(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】動物用の抗IL31抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221019BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20221019BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221019BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221019BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221019BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221019BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221019BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221019BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221019BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221019BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221019BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20221019BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221019BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221019BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221019BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/24 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P17/04
A61P17/06
A61P17/00
A61P37/08
A61P11/06
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511238
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 US2020048618
(87)【国際公開番号】W WO2021041972
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517299032
【氏名又は名称】キンドレッド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, シー ジアン
(72)【発明者】
【氏名】グェン, ラム
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ハンチュン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064BJ12
4B064CA02
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4B064CA08
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4B065CA25
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4B065CA46
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA891
4C084ZB131
4C084ZC202
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
イヌIL31及びネコIL31への結合性が増強された抗IL31抗体に関する様々な実施態様が提供される。そのような抗体は、イヌ及びネコなどのコンパニオンアニマルにおけるIL31誘発状態を治療する方法において使用できる。イヌIL31及びネコIL31への結合性が増強された抗体が提供される。イヌ及びネコIL31に結合する抗体を形成することができる抗体重鎖及び軽鎖がまた提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌIL31又はネコIL31に結合する単離された抗体であって、
a)配列番号:14若しくは配列番号:15のアミノ酸配列を有するCDR-H3配列を含む重鎖;及び/又は
b)配列番号:20のアミノ酸配列を有するCDR-L1配列を含む軽鎖;及び/又は
c)配列番号:23若しくは配列番号:24のアミノ酸配列を有するCDR-L3配列を含む軽鎖
を含む、抗体。
【請求項2】
イヌIL31又はネコIL31に結合する単離された抗体であって、
a)配列番号:11のアミノ酸配列を有するCDR-H1配列、配列番号:12のアミノ酸配列を有するCDR-H2配列、及び配列番号:13、配列番号:14、若しくは配列番号:15のアミノ酸配列を有するCDR-H3配列を含む重鎖;及び/又は
b)配列番号:20のアミノ酸配列を有するCDR-L1配列、配列番号:21のアミノ酸配列を有するCDR-L2配列、及び配列番号:22、配列番号:23、若しくは配列番号:24のアミノ酸配列を有するCDR-L3配列を含む軽鎖
を含む、抗体。
【請求項3】
抗体が、バイオレイヤー干渉法で測定して、5×10
-8M未満、1×10
-8M未満、5×10
-9M未満、1×10
-9M未満、5×10
-10M未満、1×10
-10M未満、5×10
-11M未満、1×10
-11M未満、5×10
-12M未満、又は1×10
-12M未満の解離定数(Kd)でイヌIL31又はネコIL31に結合する、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
STAT-1、STAT-3、及び/又はSTAT-5リン酸化の低下によって測定されて、抗体がコンパニオンアニマル種においてIL31シグナル伝達機能を低下させる、請求項1から3の何れか一項に記載の抗体。
【請求項5】
コンパニオンアニマル種がイヌ又はネコである、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
イムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定されて、抗体がイヌIL31又はネコIL31に結合する、請求項1から5の何れか一項に記載の抗体。
【請求項7】
抗体がイヌIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する、請求項1から6の何れか一項に記載の抗体。
【請求項8】
抗体がネコIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する、請求項1から7の何れか一項に記載の抗体。
【請求項9】
イムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定されて、抗体がヒトIL31に結合しない、請求項1から8の何れか一項に記載の抗体。
【請求項10】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1から9の何れか一項に記載の抗体。
【請求項11】
抗体が、イヌ化、ネコ化、又はキメラ抗体である、請求項1から10の何れか一項に記載の抗体。
【請求項12】
(a)配列番号:16の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列;(b)配列番号:17のHC-FR2配列;(c)配列番号:18のHC-FR3配列;(d)配列番号:19のHC-FR4配列;(e)配列番号:25の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号:26のLC-FR2配列;(g)配列番号:27のLC-FR3配列;又は(h)配列番号:28のLC-FR4配列のうちの一又は複数を更に含む、請求項1から11の何れか一項に記載の抗体。
【請求項13】
(a)配列番号:55若しくは配列番号:56の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列;(b)配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59のHC-FR2配列;(c)配列番号:60若しくは配列番号:61のHC-FR3配列;(d)配列番号:62若しくは配列番号:63のHC-FR4配列;(e)配列番号:64若しくは配列番号:65の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号:66、配列番号:67、若しくは配列番号:68のLC-FR2配列;(g)配列番号:69若しくは配列番号:70のLC-FR3配列;又は(h)配列番号:71若しくは配列番号:72のLC-FR4配列のうちの一又は複数を更に含む、請求項1から11の何れか一項に記載の抗体。
【請求項14】
抗体が、
a)(i)配列番号:5、配列番号:6、若しくは配列番号:7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖配列;(ii)配列番号:8、配列番号:9、若しくは配列番号:10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;又は(iii)(i)のような可変重鎖配列と(ii)のような可変軽鎖配列;あるいは
b)(i)配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、若しくは配列番号:90のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖配列;(ii)配列番号:52、配列番号:53、若しくは配列番号:54のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;又は(iii)(i)のような可変重鎖配列と(ii)のような可変軽鎖配列
を含む、請求項1から13の何れか一項に記載の抗体。
【請求項15】
抗体が、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:49、配列番号:50、配列番号51、又は配列番号:90の可変重鎖配列を含む、請求項1から14の何れか一項に記載の抗体。
【請求項16】
抗体が、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:52、配列番号:53、若しくは配列番号:54の可変軽鎖配列を含む、請求項1から15の何れか一項に記載の抗体。
【請求項17】
抗体が、
a)配列番号:5、配列番号:7、若しくは配列番号:8の可変重鎖配列;及び配列番号:9、配列番号:10、若しくは配列番号:11の可変軽鎖配列;又は
b)配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、若しくは配列番号:90の可変重鎖配列;及び配列番号:52、配列番号:53、若しくは配列番号:54の可変軽鎖配列
を含む、請求項1から16の何れか一項に記載の抗体。
【請求項18】
抗体がイヌ若しくはネコ定常重鎖領域及び/又はイヌ若しくはネコ定常軽鎖領域を含む、請求項1から17の何れか一項に記載の抗体。
【請求項19】
抗体が、(a)IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域;又は(b)IgG1、IgG2a、及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域を含む、請求項1から18の何れか一項に記載の抗体。
【請求項20】
抗体が、
a)(i)配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43、配列番号:44、若しくは配列番号:45の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:46、配列番号:47、若しくは配列番号:48の軽鎖アミノ酸配列;又は(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖アミノ酸配列;あるいは
b)(i)配列番号:73、配列番号:74、配列番号:75、若しくは配列番号:91の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:76、配列番号:77、若しくは配列番号78の軽鎖アミノ酸配列;又は(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖アミノ酸配列
を含む、請求項1から19の何れか一項に記載の抗体。
【請求項21】
配列番号:3の可変重鎖アミノ酸配列及び/又は配列番号:4の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
【請求項22】
配列番号:5、配列番号:6、又は配列番号:7の可変重鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
【請求項23】
配列番号:8、配列番号:9、又は配列番号:10の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
【請求項24】
抗体が、配列番号:8、配列番号:9、又は配列番号:10の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項21に記載の単離された抗体。
【請求項25】
配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、又は配列番号:90の可変重鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
【請求項26】
配列番号:52、配列番号:53、又は配列番号:54の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
【請求項27】
抗体が、配列番号:52、配列番号:53、又は配列番号:54の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1から24の何れか一項に記載の単離された抗体。
【請求項28】
抗体が、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)
2、及びFab’-SHから選択される抗体断片である、請求項1から27の何れか一項に記載の抗体。
【請求項29】
抗体が二重特異性であり、抗体がIL31と、IL17、TNFα、CD20、CD19、CD25、IL4、IL13、IL23、IgE、CD11α、IL6R、α4-インテルグリン、IL12、IL1β、又はBlySから選択される一又は複数の抗原に結合する、請求項1から28の何れか一項に記載の抗体。
【請求項30】
請求項1から29の何れか一項に記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項31】
請求項30に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項32】
請求項31に記載の宿主細胞を培養し、抗体を単離することを含む、抗体を産生する方法。
【請求項33】
請求項1から29の何れか一項に記載の抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項34】
IL31誘発状態を有するコンパニオンアニマル種を治療する方法であって、治療有効量の請求項1から29の何れか一項に記載の抗体又は請求項33に記載の薬学的組成物をコンパニオンアニマル種に投与することを含む、方法。
【請求項35】
コンパニオンアニマル種がイヌ又はネコである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
IL31誘発状態がそう痒性又はアレルギー性状態である、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項37】
IL31誘発状態が、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、そう痒症、喘息、乾癬、強皮症及び湿疹から選択される、請求項34から36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
抗体又は薬学的組成物が非経口的に投与される、請求項34から37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
抗体又は薬学的組成物が、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑液中経路、髄腔内経路、又は吸入経路によって投与される、請求項34から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
抗体又は薬学的組成物と組み合わせて、Jak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、又はMAPK阻害剤を投与することを含む、請求項34から39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
抗体又は薬学的組成物と組み合わせて、抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗IL6R抗体α4-インテルグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、及び抗BlyS抗体から選択される一又は複数の抗体を投与することを含む、請求項34から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低下させる方法であって、細胞外IL31への抗体の結合を許容する条件下で、請求項1から29の何れか一項に記載の抗体又は請求項33に記載の薬学的組成物を細胞に曝露し、それにより、IL31受容体への結合を低下させ、且つ/又は細胞によるIL31シグナル伝達機能を低下させることを含む、方法。
【請求項43】
細胞がエクスビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
細胞がインビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
細胞がイヌ細胞又はネコ細胞である、請求項42から44の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
コンパニオンアニマル種からのサンプル中のIL31を検出する方法であって、抗体のIL31への結合を許容する条件下で、サンプルを請求項1から29の何れか一項に記載の抗体又は請求項33に記載の薬学的組成物と接触させることと、抗体とサンプル中のIL31の間に複合体が形成されるかどうかを検出することを含む、方法。
【請求項47】
サンプルが、イヌ又はネコから得られた生物学的サンプルである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
IL31アンタゴニストを同定する方法であって、改変された細胞株をIL31アンタゴニスト候補と接触させることを含み、改変された細胞株がイヌ又はネコに由来しない哺乳動物細胞株であり、改変された細胞株がイヌIL31Ra及び/又はネコIL31Raを発現する、方法。
【請求項49】
改変された細胞株がHeLa細胞株である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
改変された細胞株がイヌIL31Ra又はネコIL31Raを発現する、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
改変された細胞株が、配列番号:92又は配列番号:93のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現する、請求項48から50の何れか一項に記載の方法。
【請求項52】
改変された細胞株がイヌ又はネコオンコスタチンM受容体(OSMR)を発現しない、請求項48から51の何れか一項に記載の方法。
【請求項53】
IL31アンタゴニスト候補が、IL31抗体、可溶性IL31受容体、IL31Ra抗体、又は小分子、アプタマー、又はペプチドである、請求項48から52の何れか一項に記載の方法。
【請求項54】
方法が、IL31シグナル伝達機能を測定することを含む、請求項48から53の何れか一項に記載の方法。
【請求項55】
IL31シグナル伝達機能が、STAT-1、STAT-3、及び/又はSTAT-5リン酸化のレベルによって測定される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
IL31アンタゴニスト候補が、STAT-1、STAT-3、及び/又はSTAT-5リン酸化の低下を検出することによって同定される、請求項55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
この出願は、各々があらゆる目的のためにその全体について出典明示によりここに援用される、2019年8月29日出願の米国仮出願第62/893799号、及び2019年8月30日出願の米国仮出願第62/894526号の利益を主張する。
【0002】
[分野]
本発明は、例えば、イヌIL31及びネコIL31への結合性が増強された単離された抗IL31抗体、並びに例えばイヌ及びネコなどのコンパニオンアニマルにおいて、前記抗体を使用して、例えばIL31誘発状態を治療するか、又は細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インターロイキン31(IL31)は、大部分はTh2細胞によって産生されるサイトカインであり、そう痒性及び他の形態のアレルギー性疾患(例えば、アトピー性皮膚炎)などの皮膚疾患の促進に関与していると理解される。IL31は、その受容体複合体(IL31受容体A(IL-31Ra)とオンコスタチンM受容体(OSMR)サブユニットの複合体)への結合と、下流活性の活性化、例えばJAKキナーゼの活性化とそれに続くリン酸化及びSTAT1、STAT3、及びSTAT5の活性化により、機能する。この経路の活性化は、皮膚炎及び他の障害に関連する臨床的問題の多くを引き起こすと考えられている。
ネコ、イヌ、及びウマなどのコンパニオンアニマルは、アトピー性皮膚炎を含む、ヒト皮膚疾患と同様の多くの皮膚疾患に罹患する。しかし、IL31配列は、ヒト、ネコ、イヌ、及びウマの間で多岐にわたる。従って、IL31誘発状態を治療し、IL31シグナル伝達を低下させるためにコンパニオンアニマルIL31に特異的に結合するために使用できる方法及び化合物の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0004】
実施態様1. イヌIL31又はネコIL31に結合する単離された抗体であって、
a)配列番号:14若しくは配列番号:15のアミノ酸配列を有するCDR-H3配列を含む重鎖;及び/又は
b)配列番号:20のアミノ酸配列を有するCDR-L1配列を含む軽鎖;及び/又は
c)配列番号:23若しくは配列番号:24のアミノ酸配列を有するCDR-L3配列を含む軽鎖
を含む、抗体。
実施態様2. イヌIL31又はネコIL31に結合する単離された抗体であって、
a)配列番号:11のアミノ酸配列を有するCDR-H1配列、配列番号:12のアミノ酸配列を有するCDR-H2配列、及び配列番号:13、配列番号:14、若しくは配列番号:15のアミノ酸配列を有するCDR-H3配列を含む重鎖;及び/又は
b)配列番号:20のアミノ酸配列を有するCDR-L1配列、配列番号:21のアミノ酸配列を有するCDR-L2配列、及び配列番号:22、配列番号:23、若しくは配列番号:24のアミノ酸配列を有するCDR-L3配列を含む軽鎖
を含む、抗体。
実施態様3. 抗体が、バイオレイヤー干渉法で測定して、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、又は1×10-12M未満の解離定数(Kd)でイヌIL31又はネコIL31に結合する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様4. STAT-3リン酸化の低下によって測定されて、抗体がコンパニオンアニマル種においてIL31シグナル伝達機能を低下させる、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様5. コンパニオンアニマル種がイヌ又はネコである、実施態様4の抗体。
実施態様6. イムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定されて、抗体がイヌIL31又はネコIL31に結合する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様7. 抗体がイヌIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様8. 抗体がネコIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様9. イムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定されて、抗体がヒトIL31に結合しない、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様10. 抗体がモノクローナル抗体である、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様11. 抗体が、イヌ化、ネコ化、又はキメラ抗体である、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様12. (a)配列番号:16の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列;(b)配列番号:17のHC-FR2配列;(c)配列番号:18のHC-FR3配列;(d)配列番号:19のHC-FR4配列;(e)配列番号:25の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号:26のLC-FR2配列;(g)配列番号:27のLC-FR3配列;又は(h)配列番号:28のLC-FR4配列のうちの一又は複数を更に含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様13. (a)配列番号:55若しくは配列番号:56の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列;(b)配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59のHC-FR2配列;(c)配列番号:60若しくは配列番号:61のHC-FR3配列;(d)配列番号:62若しくは配列番号:63のHC-FR4配列;(e)配列番号:64若しくは配列番号:65の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号:66、配列番号:67、若しくは配列番号:68のLC-FR2配列;(g)配列番号:69若しくは配列番号:70のLC-FR3配列;又は(h)配列番号:71若しくは配列番号:72のLC-FR4配列のうちの一又は複数を更に含む、実施態様1から11の何れか一の抗体。
実施態様14. 抗体が、
a)(i)配列番号:5、配列番号:6、若しくは配列番号:7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖配列;(ii)配列番号:8、配列番号:9、若しくは配列番号:10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;又は(iii)(i)のような可変重鎖配列と(ii)のような可変軽鎖配列;あるいは
b)(i)配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、若しくは配列番号:90のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖配列;(ii)配列番号:52、配列番号:53、若しくは配列番号:54のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;又は(iii)(i)のような可変重鎖配列と(ii)のような可変軽鎖配列
を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様15. 抗体が、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:49、配列番号:50、配列番号51、又は配列番号:90の可変重鎖配列を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様16. 抗体が、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:52、配列番号:53、若しくは配列番号:54の可変軽鎖配列を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様17. 抗体が、
a)配列番号:5、配列番号:7、若しくは配列番号:8の可変重鎖配列;及び配列番号:9、配列番号:10、若しくは配列番号:11の可変軽鎖配列;又は
b)配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、若しくは配列番号:90の可変重鎖配列;及び配列番号:52、配列番号:53、若しくは配列番号:54の可変軽鎖配列
を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様18. 抗体がイヌ若しくはネコ定常重鎖領域及び/又はイヌ若しくはネコ定常軽鎖領域を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様19. 抗体が、(a)IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域;又は(b)IgG1、IgG2a、及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様20. 抗体が、
a)(i)配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43、配列番号:44、若しくは配列番号:45の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:46、配列番号:47、若しくは配列番号:48の軽鎖アミノ酸配列;又は(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖アミノ酸配列;あるいは
b)(i)配列番号:73、配列番号:74、配列番号:75、若しくは配列番号:91の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:76、配列番号:77、若しくは配列番号78の軽鎖アミノ酸配列;又は(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖アミノ酸配列
を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様21. 配列番号:3の可変重鎖アミノ酸配列及び/又は配列番号:4の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
実施態様22. 配列番号:5、配列番号:6、又は配列番号:7の可変重鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
実施態様23. 配列番号:8、配列番号:9、又は配列番号:10の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
実施態様24. 抗体が、配列番号:8、配列番号:9、又は配列番号:10の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、実施態様21の単離された抗体。
実施態様25. 配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、又は配列番号:90の可変重鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
実施態様26. 配列番号:52、配列番号:53、又は配列番号:54の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、単離された抗体。
実施態様27. 抗体が、配列番号:52、配列番号:53、又は配列番号:54の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、実施態様1から25の何れか一の単離された抗体。
実施態様28. 抗体が、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFab’-SHから選択される抗体断片である、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様29. 抗体が二重特異性であり、抗体がIL31と、IL17、TNFα、CD20、CD19、CD25、IL4、IL13、IL23、IgE、CD11α、IL6R、α4-インテルグリン(Intergrin)、IL12、IL1β、又はBlySから選択される一又は複数の抗原に結合する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様30. 実施態様1から29の何れか一の抗体をコードする単離された核酸。
実施態様31. 実施態様30の核酸を含む宿主細胞。
実施態様32. 実施態様31の宿主細胞を培養し、抗体を単離することを含む、抗体を産生する方法。
実施態様33. 実施態様1から29の何れか一の抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
実施態様34. IL31誘発状態を有するコンパニオンアニマル種を治療する方法であって、治療有効量の実施態様1から29の何れか一の抗体又は実施態様33の薬学的組成物をコンパニオンアニマル種に投与することを含む、方法。
実施態様35. コンパニオンアニマル種がイヌ又はネコである、実施態様33の方法。
実施態様36. IL31誘発状態がそう痒性又はアレルギー性状態である、実施態様34又は実施態様35の方法。
実施態様37. IL31誘発状態が、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、そう痒症、喘息、乾癬、強皮症及び湿疹から選択される、実施態様34から36の何れか一の方法。
実施態様38. 抗体又は薬学的組成物が非経口的に投与される、実施態様34から37の何れか一の方法。
実施態様39. 抗体又は薬学的組成物が、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑液嚢内経路、くも膜下腔内経路、又は吸入経路によって投与される、実施態様34から38の何れか一の方法。
実施態様40. 方法が、抗体又は薬学的組成物と組み合わせて、Jak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、又はMAPK阻害剤を投与することを含む、実施態様34から39の何れか一の方法。
実施態様41. 方法が、抗体又は薬学的組成物と組み合わせて、抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗α4-インテルグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、及び抗BlyS抗体から選択される一又は複数の抗体を投与することを含む、実施態様34から40の何れか一の方法。
実施態様42. 細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低下させる方法であって、細胞外IL31への抗体の結合を許容する条件下で、実施態様1から29の何れか一の抗体又は実施態様33の薬学的組成物を細胞に曝露し、それにより、IL31受容体への結合を低下させ、且つ/又は細胞によるIL31シグナル伝達機能を低下させることを含む、方法。
実施態様43. 細胞がエクスビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される、実施態様42の方法。
実施態様44. 細胞がインビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される、実施態様42の方法。
実施態様45. 細胞がイヌ細胞又はネコ細胞である、実施態様42から44の何れか一の方法。
実施態様46. コンパニオンアニマル種からのサンプル中のIL31を検出する方法であって、抗体のIL31への結合を許容する条件下で、サンプルを実施態様1から29の何れか一の抗体又は実施態様33の薬学的組成物と接触させることと、抗体とサンプル中のIL31の間に複合体が形成されるかどうかを検出することを含む、方法。
実施態様47. サンプルが、イヌ又はネコから得られた生物学的サンプルである、実施態様46の方法。
実施態様48. IL31アンタゴニストを同定する方法であって、改変された細胞株をIL31アンタゴニスト候補と接触させることを含み、改変された細胞株がイヌ又はネコに由来しない哺乳動物細胞株であり、改変された細胞株がイヌIL31Ra及び/又はネコIL31Raを発現する、方法。
実施態様49. 改変された細胞株がHeLa細胞株である、実施態様48の方法。
実施態様50. 改変された細胞株がイヌIL31Ra又はネコIL31Raを発現する、実施態様48又は49の方法。
実施態様51. 改変された細胞株が、配列番号:92又は配列番号:93のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現する、実施態様48から50の何れか一の方法。
実施態様52. 改変された細胞株がイヌ又はネコオンコスタチンM受容体(OSMR)を発現しない、実施態様48から51の何れか一の方法。
実施態様53. IL31アンタゴニスト候補が、IL31抗体、可溶性IL31受容体、IL31Ra抗体、又は小分子、アプタマー、又はペプチドである、実施態様48から52の何れか一の方法。
実施態様54. 方法が、IL31シグナル伝達機能を測定することを含む、実施態様48から53の何れか一の方法。
実施態様55. IL31シグナル伝達機能が、STAT-1、STAT-3、及び/又はSTAT-5リン酸化のレベルによって測定される、実施態様54の方法。
実施態様56. IL31アンタゴニスト候補が、STAT-1、STAT-3、及び/又はSTAT-5リン酸化の低下を検出することによって同定される、実施態様48から55の方法。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は実施例2に係るネコIL-31に対する6種のキメラ抗体の結合解析である。
【所定の配列の説明】
【0006】
表1は、ここで参照される所定の配列のリストを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
イヌIL31及びネコIL31への結合性が増強された抗体が提供される。イヌ及びネコIL31に結合する抗体を形成することができる抗体重鎖及び軽鎖もまた提供される。加えて、一又は複数の特定の相補性決定領域(CDR)を含む抗体、重鎖、及び軽鎖が提供される。イヌ及びネコIL31に対する抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。イヌ及びネコIL31に対する抗体を産生し又は精製する方法もまた提供される。イヌ及びネコIL31に対する抗体を使用する治療方法が提供される。そのような方法には、限定されないが、コンパニオンアニマル種におけるIL31誘発状態を治療する方法が含まれる。コンパニオンアニマル種からのサンプル中のIL31を検出する方法が提供される。
【0008】
読者の便宜のために、ここで使用される用語に次の定義が提供される。
【0009】
ここで使用される場合、Kdなどの数値用語は、科学的測定に基づいて計算され、従って、適当な測定誤差の影響を受ける。場合によっては、数値用語は、最も近い有効数字に丸められた数値を含みうる。
【0010】
ここで使用される場合、「a」又は「an」は、別段の指定がない限り、「少なくとも一」又は「一又は複数」を意味する。ここで使用される場合、「又は」という用語は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。複数項に従属する請求項の文脈では、他の請求項を引用する際の「又は」の使用は、その代替の請求項のみを引用する。
【0011】
[例示的な抗IL31抗体]
イヌIL31及びネコIL31への親和性が増強された抗体が提供される。ここに提供される抗IL31抗体には、限定されないが、モノクローナル抗体、キメラ抗体、イヌ化抗体、及びネコ化抗体が含まれる。
【0012】
またここに提供されるのは、イヌ及びネコIL-31への結合性が増強された親和性成熟抗体のアミノ酸配列である。例えば、例示的な親和性成熟抗体(イヌ化及びネコ化)に対する可変重鎖CDR(配列番号:11-15)、可変軽鎖CDR(配列番号:20-24)、可変領域重鎖フレームワーク配列(配列番号:16-19、25-28、55-72)、及び可変領域軽鎖フレームワーク配列(配列番号11-14)が提供される。例示的な親和性成熟抗体(イヌ化及びネコ化)の可変軽鎖、軽鎖、可変重鎖、及び重鎖の例示的アミノ酸配列が提供される(例えば、配列番号:5-10、29-54、73-78)。
【0013】
ここにおける「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、限定されないがモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性(例えば二重特異性T細胞エンゲージャー)及び三重特異性抗体)、及びそれらが所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片(Fab、F(ab’)2、ScFv、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディなど)を含む様々な抗体構造を包含する。イヌ、ネコ、及びウマ種は、多くの哺乳動物によって共有される異なる種類(クラス)の抗体を有している。
【0014】
抗体という用語は、限定されないが、抗原に結合することができる断片、例えばFv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、di-scFv、sdAb(単一ドメイン抗体)及び(Fab’)2(化学的に結合したF(ab’)2を含む)を含む。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる、それぞれに単一の抗原結合部位がある二つの同一の抗原結合断片と、その名が容易に結晶化するその能力を反映している残りの「Fc」断片が生成される。ペプシン処理により、二つの抗原結合部位を有し、尚も抗原を架橋できるF(ab’)2断片が生成される。抗体という用語はまた、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びマウス、ヒト、カニクイザル、イヌ、ネコ、ウマなどの様々な種の抗体を含む。更に、ここに提供される全ての抗体コンストラクトに対して、他の生物由来の配列を有するバリアントもまた企図される。従って、抗体のマウス型が開示される場合、当業者には、マウス配列に基づく抗体をネコ、イヌ、ウマなどの配列に変換する方法が分かるであろう。抗体断片はまた、何れかの配向の単鎖scFv、タンデムdi-scFv、ダイアボディ、タンデムtri-sdcFv、ミニボディなどを含む。抗体断片はまた、ナノボディ(sdAb、軽鎖のない重鎖の可変ドメイン対などの単一の単量体ドメインを有する抗体)を含む。抗体断片は、幾つかの実施態様では特定の種であると言うことができる(例えば、マウスscFv又はイヌscFv)。これは、コンストラクト源ではなく、非CDR領域の少なくとも一部の配列を示す。幾つかの実施態様では、抗体は、標識を含むか、又は第二の部分にコンジュゲートされる。
【0015】
「標識」及び「検出可能な標識」という用語は、特異的結合対のメンバー間の反応(例えば、結合)を検出可能にするために抗体又はその分析物に付着させた部分を意味する。特異的結合対の標識されたメンバーは、「検出可能に標識された」と呼ばれる。従って、「標識された結合タンパク質」という用語は、結合タンパク質の同定をもたらす標識が導入されたタンパク質を指す。幾つかの実施態様では、標識は、視覚的又は機器的手段、例えば、放射標識アミノ酸の取り込み又はマークされたアビジン(例えば、光学的又は比色法で検出できる蛍光マーカー又は酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出できるビオチニル部分のポリペプチドへの付着によって検出可能であるシグナルを生成しうる検出可能なマーカーである。ポリペプチドのための標識の例には、限定されないが、次のものが含まれる:放射性同位元素又は放射性核種(例えば、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、又は153Sm);色素原、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される予め決められたポリペプチドエピトープ;及びガドリニウムキレートなどの磁性剤。イムノアッセイに一般的に用いられる標識の代表的な例には、光を生じる部分、例えばアクリジニウム化合物と、蛍光を生じる部分、例えばフルオレセインが含まれる。この点に関して、部分自体は検出可能に標識されていないが、更に別の部分との反応時に検出可能になる場合がある。
【0016】
「モノクローナル抗体」という用語は、抗体の実質的に均質な集団の抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる可能な天然に生じる変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して産生されている。更に、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して産生されている。而して、モノクローナル抗体のサンプルは、抗原上の同じエピトープに結合することができる。「モノクローナル」との修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の性質を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein,1975,Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されうるか、あるいは米国特許第4816567号に記載されたような組換えDNA法によって作製されうる。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCafferty等,1990,Nature 348:552-554に記載された技術を使用して作製されたファージライブラリーから単離されうる。
【0017】
「アミノ酸配列」は、ペプチド又はタンパク質中のアミノ酸残基の配列を意味する。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用され、最小の長さに限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは、天然又は非天然のアミノ酸残基を含み得、限定されないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体を含む。完全長タンパク質とその断片の両方が定義に包含される。該用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化などを含む。更に、本開示の目的では、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対して欠失、付加、及び置換(一般に性質が保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異誘発などによる意図的なものである場合もあれば、タンパク質を産生する宿主の変異やPCR増幅によるエラーなどによる偶発的なものである場合もある。
【0018】
ここで使用される「IL31」は、細胞中でのIL31の発現及びプロセシングから生じる任意の天然IL31を指す。この用語には、特に明記されていない限り、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)、及びコンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ、及びウマ)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物由来のIL31が含まれる。この用語にはまた、IL31の天然に生じるバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントが含まれる。
【0019】
幾つかの実施態様では、イヌIL31は、配列番号:79又は配列番号:80のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、ネコIL31は、配列番号:81のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、マウスIL31は、配列番号:82のアミノ酸配列を含む。
【0020】
抗体の「IL31結合ドメイン」という用語は、IL31に結合する、抗IL31抗体の軽鎖及び重鎖によって形成される結合ドメインを意味する。
【0021】
幾つかの実施態様では、IL31結合ドメインは、それがヒトIL31に結合するよりも高親和性でイヌIL31又はネコIL31に結合する。幾つかの実施態様では、IL31結合ドメインは、ウマIL31などの他のコンパニオンアニマルのIL31に結合する。幾つかの実施態様では、IL31結合ドメインは、ヒトIL31に結合しない。
【0022】
ここで使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗原結合分子(例えば抗体、抗体断片、又は抗体結合領域を含むスカフォールドタンパク質)が結合する標的分子(例えば抗原、例えばタンパク質、核酸、糖又は脂質)上の部位を意味する。エピトープは、アミノ酸、ポリペプチド又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面グループを含むことが多く、特定の三次元構造特性並びに特定の荷電特性を有している。エピトープは、標的分子の近接した又は並置された非近接の残基(例えばアミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)の両方から形成されうる。近接した残基(例えばアミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)から形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露で保持される一方、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒での処理で失われる。エピトープは、限定されないが、少なくとも3残基、少なくとも5残基、又は8-10残基(例えばアミノ酸又はヌクレオチド)を含みうる。幾つかの例では、エピトープ長は20残基(例えばアミノ酸又はヌクレオチド)未満、15残基未満又は12残基未満である。二つの抗体は、それらが抗原に対して競合結合性を示す場合は、抗原内の同じエピトープに結合しうる。幾つかの実施態様では、エピトープは、抗原結合分子上のCDR残基に対する所定の最小距離で同定されうる。幾つかの実施態様では、エピトープは上記の距離によって同定され得、更に抗体残基と抗原残基との間の結合(例えば水素結合)に関与するその残基に限定される。エピトープは様々なスキャンによってまた同定することができ、例えばアラニン又はアルギニンスキャンは、抗原結合分子が相互作用しうる一又は複数の残基を示しうる。明示的に示されていない限り、エピトープとしての残基セットは、その他の残基を特定の抗体に対するエピトープの一部であることから排除しない。むしろ、そのようなセットの存在は、エピトープの最小シリーズ(又は種のセット)を表す。従って、幾つかの実施態様では、エピトープとして同定された残基セットは、抗原上のエピトープの残基の排他的なリストというより、抗原に関連する最小エピトープを表わす。
【0023】
「CDR」という用語は、当業者による少なくとも一つの識別法によって定義される相補性決定領域を意味する。幾つかの実施態様では、CDRはChothia番号付けスキーム、Kabat番号付けスキーム、KabatとChothiaの組合せ、AbM定義、接触定義、又はKabat、Chothia、AbM、若しくは接触定義の組合せの何れかに従って定義することができる。抗体内の様々なCDRは、限定されないがCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含むその適切な番号及び鎖型によって表わすことができる。「CDR」という用語は、ここでは超可変ループを含む「超可変領域」又はHVRをまた包含するように使用される。
【0024】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、
a)配列番号:14若しくは配列番号:15のアミノ酸配列を有するCDR-H3配列を含む重鎖;及び/又は
b)配列番号:20のアミノ酸配列を有するCDR-L1配列を含む軽鎖;及び/又は
c)配列番号:23若しくは配列番号:24のアミノ酸配列を有するCDR-L3配列を含む軽鎖
を含む。
【0025】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、
a)配列番号:11のアミノ酸配列を有するCDR-H1配列、配列番号:12のアミノ酸配列を有するCDR-H2配列、及び配列番号:13、配列番号:14、若しくは配列番号:15のアミノ酸配列を有するCDR-H3配列を含む重鎖;並びに/又は
b)配列番号:20のアミノ酸配列を有するCDR-L1配列、配列番号:21のアミノ酸配列を有するCDR-L2配列、及び配列番号:22、配列番号:23、若しくは配列番号:24のアミノ酸配列を有するCDR-L3配列を含む軽鎖
を含む。
【0026】
ここで使用される「可変領域」という用語は、少なくとも三のCDRを含む領域を意味する。幾つかの実施態様では、可変領域は三のCDRと少なくとも一のフレームワーク領域(「FR」)を含む。「重鎖可変領域」又は「可変重鎖」という用語は交換可能に使用され、少なくとも三の重鎖CDRを含む領域を意味する。「軽鎖可変領域」又は「可変軽鎖」という用語は交換可能に使用され、少なくとも三の軽鎖CDRを含む領域を意味する。幾つかの実施態様では、可変重鎖又は可変軽鎖は少なくとも一のフレームワーク領域を含む。幾つかの実施態様では、抗体は、HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3、及びHC-FR4から選択される少なくとも一の重鎖フレームワーク領域を含む。幾つかの実施態様では、抗体は、LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3、及びLC-FR4から選択される少なくとも一の軽鎖フレームワーク領域を含む。フレームワーク領域は軽鎖CDRの間、又は重鎖CDRの間に並置されていてもよい。例えば、抗体は次の構造:(HC-FR1)-(CDR-H1)-(HC-FR2)-(CDR-H2)-(HC-FR3)-(CDR-H3)-(HC-FR4)を有する可変重鎖を含みうる。抗体は次の構造:(CDR-H1)-(HC-FR2)-(CDR-H2)-(HC-FR3)-(CDR-H3)を有する可変重鎖を含みうる。抗体は次の構造:(LC-FR1)-(CDR-L1)-(LC-FR2)-(CDR-L2)-(LC-FR3)-(CDR-L3)-(LC-FR4)を有する可変軽鎖をまた含みうる。抗体は次の構造:(CDR-L1)-(LC-FR2)-(CDR-L2)-(LC-FR3)-(CDR-L3)を有する可変軽鎖をまた含みうる。
【0027】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、(a)配列番号:16の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列;(b)配列番号:17のHC-FR2配列;(c)配列番号:18のHC-FR3配列;(d)配列番号:19のHC-FR4配列;(e)配列番号:25の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号:26のLC-FR2配列;(g)配列番号:27のLC-FR3配列;又は(h)配列番号:28のLC-FR4配列のうちの一又は複数を含む。
【0028】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、(a)配列番号:55若しくは配列番号:56の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列;(b)配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59のHC-FR2配列;(c)配列番号:60若しくは配列番号:61のHC-FR3配列;(d)配列番号:62若しくは配列番号:63のHC-FR4配列;(e)配列番号:64若しくは配列番号:65の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号:66、配列番号:67、若しくは配列番号:68のLC-FR2配列;(g)配列番号:69若しくは配列番号:70のLCーFR3配列;又は(h)配列番号:71若しくは配列番号:72のLC-FR4配列のうちの一又は複数を含む。
【0029】
ここで使用される「定常領域」という用語は、少なくとも三の定常ドメインを含む領域を意味する。「重鎖定常領域」又は「定常重鎖」という用語は交換可能に用いられ、少なくとも三の重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む領域を意味する。非限定的な例示的重鎖定常領域には、γ、δ、α、ε、及びμが含まれる。各重鎖定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体であり、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。所定のアイソタイプはサブクラスに更に細分割することができる。例えば、IgG抗体は、限定されないが、(γ1定常領域を含む)IgG1、(γ2定常領域を含む)IgG2、(γ3定常領域を含む)IgG3、及び(γ4定常領域を含む)IgG4抗体を含み;IgA抗体は、限定されないが、(α1定常領域を含む)IgA1及び(α2定常領域を含む)IgA2抗体を含み;IgM抗体は、限定されないが、IgM1及びIgM2を含む。「軽鎖定常領域」又は「定常軽鎖」という用語は交換可能に使用され、軽鎖定常ドメインCLを含む領域を意味する。非限定的な例示的軽鎖定常領域には、λ及びκが含まれる。ドメイン内の機能を変化させない欠失及び変化は、他に指定されない限り、「定常領域」という用語の範囲内に包含される。イヌ、ネコ、及びウマは、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgM等の抗体クラスを有する。イヌIgG抗体クラスの中にはIgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-Dがある。ネコIgG抗体クラスの中にはIgG1a、IgG1b、及びIgG2がある。
【0030】
「キメラ抗体」又は「キメラ」という用語は、重鎖又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来する一方、重鎖又は軽鎖の残りの少なくとも一部が異なる供給源又は種に由来する抗体を意味する。幾つかの実施態様では、キメラ抗体は、第一の種(例えばマウス、ラット、カニクイザル等々)からの少なくとも一の可変領域と第二の種(例えばヒト、イヌ、ネコ、ウマ等々)からの少なくとも一の定常領域を含む抗体を意味する。
【0031】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域を含む。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、(a)配列番号:83の重鎖アミノ酸配列を含むイヌIgG-A抗体;(b)配列番号:84の重鎖アミノ酸配列を含むイヌIgG-B抗体;(c)配列番号:85の重鎖アミノ酸配列を含むイヌIgG-C抗体;又は(d)配列番号:86の重鎖アミノ酸配列を含むイヌIgG-D抗体である。
【0032】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、IgG1、IgG2a、及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域を含む。
【0033】
「イヌ化抗体」は、非イヌ可変領域の一部における少なくとも一のアミノ酸がイヌ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を意味する。幾つかの実施態様では、イヌ化抗体は少なくとも一のイヌ定常領域(例えばγ定常領域、α定常領域、δ定常領域、ε定常領域、μ定常領域等々)又はその断片を含む。幾つかの実施態様では、イヌ化抗体は抗体断片、例えばFab、scFv、(Fab’)2等である。「イヌ化」という用語は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非イヌ免疫グロブリンの最小配列を含むその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、若しくは抗体の他の抗原結合配列)である非イヌ(例えばマウス)抗体の形態をまた示す。イヌ化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非イヌ種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されたイヌ免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含みうる。ある場合には、イヌ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非イヌ残基によって置き換えられる。更に、イヌ化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能を更に改良し最適化するために含められる残基を含みうる。
【0034】
幾つかの実施態様では、イヌ化可変鎖は、イヌ定常重鎖又はイヌ定常軽鎖に融合される。
【0035】
「ネコ化抗体」は、非ネコ可変領域の一部における少なくとも一のアミノ酸がネコ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を意味する。幾つかの実施態様では、ネコ化抗体は少なくとも一のネコ定常領域(例えばγ定常領域、α定常領域、δ定常領域、ε定常領域、μ定常領域等々)又はその断片を含む。幾つかの実施態様では、ネコ化抗体はFab、scFv、(Fab’)2等の抗体断片である。「ネコ化」という用語は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非ネコ免疫グロブリンの最小配列を含むその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、若しくは抗体の他の抗原結合配列)である非ネコ(例えばマウス)抗体の形態をまた示す。ネコ化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非ネコ種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されたネコ免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含みうる。ある場合には、ネコ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ネコ残基によって置き換えられる。更に、ネコ化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能を更に改良し最適化するために含められる残基を含みうる。
【0036】
幾つかの実施態様では、ネコ化可変鎖は、ネコ定常重鎖又はネコ定常軽鎖に融合される。「IgX Fc」という用語は、Fc領域が特定の抗体アイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM等々)に由来することを意味し、ここで、「X」は抗体アイソタイプを示す。従って、「IgG Fc」はγ鎖のFc領域を示し、「IgA Fc」はα鎖のFc領域を示し、「IgD Fc」はδ鎖のFc領域を示し、「IgE Fc」はε鎖のFc領域を示し、「IgM Fc」は、μ鎖のFc領域を示す等々である。幾つかの実施態様では、IgG Fc領域は、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCL1を含む。「IgX-N-Fc」は、Fc領域が抗体アイソタイプの特定のサブクラス(イヌIgGサブクラスA、B、C、又はD;又はネコIgGサブクラス1、2a、又は2b等々)に由来することを示し、ここで、「N」はサブクラスを示す。幾つかの実施態様では、IgX Fc又はIgX-N-Fc領域は、イヌ又はネコなどのコンパニオンアニマルに由来する。幾つかの実施態様では、IgG Fc領域は、IgG-A、IgG-B、IgG-C、又はIgG-Dなどのイヌγ重鎖から単離される。場合によっては、IgG Fc領域は、IgG1、IgG2a、又はIgG2bなどのネコγ重鎖から単離される。IgG-A、IgG-B、IgG-C、又はIgG-DのFc領域を含む抗体は、組換え産生系でより高い発現レベルをもたらす可能性がある。
【0037】
「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の全体の強さを意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、例えば、イムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)、又は表面プラズモン共鳴装置などの当該技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。
【0038】
「KD」、「Kd」、「Kd」又は「Kd値」という用語は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すために交換可能に使用される。幾つかの実施態様では、抗体のKDは、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio LLC,Fremont,CA)などのバイオセンサーをサプライヤーの説明書に従って使用するバイオレイヤー干渉アッセイを使用することによって測定される。簡単に説明すると、ビオチン化抗原がセンサー先端に結合され、抗体の結合が90秒間モニターされ、解離が600秒間モニターされる。希釈及び結合工程の緩衝液は、20mMのリン酸、150mMのNaCl,pH7.2である。ドリフトを補正するために、緩衝液のみのブランク曲線が差し引かれる。データは、ForteBioデータ解析ソフトウェアを使用して2:1結合モデルに適合させて、結合速度定数(kon)、解離速度定数(koff)、及びKdを決定する。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比として計算される。「kon」という用語は、抗体が抗原に結合する際の速度定数を指し、「koff」という用語は、抗体が抗体/抗原複合体から解離する際の速度定数を指す。
【0039】
抗原又はエピトープへ「結合する」という用語は、当該技術分野でよく理解されている用語であり、そのような結合性を決定する方法もまた当該技術分野でよく知られている。分子は、それが特定の細胞又は物質に対して反応し、会合し、又は親和性を有し、反応、会合、又は親和性が、例えば、当該技術分野で知られている一又は複数の方法、例えばイムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラズモン共鳴装置などによって検出可能である場合、「結合性」を示すと言われる。
【0040】
「表面プラズモン共鳴」は、例えば、BIAcoreTMシステム(BIAcore International AB,a GE Healthcare company,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、リアルタイムの生体分子特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を示す。更なる説明については、Jonsson等(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26を参照のこと。
【0041】
「バイオレイヤー干渉法」は、バイオセンサー先端上の固定化タンパク質の層と内部参照層から反射した光の干渉パターンを分析する光学分析技術を指す。バイオセンサー先端に結合した分子の数の変化が、リアルタイムで測定できる干渉パターンのシフトを引き起こす。バイオレイヤー干渉法のための非限定的で例示的な装置は、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio LLC)である。例えば、Abdiche等,2008,Anal.Biochem.377:209-277を参照のこと。
【0042】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、バイオレイヤー干渉法により測定して、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、又は1×10-12M未満の解離定数(Kd)でイヌIL31又はネコIL31に結合する。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、バイオレイヤー干渉法により測定して、5×10-6Mと1×10-6Mの間、5×10-6Mと5×10-7Mの間、5×10-6Mと1×10-7Mの間、5×10-6Mと5×10-8Mの間、5×10-6Mと1×10-8Mの間、5×10-6Mと5×10-9Mの間、5×10-6Mと1×10-9Mの間、5×10-6Mと5×10-10Mの間、5×10-6Mと1×10-10Mの間、5×10-6Mと5×10-11Mの間、5×10-6Mと1×10-11Mの間、5×10-6Mと5×10-12Mの間、5×10-6Mと1×10-12Mの間、1×10-6Mと5×10-7Mの間、1×10-6Mと1×10-7Mの間、1×10-6Mと5×10-8Mの間、1×10-6Mと1×10-8Mの間、1×10-6Mと5×10-9Mの間、1×10-6Mと1×10-9Mの間、1×10-6Mと5×10-10Mの間、1×10-6Mと1×10-10Mの間、1×10-6Mと5×10-11Mの間、1×10-6Mと1×10-11Mの間、1×10-6Mと5×10-12Mの間、1×10-6Mと1×10-12Mの間、5×10-7Mと1×10-7Mの間、5×10-7Mと5×10-8Mの間、5×10-7Mと1×10-8Mの間、5×10-7Mと5×10-9Mの間、5×10-7Mと1×10-9Mの間、5×10-7Mと5×10-10Mの間、5×10-7Mと1×10-10Mの間、5×10-7Mと5×10-11Mの間、5×10-7Mと1×10-11Mの間、5×10-7Mと5×10-12Mの間、5×10-7Mと1×10-12Mの間、1×10-7Mと5×10-8Mの間、1×10-7Mと1×10-8Mの間、1×10-7Mと5×10-9Mの間、1×10-7Mと1×10-9Mの間、1×10-7Mと5×10-10Mの間、1×10-7Mと1×10-10Mの間、1×10-7Mと5×10-11Mの間、1×10-7Mと1×10-11Mの間、1×10-7Mと5×10-12Mの間、1×10-7Mと1×10-12Mの間、5×10-8Mと1×10-8Mの間、5×10-8Mと5×10-9Mの間、5×10-8Mと1×10-9Mの間、5×10-8Mと5×10-10Mの間、5×10-8Mと1×10-10Mの間、5×10-8Mと5×10-11Mの間、5×10-8Mと1×10-11Mの間、5×10-8Mと5×10-12Mの間、5×10-8Mと1×10-12Mの間、1×10-8Mと5×10-9Mの間、1×10-8Mと1×10-9Mの間、1×10-8Mと5×10-10Mの間、1×10-8Mと1×10-10Mの間、1×10-8Mと5×10-11Mの間、1×10-8Mと1×10-11Mの間、1×10-8Mと5×10-12Mの間、1×10-8Mと1×10-12Mの間、5×10-9Mと1×10-9Mの間、5×10-9Mと5×10-10Mの間、5×10-9Mと1×10-10Mの間、5×10-9Mと5×10-11Mの間、5×10-9Mと1×10-11Mの間、5×10-9Mと5×10-12Mの間、5×10-9Mと1×10-12Mの間、1×10-9Mと5×10-10Mの間、1×10-9Mと1×10-10Mの間、1×10-9Mと5×10-11Mの間、1×10-9Mと1×10-11Mの間、1×10-9Mと5×10-12Mの間、1×10-9Mと1×10-12Mの間、5×10-10Mと1×10-10Mの間、5×10-10Mと5×10-11Mの間、1×10-10Mと5×10-11Mの間、1×10-10Mと1×10-11Mの間、1×10-10Mと5×10-12Mの間、1×10-10Mと1×10-12Mの間、5×10-11Mと1×10-12Mの間、5×10-11Mと5×10-12Mの間、5×10-11Mと1×10-12Mの間、1×10-11Mと5×10-12Mの間、又は1×10-11Mと1×10-12Mの間のKdでイヌIL31、ネコIL31、又はウマIL31に結合する。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、イムノブロット解析によって決定されて、イヌIL31又はネコIL31に結合する。
【0043】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、イムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定されて、ヒトIL31に結合しない。
【0044】
幾つかの実施態様では、IL31への結合についてM14と競合する抗IL31抗体が提供される。
【0045】
「バリアント」とは、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後、如何なる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しないで、天然配列ポリペプチドと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのようなバリアントには、例えば、ポリペプチドのN末端又はC末端に一又は複数のアミノ酸残基が付加され、欠失されているポリペプチドが含まれる。
【0046】
幾つかの実施態様では、バリアントは、天然配列ポリペプチドと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0047】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、
a)(i)配列番号:5、配列番号:6、若しくは配列番号:7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖配列;(ii)配列番号:8、配列番号:9、若しくは配列番号:10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;又は(iii)(i)のような可変重鎖配列及び(ii)のような可変軽鎖配列;あるいは
b)(i)配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、若しくは配列番号:90のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖配列;(ii)配列番号:52、配列番号:53、若しくは配列番号:54のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;又は(iii)(i)のような可変重鎖配列及び(ii)のような可変軽鎖配列
を含む。
【0048】
ここで使用される場合、ペプチド、ポリペプチド、又は抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、配列を整列させ、最大パーセントの配列同一性を達成するために必要ならば、ギャップを導入した後、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しないで、特定のペプチド又はポリペプチド配列において、アミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的でのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMEGALINETM(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当該技術分野の技量の範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者は、比較されている配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0049】
アミノ酸置換には、限定されないが、ポリペプチド中のあるアミノ酸を別のアミノ酸にと置換することが含まれうる。例示的な置換を表2に示す。アミノ酸置換は目的の抗体に導入され得、生成物が所望の活性、例えば、抗原結合性の保持/改善、免疫原性の減少、又はADCC又はCDCの改善についてスクリーニングされうる。
【0050】
【0051】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けされうる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0052】
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0053】
「ベクター」という用語は、クローン化されたポリヌクレオチド又は宿主細胞内で増殖することができるポリヌクレオチドを含むように操作することができるポリヌクレオチドを記述するために使用される。ベクターは、次のエレメントの一又は複数を含みうる:複製起点、目的のポリペプチドの発現を調節する一又は複数の制御配列(例えば、プロモーター又はエンハンサーなど)、又は一若しくは複数の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子及び比色分析において使用できる遺伝子、例えば、βガラクトシダーゼなど)。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞において目的のポリペプチドを発現させるために使用されるベクターを指す。
【0054】
「宿主細胞」は、ベクター又は単離ポリヌクレオチドのレシピエントでありうるか、又はレシピエントであった細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞でありうる。例示的な真核細胞には、哺乳動物細胞、例えば霊長類又は非霊長類の動物細胞;真菌細胞、例えば酵母;植物細胞;及び昆虫細胞が含まれる。非限定的で例示的な哺乳動物細胞には、限定されないが、NS0細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、293細胞、及びCHO細胞、並びにそれらの派生体、例えば、293-6E、DG44、CHO-S、及びCHO-K細胞が含まれる。宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、自然の、偶発的、又は意図的な変異のために、必ずしも元の親細胞と(形態又はゲノムDNA相補鎖において)完全に同一であるとは限らない。宿主細胞は、ここに提供されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドでインビボでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0055】
ここで使用される「単離された」という用語は、それが典型的には天然に見出されるか又は産生される成分の少なくとも幾つかから分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それが産生された細胞の成分の少なくとも幾つかから分離される場合、「単離された」と呼ばれる。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌される場合、ポリペプチドを含む上清を、それを産生した細胞から物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」ことと考えられる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的には自然界に見出されるより大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合はゲノムDNA又はミトコンドリアDNA)の一部ではないか、あるいは例えばRNAポリヌクレオチドの場合、それが産生された細胞の成分の少なくとも幾つかから分離される場合、「単離された」と呼ばれる。従って、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と呼ばれる場合がある。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAカラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びCHTクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを使用して精製される。
【0056】
「コンパニオンアニマル種」という用語は、ヒトのコンパニオンとなるのに適した動物を指す。幾つかの実施態様では、コンパニオンアニマル種は、イヌ(canine)、ネコ(feline)、犬(dog)、猫(cat)、ウマ、ウサギ、フェレット、モルモット、齧歯類などの小型哺乳動物である。幾つかの実施態様では、コンパニオンアニマル種は、ウマ、ウシ、ブタなどの家畜である。
【0057】
「IL31シグナル伝達機能」という用語は、IL31がその受容体又は受容体複合体に結合するときに生じる下流の活性の何れか一又は組合せを指す。幾つかの実施態様では、IL31シグナル伝達機能は、ヤヌスキナーゼ(Jak)1又はJak2シグナル伝達分子の活性化を含む。幾つかの実施態様では、IL31シグナル伝達機能は、STAT-3又はSTAT-5タンパク質のリン酸化を含む。幾つかの実施態様では、IL31シグナル伝達機能は、ERK1/2MAPキナーゼシグナル伝達経路を活性化することを含む。幾つかの実施態様では、IL31シグナル伝達機能は、PI3K/AKTシグナル伝達経路を活性化することを含む。幾つかの実施態様では、IL31シグナル伝達機能は、Jak1/2シグナル伝達経路を活性化することを含む。
【0058】
「STATリン酸化」とは、リン酸化によるSTATタンパク質の発現後修飾を意味する。例えば、「STAT-3リン酸化」は、STAT-3のリン酸化を指し、「STAT-5リン酸化」は、STAT-5のリン酸化を指す。幾つかの実施態様では、STAT-3のリン酸化は、イムノブロット解析によって測定される。
【0059】
例えば、細胞(例えば、イヌ単球DH82細胞、あるいはイヌ及び/又はネコIL31Raでトランスフェクトされた哺乳動物細胞(例えば、HeLa細胞))を、ここに記載の抗IL31抗体の存在下で37℃において24時間、15%の熱不活化ウシ胎仔血清、2mmol/LのGlutaMax、1mmol/Lのピルビン酸ナトリウム、及び10nm/mLのイヌインターフェロン-c(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)を含む増殖培地(例えば、MEM,Life Technologies(登録商標))を含む培地に1ウェル当たり1×105細胞の密度で96ウェル細胞培養プレートに蒔く。抗ホスホSTAT-3、抗STAT-3、抗ホスホSTAT-1、抗STAT-1、抗ホスホSTAT-5、又は抗STAT-5抗体(R&D Systems)を使用する細胞可溶化物のイムノブロット解析を使用して、リン酸化STATタンパク質と非リン酸化STATタンパク質の濃度を相互に検出し、ベータアクチン対照と比較することができる。イムノブロットによって定性的又は定量的にタンパク質の濃度を決定するための方法は、当業者によって理解される。幾つかの実施態様では、相対濃度は、イムノブロットの目視検査によって定性的に決定される。幾つかの実施態様では、リン酸化STATタンパク質及び非リン酸化STATタンパク質の濃度は、イムノブロットをデジタル的に画像化し、バンドの強度を決定し、既知の濃度のSTATタンパク質の線形標準曲線を使用してサンプル中のリン酸化又は非リン酸化STATタンパク質の濃度を逆算することによって定量的に決定される。
【0060】
「低下させる」又は「阻害する」とは、参照と比較して、活性、機能、又は量を減少させ、低下させ、又は停止させることを意味する。幾つかの実施態様では、「低下させる」又は「阻害する」とは、20%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、「低下させる」又は「阻害する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、「低下させる」又は「阻害する」とは、75%、85%、90%、95%、又はそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、上記の量は、同じ期間にわたり対照用量(プラセボなど)と比較して、ある期間にわたって阻害され又は減少される。ここで使用される「参照」とは、比較目的で使用される任意のサンプル、標準、又はレベルを指す。参照は、健康な又は非罹患のサンプルから取得されうる。幾つかの例では、参照は、コンパニオンアニマルの非罹患又は未治療のサンプルから得られる。幾つかの例では、参照は、試験又は治療されている動物ではない特定の種の一又は複数の健康な動物から得られる。
【0061】
ここで使用される「実質的に低下した」という用語は、当業者が二つの値の差を、該値によって測定される生物学的特性の文脈において統計的に有意であるとみなすような、数値と参照数値との間の十分に高度な低下を意味する。幾つかの実施態様では、実質的に低下した数値は、参照値と比較しておよそ10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の何れか一よりも多く低下される。
【0062】
幾つかの実施態様では、IL31抗体は、コンパニオンアニマル種におけるIL31シグナル伝達機能を、STAT-3リン酸化の低下によって測定し、抗体の非存在下でのIL31シグナル伝達機能と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%低下させることができる。幾つかの実施態様では、IL31シグナル伝達機能の低下又はSTAT-3リン酸化の低下は、10%と15%の間、10%と20%の間、10%と25%の間、10%と30%の間、10%と35%の間、10%と40%の間、10%と45%の間、10%と50%の間、10%と60%の間、10%と70%の間、10%と80%の間、10%と90%の間、10%と100%の間、15%と20%の間、15%と25%の間、15%と30%の間、15%と35%の間、15%と40%の間、15%と45%の間、15%と50%の間、15%と60%の間、15%と70%の間、15%と80%の間、15%と90%の間、15%と100%の間、20%と25%の間、20%と30%の間、20%と35%の間、20%と40%の間、20%と45%の間、20%と50%の間、20%と60%の間、20%と70%の間、20%と80%の間、20%と90%の間、20%と100%の間、25%と30%の間、25%と35%の間、25%と40%の間、25%と45%の間、25%と50%の間、25%と60%の間、25%と70%の間、25%と80%の間、25%と90%の間、25%と100%の間、30%と35%の間、30%と40%の間、30%と45%の間、30%と50%の間、30%と60%の間、30%と70%の間、30%と80%の間、30%と90%の間、30%と100%の間、35%と40%の間、35%と45%の間、35%と50%の間、35%と60%の間、35%と70%の間、35%と80%の間、35%と90%の間、35%と100%の間、40%と45%の間、40%と50%の間、40%と60%の間、40%と70%の間、40%と80%の間、40%と90%の間、40%と100%の間、45%と50%の間、45%と60%の間、45%と70%の間、45%と80%の間、45%と90%の間、45%と100%の間、50%と60%の間、50%と70%の間、50%と80%の間、50%と90%の間、50%と100%の間、60%と70%の間、60%と80%の間、60%と90%の間、60%と100%の間、70%と80%の間、70%と90%の間、70%と100%の間、80%と90%の間、80%と100%の間、又は90%と100%の間である。
【0063】
[例示的な薬学的組成物]
「薬学的製剤」及び「薬学的組成物」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象に対して容認できないほど毒性のある追加の成分を含まない調製物を指す。
【0064】
「薬学的に許容される担体」とは、対象への投与のための「薬学的組成物」を一緒に含む治療剤と共に使用するための、当該分野で一般的な非毒性固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、又は担体を指す。薬学的に許容される担体は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、製剤の他の成分と適合性がある。薬学的に許容される担体は、用いられる製剤に適切である。薬学的に許容される担体の例には、アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、イヌ又は他の動物アルブミン;緩衝液、例えばホスフェート、シトレート、トロメタミン又はHEPES緩衝液;グリシン;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物;水;塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、又は三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン、セルロース系物質;ポリエチレングリコール;スクロース;マンニトール;又はアルギニンを含むがこれに限定されないアミノ酸が含まれる。
【0065】
薬学的組成物は、凍結乾燥形態で保存することができる。従って、幾つかの実施態様では、調製方法は、凍結乾燥工程を含む。次に、凍結乾燥された組成物は、イヌ、ネコ、又はウマへの投与の前に、典型的には非経口投与に適した水性組成物として、再処方されうる。他の実施態様では、特に抗体が熱的及び酸化的変性に対して非常に安定である場合、薬学的組成物は、イヌ、ネコ、又はウマに直接又は適切に希釈して投与されうる液体として、すなわち水性組成物として保存されうる。凍結乾燥された組成物は、注射用滅菌水(WFI)で再構成することができる。抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールなどの静菌試薬)が含まれる場合がある。従って、本発明は、固体又は液体形態の薬学的組成物を提供する。
【0066】
薬学的組成物のpHは、投与される場合、約pH5から約pH8の範囲でありうる。本発明の組成物は、それらが治療目的で使用される場合、無菌である。無菌性は、除菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)による濾過を含む、当該技術分野で知られている幾つかの手段の何れかによって達成することができる。無菌性は、抗菌剤の有無にかかわらず維持されうる。
【0067】
[抗体及び薬学的組成物の例示的使用]
本発明の抗体又は抗体を含む薬学的組成物は、IL31誘発状態を治療するために有用でありうる。ここで使用される場合、「IL31誘発状態」とは、IL31濃度の上昇したレベル又は変化した勾配に関連し、それによって引き起こされ、又はそれによって特徴付けられる疾患を意味する。そのようなIL31誘発状態には、限定されないが、そう痒性又はアレルギー性疾患が含まれる。幾つかの実施態様では、IL31誘発状態は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、そう痒症、喘息、乾癬、強皮症、又は湿疹である。IL31誘発状態は、イヌ又はネコを含むがこれらに限定されないコンパニオンアニマルにおいて示されうる。
【0068】
ここで使用される場合、「治療」は、有益な又は望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。ここで使用される「治療」は、コンパニオンアニマルを含む哺乳動物における疾患のための治療薬の任意の投与又は適用を包含する。この開示の目的では、有益な又は望ましい臨床結果には、限定されないが、以下の何れか一又は複数が含まれる:一又は複数の症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の拡大の予防又は遅延化、疾患の再発の予防又は遅延化、疾患進行の遅延化又は緩徐化、病状の回復、疾患又は疾患進行の阻害、疾患又はその進行の阻害又は緩徐化、その発生の抑止、及び寛解(部分又は完全)。また「治療」に包含されるものは、増殖性疾患の病理学的帰結の減少である。ここに提供される方法は、治療のこれらの態様の何れか一又は複数を企図している。上記と一致して、治療という用語は、障害の全ての態様の100パーセントの除去を必要としない。
【0069】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体又はそれを含む薬学的組成物は、IL31誘発状態を治療するために、ここの方法に従って利用されうる。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体又は薬学的組成物は、IL31誘発状態を治療するために、イヌ又はネコなどのコンパニオンアニマルに投与される。
【0070】
物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの「治療上有効な量」は、治療される疾患のタイプ、疾患状態、疾患の重症度と経過、治療目的のタイプ、以前の治療法、臨床歴、以前の治療への反応、主治医の裁量、動物の年齢、性別、及び体重、並びに動物において所望の応答を誘発する物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの能力などの要因に応じて変化しうる。治療上有効な量は、物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの毒性又は有害な効果よりも治療上有益な効果が上回る量でもある。治療上有効な量は、一又は複数回の投与で送達されうる。治療上有効な量とは、所望の治療又は予防結果を達成するために、必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。
【0071】
幾つかの実施態様では、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、皮下投与、静脈内注入、又は筋肉内注射によって非経口的に投与される。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、ボーラス注射として又は所定の期間にわたる持続注入によって投与される。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、動脈内、関節滑液嚢内、くも膜下腔内、又は吸入経路によって投与される。
【0072】
ここに記載の抗IL31抗体は、1用量当たり0.01mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、1用量当たり0.5mg/kg体重から50mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、1用量当たり0.1mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、1用量当たり0.1mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、1用量当たり1mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、1用量当たり0.5mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、1mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、5mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、10mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、20mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、50mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、1mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲、5mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲、0.5mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲、0.01mg/kg体重から0.5mg/kg体重の範囲、0.01mg/kg体重から0.1mg/kg体重の範囲、又は5mg/kg体重から50mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。
【0073】
抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、コンパニオンアニマルに一度に又は一連の治療にわたって投与されうる。例えば、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、少なくとも一回、一回より多く、少なくとも二回、少なくとも三回、少なくとも四回、又は少なくとも五回投与されうる。
【0074】
幾つかの実施態様では、用量は、少なくとも二週間又は三週間連続して週に一回投与され、幾つかの実施態様では、この治療サイクルは二回以上繰り返され、場合によっては一又は複数週の無治療期間が散在する。他の実施態様では、治療上有効な用量は、二から五日間連続して一日一回投与され、幾つかの実施態様では、この治療サイクルは、二回以上繰り返され、場合によっては、一又は複数の日又は週の無治療期間が散在する。
【0075】
一又は複数の更なる治療剤「と組み合わせて(in combination with)」の投与には、任意の順序での同時(併用)及び連続又は逐次投与が含まれる。「併用」という用語は、ここでは、二以上の治療剤の投与を指すために使用され、ここで、投与の少なくとも一部が時間的に重複し、又は一方の治療剤の投与が他の治療剤の投与に対して短時間内にある。例えば、二以上の治療剤が、およそ特定数の分以下の時間間隔で投与される。「逐次的」という用語は、一又は複数の他の薬剤の投与を中止した後、一又は複数の薬剤の投与が続くか、又は一又は複数の他の薬剤の投与前に一又は複数の薬剤の投与が開始される、二以上の治療剤の投与を指すためにここでは使用される。例えば、二以上の治療剤の投与は、およそ特定数の分を超える時間間隔で投与される。ここで使用される場合、「と併せて(in conjunction with)」は、別の治療様式に加えてある治療様式を施すことを指す。而して、「と併せて」とは、動物へ他の治療様式を施す前、施す間、又は施した後に、ある治療様式を施すことを指す。
【0076】
幾つかの実施態様では、本方法は、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物と組み合わせて、Jak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、又はMAPK阻害剤を投与することを含む。幾つかの実施態様では、本方法は、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物と組み合わせて、抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗α4-インテルグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、又は抗BlyS抗体を投与することを含む。
【0077】
ここに提供されるのは、抗体のIL31への結合を許容する条件下で、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物を細胞に曝露する方法である。幾つかの実施態様では、細胞は、エクスビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される。幾つかの実施態様では、細胞は、インビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される。幾つかの実施態様では、細胞は、細胞内IL31への抗体の結合を許容する条件下で、抗IL31抗体又は薬学的組成物に曝露される。幾つかの実施態様では、細胞は、細胞外IL31への抗体の結合を許容する条件下で、抗IL31抗体又は薬学的組成物に曝露される。幾つかの実施態様では、細胞は、限定されないが対象への腹腔内、筋肉内、静脈内注射を含む、ここに記載の投与方法の何れか一又は複数によって、抗IL31抗体又は薬学的組成物にインビボで曝露されうる。幾つかの実施態様では、細胞は、抗体又は薬学的組成物を含む培養培地に細胞を曝露することによって、抗IL31抗体又は薬学的組成物にエクスビボで曝露されうる。幾つかの実施態様では、細胞膜の透過性は、抗体又は薬学的組成物を含む培養培地に細胞を曝露する前の、当業者によって理解される任意の数の方法(例えば細胞のエレクトロポレーション又は塩化カルシウムを含む溶液への細胞の曝露など)の使用によって影響を受けうる。
【0078】
幾つかの実施態様では、結合は、細胞によるIL31シグナル伝達機能の低下をもたらす。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は、STAT-3リン酸化の低下によって測定して、抗体の非存在下でのIL31シグナル伝達機能と比較して、細胞におけるIL31シグナル伝達機能を、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%低下させることができる。幾つかの実施態様では、IL31シグナル伝達機能の低下又はSTAT-3リン酸化の低下は、10%と15%の間、10%と20%の間、10%と25%の間、10%と30%の間、10%と35%の間、10%と40%の間、10%と45%の間、10%と50%の間、10%と60%の間、10%と70%の間、10%と80%の間、10%と90%の間、10%と100%の間、15%と20%の間、15%と25%の間、15%と30%の間、15%と35%の間、15%と40%の間、15%と45%の間、15%と50%の間、15%と60%の間、15%と70%の間、15%と80%の間、15%と90%の間、15%と100%の間、20%と25%の間、20%と30%の間、20%と35%の間、20%と40%の間、20%と45%の間、20%と50%の間、20%と60%の間、20%と70%の間、20%と80%の間、20%と90%の間、20%と100%の間、25%と30%の間、25%と35%の間、25%と40%の間、25%と45%の間、25%と50%の間、25%と60%の間、25%と70%の間、25%と80%の間、25%と90%の間、25%と100%の間、30%と35%の間、30%と40%の間、30%と45%の間、30%と50%の間、30%と60%の間、30%と70%の間、30%と80%の間、30%と90%の間、30%と100%の間、35%と40%の間、35%と45%の間、35%と50%の間、35%と60%の間、35%と70%の間、35%と80%の間、35%と90%の間、35%と100%の間、40%と45%の間、40%と50%の間、40%と60%の間、40%と70%の間、40%と80%の間、40%と90%の間、40%と100%の間、45%と50%の間、45%と60%の間、45%と70%の間、45%と80%の間、45%と90%の間、45%と100%の間、50%と60%の間、50%と70%の間、50%と80%の間、50%と90%の間、50%と100%の間、60%と70%の間、60%と80%の間、60%と90%の間、60%と100%の間、70%と80%の間、70%と90%の間、70%と100%の間、80%と90%の間、80%と100%の間、又は90%と100%の間である。
【0079】
ここに提供されるのは、抗IL31誘発状態の検出、診断、及びモニタリングのために抗IL31抗体、ポリペプチド、及びポリヌクレオチドを使用する方法である。ここに提供されるのは、コンパニオンアニマルが抗IL31抗体療法に応答するかどうかを決定する方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、抗IL31抗体を使用して、動物がIL31を発現する細胞を有するかどうかを検出することを含む。幾つかの実施態様では、検出の方法は、サンプルを抗体、ポリペプチド、又はポリヌクレオチドと接触させ、結合のレベルが参照又は比較サンプル(対照など)のレベルと異なるかどうかを決定することを含む。幾つかの実施態様では、本方法は、ここに記載の抗体又はポリペプチドが対象動物にとって適切な治療剤であるかどうかを決定するために有用でありうる。
【0080】
幾つかの実施態様では、サンプルは生物学的サンプルである。「生物学的サンプル」という用語は、生体又は以前生体であったものからのある量の物質を意味する。幾つかの実施態様では、生物学的サンプルは、細胞又は細胞/組織可溶化物である。幾つかの実施態様では、生物学的サンプルは、限定されないが、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、滑液、及び上皮細胞を含む。
【0081】
幾つかの実施態様では、細胞又は細胞/組織可溶化物を抗IL31抗体と接触させ、抗体と細胞の間の結合を決定する。試験細胞が同じ組織型の参照細胞と比較して結合活性を示す場合には、対象が抗IL31抗体での処置から恩恵を受けるであろうことが示されうる。幾つかの実施態様では、試験細胞は、コンパニオンアニマルの組織からのものである。
【0082】
特異的抗体-抗原結合を検出するための当該技術分野で知られている様々な方法を使用することができる。実施できる例示的なイムノアッセイには、蛍光分極イムノアッセイ(FPIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、比濁阻害イムノアッセイ(NIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及びラジオイムノアッセイ(RIA)が含まれる。指示薬部分、又は標識グループは、対象抗体に結合させることができ、アッセイ装置の入手可能性及び適合するイムノアッセイ手順によって決定されることが多い様々な方法の使用の必要性に合致するように選択される。適切な標識には、限定されはないが、放射性核種(例えば125I、131I、35S、3H、又は32P)、酵素(例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、又はp-グラクトシダーゼ)、蛍光性部分又はタンパク質(例えばフルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリン、GFP、又はBFP)、又は発光部分(例えばQuantum Dot Corporation,Palo Alto,Calif.によって供給されるQdotTMナノ粒子)が含まれる。上記の様々なイムノアッセイを実施する際に使用される一般的な技術は、当業者に知られている。
【0083】
診断の目的では、抗体を含むポリペプチドは、限定しないが、放射性同位体、蛍光標識、及び当該分野で知られている様々な酵素-基質標識を含む検出可能な部分で標識することができる。標識を抗体にコンジュゲートさせる方法は当該技術分野で知られている。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体は標識される必要はなく、その存在は、第一の抗IL31抗体に結合する第二の標識化抗体を使用して検出することができる。幾つかの実施態様では、抗IL31抗体を、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイ等の任意の既知のアッセイ法において用いることができる。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158(CRC Press,Inc.1987)。抗IL31抗体及びポリペプチドは、インビボイメージング等のインビボ診断アッセイにもまた用いることができる。一般に、抗体又はポリペプチドは、目的の細胞又は組織の位置がイムノシンチオグラフィーを使用して特定されうるように、放射性核種(例えば111In、99Tc、14C、131I、125I、3H、又はここに概略を示したものを含む任意の他の放射性核種標識)で標識される。抗体は当該技術分野で周知の手法を使用して病理学における染色試薬として使用してもよい。
【0084】
幾つかの実施態様では、第一の抗体は診断用に使用され、第二の抗体は治療剤として使用される。幾つかの実施態様では、第一の抗体と第二の抗体は異なる。幾つかの実施態様では、第一の抗体と第二の抗体は別々のエピトープに結合することによって、両方とも同時に抗原に結合しうる。
【0085】
次の実施例は、開示の特定の態様を例示するものであり、決して開示を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0086】
実施例1: IL31への結合性を増強するためのインビトロ親和性成熟
IL-31に対して産生されたマウスモノクローナル抗体M14の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)配列が同定された(配列番号:1及び2)。あらゆる目的のためにその全体が出典明示によりここに援用される国際公開第2018/156367号を参照のこと。M14 VH及びVL配列は、CDRグラフト化の鋳型として適切なイヌ生殖系列抗体配列を検索し選択し、続いてタンパク質モデリングを行うことにより、イヌ化した(配列番号:3及び4)。
【0087】
イヌ化されたM14 VH及びVL配列(配列番号:3及び4)のCDR内及びその周辺に変異を有するバリアントFabポリペプチドのファージライブラリーを調製し、イヌIL31解離アッセイによってより遅いkoff速度についてスクリーニングした。イヌIL31に対してファージライブラリーを3ラウンドパニングした後、潜在的にイヌIL31結合性が増強されているバリアントFabポリペプチドを発現するファージコロニーを同定し、ポリペプチドの配列を決定した。
【0088】
SASAタグを含む同定されたバリアントFabポリペプチドのそれぞれを発現する単一の大腸菌コロニーを培養し、ポリペプチドを発現するように誘導した。バリアントFabポリペプチドを含む細胞培養培地を、プレート又はBiacoreチップの何れかに固定化されたBSAに曝露した。バリアントFabポリペプチドが結合したプレート又はチップを可溶性イヌIL31に曝露して、遅いkoff速度についてスクリーニングした。
【0089】
3つのリードイヌ化成熟可変重鎖ポリペプチド(cmVH1(配列番号:5)、cmVH2(配列番号:6)、及びcmVH3(配列番号:7))と3つのイヌ化成熟軽鎖ポリペプチド(cmVL1(配列番号:8)、cmVL2(配列番号:9)、及びcmVL3(配列番号:10))を選択した。リードイヌ化成熟可変鎖の例示的なCDR配列は、配列番号:11、12、13、14、15、20、21、22、23、及び24で表され、フレームワーク領域配列は、配列番号:16、17、18、19、25、26、27、及び28で表される。
【0090】
ヒトIgG1重鎖に融合されたcmVH1、cmVH2、又はcmVH3と、ヒトカッパ定常軽鎖に融合されたcmVL1、cmVL2、及びcmVL3の異なる組み合わせから構成されるキメラ抗体を作製した。ヒトIgG1重鎖に融合されたM14のイヌ化VH(配列番号:3)と、ヒトカッパ定常軽鎖に融合されたM14のイヌ化VL(配列番号:4)もまた作製した。イヌIL31の異なるキメラ抗体に対する親和性を、以下の表3に記載されるように、BIAcore 8Kを使用して測定した:
【0091】
【0092】
イヌIL31に対する試験された各キメラ抗体の親和性及び動態を、以下の表4に要約する。試験した親和性成熟抗体(分析物2-6)のそれぞれは、イヌ化VH-VL M14抗体対照(分析物1)と比較して、(より低いKd値によって証明されるような)より高い親和性及び(より低いkoff値によって証明されるような)遅いオフ速度を示した。
【0093】
【0094】
実施例2: ネコIL31への結合性が増強された変異
表3及び4(上記)におけるイヌIL-31への親和性について試験した6種のキメラ抗体をまたネコIL31への親和性についても試験した。結合分析は、次のようにバイオセンサーOctetRedを使用して実施した。簡単に説明すると、ネコIL31をビオチン化した。遊離の未反応ビオチンを、大規模な透析によってビオチン化IL31から除去した。ビオチン化ネコIL31を、ストレプトアビジンセンサー先端に捕捉した。抗体(20ug/mL)とネコIL31の結合を300秒間モニターした。解離を300秒間モニターした。希釈及び全結合工程用の緩衝液は、20mMのリン酸、150mMのNaCl、pH7.2であった。結合分析の結果を
図2に示す。試験した抗体の親和性は、(cmVH3+cmVL2)又は(cmVH3+cmVL3)>(cmVH2+cmVL3)>(cmVH2+cmVL2)>(cmVH1+cmVL1)>(イヌ化VH-VL M14)とランク付けされた。
【0095】
実施例3: イヌ定常ドメインを含むイヌ化された成熟可変鎖
イヌ化された成熟VH(例えば、配列番号:5、6、及び7)及びVL(例えば、配列番号:8、9、及び10)は、イヌIgG-A、IgG-B、IgG-C、又はIgG-D重鎖定常ドメイン(例えば、配列番号:83、84、85、及び86)及びイヌカッパ軽鎖定常ドメイン(例えば、配列番号:87)にそれぞれ融合されうる。イヌ定常ドメインを有する例示的なイヌ化された成熟重鎖及び軽鎖配列には、配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、及び48が含まれる。
【0096】
実施例4: 親和性が増強された可変重鎖及び軽鎖のネコ化及び発現
親和性が増強された可変重鎖及び軽鎖(例えば、cmVH1-3及びcmVL1-3)は、当該技術分野で理解されている方法を使用してネコ化することができる。例えば、cmVH2(配列番号:6)は、例示的な配列番号:90にネコ化され;cmVH3(配列番号:7)は、例示的な配列番号:49、50、及び51にネコ化され;cmVL3(配列番号:10)は、配列番号:52、53、及び54の何れか一つにネコ化された。それぞれネコIgG重鎖定常ドメイン(例えば、配列番号:88)及びネコカッパ軽鎖定常ドメイン(例えば、配列番号:89)を伴うネコ化VH及びVLが発現されうる。ネコ定常領域を有する例示的なネコ化された成熟重鎖及び軽鎖配列には、配列番号:73、74、75、91、76、77、及び78が含まれる。
【0097】
配列番号:91の重鎖(VH2)及び配列番号:78の軽鎖(VL3c)を有するネコ化IL-31抗体をコードするDNA配列を、哺乳動物細胞で発現させ、精製した。実施例5の細胞ベースアッセイを使用して、ネコ化VH2-VL3 IL31抗体は、ネコIL31R及びイヌIL31RでトランスフェクトされたHeLa細胞の両方においてネコIL31誘発性STAT3リン酸化を定量的にブロックした。
【0098】
実施例5: イヌIL31細胞ベースのシグナル伝達アッセイの開発
ヒト上皮細胞株であるHeLa細胞株(アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、カタログ番号CCL-2)を購入し、10%の胎仔ウシ血清(FBS)(ATCC、カタログ番号30-2020)を補充したATCC処方のイーグル最小必須培地(ATCC、カタログ番号30-2033)で培養した。イヌ又はネコIL31Ra-FLAG発現プラスミド(pcDNA3.1_canine IL31Ra_FLAG(配列番号:92)又はpcDNA3.1_feline IL31Ra-FLAG(配列番号:93)で安定的にトランスフェクトされたHeLa細胞を、リポフェクタミン法(Thermo Fisher、カタログ番号11668027)を使用して作製し、最終濃度400μg/mLでG418を使用してG418耐性トランスフェクタント(Thermo Fisherカタログ番号10131035)について選択した。G418耐性クローンを、ウエスタンブロッティングによるイヌIL31又はネコIL31誘発に応答するSTAT1、STAT3、及びSTAT5リン酸化についてスクリーニングした。IL31誘発に応答したIL31Raで安定的にトランスフェクトされたHeLaクローンをその後の研究に使用した。
【0099】
イヌ又はネコIL31媒介STATタンパク質リン酸化を、HeLa/IL31Ra細胞をウェル当たり10e5細胞で96ウェルプレートに播種し、(ATCCが推奨するように10%のFBS D-MEM中)37℃、5%CO2で一晩インキュベートすることによって実施した。各ウェルの培地を5%CO2、37℃において1時間FBSを補充しない培地と交換することによって、細胞の血清飢餓を達成した。段階希釈した抗IL31抗体をIL31サイトカインと1時間プレインキュベートした後、96ウェルプレートの各ウェルの血清飢餓細胞に室温において5分間添加した。次に、20μLの停止液(Thermo FisherのM-PER、カタログ番号78501)を各ウェルに添加して、細胞を溶解させた。細胞可溶化物をSDS-PAGE(4-12%のBis-Trisゲル、Invitrogen、カタログ番号NP0329)で分離した。IL31誘発性STATリン酸化を、抗ホスホSTAT3抗体(RnD、カタログ番号AF4607)、抗ホスホSTAT1抗体(Cell Signaling、カタログ番号7649)、又は抗ホスホSTAT5抗体(Cell Signaling Catalog番号9359)の何れかを使用したウエスタンブロッティングによってアッセイした。
【0100】
驚くべきことに、イヌ又はネコ共受容体OSMRの発現は、IL31シグナル伝達に必要ではなかった。
【配列表】
【国際調査報告】