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▶ シララ メドテック, インク.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】環状形成システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512360
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 US2020046731
(87)【国際公開番号】W WO2021034789
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】16/548,543
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522067798
【氏名又は名称】シララ メドテック, インク.
【氏名又は名称原語表記】SILARA MEDTECH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】グリーナン,トレバー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハガード,マシュー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウオング,ド,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,レオナルド,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ブレックテル,クララ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC05
4C097CC09
4C097CC18
4C097MM10
4C097SB09
(57)【要約】
環状形成処置を実施する一例示的方法が、心臓の左心房にカテーテルを導入するステップと、カテーテルから第1の部材を展開するステップと、第1の部材を左心房の僧帽弁輪の後ろ側にアンカ固定するステップと、カテーテルから第2の部材を展開するステップと、第2の部材を左心房の僧帽弁輪の前側にアンカ固定するステップと、カテーテルから可撓引張部材を展開するステップと、引張部材を第1の部材及び第2の部材の両方に取り付けるステップと、引張部材に張力をかけて、第1の部材と第2の部材とを互いに向かって引き寄せ、僧帽弁輪の後ろ側と前側とを接近させるステップと、を含む。環状形成システム及び構成要素も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状形成処置を実施する方法であって、
心臓の左心房にカテーテルを導入するステップと、
前記カテーテルから第1の部材を展開するステップと、
前記第1の部材を前記左心房の僧帽弁輪の後ろ側にアンカ固定するステップと、
前記カテーテルから第2の部材を展開するステップと、
前記第2の部材を前記左心房の前記僧帽弁輪の前側にアンカ固定するステップと、
前記カテーテルから可撓引張部材を展開するステップと、
前記引張部材を前記第1の部材及び前記第2の部材の両方に取り付けるステップと、
前記引張部材に張力をかけて、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに向かって引き寄せ、前記僧帽弁輪の前記後ろ側と前記前側とを接近させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第2の部材は、前記第1の部材とは別個に展開及びアンカ固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の部材をアンカ固定する前記ステップは、少なくとも2つの別々のアンカを前記弁輪にねじ留めして取り付けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カテーテルから別個の第3の部材を展開するステップと、前記第3の部材を前記左心房の前記僧帽弁輪の前側にアンカ固定するステップと、引張部材を前記第1の部材及び前記第3の部材の両方に取り付けるステップと、前記第1の部材と前記第3の部材との間に取り付けられた前記引張部材に張力をかけて、前記僧帽弁輪の前記後ろ側と前記前側とを接近させるステップと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の部材は、前記第1の部材及び前記第2の部材とは別個に展開及びアンカ固定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の部材と前記第2の部材との間に取り付けられた前記引張部材、及び前記第1の部材と前記第3の部材との間に取り付けられた前記引張部材は、2つの別々の引張部材である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記2つの別々の引張部材に別々に張力がかけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の部材は前記僧帽弁輪の外側に向かってアンカ固定され、前記第3の部材は前記僧帽弁輪の内側に向かってアンカ固定される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の部材は、前記外側三角に近接する少なくとも1つのアンカを有し、前記第3の部材は、前記内側三角に近接する少なくとも1つのアンカを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の部材をアンカ固定する前記ステップ、及び前記第3の部材をアンカ固定する前記ステップの少なくとも一方は、少なくとも2つの別々のアンカを前記弁輪にねじ留めして取り付けることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記僧帽弁輪の、前方-後方方向の寸法の縮小幅は、前記外側と前記内側とで異なる可能性がある、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記引張部材は、インビボで前記カテーテルから展開されるまでは前記第1の部材にも前記第2の部材にも取り付けられない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記別々の引張部材は、インビボで前記カテーテルから展開されるまでは前記第1の部材、前記第2の部材、又は前記第3の部材のいずれにも取り付けられない、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の部材又は前記第2の部材が前記カテーテルから展開される前に、前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方に前記引張部材があらかじめ取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の部材は、前記引張部材と係合するように構成された突出フィーチャを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の部材は、前記引張部材と係合するように構成された突出フィーチャを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記カテーテルから可撓引張部材を展開する前記ステップは、前記第1の部材及び前記第2の部材を一度に1つずつ前記引張部材で捕捉することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の部材は細長い形状を有し、前記方法は更に、前記細長い第1の部材を所望の位置まで回転させて、僧帽弁輪の後ろ側にアンカ固定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記回転させるステップの間に、前記細長い第1の部材に2つ以上のリードが取り付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1の部材と、
前記第1の部材を心臓の左心房の僧帽弁輪の後ろ側にアンカ固定するように構成された少なくとも1つの第1の部材アンカと、
第2の部材と、
前記第2の部材を前記左心房の前記僧帽弁輪の前側にアンカ固定するように構成された少なくとも1つの第2の部材アンカと、
第1の可撓引張部材であって、前記第1の可撓引張部材に張力をかけて、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに向かって引き寄せ、前記僧帽弁輪の前記後ろ側と前記前側とを接近させることが可能なように、前記第1の部材と前記第2の部材との間にまたがるように構成された前記第1の可撓引張部材と、
を含む環状形成システムであって、
前記環状形成システムの前記要素の全てが、カテーテルを通して前記左心房内に展開されるように構成されている、
環状形成システム。
【請求項21】
前記第1の部材は細長く、湾曲形状を呈することが可能である、請求項20に記載の環状形成システム。
【請求項22】
前記第1の部材は、前記第1の部材が撓むことを可能にする一連のスリットを含む、請求項21に記載の環状形成システム。
【請求項23】
第3の部材と、前記第3の部材を前記左心房の前記僧帽弁輪の前記前側にアンカ固定するように構成された少なくとも1つの第3の部材アンカと、を更に含む、請求項20に記載の環状形成システム。
【請求項24】
第2の可撓引張部材であって、前記第2の可撓引張部材に張力をかけて、前記第1の部材と前記第3の部材とを互いに向かって引き寄せ、前記僧帽弁輪の前記後ろ側と前記前側とを接近させることが可能なように、前記第1の部材と前記第3の部材との間にまたがるように構成された前記第2の可撓引張部材を更に含む、請求項23に記載の環状形成システム。
【請求項25】
前記第1の部材は少なくとも2つの突出フィーチャを含み、各突出フィーチャは、前記第1の引張部材又は前記第2の引張部材のいずれかと係合するように構成されている、請求項24に記載の環状形成システム。
【請求項26】
前記第1の部材にマウントされて、前記少なくとも1つの第1の部材アンカを心臓組織内にガイドするように構成されているアンカガイドを更に含む、請求項20に記載の環状形成システム。
【請求項27】
前記アンカガイドは、前記少なくとも1つの第1の部材アンカを、前方-後方方向にある前記第1の部材に対してほぼ垂直にガイドするように構成されている、請求項26に記載の環状形成システム。
【請求項28】
前記アンカガイドは、隣接する前記第1の部材から前記カテーテルを通って前記カテーテルの近位端まで延びるリードを含む、請求項26に記載の環状形成システム。
【請求項29】
前記アンカガイドは前記第1の部材に対して折り畳み可能であり、それによって、前記第1の部材及び前記アンカガイドが前記カテーテルにロードされる際に、前記アンカガイドが前記第1の部材に対してほぼ平らになることが可能である、請求項26に記載の環状形成システム。
【請求項30】
前記第1の部材は少なくとも1つのヒンジを含み、それによって、前記第1の部材は少なくとも1つの個別ヒンジ軸に沿って折り畳み可能である、請求項20に記載の環状形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
文献の引用
本明細書において言及される全ての公表文献及び特許出願は、あらゆる意図及び目的の為に、それぞれ個々の公表文献又は特許出願が参照により具体的且つ個別に示されて組み込まれる場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示の実施形態は、全般的には埋め込み医療機器に関する。特に、本発明の幾つかの実施態様は、僧帽弁を修復する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
僧帽弁は、心臓の左心房と左心室との接合部に位置する。僧帽弁は、拡張期には開いて、血液が左心房から左心室に流れることを可能にする。収縮期に左心室が血液をポンピングして大動脈から全身に送り出すときは、僧帽弁は閉じて、血液が左心房に逆流するのを防ぐ。僧帽弁は2つの尖部(後尖及び前尖)からなり、これらは僧帽弁輪に位置する。僧帽弁輪は、左心房と左心室との接合部を形成するリングである。僧帽弁弁尖は、腱索で左心室の乳頭筋につながれている。腱索は、収縮期に僧帽弁弁尖がそれて左心房に入るのを防ぐ。
【0004】
僧帽弁逆流は、僧帽弁が完全には閉じない為に血液が左心室から左心房に逆流する状態である。場合によっては、逆流は、僧帽弁輪の拡張に起因し、具体的には、僧帽弁輪の前後径の増加に起因する。代替又は追加として、僧帽弁逆流は左心室の拡張に起因し、左心室の拡張は、例えば、梗塞に起因しうる。左心室が拡張すると、乳頭筋が腱索で僧帽弁弁尖を常に引っ張って開いた形状にする。
【0005】
先行技術には、僧帽弁逆流を治療する方法及び装置は存在する。それらは、僧帽弁を交換又は修復することを含む。弁の交換は、典型的には、経心尖的又は経中隔的に行われる。弁の修復は、典型的には、4つのカテゴリ、即ち、弁尖クリップ、直接環状形成、間接環状形成、又は索修復のうちの1つに該当する。直接環状形成及び間接環状形成は両方とも、前尖及び後尖が適切に接合されるように患者の僧帽弁輪及び/又は左心室を再形成することを含む。環状形成の幾つかの適用例では、僧帽弁輪の近傍(例えば、上又は後ろ)にリングが埋め込まれる。リングの目的は、僧帽弁輪の円周を縮めることである。
【0006】
以上の先行技術に鑑みて、僧帽弁逆流を治療する為の改良されたシステム及び方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様によれば、環状形成処置を実施するシステム及び方法が提供される。幾つかの実施形態では、一方法が、心臓の左心房にカテーテルを導入するステップと、カテーテルから第1の部材を展開するステップと、第1の部材を左心房の僧帽弁輪の後ろ側にアンカ固定するステップと、カテーテルから第2の部材を展開するステップと、第2の部材を左心房の僧帽弁輪の前側にアンカ固定するステップと、カテーテルから可撓引張部材を展開するステップと、引張部材を第1の部材及び第2の部材の両方に取り付けるステップと、引張部材に張力をかけて、第1の部材と第2の部材とを互いに向かって引き寄せ、僧帽弁輪の後ろ側と前側とを接近させるステップと、を含む。
【0009】
幾つかの実施形態では、環状形成処置を実施する一方法が、心臓の左心房にカテーテルを導入するステップと、カテーテルから第1の部材を展開するステップと、を含む。第1の部材は、左心房の僧帽弁輪の後ろ側にアンカ固定される。第2の部材がカテーテルから展開され、左心房の僧帽弁輪の前側にアンカ固定される。可撓引張部材がカテーテルから展開され、第1の部材及び第2の部材の両方に取り付けられる。引張部材に張力がかけられて、第1の部材と前記第2の部材とが互いに向かって引き寄せられ、僧帽弁輪の後ろ側と前側とが接近する。
【0010】
幾つかの実施形態では、第2の部材は、第1の部材とは別個に展開及びアンカ固定される。第1の部材をアンカ固定するステップは、少なくとも2つの別々のアンカを弁輪にねじ留めして取り付けることを含んでよい。本方法は更に、カテーテルから別個の第3の部材を展開するステップと、第3の部材を左心房の僧帽弁輪の前側にアンカ固定するステップと、引張部材を第1の部材及び第3の部材の両方に取り付けるステップと、第1の部材と第3の部材との間に取り付けられた引張部材に張力をかけて、僧帽弁輪の後ろ側と前側とを接近させるステップと、を含んでよい。幾つかの実施形態では、第3の部材は、第1の部材及び第2の部材とは別個に展開及びアンカ固定される。第1の部材と第2の部材との間に取り付けられた引張部材、及び第1の部材と第3の部材との間に取り付けられた引張部材は、2つの別々の引張部材であってよい。幾つかの実施形態では、2つの別々の引張部材に別々に張力がかけられる。
【0011】
幾つかの実施形態では、第2の部材は僧帽弁輪の外側に向かってアンカ固定され、第3の部材は僧帽弁輪の内側に向かってアンカ固定される。第2の部材は、外側三角に近接する少なくとも1つのアンカを有してよく、第3の部材は、内側三角に近接する少なくとも1つのアンカを有してよい。幾つかの実施形態では、第2の部材をアンカ固定するステップ、及び第3の部材をアンカ固定するステップの少なくとも一方は、少なくとも2つの別々のアンカを弁輪にねじ留めして取り付けることを含む。幾つかの実施形態では、僧帽弁輪の、前方-後方方向の寸法の縮小幅は、外側と内側とで異なる可能性がある。
【0012】
幾つかの実施形態では、引張部材は、インビボでカテーテルから展開されるまでは第1の部材にも第2の部材にも取り付けられない。幾つかの実施形態では、別々の引張部材は、インビボでカテーテルから展開されるまでは第1の部材、第2の部材、又は第3の部材のいずれにも取り付けられない。第1の部材又は第2の部材がカテーテルから展開される前に、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方に引張部材があらかじめ取り付けられている。幾つかの実施形態では、第1の部材は、引張部材と係合するように構成された突出フィーチャを含む。幾つかの実施形態では、第2の部材は、引張部材と係合するように構成された突出フィーチャを含む。カテーテルから可撓引張部材を展開するステップは、第1の部材及び第2の部材を一度に1つずつ引張部材で捕捉することを含んでよい。幾つかの実施形態では、第1の部材は細長い形状を有し、本方法は更に、細長い第1の部材を所望の位置まで回転させて、僧帽弁輪の後ろ側にアンカ固定するステップを含む。回転させるステップの間に、細長い第1の部材に2つ以上のリードが取り付けられてよい。
【0013】
幾つかの実施形態では、環状形成システムが、第1の部材と、少なくとも1つの第1の部材アンカと、第2の部材と、少なくとも1つの第2の部材アンカと、第1の可撓引張部材と、を含む。少なくとも1つの第1の部材アンカは、第1の部材を心臓の左心房の僧帽弁輪の後ろ側にアンカ固定するように構成されている。少なくとも1つの第2の部材アンカは、第2の部材を左心房の僧帽弁輪の前側にアンカ固定するように構成されている。第1の可撓引張部材は、第1の可撓引張部材に張力をかけて、第1の部材と第2の部材とを互いに向かって引き寄せ、僧帽弁輪の後ろ側と前側とを接近させることが可能なように、第1の部材と第2の部材との間にまたがるように構成されている。環状形成システムの要素の全てが、カテーテルを通して左心房内に展開されるように構成されている。
【0014】
幾つかの実施形態では、第1の部材は細長く、湾曲形状を呈することが可能である。第1の部材は、第1の部材が撓むことを可能にする一連のスリットを含んでよい。幾つかの実施形態では、環状形成システムは更に、第3の部材と、第3の部材を左心房の僧帽弁輪の前側にアンカ固定するように構成された少なくとも1つの第3の部材アンカと、を含む。環状形成システムは更に、第2の可撓引張部材であって、第2の可撓引張部材に張力をかけて、第1の部材と第3の部材とを互いに向かって引き寄せ、僧帽弁輪の後ろ側と前側とを接近させることが可能なように、第1の部材と第3の部材との間にまたがるように構成された第2の可撓引張部材を含んでよい。幾つかの実施形態では、第1の部材は少なくとも2つの突出フィーチャを含み、各突出フィーチャは、第1の引張部材又は第2の引張部材のいずれかと係合するように構成されている。
【0015】
本開示の原理が利用される例示的実施形態を説明する後述の詳細説明と、以下の添付図面とを参照することにより、本開示の特徴及び利点がよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ヒトの僧帽弁の態様を示す、ほぼ頭側から尾側にかけての図である。
図2】本開示の態様に従って構築された一例示的後方バーを示す斜視図である。
図3】本開示の態様に従って構築された一例示的前方パッドを示す上面図である。
図4】本開示の態様に従って環状形成処置を実施する一例示的方法を概略的に示すフローチャートである。
図5】乃至
図22】左心房を貫通するほぼ尾側方向に僧帽弁を見て、図4に概要を示した例示的方法の各ステップを示す一連の斜視図である。
図23】乃至
図33B】後方バー及びスネアフィーチャの別の例を示す斜視図である。
図34】乃至
図37】前方パッドの別の例を示す斜視図である。
図38】乃至
図40】らせん組織アンカの別の例を示す側面図である。
図41】乃至
図44】本開示の態様に従って構築された環状形成システムの別の例示的実施形態を示す上面図である。
図45】乃至
図51】後方バーのトルク制御の一例示的実施形態を示す斜視図である。
図52】乃至
図53】折り畳み可能なインプラントの一例示的実施形態を示す斜視図である。
図54】乃至
図55】引張部材スネアの別の例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、僧帽弁の各要素が示されている。具体的には、僧帽弁は、前尖、後尖、前外側交連、後内側交連、外側三角(左側と言うこともある)、及び内側三角(右側と言うこともある)を含む。前尖は3つの区分A1、A2、及びA3を含む。同様に後尖も3つの区分P1、P2、及びP3を含む。本開示の態様によれば、幾つかの実施態様では、図示のように、ターゲット位置Tのそれぞれに又はその近くにデバイスアンカが設置されてよい。
【0018】
図2を参照すると、本開示の態様に従って構築された一例示的後方バー210が示されている。後方バー210は、左心房の、後尖に隣接する僧帽弁輪に又はその近くに埋め込まれるように構成されており、これについては後で詳述する。従って、この例示的実施形態では、後方バー210は、この位置にある僧帽弁輪の解剖学的構造に合致するように湾曲した細長い管状構造である。後方バー210は、血栓症の温床になりうる心房内の不規則構造の規模を最小化する為に図示のような低プロファイルが与えられてよい。この例示的実施形態では、後方バー210は、組織損傷の可能性を制限する為に無傷性エッジが与えられており、組織の内方成長を支援する為にポリエチレンテレフタレート(PET)のファブリックで覆われている。
【0019】
この例示的実施形態では、後方バー210は、中央組織アンカガイド212と2つの端部組織アンカガイド214とが与えられている。幾つかの実施形態では、中央組織アンカガイド212は端部組織アンカガイド214と全く同じであり、他の実施形態では、中央組織アンカガイド212は異なるように構成され、例えば、送達中の後方バー210の操舵/トルキングを促進するフィーチャを有するように構成されている。幾つかの実施形態では、本明細書の後のほうで述べるように、中央組織アンカガイドはなくてもよく、組織アンカガイドの数は、この例示的実施形態で設けられている3つより多くても少なくてもよい。アンカガイド212及び214は、格納状態及び展開状態から動けるように後方バー210に対して旋回するように構成されてよい。格納状態では、アンカガイド212及び214は、それら及びバー210が一緒にカテーテルの管腔を通過できるように、バー210にほぼ平行に延びてよい。展開状態では、アンカガイド212及び214は、組織アンカをガイドの上からバー210のアパーチャに通して隣接組織内まで通すことによってバー210を組織に固定することに使用されてよいように、図2に示すように、バー210にほぼ垂直に延びてよい。
【0020】
1つ以上のスネアフィーチャ216が後方バー210上に設けられてよい。この例示的実施形態では、2つのスネアフィーチャ216が設けられており、後方バー210の各端部の近くに1つずつ設けられている。スネアフィーチャ216は、1つ以上の引張部材/スネアと容易に係合することが可能であるように後方バー210から顕著に突き出るように構成されてよく、又、操作中に引張部材が係合から外れるのを防ぐように構成されてよい。幾つかの実施形態では、スネアフィーチャ216は、送達時及び組織への取付時に後方バー210の位置決めを支援する為に、且つ引張部材をスネアフィーチャ216に接続することを支援する為に、蛍光透視下及び心エコー下で容易に画像化されるように構成されている。
【0021】
後方バー210は、解剖学的構造に関しては、アンカに引張荷重よりもせん断荷重を優先的にかけるように設計されてよい。後方バー210の初期位置決めを可能にする為に、且つ、後続のアンカが解剖学的構造に合致するように送達されたときにインプラントを動かせることを可能にする為に、トルク制御フィーチャが設けられてよい。
【0022】
後方バー210は又、特定の患者の解剖学的構造に輪郭を合わせるようにバーをインビボ調節することを可能にする為に、ある程度の可撓性が与えられてよい。後方バー210の可撓性は、心周期中にバーが撓むことを可能にするようにも働きうる。幾つかの実施形態では、後方バー210の可撓性は、バーの長手軸を横断する一連のスリット(図1には示さず)を設けることによって得られる。幾つかの実施形態では、スリット及び/又は他の、可撓性を与えるフィーチャは、僧帽弁輪の後ろ側にかかる張力がより均一になるように、埋め込み時の後方バー210の最小半径を制限するように構成されてよい。
【0023】
図3を参照すると、本開示の態様に従って構築された一例示的前方パッド310が示されている。前方パッド310は、左心房の、前尖に隣接する僧帽弁輪に又はその近くに(具体的には三角に)埋め込まれるように構成されており、これについては後で詳述する。この例示的実施形態では、前方パッド310は、大まかには平坦な構造であり、中心部から放射状に延びる4つの花弁状物312が設けられている。他の実施形態では、設けられる花弁状物の数は4より多くても少なくてもよく、ゼロでもよい。前方パッド310の中心にプライマリ組織アンカ314が位置してよい。幾つかの実施形態では、図示のように、追加組織アンカ316が設けられてよく、例えば、各花弁状物312の中心の近くに追加アンカ316が設けられてよい。幾つかの実施形態では、プライマリ組織アンカ314は追加組織アンカ316と全く同じであり、他の実施形態では、プライマリ組織アンカ314は異なるように構成され、例えば、送達中の前方パッド310の位置決めを促進するフィーチャを有するように構成されている。花弁状物312は、前方パッド310がカテーテルを通って送達されることが可能なように、コンパクトな形状に折り畳まれるように設計されてよい。
【0024】
前方パッド310は、血栓症の温床になりうる心房内の不規則構造の規模を最小化する為に図示のような低プロファイルが与えられてよい。この例示的実施形態では、前方パッド310は、組織損傷の可能性を制限する為に無傷性エッジが与えられており、組織の内方成長を支援する為にポリエチレンテレフタレート(PET)のファブリックで覆われている。
【0025】
1つ以上のスネアフィーチャが前方パッド310上に設けられてよい。この例示的実施形態では、組織アンカ314及び316の上端は、1つ以上の引張部材/スネアと係合するように構成されている。これらのスネアフィーチャは、1つ以上の引張部材/スネアと容易に係合することが可能であるように前方パッド310から顕著に突き出るように構成されてよく、又、操作中に引張部材が係合から外れるのを防ぐように構成されてよい。幾つかの実施形態では、スネアフィーチャ及び/又は前方パッド310全体は、送達時及び組織への取付時に前方パッド310の位置決めを支援する為に、且つ引張部材をスネアフィーチャに接続することを支援する為に、蛍光透視下及び心エコー下で容易に画像化されるように構成されている。前方パッド310は、解剖学的構造に関しては、アンカに引張荷重よりもせん断荷重を優先的にかけるように設計されてよい。
【0026】
図4を参照すると、本開示の態様による環状形成処置を実施する一例示的方法が示されている。この例示的方法410の各ステップについて、図4に示したフローチャートと、図5~22に示す一連のイメージとを参照しながら説明していく。図5~22に示したイメージのそれぞれにおいては、視線は、内側方向をほぼ右側として、左心房510を通って僧帽弁512に向かう、ほぼ尾側方向を向いている。本方法の幾つかの実施態様では、1つの後方バー210と、1つ、2つ、又はそれ以上の前方パッド310とが埋め込まれる。他の実施態様では、異なるタイプ又は数のデバイスが使用されてよい。図5~22では、明確さの為に後方バー210のファブリックの覆いを省略している。この例示的実施形態では、図1に示した5つのターゲット位置Tのそれぞれに又はその近くに少なくとも1つのデバイスアンカが設置される。
【0027】
方法410の幾つかの実施態様では、本方法の第1のステップ412は、送達カテーテルの遠位端を患者の左心房510に導入することである。これは、経中隔アプローチ、左心房アプローチ、又は他の、左心房へのアクセスを取得する方法により実施されてよい。図5~22に示したイメージでは経中隔アプローチが描かれており、カテーテル514の遠位端が心臓の隔壁516を貫通して患者の左心房510に入る。幾つかの実施態様では、隔壁を横断する為の内側拡張器(図示せず)がカテーテル514の遠位端に位置する。
【0028】
図4及び5を参照すると、カテーテル514の遠位端が左心房510に導入された後に、ステップ414で、後方バー210(本明細書では第1の部材と呼ぶこともある)がカテーテル514の遠位端から展開されてよい。幾つかの実施態様では、カテーテル514がまず左心房510に導入されてから、カテーテル514の近位端に後方バーアセンブリがロードされる。他の実施態様では、後方バー210は、その組織アンカガイド212、214及びスネアフィーチャ216とともにカテーテル(図示せず)にプリロードされて、カテーテル514内を進められてよい。図5に見られるように、アンカリード518が組織アンカガイド212及び214のそれぞれに取り外し可能に取り付けられて、後方バー210をカテーテル514内に押し通し、遠位端から展開させてよい。
【0029】
図6を参照すると、後方バー210がカテーテル514の遠位端から出てきたら、後方バー210の一方の端部に取り付けられたリード518をカテーテル514の近位端から押し、他方の端部に取り付けられたリード518を引っ張って、図示のように、後方バー210をカテーテル514にほぼ垂直な向きになるまで旋回させてよい。操舵可能内側カテーテル520が中央リード518の上を遠位方向に摺動されてよく、フィーチャ(例えば、凹部及び/又はキャステレーション(図示せず))が後方バー210上の嵌合フィーチャと係合して、バー210が内側カテーテル520に対して回転しないようにされるまで、摺動されてよい。次に、図7に示すように、操舵可能内側カテーテル520を使用して、後方バー210がその所望の埋め込み位置及び方位に操舵されるまで、後方バー210を位置決め及び回転してよい。幾つかの実施態様では、後方バー210にトルクをかける為に、リード518と操舵可能内側カテーテル520との間に同軸配置されたトルクドライバが使用されてよい。そのような実施態様については後で図40~46に関して説明する。
【0030】
図4及び8~11を参照して、例示的方法410のステップ416を説明する。このステップでは、後方バー210(即ち、第1の部材)が僧帽弁512の後ろ側にアンカ固定される。これを達成するには、まず、図8に示すように、遠位端にらせん組織アンカ524を有するドライブチューブ522が、後方バー210の内側端部の近くに位置する組織アンカガイド214に取り付けられたリード518の上を摺動されてよい。図9に見られるように、操舵可能内側カテーテル520が後方バー210を僧帽弁の弁輪組織に押さえつけて保持している間に、ドライブチューブ522を回転させて、内側アンカ522を後方バー210に通して下層組織にねじ留めしてよい。次に、図9に示すように、ドライブチューブ522が内側アンカ214から取り外されてよく、そのドライブチューブ522(又は別のらせん組織アンカ524を有する別のドライブチューブ522)が、後方バー210の外側端部の近くに位置する組織アンカガイド214に取り付けられたリード518の上を摺動されてよい。内側アンカ524及び操舵可能内側カテーテル520(並びに幾つかの実施態様では、カテーテル520の内側のトルクドライバ)が後方バー210を僧帽弁の弁輪組織に押さえつけて保持している間に、図10に見られるように、ドライブチューブ522を回転させて、外側組織アンカ524をバー210に通して下層組織にねじ留めしてよい。次に、図11に示すように、ドライブチューブ522が外側アンカ524から取り外されてよく、そのドライブチューブ522(又は別のらせん組織アンカ524を有する別のドライブチューブ522)が、中央組織アンカガイド212に取り付けられたリード518の上を摺動されてよい。幾つかの実施態様では、(図10に示すように)中央アンカが設置されているときに操舵可能内側カテーテル520が後方バー210を押さえたままその位置にとどまってよく、或いは(図11に示すように)操舵可能内側カテーテル520が後方バー210から取り外されてからドライブチューブ522及び中央アンカ524が摺動されて、中央組織アンカガイド212の上で係合してよい。内側アンカ及び外側アンカ524が後方バー210を僧帽弁の弁輪組織に押さえつけて保持している間に、ドライブチューブ522を回転させて、中央アンカ524をバー210に通して下層組織にねじ留めしてよい。図10及び11は、ねじ留めを外すなどして端部組織アンカガイドからリードが取り除かれた状態の後方バー210を示している。
【0031】
ステップ416では、注目すべきこととして、初期アンカが設置された後に、操舵可能内側カテーテル520(又は幾つかの実施態様では、カテーテル520内に位置するトルクドライバ)によって実施されるインプラント210のトルク制御により、インプラント210への後続アンカの設置をガイドすることが可能である。これにより、初期アンカが設置された後にアンカをガイドなしで設置することが不要になる。図12は、3つのアンカが設置され、全てのリードが取り外された後方バー210を示している。
【0032】
図4及び12を参照して、例示的方法410のステップ418を説明する。このステップでは、前方パッド310(本明細書では第2の部材と呼ぶこともある)がカテーテル514の遠位端から展開される。幾つかの実施態様では、図12に示すように、操舵可能内側カテーテル520によって、前方パッド310が外側三角に向かって操舵される(外側三角は図1にも示されている)。
【0033】
図4、12、及び13を参照して、例示的方法410のステップ420を説明する。このステップでは、前方パッド310(本明細書では第2の部材と呼ぶこともある)が僧帽弁512の前側にアンカ固定される。幾つかの実施態様では、前方パッド310が図示のように単一アンカ314で外側三角に固定される。操舵可能内側カテーテル520内でドライブチューブ(図示せず)を使用してアンカ314を所定位置にねじ留めしてよい。図13に示すように、1つ以上の追加アンカ316を使用して前方パッド310を外側三角に更に固定してよい。
【0034】
ステップ420では、注目すべきこととして、初期アンカが設置された後に、そのリードが操舵可能内側カテーテル520を通ったままその場所にとどまってよく、それにより、リード及びカテーテル520を使用して、インプラント310への後続アンカの設置をガイドすることが可能である。これにより、初期アンカが設置された後にアンカをガイドなしで設置することが不要になる。
【0035】
図4及び14を参照して、例示的方法410のステップ422及び424を説明する。これらのステップでは、別の前方パッド310(本明細書では第3の部材と呼ぶこともある)がカテーテル514の遠位端から展開される。幾つかの実施態様では、図14に示すように、操舵可能内側カテーテル520によって、前方パッド310が内側三角に向かって操舵される(内側三角は図1にも示されている)。次に前方パッド310が僧帽弁512の前側にアンカ固定されてよい。幾つかの実施態様では、前方パッド310が図示のように単一アンカ314で内側三角に固定される。操舵可能内側カテーテル520内でドライブチューブ(図示せず)を使用してアンカ314を所定位置にねじ留めしてよい。外側前方パッド310の場合と同様に、1つ以上の追加アンカを使用して内側前方パッド310を内側三角に更に固定してよい。
【0036】
ステップ424では、注目すべきこととして、初期アンカが設置された後に、そのリードが操舵可能内側カテーテル520を通ったままその場所にとどまってよく、それにより、リード及びカテーテル520を使用して、インプラント310への後続アンカの設置をガイドすることが可能である。これにより、初期アンカが設置された後にアンカをガイドなしで設置することが不要になる。
【0037】
図4及び15を参照して、例示的方法410のステップ426を説明する。このステップでは、図示のように、第1の引張部材又はスネア526が、操舵可能内側カテーテル520を通ってカテーテル514の遠位端から展開される。スネアシース528を使用して、第1の引張部材526をインプラントフィーチャに向かうように方向付けてよい。又、スネアシース528を使用し、第1の引張部材526をシース528から近位方向に引き寄せることによって、引張部材526でインプラントフィーチャの周囲を締め付けてよい。
【0038】
図4及び16~18を参照して、例示的方法410のステップ428を説明する。このステップでは、第1の引張部材又はスネア526が後方バー210(即ち、第1の部材)及び前方パッド310(即ち、第2の部材)に取り付けられる。図16に示すように、操舵可能内側カテーテル520及びスネアシース528を利用して、第1の引張部材526をバー210の外側スネアフィーチャ216にかかるようにガイドしてよい。次に、図17に示すように、第1の引張部材526が前方パッド310のプライマリ組織アンカ314にかかるようにガイドされてよい。次に、図18に示すように、第1の引張部材526とバー210及びパッド310との係合が保持されるように、スネアシース528によって第1の引張部材526に少量の張力がかけられてよい。
【0039】
図4及び19を参照して、例示的方法410のステップ430を説明する。このステップでは、図示のように、第2の引張部材又はスネア530が、操舵可能内側カテーテル520を通ってカテーテル514の遠位端から展開される。スネアシース532を使用して、第2の引張部材530をインプラントフィーチャに向かうように方向付けてよい。又、スネアシース532を使用し、第2の引張部材530をシース532から近位方向に引き寄せることによって、引張部材530でインプラントフィーチャの周囲を締め付けてよい。
【0040】
図4及び20~22を参照して、例示的方法410のステップ432を説明する。このステップでは、第2の引張部材又はスネア530が後方バー210(即ち、第1の部材)及び隣の前方パッド310(即ち、第3の部材)に取り付けられる。図20に示すように、操舵可能内側カテーテル520及びスネアシース532を利用して、第2の引張部材530をバー210の内側スネアフィーチャ216にかかるようにガイドしてよい。次に、図21に示すように、第2の引張部材530が前方パッド310のプライマリ組織アンカ314にかかるようにガイドされてよい。次に、図22に示すように、第2の引張部材530とバー210及びパッド310との係合が保持されるように、スネアシース532によって第2の引張部材530に少量の張力がかけられてよい。幾つかの実施態様では、スネア形状は、インプラント上のスネアフィーチャとより容易に係合するように構成されてよい。例えば、各スネアは、心房の外側又は内側と接触するD字形を形成してよい。そして心房の壁は、スネアを弁輪までガイドしてシンチングすることに使用され、スネアを各スネアフィーチャまでガイドすることは必ずしも必要ではない。幾つかの実施形態では、スネアは、図54に示した例示的スネア550のようなダンベル形(又はドッグボーン形)である。スネア550は、径があらかじめ定義されている遠位ループ552及び近位ループ554を有し、スネアのそれ以外の部分はほぼ平行な引張部材を有し、引張部材同士の間隙はループ径より小さい。まず遠位ループ552が、インプラント上の第1のスネアフィーチャと係合する為に露出されてよく、その後に近位ループ554が、インプラント上の第2のスネアフィーチャを捕捉する為に露出されてよい。幾つかの実施形態では、図55に示すように、2つのスネア560及び562が平行にロードされ、それぞれはあらかじめ定義された形状を有する。個々のスネア560及び562は、カプラ564でつながれてよく、互いに独立に摺動されて別々にインプラント上のスネアフィーチャと係合することが可能である。
【0041】
第1の引張部材526及び第2の引張部材530の両方が所定位置についたら、両方に更なる張力をかけて、僧帽弁512の前側と後ろ側を引っ張って、より接近させてよい。幾つかの実施態様では、部材526及び530の張力を同時に強くしてよい。幾つかの実施態様では、所望の張力及び/又は弁接近に達するまで、部材526及び530の張力を交互に少しずつ強くしてよい。幾つかの実施態様では、各引張部材526及び530の最終的な張力及び/又は組織接近はほぼ同じである。幾つかの実施態様では、各引張部材526及び530の最終的な張力及び/又は組織接近は異なる。これは、内側及び外側のシンチングが互いに独立に実施されてよく、それにより、各バーの設置の仕方の違いが大きくなる為である。このことは、本明細書に開示のシステムの全てに関して概ね当てはまる。幾つかの実施態様では、引張部材526及び530を締め付けたときの僧帽弁逆流の減少を監視する為に僧帽弁のリアルタイム心エコーが行われる。
【0042】
所望の張力及び/又は組織接近が達成されたら、引張部材526及び530を縛って留めてよい。幾つかの実施態様では、シンチング処理中に、引張部材の位置を永続的に保持するように構成された可逆ロックが用いられてよい。スネアを送達システムから切り離す為に切り離し部材が使用されてよく、又は引張部材の一部が切断されて解放されてよい。次に、カテーテル514が操舵可能内側カテーテル520及びスネアシース528及び532とともに左心房から引き抜かれてよい(図4に示したステップ436)。A-P寸法を更に短くする為には、デノボ処置中にデバイスに張力をかけることに加えて、追加の張力デバイスを後で追加してよく、且つ/又は既存のデバイスの張力を再調節してよい。
【0043】
図23~33Bを参照すると、後方バー及びスネアフィーチャの別の例が示されている。図23に示した後方バーは、既に説明したバー210によく似ているが、4つの組織アンカを有し、中央アンカがない。更に、各端部にフックの形のスネアフィーチャが設けられている。
【0044】
図24は、5つの組織アンカを有するブーメラン形の後方バーを示しており、中央アンカは他の4つより大きく、インプラントのトルク制御に使用される。この実施形態では、アンカはスネアフィーチャとして使用されてよい。幾つかの実施形態(図示せず)では、このバー形状は複合曲率半径を有しており、これは、バーが弁輪の曲率に合致するように後ろ側から離れて延びるほどきつくなる。
【0045】
図25に示す後方バーはファブリックの覆いがない。3つのアパーチャが設けられており、これらは、後方バー210のアパーチャと同様の、組織アンカガイドを旋回可能に取り付ける為の、各アパーチャにまたがる横断バーを有している。図示のように、スネアを捕捉する為のフック状スロットが各端部に設けられてよい。チューブは、曲がりや伸びの量が限られた可撓性をバーが有することを可能にするように、図示のようなインタロッキング形状のレーザカットが施されてよい。
【0046】
図26は、レーザカットシートから成形された低プロファイルの後方バーを示す。このインプラントは、図23のバーと同様の機能性を提供し、中央トルク制御フィーチャを有する。同様のインプラント(図示せず)がワイヤから成形可能である。そのようなインプラントは、非常にロバストであることが可能であり、ばねのような可撓性を有することが可能であり、より顕著なスネアフィーチャを含むことが可能である。
【0047】
図27は、図26に示したインプラントと同様のインプラントを示しており、ファブリックの覆いがある場合とない場合の両方を示している。
【0048】
図28は別の同様のインプラント610を示しており、これは、らせんスネアフィーチャ612を両端に有し、5個のアンカ位置616のそれぞれにリードナットタブ614を有し、トルク制御アタッチメント618を有し、リードナット/アンカガイド(図示せず)を中央アンカ位置にセンタリングするように構成されたタブ620を有する。らせんスネアフィーチャ612は、引張部材とのより容易な係合を可能にする為に後方バー610の面に対して持ち上げることが可能である。らせんの先端のタブが、蛍光透視及び心エコーでの可視性を高めるように設けられてよい。このタブは、引張部材を保持することに役立つように構成されてよい。
【0049】
図29は、後方バー630及び2つの前方パッド632が埋め込まれた構成を示す。後方バー630は、ファブリックの覆いと、5つのアンカ634と、2つのスネアフィーチャ636とを含み、スネアフィーチャ636は、ファブリックの覆いからほぼ長手方向に、それぞれ反対の方向に延びている。
【0050】
図30は2つの後方バー640を示しており、1つはファブリックの覆いがあり、1つはそれがない。バー640は、5つのアンカ位置642と、三角形が重なり合ったトラス構成とを含む。
【0051】
図31は2つの後方バー650を示しており、1つはファブリックの覆いがあり、1つはそれがない。バー650は2つのスネアフィーチャ652を含み、これらは、ほぼ半径方向内向きの方向に延びており、且つ、互いに向かって延びている。
【0052】
図32、33A、及び33Bは、スネアフィーチャとして使用可能な例示的ワイヤ端部を示す。幾つかの実施形態では、スネアフィーチャの先端のボールが、蛍光透視及び心エコーでの可視性を高めるように構成されてよい。スネアフィーチャのボール先端とインプラントの本体との間のギャップが、スネアフィーチャがわずかに撓むことによって引張部材がスネアフィーチャ上に滑り込むことが可能になるように構成されてよい。そしてスネアフィーチャがはねかえることによって引張部材がスネアフィーチャ上に保持される。
【0053】
幾つかの実施形態では、後方バーは、後尖に隣接する僧帽弁輪の解剖学的構造に合致するように湾曲している。後方バーは、血栓症の温床になりうる心房内の不規則構造の規模を最小化する為に低プロファイルであるように構成されてよい。
【0054】
図34~37を参照すると、前方パッドの更なる例が示されている。図34に示した前方パッドは、既に示したパッド310と似ているが、花弁状物が3つである。図35に示した前方パッドは中央タワーを有し、これに3つのスネアフィーチャが取り付けられている。図36に示した円形パッドは、花弁状物がなく、ステップ状スネアフィーチャを有する。図37に示した円形パッドは、花弁状物がなく、突出している組織アンカのてっぺんにスネアフィーチャを有する。
【0055】
幾つかの実施形態では、前方パッドは、プライマリアンカが設置された後に、目標とされた更なるアンカ固定を可能にする。前方パッドは、血栓症の温床になりうる心房内の不規則構造の規模を最小化する為に低プロファイルであってよい。パッドのエッジは、組織損傷の可能性を制限する為に無傷性であるように構成されてよい。幾つかの実施形態では、前方パッドは、組織の内方成長を支援する為にPETファブリックで覆われている。パッドは、解剖学的構造に関しては、アンカに引張荷重よりもせん断荷重を優先的にかけるように構成されてよい。インプラントの操作中にスネアが係合から外れるのを防ぐ顕著なスネアフィーチャが設けられてよい。幾つかの実施形態では、パッドは、蛍光透視下及び心エコー下で容易に画像化されるように構成されてよい。
【0056】
他の実施形態(図示せず)では、バーとパッドの位置が反対であってよく、僧帽弁輪の前側にバーが設置され、後ろ側に2つのパッドが設置されてよい。幾つかの実施形態では、後方要素は、外側に1つがあり内側に1つがある2つの別々のピースであってよく、従って、弁の周囲に4つのパッドがあってよく、バーはなくてよい。幾つかの実施形態では、1つのスネア又は引張部材を使用して、埋め込まれた全ての構成要素をつないで調節してよい。又、個々のスネアを使用して各スネアフィーチャを個別に係合してよく、各側の2つのスネア(即ち、全部で4つのスネア)に張力が一緒にかけられてよい。更に、組織の更なる安定化並びに円周方向の完全な係合の為に、2つの三角パッドの間に別個の張力部材が設置されてよい。そのようなシステム、又は本明細書に開示のいずれかのシステムが、弁交換の際のアンカ固定システムとして使用されてよい。
【0057】
図38~40を参照すると、らせん組織アンカの更なる例が示されている。図38に示したアンカは、その最上部に位置するまっすぐな無ギャップ接合面フィーチャを有する。このフィーチャは、アンカが挿入されて移動が終了した時点でアンカがインプラント内で自由にスピンすることによってインプラントと組織との間にギャップができないようにすることを可能にする。まっすぐな部分の最上部にインプラント保持タブ660が位置してよく、これにより、インプラントが組織と密接に接触するまで、まっすぐな部分がインプラント内で自由にスピンしながら、コイルが組織に入り込み続けることが可能である。図39に示したアンカは、低プロファイルのヘッドを有する。アンカが低プロファイルであることにより、血栓症の温床になりうる心房内の不規則構造の規模が最小化される。図40に示したアンカのペアの各アンカは、アンカを駆動する為のヘッドが取り付けられている。幾つかの実施形態では、これらのアンカは、組織に対する取付強度が強くなるように構成されており、必要に応じて取り出されるように構成されており、蛍光透視下及び心エコー下で容易に画像化されるように構成されている。
【0058】
図41~44を参照すると、本開示の態様に従って構築された別の例示的実施形態が示されている。これらの実施形態では、僧帽弁輪の両側に2つの構造物即ち「バー」が設置され、一方は後ろ側に、他方は前側に設置される。各バーの2つの内側端部同士がつながっており、2つの外側端部同士がつながっている。そして、弁のA-P寸法を短くする為に各側部を接近させてよい。これはA-P方向の環状変化にフォーカスしている。図示のようにシンチング機構はPET材料で覆われてよく、PET材料はインプラントが締め付けられるにつれてプリーツを形成することが可能である。2つのバーがつながることにより、完全な「リング」構造が形成される。図41に示すように、後方バーは、弁輪の形状に合致するように湾曲させてよい。前方バーはよりまっすぐであってよく、これは、外側三角と内側三角とを橋渡しする為である。これは、内側及び外側のシンチングが互いに独立に実施されてよく、それにより、各バーの設置の仕方の違いが大きくなる為である。このことはやはり、本明細書に開示のシステムの全てに関して概ね当てはまる。図42~44に示すように、リングの側部に1つ以上のアンカが設置されてよい。
【0059】
図45~51を参照して、後方バーのトルク制御の一例示的実施形態について説明する。この実施形態では、トルクドライバ710が用意される。トルクドライバ710は、その遠位端に位置するヘッド712と、ヘッドに取り付けられた可撓シャフト714とを含み、外科医がヘッド712を操作できるように可撓シャフト714の近位端が患者の体外に延びている。図48及び50において最もよく見えるように、トルクドライバ710は、使用時には、中央リード518と操舵可能カテーテル520との間の同軸上に存在する。図45において最もよく見えるように、ヘッド712は、後方バー720の中央タブ718と係合するように構成された横断スロット716を含む。図46において最もよく見えるように、トルクドライバ710が回転整列され、後方バー720に当たって遠位方向に押されると、スロット716がタブ718と係合して、トルクドライバ710が、たとえ回転抵抗が発生しても、後方バー720の回転方向を正確に制御することが可能になる(明確さの為に、図45及び46では、後方バー720のファブリックの覆い、リードナット、リード等を省略している)。
【0060】
幾つかの実施形態では、ヘッド712は、図示のように断面形状が正方形である。他の実施形態(図示せず)では、トルクドライバのヘッドの断面形状は円形又は他の形状であってよい。幾つかの実施形態では、ヘッド712の外形寸法は、バー720に対するヘッド712の横方向の動きを抑える為に、後方バー720上の嵌合フィーチャ(例えば、図46に示したリング)の内側にぴったり収まる寸法である。他の実施形態(図示せず)では、横方向の動きを抑える為に他のセンタリングフィーチャが設けられてよい。
【0061】
図47~51は、トルクドライバ710の一例示的使用方法を示す。図47に示した後方バー722は、外側ガイド又はカテーテル514から展開されている。図48に示したトルクドライバ710は、内側操舵可能シース520(図48では見えない)の中を通り、中央リード518を覆って進む。図49に示したトルクドライバ710は、前述のように、のように、後方バー722と係合している。幾つかの実施態様では、外科医は、トルクドライバ710を定位置に保持しながら中央リード518を引き戻して張力をかける。トルクドライバ710がバー722の中央と係合したら、トルクドライバ710の位置を内側操舵可能カテーテル520の後端(近位端)にロックしてよい。図50では、トルクドライバ710は今やバー722に確実にロックされている。内側操舵可能カテーテル520は、図では外側ガイド514より前に出ている。図51に示した内側操舵可能カテーテル520は、トルクドライバを覆ってバー722に届くまで進んでいる。この時点で後方バー722は、トルクドライバ710及び/又は操舵可能カテーテル520により操舵されて所定位置につくことが可能である。
【0062】
図52及び53を参照すると、別の例示的実施形態が示されており、ここでは折り畳み可能な後方バーが用意されている。折り畳み可能バー810が、カテーテル(図示せず)へのデバイスのロードを支援するように、且つ左心房内での操作を容易にするように構成されてよい。この例示的実施形態では、後方バー810は3つの個別区間、即ち、中央区間814、右区間816、及び左区間818を含む。右区間816及び左区間818はそれぞれが、図示のように、中央区間814の両側とヒンジでつながっている。この実施形態では、右区間816及び左区間818はそれぞれが(図示のような)格納姿勢から展開姿勢(図示せず)の間で回転してよく、右区間816及び左区間818はそれぞれが中央区間814とほぼ同一平面上にある。折り畳まれた各区間を広げることを支援する為に、1つ以上のリード820が右区間816及び左区間818のそれぞれと結合されてよい。各区間816及び818は、格納姿勢と展開姿勢との間を移動する際に約90度にわたって回転してよい。幾つかの実施形態では、右区間816及び左区間818は、展開後、開いた姿勢でロックされるように構成されてよい。他の実施形態(図示せず)では、2つの区間だけが用意されてよく、或いは、互いに対して折り畳まれる4つ以上の区間が用意されてよい。
【0063】
前述の実施形態と同様に、後方バー810には5つのアンカ822が設けられてよく、1つのアンカが中央区間814用であり、2つのアンカが右区間816用であり、2つのアンカが左区間818用である。幾つかの実施態様では、中央アンカが最初に設置されてよく(側部区間816及び/又は818が格納状態であれ展開状態であれ)、他の実施態様では、側部アンカが最初に設置されてよい。前述の実施形態と同様に、デバイスを所望の埋め込み部位まで移動させることを支援する為に、トルクドライバ、操舵可能シース812、又はこれらの組み合わせが与えられてよい。
【0064】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示のシステム及び方法又はそれらの一部が、いずれかの房室弁に対しても同様に利用されてよい。
【0065】
本明細書に開示のシステム及び方法によってもたらされる利点として、次のものが挙げられる。前方-後方(A-P)方向のより直接的な縮小を達成することが可能である。これは、A-P方向に直接作用することから、円周方向の再形成に一般的に必要とされる大きな力ではなく、より小さいシンチング力で達成可能である。典型的には、シンチング力が小さければ、必要なアンカの数が少なくなる。本システム及び方法は又、特定の解剖学的構造に適合する為の高レベルのカスタマイズが可能である。このことは、異なる構成要素が独立して設置されていること、並びに内側と外側とを別々に調節できることに関連する。各構成要素が独立していれば、上部構造が1つである場合に比べて、それぞれが容易に埋め込まれる。本システム及び方法によってインビボで調節できることが可能になり、各構成要素の設置に必要とされる精度を緩和することが可能になり、埋め込み処置が簡素化される。インプラントのサイズ及び構成の数がより少ない場合でも対応が可能である。A-P寸法を更に短くする為には、デノボ処置中にデバイスに張力をかけることに加えて、追加の張力デバイスを後で追加してよく、且つ/又は既存のデバイスの張力を再調節してよい。
【0066】
本明細書において、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上に(on)」あると言及された場合、その特徴又は要素は、直接その別の特徴又は要素に接していてよく、或いは、介在する特徴及び/又は要素が存在してもよい。これに対し、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直接上に(directly on)」あると言及された場合、介在する特徴及び/又は要素は存在しない。又、当然のことながら、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続されている(connected)」、「取り付けられている(attached)」、又は「結合されている(coupled)」と言及された場合、その特徴又は要素は、直接その別の特徴又は要素に接続されているか、取り付けられているか、結合されていてよく、或いは、介在する特徴又は要素が存在してもよい。これに対し、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に、「直接接続されている(directly connected)」、「直接取り付けられている(directly attached)」、又は「直接結合されている(directly coupled)」と言及された場合、介在する特徴又は要素は存在しない。そのように記載又は図示された特徴及び要素は、1つの実施形態に関して記載又は図示されているが、他の実施形態にも当てはまってよい。又、当業者であれば理解されるように、ある構造又は特徴が別の特徴に「隣接して(adjacent)」配置されていて、その構造又は特徴が言及された場合、その言及は、隣接する特徴と部分的に重なり合うか、隣接する特徴の下層となる部分を有してよい。
【0067】
本明細書において使用された術語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示の限定を意図したものではない。例えば、本明細書において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに矛盾する場合を除き、複数形も同様に包含するものとする。更に、当然のことながら、「comprises(含む)」及び/又は「comprising(含む)」という語は、本明細書で使用された際には、述べられた特徴、手順、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するものであり、1つ以上の他の特徴、整数、手順、操作、要素、構成要素、及び/又はこれらの集まりの存在又は追加を排除するものではない。本明細書では、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連付けられて列挙されたアイテムのうちの1つ以上のアイテムのあらゆる組み合わせを包含するものであり、「/」と略記されてよい。
【0068】
「下に(under)」、「下方に(below)」、「下方の(lower)」、「上方の(over)」、「上方の(upper)」等のような空間的に相対的な語句は、本明細書では、図面に示されるような、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明する場合に説明を簡単にする為に使用されてよい。当然のことながら、この空間的に相対的な語句は、使用時又は操作時の器具の、図面で描かれる向きに加えて、それ以外の向きも包含するものとする。例えば、図面内の器具が反転された場合、別の要素又は特徴の「下に(under)」又は「真下に(beneath)」あると記載された要素は、その別の要素又は特徴の「上に(over)」方向づけられることになる。従って、例えば、「下に(under)」という語句は、「上に(over)」及び「下に(under)」の両方の向きを包含しうる。本装置は、他の方向づけ(90度回転又は他の方向づけ)が行われてよく、それに応じて、本明細書で使用された空間的に相対的な記述子が解釈されてよい。同様に、「上方に(upwardly)」、「下方に(downwardly)」、「垂直方向の(vertical)」、「水平方向の(horizontal)」等の用語は、本明細書では、特に断らない限り、説明のみを目的として使用される。
【0069】
「第1の」及び「第2の」という語句は、本明細書では様々な特徴/要素(手順を含む)を説明する為に使用されてよいが、これらの特徴/要素は、文脈上矛盾する場合を除き、これらの語句によって限定されるべきではない。これらの語句は、ある特徴/要素を別の特徴/要素と区別する為に使用されてよい。従って、本開示の教示から逸脱しない限り、第1の特徴/要素が後述時に第2の特徴/要素と称されてもよく、同様に、第2の特徴/要素が後述時に第1の特徴/要素と称されてもよい。
【0070】
本明細書及び後続の特許請求の範囲の全体を通して、別段に記述しない限りは、「含む(comprise)」という後、及びその変形である「含む(comprises)」、「含む(comprising)」等は、方法及び物品(例えば、装置(device)及び方法を含む構成及び装置(apparatus))において様々な構成要素が相互連帯して使用されてよいことを意味する。例えば、「含む(comprising)」という語は、述べられた全ての要素又はステップの包含を意味するものであって、他のあらゆる要素又はステップの排除を意味するものではないことを理解されたい。
【0071】
実施例において使用される場合も含め、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているように、且つ、特に断らない限り、あらゆる数値は、「約(about)」又は「およそ(approximately)」という語句が前置されているものとして読まれてよく、たとえ、その語句が明示的に現れていなくても、そのように読まれてよい。「約(about)」、「およそ(approximately)」、又は「ほぼ(generally)」という語句は、大きさ及び/又は位置を示す場合に、記載された値及び/又は位置が、妥当な予想範囲の値及び/又は位置に収まっていることを示す為に使用されてよい。例えば、数値は、述べられた値(又は値の範囲)の±0.1%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±1%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±2%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±5%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±10%の値であってよく、他のそのような値であってよい。本明細書で与えられるいかなる数値も、文脈上矛盾する場合を除き、その値の前後のおおよその値も包含するものと理解されたい。例えば、値「10」が開示されている場合は、「約10」も開示されている。本明細書に記載のいかなる数値範囲も、そこに包含される全ての副範囲を包含するものとする。又、当然のことながら、当業者であれば適正に理解されるように、ある値が開示されていれば、その値「以下の」値、その値「以上の」値、及びそれらの値の間の可能な範囲も開示されている。例えば、値「X」が開示されていれば、「X以下の」値、及び「X以上の」値(例えば、Xが数値の場合)も開示されている。又、本出願全体を通して、データが幾つかの異なるフォーマットで与えられていること、並びにこのデータが終点及び始点を表していて、これらのデータ点の任意の組み合わせにわたる範囲を有することも理解されたい。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点「15」が開示されていれば、10と15の間の値だけでなく、10及び15より大きい値、10及び15以上の値、10及び15より小さい値、10及び15以下の値、及び10及び15に等しい値も開示されていると見なされる。2つの特定の単数の間の各単数も開示されていることも理解されたい。例えば、10及び15が開示されていれば、11、12、13、及び14も開示されている。
【0072】
ここまで様々な例示的実施形態について記載してきたが、特許請求の範囲によって示される本発明の範囲から逸脱しない限り、様々な実施形態に対して、幾つかある変更のいずれが行われてもよい。例えば、記載された各種方法ステップが実施される順序は、代替実施形態では変更されてよい場合が多く、代替実施形態によっては、1つ以上の方法ステップがまとめてスキップされてもよい。装置及びシステムの様々な実施形態の任意選択の特徴が、実施形態によっては含まれてよく、実施形態によっては含まれなくてよい。従って、上述の説明は、主に例示を目的としたものであり、特許請求の範囲に明記されている本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0073】
本明細書に含まれる実施例及び具体例は、本発明対象が実施されうる具体的な実施形態を、限定ではなく例示として示す。言及されたように、他の実施形態が利用されたり派生したりしてよく、本開示の範囲から逸脱しない限り、構造的な、或いは論理的な置換又は変更が行われてよい。本発明対象のそのような実施形態は、本明細書においては、個別に参照されてよく、或いは、「本発明」という言い方でまとめて参照されてよく、「本発明」という言い方で参照することは、あくまで便宜上であって、本出願の範囲を、実際には2つ以上が開示されていても、いずれか1つの発明又は発明概念に自発的に限定することを意図するものではない。従って、本明細書では特定の実施形態を図示及び説明してきたが、この、示された特定の実施形態を、同じ目的を達成するように作られた任意の構成で置き換えてよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる翻案又は変形を包含するものである。当業者であれば、上述の説明を精査することにより、上述の複数の実施形態の組み合わせ、及び本明細書に具体的な記載がない他の実施形態が明らかになるであろう。
図1
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【国際調査報告】