(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】導波路ディスプレイにおける外向き結合抑制
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20221020BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570855
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2020044671
(87)【国際公開番号】W WO2021040967
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】カラフィオレ, ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】モハンティ, ニハール ランジャン
(72)【発明者】
【氏名】シー, ユイ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヒユン
(72)【発明者】
【氏名】サーリッコ, パシ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン, ニンフォン
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA32
2H199CA43
2H199CA46
2H199CA50
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA96
2H249AA06
2H249AA12
2H249AA31
2H249AA37
2H249AA40
2H249AA41
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA63
(57)【要約】
プロジェクタディスプレイのための瞳孔複製導波路は、全反射によって、スラブ内に表示光を伝搬させるための透明材料のスラブを含む。回折格子はスラブによって支持される。回折格子は、回折によってスラブからの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するために、基板内に、複数のテーパリングされた傾斜した縞を含む。表示光のより大きな部分は、ブレーズド回折次数に外方結合され、表示光のより小さな部分は、非ブレーズド回折次数に外方結合される。テーパリングされた縞は、結果として、非ブレーズド回折次数に外方結合される表示光の部分の抑制を促進するように、回折格子の厚さ方向に沿って変化する回折格子のデューティサイクルを生じる。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞳孔複製導波路であって、
全反射によって表示光をその中で伝搬させるための透明材料のスラブと、
前記スラブによって支持され、ポリマー基板内のねじれネマティック(TN)液晶(LC)材料によって形成される複数の縞を備える回折格子であって、前記縞は、回折によって前記スラブからの前記表示光をブレーズド回折次数に外方結合するために傾斜され、前記表示光のより大きな部分は前記ブレーズド回折次数に外方結合され、前記表示光のより小さな部分は非ブレーズド回折次数に外方結合される、回折格子と
を備え、
前記TN LC材料は、前記TN LC材料の分子に垂直に偏光された光に対する正常屈折率n
Oと、前記TN LC材料の前記分子に平行に偏光された光に対する異常屈折率n
Eとを有し、前記回折格子に突き当たる偏光された表示光に対する屈折率コントラストは、前記回折格子の厚さ方向に沿った屈折率コントラストプロファイルを有し、
屈折率コントラストは、前記屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きく、それによって前記非ブレーズド回折次数に外方結合された前記突き当たる偏光された表示光の部分は減少される、
瞳孔複製導波路。
【請求項2】
ポリマー基板材料の屈折率はn
Eよりn
Oに近く、それによって前記屈折率コントラストは、前記屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きい、請求項1に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項3】
前記屈折率コントラストプロファイルは、前記回折格子の厚さ方向に沿って対称である、請求項1または2に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項4】
前記屈折率コントラストプロファイルは、両側で実質的にゼロである、請求項1から3のいずれか一項に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項5】
前記TN LC材料は、高分子安定化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項6】
前記屈折率コントラストプロファイルは、滑らかに変化する関数であり、
任意選択的に、前記滑らかに変化する関数はガウス関数である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項7】
前記表示光を前記スラブ内に内方結合するための入力格子をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項8】
瞳孔複製導波路を製造する方法であって、
透明材料のスラブ上に、回折によって前記スラブからの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するための複数の傾斜した縞を形成することであって、前記傾斜した縞は第1の屈折率n
1を有する、縞を形成することと、
前記複数の傾斜した縞および前記スラブ上に、適合層で覆われた前記傾斜した縞どうしの間に間隙を形成する前記適合層を形成することであって、前記適合層は第2の屈折率n
2を有する、適合層を形成することと、
前記適合層上にオーバーコート層を形成することであって、前記オーバーコート層は、前記適合層で覆われた前記傾斜した縞どうしの間の前記間隙を充填し、第3の屈折率n
3を有する、オーバーコート層を形成することと
を含み、n
1>n
2>n
3またはn
1<n
2<n
3である、方法。
【請求項9】
前記複数の傾斜した縞は、インプリンティングによって形成され、または
前記複数の傾斜した縞は、エッチングによって形成される、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記適合層は、原子層堆積(ALD)によって形成されること、
前記オーバーコート層は、スピンコーティングによって形成されること、
のうちの1つまたは複数を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
瞳孔複製導波路であって、
全反射によって表示光をその中で伝搬させるための透明材料のスラブと、
前記スラブによって支持された回折格子であって、
回折によって前記スラブからの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するための複数の傾斜した縞であって、第1の屈折率n
1を有する、複数の傾斜した縞と、
前記複数の傾斜した縞および前記スラブ上の適合層であって、前記適合層で覆われた前記傾斜した縞どうしの間に間隙を形成し、第2の屈折率n
2を有する、適合層と、
前記適合層上のオーバーコート層であって、前記適合層で覆われた前記傾斜した縞どうしの間の前記間隙内に配置され、第3の屈折率n
3を有する、オーバーコート層と
を備え、n
1>n
2>n
3またはn
1<n
2<n
3である、瞳孔複製導波路。
【請求項12】
複数の傾斜した縞は、インプリンティングによって形成され、または
前記複数の傾斜した縞は、エッチングによって形成される、
請求項1に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項13】
前記適合層は、原子層堆積(ALD)によって形成される、請求項11または12に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項14】
前記オーバーコート層は、スピンコーティングによって形成される、請求項11から13のいずれか一項に記載の瞳孔複製導波路。
【請求項15】
前記回折格子の厚さ方向に沿った前記回折格子の実効屈折率プロファイルは、対称であり、
任意選択的に、屈折率コントラストは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きい、
請求項11から14のいずれか一項に記載の瞳孔複製導波路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルヘッドセットに関し、特にウェアラブル視覚的ディスプレイヘッドセットのための構成要素およびモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘルメットマウントディスプレイ、ニアアイディスプレイ(NED)などは、仮想現実(VR)コンテンツ、拡張現実(AR)コンテンツ、複合現実(MR)コンテンツなどを表示するために、ますます用いられるようになっている。このようなディスプレイは、いくつか例を挙げると、娯楽、教育、訓練、および生物医科学を含む種々の分野で用途を見出しつつある。表示されるVR/AR/MRコンテンツは、エクスペリエンスを増進するように、および仮想物体を、ユーザによって観察される実物体に一致させるように、3次元(3D)とすることができる。目の位置および視線方向、および/またはユーザの方位は、リアルタイムで追跡されることができ、表示されるイメージは、シミュレートされたまたは拡張された環境への没入のより良いエクスペリエンスをもたらすために、ユーザの頭の方位および視線方向に応じて動的に調整され得る。
【0003】
ヘッドマウントディスプレイのために、小型ディスプレイデバイスが望まれる。HMDまたはNEDのディスプレイは、通常ユーザの頭部に装着され、大きい、嵩張る、不安定な、および/または重いディスプレイデバイスは扱いにくく、ユーザが装着するのに心地良くないものとなり得る。
【0004】
プロジェクタをベースとするディスプレイは角度ドメインにおいて画像をもたらし、これは中間のスクリーンまたはディスプレイパネルなしに、ユーザの目によって直接観察され得る。瞳孔複製導波路は、角度ドメインにおいて画像をユーザの目まで運ぶために用いられる。走査プロジェクタディスプレイ内にスクリーンまたはディスプレイパネルがないことで、ディスプレイのサイズおよび重さの低減を可能にする。
【0005】
理想的には、瞳孔複製導波路は、表示されている画像が、ディスプレイの装着者のみによって見られ、外部の観察者には見られないことを確実にするのに十分な指向性をもたらす。しかし、多くの現在の瞳孔複製導波路は、少ないが顕著な表示光の部分がディスプレイから漏洩し、外部の観察者が表示されたイメージの一部を見ることを可能にし、ディスプレイの装着者とのアイコンタクトを妨げる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様によれば、全反射によって表示光をその中で伝搬させるための透明材料のスラブを備える瞳孔複製導波路がもたらされる。回折格子はスラブによって支持される。回折格子は、ポリマー基板内のねじれネマティック(TN)液晶(LC)材料によって形成される複数の縞を含む。縞は、回折によってスラブからの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するために傾斜される。表示光のより大きな部分はブレーズド回折次数に外方結合され、表示光のより小さな部分は非ブレーズド回折次数に外方結合される。TN LC材料は、TN LC材料の分子に垂直に偏光された光に対する正常屈折率nOと、TN LC材料の分子に平行に偏光された光に対する異常屈折率nEとを有する。回折格子に突き当たる偏光された表示光に対する屈折率コントラストは、回折格子の厚さ方向に沿った屈折率コントラストプロファイルを有する。屈折率コントラストは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きく、それによって非ブレーズド回折次数に外方結合された突き当たる偏光された表示光の部分は減少される。
【0007】
いくつかの実施形態において、ポリマー基板材料の屈折率はnEよりnOに近く、それによって屈折率コントラストは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きい。屈折率コントラストプロファイルは、回折格子の厚さ方向に沿って対称とすることができ、両側で実質的にゼロとなり得る。屈折率コントラストプロファイルは、滑らかに変化する関数、例えばガウス関数である。TN LC材料は、高分子安定化され得る。いくつかの実施形態において、瞳孔複製導波路は、表示光をスラブに内方結合するための入力格子をさらに含む。
【0008】
本発明の別の態様によれば、瞳孔複製導波路を製造する方法がもたらされる。方法は、透明材料のスラブ上に、回折によってスラブからの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するための複数の傾斜した縞を形成することを含み、傾斜した縞は第1の屈折率n1を有する。複数の傾斜した縞およびスラブ上に、適合層が形成され得る。適合層は、適合層で覆われた傾斜した縞どうしの間に間隙を形成する。適合層は第2の屈折率n2を有する。適合層上にオーバーコート層が形成され、オーバーコート層は、適合層で覆われた傾斜した縞どうしの間の間隙を充填し、第3の屈折率n3を有し、n1>n2>n3またはn1<n2<n3である。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、全反射によって表示光をその中で伝搬させるための透明材料のスラブを備える瞳孔複製導波路がさらにもたらされる。回折格子はスラブによって支持される。回折格子は、回折によってスラブからの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するための複数の傾斜した縞を含み、傾斜した縞は第1の屈折率n1を有する。複数の傾斜した縞およびスラブ上に適合層がもたらされ、適合層は、適合層で覆われた傾斜した縞どうしの間に間隙を形成する。適合層は第2の屈折率n2を有する。適合層上にオーバーコート層が形成され、オーバーコート層は、適合層で覆われた傾斜した縞どうしの間の間隙内に配置され、第3の屈折率n3を有し、n1>n2>n3またはn1<n2<n3である。回折格子の厚さ方向に沿った回折格子の実効屈折率プロファイルは、対称とすることができ、屈折率コントラストは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きくなることができる。
【0010】
方法および装置のいくつかの実施形態において、複数の傾斜した縞は、インプリンティングまたはエッチングによって形成される。適合層は、原子層堆積(ALD)によって形成され得る。オーバーコート層は、スピンコーティングによって形成され得る。
【0011】
本明細書で述べられる態様のいずれかにおいて含めることが適切であると論じられた任意の特徴はまた、任意の組み合わせで他の態様のいずれかに含めることが適切となることが理解されるであろう。
【0012】
次に、例示的実施形態が図面と併せて述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ブレーズドおよび非ブレーズド回折次数への表示光回折を示す、
図1の瞳孔複製導波路の拡大断面図である。
【
図3A】瞳孔複製導波路の回折格子の誘電率マップである。
【
図3B】
図3Aの回折格子における、ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図3C】
図3Aの回折格子における、非ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図4A】回折格子が異なる屈折率コントラストを有する3つの層の積み重ねを含む、瞳孔複製導波路の回折格子の誘電率マップである。
【
図4B】
図4Aの回折格子におけるブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図4C】
図4Aの回折格子における非ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図5A】回折格子が、異なる屈折率コントラストを有する3つの層の積み重ねと、3つすべての層にわたって延びる変化する屈折率の傾斜した縞とを含む、瞳孔複製導波路の回折格子の誘電率マップである。
【
図5B】
図5Aの回折格子における、ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図5C】
図5Aの回折格子における、非ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図6A】回折格子が、異なる屈折率コントラストを有する3つの層の積み重ねと、3つすべての層にわたって延びる高屈折率の傾斜した縞とを含む、瞳孔複製導波路の回折格子の誘電率マップである。
【
図6B】
図6Aの回折格子における、ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図6C】
図6Aの回折格子における、非ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図7A】回折格子が屈折率分布型の傾斜した縞を含む、瞳孔複製導波路の回折格子の屈折率マップである。
【
図7B】回折格子が屈折率分布型の基板を含む、瞳孔複製導波路の回折格子の屈折率マップである。
【
図8A】瞳孔複製導波路のブラッグ格子の屈折率マップである。
【
図8B】
図8のブラッグ格子における、ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図8C】
図8のブラッグ格子における、非ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図9A】ブラッグ格子が異なる屈折率コントラストのエリアを有する、瞳孔複製導波路のブラッグ格子の誘電率マップである。
【
図9B】
図9Aの回折格子における、ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図9C】
図9Aの回折格子における、非ブレーズド回折次数への回折効率対表示光の入射角のグラフである。
【
図10】異なる屈折率コントラストを有するいくつかの格子層を含んだ瞳孔複製導波路を製造する方法のフローチャートである。
【
図11】滑らかに変化する屈折率コントラストを有する回折格子を含んだ瞳孔複製導波路を製造する方法のフローチャートである。
【
図12】回折格子が適合層を有する、瞳孔複製導波路のための回折格子の断面図である。
【
図13】
図12の回折格子を製造する方法のフローチャートである。
【
図14】回折格子がねじれネマティック(TN)液晶によって形成される縞を含む、瞳孔複製導波路のための回折格子の断面図である。
【
図15】眼鏡のフォームファクタを有するニアアイディスプレイの水平断面図である。
【
図16A】本発明のヘッドマウントディスプレイの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本教示は様々な実施形態および例と併せて述べられるが、本教示がこのような実施形態に限定されるものではない。反対に、本教示は当業者には理解されるように、様々な代替形態および等価物を包含する。本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにそれらの特定の例を記載するすべての本明細書での記述は、それらの構造的および機能的の両方の等価物を包含するものである。加えて、このような等価物は、現在知られている等価物と、ならびに将来開発される等価物、すなわち構造に関わらず同じ機能を行う、開発される任意の要素との両方を含む。
【0015】
本明細書で用いられる「第1の」、「第2の」などの用語は、順番付けを含意するものではなく、明示的な別段の記載がない限り、1つの要素を他と区別するためのものである。同様に、方法ステップの順番付けは、明示的な別段の記載がない限り、それらの実行の順番を含意しない。
【0016】
プロジェクタおよび瞳孔複製導波路に基づくニアアイディスプレイの外部に漏洩する光は、瞳孔複製導波路の回折格子における、望ましくない方向、すなわちユーザの目に向かってディスプレイの内部にではなく、外部世界に向かってディスプレイの外部への、表示光の回折によって引き起こされ得る。ブレーズド回折格子、すなわち、1つの回折次数、例えば第1の回折次数に、例えば第1の回折次数を除く、反対の回折次数より、より効率的に突き当たる光を回折するように、傾斜した溝または縞を有する格子は、いくらかの光は依然として非ブレーズド回折次数の方向に、すなわちディスプレイの外部に漏洩し得る。漏洩した表示光は、ニアアイディスプレイの装着者と対話する人々の気を散らす場合があり、他のビューアが表示されたコンテンツ(テキスト、画像など)を見ることを可能にし、場合によってはプライバシー問題を引き起こす。
【0017】
本発明によれば、瞳孔複製導波路の回折格子は、望ましくない方向、すなわち非ブレーズド回折次数への回折を低減するように構成され得る。そのために、回折格子の厚さの方向、すなわち回折格子の厚さにわたる、回折格子の屈折率コントラストプロファイルは、回折格子の中間の厚さにおける屈折率コントラストに比べて、回折格子の末端、すなわち、回折格子の上面および底面において低減され得る。このような屈折率コントラストのアポダイゼーションは、望ましくないまたは非ブレーズド回折次数への光の回折を抑制することができる。本明細書で、屈折率コントラストは、回折格子縞の屈折率と、縞がその中に吊された、下にある基板の屈折率との差として定義される。
【0018】
屈折率コントラストアポダイゼーションは、多様な手段によって達成され得る。いくつかの実施形態において、回折格子は階層化されることができ、各層はそれ自体の屈折率コントラストを有する。いくつかの実施形態において、より滑らかな変化は、回折格子層材料の処理、すなわち制御されたベーキングによって作り出され得る。いくつかの実施形態において、回折格子のデューティサイクル、または充填率は、回折格子溝または縞をテーパリングまたは他のやり方で整形することによって、回折格子の厚さを通して変化され得る。これらおよび他の実施形態は、さらに以下でより詳しく考察される。
【0019】
図1を参照すると、瞳孔複製導波路100は、スラブ102の上部および下部平行面から、連続的な全反射(TIR)によって、スラブ102内で表示光104を伝搬させるための透明材料のスラブ102を含む。本明細書において、「透明」という用語は、完全な透明、ならびに部分的な透明または半透明、すなわちいくらか吸収または散乱するが、ユーザが表示された画像を見るために十分な量の表示光がユーザの目に伝達されるのに十分な透明の両方含む。スラブ102は一般に平面平行であるが、いくつかの場合においてスラブのわずかな湾曲は許容され得る。
【0020】
回折格子106はスラブ102によって支持される。回折格子106は、基板110内に複数の縞108を含む。縞108の屈折率は、基板110の屈折率とは異なる。縞108の屈折率は、基板110の屈折率と比べて大きくまたは小さくすることができる。屈折率コントラストは、本明細書では、縞108と基板110の屈折率の差の率として定義される。縞108は、ユーザの目112による表示光104の観察のために、スラブ102からの表示光104のより大きな部分114を外方結合するために、
図1に示されるように傾斜される。通常、より大きな部分114は、光パワーレベルにおいて表示光104の約10%~50%である。表示光104のより小さな部分116は、「誤った」方向、すなわちニアアイディスプレイの外側に外方結合され、他の人によって観察され得る。上記で説明されたように、より小さな部分116を低減することが望ましい。いくつかの実施形態において、より小さな部分116は、表示光104の光パワーレベルの少なくとも0.1%まで低減され得る。表示光104をスラブ102に内方結合するために、入力回折格子など、入力カプラが瞳孔複製導波路100内にもたらされ得る。
【0021】
図2を参照すると、回折格子106上の表示光104の回折がより詳しく示される。回折格子106の縞108は、表示光104のより大きな部分114を、ブレーズド回折次数124に回折させるように、突き当たる表示光104に向かって傾けられ、または傾斜される。表示光104のより小さな部分116は、非ブレーズド回折次数126内へ回折される。
【0022】
図3Aを参照すると、瞳孔複製導波路、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のための、回折格子300の比誘電率εが、マイクロメートルでのxおよびz座標に対してプロットされる。x座標は回折格子300の表面に沿った横座標であり、z座標は厚さ座標、すなわち回折格子300内の特定の場所の、回折格子300の厚さの方向340での座標である。回折格子300は、3.24の低い誘電率の基板材料310内に吊された、この例では4.0に等しい高い誘電率の複数の傾斜した縞308を含む。本明細書で、「高い」または「低い」という用語は互いに相対的であり、すなわち縞誘電率は基板誘電率より高い。いくつかの実施形態において、縞308の誘電率は、基板310の誘電率より低い。非磁気的、非吸光性媒体の場合、比誘電率ε
rと屈折率nは、ε
r=n
2として関係付けられる。したがって、傾斜した縞308は屈折率n
F=2を有し、基板材料310は屈折率ns=1.8を有する。この場合、屈折率コントラストΔn=|n
F-n
S|は、0.2に等しい。傾斜した縞308は、透明なスラブ上にリソグラフィにより形成されることができ(図示せず)、基板材料308は、例えばスピンコーティングによって、傾斜した縞308上にコーティングされ得る。
【0023】
図3Bは、
図3Aの回折格子300に対する、ブレーズド回折次数回折効率314対入射角の計算の結果を示す。縦の線302は、表示光がその中で回折格子300を支持する導波路スラブ(図示せず)によって導かれる角度範囲を示す。この例において、ブレーズド回折次数回折効率314は、約28%に達する。それに比べて、
図3Cに示される、計算された非ブレーズド回折次数回折効率316は、約0.6%に達するだけである(
図3Bと3Cの縦のスケールは異なる)。これはブレーズド回折次数回折効率314と比べて大きく見えないが、到来表示光の0.6%は、この導波路を有するニアアイディスプレイの外部の観察者には極めて顕著になる場合があり、外部観察者には妨害または気を散らすように見え、さらにはディスプレイ装着者とのアイコンタクトを全く妨げ得る。
【0024】
次に
図4Aを参照すると、瞳孔複製導波路、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のための回折格子400の比誘電率が、マイクロメートルでのxおよびz座標に対してプロットされる。x座標は横座標であり、z座標は、回折格子400内の特定の場所の厚さ座標である。
図4Aに示されるように、回折格子400は、第1の格子層421、第2の格子層422、および第3の格子層423の積み重ねを含む。第2の格子層422は中間、すなわち第1の格子層421と、第3の格子層423との間に配置される。第1の格子層421および第3の格子層423は実質的に同じ厚さを有する。本明細書および本明細書の残り全体にわたって、「実質的に」という用語は、パラメータに適用されたとき、確実に、パラメータの中央値の10%以内を意味する。
【0025】
第2の格子層422は、第1の格子層421および第3の格子層423のいずれよりも厚く、この例では約2倍厚い。言い換えれば、第2の格子層422の厚さは、第1の格子層421および第3の格子層423の合計の厚さに実質的に等しい。例えば、いくつかの実施形態において、第1の格子層421および第3の格子層423の厚さは75nm~85nmとすることができ、第2の格子層422の厚さは150nm~170nmとすることができる。
【0026】
複数の傾斜した縞408は、第1の格子層421、第2の格子層422、および第3の格子層423を通って延びる。傾斜した縞408の比誘電率は、層から層へ変化し得る。傾斜した縞408はまた層から層へ変化し、縞408の比誘電率より低い比誘電率を有する基板材料410内に吊される。基板材料410の屈折率は、回折格子400の各層421、422、および423に対する、縞408の屈折率より低い。
【0027】
回折格子400の縞408は、第1の格子層421および第3の格子層423において1.95の屈折率nFを有し、第2の格子層422において2.0の屈折率nFを有する。基板材料410は、第1の格子層421および第3の格子層423において1.85の屈折率nSを有し、第2の格子層422において1.8の屈折率nSを有する。その結果として、第1の格子層421、第2の格子層422、および第3の格子層423のそれぞれの屈折率コントラストΔn=|nF-nS|は、各格子層421、422、423にわたって一定であり、層から層へ変化し、屈折率コントラストΔnは、第1の格子層421および第3の格子層423に対して0.1に等しく、第2の格子層422に対して0.2に等しく、すなわち第2の格子層422の屈折率コントラストは、第1の格子層421および第3の格子層423の屈折率コントラストより高い。回折格子400の厚さ方向440、すなわち回折格子400のz軸に沿った、屈折率コントラストプロファイルは対称であり、その結果屈折率コントラストΔnは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きい。本明細書で用いられる屈折率値は、単に例としてのものであり、屈折率値および屈折率コントラスト値は用いられる材料に応じて異なり得ることが留意される。また例えば本明細書で考察される例に対する屈折率値についての記述は、一定の許容差範囲を暗示し、例えば2.0の屈折率は1.95~2.05の範囲を意味し、1.8の屈折率は1.75~1.85の範囲を意味することなどが理解されるべきである。
【0028】
図4Bを参照すると、ブレーズド回折次数に対する計算された回折効率414は、約18%に達し、これは基準として用いられる
図3Aの回折格子300のブレーズド回折次数回折効率314(
図3B)の約半分よりわずかに高い。
図3Bとものと比べて低い最大回折効率の値は、中間の第2の層422のみが、より高い0.2の屈折率コントラストΔnを有し、残りの第1の層421および第3の層423は、より低い0.1の屈折率コントラストΔnを有することによる、より低い全体的な屈折率コントラストΔnによって引き起こされ得る。特に、TIRにより導かれる光に対する角度範囲を示す境界線402(
図4B、4C)により輪郭付けられた導波路400の角度範囲内で、非ブレーズド回折次数への最大回折効率416は、ずっと劇的に0.1%未満まで、すなわち約6倍低減される。したがって、
図4Aの回折格子400の屈折率コントラストΔnのzプロファイルのアポダイゼーションは、非ブレーズド回折次数416(
図4C)に外方結合された表示光の部分を、ブレーズド部分414の屈折率コントラストより高い程度まで減少させる。ここでおよび本明細書の全体にわたって、屈折率コントラストに関連した「アポダイゼーション」という用語は、回折格子400の外側、すなわち
図4Aに見られる回折格子400の上側または下側で、ゼロの屈折率コントラストまでの遷移を円滑化するように、回折格子400の上面および底面における屈折率コントラストの低減を意味する。
【0029】
図5Aを見ると、瞳孔複製導波路、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のための回折格子500の比誘電率が、マイクロメートルでのxおよびz座標に対してプロットされる。回折格子500は、第1の格子層521、第2の格子層522、および第3の格子層523の積み重ねを含む。第2の格子層522は、中間、すなわち第1の格子層521と、第2の格子層523の間に配置される。第1の格子層521および第3の格子層523は実質的に同じ厚さを有し、第2の格子層522はより厚く、例えば第1の格子層521および第3の格子層523のそれぞれの2倍厚い。非限定的な例として、第1の格子層521および第3の格子層523の厚さは75nm~85nmとすることができ、第2の格子層522の厚さは150nm~170nmとすることができる。
【0030】
複数の傾斜した縞508は、第1の格子層521、第2の格子層522、および第3の格子層523を通って延びる。比誘電率ε
F、およびしたがって、傾斜した縞508の屈折率n
Fは、層から層へ変化し、第2の格子層522でより大きい。縞508は、基板510内に吊され、または支持される。基板510の屈折率n
Sは、第1の格子層521、第2の格子層522、および第3の格子層523に対して、1.8の同じ一定値にある。第2の格子層522内の基板510の屈折率n
Fは、第1の格子層521および第3の格子層523内の縞の屈折率とは異なるので、第1の格子層521、第2の格子層522、および第3の格子層523のそれぞれの屈折率コントラストΔn=|n
F-n
S|は、各格子層にわたって一定であるが、層から層へ変化し、屈折率コントラストΔnは、第1の格子層521および第3の格子層523に対しては0.1に等しく、第2の格子層522に対しては0.2に等しい。回折格子の厚さ方向540、すなわちz軸に沿った回折格子500の屈折率コントラストプロファイルは、おおよそ対称であり、その結果屈折率コントラストΔnは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きい。
図5Aの回折格子500は、
図4Aの回折格子400とは構造的に異なるが、これら2つの格子の屈折率コントラストプロファイルは、実質的に同じであることが留意される。
【0031】
図5Bは、
図5Aの回折格子500によってブレーズド回折次数に回折された表示光に対する計算された回折効率514を示す。最大回折効率は約15%であり、これは基準として本明細書で用いられる
図3Aの回折格子300ブレーズド回折次数回折効率314の約半分である。
図5Cは、非ブレーズド回折次数に回折された表示光に対する計算された回折効率516を示す。非ブレーズド回折次数に対する最大回折効率516は、導かれる光に対する角度範囲を示す境界線502(
図5B、5C)により輪郭付けられた、導波路500の角度範囲内の0.1%未満の値まで、劇的に低減される。したがって、
図5Aの回折格子500の屈折率コントラストΔnのzプロファイルのアポダイゼーションも、
図4Aの回折格子400と同様に、非ブレーズド回折次数516(
図5C)に外方結合された表示光の部分を減少させる。
【0032】
図6Aを見ると、瞳孔複製導波路、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のための回折格子600の比誘電率が、マイクロメートルでのxおよびz座標に対してプロットされる。回折格子600は、第1の格子層621、第2の格子層622、および第3の格子層623の積み重ねを含む。第2の格子層622は、中間、すなわち第1の格子層621と、第2の格子層623との間に配置される。第1の格子層621および第3の格子層623は、実質的に同じ厚さを有し、第2の格子層622はより厚く、例えば第1の格子層621および第3の格子層623のそれぞれの2倍厚い。例えば、第1の格子層621および第3の格子層623の厚さは75nm~85nmとすることができ、第2の格子層622の厚さは150nm~170nmとすることができる。
【0033】
複数の傾斜した縞608は、第1の格子層621、第2の格子層622、および第3の格子層623を通って延びる。傾斜した縞608の比誘電率εF、およびしたがって、屈折率nFは、3つの各格子層621、622、および623に対して同じであり、3つすべての層に対して、傾斜した縞608の屈折率nFは、この例では1.9に等しい。
【0034】
傾斜した縞608は、基板610内に吊される。基板610材料の屈折率n
Sは、層から層へ変化する。第1の格子層621および第3の格子層623において、基板610の屈折率n
Sは1.8に等しく、第2の格子層622において、基板610の屈折率n
Sはより低く、1.7に等しい。したがって、第1の格子層621、第2の格子層622、および第3の格子層623のそれぞれの屈折率コントラストΔn=|n
F-n
S|は、層から層へ変化し、屈折率コントラストΔnは、第1の格子層621および第3の格子層623に対して0.1に等しく、第2の格子層622に対して0.2に等しい。回折格子600の厚さ方向640、すなわち回折格子のz軸に沿った、屈折率コントラストプロファイルは対称にされることができ、その結果屈折率コントラストΔnは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きい。屈折率コントラストプロファイルは、
図4Aの回折格子400および
図5Aの回折格子500におけるものと同じであることが留意される。
【0035】
図6Bは、ブレーズド回折次数に、
図6Aの回折格子600によって回折された表示光に対する計算された回折効率614を示す。最大回折効率は約18%であり、基準として本明細書で用いられる
図3Aの回折格子300のブレーズド回折次数回折効率314の半分を超える。
図6Cを参照すると、非ブレーズド回折次数616に対する最大回折効率はまた、境界線602(
図6B、6C)により輪郭付けられた、導波路600の角度範囲内の0.1%未満の値まで、かなり低減される。したがって、
図6Aの回折格子600の屈折率コントラストΔnのzプロファイルのアポダイゼーションは、非ブレーズド回折次数616(
図6C)に外方結合された表示光の部分を、ブレーズド回折次数に外方結合された表示光の部分より大幅に減少させる。
【0036】
図4Aの回折格子400、
図5Aの回折格子500、および
図6Aの回折格子600の例において、中央(第2)の格子層の厚さは、外側の格子層(第1および第3)の2倍であり、中央の格子層の屈折率コントラストは2倍高い。上記の回折格子に対して、他の構成が可能である。非限定的な例として、3つすべての格子層の厚さは、実質的に互いに等しくすることができ、中央の格子層の屈折率コントラストはより高く、例えば外側の格子層の屈折率コントラストよりおおよそ3倍高くなり得る。さらに、外側の格子層の厚さは同じである必要はなく、層の数は3つより多くすることができる。いくつかの実施形態において、層構造は回折格子の中央の厚さに対して対称であり、他の実施形態では、これは準対称、さらには非対称である。一般に、アポダイゼーションは、例えばガウス関数など、滑らかに変化する釣り鐘型関数に近付き得る。
【0037】
図7Aを参照すると、瞳孔複製導波路、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のための回折格子700Aは、低屈折率の基板材料710A内に吊された、高屈折率の複数の傾斜した縞708Aを含む。本明細書において、「高い」または「低い」という用語は互いに相対的であり、すなわち縞屈折率は、基板屈折率より高い。縞708Aは、厚さ方向740に滑らかに変化する屈折率を有する。回折格子700Aの厚さの中間点741での屈折率は、上面および底面より高い。非限定的な例として、中間点741での縞708Aの最大屈折率は2.0であり、上面および底面での屈折率は1.8である。基板710Aの屈折率は、この例では一様に1.8である。したがって、回折格子700Aの屈折率プロファイルは、最大が0.2で、最小が0の釣り鐘のような形状を有する。このような構成は、屈折率コントラストプロファイルの滑らかなアポダイゼーションをもたらし、これは望ましくない非ブレーズド回折次数に外方結合された表示光の部分をかなり低減し得る。
【0038】
図7Bを参照すると、瞳孔複製導波路、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のための回折格子700Bは、低屈折率の基板材料710B内に吊された、高屈折率の複数の傾斜した縞708Bを含む。上記の例のように、「高い」および「低い」という用語は互いに相対的であり、すなわち縞屈折率は、基板屈折率より低い。縞708Bは、この例では2.0の一定の屈折率を有する。基板材料710Bの屈折率は、厚さ方向740に滑らかに変化する。基板材料710Bの屈折率は、回折格子700Bの上面および底面より、厚さの中間点741で低い。中間点741での最小屈折率は1.8であり、上面および底面での屈折率は2.0である。したがって、
図7Bの回折格子700Bの屈折率プロファイルは、
図7Aの回折格子700Aと同じまたは同様な釣り鐘形状を有し、回折格子700Bの中間点741で最大値0.2、および外面で最小値0を有する。
【0039】
次に
図8Aを参照すると、瞳孔複製導波路、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のためのブラッグ格子800は、1.8~2.0に変化する屈折率の、複数の傾斜した正弦状縞808を含む。本明細書において、「正弦状縞」という用語は、縞808に垂直な縞方向850に沿って、例えばこの例では、0.2の振幅を有して正弦状に変化する(1.8~2.0)屈折率を有する、回折格子縞を意味する。屈折率コントラストは、ブラッグ格子800全体にわたって同じである。
【0040】
いくつかの実施形態において、ブラッグ格子800は、照射すると直ぐにその屈折率を変化させる感光性物質内に、2ビーム光学干渉パターンをもたらすことによって形成され得る。UV感受性ポリマーまたは他の材料内に2ビーム光学干渉パターンを形成するために、紫外(UV)光が用いられ得る。2ビーム干渉パターンは、2つの記録UVビームを感光性基板に方向付けることによって形成され得る。記録ビームの方位は、できるだけ多くの光をニアアイディスプレイのアイボックスの方向に回折させるように選択され得る。いくつかの実施形態において、複数のこのような露光が異なる角度で行われ、このような場合、結果としての縞パターンは、複数の露光角度に対応する複数の入射角において、高い効率で表示光を回折するように、非正弦状および/または不規則に形作られ得る。
【0041】
図8Bは、
図8Aの回折格子800における、ブレーズド回折次数回折効率814対入射角の計算の結果を示す。縦の線802は、回折格子800を支持する導波路スラブ、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のスラブ102によって、表示光が導かれる角度範囲を示す。この例において、
図8Bのブレーズド回折次数回折効率814(すなわちニアアイディスプレイのアイボックスへの)は、約18%に達する。
【0042】
図8Cは、
図8Aの回折格子800に対する、非ブレーズド回折次数回折効率816対入射角の計算の結果を示す。
図8Cに示される、計算された非ブレーズド回折次数回折効率816は、約0.4%に達するだけである。これはブレーズド回折次数回折効率814と比べて大きいように見えないが、到来表示光の0.4%は、このような瞳孔複製導波路を用いたニアアイディスプレイの外部の観察者には、極めて顕著になり得る。したがって、アポダイズされない屈折率コントラストは、回折格子縞の屈折率変化が滑らかで、例えば正弦状である場合であっても、結果としてニアアイディスプレイの外部への表示光の著しい漏洩を生じ得る。
【0043】
図9Aを見ると、瞳孔複製導波路、例えば
図1の瞳孔複製導波路100のためのブラッグ格子900は、第1の格子層921、第2の格子層922、および第3の格子層923の積み重ねを通過する、複数の傾斜した正弦状縞908を含む。回折格子900の比誘電率は、マイクロメートルでのxおよびz座標に対してプロットされる。x座標は横座標であり、z座標は、回折格子900内の特定の場所の厚さ座標である。言い換えれば、z座標は厚さ方向940に平行である。回折格子900の第2の格子層922は中間、すなわち回折格子900の第1の格子層921と、第2の格子層923との間に配置される。第1の格子層921および第3の格子層923は同じ厚さを有し、第2(中間)の層922は、第1の格子層921および第3の格子層923のおおよそ2倍の厚さである。この例において、第1の格子層921および第3の格子層923の厚さは、75nm~85nmであり、第2の格子層922の厚さは150nm~170nmである。
【0044】
縞908における屈折率の正弦状変化の振幅、すなわち屈折率コントラストは、異なる格子層で異なる。示される例において、第1の格子層921および第3の格子層923の屈折率コントラストは0.1であり、屈折率は空間的に1.85~1.95の間で変化し、第2の格子層922の屈折率コントラストは0.2であり、屈折率は空間的に1.8~2.00の間で変化する。このような変化パターンは、例えば、第2の格子層922は第1の格子層921および第3の格子層923より高い感光性物質の濃度を有して、第1の格子層921、第2の格子層922、および第3の格子層923を積み重ね、同時に、積み重ねを2つの書き込みUV波で照射して、3つすべての格子層にわたって延びる書き込みUV干渉パターンを作成することによって得ることができる。また格子の中間で最も強くなるように、ビーム強度をアポダイズすることを用い得る。
【0045】
図9Bを参照すると、ブレーズド回折次数に対する計算された回折効率914は、約17%に達し、これは
図8Aのブラッグ格子800のブレーズド回折次数回折効率814(
図8B)よりわずかに低い。最大回折効率のわずかに低い値は、中間の、第2の層922のみが0.2の屈折率コントラストΔnを有し、第1の格子層921および第3の格子層923はより低い0.1の屈折率コントラストΔnを有することによる、より低い全体の屈折率コントラストΔnによって引き起こされ得る。特に、非ブレーズド回折次数に対する最大回折効率916は、瞳孔複製導波路によって導かれる光に対する角度範囲を示す境界線902(
図9B、9C)によって輪郭付けられる、導波路900の角度範囲内で、ずっとより劇的に、0.1%未満まで、すなわち少なくとも4倍低減される。したがって、
図9Aの回折格子900の屈折率コントラストΔnのzプロファイルのアポダイゼーションは、ブレーズド部分914の屈折率コントラストより高度に、非ブレーズド回折次数916(
図9C)に外方結合され表示光の部分を減少させる。ブラッグ格子900の非ブレーズド回折効率916の挙動は、
図4Aのブラッグ格子400の非ブレーズド回折効率416と同様である。
【0046】
次に
図10を参照すると、瞳孔複製導波路を製造する方法1000は、複数の傾斜した縞、例えば
図6Aの傾斜した縞608を、透明材料のスラブ、例えば
図1のスラブ102上に形成すること(1002)を含む。傾斜した縞は、回折によって、スラブからの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するように構成され得る。例えば、傾斜した縞は、ブレーズド回折次数に回折される光の量を増加させるように選択された傾斜角、例えばブレーズド回折次数の方向での鏡面反射に対応する傾斜角を有し得る。次いで、第1の基板層が、傾斜した縞どうしの間に縞の高さの一部分まで、スラブ上に形成(
図10、1004)、例えばコーティングされ、それによって第1の格子層621(
図6A)を形成することができる。次いで、第2の基板層が、傾斜した縞どうしの間に縞の高さの一部分まで、第1の基板層上に、例えばコーティングによって形成され(
図10、1006)、それによって第2の格子層622(
図6A)を形成することができる。次いで、第3の基板層が、傾斜した縞どうしの間に少なくとも縞の高さまで、第2の基板層上に形成、例えばコーティングされ(
図10、1008)、それによって第3の格子層623(
図6A)を形成することができる。第1、第2、および第3の基板層は、一緒に基板610を形成する。第2の格子層622、すなわち縞608と第2の基板層とによって形成された層の屈折率コントラストは、第1の格子層621、すなわち縞608と第1の基板層とによって形成された層の屈折率コントラストより高い。第2の格子層の屈折率コントラストはまた、第3の格子層、すなわち傾斜した縞と第3の基板層とによって形成された層の屈折率コントラストより高い。
【0047】
複数の傾斜した縞は、適切な堆積法、例えば標準および/もしくは選択的原子層堆積(ALD)、化学気相成長法(CVD)、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、ならびに/またはプラズマエッチングもしくは気相エッチングもしくはウェットエッチングもしくは原子層エッチング(ALE)と併せて物理気相成長法(PVD)によって形成され得る。堆積の後に、例えば、マスクによる方向性エッチングが行われ得る。いくつかの実施形態において、第1、第2、および第3の基板層は、変化する屈折率の積み重ねを形成するように、適切な屈折率を有するポリマー材料が互いの上にスピンコートされる、スピンオンプロセスによって形成され得る。中間エッチング、またはリソグラフィによる露光および現像ステップが、z方向、ならびにXおよびY方向の相対厚さを制御するために含められ得る。またインクジェットまたは流動性堆積プロセスが、スピンコーティングの代わりにこの目的のために用いられ得る。
【0048】
図11を参照すると、瞳孔複製導波路を製造する方法1100は、透明材料のスラブ、例えば
図1のスラブ102上に、複数の傾斜した縞、例えば
図7Bの傾斜した縞708Bを形成すること(1102)を含む。傾斜した縞は、回折によって、スラブからの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するように構成され得る。例えば、傾斜した縞は、ブレーズド回折次数に回折される光の量を増加させるように選択された傾斜角、例えばブレーズド回折次数の方向での鏡面反射に対応する傾斜角を有し得る。次いで基板層、例えば
図7Bの基板層710Bが、縞708Bどうしの間に少なくとも縞708Bの全高まで、スラブ上に形成され得る(
図11、1104)。次いで基板層710Bは、基板層の厚さの方向740での基板層710Bの空間的屈折率変化をもたらすように、ベーキングされ(1106)、その結果回折格子700Bの厚さ方向740に沿って、縞708Bと基板層710Bとによって形成される回折格子700Bの屈折率コントラストプロファイルは対称であり、屈折率コントラストは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間741で大きい。
【0049】
複数の傾斜した縞は、適切な堆積法、例えば原子層堆積(ALD)、化学気相成長法(CVD)、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、および/または物理気相成長法(PVD)によって形成され得る。堆積の後に、例えば、マスクによる方向性エッチングが行われ得る。いくつかの実施形態において、第1、第2、および第3の基板層は、適切な屈折率を有するポリマー材料が互いの上にスピンコートされる、スピンオンプロセスによって形成される。インクジェットまたは流動性堆積プロセスも、この目的のために用いられ得る。
【0050】
次に
図12を見ると、瞳孔複製導波路1200は、TIRによってスラブ1202内の表示光を導くように構成された透明材料のスラブ1202によって支持された、複数の傾斜した縞1208を含む。上記で考察された瞳孔複製導波路の例と同様に、瞳孔複製導波路1200の傾斜した縞1208は、回折によって、スラブ102からの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するように構成される。傾斜した縞1208は、第1の屈折率n
1を有する。
【0051】
適合層1209は、傾斜した縞1208を一様な厚さまで覆う。言い換えれば、適合層1209は、示されるように、個々の傾斜した縞1208の間の間隙1211を残しながら、傾斜した縞1208の形状を反復し、個々の傾斜した縞1208を封じ込める。適合層は、第2の屈折率n2を有する。
【0052】
オーバーコート層1210、例えばポリマー層は、適合層1209で覆われた傾斜した縞1208の間の間隙1211を充填する。オーバーコート層1210の上面は平坦とすることができる。オーバーコート層1210は、第3の屈折率n
3を有する。いくつかの実施形態において、第1の屈折率n
1、第2の屈折率n
2、および第3の屈折率n
3は、条件n
1<n
2<n
3を満たす。
図12に示される例において、n
1=1.7、n
2=1.8、およびn
3=1.9である。
【0053】
実際上、傾斜した縞1208、適合層1209、およびオーバーコート層1210は、瞳孔複製導波路1200の3つの格子層、すなわち第1の格子層1221、第2の格子層1222、および第3の格子層1223(
図12の破線の横線)を形成する。第1の格子層1221は、n
1からn
2まで、この例では1.7から1.8まで変化する屈折率を有する。したがって、第1の格子層1221の実効屈折率コントラストΔnは、0.1に等しい。第2の格子層1222は、n
1からn
2さらにn
3まで、この例では1.7から1.8さらに1.9まで変化する屈折率を有する。したがって、第2の格子層1222の実効屈折率コントラストΔnは、0.2に等しい。最後に、第3の格子層1223は、n
2からn
3まで、すなわちこの例では1.8から1.9まで変化する屈折率を有する。したがって、第3の格子層1223の実効屈折率コントラストΔnは、0.1に等しい。したがって、このような構成はまた、上記で考察されたものと同様な、回折格子のアポダイズされた屈折率コントラスト、すなわち、0.1-0.2-0.1をもたらす。
【0054】
図12をさらに参照しながら
図13を見ると、例えば
図12の瞳孔複製導波路1200などの、瞳孔複製導波路を製造する方法1300は、回折によって、スラブ1202からの表示光をブレーズド回折次数に外方結合するために、スラブ1202上に複数の傾斜した縞1208を形成すること(1302)を含み、傾斜した縞は第1の屈折率n
1を有する。次いで、間隙1211が個々の傾斜した縞1208の間に残されるように、屈折率n
2を有する適合層1209が、複数の傾斜した縞1208上に形成される(1304)。次いで、適合層1209上に、屈折率n
3を有するオーバーコート層1210が形成される(1306)。オーバーコート層1210は、
図12に示されるように、適合層1209で覆われた傾斜した縞1208の間の間隙1211を充填する。傾斜した縞1208、適合層1209、およびオーバーコート層1210の屈折率は、条件n
1>n
2>n
3、あるいは、n
1<n
2<n
3を満たし得る。
【0055】
傾斜した縞1208、適合層1209、およびオーバーコート層1210を製作するために、多様な製造方法が使用され得る。いくつかの実施形態において、複数の傾斜した縞1208は、型および適切な樹脂を用いたインプリンティング、またはフォトリソグラフィにより画定されたマスクを通した等方性エッチングによって形成される。適合層1209は、原子層堆積によって形成されることができ、これは明確に画定された一様な厚さの適合する薄膜の堆積を可能にする。オーバーコート層1210は、例えばスピンコーティングによって形成されることができ、これは間隙1211を充填し、スピンコートされたオーバーコート層の上面の良好な一様性を結果として生じる。
【0056】
図14を参照すると、瞳孔複製導波路1400は、スラブ1402の上面および底面からの全反射(TIR)によって、スラブ1402内に表示光を伝搬させるための透明材料のスラブ1402を含む。回折格子1450は、スラブ1402によって支持される。回折格子1450は、基板材料1410、例えばポリマー基板内に吊された複数の縞1408を含む。縞1408は、ねじれネマティック(TN)液晶(LC)材料によって形成される。いくつかの実施形態において、LC分子1418は、ポリマー基板材料によって安定化される。縞1408は、回折によって、スラブ1402からの表示光1404をブレーズド回折次数1424に外方結合するように傾斜される。縞1408の傾斜のため、表示光1404のより大きな部分1414は、ブレーズド回折次数1424に外方結合され、表示光1404のより小さな部分1416は、非ブレーズド回折次数1426に外方結合される。
【0057】
TN LC材料は、TN LC材料の細長いLC分子1418に垂直に偏光された光に対する、正常屈折率n
Oと、TN LC材料の分子1418に平行に偏光された光に対する、異常屈折率n
Eとを有する。いくつかの実施形態において、ポリマー基板材料1410の屈折率は、n
Eよりn
Oに近い。これらの実施形態の場合、入射面内、すなわち
図14の面内に偏光された、突き当たる表示光1404に対する屈折率コントラストは、回折格子1450の厚さ方向1440に沿って、変化する屈折率コントラストプロファイルを有する。これは、
図14に示されるLC材料のTN構成において、上部および下部LC分子1418Aは、突き当たる表示光1404の偏光方向1405に垂直に配置され、したがって突き当たる表示光1404に対して正常屈折率n
Oを有し、一方、中間の厚さのLC分子1418Bは、偏光方向1405に関して鋭角にあり、したがって突き当たる表示光1404に対してn
Oとn
Eの間の屈折率を有し、これは通常は正常屈折率n
Oより高いからである。その結果として、屈折率コントラストは、屈折率コントラストプロファイルの両側より中間で大きく、これは非ブレーズド回折次数1426に外方結合された偏光された表示光の部分を減少させる。TN LC分子1418の滑らかに変化するねじれ角により、屈折率コントラストプロファイルは、通常は滑らかに変化する関数となる。適切なLC分子方位ジオメトリを選択することにより、滑らかに変化する関数は、ガウス関数を近似するようになされ得る。
【0058】
図15を参照すると、ニアアイディスプレイ1500は、1つの眼鏡のフォームファクタを有するフレーム1501を含む。フレーム1501はそれぞれの目に対して、光源サブアセンブリ1502と、複数の光ビームをもたらすために光源サブアセンブリ1502の放射器に電源供給するように、光源サブアセンブリ1502に動作可能に結合された電子的ドライバ1504と、複数の光ビームをコリメートするように、光源サブアセンブリ1502に光学的に結合されたコリメータ1506と、複数の光ビームをスキャンするためのコリメータ1506に光学的に結合されたスキャナ1508と、スキャナ1508に光学的に結合された瞳孔複製器1510とを支持する。光源サブアセンブリ1502は、複数の光ビームをもたらすための、シングルモードまたはマルチモード半導体光源、例えば側面放射レーザダイオード、垂直共振器面発光レーザダイオード(SLED)、または発光ダイオードの、アレイを支持する基板を含み得る。コリメータ1506は、凹面鏡、バルクレンズ、フレネルレンズ、ホログラフィックレンズなどを含むことができ、光源サブアセンブリ1502と一体化され得る。スキャナ1508は、例えば2D微小電気機械システム(MEMS)スキャナを含み得る。
【0059】
瞳孔複製器1510の機能は、アイボックス1512の全エリアを覆うように、スキャナ1508によってスキャンされた光ビームの、複数の横方向にオフセットされたコピーをもたらす。アイボックス1512は、ユーザがニアアイディスプレイ1500を装着したとき、ユーザの目を配置するための幾何学的なエリアを示す。ユーザの目がアイボックス1512によって輪郭付けられたエリア内に位置するとき、許容される品質の画像がユーザに表示され得る。光ビームの複数の横方向にオフセットされたコピーは、アイボックス1512のエリアが、異なるユーザによる、表示されたイメージの簡便な観察のために十分広くなることを確実にするように、瞳孔複製器1510によってもたらされる。瞳孔複製器1510は、
図4Aの回折格子400、
図5Aの回折格子500、
図6Aの回折格子600、
図7Aの回折格子700A、
図7Bの回折格子700B、
図9Aの回折格子900、および/または
図15の回折格子1550を含んだ、
図1の瞳孔複製導波路100など、本明細書で述べられる瞳孔複製導波路の任意のものを含み得る。瞳孔複製器1510はまた、
図12の瞳孔複製導波路1200、
図14の瞳孔複製導波路1400などを含み得る。
【0060】
コントローラ1505(
図15)は、スキャナ1508および電子的ドライバ1504に動作可能に結合される。コントローラ1505は、スキャナ1508の傾斜可変MEMS反射器のXおよびY傾斜角を決定するように構成され得る。次いで、コントローラ1505は、表示されることになる画像の、どの1つのまたは複数の画素が、決定されたXおよびY傾斜角に対応するかを決定する。次いで、コントローラ1505は、これらの画素の輝度および/または色を決定し、それに従って、決定された画素輝度および色に対応するパワーレベルでの光パルスを作り出すために、電力供給電気パルスを光源サブアセンブリ1502に供給するように、電子的ドライバ1504を動作させる。
【0061】
本発明の実施形態は、人工現実システムを含むことができ、または人工現実システムと併せて実施され得る。人工現実システムは、視覚的情報、オーディオ、触覚(体性感覚)情報、加速度、平衡など、感覚を通して得られる外部世界についての感覚情報を、ユーザに提示する前に何らかのやり方で調整する。非限定的な例として、人工現実は、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、ハイブリッド現実、もしくは何らかの組み合わせ、および/またはそれらの派生物を含み得る。人工現実コンテンツは、専ら生成されたコンテンツ、または捕捉された(例えば、現実世界の)コンテンツと組み合わされた生成されたコンテンツを含み得る。人工現実コンテンツは、ビデオ、オーディオ、体性もしくは触力覚フィードバック、またはそれらの何らかの組み合わせを含み得る。このコンテンツの任意のものは、ビューアに対して3次元効果を作り出すステレオビデオにおいてなど、単一チャネルまたは複数チャネルにおいて提示され得る。さらに、いくつかの実施形態において、人工現実はまた、例えば、人工現実でのコンテンツを作成するために用いられる、および/または他の形で人工現実において(例えば、人工現実における活動を行うように)用いられる、アプリケーション、製品、付属物、サービス、またはそれらの何らかの組み合わせに関連付けられ得る。人工現実コンテンツをもたらす人工現実システムは、ホストコンピュータシステムに接続されたHMD、スタンドアロンHMD、眼鏡のフォームファクタを有するニアアイディスプレイ、モバイルデバイスもしくはコンピューティングシステム、または1人または複数のビューアに人工現実コンテンツをもたらすことができる任意の他のハードウェアプラットフォームなど、ウェアラブルディスプレイを含む、様々なプラットフォーム上で実施され得る。
【0062】
図16Aを参照すると、HMD1600は、AR/VR環境へのより高度の没入のために、ユーザの顔を取り囲む、AR/VRウェアラブルディスプレイシステムの例である。HMD1600は、
図15のニアアイディスプレイ1500の実施形態であり、同様な要素を含み得る。HMD1600の機能は、コンピュータにより生成されたイメージを用いて物理的な現実世界環境の視像を拡張すること、および/または専ら仮想3Dイメージを生成することである。HMD1600は、フロントボディ1602と、バンド1604とを含み得る。フロントボディ1602は、信頼性があり快適な形で、ユーザの目の正面に配置するように構成され、バンド1604は、フロントボディ1602をユーザの頭に固定するように引き延ばされ得る。表示システム1680は、AR/VRイメージをユーザに提示するために、フロントボディ1602内に配置され得る。表示システム1680は、本明細書で開示される瞳孔複製導波路および回折格子の任意のものを含み得る。フロントボディ1602の側部1606は、不透明または透明とすることができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、フロントボディ1602は、ロケータ1608およびHMD1600の加速度を追跡するための慣性測定ユニット(IMU)1610と、HMD1600の位置を追跡するための位置センサ1612とを含む。IMU1610は、HMD1600の運動に応答して1つまたは複数の測定信号を生成する、位置センサ1612のうちの1つまたは複数から受信される測定信号に基づいて、HMD1600の位置を示すデータを生成する電子デバイスである。位置センサ1612の例は、1つまたは複数の加速度計、1つまたは複数のジャイロスコープ、1つまたは複数の磁力計、運動を検出する他の適切なタイプのセンサ、IMU1610の誤差補正のために用いられるタイプのセンサ、またはそれらの何らかの組み合わせを含む。位置センサ1612は、IMU1610の外部に、IMU1610の内部に、またはそれらの何らかの組み合わせにおいて位置し得る。
【0064】
ロケータ1608は、仮想現実システムがHMD1600全体の場所および方位を追跡できるように、仮想現実システムの外部イメージングデバイスによってトレースされる。IMU1610および位置センサ1612によって生成された情報は、HMD1600の位置および方位の改善された追跡精度のために、ロケータ1608を追跡することによって取得される位置および方位と比較され得る。正確な位置および方位は、ユーザが3D空間内で移動するおよび向きを変えるのに従って、適切な仮想背景をユーザに提示するために重要である。
【0065】
HMD1600は、深度カメラアセンブリ(DCA)1611をさらに含むことができ、これはHMD1600の一部またはすべてを取り囲むローカルエリアの深度情報を記述するデータを捕捉する。そのために、DCA1611は、レーザレーダ(LIDAR)、位相敏感深度カメラ、または同様なデバイスを含み得る。深度情報は、3D空間内のHMD1600の位置および方位の決定のより良い精度のために、IMU1610からの情報と比較され得る。
【0066】
HMD1600は、リアルタイムでユーザの目の方位および位置を決定するために、視線追跡システム1614をさらに含み得る。取得された目の位置および方位は、HMD1600が、ユーザの視線方向を決定すること、およびそれに従って表示システム1680によって生成される画像を調整することを可能にする。一実施形態において、両眼転導、すなわち、ユーザの目の視線の輻輳角が決定される。決定された視線方向および両眼転導角度はまた、視線角度および目の位置に応じて、視覚的アーチファクトのリアルタイム補償のために用いられ得る。さらに、決定された両眼転導および視線角度は、ユーザとの相互作用、物体を強調表示すること、物体を前景に動かすこと、追加の物体またはポインタを作成することなどのために用いられ得る。また、例えばフロントボディ1602に組み込まれた小型スピーカのセットを含む、オーディオシステムがもたらされ得る。
【0067】
図16Bを参照すると、AR/VRシステム1650は、
図16AのHMD1600と、様々なAR/VRアプリケーション、セットアップおよび較正手順、3Dビデオなどを記憶する外部コンソール1690と、コンソール1690を動作させるおよび/またはAR/VR環境と相互作用するための入出力(I/O)インターフェース1615とを含む。HMD1600は、物理的ケーブルによってコンソール1690に「繋がれ」、またはブルートゥース(R)、Wi-Fiなどの無線通信リンクを通じてコンソール1690に接続され得る。関連付けられたI/Oインターフェース1615をそれぞれが有する、複数のHMD1600が存在することができ、各HMD1600およびI/Oインターフェース1615はコンソール1690と通信する。代替の構成において、異なるおよび/または追加の構成要素がAR/VRシステム1650に含められ得る。加えて、
図16Aおよび16Bに示される構成要素のうちの1つまたは複数と併せて述べられる機能は、いくつかの実施形態において、
図16Aおよび16Bと併せて述べられるものとは異なる形で、構成要素の間で分散され得る。例えば、コンソール1615の一部またはすべての機能は、HMD1600によってもたらされることができ、逆も同様である。HMD1600には、このような機能を達成することができる処理モジュールがもたらされ得る。
【0068】
図16Aを参照して述べられたように、HMD1600は、目の位置および方位を追跡し、視線角度および輻輳角などを決定するための視線追跡システム1614(
図16B)、3D空間内のHMD1600の位置および方位を決定するためのIMU1610、外部環境を捕捉するためのDCA1611、HMD1600の位置を独立して決定するための位置センサ1612、およびAR/VRコンテンツをユーザに表示するための表示システム1680を含み得る。表示システム1680(
図16B)は、電子ディスプレイ1625、例えば非限定的に、走査プロジェクタディスプレイを含む。表示システム1680は、光学系ブロック1630をさらに含み、その機能は、電子ディスプレイ1625によって生成された画像をユーザの目に伝達することである。光学系ブロック1630は、本明細書で開示される瞳孔複製導波路と、回折格子とを含み得る。光学系ブロック1630は、様々なレンズ、例えば屈折レンズ、フレネルレンズ、回折レンズ、アクティブまたはパッシブパンチャラトナム・ベリー位相(PBP)レンズ、液体レンズ、液晶レンズなど、瞳孔複製導波路、格子構造体、コーティングなどをさらに含み得る。表示システム1680は、可変焦点モジュール1635をさらに含むことができ、これは光学系ブロック1630の一部とすることができる。可変焦点モジュール1635の機能は、例えば輻輳調節矛盾に対して補償するように光学系ブロック1630の焦点を調整すること、特定のユーザの視覚障害を補正すること、光学系ブロック1630の収差を相殺することなどである。
【0069】
I/Oインターフェース1615は、ユーザがコンソール1690に対して、アクション要求を送り、応答を受信することを可能にするデバイスである。アクション要求は、特定のアクションを行うための要求である。例えば、アクション要求は、画像もしくはビデオデータの捕捉を開始するもしくは終了するための命令、またはアプリケーション内の特定のアクションを行うために命令とすることができる。I/Oインターフェース1615は、キーボード、マウス、ゲームコントローラ、またはアクション要求を受信し、アクション要求をコンソール1690に通信するための任意の他の適切なデバイスなど、1つまたは複数の入力デバイスを含み得る。I/Oインターフェース1615によって受信されたアクション要求は、コンソール1690に通信され、コンソール1690は、アクション要求に対応するアクションを行う。いくつかの実施形態において、I/Oインターフェース1615は、I/Oインターフェース1615の初期位置に対する、I/Oインターフェース1615の推定される位置を示す較正データを捕捉するIMUを含む。いくつかの実施形態において、I/Oインターフェース1615は、コンソール1690から受信される命令に従って、ユーザに触力覚フィードバックをもたらし得る。例えば、触力覚フィードバックは、アクション要求が受信されたときにもたらされることができ、またはコンソール1690は、I/Oインターフェース1615に命令を通信して、I/Oインターフェース1615に、コンソール1690がアクションを行うときに触力覚フィードバックを生成させる。
【0070】
コンソール1690は、IMU1610、DCA1611、視線追跡システム1614、およびI/Oインターフェース1615のうちの1つまたは複数から受信された情報に従った処理のために、コンテンツをHMD1600に供給し得る。
図16Bに示される例において、コンソール1690は、アプリケーションストア1655、追跡モジュール1660、および処理モジュール1665を含む。コンソール1690のいくつかの実施形態は、
図16Bと併せて述べられたものとは異なるモジュールまたは構成要素を有し得る。同様に、以下でさらに述べられる機能は、
図16Aおよび16Bと併せて述べられたものとは異なる形で、コンソール1690の構成要素の間で分散され得る。
【0071】
アプリケーションストア1655は、コンソール1690による実行のための1つまたは複数のアプリケーションを記憶し得る。アプリケーションは、プロセッサによって実行されたとき、ユーザへの提示のためのコンテンツを生成する命令のグループである。アプリケーションによって生成されるコンテンツは、HMD1600またはI/Oインターフェース1615の動きを通じてユーザから受信される入力に応答したものとなり得る。アプリケーションの例は、ゲーミングアプリケーション、プレゼンテーションおよび会議アプリケーション、ビデオ再生アプリケーション、または他の適切なアプリケーションを含む。
【0072】
追跡モジュール1660は、1つまたは複数の較正パラメータを用いてAR/VRシステム1650を較正することができ、HMD1600またはI/Oインターフェース1615の位置の決定における誤差を低減するように1つまたは複数の較正パラメータを調整することができる。追跡モジュール1660によって行われる較正はまた、HMD1600内のIMU1610、および/または存在する場合はI/Oインターフェース1615に含まれるIMUから受信された、情報を考慮する。加えて、HMD1600の追跡が失われた場合、追跡モジュール1660は、AR/VRシステム1650の一部またはすべてを再較正することができる。
【0073】
追跡モジュール1660は、HMD1600の、またはI/Oインターフェース1615、IMU1610、もしくはそれらの何らかの組み合わせの動きを追跡し得る。例えば追跡モジュール1660は、HMD1600からの情報に基づいて、ローカルエリアのマッピングにおけるHMD1600の基準点の位置を決定することができる。追跡モジュール1660はまた、それぞれIMU1610からのHMD1600の位置を示すデータを用いて、またはI/Oインターフェース1615に含まれるIMUからのI/Oインターフェース1615の位置を示すデータを用いて、HMD1600の基準点またはI/Oインターフェース1615の基準点の位置を決定し得る。さらに、いくつかの実施形態において、追跡モジュール1660は、IMU1610からのHMD1600の位置を示すデータの部分、ならびにDCA1611のローカルエリアの表現を用いて、HMD1600の将来の場所を予測することができる。追跡モジュール1660は、推定されるまたは予測されるHMD1600またはI/Oインターフェース1615の将来の位置を、処理モジュール1665にもたらす。
【0074】
処理モジュール1665は、HMD1600から受信された情報に基づいて、HMD1600の一部またはすべてを取り囲むエリア(「ローカルエリア」)の3Dマッピングを生成することができる。いくつかの実施形態において、処理モジュール1665は、深度の計算に用いられる技法に関連のある、DCA1611から受信された情報に基づいて、ローカルエリアの3Dマッピングのための深度情報を決定する。様々な実施形態において、処理モジュール1665は、深度情報を用いてローカルエリアのモデルを更新し、更新されたモデルに部分的に基づいてコンテンツを生成することができる。
【0075】
処理モジュール1665は、AR/VRシステム1650内のアプリケーションを実行し、および追跡モジュール1660から、HMD1600の位置情報、加速度情報、速度情報、予測される将来の位置、またはそれらの何らかの組み合わせを受信する。受信された情報に基づいて、処理モジュール1665は、コンテンツを決定して、ユーザへの提示のためにHMD1600に供給する。例えば、受信された情報が、ユーザが左を見たことを示す場合、処理モジュール1665は、追加のコンテンツを用いて、仮想環境における、またはローカルエリアを拡張する環境における、ユーザの動きを反映する、HMD1600のためのコンテンツを生成する。加えて、処理モジュール1665は、I/Oインターフェース1615から受信されたアクション要求に応答して、コンソール1690上で実行するアプリケーション内のアクションを行い、アクションが行われた旨のフィードバックをユーザにもたらす。もたらされるフィードバックは、HMD1600を通じた視覚的もしくは可聴のフィードバック、またはI/Oインターフェース1615を通じた触力覚フィードバックとすることができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、視線追跡システム1614から受信される視線追跡情報(例えば、ユーザの目の方位)に基づいて、処理モジュール1665は、電子ディスプレイ1625上の、ユーザに対する提示のために、HMD1600に供給されるコンテンツの解像度を決定する。処理モジュール1665は、ユーザの視線の中心窩領域において電子ディスプレイ1625上の最大画素解像度を有するHMD1600に、コンテンツを供給し得る。処理モジュール1665は、電子ディスプレイ1625の他の領域において、より低い画素解像度をもたらすことができ、それによりAR/VRシステム1650の消費電力を減少させ、ユーザの視覚的エクスペリエンスを損なうことなくコンソール1690のコンピューティングリソースを節約する。いくつかの実施形態において、処理モジュール1665はさらに、輻輳調節矛盾を防止するため、ならびに/または光学的歪みおよび収差を相殺するために、視線追跡情報を用いて、電子ディスプレイ1625上のどこに物体が表示されるかを調整することができる。
【0077】
本明細書で開示される態様に関連して述べられる様々な例示的論理回路、論理ブロック、モジュール、および回路を実施するために用いられるハードウェアは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲートもしくはトランジスタロジック、ディスクリートハードウェア構成要素、または本明細書で述べられる機能を行うように設計されたそれらの任意の組み合わせを用いて、実施されることができまたは行われ得る。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサとすることができるが、代替として、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または状態機械とすることができる。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと併せて1つまたは複数のマイクロプロセッサ、または任意の他のこのような構成として実施され得る。あるいは、いくつかのステップまたは方法は、所与の機能に対して専用の回路によって行われ得る。
【0078】
本発明は、範囲において、本明細書で述べられる特定の実施形態によって限定されない。実際、当業者には、本明細書で述べられるものに加えて、他の様々な実施形態および変更形態が、上記の記述および添付の図面から明らかになるであろう。したがって、このような他の実施形態および変更形態は、本発明の範囲に包含されるものである。さらに、本発明は、特定の目的のための特定の環境での特定の実装形態の関連において本明細書で述べられたが、当業者は、有用性はそれらに限定されず、本発明は任意の数の目的のために、任意の数の環境において有益に実施され得ることを認識するであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲は、本明細書で述べられる本発明の完全な範囲および思想の観点から解釈されるべきである。
【国際調査報告】