(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】脂肪組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20221020BHJP
A23G 3/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A23D9/00
A23D9/00 518
A23G3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502499
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020073083
(87)【国際公開番号】W WO2021032731
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521044534
【氏名又は名称】ブンヘ ロデルス クロクラーン べスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】レネー ブレフィイン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン アールベルツ
(72)【発明者】
【氏名】エーリク パウル アロシン ベレンスホット
(72)【発明者】
【氏名】イェアニーネ ルベレ ウェルレマン
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GG07
4B014GG14
4B014GL07
4B026DC01
4B026DG02
4B026DH02
4B026DL03
4B026DX01
4B026DX02
(57)【要約】
脂肪組成物は、10重量%~30重量%のジグリセリドと、70重量%~90重量%のトリグリセリドであって、そのトリグリセリドは、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、40重量%~75重量%のCN50トリグリセリドおよび15重量%~40重量%のCN52トリグリセリドを含む、トリグリセリドとを含み、その脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、10℃で55~85の固形脂肪含有量と、20℃で35~70の固形脂肪含有量と、30℃で5~25の固形脂肪含有量と、40℃で0~10の固形脂肪含有量とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組成物であって、
10重量%~30重量%のジグリセリドと、
70重量%~90重量%のトリグリセリドであって、前記トリグリセリドが、前記組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、40重量%~75重量%のCN50トリグリセリドおよび15重量%~40重量%のCN52トリグリセリドを含む、トリグリセリドとを含み、
前記脂肪組成物が、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、
10℃で55~85の固形脂肪含有量と、
20℃で35~70の固形脂肪含有量と、
30℃で5~25の固形脂肪含有量と、
40℃で0~10の固形脂肪含有量と
を有する、脂肪組成物。
【請求項2】
10重量%~25重量%のジグリセリド、好ましくは10重量%~20重量%、より好ましくは15重量%~20重量%を含む、請求項1に記載の脂肪組成物。
【請求項3】
前記ジグリセリドが、
前記組成物中に存在する総ジグリセリドに基づいて、30重量%~45重量%のPPジグリセリド、好ましくは32~42重量%と、
5重量%~20重量%のPStジグリセリド、好ましくは6重量%~16重量%と、
1重量%~15重量%のOOジグリセリド、好ましくは2重量%~12重量%とを含み、
Pがパルミチン酸であり、Oがオレイン酸であり、Stがステアリン酸である、請求項1または2に記載の脂肪組成物。
【請求項4】
前記トリグリセリドが、
前記組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、1重量%~12重量%のCN48トリグリセリド、好ましくは3重量%~10重量%と、
45重量%~70重量%のCN50トリグリセリド、好ましくは50重量%~65重量%と、
15重量%~35重量%のCN52トリグリセリド、好ましくは20重量%~30重量%とを含む、
先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項5】
ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、
10℃で60~80の固形脂肪含有量、好ましくは65~75、および/または
20℃で40~65の固形脂肪含有量、好ましくは45~60、および/または
25℃で25~50の固形脂肪含有量、好ましくは30~45、および/または
30℃で8~23の固形脂肪含有量、好ましくは10~20、および/または
35℃で3~15の固形脂肪含有量、好ましくは4~12、および/または
40℃で1~8の固形脂肪含有量、好ましくは2~7
を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項6】
0重量%~5重量%のラウリン酸(C12:0)、好ましくは0%~3%、および/または
40重量%~65重量のパルミチン酸(C16:0)、好ましくは45%~60%、および/または
20重量%~45重量%のオレイン酸(C18:1)、好ましくは25%~40%を含み、
前記酸の割合が、前記脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項7】
50重量%~75重量%の飽和脂肪酸(SAFA)、好ましくは55%~70%を含み、前記酸の割合が、前記脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の前記総重量に基づく、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項8】
前記組成物が、1つ以上のパーム画分と、20重量%~50重量%のジグリセリド、好ましくは25重量%~45重量%を含む1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項9】
前記組成物が、40~45のヨウ素価を有する少なくとも1つのパーム画分、および/または30~35のヨウ素価を有する少なくとも1つのパーム画分、好ましくは40~45のヨウ素価を有するパーム画分および30~35のヨウ素価を有するパーム画分の両方を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項10】
前記組成物が、1つ以上のパーム画分から作製された1つ以上のジグリセリドが豊富な成分を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項11】
先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物を作製するための工程であって、
1つ以上のパーム画分と、
15重量%~50重量%のジグリセリド、好ましくは20重量%~45重量%を含む1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む、工程。
【請求項12】
35重量%~65重量%の1つ以上のパーム画分と、
15重量%~50重量%のジグリセリド、好ましくは20重量%~45重量%を含む35重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む、請求項11に記載の工程。
【請求項13】
40~45のヨウ素価を有する25重量%~55重量%の1つのパーム画分と、
30~35のヨウ素価を有する5重量%~35重量%の1つのパーム画分と、
15重量%~50重量%のジグリセリド、好ましくは20重量%~45重量%を含む30重量%~60重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む、請求項11または12に記載の工程。
【請求項14】
好ましくは菓子の甘味を増加させるための、菓子用途、例えば菓子フィリングにおける請求項1~10のいずれか一項に記載の脂肪組成物の、使用。
【請求項15】
菓子製品であって、
20重量%~50重量%の請求項1~10のいずれか一項に記載の脂肪組成物と、
15重量%~35重量%の砂糖と、
15重量%~65重量%の他の材料とを含む、菓子製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組成物、その使用、脂肪組成物を生産する工程、および脂肪組成物を含む菓子製品に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂は、菓子製品などの食品の重要な材料である。油脂は主にトリグリセリドを含有するが、ジグリセリドなどの部分的なグリセリドも含有する。油脂は、それらの組成に関連して菓子製品の機能に直接的または間接的に寄与する。
【0003】
菓子製品は甘く、砂糖が菓子製品で最も一般的に使用される甘味料である。しかしながら、食事へのその顕著なカロリーの寄与ならびに世界中の過体重および肥満の人口の増加により、公衆衛生上の懸念が高まっている。
【0004】
これにより、食品業界は多くの食品および飲料に使用される砂糖の量を減らしている。しかしながら、砂糖は、菓子製品において重要かつ複合的な役割を果たしているので、味覚、甘味強度ならびに食感の持続時間および喪失の潜在的な違いのために、単に配合を変化させればよいだけではない。
【0005】
EP A1 0 744 900は、10~60%のジグリセリド(=A)、90~40%のトリグリセリド(=B)の混合物を含む、食品用途に適した脂肪混合物を開示しており、(A)は、高融点ジグリセリド(>40DEG C)(=C)および同時に脂肪化合物(D)を含む、>/=70%のSU-ジグリセリドを含有し、それによって(C+D)の融点は、(C)の融点より低い、>/=5DEG Cであり、(B)はN5</=40を有するが、混合物全体は、SAFA含有量<40%を有する。
【0006】
EP A1 0 744 899は、特に包装またはタブ型容器に塗るための食品用途に適した脂肪混合物であって、その脂肪混合物は、30~70のジグリセリド、70~30のトリグリセリドを含み、ジグリセリドが、25~70%のSU、10~70%のUU、30%未満のSS(S=飽和脂肪酸C12~C24、U=不飽和脂肪酸>/=C16)を含み、トリグリセリドが、1~70重量%のS2U-トリグリセリドを含有するが、混合物のSAFA含有量が50重量%未満である、脂肪混合物を提供している。
【0007】
WO2013/027731 A1は、50質量%以上のジアシルグリセロールを含有する油または脂肪組成物であって、当該ジアシルグリセロール中で、20個以上の炭素原子を有する脂肪酸の含有量は、その構成要素の脂肪酸全体に対して12質量%以上であり、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の含有量の合計は、その構成要素の脂肪酸全体に対して5質量%以下であり、120以下の油または脂肪のヨウ素価を有する、油または脂肪組成物を提供している。
【0008】
EP A1 2 749 173は、以下の(1)~(4)を満たす50質量%以上のジアシルグリセロールを含む、脂肪または油組成物を提供している。(1)ジアシルグリセロール中の3~40質量%の二飽和ジアシルグリセロール(SS)、(2)ジアシルグリセロール中の21~48質量%の一飽和-一不飽和ジアシルグリセロール(SU)、(3)ジアシルグリセロール中の二飽和ジアシルグリセロール(SS)の含有量に対するジアシルグリセロール中の一飽和-一不飽和ジアシルグリセロール(SU)の含有量の比(質量比)[(SU)/(SS)]として0.5~3.8、および(4)ジアシルグリセロールの構成要素の脂肪酸中の18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸(S)の含有量に対する16個の炭素原子を有する飽和脂肪酸(P)の含有量の質量比[(P)/(S)]として9.7以下。
【0009】
EP A1 1 424 907は、以下の成分(A)および(B)を含む油組成物を提供している。(A)構成要素の脂肪酸の15重量%未満がω3型不飽和脂肪酸である、15~70重量%のジグリセリド、および(B)構成要素の脂肪酸の少なくとも15重量%がω3型不飽和脂肪酸である、30~85重量%のトリグリセリド。
【0010】
WO2007/097523 A2は、脂肪組成物およびその脂肪組成物を調製するための方法を開示している。その脂肪組成物は、(a)パルミチン酸またはステアリン酸が2位で結合し、構成要素の脂肪酸の重量に対して25~95重量%の量で存在する、10~95重量%のトリグリセリドと、(b)中鎖脂肪酸が1,3位で結合し、構成要素の脂肪酸の重量に対して1~50重量%の量で存在する、4.5~80重量%のトリグリセリドと、(c)不飽和脂肪酸が1,2位または1,3位で結合し、構成要素の脂肪酸の重量に対して30~95重量%の量で存在する、0.1~85重量%のジグリセリドとを含む。
【0011】
EP A2 1 803 819は、ジアシルグリセロールを生産するための工程であって、トリアシルグリセロールを水および酵素と反応させて、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよび遊離脂肪酸から構成される混合物を得ることと、脱水によって混合物中の水分含量を除去することと、少なくとも1つの分離方法によってモノアシルグリセロール、遊離脂肪酸および残留トリアシルグリセロールを分離して高純度のジアシルグリセロールを得ることとを含む、工程を提供している。当該工程から得られたジアシルグリセロール、ならびにジアシルグリセロールの0.5重量%~25重量%の量のフィトステリルエステルおよび/またはフェルラ酸エステルから構成される油または脂肪組成物もまた提供される。
【0012】
砂糖の量を減らしているが、望ましい官能特性、特に甘味強度を依然として維持することができ、製品の食感が依然として許容可能であるフィリングなどの菓子製品を作製するために使用することができる脂肪組成物に対する必要性が依然として存在している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、脂肪組成物であって、10重量%~30重量%のジグリセリドと、70重量%~90重量%のトリグリセリドであって、そのトリグリセリドは、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、40重量%~75重量%のCN50トリグリセリドおよび15重量%~40重量%のCN52トリグリセリドを含む、トリグリセリドとを含み、その脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、10℃で55~85の固形脂肪含有量と、20℃で35~70の固形脂肪含有量と、30℃で5~25の固形脂肪含有量と、40℃で0~10の固形脂肪含有量とを有する、脂肪組成物が提供される。
【0014】
本発明の脂肪組成物は、菓子製品中に35重量%未満の砂糖またはさらに30重量%未満の砂糖などの、従来の製品と比較して少ない量の砂糖を含有する菓子製品の材料として特に有用であることが見出されている。本発明による脂肪組成物は、良好な食感特性だけでなく、驚くべきことに、砂糖を減らしていない、他の点では同一の組成物と同様の官能特性を有する菓子製品を提供する。特に、本発明による脂肪組成物は、菓子フィリングなどの菓子製品において良好な甘味強度特性を提供する。
【0015】
本発明の脂肪組成物は、本明細書で定義される脂肪酸および固形脂肪含有量の要件を満たす、天然もしくは合成の脂肪、天然もしくは合成の脂肪の画分、またはそれらの混合物から作製され得る。
【0016】
用語「脂肪」は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド油脂を指し、いずれの特定の融点も意味しない。「油」という用語は、「脂肪」と同義語に使用される。
【0017】
「脂肪酸」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和(一価および多価不飽和を含む)カルボン酸を指す。x個の炭素原子およびy個の二重結合を有する脂肪酸は、Cx:yと表されてもよい。例えば、パルミチン酸はC16:0と表されてもよく、オレイン酸はC18:1と表されてもよい。本明細書で言及される組成物中の脂肪酸の割合は、グリセリド中に存在するトリグリセリド、ジグリセリド、およびモノグリセリドのアシル基を含み、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。脂肪酸プロファイル(すなわち、組成)は、例えば、ISO 12966-2およびISO 12966-4に従ってガスクロマトグラフィーを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定され得る。
【0018】
「トリグリセリド」という用語は、グリセロール分子に共有結合している3つの脂肪酸鎖からなるグリセリドを指す。「ジグリセリド」という用語は、グリセロール分子に共有結合している2つの脂肪酸鎖からなるグリセリドを指し、必ずしもグリセロール骨格上の特定の位置(1,3位または2位)に限定されない。トリグリセリド含有量およびジグリセリド含有量は、例えば、ISO 18395:2005(E)に従って高性能サイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる。
【0019】
トリグリセリド組成は、例えば、GC(AOCS Ce 5-86)による分子量差(炭素数(CN))に基づいて決定することができる。表記トリグリセリドCNxxは、脂肪アシル基にxx個の炭素原子を有するトリグリセリドを表し、例えば、CN54は、トリステアリンを含む。当技術分野における通例の専門用語であるように、各炭素数(CN)で指定されたトリグリセリドの量は、脂肪組成物中に存在するCN26~CN62の総トリグリセリドに基づく重量百分率である。
【0020】
本発明の脂肪組成物は、10重量%~30重量%のジグリセリド、好ましくは10重量%~25重量%、より好ましくは10重量%~20重量%、さらにより好ましくは15重量%~20重量%を含む。
【0021】
ジグリセリド組成は、例えば、Lee et al.(1988),“Simple Method for Derivatization of Monoglycerides and Diglycerides”(J.Assoc.Off.Anal.Chem.Vol.71,No.4,785-788)に従って決定することができる。表記ジグリセリドXYは、グリセリドの1位、2位および3位のいずれかに脂肪酸アシル基XおよびYを有するジグリセリドを表す。表記ABには、1,2-ABジグリセリド、1,3-ABジグリセリド、1,2-BAジグリセリド、および1,3-BAジグリセリドなどの全ての異性体が含まれる。
【0022】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、組成物中に存在する総ジグリセリドに基づいて、
30重量%~45重量%のPPジグリセリド、より好ましくは32%~42%、例えば33%~40%、および/または
5重量%~20重量%のPStジグリセリド、より好ましくは6%~16%、例えば7%~13%、および/または
1重量%~15重量%のOOジグリセリド、より好ましくは2%~12%、例えば3%~10%のうちの1つ以上を含み、
Pがパルミチン酸であり、Oがオレイン酸であり、Stがステアリン酸である。
【0023】
例えば、脂肪組成物は、30重量%~45重量%のPPジグリセリドと、5重量%~20重量%のPStジグリセリドと、1重量%~15重量%のOOジグリセリドとを含んでもよく、Pはパルミチン酸であり、Oはオレイン酸であり、Stはステアリン酸である。
【0024】
より好ましくは、本発明による脂肪組成物は、32重量%~42重量%のPPジグリセリドと、6重量%~16重量%のPStジグリセリドと、2重量%~12重量%のOOジグリセリドとを含み、Pはパルミチン酸であり、Oはオレイン酸であり、Stはステアリン酸である。
【0025】
さらにより好ましくは、本発明による脂肪組成物は、33重量%~40重量%のPPジグリセリドと、7重量%~13重量%のPStジグリセリドと、25重量%~35重量%のPOジグリセリドと、1重量%~5重量%のPLジグリセリドと、3重量%~10重量%のOOジグリセリドとを含み、Pはパルミチン酸であり、Oはオレイン酸であり、Stはステアリン酸であり、Lはリノール酸である。
【0026】
本発明の脂肪組成物は、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、40重量%~75重量%のCN50トリグリセリドと、15重量%~40重量%のCN52トリグリセリドとを含む。
【0027】
本発明の脂肪組成物は、好ましくは、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、
1重量%~12重量%のCN48トリグリセリド、より好ましくは3%~10%、例えば4%~9%、および/または
45重量%~70重量%のCN50、より好ましくは50%~65%、例えば55%~60%、および/または
15重量%~35重量%のCN52トリグリセリド、より好ましくは20%~30%、例えば22%~28%のうちの1つ以上を含む。
【0028】
例えば、脂肪組成物は、1重量%~12重量%のCN48トリグリセリドと、45重量%~70重量%のCN50と、15重量%~35重量%のCN52トリグリセリドとを含んでもよい。
【0029】
より好ましくは、本発明の脂肪組成物は、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、3重量%~10重量%のCN48トリグリセリドと、50重量%~65重量%のCN50トリグリセリドと、20重量%~30重量%のCN52トリグリセリドとを含む。
【0030】
さらにより好ましくは、本発明の脂肪組成物は、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、4重量%~9重量%のCN48トリグリセリドと、55重量%~60重量%のCN50トリグリセリドと、22重量%~28重量%のCN52トリグリセリドとを含む。
【0031】
本発明による脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、10℃で55~85の固形脂肪含有量と、20℃で35~70の固形脂肪含有量と、30℃で5~25の固形脂肪含有量と、40℃で0~10の固形脂肪含有量とを有する。固形脂肪含有量は割合であるため、y℃でのxの固形脂肪含有量は、ISO 8292-1に従って、脂肪のx%がy℃で固形であることを意味する。
【0032】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、10℃で60~80の固形脂肪含有量、より好ましくは65~75、さらにより好ましくは68~74を有する。
【0033】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、20℃で40~65の固形脂肪含有量、より好ましくは45~60、さらにより好ましくは50~60を有する。
【0034】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、25℃で25~50の固形脂肪含有量、より好ましくは30~45、さらにより好ましくは35~40を有する。
【0035】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、30℃で8~23の固形脂肪含有量、より好ましくは10~20、さらにより好ましくは12~18を有する。
【0036】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、35℃で3~15の固形脂肪含有量、より好ましくは4~12、さらにより好ましくは5~10を有する。
【0037】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、40℃で1~8の固形脂肪含有量、より好ましくは2~7、さらにより好ましくは3~6を有する。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、10重量%~25重量%のジグリセリドであって、そのジグリセリドは、組成物中に存在する総ジグリセリドに基づいて、30.0重量%~45.0重量%のPPジグリセリドと、5.0重量%~20.0重量%のPStジグリセリドと、1.0重量%~15.0重量%のOOジグリセリドとを含み、Pはパルミチン酸であり、Oはオレイン酸であり、Stはステアリン酸である、ジグリセリドと、75重量%~90重量%のトリグリセリドであって、そのトリグリセリドは、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、1重量%~12重量%のCN48トリグリセリドと、45重量%~70重量%のCN50トリグリセリドと、15重量%~35重量%のCN52トリグリセリドとを含む、トリグリセリドとを含み、その脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、10℃で60~80の固形脂肪含有量と、20℃で40~65の固形脂肪含有量と、25℃で25~50の固形脂肪含有量と、30℃で8~23の固形脂肪含有量と、35℃で3~15の固形脂肪含有量と、40℃で1~8の固形脂肪含有量とを有する。
【0039】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、10重量%~20重量%のジグリセリドであって、そのジグリセリドは、組成物中に存在する総ジグリセリドに基づいて、32.0重量%~42.0重量%のPPジグリセリドと、6.0重量%~16.0重量%のPStジグリセリドと、2.0重量%~12.0重量%のOOジグリセリドとを含み、Pはパルミチン酸であり、Oはオレイン酸であり、Stはステアリン酸である、ジグリセリドと、80重量%~90重量%のトリグリセリドであって、そのトリグリセリドは、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、3重量%~10重量%のCN48トリグリセリドと、50重量%~65重量%のCN50トリグリセリドと、20重量%~30重量%のCN52トリグリセリドとを含む、トリグリセリドとを含み、その脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、10℃で65~75の固形脂肪含有量と、20℃で45~60の固形脂肪含有量と、25℃で30~45の固形脂肪含有量と、30℃で10~20の固形脂肪含有量と、35℃で4~12の固形脂肪含有量と、40℃で2~7の固形脂肪含有量とを有する。
【0040】
さらにより好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、15重量%~20重量%のジグリセリドであって、そのジグリセリドは、33.0重量%~40重量%のPPジグリセリドと、7.0重量%~13重量%のPStジグリセリドと、25.0重量%~35.0重量%のPOジグリセリドと、1.0重量%~5.0重量%のPLジグリセリドと、3.0重量%~10.0重量%のOOジグリセリドとを含み、Pはパルミチン酸であり、Oはオレイン酸であり、Stはステアリン酸であり、Lはリノール酸である、ジグリセリドと、80重量%~85重量%のトリグリセリドであって、そのトリグリセリドは、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、4重量%~9重量%のCN48トリグリセリドと、55重量%~60重量%のCN50トリグリセリドと、22重量%~28重量%のCN52トリグリセリドとを含む、トリグリセリドとを含み、その脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って20℃の安定化した脂肪で測定して、10℃で68~74の固形脂肪含有量と、20℃で50~60の固形脂肪含有量と、25℃で35~40の固形脂肪含有量と、30℃で12~18の固形脂肪含有量と、35℃で5~10の固形脂肪含有量と、40℃で3~6の固形脂肪含有量とを有する。
【0041】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、0重量%~5重量%のラウリン酸(C12:0)、より好ましくは0重量%~3重量%、さらにより好ましくは0.01重量%~2重量%を含み、当該酸の割合は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0042】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、40重量%~65重量%のパルミチン酸(C16:0)、より好ましくは45重量%~60重量%、さらにより好ましくは50重量%~55重量%を含み、当該酸の割合は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0043】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、20重量%~45重量%のオレイン酸(C18:1)、より好ましくは25重量%~40重量%、さらにより好ましくは30重量%~38重量%を含み、当該酸の割合は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0044】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、50重量%~75重量%の飽和脂肪酸(SAFA)、より好ましくは55重量%~70重量%、さらにより好ましくは58重量%~65重量%を含み、当該酸の割合は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明の脂肪組成物は、0重量%~5重量%のラウリン酸(C12:0)と、40重量%~65重量%のパルミチン酸(C16:0)と、20重量%~45重量%のオレイン酸(C18:1)と、50重量%~75重量%の飽和脂肪酸(SAFA)とを含み、当該酸の割合は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0046】
より好ましい実施形態では、本発明の脂肪組成物は、0重量%~3重量%のラウリン酸(C12:0)と、45重量%~60重量%のパルミチン酸(C16:0)と、25重量%~40重量%のオレイン酸(C18:1)と、55重量%~70重量%の飽和脂肪酸(SAFA)とを含み、当該酸の割合は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0047】
さらにより好ましい実施形態では、本発明の脂肪組成物は、0.01重量%~2重量%のラウリン酸(C12:0)と、50重量%~55重量%のパルミチン酸(C16:0)と、30重量%~38重量%のオレイン酸(C18:1)と、58重量%~65重量%の飽和脂肪酸(SAFA)とを含み、当該酸の割合は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0048】
パーム油は、画分の融解挙動に応じて、さまざまな画分を分離するために分別することができる。当技術分野で周知のように、一般に、パームステアリンはパーム油の硬質の画分と見なすことができ、パームオレインはパーム油の軟質の画分と見なすことができる。パーム中間画分は、パームステアリンとパームオレインとの間の画分である。軟質パーム中間画分は、パームオレインを分別することによりステアリン画分として得ることができる。硬質パーム中間画分は、パーム中間画分を分別することによりステアリン画分として得ることができる。
【0049】
「パーム画分」という用語は、乾式分別、溶媒分別、およびLanza分別などの分別処理によってパーム油から得られるいずれかの画分を指す。異なる画分を識別するために、ヨウ素価を測定してパーム油の各画分を示すことができる。「ヨウ素価」という用語は、100gの油に加えられ得るヨウ素のグラム数を指し、AOCS法cd 1-25などの当技術分野で公知のさまざまな方法によって測定することができる。
【0050】
「ジグリセリドが豊富な成分」という用語は、少なくとも10重量%のジグリセリドを含む油または脂肪組成物を指す。ジグリセリドの量は、ISO 18395:2005(E)に従って測定することができる。
【0051】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、1つ以上のパーム画分および15重量%~50重量%のジグリセリドを含む1つ以上のジグリセリドが豊富な成分を含む。より好ましくは、本発明による脂肪組成物は、1つ以上のパーム画分および20重量%~45重量%のジグリセリドを含む1つ以上のジグリセリドが豊富な成分を含む。さらにより好ましくは、本発明による脂肪組成物は、1つ以上のパーム画分および25重量%~45重量%のジグリセリドを含む1つ以上のジグリセリドが豊富な成分を含む。
【0052】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、35重量%~65重量%の1つ以上のパーム画分および15重量%~50重量%のジグリセリドを含む35重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分を含む。より好ましくは、本発明による脂肪組成物は、好ましくは、35重量%~65重量%の1つ以上のパーム画分および20重量%~45重量%のジグリセリドを含む35重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分を含む。さらにより好ましくは、本発明による脂肪組成物は、好ましくは、35重量%~60重量%の1つ以上のパーム画分および20重量%~45重量%のジグリセリドを含む40重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分を含む。最も好ましくは、本発明による脂肪組成物は、好ましくは、35重量%~60重量%の1つ以上のパーム画分および25重量%~45重量%のジグリセリドを含む40重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分を含む。
【0053】
好ましくは、本発明による脂肪組成物は、40~45のヨウ素価を有する少なくとも1つのパーム画分を含む。
【0054】
好ましくは、本発明による脂肪組成物は、30~35のヨウ素価を有する少なくとも1つのパーム画分を含む。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、40~45のヨウ素価を有するパーム画分および30~35のヨウ素価を有するパーム画分を含む。より好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、40~45のヨウ素価を有する10重量%~70重量%のパーム画分および30~35のヨウ素価を有する5重量%~40重量%のパーム画分を含む。
【0056】
好ましい脂肪組成物は、15重量%~50重量%のジグリセリドを含む35重量%~65重量%のジグリセリドが豊富な成分と、40~45のヨウ素価を有する10重量%~70重量%のパーム画分と、30~35のヨウ素価を有する5重量%~40重量%のパーム画分とを含み、より好ましくはそれらからなる。
【0057】
さらにより好ましい脂肪組成物は、20重量%~45重量%のジグリセリドを含む40重量%~65重量%のジグリセリドが豊富な成分と、40~45のヨウ素価を有する30重量%~60重量%のパーム画分と、30~35のヨウ素価を有する10重量%~20重量%のパーム画分とを含み、より好ましくはそれらからなる。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物中の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分は、1つ以上のパーム画分から作製される。より好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物中の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分は、30~35のヨウ素価を有する1つのパーム画分から作製される。
【0059】
本発明はまた、1つ以上のパーム画分と、15重量%~50重量%のジグリセリドを含む1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む、脂肪組成物を作製するための工程に関する。好ましくは、脂肪組成物を作製するための工程は、1つ以上のパーム画分と、20重量%~45重量%のジグリセリドを含む1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。
【0060】
本発明の工程は、好ましくは、混合後、混合物または生産物の成分を漂白および/または脱臭する1つ以上のステップをさらに含む。脱臭は減圧下で実行され、好ましくは220℃以下の温度、より好ましくは210℃以下の温度、さらにより好ましくは205℃以下の温度で実施される。
【0061】
ジグリセリドが豊富な成分は、好ましくは、
a)油または脂肪を提供することと、
b)酵素を使用して油または脂肪を加水分解して、ジグリセリド、モノグリセリドおよび遊離脂肪酸を形成することと、
c)ジグリセリドからモノグリセリドおよび遊離脂肪酸を分離することとを含む方法によって得ることができる。
【0062】
ステップa)で提供される油または脂肪は、好ましくはパーム油、より好ましくはパーム油から得られる画分、さらにより好ましくは40~45のヨウ素価を有するパーム画分である。
【0063】
ステップb)の加水分解は、酵素によって、好ましくはリパーゼによって、より好ましくはCandida rugosa由来のリパーゼによって触媒され得る。酵素は、支持材料上に固定化することができる。加水分解に使用される触媒としての酵素の量は、加水分解される油または脂肪の0.01重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%、より好ましくは0.01重量%~0.5重量%であり得る。加水分解に使用される水の量は、加水分解される油または脂肪の1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%、より好ましくは5重量%~30重量%であり得る。加水分解の反応温度は、20℃~70℃、好ましくは30℃~55℃、より好ましくは35℃~40℃であり得る。加水分解の反応時間は、使用される酵素の種類、使用される酵素の量、および反応温度に依存し得、好ましくは30分~10時間、より好ましくは1時間~8時間、さらにより好ましくは2時間~5時間である。
【0064】
ステップc)の分離は、減圧下および高温で実施することができる。減圧は、4mbar未満、好ましくは1mbar未満、より好ましくは0.5mbar未満であり得る。高温は、130℃~270℃、好ましくは150℃~250℃、より好ましくは180℃~220℃であり得る。分離は、ショートパス蒸留によって実施することが特に好ましい。
【0065】
ステップc)の分離後のジグリセリドが豊富な成分中の遊離脂肪酸含有量は、好ましくは1重量%未満であり、より好ましくは0.6重量%未満である。
【0066】
場合により、ステップc)の後、乾式分別または溶媒分別によってさらなる分別を実施して、ジグリセリドが豊富な成分中のさらにより望ましいジグリセリド組成を得ることができる。
【0067】
好ましい実施形態では、脂肪組成物を作製するための工程は、35重量%~65重量%の1つ以上のパーム画分と、15重量%~50重量%のジグリセリドを含む35重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。より好ましい実施形態では、脂肪組成物を作製するための工程は、35重量%~65重量%の1つ以上のパーム画分と、20重量%~45重量%のジグリセリドを含む35重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。さらにより好ましい実施形態では、脂肪組成物を作製するための工程は、35重量%~60重量%の1つ以上のパーム画分と、20重量%~45重量%のジグリセリドを含む40重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。最も好ましい実施形態では、脂肪組成物を作製するための工程は、35重量%~60重量%の1つ以上のパーム画分と、25重量%~45重量%のジグリセリドを含む40重量%~65重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。
【0068】
好ましくは、脂肪組成物を作製するための工程は、40~45のヨウ素価を有する25重量%~55重量%のパーム画分と、30~35のヨウ素価を有する5重量%~35重量%のパーム画分と、15重量%~50重量%のジグリセリドを含む30重量%~60重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。
【0069】
より好ましくは、脂肪組成物を作製するための工程は、40~45のヨウ素価を有する25重量%~55重量%のパーム画分と、30~35のヨウ素価を有する5重量%~35重量%のパーム画分と、20重量%~45重量%のジグリセリドを含む30重量%~60重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。
【0070】
さらにより好ましくは、脂肪組成物を作製するための工程は、40~45のヨウ素価を有する30重量%~50重量%のパーム画分と、30~35のヨウ素価を有する10重量%~30重量%のパーム画分と、20重量%~45重量%のジグリセリドを含む35重量%~55重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。
【0071】
最も好ましくは、脂肪組成物を作製するための工程は、40~45のヨウ素価を有する30重量%~50重量%のパーム画分と、30~35のヨウ素価を有する10重量%~30重量%のパーム画分と、25重量%~40重量%のジグリセリドを含む35重量%~55重量%の1つ以上のジグリセリドが豊富な成分とを混合することを含む。
【0072】
本発明はまた、菓子フィリングにおけるなどの菓子用途のための本発明による脂肪組成物の使用にも関する。好ましくは、脂肪組成物の使用は、菓子の甘味強度などの甘味を増加させるためのものである。甘味を増加させると、砂糖の量を減らすことができる。したがって、本発明はまた、フィリングなどの砂糖を減らした菓子用途における脂肪組成物の使用を提供する。
【0073】
菓子製品は、好ましくは、本発明の脂肪組成物、砂糖および他の材料を含む。他の材料は、イヌリン、フラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccaride)、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコール、寒天、カラギーナン、ラフィノース、キシロース、ラクツロース、ゼラチン、アラビアガム、ローカストビーンガム、グアーガム、デキストラン、キサンタンまたはグルカンなどの食物繊維;アスパルテーム、アセスルファム-K、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、チクロまたはアリテームなどの低カロリー高甘味度甘味料;粉乳;乳脂肪;ココアパウダー;カカオマス;バニリンなどのフレーバー成分;およびレシチンまたはポリリシノール酸ポリグリセロール(polyglycerol polyricinoleate)などの乳化剤から選択される1つ以上の材料を含んでもよい。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明の脂肪組成物は、菓子フィリングのために使用される(または菓子フィリングにおける使用に適切であり得る)。本発明の脂肪組成物を使用して生産された菓子フィリングは、砂糖の量が減少しているが、甘味強度などの同様の官能特性を有することが見出された。菓子フィリングは、本発明の脂肪組成物、砂糖ならびにイヌリン、フラクトオリゴ糖、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコール、寒天、カラギーナン、ラフィノース、キシロース、ラクツロース、ゼラチン、アラビアガム、ローカストビーンガム、グアーガム、デキストラン、キサンタンまたはグルカンなどの食物繊維;アスパルテーム、アセスルファム-K、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、チクロまたはアリテームなどの低カロリー高甘味度甘味料;粉乳;乳脂肪;ココアパウダー;カカオマス;バニリンなどのフレーバー成分;およびレシチンまたはポリリシノール酸ポリグリセロールなどの乳化剤から選択される1つ以上の他の材料を含んでもよい。
【0075】
本発明はまた、20重量%~50重量%の本発明の脂肪組成物と、15重量%~35重量%の砂糖と、イヌリン、フラクトオリゴ糖、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコール、寒天、カラギーナン、ラフィノース、キシロース、ラクツロース、ゼラチン、アラビアガム、ローカストビーンガム、グアーガム、デキストラン、キサンタンまたはグルカンなどの食物繊維;アスパルテーム、アセスルファム-K、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、チクロまたはアリテームなどの低カロリー高甘味度甘味料;粉乳;乳脂肪;ココアパウダー;カカオマス;バニリンなどのフレーバー成分;およびレシチンまたはポリリシノール酸ポリグリセロールなどの乳化剤から選択される15重量%~65重量%の他の材料とを含む菓子製品にも関する。
【0076】
本発明の脂肪組成物を含む菓子製品は、好ましくは、少なくとも5重量%の、粉乳、植物性粉乳、乳製品粉末、またはそれらの混合物のうちの1つ以上を含む。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明による菓子製品は、20重量%~50重量%の本発明の脂肪組成物と、15重量%~35重量%の砂糖と、5重量%~25重量%の食物繊維とを含む。より好ましくは、本発明による菓子製品は、25重量%~45重量%の本発明の脂肪組成物と、20重量%~30重量%の砂糖と、10重量%~20重量%のイヌリンとを含む。さらにより好ましくは、本発明による菓子製品は、25重量%~45重量%の本発明の脂肪組成物と、20重量%~30重量%の砂糖と、5重量%~15重量%の粉乳と、10重量%~20重量%のイヌリンとを含む。
【0078】
典型的には、本発明の菓子製品は、20重量%未満の添加水、好ましくは10重量%未満の添加水、より好ましくは5重量%未満の添加水、さらにより好ましくは1重量%未満の添加水を含有する。最も好ましくは、添加水は菓子製品に存在しない。
【0079】
本発明の菓子製品を作製する方法であって、20重量%~50重量%の本発明の脂肪組成物を、15重量%~35重量%の砂糖および15重量%~65重量%の他の材料と合わせることを含む、方法が本発明によってさらに提供される。15~35重量%の砂糖は菓子製品にとって比較的低く、レシピは異なる場合があるが、多くの従来の菓子製品は、消費時に所望の甘味強度を提供するために40重量%超の砂糖含有量を有する。
【0080】
また、砂糖の量を減らしている、例えば、15重量%~35重量%のみの砂糖しか菓子製品に使用していないが、菓子製品において甘味強度を維持するための本発明の脂肪組成物の使用であって、その菓子製品は好ましくはフィリングである、使用も本発明によって提供される。
【0081】
本明細書で明らかに先に公表された文献のリストまたは考察は、その文献が最新技術の一部であるか、または共通の一般知識であることを認めるものと必ずしも解釈されるべきではない。
【0082】
本発明の所与の態様、実施形態、特徴、またはパラメータについての優先度および選択肢は、別段文脈が示さない限り、本発明の全ての他の態様、実施形態、特徴、およびパラメータについてのあらゆる全ての優先度および選択肢と組み合わせて開示されているものとみなされるべきである。
【0083】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を決して限定するものではない。実施例において、および本明細書を通して、他に示されない限り、全ての割合、部分、および比率は重量による。
【実施例】
【0084】
実施例1
3kgの硬質パーム中間画分(AOCS法Cd 1-25によって測定して33~35のヨウ素価)を部分的に酵素的に加水分解した。脂肪を溶解した後、25%(w/w)の脱塩水および38℃で触媒としてのCandida Rugosaから生産した0.05%(w/w)のリパーセAY(Amano Enzymeから得た)と混合した。4時間後、熱い脱塩水を加え、温度を80~90℃に増加させてリパーゼを失活させた。水層を除去した。油を減圧下で乾燥させ、濾過した。遊離脂肪酸(FFA)レベルは、ショートパス蒸留(200℃、0.01mbar)によっておよそ0.5%(w/w)に減少した。次いで、残留脂肪をジグリセリドが豊富な成分Aとして取得し、この成分の分析結果を表1に示す。
【0085】
ジグリセリドが豊富な成分Aを、軟質パーム中間画分(AOCS法Cd 1-25によって測定して40~43のヨウ素価)および硬質パーム中間画分(AOCS法Cd 1-25によって測定して33~35のヨウ素価)と、46/40/14の重量比(ジグリセリドが豊富な成分A/軟質パーム中間画分/硬質パーム中間画分)で混合した。この混合物を、最大205℃で漂白および脱臭した後、脂肪Aとして取得した。脂肪Aの分析結果を表1に示す。
【0086】
市販の脂肪製品である完全に精製されたCreamelt(登録商標)600(Bunge Loders Croklaan B.V.、Netherlandsから得た)を参照脂肪として使用した。この脂肪の分析結果を表1に示す。
【表1】
上の表中、
1.ISO 18395:2005(E)に従って決定したポリマー/トリグリセリド/ジグリセリド/モノグリセリド/遊離脂肪酸。
2.S20-Nxは、ISO 8292-1に従ってx℃で測定した安定化した脂肪(20℃で24時間安定化した)でNMRによって決定した固形脂肪含有量を指す。
3.Cx:yは、x個の炭素原子およびy個の二重結合を有する脂肪酸を指し、レベルはGC-FAME(ISO 12966-2:2014およびISO 12966-4:2015)によって決定した。
4.SAFAは、飽和脂肪酸を指す。
5.MUFAは、一価不飽和脂肪酸を指す。
6.PUFAは、多価不飽和脂肪酸を指す。
7.IV FAMEは、AOCS Cd 1c-85に従って計算されたヨウ素価を指す。
8.TRANSは、トランス脂肪酸、つまりトランス配列に二重結合を有する不飽和脂肪酸を指す。
【0087】
実施例2
ジグリセリドが豊富な成分A、脂肪AおよびCreamelt(登録商標)600(参照脂肪)のトリグリセリド組成を分析した。結果を表2に示す。
【表2】
上の表中、
CNxxは、xx個の炭素原子を有するトリグリセリドを指し、レベルは、モノグリセリドおよびジグリセリドを除去するために前処理して、AOCS Ce 5-86(1997)に従ってGCによって決定した。
【0088】
実施例3
ジグリセリドが豊富な成分A、脂肪AおよびCreamelt(登録商標)600(参照脂肪)のジグリセリド組成を、Lee et al.-“Simple Method for Derivatization of Monoglycerides and Diglycerides”(J.Assoc.Off.Anal.Chem.Vol.71,No.4,785-788,1988)に従って分析した。結果を表3に示す。
【表3】
上の表中、
O、P、StおよびLは、それぞれオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびリノール酸を指す。
ジグリセリド組成:PStおよび他のジグリセリドは、Lee et al.(1988)に従ってクロマトグラフィーによって決定し、各ピークは、異なる位置に同じ脂肪酸を有するジグリセリドを含み、例えば、1,2-PStは、1,3-PSt、1,2-StP、および1,3-StPと同じシグナルピークにある。
【0089】
実施例4
参照チョコレートフィリング(参照フィリング)および30%の砂糖を減らしたチョコレートフィリング(比較フィリング)を、Creamelt(登録商標)600(参照脂肪)を用いて生産した。砂糖を減らしたフィリングでは、砂糖の一部(スクロース)をイヌリンに置き換えるが、他の材料はレシピで同じ量に維持する。イヌリンは、食品中の食物繊維として使用される多糖であり、それは本質的にヒトの酵素によって消化されず、スクロースより顕著に低い甘味を有する。したがって、食品中のスクロースの一部をイヌリンに置き換えると、甘味に関連する官能特性が低下し、ヒトが摂取するカロリー価が低下すると予想される。表4による材料をボールミル(W-1-S、Wiener B.V.、Netherlands)を使用して55℃のサーモスタットで制御した温度で混合し、240rpmで45分間撹拌した。混合後、フィリングを取り出し、23℃に冷却した。
【表4】
【0090】
実施例5
30%の砂糖を減らしたチョコレートフィリング(フィリングA)を、実施例1で調製した脂肪Aを用いて生産した。表5による材料をボールミル(W-1-S、Wiener B.V.、Netherlands)を使用して55℃のサーモスタットで制御した温度で混合し、240rpmで45分間撹拌した。混合後、両方のフィリングを取り出し、29.5℃に冷却した。
【表5】
【0091】
実施例6
訓練を受けた官能パネル(n=13)が試験サンプルを評価し、甘味強度に関する官能特性をスコアリングした。訓練を受けた官能パネルは、参照フィリングと比較して比較フィリングのより低い甘味強度を観察した。驚くべきことに、フィリングAは砂糖の含有量が30%減少したという事実にもかかわらず、参照フィリングとフィリングAとの間に甘味強度に関する有意な差は観察されなかった。
【0092】
フィリングAの食感および他の官能特性は、30%少ない砂糖が使用されたという事実にもかかわらず、依然として許容可能であり、参照に匹敵することも観察された。
【国際調査報告】