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特表2022-545330トリプタンを含む口内分散性粉末組成物
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  • 特表-トリプタンを含む口内分散性粉末組成物 図1
  • 特表-トリプタンを含む口内分散性粉末組成物 図2
  • 特表-トリプタンを含む口内分散性粉末組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】トリプタンを含む口内分散性粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/403 20060101AFI20221020BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/422 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K31/403
A61P25/06
A61K31/4045
A61K31/422
A61K31/404
A61K31/4196
A61K31/454
A61K31/496
A61K31/506
A61K31/433
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/46
A61K47/10
A61K9/14
A61K47/14
A61K47/20
A61K9/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503429
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 IB2020056638
(87)【国際公開番号】W WO2021014275
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】19382611.2
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522021572
【氏名又は名称】バイオファーマ・シナジーズ,エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】BIOPHARMA SYNERGIES, S. L.
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】フランセスク・アヘル・プイグ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA32
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD26C
4C076DD27C
4C076DD28C
4C076DD29
4C076DD29C
4C076DD37T
4C076DD38
4C076DD40T
4C076DD41C
4C076DD43
4C076DD43Z
4C076DD46C
4C076DD47C
4C076DD55C
4C076DD67
4C076DD67T
4C076EE23C
4C076EE31
4C076EE38
4C076EE49C
4C076EE58T
4C076FF04
4C076FF09
4C076FF51
4C076FF52
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC12
4C086BC13
4C086BC21
4C086BC50
4C086BC60
4C086BC69
4C086BC85
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA09
4C086ZA08
(57)【要約】
本発明は、トリプタンと、クエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースの相乗的3成分混合物とを含む口内分散性粉末組成物に関する。本発明は、上記粉末組成物を含むスティック状包装物、及び片頭痛の治療におけるその使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口内分散性粉末組成物であって、
a)薬理学的有効量のトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩;
b)クエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースからなる3成分混合物;並びに
c)1つ以上の更なる賦形剤
を含み、比a):b)が1:2~1:90であることを特徴とする、前記口内分散性粉末組成物。
【請求項2】
前記トリプタンは、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、ドニトリプタン、アビトリプタン、LY‐334370、L‐703,664及びGR46611からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項3】
前記トリプタン:前記3成分混合物の比は、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6.5、1:10、1:15、1:16、1:20、1:25、1:30、1:32、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:79、1:80、1:85、及び1:90からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項4】
前記クエン酸ナトリウムの含有量は、前記3成分混合物の総重量に対して50重量%~85重量%、好ましくは55重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~70重量%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項5】
前記クエン酸の含有量は、前記3成分混合物の総重量に対して10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~35重量%、より好ましくは20重量%~30重量%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項6】
前記スクラロースの含有量は、前記3成分混合物の総重量に対して5重量%~40重量%、好ましくは10重量%~30重量%、より好ましくは15重量%~25重量%であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項7】
前記1つ以上の更なる賦形剤は、希釈剤、潤滑剤、滑剤、香料、甘味料、酸味料、アルカリ化剤、緩衝剤、抗酸化剤及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項8】
前記希釈剤は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、イソマルト、エリスリトール、粉末セルロース、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項9】
前記潤滑剤は、タルク、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリル、ポロキサマー、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項10】
前記滑剤は、コロイダル二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、疎水性コロイダルシリカ、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項11】
前記香料は、オレンジ、バナナ、ストロベリー、チェリー、ワイルドチェリー、レモン、カルダモン、アニス、ペパーミント、メントール、バニリン、及びエチルバニリン、並びにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の口内分散性粉末を含む、スティック状包装物。
【請求項13】
前記スティック状包装物は、1g~10g、好ましくは1.5g~5g、より好ましくは1.9g~3g、更に好ましくは約2.2gの量の前記口内分散性粉末組成物を含むことを特徴とする、請求項12に記載のスティック状包装物。
【請求項14】
片頭痛の治療に使用するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の口内分散性粉末組成物。
【請求項15】
前兆を伴う又は伴わない片頭痛発作の頭痛段階の急性期治療に、より好ましくは成人において、使用するための、請求項14に記載の口内分散性粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリプタンを有効成分として含み、口内分散性粉末としてスティック状包装物(stick packs)の形態に分包(dose)される医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トリプタンは、1990年代に初めて紹介された、片頭痛及び群発頭痛の治療において予防薬として使用されるトリプタン系薬物のファミリーである。
【0003】
トリプタンは、片頭痛の薬物療法において重要な役割を果たす。このクラスの第一の構成要素であるスマトリプタン、並びにゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン及びナラトリプタンのような第2世代の作用剤は、セロトニン5‐ヒドロキシトリプタミン5‐HT1B及び5‐HT1D受容体の選択的アゴニストである。以下の3つの主要な作用:血管収縮の強化による拡張した頭蓋内動脈の正常化、末梢ニューロンの抑制、及び三叉神経頸髄複合体の二次ニューロンを介した伝達の阻害が、片頭痛の緩和に関与する。
【0004】
片頭痛患者及び医師は、片頭痛の急性期治療において、薬剤の迅速な効果が極めて重要な属性であると考えている。トリプタンの迅速な投与は、片頭痛サイクルの進行を防止することによって、効力及び治療の満足度を改善する。
【0005】
急性片頭痛の治療のために特別に開発された有効成分である経口トリプタンは、頭痛の強さが中等度~重度であるときよりも、軽度~中等度であるときに服用する方がはるかに効果的である。薬剤の投与が遅れると、治療に対する応答が不完全になる可能性が高くなり、頭痛の不完全な緩和は、中等度~重度の頭痛の早期再発と強い相関を有する。
【0006】
トリプタンは、軽度~重度の片頭痛の患者に対する適切な一次治療であり、非特異的薬剤が効果的でない場合の救済療法に使用される。
【0007】
経口投与経路は、片頭痛の患者にとって好ましい投与経路である。経口用として存在する製剤のうち、従来の錠剤は、片頭痛の急性発作中の一般的症状である嘔吐及び悪心に患者が苦しめられている場合には効果が低く、また忍容性が低い。
【0008】
口内分散性製剤は、従来の錠剤を服用したくない患者、片頭痛の急性発作中の悪心及び嘔吐がある患者、並びに嚥下障害がある患者にとって、代替的選択肢である。例えば非特許文献1では、ゾルミトリプタン口内分散性錠剤は片頭痛患者の70%がゾルミトリプタン口内分散性錠剤を従来の錠剤よりもいかに好ましいかを開示する。非特許文献1では、片頭痛患者は、ゾルミトリプタンの口内崩壊錠剤を、スマトリプタンの従来の経口錠剤よりも好む。非特許文献2では、片頭痛患者が、薬剤の投与がより容易であること(85.5%)、服用により便利な製剤であること(86.1%)、及びよりアクティブなライフスタイルの維持を可能にすること(65.5%)を理由として、スマトリプタンの従来の錠剤よりもゾルミトリプタン口内分散性錠剤を好むことを開示している。
【0009】
既存のトリプタン7種のうち、トリプタン2種(リザトリプタン及びゾルミトリプタン)のみが、市販の口内分散性製剤となっている。他の5種トリプタン(スマトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、及びナラトリプタン)については、スペインの国内市場では、経口投与経路のためには従来の錠剤しか利用できない。
【0010】
トリプタンの口内分散性製剤に関連する共通の問題は、特許文献1に開示されているように、これらが呈する不快な苦味である。その結果、高価で有効成分の放出を遅延させない複雑なマスキング技術を用いることなく、マスキングを行い、患者が受け入れやすい口内分散性製剤を得ることは、極めて困難となる。この困難は、例えば非特許文献3によって裏付けられており、この文献は、スマトリプタンを口内分散性錠剤にそのまま組み込んだ場合、スマトリプタンが呈する苦味をマスキングするという目標は全く無駄になるであろうことを開示している。また、非特許文献4では、苦味が強い水溶性有効成分に甘味料を組み込む戦略が、該有効成分が呈する味の悪さをマスキングするために役立たないことが開示されている。
【0011】
従来技術では、トリプタンの苦味をマスキングするための様々なアプローチが開示されている。
【0012】
例えば特許文献2では、スマトリプタンを含む有効成分をシクロデキストリンと混合することによって、上記有効成分の味をマスキングすることが開示されている。
【0013】
特許文献3では、スマトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩の顆粒、並びに上記スマトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩の味をマスキングするために十分な量で存在する1つ以上の希釈剤及び/又は結合剤を含む、顆粒内部分と;上記顆粒内部分周りの、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む顆粒外部分と、を含む、コーティングされていない、味がマスキングされたスマトリプタン錠剤が開示されており、更に、ワックス成分の溶液若しくは懸濁液を錠剤に噴霧すること、及び/又はワックス粉末を錠剤に振りかけることによる、スマトリプタン錠剤の研磨プロセスも開示されている。
【0014】
特許文献4では、スマトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩、並びに任意に崩壊剤及び/又は界面活性剤を含有する顆粒内部分と、希釈剤、アルカリ化剤、崩壊剤及び潤滑剤を含む顆粒外部分とを含む、スマトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩のコーティングされていない錠剤が開示されている。しかし、患者による錠剤の受け入れやすさについては言及されていない。
【0015】
特許文献5では、不快な味を有する有効成分と、ポリビニルピロリドン及び/又はコポリビドンとを含む組成物が記載されている。上記組成物は、固体、液体、又は半固体であってよい。上記有効成分の不快な味は、有効成分1重量部あたり5~200重量部のポリビニルピロリドン及び/又はコポリビドンを添加することによって緩和されると報告されている。
【0016】
特許文献6では、トリプタン化合物、樹脂、潤滑剤、崩壊剤及び圧縮性材料(compressible material)を含む、迅速に崩壊する経口トリプタン組成物が開示され、トリプタンは樹脂と混合されて、味がマスキングされたトリプタン組成物が形成され、これが更に潤滑剤、崩壊剤、及び圧縮性材料と混合されて、迅速に崩壊する経口トリプタン組成物が形成される。
【0017】
特許文献7では、重質炭酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムと、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、ゾルミトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩の二酸化ケイ素非含有経口崩壊性錠剤製剤が開示されており、これは口当たりが良好である。
【0018】
特許文献8では、薬学的有効成分と、アルミノケイ酸マグネシウム及びケイ酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、薬学的に許容可能なキャリアとの混合物の湿潤顆粒化によって調製される、薬学的有効成分(例えばスマトリプタン)の味がマスキングされた経口投与用の医薬組成物が開示されている。この経口医薬組成物は、コストのかかる特別な製造システム又は添加剤を用いずに調製され得、有効成分に対する味のマスキング効果を有し、そして治療効果を得るために適当な体内溶解速度を示す。
【0019】
特許文献9では、a)少なくとも1つのトリプタン化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくは水和物、及びb)キシリトールを含む水性液体医薬組成物が開示されている。
【0020】
特許文献10では、スマトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なキャリアとを含む改良された経口液体組成物が開示されている。典型的には、上記組成物は、甘味料及び香料、又は苦味低減剤及び香料を含む。更に、甘味を提供するため及び/又は薬剤の苦味を低減するために、グリセリン及び/又はプロピレングリコールを製剤に含めることが開示されている。
【0021】
錠剤のコーティングは、報告によればスマトリプタンの味のマスキングを提供するためのスマトリプタン錠剤のコーティングのためのプロセスを開示する特許文献11によって教示されるように、苦味をマスキングするための一般的な解決策である。このプロセスは、糖、デンプン、又は糖とデンプンとの混合物であるコーティング溶液又は懸濁液を錠剤のコアに噴霧して、コーティングされた錠剤を得るステップを含む。特許文献12も、同様のアプローチに従っており、この文献は、有効成分のコアと、圧力の印加によって上記コア上に形成された1つ以上の外側非活性味マスキング層とを含む、経口投与用の味マスキング医薬組成物を開示している。特許文献13では、ナラトリプタン、無水ラクトース、第1の微結晶性セルロース、第2の微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを含む経口錠剤の調製のためのプロセスが開示されており、上記プロセスは、該文献中で定義されているステップを用いたコア錠剤の調製と、上記コア錠剤のコーティングとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第2010/0723353号
【特許文献2】国際公開第02/41920号
【特許文献3】国際公開第2004/009085号
【特許文献4】国際公開第2006/035313号
【特許文献5】欧州公開特許第1025858号
【特許文献6】国際公開第2007/130773号
【特許文献7】欧州公開特許第2387993号
【特許文献8】国際公開第2013/058496号
【特許文献9】国際公開第2010/072353号
【特許文献10】国際公開第2007/070504号
【特許文献11】国際公開第01/37816号
【特許文献12】国際公開第2005/70417号
【特許文献13】独国公開特許第2010/06489号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Dowson et al., Zolmitriptan orally disintegrating tablet is effective in the acute treatment of migraine, Cephalalgia, 2002, 22 (2), 101-6
【非特許文献2】Int. J. Clin. Pract., 2003, 57(7), 573-6
【非特許文献3】Sheshala et al., Formulation and Optimization of Orally Disintegrating Tablets of Sumatriptan Succinate, Chem. Pharm. Bull., 2011, 59(8), 920-928
【非特許文献4】Kaushik et al., Recent Patents and Patented Technology Platforms for Pharmaceutical Taste Masking, Recent Pat. Drug Deliv. Form., 2014, 8 (1), 37-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
コーティングは、不快な味をマスキングできるものの、コーティングの厚さ及び組成が適切に制御されない場合、コーティングは錠剤の崩壊及び溶解特性に影響を及ぼす可能性がある。更に、コーティング作業は、高度な制御を要するコストがかかるプロセスである。
【0025】
当該技術分野で利用可能な様々な提案にもかかわらず、味がマスキングされ、患者による受け入れやすさの程度が高い、トリプタンを有効成分として含む新規の経口医薬組成物に対する需要は、依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の目的は、口内分散性粉末組成物である。
【0027】
上記口内分散性粉末組成物を含むスティック状包装物もまた、本発明の一部である。
【0028】
片頭痛の治療に使用するための上記口内分散性粉末組成物もまた、本発明の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、3成分系の挙動を説明するための等式を得るために、クエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースの10個の特定の組み合わせを試験するための混合図を示す。図中、Aはクエン酸ナトリウムを表し、Bはクエン酸を表し、Cはスクラロースを表す。
図2図2は、薬学的有効成分としてのスマトリプタンと、クエン酸ナトリウム(A)、クエン酸(B)、及びスクラロース(C)の相乗的3成分混合物とを含有する口内分散性粉末の、受け入れやすさの程度に対応する等値線を示す。
図3図3は、薬学的有効成分としてのゾルミトリプタンと、クエン酸ナトリウム(A)、クエン酸(B)、及びスクラロース(C)の相乗的3成分混合物とを含有する口内分散性粉末の、受け入れやすさの程度に対応する等値線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的は、口内分散性粉末組成物でであって、
a)薬理学的有効量のトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩、
b)クエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースからなる3成分混合物、並びに
c)1つ以上の更なる賦形剤
を含み、比a):b)が1:2~1:90であることを特徴とする、前記口内分散性粉末組成物である。
【0031】
本発明者らは、直接的な混合によって、最適な流れ特性を有し、トリプタンの苦味がマスキングされ、また患者による製剤の優れた受け入れやすさを示す口内分散性粉末を開発した。苦味のマスキングは驚くべきことに、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びスクラロースの相乗効果によって生み出された。この口内分散性製剤は口腔内で迅速に(15秒未満で)溶解し、口内に製品残留物を残さず、投与後に水を飲む必要がない。更に、本発明の口内分散性粉末は、室温での長期保管後であっても、驚くほど最適な流れ特性を示す。
【0032】
本発明の口内分散性粉末により、片頭痛患者の治療コンプライアンスを改善でき、また製造コストを削減できる。更に上記製剤は糖尿病及び乳糖不耐症に好適である。
【0033】
本発明の文脈では、口内分散性粉末は、薬学的有効成分及び賦形剤が粉末形状となっており、口腔内で迅速に分散される及び/又は溶解する、医薬組成物である。「迅速に(rapidly)」は、30秒未満、好ましくは20秒未満、より好ましくは15秒未満を意味する。
【0034】
本発明の文脈では、用語「トリプタン(triptan)」は、トリプタン及びその薬学的に許容可能な塩の両方を指す。
【0035】
本説明及び特許請求の範囲では、単数形「ある(a、an)」及び「前記(the)」は、文脈的にそうでないことが明らかでない限り、複数の指示対象を含む。前置詞「…の間(between)」によって、又は用語「・・・から・・・まで(from・・・to・・・)」によって定義される範囲は、該範囲の両端も含む。用語「約(about)」は、±10%、好ましくは±5%の偏差を指す。パーセンテージは、そうでないことが明記されていない限り、重量%で表される。
【0036】
トリプタン
本発明の口内分散性粉末の有効成分は、トリプタン又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な塩(pharmaceutically acceptable salt)」は、例えば酢酸塩、アジピン酸塩、アントラニル酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、カンファースルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、フロ酸塩、ガラクツロン酸塩、ゲンチジン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、イセチオン酸、イソニコチン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ムチン酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サッカリン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファニル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p‐トルエンスルホン酸塩といった、薬理学的に許容可能なアニオンから調製される塩、及びこれらの水和物を指す。好ましくは、薬学的に許容可能な塩は、安息香酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、及びこれらの水和物から選択される。
【0038】
トリプタンは、セロトニン5‐ヒドロキシトリプタミン5‐HT1B及び5‐HT1D受容体の選択的アゴニストであり、これらは片頭痛の治療に使用される。
【0039】
トリプタンは、好ましくはスマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、ドニトリプタン、アビトリプタン、LY‐334370、L‐703,664、及びGR46611からなる群から選択され、より好ましくはスマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン及びナラトリプタンから、選択される。
【0040】
各トリプタンの薬理学的有効量は、当業者には公知である。市販の薬用製品では、推奨されるトリプタン用量は例えば:2.5mgのナラトリプタン、2.5mgのフロバトリプタン、5mgのゾルミトリプタン、10mgのリザトリプタン、12.5mgのアルモトリプタン、40mgのエレトリプタン、及び100mgのスマトリプタンである。
【0041】
トリプタン及びその薬学的に許容可能な塩は、市販の薬学的有効成分、例えばドニトリプタン(Sigma Aldrich)、アビトリプタン(Sigma Aldrich)、LY‐334370(Sigma Aldrich)、L‐703,664(Biogen)、若しくはGR46611(Sigma Aldrich)であるか、又は従来技術、例えば米国特許第4816470号(スマトリプタン)、米国特許第5466699号(ゾルミトリプタン)、国際公開第92/06973号(エレトリプタン)、欧州公開特許第0497512号、(リザトリプタン)、国際公開第94/02460号(アルモトリプタン)、国際公開第93/00086号(フロバトリプタン)、若しくは欧州公開特許第0303507号(ナラトリプタン)で既に開示されているプロセスに従って調製できる。
【0042】
本発明の口内分散性粉末中のトリプタンの含有量は通常、口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%である。製剤中にトリプタンの薬学的に許容可能な塩を使用する場合は、それに応じて上記量が補正される。
【0043】
3成分混合物
本発明の口内分散性粉末は、クエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースからなる相乗的3成分混合物を含む。好ましくは、本発明の口内分散性粉末は、クエン酸ナトリウム無水物、クエン酸無水物及びスクラロースの3成分混合物を含む。
【0044】
上記相乗的3成分混合物は、本発明の口内分散性粉末中に、1:2~1:90、好ましくは1:3~1:85より好ましくは1:5~1:80のトリプタン:3成分混合物の比で処方される。ある好ましい実施形態では、上記比は:1:2、1:3、1:4、1:5、1:6.5、1:10、1:15、1:16、1:20、1:25、1:30、1:32、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:79、1:80、1:85、及び1:90からなる群から選択され、より好ましい実施形態では、上記比は、約1:6.45、約1:16.4、約1:32、約1:40、及び約1:79からなる群から選択される。
【0045】
クエン酸ナトリウムは、二水和物又は無水物のいずれかとして医薬製剤中に使用される。これは主にpHを調整するための緩衝剤として使用される。
【0046】
クエン酸は、一水和物又は無水物のいずれかとして医薬製剤中に使用される。これは主にpHを調整するための緩衝剤として使用される。
【0047】
本発明の組成物中では、クエン酸ナトリウムは好ましくは無水物であり、またクエン酸は好ましくは無水物である。
【0048】
スクラロースは、医薬品用途において甘味料として使用される。スクラロースはショ糖のおよそ300~1000倍の甘味を有し、後味を有さない。スクラロースには栄養価がなく、非う蝕原性であり、う歯を発生させず、また血糖反応を引き起こさない。
【0049】
3成分混合物中では、クエン酸ナトリウムの含有量は、3成分組成物の総重量に対して50重量%~85重量%、好ましくは55重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~70重量%である。
【0050】
3成分混合物中では、クエン酸の含有量は、3成分混合物の総重量に対して10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~35重量%、より好ましくは20重量%~30重量%である。
【0051】
上記3成分混合物中では、スクラロースの含有量は、3成分混合物の総重量に対して5重量%~40重量%、好ましくは10重量%~30重量%、より好ましくは15重量%~25重量%である。
【0052】
3成分混合物中のクエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースの量は、100%となるように組み合わされる。水和物形態のクエン酸ナトリウム及び/又はクエン酸を使用する場合は、上記量はそれに応じて補正される。
【0053】
3成分組成物の好ましい実施形態は:55重量%~75重量%のクエン酸ナトリウム、15重量%~35重量%のクエン酸、及び10重量%~30重量%のスクラロース;より好ましくは58重量%~70重量%のクエン酸ナトリウム、18重量%~30重量%のクエン酸、及び13重量%~25重量%のスクラロース;より好ましくは60重量%~65重量%のクエン酸ナトリウム、20重量%~25重量%のクエン酸、及び15重量%~20重量%のスクラロースを含み、3成分組成物中のクエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースの量は、100%となるように組み合わされる。
【0054】
口内分散性粉末組成物中の3成分混合物の含有量は、口内分散性粉末組成物の総重量に対して9重量%~50重量%、好ましくは9重量%~45重量%、より好ましくは9重量%~40重量%、より好ましくは9重量%~35重量%、更に好ましくは9重量%~30重量%である。
【0055】
驚くべきことに、上記3成分混合物は、1:2~1:90、好ましくは1:3~1:85、より好ましくは1:5~1:80である、トリプタンと3成分混合物との間の幅広い比にわたって、トリプタンの苦味をマスキングできる。実施例で示されているように、スマトリプタンに関して約1:6.45、エレトリプタンに関して約1:16.37、アルモトリプタンに関して約1:31.68、リザトリプタンに関して約1:39.6、ゾルミトリプタンに関して約1:79.2(これはナラトリプタン及びフロバトリプタンに関しても好適である)というトリプタン:3成分混合物の比が例示された。
【0056】
他の賦形剤
本発明の口内分散性粉末は一般に、更なる賦形剤、例えば希釈剤、潤滑剤、滑剤、香料、甘味料、酸味料、アルカリ化剤、緩衝剤、抗酸化剤及びこれらの混合物を含んでよい。
【0057】
本発明の口内分散性粉末の調製に使用するために好適な賦形剤は、例えばHandbook of pharmaceutical excipients, R.C. Rowe, P.J. Sheskey and M.E. Quinn, editors, Pharmaceutical Press, sixth edition, 2009に記載されている。
【0058】
本発明の口内分散性粉末中で通常使用される更なる賦形剤は、希釈剤、潤滑剤、滑剤、香料、及びこれらの混合物を含む群から選択される。
【0059】
ある好ましい実施形態では、口内分散性粉末は、希釈剤、潤滑剤、滑剤、香料及びこれらの混合物を含む群から選択される1つ以上の更なる賦形剤を含む。
【0060】
好適な希釈剤は、例えばマンニトール、ソルビトール、キシリトール、イソマルト、エリスリトール、粉末セルロース、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム及びこれらの混合物を含んでよく、希釈剤は、好ましくはマンニトールである。好ましい一実施形態では、上記組成物は乳糖を含まない。
【0061】
マンニトールは医薬製剤に使用される。マンニトールは主に希釈剤として使用され、吸湿性がないため湿気に敏感な有効成分と共に使用できることから、特に価値がある。マンニトールは一般に、負の溶解熱、甘味、及び口内に冷感を与える「口当たり(mouth feel)」を理由として、チュアブル錠剤製剤の製造時に賦形剤として使用される。またマンニトールは、迅速な分散性を有する経口剤形中の希釈剤としても使用される。マンニトールは経口投与された場合、消化管からは略吸収されず、糖尿病患者に好適である。マンニトールはメイラード反応を起こさない。マンニトールはカロリーが低く、また非う蝕原性である。
【0062】
一般に希釈剤は、口内分散性粉末組成物の総重量に対して45重量%~95重量%、好ましくは50重量%~90重量%、より好ましくは55重量%~85重量%、更に好ましくは60重量%~85重量%の量で存在する。
【0063】
口内分散性粉末は更に潤滑剤を含んでよく、この潤滑剤は通常、タルク、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリル、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは上記潤滑剤はフマル酸ステアリルナトリウムである。
【0064】
フマル酸ステアリルナトリウムは医薬組成物中で潤滑剤として使用される。フマル酸ステアリルナトリウムは純粋な形態で供給され、化学的な非適合性を原因として、純度が比較的低いステアリン酸塩タイプの潤滑剤が好適でない場合に価値がある。フマル酸ステアリルナトリウムはステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸よりも疎水性が低く、ステアリン酸マグネシウムよりも溶解に対する遅延効果が低い。
【0065】
一般に、潤滑剤は、口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.2重量%~2.5重量%、より好ましくは0.4重量%~1重量%、より好ましくは0.45重量%~0.75重量%、更に好ましくは約0.5重量%の量で存在する。
【0066】
口内分散性粉末は更に滑剤を含んでよく、この滑剤は通常、コロイダル二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、疎水性コロイダルシリカ、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい滑剤はコロイダル二酸化ケイ素である。
【0067】
コロイダル二酸化ケイ素は医薬製剤に使用される。コロイダル二酸化ケイ素は、その小さな粒径及び大きな比表面積により、乾燥粉末の流れ特性を改善するために利用される望ましい流れ特性を有する。
【0068】
一般に滑剤は、口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.2重量%~2.5重量%、より好ましくは0.4重量%~1重量%、より好ましくは0.45重量%~0.75重量%、更に好ましくは約0.5重量%の量で存在する。
【0069】
口内分散性粉末は更に香料を含んでよく、上記香料は通常、オレンジ、バナナ、ストロベリー、チェリー、ワイルドチェリー、レモン及びこれらの混合物等のフルーツフレーバー、並びにカルダモン、アニス、ペパーミント、メントール、バニリン、及びエチルバニリン等の他のフレーバー、並びにこれらの混合物から選択される。上記香料は、好ましくはペパーミントフレーバーである。
【0070】
一般に上記香料の含有量は、口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.05重量%~5.0重量%である。
【0071】
いくつかの実施形態では、口内分散性粉末は甘味料を含んでよく、この甘味料は通常、サッカリンナトリウム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは上記組成物はショ糖を含まず、従って糖尿病に好適である。
【0072】
一般に甘味料は通常、口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.1重量%~5重量%の量で存在する。
【0073】
いくつかの実施形態では、口内分散性粉末は酸味料を含んでよく、この酸味料は通常、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0074】
一般に、上記酸味料の含有量は、口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.1重量%~2.0重量%である。
【0075】
いくつかの実施形態では、口内分散性粉末はアルカリ化剤を含んでよく、このアルカリ化剤は通常、重炭酸カリウム、クエン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。一般に、上記アルカリ化剤は通常、口内分散性粉末組成物の総重量に対して1重量%~40重量%の量で存在する。
【0076】
いくつかの実施形態では、口内分散性粉末は緩衝剤を含んでよく、この緩衝剤は通常、二塩基性リン酸ナトリウム、グリシン、メチオニン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
一般に、緩衝剤の含有量は、口内分散性粉末組成物の総重量に対して1重量%~40重量%である。
【0078】
いくつかの実施形態では、上記口内分散性粉末は抗酸化剤を含んでよく、この抗酸化剤は通常、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
一般に、上記抗酸化剤は通常、口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.1重量%~5重量%の量で存在する。
【0080】
製造プロセス
口内分散性粉末を調製するためのプロセスは、成分の直接混合であり、これは工業生産にとって極めて魅力的である。上記プロセスは一般に、0.5mm~1mmメッシュのふるいに上記成分を通すステップ;及び例えば自由流動性の粉末に適したV型ミキサーの中で、混合を行うステップを含む。混合時間は、均質な混合物を得るための通常の慣行に従って調整され、上記混合物はスティック状包装物として分包される。
【0081】
薬学技術における当業者に公知の従来の混合手順は、当該技術分野の参考書籍、例えばAulton’s Pharmaceutics. The design and manufacture of medicines, M.E. Aulton and K.M.G. Taylor, editors, Churchill Livingstone Elsevier, Fourth Edition, 2013、又はRemington: The Science and Practice of Pharmacy, D. Limmer editor, Lippincott Williams & Wilkins, 2000に開示されている。
【0082】
スティック状包装物
本発明の口内分散性粉末を含むスティック状包装物も、本発明の一部を形成する。
【0083】
スティック状包装物は、特定のバリア及び密封特性を付与するために通常は積層構造を有する、包装の形態である。スティック状包装物は、単回用量の投与に使用される。スティック状包装物は、医薬組成物や例えば砂糖等の食品を内包するという一般的な用途を有する。スティック状包装物の製造に通常採用される材料は、アルミニウム、紙、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、プロピレン、及びこれらの組み合わせである。
【0084】
スティック状包装物は、薬理学的有効量の、トリプタンを含む口内分散性粉末組成物を、1用量含む。スティック状包装物は好ましくは、2.5mgのナラトリプタン、2.5mgのフロバトリプタン、5mgのゾルミトリプタン、10mgのリザトリプタン、12.5mgのアルモトリプタン、40mgのエレトリプタン、若しくは100mgのスマトリプタン、又はこれらの薬学的に許容可能な塩を含む量の、口内分散性粉末組成物を含む。
【0085】
スティック状包装物は通常、1g~10g、好ましくは1.5g~5g、より好ましくは1.9g~3g、更に好ましくは約2.2gの量の口内分散性粉末組成物を含む。好ましくはスティック状包装物は、2.5mgのナラトリプタン、2.5mgのフロバトリプタン、5mgのゾルミトリプタン、10mgのリザトリプタン、12.5mgのアルモトリプタン、40mgのエレトリプタン、若しくは100mgのスマトリプタン、又はその薬学的に許容可能な塩を含む。成分の直接混合によって得られるこの新規の口内分散性粉末製剤は、トリプタンの苦味の優れたマスキングを提供し、この製剤は患者にとって極めて受け入れやすくなる。
【0086】
トリプタン等の抗片頭痛有効成分の直接混合によって得られる口内分散性粉末、及び直接混合によって得られる口内分散性粉末組成物を含むスティック状包装物は、市販されていない。
【0087】
成分の直接混合により、有効成分を口腔内で直接露出させ、口腔内での有効成分の溶解速度及び吸収率を向上させ、薬剤の迅速な効果を促進できる。薬剤の迅速な効果は、極めて重要な属性であり、患者及び医師の両方から評価される。
【0088】
本発明では、スティック状包装物による包装形態は、実用的であり、堅固であり、輸送及び個別使用が容易であることを理由として選択されており、従ってこれは現代的でアクティブなライフスタイルによく適合する。患者はスティック状包装物を常に携帯できるため、片頭痛発作が発生した場合、片頭痛発作の発症直後に、水を飲む必要なしに薬剤を服用でき、トリプタンの効力を向上させて、中等度~重度の頭痛の早期再発を低減できる。直接混合プロセスは医薬産業において広く使用されている製造プロセスとして使用されているため、本発明の口内分散性粉末組成物は産業上の用途を有し、更には実施例に示されているように、上記製剤は、現行版の欧州薬局方による最適な流動特性を示すため、上記製剤は産業レベルに規模を拡張でき、従って機器を用いてスティック状包装物包装フォーマットへと分包できる。
【0089】
実施例に示されているように、本発明の口内分散性粉末組成物は、幅広い組成にわたる全てのトリプタンに関して、患者による高いレベルの受け入れやすさを示す。
【0090】
使用
片頭痛の治療に使用するための本発明の口内分散性粉末組成物もまた、本発明の一部を形成する。ある好ましい実施形態では、本発明の口内分散性粉末組成物は、前兆を伴う又は伴わない片頭痛発作の頭痛段階の急性期治療に、より好ましくは成人において、使用するためのものである。
【0091】
本発明は以下の実施形態を含む:
【0092】
1.口内分散性粉末組成物であって、
a)薬理学的有効量のトリプタン又はその薬学的に許容可能な塩;
b)クエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースからなる3成分混合物;並びに
c)1つ以上の更なる賦形剤
を含み、比a):b)が1:2~1:90であることを特徴とする、前記口内分散性粉末組成物。
【0093】
2.前記トリプタンは、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、ドニトリプタン、アビトリプタン、LY‐334370、L‐703,664及びGR46611からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態1に記載の口内分散性粉末組成物。
【0094】
3.前記トリプタンの含有量は、上記口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.05重量%~10重量%であることを特徴とする、実施形態1又は2に記載の口内分散性粉末組成物。
【0095】
4.前記トリプタン:前記3成分混合物の比は、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6.5、1:10、1:15、1:16、1:20、1:25、1:30、1:32、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:79、1:80、1:85、及び1:90からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の口内分散性粉末組成物。
【0096】
5.前記クエン酸ナトリウムは、無水物であり、またクエン酸は無水物あることを特徴とする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の口内分散性粉末組成物。
【0097】
6.前記クエン酸ナトリウムの含有量は、上記3成分組成物の総重量に対して50重量%~85重量%、好ましくは55重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~70重量%であることを特徴とする、実施形態1~5のいずれか1つに記載の口内分散性粉末組成物。
【0098】
7.前記クエン酸の含有量は、上記3成分組成物の総重量に対して10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~35重量%、より好ましくは20重量%~30重量%であることを特徴とする、実施形態1~6のいずれか1つに記載の口内分散性粉末組成物。
【0099】
8.前記スクラロースの含有量は、上記3成分組成物の総重量に対して5重量%~40重量%、好ましくは10重量%~30重量%、より好ましくは15重量%~25重量%であることを特徴とする、実施形態1~7のいずれか1つに記載の口内分散性粉末組成物。
【0100】
9.上記3成分組成物は、55重量%~75重量%のクエン酸ナトリウム、15重量%~35重量%のクエン酸、及び10重量%~30重量%のスクラロース;好ましくは58重量%~70重量%のクエン酸ナトリウム、18重量%~30重量%のクエン酸、及び13重量%~25重量%のスクラロース;より好ましくは60重量%~65重量%のクエン酸ナトリウム、20重量%~25重量%のクエン酸、及び15重量%~20重量%のスクラロースを含み、上記3成分組成物中のクエン酸ナトリウム、クエン酸及びスクラロースの量は、100%となるように組み合わされることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の口内分散性粉末組成物。
【0101】
10.上記3成分混合物の含有量は、上記口内分散性粉末組成物の総重量に対して9%~50重量%、好ましくは9%~45重量%、より好ましくは9%~40重量%、より好ましくは9%~35重量%、更に好ましくは9%~30重量%であることを特徴とする、実施形態1~9のいずれか1つに記載の口内分散性粉末組成物。
【0102】
11.前記1つ以上の更なる賦形剤は、希釈剤、潤滑剤、滑剤、香料、甘味料、酸味料、アルカリ化剤、緩衝剤、抗酸化剤、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、実施形態1~10のいずれか1つに記載の口内分散性粉末組成物。
【0103】
12.上記希釈剤は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、イソマルト、エリスリトール、粉末セルロース、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、実施形態11に記載の口内分散性粉末組成物。
【0104】
13.上記希釈剤はマンニトールであることを特徴とする、実施形態12に記載の口内分散性粉末組成物。
【0105】
14.上記希釈剤は、上記口内分散性粉末組成物の総重量に対して45重量%~95重量%、好ましくは50重量%~90重量%、より好ましくは55重量%~85重量%、更に好ましくは60重量%~85重量%の量で存在することを特徴とする、実施形態12又は13に記載の口内分散性粉末組成物。
【0106】
15.上記潤滑剤は、タルク、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリル、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態11に記載の口内分散性粉末組成物。
【0107】
16.上記潤滑剤は、フマル酸ステアリルナトリウムであることを特徴とする、実施形態15に記載の口内分散性粉末組成物。
【0108】
17.上記潤滑剤は、上記口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.2重量%~2.5重量%、より好ましくは0.4重量%~1重量%、より好ましくは0.45重量%~0.75重量%、更に好ましくは約0.5重量%の量で存在することを特徴とする、実施形態15又は16に記載の口内分散性粉末組成物。
【0109】
18.上記滑剤は、コロイダル二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、疎水性コロイダルシリカ、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態11に記載の口内分散性粉末組成物。
【0110】
19.上記滑剤は、コロイダル二酸化ケイ素であることを特徴とする、実施形態18に記載の口内分散性粉末組成物。
【0111】
20.上記滑剤は、上記口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.2重量%~2.5重量%、より好ましくは0.4重量%~1重量%、より好ましくは0.45重量%~0.75重量%、更に好ましくは約0.5重量%の量で存在することを特徴とする、実施形態18又は19に記載の口内分散性粉末組成物。
【0112】
21.上記香料は、オレンジ、バナナ、ストロベリー、チェリー、ワイルドチェリー、レモン、カルダモン、アニス、ペパーミント、メントール、バニリン及びエチルバニリン、並びにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、実施形態11に記載の口内分散性粉末組成物。
【0113】
22.上記香料は、ペパーミントフレーバーであることを特徴とする、実施形態21に記載の口内分散性粉末組成物。
【0114】
23.上記香料の含有量は、上記口内分散性粉末組成物の総重量に対して0.05重量%~5.0重量%であることを特徴とする、実施形態21又は22に記載の口内分散性粉末組成物。
【0115】
24.実施形態1~23のいずれかに記載の口内分散性粉末を含む、スティック状包装物。
【0116】
25.上記スティック状包装物は、薬理学的有効量の、トリプタンを含む上記口内分散性粉末組成物を、1用量含むことを特徴とする、実施形態24に記載のスティック状包装物。
【0117】
26.上記スティック状包装物は、2.5mgのナラトリプタン、2.5mgのフロバトリプタン、5mgのゾルミトリプタン、10mgのリザトリプタン、12.5mgのアルモトリプタン、40mgのエレトリプタン、若しくは100mgのスマトリプタン、又はこれらの薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、実施形態25に記載のスティック状包装物。
【0118】
27.上記スティック状包装物は、1g~10g、好ましくは1.5g~5g、より好ましくは1.9g~3g、更に好ましくは約2.2gの量の上記口内分散性粉末組成物を含むことを特徴とする、実施形態24~26のいずれか1つに記載のスティック状包装物。
【0119】
28.片頭痛の治療に使用するための、実施形態1~23のいずれかに記載の口内分散性粉末組成物。
【0120】
29.前兆を伴う又は伴わない片頭痛発作の頭痛段階の急性期治療に、より好ましくは成人において、使用するための、実施形態28に記載の口内分散性粉末組成物。
【0121】
以下の実施例では、例示を目的として本発明の様々な実施形態が提供される。これらの実施形態は非限定的なものであることを理解されたい。
【実施例
【0122】
実施例1~10:スマトリプタンを含む口内分散性粉末
【0123】
スマトリプタンを有効成分として含む口内分散性粉末を、ある混合物の設計(図1を参照)に従って調製した。この方法は公知であり、例えばJ. Cornell, Experiments with Mixtures, 3rd edition, John Wiley & Sons, 2002に開示されている。実験の設計のマトリックスを表Iに示す。
【0124】
【表1】
【0125】
mgを単位として表されるこれらの粉末の特定の組成を表IIに示す。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
これらの実施例では、有効成分:3成分混合物の比は、1:6.45であった。140mgというコハク酸スマトリプタンの量は、100mgのスマトリプタンに相当し、この相乗的混合物の量は645mgである。
【0129】
口内分散性粉末を調製するためのプロセスは、以下のステップを含んでいた:
1)(1mmメッシュのふるいに通されたクエン酸無水物を例外として)成分を0.5mmメッシュのふるいに通し、これらを以下の順でV型ミキサーに投入するステップ:クエン酸ナトリウム無水物、スクラロース、香料、コハク酸スマトリプタン、コロイダル二酸化ケイ素、マンニトール、及びクエン酸無水物。
2)V型ミキサー内で、約20rpmで約15分間混合するステップ。
3)フマル酸ステアリルナトリウムを0.5mmメッシュのふるいに通し、これをV型ミキサーに投入するステップ。
4)V型ミキサー内で、約20rpmで約5分間混合するステップ。
5)製品をスティック状包装物に分包するステップ(スティック1個あたり2200mg)。
【0130】
粉末は口腔内で迅速に溶解し、口内に製品残留物を残さないことも確認された。
【0131】
実施例11~20:ゾルミトリプタンを含む口内分散性粉末
有効成分としてゾルミトリプタンを含む口内分散性粉末をある混合物の設計(図1を参照)及び上の表Iに示されているマトリックスに従って調製した。
【0132】
mgを単位として表されるこれらの粉末の特定の組成を表IIIに示す。
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
これらの実施例では、有効成分:3成分混合物の比は1:79.2であり、則ちゾルミトリプタン5mg、及び相乗的混合物396mgであった。
【0136】
口内分散性粉末を調製するためのプロセス、上の実施例1~10において開示されているプロセスと同様である。
【0137】
粉末は口腔内で迅速に溶解し、口内に製品残留物を残さないことも確認された。
【0138】
実施例21:アルモトリプタンを含む口内分散性粉末
上の実施例1~10において開示されているものと同様のプロセスに従って、有効成分としてリンゴ酸アルモトリプタンを含む口内分散性粉末を、表IVにmgを単位として表されている組成に従って調製した。
【0139】
【表6】
【0140】
17.5mgというリンゴ酸アルモトリプタンの量は、12.5mgのアルモトリプタンに相当する。この実施例では、有効成分:3成分混合物の比は1:31.68であり、則ちアルモトリプタン12.5mg、及び相乗的混合物396mgであった。
【0141】
粉末は口腔内で迅速に溶解し、口内に製品残留物を残さないことも確認された。
【0142】
実施例22:リザトリプタンを含む口内分散性粉末
上の実施例1~10において開示されているものと同様のプロセスに従って、有効成分として安息香酸リザトリプタンを含む口内分散性粉末を、表Vにmgを単位として表されている組成に従って調製した。
【0143】
【表7】
【0144】
14.53mgという安息香酸リザトリプタンの量は、10mgのリザトリプタンに相当する。この実施例では、有効成分:3成分混合物の比は1:39.6であり、則ちリザトリプタン10mg、及び相乗的混合物396mgであった。
【0145】
粉末は口腔内で迅速に溶解し、口内に製品残留物を残さないことも確認された。
【0146】
実施例23:エレトリプタンを含む口内分散性粉末
上の実施例1~10において開示されているものと同様のプロセスに従って、有効成分として臭化水素酸エレトリプタンを含む口内分散性粉末を、表VIにmgを単位として表されている組成に従って調製した。
【0147】
【表8】
【0148】
48.48mgという臭化水素酸エレトリプタンの量は、40mgのエレトリプタンに相当する。この実施例では、有効成分:3成分混合物の比は1:16.37であり、則ちエレトリプタン40mg、及び相乗的混合物655mgであった。
【0149】
粉末は口腔内で迅速に溶解し、口内に製品残留物を残さないことも確認された。
【0150】
実施例24:ゾルミトリプタンを含む口内分散性粉末
上の実施例1~10において開示されているものと同様のプロセスに従って、有効成分としてゾルミトリプタンを含む口内分散性粉末を、表VIIにmgを単位として表されている組成に従って調製した。
【0151】
【表9】
【0152】
この実施例では、有効成分:3成分混合物の比は1:79.2であり、則ちゾルミトリプタン5mg、及び相乗的混合物396mgであった。
【0153】
粉末は口腔内で迅速に溶解し、口内に製品残留物を残さないことも確認された。
【0154】
実施例25:スマトリプタンを含む口内分散性粉末
上の実施例1~10において開示されているものと同様のプロセスに従って、有効成分としてコハク酸スマトリプタンを含む口内分散性粉末を、表VIIIにmgを単位として表されている組成に従って調製した。
【0155】
【表10】
【0156】
この実施例では、有効成分:3成分混合物の比は、1:6.45であった。140mgというコハク酸スマトリプタンの量は、100mgのスマトリプタンに相当し、相乗的混合物の量は645mgである。
【0157】
粉末は口腔内で迅速に溶解し、口内に製品残留物を残さないことも確認された。
【0158】
実施例26:トリプタンを含む口内分散性粉末の試験
a)官能試験
スティック状包装物に分包された口内分散性粉末製剤の官能試験を、5人の健康なボランティアで実施した。
【0159】
患者による製剤の受け入れやすさを評価する方法は、
製剤の味(酸味、甘味、又は塩味)に関する1~5のスコア(ここで1は受け入れられない味に対応し、5は優れた味に対応する)と、製剤の苦味を評価するための1~5の別のスコア(ここで1は受け入れられない苦味に対応し、5は有効成分の苦味のマスキングに関する優れた能力に対応する)を確立することからなっていた。製剤の味に関する値と、有効成分の苦味をマスキングする能力を表す値とを乗算すると、患者による製剤の受け入れやすさの程度である値が得られる。
【0160】
得られた結果は、上記製剤がトリプタンの苦味をマスキングし、患者による製剤の優れた受け入れやすさをもたらし、また口内分散性製剤の投与後に水を飲む必要がないことを示している。表IXは、本発明によるいくつかの口内分散性粉末製剤の結果を示す。
【0161】
【表11】
【0162】
図2及び3は、ある混合物設計に従って調製された、それぞれスマトリプタン及びゾルミトリプタンを含む口内分散性粉末の、受け入れやすさの程度の等値線を、相乗的3成分混合物の組成に対して示す。
【0163】
3成分混合物は、患者による製剤の受け入れやすさに関して相乗効果を提供することを観察できる。更に、この特殊3次モデルは、混合物の受け入れやすさの挙動を統計的に有意な方法で記述した。
【0164】
実施例21~25に従って調製され、スティック状包装物に分包された口内分散性粉末の、頬腔内での溶解速度の試験を、5人の健康なボランティアで実施した。結果は、これらの製剤が頬腔内で極めて迅速な溶解(約10秒)を示し、口内に製品のいずれの残留物を残さないことを示し、これらの製剤は試験実施者のパネルに良好に受け入れられた。
【0165】
b)物理パラメータ
本発明による複数の口内分散性粉末に関して、かさ密度及びタップ密度を、現行版の欧州薬局方に従って決定し、圧縮率及びハウスナー比を計算した。
【0166】
表Xは、かさ密度(g/ml)、タップ密度(g/ml)、pH(純水中、1%w/v)、及び水分含有率(%)を示す:
【0167】
【表12】
【0168】
水分含有率の値は1%~3%であり、これは直接混合に最適な範囲である。
【0169】
製剤の流動性を評価するために、以下のガレヌスパラメータを決定した:安息角(°)、圧縮率(%)、及びハウスナー比。表XIに示されているように、現行版の欧州薬局方の方法を使用した:
【0170】
【表13】
【0171】
表XIIは、本発明による複数の口内分散性粉末に関する結果を示す:
【0172】
【表14】
【0173】
上記結果は、これらの製剤が最適な流動特性を有することを示し、上記流動特性は、室温で6か月間保管した後であっても維持された。
図1
図2
図3
【国際調査報告】