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特表2022-5453616-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの安定な多形形態およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの安定な多形形態およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20221020BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C07D471/04 103A
C07D471/04 CSP
A61K31/437
A61P27/16
A61K9/107
A61K9/127
A61K9/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508884
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020072328
(87)【国際公開番号】W WO2021028365
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】19191150.2
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522054123
【氏名又は名称】オーディオキュア ファーマ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロンメルスパーチャー ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ジグモント トマシュ
(72)【発明者】
【氏名】シュリンゲンシーペン ライマー
【テーマコード(参考)】
4C065
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065AA18
4C065BB04
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL02
4C065PP01
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA22
4C076BB26
4C076CC10
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA28
4C086ZA34
(57)【要約】
本発明は、式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの安定な結晶性多形形態
【化1】、
6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態の調製方法、および6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態を含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、聴覚損傷、目まい、または前庭障害の治療および/または予防において、前記安定な結晶性多形形態の使用、および前記安定な結晶性多形形態を含む医薬組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態であって、
【化1】
式中、前記結晶性多形形態は、偏差±0.2度で11.3、17.1、17.6、18.0、22.5、23.2、および29.4度の2-シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する、結晶性多形形態。
【請求項2】
請求項1に記載の結晶性多形形態であって、
前記結晶性多形形態は、偏差±0.2度で11.3、14.1、17.1、17.6、18.0、19.0、20.3、20.6、22.5、23.2、24.3、25.8、および29.4度の2シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する、結晶性多形形態。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の結晶性多形形態であって、前記結晶性多形形態は、p21/cの空間群を有する単斜晶形態であり、ここで、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの1分子は、a=3.85±0.1Å、b=17.32±0.1Å、c=13.77±0.1Å、α=90±3゜、β=91±3゜、およびγ=90±3゜の単位格子寸法を有する非対称単位格子である、結晶性多形形態。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結晶性多形形態であって、前記結晶性多形形態の固体状態13CNMRスペクトルは、偏差±1ppmで28.6、107.3、110.2、111.6、112.8、116.6、121.5、126.2、138.0、155.5、156.1、156.7、157.1、157.2、157.7、158.1、および158.4ppmにピークを含む、結晶性多形形態。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の結晶性多形形態であって、前記結晶性多形形態は、123℃±1℃の融点を有する、結晶性多形形態。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の結晶性多形形態であって、前記結晶性多形形態の前記粒子サイズは、200μm以下である、結晶性多形形態。
【請求項7】
請求項6に記載の結晶性多形形態であって、前記結晶性多形形態の前記粒子サイズは、20μm以下である、結晶性多形形態。
【請求項8】
少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、賦形剤、溶媒および/または希釈剤と共に、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態を含む医薬組成物。
【請求項9】
リポソーム、軟膏、懸濁液、ゲルおよびエマルションの形態である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
聴覚損傷、目まい、または前庭障害の治療および/または予防に使用するための、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態、または請求項8もしくは請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記聴覚障害、目まい、または前庭障害は、メニエール病、突発性難聴、騒音性難聴、加齢に関連する難聴、自己免疫性耳疾患、耳鳴り、音響外傷、爆発性外傷、迷路性難聴、老人性難聴、内耳プロテーゼの移植中の外傷(挿入外傷)、内耳の疾患による目まい、並びに抗生物質および細胞増殖抑制剤による聴覚障害、からなる群から選択される、請求項10に記載の使用のための結晶性多形形態、または使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記結晶性多形形態または前記医薬組成物は、局所的に(topically)、および/または局所的に(locally)投与される、請求項10または請求項11に記載の使用のための6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態、または使用のための医薬組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態を調製するための方法であって、
A1)式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを提供すること
【化2】
B1)極性溶媒と非極性溶媒との混合物中に6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを溶解すること、または
極性溶媒中に最初に6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを溶解すること、および極性溶媒中に6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを有する結果的に得られた溶液に非極性溶媒を添加すること、
ここで、前記極性溶媒は、ジクロロメタン、アセトン、イソプロパノール、またはそれらの混合物、または水との混合物であり、前記非極性溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル、n-ヘプタン、シクロヘキサン、またはそれらの混合物であり、前記極性溶媒と前記非極性溶媒との比率は、1:2から1:10の範囲である、
C1)6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記溶液または前記懸濁液を40℃から100℃の範囲の温度に加熱すること、
D1)結果的に得られた溶液を、同じ温度で少なくとも10分間撹拌すること、
E1)請求項1に記載の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態を得るために、結果的に得られた溶液を、-10℃から+30℃の範囲の温度に冷却すること、および
F)請求項1に記載の式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態Bを分離すること、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、ステップB1)において、前記極性溶媒と前記非極性溶媒との混合物中の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの濃度は、50mM~200mMの範囲である、方法。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の方法であって、ステップE1)の後、およびステップF)の前に、以下のステップE2)
E2)6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態を播種すること、
が行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの安定な結晶性多形形態、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態の調製方法、および6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態を含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、聴覚損傷、目まい、または前庭障害の治療および/または予防において、前記安定な結晶性多形形態の使用、および前記安定な結晶性多形形態を含む医薬組成物の使用に関する。
【0002】
[発明の背景]
多形性は、結晶格子内の分子の異なる配置を有する2つ以上の異なる結晶性形態で存在するための化学物質の能力である。同じ種の多形体は化学的に同一であるけれども、各多形体は、化学的、機械的、熱的、および物理的特性のそれらの独自の組み合わせを有する。異なる結晶形態の物理化学的特性の変化は、多形性を製薬会社にとって潜在的な重要な問題にする(Erdemir et al.;Curr.Opin.Drug Discov.Dev.2007,746-755)。製品性能および開発において直面する困難および矛盾は、多形性に起因し得、多形性は、新薬候補を開発する場合に考慮すべき重要な側面であるということは製薬業界内の共通の同意である。固形形態は、便利さ、物理的安定性および化学的安定性、製品の取り扱いの容易さ、並びに低い製造コストを提供するため、医薬品有効成分(API)は、固体状態で患者に頻繁に送達される。各固体形態は、固有の物理化学的特性を示すため、APIの固体特性を理解すること、および制御することは、医薬品開発工程において非常に重要である。結晶化段階での誤った多形体の意図的でない生成は、所定の適用形態で指定された用量で効果がない、または毒性になる可能性を有する、のいずれかである医薬剤形をもたらし得る。これらの理由のために、規制機関は、所望の多形体が継続的に生成されるように結晶化工程を制御することを製薬会社に要求し、および結晶化工程開発への工程分析技術の適用を奨励している。
【0003】
溶液からの再結晶は、自己集合工程として想定することができ、自己集合工程において、過飽和溶媒または溶媒混合物中に溶解された無作為に組織化された分子は、周期的な繰り返しパターンを有する規則的な3次元分子配列を形成するために集合する。結晶化は、自然において、および幅広い材料の製造において発生する多くの工程に不可欠である。結晶性生成物の品質は、通常、4つの主要な基準:結晶サイズ、結晶純度、結晶形態、および結晶構造によって判断される。粒子癖は、結晶化後の工程に大きな影響を与え得るため、結晶形態の制御は、多くの適用において不可欠である。APIの開発のために、最終的な剤形における原薬の生物学的利用能および安定性を保証するために、特定の多形体を生成することは不可欠である。
【0004】
ドイツ特許出願(DE 10 2007 009264 A1)は、9-アルキル-β-カルボリンを開示し、9-アルキル-β-カルボリンの神経保護効果により、例えばアルツハイマー病やパーキンソン病などの運動障害および/または神経疾患の治療および/または予防のために使用されることができる。
【0005】
米国特許出願第US2004/038970 A1は、耳鳴りを含む様々な医学的症状の治療における活性剤として3-置換2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-βカルボリンの使用を開示する。しかしながら、β-カルボリンのこのグループにおける置換パターンは、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの置換パターンとは構造的にかなり異なる。
【0006】
国際特許出願(WO2011/079841 A1)は、β-カルボリン、好ましくは9-アルキル-β-カルボリン、その調製方法、および前記β-カルボリンを含む医薬組成物を開示する。さらに、このPCT出願は、聴力損失、耳鳴り、音響ショック、目まい、および平衡障害の予防および治療のための前記β-カルボリンの使用に関する。
【0007】
国際特許出願(WO2015/044434 A2)は、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを含むフルオロ-9-メチル-β-カルボリン、その調製方法、およびフルオロ-9-メチル-β-カルボリンを含む医薬組成物を開示する。さらに、このPCT出願は、急性および慢性の耳疾患、および聴覚損傷、目まい、および平衡障害の治療のためのフルオロ-9-メチル-β-カルボリンの医学的使用を開示する。
【0008】
しかしながら、国際特許出願(WO2015/044434 A2)は、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンを開示し、任意のその結晶性形態または多形形態を説明しない。
【0009】
本発明の目的は、特に医薬組成物の調製のための有効成分として6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの安定な結晶性多形形態を提供すること、および6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの前記安定な結晶性多形形態を含む安定な医薬組成物、並びにその使用、およびその安定な多形形態の調製方法を提供することである。
【0010】
本発明のこの目的は、独立請求項の教示によって解決される。本発明のさらに有利な特徴、態様および詳細は、本出願の従属請求項、明細書、図、および例から明らかである。
【0011】
[発明の要約]
本発明において、本明細書で6-FMCとも呼ばれる6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンのいくつかの具体的な結晶性多形形態が最初に提供され、その技術的特徴も開示される。しかしながら、驚くべきことに、これらの具体的な結晶性多形形態のうちの1つのみが十分に安定であり、したがって医薬組成物の調製に適している。全ての他の多形形態は、それらの不安定性のため、医薬製剤に使用されることはできない。
【0012】
化合物6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)は、多形体A、多形体B、多形体C、および多形体Tと表示される少なくとも4つの多形形態で存在する。実際に、6-FMCは、標的組織において治療濃度に到達するための懸濁液として適用される。最終的な剤形において原薬の生物学的利用能および安定性を保証するために、特定の多形体を生成することが不可欠である。したがって、粉末形態で、および製剤の一部としての両方で各多形体の化学的、機械的、熱的および物理的特性が特徴付けられる。多形体間の顕著な違いが明らかになった。融点が異なり、再結晶化は、多形体Aの斜方晶系形態および多形体Bの場合に単斜晶系形態を生じさせた。X線粉末回折法におけるスペクトルは、ssNMRおよび赤外分光法のスペクトルと同様に明らかに異なっていた。多形体Cおよび多形体Tは、多形体Cおよび多形体Tの速い分解のために純粋な形態で分離することが困難であったため、これらの多形体のきれいなスペクトルを取得すことに苦労していた。多形体の安定性の調査は、多形体A、多形体Cおよび多形体Tが医薬製剤の製造には適していないが、一方、多形体Aは安定ではないものの、本明細書に開示される条件下で多形体Bに変換されることができることを明らかにした。驚くべきことに、多形形態Bは、十分に安定な、多形形態Bの結晶性6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの粒子を含む医薬製剤の調製に適する唯一の多形体であった。多形形態A、多形形態C、および多形形態Tは、室温で、医薬製剤のための通常の保存条件下でさえも十分に安定でないため、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの多形形態A、多形形態C、および多形形態Tは、内耳の治療のために医薬製剤における結晶性有効成分として使用されることができない。当該医薬製剤は、好ましくは、リポソーム製剤、軟膏、懸濁液、ゲルおよびエマルションであり、ここで、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの多形形態Bは、結晶性形態において、または微粉化形態において、好ましくは微粒子またはナノ粒子として存在する。
【0013】
したがって、いくつかの安定性試験を、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの多形形態Bを用いて行い、多形体Bは非常に安定であり、意図された医薬製剤に最適な形態であることが本明細書において証明される。本明細書に開示されるような劇的な条件下でのみ、多形体Bを多形体Aに変換することができた。多形体Aへの多形体Bの変換は、超臨界二酸化炭素を用いて抽出することによって、および真空昇華によって達成されることができ、一方、多形体Bへの多形体Aの自然変換は、混合直後の製剤において起こる。逆工程は観察されたことがない。さらに、第3の多形体Cおよび第4の多形体Tは、医薬製剤の製造中でさえも分解する。多形体Cへの多形体Bの、または多形体Tへの多形体Bの任意の変換は、検出されることができず、超臨界二酸化炭素への曝露、または真空昇華、または極端な加熱のような劇的な条件下でさえも検出されることができなかった。
【0014】
したがって、本出願は、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンから唯一の安定な多形形態としての6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの多形形態Bに関し、これは、本明細書に開示される医薬製剤の調製に適している。
【0015】
[発明の説明]
さらに、本発明は、式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態に関し、
【0016】
【化1】
【0017】
ここで、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態(本明細書において多形体Bまたは多形形態Bと呼ばれる)は、偏差±0.2度で11.3、17.1、17.6、18.0、22.5、23.2、および29.4度の2-シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する。
【0018】
好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンのこの結晶性多形形態Bは、偏差±0.2度で11.3、14.1、17.1、17.6、18.0、19.0、20.3、20.6、22.5、23.2、24.3、25.8、および29.4度の2シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する。より正確には、示された各値は、偏差±0.2度を有し、次のように記述されることができる:11.3±0.2度、14.1±0.2度、17.1±0.2度、17.6±0.2度、18.0±0.2度、19.0±0.2度、20.3±0.2度、20.6±0.2度、22.5±0.2度、23.2±0.2度、24.3±0.2度、25.8±0.2度、および29.4±0.2度。好ましくは、偏差は、±0.15度のみであり、より好ましくは、わずか±0.1度のみである。
【0019】
一実施形態において、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態(多形体B)は、p21/cの空間群を有する単斜晶形態であり、ここで、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの1分子は、a=3.85±0.1Å、b=17.32±0.1Å、c=13.77±0.1Å、α=90±3゜、β=91±3゜、およびγ=90±3゜の単位格子寸法を有する非対称単位格子である。
【0020】
一実施形態において、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態(多形体B)の固体状態13C-NMRスペクトルは、図8Bに示されるように、偏差±1ppmで28.6、107.3、110.2、111.6、112.8、116.6、121.5、126.2、138.0、155.5、156.1、156.7、157.1、157.2、157.7、158.1、および158.4ppmでピークを含む。したがって、28.6±1ppm、107.3±1ppm、110.2±1ppm、111.6±1ppm、112.8±1ppm、116.6±1ppm、121.5±1ppm、126.2±1ppm、138.0±1ppm、155.5±1ppm、156.1±1ppm、156.7±1ppm、157.1±1ppm、157.2±1ppm、157.7±1ppm、158.1±1ppm、および158.4±1ppmでピークを含む。好ましくは、偏差は、±0.5ppmのみであり、より好ましくは、±0.2ppmのみである。
【0021】
一実施形態において、本発明に係る6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態Bは、123±1℃の融点を有する。
より好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態BのIR-スペクトルは、偏差±5cm-1で803.27、819.54、852.30、864.13、893.22、1024.99、1126.71、1148.77、1183.98、1272.31、1283.82、1333.10、1362.06、1426.98、1448.53、1481.82、1554.80、および1578.94cm-1でピークを含む。好ましくは、偏差は、±4cm-1のみであり、より好ましくは、±3cm-1のみである。
【0022】
最も好ましくは、前記結晶性多形形態のIRスペクトルは、偏差±5cm-1で、426.62、524.31、558.12、604.22、636.09、704.73、729.05、742.59、803.27、819.54、852.30、864.13、893.22、1024.99、1126.71、1148.77、1183.98、1272.31、1283.82、1333.10、1362.06、1426.98、1448.53、1481.82、1554.80、および1578.94cm-1でピークを含む。
【0023】
本出願において、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの他の結晶性多形形態(以下、多形体A)は、図1Aに示されるように同定されている。しかしながら、この多形形態は十分に安定ではなく、参照例として本明細書に開示されるが、本発明の一部ではない。6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態(多形体A)は完全に特徴付けられ、一方、多形形態Cおよび多形形態Tは非常に不安定であるので、完全な特徴付けさえ、ほとんど可能でなかった。この結晶性多形形態Aは、斜方晶系形態であり、p2の空間群、単位格子内に一分子の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリン、およびa=5.90±0.1Å、b=10.35±0.1Å、c=15.46±0.1Å、α=90±3°、β=90±3°、γ=90±3°の単位格子寸法を有する。
【0024】
多形体Aの結晶構造(図3A)は、X線結晶学によって多少詳細に特徴付けられた。この多形体は、空間群p2内で、斜方晶系形態で結晶化する。単位格子寸法は、a=5.8986(1)Å、アルファ=90°;b=10.3506(3)Å、ベータ=90°;c=15.4572(5)Å、ガンマ=90°である。図2Aに示されるように、6-FMC分子は、パイ-積層(pi-stacked)分子および直交T-積層(T-stacked)分子の多次元層にある。構造に水和物、溶媒和物、または塩ベースの対イオンが存在しないことも明確に示す。式の図面は、開示された化合物の同一性を確認した。
【0025】
前記多形形態Aは、偏差±0.2度で11.9、13.8、16.5、20.0、23.8、24.0、25.6、26.2、26.7、および28.1度の2シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する。特に特徴的なのは、11.9、16.5、26.7、および28.1の2シータ角度値を含むシグナルである。
【0026】
融点を、オープンキャピラリーブエチ(open capillary Buechi)M565融点装置で測定した。融点をより正確に決定するために、加熱速度を100℃で毎分セ氏1度減速した。未補正融点は、~125℃+/-2℃であることが判明した。融点を、示差走査熱量測定(DSC)によって確認した。加熱および冷却曲線を、示差走査熱量測定(DSC;ネッチ(Netzsch) DSC 204 F1)によって記録した(図5A)。融点を、DSC加熱によって確認した。冷却曲線は、65℃から45℃の間の広い範囲を示した(図6A)。
【0027】
前記結晶性多形形態の固体状態13C-NMRスペクトルは、偏差±1ppmで、28.6、103、111、113、114、118、124、130、133、135および155~158(多くのC-Fピーク)ppmでピークを含む(図8A)。図8Aは、多形体AのssNMRを示し、および図8Bは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの多形体BのssNMRを示す。これらのスペクトルは、2つの多形体Aと多形体Bとの間の明確な違いを示す。
【0028】
[他の結晶形態と比較した本発明の多形体Bの安定性]
変換の程度は、一般的に、多形体の相対的な安定性、相変換に対する速度論的障壁、および適用された応力に依存する。それにもかかわらず、変換が一貫して起こるという条件で、重要な製造工程変数が十分に理解され、および制御される場合、有効な製造工程の一部として、相変換は一般に深刻な問題ではない。
【0029】
原薬における最も熱力学的に安定な多形形態は、他の多形形態への変換のための最小限の可能性、および当該優れた化学的安定性に基づいて、開発中にしばしば選択される。
【0030】
本出願において、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの本発明の多形体(多形体B)の安定性が試験され、参照として6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの他の多形体(多形体A、多形体Cおよび多形体T)と比較される。
【0031】
実施例3に記載されるような様々な熱的条件下で、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの本発明の多形体(多形体B)を他の多形形態(多形体Aなど)に変換することを試みた。
【0032】
6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態(多形体B)を有機溶媒に溶解し、前記混合物を加熱した。実施例3に記載されるように、結晶性多形形態(多形体B)を他の形態(ここでは多形体A)に完全に変換することはできなかった。
【0033】
他の多形形態と比較して本発明の多形形態の熱安定性は、予想外であり、特に製剤工程および制御にとって技術的に有利である。研究結果は、室温で、および室温未満でさえ、多形形態Aは、熱的により安定な形態である多形形態Bに、部分的に、または完全に変換することを示す。この変換は、温度を上昇することによって加速されることができる。多形形態Aのこの熱的不安定性は、この多形体を医薬目的のために不適切にする不利な点である。
【0034】
本発明の多形形態(多形体B)の多形体Aへの完全な変換は、劇的な条件下でのみ、例えば、実施例4に記載されるような超臨界COで、達成されることができた。超臨界COが導入されている装置のシリンダーに、多形体B(図9A)を装填し、35kPaの圧力で60℃に加熱した。APIが超臨界COに完全に溶解するまでの時間は2.5時間に達した。最終生成物のスペクトルを図9Bに示す。多形体Bの多形体Aへの変換が起こったことは非常に明白である。粉末は白色であった(図9C)。しかしながら、当該条件は、目的の医薬製剤の調製中に適用されないことは明らかである。さらに、多形体Bが、極端な条件下でのみ他の多形形態に変換されることができるという事実は、対象の医薬製剤が製造、保管、および適用される条件下で、多形体Bは、絶対的に安定であることを示す。
【0035】
様々な溶解/結晶化条件が、多形体Bを多形体Aに変換しようと試みるために、適用されている。前述のように、高度な手順を用いてのみ、多形体Bを完全に多形体Aに変換することができる(実施例4)。原薬の多形形態は、例えば、乾燥、粉砕、微粉化、湿式造粒、噴霧乾燥、および圧縮などのさまざまな製造工程にさらされる場合、相変換を受ける可能性がある。例えば、湿度および温度などの環境条件にさらされると、多形体変換を引き起こすこともできる。したがって、多形体Aは不安定であり、したがって医薬工程に適していない、一方、多形体Bは、乾燥、粉砕、微粉化、湿式造粒、噴霧乾燥、および圧縮を含む全てのこれらの条件下で安定であった。
【0036】
多形体Aとは反対に、本発明の結晶(多形体B)は非常に安定であり、したがって、様々な製造工程および製剤工程にさらされる場合でも変換は起こらない。これは予想外の技術的利点である。
【0037】
6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの第3の多形形態である、多形体Cを、実施例7に記載され、図15に示されるように、ヘプタン、エタノールおよび水の三元溶媒混合物中で多形体Bの再結晶化後に得た。得られた多形体Cは、標準条件下、および室温、相対湿度40%~60%、大気圧で数週間以内に非常に不安定であり、多形体Cは、多形体Bに完全に変換された。
【0038】
6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンを酸性水に溶解し、溶液をpH12に滴定することによって、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの第4の多形体である多形体Bは、より低い安定性の6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの多形形態のように見えた。標準状態(室温、40%~60%の相対湿度、および大気圧)で数日後、すでに多形体Tを検出することができなかった。多形体Tのこの急速な消失は、完全な特徴付けを非常に困難にした。しかしながら、多形体Cおよび多形体Tは、いずれも水和物または塩の形態ではないと述べられることができる。前記多形Tの単離は失敗した。多形体Aを水性媒体に保存すると、多形体Bへの変換および多形体Tのシグナルを観察する。少なくとも、多形体Tの特徴的な2シータ値を、混合ディフラクトグラムから多形体Bに属するシグナルを差し引くことによって決定することができた。X線粉末回折の特徴的なパターンを図16に示す。全てのこれらの発見は、多形体Bが6-FMCの最も安定な多形体を表し、実際に所望の医薬製剤の製造に適した唯一の多形であることを明確に強調する。
【0039】
[ポロキサマーに基づく製剤における微粉化および多形体安定性]
一連の実験において、多形体の安定性が分析されている。微粉化(20μm以下)多形体Aおよび多形体Bを、ビヒクル製剤として非イオン性界面活性剤を含むリン酸塩緩衝液に添加した。30時間後、アリコートを取り出し、洗浄し、乾燥させ、X線粉末回折法(XRPD)によって多形体同一性測定のために調製した。XRPD分析は、最初に多形体Aから作成された試料において、これらの30時間の間に多形体Bへの60%の多形体変換が発生したことを示した(図10)。調製の48時間後、XRPD分析の結果、多形形態Aから多形形態Bへの100%の変換となった。このデータは、本発明の多形体Bが製剤中に安定な結晶状態であることを示す。本発明の多形体Bから最初に作製された試料に対して、数ヶ月にわたって一定の間隔で行われた一貫性分析は、多形体変換を示さなかった(図12)。
【0040】
一実施形態において、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態は、200μm以下、好ましくは175μm以下、より好ましくは150μm以下、さらにより好ましくは125以下、さらにより好ましくは100μm以下、さらにより好ましくは75μm以下、およびさらにより好ましくは50μm以下の結晶の粒子サイズを有する。最も好ましくは、前記結晶性多形形態は、20μm以下の結晶の粒子サイズを有する。
【0041】
[インビボ(in vivo)有効性]
本出願は、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)の多形形態Bが、実施例9に概説されるように、インビボ(in vivo)で有効性に影響を与えることを実証する。結果を、図13および図14に示す。
【0042】
新たに調製された(使用の24時間未満前)6-FMC(0.12mg)の多形体Aにおける鼓室内投与が永久閾値変動に与える影響を、モルモットにおいて調査している(図13)。永久閾値変動(PTS)は、14日目に測定された外傷後の聴力閾値と-3日目に測定された基準聴力閾値との間の差として定義される。
【0043】
さらに、使用の少なくとも48時間前に調製された6-FMC(0.12mg)の多形体Bの鼓室内投与がモルモットにおけるPTSに与える影響を、図14に示す。
【0044】
モルモットの騒音性聴力損失モデル(NIHL)を使用して、出願人は聴力損失の治療における単一の鼓室内6-FMC投与の有効性を調査した。6-FMCの多形体Aを用いて治療された動物は、PTSの回復に対して中等度の改善を有することが観察された。ビヒクル処理された動物と比較した場合、多形体A処理は、16kHzで10dB~18dBのPTSの回復を示した(図13)。しかしながら、臨床使用のために、より強力な効果が必要であるであろう。
【0045】
驚くべきことに、さらなる開発中に、以前の実験と比較して、6-FMC処理された動物の有効性において明らかな改善が観察された(図14)。予想外に、PTSのはるかに強い改善は、調査された全ての周波数にわたって起こった。改善のレベルは、図13に見られるように約10~18dBから図14に見られるように23~39dBに増加した。聴覚が対数法(デシベル)で表されるため多形形態Bで見られるこの30dB以上の改善は、臨床的に最も有意義である。ヒトにおいて、18dBの聴覚損失は、個人がほとんど気付くことができない、一方、30dBの聴覚損失は、特に背景雑音が同時に発生する場合、伝達を困難にする。驚くべきことに、6-FMCの多形形態Bを用いて処理された動物のいくつかの周波数(例えば、4kHzおよび8kHz、図14)は、ゼロに近いPTSを示した。
【0046】
6-FMCの多形体Bを用いての治療は、騒音性聴力損失に続く聴力の完全な回復につながることができるという可能性を明らかにするため、この強い回復は非常に重要である。
【0047】
改善された有効性データのための根本原因が何かを調査するために、出願人は実験手順の徹底的な分析を行い、有効性の改善は医薬製剤の調製に依存することを示した。最初に、多形体Aを含む常に新たに調製された製剤を、調製直後に使用した。しかしながら、有効性の向上を示した実験において、製剤を事前に調製し、使用前に少なくとも48時間保存した。その後の製剤の分析は、最初に多形体Aを用いて調製された製剤は、多形体Bに完全に変換され、30時間以内に部分的に60%変換され(図10)、および図11に示されるようにすでに48時間後に完全に変換されたことを実証した。まとめると、これらのデータは、製剤に存在する6-FMCの多形形態の同一性が、非常に重要な役割を果たすことを示す。さらに、出願人は、多形形態Bを有する製剤が、多形形態Aを有する製剤と比較された場合、モルモットのNIHLモデルにおいてインビボ(in vivo)有効性データの著しい改善につながることを実証した。
【0048】
[結晶性多形形態の調製方法]
本発明のさらなる態様は、6-フルオロ-9H-メチル-β-カルボリンの本発明の結晶性多形形態の調製方法に関し、次のステップを含む:
A1)式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを提供すること
【0049】
【化2】
B1)極性溶媒と非極性溶媒との混合物に6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを溶解すること、または
【0050】
6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを最初に極性溶媒に溶解し、極性溶媒中に6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンを有する結果的に得られた溶液に無極性溶媒を加えること、
ここで、極性溶媒は、ジクロロメタン、アセトン、イソプロパノール、もしくはそれらの混合物、または水との混合物であり、非極性溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル、n-ヘプタン、シクロヘキサン、またはそれらの混合物であり、極性溶媒と無極性溶媒の比率は1:2から1:10の範囲にある、
C1)6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの溶液または懸濁液を40℃から100℃の範囲の温度に加熱すること、
D1)結果的に得られた溶液を同じ温度で少なくとも10分間撹拌すること、
E1)結果的に得られた溶液を-10℃から+30℃の範囲の温度に冷却し、請求項1に係る6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態を得ること、および
F1)式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態Bを分離すること
【0051】
【化3】
【0052】
6-FMCの結晶性形態を調製するための全ての最初の試みは、多形形態Aを結果的にもたらしたことが強調されなければならない。多形形態Aを、トルエン、シクロヘキサン、またはヘプタンなどの非極性、またはわずかに極性の非プロトン性有機溶媒からの結晶化によって得た。したがって、常にこの多形形態Aがn-ヘプタンからの再結晶後に得られたため、多形形態Aは、発明者によって安定な多形形態と最初は見なされていた。多形形態Bをはるかにより安定な、はるかにより活性のある形態として特定したことは、驚くべき結果であった。
【0053】
多形形態Bを薬理学的に非常に強力で化学的に非常に安定であると認識した後、選択的に多形形態Bをもたらす上記の合成手順が開発された。
6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの分離された結晶性多形形態Bは、上記に開示されたように偏差±0.2度で、11.3、17.1、17.6、18.0、22.5、23.2、および29.4度の2シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する。
【0054】
好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態Bは、上記に開示されたように偏差±0.2度で、11.3、14.1、17.1、17.6、18.0、19.0、20.3、20.6、22.5、23.2、24.3、25.8、および29.4度の2シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する。
【0055】
さらに好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの本発明の結晶性多形形態(多形体B)は、p2cの空間群を有する単斜晶形態であり、ここで、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの1分子は、上記に開示されたように、a=3.85±0.1Å、b=17.32±0.1Å、c=13.77±0.1Å、α=90±3゜、β=91±3゜、およびγ=90±3゜の単位格子寸法を有する非対称単位格子である。
【0056】
より好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態(多形体B)の固体状態13C-NMRスペクトルは、図8Bに示されるように、偏差±1ppmで28.6、107.3、110.2、111.6、112.8、116.6、121.5、126.2、138.0、155.5、156.1、156.7、157.1、157.2、157.7、158.1、および158.4ppmでピークを含む。
【0057】
より好ましくは、前述されるように、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態Bは、123±1℃の融点を有する。
さらにより好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態BのIR-スペクトルは、偏差±5cm-1で803.27、819.54、852.30、864.13、893.22、1024.99、1126.71、1148.77、1183.98、1272.31、1283.82、1333.10、1362.06、1426.98、1448.53、1481.82、1554.80、および1578.94cm-1でピークを含む。最も好ましくは、前述されるように、前記結晶性多形形態BのIRスペクトルは、偏差±5cm-1で、426.62、524.31、558.12、604.22、636.09、704.73、729.05、742.59、803.27、819.54、852.30、864.13、893.22、1024.99、1126.71、1148.77、1183.98、1272.31、1283.82、1333.10、1362.06、1426.98、1448.53、1481.82、1554.80、および1578.94cm-1でピークを含む。
【0058】
好ましくは、ステップB1)において、有機溶媒の混合物中の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの濃度は、50mMから200mM、好ましくは50mMから150mM、より好ましくは80mMから120mMの範囲である。
【0059】
ステップC1)を実施後、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの懸濁液も、ステップD1)で述べられたような結果的に得られた溶液に変換される。
【0060】
好ましくは、ステップC1)において、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの溶液または懸濁液は、40℃から60℃の範囲の温度で加熱される。
【0061】
好ましくは、上記の方法のステップD1)の間、またはステップD1)の後に、次のステップD2)が実施される:
D2)好ましくは真空下で溶媒を蒸発させることにより、結果的に得られた溶液または懸濁液の混合物を濃縮すること。
【0062】
任意に、ステップE1)において、結果的に得られた溶液を冷却した後、次のステップを実行することができる:
E2)6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの結晶性多形形態Bを播種すること。
【0063】
様々な調製方法は、実施例1および実施例2に詳細に記載される。
いくつかの実施形態において、上記方法のステップA)において、式(I)の6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンは、結晶性多形形態Aであり、ここで、前記多形形態は、偏差±0.2度で11.9、16.5、26.7、および28.1度の、または代替的に、偏差±0.2度で11.9、13.8、16.5、20.0、23.8、24.0、25.6、26.2、26.7、および28.1度の2シータ角度値を含むX線粉末線回折パターンを有する。
【0064】
[医薬組成物および医療用途]
本発明のさらなる態様は、本発明に係る6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの結晶性多形形態(多形形態B)の医療用途に関し、ここで、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの本発明の結晶性多形形態は、偏差±0.2度で11.3、17.1、17.6、18.0、22.5、23.2、および29.4度の2シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する。
【0065】
好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態Bは、前述されるように、偏差±0.2度で11.3、14.1、17.1、17.6、18.0、19.0、20.3、20.6、22.5、23.2、24.3、25.8、28.4、および29.4度の2シータ角度値を含むX線粉末回折パターンを有する。
【0066】
さらに好ましくは、前記結晶性多形形態は、前述されるように、p21/cの空間群を有する単斜晶形態であり、ここで、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの1分子は、a=3.85±0.1Å、b=17.32±0.1Å、c=13.77±0.1Å、α=90±3゜、β=91±3゜、およびγ=90±3゜の単位格子寸法を有する非対称単位格子である。
【0067】
より好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの前記結晶性多形形態の固体状態13C-NMRスペクトルは、前述されるように、図8Bで示されるように偏差±1ppmで28.6、107.3、110.2、111.6、112.8、116.6、121.5、126.2、138.0、155.5、156.1、156.7、157.1、157.2、157.7、158.1、および158.4ppmでピークを含む。
【0068】
さらにより好ましくは、医薬製剤における前記結晶性多形形態Bは、123±1℃の融点を有する。
更により好ましくは、医薬製剤における前記結晶性多形形態BのIR-スペクトルは、偏差±5cm-1で803.27、819.54、852.30、864.13、893.22、1024.99、1126.71、1148.77、1183.98、1272.31、1283.82、1333.10、1362.06、1426.98、1448.53、1481.82、1554.80、および1578.94cm-1でピークを含む。
【0069】
一実施形態において、本発明に係る6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの前述の結晶性多形形態(多形形態B)は、聴覚損傷、目まい、または前庭障害の治療および/または予防に有用である。
【0070】
好ましくは、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの前述の結晶性多形形態Bは、聴覚損傷、目まい、または前庭障害の治療および/または予防に有用であり、ここで、聴覚損傷、目まい、または前庭障害は、メニエール病、突発性難聴、騒音性難聴、加齢に関連する難聴、自己免疫性耳疾患、耳鳴り、音響外傷、爆発性外傷、迷路性難聴、老人性難聴、内耳プロテーゼの移植中の外傷(挿入外傷)、内耳の疾患による目まい、並びに抗生物質および細胞増殖抑制剤による聴覚損傷からなる群から選択される。
【0071】
本発明の更なる態様は、6-フルオロ-9-メチル-9H-β-カルボリンの上述の結晶性多形形態(多形形態B)を、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、賦形剤、溶媒および/または希釈剤と共に含む医薬組成物に関する。
【0072】
一実施形態において、前記医薬組成物は、聴覚損傷、目まい、または前庭障害の治療および/または予防に有用である。
好ましくは、前記医薬組成物は、聴覚損傷、目まい、または前庭障害の治療および/または予防に有用であり、ここで、聴覚損傷、目まい、または前庭障害は、メニエール病、突発性難聴、騒音性難聴、加齢に関連する難聴、自己免疫性耳疾患、耳鳴り、音響外傷、爆発性外傷、迷路性難聴、老人性難聴、内耳プロテーゼの移植中の外傷(挿入外傷)、内耳の疾患による目まい、並びに抗生物質および細胞増殖抑制剤による聴覚損傷からなる群から選択される。
【0073】
6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの上述の多形形態B、または6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの多形形態Bを含む上述の医薬組成物を、経皮投与システム(硬膏(plaster)、フィルム)、液滴、ピル、糖衣錠(dragees)、ゲル、ヒドロゲル、軟膏、シロップ、顆粒、座剤(suppositories)(座剤(uvulas))、エマルジョン、分散液、マイクロ製剤、ナノ製剤、リポソーム、溶液、ジュース、懸濁液、輸液剤または注射液の形態で調製、および投与されてもよい。好ましくは、リポソーム、軟膏、懸濁液、ゲルおよびエマルジョンの形態の医薬組成物である。特に好ましくは、ヒドロゲル製剤である。
【0074】
当該組成物は、とりわけ、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、粘膜皮膚、直腸、経皮、局所、頬側、皮内(intradermal)、胃内、皮内、鼻腔内、頬内、経皮、鼓室内または舌下投与に適している。特に好ましくは、中耳への投与または注射、並びに鼓膜を介した局所投与である。
【0075】
薬学的に許容可能な担体として、例えば、ラクトース、デンプン、ソルビトール、スクロース、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、マンニトール、エチルアルコール、および同類のものなどを使用されてもよい。粉末および錠剤は、当該担体の5~95wt%からなることができる。
【0076】
液体製剤は、溶液、懸濁液、スプレー、およびエマルションを含む。例えば、注射液は、非経口注射用の水に基づく、または水-プロピレングリコールに基づく。座剤の調製のために、好ましくは低融点ワックス、脂肪酸エステルおよびグリセリドが使用される。
【0077】
医薬組成物は、生分解性または非生物学的に分解性であり、水性または非水性であり、またはミクロスフェアに基づくゲルおよび他の粘性薬物担体を更に含む。
【0078】
好ましくは、本発明に係る医薬組成物は、局所(topical)および/または局所(local)投与用に製剤化される。耳性投与、すなわち(中)耳への投与に適した担体は、薬学的に許容可能であり、本発明に係る結晶性化合物および/または当該更なる活性剤と反応しない、例えば調理用の塩、アルコール、植物油、ベンジルアルコール、アルキルグリコール、ポリエチレングリコール、三酢酸グリセリン、ゼラチン、ラクトースまたはデンプンなどの炭水化物、炭酸マグネシウム(マグネシウム、チョーク)、ステアリン酸塩(ワックス)、タルク、ペトロラタム(ワセリン)、などである、有機物質および無機物質である。記載される組成物は、滅菌されことができ、および/または潤滑剤のような補助剤、チオマーサルのような防腐剤(すなわち、50重量%)、安定剤および/または保湿剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝物質、染料および/または香味料、を含むことができる。これらの組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の付加的な活性剤を含んでもよい。本発明に係る耳性組成物および/または聴覚組成物は、異なる化合物および/または物質、例えば抗生物質のような他の生物活性物質、ステロイド、コルチコイド、鎮痛剤、アンチピリン、ベンゾカイン、プロカインのような抗炎症活性剤を含んでもよい。
【0079】
局所投与用の本発明に係る組成物は、他の薬学的に許容可能な化合物および/または物質を含むことができる。本発明の好ましい実施形態において、局所的賦形剤が選択され、局所的賦形剤は、耳へ、中耳に、または耳道に投与された場合、血液循環系への、もしくは中枢神経系への結晶性6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリンの放出、および可能な付加的な活性剤の放出、または活性剤の放出を増幅しない。可能性のある担体物質は、炭化水素酸、親水性ペトロラタム(ワセリン)などの水を含まない吸着剤、および水を含まないラノリン(すなわち、アクアフォー(Aquaphor)(登録商標))、並びにラノリンおよびコールドクリームのような水-油エマルションに基づく手段を含む。より好ましくは、本質的に非除外である担体物質であり、担体物質は、水溶性であり、並びに水中油型エマルション(クリームまたは親水性軟膏)に基づく物質、およびポリエチレングリコール、およびメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースのようないくつかの物質を用いてゲル化された水溶液に基づく担体物質のような水溶性ベースを用いる物質を通常含む、担体物質である。
【0080】
[図の説明]
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】A)多形体Aの結晶を示し、B)多形体Bの結晶を示す。多形体Aおよび多形体Bの結晶構造を、ヘプタン、およびMTBEとアセトンまたはDCMとの混合物を有する溶液中でそれぞれ再結晶化することによって得た。
図2A】A)回折法によって計算された単結晶中の6-FMC多形体Aの分子ネットワーク(左)およびそれぞれの化学構造(右)を示す。
図2B】B)回折法によって計算された単結晶中の6-FMC多形体Bの分子ネットワーク(左)およびそれぞれの化学構造(右)を示す。
図3A】A)多形体AのX線粉末回折(XRPD)を示す。
図3B】B)多形体BのX線粉末回折(XRPD)を示す。
図3C】C)多形BのX線構造および多形体Bの測定された構造に基づくマーキュリー(Mercury)(登録商標)を使用して計算されたXRPDシグネチャのオーバーレイを示す。
図4A】A)多形体Aの赤外線(IR)-スペクトルを示す。
図4B】B)多形体Bの赤外線(IR)-スペクトルを示す。
図5A】A)多形体AのDSC融解曲線を示す。
図5B】B)多形体BのDSC融解曲線を示す。
図6A】A)多形体AのDSC冷却曲線を示す。
図6B】B)多形体BのDSC冷却曲線を示す。
図7A】A)多形体Aの熱重量分析を示す。
図7B】B)多形体Bの熱重量分析を示す。
図8A】固体核磁気共鳴(ssNMR)を示し、A)多形体Aの13CssNMRを示す。
図8B】固体核磁気共鳴(ssNMR)を示し、B)多形体Bの13CssNMRを示す。
図9A】超臨界二酸化炭素を用いた結果であって、A)装置に挿入する前の多形体のスペクトル(多形体B;エキストラテックス社(ExtrateX)超臨界流体イノベーション)を示す。超臨界COが導入されている装置のシリンダーに、多形体B(図9A)を装填し、60℃、35MPaの圧力に加熱した。APIが超臨界COに完全に溶解するまでの間の時間は2.5時間に達した。最終生成物のスペクトルを図9Bに示す。多形体Bの多形Aへの変換が起こったことは非常に明白である。粉末は白色であった(図9C)。
図9B】超臨界二酸化炭素を用いた結果であって、B)超臨界二酸化炭素を用いて多形体Bを処理後の多形体のスペクトル(多形体Aを生成する)。を示す。超臨界COが導入されている装置のシリンダーに、多形体B(図9A)を装填し、60℃、35MPaの圧力に加熱した。APIが超臨界COに完全に溶解するまでの間の時間は2.5時間に達した。最終生成物のスペクトルを図9Bに示す。多形体Bの多形Aへの変換が起こったことは非常に明白である。粉末は白色であった(図9C)。
図9C】超臨界二酸化炭素を用いた結果であって、C)超臨界二酸化炭素への6-FMCの曝露後の沈殿を示す。超臨界COが導入されている装置のシリンダーに、多形体B(図9A)を装填し、60℃、35MPaの圧力に加熱した。APIが超臨界COに完全に溶解するまでの間の時間は2.5時間に達した。最終生成物のスペクトルを図9Bに示す。多形体Bの多形Aへの変換が起こったことは非常に明白である。粉末は白色であった(図9C)。
図10】ポロキサマーに基づく製剤における30時間後の多形体AのX線粉末回折(XRPD)は、最初に導入された多形形態Aが本発明の多形体Bへ60%変換することを示す。
図11】製剤化の48時間後、最初に導入された本発明の多形体Aから多形体Bへの100%の変換が起こることを示す。
図12】製剤化の30時間後、最初に導入された本発明の多形体Bからの変換は起こらないことを示す。
図13】モルモットにおいてPTSに対する6-FMCの多形体A(0.12mg)の鼓室内投与の影響を示す。
図14】モルモットにおいてPTSに対する6-FMCの多形B(0.12mg)の単一鼓室内投与の影響を示す。
図15】多形体CのX線粉末回折(XRPD)を示す。
図16】多形体B+多形体TのX線粉末回折(XRPD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。続く実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するために発明者によって発見された技術を表し、したがって、当該実施のための好ましい様式を構成すると見なされことができることを当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される具体的な実施形態において多くの変更を行うことができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同様または同様の結果をさらに得ることができることを理解すべきである。
【0083】
本発明の様々な態様における更なる修正および代替の実施形態は、この明細書を考慮して当業者に明らかであろう。したがって、この明細書は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示することを目的としている。本明細書に示され、記載される本発明の形態は、実施形態の例として取られるべきであることを理解されなければならない。本発明のこの明細書における利益を得た後に、全てが当業者に明らかになるように、要素および材料は、本明細書に説明され、および記載されたものに代わってもよく、部分および工程を逆にしてもよく、本発明の具体的な特徴を独立して利用してもよい。以下の特許請求の範囲に記載されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更を行ってもよい。
【0084】
[実施例]
一般的な手順
1.固体状態NMR(ss-NMR)
ブルカー(Bruker) アドバンス(Advance)III HD、400MHz ssMAS(固体マジック角回転(Magic Angle Spinning))を用いて、4mmローター、および12.5kHzの回転速度、および送信機周波数100MHzで、RTで、ss-NMRを測定した。試料を4mmローター中に充填し乾燥し、室温で測定した。
【0085】
2.XRPD
ストエ(STOE) モデル(Modell) スタディ(Stadi)、検出器:マイテン(Mythen) デクトリス(Dectris)(Cu-K-a-ビームモノクロメーター)を用いて、オープンキャピラリーで2から50の2シータでXRPDを測定した。
【0086】
結晶学的データに基づいて、各XRPDを分析プログラムマーキュリー(Mercury)(登録商標)を用いて算出し、実験的に測定されたXRPDと比較した。
【0087】
試料調製:乾燥試料(約20mg)を、乳鉢および0.5mmのガラスキャピラリーで注意深く粉砕し、それを注意深く溶解して終える。
データ収集:XRPDを、ストエ(STOE) モデル(Modell) スタディ(Stadi)P、検出器:透過幾何学におけるCuKα1放射(1.540598Å)を使用するマイテン(Mythen) デクトリス(Dectris)1K、Cu-長-高精度焦点(Cu-long-fine focus)X線発生装置、および湾曲ゲルマニウムモノクロメータを用いて室温で測定した。試料を、デバイ(Debye)-シェラー(Scherrer)スキャンモードで2~50の2シータで測定した。ピーク位置の精度は、試料調製およびキャピラリーの充填密度などの実験的違いにより、+/-0.2度2シータと定義される。
【0088】
3.IR
IRを、ジャスコ(Jasco) ATRダイヤモンドユニット(ゴールデンゲート(Golden Gate))を用いて標準条件下で測定した。最初に、バックグラウンドを、試料無しで測定する。その後、目に見える量の試料を、ダイヤモンドATRユニットに置き、螺合する。試料を、4000~400cm-1の範囲で、16スキャンで測定した。試料のIRスペクトルを得るために、実際のスキャンからバックグラウンドを差し引く。
【0089】
実施例1-1:6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)の結晶性多形形態(参照多形形態としての多形体A)の調製
方法A
6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)を、n-ヘプタン(50mL/g)に懸濁し、懸濁液を還流下で加熱する。結果的に得られた溶液を、室温にゆっくり冷却し、一晩静置する。沈殿した固体を濾過し、n-ヘプタンを用いて洗浄し、乾燥する。6-FMCの多形形態Aを、88%の収率で淡黄褐色の針状結晶として得る。
【0090】
WO2015044434は、6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)の合成方法を開示し、6-FMCを、からし色の結晶の形態で原生成物として得る。前記結晶は、本発明の多形形態Aである。前記結晶の元素分析は、水および溶媒などの少量の不純物を示し、当該不純物は、白色結晶として現れたこの出願において得られた高純度多形形態Aと比較して、融点の低下を引き起こし得る。
【0091】
方法B
1.「最先端の再結晶化」。磁気撹拌下で、新たに蒸留された200mLのn-ヘプタン中に5グラムの多形体Bを有する懸濁液を加熱還流した。熱源(油浴)が500mL丸底フラスコの溶媒レベルを超えないように注意した。結晶は、200mLに完全に溶解したため、計算量の290mLの代わりに20mLのみをさらに追加した。5分の還流後、熱源を取り除き、攪拌を停止した。高純度の緩やかな結晶成長を可能にするために、溶液を外部攪拌または冷却から避けた。
【0092】
室温で12時間結晶化した後、結晶を真空濾過によって除去し、可能な限り乾燥するように吸引した(プラスチックスパチュラを用いてロス(lose)フィルターケーキを動かす)。半乾燥生成物をフラスコに移し、室温で、2.5Paで2時間乾燥した。乾燥収量は、4.52g(90.4%)であった。
【0093】
この試料を、X線回折を用いて分析し、出発材料と比較し、出発材料についても与えられたスペクトルを確認するために再分析された。
再結晶化生成物のXRPDは、結晶が主に「多形体A」であるが、おそらくより少量のヘプタンが再結晶化のために利用されたため、多形体Bの~20%も存在することを示す。再結晶前後のXRPDは、オーバーレイで示される。残存する多形体Bを除去するために、バッチは更なる再結晶化工程にさらされた。(パート3を参照)。
【0094】
2.厳しい条件下での再結晶化(温度が高すぎる、フラスコが大きすぎる、および溶媒レベルを1cm超える熱源である)。装置を最初の実験のように使用した。3.6gを500mLフラスコ内で120mLのn-ヘプタン中で還流した。溶液は透明に見えたが、溶媒レベルを超えると、加熱工程中に連続的に結晶が形成されたため、時々、結晶は、沸騰ヘプタンを滴下することによって混合物中にすすぎ戻しされた。
【0095】
この混合物(いくつかの前もって作られた結晶を有する)を冷却し、溶液中に急速に結晶を形成した(すでに存在する結晶のため)。結晶化が完了した後、フラスコ内に形成された結晶は、黒い点が存在し、茶色の染みがあるように見えた。
【0096】
3.2回目の再結晶化:250mLフラスコ内で、225mLのヘプタン中に3.9gを有する懸濁液を還流し(金属加熱ブロック)、結果的に得られた透明な溶液を10分間還流で維持した後、加熱源を取り除いた。反応物を冷却し、最初の結晶が現れた場合に、大きな結晶の形成を避けるために溶液を時々撹拌した。3時間静置した後、ふわふわした結晶を、濾過によって取り除き、15mLのn-ヘプタンを用いて洗浄し、吸引乾燥し、より小さなフラスコに集め、および凍結乾燥機内で、室温で、100Paで、一晩乾燥した。結果的に得られた結晶は、最初の再結晶化からよりもふわふわでより多量であるように見える。XRPDは多形体Aのみを示す。
【0097】
別の実験において、我々は、測定中に存在する遊離ヘプタンの影響を評価するために、乾燥粉末として、およびn-ヘプタンに浸されたキャピラリー内で多形体BのXRPDを記録した。これは、「ヘプタン多形体」から検出されたシグナルの全てが、含まれる残留ヘプタンによりアーチファクトでないことを確認するために重要である。追加のヘプタンは、記録されたXRPDに影響を与えないことが確認された。
【0098】
A)X線粉末結晶学
X線粉末回折法は、現在、多形を検出するための確実な方法と見なされる。さらに、単結晶X線回折による非等価構造の証明は、多形構造を裏付けるであろう。
【0099】
多形体Aの結晶構造(図1A)は、X線結晶学によってある程度詳細に特徴付けられた。この多形体は、空間群p2内で、斜方晶系形態で結晶化する。単位格子寸法は、a=5.8986(1)Å、アルファ=90°;b=10.3506(3)Å、ベータ=90°;c=15.4572(5)Å、ガンマ=90°である。図2Aに示されるように、6-FMC分子は、パイ-スタック(pi-stacked)分子および直交T-スタック分子の多次元層にある。構造内に水和物、溶媒和物、または塩に基づく対イオンが存在しないことも明確に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
B)X-RPDデータ
多形体Aの粉末X線回折は、2シータで特徴的なシグナルを有する
【0102】
【表2】
【0103】
C)多形体AのssNMR(図8A
28.7、103.6、111.9、113.4、114.6、114.8、118.9、125.4、131.0、134.0、135.8、155.5、155.7、156.4、156.6、157.6、158.2、および159.3ppm
D)多形体AのFT-IR(図4A
422.64、446.61、523.52、557.49、604.03、635.82、702.67、743.66、802.11、813.34、848.24、893.14、1023.95、1069.75、1152.14、1183.22、1275.15、1363.80、1427.67、1450.25、1480.13、1560.90、および1582.19cm-1
【0104】
実施例1-2:本発明に係る6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)の結晶性多形形態(多形体B)の調製
方法A(イソプロパノール:n-ヘプタン=1:5)
1gの6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)を、イソプロパノールとn-ヘプタンとの混合物中に懸濁し、懸濁液を還流下で加熱する。結果的に得られた溶液を冷却し、沈殿した固体を濾過し、n-ヘプタンを用いて洗浄し、乾燥する。6-FMCの多形体Bを、77%の収率で淡黄褐色粉末として得る。
【0105】
方法B(ジクロロメタン:n-ヘプタン=1:4)
2gの6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)を、6mLのDCMに溶解し、24mLのn-ヘプタンを溶液に添加する。沈殿した固体を濾過し、n-ヘプタンを用いて洗浄し、乾燥する。6-FMCの多形体Bを、62%の収率で淡黄褐色の粉末として得る。
【0106】
方法C(ジクロロメタン:MTBE=1:9.4)
400mgの6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)を、1.6mLのDCMに溶解し、15mLのMTBEを溶液に添加する。結果的に得られた懸濁液を、透明な溶液が得られるまで、65kPa下で、40℃で、ロータリーエバポレーターによって濃縮する。2分後、蒸発を停止し、溶液を冷却し、結果的に得られた懸濁液を濾過する。6-FMCの粗結晶性多形形態Bを、淡褐色固体として得て、乾燥する。収率=75%。
【0107】
方法D(アセトン:MTBE=1:2.8)
400mgの6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)を、3.6mLのアセトンに溶解し、10mLのMTBEを溶液に添加する。結果的に得られた溶液を、透明な溶液が得られるまで、45kPa下で、40℃で、ロータリーエバポレーターによって濃縮する。7分後、結果的に得られた懸濁液を冷却し、濾過する。6-FMCの粗結晶性多形形態Bを、淡褐色固体として得て、乾燥する。収率=61%。
【0108】
方法E(水を用いて遊離塩基の沈殿)
200mgの6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)を、3.2mLのDMSOに溶解する。透明な溶液を、40mLの蒸留水に沈殿させ、形成された沈殿物を遠心分離して落とす。上清を捨て、沈殿物を、蒸留水を用いて3回洗浄し、残留DMSOを除去する。(ボルテックス-遠心分離工程)。最後の洗浄ステップ後、明るい白色固体を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥し、純粋な多形体Bを示す。
【0109】
方法F(NaOHを用いた遊離塩基の沈殿)
200mgの6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)の水性懸濁液を撹拌し、HClを加えてpH2にする。塩形成中に、透明な黄色の溶液が得られる。任意の固体がないことを確実にするために、透明な黄色の溶液を0.45μmシリンジフィルターに通してろ過する。溶液を再度撹拌し、NaOHを用いてpH12に塩基性化する。添加中、遊離塩基の濃厚白色沈殿を観察し、遠心分離して落とす。上清を移し、固体を、蒸留水を用いて、ボルテックスおよび遠心分離プロセス(4回)で繰り返し処理することによって完全に洗浄した。最後の洗浄後、固体を、液体窒素中で凍結し、凍結乾燥する。収率:純粋な多形体Bが85%。
【0110】
A)X線結晶学
多形体Bの結晶構造(図1B)は、X線結晶構造解析によっても詳細に特徴付けられた。この多形体は、空間群p2c内で、単斜晶系形態で結晶化する。単位格子寸法はa=3.8456(2)Å、アルファ=90°、b=17.3249(8)Å、ベータ=91.069(3)°;c=13.7709(7)Å、ガンマ=90°である。図2Bに示されるように、6-FMC分子は、ジグザグバンドの規則正しい層にある。構造内に水和物、溶媒和物、または塩に基づく対イオンが存在しないことも明確に示す。分析は、任意の溶媒が存在しないことを明らかにした。式の図面は、クレームされた化合物の同一性を確認した。
【0111】
【表3】
【0112】
B)XRPD
多形体Bから計算されたXRPDパターンおよび多形体Bの測定されたXRPDパターンを図3Bに、およびオーバーレイとして図3Cに示す。絶対2シータ値のわずかな変化にもかかわらず、パターンは互いに比較してほぼ同一である。
【0113】
【表4】
【0114】
C)多形体BのssNMR(図8B
28.6、107.3、110.2、111.6、112.8、116.6、121.5、126.2、138.0、155.5、156.1、156.7、157.1、157.2、157.7、158.1、および158.4ppm
D)多形体BのFT-IR(図4B
426.62、524.31、558.12、604.22、636.09、704.73、729.05、742.59、803.27、819.54、852.30、864.13、893.22、1024.99、1126.71、1148.77、1183.98、1272.31、1283.82、1333.10、1362.06、1426.98、1448.53、1481.82、1554.80、および1578.94cm-1
【0115】
実施例2:結晶性多形形態のDSCおよび融点測定
100℃を超える温度で加熱を遅くすることによって(1℃/分)、6-FMCの多形体の粉末を攪拌下で加熱した。多形体A試料は~125℃で融解した。加熱および冷却曲線を、示差走査熱量測定(DSC;ネッチ(Netzsch) DSC 204 F1)によって記録した(図5A)。融点を、DSC加熱によって確認した。冷却曲線は65℃から45℃の間の広い範囲を示した(図6A)。
【0116】
多形体B試料は、~123℃で融解した。DSC加熱曲線の分析は、融解工程のわずかな減速によって特徴付けられる遷移相を示した(図5B)。多形体Bの冷却工程中、曲線は45℃~75℃の温度範囲で二相転移を示した(図6B)。これは、多形体Bの下方修正(down-grading)を反映する。回折法分析は、多形体Bから多形体Aへの変換が、完全な変換までの融解状態の持続時間と相関していることを明らかにした。真空昇華は、多形体Aへの完全な変換を生じさせた。
【0117】
実施例3:様々な熱熱条件下での多形体変換(多形体Bから多形体A)
3-1:6-FMCの多形体Bをn-ヘプタンに溶解し、懸濁液を撹拌下で1:45時間加熱した(100℃)。その後、懸濁液を冷却し、室温で15時間撹拌した。沈殿物を濾過し、n-ヘプタンを用いて洗浄し、空気によって乾燥した。結果的に得られたXRPDスペクトルは、形態Aへの変換を明らかにしなかった。
【0118】
3-2:6-FMCの多形体Bをトルエンで希釈し、95℃まで加熱し、室温に冷却した。沈殿物を濾過し、トルエンを用いて洗浄し、気流中で乾燥した。XRPDスペクトルは、多形体Aのいくつかの存在を示したが、この実験は再現性がなかったため、これらの条件下でも、多形体Bから多形体Aへの変換は行われないと想定された。
【0119】
3-3:6-FMCの多形体Bにおける懸濁液をn-ヘプタンで希釈し、110℃まで加熱した。それを還流条件下で、フラスコ内で5時間18分間保持し、続いて室温まで緩やかに冷却し、16時間撹拌した。沈殿物を濾過し、ヘプタンを用いて洗浄し、空気で乾燥した。XRPDは、変化されていない多形体Bを証明した。
【0120】
3-4:6-FMCの多形体Bにおける懸濁液をn-ヘプタンで希釈し、物質が完全に希釈されるまで108℃まで加熱した。多形体Aの種結晶を溶液に加え、それを室温まで穏やかに冷却した。沈殿物を濾過し、n-ヘプタンを用いて洗浄し、空気によって乾燥した。XRPDは変化されていない多形体Bを証明した。
【0121】
実施例4:超臨界COを使用する多形体変換(多形体Bから多形体A)
超臨界COを用いての抽出/多形体変換を、超臨界溶液(REES)システムのエクストレイト(Extrate)X 急速膨張(Rapid Expansion)で、500mgの粗オフホワイト多形体Bを用いて行った。抽出容器を、350バールの圧力で60℃に加熱した。ノズルは、長さ5cm、内径0.25mmのステンレス製キャピラリーで、70℃であった。膨張容器を、1~5Mpaで40℃に加熱した。平衡時間は2.5時間であり噴霧時間は15分であった。工程後、多形体Aを、明るい白色粉末として得る。
【0122】
超臨界COが導入されている装置のシリンダーに、多形体Bをロードし(図9A)、60℃に、35MPaの圧力で加熱した。APIが超臨界COに完全に溶解するまでの時間は2.5時間に達した。最終生成物のスペクトルを、図9Bに示す。多形体Bから多形体Aへの変換が起こったことは非常に明白である。粉末は白色であった(図9C)。
【0123】
実施例5:粉末状の6-FMCの多形体の特性(融解実験および冷却実験)
100℃を超える温度で加熱を遅くすることによって(1℃/分)6-FMCの多形体の粉末を攪拌下で加熱した。多形体A試料は~125℃で融解した。加熱および冷却曲線を、示差走査熱量測定(DSC;ネッチ(Netzsch) DSC 204 F1)によって記録した(図5A)。融点を、DSC加熱によって確認した。冷却曲線は65℃から45℃の間の広い範囲を示した(図6A)。
【0124】
多形体B試料は、~123℃で融解した。DSC加熱曲線の分析は、融解工程のわずかな減速によって特徴付けられる遷移相を示した(図5B)。多形体Bの冷却工程中、曲線は45℃~75℃の温度範囲で二相転移を示した(図6B)。これは、多形体Bの下方修正(down-grading)を反映する。回折法分析は、多形体Bから多形体Aへの変換が、完全な変換までの融解状態の持続時間と相関していることを明らかにした。1~2kPaでの真空昇華は、白色結晶の多形体Aへの完全な変換を生じさせた。
【0125】
実施例6:ポロキサマーに基づく製剤からの6-FMCの抽出プロトコル(製剤中の多形体Aおよび多形体Bの安定性試験)
12mg/mlの6-FMCを有する2mLのポロキサマーに基づく製剤を、4℃に冷却し、ボルテックスして2mLエッペンドルフバイアルに移した。冷却したバイアルを、テーブル遠心分離機を用いて2分間遠心分離し、上清ポリマー溶液を、ピペットを用いて除去して廃棄した。残存する6-FMCを再懸濁し、1.5mLの氷冷ミリ(milli)-Q水を用いてボルテックスし、前述のように遠心分離して落とした。上清水を、ピペットを用いて再び除去し、洗浄手順を3回繰り返す(合計4回の洗浄)。注:遠心分離工程を容易にするために、溶液を冷たく保持する。最後の洗浄後、残存する白色6-FMCを、液体窒素を用いて冷却し、室温で、100Paで一晩凍結乾燥する。
【0126】
30時間後、製剤中の多形形態Aの60%は、多形形態Bに変換される(図10参照)。図11に示されるように、製剤を48時間以上保持することは、多形形態Aから多形形態Bへの100%の変換をもたらす。
【0127】
実施例7:6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)の第3の結晶性多形形態(多形体C)の調製
818mgの6-FMC(多形体B)を、5mLのエタノールと500μLの水との混合物中に溶解した。その後、50mLのヘプタンを加え、結果的に相分離をもたらした。相分離にもかかわらず、ロータリーエバポレーターを、40℃、および14kPaで使用した。ピストン壁上の油膜は剥がれ、突然固くなった。この結晶性固体物質を分析したところ、多形体Bのみを示した。
【0128】
さらに20mLのヘプタンを反応生成物に加え、溶液が透明に見えるまで、還流条件下(温度約100℃)で5分間、標準圧で加熱した。溶液を撹拌しながら一晩冷却し室温にした。より暗い塊はピストン壁上に形成され、一方、均質の結晶パルプはピストンの底上に形成した。均質の結晶パルプは、多形体Cからなる。
【0129】
多形形態CのX-RPDを、図15に示されるように測定し、特徴的なピークを表5に要約する。
【0130】
【表5】
【0131】
実施例8:6-フルオロ-9-メチル-β-カルボリン(6-FMC)の第4の結晶性多形形態(多形体T)の調製
微粉化された250mgの多形体Bの6-FMCを、HClを用いて酸性化し、続いて40℃で超音波処理した。濁った溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH12に塩基性化し、このことは微細な粉末状の沈殿を引き起こした。粉末を、空気乾燥のために薬包紙上に出して線状にした。結果的に得られたXRPDは、新しい多形体と多形体Bとの混合物を明らかにした。割合は、~50%から50%であった。新しい多形体は、多形体A、多形体B、および多形体Cとは明らかに異なり、多形Tと命名された。
【0132】
多形体B/T混合物、余分な乾燥(extra-dry)多形体B/T混合物、および純粋な多形体BのNMR分析を実施し、水の存在を確認した。試料のうちのどれも、重水素化クロロホルムに存在するよりも多くの水を示さなかった。したがって、分析は、水和物のための任意の証拠を明らかにしなかった。
【0133】
多形形態TのX-RPDを、図16に示されるように測定し、特徴的なピークを、表6に要約する。
【0134】
【表6】
【0135】
実施例9:6-FMCの本発明の結晶性多形形態におけるインビボ(in vivo)有効性-モルモットモデル
一般的な手順:原理研究における全てのインビボ(in vivo)試験を、NIHLの確立されたモルモットモデルで実施した。モルモットの生体構造は、人間の生体構造の構造およびサイズの両方で同等であるため、モルモットが選択された。聴覚機能を、脳誘発応答聴力検査(BERA)によって評価した。
【0136】
方法:大人のモルモットは、感熱性ヒドロゲルで製剤化された6-FMC、またはヒドロゲルのみの鼓室内(i.t.)注射を受けた。すべての手順を、麻酔下で行った。BERAを、聴性脳幹反応(ABR)を測定するために、-3日目および14日目に使用した。聴覚刺激は、0~90dBから5dBステップでサイナス音調(sinus tones)(4、8、16kHzで10msの持続時間)であった。これらの測定を、PTSを計算するために使用した。音響外傷は、0日目に行われ、118dB SPLで30分間、単一の連続バンド(8kHzを中心とする4分の1オクターブ)からなった。動物を、音響曝露の終了1時間後に治療した。正円窓を、左耳の水疱のあるところの骨において開けられた小さな穴を介して、外科用顕微鏡下で可視化した。6-FMCまたはビヒクルのいずれかを含む10μLのゲルを、ハミルトンシリンジおよび電動式ポンプを使用して正円窓膜(RWM)に注入した後、穴を、歯科用セメントを用いて閉じた。
【0137】
製剤調製:非イオン性界面活性剤に基づく溶液は、適切な量の非イオン性界面活性剤を水またはPBS緩衝液に溶解し、冷蔵条件下で一晩混合することによって、事前に調製される。非イオン性界面活性剤が完全に溶解すると、必要に応じて浸透圧およびpHを調整する。その後、溶液を、溶解していないゲル粒子を除去するために500μmふるいに通してろ過する。これで、ビヒクルの調合を終える。API(医薬品有効成分(Active Pharmaceutical Ingredient))を含む製剤を、微粉化された6-FMC(50μm以下)を12mg/mLの濃度で添加することによって調製する。図13に示される実験のために、6-FMC製剤を調製直後に適用した。図14の実験のために、6-FMC製剤を、動物実験の少なくとも48時間前に調製した。
【0138】
結果および考察
多形形態Aまたは多形形態Bのいずれかの6-FMCを用いての鼓室内治療は、NIHLの大幅な減少をもたらした(図13および14)。
【0139】
多形体Aの投与
多形形態Aの場合、中程度の効果が達成されることができ、ここで、PTSは平均7.7dB減少した(図13)。全体的に、騒音曝露は、ビヒクル処理された対照において平均22.3dBのPTSにつながり、これは、6-FMCの多形形態Aを用いて処理された動物において約7.7dB減少し、14.6dBの閾値変動になった。
【0140】
多形形態Bの場合、この効果は、全ての調査された周波数にわたってかなりより強く有意であり、少なくとも23.6dBから最大で驚くべき39.9dBまで治療上有用な減少を結果的にもたらした(図14)。重要なことに、ある周波数で、PTSは0に減少し、このことは、6-FMCの多形体Bを用いての治療が、騒音性聴力損失から完全に回復する可能性を有することを実証する。全体的に、騒音曝露は、ビヒクル処理された対照において平均34.7dBのPTSにつながり、これは、6-FMCの多形形態Bをもちいて処理された動物において平均34.1dBで有意に減少し、0.6dBの閾値変動になった。
【0141】
6-FMCの多形形態Aおよび多形形態Bを使用した動物実験から有効性データを比較すると、多形形態Bは、多形形態Aよりもはるかに優れた有効性を有することを実証する。多形形態Bの使用は、多形形態Aを用いて処理された動物において観察されるような平均7.7dBの減少と比較して、平均34.1dBのPTSの減少につながる。さらに、多形形態Bを用いて処理された動物は、図14において4kHzおよび8kHz周波数において見られるように、PTSは0に達し、騒音性聴覚損失から完全に回復する可能性を有することが実証された。モルモットのNIHLモデルを使用するインビボ(in vivo)研究からの結果を総合すると、6-FMCの多形形態Bにおける単一の鼓室内適用は、PTSの著しい改善につながり、多形形態Aよりも優れた効果を有することを示す。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】