(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】抗血小板剤拮抗剤としてのトロンボソーム
(51)【国際特許分類】
A61K 35/19 20150101AFI20221020BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221020BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20221020BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20221020BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/4365 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/4465 20060101ALI20221020BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20221020BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K35/19 Z
A61K45/00
A61P7/04
A61K9/19
A61K47/02
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/36
A61K31/616
A61K31/675
A61K31/4365
A61K31/4465
A61K39/395 N
A61K31/197
A61K31/195
A61K38/12
A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509583
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020046525
(87)【国際公開番号】W WO2021034719
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508180585
【氏名又は名称】セルフィアー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】モスコウィッツ キース アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】イシュラー ブレイデン カール
(72)【発明者】
【氏名】ディッカーソン ウィリアム マシュー
(72)【発明者】
【氏名】タンドン ナレンドラ ナス
(72)【発明者】
【氏名】リー アンバー ニコル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB40
4C076CC14
4C076DD25Z
4C076DD26
4C076DD60Z
4C076DD66
4C076EE30
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4C076FF70
4C084AA19
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4C084NA14
4C084ZA53
4C084ZC75
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4C085EE01
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4C085GG03
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4C085GG06
4C086AA01
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4C087NA14
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4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA44
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA64
4C206MA75
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA53
4C206ZC75
(57)【要約】
いくつかの実施形態では、対象における凝固障害を治療する方法が本明細書に提供され、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含み、この対象は、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における正常な止血を回復させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、
前記組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含み、前記対象が、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている、
方法。
【請求項2】
対象における正常な止血を回復させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、
血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、前記組成物を形成することを含むプロセスによって、前記組成物が調製されており、前記対象が、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている、
方法。
【請求項3】
対象における凝固障害を治療する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、
前記組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含み、前記対象が、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている、
方法。
【請求項4】
対象における凝固障害を治療する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、
血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、前記組成物を形成することを含むプロセスによって、前記組成物が調製されており、前記対象が、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている、
方法。
【請求項5】
手術のために対象を準備させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、
前記組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含み、前記対象が、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている、
方法。
【請求項6】
手術のために対象を準備させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、
血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、前記組成物を形成することを含むプロセスによって、前記組成物が調製されており、前記対象が、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている、
方法。
【請求項7】
前記手術が、緊急手術である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記手術が、予定された手術である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、抗血小板剤によって治療されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗血小板剤による治療が、停止される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗血小板剤による治療が、継続される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
対象における抗血小板剤の効果を改善する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、
前記組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、
方法。
【請求項13】
対象における抗血小板剤の効果を改善する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、
血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、前記組成物を形成することを含むプロセスによって、前記組成物が調製されている、
方法。
【請求項14】
前記抗血小板剤の前記効果が、前記抗血小板剤の過剰摂取の結果である、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、抗線溶剤をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗線溶剤が、ε-アミノカプロン酸(EACA)、トラネキサム酸、アプロチニン、アミノメチル安息香酸、フィブリノゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記血小板または血小板誘導体に、前記抗線溶剤が充填される、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗血小板剤が、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、サプリメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗血小板剤が、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、テルトロバン、ピコタミド、エリノグレル、チクロピジン、イブプロフェン、ボラパキサール、アトパキサール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗血小板剤が、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、テルトロバン、ピコタミド、エリノグレル、チクロピジン、イブプロフェン、ボラパキサール、アトパキサール、シロスタゾール、プロスタグランジンE1、エポプロステノール、ジピリダモール、トレプロスチニルナトリウム、サルポグレラート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
投与が、局所投与を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
投与が、非経口投与を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
投与が、静脈内投与を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
投与が、筋肉内投与を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
投与が、髄腔内投与を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
投与が、皮下投与を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
投与が、腹腔内投与を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、前記投与工程の前に乾燥される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、前記乾燥工程の後に再水和される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、前記投与工程の前に凍結乾燥される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、前記凍結乾燥工程の後に再水和される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記インキュベーション剤が、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される1つ以上の塩を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記インキュベーション剤が、担体タンパク質を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記緩衝液が、HEPES、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、1種以上の糖を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
1種以上の糖が、トレハロースを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1種以上の糖が、ポリスクロースを含む、請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記1種以上の糖が、デキストロースを含む、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、有機溶媒を含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記血小板または血小板誘導体が、トロンボソームを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月16日に出願された米国仮出願第62/887,923号および2020年8月13日に出願された米国仮出願第63/065,337号の優先権を主張し、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、薬物誘発性凝固障害の治療としてのトロンボソームの使用を説明する役割を果たす。アスピリンまたはクロピドグレルなどの抗血小板薬の使用は、出血する可能性を増加させ得る。ここで、トロンボソームが、この阻害を回避または克服して止血を回復させ得ることを実証する。
【背景技術】
【0003】
背景
抗血小板薬(本明細書では抗血小板剤とも称される)は、米国成人集団において一般的であり、血小板作用を阻害する複数の機序を用いる。抗血小板薬は、多数の脳血管疾患および心臓血管疾患を治療かつ/または予防するために使用される。
【0004】
しかしながら、抗血小板薬は、多数の薬物関連有害事象(ADE)に関与している。これらの薬物に関連する過剰摂取および有害事象は、患者集団に深刻な出血および関連する合併症のリスクをもたらす。加えて、抗血小板薬によって治療されている対象は、療法の停止が対象を心臓発作、脳卒中、または死亡のリスクの増加に曝す可能性があるが、手術の前に薬物を減らされる必要がある場合があるため、手術において追加の合併症に直面している。
【0005】
したがって、抗血小板剤誘発性凝固障害などの凝固障害の治療に対するニーズ、ならびに抗血小板薬を服用する対象を手術のために準備させるための解決策に対するニーズが当該技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態では、対象における凝固障害を治療する方法が本明細書に提供され、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、対象における凝固障害を治療する方法が本明細書に提供され、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、対象における正常な止血を回復させる方法が本明細書に提供され、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、対象における正常な止血を回復させる方法が本明細書に提供され、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象を手術のために準備させる方法が本明細書に提供され、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。手術は、緊急手術であり得る。手術は、予定された手術であり得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、対象を手術のために準備させる方法が本明細書に提供され、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。実装形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。手術は、緊急手術であり得る。手術は、予定された手術であり得る。
【0012】
上記の方法のいくつかの実施形態では、対象は、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている。いくつかの実施形態では、抗血小板剤による治療は、停止され得る。いくつかの実施形態では、抗血小板剤による治療は、継続され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象における抗血小板剤の効果を改善する方法が本明細書に提供され、この方法は、その改善を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象における抗血小板剤の効果を改善する方法が本明細書に提供され、この方法は、その改善を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤の効果は、抗血小板剤の過剰摂取の結果であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、およびサプリメントからなる群から選択され得る。
【0017】
本明細書の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。投与は、局所投与を含み得る。投与は、非経口投与を含み得る。投与は、静脈内投与を含み得る。投与は、筋肉内投与を含み得る。投与は、髄腔内投与を含み得る。投与は、皮下投与を含み得る。投与は、腹腔内投与を含み得る。組成物は、投与工程の前に乾燥され得る。組成物は、乾燥工程の後に再水和され得る。組成物は、投与工程の前に凍結乾燥され得る。組成物は、凍結乾燥工程の後に再水和され得る。インキュベーション剤は、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される1つ以上の塩を含み得る。インキュベーション剤は、担体タンパク質を含み得る。緩衝液は、HEPES、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、またはそれらの組み合わせを含み得る。組成物は、1種以上の糖を含み得る。1種以上の糖は、トレハロースを含み得る。1種以上の糖は、ポリスクロースを含み得る。1種以上の糖は、デキストロースを含み得る。組成物は、有機溶媒を含み得る。血小板または血小板誘導体は、トロンボソームを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】増加濃度のカングレロールによる、またはよらない、10μMのアデノシン二リン酸(ADP)活性化によって誘発された、積分凝集曲線として表される、多血小板血漿におけるカングレロール(「Cang」)の光透過凝集測定を示す。
【
図2】T-TAS(登録商標)技術を使用した血小板閉塞に対するカングレロール、ADP、またはそれらの組み合わせの効果を示す。
【
図3】
図2からのデータセットについての曲線下面積(AUC)の棒グラフである。
図2からの複製データセットを平均として提示する。
【
図4】
図2からのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
図2からの複製データセットを平均として提示する。
【
図5】T-TAS(登録商標)技術を使用した血小板閉塞に対する再水和の60、90、または115分後のADPおよびカングレロールの存在下および非存在下での多血小板血漿に補充されたトロンボソーム(「thromb」;300,000/μL)の効果を示す。
【
図6】
図5からのデータセットについてのAUCの棒グラフである。
図5からの複製データセットを平均として示す。
【
図7】
図5からのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
図5からの複製データセットを平均として示す。
【
図8】コラーゲン(10μg/mL)および様々な濃度のエプチフィバチド(「Epti」)で処理された血小板(1μL当たり250,000個の血小板の濃度)の凝集実験からのAUCの棒グラフである。
【
図9】T-TAS(登録商標)技術を使用した全血に対する様々な濃度でのエプチフィバチドの効果を示す。
【
図10】T-TAS(登録商標)技術を使用した様々な濃度のエプチフィバチドを含む、および含まない、全血に対するトロンボソーム(「Tsome」)補充(約200,000/uL)の効果を示す。
【
図11】
図10からのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
【
図12】
図10からのデータセットについてのAUCの棒グラフである。
【
図13】トロンボソーム(様々なロット)が乏血小板血漿(PPP)中のエプチフィバチドの存在下で閉塞することを示す。
【
図14】
図13からのデータセットについてのAUCの棒グラフである。
図13からの複製データセットを平均として示す。
【
図15】
図13からのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
図13からの複製データセットを平均として示す。
【
図16】様々な濃度のアスピリン(「ASA」)を含む、および含まない、コラーゲン(10μg/mL)またはアラキドン酸(「AA」;500μg/mL)で処理された血小板の凝集実験からのAUCの棒グラフである。
【
図17】T-TAS(登録商標)技術を使用した剪断下でのコラーゲンでコーティングされたプラスチックに対する応答によって測定した、全血、様々な濃度のアスピリン(ASA)で処理された全血、および様々な濃度のアスピリンで処理され、トロンボソーム(約200,000~400,000/μL)を補充された全血についての閉塞時間の棒グラフである。
【
図18】トロンボプラスチンおよびコラーゲンでコーティングされたT-TAS ARチップにおける閉塞時間によって測定した、ASA(200マイクロモル)、カングレロール(1マイクロモル)、AP2 6F1(40マイクログラム)の存在下で全血中のトロンボソームによって促進される血栓形成の回復を示す。
【
図19】閉塞(圧力)超過時間によって測定した、ASA(200マイクロモル)、カングレロール(1マイクロモル)、および6F1(40マイクログラム/mL)の存在下で全血中のトロンボソームによって促進される血栓形成の回復を示す。
【
図20】AUCによって測定した、高剪断下でのプラスチック固定化ブタコラーゲンとの相互作用に対するアスピリン(ASA)阻害化全血(500マイクロモル)へのトロンボソーム補充の効果を示す。
【
図21】経時的な閉塞(圧力)によって測定した、高剪断下でのプラスチック固定化ブタコラージュとの相互作用に対するアスピリン(ASA)阻害化全血(500マイクロモル)へのトロンボソーム補充の効果を示す。
【
図22】AUCによって測定した、高剪断下でのプラスチック固定化ブタコラージュとの相互作用に対するアスピリン(ASA)阻害化全血(100マイクロモル)へのトロンボソーム補充の効果を示す。
【
図23】経時的な閉塞(圧力)によって測定した、高剪断下でのプラスチック固定化ブタコラージュとの相互作用に対するアスピリン(ASA)阻害化全血(100マイクロモル)へのトロンボソーム補充の効果を示す。
【
図24】正常およびアスピリン阻害化血漿へのトロンボソーム補充のピークトロンビンに対する効果を示す。
【
図25】
図25Aは、T-TAS(登録商標)技術を使用した血小板閉塞に対するカングレロール単独またはカングレロール+トロンボソームの効果を示す。
図25Bは、
図25Aからのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
【
図26】
図26Aは、T-TAS(登録商標)技術を使用した血小板閉塞に対するチロフィバン単独、またはチロフィバンとランダムドナーの血小板(RDP)もしくはトロンボソームとの効果を示す。
図26Bは、
図26Aからのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
【
図27】
図27Aは、T-TAS(登録商標)技術を使用した血小板閉塞に対するエプチフィバチド単独、またはエプチフィバチドとRDPもしくはトロンボソームとの効果を示す。
図27Bは、
図27Aからのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
【
図28】
図28Aは、T-TAS(登録商標)技術を使用した血小板閉塞に対するAP2単独、またはAP2とRDPもしくはトロンボソームとの効果を示す。
図28Bは、
図28Aからのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
【
図29】
図29Aは、T-TAS(登録商標)技術を使用したアスピリン療法の対象から採取されたPRPに対するトロンボソームの効果を示す。
図29Bは、
図29Aからのデータセットについての閉塞時間の棒グラフである。
【
図30】
図30Aは、トロンビン生成に対するアスピリン療法の対象から採取されたPRPに対するトロンボソームの効果を示す。
図30Bは、トロンボソームを添加したか、または添加していないアスピリン療法の対象から採取されたPRPについてのトロンビン生成パラメータの棒グラフである。
【
図31】
図31Aは、緩衝液、アラキドン酸、またはコラーゲンを添加したイブプロフェン療法の対象から採取されたPRPの凝集測定を示す。
図31Bは、トロンボソームを含むか、または含まないイブプロフェン療法の対象から採取されたPRPに対するADPの効果を示す。
【
図32】超薬理学的用量のクロピドグレルによって処置されたマウスの出血時間に対するトロンボソームの投薬の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明の実施形態を詳細に記載する前に、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、その用語が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または同等である任意の方法および材料が本発明の実践に使用され得るが、ここでは、好ましい方法および材料を記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、刊行物が引用される方法および/また材料と関連して方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、あらゆる組み込まれた刊行物との矛盾を制御する。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明示的に示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「糖」への言及は、1種以上の糖、および当業者に既知のそれらの同等物への言及を含む。さらに、同等の用語を使用して記載され得る用語の使用は、それらの同等の用語の使用を含む。したがって、例えば、「対象」という用語の使用は、「患者」、「人」、「動物」、「ヒト」、および医学的処置を受ける対象を示すために当該技術分野で使用される他の用語を含むことを理解されたい。単一の概念を包含するために複数の用語を使用することは、使用されるそれらの用語のみに概念を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0021】
本明細書で使用される用語が、単に特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。さらに、値の範囲が開示される場合、当業者は、開示される範囲内の他のすべての特定の値が、本明細書で各特定の値または範囲を開示する必要なしに、これらの値およびそれらが表す範囲によって本質的に開示されることを理解するであろう。例えば、開示される1~10の範囲は、1~9、1~5、2~10、3.1~6、1、2、3、4、5などを含む。さらに、開示される範囲の各々は、範囲のより低い値については最大5%低いこと、および範囲のより高い値については最大5%高いことを含む。例えば、開示される4~10の範囲は、3.8~10.5を含む。この概念は、本書では「約」という用語によって捉えられている。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「血小板」という用語は、全血小板、断片化された血小板、血小板誘導体、またはトロンボソームを含み得る。上記の定義内の「血小板」は、例えば、全血中の血小板、血漿中の血小板、選択された血漿タンパク質で任意選択的に補充された緩衝液中の血小板、低温貯蔵された血小板、乾燥された血小板、凍結保存された(cryopreserved)血小板、解凍された凍結保存された(cryopreserved)血小板、再水和された乾燥された血小板、再水和された凍結保存された(cryopreserved)血小板、凍結保存された(lyopreserved)血小板、解凍された凍結保存された(lyopreserved)血小板、または再水和された凍結保存された(lyopreserved)血小板を含み得る。「血小板」は、ヒトなどの哺乳動物の「血小板」であり得るか、または非ヒト哺乳動物などの「血小板」であり得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「トロンボソーム」(本明細書では、特に実施例および図では、「Tsome」または「Ts」とも称される場合がある)は、インキュベーション剤(例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤のうちのいずれか)で処理され、凍結保存(例えば、凍結乾燥)されている、血小板誘導体である。いくつかの場合では、トロンボソームは、プールされた血小板から調製され得る。トロンボソームは、周囲温度で、乾燥形態で2~3年の貯蔵寿命を有し得、直ちに注入するために数分以内に滅菌水で再水和され得る。トロンボソームの1つの例は、血小板減少性患者における急性出血の治療のための臨床試験にある、THROMBOSOMES(登録商標)である。典型的には、第IIa因子、第VIIa因子、第IX因子、第Xa因子、第XI因子、組織因子、もしくは凝血因子(例えば、第II因子、第VII因子、第IX因子、または第X因子)のビタミンK依存性合成を阻害する薬剤、または抗トロンビン(例えば、抗トロンビンIII)を活性化する薬剤は、抗凝固剤であると見なされる。抗凝固剤の他の機序は、既知である。抗凝固剤としては、ダビガトラン、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、ヘパリン、および低分子量ヘパリンが挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「抗血小板剤」は、抗血栓剤であり、かつ抗凝固剤を含まない。抗血小板剤の例としては、アスピリン(アセチルサリチル酸またはASAとも称される)、カングレロール(例えば、KENGREAL(登録商標))、チカグレロール(例えば、BRILINTA(登録商標))、クロピドグレル(例えば、PLAVIX(登録商標))、プラスグレル(例えば、EFFIENT(登録商標))、エプチフィバチド(例えば、INTEGRILIN(登録商標))、チロフィバン(例えば、AGGRASTAT(登録商標))、およびアブシキシマブ(例えば、REOPRO(登録商標))が挙げられる。本開示の目的のために、抗血小板剤は、P2Y受容体(例えば、P2Y12)、糖タンパク質IIb/IIIaを阻害する薬剤、またはトロンボキサンシンターゼもしくはトロンボキサン受容体に拮抗する薬剤を含む。トロンボキサンA2アンタゴニストの非限定的な例は、アスピリン、テルトロバン、およびピコタミドである。P2Y受容体アンタゴニストの非限定的な例としては、カングレロール、チカグレロール、エリノグレル、クロピドグレル、プラスグレル、およびチクロピジンが挙げられる。糖タンパク質IIb/IIIaの非限定的な例としては、アブシキシマブ、エプチフィバチド、およびチロフィバンが挙げられる。NSAID(例えば、イブプロフェン)もまた、本開示の目的のための抗血小板剤であると見なされる。抗血小板剤の他の機序は、既知である。抗血小板剤としては、PAR1アンタゴニスト、PAR4アンタゴニスト、GPVIアンタゴニスト、およびalpha2betalコラーゲン受容体アンタゴニストも挙げられる。PAR-1アンタゴニストの非限定的な例としては、ボラパキサールおよびアトパキサールが挙げられる。本明細書で使用される場合、アスピリンは、抗血小板剤であるが、抗凝固剤ではないと見なされる。抗血小板剤のさらなる非限定的な例としては、シロスタゾール、プロスタグランジンE1、エポプロステノール、ジピリダモール、トレプロスチニルナトリウム、およびサルポグレラートが挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、テルトロバン、ピコタミド、エリノグレル、チクロピジン、イブプロフェン、ボラパキサール、アトパキサール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、テルトロバン、ピコタミド、エリノグレル、チクロピジン、イブプロフェン、ボラパキサール、アトパキサール、シロスタゾール、プロスタグランジンE1、エポプロステノール、ジピリダモール、トレプロスチニルナトリウム、サルポグレラート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、本明細書に記載の抗血小板剤のうちのいずれか2つ(またはそれ以上)などの、複数の抗血小板剤を含み得る。いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アスピリンおよびクロピドグレルであり得る。
【0026】
カングレロールは、クロピドグレル、チカグレロール、およびプラスグレルと同様に、血小板上のP2Y12(ADP)受容体を遮断する。カングレロールは、いくつかの場合では、このクラスの薬物の代表として使用され得る。カングレロールは、クロピドグレルおよびプラスグレルとは異なり、生物学的に活性となるために肝代謝を必要としない。
【0027】
エプチフィバチドは、血小板上のGPIIb-IIIa受容体のフィブリン結合の役割を遮断するペプチド治療薬である。薬物は、典型的には、180μg/kgボーラスとしてIVを介して投与され、続いて2μg/kg/分の連続注入が行われる。エプチフィバチドの血中濃度は、典型的には、約1~2μMである。出血時間は、一般に、薬物停止から約1時間以内に正常に戻る。
【0028】
アスピリンは、不可逆的なシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤である。血小板中のCOX酵素は、トロンボキサンA2、プロスタグランジンE2、およびプロスタシクリン(PGI2)の合成に関与する。アスピリンは、血小板内のCOX酵素を永久的に不活性化し、かつ血小板は、新たな酵素を合成するための核物質を有しないため、アスピリン効果を克服するためには、新たな血小板を生成しなければならない。トロンボキサンA2、プロスタグランジンE2、およびプロスタシクリン(PGI2)なしでは、血小板は、その凝集促進活性が制限される。多くの人は、望ましくない凝血事象を防止するために、低用量のアスピリンを維持される。アスピリンのバイオアベイラビリティは、投与経路によって大きく異なり、500μMのピークで単回500mg用量のIV、および44μMで、経口で同じ用量である。
【0029】
抗血小板クラスの薬物は、心不全、脳卒中などをもたらす望ましくない凝血エピソードを防止するために広く使用されている。多くの場合では、抗血小板薬は、拮抗または停止される必要があり得る。事前に計画された手術の状況のように、事前に通知されている場合には、抗血小板薬の用量が手術の前に停止され、手術中の望ましくない出血を防止し得る場合がある。抗血小板剤が迅速に拮抗する必要がある場合には、拮抗剤は、典型的には、容易には入手できないか、高価であるか、または患者に重大なリスクをもたらす。迅速な抗血小板拮抗が必要である場合には、血小板輸血が典型的には投与されるが、これに対する応答は、多くの場合、部分的な拮抗のみである。この拮抗過程の注意点は、新たに注入された血小板自体が循環薬物抗血小板活性に対して感受性であるのに対し、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、トロンボソームを含む)はそうではないことである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、トロンボソームを含む)は、活性拮抗剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、トロンボソームを含む)の止血活性は、抗血小板薬に屈しない。
【0030】
いくつかの例示的な抗血小板剤および潜在的な拮抗方法を以下に記載する。
【0031】
アセチルサリチル酸(ASA;アスピリン)-アスピリンは、血小板においてCOX-1遮断剤として機能し、これは、血小板由来のトロンボキサン形成を不可逆的に阻害することによって、血小板を不活性にする。臨床的には、アスピリンは、緊急事態における血小板輸血によって、または今後手術が予定されている治療を停止することによって拮抗する場合がある。
【0032】
クロピドグレル(例えば、PLAVIX(登録商標))-クロピドグレルは、ADPが血小板上でその受容体に結合することを防止するように作用する。ADP結合は、血小板形状の変化および凝集をもたらす。クロピドグレルは、不可逆的である。臨床的には、クロピドグレルは、緊急事態における血小板輸血によって、または今後手術が予定されている治療を停止することによって拮抗する場合がある。
【0033】
カングレロール(例えば、KENGREAL(登録商標))-カングレロールは、ADPが血小板上でその受容体に結合することを防止するように作用する。ADP結合は、血小板形状の変化および凝集をもたらす。クロピドグレルは、可逆的であり、血小板機能は、注入を停止してから約1時間後に戻る。臨床的には、これは、一般に、拮抗が手順の後に必要とされる場合に好ましい。
【0034】
チカグレロール(例えば、BRILINTA(登録商標))-チカグレロールは、ADPがその受容体に結合することを防止し、かつ逆アゴニストとして作用する。チカグレロールは、可逆的であり、血小板機能は、最後の投与量の約72時間後に戻り得る。チカグレロールの作用の拮抗は、最後の用量後の時間によって影響を受け得る。最後の用量が24時間よりも前であった場合、血小板輸血は、結果に拮抗するための治療薬であり得る場合がある。
【0035】
エフィエント(例えば、PRASUGREL(登録商標))-エフィエントは、ADPがその受容体に結合することを防止するように作用し、かつ不可逆的アンタゴニストとして作用する。不可逆的なアンタゴニストであるため、その効果を克服するためには、新しい血小板を形成しなければならない。臨床的には、エフィエントは、緊急事態における血小板輸血によって、または今後手術が予定されている治療を停止することによって拮抗する。
【0036】
エプチフィバチド(インテグリリン)-エプチフィバチドは、GpIIb/IIIaを遮断するように作用し、かつ可逆的なアンタゴニストとして作用する。臨床的には、インテグリリンは、緊急事態における血小板輸血によって、または今後手術が予定されている治療を停止することによって拮抗する。
【0037】
血小板注入は、抗血小板薬の治療法として現在使用されているが、血小板注入は、これらの薬物の効果を弱めるためにのみ作用する。いくつかの実施形態では、トロンボソームは、これらの薬物に対して反応性ではなく、凝血を助けるそれらの能力を維持する。これにより、トロンボソームを介した治療は完全に独自のものとなり、製品に新たな用途が導入される。
【0038】
血小板由来の製品は、抗凝固薬/抗血小板薬の治療法としては現在使用されておらず、現在承認されている抗血小板剤の拮抗剤は存在しない。したがって、緊急治療(手術前、外傷など)は、典型的には、出血を回避または緩和するための包括的な予防策である。非限定的な例としては、血漿、赤血球、および抗線溶剤の注入が挙げられる。血小板誘導体(例えば、凍結保存された血小板(例えば、トロンボソーム))は、これらの一般的な治療に対する有効な代替策または補完であり得る。
【0039】
いかなる特定の理論にも拘束されることなく、トロンボソームは、抗凝固剤によって抑制されるものを超えてトロンビン生成を増強するために凝固促進性負荷電表面を提供することによって、少なくとも部分的に作用し得ると考えられている。同様に、いかなる特定の理論にも拘束されることなく、トロンボソームは、循環血小板に結合し、かつそれと共凝集することによって、少なくとも部分的に作用し得ると考えられている。
【0040】
出血を制御し、治癒を改善するための製品および方法が本明細書に記載される。本明細書に記載の製品および方法はまた、抗血小板剤(例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸またはASAとも称される)、カングレロール(例えば、KENGREAL(登録商標))、チカグレロール(例えば、BRILINTA(登録商標))、クロピドグレル(例えば、PLAVIX(登録商標))、プラスグレル(例えば、EFFIENT(登録商標))、エプチフィバチド(例えば、INTEGRILIN(登録商標))、チロフィバン(例えば、AGGRASTAT(登録商標))、またはアブシキシマブ(例えば、REOPRO(登録商標)))の活性に対抗するために使用され得る。本明細書に記載の製品および方法は、創傷の閉鎖および治癒を助け得る実施形態を対象とする。
【0041】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物は、患者の表面上または患者の内部の創傷に送達され得る。様々な実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物は、接着包帯、圧縮包帯、液体溶液、エアロゾル、マトリックス組成物、およびコーティングされた縫合、または他の医療的閉鎖を含むがこれらに限定されない、選択された形態で適用され得る。実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物は、患者の表面上の罹患領域の全部または一部のみに投与され得る。他の実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物は、例えば、血流を介して、全身的に投与され得る。実施形態では、血小板誘導体の適用は、2日間または3日間、好ましくは5~10日間、または最も好ましくは最大14日間、止血効果をもたらし得る。
【0042】
いくつかの実施形態は、対象における凝固障害を治療する方法を提供し、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0043】
いくつかの実施形態は、対象における凝固障害を治療する方法を提供し、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0044】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、凝固障害は、抗血小板剤の結果である。
【0045】
いくつかの実施形態は、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている対象における凝固障害を治療する方法を提供し、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0046】
いくつかの実施形態は、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている対象における凝固障害を治療する方法を提供し、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0047】
いくつかの実施形態は、対象における正常な止血を回復させる方法を提供し、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0048】
いくつかの実施形態は、対象における正常な止血を回復させる方法を提供し、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0049】
いくつかの実施形態は、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている対象における正常な止血を回復させる方法を提供し、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0050】
いくつかの実施形態は、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている対象における正常な止血を回復させる方法を提供し、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0051】
本明細書に記載の組成物はまた、いくつかの場合では、対象を手術のために準備させるために投与され得る。抗血小板剤を服用している一部の患者にとって、手術の前に抗血小板剤の投与量を低減させることは困難または不可能であり得る(例えば、外傷または他の緊急手術の場合)。抗血小板剤を服用している一部の患者にとって、手術の前に抗血小板剤の投与量を低減させることは不得策である場合がある(例えば、抗血小板剤の投与量が経時的に低減された場合に、患者が血栓性事象(例えば、深部静脈血栓症、肺塞栓症、または脳卒中)のリスクに曝されるであろう場合)。
【0052】
したがって、いくつかの実施形態は、対象を手術のために準備させる方法を提供し、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0053】
いくつかの実施形態は、対象を手術のために準備させる方法を提供し、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0054】
いくつかの実施形態は、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている対象を手術のために準備させる方法を提供し、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0055】
いくつかの実施形態は、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている対象を手術のために準備させる方法を提供し、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、手術は、緊急手術(例えば、外傷の場合)または予定された手術であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤による治療は、(例えば、手術の準備において)停止され得る。いくつかの実施形態では、抗凝固剤による治療は、継続し得る。
【0058】
いくつかの実施形態は、対象における抗血小板剤の効果を改善する方法を提供し、この方法は、その改善を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0059】
いくつかの実施形態は、対象における抗血小板剤の効果を改善する方法を提供し、この方法は、その改善を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0060】
いくつかの場合では、抗血小板剤の投与量が不正確であるため、抗血小板剤の効果を改善する必要があり得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗血小板剤の効果は、抗血小板剤の過剰摂取後に改善され得る。いくつかの場合では、別の薬物(例えば、第2の抗血小板剤)との相互作用の可能性のため、抗血小板剤の効果を改善する必要があり得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗血小板剤の効果は、そのうちの少なくとも1つが抗血小板剤である、2つ以上の薬物の誤った投薬後に改善され得る。
【0061】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、組成物は、抗線溶剤などの活性剤をさらに含み得る。抗線溶剤の非限定的な例としては、ε-アミノカプロン酸(EACA)、トラネキサム酸、アプロチニン、アミノメチル安息香酸、およびフィブリノゲンが挙げられる。いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体に、抗線溶剤などの活性剤が充填され得る。
【0062】
血液(例えば、対象の血液)の凝血パラメータは、本明細書に記載の方法の間の任意の適切な時点で評価され得る。例えば、血液の1つ以上の凝血パラメータは、例えば、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の必要性を決定するために、本明細書に記載の凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の前に評価され得る。別の例として、血液の1つ以上の凝血パラメータは、例えば、投与される組成物の有効性を決定するために、組成物の追加の投与が正当であるかどうかを決定するために、または外科的処置を実施することが安全であるかどうかを決定するために、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の後に評価され得る。
【0063】
したがって、本明細書に記載の方法のうちのいずれかは、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の前に、血液の1つ以上の凝血パラメータを評価する工程、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の後に、血液の1つ以上の凝血パラメータを評価する工程、またはその両方を含み得る。
【0064】
任意の適切な方法を使用して、血液の凝血パラメータを評価し得る。方法の非限定的な例としては、プロトロンビン時間アッセイ、国際標準化比(INR)、トロンビン生成(TGA;例えば、ピークトロンビン、内因性トロンビン産生能(ETP)、およびラグタイムなどのパラメータを生成するために使用され得る)、トロンボエラストグラフィー(TEG)、活性化凝血時間(ACT)、および部分的トロンボプラスチン時間(PTTまたはaPTT)が挙げられる。
【0065】
トロンビン生成
トロンビン生成アッセイは、蛍光ペプチドのトロンビン酵素切断および蛍光分子の放出の結果として生じる凝固促進剤を介した試料活性化後のトロンビンの産生を測定した。ピークトロンビンは、産生される最大トロンビンの尺度、ラグタイムは、トロンビン産生開始までの時間、およびETPは、潜在的に産生される総トロンビンである。
【0066】
いくつかの実施形態では、患者は、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の前に、約60nM~約170nM、例えば、約65nM~約170nM、例えば、約65nM~約120nM、例えば、約80nMのピークトロンビンを有し得る。
【0067】
TEGは、経時的な凝血塊強度のプロットを介して内因性止血を評価する。塩化カルシウム(CaCl
2)は、典型的には、開始試薬として使用される。TEG波形(例えば、
図16を参照)は、凝血についての情報を提供し得る複数のパラメータを有する。
R時間=反応時間-試験の開始から初期フィブリン形成までの待ち時間。
K=動態-初期フィブリン形成の速度、ある特定のレベルの凝血塊強度(例えば、20mmの振幅)を達成するのにかかる時間
アルファ角=RとKとの間の線の傾き-凝血魂形成の速度を測定する。
MA=最大振幅(mm)-フィブリン凝血塊の最終的な強度を表す。
A
30=最大振幅に到達した30分後の振幅-溶解相の速度を表す。
【0068】
凝固性低下状態の血液では、R時間は増加し、MAは減少する。R時間は、典型的には、MAよりも広い応答範囲を提供する。
【0069】
総血栓形成分析システム(T-TAS(登録商標)、FUJIMORI KOGYO CO.,LTD)では、試料は、鉱油を使用して、コラーゲンでコーティングされたマイクロチャネルを通される。圧力の変化は、血栓形成を評価するために使用される。閉塞開始時間は、10kPaに到達するのにかかる時間であり、閉塞時間は、ARチップ(例えば、Zacros品目番号、TC0101)を使用して各Δ80kPaに到達するのにかかる時間である。メーカーによれば、ARチップは、主にフィブリンおよび活性化された血小板からなる混合された白色血栓の形成を分析するために使用され得る。これは、コラーゲンおよび組織因子でコーティングされた流路(幅300μm×高さ50μm)を有し、凝血機能および血小板機能を分析するために使用され得る。比較して、PLチップは、主に活性化された血小板からなる血小板血栓の形成を分析するために使用され得る。PLチップは、コラーゲンのみでコーティングされた流路を有し、血小板機能を分析するために使用され得る。
【0070】
ACTアッセイは、凝血時間(tACT)を測定するための最も基本的であるが、恐らく最も確かな方法であり、その周囲に凝血塊が形成されるときの磁石の重力に対する抵抗によって決定される。典型的なドナーの血液は、CaCl2のみを使用して、約200~300秒のtACTを有する。
【0071】
いくつかの実施形態は、対象におけるトロンビン生成を増加させる方法を提供し、この方法は、その増加を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0072】
いくつかの実施形態は、対象におけるトロンビン生成を増加させる方法を提供し、この方法は、その増加を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0073】
いくつかの実施形態は、対象におけるピークトロンビンを増加させる方法を提供し、この方法は、その増加を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0074】
いくつかの実施形態は、対象におけるピークトロンビンを増加させる方法を提供し、この方法は、その増加を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0075】
いくつかの実施形態では、投与の前に、対象のピークトロンビンは、66nM未満(例えば、64nM、62nM、60nM、55nM、50nM、45nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、または5nM未満)であった。いくつかの実施形態では、投与の後に、対象のピークトロンビンは、66nM超(例えば、68nM、70nM、75nM、80nM、85nM、90nM、95nM、100nM、110nM、120nM、130nM、140nM、または150nM超)である。いくつかの実施形態では、投与の後に、対象のピークトロンビンは、66~166nMである。ピークトロンビンは、任意の適切な方法によって測定され得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、対象を治療するのに有効な、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)の量を含む、組成物の量である。そのような量の血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、任意の適切な投与量の、対象に投与され得る本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ある用量の血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を含む組成物は、約1.0×107粒子~約1.0×1010粒子、例えば、約1.6×107粒子(例えば、トロンボソーム)/kg~約1.0×1010粒子/kg(例えば、約1.6×107~約5.1×109粒子/kg、約1.6×107~約3.0×109粒子/kg、約1.6×107~約1.0×109粒子/kg、約1.6×107粒子~約5.0×108粒子/kg、約1.6×107~約1.0×108粒子/kg、約1.6×107~約5.0×107粒子/kg、約5.0×107~約1.0×108粒子/kg、約1.0×108~約5.0×108粒子/kg、約5.0×108~約1.0×109粒子/kg、約1.0×109~約5.0×109粒子/kg、または約5.0×109~約1.0×1010粒子/kg)を含み得る。
【0077】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、局所投与される。いくつかの実施形態では、局所投与は、溶液、クリーム、ゲル、懸濁液、パテ、粒子、または粉末を介した投与を含み得る。いくつかの実施形態では、米国特許出願第15/776,255号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対応するPCT公開第WO2017/040238号(例えば、段落[013]~[069])に記載のように、局所投与は、包帯(例えば、接着包帯または圧縮包帯)または医療的閉鎖(例えば、縫合、ステープル)を介した投与を含み得、例えば、血小板誘導体は、その中に埋め込まれ得る。
【0078】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、非経口投与される。
【0079】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、静脈内投与される。
【0080】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、筋肉内投与される。
【0081】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、髄腔内投与される。
【0082】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、皮下投与される。
【0083】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、腹腔内投与される。
【0084】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、投与工程の前に乾燥される。本方法のいくつかの実施形態では、組成物は、投与工程の前に凍結乾燥される。本方法のいくつかの実施形態では、組成物は、乾燥工程または凍結乾燥工程の後に再水和される。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アスピリン(アセチルサリチル酸またはASAとも称される);カングレロール(例えば、KENGREAL(登録商標))、チカグレロール(例えば、BRILINTA(登録商標))、クロピドグレル(例えば、PLAVIX(登録商標))、またはプラスグレル(例えば、EFFIENT(登録商標))などのP2Y12阻害剤;エプチフィバチド(例えば、INTEGRILIN(登録商標))、チロフィバン(例えば、AGGRASTAT(登録商標))、またはアブシキシマブ(例えば、REOPRO(登録商標))などの糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤;ならびにハーブサプリメントなどのサプリメント;またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。サプリメントの例としては、生姜、チョウセンニンジン、イチョウ、緑茶、キャバ、ノコギリヤシ、ボルド(Peumus boldus)、タンジン(Salvia miltiorrhiza)、ドンクアイ(Angelica sinensis)、パパイヤ(Carica papaya)、魚油、およびビタミンEが挙げられる。ハーブサプリメントの例としては、生姜、チョウセンニンジン、およびイチョウが挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アスピリンである。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、カングレロール(例えば、KENGREAL(登録商標))である。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、チカグレロール(例えば、BRILINTA(登録商標))である。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、クロピドグレル(例えば、PLAVIX(登録商標))である。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、プラスグレル(例えば、EFFIENT(登録商標))である。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、エプチフィバチド(例えば、INTEGRILIN(登録商標))である。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、チロフィバン(例えば、AGGRASTAT(登録商標))である。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アブシキシマブ(例えば、REOPRO(登録商標))である。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、テルトロバンである。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、ピコタミドである。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、エリノグレルである。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、チクロピジンである。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、イブプロフェンである。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、ボラパキサールである。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、アトパキサールである。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、シロスタゾールである。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、プロスタグランジンE1である。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、エポプロステノールである。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、ジピリダモールである。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、トレプロスチニルナトリウムである。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、サルポグレラートである。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、サプリメントである。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗血小板剤は、ハーブサプリメントである。
【0109】
いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体を含む組成物を再水和することは、血小板に水性液体を添加することを含む。いくつかの実施形態では、水性液体は、水である。いくつかの実施形態では、水性液体は、水溶液(例えば、緩衝液)である。いくつかの実施形態では、水性液体は、生理食塩水である。いくつかの実施形態では、水性液体は、懸濁液である。
【0110】
いくつかの実施形態では、再水和された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、40国際単位(IU)以上での凝血に関連するすべての個々の因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、および第IX因子)を示す凝固因子レベルを有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、約10%未満、例えば、約8%未満、例えば、約6%未満、例えば、約4%未満、例えば、約2%未満、例えば、約0.5%未満の血小板膜の架橋を、膜上に存在するタンパク質および/または脂質を介して有する。いくつかの実施形態では、再水和された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、約10%未満、例えば、約8%未満、例えば、約6%未満、例えば、約4%未満、例えば、約2%未満、例えば、約0.5%未満の血小板膜の架橋を、膜上に存在するタンパク質および/または脂質を介して有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、少なくとも約0.2μm(例えば、少なくとも約0.3μm、少なくとも約0.4μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約0.6μm、少なくとも約0.7μm、少なくとも約0.8μm、少なくとも約0.9μm、少なくとも約1.0μm、少なくとも約1.2μm、少なくとも約1.5μm、少なくとも約2.0μm、少なくとも約2.5μm、または少なくとも約5.0μm)の粒径(例えば、直径、最大寸法)を有する。いくつかの実施形態では、粒径は、約5.0μm未満(例えば、約2.5μm未満、約2.0μm未満、約1.5μm未満、約1.0μm未満、約0.9μm未満、約0.8μm未満、約0.7μm未満、約0.6μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満、または約0.3μm未満)である。いくつかの実施形態では、粒径は、約0.3μm~約5.0μm(例えば、約0.4μm~約4.0μm、約0.5μm~約2.5μm、約0.6μm~約2.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.5μm~約0.9μm、または約0.6μm~約0.8μm)である。
【0113】
いくつかの実施形態では、少なくとも50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%)の凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、約0.3μm~約5.0μm(例えば、約0.4μm~約4.0μm、約0.5μm~約2.5μm、約0.6μm~約2.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.5μm~約0.9μm、または約0.6μm~約0.8μm)の範囲の粒径を有する。いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)の最大99%(例えば、最大約95%、最大約80%、最大約75%、最大約70%、最大約65%、最大約60%、最大約55%、または最大約50%)は、約0.3μm~約5.0μm(例えば、約0.4μm~約4.0μm、約0.5μm~約2.5μm、約0.6μm~約2.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.5μm~約0.9μm、または約0.6μm~約0.8μm)の範囲にある。いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)の約50%~約99%(例えば、約55%~約95%、約60%~約90%、約65%~約85%、約70%~約80%)は、約0.3μm~約5.0μm(例えば、約0.4μm~約4.0μm、約0.5μm~約2.5μm、約0.6μm~約2.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.5μm~約0.9μm、または約0.6μm~約0.8μm)の範囲にある。
【0114】
いくつかの実施形態では、血小板は、対象を治療する前に、例えば液体培地中で、単離される。
【0115】
いくつかの実施形態では、血小板は、ドナー由来の血小板である。いくつかの実施形態では、血小板は、アフェレーシス工程を含むプロセスによって得られる。いくつかの実施形態では、血小板は、プールされた血小板である。
【0116】
いくつかの実施形態では、血小板は、複数のドナーからプールされる。複数のドナーからプールされたそのような血小板は、本明細書では、プールされた血小板とも称され得る。いくつかの実施形態では、ドナーは、5人より多い、例えば、10人より多い、例えば、20人より多い、例えば、50人より多い、例えば、最大約100人のドナーである。いくつかの実施形態では、ドナーは、約5~約100人、例えば、約10~約50人、例えば、約20~約40人、例えば、約25~約35人である。プールされた血小板は、本明細書に記載の組成物のうちのいずれかを作製するために使用され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、血小板は、インビトロで誘導される。いくつかの実施形態では、血小板は、培養物中で誘導されるか、または調製される。いくつかの実施形態では、血小板の調製は、巨核球の培養物から血小板を誘導または増殖することを含む。いくつかの実施形態では、血小板の調製は、胚性幹細胞(ESC)および/または人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、ヒト多能性幹細胞(PCS)の培養物から血小板(または巨核球)を誘導または増殖することを含む。
【0118】
したがって、いくつかの実施形態では、血小板は、本明細書に記載の対象を治療する前に調製される。いくつかの実施形態では、血小板は、凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、血小板は、凍結保存される。
【0119】
いくつかの実施形態では、血小板またはプールされた血小板は、インキュベーション剤とのインキュベーションの前に、約6.0~約7.4のpHに酸性化され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、血小板を約6.5~約6.9のpHに酸性化することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、血小板を約6.6~約6.8のpHに酸性化することを含む。いくつかの実施形態では、酸性化は、プールされた血小板にクエン酸デキストロース(ACD)を含む溶液を添加することを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、血小板は、インキュベーション剤とのインキュベーションの前に単離される。いくつかの実施形態では、本方法は、遠心分離を使用することによって血小板を単離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約1000×g~約2000×gの相対的遠心力(RCF)で行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約1300×g~約1800×gの相対遠心力(RCF)で行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約1500×gの相対遠心力(RCF)で行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約1分~約60分間行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約10分~約30分間行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約30分間行われる。
【0121】
インキュベーション剤は、任意の適切な成分を含み得る。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、液体培地を含み得る。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、および血液もしくは血液製剤中に見出され得るか、または血小板を乾燥させるのに有用であることが既知である任意の他の塩、あるいはこれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせから選択される1つ以上の塩を含み得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、および血液または血液製剤中に見出され得る任意の他の塩などの1つ以上の塩を含む。例示的な塩としては、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約0.5mM~約100mMの1つ以上の塩を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約0.5mM~約100mM(例えば、約0.5~約2mM、約2mM~約90mM、約2mM~約6mM、約50mM~約100mM、約60mM~約90mM、約70~約85mM)の1つ以上の塩を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約5mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、または約80mMの1つ以上の塩を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびその2つの組み合わせから選択される1つ以上の塩を、約0.5mM~約2mMの濃度で含む。
【0123】
好ましくは、これらの塩は、全血中に見出されるのとほぼ同じ量で、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物中に存在する。
【0124】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、担体タンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、約0.05%~約1.0%(w/v)の量で存在する。
【0125】
インキュベーション剤は、血小板に対して非毒性であり、かつ本明細書に提供されるプロセス中に溶液が曝露される温度で溶液に適切な緩衝能力を提供する、任意の緩衝液であり得る。したがって、緩衝液は、リン酸緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、重炭酸塩/炭酸、例えば、重炭酸ナトリウム緩衝液、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)、およびトリス系緩衝液、例えば、トリス緩衝生理食塩水(TBS)などの、市販の既知の生体適合性緩衝液のうちのいずれかを含み得る。同様に、これは、以下の緩衝液:プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸);ベンゼンペンタカルボン酸;マレイン酸;2,2-ジメチルコハク酸;EDTA;3,3-ジメチルグルタル酸;ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノ-トリス(ヒドロキシメチル)-メタン(BIS-TRIS);ベンゼンヘキサカルボン酸(メリト酸);N-(2-アセトアミド)イミノ-二酢酸(ADA);ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸;ピロリン酸;1,1-シクロペンタン二酢酸(3,3-テトラメチレン-グルタル酸);ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES);N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES);1,1-シクロヘキサン二酢酸;3-6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸(EMTA;ENDCA);イミダゾール;2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド(CHOLAMINE);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES);2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸(ベータ-メチルトリカルバリル酸);2-(N-モルホリノ)プロパン-スルホン酸(MOPS);リン酸;およびN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、1つ以上の緩衝液、例えば、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)、または重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約5~約100mMの1つ以上の緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、1つ以上の緩衝液の約5~約50mM(例えば、約5mM~約40mM、約8mM~約30mM、約10mM~約25mM)を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約10mM、約20mM、約25mM、または約30mMの1つ以上の緩衝液を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース、マンノース、デキストロース、およびキシロースを含む、単糖および二糖などの1つ以上の糖を含む。いくつかの実施形態では、糖は、単糖である。いくつかの実施形態では、糖は、二糖である。いくつかの実施形態では、糖は、単糖、二糖、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、糖は、非還元性二糖である。いくつかの実施形態では、糖は、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース(例えば、デキストロース)、マンノース、またはキシロースを含む。いくつかの実施形態では、糖は、トレハロースを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、デンプンを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、スクロースおよびエピクロロヒドリンのポリマーであるポリスクロースを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約10mM~約1,000mMの1つ以上の糖を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約50~約500mMの1つ以上の糖を含む。実施形態では、1つ以上の糖は、10mM~500mMの量で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の糖は、50mM~200mMの量で存在する。実施形態では、1つ以上の糖は、100mM~150mMの量で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の糖は、凍結乾燥剤であり、例えば、いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、トレハロース、ポリスクロース、またはそれらの組み合わせを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を含む組成物は、水または生理食塩水のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物は、DMSOを含み得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、アルコール(例えば、エタノール)などの有機溶媒を含む。そのようなインキュベーション剤において、溶媒の量は、0.1%~5.0%(v/v)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、約0.1%(v/v)~約5.0%(v/v)、例えば、約0.3%(v/v)~約3.0%(v/v)、または約0.5%(v/v)~約2%(v/v)の範囲であり得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、好適な有機溶媒としては、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、ハロゲン化溶媒、炭化水素、ニトリル、グリコール、硝酸アルキル、水、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル(IPE)、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン(例えば、1,4-ジオキサン)、アセトニトリル、プロピオニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、アニソール、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、エチレングリコール、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルアミド、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、エタノール、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、エタノール、DMSO、またはそれらの組み合わせを含む。エタノールなどの有機溶媒の存在は、血小板、血小板誘導体、またはトロンボソーム(例えば、凍結乾燥された血小板誘導体)の処理において有益であり得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、水性培地の存在下で血小板にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、DMSOを含む培地の存在下でインキュベートされる。
【0131】
いくつかの実施形態では、1つ以上の他の成分は、血小板内でインキュベートされ得る。例示的な成分は、インキュベーションプロセス中の血小板凝集および活性化を防止するために、プロスタグランジンE1もしくはプロスタシクリン、および/またはEDTA/EGTAを含み得る。
【0132】
使用され得るインキュベーション剤組成物の非限定的な例を表1~5に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【表3】
表3.緩衝液Bは、例えば、フローサイトメトリーのために血小板をインキュベートする場合に使用され得る。このようなインキュベーションは、暗所で、室温で行われ得る。アルブミンは、緩衝液Bの任意選択的な成分である。
【0136】
【0137】
表4は、別の例示的なインキュベーション剤である。pHは、NaOHで7.4に調節され得る。アルブミンは、緩衝液Bの任意選択的な成分である。
【0138】
【0139】
表5は、別の例示的なインキュベーション剤である。
【0140】
いくつかの実施形態では、血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)は、15~45℃の異なる温度、または約37℃で、異なる持続時間、インキュベーション剤とともにインキュベートされる。
【0141】
いくつかの実施形態では、血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)は、10,000血小板/μL~10,000,000血小板/μL、例えば、50,000血小板/μL~2,000,000血小板/μL、例えば、100,000血小板/μL~500,000血小板/μL、例えば、150,000血小板/μL~300,000血小板/μL、例えば、200,000血小板/μLの濃度で液体培地を含むインキュベーション剤において懸濁液を形成する。
【0142】
血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)は、例えば、少なくとも約5分間(例えば、少なくとも約20分間、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、約48時間、または少なくとも約48時間)などの異なる持続時間、インキュベーション剤とともにインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、血小板は、約48時間以内(例えば、約20分間以内、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、または約42時間以内)、インキュベーション剤とともにインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、血小板は、約10分間~約48時間(例えば、約20分間~約36時間、約30分間~約24時間、約1時間~約20時間、約2時間~約16時間、約10分間~約24時間、約20分間~約12時間、約30分間~約10時間、または約1時間~約6時間)、インキュベーション剤とともにインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、血小板、血小板誘導体、またはトロンボソームは、5分間~48時間、例えば、10分間~24時間、例えば、20分間~12時間、例えば、30分間~6時間、例えば、1時間~3時間、例えば、約2時間という期間、インキュベーション剤とともにインキュベートされる。
【0143】
いくつかの実施形態では、血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)は、異なる温度で、インキュベーション剤とともにインキュベートされる。実施形態では、インキュベーションは、37℃で実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、4℃~45℃、例えば、15℃~42℃で実施される。例えば、実施形態では、インキュベーションは、35℃~40℃(例えば、37℃)で、110~130(例えば、120)分間、および24~48時間もの長さにわたって実施される。いくつかの実施形態では、血小板は、本明細書に開示されるような異なる持続時間、かつ15~45℃、または約37℃の温度で、インキュベーション剤とともにインキュベートされる。
【0144】
いくつかの実施形態では、血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)に、1つ以上の活性剤が充填される。いくつかの実施形態では、血小板に、抗線溶剤が充填され得る。抗線溶剤の非限定的な例としては、ε-アミノカプロン酸(EACA)、トラネキサム酸、アプロチニン、アミノメチル安息香酸、およびフィブリノゲンが挙げられる。
【0145】
血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)に活性剤(例えば、抗線溶剤)を充填することは、任意の適切な方法によって実施され得る。例えば、PCT公開番号第WO2020/113090(A1)号、同第WO2020/113101(A1)号、同第WO2020/113035(A1)号、および同第WO2020/112963(A1)号を参照されたい。一般に、充填は、血小板を抗線溶剤と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、充填は、活性剤をインキュベーション剤と組み合わせることによって実施され得る。いくつかの実施形態では、充填は、インキュベーション工程とは別個の工程で実施され得る。いくつかの実施形態では、充填は、インキュベーション工程の前工程で実施され得る。いくつかのそのような実施形態では、活性剤は、本明細書に記載のインキュベーション剤のうちのいずれかにおいて溶液または懸濁液として血小板に供給され得、これは、インキュベーション工程に使用されるインキュベーション剤と同一であり得るか、または異なり得る。いくつかの実施形態では、充填工程は、インキュベーション工程中に実施され得る。いくつかのそのような実施形態では、活性剤は、(例えば、インキュベーション中に、固体として、または溶液もしくは懸濁液において)インキュベーション剤に添加され得る。いくつかの実施形態では、充填工程は、インキュベーション工程の後の工程において実施され得る。いくつかのそのような実施形態では、本明細書に記載のインキュベーション剤のうちのいずれかにおいて溶液または懸濁液として血小板に供給され得、これは、インキュベーション工程に使用されるインキュベーション剤と同一であり得るか、または異なり得る。
【0146】
活性剤は、任意の適切な濃度で血小板に適用され得る。いくつかの実施形態では、活性剤は、約1μM~約100mM(例えば、約1μM~約10μm、約1μM~約50μM、約1μM~約100μM、約1μM~約500μM、約1μM~約1mM、約1μM~約10mM、約1μM~約25mM、約1μM~約50mM、約1μM~約75mM、約10μM~約100mM、約50μM~約100mM、約100μM~約100mM、約500μM~約100mM、約1mM~約100mM、約10mM~約100mM、約25mM~約100mM、約50mM~約100mM、約75mM~約100mM、約10μM~約100mM、約200μM~約1mM、約800μM~約900μM、約400μM~約800μM、約500μM~約700μM、約600μM、約5mM~約85mM、約20mM~約90mM、約25mM~約75mM、約30mM~約90mM、約35mM~約65mM、約40mM~約60mM、約50mM~約60mM、約40mM~約70mM、約45mM~約55mM、または約50mM)の濃度で(インキュベーション剤または別の溶液もしくは懸濁液の一部として)血小板に適用され得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板を乾燥させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、乾燥工程は、血小板を凍結乾燥(lyophilizing)することを含む。いくつかの実施形態では、乾燥工程は、血小板を凍結乾燥(freeze-drying)することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥工程から得られた血小板を再水和することをさらに含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、血小板は、療法または機能アッセイに使用する前に、(例えば、トロンボソームを生成するために)低温貯蔵されるか、凍結保存されるか、または凍結乾燥される。
【0149】
5%未満の最終残留水分含有量を達成し得る限り、血小板を乾燥させるための任意の既知の技術が、本開示に従って使用され得る。好ましくは、本技術は、2%未満、例えば、1%、0.5%、または0.1%の最終残留水分含有量を達成する。好適な技術の非限定的な例は、凍結乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))および噴霧乾燥である。好適な凍結乾燥法を、表Aに提示する。追加の例示的な凍結乾燥法は、米国特許第7,811,558号、米国特許第8,486,617号、および米国特許第8,097,403号に見出され得る。例示的な噴霧乾燥法は、窒素を乾燥ガスとして、本開示によるインキュベーション剤と組み合わせること、次いで、二流体ノズル構成を有するGEA Processing Engineering,Inc.(Columbia MD,USA)製のGEA Mobile Minor噴霧乾燥機に混合物を導入すること、混合物を150℃~190℃の範囲の入口温度、65℃~100℃の範囲の出口温度、0.5~2.0バールの範囲の原子速度、5~13kg/時の範囲の原子速度、60~100kg/時の範囲の窒素使用、および10~35分間の実行時間で噴霧することを含む。噴霧乾燥における最終工程は、乾燥混合物を優先的に収集することである。いくつかの実施形態における乾燥組成物は、-20℃以下~90℃以上の範囲である温度で、少なくとも6か月間安定である。
【0150】
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように得られる血小板を乾燥させる工程、例えば、本明細書に開示されるように得られる血小板を凍結乾燥させる工程は、血小板を凍結乾燥剤(例えば、非還元性二糖)とともにインキュベートすることを含む。したがって、いくつかの実施形態では、血小板を調製するための方法は、血小板を凍結乾燥剤とともにインキュベートすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、糖である。いくつかの実施形態では、糖は、非還元性二糖などの二糖である。
【0152】
いくつかの実施形態では、血小板は、血小板を凍結乾燥剤とともにインキュベートするのに十分な時間、かつ好適な温度で、凍結乾燥剤とともにインキュベートされる。好適な凍結乾燥剤の非限定的な例は、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース(例えば、デキストロース)、マンノース、およびキシロースを含む、単糖および二糖などの糖である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤の非限定的な例としては、血清アルブミン、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプン、およびヒドロキシエチルデンプン(HES)が挙げられる。いくつかの実施形態では、例示的な凍結乾燥剤としては、高分子量ポリマーが挙げられ得る。「高分子量」とは、約70kDa以上かつ最大1,000,000kDaの平均分子量を有するポリマーを意味する。非限定的な例は、スクロースおよびエピクロロヒドリンのポリマー(例えば、ポリスクロース)である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、ポリスクロースである。任意の量の高分子量ポリマーが凍結乾燥剤として使用され得るが、約3%~10%(w/v)、例えば、3~7%、例えば、6%の最終濃度を達成する量が使用されることが好ましい。
【0153】
本明細書に開示される組成物に使用するための例示的な糖は、トレハロースである。糖の同一性にかかわらず、糖は、任意の好適な量で組成物中に存在し得る。例えば、糖は、1mM~1Mの量で存在し得る。実施形態では、糖は、10mM~500mMの量で存在する。いくつかの実施形態では、糖は、20mM~200mMの量で存在する。実施形態では、糖は、40mM~100mMの量で存在する。様々な実施形態では、糖は、上に列挙された範囲内の異なる特定の濃度で存在し、当業者は、本明細書で各々を具体的に列挙する必要なしに、様々な濃度を即座に理解することができる。複数の糖が組成物中に存在する場合、各糖は、上に列挙された範囲および特定の濃度に応じた量で存在し得る。
【0154】
本明細書に提供される組成物を作製するための本明細書に提供されるプロセス内で、凍結乾燥剤の添加は、乾燥の前の最後の工程であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、または他の成分などの組成物の他の成分と同時に、またはその前に添加される。いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、インキュベーション剤に添加され、完全に混合されて乾燥溶液を形成し、乾燥容器(例えば、ガラスまたはプラスチックの血清バイアル、凍結乾燥バッグ)中に分配され、溶液を乾燥させて乾燥組成物を形成することを可能にする条件に供される。
【0155】
血小板を凍結保護剤とともにインキュベートする工程は、温度と併せて、凍結保護剤が血小板に接触するのに十分な、好ましくは、少なくともある程度まで血小板に組み込まれるのに十分な時間と同程度の長さである、充填に好適な時間、血小板をインキュベートすることを含み得る。実施形態では、インキュベーションは、約1分間~約180分間以上行われる。
【0156】
血小板を凍結保護剤とともにインキュベートする工程は、割り当てられた時間の量と併せて選択される場合、インキュベートに好適な温度で、血小板および凍結保護剤をインキュベートすることを含み得る。一般に、組成物は、凍結を上回る温度で、凍結保護剤が血小板に接触するのに少なくとも十分な時間、インキュベートされる。実施形態では、インキュベーションは、37℃で実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、20℃~42℃で実施される。例えば、実施形態では、インキュベーションは、110~130(例えば、120)分間、35℃~40℃(例えば、37℃)で実施される。
【0157】
様々な実施形態では、凍結乾燥バッグは、ガスが、処理中にバッグの少なくとも一部または全部を通過することを可能にするように構成された、ガス透過性バッグである。ガス透過性バッグは、バッグの内部内のガスを、周囲環境に存在する大気ガスと交換することを可能にし得る。ガス透過性バッグは、酸素、窒素、水、空気、水素、および二酸化炭素などのガスに対して透過性であり得、本明細書に提供される組成物においてガス交換が生じることを可能にする。いくつかの実施形態では、ガス透過性バッグは、二酸化炭素がバッグの壁を通って透過することを可能にすることによって、バッグの内部内に存在する二酸化炭素の一部の除去を可能にする。いくつかの実施形態では、バッグからの二酸化炭素の放出は、バッグ内に収容される組成物の所望のpHレベルを維持するのに有利であり得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書におけるプロセスの容器は、閉鎖または密封されたガス透過性容器である。いくつかの実施形態では、容器は、閉鎖または密封され、かつその一部がガス透過性である、容器である。いくつかの実施形態では、容器に収容される製品の体積に対する、閉鎖または密封された容器(例えば、バッグ)のガス透過性部分の表面積(以下、「SA/V比」と称される)は、本明細書に提供される組成物のpH維持を改善するように調整され得る。例えば、いくつかの実施形態では、容器のSA/V比は、少なくとも約2.0cm2/mL(例えば、少なくとも約2.1cm2/mL、少なくとも約2.2cm2/mL、少なくとも約2.3cm2/mL、少なくとも約2.4cm2/mL、少なくとも約2.5cm2/mL、少なくとも約2.6cm2/mL、少なくとも約2.7cm2/mL、少なくとも約2.8cm2/mL、少なくとも約2.9cm2/mL、少なくとも約3.0cm2/mL、少なくとも約3.1cm2/mL、少なくとも約3.2cm2/mL、少なくとも約3.3cm2/mL、少なくとも約3.4cm2/mL、少なくとも約3.5cm2/mL、少なくとも約3.6cm2/mL、少なくとも約3.7cm2/mL、少なくとも約3.8cm2/mL、少なくとも約3.9cm2/mL、少なくとも約4.0cm2/mL、少なくとも約4.1cm2/mL、少なくとも約4.2cm2/mL、少なくとも約4.3cm2/mL、少なくとも約4.4cm2/mL、少なくとも約4.5cm2/mL、少なくとも約4.6cm2/mL、少なくとも約4.7cm2/mL、少なくとも約4.8cm2/mL、少なくとも約4.9cm2/mL、または少なくとも約5.0cm2/mLであり得る。いくつかの実施形態では、容器のSA/V比は、最大約10.0cm2/mL(例えば、最大約9.9cm2/mL、最大約9.8cm2/mL、最大約9.7cm2/mL、最大約9.6cm2/mL、最大約9.5cm2/mL、最大約9.4cm2/mL、最大約9.3cm2/mL、最大約9.2cm2/mL、最大約9.1cm2/mL、最大約9.0cm2/mL、最大約8.9cm2/mL、最大約8.8cm2/mL、最大約8.7cm2/mL、最大約8.6cm2/mL、最大約8.5cm2/mL、最大約8.4cm2/mL、最大約8.3cm2/mL、最大約8.2cm2/mL、最大約8.1cm2/mL、最大約8.0cm2/mL、最大約7.9cm2/mL、最大約7.8cm2/mL、最大約7.7cm2/mL、最大約7.6cm2/mL、最大約7.5cm2/mL、最大約7.4cm2/mL、最大約7.3cm2/mL、最大約7.2cm2/mL、最大約7.1cm2/mL、最大約6.9cm2/mL、最大約6.8cm2/mL、最大約6.7cm2/mL、最大約6.6cm2/mL、最大約6.5cm2/mL、最大約6.4cm2/mL、最大約6.3cm2/mL、最大約6.2cm2/mL、最大約6.1cm2/mL、最大約6.0cm2/mL、最大約5.9cm2/mL、最大約5.8cm2/mL、最大約5.7cm2/mL、最大約5.6cm2/mL、最大約5.5cm2/mL、最大約5.4cm2/mL、最大約5.3cm2/mL、最大約5.2cm2/mL、最大約5.1cm2/mL、最大約5.0cm2/mL、最大約4.9cm2/mL、最大約4.8cm2/mL、最大約4.7cm2/mL、最大約4.6cm2/mL、最大約4.5cm2/mL、最大約4.4cm2/mL、最大約4.3cm2/mL、最大約4.2cm2/mL、最大約4.1cm2/mL、または最大約4.0cm2/mLであり得る。いくつかの実施形態では、容器のSA/V比は、約2.0~約10.0cm2/mL(例えば、約2.1cm2/mL~約9.9cm2/mL、約2.2cm2/mL~約9.8cm2/mL、約2.3cm2/mL~約9.7cm2/mL、約2.4cm2/mL~約9.6cm2/mL、約2.5cm2/mL~約9.5cm2/mL、約2.6cm2/mL~約9.4cm2/mL、約2.7cm2/mL~約9.3cm2/mL、約2.8cm2/mL~約9.2cm2/mL、約2.9cm2/mL~約9.1cm2/mL、約3.0cm2/mL~約9.0cm2/mL、約3.1cm2/mL~約8.9cm2/mL、約3.2cm2/mL~約8.8cm2/mL、約3.3cm2/mL~約8.7cm2/mL、約3.4cm2/mL~約8.6cm2/mL、約3.5cm2/mL~約8.5cm2/mL、約3.6cm2/mL~約8.4cm2/mL、約3.7cm2/mL~約8.3cm2/mL、約3.8cm2/mL~約8.2cm2/mL、約3.9cm2/mL~約8.1cm2/mL、約4.0cm2/mL~約8.0cm2/mL、約4.1cm2/mL~約7.9cm2/mL、約4.2cm2/mL~約7.8cm2/mL、約4.3cm2/mL~約7.7cm2/mL、約4.4cm2/mL~約7.6cm2/mL、約4.5cm2/mL~約7.5cm2/mL、約4.6cm2/mL~約7.4cm2/mL、約4.7cm2/mL~約7.3cm2/mL、約4.8cm2/mL~約7.2cm2/mL、約4.9cm2/mL~約7.1cm2/mL、約5.0cm2/mL~約6.9cm2/mL、約5.1cm2/mL~約6.8cm2/mL、約5.2cm2/mL~約6.7cm2/mL、約5.3cm2/mL~約6.6cm2/mL、約5.4cm2/mL~約6.5cm2/mL、約5.5cm2/mL~約6.4cm2/mL、約5.6cm2/mL~約6.3cm2/mL、約5.7cm2/mL~約6.2cm2/mL、または約5.8cm2/mL~約6.1cm2/mLの範囲であり得る。
【0159】
ガス透過性の閉鎖された容器(例えば、バッグ)またはその一部は、1つ以上の様々なガス透過性材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、ガス透過性バッグは、フルオロポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびペルフルオロアルコキシ(PFA)ポリマーなど)、ポリオレフィン(低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)など)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーン、およびそれらの任意の組み合わせを含む、1つ以上のポリマーから作製され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、熱処理を受け得る。加熱は、約25℃超(例えば、約40℃超、50℃、60℃、70℃、80℃以上)の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、加熱は、約70℃~約85℃(例えば、約75℃~約85℃、または約75℃もしくは80℃)で実行される。加熱の温度は、加熱が実施される時間の長さと併せて選択され得る。任意の好適な時間が使用され得るが、典型的には、凍結乾燥された血小板は、少なくとも1時間、ただし36時間以下、加熱される。したがって、実施形態では、加熱は、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、または少なくとも30時間実施される。例えば、凍結乾燥された血小板は、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、または30時間加熱され得る。非限定的な例示的な組み合わせとしては、乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を30℃超の温度で少なくとも30分間加熱すること、乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を50℃超の温度で少なくとも10時間加熱すること、乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を75℃超の温度で少なくとも18時間加熱すること、および乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を80℃で24時間加熱することが挙げられる。いくつかの実施形態では、加熱は、キャップ付きバイアルなどの密封された容器内で実施され得る。いくつかの実施形態では、密封された容器は、加熱の前に真空に供される。特にアルブミンまたはポリスクロースなどの凍結保護剤の存在下での熱処理工程は、凍結乾燥された血小板の安定性および貯蔵寿命を改善させることが見出されている。実際に、熱処理工程なしの凍結乾燥保護剤と比較して、血清アルブミンまたはポリスクロースと、凍結乾燥後の熱処理工程との特定の組み合わせで、有利な結果が得られている。凍結保護剤(例えば、スクロース)は、任意の適切な量(例えば、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)の質量または体積で約3%~約10%)で存在し得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤とのインキュベーションを含むプロセスによって本明細書に開示されるように調製された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、インキュベーションの前に血小板の貯蔵安定性と少なくともほぼ等しい貯蔵安定性を有する。
【0162】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体を投与する前に、血小板または血小板誘導体を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)凍結保存することをさらに含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を投与する前に、血小板または血小板誘導体を含む組成物を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)乾燥させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥工程の後に組成物を加熱することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、凍結乾燥工程または加熱工程の後に組成物を再水和することをさらに含み得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を投与する前に、血小板または血小板誘導体を含む組成物を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)凍結乾燥させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凍結乾燥工程の後に組成物を加熱することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、凍結乾燥工程または加熱工程の後に組成物を再水和することをさらに含み得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板、血小板誘導体、またはトロンボソームを投与する前に、血小板、血小板誘導体またはトロンボソームを(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)低温貯蔵することをさらに含む。
【0166】
貯蔵条件は、例えば、標準的な室温貯蔵(例えば、約20~約30℃の範囲の温度での貯蔵)または低温貯蔵(例えば、約1~約10℃の範囲の温度での貯蔵)を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を投与する前に、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を含む組成物を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)凍結保存すること、凍結乾燥させること、解凍すること、再水和すること、およびそれらの組み合わせをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を投与する前に、血小板または血小板誘導体を含む組成物を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)(例えば、トロンボソームを形成するために)乾燥させる(例えば、凍結乾燥させる)ことをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥工程から得られた組成物を再水和することをさらに含み得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)、ポリスクロース、およびトレハロースを含む組成物が本明細書に提供され、この組成物は、新鮮な血小板を得るプロセス、任意選択的に血小板をDMSO中でインキュベートするプロセス、遠心分離によって血小板を単離するプロセス、血小板をトレハロースおよびエタノールを含むインキュベーション剤中に再懸濁させ、それによって第1の混合物を形成するプロセス、第1の混合物をインキュベートするプロセス、ポリスクロースを第1の混合物と混合し、それによって第2の混合物を形成するプロセス、ならびに第2の混合物を凍結乾燥させて、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)、ポリスクロース、およびトレハロースを含む凍結乾燥された組成物を形成するプロセスによって作製されている。
【0168】
いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)、ポリスクロース、およびトレハロースを含む、凍結乾燥された血小板組成物を作製する方法が本明細書に提供され、この方法は、新鮮な血小板を得ることと、任意選択的に血小板をDMSO中でインキュベートすることと、遠心分離によって血小板を単離することと、血小板をトレハロースおよびエタノールを含むインキュベーション剤中に再懸濁させ、それによって第1の混合物を形成することと、第1の混合物をインキュベートすることと、ポリスクロースを第1の混合物と混合することと、それによって第2の混合物を形成することと、第2の混合物を凍結乾燥させて、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)、ポリスクロース、およびトレハロースを含む凍結乾燥された組成物を形成することと、を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板を作製するためのプロセスが本明細書に提供され、このプロセスは、単離された血小板を、少なくとも1つの糖の存在下で、以下の条件:20℃~42℃の温度下で、約10分間~約180分間インキュベートすることと、血小板に少なくとも1つの凍結保護剤を添加することと、血小板を凍結乾燥させることと、を含み、このプロセスは、任意選択的に、インキュベーション工程と添加工程との間に血小板を単離することを含まず、任意選択的に、このプロセスは、血小板を血小板活性化阻害剤に曝露することを含まない。凍結保護剤は、多糖(例えば、ポリスクロース)であり得る。このプロセスは、凍結乾燥された血小板を、70℃~80℃の温度で8~24時間加熱することをさらに含み得る。血小板に少なくとも1つの凍結保護剤を添加する工程は、血小板をエタノールに曝露することをさらに含み得る。少なくとも1つの糖の存在下で単離された血小板をインキュベートする工程は、少なくとも1つの糖の存在下でインキュベートすることを含み得る。少なくとも1つの糖の存在下で単離された血小板をインキュベートする工程は、少なくとも1つの糖の存在下でインキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、約100分間~約150分間インキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、約110分間~約130分間インキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、約120分間インキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、35℃~40℃インキュベートすることを含み得る。インキュベートのための条件は、37℃でインキュベートすることを含み得る。インキュベートのための条件は、35℃~40℃で110分間~130分間インキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、37℃で120分間インキュベートすることを含み得る。少なくとも1つの糖は、トレハロース、スクロース、またはトレハロースとスクロースの両方であり得る。少なくとも1つの糖は、トレハロースであり得る。少なくとも1つの糖は、スクロースであり得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板を調製する方法が本明細書に提供され、この方法は、血小板を提供することと、約100mMのトレハロースおよび約1%(v/v)のエタノールを含む塩緩衝液中に血小板を懸濁させて、第1の組成物を作製することと、第1の組成物を約37℃で約2時間インキュベートすることと、ポリスクロース(例えば、ポリスクロース400)を約6%(w/v)の最終濃縮物に添加して、第2の組成物を作製することと、第2の組成物を凍結乾燥させて、凍結乾燥された血小板を作製することと、凍結乾燥された血小板を80℃で24時間加熱することと、を含む。
【0171】
本明細書に開示される特定の実施形態は、「~からなる」または「~から本質的になる」という言語を使用して、特許請求の範囲にさらに限定され得る。
【0172】
例示的な実施形態
実施形態1は、対象における凝固障害を治療する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む、方法である。
【0173】
実施形態2は、対象における凝固障害を治療する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている、方法である。
【0174】
実施形態3は、対象における正常な止血を回復させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む、方法である。
【0175】
実施形態4は、対象における正常な止血を回復させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている、方法である。
【0176】
実施形態5は、手術のために対象を準備させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む、方法である。
【0177】
実施形態6は、手術のために対象を準備させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている、方法である。
【0178】
実施形態7は、手術が、緊急手術である、実施形態5または6に記載の方法である。
【0179】
実施形態8は、手術が、予定された手術である、実施形態5または6に記載の方法である。
【0180】
実施形態9は、対象が、抗血小板剤によって治療されていたか、または治療されている、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0181】
実施形態10は、抗血小板剤による治療が、停止される、実施形態9に記載の方法である。
【0182】
実施形態11は、抗血小板剤による治療が、継続される、実施形態9に記載の方法である。
【0183】
実施形態12は、対象における抗血小板剤の効果を改善する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む、方法である。
【0184】
実施形態13は、対象における抗血小板剤の効果を改善する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている、方法である。
【0185】
実施形態14は、抗血小板剤の効果が、抗血小板剤の過剰摂取の結果である、実施形態12または実施形態13に記載の方法である。
【0186】
実施形態15は、組成物が、抗線溶剤をさらに含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0187】
実施形態16は、抗線溶剤が、ε-アミノカプロン酸(EACA)、トラネキサム酸、アプロチニン、アミノメチル安息香酸、フィブリノゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態15に記載の方法である。
【0188】
実施形態17は、血小板または血小板誘導体に、抗線溶剤が充填される、実施形態15または実施形態16に記載の方法である。
【0189】
実施形態18は、抗血小板剤が、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、サプリメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態9~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0190】
実施形態19は、抗血小板剤が、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、テルトロバン、ピコタミド、エリノグレル、チクロピジン、イブプロフェン、ボラパキサール、アトパキサール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態9~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0191】
実施形態20は、抗血小板剤が、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル、プラスグレル、エプチフィバチド、チロフィバン、アブシキシマブ、テルトロバン、ピコタミド、エリノグレル、チクロピジン、イブプロフェン、ボラパキサール、アトパキサール、シロスタゾール、プロスタグランジンE1、エポプロステノール、ジピリダモール、トレプロスチニルナトリウム、サルポグレラート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態9~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0192】
実施形態21は、投与が、局所投与を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0193】
実施形態22は、投与が、非経口投与を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0194】
実施形態23は、投与が、静脈内投与を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0195】
実施形態24は、投与が、筋肉内投与を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0196】
実施形態25は、投与が、髄腔内投与を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0197】
実施形態26は、投与が、皮下投与を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0198】
実施形態27は、投与が、腹腔内投与を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0199】
実施形態28は、組成物が、投与工程の前に乾燥される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0200】
実施形態29は、組成物が、乾燥工程の後に再水和される、実施形態28に記載の方法である。
【0201】
実施形態30は、組成物が、投与工程の前に凍結乾燥される、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法である。
【0202】
実施形態31は、組成物が、凍結乾燥工程の後に再水和される、実施形態30に記載の方法である。
【0203】
実施形態32は、インキュベーション剤が、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される1つ以上の塩を含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法である。
【0204】
実施形態33は、インキュベーション剤が、担体タンパク質を含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法である。
【0205】
実施形態34は、緩衝液が、HEPES、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法である。
【0206】
実施形態35は、組成物が、1種以上の糖を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0207】
実施形態36は、1種以上の糖が、トレハロースを含む、実施形態35に記載の方法である。
【0208】
実施形態37は、1種以上の糖が、ポリスクロースを含む、実施形態35または実施形態36に記載の方法である。
【0209】
実施形態38は、1種以上の糖が、デキストロースを含む、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法である。
【0210】
実施形態39は、組成物が、有機溶媒を含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法である。
【0211】
実施形態40は、血小板または血小板誘導体が、トロンボソームを含む、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法である。
【実施例】
【0212】
以下の結果は、抗血小板薬を服用している患者のインビトロモデルにおけるトロンボソーム製品の影響を実証する。トロンボソームおよび他の凍結乾燥された血小板製品は、外傷または止血不全の診断の後に患者の血流に注入されるように設計されている。これらの薬物は、いくつかを挙げると、アデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸、フィブリノゲン、およびフォン・ウィルブランド因子結合に対する血小板応答を阻害する複数の形態の血小板阻害機序を利用する。これらには、アスピリン、クロピドグレル、チカグレロール、エフィエント、カングレロール、およびエプチフィバチドのような薬物が含まれる。
【0213】
実施例1-P2Y12阻害剤
カングレロールは、クロピドグレル、チカグレロール、およびプラスグレルと同様に、血小板上のP2Y12(ADP)受容体を遮断する。カングレロールを、このクラスの薬物の代表として本実施例で使用する。
【0214】
トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。光透過凝集測定およびT-TAS(登録商標)実験を、実施例4に従って行った。
【0215】
多血小板血漿(PRP;全血としてヒトから採取し、白血球(WBC)または赤血球(rbc)を含まない血漿中の血小板を単離するように処理した)中の血小板の凝集に対するカングレロールの効果を、透過光凝集測定によって評価した。アゴニスト誘発性活性化に応答する血小板(多血小板血漿)の凝集は、0.5μM~3.5μMの治療濃度でのカングレロールによる、10μMのアデノシン二リン酸(ADP)誘発性凝集の完全な阻害を示した(
図1)。調査したすべての用量のカングレロールは、PRPにおいてADP誘発性血小板凝集を完全に排除した。
【0216】
剪断下での血小板閉塞に対するカングレロールの効果を、T-TAS(登録商標)によって評価した。10μMのADPによってインビトロで刺激された新鮮な多血小板血漿(血小板濃度278,000/μL;PRPは、概して、約200,000/μL~約300,000/μLの血小板濃度を有する)は、T-TAS(登録商標)技術を使用してARチップ(コラーゲンおよび組織トロンボプラスチン)によって決定されるように、高剪断下で非刺激血小板(PRP)よりも早く閉塞された(
図2)。カングレロール単独(1μM)は、閉塞に対する阻害を示さなかったが、ADP(10μM)と組み合わせた場合、血小板の接着および閉塞を本質的に排除した。これらの結果を、
図3および4にさらに例示する。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、このパターンが観察されるのは、血小板が、ADPに応答し、かつADP受容体P2Y12の遮断がコラーゲン結合を阻害する形状変化および凝集を引き起こすカングレロールによって遮断されない他のADP受容体を有し、したがって、血小板が、ADP刺激に起因して互いに結合し得るが、コーティングされたチップ上のコラーゲン結合を防止し得るからであると考えられている。
【0217】
図3では、曲線下面積(AUC)値(
図2のデータに由来;複製は平均化され、1回プロットされる)は、血栓が時間的にどのくらい早く発生し、血栓が発生する場合、それがどのくらい実質的なものであるかの組み合わせた値を示す。PRP AUCは、ADP刺激によって増加した。カングレロールは、AUC値に対してほとんど効果を有しなかったが、ADP刺激と組み合わせた場合、AUCは、ほぼゼロにまで低下した。
【0218】
図4では、薬物処理を伴うAR T-TAS(登録商標)チップの閉塞までの時間を評価した。PRPは、約20分でチップチャネルを閉塞し、その時間、ADPによる血小板の刺激は低下した。カングレロールは、閉塞時間に対してほとんど効果を有しなかったが、PRP試料へのADP刺激の添加により、本質的に完全に閉塞を阻害した。
【0219】
血小板の阻害であることが示されている濃度でのADP刺激を有するカングレロールの存在下では、トロンボソーム(
図5~7の「thromb」)は阻害されず、治療レベルでのカングレロールの存在下であっても、トロンボソームが凝血形成を助け得ることを示す。
【0220】
剪断下でのトロンボソームに対するカングレロールの効果を、T-TAS(登録商標)によって評価した。
図5は、トロンボソームが(示されるように、60、90、または115分間の再水和後に)、ADP(10uM)が存在する状態で、カングレロール(1uM)の非存在下または存在下で、止血機能を保持することを示す。血小板とは異なり、T-TAS(登録商標)ARチップのトロンボソームの閉塞は、カングレロール+ADPの抗血小板効果によって影響を受けない。これは、カングレロールおよび同様の薬剤を投与されている患者に注入した場合、トロンボソームが期待される機能を維持するであろうことを示唆する。これらの結果を、
図6および7にさらに例示する。
【0221】
図6では、AUC値(
図5のデータに由来)は、血栓形成を示す。血漿中のT-TAS(登録商標)ARチップのトロンボソームの接着および閉塞に対するカングレロールおよびADPの効果はなく、トロンボソームは、カングレロールおよびADPにかかわらず、血栓形成を引き起こした。同じ用量のカングレロールおよびADPは、新たに採取された血小板を完全に阻害した。
【0222】
図7では、薬物処理を伴うAR T-TAS(登録商標)チップに対するトロンボソームの閉塞までの時間(
図5のデータに由来)を評価した。血漿中のT-TAS(登録商標)ARチップを使用したトロンボソームの閉塞までの時間に対するカングレロール+ADPからの効果はなかった。同じ用量のカングレロールおよびADPは、新たに採取された血小板を完全に阻害した。
【0223】
実施例2.GPIIb-IIIa阻害剤。
以下の結果は、GPIIb-IIIa阻害剤を服用している患者のインビトロモデルにおけるトロンボソームの影響を実証する。一般的な抗血小板薬であるエプチフィバチドは、フィブリノゲンおよびフォン・ウィルブランド因子と相互作用する血小板上のGPIIb-IIIa受容体を競合的に阻害する。
【0224】
エプチフィバチドは、血小板上のGPIIb-IIIa受容体のフィブリン結合の役割を遮断するペプチド治療薬である。薬物を、典型的には、180μg/kgボーラスとしてIVを介して投与し、続いて2μg/kg/分の連続注入を行う。エプチフィバチドの血中濃度は、典型的には、約1~2μMである。出血時間は、一般に、薬物停止から約1時間以内に正常に戻る。
【0225】
トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。
光透過凝集測定およびT-TAS(登録商標)実験を、実施例4に従って行った。
【0226】
(多血小板血漿中の)血小板の凝集を、透過光凝集測定を使用して評価した。エプチフィバチドは、PRPにおける光透過凝集測定によって検出されるように、試験したすべての濃度で、PRPにおけるコラーゲン誘発性(10μg/mL)血小板凝集を完全に阻害した。(
図8)。
【0227】
エプチフィバチドの存在下での凝血時間の短縮に対するトロンボソームの効果も研究した。閉塞時間を回復させるトロンボソームの能力を、T-TAS(登録商標)システム上で研究した。T-TAS(登録商標)システムは、コラーゲンおよびトロンボプラスチン刺激による剪断力下での閉塞時間を測定する。AR T-TAS(登録商標)チップ上の閉塞およびAUCの全血プロファイルは、それぞれエプチフィバチドによって延長および減少した。エプチフィバチドは、T-TAS(登録商標)ARチップ上の全血の閉塞時間を、用量依存的様式で延長した。この実験では、全血は8分で閉塞し、6μMのエプチフィバチドによって、閉塞時間が16分に延長した(
図9)。トロンボソームは、血栓形成に対するエプチチバチドの阻害作用に拮抗した。T-TAS(登録商標)ARチップ上の全血閉塞のエプチフィバチド阻害は、約200,000/μL(N=3)のトロンボソームの添加によって拮抗した。エプチフィバチドによって阻害された全血の試料にトロンボソーム(約200k/μL)を添加した場合、閉塞までの時間は、9分で「正常」に減少した(
図10)。
【0228】
トロンボソーム処理での曲線下面積値もまた、正常な全血試料の値と比較して、トロンボソームによって増加した。
図11は、薬物処理を伴うAR T-TAS(登録商標)チップ上のトロンボソームの閉塞までの時間を実証し、T-TAS(登録商標)ARチップ閉塞のエプチフィバチド阻害は、トロンボソーム(200,000/μL;N=3)の添加によってほぼ完全に拮抗した。
図12では、曲線下面積値は、トロンボソームがエプチフィバチドによる阻害を正常レベルに戻した血栓形成を示し、T-TAS(登録商標)ARチップへの血小板接着および閉塞のエプチフィバチド阻害は、トロンボソーム(200,000/μL;N=3)の添加によって克服される。
【0229】
血小板とは異なり、トロンボソームは、エプチフィバチドの存在下で、剪断下で閉塞するその能力において阻害されない(
図13)。
図13は、AR T-TAS(登録商標)システム上の様々なロットのトロンボソームの血栓形成のプロファイルが、エプチフィバチド処理によって変化しなかったことを示す。乏血小板血漿(PPP)中のトロンボソームを、6uMのエプチフィバチドありおよびなしで、T-TAS(登録商標)ARチップを通して流した。トロンボソームの接着および閉塞に対するエプチフィバチドの効果はなかった。すべてのトロンボソーム濃度は、約300,000/μLであった。
【0230】
血漿中のトロンボソーム(約300,000/μL)についてのT-TASによるAUCおよび閉塞値は、エプチフィバチドの有無にかかわらず同じであった(
図14~15)。
図14は、曲線下面積値が、血栓形成を示し、乏血小板血漿中のエプチフィバチドによる変化は観察されなかったことを示す。トロンボソームT-TAS(登録商標)ARチップの閉塞のAUCに対する6uMのエプチフィバチドの効果はなかった。
図15は、AR T-TAS(登録商標)チップ上のトロンボソームの閉塞までの時間が、エプチフィバチドによって変化しなかったことを示す。乏血小板血漿中のT-TAS(登録商標)ARチップのトロンボソーム閉塞時間に対する6μMのエプチフィバチドからの有意な影響はなかった。
【0231】
実施例3.COX阻害剤。
以下の結果は、COX阻害剤を服用している患者のインビトロモデルにおけるトロンボソームの影響を実証する。一般的な抗血小板薬であるアスピリンは、血小板中のCOX1酵素を遮断する。COX1は、アラキドン酸のプロスタグランジンへの変換に関与する。
【0232】
アスピリンは、不可逆的なシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤である。血小板中のCOX酵素は、トロンボキサンA2、プロスタグランジンE2、およびプロスタシクリン(PGI2)の合成に関与する。アスピリンは、血小板内のCOX酵素を永久的に不活性化し、かつ血小板は、新たな酵素を合成するための核物質を有しないため、アスピリン効果を克服するためには、新たな血小板を生成しなければならない。トロンボキサンA2、プロスタグランジンE2、およびプロスタシクリン(PGI2)なしでは、血小板は、その凝集促進活性が制限される。多くの人は、望ましくない凝血事象を防止するために、低用量のアスピリンを維持される。アスピリンのバイオアベイラビリティは、投与経路によって大きく異なり、500μMのピークで単回500mg用量のIV、および44μMで、経口で同じ用量である。
【0233】
トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。
光透過凝集測定およびT-TAS(登録商標)実験を、実施例4に従って行った。
【0234】
血小板は、コラーゲンおよびアラキドン酸刺激によって凝集する。
アラキドン酸による刺激は、完全に阻害され得るが、コラーゲンによる刺激の凝集は、100~400μMのアスピリンの濃度で部分的にのみ阻害され得る(
図16)。
図16は、血小板凝集を誘発した、コラーゲン(10ug/mL)およびアラキドン酸(AA;500ug/mL)を含むPRPにおける光透過凝集測定を示し、この凝集は、試験したすべての用量のアスピリン(ASA)によって阻害された。アスピリンは、アラキドン酸誘発性血小板凝集を完全に排除した。T-TAS(登録商標)上のPLチップシステムを使用して、剪断条件下での脈管構造中のコラーゲンの曝露によるインビトロでの血小板結合および凝集を模倣した。血小板のこの作用は、100および500μMのアスピリンの存在下で大きく制限されたが、トロンボソームの存在下では、少なくとも部分的に戻り得る(約200,000~400,000/μL;
図17)。
図17は、全血の曲線下面積測定を示し、PL T-TAS(登録商標)チップ上の血栓形成がアスピリンによって阻害され、トロンボソームにより血栓形成が部分的に戻ったことを示す。
【0235】
実施例4.プロトコル
トロンボソームの生成。トロンボソームを、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製した。
【0236】
光透過凝集測定
血小板もしくはトロンボソームまたはその両方の組み合わせを含む血漿試料をキュベットに充填し、凝集測定チャンバに配置する。チャンバは、試料を加温し、一定の撹拌を提供する。凝集の開始は、トロンビン、ADP、コラーゲン、および血小板凝集を刺激することが知られている任意の薬剤に限定されない複数の種類の阻害剤によって行い得る。試料はまた、エクスビボとして採取されているか、またはインビトロで阻害剤を補充されている場合がある。機器は、2分間の刺激に先立って、最初に光透過を記録することによって、アッセイを開始する。次いで、目的の刺激剤を技術者により導入し、光透過における変化を経時的に記録する。光透過における増加は、血小板凝集における増加に対応する。
【0237】
ARチップを使用したT-TAS(登録商標)による評価。ARチップは、コラーゲンおよび組織因子を含有する単一のチャネルを特徴とし、それらを使用して、凝血および血小板機能を分析し得る。
【0238】
T-TAS(登録商標)機器は、製造業者の指示に従って使用するために準備した。ARチップ(Diapharmaカタログ番号TC0101)およびARチップカルシウムトウモロコシトリプシン阻害剤(CaCTI;Diapharmaカタログ番号TR0101)を、室温に加温した。300uLの再水和されたトロンボソームを、1.7mLのマイクロ遠心チューブに移し、3900g×10分間でペレットに遠心分離した。トロンボソームペレットを、George King(GK)プールされた正常なヒト血漿、または自己血小板を含むかもしくは含まない自己血漿中に、AcT数(Beckman Coulter AcT Diff 2 Cell Counter)によって決定される約100,000~450,000/uLの濃度に再懸濁させた。20uLのCaCTIを、GK血漿中の480uLのトロンボソーム試料と、ピペットで穏やかに混合した。試料を充填し、製造業者の指示に従ってT-TAS(登録商標)上で実行した。
【0239】
PLチップを使用したT-TAS(登録商標)による評価
PLチップは、ARチップと同様に実行されるが、このチップは、コラーゲン単独でコーティングされている。
【0240】
トロンビン生成
試薬の調製。トロンビン生成のために、以下のとおり、製造業者からの以下の材料を使用した:FluCaキット(Diagnostica Stago、カタログ番号86197)、トロンビンキャリブレータ(Diagnostica Stago、カタログ番号86197)、PRP試薬(Diagnostica Stago、カタログ番号86196)、OCTOPLAS(登録商標)、溶媒洗剤で処理されたヒトのプールされた血漿(Octapharma、カタログ番号8-68209-952-04)。すべての凍結試薬を、使用前に37℃の水浴で解凍した。すべての試薬を、試薬ラベル上に印刷された体積を使用して、滅菌水で再水和した。
再水和の約2分後、試薬を、バイアルを5回反転することによって混合し、そのため塊や粉末は残っておらず、ボルテックスは使用しなかった。この手順を、再水和の約10分後に繰り返した。すべての試薬を、室温でさらに約10分間インキュベートした(再水和後、合計約20分間)。30%のOCTOPLAS(登録商標)溶液を、4.66mlのトロンボソーム対照緩衝液(表B)を2mlのOCTOPLAS(登録商標)と混合することによって調製した。
【0241】
【0242】
試料分析-プレートの調製および試験。トロンボソームを含有する実験のために、実験用トロンボソームおよび参照トロンボソームの各々について、トロンボソーム希釈シリーズを生成した(典型的には、1μL当たり194.4K、64.8K、21.6K、および7.2Kの希釈液を使用した;細胞数を、フローサイトメトリーによって決定する)。別途示されない限り、トロンボソームを再水和した。最高濃度の希釈液(例えば、194.4kトロンボソーム)を、トロンボソーム、OCTAPLAS(登録商標)、およびトロンボソーム対照緩衝液を組み合わせることによって調製した。残りの希釈液シリーズを、OCTAPLAS(登録商標)の連続1:3希釈によって調製した。各試験試料について、20uLのPRP試薬を、各試料ウェル(Immulon 2HB Clear、丸底96ウェルプレート(VWR、カタログ番号62402-954))に添加し、20uLのトロンビンキャリブレータを、各キャリブレータウェルに添加した。各試料ウェルおよびキャリブレータウェルに、トロンボソーム希釈液シリーズの各々80uLを添加した。最後の希釈液まで継続する。次いで、プレートを、Fluoroskan Ascent 96ウェル蛍光プレートリーダー(Thrombinoscope)(ThermoFisher Scientific)内で10分間インキュベートした。このインキュベーション段階中、40μLのFluCa基質を、1.6mlの解凍されたFluo-Bufferに添加し、ボルテックスし、かつ溶液を水浴に戻すことにより、FluCa溶液を調製した。培養が完了したら、製造業者の指示に従って、FluCa溶液をFluroskan機器に添加した。プレートの蛍光を、20秒間隔で、かつ40~41℃の温度で、75分間モニタリングした。
【0243】
実施例5.
追加の実験を、カングレロールおよびアスピリンを用いて行った。
トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。光透過凝集測定、T-TAS(登録商標)、およびトロンビン生成実験を、実施例4に従って行った。
【0244】
血栓形成の回復に対するトロンボソームの効果を、T-TAS(登録商標)技術およびARチップを使用して評価した。
図18は、トロンボソーム(1μL当たり250,000トロンボソームの濃度で)、アスピリン(200μM)、カングレロール(1μM)、抗インテグリンアルファ-2(CD49B)抗体6F1(40μg;製品/製造業者情報については、dshb.biology.uiowa.edu/integrin-alpha-2-alpha2betal?sc=7&category=-107を参照されたい)、および抗GPIIb/IIIa受容体抗体AP2(20ug/mL;製品/製造業者情報については、kerafast.com/product/2010/anti-glycoprotein-gpiiiagpiib-complex-ap-2-antibodyを参照されたい)の様々な組み合わせで処理された全血の閉塞時間を示す。
図19は、未処理全血、およびトロンボソーム(1μL当たり250,000個のトロンボソームの濃度で)、6F1(40ug/mL;抗CD49b)、ASA(アスピリン;200uM)、およびカングレロール(1uM)を含有する混合物、またはそれらの組み合わせで処理された全血の経時的な閉塞を示す。
【0245】
血栓形成の回復に対するトロンボソームの効果も、T-TAS(登録商標)技術およびPLチップを使用して評価した。
図20は、緩衝液、アスピリン(500μM)、またはアスピリン(500μM)およびトロンボソーム(1μL当たり250,000個のトロンボソームの濃度で)でのみ処理された全血の閉塞時間を示す。
図21は、全血、アスピリン(500μM)で処理された全血、またはアスピリン(500μM)およびトロンボソーム(250,000/μL)の経時的な閉塞を示す。
図22および23は、500μMのアスピリンの代わりに100μMのアスピリンを使用した同様の実験データを示す。
【0246】
トロンビン生成に対するアスピリン処理(濃度)の効果を測定した。トロンボソームを、ベビーアスピリンを毎日服用している患者からのPPPおよび標準血漿(INR=1)の濃度1450、1150、850、650、450、150、50、および0k/uLで評価した。
図24は、トロンボソームの非存在下でのアスピリン血漿のピークトロンビン値が、正常範囲(約45nM、正常範囲は約66~166nMである)を下回ったが、トロンボソームの添加により、使用された最も低いトロンボソーム濃度(50k/μL)であっても、正常範囲内に戻ったことを示す。値を、約800kのトロンボソームで再び飽和させ、トロンボソームの非存在下で、この血漿の値の5倍の220nMまで上昇(45~220nMに増加)させた。
【0247】
実施例6.トロンボソームは、カングレロールによって誘発される長期PRP閉塞時間に拮抗した
追加の実験を、カングレロールを用いて行った。トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。T-TAS(登録商標)を、実施例4に従って行った。
【0248】
図25Aおよび25Bは、100ng/mLのカングレロールおよびADPで処理された多血小板血漿が、T-TAS(登録商標)フローシステム(コラーゲンおよび組織因子でコーティングされたチャネル)上で、閉塞時間を19分から26分に延長したことを示す。150k/μLのトロンボソームの添加により、時間が減少して15.3分に戻った。
【0249】
実施例7.ランダムドナーの血小板(RDP)ではないトロンボソームは、PRPにおいてチロフィバンによって誘発される延長閉塞時間に拮抗した
追加の実験を、チロフィバンを用いて行った。トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。T-TAS(登録商標)を、実施例4に従って行った。ランダムドナーの血小板を、全血から調製した。
【0250】
図26Aおよび26Bは、100ng/mLのチロフィバンで処理された多血小板血漿が、T-TAS(登録商標)フローシステム(コラーゲンおよび組織因子でコーティングされたチャネル)上で、閉塞時間を18.43分から閉塞なしに延長したことを示す。150k/μLのトロンボソームの添加により、時間が減少して12.94分に戻ったが、RDPは、同数では部分的にのみしか回復しなかった。
【0251】
実施例8.ランダムドナーの血小板ではないトロンボソームは、PRPにおいてエプチフィバチドによって誘発される延長閉塞時間に拮抗した
追加の実験を、エプチフィバチドを用いて行った。トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。T-TAS(登録商標)を、実施例4に従って行った。ランダムドナーの血小板を、全血から調製した。
【0252】
図27Aおよび27Bは、9μMのエプチフィバチドで処理された多血小板血漿が、T-TAS(登録商標)フローシステム(コラーゲンおよび組織因子でコーティングされたチャネル)上で、閉塞時間を18.43分から30分超に延長したことを示す。150k/μLのトロンボソームの添加により、時間が減少して11.56分に戻ったが、閉塞は、同数のRDPでは見られなかった。
【0253】
実施例9.トロンボソームは、PRPにおいてAP2(抗GpIIb/IIIa)によって誘発される延長閉塞時間に拮抗した
追加の実験を、AP2を用いて行った。トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。T-TAS(登録商標)を、実施例4に従って行った。ランダムドナーの血小板を、全血から調製した。
【0254】
図28Aおよび28Bは、10μg/mLのAP-2で処理された多血小板血漿が、T-TAS(登録商標)フローシステム(コラーゲンおよび組織因子でコーティングされたチャネル)上で、閉塞時間を18.43分から30分超に延長したことを示す。150k/μLのトロンボソームの添加により、時間が減少して13.14分に戻り、閉塞は、同数のRDPでは17.43分で見られた。
【0255】
実施例10.トロンボソームは、アスピリン療法の対象からのPRPにおいて長期閉塞に拮抗した
追加の実験を、アスピリンを用いて行った。トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。T-TAS(登録商標)を、実施例4に従って行った。ランダムドナーの血小板を、全血から調製した。対象は、標準用量の81mg/日のアスピリンを服用していた。
【0256】
図29Aおよび29Bは、アスピリン患者から採取した多血小板血漿が、T-TAS(登録商標)フローシステム(コラーゲンおよび組織因子でコーティングされたチャネル)上で、閉塞に失敗したことを示す。200k/μLのトロンボソームの添加により、正常な閉塞時間~16分に戻った。
【0257】
実施例11.トロンボソームは、エクスビボのアスピリン多血小板血漿中のトロンビン生成を回復させる
追加の実験を、アスピリンを用いて行った。トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。トロンビン生成を、実施例4に従って行った。
【0258】
図30Aは、PRP試薬で刺激された正常なものに対するアスピリン患者からの多血小板血漿のトロンビン生成が、50k/μLのトロンボソームで拮抗したことを示す。
図30Bは、トロンボソーム(50k/μL)を含む3つの反復アスピリンエクスビボサンプリングにおける、正常なトロンビン産生からの変化および戻り、ピーク産生までの時間、ならびにラグタイムを示す。(n=3 トロンボソームロット、n=2 個体)。
【0259】
実施例12.トロンボソームは、NSAIDイブプロフェン療法の対象からのPRPにおいて止血を回復させる。
追加の実験を、イブプロフェンであるNSAIDを用いて行った。
トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。凝集測定およびT-TAS(登録商標)を、実施例4に従って行った。
【0260】
多血小板血漿を、800mgのイブプロフェンを服用している対象から採取した。
図31Aは、アラキドン酸に対する応答における凝集の欠如が、PRPにおけるNSAIDの存在を確認することを示す。
図31Bは、T-TAS(登録商標)フローシステム(コラーゲンおよび組織因子コーティングチャネル)上の閉塞を示し、イブプロフェン患者からのPRPは閉塞を実証し、一方、ADPの添加は閉塞を消滅させた。150k/μLのトロンボソームの添加により、閉塞が回復した。
【0261】
実施例13.トロンボソーム(登録商標)は、超薬理学的クロピドグレルによって処置されたNOD-SCIDマウスにおける出血時間を回復させる
追加の実験を、クロピドグレルを用いて行った。トロンボソームを、実施例4の手順と一致して調製した。
【0262】
マウスを、クロピドグレルにより5日間処置した。マウスに麻酔をかけ、尾の先端を切断した後、トロンボソームを直ちに投与した。断尾から尾の出血が止まるまでの時間を、目視検査により記録した。
【0263】
NOD/SCIDマウスを、臨床用量の約3倍のクロピドグレルにより5日間処置し、次いで、断尾出血モデルにおいて評価した。出血時間(分)を、未処置9分に対し、クロピドグレル処置では17.8分に延長した(データ図示せず)。8μL/グラムのトロンボソーム(200μLで1.8×10^9粒子/mL)による処置により、出血が12.31分に減少した(
図32)。
【0264】
前述の説明は、本発明の好ましい実施形態を対象とするが、他の変形および修正が、当業者には明らかであり、かつ本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく行われ得ることに留意されたい。
さらに、本発明の1つの実施形態に関連して記載される特徴は、上記に明示的に記載されていない場合であっても、他の実施形態と併せて使用され得る。さらに、当業者は、上記で考察されるような発明が、異なる順序の工程で、および/または開示されるものとは異なる構成のハードウェア要素を用いて実践され得ることを容易に理解するであろう。したがって、本発明はこれらの好ましい実施形態に基づいて記載されているが、ある特定の修正、変形、および代替的な構成が、本発明の趣旨および範囲内に留まる一方で、明らかであることは、当業者には明らかであろう。そのように特許請求される本発明の実施形態は、本明細書に本質的にまたは明示的に記載され、有効である。したがって、本発明の範囲および境界を決定するために、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
【国際調査報告】