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  • 特表-ラウドスピーカ 図1
  • 特表-ラウドスピーカ 図2a
  • 特表-ラウドスピーカ 図2b
  • 特表-ラウドスピーカ 図3
  • 特表-ラウドスピーカ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ラウドスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/04 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
H04R9/04 102
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509666
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2020057565
(87)【国際公開番号】W WO2021245453
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】2020118126
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522058475
【氏名又は名称】ソティス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガー,ダニーロ
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BA01
5D012FA01
5D012GA01
(57)【要約】
磁気回路、永久磁石、コイル、筐体と永久磁石とのギャップにコイルを配置するシステム、コイルに取付機構によって取り付けられた共振膜ディフューザ、および端子付きリード線、を備え、筐体を有するラウドスピーカが提案される。そのコイルは星形コイルである。この技術的成果は、ラウドスピーカの出力および効率を向上し、重量および寸法を低減し、音質を改善することである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を有するラウドスピーカであって、磁気回路と、永久磁石と、コイルと、前記筐体と永久磁石とのギャップに前記コイルを配置するシステムと、前記コイルに取付機構によって取り付けられた共振膜ディフューザと、端子付きリード線と、を備え、星形コイルを特徴とする、ラウドスピーカ。
【請求項2】
前記星形コイルの先端の形状が、角、円弧、矩形、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得る、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響に関し、特に音響システムの平面型ラウドスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
2016年8月27日付けの特許文献1に記載された、既知のラウドスピーカがある。このラウドスピーカは:リング状マグネット;このマグネットの中心に挿入されたセンターポール部を含むヨーク;ヨークのセンターポール部の外周面外側に配置され、マグネットに取り付けられた環状プレート;センターポール部の軸方向に移動可能な状態で取り付けられた円筒形のコイル成型体であって、部分的にヨークのセンターポール部に隣接するコイル成型体;コイル成型体に巻き付けられたボイスコイルであって、少なくともその一部がプレートとヨークのセンターポール部との間の磁気ギャップに位置するボイスコイル;内周がコイル成型体に接続され、コイル成型体の動きに伴って振動する振動板;および磁気ギャップを満たす磁性流体を含む。このラウドスピーカは、実際には平面型ではなく、一般的技術水準に属するものである。
【0003】
本提案の解決策と同様の技術的解決策は、先行技術から既知のものである。例えば、1996年1月18日付けの特許文献2では、ノート型パソコンの蓋の壁部に直接装備する、ピエゾ駆動のフラットパネルラウドスピーカを利用することが提案されている。このラウドスピーカの難点は、200Hzより低い周波数帯域で効果的に動作できないことであり、その付近の動作範囲では30Dbの音量レベルでのディップやバーストを伴う、高い不均一性を特徴とする。一方、ハイエンド機器では周波数応答の不均一性の一般水準は、全動作周波数帯域で(+-)3Dbである。
【0004】
他の国際特許、1995年11月23日付けの特許文献3では、タブレット型コンピュータに搭載され、圧電駆動による振動エキサイタを含むアクティブノイズキャンセルシステムを有する、平面型音響システムを使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ロシア連邦特許第2595649C2号
【特許文献2】国際公開公報第9601547号
【特許文献3】国際公開公報第9531805号
【発明の概要】
【0006】
上述の発明では、いずれも次のような難点がある。ラウドスピーカの周波数帯域が狭く、通常200Hzを超えない。また、ラウドスピーカの振幅-周波数応答に関する品質指標が不十分であり、ラウドスピーカの生み出す出力が低い。
【0007】
我々の発明に最も近い類似発明は、2001年12月18日付けのヘンリー・アジムによる米国特許出願第6332029号に記載されている装置である。この装置は、平坦な膜を有する音響装置であり、膜に属する固有の場所に対向する空間に設置された、屈曲共振モードの原理で動作する、音響振動装置を少なくとも1つ含むことが記載されている。この特許は、1つの膜の中に、1つまたは複数の音響振動接続を使用する可能性を示している。必要な出力レベルを作り出すために複数の駆動装置を使用する場合、特定の周波数で有害な変調が発生する。これを除去するためには、複雑な形状の膜端部をカットする、膜面積に応じて膜の剛性を変える、様々な制振措置を施す、バランスマスを装着するといった、各種の複雑な技術的解決策に頼らざるを得ない。これらの対策はいずれも、何らかの形で、こうしたラウドスピーカのエネルギー損失を招き、全体的な効率を低下させることになる。複数の駆動装置が同相で動作するため、寄生共振や変調が発生し、音質特性を低下させる。また、この特許には、このタイプの膜のコインシデンス周波数に関連し、1つの駆動装置の範囲での最大可能(推奨)コイル径が記載されており、概して、コイル径を小さくすることが極めて有効であることを意味している。
【0008】
コイル直径、巻数、コイルの印加電圧レベルによって、出力の指標が決まることも知られている。したがって、他の条件がすべて同じであれば、コイルの外周の長さ、すなわち銅線1巻き分の長さは完全にコイルの直径によって決まるため、コイルの電力はその直径によって直接決まることになる。
【0009】
ラウドスピーカの動電駆動に星形コイルを使用する場合、コイルの1巻きの長さを増加させることが可能となる。このように、一種の巻き上げ方式により、半径および寸法の小さな電磁駆動装置で、十分に強力な電磁装置を得ることができ、それによって、低出力の駆動装置を複数使用する代わりに1つの駆動装置を使用できるため、寄生共振を低減することができる。
【0010】
この技術的成果は、ラウドスピーカの出力および効率を向上し、重量および寸法を低減し、音質を改善する。
【0011】
筐体を有するラウドスピーカであって、磁気回路、永久磁石、コイル、筐体と永久磁石との間のギャップ(隙間)にコイルを配置するシステム、コイルに取付機構によって取り付けられた共振膜ディフューザ、および端子付きリード線、を備えるラウドスピーカによって、その技術的成果が達成される。そのコイルは星形コイルである。
【0012】
また、星形コイルの各先端の形状は、角、円弧、矩形、またはこれらの組み合わせのいずれかにし得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図によって本発明の説明を行う。
【0014】
図1】提案するラウドスピーカの概要を示す。
【0015】
図2】円筒形コイル(a)および星形コイル(b)の、電線1巻き分の長さの違いを示しており、D1=D2、L1<L2である。
【0016】
図3】星形コイル巻きの利点を示す。直径50mmの円筒形の巻線では、1巻きの長さは157mmである(a参照)。同じ直径の「星形コイル」(b参照)の1巻きの長さは357mmであり、これは円筒形コイルの直径を126mmに増加させた場合(c参照)に相当する。その場合、製品の寸法は大幅に増加することになる。
【0017】
図4】星形コイルの種類を示す。
【符号の説明】
【0018】
図は、以下を示す。
1.星形コイル
2.永久磁石
3.磁気回路
4.共振膜(ディフューザ)
5.筐体
6.ギャップ内にコイルを配置するシステム
7.リード線
8.端子
9.コイルを膜へ取り付ける取付機構
【発明を実施するための形態】
【0019】
提案する技術的解決策は、アンプからの音響範囲の電気信号を、共振膜の原理で動作する、コーン型スピーカおよび平面型音響放射装置の、機械的エネルギーに変換するための動電駆動装置である。
【0020】
本発明は、星形コイル1(図1参照)を含む。これは、複雑で特殊な形状の管状フレーム構造体に、一定断面の導電線を巻いて固定したものであり、その断面は星形に見える。このようなコイルに電流を流すと、一般的なトロイダル型に近似した磁界が誘導される。本発明はまた、永久磁石2と、好ましくはフェライトコア3と、から成る、磁気システムを含む。星形コイルに対応する薄い磁界強度のギャップを形成するクローズ(閉鎖)またはオープン(開放)構成で、このギャップ内でコイルの往復運動が妨げられないことを意味する厚さを有する。また、本発明は、ギャップ内にコイルを配置するシステム6も含み、これは通常、ある種の布で作られ、波状の環状形状を有する2つのセンタリングワッシャから成るか、あるいは、一端が磁気システムの中心軸に取り付けられた対応するスリーブに入り、他端が星形コイルに直接取り付けられる細い金属棒である。また、提案する装置は、筐体5、可動コイルに信号を供給するための可撓性の配線7、接続端子8、コイルを共振膜(ディフューザ)本体4に取り付けるための装置9を備える。
【0021】
身近なところで使用されている一般的なラウドスピーカは、直径D1、周長L1である円形断面の可動コイルで構成されている(図2の位置aを参照)。コイル線の巻数と1巻き分の長さL1との積が、全体の機械効率を決定する。周長のパラメータであるL1は、一定の磁束を持つ作動磁気ギャップの長さに相当する。外径D2の星形コイル(図2の位置bを参照)は、外形寸法D1を有し、L2はL1のn倍である。つまり、磁気ギャップの長さに相当する、1巻きの長さのパラメータL2に対する巻き数で、出力が決まることになる。
【0022】
この場合、星形コイルの各先端はさまざまな形状にすることができる(図4参照)。角度付き(鋭角でも鈍角でもよい)を示すもの、直線(つまり星の各先端が矩形)、または半径状(つまり星の各先端が円弧)とすることもでき、あるいは上記すべての組み合わせとすることもできる。
【0023】
星形コイルの利点は、具体的な例で確認することができる。直径50mmの円筒形コイルを使用した場合、ワイヤ1巻きの長さは157mm(図3の位置a参照)である。これを、同じ外径でかつ12個の先端から成る星形コイルに置き換えると、ワイヤ1巻きの長さは357mm(図3の位置b参照)になり、2倍超の長さになる。両方のコイルの公称抵抗が同じであれば、星形のコイルの方が電力が高くなり、熱放散は少なくなる。同じ電力の円筒形コイルを作製した場合、その直径は126mmとなる(図3の位置c参照)。このようなコイルを小型ラウドスピーカシステムに搭載することは非常に困難であり、コイル取付リングの範囲内で寄生振動の振幅が急増するなど、特性の著しい不均一性によって音響特性が特徴づけられるため、高音質が求められる条件では、このようなラウドスピーカシステムを使用することができなくなる。
【0024】
Carlsbroの平面型ラウドスピーカ(https://musicland.ru/catalogue/model/Carlsbro-NlightN-Flat-Panel/)(https://www.fast-and-wide.com/equipment-releases/loudspeakers-sound-reinforcement/1324-carlsbro-nlightn)は、6個の動電エキサイタのアセンブリを使用し、パネルの総出力を100Wのレベルで決定するが、このような解決策には、多数の音響励起源から生じる表面進行波の相互変調という、重大な欠点がある。こうして、周囲環境に音を放射する段階で一次音像が歪み、音響システムの振幅-周波数応答が歪み、音に寄生音が現れる。理想的には、膜上の幾何学的位置が厳密に規定された場所に取り付けられた、単一のアクチュエータで、そのような出力を得られることが望ましい。この場合、コイルの直径は、コイル取付リング内での変調歪みを低減させるために、できるだけ小さくする必要がある。
【0025】
提案する技術的解決策を用いる場合、以下のように「星形コイル」は多くの重大な利点をもたらす。
【0026】
振幅-周波数特性が、全動作範囲において均等な成分を有することになる。
【0027】
Carlsbroのパネルでは100Hzまでだった低音域での動作範囲が、星形駆動装置を備えるパネルでは28Hzまでに著しく拡張される。
【0028】
提案する技術的解決策、すなわち「星形コイル」を、既知の様々なラウドスピーカ(スピーカ)に使用することで、そのような音響システムの出力が増大することになる。したがって、必要な音圧限界を作り出すために、1つの筐体に2つ以上のスピーカが設置される。星型コイルを用いた動電駆動装置を使用する場合、2台以上の従来スピーカに代わる、よりパワフルでコンパクトなスピーカを作ることが可能となる。
【0029】
平面型ラウドスピーカを用いた実験の結果、以下のような成果が得られた。Daytonの標準的な動電エキサイタ(https://www.parts-express.com/dayton-audio-daex30hesf-4-high-efficiency-steered-flux-exciter-with-shielding-30mm-40w-4-oh-295-240)は、出力160Wの平面型ラウドスピーカを作り出すために、出力40Wのエキサイタ4台を使用する。その結果、4つのエキサイタのアセンブリは、パネル長さの中で220mm超まで伸ばされた。800Hzでは相互変調による振幅の上昇が記録され、この帯域でパネルの周波数応答が歪み、6dBのオーバーシュートが発生した。Daytonの標準的な動電エキサイタのコイル直径に完全に対応する、外径32mmの星型コイルを用いたアクチュエータを1台使用した場合、1台の駆動装置で160Wという結果が得られ、一定の出力を得つつ動電エキサイタの数を4台から1台に減らすことが可能となった。この改良の結果、パネルの最終的な周波数応答は正常に戻り、40ヘルツから18キロヘルツまで、プラスマイナス3デシベルの範囲内となり、動作周波数範囲は、低域が広がり、多くの場合、50ヘルツから40ヘルツになった。
図1
図2a
図2b
図3
図4
【国際調査報告】