(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20221020BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20221020BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221020BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221020BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221020BHJP
A61P 5/44 20060101ALI20221020BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20221020BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221020BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20221020BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221020BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P27/04
A61P27/02
A61P43/00 171
A61K45/00
A61P5/44
A61P33/00
A61P31/00
A61P5/00
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510827
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 IB2020057817
(87)【国際公開番号】W WO2021033154
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522062106
【氏名又は名称】パドマナブハン、ビシュワナート
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パドマナブハン、ビシュワナート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC30
4C076CC32
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4C076DD09F
4C076DD38
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4C076FF61
4C084AA17
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA331
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4C086EA14
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4C086MA58
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC61
(57)【要約】
前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置のための医薬組成物および方法が本明細書に開示され、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎は、原発性起源であってもよく、感染、寄生または酒さなどの他の要因に対する続発性のものでなくてもよい。組成物は、全組成物の約0.001重量%~20重量%の範囲でイベルメクチンを含む。眼瞼縁に正確に前記組成物を局所投与することにより、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎に罹患している患者に治療上の利益をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置を必要とする対象における前部眼瞼炎および後部眼瞼炎を処置するための方法であって、イベルメクチンおよび眼科的に許容される担体を含む医薬組成物を、別の活性医薬成分と同時投与することなく、前記対象の眼瞼縁に正確に局所投与することを含み、前記医薬組成物は約0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含み、前記医薬組成物は前記眼瞼縁に付着する、方法。
【請求項2】
前記医薬組成物が、涙液膜への分散または溶解に対する耐性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記眼瞼炎がマイボーム腺疾患および/またはドライアイ疾患に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記眼瞼炎が原発性眼瞼炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記局所投与が周期的投与である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記医薬組成物を1日1回、3日間適用し、2週間後に1日1回、3日間繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物が約1重量%のイベルメクチンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬組成物が、キレート剤、保湿剤、ガム/増粘剤、乳化剤、防水剤、基剤、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤、および水からなる群から選択される1つまたは複数の成分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物が約50重量%~75%重量%の範囲で水をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物の投与がマイバム産生の増強をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記医薬組成物をアプリケータを用いて眼瞼縁に正確に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬組成物を、前記眼瞼縁の全長ならびに上眼瞼縁および下眼瞼縁の両方に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、マウス、ラット、ネコ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ハムスター、フェレット、ブタ、イヌ、カモノハシ(platypus)、モルモット、ウサギ、類人猿(ape)、サルおよびヒトのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
原発性眼瞼炎の処置を必要とする対象における原発性眼瞼炎を処置するための方法であって、イベルメクチンおよび眼科的に許容される担体を含む医薬組成物を、別の活性医薬成分と同時投与することなく、前記対象の眼瞼縁に正確に1日1回、3日間局所投与し、2週間後に1日1回、3日間繰り返すことを含み、前記医薬組成物は約0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含み、前記医薬組成物は前記眼瞼縁に付着する、方法。
【請求項16】
前記眼科的に許容される担体が、キレート剤、保湿剤、増粘剤、乳化剤、防水剤、基剤、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤、および水からなる群から選択される1つまたは複数の成分を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)眼科的に許容される担体;および(b)対象の眼瞼縁への正確な適用に適している、治療有効量の生物学的に活性な物質を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物は前記眼瞼縁に付着する、医薬組成物。
【請求項18】
医薬が、分散に対する耐性を有し、それによって眼瞼縁に保持される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記生物学的に活性な物質が、抗寄生生物薬、ステロイド、抗生物質、成長因子および血清からなる群から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記眼科的に許容される担体が、少なくとも1つの眼科的に許容される賦形剤を含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記眼科的に許容される賦形剤が、キレート剤、保湿剤、ガム/増粘剤、乳化剤、防水剤、基剤、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤、および水からなる群から選択される1つまたは複数である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記キレート剤が、全組成物の約0.1重量%~5.0重量%の範囲で存在する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記キレート剤が、EDTA二ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、およびEDTA四ナトリウムからなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記保湿剤が、全組成物の約0.5重量%~5.0重量%の範囲で存在する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記保湿剤が、グリセリン、プロパンジオール、およびプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記ガムまたは増粘剤が、全組成物の約0.2重量%~2.0重量%の範囲で存在する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記ガムまたは増粘剤が、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、およびビーガム(veegum)ゲルからなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記乳化剤が、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記アニオン性乳化剤が、全組成物の約0.3重量%~3.0重量%の範囲で存在する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記アニオン性乳化剤が、グリセリルステアラートシトラート、ナトリウムステアロイルグルタマート、およびグリセリルステアラートSEからなる群から選択される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記非イオン性乳化剤が、全組成物の約3重量%~10重量%の範囲で存在する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記非イオン性乳化剤が、セテアリルアルコール、セテアリルアルコール/ポリソルベート60、グリセリルステアラート/PEG-100ステアラートからなる群から選択される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記防水剤が、全組成物の約5重量%~12重量%の範囲で存在する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記防水剤が、ビス-ステアリルエチレンジアミン、ネオペンチルグリコール、ステアリル水素化ダイマージリノレートコポリマー(シルバクリア(Sylvaclear)C75V)およびエチレンジアミン/水素化ダイマージリノレートコポリマービス-ジ-C
14~18アルキルアミド(シルバクリア(Sylvaclear)A200V)からなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記基剤が、全組成物の約10重量%~45重量%の範囲で存在する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記基剤が、シリコーン油、ジメチコーン350cps、ジメチコーン500cps、およびジメチコーン1000cpsからなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記保存剤が、全組成物の約0.5重量%~3重量%の範囲で存在する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記保存剤が、フェノキシエタノールおよびカプリリルグリコールからなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記抗酸化剤が、全組成物の約0.01重量%~0.5重量%の範囲で存在する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記抗酸化剤がトコフェロールD-アルファ50%である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記医薬組成物が5と8との間のpHを有する、請求項17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許協力条約(PCT)国際出願は、2019年8月20日に米国特許商標庁に出願された「A Method Of Treatment For Anterior And Posterior Blepharitis(前部および後部眼瞼炎のための処置方法)」と題された仮特許出願(出願番号62/889,323)の優先権および利益を主張する、2020年8月19日に米国特許商標庁に出願された「Compositions And Methods For The Treatment Of Anterior Blepharitis And Posterior Blepharitis(前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置のための組成物および方法)」と題された非仮特許出願(出願番号16/997,079)の優先権および利益を主張する。上記で参照した特許出願の明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置のための医薬組成物および方法に関し、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎は、原発性起源のものであってよく、感染、寄生または酒さなどの他の要因に対する続発性のものでなくてもよい。組成物は、全組成物の0.001重量%~20重量%の範囲でイベルメクチンを含む。眼瞼縁に正確に前記組成物を局所投与することにより、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎に罹患している患者に治療上の利益をもたらす。
【背景技術】
【0003】
図1Aは、眼球の前部および眼瞼100を通る矢状断面を示す。眼瞼炎は、近位には最も前部の睫毛の根元の周囲の領域から、遠位には眼球106に接触する瞼縁104の縁部に延びる眼瞼縁104の炎症症状を記述するために使用される用語である。眼瞼炎は、今日まであまり理解されていない多因子起源の疾患である。これは、眼瞼に影響を及ぼす疾患の最も一般的な形態であり、眼科医の診察での病状の大部分を占める。その最も一般的な病状において、原因は不明である。それは、眼球を覆う涙液膜の破壊を引き起こすことによって、眼の不快感、かゆみ、発赤、異物感、ドライアイ疾患、瞼縁104の腫脹および視覚のかすみなどの複数の症候を引き起こす慢性的な炎症症状である。
【0004】
様々な眼瞼炎の分類が提案されているが、これらのいずれもそれぞれは広く受け入れられてはおらず、しばしば一緒に使用され、互換的に使用される傾向がある。
【0005】
臨床的には、解剖学的根拠に基づく分類は以下の通りである:
前部眼瞼炎は、
図1Bに示すように、睫毛が付く眼瞼の外側前縁部で発生し、睫毛の根元、毛包、およびそれらの周囲のケラチン化した皮膚に影響を及ぼす。睫毛の根元は、まつげの球状部を含むことの他に、皮脂腺も含む。
後部眼瞼炎は、眼球106に接触する眼瞼の内縁部に影響を及ぼす。後部眼瞼炎は、
図1Bに示すように、瞼板103の本体内に位置するマイボーム腺103A、および瞼縁104上のそれらの開口部104B、およびそれらの周囲の上皮に影響を及ぼす。これは、多くの場合、マイボーム腺炎またはマイボーム腺疾患(MGD)とも呼ばれる。
【0006】
病因による分類も臨床的に一般的に使用される。この分類は以下の通りである:
未だ病因が不確定な症状である原発性眼瞼炎、および病理の原因が細菌による感染、シラミまたはダニの寄生、乾癬などの全身症状、酒さ、アトピー性疾患、イソトレチノインなどの薬物に起因し得る続発性眼瞼炎。
【0007】
臨床で存在する眼瞼炎症例の大部分は、いかなる明白な原因因子も有さず、したがって、原発性または非感染性眼瞼炎と呼ばれる。この症状の有病率は非常に高く、推定値は一般集団の10%~90%超に及ぶ。有病率は年齢と共に増加し、民族性は東アジア人の集団においてより一般的である。それは、臨床医に提示される最も一般的な症状の1つであるにもかかわらず、十分に理解されずに処置されている臨床エンティティのままである。
【0008】
図1Aはまた、角膜強膜接合部106c、眼の後房(硝子体腔)および後房の内壁の神経網膜ライン110、瞳孔を中心アパーチャとして有する虹彩111、ならびに前房と後房との間の境界を形成する水晶体112を示す。
【0009】
図1Bは、眼瞼縁104の拡大図を示す(前部ラメラ102と後部ラメラ103との間で人工的に分割されている。
図1Bは、前部ラメラ102の皮膚102A結合組織102B筋肉102C、および脂肪102Dを示す。
図1Cは、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎によって影響を受ける関連領域および構造を示す眼瞼縁104の拡大図を示す。眼瞼縁104において前部眼瞼炎および後部眼瞼炎により影響を受ける関連領域および構造には、マイボーム腺開口部104B、睫毛の根元104A、瞼縁の前部および後部ラメラ103(マイボーム腺を有する瞼板)を裏打ちする皮膚104C、ならびに瞼縁の前部ラメラ102の内部組織が含まれる。分類の複雑さにもかかわらず、原発性眼瞼炎のすべての症例に共通する最終的な病理は、
図1Bおよび
図1Cに示される、睫毛の根元、眼瞼縁104の皮膚および瞼板103のマイボーム腺103Aならびに瞼縁104上のそれらの開口部104Bにおける炎症性変化である。症状を特徴付ける症候および徴候をもたらすのは炎症過程である。さらに、前部および後部眼瞼炎への解剖学的分類にもかかわらず、実際には、症例の圧倒的大多数は、眼瞼の前部ラメラ102および後部ラメラ103の両方の瞼縁104に影響を及ぼす様々な程度の炎症を有する。したがって、眼瞼縁104の全範囲を処置する有効な治療法が必要である。
【0010】
図3は、マイボーム腺機能不全の様々な提案された種類の分類を例示的に示し、すべてが原発性および続発性形態に細分類され、すべてが臨床的に明らかな炎症につながる。原発性および続発性形態へのこの分類は、前部眼瞼炎にも適用される。最終的な結果は炎症であり、これは眼瞼炎の症候、徴候および結果の大部分をもたらす。
図3は、Kelly K.Nicholsらによって書かれ、Investigative Ophthalmology&Visual Science、Special Issue 2011、第52巻、第4号、1922~1929頁に公表された「The International Workshop on Meibomian Gland Dysfunction:Executive Summary(マイボーム腺機能不全に関する国際ワークショップ:エグゼクティブサマリー)」から再現されている。
【0011】
図4は、局所投与後の角膜および結膜/強膜経路を通る薬物分布経路を例示的に示す。これは、眼球に接触する局所医薬品が網膜および視神経の後部神経組織に到達するためにとることができる経路を提供する。したがって、網膜および視神経の神経組織に対して潜在的に毒性である薬剤は、それらが涙液膜と混合または涙液膜に溶解する場合、眼に浸透し、それらの組織に影響を及ぼし得る。
図4は、Hughesらによって書かれ、「Advanced Drug Delivery Reviews、57、(2005)、2010~2032に公表された「Topical and systemic drug delivery to the posterior segments(後部セグメントへの局所および全身薬物送達)」から再現されている。
【0012】
原発性眼瞼炎の病因は未だ不明であるが、原因因子の仮定は、眼瞼の正常な共生細菌生物の過剰増殖、これらの細菌によって分泌される毒素に対する反応、睫毛の皮脂腺および眼瞼の瞼板103に含まれるマイボーム腺によって分泌される脂質物の組成の変化に及ぶ。眼瞼炎は多因子病因を伴う疾患複合体であるが、最も一般的な病状では、炎症過程の病因は不明である。
【0013】
続発性眼瞼炎は、明らかな微生物感染、デモデックス(Demodex)などのダニによるまつげの寄生、酒さ、乾癬などの全身症状、アトピー性疾患、尋常性ざ瘡に対する処置として使用されるイソトレチノインなどの薬物の副作用、化学的損傷、放射線後の影響、および他の様々な症状などの既知の原因因子がある症状である。
【0014】
デモデックス・フォリキュロラム(Demodex folliculorum)などのダニによる睫毛の根元の寄生およびデモデックス・ブレビス(Demodex brevis)によるマイボーム腺の寄生に起因する眼瞼炎はまた、特定のエンティティであると一部によって考えられているが、これは、デモデックス(Demodex)の寄生が原発性炎症過程に対する続発性の可能性があることを示す注目に値する証拠としては広く受け入れられていない。皮膚の正常な細菌叢、ひいては瞼縁104のケラチン化した表面は、通常、皮膚の生態系を最適化するために必要な共生生物としての細菌、真菌およびダニを含む様々な生物を含む。デモドックス(Demodex)種は非常に一般的な共生生物であり、その同定は年齢と共に増え、いくつかの報告は、それらが睫毛標本の最大30%に存在することを示している。デモデックス・フォリキュロラム(Demodex folliculorum)による睫毛検体の寄生率の平均は、炎症性眼瞼炎の症例では約30%であり、これは眼瞼炎を伴わない対象の睫毛検体で見られる寄生率とほぼ同一である。したがって、眼瞼炎、特にマイボーム腺疾患の一部のサブセットの病因においてさえ、デモドックス(Demodex)種の役割は依然として推測である。したがって、症例の大部分には、病因不明の炎症に起因する眼瞼炎が含まれる。
【0015】
この症状を処置するための現在の方法は、限られた成功しか収めていない。それらには、主に、シャンプー、液状クレンザー、およびティーツリーオイル(T-tree oil)などの様々な溶液で瞼縁104を擦る、瞼縁104のクレンジング手段が含まれる。「テルピノール」と呼ばれる活性成分を含むティーツリーオイル(T-tree oil)クレンザーは、推定されるデモデックス(Demodex)関連眼瞼炎のための処置として記載されている。
【0016】
テトラサイクリンなどの抗生物質およびアジスロマイシンなどの大球性(macrolytic)ラクトンなどの経口医薬品が提案されているが、これらは数ヶ月間の毎日の摂取を必要とする。そのような処置の成功は依然として限られている。経口ビタミンDも提案されているが、やはり成功は限られている。
【0017】
炎症性眼瞼炎の処置のための瞼縁104への局所治療薬の適用には、テトラサイクリン、アジスロマイシンおよびステロイド調製物などの抗生物質が含まれる。
【0018】
Investigative Ophthalmology&Visual Science、Special Issue 2011、第.52巻、第4号、2050~2064、(The International Workshop on Meibomian Gland Dysfunction:Report of the Subcommittee on Management and Treatment of Meibomian Gland Dysfunction)(マイボーム腺機能不全に関する国際ワークショップ:マイボーム腺機能不全の管理および処置に関する小委員会の報告書)は、人工潤滑剤適用、局所脂質補充、瞼衛生、温湿布、熱適用、局所抗生物質適用、局所ステロイド適用、局所カルシニューリン阻害剤およびシクロスポリン、テトラサイクリンおよび誘導体の全身投与などの現在の実践パターンを提供する。これはさらに、デモデックス(Demodex)ダニは前部眼瞼炎のいくつかの形態において病因的役割を有するが、後部眼瞼炎の病因におけるデモデックス(Demodex)ダニの証拠はないことを示す。
【0019】
イベルメクチンおよびイソキサゾリンなどの抗寄生生物薬の適用は、デモデックス(Demodex)ダニによる推定される寄生に起因する眼瞼炎に対する処置として提案されている。しかしながら、炎症性眼瞼炎の症例の大部分は、ダニの活性に関連していない。
【0020】
イベルメクチンは、抗殺ダニ剤として使用されているマクロライドのアベルメクチンクラスのメンバーである。イベルメクチンは、ストレプトマイセス・アヴェルミリティス(Streptomyces avermilitis)の発酵に由来する半合成化合物である。これは、5-O-デメチル-22,23-ジヒドロアベルメクチンA1aおよび5-O-デメチル-25-デ(1-メチルプロピル)-25-(1-メチルエチル)-22,23ジヒドロアベルメクチンA1aを含有する混合物である。
【0021】
イベルメクチンおよびイソキサゾリンなどの抗寄生生物薬は、主に神経組織から構成される網膜などのある特定の神経組織に対して潜在的に非常に毒性である。脊椎動物、特にヒトの網膜は、特に網膜の神経細胞上に存在するGABA(γ-アミノ酪酸)受容体上にリガンドゲートイオンチャネルを含むアマクリン細胞などの神経細胞を含む。GABAは、脊椎網膜における主要な抑制性神経伝達物質であり、網膜における視覚情報の処理において主要な役割を果たす。網膜には3つのファミリーのGABA受容体が存在する。これらは、イオノトロピックGABA-A、イオノトロピックGABA-CおよびメタボトロピックGABA-B受容体である。
【0022】
イベルメクチンは、GABA受容体のリガンドゲートイオンチャネルに結合することによって、これらの受容体を含む細胞によるシナプス伝達を遮断する。GABAは主要な抑制性神経伝達物質であるので、シナプス伝達のこの遮断は、これらの細胞の過分極をもたらす。
【0023】
経口イベルメクチンは良好な安全性プロファイルを有することが示されているが、抑制性神経伝達物質を含む細胞の過分極に起因する阻害の増強によって予想されるように、高用量は麻痺を引き起こした。脊椎動物は、中枢神経系および網膜などの選択された神経組織にのみGABA媒介性組織を含むので、脊椎動物における血液脳関門および血液網膜関門の存在は、イベルメクチン分子が無傷の関門を有する正常な脊椎動物中でこれらの組織に到達するのを妨げる。
【0024】
瞼縁104への局所調製物の適用は、活性成分の溶液または懸濁液のいずれかであるクリーム剤、軟膏剤および滴剤の形態をとる。眼瞼縁104に適用される活性成分のためのビヒクルとしてワックスが提案されており、これはその後、眼球106の表面上に送達するためのリザーバとして作用する。
【0025】
眼瞼縁104は、独特の構造である。これは、眼瞼の内眼角から外眼角まで延び、瞼が閉じている場合に適度に水密なシールを可能にする平坦な形状である。眼瞼縁104の外縁部は、わずかに湾曲した形状であり、眼瞼外皮膚の延長であるケラチン化した上皮によって裏打ちされている。このケラチン化した上皮は、眼瞼の瞼板103内に含まれるホロクリン腺であるマイボーム腺の外部オリフィスの内層まで延び、これを含む。これはまた、マイボーム腺の膨大部にも及ぶ。
図1Bに示される眼瞼の前部ラメラ102は、瞼縁104の厚さのほぼ半分まで延び、眼瞼に剛性を与える瞼板103を含む後部ラメラ103に接合されている。マイボーム腺の外部オリフィス104Bをちょうど通過すると、ケラチン化した上皮は、皮膚粘膜接合部104Dで眼瞼の内面の結膜内層の粘膜上皮に移行する。眼瞼の内面は急な形状であり、眼球106に対して平らになっている。慢性的な瞼縁の炎症は、眼瞼縁104の過度のケラチン化をもたらし、オリフィス104Bの遮断および閉塞を引き起こす。
【0026】
マイボーム腺の遮断は、腺機能不全をもたらす。マイボーム腺の分泌物には、眼球106を裏打ちする涙液膜の外層が含まれる。
図2は、ヒト涙液膜の提案されたモデルを示す(縮尺通りではない)。これは、マイボーム腺からの分泌物で構成される外部脂質層、涙腺によって分泌される涙液膜の水相層および結膜の粘液腺によって分泌されるムチン層を有する正常な涙液膜の断面を提供する。この層は、角膜および強膜の上皮を裏打ちし、結膜嚢に延び、瞼板103を裏打ちする結膜103bの上に延びる。これは、瞼縁の皮膚粘膜接合部104Dまたはその付近の前方に限定される。ムチン層は、結膜上皮の特殊な細胞によって分泌され、角膜および結膜上皮を直接裏打ちする。これは、涙液膜の水層の広がりを促進することによって涙液膜の水層を支持する。脂質層は、涙液膜の外部コートであり、水層を含み、水性の蒸発を遅らせる働きをする。脂質層はマイボーム腺によって分泌される。
図2は、Kelly K.Nicholsらによって書かれ、Investigative Ophthalmology&Visual Science、Special Issue 2011、第52巻、第4号、1922~1929頁に公表された「The International Workshop on Meibomian Gland Dysfunction:Executive Summary(マイボーム腺機能不全に関する国際ワークショップ:エグゼクティブサマリー)」から再現されている。
【0027】
涙液膜は3つの層を含む。眼球106に最も近い内層は、粘膜成分からなる。涙液膜の大半は、涙腺によって分泌される水性成分である。涙液膜の外層は、マイボーム腺の脂肪性分泌物およびワックス様分泌物を含む脂質層である。慢性炎症は、脂質層の組成を変化させる。マイボーム腺オリフィスの遮断は、分泌される脂質の量を減少させ、蒸発亢進性ドライアイを引き起こす水性成分の乾燥の増加を可能にする。脂質層は、瞼縁104の皮膚粘膜接合部104Dでの涙液膜の半月状の縁部に涙液膜を含むように働く。したがって、瞼縁の涙液膜は、
図1Dに示すように、マイボーム腺のオリフィスに非常に近接して位置する。
【0028】
図1Dは、眼球の角膜106Aおよび強膜106Bに関連する瞼縁の概略図を示す。特に、皮膚粘膜接合部104Dに対する涙液膜メニスカス111Aおよびマイボーム腺のオリフィスの関係。これは、中央の透明角膜106Aおよび周囲の不透明強膜106Bからなる眼球との関連で眼瞼縁構造の拡大図を提供する。角膜は、特殊化された上皮(図には示されていない)によって裏打ちされ、強膜106Bは、後部ラメラ103の瞼板を裏打ちする結膜上皮に連続する結膜上皮によって裏打ちされる。眼球の前部を裏打ちする涙液膜は、角膜106Aおよび強膜106Bを含む眼球の前部全体を覆っている。これは、後部瞼縁が眼球と接触する接合部に集合体を形成する。この集合体は半月状の形状をとる。一般に、メニスカスの前縁部は、皮膚粘膜接合部のムコイド側またはムコイド側内にあり、涙液膜の脂質層は、半月状の縁部の前方に位置するマイボーム腺開口部104Bから涙液膜に供給される。
【0029】
クリーム剤、軟膏剤、滴剤、懸濁剤、ローション剤などの既存の送達製剤は、瞼縁104への保持性および付着性が限られており、涙液膜に溶解および広がる傾向にある。液滴ローション剤および溶液は、涙液膜によって容易に希釈され、洗い流されるので、所望の作用部位で有効濃度を維持することができない。
【0030】
クリーム剤および軟膏剤などのエマルジョンはまた、希釈され、洗い流され、誤って拭き取られ、眼球106に塗り付けられ、眼瞼の結膜嚢108に集まる傾向がある。
【0031】
これらの製剤が必要な作用部位で有効濃度を維持することができないこととの他に、結膜嚢に活性成分が集まること、および眼球106に塗り付けられることは、活性成分が眼球106の角膜106Aおよび強膜106Bを貫通し、眼球106の内部および内部神経組織に入ることを可能にする。
【0032】
親油性分子は、角膜106を貫通して眼球の前房109に到達し、その後硝子体腔に拡散することができ、そこでそれらは硝子体腔を裏打ちする網膜の神経組織と接触することができる。
【0033】
親水性および親油性分子、特に150kDa未満の小分子はまた、結膜および強膜を通って拡散することができる。イベルメクチンは小分子として分類されるため、結膜および強膜を貫通して神経網膜に到達する可能性は現実的な可能性である。涙液膜に溶解し結膜嚢108に集まる神経毒性な薬剤は、結膜および強膜を貫通する実際の可能性を示している。
【0034】
したがって、適用の直近の領域への送達を制限することが可能な活性成分を含有する製剤が必要とされている。眼瞼縁104の独特な環境のために、製剤は正確な適用を可能にし、バイオアベイラビリティを最大にし、かつ他の領域への広がりを最小にする両方の高度な保持性を有するべきである。
【0035】
図1Dに示される、瞼縁は、毛を支える皮膚と、涙液膜の水性環境によって境界付けられた皮膚とを含む特有の環境であるため、裸の皮膚または毛を支える皮膚上の局所適用のための既存の製剤は適していない。製剤はまた、通常のまばたきの経過中に眼瞼を閉じることによって加えられるストレスおよび眼瞼の広がり効果を受ける。
【0036】
米国特許出願公開第2017/0232024号は、活性成分イベルメクチンおよび抗生物質が、瞼縁104の前部のみに存在するまつげの根元に指または綿棒を使用して適用されるクリーム剤または軟膏剤に製剤化された、デモデックス(Demodex)関連眼瞼炎の処置方法を開示している。これらの適用方法は不確かで不正確である。マイボーム腺103Aの開口部104B上への適用については言及されていない。原発性眼瞼炎またはマイボーム腺炎もしくはマイボーム腺疾患の処置については言及がなされていない。さらに、クリーム剤または軟膏剤などの純粋なエマルジョンへの製剤化は、瞼縁104上の付着性および保持性を著しく制限する。一例として、ステロイドを含有するクリーム剤または軟膏剤は、眼球106に広がり、眼球被膜に浸透して眼球の内部に入り込むことが公知である。これは、緑内障、白内障などの有害作用をもたらすことが示されている。
【0037】
米国特許出願公開第2018/0369184号は、眼の表面に有益剤を送達するための瞼縁104への脂質製剤の適用方法を開示している。この製剤は、活性成分が涙液膜を介して、およびまばたきの自然な広がり効果によって補助され、眼の表面上に広がることができるように、典型的な眼瞼温度で軟化または融解するように特に設計されている。
【0038】
国際公開第WO2007/054822号は、局所用形態のイベルメクチンを使用して眼型酒さおよび眼型酒さに関連する眼瞼炎を処置する方法を開示している。しかしながら、酒さに起因する眼瞼炎は、症状の非常に限定されたサブセットであり、好ましい製剤は、眼の結膜嚢108および角膜106に適用される洗眼液または点眼剤の形態である。これらの製剤は、瞼縁104を特異的に標的化せず、涙液膜の希釈効果のためにバイオアベイラビリティが限られていることの他に、イベルメクチンが眼球106内に拡散し、網膜のGABA媒介性神経細胞に毒性作用をもたらす明確なリスクがある。
【0039】
したがって、原発性起源であり、その原因が、細菌感染、推定されるダニの寄生、または眼瞼炎をもたらす他の要因、例えば酒さ、乾癬、もしくはイソトレチノインなどの薬物に必ずしも関連しない、前部および後部眼瞼炎を処置する効果的で安全な方法が必要である。現在利用可能な処置方法は有効性が限られている。毛および皮膚表面への局所適用のために現在利用可能な製剤は、非常にコンパクトであり、かつ毛および皮膚ならびに腺のオリフィスを含む独特の環境であり、涙液膜の水層によって非常に近くに境界付けられ(
図1D)、まばたきの動作中に生じるように組織が一定の動きをしている、眼瞼縁104への適用にはあまり適していない。また、睫毛104Aと瞼縁の皮膚粘膜接合部104Dとの間のケラチン化した皮膚104Cを含むように、睫毛および隣接する皮膚の周囲から瞼縁104の患部に適用することができ、マイボーム腺のオリフィスに浸透するいくらかの能力を有する組成物が、長年にわたり必要とされている。
【発明の概要】
【0040】
この概要は、本発明の詳細な説明でさらに開示される概念の選択を簡略化した形態で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の範囲を決定することを意図するものではない。
【0041】
本発明は、前部および後部眼瞼炎の最も一般的な形態の処置のための医薬組成物および方法に関し、前部および後部眼瞼炎は、原発性起源のものであってもよく、感染、寄生またはそのような医薬組成物を使用した酒さなどの他の要因に対する続発性なものでなくてもよい。
【0042】
一態様では、本発明は、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置を必要とする対象における前部眼瞼炎および後部眼瞼炎を処置するための方法であって、イベルメクチンおよび眼科的に許容される担体を含む医薬組成物を、別の活性医薬成分と同時投与することなく、対象の眼瞼縁に正確に局所投与することを含み、医薬組成物は0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含み、医薬組成物は眼瞼縁に付着する、方法を提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、原発性眼瞼炎の処置を必要とする対象における原発性眼瞼炎を処置するための方法であって、イベルメクチンおよび眼科的に許容される担体を含む医薬組成物を、別の活性医薬成分と同時投与することなく、対象の眼瞼縁に正確に1日1回、3日間局所投与し、2週間後に1日1回、3日間繰り返すことを含み、医薬組成物は0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含み、医薬組成物は眼瞼縁に付着する、方法を提供する。
【0044】
さらに別の態様では、本発明は、(a)眼科的に許容される担体;および(b)対象の眼瞼縁への正確な適用に適している、治療有効量の生物学的に活性な物質を含む医薬組成物を提供し、医薬組成物は眼瞼縁に付着する。
【0045】
さらに別の態様では、本発明は、0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含む局所医薬組成物、および局所医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0046】
さらに別の態様では、本発明は、局所医薬組成物を含む製造品;およびその中に含まれる局所医薬組成物を含む容器に関する。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置を必要とする対象における前部眼瞼炎および後部眼瞼炎、もしくは原発性眼瞼炎の処置を必要とする対象における原発性眼瞼炎、またはその両方の処置に有用なキットに関する。キットは、局所医薬組成物;および眼用アプリケータを含む。
前述の概要および本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解される。本発明を説明するために、本発明の例示的な構成が図面に示されている。
しかしながら、本発明は、本明細書に開示される特定の方法および組成物に限定されない。図面において数字によって参照される方法工程または組成物の説明は、本明細書の任意の後続の図面において同じ数字によって示されるその方法工程または組成物の説明に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1A】眼の前部の断面(眼球の前部および眼瞼を通る矢状断面)を示す。
【0049】
【
図1B】眼瞼縁の拡大図を示す(前部ラメラと後部ラメラとの間で人工的に分割されている)。
【0050】
【
図1C】(前部および後部ラメラを人工的に分割することなく)前部眼瞼炎および後部眼瞼炎によって影響を受ける関連領域および構造を示す眼瞼縁の拡大図を示す。
【0051】
【
図1D】眼球の角膜および強膜に関連する瞼縁の概略図を示す。
【0052】
【
図2】ヒト涙液膜の提案されたモデルを示す(縮尺通りではない)。
【0053】
【
図3】マイボーム腺機能不全の様々な提案された種類の分類を例示的に示す。
【0054】
【
図4】局所投与後の角膜および結膜/強膜経路を通る薬物分布経路を例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるかまたは例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行することができる。また、本明細書で用いられる表現および用語は、説明の目的のためであり、限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0056】
「医薬組成物」という用語は、本明細書では、標的の症状または疾患を予防する、強度を低下させる、治癒する、または処置するために用いられる組成物を指すために使用される。
【0057】
「対象」または「患者」という用語は、マウス、ラット、ネコ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ハムスター、フェレット、ブタ、イヌ、カモノハシ(platypus)、モルモット、ウサギおよび霊長類、例えばサル、類人猿(ape)、またはヒトを含むがこれらに限定されない哺乳動物起源の動物種のメンバーを指すために互換的に使用される。
【0058】
「それを必要とする対象」という句は、本明細書で使用される場合、文脈およびこの句の使用が別のことを示さない限り、(i)記載されている本発明の局所医薬組成物が投与されることになる対象;(ii)記載されている本発明の局所医薬組成物を適用している対象;または(iii)記載されている本発明の局所医薬組成物を適用された対象を指す。
【0059】
「局所」という用語は、標的組織への医薬組成物の直接投与を指す。「局所投与」および「局所適用する」という用語は、記載されている本発明の医薬組成物を1つまたは複数の眼瞼縁に送達することを指すために互換的に使用される。医薬組成物は、液体の場合、注入、滴下、または噴霧によって;軟膏、ローション、クリーム、ゲルなどの場合、擦ることによって;粉末の場合、振りかけることによって;液状またはエアロゾル組成物の場合、噴霧によって;または任意の他の適切な手段によって適用することができる。局所投与は、一般に、全身的効果ではなく局所的効果を提供する。
【0060】
「処置」または「処置すること」という用語は、疾患、症状または障害の進行を抑止、実質的に阻害、遅延または反転させること、症状の症候を実質的に改善することを含む。「処置」または「処置すること」という用語は、本明細書で使用される場合、以下のうちの1つまたは複数を達成することをさらに指す:(a)障害の重症度を低下させること;(b)処置されている障害(複数可)に特徴的な症候の発生を制限すること;(c)処置されている障害(複数可)に特徴的な症候の悪化を制限すること;(d)以前に障害(複数可)を有していたことがある患者における障害(複数可)の再発を制限すること;および(e)障害(複数可)について以前に症候性であった患者における症候の再発を制限すること、または疾患を治癒すること。
【0061】
「賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、記載されている本発明の医薬組成物に添加され、意図された投与量で治療効果を発揮することは意図しないが、産物の送達を改善するように作用し得る任意の不活性成分を指す。賦形剤のさらなる特徴は、参照により本明細書に組み込まれる、米国食品医薬品局医薬品評価研究センター(the US Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research)によって発行されたGuidance for Industry Nonclinical Studies for the Safety Evaluation of Pharmaceutical Excipients(医薬品添加物の安全性評価のための非臨床試験ガイダンス)に見出すことができる。
【0062】
「付着する(adheres)」または「付着する(adhere)」という用語は、本明細書で使用される場合、「粘着する」または「付着」という特性と同義であることを指す。「付着する(adheres)」または「付着された(adhered)」という用語は、本明細書で使用される場合、眼瞼縁(複数可)に医薬組成物を結合させるもしくは封じ込めるもしくは含有させるもしくは限定的に留めるもしくは実質的に接着させること、または眼瞼縁(複数可)と接触し、眼瞼縁(複数可)の表面に保持される薬物剤形または医薬組成物をさらに指す。「付着する(adhere)」という用語は、いかなる特定の程度の粘着または結合を意味するものではなく、ある程度の耐久性を意味するものでもない。
【0063】
起源不明の炎症は、前部および後部眼瞼炎の両方の症例の大部分を占めている。細菌感染、ダニの寄生、酒さまたは他の原因などの特定可能な原因に起因する眼瞼炎は、臨床診療で一般的に見られる眼瞼炎の症例の少数を形成する。この症状に対する治療的に有効な処置は有効性が非常に限定されており、この症状は慢性であることが最も多いため、長期間の処置を必要とする。
【0064】
本発明は、前部および後部眼瞼炎の処置のための方法を提供し、前部および後部眼瞼炎は、原発性起源のものであってもよく、感染、寄生または酒さなどの他の要因に対する続発性なものであってもよい。本発明は、瞼縁の前部および後部に影響を及ぼす原発性眼瞼炎として分類され得る眼瞼炎を処置するための方法を提供する。
【0065】
一態様では、本発明は、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置を必要とする対象における前部眼瞼炎および後部眼瞼炎を処置するための方法であって、イベルメクチンおよび眼科的に許容される担体を含む医薬組成物を、別の活性医薬成分と同時投与することなく、対象の眼瞼縁に正確に局所投与することを含み、医薬組成物は0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含み、医薬組成物は眼瞼縁に付着する、方法を提供する。
【0066】
ある実施形態では、方法は、原発性炎症性眼瞼炎を有する対象を同定すること、および治療有効量のイベルメクチンを含有する医薬組成物を眼瞼の縁に正確に局所適用することを含む。医薬組成物は、眼瞼縁への正確な適用が可能であるようなものである。医薬組成物は、眼瞼縁に置かれ、付着し、イベルメクチンの十分な治療的バイオアベイラビリティを確保するのに十分な長さの期間、適所に保持される。
【0067】
ある実施形態では、医薬組成物は、まばたきの自然な行為によって眼瞼が規則的に一緒にされる状況で、下にある組織への付着、耐水性および防水性ならびに耐久性の特性を有する。
【0068】
ある実施形態では、医薬組成物は、涙液膜への分散または溶解が最小限になるように、適用内に活性成分を保持する。ある実施形態では、医薬組成物は、分散に対する耐性を有し、それによって眼瞼縁に保持される。別の実施形態では、医薬組成物は、適用される表面にわたって耐久性を有し、医薬組成物は涙液膜に不溶性である。方法は、原発性炎症性眼瞼炎の症候および徴候の低減、ならびに炎症性眼瞼炎に対する続発性の蒸発亢進性ドライアイの処置に有効である。
【0069】
本発明者は、近位には睫毛の根元から遠位にはマイボーム腺のオリフィスに延び、マイボーム腺のオリフィスを含む眼瞼縁に適用するために特異的に設計された医薬組成物に含まれるイベルメクチンの治療有効濃度が、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎、特に原発性前部および後部眼瞼炎の処置において予想外に有効であることを見出した。イベルメクチンは主にエンデクトサイト(endectocide)と見なされるため、これは予想外の結果である。
【0070】
治療有効濃度は、医学分野において、その症状に関連する症候および徴候を軽減する活性成分の濃度として定義され、そのような改善は、毒性作用を引き起こすことなく最長の期間にわたって維持される。典型的には、全組成物の1重量%のイベルメクチンが適切であることが臨床現場で見出されているが、この濃度は例として提供されており、決して本発明を限定するものではない。
【0071】
医薬組成物はまた、予想外にも、涙液膜の脂質層の欠乏の原因となるマイボーム腺によって分泌される脂質の欠如の結果である蒸発亢進性ドライアイの処置において有効である。これは、涙液膜の脂質層の蒸発遅延効果が不十分であるため、涙液膜の水層のより迅速な蒸発をもたらす。
【0072】
慢性炎症は、マイボーム腺のオリフィスの遮断をもたらし、その結果、マイボーム腺の脱落および死をもたらす。マイボーム腺の遮断は、涙液膜に分泌される脂質の減少をもたらす。本発明は、マイボーム腺の遮断を引き起こす慢性の非感染性または非寄生性過程の処置において有効であり、それによって健康な涙液膜をもたらす。
【0073】
ある実施形態では、医薬組成物は、瞼縁への適用を含み、眼球の表面および結膜嚢などの隣接組織へのその医薬組成物の広がりを防止または最小化する特性を有する。
【0074】
ある実施形態では、医薬組成物は、適用後に迅速に定着し、防水性および耐水性を提供する。
【0075】
別の実施形態では、医薬組成物は、適用後の保持性を有し、その結果、眼瞼運動時または手、枕などの外部の表面との接触時にクラッキング(cracking)または変位すること、また涙液膜によって洗い流され、希釈されることに対する耐性がある。
【0076】
原発性前部および後部眼瞼炎は、感染、寄生、酒さまたは他の全身症状などの特定可能な原因に直接起因しない、睫毛の根元およびマイボーム腺を含む眼瞼縁の炎症がある症状を指す。原発性および続発性眼瞼炎の識別は当技術分野において周知であり、細隙灯生体顕微鏡による検査、顕微鏡検査および培養のための眼瞼縁のスワブ、ならびに顕微鏡下でのダニ、主に炎症起源の原発性眼瞼炎では存在しないダニの存在についての脱毛した睫毛の検査を含み得る。
【0077】
ある実施形態では、医薬組成物に含まれるイベルメクチンの有効濃度は、症状に関連する症候および徴候を有意に低減または完全に除去する濃度である。これはまた、眼瞼縁の皮膚の過剰なケラチン化の低減または完全な除去を含み、それによって遮断されたマイボーム腺の再開通を促進することができる。これはまた、正常な稠度、粘度および透明度のものへのマイボーム腺分泌物の回復を含む。また、ドライアイの症候の改善をもたらす。
【0078】
ある実施形態では、医薬組成物は約0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.5重量%~5重量%のイベルメクチンを含む。別の実施形態では、医薬組成物は約1重量%のイベルメクチンを含む。
【0079】
別の実施形態では、本方法は、抗生物質またはステロイドなどの他の活性医薬成分の添加または同時投与なしに、症状の迅速かつ持続的な改善をもたらす。この作用は、いかなる既知の抗菌効果とも無関係であり、イベルメクチンの予想外に有効な抗炎症効果に起因するものである。本発明者は、この抗炎症効果が、瞼スクラブ、局所抗生物質およびステロイドなどの現在使用されている処置の有効性を有意に上回ることを見出した。
【0080】
別の実施形態では、医薬組成物は定期的に投与される。ある実施形態では、医薬組成物を毎日3日間適用し、2週間後に再び3日間処置を繰り返す。ほとんどの症例では、これは有意な治療効果のために十分である。この頻度を使用した処置は、症状が再発する場合に再び繰り返すことができるが、これは比較的少数の症例にのみ必要である。イベルメクチンの間欠投薬は、より少ない量のイベルメクチン使用の利益を提供し、それによって有害作用の可能性を低下させる。
【0081】
別の実施形態では、局所適用は、イベルメクチンを対象の眼瞼縁に直接かつ正確に適用することを可能にし、よって、イベルメクチンが様々な身体区画に分配され、その結果、特定の標的部位で低濃度であるというイベルメクチンの経口適用に関連する問題を克服する。患部への医薬組成物の直接局所適用はまた、身体の他の部分における医薬品関連の副作用のリスクを最小限に抑える。
【0082】
別の実施形態では、前部および後部眼瞼炎を有する対象が特定され、既存の症候および徴候が認められる。医薬組成物は、医薬組成物が適用されるべき眼瞼縁の領域を正確に特定するために、例えば細隙灯による拡大を使用して医師によって適用される。局所麻酔の滴剤を、5~10分前に眼の下結膜嚢に適用する。一時的な麻酔は、流涙反射を減弱させ、それによって適用過程中の涙液の産生を最小限に抑える。
【0083】
別の実施形態では、医薬組成物は、例えば、局所組成物で前処理されるか、または局所組成物を含む、眼用アプリケータを用いて眼瞼縁に正確に投与される。ある実施形態では、アプリケータは、スワブ、化粧パッド、ワイプ、ワイプスティック、タオル、スポンジ、ガーゼ、パフ、ワンド(wand)、ブラシ、またはコームである。ある実施形態では、スポンジ先端アプリケータまたはブラシを使用して、遠位にはマイボーム腺のオリフィスから、マイボーム腺のオリフィスを含んで、近位には睫毛の根元および皮膚まで広がる、付着フィルムまたはコーティングとして、医薬組成物を正確に適用する。眼瞼は、適用中に眼球との接触から手動で離される。結膜嚢への製剤の流出を防ぎ、眼球との接触を防ぐように注意する。
【0084】
別の実施形態では、医薬組成物は、外眼角から涙点まで(但し、涙点は含めず)、眼瞼縁の全長に適用される。医薬組成物は、上眼瞼101と下眼瞼105縁の両方に適用される。眼瞼縁を、適用前に乾燥スポンジまたはスワブでさらに乾燥させてもよい。瞼縁表面を乾燥させることにより、製剤の付着が容易になる。
【0085】
ある実施形態では、細隙灯または他の適切な拡大の下で、眼瞼は、医師によって眼球から手動で離される。医薬組成物に浸漬された適切なスポンジ先端付きアプリケータまたはブラシを使用して、過剰な組成物を拭き取った状態で瞼縁に適用される。
【0086】
医薬組成物は、アプリケータがマイボーム腺の開口部はちょうど覆うが、組成物を粘膜表面にさらに広がらないように注意しながら、瞼縁の長さに沿って正確に膜として適用される。医薬組成物は、近位にはまつげの根元およびその間の皮膚領域を覆うように広げられる。瞼は、医薬組成物が適所に置かれ、乾燥するまで眼球から離され保持される。医薬組成物は、瞼縁上の付着性フィルムまたはコーティングの形態をとる。この手順を4つの眼瞼縁すべてについて繰り返す。医薬組成物の投与は、マイバム産生の増強をもたらす。
【0087】
ある実施形態では、適用は、約6時間~12時間、適所に放置され、例えば、スポンジ先端付きスワブスティック、またはBlephagelもしくはBlephacareなどの瞼縁での特定の使用のための溶液に浸漬された同様のデバイスを用いて除去される。結膜嚢への製剤の不注意な流出を防ぐために、拭き取り動作は眼球から離れるように除去中は注意すべきである。
【0088】
別の実施形態では、医薬組成物は、例えば凹面拡大ミラーを使用して、対象自らによって適用される。本発明による医薬組成物は、眼刺激を引き起こさないように製剤化される。したがって、本発明は、患者が診療所に行く必要なしに、そのような医薬品を自ら適用することを可能にする。患者は、眼瞼炎の再発のより低いリスクを確実にするために、ある期間にわたって投薬を連続的に繰り返すことができる場合がある。
【0089】
適用時の設置および乾燥、防水性または耐水性、小さな空間にわたって正確に適用される能力、耐久性および保持性の要件を有する医薬組成物の様々な実施形態は当業者に公知である。
【0090】
別の実施形態では、眼科的に許容される担体は、少なくとも1つの眼科的に許容される賦形剤を含む。
【0091】
別の実施形態では、医薬組成物は、以下の成分:滅菌蒸留水、イベルメクチン、キレート剤、保湿剤、ガム/増粘剤、アニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、防水剤、基剤、保存剤、抗酸化剤、およびpH調整剤のうちの1つまたは複数を含む。
【0092】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.5重量%~5重量%の範囲でイベルメクチンを含む。ある実施形態では、医薬組成物は約1重量%のイベルメクチンを含む。
【0093】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.1重量%~99.0重量%の範囲で水を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約50重量%~75重量%の範囲で水を含む。
【0094】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.1重量%~5.0重量%の範囲でキレート剤をさらに含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.08重量%~0.2重量%の範囲でキレート剤を含む。キレート剤は、EDTA二ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、およびEDTA四ナトリウムから選択されるが、これらに限定されない。
【0095】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.5重量%~5.0重量%の範囲で保湿剤をさらに含む。ある実施形態では、医薬組成物は約1.5重量%~3重量%の範囲で保湿剤を含む。保湿剤は、グリセリン、プロパンジオール、およびプロピレングリコールから選択されるが、これらに限定されない。
【0096】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.2重量%~2.0重量%の範囲でガムまたは増粘剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.1重量%~1重量%の範囲でガムまたは増粘剤を含む。ガムまたは増粘剤は、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムおよびビーガム(veegum)ゲルから選択されるが、これらに限定されない。
【0097】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.3重量%~3.0重量%の範囲でアニオン性乳化剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.35重量%~0.75重量%の範囲でアニオン性乳化剤を含む。アニオン性乳化剤は、グリセリルステアラートシトラート、ナトリウムステアロイルグルタマート、およびグリセリルステアラートSEから選択されるが、これらに限定されない。
【0098】
別の実施形態では、医薬組成物は約3重量%~10重量%の範囲で非イオン性乳化剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約4重量%~8重量%の範囲で非イオン性乳化剤を含む。非イオン性乳化剤は、セテアリルアルコール、セテアリルアルコール/ポリソルベート60、およびグリセリルステアラート/PEG-100ステアラートから選択されるが、これらに限定されない。
【0099】
別の実施形態では、医薬組成物は約5重量%~約12重量%の範囲で防水剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約6重量%~10重量%の範囲で防水剤を含む。防水剤は、ビス-ステアリルエチレンジアミン、ネオペンチルグリコール、ステアリル水素化ダイマージリノレートコポリマー(シルバクリア(Sylvaclear)C75V)、およびエチレンジアミン/水素化ダイマージリノレートコポリマービス-ジ-C14~18アルキルアミド(シルバクリア(Sylvaclear)A200V)から選択されるが、これらに限定されない。防水剤の添加は、耐水性および防水性を医薬組成物にもたらす。
【0100】
別の実施形態では、医薬組成物は約10重量%~45重量%の範囲で基剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約6重量%~10重量%の範囲で基剤を含む。基剤は、ジメチコーン350cps、ジメチコーン500cps、ジメチコーン1000cpsなどのシリコーン油から選択されるが、これらに限定されない。ジメチコーンは細孔透過性を有し、それにより、マイボーム腺のオリフィスを通る医薬組成物の十分な透過をもたらして、活性成分を腺に送達する。基剤はまた、医薬組成物に追加の防水性を提供する他の化合物、例えばアンモニウムアクリラートコポリマーおよびナトリウムアクリラートコポリマーを含有してもよい。
【0101】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.5重量%~3重量%の範囲で保存剤をさらに含む。ある実施形態では、医薬組成物は約1重量%~1.75重量%の範囲で保存剤を含む。保存剤は、フェノキシエタノールおよびカプリリルグリコールから選択されるが、これらに限定されない。
【0102】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.01重量%~0.5重量%の範囲で抗酸化剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.025重量%~0.3重量%の範囲で抗酸化剤を含む。抗酸化剤は、トコフェロールD-アルファ50%であるが、これに限定されない。
【0103】
別の態様では、本発明は、原発性眼瞼炎の処置を必要とする対象における原発性眼瞼炎を処置するための方法であって、イベルメクチンおよび眼科的に許容される担体を含む医薬組成物を、別の活性医薬成分と同時投与することなく、対象の眼瞼縁に正確に1日1回、3日間局所投与し、2週間後に1日1回、3日間繰り返すことを含み、医薬組成物は約0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含み、医薬組成物は眼瞼縁に付着する、方法を提供する。
【0104】
別の態様では、本発明は、(a)眼科的に許容される担体;および(b)対象の眼瞼縁への正確な適用に適している、治療有効量の生物学的に活性な物質を含む医薬組成物を提供し、医薬組成物は眼瞼縁に付着する。
【0105】
ある実施形態では、眼科的に許容される担体は、少なくとも1つの眼科的に許容される賦形剤を含む。
【0106】
ある実施形態では、生物学的に活性な物質は、瞼縁に送達され得る任意の有益な薬剤であり得る。ある実施形態では、生物学的に活性な物質は、抗寄生生物薬、ステロイド、抗生物質、抗炎症剤、抗新生物剤、抗ウイルス剤、成長因子、血清からなる群から選択される。
【0107】
ある実施形態では、医薬組成物は、付着特性および分散に対する耐性を有し、これにより、医薬組成物を、生物学的に活性な物質の十分なバイオアベイラビリティを確保するのに十分な期間、適所に保持することが可能になる。
【0108】
別の実施形態では、治療有効量の生物学的に活性な物質を含有する医薬組成物は、原発性炎症性眼瞼炎と特定された対象の眼瞼の縁に正確に適用される。
【0109】
別の実施形態では、眼科的に許容される賦形剤は、滅菌蒸留水、キレート剤、保湿剤、ガム/増粘剤、アニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、防水剤、基剤、保存剤、抗酸化剤、およびpH調整剤のうちの1つまたは複数である。
【0110】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.1重量%~99.0重量%の範囲で水を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約50重量%~75重量%の範囲で水を含む。
【0111】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.1重量%~5.0重量%の範囲でキレート剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.08重量%~0.2重量%の範囲でキレート剤を含む。キレート剤は、EDTA二ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、およびEDTA四ナトリウムから選択されるが、これらに限定されない。
【0112】
別の実施形態では、医薬組成物は0.5重量%~5.0重量%の範囲で保湿剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約1.5重量%~3重量%の範囲で保湿剤を含む。キレート剤は、グリセリン、プロパンジオール、およびプロピレングリコールから選択されるが、これらに限定されない。
【0113】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.2重量%~2.0重量%の範囲でガムまたは増粘剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.1重量%~1重量%の範囲でガムまたは増粘剤を含む。ガムまたは増粘剤は、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、およびビーガム(veegum)ゲルから選択されるが、これらに限定されない。
【0114】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.3重量%~3.0重量%の範囲でアニオン性乳化剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.35重量%~0.75重量%の範囲でアニオン性乳化剤を含む。アニオン性乳化剤は、グリセリルステアラートシトラート、ナトリウムステアロイルグルタマート、およびグリセリルステアラートSEから選択されるが、これらに限定されない。
【0115】
別の実施形態では、医薬組成物は約3重量%~10重量%の範囲で非イオン性乳化剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は4重量%~8重量%の範囲で非イオン性乳化剤を含む。非イオン性乳化剤は、セテアリルアルコール、セテアリルアルコール/ポリソルベート60、グリセリルステアラート/PEG-100ステアラートから選択されるが、これらに限定されない。
【0116】
別の実施形態では、医薬組成物は約5重量%~約12重量%の範囲で防水剤をさらに含む。ある実施形態では、医薬組成物は約6重量%~10重量%の範囲で防水剤を含む。防水剤は、ビス-ステアリルエチレンジアミン、ネオペンチルグリコール、ステアリル水素化ダイマージリノレートコポリマー(シルバクリア(Sylvaclear)C75V)またはエチレンジアミン/水素化ダイマージリノレートコポリマービス-ジ-C14~18アルキルアミド(シルバクリア(Sylvaclear)A200V)から選択されるが、これらに限定されない。防水剤の添加は、追加の耐水性および防水性を医薬組成物にもたらす。
【0117】
別の実施形態では、医薬組成物は約10重量%~45重量%の範囲で基剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約6重量%~10重量%の範囲で基剤を含む。基剤は、ジメチコーン350cps、ジメチコーン500cps、ジメチコーン1000cpsなどのシリコーン油から選択されるが、これらに限定されない。ジメチコーンは細孔透過性を有し、それにより、マイボーム腺のオリフィスを通る医薬組成物の十分な透過を可能にして、活性成分を腺に送達する。基剤はまた、医薬組成物に追加の防水性を提供する他の化合物、例えばアンモニウムアクリラートコポリマーおよびナトリウムアクリラートコポリマーを含有してもよい。
【0118】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.5重量%~3重量%の範囲で保存剤をさらに含む。ある実施形態では、医薬組成物は約1重量%~約1.75重量%の範囲で保存剤を含む。保存剤は、フェノキシエタノールおよびカプリリルグリコールから選択することができるが、これらに限定されない。
【0119】
別の実施形態では、医薬組成物は約0.01重量%~0.5重量%の範囲で抗酸化剤を含む。ある実施形態では、医薬組成物は約0.025重量%~0.3重量%の範囲で抗酸化剤を含む。抗酸化剤は、トコフェロールD-アルファ50%であるが、これに限定されない。
【0120】
別の実施形態では、医薬組成物は5と8との間のpHを有する。ある実施形態では、医薬組成物は6と7との間のpHを有する。
【0121】
別の態様では、本発明は、約0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含む局所医薬組成物、および局所医薬組成物を製造するための方法を提供する。実施形態では、医薬組成物は、溶液、懸濁液、サルブ(salve)、スプレー、スティック、ローション、ゲル、ペースト、バーム、フォーム、ムース、スクラブもしくはクレンザー(例えば、シャンプーまたはソープ)、クリーム、または軟膏である。ソープは、棒状、液状、または半固形などの固形であってもよい。
【0122】
別の態様では、本発明は、局所医薬組成物と、局所医薬組成物が収容された容器とを含む製造品に関する。実施形態では、容器は、折り畳み式または非折り畳み式のチューブ、バッグ、パケット、ブリスター、ストリップ、アンプル、バイアル、ボトル、缶、またはジャーである。
【0123】
別の態様では、本発明は、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置を必要とする対象における前部眼瞼炎および後部眼瞼炎、もしくは原発性眼瞼炎の処置を必要とする対象における原発性眼瞼炎、またはその両方の処置に有用なキットに関する。キットは、局所医薬組成物および眼用アプリケータを含む。場合により、アプリケータは、局所医薬組成物で前処理されてもよく、または局所医薬組成物を含んでもよい。キットは、組成物を含む容器をさらに含んでもよい。キットは、組成物を対象の眼瞼縁に正確に局所投与することによって、前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置を必要とする対象における前部眼瞼炎および後部眼瞼炎、または原発性眼瞼炎の処置を必要とする対象における原発性眼瞼炎を処置するための説明書(例えば、印刷された説明書またはデジタルの説明書)をさらに含んでもよい。
【0124】
眼科用調製物は、それが眼組織によって忍容されるように調製され、米国薬局方協会による米国薬局方国民医薬品集(U.S.Pharmacopeia National Formulary)2019 UPS42-NF37に詳述されている滅菌配合法に従って作製されるべきである。
【0125】
炎症性眼瞼炎の処置のためのイベルメクチンの臨床ベースの局所適用は、デモデックス(Demodex)種が単離されなかった場合(これは処置される眼瞼炎の症例の大部分を構成した)と、デモデックス(Demodex)種が単離されたより少数の症例との両方に対して成功している。これらのほとんどは、現在受け入れられている広範囲の処置モダリティに応答しなかった長期にわたる疾患を有する症例であった。95%超が症候の完全な除去および瞼縁の炎症の徴候の顕著な低減を有した。症例の87%は、症候の著しい改善または完全寛解のために1回の処置サイクルしか必要としなかった。また、かなりの数は、以前に閉じたマイボーム腺オリフィスの再開通、以前に塞いだマイボーム腺オリフィスの再開通および正常なマイボーム腺分泌物の再出現を示した。ドライアイの症候がある症例の大部分も顕著な改善を示した。
【0126】
例
本明細書に列挙されているすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、重量パーセントを指す。以下の非限定的な例は、本発明の実施形態を説明するのに役立つ。
【0127】
例1:
方法:
相Aの成分(水、イベルメクチン、EDTA二ナトリウム)を添加し、(溶解するまで)撹拌した。相B(プロパンジオール中のキサンタンガムのスラリー)を、均質なゲルが形成されるまで低剪断下で相Aの混合物に添加した。均質なゲルを80℃に加熱した。
【0128】
相Cの成分(グリセリルステアラートシトラート、セテアリルアルコール、ビス-ステアリルエチレンジアミン、ネオペンチルグリコール、ステアリル水素化ダイマージリノレートコポリマー)を合わせ、80℃に加熱した。相Dの成分(ジメチコーン350cpsおよびジメチコーン500cps、アンモニウムおよびナトリウムアクリラートトコポリマー)を合わせ、相C混合物に添加し、均質になるまで撹拌した。
【0129】
相CおよびDを添加することによって得られた混合物を、相AおよびBを添加することによって得られた混合物に添加し、均質になるまで激しく撹拌した。
【0130】
混合物を40℃未満に冷却し、次いで、相Eの成分(フェノキシエタノール、カプリリルグリコール、トコフェロール-D-アルファ70% Qs pH調整剤)を添加し、均質になるまで撹拌した。pHを6と7との間に調整した。
【0131】
例1で使用された成分および量を表1に要約する。
【表1】
【0132】
例2:
方法:
相Aの成分(脱イオン水およびビーガム(veegum))を高剪断混合で滑らかになるまで混合した。
【0133】
相B(トリエタノールアミンおよびプロピレングリコール)を相Aの混合物に添加し、均一になるまで混合した。
【0134】
相C(キサンタンガム、トコフェロール-D-アルファ70%)を、相AおよびBの上記混合物に添加し、次いで、高剪断混合を使用して均一になるまで混合した。
【0135】
相D(ステアリン酸、グリセリルステアラート、オレイルアルコール)および相E(ジメチコーン350CPS、ジメチコーン1000CPS)を別々の容器内で75℃±5℃に融解し、次いで高剪断混合で混合した。
【0136】
相D、Eの混合物および相A、B、Cの混合物を高剪断で一緒に混合し、35℃±5℃に冷却した。
【0137】
次いで、相F(イベルメクチン滅菌微粉化)を上記混合物に添加し、完全に混合し、滅菌容器に保存した。
【0138】
例2のために使用した成分および量を表2に要約する。
【表2】
【0139】
例3:
方法:
相Aの成分(脱イオン水およびビーガム(veegum))を高剪断混合で滑らかになるまで混合した。
【0140】
相B(トリエタノールアミンおよびプロピレングリコール)を相Aの混合物に添加し、均一になるまで混合した。
【0141】
相C(キサンタンガム、トコフェロール-D-アルファ70%)を、相AおよびBの上記混合物に添加し、次いで、高剪断混合を使用して均一になるまで混合した。
【0142】
相D(ステアリン酸、グリセリルステアラート、オレイルアルコール)および相E(カルナウバワックス、ホワイトビーズワックス)を別々の容器内で75℃±5℃に融解し、次いで高剪断混合で混合した。
【0143】
相D、Eの混合物および相A、B、Cの混合物を高剪断で一緒に混合し、35℃±5℃に冷却した。
【0144】
次いで、相F(イベルメクチン滅菌微粉化)を上記混合物に添加し、完全に混合し、滅菌容器に保存した。
【0145】
例3のために使用した成分および量を表3に要約する。
【表3】
【0146】
上記の医薬組成物は、例としてのみ提示されており、本発明を限定するものではない。最も前部の睫毛および隣接する皮膚から瞼縁上に組成物を正確に適用して、睫毛から瞼縁上の皮膚粘膜接合部へのケラチン化した皮膚を含み、マイボーム腺のオリフィスを含むように、当業者によって製剤化され得る製剤の変形。これらの医薬組成物は、共通して、迅速に設置および乾燥し、眼瞼縁に膜様構造を形成する特性、耐水性および防水性、涙液膜への分散および溶解に対する耐性、ならびに意図せずに拭き取られたり、洗い落とされたりするのを防ぐ耐久性を有する。医薬組成物は、マイボーム腺オリフィスを通って腺管の膨大部へ貫通することができる。
【0147】
以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の概念の実際の実施においてさらなる変更および改変を容易に行うことができるか、または本発明の実施によって知ることができることは、当業者には容易に明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2021-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部眼瞼炎および後部眼瞼炎の処置を必要とする対象における前部眼瞼炎および後部眼瞼炎を処置するための方法であって、イベルメクチンおよび眼科的に許容される担体を含む医薬組成物を、別の活性医薬成分と同時投与することなく、前記対象の眼瞼縁に正確に局所投与することを含み、前記医薬組成物は約0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含み、前記医薬組成物は前記眼瞼縁に付着する、方法。
【請求項2】
前記医薬組成物が、涙液膜への分散または溶解に対する耐性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記眼瞼炎がマイボーム腺疾患および/またはドライアイ疾患に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記眼瞼炎が原発性眼瞼炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記局所投与が周期的投与である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記医薬組成物を1日1回、3日間適用し、2週間後に1日1回、3日間繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物が約1重量%のイベルメクチンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬組成物が、キレート剤、保湿剤、ガム/増粘剤、乳化剤、防水剤、基剤、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤、および水からなる群から選択される1つまたは複数の成分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物が約50重量%~75%重量%の範囲で水をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物の投与がマイバム産生の増強をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記医薬組成物をアプリケータを用いて眼瞼縁に正確に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬組成物を、前記眼瞼縁の全長ならびに上眼瞼縁および下眼瞼縁の両方に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、マウス、ラット、ネコ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ハムスター、フェレット、ブタ、イヌ、カモノハシ(platypus)、モルモット、ウサギ、類人猿(ape)、サルおよびヒトのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
原発性眼瞼炎の処置を必要とする対象における原発性眼瞼炎を処置するための方法であって、イベルメクチンおよび眼科的に許容される担体を含む医薬組成物を、別の活性医薬成分と同時投与することなく、前記対象の眼瞼縁に正確に1日1回、3日間局所投与し、2週間後に1日1回、3日間繰り返すことを含み、前記医薬組成物は約0.001重量%~20重量%のイベルメクチンを含み、前記医薬組成物は前記眼瞼縁に付着する、方法。
【請求項16】
前記眼科的に許容される担体が、キレート剤、保湿剤、増粘剤、乳化剤、防水剤、基剤、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤、および水からなる群から選択される1つまたは複数の成分を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)眼科的に許容される担体;および(b)対象の眼瞼縁への正確な適用に適している、治療有効量の生物学的に活性な物質を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物は前記眼瞼縁に付着
し、前記医薬組成物は分散に対する耐性を有し、それによって眼瞼縁に保持される、医薬組成物。
【請求項18】
前記生物学的に活性な物質が、抗寄生生物薬、ステロイド、抗生物質、成長因子および血清からなる群から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記眼科的に許容される担体が、少なくとも1つの眼科的に許容される賦形剤を含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記眼科的に許容される賦形剤が、キレート剤、保湿剤、ガム/増粘剤、乳化剤、防水剤、基剤、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤、および水からなる群から選択される1つまたは複数である、請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記キレート剤が、全組成物の約0.1重量%~5.0重量%の範囲で存在する、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記キレート剤が、EDTA二ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、およびEDTA四ナトリウムからなる群から選択される、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記保湿剤が、全組成物の約0.5重量%~5.0重量%の範囲で存在する、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記保湿剤が、グリセリン、プロパンジオール、およびプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記ガムまたは増粘剤が、全組成物の約0.2重量%~2.0重量%の範囲で存在する、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記ガムまたは増粘剤が、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、およびビーガム(veegum)ゲルからなる群から選択される、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記乳化剤が、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなる群から選択される、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記アニオン性乳化剤が、全組成物の約0.3重量%~3.0重量%の範囲で存在する、請求項
27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記アニオン性乳化剤が、グリセリルステアラートシトラート、ナトリウムステアロイルグルタマート、およびグリセリルステアラートSEからなる群から選択される、請求項
27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記非イオン性乳化剤が、全組成物の約3重量%~10重量%の範囲で存在する、請求項
27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記非イオン性乳化剤が、セテアリルアルコール、セテアリルアルコール/ポリソルベート60、グリセリルステアラート/PEG-100ステアラートからなる群から選択される、請求項
27に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記防水剤が、全組成物の約5重量%~12重量%の範囲で存在する、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記防水剤が、ビス-ステアリルエチレンジアミン、ネオペンチルグリコール、ステアリル水素化ダイマージリノレートコポリマー(シルバクリア(Sylvaclear)C75V)およびエチレンジアミン/水素化ダイマージリノレートコポリマービス-ジ-C
14~18アルキルアミド(シルバクリア(Sylvaclear)A200V)からなる群から選択される、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記基剤が、全組成物の約10重量%~45重量%の範囲で存在する、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記基剤が、シリコーン油、ジメチコーン350cps、ジメチコーン500cps、およびジメチコーン1000cpsからなる群から選択される、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記保存剤が、全組成物の約0.5重量%~3重量%の範囲で存在する、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記保存剤が、フェノキシエタノールおよびカプリリルグリコールからなる群から選択される、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記抗酸化剤が、全組成物の約0.01重量%~0.5重量%の範囲で存在する、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記抗酸化剤がトコフェロールD-アルファ50%である、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記医薬組成物が5と8との間のpHを有する、請求項17に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】