(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】インモールド複合表面フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20221020BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221020BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B27/40
B29C70/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511182
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2020073816
(87)【国際公開番号】W WO2021037889
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500286643
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】オルヴィス,エリック
(72)【発明者】
【氏名】アミック,マシュー ポール
【テーマコード(参考)】
4F100
4F205
【Fターム(参考)】
4F100AA21B
4F100AK35B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100CA02B
4F100CA13B
4F100CA23B
4F100DE00B
4F100DG11E
4F100DH01E
4F100JA05D
4F100JB13B
4F100JD09
4F100JG01B
4F100JG01E
4F100JJ07
4F100JL11D
4F100JL14A
4F100JL14C
4F100YY00D
4F205AA36
4F205AC03
4F205AD08
4F205AD16
4F205AG03
4F205HA08
4F205HA14
4F205HA22
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HB12
4F205HT29
(57)【要約】
本開示は、(a)剥離キャリアと、(b)剥離キャリアの上にある表面フィルム層であって、OH官能性ポリウレタンと、120℃より高い温度でOH基と反応することができる熱活性化性硬化剤とを含む表面フィルム層と、(c)剥離ライナーとを含む、熱硬化性の多層フィルムの形態の構造複合材用インモールド表面フィルムに関する。また、プリプレグ及び多層フィルムを使用してインモールドで複合物品を調製する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性の多層フィルムであって、
(a)剥離キャリアと、
(b)前記剥離キャリアの上にある表面フィルム層であって、OH官能性ポリウレタンと、120℃より高い温度で前記OH基と反応することができる熱活性化性硬化剤とを含む表面フィルム層と、
(c)剥離ライナーと、
を含む、熱硬化性の多層フィルム。
【請求項2】
前記ポリウレタンが、ポリエステルポリオール又はフルオロエチレンビニルエーテルから調製される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記ポリウレタンが反応性不飽和結合を有さない、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記熱活性化性硬化剤が、ブロック化されたイソシアネート又はアミノ樹脂を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記表面フィルム層(b)が、導電性顔料又は導電性充填剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記剥離キャリア(a)とは反対側の前記表面フィルム層(b)の上にあるタック層をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記タック層のガラス転移温度が、本明細書に記載のm-DSCで測定して0℃以下である、請求項6に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記多層フィルムがスクリム布を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記スクリム布が導電性繊維材料を含む、請求項8に記載の多層フィルム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の多層フィルムの製造方法であって、
(a)前記表面フィルム層を前記剥離キャリア上にキャストするステップと、
(b)前記表面フィルム層を乾燥させるステップと、
(c)前記剥離ライナーを前記剥離キャリアの反対側に積層するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
プリプレグ及び請求項1から9のいずれか一項に記載の多層フィルムを使用してインモールドで複合物品を調製する方法であって、
(a)前記剥離キャリア及び前記剥離ライナーを前記多層フィルムから除去するステップと、
(b)金型のツール側に対して前記金型内に前記フィルムをレイアップするステップと、
(c)前記フィルム上にプリプレグをレイアップするステップと、
(d)前記プリプレグ及び前記フィルムの両方を前記金型内で熱硬化させて、コーティングされた硬化複合物品を形成するステップと、そして、
(e)前記コーティングされた硬化複合物品を前記金型から取り出すステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法に従って得られる複合物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造複合材のインモールド表面フィルムとして使用される熱硬化性の多層フィルム、その製造方法、及び構造複合材におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の翼などの構造部品は、多くの場合、軽量、高強度、及び優れた絶縁特性のために人気を得ている繊維強化複合材から作製される。このような複合物品は、典型的には、強化材料(炭素繊維又は繊維ガラス)及び樹脂、通常はエポキシ樹脂を含む中間製品であるプリプレグから出発して成形することによって調製される。樹脂が完全に硬化していないため、プリプレグを金型の形状に容易に合わせることができる。樹脂は、金型内で高温で最終硬化する。
【0003】
硬化後、複合材の表面は通常、下にある繊維構造のために十分に滑らかではなく、トップコート塗布前に充填及びサンディングを必要とする。表面フィルムを使用してプリプレグの表面を覆い、金型内で共硬化させて滑らかな表面を達成することができる。典型的には、プリプレグと同じ樹脂が、繊維なし又は繊維キャリアで裏打ちされた「樹脂に富む」未硬化樹脂フィルムの形態で、表面フィルムに使用される。
【0004】
公知の表面フィルムは、エポキシ-アミン化学に基づく。公知の表面フィルムの欠点には、耐UV性が低いことが含まれ、これは、複合材が、下にある複合材をUV分解から保護するために依然として適切なプライマー及びトップコートコーティングを有する必要があることを意味する。別の欠点は、保存寿命が限られていることである。公知のエポキシ-アミン表面フィルムは未硬化であり、長い保存寿命を達成するために低温保管(すなわち、0℃未満)を必要とする。周囲条件では、これらのフィルムは早期に硬化する。エポキシ-アミン表面フィルムのさらなる欠点は、硬化時の高い硬度(Tg>150℃)であり、これは、適切な接着を達成するために激しいサンディングが必要であることを意味する。エポキシ-アミン表面フィルムのさらに別の欠点は、低温流れの傾向である。フィルムは未硬化樹脂の塊であるため、凍結保管から取り出して周囲条件にした後に流動する傾向がある。ロールが直立で又は鋭利な表面に対して置かれると、未硬化樹脂の流出を招き、材料に空隙又は不均一なフィルム厚を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の欠点がない、インモールド複合表面フィルムとして使用することができる多層フィルムを提供することが望ましい。好ましくは、多層フィルムは、周囲条件での長い保存寿命及び優れたUV安定性を有する。多層フィルムは、高い耐薬品性、並びに熱及び水分に起因する亀裂に対する高い耐性を有することがさらに望ましい。多層フィルムが著しい低温又は溶融流れを示さないことも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の要望に対処するために、本開示は、第1の態様において、
(a)剥離キャリアと、
(b)剥離キャリアの上にある表面フィルム層であって、OH官能性ポリウレタンと、120℃より高い温度でOH基と反応することができる熱活性化性硬化剤とを含む表面フィルム層と、
(c)剥離ライナーと
を含む熱硬化性の多層フィルムを提供する。
【0007】
別の態様において、本開示は、本発明の熱硬化性の多層フィルムを製造するための方法であって、
(a)上記表面フィルム層を上記剥離キャリア上にキャストするステップと、
(b)上記表面フィルム層を乾燥させるステップと、
(c)上記剥離ライナーを上記剥離キャリアの反対側に積層するステップと、
を含む方法を提供する。
【0008】
さらなる態様では、本開示はまた、プリプレグ及び本発明の熱硬化性の多層フィルムを使用してインモールドで複合物品を調製する方法であって、
(a)上記剥離キャリア及び上記剥離ライナーを上記多層フィルムから除去するステップと、
(b)金型のツール側に対して上記金型内に上記フィルムをレイアップするステップと、
(c)上記フィルム上にプリプレグをレイアップするステップと、
(d)上記プリプレグ及び上記フィルムの両方を上記金型内で熱硬化させて、コーティングされた硬化複合物品を形成するステップと、
(e)上記コーティングされた硬化複合物品を上記金型から取り出すステップと、
を含む方法を提供する。
【0009】
さらに別の態様では、本開示は、コーティングされた、本発明の方法に従って得られるインモールド硬化複合物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態による多層フィルムの断面図を示す。
【
図2】本発明の実施形態による多層フィルムの別の断面図を示す。
【
図3】本発明の実施形態による多層フィルムのさらに別の断面図を示す。
【
図4】本発明の実施形態による多層フィルムの製造ステップの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示による熱硬化性の多層フィルムは、少なくとも以下の層、a)剥離キャリア、b)剥離キャリアの上にある表面フィルム層、及びc)剥離ライナーを含む。3つの層のみが存在する場合のビルドアップの例を
図1に示す。この図では、フィルムは、剥離キャリア(1)、表面フィルム層(2)、及び剥離ライナー(3)を含む。
【0012】
多層フィルムは、剥離キャリアと剥離ライナーとの間に任意の層をさらに含むことができる。これらの例を
図2及び
図3に示す。
図2では、剥離キャリア(1)、表面フィルム層(2)、及び剥離ライナー(4)の他に、任意のタック層(3)も存在する。
図3では、表面フィルム層(2)と任意のタック層(4)との間に存在する任意の強化層(3)がさらに存在する。剥離キャリア(1)及び剥離ライナー(5)は、多層フィルムの外側にある。
【0013】
任意の層と合わせて、剥離キャリア及び剥離ライナーを除く表面フィルム層は、本明細書では「複合表面フィルム」と呼ばれる。したがって、複合表面フィルムは、いくつかの実施形態では表面フィルム層のみからなることができ、いくつかの実施形態では、さらなる層をさらに含むことができる。これらの層については、以下の説明において詳細に説明する。
【0014】
剥離キャリア/ライナー
剥離キャリア及び剥離ライナーは、除去可能なキャリアシートである。除去可能とは、この場合、それらが表面フィルム層に損傷を与えることなく表面フィルム層から除去され得ることを意味する。
【0015】
剥離キャリア及び剥離ライナーは、複合表面フィルムを取り扱うために使用され、ロールで保管することができる。剥離キャリアは、液体表面フィルム層がキャストされ、乾燥されるフィルム層として定義される。剥離ライナーは、剥離キャリアとは反対側の外側にある。剥離ライナーは、ブロッキング(それ自体への粘着)を防止するために複合表面フィルムのインターリーフとして機能する。場合によっては、剥離ライナーは、多層フィルムの製造における任意のタック層のためのキャリアとすることができる。
【0016】
剥離キャリア及び剥離ライナーは、好ましくは熱的に安定であり、非エラストマーであり、室温で非伸縮性である。透明フィルムタイプ及び着色フィルムタイプの両方を使用することができる。表面フィルムが透明である場合、剥離フィルムと表面フィルムとの間の違いをユーザに示すために、着色タイプが好ましい場合がある。
【0017】
剥離キャリア及び剥離ライナーの材料は、同じであっても異なっていてもよく、本開示において特に重要ではない。適切な剥離キャリア及び剥離ライナーとしては、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレン-テレフタレート(PET)、又はポリオレフィンフィルム、例えばポリプロピレン(PP)、又は他の公知のポリマーフィルムが挙げられる。PETは、PETフィルムが非常に熱安定性であり、より高い温度でさえもフィルムキャスト及び硬化中に平坦なままであるので、剥離キャリアとして特に好ましい。適切な剥離キャリアの例はREL8752であり、これはSt.Gobain製のシリコンコーティング剥離PETフィルムである。
【0018】
ポリプロピレンフィルムは、典型的には表面エネルギーが低く、部分的に硬化した表面フィルムからの剥離が容易であるので、剥離ライナーとして好ましい。適切な剥離ライナーの例は、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)であり、例えば、Torayfan(登録商標)の商標名でToray plasticsから入手可能である。
【0019】
また、剥離剤を含まない剥離フィルム、例えば、IFAMからFlexPLASの名称で市販されているものも好適である。このようなフィルムを剥離キャリアとして使用する場合の利点は、それが金型内に留まり、離型剤として機能することができ、液体離型剤を塗布する必要がなくなることである。
【0020】
表面フィルム層
表面フィルム層は、熱硬化性の層である。それは、OH官能性ポリウレタンと、120℃より高い温度でOH基と反応することができる熱活性化性硬化剤とを含む。したがって、表面フィルムは、遊離OH基と、より高い温度でのみ活性になる硬化剤とを含有するので、部分的にのみ硬化される。部分的に硬化されているにもかかわらず、フィルムは、二次反応を開始するリスクが大きすぎることなく、取り扱い及びレイアップに十分な完全性を有する。部分的に硬化したフィルムはロール形態で安定であり、周囲条件でゆっくりと反応し続けることはない。
【0021】
表面フィルム層は、好ましくは25~125μm、より好ましくは35~75μmの厚さを有する。フィルム厚(フィルムビルド(film build)とも呼ばれる)は、コーティング厚計量器、例えば鋼又はアルミニウムで裏打ちされたElcometer(登録商標)装置によって測定することができる。厚さが大きすぎると、フィルムが特定の用途(例えば、航空宇宙)には重すぎる可能性がある。
【0022】
フィルム厚はまた、重量分析によって面積当たりのフィルム/コーティング重量に関して測定することができる。フィルムから5cm×5cmの正方形を切り出し、剥離キャリアを除去した後、フィルムを分析天秤で秤量する。測定値をg/m2に変換する。表面フィルム層は、好ましくは、面積当たりのフィルム重量59~136g/m2を有する。
【0023】
キャスト後の表面フィルムのガラス転移温度Tgは、好ましくは0~35℃の範囲、より好ましくは0~30℃の範囲、さらにより好ましくは5~20℃の範囲である。0℃未満では、フィルムがそれ自体に容易に粘着するため、フィルムの取り扱いが悪くなる。35℃をはるかに超えると、ツールプレート及びプリプレグへのタックが十分に強くならない可能性がある。
【0024】
ガラス転移温度Tgは、変調示差走査熱量測定(m-DSC)により測定される。これは、1℃の振幅、40秒の期間、及び5℃/分の基礎となる加熱範囲で、変調オプションで行われるTA Instruments Q2000を用いて行うことができる。ヘリウムは、50ml/分の流量でパージガスとして使用される。標準的な2回の実行が(1つの方法で互いに一度に)実施され、2回目の実行はTg報告に使用される。
【0025】
好ましくは、表面フィルム層は、2.5~4.0MPaの引張降伏強度を有する。表面フィルム層は、好ましくは、少なくとも7MPa、好ましくは8~10MPaの破断時の最大引張強度を有する。破断時の伸びは、好ましくは70~100%の範囲である。引張強度は、ASTM D882に従って、Instron引張試験機を用いて測定される。室温では、表面フィルム層は、破断点で脆性破壊を伴う粘弾性挙動(降伏強度未満の弾性回復)を示すことが好ましい。
【0026】
本開示による表面フィルム層は、好ましくは、m-DSCによって測定して、より低い温度、例えば82℃、又は170~180℃の硬化開始温度までのいかなる高温でも流体挙動を示さない。溶融粘度は、ASTM D445に従って82℃で測定した。
【0027】
表面フィルム層は、好ましくは非常に低いUV透過率を示す。UV透過率及び反射率は、280nm~800nmの波長でUV/Vis分光光度計を使用して測定される。本開示による表面フィルム層は、好ましくは、全波長範囲にわたって0%の透過率を示す。
【0028】
OH官能性ポリウレタン
OH官能性ポリウレタンは、活性化温度より高い温度で熱活性化性硬化剤との反応に十分な量の反応性OH基を有するポリウレタンである。好ましくは、ポリウレタンは、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、又は少なくとも60mgKOH/gのOH(ヒドロキシル)価を有する。好ましくは、ヒドロキシル価は、200、又は180、又は160mgKOH/gを超えない。ヒドロキシル価は、好ましくは、30~180mgKOH/g、より好ましくは70~150mgKOH/gの範囲である。ヒドロキシル価は、ASTM E1899-08に従って電位差滴定によって測定することができる。この方法は、一級及び二級ヒドロキシル基と過剰のp-トルエンスルホニルイソシアネート(TSI)との反応と、それに伴う酸性カルバメートの形成とに基づく。次いで後者を、強塩基性テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(TBAOH)を用いて非水性条件下で滴定することができる。
【0029】
OH官能性ポリウレタンは、好ましくは、反応性不飽和結合(二重結合)を有さない。ポリウレタンのヨウ素価は、好ましくは1gI2/100g樹脂未満、より好ましくは0である。ヨウ素価は、ヨウ素クロライドの添加及びDIN 53241-1:1995-05によるナトリウムチオスルフェートによる逆滴定によって測定することができる。
【0030】
OH官能性ポリウレタンは、少なくとも1つのポリオール及び少なくとも1つのポリイソシアネートから調製することができる。「ポリオール」は、少なくとも2つの反応性ヒドロキシル(OH)基を有する任意の化合物を意味する。「ポリイソシアネート」は、少なくとも2つの反応性イソシアネート(NCO)基を有する任意の化合物を意味する。
【0031】
好ましくは、ポリオールは、高いOH価を有するOH官能性化合物である。ポリイソシアネートとの反応中に過剰のOH基が存在し、その結果、インモールド複合材硬化中の第2の高温硬化ステップに十分な量のOH基が利用可能なままであることが重要である。好ましくは、ポリオールのOH価は、少なくとも40、より好ましくは少なくとも100、又は少なくとも140、又は少なくとも180mgKOH/gである。より好ましくは、OH価は200~500、より好ましくは240~400mgKOH/gの範囲である。ヒドロキシル(OH)価は、上述のように測定することができる。
【0032】
ポリオールのすべての最初に利用可能なOH基がポリイソシアネートと反応するわけではないので、ポリウレタンは部分的にのみ硬化される。ポリウレタンは、金型内で行われる第2のステップにおいて、最終的に高温硬化剤で硬化される。
【0033】
ポリオールは、好ましくは、1,000~10,000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する。分子量は、スチレン-ジビニルベンゼンのカラム結合で溶離液(1ml/分)としてテトラヒドロフラン(THF)(+0.1%酢酸)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって測定することができる。較正は、ポリスチレン標準を使用して行われる。
【0034】
好ましくは、OH官能性ポリウレタンは、ポリエステルポリオール又はフルオロエチレンビニルエーテルから調製される。
【0035】
いくつかの実施形態では、特に適切なポリオールはポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールは、少なくとも1つの多官能性カルボン酸又は無水物及び少なくとも1つの多価アルコールの重縮合によって得ることができる。
【0036】
適切なポリカルボン酸の例としては、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert.ブチルイソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、ヒドロキシコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、これらの無水物及びこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
適切な多価アルコールとしては、低分子量の短鎖脂肪族、脂環式ジオール、トリオール及び高級ポリオールが挙げられ、短鎖という用語は2~20の炭素原子数を意味する。ジオールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-及び1,4-シクロヘキサンジオール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネートである。適切なトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びグリセロールである。ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びソルビトールのより高い官能性の適切なアルコール。脂肪族ジオールが好ましく、脂環式ジオールが非常に特に好ましい。
【0038】
いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、飽和ポリエステルポリオールである。このようなポリオールは公知であり、例えばAllnexからSetal(登録商標)製品シリーズで市販されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、高度の分岐を有することが好ましい場合がある。これは、分岐を促進するより高い官能性を有するモノマー、又は分岐構造を有するモノマーを使用することによって行うことができる。より高い官能性のモノマーの例は、トリメチロールプロパン及びトリメリット酸無水物である。分岐モノマーの例としては、イソオクタン酸、イソデカン酸、イソノナン酸、イソトリデカン酸及びバーサチック酸が挙げられる。このようなモノマーの量は、モノマー混合物の総重量に対して、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは5~60重量%の範囲、より好ましくは10~30重量%の範囲である。本発明者らは、より高い分岐度がより高い架橋密度及びより硬いフィルムに寄与すると考えている。
【0040】
特定の実施形態では、ポリオールは、OH官能性フルオロポリマー、より好ましくはフルオロ含有ポリビニルエーテルであり得る。このようなポリオールは、多層フィルムが低い燃焼性特性を有する必要がある場合、例えば航空宇宙内装用途において特に有用であり得る。フルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)が特に適しており、これは、OH基を含む官能性ペンディング基(pending group)を有する、交互のフルオロエチレン及びビニルエーテル単位を有するコポリマーである。
【0041】
フルオロエチレンビニルエーテルは、好ましくは10~50重量%、より好ましくは20~40重量%の範囲のフッ素含有量を有する。フルオロエチレンビニルエーテルのOH価は、40~250mgKOH/gの範囲であり得る。酸価は、好ましくは0~15mgKOH/gの範囲である。分子量Mnは、15,000~1,000,000の範囲であり得る。
【0042】
FEVEの例としては、Asahi Glass Chemicals社のLumiflon(登録商標)製品範囲、例えば、Lumiflon FD-1000、Lumiflon FE-4300、Lumiflon LF-200、Lumiflon LF-600X、Lumiflon LF710F、Lumiflon LF916Fが挙げられる。
【0043】
ポリオールとの反応に適したポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式又は芳香族のジ-、トリ-又はテトラ-イソシアネート及びそれらの混合物が挙げられる。ジイソシアネートとしては、例えば、1,2-プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI(登録商標))、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナト-ジフェニルメタン、及びジイソシアナトナフタレンが挙げられる。トリイソシアネートの例としては、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタン及びリジントリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートの付加物及びオリゴマー、例えばビウレット、イソシアヌレート、アロファネート、イミノ-オキサジアジンジオン、ウレトジオン、ウレタン、及びそれらの混合物も含まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、イソシアネート基及びヒドロキシル基の付加反応のために触媒を使用することが好ましい場合がある。ポリウレタン反応に適した公知の触媒、例えば金属系触媒、特にスズ化合物を使用することができる。触媒は、一般に、コーティング組成物の不揮発分に対して計算して、0.001~10重量%、好ましくは0.002~5重量%、より好ましくは0.01~1重量%の量で使用される。金属系触媒における適切な金属としては、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム、ビスマス及びスズが挙げられる。コーティング組成物は、スズ系触媒を含むことが好ましい。スズ系触媒の周知の例は、ジメチルスズジラウレート、ジメチルスズジバーサテート(dimethyl tin diversatate)、ジメチルスズジオレエート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、及びスズオクトエートである。ジアルキルスズメルカプチド、ジアルキルスズマレエート、及びジアルキルスズアセテートも好適である。金属系触媒の混合物及び組み合わせを使用することも可能である。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリイソシアネートは、部分的にブロック化されたポリイソシアネートであり得る。「部分的にブロック化された」とは、それが即時反応に利用可能な非ブロック化イソシアネート基と、より高い温度でのみ反応性になる(ブロッキング剤を用いて又は内的による)ブロック化イソシアネート基との両方を含むことを意味する。部分的にブロック化されたイソシアネートは、ブロック化された成分を浮遊させることなく、単一のネットワーク形成を促進すると考えられる。
【0046】
部分的にブロック化されたポリイソシアネートは公知であり、例えば、Covestroから入手可能なDesmodur(登録商標)N3400イソシアネート(約40:60のブロック化/非ブロック化NCO比を有するようにウレトジオンによって内的に部分的にブロック化されている)が市販されている。
【0047】
好ましくは、ブロック化NCO基対非ブロック化NCO基の重量比は、0.1~20、好ましくは0.5~10の範囲である。これは、表面フィルム層中に存在するNCO基の総量を指す。
【0048】
いくつかの実施形態では、表面フィルム層及び複合表面フィルム(より多くの層がある場合)は熱硬化性のみであることが好ましく、これは完全な硬化が熱的にのみ達成され得ることを意味する。これは、例えば熱及び放射線による二重硬化を必要とするフィルムを除外する。
【0049】
熱活性化性硬化剤
熱活性化性硬化剤は、高温、特に120℃を超える温度でOH官能性ポリウレタンのOH基と反応することができる。「熱活性化性」とは、活性化温度未満の温度で硬化剤とOH官能性ポリウレタンとの間に化学反応が実質的にないことを意味する。
【0050】
いくつかの実施形態では、熱活性化性硬化剤は、ブロック化ポリイソシアネートを含む。ブロック化ポリイソシアネートは、ブロッキング剤によってブロック化されたイソシアネート基、例えばε-カプロラクタム、ブタノンオキシム、フェノール又はジメチルピラゾールなどを含有する。室温では、これらのブロック化ポリイソシアネートは、いかなる場合でもポリオールと反応しない。高温では、ブロック化ポリイソシアネートがブロッキング剤を遊離させ、これがフィルムから離れ、ポリイソシアネートがポリオールと反応する可能性がある。イソシアネートはまた、ブロッキング剤を使用せずに、例えばウレトジオン基の形成によってブロック化することもできる。NCO基の脱ブロック化はいかなる有機化合物も生成しないので、これは有利であり得る。これは、硬化がオートクレーブ内で行われる場合に特に好ましい。
【0051】
市販のブロック化イソシアネートとしては、Desmodur(登録商標)BL製品、例えばBL-350、BL-3175A、BL-4265、及びCrelan(登録商標)製品、例えばCrelan NI 2(ε-カプロラクタムブロック化IPDIプレポリマー)、Crelan NW 5(ε-カプロラクタムブロック化Desomodur Wプレポリマー)、Crelan VPLS 2256(ε-カプロラクタムブロック化IPDIイソシアナウレート(isocyanaurate))、Crelan EF 403(IPDIウレトジオンに基づくエミッションフリー架橋剤(emission-free crosslinker))が挙げられ、すべてCovestroから入手可能である。特定のブロック化イソシアネートは、所望の非ブロック化温度に基づいて選択することができる。ε-カプロラクタムの非ブロック化は176℃で開始し、ウレトジオンの非ブロック化は137℃で開始する。
【0052】
硬化剤として使用されるポリイソシアネートは、ポリウレタン形成の第1のステップに使用されるポリイソシアネートについて上述したように、部分的にブロック化されたポリイソシアネートであってもよい。
【0053】
ポリイソシアネートは、好ましくは、0.9:1~2.0:1の全体的なNCO:OHモル比を達成する量で存在する。
【0054】
いくつかの他の実施形態では、熱活性化性硬化剤は、アミノ樹脂、好ましくはメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含むことができる。そのような樹脂は公知であり、例えばAllnexによるCymel(登録商標)製品範囲、特にCymel 300、Cymel 301、Cymel 350、Cymel 3745、Cymel MM-100樹脂が市販されている。メラミン-ホルムアルデヒド樹脂は、典型的には120℃より高い温度で反応する。アミノ樹脂は、典型的には、樹脂固形分に基づいて20~40%の量で使用される。
【0055】
その他の成分
表面フィルム層は、OH官能性ポリウレタンと熱活性化性硬化剤との間の反応を触媒するための触媒をさらに含むことができる。触媒は、硬化剤中のOH基と反応性基との間の反応のための当分野で公知の任意の触媒であり得る。好ましくは、触媒は金属触媒である。触媒は、表面フィルムの総重量に対して、0.01~5重量%、より好ましくは0.1~1重量%の量で存在することができる。硬化剤がポリイソシアネートを含む場合、触媒は、好ましくはポリウレタン形成について上述した触媒と同じである。
【0056】
表面フィルムの固形分レベルは、表面フィルムの総重量に対して、好ましくは少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又はより好ましくは少なくとも98重量%である。
【0057】
表面フィルム層は、従来の添加剤、例えば顔料、難燃剤、UV安定剤、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、脱気剤、滑剤、接着促進剤、増粘剤、及びワックスなどをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、表面フィルム層は、帯電防止特性、EMI(電磁干渉)シールド、又はトップコートの静電塗布のための導電性プライマー層を硬化複合材に提供するために、導電性顔料又は充填剤を含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、表面フィルム層は透明であり得る。これは、顔料又は充填剤の使用を回避することによって達成することができる。その場合、プリプレグ上に保持される他の層を含み、除去可能な層を除く表面フィルム全体が透明である。透明な表面フィルムは、プリプレグの下にあるパターンを可視化することが望ましい用途において有利であり得る。
【0059】
任意の層
いくつかの実施形態では、複合表面フィルムは、任意の層をさらに含んでもよい。
【0060】
そのような層の例は、剥離キャリア(a)とは反対側の表面フィルム層(b)の上にあるタック層である(
図2参照)。
【0061】
タック層は、表面フィルムに粘着性表面を提供することを意味する。粘着性表面は、離型剤で前処理されたツール表面又はプリプレグ層に対する表面フィルムのより良好な位置決め及び取り扱いを可能にし、その結果、複合表面フィルムは、レイアップ工程中にこれらの表面に付着して保持される。
【0062】
タック層のガラス転移温度Tgは、好ましくは0℃以下、例えば-10℃~0℃の範囲である。当業者は、タック層の所望の低いTgを達成するようにバインダー樹脂及び硬化剤を選択することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、タック層は、OH官能性ポリウレタン及び熱活性化性硬化剤も含むことができ、これらは表面フィルム層で使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。
【0064】
好ましい実施形態では、タック層は、上述の表面フィルム層と同じバインダー樹脂及び/又は同じ硬化剤から調製されるが、所望のより低いTgを達成するように異なる組み合わせ又は重量比で調製される。これは、複合表面フィルムが、OH官能性ポリウレタン及び硬化剤に基づくが異なるガラス転移温度Tgを有する2つの層を含むことを意味する。
【0065】
いくつかの実施形態では、追加の層として強化層、例えばスクリム布などを有することが望ましい場合がある。スクリム布は周知であり、強化及び取り扱いの改善のために複合材製造に広く使用されている。織布及び不織布の両方は、ポリエステル、ガラス、セルロース、ポリオレフィン、炭素、ナイロン、及び他の熱可塑性物質を含む繊維組成物と共に使用することができる。表面フィルム全体の厚さ又は重量を著しく増加させないように、薄くて軽量のスクリム布を使用することが有利である。強化層の好ましい坪量は、4~25g/m2の範囲であるべきである。いくつかの実施形態では、スクリム布は不織ポリエステルを含んでもよい。
【0066】
そのようなスクリム布は、表面フィルムに強化を提供するために複合表面フィルム層の1つに積層することができる。1つ又は複数の追加の表面フィルム層を、第1の表面フィルム層の反対側のスクリム布上に設けることができる。埋め込まれたスクリム布では、表面フィルムは、手動又は自動のレイアップ処理中に著しく裂けたり伸びたりしにくい。
【0067】
いくつかの実施形態では、スクリム布は導電性繊維材料を含有することができる。多層フィルムに導電性スクリム布を含めることにより、EMI(電磁干渉)シールド又は落雷保護のための導電層を有する硬化複合材を有利に提供することができる。導電性スクリム布の例としては、炭素又は金属コーティングされた炭素スクリムが挙げられ、例えばTechnical Fibre Productsから市販されている。
【0068】
多層フィルムは、他の任意の層、例えば、導電性のための真空金属化層、塗料剥離性を改善するための追加のフィルム層をさらに含むことができる。そのような層は当分野で公知であり、当業者であれば、本開示で使用される適切な層を選択することに困難はないであろう。
【0069】
多層フィルム
熱硬化性の多層フィルムは、複合材成形工程で発生する典型的な表面欠陥(例えば、ピット、亀裂、ピンホール)を排除することを可能にする、複合材用の共硬化性インモールド表面フィルムとして使用するのに特に適している。フィルムは、反応性樹脂(OH官能性ポリウレタン)及び熱活性化性硬化剤を含有する表面フィルム層のために、高温で硬化するように設計されている。
【0070】
本発明の多層フィルムのさらなる利点は、インモールドプライマーとしても機能することができることである。この独自の二重機能により、インモールド複合材調製のステップ数を減らすことができる。特に、硬化したプリプレグの充填/サンディング、プライマー組成物によるコーティング、及びプライマーの硬化のステップを省略することができる。これは、時間及びエネルギーの観点でかなりの節約につながる。
【0071】
本開示による多層フィルムは、「スプレーイン(spray-in)」コーティング及び粉末並びに他の「樹脂に富む」表面フィルム及び接着剤よりもはるかに扱いやすい。低い溶融流れ及び急速な架橋形成は、亀裂及び破裂を防止し、複合材樹脂の移動を制限する。フィルムはまた、均一なフィルム厚及びツール内の一貫した外観を有する。
【0072】
本開示の多層フィルムは、室温で保管安定性を有する。これは、エポキシ-アミン化学に基づく既存の表面フィルムの多くがそうであるような低温保管を必要としない。室温での保存寿命は少なくとも1年である。フィルムは、実際の複合材硬化ステップにおいて、低温流れ又は溶融流れ又は可逆的溶融を示さない。これにより、部分的に硬化した状態のフィルムは、標準的なエポキシ-アミン表面フィルムと比較してより剛性であり、より高い引張強度を有するので、より良好な表面処理が可能になる。フィルムはまた、最新技術と比較してより低い総フィルム厚及び面積重量で所望のレベルの平滑性及び複合材表面処理を達成する。典型的なエポキシ-アミン表面フィルムは、130μm~1mmの厚さを有し、150g/m2~1000g/m2を超える面積重量を有する。本開示の多層フィルムは、好ましくは25~125μm、より好ましくは35~75μmの厚さを有する。面積重量は、好ましくは59~136g/m2である。
【0073】
本開示による多層フィルムは、室温で容易に取り扱うことができる。フィルムは、自動カッター若しくはプロッター又は手動の方法を使用して、プリプレグ繊維と共に事前に切断又はキット化することができる。フィルムは、切断工程中にフィルム上に残されるべき2つのライナーの間に供給される。
【0074】
多層フィルムのさらなる利点は、複合材のバッグ側(ツールプレートの反対側)で使用することができることである。これにより、複合材のUV保護を伴う表面処理及びプライミング並びに潜在的な仕上げ層を、さらなる仕上げ加工を必要とせずに複合材の裏側になすことができる。
【0075】
多層フィルムは、熱成形されることを意味しない。これは、平坦又はわずかに湾曲した2D形状の金型で使用され、レイアップ工程中に延伸又は形成されることを意味しない。金型がより複雑な3D形状である場合、多層フィルムは、異なる形状に切断又はキット化することができ、これにより、ユーザは、3D表面を覆うために重ねられたいくつかのピースでフィルムをツールに敷くことができる。
【0076】
多層フィルムの調製
本開示による熱硬化性の多層フィルムは、異なる方法で製造することができる。
【0077】
最も一般的な形態では、多層フィルムの製造方法は、(a)表面フィルム層を剥離キャリア上にキャストするステップと、(b)表面フィルム層を乾燥させるステップと、(c)剥離ライナーを剥離キャリアの反対側に積層するステップとを含む。表面フィルムの層が1つのみである場合、ステップ(c)は、表面フィルム層に剥離ライナーを積層することになる。表面フィルムの上に他の層がある場合、剥離ライナーは、剥離キャリアとは反対側の最上層に積層される。
【0078】
例えば、複合表面フィルムが2つの層-表面フィルム層及び例えば任意のタック層-を含む場合、そのような多層フィルムを製造する少なくとも2つの可能性があり得る。以下に説明する2つの例示的な方法が
図4に概略的に示されている。
【0079】
1つの方法では、多層フィルムは、(a)第1の複合表面フィルム層を剥離キャリア上にキャストするステップと、(b)第1の複合表面フィルム層を乾燥させるステップと、(c)第2の複合表面フィルム層を乾燥した第1の複合表面フィルム層上にキャストするステップと、(d)第2の複合表面フィルム層を乾燥させるステップと、(e)剥離ライナーを第2の複合表面フィルム層上に積層するステップとを含む方法で調製することができる。
【0080】
別の方法では、剥離ライナーは、第2の複合表面フィルム層をキャストするためのキャリアとして使用することができる。そのような方法は、(a)第1の複合表面フィルム層を剥離キャリア上にキャストするステップと、(b)第1の複合表面フィルム層を乾燥させるステップと、(c)第2の複合表面フィルム層を剥離ライナー上にキャストするステップと、(d)第2の複合表面フィルム層を乾燥させるステップと、(e)剥離ライナーを有する乾燥した第2の複合表面フィルム層を、剥離キャリアを有する乾燥した第1の複合表面フィルム層上に積層するステップとを含む。積層は、第1の層の表面が第2の層の表面上に積層されるように行われるべきである。このようにして、剥離キャリア及び剥離ライナーは、多層フィルムの外面に配置され、複合表面フィルムを保護する。
【0081】
同様に、より多くの層を有する熱硬化性の多層フィルムを製造することができる。追加の複合表面フィルム層は、タック、強化、導電性、又はバリア特性などの表面フィルムの他の機能を提供することができる。
【0082】
キャストは、フィルム押出の代替として、ポリマーフィルムを調製する公知の方法である。キャストでは、ポリマー溶液をキャリア基材に塗布し、次いで、オーブン内で乾燥させることによって水又は溶媒を除去して、キャリア基材上に固体層を形成する。好ましくは、連続ウェブキャストが使用される。当業者は、キャストによってポリマーフィルムを得るために適切な条件及び装置を選択することができる。一例として、本開示では、総熱硬化時間は、温度100℃で4分未満であり得る。
【0083】
複合材のインモールド調製
熱硬化性の多層フィルムは、典型的なインモールド複合材調製工程で使用することができる。そのような工程は、典型的には、(a)剥離キャリア及び剥離ライナーを多層フィルムから除去するステップと、(b)金型のツール側に対して金型内にフィルムをレイアップするステップと、(c)フィルム上にプリプレグをレイアップするステップと、(d)プリプレグ及びフィルムの両方を熱硬化させて、コーティングされた硬化複合物品を形成するステップと、(e)コーティングされた硬化複合物品を金型から取り出すステップとを含む。この工程は、コーティングされたインモールド硬化複合物品をもたらす。
【0084】
熱硬化性の多層フィルムは、好ましくは、平板又はわずかに湾曲した2D型に使用される。
【0085】
金型にレイアップする前に、フィルムは適切なサイズに切断することが好ましい。この後、剥離キャリア及び剥離ライナーを除去する。剥離キャリア及び剥離ライナーを除去する順序は、本発明にとって重要ではなく、使用される特定のインモールド工程に依存し得る。場合によっては、レイアップ工程で使用する前に、剥離キャリア及び剥離ライナーの両方を除去する。他の場合では、剥離ライナーを最初に除去して、任意のタック層を露出させることができる。次いで、フィルムが金型内に配置されたら、剥離キャリアを除去する。
【0086】
剥離キャリア及びライナーを除去した後、製品を金型プレート上に置き、好ましくは離型剤で前処理する。粘着面(タック層が存在する場合)は、レイアップ中にフィルムを所定の位置に保持するためにツール表面に対して向かうことができる。次いで、必要なプリプレグ(炭素)繊維のプライを製品上にレイアップする。組立製品を真空バッグに入れ、仕様(例えば176℃で4時間)に従って硬化させる。硬化したパネルを脱脂して離型剤を除去することができる。次いで、フィルム表面を軽く研磨して、ツール表面から欠陥を除去することができる。パネルは、仕様に従ってさらにコーティングすることができる。
【0087】
別の例示的なレイアップ方法では、剥離ライナーのみが適切なサイズに切断された後に最初に除去される。プリプレグ炭素繊維プライのスタックは、ツール側のプライを上に向けて調製される。製品は、炭素繊維に対して粘着面を有するこのトッププライ上に配置され、次いで、剥離キャリアが除去される。スタックを反転させ、フィルム側を下にして、離型剤で前処理した金型プレートに配置する。組立製品を上述のようにさらに真空バッグに入れ、硬化する。
【0088】
当業者は、表面フィルムと共に複合材を硬化させるための適切な条件(すなわち、時間及び温度)及び装置を選択することができる。温度は、プリプレグ及び表面フィルムの硬化温度に基づいて選択することができる。一例として、硬化は、176℃で4時間の硬化時間で行うことができる。硬化は、オートクレーブ中で適切に行うことができる。
【0089】
本開示による熱硬化性の多層フィルムは、詳細には、熱硬化性繊維強化プラスチック基材(プリプレグ)上において使用されるように設計されている。基材としては、任意の強化プラスチック材料を使用することができる。基材は、好ましくは熱成形可能ではないが熱硬化性である。典型的なプリプレグは、高官能性エポキシ樹脂、アミン硬化剤、及び炭素繊維又は繊維ガラスのような織物繊維強化材を有する触媒の未硬化混合物を含有する。フェノールホルムアルデヒド樹脂を含有するガラス/フェノールプリプレグも使用することができる。適切な基材としては、多くの供給業者、例えばSolvay、Toray、Hexcelから市販されているプリプレグが挙げられる。
【0090】
複合材硬化後の硬化した表面フィルムは、好ましくは少なくとも25℃、より好ましくは少なくとも35℃、さらにより好ましくは少なくとも50℃のTgを有する。好ましくは、Tgは120℃以下である。しかしながら、いくつかの用途では、硬化多層フィルムは、120℃より高い、例えば120~150℃のTgを有することが好ましい場合がある。硬化フィルムのTgは、複合材硬化に必要な温度及び特定の用途における所望のフィルム特性に適合するために、ポリウレタン調製に使用されるポリオール及びイソシアネート、フィルム組成物中の高温硬化剤及び他の添加剤の選択によって調整することができる。
【0091】
本開示による表面フィルムでコーティングされた複合物品は、例えば航空宇宙外装構造複合材、航空宇宙内装複合材だけでなく、ヨット/マリン、自動車、レクリエーション車両、他の輸送機関及びスポーツ用品にも多くの用途を有し得る。
【実施例】
【0092】
試験手順
鉛筆硬度は、ASTM D3363に従って測定する。
Skydrol(登録商標)流体耐性は、試験パネルをSkydrol(登録商標)流体に周囲温度で30日間浸漬し、試験前後に鉛筆硬度を測定することによって測定する。
溶媒(化学)耐性は、Skydrol(登録商標)流体耐性と同じ方法であるが、ベンジルアルコール系塗料ストリッパーを使用して測定する。
【0093】
原材料
ポリエステル1-不揮発分に対して計算した8.6%のOHを有する飽和ポリエステルポリオール、73~75%の不揮発分、溶媒ブチルアセテート、酸価1.5~3.8mgKOH/g(ISO 3682)、OH価260~310mgKOH/g(固形分)
ポリエステル2-不揮発分に対して計算した4.7%のOHを有する飽和ポリエステルポリオール、79~81%の不揮発分、溶媒ブチルアセテート、酸価2.4~4.1mgKOH/g(ISO 3682)、OH価140~170mgKOH/g(固形分)
Desmodur(登録商標)N3790-脂肪族ポリイソシアネート、Covestro製の高官能性HDIトリマー
Desmodur(登録商標)N3500-脂肪族ポリイソシアネート、Covestro製のHDIアロファネートトリマー
Desmodur(登録商標)N3400-ウレトジオン形成によって40%ブロック化された、Covestro製の脂肪族ポリイソシアネート(HDIウレトジオン)
Tolonate(登録商標)HDT-Vencorex製のイソシアヌレートHDIトリマー
Cymel(登録商標)350-Allnex製の高度にメチル化されたメラミン(4つのメトキシメチル基、2つのメチロール基)
Lumiflon(登録商標)LF710F-AGC Chemicals製のFEVE樹脂、OH価46mgKOH/gの固形分、酸価0mgKOH/gの固形分。
DBTDL-ジブチルスズジラウレート
Nacure(登録商標)5414-King Industries製のポリマー性ブロック化スルホン酸エステル触媒
【0094】
実施例1
灰色の着色液体を表1に従って調製した。
【0095】
【0096】
イソシアネート成分は、ε-カプロラクタムで部分的にブロック化されて30:70のブロック化/非ブロック化NCO比を有するDesmodur N3790イソシアネートである。
【0097】
液体を、最高温度280°F(138℃)のマルチゾーン乾燥/硬化オーブンを用いた連続ウェブコーティング工程でSt.Gobain製の剥離コーティングされたポリエステル剥離キャリアREL8752上にキャストして、剥離キャリア上に複合表面フィルムを得た。これにより、非ブロック化イソシアネート基がポリエステル上のヒドロキシル基の一部と反応し、部分的に硬化したフィルムが得られた。部分的に硬化したフィルムは、75ミクロンの厚さを有し、剥離キャリアから容易に除去することができ、独立フィルムとして取り扱うことができた。部分的に硬化したフィルムのTgは約30℃であった(m-DSCにより測定)。
【0098】
この表面フィルムを平らな金型にレイアップし、MCCFC(Mitsubishi Chemical Carbon Fiber and Composites)製の炭素繊維/エポキシ樹脂プリプレグを重ねた。表面フィルムは、金型のツール側に配置する。複合材を、最低45psi(0.3MPa)のオートクレーブ中、350°F(176℃)で2時間硬化させた。
【0099】
硬化後、表面フィルムは、優れた外観を示し、複合材に表面欠陥の形跡はなかった。硬化した表面フィルムのTgは約60℃であった。表面処理された複合材は、Skydrol(登録商標)流体試験の前後で6Hの鉛筆硬度を有し、ベンジルアルコール系塗料ストリッパーに対する優れた耐性を示した。
【0100】
実施例2
主バインダー成分のポリエステル1及びポリエステル2を1.3:1の重量比で、Desmodur N3400イソシアネート(理論的にはウレトジオン含有量のために40%ブロック化されている)を用いた以外は、実施例1と同様にして表面フィルムを調製した。部分的に硬化したフィルムのTgは約15℃であった。ブロッキングを防止するために、部分硬化後にBOPP剥離ライナーは表面フィルムと交互に積層した。
【0101】
表面フィルムを、実施例1に記載の炭素繊維/エポキシ樹脂複合材工程でレイアップした。硬化後、表面フィルムは、優れた外観を示し、複合材に表面欠陥の形跡はなかった。硬化した表面フィルムのTgは約30℃であった。硬化した表面フィルムは、熱湿サイクル誘発亀裂に対する優れた耐性、及び表面フィルムの継ぎ目における優れた重なり接着性を示した。
【0102】
実施例3
主バインダー成分のポリエステル1及びDesmodur N3400イソシアネートを用いた以外は、実施例1と同様にして表面フィルムを調製した。部分的に硬化したフィルムのTgは約8℃であった。ブロッキングを防止するために、部分硬化後にBOPP剥離ライナーは表面フィルムと交互に積層した。表面フィルムを、実施例1に記載の炭素繊維/エポキシ樹脂複合材工程でレイアップした。硬化後、表面フィルムは、優れた外観を示し、複合材に表面欠陥の形跡はなかった。硬化した表面フィルムのTgは約50℃であった。表面処理された複合材は、Skydrol(登録商標)流体試験の前後で6Hの鉛筆硬度を有し、熱湿サイクル誘起亀裂に対する優れた耐性を有していた。特性は、実施例1及び2で得られた表面特性が最適に混ざりあったものであった。
【0103】
実施例4
実施例3で調製した表面処理された複合材は、400グリットのサンドペーパーで軽く研磨され、脱脂された部分を有していた。別の部分は研磨せず、脱脂のみを行った。すべての部分は、航空機の外装グレードのトップコート仕上げAkzo Nobel Aerospace Aerodur(登録商標)3001/3002 BC/CC系でトップコートし、プライマーコートは使用しなかった。ASTM D3359に従って試験した表面処理された複合材に対する乾燥及び湿潤接着性は優れていた。完成した複合材は、表面欠陥のない優れた外観を示した。
【0104】
実施例5
表2に従って表面フィルムを調製した。
【表2】
【0105】
イソシアネート成分は、非ブロック化Tolonate(登録商標)HDTイソシアネートであり、熱活性化性硬化剤(Cymel(登録商標)350メラミン樹脂である)を使用した(メラミン対ポリオールの重量比25:75)。組成物は、透明な表面フィルムを得るために顔料を含まない。透明な表面フィルムは、露出した炭素繊維織物の用途に有用である。複合材硬化ステップでメラミンを反応させたまま、フィルムキャストステップでイソシアネート成分が反応する。部分的に硬化したフィルムのTgは約0℃であった。ブロッキングを防止するために、BOPP剥離ライナーをインターリーフとして使用した。複合材を280°F(137℃)で2時間硬化したことを除いて、表面フィルムは上記のように炭素繊維/エポキシ樹脂の複合材にレイアップした。
【0106】
硬化後、表面フィルムは、優れた外観を示し、複合材に表面欠陥の形跡はなかった。硬化した表面フィルムのTgは約40℃であった。表面処理された複合材は、UV損傷に対する優れた耐性を示し、700時間のQUV-B試験後、裸のエポキシ強化炭素繊維複合材の20%の残留光沢と比較して、100%の残留光沢を有していた。
【0107】
実施例6
実施例5で調製した表面複合材を400グリットのサンドペーパーで軽く研磨し、脱脂し、次いで海洋グレードのAkzo Nobel Awlgrip(登録商標)F3029ポリウレタンクリアコートでトップコートした。炭素繊維複合材の視覚的外観は際立っており、高光沢の透明の用途において欠陥はなかった。
【0108】
実施例7
灰色に着色した溶媒含有液体を表3に従って調製した。
【表3】
【0109】
イソシアネート成分は、ε-カプロラクタムで部分的にブロックされてブロック化/非ブロック化NCO比が75:25となったDesmodur N3500イソシアネート、及び40%の理論的内的ブロック化(ウレトジオン)を有するDesmodur N3400イソシアネートを含有していた。この配合物は、有効なブロック化対非ブロック化NCO含有量が70:30、全体的なNCO:OH指数が1.9:1である。
【0110】
この配合物を、最高温度280°F(138℃)のマルチゾーン乾燥/硬化オーブンを用いた連続ウェブコーティング工程で、ポリマー剥離コーティングを有する100ミクロンの青色着色PET上にキャストした。これにより、非ブロック化NCO基がポリエステル上のヒドロキシル基の一部と反応し、部分的に反応したフィルムが得られた。ブロッキングを防止するために、50ミクロンの赤色PE剥離ライナーを部分的に硬化したフィルムと交互に積層した。部分的に硬化したフィルムは、50ミクロンの厚さを有し、剥離キャリアから容易に除去することができ、独立フィルムとして取り扱うことができた。部分的に硬化したフィルムのTgは約13℃であった(m-DSCにより測定)。
【0111】
表面フィルムを、金型のツール側に表面フィルムを配置したプリプレグ炭素繊維/エポキシ樹脂複合材工程でレイアップした。複合材を、最低45psi(0.3MPa)のオートクレーブ中、最高350°F(176℃)で4時間硬化させた。硬化後、表面フィルムは、優れた外観を示し、複合材に表面欠陥の形跡はなかった。硬化した表面フィルムのTgは約70℃であった。表面処理された複合材は、Skydrol(登録商標)流体試験の前後で4Hの鉛筆硬度を有し、ベンジルアルコール塗料ストリッパーに対する優れた耐性を示した。
【0112】
実施例8
実施例7に示すように、表面フィルムを調製した。主バインダー成分としてポリエステル1、Desmodur N3400イソシアネート成分、及びDesmodur BL3272イソシアネート成分(ε-カプロラクタムで完全にブロック化されている)を含有する着色タック層を調製した。この配合物は、有効なブロック化対非ブロック化NCO含有量が90:10、全体的なNCO:OH指数が1.4:1である。この配合物を、最高温度220°F(104℃)のマルチゾーン乾燥/硬化オーブンを用いた連続ウェブコーティング工程で、50ミクロンの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)剥離ライナー上にキャストした。この部分的に硬化したフィルムのTgは約-3℃(m-DSCによって測定)であり、25ミクロンの厚さを有していた。
【0113】
このタック層を、実施例7で調製した表面フィルム層にインラインで積層して、片面にタックを有する二層表面フィルムを調製した。この表面フィルムを、表面フィルムのタック層を炭素繊維プリプレグに対して配置したプリプレグ炭素繊維/エポキシ樹脂複合材工程でレイアップした。このフィルムは、レイアップ工程において優れた粘着性及びドレープ性を示した。複合材を、最低45psi(0.3MPa)のオートクレーブ中、最高350°F(176℃)で4時間硬化させた。
【0114】
硬化後、表面フィルムは、優れた外観を示し、複合材に表面欠陥の形跡はなかった。硬化した表面フィルムのTgは約70℃であった。表面処理された複合材は、Skydrol(登録商標)流体試験の前後で4Hの鉛筆硬度を有し、ベンジルアルコール塗料ストリッパーに対する優れた耐性を示した。
【0115】
実施例9
実施例7に示すように、表面フィルムを調製した。着色タック層を表4に従って調製した。
【表4】
【0116】
イソシアネート成分は、ε-カプロラクタムで完全にブロック化されたDesmodur N3500イソシアネートである。この配合物は、NCO:OH指数が1:1である。この配合物を、最高温度220°F(104℃)のマルチゾーン乾燥/硬化オーブンを用いた連続ウェブコーティング工程で、50ミクロンの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)剥離ライナー上にキャストした。この部分的に硬化したフィルムのTgは約0℃(m-DSCによって測定)であり、25ミクロンの厚さを有していた。
【0117】
このタック層を、12g/m2のポリエステル不織布と共に、実施例7で調製した表面フィルム層にインラインで積層して、片面にタックがあり、スクリム支持体が埋め込まれた三重の表面フィルムを調製した。表面フィルムを、表面フィルムのタック層を金型のツール側に配置したプリプレグ炭素繊維/エポキシ樹脂複合材工程でレイアップした。このフィルムは、レイアップ工程において優れた粘着性、ドレープ性、及び引裂き耐性を示した。複合材を、最低45psi(0.3MPa)のオートクレーブ中、最高350°F(176℃)で4時間硬化させた。
【0118】
硬化後、表面フィルムは、優れた外観を示し、複合材に表面欠陥の形跡はなかった。硬化した表面フィルムのTgは約70℃であった。表面処理された複合材は、Skydrol(登録商標)流体試験の前後で4Hの鉛筆硬度を有し、ベンジルアルコール塗料ストリッパーに対する優れた耐性を示した。
【0119】
実施例10
エポキシ-アミン表面フィルムとの比較
表面フィルムを実施例7のように調製し、引張強度、溶融粘度及びUV透過率/反射率について、Solvay製の標準的な市販のエポキシ-アミン系表面フィルムSurfacemaster 905と比較した。
【0120】
引張強度は、ASTM D882に従って、Instron(登録商標)引張試験機を用いて測定した。実施例7による表面フィルム(強化層なし)は、400~500psi(2.8~3.4MPa)の引張降伏強度、1200~1400psi(8.3~9.7MPa)の最大引張強度(破断時)、及び70~100%の破断時の伸びを示した。室温では、表面フィルムは、破断点で脆性破壊を伴う粘弾性挙動(降伏強度未満の弾性回復)を示した。エポキシ-アミン表面フィルムは、任意の量の印加応力下で有意な変形及び延性破壊を示し、弾性回復を示さなかった。最大引張強度及び降伏強度は両方とも100psi(0.7MPa)未満であった。著しい変形及び延性破壊のために、破断時の伸びは測定することができなかった。
【0121】
溶融粘度は、エポキシ-アミン表面フィルムについてASTM D445に従って180°F(82℃)で測定した。フィルムは、m-DSCによって測定して、240~266°F(115~130℃)の硬化開始温度まで5,000~10,000mPa・sの粘度範囲で流体挙動を示した。実施例7による表面フィルムは、m-DSCによって測定して、180°F(82℃)又は338~356°F(170~180℃)の硬化開始温度までのいかなる高温でも流体挙動を示さなかった。
【0122】
UV透過率及び反射率は、UV/Vis分光光度計を使用して測定する。走査は、280nm~800nmの波長で行った。実施例7による表面フィルムは、全波長範囲にわたって0%の透過率を示した。表5は、有機コーティング及び複合材基材に損傷を与える可能性がある波長範囲(320nm~420nm)のUV透過率及び反射率をまとめたものである。
【0123】
【0124】
実施例11
灰色に着色した溶媒含有液体を表6に従って調製した。
【表6】
【0125】
イソシアネート成分は、Desmodur N3500非ブロック化イソシアネートである。この配合物を、最高温度280°F(138℃)のマルチゾーン乾燥/硬化オーブンを用いた連続ウェブコーティング工程で、剥離コーティングされたポリエステルキャリア上にキャストした。これにより、-NCO基がFEVE上のヒドロキシル基の一部と反応し、部分的に反応したウレタンフィルムが得られた。部分的に硬化したフィルムは、75ミクロンの厚さを有し、剥離キャリアから容易に除去することができ、独立フィルムとして取り扱うことができた。部分的に硬化したフィルムのTgは約20℃であった(m-DSCにより測定)。
【0126】
この表面フィルムを、金型のツール側に表面フィルムを配置したプリプレグ繊維ガラス/フェノール複合材工程でレイアップした。複合材サンドイッチ構造は、1プライのPHG600-48-50(Gurit(登録商標)プリプレグ)、ハニカムコアABS 5035 9.4mm(Plascore(登録商標)ハニカム)、及び別プライのPHG600-48-50を含んだ。複合材を、最低45psi(0.3MPa)のオートクレーブ中、280°F(138℃)で2時間硬化させた。
【0127】
硬化後、表面フィルムは、複合材の表面上で良好な充填特性を有する優れた外観を示した。硬化した表面フィルムのTgは約70℃であった。表面複合材は、硬化後に6Hの鉛筆硬度を有していた。FAR 25.853(a)及び(d)並びにAITM 3.0005に従って、表面複合材を火災、煙及び毒性について試験した。結果を表7に示す。
【0128】
【国際調査報告】