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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】微細構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A61M37/00 505
A61M37/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511198
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 GB2020052007
(87)【国際公開番号】W WO2021032991
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】1911909.8
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522064948
【氏名又は名称】イノチュア アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バムジー,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】カメリウ イチム,イオヌット
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA71
4C267BB24
4C267CC05
4C267FF10
4C267GG01
4C267GG22
4C267GG24
4C267HH01
(57)【要約】
本発明は、深いテンプレートの使用を介した微細構造、特に、美容あるいは医療目的の経皮パッチなどの医療機器に見られ得る微細構造の新たな製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造の製造方法であって、前記方法は貫通孔を含む有孔テンプレートに微細構造の組成物を塗布するステップを含み、前記微細構造の組成物が貫通孔を通り抜けて基板に積層されることにより微細構造が形成され、前記有孔テンプレート及び/又は前記貫通孔が少なくとも300μmの深さを有することを特徴とする、微細構造の製造方法。
【請求項2】
微細構造の製造方法であって、前記方法は貫通孔を含む有孔テンプレートに微細構造の組成物を塗布するステップを含み、前記微細構造の組成物が貫通孔を通り抜けて基板に積層されることにより微細構造が形成され、前記有孔テンプレートが変形に抵抗するよう構成された剛性を有することを特徴とする、微細構造の製造方法。
【請求項3】
前記有孔テンプレート及び/又は貫通孔が変形に抵抗するよう構成された剛性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有孔テンプレートは少なくとも1kg~20kgの印圧の変形に抵抗する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記有孔テンプレート及び/又は貫通孔が少なくとも300μmの深さを有する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記基板に積層した前記微細構造の組成物を硬化剤にさらすステップをさらに含み、好ましくは、前記硬化剤は紫外(UV)光である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記微細構造の組成物の前記塗布を繰り返すことを含む一つ以上のさらなるステップをさらに含み、任意に、前記微細構造の組成物のそれぞれの塗布の間に前記貫通孔が前記微細構造と位置合わせをするように、前記有孔テンプレートを前記基板から離し、再配置及び位置合わせをする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有孔テンプレートの表面に組み込まれた位置マーキングのアライメントシステム及び前記微細構造の組成物が積層される前記基板に組み込まれた対応するマーカーを用いて前記テンプレートを再配置する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有孔テンプレート及び/又は前記貫通孔が300~1000μmの深さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記有孔テンプレートがプラスチック、ステンレス鋼、又はニッケル鋼から作られる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記微細構造の組成物がポリマーを含み、好ましくは、前記微細構造の組成物はUV硬化ポリマーである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記有孔テンプレートの前記貫通孔が実質的に円形、正方形、長方形、六角形、三角形、又はインゲン豆の形状である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記有孔テンプレートの前記貫通孔は50~600μmの断面幅を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有孔テンプレートの前記貫通孔が電鋳法、レーザー穴開け、又は従来のドリルビッ
トにより形成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記有孔テンプレートが正しい位置に維持されるように、前記有孔テンプレートを支持フレーム内に配置する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記微細構造は微細構造のアレイの一つである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記微細構造はマイクロニードルである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記基板は、PVC基板、金属基板、ポリ乳酸基板、ガラス基板、セラミック基板、ポリスチレン基板、セルロース系基板、ポリビニルアルコール基板、ポリカーボネート基板、ポリメチルメタクリレート基板、シリコーン基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリウレタン基板、又はニトロセルロース基板である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記基板は少なくとも経皮パッチの一部を形成する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が前記微細構造に塗料組成物を塗布するさらなるステップを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記塗料組成物は活性成分、原薬、導電性材料、及び/又は生化学的試薬を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された微細構造を含む経皮パッチ。
【請求項23】
請求項22に記載の経皮パッチ及び前記経皮パッチの使用説明書を含むキット。
【請求項24】
請求項22に記載の経皮パッチを患者の皮膚に塗布することを含む、治療的又は美容的方法を必要とする前記患者の疾患を治療する治療的又は美容的方法。
【請求項25】
前記疾患は目尻のしわ(カラスの足跡)、口囲皮膚炎、ティアトラフの変形、デコルテのしわ(胸部のしわ)、シミ、皮膚線条、瘢痕、脱毛、乾癬、湿疹、及び/又は乾燥肌であり、又は前記疾患は痛み及び/又は炎症である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造、特に、美容あるいは医療目的の経皮パッチなどの医療機器に見られ得る微細構造の新たな製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮ドラッグデリバリーは、一つには腸及び肝臓における広範囲に及ぶ処理又は胃の酸性条件に対する感受性のために経口投与に適さない薬剤の数の増加が原因で、原薬の投与のための重要な経路として長い間みなされてきた。その上、経皮ドラッグデリバリーは、より侵襲的なアプローチの代替のデリバリーシステムを提供し、侵襲的な治療を施す医療専門家の存在を必要とする方法と比較して、非経口投与など、患者により高い自由度を与える。例えば、ゲル又は被覆パッチを皮膚に塗布することにより特定の薬剤を経皮的に投与することが可能であるが、皮膚の最外層、つまり微生物及び有害物質の望ましくない侵入を防ぐために進化した角質層と呼ばれる10~20μmのバリアが、ほとんどの医薬品の侵入をも防いでしまう、あるいは少なくとも著しく減少させてしまう。
【0003】
結果として、角質層を横断する医薬品の送達を補助するため、多くの方法が考案されてきた。一つの手段として、上記を達成できる微細構造、具体的には、マイクロニードルを含むパッチの使用がある。そのサイズにより、表皮を貫通するだけで皮膚のより深くに位置する感覚神経とは接触しないであろう点で、マイクロニードルは従来の皮下注射針に勝る追加された利点を有する。マイクロニードルは、しばしば注入に関連する痛み及びコンプライアンスの問題を軽減、あるいは回避することができる。以前の経皮パッチは様々な金属及び硬質プラスチックを用いて製造されてきたが、これらのパッチは、体の異なる部位に適応するために必要な柔軟性に欠け、大きな表面積にわたる多数の微細構造の付加を維持することができない。
【0004】
発明者らは以前に、微細構造、特に、マイクロニードルの改善された生産方法を記載しており(特許文献1及び特許文献2で概説)、既存のポリマー及びマイクロプロセッサ技術がポリマーのリソグラフィ積層の優れた方法を生み出すように構成されていた。この方法はテンプレート及びスキージ刃を使用し、異なる微細構造のデザインを作ることができる「積層技術」を用いる。例えば、様々なニードルの大きさ及び形状を生産することができ、その最終製品は大きな表面積上の様々なフレキシブル基板に適している。例えば、人体の輪郭に柔軟に適応できる必要がある経皮パッチをデザインする際に柔軟性は重要である。
【0005】
本発明は、微細構造の新たなかつ驚くほど有益な製造方法を提供することにより、微細構造を含むこれら公知のパッチの使用を改善し拡大する手段を提供する。この新たな製造方法は、より効率的な、より正確な、そしてより費用効率に優れた微細構造の生産工程を可能にする。本発明は、経皮パッチだけに限らずあらゆる基板上に微細構造を製造するのに役立つ。
【0006】
以前の微細構造の製造方法は、基板上の所望の位置に微細構造の組成物を積層するためにテンプレート又は「ステンシル」を用いてきた。上記の目的のために用いられるテンプレートは10~250μmの深さを有することが知られている。この工程で現在用いられているテンプレートは、現在の研究者が克服しようと努めてきた多くの問題を引き起こすことが知られている。第一に、現在の製造方法は、接触印刷と非接触印刷との組み合わせを用いてテンプレートと基板との間に空間を生み出し、それがしばしば基板にわたって印刷されている画像の信頼性に関する問題、例えば、印刷されていない又は均一でない結果
となる微細構造のエッジなどを引き起こす。第二に、現在のテンプレートは、スキージ刃がテンプレートにわたって微細構造の組成物を操る際にテンプレートを屈曲させ、同じ基板上に作られた微細構造間の不正確さをもたらす。これは、特に最終的な適用に関する問題を引き起こし得る。例えば、微細構造が一定量の薬剤を対象者に送ることを意図されている場合、微細構造にわたる均一性の欠如は薬剤の投与における不正確さを引き起こし得る。第三に、この工程で現在用いられているテンプレートは、印刷サイクルの後もしばしば基板に付着したままである。テンプレートを基板から係脱する場合、基板をずらし、結果として不可逆的なダメージを受けることになるのが一般的である。最後に、微細構造の製造に用いられる現在のテンプレートは、含むことのできる微細構造の組成物がどれだけの体積であるかに制限される。これにより、しばしば複数の印刷サイクルが必要となり、時間がかかりエネルギーの非効率的な工程をもたらしてしまう。
【0007】
発明者らは、以前に用いていた方法では達成することができなかった、操作の高速性、高い精度、高い再現性、及び工業生産への拡張性を有する微細構造の新たな製造方法を特定した。
【0008】
本明細書において、一見して先に公開された文書のリスト又は議論は、必ずしもその文書が最先端技術の一部、又は共通の一般的な知識であるとの承認としてみなされるべきではない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、少なくとも300μmの深さを有する有孔テンプレートを用いた微細構造の製造により、以前に用いていたテンプレートと比較してより時間効率が良く正確な工程がもたらされるという、発明者らによる驚くべき発見に基づいている。
【0010】
よって、本発明は、微細構造の製造方法を提供し、前記方法は貫通孔を含む有孔テンプレートに微細構造の組成物を塗布するステップを含み、前記微細構造の組成物が貫通孔を通り抜けて基板に積層されることにより微細構造が形成され、前記有孔テンプレート及び/又は前記貫通孔が少なくとも300μmの深さを有することを特徴とする。
【0011】
本発明はまた、微細構造の製造方法を提供し、前記方法は貫通孔を含む有孔テンプレートに微細構造の組成物を塗布するステップを含み、前記微細構造の組成物が貫通孔を通り抜けて基板に積層されることにより微細構造が形成され、前記有孔テンプレートが変形に抵抗するよう構成された剛性を有することを特徴とする。
【0012】
前記方法は、前記基板に積層した前記微細構造の組成物を硬化剤にさらすステップをさらに含んでもよく、好ましくは、前記硬化剤は紫外(UV)光であり、前記微細構造の組成物の前記塗布を繰り返すことを含む一つ以上のさらなるステップを含んでもよく、任意に、前記微細構造の組成物のそれぞれの塗布の間に前記貫通孔が前記微細構造と位置合わせをするように、前記有孔テンプレートを前記基板から離し、再配置及び位置合わせをする。
【0013】
発明はまた、発明の方法を用いて製造された微細構造を含む経皮パッチを提供する。発明はまた、発明による経皮パッチ及び前記パッチの使用説明書を含むキットを提供する。
【0014】
本発明はさらに、本明細書に記載の経皮パッチを対象者の露出面に塗布することを含む、治療的又は美容的方法を必要とする患者の疾患を治療する治療的又は美容的方法を提供する。
【0015】
発明を以下の図面及び実施例を参照してより詳細に説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第1,786,580号
【特許文献2】米国特許第8,192,787号
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、より高い圧力及びステンシルと基板との間の空間によるたわみの問題につながる、より薄いテンプレートを用いた印刷工程を概略的に示す。
図2図2は、使用されるより高い圧力、より粘性のあるポリマーの使用、及びテンプレートのたわみの減少につながる、より深いテンプレートを用いた印刷工程を概略的に示す。
図3図3は、テンプレートのたわみを完全に除くことにより、より深いテンプレートの使用がどのように工程を通して接触印刷を可能にするかを概略的に明示する。
図4図4は、500μmの深さのテンプレートを用いて5回のパスで形成した微細構造の顕微鏡写真の例である。
図5図5は、テンプレートのたわみの結果として変形した微細構造の顕微鏡写真の例である。
図6図6は、テンプレートのたわみの結果として不均一に印刷された微細構造の顕微鏡写真の例である。
図7図7は、非接触印刷によるポリマーの不正確な積層を表す顕微鏡写真の例である。
図8図8は、より高い圧力下でのステンシルのたわみにより微細構造が形成されないことを示す顕微鏡写真の例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
あらゆる当業者が発明を行い用いることができるように以下の説明を提示する。開示された実施形態への様々な修正は、当業者にとって容易に明らかとなるであろう。
【0019】
本発明は、「深い」貫通孔を有する有孔テンプレートの使用を介して、又は変形に抵抗するよう構成された剛性を有する有孔テンプレートの使用を介して、微細構造を正確にかつ効率的に製造することができる新たな方法を提供する。至る所により浅い貫通孔を有する有孔テンプレートの使用と比較して、多くの驚くべき利点がこのアプローチに関連している。第一に、より深い/より厚いテンプレートの使用により必要に応じて100%の接触印刷を可能にする一方で、同時に貫通孔内に形成されている微細構造の成長を保護する。第二に、(微細構造の組成物を積層するための)スキージ刃がテンプレートにわたって移動する際、より深いテンプレートはより浅い深さのテンプレートに比べ、より効率的に屈曲に抵抗する。第三に、驚いたことに、より深いテンプレートの屈曲の減少により、硬化しテンプレートに張り付く基板の量が著しく減少する。粘着は新たに形成された微細構造に移動及びダメージを引き起こし得る。最後に、より深いテンプレートの使用により、より浅い深さを有するテンプレートに比べてより大きな体積の微細構造の組成物の積層を可能にするより効率的な工程が提供され、したがって、少しの積層のサイクルしか必要とせず、最終製品をより迅速に製造する。よって、本発明は、以前から知られている以前に用いていた方法に関連した問題を解決する。
【0020】
本発明を適切な文脈に置き、本出願全体を通して用いられる用語を熟知させるため、我々は特許文献1及び特許文献2による以前に用いていた微細構造の製造方法の概要を提供した。本発明はこの方法に勝る著しい利点を提供する。簡潔に言うと、所望の微細構造の組成物を積層する基板を適切な技術を用い、多数の「開口部」又は「貫通孔」を含む「有孔テンプレート」又は「ステンシル」と位置合わせをする。微細構造の組成物を「有孔テ
ンプレート」又は「ステンシル」に塗布し、続いて「貫通孔」又は「開口部」の中に促し、微細構造の組成物の所望の量を受入基板に積層する。それぞれのパスで受入基板に積層される微細構造の組成物の量を「積層収率」と呼ぶ。「有孔テンプレート」又は「ステンシル」の中に微細構造の組成物を促すために、スキージ刃、又は等価物を用い微細構造の組成物を所望の位置に向かわせ、テンプレートに圧力をかけることで有孔テンプレートの貫通孔の中に促す。上記の用語は、本発明の以下の説明全体を通して用いる。印刷の二つの方法、1)テンプレートが基板と接触しない非接触印刷、及び2)テンプレートが基板と接触する接触印刷、を採用してもよい。
【0021】
よって、第1の態様において、本発明は微細構造の製造方法を提供し、方法は貫通孔を含む有孔テンプレートに微細構造の組成物を塗布するステップを含み、微細構造の組成物が貫通孔を通り抜けて基板に積層されることにより微細構造が形成され、有孔テンプレート及び/又は貫通孔が少なくとも300μmの深さを有することを特徴とする。
【0022】
本発明はまた、微細構造の製造方法を提供し、方法は貫通孔を含む有孔テンプレートに微細構造の組成物を塗布するステップを含み、微細構造の組成物が貫通孔を通り抜けて基板に積層されることにより微細構造が形成され、有孔テンプレートが変形に抵抗するよう構成された剛性を有することを特徴とする。好適な実施形態において、有孔テンプレートは少なくとも1kg~20kgの印圧の変形に抵抗する。
【0023】
「剛性」という用語は、有孔テンプレートの硬さ又は引張強度を言うことを意図している。本発明の文脈において、これらの用語は、以前は変形をもたらすと知られていた(例えば、スキージ刃の利用からの)印圧が加えられた際に折れ曲がらず、形状を崩されず、変形しない有孔テンプレートの改善能力を言う。
【0024】
少なくとも300μmの深さの貫通孔を有してもよい有孔テンプレートの引張強度により、加えられる印圧を高くすることができる。「印圧」という用語により、我々は、例えば、スキージ刃を用いて微細構造の組成物を基板に移動させるために必要とするあらゆる力又は圧力を意図している。加えられる印圧を用いるプリンタにより判断してもよい。この目的のため一般的に使用されるプリンタはASM社製(nee DEK)又はASYS社製でもよい。いくつかのプリンタ、例えば265 DEK Horizonは機械的圧力を用いる一方で、より新しいプリンタ(2003 onwards製)、例えばHorizon 01はあらかじめ設定された印圧に達するまで印圧が上昇するフィードバック機構を可能にし、動的なセンサを含み、したがって表面を横切って移動する際に印圧を維持する。そのようなプリンタは0kg~20kgの力を加えることができる。よって、本発明は、少なくとも1kgの印圧を超える変形に抵抗できる有孔テンプレートを提供する。例えば、1kg~5kg、1kg~10kg、1kg~15kg、1kg~20kg、5kg~10kg、5kg~15kg、5kg~20kg、10kg~15kg、10kg~20kg、又は15kg~20kgである。発明者らは驚いたことに、変形に抵抗するように構成された有孔テンプレートの使用により変形することなく強い微細構造の製造を可能にすることが分かった。
【0025】
本発明の一実施形態において、有孔テンプレートが微細構造の組成物が積層される基板と接触しない非接触印刷法を用いて微細構造を製造してもよい。300μm未満の深さの貫通孔を有する有孔テンプレートは、印圧が1kgより高いとテンプレートの変形をもたらす可能性があり、別の微細構造にわたって不整合性をもたらす。驚いたことに、発明者らは、変形に抵抗するように構成された剛性を有する有孔テンプレートを有することで、同じ基板上に存在する別の微細構造にわたる整合性及び精度に関して、従来技術に勝る著しい改善をもたらすことが分かった。
【0026】
本発明の代替実施形態において、有孔テンプレートが基板と接触する接触印刷法を用いて微細構造を製造してもよい。この場合、発明者らは、少なくとも300μmの深さの貫通孔を有する有孔テンプレートにより、作られている微細構造の保護を可能にし、工程の最後で従来技術と比較してより正確で一貫した微細構造の形成をもたらすと考えている。その上、非接触印刷法とは異なって、この印刷方法においてより厚いテンプレートを有することにより、積層されるより高い積層収率が可能となり、より高い圧力(上記の印刷機で1kgを超える)の使用が可能となり、有孔テンプレート下での微細構造の組成物の漏出の可能性を取り除き、機械パラメータ変化を必要としないよう工程の複雑さを軽減する。
【0027】
発明による微細構造の製造方法は、基板に積層した微細構造の組成物を硬化剤にさらすステップをさらに含んでもよいことが予想される。本発明の文脈において、「硬化剤」という用語は、硬化した最終製品を生産するために微細構造の組成物の分子成分の結合を促進することができる化学物質を言う。実施形態において、硬化剤は紫外(UV)光であってもよいことが予想される。
【0028】
さらに、発明による微細構造の製造方法は、微細構造の組成物の塗布を繰り返すことを含む一つ以上のさらなるステップをさらに含んでもよく、任意に、微細構造の組成物のそれぞれの塗布の間に貫通孔が微細構造と位置合わせをするように、有孔テンプレートを基板から離し、再配置及び位置合わせをする。実施形態において、有孔テンプレートの表面に組み込まれた位置マーキングのアライメントシステム及び微細構造の組成物が積層される基板に組み込まれた対応するマーカーを用いてテンプレートを再配置してもよいことが予想される。位置マーキングのアライメントシステムを用いることにより、すでに製造された微細構造の部分に対して有孔テンプレートを正確に再配置できることを確実にする。多くのアライメントシステムがこの目的に適している可能性があり、そのようなシステムの一つがDEKホークアイシステムである。
【0029】
「微細構造」という用語は、10μm~10mmの高さのあらゆる構造を含むことを意図している。例えば、10μm~100μmの高さ、10μm~500μmの高さ、10μm~1000μmの高さ、10μm~5000μmの高さ、10μm~10000μmの高さ、50μm~100μmの高さ、50μm~500μmの高さ、50μm~1000μmの高さ、50μm~5000μmの高さ、50μm~10000μmの高さ、100μm~500μmの高さ、100μm~1000μmの高さ、100μm~5000μmの高さ、100μm~10000μmの高さ、500μm~1000μmの高さ、500μm~5000μmの高さ、又は500μm~10000μmの高さである。本発明の文脈において、「微細構造」という用語は、主に経皮パッチの上に位置する構造を言う。微細構造はマイクロニードルであってもよく、及び/又は、例えば、拡張ワイヤ又はドーナツ形など様々な形状又は形態をとってもよい。
【0030】
本明細書に開示の微細構造はマイクロニードルであってもよいことが予想される。「マイクロニードル」により、我々は、角質層を破壊することのできる突起を意図しており、そのようなマイクロニードルは10μm~1mmの高さであってもよいと予想している。例えば、10μm~100μmの高さ、10μm~200μmの高さ、10μm~300μmの高さ、10μm~400μmの高さ、10μm~500μmの高さ、10μm~600μmの高さ、10μm~700μmの高さ、10μm~800μmの高さ、10μm~900μmの高さ、10μm~1000μmの高さである。現在開示された方法はまた、充分な時間枠で精度、精密さ、及び拡張性全てを達成することができる新たな技術から利益を得るであろう様々な異なる微細構造に適用できる。この製造方法が適用できる微細構造の形状として、ドーナツ形及び拡張ワイヤを挙げることができる。特に、この方法が、典型的にそのような製品の部品が特に小さなスケールである電気診断分野に適用できる
ことが予想される。
【0031】
「貫通孔」により、我々は、物体の一方の側から他方の側への連続的な経路を作り出す、物体の材料の中を完全に延びる穴を意図している。
【0032】
有孔テンプレート及び/又は貫通孔が300~1000μmの深さを有してもよいことが予想される。例えば、有孔テンプレート及び/又は貫通孔は、300~400μm、300~500μm、300~600μm、300~700μm、300~800μm、300~900μm、300~950μm、300~1000μm、350~400μm、350~500μm、350~600μm、350~700μm、350~800μm、350~900μm、350~950μm、350~1000μm、400~500μm、400~600μm、400~700μm、400~800μm、400~900μm、400~950μm、400~1000μm、450~500μm、450~600μm、450~700μm、450~800μm、450~900μm、450~950μm、450~1000μm、500~600μm、500~700μm、500~800μm、500~900μm、500~950μm、500~1000μm、550~600μm、550~700μm、550~800μm、550~900μm、550~950μm、550~1000μm、600~700μm、600~800μm、600~900μm、600~950μm、600~1000μm、650~700μm、650~800μm、650~900μm、650~950μm、650~1000μm、700~800μm、700~900μm、700~950μm、700~1000μm、750~800μm、750~900μm、750~950μm、750~1000μm、800~900μm、800~950μm、800~1000μm、850~900μm、850~950μm、850~1000μm、900~950μm、900~1000μm、又は950~1000μmの深さを有してもよい。
【0033】
有孔テンプレートがプラスチック、ステンレス鋼、又はニッケル鋼から作られてもよいことが予想される。プラスチックはアクリル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。これらの特定の材料により、改善された強度、柔軟性、弾性、静的特性、及び平滑性を含む多くの望ましい特性が得られる。またこれらの特性を示すその他の材料が本発明に適しているであろうこと、上記の材料が電子プリント回路産業で一般的に使用されその不活性な性質から望ましいことは理解されている。
【0034】
微細構造の組成物がポリマーを含んでもよいことが予想される。実施形態において、ポリマーの架橋ネットワークを生成するためUV光を用いるように、微細構造のポリマーはUV硬化ポリマーであってもよい。そのようなUV硬化ポリマーはアクリレート及びメタクリレートを含むがこれらに限定されるものではない。しかしながら、当業者は、例えば、急速凝固などの所望の特性を有するあらゆるUV硬化ポリマーがこの目的に適切であることを理解するであろう。
【0035】
微細構造の組成物が粘着性であってもよいことがさらに予想される。「粘着性」という用語は、導入される追加の要素がなくてもそれ自身で粘着する微細構造の組成物の能力を言うことを意図している。この特性によりあらゆる追加の成分の必要なく、後の積層のそれぞれが前の積層に付着した状態で、微細構造の組成物の積層を前の積層に加えることが可能になる。例えば、用いたUV硬化ポリマーに関して、微細構造の積層は、後の又は前の積層と同じであっても異なっていてもよい。
【0036】
有孔テンプレートの貫通孔が実質的に円形、正方形、長方形、六角形、三角形、又はインゲン豆の形状であってもよいことが予想される。用いられる微細構造の形状は治療され
る症状と関係していてもよい。例えば、いくつかの形状は、他の形状と比べて覆われる表面積が大きくなってもよい。微細構造又は微細構造のアレイの形状はまた、塗布が意図された体の部分に依存するであろう。有孔テンプレートの貫通孔の形状が、問題となっている微細構造の形状及び所望の使用に依存するであろうことは理解されている。
【0037】
有孔テンプレートの貫通孔は、例えば、50~60μm、50~70μm、50~80μm、50~90μm、50~100μm、50~150μm、50~200μm、50~250μm、50~300μm、50~350μm、50~400μm、50~450μm、50~500μm、50~550μm、50~600μm、60~70μm、60~80μm、60~90μm、60~100μm、60~150μm、60~200μm、60~250μm、60~300μm、60~350μm、60~400μm、60~450μm、60~500μm、60~550μm、60~600μm、70~80μm、70~90μm、70~100μm、70~150μm、70~200μm、70~250μm、70~300μm、70~350μm、70~400μm、70~450μm、70~500μm、70~550μm、70~600μm、80~90μm、80~100μm、80~150μm、80~200μm、80~250μm、80~300μm、80~350μm、80~400μm、80~450μm、80~500μm、80~550μm、80~600μm、90~100μm、90~150μm、90~200μm、90~250μm、90~300μm、90~350μm、90~400μm、90~450μm、90~500μm、90~550μm、90~600μm、100~150μm、100~200μm、100~250μm、100~300μm、100~350μm、100~400μm、100~450μm、100~500μm、100~550μm、100~600μm、150~200μm、150~250μm、150~300μm、150~350μm、150~400μm、150~450μm、150~500μm、150~550μm、150~600μm、200~250μm、200~300μm、200~350μm、200~400μm、200~450μm、200~500μm、200~550μm、200~600μm、250~300μm、250~350μm、250~400μm、250~450μm、250~500μm、250~550μm、250~600μm、300~350μm、300~400μm、300~450μm、300~500μm、300~550μm、300~600μm、350~450μm、350~500μm、350~550μm、350~600μm、400~450μm、400~500μm、400~550μm、400~600μm、450~500μm、450~550μm、450~600μm、500~550μm、500~600μm、又は550~600μmなど、50~600μmの断面幅を有してもよいことが予想される。有孔テンプレートの貫通孔は製造される微細構造より大きくてもよいことは理解されている。場合によっては、貫通孔は微細構造の部分より大きくてもよく、したがって、微細構造の組成物が特定の部分に塗布されることになる。したがって、有孔テンプレートの貫通孔の直径は、製造される微細構造の所定の直径に依存するであろう。
【0038】
有孔テンプレートの貫通孔が電鋳法、レーザー穴開け、又は従来のドリルビットにより形成されてもよいことが予想される。この発明の文脈において、電鋳は、電着、つまり導電性物体への金属付着が生じる工程を言う。この工程のため、電源、二つの電極(陽極及び陰極)、及び電解槽内の金属塩溶液を有する必要がある。金属イオンが原子に変換され、原子が連続的な付着によって陰極表面に築き上げられる。この方法を用いると、最終製品の厚み及び形状の両方を制御することができる。レーザー穴開けは、固体レーザーから放出されるパルスレーザーエネルギーなど、材料に繰り返し集束エネルギーをパルスすることにより貫通孔が作られる工程を言う。この方法を用いると、非常に小さい直径及び正確な工学的形状を有する貫通孔を作ることができる。所望の直径が得られるまで最初に作られた貫通孔の周囲にレーザーを移動することによって、より大きい貫通孔を作ることもできる。あるいは、従来のドリルビットを用いて貫通孔を作ってもよい。異なる大きさの
貫通孔は、したがって、異なる大きさのドリルビットを用いて作ってもよい。当業者は、発明による貫通孔を作るため、当技術分野で利用できる他の適した方法を代わりに用いてもよいことを理解するであろう。
【0039】
有孔テンプレートが正しい位置に維持されるように、有孔テンプレートを支持フレーム内に配置してもよいことが予想される。支持フレームは、他の材料を介してテンプレートと物理的に接続してもよく、互換性がなくてもよい。あるいは、DEK VectorGuardなどのシステム又は締め具を用いてテンプレートを適所に固定する方法を用いることにより、フレームはテンプレートの入れ替えを調整してもよい。
【0040】
微細構造は、本明細書に記載の本発明を用いて製造される微細構造のアレイの一つであってもよい。「アレイ」により、我々は、互いに関連した特定の配列を示す単一の固体基板上に存在する複数の微細構造を意図している。例えば、微細構造のアレイは、複数の微細構造を有する経皮パッチであってもよく、支持固体基板にわたって一様に配置されてもよい。当業者は、治療される体の部分に応じた所望の化合物の送達を促進するために微細構造の異なるパターンを用いてもよいことを理解するであろう。
【0041】
基板は、PVC基板、金属基板、ポリ乳酸基板、ガラス基板、セラミック基板、ポリスチレン基板、セルロース系基板、ポリビニルアルコール基板、ポリカーボネート基板、ポリメチルメタクリレート基板、シリコーン基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリウレタン基板、又はニトロセルロース基板であってもよいことが予想される。基板がヒト又は非ヒトの外面との接触に適し、例えば、柔軟性及び耐久性などの所望の特性を示すあらゆる材料から形成されてもよいことは理解されている。そのような外面の例として、対象者の皮膚、粘膜、口腔、又は目が挙げられる。実施形態において、基板は少なくとも経皮パッチの一部を形成してもよい。
【0042】
本発明による微細構造の製造方法が微細構造に塗料組成物を塗布するさらなるステップを含んでもよいことが予想される。実施形態において、塗料組成物は活性成分、原薬、導電性材料、及び/又は生化学的試薬を含んでもよい。あるいは、塗料組成物は微細構造の上に構造的防護壁を形成してもよい。
【0043】
「活性成分」という用語は、薬剤学的及び非薬剤学的性質の両方の活性成分を含むとみなされる。例えば、非薬剤学的活性成分を化粧品業界で用いてもよい。本質的に非薬剤学的な活性成分の例として、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、ハイドロキノン、コウジ酸、レチノール、L-アスコルビン酸、ヒアルロン酸、銅ペプチド、α-リポ酸、及びジメチルアミノエタノールが挙げられる。この場合の塗料組成物は溶解可能なものでよく、所望の時間に活性成分を放出することができる。活性成分は、塗料自身の溶解あるいは拡散勾配によって塗料組成物から放出され得る。プライマーを用いることで塗料を溶解させ、皮膚の水分に触れると、又は、例えば、融点などの温度変化によって活性成分を溶解及び放出するように設計できる粘着性表面をもたらしてもよい。ある場合には、プライマーを用いるステップは必要ではないかもしれない。塗料組成物内の活性成分は、皮膚の表面あるいは真皮のより深くまで送られてもよい。送達の範囲は、微細構造の長さ及び治療される症状に依存するであろう。本発明の文脈における活性成分は、生物学的に活性である、よって所望の治療効果を生じる塗料組成物の要素を言う。
【0044】
活性成分が原薬である場合、原薬は生物学的に活性な皮膚再生化合物であってもよく、好ましくは、皮膚再生化合物はヒアルロン酸、ビタミンB、ビタミンC、補酵素Q10、マトリキシル、又はレスベラトロールである。これらの皮膚再生化合物は、本明細書に記載の方法を用いて被覆された微細構造を含む化粧品を製造するために用いられてもよいことを意図している。そのような製品は、患者に対して美観の問題を治療するために用いら
れてもよい。そのような治療される疾患は、目尻のしわ(カラスの足跡)、口囲皮膚炎、ティアトラフの変形、デコルテのしわ(胸部のしわ)、及びシミを含み得る。その上、皮膚再生化合物は、瘢痕の外観を改善することを目的とする、又は創傷治癒の速度を促進させるための化合物を含んでもよい。当業者は、塗料組成物に含まれる化合物が治療される疾患に依存するであろうことを理解するであろう。例えば、ビタミンB又はCよりもヒアルロン酸の方が目尻のしわの使用により適した化合物であろう。その上、塗料組成物は単一の皮膚再生化合物のみを含んでもよく、又は二つ以上の異なる化合物が同じ塗料組成物内に存在する、化合物の組み合わせを含んでもよい。対処すべき複数の疾患を有する患者を治療する場合、後者は特に有用であろう。
【0045】
さらに、原薬は鎮痛剤、抗炎症薬、及び/又は免疫抑制化合物であってもよく、好ましくは、化合物はジクロフェナク、イブプロフェン、リドカイン、又はヒドロコルチゾンである。鎮痛剤は、その一次作用が対象者の痛みを軽減する化合物であるとみなされる。抗炎症化合物は、特定の損傷又は疾患に関連する炎症を軽減することができる化合物であるとみなされる。免疫抑制化合物は、免疫システムの活性を阻害又は阻止する化合物であるとみなされる。上記の化合物は、一般的な痛みの軽減としての使用であろうと局所麻酔薬としての使用であろうと、疼痛管理の方法としての使用や乾癬又は湿疹などの皮膚疾患に適している可能性があることを意図している。当業者は、上に掲載された化合物が複数の上記グループに分類できることを理解するであろう。例えば、イブプロフェンは鎮痛剤と抗炎症薬の両方として認識される。塗料組成物に含まれる化合物が治療される疾患に依存するであろうことは理解されている。例えば、イブプロフェンよりもヒドロコルチゾンの方が湿疹の治療により適しているであろう。その上、塗料組成物は単一の鎮痛剤、抗炎症薬、又は免疫抑制化合物のみを含んでもよく、又は二つ以上の異なる化合物が同じ塗料組成物内に存在する、化合物の組み合わせを含んでもよい。対処すべき複数の疾患を有する患者を治療する場合、後者は特に有用であろう。
【0046】
活性成分は、秒から時間の時間スケールで放出されてもよい。例えば、治療される急性や慢性の疾患など、最終的な適用に応じた様々な放出時間を有するように塗料組成物を調製してもよい。
【0047】
問題となっている疾患のための関連する活性成分に加えて、塗料組成物は、製剤処方での使用に適した化合物をさらに含んでもよい。そのような化合物は、許容できる薬剤キャリアを含んでもよく、その例としてカプセル化賦形剤、ナノ粒子、ミセル、皮膚浸透促進剤、及び他の添加剤が挙げられる。
【0048】
塗料組成物は、活性成分が角質層を通過するのを補助するための導電性材料を含んでもよい。この場合、外部に配置した電極は生理学的に許容できる電流(0.1~1mA/cm)を送ることが求められるだろう。そのような導電性材料の例として、塗料組成物への導電性ポリマーの添加、つまり電気を通すことで知られる有機ポリマーを挙げることができる。いくつかを明らかにすると、導電性ポリマーは、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリインドール、及びポリアニリンを含んでもよい。ヒトの体との接触に適したあらゆる導電性材料が塗料組成物に含まれるのに適しているであろうことは理解されている。
【0049】
塗料組成物は、生化学的試薬を含んでもよい。「生化学的試薬」という用語により、我々は、生体系で見ることができる、又は生物学的調査で用いることのできるあらゆる生化学的材料又は有機化合物を意図している。例えば、塗料組成物は、治療的又は美容的使用、例えば、コラーゲン産生の促進を目的としたヌクレオチド及び/又はアミノ酸を含んでもよい。生化学的試薬を含むことはまた、診断工程において助けとなり得る。
【0050】
その上、塗料組成物は微細構造の上に構造的防護壁を形成してもよい。これは、より脆
弱な微細構造が皮膚の最外層、つまり角質層を通過する際の破壊を防ぐのに役立つであろう。防護壁は微細構造の全体又は微細構造の一部のみ、例えば、最も壊れやすい部位である先端を覆ってもよい。構造的防護壁の塗料は少なくとも単一の塗料を必要とするであろう。塗料組成物により形成された構造的防護壁は、塗料組成物を気体又は液体、例えば、液相又は気相のアルコールなどの溶媒にさらすことにより溶解させ、それにより微細構造を露出してもよい。
【0051】
有孔テンプレートが微細構造の組成物に接触する前に、プレコート層を有孔テンプレートに塗布してもよいことが予想される。これは、摩擦のない表面を提供することにより、又は上部に微細構造の組成物を塗布できる面の表面張力を低下させることにより、結果として生じる微細構造の精度及び整合性を改善することができる。そのような塗料の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、及びフッ化エチレンプロピレン(FEP)を挙げることができる。医学的用途に適合しないあらゆる望ましくない相加効果を防ぐため、有孔テンプレートをプレコートするために選ばれた物質は、不活性であり、形成されている微細構造又は上に形成されている基板に残留物を残さないことが理想的である。
【0052】
よって、第2の態様において、本発明は本明細書に規定された方法により製造された微細構造を含む経皮パッチを提供する。当然のことながら、パッチが、パッチの対象とする用途に応じて配置された複数の微細構造を含むことが予期される。一つ以上の微細構造を含む経皮パッチが活性物質の対象者への送達を助けることができ、又は疾患、例えば、細菌やウイルス感染の診断に用いられ得ることが予想される。本明細書に記載の経皮パッチを様々な治療の成功、例えば、化学療法や抗生物質の成功率を監視する装置として用いることができることがさらに予想される。
【0053】
本発明はまた、本明細書に記載の経皮パッチ及び経皮パッチの使用説明書を含むキットを提供してもよい。説明書は、どのような状況でどのくらいの間パッチを塗布するべきか、及び/又は必要に応じてどれくらいの頻度でパッチ又は複数のパッチを再塗布するべきかを示してもよい。キットは、異なる投与量又は医師の指示に従って塗布される異なる原薬を有するパッチに対応することができる。
【0054】
本発明はまた、本明細書に記載の経皮パッチを対象者の皮膚に塗布することを含む、治療的又は美容的方法を必要とする患者の疾患を治療する治療的又は美容的方法を提供してもよい。
【0055】
本明細書に提供された方法を用いて製造及び被覆されたパッチ及び本明細書に提供されたパッチが、目尻のしわ(カラスの足跡)、口囲皮膚炎、ティアトラフの変形、デコルテのしわ(胸部のしわ)、シミ、皮膚線条、瘢痕、脱毛、乾癬、湿疹、及び/又は乾燥肌などの疾患を治療する上で有用であろうことが予想される。さらに、本明細書に提供された方法を用いて治療される疾患は痛み及び/又は炎症を含み得る。
【0056】
微細構造の皮膚への浸透の範囲は、皮膚疾患に依存するであろう。例えば、きめの粗い皮膚は皮膚を突き破るためにより長い微細構造を必要とするであろう一方で、痛んだ肌は同じ効果をあげるためにより小さな深さへの浸透を必要とするであろう。
【0057】
本発明はまた、獣医学の用途に適用できることが予想される。経皮パッチを有効にするために、皮膚との直接的な接触を可能にするため、動物の皮膚は毛を剃り落とさなければならないであろうことが予期される。「動物」という用語は、非ヒト霊長類、羊、犬、猫、馬、山羊、牛、及び鶏などの全ての脊椎哺乳動物を含む。
【0058】
発明を添付の図面を参照して以下の実施例で示す。
【実施例
【0059】
本発明の発明者らは、深いテンプレート又は変形に抵抗できる有孔テンプレートの使用が、より薄いテンプレートの使用と比べて印刷パスの驚くべき減少をもたらし、微細構造の高さを維持しつつも微細構造の組成物のより高い積層収率をもたらすことを発見した(表1)。この発見の結果として、発明者らは、印刷画像面積を15×15cmから50×50cmの面積に増加することができた。その上、より厚いテンプレートを使用することで、テンプレートの屈曲及び多くの欠点を生じることなく、テンプレートにわたって微細構造の組成物の動きを制御するためにスキージ刃を用いる際により高い圧力を使用する能力をもたらす。よって、本発明は、以前に用いていた方法に関連する多くの問題を解決する。例えば、本発明は、100%の接触印刷、形成されている間の微細構造の保護、テンプレートの望ましくない屈曲、硬化しテンプレートに張り付く微細構造の組成物の量の著しい減少、及び最終製品を生産するのに必要な印刷パスの数の減少を可能にする。したがって、当技術分野で周知の方法に比べ、本発明は、より効率的な、より正確な、そしてより費用効率に優れた方法である。
【0060】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】