(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】光ファイバ間の結合損失低減
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20221020BHJP
G02B 6/032 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G02B6/02 411
G02B6/02 451
G02B6/032 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511262
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020047529
(87)【国際公開番号】W WO2021035191
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】コラード,マット
(72)【発明者】
【氏名】クレンプ,トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】マンガン,ブライアン
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AC32
2H250AC35
2H250AC37
2H250AC52
2H250AC53
2H250AD01
2H250AE28
2H250AF04
2H250AF11
2H250AF23
2H250AF25
2H250AF28
2H250AF29
2H250AH47
(57)【要約】
光ファイバ増幅器は、希土類ドープ利得ファイバ自体の中に内接する格子構造を含むように形成され、分散波長依存フィルタリング(減衰)を提供し、増幅器の出力で使用される任意のタイプの利得平坦化フィルタの必要性を最小限にする。格子構造は、例えば、従来技術の離散的なGFFのプロファイルと同様に、所望の損失スペクトルを提供する任意の適切な構成のものとすることができる。利得に沿って分散された波長依存フィルタリングを提供するために使用され得る種々のタイプの格子構造には、傾斜格子、弱いブラッグ格子、長周期格子(LPG)、およびこれらの格子構造の任意の適切な組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモードフィールド直径(MFD)を有する中空コアファイバ(HCF)と、
前記HCFに結合され、前記第1のMFDの90%以下である第2のMFDを有する追加のファイバとを含む、
複数の光ファイバ間の結合損失を低減するように構成された物品。
【請求項2】
前記追加のファイバは、長手方向に変化する屈折率を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
第3のMFDを有し、前記HCFと前記追加のファイバとの間に位置する短いファイバをさらに含み、前記第3のMFDは、前記第1のMFDより小さく、前記第2のMFDより大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記第1のMFDから前記第2のMFDへの緩やかな移行を提供するテーパ加工された部分をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
リターン損失を増加させるために、HCFとSMFとの間に角度接合をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
コアとコア壁領域を持つ中空コアファイバ(HCF)と、
前記HCFに結合され、前記HCFの前記コア壁領域の直径の61%以下である領域において基本モードを伝搬する追加のファイバとを含む、
複数の光ファイバ間の結合損失を低減するように構成された物品。
【請求項7】
前記追加のファイバは、長手方向に変化する濃度のドーパントを含む、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
第3のMFDを有し、前記HCFと前記追加のファイバとの間に位置する短いファイバをさらに含み、
前記第3のMFDは、前記第1のMFDより小さく、前記第2のMFDより大きい、請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記第1のMFDから前記第2のMFDへの緩やかな移行を提供するテーパ加工された部分をさらに含む、請求項6に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月21日に出願された米国仮出願第62/889,882号の利益を主張する。
【0002】
ここでは、光ファイバ間の結合損失を低減するためのシステム、方法、および製品、より詳細には、中空コア光ファイバ(HCF)とソリッドコアファイバ(SCF)などの別のファイバとの間の結合損失を、モードフィールド直径(MFD)ミスマッチを使用して低減するためのシステム、方法、および製品について説明する。
【背景技術】
【0003】
中空コア光ファイバは、センシング、通信、高出力光パルス伝送などの画期的な性能改善を提供する強力な技術プラットフォームである。実際には、その待ち時間は真空中の光波の伝播にほぼ等しいので、中空コア光ファイバは、データセンタ、高周波株式取引通信リンク、分散コンピューティング環境、ハイパフォーマンスコンピューティングなどのための魅力的なソリューションを提供する。例えば、株式取引アプリケーションでは、中空コア光ファイバは、取引コンピュータ間のデータ伝送時間の短縮を可能にし、取引プログラムがプログラムされた取引トランザクションをより迅速に完了できるようにすると考えられている。
【0004】
中空コアファイバとは、ここでは、中空コアのような固体ではないコアを有する任意のファイバを意味し、中空コアは、真空であってもよいし、空気のような気体で満たされていてもよい。本開示では、フォトニックバンドギャップクラッドを有する中空コアファイバを例示するが、ここで説明した方法によって、任意の中空コアファイバ間の結合損失を低減することができる。典型的には、中空コアファイバは、ファイバの損失の主要な原因であるコアの端部で空気/ガラス界面と重なる光の量を低減するために、標準的なソリッドコア光ファイバよりも大きなコア直径を有する。
【0005】
低レイテンシ、温度非依存性、放射硬度などの中空コアファイバの望ましい特性を利用する光学装置またはシステムでは、HCFは通常、標準的な市販のSCF用に設計された標準的な光学部品、典型的にはソリッドコアのシングルモードファイバ(SMF)に1つまたは複数の点で結合する必要がある。したがって、これらの接続は、しばしばシステムの最良の可能な性能のために重要であるため、これらの接続または接合の結合損失を最小化する必要性が当技術分野に残る。HCFの基本モードの横方向プロファイルはSMFの基本モードとは実質的に異なるので、最小結合損失を達成するために両方のファイバでどれが最良のMFD比であるかは不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、当技術分野のニーズに対処し、中空コア光ファイバを含む接続における結合または接合損失を低減することを目的とする。例えば、HCFとSMFとの間の結合損失または接合損失は、HCFのMFDよりも著しく小さいMFDを有するSMFを選択することによって最小化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、複数の光ファイバ間の結合損失を低減するように構成された製造物品が本明細書に記載され、製造物品は、第1モードの伝搬を支持する中空コアファイバHCFと、HCFに結合されたSCFとを含む。
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、例示的なHCFを、著しく小さいMFDを有する例示的なSMFに結合/接合すること、HCFのMFDとSMFのMFDとの間にあるMFDを持つ3番目のファイバを挿入すること、HCFを端部がテーパ加工されたSMFに結合/接続すること、その端部などでドーパントの濃度が長手方向に変化するSMFにHCFを結合/接続すること、などの方法の形をとる。本発明の他の実施形態および態様は、以下の議論の過程において、添付図面を参照することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による、6つの外側コア(シャント)を有する例示的な19セルHCFにおける基本モードを示す図である。
【
図2A】種々のSMF MFDのスプライス損失に対するモードミスマッチ寄与に基づく、
図1の例示的HCFのモード特性の波長依存性を示す図である。
【
図2B】
図1の例示的HCFのMFDに基づく、
図1の例示的HCFのモード特性の波長依存性を示す図である。
【
図3】例示的なHCFの最適MFD比対正規化コアサイズの関係を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による例示的HCFの最適SMF MFD対HCFコアサイズの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に詳細に説明するように、本発明は、結合損失を最小化するために、中空コア光ファイバと他のファイバとの間の種々のタイプの結合および接合の特性を評価することに関する。例えば、(中空コアファイバの種々の構成の場合のように)「空気」コアに沿った光信号光の伝送は、標準的なシリカコア光ファイバに関連する伝送速度よりも30%大きい伝送速度を提供する。上述の通り、この特徴は、低遅延通信リンクに依存する高頻度取引企業に特に適用される。低レイテンシは、数千台のサーバを相互接続するために数百キロメートルの光ケーブルが使用されるデータセンタ/スーパーコンピュータのアプリケーションにも適用される。上述したように、本発明の一実施形態は、HCFのMFDよりも著しく小さいMFDを有するSMFを選択することによって、HCFとSMFとの間の結合損失または接合損失を最小化することを可能にする。さらに、本発明のさらなる実施形態によれば、全体での結合損失を最小化するために、ここではモードフィールド適応ファイバ(MFAF)と呼ばれる第3のファイバの短いセクションをSMFとHCFとの間に追加することが有利であり得る。
【0011】
対数(デシベル)スケールでは、HCFとSMFの間のトータルの結合損失または接合損失a<(dB)>は、以下の数式における2つの項の合計である。
【数1】
第1の項
【数2】
は、複数の有効なインデックスが大幅に異なるため、避けられないフレネル反射である。
1550nmの波長では、通常、
【数3】
につながる
【数4】
と
【数5】
が存在する可能性がある。
【0012】
フレネル反射光がファイバに沿って後方に伝搬されてシステムに不要なノイズが生じるのを避けるために、スプライスをファイバ断面に対して角度付けすることができる。
第2項
【数6】
(
図2A参照)は、2つのファイバの基本モードの不一致によるものであり、対称的な半双線型(sesquilinear)形式の表記を使用して、HCFの(電気)場E
HCFとSMFのE
SMFの横方向重複積分、すなわち、典型的にはファイバ断面である横断面積A上の2つのベクトル場U、Vの式
【数7】
で近似される。
【0013】
結合損失を最小にするために、SMFの基本モードは、HCFのコア壁領域との重複が比較的小さくてもよい。
図1は、6つの外側コア(例えばシャント)を有する例示的な19セルHCFにおける基本モードのプロット100を示す。矢印は電界の局所的な方向を示し、陰影は光強度の平方根を示す。
図1で使用される例示的なHCFは、19セルHCFであるが、本発明の代替の実施形態は、この構造に限定されず、任意の数のセルおよび外側コアを使用する種々のHCFであってもよいが、これに限定されず、外側コアを有さない場合、すなわち、単一コアHCFであってもよい。HCFの基本モードの電場(及び磁場)の方向は、HCFのこのコア壁領域(
図1参照)において強く位置依存することに注目することが重要である。これに対し、典型的なSMFは、通常、より均一に配向された電場(および磁場)を有する基本モードを有し得る。SMFがHCFのMFDよりも小さいMFDを有する場合、コア壁領域とのこのようなオーバーラップの低減が達成される。
【0014】
しかし、SMFのMFDを小さくしすぎると、結合損失が増加することもある。一例として、
図2Aのグラフ200は、
図1のガウスモード形状を有するSMFからHCFへのモードミスマッチ損失(接合または結合損失マイナスフレネル反射損失(splicing or coupling loss minus Fresnel reflection loss))を示す。1550nmの波長で、約15pmのMFDをもつSMFを用いることにより、約0.29dBの最小モードミスマッチ損失が達成され得る。これは、1550nmで約18mmであるHCFのMFDの約83%に過ぎない(
図2Bのグラフ250参照)。これに対し、1550nmで18mmのMFDを有するSMFが選択された場合(
図2Aの太線)、モードミスマッチ損失は約0.5dBであり、すなわち、最適損失よりも0.21dB高い。本発明の一実施形態によれば、例示的なSMFのMFDは、例示的なHCFのMFDの85%を超えてはならない。本発明の代替の実施形態によれば、例示的なSMFのMFDは、例示的なHCFのMFDの90%を超えてはならない。
【0015】
最適SMF MFDがHCFのMFDよりも著しく小さいという事実は、HCFコア直径の広い範囲、さらには異なるHCF設計にさえも当てはまる。例えば、
図3のグラフ300は、HCFの相対的なコアサイズd
core,relの関数としての最適なMFD比(最適なSMF MFDをHCFのMFDで割ったもの)を示し、これは、当業者は既知の通り、絶対的なコア直径dcoreおよびミクロ構造のピッチPと共に
【数8】
として定義される。2本のファイバHCF1とHCF2は、例えば、空気充填率、dcore、製造日等の多くの特徴が異なるが、いずれの場合も、最適なMFD比は常に83%程度である。
【0016】
そこで、
図3では、測定が困難なHCFのモード特性、すなわちMFDに関してSMFの最適MFDを正規化している。また、
図4は、コア直径の測定が容易であるという観点から正規化したものである。
図4のグラフ400は、SMF MFDとHCFコアサイズとの関係を示している。これらのユニットでは、SMFの最適MFDはHCF1とHCF2の両方に対して、HCFのコア直径の広い範囲にわたってHCFのコア直径の約56%である。本発明の一実施形態によれば、例示的なSMFのMFDは、例示的なHCFのコア直径の58%を超えてはならない。本発明の別の実施形態によれば、例示的なSMFのMFDは、例示的なHCFのコア直径の61%を超えてはならない。
【0017】
上述のように、結合損失または接合損失をさらに低減するために、例示的なSMFと例示的なHCFとの間に第3のファイバ(典型的には短いセクション)を使用することが有利であり得る。したがって、MFDの1つの変更を、MFDの2つの小さな変更に置き換えることができる。より一般的には、MFDのさらに緩やかな変化を達成するために、SMFとHCFとの間に1つ以上のファイバまたは導波路(典型的には短いセクション)を使用することができる。代替の実施形態によれば、テーパは、その長さに沿ってMFDの連続的な変化と共に使用されてもよい。
【0018】
モードミスマッチおよび接合損失または結合損失をさらに低減するために、種々のドーパントおよびドーピングプロファイル(例えば、屈折率の変化)を、例示的なSMFの先端で使用することができる。これと同時にまたは別個に、ガス、液体、または固体を、例示的なHCFのコアまたはクラッディングセルに含めることができる。
【0019】
さらに、本開示の別の実施形態によれば、HCFとSMFとの間に角度接合があって、リターン損失を増加させることができる。
【0020】
本発明のさらなる態様は、例示的なHCFおよびSMFのような、光ファイバ間の結合損失または接合損失を低減する方法に関する。これらの例示的な方法は、例示的なHCFを、著しく小さいMFDを有する例示的なSMFに結合/接合することと、HCFのMFDとSMFのMFDとの間にあるMFDを持つ第3のファイバを挿入して、HCFをSMFに結合/接続することと、その端部がテーパ加工されたSMFにHCFを結合/接続することと、その端部でドーパントの濃度を長手方向に変化させることができるSMFにHCFを結合/接続することと、その端部で屈折率を長手方向に変化させることとを含むことができるが、これに限定されるものではない。本明細書全体に記載される例示的な実施形態は、HCFに適用されるだけでなく、他のタイプの微細構造ファイバにも適用することができ、さらに一般的には、典型的なSMFの基本モードの横方向の形状とは異なる横方向の形状を有する基本モードを有するファイバにも適用することができる。
【0021】
本明細書において、「SMF」という用語は、中実コアSMFを指す場合がある。しかしながら、当業者は、SMFが、例えば、中空コア単一モードファイバのような、異なるタイプのSMFを指すこともあることを理解するであろう。
【0022】
本開示は、その例示的な実施形態を参照して説明された。本開示に開示されるすべての例示的な実施形態および条件付き例示は、本開示が関係する当業者による本開示の原理および概念の理解を助けることを意図して記載されているしたがって、本開示が関係する当業者には、本開示が、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、修正された形態で実施され得ることが理解されるであろう。様々な特徴を有する多数の実施形態が本明細書に記載されてきたが、本明細書に記載されていない他の組み合わせにおけるそのような様々な特徴の組み合わせは、本開示の実施形態の範囲内で企図される。
【国際調査報告】