(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
F28D20/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512444
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020040706
(87)【国際公開番号】W WO2021034417
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521219442
【氏名又は名称】ウェスティングハウス エレクトリック カンパニー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】WESTINGHOUSE ELECTRIC COMPANY LLC
【住所又は居所原語表記】1000 Westinghouse Drive, Suite 141, Cranberry Township, Pennsylvania 16066 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリー エー. スタンスバリー
(72)【発明者】
【氏名】エドワード シー. ルノー
(57)【要約】
エネルギー貯蔵装置は、複数のプレートを含み、各プレートが第1の面および第2の面を有し、これら面のうちの少なくとも一方には複数の溝が形成される。この装置は、熱伝達媒体を複数の溝に提供する、又は、複数の溝から受け取るための入口プレナムおよび出口プレナムをさらに含む。複数の溝が形成された第1のプレートの第1の面および第2の面のうちの少なくとも一方は、隣接する第2のプレートの少なくとも第1の面および第2の面のうちの他方と直接接触して配置される。熱伝達媒体が複数の溝に沿って通過するとき、伝達媒体からの熱は充填動作モードでプレートに伝達され、又は、放出動作モードでプレートから伝達媒体に熱が伝達される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分離プレートであって、前記プレートの各々が、第1の面と、反対側の第2の面とを有し、前記第1の面および前記第2の面のうちの少なくとも一方には複数の溝が形成されている、前記複数の分離プレートと、
熱源から熱伝達媒体を受け取り、前記複数の溝を介して前記熱伝達媒体を分配するように構成された入口プレナムと、
前記複数の溝から前記熱伝達媒体を受け取り、前記熱伝達媒体を戻り先へ吐出するように構成された出口プレナムと、を備え、
各溝は、前記複数の分離プレートのそれぞれのプレートの前記入口プレナムの近くに配置された第1の縁部から、前記出口プレナムの近くに配置された反対側の第2の縁部へと延びており、
前記複数の溝が形成された第1のプレートの前記第1の面および前記第2の面のうちの前記少なくとも一方は、隣接する第2のプレートの前記少なくとも第1の面および前記第2の面のうちの他方と直接接触して配置されており、
前記熱伝達媒体内の熱の一部は、前記熱伝達媒体が前記複数の溝に沿って通過するとき、充填動作モードで前記プレートに伝達され、又は、前記プレート内の熱の一部は、前記熱伝達媒体が前記複数の溝に沿って通過するとき、放出動作モードで前記熱伝達媒体に伝達される、エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
各プレートは、高比熱材料から形成されている、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
各プレートは、コンクリート材料から形成されている、請求項2に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
各溝は、各溝に沿って見たときに、概して円形セグメントのような形状である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記複数の分離プレートは、前記第1の面と前記第2の面とが水平に配置された状態で、垂直に積み重ねて配置されている、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記複数の分離プレートは、前記第1の面と前記第2の面とが垂直に配置された状態で、縁部において垂直に配置されている、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
各プレートは、約0.5インチ~約6インチの厚さを有する、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
各プレートは、約4インチの厚さを有する、請求項7に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
各溝は、約0.25インチ~約1インチの深さを有する、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
各溝は、約0.5インチ~約2.5インチの幅を有し、約0.25インチ~約2インチの分離距離を隔てて隣接する溝から離間されている、請求項9に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
前記エネルギー貯蔵装置は、約140°F~600°Fの間で動作するように構成されている、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記プレートは、マイクロ鉄筋または他の立体的補強材を備える、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
熱エネルギーの貯蔵方法であって、
熱伝達モジュールを形成する工程であって、前記熱伝達モジュールは、複数の分離プレートであって、前記プレートの各々が第1の面と反対側の第2の面とを有し、前記第1の面および前記第2の面のうちの少なくとも一方には複数の溝が形成されている、前記複数の分離プレートと、入口プレナムと、出口プレナムと、を備え、各溝は、前記複数の分離プレートのそれぞれのプレートの前記入口プレナムの近くに配置された第1の縁部から、前記出口プレナムの近くに配置された反対側の第2の縁部へと延びており、前記複数の溝が形成された第1のプレートの前記第1の面および前記第2の面のうちの前記少なくとも一方は、隣接する第2のプレートの前記少なくとも第1の面および前記第2の面のうちの他方と直接接触して配置されている、前記工程と、
前記複数の分離プレートの前記複数の溝を介して、熱伝達媒体を前記入口プレナムから前記出口プレナムに導く工程と、
充填動作モードで前記熱伝達媒体から前記複数の分離プレートに熱を伝達する工程、又は、放出動作モードで前記複数の分離プレートから前記熱伝達媒体に熱を伝達する工程と、
前記出口プレナムから前記熱伝達媒体を排出させる工程と、
を備える、熱エネルギーの貯蔵方法。
【請求項14】
前記熱伝達モジュールを約140°F~600°Fの間で動作させる工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
熱が前記熱伝達媒体から前記複数の分離プレートに伝達される前記充填動作モードと、熱が前記複数の分離プレートから前記熱伝達媒体に伝達される前記放出動作モードとは、向流熱交換器の動作と同様に、反対の流体の流れ方向でそれぞれ実行される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年6月21日に出願された“Energy Storage Device”と題する米国特許仮出願第62/522,737号の優先権を主張する、2018年5月15日出願の“Energy Storage Device”と題する米国特許出願第15/979,628号の一部継続出願である、2019年8月22日に出願された“Energy Storage Device”と題する米国特許出願第16/547,950号の優先権を主張し、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概してエネルギー貯蔵に関し、より詳細には、モジュール式で低コストの熱エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0003】
大量の瞬動予備力を必要とせずに、電力網の電力を平準化するエネルギー貯蔵手段を創り出すことは、極めて困難な課題となっている。太陽光電池や風力タービンなどの変動(non-dispatchable)再生可能エネルギー装置の普及がますます進んでいるが、これにより電力網の安定性が損なわれている。揚水貯蔵やバッテリなどの従来のエネルギー貯蔵の解決策は、それらの容量に限度があり、また環境問題を理由に取り挙げることが著しく困難になっている。蓄電するのではなく、ヒートポンプ配置または発電に使用される熱源のいずれかから、発電の直前に生成される熱としてエネルギーを貯蔵することにより、比較的低コストな貯蔵が原子力発電所の原子炉で実現かつ利用される可能性がある。蓄熱はそれ自体新しいものではないが、必ずしもどこにでも存在するとは限らない高価な塩や地形によるのではなく、むしろ一般的な材料を用いて比較的低コストなモジュールで効率的にエネルギーを貯蔵可能とする設計は実現が困難である。したがって、本発明の目的は、一般的で容易に入手できる材料から構成された、低コストなモジュール型エネルギー貯蔵装置を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの目的および他の目的は、一実施形態において、コンクリート状材料からなり、それらの面上を実質的に熱伝達媒体が通過するのに十分な大きさの流動空間を間に挟んで並列に支持される複数のプレートを備えるエネルギー貯蔵装置によって達成される。流動空間の第1の端部と流通する入口プレナムは、熱源から熱伝達媒体を受け取り、プレートの面にわたって流動空間を介して熱伝達媒体を分配するように構成される。流動空間の第2の端部と流通する出口プレナムは、流動空間から熱伝達媒体を受け取り、熱伝達媒体を戻り先へ吐出するように構成されている。熱伝達媒体内の熱の一部は、充填動作モードでプレートに伝達され、又は、プレート内の熱の一部は、放出動作モードで熱伝達媒体に伝達される。
【0005】
一実施形態では、複数のプレートは金属製ケーシングに収容され、好ましくは、プレートは、対向する縁部上で支持されて、熱伝達媒体がプレート間の流動空間を通って平行に流れる状態で水平に流れるように、水平に延びている。好ましくは、熱伝達媒体は、油又は塩である。
【0006】
他の実施形態では、プレートは、熱伝達媒体の流れ方向に直交する方向に縦溝が彫られ、縦溝は、サーマルブレイク(thermal break)を提供するためにプレートの長さに沿って離間され、部分充填に続くプレートの長さに沿った熱拡散を、すなわち熱を含むプレートの領域とそれほど熱を含まないプレートの領域との間における熱の移動を遅くする。好ましくは、縦溝は、プレートの長さに沿って6インチから4フィートの間隔で離間される。エネルギー貯蔵装置は、望ましくは約140°F~600°Fの間で動作するように構成される。このような実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、充填動作および放出動作が、向流熱交換器の動作と同様に、反対の流体の流れ方向でそれぞれ実行される。このような実施形態では、コンクリート状のプレートは、マイクロ鉄筋または他の同様な立体的補強材を含んでもよい。更なる実施形態では、プレート間の流動空間の少なくとも一部が断熱材を含み、及び/又は、プレートの少なくとも一部の部分がそれらのプレートの下流部分から断熱されて、サーマルブレイクを形成する。他の実施形態では、より小さな複数のプレートを採用し、これらのプレート間の切れ目がこのようなサーマルブレイクを提供する。
【0007】
本発明はまた、熱伝達モジュールを形成する工程を備える熱エネルギーの貯蔵方法を考察するものであり、この熱伝達モジュールは、コンクリート状材料からなり、互いに離間され、流動空間を間に形成するように並列に支持される複数の熱伝達プレートを備え、熱伝達プレートは、流動空間の一端における入口プレナムと流動空間の他端における出口プレナムとを有するハウジング内に囲まれている。本方法は、入口プレナムを介して複数の熱伝達プレートの面にわたって及びそれらの間に熱伝達媒体を導き、熱伝達媒体からの熱を複数の熱伝達プレートに伝達し、出口プレナムを介して熱伝達媒体をハウジングから排出する。
【0008】
好ましくは、導く工程は、複数の熱伝達媒体プレートにわたって及びそれらの間に平行かつ水平に熱伝達媒体を導く工程を含む。一実施形態では、本方法は、熱伝達プレートをマイクロ鉄筋または他の同様な立体的補強材で補強する工程を含む。好ましくは、本方法は、部分充填後にプレートの長さに沿った熱拡散を遅らせるために、プレートにサーマルブレイクを適用する。一実施形態では、サーマルブレイクは、熱伝達媒体の流れ方向に直交する方向に延びる縦溝である。好ましくは、縦溝は、6インチから4フィートの間隔で離間される。他の実施形態では、サーマルブレイクは、隣接する、より小さいプレート間の分離部である。
【0009】
本方法はまた、熱伝達モジュールを約140°F~600°Fの間で動作させる。また本方法は、向流熱交換器の動作と同様に、反対の流体の流れ方向でそれぞれ実行される充填動作および放出動作を含む。
【0010】
さらに別の実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、複数の分離プレートであって、プレートの各々が、第1の面と、反対側の第2の面とを有し、第1の面および第2の面のうちの少なくとも一方には複数の溝が形成されている、複数の分離プレートと、熱源から熱伝達媒体を受け取り、複数の溝を介して熱伝達媒体を分配するように構成された入口プレナムと、複数の溝から熱伝達媒体を受け取り、熱伝達媒体を戻り先へ吐出するように構成された出口プレナムと、を備える。各溝は、複数の分離プレートのそれぞれのプレートの入口プレナムの近くに配置された第1の縁部から、出口プレナムの近くに配置された反対側の第2の縁部へと延びている。複数の溝が形成された第1のプレートの第1の面および第2の面のうちの少なくとも一方は、隣接する第2のプレートの少なくとも第1の面および第2の面のうちの他方と直接接触して配置されている。熱伝達媒体内の熱の一部は、熱伝達媒体が溝に沿って通過するとき、充填動作モードでプレートに伝達され、又は、プレート内の熱の一部は、熱伝達媒体が複数の溝に沿って通過するとき、放出動作モードで熱伝達媒体に伝達される
【0011】
各プレートは、高比熱材料から形成されていてもよい。各プレートは、コンクリート材料から形成されていてもよい。各溝は、各溝に沿って見たときに、概して円形セグメントのような形状であってもよい。複数の分離プレートは、第1の面と第2の面とが水平に配置された状態で、垂直に積み重ねて配置されていてもよい。複数の分離プレートは、第1の面と第2の面とが垂直に配置された状態で、縁部において垂直に配置されていてもよい。各プレートは、約0.5インチ~約6インチの厚さを有してもよい。各プレートは、約4インチの厚さを有してもよい。各溝は、約0.25インチ~約1インチの深さを有してもよい。各溝は、約0.5インチ~約2.5インチの幅を有し、約0.25インチ~約2インチの分離距離を隔てて隣接する溝から離間されていてもよい。エネルギー貯蔵装置は、約140°F~600°Fの間で動作するように構成されててもよい。プレートは、マイクロ鉄筋または他の立体的補強材を備えてもよい。
【0012】
本発明はさらに、熱エネルギーを貯蔵する別の方法を考察するものであり、この方法は、熱伝達モジュールを形成する工程であって、熱伝達モジュールは、複数の分離プレートであって、プレートの各々が第1の面と反対側の第2の面とを有し、第1の面および第2の面のうちの少なくとも一方には複数の溝が形成されている、複数の分離プレートと、入口プレナムと、出口プレナムと、を備え、各溝は、複数の分離プレートのそれぞれのプレートの入口プレナムの近くに配置された第1の縁部から、出口プレナムの近くに配置された反対側の第2の縁部へと延びており、複数の溝が形成された第1のプレートの第1の面および第2の面のうちの少なくとも一方は、隣接する第2のプレートの少なくとも第1の面および第2の面のうちの他方と直接接触して配置されている、工程と、複数の分離プレートの複数の溝を介して、熱伝達媒体を入口プレナムから出口プレナムに導く工程と、充填動作モードで熱伝達媒体から複数の分離プレートに熱を伝達する工程、又は、放出動作モードで複数の分離プレートから熱伝達媒体に熱を伝達する工程と、出口プレナムから熱伝達媒体を排出させる工程と、を備える。
【0013】
本方法は、熱伝達モジュールを約140°F~600°Fの間で動作させる工程を含んでもよい。熱が熱伝達媒体から複数の分離プレートに伝達される充填動作モードと、熱が複数の分離プレートから熱伝達媒体に伝達される放出動作モードとは、向流熱交換器の動作と同様に、反対の流体の流れ方向でそれぞれ実行されてもよい。
【0014】
本発明のこれらの目的および他の目的、特徴、ならびに特性、さらに動作の方法および構造の関連要素の機能、ならびに部分の組み合わせおよび製造の経済性は、添付図面を参照しながら以下の説明および添付の特許請求の範囲を考慮することでより明らかになるであろう。これらのすべては、本明細書の一部を構成し、ここで同様の参照番号は様々な図中の対応する部分を示している。しかしながら、図面は例示および説明のためのみのものであり、本発明の制限を定義することを意図するものではないことを明示的に理解されたい。
【0015】
本発明のさらなる理解は、添付の図面と併せて読むことで、以下の好ましい実施形態の説明から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一例示的な実施形態に係るエネルギー貯蔵装置のハウジングの一部を簡略化した斜視図であり、いくつかのプレートがその間に流動空間を有する位置で示されている。
【
図2】取り入れプレナムおよびサーマルブレイクを示す全てのプレートを含む、本発明の一例示的な実施形態に係るエネルギー貯蔵装置のモジュール全体の断面図である。
【
図3】
図1または
図2の配置のプレートの1つを簡略化した斜視図である。
【
図4】本発明の一例示的な実施形態に係る組立後のエネルギー貯蔵装置のハウジングの全体を簡略化した斜視図である。
【
図5】
図1、2および4の細長い外側シェルを簡略化した斜視図であり、ハウジングの長手方向の範囲を拡張し、プレートホルダーがプレートを水平に支持するような位置で示されている。
【
図6】
図5に示すシェルの一端部を閉塞する1つのエンドキャップを簡略化した斜視図である。
【
図7】
図5に示すシェルの第2の端部を閉塞する第2のエンドキャップを簡略化した斜視図であり、
図6に示す1つのエンドキャップの鏡像である。
【
図8】(隠線で示す)ハウジング内に配置されて示された、本発明の他の例示的な実施形態に係るプレートの別の配置を利用する別のエネルギー貯蔵装置を簡略化した部分概略斜視図である。
【
図9】
図8の配置のプレートのうちの1つを簡略化した斜視図である。
【
図10】
図8のプレートの配置の一端を簡略化した立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態は、低コストな材料を用いてモジュール方式で熱エネルギーを貯蔵するための配置および方法を提供する。
【0018】
本発明に係る一例示的なアプローチを
図1~
図7に示す。かかる第1実施例では、複数のプレート10(
図1、
図2、および
図3に示す)を整列させて熱エネルギー貯蔵が行われる。各プレート10は、薄い断面を有し、高比熱材料から形成される。本明細書で使用される「高比熱材料」とは、少なくとも0.75kJ/kg・Kの熱容量を有する材料である。本発明の実施形態に採用されている好適な高比熱材料のいくつかの例としては、コンクリート、高性能コンクリート、超高性能コンクリート、高強度コンクリート、および高温コンクリートが挙げられる。また、相変化材料、熱化学材料、および/または大量のフライアッシュを含むコンクリートを採用してもよい。このようなコンクリート材料は、入手しやすい低コストな材料から容易に形成することができ、高い熱容量を有する頑丈なプレートを提供する。プレート10を構成してもよい高比熱材料の他のいくつかの例としては、耐火レンガ、セラミック、固形塩、金属が挙げられる。
【0019】
プレート10は互いに近接して位置し、プレート10間には流路12が形成されている。その後、プレート10は、隣接するセパレータ18間に形成されたガイドスロット16を内蔵する低コストな金属製モジュールハウジングシェル14内に組み立てられ、流路12を形成するプレート10間の間隔を維持する。代替的に、プレート10に取り付けられるか、またはプレート10に鋳込まれてもよいセパレータが、コンクリートプレートの間隔を空けるために利用されてもよい。シェル14を組み立て、その後、2つのエンドキャップ22、24をシェル14の両端にそれぞれ位置させ、溶接などによりシェル14に取り付けることにより、プレート10の各端部とそれぞれのエンドキャップ22、24の各々との間にプレナム26が形成される。2つのプレナム26と流路12を水平に置くと、プレート10の間で熱伝達流体(油、塩など)を循環可能にし、「充填レベル」が増加するにつれてアセンブリ長を下る熱勾配でプレート10にエネルギーを伝達する。熱を取り出そうとするときには、流れが逆になり、装置を向流熱交換器のように動作させることが可能である。なお、図示されたプレナム26は、例示目的のためにのみ示されており、形状、サイズ、入口サイズ、位置、数量などの1つまたは複数が、本発明の範囲から逸脱することなく変更されてもよいことを理解されたい。
【0020】
プレート10の各々は、熱伝達流体が流れていないときにプレート10を下る熱波の影響を低減するために、縦溝が彫られてもよく、すなわち、コンクリートプレート10の高さ全体に実質的に沿って垂直方向(すなわち、流れ方向に直交する方向)に、プレート10の長さに沿った所定の距離ごとに溝が形成されてもよい。所定の距離は、好ましくは6インチから4フィートであるが、モジュール100(
図2)の長さに応じて、より長くしてもよい。
図2では、縦溝28を明確に確認することができる。代替的に、より小さな分離プレート10を使用し、隣接するプレート10間の切れ目を縦溝28と同様に機能させてもよい。また、このような小さなプレートは、概してより容易な組み立てを提供する。
【0021】
図1において参照番号34によって比喩的に表される、断熱材料を含むがこれに限定されない材料からなる薄い複数のストリップは、性能特性に悪影響を与えないようにしつつ、構造を結び付けてプレート間隔を維持するように、流路12の中心に沿って1つのプレナムから他のプレナムへと延びてもよい。また、断熱材を縦溝28に埋め込んだり、縦溝を全て断熱材に取り替えて熱伝達プレートの隣接する部分を結びつけてもよい。プレート10は水平方向に延びるように示されているが、これらは代替的に、垂直方向に延びるように構成してもよく、依然として本発明の範囲内にあることが理解されるべきであるが、同等の実施形態においてはより小さい静圧のために水平流路が好ましい。
【0022】
したがって、本発明の一実施形態では、ハウジング20(すなわち、シェル14とエンドキャップ22および24)に入れられた複数のプレート10から形成されたコンクリート構造を採用することで、原子炉やヒートポンプなどの熱源からの熱エネルギーを貯蔵するために、大きな表面積対体積比を有している。好ましくは、プレート10は、コンクリート材料から形成され、強度、耐久性、および熱伝達を高めるために、マイクロ鉄筋または他の同様な混和物を含んでいる。マイクロ鉄筋の代替物としては、鋼、鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、その他の金属、複合材料、高温プラスチックが挙げられる。配管を利用する必要はないが、前述の好ましい流路構造の代わりに、金属管や複合管を採用してもよい。モジュール内の熱伝達媒体はすべて、金属ケーシングや、ケーシング内に採用された比較的薄いコンクリートプレートによって導かれ、熱を貯蔵する。
【0023】
熱伝達媒体または熱伝達流体のための流路は、隣接するプレート10の間に形成され、表面積を最大化しつつ、熱伝達媒体を動かすのに必要な伝導距離とポンプ動力を最小化する。セパレータ18は、薄い材料のストリップ、ロッドまたはバーであってもよく、高温プラスチック、金属、複合材料またはガラス繊維で構成されてもよい。好ましくは、熱伝達媒体は非加圧であり、コンクリートまたは金属構造物と負の相互作用を起こさないような適切な特性を持つ油または塩で構成され、そのような相互作用を抑止するために保護膜で処理してもよい。熱伝達媒体としては、Therminol、Duratherm HF、Calder 1、Mobiltherm、Paratherm、Dowtherm、Phillips 66などの炭化水素系流体、Duratherm S、Sylthermなどのシリコン系流体、硝酸塩などの溶液塩であってもよい。
【0024】
一実施形態では、プレート10は、それらの高さに沿って、すなわち熱伝達媒体の流れに直交して、サーマルブレイクを提供するように縦溝が彫られ、部分充填に続くプレート10間の熱拡散、すなわち、熱を貯蔵するためのプレート10の熱容量を部分的にのみ満たす、熱伝達媒体からプレート10への熱移動を遅くする。サーマルブレイクは、プレート10によるプレート間の温度の均一化を妨げ、さもなければ、部分充填後に、放熱中の高品質な熱回収を妨げることになる。他の実施形態では、より小さな複数の分離プレートが使用され、隣接するプレート間の分離部がサーマルブレイクを提供する。
【0025】
ハウジング20は、プラスチック、コーティングされた炭素鋼、ステンレス鋼、複合材料またはガラス繊維から形成されてもよく、好ましくは、ハウジングの内部、内側周囲または外側周囲のいずれかに断熱材が層状に設けられている。断熱材は、多層シェル内のエアギャップ、ガラス繊維、発泡ガラス、エアロゲル、セラミック、鉱物繊維/綿、またはシリカであってもよい。
【0026】
図1~
図7のエネルギー貯蔵装置は、プレート10を水平または垂直のいずれかの向きにして動作させてよい。さらに、シェル14、エンドキャップ22および24、ならびにプレート10は、使用現場で構築されてもよく、または完全に構築されたハウジング20およびプレート10が別々に出荷され、現場で組み立てられてもよく、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0027】
熱エネルギーは、プレート10の長軸に沿って変化する熱勾配を用いて、縦溝が彫られた構造から投入および取り出しがなされる。動作温度は低くて140°F、高くて600°Fとなる。熱の充填と放出の動作は、向流熱交換器の動作と同様に、反対の流体の流れ方向で実行される。人手を最小限に抑え、生産効率を最大化するために、従来のコンクリート補強材の代わりに、マイクロ鉄筋や同様の混和物を用いてもよい。
【0028】
好ましくは、流入する熱伝達媒体の圧力は大気圧またはそれより若干高い圧力、すなわち14.5~21.8psiaである。熱伝達媒体の流量は、望ましくは、1モジュールあたり約0~22.0lbs/s、好ましくは約4lbs/sである。プレート10は、厚さ約0.5~6インチであり、より好ましくは厚さ約4インチである。流動空間は、幅約0.04インチ~0.5インチであり、より好ましくは、幅約0.4インチである。
【0029】
図1は、プレート10の間に流動空間または流路12を形成するために、ハウジング20のシェル14部分の上壁の下面から延びるモジュールガイドスロット16によって離間された3つのプレート10を有するシェル14を示す。縦溝28は、垂直に延びる溝として示されているが、熱伝達媒体の流れは、好ましくは、プレート10の実質的な面全体にわたる流動空間を通って平行に、水平に延び、ただし、その流れはまた、端部の代わりにモジュールの上部および底部にあるプレナムにより垂直に導かれてもよいことも理解されるべきである。
【0030】
図2は、プレート10の細長い寸法の各端部にプレナム26を有する全てのプレート10を含むモジュール100全体の切断面を示し、左側のプレナムがより明らかであり、モジュール100の左上隅に示される入口または出口ノズル30を有する。
図2の双方向矢印32で示された熱伝達媒体は、両方向、すなわちプレート10に熱を充填する方向とコンクリートプレートから熱を放出する反対方向とに流れることになるので、右側または左側のプレナム26が、入口プレナムまたは出口プレナムであっても何ら差は生じない。
図3は、複数のプレート10のうちの1つの斜視図である。
図4はハウジング部品を組み立てた状態の斜視図を示し、
図5、
図6、および
図7はハウジング部品を分解した状態の斜視図を示す。
【0031】
次に、
図8~
図11を参照して、本発明の他の例示的な実施形態に係るエネルギー貯蔵装置200の他の実施形態について説明する。
図1~
図7に関して前述した配置と同様に、装置200は、前述したプレート10と同様の材料構造を有し、かつ装置200の各端部にプレナム226が形成されるように、低コストな金属モジュールハウジングシェル220(
図8に隠線で概略的に示す)内に位置した複数のプレート210を採用している。流路12を形成するためのプレート10の離間に依る前述した配置とは異なり、
図8~
図11に示す配置は、プレート210間で熱伝達流体(例えば、油、塩など)を循環させるのための流路を作成するために、プレート210の各々に形成される複数の溝212を利用する。各溝212は、プレナム226のうちの第1のプレナムの近くに配置されたそれぞれのプレート210の第1の縁部(符号なし)から、プレナム226のうちの反対側の第2のプレナムの近くに配置された反対側の対向する第2の縁部(符号なし)へと延びている。
図8~
図11に示される例示的な実施形態に示されるように、各溝212は、各プレート210を横切って直線状に延びていてもよい。代替的に、複数の溝212のうちの1つまたは複数は、本発明の範囲から逸脱することなく、非直線的に(例えば、曲線状、蛇行状、ジグザグ状などに)延びてもよい。
【0032】
溝212は熱伝達流体の流路として機能するため、プレート210は、好ましくは、互いに直接接触して配置され、したがって、
図8に示すように(本棚の本と同様に)縁部にて容易に配置されてもよく、または積み重ねて平らに置かれてもよい。一例示的な実施形態では、溝212は、プレート210自体の形成中に各プレート210の特徴として鋳造されるが、ただし、このような溝212は、本発明の範囲から逸脱することなく、任意の他の適切な方法を介して及び/又は後に形成してもよいことを理解されたい。また、図示の実施形態では、かかる溝212は各プレート210の1つの面にのみ形成されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、かかる溝を複数の面(例えば、反対側の対向する面)に形成してもよいことも理解されたい。
【0033】
図11の詳細図に示す例示的な実施形態では、各溝212は、各溝に沿って見たときに、概して円形セグメントのような形状であるが、本発明の範囲から逸脱することなく他の形状または他の複数の形状の溝を採用してもよい。好ましくは、各溝の縁部は、応力集中を最小にするためにR形状にまたは面取りされる。引き続き
図11を参照すると、各溝212は、各プレート210の第1の面210Aから対向する第2の面210Bに向かって深さdだけ内側に延びており、第1の面210Aおよび第2の面210Bは、概して各プレート210の厚さTを規定し、隣接する溝は、分離距離Sを隔てて離間される。本発明の例示的な実施形態では、一般に0.5~6インチの厚さTを有するプレート210が採用されているが、本発明の範囲から逸脱することなく他の厚さを採用してもよい。このような実施形態では、約0.25インチ~約1インチの深さd、約0.5インチ~約2.5インチの幅W、および約0.25インチ~約2インチの分離距離Sを有する溝が採用されているが、本発明の範囲から逸脱することなく他の寸法を採用してもよいことを理解されたい。また、本発明の範囲から逸脱することなく、他の形状の溝を採用してもよいことも理解されたい。
【0034】
図8及び
図9に戻ると、各プレート210は、その間に溝212が延びている対向する縁部間の方向に長さLで延びているとともに、溝212が延びる方向に概ね直交する方向に高さHで延びている。本発明の例示的な実施形態では、約2フィート~約4フィートの長さLと、約8フィート~約9フィートの高さを有するプレート210が採用されているが、本発明の範囲から逸脱することなく他の寸法のプレート210を採用してもよい。
図8に例示したエネルギー貯蔵装置200に利用される複数のプレート210は、10列で配置されており、各列には23枚のプレートが設けられている。なお、列数および/または列あたりのプレート数の一方または両方は、本発明の範囲から逸脱することなく変化させてもよいことを理解されたい。
【0035】
本発明の実施形態は、モジュール内の金属配管を不要にすることを理解されたい。機能ユニットの一部である金属ケーシングは、流動空間の各端部に単純なプレナムを容易に取り付けることを可能にする。モジュールは、コンクリートの有益な熱的特性、すなわち、比熱、耐久性、低コスト、入手のし易さなどを利用している。このモジュールは、コンクリートプレート(および/またはプレートに形成された溝)間の流動空間のサイズや低い速度により、熱伝達媒体を移動させるために必要とするポンプ動力が比較的小さい。本コンセプトに従った設計により提供される濡れ面積は大きいため、比熱の高い多くの材料に生じる熱伝達の課題を解消するのに役立ち、かつ流れの軸に沿って短時間でエネルギー蓄積を提供することになり、これにより熱勾配の創出が支持される。水平な流れ配置は、流体から大きな静的ヘッド圧を発生させることなく、より長い熱勾配距離を許容する。また、水平な流れ配置は、入口配管および出口配管の取り付けやユニット交換を容易に可能とする。また、水平な流れ配置は、コンクリート単に縦溝を彫る、すなわち垂直な溝をコンクリートに追加するだけで、またはコンクリートの分離部分を使用することで、「サーマルブレイク」の追加も容易に可能とする。このコンセプトによって、従来の労働集約的な補強用鉄筋の利用をさらに不要とする。
【0036】
熱伝達流体または熱伝達媒体を加熱するための熱は、原子炉、石炭プラント、太陽熱、または他の類似な熱源の1次ループまたは2次ループと熱交換関係にある熱交換器から導いてもよい。代替的に、熱は、ガスタービンサイクルや熱ポンプから導いてもよい。
【0037】
したがって、本発明の実施形態は、適合する地形における揚水発電や圧縮空気以外で現在利用可能であり、かつ立地制限がない、最も経済的なエネルギー貯蔵を提供する。本発明は、原子力発電所のような既存の熱源用設備、安価な材料、および簡単な設計を利用して、大きな商業規模で実用的な対処をすることなく、以前から存在するより壮大な課題を解決し得る。本発明は、加圧環境を必要とせず、安全上の破局的な事象のリスクを低減する。
【0038】
以上、本発明の特定の実施形態について詳細に説明してきたが、それらの詳細に対して様々な変形および代替が、本開示の全体的な教示に照らしてなされてもよいことが、当業者に理解されるであろう。したがって、開示された特定の実施形態は、例示にすぎず、添付の特許請求の範囲の全範囲ならびにそれらの任意および全ての均等物が付与される本発明の範囲について制限することを意図するものではない。
【国際調査報告】