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特表2022-545527高いdpf及び低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】高いdpf及び低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウ
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/28 20060101AFI20221020BHJP
   A24D 3/16 20060101ALI20221020BHJP
   A24D 3/10 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
D01F2/28 Z
A24D3/16
A24D3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513065
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020028796
(87)【国際公開番号】W WO2021040816
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/892,306
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518011552
【氏名又は名称】アセテート・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ブランケンシップ,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】アムタワー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】クームス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ブンドレン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ザッザーラ,カレン
【テーマコード(参考)】
4B045
4L035
【Fターム(参考)】
4B045BA03
4B045BA08
4B045BB04
4B045BB10
4L035AA04
4L035BB02
4L035BB03
4L035DD02
4L035DD20
4L035JJ05
(57)【要約】
本明細書では、0.1重量%未満の二酸化チタンを有する酢酸セルローストウバンドであって、二酸化チタンの含有量は、灰化によって且つ/又はチタン粒子計数密度によって測定される、酢酸セルローストウバンドが提供される。本明細書では、灰化によって酢酸セルローストウの二酸化チタン含有量を測定する方法も提供される。本明細書では、酢酸セルローストウの色を測定する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
12.5より大きい、フィラメントあたりのデニールを有する酢酸セルロース繊維を含むトウバンドであって、
灰化及び滴定によって且つ/又はチタン粒子計数密度によって測定される場合、0.1重量%未満の二酸化チタンを含み、
ドープ溶液から測定される場合、90~100の「L」値、-1~0.5の「a」値及び/又は2~6の「b」値を有するトウバンド。
【請求項2】
0.01重量%未満の二酸化チタンを含む、請求項1に記載のトウバンド。
【請求項3】
前記トウバンドの0.1%未満の灰重量を有する、請求項1又は2に記載のトウバンド。
【請求項4】
1デニールあたり1.0未満の二酸化チタン粒子を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のトウバンド。
【請求項5】
5,000~100,000トータルデニールを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のトウバンド。
【請求項6】
前記酢酸セルロース繊維は、円形、実質的に円形、鋸歯形、楕円形、実質的に楕円形、多角形、実質的に多角形、ドッグボーン、「Y」、「X」、「K」、「C」、マルチローブ及びそのいずれかの組合せからなる群から選択される断面形状を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のトウバンド。
【請求項7】
酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を測定する方法であって、
測定のための酢酸セルロースの試料を調製することと、
前記試料を灰化して、灰化された試料を形成することと、
前記灰化された試料を溶解して、試料溶液を形成することと、
チタン標準でブランク溶液を滴定することと、
前記滴定されたブランク溶液を前記試料溶液と比較することと
を含む方法。
【請求項8】
前記酢酸セルロースの前記二酸化チタン含有量は、1000ppm未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記調製することは、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテル、2-ブタノール、メチル-t-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、2-ペンタノン、イソブチルアセテート、エチレングリコールメチルエーテル、アルコール、エーテル、ケトン、エステル又は他の非溶媒及びその組合せからなる群から選択される有機非溶媒で前記酢酸セルロースを処理することを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記灰化することは、
前記試料を焼成することと、
ピロ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、ピロ硫酸カリウム、ピロ硫酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム及びその組合せからなる群から選択される塩で処理することと
をさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶解することは、前記灰化された試料を水及び/又は酸中に溶解することを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記試料溶液を過酸化水素で処理することをさらに含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ブランク溶液は、水、硫酸及び過酸化水素を含む、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記チタン標準は、0.1~50ppmの二酸化チタンを含む、請求項7~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
酢酸セルロースのドープ溶液の色を測定する方法であって、
前記ドープ溶液から酢酸セルロースのパティを調製することと、
タイルを提供することと、
前記タイルが前記パティの背後にあるように、前記パティ及び前記タイルを比色計の反射ポート上に配置することと、
前記比色計を使用して前記パティの色を記録することと
を含む方法。
【請求項16】
前記調製することは、ホットプレート上で前記酢酸セルロースを押圧することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記タイルは、白色である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
12.5より大きい、フィラメントあたりのデニール及び5,000~100,000のトータルデニールを有する酢酸セルロース繊維を含むトウバンドであって、二酸化チタンを実質的に含まないトウバンド。
【請求項19】
12.5より大きい、フィラメントあたりのデニールを有する酢酸セルロース繊維を含むトウバンドであって、
0.1重量%未満の二酸化チタンを含み、
1繊維デニールあたり1.0未満の二酸化チタン粒子の平均二酸化チタン粒子密度を有するトウバンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、その全開示があらゆる目的のために全体として参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月27日に出願の米国特許出願第62/892,306号明細書の利点を主張する。
【0002】
本開示は、概して、低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウに関する。特に、本開示は、0.1重量%未満の二酸化チタンを有する酢酸セルローストウバンドに関する。本開示は、低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウを調製及び分析するためのプロセスにも関する。
【背景技術】
【0003】
酢酸セルロースなどのセルロースエステルは、それらの堅牢な用途に関して、特にフィラメント及び繊維として知られている。実際に、酢酸セルロースは、天然ベース繊維の原理型の1つであり、多くの商業的応用を有する。例えば、酢酸セルローストウは、タバコフィルターの製造において一般的に使用される。従来のトウの製造中、特定の不透明度を最終タバコフィルターに提供するために、種々の加工ステップにおいて艶消し剤、典型的には二酸化チタンが組み込まれる。従来の酢酸セルローストウ製造中に二酸化チタンを添加することにより、トウの外観の均一性を確実にすることもできる。二酸化チタンは、タバコフィルターの光分解を促進するためにも使用され得る。これは、タバコの吸い殻の処分と関連するポイ捨ての問題を最小化することに関して重要な考慮である。
【0004】
二酸化チタンは、酢酸セルローストウの一般的な添加剤であるが、本発明者らは、二酸化チタンの添加が酢酸セルローストウの製造及び酢酸セルローストウ自体に悪影響又は他の様式で悪い影響を及ぼすことがあり得ることを見出した。二酸化チタン添加剤は、典型的には、別々に購入されるため、酢酸セルローストウの全体的な製造コストが増加する。したがって、二酸化チタンを除去又は省略することにより、製造コストが低下し得る。
【0005】
二酸化チタンを除去又は省略することにより、製造機械の摩耗は、減少され得る。例えば、本発明者らは、酢酸セルローストウ中の二酸化チタンの存在がクリンパー又は他の機構の摩耗に寄与し得ることを見出した。
【0006】
概括的に、本発明者らは、二酸化チタンの減少又は省略によって2つの品質が改善されることを見出した。例えば、研究は、二酸化チタンの存在が酢酸セルロース繊維の紡糸中のヤーン破損に寄与し得ることを示した。紡糸中のヤーン又は糸破損は、製造効率を減少させる。これらの研究は、酢酸セルローストウ製造中に二酸化チタン含有量を減少させること及び/又は二酸化チタンを省略することにより、ヤーン破損を防止することができ、それにより製造効率が改善することを示唆する。
【0007】
さらに、消費者にとって、二酸化チタンを含まない酢酸セルロース繊維を含む製品は、好ましくなり得る。本発明者らは、消費者が二酸化チタンの添加を製品の不純物として認める傾向があることを発見した。これは、より「天然」又は「有機」製品を好む消費者にとって好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウが必要とされている。
【0009】
本発明者らは、それにもかかわらず、低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウを製造する試みが、一貫して低い二酸化チタン含有量を確実にすることの問題点、特定の色の酢酸セルローストウを製造することの問題点及び一貫した色の酢酸セルローストウを製造することの問題点を含む多数の製造の問題点によって妨げられていることを見出した。
【0010】
さらに、本発明者らは、分析測定及び/又は品質制御のための方法が不十分であるため、低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウの製造が実行不可能であることを見出した。例えば、本発明者らは、酢酸セルローストウの二酸化チタン含有量を測定する従来の方法では、低濃度の二酸化チタンを正確に測定することができないことを見出した。同様に、酢酸セルローストウの色を測定する従来の方法では、低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウの色を正確に測定することができない。
【0011】
したがって、低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウのために適切である新規分析方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、いくつかの実施形態において、酢酸セルロース繊維を含むトウバンドであって、灰化及び/又はチタン粒子計数密度によって測定される場合、0.1重量%未満の二酸化チタンを含み、ドープ溶液から測定される場合、90~100の「L」値、-1~0.5の「a」値及び/又は3~6の「b」値を有するトウバンドに関する。いくつかの態様において、トウバンドは、0.01重量%未満の二酸化チタンを含む。いくつかの態様において、トウバンドは、トウバンドの0.1%未満の灰重量を有する。いくつかの態様において、トウバンドは、1デニールあたり1.0未満の二酸化チタン粒子を有する。いくつかの態様において、トウバンドは、12.5より大きい、フィラメントあたりのデニールを有する。いくつかの態様において、トウバンドは、5,000~100,000トータルデニールを有する。いくつかの態様において、酢酸セルロース繊維は、円形、実質的に円形、鋸歯形、楕円形、実質的に楕円形、多角形、実質的に多角形、ドッグボーン、「Y」、「X」、「K」、「C」、マルチローブ及びそのいずれかの組合せからなる群から選択される断面形状を有する。
【0013】
本開示は、いくつかの実施形態において、酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を測定する方法であって、測定のための酢酸セルロースの試料を調製することと、試料を灰化して、灰化された試料を形成することと、灰化された試料を溶解して、試料溶液を形成することと、チタン標準でブランク溶液を滴定することと、滴定されたブランク溶液を試料溶液と比較することとを含む方法にも関する。いくつかの態様において、酢酸セルロースの二酸化チタン含有量は、1000ppm未満である。いくつかの態様において、酢酸セルロースの二酸化チタン含有量は、15ppm以上である。いくつかの態様において、調製することは、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテル、2-ブタノール、メチル-t-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、2-ペンタノン、イソブチルアセテート、エチレングリコールメチルエーテル、アルコール、エーテル、ケトン、エステル又は他の非溶媒及びその組合せからなる群から選択される有機非溶媒で酢酸セルロースを処理することを含む。いくつかの態様において、灰化することは、試料を焼成することと、ピロ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、ピロ硫酸カリウム、ピロ硫酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム及びその組合せからなる群から選択される塩で処理することとをさらに含む。いくつかの態様において、溶解することは、灰化された試料を水及び/又は酸中に溶解することを含む。いくつかの態様において、方法は、試料溶液を過酸化水素で処理することをさらに含む。いくつかの態様において、ブランク溶液は、水、硫酸及び過酸化水素を含む。いくつかの態様において、チタン標準は、0.1~50ppmの二酸化チタンを含む。
【0014】
本開示は、いくつかの実施形態において、酢酸セルロースのドープ溶液の色を測定する方法であって、ドープ溶液から酢酸セルロースのパティを調製することと、タイルを提供することと、タイルがパティの背後にあるように、パティ及びタイルを比色計の反射ポート上に配置することと、比色計を使用してパティの色を記録することとを含む方法にも関する。いくつかの態様において、調製することは、ホットプレート上で前記酢酸セルロースを押圧することを含む。いくつかの態様において、タイルは、白色である。
【0015】
本開示は、いくつかの実施形態において、12.5より大きい、フィラメントあたりのデニール及び5,000~100,000のトータルデニールを有する酢酸セルロース繊維を含むトウバンドであって、二酸化チタンを実質的に含まないトウバンドにも関する。
【0016】
本開示は、いくつかの実施形態において、12.5より大きい、フィラメントあたりのデニールを有する酢酸セルロース繊維を含むトウバンドであって、0.1重量%未満の二酸化チタンを含み、1繊維デニールあたり1.0未満の二酸化チタン粒子の平均二酸化チタン粒子密度を有するトウバンドにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
導入
本開示は、酢酸セルロース繊維を含むトウバンドであって、0.1重量%未満の二酸化チタンを含み、トウバンド中の二酸化チタンの含有量は、灰化及び/又はチタン粒子計数密度によって測定される、トウバンドに関する。本開示は、酢酸セルローストウ中の二酸化チタン含有量を測定する方法にさらに関する。本開示は、酢酸セルローストウの色を測定する方法にも関する。
【0018】
有利には、本明細書で開示されるトウバンドは、ヤーン破損に対する抵抗の改善を示しながら、より製造コスト効率的であり、且つより自然製品の消費者需要を満たすものである。さらに、本明細書に開示される方法は、酢酸セルローストウの二酸化チタン濃度及び色の正確な測定を有利に可能にする。これらの方法は、本明細書に開示される実施形態によるものなど、低い二酸化チタン含有量を有するトウバンドを測定するために有利に適切である。
【0019】
酢酸セルロース
本明細書で記載されるように、本開示は、0.1重量%未満の二酸化チタンを含む酢酸セルロース繊維のトウバンドに関する。
【0020】
酢酸セルロースは、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第2,740,775号で明細書及び米国特許出願公開第2013/0096297号明細書で開示されるものを含む、既知のプロセスによって調製され得る。典型的には、アセチル化セルロースは、適切な酸性触媒の存在下でセルロースをアセチル化剤と反応させ、次いで脱エステル化することによって調製される。
【0021】
セルロースは、コットンリンター、軟材又は硬材を含む様々な材料から供給され得る。軟材は、針葉樹(すなわちマツ科(Pinales)からのニードルベアリング木)からの木材に関して典型的に使用される総称語である。軟材を生成する木としては、松、トウヒ、スギ、モミ、カラマツ、ダグラスファー、ドクニンジン、イトスギ、セコイア及びイチイが含まれる。反対に、硬材という用語は、広葉樹又は被子植物の木からの木材に関して典型的に使用される。「軟材」及び「硬材」という用語は、木材の実際の硬度を必ずしも記載するわけではない。平均的に硬材は、軟材よりも高密度及び硬度であるが、両方の群の実際の木材硬度には、かなりの変動があり、いくつかの軟材木は、硬材木からの木材よりも硬質である木材を実際に生成することが可能である。硬材を軟材から区別する1つの特徴は、硬材木での細孔又は管の存在であり、それは、軟材木では不在である。顕微鏡レベルでは、軟材は、2種類の細胞、縦方向の木材繊維(又は仮導管)及び横方向の放射組織細胞を含有する。軟材では、木の内部での水輸送は、硬材の細孔と異なり、仮導管を通して行われる。いくつかの態様において、硬材セルロースは、アセチル化に関して好ましい。
【0022】
アシル化剤としては、カルボン酸無水物(又は単に無水物)及びカルボン酸ハロゲン化物、特にカルボン酸塩化物(又は単に酸塩化物)を挙げることができる。適切な酸塩化物としては、例えば、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル及び同様の酸塩化物を挙げることができる。適切な無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水安息香酸性及び同様の無水物を挙げることができる。セルロースに種々のアシル基を導入するために、これらの無水物又は他のアシル化剤の混合物も使用可能である。例えば、無水酢酸プロピオン酸、無水酢酸酪酸などの混合無水物をいくつかの実施形態でこの目的のために使用することもできる。
【0023】
ほとんどの場合、場合により、いくつかの追加的なヒドロキシル基置換(例えば、硫酸塩エステル)とともに、2.4~3などの高度の置換(DS)値を有する誘導体化セルロースを製造するために、セルロースは、アセチル化剤によって徹底的にアセチル化される。セルロースを徹底的にアセチル化することは、セルロース中の可能な限り多くのヒドロキシル基がアセチル化反応を受けるように、完了に向かって引き起こされるアセチル化反応を意味する。
【0024】
セルロースのアセチル化を促進するための適切な酸性触媒は、多くの場合、硫酸又は硫酸と少なくとも1つの他の酸との混合物を含有する。硫酸を含有しない他の酸性触媒もアセチル化反応を促進するために同様に使用可能である。硫酸の場合、セルロース中の少なくともいくつかのヒドロキシル基は、アセチル化反応中の硫酸エステルとして最初に官能化されることができる。徹底的にアセチル化されたら、次いで、セルロースは、一般に脱エステル化剤の存在下において、制御された部分的脱エステル化ステップを受ける。これは、制御された部分加水分解ステップと呼ばれる。
【0025】
脱エステル化は、本明細書で使用される場合、中間体セルロースエステルのエステル基の1つ以上が酢酸セルロースから隔離されて、ヒドロキシル基で置換され、3未満の(第2)DSを有する酢酸セルロース生成物が得られる化学反応を意味する。本明細書で使用される場合、「脱エステル化剤」は、中間体セルロースエステルにおいてヒドロキシル基を形成するために酢酸セルロースのエステル基の1つ以上と反応させることが可能である化学剤を意味する。適切な脱エステル化剤としては、低分子量アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ペンタノール、R-OH(式中、RはC~C20アルキル基である)及びその混合物が挙げられる。水及び水とメタノールとの混合物も脱エステル化剤として使用され得る。典型的には、これらの硫酸エステルのほとんどは、アセチル置換の量を減少させるために使用される制御された部分加水分解中に分離する。減少した置換度は、0.5~2.9、例えば1.5~2.9又は2~2.6の範囲であり得る。置換度は、バインダー組成物中で使用される少なくとも1つの有機溶媒に基づいて選択され得る。例えば、アセトンが有機溶媒として使用される場合、置換度は、2.2~2.65の範囲であり得る。
【0026】
酢酸セルロースの数平均分子量は、30,000amu~100,000amu、例えば50,000amu~80,000amuの範囲であり得、及び1.5~2.5、例えば1.75~2.25又は1.8~2.2の多分散度を有し得る。特記されない限り、本明細書に記載される全ての分子量は、数平均分子量である。分子量は、最終トウ又はフィルターロッドの所望の硬度に基づいて選択され得る。分子量が大きいほど、硬度の増加を導くが、分子量が大きいほど、粘度も増加する。酢酸セルロースは、粉末又はフレークの形態で提供され得る。
【0027】
いくつかの態様において、異なる分子量の酢酸セルロースフレーク又は粉末の混合物が使用され得る。したがって、高分子量酢酸セルロース、例えば60,000amuより高い分子量を有する酢酸セルロースのブレンドは、低分子量酢酸セルロース、例えば60,000のamu未満の分子量を有する酢酸セルロースとブレンドされ得る。高分子量酢酸セルロース対低分子量酢酸セルロースの比率は、変動し得るが、一般に1:10~10:1、例えば1:5~5:1又は1:3~3:1の範囲であり得る。
【0028】
酢酸セルロース繊維、トウ及びトウベール
本開示の酢酸セルロース繊維を形成するために利用され得るセルロースエステルから繊維を形成するための多数の方法がある。いくつかの実施形態において、セルロースエステルから繊維を形成するために、溶媒中でセルロースエステルを溶解し、ドープ溶液を形成することにより、ドープが形成される。ドープ溶液は、典型的には、高粘性溶液である。ドープ溶液の溶媒は、水、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、氷酢酸、臨界超過二酸化炭素、前記ポリマーを溶解することが可能ないずれかの適切な溶媒及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。いくつかの態様において、溶媒は、アセトン又はアセトンと、最大で5重量%の水との組合せである。ドープに顔料が添加され得る。ドープは、例えば、10~40重量%の酢酸セルロース及び60~90重量%の溶媒を含み得る。顔料は、添加される場合、0.1~5重量%、例えば0.1~4重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.5~5重量%、0.5~4重量%、0.5~3重量%、0.5~2重量%、1~5重量%、1~4重量%、1~3重量%又は1~2重量%で存在し得る。次いで、ドープを濾過及び脱気し、その後、紡糸し、繊維を形成する。ドープは、1つ以上のキャビネットを含むスピナー上で紡糸され得る。それぞれのキャビネットは、スピナレットを含む。スピナレットは、溶媒が繊維から蒸発する速度に影響を及ぼす正孔を含む。
【0029】
ドープに添加される顔料は、特に限定されず、いかなる従来の顔料も使用され得る。一般的な適切な顔料の例としては、炭酸カルシウム、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び硫酸バリウムが含まれる。
【0030】
一般に、トウバンドのベールの製造には、ドープから繊維を紡糸すること、繊維からトウバンドを形成すること、トウバンドを捲縮すること、捲縮されたトウバンドをベイリングすることが含まれ得る。前記製造の範囲内において、任意選択的なステップとしては、限定されないが、紡糸後に繊維を加温すること、捲縮前に繊維及び/又はトウバンドに仕上げるか又は添加剤を適用すること並びに捲縮されたトウバンドを条件付けることが含まれ得る。少なくともこれらのステップのパラメーターは、所望のベールを製造するために重要である。
【0031】
さらなる加工のために必要とされるサイズ及び形状でベールを多様にし得ることに留意されたい。いくつかの実施形態において、ベールは、高さ30インチ(76cm)~60インチ(152cm)、長さ46インチ(117cm)~56インチ(142cm)及び幅35インチ(89cm)~45インチ(114cm)の範囲の寸法を有し得る。いくつかの実施形態において、ベールの重量は、900ポンド(408kg)~2100ポンド(953kg)の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、ベールは、300kg/m(18.8lb/フィート)より大きい密度を有し得る。
【0032】
繊維
本開示で使用される酢酸セルロース繊維の構造は、特に限定されず、種々の既知の繊維構造が利用され得る。例えば、トウバンドは、広範囲のフィラメントあたりのデニール(dpf)を有する繊維を利用し得る。いくつかの実施形態において、トウバンドは、12.5dpfより大きい、例えば13depより大きい、15dpfより大きい、18dpfより大きい又は20dpfより大きい値を有する。これらの実施形態において、トウバンドは、30dpf未満、例えば28dpf未満、25dpf未満、22dpf未満又は20dpf未満値を有し得る。範囲に関して、これらの実施形態のトウバンドは、12.5~30dpf、例えば12.5~28dpf、12.5~25dpf、12.5~22dpf、13~30dpf、13~28dpf、13~25dpf、13~22dpf、15~30dpf、15~28dpf、15~25dpf、15~22dpf、18~30dpf、18~28dpf、18~25dpf、18~22dpf、20~30dpf、20~28dpf、20~25dpf又は20~22dpfの値を有し得る。
【0033】
本開示で使用される繊維は、限定されないが、円形、実質的に円形、鋸歯形、楕円形、実質的に楕円形、多角形、実質的に多角形、ドッグボーン、「Y」、「X」、「K」、「C」、マルチローブ及びそのいずれかの組合せを含むいずれかの適切な断面形状を有し得る。本明細書で使用される場合、「マルチローブ」という用語は、(限定されないが、均一に間隔をあけられるか又は均一にサイズ設定される)少なくとも2つの突出部が延在する(限定されないが、断面図の中央にある)点を有する断面形状を意味する。
【0034】
上記の通り、本開示で使用される繊維は、当業者に既知のいずれかの方法によって製造され得る。示されるように、いくつかの実施形態において、繊維は、スピナレットを通してドープを紡糸することによって製造され得る。本明細書で使用される場合、「ドープ」という用語は、繊維が製造される酢酸セルロース溶液及び/又は懸濁液を意味する。いくつかの実施形態において、ドープは、酢酸セルロース及び溶媒を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示と関連した使用のためのドープは、酢酸セルロース、溶媒及び添加剤を含み得る。いくつかの実施形態において、酢酸セルロースは、10~40重量%(例えば、20~30重量%、25~40重量%、25~30重量%)の範囲のドープ中の濃度であり得、及び溶媒は、60~90重量%(例えば、60~80重量%、70~80重量%、80~90重量%)の濃度であり得る。いくつかの実施形態において、ドープは、40℃~100℃(例えば、45℃~95℃、50℃~90℃、55℃~85℃、60℃~80℃)の範囲の温度まで加熱され得る。
【0035】
適切な溶媒としては、限定されないが、水、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、氷酢酸、臨界超過CO及び前記ポリマーを溶解することができるいずれかの適切な溶媒又はそのいずれかの組合せが含まれる。非限定的な例としては、酢酸セルロースの溶媒は、アセトン/メタノール混合物であり得る。いくつかの実施形態において、本開示の非常に高いdpf値を生じるために、典型的なdpf値(例えば、2~8dpf)のための量と比較して溶媒レベルの増加を使用し得る。例えば、いくつかの実施形態において、非常に高いdpfのトウを生じるために、典型的なdpfトウのための溶媒量と比較した場合、溶媒量は、5~30重量%より多くなり得る。追加的な溶媒量は、いくつかの場合、繊維の加工に課題をもたらし得る。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態は、繊維上での表面官能性を達成するために繊維を処理することを含み得る。いくつかの実施形態において、繊維は、限定されないが、生物分解性部位(例えば、生物分解性を強化するために表面積を増加させる欠陥部位)、化学ハンドル(例えば、その後の官能化のためのカルボン酸基)、活性粒子結合部位(例えば、金粒子を結合する硫化物部位若しくは酸化鉄粒子を結合するためのキレート基)、硫黄部分又はそのいずれかの組合せを含む表面官能性を含み得る。当業者は、表面官能性を達成するための複数の方法及び機構を理解するべきである。いくつかの実施形態は、表面官能性を達成するために、浸漬、噴霧、イオン化、官能化、酸性化、加水分解、プラズマへの暴露、イオン化ガスへの暴露又はそのいずれかの組合せを含み得る。表面官能性を与える適切な化学物質は、限定されないが、酸(例えば、硫酸、硝酸、酢酸、フッ化水素酸、塩酸など)、還元剤(例えば、LiAlH、NaBH、H/Ptなど)、グリニャール試薬(例えば、CHMgBrなど)、エステル交換剤、アミン(例えば、CHNHなどのR-NH)又はそのいずれかの組合せを含む、酢酸セルロースと反応することが可能ないずれかの化学物質又は化学物質の集合であり得る。プラズマ及び/又はイオン化ガスへの曝露は、表面と反応し得るか、表面に欠陥を生じ得るか、又はそのいずれかの組合せであり得る。前記欠陥は、繊維の表面積を増加させ得、最終フィルター製品でのより高い装填及び/又はより高い濾過有効性をもたらし得る。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態は、繊維に仕上げを適用することが必要となり得る。適切な仕上げとしては、限定されないが、油(例えば、鉱物油若しくは液体石油誘導体)、水、添加剤又はそのいずれかの組合せの少なくとも1つが挙げられ得る。適切な鉱物油の例としては、限定されないが、38℃(100°F)において測定される80~95SUS(Sabolt Universal Seconds)の粘度を有する無色透明(すなわちクリアな)鉱物油が挙げられ得る。適切な乳化剤の例としては、限定されないが、ソルビタンモノラウレート、例えばSPAN(登録商標)20(Croda,Wilmington,Del.から入手可能)、ポリ(エチレンオキシド)ソルビタンモノラウレート、例えばTWEEN(登録商標)20(Croda,Wilmington,Del.から入手可能)が挙げられ得る。水は、脱鉱物水、脱イオン水又は別の様式で適切に濾過及び処理された水であり得る。潤滑剤又は仕上げは、噴霧又はワイピングによって適用され得る。一般に、潤滑剤又は仕上げは、繊維をトウに形成する前に繊維に添加される。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態において、仕上げは、ニートな仕上げ又は水中の仕上げエマルジョンとして適用され得る。本明細書で使用される場合、「ニートな仕上げ」という用語は、過剰量の水の添加を含まない仕上げ配合物を意味する。仕上げ配合物は、水を含み得ることに留意されたい。いくつかの実施形態において、仕上げは、ニートで適用され、その後、別々に水を適用し得る。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態において、仕上げられたエマルジョンは、98%未満、95%未満、92%未満又は85%未満の水を含み得る。いくつかの実施形態において、水が要因である、より低い重量百分率の湿分(例えば、トウバンドの5%~25%w/w)を有する繊維を有することは、後のステップにおいて有利であり得る。仕上げられたエマルジョンの含水量は、繊維中の湿分の前記重量百分率を達成することを補助し得る少なくとも1つのパラメーターであり得る。したがって、いくつかの実施形態において、仕上げられたエマルジョンは、92%未満の水、85%未満の水又は75%未満の水を含み得る。
【0040】
トウ
本開示は、好ましくは、複数の繊維からトウバンドを形成することを含む。いくつかの実施形態において、トウバンドは、10,000~100,00トータルデニール、例えば15,000~100,000、20,000~100,000、25,000~100,000、30,000~100,000、10,000~90,000、15,000~90,000、20,000~90,000、25,000~90,000、30,000~90,000、10,000~90,000、15,000~90,000、20,000~90,000、25,000~90,000、30,000~90,000、10,000~80,000、15,000~80,000、20,000~80,000、25,000~80,000、30,000~80,000、10,000~70,000、15,000~70,000、20,000~70,000、25,000~70,000、30,000~70,000、10,000~60,000、15,000~60,000、20,000~60,000、25,000~60,000又は30,000~60,000である。上限に関して、トウバンドは、100,000トータルデニール未満、例えば90,000未満、80,000未満、70,000未満又は60,000未満であり得る。下限に関して、トウバンドは、10,000のトータルデニールより大きく、例えば15,000より大きく、20,000より大きく、25,000より大きく又は30,000より大きい。
【0041】
いくつかの実施形態において、トウは、3.5kg~25kg、例えば3.5kg~22.5kg、3.5kg~20kg、3.5kg~17.5kg、3.5kg~15kg、4kg~25kg、4kg~22.5kg、4kg~20kg、4kg~17.5kg、4kg~15kg、4.5kg~25kg、4.5kg~22.5kg、4.5kg~20kg、4.5kg~17.5kg、4.5kg~15kg、5kg~25kg、5kg~22.5kg、5kg~20kg、5kg~17.5kg又は5kg~15kgの破壊強さを有することができる。上限に関して、トウは、25kg未満、例えば22.5kg未満、20kg未満、17.5kg未満又は15kg未満の破壊強さを有し得る。下限に関して、トウは、3.5kgより高い、例えば4kgより高い、4.5kgより高い又は5kgより高い破壊強さを有し得る。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態において、トウバンドは、2種類以上の繊維を含み得る。いくつかの実施形態において、2種類以上の繊維は、dpf、断面形状、組成、トウバンドを形成する前の処理又はそのいずれかの組合せに基づいて様々であり得る。適切な追加的な繊維の例としては、限定されないが、カーボン繊維、活性化カーボン繊維、天然繊維、合成繊維又はそのいずれかの組合せが挙げられる。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態は、捲縮されたトウバンドを形成するためにトウバンドを捲縮することを含み得る。トウバンドを捲縮することは、当業者に既知のいずれかの適切な捲縮技術を使用することも含み得る。これらの技術は、限定されないが、スタッファーボックス又はギアを含む様々な装置を含み得る。捲縮装置の非限定的な例及びそれらが作動する機構は、その全内容及び開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,610,852号明細書及び同第7,585,441号明細書に見ることができる。適切なスタッファーボックスクリンパーは、平滑なクリンパーニップロール又は溝付きクリンパーニップロール、テクスチャード加工のクリンパーニップロール、上部フラップ、下部フラップ又はそのいずれかの組合せを有し得る。
【0044】
捲縮の構成は、最終ベールの加工性において役割を果し得る。捲縮構成の例としては、限定されないが、水平、垂直、水平及び垂直間のいくつかの程度、ランダム又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。本明細書で使用される場合、「水平」という用語は、捲縮構成を記載する場合、トウバンドの平面の捲縮又は繊維屈曲を意味する。本明細書で使用される場合、「垂直」という用語は、捲縮構成を記載する場合、トウバンドの平面の外側に突出し、且つトウバンドの平面に対して垂直である捲縮を意味する。水平及び垂直という用語は、一般的な全体的な捲縮構成を指し、+/-30度までの前記構成からの偏差を有し得ることに留意されたい。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態において、捲縮されたトウバンドは、第1の捲縮構成を有する繊維及び第2の捲縮構成を有する繊維を含み得る。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態において、捲縮されたトウバンドは、端部付近で少なくとも垂直な捲縮構成を有する繊維及び中心付近で少なくとも垂直な捲縮構成を有する繊維を含み得る。いくつかの実施形態において、捲縮されたトウバンドは、端部付近で少なくとも水平な捲縮構成を有する繊維及び中心付近で水平な捲縮構成を有する繊維を含み得る。
【0047】
捲縮構成は、その後の加工ステップにおける最終ベールの加工性に関して重要であり得、例えば、水平捲縮構成は、結合を強化するためにさらなるステップが行われない限り、垂直捲縮構成よりも良好な繊維の結合を提供し得る。実質的に後者の捲縮構成を有するトウバンドを捲縮するための方法は、例えば、それぞれ全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0115452号明細書及び米国特許出願公開第2015/0128964号明細書に開示される。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態において、繊維は、最終ベールのより良好な加工性を提供するために互いに接着され得る。接着添加剤は、いずれの捲縮構成とも一緒に使用され得るが、垂直捲縮構成と一緒に接着添加剤を使用することが有利であり得る。いくつかの実施形態において、接着は、繊維上及び/又は繊維中に接着添加剤を含み得る。そのような接着添加剤の例としては、限定されないが、バインダー、接着剤、樹脂、粘着性付与剤又はそのいずれかの組合せが挙げられ得る。本明細書に記載されるいずれかの添加剤又は2つの繊維を一緒に接着することができる他のものが使用され得、それらとしては、限定されないが、活性粒子、活性化合物、イオン樹脂、ゼオライト、ナノ粒子、セラミック粒子、柔軟剤、可塑剤、顔料、染料、香料、芳香剤、放出制御ベシクル、表面変性剤、潤滑剤、乳化剤、ビタミン、過酸化物、殺生物剤、抗真菌薬、抗生物質、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、分解剤、導電性変性剤、安定化剤又はそのいずれかの組合せが挙げられ得ることに留意されたい。本開示のいくつかの実施形態は、接着剤添加剤をドープに組み込むこと、接着剤添加剤を仕上げに組み込むこと、(トウバンドの形成前、後及び/又は中に)接着剤添加剤を繊維に適用すること、(捲縮前、後及び/又は中に)接着剤添加剤をトウバンドに適用すること又はそのいずれかの組合せにより、繊維(中、上又は両方)に接着剤添加剤を添加することを含み得る。
【0049】
接着剤添加剤は、最終ベールのより良好な加工性を提供するために、複数の接触点において繊維を一緒に接着するために十分な濃度で繊維中及び/又は繊維上に含まれ得る。使用される接着剤添加剤の濃度は、接着剤添加剤の種類及び接着剤添加剤が提供する接着の強度次第であり得る。いくつかの実施形態において、接着剤添加剤の濃度は、最終ベールのトウバンドの重量に対して0.01%、0.05%、0.1%又は0.25%の下限から5%、2.5%、1%又は0.5%の上限までの範囲であり得る。接着より多くのために使用される添加剤に関して、例えば最終ベールのトウバンド中の濃度がより高くあり得、例えば25%以下であり得ることに留意されたい。
【0050】
さらに、本開示のいくつかの実施形態は、捲縮前、後及び/又は中に繊維を加熱することを含み得る。前記加熱がいずれの捲縮構成とも組み合わせて使用され得るが、垂直捲縮構成と一緒に前記加熱を使用することが有利であり得る。前記加熱は、トウバンドの繊維を蒸気、エアロゾル化化合物(例えば、可塑剤)、液体、加熱された流体、直接熱源、間接熱源、繊維中の添加剤(例えば、ナノ粒子)に熱を生じさせる照射源又はそのいずれかの組合せに暴露することが必要であり得る。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態は、捲縮されたトウバンドを条件付けることを含み得る。条件付けは、捲縮されたトウバンドの0.5%w/w以下の残留アセトン含有量を有する、捲縮されたトウバンドを生じるために使用され得る。条件付けは、捲縮されたトウバンドの8%w/w以下の残留含水量を有する捲縮されたトウバンドを達成するために使用され得る。条件付けは、捲縮されたトウバンドの繊維を蒸気、エアロゾル化化合物(例えば、可塑剤)、液体、加熱された流体、直接熱源、間接熱源、繊維中の添加剤(例えば、ナノ粒子)に熱を生じさせる照射源又はそのいずれかの組合せに暴露することが必要であり得る。
【0052】
UCEは、繊維を捲縮しないために必要とされる仕事の量である。UCEは、以下に報告されるように、ベイリングする前、すなわち乾燥後及びベイリングする前にサンプリングされる。UCEは、本明細書で使用される場合、以下の通りに測定される:(従来の校正の20分前に)ウォーミングアップされたInstron引張試験器(モデル1130、クロスヘッドギア-Gear #R1940-1及びR940-2、Instron Series IX-Version 6データ収集及び分析ソフトウェア、Instron 50 Kg最大容量負荷セル、Instronトップローラーアセンブリ、1インチ×4インチ×1/8インチ厚高グレードBuna-N 70 Shore Aデュロメーターゴムグリップフェイス)を使用し、長さ約76cmの、あらかじめ調整されたトウ試料(22℃±2℃及び相対湿気60%±2%で24時間、あらかじめ調整された)をトップローラーの中心上で環状にし、それにわたって均一に広げ、(1つの表示ディスプレーあたり)100g±2gまで穏やかに引くことにより、あらかじめ張力をかけ、且つ試料のそれぞれの端部を(製造業者推薦を上回らない最も高い利用可能な圧力において)、50cmのゲージ長(ラバーグリップの上部から測定されるゲージ長)を生じるように、より低いグリップにおいて固定し、次いで30cm/分のクロスヘッド速度で破断するまで試験する。3つの許容可能な試験が得られるまでこの試験を繰り返し、これらの試験からの3つのデータポイントの平均を報告する。エネルギー(E)限度は、0.220kg~10.0kgである。変位(D)は、10.0kgのあらかじめセットされた点を有する。UCEは、以下の式:UCE(gcm/cm)=(E*1000)/((D*2)+500)によって算出される。破壊強さは、同じ試験及び次の式BS=L(ここで、Lは、最大負荷における負荷(kg)である)を使用して算出することができる。本開示の特定の実施形態において、UCE値(gcm/cm)は、190~400、例えば200~300、例えば290の範囲であり得る。本開示の特定の実施形態において、破壊強さは、3.5kg~25kg、例えば4kg~20kg、4.5kg~15kg又は5kg~12kgの範囲であり得る。
【0053】
トウベール
本開示のいくつかの実施形態は、ベールを生じるように捲縮されたトウバンドをベイリングすることを含み得る。いくつかの実施形態において、ベイリングは、パターンで缶内において捲縮されたトウバンドを配置すること、例えば敷設、堆積又は配列することを含み得る。缶は、いずれかの材料の、いずれかの形状、好ましくは正方形又は長方形であり得る容器を意味するために一般的に使用されることに留意されたい。本明細書で使用される場合、「パターン」という用語は、配置中に変化し得るか又は変化し得ない任意のデザインを意味する。本開示のいくつかの実施形態において、パターンは、0.5サイクル/フィート~6サイクル/フィートの定期性を有する実質的にジグザグであり得る。いくつかの実施形態において、配置は、10m/m~40m/mのパドリング指数で捲縮されたトウバンドをパドリングすることを含み得る。本明細書で使用される場合、「パドリング」という用語は、それが配置される直線距離よりも大きい実際の長さのトウバンドを配置するように、トウバンドが少なくとも部分的にそれ自体に敷設することを可能にすることを意味する。本明細書で使用される場合、「パドリング指数」という用語は、配置される直線距離あたりのトウバンドの長さを意味する。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態において、ベイリングは、適切な容器中に配置された捲縮されたトウバンドを圧縮することを含み得る。いくつかの実施形態において、ベイリングは、圧縮した捲縮されたトウバンドを包装することを含み得る。いくつかの実施形態において、包装は、ラッピング材料、真空ポート(真空を開放及び/又は引くため)、固定要素などの少なくとも1つの構成要素又はそのいずれかの組合せを含み得る。適切なラッピング材料としては、限定されないが、空気浸透性材料、空気不浸透性材料、膜(例えば、ポリマー膜、ポリエチレン膜、プラスチックラップ)、熱収縮性膜、ボール紙、木材、織物材料(すなわち布を形成するために互いに絡み合う2組のヤーンから構成される布)、不織物材料(すなわちランダムなウェブ又はマット中で機械的又は化学的手段によって一緒に保持されたテキスタイル繊維のアセンブリ、例えば融合熱可塑性繊維)、箔材料(例えば、金属材料)など、又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。適切な固定要素としては、限定されないが、VELCRO(登録商標)、ピン、フック、ひも(例えば、織物、不織物、布及び/又は金属)、接着剤、テープ、溶融結合など、又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態において、(そのいずれの構成要素も含む)包装の少なくとも一部は、再使用可能であり得る。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態において、繊維は、添加剤を含み得る。本開示のいくつかの実施形態は、上記で概説されたいずれのステップ中又は上記で概説されたいずれのステップ間に適用することを含み得る。添加剤を組み込む適切な場所の例としては、限定されないが、ドープ中、仕上げ中、条件付け中又はそのいずれかの組合せを含み得る。さらに、添加剤は、トウバンドを形成する前のいずれかの点で繊維に、トウバンドの形成中及び/若しくは後に繊維に、トウバンドの捲縮中及び/若しくは後に繊維に、条件付け中及び/若しくは後に繊維に、又はそのいずれかの組合せで適用され得る。
【0056】
適切な添加剤としては、限定されないが、活性粒子、活性化合物、イオン交換樹脂、ゼオライト、ナノ粒子、セラミック粒子、柔軟剤、可塑剤、顔料、染料、香料、芳香剤、放出制御ベシクル、バインダー、接着剤、粘着性付与剤、表面変性剤、潤滑剤、乳化剤、ビタミン、過酸化物、殺生物剤、抗真菌薬、抗生物質、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、分解剤、導電性変性剤、安定化剤又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態において、添加剤を含む繊維を得ることは、ドープ中に添加剤を含ませること、トウバンドの形成前、後及び/又は中に添加剤を繊維に適用すること、トウバンドを捲縮する前、後及び/又は中に添加剤を繊維に適用すること、捲縮されたトウバンドを条件付ける前、後及び/又は中に添加剤を繊維に適用すること並びにそのいずれかの組合せによるものであり得る。適用には、限定されないが、ディップ、浸漬、湛水、ソーキング、リンス、洗浄、ペインティング、コーティング、シャワー、ドリズル、スプレー、配置、散布、スプリンクル、固定及びそのいずれかの組合せが含まれることに留意すべきである。さらに、適用には、限定されないが、表面処理、添加剤が繊維中に少なくとも部分的に組み込まれるインフュージョン処理及びそのいずれかの組合せが含まれることに留意すべきである。
【0057】
本開示の利点を有する当業者は、添加剤の濃度が少なくとも添加剤の組成、添加剤のサイズ、添加剤の目的、添加剤が含まれるプロセスの点及び繊維のサイズ次第であることを理解するべきである。非限定的な例として、添加剤は、ポリマーの0.01重量%~10重量%の範囲の量でドープ中に存在し得る。別の非限定的な例として、微粒子を含む添加剤は、繊維が繊維の0.01体積%~10体積%を含むように含まれ得る。
【0058】
適切な活性粒子としては、限定されないが、ナノスケールのカーボン粒子、少なくとも1つの壁部を有するカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、竹状カーボンナノ構造、フラーレン、フラーレン凝集体、グラフェン、数層グラフェン、酸化グラフェン、酸化鉄ナノ粒子、ナノ粒子、金属ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、アルミナナノ粒子、磁性ナノ粒子、常磁性ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、酸化ガドリニウムナノ粒子、赤鉄鉱ナノ粒子、磁鉄鉱ナノ粒子、ガド-ナノチューブ、エンドフラーレン、Gd@C60、コア-シェルナノ粒子、オニオン化(onionated)ナノ粒子、ナノシェル、オニオン化酸化鉄ナノ粒子、活性化カーボン、イオン交換樹脂、乾燥剤、シリケート、モレキュラーシーブ、シリカゲル、活性化アルミナ、ゼオライト、真珠岩、海泡石、フラー土、ケイ酸マグネシウム、金属酸化物、酸化鉄、活性化カーボン及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0059】
適切な活性粒子は、5000ミクロンの直径を有する粒子程度の大きさまで、グラフェンなどの1ナノメートル未満の少なくとも1つの寸法を有し得る。活性粒子は、0.1ナノメートル、0.5ナノメートル、1ナノメートル、10ナノメートル、100ナノメートル、500ナノメートル、1ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、150ミクロン、200ミクロン及び250ミクロンの少なくとも1つの寸法でのサイズ下限からの範囲であり得る。活性粒子は、5000ミクロン、2000ミクロン、1000ミクロン、900ミクロン、700ミクロン、500ミクロン、400ミクロン、300ミクロン、250ミクロン、200ミクロン、150ミクロン、100ミクロン、50ミクロン、10ミクロン及び500ナノメートルの少なくとも1つの寸法でのサイズ上限からの範囲であり得る。上記の下限及び上限のいずれの組合せも本開示での使用に適切であり得、選択された最大サイズは、選択された最小サイズより大きい。いくつかの実施形態において、活性粒子は、上記の下限及び条件からの範囲の粒径の混合物であり得る。いくつかの実施形態において、活性粒子のサイズは、多様であり得る。
【0060】
適切な活性化合物としては、限定されないが、リンゴ酸、炭酸カリウム、クエン酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸、ポリエチレンイミン、シクロデクストリン、水酸化ナトリウム、スルファミン酸、スルファミン酸ナトリウム、ポリ酢酸ビニル、カルボキシル化アクリレート及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0061】
適切なイオン交換樹脂としては、限定されないが、スチレン-ジビニルベンゼン(DVB)コポリマー、アクリレート、メタクリレート、フェノールホルムアルデヒド縮合物及びエピクロルヒドリンアミン縮合物などの主鎖;ポリマー主鎖に付加された複数の荷電官能基;並びにそのいずれかの組合せを有するポリマーが含まれ得る。
【0062】
ゼオライトとしては、限定されないが、細孔、例えばチャネル又は均一な分子サイズの寸法のキャビティを有する結晶質アルミノシリケートが含まれ得る。ゼオライトには、天然及び合成材料が含まれ得る。適切なゼオライトとしては、限定されないが、ゼオライトBETA(Na7(Al7Si57O128)正方晶)、ゼオライトZSM-5(n<27である、Nan(AlnSi96-nO192)16H2O)、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトK-G、ゼオライトZK-5、ゼオライトZK-4、メソポーラスシリケート、SBA-15、MCM-41、3-アミノプロピルシリル基によって変性されたMCM48、アルミノ-ホスフェート、メソポーラスアルミノシリケート、他の関連する多孔性材料(例えば、混合酸化物ゲル)又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0063】
適切なナノ粒子としては、限定されないが、ナノスケールのカーボン粒子、例えばいずれかの数の壁部のカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、竹状カーボンナノ構造、フラーレン及びフラーレン凝集体並びに数層グラフェン及び酸化グラフェンを含むグラフェン;金属ナノ粒子、例えば金及び銀;金属酸化物ナノ粒子、例えばアルミナ及びシリカ;磁性、常磁性、超常磁性ナノ粒子、例えば酸化ガドリニウム、酸化鉄の種々の結晶構造、例えば赤鉄鉱及び磁鉄鉱、12nm Fe3O4、ガド-ナノチューブ及びエンドフラーレン、例えばGd@C60;並びにコア-シェル及びオニオン化ナノ粒子、例えば金及び銀ナノシェル、オニオン化酸化鉄及び前記材料のいずれかの外側シェルを有する他のナノ粒子若しくはマイクロ粒子;又は(活性化カーボンを含む)上記のいずれかの組合せが含まれ得る。ナノ粒子としては、ナノロッド、ナノスフィア、ナノリス、ナノワイヤ、ナノスター(ナノトリポッド及びナノテトラポッドなど)、中空ナノ構造、2つ以上のナノ粒子が接続されて1つになっているハイブリッドナノ構造及びナノコーティング又はナノ厚の壁部を有する非ナノ粒子が含まれ得ることに留意すべきである。さらに、ナノ粒子としては、ナノ粒子の官能化誘導体が含まれ得ることに留意すべきであり、官能化されたナノ粒子としては、限定されないが、共有結合及び/又は非共有結合的に官能化されたナノ粒子、例えばパイ-スタッキング、物理吸着、イオン会合、ファンデルワールス会合などが含まれる。好適な官能基としては、限定されないが、アミン(1級、2級又は3級)、アミド、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、過酸化物、シリル、オルガノシラン、炭化水素、芳香族炭化水素及びそのいずれかの組合せ;ポリマー;エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリグリコラミン酸及びピロール環を含む構造などのキレート剤;並びにそのいずれかの組合せが含まれ得る。官能基は、煙成分の除去を促進し、且つ/又はナノ粒子の多孔性塊への取り込みを促進し得る。
【0064】
適切な柔軟剤及び/又は可塑剤としては、限定されないが、水、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)、クエン酸トリエチル、フタル酸ジメトキシエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、メチルフタリルエチルグリコレート、o-フェニルフェニル-(ビス)フェニルホスフェート、1,4-ブタンジオールジアセテート、ジアセテート、トリエチレングリコールの二プロピオン酸エステル、トリエチレングリコールの二酪酸エステル、フタル酸ジメトキシエチル、クエン酸トリエチル、トリアセチルグリセリンなど、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。本開示の利点を有する当業者は、繊維への添加剤として使用される可塑剤の濃度を理解するべきである。非限定的な例として、可塑剤は、吸着された溶媒の急激な熱の放出と同時の繊維表面の断裂又は破裂を防止するために十分な量でドープに添加され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、染料は、色を付与し、且つ繊維の表面処理である化合物及び/又は粒子を意味する。適切な染料としては、限定されないが、液体及び/又は粒状形態のCARTASOL(登録商標)染料(Clariant Servicesから入手可能なカチオン染料)(例えば、CARTASOL(登録商標)Brilliant Yellow K-6G液体、CARTASOL(登録商標)Yellow K-4GL液体、CARTASOL(登録商標)Yellow K-GL液体、CARTASOL(登録商標)Orange K-3GL液体、CARTASOL(登録商標)Scarlet K-2GL液体、CARTASOL(登録商標)Red K-3BN液体、CARTASOL(登録商標)Blue K-5R液体、CARTASOL(登録商標)Blue K-RL液体、CARTASOL(登録商標)Turquoise K-RL液体/粒状、CARTASOL(登録商標)Brown K-BL液体)、FASTUSOL(登録商標)染料(BASFから入手可能な助色団)(例えば、Yellow 3GL、Fastusol C Blue 74L)が含まれ得る。
【0066】
適切な香料は、煙流に味及び/又は風味を与えるものを含む、喫煙デバイスフィルターに使用するのに適切ないずれかの香料であり得る。適切な香料としては、限定されないが、有機材料(又は天然風味粒子)、天然香料のための担体、人工香料のための担体及びそのいずれかの組合せを含み得る。有機材料(又は天然風味粒子)としては、限定されないが、タバコ、クローブ(例えば、粉末状クローブ及びクローブの花)、ココアなどが含まれる。天然及び人工の香味料としては、限定されないが、メントール、クローブ、サクランボ、チョコレート、オレンジ、ミント、マンゴー、バニラ、シナモン、タバコなどが含まれ得る。そのような香料は、メントール、アネトール(甘草)、アニソール、リモネン(柑橘類)、オイゲノール(丁子)など、及びそのいずれかの組合せによって提供され得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される香味料のいずれかの組合せを含む2つ以上の香料が使用され得る。これらの香料は、タバコカラム又はフィルターの部分に配置され得る。追加的に、いくつかの実施形態において、本開示の多孔性塊は、香料を含み得る。含まれる量は、全てのフィルター部分、喫煙デバイスの長さ、喫煙デバイスの種類、喫煙デバイスの直径及び当業者に既知の他の要因を考慮して、煙中の所望の香味レベル次第である。
【0067】
適切な芳香剤としては、限定されないが、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、酪酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸ペンチル、ペンタン酸ペンチル、酢酸オクチル、ミルセン、ゲラニオール、ネロール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ネロリドール、リモネン、樟脳、テルピネオール、アルファ-イオノン、ツジョン、ベンズアルデヒド、オイゲノール、桂皮アルデヒド、エチルマルトール、バニラ、アニソール、アネトール、エストラゴール、チモール、フラネオール、メタノール又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0068】
適切なバインダーとしては、限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド(又はナイロン)、ポリアクリル、ポリスチレン、ポリビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。非繊維様可塑化セルロース誘導体も本開示のバインダー粒子として使用するために適切であり得る。適切なポリオレフィンの例としては、限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンなど、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。適切なポリエチレンの例としては、限定されないが、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。適切なポリエステルの例としては、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。適切なポリアクリルの例としては、限定されないが、ポリメタクリル酸メチルなど、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。適切なポリスチレンの例としては、限定されないが、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スチレンアクリロニトリル、ブタジエンスチレン、スチレン-無水マレイン酸など、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。適切なポリビニルの例としては、限定されないが、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなど、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。適切なセルロース誘導体の例としては、限定されないが、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、可塑化セルロース誘導体、プロピオン酸セルロース、エチルセルロースなど、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態において、バインダー粒子は、上記の列挙されたバインダーのいずれかのコポリマー、いずれかの誘導体又はいずれかの組合せを含み得る。さらに、バインダー粒子は、本明細書で開示される添加剤のいずれかの組合せによって含浸され得、且つ/又はそれによってコーティングされ得る。
【0069】
適切な粘着性付与剤としては、限定されないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、水溶性酢酸セルロース、アミド、ジアミン、ポリエステル、ポリカーボネート、シリル変性ポリアミド化合物、ポリカルバメート、ウレタン、天然樹脂、セラック、アクリル酸ポリマー、2-エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸エステルポリマー、アクリル酸誘導体ポリマー、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸エステルホモポリマー、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル)、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸エステルコポリマー、メタクリル酸誘導体ポリマー、メタクリル酸ホモポリマー、メタクリル酸エステルホモポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリルアミド-メチル-プロパンスルホネートポリマー、アクリルアミド-メチル-プロパンスルホネート誘導体ポリマー、アクリルアミド-メチル-プロパンスルホネートコポリマー、アクリル酸/アクリルアミド-メチル-プロパンスルホネートコポリマー、ベンジルココジ-(ヒドロキシエチル)四級アミン、ホルムアルデヒドと縮合されたp-T-アミル-フェノール、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N-(ジアルキルアミノアルキル)アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレートなど、そのいずれかの誘導体及びそのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0070】
適切な潤滑剤としては、限定されないが、エトキシル化脂肪酸(例えば、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)モノペラルゴネートを形成するペラルゴン酸とのエチレンオキシドの反応生成物;PEGモノラウレートを形成するココナッツ脂肪酸とのエチレンオキシドの反応生成物)など、又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。潤滑剤は、非水溶性材料、例えば合成炭化水素油、アルキルエステル(例えば、トリデシルアルコール及びステアリン酸の反応生成物であるトリデシルステアレート)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパントリペラルゴネート及びペンタエリトリトールテトラペラルゴネート)など、又はそのいずれかの組合せから選択され得る。
【0071】
適切な乳化剤としては、限定されないが、ソルビタンモノラウレート(例えば、SPAN(登録商標)20(Croda,Wilmington,Del.から入手可能)、ポリ(エチレンオキシド)ソルビタンモノラウレート(例えば、TWEEN(登録商標))(登録)20(Croda,Wilmington,Del.から入手可能)が含まれ得る。
【0072】
適切なビタミンとしては、限定されないが、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0073】
適切な抗生物質としては、限定されないが、抗菌薬金属イオン、クロルヘキシジン、クロルヘキシジン塩、トリクロサン、ポリモキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、エリスロマイシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン、ペニシリン、ノノキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ムピロシン、メトロニダゾール、セクロピン、プロテグリン、バクテリオルシン、デフェンシン、ニトロフラゾン、マフェニド、アシクロビル、バンコマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、スルホンアミド、ノルフロキサシン、ペフロキサシン、ナリジクス酸、シュウ酸、エノキサシン酸、シプロフロキサシン、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、PHMB誘導体、(例えば、ポリエチレンヘキサメチレンビグアナイド(PEHMB)などの生分解性のビグアナイド)、クリロールヘキシジングルコネート、クロロヘキシジンヒドロクロリド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA誘導体(例えば、二ナトリウムEDTA又は四ナトリウムEDTA)など、又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0074】
帯電防止剤としては、いずれの適切なアニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性帯電防止剤も含まれ得る。アニオン性帯電防止剤としては、一般に、限定されないが、アルカリ硫酸塩、アルカリリン酸塩、アルコールのリン酸エステル、エトキシル化アルコールのリン酸エステル又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。例としては、限定されないが、アルカリ中和リン酸エステル(例えば、TRYFAC(登録商標)5559又はTRYFRAC(登録商標)5576、Henkel Corporation,Mauldin,S.C.から入手可能)が含まれ得る。カチオン性帯電防止剤としては、一般的に、限定されないが、正電荷を有する四級アンモニウム塩及びイミダゾリンが含まれ得る。非イオン性帯電防止剤の例としては、ポリ(オキシアルキレン)誘導体、例えばEMEREST(登録商標)2650(エトキシル化脂肪酸、Henkel Corporation,Mauldin,S.C.から入手可能)などのエトキシル化脂肪酸、TRYCOL(登録商標)5964(エトキシル化ラウリルアルコール、Henkel Corporation,Mauldin,S.C.から入手可能)などのエトキシル化脂肪アルコール、TRYMEEN(登録商標)6606(エトキシル化タローアミン、Henkel Corporation,Mauldin,S.C.から入手可能)などのエトキシル化脂肪アミン、EMID(登録商標)6545(オレイン酸ジエタノールアミン、Henkel Corporation,Mauldin,S.C.から入手可能)などのアルカノールアミド又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。アニオン性及びカチオン性材料がより有効な静電気防止剤である傾向がある。
【0075】
本明細書で使用される場合、顔料は、色を付与し、繊維を通して組み込まれる化合物及び/又は粒子を意味する。適切な顔料としては、限定されないが、二酸化ケイ素、タートラジン、E102、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、ジオキサジン、ペリノンジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、カーボンブラック、金属粉末、酸化鉄、紺青、炭酸カルシウム、カオリン粘土、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0076】
二酸化チタンは、従来の酢酸セルローストウバンドで一般に使用される顔料である。従来の酢酸セルローストウバンドは、0.1重量%より多い量、例えば0.3重量%より多い量、0.5重量%より多い量、1重量%より多い量又は2重量%より多い量で二酸化チタンを含み得るが、しかしながら、上記の通り、二酸化チタンの使用は、製造及び商業的懸念を含む悪影響を生じ得る。したがって、本開示に従う酢酸セルローストウバンドは、添加剤として二酸化チタンを好ましくは含まない。いくつかの実施形態において、トウバンドは、0.1重量%(1000ppm)未満、例えば0.01重量%(100ppm)未満、90ppm未満、50ppm未満又は25ppm未満の二酸化チタンを含む。下限に関して、トウバンドは、0ppmより多い、例えば1ppmより多い、5ppmより多い、10ppmより多い又は15ppmより多い二酸化チタンを含み得る。範囲に関して、トウバンドは、0ppm~0.1重量%、例えば0ppm~100ppm、0ppm~90ppm、0ppm~50ppm、0ppm~25ppm、1ppm~0.1重量%、1ppm~100ppm、1ppm~90ppm、1ppm~50ppm、1ppm~25ppm、5ppm~0.1重量%、5ppm~100ppm、5ppm~90ppm、5ppm~50ppm、5ppm~25ppm、10ppm~0.1重量%、10ppm~100ppm、10ppm~90ppm、10ppm~50ppm、10ppm~25ppm、15ppm~0.1重量%、15ppm~100ppm、15ppm~90ppm、15ppm~50ppm又は15ppm~25ppmの二酸化チタンを含み得る。いくつかの好ましい実施形態において、トウバンドは、二酸化チタンを実質的に含まない。いくつかの態様において、二酸化チタンは、トウバンドに意図的に添加されない。本明細書で開示される方法によって検出される二酸化チタンのいずれの量も付帯的であり、それらがトウバンドの他の構成要素中の不純物であったことを意味する。
【0077】
酢酸セルローストウバンド中の二酸化チタンの濃度を測定する従来の方法では、二酸化チタンのそのような低濃度を正確且つ/又は精密に測定することはできない。それにもかかわらず、本発明者らは、二酸化チタンが0.1重量%未満の量で存在する場合でも、セルローストウバンドの二酸化チタン含有量を決定する方法を開発した。
【0078】
二酸化チタン含有量を決定する1つのアプローチは、酢酸セルローストウの試料を灰化することによる。本発明者らは、本明細書で開示される酢酸セルローストウが顕著に低い灰重量を有することを発見した。いくつかの実施形態において、酢酸セルローストウの灰重量は、トウの0.1%未満、例えば0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満又は0.05%未満である。
【0079】
さらに、本発明者らは、従来の量の二酸化チタンを含む従来の酢酸セルローストウバンド(例えば、0.1重量%より多い、1重量%より多い、2重量%より多い、3重量%より多い、4重量%より多い又は5重量%より多い二酸化チタンを含む酢酸セルローストウバンド)のものと比較して、本明細書で開示される酢酸セルローストウが顕著に低い灰重量を有することを発見した。従来の酢酸セルロースは、例えば、トウの0.1%より多い、0.2%より多い、0.3%より多い又は0.4%より多い灰重量を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される酢酸セルローストウバンドは、従来の酢酸セルロース繊維の灰重量の25%未満、例えば20%未満、15%未満又は10%未満の灰重量を有する。灰重量のこのような差異により、酢酸セルローストウバンド中の二酸化チタン含有量を決定するための定性的測定基準がもたらされる。
【0080】
本発明者らは、灰化によってトウバンドの二酸化チタンの濃度を定量的に決定するための別の方法も開発した。この方法の実施形態は、以下により詳細に記載される。
【0081】
二酸化チタン含有量を決定するための別のアプローチは、例えば、断面像分析によってチタン粒子数密度を観察することによる。二酸化チタンの個々の粒子は酢酸セルローストウの個々の繊維内で可視であるため、個々の1繊維デニールあたりのチタン粒子の平均数を決定することができる。従来のアセテートトウバンドは、典型的には、1繊維デニールあたり15~50の二酸化チタン粒子を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される酢酸セルローストウバンドは、1繊維デニールあたり10.0未満、例えば8.0未満、5.0未満、2.0未満又は1.0未満の二酸化チタン粒子を有する。
【0082】
酢酸セルロースの二酸化チタン含有量の測定
上記の通り、二酸化チタン含有量が減少した酢酸セルローストウ、例えば二酸化チタンを実質的に含まない酢酸セルローストウを製造するための従来の努力は、分析的測定及び/又は品質制御のための従来の方法の不十分さのために限定的であった。特に、特定の従来の分析方法がそのようなトウのために利用不可能であったため、本発明者らは、満足できる品質の低二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウを製造することが困難であったことを発見した。本明細書で記載される、酢酸セルローストウの開発を制限した分析方法の一例は、酢酸セルローストウの二酸化チタン含有量を測定する方法である。
【0083】
本発明者らは、(例えば、X線回折技術によって)酢酸セルローストウの二酸化チタン含有量を測定する従来の方法が、トウ中の比較的高い二酸化チタン、例えば0.1重量%より高い、1重量%より高い、2重量%より高い、3重量%より高い、4重量%より高い又は5重量%より高い二酸化チタンの濃度を測定するためにのみ有効であることを発見した。しかしながら、従来の方法は、低濃度二酸化チタンを適切に測定することができない。二酸化チタン含有量の正確な測定は、例えば、品質制御の目的のために必要である。二酸化チタン含有量の正確な測定は、製品添加剤必要条件及び潜在的規定を満たすためにも必要となり得る。これらの必要条件は、酢酸セルローストウの最大二酸化チタン含有量を課すことがあり得、したがって特に低濃度の二酸化チタンで正確且つ精密に二酸化チタンの含有量を決定することが必要である。
【0084】
上記の通り、本開示は、低濃度の二酸化チタンを測定するために適切である、酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を測定するための新規方法に関する。この新規方法は、測定のための酢酸セルロースの試料を調製することと;試料を灰化して、灰化された試料を形成することと;灰化された試料を溶解して、試料溶液を形成することと;チタン標準でブランク溶液を滴定することと;滴定されたブランク溶液を試料溶液と比較することとを含む。
【0085】
本明細書で開示される酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を測定する方法は、比較的低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルロース試料のために適切である。いくつかの実施形態において、本方法は、0.1重量%(1000ppm)未満、例えば900ppm未満、750ppm未満、500ppm未満、250ppm未満又は100ppm未満の二酸化チタンを有する酢酸セルロース試料のために適切である。下限に関して、本方法は、例えば、15ppm以上、例えば20ppmより多い、25ppmより多い又は30ppmより多い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルロース試料のために適切であり得る。範囲に関して、本方法は、15ppm~1000ppm、例えば15ppm~900ppm、15ppm~750ppm、15ppm~500ppm、15ppm~250ppm、15ppm~100ppm、20ppm~1000ppm、20ppm~900ppm、20ppm~750ppm、20ppm~500ppm、20ppm~250ppm、20ppm~100ppm、25ppm~1000ppm、例えば25ppm~900ppm、25ppm~750ppm、25ppm~500ppm、25ppm~250ppm、25ppm~100ppm、30ppm~1000ppm、例えば30ppm~900ppm、30ppm~750ppm、30ppm~500ppm、30ppm~250ppm又は30ppm~100ppmの二酸化チタン含有量を有する酢酸セルロース試料のために適切であり得る。
【0086】
本方法のいくつかの実施形態において、開示される方法によって分析される酢酸セルロース試料は、酢酸セルローストウの形態である。開示される方法によって分析される酢酸セルローストウは、12.5未満の、フィラメントあたりのデニールを有する酢酸セルロース繊維を含み得る。開示される方法によって分析される酢酸セルローストウは、12.5より大きい、フィラメントあたりのデニールを有する酢酸セルロース繊維を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、開示される方法によって分析される酢酸セルロース試料は、酢酸セルロースのドープ溶液である。いくつかの実施形態において、酢酸セルロースは、ドープ溶液として且つ酢酸セルローストウとして分析される。
【0088】
酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を測定する方法は、測定のための酢酸セルロースの試料を調製することを含む。本明細書で開示される試料の調製により、二酸化チタン含有量を決定する際の正確さ及び精密さを確実にすることができる。重要なことに、酢酸セルローストウ試料の二酸化チタンを測定するために、開示される方法が使用される実施形態において、本明細書で開示されるように試料を調製することにより、測定に影響し得る外部仕上げ及び/又はいずれの不純物も除去される。いくつかの実施形態において、全体として本明細書に組み込まれるASTM D2257-98(2012)で定義される繊維抽出のための標準試験方法によって試料が調製される。
【0089】
いくつかの実施形態において、測定のための酢酸セルロースの試料を調製することは、酢酸セルロースを有機非溶媒で処理することを含む。試料を処理する際に使用される有機非溶媒は、特に限定されず、例えばアルコール、エーテル、ケトン、エステル及びその組合せを含み得る。有機非溶媒は、酢酸セルロースから外部仕上げ及び/又は他の不純物を除去するために適切ないずれの有機非溶媒でもあり得る。いくつかの実施形態において、有機非溶媒は、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール又はその組合せなどのアルコールであり得る。いくつかの実施形態において、有機非溶媒は、ジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル又はエチレングリコールメチルエーテルなどのエーテルであり得る。いくつかの実施形態において、有機非溶媒は、2-ペンタノンなどのケトンであり得る。いくつかの実施形態において、有機非溶媒は、イソプロピルアセテート又はイソブチルアセテートなどのエステルであり得る。いくつかの実施形態において、有機非溶媒は、これらの溶媒のいずれかの組合せである。
【0090】
酢酸セルロース試料を有機非溶媒で処理することの作用は、特に限定されず、概括的に、試料に有機非溶媒を受けさせて、次いで試料を乾燥させることを含む。試料を非溶媒で処理するための多数の方法は、当技術分野において既知であり、本明細書では酢酸セルロース試料を有機非溶媒で処理するために使用され得る。いくつかの実施形態において、酢酸セルロース試料は、有機非溶媒によって単に洗浄され得る。他の実施形態において、振動の有無にかかわらず、有機非溶媒に試料が湛水され得る。振動は、手による撹拌などの手動又は機械的シェーカーにおけるものなどの機械的なものであり得る。いくつかの実施形態において、酢酸セルロース試料を処理することは、これら及び/又は他の既知の非溶媒で試料を処理する方法のいずれかの組合せを含み得る。同様に、有機非溶媒で処理された試料を乾燥するための多数の方法は、当技術分野において既知であり、本明細書で使用され得る。例えば、処理された試料を絞り、濾過し、且つ/若しくは排水して、過剰量の非溶媒を除去し得、及び/又は空気乾燥させ、減圧下で乾燥させ、デシケーター中で乾燥させ、且つ/若しくはオーブン中で乾燥させ得る。
【0091】
酢酸セルロースドープ溶液の二酸化チタンを測定するために本開示の方法が使用される実施形態において、外部仕上げを除去することは、一般に必要とされない。これらの実施形態において、試料を調製することは、概括的に、例えば試験管中で酢酸セルロースの試料を回収することのみを含む。好ましくは、酢酸セルロースドープ溶液を調製することは、試料の灰化を改善するために過剰な溶媒を除去する。
【0092】
酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を測定する方法は、酢酸セルロースの試料を灰化して、灰化された試料を形成することを含む。上記の通り、本明細書で記載され、且つ本明細書で開示される方法が適切である酢酸セルロースの試料は、従来の酢酸セルロース、例えばより高い含有量の二酸化チタンを含む酢酸セルロースのものより少ない灰重量を有する。本発明者らは、二酸化チタン含有量が酢酸セルロースの灰化の精密さに影響を及ぼすことを発見して、二酸化チタン含有量を測定するために本明細書で開示される方法を開発した。
【0093】
概括的に、本明細書で開示される方法によって酢酸セルロースの調製された試料を灰化することは、試料を燃焼することを含む。酢酸セルロースを燃焼するための多数の方法は、当技術分野において既知であり、本明細書で使用され得る。いくつかの実施形態において、例えば、調製された試料を灰化することは、例えば、ブンゼンバーナーで燃焼することにより、試料に点火することを含む。別の実施形態において、調製された試料を灰化することは、炉、例えばマッフル炉又はオーブン中で試料を燃焼することを含む。いくつかの実施形態において、例えば、調製された試料を灰化することは、複数の燃焼方法、例えば調製された試料を点火すること及び調製された試料を炉中で燃焼することを含む。調製された試料を燃焼する時間量は、特に限定されない。いくつかの実施形態において、例えば試料を20分より長く、例えば30分より長く、40分より長く又は60分より長く燃焼させ得る。好ましくは、調製された試料は、完全に試料を灰化するために必要に応じて長く燃焼される。
【0094】
酢酸セルロースの試料を灰化するための他の定量的な方法は、当業者既知であり、本明細書で使用され得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、燃焼後、酢酸セルロース試料は、さらなる処理を受ける。これは、燃焼させた試料を塩で処理することを含み得る。燃焼させた試料は、固体であり、本明細書で記載される塩によって試料を処理することにより、その後の定量分析前の完全な溶解を改善及び/又は確実にし得る。固体試料の溶解性を改善するためのこの方法は、当技術分野で既知であり、いずれの既知の塩も利用され得る。いくつかの実施形態において、塩は、アルカリ金属の酸塩、好ましくは鉱物酸の塩である。適切な酸塩の例としては、ピロ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、ピロ硫酸カリウム、ピロ硫酸水素カリウム、硫酸カリウム及び硫酸水素カリウム水素並びにその組合せが含まれる。
【0096】
いくつかの実施形態において、酢酸セルロース試料は、処理後に燃焼される。処理後に酢酸セルロースを燃焼させるために、上述のものを含む、当技術分野において既知のいずれの方法も使用され得る。好ましい実施形態において、処理後の燃焼によって固体試料の液化が引き起こされる。
【0097】
酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を測定する方法は、灰化された試料を溶解して、試料溶液を形成することを含む。灰化された試料を溶解するために使用される溶媒は、特に限定されず、本明細書で記載される分析及び使用のために適切ないずれの溶媒も使用され得る。いくつかの実施形態において、灰化された試料は、水、好ましくは蒸留水で溶解される。いくつかの実施形態において、灰化された試料は、酸、好ましくは鉱物酸で溶解される。適切な鉱物酸の例としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸及びその組合せが含まれる。いくつかの実施形態において、灰化された試料は、水及び酸の両方で溶解され、例えば水で溶解されて、次いで酸で希釈されるか又は酸で溶解されて、次いで水で希釈される。いくつかの実施形態において、灰化された試料の溶解は、灰化された試料を別の容器に有効に移すために使用され得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、試料溶液は、さらなる処理を受ける。いくつかの実施形態において、試料溶液に過酸化水素が添加される。本発明者らは、過酸化水素が、試料溶液と反応して着色溶液を生じる色試薬であることを発見した。したがって、過酸化水素の添加により、二酸化チタン含有量の比色分析(下記の通り)が可能となる。当業者は、過酸化水素を、当技術分野で既知のものを含む別の色試薬と置き換えることが可能であることを認識し、そのような代わりの色試薬を利用するために、本明細書で記載される方法を変更する方法を理解するであろう。
【0099】
本発明者らは、試料溶液を、既知の濃度の二酸化チタンを有する標準溶液と比較することにより、酢酸セルロース試料の二酸化チタン含有量を決定できることを発見した。試料溶液及び標準溶液は、多数の測定基準のいずれかによって比較することができる。いくつかの実施形態において、試料溶液の色を標準溶液の色と比較する。これらの実施形態のいくつかにおいて、試料溶液の色は、視覚的な検査によって標準溶液の色と比較され得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、試料溶液の色は、比色計又は類似の機械の使用により、標準溶液の色と比較され得る。試料溶液及び標準溶液は、他の測定基準により、例えばスペクトル分析により、例えばUV-Vi分光光度計の使用により比較され得る。いくつかの実施形態において、試料溶液の色は、これらの方法の組合せにより、標準溶液の色と比較され得る。
【0100】
酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を正確に決定するために、酢酸セルロースの二酸化チタン含有量を測定する方法は、チタン標準でブランク溶液を滴定することを含む。ブランク溶液は、好ましくは、試料溶液と同じ溶媒を含む。いくつかの実施形態において、例えば、灰化された試料は、水中で溶解され、ブランク溶液は、水を含む。別の実施形態において、灰化された試料は、水及び硫酸中で溶解されて、その後、過酸化水素で処理され、ブランク溶液は、水、硫酸及び過酸化水素を含む。さらに、ブランク溶液は、好ましくは、試料溶液と同じ溶媒の相対量を含む。
【0101】
チタン標準溶液の調製は、特に限定されず、既知の濃度で二酸化チタンの溶液を調製するためのいずれの既知の方法も使用され得る。本明細書で開示される方法によると、チタン標準溶液は、二酸化チタンの既知の濃度を有する。いくつかの実施形態において、チタン標準は、0.1ppm~50ppm、例えば0.1ppm~40ppm、0.1ppm~30ppm、0.1ppm~20ppm、0.1ppm~10ppm、0.25ppm~50ppm、0.25ppm~40ppm、0.25ppm~30ppm、0.25ppm~20ppm、0.25ppm~10ppm、0.5ppm~50ppm、0.5ppm~40ppm、0.5ppm~30ppm、0.5ppm~20ppm、0.5ppm~10ppm、0.75ppm~50ppm、0.75ppm~40ppm、0.75ppm~30ppm、0.75ppm~20ppm又は0.75ppm~10ppmの二酸化チタン濃度を有する。上限に関して、チタン標準は、50ppm未満、例えば40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満又は10ppm未満の二酸化チタン濃度を有し得る。下限に関して、例えば、チタン標準は、0.1ppmより高い、0.25ppmより高い、0.5ppmより高い又は0.75ppmより高い二酸化チタン濃度を有し得る。
【0102】
チタン標準によるブランク溶液の滴定は、特に限定されず、既知の体積のチタン標準でブランク溶液を滴定するためのいずれの既知の方法も使用され得る。上記の通り、滴定されたブランク溶液は、色及びスペクトル分析、例えばUV-visを含む、種々の測定基準のいずれかによって試料溶液と比較され、所定の測定基準、例えば滴定されたブランク溶液の色が試料溶液の色に適合するまで、チタン標準の十分な体積が添加されるまで、ブランク溶液は、チタン標準で滴定される。
【0103】
チタン標準中の二酸化チタンの濃度は、既知であるため、滴定されたブランク溶液が試料溶液に適合する点で、ブランク溶液に添加された二酸化チタンの量を算出することができる。このことから、試料溶液、したがって酢酸セルロース試料の二酸化チタンの濃度を算出することができる。酢酸セルロース試料が酢酸セルロースのドープ溶液である実施形態において、ドープ溶液中の酢酸セルロースの濃度は、一般に、二酸化チタンの濃度を算出するために必要とされる。
【0104】
酢酸セルローストウの色の測定
上記の通り、二酸化チタン含有量が減少した酢酸セルローストウ、例えば二酸化チタンを実質的に含まない酢酸セルローストウを製造するための従来の努力は、分析的測定及び/又は品質制御のための従来の方法の不十分さのために限定的であった。特に、特定の従来の分析方法がそのようなトウのために利用不可能であったため、本発明者らは、満足できる品質の低二酸化チタン含有量を有する酢酸セルローストウを製造することが困難であったことを発見した。本明細書で記載される、酢酸セルローストウの開発を制限した分析方法の一例は、酢酸セルローストウの色を測定する方法である。
【0105】
酢酸セルローストウの色、例えば白色度は、その商業的有用性及び/又は好ましさにおいて重要な特徴である。酢酸セルローストウの色の重要性は、典型的には、トウの製造中に考慮される。例えば、特定の色の酢酸セルロースを製造するために製造が設計され得る。同様に、一貫した色の酢酸セルローストウを製造するために製造が設計され得る。これらの測定基準が確実に満たされるために、従来の酢酸セルローストウ製造は、典型的には、トウの色の良好な指標であるドープ溶液の色を測定することを含む。ドープ溶液の色は、典型的には、適切な器具類、例えば比色計を用いて、「L」、「a」及び「b」色パラメーターとして測定される。「L」色パラメーターは、明度を意味し、典型的には0(最も濃いブラック)~100(最も明るい白)の範囲である。「a」及び「b」色パラメーターは、色の軸を定義する。「a」色パラメーターは、緑-赤成分を表し、マイナスが緑を、及びプラスが赤を表す。「b」色パラメーターは、青-黄を表し、マイナスが青を、及びプラスが黄を表す。「L」色パラメーターは、酢酸セルローストウ製品の白色度を測定する際に特に重要であり得る。
【0106】
上記の通り、従来の酢酸セルローストウバンドに顔料の二酸化チタンが添加される。二酸化チタンの従来の添加により、ドープ溶液及び最終的に酢酸セルローストウの色の一貫性を確実にすることができる。加えて、従来通り添加された二酸化チタンは、艶消し剤として作用し、製品トウバンドの明度を減少する。
【0107】
本発明者らは、ドープ溶液の色を測定する従来の方法が、低い二酸化チタン含有量を有するドープ溶液の色を測定するために有効ではないことを発見した。二酸化チタンを添加しない場合、ドープ溶液の光反射特性は、変化する。ドープ溶液の色を測定する従来の方法は、光の測定を含むため、光反射の変化は、色測定に影響を及ぼす。したがって、二酸化チタンを除去することにより、従来の分光器技術、例えば色測定は、無効となる。
【0108】
上記の通り、本開示は、低濃度の二酸化チタンを有する酢酸セルロースのために適切である酢酸セルロースの色を測定する新規且つ独創的な方法に関するものである。特に、本方法は、酢酸セルロースドープ溶液の色を測定するために適切である。いくつかの実施形態において、本方法は、酢酸セルロース繊維の紡糸前にドープ溶液の色を測定するために使用され得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、本方法は、適切な溶媒中に酢酸セルロース繊維又はトウの試料を溶解することによって形成されたドープ溶液の色を測定するために使用され得る。開示される方法によって分析される酢酸セルローストウは、12.5未満の、フィラメントあたりのデニールを有する酢酸セルロース繊維を含み得る。開示される方法によって分析される酢酸セルローストウは、12.5より大きい、フィラメントあたりのデニールを有する酢酸セルロース繊維を含み得る。
【0110】
この新規方法は、ドープ溶液から酢酸セルロースのパティを調製することと、タイルを提供することと、タイルがパティの背後にあるように、パティ及びタイルを比色計の反射ポート上に配置することと、比色計を使用してパティの色を記録することとを含む。
【0111】
本明細書で開示される、酢酸セルロースドープ溶液の二酸化チタン含有量を測定する方法は、比較的低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルロース試料のために適切である。いくつかの実施形態において、本方法は、0.1重量%(1000ppm)未満、例えば900ppm未満、750ppm未満、500ppm未満、250ppm未満又は100ppm未満の二酸化チタンを有する酢酸セルロース試料のために適切である。下限に関して、本方法は、0ppmより高い、例えば10ppmより高い、15ppmより高い、25ppmより高い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルロース試料のために適切であり得る。範囲に関して、本方法は、0ppm~1000ppm、例えば0ppm~900ppm、0ppm~750ppm、0ppm~500ppm、0ppm~250ppm、0ppm~100ppm、10ppm~1000ppm、10ppm~900ppm、10ppm~750ppm、10ppm~500ppm、10ppm~250ppm、10ppm~100ppm、15ppm~1000ppm、例えば15ppm~900ppm、15ppm~750ppm、15ppm~500ppm、15ppm~250ppm、15ppm~100ppm、25ppm~1000ppm、例えば25ppm~900ppm、25ppm~750ppm、25ppm~500ppm、25ppm~250ppm又は25ppm~100ppmの二酸化チタン含有量を有する酢酸セルロース試料のために適切であり得る。
【0112】
酢酸セルロースドープ溶液の色を測定する方法は、ドープ溶液から酢酸セルロースのパティを調製することを含む。パティを形成する方法は、特に限定されず、本方法による測定のために適切なパティにドープ溶液の酢酸セルロースを形成するいずれの既知の方法も使用され得る。いくつかの実施形態において、酢酸セルロースのパティは、手で、例えば手で押圧することによって調製される。いくつかの実施形態において、酢酸セルロースのパティは、機械的に、例えばプレスプレート又は類似の機械によって押圧することによって調製される。
【0113】
いくつかの実施形態において、ドープ溶液の酢酸セルロースは、押圧前、中又は後に加熱され得る。これらの実施形態のドープ溶液を加熱することにより、酢酸セルロースのパティの形成をもたらすドープ溶液の溶媒がより容易に蒸発する。いくつかの実施形態において、酢酸セルロースのパティは、ホットプレート上でドープ溶液を押圧することによって形成される。いくつかの実施形態において、ドープ溶液は、プレスプレートを使用してホットプレート上で押圧される。ホットプレートを含む実施形態において、ホットプレートは、100℃~200℃、例えば100℃~190℃、100℃~180℃、100℃~170℃、100℃~160℃、110℃~200℃、110℃~190℃、110℃~180℃、110℃~170℃、110℃~160℃、120℃~200℃、120℃~190℃、120℃~180℃、120℃~170℃、120℃~160℃、130℃~200℃、130℃~190℃、130℃~180℃、130℃~170℃、130℃~160℃、140℃~200℃、例えば140℃~190℃、140℃~180℃、140℃~170℃又は140℃~160℃の温度であり得る。下限に関して、ホットプレートは、100℃より高い、例えば110℃より高い、120℃より高い、130℃より高い又は140℃より高い温度であり得る。上限に関して、ホットプレートは、200℃未満、例えば190℃未満、180℃未満、170℃未満又は160℃未満の温度であり得る。これらの実施形態において、酢酸セルローストウは、好ましくは、冷却される。
【0114】
酢酸セルロースドープ溶液の色を測定する方法は、タイルを提供することと、タイルがパティの背後にあるように、パティ及びタイルを比色計の反射ポート上に配置することとを含む。上記の通り、酢酸セルロースドープ溶液中に二酸化チタンがないことは、酢酸セルロースの光反射特性に影響を及ぼす。本発明者らは、パティの背後にタイルを配置することにより、低い二酸化チタン含有量を有する酢酸セルロースの色の正確な測定が可能になることを発見した。
【0115】
酢酸セルロースのパティの背後にタイルを配置することにより、光の反射が改善し、したがってスペクトル分析が可能となる。本明細書で開示される方法で使用されるタイルは、タイルが適切に反射を改善する限り、特に限定されない。好ましい実施形態において、タイルは、実質的に白色であり、したがって光の適切な反射を確実にする。本方法で使用するために適切な商業的に入手可能なタイルの一例は、Avian Technologies Ltd.によるBRCA-WT-02C Ceramic Gray Scale Tileである。
【0116】
酢酸セルロースの色を測定する方法は、比色計を使用してパティの色を記録することを含む。本明細書で開示される方法で使用される比色計の器具類は、特に限定されない。本方法で使用するために適切な商業的に入手可能な比色計の1つの例は、HunterLab UltraScan VIS Spectrophotometerである。比色計は、使用前に好ましくは標準化及び/又は調整される。
【0117】
酢酸セルロースパティの走査の完了後、比色計は、好ましくは、パティの色を報告する。色は、典型的には、「L」、「a」及び「b」値で報告される。
【0118】
一実施形態において、酢酸セルロースパティは、90~100、例えば90~99.99、90~99.9、90~99.5、90~99、91~100、91~99.99、91~99.9、91~99.5、91~99、92~100、92~99.99、92~99.9、92~99.5、92~99、93~100、93~99.99、93~99.9、93~99.5、93~99、94~100、94~99.99、94~99.9、94~99.5又は94~99の「L」値を有する。下限に関して、酢酸セルロースパティの「L」値は、90より大きい、例えば91より大きい、92より大きい、93より大きい又は94より大きい値であり得る。上限に関して、酢酸セルロースパティの「L」値は、100未満、例えば99.99未満、99.9未満、99.5未満又は99未満であり得る。
【0119】
一実施形態において、酢酸セルロースパティは、-1~0.5、例えば-1~0.45、-1~0.4、-1~0.35、-1~0.25、-0.95~0.5、-0.95~0.45、-0.95~0.4、-0.95~0.35、-0.95~0.25、-0.9~0.5、-0.9~0.45、-0.9~0.4、-0.9~0.35、-0.9~0.25、-0.85~0.5、-0.85~0.45、-0.85~0.4、-0.85~0.35、-0.85~0.25、-0.8~0.5、-0.8~0.45、-0.8~0.4、-0.8~0.35又は-0.8~-0.7の「a」値を有する。下限に関して、酢酸セルロースパティの「a」値は、-1より大きい、例えば-0.95より大きい、-0.9より大きい、-0.85より大きい又は-0.8より大きい値であり得る。上限に関して、酢酸セルロースパティの「a」値は、0.5未満、例えば0.45未満、0.4未満、0.35未満又は-0.7未満であり得る。
【0120】
一実施形態において、酢酸セルロースパティは、3~6、例えば3~5.75、3~5.5、3~5.25、3~5、3~4.75、3.25~6、3.25~5.75、3.25~5.5、3.25~5.25、3.25~5、3.25~4.75、3.5~6、3.5~5.75、3.5~5.5、3.5~5.25、3.5~5、3.5~4.75、3.75~6、3.75~5.75、3.75~5.5、3.75~5.25、3.75~5、3.75~4.75、4~6、4~5.75、4~5.5、4~5.25、4~5、4~4.75、4.25~6、4.25~5.75、4.25~5.5、4.25~5.25、4.25~5又は4.25~4.75の「b」値を有する。下限に関して、セルロースパティの「b」値は、3より大きい、例えば3.25より大きい、3.5より大きい、3.75より大きい、4より大きい又は4.25より大きい値であり得る。上限に関して、酢酸セルロースパティの「b」値は、6未満、例えば5.75未満、5.5未満、5.25未満、5未満又は4.75未満であり得る。
【0121】
本発明が詳細に記載されたが、本発明の趣旨及び範囲内の修正形態は、当業者に容易に明らかになるであろう。上記及び/又は添付の特許請求の範囲内で列挙される本発明の態様及び種々の実施形態の部分及び種々の特徴は、全体的又は部分的に組み合わされ得るか又は交換され得ることが理解されるべきである。種々の実施形態の上記の記載において、別の実施形態を引用するそれらの実施形態は、当業者によって認識される他の実施形態と適切に組み合わされ得る。さらに、当業者は、上記の記載が一例であるに過ぎず、本発明を限定するように意図されないことを認識する。本明細書で列挙される全ての米国特許及び刊行物は、全体として参照により組み込まれる。
【実施例
【0122】
実施例1
酢酸セルローストウのいくつかの試料の二酸化チタンを測定するために、二酸化チタンを測定するための開示される方法が使用された。
【0123】
イソプロピルアルコールで処理することにより、それぞれのトウ試料を調製した。特に、それぞれのトウ試料は、リストアクションシェーカー中、イソプロピルアルコールによって振とうされた。次いで、トウ試料を絞り、過剰量のイソプロピルアルコールを除去し、換気フード中に配置して乾燥させ、その後、オーブン中に配置して乾燥させた。
【0124】
次いで、試料自体が燃焼するまで、ブンゼンバーナーで燃焼させることにより、次いで1時間又は試料が完全に灰化し、白熱試料がなくなるまで、マッフル炉に配置することにより、それぞれのトウ試料を灰化した。
【0125】
灰化後、それぞれのトウ試料を冷却した。次いで、全ての固体材料が液化するまで、試料を硫酸水素カリウムで処理し、再び燃焼させた。次いで、液状の灰化された試料を硫酸に溶解し、過酸化水素で処理した。
【0126】
それぞれのトウ試料の二酸化チタン含有量は、チタン標準でブランク溶液を滴定することによって決定した。ブランク溶液は、水、硫酸及び過酸化水素を含んだ。チタン標準は、0.1ppmの二酸化チタンを含んだ。ブランク溶液の色がそれぞれの試料の色に適合するまで、チタン標準をブランク溶液に添加した。ブランク溶液に添加されるチタン標準の体積を使用して、トウ試料の二酸化チタン含有量を算出した。いくつかの試料に関する結果を以下の表1に報告する。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例2
酢酸セルロースのドープ溶液のいくつかの試料の二酸化チタンを測定するために、二酸化チタンを測定するための開示される方法が使用された。それぞれのドープ試料は、溶媒としての水及びアセトンの混合物との酢酸セルロースの溶液を含んだ。それぞれの試料は、20重量%~35重量%のドープ固体濃度を有した。
【0129】
試料自体が燃焼するまで、ブンゼンバーナーで燃焼させることにより、次いで1時間又は試料が完全に灰化し、白熱試料がなくなるまで、マッフル炉に配置することにより、それぞれのドープ試料を灰化した。
【0130】
灰化後、それぞれのドープ試料を冷却した。次いで、全ての固体材料が液化するまで、試料を硫酸水素カリウムで処理し、再び燃焼させた。次いで、液状の灰化された試料を硫酸に溶解し、過酸化水素で処理した。
【0131】
それぞれのドープ試料の二酸化チタン含有量は、チタン標準でブランク溶液を滴定することによって決定した。ブランク溶液は、水、硫酸及び過酸化水素を含んだ。チタン標準は、0.1ppmの二酸化チタンを含んだ。ブランク溶液の色がそれぞれの試料の色に適合するまで、チタン標準をブランク溶液に添加した。ブランク溶液に添加されるチタン標準の体積を使用して、ドープ試料の二酸化チタン含有量を算出した。いくつかの試料に関する結果を以下の表2に報告する。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例3
酢酸セルロースのドープ溶液のいくつかの試料の色を測定するために、二酸化チタンを測定するための開示される方法が使用された。それぞれのドープ試料は、溶媒としての水及びアセトンの混合物との酢酸セルロースの溶液を含んだ。
【0134】
それぞれのドープ試料から酢酸セルロースのパティを調製した。特に、それぞれのパティは、プレスプレートを使用して、ホットプレート上で約4~5グラムのそれぞれのドープ試料を押圧することによって調製された。ホットプレートは、約150℃に設定された。それぞれの試料を約5分間、ホットプレート上を被覆したままにさせた後、パティを除去し、冷却した。
【0135】
比色計、特にHunterLab UltraScan VIS Spectrophotometerを使用して、それぞれのパティの色を測定した。パティの背後に白色タイルがある状態で、それぞれのパティを比色計の反射ポート上に配置した。次いで、比色計により、それぞれのパティの色を記録し、「L」、「a」及び「b」値で色を報告した。いくつかの試料に関する結果を以下の表3に報告する。
【0136】
【表3】
【国際調査報告】