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特表2022-545528電池セパレータ、セパレータを備える電池、ならびにその形成方法および形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電池セパレータ、セパレータを備える電池、ならびにその形成方法および形成システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20221020BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20221020BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20221020BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20221020BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20221020BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20221020BHJP
   H01M 50/406 20210101ALI20221020BHJP
【FI】
H01M10/0525
C08J9/00 A CFG
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/406
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513067
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020048134
(87)【国際公開番号】W WO2021041627
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/966,862
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/892,283
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522071463
【氏名又は名称】イエン,ウイリアム,ウインチン
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イエン,ウイリアム,ウインチン
【テーマコード(参考)】
4F074
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
4F074AA20
4F074AA71
4F074AD01
4F074CA03
4F074DA49
5H021BB01
5H021BB02
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE09
5H021EE15
5H021EE23
5H021HH01
5H021HH07
5H029AJ01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AM03
5H029AM07
5H029DJ04
5H029HJ01
(57)【要約】
電池セパレータとしての使用に適した微孔性シート製品およびその形成方法。一実施形態によれば、方法は、1つまたは複数の熱可塑性ポリマーと高い蒸気圧を有する流体との押出混合物を形成するステップを含む。次に、混合物はダイヘッドを通して押出され、冷却され、UELを超える状態下の第1の蒸気ゾーンで成形されて、固体シート材料を形成する。次に、シート材料は、LEL未満の状態下で第2の蒸気ゾーン内で2ステッププロセスを受け、第1のステップは、より高い温度での第1の延伸/流体気化を含み、第2のステップは、より低い温度での第2の延伸/流体気化を含む。次いで、得られたシートがアニールされ、流体の残りが除去されて、その厚さにわたってより小さく、かつより大きい細孔層の構造を特徴とする厚さを有するシート製品を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム系電池セルであって、
(a)非水性溶媒とリチウム塩とを含み、該リチウム塩が該非水性溶媒に溶解している、電解質と、
(b)アノードであって、該アノードが該電解質と接触する、アノードと、
(c)カソードであって、該カソードが該電解質と接触する、カソードと、
(d)電池セパレータであって、該電池セパレータが該アノードと該カソードとを分離し、該電池セパレータが、第1のポリマーと第2のポリマーとを含む微孔性シート製品であり、該第1のポリマーが熱可塑性ポリマーを含み、該第2のポリマーが、脱水重合反応で生成され、水に曝されると分子量の減少を受ける縮合重合ポリマーを含み、セル製造の完了時に、該第2のポリマーが初期総重量を有する、電池セパレータと、
(e)ハウジングであって、前記電解質、前記アノード、前記カソード、および前記電池セパレータが該ハウジング内に配置される、ハウジングと、を備え、
(f)セル製造の完了時に、初期総重量を有する初期量の水がハウジング内に存在し、水の初期総重量に対する第2のポリマーの初期総重量の比が約10:1~5,000:1の範囲内である、リチウム系電池セル。
【請求項2】
前記第1のポリマーが少なくとも1つのポリオレフィンを含む、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリオレフィンが、少なくとも1つのポリオレフィンホモポリマー、少なくとも1つのポリオレフィンコポリマー、少なくとも1つのポリオレフィンターポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のリチウム系電池セル。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載のリチウム系電池セル。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリオレフィンが、ポリエチレンホモポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、およびコモノマー単位として最大約10重量%の他のアルファ-オレフィンをその中に有するそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項4に記載のリチウム系電池セル。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリオレフィンが約100,000~10,000,000Daの平均分子量を有する、請求項2に記載のリチウム系電池セル。
【請求項7】
前記第2のポリマーが、少なくとも1000Daの最小絡み合い分子量を有する、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項8】
前記第2のポリマーが、少なくとも4000Daの最小絡み合い分子量を有する、請求項7に記載のリチウム系電池セル。
【請求項9】
前記微孔性シート製品が、(a)押出混合物を溶融押出してシート材料を形成するステップであって、前記押出混合物は、(i)前記第1のポリマーと、(ii)前記第2のポリマーと、(iii)前記第1のポリマーと前記第2のポリマーの混合を促進する相溶化剤とを含む、ステップと、(b)次いで、該シート材料を冷却するステップと、を含む方法によって製造され、前記シート材料に微細孔が形成される、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項10】
前記第2のポリマーが、水に曝された後、20%~90%の平均分子量の減少を受ける、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項11】
前記第2のポリマーが、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドおよびポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1つの部材である、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項12】
前記第2のポリマーがコポリマーおよびターポリマーの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項13】
前記第2のポリマーが少なくとも2つのポリマーの混合物を含み、前記少なくとも2つのポリマーのうちの少なくとも1つがコポリマーである、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項14】
全縮合ポリマーに対するコポリマー縮合ポリマーの初期重量比が0.1:1~0.9:1である、請求項13に記載のリチウム系電池セル。
【請求項15】
全縮合ポリマーに対するコポリマー縮合ポリマーの初期重量比が0.2:1~0.85:1である、請求項14に記載のリチウム系電池セル。
【請求項16】
全縮合ポリマーに対するコポリマー縮合ポリマーの初期重量比が0.3:1~0.8:1である、請求項15に記載のリチウム系電池セル。
【請求項17】
前記第2のポリマーが少なくとも1つのポリアミドを含む、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項18】
前記少なくとも1つのポリアミドが、少なくとも1つのホモポリマー、少なくとも1つのコポリマー、少なくとも1つのターポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載のリチウム系電池セル。
【請求項19】
前記少なくとも1つのポリアミドが、m-クレゾールと比較して、少なくとも1.4:1の相対粘度を有する、請求項17に記載のリチウム系電池セル。
【請求項20】
水の前記初期総重量に対する前記第2のポリマーの前記初期総重量の比が少なくとも50:1である、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項21】
水の前記初期総重量に対する前記第2のポリマーの前記初期総重量の比が少なくとも500:1である、請求項20に記載のリチウム系電池セル。
【請求項22】
前記第2のポリマーが、少なくとも12,000Daの初期平均分子量を有する、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項23】
前記第2のポリマーが、少なくとも20,000Daの初期平均分子量を有する、請求項22に記載のリチウム系電池セル。
【請求項24】
前記第2のポリマーが、少なくとも29,000Daの初期平均分子量を有する、請求項23に記載のリチウム系電池セル。
【請求項25】
前記第2のポリマーが、ポリオキシエチレンおよびポリプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項26】
前記第2のポリマーが、少なくとも110,000Daの初期分子量を有する、請求項25に記載のリチウム系電池セル。
【請求項27】
前記第2のポリマーが、少なくとも310,000Daの初期分子量を有する、請求項26に記載のリチウム系電池セル。
【請求項28】
前記第2のポリマーが、少なくとも910,000Daの初期分子量を有する、請求項27に記載のリチウム系電池セル。
【請求項29】
前記第2のポリマーが、少なくとも2,100,000Daの初期分子量を有する、請求項28に記載のリチウム系電池セル。
【請求項30】
前記第2のポリマーおよび前記第1のポリマーが、2:1未満および0.01:1を超える初期平均分子量比を有する、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項31】
前記第2のポリマーおよび前記第1のポリマーが、1:1未満の初期平均分子量比を有する、請求項30に記載のリチウム系電池セル。
【請求項32】
前記第2のポリマーおよび前記第1のポリマーが、0.5:1未満の初期平均分子量比を有する、請求項31に記載のリチウム系電池セル。
【請求項33】
前記第2のポリマーおよび前記第1のポリマーが、0.2:1未満の初期平均分子量比を有する、請求項32に記載のリチウム系電池セル。
【請求項34】
前記第2のポリマーおよび前記第1のポリマーが、0.01:1と1:1との間の初期重量比を有する、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項35】
前記第2のポリマーおよび前記第1のポリマーが、0.02:1と0.5:1との間の初期重量比を有する、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項36】
前記第2のポリマーおよび前記第1のポリマーが、0.05:1と0.3:1との間の初期重量比を有する、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項37】
前記第2のポリマーおよび前記第1のポリマーが、0.1:1と0.2:1との間の初期重量比を有する、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項38】
前記相溶化剤が少なくとも1つの有機流体を含み、前記第1のポリマーが前記押出混合物の重量の約10~60%を構成し、前記第2のポリマーが前記押出混合物の重量の約2.1~9.9%を構成し、前記相溶化剤が前記押出混合物の重量の約40~75%を構成する、請求項9に記載のリチウム系電池セル。
【請求項39】
前記相溶化剤が、炭化水素油、有機エステル、およびフタレートからなる群から選択される少なくとも1つの部材である、請求項38に記載のリチウム系電池セル。
【請求項40】
前記相溶化剤が、70℃で約1mmHg~50mmHgの蒸気圧、20℃で約0.1mmHg~5mmHgの蒸気圧、および約170℃~250℃の沸点を有し、前記相溶化剤が、少なくとも20℃の幅の沸点範囲を有する流体の混合物を含む、請求項39に記載のリチウム系電池セル。
【請求項41】
前記第2のポリマーの平均初期分子量と前記第2のポリマーの平均最終分子量との比が、少なくとも1:1および1000:1未満である、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項42】
前記リチウム系電池セルが、セル製造の完了時に、10ppmを超える水を最初に含有する、請求項1に記載のリチウム系電池セル。
【請求項43】
前記リチウム系電池セルが、セル製造の完了時に、40ppmを超える水を最初に含有する、請求項42に記載のリチウム系電池セル。
【請求項44】
(a)押出混合物を溶融押出して、キャストシートを形成するステップであって、該押出混合物が少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤を含み、該相溶化剤が第1の有機流体を含む、ステップと、
(b)該キャストシートを第1のガスゾーン内で冷却するステップであって、該第1のガスゾーンは第1の有機蒸気を含み、該第1の有機蒸気は蒸気形態の該第1の有機流体を含み、該第1の有機蒸気は、該第1のガスゾーンの少なくとも一部内にUELを超える濃度で存在する、ステップと、
(c)第2のガスゾーン内で冷却されたキャストシートの少なくともいくらかの延伸を実施するステップであって、該第2のガスゾーンは第2の有機蒸気を含み、該第2の有機蒸気は蒸気形態の該第1の有機流体を含み、該第2の有機蒸気は該第2のガスゾーン内にLEL未満の濃度で存在する、ステップと、
を含む方法によって製造された微孔性シート製品。
【請求項45】
前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが少なくとも1つのポリオレフィンを含む、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項46】
前記少なくとも1つのポリオレフィンが、少なくとも1つのポリオレフィンホモポリマー、少なくとも1つのポリオレフィンコポリマー、少なくとも1つのポリオレフィンターポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項45に記載の微孔性シート製品。
【請求項47】
前記少なくとも1つのポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項46に記載の微孔性シート製品。
【請求項48】
前記少なくとも1つのポリオレフィンが、ポリエチレンホモポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、およびコモノマー単位として最大約10重量%の他のアルファ-オレフィンをその中に有するそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項47に記載の微孔性シート製品。
【請求項49】
前記少なくとも1つのポリオレフィンが約100,000~10,000,000Daの平均分子量を有する、請求項47に記載の微孔性シート製品。
【請求項50】
前記押出混合物が少なくとも1つの縮合ポリマーをさらに含み、該少なくとも1つの縮合ポリマーが、水に曝されると分子量の減少を受ける、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項51】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、少なくとも1000Daの最小絡み合い分子量を有する、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項52】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、少なくとも4000Daの最小絡み合い分子量を有する、請求項51に記載の微孔性シート製品。
【請求項53】
水に曝された後、前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、20%~90%の平均分子量の減少を受ける、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項54】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドおよびポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1つの部材である、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項55】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、コポリマーおよびターポリマーの少なくとも1つを含む、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項56】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、少なくとも2つのポリマーの混合物を含み、該少なくとも2つのポリマーのうちの少なくとも1つがコポリマーである、請求項55に記載の微孔性シート製品。
【請求項57】
全縮合ポリマーに対するコポリマー縮合ポリマーの初期重量比が0.1:1~0.9:1である、請求項56に記載の微孔性シート製品。
【請求項58】
全縮合ポリマーに対するコポリマー縮合ポリマーの初期重量比が0.3:1~0.8:1である、請求項57に記載の微孔性シート製品。
【請求項59】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが少なくとも1つのポリアミドを含む、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項60】
前記少なくとも1つのポリアミドが、少なくとも1つのホモポリマー、少なくとも1つのコポリマー、少なくとも1つのターポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項59に記載の微孔性シート製品。
【請求項61】
前記少なくとも1つのポリアミドが、m-クレゾールと比較して、少なくとも1.4:1の相対粘度を有する、請求項59に記載の微孔性シート製品。
【請求項62】
前記少なくとも1つのポリアミドが、m-クレゾールと比較して、少なくとも1.9:1の相対粘度を有する、請求項61に記載の微孔性シート製品。
【請求項63】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、少なくとも12,000Daの初期平均分子量を有する、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項64】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、少なくとも29,000Daの初期平均分子量を有する、請求項63に記載の微孔性シート製品。
【請求項65】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、ポリオキシエチレンおよびポリプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項66】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、少なくとも110,000Daの初期分子量を有する、請求項65に記載の微孔性シート製品。
【請求項67】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーが、少なくとも2100,000Daの初期分子量を有する、請求項66に記載の微孔性シート製品。
【請求項68】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーおよび前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、2:1未満および0.01:1を超える初期平均分子量比を有する、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項69】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーおよび前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、0.2:1未満の初期平均分子量比を有する、請求項68に記載の微孔性シート製品。
【請求項70】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーおよび前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、0.01:1と1:1との間の初期重量比を有する、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項71】
前記少なくとも1つの縮合ポリマーおよび前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、0.1:1と0.2:1との間の初期重量比を有する、請求項70に記載の微孔性シート製品。
【請求項72】
前記相溶化剤が、炭化水素油、有機エステル、およびフタレートからなる群から選択される少なくとも1つの部材である、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項73】
前記相溶化剤が、70℃で約1mmHg~50mmHgの蒸気圧、20℃で約0.1mmHg~5mmHgの蒸気圧、および約170℃~250℃の沸点を有する、請求項72に記載の微孔性シート製品。
【請求項74】
前記相溶化剤が、少なくとも20℃の幅の沸点範囲を有する流体の混合物を含む、請求項73に記載の微孔性シート製品。
【請求項75】
前記押出混合物が、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび前記相溶化剤からなる、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項76】
前記押出混合物が、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、前記少なくとも1つの縮合ポリマーおよび前記相溶化剤からなる、請求項50に記載の微孔性シート製品。
【請求項77】
前記第1の有機蒸気が、蒸気形態の前記第1の有機流体からなる、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項78】
前記第1の有機蒸気が、蒸気形態の前記第1の有機流体および蒸気形態の第2の有機流体を含む、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項79】
前記第1のガスゾーンが-20℃~160℃の範囲内の温度に維持される、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項80】
前記キャストシートが、0.01~20秒間前記第1のガスゾーンに存在する、請求項79に記載の微孔性シート製品。
【請求項81】
前記第1の有機蒸気が、前記第1のガスゾーン内に少なくとも3%の体積濃度で存在する、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項82】
前記第1の有機蒸気が、前記第1のガスゾーン内に少なくとも7%の体積濃度で存在する、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項83】
前記第1の有機蒸気が、前記第1のガスゾーン内に少なくとも15%の体積濃度で存在する、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項84】
前記第1の有機蒸気が、前記第1のガスゾーン内に少なくとも30%の体積濃度で存在する、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項85】
前記第1のガスゾーンが、エンクロージャで囲まれている、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項86】
前記第1のガスゾーン内の酸素に対する前記第1の有機蒸気の濃度比が0.1:1より大きい、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項87】
前記第1のガスゾーン内の酸素に対する前記第1の有機蒸気の濃度比が0.5:1より大きい、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項88】
前記第1のガスゾーン内の酸素に対する前記第1の有機蒸気の濃度比が1:1より大きい、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項89】
前記第1のガスゾーン内の酸素に対する前記第1の有機蒸気の濃度比が2:1より大きい、請求項44に記載の微孔性シート製品。
【請求項90】
微孔性シート製品を製造する方法であって、
(a)押出混合物を溶融押出して、キャストシートを形成するステップであって、該押出混合物が少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤を含み、該相溶化剤が第1の有機流体を含む、ステップと、
(b)該キャストシートを第1のガスゾーン内で冷却するステップであって、該第1のガスゾーンは第1の有機蒸気を含み、該第1の有機蒸気は蒸気形態の該第1の有機流体を含み、該第1の有機蒸気は、該第1のガスゾーンの少なくとも一部内にUELを超える濃度で存在する、ステップと、
(c)第2のガスゾーン内で冷却された該キャストシートの少なくともいくらかの延伸を実施するステップであって、該第2のガスゾーンは第2の有機蒸気を含み、該第2の有機蒸気は蒸気形態の該第1の有機流体を含み、該第2の有機蒸気は該第2のガスゾーン内にLEL未満の濃度で存在する、ステップと、
を含む方法。
【請求項91】
前記第1の有機蒸気が、前記第1のガスゾーン内に少なくとも3%の体積濃度で存在する、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記第1のガスゾーン内の酸素に対する前記第1の有機蒸気の濃度比が0.1:1より大きい、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記第1の有機蒸気の一部がキャストロール上で凝縮し、その上に流体の凝縮物のスキン層を形成し、前記冷却ステップが、該キャストロール上の凝縮物の前記スキン層上で前記キャストシートを冷却するステップを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記UELを超える濃度が、前記第1のガスゾーンを画定するエンクロージャからの周囲酸素の流出によって達成される、請求項90に記載の方法。
【請求項95】
該エンクロージャは、その中への水蒸気の進入を最小限に抑えるように構成される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記溶融押出ステップが、押出機スクリューのrpmを増加することによって、および/または混練ブロックを加えることによって、押出機のエネルギー入力を増加するステップを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項97】
前記第1の有機蒸気が、前記第1のガスゾーン全体にわたってUELを超える濃度で存在する、請求項90に記載の方法。
【請求項98】
前記第1の有機蒸気が、前記第1のガスゾーンの一部のみにおいてUELを超える濃度で存在する、請求項90に記載の方法。
【請求項99】
前記第1のガスゾーンがエンクロージャによって画定され、冷却するステップが、少なくとも1つのチルドロールによって提供され、前記第1の有機蒸気が、前記エンクロージャの入口で、または入口付近から始まり、前記チルドロール付近まで延在して、UELを超える濃度で存在する、請求項90に記載の方法。
【請求項100】
(a)第1のポリマーと第2のポリマーとを含む微孔性シート製品であって、該第1のポリマーが熱可塑性ポリマーを含み、該第2のポリマーが、脱水重合反応で生成され、水に曝されると分子量の減少を受ける縮合重合ポリマーを含む、微孔性シート製品を提供するステップと、
(b)該微孔性シート製品を電気化学セルに組み込むステップであって、セル製造の完了時に、初期総重量を有する初期量の水が該電気化学セル内に存在し、水の該初期総重量に対する該第2のポリマーの該初期総重量の比が、約10:1~5,000:1の範囲内である、ステップと、
を含む方法。
【請求項101】
前記第2のポリマーが少なくとも1000Daの最小絡み合い分子量を有する、請求項100に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照] 本出願は、2019年8月27日に出願された発明者William Winchin Yenによる米国仮特許出願第62/892,283号明細書、および2020年1月28日に出願された発明者William Winchin Yenによる米国仮特許出願第62/966,862号明細書の米国特許法第119条(e)の下での利益を主張し、これらの両方の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に微孔性シート製品に関し、より詳細には、新規な微孔性シート製品、微孔性シート製品の電池セパレータとしての使用、電池セパレータを含む電気化学蓄電池、ならびに微孔性シート製品を形成するための新規な方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
微孔性シート製品は、例えば、電気化学蓄電池、食品包装材料、限外濾過装置等の多様な品目で一般的に使用される既知の物品である。例えば、電気化学蓄電池では、電池セパレータとして微孔性シート製品が一般的に使用されている。典型的には、電気化学蓄電池は、単一の電気化学セル、または互いに電気的に接続され、共通のハウジング内に収容された複数の電気化学セルのいずれかを含む。各電気化学セルは、典型的には、反対の極性の1対の電極を含む。1対の電極間の電流は、電解質によって維持される。電池システムの性質に応じて、電解質は、酸性、アルカリ性、または実質的に中性であり得る。電池セパレータは、典型的には、反対極性の電極間の電気化学蓄電池の各セルに設けられて、反対に充電された電極板間の直接接触を防止するが、これは、そのような直接接触がセルの短絡をもたらすためである。
【0004】
一般に、セパレータは、以下の品質のうちの1つまたは複数を有することが非常に望ましい。(i)高エネルギー密度のセルを提供するのを助けるために薄く軽量であること。(ii)電極板間のデンドライト形成を抑制する構造を有する。(iii)電極板上への電解組成物の取り込みを促進する能力を有し、そうすることで、電極板上への電解組成物の実質的に均一な分布を促進する(一般にウィッキングと呼ばれる効果)。(iv)電解伝導を自由に許容する特性を提供する。セパレータは、ピンホールなどの欠陥を実質的に含まないと同時に、経済的かつ環境的に安全な方法で作製されることがさらに非常に望ましい。
【0005】
1つの一般的なタイプの電池セパレータは、ポリオレフィンおよび液体可塑剤を含む組成物を押出成形し、その後、可塑剤を除去して微孔性構造を有するシートを製造することによって形成される微孔性シート製品を含む。典型的には、そのような可塑剤は高分子量油などで作られ、そのような可塑剤は、シートの形成の最初のステップ中にポリマー材料に対して相溶性の特性を提供するが、一方、シートの形成の後のステップ中には非相溶性であり、容易に抽出可能であるという考えである。抽出は、典型的には、相溶性の低分子量の第2の液体を使用して、冷却された最初に形成されたシートから可塑剤を洗浄することによって行われる。可塑剤の除去から生じる空隙は、得られるセパレータシート製品全体にわたって実質的に均一な多孔性を提供する。得られた混合液は、記載されたプロセスの廃棄副生成物である。そのような方法によって作製されたセパレータの例は、1981年9月1日に発行された発明者Lundquist,Jr.らの特許文献1に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
微孔性シート製品を形成するための別の技術は、処理されたシートに微孔性を生成するために、ポリオレフィンシート材料を延伸し、かつアニーリングすることを含む。この種の技術の例は、以下の文献、1969年2月11日に発行された、発明者Bierenbaumらの特許文献2、1971年1月26日に発行された、発明者Isaacsonらによる特許文献3、1972年7月25日に発行された、Druinらの特許文献4、1991年2月19日に発行された、発明者Kamaeiらの特許文献5、1994年7月12日発行された、発明者Gillberg-LaForceの特許文献6に開示されており、これらの文献はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
前述の技術の別の例は、1972年7月25日に発行され、参照により本明細書に組み込まれる、発明者Zimmermanらの特許文献7に開示されている。前述の特許では、非多孔質結晶性弾性ポリマー出発フィルムから連続気泡微多孔性ポリマーフィルムを調製するためのプロセスが開示されており、このプロセスは、(1)延伸方向に対して垂直または垂直に伸長した多孔性表面領域または領域が形成されるまでの弾性フィルムの冷間延伸、すなわち冷延伸、(2)延伸方向に対して平行に伸長したフィブリルおよび細孔または連続気泡が形成されるまでの冷間延伸フィルムの熱間延伸、すなわち熱延伸、およびその後(3)得られた多孔性フィルムを張力下で、すなわち実質的に一定の長さで加熱または熱固定して、フィルムに安定性を付与することを含む。この特許によれば、弾性出発フィルムは、好ましくは、ポリプロピレンなどの結晶性ポリマーから製造され、ポリマーを溶融押出してフィルムにし、押出物をドローダウン比で取り出して配向フィルムを得、その後、初期結晶化度を改善または向上させるために、必要に応じて配向フィルムを加熱またはアニーリングする。
【0008】
本発明者が認識した前述の技術の1つの欠点は、実際には、得られたフィルムの多孔性が約40%未満に制限されることが多く、十分に制御されないことである。
【0009】
微孔性シート製品を形成するためのさらなる技術は、他の特許および刊行物に開示されている。例えば、1996年4月2日に発行された、発明者Fortuinらの特許文献8には、ポリエチレンの微孔性フィルムを形成する方法が開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。前述の特許によれば、方法は、ポリオレフィンの溶液を第1の溶媒中に押し出し、続いて冷却し、溶媒を除去し、フィルムを延伸することを含み、フィルムは、冷却剤(例えば、水)と接触される前に、フィルムの両面がポリオレフィンのための第2の溶媒と密接に接触させられる。
【0010】
2015年10月13日に発行され、参照により本明細書に組み込まれる、発明者Yenによる特許文献9には、電池セパレータとしての使用に適したシート製品およびシート製品を形成する方法が開示されている。この方法は、熱可塑性ポリマーと高い蒸気圧を有する流体との混合物を形成することと、混合物をシート材料に成形することと、シート材料を高温で延伸/流体気化させて、0.15~1の流体パーセント対ポリマー結晶化度パーセントの比を有する中間材料を形成し、続いて、シートから流体の残りの一部を除去しながら、より低い温度で第2の延伸/流体気化させることとを含む。得られたシートをアニールし、流体の残りを除去して、その厚さにわたって小さく、かつより大きい細孔層構成の成層構造を備える厚さを有するシート製品を形成する。
【0011】
2013年7月16日に発行され、参照により本明細書に組み込まれる、発明者Usamiらの特許文献10には、厚さ方向に相互接続された多数の微細孔を有する多孔性積層体を製造する方法であって、ハードセグメントおよびソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂からなる中間層と、フィラー含有樹脂からなり、中間層の両側にそれぞれ外層として配置される2つの非多孔性外層とを備える少なくとも3つの層を備える積層体が製造されるステップと、得られた積層体は超臨界または亜臨界流体で含浸され、この状態が流体を気化させるために緩和され、それによって層間層を多孔性化するステップと、それぞれ両側に配置された2つの非多孔性外層が延伸することによって多孔性化されるステップとを含む方法が開示されている。
【0012】
2020年3月10日に発行され、参照により本明細書に組み込まれる、発明者Yenによる特許文献11には、(i)環状オレフィンコポリマー、(ii)電解質膨潤性熱可塑性物質、および(iii)環状オレフィンコポリマーと電解質膨潤性熱可塑性物質との混合を促進する相溶化剤を含む押出混合物を使用してシート材料を溶融押出することを含むプロセスによって製造された微孔性シート製品が開示されている。一例として、環状オレフィンコポリマーはエチレン-ノルボルネンコポリマーであってもよく、電解質膨潤性熱可塑性物質はポリエチレンオキシドであってもよく、相溶化剤はミネラルスピリットであってもよい。
【0013】
2007年4月26日に発行され、参照により本明細書に組み込まれる、発明者Zhamuらの特許文献12には、(a)プロトン伝導性ポリマー、(b)水素分子と酸素分子との間の化学反応を促進して膜中に水を生成する触媒、および(c)このポリマー中に分散された潮解性材料を備える自己加湿型プロトン交換膜が開示されている。潮解性材料は、本質的に一定量の水分を吸収して保持し、PEM構造内のプロトンの移動を維持する。
【0014】
関心のある可能性のある他の文書は、以下、発明者Yenの2017年6月15日に公開された特許文献13、および2017年6月1日に公開された発明者Yenの特許文献14を含むことができ、それらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
セパレータ製造のための既存の技術は、典型的には、鋳造するステップと、セパレータネットワークから低揮発性可塑剤油を抽出するステップとを必要とする。そのような技術は、押出成形されたセパレータベースシートに直接接触するために冷却ロールを使用することが多い。しかしながら、このような冷却ロールが使用される場合、厚さ30から50ミクロンのスキン層が典型的にはシートの表面上に形成され、これは望ましくない。このスキン層は、膜産業でよく知られており、シート表面の多孔性を低下させ、細孔サイズを小さくし、電池用途のイオン伝導性を低下させる。
【0016】
リチウム系の一次および二次電気化学貯蔵システムには多くの種類があり、そのようなシステムの例には、リチウムチオニルクロリド系、リチウムマンガンジオキシド系、リチウム鉄硫化物系、およびリチウムイオンホスフェート系が含まれるが、これらに限定されない。様々なリチウム系の電気化学的貯蔵システムのうち、より一般的なタイプの1つは、一般に、単にリチウムイオンセルと呼ばれる。リチウムイオンセルは、単一のリチウムイオンセルを備えることができ、別法として、電気的に接続された複数のリチウムイオンセルを備えることができる。リチウムイオンセルの各セルは、典型的には、アノード、カソード、電解質、およびセパレータを含む。アノードは、典型的には、黒鉛などの炭素で作られる。カソードは、典型的には、LiCoOまたはLiMnなどの金属酸化物で作られる。電解質は、典型的には、リチウム塩が溶解した有機溶媒を含む。例えば、有機溶媒は、多くの場合、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物などの有機カーボネートの混合物である。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)であることができる。
【0017】
純粋なリチウムは反応性が高く、水と激しく反応して水酸化リチウムや水素ガスのような物質を生成する。フッ化水素酸も生成され得る。理解され得るように、リチウムイオンセル内での水酸化リチウム、水素ガス、およびフッ化水素酸の生成は、そのような生成物がセル性能を損なう可能性があり、セルから漏れた場合に環境上の危険を引き起こす可能性があるため、非常に望ましくない。このため、リチウムイオンセルの電解質溶媒は、典型的には、上述の種類の非水性電解質である。さらに、リチウムと水との反応が起こり得る可能性を最小限に抑えるために、セルの構成要素は、通常、セル内への水の進入を防止することを意図した密閉容器内に収容される。それにもかかわらず、そのような努力にもかかわらず、何らかの水が、典型的には、しばしばセル組み立て中にセル内に侵入するか、または金属酸化物カソードなどの1つまたは複数の電池構成要素内に封入される。いくつかの製造業者は、セル製造プロセスの一部として、高温で一定期間(例えば、85℃で8時間)、セルを真空乾燥することによってこの問題に対処しようとしている。しかし、このような乾燥であっても、10ppmという低い濃度であっても、水は、セル性能を損なう可能性があるか、または環境への危険を提示する可能性がある多くの分解生成物を触媒し始める可能性がある。
【発明の概要】
【0018】
本発明の一態様によれば、リチウム系電池セルであって、(a)非水性溶媒とリチウム塩とを含み、リチウム塩が非水性溶媒に溶解している、電解質と、(b)アノードであって、アノードが該電解質と接触する、アノードと、(c)カソードであって、カソードが電解質と接触する、カソードと、(d)電池セパレータであって、電池セパレータがアノードとカソードとを分離し、電池セパレータが、第1のポリマーと第2のポリマーとを含む微孔性シート製品であり、第1のポリマーが熱可塑性ポリマーを含み、第2のポリマーが、脱水重合反応で生成され、水に曝されると分子量の減少を受ける縮合重合ポリマーを含み、セル製造の完了時に、第2のポリマーが初期総重量を有する、電池セパレータと、(e)ハウジングであって、電解質、アノード、カソード、および電池セパレータがハウジング内に配置される、ハウジングとを備え、(f)セル製造の完了時に、初期総重量を有する初期量の水がハウジング内に存在し、水の初期総重量に対する第2のポリマーの初期総重量の比が約10:1~5,000:1の範囲内である、リチウム系電池セルが提供される。
【0019】
本発明のより詳細な特徴において、第1のポリマーは、少なくとも1つのポリオレフィンを含むことができる。
【0020】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリオレフィンが、少なくとも1つのポリオレフィンホモポリマー、少なくとも1つのポリオレフィンコポリマー、少なくとも1つのポリオレフィンターポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0021】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0022】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリオレフィンが、ポリエチレンホモポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、およびコモノマー単位として最大約10重量%の他のアルファ-オレフィンをその中に有するそれらのコポリマーからなる群から選択され得る。
【0023】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリオレフィンは、約100,000~10,000,000Daの平均分子量を有し得る。
【0024】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも1000Daの最小絡み合い分子量を有し得る。
【0025】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも4000Daの最小絡み合い分子量を有し得る。
【0026】
本発明のより詳細な特徴において、微孔性シート製品が、(a)押出混合物を溶融押出してシート材料を形成するステップを含む方法によって製造され、押出混合物は、(i)第1のポリマー、(ii)第2のポリマー、および(iii)相溶化剤を含み、相溶化剤は、第1および第2のポリマーの混合を促進し、(b)次いで、シート材料を冷却するステップにより、シート材料に微細孔が形成される。
【0027】
本発明のより詳細な特徴において、水へ曝した後、第2のポリマーは、20%~90%の平均分子量の減少を受け得る。
【0028】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーが、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドおよびポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1つの部材であり得る。
【0029】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、コポリマーおよびターポリマーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0030】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも2つのポリマーの混合物を含むことができ、少なくとも2つのポリマーのうちの少なくとも1つはコポリマーであり得る。
【0031】
本発明のより詳細な特徴において、コポリマー縮合ポリマー対全縮合ポリマーの初期重量比は、0.1:1~0.9:1であり得る。
【0032】
本発明のより詳細な特徴において、コポリマー縮合ポリマー対全縮合ポリマーの初期重量比は、0.2:1~0.85:1であり得る。
【0033】
本発明のより詳細な特徴において、コポリマー縮合ポリマー対全縮合ポリマーの初期重量比は、0.3:1~0.8:1であり得る。
【0034】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも1つのポリアミドを含むことができる。
【0035】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリアミドが、少なくとも1つのホモポリマー、少なくとも1つのコポリマー、少なくとも1つのターポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0036】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾールと比較して、少なくとも1.4:1の相対粘度を有し得る。
【0037】
本発明のより詳細な特徴において、水の初期総重量に対する第2のポリマーの初期総重量の比が少なくとも50:1である。
【0038】
本発明のより詳細な特徴において、水の初期総重量に対する第2のポリマーの初期総重量の比が少なくとも500:1である。
【0039】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも12,000Daの初期平均 分子量を有し得る。
【0040】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも20,000Daの初期平均 分子量を有し得る。
【0041】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも29,000Daの初期平均分子量を有し得る。
【0042】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、ポリオキシエチレンおよびポリプロピレングリコールからなる群から選択され得る。
【0043】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも110,000Daの初期平均 分子量を有し得る。
【0044】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも310,000Daの初期平均 分子量を有し得る。
【0045】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも910,000Daの初期平均 分子量を有し得る。
【0046】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも2,100,000Daの初期平均分子量を有し得る。
【0047】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーおよび第1のポリマーは、2:1未満および0.01:1を超える初期平均分子量比を有し得る。
【0048】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーおよび第1のポリマーは、1:1未満の初期平均分子量比を有し得る。
【0049】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーおよび第1のポリマーは、0.5:1未満の初期平均分子量比を有し得る。
【0050】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーおよび第1のポリマーは、0.2:1未満の初期平均分子量比を有し得る。
【0051】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーおよび第1のポリマーは、0.01:1~1:1の初期重量比を有し得る。
【0052】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーおよび第1のポリマーは、0.02:1~0.5:1の初期重量比を有し得る。
【0053】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーおよび第1のポリマーは、0.05:1~0.3:1の初期重量比を有し得る。
【0054】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーおよび第1のポリマーは、0.1:1~0.2:1の初期重量比を有し得る。
【0055】
本発明のより詳細な特徴において、相溶化剤が少なくとも1つの有機流体を含むことができ、第1のポリマーが押出混合物の重量の約10~60%を構成することができ、第2のポリマーが押出混合物の重量の約2.1~9.9%を構成することができ、相溶化剤が押出混合物の重量の約40~75%を構成することができる。
【0056】
本発明のより詳細な特徴において、相溶化剤は、炭化水素油、有機エステル、およびフタレートからなる群から選択される少なくとも1つの部材であることができる。
【0057】
本発明のより詳細な特徴において、相溶化剤が、70℃で約1mmHg~50mmHgの蒸気圧、20℃で約0.1mmHg~5mmHgの蒸気圧、および約170℃~250℃の沸点を有することができ、相溶化剤が、少なくとも20℃の幅の沸点範囲を有する流体の混合物を含むことができる。
【0058】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーの平均初期分子量と第2のポリマーの平均最終分子量との比は、少なくとも1:1および1000:1未満であり得る。
【0059】
本発明のより詳細な特徴において、リチウム系電池セルは、最初に10ppmを超える水を含有することができる。
【0060】
本発明のより詳細な特徴において、リチウム系電池セルは、最初に40ppmを超える水を含有することができる。
【0061】
本発明の別の態様によれば、リチウム系電池セルであって、(a)非水性溶媒とリチウム塩とを含み、リチウム塩が非水性溶媒に溶解している、電解質と、(b)アノードであって、アノードが該電解質と接触する、アノードと、(c)カソードであって、カソードが該電解質と接触する、カソードと、(d)電池セパレータであって、電池セパレータがアノードとカソードとを分離し、電池セパレータが、第1のポリマーと第2のポリマーとを含む微孔性シート製品であり、第1のポリマーが熱可塑性ポリマーを含み、第2のポリマーが、脱水重合反応で生成され、水に曝されると分子量の減少を受ける縮合重合ポリマーを含み、セル製造の完了時に、第2のポリマーが初期総重量を有する、電池セパレータと、(e)ハウジングであって、電解質、アノード、カソード、および電池セパレータがハウジング内に配置される、ハウジングとを備え、(f)セル製造の完了時に、初期量の水がハウジング内に存在し、第2のポリマーが、初期量の水の実質的にすべてと反応して、約20%~90%の分子量の減少を受け、第2のポリマーが、少なくとも1000Daの最小絡み合い分子量を有する、リチウム系電池セルが提供される。
【0062】
本発明の別の態様によれば、微孔性シート製品であって、(a)押出混合物を溶融押出して、キャストシートを形成するステップであって、押出混合物が少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤を含み、相溶化剤が第1の有機流体を含む、ステップと、(b)キャストシートを第1のガスゾーン内で冷却するステップであって、第1のガスゾーンは第1の有機蒸気を含み、第1の有機蒸気は蒸気形態の第1の有機流体を含み、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーンの少なくとも一部内にUELを超える濃度で存在する、ステップと、(c)第2のガスゾーン内で冷却されたキャストシートの少なくともいくらかの延伸を実施するステップであって、第2のガスゾーンは第2の有機蒸気を含み、第2の有機蒸気は蒸気形態の第1の有機流体を含み、第2の有機蒸気は第2のガスゾーン内にLEL未満の濃度で存在する、ステップとを含む方法によって製造される微孔性シート製品が提供される。
【0063】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、少なくとも1つのポリオレフィンを含むことができる。
【0064】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリオレフィンが、少なくとも1つのポリオレフィンホモポリマー、少なくとも1つのポリオレフィンコポリマー、少なくとも1つのポリオレフィンターポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0065】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0066】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリオレフィンが、ポリエチレンホモポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、およびコモノマー単位として最大約10重量%の他のアルファ-オレフィンをその中に有するそれらのコポリマーからなる群から選択され得る。
【0067】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリオレフィンは、約100,000~10,000,000Daの平均分子量を有し得る。
【0068】
本発明のより詳細な特徴において、押出混合物は、少なくとも1つの縮合ポリマーをさらに含むことができ、少なくとも1つの縮合ポリマーは、水に曝されると、分子量の減少を受ける可能性がある。
【0069】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、少なくとも1000 Daの最小絡み合い分子量を有し得る。
【0070】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、少なくとも4000Daの最小絡み合い分子量を有し得る。
【0071】
本発明のより詳細な特徴において、水へ曝した後、少なくとも1つの縮合ポリマーは、20%~90%の平均分子量の減少を受け得る。
【0072】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドおよびポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1つの部材であり得る。
【0073】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、コポリマーおよびターポリマーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0074】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、少なくとも2つのポリマーの混合物を含むことができ、少なくとも2つのポリマーのうちの少なくとも1つはコポリマーであり得る。
【0075】
本発明のより詳細な特徴において、コポリマー縮合ポリマー対全縮合ポリマーの初期重量比は、0.1:1~0.9:1であり得る。
【0076】
本発明のより詳細な特徴において、コポリマー縮合ポリマー対全縮合ポリマーの初期重量比は、0.3:1~0.8:1であり得る。
【0077】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、少なくとも1つのポリアミドを含むことができる。
【0078】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリアミドが、少なくとも1つのホモポリマー、少なくとも1つのコポリマー、少なくとも1つのターポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0079】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾールと比較して、少なくとも1.4:1の相対粘度を有し得る。
【0080】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つのポリアミドは、m-クレゾールと比較して、少なくとも1.9:1の相対粘度を有し得る。
【0081】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、少なくとも12,000Daの初期平均分子量を有し得る。
【0082】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、少なくとも29,000Daの初期平均分子量を有し得る。
【0083】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、ポリオキシエチレンおよびポリプロピレングリコールからなる群から選択され得る。
【0084】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、少なくとも110,000Daの初期分子量を有し得る。
【0085】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーは、少なくとも2,100,000Daの初期分子量を有し得る。
【0086】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーおよび少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、2:1未満および0.01:1を超える初期平均重量比を有し得る。
【0087】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーおよび少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、0.2:1未満の初期平均重量比を有し得る。
【0088】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーおよび少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、0.01:1~1:1の初期重量比を有し得る。
【0089】
本発明のより詳細な特徴において、少なくとも1つの縮合ポリマーおよび少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、0.1:1~0.2:1の初期重量比を有し得る。
【0090】
本発明のより詳細な特徴において、相溶化剤は、炭化水素油、有機エステル、およびフタレートからなる群から選択される少なくとも1つの部材であることができる。
【0091】
本発明のより詳細な特徴において、相溶化剤は、70℃で約1mmHg~50mmHgの蒸気圧、20℃で約0.1mmHg~5mmHgの蒸気圧、および約170℃~250℃の沸点を有することができる。
【0092】
本発明のより詳細な特徴において、相溶化剤は、少なくとも20℃の幅の沸点範囲を有する流体の混合物を含むことができる。
【0093】
本発明のより詳細な特徴において、押出混合物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤からなり得る。
【0094】
本発明のより詳細な特徴において、押出混合物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、少なくとも1つの縮合ポリマー、および相溶化剤からなり得る。
【0095】
本発明のより詳細な特徴において、第1の有機蒸気は、蒸気形態の第1の有機流体からなり得る。
【0096】
本発明のより詳細な特徴において、第1の有機蒸気は、蒸気形態の第1の有機流体および蒸気形態の第2の有機流体を含むことができる。
【0097】
本発明のより詳細な特徴において、第1のガスゾーンは、-20℃~160℃の範囲内の温度に維持され得る。
【0098】
本発明のより詳細な特徴において、キャストシートは、0.01~20秒の期間にわたって第1のガスゾーンに存在することができる。
【0099】
本発明のより詳細な特徴では、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内に少なくとも3%の体積濃度で存在することができる。
【0100】
本発明のより詳細な特徴では、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内に少なくとも7%の体積濃度で存在することができる。
【0101】
本発明のより詳細な特徴では、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内に少なくとも15%の体積濃度で存在することができる。
【0102】
本発明のより詳細な特徴では、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内に少なくとも30%の体積濃度で存在することができる。
【0103】
本発明のより詳細な特徴では、第1のガスゾーンは、エンクロージャで囲まれ得る。
【0104】
本発明のより詳細な特徴では、第1のガスゾーン内の酸素に対する第1の有機蒸気の濃度比は、0.1:1より大きい可能性がある。
【0105】
本発明のより詳細な特徴では、第1のガスゾーン内の酸素に対する第1の有機蒸気の濃度比は、0.5:1より大きい可能性がある。
【0106】
本発明のより詳細な特徴では、第1のガスゾーン内の酸素に対する第1の有機蒸気の濃度比は、1:1より大きい可能性がある。
【0107】
本発明のより詳細な特徴では、第1のガスゾーン内の酸素に対する第1の有機蒸気の濃度比は、2:1より大きい可能性がある。
本発明のやはり別の態様によれば、微孔性シート製品を製造する方法が提供され、その方法は、
(a)押出混合物を溶融押出して、キャストシートを形成するステップであって、押出混合物が少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤を含み、相溶化剤が第1の有機流体を含む、ステップと、
(b)キャストシートを第1のガスゾーン内で冷却するステップであって、第1のガスゾーンは第1の有機蒸気を含み、第1の有機蒸気は蒸気形態の第1の有機流体を含み、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーンの少なくとも一部内にUELを超える濃度で存在する、ステップと、
(c)第2のガスゾーン内で冷却されたキャストシートの少なくともいくらかの延伸を実施するステップであって、第2のガスゾーンは第2の有機蒸気を含み、第2の有機蒸気は蒸気形態の第1の有機流体を含み、第2の有機蒸気は該第2のガスゾーン内にLEL未満の濃度で存在する、ステップと、
を含む。
【0108】
本発明のより詳細な特徴では、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内に少なくとも3%の体積濃度で存在することができる。
【0109】
本発明のより詳細な特徴では、第1のガスゾーン内の酸素に対する第1の有機蒸気の濃度比は、0.1:1より大きい可能性がある。
【0110】
本発明のより詳細な特徴では、第1の有機蒸気の一部は、キャストロール上で凝縮し、その上に流体の凝縮物のスキン層を形成することができ、前記冷却ステップは、キャストロール上の前記凝縮物のスキン層上でキャストシートを冷却するステップを含むことができる。
【0111】
本発明のより詳細な特徴では、前記UELを超える濃度は、第1のガスゾーンを画定するエンクロージャからの周囲酸素の流出によって達成され得る。
【0112】
本発明のより詳細な特徴では、エンクロージャは、その中への水蒸気の侵入を最小限に抑えるように構成され得る。
【0113】
本発明のより詳細な特徴において、溶融押出ステップが、押出機スクリューのrpmを増加することによって、および/または混練ブロックを加えることによって、押出機のエネルギー入力を増加するステップを含むことができる。
【0114】
本発明のより詳細な特徴において、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーンの全体にわたってUELを超える濃度で存在することができる。
【0115】
本発明のより詳細な特徴において、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーンの一部のみにおいてUELを超える濃度で存在することができる。
【0116】
本発明のより詳細な特徴において、第1のガスゾーンは、エンクロージャによって画定されることができ、冷却するステップが、少なくとも1つのチルドロールによって提供されることができ、第1の有機蒸気が、エンクロージャの入口で、または入口付近から始まり、チルドロール付近まで延在して、UELを超える濃度で存在することができる。
【0117】
本発明の追加の態様により、(a)第1のポリマーと第2のポリマーとを含む微孔性シート製品であって、第1のポリマーが熱可塑性ポリマーを含み、第2のポリマーが、脱水重合反応で生成され、水に曝されると分子量の減少を受ける縮合重合ポリマーを含む、微孔性シート製品を提供するステップと、(b)微孔性シート製品を電気化学セルに組み込むステップであって、セル製造の完了時に、初期総重量を有する初期量の水が電気化学セル内に存在し、水の初期総重量に対する該第2のポリマーの初期総重量の比が、約10:1~5,000:1の範囲内である、ステップと、
を含む方法が提供される。
【0118】
本発明のより詳細な特徴において、第2のポリマーは、少なくとも1000Daの最小絡み合い分子量を有し得る。
【0119】
本発明の追加の態様によれば、微孔性シート製品を製造するためのシステムが提供される。
【0120】
本発明のより詳細な特徴では、システムは、(a)押出機と、(b)キャストシートを放出するための押出機の出口端部に配置されたダイヘッドと、(c)ダイヘッドからキャストシートを受け取り、キャストシートを冷却するように構成された第1のガスゾーンであって、第1のガスゾーンは第1の有機蒸気を含み、第1の有機蒸気は蒸気形態の第1の有機流体を含み、第1の有機蒸気は第1のガスゾーンの少なくとも一部内にUELを超える濃度で存在する、第1のガスゾーンと、(d)第2のガスゾーンであって、第2のガスゾーンは第2の有機蒸気を含み、第2の有機蒸気は蒸気形態の第1の有機流体を含み、第2の有機蒸気は第2のガスゾーン内のLEL濃度未満で存在する、第2のガスゾーンと、(e)冷却されたキャストシートを延伸するための手段であって、延伸手段の少なくとも一部が第2のガスゾーン内に配置される、手段とを備えることができる。
【0121】
本発明のより詳細な特徴において、第1のガスゾーンは、エンクロージャで囲まれる。
【0122】
本発明のより詳細な特徴では、第1のガスゾーンは、S-ラップキャスト構成に配置された複数のチルドロールを含む。
【0123】
本発明のより詳細な特徴では、第1のガスゾーンは、U-ラップキャスト構成に配置された1つまたは複数のチルドロールを含む。
【0124】
本発明のさらなる目的、ならびに態様、特徴および利点は、以下の説明に部分的に記載され、その説明から部分的に明らかになるか、または本発明の実施によって習得され得る。本明細書では、その一部を形成し、本発明を実施するための様々な実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするために十分に詳細に説明され、他の実施形態が利用されてもよく、本発明の範囲から逸脱することなく構造的変更が行われてもよいことが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって最もよく定義される。
【図面の簡単な説明】
【0125】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の様々な実施形態を示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。図面において、同様の参照番号は同様の部分を表す。
図1】本発明による電気化学セルの一実施形態の概略断面図である。
図2】本発明による微孔性シート製品を製造するためのシステムの一実施形態の概略側面図であり、システムはS-ラップキャスト構成を含む。
図3図2に示すキャスト構成に対する第1の代替キャスト構成の概略側面図である。
図4図2に示すキャスト構成に対する第2の代替キャスト構成の概略側面図である。
図5図2に示すキャスト構成に対する第3の代替キャスト構成の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0126】
本発明は、微孔性シート製品、電池セパレータとしての微孔性シート製品の使用、電池セパレータを含む電池セル、ならびに微孔性シート製品を製造する方法およびシステムに関する。
【0127】
特定の出発材料および/または特定の製造方法を使用することによって、望ましい特性(これは、例えば、均一な開放多孔性表面を含むことができる)を有する独特の微孔性シート製品を形成することができ、前述の出発材料および前述の製造方法の詳細は以下で十分に説明されることが、本発明者によって予想外に見出された。多くの場合、主題の微孔性シート製品を製造する方法は、低い製造コストで、環境的に望ましい方法で達成することができる。
【0128】
上述したように、リチウムイオン電池で一般的に遭遇する1つの問題は、導電性塩LiPFが加水分解反応において電池電解質中の水と反応し、水酸化リチウム、水素ガスおよび/またはフッ化水素酸のような望ましくない物質を生成する可能性があることである。これらの望ましくない製品の製造は、電池性能および電池寿命を低下させる可能性があり、また環境への漏れの場合に健康被害になる可能性があるので望ましくない。
【0129】
その結果、本発明の第1の態様は、LiPFとの前述の加水分解反応の程度を最小限に抑えることに役立つことができるので、そうすることで、加水分解反応から生じ得る水酸化リチウム、水素ガスおよびフッ化水素酸のような生成物の望ましくない生成を最小限に抑えることに役立つことができる成分を微孔性シート製品に組み込むことである。本発明の一態様によれば、これは、縮合重合ポリマーを微孔性シート製品に組み込むことによって達成することができ、縮合重合ポリマーはLiPFの代わりに優先的に加水分解を受けることができ、それによって水酸化リチウム、水素ガスおよび/またはフッ化水素酸のような望ましくない生成物の望ましくない生成に関連する上述の問題を最小限に抑える。このような縮合重合ポリマーの非限定的な例は、ポリアミドであり得る。ポリアミドは、モノマーすなわちジカルボン酸と、ジアミンとの間の脱水反応によって、またはアミノ酸もしくはそのラクタムから製造することができ、ここで水はそのような反応の副生成物である。ポリアミド中のモノマー分子の結合は、典型的にはアミド基の形成によって起こる。この重合反応の逆は加水分解であり、ポリアミドは捕捉剤として作用し、水または酸と反応し得る。したがって、そのようなポリマーをリチウムイオン電池のセパレータに組み込むことによって、このポリマーは、電池から水または酸を捕捉することができ、それによって電池の劣化を最小限に抑え、電池のサイクル寿命を延ばす。酸はまた、水による捕捉剤ポリマーの水和または加水分解を触媒するための鎖切断再水和反応の触媒として作用し得る。
【0130】
本発明の第2の態様は、微孔性シート製品を製造するための新規な方法およびシステムである。少なくともいくつかの実施形態では、微孔性シート製品は、好ましくはポリオレフィン組成物であるポリマー組成物からなるか、またはそれを含むことができ、微孔性シート製品は、2つの主表面およびそれらの間の厚さを有し得る。少なくともいくつかの実施形態では、微孔性シート製品は、初期に成形された材料として、(i)少なくとも30%の結晶化度を有する中程度の分子量ポリマー、好ましくはポリオレフィン、および(ii)約135から300℃の沸点および70℃で約1から50mmHgの蒸気圧を有する有機流体の、混合物の総重量に基づいて10から60重量パーセントからなり、またはそれを含み、ポリマーが少なくとも部分的に可溶性である混合物を押出成形または成形することによって形成され得る。混合物は、高温でポリマーと流体をブレンドすることによって形成され得る。初期に成形された材料(例えば、押出機のスリットダイヘッドを介して混合物を押し出すことによって)を形成すると、成形された材料またはキャストシートは、冷却して相分離を開始しながらキャストシートが存在することができる、特定のタイプの蒸気ゾーンと接触することができる。成形された材料またはキャストシートは、チルドロール上または冷却浴中の冷却媒体によってさらに冷却され得る。
【0131】
少なくともいくつかの実施形態では、前述の蒸気ゾーンは、爆発上限(UEL)を超える有機流体の蒸気で維持され得る。爆発上限を超える有機流体蒸気のそのような維持は、冷却媒体(蒸気および流体)に対するキャストシート表面の相溶性を改善することができ、別個の流体対ポリマー(液体対固体)相分離を促進することができ、それによってキャストシートの連続気泡細孔成長速度を増加させる。溶融キャストシートと非相溶性蒸気または流体との間の接触は、ポリマーによる流体の部分的な封入を引き起こし得る。これは、小さな、曲がりくねった、または独立気泡の細孔をもたらす可能性があり、これは、場合によっては封止されたシート表面に対応し、電解質のウェットアウト不良を示す可能性がある。少なくともいくつかの実施形態では、冷却蒸気および流体は、160℃未満の温度に維持されることができ、成形された材料を凝固させるのに十分な滞留時間にわたってポリマーと流体との初期混合物を形成するのに利用される実質的に同じ有機流体を含むことができる。成形された材料が、爆発上限を超えるガスの冷却ゾーンを出た後、成形された材料をさらに処理することができる。より具体的には、少なくともいくつかの実施形態では、冷却ゾーンの後、後続のステップは、流体の爆発下限(LEL)未満の環境で維持され得る。
【0132】
次いで、冷却され、成形されたシート材料は、成形された材料から規定量の流体を除去しながら、シートの2段階延伸/流体気化を受けることができる。第1の延伸/流体気化ステップでは、初期に成形された材料を少なくとも縦方向に延伸することができる。次いで、第1の延伸された成形された材料は、横方向に(任意選択的に、縦方向に)延伸する別個の第2の延伸/気化ステップを受けることができる。得られた第2の延伸された成形された材料は、所望の得られたシート製品を製造するために、機械または横方向の張力下である期間にわたって所定の高温アニーリングを受けることができる。シート製品は、寸法安定性をさらに改善するために、延伸方向の一方または両方で任意選択的に緩和され、保管され得る。
【0133】
上記の縮合ポリマーを含み、ならびに/あるいは上記のUELを超える状態、および/またはLEL未満の状態下で形成された微孔性シート製品は、電池セパレータとしての改善された性能を示し、リチウム系電池セルならびに他の種類の電池セルに使用され得る。
【0134】
本発明の微孔性シート製品は、好ましくは、改良された電池セパレータとしての使用に適した高多孔性の単一物品である。微孔性シート製品は、その間に厚さを有する2つの主表面を有すると見なすことができる。厚さは、シート製品の主表面と実質的に同じ方向に延びる一連の交互の第1および第2の相互接続層からなるか、またはそれを含むことができる。本発明の微孔性シート製品の厚さは、複数の層から構成され得るが、各層は、好ましくは、結合ポリマー要素によって層界面境界で隣接する1つまたは複数の層に結合されて、一体構造を達成する。
明確にするために、本発明を説明するために本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される用語のいくつかを以下に定義することができる。
【0135】
「キャストシート」という用語は、その長さおよび幅寸法に関して2つの大きな表面を有し、その表面間に厚さを有する単一物品を定義することができる。一般に、この用語は、シートが冷却されて固化して固体になるまで、シートの延伸前に押出ダイを出る時点で溶融シートを説明するために使用され得る。
【0136】
「シート材料」という用語は、その長さおよび幅寸法に関して2つの大きな表面を有し、前記表面間に厚さを有する単一物品を定義することができる。一般に、この用語は、材料のシート状形態への初期押出または成形中に製造された構造、および最終シート製品を形成するために教示された中間ステップのいずれかの間に製造された材料を説明するために使用され得る。
【0137】
「シート製品」という用語は、その長さおよび幅寸法に関して2つの大きな、または主要な表面を有し、前記表面間に厚さを有する結果として得られる単一物品を定義することができる。結果として得られた物品の厚さは、一方の表面から第2の表面までの一連の接続された開放細孔からなるか、またはそれを含み得る。シート製品の厚さは、約0.1~10ミル(約0.0025~0.25mm)であることができる。
【0138】
「層」または「領域」という用語は、幾分複雑な方法ではあるが、主表面の方向と実質的に同じ長さおよび幅方向に延びる単一シート製品の厚さの別個の部分を画定するために交換可能に使用され得る。したがって、層は、シート製品の主表面に対して実質的に平行な関係で配置され得る。各層または領域は、シート製品構造内で形成、融合、または中断することができる。
【0139】
「第1」 という用語は、約0.001から10ミクロン、好ましくは約0.005~1ミクロン、より好ましくは約0.01~0.5ミクロンの平均細孔サイズを有し、それに隣接する交互の層の平均細孔サイズよりも小さい平均細孔サイズを有する層または領域を指す用語を修飾するために使用され得る。「第1」という用語はまた、シート材料の多段階延伸/流体気化の初期プロセスステップによって製造された材料およびシート材料の初期押出または成形中に、シート材料と混合され、シート材料を形成する液体を修飾および指すために使用され得る。加えて、以下でさらに考察するように、「第1の」という用語はまた、本発明のシート製品を形成するのに使用される1つまたは複数のポリマーを修飾し、指すために使用され得る。
【0140】
「第2」という用語は、少なくとも1ミクロン、好ましくは5ミクロン超から約100ミクロンまでの平均細孔サイズ(より大きな細孔寸法に関連する)を有し、それに隣接する交互の層の平均細孔サイズよりも大きい平均細孔サイズを有する連続または不連続の層または多孔性の領域を指す用語を修飾するために使用され得る。「第2の」という用語はまた、初期に形成された後のシート材料の多段階延伸/流体気化の第2のプロセスステップを修正および参照し、第2の延伸/流体気化ステップによって形成されたシート材料を区別するために使用され得る。加えて、以下でさらに考察するように、「第2の」という用語はまた、本発明のシート製品を形成するのに使用される1つまたは複数のポリマーを修飾し、指すために使用され得る。
【0141】
交換可能に使用され得る「流体」、「液体」および「溶媒」という用語は、シート材料を形成するための初期ポリマー/流体混合物の形成に使用される液体成分を指すことができる。これらの用語はまた、冷却流体を形成するのに使用される液体、またはチルドロール表面上の媒体、または形成されたキャストシートの初期冷却のための冷却浴、または対象シート製品を形成するための他のステップで使用されるプロセス流体、または延伸/流体気化ステップの各々によって除去された流体に関して使用され得る。
【0142】
「ガス」および「蒸気」という用語は、互換的に使用することができ、押出キャストシートの初期接触媒体に使用されるガス成分を指すことができる。これらの用語はまた、主題のシート材料のUELを超える処理ゾーンおよび/または主題のシート材料のLEL未満の処理ゾーンを形成するのに使用されるガス組成物に関して使用され得る。
【0143】
「主面」という用語は、シート製品の外面および前記主面に隣接する層を指すことができる。第1の層(側面露出)は、シート製品の各主面を形成することができる。
【0144】
「セパレータ」という用語は、電池の構成要素、特に蓄電池を指すことができ、それによって構成要素は、隣接する電極板または反対の極性の要素間の分離を維持することができる。セパレータは、隣接する電極の分離を維持することができる膜またはエンベロープの形態であってもよい、平坦な、リブ付き、または波形シートなどの様々な構成のものであることができる。本発明のセパレータは、厚さが約0.1ミル~10ミル(約0.0025mm~0.25mm)であることができるが、正確な厚さは、意図される電池設計に基づく。
【0145】
「結晶化度」という用語は、ポリマー塊内のポリマー分子の互いに対する規則的または構造化された配向を指すことができ、ポリマー塊内のポリマー分子のランダムで不規則な配向と区別され得る。ポリマー塊の結晶化度は、従来のX線回折分析によって既知の方法で決定され得る。
【0146】
用語「UEL」は、爆発上限または爆発上限を指すことができ、これは、発火源(例えば、アーチ、火炎、熱)の存在下で引火を発生させることができる空気中のガスまたは蒸気の最高濃度(パーセンテージ)であり得る。UELは、場合によっては可燃限界上限またはUFLとも呼ばれ得る。UELより高い蒸気濃度は、燃焼するには「高すぎる」と見なされ、本明細書では「UELを超える」と呼ばれ得る。ガスまたは蒸気がUELを超える濃度で存在する空間、体積またはエンクロージャは、本明細書ではUELを超えるゾーンと呼ばれ得る。
【0147】
用語「LEL」は、爆発下限または爆発下限を指すことができ、これは、発火源(例えば、アーチ、火炎、熱)の存在下で引火を発生させることができる空気中のガスまたは蒸気の最低濃度(パーセンテージ)であり得る。LEL未満の蒸気濃度は、燃焼するのに十分な炭化水素燃料を有していないと見なされる可能性があり、本明細書では「LEL未満」と呼ばれ得る。気体または蒸気がLEL未満の濃度で存在する空間、体積またはエンクロージャは、本明細書ではLEL未満ゾーンと呼ばれ得る。
【0148】
「流体バンク」という用語は、キャストシートとキャストロールの冷却面との間の接触点に閉じ込められた冷却流体のプールを指すことができる。この冷却流体は、シートの熱伝導率を改善することができ、キャストロール表面上に経時的に蓄積された同じ押出流体蒸気の縮合から形成され得る。
【0149】
「第1のポリマー」という用語は、シート製品の表面から表面まで連続した連続気泡多孔性ネットワークを有するポリオレフィンポリマーを指すことができる。
【0150】
「第2のポリマー」という用語は、第1のポリマーネットワーク内で溶融および混合される縮合重合ポリマーを指すことができ、縮合重合ポリマーは、長さおよび幅を有するフィブリルまたは粒子形態であり得る溶融再結晶化後の形状を有する。第2のポリマーは、第1のポリマーによって取り囲まれることができ、シート製品の表面から表面まで不連続であることができる。
【0151】
・材料仕様
本発明の一態様によれば、電池セパレータとしての使用に適した微孔性シート製品が提供され、微孔性シート製品は、(a)押出混合物を溶融押出してシート材料を形成するステップであって、押出混合物は、(i)第1のポリマーと、(ii)第2のポリマーであって、例えばリチウム系セル内の水または酸を捕捉するための縮合ポリマーとして機能することができ、それによってLiPFなどのリチウム導電性塩のリチウム系セル内の望ましくない加水分解を最小限に抑える第2のポリマーと、(iii)相溶化剤であって、第1および第2のポリマーの混合を促進することができ、それによってシート材料に微細孔が形成される相溶化剤とからなるか、またはこれらを含むステップと、(b)次いで、シート材料を冷却するステップと、を含む方法によって製造される。
【0152】
本発明における第1のポリマーとして有用であり得るポリマーは、溶融押出による微孔性シートの形成における使用に適したタイプの1つまたは複数の熱可塑性ポリマーを含み得る。そのような熱可塑性ポリマーは、少なくとも30%の結晶化度を有することができ、好ましくは少なくとも40%の結晶化度を有することができ、約50%~90%の結晶化度を有する熱可塑性ポリマーが特に好ましい。
【0153】
本発明の好ましい第1のポリマーは、1つまたは複数のポリオレフィンを含むことができる。特に、本発明の1つまたは複数のポリオレフィンは、1つまたは複数のホモポリマー、コポリマー(すなわち、バイポリマー)および/またはターポリマーを含むことができる。より具体的には、第1のポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマーなど、ならびにそれらの混合物を含むことができる。特に好ましい第1のポリマーは、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンホモポリマー、ならびにプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1など、および好ましくはシングルサイト触媒重合を使用して生成されるそれらの混合物などのコモノマー単位として、最大約10重量パーセント、好ましくは約1から10重量パーセントの少量の、他のアルファ-オレフィン(C-C10アルファオレフィン)を有するこれらのポリマーのコポリマーを含むことができる。前述のポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンから選択され得る。
【0154】
第1のポリマーは、約100,000~10,000,000Daの平均分子量を有する1つまたは複数のポリマーから選択されることができ、約200,000Da~約5,000,000Da未満の中程度の分子量のポリマーが好ましい。
【0155】
メルトフローインデックスまたはMFIは、熱可塑性ポリマーの溶融物の流れの容易さの尺度である。MFIは、代替の所定の温度で所定の代替重量を介して加えられる圧力によって特定の直径および長さの毛細管を通って10分で流れるポリマーのグラムでの質量流量 として定義される。MFIを決定するための方法は、ASTM D1238およびISO1133に記載されている。メルトフローレートは、ポリマーの分子量の間接的な尺度である。1,000,000Daを超える分子量を有するポリマーは、一般に0のMFIを有する。好ましい第1のポリマーは、約0.8未満、より好ましくは0から0.1の範囲内のメルトフローインデックス(MFI)を有することができる。
【0156】
第1のポリマーは、初期押出混合物の約10~60%(重量基準)を構成することができる。
【0157】
本明細書で縮合ポリマーと呼ばれることもある本発明の第2のポリマーは、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、および脱水重合反応から生成される他のポリマーを含む群からの1つまたは複数のポリマーであり得る。第1および第2のポリマーは、様々な割合で、またはそのようなポリマーの異なる分子量材料を使用して混合されて、初期シート材料、および最終的には単一のシート製品を形成することができる。好ましい縮合ポリマーは、コポリマー、より好ましくはターポリマーであることができ、縮合ポリマーは、一般に第1のポリマーよりも非晶質であることができ、セパレータ穿刺強度を改善するのに役立つことができる。さらにより好ましくは、縮合ポリマーは、2つ以上のポリマーの混合物であってもよく、2つ以上のポリマーの少なくとも1つはコポリマーであり、コポリマー対全縮合ポリマーの初期重量比は、約0.1:1~0.9:1、より好ましくは約0.2:1~0.85:1、さらにより好ましくは約0.3:1~0.8:1である。
【0158】
第2のポリマーとしてポリアミドを使用する場合、ポリアミドは、直鎖(脂肪族)または芳香族モノマーの特定の鎖長に基づいて命名されることができ、アミド結合はアミンラクタム群およびカルボン酸群から生成される。例えば、6炭素鎖を有する脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6と命名され得る。ポリアミドの炭素鎖が長いほど、ナノコンパウンディングにおいてポリオレフィンとの分子相溶性が向上する傾向がある。好ましくは、ポリアミドは、少なくとも6個の炭素、より好ましくは少なくとも9個の炭素、さらにより好ましくは少なくとも10個の炭素、さらにより好ましくは少なくとも12個の炭素の炭素鎖を有し得る。ポリアミドは、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12およびポリアミド13などの1つまたは複数のホモポリマー、ポリアミド10/10、ポリアミド6/9、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12およびポリアミド13/13などの1つまたは複数のコポリマー、またはポリアミド66/6/12などの1つまたは複数のターポリマー、あるいはホモポリマー、コポリマーおよび/またはターポリマーの混合物を含むことができる。第2のポリマーとして1つまたは複数のポリアミドを使用する場合、m-クレゾールの粘度に対する第2のポリマーの粘度の比として測定される相対粘度は、好ましくは少なくとも1.4:1、より好ましくは少なくとも1.7:1、さらにより好ましくは少なくとも1.9:1である。m-クレゾールの基準粘度は20℃で184cPである。ポリアミド粘度は、0.5%ポリアミドをm-クレゾールに溶解することによって測定され得る。
【0159】
縮合ポリマーの平均初期分子量は、少なくとも8,000Da、より好ましくは少なくとも12,000Da、さらにより好ましくは少なくとも20,000Da、さらにより好ましくは少なくとも29,000Daであり得る。本発明の微孔性シート状製品は、水に曝されると、蓄電池内でセパレータとして使用される際に起こり得るように、ある程度重合脱水反応の反転が起こり得る。この反転は、ひいては、微孔性シート製品の第2のポリマーの平均分子量および粘度の低下をもたらし得る。このような反転から生じる第2のポリマーの分子量の減少の程度は、蓄電池内に存在する水および第2のポリマーの割合に依存し得る。例えば、水に曝した後、第2のポリマーの平均初期分子量と第2のポリマーの平均最終分子量との比は、1:1~1000:1の範囲内であり得る。より好ましくは、第2のポリマーの平均分子量の減少は、第2のポリマーの予備押出(または初期)分子量の約90%~約20%であり得る。理解され得るように、第2のポリマーの分子量の極端な減少は、非常に低分子量の第2のポリマーが微孔性シート生成物マトリックス内から電解質中に移動する傾向があり得るので望ましくない。したがって、微孔性シート製品の完全性を維持し、微孔性シート製品がセパレータとして使用される場合にデンドライト短絡を防止するために、第2のポリマーと微孔性シート製品マトリックスとの特定の最小の絡み合いが望ましい。「絡み合い分子量」(M)という用語は、一般に、任意の平面を3回交差するポリマー鎖として定義され、したがって絡み合っていると見なされ得る。様々なポリマーの最小絡み合い(Me)値の例を以下に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
第2のポリマー最小絡み合い分子量は、少なくとも1000Da、好ましくは少なくとも2000Da、より好ましくは少なくとも3000Da、さらにより好ましくは少なくとも4000Daで指定され得る。セル内でこの最小絡み合いを得るために、最終的な第2のポリマー分子量は、出発第2のポリマーMWおよび存在する水の量に依存する。本発明の第2のポリマーは、典型的には、初期ポリマー分子量および最終ポリマー分子量(例えば、HO、HFまたはLiPFへの曝した後、第2のポリマーの加水分解開裂反応をもたらす)を有する。加水分解開裂によるこの初期および最終ポリマーMW減少比は、Rで表され得る。例えば、典型的には341Daのモノマー分子量を有するポリアミド6、および典型的には18Daの分子量を有する水の場合、セル(例えば、蓄電池)内に存在することができ、やはり最終的な最小のポリマーの絡み合いを維持することができる初期の第2のポリマーおよび水の量は、以下のように概算され得る。
[(W(ip)/M(ip))+(W(w)/M(w))]/[W(ip)/M(ip)]=R
=[M(ip)/M(fp)
(ip)/W(w)=M(ip)/[18*(R-1)]
=第2のポリマー開裂比
(ip)=セルに導入された第2のポリマーの初期総重量
(w)=セル中の水の総重量
(m)=モノマーの特定分子量
(ip)=第2のポリマーの平均初期分子量
(fp)=加水分解開裂後の第2のポリマーの平均最終分子量、または最小絡み合い分子量
【0162】
標的Rが所与の第2のポリマーに対して定義される場合、セル内の水の過剰開裂を制限するのに必要な初期第2のポリマーの量を概算することができる。水の初期重量に対する初期第2のポリマー重量の概算の比[W(ip)/W()]は、好ましくは少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも50:1、さらにより好ましくは少なくとも100:1、さらにより好ましくは少なくとも500:1であり、比は好ましくは約5,000:1で最大になる。最小開裂比Rは、少なくとも1.1であってもよいが、好ましくは約1,000未満である。
【0163】
ポリオキシエチレンまたはポリプロピレングリコールを第2のポリマーとして使用する場合、ポリオキシエチレンまたはポリプロピレングリコールの初期分子量は、好ましくは少なくとも110,000Da、より好ましくは少なくとも310,000Da、さらにより好ましくは少なくとも910,000Da、さらにより好ましくは少なくとも2,100,000Daである。事実上すべての場合において、比較的大きい分子量を有する第2のポリマーの使用が好ましい。同時に、事実上すべての場合において、第2のポリマーの第1のポリマーに対する平均初期分子量比は、約2:1未満、好ましくは約1:1未満、より好ましくは約0.5:1未満、さらにより好ましくは約0.2:1未満であり得るが、好ましくは約0.01:1超である。ポリアミドおよびポリオキシエチレンが混合物に使用される場合、ポリアミドのポリオキシエチレンに対する重量比は、好ましくは約0.1:1より大きく、好ましくは約10:1より小さく、より好ましくは約7:1より小さく、さらにより好ましくは約3:1より小さい。
【0164】
ポリアミドは縮合または脱水重合反応の生成物であるため、この反応は、水およびフッ化水素酸などの酸が存在する場合に可逆的である。より具体的には、酸および水の存在下で、ポリアミドをそのモノマーおよび/または低分子量オリゴマーに変換して戻すことができる。ポリアミドと水との前述の反応のために、LiPFを含有するリチウムセルでは、LiPFと反応して水酸化リチウム、水素ガス、およびフッ化水素酸などの望ましくない生成物を形成するために利用可能な水が少なくなる。上記のように、フッ化水素酸は、リチウムイオン電池およびフッ素含有有機電解質を使用する他のエネルギー貯蔵装置の劣化および短寿命の原因となり得る。少量の残留水分(電池製造中に導入される)であっても、そのような電池セルの内部に高度に腐食性のフッ化水素酸が形成される可能性がある。これは、電解質の化学的性質に影響を及ぼし、性能の低下、装置の故障、または最悪の場合、電解質のガス放出および漏れにつながる可能性がある。第2のポリマーの水和は、アミン、アルコールおよびカルボン酸の官能基を生成し、第2のポリマーの分子量を低下させる。ポリオキシエチレンの水和は、ジオールの官能性末端基を生成する。水のヒドロキシル基が本発明による縮合ポリマーを開裂すると、その結果として得られる官能基は、セパレータの濡れ性および電解質保持を改善する傾向があり、したがって、セル電池サイクル寿命を改善する傾向がある。
【0165】
第1のポリマーの濃度に対して高い第2のポリマー濃度を有するセパレータは、しばしばリチウム系セル内で崩壊および破壊し、デンドライト短絡を引き起こす。第2のポリマーは、好ましくは初期押出混合物の約0.1から20重量パーセントを構成し、約1から15重量パーセントがより好ましく、約2.1から9.9重量パーセントがさらにより好ましい。第2のポリマーと第1のポリマーとの初期重量比は、好ましくは約0.01:1~1:1、より好ましくは約0.02:1~0.5:1、さらにより好ましくは約0.05:1~0.3:1、さらにより好ましくは約0.1:1~0.2:1である。リチウム電池における第2のポリマーの潜在的な加水分解反応のために、第2のポリマーは微孔性シート製品の不連続相を形成し、第1のポリマーは微孔性シート製品の連続多孔性ネットワークを形成し、第1のポリマーは連続多孔性ネットワークを構成する連結するフィブリルを形成することが好ましい。
【0166】
捕捉作用が利用され得る、水に対する第2のポリマーの捕捉作用に起因して、例えば、微孔性シート製品がリチウム系セル内の電池セパレータとして使用される場合、第2のポリマーの利点は、約10ppmを超える水が利用可能である場合に最もよく実証されることができ、約40ppmを超える水が利用可能である場合によりよく実証され、150ppmを超える水が利用可能である場合、さらに一層よりよく実証され得る。不変的に、セルサイクル寿命の間にリチウム系セル内への水分の侵入があり得る。しかしながら、電池セパレータ内の水分が多すぎると、特に高い相対湿度セル組み立て環境において、捕捉ポリマーの目的が損なわれる。したがって、これらの縮合ポリマーの一部は、リチウム電解質の添加前に、例えば加熱または真空引きによって吸湿性であるため、セパレータを乾燥させる必要があり得る。セパレータ中の水分は、好ましくは約1%または10,000ppm未満、より好ましくは約2000ppm未満、さらにより好ましくは約900ppm未満、さらにより好ましくは約300ppm未満である。セル組み立ての前に、セパレータは、フォイルバッグなどの密封包装内および真空包装内で最も良好に包装され得る。
【0167】
相溶化剤(本明細書では「第1の流体」と呼ばれることもある)は、初期シート材料の形成を促進するために押出混合物に含まれ得る。第1の流体は、第1および第2のポリマーに対して少なくともわずかな溶解度を提供することができる有機流体から選択され得る。したがって、第1の流体は、第1および第2のポリマーに対して十分な溶媒として作用して、第1および第2のポリマーならびに第1の流体が高温(例えば、約100~250℃)で流動性を有する均一な混合物を形成することを可能にし、その結果、初期シート材料を形成することができる。第1の流体は、鉱油などの1つまたは複数の炭化水素油を含むことができ、または1つまたは複数の有機エステルもしくはフタレートを含むことができる。好ましくは、第1の流体は、ミネラルスピリット、低分子量アルカン、ノナン、デカン、p-キシレン、ウンデカン、ドデカン、およびオクタデカンからイコサンなどのCからC20脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、ならびにそれらの混合物などの低分子量、高蒸気圧有機液体から選択される。第1の流体は、好ましくは、例えば70℃(例えば、70℃で約1mmHg~5mmHg、70℃で約5mmHg~10mmHg、70℃で約10mmHg~20mmHg、70℃で約20mmHg~40mmHg)で約1mmHg~50mmHgの高い蒸気圧を有し、好ましくは20℃で約0.1mmHg~5mmHgの蒸気圧を有する。第1の流体は、好ましくは約135~300℃(約275~572°F)の沸騰温度を有し、約170~250℃(約338~482°F)の沸騰温度が特に好ましい。好ましい第1の流体は、少なくとも10℃の幅、より好ましくは少なくとも15℃の幅、さらにより好ましくは少なくとも20℃の幅の沸点範囲(初期から最終沸点)を有する流体の混合物を含み、それにより、制御された複数の温度および溶媒蒸発の複数のステップを提供する能力を高める。特定の製品用途では、低揮発性炭化水素または鉱油を使用することができる。好ましくは、第1の流体は、押出混合物の約20~85重量パーセント、より好ましくは押出混合物の約30~80重量パーセント、さらにより好ましくは押出混合物の約475重量パーセントを構成する。
【0168】
第1のポリマーと第2のポリマーとの間の溶融物の均一性を促進するために、特に第1のポリマーがポリオレフィンである場合、第2のポリマーは、好ましくは約240℃未満、より好ましくは約200℃未満、さらにより好ましくは約160℃未満のTm(溶融温度)を有する。第1および第2のポリマーを含むシート材料が押出ダイを出るとき、第2のポリマーは好ましくは第1のポリマーの前に結晶化し、結晶化種を形成し、全体的なポリマーマトリックスの結晶化および形成を促進する。好ましい実施形態では、第1のポリマーおよび第2のポリマーを含む押出混合物が溶融押出されて、溶融シートを形成することができる。次いで、溶融シートは、第2のポリマーの播種による第1のポリマー結晶化を促進するために、UELを超える蒸気ゾーン(以下でさらに論じる)に曝され得る。さらに、第2のポリマーおよびUEL流体蒸気は、好ましくは1より大きい、より好ましくは2より大きい溶解度パラメータ差を有する。本発明に関連して存在し得る様々な成分の溶解度パラメータを以下に列挙する(cal1/2/cm3/2の単位で)。
【0169】
【表2】
【0170】
本発明の微孔性シート製品は、この文書に記載されている種類のいずれかの単一層からなることができ、または複数の積層または積層体層を含むことができ、その1つまたは複数はこの文書に記載されている種類のいずれかであることができる。積層体構造は、従来のマルチシート押出ヘッドデバイス(例えば共押出)を使用して、または熱、接着剤、もしくは他の手段を使用して、2つ以上の予め形成された層を一体に積層することによって、容易に形成され得る。多層構造の例は、2008年4月16日に公開された欧州特許第1 911 352号明細書に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。多層構造体の1つまたは複数の層は、保護層であることができる。様々な層に使用される材料は、層の押出および並置中の接着を可能にするために十分に相溶性および混和性があるべきである。
【0171】
積層体構造をリチウム電池の電池セパレータとして用いる場合、第2のポリマーを含む層は、リチウム正極と直接接していないことが好ましい。3層以上の積層体構造を用いる場合、第2のポリマーを含む層は、内層又はコア層にのみ存在することが好ましい。例えば、ABA型の積層体構造では、外層またはA層は第2のポリマーを含まない可能性があり、コアまたはB層は第1のポリマー(ポリオレフィンであってもよい)および第2のポリマーのマトリックスを含まない可能性がある。一方、積層体構造の各層が第2のポリマーを含む場合、コアまたは内層は、第2のポリマー対第1のポリマー比が外層よりも高いことが好ましく、この比は、コアまたは内層で外層よりも少なくとも1.5倍高く、より好ましくはコアまたは内層で外層よりも3倍高く、さらにより好ましくはコアまたは内層で外層よりも5倍高い。第2のポリマーの量がより少ない層は、積層体構造に強度を提供する傾向があり得、第2のポリマーの量がより多い層は、積層体構造においてより大きな細孔サイズおよびより高い多孔性を有する傾向があり得る。
【0172】
本発明の積層体共押出構造では、構造の層の一部または全部が、異なる流体パーセンテージを含む押出混合物を使用して調製され得る。例えば、構造の表面層または外層は、中心層またはコア層よりも高い流体パーセンテージを有することができ、この高い流体パーセンテージは、少なくとも2%高く、より好ましくは少なくとも4%高く、さらにより好ましくは少なくとも7%高く、さらにより好ましくは少なくとも11%高くてもよい。表面流体のパーセンテージが高いほど、冷却時の押出相分離を促進することができ、構造表面層のより大きな細孔サイズおよびより高い多孔性が可能になり得る。
【0173】
本発明の積層体共押出構造では、構造体の層の一部または全部が、異なるポリマー平均分子量を有する押出混合物を使用して調整され得る。例えば、表面層は、コア層よりも低いポリマー平均分子量を有することができ、このよりも低いポリマー平均分子量は、コア層よりも少なくとも10,000Da低くてもよく、好ましくはコア層よりも少なくとも20,000Da低くてもよく、より好ましくはコア層よりも少なくとも50,000Da低くてもよく、さらにより好ましくはコア層よりも少なくとも100,000Da低くてもよい。ポリマー混合物の平均分子量が低いほど、冷却時の押出相分離を促進することができ、構造表面スキン層のより大きな細孔サイズおよびより高い多孔性が可能になり得る。
【0174】
特定の用途は、環状オレフィン、スチレン、ブチレンおよびイソブチレンなどの低結晶性ポリマーが組み込まれ得るセパレータまたは電極に塗布されたポリマーコーティング溶液から利益を得ることができ、またはそれを必要とする可能性がある。ポリマー組成物は、充填剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤などをさらに含有することができる。固体粒状材料は、シート材料および結果として得られたシート製品を形成する初期ポリマー組成物の所望の成分ではないが、存在する場合、本明細書に記載されるように、初期ポリマーシート材料を形成する際に使用されるポリマー組成物の約20重量%未満、好ましくは約5重量%未満に制限されるべきである。本発明の説明の残りの部分は、本発明のシート製品およびそれからのセパレータを形成するためのポリオレフィンの使用によって説明され得る。
【0175】
・電池セパレータとしての微孔性シート製品の使用
ここで図1を参照すると、本発明の教示に従って構築された電気化学セルの一実施形態の概略断面図が示されており、電気化学セルは全体的に参照符号11で表されている。明確化、単純化、および/または説明の容易さのために、本出願の他の箇所で論じられているか、または本発明の理解にとって重要ではない電気化学セル11の特定の詳細は、本明細書から省略されることができ、および/または図1から省略されることができ、または簡略化された方法で示され得る。
【0176】
電池セルであることができ、好ましくはリチウムイオン電池セルである電気化学セル11は、アノード13、カソード15、電解質17、セパレータ19、およびハウジング21を備えることができる。
【0177】
例えば、リチウムイオン電池セルに従来見られるタイプのアノードであり得るアノード13は、炭素(例えば、グラファイト)からなるか、または炭素を含む電極を含むことができる。
【0178】
例えば、リチウムイオン電池セルに従来見られるタイプのカソードであり得るカソード15は、LiCoOまたはLiMnなどの金属酸化物からなるか、または金属酸化物を含む電極を含むことができる。
【0179】
例えば、リチウムイオン電池セルに従来見られるタイプの電解質であり得る電解質17は、その中に溶解した1つまたは複数のリチウム塩を有する1つまたは複数の液体有機溶媒を含むことができる。1つまたは複数の液体有機溶媒は、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートなどの1つまたは複数の有機カーボネートを含むことができる。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)であることができる。
【0180】
セパレータ19は、縮合ポリマーを含む上述の種類の微孔性シート製品であることができる。
【0181】
ハウジング21は、例えば、リチウムイオン電池セルに従来見られるタイプのハウジングであることができ、好ましくはアノード13、カソード15、電解質17、およびセパレータ19を含むように構成される。ハウジング21は、好ましくは、水の出入りに対して実質的に不透過性であるように構成される。
【0182】
上述のように、電気化学セル11内の水の存在は、いくつかの潜在的に望ましくない物質の生成につながる可能性がある。したがって、電気化学セル11内の水の存在は、一般に望ましくないと見なされる。それにもかかわらず、電気化学セル11内の水の存在は一般に望ましくないという事実にもかかわらず、いくらかの水が電気化学セル11内に存在し得る。そのような水は、例えば、セル組み立て中に電気化学セル11内に存在するようになり得るか、または電気化学セル11の1つまたは複数の構成要素内に閉じ込められるようになり得る。幸いなことに、縮合ポリマーがセルから水を捕捉するのに役立ち得る、セパレータ19内の縮合ポリマーの存在により、そのような水の潜在的に有害な影響を最小限に抑えることができる。一方、過剰な解重合は、縮合ポリマーをセパレータ19から浸出または移動させ、セパレータ19の物理的(または他の)特性に著しい変化を引き起こす可能性があるため、水との反応に起因して、縮合ポリマーが解重合することは望ましくない。本発明によれば、Wip/Ww(すなわち、電気化学セル11に存在する縮合ポリマーの初期総重量と電気化学セル11に存在する水の初期総重量との比(前述の水の初期総重量は、好ましくは真空乾燥などの任意の乾燥ステップがセル製造時またはその前後に行われた直後の電気化学セル11内に存在する水の量を指す)は、好ましくは少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも50:1、さらにより好ましくは少なくとも100:1、さらにより好ましくは少なくとも500:1であり、比は好ましくは約5,000:1で最大化する。上述したように、電気化学セル11内に存在する水の初期総重量は、10ppmより大きい可能性があり、40ppmより大きい可能性がある。代替的に見ると、縮合ポリマー開裂比Rc(すなわち、加水分解後の縮合ポリマーの平均最終分子量(またはその最小絡み合い分子量)に対する縮合ポリマーの平均初期分子量の比)は、好ましくは少なくとも1.1であるが、好ましくは約1,000未満である。
【0183】
図1は単一の電気化学セル11を示しているが、複数の電気化学セル11は、互いに電気的に接続され、共通のハウジング内に収容されて多セル電池を形成することができることを理解されたい。
【0184】
電気化学セル11は、好ましくはリチウムイオンセルであるとして本明細書に記載されているが、電気化学セル11はリチウムイオンセルに限定されず、任意のタイプのリチウム系電気化学セルであり得ることも理解されたい。
【0185】
・プロセス仕様
本発明の別の態様によれば、微孔性シート製品を製造するための新規な方法が提供される。一実施形態では、製造方法は、(i)押出混合物を溶融押出してキャストシートを形成するステップと、(ii)第1のガスゾーン内でキャストシートを冷却するステップであって、第1のガスゾーンが有機流体の蒸気を含み、第1のガスゾーンの少なくとも一部内に存在する蒸気がUELを超える濃度である、ステップと、(iii)第2のガスゾーン内で冷却されたキャストシートの少なくともいくらかの延伸を実施するステップであって、有機流体の蒸気は、第2のガスゾーン内でLEL未満の濃度である、ステップと、を含むことができる。
【0186】
より具体的には、本発明の少なくともいくつかの実施形態では、第1のポリマー、第1の流体、および任意選択で第2のポリマーを一緒に混合して、実質的に均一な組成物を形成することができる。混合は、ポリマーおよび流体を押出機の単軸または二軸スクリュー供給チャンバ内に供給することなどによって、第1の成形された材料の形成の前またはその一部として行われ得る。このような押出機は周知であり、以下の文献に例示されており、これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。2011年2月15日に発行された発明者Leeらの米国特許第7,887,727号明細書、2011年6月9日に公開された発明者Takitaらの米国特許出願公開第2011/0133355号明細書、2010年2月18日に公開された発明者Leeらの米国特許出願公開第2010/0041779号明細書、2007年6月21日に公開された発明者Leeらの米国特許出願公開第2007/0138682号明細書、2009年4月23日公開の国際公開第WO2009/51278号明細書、2009年4月23日公開の国際公開第WO2007/46496号明細書、2007年6月28日公開の国際公開第WO2007/73019号明細書および2008年6月19日に公開された国際公開第WO2008/72906号明細書。
【0187】
特に重要ではないが、ポリマー溶液(第1のポリマーは、例えば、ポリオレフィンであり得る)の均一な溶融混合は、二軸スクリューまたは2段スクリュー押出機で行うことができる。第1の流体は、溶融混合が開始する前にポリマーに添加されることができ、別法として、混合の中間ステップにおいて、第1流体が押出機に供給され得る。第1のポリマーと第2のポリマーとの間の潜在的に大きな溶解度パラメータ差(第2のポリマーが存在する場合)のために、ポリマー混合は事前配合され得る。換言すれば、第1および第2のポリマーは、溶融混合物を二軸押出機の第2の押出機に供給してキャストシートを製造する前に、二軸押出機又は混合機の第1の押出機内で一緒に溶融され得る。それにもかかわらず、第2のポリマーの粒径を最小化し、ナノ粒子配合を達成するために、押出機は、少なくとも30:1、好ましくは少なくとも36:1、より好ましくは少なくとも42:1の長さ対スクリュー直径比(L/D)を有することができる。均質で均一なキャストシートおよびシート製品を製造するためには、溶融し、分子的に織り合わされ、第1のポリマーと第2のポリマーとの間の大きな溶解度パラメータの差を克服するために、高い総機械エネルギー入力が必要である。押出機のエネルギー入力は、押出機のスクリューのrpmを上げることによって、および/または混練ブロックを加えることによって加えられ得る。その際、総溶融エネルギー投入量は、少なくとも0.15kwh/kg、好ましくは少なくとも0.25kwh/kg、より好ましくは少なくとも0.35kwh/kg、さらにより好ましくは少なくとも0.45kwh/kgであり得る。
【0188】
混合物は、従来の示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるポリマーの溶融温度(T)よりも高い温度まで加熱されることができるが、同時に、第1の流体の沸点温度未満である。約100℃~約250℃の温度がこの目的に適している可能性があり、同時に、混合物を剪断力に供して、成形されて(ダイヘッドを介した押出などによって)初期成形シート材料になる前に成分を均一な混合物に形成させる。ポリマーは、この操作中にその結晶化度特性の全部ではないにしても大部分を失うことがある。
【0189】
形成された混合物は、押出ダイを介した押出混合物の押出などの任意の技術によって、初期シート材料(すなわち、キャストシート)に成形され得る。このような初期シート材料の形成は、流体とポリマー(複数可)との混合について上述したような高温で行われ得る。初期シート材料は、材料の分解を引き起こすことなく延伸を行うことを可能にするのに十分な厚さを有することができる。当業者によって容易に決定され得る初期シート材料の適切な厚さは、約0.1~5mm、好ましくは約0.2~3mm、より好ましくは約0.2~2mmであり得る。
【0190】
初期シート材料は、シートをダイから第1のガスゾーンに通すことによって冷却され得る。第1のガスゾーン内にある間、初期シート材料は、チルドロール表面上または冷却浴内で媒体と接触可能である。以下でさらに論じるように、第1のガスゾーンに存在するガスは、有機流体蒸気を含むことができ、主に第1の流体の蒸気または第2の流体の蒸気であることができる。第2の流体およびその蒸気の組成は、押出混合物を形成するために使用され、かつ初期シート材料に含まれる同じ流体(すなわち、第1の流体)の少なくとも50重量パーセント、好ましくは少なくとも70重量パーセント、より好ましくは少なくとも90重量パーセント、更により好ましくは100重量パーセントから形成され得る。以下に記載されるように、取り扱いおよび流体のリサイクルを可能にすることの容易さを助けるために、第1の流体および第2の流体が同じ組成であり、また単一の液体の100重量%であることが特に好ましい。第2の流体が第1の流体の100重量パーセント未満で構成される場合、残りの流体は、好ましくは、第1の流体と混和性であり、第1の流体について上記に示したのと同じ範囲内の沸点、引火点および蒸気圧特性を有する1つまたは複数の有機流体から選択される。流体は、最大約100℃の温度に維持されることができ、または冷却ロール表面を約100℃未満に維持することによって維持され得る。初期に成形されたシート材料は、シート材料の温度をポリマーの溶融温度未満に低下させるのに十分な時間、流体中に存在することができる。初期に成形されたシート材料は、最大約90秒間、好ましくは約0.01~90秒間、より好ましくは約0.7~50秒間、さらにより好ましくは約1~20秒間流体中に存在することができる。時間は、好ましくは、使用されるポリマーのTを下回るまで初期成形シート材料を冷却するのに十分な持続時間である。
【0191】
第1のガスゾーンは、周囲温度または約-20~160℃の範囲内の温度に維持され得る。第1のガスゾーン温度は、好ましくは約130℃未満、より好ましくは約100℃未満、好ましくは約30℃超である。初期シート材料が第1のガスゾーン内に存在する滞留時間は、約0.01~20秒のように短い可能性がある。第1のガスゾーンを画定する空間は、覆われることができ、または囲まれることができる。第1のガスゾーンの少なくとも一部において、第1の流体の蒸気または第2の流体の蒸気を含み得る第1の有機蒸気は、UELを超える状態(すなわち、濃度)で存在することができる。本発明のより詳細な特徴において、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーンの全体にわたってUELを超える濃度で存在することができる。言い換えれば、第1の実施形態によれば、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内のすべての位置でUELを超える状態で存在することができる。これは、第1の有機蒸気の濃度が第1のガスゾーン内の場所ごとに一定でない場合でも当てはまる。別法として、第2の実施形態によれば、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内の1つまたは複数の位置でUELを超える状態で存在することができるが、第1のガスゾーン内のすべての位置でUELを超える状態で存在する必要はない。例えば、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内の1つまたは複数の位置でUELを超える状態であることができるが、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーン内の1つまたは複数の他の位置でUELを超える状態にない可能性がある。さらに、第1の有機蒸気がUELを超える状態にある第1のガスゾーン内の位置間で濃度にいくらかの変動がある可能性があり、および/または第1の有機蒸気がUELを超える状態にない第1のガスゾーン内の位置間で濃度にいくらかの変動があり得る。前述の第2の実施形態のすべてではないがいくつかの例では、第1のガスゾーン全体の第1の有機蒸気の平均濃度は、UELを超える状態であってもよく、第1のガスゾーンのいくつかの位置はUELを超える状態であり、第1のガスゾーンの他の位置はUELを超える状態ではない。前述の第2の実施形態のすべてではないがいくつかの例では、第1の有機蒸気は、シート材料が通過する第1のガスゾーン内の位置のいくつかまたは全部でUELを超える状態であり得る(残りの位置のいくつかは第1の有機蒸気のUELを超える状態にない)。例えば、第1の有機蒸気は、第1のガスゾーンを画定するエンクロージャの入口で始まり、エンクロージャ内の任意のチルドロールまで延在し、次いで第1のガスゾーンを画定するエンクロージャの出口で終わる経路など、シート材料が通過する第1のガスゾーン内のすべての位置でUELを超える状態で存在することができる。加えて、第1の有機蒸気は、上述の経路に密接に隣接する第1のガスゾーン内の位置でUELを超える状態で存在することもできる。別の例として、第1の有機蒸気は、エンクロージャの入口またはその近くで始まり、チルドロールまで延在し、おそらくチルドロールを含む経路の部分など、前述の経路の1つまたは複数の部分のみについてUELを超える状態で存在することができる。加えて、第1の有機蒸気は、上述の経路の部分に密接に隣接する第1のガスゾーン内の位置でUELを超える状態で存在することもできる。
【0192】
第1のガスゾーン内でUELを超える条件で炭化水素蒸気が第1の有機蒸気として使用される場合、炭化水素蒸気は、第1のガスゾーンの少なくとも一部に、約3%体積を超える濃度で、好ましくは約7%体積を超える濃度で、より好ましくは約12%体積を超える濃度で、さらにより好ましくは約20%体積を超える濃度で存在することができる。別の例として、第1のガスゾーン内でUELを超える条件でミネラルスピリット蒸気が第1の有機蒸気として使用される場合、ミネラルスピリット蒸気は、第1のガスゾーンの少なくとも一部に、約5%体積を超える濃度で、好ましくは約6%体積を超える濃度で、より好ましくは約8%体積を超える濃度で、さらにより好ましくは約11%体積を超える濃度で存在することができる。第1のガスゾーンエンクロージャの設計により、押出定常状態からの第1の有機蒸気の蓄積は、エンクロージャ内に存在し得る大気、酸素または水の100%を置換するには不十分であり得る。その結果として、エンクロージャ内の第1の有機蒸気の上側パーセンテージは、約60%未満、より可能性が高いのは約90%未満、最も可能性が高いのは約99%未満であり得る。さらに、二次的な非押出源による第1の有機蒸気の100%充填は、経済的に実現可能ではない可能性がある。
【0193】
第1のガスゾーンのUELを超える状態は、キャストシート表面の冷却、凝固および相分離の相溶性を最大にすることができる。そうすることで、第1のガスゾーンは、シートの内部コアに対する相溶性および溶解度パラメータにおいて同様に、最大開放表面細孔および表面相分離の均一性を確実にすることができる。第1のガスゾーン内の第1の有機蒸気のUELを超える状態はまた、第1のガスゾーン内での燃焼の可能性を最小限に抑えることができる。UELを超える状態は、第1の有機蒸気を導入するか、または第1のガスゾーンエンクロージャ内の空気流を減少させて、第1の有機蒸気が押出から蓄積することを可能にすることによって生成され得る。第1のガスゾーンエンクロージャは、電気的に接地され得る。安全性をさらに向上させるために、第1のガスゾーンのUELを超える状態は、窒素または二酸化炭素などの不活性ガスを使用して達成可能であり、酸素の濃度は通常の大気の体積で21%未満に低減され得る。UELを超えるガスゾーンまたはLEL未満のガスゾーンにおける酸素蒸気濃度は、好ましくは約20%未満、より好ましくは約16%未満、さらにより好ましくは約14%未満、さらにより好ましくは12%未満である。14%以下の酸素濃度では、第1の有機蒸気などの燃料は、その濃度に関係なく、限界酸素濃度(LOC)未満では可燃性ではないため、ガスゾーンはLOC未満であると見なされ得る。その結果、第1のガスゾーンがLOC未満である場合、それはUELより上の条件と同等である、および/またはUELより上の条件に包含されると見なされ得る。UELを超えるガスゾーンまたはLEL未満のガスゾーンにおける酸素に対する第1の有機蒸気の比は、好ましくは約0.1:1より大きく、より好ましくは約0.5:1より大きく、さらにより好ましくは約1:1より大きく、さらにより好ましくは約2:1より大きい。
【0194】
溶融混合物がダイを出るとき、第1の流体蒸気は、押出機圧力(比較的高い)から周囲圧力(比較的低い)への移行に起因してキャストシートから気化することができる。キャストシートからの第1の流体の気化は、キャストシートおよびキャストロール環境が適切に封入され、収容された場合に、UELを超える有機流体蒸気状態を生成、供給、構築および維持するのに役立ち得る。エンクロージャは、過冷却蒸気の区域を含むことができる。定常状態の押出からの有機流体蒸気の蓄積を確実にするために、キャストシートの入口および出口は、好ましくは約0.1m/分未満、より好ましくは約0.001m/分未満にエンクロージャに入る周囲空気の速度を制限するように、キャストシートとエンクロージャとの間に約50mm未満の開口隙間を有することなどによって、有機流体蒸気の流出または空気の進入を制限するように特に設計され得る。すべての場合において、潜在的な空気の進入体積は、押出からの第1の流体の気化によって生成される潜在的な蒸気体積よりも小さくなるはずである。
【0195】
好ましい実施形態では、第1のガスゾーンの有機流体蒸気は、第1の流体に等しいか、または第1の流体の1つの溶解度パラメータ単位内の溶解度パラメータを有することができる。このUELを超える状態は、より相溶性で均一な開放表面多孔性キャストフィルムを生成する傾向がある。比較すると、キャストシートがUEL未満の状態で形成される場合、シート製品表面は均一性が低く、ランダムに結晶化したポリマーパッチを有する傾向がある。UELを超えるゾーンでキャストシートを冷却することにより、第1の流体蒸気を押出後に冷却することができる。好ましくは、蒸気ゾーンは、第1の流体の沸点より約30から200℃より低い間に維持され、押出流体蒸気を優先的に過飽和化させ、チルドロールの表面上に凝縮させる。第1の流体は、所与の温度で過飽和になる可能性があり、冷却ロール表面に堆積する可能性がある。この冷却された表面流体は、キャストシートとキャストロールとの間の熱伝導率を改善することができ、開放細孔ネットワーク形成を達成するために相分離を加速することができ、したがって、セパレータ伝導率を増加させ、細孔マトリックスの屈曲を減少させることができる。好ましい熱伝導率は、0.05W/m-Kを超える可能性がある。冷却ロールが鋼で作られている冷却ロール表面への空気の典型的な熱伝導率は、0.024W/m-Kであり得るが、有機冷却流体は、0.137W/m-Kに係数を改善することができ、水は0.548W/m-Kであり得る。より高い熱伝導率が好ましいが、しかしながら、水は、キャストシート流体の溶解度パラメータと大きな溶解度パラメータ差を有し、したがって、キャストシート上に非多孔質スキン層を形成し得る。
【0196】
S-ラップキャスト構成(図2および図3に見られ、以下でさらに考察する)などのいくつかの種類のキャストシート冷却構成では、2つのチルドロールは、ロール表面上に凝縮流体の微細層を表すことができる。さらに、S-ラップキャスト構成では、キャストシート表面の圧縮を防止するために、2つのチルドロールは互いに接触しないことが好ましい。2つのロール間の隙間は、少なくとも50ミクロン、好ましくは少なくとも200ミクロン、より好ましくは少なくとも1,000ミクロンであるが約20mm未満であり得る。キャストシートがUELを超える状態で流体蒸気に曝される場合、スキン層の厚さは、約20ミクロン未満、好ましくは約10ミクロン未満、より好ましくは約7ミクロン未満、さらにより好ましくは約4ミクロン未満であり得る。
【0197】
初期に形成された成形シート材料は、押出機または他の成形装置によって製造される場合、ポリマーおよび流体を含むことができ、このシート材料は実質的に非晶質であり得るが、依然としてポリマー供給物の元の結晶化度の残留度を保持することができる。初期シート材料の冷却時に、いくらかのポリマー再結晶化が起こり得る。したがって、冷却された初期シート材料は、約30%質量までのポリマー結晶化度を示すことができるが、より一般的には20%質量未満、例えば10%質量未満のポリマー結晶化度を示すことができる。
【0198】
キャストシートは、第1のガスゾーンを通過すると、少なくとも1つの冷却面、好ましくは2つの冷却面に接触して、両方のキャストシート表面をさらに冷却することができる。例えば、S-ラップキャスト構成では、第1のキャストシート表面が第1のロール表面によって冷却され、第2のキャストシート表面が第2のロール表面によって冷却され得る。対照的に、U-ラップキャスト構成(図4に見られ、以下でさらに考察する)では、典型的には、キャストシート表面の片側のみの冷却が達成され、その結果、U-ラップキャスト構成は、冷却効率を低下させる可能性がある。S-ラップキャスト構成が使用される場合、第1のロールは、より短い第1の表面冷却滞留時間を誘導するために、第2のロールと等しいか、またはそれよりも小さいロール直径であることが好ましい。例えば、第1のロールの直径と第2のロールの直径との比は、0.9:1未満、好ましくは0.75:1未満、より好ましくは0.5:1未満、さらにより好ましくは0.33:1未満であり得る。キャストシートは、ウェブ転移変曲点(すなわち、キャストシートが第1のロールから第2のロールに転移される点)の前のS-ラップキャスト構成におけるS字型経路の第1の半分に沿ったどこかで第1のロールに接触することができる。キャストシートは、変曲点の後のS字形経路の第2の半分に沿ったどこかで第2のロールから出たり、離れることができる。2つの冷却ロールを使用する場合、キャストシートは、第2の冷却ロール上よりも第1の冷却ロール上での滞留時間が短いことが好ましい。例えば、第1の冷却ロール上の滞留時間は、第2の冷却ロール上の滞留時間よりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも70%短くてもよい。
【0199】
図5に示すように、2つのキャストロールが仮想平面Pに位置合わせされている場合、ダイ溶融物出口から平面Pまで測定された特定のキャストシート入口角度αは、20から85度の間、より好ましくは30から80度の間、さらにより好ましくは45から80度の間であり得る。20度未満では、キャストシートの第2の表面は、冷却するのに時間がかかる可能性がある。85度を超えると、第1の表面の冷却が不十分になる可能性があり、第1のロールから第2のロールへのシートの転移時にシートの不安定性を生成する可能性がある。
【0200】
第1のガスゾーンからの第1の流体蒸気は、冷却ロール表面上に凝縮し、冷却ロール表面上に流体の凝縮物のスキン層を形成することができる。次いで、キャストシートは、このスキン層を冷却ロール表面上に接触させることができる。冷却ロール表面上のこのような液体スキン層は、キャストシートの冷却における熱伝導率を改善することができるので、望ましい可能性がある。ロールは、約-20℃~T-20℃、より好ましくは約30℃~T-40℃、さらにより好ましくは約50℃~T-50℃の温度に維持され得る。第1のポリマーがポリエチレンである場合、冷却ロールの温度は、好ましくは約50℃~90℃である。冷却温度が低すぎると、シート内の相分離が不必要に遅くなる可能性があり、一方、冷却温度が高すぎると、第1のガスゾーンからの蒸気を冷却ロール表面上に凝縮させることができない可能性がある。
【0201】
水は、ポリマー混合物の相分離を妨害し得る。その結果、ロール温度は、その上の水蒸気の凝縮を制限する温度に維持され得る。水分凝縮を制限する望ましいことは、夏の間など、高い相対湿度が一般的に経験される場合に特に重要になり得る。第1のガスゾーンのエンクロージャはまた、そこへの水蒸気の進入を制限する役割を果たすことができる。第1のガスゾーン内で、水蒸気は、好ましくは約30,000ppm未満(38℃で70%RH)、より好ましくは約21,000ppm未満、さらにより好ましくは約8,000ppm未満、さらにより好ましくは約3,000ppm未満である。流体凝縮物は、キャストシート接触面の少なくとも90%、好ましくはキャストシート接触面の少なくとも98%、より好ましくはキャストシート接触面の少なくとも99.9%を覆うことができる。流体凝縮物は、好ましくは、少なくとも0.01ミクロン、より好ましくは少なくとも0.11ミクロン、さらにより好ましくは少なくとも2ミクロン、さらにより好ましくは少なくとも11ミクロンであるが、約1mm未満の冷却ロール上の厚さを有する。ワイパブレードを使用して、ロール表面に流体を分配することができる。第2の流体は、第1の流体と異なる場合、いくつかの溶解度パラメータ単位内で第1の流体に実質的に可溶性であり得る。キャストロールとキャストシートとの間の流体は、気化性炭化水素であることができる。このような気化性炭化水素は脂肪族炭化水素であることができ、C6~C30の気化性炭化水素であることができ、より好ましくはC8~C20の気化性炭化水素であることができる。キャストシートとキャストロールとの間の圧縮接触に起因して、冷却流体の堆積または蓄積、すなわち流体冷却バンクが存在し得る。この流体冷却バンクは、シートのロール回転方向のロール周囲に堆積されることができ、少なくとも0.5mmの長さ、好ましくは少なくとも1.1mmの長さ、より好ましくは少なくとも2.1mmの長さであることができる。ロールとシートとの間の流体冷却バンクの厚さは、上述の流体凝縮物よりも少なくとも10%、または少なくとも0.01mm厚くてもよく、好ましくは少なくとも0.11mmであるが約2mm未満である。
【0202】
成形されたシート材料は、上述のように冷却されると、次に、第1のガスゾーン内のUELを超える環境から第2のガスゾーン内のLEL未満の環境または状態に移動する。一般に、有機流体として炭化水素を使用する場合、LEL未満の状態の炭化水素蒸気は、体積の約2%未満、好ましくは体積の約1.5%未満、より好ましくは体積の約0.9%未満であり得る。より具体的な例として、有機流体としてミネラルスピリットを使用する場合、LEL未満の状態のミネラルスピリット蒸気は、約0.7%未満、好ましくは約0.6%未満、より好ましくは約0.5%未満であり得る。LEL未満の状態は、エンクロージャ内で十分な空気流および流体蒸気除去を提供することによって達成され得る。
【0203】
次に、キャストシートは、2段階延伸/流体気化プロセスを受けることができる。第1のステップにおいて、冷却され成形されたシート材料は、少なくとも1つの方向に延伸され得る。この第1の延伸方向は、縦方向、すなわち、初期の成形シート材料が押出ダイヘッドおよび冷却ロールを出る方向に行われ得る。延伸は、例えば、成形シート材料を設定回転速度のニップローラに通し、次いで、巻取りローラの前に第2のセットまたは後続のセットのニップローラに通すことによって容易に達成され得る。この第1の縦方向延伸は、LEL未満の環境または上述したものと同様のUELを超える環境で実施され得る。テンター法、膨張法、またはそれらの組み合わせなどの従来の延伸技術を使用することができる。延伸は、一軸または二軸(縦方向および横方向)で行われてもよいが、一軸延伸が好ましい場合がある。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸、多段延伸(例えば、同時二軸延伸と逐次一軸延伸との組み合わせ)のいずれかを用いることができる。
【0204】
最初の成形シート材料は、最初に、その初期寸法の少なくとも約2倍、第1の方向(例えば、縦方向)に延伸されることができ、約2~12倍の延伸が好ましく、約3~8倍の延伸がより好ましい。この第1の延伸は、シート材料を高温に維持する間に行われ得る。温度は、(T-70)~(T-20)℃の温度であることができ、ここで、Tは、ポリマーの溶融温度(シート材料を作製するために1つのポリマーのみが使用される)またはシート材料を形成するために使用されるポリマーの混合物を形成する2つ以上のポリマーのより高いTである。延伸は、好ましくは、第1の延伸シート材料のポリマーに結晶化度の再確立を引き起こすのに十分である。
【0205】
二段階延伸/流体気化プロセスの第1のステップ中に、シート材料中に存在する残留流体は、気化および再結晶によって除去され得る。結果として得られる第1の延伸シート材のポリマーは、質量の少なくとも40%の結晶化度を有することが好ましく、質量の約40~85%の結晶化度を有することがより好ましく、質量の約50~80%の結晶化度を有することがさらに好ましい。さらに、最初に延伸されたシート材料中の残留流体は、好ましくは、最初の成形されたシート材料の約10~50重量パーセント、より好ましくは、最初の成形されたシート材料の約15~40重量パーセントで存在する。第1の延伸シート材料は、約0.15:1~1:1の中間のパーセント流体対パーセントポリマー結晶化度の比を有することができる。
【0206】
続いて、第1の延伸シート材料は第2の延伸気化ステップを受けることができる。この第2のステップは、第1のシート材料を、第1の延伸の方向を横断する少なくとも第2の方向に延伸することによって行われ得る。例えば、第1の延伸に縦方向のみが用いられる場合、シート材料は、第2の延伸のために横方向に延伸され得る。延伸は、従来のテンター機を使用して達成され得る。テンターは、シート製品を両方の縁部で把持し、シートがテンターを通って移動するにつれてシートをさらに引き離すことができる1組の走路を有することができる。第2の延伸は、縦方向および/または横方向で行われることができ、方向性延伸と同時にまたはそれに連続して達成され得る。第2の延伸は、第1の延伸ステップの動作温度より少なくとも約10℃低い温度で行われ得る。シート材料の第2の延伸は、一方向または両方向であることができ、第1の延伸シート材料の初期寸法の約2から14倍(すなわち、約200~1400%)であることができる。
【0207】
延伸/流体気化プロセスの第2のステップはまた、シート材料内に残っている流体のさらなる気化および除去を同時に含むことができる。シート材料の延伸が完了すると、シート材料は、好ましくは、残留流体を実質的に含まないか、または少量しか含まない。
【0208】
シート材料は、シート製品を製造するために第1および第2の(例えば、機械および横方向)延伸を利用することができる。組み合わせた伸長比は、少なくとも約4倍であることができ、約4~140倍が好ましく、約8~80倍がより好ましい。機械の設定に応じて、第1および第2の延伸は、順番に処理される場合に取替え可能であり得る。
【0209】
第2の延伸シート材料が少なくとも1つまたは両方の延伸方向に張力を受けている状態で、第2の延伸シート材料はアニーリングまたは高温シート安定化を受けることができる。アニーリング温度は、約(T-50)~(T-5)℃であってもよく、ここで、Tは、シート製品の第1のポリマーの溶融温度を表す。アニーリングの完全性は、熱伝達効率、温度、滞留時間、および緩和の関数であり得る。延伸されたシート材料は、これらの条件下で約1~300秒、好ましくは約5~120秒の期間維持され得る。任意選択的に、シート製品は、寸法安定性をさらに改善するために、当該技術分野で知られているように、一方または両方の延伸方向(長さおよび/または幅が約5%~20%減少)で弛緩され得る。この手法は、シート材料をアニールしてポリマーを固定構成に設定して、所望のシート製品を形成する。アニールされたシート生成物は、寸法安定化を完了するために、室温またはホットボックス環境で最大2週間さらに貯蔵され得る。
【0210】
シート材料の延伸が完了すると、シート内の残留流体は、アニーリング中および/またはアニーリング前に気化によって除去され得る。流体の残留量は、シート製品の重量の実質的に0%であることができ、またはシート製品の重量の1%未満であることができる。シート製品は、好ましくは、第1のポリマーマトリックスネットワーク内に均一に分布した任意の第2のポリマーを有し、好ましくは連続した連続気泡毛細管細孔を有する。第2のポリマーは、フィブリルまたは粒子形態であることができ、1ミクロン未満、好ましくは900Å未満、より好ましくは400Å未満、さらにより好ましくは90Å未満の粒径を有してもよい。
【0211】
好ましくは、ポリマーと流体とを混合し、シート材料を冷却し、シート材料を一方向または両方向に延伸し、アニーリングする上記の操作のいくつかまたは全部が、気化した流体の捕捉を容易に可能にするために1つまたは複数のエンクロージャ内で実行され得る。次いで、捕捉された蒸気は、第1の流体として使用するために凝縮、収集またはリサイクルを受けることができ、または延伸ローラ、テンターまたはアニーリングオーブンの加熱のための燃料として使用され得る。
【0212】
最後に、本明細書に記載されるように、蒸気圧が高く沸点が低い低分子有機流体を使用することによって、かつシート材料からの流体の気化によって流体を除去して最終的に得られるシート製品を形成することによって、流体を再使用しながら所望のシート製品を得ることができる。その結果として、最初の流体が第2の流体による抽出によって除去される他の既知の方法と共通の廃棄流は、本発明のプロセスによって低減され、または排除されることができ、それによって環境上および経済上の両方の利益を提供する。
【0213】
ここで図2を参照すると、本発明による微孔性シート製品を製造するためのシステムの一実施形態の簡略化された概略側面図が示されており、システムは全体的に参照符号111で表されている。明確化、単純化、および/または説明の容易さのために、本出願の他の箇所で論じられているか、または本発明の理解にとって重要ではないシステム111の特定の詳細は、本明細書から省略されることができ、および/または図2から省略されることができ、または簡略化された方法で示され得る。
【0214】
システム111は、従来のタイプおよび/または上述のタイプの押出機113を備えることができる。従来のタイプおよび/または上述のタイプのダイヘッド115は、押出機113の出口端部に結合され得る。押出物またはキャストシート116は、ダイヘッド115から放出され得る。
【0215】
システム111は、エンクロージャ117をさらに備えることができる。エンクロージャ117は、実質的にガス不透過性の材料で作られることができ、第1の入口119、第2の入口121、第1の出口123、および第2の出口125を備えるように成形され得る。第1の入口119は、キャストシート116がエンクロージャ117内に導入され得るように、ダイヘッド115の出口端部を受け入れるように適切に配置され寸法決めされ得る。第2の入口121は、不活性ガス源またはパージ129の出口端部に流体連通されることができ、プロセス開始時に、または必要に応じてエンクロージャ117内の酸素濃度を低下させるために使用され得る。パージ129内に存在し得る不活性ガスの例は、窒素ガスまたは二酸化炭素ガスを含み得る。第1の出口123は、オーバーフローガスがエンクロージャ117内から漏れ出ることを可能にするように適切に配置され寸法決めされ得る。
【0216】
エンクロージャ117の内部は、第1のガスゾーンを含むことができ、限定はしないが、キャストシート116からの第1の流体の蒸気などの有機流体の蒸気は、爆発上限を超える濃度まで第1のガスゾーン内に蓄積することができる。エンクロージャ117のサイズおよび/またはその設計に応じて、有機流体の蒸気濃度は、第1の入口119および/またはシート116の位置で極めて高くなり得るが、第1の出口123および第2の出口125などの内部の特定の静的位置は、蒸気の流出および/または空気の侵入に起因して、はるかに低い蒸気濃度を示し得る。上述したように、場合によっては、そのようなより低い蒸気濃度は、UELを超える状態より低い可能性がある。
【0217】
エンクロージャ117は、複数のロールを受け入れるように適切な寸法にされ得る。このような複数のロールは、例えば、第1のロール131、第2のロール133および第3のロール135を含むことができる。チルドロールであり得る第1のロール131、およびチルドロールであってもよい第2のロール133は、S-ラップキャスト構成でエンクロージャ117内に集合的に配置されてもよく、第1のロール131の巻取り側は第1の入口119と位置合わせされる。第3のロール135は、第2の出口125と位置合わせされた出口側を有することができる。
【0218】
システム111は、エンクロージャ117の高さを上昇させるか、そうでなければ調整するために使用することができる、1つまたは複数のジャッキ141をさらに備えることができる。
【0219】
システム111は、アイドラローラ145、1対のプルローラ147-1および147-2、ならびに巻取りローラ149をさらに備えることができる。アイドラローラ145は、冷却されたキャストシート116を受け入れることができるように、第2の出口125と位置合わせされた巻き取り側を有することができる。プルローラ147-1,147-2は、冷却されたキャストシート116を二段階延伸プロセスで延伸するために用いられることができ、巻取りローラ149は、製品を巻き取った状態で保管するために用いられ得る。
【0220】
エンクロージャ117の外側の空間、特にアイドラローラ145、プルローラ147-1および147-2、ならびに巻取りローラ149を取り囲む空間は、第2のガスゾーンを画定することができる。好ましくは、第2のガスゾーン内の有機流体の濃度は、爆発下限未満の濃度である。
【0221】
本実施形態では、第2のガスゾーンはエンクロージャ内に収容されていないが、第2のガスゾーンはエンクロージャ内に収容され得ることを理解されたい。
【0222】
ここで図3を参照すると、システム111に示されているものに対する第1の代替キャスト構成の概略側面図が示されており、第1の代替キャスト構成は、本発明に従って構成され、参照符号211で表されている。明確化、単純化、および/または説明の容易さのために、本出願の他の箇所で論じられているか、または本発明の理解にとって重要ではないキャスト構成211の特定の詳細は、本明細書から省略されることができ、および/または図3から省略されることができ、または簡略化された方法で示され得る。
【0223】
ロール131、133、および135の代わりにシステム111で使用されることができ、S-ラップキャスト構成とみなすことができるキャスト構成211は、チルドロール213、チルドロール215、およびロール217を備えることができる。理解されるように、キャスト構成211の出口方向がシステム111の出口方向と比較して異なるため、キャスト構成211をシステム111に組み込む場合、エンクロージャ117の第2の出口125を再配置する必要がある。
【0224】
ここで図4を参照すると、システム111に示されているものに対する第2の代替キャスト構成の概略側面図が示されており、第2の代替キャスト構成は、本発明に従って構成され、参照符号311で表されている。明確化、単純化、および/または説明の容易さのために、本出願の他の箇所で論じられているか、または本発明の理解にとって重要ではないキャスト構成311の特定の詳細は、本明細書から省略されることができ、および/または図4から省略されることができ、または簡略化された方法で示され得る。
【0225】
ロール131、133、および135の代わりにシステム111で使用されることができ、U-ラップキャスト構成とみなすことができるキャスト構成311は、チルドロール313およびロール317を備えることができる。理解されるように、キャスト構成311の出口方向がシステム111の出口方向と比較して異なるため、キャスト構成311をシステム111に組み込む場合、エンクロージャ117の第2の出口125を再配置する必要がある。
【0226】
ここで図5を参照すると、システム111に示されているものに対する第3の代替キャスト構成の概略側面図が示されており、第3の代替キャスト構成は、本発明に従って構成され、参照符号411で表されている。明確化、単純化、および/または説明の容易さのために、本出願の他の箇所で論じられているか、または本発明の理解にとって重要ではないキャスト構成411の特定の詳細は、本明細書から省略されることができ、および/または図5から省略されることができ、または簡略化された方法で示され得る。
【0227】
ロール131、133、および135の代わりにシステム111で使用されることができ、S-ラップキャスト構成とみなすことができるキャスト構成411は、チルドロール413、チルドロール415、およびロール417を備えることができる。理解されるように、キャスト構成411の出口方向がシステム111の出口方向と比較して異なるため、キャスト構成411をシステム111に組み込む場合、エンクロージャ117の第2の出口125を再配置する必要がある。
【0228】
以下の実施例は、例示のみを目的として与えられており、本明細書に記載される発明または本明細書に添付される特許請求の範囲に対する限定であることを意味するものではない。本明細書に添付の説明、実施例および特許請求の範囲に記載されているすべての部品およびパーセンテージは、特に明記しない限り重量による。さらに、本明細書において上記で提供された数字のすべての範囲は、各所与の範囲内の数字のすべてのサブセット範囲を具体的に開示すると見なされるものとする。
【実施例
【0229】
使用した材料:
-テキサス州ラポルタのLyondell(MFI0.06)または韓国のソウル、Yuhwa製のポリエチレンL5906、グレードHiden VH035。
-サウスカロライナ州SumterのEMS製のポリアミドグリルアミドL16、L25、CF6Sまたはミシガン州LivoniaのUbe製の6434B、5034B。
-以下の蒸気圧特性を有する、テネシー州メンティスのMW Barr&Co.Inc.、またはテキサス州ヒューストンのCitgo製の、20℃で3mmHgの蒸気圧を有するミネラルスピリット(MSB)。
【0230】
【表3】
【0231】
使用した装置は以下の通りであった:
-ニュージャージー州SewellのK-Tron Corp.によるVolumetric Feeder、Model#K2MVS60。
-カナダ、トロントのNeptuneの流体ポンプ、モデル515AN3。
-ニュージャージー州Ramsey、07466のCoperion Corporation製の2軸押出機(ZSK-30)
-コネチカット州PawcatuckのDavis Standard CompanyのKillion Extruders製のキャストフィルム巻取りおよびMDO延伸。
-横方向延伸のための、マサチューセッツ州AgawamのCSC Force Gaugeによる引張TDO延伸機。
-ロードアイランド州WoonsocketのMarshallおよびWilliams製の双方向テンターフレーム。
【0232】
以下の表に記載の各シート製品ならびに以下の表に要約された各比較シート製品を形成するために、以下の手順が使用された。
【0233】
指定された量のポリマーを、体積測定フィーダを介して二軸溶融押出機に供給した。ポリマーを押出機内で溶融させ、次いで、定量の流体を計量ポンプを介して押出機に導入した。ポリマーおよび流体を均一な流体混合物に混合した。指定されるように、総押出速度を3~5kg/時間に設定した。キャストシート速度は2ft/分であった。押出物と呼ばれる溶融混合物は、スロットダイを介してキャストシートに形成した。シートが、内部に封入されたダイヘッドを有し、ダイまたは溶融押出物が入ることができる10mmのスロット開口部を有する、図4に示すものと同様のキャストローラ引取エンクロージャ内に投じられた。第1の流体蒸気は内部に閉じ込められ、UELを超える状態を生成した。次いで、蒸気を過飽和化し、1組の冷却されたS-ラップキャストローラ上に凝縮した。押出キャストシートは、キャストローラの前にこのUELを超える蒸気ゾーンに最初に接触した。キャストシートの一方の表面は第1のローラと接触し、キャストシートの第2および反対側の表面は第2のローラと接触し、両方の表面が冷却された。
【0234】
ローラを50℃に維持し、凝縮物を、ポリマー/流体混合物を形成するために使用したのと同じ流体から形成した。溶融シート材料を液相から固相シート材料に変換した。この液体-固体遷移の後、シートは、第2のスロット開口部を介して封入されたキャストタンクから出て、蒸気状態は、タンク内のUELを超えるゾーンからこのタンクの外側のLEL未満のゾーンに変化した。
【0235】
シートを、一連のニップローラを使用して縦方向に順次延伸し、各延伸を制御された温度で行った。各延伸操作は、密閉された環境で行われた。最初の延伸からの蒸気を収集するために凝縮させた。この第1の延伸/気化は、105℃で縦方向に5.5:1の割合で行い、第1の成形シートの第1のポリマーに所定の流体を残しながら結晶化度を付与した。
【0236】
次いで、テンター装置を用いて、シートを制御された温度で横方向に延伸した。30℃および4:1の比で横方向に延伸を行い、空気流がシート材料上を通過して、気化および気化した流体の排出を助ける。
【0237】
テンター力を調整して、シートを105℃の高温で2分間張力下に保持して、アニールし、シート製品を固化させた。各成形シート製品の特性を下記表に示す。
【0238】
表に示すように、実施例1および2は、改善された左右のオイルウェットアウトを示し、表面細孔サイズおよび多孔性の差が最小化された。対照的に、制御されない従来の方法で製造された実施例3(比較例)は、有意なオイルウェットアウト時間の不一致を示し、すなわち、第1および第2の表面のオイルウェットアウトを比較した。この差は20秒、すなわち60%の増加である。オイルウェットアウト時間の測定は、SAE30モータオイルの液滴がセパレータシート製品を不透明な白色からはっきりした半透明の外観に変える時間である。この色変化は、セパレータの両面におけるオイルの浸透速度を示す。任意の1つの表面が妨害物を示す可能性がある。
【0239】
実施例2は、Celgard2325コントロールセパレータと同様に、リチウム電池コインセルで試験した。C/10レートでは、両方のセパレータが180mAh/gの比エネルギー容量を達成した。C/2レートでは、実施例2は160mAh/gの比エネルギー容量を達成し、Celgardセパレータは151mAh/gの比エネルギー容量を達成した。実施例1~3の詳細を以下の表に要約する。
【0240】
【表4】
【0241】
本発明と既存の手法との違いのいくつかは以下の通りである。既存の手法は、押出において同じ高揮発性溶媒を使用すること、UEL相溶性の気相形成剤を生成すること、凝固させ、かつ高多孔性押出キャストシートを形成すること、安全かつ効率的な方法でさらに加工され、薄型、高多孔性、および低抵抗の電池セパレータを達成すると同時に、後の加工ステップにより可能な液体溶媒のキャリーオーバを制限することに向けた手法ではない。さらに、既存のアプローチは、セパレータを形成し、リチウムセル内の水および酸分子を捕捉するための高分子量縮合ポリマーの使用を教示しておらず、そこではポリマーは開裂され、ポリオレフィンマトリックス中のポリマーの絡み合いを維持するために一定の最小分子量を維持しながら分子量が減少する。本発明は、驚くほど加工および延伸が容易であり、非常に均一で均質な細孔構造をもたらし、高い引張強度および伸びを有するシートを製造し、費用対効果が高く、環境的に望ましい製造方法で上記特性を達成し、廃棄物流をほとんどまたは全く生成しないシート製品を得ることを可能にする。
【0242】
少なくともいくつかの実施形態では、本発明の微孔性シート製品は、マイクロスキン層キャストシートを含むことができ、少なくともいくつかの実施形態では、本発明の微孔性シート製品は、電解質のウェットアウトが高く、ウィッキングが高く、電解導電率が高いことを特徴とすることができる。加えて、少なくともいくつかの実施形態では、本発明の微孔性シート製品は、電池のガス発生および腐食を抑制するために、水(HO)および/または酸(多くの場合フッ化水素酸の形態)を捕捉するためのポリマーを含むことができる。
【0243】
上述した本発明の実施形態は、単なる例示であることを意図しており、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、多数の変形および修正を行うことができるものとする。そのような変形および修正はすべて、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあることが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0244】
【特許文献1】米国特許第4,287,276号明細書
【特許文献2】米国特許第3,426,754号明細書
【特許文献3】米国特許第3,558,764号明細書
【特許文献4】米国特許第3,679,538号明細書
【特許文献5】米国特許第4,994,335号明細書
【特許文献6】米国特許第5,328,760号明細書
【特許文献7】米国特許第3,679,540号明細書
【特許文献8】米国特許第5,503,791号明細書
【特許文献9】米国特許第9,159,978号明細書
【特許文献10】米国特許第8,486,555号明細書
【特許文献11】米国特許第10,586,965号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2007/0092777号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2017/0166716号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2017/0152359号明細書
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】