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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20221020BHJP
   C07K 14/02 20060101ALI20221020BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20221020BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C07K14/02
C12N15/34
A61K35/763
A61K48/00
A61K39/00 H
A61K31/7088
A61P31/20
A61P1/16
A61K38/02
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513077
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 US2020048411
(87)【国際公開番号】W WO2021045969
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/893,546
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/941,125
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】317014002
【氏名又は名称】ブイアイアール バイオテクノロジー インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521222051
【氏名又は名称】トライアド ナショナル セキュリティ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ブリューニング エリック
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ユシム カリーナ
(72)【発明者】
【氏名】コーバー ベッテ
(72)【発明者】
【氏名】タイラー ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB09
4C084ZB33
4C085AA03
4C085CC08
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB09
4C086ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA75
4C087ZB09
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA02
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、単離されたポリヌクレオチドおよびポリペプチド、ならびに関連するB型肝炎ウイルス(HBV)ワクチンに関する。本開示はまた、そのようなポリペプチドを発現するためのウイルスベクター、およびHBVワクチンに使用され得る該ポリペプチドにも関し、かつ、本明細書において記載されるポリペプチド、ベクター、またはワクチンを投与する段階を含む、対象をHBV感染症から保護する方法および対象においてHBVを処置する方法にも関する。HBVワクチンを設計および作製する方法もまた本明細書において提供され、該方法は、ある地理的領域に存在するHBV遺伝子型におけるエピトープを効率良くカバーする抗原アミノ酸配列を用いて、該地理的領域内の多様性をカバーするようにワクチン抗原を設計する段階を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1~11またはSEQ ID NO:14~36に記載のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
SEQ ID NO:16~36に記載のアミノ酸配列を2種類またはそれ以上含む、ポリペプチド。
【請求項3】
SEQ ID NO:19または29に記載のアミノ酸配列、SEQ ID NO:16、21、27、28、または34に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:20、22、23、30、31、35、または36に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:3に記載のアミノ酸配列およびSEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列およびSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列およびSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項7】
SEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列、SEQ ID NO:10に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:11に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項8】
SEQ ID NO:17および18に記載のアミノ酸配列を1種類または複数種類さらに含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項9】
SEQ ID NO:1~36に記載のアミノ酸配列を1種類または複数種類コードする配列を含むポリヌクレオチドを含む、サイトメガロウイルス(CMV)ベクター。
【請求項10】
ヒトCMV(HCMV)ベクターまたはアカゲザルCMV(RhCMV)ベクターである、請求項9に記載のCMVベクター。
【請求項11】
UL82遺伝子を欠いている、請求項9または10に記載のCMVベクター。
【請求項12】
UL128~UL130遺伝子領域を欠いており、かつUL146~UL147遺伝子領域を欠いている、請求項9~11のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項13】
インタクトなUL128~UL130遺伝子領域およびインタクトなUL146~UL147遺伝子領域を有する、請求項9~11のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項14】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:1~11、SEQ ID NO:14~15、およびSEQ ID NO:24~26のうちの1種類または複数種類を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項15】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:16~23およびSEQ ID NO:27~36のうちの1種類または複数種類を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項16】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:16~23およびSEQ ID NO:27~36のうちの2種類またはそれ以上を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項17】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、
a) SEQ ID NO:19または29に記載の配列;
b) SEQ ID NO:16、21、27、28、または34のいずれか1つに記載の配列;および
c) SEQ ID NO:20、22、23、30、31、33、35、または36のいずれか1つに記載の配列
を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項18】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:17および18のうちの1種類または複数種類をさらに含む、請求項17に記載のCMVベクター。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチドによってコードされる配列が、発現を向上させるように配列されている、請求項15~18のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項20】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、
a) SEQ ID NO:3に記載の配列;および
b) SEQ ID NO:4に記載の配列
を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項21】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、
a) SEQ ID NO:5に記載の配列;および
b) SEQ ID NO:6に記載の配列
を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項22】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、
a) SEQ ID NO:7に記載の配列;および
b) SEQ ID NO:8に記載の配列
を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項23】
1種類または複数種類の前記アミノ酸配列が、
a) SEQ ID NO:9に記載の配列;
b) SEQ ID NO:10に記載の配列;および
c) SEQ ID NO:11に記載の配列
を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のCMVベクター。
【請求項24】
請求項9~23のいずれか一項に記載のCMVベクターを2種類またはそれ以上含む、組成物。
【請求項25】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチドを1種類または複数種類含む、B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン。
【請求項26】
CMVベクターと、1種類または複数種類のHBVエピセンサス(episensus)抗原をコードするポリヌクレオチドとを含む、B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン。
【請求項27】
前記CMVベクターが、ヒトCMV(HCMV)ベクターまたはアカゲザルCMV(RhCMV)ベクターである、請求項26に記載のワクチン。
【請求項28】
前記CMVベクターがUL82遺伝子を欠いている、請求項26または27に記載のワクチン。
【請求項29】
前記1種類または複数種類のHBVエピセンサス抗原をコードするポリヌクレオチドがUL82遺伝子と置き換わっている、請求項28に記載のワクチン。
【請求項30】
前記CMVベクターが、UL128~UL130遺伝子領域を欠いており、かつUL146~UL147遺伝子領域を欠いている、請求項26~29のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項31】
前記CMVベクターが、インタクトなUL128~UL130遺伝子領域、およびインタクトなUL146~UL147遺伝子領域を有する、請求項26~29のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチドが、2種類またはそれ以上のHBVエピセンサス抗原をコードする、請求項26~31のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項33】
前記1種類または複数種類のエピセンサス抗原が、SEQ ID NO:1~36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項26~31のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項34】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項35】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項36】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項37】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項38】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項39】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項40】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項41】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項42】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項43】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項44】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項45】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項46】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項47】
前記エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:16~23およびSEQ ID NO:27~36からなる群より選択されるアミノ酸配列を1種類または複数種類含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項48】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項49】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項50】
前記エピセンサス抗原がSEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項51】
前記エピセンサス抗原が、1種類または複数種類のエピセンサス配列を含み、該エピセンサス配列が、Cタンパク質、Sタンパク質、またはPタンパク質のうちの1種類または複数種類に由来する、請求項26~50のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項52】
前記エピセンサス抗原がエピセンサス配列を含み、該エピセンサス配列が、Cタンパク質に、Sタンパク質に、およびPタンパク質の保存領域に由来する、請求項51に記載のワクチン。
【請求項53】
前記Cタンパク質に、Sタンパク質に、およびPタンパク質に由来する前記エピセンサス配列が、発現を向上させるように配列されている、請求項51または52に記載のワクチン。
【請求項54】
前記エピセンサス抗原がエピセンサス配列をさらに含み、該エピセンサス配列が、PreS1ドメイン、PreS2ドメイン、Pタンパク質の非保存領域のうち1種類または複数種類に由来する、請求項51~52のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項55】
前記エピセンサス抗原が由来するタンパク質配列の少なくとも1種類が、1つまたは複数の変異を含む、請求項26~54のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項56】
前記変異が欠失または置換である、請求項55に記載のワクチン。
【請求項57】
前記変異が、表1に記載されるPタンパク質の変異である、請求項55に記載のワクチン。
【請求項58】
前記エピセンサス抗原が、2種類またはそれ以上のエピセンサス配列を含む、請求項26~57のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項59】
前記エピセンサス抗原が、中国由来のHBV配列を用いて開発されたエピセンサス配列を2種類含む、請求項58に記載のワクチン。
【請求項60】
前記エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む、請求項59に記載のワクチン。
【請求項61】
前記エピセンサス抗原が、中国由来のHBV配列を用いて開発されたエピセンサス配列、および全世界のセット由来のHBV配列を用いて開発されたエピセンサス配列を含む、請求項58に記載のワクチン。
【請求項62】
前記エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む、請求項61に記載のワクチン。
【請求項63】
前記エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項61に記載のワクチン。
【請求項64】
前記エピセンサス抗原が、全世界のセット由来のHBV配列を用いて開発されたエピセンサス配列を3種類含む、請求項58に記載のワクチン。
【請求項65】
前記エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、およびSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む、請求項64に記載のワクチン。
【請求項66】
a) 1種類もしくは複数種類のHBVエピセンサス抗原;
b) 1種類もしくは複数種類のHBVエピセンサス抗原をコードする1種類もしくは複数種類のポリヌクレオチド;または
c) 1種類もしくは複数種類のHBVエピセンサス抗原をコードする1種類もしくは複数種類のポリヌクレオチドを含む、1種類もしくは複数種類のベクター
を含む、HBVワクチン。
【請求項67】
a) 2種類もしくはそれ以上のHBVエピセンサス抗原;
b) 1種類もしくは複数種類のHBVエピセンサス抗原をコードする2種類もしくはそれ以上のポリヌクレオチド;または
c) 1種類もしくは複数種類のHBVエピセンサス抗原をコードする1種類もしくは複数種類のポリヌクレオチドを含む、2種類もしくはそれ以上のベクター
を含む、請求項66に記載のワクチン。
【請求項68】
請求項26~67のいずれか一項に記載のHBVワクチンを2種類またはそれ以上含む、組成物。
【請求項69】
第1のHBVワクチンが、中国由来のHBV試料を用いて開発された第1のエピセンサス抗原をコードするかまたは含み、かつ第2のHBVワクチンが、中国由来のHBV試料を用いて開発された第2のエピセンサス抗原をコードするかまたは含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記第1のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含み、かつ前記第2のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
第1のHBVワクチンが、中国由来のHBV配列を用いて開発された第1のエピセンサス抗原をコードするかまたは含み、かつ第2のHBVワクチンが、全世界のセット由来のHBV配列を用いて開発された第2のエピセンサス抗原をコードするかまたは含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項72】
前記第1のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含み、かつ前記第2のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記第1のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含み、かつ前記第2のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
第1のHBVワクチンが、全世界のセット由来のHBV配列を用いて開発された第1のエピセンサス抗原をコードするかまたは含み、第2のHBVワクチンが、全世界のセット由来のHBV配列を用いて開発された第2のエピセンサス抗原をコードするかまたは含み、かつ第3のHBVワクチンが、全世界のセット由来のHBV配列を用いて開発された第3のエピセンサス抗原をコードするかまたは含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項75】
前記第1のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含み、前記第2のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含み、かつ前記第3のエピセンサス抗原がSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、アジア由来のHBV配列の中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項77】
前記少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、中国由来のHBV配列の中心をなす、請求項76に記載のワクチンまたは組成物。
【請求項78】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、米国由来のHBV配列の中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、欧州由来のHBV配列の中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項80】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、米国由来および欧州由来のHBV配列の中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項81】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV配列の全世界のセットの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項82】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型Aエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項83】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型Bエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項84】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型Cエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項85】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型CBエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項86】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型Dエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項87】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型DCエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項88】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型DEエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項89】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型Eエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項90】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、HBV遺伝子型Fエピデミックの中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項91】
少なくとも1種類のエピセンサス抗原が、遺伝子型A、B、C、CB、D、DC、DE、E、およびF以外のHBV遺伝子型の中心をなす、請求項26~67のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項92】
前記ワクチンが予防用ワクチンである、請求項26~67および76~91のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項93】
前記ワクチンが治療用ワクチンである、請求項26~67および76~91のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項94】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項26~67および76~91のいずれか一項に記載のワクチンまたは請求項68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項95】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクター、請求項25~67もしくは76~94のいずれか一項に記載のワクチン、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物の有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む、対象においてHBVを処置する方法。
【請求項96】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクター、請求項25~67もしくは76~94のいずれか一項に記載のワクチン、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物の有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む、対象をHBV感染症から保護する方法。
【請求項97】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクター、請求項25~67もしくは76~94のいずれか一項に記載のワクチン、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物の有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む、対象においてHBVに対する免疫応答を引き起こすかまたは誘導する方法。
【請求項98】
HBVを処置するのに使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクター、請求項25~67もしくは76~94のいずれか一項に記載のワクチン、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項99】
対象をHBV感染症から保護するのに使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクター、請求項25~67もしくは76~94のいずれか一項に記載のワクチン、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
対象においてHBVに対する免疫応答を引き起こすかまたは誘導するのに使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクター、請求項25~67もしくは76~94のいずれか一項に記載のワクチン、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項101】
HBVの処置において使用するための医薬を製造するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクターの使用、請求項25~67および76~94のいずれか一項に記載のワクチンの使用、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項102】
対象をHBV感染症から保護するのに使用するための医薬を製造するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクターの使用、請求項25~67および76~94のいずれか一項に記載のワクチンの使用、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項103】
対象においてHBVに対する免疫応答を引き起こすかまたは誘導するのに使用するための医薬を製造するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用、請求項9~23のいずれか一項に記載のベクターの使用、請求項25~67および76~94のいずれか一項に記載のワクチンの使用、または請求項24もしくは68~75のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項104】
以下の段階を含む、ある地理的領域における対象のためのHBVワクチンを設計および作製する方法:
(a) 該地理的領域内のHBV遺伝子型の多様性を効率良くカバーする1種類または複数種類のエピセンサス抗原を設計する段階;および
(b) 以下のうちの1つを作製する段階:
CMV骨格と該エピセンサス抗原をコードする核酸とを含む、HBVワクチン;または
該エピセンサス抗原を含むHBVワクチン。
【請求項105】
以下の段階を含む、対象のためのHBVワクチンを設計および作製する方法:
(a) 該対象中のHBVウイルスのアミノ酸配列を決定する段階;
(b) 該対象に存在する該ウイルス内のHBV遺伝子型の多様性を効率良くカバーするように、1種類または複数種類のエピセンサス抗原を設計する段階;および
(c) 以下のうちの1つを作製する段階:
CMV骨格と該エピセンサス抗原をコードする核酸とを含む、HBVワクチン;または
該エピセンサス抗原を含むHBVワクチン。
【請求項106】
以下の段階を含む、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法:
(a) 1種類または複数種類のエピセンサス抗原を設計する段階;
(b) CMV骨格と該1種類または複数種類のエピセンサス抗原をコードする核酸とを含むワクチンを作製する段階;および
(c) 該ワクチンを、その必要がある対象に投与する段階。
【請求項107】
以下の段階を含む、対象においてHBV感染症を処置する方法:
(a) CMV骨格と1種類または複数種類のエピセンサス抗原をコードする核酸とを含む免疫原性組成物を作製する段階;および
(b) 有効量の該免疫原性組成物を該対象に投与する段階。
【請求項108】
以下の段階を含む、対象においてHBV感染症を防止する方法:
(a) CMV骨格と1種類または複数種類のエピセンサス抗原をコードする核酸とを含む免疫原性組成物を作製する段階;および
(b) 有効量の該免疫原性組成物を該対象に投与する段階。
【請求項109】
以下の段階を含む、対象においてHBVに対する免疫応答を誘導する方法:
(a) CMV骨格と1種類または複数種類のエピセンサス抗原をコードする核酸とを含む免疫原性組成物を作製する段階;および
(b) 有効量の該免疫原性組成物を該対象に投与する段階。
【請求項110】
以下の段階を含む、対象においてエフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法:
(a) CMV骨格と1種類または複数種類のエピセンサス抗原をコードする核酸とを含む免疫原性組成物を作製する段階;および
(b) 有効量の該免疫原性組成物を該対象に投与する段階。
【請求項111】
前記1種類または複数種類のエピセンサス抗原が、SEQ ID NO:1~11、SEQ ID NO:14~36からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちの1種類または複数種類を含む、請求項104~110のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の関与についての声明
米国エネルギー省(United States Department of Energy)とTRIAD National Security, LLCとの間における、ロスアラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)の運用に関する契約番号89233218CNA000001に従い、合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
配列表についての声明
本出願に付随する配列表は、書面の代替としてテキストフォーマットで提供され、かつ本明細書による参照により、本明細書に組み入れられる。配列表を含むテキストファイルの名前は、930185_414WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。該テキストファイルは186 KBであり、2020年8月21日に作成されており、かつEFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
本発明の分野
本発明の対象は、全体としてB型肝炎ウイルス(HBV)に関し、かつ具体的にはHBVワクチンに関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症は、全世界において主要な健康問題となっている。HBV感染症は、感染した成人の5~10%において慢性肝疾患を引き起こすが、一方で周産期の伝染では割合は逆になり、>90%が慢性疾患へと進行する。未処置の場合、慢性B型肝炎(CHB)感染症はしばしば壊死性の炎症へと進行し、そして肝臓の損傷が継続することにより、肝硬変および肝細胞がん(HCC)が引き起こされる。CHBは、HCCを発症するリスクを20倍に増加させると推定されており、かつHCC症例の約54%を占める。HCCは3番目に多い、がんの致死性の型であり、毎年新たに約800,000件が診断されている。高い有効性を有する(>95%)予防用ワクチンは、1980年代初頭に実現しているが;しかしながらこれらのHBVワクチンは、いったん感染が確立してしまった後では有効性は低い。予防用ワクチンが広く使用されているにもかかわらず、世界的に見て、2億4千万~3億4千万人の慢性HBVキャリアがおり、かつ1年につき780,000件超の関連死が生じている。新規なHBV感染症の大多数は、高度に蔓延している地域、たとえば、中国、東南アジア、およびサブサハラ・アフリカなどにおいて発生している。HBV感染症は、性的な伝染、病院内での伝染、または血液を介する伝染によって生じる。
【0005】
HBVゲノムは3.2 kBの二本鎖DNA分子であり、これは、オーバーラップする以下4つのオープンリーディングフレームから構成される:ポリメラーゼ(PまたはPol)、コア(C)、表面抗原(HBsAg)(S)、および、その機能は完全には理解されてはいないが、肝臓がんの発症に関与している、「X」と呼ばれる遺伝子。Locarnini et al. Antivir Ther. 2010;15 Suppl 3:3-14(非特許文献1)。また、他の小型の慢性ウイルス、たとえばHIVまたはHCVなどは、準種(quasispecies)をもたらす高い変異率を示すが、これらとは異なり、HBVの小型(3.2 kb)のDNAゲノムは、オーバーラップしているオープンリーディングフレーム(ORF)に起因して、その変異する能力はより抑制性である。宿主内での変異は限定的であるが、HBVの異なる遺伝子型が世界的に見いだされており、これは、処置を、たとえばワクチンなどを設計する際には考慮に入れる必要がある。
【0006】
慢性HBV感染症のための現行の標準治療は、抗ウイルス薬およびインターフェロンαを用いる処置である。
【0007】
これまでのところ、HBVに対する治療用ワクチンの接種は有効ではない。それには、いくつかの潜在的な原因がある。ある個体に感染しているHBV配列を同定することは、特定のワクチンのどれが有効な処置を提供するのかを決定するのに有用である。「HBVdb」と呼ばれるHBVデータベースであって、HBVゲノムを配列決定しかつ研究する共同コンソーシアムとして開発された、HBVデータベースは、HBVの完全なゲノムを約5000種類同定している。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Hayer et al. Nucleic Acids Res., 41:D566-D570 2013(非特許文献2)を参照されたい。しかしながら、配列が全体的にオーバーラップしているために、かつ、同じ患者から、または高度に緊密なクラスターから、複数の配列が単離されたために、HBVdbが同定した、真にユニークなHBV完全ゲノムの総数は、およそ3000種類である。HBVdbによって同定されたHBVゲノムは、異なる遺伝子型(A、B、C、CB、D、DC、DE、E、およびF)に分類することができる。遺伝子型の分布は、世界中の人々のあいだで変動する。たとえば、アジア由来の、かつ特に中国由来の個体の試料における、HBVdbにおいて利用可能なデータセット配列のおよそ75%は、遺伝子型BおよびCを含む。一方で、ヨーロッパにおけるHBV感染症の半分超は、遺伝子型AおよびDによる感染症である。
【0008】
抗ウイルス薬およびインターフェロンαを用いた処置は、ウイルスの複製を阻害し、かつ自然免疫系を刺激するが、それらでウイルスが排除されることはまれであり(1年につき1~4%)、かつ患者は、生涯にわたる処置が必要になる場合が多い。さらに、これらの療法に対する個々の応答は、疾患が進行するにつれて変化し、かつ処置が長引くと、耐性変異および広範囲な副作用の両方を引き起こす可能性がある。テノホビルおよびエンテカビルは、最も有効な、直接的な抗ウイルス療法であるが、これらは高価であり、かつ専門家のガイドラインおよびアルゴリズムを用いた患者のサブセットのみにおいて使用されている。治療が失敗するかまたは使用されない場合、肝臓の炎症は慢性のものとなり、そして損傷と再生とのサイクルは、線維症、肝臓の異常構造を引き起こし得、かつ場合によってはHCCを引き起こし得る。したがって、有効な免疫応答を引き起こしてHBVの消失および最終的な治癒をもたらす有効な免疫療法に対する、さしせまった必要性が存在する。
【0009】
慢性HBVを有する個体のうちの少数は、その感染を自発的に排除するが、これは血中において表面抗原が測定されなくなることから証明される。その割合は1年につき1%と低く、かつ、直接的に作用する抗ウイルス剤を用いても、改善は最小限である。最も効果的な排除は、循環している表面抗原の量的レベルが低い個体であって、I型インターフェロンを用いた処置を受けている、個体において生じるが、I型インターフェロンは重い副作用を有しており、かつ低許容性であることが多い。
【0010】
治療用ワクチンの接種もまた、完全には有効ではないが、これは、感染を排除するのに必要なT細胞が枯渇するかまたは寛容化されてしまい、肝臓においてHBVの効果的な排除を導くことができないためである。したがって、天然の感染によっては誘導されないが、それにもかかわらず、感染した肝細胞の表面に提示されるペプチド配列を認識するT細胞を、誘発する必要がある。
【0011】
CMV/HBVワクチンは、有効な応答を引き起こしてHBVの消失および最終的な治癒をもたらす手段を、提供する。活性な肝常在性エフェクターCD8+ T細胞(TEM)応答を誘導することは、HBVの排除に重要である。したがって、CHB患者の肝臓における新規なエピトープを認識する持続性のHBV特異的エフェクターCD8+ T細胞の誘導は、HBVを制御し、そして最終的にHBVを消失させるのに十分であるはずである。
【0012】
このように当技術分野においては、HBVのさまざまな遺伝子型に感染した人々のための、有効なワクチン接種を同定する必要性が残されている。また、現在利用可能なワクチンは、慢性HBV感染症に対しては有効ではないため、当技術分野においては、そのような感染症を処置するのに使用できるワクチンを開発する必要性が存在する。臨床試験の準備のために治療的HBVワクチンを設計、製造、および試験する必要性もまた、残されている。本明細書において開示される組成物および方法は、これらの必要性に対処する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Locarnini et al. Antivir Ther. 2010;15 Suppl 3:3-14
【非特許文献2】Hayer et al. Nucleic Acids Res., 41:D566-D570 2013
【発明の概要】
【0014】
概要
ある局面において、本開示は、SEQ ID NO:1~11またはSEQ ID NO:14~36に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:16~36に記載のアミノ酸配列を2種類またはそれ以上含む。いくつかの態様において、前述のポリペプチド、または該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、HBVワクチンに使用され得る。いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO:1~11またはSEQ ID NO:14~36に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、免疫原性組成物を提供する。よりさらなる態様において、本開示は、HBVに対する免疫応答を引き起こすための、またはHBV感染症を処置もしくは防止するための、前述のポリペプチドの使用、または該ポリペプチドを含む免疫原性組成物の使用を提供する。
【0015】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO:1~36に記載のアミノ酸配列を1種類または複数種類コードする配列を含むポリヌクレオチドを含む、サイトメガロウイルス(CMV)ベクターを包含するウイルスベクターを提供する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~11、SEQ ID NO:14~15、およびSEQ ID NO:24~26のうちの1種類または複数種類を含むアミノ酸配列を、1種類または複数種類コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドによってコードされる配列は、発現を向上させるように配列される。いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO:1~36に記載のアミノ酸配列を1種類または複数種類コードする配列を含むポリヌクレオチドをコードするCMVベクターを含む、免疫原性組成物を提供する。よりさらなる態様において、本開示は、HBVに対する免疫応答を引き起こすための、またはHBV感染症を処置もしくは防止するための、前述のベクターの使用、または該ベクターを含む免疫原性組成物の使用を提供する。
【0016】
本明細書においてはまた、1種類または複数種類のHBVエピセンサス(episensus)抗原を含む、免疫原性組成物またはワクチンも提供される。いくつかの態様において、ワクチンの抗原は、ポリペプチドとして提供される。いくつかの態様において、抗原は、ポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様において、ウイルスベクターはポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、抗原は、2種類またはそれ以上のポリヌクレオチドによってコードされ、ここで該ポリヌクレオチドは、同じプロモーターまたは別々のプロモーターによって発現され得る。いくつかの態様において、抗原は、別々のウイルスベクターによってコードされる。いくつかの態様において、HBVワクチンは、2種類またはそれ以上のHBVエピセンサス抗原を含む。いくつかの態様において、HBVワクチンは、サイトメガロウイルス(CMV)ベクター、および1種類または複数種類のHBVエピセンサス抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0017】
いくつかの態様において、ワクチンは予防用ワクチンである。いくつかの態様において、ワクチンは治療用ワクチンである。
【0018】
いくつかの態様において、免疫原性組成物またはワクチンは、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。
【0019】
ある局面において、本開示は、前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、またはワクチンのうちの2種類もしくはそれ以上を含む組成物、たとえば免疫原性組成物を、提供する。
【0020】
本明細書においてはまた、対象においてHBVを処置する方法も提供され、該方法は、前述のポリペプチド、ベクター、ワクチン、または組成物の有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む。本明細書においてはさらに、対象をHBV感染症から保護する方法が提供され、該方法は、前述のポリペプチド、ベクター、ワクチン、または組成物の有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む。本明細書においてはさらに、HBVに対する免疫応答を引き起こす方法が提供され、該方法は、前述のポリペプチド、ベクター、ワクチン、または組成物の有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む。
【0021】
本明細書においてはまた、前述のポリペプチド、ベクター、ワクチン、または組成物が、HBVを処置するのに、対象をHBV感染症から保護するのに、またはHBVに対する免疫応答を誘導するのに使用するためのものである、といういくつかの態様も提供される。
【0022】
本開示はまた、HBV感染症の処置において使用するための医薬を製造するための、前述のポリペプチド、ベクター、ワクチン、または組成物の使用も提供する。本開示はまた、対象をHBV感染症から保護するのに使用するための医薬を製造するための、前述のポリペプチド、ベクター、ワクチン、または組成物の使用も提供する。本開示はまた、HBVに対する免疫応答を引き起こすかまたは誘導するのに使用するための医薬を製造するための、前述のポリペプチド、ベクター、ワクチン、または組成物の使用も提供する。
【0023】
本明細書においては、1種類または複数種類のエピセンサス抗原を含む、HBVポリペプチドが提供され、該エピセンサス抗原は、HBVのC、S、Pに由来するアミノ酸配列であって、全長配列か、その部分か、またはそれらの任意の組み合わせを含む、アミノ酸配列を有する。
【0024】
本明細書においてはさらに、1種類または複数種類の薬学的に許容される担体、および1種類または複数種類のエピセンサス抗原を含む、免疫原性組成物またはワクチンが提供される。本明細書においてはまた、1種類または複数種類のエピセンサス抗原を発現可能なベクターを含む、免疫原性組成物またはワクチンも提供される。いくつかの態様において、HBVエピセンサス抗原は、2種類またはそれ以上のエピセンサス配列を含む。いくつかの態様において、HBVワクチンは予防用ワクチンである。いくつかの態様において、HBVワクチンは治療用ワクチンである。
【0025】
本開示は、対象においてHBV感染症を防止または処置する方法をさらに提供し、該方法は、前述の免疫原性組成物またはワクチンの有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む。さらに、対象のための免疫原性組成物またはワクチンを設計および作製する方法が提供され、該方法は、対象中のHBVウイルスを配列決定する段階、対象に存在するウイルス中の多様性をカバーするように設計されたワクチン抗原を、選択する段階、およびワクチン抗原をベクターに挿入する段階を含む。本明細書においてはまた、対象においてHBV感染症を処置する方法も提供され、該方法は、開示される免疫原性組成物またはワクチンの有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む。
【0026】
本明細書においてはまた、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法も提供され、該方法は、(a) 1種類または複数種類のエピセンサス抗原を設計する段階;(b) CMV骨格と1種類または複数種類のエピセンサス抗原をコードするポリヌクレオチドとを含む免疫原性組成物またはワクチンを作製する段階;および(c) ワクチンを、その必要がある対象に投与する段階を含む。
【0027】
ある態様において、本明細書において提供される方法のエピセンサス抗原は、SEQ ID NO:1~11およびSEQ ID NO:14~36からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちの1種類または複数種類を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】HBVゲノムの構成。他の小型の慢性ウイルス、たとえばHIVまたはHCVなどは、準種をもたらす高い変異率を示すが、これらとは異なり、HBVの小型(3.2 kb)のDNAゲノムは、オーバーラップしているオープンリーディングフレーム(ORF)に起因して、その変異する能力はより抑制性である。
図2図2A~2B。HBVdbから利用可能な3041種類のHBV配列の、世界分布。HBVの遺伝子型は、世界中に分布している。サンプリングされた国が既知である配列のみが、地図上に示される。
図3図3A~3B。HBVdbから利用可能な、アジアにおける、および中国における、HBV配列の分布。アジアにおいて、かつ特に中国において、遺伝子型のおよそ75%は遺伝子型BおよびCである。
図4A】1種類、2種類、および3種類のエピセンサス配列を用いた、HBVの全プロテオームカバレッジ。図4Aは、1種類のエピセンサス配列では、HBVのゲノムに対して、変動しかつ限定的であるカバレッジが提供されることを示す(上段パネル)。2種類のエピセンサス配列(中段パネル)、または3種類のエピセンサス配列(下段パネル)を使用することで、カバレッジは改善する。
図4B】完全一致した9マーの数に示されるように、3種類のエピセンサス配列は、1種類または2種類のエピセンサス配列よりも優れたカバレッジを提供する。
図5図5A~5C。全世界のHBV集団を用いて開発されたエピセンサス配列を、1種類、2種類、または3種類使用した場合の、全プロテオームカバレッジ。全世界のHBV集団を用いて開発された、2種類または3種類のエピセンサス配列の使用は、主要な遺伝子型のすべてに対するカバレッジを実質的に改善するとともに、BおよびCのHBV集団を用いて開発されたエピセンサス配列と比較して同等の、BおよびCに対するカバレッジを提供する。
図6】HBVゲノムの4つの保存領域に関する2種類のエピセンサス配列を用いた、HBVの全プロテオームカバレッジ。N末端の29個のアミノ酸、およびPタンパク質のN末端を包含する、超可変領域は、枠をつけて図示されている。超可変領域は、さらなる解析からは除外されている。
図7A】1種類のエピセンサス配列が、中国由来の試料において、中国以外由来の試料において、および全世界の試料のコホートにおいて使用される場合の、潜在的T細胞エピトープ(PTE)に対するカバレッジ。X軸は、カバレッジのパーセンテージを示す。灰色のヒストグラムは、無作為に選択された1000個の天然株による、潜在的T細胞エピトープカバレッジを示す。
図7B】2種類のエピセンサス配列が、中国由来の試料において、中国以外由来の試料において、および全世界の試料のコホートにおいて使用される場合の、潜在的T細胞エピトープ(PTE)に対するカバレッジ。X軸は、カバレッジのパーセンテージを示す。灰色のヒストグラムは、無作為に選択された1000個の天然株による、潜在的T細胞エピトープカバレッジを示す。
図8】さまざまなエピセンサス配列についてのカバレッジの比較。2_中国・全世界_Epi(2_CHGL_epi)配列は、全世界の試料に対して、0.809(80.9%)の全長配列完全カバレッジを提供する。2_CHGL_epi配列は、中国由来の試料において0.879(87.9%)の全長配列完全カバレッジを提供し、かつ中国以外由来の試料において0.772(77.2%)の全長配列完全カバレッジを提供する。
図9A】中国由来の試料(図9A左段)、中国以外由来の試料(図9A中段)、および全世界の試料のコホート(図9A右段)における、1_D.vac、1_C.ref、1_CH_epi、1_GL_epi、2_CH_epi、2_CHGL_epi、および3_GL_epiでの、保存領域カバレッジの比較。
図9B】主要な遺伝子型のすべてにおける、1_D.vac、1_GL_epi、および2_CHGL_epiでの、保存領域カバレッジを示す。
図10A】野生型の遺伝子型D配列、および1_GL_epi配列を用いた場合と比較した、2_CHGL_epi配列を用いた場合の、1089種類の中国のHBV配列に対する保存領域カバレッジ。遺伝子型Dの配列は、TransgeneおよびGlobeImmuneによって、ワクチンに使用されている。
図10B】全3041種類の全世界のHBV配列に対する保存領域カバレッジ。遺伝子型Dの配列は、TransgeneおよびGlobeImmuneによって、ワクチンに使用されている。
図11図11A~11D。図11Aおよび図11Bは、米国および欧州における効率の良いエピトープカバレッジのために開発された、HBV遺伝子型Dのエピセンサス抗原を示す;抗原構築物は図11Aから始まって、そして図11Bに続く。記載される順序の、コア(C)配列、PreS1およびPreS2配列、表面抗原(S)配列、ならびにポリメラーゼ(P)配列に由来する、HBV遺伝子型Dエピセンサス抗原が示される。膜貫通(TM)ドメイン中に欠失を有する配列に由来する抗原か、またはHBVにおけるタンパク質の順序から並べ替えられている抗原を有する、エピセンサス抗原のバリアントは、凝集を最小限に抑え、かつ発現を最大化するために、開発されている。図11Cは、C末端に挿入されたヘマグルチニン(HA)エピトープタグをそれぞれが含む、同じ抗原のための構築物を示す。図11Dは、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-page)と、それに続く、各構築物中に組み込まれたHAエピトープタグに対する抗体を用いて発光させたイムノブロットとによって測定された、ウイルスによる抗原の発現を示す。
図12A】PreS1およびPreS2配列、表面抗原(S)配列、ポリメラーゼ(P)配列、ならびに/またはコア(C)配列に由来する、HBV遺伝子型Dのエピセンサス抗原を示す。示されるように、抗原のうちの4つは、Pタンパク質に由来する配列中に欠失を有する。V5エピトープタグまたはまたはヘマグルチニン(HA)エピトープタグは、該構築物に組み込まれた;V5タグはN'末端に挿入され、かつHAタグはC'末端に挿入された。
図12B】SDS-pageと、それに続く、各構築物中に組み込まれたV5エピトープタグまたはHAエピトープタグに対する抗体を用いて発光させたイムノブロットとによって測定された、ウイルスによる抗原の発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
I. 定義
本明細書および特許請求の範囲の中で、本説明の局面に関連するさまざまな用語が使用される。そのような用語は、別途指定されない限り、当技術分野におけるその通常の意味を持つものとする。具体的に定義される他の用語は、本明細書において規定される定義と一致する様式で、解釈されるべきである。
【0030】
本明細書、および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明確に他を示していない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、たとえば「細胞」への言及は、細胞2つまたはそれ以上の組み合わせ等を含む。選択肢の使用(たとえば「または」)は、該選択肢の、1つ、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味するものとして理解されるべきであり、かつ「および/または」と同義語として使用され得る。本明細書において使用される場合、「含む」および「有する」という用語は、同義語として使用され、該用語およびそれらの異形は、非限定的であると解釈されることが意図される。
【0031】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、量、持続時間等といった測定可能な値を指す際には、開示される方法を実施するためにそのような変動が適切であるような、指定された値からの最大で±20%の変動を包含することを意図する。別途指定されない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量を表現する数字、分子量、反応条件等のような特性を表現する数字はすべて、どのような場合でも、「約」という用語によって修飾されているものと理解される。したがって、相反するように指定されない限り、以下の本明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメーターは、入手しようとする所望の特性に応じて変動し得る、近似値である。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限することを試みるものではないが、最低でも、数値パラメーターのそれぞれは、少なくとも、記載される有効数字の数を考慮し、かつ通常の丸め技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0032】
本開示の広大な範囲に記載の数値範囲および数値パラメーターは、近似値であるものの、特定の例に記載の数値は、可能な限り正確に記載されている。しかしながら、いかなる数値も、それらそれぞれを試験した測定値において見いだされる標準偏差に必然的に起因する、いくらかの誤差を、元々包含している。
【0033】
「含む」という用語は、特許請求の範囲において言及される、指定された特徴、整数、段階、または構成要素の存在を意味するが、1種類または複数種類の、他の特徴、整数、段階、構成要素、またはそれらの群の存在または付加を、除外するものではない。「から本質的になる」という用語は、ある請求項の範囲を、特許請求の対象の特定されている材料または段階と、特許請求の対象の基本的な特徴および新規な特徴に実質的な影響を与えない材料または段階とに、限定する。
【0034】
「実質的に」という単語は、「全く」を除外するものではない;たとえば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含まない可能性がある。「実質的に」という単語は、必要に応じて、本明細書において提供される定義では省略され得る。
【0035】
上で使用されている場合、および本開示中で使用される場合、「有効量」という用語は、問題とされる障害、異常、または副作用の処置に関して所望の結果を達成するために必要な投薬量および期間において、有効な量を指す。成分の有効量は、特定のワクチンによって、選択される成分または組成物によって、投与の経路によって、および個体において所望の結果を誘発する該成分の能力によって、患者ごとに変動するのみならず、たとえば、緩和されようとする異常の病態または重篤性、個体の、ホルモンレベル、年齢、性別、体重、患者の状態、および処置されている病態の重篤性、特定の患者においてその後に予定される併用薬または特別食、などといった因子によって、ならびに当業者が認識する他の因子によっても患者ごとに変動し、適切な投薬量は主治医の裁量によることが、理解される。投薬レジメンは、治療応答が改善するように調整され得る。有効量とはまた、成分のいずれの毒性作用または有害作用よりも、治療上有益な効果のほうが上回る、量でもある。
【0036】
「投与する」という用語は、化合物もしくは組成物を直接的に投与すること、または、体内で同等の量の活性化合物または活性物質を生成する、プロドラッグ、誘導体、もしくはアナログを投与することのいずれかを意味する。
【0037】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書において互換性をもって使用され、かつ、本明細書において開示される薬学的組成物を用いた処置であって、予防的処置を包含する、処置がそれに対して提供される動物、たとえばヒトを指す。本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」という用語はすべての脊椎動物を含んでおり、これはたとえば、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(たとえば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマなどの哺乳動物、ならびに、爬虫類、両生類、ニワトリ、およびシチメンチョウなどの非哺乳動物である。
【0038】
「エピセンサス」という用語は、エピトープベースのコンセンサス配列を指す。これは、そのエピトープが、天然の配列を有する参照セットにおけるエピトープと可能な限り厳密に一致する、配列である。「エピトープ」および「潜在的エピトープ」という用語は、多くの場合には、非常に長い天然の抗原配列またはワクチンの抗原配列のうちの、k個の文字の部分配列という文脈において、k個の文字の配列を指す(典型的には、kは8~12の範囲である)。T細胞は、免疫応答においてそのようなペプチドを認識し得る。
【0039】
「EpiGraph」という用語は、最適なエピセンサス配列を提供する配列を作り出すために開発された、または、組み合わせられた場合に多様なウイルス配列の集団に対する最適なカバレッジを提供する配列のセットを作り出すために開発された、コンピューターによる戦略を指す。EpiGraph法は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、PCT出願番号WO 2016/054654 A1において、およびTheiler, et al., Sci. Rep. 6:33987 (2016)において、以前に記述されている。EpiGraph法は、多様なウイルス集団において見いだされる潜在的T細胞エピトープ(PTE、典型的には9マーのペプチド配列)に対する最大化されたカバレッジを有する、人工的であるがインタクトな抗原のセットを作り出す。EpiGraphは、以前のモザイクワクチン設計法を超えた、次の段階である。グラフ理論に基づくEpiGraph法は、遺伝的アルゴリズムを使用するモザイク法と比べて、コンピューター的にはるかに強力であり、したがって、実質的により多くの組み合わせを検討することにより、PTEカバレッジの改善を可能にする。EpiGraph法およびモザイク法は両方とも、天然の株と比べて、T細胞エピトープ多様性に対するより広大なカバレッジを有する、タンパク質抗原を作製する。HBVモザイク、HIVモザイク、およびHCVモザイクは、天然株またはコンセンサス免疫原の組み合わせよりも幅広くかつより深く、細胞性免疫応答を誘発した。HBVモザイクおよびHIVモザイクは、第I相の臨床試験中である。いくつかの態様において、EpiGraphアルゴリズムは、HBVの保存領域に対応する「エピセンサス」配列を設計するために使用される。
【0040】
「エピセンサス配列」という用語は、HBV配列の集団に基づき、EpiGraphアルゴリズムを用いて設計された人工的な抗原の、アミノ酸配列を指す。HBV配列の集団の「中心をなす」エピセンサス配列とは、該集団に対する最大の平均エピトープカバレッジを提供する、コンピューターによって導き出された配列である。「エピセンサス抗原」とは、エピセンサスアミノ酸配列を含む抗原である。
【0041】
本明細書において使用される場合、「処置」または「治療」という用語(および、治癒または軽減を包含するそれらの異形)は、感染しているヒトの処置を指す。本明細書において使用される場合、「処置する」という用語は、異常、疾患、または障害の、有害な影響もしくは負の影響か、またはそれらの症状の、少なくとも1種類を緩和するかまたは低減させることを含む。この、異常、疾患、または障害は、HBV感染症であり得る。
【0042】
本明細書において使用される場合、「防止」または「予防」という用語は、対象が、たとえばHBVもしくは関連ウイルスなどに感染するのを防止するか、または対象がそれらに感染するリスクを低下させるか、またはそれらの伝染を止めるか、またはそれらが伝染するリスクを低下させることを指す。
【0043】
「薬学的に許容される」とは、理にかなった医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスクの比に見合っていて、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、問題のある他の合併症を引き起こさずに、ヒトおよび動物の組織と接触させるのに適している、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0044】
本明細書において使用される場合、「ワクチン」、「免疫原性化合物」、および「免疫原性組成物」という用語は、対象において免疫応答を誘導する化合物または組成物を指すために、互換性をもって使用される。予防用ワクチンは、新規な感染症に対して、何らかの程度の保護を提供する。治療用ワクチンは、既存の感染症の処置に役立つ。
【0045】
II. 抗原
本明細書においては、あるHBV集団に由来する配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:1~11またはSEQ ID NO:14~36に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:16~36に記載のアミノ酸配列を2種類またはそれ以上含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:19または29に記載のアミノ酸配列、SEQ ID NO:16、21、27、28、または34に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:20、22、23、30、31、33、35、または36に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:3に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:10に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:11に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:14に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:15に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:24に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:25に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:26に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:3に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列、SEQ ID NO:10に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:11に記載のアミノ酸配列を含む。前述の態様のいずれかにおいて、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17および18に記載のアミノ酸配列を1種類または複数種類、さらに含み得る。
【0046】
いくつかの態様において、本開示は、前述のポリペプチドのうちの1種類または複数種類を含む、免疫原性組成物またはワクチンを提供する。ある態様において、免疫原性組成物は、前述のポリペプチドのうちの1種類を含む。他の態様において、免疫原性組成物は、前述のポリペプチドのうちの2種類またはそれ以上を含み、これらは、1本のポリペプチドとして、または2本もしくはそれ以上のポリペプチドとして、提供され得る。
【0047】
ある態様において、ポリペプチドは、EpiGraph法を用いた、野生型HBV配列に由来する配列を含む、エピセンサス抗原である。EpiGraphアルゴリズムにおいて、天然の配列は、ノードの巨大なグラフによって特徴付けられ、各ノードは、天然の配列に出現するエピトープに対応する。対応する2本のエピトープストリングが「整合」する場合に、有向エッジは2つのノードを連結し、これは、第1のストリングにおける最後のk-1個の文字が、第2のストリングにおける最初のk-1個の文字と一致することを意味する。2本のストリングが整合する場合、これらは共に、k+1個の長さのストリングを形成する。より全体的なことを言えば、ノードおよびエッジを有するこのグラフを通る、パスは、グラフにおけるノードのそれぞれに対応するkマーのサブストリングを含む、単一のストリングに対応している。参照セットにおいて何本の配列が、ノードに対応するサブストリングを示すか、によって、各ノードは重み付けされる。このグラフ全体を通るパスであって、これらの重みの合計を最大化する、パスであり、かつしたがって最大のカバレッジを提供するパスを発見するために、EpiGraphアルゴリズムはダイナミックプログラミングスキームを使用する。
【0048】
いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBV Cタンパク質に由来する。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBVのPol(P)タンパク質もしくはSタンパク質、または別のHBVタンパク質に由来する。エピセンサス抗原は、全長のタンパク質配列に、全長のタンパク質配列の部分に、またはそれらの任意の組み合わせに、由来し得る。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBVのC、P、およびSタンパク質のうちの2種類またはそれ以上に由来するエピトープを含む。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、PreS1ドメインまたはPreS2ドメインに由来するエピトープの1種類または複数種類をさらに含む。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBVの保存領域に由来する。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBVのC、S、およびPのうちの1種類または複数種類の、保存領域に由来する。
【0049】
いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBVのC、P、およびSタンパク質のうちの2種類またはそれ以上に由来する配列を含み、該配列は、HBVゲノムにおけるそれらの順序から並べ替えられている。エピセンサス抗原中の配列の並べ替えは、該抗原のより効率なインビトロ発現、またはそうでなければ該インビトロ発現の向上をもたらし得る。
【0050】
いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、1つまたは複数の変異を有するHBVタンパク質に由来しており、該変異は、たとえば、アミノ酸の欠失または置換などである。いくつかの態様において、変異は、野生型タンパク質に存在する機能の少なくとも1種類を不活性化する。たとえばPreS1は、該タンパク質のN末端におけるミリストイル化配列を除去することによって不活性化され得、またはPolは、酵素活性部位を欠失させるかもしくは変異させることによって不活性化され得る。いくつかの態様において、HBVリボヌクレアーゼH(RNAアーゼH)の活性部位に、1つまたは複数の変異が存在しており、かつこれはRNAアーゼH活性を喪失させる。例示的な変異は、表1に示される。
【0051】
ある態様において、エピセンサス抗原は、選択されたHBV集団を用いて開発され、これは、該集団の中心をなすエピセンサス抗原をもたらす。たとえばHBV集団は、選択された地理的位置、たとえば、アジア、北米、南米、欧州、アフリカ、またはオーストラリアなどに存在する、HBV遺伝子型であり得る。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV Bの地域的エピデミックの中心をなす。他の態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV Cの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV Aの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV CBの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV Dの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV DCの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV DEの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV Eの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アジアにおける、またはより具体的には中国におけるHBV Fの地域的エピデミックの中心をなす。
【0052】
他の態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBVの複数遺伝子型の地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBV Aの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、集団エピセンサス抗原は、北米におけるHBV Bの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBV Cの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBV CBの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBV Dの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBV DCの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBV DEの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBV Eの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、北米におけるHBV Fの地域的エピデミックの中心をなす。
【0053】
他の態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBVの複数遺伝子型の地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV Aの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV Bの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV Cの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV CBの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV Dの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV DCの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV DEの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV Eの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、南米におけるHBV Fの地域的エピデミックの中心をなす。
【0054】
他の態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBVの複数遺伝子型の地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV Aの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV Bの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV Cの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV CBの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV Dの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、集団エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV DCの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV DEの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV Eの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、欧州におけるHBV Fの地域的エピデミックの中心をなす。
【0055】
他の態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBVの複数遺伝子型の地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV Aの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV Bの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV Cの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV CBの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV Dの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV DCの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV DEの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV Eの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、アフリカにおけるHBV Fの地域的エピデミックの中心をなす。
【0056】
他の態様において、エピセンサス抗原は、オーストラリアにおけるHBVの複数遺伝子型の地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、オーストラリアにおけるHBV Aの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、オーストラリアにおけるHBV Bの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、オーストラリアにおけるHBV Cの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、オーストラリアにおけるHBV CBの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBV Dの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBV DCの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBV DEの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBV Eの地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、HBV Fの地域的エピデミックの中心をなす。
【0057】
他の態様において、エピセンサス抗原は、開示されるワクチンにおける、HBVの全世界のセットの中心をなす。
【0058】
いくつかの態様において、HBVエピセンサス抗原は1_CH_epi(SEQ ID NO:1)であり、これは、中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発されたものである。いくつかの態様において、HBVエピセンサス抗原は1_GL_epi(SEQ ID NO:2)であり、これは、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発されたものである。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、個々のエピセンサス抗原の、2種類またはそれ以上の組み合わせである。たとえば、いくつかの態様において、エピセンサス抗原は2_CH_epiを含み、これは、中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発された、2種類のエピセンサス抗原(SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4)を含む。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は2_CHGL_epiを含み、これは、中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発された、第1のエピセンサス抗原であるEpi1(SEQ ID NO:5)、および、Epi1を先に解に固定しておいて、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発された、第2のエピセンサス抗原であるEpi2(SEQ ID NO:6)を含む。言い換えると、Epi2は、既存のEpi1を用いて開発されており、Epi1を補完する。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、2_CHGL_epiの改変バージョンを含み、これはEpi3(SEQ ID NO:7)およびEpi4(SEQ ID NO:8)を含む。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は3_GL_epiを含み、これは、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発された、3種類のエピセンサス抗原(SEQ ID NO:9;SEQ ID NO:10;およびSEQ ID NO:11)を含む。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、GenBankアクセッション番号Y07587である、天然のサブタイプD配列(SEQ ID NO:12)を含む。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、GenBankアクセッション番号GQ358158である、天然のサブタイプC参照配列(SEQ ID NO:13)を含む。アクセッション番号Y07587およびGQ358158である参照遺伝子はそれぞれ、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、SEQ ID NO:14である、改変された遺伝子型D配列である。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、SEQ ID NO:15である、並べ替えられた遺伝子型D配列である。いくつかの態様において、エピセンサス抗原は、SEQ ID NO:16~23およびSEQ ID NO:27~36に記載の配列のうちの1種類または複数種類を含む。いくつかの態様において、HBVエピセンサス抗原は、SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:36に記載の配列のうちの2種類またはそれ以上を含む。
【0059】
本明細書においてはさらに、前述のエピセンサス抗原のうちの1種類または複数種類を含む、免疫原性組成物またはワクチンが提供される。エピセンサス抗原は、DNAとして、RNAとして、またはポリペプチドとして、送達され得る。ある態様において、ワクチンは1種類の抗原を含む。他の態様において、ワクチンは2種類もしくはそれ以上の抗原を含み、該抗原は、1本のポリペプチドとして、または2本もしくはそれ以上のポリペプチドとして、提供され得る。ある態様において、ワクチンは、選択されたHBV遺伝子型に対して、たとえば、選択された地理的位置に存在する遺伝子型などに対して、効率の良いエピトープカバレッジを提供する、エピセンサス抗原を含む。本明細書において提供されるワクチンは、予防用ワクチンまたは治療用ワクチンであり得る。いくつかの態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリペプチド、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。
【0060】
いくつかの態様において、ワクチンは、中国由来のHBV配列を用いて開発されたエピセンサス抗原を2種類含む。ある態様において、ワクチンは、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4に記載の配列を含むエピセンサス抗原を含み、該配列は、1本のポリペプチドとして、または2本のポリペプチドとして、提供され得る。いくつかの態様において、ワクチンは、中国由来のHBV配列を用いて開発されたエピセンサス抗原、および全世界のセット由来のHBV配列を用いて開発されたエピセンサス抗原を含む。ある態様において、ワクチンは、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6に記載の配列を含むエピセンサス抗原を含み、該配列は、1本のポリペプチドとして、または2本のポリペプチドとして、提供され得る。ある態様において、ワクチンは、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8に記載の配列を含むエピセンサス抗原を含み、該配列は、1本のポリペプチドとして、または2本のポリペプチドとして、提供され得る。いくつかの態様において、ワクチンは、全世界のセット由来のHBV配列を用いて開発されたエピセンサス抗原を3種類含む。ある態様において、ワクチンは、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、およびSEQ ID NO:11に記載の配列を含むエピセンサス抗原を含み、該配列は、1本のポリペプチドとして、2本のポリペプチドとして、または3本のポリペプチドとして、提供され得る。
【0061】
III. ポリヌクレオチドおよびベクター
いくつかの態様において、本開示は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供する。ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAであり得、かつ前述の抗原のいずれかをコードし得る。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~36のうちの1種類または複数種類に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、特定の宿主における発現のために、ポリヌクレオチド配列はコドン最適化される。
【0062】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~11またはSEQ ID NO:14~36に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:16~36に記載のアミノ酸配列を2種類またはそれ以上含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:19または29に記載のアミノ酸配列、SEQ ID NO:16、21、27、28、または34に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:20、22、23、30、31、33、35、または36に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:3に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:10に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:11に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:14に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:15に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:24に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:25に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:26に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:3に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列、SEQ ID NO:10に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:11に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、コードする。前述の態様のいずれかにおいて、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:17および18に記載のアミノ酸配列を1種類または複数種類含むポリペプチドを、さらにコードし得る。
【0063】
いくつかの態様において、本開示は、前述のポリヌクレオチドのうちの2種類またはそれ以上を含む組成物、たとえば免疫原性組成物を、提供する。
【0064】
いくつかの態様において、本開示は、前述のポリヌクレオチドのうちの1種類または複数種類を含むワクチンを提供する。ある態様において、ワクチンは、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。
【0065】
本明細書においてはさらに、前述のポリヌクレオチドのいずれかを含むベクターが提供される。使用可能なベクターは、プラスミド、細菌ベクター、およびウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、サイトメガロウイルスベクターを含む。治療用ワクチン送達における使用に関する、CMVベクターの利点は、特定のCD8+ T細胞応答を誘発するために、およびより強力かつ持続性の応答を誘導するために、該ベクターを使用することができる点である。これらのウイルスベクターに基づくワクチンがウイルス感染症を排除可能であることは、動物モデルにおいて示されており(Hansen et al., Science 340:1237874 (2013))、かつそのため、これらのアプローチは治療用ワクチンとして有望である(さらに:Hansen et al, Science 351:714-720 (2016))。
【0066】
他のウイルスベクターは、以下を含み得る:ワクシニア・アンカラウイルスおよびカナリアポックスウイルスを包含する、ポックスウイルス;アデノウイルス5型(Ad5)を包含する、アデノウイルス;風疹ウイルス;センダイウイルス;ラブドウイルス;アルファウイルス;ならびにアデノ随伴ウイルス。あるいは、ワクチン抗原は、ワクチンの成分である、DNA、RNA、またはタンパク質として、送達され得る。エピセンサス抗原は、ワクチン抗原送達のいかなる様式にも本質的に適合性であり得る。
【0067】
いくつかの局面において、本開示は、ベクターベースの免疫原性組成物またはワクチンを提供し、これらにおいては、本明細書において開示される抗原を1種類または複数種類コードする核酸を送達するために、発現ベクターが使用される。たとえば、発現ベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、センダイウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルス、またはアデノ随伴ウイルスの、骨格であり得る。
【0068】
いくつかの態様において、CMVベクターが、本明細書に開示される組成物および方法において使用される。いくつかの局面では、慢性HBV感染症は、CMVベクターによる免疫療法的介入にとって特に適したものになる。
【0069】
第一に、成熟した免疫系を有する個体の大多数は、有効な免疫応答を直ちに開始し、そして急性の感染症を排除する。この免疫による排除は、サイトカイン産生CD8+ T細胞によって主に媒介されるので、HBVの排除のためには、活性な肝常在性エフェクターCD8+ T細胞(TEM)応答の誘導が重要であることは、明らかである。したがって、CHB患者の肝臓における、持続性のHBV特異的エフェクターCD8+ T細胞の誘導は、HBVを制御し、そして最終的にHBVを消失させるのに十分であるはずである。CMVベースのベクターによって誘導されたTEMの出現頻度は、接種を受けたアカゲザル(RM)の肝臓において特に高い(Hansen et al., Nature 473:523-527 (2011)、補足図1)。
【0070】
第二に、他の小型の慢性ウイルス、たとえばHIVまたはHCVなどは、準種をもたらす高い変異率を示すが、これらとは異なり、HBVの小型(3.2 kb)のDNAゲノムは、オーバーラップしているオープンリーディングフレーム(ORF)に起因して、その変異する能力はより抑制性である(図1)。
【0071】
残念なことに、従来のワクチン接種アプローチ(たとえば、ペプチドベースのもの、タンパク質ベースのもの、DNA、ならびに、異種プライム・ブーストT細胞を誘導する、DNAおよびポックスウイルスベクターの両方を伴うレジメンでさえも)によって誘発されるT細胞は、数か月後にはもはや末梢で検出不可能であり、これは、ウイルス再燃の起源を提供する潜在性を有し得る、残存HBVゲノムの生存を完全に防止するには、短すぎる可能性がある。対照的に、CMVベクターに誘導されるTEMだけは、循環中および肝臓中において、高出現頻度で数年間、持続的に維持される(Hansen et al., Nature 2011)。
【0072】
ある態様において、ベクターは、ヒトCMV(HCMV)ベクター、またはアカゲザルCMV(RhCMV)ベクターを含み、該ベクターは、HCMV骨格またはRhCMV骨格、および抗原をコードする1種類または複数種類のポリヌクレオチドを含む。1種類または複数種類のポリヌクレオチドは、前述の抗原のいずれかをコードし得る。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、前述の抗原のうちの2種類またはそれ以上をコードする。いくつかの態様において、ベクターは、2種類またはそれ以上のポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドは、前述の抗原のうちの1種類または複数種類をコードする。
【0073】
本開示は、2種類またはそれ以上のベクターを含む組成物をさらに提供し、各ベクターは、前述の抗原のうちの1種類または複数種類をコードする、1種類または複数種類のポリヌクレオチドを含む。
【0074】
いくつかの態様において、CMVベクターは、テグメントタンパク質pp71をコードするUL82遺伝子を、欠いている。いくつかの態様において、UL82遺伝子は、前述の抗原のうちの1種類または複数種類をコードする、1種類または複数種類のポリヌクレオチドと置き換えられる。いくつかの態様において、CMVベクターは、UL128~UL130遺伝子領域を欠いている。いくつかの態様において、CMVベクターは、UL146~UL147遺伝子領域を欠いている。いくつかの態様において、CMVベクターは、UL128~UL130遺伝子領域を欠いており、かつUL146~147遺伝子領域を欠いている。いくつかの態様において、CMVベクターは、インタクトなUL128~UL130遺伝子領域、およびインタクトなUL146~UL147遺伝子領域を有する。UL128~UL130遺伝子領域は、UL128遺伝子、UL130遺伝子、およびUL128遺伝子とUL130遺伝子との間のあらゆる領域を含む。UL146~UL147遺伝子領域は、UL146遺伝子、UL147遺伝子、およびUL146遺伝子とUL147遺伝子との間のあらゆる領域を含む。
【0075】
ある局面において、本開示は、前述のベクターを含む、免疫原性組成物またはワクチンを提供する。CMVベクターによって誘発される免疫応答は、既存の抗ベクター免疫によって影響を受けることは無く、したがって、異なる抗原のために同じベクターを連続的に使用することを可能にする(Hansen et al., Nature Medicine 15:293-299 (2009))。重感染する能力は、一つには、MHC-Iが媒介するCD8+ T細胞への抗原提示に対する、ウイルスが持つインヒビターに起因する(Hansen et al., Science 328:102-106 (2010))。多くのCHB患者を含め、全人口の大半はHCMVに慢性的に感染しているので、重感染は、レシピエントのCMVの状態にかかわらずCMVベクターの使用を可能にする、重要な特徴である。CMVベクターは、独特な免疫学的特性を有する。改変されたRhCMV/SIVベクターのいくつかの、驚くべきかつ予想外の特徴は、これらのベクターが、SIV感染それ自体に対する応答においても、SIV抗原を発現する他のいかなるベクタープラットフォームに対する応答においても、通常型(conventional)のMHCIa拘束性CD8+ T細胞によって認識されるエピトープのいずれも認識しないCD8+ T細胞を誘発した、という発見であった。それにもかかわらず、その全体が参照により本明細書に組み入れられるPCT/US2016/017373に示されるように(Hansen et al., Science 2013, 2016もまた参照されたい)、CMVベクターに誘発されたCD8+ T細胞は、所与の抗原中で3倍多いペプチドを認識した。
【0076】
この顕著な幅広さの根本的な理由は、100匹超の動物において、所与の抗原(CMV、SIV、TB)の個々のペプチドに対する拘束性エレメントを解析することによって決定された、そしてこれは、CMVベクターの驚くべき特徴を証明する:Rh 68-1ベクターによって誘導されたペプチドのそれぞれは、MHC-IIかまたはMHC-Eのいずれかによって提示されたが、ここでMHC-IIは通常、CD4+ T細胞によって認識されるものであり、MHC-Eは、非多型性のMHC-I分子であり、これは通常、MHC-I由来のペプチドであるVMAPRTLLL(VL9)に結合し、そしてNK細胞の抑制性受容体であるNKG2Aに対して、リガンドとして作用する。(CD4+ T細胞はすべて通常型、すなわちMHC-II拘束性であることに注意されたい。)注目すべきことに、抗原全体をカバーするオーバーラップしたペプチドプールに対する、RhCMVの68-1株に誘導されたCD8+ T細胞応答は、VL9(MHC-Eを阻害する)の添加、またはインバリアント鎖由来のCLIP(MHC-IIを阻害する)の添加によって完全にブロック可能であり、したがってこれは、すべてのCD8+ T細胞エピトープが「非通常型(unconventional)」であることを証明する(Hansen et al., Science 2016)。MHC-II拘束性CD8+ T細胞およびMHC-E拘束性CD8+ T細胞は両方とも、他の感染性疾患およびがんにおいて、ときおり観察されているが、RhCMVで免疫感作された動物において、そのようなT細胞が大量に存在するということは前例になく、かつこれは真に画期的である。重要なことに、RhCMVベクターで誘導された、MHC-II拘束性CD8+ T細胞、およびMHC-E拘束性CD8+ T細胞、およびMHC-Ia拘束性の非カノニカルCD8+ T細胞(後述)は、SIVに感染したCD4+ T細胞を認識し、これは、SIVに感染した細胞において、非通常型の抗原提示が、そのような応答をSIVがプライミングすることが不可能であったとしても、生じ得ることを示唆する。HCVを含め、多くの慢性ウイルスは、おそらくNK細胞に対する防御として、HLA-Eを上方制御するので、高度に保存されたこのMHC分子は、免疫療法のための新しい標的となる。(HBVに感染した肝細胞におけるHLA-Eの発現は、HCVと比較してあまり解明されていないものの、慢性HBVキャリアにおいては、高レベルの循環HLA-Eが見いだされている)。したがって、MHC-E拘束性CD8+ T細胞を誘発する能力は、この高度に保存された拘束性エレメントを介して、HBVを標的とすることの可能性を開く。
【0077】
CMVベクターにおける遺伝子改変の特定のパターンは、さまざまなT細胞応答と関連している。非通常型CD8+ T細胞は、UL128~UL130遺伝子領域およびUL146~UL147遺伝子領域を欠いているベクターによって誘導される(Hansen et al., Science 2013, 2016, OHSU2346)。対照的に、天然のRhCMV感染によって誘導されるCD8+ T細胞応答、またはRhCMVのUL128~UL130修復バージョン(Rh68-1)に対するCD8+ T細胞応答は、通常型、すなわちMHC-I拘束性である(Hansen et al., Science 2013)。しかしながら、UL128~UL130がインタクトであるベクターによって誘発される通常型CD8+ T細胞応答でさえも、CMVではないベクターによって誘導される応答と比較して、依然として有意に幅広い(Hansen et al., Science 2013)。さらに、免疫回避遺伝子US11が、「カノニカル」(すなわち、イムノドミナント)なMHC-Iエピトープを認識するT細胞の誘導を防止する場合に、この幅広い通常型CD8+ T細胞応答は完全に、サブドミナントな(「非カノニカル」)エピトープを指向する(Hansen et al., Science 2013)。したがって、遺伝学的に改変されたCMVベクターは、4種類の異なるCD8+ T細胞集団を誘発可能であり、これらはそれぞれ、オーバーラップしていないエピトープのセットを認識し、かつ以下のように分類される:1. 非通常型であり、MHC-II拘束性; 2. 非通常型であり、MHC-E拘束性; 3. 通常型であり、MHC-I拘束性、非カノニカル(=サブドミナント); 4. 通常型であり、MHC-I拘束性、カノニカル(=イムノドミナント)。UL128~UL130遺伝子領域およびUL146~UL147遺伝子領域の、存在または非存在は、通常型から非通常型へのCD8+ T細胞の切り替えを決定し、一方でカノニカルCD8+ T細胞は、UL128~UL130およびUL146~UL147が存在するベクターと、UL128~130およびUL146~UL147が存在しないベクターとの両方において、US11の非存在下で誘導される。
【0078】
いくつかの態様において、本開示は、前述のベクターのいずれかと、抗原をコードする1種類または複数種類のポリヌクレオチドとを含む、免疫原性組成物またはワクチンを提供する。1種類または複数種類のポリヌクレオチドは、前述の抗原のいずれかをコードし得る。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、前述の抗原のうちの2種類またはそれ以上をコードする。2種類またはそれ以上のポリペプチドは、同じプロモーターまたは別々のプロモーターによって発現され得る。いくつかの態様において、ベクターは、2種類またはそれ以上のポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドは、前述の抗原のうちの1種類または複数種類をコードする。ある態様において、ワクチンは、前述のベクターのうちの1種類または複数種類、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。
【0079】
III. 処置方法
ある態様において、対象においてHBVを処置する方法が提供され、該方法は、前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または組成物のうちの1種類または複数種類を含む免疫原性組成物またはワクチンの有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、ワクチンは、ある地理的領域内のHBV遺伝子型の多様性を効率良くカバーするように選択される、1種類もしくは複数種類の抗原か、または抗原をコードする1種類もしくは複数種類のポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリペプチドの形態で提供される。他の態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリヌクレオチドの形態で提供され、該ポリヌクレオチドは、組み換えウイルスベクターとして提供され得る。前述の態様のいずれかにおいて、ワクチンは、薬学的に許容される担体または賦形剤の1種類または複数種類をさらに含み得る。
【0080】
いくつかの態様において、対象において免疫応答を誘導するかまたは引き起こす方法が提供される。前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または組成物のうちの1種類または複数種類を含む免疫原性組成物またはワクチンの有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む、そのような方法が提供される。いくつかの態様において、ワクチンは、ある地理的領域内のHBV遺伝子型の多様性を効率良くカバーするように選択される、1種類もしくは複数種類の抗原か、または抗原をコードする1種類もしくは複数種類のポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリペプチドの形態で提供される。他の態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリヌクレオチドの形態で提供され、該ポリヌクレオチドは、組み換えウイルスベクターとして提供され得る。前述の態様のいずれかにおいて、ワクチンは、薬学的に許容される担体または賦形剤の1種類または複数種類をさらに含み得る。
【0081】
いくつかの態様は、対象においてHBV感染症を処置する方法を含み、該方法は、前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または組成物のうちの1種類または複数種類を含む免疫原性組成物またはワクチンの有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、ワクチンは、ある地理的領域内のHBV遺伝子型の多様性を効率良くカバーするように選択される、1種類もしくは複数種類の抗原か、または抗原をコードする1種類もしくは複数種類のポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリペプチドの形態で提供される。他の態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリヌクレオチドの形態で提供され、該ポリヌクレオチドは、組み換えウイルスベクターとして提供され得る。前述の態様のいずれかにおいて、ワクチンは、薬学的に許容される担体または賦形剤の1種類または複数種類をさらに含み得る。
【0082】
本開示は、対象をHBV感染症から保護する方法をさらに提供し、該方法は、前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または組成物のうちの1種類または複数種類を含む免疫原性組成物またはワクチンの有効量を、その必要がある対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、ワクチンは、ある地理的領域内のHBV遺伝子型の多様性を効率良くカバーするように選択される、1種類もしくは複数種類の抗原か、または抗原をコードする1種類もしくは複数種類のポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリペプチドの形態で提供される。他の態様において、ワクチンは、1種類または複数種類のポリヌクレオチドの形態で提供され、該ポリヌクレオチドは、組み換えウイルスベクターとして提供され得る。前述の態様のいずれかにおいて、ワクチンは、薬学的に許容される担体または賦形剤の1種類または複数種類をさらに含み得る。
【0083】
いくつかの態様は、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法を含み、該方法は、1種類または複数種類のエピセンサス配列を決定する段階、該1種類または複数種類のエピセンサス配列をコードする1種類または複数種類のポリヌクレオチドを含むベクターを含むワクチンを作製する段階、およびワクチンを、その必要がある対象に投与する段階を含む。いくつかの態様は、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法を含み、該方法は、1種類または複数種類のエピセンサス配列を決定する段階、該1種類または複数種類のエピセンサス配列のアミノ酸配列を有する1種類または複数種類の抗原を含むワクチンを作製する段階、およびワクチンを、その必要がある対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法が提供され、ここで1種類または複数種類のエピセンサス配列は、以下を含む:1_CH_epi(SEQ ID NO:1)、1_GL_epi(SEQ ID NO:2)、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を含む2_CH_epi、(SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を含む2_CHGL_epi、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を含む2_CHGL_epi、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、およびSEQ ID NO:11に記載のアミノ酸配列を含む3_GL_epi、天然のサブタイプD配列(SEQ ID NO:12)、天然のサブタイプC参照配列(SEQ ID NO:13)、SEQ ID NO:14である、改変された遺伝子型D配列、ならびにSEQ ID NO:15である、並べ替えられた遺伝子型D配列。いくつかの態様において、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法が提供され、ここで1種類または複数種類のエピセンサス配列は、SEQ ID NO:16~23およびSEQ ID NO:27~36に記載の配列のうちの1種類または複数種類を含む。いくつかの態様において、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法が提供され、ここで1種類または複数種類のエピセンサス配列は、SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:36のうちの2種類またはそれ以上を含む。
【0084】
いくつかの態様は、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法を含み、該方法は、1種類または複数種類のエピセンサス抗原をコードする前述のポリヌクレオチドのうちの1種類または複数種類を含む免疫原性組成物またはワクチンを作製する段階、および免疫原性組成物またはワクチンを、その必要がある対象に投与する段階を含む。いくつかの態様は、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法を含み、該方法は、前述のエピセンサス抗原のうちの1種類または複数種類を含む免疫原性組成物またはワクチンを作製する段階、および免疫原性組成物またはワクチンを、その必要がある対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法が提供され、ここで1種類または複数種類のエピセンサス配列は、以下を含む:1_CH_epi(SEQ ID NO:1)、1_GL_epi(SEQ ID NO:2)、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を含む2_CH_epi、(SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を含む2_CHGL_epi、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を含む2_CHGL_epi、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、およびSEQ ID NO:11に記載のアミノ酸配列を含む3_GL_epi、天然のサブタイプD配列(SEQ ID NO:12)、天然のサブタイプC参照配列(SEQ ID NO:13)、SEQ ID NO:14である、改変された遺伝子型D配列、ならびにSEQ ID NO:15である、並べ替えられた遺伝子型D配列。いくつかの態様において、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法が提供され、ここで1種類または複数種類のエピセンサス配列は、SEQ ID NO:16~23およびSEQ ID NO:27~36に記載の配列のうちの1種類または複数種類を含む。いくつかの態様において、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法が提供され、ここで1種類または複数種類のエピセンサス配列は、SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:36のうちの2種類またはそれ以上を含む。
【0085】
前述の態様のいずれかにおいて、免疫原性組成物またはワクチンは、予防用ワクチン、または治療用ワクチンであり得る。
【0086】
HBVワクチン研究における最近の進展には、HBV感染症を防止するための、エフェクターメモリーT細胞(TEM)を誘導するワクチン、という概念が含まれる。従来のワクチンアプローチによって誘導されるセントラルメモリーT細胞(TCM)とは異なり、TEMは、リンパ組織およびリンパ以外(extralymphoid)のエフェクター部位において持続的に維持されていて、かつ抗ウイルスエフェクター機能を速やかに媒介できる状態にあり、したがってこれは、ウイルス侵入の入口において、およびウイルス再活性化の部位において、持続的な免疫シールドを提供する。TEMを誘導しかつ無制限に維持するのに最も適性のあるベクターシステムは、CMVに由来するものである。持続感染している細胞における、継続的であって低レベルの、再活性化および/または遺伝子発現におそらく起因して、CMVは、T細胞の枯渇を引き起こすこと無しに、TEMの維持に必要とされるのにちょうどよい量の、持続性であって低レベルの免疫刺激を維持する。
【0087】
ある態様において、免疫原性組成物またはワクチンは、治療用ワクチンとして設定されて使用され得る。たとえば、高度に可変性の病原体、たとえばHBVなどに感染しているヒト集団において、エピトープに対する優れたカバレッジを提供する、6~10種類の抗原配列のセットを同定するために、ワクチンはk平均クラスタリング戦略を用いて設計され得る。いくつかの態様において、対象に感染しているウイルスは配列決定され、そして、感染しているウイルスのエピトープに対する優れたカバレッジを提供する、2種類または3種類のワクチン(あるいは、2種類または3種類のポリペプチドを含むか、または2種類または3種類のポリペプチドをコードする1種類または複数種類のポリヌクレオチドを含む、1種類または複数種類のワクチン)が送達される。したがって、効率の良いエピトープカバレッジが提供される一方で、ワクチンと感染株との間のエピトープの不一致は、最小限に抑えられる。
【0088】
提供されるある態様は、CMV遺伝子領域をいくらか欠いているHCMV骨格ベクター、およびエピセンサス抗原をコードするポリヌクレオチドを含む、免疫原性組成物またはワクチンを含む。ある態様において、HCMV骨格は、UL128~UL130遺伝子領域(UL128遺伝子、UL130遺伝子、およびUL128遺伝子とUL130遺伝子との間のあらゆる領域を含む)を欠いており、かつUL146~UL147遺伝子領域(UL146遺伝子、UL147遺伝子、およびUL146遺伝子とUL147遺伝子との間のあらゆる領域を含む)を欠いている。ある態様はまた、テグメントタンパク質pp71(UL82)遺伝子の欠失をも含み得る。(米国特許出願公開第2014/0141038号;同第2008/0199493号;同第2013/0142823号;および国際公開公報WO/2014/138209号)。
【0089】
いくつかの態様において、本開示は、HBV感染症を処置するのに使用するための、前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物のいずれかを提供する。いくつかの態様において、本開示は、対象をHBV感染症から保護するのに使用するための、前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物のいずれかを提供する。
【0090】
本開示は、HBV感染症の処置において使用するための医薬を製造するための、前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物のいずれかの使用を、さらに提供する。いくつかの態様において、本開示は、対象をHBV感染症から保護するのに使用するための医薬を製造するための、前述のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、免疫原性組成物、ワクチン、または組成物のいずれかの使用を、さらに提供する。
【0091】
本明細書において記載される、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物を投与する、典型的な経路は、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、直腸、膣、および鼻腔内の経路を含むが、これらに限定されない。「非経口」という用語は、本明細書において使用される場合、皮下注射、静脈内への、筋肉内への、胸骨内への注射または注入技術を含む。ある態様において、投与は、以下から選択される経路による投与を含む:経口、静脈内、非経口、胃内、胸腔内、肺内、直腸内、皮内、腹腔内、腫瘍内、皮下、局所、経皮、大槽内、髄腔内、鼻腔内、および筋肉内。
【0092】
本発明のある態様による薬学的組成物は、それに含まれる有効成分が、該組成物が患者に投与された際に生体利用可能となるように、製剤化される。対象または患者に投与されようとする組成物は、1種類または複数種類の投薬単位の形態を取り得、ここでたとえば、1個の錠剤は、1回分の投薬単位であり得、かつ、本明細書において記載されるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物が液体の形態である場合、それらの容器には、複数回分の投薬単位が収められ得る。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、または明らかである;たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)を参照されたい。投与されようとする組成物は、いずれにしても、本明細書における教示にしたがってHBVを処置または防止するために有効な量の、本開示の、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物を含むであろう。
【0093】
組成物は、固体または液体の形態であり得る。いくつかの態様において、担体は微粒子であり、その場合組成物は、たとえば、錠剤または散剤の形態である。担体は液体であってもよく、その場合組成物は、たとえば、経口用の油、注入可能な液体、またはエアロゾルであり、エアロゾルは、たとえば吸入投与に有用である。経口投与が意図される場合、薬学的組成物は、好ましくは固体または液体のいずれかの形態であり、ここで、本明細書において固体または液体のいずれかとしてみなされる形態には、半固体、半液体、懸濁液、およびゲルの形態が含まれている。
【0094】
前記薬学的組成物は、経口投与のための固体の組成物として、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル、チューイングガム、ウエハース等に製剤化され得る。そのような固体の組成物は、典型的には、1種類または複数種類の、不活性な希釈剤または可食性の担体を含む。加えて、以下のうちの1種類または複数種類が存在し得る:たとえば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの、結合剤;たとえば、デンプン、ラクトース、またはデキストリンなどの、賦形剤、たとえば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、コーンスターチ等の、崩壊剤;たとえば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotexなどの、滑沢剤;たとえばコロイド状二酸化ケイ素などの、流動化剤;
たとえば、スクロースまたはサッカリンなどの、甘味剤;たとえば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料などの、香味剤;および、着色剤。組成物が、カプセルの形態、たとえばゼラチンカプセルの形態である場合、該組成物は、上述のタイプの材料に加えて、液体の担体、たとえばポリエチレングリコールまたは油などを含み得る。
【0095】
前記組成物は液体の形態であり得、これはたとえば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルション、または懸濁液である。液体は、2例を挙げれば、経口投与用、または注入による送達用であり得る。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、本出願の化合物に加えて、甘味剤、保存剤、色素/着色剤、および香味増強剤のうちの1種類または複数種類を含む。注入によって投与されることが意図される組成物は、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定剤、および等張剤のうちの1種類または複数種類を含有し得る。
【0096】
液体の薬学的組成物は、それらが溶液、懸濁液、または他の形態のどれであっても、以下のアジュバントのうちの1種類または複数種類を含み得る:たとえば、注射用水、塩水、好ましくは生理食塩水、リンガー液、等張な塩化ナトリウム溶液、たとえば、溶媒または懸濁媒として作用し得る合成のモノグリセリドまたはジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の溶媒などの、無菌の希釈剤;たとえば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの、抗細菌剤;たとえばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの、抗酸化剤;たとえばエチレンジアミン四酢酸などの、キレート剤;たとえば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの、緩衝剤、および、たとえば、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの、張性調節剤。非経口用の調製物は、ガラス製またはプラスチック製の、アンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量バイアル中に封入され得る。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注入可能な薬学的組成物は、好ましくは無菌である。非経口投与または経口投与のいずれかが意図される液体組成物は、適切な投薬量がもたらされるような量の、本明細書において開示される、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物を含むべきである。
【0097】
前記組成物は、局所投与を意図したものであり得、その場合担体は、溶液、エマルション、軟膏、またはゲル基剤を適切に含み得る。基剤は、たとえば、以下のうちの1種類または複数種類を含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、たとえば水およびアルコールなどの希釈剤、ならびに乳化剤および安定剤。局所投与用の組成物中に、増粘剤を存在させてもよい。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチまたはイオントフォレシス装置を含み得る。薬学的組成物は、たとえば、直腸で溶解しそして薬剤を放出する坐剤の形態において、直腸投与を意図したものであり得る。直腸投与用の組成物は、適切な非刺激性の賦形剤として、油脂性基剤を含み得る。そのような基剤は、ラノリン、ココアバター、およびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0098】
組成物は、固体または液体の投薬単位の物理的形態を改変する、さまざまな材料を含み得る。たとえば、組成物は、有効成分を取り囲むコーティングシェルを形成する、材料を含み得る。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、かつ、たとえば、糖、シェラック、および腸溶性の他のコーティング剤から選択され得る。あるいは、有効成分は、ゼラチンカプセル内に収められ得る。固体または液体の形態の組成物は、本開示のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物に結合する作用物質を含み得、かつそれにより、該化合物の送達を補助する。この能力を発揮し得る適切な作用物質には、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、1種類もしくは複数種類のタンパク質、またはリポソームが含まれる。組成物は、エアロゾルとして投与可能な投薬単位から本質的になるものであり得る。エアロゾルという用語は、コロイド特性のシステムから、加圧パッケージからなるシステムまでの範囲に及ぶ、多様なシステムを意味するために使用される。送達は、液化ガスもしくは圧縮ガスによるもの、または有効成分を分配する適切なポンプシステムによるものであり得る。有効成分を送達するために、エアロゾルは、単相、二相、または三相のシステムにおいて送達され得る。エアロゾルの送達は、まとめてキットを形成し得る、必要とされる容器、アクチベーター、バルブ、サブ容器等を含む。当業者は、過度な実験無しに、好ましいエアロゾルを決定し得る。
【0099】
本開示の組成物はまた、本明細書において記載されるポリヌクレオチドのための担体分子(たとえば、脂質ナノ粒子、ナノスケールの送達プラットフォーム等)をも包含していることが理解される。
【0100】
前記薬学的組成物は、薬学の技術分野において周知の方法によって、調製され得る。たとえば、本明細書において記載されるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ワクチン、または組成物と、任意で、塩、緩衝剤、および/または安定剤のうちの1種類または複数種類とを含む組成物を、溶液を形成するために無菌の蒸留水と組み合わせることによって、注入による投与が意図される組成物が調製され得る。界面活性剤は、均一な溶液または懸濁液の形成を容易にするために添加され得る。界面活性剤は、水性の送達システムにおいて、分子の溶解または分子の均一な懸濁を促進するように、該分子と非共有的に相互作用する、化合物である。
【0101】
一般的には、適切な用量および処置のレジメンは、治療上および/または予防上の恩恵を提供するのに十分な量の組成物を提供するものである。
【0102】
組成物の有効量は、以下を含むさまざまな因子に応じて変動するが、組成物は、そのような有効量で投与される:採用される特定の化合物の活性;代謝安定性、および化合物の作用期間;対象の、年齢、体重、全身の健全性、性別、および食習慣;投与の様式および回数;排泄速度;薬剤の組み合わせ;特定の障害または異常の重篤性;ならびに、対象が受けている治療。
【0103】
本明細書において記載される態様をより詳細に説明するために、以下の実施例が提供される。該実施例は、例示することを意図するものであり、態様を限定することを意図するものではない。
【0104】
本明細書において引用される、文献、特許、および特許出願のすべては、本明細書による参照により本明細書に組み入れられ、かつ本明細書において開示される方法および組成物を実施するのに採用され得る。
【実施例
【0105】
実施例1:
治療用ワクチンとして使用するためのエピセンサス抗原の同定
HBVのためのエピセンサス抗原は、参照により全体が本明細書に組み入れられる、PCT出願番号WO 2016/054654 A1、およびTheiler, et al., Sci. Rep. 6:33987 (2016)において記載されるように、EpiGraph法を用いて開発された。EpiGraphアルゴリズムを使用するためのツールもまた、以下において利用可能である:hiv.lanl.gov/content/sequence/EPIGRAPH/epigraph.html。
【0106】
対象それぞれのためのデザイナーワクチンを作製することは現実的ではないが、対象由来のウイルスを配列決定して、ワクチンオプションの少数の参照セット内から優れた一致を得ようと試みることは、実行可能である。治療効果をもたらす可能性のあるワクチンを同定するために、中国ベースのHBV遺伝子型Bの試験集団が使用された。アップデートされたアジアベースの遺伝子型と同様に、アジアベースの参照ワクチンセット、および全世界のワクチンセットが設計された。HBVゲノムの保存領域は、Cタンパク質(N末端における最初の29アミノ酸を除く)、Sタンパク質、およびPタンパク質に見いだされる。Pタンパク質のN末端の高度に可変性の領域は、検討から除外された(図6を参照されたい)。
【0107】
予防用ワクチンの場合には、対象がどのウイルスと対峙し得るのかは未知であるが、これとは異なり、治療用ワクチンの場合には、感染しているウイルスの配列を入手することができ、かつそれと一致させることができる。
【0108】
免疫原性組成物またはワクチンに使用するための抗原の選択には、2つの因子を考慮に入れる:ワクチン応答が、適切なエピトープを可能な限り標的とするように、抗原エピトープは、対象に感染しているウイルスのエピトープと、可能な限り多く一致すべきであり、かつ、抗原と対象に感染しているウイルスとの間の、エピトープの不一致は、可能な限り少なくすべきである。
【0109】
HBVの主要な遺伝子型内での系統樹は、明確な構造をほとんど有さない傾向がある。むしろそれは「放射状」であり、非常に長い末端枝(external branch)、および基部近くの、非常に短く不明確な内部枝(internal branch)を有している。この構造の一部は、サブタイプ内での組み換えに起因するようである。これを定量化することは困難であるが、組み換えは確かに、比較的頻繁に生じており、かつ、サブタイプ間の組み換えに関して観察されたものとの類推によれば、広範囲に及ぶようである。該系統樹の構造を考慮すれば、系統樹上のクラスタリングだけを使用して、可能性のあるワクチンの参照セットを定義しても、有効ではないであろう、なぜならば、エピトープの観点から見て、遺伝子型内の関連性の意義は、限定的であるからである。そうではなく、配列の関連性は、適切な評価基準によって検討されるべきであり、かつ参照セットは、天然株と推定上のワクチン設計物との間の、潜在的エピトープの類似性に基づいて、選択されるべきである。
【0110】
Epigraph配列は、9マーのアミノ酸を用いて同定された(図4Aを参照されたい)が、該方法は、推定上の潜在的エピトープの長さをkとして、基準点としていかなる長さのkマーを用いても使用可能である。モザイクを用いた以前の研究において、9マーについての最適解は、他の近い長さ(8、10、11、12)にとってもほぼ最適であったので、これは、EpiGraph法においても真であると予想される。
【0111】
a) 1種類のエピセンサス配列を含むワクチン;b) 2種類のエピセンサス配列を含むワクチン;c) 3種類のエピセンサス配列を含むワクチン;d) 1種類の天然HBV遺伝子型配列を含むワクチン;およびe) 2種類の天然HBV遺伝子型配列を含むワクチンの、エピトープカバレッジは、図4A~7Bにおいて比較される。一般的には、遺伝子型に基づくワクチンは、該遺伝子型に対する優れたカバレッジを提供するが、他の遺伝子型に対するカバレッジは劣る。図5A~5Cにおけるデータは、2価および3価の、全世界のEpiGraph配列が、主要な遺伝子型のすべてに対するカバレッジを実質的に改善するとともに、B特異的ワクチンおよびC特異的ワクチンと比較して同等の、BおよびCに対するカバレッジを提供することを証明する。たとえば、図5A~5Cから理解されるように、遺伝子型Dへのカバレッジは、3種類のエピセンサス抗原が使用される場合に約90%であり、これは、B特異的ワクチンもしくはC特異的ワクチンで、またはB+C特異的ワクチンでさえも、約50%のカバレッジである点と対照的である。
【0112】
実施例2:
エピセンサス抗原の一過性発現
EpiGraph法を用いて、エピトープの一致を最大化するように設計された抗原は、天然の配列に類似しているが、これはもはや元のタンパク質をコードしていない。これらの人工的なアミノ酸配列の構築においては、これら配列を発現させるための理論上のガイドラインを遵守しているものの、タンパク質は、予想外の発現プロファイルを示す可能性があり、または安定な全長タンパク質を発現できない可能性がある。
【0113】
哺乳動物細胞の環境における、これらの配列の発現プロファイルを評価するため、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、WO 2016/054654に記載される方法を用いて、エピセンサス抗原をコードするポリヌクレオチドが合成され、そして一過性のトランスフェクションのためにクローニングされた。手短に述べると、プラスミドベクター(pcDNA3.1およびpOri)に適合するクローニング部位を含むように、構築物をコードするDNAが合成された(Genscript, Piscataway, NJ)。すべてのインサートは、宿主に対してコドン最適化された。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Kulkarni et al. Vaccine (2011)に記載されるように、各構築物はまた、元の配列の残存酵素活性を消失させるように改変された。プラスミドベクターは、適合するエンドヌクレアーゼを用いて線状化され、そして、空のベクターの再環状化を防止するために、仔ウシ腸由来ホスファターゼを用いて処理された。ベクターおよびインサート断片は、消化断片のサイズを確認するために、アガロースゲル電気泳動によって分離され、そしてライゲーションのため、PCR精製キット(Thermo Scientific)によって精製された。およそ3:1のインサート対ベクターの比において、迅速ライゲーションキット(Roche, Indianapolis, IN)を用いて室温で15分間にわたり、インサートは線状化されたベクターへとライゲーションされ、これでケミカルコンピテント大腸菌(E. coli)(DH5-α)が形質転換され、そして抗生物質選択プレートにプレーティングされた。生じたコロニーからのDNAは、制限酵素でのインサートの消化によってスクリーニングされた。
【0114】
ベクターのプロモーターおよびポリ(A)配列に対して適切な方向にある正しいインサートのそれぞれを含むクローンは、プラスミドDNAの精製のため、液体培養で増殖させた。12ウェル組織培養プレート中にある、活発に増殖中の、サブコンフルエントな293T細胞またはHELA細胞には、500 μlの新鮮培地(DMEM 10% FBS)が加えられた、その一方でリポソームが調製される。プラスミドDNAを含むリポソームを作製するため、250 μlの無血清培地が、500 ngのプラスミドDNAと混合され、そして250 μlの無血清培地が、2 ulの脂質(リポフェクタミン2000、Invitrogen)と混合された。室温での5分間のインキュベーション後、これらの溶液は組み合わせられ、混合され、そして20分間インキュベートされた。このプロセス中に形成されたDNA含有リポソーム(500 μl)は、培養物へと滴下され、そして12~16時間インキュベートされた、その後でトランスフェクション混合物は、新鮮培地で置き換えられる。さらに1日インキュベーションした後、培養物は、スクレイピングおよび遠心分離によって回収された。上清は吸引によって除去され、そして細胞ペレットは、5% SDSおよび10% 2-メルカプトエタノールを含有する100 μlのゲルローディング色素中での再懸濁、ならびにQiaShredカラム(Qiagen, Valencia, CA)を通過させる遠心分離によって、溶解された。
【0115】
エピセンサス抗原の発現は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-page)、および各構築物中に組み込まれたV5エピトープタグまたはヘマグルチニンエピトープタグに対する抗体を用いて発光させたウェスタンブロッティングによって、立証された。手短に述べると、NuPAGE 4-12% ビス-トリスゲルが調製され、そして全量20~50 ugのタンパク質がロードされ、そして110~120ボルトで90分間電気泳動された。分離したタンパク質は、30ボルトで90分間の、セミドライ式転写またはウェット式転写により、PVDF膜へと転写された。非特異的な結合は、0.1% tween-20含有トリス緩衝生理食塩水(PBS-T)中に10% 脱脂粉乳を含む溶液を用いて、60分間ブロッキングした。HA(Sigma)抗体またはV5(Invitrogen)抗体は、5% 脱脂粉乳溶液中で希釈され、そして1時間にわたり膜とインキュベートされた、そして、TBS-Tを用いた3回の洗浄後に、1:10000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウス(Invitrogen)二次抗体を添加しての1時間のインキュベーションが続いた。続いて、ブロットはTBS-Tで3回洗浄され、そして酵素結合化学発光(enzyme linked chemi-luminescence)(ECLキット(Thermo-Pierce)を用いて発光させ、そしてデジタルゲルイメージングシステムを用いて可視化された。
【0116】
実施例3:
CMVベクターBAC構築物へのエピセンサス抗原の組み込み、および再構成されたウイルスからの発現
エピセンサス抗原は、その作製の元となったウイルス配列スペクトルおよびHBV遺伝子型の代表であるT細胞エピトープに対して、優れたカバレッジを提供するように設計された。これらの抗原を最も効果的に用いるため、抗原をコードするポリヌクレオチドは、CMVベクターに組み込まれた、ここで該ベクターは、競合プラットフォームの3倍の、CD8+ T細胞スペクトルを生じさせることが証明されている。CMVベクターの、幅広い抗原提示、および生涯にわたる発現プロファイルは、SIVに感染したアカゲザルを保護する、および治癒させる能力を実証している。CMVベクターと組み合わせた、エピセンサス抗原設計アルゴリズムは、予防用ワクチンへと広く適用された場合に、遺伝子型内および遺伝子型間において、HBVに対するさらに広範囲なカバレッジを提供し得る。
【0117】
エピセンサス配列をコードするポリヌクレオチドであって、一過性のトランスフェクションシステムにおける発現が立証された、ポリヌクレオチドは、ガラクトキナーゼおよびカナマイシン選択を用いるBACリコンビニアリングを使用して、CMV骨格へと導入された。(Warming et al. Nucleic Acids Research. 2005. 33(4):1-12;およびParedes and Yu Curr Protoc Microbiol. 2012. Feb; Chapter 14:Unit14E.4;両者はそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。)さらに、図11A~11Bに示されるように、HBVタンパク質またはHBVタンパク質ドメインに由来する、たとえば、コア(C)タンパク質、表面抗原(S)タンパク質、PreS1ドメイン、PreS2ドメイン、およびポリメラーゼ(P)タンパク質などに由来する、エピセンサス配列は、発現を向上させるように、野生型HBVにおいてそれらが存在する順序から並べ替えられ得る。
【0118】
BACリコンビニアリングは、親となるBACを含む大腸菌株である、SW105の環境において、温度および代謝物によって制御される組換え酵素を用いて、巨大なDNA配列の操作を容易にする。組み換えは、以下からなる連続的な2ステップである:ステップ1:抗生物質耐性遺伝子カナマイシン(kan)を有するガラクトキナーゼ(galK)配列の、標的領域への挿入と、それに続くステップ2:galK/kanカセットの、関心対象の抗原との置換。ステップ1は、kanによる正の選択後に、galK/kanインサートを含む組み換え体をもたらし、そしてステップ2は、2-デオキシ-ガラクトース(DOG)による負の選択後に、関心対象の抗原を含む組み換え体をもたらす。両方のステップに関して、挿入部位に隣接するHCMV配列に対する長い(50+ bp)ホモロジーアームを有するプライマーを用いた、galK/kanカセットまたは関心対象の抗原のいずれかを含む鋳型DNAからの標準的なPCRによって、挿入される配列は増幅される。
【0119】
galK/kanカセットを挿入する(ステップ1)細菌細胞を調製するため、5 mLの培養物を、12.5 ug/mL クロラムフェニコールを含有する2×YTまたはTerrific Broth中で、30度で一晩増殖させ、そして翌朝、1:50に希釈した。細菌は、30度でさらにおよそ2~4時間増殖させ(OD600 = 0.5~0.6まで)、そしてその後、組み換え酵素を誘導するために、42度で15分間振とうすることによって熱ショックを与えた。この誘導後、細菌はペレット化され(3000 rpm、10分、4度)、そしてその後、氷冷した水で3回洗浄された。大腸菌細胞は、PCR産物を受け入れるようにエレクトロコンピテントにされ、そしてBACの標的領域へと配列を挿入するために、組換えコンピテントにされた。精製されたインサート(300 ng)は、氷上で40 μlのコンピテント大腸菌と組み合わせられ、1 mmのキュベットに移され、そしてBio-radのGene Pulser Xcellを用いてエレクトロポレーションされた。エレクトロポレーション後、細菌は、5 mLの培養培地を添加することによって希釈され、そして30度で2時間振とうすることによって回復させてから、クロラムフェニコール/カナマイシンプレートへプレーティングした。プレートは30度で2日間インキュベートされ、そしてコロニーは、組み換えイベントに関して、制限酵素での消化およびPCRによってスクリーニングされた。
【0120】
galK/kanインサートに関して陽性であるBAC構築物は、第2のステップへと進み、第2のステップにおいてgalK/kanカセットは、組み換えによって、関心対象の抗原を含むPCR断片と置き換えられた。ステップ2においてgalK/kanカセットを置き換えるための細菌細胞を調製するため、上述のように細菌は、増殖させそしてエレクトロポレーションされた。エレクトロポレーションからの回復に関し、細菌は、5 mLの培養培地を添加することによって希釈され、そして30度で少なくとも4~4.5時間振とうすることによって回復させた。細胞はその後ペレット化され(3000 rpm、10分、4度)、そして1×M9培地で3回洗浄してから、グリセロール、ロイシン、ビオチン、DOG、およびクロラムフェニコールが添加されたM63最少培地プレートにプレーティングされた。galK/kanカセットが関心対象の抗原と置き換えられたことを確認するため、コロニーはその後、PCRによってスクリーニングされた。陽性クローンは、DOGプレート上に再度画線された、そしてBAC DNAは、制限酵素での消化および配列決定によってさらに特徴付けするために、単離される。
【0121】
ウイルスの再構成:ウイルスを再構築するため、BAC DNAは、ウイルスの増殖を許容する哺乳動物宿主細胞へと導入された。手短に述べると、BAC DNAは、エンドトキシンフリー・プラスミドDNAキット(Macherey-Nagel)を用いて精製され、そして1×glutamaxおよび9% FBS含有DMEM中、37度、5% CO2で増殖させた、コンフルエントな初代ヒト線維芽細胞のフラスコへとトランスフェクトされた(16~24 ug BAC DNA/T150)。トランスフェクションは、リポフェクタミン3000を用いて、製造元のプロトコル(ThermoFisher)に従って実施された。翌日、培地は交換され、そしてその後細胞は、プラークの形成に関して毎日モニターされた。細胞変性効果(CPE)が最大に到達した後で、ウイルス上清は回収され、室温で2500×g、5分間の遠心分離によって清澄化され、そして-80度で保管された。残りの接着している細胞は、DPBS中でセルスクレイパーによって回収され、遠心分離(2,500 rpm、5分)によってペレット化され、そして-80度で保管された。
【0122】
ウイルスによるエピセンサス抗原の発現:エピセンサス抗原の発現は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-page)と、それに続く、HBV特異的抗体か、または各構築物中に組み込まれたV5エピトープタグもしくはヘマグルチニン(HA)エピトープタグに対する抗体のいずれかを用いて発光させたイムノブロットによって、試験された。手短に述べると、細胞ペレットは、放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液中での再懸濁によって溶解された、そしてタンパク質は、標準的なビシンコニン酸アッセイ(BCA)を用いて定量される。NuPAGE 4-12% ビス-トリスゲルが調製され、そして全量20~50 ugのタンパク質がロードされ、そして110~130ボルトで90分間電気泳動された。分離したタンパク質は、30ボルトで90分間か、または15Vで一晩の、セミドライ式転写またはウェット式転写により、PVDF膜へと転写された。非特異的な結合は、0.1% tween-20含有トリス緩衝生理食塩水(PBS-T)中に5% 脱脂粉乳を含む溶液を用いて、60分間ブロッキングした。一次抗体は、5% 脱脂粉乳溶液中で希釈され、そして1時間にわたり膜とインキュベートされた、そして、TBS-Tを用いた3回の洗浄後に、1:10,000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体を添加しての1時間のインキュベーションが続いた。続いて、ブロットはTBS-Tで3回洗浄され、そして酵素結合化学発光(ECLキット(Thermo-Pierce)を用いて発光させ、そしてデジタルゲルイメージングシステムを用いて可視化された。
【0123】
実施例4:
集団エピセンサスワクチン
EpiGraph法は、当初CMVベクターを用いて、エピセンサス抗原をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンのセットを作製するために使用されたが、他のワクチン送達システムも用いることが可能である。
【0124】
最も包括的であるワクチン処置を決定するために、異なるエピセンサス抗原、および抗原の組み合わせの、全部で58種類の戦略が試験された。dbHBV由来のHBV試料は、3つの群に分割された:中国由来の試料、中国以外由来の試料、および全世界の試料。全世界の試料は、中国由来の試料、および中国以外由来の試料の組み合わせを含む。天然のサブタイプDに対するワクチン、および天然のサブタイプCに対するワクチンは、対照として使用された。1種類、2種類、または3種類のエピセンサス抗原を有するワクチンが、各群に対して試験された。
【0125】
対照は、GenBankアクセッション番号Y07587である天然のサブタイプD配列(SEQ ID NO:12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクチン;およびGenBankアクセッション番号GQ358158である天然のサブタイプC参照配列(SEQ ID NO:13)をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを含んでいた。サブタイプD配列をコードするポリヌクレオチドを含むワクチン、およびサブタイプC配列をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンはその後、以下をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンと比較された:(a) 1_CH_epi (SEQ ID NO:1)、これは、中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発されたものである;(b) 1_GL_epi(SEQ ID NO:2)、これは、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発されたものである;(c) 2_CH_epi、これは、中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発された、2種類のエピセンサス抗原(SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4)を含む;(d) 2_CHGL_epi、これは、2種類のエピセンサス抗原を含む - 中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発された、第1のエピセンサス抗原であるEpi1(SEQ ID NO:5)、および、Epi1を先に解に固定しておいて、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発された、第2のエピセンサス抗原であるEpi2(SEQ ID NO:6)である;(e) Epi7およびEpi8(それぞれSEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8)、これらは、より優れた発現を誘導するために改変された、Epi1およびEpi2のバリアントである;ならびに(f) 3_GL_epi、これは、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発された、3種類のエピセンサス抗原(SEQ ID NO:9;SEQ ID NO:10;およびSEQ ID NO:11)を含む。
【0126】
図8に示されるように、中国由来の試料を用いて開発された第1の配列、および全世界のセットを用いて開発された第2の配列をコードするポリヌクレオチドを含む、エピセンサス抗原が2種類のワクチンは、中国の配列に対して約88%のカバレッジ、中国以外の配列に対して約77%のカバレッジ、および全世界の配列に対して約80%のカバレッジを提供する。
【0127】
実施例5:
エピトープカバレッジ
いくつかのエピセンサス抗原配列を含むワクチンについてのHBVエピトープカバレッジは、コンピューターによって解析された。CMVにおける初期の試験のためのワクチン群は、以下を含んでいた:1) 中国遺伝子型エピデミックの中心をなす、1種類の集団エピセンサス抗原;2) HBVの全世界の試料すべてに対するカバレッジを提供する、1種類の集団エピセンサス抗原;3) 中国由来のHBV試料に対するカバレッジを提供する、2種類の集団エピセンサス抗原;4) HBVの全世界の試料すべてに対するカバレッジを提供する、2種類の集団エピセンサス抗原;5) HBVの全世界の試料すべてに対するカバレッジを提供する、3種類の集団エピセンサス抗原;ならびに6) 2種類の集団エピセンサス抗原:中国由来のHBV試料に対するカバレッジを提供する、第1の集団エピセンサス抗原、および全世界のセット由来のHBV試料に対するカバレッジを提供する、第2の集団エピセンサス抗原。
【0128】
対照は、GenBankアクセッション番号Y07587である天然のサブタイプD配列(SEQ ID NO:12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクチン;およびGenBankアクセッション番号GQ358158である天然のサブタイプC参照配列(SEQ ID NO:13)をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを含んでいた。その後本発明者らは、サブタイプD配列をコードするポリヌクレオチドを含むワクチン、およびサブタイプC配列をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを、以下をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンと比較した:(a) 1_CH_epi (SEQ ID NO:1)、これは、中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発されたものである;(b) 1_GL_epi(SEQ ID NO:2)、これは、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発されたものである;(c) 2_CH_epi、これは、中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発された、2種類のエピセンサス抗原(SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4)を含む;(d) 2_CHGL_epi、これは、2種類のエピセンサス抗原を含む - 中国由来の1044種類のHBV配列を用いて開発された、第1のエピセンサス抗原であるEpi1(SEQ ID NO:5)、および、Epi1を先に解に固定しておいて、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発された、第2のエピセンサス抗原であるEpi2(SEQ ID NO:6)である;(e) Epi7およびEpi8(それぞれSEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8)、これらは、より優れた発現を誘導するために改変された、Epi1およびEpi2のバリアントである;ならびに(f) 3_GL_epi、これは、3041種類のHBV配列を有する全世界のセットを用いて開発された、3種類のエピセンサス抗原(SEQ ID NO:9;SEQ ID NO:10;およびSEQ ID NO:11)を含む。
【0129】
図9A~10Bから理解されるように、2_CHGL_epiを含むワクチンは、中国由来の配列に対して80パーセント超の完全カバレッジ、中国以外由来の配列に対して75%超の完全カバレッジ、および全世界の配列に対して80%の完全カバレッジを提供する。これらのデータは、対照ワクチンと比較して、全HBV配列に対する優れたカバレッジを証明する。
【0130】
実施例6:
第2世代のHBVエピセンサス抗原
多くのHBV遺伝子型において、HBVのコア(C)の、N末端集合ドメイン(N-terminal assembly domain)(NTD)は、コア粒子の集合に関与しており、かつC末端ドメインは、プレゲノム/逆転写酵素の複合体のパッケージングに関与している。表面(S)タンパク質は、単一のオープンリーディングフレームからの産物であり、かつ3つのドメイン:PreS1、PreS2、およびSに分けられる。ポリメラーゼ(P)タンパク質は、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性、およびRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)活性の両方を示す。Pタンパク質は、カプシド内のプレゲノムRNA鋳型から、HBVゲノムを複製する。Pタンパク質は、以下の4つのドメインから構成される:(1) 末端タンパク質(Terminal Protein)(TP)ドメイン、これは、保存されているチロシンを通じて、タンパク質プライミングの機構に関与する;(2) 非保存性のスペーサードメイン;(3) 逆転写酵素ドメイン(RNA依存性DNAポリメラーゼ(RT)およびDNA依存性DNAポリメラーゼ(活性部位:YMDD保存モチーフ));ならびに(4) RNアーゼHドメイン(リボヌクレアーゼH活性)。
【0131】
エピセンサス抗原は、その作製の元となったウイルス配列スペクトルの代表であるT細胞エピトープに対して、優れたカバレッジを提供するように設計される。HBV遺伝子型Dへの感染は、米国および欧州において最も蔓延しているHBV感染症の1つである。遺伝子型Dのエピセンサス(EpiD)抗原を含む、またはEpiD抗原をコードするヌクレオチドを含む、治療用ワクチンは、該特定の遺伝子型に関してプレ・スクリーニングされている患者にとって、有益であり得る。本明細書においては、米国および欧州におけるHBV遺伝子型に対して優れたカバレッジを提供する、HBV遺伝子型Dのエピセンサス抗原(SEQ ID NO:14)の例が提供される。1つのバリアントにおいては、図11Aおよび11Bに示されるように、コア(C)タンパク質、PreS1およびPreS2ドメイン、表面抗原(S)タンパク質、ならびにポリメラーゼ(P)タンパク質に由来する、HBV遺伝子型Dエピセンサス抗原は、HBVゲノム上で見られる順序:C-S-P(「CSP」)で最初に使用され(SEQ ID NO:14)、そしてS-P-Cという順序(「SPC」)に並べ替えられた(SEQ ID NO:15)。凝集を低下させ、かつ発現を向上させるために、Sタンパク質の膜貫通ドメイン1~2または1~4が欠失しているさらなる抗原バリアント(「CSP ΔTM1-2」、「CSP ΔTM1-4」、「SPC ΔTM1-2」、または「SPC ΔTM1-4」)が、EpiGraph法をHBVタンパク質配列に適用することによって作製された。したがって、HBVエピセンサス抗原はまた、前述のバリアントのうちの1種類または複数種類を含むHBVタンパク質配列にも、由来し得る。
【0132】
さらに、潜在的な毒性を低下させ、かつ安全性を改善するために、ポリメラーゼドメインの活性部位において変異および/または欠失を有するPタンパク質バリアントに由来する、エピセンサス抗原が作製された。そのようなエピセンサス抗原の例は、たとえば、SEQ ID NO:7、8、および15に提供される。これらのエピセンサス抗原を開発するために使用された配列に存在する変異が、以下の表1に示される。異なる変異または欠失を有する、他のPタンパク質バリアントもまた、使用され得る。
【0133】
(表1)HBV遺伝子型Dのポリメラーゼにおける変異導入改変
【0134】
表の左の列における位置は、HBV遺伝子型Dの全長ポリメラーゼにおけるアミノ酸の番号を指す。YMDD配列は、逆転写酵素の活性部位である。(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Radziwill, et al., J Virol. 1990 Feb;64(2):613-20を参照されたい。)他の4つのアミノ酸(D、E、D、D)は、RNAアーゼHの活性部位である。(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Tavis et al., PLoS Pathog. 2013 Jan;9(1):e1003125を参照されたい。)
【0135】
これらのバリアント配列に由来するエピセンサス抗原の発現は、上述のように、SDS-pageおよびウェスタンブロッティングによって試験された(図11A~11D)。膜貫通(TM)ドメインの除去は、発現に影響を与えなかった(図11D)。
【0136】
EpiD抗原バリアントのいずれにおいても、有意な凝集は観察されなかった。抗原融合体におけるタンパク質の順序は、効率の良い発現と関連していた。SPCとの順序に並べ替えられた抗原融合タンパク質は、有意に増加した発現を示す。
【0137】
HBVエピセンサス抗原は、以下のHBVタンパク質またはHBVタンパク質ドメインのうちの1種類または複数種類に由来し得る:コア(C)タンパク質、表面(S)タンパク質、PreS1タンパク質、PreS2タンパク質、Sタンパク質の膜貫通ドメイン1~4(TM1~4)、決定基、およびポリメラーゼ(P)タンパク質。エピセンサス抗原は、欠失または変異を有する、さまざまなHBVタンパク質およびHBVタンパク質ドメインに由来し得、および/またはエピセンサス抗原は、発現もしくは活性を向上させるように、HBVにおけるその順序から並べ替えられ得る。例示を目的として、HBVサブタイプDのコアタンパク質に由来するエピセンサス配列が、SEQ ID NO:16に提供され、HBVサブタイプDのPreS1タンパク質に由来するエピセンサス配列が、SEQ ID NO:17に提供され、HBVサブタイプDのPreS2タンパク質に由来するエピセンサス配列が、SEQ ID NO:18に提供され、HBVサブタイプDの表面タンパク質(S)に由来するエピセンサス配列が、SEQ ID NO:19に提供され、HBVサブタイプDのポリメラーゼ(P)タンパク質に由来するエピセンサス配列が、SEQ ID NO:20または22に提供され、かつ表1に示される変異および欠失を含む、HBVサブタイプDのポリメラーゼ(P)タンパク質に由来するエピセンサス配列が、SEQ ID NO:23に提供される。HBVサブタイプCの、表面タンパク質(S)、ポリメラーゼタンパク質(P)、およびコアタンパク質(C)に由来するエピセンサス配列であって、「SPC」との順序の抗原配列を有する、エピセンサス配列の一例は、SEQ ID NO:24に提供される。表1に示されるものよりも大きい欠失領域を有するPタンパク質に由来する、エピセンサス配列の例は、以下を含む:HBVサブタイプCの、表面タンパク質(S)、アミノ酸612~838位が欠失しているポリメラーゼタンパク質(P)、およびコアタンパク質(C)に由来するエピセンサス配列であって、SEQ ID NO:25に提供される、エピセンサス配列;ならびにHBVサブタイプDの、表面タンパク質(S)、アミノ酸601~827位が欠失しているポリメラーゼタンパク質(P)、およびコアタンパク質(C)に由来するエピセンサス配列であって、SEQ ID NO:26に提供される、エピセンサス配列。SEQ ID NO:25および26は両方とも並べ替えられており、「SPC」との順序の抗原配列を提供する。
【0138】
欠失領域を有するPタンパク質に由来する、エピセンサス配列のさらなる例は、図12Aに示されており、かつこれは、Pタンパク質のアミノ酸の1~200位の、201~400位の、または401~600位の欠失を含む。図12Aの構築物についての発現データは、図12Bに示される。
【0139】
HBVのコアタンパク質に由来するエピセンサス配列のさらなる例は、SEQ ID NO:27、28、および34に提供される。HBVの表面タンパク質に由来するエピセンサス配列のさらなる例は、SEQ ID NO:29に提供される。HBVのポリメラーゼタンパク質に由来するエピセンサス配列のさらなる例は、SEQ ID NO:30~32およびSEQ ID NO:35~36に提供される。
【0140】
HBVのどのサブタイプであっても、HBVタンパク質およびHBVタンパク質ドメインの配列は、本明細書において開示される配列との配列アラインメントによって、決定可能である。たとえば、天然のHBVサブタイプDの完全ゲノム配列は、GenBankアクセッション番号Y07587(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に提供される。Pタンパク質は、GenBank参照遺伝子Y07587のヌクレオチド1~1625位および2309~3182位によってコードされる。PreSタンパク質は、GenBank参照遺伝子Y07587のヌクレオチド1~837位および2850-3182位によってコードされる。Sドメインは、GenBank参照遺伝子Y07587のヌクレオチド157~837位によってコードされる。PreC/Cタンパク質は、GenBank参照遺伝子Y07587のヌクレオチド1816~2454位によってコードされる。Cタンパク質は、GenBank参照遺伝子Y07587のヌクレオチド1903~2451位によってコードされる。加えて、天然のHBVサブタイプCの完全ゲノム配列は、GenBankアクセッション番号GQ358158(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に提供される。Pタンパク質は、GenBank参照遺伝子GQ358158のヌクレオチド1~1623位および2307~3215位によってコードされる。Sタンパク質は、GenBank参照遺伝子GQ358158のヌクレオチド1~835位および2848~3215位によってコードされる。PreC/Cタンパク質は、GenBank参照遺伝子GQ358158のヌクレオチド1814~2452位によってコードされる。Cタンパク質は、GenBank参照遺伝子GQ358158のヌクレオチド1901~2452位によってコードされる。
【0141】
実施例7:
ワクチン試験
コンピューターによって設計されたエピセンサス抗原を含むワクチンは、アカゲザル(RM)において試験される。CMVに基づくT細胞応答は、以前に報告された他のベクターよりもはるかに幅広いと予想され、かつしたがって、以前に報告された他のベクターよりもはるかに多いパーセンテージの配列をカバーすると予想される。したがって、比較的少数の動物を用いた場合であっても、応答の交差反応の潜在性に対する配列多様性の影響を評価するのに十分な、エピトープ応答が存在するはずである。ワクチンに対するすべての応答の数および強さは、ワクチンに一致させたペプチドセットを用いることによって決定される。標的ペプチドが決定されたら、各動物において陽性であるそれらのペプチドのみを用いて、ワクチンに応答性のペプチドのそれぞれにおける、天然の多様性の影響が決定される。試験される天然のバリアントは、参照パネル中に見いだされる多様性に基づいている。認識の強さの減少、または認識の消失に対する、エピトープ多様性の影響を評価するために、ノンパラメトリックであってかつコンピューターを用いるリサンプリング統計手法が、主要なツールとして使用される。しかしながら、これらの解析は、T細胞応答の交差反応性に対するより複雑な相互作用の影響を調査するために必要とされる、一般化線形モデルを使用することによって、補完される。
【0142】
CMVにおける初期の試験のためのワクチン群は、以下をコードするベクターを含む:1) 中国遺伝子型エピデミックの中心をなす、1種類の集団エピセンサス抗原;2) HBVの全世界の試料すべてに対するカバレッジを提供する、1種類の集団エピセンサス抗原;3) 中国由来のHBV試料に対するカバレッジを提供する、2種類の集団エピセンサス抗原;4) HBVの全世界の試料すべてに対するカバレッジを提供する、2種類の集団エピセンサス抗原;5) HBVの全世界の試料すべてに対するカバレッジを提供する、3種類の集団エピセンサス抗原;ならびに6) 2種類の集団エピセンサス抗原:中国由来のHBV試料に対するカバレッジを提供する、第1の集団エピセンサス抗原、および全世界のセット由来のHBV試料に対するカバレッジを提供する、第2の集団エピセンサス抗原、7) 短縮型Pol配列を用いて作製されたエピセンサス抗原であって、HBVサブタイプCエピトープに対するカバレッジを提供する、エピセンサス抗原(SEQ ID NO:25)、ならびに8) 短縮型Pol配列を用いて作製されたエピセンサス抗原であって、HBVサブタイプDエピトープに対するカバレッジを提供する、エピセンサス抗原(SEQ ID NO:26)。対照は、GenBankアクセッション番号Y07587である天然のサブタイプD配列(SEQ ID NO:12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクチン;およびGenBankアクセッション番号GQ358158である天然のサブタイプC参照配列(SEQ ID NO:13)をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを含んでいた。
【0143】
5匹のアカゲザル(RM)の、最大で10個のコホートは、以下のように、106 PFUのHCMVベクターの接種を受ける:最大で8つのコホートは、上に列挙されるワクチン1~8のうちの1種類をそれぞれ投与される;1つのコホートは、天然のサブタイプDをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを投与される;かつ、1つのコホートは、天然のサブタイプCをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを投与される。コホート3は、エピセンサスに加えて、異なるテーラードワクチンベクター1種類を投与され、かつコホート4は、エピセンサスに加えて、両方のテーラードワクチンベクターを投与される。
【0144】
アカゲザル(RM)は、第0日および第12週において皮下接種を受け、そして1年間にわたり縦断的に追跡される。HCMVベクターによるワクチン接種は、既存の抗RhCMV免疫による影響を受けないため、天然でRhCMVに感染している動物は、これらの実験に使用される。各動物に投与された、ワクチンインサート内にワクチン配列を含む個々の連続した15マーペプチドに対する、CD4+細胞応答およびCD8+ T細胞応答(これは、ワクチンに誘発されたすべての応答を含む)を決定するために、フローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン解析(ICS)が使用される。その後、これらのエピトープ特異的T細胞が、標的株および非標的株の両方において、エピトープバリアントを認識するかどうかが決定される。株特異的なエピトープに対する応答を示すペプチドに関して、「親」(ワクチンインサートの配列)のペプチドバリアントに対する該応答の、強さ、機能的なアビディティ、および機能面の特徴(IFN-γ、TNF-α、IL-2、およびMIP-1βの産生、ならびにCD107の外在化)が、機能的な交差反応性の程度を決定するために比較される。選択された例においては、類似物の比較分析用のコアエピトープを同定するために、切り詰め解析が使用される。存在しているMHC-II拘束性CD8+ T細胞のパーセンテージを決定するために、MHC-Iに特異的な「ブロッキング」mAbおよびMHC-IIに特異的な「ブロッキング」mAb、ならびに、インバリアント鎖由来の、MHC-IIに特異的な結合ペプチドであるCLIPが、PBMCにおける、インフルエンザ特異的CD8+ T細胞応答を阻害するのに使用される。
【0145】
特定の態様が例示されかつ説明されているが、さらなる態様を提供するために、上述のさまざまな態様を組み合わせ得ること、およびその際、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、さまざまな変更を実施し得ることが、容易に理解される。
【0146】
2019年8月29日に提出された米国特許仮出願第62/893,546号、および2019年11月27日に提出された米国特許仮出願第62/941,125号を含め、本明細書において参照される、ならびに/または出願データシートに列挙される、米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、米国以外の特許、米国以外の特許出願、および非特許文献のすべては、別途明示的に指定されない限り、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。よりさらなる態様を提供するのに必要であれば、さまざまな特許、出願、および公報の概念を採用して、本態様の局面は改変され得る。
【0147】
これらの変更および他の変更は、上で詳述した説明を考慮して、本態様に対して実施され得る。概して、添付の特許請求の範囲においては、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲に開示される特定の態様に限定している、と解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の範囲全体とともに、可能性のあるすべての態様を含んでいる、と解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
【配列表】
2022545530000001.app
【国際調査報告】