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特表2022-545532高分解能高速カプセル内視鏡のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】高分解能高速カプセル内視鏡のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A61B1/00 C
A61B1/00 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513083
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 US2020047826
(87)【国際公開番号】W WO2021041429
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/892,073
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ティアニー ギレルモ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リュ ジフン
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161DD07
4C161FF14
4C161FF40
(57)【要約】
内視鏡法を行うためのプローブであって、当該プローブは、光源と、光源に結合された導波路と、回折格子と、第1の非球面と第2のバイコーニック面とを有するレンズと、を備え、導波路は、光源からの光を回折格子に向けるよう構成され、回折格子からの回折光が、レンズの非球面に向けられ、レンズのバイコーニック面からプローブの透明な円筒状面に向けて放出されるよう構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡法を行うためのプローブであって、
光源と、
前記光源に結合された導波路と、
回折格子と、
第1の非球面と第2のバイコーニック面とを有するレンズと、を備え、
前記導波路は、前記光源からの光を前記回折格子に向けるよう構成され、
前記回折格子からの回折光が、前記レンズの前記非球面に向けられ、前記レンズの前記バイコーニック面から前記プローブの透明な円筒状面に向けて放出されるよう構成されている、プローブ。
【請求項2】
前記レンズがハウジング内に収容されており、
前記ハウジングが前記透明な円筒状面を備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記ハウジングが液体を収容していない、請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記レンズが、前記ハウジング内において気体中に置かれている、請求項2に記載のプローブ。
【請求項5】
前記気体が空気を含む、請求項4に記載のプローブ。
【請求項6】
前記レンズの前記第2のバイコーニック面が、第1の半径に関連する第1の軸と第2の半径に関連する第2の軸とを含み、
前記第2の軸が前記第1の軸に垂直であり、
前記第1の半径が前記第2の半径よりも大きい、請求項2に記載のプローブ。
【請求項7】
前記レンズは、前記第1の軸が、前記プローブの前記透明な円筒状面の長軸に平行となる向きで配されている、請求項6に記載のプローブ。
【請求項8】
前記第1の軸は第1のコーニック定数に関連付けられており、前記第2の軸は第2のコーニック定数に関連付けられており、
前記第1のコーニック定数は、前記第2のコーニック定数よりも大きい、請求項7に記載のプローブ。
【請求項9】
前記導波路と前記回折格子との間に配置されたコリメートレンズをさらに備え、
前記導波路からの光が、前記コリメートレンズを通って前記回折格子に至る、請求項1に記載のプローブ。
【請求項10】
前記プローブはテザーカプセルを備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項11】
前記テザーカプセルは外径が8mmである、請求項10に記載のプローブ。
【請求項12】
前記レンズの前記バイコーニック面は、前記プローブの前記透明な円筒状面から生じる球面収差を補正するような形状である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項13】
前記光源は掃引源レーザを備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項14】
前記掃引源レーザは、中心波長が1060nmであり、繰返し率が400kHzである、請求項13に記載のプローブ。
【請求項15】
前記プローブのターゲット撮像深さは100μmであり、前記プローブの横方向分解能は1.25μmである、請求項14に記載のプローブ。
【請求項16】
前記内視鏡法は、スペクトル符号化共焦点顕微法(SECM)を含む、請求項13に記載のプローブ。
【請求項17】
前記レンズは、前記レンズのアライメントのためのノッチを有する、請求項1に記載のプローブ。
【請求項18】
プローブを備える内視鏡法を行うための方法であって、
前記プローブは、
光源と、
前記光源に結合された導波路と、
回折格子と、
第1の非球面と第2のバイコーニック面とを有するレンズと、を備え、
前記方法は、
前記導波路により、前記光源からの光を前記回折格子に導くことと、
前記回折格子により、回折光を前記レンズの前記非球面に導き、前記レンズの前記バイコーニック面から前記プローブの透明な円筒状面に向かって放出させることと、を含む、方法。
【請求項19】
前記レンズがハウジング内に収容されており、
前記ハウジングが前記透明な円筒状面を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ハウジングが液体を収容していない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記レンズが、前記ハウジング内において気体中に置かれている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記気体が空気を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記レンズの前記第2のバイコーニック面が、第1の半径に関連する第1の軸と第2の半径に関連する第2の軸とを含み、
前記第2の軸が前記第1の軸に垂直であり、
前記第1の半径が前記第2の半径よりも大きい、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記レンズは、前記第1の軸が、前記プローブの前記透明な円筒状面の長軸に平行となる向きで配されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の軸は第1のコーニック定数に関連付けられており、前記第2の軸は第2のコーニック定数に関連付けられており、
前記第1のコーニック定数は、前記第2のコーニック定数よりも大きい、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記光源からの光を前記回折格子に導くことが、前記光源からの光を、前記導波路から、前記導波路と前記回折格子との間に配置されたコリメートレンズに向けることをさらに含み、
前記コリメートレンズからの光は、前記回折格子に向けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記プローブはテザーカプセルを備える、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記テザーカプセルは外径が8mmである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記レンズの前記バイコーニック面は、前記プローブの前記透明な円筒状面から生じる球面収差を補正するような形状である、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記光源は掃引源レーザを備える、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記掃引源レーザは、中心波長が1060nmであり、繰返し率が400kHzである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記プローブのターゲット撮像深さは100μmであり、前記プローブの横方向分解能は1.25μmである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記内視鏡法は、スペクトル符号化共焦点顕微法(SECM)を含み、
前記プローブはSECMプローブである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記レンズは、前記レンズのアライメントのためのノッチを有する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2019年8月27日に出願された米国仮特許出願第62/892,073号に基づくものであり、その利益を主張するとともにその優先権を主張するものであり、その全内容はあらゆる目的のために引用により本明細書に盛り込まれているものとする。
【0002】
<連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載>
該当せず。
【背景技術】
【0003】
スペクトル符号化共焦点顕微法(SECM)は、機械的走査装置を回折格子に置き換えることによりプローブを大幅に小型化することを可能にしつつ、ビデオレート反射共焦点顕微法よりも1~2桁速い撮像速度を提供できる高速撮像技術である。しかしながら、従来の設計では、(例えば、SECMカプセルの円筒状の撮像ウインドウから生じる)プローブ表面にて生じる非対称球面収差によって、回折限界光学分解能を達成することが困難となっている。これに対する一つの解決策は、プローブ(例えばカプセル)内の対物レンズと撮像ウインドウとの間のギャップを水で満たし、屈折率ミスマッチを低減することによって収差を最小化して回折限界光学分解能を得るというものである(図1のA及びB参照)。図1のAは、知られているシステムの対物レンズを示し、この対物レンズは両側に丸い面を有し、この丸い面は両方とも径方向に対称(radially symmetric)である。
【0004】
しかしながら、SECMカプセルのようなプローブに水を充填することに対しては、水密性を有するエポキシによる部品の密閉の必要性を含む多数の追加の製造要件が課される。さらに、プローブ内に水を維持することが困難なため、水が充填されたSECMカプセルの寿命が短くなる(例えば、1~2カ月未満)。最後に、処理中にプローブ内部において水中の気泡が現れることがあり、これにより最適な性能とすることが妨げられる可能性がある(図2参照)。
【発明の概要】
【0005】
このように、プローブを水などの液体で満たす必要がなく、それにもかかわらず同程度の光学性能を提供する新たなSECMプローブ設計が望まれる。
【0006】
したがって、本明細書において提示されるのは、内視鏡法を行うためのプローブの実施形態であって、プローブは、光源と、光源に結合された導波路と、回折格子と、第1の非球面と第2のバイコーニック面とを有するレンズと、を備え、導波路は、光源からの光を回折格子に向けるよう構成され、回折格子からの回折光が、レンズの非球面に向けられ、レンズのバイコーニック面からプローブの透明な円筒状面に向けて放出されるよう構成されている。
【0007】
一実施形態において、本発明は、プローブを用いて内視鏡法を行うための方法を提供する。プローブは、光源と、光源に結合された導波路と、回折格子と、第1の非球面と第2のバイコーニック面とを有するレンズと、を備える。この方法は、導波路により、光源からの光を回折格子に導くことと、回折格子により、回折光をレンズの非球面に導き、レンズのバイコーニック面からプローブの透明な円筒状面に向かって放出させることと、を含む。
【0008】
本発明の上記の及び他の実施形態、態様、利点及び特徴の一部は、以下の発明の説明及び参照される図面を参照して、あるいは本発明の実施により、当業者に明らかとなる。添付の図面は1つ又は複数の実施例を説明するためのものであり、これらの実施例は必ずしも本発明の全範囲を示すものではない。
【0009】
以下の詳細な説明は、詳細な説明の一部を構成する添付の図面を参照して記載される。図面は、装置を実現し得る具体的な実施形態を例示する。本明細書において「実施例」又は「オプション」とも呼ばれるこれらの実施形態は、当業者が本実施形態を実現できるように十分詳細に記載されている。実施形態は組み合わせてもよく、他の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲内で構造的又は論理的な変更を加えてもよい。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味でとらえるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びそれらの法的同等物によって定められる。本明細書において、「a」又は「an」との用語は1つ又は複数を含むために使用され、「又は(若しくは、あるいは)」との用語は、特に指定のない限り非排他的な「又は(若しくは、あるいは)」を指すために使用される。加えて、本明細書において採用され、他に定義されていない用語又はフレーズは、説明のみを目的とし限定を目的としないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】バイコーニック面を有さないSECM対物レンズのZEMAXシミュレーションを示し、Aはレイ・トレーシングを含む対物レンズのレイアウトを示し、Bは視野角の関数としてのRMS波面エラーを示す。
図2】水充填SECMカプセルの、カプセルに水が充填されてから1日後(左)、1週間後(中央)及び1カ月後(右)の様子を示し、水によるプローブへの経時的な漸進的影響を示す。
図3】撮像ウインドウの方に向いたバイコーニック面を有する対物レンズを含む、カプセルに使用されるSECM光学的構成を示す。
図4】内部にSECM光学系が配置されたテザーカプセルを示す。
図5】非球面、バイコーニック面及びレンズ材料についての特定の実施形態でのパラメータのリストを含むZEMAXソフトウェアを用いて生成されたレンズを示す。
図6】レンズの正しいアライメントをするためのノッチを含む、非球面及びバイコーニック面が設けられた対物レンズの設計を示し、レンズの斜視図(左)及び側面図(右)を示す。
図7】レンズの正しいアライメントをするための2つのノッチを含む、非球面及びバイコーニック面が設けられた対物レンズの別の設計を示し、レンズの端面から見た図(左上)、斜視図(右上)、第1の側面から見た図(左下)及び第1の側面に直交する第2の側面から見た図(右下)を示す。
図8】一対の丸いノッチを有する対物レンズマウントと類似の一対の丸いノッチを有するレンズとを含むテザーカプセルを示し、これらのノッチによって形成された空間内に2つのセラミック球が挿入されることでレンズが正しい向きで所定の位置に固定されている。
図9】既存のSECMベースの水浸カプセルの仕様と、バイコーニック面を有する対物レンズを含みかつ水浸を必要としないSECMカプセルの仕様と、を比較した表である。
図10】円筒状ハウジングを有するカプセルプローブの図であり、プローブの長軸がプローブ内の光学部品のバイコーニックレンズの半径に沿って示され、第1の軸(R1)は、プローブの長軸と平行で、かつ、より短い第2の軸(R2)と垂直である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示されているのは、SECMプローブのための装置、方法及び/又はシステムの実施形態であり、当該実施形態はバイコーニック面を有する対物レンズを含み、その結果として、回折限界又は近回折限界光学分解能を達成するために取るべき水浸による補正対策又は他の補正対策が不要となる。
【0012】
スペクトル符号化共焦点顕微法(SECM)は、高速撮像速度を達成するために波長を用いて検査サンプル上の物理的位置を符号化する小型内視鏡技術である。簡潔に言うと、広帯域又は波長掃引光源がサンプルの帯状範囲(以下、「スワス(swath)」という)にわたって分光され、各波長又は波長のサブグループがサンプルを照射するための個別のビームとして作用し(図3)、これによって、大量のデータを並行して収集することができるのでシングル光路でサンプルから収集できるデータの量が増える。上部消化(GI)管の細胞レベル分解能画像を取得するために、いくつかのピルサイズのテザーSECMカプセルが開発されているが、今日までのこのようなSECMカプセルの撮像品質は不十分な光学分解能、不均一なプルバック及び不均一な回転歪みなどの問題により制限されている。
【0013】
開発されてきた水が充填されたピルサイズのテザーカプセルの一部のバージョンは、100kHz、1310nm波長掃引源SECM撮像システムに適合する。本明細書において開示されているのは、テザーSECM内視鏡撮像システムと1060nmを中心波長とする400kHz掃引源を利用するカプセルとの具体例である。この新しい1060nmカプセル設計では、波長がより短いことによってより高い分解能が得られるだけでなく、水浸、即ちカプセルに水などの液体を充填することなどの補正対策が不要となる。
【0014】
開示された様々な実施形態において、カプセルの湾曲した(略円筒状の)透明壁によって生じる非対称球面収差を補正するために、対物レンズ310(図3図5)が、片側(例えば、光源の方を向いている側)に従来の非球面320を有し、反対側(例えば、サンプルの方を向いている側)にバイコーニック面330を有してもよく、このように対物レンズ310を設計することによって、水浸又は他の補正対策が不要となる。
【0015】
様々な実施形態において、食道との物理的接触を改善するため及び使用可能なスペクトル符号化ライン長を長くするためにカプセルの直径が増大され、これにより、区別できる波長の数が増え、したがって、スペクトル的に拡げられた光のスワス内のピクセルの数が増える。様々な実施形態において、100kHz、1310nm源を用いた他のSECMカプセル装置及びシステムと比較して、本明細書において開示された設計の撮像速度は5.2倍増加し、横方向分解能は15%改善され得る。さらに、カプセルの水浸なしでのSECMの実現により、製造性が単純化され、かつ装置の寿命が長くなる。これらの進歩により、上部消化管診断などの用途のためのSECMの臨床トランスレータビリティ(translatability)が大幅に高まる。
【0016】
一般に、SECMによって、カテーテル又はカプセルのようなコンパクトなプローブを介して反射共焦点顕微法を行うことが可能となる(図4)。SECMは、波長分割多重(「WDM」)を用いて、サンプルから反射された一次元空間情報を符号化する。高速走査軸は一連の焦点に置き換えられ、各位置が、異なる波長の光340,350,360によって表される(図3)。空間位置に応じたレミッタンスは反射光のスペクトルを測定することにより決定できる。プローブのゆっくりとした機械的な動きで波長符号化軸を走査することによって二次元画像が作成されてもよい。このように、本発明を具現化する内視鏡装置は、スタンダードな内視鏡と一体化されて又はカプセルのような独立型装置として、様々な組織及び器官のSECM撮像を可能にする。米国特許第6,831,781号明細書及び米国特許出願公開第2011/013178号明細書を参照されたい(各文献の全内容はあらゆる目的のために引用により本明細書に盛り込まれているものとする)。
【0017】
いくつかの実施形態では、SECMシステムは、飲み込み可能なテザーカプセル400として構築することができる(図4)。図4に示すように、カプセル400は、撮像ウインドウ410(点線で示す)と、導波路/光ファイバを含むテザー420と、コリメートレンズ430と、回折格子440と、対物レンズ450と、ハウジング460とを含む。テザー420はSECMシステム470に接続され、SECMシステム470は、様々な実施形態において、1つ又は複数の光源(例えば、掃引源レーザ)と、回転及び/又は直線走査システムと、光検出器と、1つ又は複数の他の構成要素を制御するため並びにデータを収集及び処理するためのコンピューティングシステムと、を含むことができる。
【0018】
様々な実施形態において、カプセル400は全体的な形状が滑らかな形状であってもよく、ハウジング460は丸い(例えば半球状の)端部を有する円筒状本体部を備えている。このような全体的な形状により、カプセル400は、飲み込まれて、消化管などの管腔通路を小さい抵抗で移動することが可能となり、重力及び/又は蠕動性筋肉運動によって移動することが可能となる。テザー420はハウジング460の一端部から延在している(図4)。カプセル400のサイズは様々であってよいが、通常は、直径が、10mm未満であり、いくつかの実施形態では7mmであり、他の実施形態では8mmである。カプセル400のハウジング460の少なくとも一部が撮像ウインドウ410を備えており、撮像ウインドウ410は適切な波長(例えば、UV、可視及び/又はIR波長)に対して光学的に透明である。通常、撮像ウインドウ410は、カプセル400の外縁の周りに完全に延在し、これにより、カプセルのハウジング460を介してサンプルを回転走査することが可能となる。
【0019】
テザー460内に収容された導波路からの光は、導波路に対してある角度(例えば、約45°の角度)を付けて設定された回折格子440の方へ向けられ、回折格子440を出た光は対物レンズ450に向けられ、これによりカプセル400の側面を介して組織480(図4)の方へ光が集光される。いくつかの実施形態では、対物レンズ450(以下にさらに説明する)は、回折格子440の方を向いた第1の側において非球面を有し、カプセル400の外側及び組織480の方を向いた第2の側においてバイコーニック面を有してもよい。以下にさらに説明するように、バイコーニック面は、撮像に関与するカプセル本体部の湾曲した/円筒状の外面(即ち、撮像ウインドウ410)によって生じ得る収差を補正するように設計されている。いくつかの実施形態では、コリメートレンズ430が、導波路のアウトプットと回折格子440との間に配置されてもよい。プローブ内部の光学部品が回転可能であることを考慮すると、対物レンズ450と撮像ウインドウ410との間にはギャップが存在し、このギャップによりカプセル400内における光学部品の自由な回転が容易になる。特定の知られた装置では、このギャップは、湾曲した撮像ウインドウ410による収差を低減するために、水、食品グレード油、鉱油又は他の医学的若しくは食品グレードの液体(通常、光学的に透明な水と同様の粘度を有する液体)で満たされているが、本明細書において開示されている対物レンズ450のバイコーニック面によって、ギャップを水などの液体で満たすことを必要とすることなく上記収差が補正される。ハウジング460内の空間を水などの液体で満たす代わりに、この空間を、空気、窒素又は他の適当な(例えば、医学的に承認された)気体などの気体で満たしてもよい。
【0020】
さらに後述するように、スペクトル源(例えば、掃引源レーザ)をSECM実現のために使用することができる。カプセルの側面を通って組織上に放出される光源からの光は、カプセルの長軸に平行な方向に延在する線状の構成で分布し、つまり、スペクトル源の異なる波長は線に沿って分布する。次いで、サンプルから反射された光はカプセル及び導波路を通ってSECMシステム470に送られて、画像が構築される。
【0021】
GI管の一部(例えば、食道又は他の領域)のような管腔サンプルの場合、カプセルは、管腔構造を通って下方に移動している間(例えば、嚥下中)、又はカプセルの回収中に逆方向に移動している間に、画像データを収集することができる。カプセルが管腔サンプルを通って平行移動する(例えば、引き上げられる)間、光学部品は、管腔サンプルの全周からの画像データを得るために回転することができ、これにより、極座標系又は直交座標系を用いて提示することができるサンプルのスパイラル走査が生成される。
【0022】
様々な実施形態において、レンズは非球面とバイコーニック面とを含む。レンズは、ガラス又はプラスチックから機械加工又は射出成形により得られてもよい。レンズは、OKP4若しくはPMMAなどのポリマーを用いてダイアモンドターニングを介して機械加工されるか、又はD-ZK3などのガラス材料を用いて射出成形されることで製造されてもよい。いくつかの実施形態では、レンズの射出成形は、製品1単位当たりのコストを大幅に下げることが期待され、例えば製品1単位当たり10ドルほど下げることが期待される。他の実施形態では、非球面レンズの半径は約1.45mmであってもよいが、より大きい半径又はより小さい半径とすることも可能である。特定の実施形態では屈折率は1.5から1.7であってもよく、ある特定の実施形態では、屈折率はOKP4プラスチックについて1.607である。図5はZEMAXソフトウェアを用いて生成されたレンズを示し、ZEMAXソフトウェアは、特定の実施形態において、非球面、バイコーニック面及びレンズ材料のパラメータのリストを含む。
【0023】
バイコーニック面を有するレンズの外周は円形であってもよいが、レンズのバイコーニック面は、径方向に対称でない(not radially symmetric)隆起部分を含む。その代わり隆起部分は2つの軸、例えばX軸及びY軸を有し、その各々が、関連する曲率半径及びコーニック定数Kを有する。一方の軸は、他方の軸と比べてより大きな曲率半径及びコーニック定数を有し、その結果、カプセル内におけるレンズの向きは、より大きな曲率半径及びコーニック定数を有する軸が、円筒状の撮像ウインドウの軸及び円筒状ハウジングの長軸と平行になるように構成されている(図10参照)。X軸及びY軸の半径及びコーニック定数によって少なくとも部分的に定義されるバイコーニックレンズの全体的な形状の選択は、カプセルハウジング、特に透明な湾曲した撮像ウインドウによって生じる収差を補正し、かつ、通常はレンズ特性が特定の撮像ウインドウでの使用にマッチするように、行われる。いくつかの実施形態では、X軸の半径は-2.676で、X軸のコーニック定数は-27.735であり、そして、Y軸の半径は-2.725で、Y軸のコーニック定数は-32.572であるが、他の半径及びコーニック定数を有するバイコーニックレンズを使用することも可能である。
【0024】
レンズのバイコーニック面が細長くかつ径方向に対称でない形状を有することを考慮すると、いくつかの実施形態では、レンズは、レンズを他の光学部品及びカプセルハウジングに対して適切にアライメントすることを保証するためのマーキング又はノッチなどの1つ又は複数の特徴部を含むことができる。例えば、レンズは、レンズのアライメントを容易にするために、外縁に1つ(図6)又は2つ(図7)のノッチを含んでもよいが、他の形状及び数のアライメント用特徴部も可能である。ノッチ付きレンズは、正しい向きでレンズを固定するための相補的な形状を有するレセプタクルに嵌合される(図8)。図8に示す実施形態では、対物レンズマウント810は、図7のレンズについて示されるような丸いノッチ820を含み、レンズ830は、例えばセラミック球840のような2つの球状又は円筒状のインサートを用いて所定の位置に固定される。但し、他の形状及びスタイルのノッチ及びインサートを使用することもでき、いくつかの実施形態では、レンズ又はレセプタクルは、それぞれ、レセプタクル又はレンズのノッチ若しくは他の形状に相補的な形状の1つ又は複数の突起を含むことができる。
【0025】
SECMの光源は、広帯域又は波長掃引源のいずれかであってもよい。中心波長が1310nmで繰返し率が100kHzの掃引源を使用する従来のSECM(特にカプセルベースのSECM)の形態と比較して、本明細書に開示されているような、より短い波長及びより高い繰返し率を有する掃引源レーザを利用することによって、光学分解能及び撮像速度の両方が向上する。様々な実施形態において、本明細書に開示されているカプセルベースのシステムは、例えば1060nm(1020nmから1100nmに及ぶ)といったより短い波長を中心波長とし、例えば400kHzといったより速い繰返し率を有する掃引光源レーザを利用する技術を提供する。ある特定の実施形態では、光源は、Axsun Technologies(Billerica,MA)から入手可能なModel AXP50124-3である。光学分解能が波長の関数であり、そして、より短い波長が、より小さい回折限界焦点サイズを提供し、したがって、より長い波長よりも良い分解能を提供することを考慮すると、本明細書に開示されているより短い波長の光源は、これまで使用されている1300nm範囲のレーザと比較して、より高い光学的分解能を提供する。さらに、開示されているレーザの400kHzとの繰返し率によって、従来の100kHzレーザシステムで観察されたモーションアーチファクトが大幅に低減する。
【0026】
図9の表は、カプセルベースのSECMシステムに関する光学系の仕様について、本願システム(右側、「SECM-TCE-1060」)と従来システム(左側、「SECM-TCE-1310」)の比較を示す。図9に示すように、本願において開示された実施形態は、水などの液体中に光学系を浸すことを必要とせず、これにより、上述のように製造が単純化され、装置の有効寿命が延びる。さらに、中心波長がかなり短い(1060nm対1290nm)ので、分解能が向上する。特定の実施形態ではカプセル直径は7mmから8mmに増大され、これにより、カプセルと食道などの周囲組織との物理的接触が増し、また、スペクトル符号化されたライン長が長くなり、これによって、区別可能なピクセル/サンプルの数が増える。撮像視野は260μmから340μmに増大し、横方向分解能は1.44μmから1.25μmに向上し、撮像深度は50μmから100μmに向上した。最後に、従来の装置で使用されている95.725°の撮像角度と比較して、バイコーニック面を有するレンズを使用する装置は90°の撮像角度で動作する。撮像ウインドウに対してほぼ垂直な撮像角度を有することにより、対物レンズのバイコーニック面の向きが湾曲した撮像ウインドウの湾曲面により生じる収差を補正するのにベストな向きとなるので、画質が向上する。
【0027】
図10は、円筒状ハウジング1060を含むカプセルプローブ1000の実施形態を示し、このプローブの長軸1050がプローブ内の光学部品のバイコーニックレンズの半径に沿って示されており、第1の軸R1(第1の曲率半径及び第1のコーニック定数に関連する)がプローブ1000の円筒状ハウジング1060の長軸1050と平行で、かつ、第2の軸R2(第2の曲率半径及び第2のコーニック定数に関連する)と垂直であり、第1の曲率半径及び第1のコーニック定数は、第2の曲率半径及び第2のコーニック定数よりも大きい。ウインドウ1070は、特定の実施形態では透明な円筒状の面であって、点線で示されており、このウインドウ1070は円筒状ハウジング1060内に収容されている。また、対物レンズマウント1010も示されており、対物レンズマウント1010は丸いノッチ1020を有し、レンズ1030は2つの球状又は円筒状のインサート1040、例えばセラミック球を用いて所定の位置に固定されてもよく、これにより、第1の軸R1が円筒状ハウジング1060の長軸1050に平行となるように、レンズ1030が正しい向きに維持される。
【0028】
本明細書に開示された例は、カプセルベースのSECMとの関連で一般的に示されているが、開示された装置及び方法は、湾曲した(例えば、円筒状の)撮像ウインドウから生じる収差を受けやすい任意のプローブとの使用において、より一般的に適用可能である。したがって、バイコーニック面を有する開示された対物レンズは、OCT、OFDI、SD-OCT及び他の走査撮像モダリティを含むがこれらに限定されない様々な撮像モダリティを実現するためにカプセルなどのプローブに使用することができる。
【0029】
開示された主題について特定の実施形態及び例に関連して記載したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、多くの他の実施形態、例、使用、変更並びに実施形態、例及び使用のバリエーションが、添付の特許請求の範囲に含まれるものであることは、当業者であれば理解できるであろう。本明細書に引用した各特許文献及び刊行物は、これらが個別に引用により本明細書に包含されているかのように引用により本明細書に包含されているものとする。
【0030】
本発明の様々な特徴及び利点は特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】