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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】Q-ERペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20221020BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 5/062 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 5/083 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 5/097 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 5/078 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 5/103 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221020BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20221020BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K38/08
A61K38/16
A61K38/28
A61P43/00 105
A61P3/10
A61K9/48
A61P1/18
C07K7/06 ZNA
C07K5/062
C07K5/083
C07K5/097
C07K5/078
C07K5/103
C07K16/00
C07K19/00
C12Q1/02
C07K7/08
C07K14/575
C07K14/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513480
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 NL2020050535
(87)【国際公開番号】W WO2021040526
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19194645.8
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519285259
【氏名又は名称】バイオテンプト・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンスフォールト、ヘルト
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS36
4B063QX01
4C076AA53
4C076BB01
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4C076CC26
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4C076DD37
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4C076FF61
4C084AA02
4C084AA03
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4C084BA01
4C084BA17
4C084BA18
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4C084BA41
4C084BA44
4C084CA59
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4C084NA05
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4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA11
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4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA33
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、細胞によるオートファジーが関与する疾患を治療するための手段および方法に関し、発明によるプロセスは、組織修復、血管透過性および免疫応答のメカニズムに関与する。本発明は、エラスチン受容体複合体を特異的に標的化する方法および手段、ならびに、オートファジーの経路およびそれに関連する疾患に関与する、特定の標的化剤およびアミノ酸組成物を含む、分子および組成物を提供する方法および手段を提供する。また、本開示は、ペプチド薬剤の開発に関し、特にオートファジーを抑制するアミノ酸を含有するペプチド(の改良)、より詳細には、血管および炎症状態の治療に有用なグルタミン含有ペプチド、および/またはグルタミンおよび他のオートファジー調節アミノ酸を含有する組成物に関する。本発明はさらに、糖尿病、血管および/または炎症症状の治療に有用なグルタミンペプチドの改良に関する。本発明は、PGドメインアミノ酸モチーフxGxxPGまたはその機能的同等物を少なくとも1つ有する合成ペプチドまたはその機能的類似体を含むQ-ERペプチドを提供し、前記PGドメインモチーフは、前記ペプチドがエラスチン受容体複合体(ER)を標的化するのを可能にし、xの位置の少なくとも1つのアミノ酸は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニンのアミノ酸群から選択され、前記ペプチドは少なくとも1つのグルタミン(Q)を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラスチン受容体複合体が表面に付いた細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、オートファジーを低下させる方法であって、
前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
方法。
【請求項2】
エラスチン受容体複合体が表面に付いた細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、血管透過性を修正する方法であって、
前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
方法。
【請求項3】
エラスチン受容体複合体が表面に付いた細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、組織修復を改善する方法であって、
前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
方法。
【請求項4】
エラスチン受容体複合体が表面に付いた細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、免疫応答を調節する方法であって、
前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
方法。
【請求項5】
前記複合体を識別する前記分子はxGxxPGで表されるエラスチンペプチドモチーフを有し、xは天然に存在するアミノ酸を表す、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、前記オートファジー阻害アミノ酸を含むペプチドである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記オートファジー阻害アミノ酸を含む前記ペプチドは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジペプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
xGxxPGが、前記オートファジー阻害アミノ酸を含む前記ペプチドとペプチド結合により連結している、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記複合体を識別する前記分子は、抗体様分子であり、好ましくはIgG、IgM、一本鎖抗体、FAB断片またはFAB’2断片から選択される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、ペプチド結合を介して前記抗体様分子に連結された、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含むペプチドである、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体様分子は、オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源と複合体化する、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、リポソーム等の脂質小胞である、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記リポソームは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニンの群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
オートファジーを低下させるのに使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する、
分子。
【請求項15】
アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
免疫応答の調節に使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する、
分子。
【請求項16】
アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
組織修復を改善するのに使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する、
分子。
【請求項17】
アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
血管透過性を修正するのに使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する、
分子。
【請求項18】
前記分子は、xGxxPGによって表されるエラスチンペプチドモチーフを有し、xは天然に存在するアミノ酸を表す、
請求項14~17のいずれか1項に記載の分子。
【請求項19】
前記分子は、IgG、IgM、一本鎖抗体、FAB断片またはFAB’2断片から選択される抗体様分子である、
請求項14~17のいずれか1項に記載の分子。
【請求項20】
オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含むペプチドである、
請求項14~19のいずれか1項に記載の分子。
【請求項21】
前記分子は、前記ペプチドとペプチド結合を介して連結している、
請求項20に記載の分子。
【請求項22】
xGxxPGと、
AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチドを含むジペプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドから選択されるペプチドと、
を含み、
xは天然に存在するアミノ酸を表す、
オートファジーを低下させるのに使用するためのペプチド。
【請求項23】
式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド。
【請求項24】
Φnおよび/またはΦmは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含む、
請求項23に記載のペプチド。
【請求項25】
xGxxPGと、
AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドから選択されるペプチドと、
を含むペプチド、および、
少なくとも1種の薬学的に許容される添加物、
を含み、
xは天然に存在するアミノ酸を表す、
オートファジーを低下させるのに使用するための医薬製剤。
【請求項26】
請求項23または24に記載のペプチド、および少なくとも1種の薬学的に許容される添加物を含む、医薬製剤。
【請求項27】
インスリンをさらに含む、請求項25または26に記載の医薬製剤。
【請求項28】
膵臓のベータ細胞の機能障害の治療に使用するための、請求項27に記載の医薬製剤。
【請求項29】
自動ペプチド合成機で前記ペプチドを合成することを含む、請求項23または24に記載のペプチドを製造するための方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法により得られる、請求項14~17のいずれか1項に記載の使用のための、請求項23または24に記載のペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞によるオートファジーが関与する疾患を治療するための手段および方法に関し、発明によるプロセスは、組織修復、血管透過性および免疫応答のメカニズムに関与する。本発明は、エラスチン受容体複合体を特異的に標的化する方法および手段、ならびに、オートファジーの経路およびそれに関連する疾患に関与する、特定の標的化剤およびアミノ酸組成物を含む、分子および組成物を提供する方法および手段を提供する。また、本開示は、ペプチド薬剤の開発に関し、特にオートファジーを抑制するアミノ酸を含有するペプチド(の改良)、より詳細には、血管および炎症状態の治療に有用なグルタミン含有ペプチド、および/またはグルタミンおよび他のオートファジー調節アミノ酸を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン(Gln、Q)は、血漿および組織プール中で最も豊富な遊離アミノ酸である。これは、急速に分裂する細胞、特に白血球と腸細胞の重要な燃料源となる。グルタミンは、体内において最も豊富な非必須アミノ酸であり、ストレス状況下では条件付き必須アミノ酸となる。これは省庁細胞に好ましい燃料源であり、ストレス時にその構造および機能の維持を助けると考えられている。敗血症および栄養失調の患者では、筋肉のグルタミンが枯渇しており、これらの患者では、リンパ球および腸内でのグルタミンの利用能が低下し、敗血症のリスクが高まるという仮説がある。免疫力向上を目的とした経腸製剤はさまざまな結果をもたらしたが、グルタミンの補給は、骨髄移植患者、手術後の患者、重症患者、重度の火傷患者において有害ではなく、実際に合併症を軽減することが示されている。
【0003】
非経口的なグルタミンを用いた研究は、一般的に、経腸的なグルタミンを用いた研究よりも肯定的である。グルタミンは非必須アミノ酸と考えられているが、グルタミンが有益な組織再生作用を有し、異化状態の患者にとって条件付きで必須であると考えられることを多くの研究が示した(J Nutr131:2543S-2549S discussion 2550S-2541S.;Nutr Rev48:297-309.doi:10.1111/j.1753-4887.1990.tb02967.x;Yonsei Med J52:892-897.doi:10.3349/ymj.2011.52.6.892;Lancet336:523-525.doi:10.1016/0140-6736(90)92083-t;PLoSONE9(1):e84410.doi:10.1371/journal.pone.0084410)。Shiomiら(Inflamm Bowel Dis17:2261-2274.doi:10.1002/ibd.21616)は、結腸炎症の急性期において、血清および結腸組織のグルタミン濃度が有意に低く、グルタミンの補給がデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)により引き起こされる顕微鏡下の損傷の度合いを減少させることを報告した。また、グルタミンおよびアラニル-グルタミンジペプチドは、実験的内毒血症における腸間膜血漿滲出の血管透過性、白血球の接着性および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の放出を抑制する(Scheibe,Ricardo et al.,2009,-60 Suppl 8 Journal of physiology and pharmacology:an official journal of the Polish Physiological Society)。
【0004】
アラニル-グルタミン(一文字コードAQ、商品名Dipeptivin(登録商標))、グリシル-グルタミン(GQ)、ロイシル-グルタミン(LQ)、バリル-グルタミン(VQ)、イソロイシル-グルタミン(IQ)、およびシステイニル-グルタミン(CQ)等のグルタミン含有ジペプチドは、様々な症状の治療に有用であることが早くからわかっている(米国特許公開第20050059610号も参照)。グルタミンを含むトリおよびテトラペプチド製剤(LQG、配列番号1(LQGV)、または配列番号2(AQGV)、国際公開第2012112048号も参照)は、列挙したジペプチドよりも、重度の全身症状を治療するための方法および医薬組成物に有利に使用される。当該トリおよびテトラペプチドは、ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピンホルモンに由来する合成直鎖グルタミン含有ペプチドであり、動物実験において組織保護作用を有する。
【0005】
たとえば、配列番号1(LQGV)のテトラペプチドは、マウスの複数菌による敗血症モデルにおいて死亡率が低下することが示されている(van den Berg et al.,Crit Care Med 39:126-134)。LQGV(5mg/kg体重)は、中等度の盲腸結紮および穿刺後の最初の5日間で、生存率を20%から50%に大幅に改善させた。これは、腹膜洗浄液、肺、および血漿中におけるサイトカインおよびE-セレクチンの濃度の低下と関連していた。また、配列番号1(LQGV)治療も、肺の核因子-κBおよび肺損傷を減少させた。重度の盲腸結紮および穿刺のモデルでは、補液蘇生および抗生物質と組み合わせた配列番号1(LQGV)のテトラペプチド(5mg/kg体重)は、補液蘇生および抗生物質単独で観察された生存率(30%)より有意に良好な生存率(70%)をもたらした。
【0006】
また、配列番号2(AQGV)のテトラペプチドは、腎臓の虚血再灌流障害(IRI)マウスモデルおよび同種腎臓移植後の虚血誘発性臓器移植後臓器機能障害マウスモデルにおいて、生存率を改善し、腎機能の喪失を減少させたことが示されている(Gueller et al,PLoS One.2015 Jan 24;10(1):e0115709.doi:10.1371/journal.pone.0115709.eCollection 2015)。IRIは、35分間の一過性の両側腎臓ペディクルクランプによりオスC57Bl/6Nマウスに誘発された。急性腎障害(AKI)がすでに確立されているIRIの24時間後に、配列番号2(AQGV)での治療(連続した4日間、1日2回、腹腔内に20~50mg/kg)を開始した。治療は、用量依存的に生存率の著しい改善をもたらした。配列番号2(AQGV)により、IRI後2日の急性尿細管傷害は減少し、尿細管上皮細胞の増殖が有意に促進された。さらに、虚血後線維化のマーカーであるCTGFのIRI後4週間におけるアップレギュレーションは、配列番号2(AQGV)で治療した腎臓組織で有意に減少した。次に、同種腎臓移植後の虚血誘発性臓器移植後臓器機能障害のモデルにおいて、配列番号2(AQGV)での治療が試験された。レシピエントは、1日2回、腹腔内に配列番号2(AQGV)(50mg/kg)で治療され、虚血性同種移植片損傷の減少により腎機能および同種移植片生着が改善した。
【0007】
また、配列番号2(AQGV)のテトラペプチドは、安全で、かつヒトにおける全身性炎症反応症候群(SIRS)の実験モデルにおいて、著しい免疫調節効果を有することが示されている(Groenendael et al.,Intensive Care Medicine Experimental 2016,4(Suppl 1):A132)。SIRSは、著しい組織の損傷をもたらす場合があり、集中治療室における多臓器不全および死亡の原因となることが多い。SIRSは、化膿症、外傷、および大手術等のさまざまな損傷により引き起こされ、現在、特定の治療法が日常的に使用されているわけではない。ヒトにおける配列番号2(AQGV)のテトラペプチドの忍容性、安全性、および免疫調節効果を調べるために、60人の健康なボランティアでの二重盲検、プラセボ対照、用量漸増型ランダム化臨床試験が実施された。この研究は二段階で行われた。第1相(n=24)では、ペプチドの漸増投与(30、90、および180mg/kg)での安全性および忍容性が確立された。第2相(n=36)では、同じ用量を用いて、実験的ヒトエンドトキシン血症時の全身性炎症(SIRS)に対するペプチドの効果を評価した。t=0時間で、2ng/kgの大腸菌エンドトキシンをi.v.投与し、続いて配列番号2(AQGV)のテトラペプチドまたはプラセボを2時間連続的にi.v.注入した。循環サイトカインおよび接着分子の濃度、ならびに体温およびインフルエンザ様症状を評価した。
【0008】
配列番号2(AQGV)のテトラペプチドは、良好な忍容性であり、優れた安全性のプロファイルを示した。低濃度では試験していないが、ペプチド180mg/kg(最高用量)での治療は、エンドトキシンによる血漿中IL-6、IL-8、IL-1RA、MCP-1、MIP-1α、およびMIP-1β、ならびに接着分子VCAM-1濃度の上昇を有意に抑制することが示された。さらに、最高用量では熱およびインフルエンザ様症状を減少させた。配列番号2(AQGV)のテトラペプチドは、ヒトにおいて安全で、かつ全身性炎症反応の抑制をもたらすと結論された。しかし、上述の非経口投与用のジ、トリ、テトラペプチドの欠点は、標的細胞に到達して有益な作用を発揮する前に、血中で急速に加水分解される可能性があることである。このペプチドの急速な損失のために、望ましい効果を得るためには、高用量かつ長時間の適用が必要となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、有益な効果を有するアミノ酸は、特に、任意の特定の手段によりエラスチン受容体複合体を標的化することにより、それらが有益な効果を有し得る細胞を標的とする。好ましくは、標的化手段は、アミノ酸の内部移行を可能にし、アミノ酸がオリゴペプチドの形態で提供される場合、上記内部移行は、典型的には、オリゴペプチドのリソソーム送達をもたらす。したがって、本発明は、エラスチン受容体複合体を表面に有する細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、オートファジーを低下させる方法を提供し、前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する。前記標的化は、オートファジー阻害アミノ酸のパッケージとして、前記供給源の細胞への送達をもたらし、前記供給源またはパッケージを有する分子は、たとえば一般的なエンドサイトーシスおよび/またはファゴサイトーシスにより取り込まれ、次にリソソーム(オートファゴソーム)でその組成の集合、好ましくはオートファジー阻害アミノ酸に加水分解され、個々のアミノ酸は前記細胞のサイトゾルに放出される。このように、Q-ERペプチドの前記細胞への標的化のために選択された前記パッケージ中のオートファジー阻害アミノ酸の集合により、ラパマイシンの機構的標的(mTOR)が活性化される。前記分子が、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含むのが好適である。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。好ましい実施形態では、本発明は、前記分子が本発明に係るERペプチドを含み、Φnおよび/またはΦmがAQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチド、好ましくはAQ、LQ、GQ、AQL、LQL、GQL、PLQ、LQG、AQGの群から選択される、方法を提供する。前記分子は、前記ペプチドとペプチド結合により結合しているのが好適である。
【0010】
また、提供されるのは、少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含むペプチドであり、このペプチドは、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である。
【0011】
また、本発明は、自動ペプチド合成機で前記ペプチドを合成することを含む本発明に係るQ-ERペプチドを製造する方法を提供し、自動ペプチド合成機での合成により得られるQ-ERペプチド、および対象の細胞のオートファジーを低下させるための、特に、前記対象がそのような治療を必要とすると思われる場合の、前記Q-ERペプチドの使用を提供する。本発明により提供されるオリゴペプチドのサイズには、一定のバランスが必要である。取り込みの速度および免疫応答のリスクを低下させるためにはより小さいサイズが好適であり、半減期の理由およびオートファジーを低下させるアミノ酸の量のためにはより長い配列が好適である。治療される症状および許容可能と考えられる用量に基づいて、当業者は、オリゴペプチドの適切なサイズ、または異なるサイズの組み合わせ、任意に付随して提供される追加のオートファジーを低下させるアミノ酸(たとえば、前記追加のアミノ酸を含むビヒクルへの結合を介して)を決定することができるであろう。
【0012】
それとともに、本発明は、ラパマイシンの機構的標的(mTOR)経路(Liu and Sabatini, Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 21, pages 183-203(2020))を含む中心的な細胞事象を調節する方法を提供する。mTOR経路は、成長因子シグナルおよび栄養状態等の多様な環境要因を統合して、真核細胞の成長を方向付ける。この25年間で、mTORシグナル伝達ランドスケープのマッピングにより、タンパク質合成およびオートファジーを含む重要な細胞プロセスを調節し、細胞内のmTOR活性化タンパク質生成対タンパク質分解オートファジーそれぞれのバランスをとることにより、mTORがバイオマスの蓄積および代謝を制御していることが明らかになった。本発明は、オートファジー阻害アミノ酸の供給源の標的細胞への送達を提供し、その後、エンドサイトーシスまたはファゴサイトーシスを介して前記細胞、特に前記細胞のリソソーム区画がオートファジー阻害アミノ酸の前記供給源を備え、アミノ酸が前記区画で遊離し(たとえば、酵素加水分解を通じて)、細胞質経路で利用可能となる。
【0013】
mTOR経路は、細胞の維持、生理学的ホメオスタシスに中心的な役割を果たしているため、mTORシグナル伝達の調節不全は、糖尿病等の代謝障害、神経変性、癌、炎症、および老化等の一般的な細胞由来の多くの障害に関係がある。特に、ラパマイシンの機構的標的複合体I(mTOR1)は、細胞および生物の成長の中心的な調節因子であり、この経路は、多くの動物およびヒトの疾患の発病と関係がある。mTOR1は、リソソーム中およびサイトゾルに移行されたアミノ酸等の栄養素の利用可能性に応じて成長を促進し、mTOR1はその活性化部位であるリソソームの表面に移動する。本発明によれば、いくつかのアミノ酸は他のものよりもmTORを活性化し、それとともに他のものよりもオートファジーを阻害するか、またはタンパク質生成を刺激し、特に、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、およびアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸は、他の天然に存在するアミノ酸よりもオートファジーを阻害することが知られている。本発明は、現在、生物の健康の中心となる組織、特に、人体の欠陥を治癒することにより、生物が疾患に取り組み、または病気と戦うのを助ける細胞に送達される、そのような選択されたオートファジー阻害アミノ酸の標的化コレクションまたはストリング;治癒活動の中心であり、血管の完全性または透過性、組織の修復、および自然免疫反応と適応免疫反応に関連する、血管系およびその周辺の細胞、すなわち様々な方法で、細胞障害、障害、感染、代謝変化および細胞変性から生じる損傷から生物を治癒することに関与するすべての細胞を提供する。
【0014】
治療が必要な細胞および組織へのオートファジー阻害アミノ酸のそのような供給源の送達の中心として、本発明は、そのようなアミノ酸のコレクションまたは供給源の、表面にエラスチン受容体複合体を有する細胞への標的送達の使用を提供する。これらの細胞(表面結合型エラスチン受容体複合体を有する、あるいはその生活環の少なくとも一部に担われている細胞の例としては、赤血球、白血球、血管内皮細胞、平滑筋細胞、および線維芽細胞が挙げられる)は、通常、オートファジーが低下し、少なくとも部分的に抑制され、同様にmTORを介したタンパク質生成が増加し、改善されることで恩恵を受ける治療活動に関与しているためである。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明は、エラスチン受容体複合体を表面に有する細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、血管透過性を修正するための方法を提供し、前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する。血管透過性の増加は、たとえば、急性炎症で最初に必要とされる体液および白血球(白血球)の血管外遊出を支配するが、後の段階では、通常、たとえば炎症がその機能を果たし、組織がその完全性を取り戻し治癒するように設定された後、組織の修復を可能にするために、抑制または低減(すなわち、透過性の低下、または元の血管の完全性への復帰)を必要とする。そこで、本発明は、エラスチン受容体複合体を表面に有する細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、組織修復を改善または促進する方法であって、前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、方法も提供する。特に組織の完全性を回復させることは、急性免疫反応を弱め、免疫反応を治療および組織修復反応の方向に切り替える必要がある場合に有益である。そこで、本発明は、エラスチン受容体複合体を表面に有する細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、免疫応答を調節するための方法を提供し、前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する。
【0016】
本明細書では、前記複合体を識別する前記分子がxGxxPGで表されるエラスチンペプチドモチーフを有し、xは天然に存在するアミノ酸を表すことが好ましいが、エラスチン受容体複合体はむしろ無差別な性質を有し、特に、Pに続くアミノ酸が前記エラスチン受容体複合体による識別を容易にするVIIIベータターンに適応できる場合、機能的に関連するモチーフであるxGxPGまたはxGxxPxもよく識別する。オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、前記オートファジー阻害アミノ酸を含むペプチドであるのが好適である。そのような目的のために、前記ペプチドは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含むのが好適であり、好ましくはAQ、LQ、GQ、AQL、LQL、GQL、PLQ、LQG、AQGの群から選択される。モチーフxGxxPGに結合する前記エラスチン受容体複合体は、前記オートファジー阻害アミノ酸を含む前記ペプチドとペプチド結合により結合しているのがさらに好適である。本発明のこれらの分子は、ペプチド合成機により簡単に製造することができ、リソソームで一旦分解してオートファジー阻害アミノ酸を生成することができる。
【0017】
また、本発明は、オートファジーを低下させるのに使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する分子であって、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を含む前記分子を提供する。好ましくは、本明細書で提供されるそのような分子は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。好ましい実施形態では、本発明は、本発明に係るERペプチドを提供し、Φnおよび/またはΦmがAQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチド、好ましくはAQ、LQ、GQ、AQL、LQL、GQL、PLQ、LQG、AQGの群から選択される。
【0018】
また、本発明は、免疫応答の調節に使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する分子であって、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を含む前記分子を提供する。好ましくは、本明細書で提供されるそのような分子は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。好ましい実施形態では、本発明は、本発明に係るERペプチドを提供し、Φnおよび/またはΦmがAQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチド、好ましくはAQ、LQ、GQ、AQL、LQL、GQL、PLQ、LQG、AQGの群から選択される。
【0019】
また、本発明は、組織修復を改善するために使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する分子であって、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を含む前記分子を提供する。好ましくは、本明細書で提供されるそのような分子は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。好ましい実施形態では、本発明は、本発明に係るERペプチドを提供し、Φnおよび/またはΦmがAQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチド、好ましくはAQ、LQ、GQ、AQL、LQL、GQL、PLQ、LQG、AQGの群から選択される。
【0020】
また、本発明は、血管透過性の修正に使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する分子であって、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を含む前記分子を提供する。好ましくは、本明細書で提供されるそのような分子は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。好ましい実施形態では、本発明は、本発明に係るERペプチドを提供し、Φnおよび/またはΦmがAQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチド、好ましくはAQ、LQ、GQ、AQL、LQL、GQL、PLQ、LQG、AQGの群から選択される。
【0021】
さらに、本発明は、それらの表面にエラスチン受容体複合体を有する細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化する代替的な方法も提供し、前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択され、より好適にはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を含む。あるさらなる実施形態では、本発明は、それらの表面にエラスチン受容体複合体を有する細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含むオートファジーを低下させるための方法であって、前記複合体を識別する前記分子は、抗体様分子、好ましくはIgG、IgM、一本鎖抗体、FAB断片またはFAB’2断片である、方法を提供する。原則的に、エラスチン受容体複合体を特異的に識別できる任意の抗体様分子を使用してもよく、少なくとも1つのVhまたはVhhを備える一本鎖型(1つのポリペプチド鎖のみ)が好適である。この型は、オートファジーを低下させるアミノ酸がペプチド結合により結合したオリゴペプチドとして使用できるため、好ましい。実際、Q-ERペプチドが言及されている場合、通常は、Q-Vhおよび/またはQ-Vhhも開示されていると考えるべきである。抗体様分子は、一般的に、標的に結合すると迅速に貪食され、リソソーム区画に送達され、それを供給源とするアミノ酸はさらにmTORの活性化に利用される。したがって、内在の抗体様分子が好適である。オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジペプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含むペプチドであり、前記抗体様分子とペプチド結合により結合しているか、あるいは、前記抗体様分子がオートファジー阻害アミノ酸の前記供給源と別の方法で結合しているのが好適である。結合方法は当該分野で知られている。同様に、オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源はリポソーム等の脂質小胞であり、特に前記リポソームは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含み、好ましくはAQ、LQ、GQ、AQL、LQL、GQL、PLQ、LQG、AQGの群から選択される。
【0022】
本発明は、エラスチン受容体結合モチーフを有し、また、細胞のリソソームにおいてペプチドが個々のアミノ酸成分に加水分解された後に細胞のオートファジーを優先的に(mTORを介して)阻害する選択されたアミノ酸を(豊富に)有する、合成グルタミンペプチドを提供する。これらの選択されたオートファジー阻害アミノ酸によるオートファジーの阻害は、免疫細胞の活性を調節する。これらの選択されたオートファジー阻害アミノ酸によるオートファジーの阻害は、血管透過性を調節する。これらの作用は、単独で、または複合的に、(本明細書でQ-ERともいう)本発明に係るペプチドで標的化された後に、前記免疫細胞および/または血管細胞が治癒的組織修復活性を示すのに寄与する。本発明は、治癒および組織修復を支援するQ-ERペプチドであって、グルタミン(Q)およびエラスチン受容体(ER)結合アミノ酸配列モチーフを有する合成ペプチドまたはその機能的類似体を含み、また、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)、およびアルギニン(R)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を、少なくとも50%含む、前記ペプチドを提供する。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明は、エラスチン受容体結合モチーフを有し、また、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)、およびアルギニン(R)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%含む、Q-ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。本明細書ではそのようなペプチドをQ-ERペプチドと呼び、Qはグルタミンの略であり、ERはエラスチン受容体の略である。第1の実施形態において、合成ペプチドまたはその機能的類似体を含む、またはそれらからなるQ-ERペプチドは、PGドメインアミノ酸モチーフxGxxPGもしくはxGxPGx、またはその機能的等価モチーフ等の少なくとも1つのエラスチン受容体結合アミノ酸モチーフを有し、前記PGドメインモチーフは、前記ペプチドがエラスチン受容体複合体(ER)を標的化するのを可能にし、xの位置の少なくとも1つのアミノ酸は、アラニン(1文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニンのアミノ酸群から選択され、前記ペプチドは、少なくとも1つのグルタミン(Q)を有する。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を提供する。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。好ましい実施形態では、本発明は、本発明に係るERペプチドを提供し、Φnおよび/またはΦmがAQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチド、好ましくはAQ、LQ、GQ、AQL、LQL、GQL、PLQ、LQG、AQGの群から選択される。
【0025】
また、本発明は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む医薬製剤を提供する。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。好ましい実施形態では、本発明は、xGxxPGを含むペプチドと、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドとを含む、オートファジーを低下させるのに使用するための医薬製剤であって、xは天然に存在するアミノ酸を表し、少なくとも1種の薬学的に許容される添加物を含む医薬製剤を提供する。
【0026】
また、本発明は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む医薬製剤を提供する。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、少なくとも1種の薬学的に許容される添加物である。好ましい実施形態では、本発明は、xGxxPGを含むペプチドと、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドとを含む、血管透過性の修正に使用するための医薬製剤であって、xは天然に存在するアミノ酸を表し、少なくとも1種の薬学的に許容される添加物を含む医薬製剤を提供する。
【0027】
また、本発明は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む医薬製剤を提供する。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、少なくとも1種の薬学的に許容される添加物である。好ましい実施形態では、本発明は、xGxxPGを含むペプチドと、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドとを含む、免疫応答の調節に使用するための医薬製剤であって、xは天然に存在するアミノ酸を表し、少なくとも1種の薬学的に許容される添加物を含む医薬製剤を提供する。
【0028】
また、本発明は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む医薬製剤を提供する。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、少なくとも1種の薬学的に許容される添加物である。好ましい実施形態では、本発明は、xGxxPGを含むペプチドと、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドとを含む、組織修復の改善または促進に使用するための医薬製剤であって、xは天然に存在するアミノ酸を表し、少なくとも1種の薬学的に許容される添加物を含む医薬製剤を提供する。
【0029】
また、本発明は、式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド(本明細書でQ-ERペプチドともいう)を含む医薬製剤を提供する。好ましい実施形態では、n+mは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、好ましくは膵臓のベータ細胞の機能障害の治療に使用するために、インスリンをさらに含む。好ましい実施形態では、本発明は、xGxxPGを含むペプチドと、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドとを含む、オートファジーを低下させるのに使用するための医薬製剤であって、xは天然に存在するアミノ酸を表し、好ましくは膵臓のベータ細胞の機能障害の治療に使用するために、インスリンをさらに含む医薬製剤を提供する。
【0030】
通常、本発明の医薬製剤は、非経口投与を意図している。動物試験および臨床試験で、当業者によく知られている用量設定プロトコールに従って、安全かつ有効な用量を確立することができる。通常、標的化手段なしの発明に係るペプチドは、循環中のオリゴペプチドの半減期が限られているため、高用量で提供される必要がある。標的化によりランダムな循環が少なくなり、標的化により多くの本発明のアミノ酸が必要な場所に送達され、それにより標的化なしのペプチドの場合よりも用量が低くなり得ることは、本発明の利点の1つである。
【0031】
本発明はさらに、グルタミン(Q)を含むペプチドの改良に関し、グルタミン含有ペプチド(本明細書ではグルタミンペプチドともいう)が、Q-ERペプチドがその効果を発揮できる細胞を効率的に標的化するのを可能にし、それにより投与要件を改善する。本発明により提供されるそのようなQ-ERペプチドは、炎症および血管状態の治療のための方法および医薬組成物に有用である。本発明は、多くとも30アミノ酸、好ましくは多くとも20アミノ酸、さらに好ましくは多くとも15アミノ酸、最も好ましくは多くとも9アミノ酸の合成Q-ERペプチドを提供し、前記Q-ERペプチドは、少なくとも1つのPGドメインモチーフGxxPGまたはGxPGxを有し、前記モチーフはQ-ERペプチドがヒトエラスチン受容体複合体(ER)を標的化するのを可能にする。Q-ERペプチドの機能的類似体は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、アルギニン(R)のアミノ酸群から選択され、より好ましくはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択されるアミノ酸を含むペプチドから選択され得る。好ましい実施形態では、本発明は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)、およびアルギニン(R)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%含む、ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、およびプロリン(P)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%含む、ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。最も好ましい実施形態では、本発明は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ロイシン(L)、およびプロリン(P)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%含む、ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。これらのアミノ酸、特にグルタミン(Q)およびロイシン(L)は、mTORを介したオートファジーを最も顕著に阻害できることが示され、mTORは、細胞内のタンパク質生成とタンパク質分解(オートファジー)を制御する重要なスイッチである。
【0032】
好ましくは、Q-ERペプチドの機能的類似体は、4~12アミノ酸、より好ましくは6~12アミノ酸の範囲の長さを有する。好ましくは、そのような機能的類似体は、直鎖ペプチドである。本発明に係る機能的ERペプチド類似体は、より好ましくは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジペプチド配列を含むペプチドからなる群から選択され得る。本発明に係る機能的ERペプチド類似体は、より好ましくは、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド配列を含むペプチドからなる群から選択され得る。好ましくは、機能的類似体は、機能的エラスチン受容体結合モチーフを有するペプチドの群から選択され、好ましくはVIII型ベータターンを可能にするPGドメイン、好ましくはペプチド配列GxPまたはGxxPを含み、より好ましくはペプチド配列GxPGまたはGxxPG、最も好ましくはGxxPGを含むPGドメインを有する。
【0033】
xの位置の少なくとも1つのアミノ酸は、アラニン、ロイシン、バリンまたはグルタミン(これらの4つのうち、ロイシンおよびアラニンは、本発明によるPGドメインを有するQ-ERペプチドに含めるのが最も好ましい)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるのが好ましく、前記ペプチドも少なくとも1つのグルタミンを有するか、または含む。好ましい実施形態では、本発明に係るQ-ERペプチドは、AQ、LQ、GQ、VQ、IQ、CQ、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQG、配列番号2(AQGV)および配列番号1(LQGV)の群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む。ヒトに使用するためのQ-ERペプチドでは、PGドメインモチーフGxxPGの存在、および配列番号1(LQGV)および/または配列番号2(AQGV)の少なくとも1つのアミノ酸配列の包含が最も好ましい。
【0034】
このようにして、本発明は、糖尿病、炎症、または血管の症状の治療において使用するための、好ましくはヒトにおけるそのような症状の治療のための合成Q-ERペプチドであって、免疫細胞の反応性および/または血管細胞の修復の調節に関与する受容体複合体であるヒトエラスチン受容体複合体を有する細胞を、改善されたQ-ERペプチドが標的化してドッキングするのを可能にするアミノ酸の重要なモチーフ(PGドメイン)を有する前記Q-ERペプチドを提供する。Q-ERペプチドの有益な抗糖尿病、抗炎症、および血管修復効果は、標的細胞に入ると、Q-ERペプチドの加水分解により生成するオートファジー阻害アミノ酸がラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)複合体に作用し、前記標的細胞のオートファジーを阻害することにより得られると考えられている。
【0035】
本発明により提供されるようなQ-ERペプチドに含まれる好適なオートファジー阻害アミノ酸は、アラニン(A)、プロリン(P)、ロイシン(L)およびグルタミン(Q)のアミノ酸群から選択される。本発明に係るQ-ERペプチドを含むPGドメインに含めるための最も好適なオートファジー阻害アミノ酸は、L-ロイシン、L-グルタミン、およびL-アラニンである。
【0036】
本発明に係るQ-ERペプチドによる、標的細胞(免疫細胞または血管細胞等の活性エラスチン受容体複合体を有する細胞が好適に標的化される)におけるオートファジーの阻害は、一般的に、血管細胞の透過抵抗性の改善および増殖の抑制、ならびに免疫細胞の急性炎症活性の減少および血管外漏出の減少をもたらす。化膿症または全身性炎症反応症候群(SIRS)等の急性全身症状、および相対的に、または完全にCペプチドが欠如している患者(1型糖尿病および末期の2型糖尿病に典型的にみられる)における慢性全身性血管障害は、免疫細胞(たとえば、好中球、マクロファージ、リンパ球)の有害な活性化および血管外漏出、および血管を形成する血管細胞(たとえば、血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞)の破壊を含む微小血管損傷の発症につながることが多い。本発明に係るERペプチドがそれらの細胞を標的化し、そこで加水分解された個々のアミノ酸のオートファジー阻害作用を介してオートファジーを阻害し、前記糖尿病、Cペプチドの不足に起因し、他の(微小)血管および/または炎症症状とともにみられることが多い症状で苦しんでいる患者の治療に有益な効果で、それらの発症事象を低減することを可能にする。
【0037】
ヒトエラスチン受容体複合体は、通常、エラスチン中およびその分解物中(PGドメイン断片)に見られるアミノ酸の重要なモチーフ(PGドメイン)を有するペプチドにより活性化される。本明細書では、機能的PGドメインを有するペプチドまたはペプチド断片は、少なくとも1つのGxxPxまたはGxPxxアミノ酸配列を有するペプチドとして定義され、Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸であり、Pに続くアミノ酸はVIII型ベータターンを可能にし、これはPのC末端にGが続く場合に常に満たされると見なされる条件である。また、本発明は、エラスチン受容体に結合(ドッキング)して調節することができるようなペプチドをヒトに提供することを含む、疾患を予防または治療する方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は少なくとも1つのPGドメインペンタペプチドモチーフGxxPG(Gはグリシン、Pはプロリン、Xは任意のアミノ酸)を有する合成ペプチドを提供し、好ましくはxの位置の少なくとも1つアミノ酸は、アラニン、ロイシン、バリン、またはイソロイシンの群から選択され、前記ペプチドは常に少なくとも1つのグルタミンを有する。また、本発明は、このペンタペプチドモチーフが少なくとも1回反復され、前記PGドメイン反復がリンカーにより任意に分離され、そのようなリンカーは、アラニン、ロイシン、グリシン、バリン、イソロイシン、またはグルタミンの群から選択される1以上のアミノ酸等の1以上のアミノ酸を含んでもよい、合成ペプチドを提供する。
【0038】
また、本発明は、少なくとも1つのヘキサペプチドモチーフxGxxPGを有する合成ペプチドを提供し、xの位置の少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つのアミノ酸は、アラニン、ロイシン、バリン、またはイソロイシンの群から選択され、前記ペプチドは常に少なくとも1つのグルタミンを有する。また、本発明は、このヘキサペプチドモチーフが少なくとも1回反復され、前記反復がリンカーにより任意に分離され、そのようなリンカーは、アラニン、ロイシン、グリシン、バリン、イソロイシン、またはグルタミンの群から選択される1以上のアミノ酸等の1以上のアミノ酸を含んでもよい、合成ペプチドを提供する。
【0039】
特に、本発明は、AQ、LQ、GQ、VQ、PQ、IQ、CQ、AQG、LQG、配列番号2(AQGV)および配列番号1(LQGV)の全身症状を治療することができる既知のグルタミンペプチドの群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むQ-ERペプチドを提供する。エラスチン受容体複合体を有する炎症性および血管細胞により識別されるペンタペプチドモチーフGxxPGを含むことにより、PG-ドメインは、本発明のペプチドが、典型的には血管および/または炎症の症状に関与する細胞に標的化されることを可能にし、そのような症状を治療することができる既知のペプチドの群から選択されるアミノ酸配列から利益を得る。好ましい実施形態では、本発明は、本発明に係るヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ、デカ、ウンデカ、またはドデカペプチドを提供する。ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナペプチドが最も好ましく、より大きいペプチドは一般的に免疫原性が高すぎて、長期間にわたって繰り返し適用することができない。好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのPGドメインペンタペプチドモチーフを有し、配列番号1(LQGV)および/または配列番号2(AQGV)の少なくとも1つのアミノ酸配列を有する合成Q-ERペプチドを提供し、好ましい実施形態では、配列番号1(LQGV)および/または配列番号2(AQGV)のアミノ酸配列を有するそのようなペプチドは、好ましくは、配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)、配列番号8(LQGVLPG)、配列番号9(AQGVAPGQ)、配列番号10(LQGVAPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、および配列番号12(LQGVLPGQ)の群から選択される。本明細書は、エラスチン受容体複合体(ERC)認識PGドメインモチーフを有する合成Q-ERペプチドが前記ERCを標的化することによる、活性型非標的グルタミンペプチド調製の損失の解決策を提供する。通常、ヒト、霊長目、およびほとんどの動物におけるそのようなモチーフは、コンセンサスヘキサペプチド配列xGxxPGを好適に有しており、いくつかの他の哺乳類(たとえば反芻動物)は、コンセンサスペンタペプチド配列xGxPGを好適に有しており、いくつかの種で機能的に同等の結合親和性を有するようである。好ましくは、本明細書で開示される合成Q-ERペプチドでは、定義されていないアミノ酸位置(x)の少なくとも1つは、バリン(V)、グルタミン(Q)、または最も好ましくはロイシン(L)もしくはアラニン(A)等の脂肪族アミノ酸を表す。本発明は、たとえば配列番号3(QGVLPG)または配列番号4(QGVAPG)のヘキサペプチドモチーフを有するペプチド等の、ヘキサペプチドxGxxPGモチーフを有する合成ペプチドを提供し、前記ペプチドのN末端のアミノ酸は、バリン(V)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、または最も好ましくはロイシン(L)もしくはアラニン(A)から選択される。別の好ましい実施形態では、本発明は、ヒトに使用するための、N末端のアミノ酸がアラニン(A)または好ましくはロイシン(L)である、配列番号3(QGVLPG)または配列番号4(QGVAPG)のヘキサペプチドモチーフを有するペプチドであって、それぞれ配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)または配列番号8(LQGVLPG)の合成ヘプタペプチドを提供する。また、本発明は、これらのPGドメインモチーフの1つが少なくとも1回反復された合成Q-ERペプチドを提供する。前記反復がリンカーにより任意に分離され、そのようなリンカーは、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、またはグルタミンの群から選択される1以上のアミノ酸等の1以上のアミノ酸を含んでもよい。好ましくは、ピログルタミンへの変化からグルタミンを保護する非グルタミンのN末端のアミノ酸が付加される。やはりヒトでの使用に好ましいさらなる実施形態では、本発明は、たとえば配列番号3(QGVLPG)または配列番号4(QGVAPG)等のxGxxPGモチーフを有する合成ペプチドを提供し、N末端のアミノ酸はバリン(V)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、または最も好ましくはロイシン(L)もしくはアラニン(A)から選択される。好ましい実施形態では、本発明は、ヒトに使用するための、N末端のアミノ酸がアラニン(A)または好ましくはロイシン(L)であり、C末端のアミノ酸がグルタミン(Q)である、配列番号3(QGVLPG)または配列番号4(QGVAPG)のヘキサペプチドモチーフを有するペプチドを提供し、N末端のアミノ酸はピログルタミンへの変化からグルタミンを保護し、C末端のアミノ酸は、xGxxPGを識別する受容体であるエラスチン受容体複合体(ERC)を標的化する追加のグルタミンを提供する。本明細書で提供される典型的な例は、配列番号9(AQGVAPGQ)、配列番号10(LQGVAPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)または配列番号12(LQGVLPGQ)の合成オクタペプチドである。別の好ましい実施形態では、本発明は、ヒトに使用するための、N末端のアミノ酸がアラニン(A)または好ましくはロイシン(L)であり、C末端のアミノ酸がグルタミン(Q)である、配列番号13(LQGQAPG)または配列番号14(QGQAPG)のヘキサペプチドモチーフを有するペプチドを提供し、N末端のアミノ酸はピログルタミンへの変化からグルタミンを保護し、C末端のアミノ酸は、xGxxPGを識別する受容体であるエラスチン受容体複合体(ERC)を標的化する追加のグルタミンを提供し、細胞を標的とするさらに別の第3のグルタミンが提供される。本明細書で提供される典型的な例は、配列番号15(AQGQAPGQ)、配列番号16(LQGQAPGQ)、配列番号17(AQGQLPGQ)または配列番号18(LQGQLPGQ)の合成オクタペプチドである。好ましい実施形態では、本発明は、表3に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置にGQを有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。好ましいQ-ERペプチドは、配列番号46(VQGGQPGQ)、配列番号49(AQGGQPGQ)および配列番号53(GQGGQPGQ)を含む群から選択される。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明は、表4に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置にVQを有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。非常に好ましいQ-ERペプチドは、配列番号51(GQGVQPGQ)、配列番号44(VQGVQPGQ)、配列番号24(LQGVQPGQ)、配列番号22(AQGVQPG)および配列番号25(AQGVQPGQ)を含む群から選択される。
【0041】
好ましい実施形態では、本発明は、表5に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置にVAを有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。非常に好ましいQ-ERペプチドは、配列番号4(QGVAPG)、配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号9(AQGVAPGQ)、配列番号10(LQGVAPGQ)、配列番号27(VQGVAPG)、配列番号29(GQGVAPG)、配列番号33(VQGVAPGQ)および配列番号37(GQGVAPGQ)を含む群から選択される。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明は、表6に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置にVLを有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。非常に好ましいQ-ERペプチドは、配列番号3(QGVLPG)、配列番号7(AQGVLPG)、EQIDNO:8(LQGVLPG)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号12(LQGVLPGQ)、配列番号26(VQGVLPG)、配列番号28(GQGVLPG)、配列番号32(VQGVLPGQ)および配列番号36(GQGVLPGQ)を含む群から選択される。
【0043】
好ましい実施形態では、本発明は、表7に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置にQAを有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。非常に好ましいQ-ERペプチドは、配列番号13(LQGQAPG)、配列番号14(QGQAPG)、配列番号15(AQGQAPGQ)および配列番号16(LQGQAPGQ)を含む群から選択される。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明は、表8に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置にAQを有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。非常に好ましいQ-ERペプチドは、配列番号45(VQGAQPGQ)、配列番号41(LQGAQPGQ)、配列番号48(AQGAQPGQ)および配列番号52(GQGAQPGQ)を含む群から選択される。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明は、表9に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置にQLを有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。非常に好ましいQ-ERペプチドは、配列番号17(AQGQLPGQ)、配列番号18(LQGQLPGQ)、配列番号21(AQPGQLPG)、配列番号30(LQGQLPG)、配列番号31(VQGQLPG)、配列番号34(AQGQLPG)、配列番号35(GQGQLPG)、配列番号38(VQGQLPGQ)および配列番号39(GQGQLPGQ)を含む群から選択される。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明は、表10に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置にLQを有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。非常に好ましいQ-ERペプチドは、配列番号20(LQVGLQPG)、配列番号40(LQGLQPGA)、配列番号42(LQGLQPGQ)、配列番号43(VQGLQPGQ)、配列番号47(AQGLQPGQ)および配列番号50(GQGLQPGQ)を含む群から選択される。
【0047】
最も好ましい実施形態では、本発明は、表11に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、配列番号1(LQGV)のペプチド配列をさらに有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。最も好ましいQ-ERペプチドは、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号8(LQGVLPG)、配列番号10(LQGVAPGQ)、配列番号12(LQGVLPGQ)および配列番号24(LQGVQPGQ)を含む群から選択される。
【0048】
最も好ましい実施形態では、本発明は、表12に示すような、GxxPGのエラスチン受容体結合モチーフを有し、配列番号2(AQGV)のペプチド配列をさらに有する、本発明に係るQ-ERペプチドを提供する。最も好ましいQ-ERペプチドは、配列番号5(AQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)、配列番号9(AQGVAPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号22(AQGVQPG)および配列番号25(AQGVQPGQを含む群から選択される。
【0049】
PGドメイン結合モチーフを有するさらなる有用な合成Q-ERペプチドは、本明細書の詳細な説明または他の箇所に記載されている(特にQ-Vhおよび/またはQ-Vhh)。
【0050】
本明細書で提供されるようなペプチドは、急性腎障害等の急性症状、また、血管の損傷をもたらし、(多臓器)臓器不全により重症化しやすい化膿症および全身性炎症反応症候群(SIRS)等の全身性炎症症状、または炎症症状の治療に有用である。本発明のペプチドは、ベータ細胞活性の減少による糖尿病(1型糖尿業および末期の2型糖尿病)に付随する血管症状に特に有用であり、そのような患者は、Cペプチドおよびインスリン濃度の減少を示し、それにより一般的に、過剰な(微小)血管透過性および過剰な白血球血管外漏出、ならびに過剰な循環血糖で苦しんでいる。Q-ERペプチドを投与または治療する場合、そのような患者は、高いグルコース濃度も治療するために、インスリン等の抗糖尿病組成物での付随的な治療または同時治療を受けるのが好ましい。本発明のさらなる実施形態では、本明細書で提供されるようなQ-ERペプチドは、耐酸カプセルにカプセル化される。そのような(薬学的)カプセルは、ヒトおよび動物への投与のための経口剤形として薬学の分野で広く使用されている。本発明に係るQ-ERペプチドが充填された、このようなカプセルは、少なくとも1つ、好ましくは2つまたは3つのPGドメインモチーフGxxPG(Gはグリシン、Pはプロリン、xは任意のアミノ酸)を有する合成Q-ERペプチドの経腸投与のために有用であり、好ましくはxの位置の少なくとも1つのアミノ酸は、アラニン、ロイシン、バリン、またはイソロイシンから選択され、また、前記ペプチドは少なくとも1つのグルタミンを有する。そのような投与は、たとえば、腸管内皮細胞の再生が必要なクローン病等の疾患を緩和または治療するであろう。また、そのような投与は、過剰な放射線の後に起こる胃腸障害の治療に有用であろう。また、本明細書で提供されるQ-ERペプチドは、免疫調節物質等の他の治療薬、たとえば、(免疫調節)ペプチド、特に配列番号1(LQGV)、AQG、または配列番号2(AQGV)のペプチド、またはTNF-アルファ、IL-1もしくはIL-6としてサイトカインに作用する免疫調節抗体またはタンパク質、またはコルチコステロイド製剤等の従来の免疫調節剤と有利に組み合わせることができる。
【0051】
また、本発明は、急性および/または全身性の症状で苦しんでいる、または苦しんでいると考えられる対象の前記症状の治療方法を提供し、方法は、本発明に係る多くとも30アミノ酸のQ-ERペプチド、好ましくは合成Q-ERペプチドを、好ましくは非経口、経静脈、または経腹腔で、前記対象に提供することを含み、前記Q-ERペプチドは、前記ペプチドがエラスチン受容体複合体を標的化することを可能にするPGドメインモチーフGxxPGを少なくとも1つ有し、xの位置の少なくとも1つのアミノ酸は、アラニン、ロイシン、バリン、またはイソロイシンの群から選択され、また、前記ペプチドは少なくとも1つのグルタミンを有する。前記Q-ERペプチドが、AQ、LQ、GQ、VQ、IQ、CQ、AQG、LQG、配列番号2(AQGV)および配列番号1(LQGV)の群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むのが好ましい。本発明に係る、本明細書で提供されるようなヒト対象の治療方法では、PGドメインモチーフGxxPGを有し、かつ少なくとも1つの配列番号1(LQGV)および/または配列番号2(AQGV)のアミノ酸配列を有するQ-ERペプチドで前記対象を治療するのが最も好ましい。
【0052】
また、本発明は、ヒト対象の血管および/または炎症の症状で苦しんでいる、または苦しんでいると考えられる対象の前記症状の治療方法を提供し、方法は、ペプチドがエラスチン受容体複合体を標的化することを可能にするPGドメインモチーフGxxPGを少なくとも1つ有するヘプタ、オクタ、ノナ、デカ、ウンデカ、またはドデカペプチド、最も好ましくは、ヘプタ、オクタ、ノナペプチドであって、xの位置の少なくとも1つのアミノ酸は、アラニン、ロイシン、バリン、またはイソロイシンの群から選択され、また、前記ペプチドは少なくとも1つのグルタミンを含む、本発明に係るペプチドを、好ましくは非経口、経静脈、または経腹腔で、前記対象に提供することを含む。方法は、本発明に係る前記ペプチドが少なくとも2つのグルタミンを有するのが好ましく、最も好ましくは3つのグルタミンを有する。
【0053】
また、本発明は炎症の症状で苦しんでいる、または苦しんでいると考えられる対象の前記症状の治療方法を提供し、方法は、本発明に係る配列番号1(LQGV)および/または配列番号2(AQGV)のアミノ酸配列を少なくとも1つ有するペプチド、好ましくは配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)および配列番号8(LQGVLPG)の群から選択される合成ペプチドを、好ましくは非経口、経静脈、または経腹腔で、前記対象に提供することを含む。
【0054】
また、本発明は血管および/または炎症の症状で苦しんでいる、または苦しんでいると考えられる対象の前記症状の治療方法を提供し、方法は、本発明に係る配列番号1(LQGV)および/または配列番号2(AQGV)のアミノ酸配列を少なくとも1つ有するペプチド、好ましくは配列番号9(AQGVAPGQ)、配列番号10(LQGVAPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)および配列番号12(LQGVLPGQ)の群から選択される合成ペプチドを、好ましくは非経口、経静脈、または経腹腔で、前記対象に提供することを含む。
【0055】
また、本発明は血管および/または炎症の症状で苦しんでいる、または苦しんでいると考えられる対象の前記症状の治療方法を提供し、方法は、本発明に係る配列番号1(LQGV)および/または配列番号2(AQGV)のアミノ酸配列を少なくとも1つ有するペプチド、好ましくは配列番号15(AQGQAPGQ)、配列番号16(LQGQAPGQ)、配列番号17(AQGQLPGQ)および配列番号18(LQGQLPGQ)の群から選択される合成ペプチドを、好ましくは非経口、経静脈、または経腹腔で、前記対象に提供することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0056】
Q-ERペプチドの機能的類似体は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)のアミノ酸群から選択され、より好ましくはロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)およびプロリン(P)の群から選択されるアミノ酸を含むペプチドから選択され得る。好ましい実施形態では、本発明は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)、およびアルギニン(R)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%含む、ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%含む、ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、およびプロリン(P)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%含む、ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。最も好ましくは少なくとも100%含む、ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。最も好ましい実施形態では、本発明は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ロイシン(L)、およびプロリン(P)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%含む、ERペプチドまたは機能的類似体を提供する。好ましくは、Q-ERペプチドの機能的類似体は、4~12アミノ酸、より好ましくは6~12アミノ酸の範囲の長さを有する。好ましくは、そのような機能的類似体は、直鎖ペプチドである。本発明に係る機能的ERペプチド類似体は、より好ましくは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジペプチド配列を含むペプチドからなる群から選択され得る。本発明に係る機能的ERペプチド類似体は、より好ましくは、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド配列を含むペプチドからなる群から選択され得る。好ましくは、機能的類似体は、機能的エラスチン受容体結合モチーフを有する合成ペプチドの群から選択され、好ましくはVIII型ベータターンを可能にするPGドメイン、好ましくはペプチド配列GxPまたはGxxPを含み、より好ましくはペプチド配列GxPGまたはGxxPG、最も好ましくはGxxPGを含むPGドメインを有する。
【0057】
別の実施形態では、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体は、ベータ細胞の機能障害を有するヒト対象の治療に使用するために提供される。さらなる実施形態では、ベータ細胞の機能障害は糖尿病である。ある実施形態では、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体は、ベータ細胞の機能を改善するためのヒト対象の治療に使用するために提供される。ベータ細胞の機能は、膵臓のベータ細胞によるプレプロインスリンの酸性を測定することにより、好ましくは血中、血清中、または血漿中のインスリンおよび/またはCペプチドを評価することにより評価することができる。膵臓β細胞の機能欠陥は、現在、1型糖尿病および末期の2型糖尿棒の特徴として認められている。1型糖尿病におけるβ細胞の重要性は、長い間認められてきた。対照的に、末期の2型糖尿病における膵臓欠陥の必要性は、ごく最近広く認識されるようになった。臨床現場では、インスリン分泌のパラメータとして、空腹時のサンプル、または最も広く使用され検証されている、OGTT、グルカゴン刺激試験、標準朝食試験等の簡単な刺激試験が使用され得る。これらの試験において、空腹時のグルコース、インスリン、およびCペプチドの濃度を数理的に処理することが最も簡単な方法である。空腹時の濃度の数理的処理は、HOMA、空腹時ベータ細胞応答性(M0)、QUICKI等のさまざまな指標を導入することにより、インスリンの感受性および分泌の計算に使用されている。ヒトにおけるベータ細胞の機能の評価は、標準的な臨床診療である(たとえば、グルコース濃度、インスリン、またはCペプチドの測定による)。Q-ERペプチドを投与されない場合と比較したベータ細胞の機能の改善には、HOMA、空腹時ベータ細胞応答性(M0)、およびQUICKI等の脳能により評価されるベータ細胞の機能段階への進歩が含まれ得る。また、ベータ細胞の機能の改善には、グルコース濃度の改善も含まれる。どのような評価がなされるかと関係なく、Q-ERペプチド、またはその類似体の使用は、ベータ細胞の不具合を有するヒトのベータ細胞の機能および/または対象のベータ細胞の機能障害を改善することができる。
【0058】
Q-ERペプチドの使用は、ベータ細胞の機能の改善を可能にするだけでなく、ベータ細胞の機能の低下および/または障害を予防することができる。したがって、糖尿病を予防し得る。好ましくは、ベータ細胞の機能障害を有するヒト対象の予防において、Q-ERペプチドは、1時間あたり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも10mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。必要であれば、Q-ERペプチドは、インスリンまたはインスリン類似体と一緒に投与されてもよい。したがって、ある実施形態では、Q-ERペプチド、またはその類似体は、ヒト患者においてベータ細胞の機能の維持を可能にする。別の実施形態では、Q-ERペプチド、またはその類似体の使用は、ヒト患者におけるベータ細胞の機能の低下および/または障害の予防を可能にする。
【0059】
別の実施形態では、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体は、腎機能障害を有するヒト対象の治療に使用するために提供される。さらなる実施形態では、腎機能障害は、急性腎障害(AKI)である。ある実施形態では、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体は、腎機能を改善するためのヒト対象の治療に使用するために提供される。腎機能は、たとえば血漿からのイオヘキソールの除去を評価することにより、糸球体濾過率(GFR)を測定することにより評価することができる。また、腎機能は、クレアチニンの血漿濃度を測定し、性別、年齢、人種などの患者特性を考慮して、そこからMDRD式または方程式とも呼ばれる推定GFR(eGFR)機能を算出することによって評価することもできる(腎疾患における食事療法の修正)。腎機能は、GFR測定(またはMDRDに基づくその推定)に基づき、RIFLE基準を適用することにより評価することができる。危険、損傷、不全、喪失、ESKDの段階のRIFLEスコアを有することは、腎臓損傷および/または腎機能障害の示唆であり得る。ヒトにおける腎機能の評価は、標準的な臨床診療である(たとえば、GFR測定、クレアチニン除去、および/またはeGFR/MDRDによる)。Q-ERペプチドを投与されない場合と比較した腎機能の改善には、RIFLE基準で評価した腎機能ステージをより軽度のステージに進歩させることが含まれ得る(たとえば、損傷を有する状態から損傷の危険がある状態、またはAKIがない状態へ進歩している患者)。また、腎機能の改善には、GFRまたはeGFRスコアにおける改善を有することが含まれる。どのような評価がなされるかと関係なく、Q-ERペプチド、またはその類似体の使用は、腎臓損傷を有するヒトの腎機能および/または免疫調節効果のない対象の腎機能障害を改善することができる。
【0060】
Q-ERペプチドの使用は、腎機能の改善を可能にするだけでなく、腎機能の低下および/または障害を予防することができる。したがって、AKIを予防し得る。好ましくは、腎機能障害を有するヒト対象の予防において、Q-ERペプチドは、1時間あたり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも10mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。したがって、ある実施形態では、Q-ERペプチド、またはその類似体は、ヒト患者において腎機能の維持を可能にする。別の実施形態では、Q-ERペプチド、またはその類似体の使用は、ヒト患者における腎機能の低下および/または障害の予防を可能にする。たとえば、AKIを有さない、または腎損傷(AKI等)を有する危険があるとして分類され得るヒト患者が、Q-ERペプチドによる治療を受けた場合に、そのような患者は、腎機能がより深刻な段階に進行する代わりに現状を維持し得る。したがって、たとえば(誘導性の)外傷のために腎損傷が発達する危険があるヒト患者は、Q-ERペプチド、またはその類似体による治療を受けた結果として、腎機能状態を維持することができる。
【0061】
別の実施形態では、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、ヒト対象における有害な体液貯留を減少させる。体液貯留または体液過剰は、ヒト対象において、体重増加および浮腫等を含む症状を引き起こし得る。体液貯留は、腎機能の低下および/または1型糖尿病もしくは末期の2型(前記対象により内因性Cペプチドが全くまたはほとんど産生されず、微小血管の流れが悪い場合)の結果であり得る。体液貯留は、毛細血管漏出の結果であり得る。したがって、Q-ERペプチド、およびその類似体の使用は、毛細血管の漏出に効果を及ぼし、血漿の漏出および血液から末梢組織および/または臓器への免疫細胞(白血球)の血管外漏出を減少させるかもしれない。最も好ましくは、浮腫および/または白血球血管外漏出は、Q-ERペプチドの使用により減少および/または回避される。それらは、患者に有害な響及ぼすため、有害な体液貯留とも言われる。体液貯留の原因が何であろうと、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、ヒト対象における体液貯留(白血球血管外漏出ありまたはなし)を改善することができ、それにより、体重増加および浮腫等の体液貯留に関連する症状を緩和し、利尿剤の使用を減らすことができる。好ましくは、体液貯留を改善するための(特により小さい)Q-ERペプチド(5~15アミノ酸)の使用において、Q-ERペプチドは、1時間当たり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも20mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。
【0062】
別の実施形態では、本発明に従ったQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、腎損傷を有する患者、またはベータ細胞障害を有する患者に限定されない。本発明に従ったQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用には、全身性炎症を有する危険があると考えられる、および/または抗炎症治療が必要であると予測されるヒト患者の治療が含まれる。そのようなヒト患者には、集中治療に入る予定である、または入ることが予想される患者が含まれる。したがって、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用には、手術等の誘導性外傷のための使用が含まれる。誘導性外傷には、ヒトの身体への任意の物理的損傷が含まれ、通常、ヒト対象の血液の喪失および/または組織の損傷が含まれ得る。誘導性外傷には、たとえば手術が含まれる。したがって、好ましい実施形態では、誘導性外傷は手術である。手術などの誘導性外傷の治療のためのQ-ERペプチドの使用は、手術前、手術中、および/または手術後であってもよい。Q-ERペプチド、またはその類似体の使用は、手術中であるのが好ましい。好ましくは、Q-ERペプチドは、1時間あたり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも20mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。
【0063】
別の、またはさらなる実施形態において、本発明に従って使用するための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、心不全を有するヒト対象における使用のためのものである。好ましくは、心不全を有するヒト対象における使用において、Q-ERペプチドは、1時間当たり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも20mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。
【0064】
本発明は、体液過剰の危険があると考えられる、または体液過剰で苦しんでいるヒト対象の治療における使用のためのQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用を含み、使用には、ヒト対象における体液貯留を修正することが含まれる。本発明に従ったERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、体液過剰の危険があると考えられる、および/または血行動態の治療が必要であると考えられるヒト患者の治療を含む。そのようなヒト患者には、集中治療に入る予定である、または入ることが予想される患者が含まれる。したがって、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用には、手術等の誘導性体液過剰の予防のための使用が含まれる。好ましくは、誘導性体液過剰の予防のための使用において、Q-ERペプチドは、1時間当たり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも20mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。別の実施形態では、本発明に従ったQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、腎臓損傷を有する患者および/または血行動態の治療を必要とする患者に限定されない。
【0065】
本発明は、対象のICU滞在期間を改善するための、さらには対象のICU滞在期間を短縮するための、ヒト患者の治療における使用のためのQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用を含む。これを達成し得るひとつの方法は、ヒト対象における体液貯留を修正することによるものである。本発明に従ったQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、血管拡張剤もしくは強心剤での治療が危険であると考えられるヒト患者、および/または輸液療法での血管動態治療が必要であると考えられるヒト患者の治療を含む。集中治療に入っている、入る予定である、または入ることが予想され、ICUでの滞在期間を短縮することが望まれる患者が含まれる。したがって、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、有害な血管拡張剤もしくは強心剤、および/または輸液療法での治療からの危険があると考えられるヒト患者の治療のための使用を含み、たとえば実施例に示されるように提供される。好ましくは、危険があると考えられる患者における、対象のICUでの滞在期間を短縮するための使用において、Q-ERペプチドは、1時間当たり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも20mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。
【0066】
別の実施形態では、本発明に従ったQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、腎臓損傷、ベータ細胞障害を有する患者、および/または血管動態治療を必要とする患者に限定されない。本発明に従ったQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、血管拡張剤もしくは強心剤での治療が危険であると考えられるヒト患者、および/または輸液療法での血管動態治療が必要であると考えられるヒト患者の治療を含む。集中治療または病院に入院している、入院する予定である、または入院することが予想され、病院での滞在期間を短縮することが望まれる患者が含まれる。したがって、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、有害な血管拡張剤もしくは強心剤、および/または輸液療法での治療からの危険があると考えられるヒト患者の治療のための使用を含む。好ましくは、危険があると考えられる患者における、対象のICUでの滞在期間を短縮するための使用において、Q-ERペプチドは、1時間当たり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも20mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。
【0067】
好ましくは、本発明に従ったQ-ERペプチド、またはその機能的類似体の使用は、上述したように、ペプチドの血流への投与に関与する。血流への投与には、たとえば、静脈内投与または動脈内投与が含まれることが理解される。Q-ERペプチド、またはその類似体の持続的な供給は、たとえば点滴を介するのが好ましく、Q-ERペプチド、またはその類似体は、生理的に許容される溶液に含まれる。適切な生理的に許容される溶液は、生理食塩溶液(たとえば0.9%NaCl)または注射および/または点滴のための任意の他の適切な溶液を含み得る。そのような生理的溶液には、ヒト対象にさらに有益であり得るさらなる化合物(たとえばグルコース)を含んでもよく、また、他の薬剤化合物(たとえば血管拡張剤)を含んでもよい。
【0068】
好ましくは、Q-ERペプチドは、1時間当たり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/hr)の割合で投与される。好ましくは、投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、または最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/hrである。好ましくは、Q-ERペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、Q-ERペプチドの投与は、少なくとも20mg/kg/hrの割合で、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、たとえば少なくとも2.5時間投与される。好ましくは、投与は手術中に行われる。さらに好ましくは、投与は、手術の全期間中に行われる。
【0069】
別の実施形態では、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体は、上述したような本発明に従った任意の使用のために提供され、ヒト患者は集中治療に入っており、使用はヒト対象の測定パラメータを改善し、ヒト対象のパラメータは集中治療に残るか否かを評価するために測定される。上に示したように、ヒト患者が集中治療中である場合に評価されるパラメータは、腎機能および体液貯留に関するパラメータを含み、血行動態の安定性の改善を可能にする。いずれにせよ、Q-ERペプチド、またはその類似体の使用は、それらのパラメータを改善し、それにより集中治療室での滞在期間を減少させる。Q-ERペプチド、またはその類似体は、集中治療での滞在期間を減少させるだけでなく、Q-ERペプチド、またはその類似体の使用の効果は、入院期間を減少させ、再入院も減少させる。
【0070】
(さらなる実施形態)
さらなる実施形態1:ヒト対象の治療における使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって、前記使用は、ヒト対象におけるベータ細胞の機能を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0071】
さらなる実施形態2:ベータ細胞の障害の危険があると考えられる、またはベータ細胞の障害で苦しんでいるヒト対象の治療における使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって、前記使用は、前記ヒト対象におけるプレプロインスリンの濃度を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0072】
さらなる実施形態3:腎機能障害を有するヒト対象の治療における使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって前記使用は、前記ヒト対象における体液貯留を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0073】
さらなる実施形態4:ヒト対象の治療における使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって、前記使用は、前記ヒト対象の炎症を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0074】
さらなる実施形態5:ヒト対象の治療における使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって、前記使用は、前記ヒト対象の体液貯留を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0075】
さらなる実施形態6:血管拡張剤/強心剤の過剰使用の危険があると考えられる、または血管拡張剤/強心剤の過剰使用で苦しんでいるヒト対象の治療において使用するための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって、前記使用は、前記ヒトの体液貯留を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0076】
さらなる実施形態7:ヒト対象の治療における使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって、前記ヒト対象は、誘導性外傷を受けており、前記使用は、ヒト対象の体液貯留を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0077】
さらなる実施形態8:体液過剰の危険があると考えられる、または体液過剰で苦しんでいるヒト対象の治療における使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって、前記使用は、前記ヒト対象の体液貯留を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0078】
さらなる実施形態9:腎機能障害を有するヒト対象の治療における使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体であって、前記使用は、前記ヒト対象の体液貯留を修正することを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0079】
さらなる実施形態10:前記使用は、前記ヒト対象の体液貯留を減少させる、さらなる実施形態1~9のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0080】
さらなる実施形態11:前記使用は、血管拡張剤の使用の減少を含む、さらなる実施形態1~10のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0081】
さらなる実施形態12:前記使用は、水分摂取の減少を含む、さらなる実施形態1~11のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0082】
さらなる実施形態13:血管拡張剤の使用の減少は、血管拡張剤の使用期間の減少を含む、さらなる実施形態7に記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0083】
さらなる実施形態14:前記ヒト対象は、誘導性外傷を受けている、さらなる実施形態6~9のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0084】
さらなる実施形態15:前記使用は、前記ヒト対象の腎機能を改善する、さらなる実施形態8~12のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0085】
さらなる実施形態16:改善された前記腎機能は、GFR率の改善をもたらす、さらなる実施形態11に記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0086】
さらなる実施形態17:前記ヒト対象は、腎機能障害を有し、前記腎機能障害はAKIである、さらなる実施形態6~12のいずれか1つに記載の使用のための、AQVGペプチド、またはその機能的類似体。
【0087】
さらなる実施形態18:前記使用は、血液から末梢組織および/または臓器への、血漿の漏出もしくは血液の血管外漏出を減少させる、さらなる実施形態1~13のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0088】
さらなる実施形態19:前記使用は、血液から末梢組織および/または臓器への血漿の漏出を減少させる、さらなる実施形態1~13のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0089】
さらなる実施形態20:前記使用は、血液から末梢組織および/または臓器への血液の血管外漏出を減少させる、さらなる実施形態1~13のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0090】
さらなる実施形態21:前記使用は、心不全で苦しんでいる、または心不全の危険があるヒト対象においてなされる、さらなる実施形態1~20のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0091】
さらなる実施形態22:前記使用は、浮腫の危険があるヒト対象においてなされる、さらなる実施形態1~21のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0092】
さらなる実施形態23:前記ヒト対象は、誘導性外傷を受けたことがあり、前記誘導性外傷は手術である、さらなる実施形態7および14のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0093】
さらなる実施形態24:前記手術は、心肺バイパスを必要とする、さらなる実施形態23に記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0094】
さらなる実施形態25:前記ペプチドは、血流に投与される、さらなる実施形態1~24のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0095】
さらなる実施形態26:前記ペプチドは、少なくとも10mg/kg体重/時の割合で投与される、さらなる実施形態25に記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0096】
さらなる実施形態27:前記ペプチドは、少なくとも1時間投与される、さらなる実施形態25またはさらなる実施形態26に記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0097】
さらなる実施形態28:前記ヒト対象は集中治療に入っており、前記使用は前記ヒト対象の測定パラメータを改善し、前記ヒト対象の前記パラメータは集中治療に残ることを評価するために決定される、さらなる実施形態1~27のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0098】
さらなる実施形態29:パラメータの前記改善は集中治療での滞在期間の減少をもたらす、さらなる実施形態27に記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0099】
さらなる実施形態30:前記使用は血管収縮を含む、さらなる実施形態1~29のいずれか1つに記載の使用のための、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0100】
さらなる実施形態31:Q-ERペプチド、またはその機能的類似体を、血行動態の安定性を維持することを必要とするヒト対象に投与することを含む、治療方法。
【0101】
さらなる実施形態32:Q-ERペプチド、またはその機能的類似体を、血行動態の安定性を改善することを必要とするヒト対象に投与することを含む、治療方法。
【0102】
さらなる実施形態33:Q-ERペプチド、またはその機能的類似体を、腎機能障害を有するヒト対象に投与することを含む治療方法であって、Q-ERペプチドを投与する治療が、前記ヒト対象の血行動態の安定性を維持または改善することを含む、方法。
【0103】
さらなる実施形態34:グルタミン(Q)、およびエラスチン受容体(ER)結合アミノ酸配列モチーフを有し、また、オートファジー阻害アミノ酸であるアラニン(1文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)、およびアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸を少なくとも50%含む、合成ペプチドを含む、Q-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0104】
さらなる実施形態35:AQ、LQ、GQ、VQ、AQG、LQG、配列番号2(AQGV)および配列番号1(LQGV)の群から選択されるアミノ酸配列を少なくとも1つ含む、さらなる実施形態34に記載のQ-ERペプチド、またはその機能的類似体。
【0105】
さらなる実施形態36:ヘプタ、オクタ、ノナ、デカ、ウンデカ、またはドデカペプチドからなる、さらなる実施形態34または35に記載のQ-ERペプチド。
【0106】
さらなる実施形態37:グルタミンを少なくとも2つ有する、さらなる実施形態34~36のいずれか1つに記載のQ-ERペプチド。
【0107】
さらなる実施形態38:配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)および配列番号8(LQGVLPG)の群から選択される、さらなる実施形態34~36のいずれか1つに記載のQ-ERペプチド。
【0108】
さらなる実施形態39:配列番号9(AQGVAPGQ)、配列番号10(LQGVAPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)および配列番号12(LQGVLPGQ)の群から選択される、さらなる実施形態34~36のいずれか1つに記載のQ-ERペプチド。
【0109】
さらなる実施形態40:配列番号15(AQGQAPGQ)、配列番号16(LQGQAPGQ)、配列番号17(AQGQLPGQ)および配列番号18(LQGQLPGQ)の群から選択される、さらなる実施形態34~36のいずれか1つに記載のQ-ERペプチド。
【0110】
さらなる実施形態41:さらなる実施形態34~40のいずれか1つに記載のQ-ERペプチドを含む、医薬組成物。
【0111】
さらなる実施形態42:インスリンをさらに含む、さらなる実施形態41に記載の医薬組成物。
【0112】
さらなる実施形態43:膵臓のベータ細胞の機能障害の治療のための、さらなる実施形態3~40のいずれか1つに記載のQ-ERペプチド、またはさらなる実施形態41もしくは42に記載の医薬組成物。
【0113】
本明細書で定義されたQ-ERペプチドを標的化するための適切な受容体は、ヒトエラスチン結合タンパク質(EPB)であり、これは、GLB1遺伝子(Uniprot識別子P16278)によりコードされる、ベータガラクトシダーゼから得られる選択的スプライシングガラクトシダーゼとしてヒトエラスチン受容体受容体複合体に見られ得る。遺伝子産物のアイソフォーム1はベータガラクトシダーゼ(ベータ-Gal)に関連し、アイソフォーム2は選択的スプライシングガラクトシダーゼ(EPBまたはS-Gal)に関連する。ベータ-Gal(アイソフォーム1)は、ガングリオシド、糖タンパク質、およびグリコサミノグリカンから、ベータ結合した末端のガラクトシル残基を切断し、主にリソソームに位置する。
【0114】
アイソフォーム2(EPBまたはS-Gal)は、ベータグルコシダーゼ触媒活性がほとんどないか、または全くないが、細胞外弾性線維の形成(弾性繊維形成)および結合組織の発達において機能的な役割がある。S-Galは、線維芽細胞、平滑筋細胞、軟骨芽細胞、白血球、およびある種の癌細胞上に発現する非インテグリン細胞表面受容体の主要構成要素である、エラスチン受容体複合体(ERC)中のエラスチン結合タンパク質(EBP)と同じであると考えられている。エラスチン産生細胞において、ERCは、トロポエラスチンと細胞内で連携し、トロポエラスチンの分泌およびその弾性線維への会合を促進するリサイクル分子シャペロンとして機能する。
【0115】
エラスチン受容体は、エラスチン結合タンパク質(EPB)またはS-Galとして同定されたヒトベータガラクトシダーゼの選択的スプライスバリアントを含む。ヒトにおいて、それは、エラスチンおよびフィブリリン1等の細胞外基質タンパク質(のタンパク質分解断片)中のヘキサペプチドx-Gly-x-x-Pro-Gly(xGxxPG)モチーフに結合する。最もよく知られた代表的なモチーフは、(トロポ)エラスチン中に見られる配列番号19(VGVAPG)である(Blanchevoye,C et al.(2013) J Biol Chem288:1317-28)が、シグネチャー配列xGxxPG、またはいくつかの例ではxxGxPGに一致する、一般的にエラスチンペプチドと呼ばれる、多くの他の生体活性のあるペプチドが、アゴニストとして報告されている。機能的に同等な生体活性のための最小の本質的な配列は、GxxPであり、PのペプチドはVIII型ベータターンを採用することができる。ラクトース、および受容体の結合部位に対応するV14ペプチド(配列番号23(VVGSPSAQDEASPL))は、エラスチンペプチドの結合に拮抗させるために使用される。エラスチン受容体は、エラスチン結合タンパク質(EBP)、ノイラミニダーゼ(Neu-1)、および保護タンパク質カテプシンA(PPCA)と細胞表面に複合体を形成する。リガンドと結合した後、複合体は細胞内のエンドソーム区画に内在化し、多くの細胞応答を引き起こす。マウスでは、エラスチンペプチドは、Neu-1を介してアテローム性動脈硬化を促進し、Neu-1とインスリン受容体の間の相互作用によりIRを制御する。さらにマウスでは、PPCAは弾性線維の形成および活性化障害により高血圧をもたらすエンドセリン-1の不活性化に必要である。
【0116】
最近の研究は、ERC複合体のNeu1コンポーネントが細胞の活性化の引き金となることを示している。ERCは、さまざまな型の白血球、ならびに血管平滑筋細胞および線維芽細胞等の間葉系細胞を含む多くの細胞型に存在する。ヒトエラスチンでは共通反復配列である配列番号19(VGVAPG)のヘキサペプチドは、この受容体のリガンドとして最もよく知られているが、Cペプチド、ガレクチン-3、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)のベータ2ループも、現在本明細書で、ERCに結合することができると認識されている。配列番号19(VGVAPG)に加え、モチーフGxxPG(xは一般的に疎水性アミノ酸)に従うペプチドは、in vitroで単球への走化性を示した(Bisaccia F, et al., Int. J. Pept. Protein Res. 1994;44:332-341, Castiglione Morelli MA, et al., J. Pept. Res. 1997;49:492-499)。
【0117】
他の有用なアゴニストは、たとえば、ヒトERCのエラスチン結合部位の相同モデルを用いてin silicoで見出し得る。Blanchevoyらは、最近、このタンパク質の相同モデルを確立し、このモデルにおいて配列番号19(VGVAPG)とのドッキングを示した(Blanchevoye et al, doi: 10.1074/jbc.M112.419929 jbc.M112.419929)。結合部位の関連原子座標等のその内容は、参照により本明細書に援用される。
【0118】
本明細書において、タンパク質またはペプチドの組成、構造および機能を説明する際に、アミノ酸に言及する。本明細書において、アミノ酸残基を、以下の略号を使用して表現する。また、明白に示さない限り、ペプチドおよびタンパク質のアミノ酸配列は、N末端からC末端、左末端から右末端に特定し、N末端は最初の残基として特定される。Ala:アラニン残基、Asp:アスパラギン酸残基、Glu:グルタミン酸残基、Phe:フェニルアラニン残基、Gly:グリシン残基、His:ヒスチジン残基、Ile:イソロイシン残基、Lys:リジン残基、Leu:ロイシン残基、Met:メチオニン残基、Asn:アスパラギン残基、Pro:プロリン残基、Gln:グルタミン残基、Arg:アルギニン残基、Ser:セリン残基、Thr:スレオニン残基、Val:バリン残基、Trp:トリプトファン残基、Tyr:チロシン残基、Cys:システイン残基。また、アミノ酸は、慣習的な1文字コードの略号によっても言及される。A=Ala、T=Thr、V=Val、C=Cys、L=Leu、Y=Tyr、I=Ile、N=Asn、P=Pro、Q=Gln、F=Phe、D=Asp、W=Trp、E=Glu、M=Met、K=Lys、G=Gly、R=Arg、S=Ser、およびH=His。
【0119】
本明細書では、ペプチドは、天然の生物学的な、または人工的に製造された(合成)、ペプチド(アミド)結合により連結されたアミノ酸モノマーの短鎖を意味するものとする。本明細書では、グルタミンペプチドは、天然の生物学的な、または人工的に製造された(合成)、ペプチド(アミド)結合により連結されたアミノ酸モノマーの短鎖を意味し、前記アミノ酸モノマーの1つはグルタミンである。
【0120】
化学的に合成されたペプチドは、一般的にフリーのNおよびC末端を有する。N末端のアセチル化およびC末端のアミド化は、ペプチド全体の電荷を減少させ、したがって
全体的な溶解度は減少するかもしれない。しかし、末端のアセチル化/アミド化により、天然のタンパク質により近い模倣物が生成されるため、ペプチドの安定性も増大し得る。これらの修正により、ペプチドの生体活性が増大し、それもまた本明細書で提供される。合成GPドメインまたはxGxxPG型ペプチドは、古典的な固相合成で合成されることが多い。
【0121】
(ペプチド合成)
合成PGドメインもしくはxGxxPG型ペプチド、またはそれらのレトロインバーソバリアントは、古典的な固相合成により合成される。ペプチドの純度は、高速液体クロマトグラフィーにより、および高速原子衝撃質量分析により確認される。伝統的に、ペプチドは2と50の間のアミノ酸からなる分子として定義され、一方タンパク質は50以上のアミノ酸でできている。さらに、ペプチドは、二次、三次、および四次構造として知られる複雑な構造をとることができるタンパク質よりも構造が明確でないことが多い。また、ペプチドとタンパク質の間で機能的な区別もなされ得る。実は、本願と同様にほとんどの研究者は、ペプチド、または50アミノ酸までの相対的に短いアミノ酸鎖(オリゴペプチドともいう)に特に言及するためにペプチドという用語を使用し、ポリペプチドという用語はタンパク質、または50以上のアミノ酸鎖に言及するために使用される。
【0122】
(走化性活性の測定)
ヒトU973単球細胞は、American Type Culture Collectionから購入した(ATCCカタログ番号CRL-1593.2、マナサス、Va)。細胞は、10%子牛胎児血清および抗生物質を添加したRPMI1640培地を含むT-75フラスコで、浮遊培養で維持し、培養物は3~5日毎に分割される。走化性アッセイに使用する3日前に、記載されているように、1mmol/Lジブチリル環状アデノシン一リン酸(dbcAMP;Sigma Chemical Co)への曝露によりU937細胞を刺激して、マクロファージ系譜に沿って分化させる。細胞を3回洗浄し、培養培地を除去し、その後、2.5×106細胞/mLの最終濃度でアッセイチャンバーにプレーティングするために、走化性培地(1%ラクトアルブミン加水分解物を添加したダルベッコ改変必須培地)に再懸濁する。48穴のマイクロケモタクシスチャンバー(microchemotaxis chamber)(Neuro Probe, Cabin John, Md)で走化性アッセイを行った。チャンバーの下部ウェルに25mLの化学刺激物(または培地のみ)を3反復充填する。孔径5mmのコーティングされていない10mmの厚さのポリビニルピロリドンを含まないポリカーボネートフィルターをサンプルの上に配置する(Neuro Probe)。シリコンガスケットとチャンバーの上部ピースを合わせ、50mLの単球細胞懸濁液を上部ウェルに入れる。チャンバーを、加湿した5%CO2雰囲気中で、37℃で3時間インキュベートし、フィルターの上面から非遊走細胞を穏やかに除去する。フィルターをメタノールベースの固定剤に30秒間浸し、修正ライト-ギムザ法(ヘマ3染色セットのプロトコール、Biochemical Sciences社、スウェデンズボロ、NJ)で染色し、その後スライドガラスにマウントする。フィルターを通って完全に遊走した細胞を光学顕微鏡下でカウントし、1ウェルあたり3つのランダムな高倍率視野(HPF;元の倍率×400)でカウントする。
【0123】
他で記載したように、ヒト単球は、健康なボランティアの新鮮な血液から、フィコール/Pエラスチン受容体複合体(ERC)oll勾配遠心分離を用いて単離される。単離後、細胞は、0.5%ヒト血清を添加したRPMI-1640培地中で16時間培養され、静止状態になる。細胞の純度は、フローサイトメトリー解析による測定で>95%である。48穴のマイクロケモタクシスチャンバー(microchemotaxis chamber)(Neuro Probe, Cabin John, Md)で、血清を含まない培地で走化性アッセイを行った。チャンバーの上部および下部のウェルは、ポリビニルピロリドンを含まないポリカーボネート膜(孔径5μm、Costar)により分離されている。5×105/mLの密度の単離された新鮮な単球を、組換えCペプチド(Sigma)とともに2.5時間インキュベートし、フィルターの下面に遊走した細胞を染色し、光学顕微鏡下でカウントする。最大走化性活性を0.1mmol/LのN-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(f-MLF;Sigma Chemical社)で測定し、チェッカーボード解析は、走化性と化学運動性を区別するために使用される。
【0124】
配列番号12(LQGVLPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号24(LQGVQPGQ)または配列番号25(AQGVQPGQ)で走化性を試験する。ラクトースへの細胞の暴露は、67-kDのERCを特異的に乖離させるために使用される。ラクトースの対照にはグルコース、フルクトース、マンノースが含まれ、いずれも67-kDのERCに影響しない。それぞれの場合において、単球を適切な濃度の配列番号12(LQGVLPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号24(LQGVQPGQ)または配列番号25(AQGVQPGQ)(10-9~10-5mol/L)に30分間暴露し、その後走化性アッセイを開始する。配列番号12(LQGVLPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号24(LQGVQPGQ)または配列番号25(AQGVQPGQ)は、濃度依存的に走化性を誘導し、0.1mmol/Lで良好な活性を示し、これは同濃度のf-MLFよりかなり強いと考えられる。アッセイチャンバーの上部ウェルの単球は、様々な濃度の配列番号12(LQGVLPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号24(LQGVQPGQ)または配列番号25(AQGVQPGQ)に暴露30分間暴露され、その後下部ウェルの配列番号19(VGVAPG)(0.1nmol/L~10nmol/L)により刺激される。配列番号12(LQGVLPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号24(LQGVQPGQ)または配列番号25(AQGVQPGQ)とともにされる単球細胞のプレインキュベーションは、f-MLFに対する走化性反応を変化させない。配列番号19(VGVAPG)は、濃度依存的に単球の遊走を刺激する。配列番号12(LQGVLPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号24(LQGVQPGQ)、または配列番号25(AQGVQPGQ)引き出した走化性活性は、細胞のエラスチン受容体に結合するヒトエラスチンに見られる反復ペプチドであるVal-Gly-Val-Arg-Pro-Gly(配列番号19(VGVAPG))の競合により除去される。配列番号19(VGVAPG)、または、配列番号12(LQGVLPGQ)、配列番号11(AQGVLPGQ)、配列番号24(LQGVQPGQ)、もしくは配列番号25(AQGVQPGQ)の両方に応答する単球の走化性は、67-kDのERCを特異的に乖離させるガラクトシュガーであるラクトースの存在下で消失するが、グルコース、フルクトース、またはマンノースには影響されない。
【0125】
また、走化性は、改良Boydenチャンバーでの二重微小孔膜系により試験される。180μlのペプチドまたはその断片を様々な濃度で含む下部区画は、200μlの細胞懸濁液(内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、線維芽細胞のケラチノサイト、白血球等、培地1mlあたり5×104細胞)から、10μmポリカーボネート膜(Millipore、ベッドフォード、MA)により分離されている。膜は、細胞の結合を促進するために、ウシI型コラーゲン(1mlあたり25マイクロgのリン酸緩衝生理食塩水)(Chemicon International、テメキュラ、CA)に室温で24時間予浸される。チャンバーは、5%のCO2の安定した空気中で、37℃で18時間インキュベートされる。その後、チャンバーは分解され、膜の対をヘマトキシリンで染色する。顕微鏡下で、ランダムかつ重ならない、たとえば5つの視野の細胞数をカウントする。すべての実験で、ベースライン対照として、下部チャンバーに培地のみを入れてもよい。細胞遊走の方向性を確認するために、上部および下部区画の間の濃度勾配を、様々な量のエラスチンを細胞懸濁液に加えることにより消失させてもよい。走化性は上述のように試験される。また、走化性は、内皮細胞の遊走および増殖を測定するex vivoでの大動脈リングアッセイで調べることもできる。
【0126】
組換えエラスチン結合タンパク質は、以下のように製造される。β-ガラクトシダーゼ遺伝子の一次転写産物が非連続的な選択的スプライシングにより、2つのmRNAを生成し、一方はリソソーム酵素の前駆体(β-gal)をコードし、他方は、リソソームに標的化されない、酵素的に不活性なタンパク質(S-galまたはエラスチン結合タンパク質)をコードすることが知られている。S-galをコードするmRNAでは、エクソン3、4、および6は切り出され、エクソン5がインフレームでシフトし、したがってS-galにおいて、活性型β-galのエクソン5によりコードされる対応部位とは異なる、エラスチンペプチド結合ドメインを含む32アミノ酸配列をコードする独自の領域を形成する。S-galのcDNAクローンは、通常の手順で構築される。Morreauおよび同僚により説明された配列を反映する選択的スプライシングによるcDNAクローン全長(1986bp)を構築するために、ポリA+mRNAは、PharmaciaのQuick Prep mRNA purification kitを用いて、培養された通常のヒト皮膚線維芽細胞から単離される。このmRNA(500ng)は、ランダムヘキサマーおよびsuperscript reverse transcriptase(Life Technologies社)を用いて逆転写される。cDNAの重複断片を単離するために、2つのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が行われる。cDNAの5’側部分(357bp)は、5’-配列番号54(GGTGGTCATGCCGGGGTTCCT)-3’および5’-配列番号55(ATGTTGCTGCCTGCACTGTT)-3’のプライマーを用いて増幅される。5’-配列番号56(CCATCCAGACATTACCTGGC)-3’および5’-配列番号57(CCCTCACACATTCCAGGTGGT)-3’のプライマーは、cDNAの3’側断片(1598bp)を増幅するために使用される。反応は、55℃のアニーリング温度で、Perkin-Elmerのサーマルサイクラーで行う。断片をゲル精製し、pBluescript SK+のEcoRVサイトにライゲーションする。それぞれの断片は、それぞれ3’端および5’端に115bpの重複配列を含む。さらに、5’側断片の5’端に位置する最初の27bp、および3’側断片の3’端の119bpの欠損が確認される(最初のPCR反応におけるプライマーの位置によるものである)。全長クローンの最終的な組み立てでは、S-galの2つの部分の間の重複領域に見られる通常のPvuIIサイトを用いることにより、重複部分が除去される。制限酵素KpnIおよびPvuIIでの5’側クローンの完全な二重消化により、S-galの5’側部分(すなわち、5’からPvuIIサイトまで)を有する316bpの断片ができ、これにはその5’端にさらにベクターの57bpが含まれる。KpnI消化により、3’オーバーハングができ、これはPfu DNAポリメラーゼにより平滑化される。316bpの5’側断片、およびPvuII消化した3’側クローンは、両方ともアガロースゲル精製され、遺伝子洗浄され、ライゲーションされる。ライゲーション産物は、細菌細胞に形質転換され、LB-AMPプレート上で成長する。XholIおよびPvuIIでの制限酵素消化により、新しいコンストラクトでのS-galの短い5’側部分の向きが正しいことを確認する。In vitroでの転写/翻訳は、Promeganにより提供されているプロトコールにしたがって行う。pGEM-3Z中のS-galのcDNA(5μg)を直鎖化(XbaIで消化)し、In vitro転写を行った。これに続き、ヌクレアーゼ処理したウサギ網状赤血球ライセート中の2μlのRNA(ミクロソーム膜およびプロテアーゼ阻害剤を含まない)を用い、0.8mCi/ml[35S]メチオニン([35S]Met)の存在下でIn vitro翻訳を行う。翻訳ミックス(mRNAを含まない)は、対照として使用した。SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により情勢を直接解析し、続いてオートラジオグラフィーで、[35S]Metでラベルされた反応産物の存在を検出し、分子サイズを比較する。反応産物は、β-gal、S-Gal、およびエラスチン結合タンパク質を識別する抗体での免疫沈降、その後エラスチンアフィニティーカラムを用いてさらに特性評価される。
【0127】
表1に、本明細書での有用な合成Q-ERペプチドを配列識別子とともに記載する。特に、ヒトエラスチン結合モチーフGxxPGを少なくとも1つ有し、かつアミノ酸Qを少なくとも1つ有する表1のペプチドは、急性炎症症状を有することが疑われる、もしくは有するヒトの治療における使用のため、または1型糖尿病もしくは末期の2型に見られるベータ細胞の機能障害、および腎機能障害、体液貯留、および/または白血球および血漿の血管外漏出等の血行動態症状等における微小血管合併症を有することが疑われる、もしくは有するヒトの治療における使用のために、本明細書で提供される。
【0128】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0129】
本明細書で合成された有用な核酸を表2に示す。
【表2】
【0130】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置のアミノ酸がGQである好ましいQ-ERペプチド
【表3】
【0131】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置のアミノ酸がVQである好ましいQ-ERペプチド
【表4】
【0132】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置のアミノ酸がVAである好ましいQ-ERペプチド
【表5】
【0133】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置のアミノ酸がVLである好ましいQ-ERペプチド
【表6】
【0134】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置のアミノ酸がQAである好ましいQ-ERペプチド
【表7】
【0135】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置のアミノ酸がAQである好ましいQ-ERペプチド
【表8】
【0136】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置のアミノ酸がQLである好ましいQ-ERペプチド
【表9】
【0137】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、xxの位置のアミノ酸がLQである好ましいQ-ERペプチド
【表10】
【0138】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、かつ配列番号1(LQGV)のペプチド配列を有する好ましいQ-ERペプチド
【表11】
【0139】
GxxPGエラスチン受容体結合モチーフを有し、かつ配列番号2(AQGV)のペプチド配列を有する好ましいQ-ERペプチド
【表12】
【0140】
また、本発明は、表1のQ-ERペプチドのリストの1つのペプチドが少なくとも1回反復した合成ペプチドを提供し、前記反復は任意にリンカーにより分離しており、そのようなリンカーは、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、またはグルタミンの群から選択される1以上のアミノ酸等の1以上のアミノ酸を含み得る。
【0141】
また、本発明は、表1に上述されたペプチドにみられるペンタペプチドモチーフGxxPGを有する2つ、または3つのペプチドが少なくとも1回含まれる合成ペプチドを提供し、PGドメインの反復を有する前記ペプチドは、任意にリンカーにより分離しており、そのようなリンカーは、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、またはグルタミンの群から選択される1以上のアミノ酸等の1以上のアミノ酸を含み得る。
【0142】
(医薬Q-ERペプチド組成物)
(実施例1)
配列番号11(AQGVLPGQ)のペプチド
10mlの組成物を調製するために、
配列番号11(AQGVLPGQ)のペプチド500mg、
M-クレゾール25mg、
グリセロール160mg、
水、および10%塩酸または10%水酸化ナトリウムのいずれかを十分に混合して、10mlの容量で、7.0~7.8の最終pHの組成物を作製する。任意に、上記組成物を耐酸カプセルに充填する。
【0143】
(実施例2)
配列番号12(LQGVLPGQ)のペプチド
10mlの組成物を調製するために、
配列番号12(LQGVLPGQ)のペプチド500mg、
M-クレゾール25mg、
グリセロール160mg、
水、および10%塩酸または10%水酸化ナトリウムのいずれかを十分に混合して、10mlの容量で、7.0~7.8の最終pHの組成物を作製する。任意に、上記組成物を耐酸カプセルに充填する。
【0144】
(実施例3)
配列番号47(AQGLQPGQ)のペプチド
10mlの組成物を調製するために、
配列番号47(AQGLQPGQ)のペプチド500mg、
M-クレゾール25mg、
グリセロール160mg、
水、および10%塩酸または10%水酸化ナトリウムのいずれかを十分に混合して、10mlの容量で、7.0~7.8の最終pHの組成物を作製する。任意に、上記組成物を耐酸カプセルに充填する。
【0145】
(実施例4)
配列番号40(LQGLQPGQ)のペプチド
10mlの組成物を調製するために、
配列番号40(LQGLQPGQ)のペプチド500mg、
M-クレゾール25mg、
グリセロール160mg、
水、および10%塩酸または10%水酸化ナトリウムのいずれかを十分に混合して、10mlの容量で、7.0~7.8の最終pHの組成物を作製する。任意に、上記組成物を耐酸カプセルに充填する。
【0146】
(実施例5)
配列番号11(AQGVLPGQ)のペプチドおよびインスリン
10mlの組成物を調製するために、
ヒトインスリン(28U/mg)1000U、
配列番号11(AQGVLPGQ)のペプチド500mg、
M-クレゾール25mg、
グリセロール160mg、
水、および10%塩酸または10%水酸化ナトリウムのいずれかを十分に混合して、10mlの容量で、7.0~7.8の最終pHの組成物を作製する。
【0147】
(実施例6)
配列番号12(LQGVLPGQ)のペプチドおよびインスリン
10mlの組成物を調製するために、
ヒトインスリン(28U/mg)1000U、
配列番号12(LQGVLPGQ)のペプチド500mg、
M-クレゾール25mg、
グリセロール160mg、
水、および10%塩酸または10%水酸化ナトリウムのいずれかを十分に混合して、10mlの容量で、7.0~7.8の最終pHの組成物を作製する。
【0148】
(実施例7)
配列番号47(AQGLQPGQ)のペプチドおよびインスリン
10mlの組成物を調製するために、
ヒトインスリン(28U/mg)1000U、
配列番号47(AQGLQPGQ)のペプチド500mg、
M-クレゾール25mg、
グリセロール160mg、
水、および10%塩酸または10%水酸化ナトリウムのいずれかを十分に混合して、10mlの容量で、7.0~7.8の最終pHの組成物を作製する。
【0149】
(実施例8)
配列番号40(LQGLQPGQ)のペプチドおよびインスリン
10mlの組成物を調製するために、
ヒトインスリン(28U/mg)1000U、
配列番号40(LQGLQPGQ)のペプチド500mg、
M-クレゾール25mg、
グリセロール160mg、
水、および10%塩酸または10%水酸化ナトリウムのいずれかを十分に混合して、10mlの容量で、7.0~7.8の最終pHの組成物を作製する。
【0150】
(実施例9)
配列番号5(AQGVAPG)のペプチド
10mlの組成物を調製するために、
配列番号5(AQGVAPG)のペプチド40mgと、
PBSまたは0.9%NaClを十分に混合して、10mlの容量の組成物を作製する。
【0151】
(実施例10)
配列番号6(LQGVAPG)のペプチド
10mlの組成物を調製するために、
配列番号6(LQGVAPG)のペプチド40mgと、
PBSまたは0.9%NaClを十分に混合して、10mlの容量の組成物を作製する。
【0152】
(実施例11)
配列番号7(AQGVLPG)のペプチド
10mlの組成物を調製するために、
配列番号7(AQGVLPG)のペプチド40mgと、
PBSまたは0.9%NaClを十分に混合して、10mlの容量の組成物を作製する。
【0153】
(実施例12)
配列番号8(LQGVLPG)のペプチド
10mlの組成物を調製するために、
配列番号8(LQGVLPG)のペプチド40mgと、
PBSまたは0.9%NaClを十分に混合して、10mlの容量の組成物を作製する。
【0154】
(実施例13)
選択されたアミノ酸によるオートファジーの阻害
オートファジーは、オートファゴソームと呼ばれる二重膜小胞を介して細胞内および細胞質の余分な物質をリソソームに送達する分解経路である。細胞質の成分は、中身を分解するリソソームとその後融合するオートファゴソーム中に隔離される。細胞外の物質は、中身を分解するリソソームとその後再度融合するエンドサイトーシスまたはファゴサイトーシスにより捕捉される。オートファジーは、細胞内代謝およびエネルギー平衡を含む細胞機能の多くの側面と関わる重要な機構であり、オートファジーの変化は、ヒトの様々な病理プロセスと関連がある。オートファジーは、細胞がオートリソソームで細胞内成分を除去および分解する自然の機構である。オートファジーは多くの身体および病理プロセスと関連があるため、人気のある研究分野である。このように、細胞は常にタンパク質を代謝回転させ、ほとんどのアミノ酸を時間と共にリサイクルしている。恒常性は、必須アミノ酸と非必須アミノ酸の交換、および酸化したアミノ酸からアミノ酸生合成へのアミノ基の移動を通じて達成される。この恒常性状態は、活性型mTORC1複合体により維持される。アミノ酸枯渇下で、mTORC1は不活性化される。
【0155】
本発明は、タンパク質合成(mTORキナーゼ)またはタンパク質分解(オートファジー)を他よりも多くの制御するいくつかのアミノ酸を提供する。ラパマイシン複合体I(mTORC1)の機械的標的は、細胞および臓器の成長の中心的な調節因子であり、この経路はヒトの多くの疾患の病理に関与している。mTORC1は、その活性化場所であるリソソーム表面にmTOR1を駆動するアミノ酸等の栄養物の利用能に応じて成長を促進する。アミノ酸濃度がmTORC1にどのように伝達されているかは、Rag GTPaseおよびRagulator、v-ATPase、GATOR、ならびに卵胞ホルモン複合体で構成されるリソソームベースのシグナル伝達系の発見により、最近になってようやく明らかになった。細胞成長を刺激するために、mTORC1はその下流のエフェクターに依存して、タンパク質合成の基礎となるmRNA翻訳(Ma XM, Blenis J. Molecular mechanisms of mTOR-mediated translational control. Nat Rev Mol Cell Biol. 2009;10:307-318)、細胞分化、および細胞および細胞小器官の成長等の同化プログラムを協調的に促進し、ならびに、タンパク質分解の基礎となるオートファジー(Rabinowitz JD, White E. Autophagy and metabolism. Science. 2010;330:1344-1348)、および細胞または細胞小器官の崩壊等の異化プログラムを抑制、低下、または阻害し、それにより、協調しない(同化)合成および(異化)分解という無駄なサイクルを回避する。一般的に、低アミノ酸条件下では、Ragulatorはv-ATPaseで抑制されており、GATOR1はRagAに対してGAP活性を発揮し、このGTPaseを、mTORC1をリクルートするのに不十分な不活性なGDP結合状態に保っていることがわかった。インスリンシグナル伝達は、TSC複合体がRhebのGAPとして機能する場所であるリソソームの表面へのTSC複合体の移動を阻害し、このGタンパク質を不活性化する。アミノ酸刺激により、GATOR1はGATOR2により阻害され、Ragulatorおよびv-ATPaseは構造変化を受け、RagulatorのRagAへのGEF活性が開放される一方、卵胞ホルモン複合体はRagC GTPの加水分解を促進するかもしれない。GTP結合型RagAおよびGDPロード型RagCからなる活性型ヘテロダイマーは、mTORC1をリソソームの表面にリクルートし、そこでmTORC1はRhebと相互作用し、Rhebにより活性化される。mTORC1は小さいGTPaseであるRhebにより制御されるが、Rhebはリソソームの表面に存在し、そこでmTORC1のキナーゼ活性の強力な刺激要因として機能する。本質的に、オートファジーは細胞内の分解系であり、そこで機能しないタンパク質および小器官は分解される。このプロセスにおいて、凝集した機能しないタンパク質はエンドサイトーシスまたはファゴサイトーシスを通じて細胞に捕捉されるか、または細胞間でリソソーム小胞からの二重膜で囲まれてオートファゴソームを形成し、そのような分解が達成され、通常は加水分解を伴う。DALGreenは、生細胞においてQ-ERペプチドに誘導されるオートファジーを検出するために使用される。オートファジーは細胞内分解系であるため、このプロセスでは、凝集した機能しないタンパク質は、二重膜で囲まれてオートファゴソームを形成する。(アミノ酸が仲介する)オートファジーの阻害を検出および定量する方法は当該分野で知られている(たとえば、Zhang, Ziyan, Rajat Singh, and Michael Aschner. “Methods for the Detection of Autophagy in Mammalian Cells.” Current protocols in toxicology 69.1 (2016):20.12.1-20.12.26、および以下の表13に示す引用文献を参照されたい)。たとえば、小さい疎水性分子であるDALGreenは、生細胞の細胞膜を通過し、オートファゴソームに組み入れられる。リソソームがオートファゴソームと融合した後、オートリソソームの環境は酸性になる。酸性度が増大したときにDALGreenの蛍光が強くなる。この色素の特質は、蛍光顕微鏡による生細胞の画像化、およびフローサイトメトリーによるQ-ERが仲介するオートファジーの定量化を可能にする。Q-ERペプチドを用いた別のオートファジー研究では、オートファジーは、オートファジーのプロセスを追跡するための、LC3-IおよびLC3-IIの検出を通じて測定され、これはQ-ERが仲介するオートファジーをLC3で定量的アッセイをすることを可能にする。LC3は、オートファジー経路における重要なタンパク質である。一旦合成されると、細胞質LC3はAtg4によりC末端でプロセシングされ、細胞質LC3-I(16KDa)を形成する。オートファジーのシグナルにより、LC3-Iはユビキチン様タンパク質Atg7およびAtg3により脂質ホスファチジルエタノールアミン(PE)と共役し、脂質付加型LC3-II(14KDa)を生成する。脂質付加型LC3-IIは、オートファゴソームの内膜および外膜の両方に結合し、前者はリソソームと融合した後で分解され、外膜のLC3は、ATG4により脱共役化され、細胞質に戻る。したがって、LC3-IからLC3-IIへの転換、およびLC3-IIのリソソーム分解は、オートファジーの進行を反映しており、イムノブロッティングを使用して、Q-ERが細胞を標的化した後のLC3の量の変化をモニターする。
【0156】
最近および古いデータ(表13も参照)は、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グリシン(G)、プロリン(P)が、単独で、または組み合わせで、グルタミン酸(E)、スレオニン(T)、セリン(S)、リジン(K)、スレオニン(T)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびメチオニン(M)等の、効果がない、または反対の効果があることが報告されている他のアミノ酸より強力なmTORの活性化剤、またはオートファジーの阻害剤として同定している。したがって、本発明に係るQ-ER(Q-vh/vhh)ペプチドに包含するために本明細書で提供されるように、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グリシン(G)、プロリン(P)は、単独で、または(好ましくは)組み合わせで、ヒトの細胞における使用のための、パッケージングおよび細胞を標的化するための、最も好ましいmTORの活性化剤、またはオートファジーの阻害剤である。アミノ酸であるロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、およびプロリン(P)は、ヒトの細胞において、mTORが関連するオートファジーの最も顕著な阻害効果を有することが報告されている(AJ Meijer et al Amino Acids 2015, 47, 2037-206)。グリシン(Zhong Z, Wheeler MD, Li X, Froh M, Schemmer P, Yin M, Bunzendaul H, Bradford B, Lemasters JJ. l-Glycine: a novel antiinflammatory, immunomodulatory, and cytoprotective agent. Curr Opin Clin Nutr Metab Care 6:229-240,2003)は、アミノ酸刺激によるラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)複合体1の活性化を改善する。したがって、本発明に係るQ-ER(Q-vh/vhh)ペプチドに包含するために本明細書で提供されるように、ロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、およびプロリン(P)は、単独で、または(好ましくは)組み合わせで、ヒトの細胞における使用のための、最も好ましいmTORの活性化剤、またはオートファジーの阻害剤である。
【0157】
【表13-1】
【表13-2】
【0158】
(実施例14)
エラスチン受容体結合モチーフを有し、オートファジーを阻害するアミノ酸が豊富なQ-ERペプチドは、マウスにおいて1型糖尿病を減少させる。
【0159】
非肥満性糖尿病(NOD)マウスは自然に1型糖尿病(T1D)を発症し、T1Dの遺伝的および免疫学的基礎の理解、および治療のためのモデルとして役立っている。NODマウスは、それらの研究に用いられている。ほとんどの糖尿病NODマウスはインスリン欠乏性糖尿病で苦しんでおり、腎臓のベータ細胞の欠損または破壊の根本的な原因は、内分泌ベータ細胞組織をとりまく微小血管における炎症プロセスの結果である可能性が高く、遺伝的に加速された自己免疫が疑われている。糖尿病は、Abbott Medisense Precision血糖値測定器を用いて、静脈血中グルコース濃度の測定により評価する。マウスは、2回連続でグルコース測定値が≧11mmol(200mg/dl)であった場合に糖尿病であると見なされる。糖尿病の発症は、連続した読み取り値が初めて11mmol/l以上となった日である。In vivoの治療:14週齢のメスNODマウス(1群あたりn=12)の群は、それぞれ配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)、配列番号8(LQGVLPG)の合成ペプチド、またはビヒクル(PBS)で治療される。治療は、1週間に3回、PBSで希釈した250μgのペプチドを腹腔内(i.p.)に注入することにより行われる。対照マウスはPBSのみで治療される。この実験でPBSで治療されたすべてのマウスが糖尿病を発症したときに治療は中止される。これは一般的に19週齢のときである。ペプチドおよびPBSの治療は、最大で5週間行われる。≧20mmol/
lの高血糖の場合、長期の不快感を避けるためにマウスを殺処分する。残りのマウスは、さらなる治療なしで35週齢まで生存させる。これらの実験は、17週齢以降の糖尿病の発生の遅延によって測定されるように、ペプチドでの治療が、糖尿病発症に伴うベータ細胞障害を有意に減少させることを示す。
【0160】
(実施例15)
エラスチン受容体結合モチーフを有し、オートファジーを阻害するアミノ酸が豊富なQ-ERペプチドは、マウスにおいてSIRSを減少させる。
【0161】
重度の出血性ショックとそれに続く蘇生は、大規模な炎症反応を引き起こし、全身性炎症反応症候群、多臓器不全症候群、そして最終的には死に至ることがある。この炎症を効果的に予防する治療法は今のところ限られている。以前の研究において、我々は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンの一次構造に関連する合成オリゴペプチドLQGVまたはAQGVが、高用量のリポ多糖体が引き起こす炎症に続く炎症反応および死亡を抑制できることを示した。この強力な抗炎症効果を考慮して、我々は、出血性ショックのSIRS期に、0.9%NaClに溶解した25mg/mlの濃度の配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)、配列番号8(LQGVLPG)の合成ヘプタペプチド、またはビヒクル(0.9%NaCl)を、それぞれ0.5ml、i.p.で投与することで、この症状に関連する炎症反応を弱めることができるか否かを調査する。
【0162】
出血性ショックは、6のラット群に60分間、平均動脈圧が40mmHgに達するまで血液を抜き取ることにより誘発する。出血性ショックの誘発後30分間で、ラットは配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)、配列番号8(LQGVLPG)の合成ペプチドの1つ、または対照として0.9%NaCl溶液の単回投与を受けた。配列番号5(AQGVAPG)、配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)、配列番号8(LQGVLPG)の合成ペプチドでの治療により、TNF-αおよびIL-6の全身放出を防止し、肝臓におけるTNF-α、IL-6、およびEセレクチンのmRNA転写レベルの減少、肝臓に入る好中球の減少と関連し、肝臓損傷の減少と関連する。
【0163】
動物。350~400gの重量の、特定の病原体を有さない成体のオスのウィスターラットが使用される。ラットは、12時間ごとの明/暗サイクルで、25℃の遮断条件下で収容され、食事および水は自由に与えられる。実験プロトコールは、欧州評議会(1986年)の指令86/609/ECによる「実験動物の保護に関するガイドライン」を実施する国内法に定められた規則に準拠している。hCG関連合成オリゴペプチド。実験開始前に、ラットは一晩絶食させられるが、水は自由に与えられる。ラットは、N2 O/O2/イソフルランの混合物(Pharmachemie B.V.社、ハールレム、オランダ)を使用して麻酔される。体温は、温度が調節された「ハーフパイプ」(UNO社、ロッテルダム、オランダ)にラットを置くことにより継続的に37.5℃に維持される。気管内挿管が行われ、ラットは、1分間あたり60回の呼吸数でN2 O/O2/イソフルランの混合物を供給される。ポリエチレンチューブ(PE-50、Becton Dickinson社、シント・マイケルスゲステル、オランダ)はヘパリンで洗浄され、右頸動脈を通って大動脈内、および右内頸静脈内に配置される。5cmの正中開腹が行われ、尿生成をモニターするために恥骨上カテーテルが挿入される。出血性ショックは、平均動脈圧が40mmHgに達するまで血液を抜き取り、循環血液量を減少させることにより誘発する。この低血圧レベルは60分間維持される。出血性ショックの誘発後30分間で、ラットは、ヘプタペプチド溶液またはビヒクルの単回静脈内(IV)ボーラス注射を受けた。出血性ショックの誘発後60分間で、ラットは、30分間かけて流した血液を4倍にしてMAPを正常化することにより蘇生させられ、さらに120分間モニターされた後、犠牲にされる。ラットは、実験の前または実験中にヘパリンを受容しない。擬似対照の動物には、出血性ショック動物と同様の手術が行われるが、血液の抜き取り、およびヘプタペプチドの投与はしない。
【0164】
(実施例16)
エラスチン受容体結合モチーフを有し、オートファジーを阻害するアミノ酸が豊富なQ-ERペプチドは、マウスにおいて急性炎症を減少させる。
【0165】
エラスチン受容体結合モチーフ(例は上記の表に示される)を有し、mTORを優先的に活性化させる、またはオートファジーを優先的に阻害する別個の選択されたアミノ酸を含む、短い合成Q-ERペプチドは、白血球の炎症活性を減少させ、全体として急性全身性炎症を減少させ得る。これらの上記アミノ酸に富む、炎症疾患をダウンレギュレートするペプチドの例が本明細書で提供される。好ましくは、mTORを優先的に活性化する、またはオートファジーを優先的に阻害するアミノ酸、好ましくはA、G、L、V、Q、およびPの群から選択されるアミノ酸を、エラスチン受容体複合体の標的化を可能にする一連のQ-ERペプチド中に組み合わせることによって、小ペプチドを生成または合成することにより、現在他のペプチドを容易に得ることができる。
【0166】
(実施例17)
エラスチン受容体結合モチーフを有し、オートファジーを阻害するアミノ酸が豊富なQ-ERペプチドは、マウスにおいて血管透過性を減少させる。
【0167】
マウスにおけるVEGFを介した微小血管透過の防止は、たとえば、25mg/mlの濃度で0.9%NaClに溶解した配列番号7(AQGVLPG)のヘプタペプチド0.5ml(i.p.)を、週3回を4週間、糖尿病マウスに、繰り返し投与することにより達成される。VEGF誘導の血管漏出は、マイル血管透過性アッセイを用いて、糖尿病マウスの皮膚で研究される。そのようなヘプタペプチド投与は、mTORを優先的に活性化する、またはオートファジーを優先的に阻害する別個の選択されたアミノ酸を含む本発明の短い合成Q-ERペプチド(様々な例が上記の表に示される)の、糖尿病における血管内皮増殖因子(VEGF)誘導の活性酸素種(ROS)生成に対する保護の役割を示している。
【0168】
(実施例18)
エラスチン受容体結合モチーフを有し、オートファジーを阻害するアミノ酸が豊富なQ-ERペプチドは、マウスにおいて白血球の血管外漏出を減少させる。
【0169】
mTORを優先的に活性化する、またはオートファジーを優先的に阻害する別個の選択されたアミノ酸を含む短い合成Q-ERペプチド(例は上記の表に示される)は、白血球の血管外漏出を減少させる。ヘプタペプチド(配列番号6(LQGVAPG)、配列番号7(AQGVLPG)、配列番号8(LQGVLPG))を、15mg/mLの濃度で0.9%NaClに溶解する。350~400gの重量の特定の病原体を有さない生体のオスのウィスターラット(Harlan CPB社、ザイスト、オランダ)が使用される。ラットは、12時間ごとの明-暗サイクルで、25℃の遮断条件下で収容され、食事および水は自由に与えられる。実験プロトコールは、オランダ動物実験法に基づく動物実験委員会の承認を受け、欧州評議会(1986年、指令86/609/EC)による「実験動物の保護に関するガイドライン」を実施する国内法に定められた規則に準拠している。
【0170】
実験開始前に、ラットは一晩絶食させられるが、水は自由に与えられる。ラットは、N2 O/O2/イソフルランの混合物(Pharmachemie B.V.社、ハールレム、オランダ)を使用して麻酔される。体温は、温度が調節された「ハーフパイプ」(UNO社、ロッテルダム、オランダ)にラットを置くことにより継続的に37.5℃に維持される。気管内挿管が行われ、ラットは、1分間あたり60回の呼吸数でN2 O/O2/イソフルランの混合物を供給される。ポリエチレンチューブ(PE-50、Becton Dickinson社、シント・マイケルスゲステル、オランダ)はヘパリンで洗浄され、右頸動脈を通って大動脈内、および右内頸静脈内に配置される。5cmの正中開腹が行われ、尿生成をモニターするために恥骨上カテーテルが挿入される。
【0171】
15分間の順化の後、ラットは無作為に5つの群:1)擬似対照、2)HS、3)HSを配列番号6(LQGVAPG)で治療、4)HSを配列番号7(AQGVLPG)で治療、5)HSを配列番号8(LQGVLPG)で治療(HS/LAGV)に振り分けられた。出血性ショック(HS)は、MAPが40mmHgに達するまで血液を抜き取り、循環血液量を減少させることにより誘発する。この低血圧レベルは60分間維持される。HSの誘発後30分間で、ラットは、0.5mg/kg体重のヘプタペプチド溶液または0.9%NaClの単回静脈内ボーラス注射を受けた。HSの誘発後60分間で、ラットは、30分間かけて流した血液を4倍にしてMAPを正常化することにより蘇生させられ、さらに120分間モニターされた後、殺処分される。ラットは、実験の前または実験中にヘパリンを受容しない。擬似対照の動物は、HS動物と同様の手術を受けるが、血液の抜き取り、およびオリゴペプチドの投与はしない。HS誘発後180分間で、肝臓、肺、回腸、およびS状結腸は外科的に除去され、瞬間凍結され、アッセイまで-80℃で保存される。
【0172】
白血球の血管外漏出は、内皮細胞および肝細胞におけるE-セレクチンや細胞内接着分子1(ICAM-1)等の接着分子の発現の増加により特徴づけられる。これらの接着分子のアップレギュレーションは、好中球等の白血球による組織侵入を促進し、細胞を介した臓器損傷をもたらす。外傷および蘇生のラットモデルを用いて、外傷の誘発後に投与されたQ-ERヘプタペプチドは、肝臓におけるE-セレクチンのmRNA転写レベルを低下させる。さらに、Q-ERヘプタペプチド治療は、肝臓での好中球の蓄積を伴う血管外漏出を防止する。
【0173】
(実施例19)
エラスチン受容体結合モチーフを有し、オートファジーを阻害するアミノ酸が豊富なQ-ERペプチドは、マウスにおいて腎臓の機能障害を減少させる。
【0174】
エラスチン受容体結合モチーフ(例は上記の表に示される)を有し、mTORを優先的に活性化させる、またはオートファジーを優先的に阻害する別個の選択されたアミノ酸を含む、短い合成Q-ERペプチドは、腎機能に影響する。配列番号8のヘプタペプチドのi.v.注入(LQGVLPG;5nmol×分(-1)×kg(-1)体重)の腎機能およびタンパク質漏出への急性効果は、インスリン治療なしのストレプトゾトシン注射の2週間後に、麻酔をかけた糖尿病のオスのラットで研究される。ストレプトゾトシン誘発の糖尿病のラットは、ヘプタペプチドあり(N=12)またはなし(N=11)で研究される。研究の間、2つの群は同様に高い血中グルコース濃度を示した。齢が一致する正常なマウスを対照として使用する(N=5)。糸球体濾過率(GFR)は、基礎状態および60分間のグリシン(0.22mmol×分(-1)×kg(-1)体重)注入中-タンパク質負荷チャレンジと類似-のイヌリンクリアランスにより測定し、3群すべてにおいて腎機能予備能を試験した。
【0175】
基礎状態では、非ヘプタペプチド治療の糖尿病ラットは、正常ラットに比べて高いGFRおよび高い総タンパク質漏出を示した。正常なラットグリシンの注入に反応してGFRが増加する一方、ヘプタペプチドで治療されていない糖尿病のラットでは増加が起こらない。ヘプタペプチドを与えられた糖尿病ラットでは、グリシンの注入の前の最初の糸球体過剰濾過が減少する。また、ヘプタペプチドは、正常な腎機能予備能を回復させ、ヘプタペプチドを投与されていないラットに比べて少なく総タンパク質漏出をもたらす。したがって、ヘプタペプチドの短期間の注入は、ラットにおいてタンパク質漏出および過剰濾過に有益な効果があり、腎機能予備能を改善する。
【0176】
(付記)
(付記1)
エラスチン受容体複合体が表面に付いた細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、オートファジーを低下させる方法であって、
前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
方法。
【0177】
(付記2)
エラスチン受容体複合体が表面に付いた細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、血管透過性を修正する方法であって、
前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
方法。
【0178】
(付記3)
エラスチン受容体複合体が表面に付いた細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、組織修復を改善する方法であって、
前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
方法。
【0179】
(付記4)
エラスチン受容体複合体が表面に付いた細胞を、前記複合体を特異的に識別する分子で標的化することを含む、免疫応答を調節する方法であって、
前記分子は、アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
方法。
【0180】
(付記5)
前記複合体を識別する前記分子はxGxxPGで表されるエラスチンペプチドモチーフを有し、xは天然に存在するアミノ酸を表す、
付記1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
(付記6)
オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、前記オートファジー阻害アミノ酸を含むペプチドである、
付記1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
(付記7)
前記オートファジー阻害アミノ酸を含む前記ペプチドは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジペプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含む、
付記6に記載の方法。
【0183】
(付記8)
xGxxPGが、前記オートファジー阻害アミノ酸を含む前記ペプチドとペプチド結合により連結している、
付記6または7に記載の方法。
【0184】
(付記9)
前記複合体を識別する前記分子は、抗体様分子であり、好ましくはIgG、IgM、一本鎖抗体、FAB断片またはFAB’2断片から選択される、
付記1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
(付記10)
オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、ペプチド結合を介して前記抗体様分子に連結された、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含むペプチドである、
付記9に記載の方法。
【0186】
(付記11)
前記抗体様分子は、オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源と複合体化する、
付記9に記載の方法。
【0187】
(付記12)
オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、リポソーム等の脂質小胞である、
付記9に記載の方法。
【0188】
(付記13)
前記リポソームは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含む、
付記12に記載の方法。
【0189】
(付記14)
アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニンの群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
オートファジーを低下させるのに使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する、
分子。
【0190】
(付記15)
アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
免疫応答の調節に使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する、
分子。
【0191】
(付記16)
アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
組織修復を改善するのに使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する、
分子。
【0192】
(付記17)
アラニン(一文字コード:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびアルギニン(R)の群から選択される、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を有する、
血管透過性を修正するのに使用するための、エラスチン受容体複合体を特異的に識別する、
分子。
【0193】
(付記18)
前記分子は、xGxxPGによって表されるエラスチンペプチドモチーフを有し、xは天然に存在するアミノ酸を表す、
付記14~17のいずれか1つに記載の分子。
【0194】
(付記19)
前記分子は、IgG、IgM、一本鎖抗体、FAB断片またはFAB’2断片から選択される抗体様分子である、
付記14~17のいずれか1つに記載の分子。
【0195】
(付記20)
オートファジー阻害アミノ酸の前記供給源は、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含むペプチドである、
付記14~19のいずれか1つに記載の分子。
【0196】
(付記21)
前記分子は、前記ペプチドとペプチド結合を介して連結している、
付記20に記載の分子。
【0197】
(付記22)
xGxxPGと、
AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチドを含むジペプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドから選択されるペプチドと、
を含み、
xは天然に存在するアミノ酸を表す、
オートファジーを低下させるのに使用するためのペプチド。
【0198】
(付記23)
式ΦnxGxxPG、またはxGxxPGΦn、またはΦnxGxxPGΦmの配列を含む少なくとも7個のアミノ酸かつ多くとも30個のアミノ酸を含み、xは天然に存在するアミノ酸であり、Φはオートファジー阻害アミノ酸であり、nは1~24の整数であり、mは1~23の整数であり、n+mは24以下である、ペプチド。
【0199】
(付記24)
Φnおよび/またはΦmは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドを含む、
付記23に記載のペプチド。
【0200】
(付記25)
xGxxPGと、
AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジベプチド、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド、または群配列番号1(LQGV)および配列番号2(AQGV)の群から選択されるテトラペプチドから選択されるペプチドと、
を含むペプチド、および、
少なくとも1種の薬学的に許容される添加物、
を含み、
xは天然に存在するアミノ酸を表す、
オートファジーを低下させるのに使用するための医薬製剤。
【0201】
(付記26)
付記23または24に記載のペプチド、および少なくとも1種の薬学的に許容される添加物を含む、医薬製剤。
【0202】
(付記27)
インスリンをさらに含む、付記25または26に記載の医薬製剤。
【0203】
(付記28)
膵臓のベータ細胞の機能障害の治療に使用するための、付記27に記載の医薬製剤。
【0204】
(付記29)
自動ペプチド合成機で前記ペプチドを合成することを含む、付記23または24に記載のペプチドを製造するための方法。
【0205】
(付記30)
付記29に記載の方法により得られる、付記14~17のいずれか1つに記載の使用のための、付記23または24に記載のペプチド。
【配列表】
2022545554000001.app
【国際調査報告】