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特表2022-545583導電性光学フィルムおよびその製造方法
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  • 特表-導電性光学フィルムおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】導電性光学フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20221020BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20221020BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221020BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221020BHJP
【FI】
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
B32B27/00 B
B32B7/023
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538347
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 KR2020012168
(87)【国際公開番号】W WO2021049870
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0111573
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522072611
【氏名又は名称】エスジー フレキシオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SG FLEXIO CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】71,Saneopdanji-ro 87beon-gil, Daedeok-gu, Daejeon 34328 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ, チャン ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ, サン マン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジ ニ
(72)【発明者】
【氏名】キル, ミン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】ハ, ホン ソク
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ヨン ソン
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4F100AB01
4F100AB01B
4F100AB17
4F100AB17B
4F100AB24
4F100AB24B
4F100AB25
4F100AB25B
4F100AK01
4F100AK01C
4F100AK04
4F100AK04C
4F100AK07
4F100AK07C
4F100AK21
4F100AK21C
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ85
4F100GB41
4F100JG01
4F100JG01B
4F100JG04
4F100JG04A
4F100JN01
4F100JN01A
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC08
5G307FC09
5G307FC10
5G323BA01
5G323BB01
5G323BB02
5G323BB06
(57)【要約】
本発明に係る光学フィルムは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一表面に位置する導電性ナノワイヤのネットワークと、有機バインダーとを含む光学フィルムであって、前記有機バインダーは、互いに異なる溶解パラメータ(hildebrand solubility parameter、δ)を有する第1有機バインダーおよび第2有機バインダーを含み、第1有機バインダーと第2有機バインダーとの間の溶解パラメータ差が5MPa0.5以上であり、2.0%以下のヘイズおよび25Ω/sq以下の面抵抗を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材の少なくとも一表面に位置する導電性ナノワイヤのネットワークと、有機バインダーとを含む光学フィルムであって、
前記有機バインダーは、互いに異なる溶解パラメータ(hildebrand solubility parameter、δ)を有する第1有機バインダーおよび第2有機バインダーを含み、第1有機バインダーと第2有機バインダーとの間の溶解パラメータ差が5MPa0.5以上であり、
2.0%以下のヘイズおよび25Ω/sq以下の面抵抗を有する、光学フィルム。
【請求項2】
前記光学フィルムは、下記式1に規定される面抵抗均一度が式2を満たす、請求項1に記載の光学フィルム。
[式1]
面抵抗均一度(%)=[1-(面抵抗の標準偏差)/面抵抗の平均]×100
[式2]
90(%)≦面抵抗均一度(%)
【請求項3】
前記光学フィルムの紫外-可視光(UV-Vis)吸収スペクトルにおいて、350~360nmの波長領域に吸収ピークの中心が位置する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記光学フィルムの紫外-可視光(UV-Vis)吸収スペクトルにおいて、365nm~385nmの波長領域に吸収ピークの中心が位置しない、請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記導電性ナノワイヤのネットワークは、ランダムに位置する金属ナノワイヤが物理的に互いに接触して形成されるネットワークである、請求項1から4の何れか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記光学フィルムは、前記ネットワークを形成する導電性ナノワイヤの総重量を100重量部として、10~1000重量部の有機バインダーを含有する、請求項1から4の何れか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
相対的に大きい溶解パラメータを有する第1有機バインダーの溶解パラメータは、22.0MPa0.5以上である、請求項1から4の何れか一項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
面抵抗が、20Ω/sq以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記導電性ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項1から4の何れか一項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記導電性金属ナノワイヤの直径は、10~30nmである、請求項1から4の何れか一項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項1から4の何れか一項に記載の光学フィルムを含むディスプレイ装置。
【請求項12】
a)透明基材の少なくとも一表面に、導電性ナノワイヤ、有機バインダー、および溶媒を含有する塗布液を塗布して塗布膜を製造するステップと、
b)前記塗布膜が位置する前記透明基材の一表面を洗浄するステップと
を含む、光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
b)ステップの洗浄は、乾式洗浄、湿式洗浄、および蒸気洗浄から1つまたは2つ以上選択される、請求項12に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記洗浄は、極性溶媒を含有する洗浄液を噴射するステップを含む、請求項12に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記洗浄液は、20MPa0.5以上の溶解パラメータを有する、請求項14に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記b)ステップの前、b)ステップの後、またはb)ステップの前と後のそれぞれに、
前記塗布液の塗布により前記一表面に導電性ナノワイヤが位置する透明基材を熱処理するステップをさらに含む、請求項12に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性光学フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD、LED、OLED、QLEDなど、優れた明暗比、高い解像度、向上した明るさ、および優れたカラーボリュームを確保するために多様なディスプレイ装置が開発されており、このような技術の開発に伴い、ディスプレイ装置などの分野においても、より多様な物性を同時に満たす光学フィルムに対する要求が高まっている。
【0003】
本発明は、このような複合的物性を有する光学フィルムの一種として、優れた光学的特性および電気的特性を両方とも満たす光学フィルムを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた光学的特性および電気的特性を同時に満たす光学フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光学フィルムは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一表面に位置する導電性ナノワイヤのネットワークと、有機バインダーとを含む光学フィルムであって、前記有機バインダーは、互いに異なる溶解パラメータ(solubility parameter、δ)を有する第1有機バインダーおよび第2有機バインダーを含み、第1有機バインダーと第2有機バインダーとの間の溶解パラメータ差が5MPa0.5以上であり、2.0%以下のヘイズおよび25Ω/sq以下の面抵抗を有する。
【0006】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、前記光学フィルムは、下記式1に規定される面抵抗均一度が式2を満たしてもよい。
【0007】
[式1]
面抵抗均一度(%)=[1-(面抵抗の標準偏差)/面抵抗の平均]×100
【0008】
[式2]
90(%)≦面抵抗均一度(%)
【0009】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの紫外-可視光(UV-Vis)吸収スペクトルにおいて、350~360nmの波長領域に吸収ピークの中心が位置してもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの紫外-可視光(UV-Vis)吸収スペクトルにおいて、365nm~385nmの波長領域に吸収ピークの中心が位置しなくてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、前記導電性ナノワイヤのネットワークは、ランダムに位置する金属ナノワイヤが物理的に互いに接触して形成されるネットワークであってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、前記光学フィルムは、前記ネットワークを形成する導電性ナノワイヤの総重量を100重量部として、10~1000重量部の有機バインダーを含有してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、相対的に大きい溶解パラメータを有する第1有機バインダーの溶解パラメータは、22.0MPa0.5以上であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、面抵抗は、20Ω/sq以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、前記導電性ナノワイヤは、銀ナノワイヤであってもよい。
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、前記導電性金属ナノワイヤの直径は、10~30nmであってもよい。
【0015】
本発明は、上述の光学フィルムを含むディスプレイ装置を含む。
本発明は、上述の光学フィルムの製造方法を含む。
【0016】
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、a)透明基材の少なくとも一表面に、導電性ナノワイヤ、有機バインダー、および溶媒を含有する塗布液を塗布して塗布膜を製造するステップと、b)前記塗布膜が位置する前記透明基材の一表面を洗浄するステップとを含む。
【0017】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法において、b)ステップの洗浄は、乾式洗浄、湿式洗浄、および蒸気洗浄から1つまたは2つ以上選択されてもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法において、前記洗浄は、極性溶媒を含有する洗浄液を噴射するステップを含んでもよい。
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法において、前記洗浄液は、20MPa0.5以上の溶解パラメータを有してもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、前記b)ステップの前、b)ステップの後、またはb)ステップの前と後のそれぞれに、前記塗布液の塗布により前記一表面に導電性ナノワイヤが位置する透明基材を熱処理するステップをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る光学フィルムは、大面積においても均一で且つ優れた電気的特性を有するとともに、優れた光学的特性を有し、ナノワイヤにより導電性を有することで優れた柔軟性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態において、光学フィルムの洗浄前/後のUV-Vis吸収スペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の光学フィルムおよびその製造方法を詳しく説明する。次に紹介される図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるように例として提供されるものである。よって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、以下に提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示されてもよい。この際、用いられる技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨を不要に濁す恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。本明細書および添付の特許請求の範囲で特に言及なしに用いられた単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味する。また、特に一態様を限定して説明しない限り、上述の内容は、全ての態様それぞれに適用されてもよい。
【0023】
本出願人は、ナノワイヤベースの光学フィルムに対する研究を行う過程で、大面積においても均一で且つ優れた電気的特性を担保するために必須不可欠に導入される有機バインダーによりフィルムの光学的特性が損なわれることを発見し、互いに異なる2種以上の有機バインダーを用いて光学フィルムを製造するが、この際、製造過程で有機バインダーを一部除去することで、フィルムの光学的特性および電気的特性を両方とも向上可能であるとともに、ナノワイヤが基材に結着された状態が安定的に維持可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
このような知見に基づく本発明の一態様に係る光学フィルムは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一表面に位置する導電性ナノワイヤのネットワークと、有機バインダーとを含む光学フィルムであって、前記光学フィルムは、25(Ω/sq)以下の面抵抗(Rs)、下記式1に規定される面抵抗均一度が式2を満たし、下記2.0(%)以上のヘイズ(H)を満たす。
【0025】
[式1]
面抵抗均一度(%)=[1-(面抵抗の標準偏差)/面抵抗の平均]×100
【0026】
[式2]
90(%)≦面抵抗均一度(%)
【0027】
このような知見に基づく本発明の他の一態様に係る光学フィルムは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一表面に位置する導電性ナノワイヤのネットワークと、有機バインダーとを含む光学フィルムであって、前記有機バインダーは、互いに異なる溶解パラメータを有する第1有機バインダーおよび第2有機バインダーを含み、第1有機バインダーと第2有機バインダーとの間の溶解パラメータ(solubility parameter、δ)差が5MPa0.5以上である。
【0028】
このような知見に基づく本発明のまた他の一態様に係る光学フィルムは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一表面に位置する導電性ナノワイヤのネットワークと、有機バインダーとを含む光学フィルムであって、光学フィルムの紫外-可視光(UV-Vis)吸収スペクトルにおいて、365nm~385nmの波長領域に吸収ピークが存在しない。
【0029】
このような知見に基づく本発明のさらに他の一態様に係る光学フィルムは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一表面に位置する導電性ナノワイヤのネットワークと、有機バインダーとを含む光学フィルムであって、光学フィルムの紫外-可視光(UV-Vis)吸収スペクトルにおいて、365nm~385nmの波長領域に吸収ピークが存在せず、350~360nmの波長領域に吸収ピークの中心が存在する。
【0030】
本発明の有利な一態様に係る光学フィルムは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一表面に位置する導電性ナノワイヤのネットワークと、有機バインダーとを含む光学フィルムであって、前記有機バインダーは、互いに異なる溶解パラメータを有する第1有機バインダーおよび第2有機バインダーを含み、第1有機バインダーと第2有機バインダーとの間の溶解パラメータ(hildebrand solubility parameter、δ)差が5MPa0.5以上であり、2.0%以下のヘイズおよび25Ω/sq以下の面抵抗を有する。
【0031】
一具体例において、光学フィルムは、式1に規定される面抵抗均一度が式2を満たしてもよい。
【0032】
[式1]
面抵抗均一度(%)=[1-(面抵抗の標準偏差)/面抵抗の平均]×100
【0033】
[式2]
90(%)≦面抵抗均一度(%)
【0034】
一具体例において、前記光学フィルムの紫外-可視光(UV-Vis)吸収スペクトルにおいて、350~360nmの波長領域に吸収ピークの中心が位置してもよい。
【0035】
一具体例において、前記光学フィルムの紫外-可視光(UV-Vis)吸収スペクトルにおいて、365nm~385nmの波長領域に吸収ピークの中心が位置しなくてもよい。
【0036】
詳細には、透明基材は、透明絶縁性フィルムであってもよく、透明絶縁性フィルムは、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ、セルローストリアセテート(TAC)、ポリビニルアセテート、およびポリプロピレンからなる群から選択される1つまたは2つ以上を含むか、2つ以上選択された物質それぞれのフィルムが積層された積層フィルムであってもよいが、これに限定されない。
【0037】
導電性ナノワイヤのネットワークにおいて、導電性ナノワイヤは、金属ナノワイヤであってもよく、金属は、金、銀、銅、リチウム、アルミニウム、およびこれらの合金から1つまたは2つ以上選択されてもよいが、これに限定されない。但し、単なる物理的接触により、目的とする導電率(面抵抗)が得られるように、導電性ナノワイヤは、銀ナノワイヤであることが有利である。
【0038】
導電性ナノワイヤの直径(短軸直径)は、3~50nm、5~40nm、10~30nm、10~25nm、または15~25nmであってもよいが、これに限定されない。導電性ナノワイヤの縦横比(長軸長さ/短軸直径)は、5~2000または50~2000であってもよいが、これに限定されない。
【0039】
光学フィルムにおいて、透明基材の単位面積当たりに位置する導電性ナノワイヤの質量である導電性ナノワイヤ密度(ローディング量)は、0.01~0.2g/mであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0040】
導電性ナノワイヤのネットワークは、本発明の一実施形態において、導電性のネット導電性ナノワイヤ間の物理的接触により、連続的な電荷移動経路が提供される構造を意味し得る。具体的に、導電性ナノワイヤのネットワークは、透明基材の一表面上にランダムに位置する金属ナノワイヤが物理的に互いに接触して形成されるネットワークであってもよい。この際、導電性ナノワイヤのネットワークは、光焼結や熱の印加により導電性ナノワイヤ間の互いに接触する領域が融着して物理的に一体化した構造ではなく、個別的な導電性ナノワイヤが単に物理的に接触する構造であってもよい。
【0041】
光学フィルムは、25Ω/sq以下の面抵抗(Rs)、具体的には10~25Ω/sqの面抵抗、より具体的には15~20Ω/sqの面抵抗を有してもよい。
【0042】
光学フィルムは、面抵抗均一度(%)=[1-(面抵抗の標準偏差)/面抵抗の平均)]×100の式に規定される面抵抗均一度が90%以上であってもよい。この際、面抵抗均一度は、少なくとも20mm×20mmの面積を有する光学フィルムを基準として、当該面積を9個以上の領域に均等に分割した後、分割領域別に最小10回以上ランダムに面抵抗を測定して得られたものであってもよい。
【0043】
光学フィルムは、2.0%以下のヘイズ、具体的には1.0~2.0%のヘイズ、より具体的には1.0~1.8%のヘイズ、さらに具体的には1.0~1.7%のヘイズを満たしてもよい。この際、ヘイズは、ASTM D 1003に準じて測定されてもよい。
【0044】
光学フィルムに含まれる有機バインダーは、互いに異なる溶解パラメータ(solubility parameter、δ)を有する第1有機バインダーおよび第2有機バインダーを含んでもよい。第1有機バインダーは、相対的に高い溶解パラメータを有するバインダーであってもよく、第2有機バインダーは、相対的に低い溶解パラメータを有するバインダーであってもよい。溶解パラメータは、常温(25℃)基準であってもよい。溶解パラメータを求める方式は、特に制限されず、当該分野で公知の方式によるものであってよい。例えば、溶解パラメータは、当業界で、いわゆるHSP(Hansen solubility parameter)として公知された方式により計算するか求めることができる。詳細には、HSPは、データベースなど、公知の情報ソースが存在するため、例えば、データベースを参照して、物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を得ることができる。データベースにHSPが登録されていない物質は、例えば、HSPiP(Hansen solubility parameters in Practice)など、コンピュータプログラムソフトウェアを利用することで得ることができる。
【0045】
第1有機バインダーと第2有機バインダーとの間の溶解パラメータ差は、5MPa0.5以上、具体的に、6MPa0.5以上、一例として、5~25MPa0.5、5~20MPa0.5、5~15MPa0.5、6~25MPa0.5、6~20MPa0.5、または6~15MPa0.5であってもよい。溶解パラメータ差が過度に大きい場合には、1つの溶媒に適切な量の第1有機バインダーと第2有機バインダーが全て溶解され難い。また、溶解パラメータ差が過度に小さい場合、すなわち、第1有機バインダーと第2有機バインダーの溶解パラメータが互いに類似している場合には、第1有機バインダーおよび第2有機バインダーのうち1つの有機バインダーを選択的に除去し難いため、光学的特性および電気的特性が向上しない。
【0046】
2つの有機バインダーのうち相対的に大きい溶解パラメータを有する第1有機バインダーの溶解パラメータは、22.0MPa0.5以上、具体的には、23MPa0.5以上であってもよい。この際、第1有機バインダー溶解パラメータの上限は、特に限定されないが、50.0MPa0.5以下、具体的には45MPa0.5以下、より具体的には40MPa0.5以下であってもよい。第1有機バインダーが上述の溶解パラメータを満たすとともに、第2有機バインダーが上述の溶解パラメータ差を満たす場合、水のように20MPa0.5以上の溶解パラメータを有する極性溶媒に第1有機バインダーおよび第2有機バインダーが全て安定的に溶解されることができ、後述のように、洗浄により第1有機バインダーを主に除去して、電気的および光学的特性を向上させることができる。
【0047】
第1有機バインダーおよび第2有機バインダーは、上述の溶解パラメータ差を満たし、それぞれ20MPa0.5以上の溶解パラメータを有する極性溶媒に、少なくとも0.01wt%以上、具体的には少なくとも0.1wt%以上、より具体的には少なくとも2.5wt%以上溶解される有機高分子であれば良い。
【0048】
一例として、第1有機バインダーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、およびスチレンなどから1つまたは2つ以上選択されてもよい。
【0049】
一例として、第2有機バインダーは、セルロースエステルおよびセルロースエーテルから1つまたは2つ以上選択されてもよい。セルロースエーテルは、カルボキシ-C1-C3-アルキルセルロース、カルボキシ-C1-C3-アルキルヒドロキシ-C1-C3-アルキルセルロース、C1-C3-アルキルセルロース、C1-C3-アルキルヒドロキシ-C1-C3-アルキルセルロース、ヒドロキシ-C1-C3-アルキルセルロース、混合されたヒドロキシ-C1-C3-アルキルセルロース、またはこれらの混合物を含んでもよい。一例として、カルボキシ-C1-C3-アルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロースなどを含んでもよく、カルボキシ-C1-C3-アルキルヒドロキシ-C1-C3-アルキルセルロースは、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースなどを含んでもよく、C1-C3-アルキルセルロースは、メチルセルロースなどを含んでもよく、C1-C3-アルキルヒドロキシ-C1-C3-アルキルセルロースは、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、またはこれらの組み合わせなどを含んでもよく、ヒドロキシ-C1-C3-アルキルセルロースは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、混合されたヒドロキシ-C1-C3-アルキルセルロースは、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、またはアルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(前記アルコキシ基は、直鎖または分岐鎖であり、2~8個の炭素原子を含有する)などを含んでもよい。
【0050】
有機バインダー(第1有機バインダーまたは第2有機バインダー)の分子量(Mw)は、3,000~500,000であってもよいが、これに限定されない。光学フィルムは、別の分散剤を含有しなくてもよく、有機物として有機バインダーのみを含有してもよい。
【0051】
光学フィルムは、紫外-可視光吸収スペクトル(波長に応じた吸光度(absorbance))上、350~360nmの波長領域、具体的には352~358nmの波長領域に吸収ピーク(第1ピーク)の中心が位置してもよい。
【0052】
これとともに、またはこれとは独立に、光学フィルムは、紫外-可視光吸収スペクトル上、365nm~385nmの波長領域、具体的には365~380nmの波長領域、より具体的には367~377nmの波長領域に吸収ピークの中心が位置しなくてもよい。
【0053】
この際、光学フィルムの紫外-可視光吸収スペクトルは、互いに隣接する2以上の吸収ピークが互いに重なる際、ガウスおよび/またはローレンツ分布などを介してピーク別に分解されていない、光検出器により検出されて得られた未加工(raw)の紫外-可視光吸収スペクトルであってもよい。そこで、紫外-可視光吸収スペクトルは、吸収ピークが重なり、多峰形状を有することができ、吸収ピークの中心(中心波長)は、多峰形状のスペクトルにおける各峰の波長に該当することができる。
【0054】
これとともに、光学フィルムは、330~345nm、具体的には335~344nmの波長領域に吸収ピーク(第2ピーク)が存在するが、この際、第2ピークの強度が第1ピークの強度よりも小さくてもよい。一例として、第1ピークは、330~385nmの波長領域において最大強度を有する吸収ピークであってもよい。
【0055】
かかる紫外-可視光吸収スペクトルは、導電性ナノワイヤと第1有機バインダーと第2有機バインダーとを含有する液が塗布された後、洗浄により、さらに大きい溶解パラメータを有する有機バインダー(第1有機バインダー)を主に除去することで、透明基材の表面に位置するバインダーが除去されるとともに、バインダーとナノワイヤとの間の接触が無くなり、ナノワイヤ間の新たな接触が生成されることで現れるスペクトルである。
【0056】
光学フィルムは、ネットワークを形成する導電性ナノワイヤの総重量を100重量部として、10~1000重量部、10~500重量部、10~200重量部、10~150重量部、10~100重量部、または10~80重量部の有機バインダーを含有してもよい。この際、有機バインダーの量は、第1有機バインダーおよび第2有機バインダーを両方とも含むことはいうまでもない。
【0057】
光学フィルムにおいて、第2有機バインダー:第1有機バインダーの質量比は、1:0.01~1.5、1:0.01~1.0、1:0.01~0.8、または1:0.01~0.5であってもよい。
【0058】
本発明は、上述の光学フィルムを含むディスプレイ装置を含む。ディスプレイ装置は、LCD、LED、OLED、AMOLED、QLED、モバイルディスプレイなどであってもよいが、これに限定されない。
【0059】
上述の光学フィルムは、アンチ-ブルーミング(anti-blooming)フィルム、輝度向上フィルム、拡散シート、レンズシート、プリズムシート、反射フィルム、集光シート、保護フィルム、または接着フィルムなどの少なくとも一部として用いられてもよく、これとともにまたはこれとは独立に、透明導電性フィルムとして用いられてもよい。
【0060】
本発明は、上述の光学フィルムの製造方法を含む。後述の光学フィルムの製造方法において、導電性ナノワイヤ、導電性ナノワイヤのネットワーク、透明基材、有機バインダー、製造された光学フィルムなどは、先ほど光学フィルムにおいて上述したものと類似ないし同一である。そこで、光学フィルムの製造方法は、先ほど光学フィルムにおいて上述した内容を全て含む。
【0061】
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、a)透明基材の少なくとも一表面に、導電性ナノワイヤ、有機バインダー、および溶媒を含有する塗布液を塗布して塗布膜を製造するステップと、b)前記塗布膜が位置する前記一表面を洗浄するステップとを含む。
【0062】
塗布液は、導電性ナノワイヤ、有機バインダー、および溶媒を含有してもよく、有機物として、有機バインダーのみを含有してもよい。塗布液は、0.05~0.50重量%、一例として0.80~0.30重量%の導電性ナノワイヤを含有してもよい。
【0063】
塗布液は、0.05~2.50重量%、一例として0.10~2.20重量%、他の一例として0.10~1.50重量%の有機バインダーを含有してもよい。有機バインダー中の第2有機バインダー:第1有機バインダーの重量比は、1:1.5~3.0、一例として1:1.8~2.5であってもよい。
【0064】
上述の有機バインダーの含量、および第1有機バインダーと第2有機バインダーの重量比により、導電性ナノワイヤが塗布液中に安定的に均一に分散されるとともに、b)ステップの洗浄後にも導電性ナノワイヤが透明基材に安定的に固定された状態を維持することができ、洗浄により光学的特性および電気的特性を両方とも向上させることができる。
【0065】
溶媒は、極性溶媒であってもよく、極性溶媒は、常温を基準として、20MPa0.5以上の溶解パラメータ、一例として20~50MPa0.5の溶解パラメータ、他の一例として30~50MPa0.5の溶解パラメータ、また他の一例として40~50MPa0.5の溶解パラメータを有する極性溶媒であってもよい。実質的な一例として、溶媒は、エチレンカーボネート、ニトロメタン、エタノールアミン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、アリールアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、および水から選択される1種または2種以上の混合溶媒が挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。上述のように、溶媒は、上述の溶解パラメータを満たす、単一溶媒または2種以上の極性溶媒が混合された混合溶媒であってもよい。
【0066】
塗布液の塗布は、半導体やディスプレイの製造分野において、固体が分散した液相(インクやスラリーを含む)を塗布して均一な厚さの膜を製造するのに既に用いられる如何なる方法を用いてもよい。一例として、コーティング、スプレー(噴射)、印刷などの多様な方法が挙げられる。具体的な一例として、スピンコーティング(Spin coating);スクリーン印刷(screen printing);インクジェット印刷(ink-jet printing);バーコーティング(Bar coating);グラビアコーティング(Gravure coating);ブレードコーティング(Blade coating);ロールコーティング(Roll coating);スロットダイ(slot die);ディッピング(dipping)またはスプレー(spray)噴射法;などが挙げられるが、これに限定されない。
【0067】
a)ステップにおいて、必要時には乾燥がさらに行われてもよい。乾燥は、固体が分散した液相(インクやスラリーを含む)を塗布した後、溶媒(分散媒)の揮発除去のために、既に用いられる如何なる方法を用いてもよい。一例として、乾燥としては、減圧乾燥、自然乾燥、熱風乾燥、加熱乾燥、またはこれらの組み合わせを用いてもよく、熱風や加熱時の温度は、40~130℃の温度で行われてもよいが、本発明が具体的な乾燥条件や方法により限定されるものではない。
【0068】
b)ステップの洗浄は、乾式洗浄、湿式洗浄、および蒸気洗浄から1つまたは2つ以上選択されてもよい。一例として、b)ステップの洗浄は、乾式洗浄、湿式洗浄、または蒸気(洗浄に用いられる洗浄液の気相)洗浄の単独洗浄であってもよい。これとは異なり、b)ステップの洗浄は、乾式洗浄後に湿式洗浄、湿式洗浄後に乾式洗浄、乾式洗浄後に蒸気洗浄、蒸気洗浄後に乾式洗浄、湿式洗浄後に蒸気洗浄、蒸気洗浄後に湿式洗浄、または乾式洗浄後に湿式洗浄後に再び乾式洗浄などのような多段階の洗浄であってもよい。
【0069】
湿式洗浄は、極性溶媒を含有する洗浄液、具体的に、極性溶媒である洗浄液により塗布膜を洗浄するステップを含んでもよい。洗浄液に含まれる極性溶媒は、塗布液の極性溶媒とは独立に、常温を基準として、20MPa0.5以上の溶解パラメータ、一例として20~50MPa0.5の溶解パラメータ、他の一例として30~50MPa0.5の溶解パラメータ、また他の一例として40~50MPa0.5の溶解パラメータを有する溶媒であってもよい。かかる極性溶媒を含有する洗浄液を用いて、塗布膜が位置する透明基材の一表面を湿式洗浄することで、溶解パラメータが相対的に高い第1有機バインダーの大半が洗浄除去されることができ、その反面、溶解パラメータが相対的に低い第2有機バインダーは一表面に残留し、ナノワイヤを透明基材に安定的に結着させることができる。洗浄液に含まれる極性溶媒も、上述の溶解パラメータを満たす、単一溶媒または2種以上の溶媒が混合された混合溶媒であってもよい。具体例として、洗浄液は、エチレンカーボネート、ニトロメタン、エタノールアミン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、アリールアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、および水から選択される1種または2種以上の混合溶媒を含有してもよい。
【0070】
湿式洗浄は、塗布膜が位置する基材の一表面に洗浄液を塗布するか、塗布膜が形成された基材を洗浄液に浸して行われてもよい。洗浄液の塗布は、スプレー噴射、超音波噴霧などにより行われてもよいが、本発明が具体的な塗布方法により限定されるものではない。洗浄が行われてから残留の洗浄液による所望しないバインダーの除去を防止するために、洗浄後にエアブラッシングにより洗浄液を除去するステップが行われてもよく、エアブラッシング時の圧力は、0.1~0.5MPaレベルであってもよいが、これに限定されない。
【0071】
有利に後述のように透明基材に塗布液の塗布後に熱処理が行われる場合、洗浄ステップは、極性溶媒を含有する洗浄液を噴射するステップを含んでもよい。洗浄液の噴射は、噴射ノズルを用いたスプレー噴射であることが有利であり、透明基材に垂直(透明基材表面の表面垂直(surface normal))な方向に洗浄液が噴射されることが好ましい。これにより、熱処理時、有利な一例に係るセルロースエステルおよびセルロースエーテルから選択される第2バインダーのゲル化により、導電性ナノワイヤが透明基材に安定的に固定された状態を維持しつつ、第1バインダーをさらに選択的に均質に除去することができる。ノズルを用いたスプレー噴射時、洗浄液が噴射されるノズルの大きさは0.1~0.4Φレベルであってもよく、透明基材の幅方向に複数のノズルが離隔配列された状態で、ノズルアレイまたは透明基材が透明基材の長さ方向(幅に垂直な方向)に0.1m~1m/分の速度で移動しつつ洗浄が行われてもよい。この際、各ノズルを介して噴射される洗浄液の噴射量は、0.05~0.5l/分レベルであってもよく、ノズルアレイにおけるノズル間の離隔距離は、10~100mmレベルであってもよい。
【0072】
湿式洗浄時、必要時には温度が調節された洗浄液により洗浄が行われてもよい。一例として、洗浄液の温度は、5℃~0.95T(T=洗浄液に含まれた極性溶媒の常圧沸点、℃)であってもよい。洗浄液に含まれる極性溶媒の溶解パラメータとともに、洗浄液の温度を調節することで、第1有機バインダーの除去程度および/または第2有機バインダーの残留程度をさらに選択的に調節することができる。
【0073】
乾式洗浄は、プラズマ処理を含んでもよい。すなわち、乾式洗浄は、塗布膜が位置する基材の一表面をプラズマ処理するステップを含んでもよい。プラズマは、低圧プラズマまたは常圧プラズマであってもよく、これとは独立に、熱プラズマまたは低温プラズマであってもよい。塗布膜が位置する基材の一表面にプラズマが供給され、基材の一表面(塗布膜を含む)から表面に露出された有機バインダーが除去されてもよい。
【0074】
蒸気洗浄は、上述の湿式洗浄で用いられる洗浄液と類似ないし同一の液(以下、第2洗浄液)の蒸気を用いて行われてもよい。詳細には、蒸気洗浄は、気化した第2洗浄液を塗布膜が位置する基材の一表面に供給するステップを含んでもよい。第2洗浄液は、熱気化してもよく、気化した第2洗浄液の温度は、1T~1.5T(T=第2洗浄液に含まれた極性溶媒の常圧沸点、℃)であってもよいが、これに限定されない。
【0075】
a)ステップにより透明基材に塗布液の塗布が行われた後、b)ステップの前、b)ステップの後、またはb)ステップの前とb)ステップの後のそれぞれにおいて、塗布液の塗布により一表面に導電性ナノワイヤが位置する透明基材を熱処理するステップがさらに行われてもよい。一例として、洗浄前、洗浄後、または洗浄前と洗浄後にそれぞれ熱処理が行われてもよい。熱処理は、70~130℃、具体例として100~130℃で行われてもよい。熱処理時間は、5~200秒であってもよいが、これに限定されない。
【0076】
かかる熱処理は、第2有機バインダーがセルロースエステルおよびセルロースエーテルである場合に効果的である。セルロースエステルやセルロースエーテル系の第2有機バインダーは熱処理により熱ゲル化し、基材にナノワイヤをさらに強く固定させることができる。
【0077】
そこで、洗浄前熱処理により、第2有機バインダー(セルロースエステルやセルロースエーテル系のバインダー)がゲル化し、洗浄工程でナノワイヤが透明基材から部分的に脱着されるのを防止することができ、洗浄時に、第2バインダーの所望しない除去を抑制し、第1バインダーをさらに選択的に除去することができる。この際、洗浄前熱処理時に付加的に乾燥(塗布液の溶媒の揮発除去)が同時に行われてもよく、これとは異なり、ゲル化前または後に洗浄前熱処理とは独立に乾燥が行われてもよい。
【0078】
また、洗浄が行われた後にも熱処理が行われることが好ましい。洗浄後熱処理により、第2有機バインダーをもう一度ゲル化させることで、高い面抵抗均一性、25Ω/sq以下の優れた面抵抗(平均面抵抗)、2%以下の優れたヘイズ特性とともに、優れた機械的物性を確保することができるため、フレキシブルまたはローラブルディスプレイに非常に効果的に活用されることができる。
【0079】
そこで、有利な一例に係る光学フィルムの製造方法は、a)透明基材の少なくとも一表面に、導電性ナノワイヤ、有機バインダー、および溶媒を含有する塗布液を塗布して塗布膜を製造するステップと、塗布膜が形成された透明基材を70~130℃、具体例として100~130℃で5~200秒間熱処理(第1熱処理)するステップと、b)第1熱処理後、前記塗布により導電性ナノワイヤが位置する透明基材の一表面に、極性溶媒を含有する洗浄液を垂直噴射して洗浄するステップと、洗浄された透明基材を70~130℃、具体例として100~130℃で5~200秒間熱処理(第2熱処理)するステップとを含んでもよい。
【0080】
かかる第1熱処理および第2熱処理を洗浄前および後に行うことで、ナノワイヤ間融着(welding)とならず、単に物理的に接触した状態により導電性経路が形成される構造であるにもかかわらず、5mmの曲率で10000回の曲げテスト時にも、テスト前の平均面抵抗の93%以上の面抵抗が維持されることができ、光学的特性に有意な劣化が発生しない。
【0081】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを透明基材として用い、銀ナノワイヤ(短軸直径20nm、長さ20~25μm)を用い、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(溶解パラメータ26.9MPa0.5)である第1有機バインダー、溶解パラメータが20.2MPa0.5であり、セルロースエーテル系バインダーである第2有機バインダー、および極性溶媒である水を含有する塗布液を製造した。塗布液中の銀ナノワイヤの含量は0.20重量%であり、塗布液中の第1有機バインダー:第2有機バインダーの質量比は2:1であり、塗布液は0.50重量%のバインダー(第1有機バインダー+第2有機バインダー)を含有した。
【0082】
スロットダイコーティングを用いてPETフィルムに塗布液を塗布するが、この際、PETフィルムの単位面積当たりに0.056g/mの銀ナノワイヤが塗布されるようにした。スロットダイコーティングを用いて塗布が行われた後、110℃で60秒間熱処理(第1熱処理)し、第1熱処理されたフィルムに精製水をノズル噴射して洗浄を行った。精製水はPETフィルムに垂直噴射され、噴射ノズルの移動速度は0.5m/分であり、0.2Φのノズルを介して噴射される精製水量は0.1l/分であり、PETフィルムの幅方向への噴射ノズル間の間隔は50mmであった。精製水噴射が行われた後、エアブラッシング(0.3MPa)により洗浄液を除去し、再び120℃で60秒間熱処理(第2熱処理)して光学フィルムを製造した。
【0083】
[実施例2]
塗布液の塗布時、PETフィルムの単位面積当たりに0.097g/mの銀ナノワイヤが塗布されるようにしたことを除いては、実施例1と同様に光学フィルムを製造した。
【0084】
[比較例1]
実施例1において、洗浄を行わず、第1熱処理の代わりに100℃で2分間乾燥して光学フィルムを製造した。
【0085】
[比較例2]
実施例2において、洗浄を行わず、第1熱処理の代わりに100℃で2分間乾燥して光学フィルムを製造した。
【0086】
[比較例3]
実施例1において、第1有機バインダーおよび第2有機バインダーの代わりにセルロースエーテル系バインダーである第2有機バインダーのみを用い、塗布液がバインダーとして0.50重量%の第2有機バインダー(のみ)を含有するようにしたことを除いては、実施例1と同様に光学フィルムを製造した。
【0087】
[比較例4]
実施例1において、第1有機バインダーおよび第2有機バインダーの代わりに第1有機バインダーのみを用い、塗布液がバインダーとして0.50重量%の第1有機バインダー(のみ)を含有するようにしたことを除いては、実施例1と同様に光学フィルムを製造した。
【0088】
平均面抵抗および面抵抗均一度は、実施例および比較例で製造された光学フィルム30mm×30mmに対して、9個の領域に均等分割し、各領域別に面抵抗をランダムに10回測定し、総90個の面抵抗の測定結果から平均面抵抗および面抵抗の標準偏差を算出し、面抵抗均一度(%)=[1-(面抵抗の標準偏差)/面抵抗の平均)]×100の式により面抵抗均一度を算出した。
【0089】
【表1】
【0090】
表1の比較例1、2から分かるように、面抵抗を減少させるためにナノワイヤのローディング量を増加させる場合には光学特性が悪化し、光学特性を向上させるためにナノワイヤのローディング量を減少させる場合には電気的特性が悪化する。すなわち、従来、電気的特性と光学的特性が互いにトレードオフ(trade-off)になる特性であるため、25Ω/sqレベルの面抵抗を有する電気的特性、および2%以下のヘイズを有する光学特性を同時に満たすことは非常に難しかった。
【0091】
しかし、本発明の一実施形態により洗浄工程を行う場合、トレードオフ関係にある電気的特性と光学的特性が両方とも大幅に向上することが分かり、25Ω/sqレベルの面抵抗を有する電気的特性、および2%以下のヘイズを有する光学的特性が同時に満たされる光学フィルムの製造が可能であることが分かる。
【0092】
また、比較例3から、セルロースエーテル系の第2バインダー単独では、洗浄による有意な物性の変化が現れないことを確認し、第1バインダー単独では、洗浄過程でナノワイヤが透明フィルムに固定されることができずに再配列され、均一度が大幅に低下することが分かり、また、5mm一方向曲げテストの結果、200回以内に大半の銀ナノワイヤが基板から離れることを確認した。
【0093】
これに対し、実施例2で製造された光学フィルムの場合、5mm一方向曲げテストの結果、10000回の曲げテスト時にも、テスト前の平均面抵抗の94%以上の面抵抗が維持されることを確認した。
【0094】
実施例2において、洗浄前(before washing)と洗浄後(after washing)にフーリエ変換赤外線分光(FT-IR)分析を行い、洗浄により有機バインダーが一部洗い落とされたことを確認し、洗浄後にも2つの有機バインダーが両方とも残留することを確認した。これとともに、9個のサンプルを用いて洗浄前後のフィルムの重さ変化を測定した結果、約20%の有機バインダー含量の変化が発生したことを確認した。
【0095】
図1は、透明基材であるPETフィルム(図2のbase)、実施例2における、洗浄前(before washing)と洗浄後(after washing)の光学フィルム(サンプル)の紫外-可視光吸収スペクトルを測定して示した図である。図1から分かるように、洗浄により全体的に吸収率が減少することが分かり、洗浄前に340nm、355nm、および374nmの吸収ピークが現れるが、洗浄後に374nmに現れていた吸収ピークが無くなり、340nmおよび355nmの2つのピークが現れることが分かる。
【0096】
以上、特定の事項と限定された実施形態及び図面により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0097】
よって、本発明の思想は、説明された実施形態に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。
図1
【国際調査報告】