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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(54)【発明の名称】車両操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20221020BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538490
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2019036075
(87)【国際公開番号】W WO2021049001
(87)【国際公開日】2021-03-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500024274
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・プレスタ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 芳信
(72)【発明者】
【氏名】パーストル・レヴェンテ
(72)【発明者】
【氏名】サボー・アーダーム
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC40
3D232DA03
3D232DA05
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA25
3D232DA33
3D232DA63
3D232DC34
3D232DE09
3D232EB12
3D232EC23
3D232EC37
3D333CB02
3D333CB29
3D333CB32
(57)【要約】
【課題】 出力抑制機構を備えた車両制御システムにおいて、轍や溝等からの車輪の脱出を容易にする。
【解決手段】 車両操舵装置1であって、操舵部材10と、操舵角を検出する操舵角センサ21と、操舵トルクを検出するトルクセンサ22と、車輪を転舵する転舵機構11と、転舵機構に駆動力を与える転舵アクチュエータ12と、転舵角を検出する転舵角センサ32と、運転者の入力操作を検出する検出装置36と、転舵アクチュエータを制御する制御装置15とを有する。制御装置は、操舵トルクが所定の閾値以上である場合に転舵アクチュエータの出力を抑制する出力抑制制御を実行し、検出装置が運転者による所定の操作を受け付けた場合に、出力抑制制御を解除する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両操舵装置であって、
操舵部材と、
前記操舵部材の操舵角を検出する操舵角センサと、
前記操舵部材に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサと、
車輪を転舵する転舵機構と、
前記転舵機構に駆動力を与える転舵アクチュエータと、
前記車輪の転舵角を検出する転舵角センサと、
運転者の入力操作を検出する検出装置と、
前記操舵角及び前記操舵トルクの少なくとも一方に応じた前記転舵角を実現するために前記転舵アクチュエータを制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、前記操舵トルクが所定の閾値以上である場合に前記転舵アクチュエータの出力を抑制する出力抑制制御を実行し、
前記出力抑制制御の実行中に前記検出装置が前記運転者による所定の操作を受け付けた場合に、前記出力抑制制御を解除する車両操舵装置。
【請求項2】
前記検出装置は、前記トルクセンサ及び前記操舵角センサの少なくとも一方を含み、
前記制御装置は、前記操舵トルク及び前記操舵角センサの少なくとも一方が所定の閾値以上である状態が所定の期間継続した場合に前記出力抑制制御を解除する請求項1に記載の車両操舵装置。
【請求項3】
前記検出装置は、前記トルクセンサ及び前記操舵角センサの少なくとも一方を含み、
前記制御装置は、前記操舵トルク及び前記操舵角センサの少なくとも一方が所定の閾値未満から前記閾値以上となった回数が所定の期間内に所定の回数に達した場合に前記出力抑制制御を解除する請求項1に記載の車両操舵装置。
【請求項4】
前記検出装置は、運転者によって操作されるスイッチを含み、
前記制御装置は、前記スイッチが操作された場合に前記出力抑制制御を解除する請求項1に記載の車両操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が操作するステアリングホイール等の操舵部材と、操舵部材から機械的に切り離され、車輪の転舵角を変化させる転舵機構とを有するステアバイワイヤ式の車両操舵装置が公知である。転舵機構は、車輪の転舵角を変更するための駆動力を発生する電動モータを有する。このような車両操舵装置において、電動モータの過負荷状態を検出し、電動モータが過負荷であるときに電動モータに供給する電流を抑制する出力抑制制御を実行するものがある(例えば、特許文献1)。出力抑制制御によれば、車輪が縁石等の障害物に接触し、転舵が困難な状態であるときに、不必要な電力消費を抑制することができると共に、電動モータを含む転舵機構の機械的な損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-322715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、転舵機構の出力抑制制御が実行されると、車輪を轍や溝等から脱出させたい状況において車輪の転舵が抑制され、轍や溝等からの車輪の脱出が困難になる場合がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、出力抑制機構を備えた車両制御システムにおいて、轍や溝等からの車輪の脱出を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車両操舵装置(1)であって、車体に回転可能に設けられた操舵部材(10)と、前記操舵部材の操舵角を検出する操舵角センサ(21)と、前記操舵部材に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ(22)と、車輪を転舵する転舵機構(11)と、前記転舵機構に駆動力を与える転舵アクチュエータ(12)と、前記車輪の転舵角を検出する転舵角センサ(32)と、前記操舵部材に反力トルクを与える反力アクチュエータ(13)と、運転者の入力操作を検出する検出装置(36)と、前記操舵角及び前記操舵トルクの少なくとも一方に応じた前記転舵角を実現するために前記転舵アクチュエータを制御し、かつ前記転舵角に応じて前記反力アクチュエータを制御する制御装置(15)とを有し、前記制御装置は、前記操舵トルクの絶対値が所定の閾値以上である場合に前記転舵アクチュエータの出力を抑制する出力抑制制御を実行し、前記検出装置が前記運転者による所定の操作を受け付けた場合に、前記出力抑制制御を解除する。
【0007】
この態様によれば、車両操舵装置は、運転者の所定の操作を検出して、出力抑制制御を解除する。そのため、転舵アクチュエータにより大きな電力を供給することが可能になり、車輪が轍や溝等に嵌った状態においても車輪を転舵させることができる。これにより、出力抑制制御を実行する車両操舵装置において、轍や溝等からの車輪の脱出を容易にすることができる。
【0008】
上記の態様において、前記検出装置(36)は、前記トルクセンサ(22)を含み、前記制御装置は、前記操舵トルクの絶対値が所定の閾値以上である状態が所定の期間継続した場合に前記出力抑制制御を解除するとよい。
【0009】
この態様によれば、車両制御装置は、運転者が操舵部材に閾値以上の操作トルクを加え続ける操作を検出して出力抑制制御を解除する。
【0010】
上記の態様において、前記検出装置(36)は、前記トルクセンサ(22)を含み、前記制御装置は、前記操舵トルクの絶対値が所定の閾値未満から前記閾値以上となった回数が所定の期間内に所定の回数に達した場合に前記出力抑制制御を解除するとよい。
【0011】
この態様によれば、車両制御装置は、運転者が所定の期間内に所定回数の操作トルクを加える操作を検出して出力抑制制御を解除する。
【0012】
上記の態様において、前記検出装置(36)は、運転者によって操作されるスイッチ(37)を含み、前記制御装置は、前記スイッチが操作された場合に前記出力抑制制御を解除するとよい。
【0013】
この態様によれば、車両制御装置は、運転者のスイッチの操作を検出して出力抑制制御を解除する。
【発明の効果】
【0014】
以上の構成によれば、出力抑制機構を備えた車両制御システムにおいて、轍や溝等からの車輪の脱出を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る車両操舵装置の構成図
図2】出力抑制制御における転舵角の偏差Δθ2、反力アクチュエータの電流値A2、操舵トルクの絶対値|T|、及び転舵アクチュエータの電流値A1の関係を示すタイムチャート
図3】出力抑制制御を解除するための第1の操作に対応した操舵トルクの絶対値を示すグラフ
図4】出力抑制制御を解除するための第2の操作に対応した操舵トルクの絶対値を示すグラフ
図5】他の実施形態に係る車両操舵装置の構成図
図6】出力抑制制御を解除するための第1の操作に対応した操舵角の絶対値を示すグラフ
図7】出力抑制制御を解除するための第2の操作に対応した操舵角の絶対値を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両操舵装置1の実施形態について説明する。図1に示すように、車両操舵装置1は、ステアバイワイヤ(SBW)式の操舵装置である。車両操舵装置1が設けられる車両2は、左右の前輪3及び左右の後輪(不図示)を備えた4輪自動車である。左右の前輪3は、転舵角が変更可能にナックル7を介して車体に支持され、転舵輪として機能する。転舵角は、平面視において転舵輪としての前輪3の前後方向に対する角度をいう。車両操舵装置1は、前輪3の転舵角を変更する。
【0017】
車両操舵装置1は、車体に回転可能に設けられた操舵部材10と、前輪3を転舵する転舵機構11と、転舵機構11に駆動力を与える転舵アクチュエータ12と、操舵部材10に反力トルクを与える反力アクチュエータ13と、反力アクチュエータ13及び転舵アクチュエータ12を制御する制御装置15とを有する。車両操舵装置1は、転舵アクチュエータ12、反力アクチュエータ13、及び制御装置15をそれぞれ複数備える冗長系であってもよい。
【0018】
操舵部材10は、車体に回転可能に支持された第1ステアリングシャフト18と、第1ステアリングシャフト18の一端に設けられたステアリングホイール19とを有する。第1ステアリングシャフト18は車体に設けられたステアリングコラム(不図示)に回転可能に支持され、その後端はステアリングコラムから後方に突出している。ステアリングホイール19は、第1ステアリングシャフト18の後端に結合され、第1ステアリングシャフト18と一体に回転する。
【0019】
反力アクチュエータ13は電動モータであり、ギヤを介して第1ステアリングシャフト18に連結されている。反力アクチュエータ13が駆動すると、その駆動力が第1ステアリングシャフト18に回転力として伝達される。反力アクチュエータ13は、回転することによって第1ステアリングシャフト18にトルクを与える。反力アクチュエータ13が第1ステアリングシャフト18に与えるトルクを反力トルクという。
【0020】
車両操舵装置1は、第1ステアリングシャフト18の軸線を中心とした回転角を操舵角として検出する操舵角センサ21を有する。操舵角センサ21は公知のロータリエンコーダであってよい。また、車両操舵装置1は、第1ステアリングシャフト18に加わるトルクを操舵トルクとして検出するトルクセンサ22を有する。トルクセンサ22は、第1ステアリングシャフト18におけるステアリングホイール19と反力アクチュエータ13との間の部分に加わるトルクを検出する。操舵トルクは、運転者によってステアリングホイール19に加えられる操作トルクと、反力アクチュエータ13によって第1ステアリングシャフト18に加えられる反力トルクとによって定まる。トルクセンサ22は、磁歪式トルクセンサやひずみゲージ等の公知のトルクセンサ、又は反力アクチュエータ13の電動モータに流れる電流値に基づいた推定値を利用したものであってよい。
【0021】
車両操舵装置1は、反力アクチュエータ13の回転角を検出する反力アクチュエータ回転角センサ23を有する。反力アクチュエータ回転角センサ23は、公知のレゾルバやロータリエンコーダであってよい。
【0022】
転舵機構11は、車幅方向に延びるラック軸26と、ラック軸26に結合するピニオン29を一端に備えた第2ステアリングシャフト28とを有する。ラック軸26は、車幅方向に移動可能に車体に支持されている。ラック軸26の左右の端部は、タイロッド30を介して左右の前輪3をそれぞれ支持するナックル7に接続されている。ラック軸26が車幅方向に移動することによって、前輪3の転舵角が変化する。第2ステアリングシャフト28の回転は、ラック軸26の車幅方向への直線運動に変換される。第2ステアリングシャフト28は、第1ステアリングシャフト18に対して分離された構成であり、第1ステアリングシャフト18に対して相対回転可能である。なお、ピニオン29及び第2ステアリングシャフト28は必須の構成ではなく、省略可能である。
【0023】
転舵アクチュエータ12は、電動モータであり、ラック軸26又は第2ステアリングシャフト28に駆動力を与える。すなわち、転舵アクチュエータ12はラック軸26に直接に駆動力を伝達してもよく、第2ステアリングシャフト28を介してラック軸26に駆動力を伝達してもよい。転舵アクチュエータ12は、ラック軸26を車幅方向に移動させ、左右の前輪3の舵角を変化させる。
【0024】
車両操舵装置1は、転舵アクチュエータ12の回転角を検出する転舵アクチュエータ回転角センサ31を有する。転舵アクチュエータ回転角センサ31は、公知のレゾルバやロータリエンコーダであってよい。また、車両操舵装置1は、前輪3の転舵角を検出する転舵角センサ32を有する。本実施形態では、転舵角センサ32は、ラック軸26の車幅方向における位置であるラック位置を検出するラックストロークセンサであり、ラック位置に基づいて前輪3の転舵角を検出する。
【0025】
第1ステアリングシャフト18と第2ステアリングシャフト28との間にはクラッチ装置34が設けられている。クラッチ装置34は、第1ステアリングシャフト18及び第2ステアリングシャフト28を互いに連結又は切断する。クラッチ装置34は、例えば遊星歯車機構によって構成されているとよい。クラッチ装置34は、第1ステアリングシャフト18及び第2ステアリングシャフト28の連結又は切断を切り換えるための電動アクチュエータ(不図示)を有する。なお、クラッチ装置34は、必須の構成ではなく図5に示すように省略可能である。この場合、ピニオン29及び第2ステアリングシャフト28も、クラッチ装置34と共に省略する。
【0026】
車両操舵装置1は、運転者の入力操作を検出する検出装置36を有する。検出装置36は、運転者の操舵操作を検出するトルクセンサ22又は操舵角センサ21を含んでもよい。また、検出装置36は、運転者によって操作されるスイッチ37を含んでもよい。スイッチ37は、車体に設けられた機械的なスイッチであってもよく、タッチパネルディスプレイに表示される機能ボタンであってもよい。
【0027】
制御装置15は、CPUやメモリ、プログラムを記憶した記憶装置等を含む電子制御装置である。制御装置15は、操舵角センサ21、トルクセンサ22、反力アクチュエータ回転角センサ23、転舵アクチュエータ回転角センサ31、転舵角センサ32が接続されている。制御装置15は、これらのセンサからの信号に基づいて、操舵角、操舵トルク、反力アクチュエータ回転角、転舵アクチュエータ回転角、転舵角に対応した信号を取得する。また、制御装置15は、図示しない車速センサ、ヨーレートセンサ、前後加速度センサに接続され、車速、ヨーレート、前後加速度等を取得してもよい。
【0028】
制御装置15は、反力アクチュエータ13、転舵アクチュエータ12、及びクラッチ装置34に接続され、反力アクチュエータ13、転舵アクチュエータ12、及びクラッチ装置34を制御する。制御装置15は、SBW(ステアバイワイヤ)モード及びEPS(電動パワーステアリング)モードに対応して、反力アクチュエータ13、転舵アクチュエータ12、及びクラッチ装置34を制御する。なお、クラッチ装置34を省略した場合には、制御装置15はSBWモードのみに対応して反力アクチュエータ13及び転舵アクチュエータ12を制御するとよい。
【0029】
制御装置15は、SBWモードにおいてクラッチ装置34を切断制御し、第1ステアリングシャフト18及び第2ステアリングシャフト28の相対回転を可能にする。制御装置15は、SBWモードにおいて、操舵角及び操舵トルクの少なくとも一方に応じた転舵角を実現するために転舵アクチュエータ12を制御し、かつ転舵角に応じて前記反力アクチュエータ13を制御する。
【0030】
以下に、制御装置15のSBWモードにおける制御の一例を示す。制御装置15は、操舵角センサ21によって検出された操舵角に基づいて、目標転舵角を演算する。制御装置15は、例えば操舵角θ1に所定のギヤ比Kを掛けることによって目標転舵角θ2Tを演算するとよい(θ2T=θ1×K)。ギヤ比Kは例えば0.01~0.5であり、一例として0.125であるとよい。そして、制御装置15は、転舵角θ2が目標転舵角θ2Tとなるように、目標転舵角θ2Tと転舵角θ2との偏差Δθ2(=θ2T-θ2)に基づいて転舵アクチュエータ12に供給すべき電流値A1を演算する。すなわち、制御装置15は、偏差Δθ2に基づいて、転舵アクチュエータ12のフィードバック制御を行う。偏差Δθ2が大きいほど、転舵アクチュエータ12に供給される電流値A1が大きくなり、転舵アクチュエータ12の出力が大きくなり、転舵角の変化量が大きくなる。
【0031】
制御装置15は、偏差Δθ2に基づいて反力アクチュエータ13が発生させるべき反力トルクを演算する。反力トルクはΔθ2に所定の係数を掛けることによって演算されるとよい。そして、制御装置15は、演算した反力トルクに基づいて反力アクチュエータ13に供給すべき電流値A2を演算する。反力アクチュエータ13に供給すべき電流値A2は、反力トルクに基づいて所定のマップを参照することによって決定されるとよい。なお、他の実施形態では、制御装置15は、偏差Δθ2に基づいて所定のマップを参照し、電流値A2を決定してもよい。反力トルク及び電流値A2は、転舵角の偏差Δθ2が大きいほど大きく設定される。
【0032】
制御装置15は、電流値A2を反力アクチュエータ13に供給し、反力アクチュエータ13に駆動力を発生させる。反力アクチュエータ13が発生した駆動力は、第1ステアリングシャフト18に運転者の操作入力に抗する反力トルクとして加えられる。これにより、運転者は、操舵操作に対する反力(抵抗力)をステアリングホイール19から受けることができる。
【0033】
制御装置15は、操舵トルクTの絶対値|T|が所定の閾値T1以上である場合に転舵アクチュエータ12の出力を抑制する出力抑制制御を実行する。出力抑制制御は、操舵輪である前輪3の転舵が困難である状況において、転舵アクチュエータ12に比較的大きい電流が供給され続けることを防止する。前輪3の転舵が困難な状況とは、例えば前輪3が縁石等の障害物に接触している状況や、前輪3が轍や側溝等の溝に脱落し、前輪3が溝の側壁に接触している状況を含む。転舵アクチュエータ12に供給される電流を抑制することによって、電力消費量を抑制することができると共に、転舵アクチュエータ12の温度上昇を抑制することができる。また、転舵アクチュエータ12が発生する出力を抑制することによって、転舵機構11に加わる荷重を抑制することができる。
【0034】
制御装置15は、例えば、出力抑制制御において転舵アクチュエータ12に供給する電流値A1を抑制するとよい。図2に示すように、制御装置15は、例えば、操舵トルクTの絶対値|T|が閾値T1以上である場合に出力抑制制御を実行し、転舵角の偏差Δθ2の増加に関わらず転舵アクチュエータ12に供給する電流値A1を一定にする。また、制御装置15は、例えば、出力抑制制御において、転舵角の偏差Δθ2の増加量に対する電流値A1の増加量を小さくしてもよい。制御装置15は、出力抑制制御において、操舵トルクの絶対値|T|が閾値T1になったときの電流値A1の値以下の電流値A1を転舵アクチュエータ12に供給するとよい。
【0035】
制御装置15は、検出装置36が運転者による所定の操作を受け付けた場合に、出力抑制制御を解除する。本実施形態では、上述したように検出装置36は、トルクセンサ22及びスイッチ37の少なくとも一方によって構成されている。制御装置15は、トルクセンサ22が検出した操舵トルク及びスイッチ37の操作状態の少なくとも一方に基づいて出力抑制制御を解除する。運転者による所定の操作は、例として以下の第1~第3の操作であってよい。制御装置15は、第1~第3の操作の少なくとも1つを検出したときに出力抑制制御を解除するとよい。なお、制御装置15は、第1~第3の操作から選択された1つに基づいて出力抑制制御を解除する構成としてもよい。
【0036】
図3に示すように、制御装置15は、例えばトルクセンサ22が検出した操舵トルクの絶対値|T|が所定の閾値T2以上である状態が所定の期間TM1継続した場合に、運転者による第1の操作を受け付けたと判定し、出力抑制制御を解除するとよい。ここでの第1の操作は、運転者が、所定の期間、反力トルクに抗してステアリングホイール19にトルクを加え続ける操作に対応する。期間TM1の計測は、操舵トルクの絶対値|T|が閾値T2未満から閾値T2以上になったときから開始され、操舵トルクの絶対値|T|が閾値T2未満になったときにリセットされるとよい。
【0037】
図4に示すように、制御装置15は、例えばトルクセンサ22が検出した操舵トルクの絶対値|T|が所定の閾値T3未満から閾値T3以上になった回数Mが所定の期間TM2内に所定の回数M1に達した場合に、運転者による第2の操作を受け付けたと判定し、出力抑制制御を解除するとよい。ここでの第2の操作は、運転者が所定の期間内に、反力トルクに抗する方向にステアリングホイール19に操作トルクを断続的に所定の回数M1加える操作に対応する。所定の回数M1は、例えば2~5回であってよい。期間TM2の計測は、操舵トルクの絶対値|T|が閾値T3未満から閾値T3以上になった1回目から開始され、期間TM2が経過したとき、又は回数Mが回数M1になったときにリセットされるとよい。
【0038】
制御装置15は、例えばスイッチ37が操作された場合に、運転者による第3の操作を受け付けたと判定し、出力抑制制御を解除するとよい。ここでの第3の操作は、運転者によるスイッチ37の操作に対応する。制御装置15は、出力抑制制御を実行しているときに、スイッチ37からの信号に基づいてスイッチ37の操作を検出した場合に、出力抑制制御を解除するとよい。また、スイッチ37は出力抑制制御のオン、オフを切り換えるスイッチであってもよい。この場合、制御装置15はスイッチ37がオフ状態であるときに、出力抑制制御の実行を禁止してもよい。
【0039】
制御装置15は、検出装置36としてのトルクセンサ22及びスイッチ37の少なくとも一方からの信号に基づいて、運転者による第1~第3の操作の少なくとも1つを受け付けたと判定した場合に出力抑制制御を解除するとよい。制御装置15は、出力抑制制御の実行中に第1~第3の操作の少なくとも1つを検出したときに出力抑制制御を解除し、その後、所定の期間経過後に出力抑制制御を実行可能に復帰させるとよい。或いは、制御装置15は、出力抑制制御の実行中に第1~第3の操作の少なくとも1つを検出したときに出力抑制制御を解除し、その後、操舵トルクが0になってから所定の期間経過後に出力抑制制御を実行可能に復帰させてもよい。また、制御装置15は、スイッチ37がオフ状態である間、出力抑制制御を禁止し、スイッチ37がオン状態となったときに出力抑制制御を実行可能に復帰させてもよい。
【0040】
上述した車両操舵装置1は、運転者の第1~第3の操作を検出して、出力抑制制御を解除する。そのため、転舵アクチュエータ12により大きな電力を供給することが可能になり、車輪が轍や溝等に嵌った状態においても車輪を転舵させることができる。これにより、出力抑制制御を実行する車両操舵装置1において、轍や溝等からの車輪の脱出を容易にすることができる。
【0041】
車両操舵装置1は、例えば運転者が操舵部材10に閾値以上の操舵トルクを加え続ける第1の操作を検出して出力抑制制御を解除することができる。また、車両操舵装置1は、運転者が所定の期間内に所定回数の操作トルクを加える第2の操作を検出して出力抑制制御を解除することができる。第1の操作及び第2の操作は、轍等に車輪が嵌ったときに運転者が車輪を転舵させるための操作に類似しているため、運転者は直感的に第1及び第2の操作を行うことができる。また、スイッチ37の操作である第3の操作は、運転初心者でも容易に行なうことができる操作である。
【0042】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記の実施形態では、操舵トルクTの絶対値|T|に基づいて運転者による第1及び第2の操作を検出する構成としたが、操舵トルクTの絶対値|T|に代えて、操舵角や、操舵角の変化量、転舵角の偏差Δθ2等に基づいて第1及び第2の操作を検出する構成としてもよい。
【0043】
図6に示すように、制御装置15は、操舵角センサ21が検出した操舵角θ1の絶対値|θ1|が所定の閾値θTH1以上である状態が所定の期間TM1継続した場合に、運転者による第1の操作を受け付けたと判定し、出力抑制制御を解除するとよい。ここでの第1の操作は、運転者が、所定の期間、反力トルクに抗してステアリングホイール19を所定の操舵角以上に維持する操作に対応する。期間TM1の計測は、操舵角の絶対値|θ1|が閾値θTH1未満から閾値θTH1以上になったときから開始され、操舵角の絶対値|θ1|が閾値θTH1未満になったときにリセットされるとよい。
【0044】
図7に示すように、制御装置15は、例えば操舵角センサ21が検出した操舵角θ1の絶対値|θ1|が所定の閾値θTH2未満から閾値θTH2以上になった回数Mが所定の期間TM2内に所定の回数M1に達した場合に、運転者による第2の操作を受け付けたと判定し、出力抑制制御を解除するとよい。ここでの第2の操作は、運転者が所定の期間内に、反力トルクに抗する方向にステアリングホイール19を断続的に所定の回数M1回転させる操作に対応する。所定の回数M1は、例えば2~5回であってよい。期間TM2の計測は、操舵角θ1の絶対値|θ1|が閾値T3未満から閾値T3以上になった1回目から開始され、期間TM2が経過したとき、又は回数Mが回数M1になったときにリセットされるとよい。
【符号の説明】
【0045】
1 :車両操舵装置
2 :車両
3 :前輪
10 :操舵部材
11 :転舵機構
12 :転舵アクチュエータ
13 :反力アクチュエータ
15 :制御装置
21 :操舵角センサ
22 :トルクセンサ
23 :反力アクチュエータ回転角センサ
31 :転舵アクチュエータ回転角センサ
32 :転舵角センサ
34 :クラッチ装置
36 :検出装置
37 :スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】