IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシーの特許一覧

特表2022-545634選択的レーザー焼結を使用して3次元物体を作製するための付加製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】選択的レーザー焼結を使用して3次元物体を作製するための付加製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/153 20170101AFI20221021BHJP
   B29C 64/357 20170101ALI20221021BHJP
【FI】
B29C64/153
B29C64/357
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508832
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2020071641
(87)【国際公開番号】W WO2021028240
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/886,784
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19202245.7
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウォード, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ハモンズ, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド, エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA24
4F213AA32
4F213AA34
4F213AA40
4F213AB11
4F213AB16
4F213AB17
4F213AB18
4F213AB25
4F213AC04
4F213AR06
4F213AR12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL73
4F213WL96
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1つの半結晶性ポリマー又はコポリマー(P)を含む粉末ポリマー材料(M)を使用して、3次元(3D)物体を作製するための付加製造(AM)方法、特に、この粉末ポリマー材料(M)からレーザー焼結によって得ることができる3D物体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)物体を作製するための付加製造方法であって、前記付加製造方法は、
a)粉末ポリマー材料(M)の連続層をSLSプリンターの部品床にて塗布する工程であって、前記材料(M)は、イソプロパノール中でレーザー散乱により測定される、20~100μmの範囲のd50値を有し、少なくとも1つの半結晶性ポリマー又はコポリマー(P)を含む工程と、
b)印刷される粉末ポリマー材料(M)の層を処理温度(Tp)で加熱し、次の層を堆積する前に各層を選択的に焼結する工程と、
c)前記3D物体が完成するまで、印刷された部品と未焼結の材料(M’)を部品床温度(Tb)に維持する工程と、
を含み、
前記方法及び前記材料(M)は、少なくとも不等式(1)から(4):
・Tm≧230℃(1)
・Tb<Tp(2)
・Tm-40℃<Tp<Tm(3)
・Tg<Tb<Tm-40℃(4)
(式中、Tm(℃)及びTg(℃)は、ASTM D3418による20℃/分で示差走査熱量測定(DSC)によって測定される、それぞれPの溶融温度及びガラス転移温度である)が満たされるものである、3次元(3D)物体を作製するための付加製造方法。
【請求項2】
前記方法及び前記材料(M)は、前記不等式(4)及び(3)の少なくとも1つが以下の通りであるものである、請求項1に記載の方法:
・Tm-40°C<Tp<Tm-5°C(3)
・Tg<Tb<Tm-50°C(4)。
【請求項3】
前記粉末ポリマー材料(M)は、不等式(7)が満たされるものである供給床温度(Tf)に前記SLSプリンターの供給床において予熱される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法:
・Tf<Tp(7)。
【請求項4】
前記SLSプリンターは、各選択的焼結の発生後に材料(M)の1つの層の厚さだけ下げられる部品プレートを備えている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各層は、10~800μm、好ましくは50~500μm、より好ましくは80~200μmに含まれる厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Pは、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、半芳香族、半結晶性ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)又はポリフタルアミド(PPA)、半芳香族ポリエステル及び芳香族ポリエステル(PE)からなる群、好ましくはポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)及びポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる群、より好ましくはポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、及びポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末ポリマー材料(M)は、0.01~10重量%の流動剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粉末ポリマー材料(M)は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、ガラス球、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノファイバー、グラフェン、酸化グラフェン、フラーレン、タルク、ウォラストナイト、マイカ、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭化ケイ素、タングステン酸ジルコニウム、窒化ホウ素及びこれらの組み合わせからなる群から選択される0.1~50重量%の充填剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末ポリマー材料(M)は、リサイクルされた材料(M’)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)は、前記粉末の電磁放射による選択的焼結を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記未焼結の材料(M’)を回収することからなる工程d)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のレーザー焼結方法によって得ることができる3次元(3D)物体。
【請求項13】
3次元(3D)物体を作製するための付加製造方法から得ることができる、リサイクルされた粉末材料(M’)であって、前記付加製造方法は、
a)粉末ポリマー材料(M)の連続層をSLSプリンターの部品床にて塗布する工程であって、前記材料(M)は、イソプロパノール中でレーザー散乱により測定される、20~100μmの範囲のd50値を有し、少なくとも1つの半結晶性ポリマー又はコポリマー(P)を含む工程と、
b)印刷される粉末ポリマー材料(M)の層を処理温度(Tp)で加熱し、次の層を堆積する前に各層を選択的に焼結する工程と、
c)前記3D物体が完成するまで、印刷された部品と未焼結の材料(M’)を部品床温度(Tb)に維持する工程と、
d)前記未焼結の材料(M’)を回収する工程と、を含み、
前記方法及び前記材料(M)は、少なくとも不等式(1)から(4):
・Tm≧230℃(1)
・Tb<Tp(2)
・Tm-40℃<Tp<Tm(3)
・Tg<Tb<Tm-40℃(4)
(式中、Tm(℃)及びTg(℃)は、ASTM D3418による20℃/分で示差走査熱量測定(DSC)によって測定される、それぞれPの溶融温度及びガラス転移温度である)が満たされるものである、3次元(3D)物体を作製するための付加製造方法から得ることができる、リサイクルされた粉末材料(M’)。
【請求項14】
前記リサイクルされた粉末材料(M’)であって、
-90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下のΔMFI
(ΔMFI=100x|(MFIt0-MFIt1)/MFIt0|、
(式中:
MFIは、ASTMD-1238によって測定される、メルトフローインデックスであり、
MFIt0は、印刷前の粉末のMFIであり、
MFIt1は、印刷後の未焼結の粉末のMFIである))、及び/又は
-50%以下、好ましくは40%未満、より好ましくは75%未満のΔIV
(ΔIV=100x|(IVt0-IVt1)/IVt0|、
(式中:
IVは、ASTMD-5336によって測定される固有粘度であり、
IVt0は、印刷前の粉末のIVであり、
IVt1は、印刷後の未焼結の粉末のIVである))を有する、請求項13に記載のリサイクルされた粉末材料(M’)。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のリサイクルされた粉末材料(M’)を含む、3D印刷用の粉末材料のブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つの半結晶性ポリマー又はコポリマー(P)を含む粉末ポリマー材料(M)を使用して、3次元(3D)物体を作製するための付加製造(AM)方法、特に、この粉末ポリマー材料(M)からレーザー焼結によって得ることができる3D物体に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造システムは、コンピュータ支援設計(CAD)モデリングソフトウェアで作成されたデジタル設計図から3D物体を印刷或いは構築するために用いられる。利用可能な付加製造技術の1つである選択的レーザー焼結(「SLS」)は、レーザーからの電磁放射線を使用して粉末材料を融合させて塊にする。レーザーは、粉末床の表面上において、物体のデジタル設計図から生成された断面を走査することによって粉末材料を選択的に融合させる。断面が走査された後、粉末床は、1つの層の厚さだけ下げられ、材料の新しい層が適用され、粉末床が再走査される。前の焼結層との接着性だけでなく、最上部の粉末層中でのポリマー粒子の局所的に完全な合体が必要である。このプロセスは、物体が完成するまで繰り返される。
【0003】
SLSプリンターには、一般に、粉末の選択的レーザー焼結が実際に行われる印刷チャンバーが含まれる。印刷チャンバーには、一般に、部品床(part bed)、及び部品床の温度を制御するために発熱体が含まれる。プロセス中、粉末の層は、部品床上に又は部品床に事前に配置された粉末上に連続的に塗布され、次いで3D物体が完成するまで焼結される。半結晶性ポリマーの場合、少なくともいくつかの焼結層では、印刷中の結晶化をできるだけ長く抑制する必要がある。それ故、処理温度は、「焼結ウィンドウ」とも呼ばれる、半結晶性ポリマーの溶融温度(Tm)と結晶化温度(Tc)との間で厳密に調整されなければならない。レーザーは、インプットによって指定される場所においてのみ粉末の融合を引き起こす。レーザーエネルギー曝露は、典型的には、使用中のポリマーに基づいて且つポリマー劣化を回避するために選択される。
【0004】
プロセスが完了したとき、未融合粉末は、3D物体から除去され、リサイクルして後続のSLSプロセスに再利用することができる。
【0005】
レーザー焼結による物品の作製は、小さい物品についてさえも、長い時間、頻繁に16時間超を要し得る。これは、粉末材料がSLSプリンターで長時間高温に曝されること(熱エージングと呼ばれる)を意味する。これは、ポリマー材料がもはやリサイクル可能ではないように、ポリマー材料に不可逆的に影響を及ぼし得る。熱エージングのためにポリマーの化学的性質が変わるのみならず、その靱性などのポリマー材料のその機械的特性も変化する。ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、又はポリフェニレンスルフィド(PPS)、又は高溶融温度ポリアミド(PA)などの一部の半結晶性ポリマーでは、処理温度が高すぎるため、SLSの処理性と粉末のリサイクルに悪影響を与える劣化及び/又は架橋を引き起こす。SLSプロセスのポテンシャルは、そのため、このプロセスのために最適化された限定された数の材料に制限される。
【0006】
国際公開第2012/160344A1号パンフレット(Airbus)は、支持構造体を作製し、次いで支持構造体上に物品を形成することからなる、ポリマー材料から成形物品を作製するための付加層製造方法に関する。処理温度は、ポリマーのガラス転移温度と再凝固温度の間で変動する。処理温度が低いほど、焼結用のエネルギー源の出力が高くなり、逆も又同様である。ガラス転移温度に近い温度では、凝固プロセス中に発生する熱残留応力の蓄積によって引き起こされる歪みを防ぐために、物品は、かなり多くの支持構造体を必要とする。逆に、ビームエネルギーが低い、温度範囲の上限での処理では、ビルド(build)に支持構造体はほとんど必要ない。しかしながら、より強力なエネルギー源は、より多くのエネルギーを消費する。
【0007】
国際公開第2019/053239A1号パンフレット(Solvay)は、少なくとも半結晶性PEEKポリマーと、少なくとも1つの非晶性PAESポリマーとを含むポリマーのブレンドから作られた粉末材料の使用に基づくレーザー焼結方法に関しており、これにより、粉末材料の劣化及び/又は架橋が大幅に低減することができ、こうして未焼結の材料をリサイクルし、新しい3D物体の製造に使用できる。
【0008】
本発明のレーザー焼結3D印刷方法は、粉末材料を処理して3D物体を形成し、次いで3D物体が完成するまでそれを保持するために使用される温度の調整に基づいている。又、この方法は、特定の熱転移温度、即ち、溶融温度、ガラス転移温度、及び結晶化温度を有する少なくとも半結晶性ポリマーを含むポリマー粉末材料の選択に基づいている。処理温度とポリマー熱転移温度の両方の組み合わせにより、粉末材料を大幅に劣化及び/又は架橋することなく、SLSを介して良好な3D物体を製造することができ、これにより、未焼結の材料をリサイクルし、新しい3D物体の製造に使用できる。本発明の付加製造方法から得られた3D物体は、前述の方法と同様の機械的特性(例えば、引張り強度)を有利に示す。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、3次元(3D)物体を作製するための付加製造方法に関する。この方法は、
a)粉末ポリマー材料(M)の連続層をSLSプリンターの部品床に対して塗布する工程であって、粉末ポリマー材料(M)は、イソプロパノール中でレーザー散乱により測定される、20~100μmの範囲のd50値を有し、少なくとも1つの半結晶性ポリマー又はコポリマー(P)を含む工程と、
b)印刷される粉末ポリマー材料(M)の層を処理温度(Tp)で加熱し、次の層を堆積する前に各層を選択的に焼結する工程と、
c)3D物体が完成するまで、印刷された部品と未焼結の粉末ポリマー材料(M)を部品床温度(Tb)に維持する工程と、を含み、
この場合、この方法及び粉末ポリマー材料(M)は、少なくとも不等式(1)から(4):
・Tm≧230℃(1)
・Tb<Tp(2)
・Tm-40℃<Tp<Tm(3)
・Tg<Tb<Tm-40℃(4)
(式中、Tm(℃)及びTg(℃)は、ASTM D3418による20℃/分で示差走査熱量測定(DSC)によって測定される、それぞれPの溶融温度及びガラス転移温度である)が満たされるものである。
【0010】
本発明の3D物体を製造するための方法は、ポリマー材料の主成分として半結晶性ポリマーを含む粉末ポリマー材料(M)を使用する。粉末ポリマー材料(M)は、球形などの規則的な形状又はペレット又は粗い粉末の摩砕/粉砕によって得られる複雑な形状を有することができる。
【0011】
本発明の方法で使用される粉末ポリマー材料(M)は、イソプロパノール中でのレーザー散乱により測定される、20~100μmの範囲のd50値を有する。この材料(M)は、材料(M)の成分を粉砕又は摩砕することによって調製することができ、任意選択で、摩砕前及び/又は摩砕中に25℃未満の温度に冷却することができる。
【0012】
このような製造方法で得ることができる3D物体又は物品は、期待される機械的特性を有し、様々な最終用途で使用できる。特に、埋込式装置、医療装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な形状部品並びに自動車工業におけるボンネット下部品を挙げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の方法で使用される粉末ポリマー材料(M)は、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、半芳香族、半結晶性ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)又はポリフタルアミド(PPA)、半芳香族ポリエステル及び芳香族ポリエステル(PE)からなる群から選択することができる、半結晶性ポリマー又はコポリマーに基づく。
【0014】
半結晶性ポリマー(P)を含む粉末ポリマー材料(M)を使用する本発明の付加製造方法は、粉末ポリマー材料(M)の一部として、SLSプリンターで使用される温度プロファイルの調整と、特定のポリマー熱転移温度の選択との組み合わせに基づく。より正確には、本発明者らは、特に、それから得られる印刷物の印刷適性及び機械的特性を損なうことなく、特定のポリマーの転移温度範囲と組み合わせた処理温度(Tp)及び部品床温度(Tb)の調整が、未使用のポリマー材料(M)をリサイクルする可能性にプラスの影響を与えることができることを特定した。
【0015】
本発明者らは、これらの目標を達成するために少なくとも4つの不等式が満たされる必要があることを特定した。
【0016】
第1の不等式によれば、本発明のポリマー(P)は、ASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって測定される、230℃を超える溶融温度(Tm)を有する。
【0017】
本発明に記載されているポリマーのガラス転移及び溶融温度は、20℃/分の加熱及び冷却速度を使用するASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定される。各DSC試験には3つの走査が使用される:ポリマーのTm+15℃を超える温度(即ち、ポリマーが劣化しない温度)までの第1の加熱、次に30℃までの第1の冷却、次にポリマーのTm+15℃を超える温度までの第2の加熱。Tmは、第1の加熱から決定される。Tgは、第2の加熱から決定される。キャリアガス(純度99.998%、50mL/分)として窒素を使用して、TA Instruments DSC Q20でDSCを実行した。
【0018】
第2の不等式によれば、3D印刷プロセスが終了するまで(即ち、3D物体が完成するまで)、未焼結の材料(M)が部品床に保持される部品床温度(Tb)は、材料(M)の各層が部品床で焼結される処理温度(Tp)より低い。本発明者らは、部品床温度を処理温度より低く設定することは、粉末材料(M)に対する高い処理温度の影響を最小限に抑え、材料(M)のリサイクル性の結果となることから、特に有利であることを発見し示した。本発明の方法は、ポリマーの態様(例えば色)、合体能力、及び脱凝集能力によって評価することができる粉末ポリマー材料(M)の熱エージングが大幅に低減される温度設定で実施される。言い換えれば、粉末材料は熱エージングのそれほど大きな兆候(sign)を示さず、リサイクルし、レーザー焼結3D印刷によって、又はニートの粉末ポリマー材料と組み合わせて、新しい物品を調製するために使用できる。又、処理温度に対して部品床温度(Tb)を下げると、印刷プロセス中に費やされるエネルギー量を減らすのに役立つ。
【0019】
プリンターの動作中、ローラー/ブレードシステム又は同様の装置は、部品床又は部品床に事前に堆積された材料の表面に渡り材料(M)の層を均一に分布させる。いくつかの実施形態では、部品床の上に配置されたレーザー及び走査装置は、プログラムに従って、材料(M)の層に渡りレーザービームを選択的に分布させる。焼結後、部品床は、1つのポリマー層が下げられ、材料(M)の新しい層が、部品床に着座する、事前に堆積された層に堆積される。次いで、部品床が再走査され、3D物体が完成するまでこのプロセスが繰り返される。
【0020】
「部品床温度」という用語は、本明細書では、完成中の部品及び未焼結の材料(M)が、焼結後、3D物体が完成するまで、SLSプリンターの部品床に保持される温度を意味する。この温度は、SLSプリンターの印刷チャンバー内で、完成中の部品及び未焼結の材料(M)の周囲と下部にある、側面センサーと底面センサーによって測定される。この温度は、プリンターのソフトウェア及びハードウェアシステムを介して発熱体によって制御される。
【0021】
本明細書では、「処理温度」という用語は、印刷プロセス中の粉末材料(M)の最上層の温度を意味する。処理温度は、材料(M)の各層が、3D物体の製造方法中に焼結前に部品床の上層で加熱される温度である。この温度は、SLSプリンターの表面センサーによって測定され、プリンターのソフトウェア及びハードウェアシステムを介して個別の発熱体によって制御される。
【0022】
第3の不等式によれば、処理温度(Tp)は、ポリマー(P)の溶融温度(Tm)-40℃とTmの間に厳密に含まれる。
【0023】
第4の不等式によれば、部品床温度(Tb)は、ポリマー(P)のガラス転移温度(Tg)とポリマー(P)の溶融温度(Tm)-40℃の間に厳密に含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、不等式(1)~(4)の少なくとも1つは以下の通りである。
・Tm≧240℃(1)、
・Tm≧250℃(1)、
・Tm≧260℃(1)、
・Tb<Tp-10℃(2)、
・Tm-40℃<Tp<Tm-5℃(3)
・Tg<Tb<Tm-50℃(4)
・Tm-30℃<Tp<Tm-5℃(3)、
・Tm-20℃<Tp<Tm-5℃(3)、
・Tm-15℃<Tp<Tm-5℃(3)、及び/又は
・Tg<Tb<Tc-55℃(4)。
【0025】
材料(M)がPPSに基づく実施形態では、方法は、不等式(5)及び/又は(6)の少なくとも1つが満たされるものであり得る:
・250℃<Tp<290℃(5)
・Tb<250℃(6)、例えばTb<240℃(6)。
【0026】
材料(M)が、PAEK、例えば、PEEK、PEKK又はPEKに基づく実施形態では、方法は、不等式(5)及び/又は(6)の少なくとも1つが満たされるものであり得る:
・300℃<Tp<340℃(5)
・Tb<300℃(6)、例えばTb<290℃(6)。
【0027】
材料(M)がヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合に由来する繰り返し単位を含むPAに基づく実施形態では、方法は、不等式(5)及び/又は(6)の少なくとも1つが満たされるものであり得る:
・220℃<Tp<260℃(5)
・Tb<220℃(6)、例えばTb<210℃(6)。
【0028】
材料(M)がPPAに基づく実施形態では、方法は、不等式(5)及び/又は(6)の少なくとも1つが満たされるものであり得る:
・230℃<Tp<310℃(5)
・Tb<230℃(6)、例えばTb<220℃(6)。
【0029】
SLSプリンターには、部品床の温度を制御するために、発熱体及び様々なセンサー/プローブを備えた部品床を含む第1のチャンバーが含まれる。供給床と呼ばれることもある、第1のチャンバーに隣接する第2のチャンバー又はチャンバーのセットも又、プリンターに含まれ得、印刷プロセス中に使用される材料(M)を保管するために使用され得る。粉末ポリマー材料(M)は、焼結チャンバーに堆積する前に、この供給床で予熱されることができる。粉末材料(M)の予熱は、部品床の上層の温度を処理温度(Tp)に上げるときに克服するために存在する熱勾配を低減又は排除することができる。従って、粉末ポリマー材料(M)は、印刷プロセスの間、供給床温度(Tf)で供給床に保持することができる。従って、本発明の方法は、SLSプリンターの供給床における粉末ポリマー材料(M)を供給床温度(Tf)に予熱する工程を更に含み得る。供給床の温度は、供給チャンバーに配置された少なくとも1つのセンサー/プローブによって測定及び制御される。この実施形態では、供給床温度(Tf)は、処理温度(Tp)よりも低い。言い換えると、以下の不等式が満たされる:Tf<Tp(7)。
【0030】
材料(M)と、特定の床温度(Tb)及び処理温度(Tp)、任意選択で供給床温度(Tf)(プリンターに供給床チャンバー又はチャンバーのセットが装備されている場合)の選択との組み合わせは、未焼結の材料のリサイクルと、新しい3D物体の製造でのその再利用を可能にする。粉末ポリマー材料(M)は、床温度(Tb)及び処理温度(Tp)、任意選択で供給床温度(Tf)への長期暴露による影響をそれほど受けない。調整された床温度と処理温度を使用した印刷物の機械的特性は、より高い温度で印刷された印刷物に匹敵する。これにより、本発明の方法がSLSを介した印刷物に関連するようになるだけでなく(機械的特性が保持される)、使用済み粉末が、結果として得られる印刷物の外観、及び機械的性能(特に、ポリマー材料の期待される性能、例えば、PAEKの強靭さ)に影響を与えることなく、レーザー焼結3D印刷方法での再利用により適したものになる。
【0031】
いくつかの実施形態では、選択的焼結は、高出力エネルギー源、例えば、電磁ビーム源などの高出力レーザー源によって実行される。レーザー出力は、好ましくは30W未満、例えば25W未満、例えば10~25Wの範囲である。
【0032】
一実施形態によれば、本発明の方法は、支持構造体を作製することからなる工程を含まないものである。この実施形態によれば、完成中の3D物体は、支持構造体上に構築されていない。
【0033】
本発明の方法は、3D物体が完成した後の所定の及び/又は制御された冷却工程を含み得る。所定の及び/又は制御された冷却工程は、所定の低速冷却、場合によっては自然(native)(受動)冷却よりも遅い冷却、又は高速冷却を提供するための能動冷却によって実現できる。3D物体は、例えば、0.01~10℃/分、好ましくは0.1~5℃/分、より好ましくは1~5℃/分の冷却速度で、ポリマー又はコポリマー(P)の部品床温度(Tb)からガラス転移温度(Tg)まで冷却され得る。温度制御装置によって設定される冷却速度は、材料(M)に含まれるポリマー、コポリマー、又はポリマーブレンドのタイプに依存する。冷却速度は、3D物体の化学的抵抗及び収縮を伴わずに、3D物体の結晶化度、従って、その機械的特性(例えば、剛性、圧縮強度、衝撃強度、引張り強度及び曲げ強度、破断伸び、並びに熱歪み)を調整するために選択できる。
【0034】
本発明の方法は、ポリマー材料の主要素として半結晶性ポリマー(P)を含む粉末ポリマー材料(M)を使用する。又、材料(M)は、1つ又はいくつかの追加のポリマー(P’、P’’、P’’’…)を含み得る。粉末ポリマー材料(M)は、球形などの規則的な形状又はペレット又は粗い粉末の摩砕/粉砕によって得られる複雑な形状を有することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、粉末材料(M)は、リサイクルされた材料(M’)を含む。「リサイクルされた」とは、3Dプリンターの処理温度にすでに曝されている材料であることを理解する必要がある。いくつかの実施形態では、粉末ポリマー材料(M)は、材料(M)の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも98重量%のリサイクルされた粉末材料(M’)を含む。リサイクルされた粉末材料(M’)/リサイクルされていない粉末材料(M)の比は、例えば、50/50~100/0、好ましくは55/45~99/1、より好ましくは60/40~99/1の範囲であり得る。
【0036】
又、本発明は、3次元(3D)物体、即ち、本発明の方法による3Dプリンターの処理温度に曝された粉末材料を作製するための付加製造方法から得ることができるリサイクルされた粉末材料(M’)に関し、リサイクルされた粉末材料(M’)は、新しい3D物体の製造における粉末材料としての使用に依然完全に適した一組の特性を示している。このようなリサイクルされた粉末材料(M’)は、未使用の純粋な粉末材料(M)とは異なり、その理由は、一般にその特性、例えば、そのメルトフローインデックス(MFI)又はその固有粘度(IV)に影響を与える熱条件に曝されているからである。しかしながら、本発明の印刷プロセス中に使用される条件は、これらの特性が著しく劣化しないものであり、これにより、未焼結の材料をリサイクルし、新しい3D物体の製造に使用することができる。
【0037】
本出願では、
-いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
-要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連する実施形態において、要素又は成分は、個々の列挙された要素又は成分のいずれか1つでもあり得る、又は明示的に列挙された要素又は成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、且つ、
-端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0038】
粉末ポリマー材料(M)
本発明の方法で使用される粉末ポリマー材料(M)は、ASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって測定される、230℃を超える溶融温度(Tm)を有する少なくとも1つのポリマー又はコポリマー(P)を含む。
【0039】
本発明の粉末ポリマー材料(M)は、他の成分を含み得る。例えば、材料(M)は、少なくとも1つの添加剤、とりわけ、流動剤、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、核剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。充填剤は、これに関連して、本来は強化性又は非強化性であることもできる。又、材料(M)は、ポリマー(P)とは異なる1つ又はいくつかの追加のポリマー又はコポリマー(P’、P’’、P”’…)を含み得る。いくつかの実施形態では、材料(M)中のポリマー成分は、1つ又はいくつかの半結晶性ポリマーから本質的になる。他のいくつかの実施形態では、材料(M)中のポリマー成分は、1つの半結晶性ポリマーから本質的になる。
【0040】
流動剤を含む実施形態では、材料(M)中の流動剤の量は、部品材料の総重量に対して、0.01重量%~10重量%の範囲である。
【0041】
充填剤を含む実施形態では、材料(M)中の充填剤の量は、材料(M)の総重量に対して、0.1重量%~50重量%、又は0.5~40重量%、又は1~30重量%の範囲である。適切な充填剤には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、ガラス球、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノファイバー、グラフェン、酸化グラフェン、フラーレン、タルク、ウォラストナイト、マイカ、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭化ケイ素、タングステン酸ジルコニウム、窒化ホウ素及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の材料(M)は、粉末ポリマー材料(M)の総重量に基づいて、50~99.9重量%、60~99.8重量%、70~99.7重量%、又は80~99.6重量%の、ASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)で測定される、230℃を超える溶融温度(Tm)を有する少なくとも1つのポリマー(P)を含む。
を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の材料(M)は、粉末ポリマー材料(M)の総重量に基づいて、0.1~50重量%の少なくとも1つの添加剤、又は0.1~28重量%又は0.5~25重量%の少なくとも1つの添加剤を含み、例えば、流動剤、充填剤、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、可塑剤、難燃剤(ハロゲン難燃剤及びハロゲンフリー難燃剤など)、核剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、加工助剤、ナノ充填剤及び電磁吸収剤からなる群から選択される。
【0044】
ポリマー又はコポリマー(P)は、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、半芳香族、半結晶性ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、又は、ポリフタルアミド(PPA)、半芳香族ポリエステル及び芳香族ポリエステル(PE)、並びにこれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択され得、それは、好ましくは、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリフタルアミド(PPA)及びポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる群から選択される。
【0045】
PがPAEKである場合、それは、好ましくは、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、PEEKとポリ(ジフェニルエーテルケトン)のコポリマー(PEEK-PEDEKコポリマー)、並びにこれらのコポリマー及び混合物、更に好ましくはPEEK又はPEKKからなる群から選択される。
【0046】
PがPEである場合、それは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)、液晶ポリエステル(LCP)、並びにこれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択される。
【0047】
PがPA又はPPAである場合、それは、好ましくは、以下の通りであるジアミン/二酸の組み合わせの縮合に由来する少なくとも1つの繰り返し単位を含む:6/6、4/6、4/10、4/T、10/6、6/C、6/T、6/N、9/T、9/N、9/C、10/T、10/C、10/N、PXD/6、PXD/10、PXD/12、PXD/14、PXD/16、PXD/18、MXD/6、BAC/6、BAC/10、BAC/T、BAC/C、及びBAC/12、並びにこれらのコポリマー及び混合物。
【0048】
ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)
本明細書で使用される場合、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、Ar’-C(=O)-Ar基(式中、互いに等しい又は異なる、Ar’及びArは、芳香族基であり、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)を含む繰り返し単位(RPAEK)を含む任意のポリマーを示す。繰り返し単位(RPAEK)は、以下の式(J-A)~式(J-D)の単位からなる群から選択される:
【化1】
(式中、R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
j’は、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)。
【0049】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、繰り返し単位(RPAEK)においてR’とは異なる他の部位への1,2-、1,4-又は1,3-結合を有し得る。好ましくは、フェニレン部位は、1,3-又は1,4-結合を有し、より好ましくは、1,4-結合を有する。
【0050】
繰り返し単位(RPAEK)において、フェニレン部位がポリマーの主鎖を連結するもの以外の他の置換基を有さないように、j’は、好ましくは、各位置においてゼロである。
【0051】
一実施形態によれば、PAEKは、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)である。
【0052】
本明細書で使用される場合、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づいて、式(J-A)の繰り返し単位(RPEEK)を含む任意のポリマーを示す:
【化2】
(式中、
R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
j’は、各R’について、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3、又は4)である)。
【0053】
式(J-A)によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各芳香環は、1~4のラジカル基R’を含み得る。j’が0である場合、対応する芳香環は、いかなるラジカル基R’も含まない。
【0054】
繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部位は、互いに独立して、他のフェニレン部位への1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。一実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部位は、互いに独立して、他のフェニレン部位への1,3-又は1,4-結合を有する。更に別の実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部位は、他のフェニレン部位への1,4-結合を有する。
【0055】
一実施形態によれば、R’は、上の式(J-A)中での各位置において、1つ以上のヘテロ原子を任意選択で含む、C1~C12部位、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン並びに4級アンモニウム基からなる群から独立して選択される。
【0056】
一実施形態によれば、j’は、各R’についてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)は、式(J’-A):
【化3】
である。
【0057】
本開示の別の実施形態によれば、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)は、少なくとも10モル%の式(J-A’’):
【化4】
の繰り返し単位(RPEEK)(モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)を含む任意のポリマーを示す。
【0058】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも10モル%(ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は全てのPEEK中の繰り返し単位は、式(J-A)、(J’-A)及び/又は(J’’-A)の繰り返し単位(RPEEK)である。
【0059】
従って、PEEKポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。PEEKポリマーがコポリマーである場合、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0060】
PEEKがコポリマーである場合、式(J-D):
【化5】
(式中、
R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
j’は、各R’について、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)の繰り返し単位などの、繰り返し単位(RPEEK)とは異なり、且つこの繰り返し単位に加えて、繰り返し単位(R PEEK)からなり得る。
【0061】
式(J-D)によれば、繰り返し単位(R PEEK)の各芳香環は、1~4のラジカル基R’を含み得る。j’が0である場合、対応する芳香環は、いかなるラジカル基R’も含まない。
【0062】
一実施形態によれば、R’は、上の式(J-B)中での各位置において、1つ以上のヘテロ原子を任意選択で含む、C1~C12部位、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び4級アンモニウム基からなる群から独立して選択される。
【0063】
一実施形態によれば、j’は、各R’についてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R PEEK)は、式(J’-D):
【化6】
に従う。
【0064】
本開示の別の実施形態によれば、繰り返し単位(R*PEEK)は、式(J’’-D):
【化7】
に従う。
【0065】
本開示の一実施形態によれば、90モル%未満(ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)、80モル%未満、70モル%未満、60モル%未満、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、%未満、1モル%未満、又は全てのPEEK中の繰り返し単位は、式(J-B)、(J’-B)、及び/又は(J’’-B)の繰り返し単位(R PEEK)である。
【0066】
一実施形態によれば、PEEKポリマーは、PEEK-PEDEKコポリマーである。本明細書で使用される場合、PEEK-PEDEKコポリマーは、式(J-A)、(J’-A)、及び/又は(J’’-A)の繰り返し単位(RPEEK)と、式(J-B)、(J’-B)又は(J’’-B)の繰り返し単位(R PEEK)(本明細書では、繰り返し単位((RPEDEK))とも呼ばれる)と、を含むポリマーを示す。PEEK-PEDEKコポリマーは、95/5~5/95、90/10~10/90、又は85/15~15/85の範囲の繰り返し単位(RPEEK/RPEDEK)の相対モル比を含み得る。繰り返し単位(RPEEK)と(RPEDEK)との合計は、例えば、PEEKコポリマー中の繰り返し単位の、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%を表すことができる。繰り返し単位(RPEEK)と(RPEDEK)との合計は又、PEEKコポリマー中の繰り返し単位の100モル%を表すことができる。
【0067】
欠陥、末端基及びモノマーの不純物は、ポリマー組成物(C1)中のポリマーの性能に望ましくない影響を与えることなく、本開示のポリマー(PEEK)に非常にわずかな量で組み込まれることができる。
【0068】
PEEKは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.からKetaSpire(登録商標)PEEKとして市販されている。
【0069】
PEEKは、当技術分野において公知の任意の方法によって調製することができる。それは、例えば、塩基の存在下での4,4’-ジフルオロベンゾフェノンとヒドロキノンとの縮合から生じることができる。モノマー単位の反応器は、求核芳香族置換によって起こる。分子量(例えば重量平均分子量Mw)は、モノマーモル比の調整、及び重合の収率の尺度(例えば、反応混合物を撹拌する羽根車のトルクの尺度)であり得る。
【0070】
本開示の一実施形態によれば、PEEKポリマーは、(ポリスチレン標準を使って、160℃でフェノール及びトリクロロベンゼン(1:1)を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される)75,000~100,000g/モル、例えば77,000~98,000g/モル、79,000~96,000g/モル、81,000~95,000g/モル、又は85,000~94,500g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0071】
本発明の粉末ポリマー材料(M)は、Mの総重量に基づいて、55~95重量%、例えば60未満~90重量%の量でPEEKを含み得る。
【0072】
本発明によれば、PEEKのメルトフローレイト又はメルトフローインデックス(ASTM D1238に従って2.16kgの荷重下にて400℃での)(MFR又はMFI)は、1~60g/10分、例えば、2~50g/10分又は2~40g/10分であり得る。
【0073】
別の実施形態では、PAEKは、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)である。
【0074】
本明細書で使用される場合、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)は、50モル%超の式(J-B)及び(J-B)の繰り返し単位を含むポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく:
【化8】
(式中
及びRは、各場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
i及びjは、各場合に、0~4の範囲の独立して選択される整数である)。
【0075】
一実施形態によれば、R及びRは、上の式(J-B)及び(J-B)中で、各位置において、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含む、C1~C12部位、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び4級アンモニウム基からなる群から独立して選択される。
【0076】
別の実施形態によれば、i及びjは、各R及びR基についてゼロである。この実施形態によれば、PEKKポリマーは、少なくとも50モル%の式(J’-B)及び(J’-B)の繰り返し単位を含み、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく。
【化9】
【0077】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は全てのPEKK中の繰り返し単位は、式(J-B)及び(J-B)の繰り返し単位である。
【0078】
本開示の一実施形態によれば、PEKKポリマーにおいて、繰り返し単位(J-B)又は/及び(J’-B)対繰り返し単位(J-B)又は/及び(J’-B)のモル比は、少なくとも1:1~5.7:1、例えば少なくとも1.2:1~4:1、少なくとも1.4:1~3:1又は少なくとも1.4:1~1.86:1である。
【0079】
PEKKポリマーは、好ましくは、濃HSO(最小96重量%)中の0.5重量/体積%溶液において30℃でASTM D2857に従って測定される、1グラム当たり少なくとも0.50デシリットル(dL/g)、例えば、少なくとも0.60dL/g又は少なくとも0.65dL/g、及び例えば多くとも1.50dL/g、多くとも1.40dL/g、又は多くとも1.30dL/gの固有粘度を有する。
【0080】
PEKKは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.からNovaSpire(登録商標)PEKKとして市販されている。
【0081】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)
本明細書で使用される場合、ポリフェニレンスルフィド(PPS)は、少なくとも50モル%(モル%は、PPSポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)の式(U):
【化10】
(式中、
Rは、ハロゲン、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基、及びC~C18アリールオキシ基からなる群から独立して選択され、
iは、独立して、ゼロ又は1~4の整数である)の繰り返し単位(RPPS)を含む任意のポリマーを示す。
【0082】
式(U)によれば、繰り返し単位(RPPS)の芳香環は、1~4のラジカル基Rを含み得る。iがゼロである場合、対応する芳香環は、いかなるラジカル基Rも含まない。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、PPSポリマーは、iがゼロである、少なくとも50モル%の式(U’):
【化11】
の繰り返し単位(RPPS)を含む任意のポリマーを示す。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、PPSポリマーは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%のPPS中の繰り返し単位が、式(U)又は(U’)の繰り返し単位(RPPS)であるものである。モル%は、PPSポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、PPSポリマーは、100モル%の繰り返し単位が、式(U)又は(U’)の繰り返し単位(RPPS)であるものである。この実施形態によれば、PPSポリマーは、式(U)又は(U’)の繰り返し単位(RPPS)から本質的になる。
【0086】
PPSは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.から商標名Ryton(登録商標)PPSで市販されている。
【0087】
PPSのメルトフローレイト(ASTM D1238、手順Bに従って5kgの重量下で316℃での)は、50~400g/10分、例えば60~300g/10分又は70~200g/10分であり得る。
【0088】
ポリアミド(PA)及びポリフタルアミド(PPA)
PがPA又はPPAである場合、それは、好ましくは、以下の通りであるジアミン/二酸の組み合わせの縮合に由来する少なくとも1つの繰り返し単位を含む:6/6、4/6、4/10、4/T、10/6、6/C、6/T、6/N、9/T、9/N、9/C、10/T、10/C、10/N、PXD/6、PXD/10、PXD/12、PXD/14、PXD/16、PXD/18、MXD/6、BAC/6、BAC/10、BAC/T、BAC/C、及びBAC/12、並びにこれらのコポリマー及び混合物。
【0089】
本明細書で使用される場合、ポリフタルアミド(PPA)は、少なくともフタル酸と少なくとも脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される少なくとも50モル%(ポリマー中の総モル数に基づいて)の繰り返し単位(RPPA)を含む任意のポリマーを示す。フタル酸は、例えば、o-フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸からなる群から選択することができる。脂肪族ジアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-メチルオクタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ジアミノブタンからなる群から選択することができる。C6ジアミン、特にヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0090】
ポリフタルアミド(PPA)の中で、ポリテレフタルアミド(PTPA)が好ましい。ポリテレフタルアミドは、少なくとも50モル%の、少なくともテレフタル酸(TPA)と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される繰り返し単位(RPTPA)を含む芳香族ポリアミドである。
【0091】
第1の実施形態によれば、ポリテレフタルアミド(PTPA)は、少なくともテレフタル酸(TPA)と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%又は少なくとも99モル%の繰り返し単位(RPTPA)を含む。この実施形態によれば、好ましいジアミンは、C6ジアミン及び/又はC9ジアミン及び/又はC10ジアミンである。
【0092】
第2の実施形態によれば、ポリテレフタルアミド(PTPA)は、テレフタル酸(PTA)、イソフタル酸(IPA)及び少なくとも1つの脂肪族ジアミンの重縮合によって形成される繰り返し単位を含む。この実施形態によれば、好ましいポリテレフタルアミドは、少なくとも50モル%の、60:40~90:10(モル%)の範囲のモル比での、テレフタル酸(PTA)と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される繰り返し単位及びイソフタル酸(IPA)と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される繰り返し単位を含む又はそれらから本質的になる。
【0093】
第3の実施形態によれば、ポリテレフタルアミド(PTPA)は、テレフタル酸(TPA)、少なくとも1つの脂肪族二酸及び少なくとも1つの脂肪族ジアミンの間の重縮合反応によって形成される繰り返し単位を含む。脂肪族二酸は、例えば、アジピン酸及びセバシン酸からなる群から選択することができる。アジピン酸が好ましい。この実施形態によれば、好ましいポリテレフタルアミドは、少なくとも50モル%の、55:45~75:25(モル%)の範囲のモル比での、テレフタル酸(TPA)と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される繰り返し単位及び少なくとも1つの脂肪族二酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される繰り返し単位を含む又はそれらから本質的になる。
【0094】
第4の実施形態によれば、ポリテレフタルアミド(PTPA)は、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、少なくとも1つの脂肪族二酸及び少なくとも1つの脂肪族ジアミンの重縮合によって形成される繰り返し単位を含む。脂肪族二酸は、例えば、アジピン酸及びセバシン酸からなる群から選択することができる。アジピン酸が好ましい。この実施形態によれば、好ましいポリテレフタルアミドは、少なくとも50モル%の、テレフタル酸(TPA)と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される繰り返し単位(R1)、イソフタル酸(IPA)と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される繰り返し単位(R2)、及び少なくとも1つの脂肪族二酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合によって形成される繰り返し単位(R3)を含む又はそれらから本質的になる。この場合に、繰り返し単位のモル比(R1):(R2)+(R3)は、55:45~75:25(モル%)の範囲であり得、モル比(R2):(R3)は、60:40~85:15の範囲であり得る。
【0095】
ポリフタルアミド(PPA)は半結晶性である。PPAの融点は、275℃超、好ましくは290℃超、より好ましくは305℃超、更により好ましくは320℃超であり得る。
【0096】
PPAは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.から商標名Amodel(登録商標)で市販されている。
【0097】
半芳香族及び芳香族ポリエステル(PE)
本明細書で使用される場合、半芳香族又は芳香族ポリエステルは、少なくとも50モル%の、式R-COO-Rの少なくとも1つのエステル部位と少なくとも1つの芳香族部位とを含む繰り返し単位(RPE)を含む任意のポリマーを示す。
【0098】
本発明のポリエステルは、少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つのカルボン酸基とを含む芳香族モノマー(MA)の重縮合によって、又はモノマー(MB)又は(MC)の少なくとも1つが芳香族部位を含む状態での、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのモノマー(MB)(ジオール)と少なくとも2つのカルボン酸基を含む少なくとも1つのモノマー(MC)(ジカルボン酸)との重縮合によって得ることができる。
【0099】
モノマー(MA)の非限定的な例には、4ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸が含まれる。
【0100】
モノマー(MB)の非限定的な例には、1,4シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコールが含まれるが、1,4シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコールが好ましい。
【0101】
モノマー(MC)の非限定的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、セバシン酸、及びアジピン酸が挙げられるが、テレフタル酸及びシクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
【0102】
モノマーの選択に応じて、ポリエステル(PE)は完全に半芳香族又は全芳香族のいずれかであり得る。これらは、コポリマー又はホモポリマーであり得る。
【0103】
一実施形態によれば、本発明の組成物のポリエステルがコポリマーである場合、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%の繰り返し単位は、テレフタル酸の重縮合によって得られる。
【0104】
別の実施形態によれば、本発明の組成物のポリエステルがコポリマーである場合、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%の繰り返し単位は、テレフタル酸と1,4-シクロヘキシレンジメタノールとの重縮合によって得られる。
【0105】
本発明の組成物のポリエステルがホモポリマーである場合、それは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ(1,4シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)、及び液晶ポリエステル(LCP)からなる群から選択され得る。それは、好ましくはPCT(即ち、テレフタル酸と1,4-シクロヘキシレンジメタノールの重縮合によって得られるホモポリマー)である。
【0106】
本明細書で使用されるポリエステルは、有利には、60:40のフェノール/テトラクロロエタン混合物又は類似した溶媒中で約30℃において測定される、約0.6~約2.0dl/gの固有粘度数を有する。本発明のために特に適切なポリエステルは、0.6~1.4dl/gの固有粘度数を有する。
【0107】
PEの溶融温度(Tm)は、240℃より高くあり得、更により好ましくは280℃より高くあり得る。
【0108】
任意選択の成分
本発明の粉末ポリマー材料(M)は、時に流動助剤とも呼ばれる流動剤を更に含み得る。この流動剤は、例えば、親水性であり得る。親水性流動助剤の例は、シリカ、アルミナ及び酸化チタンからなる群からとりわけ選択される無機顔料である。ヒュームドシリカを挙げることができる。
【0109】
ヒュームドシリカは、商標名Aerosil(登録商標)(Evonik)及びCab-O-Sil(登録商標)(Cabot)で市販されている。
【0110】
本発明の一実施形態によれば、粉末ポリマー材料(M)は、0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、より好ましくは0.25~1重量%の流動剤、例えばヒュームドシリカを含む。
【0111】
これらのシリカは、ナノメートルの一次粒子(ヒュームドシリカについては、典型的には5~50nm)で構成される。これらの一次粒子は、結合して凝集体を形成する。流動剤としての使用において、シリカは、様々な形態(基本粒子及び凝集体)で見出される。
【0112】
本発明の粉末ポリマー材料(M)は、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料、加工助剤、染料、充填剤、ナノ充填剤又は電磁気吸収剤などの1つ又はいくつかの添加剤を更に含み得る。これらの任意選択の添加剤の例は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ又は硫化亜鉛、ガラス繊維、炭素繊維である。
【0113】
本発明の粉末ポリマー材料(M)は、ハロゲン難燃剤及びハロゲンフリー難燃剤などの難燃剤を更に含み得る。
【0114】
本発明の方法で使用される粉末ポリマー材料(M)の作製方法は、a)いくつかが使用される場合、例えば、ポリマーをブレンド配合するなど、材料(M)がいくつかのポリマー又はコポリマーを含む場合に、材料(M)の成分を一緒に混合する工程と、b)イソプロパノール中でのレーザー散乱により測定される、20から100μmの範囲のd50値を有する粉末ポリマー材料(M)を得るために、例えばペレットの形態で、得られたブレンドされた配合物を摩砕する工程と、を含み得る。D50とも呼ばれるd50は、粒径分布の中央径又は中央値として知られ、それは、累積分布での50%における粒径の値である。これは、試料中の粒子の50%がd50値よりも大きく、試料中の粒子の50%がd50値よりも小さいことを意味する。D50は、通常、粒子の群の粒径を表すために用いられる。
【0115】
本発明によれば、粉末は、イソプロパノール中でのレーザー散乱により測定される、20μm~100μm、好ましくは30μm~80μm、又は35μm~70μm、又は40μm~60μmに含まれるd50値を有する。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノール中でのレーザー散乱により測定される、120μm未満のd90値を有する。一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノール中でのレーザー散乱により測定される、115μm未満、好ましくは110μm未満又は105μm未満のd90値を有する。
【0117】
本発明の一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノール中でのレーザー散乱により測定される、15μmより高いd10値を有する。一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノール中でのレーザー散乱により測定される、20μmより高い、好ましくは25μmより高い又は28μmより高いd10値を有する。
【0118】
ブレンドされた配合物のペレットは、例えば、ピン付きディスクミル、分級器付きジェットミル/流動化ジェットミル、インパクトミルプラス分級器、ピン/ピン-ビーターミル又は湿式摩砕ミル、又はこれらの装置の組み合わせで摩砕することができる。
【0119】
ブレンドされた配合物のペレットは、工程c)の前に、材料が脆くなる温度よりも下の、例えば、摩砕される前に25℃よりも下の温度に冷却することができる。
【0120】
摩砕する工程は、冷却を追加して行うこともできる。冷却は、液体窒素又はドライアイスを用いて行うことができる。
【0121】
摩砕された粉末は、好ましくは、空気セパレーター又は分級器で分離して、所定の分画スペクトルを得ることができる。
【0122】
粉末ポリマー材料(M)の作製方法は、粉末ポリマー材料(M)又はポリマー(P)を、ポリマー(P)、例えば、PAEKポリマーのガラス転移温度(Tg)の範囲の温度(Ta)、及びポリマー(P)、例えば、PAEKポリマーの溶融温度(Tm)に曝露することからなる工程を更に含み得、Tg及びTmの両方は、ASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定される。温度Taは、ポリマー(P)、例えば、PAEKポリマーのTgより少なくとも20℃高くなるように、例えば、ポリマー又はコポリマー(P)、例えば、PAEKポリマーのTgより少なくとも30、40又は50℃高くなるように選択することができる。温度Taは、ポリマー(P)、例えば、PAEKポリマーのTmより少なくとも5℃低くなるように、例えば、ポリマー(P)、例えば、PAEKポリマーのTmより少なくとも10、20又は30℃低くなるように選択することができる。材料(M)又はポリマー又はコポリマー(P)の温度Taへの暴露は、例えば、熱処理によることができ、オーブン(静的、連続、バッチ、対流)、流動床ヒーターで行うことができる。代わりに、温度Taへの粉末の曝露は、電磁放射線又は粒子放射線での放射によることができる。熱処理は、空気下又は不活性雰囲気下で行うことができる。好ましくは、熱処理は、不活性雰囲気下、より好ましくは2%未満の酸素を含む雰囲気下で行われる。
【0123】
粉末ポリマー材料(M)の作製方法は、当業者に知られている装置を使用して、粉末ポリマー材料(M)を機械的に緻密化することからなる工程を更に含み得る。
【0124】
リサイクルされた粉末材料(M’)
粉末材料を3D物体に処理し、次いで3D物体が完成するまでそれを維持するために使用される印刷温度の調整は、SLSによる良好な3D物体の製造、及び未焼結の粉末材料(M’)のリサイクルを可能にするものである。
【0125】
これにより、本発明は、3次元(3D)物体を作製するための付加製造方法から得ることができる、リサイクルされた粉末材料(M’)に関する。印刷プロセス中に使用される温度は、本発明の実施例で実証されるように、M’がMと同一ではないように、純粋な粉末材料(M)の特性に影響を与えるものである。本発明者らは、実際に、粉末材料のメルトフローインデックス(MFI)又は固有粘度(IV)が、プロセスの処理温度によって、しかし印刷後の未焼結の粉末のメルトフローインデックス(MFI)の変化を測定することによって、影響を受けることを実証している。本発明の方法で使用される粉末材料は、本発明で規定される印刷条件によって影響を受けるが、特性への影響は、本方法の範囲外の印刷条件と比較して著しく低い。
【0126】
いくつかの実施形態では、リサイクルされた粉末材料(M’)は、90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下のΔMFI
(ΔMFI=100x|(MFIt0-MFIt1)/MFIt0|、
式中、
MFIは、ASTM D-1238によって測定されるメルトフローインデックスであり、
MFIt0は、印刷前の粉末のMFIであり、
MFIt1は、印刷後の未焼結の粉末のMFIである)を有する。
【0127】
ポリマーのメルトフローインデックスは、ASTM D-1238に従って、以下の重量と温度を使用して測定される:PPSの場合、重量は5kg、及び温度は316℃であり、PAEKの場合、重量は2.16kg、及び温度は420℃であり、PEEKの場合、重量は2.16kg、及び温度は400℃であり、PPAの場合、重量は2.16kg、及び温度は343℃である。
【0128】
いくつかの実施形態では、リサイクルされた粉末材料(M’)は、固有の粘度変化、又は50%以下、好ましくは40%未満、より好ましくは75%未満のΔIV
(ΔIV=100x|(IVt0-IVt1)/IVt0|、
式中、
IVは、ASTM D-5336によって測定される固有粘度であり、
IVt0は、印刷前の粉末のIVであり、
IVt1は、印刷後の未焼結の粉末のIVである)を有する。
【0129】
3D物体及び物品
製造のこうした方法によって得ることができる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式装置、医療装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な形状部品並びに自動車工業におけるボンネット下部品を挙げることができる。
【0130】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0131】
本開示は、ここで、以下の実施例に関連してより詳細に記載されるが、それらの目的は、例示的であるに過ぎず、本開示の範囲を限定することを意図してない。
【0132】
出発材料
PPS:カルシウム含有量=56ppmのポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーを、以下に記載する方法に従って調製した。
PPSは、米国特許第3,919,177号明細書及び米国特許第4,415,729号明細書に記載の方法に従って合成し、反応混合物から回収し、60℃で少なくとも5分間脱イオン水で洗浄し、次いで60℃で少なくとも5分間、6.0未満のpHを有する酢酸水溶液と接触させ、その後、60℃において脱イオン水で濯いだ。
【0133】
【表1】
【0134】
PAEK:ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ポリマーは、EOS PEEK HP3ポリアリールエーテルケトン粉末の製品名で、North America、Inc.のEOSから商業的に入手した。
【0135】
【表2】
【0136】
PEEK:ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリマーは、以下に記載する方法に従って調製した。
攪拌機、N2注入管、反応媒体中に入れられた熱電対付きのクライゼンアダプター、並びに縮合器及びドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを装着した500mlの4口反応フラスコに、128gのジフェニルスルホン、28.6gのp-ヒドロキノン、及び57.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを導入した。
【0137】
反応混合物を150℃までゆっくり加熱した。150℃で28.43gの乾燥NaCOと0.18gの乾燥KCOとの混合物を30分に渡り粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加の終了時、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。
【0138】
15~30分後、ポリマーが予想Mwを有するとき、反応器で窒素パージを維持しながら、6.82gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応混合物に導入することによって反応を止めた。5分後、0.44gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に別の2.27gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物をその温度で15分間維持した。続いて、反応器の内容物を冷却した。固体を砕いて摩砕した。塩の濾過、洗浄、及び乾燥によってポリマーを回収した。
【0139】
【表3】
【0140】
PPA:高性能9/T系半芳香族ポリアミド(PPA)ポリマーは、Genestar(商標)GC98018の製品名でKuraray Company,LTDから入手した。
【0141】
【表4】
【0142】
Cab-O-Sil(登録商標)M-5は、Cabot Corporationから市販されているヒュームドシリカである。
【0143】
粉末の調製
粉末は、ローターミルを使用した機械的摩砕によってPPS出発材料から生成された。次いで、PPSをドラムローリングで0.3%のヒュームドシリカとブレンドし、No.120メッシュの引張りボルト締め布(孔径147μm)でふるいにかけた。
【0144】
【表5】
【0145】
PAEK材料は、以前より粉末の形態で商業的に入手した。
【0146】
【表6】
【0147】
粉末は、ローターミルを使用した機械的摩砕によってPEEK出発材料から生成された。次いで、PEEKをドラムローリングで0.3%のヒュームドシリカとブレンドし、No.100U.S.のふるい(孔径150μm)でふるいにかけた。
【0148】
【表7】
【0149】
粉末は、極低温摩砕条件下でのジェットミルを介してPPA出発材料から生成された。次いで、PPAを、ドラムローリングで0.3%のヒュームドシリカとブレンドし、No.100U.S.のふるい(孔径150μm)でふるいにかけた。
【0150】
【表8】
【0151】
試験方法
*熱転移(Tg、Tm、Tc)
ポリマーのガラス転移、溶融及び結晶化温度は、20℃/分の加熱及び冷却速度を使用するASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定した。各DSC試験に3つの走査を使用した:最高温度までの第1の加熱、次に30℃までの第1の冷却、次に最高温度までの第2の加熱。Tmは、第1の加熱から決定される。Tcは、第1の冷却から決定される。Tgは、第2の加熱から決定される。PPS材料の場合、最高温度は350℃であった。PAEK及びPEEK材料の場合、最高温度は、400℃であった。キャリアガス(純度99.998%、50mL/分)として窒素を使用して、TA Instruments DSC Q20でDSCを実行した。
【0152】
*メルトフローインデックス(MFI)
ポリマーのメルトフローインデックスは、ASTM D-1238に従って、以下の重量と温度を使用して測定した:PPSの場合、5kgの重量と316℃の温度を使用し、PAEKの場合、2.16kgの重量と420℃の温度を使用し、PEEKの場合、2.16kgの重量と400℃の温度を使用し、PPAの場合、2.16kgの重量と343℃の温度を使用した。測定は、Dynisco 4001メルトフローインデクサーで実施した。
【0153】
*固有粘度(IV)
ポリマーの固有粘度は、ASTM D-5336に従って測定した。ポリマーをフェノール-テトラクロロエタン(P:TCE=60:40)に溶解し、100℃で45分間加熱した。冷却後、分注ポンプとオートサンプラーを備えたViscotek粘度計(Y500シリーズ)に溶液を注入した。次いで、この装置によって、溶媒ブランクとPPA溶液の差圧に基づいて試料IVを決定した。
【0154】
*PSD(d0.5、d0.1、d0.9
粉末ポリマー材料のPSD(体積分布)は、湿式モード(128チャネル、0.0215~1408μm)でのレーザー散乱Microtrac S3500分析器を用いて、3回実験の平均によって決定した。溶媒は、屈折率1.38のイソプロパノールであり、粒子は、PPS、PAEK、及びPEEKで1.59の屈折率、PPAで1.53の屈折率を有すると想定された。超音波モードが可能にされ(25W/60秒)、流量は、55%に設定された。
【0155】
*機械的試験
ASTMタイプIの引張り棒は、ASTM D638に従って試験され、報告された結果は、5本の棒の平均である。
【0156】
*離解
未焼結の粉末は、印刷後に印刷された部品から分離され、粉末粒子を自由流動性の形態に戻すための潜在的なリサイクル性の尺度である、離解について評価された。
この場合、以下の定義を使用して未焼結の粉末を評価できる:
1=容易な離解:未焼結の粉末の粉末粒子は、密接に共に会合しておらず、粉末は、非常に容易に自由流動性の粉末に戻すことができる。
2=困難な離解:未焼結の粉末の粉末粒子は密接に共に会合しているが、従来のふるい分けによって簡単に分解することができる。印刷は、EOSINT(登録商標)P800SLSプリンターで行われ、処理温度と床温度は実施例によって異なる(以下を参照)。その他の関連する印刷設定には、17ワットのハッチレーザー出力、8.5ワットの輪郭レーザー出力、2.65m/秒のレーザー速度、及び10℃/分未満の印刷完了後の冷却速度が含まれる。粉末を焼結してASTMタイプIの引張り棒にした。
【0157】
結果
【0158】
【表9】
【0159】
実施例1cは、比較であり、不等式(4)は満たされていない。
【0160】
実施例2は、本発明であり、全ての不等式(1)~(4)は満たされている。
【0161】
実施例3cは、比較であり、不等式(2)及び(3)は満たされていない。
【0162】
部品床温度を273℃から200℃に下げると(E2対E1c)、同じ大きさの引張り強度が達成される。本発明の実施例E2のMFI変化(又はΔMFI)は、比較例E1cと比較して著しく低く、これは、本発明の方法の熱条件が適用される場合にMFIが維持されることを意味する。本発明の実施例E2の熱条件下で印刷が実行された場合、印刷後の未焼結の粉末の離解はより容易である。更に、未焼結の粉末は、より良い様相を有している(薄い茶色対濃い茶色)。部品床の温度(Tb)を下げると、PPSの安定性、PPS材料の寿命及びリサイクル性に有益な効果があり、印刷プロセス中のエネルギー消費が削減されるだけでなく、印刷物の機械的性能を維持できる。
【0163】
しかしながら、比較例E3cは、部品床温度(Tb)と処理温度(Tp)の両方を200℃に下げると、現在焼結している層が即座に結晶化しカールし始めることを実証している。これにより、印刷が失敗し、印刷を続行できなくなる。
【0164】
【表10】
【0165】
実施例4cは、比較であり、不等式(4)は満たされていない。
【0166】
実施例5は、本発明であり、全ての不等式(1)~(4)は満たされている。
【0167】
実施例6cは、比較であり、不等式(2)及び(3)は満たされていない。
【0168】
部品床温度を345℃から275℃に下げると(E5対E4c)、及び標準偏差を考慮すると、同じ大きさの引張り強度が達成される。本発明の実施例E5のMFI変化(又はΔMFI)は、比較例E4cと比較して低く、これは、本発明の方法の熱条件が適用される場合にMFIが維持されることを意味する。部品床の温度(Tb)を下げると、PAEKの安定性とPAEK材料のリサイクル性に有益な効果があり、印刷プロセス中のエネルギー消費が削減されるだけでなく、印刷物の機械的性能を維持できる。
【0169】
しかしながら、比較例E6cは、部品床温度(Tb)と処理温度(Tp)の両方を275℃に下げると、現在焼結している層が即座に結晶化しカールし始めることを実証している。これにより、印刷が失敗し、印刷を続行できなくなる。
【0170】
【表11】
【0171】
実施例7cは、比較であり、不等式(4)は満たされていない。
【0172】
実施例8は、本発明であり、全ての不等式(1)~(4)は満たされている。
【0173】
実施例9cは、比較であり、不等式(2)及び(3)は満たされていない。
【0174】
部品床温度を305℃から250℃に下げると(E8対E7c)、同じ大きさの引張り強度が達成される。本発明の実施例E8のMFI変化(又はΔMFI)は、比較例E7cと比較して低く、これは、本発明の方法の熱条件が適用される場合にMFIが維持されることを意味する。部品床の温度(Tb)を下げると、PEEKの安定性とPEEK材料のリサイクル性に有益な効果があり、印刷プロセス中のエネルギー消費が削減されるだけでなく、印刷物の機械的性能を維持できる。
【0175】
しかしながら、比較例E9cは、部品床温度(Tb)と処理温度(Tp)の両方を250℃に下げると、現在焼結している層が即座に結晶化しカールし始めることを実証している。これにより、印刷が失敗し、印刷を続行できなくなる。
【0176】
【表12】
【0177】
実施例10cは、比較であり、不等式(4)は満たされていない。
【0178】
実施例11は、本発明であり、全ての不等式(1)~(4)は満たされている。
【0179】
実施例12cは、比較であり、不等式(2)及び(3)は満たされていない。
【0180】
部品床温度を245℃から190℃に下げると(E10c対E11)、本発明の実施例E11のIVは、わずか19.5%の変化(又はΔIV)を実証している。又、比較例E10cのIVは、材料を溶液に溶解できなかったため、測定できない。これは、PPAの安定性に重大な悪影響があることを示している。部品床の温度(Tb)を下げると、PPAの安定性とPPA材料のリサイクル性に有益な効果があるだけでなく、印刷プロセス中のエネルギー消費が削減される。
【0181】
しかしながら、比較例E12cは、部品床温度(Tb)と処理温度(Tp)の両方を190℃に下げると、現在焼結している層が即座に結晶化しカールし始めることを実証している。これにより、印刷が失敗し、印刷を続行できなくなる。
【国際調査報告】