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特表2022-545638鉄促進化ゼオライトおよびそれから作製された触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】鉄促進化ゼオライトおよびそれから作製された触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20221021BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221021BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221021BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221021BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221021BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20221021BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01J35/04 301J
B01J35/04 301E
B01D53/94 222
B01D53/94 228
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/022 C
F01N3/035 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508912
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 US2020045837
(87)【国際公開番号】W WO2021041024
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/893,543
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ジェフ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ロス,スタンリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハフ,ロビン エム
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA17
3G091GA06
3G091GB09W
3G091GB10W
3G091HA09
3G091HA10
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3G190CB19
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4G169ZD03
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
本開示は、選択的触媒還元(SCR)触媒を形成する方法を提供し、この方法は、第1の鉄含有量を有する第1の鉄促進化ゼオライトを受け取ることと、イオン交換ステップにおいてこの鉄促進化ゼオライトを追加の鉄で処理して第2の鉄含有量を有する第2の鉄促進化ゼオライトを形成することとを含み、第2の鉄含有量は第1の鉄含有量よりも高い。鉄促進化ゼオライトの総重量に基づいて、少なくとも約6重量パーセントの鉄を有する鉄促進化ゼオライトを含む選択的触媒還元(SCR)触媒組成物であって、ゼオライトの鉄含有量が、少なくとも2つの別々のステップでゼオライトに添加された、SCR触媒組成物も本明細書に提供されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的触媒還元(SCR)触媒を形成する方法であって、
第1の鉄含有量を有する第1の鉄促進化ゼオライトを受け取ることと、
イオン交換ステップにおいて前記鉄促進化ゼオライトを追加の鉄で処理して、第2の鉄含有量を有する第2の鉄促進化ゼオライトを形成することと、を含み、前記第2の鉄含有量は、前記第1の鉄含有量よりも高い、方法。
【請求項2】
前記鉄促進化ゼオライトの総重量に基づいて、前記第1の鉄含有量が約2~約8重量%であり、前記第2の鉄含有量が約6~約10重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の鉄含有量が、前記第1の鉄含有量よりも少なくとも約15%高く、より具体的には少なくとも約20%高い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記鉄促進化ゼオライトが、BEA骨格構造を有するゼオライト材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記BEA骨格構造を有するゼオライト材料が、有機テンプレート不使用の合成プロセスから得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記鉄促進化ゼオライトが、約10以下のシリカ対アルミナモル比(SAR)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記鉄促進化ゼオライトが、約5以下のシリカ対アルミナモル比(SAR)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、イオン交換鉄と、前記触媒の水熱エージング後に窒素酸化物を含有する排気流中で前記触媒のNOx転化性能を維持するのに十分な量の非交換鉄と、を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の鉄含有量を有する第2の鉄促進化ゼオライトの新鮮なサンプルが、250°Cの温度で、前記第1の鉄促進化ゼオライトの新鮮なサンプルよりも少なくとも約15%高いNOx転化率、より具体的には少なくとも約20%または25%または30%または35%または40%高いNOx転化率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
フロースルーセラミックまたは金属基材を前記第2の鉄促進化ゼオライトでコーティングすることによってSCR触媒物品を調製することをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
多孔性壁流フィルター基材をさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法に従って作製された鉄促進化ゼオライト。
【請求項13】
選択的触媒還元(SCR)触媒組成物であって、約10未満のSARを有する鉄促進化低SARベータゼオライトを含み、前記鉄促進化ゼオライトの総重量に基づいて少なくとも約6重量パーセントの鉄を含み、前記ベータゼオライトの鉄含有量が、少なくとも2つの別々のステップで前記ゼオライトに添加された、SCR触媒組成物。
【請求項14】
前記触媒組成物が、フロースルーまたは壁流フィルター基材上に配置される、請求項13に記載のSCR触媒組成物。
【請求項15】
エンジン排気ガス処理システムであって、先行請求項のいずれか一項に従って作製された触媒組成物と、リーンバーンエンジンと流体連通している排気ガス導管と、を含み、前記触媒組成物が、前記排気ガス導管の下流にある、エンジン排気ガス処理システム。
【請求項16】
前記エンジンが、ディーゼルエンジンである、請求項15に記載のエンジン排気ガス処理システム。
【請求項17】
低SCRのFe促進化ベータゼオライトSCR触媒の前に、DOCおよび/またはCSF触媒があり、かつ追加のCu-ゼオライトSCR触媒および/または選択的アンモニア酸化触媒(AMOx)が続いてもよく、前記Cu-ゼオライトSCR触媒およびAMOx触媒が、Cu-CHAを含む、請求項15に記載のエンジン排気ガス処理システム。
【請求項18】
リーンバーンエンジンからの排気ガスから窒素酸化物を除去する方法であって、リーンバーンエンジンからの排気ガス流を、先行請求項のいずれか一項に従って調製された触媒組成物と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月29日に出願された、米国仮出願第62/893,543号全体に対する優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、鉄促進化ゼオライト含有SCR触媒組成物、リーンエミッション制御用途のためのそのような触媒組成物の調製および使用の方法、ならびにそのような触媒組成物を使用する触媒物品およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
長い年月にわたって、窒素酸化物(NO)の有害な成分が大気汚染を引き起こしてきた。NOは、内燃エンジン(例えば、自動車およびトラック)、燃焼設備(例えば、天然ガス、石油、または石炭によって加熱を行う発電所)、ならびに硝酸生成プラントなどからの排気ガスに含有されている。
【0004】
NO含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。1つの処理タイプは、窒素酸化物の触媒還元を伴う。2つのプロセスがある:(1)一酸化炭素、水素、または炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス。選択的還元プロセスでは、化学量論量の還元剤を用いて高度な窒素酸化物除去を達成することができる。
【0005】
選択的還元プロセスは、SCR(選択的触媒還元)プロセスと称される。SCRプロセスは、大気酸素の存在下で還元剤(例えば、アンモニア)を用いた窒素酸化物の触媒還元を使用し、以下のように、主に窒素および蒸気の形成をもたらす:
4NO+4NH+O→4N2+6HO(標準のSCR反応)
2NO+4NH+O→3N+6HO(遅いSCR反応)
NO+NO+2NH→2N+3HO(高速SCR反応)
【0006】
SCRプロセスで用いられる触媒は、理想的には、水熱条件下で、広い使用温度条件範囲、例えば、200℃~600℃以上で良好な触媒活性を維持できる必要がある。排気ガス制御用途において使用されるSCR触媒は、粒子の除去に使用される排気ガス処理システムの成分である煤フィルターの再生中に、高温水熱条件に曝露される。
【0007】
ゼオライトなどのモレキュラーシーブは、酸素の存在下でアンモニア、尿素、または炭化水素などの還元剤とともに窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)に使用されてきた。ゼオライトは、ゼオライトの種類、ならびにイオン交換部位に含まれるカチオンの種類および量に応じて、直径が約3~約10オングストロームの範囲の、均一な細孔径を有する結晶性材料である。
【0008】
アンモニアによる窒素酸化物の選択的触媒還元のための、中でも特に鉄促進化および銅促進化ゼオライト触媒を含む、金属促進化ゼオライト触媒が知られている。例えば、鉄促進化ゼオライトベータは、例えば、米国特許第4,961,917号に記載されているように、アンモニアによる窒素酸化物の選択的還元のための効果的な市販の触媒であった。
【0009】
触媒の性能を改善することが常に望まれており、したがって、低温および/または高温性能が改善されたSCR触媒を提供することが有益であろう。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、例えば鉄促進化ゼオライトの総重量に基づいて、少なくとも約6重量パーセントの鉄を含む鉄促進化ゼオライトを含み、ゼオライトの鉄含有量が、少なくとも2つの別々のステップでゼオライトに添加された、選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を含む触媒組成物を提供する。本明細書に記載の触媒組成物は、基材上に配置することができる。多孔性基材は、例えばフロースルー多孔性モノリスまたは壁流フィルターであり得る。
【0011】
選択的触媒還元(SCR)触媒を形成する方法も本明細書で提供され、この方法は、第1の鉄含有量を有する第1の鉄促進化ゼオライトを受け取ることと、イオン交換ステップにおいてこの鉄促進化ゼオライトを追加の鉄で処理して第2の鉄含有量を有する第2の鉄促進化ゼオライトを形成することとを含み、第2の鉄含有量は第1の鉄含有量よりも高い。様々な実施形態において、鉄促進化ゼオライトの総重量に基づいて、第1の鉄含有量は約2~約8重量%であり、第2の鉄含有量は約6~約10重量%である。第2の鉄含有量は、第1の鉄含有量よりも少なくとも約15%高いことがあり、より具体的には少なくとも約20%高いことがある。本明細書に記載の方法は、多孔性基材を第2の鉄促進化ゼオライトでコーティングすることによってSCR触媒物品を調製することをさらに含み得る。
【0012】
様々な実施形態において、鉄促進化ゼオライトは、BEA骨格構造を有するゼオライト材料であり、BEA骨格構造は、YOおよびXを含み、Yは4価元素であり、Xは3価元素である。いくつかの実施形態では、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、Xは、Al、B、In、Ga、Feおよびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、YはSiであり、XはAlである。様々な実施形態において、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、本明細書にその全体が組み込まれている米国特許第8,865,121号に記載されているように、有機テンプレート不使用の合成プロセスから得られる。鉄促進化ゼオライトは、約10以下、または約5以下のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有し得る。
【0013】
以下に詳述するように、本開示による第2の鉄含有量を有する第2の鉄促進化ゼオライトの新鮮なサンプルは、250°Cの温度で、第1の鉄促進化ゼオライトの新鮮なサンプルよりも少なくとも約15%高いNOx転化率、より具体的には少なくとも約20%または25%または30%または35%または40%高いNOx転化率を有する。
【0014】
エンジン排気ガス処理システムも本明細書に提供されており、このシステムは、本開示に従って作製された触媒組成物と、リーンバーンエンジンと流体連通している排気ガス導管とを含み、触媒組成物(つまり、第2の鉄促進化ゼオライト)が、排気ガス導管の下流にある。様々な実施形態において、エンジンはディーゼルエンジンである。リーンバーンエンジンからの排気ガスから窒素酸化物を除去する方法も本明細書に提供されており、この方法は、リーンバーンエンジンからの排気ガス流を、本開示に従って調製された触媒組成物(つまり、第2の鉄促進化ゼオライト)と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、これらは、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、参照番号は、本発明の例示的な実施形態の成分を指す。図面は、単なる例であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0016】
図1A】本発明による触媒組成物を含み得るハニカム型基材の斜視図であり、
図1B図1Aに対して拡大され、かつ図1Aの担体の端面に平行な平面に沿って切り取られた部分断面図であり、図1Aに示される複数のガス流路の拡大図を示し、
図2】壁流フィルター基材の一部の断面図を示し、
図3】本開示の触媒が利用される排出物処理システムの実施形態の概略図を示し、
図4】本開示による新鮮なおよびエージングしたSCR触媒サンプル、ならびに新鮮なおよびエージングした比較SCR触媒サンプルについてのある温度範囲にわたるNOx転化のグラフであり、そして
図5】本開示による新鮮なおよびエージングしたSCR触媒サンプル、ならびに新鮮なおよびエージングした比較SCR触媒サンプルについてのある温度範囲にわたるNOx転化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、例示的な実施形態を参照して、以降より完全に本開示について記載する。本開示が徹底的かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように、これらの例示的な実施形態について記載する。実際、本開示は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすであろうように提供されている。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、別途文脈により明らかに指示されない限り、複数の指示物を含む。
【0018】
本開示は、概して、ディーゼルまたはガソリンエンジンなどのエンジンからのNO排出物の少なくとも部分的な転化に適した触媒組成物、例えば、SCR触媒組成物を提供する。触媒組成物は、概して、1つ以上の金属促進化モレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)を含み、以下により完全に記載されるようなウォッシュコート技術を使用して、調製され、基材上にコーティングすることができる。本明細書に記載の触媒組成物は、概して、ゼオライトの鉄含有量が少なくとも2つの別々のステップでゼオライトに添加される鉄促進化ゼオライトを含む。本明細書に開示される触媒組成物は、強化された低温性能を提供し得る。特に、開示された組成物は、2つの別々の鉄の添加を受けていない同等の組成物と比較して、低温で改善されたNO転化を示す。さらに、開示された組成物は、他のFe-ゼオライトSCR触媒で観察されたものと同等の低いNO形成レベルを示す。
【0019】
触媒組成物
本明細書に開示される触媒組成物は、一般に、例えば鉄促進モレキュラーシーブの総重量に基づいて、少なくとも約6重量パーセントの鉄を含む鉄促進モレキュラーシーブを含み、モレキュラーシーブの鉄含有量が、少なくとも2つの別々のステップでモレキュラーシーブに添加された、選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を含む。本明細書で使用される場合に「モレキュラーシーブ」という表現は、ゼオライトおよび他の骨格材料(例えば、同形置換された材料)などの骨格材料を指し、これらは、例えば、粒子形態で、1つ以上の促進剤金属と組み合わせて、触媒として使用され得る。モレキュラーシーブは、一般的に四面体型の部位を含み、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、平均細孔径が20Å以下の、広範な三次元網目構造の酸素イオンに基づく材料である。細孔径は環径により定義される。本明細書で使用される場合、「ゼオライト」という用語は、ケイ素およびアルミニウム原子をさらに含むモレキュラーシーブの具体的な例を指している。1つ以上の実施形態によれば、モレキュラーシーブをそれらの構造型によって定義することは、その構造型を有するモレキュラーシーブと、同じ構造型を有するSAPO、AlPOおよびMeAPO材料などのありとあらゆるアイソタイプ骨格材料との両方を含むことを意図することが理解されよう。
【0020】
より具体的な実施形態では、アルミノシリケートゼオライト構造型に言及することで、材料を、骨格内へと置換されたリンまたは他の金属を故意に含まないモレキュラーシーブに限定する。しかしながら、明確にするために、本明細書で使用される場合、「ケイ酸アルミノゼオライト」は、SAPO、AlPO、およびMeAPO材料などのリン酸アルミノ材料を除外し、より広範な「ゼオライト」という用語は、ケイ酸アルミノおよびリン酸アルミノを含むことが意図される。ゼオライトは、結晶性材料であり、コーナー共有TO面体(Tは、AlまたはSiである)からなるオープン三次元骨格構造を有するアルミノシリケートであることが理解される。ゼオライトは一般に、1以上のシリカ対アルミナ(SAR)モル比を含む。開示された触媒組成物で使用するためのゼオライトは、SAR値に関して特に限定されないが、ゼオライトに関連する特定のSAR値は、いくつかの実施形態では、(例えば、特にエージング後に)それが組み込まれる触媒組成物のSCR性能に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、ゼオライトのSAR値は、約2~約100または約2~約15である。いくつかの実施形態では、SARは約10以下であり、他の実施形態では、SARは約5以下である。
【0021】
アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格の酸素とゆるく関連しており、残りの細孔容積は潜在的に水分子で満たされ得る。非骨格カチオンは一般的に交換可能であり、水分子は除去可能である。ゼオライトは、典型的には、ゼオライトの種類、ならびにゼオライト格子に含まれるカチオンの種類および量に応じて、直径が約3~10オングストロームの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。
【0022】
モレキュラーシーブは、構造を特定するための骨格トポロジによって分類することができる。典型的には、ゼオライトの任意の構造型、例えば、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、またはそれらの組み合わせの構造型を使用することができる。
【0023】
本開示の1つ以上の特定の実施形態では、触媒組成物のゼオライトは、BEA構造型を有する。様々な実施形態において、ゼオライト材料は、BEA骨格構造を有し、BEA骨格構造は、YOおよびXを含み、Yは4価元素であり、Xは3価元素である。いくつかの実施形態では、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、Xは、Al、B、In、Ga、Fe、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、YはSiであり、XはAlである。様々な実施形態において、BEA構造型を有するゼオライト材料はゼオライトベータであり、これは、その骨格中にSiOおよびAlを含有し、三次元12員環(12MR)細孔/チャネル系を有するゼオライトである。
【0024】
本開示の様々な実施形態において、触媒組成物のゼオライトは、テンプレート不使用のプロセスによって調製された低シリカ-アルミナ比(SAR)ベータゼオライトであり得る。テンプレート不使用のベータゼオライトを作製するための方法は、当技術分野で知られている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Feyenらに対する米国特許公開第2018/0022611号に記載されているプロセスを参照されたい。Feyenらに対する米国特許公開第2018/0022611号に記載されているように、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、有機テンプレート不使用の合成プロセスから得ることができる。BEA骨格構造を有するテンプレート不使用のゼオライトは、約10以下、または約5以下のSAR比を有し得、これは、テンプレート不使用ではないBEA骨格構造を有する他のゼオライトよりも低い。ベータゼオライトを合成するための他のテンプレート法は、通常、30を超えるシリカ-アルミナ比(SAR)をもたらす。理論によって制限されることなく、そのようなより高いSARは、本明細書に開示されるこの二重鉄交換法によって観察される触媒増強のための十分なイオン交換部位を提供しない。
【0025】
本明細書に上記で言及されたように、開示される触媒組成物は、概して、金属促進化されているモレキュラーシーブ(例えば、ベータゼオライト)を含む。本明細書に使用される際、「促進化」は、モレキュラーシーブに固有であり得る不純物を含むのとは対照的に、意図的に添加される1つ以上の成分を含むモレキュラーシーブを指す。したがって、促進剤は、意図的に添加された促進剤を有していない触媒と比較して、触媒の活性を増強するために意図的に添加される成分である。窒素酸化物のSCRを促進するために、本開示による1つ以上の実施形態では、適切な金属がモレキュラーシーブ内に交換される。銅および鉄は窒素酸化物の転化に関与するため、交換に特に有用な金属であり得る。したがって、特定の実施形態では、鉄促進化モレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)、例えばFe-BEAを含む触媒組成物が用意される。しかしながら、本発明はそれらに限定されることを意図してはおらず、他の金属促進化モレキュラーシーブを含む触媒組成物もこれに包含される。以下に詳述するように、本明細書に記載される触媒組成物は、2つの別々の金属(例えば、鉄)促進プロセスを経たモレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)を含む。しかしながら、特定の実施形態では、鉄は、本開示のプロセスにおいて他の促進剤金属で置き換えることができる。
【0026】
促進剤金属は、一般的に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、第IB族、および第IIB族の遷移金属、第IIIA族の元素、第IVA族の元素、ランタニド、アクチニド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することが可能である。金属促進化モレキュラーシーブを用意するために使用することができる特定の促進剤金属としては、様々な実施形態では、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、タングステン(W)、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。そのような金属の組み合わせ、例えば銅および鉄を使用して、混合されたCu-Fe促進化モレキュラーシーブ、例えばCu-Fe-BEAを得ることができる。特定の実施形態では、開示されたゼオライト成分に関連する促進剤金属は、銅(例えば、CuOとして)、鉄(例えば、Feとして)、またはマンガン(例えば、MnOとして)を含む。
【0027】
酸化物として計算される、金属促進化モレキュラーシーブの促進剤金属含有量は、1つ以上の実施形態において、か焼モレキュラーシーブ(促進剤を含む)の総重量に基づいて、少なくとも約0.1重量%であり、揮発性物質を含まないものとして報告される。特定の実施形態では、ゼオライト成分の促進剤金属はFeを含み、Feとして計算されるFe含有量は、それぞれ、揮発性物質を含まない基準で報告されたか焼モレキュラーシーブの総重量に基づいて、約0.5重量%~約17重量%、約2重量%~約15重量%、または約2重量%~約10重量%を含む、約0.1重量%~約20重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、ゼオライト成分(促進剤金属を含む)は、促進化ゼオライト内のアルミニウムに対する促進剤金属の比率によって定義することができる。例えば、いくつかの実施形態では、促進剤金属対アルミニウムのモル比は、約0.1~約0.5である(例えば、Fe/Al比は、約0.1~約0.5である)。いくつかの実施形態では、促進剤金属対アルミニウムのモル比は、約0.1~約0.33である(例えば、Fe/Al比は、約0.1~約0.33である)。いくつかの実施形態では、イオン交換されない過剰のFeが存在し得る。
【0028】
本明細書に記載されるように、ゼオライト材料(例えば、テンプレート不使用のベータゼオライト)は、第1の金属(例えば、Fe)含有量で金属促進化され、本明細書では第1の鉄促進化ゼオライトと呼ばれる。開示を容易にするために、促進剤金属をFeと呼ぶが、本開示は、鉄促進化ゼオライトに限定されることを意図するものではない。Feとして計算される第1の鉄促進化ゼオライトの第1の鉄含有量は、それぞれ、揮発性物質を含まない基準で報告されたか焼モレキュラーシーブの総重量に基づいて、約4重量%~約8重量%、または約6重量%~約8重量%を含む、約2重量%~約10重量%の範囲である。
【0029】
第1の鉄促進化ゼオライトは、追加の鉄で処理されて、第2の鉄含有量を有する本開示の鉄促進化ゼオライトを形成する。Feとして計算される本開示による鉄促進化ゼオライトの第2の鉄含有量は、それぞれ、揮発性物質を含まない基準で報告されたか焼モレキュラーシーブの総重量に基づいて、約6重量%~約15重量%、または約8重量%~約15重量%を含む、約4重量%~約20重量%の範囲である。第2の鉄含有量は、第1の鉄含有量よりも高い。いくつかの実施形態では、第2の鉄含有量は、第1の鉄含有量よりも少なくとも約15%高いか、または少なくとも約25%高い。
【0030】
特定の実施形態では、触媒は、イオン交換鉄と、水熱または排気中エージング後に窒素酸化物を含有する排気流中で触媒のNOx転化性能を維持するのに十分な量の非交換鉄と、を含有する。
【0031】
基材
1つ以上の実施形態によれば、基材(開示された触媒組成物が触媒物品、例えば、SCR触媒物品を得るために適用される)は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料から構築され得、典型的には金属またはセラミックのハニカム構造で構成される。本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒材料が典型的にはウォッシュコートの形態で適用されるモノリス材料を指す。基材は、典型的には、SCRウォッシュコート組成物(例えば、本明細書で上に開示された金属促進化モレキュラーシーブを含む)が適用および接着される複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の担体として作用する。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーハニカムモノリスまたは微粒子フィルターのうちの1つ以上から選択され、触媒材料は、ウォッシュコートとして基材に適用される。
【0032】
図1Aおよび1Bは、本明細書に記載されているような触媒組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を例示する。図1Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状および円筒外表面4、上流端面6、および端面6と同一である対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。図1Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8まで担体2を通って延在し、通路10は、流体、例えば、ガス流が担体2を、そのガス流路10を介して長手方向に流れることを許容するように閉塞されていない。図1Bでより容易に見られるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示されるように、触媒組成物は、必要に応じて、複数の別個の層として適用され得る。例示される実施形態では、触媒組成物は、担体部材の壁12に接着された別個の底部層14、および底部層14の上にコーティングされた第2の別個の上部層16の両方で構成される。本発明は、1つ以上(例えば、2、3、または4つ)の触媒層を用いて実施され得、図1Bに例示された2層の実施形態に限定されない。
【0033】
1つ以上の実施形態では、基材は、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属である。通路が開放されて流体が流れて通過するように、基材の入口または出口面から延在する微細で平行なガス流路を有するタイプのモノリス基材などの任意の好適な基材が用いられ得る。流体の入口から流体の出口への本質的に直線の経路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされる壁によって画定される。モノリス基材の流路は、壁が薄いチャネルであり、それは、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状およびサイズであることができる。かかる構造は、1平方インチの断面当たり約60~約900個以上のガス入口開口部(すなわち、セル)を含み得る。フロースルー基材の壁厚は、様々なものとすることができ、典型的な範囲は、0.002~0.01インチである。代表的な市販のフロースルー基材は、400cpsiで4~6ミルの壁厚、または600cpsiで3~4ミルの壁厚を有するコーディエライト基材である。しかしながら、本発明は、特定の基材の種類、材料、または幾何学的形状に限定されないことが理解されるであろう。
【0034】
基材の構築に使用されるセラミック材料には、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、ムライト、コーディエライト-αアルミナ、炭化ケイ素、アルミニウムチタネート、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、およびアルミノシリケートなどが含まれ得る。
【0035】
本発明の実施形態の触媒に有用な基材はまた、本質的に金属であり得、1つ以上の金属または金属合金で構成され得る。金属基材は、チャネル壁に開口部または「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属基材は、ペレット、波形シート、またはモノリスフォームのような様々な形状で用いられ得る。例示的な金属基材は、チタンおよびステンレス鋼ならびに鉄が実質的なまたは主な成分である他の合金などの耐熱性金属および金属合金を含む。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、いずれの場合も、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%の合金、例えば、約10~25重量%のクロム、約1~8重量%のアルミニウム、および約0~20重量%のニッケルを含む。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、およびチタンなどの、少量または痕跡量の1つ以上の他の金属を含有してもよい。表面または金属担体は、高温、例えば、1000℃以上で酸化されて、基材の表面上に酸化物層を形成し、合金の耐食性を改善し、金属表面へのウォッシュコート層の接着を容易にし得る。
【0036】
基材が微粒子フィルターである1つ以上の実施形態では、微粒子フィルターは、ガソリン微粒子フィルターまたはディーゼル煤フィルターから選択され得る。本明細書で使用される場合、「微粒子フィルター」または「煤フィルター」という用語は、煤などの排気ガス流からの微粒子状物質を除去するように設計されたフィルターを指す。微粒子フィルターには、ハニカム壁流フィルター、部分濾過フィルター、ワイヤーメッシュフィルター、巻き繊維フィルター、焼結金属フィルター、およびフォームフィルターが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、微粒子フィルターは、触媒化された煤フィルター(CSF)である。触媒化されたCSFは、例えば、本発明の触媒組成物でコーティングされた基材を含む。
【0037】
1つ以上の実施形態の触媒材料を支持するのに有用な壁流基材は、基材の長手方向軸に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端で遮断され、1つおきに通路は、反対の端面で遮断される。そのようなモノリス基材は、1平方インチの断面当たり最大約900個以上の流路(または「セル」)を含み得るが、はるかに少ない数が使用され得る。例えば、基材は、約7~600個、より一般的には約100~300個のセル/平方インチ(「cpsi」)を有し得る。本発明の実施形態で使用される多孔性壁流フィルターは、この要素の壁が白金族金属をその上に有するかまたはその中に含有するように触媒化され得る。触媒材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在し得るか、または壁自体がすべてもしくは部分的に触媒材料で構成され得る。別の実施形態では、本発明は、基材の入口上、出口上、または壁中の1つ以上の触媒層および1つ以上の触媒層の組み合わせの使用を含み得る。
【0038】
図2は、壁流フィルター基材の入口端から出口端まで長手方向に延在する複数の多孔性壁の実施形態の断面図を示している。入口端54から出口端56まで長手方向に延在し、複数の平行な通路52を形成する複数の多孔性壁53の実施形態の部分断面図が示されている。ガス流62(矢印として示されている)は、入口通路64のプラグが抜かれた開いた端を通って入り、出口プラグ60によって閉じた端で止まり、多孔性壁53を通って拡散し、出口通路66への通路を形成する。ガス流62は、出口通路66のプラグが抜かれた開いた端を通って流れることによってフィルターを出る。ガスは、入口プラグ58によって出口通路からフィルターの入口端に逆流するのが防止され、出口プラグ60によって出口端から入口通路に再び入るのが防止される。このように、通路のある量は、入口端で開いて出口端で閉じている入口通路であり、通路のある量は、入口端で閉じて出口端で開いている出口通路であり、ここで、出口通路は、入口通路とは異なる通路である。本発明で使用される多孔性壁流フィルターは、基材の壁がその中または上に1つ以上の触媒材料を有するという点で触媒化され得る。
【0039】
そのようなモノリス基材は、約100~400cpsi、より典型的には、約200~約300cpsiなどの、最大約700cpsi以上を含み得る。セルの断面形状は、上記に説明されているように、変動する可能性がある。壁流基材は、典型的には、0.008~0.02インチの壁厚を有する。代表的な市販の壁流基材は、多孔性コーディエライトから構築され、その例は、200cpsiおよび10ミルの壁厚、または300cpsiおよび8ミルの壁厚、ならびに45~65%の壁多孔度を有する。チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、および窒化ケイ素などの他のセラミック材料もまた、壁流フィルター基材として使用される。しかしながら、本開示は、特定の基材の種類、材料、または形状には限定されないことが理解されるであろう。基材が壁流基材である場合、それに関連する触媒組成物は、壁の表面に配置されることに加えて、多孔性壁の細孔構造内に浸透し得る(すなわち、細孔開口部を部分的または完全に塞ぐ)ことに留意されたい。
【0040】
いくつかの実施形態では、壁流フィルター物品基材は、2.0L、2.5L、5.0L、10L、20L、または30Lの体積を有し得、これらの例示的な値のうちの任意の2つの間のすべての体積もまた、本発明によって企図されることが理解されたい。壁流フィルター基材は、典型的には、約200ミクロン~約500ミクロン、例えば、約200ミクロン~約300ミクロンの壁厚を有する。
【0041】
壁流フィルターの壁は、多孔性であり、概して、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約45%~少なくとも約70%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約5ミクロン~少なくとも約30ミクロンである。「壁多孔度」および「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、フィルター壁の一部内の空隙体積を空隙率が測定される体積で割った比率である。細孔径は、窒素細孔径分析のためのISO15901-2(静的体積)手順に従って決定されてもよい。窒素細孔径は、Micromeritics TRISTAR 3000シリーズの機器において決定されてもよい。窒素細孔径は、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)計算および33の脱着点を使用して決定されてもよい。有用な壁流フィルターは、高い多孔度を有し、動作中に過度の背圧をかけることなく触媒組成物の高充填量を可能にする。
【0042】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるような第2の鉄含有量で促進される鉄促進化ゼオライトを含む触媒組成物を含む基材が提供される。そのようなコーティングされた基材は、いくつかの実施形態において、鉄促進を加えなくても、触媒組成物を含むコーティングされた基材に関して増強されたNOx転化を示す可能性がある。以下に詳述するように、本開示による第2の鉄含有量を有する鉄促進化ゼオライトの新鮮なサンプルは、250°Cの温度で、第1の鉄促進化ゼオライトの新鮮なサンプルよりも少なくとも約15%高いNOx転化率、より具体的には少なくとも約20%または25%または30%または35%または40%高いNOx転化率を有する。
【0043】
第2の金属含有量を有する金属促進化SCR組成物の作成方法
本開示によれば、SCR触媒組成物は、一般に、第1の金属促進化モレキュラーシーブ材料を提供することによって調製される。上記のように、本開示の様々な実施形態において、第1の金属促進化モレキュラーシーブ材料は、テンプレート不使用の合成法によって調製された低シリカ-アルミナ鉄促進化ベータゼオライトであり得る。他の種類のモレキュラーシーブを調製する方法は、当技術分野で知られており、開示された組成物内に含めるための所望のゼオライト骨格を提供するために容易に使用することができる。ゼオライトは、ゼオライト構造内にすでに第1の鉄含有量が存在する状態で調製するか、または初期の鉄含有量を確立するために以下に記載されるように処理することができる。
【0044】
第1の鉄促進化ゼオライトは、追加の鉄で処理されて、本開示による第2の鉄含有量を有し、第2の鉄含有量が第1の鉄含有量よりも高い鉄促進化ゼオライトを形成する。本発明の様々な実施形態による第2の金属含有量を有する金属促進化モレキュラーシーブを調製するために、金属(例えば、鉄)が第1の金属促進化モレキュラーシーブにイオン交換される。そのような金属は、概して、アルカリ金属またはNHモレキュラーシーブにイオン交換される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Bleken,F.et al.,Topics in Catalysis 2009,52,218-228に開示されているように、当技術分野で既知の方法によってアルカリ金属モレキュラーシーブへのNH イオン交換によって調製することができる)。
【0045】
様々な実施形態において、第2の鉄含有量は、イオン交換プロセスを使用して、第1の鉄促進化ゼオライト材料に添加することができる。例えば、特定の実施形態では、スラリー内イオン交換(ISIE)プロセスを使用することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2018/101718に記載されているISIEプロセスを参照されたい。このプロセスには、酸化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、または酢酸鉄など、任意の適切な形態の鉄を使用できる。
【0046】
基材のコーティングプロセス
上で言及したように、触媒組成物は、調製され、基材上にコーティングされる。この方法は、本明細書に概して開示される触媒組成物(または触媒組成物の1つ以上の成分)を溶媒(例えば、水)と混合して、触媒基材をコーティングするためのスラリーを形成することを含むことができる。本明細書に記載の第2の金属含有量で促進された金属促進化ゼオライト材料を含む触媒組成物は、スラリーの形態で調製することができる。
【0047】
所与のウォッシュコートスラリー内の触媒成分(すなわち、本開示による第2の金属含有量を有する金属促進化モレキュラーシーブ)に加えて、スラリーは、任意選択で、様々な追加の成分を含有し得る。典型的な追加の成分としては、例えば、スラリーのpHおよび粘度を制御するための1つ以上の結合剤および添加剤が挙げられるが、それらに限定されない。特定の追加の成分としては、結合剤(例えば、典型的には、ゼオライトの重量に基づいて約0.1~約10重量パーセントの量の、シリカ、チタニア、ジルコニア、またはそれらの組み合わせ)、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性界面活性剤を含む)および酢酸ジルコニウムを挙げることができる。
【0048】
スラリーは、いくつかの実施形態では、粉砕されて、粒子の混合および均質なウォッシュコートの形成を増強することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の機器で達成することができ、スラリーの固形分は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約30~40重量%であってもよい。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約5~約50ミクロン(例えば、約5~約20ミクロン、または約10~約20ミクロン)のD90粒子サイズによって特徴付けられる。
【0049】
一般に、当該技術分野で既知のウォッシュコート技術を使用して、スラリーを触媒基材上にコーティングする。本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」は、基材、例えば、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性である、ハニカムフロースルーモノリス基材またはフィルター基材に適用される材料(例えば、触媒材料)の薄くて付着性のあるコーティングという当技術分野における通常の意味を有する。本明細書で使用される場合およびHeck,Ronald and Robert Farrauto,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材の表面上または下にあるウォッシュコート層上に配置された材料の組成的に異なる層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含むことができ、各ウォッシュコート層は、固有の化学的触媒機能を有することができる。
【0050】
ウォッシュコートは、一般に、液体ビヒクル中に触媒材料(ここでは、第2の金属含有量を有する金属促進化ゼオライト成分)の特定の固形分(例えば、30~60重量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、次に、1つ以上の基材上にコーティングされ、乾燥されてウォッシュコート層が提供される。壁流基材を1つ以上の実施形態の触媒材料でコーティングするために、基材の上部がスラリーの表面のすぐ上に位置するように、基材を触媒スラリーの一部に垂直に浸漬することができる。このようにして、スラリーは、フロースルーモノリスのすべての壁に接触し、フィルターモノリスの場合は、各ハニカム壁の入口面のみに接触するが、各フィルター壁の出口面に接触することは防止される。サンプルは、約30秒間スラリー中に残される。基材はスラリーから取り除かれ、過剰なスラリーは、最初にチャネルから排出させるようにし、次に圧縮空気を吹き付け(スラリーの浸透方向に対して)、次にスラリーの浸透方向から真空を引くことによって、基材から取り除かれる。フロースルー基材の場合、得られるウォッシュコート層はすべての基材壁に均一に分散される。フィルター基材の場合、触媒スラリーは、基材の壁に浸透するが、完成した基材に過度の背圧が発生するほど細孔が塞がれることはない。本明細書で使用される場合、「浸透する」という用語は、フィルター基材上およびフィルター基材中の触媒スラリーの分散を説明するために使用されるとき、触媒組成物が基材の壁全体に分散していることを意味する。
【0051】
その後、コーティングされた基材を高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、10分~3時間)乾燥し、次いで、例えば、400~600℃で典型的には約10分~約3時間加熱することによって、か焼する。乾燥およびか焼の後に、最終的なウォッシュコートコーティング層は、溶媒を実質的に含まないと考えることができる。
【0052】
か焼の後に、触媒充填量は、基材のコーティングされた重量およびコーティングされていない重量の差を計算することによって決定することができる。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることにより修正することが可能である。さらに、コーティング/乾燥/か焼プロセスを、必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填量レベルまたは厚さに構築することができる。
【0053】
エージングは、様々な条件下で行うことができ、本明細書で使用される場合、「エージング」は、ある範囲の条件(例えば、温度、時間、および雰囲気)を包含すると理解される。例示的なエージングプロトコルは、か焼されコーティングされた基材を10%蒸気中で約50時間650℃の温度に、または10%蒸気中で約16時間800℃の温度にさらすことを含む。しかしながら、これらのプロトコルは、限定を意図するものではなく、温度はより低くてもより高くてもよく(例えば、限定されないが、400℃以上、例えば400℃~1000℃、600℃~950℃、または650℃~800℃の温度を含む)、時間はより短くてもより長くてもよく(例えば、限定されないが、約1時間~約100時間、または約2時間~約50時間の時間を含む)、雰囲気は(例えば、その中に異なる量の蒸気および/または他の成分が存在するように)調整してもよい。
【0054】
触媒物品
得られる触媒物品(基材上の1つ以上のウォッシュコート層を含み、触媒組成物でコーティングされた基材を提供する)は、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で言及したように、開示される触媒組成物のすべての成分(第2の金属含有量成分を有する金属促進化ゼオライトを含む)は、単一の触媒組成物ウォッシュコート層(すなわち、混合物)内に含有され、これは基材上の1つ以上の層として提供される。いくつかの実施形態では、基材上にコーティングされた触媒組成物が別個のウォッシュコート層を含み、少なくとも1つのウォッシュコート層が本明細書に記載の金属促進化ゼオライトを含み、少なくとも1つの(別個の)ウォッシュコート層が本明細書による第2の金属含有量を有する金属促進化ゼオライト成分を含まない、触媒物品が提供される。この実施形態では、他のウォッシュコート層は、PGM、具体的にはPtを含有し得、本開示の金属促進化ゼオライトと一緒にした場合、選択的アンモニア酸化触媒(AMOx)として機能する。
【0055】
1つの特定の実施形態では、本開示の金属促進化ゼオライト成分を含む第1の触媒組成物ウォッシュコート層は、基材と直接接触している。この特定の実施形態では、1つの例示的な触媒物品は、0.2~2.0g/inの充填量でその表面に直接配置された第2の金属促進化ゼオライト含有ウォッシュコート層を有する基材を含む。
【0056】
ウォッシュコートは、異なるコーティング層が基材と直接接触するように適用することができる。あるいは、触媒組成物ウォッシュコート層(単数または複数)の少なくとも一部が基材と直接接触しない(むしろアンダーコートと接触するように)、1つ以上の「アンダーコート」が存在し得る。コーティング層の少なくとも一部がガス流または大気に直接曝されない(むしろ、オーバーコートと接触する)ように、1つ以上の「オーバーコート」も存在する場合がある。
【0057】
基材上に本明細書に開示されるような触媒組成物を含む、得られる触媒物品は、いくつかの実施形態では、有利に、2つのステップで促進剤金属が添加されていない触媒組成物と比較して、低温で、改善されたNO転化を呈示し得る。例えば、本開示に従って第2のステップで鉄が添加された鉄促進化ゼオライトの新鮮なサンプルは、250°Cの温度で、第2の鉄の添加がされていない、初期の鉄促進化ゼオライトの新鮮なサンプルよりも少なくとも約15%高いNOx転化率、より具体的には少なくとも約20%または25%または30%または35%または40%高いNOx転化率を有する。
【0058】
排出物処理システム
本開示による触媒組成物を利用する窒素酸化物の選択的還元は、一般に、アンモニアまたは尿素の存在下で実施される。特に、本明細書に記載の方法に従って調製された触媒組成物を含むSCRシステムは、車両の排気ガス処理システムに統合することができる。例示的なSCRシステムは、以下の成分を含むことができる。本明細書に記載のSCR触媒組成物、尿素貯蔵タンク、尿素ポンプ、尿素投与システム、尿素インジェクター/ノズル、およびそれぞれの制御ユニット。
【0059】
いくつかの態様において、本開示はまた、排気ガスなどの流れから窒素酸化物(NO)を選択的に還元するための方法に関連することができる。特に、その流れは、本開示に従って調製された触媒組成物と接触させることができる。本明細書で使用される場合、窒素酸化物、またはNOという用語は、NO、NO、N、NO、N、N、およびNOを含むがこれらに限定されない窒素のあらゆる酸化物を包含する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の触媒組成物は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%のNO転化を約150℃~約650℃、約200℃~約600℃、約300℃~約600℃、約300℃~約550℃、約300~約500℃、または約350℃~約450℃の温度範囲にわたって、提供するのに有効であり得る。特定の実施形態では、触媒組成物は、200℃で少なくとも約25%のNO転化を提供するように提供することができる。
【0061】
本発明はまた、本明細書に記載のSCR組成物または物品を組み込む排出物処理システムを提供する。本発明のSCR組成物は、典型的には、ディーゼル排気ガス排出物を処理するための1つ以上の追加の成分を含む統合排出物処理システムで使用される。したがって、「排気流」、「エンジン排気流」、「排気ガス流」などの用語は、エンジン流出物、ならびに本明細書に記載の1つ以上の他の触媒システム成分の上流または下流の流出物を指す。そのような追加の触媒成分には、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化煤フィルター(CSF)、リーンNOトラップ(LNT)、および選択的NH制御触媒(AMOx)が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
図3は、排出物処理システム、尿素インジェクター、および他のエンジン成分を含むエンジンシステムの1つの例示的な実施形態を示している。本明細書に開示されるSCR(例えば、SCRoF)触媒150は、エンジンの直接下流に配置することができ、または任意選択成分147としてここに示す別の触媒成分の下流に配置することができる。任意選択の追加の触媒143は、SCR触媒150の下流に配置することができ、AMOx触媒、別のSCR触媒、ならびに/または炭化水素および一酸化炭素を酸化するための触媒を含有し得る。アンモニア、一酸化炭素、および炭化水素の除去の望ましいレベルに応じて、追加の酸化触媒を含めることができる。具体的には、追加のCu-ゼオライトSCR触媒、より具体的には、Cu-CHA SCR触媒を、本開示のFe-BEA触媒の後に添加することができる。前方のFe-BEA SCR触媒または後方のCu-CHA SCR触媒のいずれかを、煤フィルターに適用してSCRoFを形成することができる。ガス状汚染物質(未燃炭化水素、一酸化炭素、NOを含む)および粒子状物質を含有する排気は、エンジン141からコネクタ142を介して図3に示す様々な成分に運ばれ、排気ガスはテールパイプ144を介してシステムから排出される。図3に示されるものに加えて、SCR150の上流または下流に他の成分、例えば別の任意選択の触媒成分152を含めることができることが理解される。
【0063】
図3に示されるシステムは、還元剤、例えば尿素の注入をさらに示し、これは、ノズル(図示せず)を介して排気流にスプレーとして注入され得る。1つのライン148に示される尿素水は、混合ステーション146内の別のライン149上で空気と混合することができるアンモニア前駆体として機能し得る。バルブ145は、排気流中でアンモニアに転化される尿素水の正確な量を計量するために使用することができる。アンモニアが添加された排気流は、SCR反応のためにSCR触媒150に運ばれる。示されているインジェクターは、使用され得る1つの種類のシステムの例であり、他の変形は、本開示の範囲内にある。
【0064】
実験
本発明の態様は、以下の実施例によってさらに完全に例示され、これらは、本発明のある特定の態様を記載するために例示されるのであって、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0065】
参照例1:
40のシリカ-アルミナ比および1.4重量%のFe充填量を有する従来のFe促進化ベータ触媒組成物を使用して、固形分が約40%のSCR触媒スラリーを調製した。このスラリーに、か焼された触媒上に5重量%のZrOを提供するように設計されたレベルで酢酸ジルコニウムを添加した。この参照触媒を、400セル/平方インチ(cpsi)のセル密度および6ミルの壁厚を有するセル状セラミックモノリス上にウォッシュコートした。直径1インチ×長さ3インチのモノリスサンプルをコーティングし、110℃で乾燥させた後、450℃で1時間か焼した。ウォッシュコート、乾燥、およびか焼を繰り返して3.0g/inのウォッシュコート充填量を達成した。
【0066】
比較例1:
本開示による第2の鉄含有量を有するFe促進化ベータ触媒組成物を調製した。
【0067】
第1のFe促進化低SARベータゼオライト(サンプルAおよびBに使用)は、テンプレート不使用の方法でSAR=5に合成した。第1のFe促進化低SARベータゼオライトは、Feとして計算して、ゼオライト材料の総重量に基づいて、約4.7重量%の第1の鉄含有量を有していた。
【0068】
4.7重量%のFeを含む第1のFe促進化低SARベータゼオライトを含む触媒組成物を、か焼された触媒上に5重量%のZrOを提供するように設計された酢酸ジルコニウムとともに水に添加した。最終的なウォッシュコートスラリーは、粉砕後に固体約30~40%に調整された。
【0069】
ウォッシュコートスラリーを調製した後、直径1インチ×長さ3インチ、400cpsi、6ミルのモノリスをコーティングすることによって触媒を調製した。110℃で乾燥後、サンプルを450℃で1時間か焼した。コーティングプロセスは、2.1g/inの触媒ウォッシュコート充填量を提供した。
【0070】
実施例1:
スラリー内イオン交換プロセスを使用して、第1のゼオライト材料に追加の鉄を添加し、第2の鉄含有量を有する第2のFe促進化低SARベータゼオライト(サンプルCおよびDに使用)を形成した。本開示による第2のFe促進化低SARベータゼオライトは、Feとして計算して、ゼオライト材料の総重量に基づいて、約6.6重量%の第2の鉄含有量を有していた。
【0071】
第2のFe促進化低SARベータゼオライトを含む触媒組成物は、4.7重量%のFeを含む第1のFe促進化低SARゼオライト(比較例1に使用)を、か焼後のゼオライト充填量に基づいて5重量%のZrOおよび追加の1.9重量%のFeを提供するように設計された酢酸ジルコニウムおよび硝酸鉄とともに水に混入することによって調製された。最終的なウォッシュコートスラリーは、粉砕後に固体約30~40%に調整された。
【0072】
ウォッシュコートスラリーを調製した後、直径1インチ×長さ3インチ、400cpsi、6ミルのモノリスをコーティングすることによって触媒を調製した。110℃で乾燥後、サンプルを450℃で1時間か焼した。コーティングプロセスは、2.1g/inの触媒ウォッシュコート充填量を提供した。
【0073】
比較例2:
本開示による第2の鉄含有量を有するFe促進化ベータ触媒組成物を調製した。
【0074】
第1のFe促進化低SARベータゼオライト(サンプルEおよびFに使用)は、テンプレート不使用の方法でSAR=5に合成した。第1のFe促進化低SARベータゼオライトは、Feとして計算して、ゼオライト材料の総重量に基づいて、約7.4重量%の第1の鉄含有量を有していた。
【0075】
7.4重量%のFeを含む第1のFe促進化低SARベータゼオライトを含む触媒組成物を、か焼された触媒上に5重量%のZrOを提供するように設計された酢酸ジルコニウムとともに水に添加した。最終的なウォッシュコートスラリーは、粉砕後に固体約30~40%に調整された。
【0076】
ウォッシュコートスラリーを調製した後、直径1インチ×長さ3インチ、400cpsi、6ミルのモノリスをコーティングすることによって触媒を調製した。110℃で乾燥後、サンプルを450℃で1時間か焼した。コーティングプロセスは、2.1g/inの触媒ウォッシュコート充填量を提供した。
【0077】
実施例2:
スラリー内イオン交換プロセスを使用して、ゼオライト材料に追加の鉄を添加し、本開示による第2の鉄含有量を有する第2のFe促進化低SARベータゼオライト(サンプルGおよびHに使用)を形成した。第2のFe促進化低SARベータゼオライトは、Feとして計算して、ゼオライト材料の総重量に基づいて、約8.5重量%の第2の鉄含有量を有していた。
【0078】
第2のFe促進化低SARベータゼオライトを含む触媒組成物は、7.4重量%のFeを含む第1のFe促進化低SARゼオライト(比較例2に使用)を、か焼後のゼオライト充填量に基づいて5重量%のZrOおよび追加の1.1重量%のFeを提供するように設計された酢酸ジルコニウムおよび硝酸鉄とともに水に混入することによって調製された。最終的なウォッシュコートスラリーは、粉砕後に固体約30~40%に調整された。
【0079】
ウォッシュコートスラリーを調製した後、直径1インチ×長さ3インチ、400cpsi、6ミルのモノリスをコーティングすることによって触媒を調製した。110℃で乾燥後、サンプルを450℃で1時間か焼した。コーティングプロセスは、2.1g/inの触媒ウォッシュコート充填量を提供した。
【0080】
以下の表1は、SAR値、第1、添加、および第2の鉄の重量パーセント、ならびに参照例、2つの比較例、および本明細書に開示される方法に従って調製された2つの実施例のウォッシュコート充填量を要約する。
【表1】
【0081】
実施例3:
上記の実施例1に従って調製された、第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むSCR触媒物品のサンプルCおよびDを、deNOx性能について評価した。比較目的のために、第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むSCR触媒物品のサンプルAおよびBを、上記の比較例1に従って調製し、これらもdeNOx性能について評価した。記載されたように基材上に触媒スラリーをウォッシュコートすることによって、SCRサンプルを調製した。
【0082】
触媒化されたモノリスサンプルの水熱処理は、管状炉内で蒸気を使用して、Nに約10%のOおよび10%のHOを含有するガスを、650℃で50時間、空間速度9,000/時でサンプルを流れて通過させることによって実行された。
【0083】
サンプルは、500ppmのNOx(NO/NOx=0である標準SCR条件)、500ppmのNH3、10%のO、5%のHOを含む模擬排気ガスを用いて、80,000/時の空間速度で200°~600℃の0.5℃/分の温度傾斜を用いて実験室反応器において評価した。比較のために、250°、350°、および450℃でのNOx転化をppm単位のピークNO形成(通常は350℃付近)とともに、以下の表2に示す。
【表2】
【0084】
図4は、本開示による第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むSCR触媒物品の新鮮なおよびエージングしたサンプル(それぞれサンプルCおよびD)、ならびに第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むSCR触媒物品の新鮮なおよびエージングしたサンプル(それぞれサンプルAおよびB)の広い温度範囲にわたるNOx転化率を示すグラフを提供する。
【0085】
図4に示すように、約250℃の温度では、本開示による第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含む新鮮なSCR触媒物品(サンプルC)は、約68%のNOx転化を提供する。約250℃の温度では、本開示による第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含む新鮮なSCR触媒物品(比較サンプルA)は、約43%のNOx転化を提供する。したがって、新鮮なサンプルの場合、本開示のSCR触媒組成物は、単一の鉄促進のみを有するSCR触媒と比較して、少なくとも約25%のNOx転化の増加を提供する。
【0086】
図4に示すように、約250℃の温度では、本開示による第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むエージングしたSCR触媒物品(サンプルD)は、約32%のNOx転化を提供する。約250℃の温度では、本開示による第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むエージングしたSCR触媒物品(比較サンプルB)は、約28%のNOx転化を提供する。したがって、エージングしたサンプルの場合、本開示のSCR触媒組成物は、単一の鉄促進のみを有するSCR触媒と比較して、NOx転化の増加を提供する。ピークNOの値は実験誤差の範囲内にあり、このことは、本発明の方法に従って追加の鉄を添加することによるNOx転化の改善がNOに対する選択性に負の影響を与えなかったことを意味する。
【0087】
実施例4:
上記の実施例2に従って調製された、第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むSCR触媒物品のサンプルGおよびHを、deNOx性能について評価した。比較目的のために、第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むSCR触媒物品のサンプルEおよびFを、上記の比較例2に従って調製し、これらもdeNOx性能について評価した。記載されたように基材上に触媒スラリーをウォッシュコートすることによって、SCRサンプルを調製した。
【0088】
比較例2および実施例2のサンプルを、実施例3について記載されたのと同じ方法を使用してエージングおよび評価した。比較のために、250°、350°、および450℃でのNOx転化をppm単位のピークNO形成(通常は350℃付近)とともに、以下の表3に示す。
【表3】
【0089】
図5は、本開示による第2の鉄含有量を有する第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むSCR触媒物品の新鮮なおよびエージングしたサンプル(それぞれサンプルGおよびH)、ならびに第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むSCR触媒物品の新鮮なおよびエージングしたサンプル(それぞれサンプルEおよびF)の広い温度範囲にわたるNOx転化率を示すグラフを提供する。
【0090】
図5に示すように、約250℃の温度では、本開示による第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含む新鮮なSCR触媒物品(サンプルG)は、約81%のNOx転化を提供する。約250℃の温度では、本開示による第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含む新鮮なSCR触媒物品(比較サンプルE)は、約63%のNOx転化を提供する。したがって、新鮮なサンプルの場合、本開示のSCR触媒組成物は、単一の鉄促進のみを有するSCR触媒と比較して、少なくとも約18%のNOx転化の増加を提供する。
【0091】
図5に示すように、約250℃の温度では、本開示による第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むエージングしたSCR触媒物品(サンプルH)は、約39%のNOx転化を提供する。約250℃の温度では、本開示による第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むエージングしたSCR触媒物品(比較サンプルF)は、約13%のNOx転化を提供する。したがって、エージングしたサンプルの場合、本開示のSCR触媒組成物は、単一の鉄促進のみを有するSCR触媒と比較して、少なくとも約26%のNOx転化の増加を提供する。ピークNOの値は実験誤差の範囲内にあり、このことは、本発明の方法に従って追加の鉄を添加することによるNOx転化の改善がNOに対する選択性に負の影響を与えなかったことを意味する。
【0092】
実施例5:
実施例1(6.6重量%の総Fe充填量を有する二重Fe交換)のデータを、比較例2(7.4重量%のFe充填量を有する単一Fe交換)のデータと比較した。
【0093】
約250℃の温度では、本開示による第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含む実施例1の新鮮なSCR触媒物品(サンプルC)は、約68%のNOx転化を提供する。本開示による第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含む新鮮なSCR触媒物品(比較サンプルE)は、約63%のNOx転化を提供する。したがって、新鮮なサンプルの場合、本開示のSCR触媒組成物は、単一の鉄促進のみを有するSCR触媒と比較して、0.8重量%少ないFeを有するにもかかわらず、少なくとも約5%のNOx転化の増加を提供する。
【0094】
エージングした触媒の比較において、約250℃の温度では、本開示による第2のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むエージングしたSCR触媒物品(サンプルD)は、約32%のNOx転化を提供する。本開示による第1のFe促進化低SARベータゼオライト触媒組成物を含むエージングしたSCR触媒物品(比較サンプルF)は、約13%のNOx転化を提供する。したがって、エージングしたサンプルの場合、本開示のSCR触媒組成物は、単一の鉄促進のみを有するSCR触媒と比較して、0.8重量%少ないFeを有するにもかかわらず、少なくとも約19%のNOx転化の増加を提供する。
【0095】
本明細書に開示の発明は、特定の実施形態およびその用途によって説明されているが、特許請求の範囲に記載の発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの修正および変更を行うことができる。さらに、本開示の様々な態様は、それらが本明細書で具体的に説明されたもの以外の用途で使用することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】