(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】疾患の処置のための細菌組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20221021BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221021BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221021BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P31/00
A61P31/04
C12N1/20 E ZNA
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510098
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 GB2020051953
(87)【国際公開番号】W WO2021028700
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522059955
【氏名又は名称】マイクロバイオティカ・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518369590
【氏名又は名称】ゲノム・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トレヴァー・ローリー
(72)【発明者】
【氏名】アン・ネヴィル
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・フォースター
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ホーリャー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニカ・クリスコ
(72)【発明者】
【氏名】ショーニン・マクラスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージア・カパテイ
(72)【発明者】
【氏名】ナン・ウォーレル
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ウィルキンソン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BC53
4C087BC59
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA22
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA52
4C087MA60
4C087NA14
4C087ZB31
(57)【要約】
本発明は、疾患、特に感染症、例えば、C.ディフィシル感染の処置又はその予防のための細菌組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の単離された細菌を含む組成物であって、前記細菌は、配列番号1、2若しくは3の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号4の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号5の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号6の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号7の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号8の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号9の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;以下の配列番号10若しくは11の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号12の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号13の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号14若しくは15の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌、配列番号16の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号17の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号18の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号19の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号20の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌及び配列番号21の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌から選択される、組成物。
【請求項2】
2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17種の単離された細菌を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2種以上の単離された細菌が、配列番号1から21から選択される核酸配列と少なくとも97%の配列同一性を有する16S rDNA配列を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
以下の配列番号の16sDNAを有する15種の単離された細菌を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物:
配列番号1(若しくは2若しくは3)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号10(若しくは11)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号12又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号14(若しくは15)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号16又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号17又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号18又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号19又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【請求項5】
以下の配列番号の16sDNAを有する10種の単離された細菌を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物:
配列番号1(若しくは2若しくは3)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号10(若しくは11)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号12又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【請求項6】
以下の配列番号の16sDNAを有する7種の単離された細菌を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物:
配列番号1(若しくは2若しくは3)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【請求項7】
以下の配列番号の16sDNAを有する5種の単離された細菌を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物:
配列番号1(若しくは2若しくは3)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【請求項8】
以下の配列番号の16sDNAを有する4種の単離された細菌を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物:
配列番号3(若しくは1若しくは2)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号11(若しくは10)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号15(若しくは14)又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号21又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【請求項9】
薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
経口又は直腸投与用に製剤化される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
カプセル、錠剤、ゲル又は液体の形態である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
腸溶コーティングにカプセル化される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
2種以上の細菌が、栄養形態である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
1種又は複数のヒトドナーを起源とする細菌株を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
インビトロ又はインビボアッセイにおけるC.ディフィシル成長及び/又は生存を阻害する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
細菌が凍結乾燥される、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
単離された細菌が、DSMZにおいてブダペスト条約に基づいて寄託され、以下のアクセッション番号のうちの1つを割り当てられた細菌である(寄託された各細菌についてのDSMZによる寄託日は、アクセッション番号の後の括弧内に示される)、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物:DSM 33265(2019年9月13日)、DSM 33263(2019年9月13日)、DSM 33261(2019年9月13日)、DSM 33266(2019年9月13日)、DSM 33277(2019年9月13日)、DSM 33278(2019年9月13日)、DSM 33267(2019年9月13日)、DSM 33268(2019年9月13日)、DSM 33269(2019年9月13日)、DSM 33270(2019年9月13日)、DSM 33264(2019年9月13日)、DSM 33271(2019年9月13日)、DSM 33279(2019年9月13日)、DSM 33272(2019年9月13日)、DSM 33262(2019年9月13日)、DSM 33282(2019年9月13日)、DSM 33283(2019年9月13日)、DSM 33280(2019年9月13日)、DSM 33281(2019年9月13日)、DSM 33273(2019年9月13日)、DSM 33274(2019年9月13日)。
【請求項18】
対象における疾患を処置又は予防するための方法であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項19】
疾患の処置における使用のための、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
疾患が、病原性感染である、請求項18に記載の方法又は請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
病原性感染が、C.ディフィシル、広域スペクトルベータ-ラクタマーゼ産生性腸内細菌科、第三世代セファロスポリン耐性腸内細菌科、カルバペネム耐性腸内細菌科、フルオロキノロン耐性腸内細菌科、チフス菌、パラチフス菌、腸炎菌を含むサルモネラ属種、腸管組織侵入性大腸菌、腸管出血性大腸菌、シゲラ毒素産生性大腸菌を含む大腸菌、肺炎桿菌、コレラ菌、カンピロバクター・ジェジュニ、C.コリ、C.ラリ、C.フィタスを含むカンピロバクター属種、S.ディゼンテリエ、S.フレクスナー、S.ボイド、S.ソンネを含む赤痢菌属種、クリプトスポリジウム属種、マイクロスポリジウム属種、赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫、又はB.ホミニスを含むブラストシスティス属種及びこれらの組合せから選択される、請求項20に記載の方法又は請求項21に記載の組成物。
【請求項22】
感染が、C.ディフィシル感染である、請求項20に記載の方法又は請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
C.ディフィシル感染が、初発又は再発性C.ディフィシル感染である、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法又は請求項19から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
対象が、抗生物質で処置されている又は処置されていない、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法又は請求項19から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
抗生物質を投与する工程を更に含む、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法又は請求項19から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
対象における胃腸の微生物叢の多様性を増大させるための方法であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項27】
対象における胃腸管の微生物叢を変化させる方法であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項28】
請求項1から17のいずれか一項に記載の細菌組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)(より最近では、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)、又はC.ディフィシルとして知られている)は、グラム陽性桿状、縁毛性鞭毛性、毒素産生性の胞子形成細菌であり、軽度の下痢から重度の生命を危うくする大腸炎の範囲の症状を有する胃腸疾患を引き起こす(1)。その胞子は、丈夫で耐久性がある構造であり、この種が時間と空間を越えて、人々の間で効果的な伝達を可能にする。これらの胞子は酸素耐性であり、多くのヘルスケア消毒剤で殺傷されず、これは、厳密なクリーニングが、病院及び家庭環境の効果的な汚染除去のために必要とされることを意味する(2)。
【背景技術】
【0002】
そのような事情で、C.ディフィシルは、卓越した細菌性の病原体であり、米国での抗生物質耐性の脅威についての最近の報告において、米国疾病管理センター(US Centre for Disease Control)は「緊急且つ積極的な行動」を必要とする「差し迫った公衆衛生上の脅威」と記載している(3)。入院した個人、特に、免疫不全又は抗生物質を摂取しているもの及び高齢者は、C.ディフィシル疾患に特に感受性であり、再発する可能性がある(1)。
【0003】
米国では、2011年中に十カ所の地理的に異なる場所での調査に基づいて、C.ディフィシル疾患の国民負担は、およそ50万人の感染と推定され、その年だけで約29,000人の死亡者を伴っていた(4)。2013年に公開された米国疾病予防管理センター(US Centre for Disease Control and Prevention)からの別の報告は、C.ディフィシル疾患が入院を必要とする250,000例の感染を引き起こし、毎年14,000人が死亡していると主張した(3)。ヨーロッパでは、2016年に7000例を超えるC.ディフィシルの症例が20の異なる国々にわたって報告され、米国と同様に、これらの感染の大多数はヘルスケア関連であった(5)。C.ディフィシル疾患を処置するコストは大きい。ヘルスケア関連のC.ディフィシル疾患の平均再発率は約20%であり、看護のコストは典型的には再発性疾患を処置するコストによって跳ね上がる(4)。したがって、再発性疾患を予防するための介入は、C.ディフィシル感染(CDI)の経済的な負担を緩和するため至急探求される。
【0004】
伝統的に、抗生物質及び水分補給は推奨されるCDIに対する第一線の処置であり、バンコマイシン、メトロニダゾール及びフィダキソマイシンを含む抗生物質が、病原体を殺傷するためしばしば処方された(6)。抗生物質耐性C.ディフィシル株の出現及びCDIを支持する抗生物質処置の傾向は、抗生物質の代替物が至急探求されることを意味する(3)。
【0005】
糞便の微生物叢移植(FMT)は再発性C.ディフィシル疾患に対して著しく効果的な処置であり、軽度から重度の再発性CDIの処置に対するランダム化対照試験からの質の高い証拠に基づいて強く推奨される(7)。FMTは多様な腸内マイクロバイオームを回復することによって働き、したがって、腸内マイクロバイオームディスバイオシスを有する患者に対してコロニー形成耐性であると考えられる。処置の選択肢として、FMTの主な利益には、その莫大且つ耐久性のある有効性、優れた短期の安全性プロファイル及び手順後の高レベルの患者満足が含まれる(7)。しかしながら、FMTの作用の正確な機構は、完全には理解されておらず、利用可能な長期の安全性データはごくわずかである。
【0006】
その上、まさにその性質により、原料の組成は、標準化されず、大規模で産生することができない。更に、糞便は、「既知の既知(known knowns)」についてのみスクリーニングされ、いかなる非定型又は潜在性の病原体も考慮されない。ドナーのスクリーニング、糞便の処理(7)及び患者へのFMTの送達も、診療所間で変動し、更に素人によって彼ら自身の自宅で監督されずに実施されている(9)。
【0007】
最終的な正統でない手順から評判の良い主流の処置選択肢へとFMTは移行しているので、必然的に商品化されたマイクロバイオームに基づく治療剤を探究する組織及び企業が出現している。現在、糞便バンクが医学専門家及びCDIのための全体的に糞便に基づく治療にFMT材料を供給するため存在しており、他の適応症が薬物として開発中である(10)。実際、大まかに定義された糞便画分、例えば、エタノール耐性細菌胞子の治療潜在能力でさえも、再発性CDIの処置のため成功裏に使用されている(11)。これらの糞便に基づく治療が薬物開発の理念をもつ企業及び組織によって産生されているにもかかわらず、これらの製品にもFMTに関連する多くの弱点が適用される。
【0008】
これらの未定義の原料糞便に基づく治療から論理的に発展したものが、疾患を成功裏に処置するのに使用することができる、定義され、合理的に選択された株又は精製され且つ十分特徴付けられた微生物の共同体である。これらの「生きた生物学的治療生成物」(LBP)は、予防、疾患に罹患したヒトの処置又は治癒を意図した生物を含有する、ワクチン以外の生物学的生成物である(12)。LPBはまだ市場に登場していないにもかかわらず、C.ディフィシルを含む感染症適応に対する有効性が証明された例が存在する(13)。
【0009】
共同体アプローチの利点は、生成物の標準化、安全性及び製造の側面に主に適用される。FMT(組成及び質の変動に制約される)と異なり;治療共同体を含む株を確実に再現して、分析的に評価することができる事前に定義した仕様を満たすことができる。これらの治療株は分類学的に十分に定義されるべきであり、これは、代用又は混入分類群が、最終的な生成物に決して出現しないであろうことが現実的に期待されることを意味する。その上、選択される株も生物学的に十分特徴付けられ、その結果、病原性又は遺伝的な不安定性の任意の潜在性が知られることになるであろう。株の代謝及び行動を理解することにより、標的とされる株の大規模産生のための再現性のある方法の開発を可能にし、それによって、LBPの製造を容易にする。治療株のゲノタイプ及び表現型を知ることにより、生成物の安全性及びバッチ試験が支えられる。患者が、錠剤又はカプセル形態で経口で送達されるLBPに対して、より受容性であろうことを想定することも合理的である、その理由は、その送達のモードが、彼らの生活様式に対して、FMTよりも低侵襲性及び低破壊性であろうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願第2013/171515号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Green and Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. (2012)
【非特許文献2】the Leibniz-Institut DSMZ - Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ)、Inhoffenstr. 7B、38124 Braunschweig
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、C.ディフィシル感染に対する効果的な処置を提供する必要性があり、本発明は、この必要性に取り組むことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、C.ディフィシル感染を処置するのに使用することができる、単離された細菌を含む組成物を同定した。したがって、本発明は、各々が、疾患の処置、特にC.ディフィシル感染の処置及び予防に有用な、定義された細菌単離物の共同体を含む、治療用細菌組成物に関する。また、本発明は、疾患の処置及び予防、特にC.ディフィシル感染の処置及び予防の方法にも関する。
【0014】
一態様では、本発明は、以下の種から選択される2種以上の単離された細菌を含む、組成物に関する:バクテロイデス・セルロシリティカス(Bacteroides cellulosilyticus)、ブラウティア属種(Blautia sp.)、コプロコッカス・カツス(Coprococcus catus)、コプロコッカス・コメス(Coprococcus comes)、ドレア属種(Dorea sp.)、エリュシペロトリカセエUCG-003種(Erysipelotrichaceae UCG-003 sp.)、オドリバクター・スプラクニクス(Odoribacter splanchnicus)、パラバクテロイデス・ディスタソニス(Parabacteroides distasonis)、ルミニクロストリジウム9属種(Ruminiclostridium 9 sp.)、ルミノコッカス・トルクエス(Ruminococcus torques)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ブラウティア属種、ブラウティア属種、ラクノスピラ科FCS020群種(Lachnospiraceae FCS020 group sp.)、ラクノクロストリジウム属種(Lachnoclostridium sp.)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)及びバクテロイデス属種(Bacteroides sp.)。組成物は、このリストから選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17種の単離された細菌を含んでいてもよい又はそれからなっていてもよい。一実施形態では、2種以上の単離された細菌は、配列番号1から21から選択される核酸配列と少なくとも95%、例えば97%、98%、98.7%又は99%の配列同一性を有する16S rDNA配列を含む。一実施形態では、細菌は、凍結乾燥される。
【0015】
また、本発明は、2種以上の単離された細菌を含む組成物にも関し、前記細菌は、配列番号1、2若しくは3の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号4の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号5の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号6の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号7の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号8の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号9の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;以下の配列番号10若しくは11の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号12の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号13の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号14若しくは15の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌、配列番号16の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号17の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号18の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号19の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号20の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌及び配列番号21の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌から選択される。
【0016】
また、本発明は、本明細書に提供されるアクセッション番号として寄託された1種;例えば、2種から17種以上の単離された株を含む組成物も提供する。
【0017】
また、本発明は対象における疾患を処置又は予防するための方法であって、本明細書に記載される組成物を投与する工程を含む方法にも関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、疾患の処置に使用するための、本明細書に記載される組成物にも関する。
【0019】
方法及び組成物によれば、処置される疾患は、病原性感染、例えば、C.ディフィシル感染である。
【0020】
また、本発明は、本明細書に記載される細菌組成物を含むキットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】生存グラフを示す図である。17種の細菌単離物を有する組成物(組成物A)を、実施例2において記載されるようにインビボモデルで試験した。FMT療法及び媒体も試験した。
【
図2】生存グラフを示す図である。15種の細菌単離物を有する組成物(組成物B)を、実施例2において記載されるようにインビボモデルで試験した。媒体も試験した。
【
図3】生存グラフを示す図である。10種の細菌単離物を有する組成物(組成物C)を、実施例2において記載されるようにインビボモデルで試験した。媒体も試験した。
【
図4a】媒体(プラセボ)で処置したマウスと比較した、17株の細菌株共同体(組成物A)で処置したマウスのC.ディフィシル負荷後2日の平均体重減少を、C.ディフィシル負荷直前のマウス平均体重に対するパーセンテージとして示した図である。
【
図4b】媒体(プラセボ)で処置したマウスと比較した、10株の細菌株の共同体(組成物C)で処置したマウスのC.ディフィシル負荷後2日の平均体重減少を、C.ディフィシル負荷直前のマウスの平均体重に対するパーセンテージとして示した図である。
【
図4c】媒体(プラセボ)で処置したマウスと比較した、4株の細菌株の共同体(組成物D)で処置したマウスのC.ディフィシル負荷後2日の平均体重減少を、C.ディフィシル負荷直前のマウスの平均体重に対するパーセンテージとして示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について、更に記載する。以下の節で、本発明の異なる態様は、より詳細に定義される。そのように定義される各態様は、それとは反対に明らかに示されていない限り、任意の他の態様と組み合わされ得る。特に、好ましい又は有利と示される任意の特徴は、好ましい又は有利と示される任意の他の特徴と組み合わされ得る。
【0023】
一般的に、関連して使用される命名法、及び本明細書に記載される微生物学、細胞及び組織培養、病理学、分子生物学、遺伝学及びタンパク質及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションの技術は、当技術分野において周知の及び一般に使用されるものである。本開示の方法及び技術は、別段の指示がない限り、当技術分野において周知の従来の方法に従い、本明細書の全体にわたって引用され、論じられる、様々な一般の及びより具体的な参照に記載されるように、一般的に実施される。例えば、Green and Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. (2012)を参照されたい。
【0024】
関連して使用される命名法、及び本明細書に記載される分析化学、微生物学、バイオインフォマティクス並びに医薬及び製薬化学の技術は、当技術分野において周知の及び一般に使用されるものである。
【0025】
本発明は、各々が定義された細菌単離物の共同体を含む治療用細菌組成物に関する。組成物は疾患の処置に有用である。したがって、組成物は、糞便の微生物叢移植(FMT)ではなく、糞便材料を含有しないが、糞便材料を含有しない細菌単離物の定義された混合物を含有する。FMTは、通常は健常ヒトドナーからの糞便試料からなり、それがレシピエントに直接、例えば、浣腸剤の形態で投与され、糞便試料中に存在する細菌がレシピエンへのFMTの投与の前に単離されることはない。したがって、本組成物の利点は、FMTに存在する定義されていない成分を含まないことであり、それによって、治療用組成物が標準化されて、組成物の安全性が増大することが可能になる。
【0026】
用語「単離された」は、その天然環境から単離された細菌を指す。単離された細菌、例えば、単離された細菌株は、他の細胞材料、化学物質及び/又は糞便材料を実質的に含有しない。
【0027】
したがって、本明細書において使用する場合、用語「単離された」細菌は、1種又は複数の望ましくない成分、例えば別の細菌又は細菌株、成長培地のうちの1種又は複数の成分、及び/若しくは試料、例えば糞便試料のうちの1種又は複数の成分から分離されている細菌を指す。いくつかの実施形態では、供給源の他の成分が検出されないように、細菌は供給源から実質的に単離される。本明細書において使用する場合、用語「種」は、ゲノム配列及び表現型の特性により慣習的に定義される分類学的な実体を指す。「株」は、従来の微生物学的な技術に従って単離され、精製されている種の特定の例である。
【0028】
一実施形態では、組成物の細菌は、投与前に不活性である。例えば、細菌は凍結乾燥される。一実施形態では、組成物は、栄養細菌細胞を含み、細菌胞子を含まない。一実施形態では、組成物は、栄養細菌細胞及び/又は細菌胞子を含む。一実施形態では、組成物は、栄養細菌細胞を含み、細菌胞子を含まない又は胞子を実質的に欠く。一実施形態では、組成物は、約0.5%、1%、2%、3%、4%又は5%よりも少ない胞子を含む。一実施形態では、組成物は、栄養細菌細胞及び/又は細菌胞子を含む。
【0029】
組成物は、好ましくは、生きた細菌性治療薬、細菌療法又は生きた生物学的治療生成物である。本明細書に記載される場合、生きた細菌生成物(細菌組成物、生きた細菌共同体、又は細菌共同体とも称される)は、本明細書に記載される1種又は複数の細菌種からの1種又は複数の細菌株を含む。生きた細菌生成物は、生きた細菌治療(LBT)を提供する。生きた細菌治療又はLBTの用語は、本明細書における細菌療法と互換的に使用され、健康を回復させる又は疾患を治癒するための生きた細菌を使用する治療を定義する。
【0030】
一実施形態では、組成物は、上で記載された通りであってもよいが、いかなる他の種、すなわち、表1aに列挙されない種の細菌も含まない、又は組成物は、最小限(de minimis)又は生物学的に無関係な量の別の種からの細菌を含む。生物学的に無関係とは、C.ディフィシル感染の処置に効果を有していない細菌を意味する。
【0031】
一実施形態では、単離された細菌、例えば、単離された細菌株は、対象に投与された場合に前記対象の胃腸にコロニーを形成することができる生存可能な細菌であってもよい。
【0032】
第1の態様では、本発明は2種以上の単離された細菌を含む組成物に関し、前記細菌は、配列番号1、2若しくは3の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号4の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号5の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号6の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号7の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号8の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号9の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;以下の配列番号10若しくは11の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号12の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号13の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号14若しくは15の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌、配列番号16の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号17の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号18の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号19の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌;配列番号20の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌及び配列番号21の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する細菌から選択される。
【0033】
以下のTable 1a(表1)は、17種の異なる細菌種を列挙する。同定された最近縁の細菌種の名称が提供され、可能な代替の名称及び/又は公共のデータベースから密接に関連する種に基づく密接に関連する種も与えられる。本発明の組成物に存在する単離された細菌は、以下の17種から選択される。各種に関して分類学上の名称並びに例示的な16S rDNA配列が提供される。配列番号1~21が、全長又は部分的な16S rDNA配列を含み得ることが認識されるべきである。また、更に以下に説明されるように、細菌は、以下に列挙される配列番号とある特定の配列同一性を有する16S rDNA配列を有し得る。以下に見ることができるように、1、8及び11行に列挙される種について、異なる例示的な配列が提供される。
【0034】
【0035】
Table 1bは、Table 1a(表1)中の細菌の例示的な株を列挙する。そのような株を含む組成物は、本発明の範囲内である。細菌は、Leibniz-Institut DSMZ - Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ)、Inhoffenstr. 7B、38124 Braunschweigにおいて特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて、Microbiotica社により寄託された。アクセッション番号、寄託日及び寄託者の参照番号を以下に示す。
【0036】
【0037】
一実施形態では、組成物は、17種の単離された細菌、例えば、Table 1a(表1)に列挙される異なる17種の各々からの細菌を、例えば、以下に説明されるように、表に示される配列又はそれに対して同一性を有する配列を参照して、含む又はそれからなる。一実施形態では、細菌は、Table 1a(表1)に示される配列を参照することによって定義される。1、8及び11行に列挙される種について、異なる例示的な配列が提供される。これらのうちの1種又は複数が、組成物に含まれてもよい。一実施形態では、細菌は、Table 1b中の株から選択される。
【0038】
当業者には明らかとなるように、Table 1に列挙されるものから選択される異なる細菌は、単一組成物に組み合わせることができる。例えば、組成物は、例えば、表に示される配列を参照して、Table 1a(表1)に示されるもの又はTable 1b中の株から選択される、少なくとも2種、例えば、3種まで、4種まで、5種まで、6種まで、7種まで、8種まで、9種まで、10種まで、11種まで、12種まで、13種まで、14種まで、15種まで、16種まで若しくは17種までの単離された細菌を含む又はそれからなる。
【0039】
一実施形態では、組成物は、例えば、表に示される配列を参照して、Table 1a(表1)に列挙されるもの又はTable 1b中の株から選択される、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16若しくは17種の単離された細菌を含む又はそれからなる。
【0040】
一実施形態では、組成物は、例えば、表に示される配列を参照して、Table 1a(表1)に示されるもの又はTable 1b中の株から選択される、4、5、7、10若しくは15種の単離された細菌を含む又はそれからなる。
【0041】
一実施形態では、組成物は、例えば、表に示される配列を参照して、Table 1a(表1)に列挙されるもの又はTable 1b中の株から選択される、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16若しくは少なくとも17種の単離された細菌を含む又はそれからなる。
【0042】
一実施形態では、組成物は、例えば、表に示される配列を参照して、Table 1a(表1)に示されるもの又はTable 1b中の株から選択される、4、7、10又は15種以下の単離された細菌を含む。
【0043】
一実施形態では、組成物は、例えば、Table 1a(表1)に示される配列又はTable 1b中の株を参照して、Table 1に示されるものから選択される、2から4、2から5、2から6、2から7、2から8、2から9、2から10、2から11、2から12、2から13、2から14、2から15、2から16若しくは2から17種の単離された細菌を含む又はそれからなる。
【0044】
一実施形態では、組成物は、配列番号1から21から選択される16s DNA配列と少なくとも97%の配列同一性を有する2から17種の単離された細菌(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17種の単離された細菌)からなる単離された細菌混合物を含む。例示的な組成物が本明細書に記載されるが、全ての組合せが本発明の範囲内である。
【0045】
一実施形態では、組成物は、以下の種から選択される単離された細菌を含む又はそれからなる:バクテロイデス・セルロシリティカス(例えば、配列番号1、2又は3)、パラバクテロイデス・ディスタソニス(例えば、配列番号10又は11)、バクテロイデス・フラジリス(例えば、配列番号1、2又は3)及びバクテロイデス属種(例えば、配列番号14又は15)。
【0046】
一実施形態では、組成物は、組成物A、B、C又はDについて示される単離された細菌を含む又はそれからなる(実施例を参照されたい)。
【0047】
当業者は、Table 1a(表1)又はTable 1b中の株から並びに本発明の組成物及び方法に使用するため選択される細菌種が、Table 1a(表1)に示される配列又はTable 1b中の株若しくはそれに対してある特定の同一性パーセンテージを有し且つ生物活性;すなわち、本明細書に記載される組成物に使用される場合にC.ディフィシル感染に対する有効性を保持する配列を有し得ることを認識するであろう。
【0048】
配列同一性を決定する方法は、当技術分野で公知である。クレード、分類学の作業単位(OTU)、種、及び株が、いくつかの実施形態では、それらの16S rDNA配列により同定されることは公知である。関連性は同一性パーセントにより決定することができ、これは当技術分野において公知の方法を使用して決定することができる。
【0049】
本明細書に記載される組成物に使用される細菌種及び株は、16S核酸配列(全長又はその部分、例えば、V領域)に基づいて同定される。16SリボソームRNA遺伝子は、細菌リボソームの30SサブユニットのRNA成分をコードする。それは、全ての細菌種に広く存在する。異なる細菌種は、16S rRNA遺伝子のうちの1つから複数のコピーを有する。16S rRNA遺伝子シークエンシングは、細菌の系統発生及び属/種分類を研究するためハウスキーピング遺伝子をターゲッティングする最も一般的な方法のうちの優れた1つである。したがって、細菌は、16S核酸配列、例えば、細菌のリボソームRNA(rRNA)をコードする遺伝子の配列に基づいて、分類学的に分類することができる。この遺伝子配列は、リボソームDNA配列(rDNA)とも称される。細菌16S rDNAは、およそ1500個のヌクレオチドの長さである。16SのV1~V9領域は、16S rRNA遺伝子の最初の9つの超可変領域を指し、これらは細菌試料の遺伝的な分類にしばしば使用される。いくつかの態様では、V1からV9のうちの少なくとも1つを使用して、細菌単離物を特徴付ける。
【0050】
本明細書において使用する場合、用語「相同性」又は「同一性」は、必要に応じて、最大配列相同性パーセンテージを達成するために、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しないで、配列を整列させた後、及びいくつかの実施形態では、ギャップを導入した後、比較される参照配列の残基と同一である配列における核酸残基のパーセンテージを一般に指す。したがって、2つの核酸配列の間の相同性パーセンテージは、2つの配列の間の同一性パーセンテージと同等である。アラインメントに関する方法及びコンピュータプログラムは周知である。2つの配列の間の同一性パーセンテージは、周知の数学的なアルゴリズムを使用して決定することができる。2つのヌクレオチド配列の間の配列同一性パーセンテージへの参照は、整列された場合、ヌクレオチドのパーセンテージが、2つの配列を比較して同じであることを意味する。任意選択で、同一性は、少なくとも約50個ヌクレオチドの長さである領域にわたって、又はより好ましくは100から500個若しくは1000個以上のヌクレオチドの長さである領域にわたって存在する。いくつかの実施形態では、同一性は、本明細書に提供される16S rRNA又は16S rDNA配列の長さにわたって存在する。
【0051】
一実施形態では、クエリー配列と参照配列との間の配列同一性の度合は、市販されている配列比較プログラムの援助で決定することができる。これは典型的には、デフォルトスコアリングマトリックス及びデフォルトギャップペナルティーを使用して2つの配列を整列すること、完全マッチの数を同定すること、及び完全マッチの数を参照配列の長さで割ることを伴う。同一性を決定するのに有用な適当なコンピュータプログラムには、例えば、BLAST(blast.ncbi.nlm.nih.gov)が含まれる。1種のアラインメントは、Smith-Waterman相同性検索アルゴリズム又はNeedleman-Wunschアルゴリズムにより決定される。その上さらなる実施形態では、グローバルアラインメントプログラムはEMBOSS Needle及びEMBOSSストレッチャーからなる群から選択され、配列同一性は「アラインメント長」で割ったプログラムにより同定された完全マッチの数を同定することにより計算され、ここで、アラインメント長は、配列のギャップ及びオーバーハング部分を含む全アラインメントの長さである。
【0052】
したがって、Table 1に列挙される細菌種の全長又は部分的16S rDNA(本発明の組成物及び方法に使用される)は、少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性をTable 1に列挙される対応する16S rDNA(すなわち、配列番号1から21)に対して有する。一実施形態では、前記配列同一性は、少なくとも95%である。一実施形態では、前記配列同一性は、少なくとも97%である。一実施形態では、前記配列同一性は、少なくとも98.7%である。
【0053】
したがって、一態様では、組成物は、配列番号1から21から選択される16S rDNA配列を含む又は少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を、配列番号1から21から選択される核酸配列に対して有する16S rDNA配列を含む2種以上の細菌を含む。一実施形態では、組成物に存在する細菌は、本明細書に開示される細菌と同じ種に属し、少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;、例えば、97%又は98.7%の同一性を、配列番号1から21から選択される核酸配列に対して有し、C.ディフィシル感染に対する活性を保持する。C.ディフィシル感染に対する活性は、例えば、実施例に記載されるマウスモデルを使用するインビトロ、エクスビボ又はインビボ評価を使用して評価することができる。
【0054】
一実施形態では、組成物は、番号1から21選択される配列の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%又は98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する17種の異なる種からの細菌を含む又はそれからなる。上で説明されるように、いくつかの種に関して、1つより多い配列が提供される。一実施形態では、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列が、選択される。一実施形態では、配列番号10又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列が、選択される。一実施形態では、配列番号14又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列が、選択される。したがって、組成物は、配列番号1、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、16、17、18、19、20、21又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する配列から選択される細菌を含む又はそれからなる。
【0055】
一実施形態では、組成物は、例えば、15種の異なる種から、以下の15種の細菌を含むか又はそれからなり、以下の配列番号の16sDNAを有する:
配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号10又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号12又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号14又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号16又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号17又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号18又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号19又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【0056】
一実施形態では、配列番号1は、配列番号2若しくは3又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよく;配列番号10は、配列番号11又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよく、及び配列番号14は、配列番号15又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよい。
【0057】
別の実施形態では、組成物は、以下の配列番号の16sDNAを有する以下の10種の細菌を含む又はそれからなる:
配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号10又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号12又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【0058】
一実施形態では、配列番号1は、配列番号2若しくは3又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよく;配列番号10は、配列番号11又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよい。
【0059】
別の実施形態では、組成物は、以下の配列番号の16sDNAを有する以下の7種の細菌を含む又はそれからなる:
配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【0060】
一実施形態では、配列番号1は、配列番号2若しくは3又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよい。
【0061】
別の実施形態では、組成物は、以下の配列番号の16sDNAを有する以下の5種の細菌を含む又はそれからなる:
配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【0062】
一実施形態では、配列番号1は、配列番号2若しくは3又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよい。
【0063】
別の実施形態では、組成物は、以下の配列番号の16sDNAを有する以下の4種の細菌を含む又はそれからなる:
配列番号3又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号11又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列、
配列番号15又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列及び
配列番号21又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【0064】
一実施形態では、配列番号3は、配列番号1若しくは2又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよく;配列番号11は、配列番号10又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよく、及び配列番号15は、配列番号14又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列で置き換えられてもよい。
【0065】
一実施形態では、組成物は、Table 2(表3)、Table 3(表4)又はTable 4(表5)に示される組成物B、C又はD、例えば、これらの組成物に関して示される種又は配列を有する細菌から選択される。一実施形態では、組成物は、Table 2(表3)、Table 3(表4又はTable 4(表5)に示される組成物B、C又はDから選択され、ここで、組成物の細菌は、それぞれの表に提供される配列番号の16sDNA又はそれに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%;例えば、97%若しくは98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する。
【0066】
一実施例では、組成物に使用される種は、それらの16S rDNA配列(例えば、全長配列、又は部分配列)に基づいて同定される。いくつかの場合では、本発明で有用な細菌種の株、例えば、本明細書に開示された種の株は、公共の生物資源センター、例えば、ATCC(atcc.org)、DSMZ(dsmz.de)、又は理化学研究所バイオリソースセンター(en.brc.riken.jp)から得ることができる。本発明の種又は他の態様を同定するのに有用な16s rDNA配列は、公共のデータベース、例えば、Human Microbiome Project(HMP)ウェブサイト又はGenBankから得ることができる。
【0067】
当業者は、本明細書に記載される組成物が、任意の株を含み得ることを認識するであろう。当業者は、組成物が、表に列挙される特定の細菌種の1種又は1種より多い株を含み得ることを認識するであろう。例えば、核酸配列番号1、2又は3を有する16S rDNA配列を有する細菌株は、全て関連する分類学上の種の呼称としてバクテロイデス・セルロシリティカスを有する。核酸配列番号10又は11を有する16S rDNA配列を有する細菌株は、全て関連する分類学上の種の呼称としてパラバクテロイデス・ディスタソニスを有する。核酸配列番号14又は15を有する16S rDNA配列を有する細菌株は、全て関連する分類学上の種の呼称としてバクテロイデス・フラジリスを有する。一実施形態では、株は、Table 1b中の株のうちの1つから選択される。
【0068】
一実施形態では、組成物は、本明細書に列挙される細菌種を含み、さらなる細菌種を含まない。しかしながら、組成物は、医薬賦形剤を更に含んでいてもよい。一実施形態では、細菌組成物は、実施例に列挙される細菌を含む又はそれからなる。一実施形態では、細菌組成物は、実施例に列挙される細菌株を含む又はそれからなる。
【0069】
一実施形態では、組成物の細菌は、対象の胃腸管にコロニーを形成することができる。一実施形態では、組成物の細菌は、対象の胃腸管に持続的に生着(engraftment)することができる。
【0070】
一実施形態では、組成物は、1種又は複数の以下の特性も有する:
・組成物は、対象又は動物モデルにおけるC.ディフィシル感染の処置及び/又は予防に効果的である;
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシルを追い出し、それによって、対象における感染を処置する;
・細菌単離物は、対象の胃腸管のC.ディフィシルコロニー形成を低下させ、それによって、感染を処置する;
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシルよりも急速に対象の胃腸管にコロニーを形成し、それ故、病原体が胃腸管にコロニーを形成すること又はコロニーを再形成することを阻害する;
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシルに向けたコロニー形成耐性を付与し、それによって、対象における疾患の再発を予防する;
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシル毒素を中和し、それによって、対象における疾患の徴候を予防する;
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシルの免疫刺激効果を低下させ、それによって、対象における疾患の徴候を予防する;
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシルの胞子形成の率及び/又は胞子排出を低下させ、それによって、対象における進行性の伝播及び感染を制限する;
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシル胞子発芽を予防し、それによって、対象の感染を予防する;
・組成物の細菌単離物は、インビトロ及びインビボモデルにおけるC.ディフィシル成長及び/又はC.ディフィシル生存を低下させる;
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシルで負荷したマウスの生存率を増大させる(実施例に示される)及び/又は
・組成物の細菌単離物は、C.ディフィシルで負荷したマウスにおけるC.ディフィシル感染関連体重減少からの保護の増大を提供する(実施例に示される)。
【0071】
上に列挙される特性は、当業者に公知の方法を使用して評価され得る。例示的なアッセイは、実施例に示される。一実施形態では、組成物は、C.ディフィシル感染を処置すること及び/又は予防すること、C.ディフィシル成長及び/又は生存を低下させることに効果的であり、アッセイは、C.ディフィシル感染のインビボの生存モデル又はC.ディフィシル感染の生存モデルにおける体重減少である。生存モデルは、Warnら(14)に記載されるものであってもよい。
【0072】
したがって、C.ディフィシル感染は、適当な動物モデル、例えば、実施例に示されるマウスモデルにおいて評価することができ、生存及び/又は重量減少を研究することによって評価することができる。
【0073】
組成物に使用される細菌単離物は、1個体又は複数の健常対象から一般的に単離される。
【0074】
いくつかの実施形態では、1種又は複数の細菌株は、ヒト由来細菌であり、1種又は複数の細菌株が、ヒト又はそれに由来する試料(例えば、ヒトドナー)から得られた又はそれから同定されたことを意味する。本明細書に提供される組成物のいくつかの実施形態では、全ての細菌株は、ヒト由来細菌である。本明細書に提供される組成物のいくつかの実施形態では、細菌株は、1個体より多いヒトドナーに由来する。
【0075】
本明細書に提供される生きた細菌生成物に使用される細菌株は、一般的に、健常個体のマイクロバイオームから単離されるが、いくつかの場合では、健常個体からではなくてもよい。いくつかの実施形態では、生きた細菌生成物は、単一個体を起源とする株を含む。いくつかの実施形態では、生きた細菌生成物は、複数の個体を起源とする株を含む。いくつかの実施形態では、細菌株は、単離され個々に成長した複数の個体から得たものである。続いて、個々に成長した細菌組成物は、組み合わされて、本開示の組成物を提供し得る。本明細書に提供される生きた細菌生成物の細菌株の起源が、健常個体からのヒトマイクロバイオームに限定されないことが認識されるべきである。
【0076】
細菌単離物は、国際特許出願第2013/171515号に記載されるように試験することができる。一実施形態では、細菌株は、個々に培養され、増殖され、次に組成物に組み合わされる。
【0077】
組成物に使用される細菌単離物は、好ましくは非病原性株である。言い換えれば、細菌は、好ましくは、健常ヒト個体において、前記個体に投与されたときに疾患を引き起こさない。
【0078】
一実施形態では、組成物に存在する各細菌は、1種又は複数の抗生物質での処置に感受性である。言い換えれば、細菌は、少なくとも1種の抗生物質での処置に耐性ではない。このことは、個体に投与された治療用組成物に含まれる1種又は複数の細菌が、期待に反して個体に疾患を引き起こす事象で、個体の抗生物質処置を可能にする。したがって、一実施形態では、細菌は、ベータラクタム、フシジン酸、エルファマイシン、アミノグリコシド、ホスホマイシン、ツニカマイシンメトロニダゾール及び/又はバンコマイシンからなる群から選択される1種又は複数の抗生物質での処置に感受性である。細菌を抗生物質耐性についてスクリーニングするインビトロ及びインシリ法は当技術分野において公知である。
【0079】
一実施形態では、組成物に含まれる単離された細菌は、1種若しくは複数のビルレンス因子をコードする1種又は複数の遺伝子を含まなくてもよい及び/又は、好ましくは、1種若しくは複数のビルレンス因子を産生しない。この関係におけるビルレンス因子は、細菌の個体で疾患を引き起こす潜在能力を強化する性質である。ビルレンス因子は、細菌毒素、例えば細菌による内毒素及び外毒素の産生、並びに細菌の病原性に寄与し得る加水分解酵素の産生を含む。ビルレンス因子をコードする遺伝子について、細菌をスクリーニングする方法は、当技術分野において公知である。
【0080】
本発明の様々な態様、すなわち、組成物、方法、キット及び使用は、DSMZにおける特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて寄託した1種又は複数の株も包含する。具体的には、一態様では、本発明の治療用組成物は、少なくとも1種の単離された細菌株を含み、細菌は、the Leibniz-Institut DSMZ - Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ)、Inhoffenstr. 7B、38124 Braunschweigにおいて特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて、Microbiotica社により上のTable 1bに列挙され、下にも示すアクセッション番号で寄託される細菌である。
【0081】
したがって、本発明の治療用組成物は、少なくとも1種の単離された細菌を含むことができ、細菌は、DSMZにおいてブダペスト条約に基づいて寄託され、以下のアクセッション番号のうちの1つを割り当てられた細菌である(寄託された各細菌についてのDSMZによる寄託日は、アクセッション番号の後の括弧内に示される):DSM 33265(2019年9月13日)、DSM 33263(2019年9月13日)、DSM 33261(2019年9月13日)、DSM 33266(2019年9月13日)、DSM 33277(2019年9月13日)、DSM 33278(2019年9月13日)、DSM 33267(2019年9月13日)、DSM 33268(2019年9月13日)、DSM 33269(2019年9月13日)、DSM 33270(2019年9月13日)、DSM 33264(2019年9月13日)、DSM 33271(2019年9月13日)、DSM 33279(2019年9月13日)、DSM 33272(2019年9月13日)、DSM 33262(2019年9月13日)、DSM 33282(2019年9月13日)、DSM 33283(2019年9月13日)、DSM 33280(2019年9月13日)、DSM 33281(2019年9月13日)、DSM 33273(2019年9月13日)、DSM 33274(2019年9月13日)。
【0082】
上で説明されるように、組成物は、単離された株の組合せ、例えば、アクセッション番号によって上に列挙される2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17種の単離された細菌を含んでいてもよい。
【0083】
当業者には明らかとなるように、上に列挙される株から選択される異なる細菌株は、単一組成物に組み合わせることができる。例えば、組成物は、例えば、表に示される配列を参照して、Table 1に示されるものから選択される、少なくとも2種、例えば、3種まで、4種まで、5種まで、6種まで、7種まで、8種まで、9種まで、10種まで、11種まで、12種まで、13種まで、14種まで、15種まで、16種まで又は17種までの単離された細菌を含む又はそれからなる。典型的に、1種の細菌株は、各種に関して含まれるが、各種に関して1種より多く、例えば2、3、4、5種を含むことも可能である。
【0084】
一実施形態では、組成物は、上のアクセッション番号によって列挙される4、5、7、10又は15種の単離された細菌株を含む又はそれからなる。一実施形態では、組成物は、組成物B、C及びDについて示される株を含む又はそれからなる(実施例を参照されたい)。
【0085】
一実施形態では、組成物は、上のアクセッション番号によって列挙される、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16又は少なくとも17種の単離された株を含む又はそれからなる。
【0086】
一実施形態では、組成物は、上のアクセッション番号によって列挙される4、7、10又は15種以下の単離された株を含む。
【0087】
一実施形態では、組成物は、上のアクセッション番号によって列挙される2から4、2から5、2から6、2から7、2から8、2から9、2から10、2から11、2から12、2から13、2から14、2から15、2から16又は2から17の株を含む又はそれからなる。
【0088】
一実施形態では、組成物は、以下の株から、それらのアクセッション番号DSM 33265、DSM 33263、DSM 33261、DSM 33270、DSM 33264、DSM 33272及び/又はDSM 33262を参照することによって選択される、単離された細菌株を含む又はそれからなる。一実施形態では、組成物は、実施例に記載される単離された細菌株を含む又はそれからなる(組成物A、B、C又はDを参照されたい)。
【0089】
しかしながら、上で説明されるように、本発明は、特定の株に限定されないが、16S rDNAによって定義される細菌を包含する。したがって、本明細書に開示される及び開示されたアクセッション番号で寄託された株の派生物は、例えば、遺伝的なレベルで、生物学的活性をアブレーションすることなく、修飾され得る。特に、本発明の派生株は、治療活性がある。派生株は、元の寄託された株に匹敵する活性を有する。特に、派生株はC.ディフィシル疾患モデルに匹敵する効果を誘発し、これは実施例に記載される培養及び投与プロトコールを使用することによって同定され得る。寄託された株の派生物は、同じバイオタイプの派生物である。バイオタイプは、同じ又は非常に類似する生理的及び生化学的特性を有する密接に関係する株である。ある特定の実施形態では、本明細書に列挙されるアクセッション番号で寄託された細菌のバイオタイプであり、本発明における使用のために適当である株は、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析される場合、例えば、Sau3AI制限酵素分析を使用する場合、本明細書に列挙されるアクセッション番号で寄託された細菌と同じパターンを提供する株である。
【0090】
本明細書で説明されるように、本発明の細菌組成物は、対象に投与されたときに治療効果を有し、C.ディフィシル感染の処置又は予防に使用することができる。特に、本発明の細菌組成物は、実施例に記載されるC.ディフィシル疾患モデルに使用されたときに治療効果を有する。したがって、本明細書に記載される組成物は、医薬組成物である。
【0091】
一実施形態では、組成物は、当業者に周知の薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤又は他の材料を含むことができる。そのような材料は、無毒性であるべきであり、治療用組成物に存在する単離された細菌の有効性に干渉すべきではない。薬学的に許容される賦形剤又は他の材料の正確な性質は、投与経路に依存し、経口又は直腸であってもよい。治療用組成物を調製する多くの方法が当業者に公知である。
【0092】
本発明の細菌組成物は、プレバイオティクス、薬学的に許容される担体、不溶性繊維、緩衝剤、浸透圧調節剤、消泡剤及び/又は防腐剤を含むことができる。組成物に含まれる賦形剤の特定の例は、下に開示される。
【0093】
プレバイオティクスは、細菌組成物に存在する単離された細菌に栄養素を提供して、個体に投与後のそれらの早い成長及びコロニー形成を助けることができる。当技術分野で公知の任意のプレバイオティクスが使用され得る。プレバイオティクスの非限定的な例には、オリゴ糖、例えば、フルクトオリゴ糖、例えばオリゴフルクトース並びにイヌリン、マンナンオリゴ糖並びにガラクトオリゴ糖、可溶性オリゴフルクトースに富むイヌリン及び可溶性繊維が含まれる。不溶性繊維は、治療用組成物に担体として含まれてもよく、例えば、輸送又は貯蔵中の保護を提供する。緩衝剤は、細菌組成物に含まれ、存在する単離された細菌の生存能力を助長することができる。抗真菌剤は、細菌組成物に防腐剤として含まれ得る。
【0094】
一実施形態では、治療用細菌組成物は、本明細書に記載される細菌単離物以外の他の活性成分を含まなくてもよく、他の単離された細菌、及び任意選択でプレバイオティクスを含まなくてもよい。したがって、治療用組成物の活性成分は、本明細書に開示される細菌単離物の群、及び任意選択でプレバイオティクスからなっていてもよい。
【0095】
本発明の細菌組成物は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載される、錠剤、カプセル、ロゼンジ又は液体の形態を含む種々の手段で対象に投与することができる。
【0096】
本発明の細菌組成物は、対象への経口投与又は直腸投与用であってもよい。組成物が経口投与用である場合、組成物は、カプセル、又は錠剤の形態であってもよい。治療用組成物が直腸投与用である場合、治療用組成物は、浣腸剤の形態であってもよい。適当なカプセル、錠剤及び浣腸剤の調製は、当技術分野で周知である。カプセル又は錠剤は、胃酸からカプセル又は錠剤を保護するためのコーティングを含むことができる。例えば、カプセル又は錠剤は、腸溶コーティング、pH依存性、徐放性、及び/又は胃耐性であってもよい。そのようなカプセル及び錠剤は、例えば、胃におけるカプセル又は錠剤の溶解を最少化するが、小腸における溶解を可能にするために使用される。経口投与が意図される場合、組成物は固体又は液体形態であってもよく、半固体、半液体、懸濁液及びゲル形態が固体又は液体のいずれかとして本明細書で考慮される形態内に含まれる。
【0097】
経口投与のための固体組成物として、組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠、ピル、カプセル、チューイングガム、ウエハー等に製剤化することができる。そのような固体組成物は、典型的には1つ又は複数の不活性な希釈剤を含有する。それに加えて、1つ又は複数の以下のものが存在することができる:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、又はゼラチン、賦形剤、例えば、デンプン、ラクトース又はデキストリン、崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、コーンスターチ等;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、甘味剤、例えば、スクロース又はサッカリン、着香剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ着香剤;及び発色剤。組成物がカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態である場合、上のタイプの材料に加えて、液体担体、例えば、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン又は脂肪油を含有することができる。
【0098】
経口投与のために意図される場合、組成物は1つ又は複数の甘味剤、防腐剤、色素/着色剤及び香味促進剤を含むことができる。注射による投与のための組成物では、1つ又は複数の界面活性剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定化剤及び等張剤も含まれてもよい。
【0099】
細菌組成物は薬学的に許容される担体を含むことができ又は媒体は粒子性であってもよく、その結果、組成物は、例えば、錠剤若しくは粉末形態である。用語「担体」は、希釈剤、アジュバント、賦形剤を指し、これらと共に組成物が投与される。このような医薬担体は、液体、例えば、水及び油(石油、動物、野菜又は合成起源のものを含む)、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラル油、ゴマ油等であり得る。担体は、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド性シリカ、尿素等であり得る。それに加えて、補助剤、安定化剤、濃縮剤、潤滑及び発色剤を使用することができる。一実施形態では、組成物及び薬学的に許容される担体は滅菌される。生理食塩水並びに水性デキストロース及びグリセリン溶液を、液体担体として、特に注射溶液用に用いることもできる。適当な薬学的担体には、賦形剤、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等も含まれる。本発明の組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含有してもよい。
【0100】
組成物は、1つ又は複数の単位剤形の形態をとることができる。一実施形態では、単位用量は、少なくとも1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011又は1×1011より多くのコロニー形成単位(cfu)の栄養細菌細胞を含む。一実施形態では、単位用量は、薬学的に許容される賦形剤、腸溶コーティング、又はこれらの組合せを含む。細菌単離物又は組成物は、1~100g/日、例えば、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80又は90g/日の用量で提供することができる。
【0101】
処置又は特定のプロセスを適用して、組成物の細菌単離物の安定性又は生存能力を改善することができる。細菌組成物を、乾燥形態又は湿潤形態に適用することができる。細菌組成物は、凍結乾燥させることができる。凍結乾燥された治療用組成物は、1つ又は複数の安定剤及び/又は凍結保護剤を含むことができる。凍結乾燥された細菌組成物は、個体への投与前に、適当な希釈剤を使用して再構成することができる。
【0102】
別の態様では、対象における疾患を処置又は予防するための方法であって、本明細書に記載される細菌組成物を投与する工程を含む方法が提供される。別の態様では、疾患の処置に使用するための、本明細書に記載される細菌組成物が提供される。別の態様では、疾患の処置又は予防のための医薬の製造における、本明細書に記載される細菌組成物の使用が提供される。
【0103】
一実施形態では、疾患は、腸内病原性感染である。腸内感染の原因因子は:C.ディフィシル、広域スペクトルベータ-ラクタマーゼ産生性腸内細菌科、第三世代セファロスポリン耐性腸内細菌科、カルバペネム耐性腸内細菌科、フルオロキノロン耐性腸内細菌科、チフス菌(S.typhi)、パラチフス菌(S.paratyphi)、腸炎菌(S.enteritidis)を含むサルモネラ属種(Salmonella spp.)、腸管組織侵入性大腸菌、腸管出血性大腸菌、シゲラ毒素産生性大腸菌を含む大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、コレラ菌(Vibrio Cholerae)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejeuni)、C.コリ(C.coli)、C.ラリ(C.lari)、C.フィタス(C.fetus)を含むカンピロバクター属種(Campylobacter spp.)、S.ディゼンテリエ(S.dysenteriae)、S.フレクスナー(S.flexneri)、S.ボイド(S.boydii)、S.ソンネ(S.sonnei)を含む赤痢菌属種(Shigella spp.)、クリプトスポリジウム属種(Cryptosporidium spp.)、マイクロスポリジウム属種(Microsporidium spp.)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、B.ホミニス(B.hominis)を含むブラストシスティス属種(Blastocystis spp.)であってもよい。
【0104】
一実施形態では、疾患は、C.ディフィシル感染である。
【0105】
本明細書において使用する場合、「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、又は「処置(treatment)」は、疾患又は障害を阻害又は緩和(relieving)することを意味する。例えば、処置は、疾患又は障害に関連する症状の発生の延期、及び/又は前記疾患と共に発生する又は発生することが予想されるそのような症状の重症度の低下を含み得る。用語には、既存の症状を改善すること、さらなる症状を予防すること、及びそのような症状の根底にある原因を改善又は予防することが含まれる。したがって、用語は、有益な結果が、処置される哺乳動物、例えば、ヒト患者の少なくとも一部に与えられることを示す。多くの医学的な処置は、処置を受ける一部(しかし、全てではない)の患者に効果的である。
【0106】
用語「対象」又は「患者」は、処置、観察、又は実験の対象である動物を指す。単に例として、対象は、限定されないが、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、又はネコを含むが、これらに限定されない哺乳動物を含む。
【0107】
本発明による細菌組成物は、単独或いは他の処置との組合せで、同時に若しくは順次に、又は別の治療剤と組み合わされた製剤として、投与することができる。
【0108】
投与は、「治療有効量」であってもよく、これは個体に利益を示すために十分である。そのような利益は、少なくとも、少なくとも1つの症状の寛解であってもよい。したがって、特定の疾患の「処置」は、少なくとも1つの症状の寛解を指す。実際に投与された量、及び投与の速度並びに時間経過は、処置される対象、処置される特定の患者の性質並びに重症度、個々の患者の臨床状態、組成物の送達部位、治療用組成物のタイプ、投与の方法、投与のスケジュール及び医療従事者に公知の他の要因に依存する。処置の処方、例えば、投薬量の決定等は、一般の従事者及び他の医師の責任の範囲内であり、処置される疾患の症状の重症度及び/又は進行度に依存し得る。本発明の治療用組成物の治療有効量又は適当な投与量は、動物モデルにおけるそのインビトロ活性及びインビボ活性との比較により決定することができる。マウス及び他の試験動物での効果的な投薬量をヒトに外挿する方法は公知である。正確な投与量は、治療用組成物が予防のためか又は処置のためかを含むいくつかの因子に依存する。
【0109】
一実施形態では、対象は、本明細書に記載される組成物での処置前に抗生物質での処置を受けていない。別の実施形態では、対象は、本明細書に記載される組成物での処置前に抗生物質での処置を受けている。
【0110】
本明細書に記載される方法及び組成物は、C.ディフィシル感染を処置すること又はC.ディフィシル感染を予防することに使用することができる。例えば、方法は、C.ディフィシル感染に対する感受性を低下させることができる。一実施形態では、C.ディフィシル感染は、初発C.ディフィシル感染である。一実施形態では、C.ディフィシル感染は、再発性C.ディフィシル感染である。
【0111】
別の態様では、本発明は、対象における胃腸の微生物叢の多様性を増大させるための方法であって、本明細書に記載される組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0112】
別の態様では、本発明は、対象における胃腸管の微生物叢を変化させる方法であって、本明細書に記載される組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0113】
組成物の投与を必要とする方法の一実施形態では、方法は、投与に続いて、対象に投与された1種又は複数の細菌株の存在を検出するさらなる工程を含む。検出のための方法には、例えば、前記対象における少なくとも1種の投与された細菌単離物の本明細書で定義される16S核酸配列を検出する工程が含まれる。
【0114】
本発明の組成物は、組成物に存在する2種以上の単離された細菌を、適当な培地で培養する工程を含む方法により調製することができる。本発明の治療用組成物に含まれる細菌を培養するために適当な培地及び条件は、本明細書の他の場所で詳細に記載される。例えば、本発明による治療用組成物を調製する方法は、以下の工程を含んでいてもよい:
(i)本明細書に記載される第1の単離された細菌を培養する工程;
(ii)第2の及び任意選択でさらなる単離された細菌を培養する工程;及び
(iii)(i)及び(ii)で得られた細菌を混合して、治療用組成物を調製する工程。
【0115】
組成物に含まれる単離された細菌は、別々の工程で培養されてもよい。言い換えれば、治療用組成物に含まれる各細菌の別々の培養物が、好ましくは調製される。このことは、各細菌の成長が評価されること、及び医薬組成物に含まれる各細菌の量が所望のように制御されることを可能にする。工程(i)及び(ii)で培養された細菌は、好ましくは、明確な16S核酸配列を有し、これは99%、98%、97%、96%又は95%未満の配列同一性を共有する16S核酸配列である。
【0116】
上の方法は、組成物に含まれる単離された各細菌を培養する工程を含むことができる。
【0117】
方法は、細菌が、1つ又は複数のさらなる成分、例えば、薬学的に許容される賦形剤、プレバイオティクス、担体、不溶性繊維、緩衝剤、浸透圧調節剤、消泡剤、及び/又は防腐剤と混合される1つ又は複数のさらなる工程を任意選択で含むことができる。それに加えて又は代わりに、方法は、(i)及び任意選択で(ii)で得られた細菌をケモスタット培地、又は生理食塩水、例えば、0.9%生理食塩水に懸濁させる工程を含むことができる。(i)及び任意選択で(ii)で得られた細菌は、還元性雰囲気下、例えば、N2、CO2、H2、又はこれらの混合物、例えば、N2:CO2:H2の下で提供されてもよい。気体は、治療用組成物に存在する細菌を保存するために適当な比で存在することができる。例えば、還元性雰囲気は、80%N2、10%CO2及び10%H2を含むことができる。それに加えて又は代わりに、方法は、(i)及び任意選択で(ii)で得られた細菌を、任意選択で安定化剤及び/又は凍結保護剤の存在下で凍結乾燥させる工程を含むことができる。方法は、(i)及び任意選択で(ii)で得られた細菌を含むカプセル、錠剤、又は浣腸剤を調製する工程も含むこともできる。カプセル又は錠剤は、腸溶性、pH依存性、徐放性、及び/又は胃耐性であってもよい。
【0118】
本発明の組成物は、食物サプリメントの形態でも提供して、健常及びバランスのとれたマイクロバイオームを、例えば、飲料又は他の食料品として助長してもよい。
【0119】
さらなる態様では、本発明はキットに関する。キットは、本明細書に記載される組成物を含む。一実施例では、キットは、試料(例えば、凍結乾燥形態にパッケージされた、又は水性媒体等にパッケージされた)を害することなく、集めた材料を出荷するための材料を含み得る。キットは、滅菌容器、例えば、鼻腔胃(NG)チューブ、バイアル(例えば、保持性浣腸での使用のための)、胃耐性カプセル(例えば、酸-生物耐性で腸管に達し、滅菌された外側部分を有する)等において、処理された材料又は処置を含むことができる。キットは、使用のための指示書も含むことができる。
【0120】
別の態様では、本発明は、FMT治療のためのドナーを識別する方法におけるTable 1から選択される1種又は複数の細菌の使用に関する。
【0121】
別の態様では、本発明は、対象への投与前に糞便の移植物を処置するための方法であって、糞便の移植物にTable 1a(表1)又はTable 1bから選択される1種又は複数の単離された細菌を補充する工程を含む方法に関する。
【0122】
本発明のさらなる態様及び実施形態は、以下の実験の例示を含む本開示が与えられる当業者には明らかである。
【0123】
本明細書に別段の定義がない限り、本開示に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当技術分野における当業者が一般に理解する意味を有する。前述の開示は、本発明を作製及び使用する方法並びにその最良の形態を含む、本発明の範囲内に包含される主題の一般的な説明を提供しているが、以下の実施例は、更に当業者が本発明を実施することを可能にし、その完全な明細書を提供するために提供される。しかしながら、当業者は、これらの実施例の特質が本発明を限定するものとして読まれるべきでなく、その範囲が本開示に添付される特許請求の範囲及びその均等物からとらえるべきであることを認識する。本発明の様々なさらなる態様及び実施形態は、本開示の観点から当業者には明らかである。
【0124】
本明細書に言及した全ての文書は、任意の遺伝子アクセッション番号への参照及び特許公開への参照を含めて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、他のものがあってもなくても、2つの特定された特徴又は成分の各々の特定の開示と受けとられる。例えば、「A及び/又はB」は、恰も各々が本明細書で個々に記述されているように、(i)A、(ii)B及び(iii)A並びにBの各々の特定の開示と受けとられる。他のように指示されない限り、上で述べられた特徴の記載及び定義は、本発明のいかなる特定の態様又は実施形態にも限定されず、記載された全ての態様及び実施形態に均等に適用される。
【0126】
「実質的に」という語は、「完全に」を排除せず、例えば、Yが「実質的にない」組成物は完全にYがなくてもよい。
【0127】
本発明は、非限定的な実施例に更に記載される。
【実施例】
【0128】
(実施例1)
細菌単離物の同定及び単離
実験を行って、健康なヒトドナーの消化管微生物叢を、無菌マウスにおけるC.ディフィシル感染を予防する能力についてスクリーニングした。実験は、健康なドナーの便から調製した糞便スラリーを接種したC57BL/6無菌マウスを使用して行った。マウスに、C.ディフィシルM7404(血清型O27)を強制経口投与した。ヒト化微生物叢を有するマウスを生成するために、ヒトの便(マウス当たり20mgの便の相当量)を使用するFMTを週に1回、連続3週間行い、その後、「定住」期間とした。C.ディフィシルを導入した後、C.ディフィシル量の培養ベースの計数及びショットガンメタゲノミクスによる微生物叢組成物の評価のために、便試料を1日目から28日目の間、頻繁に回収した。便試料を、強制経口投与等の計画された任意の介入の前に回収した。
【0129】
21日目までの及び21日目を含む全ての時点で単一ケージ中のいずれのマウスからもC.ディフィシル排出の形跡がなかった場合は、微生物叢は、C.ディフィシル疾患に対して防御的であるとみなされた。各マウスが有するC.ディフィシル量を、CCEYアガーへの便ホモジネートの選択的播種によって計数し、その後、37℃で嫌気性インキュベーションを行った。
【0130】
ドナーに応じて、いくつかのC.ディフィシル排出表現型が見られた。1つのドナーは21日目まで、C.ディフィシル排出を完全に予防した。このコホートをさらなる分析に使用して、治療上有用な細菌を同定した。
【0131】
C.ディフィシル胞子を接種する前に0日目の各ケージ中のマウスの微生物叢プロファイルによって、C.ディフィシル排出に対する防御が予測されるという仮説を立てた。ドナーにおける細菌間の差を調べた。したがって、0日目に回収された全ての便試料に対して、ショットガンメタゲノミクスを行った。機械学習アプローチを用いてメタゲノミクスデータを分析した。このアプローチによって、マウスのマイクロバイオームデータ及びC.ディフィシル排出表現型を一体化して、防御表現型に寄与する可能性が高い細菌のリストを同定した。
【0132】
これによって、防御効果を付与する可能性が高い15株の異なる細菌株のリストが得られた。
【0133】
1人のヒトドナー由来の片利共生細菌の培養物コレクションを生成して、細菌療法共同体をそこから作製するための資源を提供した。単一の健康なヒトドナーから候補治療用細菌を得る主な利点は、これらの細菌が天然に共に生じ、そのため、互いに適合性がある可能性が高いことである。更に、これらは全て、C.ディフィシルの保菌に対して防御的であることが公知である微生物叢に由来し、これらの治療的機能の基礎を提供している。
【0134】
上記の機械学習アプローチによって治療効果を有すると同定された単離物の16SrRNA遺伝子に適合するその16S rRNA遺伝子に基づいて、細菌療法ミックスに含めるための株を選択した。
【0135】
C.ディフィシル排出を21日目まで完全に予防した微生物叢を有するドナーから同様に回収した2種の株(ビフィドバクテリウム・ロンガム及びバクテロイデス種)を、初期生着菌として治療用組成物に追加で含めた。これらを含める理論的根拠は、消化管の第2及び第3の生着菌であり得る候補治療用単離物によるコロニー形成を改善するためであった。次いで、17種の単離された細菌及び小集団の共同体を、インビボアッセイで試験した。
【0136】
(実施例2)
インビボアッセイ
1)C.ディフィシル感染の生存モデルにおける、インビボでの、17種の細菌単離物及び17種の細菌単離物の小集団の組成物の試験
Table 1(表1)に示す17種の単離された細菌を有する組成物(組成物A)を、動物モデルにおいて試験した。単離物の16S rDNAの配列番号をTable 1(表1)に示す。バクテロイデス・セルロシリティカスでは、配列番号1(DSM 33265)を使用した。パラバクテロイデス・ディスタソニスでは、配列番号10(DSM 33270)を使用した。バクテロイデス・フラジリスでは、配列番号14(DSM 33272)を使用した。
【0137】
C.ディフィシル感染マウスモデルを、前述のように確立した(14)。このモデルは、C.ディフィシルが成長するための栄養的ニッチを作り、疾患の発生をもたらす、抗生物質を使用する常在マウス微生物叢の抑制に基づくものである。
【0138】
全体を通して、およそ6週齢のメスの特定病原体不在(SPF)C57/BL6Nマウスを使用した。マウスを、無菌飲用水中に調製したセフォペラゾンで処置することによって、10日間、事前馴化した(0.5mg/mL、感染のマイナス12日目に開始してマイナス2日目まで)。マウスには、抗生物質を含有する水を、自由摂取で飲めるようにした。マウスを、感染の48時間前に、研究の残りの期間の間、セフォペラゾンを含有しない飲用水に戻した。C.ディフィシル感染の48時間前に、単回用量のクリンダマイシン(10mg/kg)を、腹腔内注射によって投与した。
【0139】
C.ディフィシル感染の前日に、マウスを、11時間離して投与された1~2×107cfuの組成物Aの2回投与量で処置した。0日目に、マウスを、C.ディフィシル株ATCC 43255(VPI 10463)由来の、106cfuの胞子に対応する100μlの胞子調製物を投与することによって、C.ディフィシルに感染させた。
【0140】
感染後、いずれのマウスも長期にわたる重度の疾患にかかることも死亡することもないようにする目的で、マウスを、臨床的に必要な頻度で、C.ディフィシル感染の兆候についてモニタリングした。感染の兆候としては、発熱、軟便、及び体重減少が含まれる。重度のウェットテイル、下痢、低体温症、うつ伏せ状態、又は無反応であることが分かったマウスは安楽死させ、死亡時刻と共に臨床状態を記録した。
【0141】
生存の結果を
図1に示す。組成物Aの有効性を、FMT療法での処置及び媒体のみでの処置と比較して試験した。C.ディフィシルATCC 43255感染のロバストモデルを媒体マウスで確立し、これは、媒体処置群において平均生存時間が感染後34時間であったことを示す。組成物Aで処置したマウス及びFMTで処置したマウスは、それぞれ約122時間及び約121時間の平均生存を示した。これらの処置群の両方が、媒体処置マウスと比較して優れた生存を示し、このことは統計的に有意であった(ログランク検定、p=0.0008)。このことは、組成物が有効であり、生存率を増大させることを実証している。
【0142】
Table 2(表3)に示す15種の単離された細菌を有する組成物(組成物B)を、生存モデルにおいて試験した。単離物の16S rDNAの配列番号をTable 2(表3)に示す。マウスを、11時間離して投与された0.6~1×107cfuの組成物Bの2回投与量で処置した。
【0143】
組成物Bの有効性を、媒体での処置と比較して試験し、7日間にわたって生存を評価した(
図2)。C.ディフィシルATCC 43255感染のロバストモデルを媒体マウスで確立し、これは、媒体処置群において平均生存時間が感染後91時間であったことを示す。組成物Bで処置したマウスは、約128時間の平均生存を示した。感染後7日、媒体処置マウスにおいて生存は38%であり、それに対し、組成物B処置マウスでは63%であった。このことは、組成物Bが有効であり、生存率を増大させることを実証している。
【0144】
【0145】
Table 3(表4)に示す10種の単離された細菌を有する組成物(組成物C)を、生存モデルにおいて試験した。単離物の16S rDNAの配列番号をTable 3(表4)に示す。マウスを、-1日目及び1日目(マウスは、0日目にC.ディフィシル胞子で感染させた)に、11時間離して投与された0.9~2×108cfuの組成物Cの2回投与量で処置した。マウスに、0日目に、C.ディフィシルの感染の11時間前に、0.7×108cfuの組成物Cを単回投与した。
【0146】
組成物Cの有効性を、媒体での処置と比較して試験し、7日間にわたって生存を評価した(
図3)。C.ディフィシルATCC 43255感染のロバストモデルをマウスで確立し、これは、媒体処置群において平均生存時間が感染後55時間であったことを示す。組成物Cで処置したマウスは、107時間の平均生存を示した。感染後7日、媒体処置マウスにおいて生存は13%であり、それに対し、組成物C処置マウスでは50%であった。このことは、組成物Cが有効であり、生存率を増大させることを実証している。
【0147】
【0148】
2)C.ディフィシル感染の体重減少モデルにおける、インビボでの、17種の細菌単離物及び17種の細菌単離物の小集団の試験
さらなる実験において、組成物A、並びに、Table 1(表1)で示した単離物の10株及び4株の小集団をそれぞれ含む2つの他の細菌組成物である組成物C及び組成物Dを、C.ディフィシル感染の動物モデルにおいて試験した。組成物C及びD中の細菌単離物を、それぞれの16S rDNA配列と共に、Table 3(表4)及びTable 4(表5)にそれぞれ示す。
【0149】
【0150】
C.ディフィシル感染マウスモデルを、前述のモデルに基づいて確立した(14)。このモデルは、C.ディフィシルが成長するための栄養的ニッチを作り、疾患の発生をもたらす、抗生物質のカクテルを使用する常在マウス微生物叢の抑制に基づくものである。
【0151】
5~9週齢のメスSPFマウス(系統C57BL/6)を使用した。マウスには、カナマイシン(0.4mg/mL)、ゲンタマイシン(0.035mg/mL)、コリスチン(850U/mL)、メトロニダゾール(0.215mg/mL)、及びバンコマイシン(0.045mg/mL)を補充した水を3日間(-7日目から-4日目)与え(自由摂取)、次いで、抗生物質を含有しない水に切り替えた(自由摂取)。-2日目に、マウスに、クリンダマイシン(10mg/kg)を強制経口投与によって単回投与した。
【0152】
マウスを、-1日目、又は-1日目及び0日目に、強制経口投与によってLBP又は媒体で処置した。0日目に、各マウスに、1×105cfuのC.ディフィシル株M7404(リボタイプ027)の胞子で負荷を行った。マウスを、疾患の兆候として体重減少についてモニタリングした。
【0153】
C.ディフィシル感染の前日に投与された6~8×10
7cfuを含む、17株の共同体である組成物Aの単回投与は、媒体対照と比較して、マウスにおける体重減少の予防をもたらした。組成物A処置群において、C.ディフィシル負荷後2日のマウスは体重が平均6.4%減少しており、それに対し、媒体処置群では13.8%の減少であり(
図4a)、これは、統計的に有意であった(t検定、p≦0.006)。媒体処置マウスと比較して、C.ディフィシル感染に関連する体重減少からの防御のこの増大は、組成物Aが有効であったことを示す。
【0154】
10株の共同体(組成物C)を同一のモデルにおいて試験し、感染の前日、及び感染の日の感染5時間前に、双方の場合において1~2×10
7cfuの用量でマウスに投与した。媒体処置と比較して、組成物Cは、C.ディフィシル感染によって生じる体重減少に対して防御的であった。組成物C処置群において、C.ディフィシル負荷後2日のマウスは体重が平均11.7%減少しており、それに対し、媒体処置群では14.9%の減少であった(
図4b)。媒体処置マウスと比較して、C.ディフィシル感染に関連する体重減少からの防御のこの増大は、組成物Cが有効であったことを示す。
【0155】
糞便試料を、組成物Aで処置したマウスから単離し、全DNAを抽出し、そして糞便試料から精製した。各対が組成物Aの17株のうちの1株に特異である、17対のプライマー対を、別個の反応で使用して、糞便DNA試料をPCRにかけた。投与後3日以降に得た糞便試料からPCR増幅産物を得、プライマーセットのうちの4つについては、Table 1(表1)に列挙した17株のうちのバクテロイデス・セルロシリティカス、パラバクテロイデス・ディスタソニス、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス種に特異的であった。これらの特定の株は、消化管内でのC.ディフィシルの増殖を予防し得るとみなされた。これら4株を配合して組成物Dとし、この組成物を、上記のC.ディフィシル感染の体重減少モデルにおいて試験した。組成物Dを、C.ディフィシル感染の前日に2回投与し、5×10
7cfuの2回投与量が8時間離して投与された。媒体処置と比較して、組成物Dは、C.ディフィシル感染によって生じる体重減少に対して防御的であった。組成物D処置群において、C.ディフィシル負荷後2日のマウスは体重が平均7.4%減少しており、それに対し、媒体処置群では12.2%の減少であり(
図4c)、これは、統計的に有意であった(t検定、p=0.03)。媒体処置マウスと比較して、C.ディフィシル感染に関連する体重減少からの防御のこの増大は、組成物Dが有効であったことを示す。
【0156】
【0157】
(配列)
>バクテロイデス・セルロシリティカス 配列番号1
【0158】
【0159】
>バクテロイデス・セルロシリティカス 配列番号2
【0160】
【0161】
>バクテロイデス・セルロシリティカス 配列番号3
【0162】
【0163】
>ブラウティア属種 配列番号4
【0164】
【0165】
>コプロコッカス・カツス 配列番号5
【0166】
【0167】
>コプロコッカス・コメス 配列番号6
【0168】
【0169】
>ドレア属種 配列番号7
【0170】
【0171】
>エリュシペロトリカセエUCG-003種 配列番号8
【0172】
【0173】
>オドリバクター・スプラクニクス 配列番号9
【0174】
【0175】
>パラバクテロイデス・ディスタソニス 配列番号10
【0176】
【0177】
>パラバクテロイデス・ディスタソニス 配列番号11
【0178】
【0179】
>ルミニクロストリジウム9属種 配列番号12
【0180】
【0181】
>ルミノコッカス・トルクエス 配列番号13
【0182】
【0183】
>バクテロイデス・フラジリス 配列番号14
【0184】
【0185】
>バクテロイデス・フラジリス 配列番号15
【0186】
【0187】
>ブラウティア属種 配列番号16
【0188】
【0189】
>ブラウティア属種 配列番号17
【0190】
【0191】
>クノスピラ科FCS020群種 配列番号18
【0192】
【0193】
>ラクノクロストリジウム属種 配列番号19
【0194】
【0195】
>ビフィドバクテリウム・ロンガム 配列番号20
【0196】
【0197】
>バクテロイデス属種 配列番号21
【0198】
【配列表】
【国際調査報告】