(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】グラフェンベースの化学センサの非共有結合性修飾
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20221021BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20221021BHJP
H01L 29/16 20060101ALI20221021BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
G01N27/22 A
G01N33/497 Z
H01L29/16
H01L29/93
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511117
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020046829
(87)【国際公開番号】W WO2021034844
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】513112245
【氏名又は名称】リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミネソタ
【氏名又は名称原語表記】REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MINNESOTA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、シュエ
(72)【発明者】
【氏名】ビュールマン、フィリップ ピエール ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ケスター、スティーブン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA26
2G045CB22
2G045CB30
2G045FA34
2G045JA07
2G060AA01
2G060AB15
2G060AE19
2G060AF07
2G060AF10
2G060BA09
2G060BB08
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
本願の実施形態は、化学センサ、化学センサを含む機器及びシステム、並びに関連する方法に関する。一実施形態では、グラフェンバラクタを有する医療機器が含まれ、グラフェンバラクタは、グラフェン層と自己組織化単分子層とを備え、自己組織化単分子層は、自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に配置されている。自己組織化単分子層は、1つ若しくは複数のピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体を含む。本願には他の実施形態も含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンバラクタを含む医療機器であって、前記グラフェンバラクタは、
グラフェン層と、
自己組織化単分子層とを備え、前記自己組織化単分子層は、前記自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通して前記グラフェン層の外面上に配置されており、
前記自己組織化単分子層は、1つ若しくは複数のピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体を含む、医療機器。
【請求項2】
前記自己組織化単分子層は、少なくとも0.9のラングミュアシータ値を提供する、請求項1及び3~7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項3】
前記自己組織化単分子層は、表面積で50%~150%のグラフェン上における被覆率を提供する、請求項1~2及び4~7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項4】
前記自己組織化単分子層は、
を有する置換ピラーレンを含み、
各R
0は、独立して、-R
1、-OR
1又は-SR
1を含むことができ、
各R
1は、独立して、H;-OH;=O;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R
2OH、-R
2C(O)OH、-R
2C(O)OR
2、-R
2OR
2、-R
2SR
2、-R
2CHO、-R
2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R
2C(O)NH
2、-R
2C(O)NR
2、-R
2NH
3
+、-R
2NH
2、-R
2NO
2、-R
2NHR
2、-R
2NR
2R
2、-R
2N
3、-R
2OPO(OH)
2、-R
2OSO(OH)
2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、
各R
2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、
nは少なくとも5~15の整数である、請求項1~3及び5~7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記自己組織化単分子層は、
を有する置換ピラーレンを含み、
各R
0は、独立して、-R
1、-OR
1又は-SR
1を含むことができ、
各R
1は、独立して、H;-OH;=O;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R
2OH、-R
2C(O)OH、-R
2C(O)OR
2、-R
2OR
2、-R
2SR
2、-R
2CHO、-R
2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R
2C(O)NH
2、-R
2C(O)NR
2、-R
2NH
3
+、-R
2NH
2、-R
2NO
2、-R
2NHR
2、-R
2NR
2R
2、-R
2N
3、-R
2OPO(OH)
2、-R
2OSO(OH)
2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、
各R
2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、
xは少なくとも0~15の整数であり、yは少なくとも0~15の整数であり、nは少なくとも5~15の整数である、請求項1~4及び6~7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項6】
前記自己組織化単分子層は、
又は
のいずれかを有する置換カリックスアレーンを含み、
各R
0は、独立して、-R
1、-OR
1又は-SR
1を含むことができ、
各R
1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R
2OH、-R
2C(O)OH、-R
2C(O)OR
2、-R
2OR
2、-R
2SR
2、-R
2CHO、-R
2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R
2C(O)NH
2、-R
2C(O)NR
2、-R
2NH
3
+、-R
2NH
2、-R
2NO
2、-R
2NHR
2、-R
2NR
2R
2、-R
2N
3、-R
2OPO(OH)
2、-R
2OSO(OH)
2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、
各R
2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、
nは少なくとも3~15の整数である、請求項1~5及び7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項7】
前記自己組織化単分子層は、
を有する置換ペルアルキル化シクロデキストリンを含み、
各Zは、独立して、-S又は-Oを含むことができ、
各R
1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R
2OH、-R
2C(O)OH、-R
2C(O)OR
2、-R
2OR
2、-R
2SR
2、-R
2CHO、-R
2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R
2C(O)NH
2、-R
2C(O)NR
2、-R
2NH
3
+、-R
2NH
2、-R
2NO
2、-R
2NHR
2、-R
2NR
2R
2、-R
2N
3、-R
2OPO(OH)
2、-R
2OSO(OH)
2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、
各R
2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、
nは少なくとも5~10の整数である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項8】
グラフェンの表面を修飾する方法であって、前記方法は、
自己組織化単分子層を形成するステップと、
液滴接触角測定法、ラマン分光法又はX線光電子分光法を用いて、前記自己組織化単分子層の表面被覆の程度を定量化するステップとを含み、
前記自己組織化単分子層は、前記自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に配置され、
前記自己組織化単分子層は、1つ若しくは複数のピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体を含む、方法。
【請求項9】
少なくとも0.9のラングミュアシータ値を示す誘導体化されたグラフェン層を選択するステップをさらに含む、請求項8及び10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記自己組織化単分子層は、
を有する置換ピラーレンを含み、
各R
0は、独立して、-R
1、-OR
1又は-SR
1を含むことができ、
各R
1は、独立して、H;-OH;=O;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R
2OH、-R
2C(O)OH、-R
2C(O)OR
2、-R
2OR
2、-R
2SR
2、-R
2CHO、-R
2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R
2C(O)NH
2、-R
2C(O)NR
2、-R
2NH
3
+、-R
2NH
2、-R
2NO
2、-R
2NHR
2、-R
2NR
2R
2、-R
2N
3、-R
2OPO(OH)
2、-R
2OSO(OH)
2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、
各R
2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、
nは少なくとも5~15の整数である、請求項8~9及び11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記自己組織化単分子層は、
を有する置換ピラーレンを含み、
各R
0は、独立して、-R
1、-OR
1又は-SR
1を含むことができ、
各R
1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R
2OH、-R
2C(O)OH、-R
2C(O)OR
2、-R
2OR
2、-R
2SR
2、-R
2CHO、-R
2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R
2C(O)NH
2、-R
2C(O)NR
2、-R
2NH
3
+、-R
2NH
2、-R
2NO
2、-R
2NHR
2、-R
2NR
2R
2、-R
2N
3、-R
2OPO(OH)
2、-R
2OSO(OH)
2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、
各R
2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、
xは少なくとも0~15の整数であり、yは少なくとも0~15の整数であり、nは少なくとも5~15の整数である、請求項8~10及び12~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記自己組織化単分子層は、
又は
のいずれかを有する置換カリックスアレーンを含み、
各R
0は、独立して、-R
1、-OR
1又は-SR
1を含むことができ、
各R
1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R
2OH、-R
2C(O)OH、-R
2C(O)OR
2、-R
2OR
2、-R
2SR
2、-R
2CHO、-R
2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R
2C(O)NH
2、-R
2C(O)NR
2、-R
2NH
3
+、-R
2NH
2、-R
2NO
2、-R
2NHR
2、-R
2NR
2R
2、-R
2N
3、-R
2OPO(OH)
2、-R
2OSO(OH)
2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、
各R
2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、
nは少なくとも3~15の整数である、請求項8~11及び13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記自己組織化単分子層は、
を有する置換ペルアルキル化シクロデキストリンを含み、
各R
0は、独立して、-R
1、-OR
1又は-SR
1を含むことができ、
各R
1は、独立して、H;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R
2OH、-R
2C(O)OH、-R
2C(O)OR
2、-R
2OR
2、-R
2SR
2、-R
2CHO、-R
2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R
2C(O)NH
2、-R
2C(O)NR
2、-R
2NH
3
+、-R
2NH
2、-R
2NO
2、-R
2NHR
2、-R
2NR
2R
2、-R
2N
3、-R
2OPO(OH)
2、-R
2OSO(OH)
2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、
各R
2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC
1~C
20アルキル、C
1~C
20アルケニル、C
1~C
20アルキニル、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
1~C
20ヘテロアルケニル、C
1~C
20ヘテロアルキニル、C
1~C
20ハロアルキル基、C
1~C
20ハロアルケニル基、C
1~C
20ハロアルキニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C
1~C
20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、
nは少なくとも5~10の整数である、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
分析物を検出する方法であって、
患者からガス状サンプルを採取するステップと、
前記ガス状サンプルを1つ又は複数のグラフェンバラクタと接触させるステップとを含み、前記1つ又は複数のグラフェンバラクタの各々は、
グラフェン層と、
自己組織化単分子層とを備え、前記自己組織化単分子層は、前記自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通して前記グラフェン層の外面上に配置されており、
前記自己組織化単分子層は、ピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、方法。
【請求項15】
前記ガス状サンプル中に存在する1つ又は複数の分析物の結合による前記1つ又は複数のグラフェンバラクタの電気特性における特異な応答を測定するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年8月18日に、すべての国を指定国とする出願人である米国法人ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド、及びすべての国を指定国とする発明者である中国市民シュエ ジェン(Xue Zhen)の名義によるPCT国際特許出願として出願されている。本願はまた、すべての国を指定国とする出願人であるリージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミネソタ、すべての国を指定国とする発明者である米国市民フィリップ ピエール ジョセフ ビュールマン(Philippe Pierre Joseph Buhlmann)及び米国市民スティーブン ジェイ.ケスター(Steven J. Koester)の名義によるPCT国際特許出願としても出願されている。本願は、2019年8月20日に出願された米国仮特許出願第62/889,387号に対する優先権を主張するものであり、この仮特許出願の内容は参照により余すところなく本明細書に援用される。
【0002】
分野
本明細書の実施形態は、化学センサ、化学センサを備えた機器及びシステム、並びに関連する方法に関する。より詳細には、本明細書の実施形態は、グラフェンの非共有結合性表面修飾に基づく化学センサに関する。
【背景技術】
【0003】
疾患の正確な検出により、臨床医は適切な治療的介入を行うことができる。疾患の早期発見は、より良好な治療結果をもたらす可能性がある。疾患は、組織サンプルの分析、様々な体液の分析、診断スキャン、遺伝子解析などを含む多くの異なる技術を用いて検出することができる。
【0004】
いくつかの病態は特有の化合物の産生を生じる。場合により、患者のガス状サンプル中に放出された揮発性有機化合物(VOC)が特定の疾患の特徴になることがある。これらの化合物の検出又はその分別検知は、特定の病態の早期発見を可能にすることができる。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、グラフェンバラクタを有する医療機器が含まれ、グラフェンバラクタは、グラフェン層と自己組織化単分子層とを備え、自己組織化単分子層は、自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に配置されている。自己組織化単分子層は、1つ若しくは複数のピラーレン(pillarene)、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体を含むことができる。
【0006】
第2の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、少なくとも0.9のラングミュアシータ値を提供する。
【0007】
第3の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、少なくとも0.98のラングミュアシータ値を提供する。
【0008】
第4の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、表面積で50%~150%のグラフェン上における被覆率を提供する。
【0009】
第5の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、医療機器上においてアレイに構成された複数のグラフェンバラクタが含まれ得る。
【0010】
第6の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、式:
【0011】
の置換ピラーレンを含むことができ、
式中、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができ、各R1は、独立して、H;-OH;=O;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、nは少なくとも5~15の整数である。
【0012】
第7の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、R0置換基のうちの少なくともいくつかは他のR0置換基と異なる。
【0013】
第8の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、式:
【0014】
の置換ピラーレンを含むことができ、
式中、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができ、各R1は、独立して、H;-OH;=O;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、xは少なくとも0~15の整数であり、yは少なくとも0~15の整数であり、nは少なくとも5~15の整数である。
【0015】
第9の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、
【0016】
【0017】
【0018】
のうちのいずれかを有し得る置換カリックスアレーンを含むことができ、
式中、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができ、各R1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、nは少なくとも3~15の整数である。
【0019】
第10の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、式:
【0020】
の置換ペルアルキル化シクロデキストリンを含むことができ、
式中、各Zは、独立して、-S又は-Oを含むことができ、各R1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、nは少なくとも5~10の整数である。
【0021】
第11の態様では、グラフェンの表面を修飾する方法が提供される。その方法は、自己組織化単分子層を形成するステップを含むことができ、自己組織化単分子層は、自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に配置される。自己組織化単分子層は、1つ若しくは複数のピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体を含むことができる。その方法は、液滴接触角測定法、ラマン分光法又はX線光電子分光法を用いて、自己組織化単分子層の表面被覆の程度を定量化するステップを含むことができる。
【0022】
第12の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、前記方法は、少なくとも0.9のラングミュアシータ値を示す誘導体化されたグラフェン層を選択するステップをさらに含むことができる。
【0023】
第13の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、前記方法は、少なくとも0.98のラングミュアシータ値を示す誘導体化されたグラフェン層を選択するステップをさらに含むことができる。
【0024】
第14の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、本明細書の方法における使用に適した自己組織化単分子層は、式:
【0025】
の置換ピラーレンを含むことができ、
式中、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができ、各R1は、独立して、H;-OH;=O;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、nは少なくとも5~15の整数である。
【0026】
第15の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、式:
【0027】
の置換ピラーレンを含み、
式中、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができ、各R1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、xは少なくとも0~15の整数であり、yは少なくとも0~15の整数であり、nは少なくとも5~15の整数である。
【0028】
第16の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、
【0029】
【0030】
【0031】
のうちのいずれかを有し得る置換カリックスアレーンを含むことができ、
式中、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができ、各R1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、nは少なくとも3~15の整数である。
【0032】
第17の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、自己組織化単分子層は、
【0033】
を有し得る置換ペルアルキル化シクロデキストリンを含み、
式中、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができ、各R1は、独立して、H;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができ、各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル基、C1~C20ハロアルケニル基、C1~C20ハロアルキニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができ、nは少なくとも5~10の整数である。
【0034】
第18の態様では、分析物を検出する方法が含まれている。その方法は、患者からガス状サンプルを採取するステップと、ガス状サンプルを1つ又は複数のグラフェンバラクタと接触させるステップとを含むことができる。1つ又は複数のグラフェンバラクタの各々は、グラフェン層と自己組織化単分子層とを備えることができ、自己組織化単分子層は、自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に配置されている。自己組織化単分子層は、ピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0035】
第19の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、前記方法は、ガス状サンプル中に存在する1つ又は複数の分析物の結合による1つ又は複数のグラフェンバラクタの電気特性における特異な応答を測定するステップをさらに含むことができる。
【0036】
第20の態様において、前の態様若しくは以下の態様の1つ若しくは複数に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電気特性はキャパシタンス又は抵抗からなる群から選択され得る。
【0037】
本概要は、本願の教示の一部の概説であり、本主題を排他的又は網羅的に取り扱うことを意図するものではない。さらなる詳細事項は、詳細な説明及び添付する特許請求の範囲に見い出される。他の態様は、以下の詳細な説明を読んで理解し、その一部をなす図面を見ることにより、当業者に明らかとなるであろう。それらの詳細な説明及び図面の各々は限定的な意味で解釈されるべきではない。本願の範囲は添付する特許請求の範囲及びそれらの法的均等物によって定められる。
【0038】
態様は、以下の図に関連してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本明細書の様々な実施形態によるグラフェンバラクタの概略斜視図。
【
図2】本明細書の様々な実施形態によるグラフェンバラクタの一部の概略断面図。
【
図3】本明細書の様々な実施形態による化学センサ素子の概略平面図。
【
図4】本明細書の様々な実施形態による測定ゾーンの一部の概略図。
【
図5】本明細書の様々な実施形態によるパッシブセンサ回路及び読取り回路の一部の回路図。
【
図6】本明細書の様々な実施形態によるガス状分析物を検知するシステムの概略図。
【
図7】本明細書の様々な実施形態によるガス状分析物を検知するシステムの概略図。
【
図8】本明細書の様々な実施形態による化学センサ素子の一部の概略断面図。
【
図9】本明細書の様々な実施形態による濃度の関数としての相対的表面被覆率の代表的なプロット。
【
図10】本明細書の様々な実施形態による、
図10に提示された濃度の対数の関数としての相対的表面被覆率の代表的なプロット。
【
図11】本明細書の様々な実施形態による濃度の関数としての相対的表面被覆率の代表的なプロット。
【
図12】本明細書の様々な実施形態による、
図11に提示された濃度の対数の関数としての相対的表面被覆率の代表的なプロット。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実施形態は様々な変更及び代替形態が可能であるが、それらの詳細は、例及び図面によって示されており、詳細に説明されるであろう。しかしながら、本明細書の範囲は、記載される特定の態様に限定されるものではないことが理解されるべきである。むしろ、その意図は、本明細書の趣旨及び範囲内にある変更物、均等物、及び代替物を網羅することにある。
【0041】
本明細書の実施形態は、化学センサ、化学センサを含む医療機器及びシステム、並びに患者の息などの、しかしこれに限定されるものではないガス状サンプル中の化合物を検出するための関連する方法に関する。いくつかの実施形態において、本明細書の化学センサは、様々な表面レセプタによるグラフェンの非共有結合性表面修飾に基づくことができ、そのような表面レセプタには、ピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類又は置換ピレン類が含まれる。本明細書に使用される場合、「ピラーレン」という用語は、「ピラーアレーン(pillararene)」という用語と言い換え可能に使用され得る。
【0042】
グラフェンは、六方格子の炭素原子の単一層を含有する炭素の形態である。グラフェンは、緊密に充填されたsp2混成軌道により高い強度と安定性を有しており、各炭素原子は、その近隣の3つの炭素原子とそれぞれ1つのシグマ(σ)結合を形成し、六角形の平面から突き出る1つのp軌道を有する。六方格子のp軌道は、他の分子とのπ-πスタッキング相互作用を含む非共有結合性静電相互作用に適したグラフェンの表面上におけるπバンドを形成するように混成することができる。
【0043】
ピラーレンは、メチレン(-CH
2-)ブリッジによってそれぞれが接続された5~15個の修飾されたヒドロキノンサブユニットを有する複素環式大環状分子の群である。ピラーレンの基本コア構造は下記の通りである。
【0044】
ピラーレンのヒドロキノンサブユニットは、中央空洞を画定する対称な柱(ピラー)状構造を形成する。中央空洞が化学センシングの目的の分析物を捕捉することができるため、ピラーレンはホスト-ゲスト化学に用いられる新たなクラスの大環状分子である。
【0045】
カリックスアレーンは、フェノールなどの化合物から誘導された3~15個の芳香族成分を有する複素環式大環状分子の群であり、各成分が置換又は非置換メチレン(-CH
2-)ブリッジによって接続されている。カリックスアレーンの1つの例示的な構造は下記の通りである。
【0046】
カリックスアレーンのサブユニットは、中央空洞を画定するカップ状の形状を形成することができる。中央空洞が化学センシングの目的の分析物を捕捉することができるため、カリックスアレーンはホスト-ゲスト化学に用いられる新たなクラスの大環状分子である。
【0047】
シクロデキストリンは、1,4グリコシド結合によって結合された5~10個のグルコースサブユニットを有する環状オリゴ糖の群であり、これは、α-ペルアルキル化シクロデキストリン、β-ペルアルキル化シクロデキストリン、及びγ-ペルアルキル化シクロデキストリン、並びにこれらの誘導体を含む。ペルアルキル化シクロデキストリンの基本コア構造は下記の通りである。
【0048】
シクロデキストリンのグルコースサブユニットは、その環境に露出する1つの大開口部と1つの小開口部とを有したトロイド構造を形成することができる。シクロデキストリンのトロイド構造によって画定される内部空洞により、シクロデキストリンは、ホスト-ゲスト化学に用いるための他の分子と錯体を形成することができる。
【0049】
いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、ホスト-ゲスト化学は、2つ以上の分子によって形成することができ、それらの2つ以上の分子が共有結合以外の分子間力によって結び付いている1つ又は複数の錯体を説明すると考えられる。ピラーレン、カリックスアレーン及びシクロデキストリンは、電子に富んだ芳香環及び芳香環に結合した1つ又は複数のアルキルオキシ基に起因する非共有結合性π-πスタッキング相互作用又は非共有結合性-CH-πスタッキング相互作用を通して、グラフェン上に官能化され得る。
【0050】
いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、炭化水素基(例えばアルキル鎖)内の水素原子は、静電相互作用を通してグラフェンの表面上のπ電子系と相互作用することができると考えられる。水素原子は電気陰性度が低く、従って、これらの水素原子は部分正電荷を帯びている。アルキル鎖の水素原子上の部分正電荷は、グラフェンの表面におけるπバンドのπ電子系との静電相互作用に関与することができる。アルキル鎖は、炭素原子がグラフェン表面に対して垂直又は平行のいずれかである1つの平面内に入るように、炭素-炭素骨格に沿って全トランス構造でグラフェン表面上に吸着することができる。
【0051】
例として、グラフェンの表面に沿ってその炭素-炭素骨格の垂直配向を有するアルキル鎖のトランス構造は、アルキル鎖の1つ置きの-CH2-基がグラフェンの方に向いたその水素原子を有する構成を生じる。そのため、アルキル鎖は、1つ置きの-CH2-基の-CH2-水素がグラフェン表面からの同一の距離に配置され、水素-グラフェン相互作用が最大化されるように、アルキル鎖自体をグラフェン表面に対して配向させることができる。従って、アルキル鎖は、アルキル鎖の長さに沿ってグラフェンの表面と相互作用することができる。また、アルケニル鎖及びアルキニル鎖、並びにこれらの誘導体の水素原子も同様にグラフェン表面と相互作用することができると考えられる。
【0052】
例えば炭化水素基で置換されたピラーレン、カリックスアレーン、又はペルアルキル化シクロデキストリンを含むレセプタ分子の自己組織化単分子層によるグラフェンの非共有結合性の機能化は、グラフェンの原子構造に大きな影響を与えず、多数の揮発性有機化合物(VOC)に対して十億分率(ppb)又は百万分率(ppm)レベルの高い感度を有する安定したグラフェンベースのセンサを提供する。そのため、本明細書の実施形態は、VOC及び/又はそれの特異な結合パターンを検出するために用いることができ、これはひいては病態を識別するために利用され得る。
【0053】
ここで
図1を参照すると、本明細書の実施形態によるグラフェンベースのバリアブルキャパシタ(即ちグラフェンバラクタ)100の概略図が示されている。グラフェンバラクタは、様々な方法により様々な幾何学的形状で製作することができ、
図1に示すグラフェンバラクタは、本明細書の実施形態による一例にすぎないことが理解されよう。
【0054】
グラフェンバラクタ100は、絶縁体層102、ゲート電極104(又は「ゲートコンタクト」)、誘電体層(
図1では図示せず)、グラフェン層108a,108bなどの1つ又は複数のグラフェン層、及びコンタクト電極110(又は「グラフェンコンタクト」)を含むことができる。いくつかの実施形態では、グラフェン層108a~108bは連続的であり得るが、他の実施形態では、グラフェン層108a~108bは不連続であり得る。ゲート電極104は、絶縁体層102に形成された1つ又は複数の凹部内に堆積させることができる。絶縁体層102は、シリコン基板(ウェハ)上などに形成される二酸化シリコンなどの絶縁材料から形成することができる。ゲート電極104は、クロム、銅、金、銀、ニッケル、タングステン、アルミニウム、チタン、パラジウム、プラチナ、イリジウム及びこれらの任意の組み合わせ又は合金などの導電性材料によって形成することができ、これらの材料は、絶縁体層102の最上部に堆積させるか、又は絶縁体層102内に埋設することができる。誘電体層は、絶縁体層102の表面及びゲート電極104の上に配置することができる。グラフェン層108a~108bは誘電体層上に配置することができる。誘電体層については、
図2を参照してより詳細に後述する。
【0055】
グラフェンバラクタ100は8個のゲート電極フィンガー106a~106hを含む。グラフェンバラクタ100は8個のゲート電極フィンガー106a~106hを示しているが、任意の数のゲート電極フィンガー構成が想定され得ることが理解されよう。いくつかの実施形態では、個々のグラフェンバラクタは8個未満のゲート電極フィンガーを含むことができる。いくつかの実施形態では、個々のグラフェンバラクタは8個を超えるゲート電極フィンガーを含むことができる。他の実施形態では、個々のグラフェンバラクタは2個のゲート電極フィンガーを含むことができる。いくつかの実施形態では、個々のグラフェンバラクタは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれより多くのゲート電極フィンガーを含むことができる。
【0056】
グラフェンバラクタ100は、グラフェン層108a,108bの一部の上に配置された1つ又は複数のコンタクト電極110を含むことができる。コンタクト電極110は、クロム、銅、金、銀、ニッケル、タングステン、アルミニウム、チタン、パラジウム、プラチナ、イリジウム及びこれらの任意の組み合わせ又は合金などの導電性材料から形成することができる。例示的なグラフェンバラクタのさらなる態様は、米国特許第9,513,244号に見い出すことができ、その内容は参照により余すところなく本明細書に援用される。
【0057】
本明細書に記載されるグラフェンバラクタは、単一のグラフェン層が、グラフェンと炭化水素基で置換された分子との間の非共有結合性相互作用を通して表面修飾されているものを含むことができる。いくつかの実施形態では、単一のグラフェン層の表面は、グラフェンと、多数のピラーレン、置換ピラーレン又はこれらの誘導体のうちのいずれか1つとの間の非共有結合性静電相互作用を通して表面修飾され得る。いくつかの実施形態では、単一のグラフェン層の表面は、グラフェンと、多数のカリックスアレーン、置換カリックスアレーン又はこれらの誘導体のうちのいずれか1つとの間の非共有結合性静電相互作用を通して表面修飾され得る。いくつかの実施形態では、単一のグラフェン層の表面は、グラフェンと、多数のペルアルキル化シクロデキストリン若しくは置換ペルアルキル化シクロデキストリン、又はこれらの誘導体のうちのいずれか1つとの間の非共有結合性静電相互作用を通して表面修飾され得る。他の実施形態では、単一のグラフェン層の表面は、グラフェンと、多数のピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体のうちのいずれか1つとの間の非共有結合性π-πスタッキング相互作用を通して表面修飾され得る。本明細書における使用に適したグラフェンバラクタ、ピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類又は置換ピレン類に関する詳細は、さらに十分に後述する。
【0058】
本明細書の様々な実施形態において、グラフェンは、例えばボロフェン又はグラフェンの他の構造類似体を含む別の同様の単一層構造材料と置き換え可能であることが理解されよう。ボロフェンは、様々な結晶形態で配されたボロン原子の単一層である。
【0059】
次に
図2を参照すると、本明細書の様々な実施形態によるグラフェンバラクタの一部の概略断面図が示されている。グラフェンバラクタ200は、絶縁体層102と、絶縁体層102に埋め込まれたゲート電極104とを含むことができる。ゲート電極104は、
図1を参照して上述したように、絶縁体層102内の凹部に導電性材料を堆積させることによって形成することができる。誘電体層202は、絶縁体層102の表面及びゲート電極104の上に形成することができる。いくつかの例では、誘電体層202は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ハフニウム、二酸化ジルコニウム、ケイ酸ハフニウム、又はケイ酸ジルコニウムなどの材料から形成され得る。
【0060】
グラフェンバラクタ200は、誘電体層202の表面上に配置され得る単一のグラフェン層204を含むことができる。グラフェン層204は、自己組織化単分子層206によって表面修飾され得る。自己組織化単分子層206は、非共有結合性相互作用を通してグラフェン層204の外面上に配置されるピラーレン、置換ピラーレン又はこれらの誘導体の同種集団から形成され得る。いくつかの実施形態では、自己組織化単分子層206は、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン又はこれらの誘導体の同種集団から形成され得る。他の実施形態では、自己組織化単分子層206は、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン又はこれらの誘導体の同種集団から形成され得る。例示的なピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又は前記のいずれかの誘導体は、さらに十分に後述する。自己組織化単分子層206は、グラフェン層204の少なくとも90%の表面被覆率(面積による)を提供することができる。いくつかの実施形態において、自己組織化単分子層206は、グラフェン層204の少なくとも95%の表面被覆率を提供することができる。他の実施形態では、自己組織化単分子層206は、グラフェン層204の少なくとも98%の表面被覆率を提供することができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、自己組織化単分子層は、グラフェン層の少なくとも50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の表面被覆率(面積による)を提供することができる。自己組織化単分子層は、一定の範囲内にある表面被覆率を提供することができ、前述のパーセンテージのいずれもその範囲の下限又は上限となり得るが、但し、範囲の下限はその範囲の上限未満とすることが理解されよう。
【0062】
いくつかの実施形態において、グラフェン層の表面上におけるピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体の自己組織化は、多分子層などの複数の層への自己組織化を含み得ることが理解されよう。多分子層は、走査型トンネル顕微鏡検査法(STM)及び他の走査型プローブ顕微鏡法などの技術によって検出し、定量化することができる。本明細書において100%を超える被覆率のパーセンテージへの言及は、表面積の一部が複数の層によって被覆される状況、例えば、使用される化合物の2層、3層、又は潜在的にそれより多くの層によって被覆される状況を指すものとする。従って、本明細書における105%の被覆率への言及は、表面積の約5%がグラフェン層上における複数の層の被覆範囲を含むことを示すものとする。いくつかの実施形態では、グラフェン表面は、グラフェン層の101%、102%、103%、104%、105%、110%、120%、130%、140%、150%、又は175%の表面被覆率を含むことができる。グラフェン層の多分子層表面被覆率は、表面被覆率の一定の範囲内にあり得、前述のパーセンテージのいずれもその範囲の下限又は上限となり得るが、但し、範囲の下限はその範囲の上限未満とすることが理解されよう。例えば、被覆率の範囲は、表面積で50%~150%、表面積で80%~120%、表面積で90%~110%又は99%~120%を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書における使用に適した自己組織化単分子層は、少なくともある最小閾値のラングミュアシータ値によって定量化される単分子層によるグラフェン表面の被覆率を提供することができるが、グラフェンの表面の大部分を単分子層よりも厚い多分子層で被覆することを回避することができる。ラングミュア吸着理論を用いた特定の自己組織化単分子層のラングミュアシータ値及びその特定についての詳細は、さらに十分に後述する。いくつかの実施形態において、本明細書における使用に適した自己組織化単分子層は、少なくとも0.95のラングミュアシータ値を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書における使用に適した自己組織化単分子層は、少なくとも0.98のラングミュアシータ値を提供する。いくつかの実施形態において、自己組織化単分子層は、少なくとも0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、又は1.0のラングミュアシータ値を提供することができる。自己組織化単分子層は一定範囲のラングミュアシータ値を提供することができ、前述のラングミュアシータ値のいずれもその範囲の下限又は上限となり得るが、但し、範囲の下限はその範囲の上限未満とすることが理解されよう。
【0064】
次に
図3を参照すると、本明細書の様々な実施形態による化学センサ素子300の概略平面図が示されている。化学センサ素子300は基板302を含むことができる。基板は多くの異なる材料から形成され得ることが理解されよう。例として、基板は、シリコン、ガラス、石英、サファイア、ポリマー、金属、ガラス類、セラミック、セルロース系材料、複合材、金属酸化物などから形成され得る。基板の厚さは様々であり得る。いくつかの実施形態において、基板は、基板上のコンポーネントを損傷し得る過度の撓みを生じることなく取り扱われるために十分な構造的完全性を有する。いくつかの実施形態において、基板は約0.05mm~約5mmの厚さを有する。基板の長さ及び幅もまた様々であり得る。いくつかの実施形態では、長さ(又は主軸線)は約0.2cm~約10cmであり得る。いくつかの実施形態では、長さ(又は主軸)は約20μm~約1cmであり得る。いくつかの実施形態では、幅(主軸線に垂直)は約0.2cm~約8cmであり得る。いくつかの実施形態では、幅(主軸に垂直)は約20μm~約0.8cmであり得る。いくつかの実施形態では、グラフェンベースの化学センサは使い捨てであり得る。
【0065】
第1の測定ゾーン304は基板302上に配置され得る。いくつかの実施形態において、第1の測定ゾーン304は、第1のガス流路の一部を画定することができる。第1の測定ゾーン(又はガスサンプルゾーン)304は、息サンプルなどのガス状サンプル中の分析物を検知することができる複数の個別グラフェンベースバリアブルキャパシタ(即ちグラフェンバラクタ)を含むことができる。第1の測定ゾーン304とは分離した第2の測定ゾーン(又は環境サンプルゾーン)306も基板302上に配置され得る。第2の測定ゾーン306も複数の個別グラフェンバラクタを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の測定ゾーン306は第1の測定ゾーン304内にあるのと同じ(種類及び/又は数の)個別グラフェンバラクタを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の測定ゾーン306は、第1の測定ゾーン304内にある個別グラフェンバラクタの一部のみを含むことができる。操作において、分析されたガス状サンプルを反映し得る第1の測定ゾーンから収集されたデータは、環境中に存在する分析物を反映し得る第2の測定ゾーンから収集されたデータに基づいて、補正又は正規化され得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、第3の測定ゾーン(ドリフト制御又はウィットネスゾーン)308も基板上に配置することができる。第3測定ゾーン308は複数の個別グラフェンバラクタを含むことができる。いくつかの実施形態では、第3の測定ゾーン308は第1の測定ゾーン304内にあるのと同じ(種類及び/又は数の)個別グラフェンバラクタを含むことができる。いくつかの実施形態では、第3の測定ゾーン308は、第1の測定ゾーン304内にある個別グラフェンバラクタの一部のみを含むことができる。いくつかの実施形態では、第3測定ゾーン308は、第1の測定ゾーン304及び第2の測定ゾーン306のものとは異なる個別グラフェンバラクタを含むことができる。第3の測定ゾーンの態様は、より詳細に後述する。
【0067】
第1の測定ゾーン、第2の測定ゾーン及び第3測定ゾーンは、同一の大きさであるか、又は異なる大きさであり得る。化学センサ素子300はまた、参照データを記憶するコンポーネント310も含むことができる。参照データを記憶するコンポーネント310は、電子データ記憶装置、光学データ記憶装置、印刷データ記憶装置(例えば印刷コード)などであり得る。参照データは、第3の測定ゾーンに関するデータを含むことができるが、これに限定されるものではない(より詳細に後述する)。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書において具体化される化学センサ素子は電気コンタクト(図示せず)を含むことができ、この電気コンタクトは、化学センサ素子300上のコンポーネントに電力を提供するために使用することができ、且つ/又は測定ゾーンに関するデータ及び/若しくはコンポーネント310に記憶されたものからデータを読み出すために使用することができる。しかしながら、他の実施形態では、外部電気コンタクトが化学センサ素子300上に存在しない。
【0069】
本明細書の化学センサ素子からデータ及び/又は信号を収集するために、ダイレクトコンタクト回路設計及びパッシブワイヤレスセンシング回路設計の双方を含む多くの異なる回路設計を使用できることが理解されよう。いくつかの例示的な測定回路は米国特許出願公開第2019/0025237号に記載されており、その内容は参照により本願に援用される。
【0070】
本明細書で具体化される化学センサ素子は、パッシブワイヤレスセンシングに適合するものを含むことができることが理解されよう。パッシブセンサ回路502及び読取り回路522の一部の概略図を
図5に示し、より詳細に後述する。パッシブワイヤレスセンシング構成では、グラフェンバラクタの1つの端子がインダクタの一方の端部と接触し、グラフェンバラクタの第2の端子がインダクタの第2の端子と接触するように、グラフェンバラクタをインダクタと統合することができる。いくつかの実施形態では、インダクタはグラフェンバラクタと同一の基板上に位置し得るが、他の実施形態では、インダクタはオフチップ位置に位置してもよい。
【0071】
次に
図4を参照すると、本明細書の様々な実施形態による測定ゾーン400の一部の概略図が示されている。複数の個別グラフェンバラクタ402は、測定ゾーン400にアレイで配置することができる。いくつかの実施形態では、化学センサ素子は、測定ゾーン内においてアレイに構成された複数のグラフェンバラクタを含むことができる。いくつかの実施形態では、複数のグラフェンバラクタは同一であり得るが、他の実施形態では、複数のグラフェンバラクタは互いに異なり得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、個別グラフェンバラクタは、それらの個別グラフェンバラクタがすべて特定の分析物に対するその結合挙動の特異性に関して互いに異なるという点で異種であり得る。いくつかの実施形態において、いくつかの個別グラフェンバラクタは、検証の目的のために重複していてもよいが、そうでなければ他の個別グラフェンバラクタとは異種である。さらに、他の実施形態では、個別グラフェンバラクタは同種であり得る。
図4の個別グラフェンバラクタ402は格子状に編成された四角として示されているが、個別グラフェンバラクタは多くの異なる形状(様々な多角形、円、楕円形、不規則形状などを含むが、これらに限定されるものではない)をとることができ、同様に個別グラフェンバラクタの群は多くの異なるパターン(星形パターン、ジグザグパターン、放射状パターン、記号パターンなどを含むが、これらに限定されるものではない)に配され得ることが理解されよう。
【0073】
いくつかの実施形態において、測定ゾーンの長さ412及び幅414にわたる特定の個別グラフェンバラクタ402の順序は、実質的にランダムであり得る。他の実施形態では、順序は特定のものであり得る。例えば、いくつかの実施形態において、測定ゾーンは、流入するガス流のより近くに位置する分子量がより高い分析物のための特定の個別グラフェンバラクタ402と比較して、分子量がより低い分析物のための特定の個別グラフェンバラクタ402が流入するガス流からより遠くに位置するように順序付けられ得る。従って、異なる分子量の化合物を分離する役割を果たし得るクロマトグラフィ効果を利用して、対応する個別グラフェンバラクタに対する化合物の最適な結合を提供することができる。
【0074】
特定の測定ゾーン内における個別グラフェンバラクタの数は、約1~約100,000個であり得る。いくつかの実施形態では、個別グラフェンバラクタの数は約1~約10,000個であり得る。いくつかの実施形態では、個別グラフェンバラクタの数は約1~約1,000個であり得る。いくつかの実施形態では、個別グラフェンバラクタの数は約2~約500個であり得る。いくつかの実施形態では、個別グラフェンバラクタの数は約10~約500個であり得る。いくつかの実施形態では、個別グラフェンバラクタの数は約50~約500個であり得る。いくつかの実施形態では、個別グラフェンバラクタの数は約1~約250個であり得る。いくつかの実施形態では、個別グラフェンバラクタの数は約1~約50個であり得る。
【0075】
本明細書における使用に適した個別グラフェンバラクタの各々は、1つ又は複数の電気回路の少なくとも一部を含むことができる。例として、いくつかの実施形態では、個別グラフェンバラクタの各々は、1つ又は複数のパッシブ電気回路を含むことができる。いくつかの実施形態では、グラフェンバラクタは、それらのグラフェンバラクタが電子回路上に直接集積されるように備えられ得る。いくつかの実施形態では、グラフェンバラクタは、それらのグラフェンバラクタが回路にウェハボンディングされるように備えられ得る。いくつかの実施形態では、グラフェンバラクタは、読取り集積回路(ROIC)などの集積された読取り電子部品を含むことができる。抵抗又はキャパシタンスを含む電気回路の電気特性は、ガスサンプルからの成分との特異的結合及び/又は非特異的結合などの結合により変化し得る。
【0076】
次に
図5を参照すると、本明細書の様々な態様によるパッシブセンサ回路502と読取り回路552の一部との概略図が示されている。いくつかの実施形態において、パッシブセンサ回路502は、インダクタ510に接続された金属-酸化物-グラフェンバラクタ504(ここで、RSは直列抵抗を表し、CGはバラクタキャパシタを表す)を含むことができる。グラフェンバラクタは、様々な方法により様々な幾何学的形状で製作することができる。例として、いくつかの態様において、ゲート電極は、
図1にゲート電極104として示したように、絶縁体層に埋め込まれ得る。ゲート電極は、絶縁体層に凹部をエッチングし、次に、その凹部に導電性材料を堆積させてゲート電極を形成することによって形成され得る。誘電体層は、絶縁体層の表面及びゲート電極の上に形成することができる。いくつかの例では、誘電体層は、酸化アルミニウム、二酸化ハフニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素などの金属酸化物、又はケイ酸ハフニウム若しくはケイ酸ジルコニウムなどの別の材料から形成され得る。表面修飾グラフェン層は誘電体層上に配置することができる。コンタクト電極もまた表面修飾グラフェン層の表面上に配置することができ、コンタクト電極110として
図1にも示されている。
【0077】
例示的なグラフェンバラクタ構造のさらなる態様は、米国特許第9,513,244号に見い出すことができ、その内容は参照により余すところなく本明細書に援用される。
様々な実施形態において、グラフェンバラクタの一部であり、従ってパッシブセンサ回路などのセンサ回路の一部である機能化グラフェン層(例えば、分析物と結合するレセプタを含むように機能化されている)は、測定ゾーンの表面を覆って流れるガスサンプルに曝露される。パッシブセンサ回路502はまた、インダクタ510も含むことができる。いくつかの実施形態において、各パッシブセンサ回路502には単一のバラクタのみが含まれている。他の実施形態において、各パッシブセンサ回路502には複数のバラクタが例えば並列で含まれている。
【0078】
パッシブセンサ回路502において、電気回路のキャパシタンスは、ガスサンプル中の分析物とグラフェンバラクタとが結合すると変化する。パッシブセンサ回路502はLRC共振器回路として機能することができ、LRC共振器回路の共振周波数は、ガスサンプルからの成分と結合すると変化する。
【0079】
読取り回路522は、パッシブセンサ回路502の電気特性を検出するために使用することができる。例として、読取り回路522は、LRC共振器回路の共振周波数及び/又は該共振周波数の変化を検出するために使用することができる。いくつかの実施形態において、読取り回路522は、抵抗524及びインダクタンス526を有する読取りコイルを含むことができる。センサ側LRC回路がその共振周波数にあるとき、周波数に対する読取り回路のインピーダンスの位相のプロットは極小(即ち位相ディップ周波数)を有する。検知は、共振周波数及び/又は位相ディップ周波数の値を変化させる分析物の結合に応答してバラクタのキャパシタンスが変化するときに生じ得る。
【0080】
次に
図6を参照すると、本明細書の様々な実施形態によるガス状分析物を検知するシステムの概略図が示されている。システム600はハウジング618を含むことができる。システム600は、評価対象者が息サンプルを吹き込むことができるマウスピース602を備えることができる。ガス状の息サンプルは、流入導管604を通過し、評価サンプル(患者サンプル)注入ポート606を通過し得る。システム600は対照サンプル(環境)注入ポート608も備え得る。システム600は、使い捨てセンサ素子を入れることができるセンサ素子チャンバ610も備え得る。システム600はまた、表示画面614、及びキーボードなどのユーザ入力装置616も備え得る。システムはまた、ガス流出ポート612を備えることもできる。システム600はまた、評価サンプル注入ポート606及び対照サンプル注入ポート608のうちの1つ又は複数に関連するガス流と流体連通するフローセンサも備え得る。多くの異なる種類のフローセンサを使用できることが理解されよう。いくつかの実施形態において、空気の流れを測定するために熱線流速計を使用することができる。いくつかの実施形態において、システムは、評価サンプル注入ポート606及び対照サンプル注入ポート608のうちの1つ又は複数に関連するガス流と流体連通するCO
2センサを備えることができる。
【0081】
様々な実施形態において、システム600はまた、他の機能的コンポーネントも備えることができる。例として、システム600は、湿度制御モジュール640及び/又は温度制御モジュール642を備えることができる。湿度制御モジュールは評価サンプル注入ポート606及び対照サンプル注入ポート608のうちの1つ又は複数に関連するガス流と流体連通することができ、これは、システムによって得られる読み取り値に対する悪影響を防止するために、2つのストリームの相対湿度を実質的に同じにするように、ガス流ストリームの一方又は双方の湿度を調整するためである。温度制御モジュールは、評価サンプル注入ポート606及び対照サンプル注入ポート608の1つ又は複数に関連するガス流と流体連通することができ、これは、システムによって得られる読み取り値に対する悪影響を防止するために、2つのストリームの温度を実質的に同じにするように、ガス流ストリームの一方又は双方の温度を調整するためである。例として、対照サンプル注入ポートに流れ込む空気は、患者から来る空気の温度と一致するか、又はそれを超えるようにするために、摂氏37度以上にされ得る。湿度制御モジュール及び温度制御モジュールは、注入ポートから上流にあるか、注入ポート内にあるか、又は注入ポートから下流のシステム600のハウジング618内にあり得る。いくつかの実施形態において、湿度制御モジュール640と温度制御モジュール642とを一体化させることができる。
【0082】
いくつかの実施形態(図示せず)では、システム600の対照サンプル注入ポート608をマウスピース602に接続することもできる。いくつかの実施形態において、マウスピース602は、患者が息を吸い込んでいるときには空気が対照サンプル注入ポート608からマウスピースへ流れるように、切替え空気流バルブを備えることができ、システムは、これにより周囲空気が適切な対照測定ゾーン(第2の測定ゾーンなど)にわたって流れるように構成される。次に、患者が息を吐き出すと、切替え空気流バルブは、患者からの息サンプルがマウスピース602から流入導管604を通って評価サンプル注入ポート606内へ流れ、そして使い捨てセンサ素子上の適切なサンプル(患者サンプル)測定ゾーン(第1の測定ゾーンなど)にわたって流れるように切り替わることができる。
【0083】
一実施形態において、化学センサ素子を製造する方法が含まれる。その方法は、1つ又は複数の測定ゾーンを基板上に堆積させるステップを含むことができる。その方法は、複数の個別グラフェンバラクタを基板上の測定ゾーン内に堆積させるステップをさらに含むことができる。その方法は、グラフェン層の表面をピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体で修飾して、非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に自己組織化単分子層を形成することにより、1つ又は複数の個別グラフェンバラクタを生成するステップを含むことができる。その方法は、液滴接触角測定法、ラマン分光法又はX線光電子分光法を用いて、自己組織化単分子層の表面被覆の程度を定量化するステップを含むことができる。その方法は、さらに十分に後述するように、少なくとも0.9のラングミュアシータ値を示す誘導体化されたグラフェン層を選択するステップを含むことができる。いくつかの実施形態において、その方法は、少なくとも0.98のラングミュアシータ値を示す誘導体化されたグラフェン層を選択するステップをさらに含むことができる。その方法は、参照データを記憶するためのコンポーネントを基板上に堆積させるステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、測定ゾーンはすべて、基板の同じ面に配置することができる。他の実施形態では、測定ゾーンは、基板の異なる面に配置することができる。
【0084】
一実施形態において、1つ又は複数のガスサンプルをアッセイする方法が含まれる。その方法は、化学センサ素子を検知装置に挿入することを含むことができる。化学センサ素子は、基板と、複数の個別グラフェンバラクタを備えた第1の測定ゾーンとを含むことができる。第1の測定ゾーンは、第1のガス流路の一部を画定することができる。化学センサ素子は、第1の測定ゾーンとは分離した第2の測定ゾーンをさらに含むことができる。第2の測定ゾーンもまた複数の個別グラフェンバラクタを含むことができる。第2の測定ゾーンは、第1のガス流路の外側に配置することができる。
【0085】
前記方法は、第1のガス流路を辿るように検知装置に対象が空気を吹き込むことを促すステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、患者の肺胞から生じる空気は揮発性有機化合物などの分析のための化合物の含有量が最も多いと考えられるため、対象からの空気のCO2含有量が監視され、CO2含有量の平坦域中に使い捨てセンサ素子によるサンプリングが行われる。いくつかの実施形態において、前記方法は、フローセンサを用いて、息サンプル及び対照(又は環境)空気サンプルの総質量流量を監視するステップを含むことができる。前記方法は、個別グラフェンバラクタから情報を得て個別グラフェンバラクタの分析物結合状態を特定するステップをさらに含むことができる。前記方法は、サンプリングの完了時に使い捨てセンサ素子を廃棄することをさらに含むことができる。
【0086】
次に
図7を参照すると、本明細書の様々な実施形態によるガス状分析物を検知するシステム700の概略図が示されている。この実施形態において、システムは手持ち式である。システム700はハウジング718を備えることができる。システム700は、評価対象者が息サンプルを吹き込むことができるマウスピース702を備えることができる。システム700はまた、表示画面714と、キーボードなどのユーザ入力装置716とを備えることができる。システムはまた、ガス流出ポート712を備えることができる。システムは、
図6に関して上述したものなどの様々な他のコンポーネントも備えることができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、測定ゾーンのうちの1つは、使用前の保管及び取扱いの間における経年化及び変動条件への曝露(例えば、熱曝露、光曝露、分子酸素曝露、湿潤曝露、等)の結果として生じ得る化学センサ素子の変化(又はドリフト)を示すように構成され得る。いくつかの実施形態において、第3の測定ゾーンはこの目的のために構成され得る。
【0088】
次に
図8を参照すると、本明細書の様々な実施形態による化学センサ素子800の一部の概略断面図が示されている。化学センサ素子800は、基板802と、測定ゾーンの一部である基板802上に配置された個別グラフェンバラクタ804とを含むことができる。任意選択で、いくつかの実施形態において、個別グラフェンバラクタ804は、窒素ガス又は不活性液体若しくは固体などの不活性材料806によって封じ込められ得る。このようにして、第3の測定ゾーンのための個別グラフェンバラクタ804は、ガスサンプルとの接触から遮蔽され、従って、特に、使い捨てセンサ素子の製造時と使用時との間に生じることがあるセンサドリフトを制御するための対照又は参照として使用され得る。いくつかの実施形態において、例えば不活性ガス又は液体を使用する場合などでは、個別結合検出器は、バリア層808も含むことができ、これは、ポリマー材料、箔などの層であり得る。場合によっては、バリア層808は、使用直前に除去することができる。
【0089】
一実施形態において、1つ又は複数の分析物を検出する方法が含まれる。その方法は、患者からガス状サンプルを採取するステップを含むことができる。いくつかの実施形態において、ガス状サンプルは呼気を含むことができる。他の実施形態では、ガス状サンプルは、カテーテル又は他の同様の取出し装置を通じて患者の肺から取り出された息を含むことができる。いくつかの実施形態において、取出し装置は、内視鏡、気管支鏡又は気管鏡を含むことができる。前記方法はまた、グラフェンバラクタをガス状サンプルと接触させるステップを含むことができ、グラフェンバラクタは、グラフェン層と、非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に配置された自己組織化単分子層とを備える。いくつかの実施形態において、自己組織化単分子層は、少なくとも0.9のラングミュアシータ値を提供することができる。いくつかの実施形態において、前記方法は、少なくとも0.98のラングミュアシータ値を示す誘導体化されたグラフェン層を選択するステップをさらに含むことができる。ラングミュアシータ値については、さらに十分に後述する。いくつかの実施形態において、前記方法は、ガス状サンプル中に存在する1つ又は複数の分析物の結合によるグラフェンリアクタのキャパシタンスにおける特異な応答を測定するステップを含むことができ、これは、ひいては病態を識別するために用いることができる。いくつかの実施形態において、前記方法は、少なくとも1つのピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体のうちから選択される自己組織化単分子層を含むことができる。
【0090】
グラフェンバラクタ
本明細書に記載されるグラフェンバラクタは、例えば患者の息などのガス状サンプル中の1つ又は複数の分析物を検知するために使用することができる。本明細書で具体化されるグラフェンバラクタは、ガス状サンプル中に見られる揮発性有機化合物(VOC)に対して百万分率(ppm)若しくは十億分率(ppb)レベル又はこれらに近いレベルの高い感度を示すことができる。グラフェンバラクタの表面上へのVOCの吸着は、そのような機器の抵抗、キャパシタンス、又は量子キャパシタンスを変化させることができ、VOC及び/又はVOCによる結合のパターンを検出するために用いられることが可能であり、これは、ひいては癌、心臓病、感染症、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病などのような病態を識別するために利用することができる。グラフェンバラクタは、ガス混合物中の個々の分析物、並びに非常に複雑な混合物における応答パターンを検出するために使用することができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のグラフェンバラクタは、ガス状サンプル中の同一の分析物を検出するために含まれ得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のグラフェンバラクタは、ガス状サンプル中の異なる分析物を検出するために含まれ得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のグラフェンバラクタは、ガス状サンプル中の複数の分析物を検出するために含まれ得る。
【0091】
例示的なグラフェンバラクタは、グラフェン層と、グラフェン層の外面上に配置された自己組織化単分子層とを備えることができ、自己組織化単分子層は、
図2に関して図示して上述したように、非共有結合性相互作用を通してグラフェン層と相互作用する。本明細書における使用に適した自己組織化単分子層は、少なくとも0.9のラングミュアシータ値を提供することができる。ラングミュア吸着理論を用いた特定の自己組織化単分子層のラングミュアシータ値の特定は、さらに十分に後述する。いくつかの実施形態では、本明細書における使用に適した自己組織化単分子層は、少なくとも0.95のラングミュアシータ値を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書における使用に適した自己組織化単分子層は、少なくとも0.98のラングミュアシータ値を提供する。
【0092】
本明細書に記載されるグラフェンバラクタは、単一のグラフェン層が、本明細書の他の箇所に記載されるように、ピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体を含む1つ又は複数のレセプタ分子との非共有結合性相互作用を通して表面修飾されているものを含むことができる。置換ピラーレン、置換カリックスアレーン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン又は置換ピレン類は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、ハロアルキル基、ハロアルケニル基、ハロアルキニル基、ハロゲン化ヘテロアルキル基、ハロゲン化ヘテロアルケニル基、ハロゲン化ヘテロアルキニル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、アリールチオ、置換アリールチオ基、アリールアミン基、置換アリールアミン基、ハロゲン化アリール基、置換ハロゲン化アリール基、ビフェニル基、及び/又は置換ビフェニル基を含むが、これらに限定されるものではない本明細書に記載される任意の数の官能基で置換され得る。
【0093】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1~20個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC1~C20アルキル)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書におけるアルキル基は、6~18個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC6~C18アルキル)を含有することができる。他の実施形態では、本明細書におけるアルキル基は、10~16個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC10~C16アルキル)を含有することができる。本明細書の記載するアルキル基は、別段の指示がない限り、一般式CnH2n+1を有する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、1~20個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基を指し、ここで、アルケニル基は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する(即ちC1~C20アルケニル)。いくつかの実施形態において、本明細書におけるアルケニル基は、6~18個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基を含有することができ、ここで、アルケニル基は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する(即ちC6~C18アルケニル)。他の実施形態では、本明細書におけるアルケニル基は、10~16個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基を含有することができ、ここで、アルケニル基は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する(即ちC10~C16アルケニル)。本明細書に記載されるアルケニル基は、別段の指示がない限り、一般式CnH(2n+1-2x)を有し、式中、xはアルケニル基中に存在する二重結合の数である。
【0095】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を含み、1~20個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC1~C20アルキニル)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書におけるアルキニル基は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を含み、6~18個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC6~C18アルキニル)を含有することができる。他の実施形態では、本明細書におけるアルキニル基は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を含み、10~16個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC6~C18アルキニル)を含有することができる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」という用語は、1~20個の範囲の炭素原子と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC1~C20ヘテロアルキル)を指す。いくつかの実施形態において、本願におけるヘテロアルキル基は、6~18個の範囲の炭素原子と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC6~C18ヘテロアルキル)を含有することができる。他の実施形態では、本願におけるヘテロアルキル基は、10~16個の範囲の炭素原子と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC10~C16ヘテロアルキル)を含有することができる。いくつかの実施形態において、本明細書におけるヘテロアルキル基は、一般式-RZ、-RZR、-ZRZR、又は-RZRZRを有することができ、式中、Rは、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではなく、Zは、N、O、P、S、Si、Se及びB、又は任意のこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子を含むことができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、アルコキシ基、アルキルアミド基、アルキルチオエーテル基、アルキルエステル基、アルキルスルホナート基、アルキルホスファート基などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。本明細書における使用に適したヘテロアルキル基の例としては、-ROH、-RC(O)OH、-RC(O)OR、-ROR、-RSR、-RCHO、-RX、-RC(O)NH2、-RC(O)NR、RNH3
+、-RNH2、-RNO2、-RNHR、-RNRR、-RB(OH)2、-RSO3
-、-RPO4
2-、又はこれらの任意の組み合わせから選択されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、式中、Rは、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20ヘテロアルキル(但し、N、O、P、S、Si、Se及びBを含むが、これらに限定されるものではない少なくとも1つのヘテロ原子が少なくとも1つのR基中に存在する)、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではなく、Xは、F、Cl、Br、I又はAtを含むハロゲンであり得る。
【0098】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルケニル」という用語は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含み、1~20個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC1~C20ヘテロアルケニル)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書におけるヘテロアルケニル基は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含み、6~18個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC6~C18ヘテロアルケニル)を含有することができる。他の実施形態では、本明細書におけるヘテロアルケニル基は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含み、10~16個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC10~C16ヘテロアルケニル)を含有することができる。いくつかの実施形態において、本明細書におけるヘテロアルケニル基は、一般式-RZ、-RZR、-ZRZR、又は-RZRZRを有することができ、式中、Rは、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル若しくはC1~C20アルケニル(但し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合が少なくとも1つのR基中に存在する)、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではなく、Zは、N、O、P、S、Si、Se及びB、又は任意のこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子を含むことができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、アルケノキシ基、アルケニルアミン、アルケニルチオエステル基、アルケニルエステル基、アルケニルスルホナート基、アルケニルホスファート基などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。本明細書における使用に適したヘテロアルケニル基の例としては、-ROH、-RC(O)OH、-RC(O)OR、-ROR、-RSR、-RCHO、-RX、-RC(O)NH2、-RC(O)NR、RNH3
+、-RNH2、-RNO2、-RNHR、-RNRR、-RB(OH)2、-RSO3
-、-RPO4
2-、又はこれらの任意の組み合わせから選択されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、式中、Rは、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル若しくはC1~C20アルケニル(但し、少なくとも1つ又は複数の炭素-炭素二重結合と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とが、少なくとも1つのR基中に存在する)、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではなく、Xは、F、Cl、Br、I又はAtを含むハロゲンであり得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキニル」という用語は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含み、1~20個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC1~C20ヘテロアルキニル)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書におけるヘテロアルキニル基は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含み、6~18個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC6~C18ヘテロアルキニル)を含有することができる。他の実施形態では、本明細書におけるヘテロアルキニル基は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とを含み、10~16個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素官能基(即ちC10~C16ヘテロアルキニル)を含有することができる。いくつかの実施形態において、本明細書におけるヘテロアルキニル基は、一般式-RZ、-RZR、-ZRZR、又は-RZRZRを有することができ、式中、Rは、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル若しくはC1~C20アルキニル(但し、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合が少なくとも1つのR基中に存在する)、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではなく、Zは、N、O、P、S、Si、Se及びB、又は任意のこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子を含むことができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、アルキニルオキシ基、アルキニルアミン、アルキニルチオエステル基、アルキニルエステル基、アルケニルスルホナート基、アルケニルホスファート基などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。本明細書における使用に適したヘテロアルキニル基の例としては、-ROH、-RC(O)OH、-RC(O)OR、-ROR、-RSR、-RCHO、-RX、-RC(O)NH2、-RC(O)NR、RNH3
+、-RNH2、-RNO2、-RNHR、-RNRR、-RB(OH)2、-RSO3
-、-RPO4
2-、又はこれらの任意の組み合わせから選択されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、式中、Rは、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル若しくはC1~C20アルキニル(但し、少なくとも1つ又は複数の炭素-炭素三重結合と、N、O、P、S、Si、Se及びB、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない1つ又は複数のヘテロ原子とが、少なくとも1つのR基中に存在する)、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではなく、XはF、Cl、Br、I又はAtを含むハロゲンであり得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」という用語は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I、Atのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、1~20個の範囲の炭素原子(即ちC1~C20)を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基(即ちC1~C20ハロアルキル)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書におけるハロアルキル基は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、6~18個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基(即ちC6~C18ハロアルキル)を含有することができる。他の実施形態では、本明細書におけるハロアルキル基は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、10~16個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基(即ちC10~C16ハロアルキル)を含有することができる。いくつかの実施形態において、ハロアルキルは、水素原子の代わりに1つのみのハロゲン原子を含有するモノハロアルキルを含むことができる。他の実施形態では、ハロアルキルは、水素原子の代わりに2つ以上のハロゲン原子を含有するポリハロアルキルを含むことができ、但し、少なくとも1つの水素原子は残存する。さらに他の実施形態では、ハロアルキルは、対応するアルキルのすべての水素原子の代わりにハロゲン原子を含有するペルハロアルキルを含むことができる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「ハロアルケニル」という用語は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、1~20個の範囲の炭素原子(即ちC1~C20)を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基を指し、ここで、ハロアルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する(即ちC1~C20ハロアルケニル)。いくつかの実施形態において、本明細書におけるハロアルケニル基は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、6~18個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基を含有することができ、ここで、ハロアルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する(即ちC6~C18アルケニル)。他の実施形態では、本明細書におけるハロアルケニル基は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、10~16個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基を含有することができ、ここで、ハロアルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する(即ちC10~C16ハロアルケニル)。
【0104】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキニル」という用語は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、1~20個の範囲の炭素原子(即ちC1~C20)を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルキニル基を指し、ここで、ハロアルキニル基は少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する(即ちC1~C20ハロアルキニル)。いくつかの実施形態において、本明細書におけるハロアルキニル基は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、6~18個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルキニル基を含有することができ、ここで、ハロアルキニル基は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を含有する(即ちC6~C18アルキニル)。他の実施形態では、本明細書におけるハロアルキニル基は、1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられており、10~16個の範囲の炭素原子を含有する任意の直鎖状、分岐状又は環状のアルキニル基を含有することができ、ここで、ハロアルキニル基は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を含有する(即ちC10~C16ハロアルキニル)。
【0105】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン化ヘテロアルキル」という用語は、1~20個の範囲の炭素原子(即ちC1~C20)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルキル基(即ち、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書におけるハロゲン化ヘテロアルキル基は、6~18個の範囲の炭素原子(即ちC6~C18)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルキル基(即ち、C6~C18ハロゲン化ヘテロアルキル)を含むことができる。他の実施形態では、本明細書におけるハロゲン化ヘテロアルキル基は、10~16個の範囲の炭素原子(即ちC10~C16)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルキル基(即ち、C10~C16)ハロゲン化ヘテロアルキル)を含むことができる。
【0106】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン化ヘテロアルケニル」という用語は、1~20個の範囲の炭素原子(即ちC1~C20)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルケニル基(即ち、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書におけるハロゲン化ヘテロアルケニル基は、6~18個の範囲の炭素原子(即ちC6~C18)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルケニル基(即ち、C6~C18ハロゲン化ヘテロアルケニル)を含むことができる。他の実施形態では、本明細書におけるハロゲン化ヘテロアルケニル基は、10~16個の範囲の炭素原子(即ちC10~C16)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルケニル基(即ち、C10~C16ハロゲン化ヘテロアルケニル)を含むことができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン化ヘテロアルキニル」という用語は、1~20個の範囲の炭素原子(即ちC1~C20)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルキニル基(即ち、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書におけるハロゲン化ヘテロアルキニル基は、6~18個の範囲の炭素原子(即ちC6~C18)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルキニル基(即ち、C6~C18ハロゲン化ヘテロアルキニル)を含むことができる。他の実施形態では、本明細書におけるハロゲン化ヘテロアルキニル基は、10~16個の範囲の炭素原子(即ちC10~C16)を含有し、且つ1つ又は複数の水素原子がF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載される任意のヘテロアルキニル基(即ち、C10~C16ハロゲン化ヘテロアルキニル)を含むことができる。
【0108】
本明細書の使用される場合、「アリール」という用語は、例えばシクロペンタジエン、ベンゼン、及びこれらの誘導体などのC5~C8員芳香環を含有する任意の芳香族炭化水素官能基を指す。提供した例に対応する芳香族ラジカルは、例えば、シクロペンタジエニルラジカル及びフェニルラジカル、並びにこれらの誘導体を含む。いくつかの実施形態において、本明細書におけるアリール官能基はさらに置換されて、置換アリール官能基を形成することができる。本明細書で使用される場合、「置換アリール」という用語は、本明細書に記載される1つ又は複数のアルキル官能基、アルケニル官能基、アルキニル官能基、ヘテロアルキル官能基、ヘテロアルケニル官能基若しくはヘテロアルキニル官能基、又はこれらの任意の組み合わせでそれ自体が置換され得る、C5~C8員芳香環を含有する任意の芳香族炭化水素官能基を指す。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書におけるアリール官能基は、1つ又は複数のヘテロ原子を含んで、ヘテロアリール官能基を形成することができる。本明細書における使用に適したヘテロ原子は、N、O、P、S、Si、Se及びBを含むことができるが、これらに限定されるものではない。本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、C5~C8員芳香環の1つ又は複数の炭素原子が1つ又は複数のヘテロ原子又はヘテロ原子の組み合わせで置き換えられている、本明細書で定義される任意のアリール官能基を指す。ヘテロアリール官能基の例としては、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、ピリジン及びピリミジンのラジカルを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本明細書におけるヘテロアリール官能基はさらに置換されて、置換ヘテロアリール官能基を形成することができる。本明細書で使用される場合、「置換ヘテロアリール」という用語は、本明細書に記載される1つ又は複数のアルキル官能基、アルケニル官能基、アルキニル官能基、ヘテロアルキル官能基、ヘテロアルケニル官能基若しくはヘテロアルキニル官能基、又はこれらの任意の組み合わせでさらに置換された本明細書に記載される任意のヘテロアリール官能基を指す。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書におけるアリール官能基はさらに置換されて、アリールオキシ官能基を形成することができる。本明細書で使用される場合、「アリールオキシ」という用語は、一般式Aryl-O-の官能基を含むことができ、ここで、アリール官能基はC5~C8員芳香環を含むことができる。いくつかの実施形態において、アリールオキシ基は、式C6H5O-のフェノキシ官能基を含むことができる。いくつかの実施形態において、アリールオキシ官能基はさらに置換され得る。本明細書で使用される場合、「置換アリールオキシ」という用語は、本明細書に記載される1つ又は複数のアルキル官能基、アルケニル官能基、アルキニル官能基、ヘテロアルキル官能基、ヘテロアルケニル官能基若しくはヘテロアルキニル官能基、又はこれらの任意の組み合わせでさらに置換された、本明細書で定義される任意のアリールオキシ官能基を含むことができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書におけるアリール官能基はさらに置換されて、アリールチオ官能基を形成することができる。本明細書で使用される場合、「アリールチオ」という用語は、一般式Aryl-S-の官能基を含むことができ、ここで、アリール官能基はC5~C8員芳香環を含むことができる。いくつかの実施形態において、アリールチオ官能基は、式C6H5S-のフェニルスルファニル官能基を含むことができる。いくつかの実施形態において、アリールチオ官能基はさらに置換され得る。本明細書で使用される場合、「置換アリールチオ」という用語は、本明細書に記載される1つ又は複数のアルキル官能基、アルケニル官能基、アルキニル官能基、ヘテロアルキル官能基、ヘテロアルケニル官能基若しくはヘテロアルキニル官能基、又はこれらの任意の組み合わせでさらに置換された、本明細書で定義される任意のアリールチオ官能基を含むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書におけるアリール官能基はさらに置換されて、アリールアミン官能基を形成することができる。本明細書で使用される場合、「アリールアミン」という用語は、一般式Aryl-NHnの官能基を含むことができ、ここで、アリール官能基はC5~C8員芳香環を含むことができ、nは0~3であり得るが、但し、n=0、1又は2である場合には、N原子において非H置換が存在し、これは、本明細書に記載される1つ又は複数のアルキル官能基、アルケニル官能基、アルキニル官能基、ヘテロアルキル官能基、ヘテロアルケニル官能基若しくはヘテロアルキニル官能基、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
いくつかの実施形態において、アリールアミン官能基は、式C6H5Nのλ1-アザニルベンゼン官能基を含むことができる。いくつかの実施形態において、アリールアミン官能基はさらに置換され得る。本明細書で使用される場合、「置換アリールアミン」という用語は、本明細書に記載される1つ又は複数のアルキル官能基、アルケニル官能基、アルキニル官能基、ヘテロアルキル官能基、ヘテロアルケニル官能基若しくはヘテロアルキニル官能基、又はこれらの任意の組み合わせでさらに置換された、本明細書で定義される任意のアリールアミン官能基を含むことができる。
【0114】
本明細書の使用される場合、「ハロゲン化アリール」という用語は、例えばシクロペンタジエン、ベンゼン及びこれらの誘導体などのC5~C8員芳香環を含有する任意の芳香族基、又は例えばシクロペンタジエニルラジカル及びフェニルラジカル並びにこれらの誘導体を含む提供した例に対応する芳香族ラジカルを含み、ここで、アリール基又は対応する芳香族ラジカルの1つ又は複数の水素原子が、F、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含むハロゲン原子によって置き換えられている本明細書に記載されるアリール基を指す。いくつかの実施形態において、ハロゲン化アリール基はクロロフェニル基を含むことができる。他の実施形態では、ハロゲン化アリール基はペルフルオロフェニル基を含むことができる。
【0115】
いくつかの実施形態において、本明細書におけるハロゲン化アリール官能基はさらに置換されて、置換ハロゲン化アリール官能基を形成することができる。本明細書で使用される場合、「置換ハロゲン化アリール」という用語は、本明細書に記載される1つ又は複数のアルキル官能基、アルケニル官能基、アルキニル官能基、ヘテロアルキル官能基、ヘテロアルケニル官能基、ヘテロアルキニル官能基、ハロアルキル官能基、ハロアルケニル官能基、ハロアルキニル官能基、ハロゲン化ヘテロアルキル官能基、ハロゲン化ヘテロアルケニル官能基、ハロゲン化ヘテロアルキニル官能基、又はこれらの任意の組み合わせでそれ自体が置換され得る本明細書に記載される任意のハロゲン化アリール基を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、「ビフェニル」という用語は、分子式(C6H5)2を有した芳香族炭化水素官能基を指し、ポルフィリン又はメタロポルフィリンに結合される場合、ポルフィリン又はメタロポルフィリン環構造に対する共有結合の部位において1つ少ない水素を有する。いくつかの実施形態において、ビフェニル官能基は置換されて、置換ビフェニル官能基を形成することができる。本明細書で使用される場合、「置換ビフェニル」という用語は、本明細書に記載される1つ又は複数のアルキル官能基、アルケニル官能基、アルキニル官能基、ヘテロアルキル官能基、ヘテロアルケニル官能基若しくはヘテロアルキニル官能基、又はこれらの任意の組み合わせでそれ自体が置換された本明細書に記載されるビフェニル官能基を指す。
【0117】
グラフェンの機能化のためのレセプタ分子
グラフェンの機能化に適したレセプタ分子は、本明細書に記載されるピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類又は置換ピレン類のいずれかを含むことができる。
【0118】
ピラーレン
本明細書における使用に適したピラーレンは、置換されているもの又は非置換のものを含む。ピラーレンは、メチレン(-CH
2-)ブリッジによってそれぞれが接続された5~15個の修飾されたヒドロキノンサブユニットを有する複素環式大環状分子の群である。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、ピラーレンのヒドロキノンサブユニットは、中央空洞を画定する対称な柱状構造を形成すると考えられる。中央空洞が化学センシングの目的の分析物を捕捉することができるため、ピラーレンはホスト-ゲスト化学に用いられる新たなクラスの大環状分子である。ピラーレンは、1,4-二置換されたもの、1,2-二置換されたもの、又は1,5-二置換されたものを含む、ベンゼン環の様々な位置で置換されたものを含むことができる。ピラーレンの基本コア構造は以下の通りであり、
【0119】
式中、nは少なくとも5~15の整数であり、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができる。各R1は、独立して、H;-OH;=O;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができる。各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、各R1は、独立して、前述のもののいずれかの任意の置換体、任意の誘導体又は任意の組み合わせを含むことができる。例えば-R2C(O)OH、-R2OPO(OH)2及び-R2OSO(OH)2などの酸性官能基が列挙される様々な実施形態では、対応するナトリウム塩、カリウム塩なども本明細書において想定されることが理解されるべきである。R0が-R1である実施形態では、R1は、XがF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含む任意のハロゲン原子であるような-Xを独立して含むことができる。いくつかの実施形態において、R0置換基のうちの少なくともいくつかは他のR0置換基と異なる。他の実施形態では、R0置換基はすべて同一であり得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、本明細書における使用に適したピラーレンは、一般式:
【0122】
のものを含むことができ、
式中、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができ、xは少なくとも0~15の整数であり、yは少なくとも0~15の整数であり、nは少なくとも5~15の整数である。各R1は、独立して、H;-OH;=O;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができる。各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、各R1は、独立して、前述のもののいずれかの任意の置換体、任意の誘導体、又は任意の組み合わせを含むことができる。例えば-R2C(O)OH、-R2OPO(OH)2及び-R2OSO(OH)2などの酸性官能基が列挙される様々な実施形態では、対応するナトリウム塩、カリウム塩なども本明細書において想定されることが理解されるべきである。R0が-R1である実施形態では、R1は、XがF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含む任意のハロゲン原子であるような-Xを独立して含むことができる。いくつかの実施形態において、R0置換基のうちの少なくともいくつかは他のR0置換基と異なる。他の実施形態では、R0置換基はすべて同一であり得る。
【0124】
様々な実施形態において、本明細書における使用に適したピラーレンは、ジメトキシピラー[5]アレーン又はジメトキシピラー[4]アレーン[1]キノンなどのピラーレンを含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書における使用に適したピラーレンは、化学構造:
【0125】
のジメトキシピラー[5]アレーンを含む。
他の実施形態では、本明細書における使用に適したピラーレンは、化学構造:
【0126】
のジメトキシピラー[4]アレーン[1]キノンを含む。
カリックスアレーン
カリックスアレーンは、フェノールなどの化合物から誘導された3~15個の芳香族成分を有する複素環式大環状分子の群であり、各成分が置換又は非置換メチレン(-CH
2-)ブリッジによって接続されている。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、カリックスアレーンのサブユニットは、中央空洞を画定するカップ状の形状を形成することができると考えられている。中央空洞が化学センシングの目的の分析物を捕捉することができるため、カリックスアレーンはホスト-ゲスト化学に用いられる新たなクラスの大環状分子である。本明細書における使用に適したカリックスアレーンは、置換されているもの又は非置換のものを含む。カリックスアレーンのいくつかの例示的な構造は、
【0127】
【0128】
【0129】
を含み、式中、nは少なくとも3~15の整数であり、各R0は、独立して、-R1、-OR1又は-SR1を含むことができる。各R1は、独立して、H;-OH;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができる。各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができる。
【0130】
いくつかの実施形態において、各R1は、独立して、前述のもののいずれかの任意の置換体、任意の誘導体、又は任意の組み合わせを含むことができる。例えば-R2C(O)OH、-R2OPO(OH)2及び-R2OSO(OH)2などの酸性官能基が列挙される様々な実施形態では、対応するナトリウム塩、カリウム塩なども本明細書において想定されることが理解されるべきである。R0が-R1である実施形態では、R1は、XがF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含む任意のハロゲン原子であるような-Xを独立して含むことができる。いくつかの実施形態において、R0置換基のうちの少なくともいくつかは他のR0置換基と異なる。他の実施形態では、R0置換基はすべて同一であり得る。
【0131】
ペルアルキル化シクロデキストリン
様々なペルアルキル化シクロデキストリンは、本明細書に記載されるグラフェンの表面の修飾に使用するのに適し得る。本明細書における使用に適したペルアルキル化シクロデキストリンは、置換されているもの又は非置換のものを含む。いくつかの実施形態において、ペルアルキル化シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリン、並びにこれらの誘導体を含み得るが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、ペルアルキル化シクロデキストリン及びこれらの誘導体は、式:
【0132】
を有するものを含み得るが、これらに限定されるものではなく、
式中、nは、5~10の任意の整数又は6~8の任意の整数であり得、Zは-S又は-Oであり得る。各R1は、独立して、H;任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、又はアリールアミン;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができる。各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、各R1は、独立して、前述のもののいずれかの任意の置換体、任意の誘導体、又は任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、各R1は、独立して、前述のもののいずれかの任意の置換体、任意の誘導体、又は任意の組み合わせを含むことができる。
【0133】
例えば-R2C(O)OH、-R2OPO(OH)2及び-R2OSO(OH)2などの酸性官能基が列挙される様々な実施形態では、対応するナトリウム塩、カリウム塩なども本明細書において想定されることが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のヒドロキシル基又はアミノ基の存在は、シクロデキストリン分子とグラフェン層との間の水素結合に寄与することができる。様々な実施形態において、式中、ZR1は、XがF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含む任意のハロゲン原子であるような-Xで置き換えられ得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書における使用に適したペルアルキル化シクロデキストリンは、化学構造:
【0135】
を有するヘプタキス(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(本明細書では「β-CDMe
21」)を含むことができる。
多環芳香族炭化水素
様々な多環芳香族炭化水素化合物が、本明細書に記載されるグラフェンの表面の修飾に使用するのに適し得る。本明細書における使用に適した多環芳香族炭化水素化合物は、置換されているもの又は非置換のものを含む。本明細書に記載されるように、多環芳香族炭化水素は、式:
【0136】
によって表すことができ、
式中、nは少なくとも3~20の整数であり、各Xは、-R1、-OR1又は-SR1を独立して含むが、これらに限定されるものではない任意の置換基であり得る。各R1は、独立して、-H、-OH、-C(O)OH、-C(O)OR2、-OR2、-SR2、-CHO、-X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-C(O)NH2、-C(O)NR2、-NH3
+、-NH2、-NO2、-NHR2、-NR2R2、-N3、-B(OH)2、-OPO(OH)2、-OSO(OH)2、任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2B(OH)2、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができる。各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができる。
【0137】
いくつかの実施形態において、各R1は、独立して、前述のもののいずれかの任意の置換体、任意の誘導体、又は任意の組み合わせを含むことができる。例えば-R2B(OH)2、-R2C(O)OH、-R2OPO(OH)2及び-R2OSO(OH)2などの酸性官能基が列挙される様々な実施形態では、対応するナトリウム塩、カリウム塩なども本明細書において想定されることが理解されるべきである。Xが-R1である実施形態では、R1は、XがF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含む任意のハロゲン原子であるような-Xを独立して含むことができる。
【0138】
いくつかの実施形態において、多環芳香族炭化水素は、式:
【0139】
によって表されるピレン類、置換ピレン類及びピレン誘導体を含むことができ、
式中、Xは、R1、-OR1又はSR1を含むが、これらに限定されるものではない任意の置換基であり得る。各R1は、独立して、-H、-OH、-C(O)OH、-C(O)OR2、-OR2、-SR2、-CHO、-X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-C(O)NH2、-C(O)NR2、-NH3
+、-NH2、-NO2、-NHR2、-NR2R2、-N3、-B(OH)2、-OPO(OH)2、-OSO(OH)2、任意の直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル、又はこれらの任意の組み合わせ;アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールアリール、ハロゲン化アリール、置換ハロゲン化アリール、ベンジル若しくは置換ベンジル、ビフェニル若しくは置換ビフェニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミン、又はこれらの任意の置換体;-R2OH、-R2C(O)OH、-R2C(O)OR2、-R2OR2、-R2SR2、-R2CHO、-R2X(ここで、Xはハロゲン原子である)、-R2C(O)NH2、-R2C(O)NR2、-R2NH3
+、-R2NH2、-R2NO2、-R2NHR2、-R2NR2R2、-R2N3、-R2B(OH)2、-R2OPO(OH)2、-R2OSO(OH)2、又はこれらの任意の誘導体若しくは組み合わせを含むことができる。各R2は、独立して、任意の同一の若しくは異なる直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C20アルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、C1~C20ヘテロアルキル、C1~C20ヘテロアルケニル、C1~C20ヘテロアルキニル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20ハロアルケニル、C1~C20ハロアルキニル、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルケニル基、C1~C20ハロゲン化ヘテロアルキニル基、又はこれらの任意の置換体若しくは組み合わせを含むことができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、各R1は、独立して、前述のもののいずれかの任意の置換体、任意の誘導体、又は任意の組み合わせを含むことができる。例えば-R2B(OH)2、-R2C(O)OH、-R2OPO(OH)2及び-R2OSO(OH)2などの酸性官能基が列挙される様々な実施形態では、対応するナトリウム塩、カリウム塩なども本明細書において想定されることが理解されるべきである。Xが-R1である実施形態では、R1は、XがF、Cl、Br、I又はAtのうちの少なくとも1つを含む任意のハロゲン原子であるような-Xを独立して含むことができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、多環芳香族炭化水素は、式pyrenyl-(CH2)n-SO3Xを有するものを含むことができ、式中、nは0~10の数であり、Xは、H、又はNa、K、Li、Rb、Cs、Mg、Ca若しくはSrを含むが、これらに限定されるものではない金属カチオンである。本願で使用される場合、「ピレニル(pyrenyl)」という用語はピレン基を指す。
【0142】
いくつかの実施形態において、多環芳香族炭化水素は、式:
【0143】
によって表される1-ピレンスルホン酸を含むことができる。
ラングミュア吸着理論
いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、ラングミュア吸着理論によれば、グラフェンの単分子層修飾は、
【0144】
に従って、自己組織化溶液のバルク中の吸着質の濃度を変更することによって制御することができると考えられ、
式中、θは表面被覆率であり、Cは自己組織化溶液のバルク中の吸着質の濃度であり、Kはグラフェンに対する吸着質の吸着の平衡定数である。実験的に、表面被覆率は、
【0145】
に従って、未修飾のグラフェンと修飾されたグラフェンとの間における接触角の変化によって表わすことができ、
式中、Φ(i)は自己組織化溶液の濃度の関数としての修飾グラフェンの接触角であり、Φ(bare)は未修飾グラフェンの接触角であり、Φ(sat.)はレセプタ分子の完全な単分子層で修飾されたグラフェン(即ち100%の表面被覆率又はθ=1.0)の接触角であり、ここで、レセプタ分子は、ピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン又は置換ペルアルキル化シクロデキストリン及びこれらの誘導体のうちの1つ又は複数を含むことができる。式(2)のθを式(1)に代入してΦ(i)について解くと、式(3)が得られる。
【0146】
従って、実験的に観察されたΦ(i)値は、2つのフィッティングパラメータK及びΦ(sat.)を用いて、自己組織化溶液中のレセプタ濃度の関数としてフィッティングすることができる。これらの2つのパラメータが特定されると、異なる自己組織化濃度での相対的表面被覆率を、Kを用いて式(1)から予測することができる。
【0147】
データをラングミュア吸着モデルでフィッティングして、表面吸着の平衡定数、及びグラフェン上で90%以上の表面被覆率(すなわち、θ>0.9)を有する稠密な単分子層を形成するために必要とされる自己組織化溶液の濃度を特定することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも90%以上の表面被覆率が望ましい。いくつかの実施形態では、少なくとも95%以上の表面被覆率が望ましい。いくつかの実施形態では、少なくとも98%以上の表面被覆率が望ましい。
【0148】
グラフェンに対する置換ピラーアレーンの吸着についての代表的なラングミュア吸着等温線を
図9に示し、以下の実施例1~3においてより十分に説明する。データは、XPS測定によって特定されるグラフェンに対するジメトキシピラー[5]アレーン(本明細書では「DMピラー[5]アレーン」)の吸着について、相対的単分子層被覆率(点)をラングミュア吸着理論に基づくフィット(実線)と共に示している。自己組織化溶液中のDMピラー[5]アレーン濃度の対数の関数としてのグラフェンに対するDMピラー[5]アレーンの吸着の相対的表面被覆率は
図10に示す。
【0149】
上記の例において、ラングミュアモデルは、X線光電子分光法(XPS)を用いて得られた未修飾グラフェン及び修飾グラフェンの表面の元素組成からKを特定するために用いられる。XPSデータを用いる代わりに、赤外分光法若しくはラマン分光法又は液滴接触角測定法によって得られたデータも用いることができる。
【0150】
X線光電子分光法
X線光電子分光法(XPS)は、材料の表面の元素組成を定量的に測定できる高感度の分光技術である。XPSのプロセスは、真空下におけるX線による表面の照射を伴い、それとともに物質の最上部の0~10nm以内における運動エネルギー及び電子の放出を測定する。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、グラフェンの表面上に形成された自己組織化単分子層の存在を確認するためにXPSを用いることができると考えられる。
【0151】
単分子層、グラフェン及びその下の基板を構成する原子の種類の表面濃度(XPSから特定される)は、単分子層のラングミュアシータ値、即ち換言すれば、グラフェン上の単分子層分子の表面密度に依存する。例えば、銅基板上における所与のシクロデキストリンの単分子層についての炭素、酸素及び銅の表面濃度(即ち、XPSから特定されるC%、O%及びCu%)は、自己組織化溶液中におけるそのシクロデキストリンの濃度に依存する。C%、O%又はCu%のデータを別々にフィッティングすると、実験誤差により、表面吸着の平衡定数(Κ)の僅かに異なる値が得られるであろう。しかしながら、C%、O%又はCu%のデータは同一の平衡を特徴付けるため、Κの真の値は1つのみである。従って、XPSデータは、C%、O%及びCu%のデータについて別々にフィッティングされるだけでなく、1つの結合されたデータセットとしてもフィッティングされ得る。単分子層、グラフェン及びその下の基板を構成する数種類の原子についての結合データのフィッティングにより、Kの真の値のより正確な推定が得られる。この目的のために、下記の式を用いることができ、ここで、各データポイントは、(i)指数、(ii)自己組織化溶液の濃度、及び(iii)XPSによって特定される炭素、酸素又は銅の濃度を含むベクトルからなる。
【0152】
指数1はC%データに対して使用し、指数2はO%データに対して使用し、指数3はCu%データに対して使用した。0の入力に対するクロネッカーのデルタ(Kronecker delta)の出力は1であり、任意の他の入力に対するそれは0である。このフィッティング手順により、炭素、酸素及び銅の最大表面濃度(即ち、それぞれC%(sat.)、O%(sat.)及びCu%(sat.))が、3つの吸着等温線すべてに関するΚの単一値と共に、1ステップで得られる。
【0153】
上記の例において、K値は、3つの吸着等温線、即ち、3種類の原子の表面濃度からフィッティングされる。同じ種類のフィッティングは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれより多くの異なる種類の原子の吸着等温線についても実施され得る。
【0154】
XPSデータのフィッティングによって特定される平衡定数Kは、ラングミュア吸着モデルにおいて、ピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン及びそれらの誘導体などのグラフェン上で単分子層を形成する様々な分子で修飾されたグラフェン表面についてのθ値を特定するために使用することができる。ジメトキシピラー[5]アレーンで修飾されたグラフェンの吸着についての代表的なラングミュア吸着等温線を
図9に示し、実施例1~3においてより詳細に説明する。
【0155】
液滴接触角測定法
液滴接触角測定法は、液体による固体表面の濡れ性を特定するために用いることができる。濡れ性又は濡れは、液体と固体表面との間の接触領域における分子間力に起因し得る。濡れの程度は、液体と固体表面との間の接触領域と、液気界面に対する接線との間に形成される接触角Φの値によって表され得る。固体表面が親水性であり、試験液として水が使用される(つまり濡れ性が高い)場合、Φの値は0~90度の範囲内にあり得る。固体表面が中程度に親水性から疎水性である(つまり濡れ性が中程度である)場合、水を試験液としたΦの値は85~105度の範囲内にあり得る。固体表面が非常に疎水性である(つまり濡れ性が低い)場合、水を試験液として用いたΦの値は90~180度の範囲内にあり得る。従って、接触角の変化は、基板の界面化学の変化を反映することができる。
【0156】
グラフェン表面及びグラフェン表面になされた修飾は、液滴接触角測定法を用いて特徴付けることができる。液滴接触角測定法は、グラフェン表面の修飾の程度に関する定量的情報を提供することができる。接触角測定は、サンプル表面上に存在する官能基に対して感度が高く、自己組織化単分子層の形成及び表面被覆率の程度を特定するために用いられ得る。π電子が豊富な分子を含有する自己組織化溶液に浸漬したものと比較した未修飾グラフェン表面からの接触角の変化は、グラフェンの表面上における自己組織化単分子層の形成を確認するために用いることができる。
【0157】
濡れ液とも呼ばれる接触角測定値の特定に使用するのに適した溶媒の種類は、未修飾グラフェン上における液の接触角と修飾グラフェン上における接触角との間の差を最大にし、それにより結合等温線の測定のためのデータ精度を改善するものである。いくつかの実施形態において、濡れ液は、脱イオン(DI)水、NaOH水溶液、ホウ酸塩緩衝液(pH9.0)、他のpH緩衝液、CF3CH2OHなどを含むことができるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、濡れ液は極性である。いくつかの実施形態において、濡れ液は非極性である。
【0158】
方法
本明細書におけるピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類又は置換ピレン類は、グラフェンの表面を修飾する1つ又は複数の方法に使用され得る。一実施形態において、方法は、自己組織化単分子層を形成するステップを含むことができ、自己組織化単分子層は、自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に配置される。その方法は、本明細書の他の箇所に記載されるように、1つ若しくは複数のピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン若しくは置換カリックスアレーン、又はこれらの誘導体を含む自己組織化単分子層を含むことができる。その方法は、液滴接触角測定、ラマン分光法又はX線光電子分光法を用いて、自己組織化単分子層の表面被覆の程度を定量化するステップを含むことができる。いくつかの実施形態において、そのような非共有結合性相互作用は静電相互作用を含むことができる。他の実施形態では、非共有結合性相互作用はπ-πスタッキング相互作用を含むことができる。
【0159】
いくつかの実施形態において、その方法は、少なくとも0.9のラングミュアシータ値を示す誘導体化されたグラフェン層を選択するステップをさらに含むことができる。他の実施形態において、その方法は、少なくとも0.98のラングミュアシータ値を示す誘導体化されたグラフェン層を選択するステップを含む。
【0160】
本明細書におけるピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類又は置換ピレン類は、グラフェンの表面を修飾する1つ又は複数の方法に使用され得る。一実施形態において、方法は、分析物を検出するステップを含むことができる。その方法は、患者からガス状サンプルを採取するステップと、ガス状サンプルを1つ又は複数のグラフェンバラクタと接触させるステップとを含むことができる。1つ又は複数のグラフェンバラクタは、グラフェン層と自己組織化単分子層とを備えることができ、自己組織化単分子層は、自己組織化単分子層とグラフェンのπ電子系との間の非共有結合性相互作用を通してグラフェン層の外面上に配置されている。自己組織化単分子層は、本明細書の他の箇所に記載されるように、ピラーレン、置換ピラーレン、カリックスアレーン、置換カリックスアレーン、ペルアルキル化シクロデキストリン、置換ペルアルキル化シクロデキストリン、ピレン類若しくは置換ピレン類、又はこれらの誘導体を含む群から選択される少なくとも1つを含むことができる。前記方法は、ガス状サンプル中に存在する1つ又は複数の分析物の結合による1つ又は複数のグラフェンバラクタの電気特性における特異な応答を測定するステップをさらに含むことができ、電気特性はキャパシタンス又は抵抗を含む群から選択され得る。
【0161】
態様は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。これらの実施例は、特定の実施形態を代表するものであるが、本明細書の実施形態の全般的な範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0162】
実施例1: 実験材料
ジメトキシピラー[5]アレーン(本明細書では「DMピラー[5]アレーン」)は、東京化成工業(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から購入した。Cu箔上の単分子層グラフェンは、グラフェネア(Graphenea)(ドノスティア、スペイン)から購入した。ヘプタキス(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(本明細書では「β-CDMe
21」)、ヘキサン及びアセトニトリルは、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ミズーリ州セントルイス)から購入した。DMピラー[5]アレーンの化学構造は下記の通りである。
【0163】
【0164】
実施例2: DMピラー[5]アレーンの自己組織化によるグラフェンの表面修飾
アセトニトリルを自己組織化溶媒として使用した。グラフェン基板を、0ミルモル(mM)、0.0030mM、0.010mM、0.030mM、0.10mM又は0.30mMを含む様々な濃度のDMピラー[5]アレーン溶液に一晩浸漬した。次に、DMピラー[5]アレーンで修飾されたグラフェン基板を少量のアセトニトリル溶媒で3回洗浄して、過剰な自己組織化溶液を除去した。
【0165】
実施例3: DMピラー[5]アレーンで修飾されたグラフェンの表面特性解析
未修飾のグラフェン及びDMピラー[5]アレーンで修飾されたグラフェンのX線光電子分光(XPS)スペクトルを、バーサプローブIII(VersaProbe III)走査型XPSマイクロプローブ(PHI5000、5フィジカルエレクトロニクス(Physical Electronics)、ミネソタ州チャンハッセン)で収集した。DMピラー[5]アレーンで修飾されたグラフェンの表面元素組成の結果を表1に示す。
【0166】
【0167】
C%、O%及びCu%のデータを上述したように同時にフィッティングして、平衡定数Kを特定した。平衡定数K及びDMピラー[5]アレーンによる少なくとも90%の単分子層の形成に必要とされる自己組織化溶液の濃度を表2に示す。
【0168】
【0169】
DMピラー[5]アレーンで修飾されたグラフェンの吸着についてのラングミュア吸着等温線を
図9に示す。図は、XPSデータによって特定された、DMピラー[5]アレーンで修飾されたグラフェンの吸着についての相対的単分子層被覆率(点)をラングミュア吸着理論に基づくフィット(実線)と共に示している。自己組織化溶液中のDMピラー[5]アレーン濃度の対数の関数としてのグラフェンに対するDMピラー[5]アレーンの吸着の相対的表面被覆率は
図10に示す。
【0170】
実施例4: β-CDMe21の自己組織化によるグラフェンの表面修飾
ヘキサンを自己組織化溶媒として使用した。グラフェン基板を、0ミルモル(mM)、0.0050mM、0.010mM、0.050mM、0.10mM又は0.50mMを含む様々な濃度のβ-CDMe21溶液に一晩浸漬した。次に、β-CDMe21で修飾されたグラフェン基板を少量のヘキサン溶媒で3回洗浄して、過剰な自己組織化溶液を除去した。
【0171】
実施例5: β-CDMe21で修飾されたグラフェンの表面特性解析
未修飾のグラフェン及びβ-CDMe21で修飾されたグラフェンのX線光電子分光(XPS)スペクトルを、バーサプローブIII走査型XPSマイクロプローブ(PHI5000、5フィジカルエレクトロニクス、ミネソタ州チャンハッセン)で収集した。β-CDMe21で修飾されたグラフェンの表面元素組成の結果を表3に示す。
【0172】
【0173】
C%、O%及びCu%データを上述したように同時にフィッティングして、平衡定数Kを特定した。平衡定数K及びβ-CDMe21による少なくとも90%の単分子層の形成に必要とされる自己組織化溶液の濃度を表4に示す。
【0174】
【0175】
β-CDMe
21で修飾されたグラフェンの吸着についてのラングミュア吸着等温線を
図11に示す。同図は、XPSデータによって特定された、β-CDMe
21で修飾されたグラフェンの吸着についての相対的単分子層被覆率(点)をラングミュア吸着理論に基づくフィット(実線)と共に示している。自己組織化溶液中のβ-CDMe
21濃度の対数の関数としてのグラフェンに対するβ-CDMe
21の吸着の相対的表面被覆率は
図12に示す。
【0176】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられる場合、単数形「a」「an」及び「the」は、内容が明らかに他の意味を示していない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。「又は」という用語は、内容が明らかに他の意味を示していない限り、一般に「及び/又は」を含む意味で使われていることにも留意すべきである。
【0177】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられる場合、「構成される」という語句は、特定のタスクを実施するか、又は特定の構成をとるように構築又は構成されるシステム、装置又は他の構造を説明していることにも留意すべきである。「構成される」という句は、配されて構成される、構築されて配される、構築される、製造される、及び配される、などの他の同様の語句と言い換え可能に使用され得る。
【0178】
本明細書中のすべの刊行物及び特許出願は、本発明が関係する技術分野の一般的な技術水準を示す。すべての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照文献として具体的且つ個別に示されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0179】
本願において用いられる場合、終点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数を含むものとする(例えば、2~8は2.1、2.8、5.3、7などを含む)。
【0180】
本明細書に用いられる見出しは、米国特許法施行規則第1.77条に基づく示唆に整合するように、又は他の場合には構成上の手がかりを与えるために提供されている。これらの見出しは、本開示から提出され得る任意の請求項に記載されている本発明を限定又は特徴付けるものと見なしてはならない。例として、見出しが「分野」を指しているとしても、そのような請求項は、いわゆる技術分野を説明するためにこの見出しの下で選択された文言によって限定されるべきではない。さらに、「背景」における技術の説明は、技術が本開示における任意の発明に対する従来技術であることを認めるものではない。「概要」もまた、提出された請求項に記載された本発明の特徴を示すものとはみなされない。
【0181】
本明細書に記載される実施形態は、本発明を網羅することも、本発明を以下の詳細な説明に開示されたまさにその形態に限定することも意図するものではない。むしろ、実施形態は、当業者が原理及び実践を認識し理解することができるように選択され記載される。従って、態様は様々な特定の好ましい実施形態及び技術を参照して記載されている。しかしながら、本明細書の趣旨及び範囲内に留まりながらも、多くの変形及び変更がなされ得ることが理解されるべきである。
【国際調査報告】