(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】顔面トポグラフィックパラメータを記録するための記録装置および関連方法
(51)【国際特許分類】
A61C 19/045 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
A61C19/045 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512764
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2020073153
(87)【国際公開番号】W WO2021037619
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522070341
【氏名又は名称】ゲルバー コンディレーター ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Gerber Condylator GmbH
【住所又は居所原語表記】Seeweg 162, 8804 Au ZH, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンナ エム. ドゥボイスカ-ゲルバー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン エッパー
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA20
4C052NN03
4C052NN13
(57)【要約】
顔面トポグラフィックパラメータを記録するための記録装置が開示されている。当該装置はベース部材(1)を有しており、ベース部材には横方向部分(10)を含む。横方向部分はその中央部分(13)に、基準部材(20)に回動不能に結合するための結合手段を有している。ベース部材はさらに、横方向部分から後方に延びかつ横方向部分に回動不能に結合された2つの咬合平面インジケータ(14a,14b)を有している。咬合平面インジケータはそれぞれ、1つの共通の平面内に延在している。2つの下顎頭インジケータポインタ(16a,16b)が、各矢状面内でベース部材に対する各下顎頭インジケータポインタの変位を可能にする可動リンク機構関係においてベース部材に連結されている。各下顎頭インジケータポインタには、耳珠インジケータ(17a,17b)が旋回可能に結合されている。さらに、前記装置を使用する方法が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面トポグラフィックパラメータを記録するための記録装置であって、
ベース部材(1)を有しており、該ベース部材は横方向部分(10)を含んでおり、前記ベース部材は、前側(11)と後ろ側(12)とを有しており、前記横方向部分はその中央部分(13)に、基準部材(20)に回動不能に結合するための結合手段を有しており、前記ベース部材はさらに、2つの咬合平面インジケータ(14a,14b)を有しており、該咬合平面インジケータは、前記横方向部分の両外側において前記横方向部分から後方に延びておりかつ前記横方向部分に回動不能に結合されており、前記咬合平面インジケータはそれぞれ、1つの共通の平面内に延びており、
2つの下顎頭インジケータポインタ(16a、16b)を有しており、各下顎頭インジケータポインタは、各矢状面内で前記ベース部材に対する各下顎頭インジケータポインタの変位を可能にする可動リンク機構関係において前記ベース部材に連結されており、
前記矢状面は、前記咬合平面インジケータの前記共通の平面に対して垂直であり、前記下顎頭インジケータポインタは、前記横方向部分(10)の前記中央部分(13)のそれぞれ異なる外側に設けられており、
各前記下顎頭インジケータポインタには、耳珠インジケータ(17a,17b)が旋回可能に結合されており、各耳珠インジケータの旋回軸線(170a,170b)は、各前記下顎頭インジケータポインタの軸線と一致している、
記録装置。
【請求項2】
各前記耳珠インジケータは、耳珠ポインタ(171a,171b)を有している、請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
横方向(5)における前記下顎頭インジケータポインタの間の距離が可変である、請求項1または2記載の記録装置。
【請求項4】
2つの下顎頭インジケータバー(18a,18b)を有しており、前記横方向部分(10)の両外側において、1つの下顎頭インジケータバーが、前記横方向部分に旋回可能に結合されておりかつ旋回軸線(180a,180b)を中心として旋回可能であり、前記下顎頭インジケータバーは、矢状面内で旋回可能であり、1つの前記下顎頭インジケータポインタ(16a,16b)は、各前記旋回軸線(180a,180b)から離れて各1つの前記下顎頭インジケータバーに結合されており、前記下顎頭インジケータポインタと各前記旋回軸線との間の距離が可変である、請求項1から3までのいずれか1項記載の記録装置。
【請求項5】
前記下顎頭インジケータバーは、1つの共通の軸線を中心として旋回可能である、請求項4記載の記録装置。
【請求項6】
各前記下顎頭インジケータバー(18a,18b)は個々に、各前記旋回軸線(180a,180b)に沿って前記ベース部材(1)に対して軸線方向に変位可能である、請求項4または5記載の記録装置。
【請求項7】
さらに、前鼻棘インジケータ(30)を有しており、該前鼻棘インジケータ(30)は、前記横方向部分(10)に取り付けられた前鼻棘ポインタ(31)を有しており、該前鼻棘ポインタのアタッチメントは、前記前鼻棘ポインタが前記横方向部分に対して変位可能であるように設けられており、これにより、前記前鼻棘ポインタと前記咬合平面(14a,14b)の前記共通の平面との間の距離が可変である、請求項1から6までのいずれか1項記載の記録装置。
【請求項8】
前記前鼻棘インジケータ(30)は、前記ベース部材(1)に取外し可能に取り付けることができる前鼻棘インジケータロッド(32)を含み、前記前鼻棘ポインタ(31)は、前記前鼻棘インジケータロッドに沿って変位可能であり、該前鼻棘インジケータロッドは、前記咬合平面インジケータの前記共通の平面に対して少なくともほぼ垂直に延在している、請求項7記載の記録装置。
【請求項9】
前記咬合平面インジケータの前記共通の平面に対して少なくともほぼ垂直に延びるように、前記ベース部材に美的パラメータ記録ロッド(41)が取付け可能であり、該美的パラメータ記録ロッド(41)は、前記ベース部材に取り付けられると、前記ベース部材に対して軸線方向に変位可能であり、特に前記咬合平面インジケータ(14a,14b)の前記共通の平面の両側に延在している、請求項1から8までのいずれか1項記載の記録装置。
【請求項10】
前記美的パラメータ記録ロッドが前記ベース部材に取り付けられている場合には、前記咬合平面インジケータの前記共通の平面の両側で少なくとも1つのインジケータ装置(42,43,44,45)が前記美的パラメータ記録ロッド(41)に変位可能に取り付けられている、請求項9記載の記録装置。
【請求項11】
顔面トポグラフィックパラメータを記録するためのシステムであって、請求項1から10までのいずれか1項記載の記録装置と、基準部材(20)とを備えており、該基準部材は、主平面を有する基準プレートであり、前記基準部材は、当該記録装置の前記横方向部分(10)の結合手段と嵌合するように適合されて構成された結合手段を有しており、これにより、前記基準プレートは当該記録装置に回動不能に結合されており、特に前記基準プレートの前記結合手段と前記横方向部分とは、前記基準プレートの前記主平面が2つの前記咬合平面インジケータ(14a,14b)の前記共通の平面に対して平行である位置において前記基準プレートが当該記録装置に結合するように、互いに適合されて構成されており、より具体的には、前記基準プレートの前記結合手段と前記横方向部分の前記結合手段とは、前記基準プレートの前記主平面が2つの前記咬合平面インジケータによって規定される前記共通の平面と一致した状態で前記基準プレートが当該記録装置に取り付けられるように互いに適合されて構成されている、システム。
【請求項12】
顔の顔面トポグラフィックパラメータを記録する方法であって、当該方法は、
下顎の歯の上部において基準プレート(20)を下顎に取り付けるステップと、前記下顎の歯に前記基準プレートを固定し、これにより該基準プレートの主平面を、下顎の咬合平面と少なくとも実質的に一致させるステップと、
請求項1から10までのいずれか1項記載の記録装置を前記基準プレートに取り付け、これにより咬合平面インジケータ(14a,14b)を、前記基準プレート(20)の前記主平面に対して平行にし、かつこれにより、前記基準プレートの両外側に、下顎頭インジケータポインタと耳珠インジケータとを設けるステップと、
前記下顎頭インジケータポインタ(16a,16b)を、前記基準プレートの両側の、前記下顎頭インジケータポインタ(16a,16b)の各矢状面内で変位させるステップと、各下顎頭インジケータポインタを、前記矢状面内で前記基準プレートの両側の下顎頭と一致するように配置し、これにより前記基準プレートの両側において下顎の下顎頭の位置をマーキングするステップと、
前記基準部材の両外側の前記耳珠インジケータ(17a,17b)を、各耳珠インジケータ旋回軸線(170a,170b)を中心として旋回させるステップと、各前記耳珠インジケータの耳珠インジケータポインタ(171a,171b)を、下顎頭と各耳珠とを結ぶ線上に配置するステップと、
前記咬合平面から前記下顎頭インジケータポインタ(16a,16b)までの、前記咬合平面に対して垂直な距離と、前記咬合平面に対して平行な、前記下顎頭インジケータポインタ(16a,16b)の前後位置とを表す少なくとも1つのパラメータを読み取るステップと、
前記咬合平面から前記耳珠インジケータポインタ(171a,171b)までの、前記咬合平面に対して垂直な距離と、前記咬合平面に対して平行な、前記耳珠インジケータポインタの前後位置を表す少なくとも1つのパラメータを読み取るステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記記録装置は、2つの下顎頭インジケータバー(18a,18b)を有しており、横方向部分(10)の両外側において、各1つの下顎頭インジケータバーが、前記横方向部分に旋回可能に結合されておりかつ旋回軸線(180a,180b)を中心として旋回可能であり、前記下顎頭インジケータバーは、前記基準部材の両外側において矢状面内で旋回可能であり、1つの前記下顎頭インジケータポインタ(16a,16b)は、各1つの前記下顎頭インジケータバー(18a,18b)に、各前記下顎頭インジケータバーの各前記旋回軸線(180a,180b)から離れて結合されており、前記下顎頭インジケータポインタと各前記旋回軸線との間の距離は可変であり、
当該方法は、前記下顎頭インジケータバー(18a,18b)を、それらの各前記旋回軸線(180a,180b)を中心として旋回させ、これにより前記記録装置の両側において、前記下顎頭インジケータバーと前記咬合平面インジケータ(14a,14b)との間の傾斜角度を変化させるステップと、
前記基準部材の両外側において、前記下顎頭インジケータポインタ(16a,16b)と前記下顎頭インジケータバーの各前記旋回軸線(180a,180b)との間の距離を変化させるステップと、
を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
さらに、読取り値を遠隔装置に転送し、特にこれにより、顔面トポグラフィのランドマークを離れた場所に、特に歯科修復処置の機能的かつ審美的な効果を評価するために転送するステップを含む、方法請求項12または13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、請求項に記載された記録装置、顔面トポグラフィックパラメータを記録するためのシステム、および記録装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用置換物の製作では、下顎運動中の下顎頭の動的変位を記録することができる記録装置を使用することがある。このような口腔内装置は、下顎の歯に取り付けられてよい。次いで、矢状面において下顎頭と一致するように調整可能なポインタを有する口腔外記録装置が口腔内装置に取り付けられてよい。下顎頭とポインタとの間に、咬合平面に対して明確に規定された向きで記録カードを配置することができる。次いで、下顎が動かされると、記録ピンが、下顎運動中の頭蓋に対する下顎頭の変位を表す痕跡を記録カードに残す。記録装置の調整を固定した状態で、口腔内装置を介して記録装置が下顎に取り付けられると、これにより咬合平面に対する関係が固定された状態になり、下顎頭ポインタが下顎頭と一致することになり、記録装置は、現状に即して歯科技工室に送られてよい。記録装置により「凍結」された下顎の幾何学的パラメータおよび下顎運動中に記録された下顎頭の痕跡に関する知識を有する歯科技工士が、技工室において下顎と歯との、特に咀嚼面の運動学を詳細に再現し、これに応じて歯科修復処置を適合させることができる。ただし、記録処理中に調整された記録装置の設定が変更されないことが極めて重要である。歯科技工室がますます中央集中化され、歯科医院から遠く離れる傾向がある中では、増加する距離を越えて記録装置を送ることが必要とされている。これにより、設定の誤調整のリスクが高まる。
【0003】
頭蓋の基準軸線に対する下顎の結合軸線を記録することが重要であることがある。前記基準軸線は、頭部の両側の各耳珠の間、または頭蓋の両側の耳珠の下にある骨構造の間に画定することができる。
【0004】
他の態様では、咬合平面に加えてカンペル平面も記録することが重要であることがある。カンペル平面は、頭蓋の両側の骨の上の各耳珠と前鼻棘との間に画定される。カンペル平面と咬合平面とは、少なくとも互いに実質的に平行であることが望ましい。この理想的な条件からの逸脱は、顔面の審美的外観に悪影響を及ぼすことになり、これは歯科修復処置/リハビリテーションによって矯正することができる。これは病理所見であり得、何らかの疾患、変形、または過去あるいは現在の損傷を示唆し得る。したがって、咬合平面とカンペル平面とを同時に記録することは、歯科学だけでなく、法医学や考古学においても重要であることがある。ただし、単なる発見は診断そのものではなく、医療専門家による評価が必要であることを強調しておく。
【0005】
別の態様では、審美性が歯科学においてますます重要になっている。しかしながら、予め審美性に結び付けられているように見える特定のパラメータも、機能的に重要な場合がある。例えば、上顎切歯の長さは、個体の音声レパートリーに影響を与える可能性がある。上顎切歯の長さが正しくない場合には、音声レパートリーを傷つけるかまたは損なうことにつながる恐れがある。パラメータに従った評価は、死亡した個体の音声レパートリーのヒントを与えることさえ可能であり、これは、考古学および古生物学において重要であることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、冒頭に述べた形式の記録装置を提供することにある。より具体的な態様では、本開示の目的は、上述の問題を軽減する記録装置を提供することにある。本開示の目的は、多数の顔面トポグラフィックパラメータの同時記録を可能にする記録装置を提供することにあると考えられてもよい。さらにより具体的な態様では、本明細書に開示された主題の目的は、咬合平面およびカンペル平面の同時記録を可能にする装置を提供することにある。なおさらにより具体的な態様では、審美性に関する筋膜トポグラフィックパラメータの記録を可能にする記録装置を提案することが望ましい。
【0007】
別の態様では、上述の目的を達成するための方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは、独立請求項に記載された主題によって達成される。
【0009】
開示された主題のさらなる効果および利点は、明示的に言及されたか否かにかかわらず、以下に提供する開示を考慮すれば明らかになるであろう。
【0010】
したがって、顔面トポグラフィックパラメータを記録するための記録装置であって、ベース部材を有しており、ベース部材は、横方向部分を含みかつ前側および後側を有している、記録装置を開示する。横方向部分はその中央部分に、基準部材に回動不能に結合するための結合手段を有している。結合手段は特に、基準部材がベース部材に結合されると基準部材はベース部材の後ろ側に延在するように設けられている。実施形態では、結合手段はベース部材の後ろ側に設けられている。ベース部材はさらに、2つの咬合平面インジケータを有しており、咬合平面インジケータは、横方向部分の両外側において、横方向部分から後方に延びておりかつ横方向部分に回動不能に結合されている。咬合平面インジケータはそれぞれ、1つの共通の平面内に延在している。さらに、当該装置は2つの下顎頭インジケータポインタを有している。各下顎頭インジケータポインタは、各矢状面内でベース部材に対する各下顎頭インジケータポインタの変位を可能にする可動リンク機構関係においてベース部材に連結されている。前記面は、以下の理由で矢状面と呼ばれる。当該装置は、下顎頭インジケータポインタが変位可能な平面が矢状面と少なくとも実質的に一致するように頭蓋に取り付けられることを意図したものである。この限りでは、特に各下顎頭インジケータポインタが変位可能な平面は互いに平行であることが理解される。これらの矢状面は、咬合平面インジケータの共通の平面に対して垂直であり、下顎頭インジケータポインタは、横方向部分の中央部分のそれぞれ異なる外側に設けられている。複数の態様では、下顎頭インジケータポインタは、旋回軸線を中心とした旋回運動と、前記旋回軸線に対して垂直な移行運動とを可能にするように設けられている。さらに、各下顎頭インジケータポインタには耳珠インジケータが旋回可能に結合されており、各耳珠インジケータの旋回軸線は、各下顎頭ポインタの軸線と一致している。当該装置は、両外側に下顎頭インジケータポインタと耳珠ポインタとを有しており、これにより、頭部または頭蓋の両外側の耳珠と下顎頭との相対位置の記録が可能になる。したがって、頭蓋に対する下顎の結合が、頭部または頭蓋の両外側において対称であるか否かを判定することができる。
【0011】
本開示の枠組みの中で、不定冠詞「a」または「an」の使用は、単数であることを規定するわけでも、挙げられた部材または特徴が複数存在することを排除するわけでもないことに留意されたい。したがって、「少なくとも1つ」または「1つまたは多数」という意味で読まれるべきである。
【0012】
下顎頭インジケータポインタは、矢状面に対して垂直に延びる各軸線を有する尖ったロッドまたはピンであってよく、矢状面内で、下顎頭インジケータポインタは変位可能でありかつ/または咬合平面インジケータの共通の平面に対して平行である。耳珠インジケータは、特に下顎頭インジケータポインタの前記各軸線を中心として旋回可能であってよい。耳珠インジケータ自体は、耳珠ポインタを含んでいてよく、耳珠ポインタも、尖ったロッドまたはピンとして設けられていてよい。より具体的な実施形態では、耳珠ポインタの軸線は、耳珠ポインタが旋回可能に連結された下顎頭インジケータポインタの軸線に対して平行である。耳珠ポインタから耳珠インジケータの各旋回軸線までの距離は固定することができる。
【0013】
当該装置のそれぞれ異なる外側における下顎頭インジケータポインタ間の距離、ひいては間接的に、当該装置のそれぞれ異なる外側における耳珠インジケータ間の距離は可変であってよく、これにより、前記距離の調整が可能になる。例示的な非限定的な態様では、下顎頭インジケータポインタは、旋回軸線に沿って変位可能であり、この旋回軸線を中心として、下顎頭インジケータポインタは各矢状面内で旋回可能であることが提供されてもよい。より具体的な例示的な態様では、これは、両下顎頭インジケータポインタの1つの共通の旋回軸線であってよい。これに関して、下顎頭インジケータポインタは特に、互いに対して、かつベース部材に対して横方向に、すなわち矢状面に対して垂直に変位可能である。
【0014】
他の例示的な態様では、記録装置は、2つの下顎頭インジケータバーを有していてよく、下顎頭インジケータバーは、横方向部分の両外側において、横方向部分に旋回可能に結合されておりかつ旋回軸線を中心として旋回可能である。この限りでは、例示的な実施形態では、ベース部材の両外側に軸が設けられかつ/または延在していてよい。各軸は、特に咬合平面インジケータの共通の平面に対して平行かつ矢状面に対して垂直な横方向に延びていてよい。前記実施形態における下顎頭インジケータバーは、各軸に、各軸を中心として旋回可能に取り付けられている。さらに、下顎頭インジケータバーは、各軸に沿って変位可能であってよい。上で提案したように、両下顎頭インジケータバーの旋回軸線は一致していてよい、すなわち、下顎頭インジケータバーは、それぞれ1つの共通の軸線を中心として旋回可能である。複数の実施形態では、下顎頭インジケータバーが旋回可能に取り付けられる軸は、特に同軸であってよい。これに関して、各実施形態における下顎頭インジケータバーの旋回軸線は、下顎頭インジケータバーが旋回可能に取り付けられる軸の軸線と同一であることが理解される。例示的な実施形態では、下顎頭インジケータバーは、矢状面内で旋回可能である。1つの下顎頭インジケータポインタは、各旋回軸線から離れて各1つの下顎頭インジケータバーに結合されており、下顎頭インジケータポインタと各旋回軸線との間の距離は可変であるため、前記距離の調節が可能である。したがって、下顎頭インジケータポインタは、下顎頭インジケータバーに沿って変位可能である。より具体的な態様では、各下顎頭インジケータバーは、それぞれの旋回軸線に沿ってベース部材に対して個別に軸線方向に変位可能である。より具体的には、それぞれの旋回軸線に沿った前記変位は、横方向における変位である。
【0015】
記録装置のより具体的な例示的な実施形態は、前鼻棘インジケータを有している。前鼻棘インジケータは、記録装置の横方向部分に取り付けられた前鼻棘ポインタを有している。前鼻棘ポインタのアタッチメントは、前鼻棘ポインタが前記横方向部分に対して変位可能であり、これにより前鼻棘ポインタと咬合平面、すなわち咬合平面インジケータの共通の平面との間の距離が可変であり、その結果、前記距離の調整が可能になるように設けられている。要するに、前鼻棘ポインタは、先端が前鼻棘を指し示すように配置されることを意図したものである。耳珠と前鼻棘とは、頭蓋のカンペル平面を規定する。したがって、耳珠インジケータが頭蓋の両側の耳珠に正しく配置され、かつ前鼻棘ポインタが前鼻棘に正しく配置されていれば、当該装置がカンペル平面を記録する。これにより、咬合平面とカンペル平面との相対的な位置および向きを記録することが可能である。この限りでは、前鼻棘インジケータは複数の実施形態において、ベース部材に取外し可能に取り付けることができる前鼻棘インジケータロッドを有しており、前鼻棘ポインタは、前鼻棘インジケータロッドの軸線方向で前鼻棘インジケータロッドに沿って変位可能であり、前鼻棘インジケータロッドは、咬合平面インジケータの共通の平面に平行または一致する平面として規定される咬合平面に対して、少なくともほぼ垂直に延在している。
【0016】
さらに、咬合平面インジケータの共通の平面に対して少なくともほぼ垂直に延びるようにベース部材に取付け可能な美的パラメータ記録ロッドを有する記録装置が提供されてもよく、この場合、美的パラメータ記録ロッドは、ベース部材に対して軸線方向に変位可能であり、特に咬合平面インジケータの共通の平面および/またはベース部材の横方向部分の両側に延びていてよい。さらに、美的パラメータ記録ロッドがベース部材に取り付けられている場合には、咬合平面インジケータの共通の平面の両側で美的パラメータ記録ピンに変位可能に取り付けられた少なくとも1つのインジケータ装置が設けられていてもよい。美的パラメータ記録ロッドはインジケータ装置と共に、単独でまたは互いに関連して顔の審美的外観の決め手となる特定の比率、すなわち、例えば前鼻棘から顎の底までの距離、または上切歯の長さに対する眼角から口唇角までの距離の比を記録するために、使用することができる。上切歯の寸法は、音声レパートリーの制限または吃音を生じさせることがあるため、音声学にとっても重要である。歯科修復処置の審美的な結果に関する関連性に加え、頭蓋のトポグラフィックパラメータの記録は、考古学、古生物学および法医学においても有用であり得る。これらのパラメータを、考えられるその他のパラメータと共に記録装置によって頭蓋から記録することにより、顔を再構成する能力を向上させることができ、例えば、過去に過ぎ去った個体または個体群の音声学的な特徴に関するヒントをもたらすことができる。
【0017】
別の態様では、顔面トポグラフィックパラメータを記録するためのシステムが開示される。当該システムは、上で概説した任意の実施形態に基づく記録装置と、基準部材とを備えている。基準部材は、主平面を有する基準プレートであり、記録装置の横方向部分の結合手段と嵌合するように適合されて構成された結合手段を有しており、これにより、基準プレートは記録装置に回動不能に結合されている。特定の実施形態では、基準プレートの結合手段と横方向部分とは、基準プレートの主平面が咬合平面インジケータによって規定される共通の平面に対して平行である位置において基準プレートが記録装置に結合するように、互いに適合されて構成されている。より具体的な実施形態では、基準プレートの結合手段と横方向部分の結合手段とは、基準プレートの主平面が咬合平面インジケータによって規定される共通の平面と一致した状態で基準プレートが記録装置に取り付けられるように互いに適合されて構成されている。さらに、基準プレートの結合手段と横方向部分の結合手段とは、基準プレートが、ベース部材から後ろ側で後方に延びるように記録装置に取り付けられるように互いに適合されて構成されている。基準部材は、実施形態では口腔内プレートと呼ばれることもある。以下の説明によって認識されるように、基準部材は、歯科医療または審美歯科学において使用される場合は口腔内に配置されることを意図したものである。しかしながら、例えば歯科法医学、考古学または古生物学等の他の用途では、基準部材は口腔内に配置されるよりもむしろ、単に下顎に取り付けられるだけに過ぎない。基準部材の主な機能は、生死に関係なく、個体の咬合平面を基準とすることにあり、したがって基準部材は主に、下顎の歯の上部に固定的に配置して使用することを意図したものである。基準プレートは、複数の実施形態では、その表面に貫通開口を有していてよく、より具体的には、開口は、基準プレートを歯に配置することを意図した領域に設けられている。これにより、例えば基準プレートを歯に固定して、基準プレートと歯との間のギャップを回避しひいては基準プレートを可能な限り咀嚼面の近くに配置するために使用される医療用シリコンのような装具が可能になり、その結果、可能な限り近くで咬合平面を基準とすることができる。
【0018】
さらに別の態様では、顔の顔面トポグラフィックパラメータを記録する方法を開示する。当該方法は、下顎の歯の上部において基準プレートを下顎に取り付けるステップと、下顎の歯に基準プレートを固定し、これにより基準プレートの主平面を、下顎の咬合平面と少なくとも実質的に一致させるステップとを含む。歯科医療または審美歯科学において、これは暗に、基準プレートを口腔内に配置することも意味することは容易に理解されるであろう。例えば医療グレードシリコーンのような接着剤が、口腔内プレートを歯に固定するために使用されてもよい。次いで、上述したような任意の形式の記録装置が、基準プレートに結合される。歯科医療および審美歯科学では、記録装置が口腔外に配置されることが理解される。咬合平面インジケータは、基準プレートの主平面に対して平行であり、またはより具体的な実施形態では、基準プレートの主平面と一致する平面内に延在しており、したがって、咬合平面を口腔外において良好に可視化して示している。この方法はさらに、下顎頭インジケータポインタを基準プレートの両側の各矢状面内で変位させるステップと、各下顎頭インジケータポインタを、矢状面内で基準プレートの両側の下顎頭と一致するように配置し、これにより基準プレートの両側において下顎の下顎頭の位置をマーキングするステップとを含む。このようにして、咬合平面インジケータの両側の下顎頭インジケータポインタを結ぶ線を記録し、この軸線を下顎の統合軸線または下顎軸線とする。下顎頭インジケータポインタが要求された位置に位置すると、ベース部材に対する下顎頭インジケータポインタの変位能力を、複数の実施形態においてロックすることができる。横方向部分の両側または基準プレートの両側の耳珠インジケータはそれぞれ、各耳珠インジケータ旋回軸線を中心として旋回する。特に、耳珠インジケータ旋回軸線は、下顎軸線と一致していてよい。両外側において、耳珠インジケータポインタは下顎頭と各耳珠とを結ぶ線上に配置されている。基準装置を適宜調整する場合、当該方法は、咬合平面から下顎頭インジケータポインタまでの、咬合平面に対して垂直な距離と、咬合平面に対して平行な、下顎頭インジケータポインタの前後位置とを表す少なくとも1つのパラメータを読み取るステップと、さらに、咬合平面から耳珠インジケータポインタまでの、咬合平面に対して垂直な距離と、咬合平面に対して平行な、耳珠インジケータポインタの前後位置を表す少なくとも1つのパラメータを読み取るステップとを含む。前後位置は、規定された任意の基準位置またはランドマークから、例えばベース部材の後ろ側等から読み取られてよいことは容易に理解されるであろう。
【0019】
記録装置は、複数の実施形態において2つの下顎頭インジケータバーを有していてよく、記録装置の横方向部分の両外側において、各1つの下顎頭インジケータバーが、横方向部分に旋回可能に結合されておりかつ旋回軸線を中心として旋回可能であり、下顎頭インジケータバーは、矢状面内で旋回可能である。1つの下顎頭インジケータポインタは、各1つの下顎頭インジケータバーに下顎頭インジケータバーの各旋回軸線から離れて結合されており、下顎頭インジケータポインタと各旋回軸線との間の距離は可変であり、これにより、前記距離の調節が可能である。したがって、記録装置が基準プレートに結合されると、基準プレートの両外側に1つの下顎頭インジケータバーが設けられている。この場合、本明細書に開示する方法はさらに、下顎頭インジケータバーを、それらの各旋回軸線を中心として旋回させ、これにより記録装置の両側において、下顎頭インジケータバーと咬合平面インジケータとの間の傾斜角度を変化させるステップと、下顎頭インジケータポインタを各下顎頭インジケータバーに沿って変位させ、これにより横方向前側部分の両側において、下顎頭インジケータポインタと下顎頭インジケータバーの各旋回軸線との間の距離を変化させるステップを含んでいてよい。複数の実施形態では、各下顎頭インジケータバーが各下顎頭に重なるように配置されると、横方向部分の両側の各旋回軸線を中心とした下顎頭インジケータバーの旋回自由度をロックすることができ、これにより、各下顎頭インジケータバーと咬合平面インジケータとの間の傾斜角度を固定し、かつ下顎頭インジケータポインタが各下顎頭と一致するように配置されると、さらに横方向部分の両側の下顎頭インジケータポインタと下顎頭インジケータバーの各旋回軸線との間の移行自由度をロックすることができ、これにより、下顎頭インジケータポインタと各旋回軸線との間の距離を固定する。
【0020】
複数の実施形態では、2つの下顎頭インジケータバーの旋回軸線は一致していることが理解される。
【0021】
当該方法の複数の実施形態は、下顎頭インジケータポインタを横方向に、すなわち各矢状面に対して垂直に変位させるステップも含んでよい。より具体的な実施形態では、これに、下顎頭インジケータバーを各旋回軸線に沿って変位させるステップを含んでもよい。この場合、当該方法はさらに、下顎頭インジケータポインタの互いに対する横方向位置ひいてはこれもまた下顎頭間の横方向距離の指標をもたらす2つの下顎頭インジケータバー間の距離を表すパラメータを読み取るステップを含む。
【0022】
記録装置は、複数の実施形態では、各パラメータの読取りおよび転送を容易にするために測定テンプレートを備えていてよい。
【0023】
当該方法はさらに、読取り値を遠隔装置に転送するステップを含んでいてよく、特にこれにより、顔面トポグラフィのランドマークを離れた場所に、特に歯科修復処置の機能的かつ審美的な効果を評価するために転送することができる。
【0024】
上に開示した方法は、治療または診断ステップを含むものではなく、単に、歯科医師が診断を実施し、その後治療ステップを計画することができるようにする特定のトポグラフィックランドマークを記録するために使用されるステップだけを含むに過ぎないことに留意されたい。当該方法の特定の使用は、歯科修復処置の審美的な結果の改良を目的とする。さらに、上で概説したように、当該方法は、生存中の個体において有用に実施されるだけでなく、例えば法医学または考古学または古生物学において、死亡した個体にも有用に適用され得ることに留意されたい。この限りでは、当該方法は、あらゆる本物のまたは人工的な頭蓋にも有用に適用することができる。
【0025】
さらに別の態様では、顔面トポグラフィックパラメータを記録するためのシステムは、上述した任意の種類の記録装置と、記録装置を懸吊可能なスタンドとを備えている。要するに、スタンドおよび記録装置は、記録装置がベース部材においてスタンドに取付け可能でありかつスタンドから自由に片持ち式に突出するように設けられている、という状態がもたらされてよい。これにより、顔面トポグラフィックパラメータを記録した後に記録装置はスタンドから懸吊されているため、記録装置の誤調整や調整の喪失を回避することができる。
【0026】
上で開示した特徴および実施形態は互いに組み合わせられてよいことが理解される。さらに、本開示の範囲内で別の実施形態が考えられ、特許請求される主題は当業者にとって明白かつ明らかであることも認識されるであろう。
【0027】
以下、本開示の主題を、添付の図面に示す選択された例示的な実施形態を用いて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】上述した装置の1つの例示的な実施形態を示す図である。
【
図3】記録装置の他方の側を異なる視点で
図2と同様に詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面は大幅に概略的なものであり、理解や描写を容易にするために、説明目的で必要とされない細部は省略されている場合があることが理解される。さらに、図面は選択された例示的な実施形態のみを示すものであり、図示されていない実施形態も依然として、本明細書において開示されかつ/または特許請求された主題の範囲内にあり得ることが理解される。
【0030】
本開示の教示を実施する例示的な形態
図1には、顔面トポグラフィックパラメータを記録するためのシステムの1つの例示的な実施形態が示されており、このシステムは、本明細書でさらに説明する記録装置と、この記録装置に結合された基準プレート20とを含む。記録装置は、横方向部分10を有するベース部材1を備えている。ベース部材はさらに、前側11と後ろ側12とを有している。指定通りに使用した場合、頭部または頭蓋を基準として前側が前方に位置し、後ろ側が後方に位置する。横方向部分10はその中央部分13に、基準部材または基準プレートをベース部材の後側に結合するための結合手段を有している。横方向部分の中央領域13は、装置の取扱いを容易にするためにアーチ状になっており、前方に突出している。結合手段は、基準部材が後方に延在した状態でベース部材に対する基準部材20の回動不能な結合を達成するように設けられている。したがって、基準部材がベース部材に結合されているとき、例えば基準プレート20の主平面は、ベース部材の向きに対して角度が固定され、明確に規定された関係を有している。1つの例として、横方向部分は、基準プレートの主平面に対して平行に延在していてよく、より具体的な実施形態では、例示的な実施形態に示されるように、基準プレートの主平面内に延在していてよい。基準プレートは、下顎の歯の上部に配置されることを想定している。この場合、基準プレートの主平面は、下顎の咬合平面と少なくとも実質的に同一である。したがって、横方向部分は、咬合平面に対して少なくとも実質的に平行に延在しており、より具体的な実施形態では、咬合平面内に延在している。本システムが、例えば生存中の個体に適用される場合には、基準プレート20は口腔内に配置される一方で、この基準プレート20が結合された記録装置は口腔外に配置されることが理解される。ベース部材はさらに、横方向部分から後方に片持ち式に突出している2つの咬合平面インジケータ14a,14bを有している。咬合平面インジケータは、横方向部分に回動不能に取り付けられている。さらに、咬合平面インジケータは1つの共通の平面内に延在している。咬合平面インジケータはさらに、基準プレートがベース部材に結合されたときに、咬合平面インジケータが基準プレートの主平面に対して平行に延在するように、または咬合平面インジケータの共通の平面が基準プレート20の主平面に対して少なくとも実質的に平行になるように、または複数の実施形態では、基準プレート20の主平面に少なくとも実質的に一致するように配置されている。基準プレートの主平面は、このプレートの主領域が延在する平面であることを、当業者は容易に認識するであろう。この限りにおいて、プレートは一般に面積および厚さを有するものであると定義されており、厚さは面積の寸法よりも小さいということに留意されたい。したがって、基準プレートが指定通りに配置された場合、咬合平面インジケータは、咬合平面に関する口腔外表示を提供する。下顎頭インジケータバー18a,18bは、ベース部材に結合されており、各旋回軸線180a,180bを中心として旋回可能である。特定の例示的な実施形態では、旋回軸線180aおよび180bは一致しており、これにより、下顎頭インジケータバー18a,18bは、1つの共通の旋回軸線を中心として旋回可能である。さらに、各下顎頭インジケータバーは、符号5で示す横方向に移行するように変位可能であり、これにより、横方向の下顎インジケータバー間の間隔は可変であり、前記間隔を調整することができるようになっている。図示された例示的な実施形態では、各下顎頭インジケータバーは、1つの共通の旋回軸線を中心として旋回可能であり、この旋回軸線に沿って変位可能であることが認められるであろう。ベース部材1または横方向部分10の各横方向側部において、各1つの軸181a,181bが、ベース部材から横方向に片持ち式に突出している。軸181aおよび181bは同軸である。下顎頭インジケータバーは、これらの軸に旋回可能に取り付けられており、さらに、これらの軸の軸線方向に沿って変位可能である。下顎頭インジケータバーの変位および回動を選択的にロックするために、ねじ183a,183bが設けられている。図示しない実施形態では、目盛りが軸上に設けられており、横方向における下顎頭インジケータバー間の距離の表示を読み取ることを可能にする。下顎頭インジケータバーには下顎頭インジケータポインタ16a,16bが取り付けられており、各下顎頭インジケータバーに沿って直線的に変位可能である。下顎頭インジケータバーに沿った下顎頭インジケータポインタの変位を選択的にロックするために、ねじが設けられている。一般に、図示の例示的な実施形態が所定の自由度をロックするためのねじを有している場所には、別の適切なロック機構が適用されてもよいことに留意されたい。さらに装置の両側には、耳珠インジケータ17a,17bが各下顎頭インジケータポインタに旋回可能に結合されている。各耳珠インジケータは、耳珠インジケータ旋回軸線170a,170bを中心として旋回可能である。特に、耳珠インジケータ旋回軸線170a,170bは、各下顎頭インジケータポインタ16a,16bの軸線と同軸である。これは、以下で記録装置の例示的な使用について説明する際に、より詳しく述べることにする。耳珠インジケータは、図示の実施形態では、下顎頭インジケータを部分的に取り囲む付勢されたばねクリップ175a,175bによって、下顎頭インジケータに旋回可能かつ軸線方向に変位可能に結合されている。付勢力は、外力が加えられることなく、付勢クリップが下顎頭インジケータに摩擦式に係止するように選択されており、摩擦係止力は、耳珠インジケータの重量による動きを回避するためには十分である。記録装置の片側に関する下顎頭インジケータおよび耳珠インジケータの配置は、
図2および
図3に、より詳細に示されている。
【0031】
図2には、内側から外側に向かう目視方向において、下顎頭インジケータポインタ16bと、耳珠インジケータ17bと、下顎頭インジケータバー18bの一部とを含む細部が示されている。
図3には、外側から内側に向かう目視方向で、記憶装置の他方の側における同様の細部が示されている。看取できるように、下顎頭インジケータポインタ16bと、耳珠インジケータポインタ171bを備える耳珠インジケータ17bとは共に、下顎頭インジケータバー18bの長手方向延在部に沿って変位可能であるように、下顎頭インジケータバー18bに取り付けられている。前記並進自由度は、ねじ184bによって選択的にロック可能かつロック解除可能である。
図2には、ポインタ16b,171bの先端部の図が示されている。下顎頭インジケータポインタ16bの先端部は、ブシュ内に引込み可能に収容されており、ねじ185bによってブシュの内部に係止することができる。記録装置の他方の側における、
図2と同様の細部を示す
図3を参照すると、耳珠インジケータ17aが、付勢されたばねクリップ175aによって下顎頭インジケータポインタ16aのブシュに結合されており、下顎頭インジケータポインタの軸線170aを中心として旋回可能である様子が見られる。さらに、耳珠インジケータ17aが、角度目盛り板172aを取り囲んでヨーク状に延在している様子が見られる。角度目盛り板172aに設けられた角度目盛りは、下顎頭インジケータバー18aと耳珠インジケータ17aのレバーとの間の傾斜角度を直接読み取る可能性を提供する。
【0032】
記録装置はさらに、任意には、前鼻棘インジケータ30を有している。前鼻棘インジケータ30は、ベース部材1の横方向部分10に取付け可能な前鼻棘インジケータロッド32を備えている。前鼻棘インジケータロッドは、咬合平面インジケータの共通の平面に対して少なくとも実質的に垂直に延在する、横方向部分の貫通開口内に取り付けられている。ロッド32は、ロッド32の軸線に沿ってベース部材に対して変位可能である。前鼻棘インジケータロッド32は、ベース部材1に螺入されている。前鼻棘ポインタ31は、前鼻棘インジケータロッド32に取付け可能であり、前鼻棘インジケータロッドに沿って変位可能である。前鼻棘ポインタ31は、下顎頭インジケータへの耳珠インジケータの結合に関連して説明したのと同様に、ばねクリップによって前鼻棘インジケータロッドに結合されており、外力を加えることなく摩擦式に係止されるが、オペレータによって手動でロッド32に沿って変位され、かつロッド32を中心として旋回されてもよい。前鼻棘インジケータ兼ロッドにより、前鼻棘ポインタと、咬合平面インジケータの共通の平面ひいては咬合平面との間の距離を表すパラメータを記録することができる。
【0033】
別の態様では、記録装置は、任意には、ベース部材1の横方向部分10に取付け可能な美的パラメータ記録ロッド41を有している。美的パラメータ記録ロッド41は、横方向部分10に設けられた貫通開口を貫通して取り付けられている。好ましくは、咬合平面インジケータの共通の平面の両側に、少なくとも1つのインジケータ装置42,43,44,45が美的パラメータ記録ロッドに取外し可能に取り付けられており、かつ美的パラメータ記録ロッドに沿って変位可能である。インジケータ装置42,43,44,45はそれぞれ、上述したように、付勢されたばねクリップによってロッド41に結合されている。
【0034】
顔の顔面トポグラフィックパラメータを記録するために、まず基準プレート20が、下顎の歯の上部に取り付けられ、下顎の歯に固定される。前記固定は特に、慣用の方法で、例えば基準プレート20と下顎の歯の上部との間に配置されたシリコンによって達成することができる。この場合、基準プレートの主平面は、咬合平面と少なくとも実質的に一致している。上述したように、基準プレートは、歯と基準プレートとの間の空間から余剰のシリコンが漏出することを可能にする複数の開口を有していてよい。次いで、上述した各実施形態のいずれかにより説明する記録装置は、基準プレートの前側において基準プレートに取り付けられる。記録装置のベース部材1に設けられた各結合手段と基準プレート20との機能的相互作用により、咬合平面インジケータ14aおよび14bは、咬合平面または基準プレートの主平面に対してそれぞれ平行に延在することが保証されている。各実施形態において、咬合平面インジケータ14aおよび14bは、少なくとも実質的に咬合平面内に延在していてよい。本方法が、生存中の個体または軟組織を含む頭蓋に対して実施される場合、基準プレートは口腔内に配置され、基準プレートが存在すると、その可視性は大幅に制限されることが認識されるであろう。しかしながら、記録装置は口腔外に位置しており、したがって咬合平面インジケータが、咬合平面に関する口腔外の基準を提供する。さらに、上述の機能を保証するために、記録装置の横方向部分と基準プレートとの間の結合部は回動不能でなければならないことが認識されるであろう。係止ねじ183a,183b,184a,184bが係止解除した状態で、下顎頭インジケータポインタ16aおよび16bは、矢状面内の基準プレートの両側の下顎頭と一致するように配置され、これにより、基準プレートの両側の下顎頭の位置をマーキングする。
図1および
図2に例示した装置では、各下顎頭ポインタの位置は、それぞれ係止ねじ183aおよび184aならびに183bおよび184bにおいて下顎頭と一致するように係止されており、これにより、ベース部材に対する下顎頭インジケータポインタの変位能力をロックしている。咬合平面インジケータ14aおよび14bの共通の平面からの下顎頭の距離を読み取り、記録することができる。さらに、軸181aおよび181bに対して平行な下顎頭インジケータバー間の横方向距離を読み取る際に、下顎頭間の横方向距離を表すパラメータを得てもよい。それらの読取り値も記録することができる。次いで、耳珠インジケータ17aおよび17bが、それらの各耳珠インジケータ旋回軸線170aおよび170bを中心として旋回され、耳珠インジケータポインタ171aおよび171bが、頭蓋の両側の下顎頭と各耳珠とを結ぶ線上に位置決めされる。ばねクリップ175a,175bの付勢力は、下顎頭インジケータに設けられた耳珠インジケータを非操作時にロックするためには十分である。次いで、各咬合平面インジケータの共通の平面または咬合平面からの、頭蓋の両側の耳珠の距離をそれぞれ表す値が読み取られてよい。頭蓋の両側の耳珠が咬合平面に対して対称であるか否かが重要な場合がある。通常、頭蓋の両側の2つの下顎頭により規定される下顎の旋回軸線は、カンペル平面に対して少なくとも実質的に平行であることが望ましい。平行からの偏差は、医療専門家または歯科技工士によって病理学的な状態を診断するために利用することができる。さらに、結果として非対称性が生じていると、個体の審美的外観に悪影響をもたらす場合がある。このような状態の悪影響は、例えば歯科修復物を製作する間に矯正することができる。考古学では、このような所見が死亡した個体または古代の個体群の健康状態に関する示唆を与える場合がある。法医学において、このような所見は、例えば咬痕の比較において重要であり得る。記録された読取り値は、遠隔配置された記録装置に転送することができ、これにより、記録された顔面トポグラフィのランドマークを離れた場所に転送することができる。各実施形態において、遠隔配置される装置は、歯科技工室内に配置することができ、これにより、記録装置を送る必要なしにひいては送付中に様々なポインタの偶発的な調整が生じるリスクなしに歯科技工士が記録された状態を再現し、歯科修復物の製作結果を改良することが可能になる。
【0035】
さらに、前鼻棘インジケータロッド32をベース部材の各開口に挿入することができ、前鼻棘ポインタ31が、その先端でもって前鼻棘と一致するように、または前鼻棘の方を指し示すように配置することができる。カンペル平面は、耳珠と前鼻棘との間に存在する距離として定義されている。この場合、記録装置は、耳珠インジケータポインタ171a,171bの先端部と前鼻棘ポインタ31の先端部との間において、記録装置が取り付けられる頭蓋のカンペル平面を示唆するように設定されている。他方では、咬合平面インジケータ14a,14bは、咬合平面の位置および/または向きの示唆を提供する。これにより、咬合平面とカンペル平面とが互いに平行であるか否かを容易に判定することができ、平行でない場合には、ミスアライメントの大きさおよび向きを評価することができる。また、カンペル平面と咬合平面との間の距離も記録装置に記録される。このようなデータは、一方では歯科補綴学の審美的かつ機能的な結果を改良するために有用であり得る。他方では、このような測定は、考古学では死亡した個体または個体群に関する有用なデータを提供することがあり、法医学ではより一層有用であると見なされることがある。
【0036】
美的パラメータ記録ロッド41は、ベース部材の各開口に挿入されてベース部材に取り付けられてよい。次いで、インジケータ装置42および43が美的パラメータ記録ロッド41に取り付けられてよい。下側のインジケータ装置43は顎に配置することができるのに対し、例えば上側のインジケータ装置45は、上切歯の下縁部の下に配置することができる。インジケータ装置42および44は、重要な別のランドマークを示すように設定することができる。これらすべての記録ステップが実施されることで、咀嚼器官に関する限り、顔面トポグラフィックパラメータの総合的な写真が記録される。例えば、前鼻棘と顎の底との相互間の距離および咬合平面からの距離が記録される。また、咬合平面に対する下顎頭および耳珠の位置も記録される。機能性および審美性に関する歯科補綴学の結果の改良に加え、このような知識は、前述のように非限定的な例として、頭蓋から顔貌を再構成することの改良といった別の分野において有用であると判明する場合がある。
【0037】
まとめると、本明細書に記載した記録装置は、以下の列挙は包括的ではないとはいえ、機能に関しても審美性に関しても歯科補綴学の結果を改良するために、しかしまた、例えば咬痕を個体に割り当てるためにも、生存中の個体に適用されることにおいて有用であると判明した。この記録装置は、法医学において死亡した個体に適用される場合にも有用であり得る。この記録装置は、考古学において死亡した個体または死亡した個体群の個体のサンプルに適用した場合により一層有用であり得、これにより、例えば死亡した個体の生存時の外見の印象または古代の個体または個体群の健康状態が得られる。しかしながら、本明細書に開示された方法によって達成されるランドマークの記録は、治療ステップはもちろん診断ステップ自体を含むものではなく、したがって、受け取ったデータは、医療専門家による診断の基礎および可能な後続の治療ステップを提供可能であるだけに過ぎないことに留意されたい。
【0038】
本開示の主題を例示的な実施形態を用いて説明してきたが、これらは決して特許請求される主題の範囲を限定することを意図したものではないことが理解される。特許請求の範囲は、本明細書に明示的に図示または開示されていない実施形態をもカバーしており、本開示の教示を実施する例示的な形態において開示されたものから逸脱している実施形態も、依然として特許請求の範囲によりカバーされることになることが認識されるであろう。
【国際調査報告】