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特表2022-545737血管疾患を処置する組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】血管疾患を処置する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20221021BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20221021BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221021BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221021BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20221021BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20221021BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 35/545 20150101ALN20221021BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/02
C12N5/10
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P9/14
A61P9/00
A61K35/44
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/02
A61K35/545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513534
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 US2020048076
(87)【国際公開番号】W WO2021041591
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/892,724
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522074523
【氏名又は名称】アステラス インスティテュート フォー リジェネラティブ メディシン
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ミロツォウ マリア
(72)【発明者】
【氏名】プラセイン ヌタン
(72)【発明者】
【氏名】シン アムリタ
(72)【発明者】
【氏名】ランザ ロバート
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BA25
4B065BB19
4B065CA44
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB15
4C076DD23
4C076DD67
4C076FF14
4C087BB64
4C087MA17
4C087MA21
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA45
(57)【要約】
本発明は、概して、新規の中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)および前記meso-VPCを生産する方法に関する。本発明はまた、対象にmeso-VPCを投与することによって重症虚血肢などの血管疾患を処置する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞から中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の集団を生産する方法であって、
多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質4(BMP4)およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子からなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む培地中で、非接着条件下または低接着条件下で培養する工程であって、それによって中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の集団を生産する、工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
アクチビンA、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)および骨形成タンパク質4(BMP4)からなる群より選択される1つまたは複数の中胚葉誘導性増殖因子を含む培地中で多能性幹細胞を培養することによって、中胚葉細胞が多能性幹細胞から誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
meso-VPCがバスキュロノイド(vasculonoid)として生産される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
バスキュロノイド中のmeso-VPCを単一細胞に解離させる工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
中胚葉誘導性増殖因子が、アクチビンA、VEGF165、FGF-2およびBMP4を含む、請求項2~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
アクチビンAが約5~15ng/mLの濃度で使用される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
VEGF165が約5~25ng/mLの濃度で使用される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
FGF-2が約5~25ng/mLの濃度で使用される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
BMP4が約5~50ng/mLの濃度で使用される、請求項5記載の方法。
【請求項10】
約24時間の培養後に培養培地からアクチビンAを除去する工程をさらに含む、請求項2~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
多能性幹細胞が細胞外マトリックス表面上で培養される、請求項2~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
細胞外マトリックス表面がMatrigelコート表面である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
多能性幹細胞が約3日~約5日間培養される、請求項2~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子がSB431542である、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数の因子が、VEGF165、FGF-2、BMP4およびSB431542を含む、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
1つまたは複数の因子がフォルスコリンをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
フォルスコリンが約2~10μMの濃度で使用される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
VEGF165が約10~50ng/mLの濃度で使用される、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
FGF-2が約10~50ng/mLの濃度で使用される、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
BMP4が約10~50ng/mLの濃度で使用される、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
SB431542が約5~20μMの濃度で使用される、請求項14~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
中胚葉細胞を培養する工程が約3日~約7日間行われる、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
中胚葉細胞を培養する工程が、5%CO2および20%O2の正常酸素濃度条件下で行われる、請求項1~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
多能性幹細胞の培養が、5%CO2および20%O2の正常酸素濃度条件下で行われる、請求項2~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
非接着条件または低接着条件が超低付着表面上である、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
多能性幹細胞から中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の集団を生産する方法であって、
(a)血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)および骨形成タンパク質4(BMP4)からなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む培地中、細胞外マトリックス表面上で、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を培養する工程;および
(b)血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質4(BMP4)およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子からなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む培地中、細胞外マトリックス表面上で、工程(a)において生産された細胞を培養する工程であって、それによって中胚葉由来血管前駆細胞の集団を生産する、工程
を含む、前記方法。
【請求項27】
アクチビンA、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)および骨形成タンパク質4(BMP4)からなる群より選択される1つまたは複数の中胚葉誘導性増殖因子を含む培地中で多能性幹細胞を培養することによって、中胚葉細胞が多能性幹細胞から誘導される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
meso-VPCの集団を単一細胞に解離させる工程をさらに含む、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
中胚葉誘導性増殖因子が、アクチビンA、VEGF165、FGF-2およびBMP4を含む、請求項27または28記載の方法。
【請求項30】
アクチビンAが約5~15ng/mLの濃度で使用される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
VEGF165が約5~25ng/mLの濃度で使用される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
FGF-2が約5~25ng/mLの濃度で使用される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
BMP4が約5~50ng/mLの濃度で使用される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
約24時間の培養後に培養培地からアクチビンAを除去する工程をさらに含む、請求項29~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
工程(a)における細胞外マトリックス表面がコラーゲンIVコート表面である、請求項26~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
多能性幹細胞が約3日~約5日間培養される、請求項27~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
工程(a)における1つまたは複数の因子が、VEGF165、FGF-2およびBMP4を含む、請求項26~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子がSB431542である、請求項26~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
工程(b)における1つまたは複数の因子が、VEGF165、FGF-2、BMP4およびSB431542を含む、請求項26~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
工程(a)における1つまたは複数の因子がフォルスコリンをさらに含む、請求項26~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
工程(b)における1つまたは複数の因子がフォルスコリンをさらに含む、請求項26~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
フォルスコリンが約2~10μMの濃度で使用される、請求項40または41記載の方法。
【請求項43】
VEGF165が約10~50ng/mLの濃度で使用される、請求項37~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
FGF-2が約10~50ng/mLの濃度で使用される、請求項37~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
BMP4が約10~50ng/mLの濃度で使用される、請求項37~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
SB431542が約5~20μMの濃度で使用される、請求項38または39記載の方法。
【請求項47】
工程(a)および工程(b)における細胞外マトリックス表面がコラーゲンIVコート表面である、請求項26~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
工程(a)における培養が約1日間行われる、請求項26~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
工程(b)における培養が約4日~約7日間行われる、請求項26~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
工程(a)における培養が5%CO2および20%O2の正常酸素濃度条件下で行われる、請求項26~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
工程(b)における培養が5%CO2および5%O2の低酸素濃度条件下で行われる、請求項26~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
多能性幹細胞の培養が、5%CO2および20%O2の正常酸素濃度条件下で行われる、請求項27~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
多能性幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項1~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
多能性幹細胞がヒト人工多能性幹細胞である、請求項1~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
meso-VPCの集団が、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbからなる群より選択される細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つを発現する、請求項1~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
meso-VPCの集団が、細胞表面マーカー(a)CD146、CD31/PECAM1およびCD309/KDR、または(b)CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD146、ならびに(i)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD43もしくはPDGFRbのうちの少なくとも1つ、(ii)CD34、CD184/CXCR4およびPDGFRb、(iii)CD184/CXCR4、(iv)PDGFRb、(v)CD144およびCD184/CXCR4、(vi)CD184/CXCR4およびCD43、もしくは(vii)CC184/CXCFR4を発現する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
meso-VPCの集団は、(a)CXCR7、CD45およびNG2からなる群より選択される細胞表面マーカーのうちの1つまたは複数、(b)CXCR7、CD45およびNG2、または(c)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CXCR7、CD43、CD45、PDGFRbおよびNG2からなる群より選択される細胞表面マーカーのうちの1つまたは複数の限定的な検出を示すか、または検出を示さない、請求項1~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
meso-VPCの集団が、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-483-3p、miR214、miR335-3pおよびmiR-199a-3pから選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーを発現する、請求項1~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
meso-VPCの集団が、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3p、hsa-miR-133a-5p、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pから選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さない、請求項1~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
meso-VPCの集団が、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを発現する、請求項1~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
meso-VPCの集団が、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーに関して陽性である少なくとも1つのmeso-VPCを含む、請求項1~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
miRNAマーカーがmir483-5pである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
meso-VPCの集団が、mir367、mir302a、mir302b、mir302c、mirLet7-e、mir223、mir99a、mir142-3pおよびmir133aからなる群より選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すかまたは発現を示さない、少なくとも1つのmeso-VPCを含む、請求項1~62のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
meso-VPCの分化によって血管内皮細胞を生産する工程をさらに含む、請求項1~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
分化がフィブロネクチンコート表面上で行われる、請求項64記載の方法。
【請求項66】
請求項1~63のいずれか一項記載の方法によって生産されるmeso-VPCの集団を含む、組成物。
【請求項67】
多能性幹細胞由来の中胚葉細胞のインビトロ分化によって生産される中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の集団を含む、組成物であって、meso-VPCの集団が、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbからなる群より選択される少なくとも1つの細胞表面マーカーを発現する、前記組成物。
【請求項68】
meso-VPCの集団が、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbからなる群より選択される少なくとも2つの細胞表面マーカーを発現する、請求項67記載の組成物。
【請求項69】
meso-VPCの集団が、細胞表面マーカーCD146、CD31/PECAM1およびCD309/KDRを発現する、請求項67~68のいずれか一項記載の組成物。
【請求項70】
meso-VPCの集団が、細胞表面マーカーCD31/PECAM1、CD309/KDR、CD146、ならびに(i)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD43またはPDGFRbのうちの少なくとも1つ、(ii)CD34、CD184/CXCR4およびPDGFRb、(iii)CD184/CXCR4、(iv)PDGFRb、(v)CD144およびCD184/CXCR4、(vi)CD184/CXCR4およびCD43、または(vii)CC184/CXCFR4を発現する、請求項67~69のいずれか一項記載の組成物。
【請求項71】
meso-VPCの集団は、(a)CXCR7、CD45およびNG2からなる群より選択される1つまたは複数の細胞表面マーカー、(b)CXCR7、CD45およびNG2、または(c)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CXCR7、CD43、CD45、PDGFRbおよびNG2からなる群より選択される1つまたは複数の細胞表面マーカーの限定的な検出を示すか、または検出を示さない、請求項67~70のいずれか一項記載の組成物。
【請求項72】
meso-VPCの集団が、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-483-3p、miR214、miR335-3pおよびmiR-199a-3pから選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーを発現する、請求項67~71のいずれか一項記載の組成物。
【請求項73】
meso-VPCの集団が、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3p、hsa-miR-133a-5p、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pから選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さない、請求項67~72のいずれか一項記載の組成物。
【請求項74】
meso-VPCの集団が、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを発現する、請求項67~73のいずれか一項記載の組成物。
【請求項75】
meso-VPCの集団がmeso-VPCのバスキュロノイドを含む、請求項67~74のいずれか一項記載の組成物。
【請求項76】
meso-VPCの集団がmeso-VPCの単一細胞を含む、請求項67~74のいずれか一項記載の組成物。
【請求項77】
多能性幹細胞由来の中胚葉細胞のインビトロ分化によって生産される、meso-VPCであって、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーに関して陽性である、前記meso-VPC。
【請求項78】
miRNAマーカーmir483-5pに関して陽性である、請求項77記載のmeso-VPC。
【請求項79】
mir367、mir302a、mir302b、mir302c、mirLet7-e、mir223、mir99a、mir142-3pおよびmir133aからなる群より選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーに関して陰性である、請求項77または78記載のmeso-VPC。
【請求項80】
多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、請求項66~79のいずれか一項記載の組成物またはmeso-VPC。
【請求項81】
多能性幹細胞がヒト胚性幹細胞(hESC)である、請求項80記載の組成物またはmeso-VPC。
【請求項82】
多能性幹細胞がヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)である、請求項80記載の組成物またはmeso-VPC。
【請求項83】
多能性幹細胞をまず中胚葉細胞に分化させ、次にそれをmeso-VPCに分化させる、請求項66~82のいずれか一項記載の組成物またはmeso-VPC。
【請求項84】
請求項66~83のいずれか一項記載の組成物またはmeso-VPCを含む、薬学的組成物。
【請求項85】
対象における血管疾患または血管障害を処置する方法であって、
請求項66~83のいずれか一項記載の組成物もしくは中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)または請求項83記載の薬学的組成物の有効量を対象に投与する工程であって、それによって対象における血管疾患または血管障害を処置する、工程
を含む、前記方法。
【請求項86】
血管疾患または血管障害が、アテローム性動脈硬化、末梢動脈疾患(PAD)、頸動脈疾患、静脈疾患、凝血塊、大動脈瘤、線維筋性異形成、リンパ浮腫および血管傷害からなる群より選択される、請求項85記載の方法。
【請求項87】
末梢動脈疾患が、重症虚血肢、腸虚血症候群、腎動脈疾患、膝窩動脈捕捉症候群、レイノー現象、バージャー病からなる群より選択される、請求項86記載の方法。
【請求項88】
末梢動脈疾患が重症虚血肢である、請求項87記載の方法。
【請求項89】
組成物、meso-VPCまたは薬学的組成物が、筋肉内または全身性に投与される、請求項85~88のいずれか一項記載の方法。
【請求項90】
組成物、meso-VPCまたは薬学的組成物の投与が対象における血流を増加させる、請求項85~89のいずれか一項記載の方法。
【請求項91】
組成物、meso-VPCまたは薬学的組成物の投与が対象における血管新生および/または血管形成を促進する、請求項85~90のいずれか一項記載の方法。
【請求項92】
組成物、meso-VPCまたは薬学的組成物の投与が対象における虚血重症度を低減する、請求項85~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
組成物、meso-VPCまたは薬学的組成物の投与が対象における肢の壊死領域を低減する、請求項85~92のいずれか一項記載の方法。
【請求項94】
約1×104~約1×1013個のmeso-VPCが対象に投与される、請求項85~93のいずれか一項記載の方法。
【請求項95】
meso-VPCが薬学的組成物として投与される、請求項85~94のいずれか一項記載の方法。
【請求項96】
薬学的組成物が、
(a)溶液を生理的pHに維持する緩衝剤、
(b)少なくとも5%(w/v)グルコース、および
(c)溶液を生理学的浸透圧に維持する浸透圧活性剤
を含む、請求項95記載の方法。
【請求項97】
グルコースがD-グルコース(デキストロース)である、請求項96記載の方法。
【請求項98】
浸透圧活性剤が塩である、請求項96記載の方法。
【請求項99】
塩が塩化ナトリウムである、請求項96記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2019年8月28日に出願された米国仮出願第62/892,724号の恩典を主張し、この米国仮特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)および前記meso-VPCを生産する方法に関する。本発明は、meso-VPCを使って虚血などの血管疾患を処置する方法にも関係する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血管疾患は身体の血管ネットワークを侵す状態である。7800万人を超えるアメリカ人が、最もよくある形態の血管疾患、高血圧症を有する。加えて、末梢動脈疾患(PAD)は、米国では1200万人~1500万人を侵しており、未診断症例の数はこれよりはるかに多い。
【0004】
末梢動脈疾患(PAD)は、心臓から他の器官および組織に血液を運ぶ血管の狭窄または閉塞である。これは主として、アテローム性動脈硬化と呼ばれる動脈における脂肪性プラークの蓄積によって引き起こされる。PADはどの血管でも起こりうるが、上肢よりは下肢によく見られる。
【0005】
虚血は、組織、器官または四肢への動脈血供給の遮断を伴う末梢動脈疾患によって引き起こされる状態であり、これは、処置されなければ、組織死につながりうる。これは、塞栓症、アテローム硬化性動脈の血栓症または外傷によって引き起こされうる。静脈流出障害のような静脈の問題および低血流は、急性動脈虚血を引き起こしうる。下肢における虚血は、下肢痛または活動に伴う痙攣(跛行)、皮膚の色調変化、びらんまたは潰瘍、および下肢の疲労感につながりうる。循環の完全な喪失は壊疽および肢喪失につながりうる。
【0006】
虚血などの血管疾患の処置は限られている。大半の処置方法では侵襲的外科手術を伴うが、既存の状態の進行を防止することに重点を置くものもある。したがって、当技術分野では、虚血などの血管疾患のための改良された処置が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、多能性幹細胞のインビトロ分化によって中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)を生産する新規な方法に関する。本発明は、血管疾患、例えば重症虚血肢を、本発明のmeso-VPCを使って処置する方法を、さらに提供する。
【0008】
したがって一局面において本発明は、多能性幹細胞から中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の集団を生産する方法であって、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質4(BMP4)およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子からなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む培地中で、非接着条件下または低接着条件下で培養する工程であって、それによって中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の集団を生産する、工程を含む、方法を提供する。
【0009】
一態様において、アクチビンA、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)および骨形成タンパク質4(BMP4)からなる群より選択される1つまたは複数の中胚葉誘導性増殖因子を含む培地中で多能性幹細胞を培養することによって、中胚葉細胞は、多能性幹細胞から誘導される。
【0010】
一態様において、meso-VPCはバスキュロノイド(vasculonoid)として生産される。別の一態様において、meso-VPCは単一細胞に解離される。
【0011】
一態様において、中胚葉誘導性増殖因子は、アクチビンA、VEGF165、FGF-2およびBMP4を含む。一態様において、アクチビンAは約5~15ng/mLの濃度で使用される。一態様において、VEGF165は約5~25ng/mLの濃度で使用される。一態様において、FGF-2は約5~25ng/mLの濃度で使用される。一態様において、BMP4は約5~50ng/mLの濃度で使用される。一態様において、本方法は、約24時間の培養後に培養培地からアクチビンAを除去する工程を、さらに含む。
【0012】
一態様において、多能性幹細胞は細胞外マトリックス表面上で培養される。一態様において、細胞外マトリックス表面はMatrigelコート表面である。一態様において、多能性幹細胞は約3日~約5日間培養される。
【0013】
一態様において、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子はSB431542である。別の一態様において、1つまたは複数の因子は、VEGF165、FGF-2、BMP4およびSB431542を含む。一態様において、1つまたは複数の因子はフォルスコリンをさらに含む。一態様において、フォルスコリンは約2~10μMの濃度で使用される。一態様において、VEGF165は約10~50ng/mLの濃度で使用される。一態様において、FGF-2は約10~50ng/mLの濃度で使用される。一態様において、BMP4は約10~50ng/mLの濃度で使用される。一態様において、SB431542は約5~20μMの濃度で使用される。
【0014】
一態様において、中胚葉細胞を培養する工程は約3日~約7日間行われる。
【0015】
一態様において、中胚葉細胞を培養する工程は、5%CO2および20%O2の正常酸素濃度条件下で行われる。
【0016】
一態様において、多能性幹細胞の培養は、5%CO2および20%O2の正常酸素濃度条件下で行われる。
【0017】
一態様において、非接着条件または低接着条件は、超低付着表面上である。
【0018】
一局面において、本発明は、多能性幹細胞から中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の集団を生産する方法であって、(a)血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)および骨形成タンパク質4(BMP4)からなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む培地中、細胞外マトリックス表面上で、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を培養する工程、および(b)血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質4(BMP4)およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子からなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む培地中、細胞外マトリックス表面上で、工程(a)において生産された細胞を培養する工程であって、それによって中胚葉由来血管前駆細胞の集団を生産する、工程を含む、方法を提供する。
【0019】
一態様において、アクチビンA、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)および骨形成タンパク質4(BMP4)からなる群より選択される1つまたは複数の中胚葉誘導性増殖因子を含む培地中で多能性幹細胞を培養することによって、中胚葉細胞は、多能性幹細胞から誘導される。
【0020】
一態様において、本方法は、meso-VPCの集団を単一細胞に解離させる工程をさらに含む。
【0021】
一態様において、中胚葉誘導性増殖因子は、アクチビンA、VEGF165、FGF-2およびBMP4を含む。一態様において、アクチビンAは約5~15ng/mLの濃度で使用される。一態様において、VEGF165は約5~25ng/mLの濃度で使用される。一態様において、FGF-2は約5~25ng/mLの濃度で使用される。一態様において、BMP4は約5~50ng/mLの濃度で使用される。一態様において、本方法は、約24時間の培養後に培養培地からアクチビンAを除去する工程を、さらに含む。
【0022】
一態様において、工程(a)における細胞外マトリックス表面はコラーゲンIVコート表面である。
【0023】
一態様において、多能性幹細胞は約3日~約5日間培養される。
【0024】
一態様において、工程(a)における1つまたは複数の因子は、VEGF165、FGF-2およびBMP4を含む。
【0025】
一態様において、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子はSB431542である。別の一態様において、工程(b)における1つまたは複数の因子は、VEGF165、FGF-2、BMP4およびSB431542を含む。
【0026】
一態様において、工程(a)における1つまたは複数の因子はフォルスコリンをさらに含む。
【0027】
一態様において、工程(b)における1つまたは複数の因子はフォルスコリンをさらに含む。
【0028】
一態様において、フォルスコリンは約2~10μMの濃度で使用される。
【0029】
一態様において、VEGF165は約10~50ng/mLの濃度で使用される。
【0030】
一態様において、FGF-2は約10~50ng/mLの濃度で使用される。
【0031】
一態様において、BMP4は約10~50ng/mLの濃度で使用される。
【0032】
一態様において、SB431542は約5~20μMの濃度で使用される。
【0033】
一態様において、工程(a)および工程(b)における細胞外マトリックス表面はコラーゲンIVコート表面である。
【0034】
一態様において、工程(a)における培養は約1日間行われる。
【0035】
一態様において、工程(b)における培養は約4日~約7日間行われる。
【0036】
一態様において、工程(a)における培養は、5%CO2および20%O2の正常酸素濃度条件下で行われる。
【0037】
一態様において、工程(b)における培養は、5%CO2および5%O2の低酸素濃度条件下で行われる。
【0038】
一態様において、多能性幹細胞の培養は、5%CO2および20%O2の正常酸素濃度条件下で行われる。
【0039】
一態様において、多能性幹細胞はヒト胚性幹細胞である。
【0040】
一態様において、多能性幹細胞はヒト人工多能性幹細胞である。
【0041】
一態様において、本発明の方法のいずれかに従って生産されたmeso-VPCの集団は、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbからなる群より選択される細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つを発現する。
【0042】
一態様において、本発明の方法のいずれかに従って生産されたmeso-VPCの集団は、細胞表面マーカー(a)CD146、CD31/PECAM1およびCD309/KDRのうちの少なくとも1つ、または(b)CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD146、ならびに(i)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD43もしくはPDGFRb、(ii)CD34、CD184/CXCR4およびPDGFRb、(iii)CD184/CXCR4、(iv)PDGFRb、(v)CD144およびCD184/CXCR4、(vi)CD184/CXCR4およびCD43、もしくは(vii)CC184/CXCFR4を発現する。
【0043】
一態様において、本発明の方法のいずれかに従って生産されたmeso-VPCの集団は、(a)CXCR7、CD45およびNG2からなる群より選択される細胞表面マーカーのうちの1つまたは複数、(b)CXCR7、CD45およびNG2、または(c)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CXCR7、CD43、CD45、PDGFRbおよびNG2からなる群より選択される細胞表面マーカーのうちの1つまたは複数の限定的な検出を示すか、または検出を示さない。
【0044】
一態様において、本発明の方法のいずれかに従って生産されたmeso-VPCの集団は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-483-3p、miR214、miR335-3pおよびmiR-199a-3pから選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーを発現する。
【0045】
一態様において、本発明の方法のいずれかに従って生産されたmeso-VPCの集団は、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3p、hsa-miR-133a-5p、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pから選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーの発現を示さないか、限られた発現しか示さない。
【0046】
一態様において、本発明の方法のいずれかに従って生産されたmeso-VPCの集団は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを発現する。
【0047】
一態様において、本発明の方法のいずれかに従って生産されたmeso-VPCの集団は、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーに関して陽性である少なくとも1つのmeso-VPCを含む。一態様において、miRNAマーカーはmir483-5pである。
【0048】
一態様において、本発明の方法のいずれかに従って生産されたmeso-VPCの集団は、mir367、mir302a、mir302b、mir302c、mirLet7-e、mir223、mir99a、mir142-3pおよびmir133aからなる群より選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すかまたは発現を示さない、少なくとも1つのmeso-VPCを含む。
【0049】
一態様において、本発明の方法は、meso-VPCの分化によって血管内皮細胞を生産する工程を、さらに含む。
【0050】
一態様において、分化はフィブロネクチンコート表面上で行われる。
【0051】
一局面において、本発明は、本発明の方法のいずれか1つによって生産されたmeso-VPCの集団を含む、組成物を提供する。
【0052】
一局面において、本発明は、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞のインビトロ分化によって生産される中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の集団を含む、組成物であって、meso-VPCの集団が、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbからなる群より選択される少なくとも1つの細胞表面マーカーを発現する、組成物を提供する。
【0053】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物は、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbからなる群より選択される少なくとも2つの細胞表面マーカーを発現する。
【0054】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物は、細胞表面マーカーCD146、CD31/PECAM1およびCD309/KDRを発現する。
【0055】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物は、細胞表面マーカーCD31/PECAM1、CD309/KDR、CD146、ならびに(i)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD43またはPDGFRbのうちの少なくとも1つ、(ii)CD34、CD184/CXCR4およびPDGFRb、(iii)CD184/CXCR4、(iv)PDGFRb、(v)CD144およびCD184/CXCR4、(vi)CD184/CXCR4およびCD43、または(vii)CC184/CXCFR4を発現する。
【0056】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物は、(a)CXCR7、CD45およびNG2からなる群より選択される1つまたは複数の細胞表面マーカー、(b)CXCR7、CD45およびNG2、または(c)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CXCR7、CD43、CD45、PDGFRbおよびNG2からなる群より選択される1つまたは複数の細胞表面マーカーの限定的な検出を示すか、または検出を示さない。
【0057】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-483-3p、miR214、miR335-3pおよびmiR-199a-3pから選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーを発現する。
【0058】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物は、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3p、hsa-miR-133a-5p、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pから選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さない。
【0059】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを発現する。
【0060】
一態様において、meso-VPCの集団はmeso-VPCのバスキュロノイドを含む。
【0061】
一態様において、meso-VPCの集団はmeso-VPCの単一細胞を含む。
【0062】
一態様において、本発明は、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞のインビトロ分化によって生産されるmeso-VPCであって、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーに関して陽性であるmeso-VPCを提供する。
【0063】
一態様において、meso-VPCはmiRNAマーカーmir483-5pに関して陽性である。
【0064】
一態様において、meso-VPCは、mir367、mir302a、mir302b、mir302c、mirLet7-e、mir223、mir99a、mir142-3pおよびmir133aからなる群より選択される少なくとも1つのmiRNAマーカーに関して陰性である。
【0065】
一態様において、多能性幹細胞はヒト多能性幹細胞である。
【0066】
一態様において、多能性幹細胞はヒト胚性幹細胞(hESC)である。
【0067】
一態様において、多能性幹細胞はヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)である。
【0068】
一態様では、多能性幹細胞をまず中胚葉細胞に分化させ、次にそれをmeso-VPCに分化させる。
【0069】
一局面において、本発明は、本発明のmeso-VPCの集団を含む組成物を含むか、本発明のmeso-VPCのいずれか1つを含む、薬学的組成物を提供する。
【0070】
一局面において、本発明は、対象における血管疾患または血管障害を処置する方法であって、本発明のmeso-VPCの集団を含む組成物もしくは本発明の中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)のいずれか1つ、または本発明の薬学的組成物のいずれか1つの有効量を対象に投与する工程であって、それによって対象における血管疾患または血管障害を処置する、工程を含む、方法を提供する。
【0071】
一態様において、血管疾患または血管障害は、アテローム性動脈硬化、末梢動脈疾患(PAD)、頸動脈疾患、静脈疾患、凝血塊、大動脈瘤、線維筋性異形成、リンパ浮腫および血管傷害からなる群より選択される。
【0072】
一態様において、末梢動脈疾患は、重症虚血肢、腸虚血症候群、腎動脈疾患、膝窩動脈捕捉症候群、レイノー現象、バージャー病からなる群より選択される。
【0073】
一態様において、末梢動脈疾患は重症虚血肢である。
【0074】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物、meso-VPC、または薬学的組成物は、筋肉内または全身性に投与される。
【0075】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物、meso-VPC、または薬学的組成物の投与は、対象における血流を増加させる。
【0076】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物、meso-VPC、または薬学的組成物の投与は、対象における血管新生および/または血管形成を促進する。
【0077】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物、meso-VPC、または薬学的組成物の投与は、対象における虚血重症度を低減する。
【0078】
一態様において、meso-VPCの集団を含む組成物、meso-VPC、または薬学的組成物の投与は、対象における肢の壊死領域を低減する。
【0079】
一態様では、約1×104~約1×1013個のmeso-VPCが対象に投与される。
【0080】
一態様において、meso-VPCは薬学的組成物として投与される。
【0081】
一態様において、薬学的組成物は、(a)溶液を生理的pHに維持する緩衝剤、(b)少なくとも5%(w/v)グルコース、および(c)溶液を生理学的浸透圧に維持する浸透圧活性剤(osmotically active agent)を含む。
【0082】
一態様において、グルコースはD-グルコース(デキストロース)である。
【0083】
一態様において、浸透圧活性剤は塩である。
【0084】
一態様において、塩は塩化ナトリウムである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】ヒト多能性幹細胞を中胚葉細胞にインビトロ分化させるプロセスの略図である。
図2A】ヒト人工多能性幹細胞株GMP1から分化した中胚葉細胞における細胞表面マーカーKDR、CD56/NCAM1、APLNR/APJ、GARPまたはCD13の発現を示すグラフであり、これによって中胚葉系譜への分化が確認される。
図2B】ヒト人工多能性幹細胞株GMP1から分化した中胚葉細胞上では、多能性細胞、内胚葉細胞、外胚葉細胞および血液血管細胞の細胞表面マーカーを限定的に発現することまたは発現しないことを示すグラフであり、これによって中胚葉系譜への分化が確認される。
図3】ヒト多能性幹細胞を中胚葉細胞にインビトロ分化させるためのプロセス(左)、および中胚葉細胞を、中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)に、Meso-3D-バスキュロノイド(Vasculonoid)VPC1プロトコール(右上)またはMeso-3D-バスキュロノイドVPC2プロトコール(右下)を使って、インビトロ分化させるためのプロセスの略図である。
図4】ヒト多能性幹細胞を中胚葉細胞にインビトロ分化させるためのプロセス(左)、および中胚葉細胞を、中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)に、Meso-2D VPC2プロトコール(右上)またはMeso-2D VPC3プロトコール(右下)を使って、インビトロ分化させるためのプロセス略図である。
図5】Meso-3D-バスキュロノイドプロトコールによって生産されたmeso-VPCの、内皮系譜へのさらなる分化を起こす能力を示す顕微鏡像のパネルである。上段のパネルは、回収前の5日目のmeso-VPCの形態を示している。中段のパネルは、フィブロネクチンコートプレートおよび内皮分化を促進する培地を使ったmeso-VPCの内皮分化を示している。下段のパネルは、meso-VPCによって形成された毛細血管様のMatrigelネットワークを示している。
図6A】Meso-3D-バスキュロノイド-VPC1プロトコール、Meso-3D-バスキュロノイド-VPC2プロトコール、Meso-2D-VPC2プロトコールまたはMeso-2D-VPC3プロトコールを使って生産されたmeso-VPCにおける細胞表面マーカーCD31/PECAM1、CD309/KDR、CXCR4/CD184、CD43、CD146およびPDGFRbの発現を示すグラフである。
図6B】meso-VPCおよび比較用の造血内皮細胞(HE)または血管芽細胞(HB)のうち、選択された細胞表面マーカーについて陽性である細胞の分率を示すヒートマップである。未分化多能性幹細胞(J1およびGMP1)ならびにヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)との比較も示す。
図6C】Meso-3D-バスキュロノイドプロトコールまたはMeso-2Dプロトコールによって生産されたmeso-VPC、比較用の造血内皮細胞(HE)、比較用の血管芽細胞(HB)、未分化多能性幹細胞(J1およびGMP1)またはヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の、血管細胞表面マーカー発現プロファイルを示す主成分分析(PCA)プロットである。
図7】Meso-2Dプロトコールによって生産されたmeso-VPCの、内皮系譜へのさらなる分化を起こす能力を示す顕微鏡像のパネルである。上段のパネルは、回収前の7日目のmeso-VPCの形態を示している。中段のパネルは、フィブロネクチンコートプレートおよび内皮分化を促進する培地を使ったmeso-VPCの内皮分化を示している。下段のパネルは、meso-VPCによって形成された毛細血管様のMatrigelネットワークを示している。
図8】実施例9に記載するようにmeso-VPCで処置された動物における血流の増加を示すグラフである。具体的に述べると、動物をシャム手術するか(1M)、またはビヒクル対照(2M)、J1-HDF Meso-2D VPC2(3M)、J-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC2(4M)、GMP1HDF Meso-2D VPC2(5M)、GMP1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC2(6M)もしくはGMP1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC1(7M)で処置する。
図9】実施例9に記載するようにmeso-VPCで処置された動物における血管密度の変化を示すグラフである。具体的に述べると、動物をビヒクル対照(2M)、J1-HDF Meso-2D VPC2(3M TI1)、J-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC2(4M TI2)、GMP1HDF Meso-2D VPC2(5M TI3)、GMP1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC2(6M TI4)またはGMP1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC1(7M TI5)で処置する。
図10】meso-VPCで処置された動物における、小毛細血管形成の指標であるCD34染色、総血管数および血流検査の定量結果を合わせて示すグラフである。具体的に述べると、動物をシャム手術するか(1M)、またはビヒクル対照(2M)、J1-HDF Meso-2D VPC2(3M TI1)、J-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC2(4M TI2)、GMP1HDF Meso-2D VPC2(5M TI3)、GMP1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC2(6M TI4)もしくはGMP1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC1(7M TI5)で処置する。
図11】meso-VPCで処置された動物の各群の、レーザードップラーによって測定される血流と平均毛細血管密度の間の強くて統計的に有意な相関を示している。
図12図12Aは、J1細胞の集団およびJ1由来HE細胞と比較した、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを含む、3つのレプリケートからのJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団に見いだされる特有のヒトmiRNAを示すプロットとグラフである。図12Aは、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pを含む、J1由来HE細胞の集団に見いだされる特有のヒトmiRNAも示している。「発現」とは、3つのレプリケートのすべてにおいて>0である、正規化された発現である。 図12Bは、先に単一細胞で分析されたJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団におけるmiRNAの発現レベルを示すグラフであり、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5pおよびhsa-miR-24-3pがJ1細胞の集団でもJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団でも発現することを示している。 図12Cは、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団がhsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5pおよびhsa-miR-142-3pを発現すること、そしてhsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3pおよびhsa-miR-133a-5pは発現しないか、発現量が少ないことを示すグラフである。 図12Dは、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団がhsa-miR-483-5pおよびhsa-miR-483-3pを発現することを示すグラフである。
図13-1】単一細胞RNA-seq解析において単一J1細胞または単一HUVEC細胞と比較した、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞試料で最もアップレギュレートされる遺伝子または最もダウンレギュレートされる遺伝子の発現を示すグラフである。
図13-2】図13-1の続きの図である。
図14図14Aは、14日後のDAPIおよびUAE1染色による、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2バスキュロノイドの包埋凝集物から伸びる広範囲にわたる血管ネットワークの低倍率(対物10×)像である。 図14Bは、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2バスキュロノイド(「多細胞」)または単一細胞に解離させたJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞(「単一細胞」)を、CLI模倣条件中、正常酸素濃度下(20%O2)(左側のパネル)または低酸素濃度下(5%O2)(右側のパネル)下で、インビトロ培養した場合に、単一細胞として凍結保存されていたJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞と比べて、バスキュロノイドの方がより良い細胞生存を示したことを示すグラフである。 図14Cは、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2単一細胞(「sc」)またはバスキュロノイドを投与した後、試験全体にわたる、ビヒクル処置群(GS2培地のみ)と比較した、血流の統計的に有意な改善を示すグラフである;二元配置ANOVAに続くTukeyの検定。
図15図15Aは、meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞で処置された動物の方が、21日目に、HE細胞およびHB細胞と比べて、平均壊死スコア(左側のパネル)および機能スコア(右側のパネル)が良好であったことを示すグラフである。一元配置ANOVAに続くDunnettの検定。平均±sem。 図15Bは、meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞、HE細胞およびHB細胞で処置された動物における、ビヒクルと比較した、63日目の血流の改善を示すグラフである。*p<0.05対ビヒクル。平均±s.d.。二元配置ANOVAに続くTukeyの検定。 図15Cは、Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞、HE細胞およびHB細胞で処置された動物の四頭筋におけるCD34血管成長を示すグラフである。*p<0.05対ビヒクル。平均±sem。二元配置ANOVAに続く補正なしのFisherのLSD検定。 図15Dは、Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞、HE細胞またはHB細胞を投与した後の腓腹筋の改善を示すグラフである。*p<0.05対ビヒクル。平均±sem。二元配置ANOVAに続く補正なしのFisherのLSD検定。
図16A】63日目および180日目のKu80+染色による生着ドナーGMP1-Meso3DバスキュロノイドVPC2細胞を示すグラフであり、これらは細胞の長期生着を示している。
図16B】35日目および63日目に、Ku80+染色によってmeso-3DバスキュロノイドVPC2細胞が生着を示したことを示すグラフである。
図16C】Balb/cヌードマウスにおけるHLI手術の63日後の、長期生着(Ku80+)、ヒト脈管構造の形成(UEA1+血管)、およびパラクリン宿主血管成長の促進(IB4+およびSMA+血管)を示す、注射されたMeso3DバスキュロノイドVPC2の蛍光像である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
発明の詳細な説明
I. 定義
本発明がより容易に理解されうるように、一定の用語をまず定義する。パラメータの値または値域が具陳された場合は常に、具陳された値の間にある値および範囲が同様に本発明の一部であることにも留意すべきである。
【0087】
以下の記述では、本発明の完全な理解が得られるように、説明のために具体的な数字、材料および構成を示す。しかし、これらの具体的詳細がなくても本発明を実施しうることは、当業者にとって明白であるだろう。場合により、周知の特色は、本発明が不明瞭にならないように、省略または簡略化されうる。さらにまた、明細書において「一態様」または「ある態様」などの語句に言及する場合、それは、その態様に関して記載された特定の特色、構造または特徴が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。「一態様において」などの語句が本明細書中のさまざまな場所に使われていても、それは、必ずしもすべてが同じ態様を指しているわけではない。
【0088】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書では、1つのまたは1つより多い(すなわち少なくとも1つの)その冠詞の文法上の対象を指すために使用される。一例として「1つの要素(an element)」とは、1つの要素または1つより多い要素を指す。
【0089】
「含むこと」または「含む」という用語は、本明細書では、本開示にとって本質的な組成物、方法およびそれらの各構成要素に関連して使用されるが、本質的であるか否かを問わず、指定されていない要素の包含も許容される。
【0090】
本明細書にいう「多能性細胞」、「多能性幹細胞」および「PSC」は、適当な条件下で未分化状態を保ち、安定な(好ましくは正常な)核型を呈し、かつ3つの胚葉(すなわち外胚葉、中胚葉および内胚葉)のすべてに分化する能力を有しつつ、長期間にわたってまたは事実上無限にインビトロで増殖する能力を有する細胞を、広く指す。典型的には、多能性細胞は、(a)免疫不全(SCID)マウスに移植した場合に奇形腫を誘導する能力を有し、(b)3つの胚葉すべての細胞タイプ(例えば外胚葉細胞タイプ、中胚葉細胞タイプおよび内胚葉細胞タイプ)に分化する能力を有し、(c)少なくとも1つのhES細胞マーカー(例えばOct-4、アルカリホスファターゼ、SSEA3表面抗原、SSEA4表面抗原、NANOG、TRA 1 60、TRA 1 81、SOX2、REX1)を発現する。例示的な多能性細胞は、Oct-4、アルカリホスファターゼ、SSEA3表面抗原、SSEA4表面抗原、TRA 1 60および/またはTRA 1 81を発現しうる。さらなる例示的な多能性細胞として、胚性幹細胞、人工多能性(iPS)細胞、胚由来細胞、胚性生殖(EG)細胞から(例えばFGF-2、LIFおよびSCFの存在下で培養することによって)生産される多能性細胞、単為発生ES細胞、培養内部細胞塊細胞(ICM)から生産されたES細胞、割球から生産されるES細胞、および核移植(例えばレシピエント卵母細胞に移植された体細胞核)によって生産されるES細胞が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。例示的な多能性細胞は胚を破壊することなく生産されうる。例えば人工多能性細胞は、胚破壊を伴わずに得られた細胞から生産されうる。さらなる一例として、多能性細胞は生検された割球(これは残った胚を害することなく達成することができる)から生産されうる。任意で、残った胚は、凍結保存し、培養し、および/または適切な宿主に着床させうる。多能性細胞には(その供給源がなんであれ)、遺伝子改変または他の改変を加えうる。
【0091】
本明細書にいう「胚」または「胚性」とは、母性宿主(maternal host)の子宮膜に着床していない発生中の細胞塊を、広く指す。「胚細胞」とは、胚から単離された細胞または胚に含有される細胞である。これには早ければ二細胞期に得られる割球および凝集した割球も含まれる。
【0092】
「胚性幹細胞」(ES細胞またはESC)は、胚細胞から(例えば培養内部細胞塊細胞からまたは培養割球から)生産された多能性細胞を包含する。多くの場合、そのような細胞は細胞株として連続継代されるか、連続継代されたものである。胚性幹細胞は、本明細書に記載するように中胚葉細胞およびmeso-VPCを生産するプロセスにおいて、多能性幹細胞として使用されうる。例えばES細胞は、精子もしくは精子DNAによる卵細胞の受精、核移植(体細胞核移植を含む)または単為生殖などといった、何らかの方法によって生産された胚(有性的手段または無性的手段によるものを含む)からの誘導を含む、当技術分野において公知の方法によって生産されうる。さらなる一例として、体細胞核移植によって生産される細胞も、そのプロセスに非胚細胞が使用される場合を含めて、胚性幹細胞に含まれる。例えばES細胞は、1つまたは複数の割球から誘導される胚性幹細胞でありうると共に、胚盤胞期胚のICMから誘導されうる。そのような胚性幹細胞は、受精によって生産されるか、体細胞核移植(SCNT)、単為生殖、および雄性発生を含む無性的手段によって生産される、胚性材料から生成させることができる。上にさらに述べたように、ES細胞には遺伝子改変または他の改変を加えうる。
【0093】
ES細胞は、例えば遺伝子操作や、ヘテロ接合性の自発的喪失に関するスクリーニングなどにより、1つまたは複数のHLA遺伝子においてホモ接合またはヘテロ接合であるように生成させることができる。胚性幹細胞は、それらの供給源ともそれらを生産するために使用される特定の方法とも無関係に、典型的には、以下の属性のうちの1つまたは複数を備えている:(i)3つの胚葉すべての細胞に分化できること、(ii)少なくともOct-4およびアルカリホスファターゼの発現、ならびに(iii)免疫無防備状態の動物に移植された場合に奇形腫を生産できること。本発明の態様において使用されうる胚性幹細胞として、CT2、MA01、MA09、ACT-4、No.3、J1、H1、H7、H9、H14およびACT30胚性幹細胞などのヒトES細胞(「hESC」または「hES細胞」)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。さらなる例示的な細胞株として、NED1、NED2、NED3、NED4、NED5およびNED7が挙げられる。NIHヒト胚性幹細胞レジストリ(NIH Human Embryonic Stem Cell Registry)も参照されたい。使用されうる例示的なヒト胚性幹細胞株はJ1細胞である。
【0094】
例示的なヒト胚性幹細胞(hESC)マーカーとしては、アルカリホスファターゼ、Oct-4、Nanog、ステージ特異的胚抗原3(SSEA-3)、ステージ特異的胚抗原4(SSEA-4)、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、Sox2、増殖分化因子3(GDF3)、REX1(reduced expression 1)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚細胞特異抗原1(ESG1)、DPPA2(developmental pluripotency-associated 2)、DPPA4、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、SALL4、E-カドヘリン、CD30(Cluster designation 30)、Cripto(TDGF-1)、GCTM-2、Genesis、生殖細胞核内因子および幹細胞因子(SCFまたはc-Kitリガンド)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。加えて、胚性幹細胞は、Oct-4、アルカリホスファターゼ、SSEA3表面抗原、SSEA4表面抗原、TRA 1 60および/またはTRA 1 81を発現しうる。
【0095】
ESCは、まず、ESCの多能性を維持する当技術分野公知の任意の培養培地中、マウス胚性フィーダー(MEF)細胞またはヒトフィーダー細胞、例えばヒト真皮線維芽細胞(HDF)などといった、フィーダー細胞ありまたはフィーダー細胞なしで、培養されうる。MEF細胞またはヒトフィーダー細胞は、ESCを共培養に播種する前に、例えばマイトマイシンC、ガンマ線照射、または他の任意の公知の方法によって、有糸分裂的に不活化することができるので、MEFは培養下で増殖しない。したがって、ESC細胞培養を顕微鏡で検査し、例えば幹細胞用ナイフ(stem cell cutting tool)、レーザーアブレーション、または他の手段を使って、非ESC細胞形態を含有するコロニーを拾い上げて捨てることができる。通例、胚様体形成のために播種用のESCを回収した時点以降は、追加のMEF細胞またはヒトフィーダー細胞を使用しない。
【0096】
あるいは、hES細胞は、細胞外マトリックス(例えばMatrigel(登録商標)、ラミニンもしくはiMatrix-511または本明細書において開示するもしくは当技術分野において公知の他の任意の細胞外マトリックス)などの固形表面上、フィーダーフリー条件下で、例えばKlimanskaya et al.,Lancet 365:1636-1641(2005)など、当技術分野において公知の任意の方法によって培養されうる。したがって、本明細書記載の方法において使用されるhES細胞は、フィーダーフリー培養で培養されうる。
【0097】
本明細書にいう「胚由来細胞」(EDC)とは、多能性の桑実胚由来細胞、内部細胞塊、胚盾もしくは胚盤葉上層の細胞を含む胚盤胞由来細胞、または原始内胚葉、外胚葉および中胚葉を含む初期胚の他の多能性幹細胞、ならびにそれらの派生物を広く指す。「EDC」には、割球や、凝集した単一割球またはさまざまな発生段階の胚からの細胞塊も含まれるが、細胞株として継代されたヒト胚性幹細胞は、これには含まれない。
【0098】
本明細書にいう「人工多能性幹細胞」または「iPSC」または「iPS細胞」とは、体細胞のリプログラミングによって生成させた多能性幹細胞を指す。iPSCは、因子(「リプログラミング因子」)の組合せを発現させるかその発現を誘導することによって生成させうる。iPS細胞は、胎児の、出生後の、新生児の、若年のまたは成人の体細胞を使って生成させうる。iPS細胞は細胞バンクから入手しうる。あるいは、iPS細胞は、血管前駆細胞(VPC)または他の細胞タイプへの分化を開始する前に、(当技術分野において公知のプロセスによって)新たに生成させうる。iPS細胞の作製は分化細胞の生産において最初の工程になりうる。iPS細胞は、組織適合VPCを生成させる目的で、特定の患者または適合ドナーからの材料を使って、特別に生成させうる。iPS細胞は、意図したレシピエントにおいて実質的に免疫原性ではない細胞から生産すること、例えば意図したレシピエントにとって自家の細胞からまたは組織適合性の細胞から生産することができる。上でさらに述べたように(「多能性細胞」参照)、iPS細胞を含む多能性細胞には、遺伝子改変または他の改変を加えうる。使用されうる例示的なヒトiPSC細胞株はGMP1細胞である。
【0099】
さらなる一例として、人工多能性幹細胞は、体細胞または他の細胞を1種または複数種のリプログラミング因子と接触させることでそれらの細胞をリプログラミングすることによって生成させうる。例えばリプログラミング因子は、細胞により、例えば細胞に加えられた外因性核酸から、または内在性遺伝子から、当該遺伝子の発現を促進または誘導する低分子、マイクロRNAなどの因子に応答して、発現されうる(Suh and Blelloch,Development 138,1653-1661(2011)、Miyoshi et al.,Cell Stem Cell(2011),doi:10.1016/j.stem.2011.05.001、Sancho-Martinez et al.,Journal of Molecular Cell Biology(2011)1-3、Anokye-Danso et al.,Cell Stem Cell 8,376-388,April 8,2011、Orkin and Hochedlinger,Cell 145,835-850,June 10,2011、またはWarren et al.,Scientific Reports,10.1038/srep00657,September 14,2012参照。これらの参考文献はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。リプログラミング因子は外因的供給源から、例えば培養培地に添加されることなどによって、提供され、当技術分野において公知の方法、例えば細胞進入ペプチド(cell entry peptide)へのカップリング、タンパク質または核酸トランスフェクション剤、リポフェクション、エレクトロポレーション、バイオリスティック粒子送達システム(遺伝子銃)、マイクロインジェクションなどによって、細胞中に導入されうる。一定の態様において、体細胞を多能性幹細胞へとリプログラミングするために使用することができる因子として、例えば、Oct4(Oct3/4と呼ばれる場合もある)、Sox2、c-MycおよびKlf4の組合せが挙げられる。別の態様において、体細胞を多能性幹細胞へとリプログラミングするために使用することができる因子として、例えば、Oct-4、Sox2、NanogおよびLin28の組合せが挙げられる。別の態様において、体細胞は、少なくとも2種のリプログラミング因子、少なくとも3種のリプログラミング因子、または4種のリプログラミング因子を発現させることによってリプログラムされる。別の一態様において、体細胞は、Oct4、Sox2、MYC、Klf4、NanogおよびLin28を発現させることによってリプログラミングされる。別の態様では、さらなるリプログラミング因子が同定され、それを単独で使用するか、1種もしくは複数種の公知リプログラミング因子と併用することで、体細胞を多能性幹細胞へとリプログラミングする。iPS細胞は、典型的には、胚性幹細胞と同じマーカーの発現によって同定することができるが、特定のiPS細胞株はその発現プロファイルが異なりうる。
【0100】
人工多能性幹細胞は、体細胞において1種または複数種のリプログラミング因子を発現させるか、その発現を誘導することによって生産されうる。ある態様において、体細胞は線維芽細胞、例えば真皮線維芽細胞、滑膜線維芽細胞もしくは肺線維芽細胞、または非線維芽細胞性体細胞である。ある態様において、体細胞は、少なくとも1、2、3、4、5種の上記リプログラミング因子を発現させることによってリプログラミングされる。別の一態様において、リプログラミング因子の発現は、体細胞を、リプログラミング因子の発現を誘導する少なくとも1つの作用物質、例えば有機低分子作用物質と接触させることによって、誘導されうる。
【0101】
また体細胞は、リプログラミング因子を(例えばウイルスベクター、プラスミドなどを使って)発現させ、そのリプログラミング因子の発現を(例えば有機低分子を使って)誘導する、コンビナトリアルアプローチを使ってリプログラミングされうる。例えばリプログラミング因子は、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターを使った感染によって、体細胞中で発現されうる。また、リプログラミング因子は、エピソームプラスミドまたはmRNAなどの非組込みベクターを使って、体細胞中で発現されうる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるYu et al.,Science.2009 May 8;324(5928):797-801を参照されたい。非組込みベクターを使ってリプログラミング因子を発現させる場合、因子は、そのベクターによる体細胞のエレクトロポレーション、トランスフェクションまたは形質転換を使って、細胞中で発現させうる。
【0102】
細胞中でリプログラミング因子を発現させたら、当技術分野において公知の任意の方法によって、その細胞を培養しうる。時間が経つにつれて、ESの特徴を持つ細胞が培養ディッシュ中に現われる。細胞は、例えばES形態に基づいて、または選択可能マーカーもしくは検出可能マーカーの発現に基づいて選ばれ、継代培養されうる。細胞は、ES細胞に似た細胞の培養物が生じるように培養することができ、それらが推定iPS細胞である。iPS細胞は、典型的には、他の胚性幹細胞と同じマーカーの発現によって同定することができるが、特定のiPS細胞株はその発現プロファイルが異なりうる。例示的なiPS細胞は、Oct-4、アルカリホスファターゼ、SSEA3表面抗原、SSEA4表面抗原、TRA 1 60および/またはTRA 1 81を発現しうる。
【0103】
iPS細胞の多能性を確認するために、細胞を1つまたは複数の多能性アッセイで検査しうる。例えば、細胞をES細胞マーカーの発現について検査し、細胞をSCIDマウスに移植された場合に奇形腫を生産する能力について評価し、細胞を3つの胚葉すべての細胞タイプに分化する能力について評価しうる。多能性iPS細胞が得られたら、中胚葉細胞および血管前駆細胞、例えば中胚葉由来血管前駆細胞を生産するために、それを使用しうる。
【0104】
本明細書にいう「中胚葉」とは、すべての左右相称動物(belaterian animal)の極初期胚における3つの一次胚葉のうちの1つを指す。中胚葉は、間葉、中皮、非上皮性血管細胞および体腔細胞を形成する。初期中胚葉拘束は上皮間葉転換から発生し、それに続き、原腸形成が進行するにつれて、指定された中胚葉系譜細胞が内側に移動する。中胚葉系譜の細胞は、血管芽細胞、および複数の指定された細胞タイプに分化する能力を有する複能性間葉系幹細胞を含む、血管およびリンパ系を形成する運命にある。中胚葉は、胚外中胚葉とそれに続く胚臓側中胚葉の形成により、血管形成を引き起こす。血管内皮増殖因子(VEGF)および胎盤増殖因子(PIGFまたはPGF)などの増殖因子は、新しい血管の成長と発生を刺激する。一態様において、中胚葉系譜の細胞は、血管前駆体細胞(vascular precursor cell)または血管前駆細胞(vascular progenitor cell)となる運命にある。一態様において、多能性幹細胞、例えばhESCまたはiPSC、例えばhiPSCは、中胚葉に系譜づけられた細胞、例えば中胚葉前駆体細胞へと分化させることができる。したがって「中胚葉」という用語には、細胞の成熟度を問わず、多能性幹細胞に由来する中胚葉に系譜づけられた細胞も含まれ、したがってこの用語は、中胚葉前駆体細胞を含むさまざまな成熟レベルの中胚葉細胞を包含する。
【0105】
例示的な中胚葉マーカーとしては、CD309/KDR、CD56/NCAM1、APLNR/APJ、GARP、CD13、N-カドヘリン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンB、アクチビンC、BMPおよび他のアクチビン受容体活性化因子、BMPおよび他のアクチビン受容体阻害因子、BMP-2、BMP-2/BMP-4、BMP-2/BMP-6ヘテロ二量体、BMP-2/BMP-7ヘテロ二量体、BMP-2a、BMP-4、BMP-6、BMP-7、クリプティック(Cryptic)、FABP4/A-FABP、FGF-5、GDF-1、GDF-3、INHBA、INHBB、ノーダル(Nodal)、TGF-ベータ、TGF-ベータ1、TGF-ベータ1、2、3、TGF-ベータ1.2、TGF-ベータ1/1.2、TGF-ベータ2、TGF-ベータ2/1.2、TGF-ベータ3、TGF-ベータ受容体阻害因子、Wnt-3a、Wnt-8a、MESDC2、ニカリン(Nicalin)、ブラキウリ(Brachyury)、EOMES、FoxC1、FoxF1、グースコイド(Goosecoid)、HAND1、MIXL1、スラッグ(Slug)、スネイル(Snail)、TBX6、Twist-1およびTwist-2が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。一態様において、中胚葉細胞は、CD309/KDR、CD56/NCAM1、APLNR/APJ、GARPおよびCD13から選択される1つまたは複数のマーカーについて陽性な中胚葉前駆体細胞である。
【0106】
本明細書にいう「血管形成」(vasculogenesis)とは、新しい血管の形成を指す。血管形成には中胚葉由来の内皮の形成が含まれる。本明細書にいう「血管新生」(angiogenesis)とは、既存の血管からの血管の形成を指す。例えばDevelopmental Biology by Gilbert,Scott F.Sunderland(MA):Sinauer Associates,Inc.;c2000、およびMolecular Biology of the Cell 4th ed.Alberts,Bruce;Johnson,Alexander;Lewis,Julian;Raff,Martin;Roberts,Keith;Walter,Peter New York and London:Garland Science;c2002を参照されたい。
【0107】
本明細書にいう「血管前駆細胞」(VPC)とは、内皮細胞、平滑筋細胞および周皮細胞、その他血液血管細胞系譜に分化する能力を有する細胞を指す。一態様において、血管前駆細胞は中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)である。
【0108】
本明細書にいう「中胚葉由来血管前駆細胞」(meso-VPC)とは、多能性幹細胞、例えばESCまたはiPSCのインビトロ分化によって誘導された中胚葉細胞から生成されるVPCを指す。meso-VPCは、本明細書においてさらに説明する1種または複数種の細胞表面マーカーの発現によって同定されうる。一態様において、中胚葉由来血管前駆細胞は、多能性幹細胞、例えばESCまたはiPSCが中胚葉細胞へとインビトロ分化し、それが次にmeso-VPCへと分化することによって生成する。
【0109】
meso-VPCは、マウスPSCからもヒトPSCからも、インビトロで誘導されうる。meso-VPCは、造血細胞系譜および内皮細胞系譜に分化する能力を有し、平滑筋細胞にもなる能力を有しうる。本発明のmeso-VPCの集団は、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbなどといった、少なくとも1つのマーカーについて陽性でありうる。一態様において、meso-VPCの集団は、上に挙げたマーカーのうちの1、2、3、4、5、6、7または8個について陽性である。一態様において、meso-VPCの集団は、CD146、CD31/PECAM1およびCD309/KDRについて陽性である。別の一態様において、meso-VPCの集団は、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD146、ならびに(i)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD43またはPDGFRbのうちの少なくとも1つ、(ii)CD34、CD184/CXCR4およびPDGFRb、(iii)CD184/CXCR4、(iv)PDGFRb、(v)CD144およびCD184/CXCR4、(vi)CD184/CXCR4およびCD43、または(vii)CC184/CXCFR4を発現する。ある態様において、meso-VPCの集団は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-483-3p、miR214、miR335-3pおよびmiR-199a-3pから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個または少なくとも15個のmiRNAマーカーを発現する。一態様において、meso-VPCの集団は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを発現する。ある態様において、meso-VPCの集団は、組成物中のmeso-VPCの少なくとも約20%がある特定マーカーを発現するのであれば、そのマーカーを発現するとみなされる。一態様において、本発明のmeso-VPCは、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つのmiRNAマーカーについて陽性である。一態様において、miRNAマーカーはmir483-5pである。一態様において、meso-VPCの集団は、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つのmiRNAマーカーについて陽性である少なくとも1つのmeso-VPCを含む。一態様において、miRNAマーカーはmir483-5pである。ある態様において、meso-VPCの集団は、CD31およびKDRを、HE細胞の集団よりも高いレベルで発現する。別の一態様において、meso-VPCの集団は、CD146を、HE細胞の集団よりも低いレベルで発現する。さらに別の態様において、meso-VPCの集団は、CD184/CXCR4を、HE細胞の集団より低いレベルで発現する。
【0110】
どの態様においても、meso-VPCの集団は、CXCR7、CD45およびNG2のうちの1つ、2つまたは3つの限定的な検出を示すか、または検出を示さない。どの態様においても、meso-VPCの集団は、CXCR7、CD45およびNG2のすべての限定的な検出を示すか、または検出を示さない。どの態様においても、meso-VPCの集団は、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CXCR7、CD43、CD45、PDGFRbまたはNG2のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの限定的な検出を示すか、または検出を示さない。ある態様において、meso-VPCの集団は、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3p、hsa-miR-133a-5p、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つまたは少なくとも7つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さない。ある態様において、meso-VPCの集団は、あるマーカーを発現するのが組成物中のmeso-VPCの約20%未満であるなら、そのマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さないとみなされる。ある態様において、本発明のmeso-VPCは、mir367、mir302a、mir302b、mir302c、mirLet7-e、mir223、mir99a、mir142-3pおよびmir133aからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたは少なくとも9つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さない。本発明の一態様において、meso-VPCの集団は、mir367、mir302a、mir302b、mir302c、mirLet7-e、mir223、mir99a、mir142-3pおよびmir133aからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたは少なくとも9つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すかまたは発現を示さない、少なくとも1つのmeso-VPCを含む。
【0111】
本明細書にいう「バスキュロノイド」とは、例えば細胞培養中などに形成される、細胞、例えば中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)の、コロニー様凝集体を指す。一態様において、バスキュロノイドは、3D-バスキュロノイド分化プラットホームを使って生産されたmeso-VPCによって形成される。
【0112】
本明細書にいう「治療」、「治療的」、「処置すること」、「処置する」または「処置」とは、疾患を処置し、疾患もしくはその臨床症状の発達を停止または低減しおよび/または疾患を緩和し、疾患もしくはその臨床症状の後退を引き起こすことを、広く指す。「治療」、「治療的」、「処置すること」、「処置する」または「処置」は、予防、防止、処置、療養、矯正、低減、軽減、ならびに/または疾患、疾患の徴候および/もしくは症状を和らげることを包含する。「治療」、「治療的」、「処置すること」、「処置する」または「処置」は、疾患の徴候および/または症状が継続している患者における徴候および/または症状の軽減を包含する。「治療」、「治療的」、「処置すること」、「処置する」または「処置」は、「予防」および「防止」を包含する。予防には、患者における疾患の処置後に疾患が起こるのを防止すること、または患者における疾患の発生率または重症度を低減することが含まれる。治療、「治療的」、「処置すること」、「処置する」または「処置」に関して「低減した」という用語は、徴候および/または症状の臨床的に有意な低減を、広く指す。「治療」、「治療的」、「処置すること」、「処置する」または「処置」には、再燃または反復性の徴候および/もしくは症状を処置することが含まれる。「治療」、「治療的」、「処置すること」、「処置する」または「処置」は、徴候および/または症状の出現を妨げること、ならびに既存の徴候および/または症状を低減すること、既存の徴候および/または症状を排除することを包含するが、それらに限定されるわけではない。「治療」、「治療的」、「処置すること」、「処置する」または「処置」には、慢性疾患を処置すること(「維持」)および急性疾患を処置することが含まれる。例えば処置には、再燃または徴候および/もしくは症状の再発を処置または防止することが含まれる。一態様において、処置には、重症虚血肢などの血管疾患の徴候および/または症状の臨床的に有意な低減が含まれる。
【0113】
本明細書にいう「病態を正常化する」とは、疾患に起因する異常な構造および/または機能をより正常な状態に復帰させることを指す。正常化は、疾患に起因する組織、器官または細胞タイプの構造および/または機能の異常を補正することによって、病態の進行を管理し、改善できることを示唆する。例えば、本発明のmeso-VPCによる処置後に、血管疾患、例えば重症虚血肢の結果としての肢の異常は、改善され、補正されおよび/または反転されうる。
【0114】
本明細書にいう「血管疾患」とは、血管(動脈および静脈)の任意の異常状態を指す。心臓外の血管疾患はどこにでも出現しうる。最もよくある血管疾患は卒中、末梢動脈疾患(PAD)、腹部大動脈瘤(AAA)、頸動脈疾患(CAD)、動静脈奇形(AVM)、重症虚血肢(CLI)、肺塞栓症(凝血塊)、深部静脈血栓症(DVT)、慢性静脈不全症(CVI)および静脈瘤である。一態様において、血管疾患は末梢動脈疾患(PAD)である。一態様において、血管疾患は重症虚血肢(CLI)などの虚血性疾患である。一態様において、血管疾患は、アテローム性動脈硬化、末梢動脈疾患(PAD)、頸動脈疾患、静脈疾患、凝血塊、大動脈瘤、線維筋性異形成、リンパ浮腫または血管傷害である。一態様において、血管疾患は、重症虚血肢(CLI)、腸虚血症候群、腎動脈疾患、膝窩動脈捕捉症候群、レイノー現象、またはバージャー病などの末梢動脈疾患である。
【0115】
II. 中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)のインビトロ生成
本発明は、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞から中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)を生産する方法を提供する。本方法は、1つまたは複数の中胚葉誘導性増殖因子を含有する培地中で多能性幹細胞を培養することで中胚葉細胞を生産する工程、および中胚葉細胞の中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)への分化を指示する1つまたは複数の因子を含有する培地中、適当な表面上で、中胚葉細胞を培養する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、複数のmeso-VPCを単一細胞に解離させる工程を、さらに含む。
【0116】
本発明において使用される多能性幹細胞は、上に提示した方法のいずれかによって入手し、培養することができる。一態様において、多能性幹細胞、例えばヒト胚性幹細胞(hESC)またはヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)は、フィーダーフリー(FF)条件下で培養され、細胞外マトリックス上にプレーティングされる。一態様において、多能性幹細胞は、フィーダー培養条件下で培養され、細胞外マトリックス上にプレーティングされる。
【0117】
いくつかの態様において、細胞外マトリックスは、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸、EHS(Engelbreth-Holm-Swarm)マウス肉腫細胞からの可溶性調製物、Matrigel(登録商標)(Corning)、ゼラチンおよびヒト基底膜抽出物からなる群より選択される。一態様において、細胞外マトリックスは、ヒトを含む任意の哺乳動物起源に由来しうる。一態様において、多能性幹細胞を培養するための細胞外マトリックス表面はMatrigelコート表面である。
【0118】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は、多能性をサポートするのに適した培地中で培養され、そのような培地はいずれも当技術分野において公知である。いくつかの態様において、多能性をサポートする培地はNutristem(商標)である。いくつかの態様において、多能性をサポートする培地はTeSR(商標)である。いくつかの態様において、多能性をサポートする培地はStemFit(商標)である。別の態様において、多能性をサポートする培地はKnockout(商標)DMEM(Gibco)であり、これにはKnockout(商標)血清代替品(Gibco)、LIF、bFGF、または他の任意の因子を補足してもよい。これらの例示的な培地のそれぞれは当技術分野において公知であり、市販されている。さらなる態様において、多能性をサポートする培地には、bFGFまたは他の任意の因子を補足しうる。ある態様において、bFGFは低濃度(例えば4ng/mL)で補足されうる。別の一態様において、bFGFは、より高い濃度(例えば100ng/mL)で補足されうる。ある態様において、培地は無血清である。別の一態様において、培地は血清を含む。
【0119】
多能性幹細胞は、当技術分野において公知の任意の適切な容器中で、培養し、継代しまたは回収することができる。例示的な組織培養容器として、15cm組織培養プレート、10cm組織培養プレート、3cm組織培養プレート、6ウェル組織培養プレート、12ウェル組織培養プレート、24ウェル組織培養プレート、48ウェル組織培養プレート、96ウェル組織培養プレート、T-25組織培養フラスコ、T-75組織培養フラスコが挙げられる。一態様において、多能性幹細胞は6ウェル組織培養プレートで培養される。
【0120】
いくつかの態様では、約1、2、3、4、5または6日間の培養後に、多能性幹細胞の至適条件を維持するために、培地交換が行われる。培地交換には、出発条件と同じ培養培地を使用するか、培養ニーズに応じて培地を調節しうる。いくつかの態様において、多能性幹細胞は、約1、2、3、4、5、6、7、8または9日後に、または細胞培養が約60~90%コンフルエントに達した時に、分割され、継代される。細胞継代には、出発条件と同じ培養培地を使用するか、培養ニーズに応じて培地を調節しうる。細胞は、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19または1:20の希釈比で分割され、継代されうる。一態様において、多能性幹細胞は1:3の希釈比で継代される。
【0121】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は、約5%CO2および約20%O2の正常酸素濃度条件下、または多能性幹細胞の成長に適した他の公知の条件下で、培養されうる。
【0122】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は、培養培地中、フィーダー細胞層が培養に含まれていないフィーダーフリー条件下で培養され、継代され、または回収される。いくつかの態様において、多能性幹細胞は、培養培地中、ヒト真皮線維芽細胞(HDF)または当業者に公知の他の細胞タイプなどのフィーダー細胞層が培養に含まれるフィーダー培養条件下で培養され、継代され、または回収される。
【0123】
多能性幹細胞のインビトロ分化によって中胚葉細胞を生産するために、多能性幹細胞、例えばhESCまたはhiPSCは、適切な表面、例えば細胞外マトリックス表面上で培養される。いくつかの態様において、細胞外マトリックスは、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸、EHS(Engelbreth-Holm-Swarm)マウス肉腫細胞からの可溶性調製物、Matrigel、ゼラチンおよびヒト基底膜抽出物からなる群より選択される。一態様において、細胞外マトリックスは、ヒトを含む任意の哺乳動物起源に由来しうる。一態様において、多能性幹細胞の中胚葉細胞へのインビトロ分化のための細胞外マトリックス表面はMatrigelコート表面である。
【0124】
一態様では、多能性幹細胞をプレーティングし、分化の誘導に先立って細胞を沈降させるために、培養培地中で約1時間~約24時間培養する。多能性幹細胞の中胚葉細胞への分化を誘導するために、多能性幹細胞を、培養培地中、適切な表面、例えば上述の細胞外マトリックス表面で培養する。
【0125】
多能性幹細胞の中胚葉細胞への分化を誘導するための培養培地は、分化をサポートする任意の培地であってよく、当技術分野において公知の培養培地でありうる。いくつかの態様において、培養培地は、血液血管培養および/または血液血管拡大をサポートする任意の培地であってよく、例えばStemline(登録商標)II(Sigma)、StemSpan(商標)SFEMII(StemCell Technologies)、StemSpan(商標)AFC(StemCell Technologies)、最小必須培地(MEM)(Gibco)およびαMEMが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある態様において、培養培地は無血清である。別の一態様において、培養培地は血清を含む。培養培地は、1つまたは複数の中胚葉誘導性増殖因子、例えばアクチビンA、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)および骨形成タンパク質4(BMP4)を、さらに含みうる。一態様において、本方法において使用されるVEGFはVEGF165である。一態様において、本方法において使用されるFGFは塩基性FGF(bFGF)である。一態様において、多能性幹細胞は、アクチビンA、VEGF165、bFGFおよびBMP4を含む培養培地中で培養される。一態様において、培養継続時間は約1、2、3、4、5、6または7日である。一態様において、培養継続時間は約4日である。一態様において、培養培地は約24時間の培養後に交換され、アクチビンAを含まない培養培地で置き換えられる。
【0126】
VEGF、例えばVEGF165は、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約5ng/mL~約20ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、VEGFは、約1ng/mL、約2ng/mL、約3ng/mL、約4ng/mL、約5ng/mL、約10ng/mL、約15ng/mLまたは約20ng/mLの濃度で使用される。アクチビンAは、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約5ng/mL~約20ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、アクチビンAは、約1ng/mL、約2ng/mL、約3ng/mL、約4ng/mL、約5ng/mL、約10ng/mL、約15ng/mLまたは約20ng/mLの濃度で使用される。FGF、例えばbFGFは、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約5ng/mL~約20ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、FGFは、約1ng/mL、約2ng/mL、約3ng/mL、約4ng/mL、約5ng/mL、約10ng/mL、約15ng/mLまたは約20ng/mLの濃度で使用される。BMP4は、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約5ng/mL~約35ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、BMP4は、約1ng/mL、約2ng/mL、約3ng/mL、約4ng/mL、約5ng/mL、約10ng/mL、約15ng/mL、約20ng/mL、約25ng/mL、約30ng/mLまたは約35ng/mLの濃度で使用される。一態様において、VEGFは10ng/mLの濃度で使用され、アクチビンAは10ng/mLの濃度で使用され、FGFは10ng/mLの濃度で使用され、BMP4は25ng/mLの濃度で使用される。
【0127】
多能性幹細胞の中胚葉細胞への分化は、約5%CO2および約20%O2の正常酸素濃度条件下、または多能性幹細胞の分化に適した他の公知の条件下で、行われうる。
【0128】
多能性幹細胞の中胚葉細胞への分化は、当技術分野において公知の任意の適切な容器中で行われうる。例示的な組織培養容器として、15cm組織培養プレート、10cm組織培養プレート、3cm組織培養プレート、6ウェル組織培養プレート、12ウェル組織培養プレート、24ウェル組織培養プレート、48ウェル組織培養プレート、96ウェル組織培養プレート、T-25組織培養フラスコおよびT-75組織培養フラスコが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。一態様において、多能性幹細胞の中胚葉細胞への分化は10cm組織培養プレート中で行われる。
【0129】
中胚葉細胞は、さらに、さらなる使用のために単一細胞に解離させうる。一態様では、多能性幹細胞のインビトロ分化によって生産された中胚葉細胞を、酵素処理によって単一細胞に解離させる。
【0130】
一態様において、中胚葉細胞は、CD309/KDR、CD56/NCAM1、APLNR/APJ、GARPおよびCD13を含む群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つのマーカーを発現する。
【0131】
中胚葉細胞は、N-カドヘリン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンB、アクチビンC、BMPおよび他のアクチビン受容体活性化因子、BMPおよび他のアクチビン受容体阻害因子、BMP-2、BMP-2/BMP-4、BMP-2/BMP-6ヘテロ二量体、BMP-2/BMP-7ヘテロ二量体、BMP-2a、BMP-4、BMP-6、BMP-7、クリプティック(Cryptic)、FABP4/A-FABP、FGF-5、GDF-1、GDF-3、INHBA、INHBB、ノーダル、TGF-ベータ、TGF-ベータ1、TGF-ベータ1、2、3、TGF-ベータ1.2、TGF-ベータ1/1.2、TGF-ベータ2、TGF-ベータ2/1.2、TGF-ベータ3、TGF-ベータ受容体阻害因子、Wnt-3a、Wnt-8a、MESDC2、ニカリン、ブラキウリ、EOMES、FoxC1、FoxF1、グースコイド、HAND1、MIXL1、スラッグ、スネイル、TBX6、Twist-1およびTwist-2からなる群より選択される1つまたは複数の他の中胚葉マーカーも発現しうる。
【0132】
本発明の方法によって生産される中胚葉細胞を、本明細書において開示する2つのプラットホームのうちの一方、すなわち3D-バスキュロノイド分化プラットホームまたは2D分化プラットホームを使って、中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)へと、さらに分化させる。
【0133】
3D-バスキュロノイド分化プラットホームは、多能性幹細胞、例えばhESCまたはhiPSCから生産された中胚葉細胞を、meso-VPCにインビトロ分化させるための方法を提供する。
【0134】
3D-バスキュロノイド分化プラットホームの方法は、培養培地中、非接着条件下または低接着条件下で、例えば超低付着表面または浮遊培養で、中胚葉細胞を培養することによって行われ、培養培地は、分化をサポートする任意の培養培地であってよく、当技術分野において公知でありうる。いくつかの態様において、培養培地は、血液血管培養および/または血液血管拡大をサポートする任意の培地であってよく、例えばStemline(登録商標)II(Sigma)、StemSpan(商標)SFEMII(StemCell Technologies)、StemSpan(商標)AFC(StemCell Technologies)、最小必須培地(MEM)(Gibco)およびαMEMが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある態様において、培養培地は無血清である。別の一態様において、培養培地は血清を含む。培養培地は、中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化を誘導する1つまたは複数の因子、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質4(BMP4)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子およびフォルスコリンを、さらに含みうる。一態様において、本方法において使用されるVEGFはVEGF165である。一態様において、本方法において使用されるFGFは塩基性FGF(bFGF)である。一態様において、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子はSB431542である。一態様において、多能性幹細胞は、VEGF165、bFGF、BMP4およびSB431542を含む培養培地中で培養される。一態様において、多能性幹細胞は、VEGF165、bFGF、BMP4、SB431542およびフォルクソコリン(Forksolin)を含む培養培地中で培養される。一態様において、培養継続時間は約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日である。一態様において、培養継続時間は約5日である。一態様において、培養培地は、分化の開始から約2日後および約4日後に交換される。
【0135】
VEGF、例えばVEGF165は、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、VEGFは、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。FGF、例えばbFGFは、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、FGFは、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。BMP4は、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、BMP4は、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子、例えばSB431542は、約0.1μM~約100μMの濃度で、またはより好ましくは約1μM~約100μMの濃度で、使用することができる。一態様において、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子は、約0.1μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μMまたは100μMの濃度で使用される。フォルスコリンは約0.1μM~約10μMの濃度で使用することができる。一態様において、フォルスコリンは、約0.1μM、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、5μM、5.5μM、6μM、6.5μM、7μM、7.5μM、8μM、8.5μM、9μM、9.5μMまたは10μMの濃度で使用される。
【0136】
一態様において、VEGFは約50ng/mLの濃度で使用され、FGFは約50ng/mLの濃度で使用され、BMP4は約25ng/mLの濃度で使用され、低分子阻害因子は約10μMの濃度で使用され、フォルスコリンは約2μMの濃度で使用される。
【0137】
3D-バスキュロノイド分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化は、約5%CO2および約20%O2の正常酸素濃度条件下で、または多能性幹細胞の分化に適した他の公知の条件下で、行われうる。
【0138】
3D-バスキュロノイド分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化は、当技術分野において公知の任意の適切な容器中で行われうる。例示的な組織培養容器として、15cm組織培養プレート、10cm組織培養プレート、3cm組織培養プレート、6ウェル組織培養プレート、12ウェル組織培養プレート、24ウェル組織培養プレート、48ウェル組織培養プレート、96ウェル組織培養プレート、T-25組織培養フラスコおよびT-75組織培養フラスコが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。一態様において、3D-バスキュロノイド分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化は、10cm組織培養プレートで行われる。
【0139】
3D-バスキュロノイド分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化は、非接着条件下で、または細胞が培養器に最小限にしか接着しない低接着条件下で、行われうる。一態様において、3D-バスキュロノイド分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化は、超低付着表面または浮遊培養で行われる。
【0140】
いくつかの態様において、3D-バスキュロノイド分化プラットホームによって生産されたmeso-VPCはバスキュロノイドを形成する。本明細書にいうバスキュロノイドとは、血管細胞系譜、例えばmeso-VPCによって形成される細胞凝集物、例えばコロニー様凝集物を指す。バスキュロノイドの形態は、血管細胞を生産するために使用される方法に依存してさまざまでありうる。本発明は、単一細胞を得るためにバスキュロノイド中の複数の細胞を解離させる方法を、さらに提供する。一態様において、3D-バスキュロノイド分化プラットホームによって生産されるmeso-VPCは、さらに、単一細胞に解離させうる。一態様において、バスキュロノイド中の複数のmeso-VPCが、酵素処理により、単一細胞に解離される。
【0141】
2D分化プラットホームは、多能性幹細胞、例えばhESCまたはhiPSCから生産された中胚葉細胞を、meso-VPCにインビトロ分化させるための方法を提供する。
【0142】
2D分化プラットホームの方法は、培養培地中、適切な表面、例えば細胞外マトリックス表面で、中胚葉細胞を培養することによって行われる。いくつかの態様において、細胞外マトリックスは、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸、EHS(Engelbreth-Holm-Swarm)マウス肉腫細胞からの可溶性調製物、Matrigel、ゼラチンおよびヒト基底膜抽出物からなる群より選択される。一態様において、細胞外マトリックスは、ヒトを含む任意の哺乳動物起源に由来しうる。一態様において、中胚葉細胞のインビトロ分化のための細胞外マトリックス表面はコラーゲンIVコート表面である。
【0143】
培養培地は、中胚葉細胞の分化をサポートする任意の培地であってよく、当技術分野において公知の培養培地でありうる。いくつかの態様において、培養培地は、血液血管培養および/または血液血管拡大をサポートする任意の培地であってよく、例えばStemline(登録商標)II(Sigma)、StemSpan(商標)SFEMII(StemCell Technologies)、StemSpan(商標)AFC(StemCell Technologies)、最小必須培地(MEM)(Gibco)およびαMEMが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある態様において、培養培地は無血清である。別の一態様において、培養培地は血清を含む。培養培地は、中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化を誘導する1つまたは複数の因子を、さらに含みうる。これらの因子は、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質4(BMP4)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子およびフォルスコリンから選択される。一態様において、本方法において使用されるVEGFはVEGF165である。一態様において、本方法において使用されるFGFは塩基性FGF(bFGF)である。一態様において、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子はSB431542である。
【0144】
ある態様において、中胚葉細胞を分化させてmeso-VPCを得るための2D分化プラットホームの方法は、2つの工程を含む。中胚葉細胞を、まず、分化をサポートする培養培地中で分化させる。この培養培地は、当技術分野において公知の培養培地でありうる。いくつかの態様において、培養培地は、血液血管培養および/または血液血管拡大をサポートする任意の培地であってよく、例えばStemline(登録商標)II(Sigma)、StemSpan(商標)SFEMII(StemCell Technologies)、StemSpan(商標)AFC(StemCell Technologies)、最小必須培地(MEM)(Gibco)およびαMEMが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある態様において、培養培地は無血清である。別の一態様において、培養培地は血清を含む。培養培地は、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質4(BMP4)およびフォルスコリンから選択される1つまたは複数の因子を、さらに含みうる。一態様において、培養培地はVEGF165、bFGFおよびBMP4を含む。一態様において、培養培地はVEGF165、bFGF、BMP4およびフォルスコリンを含む。この工程における培養は約12時間~約2日間行われる。一態様において、中胚葉細胞をmeso-VPCに分化させるための2D分化プラットホームの第1工程は、約1日間行われる。
【0145】
VEGF、例えばVEGF165は、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、VEGFは、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。FGF、例えばbFGFは、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、FGFは、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。BMP4は、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、BMP4は、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。フォルスコリンは約0.1μM~約10μMの濃度で使用することができる。一態様において、フォルスコリンは、約0.1μM、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、5μM、5.5μM、6μM、6.5μM、7μM、7.5μM、8μM、8.5μM、9μM、9.5μMまたは10μMの濃度で使用される。
【0146】
一態様において、VEGFは約50ng/mLの濃度で使用され、FGFは約50ng/mLの濃度で使用され、BMP4は約25ng/mLの濃度で使用され、フォルスコリンは約2μMの濃度で使用され。
【0147】
2D分化プラットホームを用いる中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化の第1工程は、約5%CO2および約20%O2の正常酸素濃度条件下で、または中胚葉細胞の分化に適した他の公知の条件下で行われうる。
【0148】
2D分化プラットホームの第2工程は、第1工程で得られた細胞を、分化をサポートする培養培地中で、meso-VPCにさらに分化させる。いくつかの態様において、培養培地は、血液血管培養および/または血液血管拡大をサポートする任意の培地であってよく、例えばStemline(登録商標)II(Sigma)、StemSpan(商標)SFEMII(StemCell Technologies)、StemSpan(商標)AFC(StemCell Technologies)、最小必須培地(MEM)(Gibco)およびαMEMが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある態様において、培養培地は無血清である。別の一態様において、培養培地は血清を含む。培養培地は、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質4(BMP4)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子および/またはフォルスコリンなどといった1つまたは複数の因子を、さらに含みうる。一態様において、培養培地は、VEGF165、bFGF、BMP4およびSB431542を含む。一態様において、培養培地は、VEGF165、bFGF、BMP4、SB431542およびフォルスコリンを含む。この工程における培養は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日間行われる。一態様において、中胚葉細胞をmeso-VPCに分化させるための2D分化プラットホームの第2工程は、約6日間行われる。一態様において、培養培地は、2D分化プラットホームの第2工程の開始から約2日後および約4日後に交換される。
【0149】
VEGF、例えばVEGF165は、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、VEGFは、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。FGF、例えばbFGFは、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、FGFは、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。BMP4は、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度で、またはより好ましくは約10ng/mL~約100ng/mLの濃度で、使用することができる。一態様において、BMP4は、約1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、55ng/mL、60ng/mL、65ng/mL、70ng/mL、75ng/mL、80ng/mL、85ng/mL、90ng/mL、95ng/mLまたは100ng/mLの濃度で使用される。トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子、例えばSB431542は、約0.1μM~約100μMの濃度で、またはより好ましくは約1μM~約100μMの濃度で、使用することができる。一態様において、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)I型受容体の低分子阻害因子は、約0.1μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μMまたは100μMの濃度で使用される。フォルスコリンは約0.1μM~約10μMの濃度で使用することができる。一態様において、フォルスコリンは、約0.1μM、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、5μM、5.5μM、6μM、6.5μM、7μM、7.5μM、8μM、8.5μM、9μM、9.5μMまたは10μMの濃度で使用される。
【0150】
一態様において、VEGFは約50ng/mLの濃度で使用され、FGFは約50ng/mLの濃度で使用され、BMP4は約25ng/mLの濃度で使用され、低分子阻害因子は約10μMの濃度で使用され、フォルスコリンは約2μMの濃度で使用される。
【0151】
2D分化プラットホームを用いる中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化の第2工程は、約5%CO2および約5%O2の低酸素濃度条件下で、または血管前駆細胞への分化に適した他の公知の条件下で行われうる。
【0152】
2D分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの二段階分化は、当技術分野において公知の任意の適切な容器中で行われうる。例示的な組織培養容器として、15cm組織培養プレート、10cm組織培養プレート、3cm組織培養プレート、6ウェル組織培養プレート、12ウェル組織培養プレート、24ウェル組織培養プレート、48ウェル組織培養プレート、96ウェル組織培養プレート、T-25組織培養フラスコおよびT-75組織培養フラスコが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。一態様において、2D分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化は、T-75組織培養フラスコで行われる。
【0153】
2D分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化は、任意の適切な表面で行われうる。一態様において、2D分化プラットホームを使った中胚葉細胞のmeso-VPCへの分化は細胞外マトリックス表面で行われる。一態様において、細胞外マトリックス表面はコラーゲンIVコート表面である。
【0154】
一態様において、2D分化プラットホームによって生産されたmeso-VPCは、酵素処理により、さらに、単一細胞に解離させうる。
【0155】
本発明のいくつかの態様において、各工程において生産された中胚葉細胞またはmeso-VPCは、分子マーカー、例えば細胞表面マーカーまたはmiRNAマーカーの、一定の発現プロファイルを持つ細胞を選択するために、当技術分野において公知の方法、例えばフローサイトメトリーによって、さらに選別されうる。本発明の方法によって生産された細胞を特徴づける方法を以下にさらに記載する。
【0156】
III. meso-VPCの特徴および組成物
本発明は、本明細書に開示する方法を使って多能性幹細胞から誘導された中胚葉細胞のインビトロ分化によって得られる中胚葉由来血管前駆細胞(meso-VPC)を提供する。一態様では、多能性幹細胞をまず中胚葉細胞に分化させ、次にそれをmeso-VPCに分化させる。一定の表現型マーカーの発現レベルは、フローサイトメトリー/蛍光活性化細胞選別法(FACS)、単一細胞mRNAプロファイリングまたは免疫組織化学などといった、当技術分野において公知の任意の方法によって決定されうる。一定の遺伝子の発現は、RT-PCRおよびRNA-Seqなど、当技術分野において公知の任意の方法によって決定されうる。
【0157】
一態様において、本発明のmeso-VPCの集団は、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つのマーカーを発現する。一態様において、meso-VPCの集団は、CD31/PECAM1、CD309/KDRおよびCD146を発現する。別の一態様において、meso-VPCの集団は、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD146、ならびに(i)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD43またはPDGFRbのうちの少なくとも1つ、(ii)CD34、CD184/CXCR4およびPDGFRb、(iii)CD184/CXCR4、(iv)PDGFRb、(v)CD144およびCD184/CXCR4、(vi)CD184/CXCR4およびCD43、または(vii)CC184/CXCFR4を発現する。ある態様において、meso-VPCの集団は、組成物中のmeso-VPCの少なくとも約20%がある特定マーカーを発現するのであれば、そのマーカーを発現するとみなされる。
【0158】
どの態様においても、meso-VPCの集団は、CXCR7、CD45およびNG2のうちの1つまたは複数の限定的な検出を示すか、または検出を示さない。どの態様においても、meso-VPCの集団は、CXCR7、CD45およびNG2のすべての限定的な検出を示すか、または検出を示さない。どの態様においても、meso-VPCの集団は、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CXCR7、CD43、CD45、PDGFRbまたはNG2のうちの1つまたは複数の限定的な検出を示すか、または検出を示さない。ある態様において、meso-VPCの集団は、あるマーカーを発現するのが組成物中のmeso-VPCの約20%未満であるなら、そのマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さないとみなされる。
【0159】
一態様では、組成物中のmeso-VPCの少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%が、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD43、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD146およびPDGFRbからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つのマーカーを発現する。本発明の一態様において、本発明の組成物中のmeso-VPCの少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、CD31/PECAM1、CD309/KDRおよびCD146を発現する。本発明の一態様において、本発明の組成物中のmeso-VPCの少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、CD31/PECAM1、CD309/KDR、CD146、ならびに(i)CD144、CD34、CD184/CXCR4、CD43もしくはPDGFRbのうちの少なくとも1つ、(ii)CD34、CD184/CXCR4およびPDGFRb、(iii)CD184/CXCR4、(iv)PDGFRb、(v)CD144およびCD184/CXCR4、(vi)CD184/CXCR4およびCD43、または(vii)CC184/CXCFR4を発現する。
【0160】
どの態様でも、CXCR7、CD45およびNG2のうちの1つまたは複数を発現するのは、本発明の組成物中のmeso-VPCの約20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。どの態様でも、CXCR7、CD45およびNG2のすべてを発現するのは、本発明の組成物中のmeso-VPCの約20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。どの態様でも、CD144、CD34、CD184/CXCR4、CXCR7、CD43、CD45、PDGFRbまたはNG2のうちの1つまたは複数を発現するのは、本発明の組成物中のmeso-VPCの約20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。
【0161】
本発明のmeso-VPCは単一細胞miRNAプロファイルによってさらに特徴づけうる。一態様において、本発明のmeso-VPCは、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つのmiRNAマーカーについて陽性である。どの態様においても、meso-VPCは、mir367、mir302a、mir302b、mir302c、mirLet7-e、mir223、mir99a、mir142-3pおよびmir133aからなる群より選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたは少なくとも9つについて、陰性である。一態様において、meso-VPCは、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pについて陽性である。別の一態様において、meso-VPCはmir483-5pについて陽性である。
【0162】
一態様において、組成物中のmeso-VPCの約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つのmiRNAマーカーについて陽性である。本発明の一態様において、組成物中のmeso-VPCの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つのマーカーについて陽性である。どの態様でも、mir367、mir302a、mir302b、mir302c、mirLet7-e、mir223、mir99a、mir142-3pおよびmir133aからなる群より選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたは少なくとも9つを発現するのは、組成物中のmeso-VPCの約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。本発明の一態様において、組成物中のmeso-VPCの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、mir126、mir125a-5p、mir24およびmir483-5pについて陽性である。別の一態様において、組成物中のmeso-VPCの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、mir483-5pについて陽性である。
【0163】
一態様において、meso-VPCの集団は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-483-3p、miR214、miR335-3pおよびmiR-199a-3pから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個または少なくとも15個のmiRNAマーカーを発現する。一態様において、meso-VPCの集団は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを発現する。ある態様において、meso-VPCの集団は、組成物中のmeso-VPCの少なくとも約20%がある特定マーカーを発現するのであれば、そのマーカーを発現するとみなされる。
【0164】
一態様において、組成物中のmeso-VPCの約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-483-3p、miR214、miR335-3pおよびmiR-199a-3pから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個または少なくとも15個のmiRNAマーカーを発現する。本発明の一態様において、組成物中のmeso-VPCの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-483-3p、miR214、miR335-3pおよびmiR-199a-3pから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個または少なくとも15個のmiRNAマーカーを発現する。一態様において、組成物中のmeso-VPCの約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを発現する。一態様において、組成物中のmeso-VPCの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを発現する。
【0165】
一態様において、meso-VPCの集団は、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3p、hsa-miR-133a-5p、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つまたは少なくとも7つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さない。一態様において、meso-VPCの集団は、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3pおよびhsa-miR-133a-5pの限定的な発現を示すか、または発現を示さない。ある態様において、meso-VPCの集団は、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pの限定的な発現を示すか、または発現を示さない。ある態様において、meso-VPCの集団は、あるマーカーを発現するのが組成物中のmeso-VPCの約20%未満であるなら、そのマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さないとみなされる。
【0166】
一態様において、組成物中のmeso-VPCの約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3pおよびhsa-miR-133a-5pから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さない。一態様において、組成物中のmeso-VPCの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、hsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3pおよびhsa-miR-133a-5pから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのmiRNAマーカーの限定的な発現を示すか、または発現を示さない。
【0167】
上述の特徴に加えて、本発明のmeso-VPCは、血管前駆細胞の他の性質、例えば内皮細胞、平滑筋細胞および造血細胞などの血管細胞に分化する潜在力などを備えている。一態様において、本発明のmeso-VPCは、血管内皮細に分化する潜在力を備えている。meso-VPCの他の血管細胞性は、例えばMatrigelおよびAcLDL取込みアッセイによって決定することができる。
【0168】
一態様において、本発明のmeso-VPCは、敷石状内皮様形態などといった血管細胞の形態を有する。本発明のmeso-VPCを特徴づける他の方法として、染色体の完全性を決定するための核型分析が挙げられる。
【0169】
ある態様において、本発明のmeso-VPCは、多能性幹細胞および中胚葉細胞に関して、実質的に精製される。さらなる一態様において、本発明のmeso-VPCは、該細胞が少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のmeso-VPCを含むように、多能性幹細胞および中胚葉細胞に関して実質的に精製される。多能性幹細胞は、本明細書に記載する任意の多能性幹細胞でありうる。
【0170】
meso-VPCは、約30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%または0.0001%未満の多能性幹細胞および中胚葉細胞を含みうる。本組成物は多能性幹細胞および中胚葉細胞を欠きうる。
【0171】
IV. meso-VPCを含む薬学的組成物
本発明は、本明細書に記載するmeso-VPCのいずれかを含む薬学的組成物を提供する。本発明のmeso-VPCを含む薬学的組成物は薬学的に許容される担体と共に製剤化することができる。例えば本発明のmeso-VPCは、単独で投与するか、薬学的製剤の一構成要素として投与することができ、この場合、meso-VPCは、医学において使用するための任意の好都合な方法で投与するために製剤化されうる。本開示に適した担体としては従来使用されているものが挙げられ、例えば水、食塩水、デキストロース水溶液、ラクトース、リンゲル液、緩衝溶液、ヒアルロナンおよびグリコールは、特に(等張である場合は)溶液剤用の、例示的な液状担体である。
【0172】
他の例示的な担体または賦形剤は、例えばHardman,et al.(2001)Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,N.Y.、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,N.Y.、Avis,et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY、Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY、Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY、およびWeiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.に記載されている。
【0173】
meso-VPCを含む薬学的組成物は、分散液、懸濁液、乳液からなる群より選択される1つもしくは複数の薬学的に許容される滅菌された等張水溶液もしくは非水性溶液、任意で使用直前に滅菌された注射可能な溶液もしくは分散液に再構成される滅菌粉末、酸化防止剤、緩衝剤、殺細菌剤、溶質または懸濁化および増粘剤と組み合わせて、製剤化することができる。
【0174】
例示的な本発明の薬学的組成物は、ヒト患者、例えば血管疾患または血管障害を患っている患者の処置に使用するのに適した、任意の製剤でありうる。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物は、注射可能物、例えば筋肉内注射に適した物として製剤化される。meso-VPCを含む薬学的組成物は、溶液を生理学的浸透圧に維持する浸透圧活性剤をさらに含有する生理的pHの緩衝溶液に入れて投与されうる。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物は、少なくとも5%(w/v)グルコースを含む緩衝液に入れて投与されうる。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物は、塩化ナトリウムを含む緩衝液に入れて投与されうる。当技術分野において公知の他の試薬類も、薬学的組成物を製剤化するために使用することができる。一態様において、薬学的組成物を製剤化するために使用される緩衝剤または溶液は、使用前に滅菌される。
【0175】
本明細書に記載する方法において使用されるmeso-VPCを含む薬学的組成物は、懸濁液、ゲル、コロイド、スラリーまたは混合物として送達されうる。また、送達時には、凍結保存されたmeso-VPCを、(例えばボーラスまたは静脈内)注射による投与にとって望ましい浸透圧および濃度が得られるように、市販の平衡塩類溶液で再懸濁しうる。meso-VPCを含む薬学的組成物は、耐久性のある不活性マトリックスと混合されて、例えば対象への1回または複数回の注射によって送達されうる。耐久性のある不活性マトリックス、例えばヒドロゲル--天然または合成の水不溶性ポリマー--は、投与部位における細胞の成長と拡大のための足場になりうる。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物は、ヒアルロナンヒドロゲルに入れて投与される。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物は、メチルセルロースヒドロゲルに入れて投与される。細胞の成長および拡大のための耐久性のある不活性マトリックス足場となる当技術分野において公知の他の適切な物質も、本明細書記載の方法において使用することができる。
【0176】
meso-VPCを含む薬学的組成物は、例えば注射器を使って、1回または複数回の注射によって送達されうる。あるいは、meso-VPCを含む薬学的組成物は、当技術分野において公知の他の適切な方法によって送達されうる。適切な送達方法は、さらに、meso-VPCの成長と生残を容易にし、投与部位における細胞喪失を防ぐ。一定の態様において、適当な送達方法は、meso-VPCを投与部位にとどめ、細胞成長にとって最適な環境を与えるのを助ける。したがって、meso-VPCを含む薬学的組成物は、例えばヒドロゲルチューブ、ヒドロゲルシート、天然素材もしくは人工素材で作られたバイオ工学パッチ(bioengineered patch)、または薬学的組成物中のmeso-VPCに十分なサポートを提供する細胞シートに製剤化することもできる。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物はヒドロゲルチューブの形態で送達される。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物はヒドロゲルシートの形態で送達される。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物は、バイオ工学パッチの形態で送達される。一態様において、meso-VPCを含む薬学的組成物は、細胞シートの形態で送達される。当技術分野において公知の他の任意の適切な方法も、本明細書に記載する薬学的組成物の送達において使用することができる。
【0177】
薬学的組成物は、典型的には、滅菌されていなければならず、製造条件下および貯蔵条件下で安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソームまたは他の秩序だった構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびに適切なそれらの混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることが望ましいだろう。注射可能な組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることによって生じさせることができる。さらにまた、可溶性因子を、持効性製剤として、例えば遅放性ポリマーを含む組成物として、投与しうる。活性化合物は、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、化合物を急速な放出から保護する担体を使って調製されうる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、およびポリ乳酸ポリグリコール酸コポリマー(PLG)などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は数多く特許され、または当業者に広く公知である。
【0178】
本発明の一局面は、少なくとも104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012または1013個のmeso-VPCと薬学的に許容される担体とを含む、ヒト患者などの哺乳動物患者における使用に適した薬学的組成物に関する。meso-VPCの薬学的調製物の投与のための濃度は、有効な任意の量であることができ、例えばPSCを実質的に含まない。例えば薬学的組成物は本明細書に記載する数およびタイプのmeso-VPCを含みうる。ある特定態様において、meso-VPCの薬学的組成物は、それを必要とする宿主への全身性投与用に、約1×104~約1×105、約1×105~約1×106、約1×106~約1×107、約1×107~約1×108、約1×108~約1×109、約1×109~約1×1010、約1×1010~約1×1011、約1×1011~約1×1012または約1×1012~約1×1013個のmeso-VPCを含むか、またはそれを必要とする宿主への局所投与用に約1×104~約1×105、約1×105~約1×106、1×106~約1×107、約1×107~約1×108、約1×108~約1×109、約1×109~約1×1010、約1×1010~約1×1011、約1×1011~約1×1012、または約1×1012~約1×1013個のmeso-VPCを含む。
【0179】
V. 血管疾患を処置する方法
本明細書に記載するmeso-VPCおよびmeso-VPCを含む薬学的組成物は、細胞ベースの処置に使用されうる。特に本発明は、重症虚血肢などの血管疾患を処置するための方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に、有効量のmeso-VPCを投与する工程を含み、meso-VPCは多能性幹細胞から誘導された中胚葉細胞のインビトロ分化によって得られる。一態様では、多能性幹細胞を中胚葉細胞に分化させ、それを次にmeso-VPCに分化させる。
【0180】
血管疾患とは、血管(動脈および静脈)の任意の異常状態を指す。心臓外の血管疾患はどこにでも出現しうる。最もよくある血管疾患は卒中、末梢動脈疾患(PAD)、腹部大動脈瘤(AAA)、頸動脈疾患(CAD)、動静脈奇形(AVM)、重症虚血肢(CLI)、肺塞栓症(凝血塊)、深部静脈血栓症(DVT)、慢性静脈不全症(CVI)および静脈瘤である。一態様において、血管疾患は末梢動脈疾患(PAD)である。一態様において、血管疾患は重症虚血肢(CLI)などの虚血性疾患である。一態様において、血管疾患は、アテローム性動脈硬化、末梢動脈疾患(PAD)、頸動脈疾患、静脈疾患、凝血塊、大動脈瘤、線維筋性異形成、リンパ浮腫または血管傷害である。一態様において、血管疾患は、重症虚血肢(CLI)、腸虚血症候群、腎動脈疾患、膝窩動脈捕捉症候群、レイノー現象、またはバージャー病などの末梢動脈疾患である。
【0181】
meso-VPCまたは薬学的組成物は、対象における任意の血管疾患を処置するために使用されうる。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物は、末梢動脈疾患を処置するために使用される。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物は、重症虚血肢(CLI)、腸虚血症候群、腎動脈疾患、膝窩動脈捕捉症候群、レイノー現象、またはバージャー病を含む末梢動脈疾患を処置するために使用される。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物は重症虚血肢(CLI)を処置するために使用される。
【0182】
本発明のmeso-VPCまたは薬学的組成物は全身的または局所的に投与されうる。meso-VPCまたは薬学的組成物は、例えば限定するわけではないが、処置される特定の病態に応じて、静脈内、頭蓋内、筋肉内、腹腔内への注射、または他の投与経路、または局所埋込みなどといった、当技術分野において公知のモダリティを使って投与されうる。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物は筋肉内に投与される。
【0183】
本発明のmeso-VPCまたは薬学的組成物は、送達デバイスを利用して、局所埋込みによって投与してもよい。本発明の送達デバイスは生体適合性かつ生分解性である。本発明の送達デバイスは、生体適合性繊維、生体適合糸、生体適合性フォーム、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、ポリシュウ酸アルキレン、ポリアミド、チロシン由来ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、生体高分子;ラクチド、グリコリド、イプシロン-カプロラクトン、パラ-ジオキサノン、トリメチレンカーボネートのホモポリマーおよびコポリマー;ラクチド、グリコリド、イプシロン-カプロラクトン、パラ-ジオキサノン、トリメチレンカーボネートのホモポリマーおよびコポリマー、線維性コラーゲン、非線維性コラーゲン、ペプシン処理されていないコラーゲン、他のポリマー、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質、生体関連ペプチドフラグメント、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、多血小板血漿、インスリン増殖因子、増殖分化因子、血管内皮細胞由来増殖因子、ニコチンアミド、グルカゴン様ペプチド、テネイシンC、ラミニン、抗拒絶剤、鎮痛薬、酸化防止剤、抗アポトーシス剤、抗炎症剤および細胞増殖阻害剤と組み合わされたコラーゲンを含むから選択される素材を使って製造することができる。
【0184】
特定の処置レジメン、投与経路およびアジュバント治療は、その特定病態、病態の重症度、患者の総合的健康状態に基づいて調整しうる。meso-VPCまたは薬学的組成物の投与は、病態発現の重症度を低減しおよび/または病態発現のさらなる変性を防止するのに有効でありうる。
【0185】
本発明の処置モダリティは、meso-VPCまたは薬学的組成物の単回投与の施行を含みうる。あるいは、本明細書に記載する処置モダリティは、meso-VPCまたは薬学的組成物がある期間の間に複数回投与される1クールの治療を含みうる。例示的な処置クールは、週1回、2週に1回、月1回、年4回、年2回、または年1回の処置を含みうる。あるいは、処置は、最初に複数回の投与(例えば第1週は毎日の投与)が要求され、次にそれよりも回数の少ない低頻度の投薬が必要になるというように、段階的に進行してもよい。
【0186】
一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物は、患者に、1回または患者の生涯にわたって定期的に複数回投与される。本発明のさらに別の態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物は、年に1回、6~12ヶ月ごとに1回、3~6ヶ月ごとに1回、1~3ヶ月ごとに1回、または1~4週ごとに1回、投与される。あるいは、一定の状態または障害には、さらに頻繁な投与が望ましい場合もありうる。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物は、デバイスを使って、1回、患者の生涯にわたって周期的に複数回、またはその特定患者の必要および処置される患者の病態に応じて、投与される。また、時間と共に変化する治療レジメンも考えられる。例えば、初めのうちは、より頻繁な処置(例えば毎日または週1回の処置)が必要になりうる。時間と共に、患者の状態が改善するにつれて、必要な処置頻度が減ったり、さらにはさらなる処置が必要なくなったりしうる。
【0187】
いくつかの態様では、約1×104、約1×105、約1.5×105、約2×105、約5×105、約1×106、約5×106、約1000万、約2000万、約4000万、約6000万、約8000万、約1億、約1億2000万、約1億4000万、約1億6000万、約1億8000万、約2億、約2億2000万、約2億4000万、約2億6000万、約2億8000万、約3億、約3億2000万、約3億4000万、約3億6000万、約3億8000万、約4億、約4億2000万、約4億4000万、約4億6000万、約4億8000万、約5億、約5億2000万、約5億4000万、約5億6000万、約5億8000万、約6億、約6億2000万、約6億4000万、約6億6000万、約6億8000万、約7億、約7億2000万、約7億4000万、約7億6000万、約7億8000万、約8億、約8億2000万、約8億4000万、約8億6000万、約8億8000万、約9億、約9億2000万、約9億4000万、約9億6000万または約9億8000万個のmeso-VPCが対象に投与される。いくつかの態様では、約10億、約20億、約30億、約40億もしくは約50億個またはそれ以上のmeso-VPCが投与される。いくつかの態様において、meso-VPCの数の範囲は、約2000万~約40億個のmeso-VPC、約4000万~約10億個のmeso-VPC、約6000万~約7億5000万個のmeso-VPC、約8000万~約4億個のmeso-VPC、約1億~約3億5000万個のmeso-VPC、および約1億7500万~約2億5000万個のmeso-VPCである。
【0188】
本明細書に記載する方法は、当技術分野において公知の方法を使って処置または防止の効力をモニタリングする工程を、さらに含みうる。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物の投与は対象における血流を増加させる。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物の投与は、対象における血管形成および血管新生などの血管化を促進する。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物の投与は、対象における虚血重症度を低減する。一態様において、meso-VPCまたは薬学的組成物の投与は、対象における壊死領域を低減する。対象における他の身体的および機能的変化も、血管疾患の処置方法の効力を決定するために測定し、定量することができる。
【0189】
VI. キット
いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の別々のコンパートメントに、本発明のmeso-VPCまたは薬学的組成物を含むキットを提供する。キットは、追加の成分、例えばゲル化剤、軟化剤、界面活性剤、保水剤、粘度増強剤、乳化剤を、1つまたは複数のコンパートメントに、さらに含みうる。キットは、任意で、診断的応用または治療的応用に向けてmeso-VPCまたは薬学的組成物を処方するための説明を含みうる。キットは、血管障害および/または血管疾患の治療において構成要素を個別にまたは一緒に使用するための説明も含みうる。一態様において、本発明のキットは、meso-VPCを含む薬学的組成物を注射するための注射器を含む。
【0190】
いくつかの態様において、本発明は、本発明のmeso-VPCを、meso-VPCを選択し、培養し、拡大し、維持し、および/または移植するための試薬類と一緒に含むキットを提供する。細胞選択キット、培養キット、拡大キット、移植キットの代表例は当技術分野において公知である。細胞は、その遺伝子産物の発現に関する正の選択、負の選択またはそれらの組合せを使うことによって、試料中に濃縮することもできる。
【0191】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに例示するが、これらの実施例は決して限定を意図していない。本願および図面の全体を通して言及される参考文献、特許および特許出願公開はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0192】
実施例1:ヒト多能性幹細胞の培養および中胚葉細胞への分化
これらの研究では専売のヒト胚性幹細胞(hES)株J1およびヒト人工多能性幹細胞(hiPS)株GMP1を使用した。細胞は、フィーダーフリー培養条件(以下、「FF」という)用にMatrigel(Corning)がプレコートされた、またはフィーダー培養条件(以下、「HDF」という)用にMatrigel+ヒト真皮線維芽細胞すなわちHDFがプレコートされた、6ウェル組織培養プレート中、37℃、5%CO2+20%O2の正常酸素濃度条件で、mTeSR1完全培地(Stem Cell Technologies)中に維持した(図1)。培地交換は細胞のプレーティング(0日目)後、1日目、2日目および3日目に行った。細胞は4日目に継代するか、細胞が60~70%コンフルエントに達した時に継代した。継代のために、FF培養したヒト多能性幹細胞には1mL/ウェルのディスパーゼ(1U/ml、STEMCELL Technologies)を使用し、HDF培養したヒト多能性幹細胞には1ml/ウェルの細胞解離緩衝液(cell dissociation buffer:CDB)(Gibco)を使用した。細胞を、37℃で5~7分間、またはコロニーの縁辺がプレートから浮き上がるまでインキュベートした。ディスパーゼまたはCDBを含有する培地をプレートから注意深く吸引除去し、細胞をDMEM-F12(Gibco)で優しく洗浄することで、酵素または緩衝液の残量をすべて除去した。次に、プレートからのコロニーの収集には新鮮mTeSR1完全培地を使用し、強い洗浄を使って、気泡が生じないように注意しながら使い捨て細胞スクレーパーで掻き落とし、次に室温(RT)において300×gで5分間の遠心分離を行うことで、細胞ペレットを得た。上清を除去した後、細胞ペレットをmTeSR1完全培地に再懸濁し、この均一に混合された細胞懸濁液1mLを、2mLのmTeSR1完全培地が入っている6ウェル組織培養プレートの各ウェル(上述のように、FF培養用にMatrigelがプレコートされたもの、またはMatrigel+HDFがプレコートされたもの)に加えた。FF培養の場合は小さな細胞集塊中のおよそ50万個の細胞を、またHDF培養の場合は小さな細胞集塊中の25万個の細胞を、各ウェルに均等に分配した。次に、旋回させないように左右に複数回動かすことにより、細胞をウェル内に拡げた。培養を成長の質および形態について毎日チェックした。
【0193】
多能性幹細胞を中胚葉細胞に分化させる場合、5mLのMatrigel/ディッシュを加えることにより、Matrigelプレコート10cm組織培養ディッシュ(Corning)を調製した。付着しなかったマトリゲルを各ディッシュから除去した後は、マトリゲルコート表面が乾燥しきるのを避けるために、直ちに10mLのmTeSR1完全培地/10cmディッシュを加えた。各Matrigelプレコート10cmディッシュに、FF培養またはHDF培養されたGMP1細胞培養からの小さな細胞集塊中のおよそ150万個の細胞(またはHDF培養されたJ1細胞培養からの小さな細胞集塊中のおよそ300,000個の細胞/10cmディッシュ)を、10mLのTeSR1完全培地に均等に分配した。次に、旋回させないように左右に複数回動かすことにより、細胞をディッシュ内に拡げ、その後24時間(D-1)、37℃において、5%CO2+20%O2の正常酸素濃度条件で、プレートをインキュベートした(図1)。分化のD0時点で、mTeSR1完全培地を、中胚葉誘導性増殖因子アクチビンA(10ng/mL;Humanzyme)、FGF-2(10ng/mL;Humanzyme)、VEGF165(10ng/mL、Humanzyme)およびBMP4(25ng/mL、Humanzyme)のカクテルを含有する12mL/10cmディッシュのStemline II培地(Sigma)で置き換えた。分化のD1時点で、アクチビンAを中胚葉カクテルから取り除き、中胚葉細胞の出現と拡大を促進するために、培地を、FGF-2(10ng/mL)、VEGF165(10ng/mL)およびBMP4(25ng/mL)を含有する12mL/ディッシュの新鮮Stemline II培地で置き換えた。最後の培地交換は、FGF-2(10ng/mL)、VEGF165(10ng/mL)およびBMP4(25ng/mL)を含有する15mL/ディッシュの新鮮Stemline II培地を加えることにより、分化のD3に行った。培養は、常に37℃、5%CO2+20%O2の正常酸素濃度条件で、4日目まで続けた(図1)。次に、Stempro Acutase酵素(Gibco)を使って細胞を単一細胞に解離させることによって、細胞を回収した。細胞の特徴づけ(FACSおよびq-PCR分析による)を行うことで、D4に回収された細胞に中胚葉の特徴が存在することを確認した(図2A~B)。
【0194】
実施例2:3D-バスクロノイド(vasclonoid)分化プラットホームによるヒト中胚葉細胞の血管前駆細胞(MESO-VPC)への分化
超低付着組織培養ディッシュ(Corning)を使用し、血管前駆細胞の出現および拡大を促進する因子の存在下で、実施例1において得た中胚葉細胞をVPC分化培地に懸濁することにより、新規3Dバスキュロノイド分化プラットホームを開発した(図3)。D0に、100万個の無選別D4中胚葉細胞を超低付着6ウェルプレートの各ウェルに懸濁し、VPC 3D分化培地(50ng/mL VEGF165、50ng/mL FGF-2、25ng/mL BMP4、10μM SB431542を含有し、2μMフォルスコリンを含む(「Meso-3DバスキュロノイドVPC1」プロトコール)またはフォルスコリンを含まない(「Meso-3DバスキュロノイドVPC2」プロトコール)、Stemline II培地)中、正常酸素濃度(37℃、5%CO2および20%O2)下で分化させた。それぞれの培地をD2およびD4に交換し、分化培養を5日目に完了した。5日間の分化後に、両プロトコールからのMESO-VPCを、Stempro Acutase酵素を使って単一細胞に解離させることによって回収した。次に細胞をカウントし、生存率を測定してから、冷凍保存した。
【0195】
実施例3:2D分化プラットホームによるヒト中胚葉細胞の血管前駆細胞(MESO-VPC)への分化
実施例1に従って生産された中胚葉細胞を接着性ヒト細胞外マトリックス(コラーゲンIVコート組織培養ディッシュ)上に播種することによって、新規2DベースのVPC分化プラットホームも開発した。D0に、120万個の無選別D4中胚葉細胞(上記から)をヒトコラーゲンIVコート(5mg/cm2)T-175フラスコ(Corning)上に播種し、VPC 2D分化培地中で、2つの異なる(Meso-2D VPC2およびMeso-2D VPC3)分化プロトコールを使って分化させた(図4)。Meso-2D VPC2プロトコールには、D0に、50ng/mL VEGF165、50ng/mL FGF-2および25ng/mL BMP4を含有するStemline II培地を使用し(40mL/フラスコ)、D1(45mL/フラスコ)からD7までは、50ng/mL VEGF165、50ng/mL FGF-2、25ng/mL BMP4を含有するStemline II培地+10μM SB431542を使用した。Meso-2D VPC3プロトコールには、D0に、50ng/mL VEGF165、50ng/mL FGF-2、25ng/mL BMP4および2μMフォルスコリンを含有するStemline II培地を使用し、D1からD7までは、50ng/mL VEGF165、50ng/mL FGF-2、25ng/mL BMP4および2μMフォルスコリンを含有するStemline II培地+10μM SB431542を使用した。D0細胞は、正常酸素濃度条件(37℃、5%CO2および20%O2)で培養した。D1~D7細胞は、低酸素濃度条件(37℃、5%CO2および5%O2)で培養し、分化のD3(50mL/フラスコ)およびD5(60mL/フラスコ)に培地交換を行った。7日間の分化後に、Stempro Acutase酵素を使った酵素的解離により、Meso-2D VPC2プロトコールおよびMeso-2D VPC3プロトコールからのMESO-VPCを単一細胞として回収した。次に、実施例2で述べたように、細胞をカウントし、生存率を測定してから、冷凍保存した。
【0196】
実施例4:Matrigel/AcLDLアッセイ
凍結保存された実施例2~3からのmeso-VPCを37℃の水浴で急速解凍した(2~3分)。次に細胞を、10mLの内皮細胞培地すなわちEC培地(LifeLine Cell TechnologyのVascuLife(登録商標)VEGF培地)と共に15mLコニカルチューブに移し、300×gで5分間遠心分離した。遠心分離後に、上清を除去し、細胞カウントのために細胞を1mLの新鮮EC培地に再懸濁した。トリパンブルーおよびNexcelom BioscienceのK2セロメーター(Cellometer)を使って細胞をカウントした。EC培地を使って濃度が10,000~20,000個の生MESO-VPC/mLである細胞懸濁液を合計18mL調製した。3mL/ウェルのこの細胞懸濁液を、フィブロネクチン(FN)コート6ウェルプレート上に正常酸素濃度条件(37℃、5%CO2および20%O2)下で3~4日間プレーティングすることで、MatrigelおよびAcLDL取込みアッセイ用の細胞を調製した。
【0197】
Matrigel/AcLDLアッセイのために、250μLの基底膜Matrigel(Corning)をNunc(商標)4ウェルプレート(Thermo Scientific)の各ウェルに加え、プレートをRTで30分インキュベートした。プレートがコーティングされたら、細胞を、1ウェルあたり250μLのEC培地中、5.0×104細胞の密度で播種した。2~3時間のプレーティング後に、培地を、AcLDL(Molecular Probes)を含有する新鮮な250μLのEC培地(5μLのAcLDL+245μLのEC培地)で置き換えた。プレートを正常酸素濃度条件下で一晩インキュベートした。24時間のインキュベーション後に、AcLDL含有培地を除去し、プレートをD-PBSで3回洗浄し、新鮮な250μLのEC培地/ウェルを加えた。最後に、キーエンス顕微鏡を使って、各ウェルの顕微鏡写真を倍率4倍で撮影した。
【0198】
実施例5:フローサイトメトリーアッセイ
5日目に回収したMeso-3DバスキュロノイドVPCと7日目に回収したMeso-2D VPCの凍結保存バイアル(上記実施例2~3で得たもの)を融解し、細胞カウント用にEC培地中に単一細胞懸濁液として調製した。細胞カウントを行った後に、細胞をFACS緩衝液(2%FBSを含有するD-PBS)に再懸濁した。表面マーカー抗体染色用に、細胞のアリコート(100,000~200,000細胞/FACSアッセイ試料)を100μLのFACS緩衝液に調製した。抗ヒトCD31/PECAM1(BioLegend)、CD34(BD Biosciences)、CD144/VE-Cadh(BioLegend)、CD309/KDR(BioLegend)、CD43(BD Biosciences)、CD45(BD Biosciences)、CD184/CXCR4(BD Biosciences)、CXCR7(BioLegend)、CD146(BioLegend)、NG2(BD Biosciences)およびPDGFRb(BioLegend)モノクローナル抗体を、総体積100μL中、5μL/試料で使用した。細胞を抗体と共に氷上で20~30分インキュベートした。インキュベーション後に、未結合の抗体を除去するために、細胞を1mLのFACS緩衝液で洗浄した。次に、細胞を300×gで5分間遠心分離し、上清を除去してから、ヨウ化プロピジウム(PI、Sigma)を含む新鮮な100μLのFACS緩衝液に1:1000の希釈度で再懸濁した。PIを細胞懸濁液に加え、FACS分析中に死細胞を排除するために、それを使用した。分析にはソニーSA3800スペクトル型アナライザーを使用した。補償は、陽性対照(HUVEC)および陰性対照(未分化のJ1またはGMP1細胞)を使用することによって設定した。
【0199】
実施例6:比較用の細胞
本発明のmeso-VPCとの比較のために、例えば米国特許第9,938,500号、米国特許第9,410,123号、WO 2013/082543、WO 2014/100779、米国特許第9,993,503号および米国仮出願第62/892,712号(2019年8月28日出願)とそれに基づく優先権を主張するそのPCT出願(これらの文献はすべて参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)に既述のHEプロトコールおよびHBプロトコールを使って、ヒト胚性幹細胞(例えばJ1 hESC)またはヒト人工多能性幹細胞(例えばGMP-1 iPSC)から、造血内皮細胞(HE)および血管芽細胞(HB)を生成させた。簡単に述べると、HEを生成させるために、hESCまたはiPSCをGibco(登録商標)細胞解離緩衝液(CDB)で解離させることで、単一細胞凝集物を得た。Y-27632(Stemgent)を10μMの最終濃度で含有するmTeSR(商標)1培地(STEMCELL Technologies)に、細胞を、400,000細胞/10mLの最終密度で再懸濁した。この細胞懸濁液10mLをコラーゲンIVコート10cmプレートに移した(-1日目)。プレートを正常酸素圧のインキュベータに一晩入れておいた。翌日(0日目)、mTeSR(商標)1/Y-27632培地を各10cmプレートから静かに取り除き、10mLのBVF-M培地[Stemline(登録商標)II造血幹細胞拡大培地(Hematopoietic Stem Cell Expansion Medium)(Sigma);25ng/mL BMP4(Humanzyme);50ng/mL VEGF165(Humanzyme);50ng/mL FGF2(Humanzyme)]で置き換えた。プレートを低酸素濃度チャンバー(5%CO2/5%O2)において2日間インキュベートした。2日目に、培地を吸引し、新鮮な10~12mLのBVF-Mを各10cmプレートに加えた。4日目に、培地を再び吸引し、新鮮な10~15mLのBVF-Mを各10cmプレートに加えた。6日目に、移植および/またはさらなる試験用に、細胞を回収した。培地を各プレートから吸引し、10mLのD-PBS(Gibco)を加えてそのD-PBSを吸引することによって、プレートを洗浄した。5mLのStemPro Accutase(Gibco)を各10cmプレートに加え、正常酸素圧のCO2インキュベータ(5%CO2/20%O2)中で3~5分間インキュベートした。細胞を5mLピペットで5回ピペッティングし、次にP1000ピペットで約5回ピペッティングした。次に細胞を30μMセルストレーナーで濾して、収集チューブに移した。10cmプレートのそれぞれを10mLのEGM-2培地(Lonza)またはStemline(登録商標)II造血幹細胞拡大培地(Sigma)で再びすすぎ、細胞を30μMセルストレーナーに通して、収集チューブに収集した。チューブを120~250×gで5分間遠心分離した。次に、細胞をEGM-2培地またはStemline(登録商標)II造血幹細胞拡大培地(Sigma)で再懸濁し、カウントした。カウント後に、細胞を遠沈し(250×g、5分間)、凍結培地(10%DMSO+熱非働化FBS)に3×106細胞/mLの濃度で再懸濁した。凍結ストックを作るために、細胞懸濁液を、クライオバイアル1本あたり2mLのFBS(Hyclone)およびDMSO(Sigma)に分注した(6×106細胞/2mL/バイアル)。
【0200】
血管芽細胞(HB)を生成させるために、hESCまたはiPSCを4mg/mLコラゲナーゼIV(Gibco)で解離させることで細胞集塊を得て、次にBV-M培地[Stemline(登録商標)II造血幹細胞拡大培地(Sigma)、25ng/mL BMP4(Humanzyme)、50ng/mL VEGF165(Humanzyme)]に再懸濁し、超低付着表面6ウェルプレート(Corning)に1ウェルあたり約750,000~1,200,000細胞の密度でプレーティングした。正常酸素圧のCO2インキュベータでプレートを48時間インキュベータに入れておくことで、胚様体を形成させた(0~2日目)。次に各ウェル中の培地と細胞を収集し、120~300gで3分間遠心分離した。上清のうちの半分を取り除き、50ng/mLのbFGFを含有する2mLのBV-Mで置き換えた。したがって細胞懸濁液中のbFGFの最終濃度は約25mg/mLになった。4mLの細胞懸濁液を超低付着表面6ウェルプレートの各ウェルにプレーティングし、正常酸素圧のCO2インキュベータにさらに48時間(2~4日目)入れておくことで、引き続き胚様体を形成させた。4日目に胚様体を15mLチューブに収集し、120~300×gで2分間遠心分離し、D-PBSで洗浄し、StemPro Accutase(Gibco)を使って単一細胞懸濁液に解離させた。FBS(Hyclone)を使ってAccutaseを不活化し、単一細胞をセルストレーナーに通し、遠心分離し、約1×106細胞/mLになるようにStemline II培地(Sigma)に再懸濁した。約3×106細胞を30mLのMethocult BGM培地[MethoCult(商標)SF H4536(EPOなし)(StemCell Technologies)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、ExCyte細胞成長サプリメント(1:100)(Millipore)、50ng/mL Flt3リガンド(PeproTech)、50ngm/ml VEGF(Humanzyme)、50ng/mL TPO(PeproTech)、30ng/mL bFGF(Humanzyme)]中で混合し、超低付着表面10cmディッシュ(Corning)に再プレーティングし、正常酸素圧のCO2インキュベータ中で7日間(4~11日目)インキュベートすることで、血管芽細胞を形成させた。11日目に、移植および/またはさらなる試験用に、血管芽細胞を回収した。血管芽細胞はメチルセルロースをD-PBS(Gibco)で希釈することによって収集した。細胞混合物を300×gで15分間、2回遠心分離し、30mLのEGM2 BulletKit培地(Lonza)またはStemlineIIに再懸濁し、上述のように細胞をカウントし、凍結した。
【0201】
実施例7A:3Dバスキュロノイド分化プラットホームによって血管前駆体の性質を持つ細胞が生成する
実施例2で述べたように、2つの異なる3D分化プロトコール(Meso-3DバスキュロノイドVPC1およびMeso-3DバスキュロノイドVPC2)を使用し、正常酸素濃度条件下(37℃、5%CO2および20%O2)で5日間、meso-VPCを生成させた(図3)。播種された中胚葉細胞は生存可能な状態を保ち、早くも1日目には細胞凝集物を形成した(データ省略)。これらの細胞凝集物(以下、これを「バスキュロノイド」という)は5日目までサイズが増大し(図5、上段)、この時点でそれらを回収した。Meso-3DバスキュロノイドVPC1プロトコールは、Meso-3DバスキュロノイドVPC2プロトコールと比較して、より大きなバスキュロノイド凝集物を生じた。細胞回収後、内皮系譜へのさらなる分化を起こす細胞の能力を決定するために、FNコートプレートに細胞を再プレーティングした。図5の中段に示すように、細胞を、内皮分化を促進する培地中、FNコートプレート上で培養すると、それらは内皮細胞に特有の敷石状の形態を獲得した。Meso-3D VPCは、毛細血管様のネットワークをMatrigel上に形成するロバストな能力も呈し、AcLDL取込みを示した(図5、下段)。VPC2細胞は、VPC1細胞と比べて、高い管形成能を示した(図5、下段)。
【0202】
加えて、血管マーカーに関するFACS分析により、J1由来およびGMP1由来のMeso-3DバスキュロノイドVPC1およびVPC2細胞はいずれも、内皮マーカーKDR、CD31ならびに内皮/周皮細胞(CD146)(図6A)のロバストな発現(>20%)と、造血マーカーCD43の低い発現を示した。それらの広範な血管マーカー発現プロファイルは、未分化多能性幹細胞(GMP1およびJ1)またはHUVEC細胞に観察される発現プロファイルおよび他のPSC由来細胞(例えばHBおよびHE)に観察されるものとは異なっていた(図6B~C)。これらの分化細胞の染色体安定性をGバンディング核型分析によって評価したところ、細胞は正常核型を呈したことから、Meso-3DバスキュロノイドVPC1プロトコールおよびMeso-3DバスキュロノイドVPC2プロトコールによるhES細胞およびhiPS細胞の分化は、分化中に染色体安定性を変化させないことが示された(データ省略)。
【0203】
実施例7B:2D分化プラットホームによって血管前駆体の性質を持つ細胞が生成する
実施例3で述べたように、2つの異なる2D分化プロトコール(Meso-2D VPC2およびMeso-2D VPC3)を使用し、正常酸素濃度培養条件下および低酸素濃度培養条件下で、合計7日間、iPS細胞(GMP1)およびhES細胞(J1)から、meso-VPCを生成させた(図4)。播種された中胚葉細胞はコラーゲンIVコート表面に付着し、成長し、2D分化接着細胞培養として、7日目(回収日)までに、より大きく緻密な細胞コロニーに拡大した(図7上段)。Meso-2D VPC2プロトコールは、Meso-2D VPC3プロトコールと比較して、J1由来細胞とGMP1由来細胞のどちらでも、より緻密な細胞コロニーを生じた(コロニーはより「刺々しい(spiky)」かまたは「ねじれて(swirly)」いた)。7日目の細胞回収後、FNコートプレート上でさらに培養して内皮培養培地に曝露したところ、細胞は、敷石状内皮様形態(図7、中段)およびMatrigel上で毛細血管様ネットワークを形成しAcLDLを取り込む能力を含む、典型的な血管前駆体の性質を呈したが(図7、下段)、meso-3D細胞よりは規模が小さかった(図5図7の下段同士の比較)。
【0204】
加えて、血管マーカーに関するFACS分析により、J1由来およびGMP1由来のMeso-2D VPC1およびMeso-2D VPC2細胞は、いずれも、CD146の高発現、内皮マーカーKDR、CD31のロバストな発現(>20%)、およびPDGFRbの検出可能な(10~40%)発現を呈することが示された。この発現プロファイルは、未分化多能性幹細胞またはHUVEC細胞に観察される発現プロファイルおよび他のPSC由来血管前駆細胞(例えばHBおよびHE)に観察されるものとは異なっていた(図6Bおよび図6C)。Meso-3D細胞と比べて、Meso-2D VPCは、より高レベルのCD146を発現し、PDGFRの特有の発現を示すことから、周皮細胞分化の傾向がより高いことが示唆された(図6A~B)。そのうえ、Meso-3Dとは異なり、Meso-2D VPCは、血液マーカーCD45またはCD43をいずれも発現しなかった。
【0205】
実施例8:単一細胞miRNAプロファイル
多能性または血管細胞アイデンティティに関連する96種のマイクロRNAの発現レベルを評価するために、単一細胞qRT-PCR分析を使ったさらなる分析を、以下に述べるように行った。TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を96種のヒトmiRNA用に注文した。体積50μLの最終ストック用に、25μLの20×Taqmanアッセイを25μLの2×アッセイローディング試薬(Assay Loading Reagent)(Fluidigm)と混合することにより、10×アッセイを調製した。66,000~250,000細胞/mLの範囲の細胞(凍結細胞または新たに回収された細胞)のアリコートを調製した。細胞をLIVE/DEAD染色溶液(LIVE/DEAD生存率/細胞毒性キット)と共に室温で10分間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、培地に懸濁し、40μmフィルタで濾過した。生存率および細胞濃度を得るためにセロメーターを使って細胞カウントを行った。細胞(60μL)を懸濁試薬(suspension reagent)(40μL)(Fluidigm)と3:2の比で混合することにより、細胞混合物を調製した。その細胞懸濁混合物6μLを、中細胞(10~17μm)用または大細胞(17~25μm)用のプライミング済(primed)C1シングルセルオートプレップIFCマイクロ流体チップ(Single-Cell Autoprep IFC microfluidic chip)にローディングし、次にそのチップを、「STA:Cell Load(1782x/1783x/1784x)」スクリプトを使って、Fluidigm C1機器で処理した。この工程により、96キャプチャーチャンバーのそれぞれに1つの細胞がキャプチャーされた。次に、そのチップをキーエンス顕微鏡に移し、各チャンバーをスキャンすることで、単一細胞キャプチャーの数、細胞の生/死状態およびキャプチャーされたダブレット/細胞凝集物をスコア化した。C1での細胞溶解、逆転写およびプレ増幅のために、回収試薬(Harvest reagent)、溶解最終ミックス(Lysis final mix)、RT最終ミックス(RT final mix)およびプレアンプミックス(Preamp mix)を、製造者のプロトコールに従って、C1チップの指定されたウェルに加えた。次に、IFCをC1に入れ、「STA:miRNA Preamp(1782x/1783x/1784x)スクリプトを使用した。cDNAの回収は翌朝に終わるようにプログラムした。cDNAを、C1チップの各チャンバーから、12.5μLのC1DNA希釈試薬が予めローディングされている新鮮96ウェルプレートに移した。テンプレートなし対照および陽性対照などのチューブ対照は、製造者の説明書に従って各実験用に調製した。96.96 Dynamic Array(商標)IFCおよびBioMark(商標)HDシステムを用いるqPCRによって、プレ増幅cDNA試料を分析した。JUNO機器におけるIFCプライミングの処理と、それに続くcDNA試料ミックスおよび10×アッセイのローディングは、製造者のプロトコールに従って行った。次に、IFCをBiomark(商標)HDシステムに入れ、プロトコール「GE96x96 miRNA Standard v1.pcl)を使ってPCRを行った。データ解析はFluidigmによって提供されたリアルタイムPCR分析ソフトウェアを使って行った。死細胞、重複(duplicate)などは解析から除去し、線形導関数ベースラインおよびユーザー検出器Ct閾ベースの方法(Linear Derivative Baseline and User Detector Ct Threshold based methods)を解析に使用した。データをヒートマップ図で表示し、CSVファイルとしてエクスポートした。次に、「R」ソフトウェアを使って「外れ値同定(Outlier Identification)」解析を行うことで「FSO」ファイルを得て、次に「自動解析(Automatic Analysis)」の説明に従った。
【0206】
結果
(表1)miRNAプロファイル
【0207】
表1に示すように、MESO-VPC(3Dまたは2D)は、多能性幹細胞miRNAマーカー(mir376、mir302a、mir302bおよびmir302c)については陰性であり、HUVECで発現するmir126、mir125a-5pおよびmir24などの内皮miRNAマーカーについては陽性だった。それでも、MESO-VPCは、HUVEC特異的miRNA(mirLet7-e、mir223およびmir99a)については陰性だった。最後に、MESO-VPCはmiRNA 483-5Pの特有の発現を示し、それぞれHBおよびHEの特有のmiRNAであるmir142-3pおよび133aについては陰性だった。
【0208】
実施例9:後肢虚血モデルにおけるインビボ試験
末梢動脈疾患(PAD)は、肢、通常は下肢への部分的な遮断または完全な遮断があって、それが血流障害および組織における低酸素をもたらす末梢血管疾患(PVD)の一形態である。PADが進行すると、重症虚血肢(CLI)の段階に達して、皮膚の潰瘍形成、壊疽およびやむを得ない切断を伴う。後肢虚血動物モデルはさまざまな治療アプローチを評価するために使用されてきた。この試験では、安定重症虚血モデル(Ishikane et al.(2008)Stem Cells,16:2625-2633)を使って、meso-VPCの効力を評価すると共に、虚血肢における血流回復の改善およびドナー細胞組込みの徴候を実証した。マウスにおける後肢虚血の誘導は、腸骨動脈および大腿動脈の近位端の2つの結紮、ならびにそれら2つの結紮間の切離を伴う。この手術によって、血流障害が起こり、引き続いて重度の虚血性損傷が起こる。
【0209】

試験開始時に6~8週齢であり、最小体重および最大体重が群平均体重の±20%の範囲内にある、マウス/Balb/cOlaHsd-Foxn1nu(Charles River Laboratories)。
【0210】
試験物品
試験品目1=実施例3に従って調製されたJ1-HDF Meso-2D VPC2
【0211】
試験品目2=実施例2に従って調製されたJ1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC2
【0212】
試験品目3=実施例3に従って調製されたGMP-1-HDF Meso-2D VPC2
【0213】
試験品目4=実施例2に従って調製されたGMP1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC2
【0214】
試験品目5=実施例2に従って調製されたGMP1-HDF Meso-3DバスキュロノイドVPC1
【0215】
ビヒクル(陰性対照)
GS2(参照によりその全体が本明細書に組み入れられるWO 2017/031312記載の無細胞培地)[552.2mLのGS2:0.9%塩化ナトリウム洗浄用USP(Baxter HealthcareまたはHospira)(408.6mL);5%デキストロース/0.9%塩化ナトリウム注射用USP(BaxterまたはBraun)(33.2mL)およびBSS洗浄溶液(Alcon)(110.4mL)]。
【0216】
試験デザインおよびタイムライン
試験は、以下の試験デザイン(表2)およびタイムライン(表3)に従って行った。
【0217】
(表2)試験デザイン
IM=虚血肢への局所筋肉内注射
【0218】
(表3)タイムライン
【0219】
実験手順
罹病および死亡の観察
手術日の間とその後の1日2回(週末は1日1回)、動物を継続的にモニタリングした。
【0220】
体重
処置前とその後の週1回、体重を記録した。
【0221】
HLI外科手術
麻酔および鎮痛下でマウスを、仰向けにした。
【0222】
手術日(0日目)に、右後肢の鼠径部の皮膚に切開を施した。大腿動脈を6-0絹糸で2回結紮し、それら2つの結紮の間を横切した。傷を5-0バイクリル(Vicryl)吸収糸で閉じ、マウスを回復させた。
【0223】
試験品目投与手順
0日目の術後直ちに、各動物の手術創の近位側と遠位側の2ヶ所に、筋肉内注射した。動物には各部位に50μl、マウス1匹あたり合計100μlを注射した。マウス1匹あたりの総量は1M細胞/マウスとした。
【0224】
血流測定手順
各マウスの両下肢における血流を、手術前、手術直後、および組み入れ基準のために処置の直前(無傷の下肢と比較して血流が少なくとも30%低減した動物だけを組み入れた)、ならびに手術後7、14、21、28および35日目に、非接触型Peri-Medレーザードップラーで測定した。血流測定は、手術後の虚血肢における流量と正常肢における流量の比および右肢における流量と左肢における流量の比として表した。
【0225】
血管イメージング手順
3つの時点(手術の7日後、21日後および35日後)の各群3匹のマウスについて両下肢(大腿部および脛骨部)における血管イメージングを、RSOM Explorer P50''(i-Thera Medical)イメージングシステムによって測定した。RSOM(Raster Scanning Optoacoustic Mesoscopy:ラスター走査型光音響メゾスコープ)Explorer P50は、532nmのナノ秒レーザーパルスの照射とスフェリカリーフォーカスド(spherically focused)50MHz検出器によって作動する。80秒の収集時間により、5×5mmの視野、深度3mmおよび40μm/10μmの距離/方位分解能のイメージングが可能になった。
【0226】
虚血重症度の肉眼的評価手順
虚血肢の肉眼的評価は、表4に従って壊死領域についての形態学的グレードを使用することにより、手術後、7日目から開始して毎週行った(Goto et al.Tokai J.Exp.Clin.Med.2006.31:128-132参照)。
【0227】
(表4)壊死領域の形態学的グレード
【0228】
肢機能のインビボ評価手順
虚血肢の使用障害の半定量的評価は、下記表5の尺度を使って、手術後7日目から開始して毎週行った(Stabile et al.Circulation.2003.108:205-210参照)。
【0229】
(表5)肢機能の評価
【0230】
部分的または完全な肢切断の場合は肢機能を「該当なし」または「N/A」と格付けした。そのような場合は血流測定を統計解析に含めなかった。
【0231】
動物の屠殺と組織固定
36日目にマウスを屠殺した。両後肢から腓腹筋を収集し、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した(各群5匹)。各群3匹の動物から、筋をOCT包埋し、凍結し、さらなる輸送のためにストックした。包埋された筋試料は、薄切され、H&E+IHCイソレクチンB4-HRPコンジュゲートで染色され、病理学者によって評価された。組織中のヒト細胞の存在に関し、ヒト特異的抗体(Stem121)についてIHCを行った。CD34についてのICH染色および血管密度評価を行った。
【0232】
結果
死亡
14匹の動物が試験中に死亡した。そのうち、1匹は手術中に死亡した。13匹は、HLI手術後、11日以内に、それぞれのケージで死亡しているのが見つかった。そのうち、マウス番号19、40、99、100および101は第1M群、マウス番号97は第2M群、マウス番号69、72、88および89は第4M群、マウス番号38および50は第6M群、マウス番号28は第7群だった。20匹のマウスは下肢切断による人道的理由で安楽死させた(第2M群のマウス番号58および98、第3M群のマウス番号61、63、64、90、91、92、93および95、第4M群のマウス番号81、第5M群のマウス番号21、第6M群のマウス番号36、37、47および53、第7M群のマウス番号29、30、32および34)。各時点で生き残っている動物はすべてその時点で評価した。
【0233】
体重
体重は試験35日目までモニタリングした。手術後、第一週の間は体重が低下したが、第2週中に回復し始めて、最終週にはほとんど完全に回復した。すべての動物群が並行して回復した。GraphPad Prism 5ソフトウェアを使って行った二元配置ANOVAとそれに続くBonferroni事後比較では、すべての群間で、体重の統計的有意差は明らかにならなかった。
【0234】
血流測定
試験品目処置に先立って血流を評価したところ、手術を受けたすべての動物において、その後に、著しい変化が観察された。試験全体を通し、すべての処置群(3~7M)において、ビヒクル処置群(2M)と比較して、血流の有意な改善が観察された。この改善は、手術された右肢について、第3M群では21日目から、他の処置群については28日目から35日目まで、統計的に有意だった(二元配置ANOVAとそれに続くBonferroni多重比較)(図8)。
【0235】
血管イメージング
3つの時点(手術の7日後、21日後および35日後)の各群3匹のマウスについて両下肢(大腿部および脛骨部)における血管イメージングを、RSOM Explorer P50(i-Thera Medical)イメージングシステムを使用することによって測定した。
【0236】
数種類の解析方法を使って、虚血後肢における小血管密度の考えうる増加を評価した。最後に、血管の血管新生を見るために、より確かなものとして、最も高い100切片の積分を使用した。結果は7日目のパーセンテージとしての35日目の要約として提示した。データをより明確にするために、ビヒクル群からの増加または減少と比較した全群の平均を提示した。試験全体を通して、処置群(3、4、6および7M)では、ビヒクル処置群(2M)と比較して、小血管密度の改善が観察された(図9)。
【0237】
虚血重症度の肉眼的評価
虚血肢を、壊死領域に関する段階的な形態学的尺度により、7日目から35日目まで、肉眼的に評価した。足切断はすべての群の動物で観察され、第4M群および第5M群では、最も少なかった。(表6および表7参照)。
【0238】
(表6)7日目に肢壊死スコアが0、1および2であるマウスの発生率
【0239】
(表7)35日目に肢壊死スコアが0、1および2であるマウスの発生率
【0240】
肢機能の評価
段階的な機能尺度を使用することにより、虚血肢の使用障害の半定量的評価を、7日目から35日目まで行った。肢機能の自発的改善がすべての動物群に見いだされた。それでもなお、第4M群および第5M群において試験品目で処置された動物は、ビヒクル処置(2M)対照群に対して、より良い機能的改善を示した(表8および表9参照)。
【0241】
(表8)7日目に肢機能スコアが0、1、2および3であるマウスの発生率
【0242】
(表9)35日目に肢機能スコアが0、1、2および3であるマウスの発生率
【0243】
組織学的検査結果
スライドはすべてH&E染色およびマッソントリクローム染色で染色され、一人の病理学者によって検査された。この評価は半定量的な分析(下記グレード参照)として行われた。CD34高解像度組織像を定量的画像解析のために転送した。
【0244】
筋萎縮グレード:
0=萎縮は全くない。
1=極めて軽度の萎縮(筋線維の10%まで)
2=軽度の萎縮(筋線維の>10%かつ<25%)
3=中等度の萎縮(筋線維の>25%かつ<75%)
4=重度の萎縮(筋線維の>75%かつ<100%)
【0245】
炎症(マクロファージおよびサテライト細胞)グレード:
0=炎症性浸潤は全くない。
1=×20 HPFあたり10細胞までの増加である軽度の細胞浸潤
2=×20 HPFあたり10~20細胞の増加である中等度の細胞浸潤
3=×20 HPFあたり20~50細胞の増加である高度の細胞浸潤
4=×20 HPFあたり>50細胞の増加である極めて高度の細胞浸潤
【0246】
すべての動物群において、筋繊維に中等度~重度の萎縮が観察された。筋細胞の変性脂肪変化(degenerative adipose change)ならびにサテライト細胞およびマクロファージの増加が観察された。場合によっては、線維組織およびリンパ球浸潤の著しい増加があった。わずかながらも数匹は多少のジストロフィー性石灰化(dystrophic mineralization)も示した。第2M群および第3M群は、概して、第4M群、第5M群および第6M群と比較して、より重度の変化を示した。第7M群は中間の変化を示した。
【0247】
免疫組織化学および毛細血管密度の解析
染色された切片を、CCDカメラ(DMX1200F、ニコン)に接続されたPlan Fluor対物レンズが装着された蛍光顕微鏡(E600、ニコン、日本国東京)で評価し、写真撮影した。Cy3は明るい赤色蛍光を示す:Ex(極大):543nm;Em(極大):570nm。一方、フルオレセインデキストランは強い緑色蛍光を示す(Ex(極大):488nm;Em(極大):530nM)。デジタル画像を収集し、Image Pro+ソフトウェアを使って解析した。筋試料の2つの切片を、第1M群および第7M群の5匹の動物の同じ領域から採取した。血管の面積を測定した。密度を視野あたりの毛細血管の平均数として表した。総血管は測定された領域中の全血管を表す。試験36日目のCD-34陽性毛細血管の数は、すべての処置群において、対照群2Mと比べて多かった。CD-34陽性染色は小さい毛細血管形成の指標とみなされるので、得られた結果は、細胞で処置された動物群に観察される血流の改善を裏付けている。レーザードップラーによって測定された血流と毛細血管密度との間には統計的に有意な強い相関があった(図10および図11参照)。
【0248】
考察
虚血肢への試験品目のIM投与は、主として処置群4Mおよび5Mにおいて、肢機能の多少の改善、血流(レーザードップラーによってモニタリングしたもの)、RSOMイメージングおよび血管の定量的組織学的検査の改善を示した。処置により、ビヒクル処置群と比較してすべての処置群において、試験の終わり(36日目)までに、血液灌流が(最も良い群4Mではその正常値の78%まで)回復した。この血液灌流回復は、手術を受けた後肢におけるRSOMイメージング解析の結果および毛細血管密度に関する免疫組織化学の結果とよく相関した。各群のレーティングにより、4Mが最善であり、6Mおよび7Mがそれに追随することが示された。腓腹筋パラフィン包埋スライドのSTEM121染色はヒト幹細胞を示すことができなかったが、それらは、注射部位近くの四頭筋中で可視化された。
【0249】
実施例10:Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞のバルク低分子RNA-seq解析
Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞を実施例2に従って生成させた。約100万~200万個の細胞のペレットを溶解し、単離されたRNAを配列決定し、バイオインフォマティクスで整列し、公知のヒトトランスクリプトーム(約2000のmiRNA)について低分子RNA発現を解析した。図12Aは、J1細胞の集団およびJ1由来HE細胞の集団と比較した、hsa-miR-3917、hsa-miR-450a-2-3pおよびhsa-miR-542-5pを含む、3つのレプリケートからのJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団に見いだされる特有のヒトmiRNAを示している。図12Aは、hsa-miR-11399、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-5690およびhsa-miR-7151-3pを含む、J1由来HE細胞の集団に見いだされる特有のヒトmiRNAも示している。
【0250】
加えて、バルク低分子RNA-seq解析により、miR214がJ1由来HEでもmeso 3DバスキュロノイドVPC2細胞でも高レベルに発現すること、J1細胞およびJ1由来HE細胞ではmiR335-5pが高レベルに発現し、一方、J1由来HE細胞およびmeso 3DバスキュロノイドVPC2細胞ではmiR335-3pが高レベルに発現することが明らかになった。同様に、miR199a-3pはJ1由来HEでもmeso 3DバスキュロノイドVPC2細胞でも高レベルに発現した(データ省略)。
【0251】
図12Bは、先に単一細胞で解析されたJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団におけるmiRNAの発現レベルを示す。図12Bは、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-125a-5pおよびhsa-miR-24-3pが、J1細胞の集団でもJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団でも発現することを示している。図12Cは、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団がhsa-let-7e-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-223-5pおよびhsa-miR-142-3pを発現すること、そしてhsa-let-7e-3p、hsa-miR-99a-3pおよびhsa-miR-133a-5pは発現しないか、発現量が少ないことを示している。また、図12Dは、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の集団がhsa-miR-483-5pおよびhsa-miR-483-3pを発現することを示している。
【0252】
実施例11:Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の単一細胞RNA-seq解析
実施例2に従って生成させたJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞で単一細胞RNA-seq解析も行った。10X Genomics(カリフォルニア州プレザントン)プラットホームおよびそのCell Ranger解析パイプラインを使って、各細胞タイプ(J1細胞、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞およびHUVEC)について約3,700~8,000個の単一細胞をキャプチャーし、処理し、単一細胞シーケンシングについて解析した。さらなるデータQCおよびデータ解析はRパッケージSeuratを使って行った(Butler et al.,Nature Biotechnology 36:411-420(2018)、Stuart et al.,Cell 177:1888-1902(2019))。そのような解析の1つは、J1細胞、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞およびHUVECの統合解析を行うことで、これら3つの試料間で上位の差次的発現遺伝子を同定することだった。この解析は、Stuart et al.,Cell 177:1888-1902(2019)およびhttps://satijalab.org/seurat/v3.0/pancreas_integration_label_transfer.htmlに記載の指針に従った。解析では、≧10個の細胞および検出された遺伝子が少なくとも200である細胞において発現する遺伝子だけを保持した。図13は、単一J1細胞または単一HUVEC細胞と比較した、J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞試料で最もアップレギュレートされる遺伝子または最もダウンレギュレートされる遺伝子の発現を示している。
【0253】
実施例12:バスキュロノイドは、インビトロ細胞生存率の増加を呈し、インビボで効力を示す
J1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞のバスキュロノイドを実施例2に従って生成させた。ただし細胞は、細胞が凝集した形態を保つように、単一細胞に解離させることなく凍結保存した。
【0254】
約150の未解離Meso-3DバスキュロノイドVPC2(約1,500,000個の解離された単一細胞に相当)を、96ウェルプレートの4つのウェル中で、比が1:1のコラーゲンIおよび増殖因子低減Matrigelに混合した。ゲルを37℃で30分間固化してから、20ng/mL FGF、25ng/mL BMP4、45ng/mL VEGFおよび10uM SB431542-を補足した完全VascuLife(登録商標)基礎培地(Lifeline(登録商標)Cell Technology、メリーランド州フレデリック)50ulを重層した。バスキュロノイドを14日間培養した。ゲルを4%PFAで固定し、0.05%Triton-Xで最大4時間透過処理し、ヒト特異的内皮細胞マーカーであるローダミンコンジュゲートハリエニシダ(Ulex europaeus)I(UEA1)で、一晩染色した。ゲルを十分に洗浄し、核マーカーDAPIで対比染色した。ゲルはLeica SP8共焦点顕微鏡で撮像した。図14Aは、14日後のJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2バスキュロノイドの包埋凝集物から伸びる広範囲にわたる血管ネットワークを低倍率(対物10×)で示している。
【0255】
次に、解離させた(すなわち「単一細胞」(single))または未解離の(すなわちバスキュロノイドもしくは「多細胞」(plural))Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞を、100ulの培地中、組織培養処理96ウェルプレート(1ウェルあたり約14,000個の単一細胞)または超低付着96ウェルプレート(1ウェルあたり約14,000個の単一細胞に相当する、1ウェルあたり約70の多細胞、すなわちバスキュロノイド)に播種した。CLI模倣条件(すなわち高血糖および/または低酸素)を試験するために、細胞を、対照としての5.5mM D-グルコースを含む完全VascuLife(登録商標)基本培地(Lifeline(登録商標)Cell Technology、メリーランド州フレデリック)、または高グルコース濃度(30mM)の完全VascuLife(登録商標)基本培地と共に、正常酸素条件下(20%O2)または低酸素条件下(5%O2)で、72時間培養した。72時間後に、各ウェルを100ulのCellTiter-Glo(登録商標)試薬(Promega、ウィスコンシン州マディソン)と共に製造者の指示どおりに45分間インキュベートすることにより、相対細胞生存率を測定した。各酸素条件下の単一細胞および多細胞の両方について、細胞生存率の読出しとして、ルミネセンスを測定し、5.5mM対照に対して正規化した。図14Bは、これらのバスキュロノイドを、上述のように融解した後、正常酸素濃度(20%O2)または低酸素濃度(5%O2)下、CLI模倣条件でインビトロ培養した場合に、単一細胞として凍結保存されていたJ1由来Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞と比較して、バスキュロノイドが、より良い細胞生存率を示したことを示している。
【0256】
インビボ効力を試験するために、実施例9に詳述したように後肢虚血を誘導した後、GMP1-Meso3D VPCを単一細胞(Meso3D s.c.、1匹あたり100万個の総単一細胞)として、または未解離多細胞すなわちバスキュロノイド(Meso3Dバスキュロノイド、1匹あたり25,000、1匹あたり100万個の総単一細胞にほぼ相当する)として、Balb/cヌードマウス(n=各群15)の四頭筋に注射した。手術の直後とその後の週1回、64日目まで、血流をレーザードップラー灌流イメージング(LDPI)によって評価した。図14Cは、単一細胞またはバスキュロノイドを投与した後、試験全体にわたる、ビヒクル処置群(GS2培地のみ)と比較した、血流の統計的に有意な改善を示している;二元配置ANOVAに続くTukeyの検定。
【0257】
実施例13:HLIモデルにおけるMeso-3DバスキュロノイドVPC2細胞の長期効果
meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞を実施例2に従って(解離された単一細胞として)生成させ、実施例9記載のHLI動物モデルに投与し、長期効果について観察した。これらの試験では、HLI手術後、右四頭筋に、1匹あたり100万個のGMP1由来細胞(GMP1 Meso3DバスキュロノイドVPC2、GMP1-HEおよびGMP1-HB)をGS2培地に入れて注射するか、GS2培地のみ(ビヒクル)を注射した(n=マウス12~19匹/群)。肢壊死および肢機能のスコア化は実施例9に述べたように行った。いくつかの細胞タイプについては、独立した分化実験で生産された2ロット以上の細胞を使用したので、2ロット以上の同じ細胞タイプからのデータを合わせた場合には、動物数が増えている。データは、2つの独立した反復試験を平均した平均±semである。*p<0.05対ビヒクル対照(GS2培地)、一元配置ANOVAとそれに続くDunnettの検定による。
【0258】
図15Aは、meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞で処置された動物の方が、21日目に、HE細胞およびHB細胞と比べて、平均壊死スコアおよび平均機能スコアが良好であったことを示している。図15Bは、meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞、HE細胞およびHB細胞で処置された動物における、ビヒクルと比較した、63日目の血流の改善を示している。四頭筋(図15C)および腓腹筋(図15D)におけるCD34血管成長は、3つの細胞タイプすべてによる改善を示し、35日付近においてHBはより良い成長を示した。しかし63日目までには3つの細胞タイプはすべて成長を同様に促進し、meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞はHEおよびHBよりも腓腹筋において成長をわずかによく促進するようだった。
【0259】
Meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞は、処置後63日を超える長期生着も示した(図16A)。この試験では、GS2培地中の1匹あたり100万個の細胞またはGS2培地のみ(ビヒクル)を、HLI手術後に、右四頭筋に注射した(ビヒクル=マウス18匹、GMP1-Meso3Dロット番号1=マウス19匹、GMP1-Meso3Dロット番号2=マウス18匹、GMP1-Meso3Dロット番号3=マウス19匹、GMP1-HE=マウス19匹およびJ1-HE=マウス19匹)。次に注射部位に刺青で印をつけた。14日目、35日目、63日目および180日目に、手術された右後肢から四頭筋を収集し、PFAで固定し、パラフィンに包埋し、ヒト特異的マーカーKu80について染色した。1匹につき2つの像(倍率20倍)を解析した。14日目のJ1-HEがn=1しかなかった点を除けば、各群少なくともn=3であった。データは、以下の半定量的尺度を使用し、盲検化された独立した組織病理学者による、平均±s.e.m.を表す;0=陽性Ku-80細胞は存在しない;1=<5個の陽性Ku-80細胞が存在する;2=>5個かつ<15個の陽性Ku-80細胞が存在する;3=>15個かつ<50個の陽性Ku-80細胞が存在する;4=>50個の陽性Ku-80細胞が存在する。図16Aは、63日目および180日目の生着ドナーGMP1-Meso3DバスキュロノイドVPC2細胞を示しており、これらは細胞の長期生着を示している。ただし、GMP-1由来HEは、180日目においてより良い生着を示すようであった。
【0260】
第2の試験では(図16B)、GS2培地中の1匹あたり100万個の細胞を、HLI手術後に、右四頭筋に注射した(GMP1-Meso3DバスキュロノイドVPC2細胞=マウス16匹、GMP1-HEロット番号1=マウス16匹、GMP1-HEロット番号2=マウス17匹、GMP1-HBロット番号1=マウス16匹、GMP1-HBロット番号2=マウス16匹)。次に注射部位に刺青で印をつけた。14日目、35日目および63日目に、手術された右後肢から四頭筋を収集し、PFAで固定し、パラフィンに包埋し、ヒト特異的マーカーKu80について染色した。各群少なくともn=2で、1匹につき、オリンパスBX60光学顕微鏡を使って撮影した2つの画像(倍率20倍)を解析した。Ku80+細胞は、盲検化された独立した組織病理学者によって定量された。データは平均±s.e.m.を表す。図16Bは、35日目および63日目までに、meso-3DバスキュロノイドVPC2細胞が生着を示したことを示している。ただし、GMP-1由来HEの一方のロットは、63日目時点でより良い生着を示した。
【0261】
別の試験(図16C)では、GS2培地中の1匹あたり100万個の細胞をHLI手術後の右四頭筋に注射した(GMP1-Meso3DバスキュロノイドVPC2細胞=2つのロットからの24~25マウス)。63日目に、手術された右後肢から四頭筋を収集し、PFAで固定し、パラフィンに包埋した。次に切片を染色肢、イソレクチン-B4(マウス内皮細胞のマーカー)およびハリエニシダ(Ulex europaeus)I(UEA1、ヒト内皮細胞のマーカー)またはKu80(汎ヒト特異的マーカー)、UEA1、ならびに平滑筋α-アクチン(SMA、マウスとヒトの両方の平滑筋マーカー)のいずれかで染色した。核を対比標識するためにDAPIを使用した。図16Cは、Balb/cヌードマウスにおけるHLI手術の63日後の、長期生着(Ku80+)、ヒト脈管構造の形成(UEA1+血管)、およびパラクリン宿主血管成長の促進(IB4+およびSMA+血管)を示す、注射されたMeso3DバスキュロノイドVPC2の蛍光像を示している。
【0262】
均等物
本明細書に記載する発明の具体的態様の数多くの均等物を、当業者は認識するか、またはせいぜい日常的な実験を使って確かめることができるであろう。そのような均等物は、下記の特許請求の範囲に包含されることが意図される。本願の全体を通して言及されるすべての参考文献、特許および特許出願公開の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16A
図16B
図16C
【国際調査報告】