(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】ヒト組換えアルギナーゼ1の製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 9/78 20060101AFI20221021BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221021BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221021BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221021BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221021BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20221021BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
C12N9/78 ZNA
A61K47/60
A61K47/04
A61K47/10
A61P3/00
A61K38/48
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513535
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020048536
(87)【国際公開番号】W WO2021041904
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074534
【氏名又は名称】アエグリア バイオセラピューティクス, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ローリンソン, スコット ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4B050
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050CC04
4B050CC05
4B050DD11
4B050EE10
4B050FF01C
4B050FF11C
4B050GG03
4B050KK01
4B050LL01
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC21
4C076CC29
4C076DD23
4C076DD26
4C076DD38
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA07
4C084DC02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC211
4C084ZC212
(57)【要約】
PEG化されたコバルト置換組換えヒトアルギナーゼ1などの組換えアルギナーゼを産生するための方法が記載される。また、そのような組換えアルギナーゼを含む医薬組成物、ならびに治療方法およびそのような組換えアルギナーゼの使用方法も記載されている。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製された組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼを産生するための方法であって、前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、
配列番号1と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含み、前記方法が、
a.バイオリアクター内で、rhARGを産生するE.Coli細胞を培養することと、
b.前記E.Coli細胞を溶解することと、
c.溶解物から細胞破片を除去することと、
d.前記細胞溶解物を陽イオン交換カラムに装填することと、
e.高塩濃度溶液で前記rhARGを溶出させることと、
f.前記溶出されたrhARGを、コバルト塩とインキュベートしてコバルト置換rhARG(Co-rhARG)を形成することと、
g.前記Co-rhARGを陰イオン交換カラムに適用して、フロースルーを収集することと、
h.前記フロースルーを第3のクロマトグラフィーカラムに適用することと、
i.高塩濃度溶液で前記第3のクロマトグラフィーカラムから前記Co-rhARGを溶出させることと、を含む、方法。
【請求項2】
陽イオン交換樹脂1リットル当たり最大60グラムのrhARGが、前記陽イオン交換カラムに装填される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記陽イオン交換カラムから前記rhARGを溶出させることが、最大約0.5Mの塩濃度の高塩濃度溶液を使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記陽イオン交換カラムから前記rhARGを溶出させることが、約0.1Mの塩濃度の高塩濃度溶液を使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記陽イオン交換カラムから前記rhARGを溶出させることが、
約0.0~約0.5Mの塩濃度のグラジエントを使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記陽イオン交換カラムから前記rhARGを溶出させることが、約0.0~約0.2Mの塩濃度のグラジエントを使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記コバルト塩が、Co2+塩を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コバルト塩が、CoCl2を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第3のクロマトグラフィーカラムが、マルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)カラムを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記rhARGまたはCo-rhARGをPEG化反応物と反応させてPEG化タンパク質を提供することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PEG化タンパク質が、K16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、
K88、K152、K154、K171、K222、K223、K312およびK321にPEG化アミノ酸残基のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PEG化タンパク質が、K16の約15%~約60%、K32の約35%~約80%、K38の約20%~約85%、K40の約10%~約60%、K47の約10%~約60%、K67の約40%~約90%、K74の約30%~約95%、
K82の約30%~約98%、K87の約15%~約65%、K88の約25%~約70%、K152の約25%~約85%、K154の約15%~約65%、K171の約20%~約75%、K222の0%~約30%、K223の0%~約35%、K312の0%~約45%、およびK321の0%~約45%のうちの1つ以上が、PEG化されてことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記PEG化タンパク質が、
少なくともK16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K312およびK321にPEG化アミノ酸残基を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記PEG化タンパク質が、K3、K149、K190、K195、K29、K265およびK283にPEG化アミノ酸残基を有さない、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
精製されたPEG化組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼを産生するための方法であって、
前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、配列番号1と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含み、前記方法が、
a.バイオリアクター内で、rhARGを産生するE.Coliを培養することと、
b.前記E.Coli細胞を溶解することと、
c.溶解物から細胞破片を除去することと、
d.陽イオン交換カラムに前記細胞溶解物を装填することと、
e.高塩濃度溶液で前記rhARGを溶出させることと、
f.前記溶出されたrhARGを、10mMのCoCl2とインキュベートしてコバルト置換rhARG(Co-rhARG)を形成することと、
g.前記Co-rhARGを陰イオン交換カラムに適用して、フロースルーを収集することと、
h.前記フロースルーをマルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)カラムに適用することと、
i.高塩濃度溶液で前記MMCカラムから前記Co-rhARGを溶出させることと、
j.モル過剰のメトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステルを加えることと、
k.過剰のPEGを除去することと、を含む、方法。
【請求項16】
精製された組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼを産生するための方法であって、前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、
配列番号1と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含み、前記方法が、
a.バイオリアクター内で、約36℃~約38℃、pH約7.0~約7.4でrhARGを産生するE.coli細胞を撹拌および通気しながら培養することであって、
i.前記バイオリアクターの温度を約29℃に調整し、
ii.rhARGを産生するようにE.Coli細胞を誘導し、
iii.前記E.coli細胞を約18時間培養し、
iv.遠心分離により前記E.coli細胞を収獲する、培養することと、
b.約7.2~約7.6の間のpH、および約15℃以下で、25mMのHEPES中での高圧均質化によって前記E.coli細胞を溶解することと、
c.15℃以下で遠心分離して溶解物から細胞破片を除去し、前記溶解物を0.8ミクロンフィルターで濾過し、次に0.5ミクロンフィルターで濾過することと、
d.前記細胞溶解物を陽イオン交換カラムに装填し、次にカラムを25mMのHEPES、pH7.2~7.6で洗浄することと、
e.25mMのHEPES、0.1MのNaCl、pH7.2~7.6を含む高塩濃度溶液で、室温で前記rhARGを溶出させることと、
f.前記溶出されたrhARGを10mMのCoCl2と室温で約2~約8時間インキュベートして、コバルト置換rhARG(Co-rhARG)を形成することと、
i.Co-rhARGを50mMのTris、pH8.1~8.5と交換することと、
g.前記Co-rhARGを陰イオン交換カラムに適用し、フロースルーを収集することと、
h.前記フロースルーをCaptoマルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)カラムに適用することと、
i.50mMのTris、250mMのNaCl、pH8.1~8.5を含む高塩濃度溶液で前記MMCカラムから前記Co-rhARGを溶出させることと、を含む、方法。
【請求項17】
精製された組換えPEG化組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼを製造するための方法であって、前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、
配列番号1と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含み、前記方法が、
a.バイオリアクター内で約36℃および約38℃、pH約7.0~約7.4でrhARGを産生するE.coliを撹拌および通気しながら培養することであって、
i.前記バイオリアクターの温度を約29℃に調整し、
ii.rhARGを産生するようにE.Coliを誘導し、
iii.前記E.coliを約18時間培養し、
iv.遠心分離により前記E.coli細胞を収獲する、培養することと、
b.約7.2~約7.6の間のpH、および約15℃以下で、25mMのHEPES中での高圧均質化によって前記E.coli細胞を
溶解することと、
c.15℃以下で遠心分離して溶解物から細胞破片を除去し、前記溶解物を0.8ミクロンフィルターで濾過し、次に0.5ミクロンフィルターで濾過することと、
d.前記細胞溶解物を陽イオン交換カラムに装填し、次にカラムを
25mMのHEPES、pH7.2~7.6で洗浄することと、
e.25mMのHEPES、0.1MのNaCl、pH7.2~7.6を含む高塩濃度溶液で、室温で前記rhARGを溶出させることと、
f.前記溶出されたrhARGを10mMのCoCl2と室温で約2~約8時間インキュベートして、コバルト置換rhARG(Co-rhARG)を形成することと、
i.Co-rhARGを50mMのTris、pH8.1~8.5と交換することと、
g.前記Co-rhARGを陰イオン交換カラムに適用して、フロースルーを収集することと、
h.前記フロースルーをCaptoマルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)カラムに適用することと、
i.50mMのTris、250mMのNaCl、pH8.1~8.5を含む高塩濃度溶液(MMC緩衝液)で前記MMCカラムから前記Co-rhARGを溶出させることであって、
i.MMC緩衝液を20mMのリン酸ナトリウム、50mMのNaCl、1.5%グリセロール、pH7.4(緩衝液1)と交換して、タンパク質の濃度を約5.0mg/mLに調整し、
ii.緩衝液1を0.1Mのリン酸ナトリウム、pH8.1~8.5(緩衝液2)と交換して、前記タンパク質濃度を約10.0mg/mLに濃縮する、溶出させることと、
j.モル過剰のメトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステル5,000Daの概算分子量を添加して(タンパク質1モル当たり約19モルのメトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステルを添加する)、この混合物を約30分~約4時間およそ
pH8.4でインキュベートすることと、
k.緩衝液2を20mMのリン酸ナトリウム、50mMのNaCl、1.5%グリセロール、pH7.4と交換して過剰のPEGを除去することと、を含む、方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法によって産生されたCo-rhARGまたはCo-rhARG-PEGを含む組成物。
【請求項19】
タンパク質が、K16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K222、K223、K312およびK321のうちの1つ以上でポリエチレングリコールに共有結合している、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)タンパク質を含む組成物であって、前記タンパク質は、配列番号1と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を
含み、タンパク質は、非天然金属補因子と複合体を形成しており、前記非天然金属補因子はコバルトであり、前記タンパク質は、K16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K222、K223、K312およびK321の1つ以上でポリエチレングリコールに共有結合している、組成物。
【請求項21】
前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、
H100、D123、H125、D127、D231、D233、W121、D180、S229、C302、およびE255からなる群から選択される位置にアミノ酸置換を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、
D180S、S229C、S229G、C302F、C302I、E255Q、D180EおよびS229Aからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、C302である、請求項18~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、少なくとも2つのアミノ酸置換を含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、トランケートアルギナーゼIタンパク質である、請求項18~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)が、外因性タンパク質断片をさらに含む、請求項18~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記外因性タンパク質断片が、免疫グロブリンのFc領域または免疫グロブリンのFc領域の一部を含んでいる、
請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
Co-rhARG-PEGの比活性が、約400U/mg~約700U/mgの範囲にある、請求項18~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記タンパク質が、インビトロでアッセイした場合、pH7.4で約200mM-1s-1~約4,000mM-1s-1の範囲でアルギニンの加水分解に対するkcat/Kmを呈示する、
請求項18~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記タンパク質が、インビトロでアッセイした場合、pH7.4で約400mM-1 s-1~約2,500mM-1s-1の範囲でアルギニンの加水分解に対するkcat/KMを呈示する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
PEG:Co-rhARGのモル比が、
約7モル/モル~約15モル/モルの範囲にある、請求項18~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
遊離PEG濃度が、100μg/mL以下である、請求項18~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物の総コバルト含有量が、約9μg/mL~約15μg/mLの範囲にある、請求項18~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物が、イメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)にロードされた場合に、少なくとも9つのピークを生成し、ピーク1が20%未満であり、ピーク2が30%未満であり、ピーク3+4が10~30%の範囲にあり、ピーク5が15~30%の範囲にあり、ピーク6が10~25%の範囲にあり、ピーク7が25%未満であり、ピーク8が15%未満であり、ピーク9が8%未満である、請求項18~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が、icIEFにロードされた場合に、少なくとも9つのピークを生成し、ピーク1が5~7%の範囲にあり、ピーク2が8~11%の範囲にあり、ピーク3+4が16~20%の範囲、ピーク5が21~24%の範囲、ピーク6が21~22%の範囲、ピーク7が14~15%の範囲、ピーク8が5~8%の範囲、ピーク9が2~3%の範囲にある、請求項18~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
請求項18~35のいずれか一項に記載のCo-rhARGまたはCo-rhARG-PEGと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項37】
前記組成物が、静脈内または皮下内投与用に製剤化される、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記組成物が、リン酸カリウム、塩化ナトリウムおよびグリセロールを含む、請求項36または37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記組成物が、約50mMのNaCl、約1mMのK2HPO4、約4mMのKH2PO4、および約1.5%w/vのグリセロールを含む、請求項36~38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
アルギナーゼ1欠損症を治療する方法であって、請求項36~39のいずれか一項に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む方法。
【請求項41】
前記医薬組成物が、静脈内投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記医薬組成物が、皮下投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記医薬組成物の投与が、
非ペグ化酵素の重量に基づいて0.1mg/kgの用量で開始される、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記患者の血漿アルギニンレベルを監視することをさらに含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記用量が、
以下のアルゴリズムに従って調製され、
a.前記血漿アルギニンレベルが>150μMの場合、この試料の前の2回の用量がa)mg/kgでの同じ用量レベルであり、b)連続している場合(投与し忘れなし)、単一の168時間試料を使用して、下の表の2用量レベルだけ用量を増やし(0.20mg/kgを超えない)。
b.2つの連続する168時間試料(投与し忘れた場合でも)からの前記血漿アルギニンレベルが両方とも<50μMである場合、前記用量は下の表の1用量レベルだけ減少させるが、0.05mg/kgを下回らないようにする、請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【表1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、酵素補充療法およびアルギナーゼ1欠損症または高アルギニン血症の治療に関する。本開示はまた、ヒト組換えアルギナーゼ1を産生するための方法を包含する。アルギナーゼ1は癌の治療にも使用できる。
【背景技術】
【0002】
アルギナーゼ1欠損症または高アルギニン血症は、酵素アルギナーゼ1の欠損によって引き起こされるまれなアミノ酸代謝障害である。アルギナーゼ1は、尿素サイクルの正常な機能に重要な6つの酵素のうちの1つであり、サイクルの最後のステップで、L-アルギニンから尿素およびオルニチンへの変換を触媒する。その後、オルニチンはミトコンドリアに再び入り、サイクルを継続する。
【0003】
アルギナーゼ1は、主に赤血球(RBC)と肝臓に見られる。ARG1は、変異がアルギナーゼ1欠損症を引き起こすことが現在知られている唯一の遺伝子である。臨床的には、アルギナーゼ1欠損症は、進行性認知症、精神運動遅滞、痙直型両麻痺、発作、および成長阻害につながる大脳皮質および錐体路のゆっくりとした悪化を特徴としている。治療せずに放置すると、病気は重度の痙性、歩行の喪失、排便と膀胱の制御の喪失、および重度の知的障害に進行する。アルギナーゼ1欠損症の患者は、通常、血中アルギニンレベルの上昇(正常[ULN]の上限の3~4倍)、軽度の高アンモニア血症、および尿中オロト酸の軽度の増加を示す。ほとんどの患者は、RBCで検出可能なアルギナーゼ1酵素活性を有していない(正常の<1%)。
【0004】
アルギナーゼ1欠損症の現在の治療は、生涯にわたる食事性タンパク質制限を通じて、血漿アルギニン濃度を可能な限り正常に近いレベルに維持することに焦点を合わせている。タンパク質の摂取量は、タンパク質の生合成と成長を維持するために必要な最小限に制限されている。食物タンパク質の半分以上は、アルギニンを含まない必須アミノ酸混合物の形で与えられる。このような食事の変更は、ほとんどの患者の血漿アルギニンレベルを低下させ得るが、この食事は味が悪く、高価であり、特に成長期の子供では維持および管理が困難である。
【0005】
アルギナーゼ1欠損症患者の治療選択肢の少なさは、アルギニンレベルを正常範囲内に下げ、生涯にわたる正常なアルギニンレベルの維持を促進する治療の重要な満たされていないニーズを浮き彫りにする。このような治療法の開発は、アルギニンとその代謝物の神経毒性作用への曝露を最小限に抑え、これらの患者の正常な神経認知発達の可能性を提供する試みに役立つ可能性がある。
【0006】
アルギナーゼ1欠損症または高アルギニン血症の治療に加えて、これらの方法で産生されたアルギナーゼは、他の疾患の治療に使用できる。アルギナーゼ1は、癌治療での使用を調査する臨床試験で使用されており、ペムブロリズマブなどの免疫腫瘍学薬と組み合わせて使用されている。
【発明の概要】
【0007】
アルギナーゼの産生
本発明の一態様は、組換えヒトアルギナーゼタンパク質を産生および/または精製するための方法に関する。1つ以上の実施形態では、組換えヒトアルギナーゼタンパク質は、組換えヒトアルギナーゼ1(rhARG1)(配列番号1、
図1(a)に示される)である。他の実施形態では、組換えヒトアルギナーゼタンパク質は、組換えヒトアルギナーゼ2(rhARG2)(配列番号3、
図1(c)を参照)である。本明細書では、rhARG1について具体的に言及するが、本明細書に記載の方法、製剤化および使用は、rhARG2にも適用することができる。
【0008】
本発明の方法に供されるヒトアルギナーゼ1および2タンパク質は、2つのMn2+部位を有し、いずれかまたは両方の部位を置換して、非天然金属補因子で修飾アルギナーゼ1または2タンパク質を生成することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、pH7.4で200mM-1 s-1を超えるkcat/KMを示す。特定の実施形態では、タンパク質は、pH7.4で約200mM-1s-1~約4,000mM-1s-1の範囲のkcat/KMを示す。別の実施形態では、タンパク質は、37℃でpH7.4で約400mM-1s-1~約2,500mM-1s-1の範囲のkcat/KMを示す。特定の実施形態では、本発明は、ヒトアルギナーゼ1または2のアミノ酸配列および非天然金属補因子を含むタンパク質を企図し、ここで、当該タンパク質は、37℃でpH7.4で400mM-1 s-1を超えるkcat/KMを呈示する。例示的なkcat/KM値は、37℃でpH7.4で約200,約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約800、約900、約1,000、約1,100、約1,200、約1,500、約2,000、約3,000、約3,500および約4,000mM-1s-1を含む。
【0009】
1つ以上の実施形態では、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を産生するための方法が提供される。1つ以上の実施形態では、方法は、以下を含む:rhARG1を発現するE.coli細胞の菌株発酵すること、rhARG1においてマンガンの代わりにコバルトを使用してCo-アルギナーゼ1中間体(Co-rhARG1)を提供すること、このCo-アルギナーゼ1中間体を精製してCo-アルギナーゼ1中間体をPEG化して原薬(Co-rhARG1-PEG)を形成すること。1つ以上の実施形態では、Co-rhARG1-PEGはペグジラルギナーゼ(Pegzilarginase)を含む。
【0010】
1つ以上の実施形態では、方法は、いくつかのステップ:組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)を産生するバイオリアクター内でE.coli細胞を培養すること、E.coli細胞を溶解すること、溶解物から細胞破片を除去すること、細胞溶解物を陽イオン交換カラムに装填すること、高塩濃度溶液で組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)を溶出させること、溶出された組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)をコバルト塩とインキュベートしてコバルト置換組換えヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を形成すること、コバルト置換組換えヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を陰イオン交換カラムに適用し、フロースルーを収集すること、フロースルーを第3のクロマトグラフィーカラムに添加すること、高塩濃度で第3のクロマトグラフィーカラムからコバルト置換組換えヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を溶出すること、を含む。
【0011】
1つ以上の実施形態では、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を産生するための方法は、陽イオン交換樹脂1リットル当たり最大60グラムの組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)が陽イオン交換カラムに装填されることを含む。
【0012】
1つ以上の実施形態では、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を産生するための方法は、最大約0.5Mの塩濃度の高塩濃度溶液を使用して陽イオン交換カラムから組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)が溶出させることを含む。いくつかの実施形態では、組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)は、0.1M濃度の高塩濃度溶液を使用して陽イオン交換カラムから溶出される。いくつかの実施形態では、組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)は、約0.0~約0.5Mの塩濃度のグラジエントを使用して、陽イオン交換カラムから溶出される。.いくつかの実施形態では、組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)は、約0.0~約0.2Mの塩濃度のグラジエントを使用して、陽イオン交換カラムから溶出される。
【0013】
1つ以上の実施形態では、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を産生するための方法は、陽イオン交換カラムから溶出された組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)を、Co2+を含むコバルト塩と共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、コバルト塩はCoCl2を含む。
【0014】
1つ以上の実施形態では、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を産生する方法は、マルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)カラムを含む第3のクロマトグラフィーカラムに、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)フロースルーを添加することを含む。
【0015】
1つ以上の実施形態では、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を産生する方法は、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)または組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)をPEG化反応物と反応させてPEG化タンパク質を提供することを含む。いくつかの実施形態では、PEG化タンパク質が、K16,K32,K38,K40,K47,K67,K74,K82,L87,K88,K152,K154,K171,K222,K223,K312およびK321に、PEG化アミノ酸残基の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、PEG化タンパク質が、K16の約15%~約60%、K32の約35%~約80%、K38の約20%~約85%、K40の約10%~約60%、K47の約10%~約60%、K67の約40%~約90%、K74の約30%~約95%、K82の約30%~約98%、K87の約15%~約65%、K88の約25%~約70%、K152の約25%~約85%、K154の約15%~約65%、K171の約20%~約75%、K222の0%~約30%、K223の0%~約35%、K312の0%~約45%、K321の0%~約45%のうちの1つ以上が、PEG化されていることを含む。いくつかの実施形態では、PEG化タンパク質が、少なくともK16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K312およびK321にPEG化アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、PEG化タンパク質が、K3、K149、K190、K195、K29、K265およびK283にPEG化アミノ酸残基を有さない。
【0016】
Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態は、静脈内(IV)または皮下(SC)投与用に製剤化されたE.coliで発現されるコバルト置換されたPEG化ヒト組換えアルギナーゼ1酵素に関する。アルギナーゼ1の活性部位で天然マンガン(Mn2+)をコバルト(Co2+)に置き換えると、生理的pHでの安定性と触媒活性が向上する。PEG化は、組換えアルギナーゼ1の循環半減期(t1/2)も延長する。
【0017】
様々な実施形態では、方法は、バイオリアクター内でE.coli細胞を培養して組換えヒトアルギナーゼ1を産生し、E.coli細胞を溶解し、組換えヒトアルギナーゼ1を精製することを含む(
図2および3を参照)。Co-アルギナーゼ1中間体の精製は、以下の1つ以上のステップを含む精製手順によって実行できる:高圧均質化による細胞破壊、ホモジネートの清澄化、SPセファロースFF陽イオン交換捕捉クロマトグラフィー、コバルト交換、限外濾過/ダイアフィルトレーション、QセファロースFF陰イオン交換フロースルークロマトグラフィー、Capto MMCマルチモーダルクロマトグラフィー、および限外濾過/ダイアフィルトレーション。精製されたCo-アルギナーゼ1中間体は、PEG化された原薬を形成するために処理されるか、後で原薬に変換するために凍結および保存される。
【0018】
この方法の好ましい実施形態では、rhARG1を含むE.coli溶解物を陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーカラム(「カラム1」とも呼ばれる)に装填してrhARG1を捕捉し、次にこれを高塩濃度溶液で溶出して第1のタンパク質産物(「第1のタンパク質産物」)を提供する。
【0019】
一つ以上の実施形態では、この方法は、第1のタンパク質産物を陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーカラム(「カラム2」とも呼ばれる)に装填し、フロースルーを収集して第2のタンパク質産物(「第2のタンパク質産物」)を提供することをさらに含む。この方法の別の態様では、この方法は、第2のタンパク質産物を、アルギナーゼ1を捕捉し、次いで溶出されて第3のタンパク質産物を提供するマルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)カラムに装填することをさらに含む(「第3のタンパク質産物」)。いくつかの実施形態では、この第3のクロマトグラフィーカラム(「カラム3」とも呼ばれる)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムであり得る。
【0020】
様々な実施形態は、コバルト補酵素のためにアルギナーゼの天然マンガン補酵素を変更することを含む。コバルト置換(コバルト担持とも呼ばれる)は、製造プロセスのどの段階でも実行できる。たとえば、アルギナーゼ1コバルト担持は、E.Coli溶解物、第1のタンパク質産物、第2のタンパク質産物、第3のタンパク質産物のいずれか、またはPEG化アルギナーゼ1の任意のステップで実行できる。他の実施形態では、コバルト担持は、カラム1から溶出されたアルギナーゼ1、カラム2から溶出されたアルギナーゼ1、またはカラム3から溶出されたアルギナーゼ1で実行できる。コバルト担持は、CEXカラムから溶出されたアルギナーゼ1、AEXカラムから溶出されたアルギナーゼ1、MMCカラムから溶出されたアルギナーゼ1、またはSECカラムから溶出されたアルギナーゼ1で実行できる。
【0021】
アルギナーゼ1のコバルト担持は、コバルトを含む様々な溶液を使用して、様々な温度で行うことができる。1つ以上の実施形態では、コバルト塩は、CoCl2などのCo2+を含む。好ましい実施形態において、アルギナーゼ1のコバルト担持は、約15~約25℃または約20~約25℃などの室温またはほぼ室温でCoCl2を用いて実行される。コバルト担持率は、反応温度を上げたり下げたりすることで操作できる。コバルト担持は、様々なpH値で実行することもできる。
【0022】
本開示の一態様は、CEXクロマトグラフィー(カラム1)に関連する条件を変えることに関する。カラム1に装填されるタンパク質の量は、様々なアルギナーゼ1電荷バリアントを選択するために増減できる。装填係数を操作して、より望ましいCEX電荷種プロファイルへのシフトを引き起こすことができる。最大約60g/Lの装填係数(グラムでのタンパク質量/リットルでのCEXカラム樹脂の体積)により、高い比活性を有するアルギナーゼ1を産生できる。様々な実施形態では、装填係数は、最大約10g/L、約20g/L、約30g/L、約40g/L、約50g/Lまたは約60g/Lである。
【0023】
好ましい実施形態では、アルギナーゼ1は最初にカラム1で捕捉され、続いてカラム2で連続的に精製され、次にカラム3で捕捉される。別の実施形態では、E.coli溶解物をAEXカラム(例えば、カラム2)に装填し、フロースルーをCEXカラムに適用して、アルギナーゼ1を捕捉することができる。別の実施形態では、アルギナーゼ1のコバルト担持は、PEG化反応の後に起こり得る。また、SECカラムなど、他のクロマトグラフィーカラムを使用してMMCカラムを置き換えることもできる。
【0024】
本発明の一態様は、組換えコバルト置換ヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を産生するための方法に関する。1つ以上の実施形態において、組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)は、配列番号1と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。方法はいくつかのステップで構成される:組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)を産生するバイオリアクター内でE.coli細胞を培養し、E.coli細胞を溶解し、溶解物から細胞破片を除去し、細胞溶解物を陽イオン交換カラムに装填し、組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)を高塩濃度溶液で溶出させ、溶出された組換えヒトアルギナーゼタンパク質(rhARG)をコバルト塩とインキュベートして、コバルト置換組換えヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を形成し、コバルト置換組換えヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を陰イオン交換カラムに適用してフロースルーを収集し、フロースルーを第3のクロマトグラフィーカラムに添加し、高塩濃度溶液でMMCカラムからコバルト置換組換えヒトアルギナーゼタンパク質(Co-rhARG)を溶出させ、モル過剰のメトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステルを反応させ、過剰のPEGを除去する。
【0025】
組換えヒトアルギナーゼ1、医薬組成物および製剤
本発明の別の態様は、本明細書に記載の方法によって製造されたrhARG1、Co-rhARG1および/またはCo-rhARG1-PEG、またはそれを含む組成物に関する。
【0026】
1つ以上の実施形態では、タンパク質は、K16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K222、K223、K312およびK321のうちの1つ以上でポリエチレングリコールに共有結合している。
【0027】
本発明の別の態様は、組換えヒトアルギナーゼ(rhARG)タンパク質を含む組成物に関し、タンパク質は、配列番号1と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含み、タンパク質は、非天然金属補因子との複合体であり、非天然金属補因子はコバルトであり、タンパク質は、K16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K222、K223、K312およびK321の1つ以上でポリエチレングリコールに共有結合している。
【0028】
1つ以上の実施形態では、タンパク質は、以下からなる群から選択される位置にアミノ酸置換を含む:H100、D123、H125、D127、D231、D233、W121、D180、S229、C302、and E255。
【0029】
1つ以上の実施形態では、タンパク質は、以下からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む:D180S、S229C、S229G、C302F、C302I、E255Q、D180EおよびS229A。
【0030】
1つ以上の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸置換はC302である。
【0031】
1つ以上の実施形態において、タンパク質は、少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。
【0032】
1つ以上の実施形態では、タンパク質は、トランケートアルギナーゼIタンパク質である。
【0033】
1つ以上の実施形態では、タンパク質は、外因性タンパク質断片をさらに含む。
【0034】
1つ以上の実施形態では、外因性タンパク質断片は、免疫グロブリンのFc領域または免疫グロブリンのFc領域の一部を含む。
【0035】
1つ以上の実施形態では、Co-rhARG-PEGの比活性は、約400U/mg~約700U/mgの範囲にある。
【0036】
1つ以上の実施形態では、タンパク質は、インビトロでアッセイされた場合、pH7.4で約200mM-1s-1~約4,000mM-1s-1の範囲でアルギニンの加水分解についてkcat/Kmを呈示する。
【0037】
1つ以上の実施形態では、タンパク質は、インビトロでアッセイされた場合、pH7.4で約400mM-1 s-1~約2,500mM-1 s-1の範囲でアルギニンの加水分解についてkcat/KMを呈示する。
【0038】
1つ以上の実施形態では、PEG:Co-rhARGのモル比は、約7モル/モル~約15モル/モルの範囲である。
【0039】
1つ以上の実施形態では、遊離PEG濃度は、100μg/mL以下である。
【0040】
1つ以上の実施形態では、組成物の総コバルト含有量は、約9μg/mL~約15μg/mLの範囲にある。
【0041】
1つ以上の実施形態では、組成物は、イメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)にロードされた場合に少なくとも9つのピークを生成し、ピーク1は20%未満であり、ピーク2は30%未満であり、ピーク3+4は10~30%の範囲にあり、ピーク5は15~30%の範囲にあり、ピーク6は10~25%の範囲にあり、ピーク7は25%未満であり、ピーク8は15%未満であり、ピーク9は8%未満である。
【0042】
1つ以上の実施形態では、組成物は、icIEFにロードされた場合に少なくとも9つのピークを生成し、ピーク1は5~7%の範囲にあり、ピーク2は8~11%の範囲にあり、ピーク3+4は16~20%の範囲にあり、ピーク5は21~24%の範囲にあり、ピーク6は21~22%の範囲にあり、ピーク7は14~15%の範囲にあり、ピーク8は5~8%の範囲にあり、ピーク9は2~3%の範囲にある。
【0043】
本発明の別の態様は、rhARG1、Co-rhARG1および/またはCo-rhARG1-PEG、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。1つ以上の実施形態では、組成物は、静脈内または皮下投与用に処方される。1つ以上の実施形態では、組成物は、リン酸カリウム、塩化ナトリウムおよびグリセロールを含む。1つ以上の実施形態では、組成物は、約50mMのNaCl、約1mMのK2HPO4、約4mMのKH2PO4、および約1.5%w/vのグリセロールを含む。
【0044】
アルギナーゼ1欠損症の治療法
本発明の別の態様は、Co-rhARG1-PEGなどの組換えヒトアルギナーゼ1の投与に関する。そのような投与は、IVまたはSC投与を含む任意の適切な方法によることができる。この態様の1つ以上の実施形態では、Co-rhARG1-PEGの用量は、特定のアルゴリズムによって決定される:
このアルゴリズムの1つ以上の実施形態では、患者は、0.10mg/kgで治療を開始する。血漿アルギニンレベルが監視される。血漿アルギニンレベルが>150μMの場合、用量は0.20mg/kgに増加される。血漿アルギニンレベルが<50μMの場合、用量は0.05mg/kgに減少される。それ以外の場合、患者は0.10mg/kgの用量を維持する。
【0045】
このアルゴリズムの1つ以上の実施形態では、用量の変更は以下の通りである:
・血漿アルギニンレベルが>150μMの場合、この試料の前の2用量がa)mg/kgで同じ用量レベルであり、
b)連続している場合(投与し忘れなし)、単一の168時間試料を使用して下の表の2用量レベルだけ用量を増加させる(0.20mg/kgを超えない)。
・2つの連続する168時間試料(投与し忘れた場合でも)からの血漿アルギニンレベルが両方とも<50μMである場合、用量は、0.05mg/kgを下回らないようにして、下の表の1用量レベルだけ減少させる。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明のさらなる特徴は、以下の書面による説明および付随する図から明らかになるであろう。
【0047】
【
図1】アルギナーゼ1のアミノ酸とDNA配列、およびアルギナーゼ2のアミノ酸配列を示す。
図1(a)は、E.coliで発現した組換えヒトアルギナーゼ1のアミノ酸配列(配列番号1)1)を示し、
図1(b)は、組換えヒトアルギナーゼ1のコドン最適化DNA配列(配列番号2)を示す。このアルギナーゼ1の発現されたモノマーは、天然のヒトアルギナーゼ1モノマーに見られるN末端メチオニンを欠損している。
図1(c)は、天然のヒトアルギナーゼ2モノマーに見られるN末端メチオニンが欠損しているアルギナーゼ2のアミノ酸配列を示す。
【
図2】E.coliの発酵およびアルギナーゼ1の発現のための例示的なプロセスの概略図である。
【
図3】組換えヒトアルギナーゼ1、コバルト置換組換えヒトアルギナーゼ1およびPEG化コバルト置換組換えヒトアルギナーゼ1の精製のための例示的なプロセスの概略図である。
図3(a)は、陽イオン交換カラム(カラム1)、陰イオン交換カラム(カラム2)、およびCaptoマルチモーダルカラム(カラム3)、ならびにコバルト担持ステップを含む例示的なプロセスを示す。
図3(b)は、Co-アルギナーゼ1中間体のPEG化と、それに続く最終的な濾過と製剤化による原薬の提供を示す。
【
図4】アルギナーゼ1のカラムクロマトグラフィー精製を示す。
図4(a)は、E.coli細胞溶解物を陽イオン交換カラム(カラム1)への装填、カラムの洗浄、次いで高塩濃度溶液での溶出(第1のタンパク質産物を提供する)を示す。タンパク質の装填と溶出は、280nmでのUV吸光度を測定することによって評価した。約3リットル(L)の細胞溶解物をカラムに適用し、次にカラムを約1.5Lの緩衝液で洗浄し、約1L未満で溶出を行った。
図4(b)は、陰イオン交換カラム(カラム2)へのカラム1溶出アルギナーゼ1(第1のタンパク質産物)の装填を示し、タンパク質濃度は、280nmでの吸光度を使用して測定した。このカラム2からのフロースルーでアルギナーゼ1を収集し、第2のタンパク質産物を提供した。
図4(c)は、Captoマルチモーダル陽イオン交換カラム(カラム3)へのアルギナーゼ1の捕捉と、高塩濃度溶液で溶出して第3のタンパク質産物を提供することを示す。
【
図5】カラム1から溶出されたCo-アルギナーゼ1中間体試料(第1のタンパク質産物とも呼ばれる)の電荷不均一性プロファイルを決定するために使用された解析的陽イオン交換HPLC法の結果を示す。アルギナーゼ1の1mg/m試料を、20mM MES、pH6.0緩衝液の移動相を用いて陽イオン交換カラムに流速1.0mL/分で装填した。0~500mMのNaClのグラジエントを40分かけて導入し、このカラムから溶出したタンパク質の量を280nmでの吸光度から推定した。
図5(a)は、アルギナーゼ1の電荷不均一性種の代表的なクロマトグラムを示す。アルギナーゼ1電荷バリアントは、10~20分後にこの分析用HPLCカラムから溶出された。
図5(b)は、
図5(a)と同じクロマトグラムを示すが、ピークが大きく拡大されている。
図5(c)は、アルギナーゼ1陽イオン交換電荷バリアントへのピーク番号の割り当てを示す。
図5(d)は、イメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)法によって分離された原薬の典型的な電荷不均一性プロファイルを示す。
【
図6】E.coliでのrhARGの発現によって生成されるアルギナーゼ1グルコニル化バリアントを測定するためのLC/MS法の結果を示す。LC/MS解析により、未修飾のアルギナーゼ1(モノマー)、グルコニル化アルギナーゼ1、ホスホグルコニル化アルギナーゼ1、および2倍(2X)のグルコニル化アルギナーゼ1が同定される。トレースは、薬物中間体の2つの別々の産生実行由来のものである。質量スペクトルのオーバーレイは、35℃のRP LCMSで33~35分にわたって合計され、スペクトルは、未修飾のアルギナーゼ1によるシグナルのピーク強度に正規化されている。バリアントのピーク強度は、相対的な存在量に比例する。
【
図7】カラム1に適用された0.0~0.2MのNaClのグラジエントの結果を示す。画分は、グラジエントを介して0.25CV(カラム体積)ごとに収集された。データは、2つの異なるロットの収獲した細胞スラリーを供給材料として使用した2つのカラム1の実行を表す。評価に使用した装填係数は30g/Lであった。グラジエントは、産物の回収率を維持しながら、様々なグルコノイル化種をうまく分離した。
【
図8】Co-アルギナーゼ1中間体とCo-rhARG1-PEG原薬の酵素活性を示す。
図8(a)は、Co-アルギナーゼ1中間体の代表的な酵素反応速度論解析を示す(37℃で0~2mMの範囲にわたる基質濃度でのアルギニンからオルニチンへの変換)。
図8(b)は、Co-rhARG1-PEG原薬の代表的な酵素反応速度論解析を示す。
【
図9】Co-rhARG1-PEG原薬の薬物動態解析を示す。
図9(a)および(b)は、Co-rhARG1-PEG:第1部の単回静脈内投与後の患者の平均(±SD)アルギナーゼ1濃度対時間プロファイルを示す。線形(a)および片対数(b)プロットが示される。最初の平均BQL濃度は、LLOQの半分(0.125μg/mL)でプロットされていることに注意されたい。すべての患者の平均循環薬物濃度は、Co-rhARG1-PEGの用量を増やすにつれて増加した。
図9(c)~(f)は、Co-rhARG1-PEG:第2部のQW(毎週)IV用量投与後の患者の平均(±SD)Co-rhARG1-PEG濃度対時間プロファイルを示す。1週目(c)と8週目(d)の線形プロット、1週目(e)と8週目(f)の片対数プロット。
【
図10】アルギナーゼ1欠損症患者へのCo-rhARG1-PEGの投与を評価するための、第1/2相非盲検研究における薬物動態(PK)および薬力学(PD)の3つの代表的な統合プロット(a、b、c)を示す。漸増停止基準を使用すると、第2部で決定された用量は、患者1で0.09mg/kg、患者3で0.12mg/kg、および0.04mg/kgであった(第2部の期間中)。用量漸増停止基準を適用することにより、試験の他の患者は、様々な第2部投与レベルに落ち着いた。これらの同じ基準を適用して、好ましい(健康な)範囲外に移動するアルギニンレベルに応じて、すでにCo-rhARG1-PEGを使用している患者の用量を調整(増加または減少)することができる。
【
図11】Co-rhARG1-PEGの静脈内投与と皮下投与の比較を示す。患者にとって好ましい血漿アルギニン濃度は、40μM~115μMの間である(点線)。Co-rhARG1-PEGの皮下投与は、IV投与よりも長くこの好ましい範囲内のアルギニン濃度をもたらす。
図11には、(a)第2部の終了後の最初の週のデータが含まれ、
図11(b)には、この継続投与1週目からのIVデータが含まれていない。プロットは患者の値の平均として示され、データは各患者に対して停止基準が決定した用量から抽出される。
【
図12】Co-rhARG1-PEG投与後の血漿アルギニンおよび血漿グアニジノ化合物レベルを示す。
図12(a)は、ベースライン時投与1後、投与8後、および非盲検継続投与(open label extension)(OLE)中の血漿アルギニンレベルを示す。
図12(b)は、ベースライン時およびOLE中のグアニジノ酢酸(GAA)、N-α-アセチル-L-アルギニン(NAA)、α-ケト-δ-グアニジノ酢酸(GVA)およびアルギニン酸(ARGA)の血漿レベルを示す。
【
図13】ベースライン欠損と臨床転帰の応答を示す。
図13(a)は、6分間歩行試験(6MWT)、粗大運動能力尺度(GMFM)パートDおよびE、および適応行動評価システム(ABAS)のアルギナーゼ1欠損患者のベースライン欠損を示す。
図13(b)は、6MWT、GMFM-D、およびGMFM-Eの臨床応答を示す。
【
図14】6MWT、GMFM-D、およびGMFM-Eの時間依存性改善を示す。
図14(a)は、投与8および投与20における、すべての患者と6MWTのベースライン欠損のある患者における6MWTの臨床応答者のパーセンテージを示す。
図14(b)は、投与8および投与20における、すべての患者と6MWTのベースライン欠損のある患者におけるGMFM-Dの臨床応答者のパーセンテージを示す。
図14(c)は、用量8および用量20における、すべての患者と6MWTにベースライン欠損のある患者におけるGMFM-Eの臨床応答者のパーセンテージを示す。
【
図15】Co-rhARG1-PEGの様々なバッチの部位特異的PEG化解析を示す。
【発明の詳細な説明】
【0048】
組換えヒトアルギナーゼ1
hArg1として識別されるヒトアルギナーゼ1は、L-アルギニン(L-Arg)の加水分解を触媒してL-オルニチンと尿素を生成する二核マンガン金属酵素である。アルギナーゼ1は、3つの非共有結合した同一のモノマーユニットの三量体である。モノマーアルギナーゼ1は酵素的に活性であるが、安定性は低い。アルギナーゼ1の活性部位で天然マンガン(Mn2+)をコバルト(Co2+)に置換すると、生理的pHでの触媒活性が向上する。本明細書に記載のコバルト置換アルギナーゼ1酵素を産生する方法は、高純度で高活性の酵素を提供する。この方法はまた、原薬の製造における単離された中間体としてCo-アルギナーゼ1(Co-rhARG1)を提供することができる。1つ以上の実施形態では、原薬は、PEG化されたCo-アルギナーゼ1(Co-rhARG1-PEG)である。Co-アルギナーゼ1のPEG化は、循環半減期を大幅に延長する。この場合も、本明細書ではrhARG1を具体的に言及しているが、本明細書に記載の方法、製剤化および使用は、rhARG2にも適用することができる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「rhARG1」という用語は、配列番号1に対して少なくとも98%の配列同一性を有する組換え酵素などの組換えヒトアルギナーゼ1酵素を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「Co-rhARG1」、「Co-アルギナーゼ1中間体」などの用語は、天然マンガン補因子の少なくとも一部がコバルトで置き換えられたrhARG1を指す。1つ以上の実施形態では、Co-rhARG1は、Co-rhARG1-PEGの産生および/または精製プロセスにおける単離可能な中間体である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「Co-rhARG1-PEG」、「PEG化Co-アルギナーゼ1」などの用語は、N末端アミノ酸および/または1つ以上のリジン残基の遊離アミン(複数可)など、酵素に共有結合した1つ以上のPEGユニットを有するCo-rhARG1を指す。
【0052】
Co-rhARG1-PEG原薬の量は、非PEG化酵素の集合の量として表すことができる。この方法の一実施形態では、Co-rhARG1-PEG原薬の各mg(酵素ベース)はまた、約1mgのPEGなどのおよそ1~2mgのPEGを1.4mgを含有する。
【0053】
図1(a)はE.coliで発現したアミノ酸配列を示す。hArg1タンパク質配列はNCBIデータベース(UniProtKB:遺伝子座ARGI1_HUMAN、アクセッションP05089)から取得された。重複するオリゴヌクレオチドをPCR反応で使用して、E.coliでの発現に最適化されたコドンであるアルギナーゼ1 DNAを生成した(
図1(b))。アルギナーゼ1の321個のアミノ酸のE.coli発現モノマーは、天然のヒトアルギナーゼ1モノマーに見られるN末端メチオニンを欠損している。Co-アルギナーゼ1の計算された分子量は34721.6ダルトンである(表1)。ホモ三量体Co-アルギナーゼ1の計算された分子量は104164.8ダルトンである。アルギナーゼ1にはジスルフィド結合を有さない。
【表2】
【0054】
1つ以上の実施形態では、モノマーCo-rhARG1-PEGの計算された分子量は、約75~115kDaである。1つ以上の実施形態では、ホモ三量体Co-rhARG1-PEGの計算された分子量は、約224~344kDaである。1つ以上の実施形態では、平均PEG数は、約8~約25モルのPEG/モルのCo-アルギナーゼ1モノマー、例えば、約8~約16モルのPEG/モルのCo-アルギナーゼ1モノマーである。例示的なPEGの量には、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、および約16モルのPEG/モルのCo-アルギナーゼ1モノマーが含まれる。各PEGの平均分子量は約1,000~約10,000ダルトンであり、例えば、約1,000、約2,000、約3,000、約4,000、約5,000、約6,000、約7,000、約8,000、約9,000、または約10,000ダルトンである。特定の実施形態では、PEGの平均MWは、約5,000ダルトンである。
【0055】
1つ以上の実施形態では、Co-rhARG1-PEGはペグジラルギナーゼを含む。ペグジラルギナーゼには、次の2つの化学名があり:
a.ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、α-(カルボキシメチル)-ω-メトキシ-、アルギナーゼ1[コバルト補因子](合成ヒト)(1:10)とのアミド、三量体
b.マンガンがコバルトに置き換えられ、(N末端セリンおよびN6-リジンの)平均10個の第一級アミンが[メトキシポリ(エチレンオキシ)]アセチルでアミド化されている、Des-Met1-アルギナーゼ-1(肝臓型アルギナーゼ、EC 3.5.3.1)(ホモサピエンス)、非共有結合性ホモ三量体、Escherichia coli で産生。ペグジラルギナーゼの分子式は、C1554H2492N416O453S6 [C3H4O2(C2H4O)n]aモノマーである。ペグジラルギナーゼの平均分子量は、三量体で284kDaである。ペグジラルギナーゼのCAS登録番号は1659310-95-8である。
【0056】
ペグジラルギナーゼのPEG化の可能性のある部位を以下に示す。
【化1】
【0057】
通常、PEG化反応はCo-rhARG1で行われる。いくつかの実施形態では、PEG化反応は、rhARG1に対して行われ得る。1つ以上の実施形態では、反応物の量、時間、温度、および溶液および反応物の取り扱い(混合、添加速度、PEGの取り扱いなど)は、一貫したPEG化産物を産生するために重要である。通常、Co-rhARG1でのPEG化反応は、pH8.4の反応緩衝液中で行われる。1つ以上の実施形態では、Co-rhARG1は、pH8.4の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液でPEG化される。1つ以上の実施形態では、PEG化反応は、PEG(g)対Co-rhARG1(g)の範囲が4:1~1:1である、反応物比を含む。1つ以上の実施形態では、PEG化反応は、PEG(g)対Co-rhARG1(g)が約2.77:1である、反応物比を含む。1つ以上の実施形態では、PEG化反応は、PEGとCo-rhARG1を、約5分~約300分、約10分~約300分、約20分~約300分、約30分~約300分、約5分~約280分、約10分~約280分、約20分~約280分、約30分~約280分、約5分~約260分、約10分~約260分、約20分~約260分、約30分~約260分、約5分~約240分、約10分~約240分、約20分~約240分、約30分~約240分、ミストすることによって行われる。1つ以上の実施形態では、過剰なPEGを除去し、反応緩衝液のpHを低下させることにより、PEG化反応を停止させる。いくつかの実施形態では、過剰なPEGは濾過技術によって除去される。1つ以上の実施形態では、反応緩衝液を保存緩衝液と交換することにより、pHを低下させる。いくつかの実施形態では、保存緩衝液は、5mMのリン酸カリウム、50mMのNaCl、1.5%w/vグリセロール、およびpH7.4で構成されている。
【0058】
1つ以上の実施形態では、Co-rhARG1-PEGは、K16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K222、K223、K312、およびK321アミノ酸残基のうちの1つ以上でPEG化されている。いくつかの実施形態では、Co-rhARG1-PEGは、少なくともK16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K312、およびK321アミノ酸残基でPEG化されている。いくつかの実施形態では、Co-rhARG1-PEGは、K222および/またはK223アミノ酸残基でPEG化されている。いくつかの実施形態では、the Co-rhARG1-PEGは、K222および/またはK223アミノ酸残基でPEG化されていない。いくつかの実施形態では、Co-rhARG1-PEGは、K3、K149、K190、K195、K29、K265、およびK283アミノ酸残基のうちの1つ以上でPEG化されていない。いくつかの実施形態では、Co-rhARG1-PEGは、K3、K149、K190、K195、K29、K265、およびK283アミノ酸残基でPEG化されていない。
【0059】
Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K16は、約15%~約60%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K32は、約35%~約80%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K38は、約20%~約85%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K40は、約10%~約60%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K47は、約10%~約60%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K67は、約40%~約90%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K74は、約30%~約95%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K82は、約30%~約98%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K87は、約15%~約65%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K88は、約25%~約70%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K152は、約25%~約85%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K154は、約15%~約65%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K171は、約20%~約75%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K222は、0%~約30%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K223は、0%~約35%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K312は、0%~約45%の範囲でPEG化されている。Co-rhARG1-PEGの1つ以上の実施形態では、K321は、0%~約45%の範囲でPEG化されている。
【0060】
PEG-タンパク質モル比は、PEG化の程度を示す特質である。1つ以上の実施形態では、約1~約20モルのPEGが、1モルのCo-rhARG1をPEG化した。PEG:Co-rhARG1のモル比の例示的な範囲には、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1および20:1が含まれる。いくつかの実施形態では、PEG:Co-rhARGのモル比は、約7モル/モル~約15モル/モルの範囲にある。
【0061】
遊離PEGは、PEGクリアランスと安定性を実証するために測定される。いくつかの実施形態では、PEG化Co-rhARG1(mL)における遊離PEG濃度(μg)は、500μg/mL以下、400μg/mL以下、300μg/mL以下、200μg/mL以下、100μg/mL以下、および50μg/mL以下である。
【0062】
ヒトアルギナーゼ1は、L-アルギニンからL-オルニチンと尿素への変換である尿素回路の5番目の最後のステップを触媒する。PEG化された原薬であるCo-rhARG1-PEGは、同じ反応を触媒する。酵素活性を評価するためのアッセイは、pH7.4および37℃での一定の反応時間中のL-アルギニンからL-オルニチンへの変換を測定する。生成物の変換量は反応速度に変換され、ミカエリスメンテン式に適合させてKmとkcatを決定する。
【数1】
【0063】
Vmaxは、飽和基質濃度で達成される最大反応速度であり、Kmは、Vmaxの半分の速度をもたらす基質濃度を測定するためのミカエリスメンテン結合定数である。酵素代謝回転数、kcatは、Vmax/[E]によって計算される。
【0064】
比活性は、μモル/分で表される2mMのアルギニンでの反応速度をmgで表される酵素濃度で割ることによって決定される。
【0065】
酵素活性アッセイで測定されたKMおよびkcatのCo-rhARG1-PEG原薬の値は、通常、それぞれ0.15~0.22mMおよび約200~300/秒の範囲である。Co-アルギナーゼ1中間体をPEG化して原薬を形成すると、PEG化されていない中間体と比較して、酵素活性は大きく変化しない。ただし、PEG化は、Co-アルギナーゼ1中間体と比較して、Co-rhARG1-PEG製剤の循環半減期を大幅に延長する。
【0066】
1つ以上の実施形態では、タンパク質(例えば、Co-rhARG1またはCo-rhARG1-PEG)は、pH7.4で200mM-1s-1を超えるkcat/KMを示す。特定の実施形態では、タンパク質は、pH7.4で約200mM-1s-1~約4,000mM-1s-1の範囲のkcat/KMを示す。別の実施形態では、タンパク質は、37℃でpH7.4で約400mM-1s-1~約2500mM-1s-1の範囲のkcat/KMを示す。特定の実施形態では、本発明は、ヒトアルギナーゼ1のアミノ酸配列および非天然金属補因子を含むタンパク質を企図し、このタンパク質は、37℃でpH7.4で400mM-1s-1を超えるkcat/KMを示す。例示的なkcat/KM値は、37℃でpH7.4で、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約800、約
900、約1,000、約1,100、約1,200、約1,500、約2,000、約2,500、約3,000、約3,500および約4,000mM-1s-1またはこれらの値の間の任意の範囲が含まれる。
【0067】
比活性は、タンパク質(例えば、Co-rhARG1またはCo-rhARG1-PEG)の効力の指標である。1つ以上の実施形態では、Co-rhARG-PEGの比活性は、約200U/mgから約1000U/mgの範囲にある。比活性の例示的な範囲には、約200U/mg~約1000U/mg、約300U/mg~約1000U/mg、約400U/mg~約1000U/mg、約200U/mg~約900U/mg、約300U/mg~約900U/mg、約400U/mg~約900U/mg、約200U/mg~約800U/mg、約300U/mg~約800U/mg、約400U/mg~約800U/mg、約200U/mg~約700U/mg、約300U/mg~約700U/mg、および約400U/mg~約700U/mgが含まれる。
【0068】
1つ以上の実施形態では、rhARG1、Co-rhARG1、またはCo-rhARG1-PEGは、配列番号1に対して少なくとも98%、98.5%、99%、または99.5%の同一性を有することができる。1つ以上の実施形態では、rhARG1、Co-rhARG1またはCo-rhARG1-PEGは、配列番号1によって記載されるアミノ酸配列に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上の欠失、置換、および/または挿入を有することができる。様々なアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムを使用して、2つの配列間の同一性を計算でき、それらには米国国立バイオテクノロジー情報センターのWebサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)
【0069】
1つ以上の実施形態では、rhARG1、Co-rhARG1またはCo-rhARG1-PEGは、H100、D123、H125、D127、D231、D233、D180、S229、およびC302から選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、rhARG1、Co-rhARG1またはCo-rhARG1-PEGは、以下からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む:D180S、S229C、S229G、C302F、C302I、E255Q、D180EおよびS229A。1つ以上の実施形態では、rhARG1、Co-rhARG1またはCo-rhARG1-PEGは、少なくともC302にアミノ酸置換を含む。
【0070】
本明細書で説明する方法を使用すると、アルギナーゼ1のほとんどすべてのマンガン補因子をコバルトで置き換えることができる。コバルト補因子への変更により、アルギニンのKmがpH7.4で2.8mMから約0.18mMに変化する。1つ以上の実施形態では、Co-rhARG1-PEGは、約0.1~約2μgのCo/mgタンパク質を含む。例示的なコバルト担持には、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9および約2μgのCo/mgタンパク質が含まれる。
【0071】
遊離コバルトは、コバルトのクリアランスと安定性を実証するための尺度である。いくつかの実施形態では、遊離コバルトは0.10μg/mL以下、0.09μg/mL以下、0.08μg/mL以下、0.07μg/mL以下、0.06μg/mL以下、0.05μg/mL以下、および0.04μg/mL以下である。
【0072】
総コバルトはタンパク質の効力に影響を与え、遊離コバルトの量が比較的少ないため、結合コバルトの指標となる。いくつかの実施形態では、総コバルト濃度は、約5μg/mL~約20μg/mL、約6μg/mL~約20μg/mL、約7μg/mL~約20μg/mL、約8μg/mL~約20μg/mL、約9μg/mL~約20μg/mL、約5μg/mL~約19μg/mL、約6μg/mL~約19μg/mL、約7μg/mL~約19μg/mL、約8μg/mL~約19μg/mL、約9μg/mL~約19μg/mL、約5μg/mL~約18μg/mL、約6μg/mL~約18μg/mL、約7μg/mL~約18μg/mL、約8μg/mL~約18μg/mL、約9μg/mL~約18μg/mL、約5μg/mL~約17μg/mL、約6μg/mL~約17μg/mL、約7μg/mL~約17μg/mL、約8μg/mL~約17μg/mL、約9μg/mL~約17μg/mL、約5μg/mL~約16μg/mL、約6μg/mL~約16μg/mL、約7μg/mL~約16μg/mL、約8μg/mL~約16μg/mL、約9μg/mL~約16μg/mL、約5μg/mL~約15μg/mL、約6μg/mL~約15μg/mL、約7μg/mL~約15μg/mL、約8μg/mL~約15μg/mL、および約9μg/mL~約15μg/mLの範囲である。
【0073】
様々な実施形態において、Co-rhARG1-PEGは、約1μg未満のMn/mgタンパク質、例えば、約1、約0.9、約0.8、約0.7、約0.6、約0.5、約0.4、約0.3、約0.2、約0.15、約0.1、約0.09、約0.08、約0.07、約0.06、約0.05、約0.04、約0.03、約0.02または約0.01μg未満のMn/mgタンパク質を含む。特定の実施形態では、Co-rhARG1-PEG原薬は、約2μgのCo/mgタンパク質および約0.05μgのMn/mgタンパク質を含む。
【0074】
様々な実施形態において、Co-rhARG1-PEGは、約1μg未満のFe/mgタンパク質、例えば、約1、約0.9、約0.8、約0.7、約0.6、約0.5,約0.4、約0.3、約0.2、約0.15、約0.1、約0.09、約0.08、約0.07、約0.06、約0.05、約0.04、約0.03、約0.02または約0.01μg未満のFe/mgタンパク質を含む。
【0075】
rhARG1、Co-rhARG1およびPEGrhARG1の産生と精製
例示的な上流および下流の産生方法の概要を
図2および3に見ることができる。
【0076】
振とうフラスコでの拡大
振とうフラスコでの拡大/発酵の目的は、産生発酵槽に播種するための接種材料を生成することである。振とうフラスコでの拡大により、生産リアクターに接種するための細胞集団と、分析目的のための余分な細胞集団が作成される。アルギナーゼ1発酵プロセスの代表的な概要を
図2に示す。
【0077】
接種培地のアリコートを1つの500mLフラスコ(一次フラスコ)と6つの3 L使い捨てフラスコ(二次フラスコ)に導入する。フラスコはオートクレーブにかけられ、滅菌後の添加物が各フラスコに移される。接種前に、一次培地は37℃の処理温度に予熱される。二次接種の前に、二次フラスコは37℃の処理温度に予熱される。
【0078】
アルギナーゼ1を発現するE.coliワーキング細胞バンク(WCB)のうちの1つのバイアルを冷蔵から取り出し、解凍する。解凍した細胞の目標量(約1.1mL)を無菌的に一次フラスコに加え、フラスコを37℃で攪拌しながらインキュベートする。接種後数時間から開始して1時間ごとにフラスコから試料を取り出し、600nm(OD600)での光学密度で細胞増殖を追跡する。一次フラスコで≧1.0の目標OD600に達したら、一次培養の目標容量(15mL)を各二次フラスコに無菌的に移す。二次フラスコを37℃で撹拌しながらインキュベートする。試料を、接種後4時間から開始して1時間ごとに1つの二次フラスコから取り出し、OD600が1.5以上に達したら、30分ごとに増やす。測定値が、≧2.0のOD600の指定された密度に達したら、残りの二次フラスコをサンプリングする。すべての二次フラスコの平均OD600が指定された移送基準を満たしている場合、フラスコはプールされ、接種材料は産生発酵槽に移送される。アルギナーゼ1の発酵プロセスの代表的な概要を
図2に示す。
【0079】
産生発酵
産生発酵の目的は、振とうフラスコ培養を拡大し、アルギナーゼ1の産生を誘導することである。産生発酵は、大量のアルギナーゼ1を生成することができる。細胞集団を構築するための振とうフラスコでの拡大段階に続いて、発酵プロセスは、可溶性タンパク質としてアルギナーゼ1(E.coli中)を産生する。一実施形態では、1500 Lの発酵槽は、接種前の滅菌添加物を含む最初のバッチ培地を含有する。接種後、発酵槽への投入には、栄養供給物(nutrient feed)、消泡剤溶液、培養液のpHを維持するための酸または塩基の添加が含まれる。二次容器は栄養供給培地を保持する。自動制御戦略は、溶存酸素、スパージ速度、撹拌速度、pH、圧力、温度など、一貫した細胞増殖のための重要なパラメータを維持する。アルギナーゼ1の発現は、IPTG(イソプロピルベタ-D-1-チオガラクトフラノシド(isopropyl betta-D-1-thiogalactophranoside))の添加によって誘導され、収獲は約18時間後に行われる。発酵槽の性能は、産生の最後に、細胞密度、固形分パーセント、および可溶性アルギナーゼ1の割合を監視することによって評価される。
【0080】
好ましい実施形態では、発酵培地は、産生発酵槽で直接調製される。定置滅菌(SIP)の前に、精製水を必要な重量になるまで発酵培地に添加する。カナマイシン、グルコース、およびリン酸カリウムの滅菌後の添加物は、培地が冷却された後、産生発酵槽にフィルター滅菌される。必要に応じて、0.2μmの滅菌フィルターを使用して、滅菌培地を精製水で指定の接種前重量にする。発酵培地は、制御されたpH値まで塩基(水酸化アンモニウム)で滴定される。
【0081】
37℃の産生発酵槽は、圧力支援移送を介してプールされた接種材料を使用して無菌的に接種される。接種時から発酵がクールダウンするまで発酵ブロス試料は定期的に収集され、OD600分析のために測定される。グルコース試料は、接種後3時間から始まり、接種後9時間後には頻度を増加させて一定の間隔で採取される。培養物の過度の発泡を避けるために、発酵プロセス中に必要に応じて消泡剤溶液が添加される。溶存酸素は、必要に応じて酸素スパージを含む撹拌カスケードによって制御される。培養pHは、酸と塩基の投入を使用して維持される。増殖培地は、撹拌および通気により、36~38℃およびpH7.0~7.4に維持することが好ましい。
【0082】
栄養供給物は、酵母エキス、Martone B-1、L-システインHCl、およびグリセロールで構成される。グルコース濃度が10g/L未満(接種後12~14時間)になると供給が開始され、生産が終了するまで一定の速度で継続される。IPTGの添加により発現が起こる。誘導は18時間継続する。発酵プロセスの完了に続いて、収穫操作の準備のためにクールダウンが行われる。産生発酵槽は、約6g/Lの可溶性アルギナーゼ1の力価をもたらす。産生発酵の概要を
図3に示す。
【0083】
収穫操作
収穫操作は、可溶性アルギナーゼ1を含む細胞を捕捉し、細胞を破壊して開け/細胞を溶解し、遠心分離および/または濾過を使用して細胞破片の溶解物を取り除く。取り戻した細胞スラリーは、長期保存のために凍結または低温で保存することができる。収穫操作は、遠心分離によって細胞を収集し、ホモジナイザーまたは圧力下での細胞破壊(フレンチプレス)を2回通過させて溶解し、2回目の遠心分離を行い、最初のクロマトグラフィーステップの前に膜濾過することができる。
【0084】
好ましい実施形態では、全細胞は、ディスクスタック遠心分離機を使用して発酵培地から分離される。得られた細胞スラリーを25mMのHEPES、pH7.6に再懸濁し、ホモジナイザーを2回通過させた。25mMのHEPESのpHは、pH7.2~7.6の範囲でも使用できる。溶解した物質を細胞の破片を除去するため遠心分離機を使用して清澄化してから、0.2μmグレードのフィルターで膜濾過する。好ましい実施形態では、収穫ステップは、≦15℃の目標温度で実行される。
【0085】
代替の実施形態では、細胞破壊は、高圧を使用して実行される。細胞スラリーは制御された速度でホモジナイザーに移され、均質化された流出物は熱交換器を通過して、圧力均質化中に見られる温度上昇を低減する。冷却された細胞は2回の均質化通過を受ける。最初の通過の溶解プールは、収集容器から供給容器に戻される。通過間の保持期間は、潜在的な微生物の増殖を減らすために最小限に抑えられる。
【0086】
溶解後の材料は、溶解物の可溶性成分から細胞破片を除去するための遠心分離によって清澄化される。ライセートは制御された速度でディスクスタック、断続的な排出、遠心分離機に移送される。清澄化された溶解物は、さらなる処理のために収集される。
【0087】
清澄化した溶解物を約0.2μmフィルターなどで濾過する。プロセス遷移フィルター(Process transition filter)は、プロセス操作中の微生物制御にも使用できる。この目的のために、フィルターは0.5μmまたは0.2μmのフィルターにすることができる。このステップでは、清澄化操作中に分離しなかった可能性のある小さな微粒子も清澄化された物質から除去する。使用前に、フィルターを精製水で十分に洗い流し、25mMのHEPES、pH7.6緩衝液で平衡化する。下流の各プロセスステップの前に、バイオバーデン担持の可能性を軽減するためのプレフィルターを付けることができる。
【0088】
rhARG1、Co-rhARG1およびCo-rhARG1-PEGの精製
rhARG1を発現する細胞を培養するために使用される方法(例えば、上記の発酵プロセス)に関係なく、本明細書に記載の精製方法を使用して、rhARG1を捕捉し、酵素をさらに精製することができる。精製方法には、コバルトを担持してCo-rhARG1を産生する、および/またはPEG化反応物と反応してCo-rhARG1-PEGを産生するなどのオプションのステップを含めることができる。
【0089】
精製プロセスの様々な実施形態は、rhARG1を捕捉するための陽イオン交換(CEX)カラムの使用に関する。1つ以上の実施形態では、CEXカラムは、複数のクロマトグラフィーカラムを備えたシステムの第1のカラム(「カラム1」)である。このカラム1から溶出されたタンパク質産物は「第1のタンパク質産物」である。
【0090】
1つ以上の実施形態では、カラム1は、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用して、約7.6のpHなど、約7から約8の範囲のpHでrhARG1を結合する。1つ以上の実施形態では、rhARG1は、塩の非存在下または低塩濃度で結合する。1つ以上の実施形態では、rhARG1は、最大約0.5MのNaClなどの高塩濃度(NaClなど)のバッファーで溶出される。例示的な塩濃度には、約0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、0.1、約0.2、約0.3、約0.4および約0.5MのNaClが含まれる。
【0091】
様々な実施形態において、塩グラジエントは、rhARG1の異なる電荷バリアントを分離するために使用される。例示的な塩例示的な塩グラジエントは、約0~約0.5MのNaCl、約0~約0.4MのNaCl、約0~約0.3MのNaCl、約0~約0.2MのNaCl、または約0~約0.1MのNaClである。
【0092】
1つ以上の実施形態では、方法は、第1のタンパク質産物(任意選択にはコバルト置換後)を陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーカラム(「カラム2」)に装填し、フロースルーを収集して第2のタンパク質生成物(「第2のタンパク質産物」)を提供することをさらに含む。別の実施形態では、この方法はさらに、アルギナーゼ1を捕捉し、次いで溶出させて第3のタンパク質産物(「第3のタンパク質産物」)を提供する第3のカラムに第2のタンパク質産物を装填することを含む。いくつかの実施形態では、この第3のクロマトグラフィーカラム(「カラム3」)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムまたはマルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)カラムであり得る。
【0093】
様々な実施形態は、rhARG1には、Mn補因子を置き換えるためCoが担持されることを提供する。1つ以上の実施形態では、Co担持は、Co2+塩、例えばCoCl2を使用して実行される。インキュベーション時間は温度に依存するため、コバルト置換温度が低いほどインキュベーション時間は長くなり、コバルト置換温度が高いほど長いインキュベーション時間は必要ない。コバルト担持温度は1℃程度に低くまたは50℃を超える場合があり、対応するインキュベーション時間は8時間以上または10分未満の場合がある。
【0094】
様々な実施形態は、rhARG1またはCo-rhARG1が、メトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステル(MW5000)などのPEG化反応物と反応することを提供する。PEG化反応物は通常、酵素と比較して10~40モル過剰で提供される。インキュベーション時間は0.5~4時間の範囲であり得る。PEG化中のpHは、約8.4のpHなど、約8~約9であり得る。
【0095】
1つ以上の実施形態では、精製されたPEG化タンパク質、rhARG1またはCo-rhARG1は、アルギナーゼIモノマー、グルコノイル化アルギナーゼI、ホスホグルコノイル化アルギナーゼI、2×グルコノイル化アルギナーゼI、グルコノイル化+ホスホグルコノイル化アルギナーゼIおよび2×ホスホグルコノイル化アルギナーゼIを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質であるrhARG1またはCo-rhARG1は、少なくとも70%のアルギナーゼIモノマーを含む。例示的な量には、少なくとも70%、少なくとも75、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%のアルギナーゼIモノマーが含まれる。いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、10%未満のグルコノイル化アルギナーゼIを含む。例示的な量には、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%または約9%のグルコノイル化アルギナーゼI、またはこれらの値の間の任意の範囲が含まれるいくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、10%未満のホスホグルコノイル化アルギナーゼIを含む。例示的な量には、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%または約9%のホスホグルコノイル化アルギナーゼIが含まれる、いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、少なくとも70%のアルギナーゼIモノマー、10%未満のグルコノイル化アルギナーゼI、および10%未満のホスホグルコノイル化アルギナーゼIを含む。
【0097】
画像化されたキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)は、PEG化三量体の不均一性のレベルによるpeg化タンパク質の一貫性の測定を提供する。1つ以上の実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1のicIEF解析は、それぞれが9つの別個に帯電した種である、種-1、種-2、種-3、種-4、種-5、種-6、種-7、種-8、種-9に対応する9つの別個のピークである、ピーク1、ピーク2、ピーク3、ピーク4、ピーク5、ピーク6、ピーク-7、ピーク-8およびピーク-9を含む。各ピークの曲線下面積は、その特定の種の割合に対応する。1つ以上の実施形態では、特定のピークは、ピーク1+2またはピーク3+4などの関連種に対して一緒に組み合わせることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質であるrhARG1またはCo-rhARG1は、ピーク1の曲線下面積を、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、および約10%未満の割合で含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、ピーク2の曲線下面積を、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、および約10%未満の割合で含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、結合されたピーク1+2の曲線下面積を、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、および約10%未満の割合で含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、ピーク3+4の曲線下面積を、約2%~約40%、約2%~約35%、約2%~約30%、約2%~約25%、約4%~約40%、約4%~約35%、約4%~約30%、約4%~約25%、約6%~約40%、約6%~約35%、約6%~約30%、約6%~約25%、約8%~約40%、約8%~約35%、約8%~約30%、約8%~約25%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、および約10%~約25%の比率範囲で含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、ピーク5の曲線下面積を、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約10%~約40%、約10%~約35%,10%~約30%、約10%~約25%、約15%~約40%、約15%~約35%、約15%~約30%、および約15%~約25%の比率範囲で含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、ピーク6の曲線下面積を、約2%~約35%、約2%~約30%、約2%~約25%、約2%~約20%、約4%~約35%、約4%~約30%、約4%~約25%、約4%~約20%、約6%~約35%、約6%~約30%、約6%~約25%、約6%~約20%、約8%~約35%、約8%~約30%、約8%~約25%、約8%~約20%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、および約10%~約20%の比率範囲で含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、ピーク7の曲線下面積を、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、および約10%未満の比率で含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、ピーク8の曲線下面積を、約25%未満未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、および約5%未満の比率で含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、精製されたPEG化タンパク質である、rhARG1またはCo-rhARG1は、ピーク9の曲線下面積を、約18%未満、約16%未満、約14%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、および約4%未満の比率で含む。
【0107】
rhARG1、Co-rhARG1およびCo-rhARG1-PEGの投与
本明細書に記載のrhARG1、Co-rhARG1およびCo-rhARG1-PEG(およびそれらを含む組成物)は、静脈内、髄腔内、皮下、筋肉内、腫瘍内、および/または腹腔内を含む任意の適切な経路を介して投与することができる。1つ以上の実施形態では、rhARG1、Co-rhARG1およびCo-rhARG1-PEG(またはそれらを含む組成物)は、静脈内(IV)または皮下(SC)に投与される。rhARG1、Co-rhARG1およびCo-rhARG1-PEGを含む組成物は、生理学的に許容される液体、ゲルまたは固体の担体、希釈剤、および賦形剤と共に製剤で提供することができる。このような組成物は、典型的には、注射剤としての液体溶液または懸濁液として調製される。好適な希釈剤および賦形剤とは、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、またはグリセロールなど、およびこれらの組合せである。さらに、所望であれば、組成物は少量の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、安定化剤またはpH緩衝剤を含有してもよい。
【0108】
rhARG1、Co-rhARG1およびCo-rhARG1-PEG(例えば、ペグジラルギナーゼ)の投与に関する例示的な方法および説明を以下に提供する。以下の記述はペグジラルギナーゼに固有のものであるが、方法および説明は他の組換えアルギナーゼ1および2酵素にも適用できる。
【0109】
推奨される静脈内投与レジメン:
治療を開始する前に、ベースラインの血漿アルギニン濃度を取得する。単回静脈内注入として週に1回投与されるARG1-D患者に対するペグジラルギナーゼの最初の推奨投与量は0.10mg/kgである。0.10mg/kgの初期用量で血漿アルギニンが≦150マイクロモル/Lのレベルに低下しない場合、用量は週に1回最大0.20mg/kgまで調整できる。治療中に血漿アルギニンレベルが50マイクロモル/Lを下回った場合は、投与量を減らすことを検討する。ペグジラルギナーゼを5回以上静脈内投与したら、ARG1-D患者にペグジラルギナーゼの皮下投与を使用することを検討し、血漿アルギニンレベルを定期的に監視し続ける。
【0110】
推奨される皮下投与レジメン:
ペグジラルギナーゼ静脈内投与から皮下投与に移行する場合、次に予定されている静脈内投与の代わりに、最初の皮下投与を行う。最初の皮下投与量は、最後に投与されたIV投与量と同じmg/kg投与量である必要がある。皮下投与量は、血漿アルギニンレベルが50~150マイクロモル/Lの範囲にとどまるように、臨床的に示されるように変更することができる。
【0111】
血中アルギニン監視:
ペグジラルギナーゼによる治療を開始した後、患者の血漿アルギニンレベルが50~150μmol/Lの目標範囲内になるまで、血漿アルギニン監視を実施する必要がある。その後、血中アルギニン制御を評価するために、定期的な血漿アルギニン監視が推奨される。皮下投与に変更する場合、または食事を変更する場合は、追加の血漿アルギニンモニタリングが必要になる場合がある。
【0112】
調製と投与の説明
ペグジラルギナーゼは、1mg/mLまたは5mg/mLの濃度で5mLのペジラルギナーゼを含む10mLの使い捨てガラスバイアルに入った凍結液体製剤として供給される。ペグジラルギナーゼの各使い捨てガラスバイアルは、単回静脈内注射または皮下注射として使用することを目的としている。投与前に、粒子状物質と変色がないかペジラルギナーゼを視覚的に検査する。ペグジラルギナーゼは、無色からわずかに黄色またはわずかにピンク色の溶液である。変色、曇り、または粒子状物質がバイアルに存在する場合は廃棄する。バイアルからフリップトップを取り外す。バイアルのゴム栓をアルコール綿棒で拭いて消毒する。18G針付きの滅菌シリンジを使用して、バイアルから適切な量の薬剤を取り出す。複数のバイアルが必要な場合は、別々の針を使用して各バイアルから溶液を引き出されたい。シリンジポンプで使用するためにバイアルから引き出す溶液を計算する。適切な量の薬剤が注射器に引き込まれたら、別の針を使用して通常の生理食塩水を引き込み、総量が40mLになるようにする。使用する薬剤の必要量を次のように計算する。1.0mg/mLペグジラルギナーゼの量=患者の体重(kg)×用量レベル(mg/kg)5.0mg/mLペグジラルギナーゼの量=患者の体重(kg)×用量レベル(mg/kg)
【0113】
シリンジポンプを使用して、30分以上にわたる静脈内注入によりペグジラルギナーゼを投与する。
【表3】
【0114】
1つ以上の実施形態では、皮下注射の体積は、最大体積を有し、例えば、成人患者の場合は最大2mL/注射、および/または小児患者の場合は最大体積1mL/注射である。皮下投与の計算された体積が最大体積よりも大きい場合は、より高いバイアル濃度を使用する(例えば、1mg/mLではなく5mg/mL)か、体積を複数の小さな注射に分割することができる(例えば、4mLの注射はそれぞれ2mLの2つの注射に分割される)。
【0115】
剤型と強度
ペグジラルギナーゼ注射液は無色からわずかに黄色またはわずかにピンク色の溶液で10mLバイアルで次のように利用可能である:
10mLバイアルで次のように利用可能:
a.注射用溶液:1.0mg/mLの5mL
b.注射用溶液:5.0mg/mLの5mL
【0116】
警告と注意事項
ペグジラルギナーゼの投与により過敏反応が起こることがある。ペグジラルギナーゼ注入中および注入後の急性アレルギー反応(蕁麻疹、そう痒症、紅斑、低血圧、頻脈など)の兆候と症状についてすべての患者を監視する。重度の過敏反応の場合は、ペグジラルギナーゼの投与を直ちに遅らせるか中止し、適切な医療を行う。投薬前に、鎮静作用少ない抗ヒスタミン薬による患者の前投薬を検討されたい。コルチコステロイドが必要な場合は、高アンモニア血症を引き起こす可能性があるため、注意して使用する必要がある。
【0117】
妊娠:妊娠カテゴリーB
生殖試験は、100mg/kgまでの用量でマウスおよびラットで実施された。ペグジラルギナーゼによる胎児への害の証拠はなかった。しかし、妊婦を対象とした適切で十分に管理された研究はない。動物の生殖研究は、必ずしも人間の反応を予測するものではないため、妊娠中はペグジラルギナーゼは明らかに必要な場合にのみ使用する必要がある。
【0118】
授乳中の母親
ペグジラルギナーゼが母乳に存在するかどうかは不明である。母乳育児の発達上および健康上の利点は、ペグジラルギナーゼに対する母親の臨床的必要性、および母乳育児中の子供に対する薬物による潜在的な悪影響とともに考慮する必要がある。
【0119】
説明
ペグジラルギナーゼは、コバルト置換された組換えヒトアルギナーゼI酵素であり、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)に共有結合的にコンジュゲートし、アルギナーゼ1と同じ反応を触媒して、アルギニンをオルニチンと尿素に変換する作用をする。ヒトアルギナーゼ1は二核マンガン金属酵素である。ペグジラルギナーゼを産生するには、マンガン補因子をコバルトに置き換えて、Co-アルギナーゼIを生成する。アルギナーゼIの活性部位での天然マンガン(Mn+2)をコバルト(Co+2)に置換すると、生理的pHでの安定性と触媒活性が向上する。ペグ化は循環半減期を延長する。ペグジラルギナーゼの平均分子量はおよそ284kDaである。ペグジラルギナーゼは、タンパク質含有量1mg当たりおよそ320~600単位の範囲の比活性を有する。1活性単位は、37℃で1分当たり1マイクロモルのアルギニンをオルニチンに変換するために必要な酵素の量として定義される。
【0120】
ペグジラルギナーゼは、静脈内または皮下注入を目的としており、50mMの塩化ナトリウム、5mMのリン酸カリウム、および1.5%w/vグリセロールを含み、pH7.4である、1mg/mLおよび5mg/mLの濃度の緩衝液で製剤化された、無菌の透明な無色からわずかに黄色またはわずかにピンク色の溶液として供給される。透明な使い捨てのガラスバイアルに防腐剤を含まない滅菌溶液として提供される。1mg/mLペグジラルギナーゼ製剤の各バイアルには、5mLの製剤が含まれている(バイアル当たり5mgペグジラルギナーゼ)。5mg/mLペグジラルギナーゼ製剤の各バイアルには、5mLの製剤が含まれる(バイアル当たり25mgペグジラルギナーゼ)。バイアルはコーティングされたゴム製ストッパーで栓をされ、アルミニウム製のフリップオフシールで密封され、≦-60℃で凍結保存され、使用前に解凍される。
【0121】
薬力学
アルギナーゼ1欠損症の成人および小児患者のペグジラルギナーゼ治療により、血中アルギニン濃度が治療前のベースライン値から通常の血中アルギニン範囲である40~115マイクロモル/Lに減少した。L-アルギニンの最大抑制は、投与後およそ8時間で観察され、用量依存的に減少し、投与後168時間までに投与前レベルまで回復した。ペグジラルギナーゼとアルギニンの間に強い相関が観察され、IV投与後のアルギニンに対する即時の抑制効果、および投与後24時間以内にアルギニン濃度の最大の減少に達した。
【0122】
薬物動態:
14人の被験者にIV投与した後、ペグジラルギナーゼの薬物動態とアルギニンの関係を特性評価するために、0~168時間の投与間隔全体を通して薬物動態試料を収集した。用量範囲(0.015mg/kg~0.2mg/kg)全体で、CmaxおよびAUC0~168で測定したペグジラルギナーゼ曝露は、用量にほぼ比例して増加し、用量が13倍に増加すると、CmaxおよびAUC0~168が14倍に増加した。週1回のIV投与レジメンの後にペグジラルギナーゼの蓄積は、観察されず、用量範囲全体でT1/2は約30時間であり、曝露測定基準の被験者間変動は低から中程度(13~46%CV)であった。
【0123】
動物毒性学および/または薬理学
アルギニンレベルに対するペグジラルギナーゼの薬理学的効果は、アルギナーゼIの新生児トランスジェニックマウスモデルおよび成体マウスのタモキシフェン誘発アルギナーゼ欠損モデルで評価された。これらのモデルは、循環するアルギニンとアルギニンのカタボライトがかなり過剰に存在するという点で、人間の病気を模倣しているが、ただし、アルギナーゼI欠損症のヒトとは異なり、これらの動物は重度で一般的に致命的な高アンモニア血症を発症する。薬理学的効果はまた、高アルギニン血症のラットアルギニン誘発モデルで評価された。ペグジラルギナーゼは、用量依存的に血漿アルギニンレベルを低下させた。
【0124】
ペグジラルギナーゼの潜在的毒性およびTKは、生後(PND)21日目の幼若ラット(2歳のヒトに相当)に、0.1、0.3、および1.0mg/kgのIVボーラス注射を週1回、6か月間投与し、その後6週間の回復期間を設けて評価した。ペグジラルギナーゼは忍容性が高く、被験物質に関連する死亡率はなく、摂食量、凝固、検尿、検眼鏡検査、性的成熟、成長ホルモン分析、骨髄分析、機能観察バッテリ評価(FOB)、神経行動試験(聴覚驚愕馴化、運動活動、またはモリス水泳迷路)に有意な被験物質の影響は観察されなかった。6ヶ月の終末および6週間の回復間隔の終わりにペグジラルギナーゼ関連の肉眼的所見はなかった。不利な微視的変化は精巣と精巣上体に限定され、雄生殖器の重量の減少と0.3および1.0mg/kgでの不利な精子分析所見と相関していた。1.0mg/kgでは、精子の運動性の低下、尾側精巣上体の精子数の減少、精子濃度の低下、異常な精子の割合の増加など、精子分析に悪影響が見られた。これらの観察結果は、直接的な治療関連の影響とみなされ、0.3mg/kgおよび1.0mg/kgの精巣における微妙な尿細管変性の顕微鏡的変化と相関していた。対照群と1.0mg/kg群の6週間の回復期間後、これらの変化は、異常な精子と精子数の割合の増加を除いて、全体的に可逆的であった。正常な精子の発達サイクルは約9週間であるか、6週間の回復期間よりも長いため、6週間後の部分的な可逆性は予想外ではなかった。
【0125】
重要なことに、組織病理学によって観察された明らかなPEG化効果はなかった。毒物動態学データは、ペグジラルギナーゼ曝露が研究を通して維持されたことを示した。結論として、雌のNOAELは1.0mg/kgであった。雄では、0.3mg/kgおよび1.0mg/kgでの精巣の微視的変化に基づいて、NOAELは0.1mg/kgであった。
【0126】
ペグジラルギナーゼの潜在的毒性とTKは、カニクイザルに0.1、0.3、1.0mg/kgの用量で13週間、週1回の静脈内ボーラス注射を行い、その後4週間の回復期間を経て評価した。1.0mg/kgで観察された臨床症状には、体重の減少、まばらな毛の発生率の増加(全身)、皮膚の乾燥/変色(全身)、振戦、食欲不振、水様便、活動性低下、運動失調、筋消耗、および/またはボサボサの/円背の外観が含まれていた。臨床病理パラメータ(凝固、成長ホルモン、および検尿)、ECGおよび眼科検査、呼吸数、および血圧評価では、治療に関連する影響は認められなかった。
【0127】
供給方法/保管および取り扱い
ペグジラルギナーゼは注射用溶液として提供されている。
【0128】
ペグジラルギナーゼは凍結状態で供給される(≦-60℃)。希釈したペグジラルギナーゼはすぐに使用する必要がある。すぐに使用できない場合は、希釈したペジラルギナーゼを投与中に2℃~8℃(36°F~46°F)で最大8時間保存できる。
【実施例】
【0129】
本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示は、以下の説明で後述する構築またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践または実施することができる。
【0130】
以下の実験的開示では、以下の略語が適用される:eq(当量)、M(モル)、μM(マイクロモル)、mM(ミリモル)、N(規定)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、μmol(マイクロモル)、nmol(ナノモル)、g(グラム)、mg
(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、L(リットル)、ml(ミリリットル)、μl(マイクロリットル)、cm(センチメートル)、mm(ミリメートル)、μm(マイクロメートル)、nm(ナノメートル)、MW(分子量)、PBS(リン酸緩衝食塩水)、min(分)。
【0131】
実施例1:陽イオン交換カラムクロマトグラフィー(カラム1)
好ましい実施形態では、アルギナーゼ1は、カチオン交換カラム(CEX)に捕捉されて、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、およびエンドトキシンなどの産物関連の不純物およびプロセス関連の不純物を低減する(精製プロセスの概要については、
図3を参照されたい)。特定の実施形態では、アルギナーゼ1精製プロセスの第1のカラム(カラム1)クロマトグラフィーステップは、SPセファロースFF樹脂および入口熱交換器を使用する。カラム1は、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用して、pH7.6の塩の非存在下でアルギナーゼ1に結合し、塩濃度を上げた緩衝液で溶出する(
図4(a))。一実施形態では、塩はNaClであり、カラム1からの溶出は、25mMのHEPES、0.1MのNaCl、pH7.2~7.6を使用して室温で行う。しかしながら、カラム1へのNaClグラジエントの適用などの代替の実施形態が可能である。
【0132】
図4(a)は、カラム1でのアルギナーゼ1の代表的な精製を示す。およそ3リットルの清澄化E.Coli溶解物を陽イオン交換カラムに装填した。280nmでの高レベルの吸光度からわかるように、大量のタンパク質がカラムに結合せず、フロースルーで検出される。次に、カラムをおよそ2リットルのカラム洗浄液で洗浄した。280nmでの吸光度で検出されたように、アルギナーゼ1が濃縮された画分は、0.1M のNaClで溶出された(最終ピーク)。
【0133】
実施例2:コバルト置換
好ましい実施形態では、アルギナーゼ1天然マンガン補酵素は、コバルトによって置き換えられる。コバルト置換(コバルト担持とも呼ばれる)中に、アルギナーゼ1に通常存在する2つのマンガンイオンの一方または両方がコバルトイオンに置き換えられる。コバルトの置換ステップには様々な温度を使用でき、コバルトの濃度も幅広く使用できる(表2を参照されたい)。コバルト置換のインキュベーション時間は10分と短く、50℃以上で実行できる。逆に、コバルトの担持温度は1℃または5℃と低く、8時間を超えて実行できる。また、アルギナーゼ1に担持されるコバルトの割合が高いほど、比活性が高くなる。
【0134】
カラム1(カラム1プールとも呼ばれる)から溶出されたアルギナーゼ1は、コバルト置換ステップのために室温で保持できる。一実施形態では、塩化コバルト原液(0.5MのCoCl2)は、それをカラム1プールに規定の速度で添加することによって50倍に希釈され、最終塩化コバルト濃度は10mMである。次にコバルト置換を20℃で2時間混合する。別の実施形態では、アルギナーゼ1コバルト担持は、10mM CoCl2 の溶液中で、室温で約2時間~約8時間行われる。
【0135】
コバルト担持ステップの概要を表3に示す。
【表4】
【0136】
実施例3:限外濾過/ダイアフィルトレーション1(UF/DF1)
UF/DF1は、遊離コバルトイオンを除去し、陰イオン交換クロマトグラフィーの準備としてCo-アルギナーゼ1を溶液に交換する。UF/DF1ステップでは、分子量カットオフが30kDaの膜を使用する。このステップの重要な機能の1つは、陰イオン交換クロマトグラフィーの前に、遊離コバルトのレベルを下げ、Co-アルギナーゼ1プールを緩衝液交換することである。膜を洗浄液(0.5NのNaOH)で消毒し、水ですすぐ。規準化された(normalized)透水性試験(NWP)が実行され、その後、産生で使用する前に平衡化される。UF/DFシステムが平衡化したら、Co-アルギナーゼ1プールを25mMのHEPES、0.1MのNaCl、pH7.6に対して3ダイアボリューム、続いて4ダイアボリュームの50mMのトリス、pH8.4に対してダイアフィルトレーションする。ダイアフィルトレーション後、プールは再循環され、50mMのトリス、pH8.4でシステムのホールドアップ体積の2倍を使用してシステムから回収される。
【0137】
UF/DF1膜は、2MのNaClフラッシュを実行した後、0.5NのNaOHを使用して30分間再循環させた変性洗浄ステップを実行することにより、洗浄される。システムを精製水で洗い流し、NWPを試験して洗浄手順の有効性を評価する。膜は0.1NのNaOHで保存できる。
【0138】
代替の実施形態において、緩衝液の第1の交換は、25mMのHEPES、0.1MのNaCl、pH7.2~7.6への交換であり、第2の交換は、50mMのトリス、pH8.1~8.5への交換である。
【0139】
実施例4:陰イオンカラムクロマトグラフィー(カラム2)
アルギナーゼ1精製の好ましい実施形態は、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーである別のカラム(「カラム2」)を使用する。カラム2の一実施形態は、QセファロースFF樹脂である。このカラム2ステップの1つの機能は、UF/DF1プールからの宿主細胞DNAやエンドトキシンなどのプロセス関連不純物を低減することである。カラム2は、Co-アルギナーゼ1が流れる間にこれらの不純物を結合し、装填および洗浄ステップ中にカラム流出液に収集される。一実施形態では、カラム2の陰イオン交換フロースルークロマトグラフィーは、QセファロースFFを用いて実行され、最大40gのタンパク質/L樹脂が、緩衝液50mMのトリス、pH8.1~8.5を有するカラムに装填される。
【0140】
方法の別の実施形態では、アルギナーゼ1がフロースルーで回収されている間、第1のタンパク質産物が陰イオン交換カラムに装填されて不純物を捕捉する。
図4(b)は、陰イオン交換カラム(カラム2)でのアルギナーゼ1精製の代表的なクロマトグラムである。280nmでの吸光度からわかるように、フロースルーで大量のタンパク質が検出される。不純物はカラム2に捕捉され、カラム2プール(第2のタンパク質産物とも呼ばれる)に溶出されず、アルギナーゼ1がさらに濃縮される。
【0141】
実施例5:Captoマルチモーダルカラムクロマトグラフィー(カラム3)
好ましい実施形態では、アルギナーゼ精製プロセスは、第3のカラムクロマトグラフィーカラム(カラム3)を使用する。一実施形態では、カラム3はCaptoマルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)カラム、またはサイズ排除カラムである。MMCを使用する実施形態は、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、およびエンドトキシンなどのプロセス関連不純物がフロースルーで洗い流されている間に、カラム上のアルギナーゼ1を捕捉する。この実施形態において、Co-アルギナーゼ1は、pH8.4の塩の非存在下でカラムによって捕捉され得、次いで、Co-アルギナーゼ1は、増加させた塩濃度の緩衝液で溶出され得る。Capto Multimodal Cation交換クロマトグラフィーカラムの代表的な例を
図4(c)に示す。
【0142】
一実施形態では、MMCクロマトグラフィー(カラム3)は、およそ15カラム体積を使用して、最大30gのタンパク質/L樹脂を装填し、高塩濃度ステップ溶出は、50mMのトリス、250mMのNaCl、pH8.1~8.5で実行される。いくつかの実施形態では、陰イオン交換カラム(カラム2)からのフロースルーをpH8.4のCapto MMCカラムに装填し、洗浄し、次に結合したCo-アルギナーゼ1を50mMのトロメタミン、250mMの塩化ナトリウムを使用して溶出する。
【0143】
実施例6:限外濾過/ダイアフィルトレーション2(UF/DF2)
UF/DF2はアルギナーゼ1を濃縮し、タンパク質をプレPEG化中間体に交換する。UF/DF2ステップでは、分子量カットオフが30kDaの膜を使用する。このステップの重要な機能は、PEG化前(または追加の濾過と保存前)に、非PEG化Co-アルギナーゼ1中間体のカラム3プールを緩衝液交換することである。膜を洗浄液(0.5NのNaOH)で消毒し、水ですすぐ。UF/DFシステムが平衡化したら、カラム3プール(第3のタンパク質産物とも呼ばれる)を20mMのリン酸ナトリウム、50mMの塩化ナトリウム、1.5%(w/v)グリセロール、pH7.4に対して、5つのダイアボリュームでダイアフィルトレーションする。カラム3のプール濃度が<8g/lの場合、プールはさらに8g/Lに濃縮される。ダイアフィルトレーション(および必要に応じて濃縮)後、プールは再循環され、20mMのリン酸ナトリウム、50mMの塩化ナトリウム、1.5%(w/v)グリセロール、pH7.4でシステムのホールドアップ体積の2倍を使用して、システムから回収される。回収後、ダイアフィルトレーション溶液による2段階希釈を使用できる。第1の希釈の濃度目標は6g/Lで、第2のステップの濃度目標は5g/Lである。目標に到達するために2つのステップを使用できる。第1の希釈後の濃度が目標範囲内にある場合は、第2のステップは必要ない場合がある。
【0144】
実施例7:中間体濾過およびUF/DF3
PEG化反応の前に、コバルト含有アルギナーゼ1は、長期凍結を含む長期保存が可能である。中間体のCo-アルギナーゼは、0.2μmフィルターで濾過することができ、長期保存のために凍結することができる。
【0145】
UF/DF3ステップでは、分子量カットオフが30kDaの膜を使用する。このステップの1つの機能は、緩衝液交換とフィルター処理されたUF/DF2プール(新鮮または解凍)を濃縮して、PEG化に最適な条件を提供することである。凍結したCo-アルギナーゼ1中間体を出発物質として使用する場合、解凍は室温で最大36時間行われる。膜を洗浄液(0.5NのNaOH)で消毒し、水ですすぐ。規準化された透水性試験(NWP)が実行され、その後、産生で使用する前に平衡化される。UF/DFシステムが平衡化されると、Co-アルギナーゼ1中間体は、0.1Mリン酸ナトリウム(pH8.4)に対して5つのダイアボリュームでダイアフィルトレーションされる。ダイアフィルトレーション後、プールは濃縮され、再循環され、0.1Mのリン酸ナトリウム、pH8.4でシステムのホールドアップ体積の2倍を使用してシステムから回収される。回収後、ダイアフィルトレーション液で2段階希釈する。第1の希釈の濃度目標は11g/Lで、第2のステップの濃度目標は10g/Lである。目標がレベルであることを容易にするために2つのステップが利用される。第1の希釈後の濃度が目標範囲内にある場合は、第2のステップは必要ない場合がある。
【0146】
UF/DF2およびUF/DF3のステップに関して、第1の緩衝液交換は、20mMのリン酸ナトリウム、50mMのNaCl、1.5%のグリセロール、pH7.4、≧5DV、およびタンパク質をおよそ5.0mg/mLに濃縮することができる。第2のバッファー交換は、0.1Mのリン酸ナトリウム、pH8.1~8.5にでき、タンパク質はおよそ10.0mg/mLに濃縮される(原薬のPEG化のための調製において)。
【0147】
実施例8:アルギナーゼ1のPEG化
PEG化は、PEG(ポリエチレングリコール)をCo-アルギナーゼ1(原薬)分子に共有結合させる(PEG化ステップの代表的な実施形態については、表4を参照されたい)。一実施形態では、PEG化反応は、5000DaのPEG分子をCo-アルギナーゼ1に共有結合させる。代替の実施形態では、PEG化は、アルギナーゼ1のコバルト置換の前に、または産生プロセスの他の時点で実行することができる。一実施形態では、PEGコンジュゲーション反応では、Co-アルギナーゼ1上の立体的に利用可能なリジンと反応する固体または液体のメトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステルを使用できる。得られたPEG化タンパク質(Co-rhARG1-PEG)の分子量は約280kDaである。PEG化されたプールは濾過され、UF/DF4操作まで2~8℃で保存できる。
【表5】
【0148】
一実施形態では、固体メトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステル(MW 5000)を、19.3倍モル過剰でアルギナーゼ1含有溶液に添加し、0.5~4.0時間、pH8.4でインキュベートすることができる。
【0149】
PEG化に続いて、限外濾過/ダイアフィルトレーションにより、結合していないPEGを除去し、アルギナーゼ1を製剤緩衝液に交換し、製剤ステップのためにアルギナーゼ1を濃縮する。このUF/DF4ステップでは、分子量カットオフが100kDaの膜を使用する。このステップの1つの機能は、遊離PEGを除去しながら、PEGプールを最終製剤に緩衝液交換することである。この目的で使用される膜を、洗浄液(0.5NのNaOH)で消毒し、水ですすぐ。UF/DFシステムが平衡化したら、PEG。プールを5mMのリン酸カリウム、50mMの塩化ナトリウム、1.5%(w/v)のグリセロール、pH7.4に対して10ダイアボリュームでダイアフィルトレーションする。ダイアフィルトレーション後、プールは圧力をかけてシステムから回収される。回収されたUF/DF4プールは、最終的な濾過および充填ステップの前に、5mMのリン酸カリウム、50mMの塩化ナトリウム、1.5%(w/v)のグリセロール、pH7.4で5g/Lに希釈される。代替の実施形態では、アルギナーゼ1を20mMのリン酸ナトリウム、50mMのNaCl、1.5%のグリセロール、pH7.4に交換し、約5.0mg/mLのタンパク質濃度に調整する。
【0150】
いくつかの実施形態では、製剤緩衝液、5mMのリン酸カリウム、50mMの塩化ナトリウム、1.5%のグリセロール、pH7.4は、リン酸ナトリウム緩衝液などの他の緩衝液と比較して、アルギナーゼ1の貯蔵時の安定性を増強することが見出された。1つ以上の実施形態では、緩衝液5mMのリン酸カリウムは、1mM K2HPO4および4mMのKH2PO4を含む。
【0151】
原薬(Co-rhARG1-PEG)は、活性化されたPEG分子をリジンのε-アミノ基およびN末端アミノ酸のアミン基とコンジュゲートさせることによって作られたPEG化コバルト置換ヒトアルギナーゼ1である。オルトフタルジアルデヒドを使用して、タンパク質当たりのPEG分子のモル比を決定するために色素ベースの蛍光アッセイが使用される。オルトフタルジアルデヒドは、チオールの存在下で、特に第一級アミンと反応して、蛍光誘導体を形成する。蛍光シグナルの測定により、タンパク質分子に存在する反応性遊離アミンの定量が可能になる。定量は、N-アセチルリジンを使用した標準曲線に基づく。タンパク質当たりのPEG化アミンの数は、非コンジュゲートCo-アルギナーゼ1に存在する遊離アミンの理論上の数から、PEG化原薬の蛍光アッセイによって測定された遊離アミンの数を差し引くことによって決定できる。リシン残基とN末端アミノ酸からの遊離アミンの理論上の数は25である。原薬中の遊離非コンジュゲートPEGは、屈折率による検出を備えたSEC-HPLCによって測定される。結果は、遊離PEGのμg/mLとして表すことができる(表5を参照されたい)。
【表6】
【0152】
実施例9:薬物中間体のCIEX-HPLC特性評価
E.coliの発酵中に、様々なアルギナーゼ1電荷バリアントが産生され得る。電荷バリアントは、TSKゲル陽イオン交換カラムを使用する陽イオン交換HPLC(CIEX-HPLC)法で分析できる。このタイプの分析では、20mMのMES、pH 6.0の移動相(A)と20mMのMES、500mMのNaCl pH6.0の移動相B、1.0mL/分の流量、40.0分の実行時間、22℃のカラム温度、表6による移動相グラジエントを使用する。
【表7】
【0153】
分析前に、試料を製剤緩衝液で希釈する。結果は、パーセント電荷バリアント分布として記述される。代表的なクロマトグラムを
図5(a)に示し、通常、Coアルギナーゼ1中間体で6つの主要なピークが観察される。
【0154】
実施例10:原薬のiCIEF特性評価
薬物中間体はPEG化されて原薬を形成する。薬物中間体のPEG化は、薬物中間体CIEX-HPLC法の使用を、本発明の一部として開発された他の実施形態よりも不適切にする。陰イオンIEX-HPLCを評価したが、十分な分離が得られなかった。その代わり、原薬の電荷バリアントを分析するために、イメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)法が開発された。
【0155】
イメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)の分析対象物は、電界の存在下でヒドロニウムイオン(陽極液)とヒドロキシルイオン(陰極液)の逆移動によってキャピラリー内を移動する。試料は、キャリア両性電解質とpIマーカーを含有するマトリックスで希釈される。タンパク質の分離は、2つのフォーカシング(focusing)ステップで行われる。最初のプレフォーカシング(prefocusing)ステップは、pHグラジエントを確立する。電荷バリアントは、第2のより高い電圧のフォーカシングステップ中に、より鋭く集束され、分離される。キャピラリー全体のUV光吸収の画像は、30秒ごとに、およびフォーカシングステップの完了後にデジタルで捕らえられる。
【0156】
結果は、パーセント電荷バリアント分布として表すことができる。代表的な電気泳動図を
図5(b)に示し、原薬について9つの主要なピークが観察されている。ピーク3と4は、これらのピーク間の分解能が可変であることが示されているため、一緒に統合されている。これらのピークの相対面積を表7に示す。
【表8】
【0157】
実施例11:Co-アルギナーゼ1中間体および原薬の酵素活性
活性を測定し、Co-アルギナーゼ1中間体およびCo-rhARG1-PEG原薬の同一性を確立するために使用される酵素アッセイは、アルギニンからオルニチンへの変換を監視する。反応混合物は、0~2mMの範囲で7つの異なるアルギニン基質濃度で試験された1つの酵素濃度を有する。反応は37℃で一定時間行う。反応時間は、任意の基質濃度で基質の消費が10%未満になるように設定されている。反応がクエンチされ、産物であるオルニチンが誘導体化され、逆相UPLCによって定量化される。[00183] 反応速度対基質濃度のプロットの例を、代表的なKcat、Km、およびKcat/Km 値とともに
図8(a)(Co-アルギナーゼ1中間体)および
図8(b)(Co-rhARG1-PEG原薬)に示す。
【0158】
実施例12:コバルトとマンガンの分析
コバルト、残留マンガン、および遊離コバルトは、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して測定された。サンプルをマイクロ波で分解し、1%硝酸と6%過酸化水素を使用して、マトリックスからすべての金属を放出した。得られた消化物をICP-MSで分析した。コバルトと残留マンガンの試料は、試料処理なしで分解された。酵素と結合していないコバルトを測定するために、酵素を透過液から分離するために限外濾過を行った透過液試料について遊離コバルトを測定した。遊離コバルトを測定した。表8に、Co-アルギナーゼ1中間体の特性の一部をまとめた。
【表9】
【表10】
【0159】
実施例13:Co-アルギナーゼ1中間体翻訳後修飾
Co-アルギナーゼ1の中間体翻訳後修飾は、ペプチドマッピング、LC-MSインタクト質量分析、逆相LC/MSなどの様々な技術を使用して検出された。同定されたすべての修飾の要約を表10に示す。
【表11】
【0160】
特性評価により、Co-アルギナーゼ1中間体
修飾が存在する場合、主な修飾はN末端グルコノイル化であることが判明した(ペプチドマッピングによって確認された)。アルギナーゼ1修飾種の追加の特性評価は、3つの時点(発酵、ポストカラム1、およびカラム3からの薬物中間体)で採取した試料を試験することによって実行された。分析方法では、通常、アルギナーゼを分離してモノマーとして分析する必要がある。アルギナーゼ1のN末端グルコノイル化(モノマーとして分析)は、通常10.8~13.9%であった。その他の修飾は、3つの時点の試料にわたるN末端ホスホグルコノイル化モノマー(4.3~6.5%)、およびジグルコノイル化モノマー(0.7~1.2%)であった。標準参照産生の実行から使用された試料では、未修飾のCo-アルギナーゼ1(モノマー)とCo-アルギナーゼ1中間体のレベルはそれぞれ80.6%~83.6%で同等であった。精製プロセスに使用される標準条件(すなわち、カラム1に塩グラジエントが適用されていない)は、Co-アルギナーゼ1中間体まで持続する未修飾モノマーの相対レベルを適度に変化させた(81.1~83.6%)。
【表12】
【0161】
実施例14:カラム1の条件の変化
代替の実施形態では、NaClグラジエントをカラム1に適用することができる。カラム1でNaClグラジエントを使用すると、様々なアルギナーゼ1バリアントを分離して、好ましい実施形態を選択できる。
図7は、カラム1に適用された0.0~0.2 MNaClのグラジエントを示す。カラム1の溶出液から収集した個々の画分を、SE-HPLC、CEX-HPLC、およびRP-HPLCで分析した。
【0162】
アルギナーゼ1の電荷バリアントのピーク数を1から6に割り当てる分析CEX-HPLC法を使用した(
図5(c)を参照されたい)。ピーク数は、様々なグルコノイル化状態および非グルコノイル化アルギナーゼ1と一致する。この分析は、NaClグラジエントから溶出されたアルギナーゼ1の6つのピークを示した。ピーク番号1、2、および3が割り当てられたアルギナーゼ1バリアントは、カラム1の溶出ピークの初期に溶出した。ピーク4は溶出されたアルギナーゼ1とピーク5(未修飾アルギナーゼ1)の最高濃度部分から溶出し、ピーク6は溶出ピークの後半で溶出した。したがって、0.0~0.2MのNaClは、アルギナーゼ1の様々な電荷バリアントをうまく分離した。
【0163】
0~0.5MのNaClなどの代替NaClグラジエントをカラム1の溶出に使用できる。NaClグラジエントを使用すると、アルギナーゼ1が6つの異なるピークに再現性よく分離され、原薬または製剤の製造でさらに処理するための特定のアルギナーゼ1バリアントの選択が可能になることがわかった。
【0164】
第1のタンパク質産物(およびアルギナーゼ1バリアント)のさらなる分析もLC/MSによって分析された(
図6を参照されたい)。LC/MS分析は、E.coliでのアルギナーゼ1の産生によって生成される特定のタイプのグルコニル化を同定する。LC/MS分析により、未修飾アルギナーゼ1、グルコニル化アルギナーゼ1、ホスホグルコニル化アルギナーゼ1、および2倍(2X)のグルコニル化アルギナーゼ1が同定される。
【0165】
表12は、0~0.2MのNaClグラジエント(および対応する分画されたCEXピーク1~6)を適用すると、グルコニル化のレベルが異なる画分が生成されることを示している。ピーク番号1~6のそれぞれをLC/MSで分析した。データは、ドミナントピーク(ピーク5)が非グルコニル化アルギナーゼ1の割合が高く、比活性が高いことを示す。目的の特性に応じて、様々な画分(ピーク1~6に対応)を収集してさらに処理することができる。
【表13】
【0166】
カラム1のNaCl濃度を変化させることに加えて、異なる量のタンパク質をカラム1に装填して、非グルコニル化アルギナーゼ1種の精製を強化することができる。
【0167】
カラム1の装填係数を変化させ、カラム1でNaClグラジエントを使用すると、グルコニル化アルギナーゼ1種を産生するE.coli発酵中に発生する予期しない摂動を補償できる。
【0168】
実施例15:発酵条件の変化
アルギナーゼ1を生産するための発酵条件の頑健性を決定するために実験を行った。表13は、最適以下のpH7.6でのE.coliの発酵が、好ましいpH7.2の発酵よりも多くのグルコニル化を産生することを示している。容器B1、B8、およびB12は、発酵の最適条件を使用した:pH 7.2、溶存酸素30%、培地の供給速度0.06mL/分。容器B3は、pH 7.6(最適条件よりも高いpH)でアルギナーゼ1発現E.coliを発酵させるのに使用した。pHの上昇により、ホスホグルコニル化付加物の割合が高くなった(対照実験では23%対10~12%)
【表14】
【0169】
実施例16:カラム1の装填係数の変動
様々な量のE.coli細胞溶解物をカラム1に適用して、アルギナーゼ1電荷バリアントの精製への影響、および収量と純度を測定した。15~60gのタンパク質/L樹脂の装填係数を様々な条件下で使用したところ、CIEX電荷種プロファイルのシフトが示された(表14)。より高い装填係数は、グルコニル化バリアントのより良い分離をもたらした(ただし、収集された画分によっては、収量のトレードオフが生じる場合がある)。例えば、装填係数が20mgタンパク質/mL樹脂の場合、ピーク5は45.8%であったが、装填係数が40mg/mLの場合、これは50.0%に増加した。
【表15】
【0170】
実施例17:第1/2相臨床試験
本発明の方法によって産生された製剤は、アルギナーゼ1欠損症および高アルギニン血症におけるCo-rhARG1-PEGの投与を評価するための第1/2相非盲検研究で使用された。この研究の主要評価項目は、高アルギナーゼ/アルギナーゼ1欠損症の被験者におけるCo-rhARG1-PEGの静脈内(IV)投与の安全性と忍容性を評価することであった。副次的評価項目は次のとおりであった:血漿アルギニン濃度に対するIV投与された治験薬の効果を決定すること、血漿グアニジノ化合物(GC)に対するIV投与された治験薬の効果を決定すること、IV投与された治験薬の薬物動態(PK)プロファイルを特性評価すること。その他の評価項目には、次のような臨床的利益を獲得する際の臨床転帰評価の評価が含まれる:6分間歩行試験(6MWT)、粗大運動能力尺度(GMFM)パートDおよびE、および適応行動評価システム(ABAS)。
【0171】
第1/2相のデータは、Co-rhARG1-PEGが血漿アルギニンを持続的に低下させるのに非常に効果的であることを示した。さらに、患者の血漿アルギニンレベルの制御は、可動性および適応行動における臨床的に意味のある応答を伴っていた。治療では一般的に忍容性が良好であった。過敏反応はまれであり、標準的な手段で管理可能であった。
【0172】
研究のために供給されたCo-rhARG1-PEG製剤は、1mg/mLの濃度で5mLの製剤化された製剤を含む10mLの使い捨てのガラスバイアル内の液体製剤としてのものであった。この薬剤は、50mMのNaCl、1mMのK2HPO4、4mMの KH2PO4、および1.5%w/vのグリセロールで処方された。
【0173】
第1/2相研究、次の2つの部で実施された:第1部(単回漸増用量増加)および第2部(反復投与)。この第1/2相試験101Aおよび102A非盲検継続投与の試験デザインを下の図に示す:
【化2】
【0174】
第1部では、患者に薬を紹介し、安全性に焦点を当てた。第2部では、患者を一定の用量で安定させ、臨床的効果のマーカーを探すように設計された。各部の前に、アルギニンレベルのベースライン評価を行なった。第1部に参加したすべての患者は、継続投与の資格があれば、第2部でアルギナーゼ1の投与を継続できる。
【0175】
この研究では、各患者は、第1部で漸増する可能性のある開始用量の投与を受け、各連続する用量レベルの間に2週間のウォッシュアウト/観察期間が設けられた。第1部の各患者の可能な用量は、血漿アルギニンを最適化するために必要に応じて2週間間隔で0.015、0.03、0.06、0.10、0.15、0.20、および0.30mg/kgであった。以前の用量レベルからの新たなデータが特定の基準を満たした場合、特定の用量を繰り返すか、指定された用量レベルの間で用量を増加/減少させることができる。例えば、次の用量漸増停止基準の1つ以上が満たされた場合、用量漸増は停止する可能性がある:患者の血漿アルギニンレベルが、その期間中に収集されたすべての試料について、投与後少なくとも40(±2)時間連続して<40μMであったか、または患者の血漿アルギニンレベルが、その期間中に収集されたすべての試料について、投与後少なくとも112(±2)時間連続して平均<115μMであった。
【0176】
これらの事象のいずれも発生しなかった場合、用量漸増停止基準に達するか、このプロトコルで0.30mg/kgの最高用量を投与されるまで、患者は2週間ごとに次に高い用量レベルのアルギナーゼ1に漸増する可能性がある。最終的には、治療目的で、投与量が0.30mg/kgを超えて増加する可能性もある。
【0177】
第2部は、第1部を完了した患者の反復投与期間であった。第2部では、反復投与中に血漿アルギニンを約40μM~約115μMの範囲で安全に最適化し、投与前のレベルを150~200μM未満に維持することに重点を置いて、各患者の用量とレジメンを見いだした。データが反復投与中の用量反応結果をよりよく調査する可能性を示していれば、第2部でいくつかの用量レベルを使用することも可能であった。治療中のアルギニンレベルも、治療前に測定されたアルギニンレベルと比較された。
【0178】
101Aの第2部を完了した患者は、長期の非盲検継続投与(OLE)試験(NCT03378531)に参加する資格があった。24の週1回の静脈内投与で、残りの3年間のOLE期間中は皮下投与に切り替えるオプションがある。
【0179】
結果
平均Cmax および平均AUC0-168の増加は、すべての患者で用量に比例しているように見えた。平均(±SD)Cmaxは、Co-rhARG1-PEGの用量レベルが0.015、0.03、0.06、0.1、および0.2mg/kgの場合、それぞれ0.428±0.0915、0.723±0.247、1.73±0.538、2.27±0.238、および6.13(N=1)μg/mLであった。ADA陽性患者とADA陰性患者の平均Cmaxには、わずかな抗薬物抗体(ADA)の影響があった(
図9)。
【0180】
AUCの変化(AUC0-168、AUC0-∞)は、研究された用量範囲全体で用量に比例しているように見え、0.06~0.1mg/kgの間に顕著な変化は認められなかった(入手可能なデータを使用)。平均クリアランス(CL)の推定値は、すべての患者で0.789~1.57mL/時間/kg、ADA陰性患者で0.776~1.33mL/時間/kgの範囲であった。平均分布容積(Vss)の推定値は、すべての患者で35.3~52.1mL/kg、ADA陰性患者で32.8~52.1mL/kgの範囲であった。
【0181】
研究の第1部は、観察されたPD(アルギニン)応答を使用して、第2部の各患者に最適な(個々の)開始用量を選択するのに役立った。第2部の1週目では、評価された用量範囲全体でCo-rhARG1-PEGの用量を漸増させたすべての患者で、平均循環薬物濃度が増加する傾向があった。第2部でCo-rhARG1-PEGの初回投与後、平均Cmaxの増加は、すべての患者で用量に比例するように見えた。平均(±SD)Cmaxは、Co-rhARG1-PEGの用量レベルが0.015、0.03、0.04、0.06、0.09、0.1および0.12mg/kgの場合、それぞれ0.292(N=1)、0.395(N=1)、1.01±0.221、1.75±0.391、1.99(N=1)、2.34(N=1)、および2.87±0.626μg/mLであった。
【0182】
第2部、8週目では、Co-rhARG1-PEGの用量を増やすにつれて、すべての患者の平均循環薬物濃度は概ね増加した。8週目で利用可能なPK濃度に顕著なADAの影響はなかった。データの結果、現時点ではほとんど(13/14)の患者で定常状態の達成が想定されていた。Co-rhARG1-PEGの8回目のQW投与後、平均Cmax およびAUC0-168 の増加は、すべての患者で投与量に比例するように見えた。
【0183】
薬物動態データに加えて、薬力学(アルギニン)データが収集された(
図10)。アルギナーゼ1欠損症の患者には、第2部でCo-rhARG1-PEGのQW IV用量を(毎週)投与し、第1部で観察されたPD(アルギニン)応答に基づいて開始用量を選択した。Co-rhARG1-PEGの初回のQW IV投与後、特に0.04mg/kg以上のCo-rhARG1-PEG投与では、循環アルギニンレベルの顕著な低下が見られた。いくつかの例では、個々のアルギニン濃度が40μMを下回った。さらに、≧0.04mg/kgの用量で、2回目のQW(毎週)Co-rhARG1-PEG用量の投与直前にほとんどの患者で開始アルギニンレベルへの回復は不完全であった。
【0184】
全体として、Co-rhARG1-PEGへの曝露は概して増加し、用量を増やすとアルギニン抑制も増加した。個別の用量最適化は第1部で実施され、第2部の1週目と8週目に、用量レベルごとに患者数の異なる範囲の用量が存在するようにした。
【0185】
実施例18:皮下投与
実施例17の第1/2相試験の第2部が完了した後、一部の患者はCo-rhARG1-PEGの静脈内投与から皮下投与に切り替えられた。驚くべきことに、Co-rhARG1-PEGの皮下投与は、IV投与よりも優れているように見える薬力学的プロファイルを与えた。また、予期せぬことに、Co-rhARG1-PEGの皮下投与には、静脈内投与と同じ製剤がうまく使用された。
【0186】
Co-rhARG1-PEGの皮下投与は、IV投与よりも長い血漿アルギニン濃度の好ましい(健康な)目標範囲内に患者のアルギニンレベルを維持した(
図11)。患者における好ましい最適化された血漿アルギニン濃度は、約40μM~約115μMの範囲であり(反復投与中)、投与前の150~200μM未満のレベルを維持することに重点を置いている。
図11に見られるように、Co-rhARG1-PEGの皮下投与は、アルギニン濃度が40μMの下限レベルを上回り、115μMの上限レベルを下回る結果になる。驚くべきことに、皮下投与は完全に好ましい範囲にあるアルギニン濃度を与えた。これは、別の毎週のCo-rhARG1-PEG投与を受けるまで、患者がアルギニン濃度の適切な血漿範囲にとどまることを意味する。
【0187】
実施例19:第1/2相臨床試験および非盲検継続投与からの薬力学的および臨床応答
16人の患者(小児11人と成人5人)が101A第1部に登録され、15人の患者が101A第2部に進んだ。2人の患者が個人的な理由で試験を中止しました(第1部の投与3の後の1人の患者と第2部の投与3の後の1人の患者)。101A第2部を完了した14人の患者全員がOLE試験に進んだ。
【0188】
患者のベースライン特性を表15に示す。
【表16】
【0189】
血漿アルギニンおよびグアニジノ化合物レベルの分析により、血漿アルギニンレベルの顕著な持続的な低下が見られた(
図12(a)は、ペグジラルギナーゼの20回投与後のベースラインから中央値で274μM低下したことを示す。ベースラインから投与1、投与8、およびOLEへの血漿アルギニンの低下は統計的に有意であった(p<0.001)。血漿アルギニンの低下は、血漿グアニジノ化合物(GC)レベルの低下を伴った。
図12(b)は、ベースラインでのグアニジノ酢酸(GAA)、N-α-アセチル-L-アルギニン(NAA)、α-ケト-δ-グアニジノ酢酸(GVA)、アルギニン酸(ARGA)の血漿レベルと、OLE中の血漿GCレベルの低下を示している。
【0190】
16人の患者のうち15人がベースラインですべての可動性評価を完了した(患者13は車椅子生活にあった)(
図13(a))。欠損は以下のように定義された:6MWT:下位5パーセンタイル未満;GMFMパートD:<35/39;GMFMパートE:<68/72;ABAS-3:≦85。患者の88%(14/16)は、ベースラインで少なくとも1つの運動欠損があり、16人の患者の88%、50%、56%は、それぞれ6MWT、GMFMパートD、GMFMパートEでベースラインの欠損があると分類された。適応行動ABAS-3評価は、ベースラインで10人の患者に利用可能であった。言語、年齢、認知障害による制約など、技術的な理由で6人の患者は試験を受けなかった10人中8人(80%)の患者は、ABAS-3によって評価された1つ以上のドメインでベースラインに欠損があった。
【0191】
全体的な臨床応答は、6MWT、GMFM-D、またはGMFM-E評価の少なくとも1つで≧1のMCID改善に基づいて、14人の患者のうち11人(79%)が投与20の応答者として定義されたことを示した(
図13(b))。20回投与データは、6MWT、GMFM-D、およびGMFM-Eが、ARG1-D患者の臨床的利益を獲得するための変化に対して十分に敏感であることを示した。全体的な応答者の割合は、投与8から投与20に大幅に増加した。投与44に達した5人の患者全員(100%)は、応答者として投与20の全体的な臨床応答状態を維持した。
【0192】
個々の構成要素のすべての応答者で、≧1のMCIDが改善された(
図13(b)および
図14)。6MWTの場合、13人中7人(54%)の患者がこの構成要素のみの応答者であった。6MWTの平均変化は、すべての患者で32メートル、7人の応答者で66メートルであった。GMFM-Dの場合:ベースライン欠損のある8人中5人(63%)の患者は、この構成要素のみの応答者であった(平均MCID 1.84、範囲1.21~3.33)。GMFM-Eの場合:ベースライン欠損のある8人中5人(63%)の患者は、この構成要素のみの応答者であった(平均MCID 4.79、範囲1.67~8.33)。個々の可動性構成要素に対する応答者の割合は、投与8と比較して投与20で実質的に大きかった。
【0193】
ペグジラルギナーゼの20回投与後のすべての患者からのデータは、血漿アルギニンの顕著な持続的な低下、重要な疾患症状の改善、および79%の臨床応答者率を示した。第1/2相およびOLE試験は、ペグジラルギナーゼの臨床的利点を獲得するためのツールとして6MWT、GMFM-D、またはGMFM-Eを利用することの価値を示している。ペグジラルギナーゼは忍容性が高く、治療に関連する有害事象の発生率は時間の経過とともに減少した。アルギニン制御の改善とペジラルギナーゼ治療後の臨床的有益性の証拠は、重要な第3相PEACE試験(NCT03921541)の主要な評価項目とデザイン要素のさらなる検証を提供する。
【0194】
実施例20:第3相臨床試験デザイン
アルギナーゼ1欠損症の小児および成人におけるCo-rhARG1-PEGの有効性と安全性に関する無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験が、本発明の方法で産生されたCo-rhARG1-PEGを使用して実施される。この試験は現在、アルギナーゼ1欠損症の臨床評価項目に対するペジラルギナーゼ効果(Pegzilarginase Effect on Arginase 1 Deficiency Clinical Endpoints)、またはPEACE(CAEB1102-300A、NCT03921541)として進行中である。
【0195】
この第3相試験の試験デザインを下の図に示す:25
【化3】
【0196】
主要な選択基準
a.ARG1-Dと診断され、血漿アルギニンレベルが≧250μmol/Lであり、医療指導の下200μmol/Lの血漿アルギニンを達成した患者の割合の統計的検定が可能な2歳以上のもの
b.盲検期間中、安定した一貫した食事を維持することができること
c.盲検期間中、アンモニア捕捉剤、抗てんかん療法および/または痙縮治療薬の安定した投与が可能であること
d.臨床評価を実施し、成功裏に完了することができ、表16に示す副次的臨床応答評価項目の構成要素のうちの1つがベースラインで欠損していること。
【0197】
主要な除外基準
a.治療開始前6週間以内に入院を必要とする高アンモニア血症が発症
b.最初のペグジラルギナーゼ投与を受ける前3週間以内の活動性感染症
c.ジレット機能評価質問票(GFAQ)で評価できないまたはGFAQでスコア1と定義される、極端な運動欠損(全く歩けない)
d.ペグジラルギナーゼによる以前の介入研究に参加した、または現在他の臨床試験に参加している
e.ポリエチレングリコールに対する過敏症の病歴
【表17】
【0198】
この第3相試験の主要評価項目は、血漿アルギニンの低減である(活性群とプラセボ群の個々の患者のベースラインからの変化の治療手段に基づく、24週目の血漿アルギニンレベルのベースラインからの変化)。
【0199】
副次的評価項目尺度には以下が含まれる:
a.臨床応答評価項目:臨床応答者は、表17に定義されているように、24週目に2MWT、GMFM-D、またはGMFM-E臨床応答評価項目の少なくとも1つが改善した患者として定義される
b.臨床反応評価項目の個々の構成要素の奏功率
c.その他の臨床転帰評価
i.機能的移動能力評価尺度 5,50,500 meters
ii.ジレット機能評価質問票(GFAQ)
iii.ヴァインランド適応行動尺度II
d.免疫原性を含む安全性の評価
e.血漿アルギニンが<200μMで正常範囲内(40~115μM)の患者の割合
f.ペグジラルギナーゼの薬物動態プロファイルの特性評価
【表18】
【0200】
研究の合計期間は、長期の非盲検継続投与期間を含めて、被験者当たりおよそ178週間になると予想される(3~4週間のスクリーニング期間、24週間の治療期間、その後最大150週間の非盲検継続投与期間)。被験者は、Co-rhARG1-PEGまたは容量調整プラセボを毎週1回IV注入(およそ30分)を受ける。血漿アルギニン値のみに基づくCo-rhARG1-PEGの用量変更は、投薬アルゴリズムに従って、非盲検の薬剤師および/または医師によって実施される。盲検化された長期継続投与期間の最初の8週間後、被験者は、治験責任医師および治験依頼者の承認を得て、皮下投与によりCo-rhARG1-PEGを投与するオプションがある。初期mg/kg皮下投与量はIV投与量と同じであり得る。
【0201】
Co-rhARG1-PEGに割り当てられた被験者は、用量レベル2(以下の表18を参照)、0.10mg/kgで開始する。来診5から、必要に応じて、血漿アルギニン値に基づく用量変更は、以下の投与アルゴリズムに従って、非盲検の医師によって実施される:
・血漿アルギニンレベルが>150μMの場合、この試料の前の2用量が(a)mg/kgで同じ用量レベルであり、(b)連続している場合(投与忘れなし)、単一の168時間試料を使用して用量を2用量レベルだけ増加させる(0.20mg/kgを超えない)。
・2つの連続する168時間試料からの血漿アルギニンレベル(投与し忘れた場合でも)が両方とも<50μMである場合、用量は1用量レベルだけ減少させ(表17を参照)、0.05mg/kgを下回らないようにする。
【表19】
【0202】
統計的考察
一次分析では、厳密に事前に指定された基準を満たす最後の4つの血漿アルギニン測定結果の平均に基づいて、ペグジラルギナーゼとプラセボで治療された患者の血漿アルギニンレベルのベースラインからの平均減少を24週毎週投与後に比較する。
【0203】
プラセボとペグジラルギナーゼにそれぞれランダム化された10人と20人の患者の標本サイズは、98%の検出力を達成し、120μMの一般的なSDを想定して、両側マンホイットニーウィルコクソン検定を使用して、0.05の有意水準で200μMの平均血漿アルギニンレベルの差を示す。
【0204】
さらに、この数の被験者は、フィッシャーの直接確率検定を使用して、0.05の有意水準で臨床応答エンドポイントのグループ比率間で40%の統計的に有意な差を検出する80%以上の検出力を提供する。
【0205】
実施例21:部位特異的のPEG化解析
例示的な部位特異的PEG化解析を
図15に示す。3つのCo-rhARG1-PEGバッチを分析した。ペプチドマッピングは、Co-rhARG1-PEG原薬、Co-アルギナーゼ1中間体(非PEG化)ロットおよび対応する参照標準をグアニジン-HCIで変性し、DTTで還元し、ヨードアセトアミドでアルキル化することによって実行された。これらの試料は、50mMのトリス緩衝液pH8.0で希釈した。各試料をシーケンシンググレードのトリプシンで37℃で約5時間消化した。得られたペプチドは、Waters Acquity BEH300C18カラム、2.1×150mm、Waters C/N186003687で、0.05%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリルグラジエントを使用して分離した。ペプチドのLC-MSおよびMS/MS断片化は、Waters Xevo G2-XS QTOF MS/MSで得られた。
【0206】
見てわかるように、3つのバッチのいずれも部位K3、K149、K190、K195、K29、K265、またはK283でPEG化されていなかった。また、3つのバッチすべてで、部位K16、K32、K38、K40、K47、K67、K74、K82、L87、K88、K152、K154、K171、K312、およびK321でPEG化が行われた。いくつかのバッチでは、部位K222およびK223でPEG化の頻度が低かった。
【0207】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「様々な実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「様々な実施形態では」、「一実施形態では」または「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも開示の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0208】
本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明を提供したが、これらの実施形態は、本開示の原理および適用の単なる例示であることが理解されるべきである。その趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変形を含むことが意図されている。
【図】
【配列表】
【国際調査報告】