(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】中間径フィラメント由来ペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20221024BHJP
C07K 2/00 20060101ALI20221024BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221024BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221024BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20221024BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20221024BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221024BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20221024BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20221024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221024BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221024BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221024BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K2/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N7/01
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61K38/17
A61K39/39
A61P35/00
A61K48/00
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577965
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020068052
(87)【国際公開番号】W WO2020260603
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518011404
【氏名又は名称】ウニベルシタ デ リェイダ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT DE LLEIDA
(71)【出願人】
【識別番号】518011415
【氏名又は名称】インスティトゥト デ レセルカ ビオメディカ デ リェイダ フンダシオ ドクトル ピファレ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT DE RECERCA BIOMEDICA DE LLEIDA FUNDACIO DR PIFARRE
(71)【出願人】
【識別番号】521568188
【氏名又は名称】フンダシオ インスティトゥト ディンベスティガシオ エン シエンシス デ ラ サルト ジェルマンス トリアス イ プホル
【氏名又は名称原語表記】FUNDACIO INSTITUT D‘INVESTIGACIO EN CIENCIES DE LA SALUT GERMANS TRIAS I PUJOL
(71)【出願人】
【識別番号】512274953
【氏名又は名称】フンダシオ オスピタル ウニベルシタリ バル デブロン-インスティテュート デ レセルカ
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ベルダゲ アウトネユ、ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】エジア メンディクテ、レイレ
(72)【発明者】
【氏名】コラル プホル、マルタ
(72)【発明者】
【氏名】モラ ジラル、コンセプシオ
(72)【発明者】
【氏名】ロセル マセス、エステーラ
(72)【発明者】
【氏名】ビベス パイ、マルタ
(72)【発明者】
【氏名】プホル アウトネユ、イルマ
(72)【発明者】
【氏名】バルキネロ マニェス、ホルディ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA44
4C084CA18
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA38
4C085CC08
4C085EE06
4C085FF13
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA40
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、後生動物細胞において細胞死を誘導することができ、かつ/または炎症性サイトカイン分泌を刺激することができる、既知の中間径フィラメント由来のペプチドに関する。上記ペプチドは、「n」個のアミノ酸の第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);9個のアミノ酸の第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および「m」個のアミノ酸の第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)からなる。本発明のペプチドは、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する。これらのペプチドは、単独でまたは他の療法と併用して、ワクチンにおける新規アジュバントとして有用であり得;また、単独でまたは他の薬剤もしくは療法と併用して、化学療法剤としても有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域であって、前記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である、第2の領域;および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、
前記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有し、
ただし、前記ペプチドの配列が、下記配列:
(i)YQELMNVKLALDIEIATYRR(配列番号2);
(ii)YQDLLNVKMALDIEIATYRR(配列番号3);
(iii)YQDLLNVKLALDIEIATYRR(配列番号4);
(iv)YQDLLNVKMALDVEIATYRR(配列番号5);
(v)YQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号6);
(vi)YQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号7);
(vii)YQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号8);
(viii)YQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号9);
(ix)DYQELMNVKLALDVEIATYR(配列番号10);
(x)VKIALEVEIATY(配列番号11);
(xi)IKSRLEQEIATYRSLLEGQEDHYNNLSASKVL(配列番号12);
(xii)LMDIKSRLEQEIATY(配列番号13)
(xiii)LLNVKMALDIEIAAY(配列番号87);
(xiv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRRLPPKGYPASAGLMPQNFGVI(配列番号88);
(xv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号89);
(xvi)KQDMARQLREYQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号90);
(xvii)RADSERQNQEYQRLMDIKSRLEQEIATYRS(配列番号91);
(xviii)KEEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号92);
(xix)KEEMARHLQEYQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号93);
(xx)KDEMARHLREYQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号94);
(xxi)KWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRK(配列番号95);
(xxii)RQAQEYEALLNIKVKLEAEI(配列番号96);
(xxiii)QEYEALLNIKVKLEAEIATYRRL(配列番号97);
(xxiv)YEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号98);
(xxv)NIKVKLEAEIATYRRLPPKG(配列番号99);
(xxvi)YQRLMDIKSRLEQEIATYRR(配列番号100);
(xxvii)EALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号101);
(xxviii)DYQELMNTKLALDLEIATYRTLLEGEE(配列番号102);
(xxix)DYQELMNVKLALDVEIATYRKLLEGEE(配列番号103);
(xxx)EYQELMNVKLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号104);
(xxxi)EYQQLLDIKIRLENEIQTYRSLLEGEG(配列番号105);
(xxxii)EYEALLNIKVKLEAEIATYRRLLEDGE(配列番号106);
(xxxiii)LRGTKWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEG(配列番号107);
(xxxiv)EYQDLLNVKMALDIEIATYR(配列番号108)
のいずれでもない、ペプチド。
【請求項2】
前記第2の領域の9個のアミノ酸の配列が、[A/I/L/S/T/V]-[K/R]-[L/I/M/S/T/V/A]-[G/R/A/H/K/S/F]-[L]-[D/E]-[I/N/V/M/K/Q/A/L/G/C]-[E]-[I](配列番号14)である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
(1)前記第1の領域が、「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列(「n」は0~8個のアミノ酸である)からなり;
(2)前記第2の領域が、9個のアミノ酸のアミノ酸配列([V]-[K]-[M/L]-[A]-[L]-[D]-[I/V]-[E]-[I](配列番号15))からなり;かつ
(3)前記第3の領域が、「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列(「m」は0~8個のアミノ酸である)からなり、
最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
最小12アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
前記第1の領域および/または前記第3の領域が、細胞透過性ペプチドおよび/またはシグナルペプチドを含み;好ましくは、
- 前記細胞透過性ペプチドおよび/または前記シグナルペプチドが、iRGD(CRGDKGPDC、配列番号16)を含み、および/または、
- 前記細胞透過性ペプチドおよび/または前記シグナルペプチドが、極性アミノ酸配列、より好ましくは3個以上の連続するリジンアミノ酸(K-K-K)または3個以上の連続するアルギニンアミノ酸(R-R-R);最も好ましくは8個以上の連続するリジンアミノ酸(K-K-K-K-K-K-K-K、配列番号17)または8個以上の連続するアルギニンアミノ酸(R-R-R-R-R-R-R-R、配列番号18)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
タンパク質タグをさらに含む、またはキメラタンパク質を形成するポリペプチドに結合している、請求項1から5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチドをコードする、核酸。
【請求項8】
ヒト細胞における発現のためにコドン最適化された、請求項7に記載の核酸。
【請求項9】
請求項7または8のいずれか一項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項10】
請求項7または8のいずれか一項に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクターを含む、ウイルス。
【請求項11】
治療有効量の請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチド、請求項7または8のいずれか一項に記載の核酸、請求項9に記載の発現ベクター、または請求項10に記載のウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項12】
医薬における使用のための組成物であって:
N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域であって、前記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である、第2の領域;および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなり、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有するペプチド、
前記ペプチドをコードする核酸;
前記核酸を含む発現ベクター;
前記核酸または前記発現ベクターを含むウイルス;または
治療有効量の前記ペプチド、前記核酸、前記発現ベクターまたは前記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物
を含み、
ただし、前記ペプチド配列が、VKIALEVEIATY(配列番号11)またはLLNVKMALDIEIAAY(配列番号87)ではない、組成物。
【請求項13】
前記ペプチドの前記第2の領域の9個のアミノ酸の配列が、[A/I/L/S/T/V]-[K/R]-[L/I/M/S/T/V/A]-[G/R/A/H/K/S/F]-[L]-[D/E]-[I/N/V/M/K/Q/A/L/G/C]-[E]-[I](配列番号14)である、請求項12に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
(1)前記ペプチドの前記第1の領域が、「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列(「n」は0~11個のアミノ酸である)からなり;
(2)前記ペプチドの前記第2の領域が、9個のアミノ酸のアミノ酸配列([V]-[K]-[M/L]-[A]-[L]-[D]-[I/V]-[E]-[I](配列番号15))からなり;かつ
(3)前記ペプチドの前記第3の領域が、「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列(「m」は0~11個のアミノ酸である)からなり、
前記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記ペプチドが、最小12アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する、請求項14に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
アジュバントとしての使用のための組成物であって:
N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域であって、前記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である、第2の領域;および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなり、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有するペプチド、
前記ペプチドをコードする核酸;
前記核酸を含む発現ベクター;
前記核酸または前記発現ベクターを含むウイルス;または
治療有効量の前記ペプチド、前記核酸、前記発現ベクターまたは前記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物
を含む、組成物。
【請求項17】
前記ペプチドの前記第2の領域の9個のアミノ酸の配列が、[A/I/L/S/T/V]-[K/R]-[L/I/M/S/T/V/A]-[G/R/A/H/K/S/F]-[L]-[D/E]-[I/N/V/M/K/Q/A/L/G/C]-[E]-[I](配列番号14)である、請求項16に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
(1)前記ペプチドの前記第1の領域が、「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列(「n」は0~11個のアミノ酸である)からなり;
(2)前記ペプチドの前記第2の領域が、9個のアミノ酸のアミノ酸配列([V]-[K]-[M/L]-[A]-[L]-[D]-[I/V]-[E]-[I](配列番号15))からなり;かつ
(3)前記ペプチドの前記第3の領域が、「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列(「m」は0~11個のアミノ酸である)からなり、
前記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する、請求項17に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記ペプチドが、最小12アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する、請求項18に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
癌の治療における使用のための組成物であって:
N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域であって、前記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である、第2の領域;および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなり、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有するペプチド、
前記ペプチドをコードする核酸;
前記核酸を含む発現ベクター;
前記核酸または前記発現ベクターを含むウイルス;または
治療有効量の前記ペプチド、前記核酸、前記発現ベクターまたは前記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物
を含む、組成物。
【請求項21】
前記ペプチドの前記第2の領域の9個のアミノ酸の配列が、[A/I/L/S/T/V]-[K/R]-[L/I/M/S/T/V/A]-[G/R/A/H/K/S/F]-[L]-[D/E]-[I/N/V/M/K/Q/A/L/G/C]-[E]-[I](配列番号14)である、請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
(1)前記ペプチドの前記第1の領域が、「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列(「n」は0~11個のアミノ酸である)からなり;
(2)前記ペプチドの前記第2の領域が、9個のアミノ酸のアミノ酸配列([V]-[K]-[M/L]-[A]-[L]-[D]-[I/V]-[E]-[I](配列番号15))からなり;かつ
(3)前記ペプチドの前記第3の領域が、「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列(「m」は0~11個のアミノ酸である)からなり、
前記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する、請求項21に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
前記ペプチドが、最小12アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記癌が、リンパ系癌または骨髄系癌であるか、または前記癌が固形腫瘍である、請求項20から23のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
アジュバントとして、請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチド、請求項7または8のいずれか一項に記載の核酸、請求項9に記載の発現ベクター、請求項10に記載のウイルス、または請求項11に記載の医薬組成物を含む、ワクチン。
【請求項26】
請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチドのインビトロプログラム細胞死誘導剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知の中間径フィラメントに由来するペプチド、および、ワクチンにおける新規アジュバントとしての、また癌に対する化学療法剤としての、単独でまたは他の薬剤もしくは療法との併用でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
市販のアジュバントの多くは、PAMP(病原体関連分子パターン)と呼ばれる微生物由来生成物である。PAMPは通常、良好な反応を誘導することができるが、重度の局所炎症および全身的副作用を引き起こすこともある。そのため、PAMPは、動物用および実験用のワクチンとして留保されている。さらに、水酸化アルミニウムなどの塩類およびMF59などの乳剤も、アジュバントとして作用することがある。水酸化アルミニウムは非常に良好な耐容性を示し、ヒト用のワクチンで最も一般的に使用されているアジュバントである。MF59は、インフルエンザワクチンのアジュバントとして使用するために特別に設計されたスクアレン製剤である。これらの後者のアジュバントをヒトのワクチンに使用する場合の主な問題は、それらが通常は、遮断抗体の産生を刺激するという点では良好な反応を誘導することである。しかしながら、Th1 CD4+および細胞傷害性CD8+Tリンパ球応答を刺激することにおいては効率的というわけではなく、その結果、細胞内感染に対して作用するための効率に欠けることになる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、既知の中間径フィラメントに由来するペプチドが、試験したすべてのタイプの真核細胞において、アポトーシス、ピロトーシスおよび/またはネクロトーシスを誘導することができるという驚くべき発見に関する。さらに、白血球においては、それらのペプチドが炎症性サイトカイン分泌を刺激することから、単独でまたは他の療法と併用して、ワクチンにおける新規アジュバントとして有用であり得;また、単独でまたは他の薬剤もしくは療法と併用して、化学療法剤としても有用であり得る。
【0004】
したがって、第1の態様において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、
上記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有し、ただし、上記ペプチド配列が、以下:
(i)YQELMNVKLALDIEIATYRR(配列番号2);
(ii)YQDLLNVKMALDIEIATYRR(配列番号3);
(iii)YQDLLNVKLALDIEIATYRR(配列番号4);
(iv)YQDLLNVKMALDVEIATYRR(配列番号5);
(v)YQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号6);
(vi)YQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号7);
(vii)YQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号8);
(viii)YQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号9);
(ix)DYQELMNVKLALDVEIATYR(配列番号10);
(x)VKIALEVEIATY(配列番号11);
(xi)IKSRLEQEIATYRSLLEGQEDHYNNLSASKVL(配列番号12);
(xii)LMDIKSRLEQEIATY(配列番号13);
(xiii)LLNVKMALDIEIAAY(配列番号87);
(xiv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRRLPPKGYPASAGLMPQNFGVI(配列番号88);
(xv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号89);
(xvi)KQDMARQLREYQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号90);
(xvii)RADSERQNQEYQRLMDIKSRLEQEIATYRS(配列番号91);
(xviii)KEEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号92);
(xix)KEEMARHLQEYQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号93);
(xx)KDEMARHLREYQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号94);
(xxi)KWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRK(配列番号95);
(xxii)RQAQEYEALLNIKVKLEAEI(配列番号96);
(xxiii)QEYEALLNIKVKLEAEIATYRRL(配列番号97);
(xxiv)YEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号98);
(xxv)NIKVKLEAEIATYRRLPPKG(配列番号99);
(xxvi)YQRLMDIKSRLEQEIATYRR(配列番号100);
(xxvii)EALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号101);
(xxviii)DYQELMNTKLALDLEIATYRTLLEGEE(配列番号102);
(xxix)DYQELMNVKLALDVEIATYRKLLEGEE(配列番号103);
(xxx)EYQELMNVKLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号104);
(xxxi)EYQQLLDIKIRLENEIQTYRSLLEGEG(配列番号105);
(xxxii)EYEALLNIKVKLEAEIATYRRLLEDGE(配列番号106);
(xxxiii)LRGTKWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEG(配列番号107);
(xxxiv)EYQDLLNVKMALDIEIATYR(配列番号108)
のいずれでもないことを条件とする、ペプチドに関する。
【0005】
別の態様において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドを含む組成物であって、
上記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有し、ただし、上記ペプチド配列が、VKIALEVEIATY(配列番号11)またはLLNVKMALDIEIAAY(配列番号87)ではないことを条件とする、医薬における使用のための組成物に関する。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドを含む組成物であって、
上記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する、アジュバントとしての使用のための組成物に関する。
【0007】
別のさらなる態様において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドを含む組成物であって、
上記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する、癌の治療における使用のための組成物に関する。
【0008】
別の態様において、本発明は、本発明によるペプチドをアジュバントとして含むワクチンに関する。
【0009】
最後の態様において、本発明は、細胞死誘導剤としての本発明によるペプチドの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ペプチドと共に培養したマウス脾臓細胞からのサイトカイン濃度を示す図である。ペプチド72およびDIF-Pと共に24時間および48時間インキュベートした細胞の上清の分析結果(n=4);(A)NOD.RAG-2-/-マウス由来の脾臓細胞;(B)NODマウス由来の脾臓細胞。
【
図2】ペプチドと共にインキュベートしたNOD、NOD.RAG2-/-およびC57Bl/6からのアポトーシスアッセイ結果を示す図である。NOD、NOD.RAG2-/-およびC57Bl/6由来の脾臓細胞をペリフェリン由来のペプチドと共に24時間インキュベーション後に得られたドットプロットの代表的画像(n=3)。
【
図3】DIFの種々の改変体と共に培養した後のNALM6細胞の細胞死およびアポトーシスを示す図である。種々のペプチド断片DIF-PおよびDIF改変体の存在下で24時間培養後のアネキシン陽性(細胞アポトーシスのマーカー)、およびアネキシンVとヨウ化プロピジウムの二重陽性(細胞死のマーカー)のNALM-6細胞。A)72、77、DIF-P(ペプチド78としても知られる)、および79は、ペリフェリン中間径フィラメントに由来する異なるペプチドを表す。活性コア配列を決定するために、DIF-P(ペプチド78)のネイティブ配列から、カルボキシ末端領域でアミノ酸を除去するか、またはリジンAAに置換した。DIF-P3K(78.12ペプチド)からペプチド78.16まで、およびペプチド78.Aから78.Dまでは、DIF-Pの種々の改変体(DIF-P改変体)を表す。リジンの置換は、ペプチド合成要件が異なる状況に対して実施した。極性アミノ酸(RまたはK)配列は、ペプチドの細胞侵入を補助する細胞透過性ペプチドとして作用する。DIF-P8R(78-12.8Rペプチドとしても知られる)では、細胞質へのペプチド透過性を高めるために、ネイティブ78ペプチドのコア配列の後のカルボキシ末端領域を、アルギニンの尾部に置換した。B)DIF-P(ペプチド78)、NF、GFAP、DES、LMNA、KRT84、KRT32およびKRT13は、それぞれペリフェリン/ビメンチン、神経フィラメント(重、中および軽)、グリア線維酸性タンパク質、デスミン、ラミンA、ケラチン-84、ケラチン-32およびケラチン-13中間径フィラメントのコアコンセンサス配列に由来する異なるペプチドである。72はペリフェリンに由来する無関係のペプチドであり、ここでは陰性対照として使用した。NALM-6は、ヒトBリンパ球性白血病細胞株である。
【
図4】すべての中間径フィラメントに見出されるすべての可能性のある変化を含む概要配列(DIF配列)を示す図である。文字サイズは、配列におけるその特定のアミノ酸の確率を示し、可能性のある他のアミノ酸変異も各位置に示す。
【
図5】種々のペプチドと共に培養したNALM-6細胞における切断型カスパーゼ-3の発現の代表的な画像を示す図である。NALM-6細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、1時間または24時間培養し、細胞内染色を行って、切断型カスパーゼ-3の発現を分析した。太線は、ペプチドなしでの対照細胞の発現に相当し、より明瞭な曲線は、種々のペプチドと共にインキュベートした細胞に相当する(n=3)。
【
図6】種々のペプチドと共に培養した後のヒトPBMC細胞のアポトーシスアッセイの代表的なドットプロットを示す図である。4×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、1時間、24時間または48時間培養した後に、アネキシンVおよびPI陽性細胞を分析した(n=4)。
【
図7】種々のペプチドと共に培養したヒトPBMCからの活性化(切断型)カスパーゼ-1陽性細胞の代表的なヒストグラムを示す図である。4×10
5個のPBMC細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8R、またはナイジェリシン(陽性対照として)と共に、あるいは刺激なしで、1時間培養し、活性化カスパーゼ-1を660-YVAD-FMKで測定した(n=4)。図の右側には、陽性細胞のパーセンテージを要約している(
*=p<0.05)。
【
図8】種々のペプチドと共に培養したヒトPBMCからの活性化(切断型)カスパーゼ-3陽性細胞の代表的なヒストグラムを示す図である。4×10
5個のPBMC細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8R、またはスタウロスポリン(陽性対照として)と共に、あるいは刺激なしで、1時間培養し、活性化カスパーゼ-3をFAM-DEVD-FMKで測定した(n=4)。図の右側には、陽性細胞のパーセンテージを要約している(
*=p<0.05、
**=p<0.01)。
【
図9】ペプチドと共に培養したヒトPBMC細胞により産生された種々のサイトカインの濃度を示す図である。1ウェルあたり4×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8R、またはスタウロスポリン、またはナイジェリシン(Nigericine)と共に、あるいは刺激なしで、24時間または48時間インキュベートした後に、上清を回収した。スタウロスポリンおよびナイジェリシン(Nigericine)の場合、サイトカインの産生は24時間後にのみ分析された(
*=p<0.05)。
【
図10】ペプチドと共に培養したNOD.RAG2-/-脾臓細胞により産生された種々のサイトカインの濃度を示す図である。1ウェルあたり4×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、24時間または48時間インキュベートした後に、上清を回収した(
*=p<0.05、
**=p<0.01)。
【
図11】ペプチドと共に培養した骨髄由来のNOD.RAG2-/-細胞により産生された種々のサイトカインの濃度を示す図である。1ウェルあたり4×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、24時間または48時間インキュベートした後に、上清を回収した(
*=p<0.05)。
【
図12】ペプチドと共に培養したNOD骨髄から精製した細胞により産生された種々のサイトカインの濃度を示す図である。1ウェルあたり4×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、24時間または48時間インキュベートした後に、上清を回収した。細胞は、(A)単球および(B)好中球である。
【
図13】NOD.RAG2-/-骨髄細胞を種々のペプチドと共に培養した後のアポトーシスアッセイの代表的なドットプロットを示す図である。4×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3Kと共に、あるいは刺激なしで、24時間または48時間培養した後に、アネキシンVおよびPI陽性細胞を分析した(n=4)。
【
図14】NOD骨髄から精製した単球を種々のペプチドと共に培養した後のアポトーシスアッセイの代表的なドットプロットを示す図である。4×10
5個の単球を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3Kと共に、あるいは刺激なしで、24時間または48時間培養した後に、アネキシンVおよびPI陽性細胞を分析した(n=4)。
【
図15】NOD骨髄から精製した好中球を種々のペプチドと共に培養した後のアポトーシスアッセイの代表的なドットプロットを示す図である。4×10
5個の好中球を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3Kと共に、あるいは刺激なしで、24時間または48時間培養した後に、アネキシンVおよびPI陽性細胞を分析した(n=4)。
【
図16】増殖アッセイを示す図である。DIF-Pと共に培養したNOD.RAG-2-/-マウス脾臓細胞では、増殖は認められない。ペプチド72は陰性対照として使用している。
【
図17】マウスB16F10(メラノーマ)およびP815(肥満細胞腫)細胞株をDIFの種々の改変体と共に培養した後の細胞死およびアポトーシスを示す図である。A)種々のペプチド断片DIF-P、およびDIF改変体の存在下で培養24時間後のアネキシン陽性(細胞アポトーシスのマーカー)、およびアネキシンVとヨウ化プロピジウムの二重陽性(細胞死のマーカー)のB16F10細胞(n=3)。B)種々のペプチド断片DIF-P、およびDIF改変体の存在下で培養24時間後のアネキシン陽性(細胞アポトーシスのマーカー)、およびアネキシンVとヨウ化プロピジウムの二重陽性(細胞死のマーカー)のP815細胞(n=1)。
【
図18】ニワトリ脾臓細胞を種々のペプチドと共に培養した後のアポトーシスアッセイの代表的なドットプロットを示す図である。4×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3Kと共に、あるいは刺激なしで、24時間または48時間培養した後に、アネキシンVおよびPI陽性細胞を分析した(n=4)。
【
図19】Jurkat細胞を種々のペプチドと共に培養した後のアポトーシスアッセイの代表的なドットプロットを示す図である。1×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、1時間、24時間または48時間培養した後に、アネキシンVおよびPI陽性細胞を分析した(n=4)。
【
図20】HL-60細胞を種々のペプチドと共に培養した後のアポトーシスアッセイの代表的なドットプロットを示す図である。1×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、1時間、24時間または48時間培養した後に、アネキシンVおよびPI陽性細胞を分析した(n=4)。
【
図21】NALM-6細胞を種々のペプチドと共に培養した後のアポトーシスアッセイの代表的なドットプロットを示す図である。1×10
5個の細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、1時間、24時間または48時間培養した後に、アネキシンVおよびPI陽性細胞を分析した(n=4)。
【
図22】種々のペプチドと共に培養したA375細胞(ヒトメラノーマ細胞株)における切断型カスパーゼ-3の発現の代表的な画像を示す図である。A375細胞を、ペプチド72、またはDIF-P、またはDIF-P3K、またはDIF-P8Rと共に、あるいは刺激なしで、24時間培養し、細胞内染色を行って、切断型カスパーゼ-3の発現を分析した。太線は、ペプチドなしでの対照細胞の発現に相当し、より明瞭な曲線は、種々のペプチドと共にインキュベートした細胞に相当する(n=2)。
【
図23】HEK293、HeLaおよびRD細胞をDIFの種々の改変体と共に培養した後の細胞死およびアポトーシスを示す図である(n=1)。A)DIF改変体の種々のペプチド断片の存在下で培養1時間後のアネキシン陽性(細胞アポトーシスのマーカー)、およびアネキシンVとヨウ化プロピジウムの二重陽性(細胞死のマーカー)のHEK293細胞。B)DIF改変体の種々のペプチド断片の存在下で培養1時間後のアネキシン陽性(細胞アポトーシスのマーカー)、およびアネキシンVとヨウ化プロピジウムの二重陽性(細胞死のマーカー)のHeLa細胞。C)DIF改変体の種々のペプチド断片の存在下で培養1時間後のアネキシン陽性(細胞アポトーシスのマーカー)、およびアネキシンVとヨウ化プロピジウムの二重陽性(細胞死のマーカー)のRD細胞。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述のように、本発明は、既知の中間径フィラメントに由来するペプチドが、試験したすべてのタイプの真核細胞において、アポトーシス、ピロトーシスおよび/またはネクロトーシスを誘導することができるという驚くべき発見に関する。さらに、白血球においては、それらのペプチドが炎症性サイトカインの分泌を刺激することから、単独でまたは他の療法と併用して、ワクチン接種における新規アジュバントとしても、また、癌の化学療法剤としても、有用であり得る。本発明のペプチドの使用は、特にリンパ系または骨髄系起源の癌に、または固形腫瘍に適応される。
【0012】
本発明のペプチド
第1の態様において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、
上記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有し、ただし、上記ペプチド配列が、以下:
(i)YQELMNVKLALDIEIATYRR(配列番号2);
(ii)YQDLLNVKMALDIEIATYRR(配列番号3);
(iii)YQDLLNVKLALDIEIATYRR(配列番号4);
(iv)YQDLLNVKMALDVEIATYRR(配列番号5);
(v)YQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号6);
(vi)YQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号7);
(vii)YQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号8);
(viii)YQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号9);
(ix)DYQELMNVKLALDVEIATYR(配列番号10);
(x)VKIALEVEIATY(配列番号11);
(xi)IKSRLEQEIATYRSLLEGQEDHYNNLSASKVL(配列番号12);
(xii)LMDIKSRLEQEIATY(配列番号13)
(xiii)LLNVKMALDIEIAAY(配列番号87);
(xiv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRRLPPKGYPASAGLMPQNFGVI(配列番号88);
(xv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号89);
(xvi)KQDMARQLREYQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号90);
(xvii)RADSERQNQEYQRLMDIKSRLEQEIATYRS(配列番号91);
(xviii)KEEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号92);
(xix)KEEMARHLQEYQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号93);
(xx)KDEMARHLREYQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号94);
(xxi)KWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRK(配列番号95);
(xxii)RQAQEYEALLNIKVKLEAEI(配列番号96);
(xxiii)QEYEALLNIKVKLEAEIATYRRL(配列番号97);
(xxiv)YEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号98);
(xxv)NIKVKLEAEIATYRRLPPKG(配列番号99);
(xxvi)YQRLMDIKSRLEQEIATYRR(配列番号100);
(xxvii)EALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号101);
(xxviii)DYQELMNTKLALDLEIATYRTLLEGEE(配列番号102);
(xxix)DYQELMNVKLALDVEIATYRKLLEGEE(配列番号103);
(xxx)EYQELMNVKLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号104);
(xxxi)EYQQLLDIKIRLENEIQTYRSLLEGEG(配列番号105);
(xxxii)EYEALLNIKVKLEAEIATYRRLLEDGE(配列番号106);
(xxxiii)LRGTKWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEG(配列番号107);
(xxxiv)EYQDLLNVKMALDIEIATYR(配列番号108)
のいずれでもないことを条件とする、ペプチドに関する。
【0013】
用語「ペプチド」とは、本明細書中で使用される場合、実質的に類似または同一の機能性を有するアミノ酸の配列、類似体または模倣体を指す。用語「ペプチド」には、ペプチド結合によって結合された合成アミノ酸および天然アミノ酸を有する類似体も含まれる。ペプチドはまた、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、その類似体、誘導体、塩、レトロ-インベルソ異性体、模倣物、模倣体、またはペプチド模倣体も含むことが意図される。例えば、本発明のモジュレータのペプチド構造は、その安定性、生物学的利用能、溶解性などを高めるためにさらに修飾されていてもよい。「類似体」、「誘導体」および「模倣体」には、ペプチド構造体の化学構造を模倣して、ペプチド構造体の機能特性を保持する分子が含まれる。ペプチドの類似体、誘導体および模倣体を設計するためのアプローチは、当該技術分野において公知である。例えば、Farmer,P.S.in Dmg Design(E.J.Ariens,ed.)Academic Press,New York,1980,vol.10,pp.119~143;Ball,J.B.およびAlewood,P.F.(1990)J.Mol.Recognition 3:55.Morgan,B.A.およびGainor,J.A.(1989)Ann.Rep.Med.Chem.24:243;およびFreidinger,R.M.(1989)Trends Pharmacol.Sci.10:270を参照。また、Sawyer,T.K.(1995)Peptidomimetic Design and Chemical Approaches to Peptide Metabolism in Taylor,M.D.およびAmidon,G.L.(eds.)Peptide-Based Drug Design:Controlling Transport and Metabolism,Chapter 17;Smith,A.B.3rd,et al.(1995)J.Am.Chem.Soc.117:11113~11123;Smith,A.B.3rd,et al.(1994)J.Am.Chem.Soc.116:9947~9962;およびHirschman,R.,et al.(1993)J.Am.Chem.Soc.115:12550~12568も参照。「誘導体」(例えば、ペプチドまたはアミノ酸)には、化合物上の1つ以上の反応基が置換基で誘導体化された形態が含まれる。ペプチド誘導体の例としては、アミノ酸側鎖、ペプチド骨格、またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端が誘導体化されたペプチド(例えば、メチル化アミド結合を有するペプチド化合物)が挙げられる。化合物Xの「類似体」には、機能活性に必要な化学構造を保持しつつ、ある異なる化学構造も含む化合物が含まれる。天然に存在するペプチドの類似体の例としては、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を含むペプチドが挙げられる。化合物の「模倣体」には、その化合物の機能活性に必要な化学構造が、その化合物の立体構造を模倣する他の化学構造で置き換えられた化合物が含まれる。ペプチド模倣体の例としては、ペプチド骨格が1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されたペプチド化合物が挙げられる(例えば、James,G.L.et al.(1993)Science 260:1937~1942を参照)。
【0014】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。アミノ酸は、本明細書において、それらの一般に知られている3文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される1文字記号のいずれかで呼ばれ得る。同様に、ヌクレオチドも、それらの一般に受け入れられている1文字コードで呼ばれ得る。アミノ酸という用語には、天然に存在するアミノ酸(Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val)、希少天然アミノ酸、非天然(合成)アミノ酸が含まれる。アミノ酸は、好ましくはL配置であるが、D配置であっても、D配置とL配置のアミノ酸の混合物であってもよい。用語「天然アミノ酸」には、脂肪族アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン)、ヒドロキシル化アミノ酸(セリンおよびスレオニン)、含硫アミノ酸(sulfured amino acids)(システインおよびメチオニン)、ジカルボン酸アミノ酸およびそれらのアミド(アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびグルタミン)、2つの塩基性基を有するアミノ酸(リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン)および環状アミノ酸(プロリン)が含まれる。本明細書中で使用される場合、用語「非天然アミノ酸」とは、位置αでアミン基に置換された、天然アミノ酸と構造的に関連しているカルボン酸、またはその誘導体を指す。修飾アミノ酸または希少アミノ酸の例示的な限定されない例としては、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロイソロイシン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチルリジン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチンなどが挙げられる。
【0015】
括弧内に示されるアミノ酸の位置は、括弧内にあるアミノ酸が、所定の位置での選択肢として見出され得ることを示す。したがって、[(a)/(b)]は、上記位置のアミノ酸が非極性脂肪族アミノ酸または極性非荷電アミノ酸であり得ることを示し;[K/R]は、上記位置のアミノ酸がLysまたはArgであり得ることを示し;[(a)/(b)/(c)/(d)]は、上記位置のアミノ酸が非極性脂肪族アミノ酸、極性非荷電アミノ酸、正荷電アミノ酸、または芳香族アミノ酸であり得ることを示し;[L]は、上記位置のアミノ酸がLeuのみであり得ることを示し;[(e)]は、上記位置のアミノ酸が負荷電アミノ酸のみであり得ることを示し;[(a)/(b)/(c)]は、上記位置のアミノ酸が非極性脂肪族アミノ酸、極性非荷電アミノ酸、または正荷電アミノ酸であり得ることを示し;[E]は、上記位置のアミノ酸がGluのみであり得ることを示し;[I]は、上記位置のアミノ酸がIleのみであり得ることを示す。
【0016】
本明細書中で使用される場合、非極性脂肪族アミノ酸は、Gly、Ala、Val、Pro、Met、Leu、およびIleからなる群から選択され;極性非荷電アミノ酸は、Ser、Cys、Thr、Asn、およびGlnからなる群から選択され;正荷電アミノ酸は、His、Lys、およびArgからなる群から選択され;芳香族アミノ酸は、Phe、Tyr、およびTrpからなる群から選択され;そして負荷電アミノ酸は、Asp、およびGluからなる群から選択される。
【0017】
本発明のペプチドの第2の領域は、9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる。本発明のペプチドの第2の領域の位置1のアミノ酸は、非極性脂肪族アミノ酸または極性非荷電アミノ酸であり;好ましくはAla、Ile、Leu、Ser、Thr、またはValであり、最も好ましくはValである。本発明のペプチドの第2の領域の位置2のアミノ酸は、LysまたはArgであり;好ましくはLysである。本発明のペプチドの第2の領域の位置3のアミノ酸は、非極性脂肪族アミノ酸または極性非荷電アミノ酸であり;好ましくはLeu、Ile、Met、Ser、Thr、Val、またはAlaであり;最も好ましくはMetまたはLeuである。本発明のペプチドの第2の領域の位置4のアミノ酸は、非極性脂肪族アミノ酸、極性非荷電アミノ酸、正荷電アミノ酸、または芳香族アミノ酸であり;好ましくはGly、Arg、Ala、His、Lys、Ser、およびPheであり;最も好ましくはAlaである。本発明のペプチドの第2の領域の位置5のアミノ酸は、Leuである。本発明のペプチドの第2の領域の位置6のアミノ酸は、負荷電アミノ酸であり;好ましくはAspまたはGluであり、最も好ましくはAspである。本発明のペプチドの第2の領域の位置7のアミノ酸は、非極性脂肪族アミノ酸、極性非荷電アミノ酸、または正荷電アミノ酸であり;好ましくはIle、Asn、Val、Met、Lys、Gln、Ala、Leu、GlyまたはCysであり;最も好ましくはIleまたはValである。本発明のペプチドの第2の領域の位置8のアミノ酸は、Gluである。本発明のペプチドの第2の領域の位置9のアミノ酸は、Ileである。
【0018】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する。別の特定の実施形態において、本発明のペプチドは、最小12アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する。特定の実施形態において、本発明のペプチドは、最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する。別の特定の実施形態において、本発明のペプチドは、最小12アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する。別の特定の実施形態において、本発明のペプチドは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個のアミノ酸の長さを有する。本発明のペプチドの第1の領域は、「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなり、ここで、「n」は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40または41個のアミノ酸である。本発明のペプチドの第3の領域は、「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなり、ここで、「m」は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40または41個のアミノ酸である。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[A/I/L/S/T/V]-[K/R]-[L/I/M/S/T/V/A]-[G/R/A/H/K/S/F]-[L]-[D/E]-[I/N/V/M/K/Q/A/L/G/C]-[E]-[I](配列番号14)である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、
上記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有し、ただし、上記ペプチド配列が、以下:
(i)YQELMNVKLALDIEIATYRR(配列番号2);
(ii)YQDLLNVKMALDIEIATYRR(配列番号3);
(iii)YQDLLNVKLALDIEIATYRR(配列番号4);
(iv)YQDLLNVKMALDVEIATYRR(配列番号5);
(v)YQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号6);
(vi)YQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号7);
(vii)YQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号8);
(viii)YQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号9);
(ix)DYQELMNVKLALDVEIATYR(配列番号10);
(x)VKIALEVEIATY(配列番号11);
(xi)IKSRLEQEIATYRSLLEGQEDHYNNLSASKVL(配列番号12);
(xii)LMDIKSRLEQEIATY(配列番号13)
(xiii)LLNVKMALDIEIAAY(配列番号87);
(xiv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRRLPPKGYPASAGLMPQNFGVI(配列番号88);
(xv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号89);
(xvi)KQDMARQLREYQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号90);
(xvii)RADSERQNQEYQRLMDIKSRLEQEIATYRS(配列番号91);
(xviii)KEEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号92);
(xix)KEEMARHLQEYQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号93);
(xx)KDEMARHLREYQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号94);
(xxi)KWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRK(配列番号95);
(xxii)RQAQEYEALLNIKVKLEAEI(配列番号96);
(xxiii)QEYEALLNIKVKLEAEIATYRRL(配列番号97);
(xxiv)YEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号98);
(xxv)NIKVKLEAEIATYRRLPPKG(配列番号99);
(xxvi)YQRLMDIKSRLEQEIATYRR(配列番号100);
(xxvii)EALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号101);
(xxviii)DYQELMNTKLALDLEIATYRTLLEGEE(配列番号102);
(xxix)DYQELMNVKLALDVEIATYRKLLEGEE(配列番号103);
(xxx)EYQELMNVKLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号104);
(xxxi)EYQQLLDIKIRLENEIQTYRSLLEGEG(配列番号105);
(xxxii)EYEALLNIKVKLEAEIATYRRLLEDGE(配列番号106);
(xxxiii)LRGTKWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEG(配列番号107);
(xxxiv)EYQDLLNVKMALDIEIATYR(配列番号108)
のいずれでもないことを条件とする、ペプチドに関する。
【0020】
別の好ましい実施形態において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~11個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[V]-[K]-[M/L]-[A]-[L]-[D]-[I/V]-[E]-[I](配列番号15)である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~11個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、
上記ペプチドが、最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有し、ただし、上記ペプチド配列が、以下:
(i)YQELMNVKLALDIEIATYRR(配列番号2);
(ii)YQDLLNVKMALDIEIATYRR(配列番号3);
(iii)YQDLLNVKLALDIEIATYRR(配列番号4);
(iv)YQDLLNVKMALDVEIATYRR(配列番号5);
(v)YQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号6);
(vi)YQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号7);
(vii)YQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号8);
(viii)YQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号9);
(ix)DYQELMNVKLALDVEIATYR(配列番号10);
(x)LLNVKMALDIEIAAY(配列番号87);
(xi)EYQDLLNVKMALDIEIATYR(配列番号108)
のいずれでもないことを条件とする、ペプチドに関する。
【0021】
特定の実施形態において、本発明によるペプチドは、以下のことが可能である:
(a)白血球においてアポトーシス、ピロトーシスおよび/またはネクロトーシスを誘導すること、および/または
(b)炎症性サイトカインの分泌を刺激すること。
したがって、これらのペプチドは、その細胞透過能によって2種類の効果を有する。一方では、これらのペプチドは、白血球または単球精製培養物に添加されるとサイトカインの産生を促進することができ、他方では、鳥類または哺乳類の真核細胞の任意の集団において細胞死を引き起こす。これらのペプチドはまた、ヒトT-リンパ球の細胞死を誘導することができる。これらのペプチドは内因性であるため、「ダメージ関連分子パターン」(DAMP)とみなされ得る。
【0022】
用語「アポトーシス」とは、本明細書中で使用される場合、細胞自殺の選択的形態を引き起こす生化学的事象の制御されたネットワークに関するものであり、容易に観察可能な形態学的および生化学的現象、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)の断片化、クロマチンの凝縮(エンドヌクレアーゼ活性と関連している場合も関連していない場合もある)、染色体移動、細胞核における辺縁趨向、アポトーシス小体の形成、ミトコンドリア膨化、ミトコンドリアクリステの拡張、ミトコンドリア透過性遷移孔の開口、および/またはミトコンドリアプロトン勾配の消失などを特徴とする。細胞アポトーシスを測定する方法は当業者に公知であり、限定はされないが、DNA断片化を測定するアッセイ(細胞透過処理後の染色体DNAの染色を含む)、カスパーゼ3などのカスパーゼの活性化を測定するアッセイ(プロテアーゼ活性アッセイを含む)、カスパーゼ切断産物を測定するアッセイ(PARPおよびサイトケラチン18分解の検出を含む)、クロマチンクロマトグラフィー検査アッセイ(染色体DNA染色を含む)、DNA鎖切断(ニック)およびDNA断片化(ねじれ型DNA末端)を測定するアッセイ(ニックトランスレーションまたはISNTによる細胞の活性標識、および末端標識またはTUNELによる細胞の活性標識を含む)、アポトーシス細胞の表面上のホスファチジルセリンを検出するアッセイ(移行した膜成分の検出を含む)、細胞膜損傷/漏出を測定するアッセイ(トリパンブルー排除アッセイおよびヨウ化プロピジウム排除アッセイを含む)が挙げられる。例示的なアッセイとしては、フローサイトメトリーによるアポトーシス細胞の散乱パラメータの解析、フローサイトメトリーによるDNA含量分析(ヨウ化プロピジウムなどの蛍光色素溶液中でのDNA染色を含む)、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼによるDNA鎖切断の蛍光色素標識またはTdTアッセイ、フローサイトメトリーによるアネキシンV結合の分析、およびTUNELアッセイが挙げられる。
【0023】
用語「ピロトーシス」とは、本明細書中で使用される場合、細胞内病原体による免疫細胞の感染時に最も頻繁に生じ、炎症性サイトカインの放出、および感染細胞の膨張および破裂を特徴とする、非常に炎症性の高いプログラム細胞死の形態を指す。放出されたサイトカインは、感染と戦うために他の免疫細胞を引き寄せ、組織の炎症を引き起こす。ピロトーシスは、細胞内複製ニッチを取り除き、宿主の防御反応を強化することにより、様々な細菌感染およびウイルス感染の迅速な排除を促進する。ピロトーシスにはカスパーゼ1という酵素の作用が必要であり、この酵素はピロトソーム(インフラマソームとしても知られる)と呼ばれる大きな超分子複合体によって活性化される。アポトーシスとは異なり、ピロトーシスによる細胞死は細胞膜破裂を生じ、さらに多くの免疫細胞を動員して組織における炎症カスケードをさらに持続させるサイトカインを含む、ATP、DNAおよびASCオリゴマー(スペック)などのダメージ関連分子パターン(DAMP)分子を細胞外環境に放出する。
【0024】
用語「ネクロトーシス」とは、本明細書中で使用される場合、アポトーシスおよびネクローシスの特徴を模倣する制御された細胞死の代替様式を指す。ネクロトーシスには、タンパク質RIPK3(炎症、細胞生存、および疾患の制御因子として以前からよく知られている)およびその基質であるMLKLが、この経路の重大な担い手として必要である。ネクロトーシスは、Toll様受容体、細胞死受容体、インターフェロンなどのメディエーターによって誘導される。ネクロトーシスの免疫原性は、免疫系による病原体に対する防御を助けるなど、特定の状況でのネクロトーシスの関与に有利に働く。ネクロトーシスは、ウイルス防御機構として明確に定義されており、ウイルスのカスパーゼインヒビターの存在下でカスパーゼ非依存的に細胞を「細胞自殺」させ、ウイルス複製を制限することができる。ネクロトーシスは、疾患に対する反応であることに加え、クローン病、膵炎、および心筋梗塞などの炎症性疾患の構成要素としても特徴づけられている。
【0025】
本発明の文脈において、用語「炎症性サイトカイン」とは、直接的に、または特定の細胞型では細胞接着分子または他のサイトカインの合成を誘導する能力によって、炎症を促進し、炎症反応を制御するサイトカインを指す。主な炎症性サイトカインは、IL1-α、IL1-β、IL6、およびTNF-αである。
【0026】
本発明のペプチドは、ペプチドを細胞内に送達するための1つまたは複数の追加的な要素を含み得る。ペプチドの細胞内送達を達成する他の非限定的手段としては、カチオン性脂質混合物によるトランスフェクション、ポリマーベースの試薬によるトランスフェクション、デンドリマー、ナノキャリア、マイクロインジェクション、微粒子銃粒子送達システム(すなわち、遺伝子銃)、エレクトロポレーション、ソノポレーション、光学的トランスフェクションおよびベクターフリーマイクロ流体プラットフォーム(すなわち、CellSqueeze(登録商標))が挙げられる。
【0027】
特定の実施形態において、本発明のペプチドの第1の領域は、アミノ酸配列L-L-Nを含む。
【0028】
別の特定の実施形態において、本発明のペプチドの第1の領域および/または第3の領域は、細胞透過性ペプチドおよび/またはシグナルペプチドを含む。細胞透過性ペプチド(CPP)は、共有結合を介した化学結合または非共有相互作用のいずれかによってペプチドと結合している様々な分子実体の細胞への摂取/取り込みを促進する短いペプチドである。結合する分子実体は、ナノサイズの粒子から小さな化学分子および大きなDNA断片まで多岐にわたる。CPPの機能は、結合する実体を細胞内に送達することであり、そのプロセスは、一般的にエンドサイトーシスによって起こる。CPPは、典型的に、リジンまたはアルギニンなどの正荷電アミノ酸を相対的に多く含むか、極性/荷電アミノ酸と非極性疎水性アミノ酸の交互パターンを含む配列を有するかのいずれかであるアミノ酸組成を有する。これらの2つのタイプの構造は、それぞれ、ポリカチオン性または両親媒性と呼ばれる。CPPの第3のクラスは、疎水性ペプチドであり、正味電荷の低い無極性残基のみを含有するか、または細胞取り込みに重要な疎水性アミノ酸基を有する。特定の実施形態において、細胞透過性ペプチドは、9アミノ酸の環状ペプチドiRGD(CRGDKGPDC、配列番号16)を含む腫瘍透過性ペプチドである。別の特定の実施形態において、細胞透過性ペプチドは、極性アミノ酸配列を含む。好ましい実施形態において、細胞透過性ペプチドは、3個以上(すなわち、3個、4個、5個、6個、7個、8個またはそれ以上)の連続するリジンアミノ酸(K-K-K)または3個以上(すなわち、3個、4個、5個、6個、7個、8個、またはそれ以上)の連続するアルギニンアミノ酸(R-R-R)を含む。より好ましい実施形態において、細胞透過性ペプチドは、8個以上の連続するリジンアミノ酸(K-K-K-K-K-K-K-K、配列番号17)または8個以上の連続するアルギニンアミノ酸(R-R-R-R-R-R-R-R、配列番号18)を含む。シグナルペプチド(シグナル配列、標的シグナル、局在化シグナル、局在化配列、輸送ペプチド、リーダー配列またはリーダーペプチドと呼ばれることもある)は、分泌経路に向かうことになっている新たに合成されたタンパク質の大部分のN末端に存在する短いペプチド(通常、16~30アミノ酸長)である。これらのタンパク質には、特定の細胞小器官(小胞体、ゴルジ体またはエンドソーム)内に存在するタンパク質、細胞から分泌されるタンパク質、またはほとんどの細胞膜に挿入されるタンパク質が含まれる。特定の実施形態において、本発明のペプチドの第1の領域および/または第3の領域は、「核局在化配列」(NLS)ペプチドを含む。特定の実施形態において、本発明のペプチドは、タンパク質タグをさらに含むか、またはキメラタンパク質を形成するポリペプチドに結合される。特定の例では、本発明のペプチドは、キメラタンパク質を形成するために抗体に結合されてもよい。
【0029】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、以下の配列のペプチドである:
(i)LLNVKMALDIEIATYRKLLE(配列番号19);
(ii)LLNVKMALDIEIKKK(配列番号20);
(iii)LLNVKMALDVEIATYRKLLE(配列番号21);
(iv)LLNVKLALDIEIATYRKLLE(配列番号22);
(v)LLNVKMALDIEIAAYRKLLE(配列番号23);
(vi)REYQELLNVKMALDIEIATY(配列番号24);
(vii)LLNVKMALDIEIATYR(配列番号25);
(viii)LLNVKMALDIEIATYKKK(配列番号26);
(ix)LLNVKMALDIEIATKKK(配列番号27);
(x)LLNVKMALDIEIAKKK(配列番号28);
(xi)LNVKMALDIEIATYR(配列番号29);
(xii)NVKMALDIEIATYR(配列番号30);
(xiii)VKMALDIEIATYR(配列番号31);
(xiv)LLNVKMALDVEIATKKK(配列番号32);
(xv)LLNVKMALDVEIKKK(配列番号33);
(xvi)LLNVKMALDVEIAKKK(配列番号34);
(xvii)LLNVKLALDIEIKKK(配列番号35);
(xviii)LLNVKLALDIEIAKKK(配列番号36);
(xix)LLNVKLALDIEIATKKK(配列番号37);
(xx)LLNVKLALDVEIKKK(配列番号38);または
(xxi)LLNVKMALDIEIRRRRRRRR(配列番号39)。
【0030】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、以下の配列のペプチドではない:
(i)YQELMNVKLALDIEIATYRR(配列番号2);
(ii)YQDLLNVKMALDIEIATYRR(配列番号3);
(iii)YQDLLNVKLALDIEIATYRR(配列番号4);
(iv)YQDLLNVKMALDVEIATYRR(配列番号5);
(v)YQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号6);
(vi)YQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号7);
(vii)YQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号8);
(viii)YQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号9);
(ix)DYQELMNVKLALDVEIATYR(配列番号10);
(x)VKIALEVEIATY(配列番号11);
(xi)IKSRLEQEIATYRSLLEGQEDHYNNLSASKVL(配列番号12);
(xii)LMDIKSRLEQEIATY(配列番号13)
(xiii)LLNVKMALDIEIAAY(配列番号87);
(xiv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRRLPPKGYPASAGLMPQNFGVI(配列番号88);
(xv)RAEGQRQAQEYEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号89);
(xvi)KQDMARQLREYQELMNVKLALDIEIATYRK(配列番号90);
(xvii)RADSERQNQEYQRLMDIKSRLEQEIATYRS(配列番号91);
(xviii)KEEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIATYRK(配列番号92);
(xix)KEEMARHLQEYQDLLNVKLALDIEIATYRK(配列番号93);
(xx)KDEMARHLREYQDLLNVKMALDVEIATYRK(配列番号94);
(xxi)KWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRK(配列番号95);
(xxii)RQAQEYEALLNIKVKLEAEI(配列番号96);
(xxiii)QEYEALLNIKVKLEAEIATYRRL(配列番号97);
(xxiv)YEALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号98);
(xxv)NIKVKLEAEIATYRRLPPKG(配列番号99);
(xxvi)YQRLMDIKSRLEQEIATYRR(配列番号100);
(xxvii)EALLNIKVKLEAEIATYRR(配列番号101);
(xxviii)DYQELMNTKLALDLEIATYRTLLEGEE(配列番号102);
(xxix)DYQELMNVKLALDVEIATYRKLLEGEE(配列番号103);
(xxx)EYQELMNVKLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号104);
(xxxi)EYQQLLDIKIRLENEIQTYRSLLEGEG(配列番号105);
(xxxii)EYEALLNIKVKLEAEIATYRRLLEDGE(配列番号106);
(xxxiii)LRGTKWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEG(配列番号107);
(xxxiv)EYQDLLNVKMALDIEIATYR(配列番号108)。
【0031】
本明細書の他の箇所に記載されているすべての用語および実施形態は、本発明のこれらの態様にも等しく適用可能である。
【0032】
本発明の核酸、ベクターおよびウイルス
別の態様において、本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸、ならびに上記核酸を含む発現カセット、ベクターおよびウイルスに関する。
【0033】
好ましくは、上記核酸はポリヌクレオチドであり、ヌクレオチドモノマー(核酸)の一本鎖または二本鎖ポリマーを指し、ヌクレオチド間ホスホジエステル結合連鎖(bond linkage)によって連結された2’-デオキシリボヌクレオチド(DNA)およびリボヌクレオチド(RNA)を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、上記核酸はコドン最適化されている。好ましい実施形態において、上記核酸は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化されている。本発明による使用のためのコドン最適化核酸は、免疫原をコードする核酸のコドンを「ヒト化」コドン(すなわち、高発現ヒト遺伝子において頻繁に現れるコドン)に置き換えることによって調製され得る。Andre S,et al.,J.Virol.1998;72:1497~1503を参照。本発明のこの態様の核酸は、ベクターに連結するために、制限酵素による切断を必要とする場合がある。この手順は、様々な末端ヌクレオチド(例えば、1個、2個、または3個)の除去を伴う可能性がある。従って、一実施形態では、本発明は、制限酵素で各末端を切断された上記核酸に関する。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、本発明のこの態様の核酸、プロモーター配列および3’-UTR、および場合により選択マーカーを含む発現カセットに関する。好ましくは、プロモーター配列は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたは初期-後期p7.5プロモーター配列である。好ましくは、3’-UTRは、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリAである。任意の選択マーカーは、好ましくは、抗生物質耐性遺伝子(例えば、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、スペクチノマイシン)である。
【0035】
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明のこの態様の核酸または発現カセットを含む発現ベクターに関する。用語「ベクター」とは、本明細書中で使用される場合、目的の1つ以上のポリヌクレオチドを宿主細胞に送達することができ、好ましくはさらに発現させることができる構築物を指す。ベクターの例としては、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と結合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、および産生細胞などの特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。この用語はまた、ゲノムDNAへの標的化構築物のランダムなまたは部位特異的な組込みを可能にする標的化構築物に関する。そのような標的化構築物は、好ましくは、相同組換えまたは異種組込みのいずれかに十分な長さのDNAを含む。特定の実施形態において、ベクターは発現ベクターである。用語「発現ベクター」とは、細胞、好ましくは真核細胞、より好ましくは哺乳動物細胞において本発明の核酸構築物を発現するために使用される複製DNA構築物をいう。発現ベクターはまた、細菌におけるベクター増幅に必要な、原核生物の複製起点を含むことが好ましい。さらに、発現ベクターは、細菌のための選択遺伝子、例えば、抗生物質(例えば、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールなど)に対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子も含み得る。発現ベクターは、1つ以上の複数のクローニング部位も含み得る。
【0036】
特定の実施形態において、発現ベクターは、本発明の核酸を含むウイルスベクターまたはウイルス、または本発明の発現ベクターである。より特定の実施形態において、発現ベクターは、レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである。用語「レンチウイルスベクター」とは、本明細書中で使用される場合、宿主ゲノムに組み込む能力により、本質的に緩徐に発症する疾患を引き起こすレトロウイルスの群(または科学的属)に基づくベクターを指す。改変されたレンチウイルスゲノムは、細胞に核酸配列を送達するためのウイルスベクターとして有用である。細胞の感染に対するレンチウイルスの利点は、導入遺伝子を持続的に発現する能力である。これらのウイルスとしては、特に、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヒツジのビスナウイルス(VISNA)およびヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が挙げられる。組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、インビボおよびエクスビボの両方での遺伝子導入および核酸配列の発現に使用され得る。例えば、パッケージング機能、すなわち、gag、polおよびenv、ならびにrevおよびtatを有する2つ以上のベクターを用いて適切な宿主細胞をトランスフェクトする、非分裂細胞に感染することができる組換えレンチウイルスが、米国特許第5,994,136号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。特定の細胞型の受容体を標的とするために、抗体または特定のリガンドと、エンベロープタンパク質とを結合させることによって、組換えウイルスを標的化し得る。例えば、目的の配列(調節領域を含む)を、特定の標的細胞上の受容体に対するリガンドをコードする別の遺伝子と共にウイルスベクターに挿入することによって、そのベクターは標的特異的となる。本発明によるレンチウイルスベクターは、天然の感染性ウイルスを構成する特定の遺伝子を除去し、標的細胞に導入すべき目的の核酸配列に置き換えるような方法で遺伝子改変されていてもよい。用語「アデノウイルスベクター」とは、本明細書中で使用される場合、アデノウイルスに基づくベクターを指す。用語「アデノウイルス」とは、二本鎖DNAゲノムを含む擬似二十面体ヌクレオカプシドを有する非エンベロープウイルスであることを特徴とする、アデノウイルス科に属する任意のウイルスを指す。この用語には、標的細胞への感染のための受容体としてCAR、CD46またはデスモグレイン-2を用いるすべての群、亜群、および血清型を含む、ヒトまたは動物に感染可能な任意のアデノウイルスが含まれる。アデノウイルスという用語には、限定されるものではないが、トリ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヒトまたはカエルのアデノウイルスが含まれる。特定の実施形態において、アデノウイルスは、ヒトアデノウイルス、すなわち、ヒトに感染可能なアデノウイルスである。「血清型」とは、免疫学的に異なるアデノウイルスの各型を指す。ヒトアデノウイルスには少なくとも57の血清型が存在し、いくつかの亜群(A~G)に分類されている。別の実施形態において、ウイルスベクターは、ウイルスまたはパルボウイルス科、好ましくはパルボウイルス亜科由来、より好ましくはディペンドパルボウイルス属(Dependoparvovirus)由来、さらにより好ましくはアデノ随伴ウイルスに基づくベクターである。
【0037】
発現ベクターおよび/またはウイルスベクターは、コアペプチドが細胞内で直接合成され、そこでその効果を発揮し得るように、9アミノ酸コアペプチドをコードしかつ送達することが可能であるべきである。
【0038】
本明細書の他の箇所に記載されているすべての用語および実施形態は、本発明のこれらの態様にも等しく適用可能である。
【0039】
本発明の薬理学的組成物
さらなる態様では、本発明は、治療有効量の本発明のペプチド、本発明の核酸、本発明の発現ベクターまたは本発明のウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を指す。
【0040】
用語「医薬組成物」とは、本明細書中で使用される場合、治療有効量の本発明によるペプチドまたは核酸構築物(または上記核酸構築物を含むベクター、ウイルス粒子または細胞)および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を指す。本発明による医薬組成物は、例えば、液体溶液、懸濁液、およびエマルジョンなどの注射剤として調製され得る。「薬学的に許容される賦形剤」、または「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される希釈剤」、または「薬学的に許容されるビヒクル」という用語は、本明細書中で互換的に使用され、任意の従来型の非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料または製剤補助剤を指す。薬学的に許容される担体は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して本質的に無毒性であり、かつ、製剤の他の成分と適合性である。適切な担体としては、水、デキストロース、グリセロール、生理食塩水、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。担体は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、または製剤の有効性を高めるアジュバントなどの追加の薬剤を含み得る。アジュバントは、無菌液体、例えば、水および油(石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む)からなる群から選択され得る。ビヒクルとしては、特に注射剤用に、水または生理食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液が好ましく使用される。好適な医薬用ビヒクルは、E.W.Martin著「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第21版、2005年に記載されている。
【0041】
用語「治療有効量」は、本発明の化合物に関連して、または、本発明の医薬組成物に含まれる化合物、賦形剤および/または担体に関連して、本明細書中で使用される場合、所望の効果をもたらすための、すなわち、疾患から生じる1つ以上の症状の明らかな予防、治癒、遅延、重症度の軽減または寛解を達成するための、上記化合物、賦形剤および/または担体の十分量に関し、これは一般に、他の要因の中でも特に、薬剤自体の特性および達成されるべき治療効果によって決定される。治療有効量はまた、治療される被験体、上記被験体が罹患している疾患の重症度、選択された剤形などにも依存する。このため、本発明に記載され得る用量は、前述の変動要素に応じて用量を調整しなければならない当業者にとっての指針としてのみ考慮されなければならない。一実施形態では、有効量は、治療されている疾患の1つ以上の症状の寛解をもたらす。個々のニーズが異なっていても、本発明による化合物の治療有効量の最適範囲の決定は、当業者の共通の経験に属する。一般に、有効な治療を提供するために必要な投薬量は、当業者により調整可能であるが、年齢、健康、体力、性別、食事、体重、受容体の変化の程度、治療の頻度、損傷の性質および状態、障害または疾病の性質および程度、被験体の医学的状態、投与経路、使用する特定の化合物の活性、効力、薬物動態学および毒物学プロファイルなどの薬理学的考慮事項、薬物送達システムを使用するか否か、および化合物が薬物の組み合わせの一部として投与されるか否かによって異なる。被験体の虚血傷害または虚血/再灌流傷害の予防および/または治療において治療的に有効な本発明による化合物の量は、従来の臨床技術(例えば、The Physician’s Desk Reference,Medical Economics Company,Inc,Oradell,NJ,1995およびDrug Facts and Comparisons,Inc,St.Louis,MO,1993を参照)によって決定され得る。
【0042】
本明細書の他の箇所に記載されているすべての用語および実施形態は、本発明のこれらの態様にも等しく適用可能である。
【0043】
本発明のペプチドの、および本発明の核酸、ベクター、ウイルスおよび医薬組成物の医学的使用
さらなる態様において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス;または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、医薬における使用のための組成物であって、ただし、上記ペプチド配列が、VKIALEVEIATY(配列番号11)、またはLLNVKMALDIEIAAY(配列番号87)ではないことを条件とする、組成物に関する。
【0044】
特定の実施形態において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[A/I/L/S/T/V]-[K/R]-[L/I/M/S/T/V/A]-[G/R/A/H/K/S/F]-[L]-[D/E]-[I/N/V/M/K/Q/A/L/G/C]-[E]-[I](配列番号14)である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス;または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、医薬における使用のための組成物であって、ただし、上記ペプチド配列が、VKIALEVEIATY(配列番号11)、またはLLNVKMALDIEIAAY(配列番号87)ではないことを条件とする、組成物に関する。
【0045】
別の特定の実施形態において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~11個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[V]-[K]-[M/L]-[A]-[L]-[D]-[I/V]-[E]-[I](配列番号15)である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~11個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス;または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、医薬における使用のための組成物であって、ただし、上記ペプチド配列が、LLNVKMALDIEIAAY(配列番号87)ではないことを条件とする、組成物に関する。
【0046】
別のさらなる態様において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス;または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、アジュバントとしての使用のための組成物に関する。
【0047】
特定の実施形態において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[A/I/L/S/T/V]-[K/R]-[L/I/M/S/T/V/A]-[G/R/A/H/K/S/F]-[L]-[D/E]-[I/N/V/M/K/Q/A/L/G/C]-[E]-[I](配列番号14)である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス;または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、アジュバントとしての使用のための組成物に関する。
【0048】
別の特定の実施形態において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~11個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[V]-[K]-[M/L]-[A]-[L]-[D]-[I/V]-[E]-[I](配列番号15)である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~11個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;または、上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス、または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、アジュバントとしての使用のための組成物に関する。
【0049】
用語「アジュバント」とは、本明細書中で使用される場合、免疫原性作用物質に添加すると、その混合物に曝露されたレシピエント宿主において、その作用物質に対する免疫応答を非特異的に強化または増強する物質を指す。用語「免疫原性作用物質」または「免疫原」とは、本明細書中で使用される場合、注入された場合に単独で適応免疫応答を誘発することができる抗原を指す。すべての免疫原は抗原でもあるが、すべての抗原が免疫原というわけではない。用語「免疫原性組成物」とは、本明細書中で使用される場合、特定の免疫原に対して抗体または細胞性免疫応答を生じる被験体において、免疫応答を誘発する組成物を指す。免疫原性組成物は、例えば、液体溶液、懸濁液、およびエマルジョンなどの注射剤として調製され得る。用語「抗原性組成物」とは、宿主免疫系によって認識され得る組成物を指す。例えば、抗原性組成物は、宿主免疫系の体液性または細胞性成分によって認識され得るエピトープを含む。
【0050】
別の態様において、本発明は、アジュバントとして、本発明のペプチド、または本発明による核酸、発現ベクター、ウイルス、または医薬組成物を含むワクチンに関する。用語「ワクチン」とは、本明細書中で使用される場合、免疫学的記憶を含む適応免疫応答を誘導することにより、特定の疾患に対する免疫を確立または向上させる物質または組成物を指す。ワクチンは、典型的には、疾患を引き起こす微生物またはその一部に似た作用物質(例えば、ポリペプチド)を含む。ワクチンには、予防的なものと治療的なものがある。
【0051】
なお別のさらなる態様において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[(a)/(b)]-[K/R]-[(a)/(b)]-[(a)/(b)/(c)/(d)]-[L]-[(e)]-[(a)/(b)/(c)]-[E]-[I](配列番号1)であり、ここで、(a)は非極性脂肪族アミノ酸、(b)は極性非荷電アミノ酸、(c)は正荷電アミノ酸、(d)は芳香族アミノ酸、(e)は負荷電アミノ酸である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス;または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、癌の治療における使用のための組成物に関する。
【0052】
特定の実施形態において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~41個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[A/I/L/S/T/V]-[K/R]-[L/I/M/S/T/V/A]-[G/R/A/H/K/S/F]-[L]-[D/E]-[I/N/V/M/K/Q/A/L/G/C]-[E]-[I](配列番号14)である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~41個のアミノ酸である)
からなり、最小9アミノ酸から最大50アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス;または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、癌の治療における使用のための組成物に関する。
【0053】
別の特定の実施形態において、本発明は、N末端からC末端に向かって順に:
(1)「n」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第1の領域(「n」は0~11個のアミノ酸である);
(2)9個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第2の領域(上記9個のアミノ酸の配列は、[V]-[K]-[M/L]-[A]-[L]-[D]-[I/V]-[E]-[I](配列番号15)である);および
(3)「m」個のアミノ酸のアミノ酸配列からなる第3の領域(「m」は0~11個のアミノ酸である)
からなるペプチドであって、最小9アミノ酸から最大20アミノ酸までの長さを有する上記ペプチド;上記ペプチドをコードする核酸;上記核酸を含む発現ベクター;上記核酸または上記発現ベクターを含むウイルス;または、治療有効量の上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記ウイルスを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を含む、癌の治療における使用のための組成物に関する。
【0054】
本明細書で使用される用語「癌」または「腫瘍」とは、制御されていない細胞分裂(または生存率もしくはアポトーシス抵抗性の増大)によって、および上記細胞が他の隣接組織に侵入し(浸潤)、リンパ管および血管を介して上記細胞が通常存在しない身体の他の領域に広がり(転移)、血流を介して循環し、次いで身体の他の場所の正常組織に侵入する能力によって特徴づけられる疾患を指す。腫瘍は、浸潤および転移によって広がることができるか否かに応じて、良性または悪性のいずれかに分類される:良性腫瘍は、浸潤または転移によって広がることができない腫瘍、すなわち、局所的にしか増殖しない腫瘍であり;一方、悪性腫瘍は、浸潤および転移によって広がることができる腫瘍である。癌に関連することが知られている生物学的プロセスには、血管新生、免疫細胞浸潤、細胞遊走および転移が含まれる。癌という用語には、肺癌、肉腫、悪性黒色腫、胸膜中皮腫、膀胱癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肝細胞腫、乳癌、結腸直腸癌、腎癌、食道癌、腎上部癌(suprarenal cancer)、耳下腺癌、頭頸部癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、肝癌、中皮腫、多発性骨髄腫、白血病、およびリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態では、癌は、リンパ性癌または骨髄性癌である。好ましい実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。別の好ましい実施形態では、癌は白血病である。さらに別の好ましい実施形態では、癌はリンパ腫である。別の特定の実施形態では、癌は固形腫瘍である。
【0055】
用語「治療」とは、本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載されるような臨床状態を終結させるか、予防するか、寛解させるか、または臨床状態に対する感受性を低下させることを目的とした、任意のタイプの療法を指す。好ましい実施形態において、治療という用語は、本明細書中で定義される障害または状態の予防的治療(すなわち、臨床状態に対する感受性を低下させる療法)に関する。したがって、「治療」、「治療すること」、およびそれらの等価語は、所望の薬理学的効果または生理学的効果を得ることを指し、ヒトを含めた哺乳動物における病的状態または障害の任意の治療を含む。その効果は、障害またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的であってもよく、かつ/あるいは、障害および/または障害に起因する有害作用の部分的または完全な治癒という点で治療的であってもよい。すなわち、「治療」には、(1)被験体において障害が発症または再発するのを予防すること、(2)障害を抑制すること、例えば、その進行を阻止すること、(3)例えば、失われたか欠損したかまたは欠陥のある機能を回復または修復するか、または非効率的なプロセスを刺激することによって、障害またはその症状の退縮をもたらすなど、宿主が障害またはその症状にもはや苦しまないように、障害または少なくともそれに関連する症状を停止または終結させること、あるいは(4)障害、またはそれに関連する症状を緩和、軽減、または寛解させること(ここで、寛解は、炎症、疼痛、または免疫不全などのパラメータの大きさを少なくとも縮小させることを指す広い意味で使用される)が含まれる。
【0056】
本発明による使用のための化合物または医薬組成物は、任意の適切な投与経路、例えば、非経口(例えば、筋肉内、静脈内、皮下、鼻腔など)、経腸(すなわち、経口、直腸など)、局所などによって被験体に投与され得る。特定の実施形態では、本発明の使用のための組成物は、腹腔内、くも膜下腔内(intratecal)、膀胱内、胸膜内、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔、または局所経路を介して投与される。固形腫瘍の場合、本発明のペプチドは、腫瘍内に直接投与され得る。別の特定の実施形態では、本発明による使用のための化合物または医薬組成物は、非経口的に、より好ましくは静脈内経路によって投与される。本発明の対応するポリヌクレオチドを含む本発明のベクターは、従来の方法によって被験体に直接投与され得る。あるいは、上記ベクターを用いて、細胞、例えば、ヒトを含めた哺乳動物細胞をエクスビボで形質転換、すなわちトランスフェクトまたは感染させてもよく、その後、人体または動物に移植して、所望の治療効果を得る。人体または動物への投与のために、上記細胞は、細胞生存率に悪影響を及ぼさない適切な培地中で調製される。
【0057】
用語「被験体」、「患者」または「個体」は、動物界の任意のメンバーを指すために本明細書中で互換的に使用され、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、トリ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類を含む、魚類、鳥類、爬虫類、両生類または哺乳類などの脊椎動物であってよい。好ましくは、被験体は哺乳類であり、より好ましくはヒトである。
【0058】
本明細書の他の箇所に記載されているすべての用語および実施形態は、本発明のこれらの態様にも等しく適用可能である。
【0059】
本発明のペプチドのプログラム細胞死誘導剤としての使用
最後の態様において、本発明は、プログラム細胞死誘導剤としての本発明によるペプチドの使用に関する。したがって、アポトーシス、ピロトーシスおよび/またはネクロトーシスによりプログラム細胞死を誘導することができる薬剤としての本発明によるペプチドの使用が企図される。特に、本発明のペプチドは、研究、診断および治療用途において、アポトーシス、ピロトーシスおよび/またはネクロトーシスによりインビトロでのプログラム細胞死を誘導するための試薬として有用であり得ることが想定される。本発明のさらなる態様は、本発明によるペプチドを細胞培養物にインビトロで投与する工程;細胞培養物においてアポトーシスを誘導する工程;および細胞培養物において誘導されたアポトーシスの進行を調べる工程を含む、アポトーシスを調べる方法である。
【0060】
本明細書の他の箇所に記載されているすべての用語および実施形態は、本発明のこれらの態様にも等しく適用可能である。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を以下の実施例を用いて説明するが、これらの実施例は単なる例示であって、本発明の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0062】
材料および方法
マウス
NOD、NOD-RAG2-/-またはC57BL/6マウスは、Lleida大学で、特定の病原体を含まない条件下で同胞交配により維持した。本研究は、バーゼル宣言の原則および実験動物の保護に関するカタロニア政府(Generalitat de Catalunya)の勧告に従って実施された。本プロトコルは、スペインのLleida大学の動物実験研究倫理委員会により承認された。プロトコル番号:CEEA02-04/16。
【0063】
ヒトPBMCおよび細胞株
健常血液ドナー由来のヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、Vall D’Hebron Research Institute(VHIR、バルセロナ)のJordi Barquinero博士から提供された。NALM-6(Bリンパ球白血病)は、Eulalia Genesca博士(Institute of Research of Leukemia Josep Carreras、Campus ICO-Germans Trias i Pujol、バダロナ)から提供され、HL-60(前骨髄球性細胞株)およびJURKAT(Tリンパ球)は、IRB Lleidaの細胞株細胞バンクから入手した。
【0064】
インビトロ培養
HL-60、JurkatおよびNALM-6細胞を、37℃で加湿した5%CO2雰囲気下、完全培地中で増殖および維持した。6週齢の雌のNODマウス、NOD.RAG2-/-マウスおよびC57Bl/6マウスから、脾臓を機械的に破壊して脾臓細胞を得、赤血球を0.87%塩化アンモニウム溶液に溶解した(Puertas,M.C.et.al.Phenotype and Functional Characteristics of Islet-Infiltrating B-Cells Suggest the Existence of Immune Regulatory Mechanisms in Islet Milieu.Diabetes 2007,56,940~949)。バフィーコートからヒト脾臓細胞を、Histopaque 1077(Histopaque(登録商標)-1077,10771 sigma)を用いた密度勾配により、他で記載されているように収集した(Johnston,L.,Harding,S.A.&La Flamme,A.C.Comparing methods for ex vivo characterization of human monocyte phenotypes and in vitro responses.Immunobiology 2015,220,1305~1310)。同じく別の箇所に記載されているように、大腿骨および脛骨を破壊し、骨髄から細胞を得た(Liu,X.&Quan,N.Immune Cell Isolation from Mouse Femur Bone Marrow.Bio-protocol 5,2015)。骨髄由来の単球および好中球は、Stemcellキット(続いて、19861および19762)を用いて精製し、キットプロトコルに従った。細胞を96ウェル組織培養プレート(初代細胞については4×105/ウェル、細胞株については1×105)中で、55μMの種々のペリフェリンペプチドを用いた完全培地中で、5%CO2下、37℃でインキュベートした。増殖アッセイのために、細胞をCFSE(C34554、life technologies)で標識した。1時間後、24時間後または48時間後に、細胞をフローサイトメトリーによって分析し、培養上清は使用するまで-80℃で保存した。
【0065】
フローサイトメトリー
細胞死およびアポトーシス分析のために、400.000個の初代細胞または100.000個の細胞株細胞を、96ウェルプレート中で、200μLの完全培地中、37℃および5%CO2下で24時間、55μMの種々のペプチドの非存在下または存在下でインキュベートした。1時間後、24時間後または48時間後に、アポトーシスを、CFBlue Annexin V Apoptosis Detection Kit with PI(ANXVKCFB-100T,Immunostep)により、キットプロトコルに従って測定した。切断型カスパーサ(caspasa)-3の細胞内染色のために、単核細胞を、FoxP3 Staining Buffer Set(00-5523-00,eBioscience)の製造業者の指示に従って透過処理し、染色のためにcleaved caspasa-3-Pacific Blue(8788S,Cell Signalling)を使用した。細胞懸濁液は、FACS CANTO II instrumentation(BD,Biosciences,San Jose,CA)およびFlowjo(バージョン8.7)ソフトウェアを用いたフローサイトメトリーによって分析した。
【0066】
サイトカインプロファイル解析
マウス増殖アッセイからの培養上清を回収し、IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ、IL-10、TNF-αおよびIL-17サイトカイン量を、CBAキット(560485,BD)を用いたフローサイトメトリーによって解析した。ヒト細胞培養物については、Legendplex Kitを使用し(BioLegend,740502)、サイトカインIL-12p70、TNF-α、IL-6、IL-4、IL-10、IL-1β、アルギナーゼ、IL-1st、IL-12p40、IL-23、IFN-γおよびIP-10を調べた。
【0067】
FLICAによる細胞内カスパーゼ染色
特異的カスパーゼの細胞内活性化を調べ、切断型カスパーサ-3抗体による以前に得られたフローサイトメトリー結果を確認するために、蛍光標識したカスパーゼ阻害剤(FLICA)プローブアッセイを行った。FLICA染色は、細胞を55μMの種々のペリフェリンペプチドと共に1時間または24時間インキュベートした後、他で記載されているように(Doitsh,G.et al.Cell death by pyroptosis drives CD4 T-cell depletion in HIV-1 infection.Nature 2014,505,509~514)、製造業者の指示に従って達成した。
【0068】
統計
解析には、PRISM Graphpadソフトウェアを使用した。統計は、Mann-Whitney U検定を用いて行った。すべての平均値±SDを示す。
【0069】
結果
ペプチド特性評価
ヒトタンパク質ペリフェリン(Ensembl ID番号:ENSG00000135406)の断片化により、前後のペプチドと5アミノ酸で重複する20アミノ酸ペプチドのペプチドライブラリーを得た。調べた全ての断片の中で、DIF-P(ペプチド78としても知られる、LLNVKMALDIEIATYRKLLE、配列番号19)が、炎症性サイトカインの産生(
図1)および細胞死(
図2)を誘導する能力から、目的の分子であると認定された。DIF-Pは、系統的に高度に保存されており、マウス、ヒト、ラット、ラクダ、ビーバーなどにおいて100%の配列相同性を有している。同様に、DIF-Pは、以下の種々のヒト中間径フィラメントにおいても高度に保存された配列である:
- ビメンチン(100%相同性);
- グリア線維酸性タンパク質-GFAP(95%相同性);
- デスミン(95%相同性);
- 神経フィラメント(重、中および軽)(95%相同性);
- αインターネキシン(95%相同性);
- 神経フィラメント66(95%相同性)。
ペプチド72は、対照ペプチドである(GGYQAGAARLEEELRQLKEE、配列番号75、刺激活性を有さないペリフェリン配列)。
【0070】
下記表1に示すように、マウス脾臓細胞を種々のペプチド断片と共に24時間培養し、細胞死(アポトーシスおよび/またはピロトーシス)のマーカーとしてアネキシンVの発現を分析した結果から、ペプチド断片の活性部分は、以下の9アミノ酸コア配列:VKMALDIEI(配列番号76)により構成されていることが示唆される。
【0071】
【0072】
この結果を考慮して、本発明者らは、この9アミノ酸コア配列が他の中間径フィラメントにも存在するか否かを検討した。表2に示した異なる位置のアミノ酸変異の解析に基づいて、
図4に示すようにコンセンサス配列を提案することができる。
【0073】
【0074】
【0075】
しかしながら、さらなる実験により、上記の9アミノ酸コア配列を細胞培養物に直接添加した場合、単独では活性がないことが実証された。ペリフェリン由来ペプチド、および、デスミンおよびグリア線維酸性タンパク質に対応するペプチド[Per9:VKMALDIEI(配列番号55);Des9:VKMALDVEI(配列番号56);FAP9:VKLALDIEI(配列番号51)]を用いて行った詳細分析の結果、陽性ではないことが判明し(すなわち、上記9アミノ酸ペプチドのいずれも、異なる白血球集団においてアネキシンVの発現を誘導することができなかった)、これらのペプチドのアミノ酸配列にかかわらず、そのN末端および/またはC末端に付加的なアミノ酸が存在することが、それらのペプチドの正しい機能性に必要であること(細胞膜にペプチドを固定し、細胞質へのペプチドの内在化を誘導するために)が示された。
【0076】
具体的には、各末端に最低3個のアミノ酸を付加することが、最も適した機能形態であると考えられ、特に、リジンまたはアルギニンなどの正荷電アミノ酸を相対的に多く含むアミノ酸組成を有する細胞透過性ペプチドをC末端に有する場合である。例えば、本発明者らは、ペプチド配列DIF-P3K、(ペプチド78-12-3Kとしても知られる)LLNVKMALDIEIKKK(配列番号20)およびDIF-P8R、(78-12-8Rとしても知られる)LLNVKMALDIEIRRRRRRRR(配列番号39)が、ヒト急性リンパ芽球性白血病のモデルであるNALM-6細胞の細胞培養において、わずか1時間後に22%および55%、または24時間後に40%および85%の細胞死(切断型カスパーゼ-3の発現によって決定される)を引き起こし得ることを観察した(
図5)。
【0077】
ヒトPBMC(末梢血単核細胞)の培養において、細胞培養物中の細胞溶解活性(アポトーシスおよび/またはピロトーシスの誘導)および炎症性サイトカインの産生を、ペプチドDIF-P、DIF-P3KおよびDIF-P8Rについて、陰性対照としてペプチド72を用いて分析した。アポトーシスおよび/またはピロトーシスの誘導、および細胞死は、フローサイトメトリー分析により、細胞膜中のアネキシンVの発現(存在)、およびヨウ化プロピジウムによる細胞核の染色をそれぞれ決定することによって検出した(
図6)。細胞ピロトーシスの存在は、刺激因子と共に1時間インキュベーション後のカスパーゼ-1発現の分析によって確認し(
図7)、一方、アポトーシス細胞死は、刺激因子と共に1時間インキュベーション後のカスパーゼ-3発現の分析によって明らかにしている(
図8)。炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1β、TNF-α、IL-12p40、IL-23、IP-10、IFN-γ)の産生は、刺激因子と共に24時間または48時間インキュベーション後に測定している(
図9)。
【0078】
得られた結果は、ペプチドDIF-PおよびDIF-P3KおよびDIF-P8Rが、アポトーシスおよび/またはピロトーシスを誘導する一方で、炎症性サイトカインの分泌も誘導することを示している。しかしながら、アポトーシスおよび/またはピロトーシスによる細胞死の誘導、およびサイトカイン分泌の誘導の程度は、ペプチドによって異なっている。したがって、ペプチドDIF-Pは、ペプチドDIF-P3KまたはDIF-P8Rと比較してアポトーシスによる細胞死の誘導が少ないが、ペプチドDIF-P3Kは、ペプチドDIF-Pと比較して有意なパーセンテージのピロトーシスを誘導し、ペプチドDIF-P8Rでは、ピロトーシスはほとんど誘導されない。対照的に、培養終了時に生き残っている白血球による炎症性サイトカインの有意な産生は、ペプチドDIF-Pに曝露された培養物で観察されるが、ペプチドDIF-P3Kは、サイトカイン分泌を誘導する効率が最も低い。一般に、ペプチドDIF-P3KおよびDIF-P8Rは、悪性細胞であっても迅速な細胞死を誘導するが、炎症性サイトカインの産生はペプチドDIF-Pよりも低い。
【0079】
マウスの脾臓細胞または骨髄細胞における細胞死の誘導および炎症性サイトカイン分泌の刺激
NOD.RAG-2-/-マウスは、Rag-2遺伝子(組換え活性化遺伝子-2)にホモ接合性の変異を有するため、免疫グロブリン遺伝子およびBCR/TCRのV(D)J領域を再編成することができない。その結果、これらのマウスではBリンパ球およびTリンパ球の成熟が行われず、したがって、これらの細胞が獲得免疫から完全に欠損している。このことは、これらのマウスの二次リンパ器官、例えば脾臓などにおいて、マクロファージおよびDCなどの免疫系の他の細胞亜集団の割合が、正常な状態(すなわち野生型マウス)で観察される割合と異なることを意味する。このため、これらの集団をより効率的に研究することが可能になる。
【0080】
ペプチドDIF-P、DIF-P3KおよびDIF-P8Rを用いたNOD.RAG-2-/-マウス脾臓細胞の24時間および48時間の培養で得られたデータによれば、培地へのIL-6およびIL-4などの炎症性サイトカインの放出は、ペプチドDIF-P8Rの場合に特に顕著であり、一方、ペプチドDIF-PおよびDIF-P3Kは、TNF-αの放出を誘導するのにより効率的であることが分かる(
図10)。しかしながら、ペプチドDIF-P、DIF-P3KおよびDIF-P8Rを用いたNOD.RAG-2-/-マウス骨髄細胞の24時間および48時間の培養では、ペプチドDIF-P3KおよびDIF-P8Rはいずれも、培地への炎症性サイトカインIL-6およびIL-4の放出を刺激するのに同様に効率的であるように見える(
図11)。興味深いことに、NODマウスの骨髄から単球および好中球を精製すると、培地への炎症性サイトカインIL-6およびIL-4の刺激は、ペプチドDIF-P3Kに関して、他の2つのペプチドと比較して、単球では著しく高く、好中球でもなおかなり高い(
図12)。細胞死に関しては、ペプチドDIF-P3KおよびDIF-P8Rのいずれも、骨髄細胞(
図13)、精製好中球(
図14)および単球(
図15)においてアポトーシスおよび/またはピロトーシスを誘導するのにペプチドDIF-Pよりも効率的である。
【0081】
本発明者らは、ペプチドDIF-PがBリンパ球、マクロファージ、およびDCの増殖を誘導する能力についても検討した。その結果、インビトロ培養において、ペプチドDIF-P(LLNVKMALDIEIATYRKLLE、配列番号19、すなわち目的の配列)と共に培養した細胞と、対照ペプチド(GGYQAGAARLEEELRQLKEE、配列番号75、すなわち、ペプチド72、刺激活性を有さないペリフェリン配列)と共に培養した細胞との間に増殖の差はなく、したがって、ペプチドDIF-Pは白血球増殖を刺激しないことがわかった(
図16)。
【0082】
他の系統および異なる種における細胞死の誘導
本発明のペプチドによる細胞死の誘導は、異なるマウス系統の細胞培養においても、または異なる種(すなわち、ニワトリ)に対応する細胞培養においても実証された。マウスB16F10(メラノーマ)およびP815(肥満細胞腫)細胞株は、DIF-P(LLNVKMALDIEIATYRKLLE、配列番号19);DIF-P3K(LLNVKMALDIEIKKK、配列番号20);DIF-P8R(LLNVKMALDIEIRRRRRRRR;配列番号39);およびペプチド72(GGYQAGAARLEEELRQLKEE;配列番号75)と共に、または対照として刺激なしで、24時間培養した(
図17)。ニワトリ脾臓細胞は、DIF-P(LLNVKMALDIEIATYRKLLE、配列番号19);DIF-P3K(LLNVKMALDIEIKKK、配列番号20);およびペプチド72(GGYQAGAARLEEELRQLKEE;配列番号75)と共に、または刺激なしで、24時間または48時間培養した(
図18)。これらの結果から、本発明のペプチドは、一般に、広範な後生動物細胞(すなわち、脊椎動物細胞)において細胞死を誘導する能力があることが示される。
【0083】
ヒト細胞株における細胞死の誘導
ヒト白血病の異なる細胞株由来の細胞において、ペプチドDIF-P、DIF-P3KおよびDIF-P8Rがアポトーシス、ピロトーシスおよび/またはネクローシスを誘導する能力を分析することで、細胞死の研究を補完する。細胞株は以下の通りである:
i.Jurkat T細胞:T細胞白血病モデル;
ii.HL-60細胞:急性骨髄性白血病(AML)モデル;
iii.NALM-6細胞:急性リンパ芽球性白血病モデル(ALL)。
【0084】
図19は、Jurkat-T細胞において、ペプチドDIF-P、DIF-P3KおよびDIF-P8Rを培養物に添加後、1時間、24時間および48時間の時点での死亡率パーセンテージをフローサイトメトリーによって示している。Jurkat-T細胞において、ペプチドDIF-Pは、38%(1時間)、26%(24時間)および20%(48時間)の細胞死を誘導し、一方、ペプチドDIF-P3Kは、より高いパーセンテージの細胞死(44%(1時間)、58%(24時間)および45%(48時間))を誘導し、ペプチドDIF-P8Rは、最も高いパーセンテージの細胞死(57%(1時間)、71%(24時間)および77%(48時間))を誘導している。
【0085】
図20は、HL-60細胞において、ペプチドDIF-P、DIF-P3KおよびDIF-P8Rを培養物に添加後、1時間、24時間および48時間の時点での死亡率パーセンテージをフローサイトメトリーによって示している。HL-60細胞において、ペプチドDIF-Pは、28%(1時間)の死亡率を誘導しているが、死細胞の総数は24時間(18%)および48時間(12%)でより低く、これはおそらく細胞増殖によるものである。ペプチドDIF-P3Kは、より高いパーセンテージの細胞死(41%(1時間)、53%(24時間)および57%(48時間))を誘導し、ペプチドDIF-P8Rは、最も高いパーセンテージの細胞死(85%(1時間)、75%(24時間)および78%(48時間))を誘導している。
【0086】
図21は、NALM-6細胞において、ペプチドDIF-P、DIF-P3KおよびDIF-P8Rを培養物に添加後、1時間、24時間および48時間の時点での死亡率をフローサイトメトリーによって示している。NALM-6細胞において、ペプチドDIF-Pは、14%(1時間)、12%(24時間)および15%(48時間)の細胞死を誘導し、一方、ペプチドDIF-P3Kは、36%(1時間)、91%(24時間)および96%(48時間)の細胞死を誘導し、ペプチドDIF-P8Rは、85%(1時間)、81%(24時間)および80%(48時間)の細胞死を誘導している。
【0087】
上記ペプチドが細胞死を誘導する能力は、ヒトメラノーマの細胞株(A375細胞)、および、HEK293、HeLaおよびRD細胞などの細胞株でも実証されている。
【0088】
図22は、以下のペプチドと共に24時間培養後のA375細胞における切断型カスパーゼ-3の発現を示している:DIF-P(LLNVKMALDIEIATYRKLLE、配列番号19);DIF-P3K(LLNVKMALDIEIKKK、配列番号20);DIF-P8R(LLNVKMALDIEIRRRRRRRR;配列番号39);およびペプチド72(GGYQAGAARLEEELRQLKEE;配列番号75)。
【0089】
図23は、以下のペプチドと共に1時間培養後の細胞株HEK293、HeLaおよびRD細胞についての細胞死およびアポトーシスを示している:KRT18-8R(LLNIKVKLEAEIRRRRRRRR、配列番号84)、KRT17-8R(LLDVKTRLEQEIRRRRRRRR、配列番号85)、DES-8R(LLNVKMALDVEIRRRRRRRR、配列番号86)、DIF-P8R(LLNVKMALDIEIRRRRRRRR;配列番号39);ペプチド72-8R(GGYQAGAARLEEELRQLKEERRRRRRRR;配列番号76);およびペプチド72(GGYQAGAARLEEELRQLKEE;配列番号75)。
【配列表】
【国際調査報告】