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特表2022-545771体内で安全量の一酸化窒素を産生する薬物組成物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】体内で安全量の一酸化窒素を産生する薬物組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20221024BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K31/375
A61K31/706
A61K31/198
A61K45/00
A61K38/16 100
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/12
A61K39/39
A61P37/04
A61P31/12
A61P31/16
A61P31/22
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506932
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2020107409
(87)【国際公開番号】W WO2021023263
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】201910719544.6
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522045899
【氏名又は名称】リェンユンガン ジンカン ヘキシン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヨンジ
(72)【発明者】
【氏名】リアン ゼンリン
(72)【発明者】
【氏名】リウ カン
(72)【発明者】
【氏名】グ ルイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA24
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC04
4C076CC26
4C076CC31
4C076CC35
4C084AA01
4C084AA02
4C084DA30
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA28
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB22
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC75
4C085AA38
4C085BB16
4C085EE06
4C085FF12
4C085FF13
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086CB09
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB22
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA28
4C206HA32
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA48
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA72
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB22
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
NO弱毒化剤、任意のNO増量剤及び一酸化窒素合成酵素誘導剤を含む、体内で安全量の一酸化窒素を産生する薬物組成物及びその使用である。汎用性が強く病原微生物感染を極めて効果的に治療する薬物組成物を提供する。5-メチルテトラヒドロ葉酸、NMN及びデヒドロアスコルビン酸については新たな薬用活性が発見され、病原体感染による免疫系に対して多種の活性作用を有し、ウイルス感染及びそのほかの病原体感染による疾患を治療又は予防するために用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物体内で安全量の一酸化窒素を産生するための薬物組成物であって、NO弱毒化剤と、任意のNO増量剤とを含み、前記NO弱毒化剤が、投薬量で過酸化亜硝酸又はその塩(PON)を除去する抗酸化物質から選択され、好ましくは、前記弱毒化剤が、10μmol/L以上の濃度で、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を抑制しない、例えば、LSPにより誘導されるマクロファージにおけるiNOSの発現を抑制しない、薬物組成物。
【請求項2】
前記NO弱毒化剤は、以下の物質:5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩、デヒドロアスコルビン酸、及びNMNのうちの一つ又は複数から選択される、請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項3】
前記NO増量剤は、酵素由来NO基質から選択され、例えば、前記酵素由来NO基質は、L-アルギニン若しくはその塩、シトルリン若しくはその塩、又はアルギニン活性化添加剤から選択される、請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項4】
5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩、及びアルギニン又はその塩を含み、植物性血球凝集素をさらに含んでもよい、請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項5】
前記5-メチルテトラヒドロ葉酸の一回量が15mg以上であり、前記アルギニンの一回量が50mg以上である、請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項6】
前記組成物が、5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩と、ビタミンCとを含み、好ましくは、5-メチルテトラヒドロ葉酸対ビタミンCの質量比が、2:1~5:1である、請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項7】
活性成分と薬学的に許容できる補助剤とを含み、例えば、前記薬物製剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、局所軟膏又はスプレイ剤から選択される、請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物を含む、免疫アジュバント。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の薬物組成物の、病原微生物感染により引き起こされる疾患の予防又は治療のための薬物の調製のための使用であって、好ましくは、前記病原微生物感染がウイルス感染である、使用。
【請求項10】
前記薬物組成物が、ウイルスに感染した宿主のT細胞、特にCD4及びCD8T細胞のレベルを高め、炎症因子の発現を低下させ、それによって抗ウイルス感染に用いることができる、請求項9に記載の薬物組成物の使用。
【請求項11】
前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、及びコロナウイルス、例えばCOVID-19である、請求項9に記載の薬物組成物の使用。
【請求項12】
前記組成物が、感染により引き起こされる膿毒症、全身性炎症反応症候群を予防及び治療するための薬物を調製するために使用される、請求項9に記載の薬物組成物の使用。
【請求項13】
前記膿毒症が、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌、インフルエンザウイルス感染により引き起こされる、請求項12に記載の薬物組成物の使用。
【請求項14】
前記組成物が、非感染性原因により引き起こされる全身性炎症反応症候群、膿毒症を治療するための薬物を調製するために使用される、請求項9に記載の薬物組成物の使用。
【請求項15】
前記組成物が、請求項6に記載のものである、請求項14に記載の薬物組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年8月6日に中国国家知識産権局に出願された特許番号が201910719544.6で、発明の名称が「安全な一酸化窒素組成物及びその使用」である先行出願の優先権を主張し、上述した先行出願の内容のすべてが援用により本願に組み込まれる。
本発明は、医薬の分野に属し、具体的には、安全で十分量の一酸化窒素を提供して疾患の予防と治療に使用できる、動物体内で一酸化窒素を産生できる薬物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の歴史では、新しいウイルスが絶えずに出てきて、既知のウイルスが変異し続けた。新しい伝染性ウイルスに対して、人体内では対応する特異性抗体がないため、準周期的に大規模の感染が発生した。人間のいくつかのインフルエンザウイルスパンデミックで、多数の人間の命を奪ってしまった。2009年、米国とメキシコではH1N1インフルエンザウイルスが流行し、2020年、全世界でCOVID-19ウイルスが流行してきた。個体によっては、同じインフルエンザウイルスに感染するが、結果が異なり、ある患者が命を失うのに対して、ある患者はほとんど症状がない。ウイルスの毒力が異なる可能性があるが、宿主の免疫状態も重要である。
【0003】
インフルエンザウイルス感染を予防及び治療する必要があるとき、抗体が最適な手段であるが、インフルエンザウイルスの発展が速く、季節性インフルエンザウイルスに対する抗体の選択的圧力によりエスケープ変異体が出てきて、これらの変異体により早期菌株免疫コミュニティで流行病を引き起こしてしまい、これは季節性インフルエンザワクチンを常に更新する必要がある原因となる。残念ながら、抗体反応の特異性もインフルエンザパンデミックの元となる。前世紀では、1918、1957、1968、2009、2001及び2020年にそれぞれA(H1N1)、A(H2N2)、A(H3N2)、A(H1N1)、SARSコロナウイルス及びCOVID-19を含むインフルエンザウイルス又はコロナウイルスが複数回大流行した。面白いのは、上述したインフルエンザウイルス感染の流行中、宿主の重篤度は巨大の差がある。ある学者によると、免疫細胞のうち、特にT細胞の感染と活性化の差異により、インフルエンザウイルスに抵抗する能力に差異があることが証明された[Kelso,Anne.CD4+T cells limit the damage in influenza[J].Nature Medicine,2012,18(2):200-202.]。
【0004】
T細胞は交差保護免疫を媒介することができ、ウイルス感染を予防できないが、感染した上皮細胞又は抗原提示細胞の表面上のヒト白血球抗原(HLA)分子と複合するウイルスタンパク質(エピトープ)断片を認識することにより、感染した細胞を感知できる証拠がある。T細胞がウイルスの内部保存タンパク質に由来するエピトープを優先的に認識するので、交差保護免疫は、予め存在する細胞毒性CD8+T細胞によるものと考えられ、これらの細胞は、これらの保存エピトープを提示するウイルス感染細胞を殺し、抗体保護の欠乏によるパンデミックウイルス感染の時間及び重篤度を低減する。
【0005】
抗生物質の発見のため、細菌感染に対して良好な臨床的治療手段があるが、ウイルスに対しては、いまだに良好な治療手段がない。現在、ウイルスに対する治療薬物は主として、M2イオンチャネル遮断薬とノイラミニダーゼ阻害薬の二つに分類され、M2イオンチャネル遮断薬は、全体的なウイルス抵抗効果及び神経系に対する副作用があるので、臨床的応用が理想的ではない。ノイラミニダーゼ阻害薬は、ウイルスを誘導できるが、効果が弱い。近年、鳥インフルエンザウイルス、アフリカ豚熱ウイルス、SARSウイルスといった大量のウイルスが爆発的に流行し、これらのウイルスの毒物学的効果が非常に深刻であり、患者又は患畜に対して医師でも良好な治療手段を与えられない。新しいウイルスに対して良好な治療手段がないだけでなく、デングウイルス、エイズウイルスなどを含む、長期間存在した多くのウイルスに対しても対応方法はない。ウイルスを治療する最適な方案は予防、つまり、ワクチンであり、人体の免疫系によりウイルスを予防する効果を達成する。以上の事実も、ウイルスの治療に対して、抗生物質といった病原体を直接殺滅又は抑制する薬物を開発するという構想は実に労力が倍なのに成果が半分であると証明された。
【0006】
抗ウイルス薬物の開発には新たな構想が必要である。ウイルス感染を治療する効果を達成するためのヒト免疫系の使用は、特にNO及び免疫に関する薬物にとって、汎用性が強い抗ウイルス効果を実現するために重要な方向である。
【0007】
一酸化窒素ガスは、無色無臭で、水、アルコール類、脂肪に可溶である。前世紀の80年代以前、一酸化窒素は通常で不要な化学ガスにすぎず、自動車排気及びある化学過程のガス汚染物に存在することしか知られていない。1980年より27年の前、内皮細胞から産生される物質(「内皮由来弛緩因子」と呼ばれる)が発見され、1986年に、Ignarroが提出した初めての実験論文から、内皮由来弛緩因子(EDRF)が一酸化窒素であると主張した。これらの成果により、NOに対する注目及び検討に巨大な興味を誘発された。NOは細胞に迅速に出入りし、シグナルを伝達して血管拡張、神経伝達、脳の発育、ひいては学習及び記憶を調節し、免疫を強化して一部の外来微生物を殺滅することができ、血圧の低下や卒中、心臓病、腫瘍、老年期痴呆の予防ができる。
【0008】
NOは、L-アルギニンから一酸化窒素合成酵素(NOS)の触媒でNADPHにより還元されたものであり、一酸化窒素合成酵素は、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)に分けられる。それらはそれぞれ、ヒトの異なる組織細胞において、それぞれ心脳血管系の調節、免疫調節、神経系の調節に関与する。
【0009】
免疫に関与するNOは、様々な免疫細胞(樹状細胞、NK細胞、マクロファージ、好酸球および好中球)から産生され、iNOSが発現される場合、多量のNOが発生し、ヒトの能動的防御機構となる。NOがウイルスのコピーを抑制できる証拠があり、関連機構には、ウイルススパイクタンパク質のパルミトイル化の低下、ウイルスプロテアーゼの抑制、ウイルスタンパク質及び核酸の合成の阻害が含まれる。
【0010】
一酸化窒素合成酵素はダイマーであり、酸化条件下で脱共役し、本来NOを合成する反応経路を変換させしてO2-、NO3-(PON)などの活性酸素ラジカル(ROS)を生成する。また、NO自身も活性酸素ラジカル(ROS)と反応して活性窒素(RNS)を生成できる。
【0011】
NOは体内で超酸化物アニオンと迅速に反応して過酸化亜硝酸を生成する。酸性条件下で、迅速に分解して水酸基ラジカルを産生する。過酸化亜硝酸は酸化性が極めて強い物質であり、タンパク質のニトロ化や、DNA鎖の破断に繋がる。様々な原因で、生体内で、活性酸素及び活性窒素を同時に含む多くの酸化性のラジカルが産生される。これらのラジカルの存在により、過去のバランスをある程度破壊した。これらのラジカルのうち、最も大きな影響を与えるのは、過酸化亜硝酸アニオン(PON)である。その生成経路としては、主に一酸化窒素と超酸化物アニオンとの反応により得られる。
【0012】
PONは、人体内での作用がほとんどネガティブであり、以下を含むがそれに限らない。
1.酸化作用:PON自身は強い酸化剤であり、酸性条件下で迅速に二酸化窒素と水酸基ラジカルに分解される。水酸基ラジカルはより強い酸化剤であり、ほとんどすべての有機物を酸化分解できる。生体内では、PONは多くの酵素、タンパク質、サイトカインなどの鉄/硫黄中心、メルカプト、脂質などと反応して酸化ダメージを引き起こし、細胞機能の損傷及びアポトーシスをきたし、さらに、グルタチオンによるラジカルの除去機構を低下させ、悪循環となる。PON酸化作用により、例えば急性慢性炎症、敗血症、外傷性局所的虚血、動脈硬化、神経再生性失調などの各種の疾患を引き起こす可能性がある。
2.ニトロ化作用:PONはタンパク質におけるチロシンと反応してニトロチロシンを生成してタンパク質の機能に影響することができ、DNA破断などの結果をきたす。
3.エネルギー代謝に対する影響:チモプロテインは酸化作用及びニトロ化作用により活性が低下する。例えばミトコンドリアのATP合成酵素、アコニターゼの活性が抑制され、エネルギーが減少する。PONはポリADP-リボース合成酵素の強い活性化物である。当該酵素は、活性化されると無効な修復循環を開始させ、エネルギーセルが迅速に枯渇する。細胞代謝及び膜の完全性が破壊され、細胞死を引き起こす。
4.カルシウム輸送の干渉:Na+/Ca2+交換タンパク質のメルカプトが酸化され、機能障害が起こり、細胞内のカルシウム過負荷に繋がり、機能障害をきたす。
もちろん、耐用量のPONも、ウイルス、病菌、病原虫、癌細胞などによる人体に対する危害に抵抗するといったポジティブな作用を示す。
【0013】
1992年のスター分子であるNOは、実際に生体内の所々に存在する。NOは、免疫系のメッセンジャーであり、血流の調節、神経伝達、脳の発育などで重要な役割を果たし、病菌、ウイルス、病原虫、癌細胞を殺滅することができ、非特異的免疫に非常に重要な組成部分である。NOで殺滅された外来微生物又は異常細胞が自己分解してから多量の抗原物質を放出し、特異的免疫を開始させる。NOもまた、生体にインターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子TNF、コロニー刺激因子CSF等の、多くのサイトカインを放出させ、免疫応答を調節する。
【0014】
NOは超酸化物アニオンなどのラジカルと反応して過酸化亜硝酸塩(PON)が生成され、酸化性が極めて強く、特別なニトロ化能力を有し、一定の程度まで堆積すると炎症を起こしてしまい、病理過程に影響するサイトカインを放出する。PONはタンパク質ニトロ化によりタンパク質機能を破壊し、DNAを破断し、ウイルスの変異を促進し、免疫バランスを破壊し、癌原遺伝子を活性化し、癌を誘発する。
【0015】
NOは免疫調節に関与する。急性炎症反応は複雑で高度に調和したイベント配列であり、分子、細胞及び生理学的変化に関し、宿主が感染に対する反応が失調すると、さらに異常免疫応答が発生し、臓器機能障害の症候群、すなわち膿毒症(Sepsis)が発生する。膿毒症の治療の研究は、人間が病態生理学及び宿主-微生物の相互作用に対する理解の進歩を反映する。初期に微生物及びその病原性が注目され、20世紀80年代に分子クローンの実施及びヒト炎症遺伝子のシーケンシングに伴い、膿毒症の研究では、宿主の侵入病原体に対する反応により注目してきた。
【0016】
2016年の膿毒症3の国際会議(The Third International Consensus Definitions for Sepsis)によると、膿毒症は、宿主の感染に対する反応失調による生命を脅かす臓器機能障害と定義され、その臨床的症状は発熱、頻呼吸、意識レベル変化及び低血圧であり、そして例えば肺感染による肺炎、腎臓感染、尿路感染など、当該疾患の関連症状を伴う。
【0017】
膿毒症の由来、発展に対する認識は従来より大幅に高まっているが、膿毒症の死亡率は依然として非常に高く、[Hotchkiss R S,Moldawer L L、Opal S M、et al.Sepsis and septic shock[J].Nature reviews Disease primers、2016、2(1):1-21.]という文章によると、高収入国家のデータに対する初期推定から、全世界では、毎年3150万例の膿毒症及び1940万例の重症膿毒症が発生し、毎年530万人が死亡する可能性があることが示される。多くの場合に、特に慢性疾患(例えば癌症、うっ血性心不全及び慢性閉塞性肺疾患)に罹患している患者では、公式な死亡記録は、一般的に直接的な死亡原因(膿毒症)ではなく、潜在的疾患を報告するので、膿毒症の死亡率が顕著に少なく見積もられている可能性がある。また、関連する発症率及び低収入、中収入国家での膿毒症の死亡率記録が欠けているので、これらの値は推定にすぎない。
【0018】
炎症は、侵入病原体に対する宿主の防御反応であるので、抗生物質薬物又は抗ウイルス薬物を用いて病原体抗原の外来刺激を減少させることは、臨床上優先的に採用される病原体を除去する治療方案である。ウイルス感染性疾患が免疫失調段階に進行すると、重篤な炎症が起こってしまう。炎症を停止させる又は炎症に抵抗するいくつかの療法により、炎症領域のマクロファージ数が減少されるので、免疫応答を向上させるか低下させるかは常に決められにくい。よく見られる抗炎症薬物には、非ステロイド性抗炎症薬、糖質コルチコイドなどがある。重症炎症が発生したとき、一般的には臨床上糖質コルチコイドを用いるが、膿毒症に対しては、コルチゾールの使用は実質的な利益がない。ランダム対照試験[Annane D、Cariou A、Maxime V、et al.Corticosteroid treatment and intensive insulin therapy for septic shock in adults:a randomized controlled trial[J].Jama、2010、303(4):341-348.]から、フルドロコルチゾンにより膿毒症患者の死亡率を低下させることはないことが示される。その後の抽出分析[Wang C、Sun J、Zheng J、et al.Low-dose hydrocortisone therapy attenuates septic shock in adult patients but does not reduce 28-day mortality:a meta-analysis of randomized controlled trials[J].Anesthesia & Analgesia、2014、118(2):346-357.]からも、ヒドロコルチゾンにより重症感染患者又は膿毒症の死亡率を低下させることができないことが示される。従って、現在臨床的に重症感染患者にステロイドを使用することは争議がある。
【0019】
過去の20年内では、ビタミンCと膿毒症との関係を明らかにする試みが行われている。膿毒症患者は一般に血清ビタミンCレベルが非常に低く、重症患者の低いビタミンCレベルは血管加圧、腎臓損傷、多臓器機能障害及び死亡率の増加に関すると考えられる。ビタミンCの作用機構に対する研究により、抗酸化、抗炎症、マイクロ循環、抗血栓、副腎感受性の増加、創傷治癒促進などを含む、膿毒症に作用する可能性がある多種の機構が発見された。しかしながら、意外にも、ビタミンCの臨床使用には顕著な効果が見られず、[常雪●(●は女へんに尼)、李敏、張正馨他 ビタミンCの膿毒症及び膿毒症性ショック患者の治療における効果のMeta分析[J].中華危重症医学雑誌(電子版)、2019、012(001):37-41.]による統計から、ビタミンCの静脈注入により、膿毒症及び膿毒症性ショック患者の病死率を改善することができない。
【0020】
5-メチルテトラヒドロ葉酸は、人体での葉酸の活性形態であり、直接的な抗ウイルス作用が見られない。現在、葉酸とウイルスとの直接関係は主に葉酸受容体α(FRalpha)にあり、エボラなどを含むウイルスが細胞に侵入することを媒介する因子と述べられた。5-メチルテトラヒドロ葉酸は、直接的な抗酸化作用を有し、ジヒドロ葉酸還元酵素の作用により、BH2からBH4への変換を促進し、BH4がeNOSに必要な補助因子であることは公知である。5-メチルテトラヒドロ葉酸はeNOSを促進することにより、心血管疾患の予防及び保護に有利であることは既に証明されたが、先天性免疫活性化の条件下で5-メチルテトラヒドロ葉酸のiNOS及びマクロファージによるNO分泌に対する影響について研究や報告がほとんどない。
【0021】
L-アルギニンはNOの内因性合成の前駆体であり、一酸化窒素合成酵素の作用で反応してNO及びL-シトルリンを生成し、L-アルギニンのわずかの一部がこのような経路を経て体内で代謝されるが、急性炎症の場合には、マクロファージのiNOSから産生されるNOはヒトでの通常量を遥かに超えてしまう。L-アルギニンは非必須アミノ酸であり、プロリン、グルタミン又はグルタミン酸の代謝経路で内因性合成され(全身タンパク質分解過程による)、腎臓では、シトルリンは、アルギニンコハク酸シンターゼ及びアルギニンコハク酸分解酵素の作用によりアルギニンに変換されるが、アルギニンの内因性合成が生体の代謝ニーをに満たせないと、異なる病態生理条件下で非常に重要となる。
【発明の概要】
【0022】
本発明によれば、5-メチルテトラヒドロ葉酸が「薬理」濃度下で「栄養支持」の低濃度と異なる生理学的活性を有し、5-メチルテトラヒドロ葉酸を含有する組成物はウイルス感染を治療する作用を有することが見出され、細菌、真菌などを含む異なる病原体のいずれに対しても治療効果があることがさらに見出された。本発明によれば、デヒドロアスコルビン酸及びNMNの活性が5-メチルテトラヒドロ葉酸と類似することがさらに見出された。
【0023】
以上の発見に基づき、本発明は、以下の技術方案を提供する。
動物体内で安全量の一酸化窒素を産生する、すなわち体内での活性窒素の割合を制御又は低減することができる薬物組成物であって、体内で産生される一酸化窒素を疾患の予防及び治療に必要な量にすることができる、薬物組成物。
【0024】
本発明にかかる薬物組成物は、投薬量で過酸化亜硝酸又はその塩(PON)を除去する抗酸化物質から選択されるNO弱毒化剤と、任意のNO増量剤を含む。好ましくは、前記弱毒化剤は、10μmol/L以上の濃度で誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を抑制せず、例えばLSP誘導によるマクロファージにおけるiNOSの発現を抑制しない。
【0025】
本発明にかかるNO弱毒化剤は、iNOS合成酵素の活性化に影響を与えず、かつ過酸化亜硝酸塩を選択的にクエンチする抗酸化物質から選択される。例としては、5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩、デヒドロアスコルビン酸、NMNから選択される1つ又は複数である。
【0026】
本発明にかかるNO増量剤は、L-アルギニン又はその塩、シトルリン又はその塩、或いはアルギニン活性化添加剤から選択される酵素由来NO基質から選択される。
【0027】
本発明にかかる薬物組成物は、5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩及びアルギニン又はその塩を含む。さらには、植物性血球凝集素を含んでもよい。
【0028】
本発明にかかる薬物組成物において、前記5-メチルテトラヒドロ葉酸は一回量で15mg以上であり、前記アルギニンは一回量で50mgである。
【0029】
本発明は、病原微生物感染による疾患を予防又は治療する薬物を調製するための、上述した薬物組成物の使用をさらに提供する。好ましくは、前記病原微生物感染はウイルス感染である。
【0030】
本発明にかかる薬物組成物の使用によれば、ウイルスに感染した宿主のT細胞、特にCD4及びCD8T細胞のレベルを高め、炎症因子の発現を低下させ、抗ウイルス感染に用いることができる。
【0031】
本発明にかかる薬物組成物の使用によれば、前記ウイルスがインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、アフリカ豚熱ウイルス、COVID-19のようなコロナウイルスである。
【0032】
本発明にかかる薬物組成物の使用によれば、前記組成物は感染による膿毒症、全身性炎症反応症候群を予防及び治療する薬物を調製するために用いられる。
【0033】
本発明にかかる薬物組成物によれば、5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩及びビタミンCを含む。好ましくは、前記5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムとビタミンCとの質量比が2:1~5:1であり、例えば3:1、4:1である。
【0034】
本発明は、非感染性原因による全身性炎症反応症候群、膿毒症を治療する薬物を調製するための、上述した薬物組成物の使用をさらに提供する。
【0035】
本発明にかかる薬物組成物の使用によれば、前記膿毒症は、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌、インフルエンザウイルス感染によるものである。
【0036】
本発明にかかる薬物組成物よれば、活性成分及び薬学的に許容できる副原料から調整されてもよく、例えば、前記薬物製剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、外用ハップ剤(局所軟膏)又はスプレイ剤から選択される。
【0037】
本発明にかかる薬物組成物によれば、免疫アジュバントである。
【0038】
本発明において、安全量の一酸化窒素とは、一酸化窒素を用いて疾患を予防及び治療する安全欲求を満たせるように、一酸化窒素のうち、過酸化亜硝酸をはじめた毒性ラジカル、活性窒素へ変換する割合が制御可能である。これらのラジカルは、体内で物質及びエネルギーの代謝に大きく影響し、細胞及び組織の機能に影響し、さらに細胞及び組織の機能を破壊し、遺伝子突然変異の確率を著しく向上させ、多くの疾患の発生の原因となる。
【0039】
本発明の組成物は、毒性ラジカルを制御することにより、疾患を予防及び治療するニーズを満たせるまで一酸化窒素の産生量を効果的に向上させる。
【0040】
本発明において、安全量の一酸化窒素を産生する薬物組成物は、多種の疾患の治療に応用する見通しがある。本発明の組成物は、T細胞の増殖及び活性化を促進し、感染過程での宿主のCD4及びCD8細胞のレベルを高め、CD4及びCD8 T細胞のアポトーシスを遮断し、宿主の生存率を著しく向上させ、感染過程での炎症反応を改善することができる。
【0041】
本発明では、インフルエンザウイルスに感染したマウスに5-メチルテトラヒドロ葉酸、アルギニンを含有する組成物を投与することにより、治癒割合が高い結果が得られ、かつ病気の経過が顕著に短縮される。
【0042】
葉酸の機能として主に炭素移動であり、DNAのメチル化や、プリン及びチミンの合成に関与し、さらにDNA及びRNAを合成する。ウイルスは、DNA又はRNAの構造で、宿主細胞で大量にコピーし、十分な葉酸を供給することによりウイルスのコピーと伝播に寄与すべきであると考えられるが、実験の結果から、意外にも5-メチルテトラヒドロ葉酸は一酸化窒素増量剤と協同して逆にウイルスを抑制する。本発明は、5-メチルテトラヒドロ葉酸とアルギニンなどの組成物を、微生物感染、特にウイルス感染に応用することをはじめて提案する。
【0043】
iNOSは、免疫系でNOを生成するキー酵素であり、従来技術より、当該酵素の酸化によりダイマーの脱共役を引き起こし、NOを生成する反応経路を、ラジカル、活性窒素を生成する反応経路へ変換させることが知られている。5-メチルテトラヒドロ葉酸は内因性抗酸化剤であり、NADPHを活性化させることができ、良好な抗酸化効果を達成し、直接的な抗酸化作用を有する。本発明の組成物によれば、病原体に感染した生体では、NOを産生するとともに、活性酸素(ROS)及び活性窒素(RNS)を含む生体に不利なラジカルを産生しないようにすることができる。本発明により、5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩、デヒドロアスコルビン酸、NMNを含む抗酸化剤が、iNOS発現の機能に影響を与えずに、過酸化亜硝酸塩を除去することができる。
【0044】
本発明は、体内で十分量の一酸化窒素を産生する方法を提供する。本発明の組成物は、過酸化亜硝酸塩の生成を抑制し、かつ一酸化窒素合成酵素の活性を抑制せずに向上を誘導し、さらに酵素由来一酸化窒素基質であるアルギニン及びその前駆体を増加させることにより、体内で十分量の一酸化窒素を産生させる。
【0045】
本発明において、十分量という概念は、疾患の予防及び治療に必要な一酸化窒素の最小投与量を達成したり超えたりすることをいう。
【0046】
本発明は、十分量の一酸化窒素を提供するために、系統的な方案を提供し、必要に応じて選択して最適化することができる。一酸化窒素の産生量を高めるために、組成物には、植物性血球凝集素のような一酸化窒素合成酵素誘導剤を使用してもよい。植物性血球凝集素PHAは、有糸分裂促進因子であり、効率的で安全な一酸化窒素合成酵素誘導剤であり、マメ科植物から抽出する技術により既に大規模生産することができた。本発明の他の目的は、上述した安全な一酸化窒素組成物の使用を多種提供する。
【0047】
本発明の組成物における活性成分には、5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩が含まれる。前記塩はカルシウム塩、アルギニン塩、グルコサミン塩、ナトリウム塩から選択されるが、それらに限らない。
【0048】
一つの好ましい実施形態において、本発明における一回量あたりの組成物における5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩の用量が15mg以上であり、好ましくは25mg以上、より好ましくは50~1000ミリグラムである。
【0049】
ある実施形態において、組成物には、5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩、或いはデヒドロアスコルビン酸又はNMN、及びアルギニンが含まれる。一回量あたりの組成物に含まれる5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩の量が15mg(5-メチルテトラヒドロ葉酸換算)以上であり、好ましくは25mg以上であり、好ましくは50~1000ミリグラムであり、より好ましくは50~500ミリグラムである。例としては、アルギニンの量が50~5000ミリグラムであり、好ましくは100~1000ミリグラムである。
【0050】
ある実施形態において、組成物には、5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩、アルギニン及び植物性血球凝集素PHAが含まれる。単位用量あたりの組成物に含まれる5-メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩の用量が15mg以上であり、好ましくは25mg以上であり、好ましくは50~1000ミリグラムであり、より好ましくは50~500ミリグラムである。単位用量あたりの組成物におけるアルギニンの量が50~5000ミリグラムであり、好ましくは100~1000ミリグラムである。単位用量あたりの組成物における植物性血球凝集素の量が10~500ミリグラムであり、好ましくは20~100ミリグラムである。
【0051】
前記薬物製剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、外用ハップ剤又はガス製剤から選択されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0052】
NOにより誘導されるHIF-1αの安定化及びリン酸化のp53レベルは活性酸素により低下する[Thomas DD、Ridnour LA、Espey MG、et al.Superoxide fluxes limit nitric oxide-induced signaling.J Biol Chem.2006;281(36):25984-25993.]。実際に、抗酸化剤の添加は、ニトロソ化シグナルに対して保護作用がある[Edirisinghe I、Arunachalam G、Wong C、et al.Cigarette-smoke-induced oxidative/nitrosative stress impairs VEGF- and fluid-shear-stress-mediated signaling in endothelial cells [retracted in:Rahman I.Antioxid Redox Signal.2013 Apr 2018(12):1535].Antioxid Redox Signal.2010;12(12):1355-1369.]。そのため、NOレベル及びその後の下流シグナルの伝達は活性酸素により調節され、それも酸化還元シグナルを調節する要素である。
【0053】
iNOSの発現には、STATとNF-κBを同時に活性化する必要があり、NF-κBは、炎症の主スイッチとし、H22の産生に関し、NF-κBが酸化還元により調節される。大部分の還元剤又は抗酸化剤はある程度で抗炎症作用を有し、NF-κB通路を抑制することにより、iNOSの発現を抑制することができる。一つの実施例では、LPSにより誘導されるマクロファージにおけるiNOSの発現に対する、異なる抗酸化剤の影響を比較したところ、5-メチルテトラヒドロ葉酸、デヒドロアスコルビン酸、BH4、グルタチオン、ニコチンアミドモノヌクレオチドは10μmol/Lの濃度でiNOSの発現にほとんど影響しないことが示される。上述した抗酸化剤の過酸化亜硝酸塩に対する反応性を考察したところ、5-メチルテトラヒドロ葉酸、デヒドロアスコルビン酸、NMNはいずれも高い過酸化亜硝酸塩の除去能力を有することが示される。低酸素条件下で、リンパ球の免疫機能が抑制され、アポトーシス率が増加することが既に証明された。活性酸素の欠乏により、iNOSの合成が阻害され、iNOSとα-actinin4との結合が破壊され、iNOSのアクチン細胞骨格への付着を防止する。そのため、抗酸化剤の存在により、iNOSが下方調節される可能性がある。しかしながら、本発明は、抗酸化剤である5-メチルテトラヒドロ葉酸、デヒドロアスコルビン酸、NMNが独特の性質を有し、一定の濃度でiNOSの発現を低下させることなく、良好な過酸化亜硝酸塩の除去能力を有することを見出した。上述した抗酸化剤はいずれも、抗原により免疫を活性化させた後、免疫応答能力を低下させることなく、特に感染過程でのiNOSの発現に悪影響を与えず、かつ過酸化亜硝酸塩の産生を低下させる。NOは細胞アポトーシスを抑制する作用を有し、S-ニトロソ化作用によりcaspases-8、caspases-9又はcaspases-3を抑制するが、過酸化亜硝酸塩はDNA損傷及びp53の上方調節により細胞のアポトーシスを促進する。
【0054】
NOは、感染性微生物に直接及び間接的な作用を有し、NOは病原微生物の酵素構造、特に[Fe-S]クラスターを直接破壊することができ、ウイルス感染では、NOの発現により、ウイルスの酵素活性を抑制し、ウイルスのコピーを抑制することができる。NOの直接毒性、特に細胞外での抗ウイルス活性が十分に証明されたが、NOの免疫機能に対する間接的な調節作用が相当に複雑である。研究によると、インフルエンザウイルスに感染したiNOS欠損マウスには肺炎の組織病理学的証拠がないことが証明されたので、当該学者は、ウイルスコピーよりも、宿主のiNOSが肺炎により貢献すると考えている[Karupiah G、Chen JH、Mahalingam S、Nathan CF、MacMicking JD.Rapid interferon gamma-dependent clearance of influenza A virus and protection from consolidating pneumonitis in nitric oxide synthase 2-deficient mice.J Exp Med.1998;188(8):1541-1546.]。エンドトキシン血症では、早期に使用されたiNOS阻害剤による治療の前臨床モデルの結果が失望を招いた[Hauser B、Bracht H、Matejovic M、et al.Nitric oxide synthase inhibition in sepsis? Lessons learned from large-animal studies[J].Anesthesia & Analgesia、2005、101(2):488-498.]。これまで、有益及び有害な効果が述べられており、NOは感染に対してポジティブなのかネガティブなのかは分からない。
【0055】
外因性NOはTリンパ球の増殖を抑制し、外因性NO(すなわち、T細胞から産生されるNO自身ではない)は増殖を抑制し、さらにはT細胞の死亡を引き起こすことが認められた[Bogdan C .Regulation of lymphocytes by nitric oxide.[J].Methods Mol Biol、2011、677:375-393.]。重要な抗酸化剤機構が欠損したマウス(すなわちGSNOR)は、過剰のS-ニトロソ化及びリンパ球アポトーシスにより、周辺でT及びB細胞の顕著な欠乏が示される。一方で、少量のNO分岐T細胞サブセット、特にTh1細胞及びFoxP3のネガティブ調節性T細胞群は、Th17細胞の分化を効果的に抑制できる。なお、最近の研究によると、外因性NOもTh9及びTh17細胞を調節することが示される。
【0056】
本発明の一実施例では、細胞培養液において5-メチルテトラヒドロ葉酸は15.625μmの濃度で、マクロファージによるNO分泌にほとんど影響せず、より面白いのは、LPS刺激を与えていない場合、5-メチルテトラヒドロ葉酸は低濃度でNO分泌を促進できることを見出した。
【0057】
本発明で選択されるNO弱毒化剤とNO増量剤の併用により、抗原刺激されたCD4+T細胞の増殖活性を著しく向上させることができることを示す。従来の研究によると、ウイルス除去は抗原特異的CD8+エフェクターT細胞により媒介されるが、記憶CD4+T細胞はCD8+TとB細胞の記憶応答の維持に重要な役割を果たすことが示される[Stambas J、Guillonneau C、Kedzierska K、et al.Killer T cells in influenza[J].Pharmacology & therapeutics、2008、120(2):186-196.]。また、最近の研究によると、CD4+とCD8+T細胞はいずれも肺炎の制御に関し、インターロイキン10の産生により過度の組織損傷を制限することが示される。そのため、本発明における上述したNO弱毒化剤とNO増量剤を含有する薬物組成物は、ウイルス除去及び抗炎症治療に用いられる。
【0058】
本発明においては、アルギニンはNOの増量物として、5-メチルテトラヒドロ葉酸とともに使用される場合、予想外の抗ウイルス、膿毒症治療効果を示した。一実施例では、本発明の組成物は、マウスの胸腺及び脾臓のT細胞増殖を顕著に刺激することができ、アルギニンのみを添加する場合と比べ、アルギニンと5-メチルテトラヒドロ葉酸との組合せを投与する場合には、CD4細胞の増殖が著しく向上し、組成物がエフェクターCD4+T細胞の増殖能力を向上させることができることが説明される。背景技術に述べるように、ウイルス特異的記憶CD4+T細胞の数から、インフルエンザウイルスによるヒト感染の重篤度を予測することができ、ウイルス特異的T細胞の数と疾患の重篤度とは反比例する。そのため、本発明の組成物はインフルエンザウイルス感染を治療する見通しがあり、病態の重篤度を低下させることができる。過酸化亜硝酸塩が細胞の免疫応答に影響することは既知のことであり、過酸化亜硝酸塩が炎症反応及び修復を抑制するフィードバック能力を阻害し、感染中で宿主の免疫失調を引き起こしやすいことは、研究によりサポートされる。使用される組成物は、宿主の免疫能力を向上させることができるだけでなく、炎症のネガティブフィードバック機構を維持し、感染、特にウイルス感染から宿主を保護することができる。
【0059】
従来のウイルス風邪薬の多くは、症状を緩和して風邪の痛みを軽減するために用いられるが、病気の経過を確実で顕著に短縮することができない。本発明の上述した薬物組成物は、風邪の治療に転覆的な効果をもたらす。効き目が速く、40余りの被験者を再診したところ、組成物が投与されてから一般に48時間内に風邪症状が消えた。二重盲検対照臨床実験が行われていないが、関連する試用組成物のフィードバック結果も予期外である。
【0060】
さらには、本発明は、動物モデルで組成物の抗ウイルス感染効果を検証したところ、組成物によりマウスの免疫機能を保護し、インフルエンザウイルスによる肺部感染の病理状態を軽減し、肺組織損傷を軽減することができることが示される。5-メチルテトラヒドロ葉酸とアルギニンとの組成物により、感染による炎症性因子のレベルを顕著に低下させ、感染後5日間の肺部のウイルス力価を顕著に低下させることができ、組成物が一定の抗ウイルス作用を有することが示唆される。なお、組成物の使用により、感染したマウスの脾臓及び胸腺のCD4+とCD8+T細胞のレベルを顕著に向上させることができ、組成物が炎症性因子を低下させるが宿主の免疫力を低下させていないことが示唆される。肺組織切片の結果から、組成物により肺組織損傷及び炎症状態を軽減することができ、風邪ウイルスに対する宿主モデルで非常に良好な治療効果を示す。
【0061】
最近の研究によると、NOはT細胞受容体(TCR)により媒介される免疫シナプス(IS)シグナルを促進できる[Garcia-Ortiz A、Martin-Cofreces N B、Ibiza S、et al.eNOS S-nitrosylates β-actin on Cys374 and regulates PKC-θ at the immune synapse by impairing actin binding to profilin-1[J].PLoS biology、2017、15(4):e2000653.]。ISは、T細胞の活性化、分泌及び細胞間の免疫シグナル通信の調節に非常に重要であり、これも組成物がT細胞数を顕著に向上できる可能な理由である。
【0062】
本発明の一実施例では、組成物を、アフリカ豚熱ウイルスに感染した豚の治療に応用したところ、非常に良好な効果が得られ、アフリカ豚熱ウイルスに感染した豚の生存率を顕著に向上させ、組成物による抗ウイルスの見通しをさらに証明した。
【0063】
なお、本発明では、本発明にかかる上述した組成物は高用量ウイルスのチャレンジ実験における宿主の生存を顕著に保護でき、一定の膿毒症の治療見通しを示すことを見出した。
【0064】
過去の三十年間では、各種の新規な薬物及び治療介入手段をテストするように、100回以上のII期及びIII期臨床試験を行い、重症膿毒症及び敗血症性ショック患者の予後を改善することを期待する。しかしながら、これらのすべての努力で、臓器不全を低減して膿毒症患者の生存率を改善できる新規な薬物が産生できない[Artenstein AW、Higgins TL、Opal SM.Sepsis and scientific revolutions.Crit Care Med.2013;41(12):2770-2772.]。これらのすべての研究は、いずれも特定の分子又は経路の単一薬物を使用し、非常に複雑な免疫代謝経路、及び千個以上の可能なターゲットに関するので、このような構想により薬物を選別することは容易ではない。
【0065】
外因性アルギニンの補充は膿毒症の治療で争議がある。NOにより媒介される過酸化が膿毒症の病態進行に重要である。NO産生過程での薬学遮断薬が膿毒症を治療可能であると想定されるので、NOS合成酵素阻害剤を開発したが、臨床結果を振り返ると、NOSを抑制する療法は全体として利益がない。一方で、膿毒症患者のアルギニンレベルが低下するが、NOの内因性ドナーの増加により酸化ストレスが増加するという悪影響を与える可能性がある。本発明の組成物における5-メチルテトラヒドロ葉酸とアルギニンとの併用により前臨床動物モデルで意外にも非常に良好な治療効果が得られる。
【0066】
本発明では、5-メチルテトラヒドロ葉酸はLPSにより誘導される膿毒症マウスの死亡率を顕著に低下させることができることを見出し、5-メチルテトラヒドロ葉酸は重症のアレルギーによる膿毒症の治療に有益でありえることが示唆される。
【0067】
本発明では、5-メチルテトラヒドロ葉酸とアルギニンとの組成物により微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)感染による膿毒症マウスの死亡率が顕著に低下することを見出した。膿毒症は高度致死病であり、幅広い細胞アポトーシスで誘導される免疫細胞の枯渇及びその後の免疫抑制を特徴とする。本発明では、5-メチルテトラヒドロ葉酸とアルギニンとの組合せにより、宿主の生存率を顕著に向上させ、CD4及びCD8 T細胞のアポトーシスを遮断することができ、多種の細菌及びウイルスによる膿毒症モデルで組成物が有する治療効果が証明された。
【0068】
人体で、ある酸化性シグナルが感染性疾患に有益であり、保護性酸化シグナルと活性酸素の有害作用との間に微妙なバランスが存在することを理解すべきである。本発明の組成物で使用される抗酸化剤は、独特の性質を有し、病原微生物感染による症状を緩和するとともに、NOのレベルを向上させ、NOにより媒介される病原体殺滅作用がNOで誘発される酸化ストレス機構を上回ることができる。
【0069】
確かにT細胞は交差保護で重要な役割を果たし、ワクチン分野において、不活性化ウイルスワクチンはあるウイルスに対して特異性抗体を誘導することにより保護を行い、交差保護性T細胞の応答増強に対して作用が小さい。本発明の組成物は免疫応答を増強させる作用を有し、一実施例では、組成物の使用により、狂犬病ワクチン接種後の免疫動物の抗体レベルを顕著に向上させる。
【0070】
本発明は、天然で強力な抗ウイルスツールであるヒト及び動物体の免疫系を利用する。アフリカ豚熱は致死率95%~100%の重症感染症であり、従来技術で何もできないが、本発明を用いることにより明確な治療効果が示され、組成物の抗ウイルス感染能力が予期外であることが示される。[Oura、C.A L .In vivo depletion of CD8+T lymphocytes abrogates protective immunity to African swine fever virus[J].Journal of General Virology、2005、86(9):2445-2450.]には、弱毒化ウイルス分離株OUR/T88/3が報告され、当該ウイルスをワクチンとすると、無毒ASFV分離株OUR/T88/3の感染により、遠縁豚をポルトガルASFV強毒性分離株OUR/T88/1の攻撃から保護することができる。ただし、OUR/T88/3に曝されてCD8(+)リンパ球が枯渇した豚はOUR/T88/1の攻撃から完全に保護されることができず、CD8+リンパ球は、ASFV感染の保護性免疫応答において重要な役割を果たすことを示す。
【0071】
近年、免疫力に対するNOの作用に対する認識が大幅に進歩して、病原微生物に対する直接抑制のほか、免疫機能を広く調節する。iNOSのほか、eNOSを免疫条件でのNOのソースとする必要がある。従って、NOの多種の機能及び標的ターゲットに対する認識の補充により、NOSサブクラスに対する抑制又は活性化を臨床実践に応用しにくいことが認識される。しかし、本発明の組成物の前臨床動物モデルでの結果が鼓舞的であり、NOは、抗ウイルス及び膿毒症治療において見通しを示す。
【0072】
本発明は、安全で十分量の一酸化窒素を抗ウイルス感染疾患に応用するという概念を初めて提出し、使用される組成物が相乗効果を示し、良好な効果を示す。免疫系では複雑な調節機構が存在し、多くのシグナル通路又は標的ターゲットが有益又は有害な作用を有し、一酸化窒素に関する研究論文も数万篇と多いが、研究の結論が一致しておらず、互いに矛盾し、明らかにしにくい。ある研究者はさらに、各種のターゲット機構の両刃の剣のような作用を説明するために東方文明における「陰と陽のバランス」という概念を導入した[Burke A J、Sullivan F J、Giles F J、et al.The yin and yang of nitric oxide in cancer progression[J].Carcinogenesis、2013、34(3):503-512.]。本発明は、免疫の全体から発明される組成物は、十分に顕著な技術的効果をもたらす。すなわち、1.宿主の免疫細胞レベルを顕著に向上させ、又は免疫細胞のアポトーシスを防止することができる。2.炎症因子を効果的に低下させ、炎症損傷を低下させる。3.免疫機能を調節することによりウイルスに抵抗し、宿主が二次感染に良好に抵抗させることができる。4.組成物における各成分の安全性が良好である。
【0073】
名詞解釈:
NO、一酸化窒素。
NOS、一酸化窒素合成酵素。
SNO、安全な一酸化窒素。過酸化亜硝酸などの毒性ラジカルの含有量が制御可能な一酸化窒素をいい、一酸化窒素を用いて疾患を治療及び予防するときの安全欲求を満たせる。
PON:過酸化亜硝酸及びその塩。
NO弱毒化剤:過酸化亜硝酸などの毒性窒素含有ラジカルの生成を減少するための還元性物質。
NO増量剤:NOを産生する前駆体物質。体内でNOを放出できる化学物質と酵素由来NOを産生するアルギニン、アルギニン活性化添加剤などの物質とに分けられる。
NO合成酵素誘導剤:NO合成酵素の産生を誘導する物質
葉酸:6S-5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム。
本発明で述べられる塩は、薬学的に許容できる塩を言う。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】実施例7における各群の体重変化曲線である。
図2】実施例7における各群の体温変化曲線である。
図3】実施例7における各群の摂食量変化曲線である。
図4】実施例7における各群の摂水量変化曲線である。
図5】実施例7における各群の生存曲線である。
図6】実施例8における各種の抗酸化剤がLPSにより誘導されることによるマクロファージにおけるiNOSの発現に対する影響である。
図7】実施例9における各種の抗酸化剤の過酸化亜硝酸塩に対する除去作用である。
図8】実施例10における組成物の、CD4 T細胞の三日間刺激による増殖に対する影響である。
図9】実施例10における定量組成物の、CD4 T細胞の三日間刺激による増殖に対する結果である。
図10】実施例12における炎症性因子の検出結果である。
図11】実施例12における炎症性因子の検出結果である。
図12】実施例12における炎症性因子の検出結果である。
図13】実施例13における脾臓指数及び脾臓の各免疫細胞の総数変化である。
図14】実施例13における脾臓指数及び脾臓の各免疫細胞の総数変化である。
図15】実施例13における脾臓指数及び脾臓の各免疫細胞の総数変化である。
図16】実施例13における胸腺指数及び胸腺の各免疫細胞の総数変化である。
図17】実施例13における肺の組織切片図である。
図18】実施例13における末梢血炎症性因子の分泌変化である。
図19】実施例13における各群のマウスのウイルス力価である。
図20】実施例17における膿毒症モデルマウスの脾臓リンパ球のカウント図である。
図21】実施例24における組成物による飼育豚の耳静脈血ルーチン検査のLYMP/NEUP変化図である。
【実施例
【0075】
以下、本発明の実施例により本発明における上記及びそのほかの特性及び利点をさらに詳しく解釈して説明する。以下の実施例は、本発明の技術方案を例示的に説明するものであり、請求項及び相当方案に限定される本発明の保護範囲を制限することを意図するものではないことを理解すべきである。
別に説明がない限り、本文における材料及び試薬はいずれも市販品や、当業者が従来技術により調製できるものである。
【0076】
実施例1 カプセル
6s-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム 200mg
ビタミンc 200mg
充填剤 適量
粘着剤 適量
崩壊剤 適量
【0077】
実施例2 カプセル
6s-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム 100mg
アルギニン 400mg
充填剤 適量
粘着剤 適量
崩壊剤 適量
【0078】
実施例3 錠剤
6S-5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム 100ミリグラム
植物性血球凝集素 50ミリグラム
アルギニン 400ミリグラム
充填剤 適量
粘着剤 適量
崩壊剤 適量
【0079】
実施例4 錠剤
6S-5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム 200ミリグラム
ビタミンC 600ミリグラム
充填剤 適量
粘着剤 適量
崩壊剤 適量
【0080】
実施例5 錠剤
6S-5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム 400ミリグラム
ビタミンCナトリウム 100ミリグラム
フルクトース-1,6-ビスリン酸 2ミリグラム
充填剤 適量
粘着剤 適量
崩壊剤 適量
【0081】
実施例6 注射用凍結乾燥粉末
6S-5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム 800ミリグラム
アルギニン 3グラム
溶解、濾過、凍結乾燥すればよい。
【0082】
実施例7 マウスの抗風邪試験
マウス:Balb/cマウス、雌、6週齢、15~17g、25匹。
A、薬物投与群。感染させて薬物を投与した。10匹。
B、モデル群。感染させるが薬物を投与しなかった。10匹。
C、正常群。感染も投与もしなかった。5匹。
【0083】
感染方法:5%抱水クロラール150μlで腹腔注射によりマウスを麻酔し、PR8インフルエンザウイルス(1×106pfu/mouse)に点鼻により感染させた。
投与方法:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムと蒸留水を濃度6mg/mlとなるように配合し、マウス1匹に200μl、1.2mg/匹で、胃内投与により、本回の実験で感染させてから32時間後に投与した。
【0084】
感染当日から、体重、体温、摂水量、摂食量を測定した。マウスの体重、摂食量及び摂水量を毎日一定の時間に一回測定した。体温測定は、感染後の3日間内に、12時間おきに毎日2回測定し、感染から4日目から、毎日一定の時間に一回測定した。実験では感染後15日目まで、マウスの体重が基本的に復帰した。
【0085】
結果:各群の体重変化曲線を図1に、体温変化曲線を図2に、摂食量変化曲線を図3に、摂水量変化曲線を図4に、生存曲線を図5にそれぞれ示した。各図から、薬物投与群の状況が大幅に改善されたことが分かった。そのうちの図1~4の縦座標は、一日目の値を1とする相対値である。
【0086】
実施例8 組成物における弱毒化剤の選別
一、実験材料
1、細胞株:マクロファージRAW264.7。
2、試薬:LPS(Sigma);iNOS検出キット(Stressgen);MTT(Biotopped)。
【0087】
二、実験方案
1、細胞培養:
マウスマクロファージRAW264.7を、37℃、5%CO2インキュベーターにて10%FBS含有DMEM高グルコース培地で培養した。
【0088】
2、薬物添加処理:
細胞密度を5×104cell/mLに調整し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで細胞懸濁液を加え、CO2インキュベーターにおいて24h培養した。
LPS誘導による炎症モデル:
LPS誘導:すべてのウェルに40μLのLPSを(最終濃度0.1μg/mLまで)加えた。
ビタミンC群:各ウェルにビタミンC、LPSを(最終濃度がビタミンCで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
ビタミンE群:各ウェルにビタミンE、LPSを(最終濃度がビタミンEで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
グルタチオン群:各ウェルにグルタチオン、LPSを(最終濃度がグルタチオンで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
5-メチルテトラヒドロ葉酸群:各ウェルに5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム、LPSを(最終濃度が5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
デヒドロアスコルビン酸群:各ウェルにデヒドロアスコルビン酸、LPSを(最終濃度がデヒドロアスコルビン酸で10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
アントシアニジン群:各ウェルにアントシアニジン、LPSを(最終濃度がアントシアニジンで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
クルクミン群:各ウェルにクルクミン、LPSを(最終濃度がクルクミンで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
レスベラトロール群:各ウェルにレスベラトロール、LPSを(最終濃度がレスベラトロールで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
アンドログラホリド群:各ウェルにアンドログラホリド、LPSを(最終濃度がアンドログラホリドで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
バイカリン群:各ウェルにバイカリン、LPSを(最終濃度がバイカリンで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
NMN群:各ウェルにNMN、LPSを(最終濃度がNMNで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
テトラヒドロビオプテリン群:各ウェルにテトラヒドロビオプテリン、LPSを(最終濃度がテトラヒドロビオプテリンで10μmol/L、LPSで0.1μg/mLまで)加えた。
正常群:各ウェルに完全培地50μLを加えた。
均一に混合し、CO2インキュベーターで24h培養し続けた。
【0089】
3、iNOSの検出
ポリクローナル抗体抗ヒトiNOS(Stressgen)を用いて、ELISAによりマクロファージにおけるiNOSタンパク質レベルを測定した。自動フローサイトメーターを用いてマクロファージの数を決定した。
【0090】
4、結果
結果を図6に示した。その結果から、5-メチルテトラヒドロ葉酸、グルタチオン、NMN、テトラヒドロビオプテリンが10μmol/Lの濃度でiNOSの発現に影響しなかったことを示した。
【0091】
実施例9 異なる抗酸化剤による過酸化亜硝酸塩除去の比較
過酸化亜硝酸塩ドナーである3-モルホリノ-シドノニミン(SIN-1)を濃度1μmol/Lで15個の試験管にそれぞれ入れた。それぞれSIN-1溶液を含有する試験管に、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムを最終濃度1μmol/L、10μmol/L、100μmol/Lまで、デヒドロアスコルビン酸を最終濃度1μmol/L、10μmol/L、100μmol/Lまで、グルタチオンを最終濃度1μmol/L、10μmol/L、100μmol/Lまで、NMNを最終濃度1μmol/L、10μmol/L、100μmol/Lまで、テトラヒドロビオプテリンを最終濃度1μmol/L、10μmol/L、100μmol/Lまで加えた。過酸化亜硝酸塩の濃度を分光光度法により測定し、検出波長が302nmであった。
結果を図7に示した。その結果から、デヒドロアスコルビン酸、5-メチルテトラヒドロ葉酸、NMNはいずれも非常に良好な過酸化亜硝酸塩の除去効果を有することを示した。
【0092】
実施例10 組成物によるT細胞の増殖分化実験
頚椎脱臼法によりマウスを死亡させ、マウスの脾臓及びリンパ節を無菌分離してHank’s液に入れ、免疫マイクロスフェア(CD4+細胞抽出キット;米国Miltenyi Biotec)を用いてマウスの脾臓及びリンパ節からCD4T細胞を精製した。96ウェルプレートにマウスCD3モノクローナル抗体4μg/mL及び抗CD28(Biolegend社)2μg/mLをそれぞれ加え、そしてDulbecco改変Eagle培地(L-アルギニンを含まない)、微量ペニシリン、グリシン、10%ウシ胎仔血清を添加した。
【0093】
組成物A群:細胞培養液に5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムを最終濃度10μmol/L、アルギニンを最終濃度40μmol/Lまでそれぞれ添加した。組成物B群:細胞培養液にデヒドロアスコルビン酸を最終濃度10μmol/L、アルギニンを最終濃度40μmol/Lまでそれぞれ添加した。組成物C群:細胞培養液にNMNを最終濃度10μmol/L、アルギニンを最終濃度40μmol/Lまでそれぞれ添加した。アルギニン群:細胞培養液にアルギニンを最終濃度40μmol/Lまで添加した。ブランク:初期細胞培養液(L-アルギニンを含まない)を用いた。
【0094】
精製されたT細胞をCell Violet Trace Proliferation kit(Invitrogen)により染色して三日間培養し、フローサイトメーターにより増殖を分析して測定した。
結果を図8、9に示した。その結果から、選別された組成物はいずれも刺激後のCD4細胞の増殖をある程度向上させることができ、感染していた宿主の細胞免疫能力を向上させることができたことを示した。
【0095】
実施例11 風邪患者に組成物を試用させる前臨床実験
400ミリグラム/個の葉酸(6S-5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム)カプセルを調製し、風邪患者に試用させ、投与後各症状の消失時間(時間)を表1に示した。扁桃炎、咽頭痛以外の症状がすべて消失した場合を基本回復と定義し、扁桃炎、咽頭痛を含むすべてが消失した場合を完全回復と定義した。
【0096】
表1 風邪患者の臨床統計(症状消失時間、時間)
【表1】
【0097】
風邪患者に処方GK301(葉酸300ミリグラム、L-アルギニン100ミリグラム)カプセルを試用させ、結果を表2にまとめた。
【0098】
表2 風邪患者の臨床分析(症状消失時間)
【表2】
【0099】
表1と比較すると、アルギニンを加えたことにより病気の経過を短縮したことが分かる。組成物投与による抗風邪効果は5-メチルテトラヒドロ葉酸単独より優れた。ただし、表1及び表2のデータから、いずれも、5-メチルテトラヒドロ葉酸を投与した後、患者の風邪がほとんど2日間内に治癒したことを示した。
【0100】
実施例12 5-メチルテトラヒドロ葉酸による炎症性因子の一部に対する影響及びNO分泌に対する影響
一、実験材料
1.細胞株:マクロファージRAW264.7。
2.薬剤:LPS(Sigma);MTT(Biotopped);葉酸は5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムである(連雲港金康和信薬業有限公司);NO検出キット(Beyotime)
【0101】
二、実験方案
1.細胞培養:マウスマクロファージRAW264.7を37℃、5%CO2インキュベーターにて10%FBS含有DMEM高グルコース培地で培養した。ELISA法により上清炎症性因子(TNF-α、IL-1α、IL-6)を検出した。
2.薬物添加処理:
1)細胞密度を2×105cell/mLに調整し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで細胞懸濁液を加え、CO2インキュベーターにおいて24h培養した。
2)葉酸群では各ウェルに葉酸50μLを(最終濃度15.625、62.5、250μmol/Lまで)加えた。
LPS+葉酸群では、各ウェルにLPS 50μLを(最終濃度0.1μg/mLまで)加え、インキュベーターで6h培養した後、各ウェルに葉酸10μLを(最終濃度15.625、62.5、250μmol/Lまで)加えた。
LPS群では、LPS 50μLを(最終濃度0.1μg/mLまで)加えた。
正常群では各ウェルに完全培地50μLを加えた。
3)均一に混合し、CO2インキュベーターで24h培養した。
520nmの吸光度値で平均数±標準差で表された。NO分泌率=(ODサンプルウェル-ODブランクウェル)/(OD正常ウェル-ODブランクウェル)×100%を計算し、標準曲線からNO分泌量を算出した。
【0102】
三、実験結果
表3 NO検出キットによる520nmでのOD値の測定。平均値で表示(n=6)
【表3】
【0103】
その結果から、5-メチルテトラヒドロ葉酸は15.625μmol/Lの濃度で、LPSにより誘導されるマクロファージにおけるNOの発現を抑制しなかったことが分かる。炎症因子の結果を明細書の図10、明細書の図11、明細書の図12に示した。
上述した結果から、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムはマクロファージ及びLPSにより誘導される炎症性因子の発現に顕著な影響を与えなかったことが分かる。
【0104】
実施例13 用量の異なる組成物の一度投与によるインフルエンザウイルスに感染したマウスに対する早期保護作用の考察
1.1 材料と方法
1.1.1 マウス
Balb/cマウス、20匹(各群5匹)、雌、6週齢、15~17g、維通利華実験動物公司から購入。
1.1.2 薬物調製
脱イオン水を用いて薬物を溶解し、調製してから30分間内で使用した。
【0105】
1.1.3 投与方法
G1群:ブランク対照群
G2群:モデル群
G3群:低用量投与群(5-メチルテトラヒドロ葉酸:アルギニン=1:4、0.173g/kg)
G4群:高用量投与群(5-メチルテトラヒドロ葉酸:アルギニン=1:4、0.346g/kg)
低用量群、高用量群では胃内投与を行い、モデル群ではモデル構築のみを行い、薬物を投与せず、等体積の脱イオン水を投与した。ブランク対照群では、等体積の脱イオン水を投与した。一度投与した。
1.1.4 感染方法
5%抱水クロラール150μlを用いて腹腔注射によりマウスを麻酔し、PR8インフルエンザウイルス(1×106pfu/mouse)に点鼻により感染させた。
【0106】
1.1.5 マウス処理方法
感染当日から体重を測定し、マウスの体重を毎日一定の時間に一回測定した。感染後3日目に、眼窩から静脈血100μlを採血し、血清を調製し、冷凍保管した。感染後5日目にマウスを死亡させ、肺、胸腺、脾臓及び末梢血を摘出した。
血:血清を調製し、一部をサイトカインの検出(外部検出)に用い、残りを冷凍保管した。
肺臓:肺組織を2つに分け、一方(右肺葉)に対してウイルス力価を測定し、他方(左肺葉の上先端)を固定し、パラフィン包埋を行い、切片してHE染色を行った。
脾臓、胸腺:重量を測り、写真を撮り、細胞をカウントして免疫細胞を染色した。
【0107】
1.1.6指標観察
体重が変化し、毎日体重を測定した。サンプル保管:5日目に血清サンプルを炎症性因子の検出に用いた(BiolegendのLEGENDplex Mouse Inflammation Panelを用いた検出、外部検出)。肺臓:ウイルス力価を測定し、肺組織の病理切片を作り、肺組織における炎症性因子の変化を検出した。胸腺:重量を測り、写真を撮り、胸腺全細胞をカウントし、リンパ球を染色(CD4+、CD8+T細胞)した。脾臓:重量を測り、写真を撮り、脾臓全細胞をカウントし、脾臓リンパ球の染色分析を行った(表面染色、B細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、NKT細胞、単核球、マクロファージ、樹状細胞、好中球)。
【0108】
1.2 実験結果
1.2.1 脾臓指数及び脾臓の各免疫細胞の総数変化
明細書の図13、14、15に示した。
1.2.3胸腺指数及び各免疫細胞の総数変化
明細書の図16に示した。
1.2.2肺部病理変化
明細書の図17に示した。
1.2.6末梢血炎症性因子分泌変化
明細書の図18に示した。
1.2.7肺部ウイルス力価(5dpi)の変化
明細書の図19に示した。
【0109】
それらの結果から、インフルエンザウイルスに感染させた後、正常対照群以外の各群では、マウスはいずれも脾臓リンパ球が減少し、胸腺が小さくなり、高用量群では胸腺の変化が小さかった。脾臓と胸腺はいずれも免疫臓器であり、マウスの免疫機能に関連し、胸腺が小さくなることは免疫機能低下を引き起こす原因のひとつであり、組成物が免疫臓器の保護に寄与し、ウイルス感染抵抗による免疫低下に対して一定の保護作用を有する可能性があることが示唆された。肺部病理切片をHE染色後、モデル群及び治療群はいずれも類似する程度のリンパ球浸潤及び肺部組織構造の変化を示し、高用量治療群はモデル群よりも肺組織損傷の程度がやや軽かった。これは、組成物がインフルエンザウイルスに感染した早期肺部の病理状態の軽減に寄与し、肺組織損傷を軽減したことが示唆された。
【0110】
インフルエンザウイルスに感染させた後、感染後5日間でモデル群では末梢血の多種のサイトカインが顕著に向上し、薬物投与群では感染による炎症性因子の分泌を著しく低減できた。薬物により炎症性因子のレベルを効果的に低下させることができ、炎症性因子ストームを減弱することに寄与し得、炎症性因子ストームによる肺損傷を予防及び治療できたことが証明された。感染後5日間の肺部ウイルス力価については、治療群はモデル群と比べていずれも異なる程度の降下傾向を示した。特に高用量治療群では、モデル群と比べてウイルス力価の降下が統計学的有意差の閾値に近づいた。組成物によりウイルス力価を低下させることにより、ウイルスの体内でのコピーを抑制でき、一定の抗ウイルス作用を有することを示唆した。
【0111】
実施例14 組成物によるヘルペスウイルスI型脳炎マウスの治療
体重14~18gの昆明雄性マウス60匹を用い、HSV-1によりHela細胞を攻撃し、HSV-1をHela細胞中で48時間培養し、ウイルスを回収して当該ウイルス力価を測定し、質量分率100TCID5010-5のウイルスをマウスに接種した。マウスを対照群、モデル群、生理食塩水治療群、アシクロビル治療群(10mg/kg)、組成物群(5-メチルテトラヒドロ葉酸14mg/kg、アルギニン50mg/kg、植物性血球凝集素7mg/kg)に分け、対照群に無菌生理食塩水0.03mlを注射し、モデル群及び各治療群にHSV-1ウイルス液0.03mlを注射した後、胃内投与し、連続して4日間投与し、各群の死亡状況及びそのほかの変化を観察した。7日間の後、眼球から0.5ml採血し、35℃インキュベーターで2h保存し、1000r/minで5min遠心分離し、NOと1L-1βを検出した結果を以下に示した。
【0112】
表4 各群の死亡数及び死亡率
【表4】
【0113】
【表5】
本実験から、組成物がヘルペスウイルスに感染したマウスの死亡率を顕著に低下させ、感染過程でのマウスからNOの放出を向上させ炎症因子のレベルを低下させることができたことがわかる。
【0114】
実施例15 5-メチルテトラヒドロ葉酸組成物の抗膿毒症処方の選別
6~8週齢、体重18~22gのC57雄性マウスを用い、動物の一般生理指標、体重及び摂食状況を観察した。一週間なじませて飼育した。標準ペレット飼料で飼育し、自由に摂水させた。自然な昼夜光線で照明し、室温を18~26℃にし、相対湿度を40%~70%にした。LPSは、sigma社から購入され、商品番号:L2880であった。
49匹のC57雄性マウスを7匹/群で、6群の薬物投与群と1群のモデル群との7群に分け、腹腔注射によりLPSを13mg/kgで投与した(予備実験で決定された用量。LPS用量20mg用量では120時間の様子を観察できなかったので、モデル群の生存時間を延長するために、予備実験により用量が13mg/kgであると確認された)。
【0115】
A群:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=3:1(ヒト用量で5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム300mg、ビタミンC 100mg);
B群:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=1:3(ヒト用量で5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム100mg、ビタミンC 300mg);
C群:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=1:12(ヒト用量で5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム50mg、ビタミンC 600mg);
D群:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=12:1(ヒト用量で5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム600mg、ビタミンC 50mg);
E群:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=4:1(ヒト用量で5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム1200mg、ビタミンC 300mg)
F群:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=3:1(ヒト用量で5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム1200mg、ビタミンC 400mg
H群:モデル群。
すべての薬物投与群では、それぞれモデル構築後の9時間に一回(1日目の夜9時)、翌日の朝に一回、三日目の朝に一回、計3回投与し、投与体積が一致していた。結果を以下に示した。
【0116】
表6 LPSの腹腔注射後の各時点での動物表現及び死亡状況
【表6】
C群、D群では、投与過程で、一部のマウスが身震い、顕著な不活発などの症状を示した。E、F群の状態が最も優れており、A、B群はその次であり、144h後に各群では動物が死亡したことはなかった。
【0117】
その結果から、用量や、配合比の異なる5-メチルテトラヒドロ葉酸とビタミンCとの組成物により、LPSにより誘導されるマウスの死亡率を異なる程度抑制し、マウスの生存率を向上させることができ、経口胃内投与だけで膿毒症モデルマウスの死亡率を低下させる作用を果たすことができ、それらの最適の配合比が3:1であった。用量の増加に伴い、効果が顕著に改善され、ヒト用量で1200mgの5-メチルテトラヒドロ葉酸の用量で、ビタミンC 400mgと相互作用してLPSにより誘導される膿毒症モデルマウスの生存率を100%とすることができ、極めて大きな臨床価値がある。
【0118】
実施例16 5-メチルテトラヒドロ葉酸組成物による黄色ブドウ球菌膿毒症モデルマウスに対する保護の試み
体重20グラム程度のSPFグレード昆明種マウスを用い、黄色ブドウ球菌を単一コロニーで培養液に接種し、37℃で徹夜振とう培養した。菌液を回収して4000rpmで3min遠心分離し、沈殿を回収し、無菌生理食塩水で2回洗浄した。菌液が約5×109CFU/mlであった。予備実験から、菌液2mlを腹腔注射すると、7日間死亡率が90%以上となったことが分かる。
【0119】
マウスを雌雄半分で以下のようにランダムに分けた。
A群:高用量群、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=3:1(ヒト用量で1200mg/日、すなわち192mg/kg/日);
B群:中用量群、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=3:1(ヒト用量で600mg/日、すなわち96mg/kg/日);
C群:低用量群、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=3:1(ヒト用量で300mg/日、すなわち48mg/kg/日);
D群:併用治療群、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:ビタミンC=3:1(ヒト用量で600mg/日、すなわち96mg/kg/日)+オキサシリン30mg/kg/d;
モデル群。
菌液を腹腔注射した後の4hから、上述した用量で、三回に分けて薬物を一日おきに投与した(0、2、4日目)。
【0120】
表7 黄色ブドウ球菌膿毒症モデルの治療
【表7】
実験結果から、驚くべきことに、LPSモデル群のマウスに確実に保護性を有する組成物は、ブドウ球菌モデルマウスに対して疾患を緩和することができず、両方に有意差がなかった。
【0121】
実施例17 組成物Cの処方による膿毒症の治療及び抗菌試験
5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム、アルギニン、植物性血球凝集素を、2:8:1の割合で混合し、処方Cの組成物を得た。
体重18~24g、雌雄半分の健常ICRマウス120匹を用い、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌を試験菌種とし、体重で正常群、モデル群、組成物低用量群(40mg/kg)、組成物中用量群(80mg/kg)、組成物高用量群(160mg/kg)、アモキシシリン群(120mg/kg)にランダムに分けた。以上の各群に対して、いずれも20ml/kgで毎日1回腹腔投与し、正常群以外の各群のマウスのいずれに対しても0.5ml/匹で黄色ブドウ球菌液(5×109CFU/ml)を腹腔注射した。(肺炎球菌の感染方法及び群分け状況は黄色ブドウ球菌と同様)各群マウスに対して菌液注入後の4日間内の死亡状況を観察し、群間の差異を比較し、生存率を算出した。実験結果を以下に示した。
【0122】
【表8】
注:モデル対照群と比べて、*p<0.05であった。
モデル対照群と比べて、**p<0.01であった。
【0123】
その結果から、明確に感染したモデル動物に対しては、組成物にL-アルギニンを加える必要があることが分かる。
【0124】
組成物は、宿主の生存率を顕著に向上させることができた。組成物のリンパ球に対する作用をさらに検証するために、独立実験を行った。すなわち、ICRマウスに、それぞれ黄色ブドウ球菌菌液(5×109CFU/ml)0.5mlを注射し、モデルマウス10匹に同時に5-メチルテトラヒドロ葉酸、アルギニンの組成物溶液20mg/kgを腹腔注射し、モデル構築から24時間後、マウスを死亡させ、脾臓を回収した。脾臓全細胞のカウント、脾リンパ球の染色分析(表面染色、B細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞)を行った。
【0125】
結果を図20に示した。その結果から、組成物が敗血症でCD4及びCD8T細胞のアポトーシスを防止することができ、敗血症マウスは、モデル構築から24時間後、敗血症であらゆるタイプの免疫エフェクター細胞のアポトーシスを誘導し、組成物がCD4T、CD8T細胞及びB細胞のアポトーシスを防止したが、NK細胞の減少(n=11)を阻止していなかったことが示される。このような組成物の作用についてこれまで報告がなく、組成物の膿毒症に対する治療見通しを十分に考えるべきである。
【0126】
実施例18 体内で組成物のグラム陰性菌に対する抑制作用
5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム、アルギニン、植物性血球凝集素を2:8:1の割合で混合し、全混合した後、処方Cの組成物を得た。
体重18~22gのBAL B/C雄性マウス50匹を8匹/群で6群に分け、2群が実験群で、残りが各種の対照群であり、それぞれ組成物低用量群(40mg/kg)、組成物高用量群(80mg/kg)、正常群、モデル群、ペニシリン群(450mg/kg)、メロペネム群(75mg/kg)であった。緑膿菌の菌液をLB固形培地で画線培養した後、典型的コロニーを選択して通常LB液体培地に接種し、37℃で徹夜振とう培養してから約12h後、4000r/minで3min遠心分離し、上清を捨て、使用するまで生理食塩水に菌体を再懸濁した。致死用量の緑膿菌菌液を500μL/匹で各実験群及び三つの対照群のBAL B/C雄性マウスに腹腔注射した。実験群のBAL B/C雄性マウスに菌体を感染させてから30min後、組成物中用量群、組成物高用量群に胃内投与し、ペニシリン群及びメロペネム群に同様に胃内投与し、正常群に精製水を胃内投与した。投与してから24h後、各実験群及び対照群のBAL B/C雄性マウスに再度投与し、投与タイプ及び用量は一回目の投与と同じであった。BAL B/C雄性マウスに投与した後、24hごとに観察し、生存状況を記録し、15日目にすべての動物を死亡させた。
【0127】
その結果から、本発明の処方Cの組成物は、動物体内でグラム陰性菌に対する抑制作用を有し、かつ毒性が低かったことが分かる。本発明の前記組成物は致死用量の緑膿菌に感染させたマウスの生存率を14日間で100%に維持できた。メロペネム群では、マウスは14日間後の生存率が100%であったが、ペニシリン群では全部死亡し、モデル群でも全部死亡した。
【0128】
実施例19 組成物の治療及び予防的投与によるH1N1(FM1)インフルエンザウイルスに感染したマウスに対する死亡保護作用
1.1 被験サンプル
組成物顆粒(5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:アルギニン=1:4)、連雲港金康和信薬業有限公司
1.2 試験動物
ICRマウス、SPFグレード、体重13~15g、雌雄半分。北京維通利華試験動物有限責任公司から提供され、許可番号:SCXK(京)2016-0006、動物合格証:1100111911082385。
1.3接種した毒性株
FM1毒性株(濃度100.TICD50)を購入した。本実験室で継代培養し、-80℃で冷蔵庫で保存した。
【0129】
2 試験方法及び結果
2.1 用量設計
試験で、被験物に対して、いずれも1000倍FM1毒性株の希釈液によりマウスの点鼻感染を行い、組成物を高、中、低という三つの用量群に分けた。また、予防投与群を設定し、低用量で一度投与し、ビタミン群と中用量群を設定して比較した。
2.2 菌液の用意
FM1毒性株0.2mlを凍結融解した後、生理食塩水で勾配希釈して試験に必要な濃度(1000倍量)を得た。
【0130】
3.3 動物感染量の確定
濃度の異なるFM1ウイルス液で、各濃度群10匹、45μl/匹でそれぞれマウスを点鼻感染させ、感染後の12日間内の動物の死亡状況を観察し、マウスを80±5%死亡させたウイルス液濃度を本試験の感染濃度とした。結果を表9に示した。
【0131】
表9 インフルエンザウイルスFM1のマウス致死感染毒液濃度の確定
【表9】
以上の結果から、本試験用の濃度が1000倍FM1希釈液であり、45μl/匹で点鼻感染させた。
【0132】
4.1 動物感染および群分け
ICRマウス130匹を用い、動物を体重レベルで正常対照群、モデル対照群、組成物の高、中、低用量群、組成物予防群、組成物後治療群の7群にランダムに分けた。10匹を正常対照群とし、残りの各群の動物20匹を45μl/匹でH1N1インフルエンザウイルスに点鼻感染させた。感染後、各薬物投与群に0.1ml/10gで胃内投与した。
【0133】
4.2 治療的投与及び予防的投与の用量設計
正常対照群:等量の生理食塩水を投与した。
モデル対照群:等量の生理食塩水を投与した。
高用量群:組成物(5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:アルギニン=1:4)を0.346g/kg体重で投与し、それぞれ感染後の12h、24hに一回ずつ投与し、二回目の投与量を一回目の投与量の半分にした。
中用量群:組成物(5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:アルギニン=1:4)を0.173g/kg体重で投与し、それぞれ感染後の12h、24hに一回ずつ投与し、二回目の投与量を一回目の投与量の半分にした。
低用量群:組成物(5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:アルギニン=1:4)を0.087g/kg体重で投与し、それぞれ感染後の12h、24hに一回ずつ投与し、二回目の投与量を一回目の投与量の半分にした。
予防群:予防作用。すなわち、モデル構築前の12hに低用量群の用量、つまり組成物(5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム:アルギニン=1:4)を0.087g/kg体重で一度投与した。
後治療群:組成物(5-メチルテトラヒドロ葉酸:アルギニン=1:4)を0.173g/kg体重で投与し、それぞれ感染後の12h、24hに一回ずつ投与し、二回目の投与量を一回目の投与量の半分にした。組成物(5-メチルテトラヒドロ葉酸:アルギニン:ビタミンC=3:12:1)を0.173g/kg体重で投与し、それぞれ感染後の3日目、6日目に一回ずつ投与した。
【0134】
感染後の14日間内の動物の死亡状況を観察し、死亡率、死亡保護率(対照群死亡率-実験群死亡率)/対照群死亡率を算出した。肺指数=湿肺重量(g)/体重(g)であった。結果に対して、群間比較でX2検定及びt検定により統計学的処理した。結果を以下の表に示した。
【0135】
表10 初回FM1インフルエンザウイルス感染によるマウス致死に対する保護作用
【表10】
【0136】
表11 FM1インフルエンザウイルスによるマウスの肺部炎症に対する影響
【表11】
【0137】
5.組成物の治療後生存マウスの重複感染に対する死亡保護作用
上述した実験で、投与後15日目に、上述したインフルエンザウイルスに感染させたり薬物介入を行って生存したマウスに対して、重複感染実験を行い、同じインフルエンザウイルスに生存動物を再度感染させ、再感染後の7日間内の死亡状況を観察し、インフルエンザウイルスに再感染させたマウスの死亡率及び死亡保護率に対する異なる処理群の影響を比較した。重複感染実験の各群に対しては薬物介入を行っていなかった。
【0138】
表12 組成物によるFM1インフルエンザウイルスに重複感染させたマウスに対する死亡保護作用
【表12】
その結果から、組成物高用量群では、初回感染および重複感染の後に動物の死亡に対して保護作用を有することを示した。予防的投与群でも一定の保護作用を示した。組成物は、インフルエンザウイルスによるマウスの死亡率を低下させ、動物に対して良好な治療及び死亡保護作用を有するだけでなく、その予防的投与によっても一定の保護作用を示し、マウスの生存期間を延長できたことが示唆された。
【0139】
実施例20 エンドトキシンによる発熱に対する処方Aの組成物の抑制作用
処方Aの組成物の調製:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムとビタミンCとを質量比1:1で混合し、三次元混合により全混合した後、処方Aの組成物を調製した。
エンドトキシンの調製:従来文献の報告により、本実験では、予備実験を行った後エンドトキシン発熱量を250ng/ml/kgにし、実験の前に生理食塩水で調製した。
ウサギの選択:体重2.0~3.0Kgのニュージーランドウサギ35匹を用い、直腸温を毎日1回、連続して2日間測定し、ウサギをこの温度測定操作になじませた。体温範囲37.5~38.5℃で体温変動範囲が0.5℃以内のものを選択し、実験に用いた。
【0140】
各ウサギに対して耳静脈からエンドトキシンを注射し、注射後の1時間に、直腸温を測定し、体温変化に従って、モデル群、陽性薬物群、本発明の薬物組成物A処方の高(40mg/kg)、中(20mg/kg)、低(10mg/kg)用量群に均一に分けた。各薬物投与群では胃内投与を、2ml/kgで一回行い、モデル群では同じ条件で蒸留水を投与した。投与後0.5h、1h、1.5h、2hに直腸温を測定した。実験結果を表13に示した。
【0141】
表13 本発明の処方Aの組成物のエンドトキシン発熱ウサギの体温変化に対する影響(n=6)
【表13】
その結果から、エンドトキシンを注射した後、各群のウサギはいずれも体温が顕著に上昇し、薬物が投与された後、各群のウサギはいずれも体温が降下したことを示し、組成物が一定の解熱作用を有することを示した。
【0142】
実施例21 C処方による体内抗肺炎マイコプラズマ試験
肺炎マイコプラズマ国際標準株(ATCCFH15531)は、アメリカ培養細胞系統保存機関から購入された。
C処方の組成物:実験室で自製し、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム、アルギニン、植物性血球凝集素を2:8:1の割合で混合し、全混合した後、処方Cの組成物を得た。
雌雄半分、体重16~20gのBALB/Cマウス50匹は、広東省医学実験動物中心から購入された。
陽性薬物群:アジスロマイシン分散錠、哈薬集団製薬六廠、バッチ番号160303、規格0.25g/錠。
【0143】
BALB/Cマウスを一週間なじませて飼育した後、雌雄半分で正常対照群、モデル対照群、陽性薬物対照群(40mg/kg)、C組成物高用量群(80mg/kg)、C組成物低用量群(40mg/kg)の5群にランダムに分けた。正常対照群以外の各群のマウスをエチルエーテルで麻酔した後、濃度106CCU/mlの肺炎マイコプラズマ(MP)菌液50μLで、連続して3日間点鼻感染させた。その後胃内投与を、毎日一回、連続して10日間行った。最後の投与から4h後、マウスを眼球から採血して死亡させ、肺臓、脾臓、胸腺を摘出して重量を測定した後、病理学的観察を行った。別に小片の肺組織をとり、研磨した後、PCRによりMPの含有量を定量的に検出した。結果を以下に示した。
【0144】
表14 マウス脾指数及び胸腺指数に対する影響
【表14】
注:モデル対照群と比較して、*p<0.05であった。
【0145】
モデル群と比べると、ブランク対照群のマウスの脾臓指数に有意差があり、各薬物投与群のマウスの脾指数に有意差があり、投与後、生体内のMPが殺滅されたことを示唆した。免疫臓器に対する刺激が軽減され、脾指数が降下した。
マウス肺臓組織の病理学的検査では、解剖時に、正常群と比べてモデル群の肺部組織の病変が著しく、肺部の外観に充血水腫が見られ、肺葉に不均一な壊死巣が散布され、病理学的検査により病変が主に肺内にあり、主に間質性肺炎及び細気管支肺炎であり、気管支に顕著なリンパ球浸潤が見られ、ブランクでは肺組織が基本的に正常であった。アジスロマイシン対照群では軽度の間質性肺炎が見られ、C組成物群では炎症が顕著に軽減され、細気管支の周辺で僅かに炎症性細胞浸潤が見られ、間質性肺炎の程度が用量の増加につれて次第に軽減された。その結果から、C組成物がマウスの肺炎マイコプラズマへの感染を制御する作用を有し、肺組織の病変度合いが軽減されたことが分かる。
【0146】
実施例22 免疫アジュバントとして一酸化窒素組成物の狂犬病ウイルスワクチン効果に対する影響
体重20~28g、雌雄半分の成熟昆明マウス30匹は新彊医科大学実験動物中心から購入され、狂犬病rSRV9弱毒化経口凍結乾燥生ワクチンは北京中聨康生物科技有限公司から購入された。一酸化窒素組成物のB処方の調製について、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウムとアルギニンとを質量比1:4で混合し、B処方の組成物を調製した。マウス30匹を雌雄半分、10匹/群で、ブランク対照群、ウイルス経口免疫群、B処方+ウイルス経口免疫群の3群に分けた。それぞれ試験の1日目、7日目、14日目に対応するワクチンを経口投与し、免疫後0、14、21、35、42、70日目に300μL/匹で眼窩採血を行い、1h静置した後、5000r/minで5min遠心分離し、血清を吸収し、マウスの糞便を0.05g程度同期採取し、PBS(pH約7.4)500μLに置き、粉砕して混濁液を形成し、上清を遠心して吸収し、-20℃で冷蔵庫に保存し、血清IgG抗体をELISA検出キットにより検出し、糞便IgA抗体をマウス血清狂犬病特異的IgA抗体を用いてELISA検出キットにより検出した。結果を以下の表に示した。
【0147】
表15 各群のマウスを初回免疫後、異なる時間で血清抗狂犬病特異的IgGレベルの検出(U/ml)
【表15】
その結果から、組成物Bが血清中IgGの抗体レベルを高め、経口ワクチンと組成物Bとの併用により、14日目に十分程度の抗体があり、免疫から21日間後、異なる群間で抗体の差異が著しくなったことが分かる。
【0148】
表16 各群のマウスを初回免疫後、異なる時間で糞便SIgAレベルの検出(U/ml)
【表16】
以上の結果から、処方Bの組成物がワクチンの免疫活性を向上させ、処方Bの組成物が免疫アジュバントとして相乗効果を示し、rSRV9ウイルス経口弱毒化ワクチンにより、マウス体内での抗体発現を顕著に向上させることができ、免疫接種回数を低減し、免疫効果を向上させる作用を有することが分かる。
【0149】
実施例23 処方Cの組成物のアフリカ豚熱の治療への応用
江蘇省動物疫病予防中心から送られてきたサンプルから、中国動物衛生・流行病学研究センターがアフリカ豚熱を一例確認し、陽性サンプルが江蘇省連雲港ガン楡区のある農家に由来し、当該農家では生豚を300頭飼い、130頭が発症し、120頭以上が死亡した。死亡した感染豚を解剖して病理学的検査を行ったところ、肺出血、間質性肺炎などの症状が発見された。脾臓を解剖したところ、脾腫が深刻であり、7倍も脾腫したものがあることが発見された。胃を解剖したところ、胃漿膜表面にびまん性出血が発見された。また、腎腫大が顕著であった。それらはアフリカ豚熱の症状に合致した。
【0150】
当該農家から感染豚3頭、及び健常豚10頭の血液をとり、3000r/minで遠心分離し、血清を、セラミックビーズを入れたRocheに加え、PBSバッファーを添加し、ウイルスDNAキットによりDNAを抽出し検出したところ、ASFVアフリカ豚熱遺伝子II型であり、2017年の極東ロシア及び東ヨーロッパで流行したウイルス属であると確認した。アフリカ豚熱の治療には、処方Cの組成物を介入させた。
【0151】
処方Cの組成物注射剤の調製:5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム、L-アルギニン及び植物性血球凝集素を2:8:1の割合で混合し、全混合した後、処方Cの組成物を得た。処方Cの組成物に滅菌処理を施した後、生理食塩水で溶解させ、精密濾過膜を通して濾過を行い、活性炭で熱源を吸着し、その後注射剤に調製した。
【0152】
18頭の感染初期の豚を隔離し、関連飼料及び排水、糞便を無害化処理した。感染豚の体温が平均で40℃であり、一部の感染豚が皮膚に充血、チアノーゼが現れ、かつ、耳、腹下で複数個所の出血斑又は赤斑が現れ、全部の感染豚は摂食が不正常で、食欲不振であった。感染豚を血液検出したところ、正常豚よりも白血球レベルが低下したことが認められた。
【0153】
以上のことから、感染豚18頭に対して処方Cの組成物の介入治療を行い、豚一頭あたり処方Cを含む注射液を、用量50mg/キログラムで毎日、2日間持続して注射し、その間各豚の体温を検出した。
結果を以下に示した。
【0154】
表17 感染豚18頭の7日間の生存率のまとめ
【表17】
その結果から、アフリカ豚熱に感染した豚に対して予期外の効果があり、処方Cの組成物が非常に優れた抗ウイルス効果を有することが示唆された。その結果から、7日間で豚1頭のみが死亡したことが分かる。その後、ポリシー要件を満たすために、すべての感染豚を死亡させ、当該農家の残りの感染豚がいずれも発症後3~4日間で死亡した。
【0155】
アフリカ豚熱による死亡例の解剖検出
病死豚を解剖したところ、病死豚の脾臓が深刻に腫大し、かつ脾臓が充血し、脆くなり崩れやすく、肺部に大規模の出血が現れ、肺組織観察により間質性肺炎と定義された。また、胃も同様に出血し、胃漿膜表面にびまん性出血が現れ、腎腫大が顕著であった。
【0156】
血液を1h静置した後、5000r/minで5min遠心分離し、血清を吸収した。IgG抗体レベルを検出した。血液にKrebs-HEPESバッファーを加え、37℃に維持して30分間静置し、L-NAME(100μM)を加え、電気化学方法により超酸化物、亜硝酸塩およびNOの含有量を検出した。
【0157】
治癒豚を死亡させて解剖し、病理学的観察を行ったところ、治癒豚では脾臓がやや大きくなる以外、肺の局所に出血が現れた。血液を1h静置した後、5000r/minで5min遠心分離し、血清を吸収した。IgG抗体レベルを検出した。血液にKrebs-HEPESバッファーを加え、37℃に維持して30分間静置し、L-NAME(100μM)を加え、光化学方法により亜硝酸塩およびNOの含有量を検出した。
結果を以下に示した。
【0158】
表18 病死豚群及び治癒豚の生化学的指標
【表18】
その結果から、治癒豚の体内に大量の抗体が存在し、組成物Cの向上により豚の免疫系レベルを向上させ、抗ウイルスの効果を果たすことができたことがわかる。
【0159】
そして、病死豚のNOレベルも低くないが、そのうちの活性窒素のレベルが大幅に向上し、ウイルスによる急性症状及び死亡が活性窒素のレベルに関連することを示唆し、高強度の免疫系は逆に個体の死亡を促進してしまい、ウイルスの治療過程によく見られた。あるウイルスに対しては、免疫遺伝子ノックアウトマウスの生存時間は逆に正常マウスを遥かに超えた。したがって、アフリカ豚熱による死亡が免疫系の過剰反応に関連すると推測され、比較すると、病死豚の血液中RNS/NOの比が治癒豚の血液中RNS/NO比の3倍以上であったことが認められた。
【0160】
本発明の組成物は、RNSを低下させることにより、免疫過剰発現で悪性ウイルスによる死亡を減少させ、免疫系の正常動作を維持し、ウイルスを除去する目的を達成することができたことが示唆された。本発明の組成物の実施効果は予想を大幅に上回った。
【0161】
実施例24 飼育豚の免疫細胞に対する組成物の影響
約3月齢、体重25kg程度の通常の飼育豚3匹を用い、それぞれ5-メチルテトラヒドロ葉酸を含有する組成物を投与した。組成物の調製には、5-メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム、L-アルギニン及び植物性血球凝集素を1:4:0.1の割合で混合し、薬物組成物を得た。組成物の投与前、耳から採血し、血ルーチン検査を行った。その後、豚の体重により組成物を30mg/キログラムで経口投与し、一週目、二週目にそれぞれ耳から採血し、血ルーチン検査を行った。血ルーチン検査の主な指標はLYMP(リンパ球)、NEUP(好中球)であった。
【0162】
血ルーチン検査の指標

免疫指数LYMP/NEUPが高かった患者はウイルス感染による症状が相対的に軽度であった。文章[Zhang B、Zhou X、Qiu Y、et al.Clinical characteristics of 82 death cases with COVID-19[J].MedRxiv、2020.]では、新型コロナウイルス感染症の患者に対して臨床分析を行ったところ、死亡した患者は基本的にリンパ球/好中球の比が低かったと述べられている。図21において、組成物がLYMP/NEUP比を高め、ウイルス感染による症状の重篤度を制限することができたことが示される。組成物がウイルスに対して予防作用を有することをある程度説明した。
【0163】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の精神及び原則の範囲内で、いかなる補正、同等置換、改良などはすべて本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】