(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾールのカルボン酸誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
C07D401/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509011
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020046947
(87)【国際公開番号】W WO2021034904
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391022452
【氏名又は名称】エフ エム シー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
(71)【出願人】
【識別番号】518259165
【氏名又は名称】エフエムシー アグロ シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジャンファ・マオ
(72)【発明者】
【氏名】ジンイー・マー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥンジィエ・パン
(72)【発明者】
【氏名】チュンヤン・フゥオ
【テーマコード(参考)】
4C063
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC22
4C063DD12
4C063EE03
(57)【要約】
式(I)及び(II)の化合物
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、X及びnが、本開示において定義されるとおりである)を調製するための方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
(式中、R
1がハロゲンであり;
各R
2が、独立して、C
1~C
4アルキル、C
2~C
4アルケニル、C
2~C
4アルキニル、C
3~C
6シクロアルキル、C
1~C
4ハロアルキル、C
2~C
4ハロアルケニル、C
2~C
4ハロアルキニル、C
3~C
6ハロシクロアルキル、ハロゲン、CN、NO
2、C
1~C
4アルコキシ、C
1~C
4ハロアルコキシ、C
1~C
4アルキルチオ、C
1~C
4アルキルスルフィニル、C
1~C
4アルキルスルホニル、C
1~C
4アルキルアミノ、C
2~C
8ジアルキルアミノ、C
3~C
6シクロアルキルアミノ、C
3~C
6(アルキル)シクロアルキルアミノ、C
2~C
4アルキルカルボニル、C
2~C
6アルコキシカルボニル、C
2~C
6アルキルアミノカルボニル、C
3~C
8ジアルキルアミノカルボニル又はC
3~C
6トリアルキルシリルであり;
R
3が、H又はC
1~C
4アルキルであり;
Xが、N又はCR
4であり;
R
4が、H又はR
2であり;
nが、0、1、2、又は3であり、ただし、XがCHである場合、nは、少なくとも1である)
を調製する方法であって、
(a)式(A)の化合物
【化2】
(式中、R
3が、C
1~C
4アルキルである)を;三臭化リンで処理すること;
(b)工程(a)から得られた前記生成物を臭素で処理すること;
及び式(I)の化合物(式中、R
3がHである)を調製する場合、(a)において形成された前記化合物を、化合物(式中、R
3がHである)に転化することを含む、方法。
【請求項2】
nが、1、2、又は3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1が、Cl又はBrである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R
2が、独立して、Cl又はBrである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1つのR
2が、3位にある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
R
3が、C
1~C
4アルキルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
XがNである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の前記化合物が、以下の構造:
【化3】
を有するエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートであり、式(A)の前記化合物が、構造:
【化4】
を有するエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(a)及び(b)が、独立して、15℃~50℃の温度で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、溶媒の存在下で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、アセトン、プロピオニトリル、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、及び1,2-ジクロロエタンから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、アセトニトリル、クロロベンゼン、ジクロロメタン、及び1,2-ジクロロエタンから選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒がアセトニトリルである、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(c)工程(b)から得られた前記生成物を塩基で処理することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基が、固体炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルイミダゾール、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記塩基が、固体炭酸水素ナトリウム、飽和炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムから選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記塩基が、固体炭酸水素ナトリウムである、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)から得られた前記生成物を、前記固体炭酸水素ナトリウムで処理した後、水を加えることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記塩基が、飽和炭酸水素ナトリウム溶液である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(b)から得られた前記生成物を、前記飽和炭酸水素ナトリウム溶液で処理した後、固体炭酸水素ナトリウムを加えることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記塩基が、炭酸ナトリウム溶液である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記塩基が、炭酸カリウム溶液である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
任意選択的に、式(I)の化合物を単離することをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
式(II)の化合物
【化5】
(式中、R
1がハロゲンであり;
各R
2が、独立して、C
1~C
4アルキル、C
2~C
4アルケニル、C
2~C
4アルキニル、C
3~C
6シクロアルキル、C
1~C
4ハロアルキル、C
2~C
4ハロアルケニル、C
2~C
4ハロアルキニル、C
3~C
6ハロシクロアルキル、ハロゲン、CN、NO
2、C
1~C
4アルコキシ、C
1~C
4ハロアルコキシ、C
1~C
4アルキルチオ、C
1~C
4アルキルスルフィニル、C
1~C
4アルキルスルホニル、C
1~C
4アルキルアミノ、C
2~C
8ジアルキルアミノ、C
3~C
6シクロアルキルアミノ、C
3~C
6(アルキル)シクロアルキルアミノ、C
2~C
4アルキルカルボニル、C
2~C
6アルコキシカルボニル、C
2~C
6アルキルアミノカルボニル、C
3~C
8ジアルキルアミノカルボニル又はC
3~C
6トリアルキルシリルであり;
R
3が、H又はC
1~C
4アルキルであり;
Xが、N又はCR
4であり;
R
4が、H又はR
2であり;nが、0、1、2、又は3であり、ただし、XがCHである場合、nは、少なくとも1である)
を調製するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
nが、1、2、又は3である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
R
1が、Cl又はBrである、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
R
2が、独立して、Cl又はBrである、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
1つのR
2が、3位にある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
R
3が、C
1~C
4アルキルである、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
XがNである、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
式(II)の前記化合物が、以下の構造:
【化6】
を有するエチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートである、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
式(II)の前記化合物を単離することをさらに含む、請求項24~31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月19日に出願された米国仮特許出願第62/888,667号、及び2019年8月22日に出願された米国仮特許出願第62/890,154号の利益を主張するものであり、これらの開示内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、新規な一工程臭素化プロセスを用いた3-ハロ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾールの調製に関する。本明細書に開示される方法によって調製される化合物は、殺虫剤として興味深い特定のアントラニルアミド化合物の調製に有用である。
【背景技術】
【0003】
エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートは、例えば、殺虫剤クロラントラニリプロール及びシアントラニリプロールなどの、アントラニルアミドの調製における中間体である。二工程プロセスにおけるエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートからのエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートの調製は、DuPontに付与された特許文献1に記載されている。第1の工程において、エチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートが、塩化ベンゼンスルホニルで処理されて、エチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-((フェニルスルホニル)オキシ)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートが得られる。第2の工程において、エチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-((フェニルスルホニル)オキシ)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートが、酢酸中の臭化水素の溶液で処理されて、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートの86%の全収率が得られた。リン酸オキシブロミド(POBr3)又は五臭化リン(PBr5)を用いた一工程臭素化プロセスなどの、エチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートからのエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートの調製のための別の方法も記載されている。しかしながら、POBr3及びPBr5は、アントラニルアミド化合物の製造に必要な規模で市販されていない。PBr5は、製造するのに最も安価である可能性があるが、それは、硬質の固体ブロックへと凝集する傾向を有し、それにより輸送及び貯蔵が難しくなる。この問題を回避する一方法は、PBr3を臭素と反応させることによって、PBr5をインサイチュで調製することによる(特許文献2)。PBr3及び臭素は両方とも、十分な規模で市販されている。この選択肢において、PBr3が、臭素で処理され、PBr5のスラリーが得られ、それにエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートが加えられる。しかしながら、この方法の欠点の一つは、PBr5が、それが形成されている反応器の壁を被覆しがちで、混合物の、別の反応器への移動を困難にすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,965,032号明細書
【特許文献2】中国特許出願第102399211A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート及びその誘導体を、好都合な及びコスト効率の高い方法で調製するのに有用な新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
式(I)の化合物
【化1】
(式中、R
1がハロゲンであり;
各R
2が、独立して、C
1~C
4アルキル、C
2~C
4アルケニル、C
2~C
4アルキニル、C
3~C
6シクロアルキル、C
1~C
4ハロアルキル、C
2~C
4ハロアルケニル、C
2~C
4ハロアルキニル、C
3~C
6ハロシクロアルキル、ハロゲン、CN、NO
2、C
1~C
4アルコキシ、C
1~C
4ハロアルコキシ、C
1~C
4アルキルチオ、C
1~C
4アルキルスルフィニル、C
1~C
4アルキルスルホニル、C
1~C
4アルキルアミノ、C
2~C
8ジアルキルアミノ、C
3~C
6シクロアルキルアミノ、C
3~C
6(アルキル)シクロアルキルアミノ、C
2~C
4アルキルカルボニル、C
2~C
6アルコキシカルボニル、C
2~C
6アルキルアミノカルボニル、C
3~C
8ジアルキルアミノカルボニル又はC
3~C
6トリアルキルシリルであり;
R
3が、H又はC
1~C
4アルキルであり;
Xが、N又はCR
4であり;
R
4が、H又はR
2であり;
nが、0、1、2、又は3であり、ただし、XがCHである場合、nは、少なくとも1である)
を調製する方法であって、(1)式(A)の化合物
【化2】
(式中、X、R
2、及びnが、式(I)について上述されるとおりであり、R
3が、C
1~C
4アルキルである)を;三臭化リン(PBr
3)で処理すること;及び(2)得られた生成物を臭素(Br
2)で処理すること;及び式(I)の化合物(式中、R
3がHである)を調製する場合、
(3)(2)において形成された化合物を、化合物(式中、R
3がHである)に転化することを含む、方法が、本明細書において提供される。
【0007】
式(II)の化合物
【化3】
(式中、R
1がハロゲンである)(及びX、R
2、R
3及びnが、式(I)について上述されるとおりである)を調製する方法も開示される。本方法は、(4)式(I)の化合物を形成するための上に記載される工程に従って式(A)の化合物を処理すること;及び式(I)の化合物(式中、R
3が、C
1~C
4アルキルである)を用いて、式(II)の化合物(式中、R
3がHである)を調製する場合、(5)(3)において形成された化合物を、式(II)の化合物(式中、R
3がHである)に転化することによって特徴付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の記載において、単独で又は「アルキルチオ」若しくは「ハロアルキル」などの複合語で使用される「アルキル」という用語は、直鎖状又は分枝鎖状アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、又は異なるブチル、ペンチル若しくはヘキシル異性体を含む。「アルケニル」は、直鎖状又は分枝鎖状アルケン、例えば1-プロペニル、2-プロペニル、及び異なるブテニル、ペンテニル及びヘキセニル異性体を含み得る。「アルケニル」は、ポリエン、例えば1,2-プロパジエニル及び2,4-ヘキサジエニルも含む。「アルキニル」は、直鎖状又は分枝鎖状アルキン、例えば1-プロピニル、2-プロピニル及び異なるブチニル、ペンチニル及びヘキシニル異性体を含む。「アルキニル」は、複数の三重結合から構成される部分、例えば2,5-ヘキサジイニルも含み得る。「アルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ及び異なるブトキシ、ペントキシ及びヘキシルオキシ異性体を含む。「アルコキシアルキル」は、アルキルにおけるアルコキシ置換を示す。「アルコキシアルキル」の例としては、CH3OCH2、CH3OCH2CH2、CH3CH2OCH2、CH3CH2CH2CH2OCH2及びCH3CH2OCH2CH2が挙げられる。「アルキルチオ」は、分枝鎖状又は直鎖状アルキルチオ部分、例えばメチルチオ、エチルチオ、及び異なるプロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ及びヘキシルチオ異性体を含む。「シクロアルキル」は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含む。「シクロアルキルアルキル」は、シクロアルキル基で置換されたアルキル基を示し、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルプロピル及びシクロヘキシルメチルを含む。「シクロアルキルアミノ」は、アミノ窒素原子が、シクロアルキル基及び水素原子に結合されることを意味し、シクロプロピルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノ及びシクロヘキシルアミノなどの基を含む。「(アルキル)シクロアルキルアミノ」は、水素原子がアルキル基で置換されたシクロアルキルアミノ基を意味し;例としては、(アルキル)シクロプロピルアミノ、(アルキル)シクロブチルアミノ、(アルキル)シクロペンチルアミノ及び(アルキル)シクロヘキシルアミノなどの基が挙げられる。好ましくは、(アルキル)シクロアルキルアミノ中のアルキルが、C1~C4アルキルである一方、シクロアルキルアミノ及び(アルキル)シクロアルキルアミノ中のシクロアルキルは、C3~C6シクロアルキルである。
【0009】
本出願における用語「アリール」は、芳香環若しくは環系又は複素芳香環若しくは環系を指し、各環又は環系は、任意選択的に置換される。「芳香環系」という用語は、多環式環系の少なくとも1つの環が芳香族である完全不飽和炭素環及び複素環を示す。芳香族は、環原子のそれぞれが本質的に同じ面内にあり、環の面に垂直なp-軌道を有し、(4n+2)π電子は、nが0又は正の整数である場合、ヒュッケル則に従うように環に結合されることを示す。「芳香族炭素環系」という用語は、完全芳香族炭素環、及び多環式環系の少なくとも1つの環が芳香族である炭素環(例えばフェニル及びナフチル)を含む。「複素芳香環又は環系」という用語は、完全芳香族複素環、及び多環式環系の少なくとも1つの環が芳香族であり、少なくとも1つの環原子が炭素でなく、窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含有し得るが、ただし、各複素芳香環が、4個以下の窒素、2個以下の酸素及び2個以下の硫黄を含有する複素環を含む(ここで、芳香族は、ヒュッケル則が満たされることを示す)。複素環系は、前記炭素又は窒素における水素の置換によって、任意の利用可能な炭素又は窒素を介して結合され得る。より詳細には、「アリール」という用語は、部分
【化4】
を指し、式中、R
2及びnが、上記のように定義され、「3」が、この部分における置換基の3位を示す。
【0010】
「ハロゲン」という用語は、単独で又は「ハロアルキル」などの複合語で、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を含む。さらに、「ハロアルキル」などの複合語で使用される場合、前記アルキルは、同じか又は異なり得るハロゲン原子で部分的に又は完全に置換され得る。「ハロアルキル」の例としては、F3C、ClCH2、CF3CH2及びCF3CCl2が挙げられる。「ハロアルケニル」、「ハロアルキニル」、「ハロアルコキシ」などの用語は、「ハロアルキル」という用語と同様に定義される。「ハロアルケニル」の例としては、(Cl)2C=CHCH2及びCF3CH2CH=CHCH2が挙げられる。「ハロアルキニル」の例としては、HC≡CCHCl、CF3C≡C、CCl3C≡C及びFCH2C≡CCH2が挙げられる。「ハロアルコキシ」の例としては、CF3O、CCl3CH2O、HCF2CH2CH2O及びCF3CH2Oが挙げられる。
【0011】
「アルキルカルボニル」の例としては、C(O)CH3、C(O)CH2CH2CH3及びC(O)CH(CH3)2が挙げられる。「アルコキシカルボニル」の例としては、CH3OC(=O)、CH3CH2OC(=O)、CH3CH2CH2OC(=O)、(CH3)2CHOC(=O)及び異なるブトキシ-又はペントキシカルボニル異性体が挙げられる。「アルキルアミノカルボニル」及び「ジアルキルアミノカルボニル」という用語は、例えば、CH3NHC(=O)、CH3CH2NHC(=O)及び(CH3)2NC(=O)を含む。
【0012】
置換基中の炭素原子の総数は、「Ci~Cj」という接頭語(ここで、i及びjが、1~8の数である)によって示される。例えば、C1~C3アルキルスルホニルは、メチルスルホニルからプロピルスルホニルを示す。上記の記載において、式(I)の化合物が、複素芳香環を含む場合、全ての置換基が、前記炭素又は窒素における水素の置換によって、任意の利用可能な炭素又は窒素を介してこの環に結合される。
【0013】
基が、水素、例えばR4であり得る置換基を含む場合、この置換基が、水素と考えられる場合、これが、非置換である前記基に相当することが認識される。
【0014】
本発明の特定の化合物は、1つ以上の立体異性体として存在し得る。様々な立体異性体は、鏡像異性体、ジアステレオマー、アトロプ異性体及び幾何異性体を含む。当業者は、1つの立体異性体が、より活性であり得、及び/又は他の立体異性体と比べて富化されるとき若しくは他の立体異性体から分離されるとき、有益な効果を示し得ることを理解するであろう。さらに、当業者は、前記立体異性体を分離し、富化し、及び/又は選択的に調製する方法を認識している。したがって、本開示の実施形態は、以下を含む:
【0015】
実施形態1.式(I)の化合物(式中、nが、1、2、又は3である)を調製する方法。
【0016】
実施形態2.nが1である、実施形態1に記載の方法。
【0017】
実施形態3.R1が、Cl又はBrである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0018】
実施形態4.R1がBrである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
実施形態5.各R2が、独立して、Cl又はBrであり、1つのR2が、3位にある、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
実施形態6.各R2が、3位にあるClである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
実施形態7.R3が、C1~C4アルキルである、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
実施形態8.R3がEtである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0023】
実施形態9.XがNである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
実施形態10.方法が、溶媒の存在下で行われる、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
実施形態11.溶媒が、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、アセトン、プロピオニトリル、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、及び1,2-ジクロロエタンから選択される、実施形態10に記載の方法。
【0026】
実施形態12.溶媒が、アセトニトリル、クロロベンゼン、ジクロロメタン、及び1,2-ジクロロエタンから選択される、実施形態11に記載の方法。
【0027】
実施形態13.溶媒がアセトニトリルである、実施形態11又は12に記載の方法。
【0028】
実施形態14.工程(2)の後の生成物を塩基で処理することをさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
実施形態15.塩基が、固体炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルイミダゾール、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
実施形態16.塩基が、固体炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウムから選択される、実施形態14~15のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
実施形態17.塩基が、固体炭酸水素ナトリウムである、実施形態14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
実施形態18.生成物を、固体炭酸水素ナトリウムで処理した後、水を加えることをさらに含む、実施形態17に記載の方法。
【0033】
実施形態19.塩基が、飽和炭酸水素ナトリウム溶液である、実施形態14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
実施形態20.生成物を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で処理した後、固体炭酸水素ナトリウムを加えることをさらに含む、実施形態19に記載の方法。
【0035】
実施形態21.塩基が、炭酸ナトリウム溶液である、実施形態14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施形態22.塩基が、炭酸カリウム溶液である、実施形態14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施形態23.式(I)の化合物を単離することをさらに含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施形態24.式(I)の化合物が、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートである、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
実施形態25.式(II)の化合物(式中、nが、1、2、又は3である)を調製する方法。
【0040】
実施形態26.R1が、Cl又はBrである、実施形態25に記載の方法。
【0041】
実施形態27.R2が、独立して、Cl又はBrである、実施形態25~26のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施形態28.1つのR2が、3位にある、実施形態27に記載の方法。
【0043】
実施形態29.R3が、C1~C4アルキルである、実施形態25~28のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
実施形態30.XがNである、実施形態25~29のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
実施形態31.式(II)の化合物を単離することをさらに含む、実施形態25~30のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
実施形態32.式(II)の化合物が、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートである、実施形態25~30のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
実施形態33.工程(1)及び(2)が、独立して、15℃~50℃の温度で行われる、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。一実施形態において、工程(1)及び(2)が行われ得る有用な温度としては、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、及び50℃が挙げられる。
【0048】
実施形態34.式(I)の化合物が、以下の構造:
【化5】
を有するエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートであり、式(A)の化合物が、構造:
【化6】
を有するエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートである、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
式(I)及び式(II)の化合物を調製する段階的な方法が、後述される。
【0050】
式(A)の化合物の調製方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第6,965,032 B2号明細書に記載されている。
【0051】
本明細書において提供される式(I)及び式(II)の化合物を調製するための方法は、(1)溶媒の存在下で、式(A)の化合物
【化7】
(式中、X、R
2及びnが、上記のように定義されるとおりであり、R
3がHであり;又はR
3が、C
1~C
4アルキルである)を、PBr
3で処理することを含む。次に、得られた生成物を(2)臭素で処理して、式(I)の化合物;
【化8】
(式中、X、R
1、R
2及びnが、上記のように定義されるとおりであり、R
3がHであり;又はR
3が、C
1~C
4アルキルである)を形成する。
【0052】
過剰な臭素のため、ある量の式(I)の化合物が、酸化されて、式(II)の化合物
【化9】
(式中、X、R
1、R
2及びnが、上記のように定義されるとおりであり、R
3がHであり;又はR
3が、C
1~C
4アルキルである)を形成する。
【0053】
スキーム1は、工程(1)及び(2)をより詳細に例示する。式(A)の化合物は、まず、(1)溶媒の存在下で、PBr
3で処理される。有用な溶媒としては、限定はされないが、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、アセトン、プロピオニトリル、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンが挙げられる。一実施形態において、溶媒は、アセトニトリル、クロロベンゼン、ジクロロメタン、及び1,2-ジクロロエタンから選択される。一実施形態において、アセトニトリルが、溶媒として使用される。次に、得られた生成物は、(2)臭素で処理されて、式(I)の化合物の臭化水素酸塩のスラリーが得られる。
【化10】
【0054】
次に、反応生成物(reaction mass)が、限定はされないが、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルイミダゾール、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムを含む無機塩基で処理される。一実施形態において、反応生成物は、固体炭酸水素ナトリウムで処理された後、水が加えられて、固体が溶解される。一実施形態において、反応生成物は、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、続いて固体炭酸水素ナトリウムで処理されて、中和が完了される。一実施形態において、反応生成物は、炭酸ナトリウム溶液又は炭酸カリウム溶液を加えることによって中和される。
【0055】
任意選択的に、所望の生成物、式(I)の化合物は、限定はされないが、結晶化、抽出及び蒸留を含む、当業者に公知の方法によって単離され得る。本明細書に開示される方法を用いて、式(I)の化合物の約90~95%の収率が達成される。式(I)の化合物に加えて、記載される方法が約1%~5%の式(II)の化合物を生じることは注目すべきことである。この方法がPBr5の形成を回避することが留意されるべきである。
【0056】
さらなる詳細な説明なしで、当業者は、上記の説明を用いて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、単に例示的なものであると解釈されるべきであり、本開示を全く限定するものではない。以下の実施例のための出発材料は、手順が他の実施例に記載される特定の調製実施例によって必ずしも調製されているとは限らないことがある。パーセンテージは、クロマトグラフィー溶媒混合物を除いて又は特に示される場合を除いて、重量基準である。クロマトグラフィー溶媒混合物についての部及びパーセンテージは、特に示されない限り、体積基準である。本明細書に列挙されるいずれの数値範囲も、下限値から上限値までの全ての値を含むことも理解される。例えば、範囲が10~50として記載される場合、12~30、20~40、又は30~50などの値が、本明細書において明示的に列挙されることが意図される。これらは、特に意図されるものの例であるに過ぎず、最低値と最高値との間の数値(最低値及び最高値を含む)のあらゆる可能な組合せが、本出願において明示的に記載されるものと見なされる。
【0057】
1H NMRスペクトルが、テトラメチルシランから低磁場側(downfield)でのppmで報告され;「s」が、一重線を意味し、「d」が、二重線を意味し、「t」が、三重線を意味し、「q」が、四重線を意味し、「m」が、多重線を意味し、「dd」が、二重線の二重線を意味し、「dt」が、三重線の二重線を意味し、「br s」が、幅広の一重線を意味する。以下の実施例に記載される全ての試薬は、商業的供給源から入手可能である。
【実施例】
【0058】
実施例1
中和のために固体炭酸水素ナトリウムを用いたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート*及びエチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート**の調製
150gのエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートを、0.5時間にわたって30~50℃で、750mlのアセトニトリル中の90.3gの三臭化リン(PBr3)で処理した。次に、混合物を、30~40℃で、53.3gの臭素(Br2)で処理する。反応生成物を、1~2時間にわたって加熱還流させた(約83℃で、これは、約80℃~約83℃で行われ得る)。反応が完了した後、得られたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート-HBrスラリーを、140gの固体炭酸水素ナトリウムで少しずつ処理した。次に、混合物を、600gの水を少しずつ加えることによって希釈した。二相混合物をpH7~8に調整し、相を分離した。有機相を減圧下で濃縮して、アセトニトリルを除去した。残渣を、120gのEtOH及び150gの水と混合した。得られたスラリーをろ過して、92%の収率に相当する、173.7gのエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート(98.1重量%)を得た。過剰な臭素の存在のため、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートの一部がさらに酸化されて、約1.0%~5.0%の収率に相当する、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートが生成された。
【0059】
固体重炭酸塩による中和が、反応生成物による炭酸水素ナトリウムの封入のため、完了しないことが多いことが留意されるべきである。相間移動触媒の添加が必要とされることが多い。意外なことに、この場合、中和反応が、相間移動触媒なしで完了する。したがって、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート-HBrスラリーを生成するいずれかの方法が、本明細書に開示される固体重炭酸塩の添加から同様に利益を得られ得ることが予測される。
【0060】
実施例2
インサイチュで調製されるPBr5を用いたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート*の調製
この実施例において、PBr3を臭素と反応させることによって、PBr5をインサイチュで調製した。その後、エチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートを、PBr5スラリーに加える。具体的には、81gのPBr3及び48gのBr2を、2時間にわたって20℃で、1490mLのアセトニトリル中で混合した。次に、得られたPBr5スラリーを、68gのエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートで処理し、混合物を、2時間にわたって80℃に加熱した。反応が完了した後、溶媒を圧力下で除去した。残渣をジクロロメタンに溶解させ、溶液を水で洗浄した。有機相を濃縮して、88%の収率に相当する、82.1gのエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート(90重量%)を得た。
【0061】
実施例3
中和のために炭酸水素ナトリウム溶液及び固体炭酸水素ナトリウムを用いたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート*及びエチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート**の調製
135gのエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートを、0.5時間にわたって30~50℃で、675mlのアセトニトリル中の74.4gの三臭化リン(PBr3)で処理した。次に、混合物を、30~40℃で、43.9gの臭素(Br2)で処理する。反応生成物を、1~2時間にわたって加熱還流させた(約83℃で)。反応が完了した後、得られたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート-HBrスラリーを、水中の720gの炭酸水素ナトリウム溶液(50gの固体炭酸水素ナトリウムを、675gの水に溶解させた)で少しずつ処理し、次に、さらなる65gの固体炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えた。二相混合物をpH7~8に調整し、相を分離した。有機相を減圧下で濃縮して、アセトニトリルを除去した。残渣を、106gのEtOH及び135gの水と混合した。得られたスラリーをろ過して、91%の収率に相当する、155gのエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート(98.0重量%)を得た。過剰な臭素の存在のため、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートの一部がさらに酸化されて、約1.0%~5.0%の収率に相当する、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートが生成された。
【0062】
実施例4
中和のために炭酸ナトリウム溶液及び固体炭酸ナトリウムを用いたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート*及びエチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート**の調製
135gのエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートを、0.5時間にわたって30~50℃で、675mlのアセトニトリル中の74.4gの三臭化リン(PBr3)で処理した。次に、混合物を、30~40℃で、43.9gの臭素(Br2)で処理する。反応生成物を、1~2時間にわたって加熱還流させた(約83℃で)。反応が完了した後、得られたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート-HBrスラリーを、水中の748gの炭酸ナトリウム溶液(73gの固体炭酸ナトリウムを、675gの水に溶解させた)で少しずつ処理した。二相混合物をpH7~8に調整し、相を分離した。有機相を減圧下で濃縮して、アセトニトリルを除去した。残渣を、106gのEtOH及び135gの水と混合した。得られたスラリーをろ過して、90%の収率に相当する、152gのエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート(98.5重量%)を得た。過剰な臭素の存在のため、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートの一部がさらに酸化されて、約1.0%~5.0%の収率に相当する、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートが生成された。
【0063】
実施例5
中和のために炭酸カリウム溶液及び固体炭酸カリウムを用いたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート*及びエチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート**の調製
135gのエチル1-(3-クロロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートを、0.5時間にわたって30~50℃で、675mlのアセトニトリル中の74.4gの三臭化リン(PBr3)で処理した。次に、混合物を、30~40℃で、43.9gの臭素(Br2)で処理する。反応生成物を、1~2時間にわたって加熱還流させた(約83℃で)。反応が完了した後、得られたエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート-HBrスラリーを、水中の768gの炭酸カリウム溶液(93gの固体炭酸カリウムを、675gの水に溶解させた)で少しずつ処理した。二相混合物をpH7~8に調整し、相を分離した。有機相を減圧下で濃縮して、アセトニトリルを除去した。残渣を、106gのEtOH及び135gの水と混合した。得られたスラリーをろ過して、92%の収率に相当する、155gのエチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレート(98.3重量%)を得た。過剰な臭素の存在のため、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートの一部がさらに酸化されて、約1.0%~5.0%の収率に相当する、エチル3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートが生成された。
*1H NMR(DMSO-d6、400MHz)δ=1.12(t,J=7.0Hz、3H)、3.24-3.31(m,1H)、3.54-3.61(m,1H)、4.08(q,J=7.0Hz、2H)、5.14-5.19(m,1H)、6.98(dd,J=4.8Hz、J=7.6Hz、1H)、7.83(d,J=7.7Hz、1H)、8.10(d,J=4.4Hz、1H).
**1H NMR((DMSO-d6、400MHz)δ=1.20(t,J=7.2Hz、3H)、4.23(q,J=7.2Hz、2H)、6.94(s,1H)、7.44(dd,J=4.8Hz、J=8.1Hz、1H)、7.91(d,J=8.1Hz、1H)、8.51(d,J=4.8Hz、1H).
【0064】
当該技術分野において公知の方法と一緒に、本明細書に記載される手順によって、表1~3の以下の化合物が調製され得る。以下の略語が、表中で使用される:tが、第三級であり、sが、第二級であり、nが、ノルマルであり、iが、イソであり、Meが、メチルであり、Etが、エチルであり、Prが、プロピルであり、i-Prが、イソプロピルであり、t-Buが、第三級ブチルである。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
有用性
式(I)、(II)及び(A)の化合物は、式(III)の化合物
【化11】
(式中、X、R
1、R
2及びnが、上記のように定義され;R
6が、CH
3、Cl又はBrであり;R
7が、CN、F、Cl、Br、I又はCF
3であり;R
8が、C
1~C
4アルキルである)を調製するための合成中間体として有用である。
【0069】
式(III)の化合物は、殺虫剤として有用である。
【0070】
式(III)の化合物は、米国特許第6,965,032 B2号明細書において既に開示される方法によって、式(II)の化合物から並びにひいては式(A)及び(I)の化合物から調製され得る。
【国際調査報告】