(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/04 20060101AFI20221024BHJP
F25B 17/08 20060101ALI20221024BHJP
B01D 1/26 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C02F1/04 A
F25B17/08 Z
B01D1/26 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510204
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2020009872
(87)【国際公開番号】W WO2021033935
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101687
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518304915
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ オーシャン サイエンス テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,ホ セン
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ホ
(72)【発明者】
【氏名】イム,スン テク
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ドク ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ドク
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ソン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン シク
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン フン
【テーマコード(参考)】
3L093
4D034
4D076
【Fターム(参考)】
3L093NN03
3L093PP04
3L093QQ05
4D034AA01
4D034BA03
4D034CA14
4D034CA21
4D076AA22
4D076BA24
4D076BA35
4D076BB01
4D076CD25
4D076DA35
4D076EA06Y
4D076EA11Y
(57)【要約】
本発明は、海水を淡水化させる吸着式海水淡水化(adsorption desalination、AD)システムに係り、高温水蒸気及び低温水蒸気を生産する多重効用蒸発装置(100)と、前記多重効用蒸発装置(100)で生産された高温水蒸気又は低温水蒸気を受け取って水分を吸着又は脱着する吸着剤(220)、及び冷却水又は温水を介して吸着剤(220)に熱を伝達可能な熱交換チューブ(210)を含む複数の反応部(200)と、前記反応部(200)の吸着剤(220)から脱着された水分が含有された水蒸気を淡水として回収することができるように凝縮させる凝縮器(300)と、前記反応部(200)の熱交換チューブ(210)に冷却水又は温水を選択的に供給する冷温水ライン(400)と、前記多重効用蒸発装置(100)と前記反応部(200)、及び前記反応部(200)と前記凝縮器(300)をそれぞれ連結する水蒸気ラインと、前記水蒸気ラインに設けられたバルブと、前記冷温水ライン(400)から前記熱交換チューブ(210)へ提供される冷却水又は温水を選択的に供給するために前記バルブの作動を制御するバルブ制御部と、を含む構成を介して、海水からの淡水(freshwater)生産量を極大化することができ、地域(district)冷房及び住宅(residential)冷房のための冷水(chilled water)を副産することができる、多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温水蒸気及び低温水蒸気を生産する多重効用蒸発装置(100)と、
前記多重効用蒸発装置(100)で生産された高温水蒸気又は低温水蒸気を受け取って水分を吸着又は脱着する吸着剤(220)、及び冷却水又は温水を介して前記吸着剤(220)に熱を伝達可能な熱交換チューブ(210)を含む複数の反応部(200)と、
前記反応部(200)の吸着剤(220)から脱着された水分が含有された水蒸気を淡水として回収することができるように凝縮させる凝縮器(300)と、
前記反応部(200)の熱交換チューブ(210)に冷却水又は温水を選択的に供給する冷温水ライン(400)と、
前記多重効用蒸発装置(100)と前記反応部(200)、及び前記反応部(200)と前記凝縮器(300)をそれぞれ連結する水蒸気ラインと、
前記水蒸気ラインに設けられたバルブと、
前記冷温水ライン(400)から前記熱交換チューブ(210)へ提供される冷却水又は温水を選択的に供給するために前記バルブの作動を制御するバルブ制御部と、を含むことを特徴とする、多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システム。
【請求項2】
前記反応部(200)は、
前記吸着剤(220)及び熱交換チューブ(210)をそれぞれ含むベッドA(200a)、ベッドB(200b)及びベッドC(200c)で構成され、
前記ベッドA(200a)、ベッドB(200b)及びベッドC(200c)は、それぞれ前記バルブ制御部の制御を介して、前記多重効用蒸発装置(100)で生成された高温水蒸気又は低温水蒸気の供給を選択的に受け、前記冷温水ラインを介して冷却水又は温水の供給を選択的に受けて低温吸着工程、高温吸着工程、予熱工程、脱着工程、予冷工程を順次行うことを特徴とする、請求項1に記載の多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システム。
【請求項3】
前記ベッドA(200a)、ベッドB(200b)及びベッドC(200c)のうち、いずれか一つが低温吸着工程を行うとき、もう一つは高温吸着工程を行い、残りの一つは脱着工程を行うことを特徴とする、請求項2に記載の多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システム。
【請求項4】
前記多重効用蒸発装置(100)は、
複数の連続した蒸発器及び高温水蒸気を排出する高圧蒸発器(130a)を含む第1蒸発部(110)と、
複数の連続した蒸発器及び最終低温水蒸気を排出する低圧蒸発器(130b)を含む第2蒸発部(120)と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システム。
【請求項5】
前記第1蒸発部(110)と前記第2蒸発部(120)とは、互いに連結され、前記第1蒸発部(110)の蒸発器(A1)から前記第2蒸発部(120)の低圧蒸発器(130b)まで内部で生成された凝縮水が順次移動して淡水を生産することを特徴とする、請求項4に記載の多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システム。
【請求項6】
前記蒸発器(130)は、
気体を収容する放熱管体(132)と、
前記放熱管体(132)の表面に海水を噴射する噴射ノズル(133)と、
前記噴射ノズル(133)の上部に設けられ、海水の蒸発による水蒸気から液滴を分離するデミスター(134)と、
前記噴射ノズル(133)、放熱管体(132)及びデミスター(134)を収容するハウジング(131)と、を含むことを特徴とする、請求項4に記載の多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水を淡水化させる吸着式海水淡水化システムに係り、より具体的には、海水から淡水生産量を極大化することができ、地域及び住宅冷房のための冷水を付加的に生産することができる、多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸着式海水淡水化システムは、蒸発器を介して海水から水分を蒸発させて分離した後、吸着工程で水蒸気をシリカゲルの表面に吸着させ、脱着工程でシリカゲルの表面から水蒸気を脱着させた後、脱着された水蒸気を凝縮器に供給して液体の状態に凝縮させることにより淡水を回収するシステムである。
【0003】
ここで、吸着式海水淡水化システムは、吸着工程で水蒸気をシリカゲルに吸着させるにあたり、吸着時に発生する熱を冷却させるために冷却水が要求され、脱着工程でシリカゲルから水蒸気を脱着させるためには温水が要求される。
【0004】
このために、従来の吸着式海水淡水化システムでは、化石エネルギーを利用して温水を供給したが、運転コストが大きく増加し、システム効率が低下するという問題点があり、別途の冷却水が必要であるという問題点がある。
【0005】
図1に示すように、従来のAD(adsorption desalination)システムは、吸着ベッド及び脱着ベッド内に親水性の吸着剤3を備えた熱交換チューブ4が搭載されており、蒸発器と凝縮器が吸着及び脱着ベッドと水蒸気ライン5、6を介して連結されている。
【0006】
脱気タンク15で脱気された海水は、配管14を介してノズル型の海水分配器(brine distributor)が設置された降下膜式蒸発器(falling-film evaporator)11へ供給され、海水は、配管12を介して循環する。
【0007】
そして、蒸発器11は、水蒸気ライン5に設置されたバルブの作動を介して、吸着工程に用いられる吸着ベッド2に連結され、吸着ベッド2内の吸着剤は、蒸発器内の海水から蒸発した水蒸気を吸着する。
【0008】
この場合、吸着剤の水蒸気吸着駆動力(driving force)は、ファンデルワールス力(van der Waals force)と弱い静電気力(electrostatic force)に基づく物理吸着(physisorption)に起因する。
【0009】
ここで、海水の蒸発潜熱により蒸発器から冷水13が生産され、これは、住宅冷房又は地域冷房のために使用できる。また、吸着剤の水蒸気吸着時に発生した熱は、吸着ベッド内の熱交換チューブに供給された冷却水9によって除去される。
【0010】
前述した吸着工程と同時に、脱着工程に用いられる脱着ベッド1を、水蒸気ライン6に設置されたバルブ作動を介して凝縮器7に連結し、脱着ベッド内の熱交換チューブに温水8を供給することにより、吸着剤に吸着されている水蒸気は脱着される。
【0011】
このとき、脱着された水蒸気は、冷却水が供給される凝縮器へ移動して凝縮し、生産された淡水は、貯蔵タンク10に貯蔵される。前述した吸着ベッド2及び脱着ベッド1は、予め定めた一定の時間後(half cycle)、それぞれ予熱(preheating)及び予冷(precooling)のための交替時間(switching time)を経て脱着工程と吸着工程が交互に切り替えられ、これにより従来のADシステムの1サイクルが完了する。
【0012】
前述した従来のADサイクルの基本作動ロジックは、
図2に示すように、サイクル#1-交替#1-サイクル#2-交替#2の順序で繰り返し行われる。
【0013】
しかし、上述した従来のADシステムでは、1つの蒸発器と一対の吸着ベッド及び脱着ベッドとから構成され、使用された吸着剤の質量と吸着剤の物理的特性に基づくため、淡水生産量と効率が低いという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、その目的は、複数の連続した蒸発器を含む第1蒸発部及び第2蒸発部を介して高温水蒸気及び低温水蒸気を生産及び提供する多重効用蒸発装置(multi-effect evaporator)と、3つの吸着及び脱着ベッドを有するADシステムを含む構成であって、性能係数(coefficient of performance、COP)を補完し、淡水生産量を最大化することができ、それぞれの第1蒸発部及び第2蒸発部を介して付加的に生産された冷水を地域冷房(district cooling)及び住宅冷房(residential cooling)のための用水として活用することができる、多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態による多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムは、高温水蒸気及び低温水蒸気を生産する多重効用蒸発装置100と、前記多重効用蒸発装置100で生産された高温水蒸気又は低温水蒸気を受けて水分を吸着又は脱着する吸着剤220、及び冷却水又は温水を介して前記吸着剤220に熱を伝達可能な熱交換チューブ210を含む複数の反応部200と、前記反応部200の吸着剤220から脱着された水分が含まれた水蒸気を淡水として回収することができるように凝縮させる凝縮器300と、前記反応部200の熱交換チューブ210に冷却水又は温水を選択的に供給する冷温水ライン400と、前記多重効用蒸発装置100と前記反応部200、及び前記反応部200と前記凝縮器300をそれぞれ連結する水蒸気ラインと、前記水蒸気ラインに設けられたバルブと、前記冷温水ライン400から前記熱交換チューブ210へ提供される冷却水又は温水を選択的に供給するために前記バルブの作動を制御するバルブ制御部と、を含む。
【0016】
前記反応部200は、前記吸着剤220及び熱交換チューブ210をそれぞれ含むベッドA200a、ベッドB200b及びベッドC200cから構成され、前記ベッドA、ベッドB及びベッドCは、それぞれ前記バルブ制御部の制御を介して、前記多重効用蒸発装置100で生成された高温水蒸気又は低温水蒸気の供給を選択的に受け、前記冷温水ラインを介して冷却水又は温水の供給を選択的に受けて低温吸着工程、高温吸着工程、予熱工程、脱着工程、予冷工程を順次行うことができる。
【0017】
前記ベッドA、ベッドB及びベッドCのうち、いずれか一つが低温吸着工程を行うとき、もう一つは高温吸着工程を行い、残りの一つは脱着工程を行うことができる。
【0018】
前記多重効用蒸発装置100は、複数の連続した蒸発器及び高温水蒸気を排出する高圧蒸発器130aを含む第1蒸発部110と、複数の連続した蒸発器及び最終低温水蒸気を排出する低圧蒸発器130bを含む第2蒸発部120と、を含むことができる。
【0019】
前記第1蒸発部110と前記第2蒸発部120とは、互いに連結され、前記第1蒸発部110の蒸発器A1から前記第2蒸発部120の低圧蒸発器130bまで内部で生成された凝縮水が順次移動して淡水を生産することができる。
【0020】
前記蒸発器130は、気体を収容する放熱管体132と、前記放熱管体132の表面に海水を噴射する噴射ノズル133と、噴射ノズル133の上部に設けられ、海水の蒸発による水蒸気から液滴を分離するデミスター134と、前記噴射ノズル133、放熱管体132及びデミスター134を収容するハウジング131と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
上述したように構成された本発明を提供することにより、性能係数(coefficient of performance、COP)及び淡水生産量を最大化することができ、多重効用蒸発装置を介して付加的に生産された冷房水を地域冷房(district cooling)及び住宅冷房(residential cooling)のための用水として活用することができ、多重効用法による海水と水蒸気の潜熱交換によって生成される凝縮水を追加的に淡水として活用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来の吸着式海水淡水化システムを示す構成図である。
【
図2】従来の吸着式海水淡水化システムに適用される作動ロジック表である。
【
図3】本発明に係る多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムを示す構成図である。
【
図4】本発明による多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムの詳細工程を示す表である。
【
図10】本発明に係る多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムの詳細工程別作動状態図である。
【
図11】本発明に係る多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムに適用される作動ロジックを介してベッドA、ベッドB、ベッドCの作動手順を示す表である。
【
図12】本発明による多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムの性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、同一の技術分野に属する通常の知識を有する者が容易に実施し得るように、添付図面を参照して好適な実施形態を詳細に説明する。
【0024】
先立って
図1を参照して説明したように、従来の吸着式海水淡水化システム(adsorption desalination、以下「ADシステム」)は、海水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発器、蒸発器から伝達された水蒸気を吸着剤に対して交互に吸着、脱着する2つの反応部と、反応部に吸着又は脱着のために冷却水及び温水を選択的に供給する冷温水ラインと、反応部から脱着されて排出される水蒸気を凝縮させて淡水を提供する凝縮器と、を有する。
【0025】
本発明の実施形態による多重効果蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムは、
図3乃至
図11に示すように、既存のADシステムで蒸発器の代わりに高温水蒸気及び低温水蒸気を同時に提供することができる多重効用蒸発装置100を適用し、3つ以上の反応部200を適用することを一特徴とする。
【0026】
前記多重効用蒸発装置100を介して高温水蒸気及び低温水蒸気を選択的に供給することができ、多重效用法(Multiple Effect Distillation)によってそれぞれ地域冷房及び住宅冷房を行うことができる。
【0027】
また、多重効用蒸発装置の2-蒸発器及び3-ベッドAD工程を介して吸着剤の有効平衡吸着量と脱着工程に対する最適のサイクルを実現して淡水化性能を向上させることができる。
【0028】
図3は本発明の一実施形態に係る多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムを示す構成図、
図4は本発明の実施形態に係る多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化工程の各ステップを示す図である。
【0029】
前記多重効用蒸発装置100は、それぞれ多数の蒸発器130を有する第1蒸発部110及び第2蒸発部120を含むことができる。前記第1蒸発部110及び第2蒸発部120は、それぞれ供給される海水を蒸発させて高温水蒸気及び低温水蒸気を生成することができる。
【0030】
以下、本発明の多重効用蒸発装置100をより詳細に説明する。
【0031】
図3を参照すると、前記多重効用蒸発装置100は、上述したように、それぞれ多数の蒸発部を有する第1蒸発部110及び第2蒸発部120を含む。
【0032】
第1蒸発部110によって生成される水蒸気は、第2蒸発部120によって生成される水蒸気に比べて高温、高圧の水蒸気であり得る。
【0033】
図3に例示されているように、第1蒸発部110は、連続した蒸発器A1~蒸発器ANを含むことができ、高温、高圧の水蒸気を排出することができる。第2蒸発部120は、連続した蒸発器B1~蒸発器BNを含み、第1蒸発部110の蒸発器A1~蒸発器ANに比べて相対的に低温低圧の水蒸気を排出することができる。
【0034】
前記第1蒸発部110と第2蒸発部120とは、互いに連結できる。
【0035】
このとき、前記第1蒸発部110は、熱併合圧縮機(TVC、Termo-Vapor Compressor)を介して前記蒸発器A1に最初にスチームが提供され、各蒸発器130に供給及び噴射される海水との潜熱交換により発生した水蒸気を次の蒸発器130の熱源にして蒸発器ANまで順次提供される多重効用法によって、最終高温水蒸気を生産して、高温水蒸気ライン111を介して上述の反応部200に供給し、余分の高温水蒸気は再びTVCに送られることができる。
【0036】
前記第2蒸発部120は、TVCを介して前記蒸発器B1に最初にスチームが提供され、各蒸発器130に供給及び噴射される海水との潜熱交換により発生した水蒸気を次の蒸発器130の熱源にして、蒸発器BNまで順次提供される多重効用法によって最終低温水蒸気を生産して低温水蒸気ライン121を介して反応部200に供給し、余分な高温水蒸気は再びTVCに送られることができる。
【0037】
前記それぞれの蒸発器130は、水蒸気を収容する放熱管体132と、前記放熱管体132の表面に海水を噴射する噴射ノズル133と、噴射ノズル133の上部に設けられ、放熱管体132の表面への海水接触による潜熱蒸発により発生する水蒸気から液滴を分離するデミスター(demister)134と、前記噴射ノズル133、放熱管体132及びデミスター134を含み、前記噴射ノズル133に噴射される海水を収容するハウジング131と、を含むことができる。
【0038】
前記放熱管体132の表面への海水の接触による潜熱交換で前記放熱管体132の内部に生成された凝縮水を蒸発器A1から蒸発器Bnまで順次収集して淡水を生産することができる。
【0039】
以下、本発明の反応部200及び凝縮器300についてより詳細に説明する。
【0040】
図3を参照すると、前記反応部200は、前記多重効用蒸発装置100で生産された高温水蒸気又は低温水蒸気を受け取って吸着又は脱着する吸着剤(
図5乃至
図10は、220)と、前記反応部200から吸着剤220の水分吸着時に発生する熱を除去し、脱着時に前記反応部200へ熱を供給することができるように冷水又は温水が移動する熱交換チューブ(
図5乃至
図10の210)を含むベッドA200a、ベッドB200b、ベッドC200cでそれぞれ構成できる。前記ベッドの数は、例示的なもので、必ずしも3つに限定されるのではなく、実施形態によって4つ以上のベッドが適用できる。
【0041】
一実施形態において、反応部200は、ベッドA200a、ベッドB200b及びベッドC200cで分割構成でき、バルブ制御部のバルブ開閉制御を介してそれぞれのベッド200a、200b、200cに、多重効用蒸発装置100で生成された高温水蒸気及び低温水蒸気と、冷温水ライン400を介して提供される冷却水及び温水が選択的に供給されることができ、低温吸着、高温吸着、予熱、脱着、予冷の各工程が有機的に行われることができる。
【0042】
バルブ制御部(図示せず)は、多重効用蒸発装置100と反応部200、前記反応部200と凝縮器300をそれぞれ連結する水蒸気ラインに設けられたバルブと、前記冷温水ライン400から前記反応部200の熱交換チューブ210へ提供される冷却水及び温水の選択供給のためのバルブの作動(開閉)を制御することができる。
【0043】
凝縮器300は、前記反応部200の吸着剤220から脱着された水蒸気を受けて凝縮させ、前記凝縮した水は淡水として回収して淡水貯蔵タンク310に貯蔵するか、或いは工業用水又は生活用水として活用することができる。
【0044】
前記反応部200から排出される水蒸気を凝縮器300に供給するために、排出ライン230が連結されることができる。
【0045】
冷温水ライン400は、前記反応部200の熱交換チューブ210に冷却水及び温水を選択的に供給することができる。
【0046】
そして、前記第1蒸発部110の高温水蒸気ライン111及び第2蒸発部120の低温水蒸気ライン121は、最終投入管140を介してそれぞれの反応部200に連結されることができる。
【0047】
本発明の実施形態による多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムは、6ステップの詳細工程を介して海水を淡水化することができる。以下では、各詳細工程を図面と共により詳細に説明する。
【0048】
図4を参照すると、本発明の実施形態による多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化は、サイクル#1、交替#1、サイクル#2、交替#2、サイクル#3及び交替#3の詳細工程からなることができる。本発明の実施形態による多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムは、上述した6つの詳細工程を繰り返し行うことにより、海水を淡水化することができる。
【0049】
図4は各詳細工程においてベッドA、ベッドB及びベッドCのそれぞれによって行われる工程と、バルブの開閉状態をまとめたものである。上述したように、バルブは、バルブ制御部によって制御され、それぞれの詳細工程でベッドA~ベッドCが高圧吸着工程、低圧吸着工程、脱着工程、予熱工程及び予冷工程のうちのいずれか一つを行うように開閉できる。
【0050】
例えば、サイクル#1の場合、ベッドAは低温吸着工程、ベッドBは高温吸着処理、ベッドCは脱着工程を行うことができ、交替#1の場合、ベッドAは低温吸着工程、ベッドBは予熱工程、ベッドCは予冷工程を行い、サイクル#2の場合、ベッドAは高温吸着工程、ベッドBは脱着工程、ベッドCは低温吸着工程を行い、交替#2の場合、ベッドAは予熱工程、ベッドBは予冷工程、ベッドCは低温吸着工程を行い、サイクル#3の場合、ベッドAは脱着工程、ベッドBは低温吸着工程、ベッドCは高温吸着工程を行い、交替#3の場合、ベッドAは予冷工程、ベッドBは低温吸着工程、ベッドCは予熱工程を行うことができる。
図11に示すように、サイクル#1-交替#1-サイクル#2-交替#2-サイクル#3-交替#3の詳細工程は順次繰り返し行われることができる。
【0051】
以下、
図5~
図10を参照して、各詳細工程をより詳細に説明する。
【0052】
【0053】
図5を参照すると、a)ベッドA200aにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-01は閉鎖され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-02は開放され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-07は閉鎖されることにより、低温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-02及びバルブAV-04は開放され、バルブAV-01及びバルブAV-03は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、低温水蒸気に含有された水分が吸着剤220に吸着される低温吸着工程が行われる。
【0054】
ベッドB200bにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-03は開放され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-04は閉鎖され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-08は閉鎖されることにより、高温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-06及びバルブAV-08は開放され、バルブAV-05及びバルブAV-07は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、高温水蒸気に含有された水分が吸着剤220に吸着される高温吸着工程が行われる。ここで、ベッドA200a及びベッドB200bへ冷却水を供給して、吸着剤220に水分が吸着されることによる熱を冷却水を介して減少又は除去することができる。
【0055】
ベッドC200cにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-05及び第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-06は閉鎖され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-09は開放され、冷温水ライン400のバルブAV-09及びバルブAV-11は開放され、バルブAV-10及びバルブAV-12は閉鎖される。上述したバルブの開閉動作によって温水を前記熱交換チューブ210に提供して水分を吸着剤220から脱着させることにより、前記凝縮器300に連結された排出ライン230を介して凝縮器300へ水蒸気を供給する脱着工程が行われる。
【0056】
【0057】
図6を参照すると、b)ベッドA200aにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-01は閉鎖され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-02は開放され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-07は閉鎖されることにより、低温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-02及びバルブAV-04は開放され、バルブAV-01及びバルブAV-03は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、低温水蒸気に含有された水分を吸着剤220に吸着させる低温吸着工程が行われる。
【0058】
ベッドB200bにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-03、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-04、及び排出ライン230のバルブGV-08は全て閉鎖され、前記冷温水ライン400のバルブAV-05及びバルブAV-07は開放され、バルブAV-08及びバルブAV-08は閉鎖されることにより、前記熱交換チューブ210に温水を提供して予熱する予熱工程が行われる。
【0059】
ベッドC200cにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-05、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-06、及び排出ライン230のバルブGV-09は全て閉鎖され、前記冷温水ライン400のバルブAV-10及びバルブAV-12は開放され、バルブAV-09及びバルブAV-11は閉鎖されることにより、前記熱交換チューブ210に冷却水を提供して予冷する予冷工程が行われる。
【0060】
【0061】
図7を参照すると、c)ベッドA200aにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-01は開放され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-02は閉鎖され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-07は閉鎖されることにより、高温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-02及びバルブAV-04は開放され、バルブAV-01及びバルブAV-03は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、高温水蒸気に含有された水分が吸着剤220に吸着される高温吸着工程が行われる。
【0062】
ベッドB200bにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-03及び第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-04は閉鎖され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-08は開放され、冷温水ライン400のバルブAV-05及びバルブAV-07は開放され、バルブAV-06及びバルブAV-08は閉鎖されることにより、温水を前記熱交換チューブ210に提供し、吸着剤220に吸着された水分を脱着させることにより、前記凝縮器300に連結された排出ライン230を介して凝縮器300に水蒸気を供給する脱着工程が行われる。
【0063】
ベッドC200cにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-05は閉鎖され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-06は開放され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-09は閉鎖されることにより、低温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-10及びバルブAV-12Aは開放され、バルブAV-09及びバルブAV-11は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、低温水蒸気に含有された水分が吸着剤220に吸着される低温吸着工程が行われる。
【0064】
【0065】
図8を参照すると、d)ベッドA200aにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-01、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-02、及び排出ライン230のバルブGV-07は全て閉鎖され、前記冷温水ライン400のバルブAV-01及びバルブAV-03は開放され、バルブAV-02及びバルブAV-04は閉鎖されることにより、前記熱交換チューブ210に温水を提供して予熱する予熱工程が行われる。
【0066】
ベッドB200bにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-03、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-04、及び排出ライン230のバルブGV-08は全て閉鎖され、前記冷温水ライン400のバルブAV-06及びバルブAV-08は開放され、バルブAV-05及びバルブAV-07は閉鎖されることにより、前記熱交換チューブ210に冷却水を提供して予冷する予冷工程が行われる。
【0067】
ベッドC200cにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-05は閉鎖され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-06は開放され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-09は閉鎖されることにより、低温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-10及びバルブAV-12は開放され、バルブAV-09及びバルブAV-11は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、低温水蒸気に含有された水分が吸着剤220に吸着される低温吸着工程が行われる。
【0068】
【0069】
図9を参照すると、e)ベッドA200aにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-01及び前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-02は閉鎖され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-07は開放され、冷温水ライン400のバルブAV-01及びバルブAV-03は開放され、バルブAV-02及びバルブAV-04は閉鎖されることにより、温水を前記熱交換チューブ210に提供し、吸着剤220に水分を脱着させて、前記凝縮器300に連結された排出ライン230を介して凝縮器300へ水蒸気を供給する脱着工程が行われる。
【0070】
ベッドB200bにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-03は閉鎖され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-04は開放され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-08は閉鎖されることにより、低温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-06及びバルブAV-08は開放され、バルブAV-05及びバルブAV-07は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、低温水蒸気に含有された水分が吸着剤220に吸着される低温吸着工程が行われる。
【0071】
ベッドC200cにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-05は開放され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-06は閉鎖され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-09は閉鎖されることにより、高温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-10及びバルブAV-12は開放され、バルブAV-09及びバルブAV-11は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、高温水蒸気に含有された水分が吸着剤220に吸着される高温吸着工程が行われる。
【0072】
【0073】
図10を参照すると、f)ベッドA200aにおいて、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-01、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-02、及び排出ライン230のバルブGV-07は全て閉鎖され、前記冷温水ライン400のバルブAV-02及びバルブAV-04は開放され、バルブAV-01及びバルブAV-03は閉鎖されることにより、前記熱交換チューブ210に冷却水を提供して予冷する予冷工程が行われる。
【0074】
ベッドB200bにおいて、バルブ制御部によって、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-03は閉鎖され、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-04は開放され、前記凝縮器300に連結された排出ライン230のバルブGV-08は閉鎖されることにより、低温水蒸気を収容し、バルブ制御部によって、冷温水ライン400のバルブAV-06及びバルブAV-08は開放され、バルブAV-5及びバルブAV-07は閉鎖されることにより、冷却水を前記熱交換チューブ210に提供し、低温水蒸気に含有された水分が吸着剤220に吸着される低温吸着工程が行われる。
【0075】
ベッドC200cにおいて、前記第1蒸発部110に連結された高温水蒸気ライン111のバルブGV-05、前記第2蒸発部120に連結された低温水蒸気ライン121のバルブGV-06、及び排出ライン230のバルブGV-09は全て閉鎖され、前記冷温水ライン400のバルブAV-09及びバルブAV-11は開放され、バルブAV-10及びバルブAV-12は閉鎖されることにより、前記熱交換チューブ210に温水を提供して予熱する予熱工程が行われる。
【0076】
本発明の一実施形態において上述したサイクル#1、交替#1、サイクル#2、交替#2、サイクル#3、交替#3が順次繰り返し行われることができる。
【0077】
上述した淡水化過程で、予熱及び予冷過程を介して、前記凝縮器300内の水分が反応部200へ移動することを防止し、圧力を調節することができ、省エネルギーを図ることができる。
【0078】
以下、本発明による多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムの技術的効果について説明する。
【0079】
従来のADシステムの場合、性能係数(coefficient of performance、COP)と設置面積(footprint)の観点から、既存の水蒸気圧縮式又は吸収式サイクルに比べて相対的に非効率的である。これは、従来のADシステムサイクルにおける吸着剤の吸着率(coverage)、吸着質(adsorbate)に対する吸着剤の最大吸着量対比実際吸着量)に大きく依存する相対的に高い吸着熱(adsorption heat)と吸着剤のやや低い平衡吸着量(equilibrium uptake)に起因する。
【0080】
このとき、特定の吸着質に対する吸着剤の吸着容量(uptake capacity)は、無限に長い時間、平衡状態における吸着量を示す吸着等温線(adsorption isotherm)データから得ることができる。
【0081】
そして、ほとんどの従来のADシステムは、熱源の温度に応じて180秒~900秒の範囲の(半)サイクル時間を適用しており、このようにADサイクルの吸着及び脱着過程を実行するために、特定の吸着剤に対してサイクル時間は効果的に制限される。
ADシステムの性能係数として使用されているCOPは、吸着質の脱着熱に対する蒸発潜熱(latent heat)の比で定義される。
【0082】
ほとんどの吸着剤及び吸着質の対において、吸着熱は低い相対圧力(relative pressure)又は低い平衡吸着量条件で潜熱よりも非常に大きい。これにより、従来のADシステムの容量(capacity)に対比して体積(volume)又は設置面積の比を向上させる方法は、向上した有効平衡吸着量(net uptake capacity)を有するサイクルを適用する。
【0083】
吸着剤のより高い吸着量は、高い吸着率及び相対圧力で吸着質の潜熱に近接した低い吸着熱をもたらす。ほとんどの従来のADシステムは、約02の吸着率を有する運転条件下で作動し、これにより従来のADシステムのCOPは、有効平衡吸着量を増加させることにより、従来よりも約015以上向上することができる。
【0084】
これだけでなく、従来のADシステムに対する熱力学第二法則の解釈から分かるように、より高い物質伝達速度(kinetics)を有する高温度で熱伝達が行われる再生(regeneration)又は脱着(desorption)工程は、吸着工程よりも相対的にさらに効率的である。
【0085】
しかし、ほとんどの従来のADシステムでは、吸着/脱着工程に対して同一のサイクル時間が適用され、これにより完全な吸着工程のための脱着ベッドの付加的な加熱はADシステムの効率を低下させる要因となる。
【0086】
図12は本発明による多重効用蒸発装置を用いた吸着式海水淡水化システムの性能を示すグラフである。
【0087】
図12に示すように、本発明で提案された第1蒸発部110及び第2蒸発部120を介して高温水蒸気及び低温水蒸気を用いて温度に応じて圧力が上昇するにつれて吸着率が上昇する効果を期待することができる。
【0088】
したがって、吸着及び脱着工程に互いに異なるサイクル時間、すなわち脱着工程に相対的にもっと短いサイクル時間を適用すれば、従来のADシステムの効率を向上させることができる。
【0089】
上述したように構成された本発明を提供することにより、性能係数(coefficient of performance、COP)補完及び淡水生産量を極大化することができ、それぞれの第1蒸発部及び第2蒸発部を介して副産された冷水を地域冷房(district cooling)及び住宅冷房(residential cooling)のための用水として活用することができ、多重効用法による海水と水蒸気の潜熱交換で生成される凝縮水を淡水として活用することができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、海水を淡水化させる吸着式海水淡水化(adsorption deslaination、AD)システムに関するもので、高温水蒸気及び低温水蒸気を生産する多重効用蒸発装置100と、前記多重効用蒸発装置100で生産された高温水蒸気又は低温水蒸気を受け取って水分を吸着又は脱着する吸着剤220、及び冷却水又は温水を介して前記吸着剤220へ熱を伝達可能な熱交換チューブ210を含む複数の反応部200と、前記反応部200の吸着剤220から脱着された水分が含有された水蒸気を淡水として回収することができるように凝縮させる凝縮器300と、前記反応部200の熱交換チューブ210に冷却水又は温水を選択的に供給する冷温水ライン400と、前記多重効用蒸発装置100と前記反応部200、及び前記反応部200と前記凝縮器300をそれぞれ連結する水蒸気ライン、前記水蒸気ラインに設けられたバルブ、前記冷温水ライン400から前記熱交換チューブ210へ提供される冷却水又は温水を選択的に供給するために前記バルブの作動を制御するバルブ制御部と、を含む構成によって、海水から淡水(fresh water)生産量を極大化することができ、地域(district)冷房及び住宅(residential)冷房のための冷水(chilled water)を副産することができるため、海水淡水化技術分野に対して産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0091】
100 多重効用蒸発装置
110 第1蒸発部
111 高温水蒸気ライン
120 第2蒸発部
121 低温水蒸気ライン
130 蒸発器
130a 高圧蒸発器
130b 低圧蒸発器
131 ハウジング
132 放熱管体
133 噴射ノズル
134 デミスター
140 投入管
200 反応部
200a ベッドA
200b ベッドB
200c ベッドC
210 熱交換チューブ
220 吸着剤
230 排出ライン
300 凝縮器
310 淡水貯蔵タンク
400 冷温水ライン
バルブ(GV-01、GV-02、GV-03、GV-04、GV-05、GV-06、GV-07、GV-08、GV-09)
バルブ(AV-01、AV-02、AV-03、AV-04、AV-05、AV-06、AV-07、AV-08、AV-09、AV-10、AV-11、AV-12)
【国際調査報告】