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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20221024BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P13/12
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511279
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020047451
(87)【国際公開番号】W WO2021035157
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/890,162
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート イー
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、慢性腎疾患などの腎臓障害の治療および/または予防のためのホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤の投与を含む投与の方法に関する。関連する化合物および製造方法がさらに定義されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓障害の治療または予防方法であって、該治療または予防を必要とする対象体にPDE1阻害剤の薬学的に許容される量を投与することを含む、方法。
【請求項2】
腎臓障害が、腎線維症、慢性腎疾患、腎臓不全、糸球体硬化症および腎炎のうち1つ以上から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該状態が腎線維症である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該状態が慢性腎疾患である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
該状態が腎臓不全である、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
該状態が糸球体硬化症である、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
該状態が腎炎である、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
腎臓障害が、糖尿病、腎臓の損傷、高血圧、癌増殖(例えば、多発性嚢胞腎)、または心血管障害(例えば、狭心症、脳卒中、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病に関連する高血圧症、アテローム性動脈硬化症に関連する高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、心筋の、狭心症、および脳卒中、高血圧症、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、ならびに結合組織疾患および障害、例えば、マルファン症候群)の結果として生じるものである、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
腎臓障害が糖尿病の結果として生じるものである、いずれかの前記請求項記載の方法。
【請求項10】
腎臓障害が腎臓の損傷の結果として生じるものである、いずれかの前記請求項記載の方法。
【請求項11】
腎臓障害が高血圧の結果として生じるものである、いずれかの前記請求項記載の方法。
【請求項12】
腎臓障害が癌増殖(例えば、多発性嚢胞腎)の結果として生じるものである、いずれかの前記請求項記載の方法。
【請求項13】
腎臓障害が、心血管障害(例えば、狭心症、脳卒中、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病に関連する高血圧症、アテローム性動脈硬化症に関連する高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、心筋の、狭心症、および脳卒中、高血圧症、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、ならびに結合組織疾患および障害、例えば、マルファン症候群)の結果として生じるものである、いずれかの前記請求項記載の方法。
【請求項14】
PDE1阻害剤が、
(A)エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、R2およびR3はどちらもメチルであるか、または、R2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2はHであり、R3およびR4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくは、R3およびR4が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している);
(iii) R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよいピリジル(例えば、ピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R8、R9またはR10は、それぞれ存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R1314)-である(ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである)];
(B) エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、式Ia:
【化3】
[式中、
(i) R2およびR5は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R3およびR4は一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成する[好ましくは、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]か;または、R2およびR3はそれぞれメチルであり、R4およびR5はそれぞれHであるか;または、R2、R4およびR5はHであり、R3はイソプロピルであり[好ましくは、R3を担持している炭素はR配置を有している];
(ii) R6は、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ベンジルアミノ、C1-4アルキル、またはC1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R10は、C1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
(iv) XおよびYは、独立してCまたはNである];
(C) 遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II:
【化4】
(i) Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリダ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、または、NまたはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル;
(vi) R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキル、または、1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)もしくはC1-6アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル、5-フルオロピリダ-2-イル、6-フルオロピリダ-2-イル、3-フルオロピリダ-2-イル、4-フルオロピリダ-2-イル、4,6-ジクロロピリダ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリダ-2-イル)またはC1-6アルキル(例えば、5-メチルピリダ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えば、ピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)で置換されている、アリール、例えばフェニルである;
(D) 遊離形態または塩形態の、式III:
【化5】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R5は、独立して-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R6およびR7は、独立して、H、または、独立してC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である];
(E) 遊離形態または塩形態の、式IV
【化6】
[(i) R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)(ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(ii) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii) R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;またはR3はHであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R4およびR5は一緒になってシス配置を有しており、例えば、R4およびR5を担持している炭素はそれぞれR配置およびS配置を有している);
(iv) R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2
であり;
(v) ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在しない;また、X、YおよびZがすべてCである場合、R6、R7またはR8の少なくとも1つは-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである];
(F)遊離形態または塩形態の、式V
【化7】
[式中、
(iv) R1は、-NH(R4)であり、ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(v) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(vi) R3は、-SO2NH2または-COOHである];ならびに
(G)遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式VI
【化8】
[式中、
(iv) R1は、-NH(R4)であり、ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(v) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(vi) R3は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリダ-2-イルまたはピリダ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である]
から選択される化合物である、いずれかの前記請求項記載の方法。
【請求項15】
PDE1阻害剤が、下記:
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
のいずれかから選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記:
【化13】
のいずれかから選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化14】
である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化15】
である、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、下記:
【化16】
である、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、下記:
【化17】
である、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかに記載の腎臓障害の治療または予防方法におけるPDE1阻害剤の使用。
【請求項22】
請求項1~20のいずれかに記載の腎臓障害の治療または予防用医薬の製造におけるPDE1阻害剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
当該分野は、慢性腎疾患(chronic kidney disease)などの腎臓障害(renal disorder)の処置に有用なホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤に関する。また、当該分野は、慢性腎疾患などの腎臓障害の処置のための、またはPDE1の発現増加を特徴とする関連状態の処置のための、ホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
腎線維症(kidney fibrosis)は、真性糖尿病誘発性腎不全(diabetes mellitus induced kidney failure)、糸球体硬化症、および、慢性腎疾患または末期腎臓疾患(end-stage renal disease)をもたらす腎炎などの腎疾患(kidney disease)の進行に重要な因子である。環状アデノシン一リン酸(cAMP)および環状グアノシン一リン酸(cGMP)は、一酸化窒素/ANP/グアニリルシクラーゼ/cGMP依存性プロテインキナーゼ経路およびcAMP/Epac/アデニリルシクラーゼ/cAMP依存性プロテインキナーゼ経路などの多くの複合的なメカニズムによっていくつかの既知の腎臓疾患(renal disease)を抑制することに関係があるとされている。これらの多様なメカニズムから、腎不全(kidney failure)の治療または予防のために新しい薬理学的処置が発展することが提案されている。
【0003】
腎臓線維症(renal fibrosis)は、慢性腎疾患(CKD)、例えば、糖尿病性腎症、糸球体硬化症およびループス腎炎において一般的に見られる。このようなCKDは、酸化ストレス、低酸素、炎症、自己免疫疾患または代謝の変化によって引き起こされ得る。虚血または毒素による腎臓の急性侵襲も、最終的にCKDを引き起こし得る。しかしながら、通常、筋線維芽細胞(次に細胞外マトリックス(ECM)タンパク質を分泌する)の形成が線維症の進行の最初のステップであるので、様々なCKDに共通する疾患パターンがある。
【0004】
線維化促進のシグナル伝達経路の妨害は、疾患抑制のための有用な手段であると考えられている。例えば、筋線維芽細胞分化を防止するTGFβまたはそのシグナル伝達経路の阻害剤は、抗線維化剤として価値がある。TGFβの発現は、例えば、糖尿病性腎疾患(diabetic kidney disease)の処置に有効であり得るピルフェニドンによって減少させることができる。さらに、ミトコンドリア機能不全によって誘発される酸化ストレスを改善する。環状ヌクレオチドのシグナル伝達は、例えば、TGFβシグナル伝達および筋線維芽細胞形成の低減または酸化ストレスの低減を介して間質性線維症を抑制するので、これら線維化プロセスのいくつかの部分に作用し得る。
【0005】
ホスホジエステラーゼ(PDE)の11のファミリーが同定されているが、Ca2+/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ(CaM-PDE)であるファミリーIのPDEのみが、Ca2+/カルモジュリンによって活性化され、カルシウムおよび環状ヌクレオチド(例えば、cGMPおよびcAMP)シグナル伝達経路を媒介することが示されている。3つの既知のCaM-PDE遺伝子、PDE1A、PDE1BおよびPDE1Cは、全て、中枢神経系組織において発現する。PDE1Aは、脳、肺および心臓において発現する。PDE1Bは、主に中枢神経系において発現するが、単球および好中球においても検出され、これらの細胞の炎症反応に関与することが示されている。PDE1Cは、嗅上皮、小脳顆粒細胞、線条体、心臓および血管平滑筋において発現する。PDE1Cは、ヒト平滑筋における平滑筋増殖の主要な調節因子であることが実証されている。
【0006】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼは、これらの環状ヌクレオチドを、細胞内シグナル伝達経路の観点から不活性なそれぞれの5'-一リン酸(5'AMPおよび5'GMP)に加水分解することによって、細胞内cAMPおよびcGMPシグナル伝達をダウンレギュレートする。cAMPとcGMPはどちらも中心的な細胞内二次メッセンジャーであり、多くの細胞機能を調節する役割を果たしている。PDE1AとPDE1Bは、cAMPよりもcGMPを優先的に加水分解するが、PDE1Cは、cGMPとcAMPの加水分解がほぼ等しいことを示している。
【0007】
心臓線維芽細胞において、PDE1Aは、ATIIおよびTGFβによる刺激の後に高度にアップレギュレートする。さらに、PDE1阻害剤は、ATIIまたはTGFβによって誘発される心筋線維芽細胞活性化、ECM産生および線維化促進遺伝子発現を低下させることが報告されており、これは、PDE1阻害がcAMPを介した抗線維化効果も媒介することを示唆している。PDE1アイソザイムは腎臓に大量に存在する。したがって、特定のPDE1阻害剤によって誘導されるcAMPレベルの上昇は腎臓疾患の処置に有益であり得るということになる。
【0008】
慢性腎疾患、特に糖尿病性腎疾患に罹患している患者のためのさらなる処置選択肢が必要とされている。癌細胞内のcAMPを調節するための新しく、安全で選択的なストラテジーが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
開示の概要
本明細書で提示されるのは、腎臓障害、例えば、腎線維症、慢性腎疾患、腎線維症、腎臓不全(renal failure)、糸球体硬化症および腎炎の処置のための化合物および方法である。環状ヌクレオチドcAMPおよびcGMPが、このような腎臓障害の進行に大きな役割を果たすことが研究により示されている。本開示の化合物は、PDE1の強力な阻害剤である。
【0010】
様々な実施態様において、本開示は、腎臓障害、例えば、腎線維症、慢性腎疾患、腎線維症、腎臓不全、糸球体硬化症および腎炎の処置または予防のための方法であって、該処置または予防を必要とする対象体に本明細書に開示されているPDE1阻害剤の薬学的に許容される量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、腎臓障害は慢性腎疾患である。いくつかの実施態様では、慢性腎疾患は、糖尿病、腎臓の損傷、高血圧、癌増殖(例えば、多発性嚢胞腎)、または心血管障害(例えば、狭心症、脳卒中、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病に関連する高血圧症、アテローム性動脈硬化症に関連する高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、心筋の、狭心症、および脳卒中、高血圧症、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、ならびに結合組織疾患および障害、例えば、マルファン症候群)の結果として生じるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示の詳細な説明
開示の方法において用いるための化合物
一の実施態様では、本明細書に記載の処置および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤は、選択的PDE1阻害剤である。
【0012】
PDE1阻害剤
一の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、R2およびR3はどちらもメチルであるか、または、R2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2はHであり、R3およびR4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくは、R3およびR4が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している);
(iii) R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよいピリジル(例えば、ピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R8、R9またはR10は、それぞれ存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R1314)-である(ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである)]
で示される化合物であることを提供する。
【0013】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、式1a:
【化3】
[式中、
(i) R2およびR5は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R3およびR4は一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成する[好ましくは、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]か;または、R2およびR3はそれぞれメチルであり、R4およびR5はそれぞれHであるか;または、R2、R4およびR5はHであり、R3はイソプロピルであり[好ましくは、R3を担持している炭素はR配置を有している];
(ii) R6は、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ベンジルアミノ、C1-4アルキル、またはC1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R10は、C1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
XおよびYは、独立してCまたはNである]
であることを提供する。
【0014】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II:
【化4】
(i) Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリダ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、または、NまたはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi) R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキル、または、1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)もしくはC1-6アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル、5-フルオロピリダ-2-イル、6-フルオロピリダ-2-イル、3-フルオロピリダ-2-イル、4-フルオロピリダ-2-イル、4,6-ジクロロピリダ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリダ-2-イル)またはC1-6アルキル(例えば、5-メチルピリダ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えば、ピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)で置換されている、アリール、例えばフェニルである]
で示される化合物であることを提供する。
【0015】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式III:
【化5】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R5は、独立して-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R6およびR7は、独立して、H、または、独立してC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である]
であることを提供する。
【0016】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式IV:
【化6】
[式中、
(i) R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)(ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(ii) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii) R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;またはR3はHであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R4およびR5は一緒になってシス配置を有しており、例えば、R4およびR5を担持している炭素はそれぞれR配置およびS配置を有している);
(iv) R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2
であり;
(v) ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在しない;また、X、YおよびZがすべてCである場合、R6、R7またはR8の少なくとも1つは-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである]
であることを提供する。
【0017】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式V:
【化7】
[式中、
(i) R1は、-NH(R4)であり、ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(ii) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(iii) R3は、-SO2NH2または-COOHである]
であることを提供する。
【0018】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式VI:
【化8】
[式中、
(i) R1は、-NH(R4)であり、ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(ii) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R3は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリダ-2-イルまたはピリダ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である]
であることを提供する。
【0019】
一の実施態様では、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤(例えば、式I、Ia、II、III、IV、V、および/またはVIで示される化合物)の投与であって、該阻害剤が、下記:
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
で示される化合物である、投与を提供する。
【0020】
一の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記:
【化13】
で示される化合物である、投与を提供する。
【0021】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記:
【化14】
で示される化合物である、投与を提供する。
【0022】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記:
【化15】
で示される化合物である、投与を提供する。
【0023】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記:
【化16】
で示される化合物である、投与を提供する。
【0024】
一の実施態様では、上記の式(例えば、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVI)のいずれかで示される選択的PDE1阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特にPDE1B媒介)加水分解を阻害する化合物であり、例えば、好ましい化合物は、遊離形態または塩形態で、固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにて、1μM未満、好ましくは500nM未満、好ましくは50nM未満、好ましくは5nM未満のIC50を有する。
【0025】
他の実施態様では、本発明は、癌または腫瘍から選択される状態の処置のため;腫瘍細胞の増殖、遊走および/または浸潤の阻害のため;ならびに/または神経膠腫の処置のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、下記:
【化17】
で示される化合物である、投与を提供する。
【0026】
本明細書で説明されている方法および処置における使用に適しているPDE1阻害剤のさらなる例は、国際公開第2006133261号(A2);米国特許第8,273,750号;米国特許第9,000,001号;米国特許第9,624,230号;国際公開第2009075784号(A1);米国特許第8,273,751号;米国特許第8,829,008号;米国特許第9,403,836号;国際公開第2014151409号(A1)、米国特許第9,073,936号;米国特許第9,598,426号;米国特許第9,556,186号;米国特許出願公開第2017/0231994号(A1)、国際公開第2016022893号(A1)、および米国特許出願公開第2017/0226117号(A1)に見ることができる(それぞれ、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0027】
本明細書で説明されている方法および処置における使用に適しているPDE1阻害剤のさらにさらなる例は、国際公開第2018007249号(A1);米国特許出願公開第2018/0000786号;国際公開第2015118097号(A1);米国特許第9,718,832号;国際公開第2015091805号(A1);米国特許第9,701,665号;米国特許出願公開第2015/0175584号(A1);米国特許出願公開第2017/0267664号(A1);国際公開第2016055618号(A1);米国特許出願公開第2017/0298072号(A1);国際公開第2016170064号(A1);米国特許出願公開第2016/0311831号(A1);国際公開第2015150254号(A1);米国特許出願公開第2017/0022186号(A1);国際公開第2016174188号(A1);米国特許出願公開第2016/0318939号(A1);米国特許出願公開第2017/0291903号(A1);国際公開第2018073251号(A1);国際公開第2017178350号(A1);および米国特許出願公開第2017/0291901号(A1)に見ることができる(それぞれ、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。出典明示により本明細書の一部とされる文書の記載が本開示における記載と矛盾するか、または互換性がない場合には、本開示の記載が支配的であると理解すべきである。
【0028】
別段の指定がない場合、または文脈から明らかでない場合、本明細書における以下の用語は、以下の意味を有する:
【0029】
(a) 「選択的PDE1阻害剤」とは、本明細書で用いられる場合、PDE1阻害が他のいずれものPDEアイソフォームの阻害よりも少なくとも100倍の選択性を有するPDE1阻害剤をいう。
【0030】
(b) 「アルキル」とは、本明細書で用いられる場合、飽和または不飽和炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは1~6個の炭素原子を有しており、直鎖または分枝鎖であってよく、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、モノ置換、ジ置換またはトリ置換されていてもよい。
【0031】
(c) 「シクロアルキル」とは、本明細書で用いられる場合、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、それらのうち少なくともいくつかが非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成しており、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。シクロアルキルがNおよびOおよび/またはSから選択される1個以上の原子を含んでいてもよい場合、該シクロアルキルはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0032】
(d) 「ヘテロシクロアルキル」とは、特記しない限り、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、それらのうち少なくともいくつかが非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成しており、少なくとも1個の炭素原子がN、OまたはSに置き換わっており、ヘテロシクロアルキルは、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0033】
(e) 「アリール」とは、本明細書で用いられる場合、単環式または二環式芳香族炭化水素であり、好ましくはフェニルであり、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよい。
【0034】
(f) 「ヘテロアリール」とは、本明細書で用いられる場合、芳香環を構成する原子の1個以上が炭素ではなくて硫黄または窒素である芳香族部分であり、例えばピリジルまたはチアジアゾリルであり、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0035】
本開示化合物、例えば、本明細書に記載されているようなPDE1阻害剤は、遊離形態または塩形態で、例えば、酸付加塩として存在し得る。本明細書では、特記しない限り、「本開示化合物」などの文言は、何らかの形態、例えば遊離形態または酸付加塩形態の化合物、または化合物が酸性置換基を含有する場合には塩基付加塩形態の化合物を包含すると解されるべきである。本開示化合物は、医薬品としての使用を意図しているので、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば遊離の本開示化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製に有用であり得、したがって、該塩も包含される。
【0036】
本開示化合物は、場合によっては、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本開示化合物に変換される化合物である。例えば、本開示化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含有する場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、自体が投与されるべき用量で生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本開示化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本開示化合物の場合)を生成する、本開示化合物のエステルを意味する。したがって、本開示化合物がヒドロキシ基を含有する場合、例えば化合物-OHである場合、該化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を形成し、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本開示化合物がカルボン酸を含有する場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、該化合物の酸エステルプロドラッグ、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0037】
別の実施態様では、本開示は、さらに、PDE1阻害剤をさらなる治療剤と併せて、それぞれが遊離形態または薬学的に許容される塩形態で、薬学的に許容される担体と混合して含む医薬組成物を提供する。用語「併用」とは、本明細書で用いられる場合、PDE1阻害剤とさらなる治療剤との同時(simultaneous)、連続(sequential)または同時期(contemporaneous)投与を包含する。別の実施態様では、別の実施態様では、本開示は、このような化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0038】
本開示化合物を使用する方法
別の実施態様では、本願は、腎臓障害の処置または予防のための方法であって、該処置または予防を必要とする対象体にPDE1阻害剤(すなわち、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の薬学的に許容される量を投与することを含む、方法(方法1)を提供する。
【0039】
1.1 腎臓障害が、腎線維症、慢性腎疾患、腎臓不全、糸球体硬化症および腎炎のうち1つ以上から選択される、方法1。
【0040】
1.2 該状態が、腎線維症である、いずれかの上記方法。
【0041】
1.3 該状態が、慢性腎疾患である、いずれかの上記方法。
【0042】
1.4 該状態が、腎臓不全である、いずれかの上記方法。
【0043】
1.5 該状態が、糸球体硬化症である、いずれかの上記方法。
【0044】
1.6 該状態が、腎炎である、いずれかの上記方法。
【0045】
1.7 腎臓障害が、糖尿病、腎臓の損傷、高血圧、癌増殖(例えば、多発性嚢胞腎)、または心血管障害(例えば、狭心症、脳卒中、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病に関連する高血圧症、アテローム性動脈硬化症に関連する高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、心筋の、狭心症、および脳卒中、高血圧症、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、および結合組織疾患および障害、例えば、マルファン症候群)の結果として生じるものである、いずれかの上記方法。
【0046】
1.8 腎臓障害が、糖尿病の結果として生じるものである、いずれかの上記方法。
【0047】
1.9 腎臓障害が、腎臓の損傷の結果として生じるものである、方法1~1.7のいずれか。
【0048】
1.10 腎臓障害が、高血圧の結果として生じるものである、方法1~1.7のいずれか。
【0049】
1.11 腎臓障害が、癌増殖(例えば、多発性嚢胞腎)の結果として生じるものである、方法1~1.7のいずれか。
【0050】
1.12 腎臓障害が、心血管障害(例えば、狭心症、脳卒中、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病に関連する高血圧症、アテローム性動脈硬化症に関連する高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、心筋の、狭心症、および脳卒中、高血圧症、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、および結合組織疾患および障害、例えば、マルファン症候群)の結果として生じるものである、方法1~1.7のいずれか。
【0051】
1.13 腎臓障害が、糖尿病の結果として生じる慢性腎疾患である、方法1または1.1。
【0052】
1.14 腎臓障害が、腎臓の損傷の結果として生じる慢性腎疾患である、方法1または1.1。
【0053】
1.15 腎臓障害が、高血圧の結果として生じる慢性腎疾患である、方法1または1.1。
【0054】
1.16 腎臓障害が、癌増殖(例えば、多発性嚢胞腎)の結果として生じる慢性腎疾患である、方法1または1.1。
【0055】
1.17 腎臓障害が、心血管障害(例えば、狭心症、脳卒中、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病に関連する高血圧症、アテローム性動脈硬化症に関連する高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、心筋の、狭心症、および脳卒中、高血圧症、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、および結合組織疾患および障害、例えば、マルファン症候群)の結果として生じる慢性腎疾患である、方法1または1.1。
【0056】
1.18 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤または下記:
【化18】
【化19】
で示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0057】
1.19 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0058】
1.20 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン:
【化20】
を含む、上記方法のいずれか。
【0059】
1.21 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン:
【化21】
を含む、上記方法のいずれか。
【0060】
1.22 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン:
【化22】
を含む、上記方法のいずれか。
【0061】
1.23 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(ピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン:
【化23】
を含む、上記方法のいずれか。
【0062】
本開示は、さらに、腎臓障害の処置または予防のための方法において用いるための、例えば方法1以降のいずれかにおいて用いるための、PDE1阻害剤を提供する。
【0063】
本開示は、さらに、腎臓障害の処置または予防のための医薬、例えば方法1以降のいずれかにおいて用いるための医薬の製造におけるPDE1阻害剤の使用を提供する。
【0064】
本開示化合物の製造方法
本開示PDE1阻害剤およびそれらの薬学的に許容される塩は、米国特許第8,273,750号、米国特許出願公開第2006/0173878号、米国特許第8,273,751号、米国特許出願公開第2010/0273753号、米国特許第8,697,710号、米国特許第8,664,207号、米国特許第8,633,180号、米国特許第8,536,159号、米国特許出願公開第2012/0136013号、米国特許出願公開第2011/0281832号、米国特許出願公開第2013/0085123号、米国特許出願公開第2013/0324565号、米国特許出願公開第2013/0338124号、米国特許出願公開第2013/0331363号、国際公開第2012/171016号および国際公開第2013/192556号に記載および例示されているような方法を用いて、また、それらと同様の方法によって、また、化学技術分野で既知の方法によって、製造され得る。このような方法としては、下記の方法が挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロセスの出発物質は、市販されていない場合には、既知の化合物の合成方法と同様または類似の技術を用いる化学技術から選択される手順によって製造され得る。
【0065】
種々のPDE1阻害剤およびそれらのための出発物質は、米国特許出願公開第2008-0188492号(A1)、米国特許出願公開第2010-0173878号(A1)、米国特許出願公開第2010-0273754号(A1)、米国特許出願公開第2010-0273753号(A1)、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/133224号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、国際公開第2011/153138号に記載されている方法を使用して製造することができる。本明細書で引用されている参考文献はすべて、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0066】
本開示化合物には、それらのエナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および複合体が含まれる。本開示の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含み得る。本開示における二重結合の表現は、二重結合のE異性体およびZ異性体の両方を含むことを意味する。さらに、本開示の範囲内のいくつかの化合物は、1つ以上の不斉中心を含み得る。本開示は、光学的に純粋な立体異性体のいずれか、および立体異性体の組み合わせの使用を含む。
【0067】
本開示化合物がその安定な同位体および不安定な同位体を包含することも意図されている。安定な同位体は、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、1個のさらなる中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物は非同位体類似体の薬物動態を測定するための有用性も有すると考えられる。例えば、本開示化合物のある位置の水素原子を重水素(非放射性の安定な同位体)に置き換えることができる。既知の安定な同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、さらなる複数の中性子を含有している放射性同位体である不安定な同位体、例えば123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種と置き換わってもよい。本開示の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本開示の化合物の放射線画像処理および/または薬物動態学的研究に有用である。
【0068】
融点は未補正であり、(dec)は分解を示す。温度は摂氏(℃)で示される;特記しない限り、操作は、室温または周囲温度で、すなわち18~25℃の範囲の温度で行われる。クロマトグラフィーとは、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを意味し;薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲルプレートで行われる。NMRデータは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対して百万分率(ppm)で表される主要な診断用プロトンのデルタ値で示される。シグナル形状の慣用の略語が使用される。結合定数(J)は、Hzで表される。質量スペクトル(MS)について、同位体分割によって複数の質量スペクトルピークが生じる分子については最小質量の主要イオンが報告される。溶媒混合物の組成は、体積百分率または体積比として示される。NMRスペクトルが複雑な場合には、診断信号のみが報告される。
【0069】
用語「治療」および「治療すること」は、適宜、疾患の症状の治療または寛解、ならびに疾患の原因の治療を含むものと理解されるべきである。
【0070】
治療方法について、用語「有効量」は、特定の疾患または障害を治療するための治療有効量を包含することを意図している。
【0071】
用語「患者」は、ヒト患者または非ヒト(すなわち、動物)患者を含む。特定の実施態様では、本開示は、ヒトおよび非ヒトの両方を包含する。別の実施態様では、本開示は、非ヒトを包含する。他の実施態様では、該用語は、ヒトを包含する。
【0072】
用語「含む」は、本開示で用いる場合、制限が無いことを意図しており、言及されていないさらなる要素または方法ステップを除外するものではない。
【0073】
本開示を実施する際に用いられる用量は、もちろん、例えば治療される特定の疾患または状態、使用される特定の本開示化合物、投与様式、および所望の療法に応じて変化する。本開示化合物は、経口、非経口、経皮、または吸入を含む好適な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。一般に、例えば上記のような疾患の治療のための、満足のいく結果は、約0.01~2.0mg/kgのオーダーの用量で経口投与により得られることが示されている。大きな哺乳動物、例えばヒトでは、したがって、約0.50~300mgの範囲であり、好都合には1日1回投与されるか、または1日2~4回の分割用量で投与されるか、または徐放性剤形で投与される。したがって、経口投与用の単位剤形は、例えば、薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に本開示化合物約0.2~150または300mg、例えば約0.2または2.0~10、25、50、75、100、150または200mgを含むことができる。
【0074】
本開示化合物は、経口、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む満足のいく経路によって投与することができるが、好ましくは経口投与される。特定の実施態様では、例えばデポー製剤での、本開示化合物は、好ましくは非経口投与され、例えば注射によって投与される。
【0075】
本開示化合物および本開示の医薬組成物は、1つ以上のさらなる治療剤と併せて、特に個々の薬剤が単剤療法として使用される場合よりも低用量で使用されて、慣用の単剤療法で一般的に生じる望ましくない副作用を引き起こすことなく併せた薬剤の治療活性を増強することができる。したがって、本開示化合物は、疾患を治療するのに有用な他の薬剤と、同時に(simultaneously)、別々に(separately)、連続的に(sequentially)、または、同時期に(contemporaneously)、投与することができる。別の例では、副作用は、本開示化合物を遊離形態または塩形態の1つ以上のさらなる治療剤と併せて投与する(ここで、(i)第2の治療剤の用量または(ii)本開示化合物と第2の治療剤の両方の用量は、薬剤/化合物が単剤療法として投与される場合よりも低い)ことによって軽減または最小化することができる。このようなさらなる治療剤としては、非限定的な例として、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断薬などを挙げることができる。
【0076】
治療的使用に言及する場合の「同時に」という用語は、2つ以上の活性成分を同一投与経路によって同時またはほぼ同時に投与することを意味する。
【0077】
治療的使用に言及する場合の「別々に」という用語は、2つ以上の活性成分を異なる投与経路によって同時またはほぼ同時に投与することを意味する。
【0078】
本開示化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤、およびガレノス技術分野で知られている技術を使用して調製され得る。したがって、経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを挙げることができる。
【実施例
【0079】
IMAPホスホジエステラーゼアッセイキットを使用するインビトロでのPDEIB阻害の測定
ホスホジエステラーゼIB(PDEIB)は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)を5'-グアノシン一リン酸(5'-GMP)に変換するカルシウム/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ酵素である。PDEIBはまた、蛍光分子cGMP-フルオレセインなどの修飾cGMP基質を対応するGMP-フルオレセインに変換することができる。cGMP-フルオレセインからのGMP-フルオレセインの生成は、例えばIMAP(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)固定化金属親和性粒子試薬を使用して、定量化することができる。
【0080】
簡単に説明すると、IMAP試薬は、GMP-フルオレセインに存在するがcGMP-フルオレセインには存在しない遊離5'-リン酸に高い親和性で結合する。結果として生じるGMP-フルオレセイン-IMAP複合体はcGMP-フルオレセインに比べて大きい。大きくてゆっくりとタンブリングする複合体に結合している小さなフルオロフォアは、蛍光を発する時に放出される光子が蛍光を励起するために使用される光子と同じ極性を保持するため、結合していないフルオロフォアと区別することができる。
【0081】
該ホスホジエステラーゼアッセイにおいて、IMAPに結合することができないためにほとんど蛍光偏光を保持しないcGMP-フルオレセインは、GMP-フルオレセインに変換され、これがIMAPに結合すると蛍光偏光(Amp)の大きな増加をもたらす。したがって、ホスホジエステラーゼの阻害は、Ampの減少として検出される。
【0082】
酵素アッセイ
材料: Molecular Devices(Sunnyvale, CA)から入手可能なIMAP試薬(反応バッファー、結合バッファー、FL-GMPおよびIMAPビーズ)を除いて、全ての化学物質はSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から入手できる。
【0083】
アッセイ: 以下のホスホジエステラーゼ酵素を使用することができる: 3',5'-環状ヌクレオチド特異的ウシ脳ホスホジエステラーゼ(Sigma, St. Louis, MO)(主にPDEIB)および組換え完全長ヒトPDE1AおよびPDE1B(それぞれ、r-hPDE1Aおよびr-hPDE1B)(例えば、当該技術分野の当業者によってHEK細胞またはSF9細胞において産生され得る)。PDE1酵素は、50%グリセロールで2.5U/mlに再構成される。1ユニットの酵素は、pH7.5、30℃で毎分1.0μmolの3',5'-cAMPを5'-AMPに加水分解する。酵素1部を反応バッファー(30μM CaCl2、10U/mlのカルモジュリン(Sigma P2277)、10mM Tris-HCl pH7.2、10mM MgCl2、0.1%BSA、0.05%NaN3)1999部に添加して、最終濃度1.25mU/mlを得る。希釈した酵素溶液99μlを平底96ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに添加し、これに、100%DMSOに溶解した試験化合物1μlを添加する。室温で10分間、化合物を酵素と混合してプレインキュベートする。
【0084】
384ウェルマイクロタイタープレートにおいて、酵素および阻害剤の混合物4部と基質溶液(0.225μM)1部を合わせることによってFL-GMP変換反応を開始させる。該反応を暗所にて室温で15分間インキュベートする。該384ウェルプレートの各ウェルに結合試薬(1:1800希釈の消泡剤を添加した結合バッファーによる1:400希釈のIMAPビーズ)60μLを添加することによって反応を停止させる。該プレートを室温で1時間インキュベートしてIMAP結合を進行させて完了させ、次いで、Envisionマルチモードマイクロプレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT)に入れて蛍光偏光(Amp)を測定する。
【0085】
Ampの減少として測定されるGMP濃度の減少は、PDE活性の阻害を示している。0.0037nM~80,000nMの範囲の8~16種類の濃度の化合物の存在下で酵素活性を測定し、次いで、薬物濃度対AmPをプロットすることによってIC50値を決定し、これにより、非線形回帰ソフトウェア(XLFit;IDBS, Cambridge, MA)を用いてIC50値を推定することができる。
【0086】
PDE1阻害活性について本明細書に記載されているかまたは同様に記載されているアッセイで、本発明の化合物を試験する。例えば、化合物214は、式:
【化24】
で示される特定のPDE1阻害剤として同定される。
【0087】
下記の表に記載されるように、この化合物は、ナノモル以下のレベルでPDE1に対して効力を有し(上記のアッセイにおけるウシ脳PDE1に対して0.058nMのIC50)、他のPDEファミリーよりも高い選択性を有する:
【0088】
【表1】
【0089】
本化合物は、63個の受容体、酵素およびイオンチャネルの一団に対しても選択性が高い。これらのデータおよび本明細書に記載の他のPDE1阻害剤のデータは、Li et al., J. Med. Chem. 2016: 59, 1149-1164に記載されている(その内容は出典明示により本明細書の一部とする)。
【0090】
提供される例の代替的な組み合わせおよび変形は、本開示に基づいて明らかになるであろう。記載された実施態様の多くの可能な変形例のすべてについて具体例を提供することはできなが、そのような組み合わせおよび変形例は、最終的に問題となる特許請求の範囲であり得る。
【国際調査報告】