(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】物体を船体デッキから持ち上げるための方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/06 20060101AFI20221024BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20221024BHJP
B66C 1/10 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B66C13/06
F03D13/25
B66C1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513325
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020074108
(87)【国際公開番号】W WO2021038057
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282638
【氏名又は名称】ディーム・オフショア・ベーエー・エヌ・ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ウヴェ・ステンピンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ヴァルト・ベールト
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ジェラルド・ファンニューウェンハイセ
【テーマコード(参考)】
3F004
3H178
【Fターム(参考)】
3F004EA04
3F004KA01
3H178AA03
3H178AA24
3H178BB77
(57)【要約】
船体デッキから物体を持ち上げるための方法が記載されている。船体デッキに設けられた吊り上げ手段には吊り上げケーブルが設けられ、吊り上げケーブルには、物体のための取付手段が連結されている。物体は取付手段に連結され、取付手段を使用して船体デッキに対して持ち上げられ且つ移動させられる。取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、波力および風力の影響の下で生じ、振り子動作は、移動される際にジャイロスコープにより減衰される。ジャイロスコープは、吊り上げケーブル、取付手段、および/または物体に連結され、一次回転軸の周りに回転する回転対称な本体を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体デッキから物体を持ち上げるための方法であって、
前記船体デッキ上の吊り上げ手段は、前記物体のための取付手段が外側端部に設けられた吊り上げケーブルを備え、前記物体は前記取付手段に連結されて、前記取付手段を使用して前記船体デッキに対して持ち上げられ且つ移動され、前記取付手段および該取付手段に連結された物体の振り子動作は、波力および風力の影響の下で生じ、前記振り子動作は、前記吊り上げケーブル、取付手段、および/または物体に連結されたジャイロスコープにより、移動の際に減衰され、前記ジャイロスコープは、一次回転軸の周りに回転する回転対称な本体を備え、前記ジャイロスコープの一次回転軸は、前記吊り上げケーブルの方向に対してゼロ以外の傾斜角に保持されており、前記傾斜角は、前記吊り上げケーブルの方向と、前記船体デッキに対して垂直に延びたz方向と、の間の揺れのその瞬間の角度に線形に変化する、方法。
【請求項2】
前記一次回転軸の周りに回転する前記本体の回転速度は、前記振り子動作の振幅が増大するにつれて増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取付手段および該取付手段に連結された前記物体の振り子動作は、前記船体デッキから前記物体を持ち上げる際に、前記ジャイロスコープにより減衰される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
持ち上げられ且つ移動させられた前記物体は、周囲の水上にある、前記物体のための支持構造物上に降ろされて積み上げられ、前記取付手段および該取付手段に連結された前記物体の振り子動作は、前記支持構造物上に前記物体を下ろす際および/または積み上げる際に前記ジャイロスコープにより減衰される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吊り上げ手段はブームを備え、該ブームの外側端部には、吊り上げケーブルが連結されており、少なくとも、前記船体デッキに対して垂直に延びた回転軸の周りに前記物体を移動させる際に、前記ブームが回転させられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記取付手段および該取付手段に連結された前記物体の振り子動作は、前記取付手段および/または該取付手段に連結された前記物体にタガーラインの一側を連結し、且つ該タガーラインを他側において、好適に船体デッキから保持することによりさらに減衰され、前記振り子動作は、タガーラインの引き込みまたは送り出しによりさらに減衰される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記取付手段および該取付手段に連結された前記物体の振り子動作は、前記ジャイロスコープが前記振り子動作の最大減衰を生じさせる方向以外の方向において、前記タガーラインにより減衰される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(x,y,z)座標系が前記船体デッキに関連付けられており、x軸は前記船体の長手方向に延び、y軸は前記船体の横方向に延び、z軸は前記船体に対して垂直に延びており、前記船体は、前記x軸が波の方向に略平行となるように保持され、前記取付手段および該取付手段に連結された前記物体の振り子動作は、前記タガーラインを使用してy軸に略平行に減衰される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記取付手段は前記ジャイロスコープを備えている、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記取付手段はスプレッダバーを備え、該スプレッダバーから前記物体が懸架されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記取付手段は吊り上げブロックを備えている、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記一次回転軸の周りに回転する前記ジャイロスコープの本体は、フレーム内に受容されており、前記本体は駆動手段により回転駆動され、前記フレームは、前記吊り上げケーブル、前記取付手段、および/または前記物体に固定的に連結されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記物体は、風力タービンのマストセクション、ロータブレード、および/またはナセルを備えている、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記物体は、風力タービンのハブを備えたナセルを備え、前記ハブにはロータブレード、好適に3つのロータブレードが設けられている、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を船体デッキから持ち上げるための方法に関し、船体デッキ上の吊り上げ手段は、物体のための取付手段が外側端部に設けられた吊り上げケーブルを備え、物体は取付手段に連結されて、取付手段を使用して船体デッキに対して持ち上げられ且つ移動させられる。
【0002】
本発明は、洋上風力タービンに関して部分的に記載されるだろう。しかしながら、そのような風力タービンへの言及は、本発明が風力タービンの構成部品を持ち上げて移動させることに制限されることを暗示しているのではなく、この方法は、他の物体、特に大きく且つ細い物体を持ち上げて移動させるためにも同様に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
船体デッキから物体を持ち上げて移動させることは、例えば海上における風力タービンの設置の際に適用され得る。風力タービンの構成部品は、船体デッキから、海上に設置された支持構造物上に載置されなければならず、このことは、風力タービンの構成部品を船体デッキから持ち上げて移動させることを必要とする。洋上風力タービンはゴンドラ(またはナセル)を備え、ナセルはマスト上に設置されて、発電機等の電気機械設備のためのハウジングを形成する。ナセルには、複数のロータブレードが配置されたハブが設けられている。ロータブレードは、風の動的エネルギをナセルのシャフトの回転動作へと変換し、この動作は発電機により電気エネルギへと変換される。建設のステージによっては、支持構造物は、風力タービンの場合、基礎、基礎上に載置されたマスト、またはマスト上に載置されたナセルを備えることが可能である。マスト、ナセル、またはタービンブレードは、それぞれ個々に載置されなければならない。
【0004】
風力タービンの構成部品等の物体の持ち上げおよび載置は、風および波の負荷により障害を受ける。このことは、物体がより大きくおよびより細長くなった場合にますます当てはまる。特に風力タービンブレードは、多くの風を捕捉する。吊り上げ手段に取り付けられた風力タービンブレードは、ここでは支持構造物に対してまたはすでに設置された構成部品に対して、大きく且つ予想外の動作受け得る。このことは、操作を相当により難しくするか、または強い風の荷重の場合不可能にさえなる。加えて、物体は船体デッキから持ち上げられており、船体は波の作用に起因した動作を受ける。
【0005】
水上に浮いた船体は、3つの並進動作および3つの回転動作を含んだ6自由度を有する動作に向き合っている。船体デッキに連携したデカルト座標系においては、x軸は船体の長手方向に平行に延びており、y軸は船体の横方向に平行に延びており、z軸は船体デッキに直交して延びた方向に平行である。x方向における船体の並進はサージと称され、y方向における船体の並進はスウェイと称され、z方向における並進はヒーブと称される。x軸周りの船体の回転はロールと称され、y軸周りの回転はピッチと称され、z軸周りの回転はヨーと称される。これらすべての移動は、吊り上げ手段から懸架された物体の振り子動作を誘起し得、特に船体デッキ上の吊り上げ手段は船体の動作に追従するだろう。
【0006】
物体は船体から持ち上げられて移動させられ、船体はジャッキアッププラットフォームを備えることが可能であり、海底に静止したジャッキアッププラットフォームの脚は、幾分かの安定性に寄与する。しかしながら、本発明の利点は、船体が浮いている場合に、最も明確に立証される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、取付手段を使用した方法を提供することであり、この方法では、物体は、従来技術により知られているよりも風の影響を受けにくい方法で、海上において船体デッキに対して持ち上げられ且つ移動させられることが可能であり、随意的に海上にある支持構造物上に載置され積み上げられることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1による方法を提供することにより達成される。本発明は、特に船体デッキから物体を持ち上げるための方法を提供しており、船体デッキ上の吊り上げ手段は、物体のための取付手段が外側端部に設けられた吊り上げケーブルを備えている。物体は取付手段に連結されており、次いで取付手段を使用して船体デッキに対して持ち上げられ且つ移動させられる。取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、波力および風力の影響の下で生じ、振り子動作は、吊り上げケーブル、取付手段、および/または物体に連結されたジャイロスコープにより、移動の際に減衰され、ジャイロスコープは、一次回転軸の周りに回転する回転対称な本体を備えている。
【0009】
ジャイロスコープは、波力および風力により生じた、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作を減衰させ、これは、異なった方向における振り子動作の振幅が、ジャイロスコープを使用していない場合のこれらの振り子動作の振幅よりも小さくなることを意味している。このようにして、物体は、先行技術により可能であるよりも、より荒れた気象条件において船体デッキから吊り上げ手段を用いて操作されることが可能である。
【0010】
ジャイロスコープはそれ自体既知であり、例えば船体内において、船体のローリング動作(ロール)を減少させる目的で適用されている。このことは、1つの単一方向における動作の制御を含んでいる。しかしながら、吊り上げケーブルに懸架された物体は、前述の船体の動作(サージ、スウェイ、ヒーブ、ロール、ピッチ、およびヨー)および風力に起因した、全方向における動作の影響を受ける。吊り上げケーブル、取付手段、および/または物体に連結された単一のジャイロスコープが、効果的な方法において、全方向の振り子動作を減衰させることが可能であることは、驚きである。持ち上げ手段から懸架された物体の揺れの減衰は、物体の位置決めが、船体デッキに対する物体の移動の際により正確になることを達成する。そのような移動は、吊り上げケーブルが連結された持ち上げ手段の一部(例えばブームの外側端部)を船体デッキに対して移動させることにより達成されることが可能である。この動作は、懸架された物体の追加の振り子動作の原因ともなり得る。
【0011】
ジャイロスコープは、一次回転軸の周りに回転する回転対称な本体を備えている。この回転する本体は、この目的に適した駆動部により回転させられるように設定され、その回転速度は一定に維持されることが可能であるか、または例えば加速させられて変化させられることが可能である。本体は(例えばフライホイールのような)ディスク状とされることが可能であるが、例えば球状のような異なった形状とされることも可能である。本体は、この目的に適したサスペンション内に、例えばフレームまたはハウジング内に一次シャフトを通じて受容されている。
【0012】
発明された方法の実施形態により優れた結果が達成され、そこでは、ジャイロスコープの一次回転軸は、吊り上げケーブルの方向に平行に保持されている。これはジャイロスコープの適用により達成されることが可能であり、そこでは、一次回転軸は、吊り上げケーブルの揺れのその瞬間の方向に略平行に保持される。
【0013】
方法の別の実施形態は、ジャイロスコープの一次回転軸が、吊り上げケーブルのその瞬間の方向に対してゼロ以外の傾斜角を保持しているとの特徴を有する。
【0014】
方法に関するまた別の実施形態では、傾斜角は、吊り上げケーブルの方向と、船体デッキに対して垂直に延びたz方向と、の間の揺れのその瞬間の角度に線形に変化する。
【0015】
方法の実施形態では、一次回転軸の周りに回転する本体の回転速度は、振り子動作の振幅が増大するにつれて増大することが見受けられ、結果として懸架された物体がさらに安定する。
【0016】
発明された方法は、取付手段に連結された物体の操作の異なった段階において適用されることが可能である。特に提供されているのは方法の実施形態であり、そこでは、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、船体デッキから物体を持ち上げる際に、ジャイロスコープにより減衰される。海上の搬送の際に、物体は、通常はこの目的のために設けられた船体デッキ上の格納庫内に配置されている。物体は格納庫から持ち上げられなければならず、吊り上げケーブルは、持ち上げる場合に最大長さを有することが可能であり、持ち上げている間、吊り上げケーブルは最小長さへと引き込まれることが可能である。ジャイロスコープも良好に作動し、操作のこの段階において吊り上げケーブルの引き込みの際にも物体の振り子動作を防止する。これは、船体デッキ上の安全性を高めている。
【0017】
別の実施形態によれば、発明された方法は、持ち上げられ且つ移動させられた物体が、周囲の水上にある、物体のための支持構造物上に降ろされて積み上げられ、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、支持構造物上に物体を下ろす際および/または積み上げる際にジャイロスコープにより減衰されるように、適用されることも可能である。支持構造物は一般的に、海底に対して比較的安定した位置にあり、したがって懸架された物体は、支持構造物に対して移動させられることが、ここでは重要であると考えられる。本実施形態による方法は、この相対移動が減衰されることを確実にしている。
【0018】
本発明のまた別の実施形態は方法を提供しており、そこでは、吊り上げ手段はブームを備え、このブームの外側端部には、吊り上げケーブルが連結されており、船体デッキに対して垂直に延びた回転軸の周りの物体の移動の際に、ブームが回転させられる。そのような持ち上げの方法では、懸架位置(吊り上げケーブルが取り付けられたブームの外側端部)自身が移動され、この移動により、物体の追加の振り子動作を引き起こし得る。振り子動作の良好な減衰は、この実施形態においても達成されている。
【0019】
さらに改善された方法は実施形態に関連しており、そこでは、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、取付手段および/またはそこに連結された物体にタガーラインの一側を連結し、且つタガーラインを他側において、好適に船体デッキから保持することによりさらに減衰される。この実施形態においては、振り子動作は、タガーラインの引き込みまたは送り出しによりさらに減衰されることが可能である。
【0020】
また別の実施形態は方法に関し、そこでは、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、ジャイロスコープが振り子動作の最大減衰を生じさせる方向以外の方向において、タガーラインにより減衰される。
【0021】
一実施形態による方法を適用することは、ここでさらなる利点を有することができ、(x,y,z)座標系が船体デッキに関連付けられており、x軸は船体の長手方向に延び、y軸は船体の横方向に延び、z軸は船体に対して垂直に延びており、船体は、x軸が波の方向に略平行となるように保持され、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、タガーラインを使用してy軸に略平行に減衰される。
【0022】
本発明によれば、ジャイロスコープは、吊り上げケーブル自身への取り付けの可能性に加えて、吊り上げケーブルから懸架された任意の構成部品に取り付けられることが可能である。方法の実用的な実施形態においては、取付手段はジャイロスコープを備えている。取付手段はスプレッダバーを備え、スプレッダバーから物体が懸架されているか、または取付手段は吊り上げブロックを備えることが可能である。
【0023】
実施形態によれば、方法が提供されており、そこでは、一次回転軸の周りに回転するジャイロスコープの本体は、フレームまたはハウジング内に受容されており、本体は駆動手段により回転駆動され、フレームまたはハウジングは、吊り上げケーブル、取付手段、および/または物体に随意的に固定的に連結されている。その連結は、スリングまたはケーブルを用いて実施されることも可能である。
【0024】
発明された方法により、吊り上げケーブルから懸架された任意の物体は、原則的に船体デッキから操作されることが可能である。本発明は、方法の実施形態において特に利点を有し、物体は、風力タービンのマストセクション、ロータブレード、および/またはナセルを備えており、より具体的には、物体は、風力タービンのハブを備えたナセルを備え、ハブにはロータブレード、好適に3つのロータブレードが設けられている。
【0025】
この特許出願に記載された本発明の実施形態は、これらの実施形態の任意の可能な組み合わせで組み合わせることが可能であり、各実施形態は、分割出願の主題を個別に形成することが可能である。
【0026】
ここで、本発明をそれに限定することなく、以下の図および好適な実施形態の記載を参照して、本発明がさらに解明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態による、船体デッキから物体を持ち上げるように構成された浮いた船体を概略的に示した斜視図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、異なった状態における、支持構造物上に物体を持ち上げて且つ載置するように構成されたジャッキアッププラットフォームの側面を概略的に示した図である。
【
図2B】本発明の実施形態による、異なった状態における、支持構造物上に物体を持ち上げて且つ載置するように構成されたジャッキアッププラットフォームの後面を概略的に示した図である。
【
図3】先行技術による吊り上げ手段のブームから懸架された物体の自由度を概略的に示した図である。
【
図4A】本発明の2つの実施形態による吊り上げ手段のブームから懸架された物体の自由度を概略的に示した図である。
【
図4B】本発明の2つの実施形態による吊り上げ手段のブームから懸架された物体の自由度を概略的に示した図である。
【
図5】本発明の実施形態による、取付手段から懸架された風力タービンナセルを概略的に示した斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態による、取付手段から懸架された風力タービンのためのモノパイル基礎を概略的に示した斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態による方法において適用されるように構成されたジャイロスコープの実施形態を概略的に示した斜視図である。
【
図8】懸架された物体の振り子動作への、ジャイロスコープの実施形態の減衰効果を明確にした比較用を示している。
【
図9A】先行技術によりおよび本発明の実施形態により懸架された物体の、x、y、z方向における位置の確率分布を示した図である。
【
図9B】先行技術によりおよび本発明の実施形態により懸架された物体の、x、y、z方向における位置の確率分布を示した図である。
【
図9C】先行技術によりおよび本発明の実施形態により懸架された物体の、x、y、z方向における位置の確率分布を示した図である。
【
図10】本発明の特定の実施形態による方法を概略的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、特にモノパイル4の形状の風力タービンのための基礎を水底5に配置するように構成された船体1が示されている。必要であれば、船体1には、自身の位置を安定させるための自動船位保持システム(DPシステム)が備えられることが可能である。船体1の作業デッキ10は、ベース72が設けられた持ち上げクレーン7の様式の吊り上げ手段を支持しており、この手段は垂直軸の周りに枢動可能であり、ベースには水平軸の周りに枢動可能なブーム73が設けられている。持ち上げクレーン7には吊り上げケーブル70が設けられ、このケーブルには、フックを備えた吊り上げブロック71の様式の取付手段が取り付けられている。モノパイル4は、吊り上げ位置40において吊り上げブロック71に取り付けられて、次いで持ち上げクレーン7により作業デッキ10に対して持ち上げられ且つ移動させられることが可能である。吊り上げケーブル70から懸架されたモノパイル4は、例えばブーム73が作業デッキ10上を旋回する回転ベース72により、および/またはモノパイル4がそれぞれ上昇されおよび下降させられる、ブーム73の上向きの回転(ラフイン)または下向きの回転(ラフアウト)により、移動させられることが可能である。最終的にモノパイル4を水底5内へと下降させるために、船体1の側部に配置されたガイドケージ3が使用されることが可能である。操作される他の構成部品は、船体1の作業デッキ10上に保管されることが可能であり、それらは風力タービンの複数の遷移部品6および他のモノパイル4等である。
【0029】
モノパイル4の持ち上げおよび載置が風の負荷により邪魔され、船体1が波の作用に起因した動作を受けることも、明白である。持ち上げクレーン7により持ち上げられて自由懸架されたモノパイル4は、作業デッキ10、ガイドケージ3、および水底5に対して大きく且つ予想外の振り子動作を受け得る。このことは、操作を相当により難しくするか、または強い風の負荷の場合不可能にさえする。
【0030】
別の用途は、すでに水底5に配置されたジャケット4´の様式の支持構造物上のナセル8等の、風力タービンの構成部品を載置することに関する。
図2Aおよび
図2Bを参照すると、海でジャケット4´上に風力タービンを組み立てるように構成された船体1´の側面図が示されている。設置される風力タービンの構成部品は、
図2A、
図2Bにおいて異なった位置に示された風力タービンのナセル8、マスト(セクション)8´、および/またはロータブレード(図示略)を含んでいる。船体1´には、例えば持ち上げクレーン7のように、おおよそ船体1と同じデバイスが設けられている。この理由のために、類似のデバイスには
図1と同じ番号が付されている。
図2A、
図2Bにおいて、吊り上げタックル71は同様に異なった位置に示されており、持ち上げられる構成部品はナセル8である。船体1´は、作業デッキ10を支持したアンカパイル11´が設けられたジャッキアップ洋上プラットフォームを備えている。アンカパイル11´は、垂直方向に海底へと移動可能であり、水位に対する作業デッキ10の高さ位置は、(油圧)ジャッキまたはギアラックピニオンシステムを用いてパイル11´に対して作業デッキ10を移動させることにより変化させられることが可能である。本発明による方法が実施されることを可能にするために、船体1´は、海にあるジャケット4´の直近に停泊され、あらゆる場合において、ジャケット4´は、ラフアウト位置にあるブーム73を備えた持ち上げクレーン7のリーチ内に位置している。
【0031】
必要であれば、ブーム73は、吊り上げタックル71のためのガイドデバイス74を備えることが可能であり、それにより吊り上げタックル71の動作は、少なくとも一方向に制限されることが可能である。しかしながら、これは本発明に関して本質的ではない。
【0032】
図示された前述の両方の用途において、吊り上げタックル71およびそれに連結されたナセル8の振り子動作は、波力および風力の影響下で生じ、本発明によれば、振り子動作は、吊り上げタックル71またはナセル8自身に連結され且つ一次回転軸の周りに回転対称な本体を備えたジャイロスコープ2により、移動の際に緩和される。
【0033】
吊り上げケーブル70と例えばナセル8との間の可能な連結は、
図5に示されている。ナセル8は、ハウジング80と、ハウジング80に連結され且つ風力タービンブレードのための装着位置82を備えた回転自在ハブ81と、を備えている。ナセル8は、ワイヤ(90a、90b)により取付手段9から懸架され、図示された実施形態においては、取付手段は第1のスプレッダバー9aと、これに直交して配置された第2のスプレッダバー9bと、を備え、これらは一体となって交差構造を形成している。ナセル8は、ハウジング80と第2のスプレッダバー9bとの間、およびハブ81と第1のスプレッダバー9aとの間、のそれぞれに延びたワイヤ(90a、90b)により懸架されている。この実施形態によれば、第1のスプレッダバー9aにはジャイロスコープ2が設けられている。
【0034】
吊り上げケーブル70とモノパイル基礎4との間の可能な連結が、
図6に示されている。モノパイル4はスリング93内に懸架され、スリング93は、上側に作業プラットフォーム92が設けられたスプレッダバー(不可視)に連結されている。スプレッダバーは、次に、スリングまたはケーブル90により、ジャイロスコープ2のためのハウジング94に連結されている。ハウジング94は、次に、吊り上げブロック71(吊り上げタックル71とも称される)のフックからスリングまたはケーブル91により懸架されている。この実施形態によれば、ハウジング94はジャイロスコープ2を備えている。
【0035】
ハウジング94またはスプレッダバー9a内に受容されたジャイロスコープ2の可能な実施形態が、
図7に示されている。ジャイロスコープ2は、一次シャフト21の周りに回転し且つ回転対称なフライホイール20の形状の本体を備えている。一次シャフト21は、第1の環状サスペンション21´内に回転可能に懸架されている。第1の環状サスペンション21´は第2の環状サスペンション22´内に、随意的に二次シャフト22の周りに回転可能に受容されている。この第2の環状サスペンション22´は、三次シャフト23を備えた第3のサスペンション23´内に、随意的に回転可能に懸架されている。図示された実施形態においては、第3のサスペンション23´は、中央開口部23aが設けられたブロックを備え、開口部23a内には、ジャイロスコープ2が受容されている。ブロック形状のサスペンション23´は、スプレッダバー9a、ハウジング94、または他の受容体内に配置され、そこに堅固に固定されている。ジャイロスコープ2が固定され、それにより一次回転シャフト21は略垂直に延び、換言すると(垂直方向に)自由懸架された吊り上げケーブル70の方向に平行に延びている(または代替的に、フライホイール20の平面が自由懸架された吊り上げケーブル70の方向に略直交して延びている)ことは、ここでは重要である。
【0036】
第1の環状サスペンション21´と第2の環状サスペンション22´と第3の環状サスペンション23´との間の連結は、自由に回転可能とされることが可能であるが、各々が固定位置に設置されることも可能である。図示された実施形態においては、第1の環状サスペンション21´と第2の環状サスペンション22´との間の連結は固定され、これにより2つのリング(21´、22´)は互いに対して直交して延びている。この状態においてパッシブと称され、ジャイロスコープの一次シャフト21は、振り子動作の場合に、揺れている吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に略平行に延びたままである。第1の環状サスペンション21´と第2の環状サスペンション22´との間の連結は固定されることも可能であり、これにより2つのリング(21´、22´)は、互いに対して直角以外の角度24を成している。この状態においてアクティブと称され、ジャイロスコープ2の一次シャフト21は、振り子動作の場合に、揺れている吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に対してほぼ前述の角度24で延びている。また別のオプションは、第1の環状サスペンション21´と第2の環状サスペンション22´との間の連結を解放した場合であり、これにより2つのリング(21´、22´)は、互いに対して自由に回転可能である。前述の実施形態においては、第2の環状サスペンション22´と第3の環状サスペンション23´との間の連結は、固定または解放されることが可能である。ジャイロスコープのための解放可能な連結は、すでに獲得可能である。
【0037】
図3を参照すると、吊り上げケーブル70によりブーム73から懸架された物体(4、8)が示されている。船体デッキ10に関連付けられたデカルト(x、y、z)座標系が、同様に示されている。(x、y、z)座標系の原点は、ブーム73のベース72の位置に、または少なくとも、ブーム73がベース72の周りに回転可能な位置内にある。x軸は船舶の長手方向に延び、y方向は船舶の横方向に延び、z方向は船体デッキ10に直交した方向に延びている。図示されたように、波力および風力の影響下において、懸架された物体(4、8)は振り子として作用し、略三自由度の振り子動作を示す。その自由度は、吊り上げケーブル70とz軸との間の角度θ、方位角Ψ、および吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に平行な軸の周りの、物体(4、8)の回転角φである。
【0038】
図4Aおよび
図4Bは本発明の方法の実施形態を示しており、その方法では、ジャイロスコープ2は、吊り上げケーブル70に、例えば物体(4、8)のための連結手段9に統合されている。
図4Aにおいて方法が示されており、その方法では、ジャイロスコープ2は前述のパッシブ状態において操作され、ジャイロスコープ2の一次シャフト21は、振り子動作の場合において、揺れている吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に略平行に延びたままである。換言すると、フライホイール20の回転ベクトルωは、図示されたように、方向76に平行に向けられている。
図4Bは方法を示しており、その方法では、ジャイロスコープ2は前述のアクティブ状態において操作され、ジャイロスコープ2の一次シャフトは、振り子動作の場合において、揺れている吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に対してゼロ以外の角度で延びたままである。換言すると、フライホイール20の回転ベクトルωは、ここではz軸とゼロ以外の傾斜角(鋭角)βを形成している。
【0039】
例えば風力タービンのモノパイル4、ナセル8、またはマストセクション8´等の物体の持ち上げおよび移動におけるジャイロスコープ2の効果は、
図8に含まれた表に示されている。この表は、最初の3つのコラムに、x、y、およびz方向における物体(4、8)の移動の二乗平均平方根(rms)値、最後の3つのコラムに、これらの方向に生じた最大移動値、を示している。第1列(制御されていない振り子)は、先行技術による方法に従った移動量を示している。第2列および第3列(パッシブジャイロスコープ150rpm、アクティブジャイロスコープ150rpm)は、本発明の方法が適用された場合の移動量を示しており、ジャイロスコープ2は、毎分150回転(rpm)の回転速度において、それぞれパッシブ状態およびアクティブ状態で操作されている。第4列および第5列(パッシブジャイロスコープ180rpm、アクティブジャイロスコープ180rpm)は、本発明の方法が適用された場合の移動量を示しており、ジャイロスコープ2は、毎分180回転(rpm)の回転速度において、それぞれパッシブ状態およびアクティブ状態で操作されている。最後に、第6列および第7列(パッシブジャイロスコープ200rpm、アクティブジャイロスコープ200rpm)は、本発明の方法が適用された場合の移動量を示しており、ジャイロスコープ2は、毎分200回転(rpm)の回転速度において、それぞれパッシブ状態およびアクティブ状態で操作されている。すべての移動量は、既知の方法(第1列)に対して、(主にxおよびy方向において)顕著に減少していることが明らかである。
【0040】
この効果は
図9A、
図9B、および
図9Cにも見られており、そこでは、x、y、およびz方向における物体(4、8)の位置の可能性P(x,y,z)は、変位量の関数として示されている。本発明による方法は、主にxおよびy方向における振り子動作の振幅を顕著に減少させることが見出された。したがって、振り子動作は効果的に減衰している。
【0041】
最後に、
図10は好適な方法を示しており、ここでは、浮いた船体1は、例えばこの目的に適した固定により、x軸(船舶の長手方向)が平均した波の方向100に略平行となるように保持されている。スプレッダバー92の様式の固定手段のおよびそこに連結されたモノパイル4の形状の物体の振り子動作は、タガーライン101を使用してy軸(船舶の横方向)に略平行に減衰される。この目的のために、タガーライン101は、作業デッキ10に固定されたウィンチ102に連結されており、ウィンチ102はタガーラインを送り出すまたは引き込むことが可能である。x方向における振り子動作は、前述のようにハウジング94内に受容されたジャイロスコープ2により減衰される。
【0042】
本発明は、図示された実施形態に限定されるのではなく、その多くの変形が、添付の請求項に保護の範囲内において可能である。
【符号の説明】
【0043】
1、1´ ・・・船体
2 ・・・ジャイロスコープ
3 ・・・ガイドケージ
4 ・・・モノパイル
4´ ・・・ジャケット
5 ・・・水底
6 ・・・遷移部品
7 ・・・持ち上げクレーン
8 ・・・ナセル
8´ ・・・マスト
9 ・・・取付手段
9a ・・・第1のスプレッダバー
9b ・・・第2のスプレッダバー
10 ・・・作業デッキ
11´ ・・・アンカパイル
20 ・・・フライホイール
21 ・・・一次シャフト
21´ ・・・第1の環状サスペンション
22 ・・・二次シャフト
22´ ・・・第2の環状サスペンション
23 ・・・三次シャフト
23´ ・・・第3の環状サスペンション
23a ・・・中央開口部
24 ・・・角度
40 ・・・吊り上げ位置
70 ・・・吊り上げケーブル
71 ・・・吊り上げブロック
72 ・・・ベース
73 ・・・ブーム
74 ・・・ガイドデバイス
80 ・・・ハウジング
81 ・・・回転自在ハブ
82 ・・・装着位置
90a、90b ・・・ワイヤ
91 ・・・ケーブル
92 ・・・作業プラットフォーム
93 ・・・スリング
94 ・・・ハウジング
100 ・・・波の方向
101 ・・・タガーライン
102 ・・・ウィンチ
【手続補正書】
【提出日】2022-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を船体デッキから持ち上げるための方法に関し、船体デッキ上の吊り上げ手段は、物体のための取付手段が外側端部に設けられた吊り上げケーブルを備え、物体は取付手段に連結されて、取付手段を使用して船体デッキに対して持ち上げられ且つ移動させられる。
【0002】
本発明は、洋上風力タービンに関して部分的に記載されるだろう。しかしながら、そのような風力タービンへの言及は、本発明が風力タービンの構成部品を持ち上げて移動させることに制限されることを暗示しているのではなく、この方法は、他の物体、特に大きく且つ細い物体を持ち上げて移動させるためにも同様に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
船体デッキから物体を持ち上げて移動させることは、例えば海上における風力タービンの設置の際に適用され得る。風力タービンの構成部品は、船体デッキから、海上に設置された支持構造物上に載置されなければならず、このことは、風力タービンの構成部品を船体デッキから持ち上げて移動させることを必要とする。洋上風力タービンはゴンドラ(またはナセル)を備え、ナセルはマスト上に設置されて、発電機等の電気機械設備のためのハウジングを形成する。ナセルには、複数のロータブレードが配置されたハブが設けられている。ロータブレードは、風の動的エネルギをナセルのシャフトの回転動作へと変換し、この動作は発電機により電気エネルギへと変換される。建設のステージによっては、支持構造物は、風力タービンの場合、基礎、基礎上に載置されたマスト、またはマスト上に載置されたナセルを備えることが可能である。マスト、ナセル、またはタービンブレードは、それぞれ個々に載置されなければならない。
【0004】
風力タービンの構成部品等の物体の持ち上げおよび載置は、風および波の負荷により障害を受ける。このことは、物体がより大きくおよびより細長くなった場合にますます当てはまる。特に風力タービンブレードは、多くの風を捕捉する。吊り上げ手段に取り付けられた風力タービンブレードは、ここでは支持構造物に対してまたはすでに設置された構成部品に対して、大きく且つ予想外の動作受け得る。このことは、操作を相当により難しくするか、または強い風の荷重の場合不可能にさえなる。加えて、物体は船体デッキから持ち上げられており、船体は波の作用に起因した動作を受ける。
【0005】
水上に浮いた船体は、3つの並進動作および3つの回転動作を含んだ6自由度を有する動作に向き合っている。船体デッキに連携したデカルト座標系においては、x軸は船体の長手方向に平行に延びており、y軸は船体の横方向に平行に延びており、z軸は船体デッキに直交して延びた方向に平行である。x方向における船体の並進はサージと称され、y方向における船体の並進はスウェイと称され、z方向における並進はヒーブと称される。x軸周りの船体の回転はロールと称され、y軸周りの回転はピッチと称され、z軸周りの回転はヨーと称される。これらすべての移動は、吊り上げ手段から懸架された物体の振り子動作を誘起し得、特に船体デッキ上の吊り上げ手段は船体の動作に追従するだろう。
【0006】
特許文献1は、懸架された風力タービンに関連した構成部品等の荷物を垂直軸周りに回転させるためのアセンブリを開示している。アセンブリは、荷物が懸架された内側リム、および固定位置に保持され得る外側リム、を備えている。駆動部は、内側リムおよびそこから懸架された荷物を、外側リムに対して回転させる。
【0007】
特許文献2は、2つの対向した回転ディスクを用いてタービンブレードの配向を制御するための方法を開示している。風力等の外力により荷重が負荷された場合、ブレードの配向は、回転ディスクの一方の速度を増加または減少させることにより制御される。特許文献2は、波力および風力の影響の下で生じた、タービンブレードまたは他の物体の移動の際の振り子動作の減衰について触れていない。
【0008】
特許文献3および特許文献4は同様に、2つのジャイロスコープおよび1つの制御装置を用いて荷物の方向および傾斜を制御するための方法を開示している。これらの文献も、ロープから懸架された荷物の振り子動作の減衰については触れていない。
【0009】
特許文献5も、2つ以上のジャイロスコープを用いて、持ち上げられた荷物の配向を制御するための方法を開示している。特許文献5も、懸架された荷物の振り子動作を減衰するための方法とは関係ない。特許文献6も同様である。
【0010】
最後に特許文献7は、外力に抵抗する、ジャイロスコープを使用した安定化位置決めシステムを開示している。複数の駆動可能なフライホイールが、懸架された荷物に剛的に係合され、各々が3つの直交空間軸のセットの1つに沿って配置されている。これらの軸は、吊り上げケーブルの方向に対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2018/113882号パンフレット
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第101607995号明細書
【特許文献3】特開平02-169493号公報
【特許文献4】特許第5644419号公報
【特許文献5】国際公開第2017/059493号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2015/082347号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5,871,249号明細書
【0012】
物体は船体から持ち上げられて移動させられ、船体はジャッキアッププラットフォームを備えることが可能であり、海底に静止したジャッキアッププラットフォームの脚は、幾分かの安定性に寄与する。しかしながら、本発明の利点は、船体が浮いている場合に、最も明確に立証される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、取付手段を使用した方法を提供することであり、この方法では、物体は、従来技術により知られているよりも風の影響を受けにくい方法で、海上において船体デッキに対して持ち上げられ且つ移動させられることが可能であり、随意的に海上にある支持構造物上に載置され積み上げられることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1による方法を提供することにより達成される。本発明は、特に船体デッキから物体を持ち上げるための方法を提供しており、船体デッキ上の吊り上げ手段は、物体のための取付手段が外側端部に設けられた吊り上げケーブルを備えている。物体は取付手段に連結されており、次いで取付手段を使用して船体デッキに対して持ち上げられ且つ移動させられる。取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、波力および風力の影響の下で生じ、振り子動作は、吊り上げケーブル、取付手段、および/または物体に連結されたジャイロスコープにより、移動の際に減衰され、ジャイロスコープは、一次回転軸の周りに回転する回転対称な本体を備えている。
【0015】
ジャイロスコープは、波力および風力により生じた、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作を減衰させ、これは、異なった方向における振り子動作の振幅が、ジャイロスコープを使用していない場合のこれらの振り子動作の振幅よりも小さくなることを意味している。このようにして、物体は、先行技術により可能であるよりも、より荒れた気象条件において船体デッキから吊り上げ手段を用いて操作されることが可能である。
【0016】
ジャイロスコープはそれ自体既知であり、例えば船体内において、船体のローリング動作(ロール)を減少させる目的で適用されている。このことは、1つの単一方向における動作の制御を含んでいる。しかしながら、吊り上げケーブルに懸架された物体は、前述の船体の動作(サージ、スウェイ、ヒーブ、ロール、ピッチ、およびヨー)および風力に起因した、全方向における動作の影響を受ける。吊り上げケーブル、取付手段、および/または物体に連結された単一のジャイロスコープが、効果的な方法において、全方向の振り子動作を減衰させることが可能であることは、驚きである。持ち上げ手段から懸架された物体の揺れの減衰は、物体の位置決めが、船体デッキに対する物体の移動の際により正確になることを達成する。そのような移動は、吊り上げケーブルが連結された持ち上げ手段の一部(例えばブームの外側端部)を船体デッキに対して移動させることにより達成されることが可能である。この動作は、懸架された物体の追加の振り子動作の原因ともなり得る。
【0017】
ジャイロスコープは、一次回転軸の周りに回転する回転対称な本体を備えている。この回転する本体は、この目的に適した駆動部により回転させられるように設定され、その回転速度は一定に維持されることが可能であるか、または例えば加速させられて変化させられることが可能である。本体は(例えばフライホイールのような)ディスク状とされることが可能であるが、例えば球状のような異なった形状とされることも可能である。本体は、この目的に適したサスペンション内に、例えばフレームまたはハウジング内に一次シャフトを通じて受容されている。
【0018】
発明された方法の実施形態により優れた結果が達成され、そこでは、ジャイロスコープの一次回転軸は、吊り上げケーブルの方向に平行に保持されている。これはジャイロスコープの適用により達成されることが可能であり、そこでは、一次回転軸は、吊り上げケーブルの揺れのその瞬間の方向に略平行に保持される。
【0019】
方法の別の実施形態は、ジャイロスコープの一次回転軸が、吊り上げケーブルのその瞬間の方向に対してゼロ以外の傾斜角を保持しているとの特徴を有する。
【0020】
方法に関するまた別の実施形態では、傾斜角は、吊り上げケーブルの方向と、船体デッキに対して垂直に延びたz方向と、の間の揺れのその瞬間の角度に線形に変化する。
【0021】
方法の実施形態では、一次回転軸の周りに回転する本体の回転速度は、振り子動作の振幅が増大するにつれて増大することが見受けられ、結果として懸架された物体がさらに安定する。
【0022】
発明された方法は、取付手段に連結された物体の操作の異なった段階において適用されることが可能である。特に提供されているのは方法の実施形態であり、そこでは、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、船体デッキから物体を持ち上げる際に、ジャイロスコープにより減衰される。海上の搬送の際に、物体は、通常はこの目的のために設けられた船体デッキ上の格納庫内に配置されている。物体は格納庫から持ち上げられなければならず、吊り上げケーブルは、持ち上げる場合に最大長さを有することが可能であり、持ち上げている間、吊り上げケーブルは最小長さへと引き込まれることが可能である。ジャイロスコープも良好に作動し、操作のこの段階において吊り上げケーブルの引き込みの際にも物体の振り子動作を防止する。これは、船体デッキ上の安全性を高めている。
【0023】
別の実施形態によれば、発明された方法は、持ち上げられ且つ移動させられた物体が、周囲の水上にある、物体のための支持構造物上に降ろされて積み上げられ、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、支持構造物上に物体を下ろす際および/または積み上げる際にジャイロスコープにより減衰されるように、適用されることも可能である。支持構造物は一般的に、海底に対して比較的安定した位置にあり、したがって懸架された物体は、支持構造物に対して移動させられることが、ここでは重要であると考えられる。本実施形態による方法は、この相対移動が減衰されることを確実にしている。
【0024】
本発明のまた別の実施形態は方法を提供しており、そこでは、吊り上げ手段はブームを備え、このブームの外側端部には、吊り上げケーブルが連結されており、船体デッキに対して垂直に延びた回転軸の周りの物体の移動の際に、ブームが回転させられる。そのような持ち上げの方法では、懸架位置(吊り上げケーブルが取り付けられたブームの外側端部)自身が移動され、この移動により、物体の追加の振り子動作を引き起こし得る。振り子動作の良好な減衰は、この実施形態においても達成されている。
【0025】
さらに改善された方法は実施形態に関連しており、そこでは、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、取付手段および/またはそこに連結された物体にタガーラインの一側を連結し、且つタガーラインを他側において、好適に船体デッキから保持することによりさらに減衰される。この実施形態においては、振り子動作は、タガーラインの引き込みまたは送り出しによりさらに減衰されることが可能である。
【0026】
また別の実施形態は方法に関し、そこでは、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、ジャイロスコープが振り子動作の最大減衰を生じさせる方向以外の方向において、タガーラインにより減衰される。
【0027】
一実施形態による方法を適用することは、ここでさらなる利点を有することができ、(x,y,z)座標系が船体デッキに関連付けられており、x軸は船体の長手方向に延び、y軸は船体の横方向に延び、z軸は船体に対して垂直に延びており、船体は、x軸が波の方向に略平行となるように保持され、取付手段およびそこに連結された物体の振り子動作は、タガーラインを使用してy軸に略平行に減衰される。
【0028】
本発明によれば、ジャイロスコープは、吊り上げケーブル自身への取り付けの可能性に加えて、吊り上げケーブルから懸架された任意の構成部品に取り付けられることが可能である。方法の実用的な実施形態においては、取付手段はジャイロスコープを備えている。取付手段はスプレッダバーを備え、スプレッダバーから物体が懸架されているか、または取付手段は吊り上げブロックを備えることが可能である。
【0029】
実施形態によれば、方法が提供されており、そこでは、一次回転軸の周りに回転するジャイロスコープの本体は、フレームまたはハウジング内に受容されており、本体は駆動手段により回転駆動され、フレームまたはハウジングは、吊り上げケーブル、取付手段、および/または物体に随意的に固定的に連結されている。その連結は、スリングまたはケーブルを用いて実施されることも可能である。
【0030】
発明された方法により、吊り上げケーブルから懸架された任意の物体は、原則的に船体デッキから操作されることが可能である。本発明は、方法の実施形態において特に利点を有し、物体は、風力タービンのマストセクション、ロータブレード、および/またはナセルを備えており、より具体的には、物体は、風力タービンのハブを備えたナセルを備え、ハブにはロータブレード、好適に3つのロータブレードが設けられている。
【0031】
この特許出願に記載された本発明の実施形態は、これらの実施形態の任意の可能な組み合わせで組み合わせることが可能であり、各実施形態は、分割出願の主題を個別に形成することが可能である。
【0032】
ここで、本発明をそれに限定することなく、以下の図および好適な実施形態の記載を参照して、本発明がさらに解明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態による、船体デッキから物体を持ち上げるように構成された浮いた船体を概略的に示した斜視図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、異なった状態における、支持構造物上に物体を持ち上げて且つ載置するように構成されたジャッキアッププラットフォームの側面を概略的に示した図である。
【
図2B】本発明の実施形態による、異なった状態における、支持構造物上に物体を持ち上げて且つ載置するように構成されたジャッキアッププラットフォームの後面を概略的に示した図である。
【
図3】先行技術による吊り上げ手段のブームから懸架された物体の自由度を概略的に示した図である。
【
図4A】本発明の2つの実施形態による吊り上げ手段のブームから懸架された物体の自由度を概略的に示した図である。
【
図4B】本発明の2つの実施形態による吊り上げ手段のブームから懸架された物体の自由度を概略的に示した図である。
【
図5】本発明の実施形態による、取付手段から懸架された風力タービンナセルを概略的に示した斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態による、取付手段から懸架された風力タービンのためのモノパイル基礎を概略的に示した斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態による方法において適用されるように構成されたジャイロスコープの実施形態を概略的に示した斜視図である。
【
図8】懸架された物体の振り子動作への、ジャイロスコープの実施形態の減衰効果を明確にした比較用を示している。
【
図9A】先行技術によりおよび本発明の実施形態により懸架された物体の、x、y、z方向における位置の確率分布を示した図である。
【
図9B】先行技術によりおよび本発明の実施形態により懸架された物体の、x、y、z方向における位置の確率分布を示した図である。
【
図9C】先行技術によりおよび本発明の実施形態により懸架された物体の、x、y、z方向における位置の確率分布を示した図である。
【
図10】本発明の特定の実施形態による方法を概略的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、特にモノパイル4の形状の風力タービンのための基礎を水底5に配置するように構成された船体1が示されている。必要であれば、船体1には、自身の位置を安定させるための自動船位保持システム(DPシステム)が備えられることが可能である。船体1の作業デッキ10は、ベース72が設けられた持ち上げクレーン7の様式の吊り上げ手段を支持しており、この手段は垂直軸の周りに枢動可能であり、ベースには水平軸の周りに枢動可能なブーム73が設けられている。持ち上げクレーン7には吊り上げケーブル70が設けられ、このケーブルには、フックを備えた吊り上げブロック71の様式の取付手段が取り付けられている。モノパイル4は、吊り上げ位置40において吊り上げブロック71に取り付けられて、次いで持ち上げクレーン7により作業デッキ10に対して持ち上げられ且つ移動させられることが可能である。吊り上げケーブル70から懸架されたモノパイル4は、例えばブーム73が作業デッキ10上を旋回する回転ベース72により、および/またはモノパイル4がそれぞれ上昇されおよび下降させられる、ブーム73の上向きの回転(ラフイン)または下向きの回転(ラフアウト)により、移動させられることが可能である。最終的にモノパイル4を水底5内へと下降させるために、船体1の側部に配置されたガイドケージ3が使用されることが可能である。操作される他の構成部品は、船体1の作業デッキ10上に保管されることが可能であり、それらは風力タービンの複数の遷移部品6および他のモノパイル4等である。
【0035】
モノパイル4の持ち上げおよび載置が風の負荷により邪魔され、船体1が波の作用に起因した動作を受けることも、明白である。持ち上げクレーン7により持ち上げられて自由懸架されたモノパイル4は、作業デッキ10、ガイドケージ3、および水底5に対して大きく且つ予想外の振り子動作を受け得る。このことは、操作を相当により難しくするか、または強い風の負荷の場合不可能にさえする。
【0036】
別の用途は、すでに水底5に配置されたジャケット4´の様式の支持構造物上のナセル8等の、風力タービンの構成部品を載置することに関する。
図2Aおよび
図2Bを参照すると、海でジャケット4´上に風力タービンを組み立てるように構成された船体1´の側面図が示されている。設置される風力タービンの構成部品は、
図2A、
図2Bにおいて異なった位置に示された風力タービンのナセル8、マスト(セクション)8´、および/またはロータブレード(図示略)を含んでいる。船体1´には、例えば持ち上げクレーン7のように、おおよそ船体1と同じデバイスが設けられている。この理由のために、類似のデバイスには
図1と同じ番号が付されている。
図2A、
図2Bにおいて、吊り上げタックル71は同様に異なった位置に示されており、持ち上げられる構成部品はナセル8である。船体1´は、作業デッキ10を支持したアンカパイル11´が設けられたジャッキアップ洋上プラットフォームを備えている。アンカパイル11´は、垂直方向に海底へと移動可能であり、水位に対する作業デッキ10の高さ位置は、(油圧)ジャッキまたはギアラックピニオンシステムを用いてパイル11´に対して作業デッキ10を移動させることにより変化させられることが可能である。本発明による方法が実施されることを可能にするために、船体1´は、海にあるジャケット4´の直近に停泊され、あらゆる場合において、ジャケット4´は、ラフアウト位置にあるブーム73を備えた持ち上げクレーン7のリーチ内に位置している。
【0037】
必要であれば、ブーム73は、吊り上げタックル71のためのガイドデバイス74を備えることが可能であり、それにより吊り上げタックル71の動作は、少なくとも一方向に制限されることが可能である。しかしながら、これは本発明に関して本質的ではない。
【0038】
図示された前述の両方の用途において、吊り上げタックル71およびそれに連結されたナセル8の振り子動作は、波力および風力の影響下で生じ、本発明によれば、振り子動作は、吊り上げタックル71またはナセル8自身に連結され且つ一次回転軸の周りに回転対称な本体を備えたジャイロスコープ2により、移動の際に緩和される。
【0039】
吊り上げケーブル70と例えばナセル8との間の可能な連結は、
図5に示されている。ナセル8は、ハウジング80と、ハウジング80に連結され且つ風力タービンブレードのための装着位置82を備えた回転自在ハブ81と、を備えている。ナセル8は、ワイヤ(90a、90b)により取付手段9から懸架され、図示された実施形態においては、取付手段は第1のスプレッダバー9aと、これに直交して配置された第2のスプレッダバー9bと、を備え、これらは一体となって交差構造を形成している。ナセル8は、ハウジング80と第2のスプレッダバー9bとの間、およびハブ81と第1のスプレッダバー9aとの間、のそれぞれに延びたワイヤ(90a、90b)により懸架されている。この実施形態によれば、第1のスプレッダバー9aにはジャイロスコープ2が設けられている。
【0040】
吊り上げケーブル70とモノパイル基礎4との間の可能な連結が、
図6に示されている。モノパイル4はスリング93内に懸架され、スリング93は、上側に作業プラットフォーム92が設けられたスプレッダバー(不可視)に連結されている。スプレッダバーは、次に、スリングまたはケーブル90により、ジャイロスコープ2のためのハウジング94に連結されている。ハウジング94は、次に、吊り上げブロック71(吊り上げタックル71とも称される)のフックからスリングまたはケーブル91により懸架されている。この実施形態によれば、ハウジング94はジャイロスコープ2を備えている。
【0041】
ハウジング94またはスプレッダバー9a内に受容されたジャイロスコープ2の可能な実施形態が、
図7に示されている。ジャイロスコープ2は、一次シャフト21の周りに回転し且つ回転対称なフライホイール20の形状の本体を備えている。一次シャフト21は、第1の環状サスペンション21´内に回転可能に懸架されている。第1の環状サスペンション21´は第2の環状サスペンション22´内に、随意的に二次シャフト22の周りに回転可能に受容されている。この第2の環状サスペンション22´は、三次シャフト23を備えた第3のサスペンション23´内に、随意的に回転可能に懸架されている。図示された実施形態においては、第3のサスペンション23´は、中央開口部23aが設けられたブロックを備え、開口部23a内には、ジャイロスコープ2が受容されている。ブロック形状のサスペンション23´は、スプレッダバー9a、ハウジング94、または他の受容体内に配置され、そこに堅固に固定されている。ジャイロスコープ2が固定され、それにより一次回転シャフト21は略垂直に延び、換言すると(垂直方向に)自由懸架された吊り上げケーブル70の方向に平行に延びている(または代替的に、フライホイール20の平面が自由懸架された吊り上げケーブル70の方向に略直交して延びている)ことは、ここでは重要である。
【0042】
第1の環状サスペンション21´と第2の環状サスペンション22´と第3の環状サスペンション23´との間の連結は、自由に回転可能とされることが可能であるが、各々が固定位置に設置されることも可能である。図示された実施形態においては、第1の環状サスペンション21´と第2の環状サスペンション22´との間の連結は固定され、これにより2つのリング(21´、22´)は互いに対して直交して延びている。この状態においてパッシブと称され、ジャイロスコープの一次シャフト21は、振り子動作の場合に、揺れている吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に略平行に延びたままである。第1の環状サスペンション21´と第2の環状サスペンション22´との間の連結は固定されることも可能であり、これにより2つのリング(21´、22´)は、互いに対して直角以外の角度24を成している。この状態においてアクティブと称され、ジャイロスコープ2の一次シャフト21は、振り子動作の場合に、揺れている吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に対してほぼ前述の角度24で延びている。また別のオプションは、第1の環状サスペンション21´と第2の環状サスペンション22´との間の連結を解放した場合であり、これにより2つのリング(21´、22´)は、互いに対して自由に回転可能である。前述の実施形態においては、第2の環状サスペンション22´と第3の環状サスペンション23´との間の連結は、固定または解放されることが可能である。ジャイロスコープのための解放可能な連結は、すでに獲得可能である。
【0043】
図3を参照すると、吊り上げケーブル70によりブーム73から懸架された物体(4、8)が示されている。船体デッキ10に関連付けられたデカルト(x、y、z)座標系が、同様に示されている。(x、y、z)座標系の原点は、ブーム73のベース72の位置に、または少なくとも、ブーム73がベース72の周りに回転可能な位置内にある。x軸は船舶の長手方向に延び、y方向は船舶の横方向に延び、z方向は船体デッキ10に直交した方向に延びている。図示されたように、波力および風力の影響下において、懸架された物体(4、8)は振り子として作用し、略三自由度の振り子動作を示す。その自由度は、吊り上げケーブル70とz軸との間の角度θ、方位角Ψ、および吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に平行な軸の周りの、物体(4、8)の回転角φである。
【0044】
図4Aおよび
図4Bは本発明の方法の実施形態を示しており、その方法では、ジャイロスコープ2は、吊り上げケーブル70に、例えば物体(4、8)のための連結手段9に統合されている。
図4Aにおいて方法が示されており、その方法では、ジャイロスコープ2は前述のパッシブ状態において操作され、ジャイロスコープ2の一次シャフト21は、振り子動作の場合において、揺れている吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に略平行に延びたままである。換言すると、フライホイール20の回転ベクトルωは、図示されたように、方向76に平行に向けられている。
図4Bは方法を示しており、その方法では、ジャイロスコープ2は前述のアクティブ状態において操作され、ジャイロスコープ2の一次シャフトは、振り子動作の場合において、揺れている吊り上げケーブル70のその瞬間の方向76に対してゼロ以外の角度で延びたままである。換言すると、フライホイール20の回転ベクトルωは、ここではz軸とゼロ以外の傾斜角(鋭角)βを形成している。
【0045】
例えば風力タービンのモノパイル4、ナセル8、またはマストセクション8´等の物体の持ち上げおよび移動におけるジャイロスコープ2の効果は、
図8に含まれた表に示されている。この表は、最初の3つのコラムに、x、y、およびz方向における物体(4、8)の移動の二乗平均平方根(rms)値、最後の3つのコラムに、これらの方向に生じた最大移動値、を示している。第1列(制御されていない振り子)は、先行技術による方法に従った移動量を示している。第2列および第3列(パッシブジャイロスコープ150rpm、アクティブジャイロスコープ150rpm)は、本発明の方法が適用された場合の移動量を示しており、ジャイロスコープ2は、毎分150回転(rpm)の回転速度において、それぞれパッシブ状態およびアクティブ状態で操作されている。第4列および第5列(パッシブジャイロスコープ180rpm、アクティブジャイロスコープ180rpm)は、本発明の方法が適用された場合の移動量を示しており、ジャイロスコープ2は、毎分180回転(rpm)の回転速度において、それぞれパッシブ状態およびアクティブ状態で操作されている。最後に、第6列および第7列(パッシブジャイロスコープ200rpm、アクティブジャイロスコープ200rpm)は、本発明の方法が適用された場合の移動量を示しており、ジャイロスコープ2は、毎分200回転(rpm)の回転速度において、それぞれパッシブ状態およびアクティブ状態で操作されている。すべての移動量は、既知の方法(第1列)に対して、(主にxおよびy方向において)顕著に減少していることが明らかである。
【0046】
この効果は
図9A、
図9B、および
図9Cにも見られており、そこでは、x、y、およびz方向における物体(4、8)の位置の可能性P(x,y,z)は、変位量の関数として示されている。本発明による方法は、主にxおよびy方向における振り子動作の振幅を顕著に減少させることが見出された。したがって、振り子動作は効果的に減衰している。
【0047】
最後に、
図10は好適な方法を示しており、ここでは、浮いた船体1は、例えばこの目的に適した固定により、x軸(船舶の長手方向)が平均した波の方向100に略平行となるように保持されている。スプレッダバー92の様式の固定手段のおよびそこに連結されたモノパイル4の形状の物体の振り子動作は、タガーライン101を使用してy軸(船舶の横方向)に略平行に減衰される。この目的のために、タガーライン101は、作業デッキ10に固定されたウィンチ102に連結されており、ウィンチ102はタガーラインを送り出すまたは引き込むことが可能である。x方向における振り子動作は、前述のようにハウジング94内に受容されたジャイロスコープ2により減衰される。
【0048】
本発明は、図示された実施形態に限定されるのではなく、その多くの変形が、添付の請求項に保護の範囲内において可能である。
【符号の説明】
【0049】
1、1´ ・・・船体
2 ・・・ジャイロスコープ
3 ・・・ガイドケージ
4 ・・・モノパイル
4´ ・・・ジャケット
5 ・・・水底
6 ・・・遷移部品
7 ・・・持ち上げクレーン
8 ・・・ナセル
8´ ・・・マスト
9 ・・・取付手段
9a ・・・第1のスプレッダバー
9b ・・・第2のスプレッダバー
10 ・・・作業デッキ
11´ ・・・アンカパイル
20 ・・・フライホイール
21 ・・・一次シャフト
21´ ・・・第1の環状サスペンション
22 ・・・二次シャフト
22´ ・・・第2の環状サスペンション
23 ・・・三次シャフト
23´ ・・・第3の環状サスペンション
23a ・・・中央開口部
24 ・・・角度
40 ・・・吊り上げ位置
70 ・・・吊り上げケーブル
71 ・・・吊り上げブロック
72 ・・・ベース
73 ・・・ブーム
74 ・・・ガイドデバイス
80 ・・・ハウジング
81 ・・・回転自在ハブ
82 ・・・装着位置
90a、90b ・・・ワイヤ
91 ・・・ケーブル
92 ・・・作業プラットフォーム
93 ・・・スリング
94 ・・・ハウジング
100 ・・・波の方向
101 ・・・タガーライン
102 ・・・ウィンチ
【国際調査報告】