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特表2022-545836JAK1阻害剤として有用な置換(7H-ピロロ[2,3-D]ピリミジン-4-イル)アミノ化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】JAK1阻害剤として有用な置換(7H-ピロロ[2,3-D]ピリミジン-4-イル)アミノ化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20221024BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/10
A61K9/70 401
A61K9/08
A61P37/08
A61P29/00
A61P37/02
A61P17/04
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P11/06
A61P11/00
A61P35/00
A61P3/10
A61P27/02
A61P1/04
A61P25/00
A61P37/06
A61K31/519
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513571
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 US2020047767
(87)【国際公開番号】W WO2021041392
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/891,706
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074981
【氏名又は名称】ケムワース・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CHEMWERTH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】スー,シーピン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,シドニー シー
(72)【発明者】
【氏名】ワース,ピーター ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF01
4C050GG04
4C050HH01
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA72
4C076CC01
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076FF01
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA58
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC35
(57)【要約】
本開示は、式(I)で示される化合物およびその薬学的に許容される塩を提供する。可変基、R、R1-R3およびA環は、本明細書に記載されている。Aは、シクロヘキシル環でありうる。該化合物は、JAK1キナーゼの阻害剤であり、治療有効量の式Iの化合物またはその塩を患者に投与することを含む、患者のアレルギー性、炎症性、または自己免疫疾患を治療する方法において有用である。本開示はまた、式Iの化合物を含む製剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
式(I)
[式中、
Rは、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されているC1-C6アルキルである;
R1およびR2は、水素、C1-C6アルキル、(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキル、(フェニル)C0-C2アルキル、および(4~6員複素環)C0-C2アルキルから独立して選択される;
R3はC1-C4アルキルである;および
環A:
【化2】
は、N、O、およびSから独立して選択される1つまたは2つのヘテロ原子を有するC3-C7シクロアルキルまたは4~6員ヘテロシクロアルキル環である]
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
環Aが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、またはピペラジニル基である、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
式(IA):
【化3】
式(IA)
[式中、
Rは、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されたC1-C6アルキルである;および
R1およびR2は、水素、C1-C6アルキル、または(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルから独立して選択される]
で示される請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
Rが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、-CH2CN、または-CH2CF3である、請求項3に記載の化合物または塩。
【請求項5】
R1およびR2の両方が、水素である、請求項1~4のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【請求項6】
式(I)の化合物が、式(IB):
【化4】
式(IB)
の立体化学を有する化合物である、請求項1~5のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【請求項7】
R1およびR2の少なくとも1つが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである、請求項1~6のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【請求項8】
R1およびR2の少なくとも1つが、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである、請求項1~7のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【請求項9】
R1およびR2の少なくとも1つが、C3-C6シクロアルキルである、請求項1~8のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【請求項10】
R1およびR2の少なくとも1つが、(C3-C6シクロアルキル)C1アルキルである、請求項1~9のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【請求項11】
R1およびR2の少なくとも1つが、(C3-C6シクロアルキル)C2アルキルである、請求項1~10のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載の化合物または塩を、薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物が、エアロゾル、クリーム、ゲル、丸剤、カプセル、錠剤、シロップ、経皮パッチ、または点眼液である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
化合物または塩が、医薬組成物の約0.1~約99重量%(wt.%)を含む、請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
治療有効量の請求項1~11のいずれか1つに記載の化合物または塩、あるいは請求項12~14のいずれか1つに記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、患者のアレルギー性、炎症性、または自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項16】
患者が、ヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者が、コンパニオンアニマルまたは家畜動物である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
アレルギー性、炎症性、または自己免疫疾患が、掻痒、アレルギー性皮膚炎、湿疹、または乾癬である、請求項15~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
アレルギー性、炎症性、または自己免疫疾患が、アレルギー反応、関節炎、喘息、閉塞性気道疾患、癌、糖尿病、眼疾患、腸炎、神経変性疾患、皮膚疾患、または移植反応である、請求項15~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
医薬組成物が、経口、局所、静脈内、筋肉内、非経口、吸入または噴霧、舌下、経皮、口腔内投与、直腸、または点眼液として、投与される、請求項15~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
化合物または塩が、少なくとも30のJAKl/JAK2効力比を有する、請求項15~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
化合物または塩が、少なくとも3のJAKl/JAK3効力比を有する、請求項15~20のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月26日出願の米国仮出願第62/891,706号に対する優先権を主張するPCT出願であり、上記出願の内容の全体は、参照することにより本出願に組み込まれる。
技術分野
本開示は、JAK1阻害剤として有用な置換(7H-ピロロ-[2,3-D]ピリミジン-4-イル)アミノ化合物およびその薬学的に許容される塩を提供する。本開示はまた、そのような化合物を含む医薬組成物および剤形を提供する。本開示はさらに、本開示の(7H-ピロロ-[2,3-D]ピリミジン-4-イル)アミノ化合物を用いて、特定のアレルギー性、炎症性、および自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、タンパク質の特定の残基のリン酸化を触媒する酵素であり、チロシンキナーゼとセリン/トレオニンキナーゼに大きく分類される。突然変異、過剰発現、または不適切な調節、調節異常(dys-regulation)もしくは調節低下(de-regulation)、ならびに成長因子またはサイトカインの過剰または過少産生から生じる不適切なキナーゼ活性は、限定的ではないが、癌、心臓血管疾患、アレルギー、喘息およびその他の呼吸器疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、および神経障害および神経変性障害などの多くの疾患に関係している。
【0003】
JAK(ヤヌス関連キナーゼ)ファミリーには、4つの非受容体型チロシンキナーゼである、JAK1、JAK2、JAK3およびTyk2が含まれ、これらはサイトカインシグナル伝達と成長因子を介したシグナル伝達において重要な役割を果たす。それらの受容体に結合すると、サイトカインはJAKを活性化し、次に、サイトカイン受容体をリン酸化し、それによってシグナル伝達分子、特にシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)ファミリーのメンバーのドッキング部位を作成し、最終的に遺伝子発現をもたらす。多数のサイトカインがJAKファミリーを活性化することが知られている。
【0004】
JAK1キナーゼは、とりわけ、I型インターフェロン受容体(たとえば、IFNアルファ)、II型インターフェロン受容体(たとえば、IFNガンマ)、共通のガンマ鎖γc(たとえば、IL-2、IL-4、IL-7、 IL-9、IL-15およびIL-21)、およびインターロイキン-6ファミリー(IL-10、IL-13およびIL-22)と相互作用する。これらのサイトカインがそれらの受容体に結合した後、受容体のオリゴマー化が起こり、関連するJAKキナーゼの細胞質尾部が近接して移動し、JAKキナーゼのチロシン残基のリン酸化と活性化を促進する。リン酸化されたJAKキナーゼは、さまざまなSTATタンパク質に結合し、活性化する。次に、これらのSTATタンパク質は、二量体化して核に移行し、そこで、それらはシグナル伝達分子と転写因子の両方として機能し、最終的にサイトカイン応答性遺伝子のプロモーターに存在する特定のDNA配列に結合する。アレルギー、喘息、円形脱毛症、移植(同種移植)拒絶、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症などのさまざまな免疫不全および自己免疫疾患、ならびに固形および血液癌は、JAK/STAT経路のシグナル伝達破壊に起因する。
【0005】
JAK1の重要な要素は、受容体の異なるサブユニットの細胞内ドメインで他のJAKキナーゼとペアリングする能力である。たとえば、JAK3は、さまざまなサイトカイン受容体の共通γ鎖(γc)と結合する。JAK1は、JAK3よりも優勢であり、JAK1の阻害は、JAK3の活性にもかかわらず、共通γ鎖を介したシグナル伝達を不活性化するのに十分であることが示されている。したがって、JAK1の選択的阻害は、JAK1/JAK3-STAT経路を介したサイトカインシグナル伝達に関連する多くの炎症性および自己免疫疾患を治療するのに十分である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在まで、他のJAKキナーゼに対してオフターゲット活性をほとんどまたはまったく持たない選択的JAK1阻害剤はほとんどない。JAK1選択的阻害剤として同定された化合物は、わずかなJAK1選択性のみを示す。したがって、アレルギー性、炎症性、および自己免疫疾患を含む、JAK1関連障害を治療するための非常に強力で選択的なJAK1阻害剤を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示は、式(I)で示される化合物:
【化1】
式(I)
およびその薬学的に許容される塩を提供する。
【0008】
式(I)中、可変基であるR、R1-R3、および環Aは、次の定義を有する。
Rは、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されているC1-C6アルキルである。
R1およびR2は、水素、C1-C6アルキル、(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキル、(フェニル)C0-C2アルキル、および(4~6員複素環)C0-C2アルキルから独立して選択される。
R3はC1-C4アルキルである。4~6員複素環は、飽和、部分的不飽和、または不飽和であり、N、O、およびSから独立して選択される1、2、3、または4つのヘテロ原子を含む。4~6員複素環の1つ以上のヘテロ原子は、OまたはSである。
環A:
【化2】
は、N、O、およびSから独立して選択される1つまたは2つのヘテロ原子を有するC3-C7シクロアルキルまたは4~6員ヘテロシクロアルキル環である。たとえば、環Aは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、またはピペラジニル基でありうる。
【0009】
【化3】
式(IA)
またはその薬学的に許容される塩。
【0010】
式(I)中、可変基であるR、R1、およびR2は、次の定義を有する。
Rは、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されるC1-C6アルキルである。
R1およびR2は、水素、C1-C6アルキル、または(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルから独立して選択される。
【0011】
本開示はまた、式(I)の化合物またはその塩を、薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物を含む。
【0012】
本開示は、治療有効量の式(I)の化合物またはその塩を患者に投与することを含む、患者のアレルギー性、炎症性、または自己免疫疾患を治療する方法を含む。式(I)の化合物は、製剤の形態でありうる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な記載
専門用語
現在開示される化合物は、標準的な命名法を使用して記載される。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。文脈によって明確に禁忌でない限り、各化合物名は、化合物のすべての薬学的に許容される塩として、化合物の遊離酸または遊離塩基形態を含む。
【0014】
「式(I)の化合物」という句は、任意のエナンチオマー、ラセミ体および立体異性体を含む、式(I)を満たすすべての化合物、ならびにそのような化合物のすべての薬学的に許容される塩を含み、このフレーズが使用される文脈によって明確に禁忌でない限り、式(I)のすべての亜属グループも含む。式(I)には、式(IA)および式(IB)が含まれる。
【0015】
「a」および「an」という用語は、数量の制限を意味するのではなく、参照アイテムの少なくとも1つが存在することを意味する。「または」という用語は、「および/または」を意味する。「含む」、「有する」、「包含する」、および「含有する」という用語は、制限のない用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。値の範囲の列挙は、本書に別段の記載がない限り、範囲内にある各個別の値を個別に参照する簡単な方法として機能することを目的としており、各個別の値は、本明細書で個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。すべての範囲の終点は、範囲内に含まれ、独立して組み合わせることができる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、適切な順序で実行することができる。ありとあらゆる例、または例示的な言語(たとえば、「など」)の使用は、単によりよく説明することを意図しており、別段の主張がない限り、開示の範囲に制限を課すことはない。明細書のいかなる文言も、本明細書で使用される慣行に不可欠であると主張されていない要素を示すと解釈されるべきではない。別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0016】
「活性剤」とは、患者に単独で、または他の化合物、要素または混合物と組み合わせて投与されたときに、その患者に対して直接的または間接的に生理学的効果を与える化合物(本明細書に開示される化合物を含む)、要素、または混合物を意味する。間接的な生理学的効果は、代謝物または他の間接的なメカニズムを介して発生する可能性がある。
【0017】
2つの文字または記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。たとえば、-CH2CF3は、メチレン(CH2)基の炭素を介して結合する。
【0018】
「アルキル」は、分枝状または直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であり、特定された数の炭素原子、一般に1個から約8個の炭素原子を有する。C1-C6アルキルという用語は、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキル基を示す。他の実施態様は、1~8個の炭素原子、1~4個の炭素原子、または1個または2個の炭素原子、たとえば、C1-C8アルキル、C1-C8アルキル、およびC1-C2アルキルを有するアルキル基を含む。
【0019】
「シクロアルキル」は、飽和単環式炭化水素基であり、示された数の炭素原子、一般に約3~約8個の炭素原子を有する。単環式シクロアルキル基は、通常、3~約6個の環原子を有する。C3-C6シクロアルキルは、3、4、5、または6個の炭素原子を有するシクロアルキル基を示す。シクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル基が含まれる。シクロアルキル基には、置換基を有さないシクロアルキル基が含まれる。シクロアルキル基には、1~4個のアルキル置換基、たとえば、1、2、3、または4個の置換基を有するシクロアルキル基が含まれる。いくつかの実施態様において、シクロアルキル基は、3~6個の炭素環原子を有するシクロアルキル基、および0~2個のアルキル置換基、たとえば、(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルを含む。
【0020】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードのいずれかである。
【0021】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、通常、N、O、およびSから独立して選択される1つまたは2つの環原子を有する3~7環原子を有する飽和環基を意味する:ヘテロシクロアルキル基の例には、アゼピン、アゼチジニル、モルホリニル、ピラニル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、キニクルジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニルおよびテトラヒドロフランが含まれる。
【0022】
「複素環式基」という用語は、N、O、およびSから選択される少なくとも環上のヘテロ原子を含む環式基を意味する。複素環式基は、完全飽和基、すなわちヘテロシクロアルキル基、たとえばヘテロシクロアルケニル基などの部分不飽和基、またはたとえばヘテロアリール基などの芳香族基でありうる。複素環式基は、4~7個の環員を有する1個の環と、N、O、およびSから独立して選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含むことができる。2つ以下のヘテロ原子がOまたはSであり、OおよびS原子が隣接していないことが好ましい。複素環式基は、2つの縮合環またはスピロ配向の2つの環を含むこともできる;2環複素環式基の1つの環だけが、ヘテロ原子を含むために必要である。
【0023】
「置換された」という用語は、指定された原子の通常の原子価を超えないという条件で、指定された原子または基上の任意の1つまたは複数の水素が、指定された基からの選択で置き換えられることを意味する。置換基がオキソ(すなわち、=O)の場合、原子上の2つの水素が置換される。オキソ基が芳香族部分を置換する場合、対応する部分的に不飽和の環が芳香族環を置換する。たとえば、オキソで置換されたピリジル基は、ピリドンである。置換基および/または可変基の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物または有用な合成中間体をもたらす場合にのみ許容される。安定な化合物または安定した構造は、反応混合物からの単離、およびその後の効果的な治療薬への製剤化に耐えるのに十分に頑強である化合物を意味する。特に指定のない限り、置換基は、コア構造に名前が付けられる。たとえば、アミノアルキルが可能な置換基としてリストされている場合、この置換基のコア構造への結合点は、アルキル部分にあることが理解されるべきである。
【0024】
「医薬組成物」とは、式(I)の化合物または塩などの少なくとも1つの活性剤と、賦形剤などの少なくとも1つの他の物質とを含む組成物である。医薬組成物は、ヒトまたは非ヒトの薬物に関する米国FDAの適正製造基準(GMP)基準を満たす。
【0025】
「薬学的に許容される塩」には、その無機および有機、非毒性、酸または塩基付加塩を作製することによって親化合物が修飾される、開示された化合物の誘導体が含まれる。本化合物の塩は、従来の化学的方法により、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論量の適切な塩基(たとえば、Na、Ca、Mg、またはK水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)と反応させることによるか、または化学量論量の適切な酸とこれらの化合物の遊離塩基形態を反応させることによって調製することができる。そのような反応は、典型的には、水中または有機溶媒中で、あるいは2つの混合物中で実施される。一般に、実行可能な場合に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。本化合物の塩には、化合物および化合物塩の溶媒和物がさらに含まれる。
【0026】
薬学的に許容される塩の例には、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩;などが含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩には、従来の非毒性塩および、たとえば、非毒性の無機または有機酸から形成された親化合物の第四級アンモニウム塩が含まれる。たとえば、従来の非毒性酸塩には、塩酸、臭化水素酸塩、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されたもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH2)n-COOH(ここで、nは0~4)などなどの有機酸から調製された塩が含まれる。
【0027】
「賦形剤」は、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にもその他にも望ましくないものではない医薬組成物を調製するのに有用な不活性成分であり、獣医用およびヒト用医薬用途に許容される賦形剤を含む。
【0028】
本開示の医薬組成物に適用される「担体」という用語は、活性化合物がそれとともに提供される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを示す。賦形剤は、一般的に安全で、非毒性であり、生物学的にもその他にも望ましくないものではない医薬組成物を調製するのに有用な不活性成分であり、獣医用およびヒト用医薬用途に許容される賦形剤を含む。
【0029】
「患者」とは、治療を必要とするヒトまたは非ヒト動物のことである。医学的治療は、疾患または障害、予防的または予防的(prophylactic or preventative)治療、または診断的治療などの既存の状態の治療を含むことができる。いくつかの実施態様では、患者はヒト患者である。特定の実施態様では、患者は、ネコまたはイヌなどのコンパニオンアニマル、またはウマ、ウシ、またはブタなどの家畜動物である。
【0030】
「式(I)の化合物を少なくとも1つの追加の活性剤とともに投与する」とは、式(I)の化合物および追加の活性剤が単一の剤形で同時に提供されること、別々の剤形で同時に提供されること、または式(I)の化合物および少なくとも1つの追加の活性剤の両方が患者の血流内にある時間内である時間によって分離された投与のための別個の剤形で提供されることを意味する。式(I)の化合物と追加の活性剤は、同じ医療従事者によって患者に処方される必要はない。追加の活性剤(単数または複数)は、処方箋を必要としない。式(I)の化合物または少なくとも1つの追加の活性剤の投与は、任意の適切な経路、たとえば、経口錠剤、経口カプセル、経口液体、吸入、注射、坐剤または局所接触を介して行うことができる。
【0031】
本明細書で使用される「治療」は、唯一の活性剤として、または以下を成し遂げるのに十分な少なくとも1つの追加の活性剤とともに、式(I)の化合物を提供することを含む:(a)病気を阻害する、すなわち、その発症を阻止すること;および(b)疾患を緩和する、すなわち、疾患の退行を引き起こすこと。「治療する」および「治療」はまた、治療有効量の式(I)の化合物を、唯一の活性剤として、または少なくとも1つの添加物とともに、細菌感染を有する患者に提供することを意味する。
【0032】
本開示の式(I)の化合物または組成物の「治療有効量」とは、患者に投与した場合に、症状の改善などの治療効果をもたらすのに有効な量、たとえば、炎症性障害の症状を軽減するのに有効な量を意味する。たとえば、炎症状態を有する患者は、特定の肝酵素のレベルの上昇または白血球数の上昇を示しうる。したがって、治療有効量は、上昇した肝酵素レベルまたは白血球数の有意な減少を提供するのに十分な量、または肝酵素レベルまたは白血球数を正常範囲に戻すのに十分な量である。
【0033】
化学的説明
式(I)には、そのすべてのサブフォーミュラ(subformula)が含まれる。特定の状況では、式(I)の化合物は、化合物が異なる立体異性体で存在できるようにするように、たとえば、不斉炭素原子などの、立体中心、立体中心線などの1つまたは複数の不斉元素を含みうる。これらの化合物は、たとえば、ラセミ体または光学活性形態でありうる。2つ以上の不斉元素を有する化合物の場合、これらの化合物は、さらにジアステレオマーの混合物でありうる。不斉中心を有する化合物については、すべての光学異性体およびそれらの混合物が含まれることを理解されたい。さらに、炭素-炭素二重結合を有する化合物は、Z体およびE体で生じる可能性があり、化合物のすべての異性体が本開示に含まれる。これらの状況では、単一のエナンチオマー、すなわち、光学的に活性な形態は、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、またはラセミ体の分割によって得ることができる。ラセミ体の分離はまた、たとえば、分割剤の存在下での結晶化またはクロマトグラフィー、たとえば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムを使用するなどの従来の方法によって達成することができる。
【0034】
化合物が、さまざまな互変異性体の形態で存在する場合、本開示は、特定の互変異性体のいずれか1つに限定されず、むしろすべての互変異性体を含む。
【0035】
本開示は、本発明の化合物に存在する原子のすべての同位体を含むことを意図している。同位体には、原子番号は同じで質量数が異なる原子が含まれる。一般的な例として、限定ではないが、水素の同位体には、トリチウムおよび重水素が含まれ、炭素の同位体には、11C、13C、および14Cが含まれる。
【0036】
特定の化合物は、可変基、たとえば、R、R1、R2、およびR3を含む一般式を使用して本明細書に記載される。特に指定のない限り、このような式内の各可変は、他の可変とは独立して定義される。したがって、ある基がたとえば0~2個のR*で置換されていると言われる場合、その基は最大2個のR*基で置換されてもよく、各出現におけるR*は、R*の定義とは独立して選択される。また、置換基および/または可変基の組み合わせは、そのような組み合わせが安定した化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0037】
上記の式(I)および(IA)の化合物に加えて、本開示はまた、式(I)および(IA)の可変基について以下の条件のうちの1つ以上が満たされる式(I)および(IA)の化合物を含む。本開示の実施態様は、安定な化合物が生じる限り、以下に記載される条件の任意の組み合わせを含む。
【化4】
式(I)
【化5】
式(IA)
【0038】
安定な化合物をもたらす、以下に記載の可変基の定義の任意の組み合わせを有する化合物は、本開示に含まれる。
【0039】
式(I)または(IA)では、Rは、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されたC1-C6アルキルである。
【0040】
式(I)または(IA)では、R1およびR2、水素、C1-C6アルキル、または(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルから独立して選択される。
【0041】
本開示はまた、式(Ia)の立体化学を有する化合物を含む。
【化6】
式(IB)
【0042】
式(IB)では、Rは、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されたC1-C6アルキルである。
【0043】
式(IB)では、R1およびR2は、水素、C1-C6アルキル、または(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルから独立して選択される。
【0044】
可変基R
本開示は、Rが、以下の定義のいずれかを有する上記の式のいずれかの化合物および塩を含む:
(a)Rは、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されたC1-C6アルキルである。
(b)Rは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されたC1-C6アルキルである。
(c)Rは、シアノまたはアミノで置換されたC1-C6アルキルである。
(d)Rは、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(e)Rは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されたメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(f)Rは、シアノまたはアミノで置換されたメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(g)Rは、-CH2CNまたは-CH2CF3である。
【0045】
可変基R 1
本開示は、R1が、以下の定義のいずれかを有する上記の式のいずれかの化合物および塩を含む:
(a)R1は、水素である。
(b)R1は、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されたC1-C6アルキルである。
(c)R1は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されたC1-C6アルキルである。
(d)R1は、シアノまたはアミノで置換されたC1-C6アルキルである。
(e)R1は、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(f)R1は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されたメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(g)R1は、シアノまたはアミノで置換されたメチル、プロピル、イソプロピル ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(h)R1は、-CH2CNまたは-CH2CF3である。
(i)R1は、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換された(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルである。
(j)R1は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換された(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルである。
(k)R1は、シアノまたはアミノで置換された(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルである。
(l)R1は、C3-C6シクロアルキルである。
(m)R1は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
(n)R1は、水素、C1-C6アルキル、(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキル、(フェニル)C0-C2アルキル、(テトラヒドロフラニル)C0-C2アルキル、(フラニル)C0-C2アルキル、(ピロリジニル)C0-C2アルキル、(ピロリル)C0-C2アルキル、(チエニル)C0-C2アルキル、(イミダゾリル)C0-C2アルキル、(オキサゾリル)C0-C2アルキル、(ピリジニル)C0-C2アルキル、または(ピラジニルアルキル)C0-C2アルキルである。
(o)R1は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されたシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
(p)R1は、シアノまたはアミノで置換されたシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
(q)R1は、(C3-C6シクロアルキル)C1アルキルである。
(r)R1は、(C3-C6シクロアルキル)C2アルキルである。
【0046】
可変基R 2
本開示は、R2が、以下の定義のいずれかを有する上記の式のいずれかの化合物および塩を含む:
(a)R2は、水素である。
(b)R2は、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換されたC1-C6アルキルである。
(c)R2は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されたC1-C6アルキルである。
(d)R2は、シアノまたはアミノで置換されたC1-C6アルキルである。
(e)R2は、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(f)R2は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されたメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(g)R2は、シアノまたはアミノで置換されたメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
(h)R2は、-CH2CNまたは-CH2CF3である。
(i)R2は、ハロゲン、シアノ、またはアミノで任意に置換された(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルである。
(j)R2は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換された(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルである。
(k)R2は、シアノまたはアミノで置換された(C3-C6シクロアルキル)C0-C2アルキルである。
(l)R2は、C3-C6シクロアルキルである。
(m)R2は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
(n)R2は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されたシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
(o)R2は、シアノまたはアミノで置換されたシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
(p)R2は、(C3-C6シクロアルキル)C1アルキルである。
(q)R2は、(C3-C6シクロアルキル)C2アルキルである。
【0047】
医薬組成物
本明細書に開示される化合物は、ニートな化学物質として投与することができるが、好ましくは医薬組成物として投与される。したがって、式(I)の化合物または薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とともに含む医薬組成物が、本明細書で提供される。医薬組成物は、唯一の活性剤として式(I)の化合物または塩を含みうるか、または1つまたは複数の追加の活性剤を含みうる。
【0048】
本明細書に開示される化合物は、経口、局所、静脈内、筋肉内、非経口、吸入または噴霧、舌下、経皮、口腔内投与、直腸、点眼液として、または他の手段により、従来の薬学的に許容される担体を含む投与単位製剤で投与することができる。医薬組成物は、任意の薬学的に有用な形態として、たとえば、エアロゾル、クリーム、ゲル、丸剤、カプセル、錠剤、シロップ、経皮パッチ、または点眼液として製剤することができる。錠剤やカプセルなどのいくつかの剤形は、適切な量の活性成分、たとえば、所望の目的を達成するための有効量を含む適切なサイズの単位用量に細分される。
【0049】
担体には、賦形剤および希釈剤が含まれ、治療される患者への投与に適したものにするために、十分に高い純度および十分に低い毒性でなければならない。担体は不活性でありうるか、または、それ自体の医薬上の利点を有する場合もありうる。化合物と組み合わせて使用される担体の量は、化合物の単位用量あたりの投与のための実用的な量の材料を提供するのに十分である。
【0050】
担体の種類には、結合剤、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、香味料、流動促進剤、滑沢剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤、錠剤化剤、および湿潤剤が含まれるが、これらに限定されない。一部の担体は、複数の種類に記載されている場合があり、たとえば、植物油は、一部の製剤では滑沢剤として使用され、他の製剤では希釈剤として使用される場合がある。例示的な薬学的に許容される担体には、糖類、デンプン、セルロース、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン;タルク、および植物油が含まれる。任意の活性剤が、医薬組成物に含まれうるが、本明細書に記載の化合物の活性を実質的に妨害しない。
【0051】
医薬組成物は、経口投与用に製剤することができる。これらの組成物は、本開示の式(I)の化合物を0.1~99重量%(wt.%)、通常、本開示の式(I)の化合物を少なくとも約5重量%含む。いくつかの実施態様は、本開示の式(I)の化合物を約25重量%~約50重量%または約5重量%~約75重量%含む。
【0052】
本開示の化合物はまた、静脈内投与用に製剤することができる。式(I)の化合物の静脈内製剤は、表面安定剤(ポビドンまたはデキストランなど)、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤、生理食塩水、またはスクロースのうちの1つまたは複数を含むことができる。本開示の注射可能または静脈内製剤は、 0.25mg/ mL、0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、または15mg/mlの開示の式(I)の化合物を含みうる。
【0053】
治療方法
患者のアレルギー性、炎症性、または自己免疫疾患を治療する方法には、治療有効量の本発明の化合物を投与することが含まれる。本明細書に記載の化合物は、唯一の活性剤として提供されてもよく、または1つまたは複数の追加の活性剤とともに提供されてもよい。
【0054】
いくつかの実施態様において、患者における掻痒、アレルギー性皮膚炎、湿疹、または乾癬を治療する方法は、治療有効量の本開示の化合物を投与することを含む。
【0055】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および医薬組成物は、以下などのさまざまな状態を治療するために使用することができる:
咬傷過敏症、夏の湿疹、ウマの皮膚掻痒などのウマのアレルギー性疾患を含む哺乳類のアレルギー性皮膚炎などのアレルギー反応;
関節リウマチ、若年性関節炎および乾癬性関節炎などの関節炎;
【0056】
慢性または難治性喘息、遅発性喘息、気道過敏性、気管支炎、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、粉塵喘息、再発性気道閉塞、および慢性閉塞肺疾患などの喘息およびその他の閉塞性気道疾患;
【0057】
たとえば、橋本甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血の自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性精巣炎、グッドパスチャー病、自己免疫性血小板減少症、交感性眼炎、重症筋無力症、バセドウ病、原発性胆汁性肝硬変、慢性進行性肝炎、潰瘍性大腸炎および膜性腎症などの単一臓器または単一細胞型自己免疫疾患として指定されたもの;たとえば、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、シェーグレン症候群、ライター症候群、多発性筋炎-皮膚筋炎、全身性硬化症、結節性多発動脈炎、多発性硬化症および水疱性類天疱瘡、ならびにコーガン症候群、強直性脊椎炎、ウェゲナー肉芽腫症、自己免疫性脱毛症、I型または若年性糖尿病、および甲状腺炎などのO細胞(液性)系またはT細胞系でありうる追加の自己免疫疾患などの全身性自己免疫疾患を伴うものとして指定されたもの、などの自己免疫疾患または障害;
【0058】
消化管/胃腸管がん、結腸がん、肝がん、マスト細胞腫瘍および扁平上皮がんを含む皮膚がん、乳がん(breast cancer)および乳がん(mammary cancer)、卵巣がん、前立腺がん、リンパ腫、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病などの白血病、腎臓がん、肺がん、筋肉がん、骨がん、膀胱がん、脳がん、口腔および転移性黒色腫を含む黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫を含む骨髄腫、骨髄増殖性疾患、増殖性糖尿病性網膜症、および固形腫瘍を含む血管新生関連障害などの癌または腫瘍;
I型糖尿病および糖尿病による合併症などの糖尿病;
【0059】
眼の自己免疫疾患、角結膜炎、春季カタル、ベーチェット病に伴うブドウ膜炎および水晶体誘発性ブドウ膜炎を含むブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜炎、角膜上皮ジストロフィー、角膜白血病、眼類天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、バセドウ病、フォークト・小柳・原田症候群、乾性角結膜炎(ドライアイ)、フリクテン、虹彩毛様体炎、サルコイドーシス、内分泌眼症、交感神経性眼炎、アレルギー性結膜炎、および眼の血管新生などの眼疾患、障害または状態;
【0060】
クローン病および/または潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、および肥満細胞症などの腸炎、アレルギーまたは状態;
【0061】
運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脳虚血などの神経変性疾患、または外傷、脳卒中、グルタミン酸神経毒性または低酸素症によって引き起こされる神経変性疾患;
脳卒中における虚血性/再灌流傷害、心筋虚血、腎虚血、心臓発作、心肥大、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化症、臓器低酸素症、および血小板凝集;
【0062】
アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、掻痒症およびその他の掻痒状態などの皮膚疾患、状態または障害;および
【0063】
膵島移植拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、移植片対宿主病;骨髄、軟骨、角膜、心臓、椎間板、膵島、腎臓、四肢、肝臓、肺、筋肉、筋芽細胞、神経、膵臓、皮膚、小腸、または気管などの臓器および細胞移植拒絶反応、および異種移植などの移植片拒絶反応。
【0064】
本発明の化合物は、JAK1に対して選択的有効性を有するJAK阻害剤である。いくつかの実施態様では、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%を超えるJAK1活性がヒトまたは非ヒト患者において阻害される。
【0065】
特定の実施態様では、本開示の化合物は、JAK2の活性よりもJAK1の活性を優先的に阻害する。たとえば、優先的阻害は、JAK2阻害のIC50に対するJAK1阻害のIC50の逆比として定義される、JAKl/JAK2効力比によって測定することができる。特定の実施態様では、JAKl/JAK2効力比は、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、85以上である。他の実施態様では、JAKl/JAK2効力比は、約30~約85、約40~約85、約50~約85、約60~約85、または約70~約85である。いくつかの実施態様では、JAKlおよび/またはJAK2阻害のIC50は、酵素アッセイで測定される。特定の実施態様では、JAK1阻害のIC50は、たとえば、式(I)の化合物を投与された対象からのサンプル(たとえば、血液サンプル)を使用して、エクスビボでのIL6刺激STAT3リン酸化の阻害によって測定される。特定の実施態様では、JAK2阻害のIC50は、たとえば、式(I)の化合物を投与された対象からのサンプル(たとえば、血液サンプル)を使用して、エクスビボでのEPO刺激STAT5リン酸化の阻害によって測定される。
【0066】
特定の実施態様では、本開示の化合物は、JAK3の活性よりもJAK1の活性を優先的に阻害する。たとえば、優先的阻害は、JAK3阻害のIC50に対するJAK1阻害のIC50の逆比として定義される、JAKl/JAK3効力比によって測定することができる。特定の実施態様では、JAKl/JAK3効力比は、少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、56、57、58、59、60、65、70以上である。他の実施態様では、JAKl/JAK3効力比は、約3~約70、約10~約70、約20~約70、約30~約70、約40~約70、約50~約70、または約60~約70である。いくつかの実施態様では、JAKlおよび/またはJAK3阻害のIC50は、酵素アッセイで測定される。特定の実施態様では、JAK1阻害のIC50は、たとえば、式(I)の化合物を投与された対象からのサンプル(たとえば、血液サンプル)を使用して、エクスビボでのIL6刺激STAT3リン酸化の阻害によって測定される。特定の実施態様では、患者(たとえば、ヒト)は、JAK1活性の阻害によって治療可能な状態の治療を必要としている。特定の実施態様では、状態は、患者(たとえば、ヒト)のJAK1活性の阻害によって治療可能である。そのような状態は、炎症性疾患/障害、または自己免疫疾患/障害を含みうる。
【0067】
本明細書に開示される医薬組成物は、ヒトおよび非ヒト患者を治療するために有用である。非ヒト患者には、たとえば、家畜動物およびコンパニオンアニマルが含まれる。
【0068】
本開示によって提供される医薬組成物の有効量は、以下を成し遂げるのに十分な量でありうる:(a)障害の退行を引き起こすこと;または(b)障害の治癒を引き起こすこと;(c)障害の少なくとも1つの症状の重症度を軽減すること;または(d)障害の症状を発症することによる障害のリスクとして無症状の患者の可能性を大幅に減らすこと、または障害が発生した場合に障害の症状の重症度を大幅に軽減すること。障害の進行を阻害するか、または退行を引き起こすのに必要な医薬組成物の量は、症状の悪化を停止するか、または罹患した患者が経験する症状を軽減するのに有効な量を含む。あるいは、炎症性またはアレルギー性症状の進行または退行の停止は、疾患のいくつかのマーカーのいずれかによって示されうる。
【0069】
治療の方法は、患者に特定の投与量の式(I)の化合物を提供することを含む。約0.1mg~約140mg/体重kg/日の各活性剤の投与量レベルは、上記の状態の治療に有用である(患者あたり約0.5mg~約7g/日)。単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される患者および特定の投与様式に応じて変化するであろう。特定の実施態様では、25mg~500mg、または25mg~200mgの式(I)の化合物が、患者に毎日投与される。投与の頻度はまた、使用される化合物および治療される特定の疾患に応じて変化しうる。しかしながら、大部分のアレルギー性、炎症性、または自己免疫疾患の治療には、1日4回以下の投与計画が好ましく、1日1回または2回の投与計画が特に好ましい。
【0070】
しかしながら、特定の患者の特定の用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排出率、薬剤の組み合わせ、および治療を受けている患者における特定の疾患の重症度を含むさまざまな要因に依存することが理解されよう。
【実施例
【0071】
略語
ACN アセトニトリル
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N-ジイソプロピルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
HEPES (4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)
IS 内部標準
【0072】
一般的方法
試薬と溶媒は、標準的商用グレードである。それらは、実施例において精製が具体的に言及されていない限り、さらなる精製なしで使用される。以下の反応スキームは、本開示の化合物の一般的な合成手順を示す。すべての出発物質は、これらのスキームに記載されている手順によって、または当業者に知られている手順によって調製される。
【0073】
1H NMR(400 MHz)スペクトルは、内部標準としてTMSまたは残留溶媒ピークを使用して室温でBruker分光計にて記録された。線の位置または多重は(δ)で示され、結合定数(J)はヘルツ(Hz)で絶対値として示される。1HNMRスペクトルの多重度は、次のように略される:s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、m(マルチプレット)、brまたはブロード(広がった)。
【0074】
LC-20ADまたは30ADポンプ、SPD-M20A PDAおよびAlltech 3300 ELSDを備えたShimadzu LCMS-2020でLC-MSを行った;移動相:A:水(0.1%ギ酸)、B:ACN;5分間のラン;カラム:Sepax BR-C18 4.6×50mm、3μm;流速:1.0ml/分;オーブン温度:40℃;勾配:20% Bで0.2分、1.8分以内に70% Bに増加、70% Bで2.8分、0.2分以内に20% Bに戻す、20% Bで2分。
【0075】
実施例1:化合物の合成
スキームIにしたがって、化合物1~4を合成した。
【0076】
スキームI
【化7】
【0077】
化合物Bの合成
DMF(15mL)中の化合物A (2.25g、9.89mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.55g、19.78mmol)および4-クロロ-7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(3.19g、10.38mmol)を加えた。混合物を、80℃にて一晩撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。反応混合物に水を加え、酢酸エチル(50ml)で抽出した。有機層を食塩水(3 x 40ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して、粗残渣を得、シリカゲフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン(50%)およびジクロロメタン(50%)中の5%酢酸エチル溶液で溶離)で精製して、化合物B(2.7g、収率56%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、CDCl3):δ 1.27-1.38(m、4H)、1.45(s、9H)、1.76-1.79(m、2H)、2.06-2.12(m、2H)、2.38(s、3H),3.13(s、3H)、3.40-3.45(m、1H)、4.40-4.42(m、1H)、4.66-4.72(m、1H)、6.60(d、J=4.4 Hz、1H)、7.26(s、1H)、7.29(s、1H),7.44(d、J=4.0 Hz、1H)、8.05(d、J=8.4 Hz、2H)、8.37(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H]+ 計算値:C25H33N5O4S:499.23。実測値:500.5。
【0078】
化合物Cの合成
メタノール(50ml)中の化合物B(2.7g、5.41mmol)の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(2.27g、54.1mmol)を加えた。混合物を、50℃にて一晩撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。反応混合物を減圧濃縮した。水を加え(10ml)混合物を2M塩酸でpH=6.0に調節し、ろ過し、固体を集めた。固体をジエチルエーテルで洗浄し(20ml)、乾燥して化合物B(1.53g、収率81%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ 1.29-1.36(m、2H)、1.39(s、9H)、1.63-1.75(m、4H)、1.86-1.89(m、2H)、3.15(s、3H)、3.27-3.30(m、1H)、4.66-4.68(m、1H)、6.52(s、1H)、6.73(d、J=8.0 Hz、1H)、7.10-7.12(m、1H)、8.08(s、1H),11.58(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H] + 計算値:C18H27N5O2:345.22。実測値:346.3。
【0079】
化合物Dの合成
メタノール(60ml)中の4M塩酸中の化合物C(1.53g、4.43mmol)溶液に。得られる混合物を50℃で一晩撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。得られる混合物を減圧濃縮した。固体をジエチルエーテル(20ml)で洗浄し、乾燥して化合物D(960mg、収率90%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ 1.65-1.72(m、2H)、1.84-1.89(m、4H)、2.08-2.10(m、2H)、3.08-3.09(m、1H)、3.34(s、3H)、4.46-4.54(m、1H)、6.89(s、1H)、7.47(s、1H)、8.28-8.35(m、3H)、12.88(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H] + 計算値:C13H19N5:345.16。実測値:245.9。
【0080】
1の合成
N,N-ジメチルホルムアミド(2ml)およびジクロロメタン(2ml)中の化合物D(150mg、0.61mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(393.4mg、3.05mmol)および塩化メチルカルバミン酸(70.7mg、0.73mmol)を加えた。得られる混合物を室温で1時間撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。得られる混合物を減圧濃縮した。粗物質をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール中の8%ジクロロメタン溶液で溶離)で精製して、1(83.3mg、収率45%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ 1.24-1.31(m、2H)、1.64-1.72(m、4H)、1.89-1.92(m、2H)、2.54(d、J=4.4 Hz、3H)、3.16(s、3H)、3.38-3.42(m、1H)、4.68(s、1H)、5.59-5.63(m、1H)、5.73(d、J=8.0 Hz、1H)、 6.52-6.53(m、1H)、7.10-7.12(m、1H)、8.08(s、1H),11.58(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H] + 計算値:C15H22N6O:302.19。実測値:302.9。
【0081】
2の合成
N,N-ジメチルホルムアミド(2ml)およびジクロロメタン(2ml)中の化合物D(145mg、0.59mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(380.6mg、2.95mmol)およびイソシアナトエタン(62mg、0.88mmol)を加えた。得られる混合物を室温で1時間撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。得られる混合物に水(15ml)を加え、ろ過し、固体を集めた。固体をジエチルエーテルで洗浄し(20ml)、乾燥して2(105.5mg、収率56%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ0.98(t、J=7.2 Hz、3H)、1.23-1.33(m、2H)、1.64-1.78(m、4H)、1.89-1.93(m、2H)、2.97-3.03(m、2H)、3.16(s、3H)、3.36-3.43(m、1H)、4.68(s、1H)、5.64-5.70(m、2H)、6.52-6.53(m、1H)、7.11(t、J=2.8 Hz、1H)、8.08(s、1H),11.58(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H] + 計算値:C16H24N6O:316.2。実測値:317.0。
【0082】
3の合成
N,N-ジメチルホルムアミド(2ml)およびジクロロメタン(2ml)中の化合物D(150mg、0.61mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(393.4mg、3.05mmol)および1-イソシアナトプロパン(78mg、0.92mmol)を加えた。得られる混合物を室温で1時間撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。得られる混合物に水(15ml)を加え、ろ過し、固体を集めた。固体をジエチルエーテル(20ml)で洗浄し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製して(メタノール中の7%ジクロロメタン溶液で溶離)、3(105.3mg、収率52%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ 0.83(t、J=7.2 Hz、3H)、1.24-1.30(m、2H)、1.34-1.41(m、2H)、1.64-1.75(m、4H)、1.90-1.93(m、2H)、2.91-2.96(m、2H)、3.16(s、3H)、3.36-3.42(m、1H)、4.68-4.70(m、1H)、5.65(d、J=8.0 Hz、1H)、5.72-5.76(m、1H)、6.52-6.54(m、1H)、7.10-7.12(m、1H)、8.08(s、1H),11.58(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H] + 計算値:C17H26N6O:330.22。実測値:331.3。
【0083】
4の合成
N,N-ジメチルホルムアミド(2ml)およびジクロロメタン(2ml)中の化合物D(130mg、0.53mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(341.8mg、2.65mmol)および2-イソシアナトプロパン(54mg、0.64mmol)を加えた。得られる混合物を室温で1時間撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。得られる混合物に水(15ml)を加え、ろ過し、固体を集めた。固体をジエチルエーテルで洗浄し(20ml)、シリカゲルクロマトグラフィー(メタノール中の7%ジクロロメタン溶液で溶離)により精製して、4(103.5mg、収率59%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ 1.02(d、J=6.4 Hz、6H)、1.21-1.32(m、2H)、1.64-1.74(m、4H)、1.90-1.93(m、2H)、3.16(s、3H)、3.37-3.41(m、1H)、3.63-3.68(m、1H)、4.68(s、1H)、5.54-5.57(m、2H)、6.52-6.53(m、1H)、7.10-7.12(m、1H)、8.08(s、1H),11.57(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H] + 計算値:C17H26N6O:330.22。実測値:331.3。
【0084】
スキームIIにしたがって、化合物5を合成した。
【0085】
スキームII
【化8】
【0086】
化合物Eの合成
N,N-ジメチルホルムアミド(20ml)中の2-アミノアセトニトリル塩酸塩(1g、10.87mmol)の撹拌溶液に、テトラヒドロフラン(10ml)中のピリジン(1.03g、13.04mmol)および4-ニトロフェニルカルボノクロリデート(2.6g、13.04mmol)の溶液を0℃で加えた。混合物を、0℃にて15分撹拌したし、室温で一晩撹拌を継続した。TLCは、反応の完了を示した。反応混合物に水を加え、酢酸エチル(80ml)で抽出した。有機層を食塩水(3 x 50ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して、粗残渣を得、シリカゲフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の10%-30%酢酸エチル溶液で溶離)で精製して、化合物E(500mg、収率21%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ 4.26(d、J=6.0 Hz、2H)、7.46-7.48(m、2H)、8.28-8.30(m、2H)、8.81-8.24(m、1H)。
【0087】
5の合成
N,N-ジメチルホルムアミド(5ml)中の化合物D(250mg、1.02mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(658mg、5.10mmol)および4-ニトロフェニル(シアノメチル)カルバメート(1H NMRによる純度88%)(306mg、1.22mmol)を加えた。得られる混合物を室温で1時間撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。反応混合物を減圧濃縮して、粗残渣を得、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(メタノール中の7%ジクロロメタン溶液で溶離)で精製して、5(118.9mg、収率35%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ1.26-1.38(m、2H)、1.65-1.76(m、4H)、1.91-1.94(m、2H)、3.16(s、3H)、3.42-3.46(m、1H)、4.03(d、J=6.0 Hz、2H)、4.69(s、1H)、6.26(d、J=7.6Hz、1H)、6.35(d、J=6.0Hz、1H)、6.53-6.54(m、1H)、7.11-7.12(m、1H)、8.09(s、1H),11.59(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H] + 計算値:C16H21N7O:327.18。実測値:328.3。
【0088】
スキームIIIにしたがって、化合物6を合成した。
スキームIII
【化9】
【0089】
化合物Fの合成
酢酸エチル(50ml)中の2,2,2-トリフルオロエタンアミン(1g、10.10mmol)の撹拌溶液に、トリメチルアミン(255mg、2.52mmol)および中酢酸エチル(10ml)のトリホスゲン(1.49g、5.05mmol)の溶液を0℃にて加えた。混合物を、0℃にて30分撹拌し、室温にて撹拌を1時間継続し、5時間還流した。TLCは、反応の完了を示した。反応混合物を減圧濃縮して、粗化合物F(1g、粗物質)を黄色油状物で得た。
【0090】
6の合成
N,N-ジメチルホルムアミド(20ml)中の化合物D(250mg、1.02mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(526mg、4.08mmol)および1,1,1-トリフルオロ-2-イソシアナトエタン(191mg、1.53mmol)を加えた。得られる混合物を室温で1時間撹拌した。TLCは、反応の完了を示した。反応混合物を減圧濃縮して、粗残渣を得、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(メタノール中の7%ジクロロメタン溶液で溶離)で精製して、6(107.2mg、収率28%)を白色固体で得た。1H NMR(400 MHz、DMSO-d6):δ 1.26-1.36(m、2H)、1.66-1.77(m、4H)、1.92-1.94(m、2H)、3.16(s、3H)、3.43-3.45(m、1H)、3.77-3.86(m、2H)、4.68(s、1H)、6.07(d、J=8.0 Hz、1H)、6.35-6.39(m、1H)、6.55(s、1H)、7.13-7.14(m、1H)、8.10(s、1H)、11.63(s、1H);LC-MS:(ES+):m/z [M+H] + 計算値:C16H21F3N6O:370.17。実測値:371.3。
【0091】
式(I)の以下の化合物(表1中)をスキームI~IIIに示される方法で調製した。
【表1】
【表2】
【0092】
実施例2:JAKファミリーキナーゼに対する効力
A. JAK1、JAK2、およびJAK3酵素アッセイ
JAK2に対するJAK1のIC50の逆比として定義される、JAKl/JAK2効力比は、少なくとも約30であり、いくつかの場合、50~85以上である。JAK3に対するJAK1のIC50の逆比として定義される、JAKl/JAK3効力比は、少なくとも約3であり、いくつかの場合、40~70以上である。
【0093】
アッセイ結果は、JAK1阻害のIC50値が非常に低いことを示し、これは、JAK2およびJAK3よりもJAK1に対する式(I)の化合物の選択性を示し、JAK2またはJAK依存性細胞経路を割愛することによる、より選択的な生化学的プロファイルが臨床プロファイルの改善につながるかどうかを判断するための基礎を提供する。
【0094】
JAK酵素アッセイは、以下の試薬を使用した。
JAK1(BPS Bioscience、San Diego、CA カタログ番号40449)
JAK2(Carna Bio, USA, Inc. Natick、MA、カタログ番号08-045)
JAK3(Carna Bio, USA, Inc. Natick、MA、カタログ番号08-046)
TYK2(Carna Bio, USA, Inc. Natick、MA、カタログ番号08-147)
ペプチドFAM-P22(GL Biochem、カタログ番号112393)
ペプチドFAM-Pep D(GL Biochem、カタログ番号358783)
ペプチドFAM-P30(GL Biochem、カタログ番号263631)
ATP(Millipore Sigma、カタログ番号A7699-1G、CAS No。987-65-5)
DMSO(Millipore Sigma、カタログ番号D2650)
EDTA(Millipore Sigma、カタログ番号E5134、CAS No。60-00-4)
Brij-35 [Sigma、カタログ番号B4184]
96ウェルプレート(Corning、Corning、NY、カタログ番号3365)
384ウェルプレート(Corning、Corning、NY、カタログ番号3573)
オクラシチニブ[HUIFEIChem(WuXi)PharmaTech Co. Ltd.、バッチ番号:D0228-W-0814-1]
トファシチニブ(Med Chem Express、Monmouth Junction、NJ、カタログ番号HY-40354)
フィルゴチニブ[MCE、カタログ番号HY-18300]
【0095】
アッセイプレートの調製
各サンプルまたは参照化合物を、DMSOで所望の最高阻害剤濃度の50倍に希釈した。各サンプルまたは参照化合物を、96ウェルソースプレートを使用して段階希釈し、テスト用に10種の濃度にした。ソースプレートの各ウェルからの10μLを96ウェル中間プレートに移した。中間プレートの各ウェルに、90μLの1倍キナーゼ緩衝液(50mM HEPES、pH7.5、0.0015% Brij-35)を加え、中間プレートをシェーカーで10分間振とうした。96ウェル中間プレートの各ウェルからの5μLを384ウェルプレートに移した。
【0096】
キナーゼ反応
10μLの2.5倍酵素溶液(1倍キナーゼベース緩衝液中の酵素)をアッセイプレートのそれぞれのウェルに加えた。アッセイプレートを室温で10分間インキュベートした。10μLの2.5倍ペプチド溶液(1倍キナーゼベース緩衝液中のFAM標識ペプチドおよびATP)をアッセイプレートのそれぞれのウェルに加えた。キナーゼ反応は28℃で60分間進行し、続いて25μLのストップ緩衝液を添加した。CALIPERプログラムを使用してデータを収集した。CALIPERプログラムからの変換データを、次のように阻害値に変換した:阻害%=(最大変換)/(最大-最小)×100。「最大」という用語はDMSO対照を意味し、「最小」は低対照を意味する。Xlfit excel add-in バージョン5.4.0.8を使用して、データのカーブフィッティングを実行し、IC50値を得た。使用した式は、Y=Bottom+(Top-Bottom)/(1+(LogIC50/X)^HillSlopeであった。各キナーゼに使用されるペプチド基質、ペプチド濃度、酵素濃度、およびATP濃度を表2に示す。
【表3】
【0097】
結果を表3に示す。
【表4】
【0098】
オクラシチニブ、トファシチニブ、およびフィルゴチニブを参照化合物として使用した。
【化10】
【0099】
表3に示すように、オクラシチニブは、JAK1とJAK2に対して同様の活性を示し、トファシチニブは、JAK1、JAK2、およびJAK3を同様に阻害し、フィルゴチニブは、JAK3よりもJAK1とJAK2に対して選択性を示した。参照化合物のうち、JAK1/JAK2選択性に関しては、オクラシチニブのみがJAK1/JAK2に対して選択性を示した(すなわち、45%)。トファシチニブとフィルゴチニブは、JAK1/JAK2に対して選択的ではなかった。有利なことに、化合物1~6は、JAK2よりもJAK1に対して優れた選択性を示した(すなわち、それぞれ、87%、2.9倍、3.7倍、3.35倍、2.4倍、および6倍)。参照化合物のJAK1/JAK3選択性に関して、オクラシチニブとフィルゴチニブは、JAK3よりもJAK1に対して選択性を示し(すなわち、それぞれ10.6倍と21倍)一方、トファシチニブは、JAK1よりもJAK3の選択性を示した。JAK3よりもJAK1に対する化合物1~6の選択性は、参照化合物よりも大幅に向上した(すなわち、、それぞれ、3.96倍、10.4倍、10.9倍、15.4倍、3.5倍、および18.3倍)。参照化合物のうち、オクラシチニブのみが、JAK2およびJAK3の両方よりもJAK1に対して選択的であった(すなわち、それぞれ、45%および10.6倍)。驚くべきこと、かつ予想外に、化合物1~6は、JAK2よりもJAK1に、JAK3よりもJAK1に選択的であり、参照化合物と比較して優れた値を示した。
【0100】
実施例3:代謝安定性アッセイ
サンプルおよび参照化合物のストック溶液を、DMSO(10mM)で調製した。10μLのストック溶液をACN(190μL)で希釈することにより、各サンプル化合物と参照化合物に対するスパイク溶液(500μM)を調製した。ミクロソーム濃度0.75mg/mLのミクロソームスパイク溶液を、各サンプルについて調製した:1.5μLのそれぞれの500μMスパイク溶液を、18.75μLのミクロソーム溶液(プールされた肝臓ミクロソーム、250mMスクロース中20mg/mL、Corning、カタログ番号452601、ロット番号8176003)および479.75μLの緩衝液(0.1Mリン酸カリウム緩衝液、1.0mM EDTA、pH 7.4)と混合した。ミクロソームスパイク溶液を氷上で冷却した。異なる時点(0、5、15、30および45分)に対して指定されたウェルを備えたアッセイプレートを氷上で冷却した。各ミクロソームスパイク溶液の30μLを、異なる時点(0、5、15、30および45分)に対して指定されたウェルに加えた。ISを含む135uLのACNを0分とラベル付けされたプレートのウェルに入れ、続いて、15uLのNaDPHストック溶液(0.1Mリン酸カリウム緩衝液中の6mM NaDPH、1.0mM EDTA、pH 7.4)を加えた。5、15、30および45分に対するレートを、37℃で5分間インキュベートした。5分、10分、30分、および45分で、ISを含む135μLのACNを、対応するプレートのウェルに加えて、反応をクエンチした。プレートを10分間振とうし[IKAバイブレーター、MTS 2/4]、5594Gで15分間遠心分離した(Thermo Multifuge x 3R)。各ウェルの上清50uLを、LC-MS分析用に、50uLの超純水(Millipore、ZMQS50F01)を含む96ウェルサンプルプレートに移した。
【0101】
【表5】
【0102】
代謝安定性アッセイでは、オクラシチニブとケタンセリンを参照化合物として使用した。ミクロソームアッセイは、主にシトクロムP450システム(フェーズI酵素)による代謝を評価する。表4に示すように、化合物3、5、および6は、参照化合物と比較して、半減期が劇的に改善された。したがって、化合物3、5、および6は、参照化合物と比較して、肝臓による初回通過代謝に対して脆弱性が低い。
【国際調査報告】