(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】膜-電極アセンブリの製造のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1004 20160101AFI20221024BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20221024BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221024BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/0273
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514020
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2020015030
(87)【国際公開番号】W WO2021091169
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0141003
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】チョ ドンジュン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA13
5H126BB06
5H126EE11
(57)【要約】
本発明の膜-電極アセンブリの製造のための方法及び装置は、電解質膜、電極及びサブガスケットフィルムなどの多層積層体に位置決め孔を形成するが、最終製品に含まれない領域に前記位置決め孔を形成し、これらに基づいて、膜-電極アセンブリのマニホールド孔を迅速で正確に形成することによって、膜-電極アセンブリの不良率を低減させると共に生産性を増加させることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有する電解質膜(electrolyte membrane)、前記第1面上の第1電極、及び前記第2面上の第2電極を含む膜-電極積層体(membrane-electrode laminate)を準備する第1段階;
第1中央領域(central region)及び前記第1中央領域を取り囲む第1周辺領域(peripheral region)を有する第1サブガスケットフィルムを準備する第2段階;
前記第1中央領域内に第1電極ウィンドウ(electrode window)を形成する第3段階;
前記第1周辺領域内に少なくとも2個の第1位置決め孔(positioning holes)を形成する第4段階;
第2中央領域及び前記第2中央領域を取り囲む第2周辺領域を有する第2サブガスケットフィルムを準備する第5段階;
前記第2中央領域内に第2電極ウィンドウを形成する第6段階;
前記第2周辺領域内に少なくとも2個の第2位置決め孔を形成する第7段階;
前記第1電極ウィンドウを通して前記第1電極の少なくとも一部が露出されるように、前記電解質膜の前記第1面上に前記第1サブガスケットフィルムを付着させ、前記第2電極ウィンドウを通して前記第2電極の少なくとも一部が露出されるように前記電解質膜の前記第2面上に前記第2サブガスケットフィルムを付着させることによって、多層積層体(multilayer laminate)を形成する第8段階;
前記第1及び第2中央領域に対応する前記多層積層体の中央部分内に少なくとも一つのマニホールド孔を形成する第9段階;及び
前記第1及び第2周辺領域に対応する前記多層積層体の周辺部分を除去する第10段階を含む、膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つのマニホールド孔の形成のための第9段階及び前記多層積層体の周辺部分の除去のための第10段階は、前記第1及び第2位置決め孔の位置に基づいて行われる、請求項1に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つのマニホールド孔形成のための第9段階及び前記多層積層体の周辺部分の除去のための第10段階は、同時に行われる、請求項2に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つのマニホールド孔の形成のための第9段階及び前記多層積層体の周辺部分の除去のための第10段階は、前記多層積層体をプレス打抜(press-punching)することによって行われる、請求項2に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つのマニホールド孔の形成のための第9段階及び前記多層積層体の周辺部分の除去のための第10段階の前に、前記多層積層体を固定させる(securing)段階をさらに含む、請求項2に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項6】
前記多層積層体の固定段階は、前記第1及び第2位置決め孔を位置決めピン(positioning pins)に嵌めることによって行われる、請求項5に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項7】
複数の前記多層積層体を得るために前記第1~第8段階が繰り返され、
前記多層積層体の前記第1及び第2位置決め孔を前記位置決めピンに嵌めることによって前記多層積層体が一緒に固定され、
前記第9段階及び前記第10段階は、前記多層積層体を一緒にプレス打抜することによって行われる、請求項6に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項8】
前記多層積層体を一緒に固定させる段階は、
前記多層積層体を支持台(supporting platela)上に積む(stacking)段階;及び
前記多層積層体が積まれた前記支持台を、前記位置決めピンを備えたダイ(die)に装着しながら前記多層積層体の前記第1及び第2位置決め孔を前記位置決めピンに嵌める段階を含む、請求項7に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項9】
前記多層積層体を一緒に固定させる段階は、前記支持台を前記ダイに装着する前に、前記ダイに形成されたガイドレールに沿って前記位置決めピンを移動させることによって、前記多層積層体のサイズに合わせて前記位置決めピンの位置を調整する段階をさらに含む、請求項8に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項10】
前記第1電極ウィンドウの形成のための第3段階及び前記第1位置決め孔の形成のための第4段階は同時に行われ、
前記第2電極ウィンドウの形成のための第6段階及び前記第2位置決め孔の形成のための第7段階は同時に行われる、請求項1に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項11】
電解質膜、前記電解質膜の第1面上の第1電極、前記電解質膜の前記第1面上に配置され、前記第1電極の少なくとも一部を露出させる第1電極ウィンドウを有する第1サブガスケットフィルム、前記電解質膜の第2面上の第2電極、及び前記電解質膜の前記第2面上に配置され、前記第2電極の少なくとも一部を露出させる第2電極ウィンドウを有する第2サブガスケットフィルムを含む少なくとも一つの多層積層体が安置されるように構成された支持台;
前記支持台が装着されている又は装着可能なように構成されたダイ;及び
パンチングプレートを含み、
前記多層積層体は、その周縁部(peripheral portion)に少なくとも2個の位置決め孔を有し、
前記ダイは、前記位置決め孔にそれぞれ差し込み可能な少なくとも2本の位置決めピンを含み、
前記パンチングプレートは、前記位置決め孔が形成された前記周縁部を前記多層積層体から除去し、その残存部(residual portion)に少なくとも一つのマニホールド孔を形成可能なように構成されたパンチを含む、膜-電極アセンブリの製造装置。
【請求項12】
前記ダイは、前記位置決めピンの移動を案内可能なように構成されたガイドレールを備えた、請求項11に記載の膜-電極アセンブリの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜-電極アセンブリの製造のための方法及び装置に関し、より具体的には、ガス又は冷却水の伝達のためのマニホールド孔(manifold hole)を迅速で正確に形成することによって、不良率を低減させると共に生産性を増加させることができる膜-電極アセンブリの製造のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膜-電極アセンブリ(Membrane-Electrode Assembly:MEA)とセパレーター(separator)[‘バイポーラプレート(bipolar plate)’ともいう。]とからなる単位セル(unit cell)の積層構造を用いて電気を発生させる高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)は、高いエネルギー効率性と環境に優しいという特徴から、化石エネルギーを代替できる次世代エネルギー源として注目されている。
【0003】
前記膜-電極アセンブリは、一般に、アノード(anode)(‘燃料極’ともいう。)、カソード(cathode)(‘空気極’ともいう。)、及びこれらの間の高分子電解質膜を含む。
【0004】
水素ガスのような燃料がアノードに供給されると、アノードでは水素の酸化反応によって水素イオン(H+)と電子(e-)が生成される。生成された水素イオンは、高分子電解質膜を通してカソードに伝達され、生成された電子は、外部回路を通してカソードに伝達される。カソードに供給される酸素が前記水素イオン及び前記電子と結合して還元されることによって水が生成される。
【0005】
一般に、アノードを露出させる電極ウィンドウ(electrode window)を有する第1サブガスケットフィルム、及びカソードを露出させる電極ウィンドウを有する第2サブガスケットフィルムが、前記高分子電解質膜の第1面及びその反対側の第2面にそれぞれ提供される。
【0006】
前記第1及び第2サブガスケットフィルムは、(i)燃料電池の運転中に前記高分子電解質膜が膨潤及び収縮を繰り返すことによって高分子電解質膜のエッジ部分に破損を招くことを防止し 、(ii)極薄い高分子電解質膜及び/又は膜-電極アセンブリの取扱性(handling)を向上させ、(iii)水素ガス及び酸素ガスの漏れを防止するための構成要素である。
【0007】
水素/酸素ガス又は冷却水の伝達のためのマニホールド孔が膜-電極アセンブリに提供される必要がある。以下、
図1を参照して、従来の技術によるマニホールド孔の形成方法を具体的に説明する。
【0008】
まず、電解質膜11の第1及び第2面上に第1電極(例えば、アノード)12及び第2電極(例えば、カソード)13をそれぞれ形成することによって得られたCCM(Catalyst Coated Membrane)の両面に、第1及び第2サブガスケットフィルム14,15がそれぞれ付着する。
【0009】
前記第1サブガスケットフィルム14に形成されている第1電極ウィンドウ14aを通して前記第1電極12の中央部が露出され、前記第2サブガスケットフィルム15に形成されている第2電極ウィンドウ15aを通して前記第2電極13の中央部が露出される。前記第1及び第2電極12,13の露出部はそれぞれ、電気の発生に直接貢献する活性領域AAである。すなわち、前記第1及び第2電極ウィンドウ14a,15aが前記活性領域AAを定義する。
【0010】
このように得られた多層積層体(multilayer laminate)を、最終膜-電極アセンブリの形態及びサイズに対応する第1カッティングラインCL1に沿って切断する。また、前記多層積層体を、最終膜-電極アセンブリに提供されるべきマニホールド孔の形態及びサイズに対応する第2カッティングラインCL2に沿って切断することによって、マニホールド孔を形成する。
【0011】
従来の技術によれば、ビジョンセンサ(vision sensor)を用いて前記第1又は第2電極12,13の位置が把握され、これに基づいて前記第1及び第2カッティングラインCL1,CL2の位置が決定される。前記第1又は第2電極12,13の位置把握のためのセンシング地点(SP)は、前記第1及び/又は第2電極12,13における少なくとも2つの角である。電極ウィンドウを通して電極全体が露出されるエッジ-フィット(Edge-fit)タイプと違い、電極のエッジ部がサブガスケットで覆われるオーバーラップ(overlap)タイプでは、前記第1及び第2電極12,13の角が前記第1及び第2サブガスケットフィルム14,15で覆われている。ところが、サブガスケットフィルムは一般に無色透明であるので、前記角がビジョンセンサにより依然として感知でき、よって、センシング地点(SP)として働くことができる。
【0012】
しかしながら、
図1に示すように、CCM上に第1及び第2サブガスケットフィルム14,15を付着させるとき、前記第1及び第2電極ウィンドウ14a,15aが前記第1及び第2電極12,13と正確に整列しないことが意図せずに度々発生する。
【0013】
電極ウィンドウ14a,15aと電極12,13との間のこのような不整合(mismatch)にも関わらず、前記第1及び第2カッティングラインCL1,CL2が電極12,13の角などの位置に基づいて決定されると、前記電極ウィンドウ14a,15aにより定義される活性領域AAが最終製品の中央に位置付けられなくなる他、前記活性領域AAとマニホールド孔との間の距離d1,d2に差異が発生してしまい、結果的に製品の不良を招く。
【0014】
また、前記オーバーラップタイプの場合、ビジョンセンサを用いた前記第1及び第2カッティングラインCL1,CL2の位置決定は、前記第1及び第2サブガスケットフィルム14,15が無色透明であることを前提としているため、前記第1及び第2サブガスケットフィルム14,15が有色又は不透明である場合には、前記第1又は第2電極12,13の位置を感知すること自体が不可能であり、又は、その正確度が大きく低下するという問題がある。
【0015】
また、ビジョンセンサを用いて第1又は第2電極12,13の位置を感知し、その結果に基づいて前記第1及び第2カッティングラインCL1,CL2の位置を決定して、前記多層積層体を切断する一連の工程は、個別の多層積層体毎に行われなければならず、膜-電極アセンブリの生産性を向上させるには限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明は、上記のような関連技術の制限及び短所に起因する問題点を防止できる膜-電極アセンブリの製造のための方法及び装置に関する。
【0017】
本発明の一観点は、ガス又は冷却水の伝達のためのマニホールド孔を迅速で正確に形成することによって、不良率を低減させると共に生産性を増加させることができる膜-電極アセンブリの製造方法を提供することである。
【0018】
本発明の他の観点は、ガス又は冷却水の伝達のためのマニホールド孔を迅速で正確に形成することによって、不良率を低減させると共に生産性を増加させることができる膜-電極アセンブリの製造方法を提供することである。
【0019】
上記で言及した本発明の観点の他にも、本発明の他の特徴及び利点が以下で説明されるか、又はそのような説明から、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有する電解質膜(electrolyte membrane)、前記第1面上の第1電極、及び前記第2面上の第2電極を含む膜-電極積層体(membrane-electrode laminate)を準備する第1段階;第1中央領域(central region)及び前記第1中央領域を取り囲む第1周辺領域(peripheral region)を有する第1サブガスケットフィルムを準備する第2段階;前記第1中央領域内に第1電極ウィンドウ(electrode window)を形成する第3段階;前記第1周辺領域内に少なくとも2個の第1位置決め孔(positioning holes)を形成する第4段階;第2中央領域及び前記第2中央領域を取り囲む第2周辺領域を有する第2サブガスケットフィルムを準備する第5段階;前記第2中央領域内に第2電極ウィンドウを形成する第6段階;前記第2周辺領域内に少なくとも2個の第2位置決め孔を形成する第7段階;前記第1電極ウィンドウを通して前記第1電極の少なくとも一部が露出されるように、前記電解質膜の前記第1面上に前記第1サブガスケットフィルムを付着させ、前記第2電極ウィンドウを通して前記第2電極の少なくとも一部が露出されるように前記電解質膜の前記第2面上に前記第2サブガスケットフィルムを付着させることによって、多層積層体(multilayer laminate)を形成する第8段階;前記第1及び第2中央領域に対応する前記多層積層体の中央部分内に少なくとも一つのマニホールド孔を形成する第9段階;及び、前記第1及び第2周辺領域に対応する前記多層積層体の周辺部分を除去する第10段階を含む、膜-電極アセンブリの製造方法が提供される。
【0021】
前記少なくとも一つのマニホールド孔の形成のための第9段階及び前記多層積層体の周辺部分の除去のための第10段階は、前記第1及び第2位置決め孔の位置に基づいて行われてよい。
【0022】
前記少なくとも一つのマニホールド孔の形成のための第9段階及び前記多層積層体の周辺部分の除去のための第10段階は、前記多層積層体をプレス打抜(press-punching)することによって行われてよい。
【0023】
前記方法は、前記少なくとも一つのマニホールド孔の形成のための第9段階及び前記多層積層体の周辺部分の除去のための第10段階の前に、前記多層積層体を固定させる(securing)段階をさらに含んでよい。
【0024】
前記多層積層体の固定段階は、前記第1及び第2位置決め孔を位置決めピン(positioning pins)に嵌めることによって行われてよい。
【0025】
複数の前記多層積層体を得るために前記第1~第8段階が繰り返されてよく、前記多層積層体の前記第1及び第2位置決め孔を前記位置決めピンに嵌めることによって前記多層積層体が一緒に固定されてよく、前記第9段階及び前記第10段階は、前記多層積層体を一緒にプレス打抜することによって行われてよい。
【0026】
前記多層積層体を一緒に固定させる段階は、前記多層積層体を支持台(supporting platela)上に積む(stacking)段階;及び、前記多層積層体が積まれた前記支持台を、前記位置決めピンを備えたダイ(die)に装着しながら前記多層積層体の前記第1及び第2位置決め孔を前記位置決めピンに嵌める段階を含んでよい。
【0027】
前記多層積層体を一緒に固定させる段階は、前記支持台を前記ダイに装着する前に、前記ダイに形成されたガイドレールに沿って前記位置決めピンを移動させることによって、前記多層積層体のサイズに合わせて前記位置決めピンの位置を調整する段階をさらに含んでよい。
【0028】
前記第1電極ウィンドウの形成のための第3段階及び前記第1位置決め孔の形成のための第4段階は同時に行われ、前記第2電極ウィンドウの形成のための第6段階及び前記第2位置決め孔の形成のための第7段階も同時に行われてよい。
【0029】
本発明の他の観点によって、電解質膜、前記電解質膜の第1面上の第1電極、前記電解質膜の前記第1面上に配置され、前記第1電極の少なくとも一部を露出させる第1電極ウィンドウを有する第1サブガスケットフィルム、前記電解質膜の第2面上の第2電極、及び前記電解質膜の前記第2面上に配置され、前記第2電極の少なくとも一部を露出させる第2電極ウィンドウを有する第2サブガスケットフィルムを含む少なくとも一つの多層積層体が安置されるように構成された支持台;前記支持台が装着された或いは装着可能なように構成されたダイ;及び、パンチングプレートを含み、前記多層積層体は、その周縁部(peripheral portion)に少なくとも2個の位置決め孔を有し、前記ダイは、前記位置決め孔にそれぞれ差し込まれ得る少なくとも2本の位置決めピンを含み、前記パンチングプレートは、前記位置決め孔が形成された前記周縁部を前記多層積層体から除去し、その残存部(residual portion)に少なくとも一つのマニホールド孔を形成可能なように構成されたパンチを含む、膜-電極アセンブリの製造装置が提供される。
【0030】
前記ダイは、前記位置決めピンの移動を案内できるように構成されたガイドレールを備えてよい。
【0031】
上記のような本発明に対する一般的技術は、本発明を例示又は説明するためのものもので、本発明の権利範囲を制限するものではない。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電解質膜、電極及びサブガスケットフィルムなどの多層積層体に位置決め孔を形成するが、最終製品に含まれない領域に前記位置決め孔を形成し、これらに基づいて膜-電極アセンブリのマニホールド孔を迅速で正確に形成することによって、膜-電極アセンブリの不良率を低減させると共に生産性を増加させることができる
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付の図面は、本発明の理解を助け、本明細書の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明と共に本発明の原理を説明する。
【0034】
【
図1】従来の技術による膜-電極アセンブリの製造方法を概略的に例示する図である。
【0035】
【
図2】本発明の一実施例によって膜-電極アセンブリを製造する方法及び装置を概略的に例示する図である。
【
図3】本発明の一実施例によって膜-電極アセンブリを製造する方法及び装置を概略的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、
図2及び
図3を参照して、本発明の一実施例による膜-電極アセンブリの製造のための方法及び装置をさらに具体的に説明する。
【0037】
図2に示すように、膜-電極積層体、第1サブガスケットフィルム131、及び第2サブガスケットフィルム132をそれぞれ準備する。
【0038】
前記膜-電極積層体は、電解質膜110、第1電極121、及び第2電極122を含む。前記電解質膜110は、第1面、及び前記第1面の反対側の第2面を有する。前記第1面上に前記第1電極121が配置されており、前記第2面上に前記第2電極122が配置されている。
【0039】
本明細書において、‘電解質膜’という用語は、単一膜(single membrane)タイプの高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane:PEM)、強化膜(reinforced membrane)タイプの複合PEM(composite PEM)のいずれをも含む概念である。
【0040】
前記第1サブガスケットフィルム131は、第1中央領域131b、及び前記第1中央領域131bを取り囲む第1周辺領域131aを有する。同様に、前記第2サブガスケットフィルム132は、第2中央領域132b、及び前記第2中央領域132bを取り囲む第2周辺領域132aを有する。
【0041】
前記第1及び第2中央領域131b,132bは、最終膜-電極アセンブリ製品の形態及びサイズに対応する単一閉曲線(simple closed curve)である第1カッティングラインCL1の内側に位置し、前記最終製品に残る領域である。一方、前記第1及び第2周辺領域131a,132aは、前記第1カッティングラインCL1の外側に位置し、前記第1カッティングラインCL1に沿うカッティング/打抜工程によって除去され、前記最終製品には存在しなくなる領域である。
【0042】
次に、
図2に例示するように、前記第1サブガスケットフィルム131に第1電極ウィンドウEW1及び少なくとも2個の第1位置決め孔PH1を形成する。前記第1電極ウィンドウEW1は、前記第1サブガスケットフィルム131の前記第1中央領域131b内に形成される。一方、前記第1位置決め孔PH1は、前記第1サブガスケットフィルム131の前記第1周辺領域131a内に形成される。
【0043】
同様に、前記第2サブガスケットフィルム132に、第2電極ウィンドウEW2及び少なくとも2個の第2位置決め孔PH2を形成する。前記第2電極ウィンドウEW2は、前記第2サブガスケットフィルム132の前記第2中央領域132b内に形成される。一方、前記第2位置決め孔PH2は、前記第2サブガスケットフィルム132の前記第2周辺領域132a内に形成される。
【0044】
前記第1電極ウィンドウEW1と前記第1位置決め孔PH1は、同時に形成されてよい。或いは、前記第1電極ウィンドウEW1と前記第1位置決め孔PH1のいずれか一方が形成された後、いずれか他方が形成されてもよい。
【0045】
同様に、前記第2電極ウィンドウEW2と前記第2位置決め孔PH2も同時に又は順次に形成されてよい。前記第2電極ウィンドウEW2と前記第2位置決め孔PH2が順次に形成されるとき、その順序は特に制限されない。
【0046】
本発明の一実施例によれば、前記第1電極ウィンドウEW1と前記第1位置決め孔PH1は、一つの打抜機(punching tool)を用いて一度(at once)に形成されてよく、前記第2電極ウィンドウEW2と前記第2位置決め孔PH2も、一つの打抜機を用いて一度に形成されてよい。したがって、前記第1及び第2電極12,13の少なくとも一部を露出させることによって、電気の発生に直接貢献する活性領域AAをそれぞれ定義する前記第1及び第2電極ウィンドウEW1、EW2と前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2の相対的位置が一定に維持され得る。
【0047】
次に、
図2に示すように、前記電解質膜110の前記第1及び第2面上に前記第1及び第2サブガスケットフィルム131,132をそれぞれ付着させることによって多層積層体100を形成する。
【0048】
前記第1及び第2サブガスケットフィルム131,132は、前記電解質膜110に同時に又は順次に付着してよい。前記第1及び第2サブガスケットフィルム131,132が前記電解質膜110に順次に付着するとき、その順序は特に制限されない。
【0049】
前記第1サブガスケットフィルム131が前記電解質膜110の第1面上に付着する際に、前記第1電極ウィンドウEW1を通して前記第1電極121の少なくとも一部が露出される。すなわち、エッジ-フィット(edge-fit)タイプでは、前記第1電極ウィンドウEW1を通して前記第1電極121の全体が露出される。一方、オーバーラップ(overlap)タイプでは、前記第1電極121のエッジ部が前記第1サブガスケットフィルム131で覆われるため、前記第1電極121の中央部のみが前記第1電極ウィンドウEW1を通して露出される。同様に、前記第2サブガスケットフィルム132が前記電解質膜110の第2面上に付着する際に、前記第2電極ウィンドウEW2を通して前記第2電極122の少なくとも一部が露出される。
【0050】
前記電解質膜110は、前記多層積層体100が形成されるとき、前記第1及び第2サブガスケットフィルム131,132の第1及び第2位置決め孔PH1,PH2をブロッキングしない限り、特定のサイズ又は形態に制限されない。例えば、
図3に例示するように、前記多層積層体100において、前記電解質膜110は前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2をブロッキングしないうえに、その周縁が第1カッティングラインCL1の単一閉曲線の外側に配置されるようにするサイズ及び形態を有することができる。
【0051】
或いは、前記電解質膜110は、その周縁が前記第1カッティングラインCL1の単一閉曲線の内側に配置されるようにするサイズ及び形態を有することによって、前記第1及び第2サブガスケットフィルム131,132の前記第1及び第2中央領域131b,132bとのみ重畳し得る。特に、相対的に高価である電解質膜110の使用量を最小化するために、前記電解質膜110はマニホールド孔MHの形成のための前記第2カッティングラインCL2とも重畳しないサイズ及び形態を有することができる。
【0052】
次に、前記第2カッティングラインCL2に沿うカッティング工程が行われることによって、前記第1及び第2中央領域131b,132bに対応する前記多層積層体100の中央部分内に少なくとも一つのマニホールド孔MHが形成される。また、前記第1カッティングラインCL1に沿うカッティング工程が行われることによって、前記第1及び第2周辺領域131a,132aに対応する前記多層積層体100の周辺部分が除去される。
【0053】
本発明の一実施例によれば、前記少なくとも一つのマニホールド孔MHの形成のための工程と前記多層積層体100の周辺部分の除去のための工程は、前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2の位置に基づいて行われてよい。すなわち、前記少なくとも一つのマニホールド孔MHの形成のための前記第2カッティングラインCL2と前記多層積層体100の周辺部分の除去のための前記第1カッティングラインCL1が、前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2の位置に基づいて決定されてよい。
【0054】
例えば、
図3に示すように、前記多層積層体100の第1及び第2位置決め孔PH1,PH2を位置決めピン311に嵌めることによって前記多層積層体100を固定させた後、前記第1及び第2カッティングラインCL1,CL2に沿うカッティング工程を行うことができる。すなわち、前記位置決めピン311を基準にして[よって、前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2の位置に基いて]、前記多層積層体100に対する前記カッティング工程が行われてよい。
【0055】
或いは、ビジョンセンサ(vision sensor)を用いて前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2の位置が把握され、これに基づいて前記第1及び第2カッティングラインCL1,CL2の位置が決定されてよい。
【0056】
本発明によれば、活性領域AAをそれぞれ定義する前記第1及び第2電極ウィンドウEW1、EW2との相対的位置が一定に維持された前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2の位置に基づいて前記カッティング工程が行われるので、前記第1及び第2電極ウィンドウEW1、EW2(すなわち、前記活性領域AA)を常に最終膜-電極アセンブリ製品の中央に配置させることができる他、前記活性領域AAと前記マニホールド孔MHとの間の距離を一定に維持させることもできるので、膜-電極アセンブリ及びそれを含む燃料電池の不良率を画期的に低減させることができる。
【0057】
前記少なくとも一つのマニホールド孔MHの形成のために前記第2カッティングラインCL2に沿って前記多層積層体100をカッティングする工程と、前記多層積層体100の周辺部分の除去のために前記第1カッティングラインCL1に沿って前記多層積層体100をカッティングする工程は、同時に又は順次に行われてよい。前記カッティング工程が順次に行われる際に、その順序は特に制限されない。
【0058】
本発明の一実施例によれば、前記第1及び第2カッティングラインCL1,CL2に沿うカッティング工程は、プレス打抜(press-punching)することによって行われてよい。
【0059】
また、本発明の一実施例よれば、第1及び第2位置決め孔PH1,PH2をそれぞれ有する複数の多層積層体100を前述の方法によって形成し、本発明の膜-電極アセンブリの製造装置を用いてそれらの多層積層体100を一緒にプレス打抜することによって、膜-電極アセンブリの不良率を低減させると共に生産性を増加させることができるが、以下、これについて具体的に説明する。
【0060】
前記本発明の装置は、
図3に例示するように、支持台200、ダイ(die)310及びパンチングプレート320を含む。
【0061】
まず、上述した方法によって形成された複数の多層積層体100を支持台200上に積みあげる(stacking)。前記支持台200は、前記多層積層体100及び/又は最終膜-電極アセンブリ製品に対応する形態を有してよい。例えば、前記多層積層体100の第1及び第2位置決め孔PH1,PH2が前記支持台200と重畳しない程度に前記支持台200が前記多層積層体100よりも小さくてよい。
【0062】
前記支持台200は、少なくとも2本の位置決めピン311を含む前記ダイ310に装着されていてよく、前記複数の多層積層体100を前記支持台200上に順次に積む際に、前記多層積層体100の第1及び第2位置決め孔PH1,PH2を前記ダイ310の位置決めピン311に嵌めることによって、前記ダイ310に対する前記多層積層体100の位置を固定させることができる。
【0063】
或いは、少なくとも2本の位置決めピン311を含む前記ダイ310は、前記多層積層体100が安置された支持台200が装着され得るように構成されてよい。すなわち、前記複数の多層積層体100を前記支持台200上に積みあげた後に前記支持台200を前記ダイ310に装着することができる。前記支持台200を前記ダイ310に装着する際に、前記支持台200上に積まれている前記多層積層体100の第1及び第2位置決め孔PH1,PH2を前記ダイ310の位置決めピン311に嵌めることによって、前記ダイ310に対する前記多層積層体100の位置を固定させることができる。
【0064】
選択的に(optionally)、前記ダイ310は、前記位置決めピン311の移動を案内できるように構成されたガイドレール312を備えることができる。前記位置決めピン311の位置調整は、電子的制御により又は手動で行われてよい。よって、本発明の一実施例によれば、前記ダイ310に固定されている前記支持台200上に前記多層積層体100を積みあげる前に、又は、前記多層積層体100が積まれている前記支持台200を前記ダイ310に装着する前に、前記多層積層体100のサイズに合わせて(又は、前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2の位置に合わせて)前記位置決めピン311の位置を調整することができる。
【0065】
前記パンチングプレート320は、前記第1カッティングラインCL1に沿うパンチングによって、前記第1及び第2位置決め孔PH1,PH2が形成されている前記多層積層体100の周縁部を除去し、前記第2カッティングラインCL2に沿うパンチングにより、前記多層積層体100の残存部に少なくとも一つのマニホールド孔MHを形成できるように構成されたパンチ321を含む。
【0066】
前記パンチ321を有するパンチングプレート320及び前記ダイ310のうち少なくとも一つを移動させることによって、前記プレス打抜を行うことができる。
【0067】
上述したように、本発明によれば、前記支持台200上の複数の多層積層体100が一緒にプレス打抜されることによって、膜-電極アセンブリの生産性が画期的に向上し得る。
【0068】
以上、複数の多層積層体100を一緒にプレス打抜することを説明したが、本発明に係る装置は、一つの多層積層体100のみにプレス打抜を行う場合にも使用可能であることは勿論である。
【国際調査報告】