(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(54)【発明の名称】線形駆動軸受および案内軸受を備える高精度工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 5/027 20060101AFI20221024BHJP
B23Q 1/01 20060101ALI20221024BHJP
B23Q 1/25 20060101ALI20221024BHJP
B23Q 1/56 20060101ALI20221024BHJP
B23Q 1/26 20060101ALI20221024BHJP
B23Q 11/12 20060101ALI20221024BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20221024BHJP
F16C 32/06 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B23Q5/027
B23Q1/01 W
B23Q1/25
B23Q1/56 B
B23Q1/26 Z
B23Q11/12 D
H02K41/02 C
F16C32/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538346
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 DE2020000191
(87)【国際公開番号】W WO2021037295
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】102019005966.2
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522072323
【氏名又は名称】カーン マイクロテクニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】マイアー、クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3C048
3J102
5H641
【Fターム(参考)】
3C048BB03
3C048BB12
3C048BB14
3C048BC02
3C048BC03
3C048CC07
3C048DD10
3C048DD26
3J102AA01
3J102AA02
3J102BA05
3J102BA13
3J102CA10
3J102CA11
3J102CA40
3J102DA02
3J102EA02
3J102GA07
5H641BB06
5H641GG03
5H641HH02
5H641JA06
(57)【要約】
高精度工作機械(100)の精度をさらに改善することを目的として、少なくとも1つの線形駆動軸受および案内軸受(1)が設けられており、この線形駆動軸受および案内軸受は、少なくとも1つのリニアモータ(27)を備え、このリニアモータは、一方の機械構成部品(5)に配置された磁石(15)と、他方の機械構成部品(10)に配置された、少なくとも1つの磁石(15)と作動的に接続されているコイル(25)とを有し、少なくとも1つの磁石(15)および少なくとも1つのコイル(25)は、相互に引力を及ぼし、少なくとも一時的な相対運動を実行することができるように調整されている。線形駆動軸受および案内軸受はまた、2つの機械構成部品の一方(10)に配置された、他方の機械構成部品(5)と作動的に接続されている少なくとも1つの静圧流体軸受(30-1、30-3)を備え、この静圧流体軸受(30-1、30-3)は、引力とは反対方向に反発力を及ぼしている。線形駆動軸受および案内軸受はさらに、2つの機械構成部品(5、10)の間に形成された、高さが0μmよりも大きく、10μm以下である第1の軸受隙間(H1)を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高精度工作機械(100)に取り付けられた2つの機械構成部品(5、10)の相対線形運動を実行するための少なくとも1つの線形駆動手段を備える高精度工作機械(100)であって、
前記少なくとも1つの線形駆動手段は、線形駆動軸受および案内軸受(1、1’、1”)として形成されており、かつ
・少なくとも1つのリニアモータ(27)を有し、該リニアモータは、前記一方の機械構成部品(5)に配置された少なくとも1つの磁石(15)と、前記他方の機械構成部品(10)に配置された、前記少なくとも1つの磁石(15)と作動的に接続されているコイル(25)とを有し、前記少なくとも1つの磁石(15)および前記少なくとも1つのコイル(25)は、相互に引力を及ぼし、少なくとも一時的な相対運動を実行することができるように調整されており、かつ
・前記2つの機械構成部品の一方(10)に配置された、前記他方の機械構成部品(5)と作動的に接続されている少なくとも1つの静圧流体軸受(30-1、30-3)を有し、該静圧流体軸受(30-1、30-3)は、前記引力とは反対方向に反発力を及ぼし、かつ
・前記2つの機械構成部品(5、10)の間に形成された、高さが0μmよりも大きく、10μm以下である第1の軸受隙間(H1)を有していることを特徴とする、高精度工作機械(100)。
【請求項2】
前記2つの機械構成部品(5、10)は、それぞれ、互いに平行な第1の仮想面(E1、E2)を有し、前記第1の仮想面には、前記リニアモータ(27)と前記静圧流体軸受(30-1、30-3)とが前記第1の軸受隙間(H1)を形成しながら延伸していることを特徴とする、請求項1に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項3】
前記それぞれの第1の仮想面(E1、E2)に対して傾斜した、好適には直交した第2の仮想面(E3)の中に、少なくとも1つの線形案内手段(60)が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項4】
前記線形案内手段(60)は、少なくとも1つの流体軸受手段(65)と、これと対抗的に作用する磁気軸受手段(75)とを有することを特徴とする、請求項3に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項5】
前記流体軸受手段(65)および前記磁気軸受手段(75)は、前記一方の同じ機械構成部品(10)に配置されており、前記他方の機械構成部品(5)と作動的に接続されていることを特徴とする、請求項4に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項6】
前記一方の機械構成部品(5)は、断面で見て、第1の接触面(5-1)と、そこから離れた第2の接触面(5-3)と、それらの間にある第1の収容領域(5-5)とを有し、前記他方の機械構成部分(10)は、第1の収容部分(10-1)と、そこから離れた第2の収容部分(10-3)と、それらの間にある第2の収容領域(10-5)を有し、前記第1の収容部分(10-1)には、前記第1の接触面(5-1)に対向する少なくとも1つの静圧流体軸受(30-1)が収容され、前記第2の収容部分(10-3)には、前記第2の接触面(5-3)に対向する第2の静圧軸受(30-3)が収容され、前記第1の収容領域(5-5)には、前記少なくとも1つの磁石(15)が収容され、前記第2の収容領域(10-5)には、前記少なくとも1つのコイル(25)が前記第1の収容領域(5-5)に対向して収容されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項7】
前記第1の収容領域(5-5)は、前記第1の接触面(5-1)および/または前記第2の接触面(5-3)に対して窪ませて形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項8】
前記第1の収容部分(10-1)および前記第2の収容部分(10-3)を有する前記機械構成部品(10)は、流体軸受手段(65)が配置された第1の突出部分(60-1)と、前記第1の突出部分(60-1)に対向し、かつ磁気軸受手段(75)が配置された第2の突出部分(60-3)とを有しており、前記2つの突出部分(60-1、60-3)は第2の軸受隙間(H2)を形成しながら前記他方の機械構成部品(5)に隣接していることを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項9】
前記磁気軸受手段(75)は、前記一方の機械構成部品(5)に取り付けられているマグネットバー(75-1)と、前記他方の機械構成部品(10)に取り付けられている相手方バー(75-3)とを有し、前記両方のバーは、互いに磁気的反発力を及ぼし合うように調整されていることを特徴とする、請求項4~8のいずれか一項に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項10】
前記流体軸受手段(65)は、少なくとも1つの静圧流体軸受(30-1、30-3)に相当することを特徴とする、請求項4~9のいずれか一項に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項11】
前記高精度工作機械と作動的に接続されている少なくとも1つの温度調整手段(80)を特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の高精度工作機械(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの温度調整手段(80)は、前記高精度工作機械(100)自体の中に、またはこれから離れた場所に位置決めされていることを特徴とする、請求項11に記載の高精度工作機械(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による、少なくとも1つの線形駆動手段を備える高精度工作機械に関する。
【0002】
基本的に、高精度工作機械内に取り付けられた2つの機械構成部品を相対運動させるための線形駆動手段を備える高精度工作機械は、それ自体公知である。この工作機械は、2つの機械構成部品を確実かつ精確に運動させ、案内し、静止状態に保持するために用いられる。本特許の出願人は、ドイツ登録商標KERN Pyramid Nano(正式登録番号30676385)の下でこの種の高精度工作機械を備えたマシニングセンタを提供しており、これにより2つの機械構成部品を20μm以上の間隔で相対運動させることができる。
【0003】
本発明の課題は、2つの機械構成部品を従来技術よりもさらに高い精度で相対的に位置決めし、線形運動させることができる高精度工作機械を提供することである。
【0004】
この課題は、本発明により請求項1の特徴によって解決される。本発明のさらなる構成は従属請求項から得られる。
【0005】
本発明の高精度工作機械は、特に切削高精度工作機械、とりわけ高精度フライス盤として形成することができる。これはさらに、単独の機械、マシニングセンタの一部、フレキシブル生産セルの一部、またはフレキシブル生産システムの一部であってもよい。したがって、この高精度工作機械に工具交換装置および/または部材交換装置を含む工具キャビネットを設けることが特に可能である。
【0006】
高精度工作機械に取り付けられた2つの機械構成部品の相対線形運動を実行するための本発明による高精度工作機械の少なくとも1つの線形駆動手段は、線形駆動軸受および案内軸受として形成されている。
【0007】
機械構成部品とは、相対運動および/または一時的な停止が部材の加工に必要または有用であるような、高精度工作機械の隣接し合う構成部品である。したがって、以下に記載した2つの機械構成部品の唯一のペア、複数のペア、または全てのペアに線形駆動軸受および案内軸受を設けることができる。
・一方の機械構成部品は高精度工作機械の機械スタンドとして形成し、他方の機械構成部品は機械スタンドに隣接する高精度工作機械の横送り台として形成することができる。
・一方の機械構成部品は高精度工作機械の機械スタンドとして形成し、他方の機械構成部品は機械スタンドに隣接する高精度工作機械の縦送り台として形成することができる。
・一方の機械構成部品は高精度工作機械の機械スタンドとして形成し、他方の機械構成部品は機械スタンドに隣接する高精度工作機械の上下送り台として構成することができる。
・一方の機械構成部品は高精度工作機械の縦送り台として形成し、他方の機械構成部品は縦送り台に隣接する高精度工作機械の横送り台として形成することができる。
・一方の機械構成部品は高精度工作機械の上下送り台として形成し、他方の機械構成部品は上下送り台に隣接する高精度工作機械の横送り台として形成することができる。
・一方の機械構成部品は高精度工作機械の上下送り台として形成し、他方の機械構成部品は上下送り台に隣接する高精度工作機械の縦送り台として形成することができる。
【0008】
したがって、本発明の高精度工作機械は、特に、機械スタンドと横送り台との間で相対線形運動を実行するための第1の線形駆動軸受および案内軸受、横送り台と縦送り台との間で相対線形運動を実行するためのさらなる線形駆動軸受および案内軸受、および縦送り台と上下送り台との間の相対線形運動を実行するための第3の線形駆動軸受および案内軸受を有することができる。
【0009】
代替的に本発明の高精度工作機械は、特に、機械スタンドと縦送り台との間で相対線形運動を実行するための第1の線形駆動軸受および案内軸受、横送り台と縦送り台との間で相対線形運動を実行するためのさらなる線形駆動軸受および案内軸受、および縦送り台と上下送り台との間で相対線形運動を実行するための第3の線形駆動軸受および案内軸受を有することができる。
【0010】
前述の各機械構成部品は、アルミニウム合金から作製することができる。代替的に機械スタンドとして形成された機械構成部品は、超高性能コンクリート(Ultra High Performance Concrete:UHPC)から作製することができる。
【0011】
さらに、機械構成部品の少なくとも1つは熱対称に形成することができる。
【0012】
本発明により設けられた、2つの機械構成部品の相対線形運動を実行するための線形駆動軸受および案内軸受は、少なくとも1つのリニアモータを有し、このリニアモータは、一方の機械構成部品に配置された少なくとも1つの磁石と、他方の機械構成部品に配置された少なくとも1つのコイルとを有する。コイルは、基本的に空芯で形成することができる。しかし有利には、コイルがコアを含み、特にフェライトにより形成されたコアを含むことにより、比較的簡単なコイル構造と、技術的に特に優れたコイル作用とを達成することができる。磁石、好適には永久磁石とコイルとは、互いに作動的に接続されており、相互に引力を及ぼし、少なくとも一時的な相対運動を実行することができるように調整されている。
【0013】
さらに本発明により設けられた、2つの機械構成部品の相対線形運動を実行するための線形駆動軸受および案内軸受は、2つの機械構成部分の一方に配置された、他方の機械構成部品と作動的に接続されている少なくとも1つの静圧流体軸受を有する。この静圧流体軸受は、引力とは反対方向に反発力を及ぼすように調整されており、それにより2つの機械構成部品の間に第1の軸受隙間を形成することができる。第1の軸受隙間が、互いに可動に配置された2つの機械構成部品の間で一定の高さに設定される場合、引力と反発力とは同じ大きさであることは自明である。一方の機械構成部品の送り方向での加速度、速度および位置は、基本的に、上記のコイルを流れる電流の制御ないし調整によって設定することができる。送り方向に対して横方向の機械構成部品の加速度、速度および位置は、基本的に、静圧流体軸受により、油圧の流れ、すなわち液体流量を流量制御ないし流量調整することによって設定可能である。軸受隙間の高さ、加速度、速度および/または2つの機械構成部品の相対運動方向の制御または調整は、コイルを流れる、特に磁石に同調した電流を適切に適合させることによって代替的または累積的に簡単に行うことができる。
【0014】
最後に、本発明により設けられた、2つの機械構成部品の相対線形運動を実行するための線形駆動軸受および案内軸受の第1の軸受隙間の高さは、0μmよりも大きく、実質的には10μm以下である。言い替えると、第1の軸受隙間の高さをH1により表せば、実質的に以下の関係が成り立つ。
0μm<H1≦10μm
【0015】
ここで提案されている、同期リニアモータ形式によるリニアモータの構成、および少なくとも1つの静圧流体軸受とリニアモータとの作動的接続に基づき、高い効率と同時に良好な熱収支を持つ線形駆動軸受および案内軸受が創出され、これはさらに非常に高い精度を有する。2つの機械構成部品の相対運動は、2つの機械構成部品の一方が運動し、他方の機械構成部品は運動しないように、または2つの機械構成部品が同時に運動するように行うことができる。言い替えると、有利には、一方の機械構成部品が運動し、他方の機械構成部品はその位置に留まるように、または一方の機械構成部品がその位置に留まり、これに対して他方の機械構成部品は運動するように、または一方の機械構成部品も他方の機械構成部品も同時に互いに運動するようになっている。
【0016】
好適な実施形態によれば、本発明による高精度工作機械の2つの機械構成部品は、それぞれ、互いに平行な第1の仮想面を有し、この仮想面にはリニアモータと静圧流体軸受とが第1の軸受隙間を形成しながら延伸している。これにより有利には、2つの機械構成部品は、それらの相対運動の間に正確かつ平行に案内される。
【0017】
基本的に、第1の仮想面に対して傾斜した第2の仮想面を設けることができ、この第2の仮想面には少なくとも1つの線形案内手段が形成されている。該当する傾斜角は、任意の適切な大きさを有することができ、特に15°、30°、または45°である。特に有利には、それぞれの第1の仮想面に対して直交する第2の仮想面が存在し、この第2の仮想面には少なくとも1つの線形案内手段が形成されていてよい。したがって傾斜角は90°であり、これにより2つの機械構成部品の自由度の阻止が有利に達成される。
【0018】
本発明による高精度工作機械の好適な実施形態によれば、前述の線形案内手段は、少なくとも1つの流体軸受手段と、これと対抗的に作用する磁気軸受手段とを有する。これにより有利には、簡単に製造することができ、動作時に調整可能な、本発明による線形駆動軸受および案内軸受の支承が創出されるため、互いに直交するように配向された2つの空間面において2つの構成部品を精確かつ容易に案内することができる。流体軸受手段と磁気軸受手段を介して機械構成部品(複数可)に作用する向かい合う力は、線形案内手段を平衡に維持するために同じ大きさであることは自明である。
【0019】
本発明の線形駆動軸受および案内軸受、ひいては本発明による高精度工作機械の特に簡単な構造は、流体軸受手段および磁気軸受手段が一方の同じ機械構成部品に配置されており、他方の機械構成部品と作動的に接続されている場合に創出される。
【0020】
さらに好適な実施形態によれば、本発明により設けられた線形駆動軸受および案内軸受は、断面で見て、以下に開示された構造を有する。この断面は、本発明による装置を通る仮想切断面に相当し、この仮想切断面は、第1の仮想面に対しても第2の仮想面に対しても直交するように配向されていることに注意されたい。したがって、一方の機械構成部品は、第1の接触面と、そこから離れた第2の接触面と、それらの間にある第1の収容領域とを有する。これに対して、他方の機械構成部品は、第1の収容部分と、そこから離れた第2の収容部分と、それらの間にある第2の収容領域を有する。第1の収容部分には、第1の接触面に対向する少なくとも1つの静圧流体軸受が収容され、第2の収容部分には、第2の接触面に対向する第2の静圧流体軸受が収容され、第1の収容領域には少なくとも1つの磁石が収容され、第2の収容領域には少なくとも1つのコイルが収容されており、磁石とコイルは互いに対向している。これにより、有利には、特に精密かつ比較的簡単に製造可能な駆動軸受および案内軸受が創出される。
【0021】
第1の収容領域は、第1の接触面および/または第2の接触面に対して窪ませて形成することができる。これにより、有利には、静圧流体軸受から流出する流体、特にオイルを収集できるチャネルが創出される。前述の流体は、チャネル表面の適切な形態および/または任意の出口を介して簡単に磁石から除去することができる。
【0022】
本発明により設けられた線形駆動軸受および案内軸受の構造を特に簡単にするため、また軸受の案内精度をさらに改善するため、第1の収容部分および第2の収容部分を有する機械構成部品は、第1の突出部分と、この第1の突出部分に対向する第2の突出部分とを有する。第1の突出部分には流体軸受手段が配置されている。第2の突出部分には、磁気軸受手段が配置されており、2つの突出部分は第2の軸受隙間を形成しながら他方の機械構成部品に隣接している。
【0023】
有利には、磁気軸受手段が、一方の機械構成部品に取り付けられているマグネットバーと、他方の機械構成部品に取り付けられている、好適には強磁性の相手方バーとを有し、これらが互いに反発力を及ぼし合うように調整されている場合は、特に簡単に製造可能な線形駆動軸受および案内軸受が創出される。しかし、代替的または累積的に、少なくとも1つの可変または不変の電磁手段を設けることで、所要の反発力を設定できることは自明である。
【0024】
好適な実施形態によれば、流体手段は、設けられた静圧流体軸受に相当する。言い替えると、流体手段の構造は静圧流体軸受に相当し、これにより有利には、本発明による装置の製造コストを共通部品戦略の意味で低減することができる。本発明により設けられた線形駆動軸受および案内軸受に存在する全ての流体手段および静圧流体軸受も同じ構造を有することができ、それにより前に述べた利点が倍増されることは自明である。
【0025】
本発明により設けられた線形駆動軸受および案内軸受は、さらに、少なくとも1つの温度調整手段と作動的に接続していることを特徴とする。これにより、本発明による高精度工作機械、特に線形駆動軸受および案内軸受の単独部品、複数部品、またはすでに開示されている全部品について、温度に起因する部品の変形を補正、または許容範囲に低減できるように温度調整を行う、詳細には冷却することが可能になる。したがって有利には、一方または両方の機械構成部品に、リニアモータに、特にコイルおよび/または磁石の領域に、静圧流体軸受の領域に、および/または流体軸受手段の領域に、温度調整流体を案内する管路が設けられていてよい。さらに有利には、すでに開示されている少なくとも1つの個所に、少なくとも1つの温度測定手段を配置することもできる。
【0026】
温度調整手段は、基本的に高精度工作機械自体の中に配置することができる。特に好適な実施形態によれば、温度調整手段は、高精度工作機械から離れた場所に位置決めされているため、温度調整に必要な機器、詳細には温度調整流体用コンプレッサ(複数可)およびポンプ(複数可)は、高精度工作機械の精度をさらに向上させるために第1または第2の機械構成部品から防振された状態で配置されている。
【0027】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明の添付の非制限的実施例の中で、縮尺どおりには描かれていない添付の図面に関連して示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による高精度工作機械の象徴的かつ簡略化された側面図である。
【
図2】本発明により設けられた線形駆動軸受および案内軸受の象徴的かつ簡略化された断面図である。
【
図3】
図2に示した実施形態に対する代替の実施形態を示す図である。
【
図4】
図2に示した機械構成部品に対する代替の機械構成部品の簡略化された底面斜視図である。
【0029】
図1は、本発明による高精度工作機械100の象徴的かつ簡略化された側面図であり、この高精度工作機械は、ここに示した実施例によれば、走行スタンド構造で形成されている。この高精度工作機械は、機械スタンド105と、これに対向して横方向ないしリニア軸Qに走行可能な横送り台110と、この横送り台110に対向して縦方向ないしリニア軸Lに走行可能な縦送り台115と、この縦送り台115に対向して高さ方向ないしリニア軸Hに走行可能な上下送り台120とを含む。
【0030】
横方向Qは、ここで選択された規則によれば、それ自体公知のデカルト座標系のx軸に対して平行に延在し、したがって
図1の紙平面から飛び出している。縦方向Lは、ここで選択された規則によれば、デカルト座標系のy軸に対して平行に、したがって
図1の水平方向に延在する。高さ方向Hは、ここで選択された規則によれば、デカルト座標系のz軸に対して平行に、したがって
図1の垂直方向に延在する。したがって、横送り台110、縦送り台115および上下送り台120は、互いに直交する方向に走行可能である。
【0031】
機械スタンド105側の上下送り台120の端部には工具支持手段125が配置されており、この工具支持手段には、ここに図示されていないフライスなどの工具を収容し、z軸に対して平行に延在する回転軸D1を中心に回転可能に支承することができる。機械スタンド105には部材支持手段130が、y軸に対して平行に延在する回転軸D2を中心に旋回可能に支承されている。工具支持手段125に対向する部材支持手段130の端部には部材収容部135が配置されており、この部材収容部には、ここに図示されていない加工部材を、回転軸D3を中心に旋回可能に収容することができる。
【0032】
したがって、この実施例の高精度工作機械100は、5軸高精度工作機械として形成されており、この5軸高精度工作機械はさらに、特にキャビネット状に形成することのできるハウジング140内に配置されている。
【0033】
機械スタンド105に対して横送り台110を線形運動させるために、機械スタンドには線形駆動軸受および案内軸受1が設けられている。横送り台110に対して縦送り台115を線形運動させるために、縦送り台にはさらなる線形駆動軸受および案内軸受1’が設けられている。最後に、この実施例によれば、最後の線形駆動軸受および案内軸受1”が縦送り台115と上下送り台120に設けられている。
【0034】
線形駆動軸受および案内軸受1、1’および1”の構造と作用を、
図2~4を参照してさらに説明する。あらかじめここで、駆動軸受および案内軸受1、1’および1”は、静圧流体軸受として形成されており、これらにはポンプ40および流体管50を介して、ここに図示されていない流体が供給される。
【0035】
図1から理解できるように、ポンプ40と、前述の流体を含むリザーバ45とは、ハウジング140の外部に配置されている。同様にハウジング140の外部には、この実施例によればポンプ40とリザーバ45に隣接して温度調整手段80が配置されており、この温度調整手段によって、ここに図示されていない冷却液を、冷却管80-5を介し温度状況に応じて、ハウジング140内に存在する個々の、または全ての部品ないしコンポーネントに送出することができる。詳細には、ここに示した実施例によれば、機械スタンド105、横送り台110、縦送り台115、上下送り台120、工具支持手段125、部材支持手段130、および線形駆動軸受および案内軸受1、1’および1”は、温度調整手段80と流体接続している。さらにハウジング140自体も温度調整手段80と流体接続することができる。
【0036】
次に
図2~4には、線形駆動軸受および案内軸受1が例示的に詳細に示されている。この線形駆動軸受および案内軸受は、ここに示した実施例によれば、構造および機能が線形駆動軸受および案内軸受1’または1”に相当するという事実に基づき、以下では関係をより簡単に示すために、一般に2つの機械構成部品5または10の運動を参照するものとし、このとき以下の関係が適用される。
【0037】
線形駆動軸受および案内軸受1は、横送り台110(以下、機械構成部品10と呼ぶ)が機械スタンド105(以下、機械構成部品5と呼ぶ)に対して確実かつ精確に運動するために用いられる。これに対応して、線形駆動軸受および案内軸受1’は、機械構成部品10と見なすことのできる縦送り台115が、機械構成部品5と見なすことのできる横送り台110に対して確実かつ精確に運動するために用いられる。最後に、この意味で、線形駆動軸受および案内軸受1”は、機械構成部品10と見なすことのできる上下送り台120が、機械構成部品5と見なすことのできる縦送り台115に対して確実かつ精確に運動するために用いられる。
【0038】
図2から理解されるように、下方の機械構成部品5は、第1の接触面5-1、これから離れている第2の接触面5-3、およびそれらの間にある第1の収容領域5-5を有する。後者は、2つの接触面5-1および5-3に対して窪ませて形成されており、チャネル7を形成し、その機能については後述する。
【0039】
これに対して
図2の上方の機械構成部品10は、機械構成部品5側が平坦に構成されており、第1の収容部分10-1、これから離れている第2の収容部分10-3、およびこれらの間にある第2の収容領域10-5を有する。第1の収容部分10-1は第1の接触面5-1に対向して配置されており、第2の収容部分10-3は第2の接触面5-3に対向して配置されており、第2の収容領域10-5は第1の収容領域5-5に対向して配置されている。
【0040】
線形駆動軸受および案内軸受1は、磁石15を含み、この磁石は、この実施例によれば実質的に平坦な永久磁石として形成されており、支持体20によって第1の収容領域5-5内に置かれている。
図2における上方の機械構成部品10に、磁石15に対向して、ここには図示されてないフェライトコアを有するコイル25が配置されており、このコイルは電気接続部25-1を介して、ここには図示されていない電子回路と接続されている。磁石15とコイル25は、2つの機械構成部品5、10を永久磁石で引きつけている。さらにコイル25は、電子回路によって磁石15と作動的に接続することができ、これと共にリニアモータ27を形成する。
【0041】
2つの機械構成部品5、10の磁力誘発性の衝突を回避するため、第1の収容部分10-1には第1の静圧流体軸受30-1が配置され、第2の収容部分10-3には第2の静圧流体軸受30-3が配置されており、これらはここに図示されていない流体によって第1の接触面5-1ないし第2の接触面5-3に作用する液圧を加え、この液圧が前に述べた磁気的引力に対抗的に作用する。この場合、流体はポンプ40によってリザーバ45から流体管路50を通り、ここに図示されていない油圧式直列抵抗を介して2つの静圧流体軸受30-1、30-3にポンピングされ、これらの静圧流体軸受からチャンバ(図示されていない)に流出する。このチャンバは、側方が密閉されているが、2つの収容領域5-1ないし5-3の方向には開放されている。場合によりチャンバから流出する漏れ液(図示されていない)は、チャネル7に収集され、必要に応じてリーク管路55を介してリザーバ45に戻すことができる。
【0042】
リニアモータ27と静圧流体軸受30-1、30-3との相互作用により、2つの機械構成部品5、10の間に第1の収容部分10-1および第2の収容部分10-3の領域で第1の軸受隙間H1を設定することができ、その高さはこの実施例によれば5μmである。もちろん第1の軸受隙間H1の高さは、本発明にしたがって、5μm未満、例えば3μmまたはそれ以上、例えば6μm、7μm、8μm、9μmまたは10μmであってもよい。
【0043】
従来技術と比較して非常に小さなこの第1の軸受隙間H1は、簡単に設定および保持できないことが容易に理解される。したがって、2つの機械構成部品5、10は、それぞれ互いに平行な第1の仮想面E1ないしE2を有し、これら平面にはリニアモータ27ないし静圧流体軸受30-1、30-3が伸びている。特にこれによって、リニアモータ27の作動に基づき2つの機械構成部品5、10が互いに運動あるいは停止する際に、2つの機械構成部品5、10の衝突が回避される。この場合、運動自体は、
図2を参照すると、この紙面から出たり、再び紙面に入ったりするように行われる。言い替えると、機械構成部分10の送り軸Vは、紙面に対して直交するように配向されている。
【0044】
ここに示した実施例によれば、線形駆動軸受および案内軸受1は、横送り台10として構成された機械構成部品10が機械構成部品分5に対して運動し、後者の部品は機械スタンド105に固定的に支承されているため、静止状態で留まるように形成されている。
【0045】
前に開示した手段により、2つの機械構成部品5、10を、送り軸V(したがって横方向Q)の方向および第1の隙間H1の方向に案内することが可能である。2つの機械構成部品5、10を側方に案内するため、第1の部分60-1またはこれと離れた第2の部分60-3は、それぞれ第1の仮想面E1、E2に直交する第2の仮想面E3で機械構成部品5の方向に機械構成部品10からそれぞれ突き出しており、これらの部分と機械構成部品5との間にそれぞれ第2の軸受隙間H2が存在するようになっている。
【0046】
図2の左に示した第1の部分60-1には、静圧軸受として形成された流体軸受手段65が配置されており、この流体軸受手段は、軸受隙間H2を挟んで向かい合っている機械構成部分5と相互作用する。そのために流体軸受手段65は、流体管路70と、ここに図示されていない油圧式直列抵抗とを介して流体管路50およびポンプ40に接続されているため、第1の部分60-1と機械構成部品5との間には両者を互いに反発させる機械的力が発生する。流体軸受手段65は、静圧流体軸受30-1、30-3のいずれかに相当し得ることに注意されたい。
【0047】
図2の右に示した第2の部分60-3の領域には、磁気軸受手段75が配置されており、この磁気軸受手段は、機械構成部品5に対して同様に反発力を受け、これにより両者の間に第2の軸受隙間H2が形成される。このために機械構成部品5にはマグネットバー75-1が配置され、このバーに対向して第2の部分60ー3には強磁性の相手方バー75-3が配置されている。磁気軸受手段75は、代替的に電磁石装置としても形成できることは自明である。
【0048】
ポンプ40の適切な出力、磁気軸受手段75の磁気的反発力に整合した流体軸受手段65の位置決めおよび幾何形状ないし構造によって、非常に正確に第2の軸受隙間H2を調整することができる。
【0049】
線形駆動軸受および案内軸受1の寸法精度をさらに改善するために、ここに示した実施例では、冷却液(図示されていない)が通流する複数のチャネル80-1が設けられており、これらは冷却管路80-5と流体接続している。チャネル80-1は、機械構成部品10、コイル25、支持体20、機械構成部品5並びに第1の突出部分60-1に配置されており、線形駆動軸受および案内軸受1にわたり均等な温度分布にすることができる。温度測定のために、コイル25には温度測定手段80-3が格納されている。特にチャネル80-1の数、位置決めおよび寸法は、ここに紹介された実施例と異なっていてよいことは自明である。
【0050】
図3には、
図2に対する代替の線形駆動軸受および案内軸受1の実施形態が示されている。
図3の機械構成部品5の右部分は、切欠部5-7を有し、この図でも同様に切欠部の右フランジにはマグネットバー75-1が配置されている。さらに相手方バー75-3を有する第2の部分60-3は、少なくとも部分的に切欠部5-7の中で自由に動くように配置されている。
図2を参照して示した実施例とは異なり、マグネットバー75-1および相手方バー75-3は互いに引き付け合うように形成されている。その他の点で線形駆動軸受および案内軸受1の構造およびその機能は、
図1に示した実施形態のそれに対応する。
【0051】
機械構成部品10の、
図2に対する代替の実施形態が、
図4の底面斜視図に示されている。見て分かるように、機械構成部品10と第1の突出部分60-1は、ここでは一体形成されている。第2の突出部分60-3は、この図には示されておらず、機械構成部品10にある固定部分10-7に取り付けることができる。
【0052】
機械構成部品10の下側およびその4つの角領域には、それぞれ第1の静圧流体軸受30-1ないし第2の静圧流体軸受30-3が設けられており、これらは同じ構造を有する。第1の突出部分60-1には流体軸受手段65が配置されており、この流体軸受手段は、互いに離された2つの静圧流体軸受65-1ないし65-2からなり、これらの軸受は、第1ないし第2の静圧流体軸受30-1、30-2に対応する。図で分かるように、静圧流体軸受30-1、30-3、65-1および65-2は、同じ縦方向に伸びており、この縦方向は、機械部品10の送り軸Vないし運動方向と同じである。
【0053】
図2に示されているものとは異なり、
図4の温度調整手段80のチャネル80-1は、送り軸Vの方向ではなく、送り軸に対して横方向に、仮想面E1に対して実質的に平行に配向されている。
【符号の説明】
【0054】
1、1’、1” 線形駆動軸受および案内軸受
5 機械構成部品
5-1 第1の接触面
5-3 第2の接触面
5-5 第1の収容領域
5-7 切欠部
7 チャネル
10 機械構成部品
10-1 第1の収容部分
10-3 第2の収容部分
10-5 第2の収容領域
10-7 固定部分
15 磁石
20 支持体
25 コイル
25-1 電気接続部
27 リニアモータ
30-1 第1の静圧流体軸受
30-3 第2の静圧流体軸受
40 ポンプ
45 リザーバ
50 流体管路
55 リーク管路
60 線形案内手段
60-1 第1の部分
60-3 第2の部分
65 流体軸受手段
65-1 静圧流体軸受
65-3 静圧流体軸受
70 流体管路
75 磁気軸受手段
75-1 マグネットバー
75-3 相手方バー
80 温度調整手段
80-1 チャネル
80-3 温度測定手段
80-5 冷却管路
100 高精度工作機械
105 機械スタンド
110 横送り台
115 縦送り台
120 上下送り台
125 工具支持手段
130 部材支持手段
135 部材収容部
140 ハウジング
D1、D2、D3 回転軸
E1、E2 第1の仮想面
E3 第2の仮想面
H 垂直方向
H1 第1の軸受隙間
H2 第2の軸受隙間
L 縦方向
Q 横方向
V 送り軸
x、y、z デカルト座標
【国際調査報告】