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特表2022-545865ワイパーブレード及びフロントガラスに配合物を塗布する装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ワイパーブレード及びフロントガラスに配合物を塗布する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/28 20060101AFI20221025BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20221025BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221025BHJP
   C09D 183/00 20060101ALI20221025BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C03C17/28
C09K3/18 104
C09D7/63
C09D183/00
C09D171/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507426
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020044964
(87)【国際公開番号】W WO2021026207
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/883,375
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/984,505
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ジョン イシドロ エスコト
(72)【発明者】
【氏名】ツェーリ パン
(72)【発明者】
【氏名】チアフー ファン
【テーマコード(参考)】
4G059
4H020
4J038
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB09
4G059AC22
4G059FA03
4G059FA05
4G059FB03
4H020BA34
4J038DF011
4J038DF012
4J038DL081
4J038DL082
4J038JC32
4J038JC35
4J038NA07
4J038PB07
4J038PC03
(57)【要約】
第四級アンモニウムシランと、ポリアルキレングリコールと、任意の固形潤滑剤とを含む、対象表面に疎水性被膜を付与するコーティング組成物が提供される。また、上記組成物を塗布されたアプリケーターと、組成物を車両のフロントガラスワイパーのブレードに塗布して、ブレードが接触する車両フロントガラスに疎水性被膜を付与するための使用説明とを備えるキットが提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ワイパーブレードのゴム要素からフロントガラスに撥水性を付与するコーティング組成物であって、該コーティングは、
第四級アンモニウムシランと、
分子量が500~5000であるポリアルキレングリコールと、
を含む、組成物。
【請求項2】
固形潤滑剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記固形潤滑剤が0総重量パーセント~40総重量パーセントで存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第四級アンモニウムシランが5総重量パーセント~95総重量パーセントで存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアルキレングリコールが1600±300の分子量を有し、5総重量パーセント~95総重量パーセントで存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
フロントガラスワイパーのブレードと接触する表面に疎水性被膜を作り出すキットであって、
基体上にアプリケーター表面、及び該アプリケーター表面上に請求項1に記載の組成物から形成された不揮発性層を有するアプリケーターであって、前記不揮発性層が、前記アプリケーター表面に付着しているか、又は容器から前記アプリケーター表面に塗布される、アプリケーターと、
前記基体の前記アプリケーター表面にあるスロット又はチャネルであって、前記ブレードに前記疎水性被膜を付与するために前記フロントガラスワイパーの前記ブレードと噛み合うように構成される、スロット又はチャネルと、
前記アプリケーター表面を前記ブレードと接触させて60度以上の水接触角を有する疎水性被膜を前記表面に作り出すための使用説明と、
を備える、キット。
【請求項7】
前記アプリケーターが、前記フロントガラスワイパーの前記ブレードをクリーニングするクリーニングスロット又はチャネルを更に備える、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記アプリケーターが前記表面をクリーニングするスクラブパッドを更に備える、請求項6に記載のキット。
【請求項9】
前記不揮発性層が不乾性であり、ワイピングによって前記アプリケーター表面から接触面へと移行可能である、請求項6に記載のキット。
【請求項10】
前記フロントガラスワイパーの前記コーティングされたブレード要素が、ウェット条件、ドライ条件、又はウェット条件とドライ条件との組合せのもとで一定数のワイプサイクル後に前記表面を疎水性にすることができる、請求項6に記載のキット。
【請求項11】
前記表面がフロントガラスである、請求項6~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
前記基体が織布材料又は不織布材料から作製される、請求項6~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
前記基体がスパンレース又はメルトブローイングによって形成される、請求項6~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項14】
前記基体がポリエステル又はポリプロピレンから作られる、請求項6~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
前記ブレードが、少なくともクロロプレンゴム、天然ゴム、若しくはシリコーン又はそれらの任意の組合せの材料で形成される、請求項6~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
フロントガラス上で撥水剤を活性化する方法であって、
フロントガラスワイパーのブレードを請求項1に記載の組成物を有するアプリケーターと接触させることと、
数分又は150ワイプサイクル以内で、ウェット条件、ドライ条件、又はウェット条件とドライ条件との組合せで水接触角60度超の撥水性までワイピングして、前記フロントガラスを活性化することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記接触させることが、前記アプリケーターのチャネル又はスロットを前記ブレードと位置合わせし、前記撥水性組成物を前記ブレードに移行するために定常圧力を加えながら前記ブレードの長さにわたって前記アプリケーターを動かすことを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記接触させることが、前記アプリケーターのチャネル又はスロットを前記ブレードと位置合わせし、前記撥水性組成物を前記ブレードに移行するために定常圧力を加えながら前記ブレードの長さにわたって前記アプリケーターを動かして前記ブレードを同時にワイプクリーニングすることを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アプリケーターがスクラブパッドを更に備え、前記方法が、前記スクラブパッドを用いて前記フロントガラスをクリーニングすることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2020年8月4日に出願された米国特許出願第16/984,505号の優先権の利益を主張する。さらに、上記米国特許出願は、2019年8月6日に出願された米国仮特許出願第62/883,375号の優先権の利益を主張する。上記米国特許出願の内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、概して、ワイパーの使用によって接触フロントガラスに疎水性被膜を付与するワイパーブレード用の疎水性コーティング組成物、特にワイパーブレード表面へ疎水性コーティング組成物を移行するアプリケーターに関する。
【背景技術】
【0003】
雨、みぞれ、及び雪は、常に車両の運転者にとって視界の問題を提示してきた。フロントガラスを横切るワイパーブレードの機械的な動きは、フロントガラスから水及び雪を移動させるための機械的スキージとして部分的に有効である。従来のワイパーブレードの操作は、カーボンベースかシリコーンゴム製かにかかわらず、フロントガラスからの水及び雪の除去において部分的に有効であるにすぎない。フロントガラスを横切って動くワイパーブレードは、視界を部分的に損なう薄い水膜を残し、更なる液体水又は雪のフロントガラスへの付着を促進する。さらに、ワイパーブレードは環境に曝されて劣化するため、ワイパーブレードとフロントガラスとの接触の均一性が低下する。さらに、一般的にフロントガラスに付着する細片(debris)によって、ワイパーブレードとフロントガラスの表面との間に隙間ができる領域が生じ、視界がぼやける筋及び水滴につながる。
【0004】
機械的スキージ動作によるフロントガラスのクリーニングの制限に対処するため、雨、みぞれ、又は雪の高湿度条件下で運転者の視界を改善するように疎水性ガラス処理溶液を自動車のフロントガラスに塗布した。かかるガラス処理の代表は、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に詳述されるものである。かかるガラス処理は、水がビード(bead)になることで、フロントガラスに水膜を形成しないように、フロントガラスを疎水性にするのに有効であるが、これらの製品は、塗布するのに大きな労力を要するために受け入れ難く、疎水性のフロントガラスの表面を作り出すために幾分有毒な化学物質を扱う必要がある。さらに、フロントガラスが雨又はその他の降水に曝されている間にかかる疎水性ガラス処理を施すのは実用的ではない。
【0005】
従来の疎水性ガラス処理の限界を認識し、ワイパーブレードの動作中に、コーティング層の成分が、フロントガラスに対するワイパーブレードの摩擦を通して接触するフロントガラス上に移行されるように、シリコーンワックス(ワックスがシリコーン油に溶解しているような固形潤滑剤中のシリコーン油)を含むワイパーブレード用のコーティング組成物が開発されている。かかる組成物は、特許文献4に詳述されている。かかるコーティングされたワイパーブレードは、ワイパーブレードの取り付け時にフロントガラスに疎水性コーティングを与えるのに有効であるが、フロントガラスにコーティング成分を移行する能力がワイパー製造から実際にブレードを車両に取り付けるまでの間に著しく低下することで、フロントガラスにコーティングを移行する能力は急速に低下する。さらに、フロントガラスに付与されるコーティングは不規則になりがちであり、斑状の疎水性をもたらす。
【0006】
この出願の譲受人に対する特許文献5(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)は、対象表面にシリコーン油若しくはフッ素ポリマー油のオイル、又はそれらの組合せ、樹脂、及び乾燥潤滑剤を含む疎水性被膜を付与するためのコーティング組成物を教示する。オイル及び樹脂の溶液を形成するために溶媒が存在する。コーティングをアプリケーターに付与し、このアプリケーターは、次に該コーティングを疎水性被膜として移行することができる。コーティング組成物は安定であり、高温で数週間保管した後であっても疎水性被膜を付与することができる。コーティング組成物は、特にシリコーンワックスを含む合成ワックスを排除することによって疎水性被膜を付与する。また、ワイパーブレードが接触する車両のフロントガラスに疎水性被膜を付与するためのワイパーブレードを車両に固定するための使用説明と共に、上記のコーティング組成物を塗布したワイパーブレードを含むキットも提供される。
【0007】
さらに、幾つかの従来技術は、ワイパーブレードから層をトリミング又は除去すること、又は幾つかの場合にはワイパーブレードの表面を研磨してスキージ表面を新しくし、これにより、おそらくワイパーブレードの動作中の可視性を改善することにより操作されるワイパーブレードを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,579,540号
【特許文献2】米国特許第5,688,864号
【特許文献3】米国特許第6,432,181号
【特許文献4】米国特許第8,258,219号
【特許文献5】米国特許第9,540,552号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
疎水性コーティング組成物の進歩に伴い、これらの組成物を車両フロントガラスに塗布する装置及び方法の改善が引き続き必要である。加えて、ワイパーブレードの動作中、及びワイパーブレードコーティング組成物の長期保管期間後であっても、また高温であっても、コーティングされたワイパーブレードが、フロントガラスの接触領域に疎水性被膜を迅速に付与できるようにする、ワイパーブレードに塗布した後の貯蔵寿命が長いワイパーブレードコーティングが必要である。さらに、本発明のコーティング組成物をワイパーブレードに塗布し、その後、コーティング組成物成分を接触したフロントガラスに移行する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
自動車ワイパーブレードのゴム要素からフロントガラスに撥水性を付与するコーティング組成物が提供される。コーティングは、第四級アンモニウムシランと、分子量が500~5000であるポリアルキレングリコールと、任意の固形潤滑剤とを含む。
【0011】
表面に疎水性被膜を作り出すキットが提供される。キットは、アプリケーター表面及び上述の組成物から形成された不揮発性層を有するアプリケーターであって、不揮発性層が、アプリケーター表面に付着しているか、又は容器からアプリケーター表面に塗布される、アプリケーターと、60度以上の水接触角を有する疎水性被膜を表面に作り出すために、アプリケーターをフロントガラスワイパーのブレードと接触させてブレードに組成物を付与するための使用説明とを備える。
【0012】
フロントガラスを活性化する方法は、フロントガラスを上述の組成物でコーティングされたワイパーブレードと接触させることと、ウェット条件、ドライ条件、又はウェット条件とドライ条件との組合せでワイピングすることとを含み、活性化は、数分又は150ワイプサイクル以内で、水接触角60度超の撥水性まで行い、フロントガラスを活性化する。
【0013】
本発明を、以下の図面に関して更に詳述する。これらの図面は、本発明の範囲を限定するためのものではなく、その或る特定の属性を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の実施形態に係る撥水性コーティングを有するアプリケーターの斜視図である。
図1B】本発明の実施形態に係る、撥水性コーティングをフロントガラスワイパーのワイパーブレードに付与するための図1Aのアプリケーターの使用を示す図である。
図2A】本発明の実施形態に係るホルダー及び基体を有する2部品アプリケーターを示す図である。
図2B】本発明の実施形態に係るホルダー及び基体を有する2部品アプリケーターを示す図である。
図2C】本発明の実施形態に係るホルダー及び基体を有する2部品アプリケーターを示す図である。
図2D】本発明の実施形態に係るホルダー及び基体を有する2部品アプリケーターを示す図である。
図3】ワイパーブレードによって移行される本発明の撥水性コーティングで処理された領域を有するフロントガラスの一部と、フロントガラスの無処理部分とのコントラストを示す図である。
図4A】本発明の実施形態に係る、片側でワイパーブレードをクリーニングすると共に、アプリケーターの他方の側から撥水性コーティングをブレードに塗布するアプリケーターカートリッジの斜視図である。
図4B】本発明の実施形態に係る、撥水性コーティングをフロントガラスワイパーのワイパーブレードに付与するための図4Aのアプリケーターの使用を示す図である。
図5A】本発明の実施形態に係るフロントガラススクラブパッドと一体化された撥水性アプリケーターを示す図である。
図5B】本発明の実施形態に係るフロントガラススクラブパッドと一体化された撥水性アプリケーターを示す図である。
図6A】本発明の実施形態に係る引き裂きフロントガラスクリーニングフォームを有する撥水性アプリケーターを示す図である。
図6B】ワイパーブレードへの塗布のために撥水性コーティングが予め添加された(preloaded)アプリケーターを露出させるように引き裂かれた図6Aのクリーニングフォームを示す図である。
図7A】本発明の実施形態に係る、フロントガラスをクリーニングし、フロントガラスワイパーのブレードをクリーニングし、撥水性コーティングをワイパーブレードに塗布するスリーインワン(three-in-one)装置を示す図である。
図7B】本発明の実施形態に係る、フロントガラスをクリーニングし、フロントガラスワイパーのブレードをクリーニングすると共に、撥水性コーティングをワイパーブレードに塗布するスリーインワン装置を示す図である。
図8A】本発明の実施形態に係る、ワイパーブレードをクリーニングすると共に、撥水性コーティングをワイパーブレードに塗布するアプリケーターカートリッジを示す図である。
図8B】本発明の実施形態に係る、ワイパーブレードをクリーニングすると共に、撥水性コーティングをワイパーブレードに塗布するアプリケーターカートリッジを示す図である。
図8C】本発明の実施形態に係る、ワイパーブレードをクリーニングすると共に、撥水性コーティングをワイパーブレードに塗布するアプリケーターカートリッジを示す図である。
図8D】本発明の実施形態に係る、ワイパーブレードをクリーニングすると共に、撥水性コーティングをワイパーブレードに塗布するアプリケーターカートリッジを示す図である。
図9A】本発明の実施形態に係る撥水性コーティングを表面に塗布するアプリケーターを示す図である。
図9B】本発明の実施形態に係る撥水性コーティングを表面に塗布するアプリケーターを示す図である。
図9C】本発明の実施形態に係る撥水性コーティングを表面に塗布するアプリケーターを示す図である。
図10A】本発明の実施形態に係る撥水剤をワイパーブレードに塗布するためにバイアル、パウチ、又はスクイーズボトルと共に使用されるアプリケーターチップを示す図である。
図10B】本発明の実施形態に係る撥水剤をワイパーブレードに塗布するためにバイアル、パウチ、又はスクイーズボトルと共に使用されるアプリケーターチップを示す図である。
図10C】本発明の実施形態に係る撥水剤をワイパーブレードに塗布するためにバイアル、パウチ、又はスクイーズボトルと共に使用されるアプリケーターチップを示す図である。
図11A】市販のアプリケーターアセンブリの一連の写真であって、従来技術である。
図11B】市販のアプリケーターアセンブリの一連の写真であって、従来技術である。
図11C】市販のアプリケーターアセンブリの一連の写真であって、従来技術である。
図11D】市販のアプリケーターアセンブリの一連の写真であって、従来技術である。
図11E】市販のアプリケーターアセンブリの一連の写真である。
図12A】溶液を対象表面に塗布する更なる市販のアプリケーターを示す図であって、従来技術である。
図12B】溶液を対象表面に塗布する更なる市販のアプリケーターを示す図であって、従来技術である。
図12C】溶液を対象表面に塗布する更なる市販のアプリケーターを示す図であって、従来技術である。
図12D】溶液を対象表面に塗布する更なる市販のアプリケーターを示す図であって、従来技術である。
図13】本発明に係る活性化試行に応じた自動車フロントガラスの接触角のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、接触ガラス表面に疎水性被膜を付与するために車両フロントガラスワイパーのブレードに撥水性(WR)配合物を塗布するアプリケーター装置及びアプリケーターの使用方法としての有用性を有する。本明細書において撥水性コーティングについて説明するが、アプリケーター装置の実施形態は、例示的には紫外線(UV)、反射防止、ストリークなし、低摩擦無雑音、残留物防止、及び虫分解(bug disintegration)を含む、他のタイプのコーティングを塗布してもよい。本発明は、スクイージーをクリーニングすると共にWR配合物をブレード表面に付与する際の性能不良なワイパーブレードの可視性を改善する。本発明の撥水性コーティング組成物の実施形態は、ワイパーブレード産業において一般的に使用されるシリコーンゴム及び種々の非シリコーンゴム材料に優れた性能を提供する。これらのゴム材料としては、限定しないが、天然ゴム、合成ゴム、例えば、CRゴム(クロロプレンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンターポリマー)ゴム等、天然ゴムと合成ゴムとの混合物、シリコーンゴム、及びシリコーンゴムと非シリコーンゴムとの混合物が挙げられる。本発明のアプリケーター装置の実施形態は、直接の使用のために撥水性をワイパーブレードに、その後フロントガラスに移行することを支援する。
【0016】
本発明のコーティング組成物を概してフロントガラスに関して説明するが、本発明の使用に適した他の対象表面としては、例示的には、手動スキージ、車両後部窓、航空機外面、及び撥水性が望まれる他の外面が挙げられることが理解されることが更に理解される。本発明は、貯蔵後でも接触表面に疎水性被膜を付与する能力と相まって、長期貯蔵安定性の特性を有する。本発明は概して、ワイパーブレードを介して表面に塗布されるものとして本発明のコーティング組成物について詳述するが、本発明のコーティング組成物は、例示的には緩衝パッド又は布を含む他のアプリケーターによって、疎水性被膜が望まれる表面に容易に塗布されることが理解されるべきである。
【0017】
本発明は、表面に疎水性被膜を作り出すためのキットも提供する。キットは、ASTM C813により測定される接触角が60度以上の水滴接触角で表面に疎水性被膜を作り出すようにコーティングされたアプリケーターを対象表面と接触させる使用説明と共に、アプリケーターに付着したコーティング組成物の不揮発性層を有するアプリケーターを備えるか、又はアプリケーターへのユーザー塗布のため別個のボトルに入ったコーティング組成物を備える。
【0018】
次に図を参照する。図1Aは、ハンドル12と、基体14のチャネル又はスロット16に予め塗布された撥水性コーティングとを有するアプリケーター10の斜視図である。基体14は、例示的にはスパンレース及びメルトブローイングを含む織布材料又は不織布材料から作製することができる。本発明の特定の実施形態において、基体はポリエステル又はポリプロピレンから作られる。基体の実施形態は、シリコーン、ポリウレタン、ナイロン、ネオプレン、セルロース、PET、及び木材パルプ材料から形成してもよい。不織布は、織物でも編み物でもない、化学処理、機械処理、熱処理又は溶媒処理によって結合したステープルファイバー(短繊維)及び長繊維から作製される繊維状の材料である。スパンレースプロセスは、噴流を利用して繊維を絡ませることで繊維の一体感をもたらす不織布製造システムである。メルトブローイングは、高速で吹くガスに囲まれた小型ノズルを通してポリマー溶融体を押し出す製作方法である。ランダムに堆積した繊維により不織布板製品が形成される。
【0019】
図1Bは、撥水性コーティングをフロントガラスワイパーのワイパーブレード18に付与する図1Aのアプリケーター10の使用を示す。ユーザーは、アプリケーター10のチャネル又はスロット16をワイパーブレード18と位置合わせし、撥水性コーティングをワイパーブレード18に移行するために定常圧力を加えながらブレード18の長さにわたってアプリケーター10を動かす。
【0020】
図2A図2Dは、ホルダー22と、基体14のチャネル又はスロット16に塗布することができる撥水性コーティングを有する取り外し可能な基体14とを有する2部品アプリケーター20の本発明の実施形態を示す。特定の実施形態において、撥水性コーティングはスロット16に予め塗布してもよい。上で述べたように、基体14は、例示的にはスパンレース及びメルトブローイングを含む織布材料又は不織布材料から作製することができる。図2Cに示すように、ホルダー22は基体14から分離可能であり、ホルダー22は異なるコーティング済み基体と共に再使用することができる。ホルダー22は、プラスチック、ポリマー材料、金属、又は木材から作製することができ、ホルダー22は可撓性又は剛性を有することができる。図2Dは、撥水性コーティングをフロントガラスワイパーのワイパーブレード18に付与するアプリケーター20の使用を示す。ユーザーは、アプリケーター20のチャネル又はスロット16をワイパーブレード18と位置合わせし、撥水性コーティングをワイパーブレード18に移行するために定常圧力を加えながらブレード18の長さにわたってアプリケーター20を動かす。
【0021】
図3は、ワイパーブレードによって移行される本発明の撥水性コーティングで処理されたフロントガラス24の一部Tと、撥水性のないフロントガラスの無処理部分UTとのコントラストを示す。容易に分かるように、処理されたフロントガラスの部分Tにより、フロントガラス20の表面に水玉を有することで可視性が改善した。
【0022】
図4は、片側32でワイパーブレードをクリーニングすると共に、アプリケーター30の他方の側にあるチャネル又はスロット34を使用して撥水性コーティングをブレードに塗布するアプリケーターカートリッジ30の斜視図である。本発明の特定の実施形態において、撥水性コーティングはアプリケーターのチャネル又はスロット34に予め塗布される。図4Bは、撥水性コーティングをフロントガラスワイパーのワイパーブレードに付与する図4Aのアプリケーターの使用を示す。ユーザーは、アプリケーター30のクリーニングチャネル又はスロット32をワイパーブレード18と位置合わせし、ブレード18をクリーニングするために定常圧力を加えながらブレード18の長さにわたってアプリケーター30を動かす。次に、ユーザーは、アプリケーター30のチャネル又はスロット32をワイパーブレード18と位置合わせし、撥水性コーティングをブレード18に移行するために定常圧力を加えながらブレード18の長さにわたってアプリケーター30を動かす(図4Bに示すように)ことにより、撥水性コーティングをワイパーブレード18に移行する。
【0023】
図5A及び図5Bは、フロントガラススクラブパッド44と一体化された撥水性アプリケーター40を示す。スクラブパッド44は、アプリケーター基体に関して説明したように不織布材料又は不織布材料から作製することができる。使用時、ユーザーは、スクラブパッド44を用いてフロントガラスをクリーニングし、その後、アプリケーター30のチャネル又はスロット42をワイパーブレード18と位置合わせし、撥水性コーティングをブレード18に移行するために定常圧力を加えながらブレード18の長さにわたってアプリケーター40を動かすことにより撥水性コーティングをワイパーブレード18に移行する。
【0024】
図6Aは、ハンドル54と、撥水性コーティングが予め添加されたアプリケーター基体52の上方に位置決めされる引き裂きフロントガラスクリーニングフォーム56と引き裂かれた図6Aのクリーニングフォームとを有する撥水性アプリケーター50を示す。図6Bは、アプリケーター基体52を露出させるように引き裂かれた図6Aのクリーニングフォームを示す。使用時、ユーザーは、クリーニングフォーム56を用いてフロントガラスをクリーニングし、クリーニングフォーム56を引き裂いてアプリケーター基体52を露出させ、その後、アプリケーター50のアプリケーター基体52のチャネル又はスロットをワイパーブレード18と位置合わせし、撥水性コーティングをブレード18に移行するために定常圧力を加えながらブレード18の長さにわたってアプリケーター50を動かすことにより撥水性コーティングをワイパーブレード18に移行する。
【0025】
図7A及び図7Bは、スクラブパッド64を用いてフロントガラスをクリーニングし、また、アプリケーター62を使用して、撥水性コーティングをワイパーブレードに塗布しながら、フロントガラスワイパーのブレードをクリーニングするスリーインワン装置60を示す。
【0026】
図8A図8Dは、ワイパーブレードをクリーニングすると共に、撥水性コーティングをワイパーブレードに塗布するアプリケーターカートリッジ70の本発明の実施形態を示す。図8A及び図8Bのアプリケーターカートリッジ70の分解図に最もよく示すように、アプリケーターカートリッジ70の外殻76内のブラダー又はパウチ72は、撥水性コーティングを包有する。ブラダー又はパウチ72の破裂により、撥水性コーティングがアプリケーター基体74へと解放される。ブラダー又はパウチ72の破裂は、アプリケーターカートリッジ70のハウジングを形成する外殻76に圧力を加えることでブラダーを押圧又は穿孔することにより達成することができる。図8Cは、撥水性コーティングをアプリケーター基体74から塗布するためにワイパーブレードをスロット42へとガイドする縁部ガイド部78を有する、組付けられたアプリケーターカートリッジ70を示す。図8Dは、アプリケーター70のチャネル又はスロット42をワイパーブレード18と位置合わせし、撥水性コーティングをブレード18の両側に移行するために定常圧力を加えながらブレード18の長さにわたってアプリケーター70を動かすことによる、ワイパーブレード18への撥水性コーティングの移行を示す。
【0027】
図9A図9Cは、撥水性コーティングを表面に塗布するアプリケーター80を示す。図9Bのアプリケーター80の分解図における図9Aに最もよく示すように、ブラダー84はホルダー82の空洞に嵌合し、フォーム基体86は、ホルダー82の底部周縁リップ又はフランジ88に沿って接合される。図9Cに示すように、ホルダー82の側壁に圧力を加えることは、ホルダー82内部のブラダー84を破裂、穿孔、又は穿刺するように作用する。
【0028】
図10A図10Cは、撥水剤をワイパーブレードに塗布するためにバイアル、パウチ92、又はスクイーズボトルと共に使用されるアプリケーターチップ90の実施形態を示す図である。図10Bは、アプリケーターチップ90をワイパーブレード18と位置合わせし、撥水性コーティングをブレード18に移行するために定常圧力を加えながらブレード18の長さにわたってアプリケーターチップ90を動かすことによる、ワイパーブレード18への撥水性コーティングの移行を示す。図10Cは、アプリケーターチップ90に取り付けられたスクイーズ可能パウチ92を示す。
【0029】
図11A図11Eは、市販のアプリケーターアセンブリ100の一連の写真である。図11A及び図11Bに最もよく示すように、リザーバー102は穿孔キャップ104を有し、穿孔キャップ104は、下に押されるとリザーバー102を開放し、リザーバー102内の内容物を流出させる。図11Cは、ハウジング106内に着座したリザーバー102と、リザーバー102の内容物を対象表面に拡散するフォーム基体108とを示すアプリケーターアセンブリ100の分解図である。図11Dは、組付けられたアプリケーターアセンブリ100であって、ハウジング106を下に押した結果、穿孔キャップ104がリザーバー102を穿刺し、リザーバー102の内容物が解放された状態を示す。図11Eは、撥水性コーティングをブレード18に塗布するためのアプリケーターアセンブリ100の使用を示す。
【0030】
図12A図12Dは、溶液を対象表面に塗布する更なる市販のアプリケーターを示す。図12Aは、スナップ可能なウェットスワブを示し、図12Bは、スクイーズボトルによって濡れるローラーアプリケーターである。図12Cは、ブラシ付きアプリケーターと共に浸漬(dipped)/ねじ式上部を示す。図12Dは、アプリケータースポンジチップへと流入し中を流れる液体が充填されたプラスチック管を示す。
【0031】
本発明の或る特定の実施形態に係るワイパーブレードアプリケーターを用いてフロントガラスを活性化する方法は、数分又は150ワイプサイクル以内で、ウェット条件、ドライ条件、又はウェット条件とドライ条件との組合せで水接触角60度超の撥水性までフロントガラスをワイピングすることによって実現される。特定の実施形態において、撥水性コーティングは、ワイパーブレードからフロントガラスに移行して数分後に活性化する。更に他の実施形態においては、ワイピングされたフロントガラス表面の撥水性を残しながら、コーティングされていないこと以外は上記ワイパーブレードと同じワイパーブレードのワイプ質の90%以内又は90%超のワイプ質を維持しながら、この度数の撥水性が達成される。ワイプ質は、典型的には、例えばAkron Rubber Development Laboratory(ARDL), Inc.社によって定義されているように、1~10のスケールで等級付けされる。したがって、本発明が、スキージをクリーニングすると共にWR配合物をブレード表面に付与する際の性能不良なワイパーブレードの可視性を改善することが示される。
【0032】
表1は、ゴム材料への吸収に耐える本発明のWRコーティング組成物の実施形態の主な成分を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
本明細書において有効な第四級アンモニウムシリコーン化合物は、下記式:
[(RO)3-aSi-R-N(R)(R)(R)]X (I)、又は、
(HO)-Si(R)-O-(R)Si-(OH) (II)
(Rはそれぞれ独立してC~Cアルキル、R、又はHであり、aは0、1、又は2を含む整数値であり、R及びRはそれぞれ独立してC~Cのアルキル基又はアルケニル基であり、RはC~C22アルキル基であり、Xはアニオンを表し、第四級アンモニウムカチオンにより塩が形成されることを条件として、F、Cl、Br、I、2価及び3価のアニオンを含み、Rはそれぞれ[N(R)(R)(R)]Xである)を有する。式(I)に存在する任意のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でもよく分岐鎖でもよいことが理解される。さらに、少なくともC3を有する任意のアルキル基は、溶解性及び被膜形成特性を変更するのに役立つペンダント基を更に含むことができることが理解される。本明細書において有効なペンダント基としては、例示的には、-OH、-SO -2、又は-SO が挙げられる。
【0035】
本明細書において有効な、典型的な第四級アンモニウムシリコーンとして、例示的には以下が挙げられる:(CHO)Si(CH(CHCi1837Cl、(CHCHO)Si(CH(CH1837Cl、(CHO)Si(CH(CH1837Br、(CHO)Si(CH(C1021CHCl(CHO)Si(CH(CH1429Cl、(CHO)Si(CH(CH1429Br、(CHO)Si(CH(CH1623Cl、及びそれらの組合せ。
【0036】
ポリアルキレングリコールは、分岐度に関係なく500~5000の分子量を有する。幾つかの本発明の実施形態において、ポリアルキレングリコールは、1600±300の分子量を有する。
【0037】
本明細書において使用される場合、分子量は質量平均モル質量Mを指す。
【0038】
本発明のコーティング組成物は、任意の粒子状潤滑剤も含む。本発明の或る特定の実施形態における粒子状潤滑剤は、100ミクロン未満の粒径を有する微粒子をサイズガイドナンバー(SGN)によって決定される90を超える粒子数パーセントで有する。本発明の更に他の実施形態においては、100粒子数パーセントは100ミクロンよりも小さい。本発明の更に他の実施形態においては、微粒子は、50ミクロンよりも小さい平均粒径を有する。本発明の或る特定の実施形態においては、溶媒和形態のコーティング組成物は1総重量パーセント~10総重量パーセントの粒子状潤滑剤である。本発明において有効な粒子状潤滑剤としては、例示的にはグラファイト、乱層構造カーボン(turbostratic carbon)、窒化ホウ素、ホウ酸、及びそれらの組合せが挙げられる。本発明の幾つかの実施形態においては、粒子状潤滑剤はグラファイトのみである。
【0039】
本発明を、以下の非限定な実施例に関して更に詳述する。これらの実施例は、発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の特定の実施形態の特性及び比較例に対して優れているその性能を強調するものである。
【実施例
【0040】
実施例1
図2Aに示す物品を使用すると共に図1B及び図2Dの方法を実演して、コーティング組成物をクロロプレンゴムと天然ゴム(CR-NR)混合スキージに塗布し、WR活性化試験の前にコーティングしたスキージを濡れた手触りにした(少なくともこの実施例に関して)。試験結果を5回の複製試行について図13に示す。フロントガラスの平均水CAは、測定を確かめるためにASTM C813を使用して、活性前の30度未満から、150ワイプサイクル後には60度超まで上昇した。これらの試行は、荒天条件をシミュレートするためにウェット条件において行われる。
【0041】
本明細書において言及される特許及び出版物は、本発明が属する技術分野の当業者の技術水準を示す。これらの特許及び出版物は、個々の特許又は出版物がそれぞれ引用することによって具体的かつ個別に本明細書の一部をなす場合と同じ程度に引用することによって本明細書の一部をなす。
【0042】
上記の記載は本発明の特定の実施形態を説明するものであり、実施に際する限定を意味するものではない。全ての均等物を含む添付の特許請求の範囲は発明の範囲を規定するものと意図される。
【0043】
本明細書において引用される数値範囲は、かかる範囲の終了値だけでなく、範囲内に包含され、最後の有効数字の単一単位で変化する個々の値も記述することを意図する。例えば、本発明による任意の単位で0.1~1.0の範囲は、それぞれ範囲の下限値及び上限値として独立して0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、及び0.9も包含する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5A
【図
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
【国際調査報告】