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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電磁流量計及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/60 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
G01F1/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510927
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020047432
(87)【国際公開番号】W WO2021045915
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/896,124
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/587,886
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】アメリ,マスード
(72)【発明者】
【氏名】フォス,スコット ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ドライヤー,ジャレッド ジェームズ
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035BD00
2F035CB03
2F035CB09
2F035CB10
(57)【要約】
【解決手段】電磁流量計102は、流管アセンブリ120と、起電力(EMF)センサ123と、電力増幅器142と、電流サンプリング回路143と、コントローラ140とを含む。流管アセンブリ120は、流体流れ104を受け入れるとともに、コイル電流を受けて、流量に比例したEMFを流体流れ104に誘導するコイル126A,126Bを含む。EMFセンサ123は、誘導EMFを示す出力を発生する。電力増幅器142は、第1周波数でフィルタを通さない電流パルスを発生する。電力増幅器142は、フィルタを通さない電流パルスを減衰して、コイル電流を形成する第2周波数でコイル電流パルスを形成するローパスフィルタ148を含む。電流サンプリング回路143は、サンプリング周波数でコイル電流パルスをサンプリングする。コントローラ140は、サンプリング周波数と第1周波数との関係を変更して、サンプルに基づいてコイル電流を調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流れの流量を測定する電磁流量計であって、
前記流体流れを受け入れるように構成されたパイプ部と、コイル電流を受けるとともに、流量に比例した起電力(EMF)を前記流体流れに誘導する磁場を前記流体流れに生成するように構成されたコイルとを含む流管アセンブリと、
前記EMFを感知して、前記誘導されたEMFを示す出力を発生するように配置されたEMFセンサと、
第1周波数でフィルタを通さない電流パルスを発生するように構成されるとともに、前記フィルタを通さない電流パルスを減衰して前記コイル電流を形成する第2周波数でコイル電流パルスを形成するローパスフィルタを含む電力増幅器と、
サンプリング周波数で前記コイル電流パルスの一連のサンプルを捕捉するように構成された電流サンプリング回路と、
前記サンプリング周波数と前記第1周波数との関係を変更して、前記サンプルに基づいて前記コイル電流を調整するように構成されたコントローラと、
を備える電磁流量計。
【請求項2】
前記フィルタを通さない電流パルスは、それぞれが前記第1周波数に対応するパルス期間を有し、
前記電流サンプリング回路は、各パルス期間の始まりからサンプリング遅延を設けて前記コイル電流パルスをサンプリングし、
前記コントローラは、前記サンプリング周波数と前記第1パルス周波数との関係を変更するために前記サンプリング遅延を変える、請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項3】
前記コントローラは、前記サンプリング遅延を無作為化する、請求項2に記載の電磁流量計。
【請求項4】
前記コントローラは、一連のサンプルにわたり前記サンプリング遅延をシフトする、請求項2に記載の電磁流量計。
【請求項5】
前記電力増幅器が、
電源と、
前記電源に結合されているHブリッジと、
前記Hブリッジからフィルタを通さない電流パルスを受けるように構成された前記ローパスフィルタと、を備えており、
前記コントローラは、フィルタを通さない電流パルスを発生させて、前記コイルを流れる前記コイル電流パルスの方向を交互に変えるために、可変するデューティサイクルで前記Hブリッジの対の相補型スイッチを作動するように構成されている、請求項2に記載の電磁流量計。
【請求項6】
前記第1周波数は、10~100kHzであり、
前記第2周波数は、5~200Hzである、請求項5に記載の電磁流量計。
【請求項7】
前記EMFセンサは、前記流体流れの対向側面に位置付けられる第1および第2の電極を備えており、前記第1および第2の電極のそれぞれが前記流体流れの電圧を感知するように構成されており、
前記電磁流量計は、
前記第1および第2の電極が感知する電圧を受信して、前記EMFおよび前記流体流れの流量に比例する前記第1と第2の電極間の電圧差を示すデジタル電圧信号を発生させるように構成された信号プロセッサと、
前記デジタル電圧信号を処理して、前記流体流れの流量を確定するように構成されたデジタルプロセッサと、を含む、請求項5に記載の電磁流量計。
【請求項8】
前記電磁流量計に電力供給する二線式プロセス制御ループを介して前記流量を外部コンピューティングデバイスに通信するように構成された通信インターフェースを含む、請求項7に記載の電磁流量計。
【請求項9】
流体流れの流量を測定する電磁流量計であって、
前記流体流れを受け入れるように構成されたパイプ部と、コイル電流を受けるとともに、前記流量に比例した起電力(EMF)を前記流体流れに誘導する磁場を前記流体流れに生成するように構成されたコイルとを含む流管アセンブリと、
前記EMFを感知して、前記誘導されたEMFを示す出力を発生するように配置されたEMFセンサと、
第1周波数でフィルタを通さない電流パルスを発生するように構成されるとともに、前記フィルタを通さない電流パルスを減衰して、前記コイル電流を形成する第2周波数でコイル電流パルスを形成するローパスフィルタを含む電力増幅器であって、前記フィルタを通さない電流パルスのそれぞれは、パルス期間内であって該パルス期間の始まりからパルス遅延後に発生する、電力増幅器と、
サンプリング周波数で前記コイル電流パルスの一連のサンプルを捕捉するように構成された電流サンプリング回路と、
前記サンプリング周波数と前記フィルタを通さない電流パルスとの関係を変更して、前記サンプルに基づいて前記コイル電流を調整するために、前記パルス遅延を調整するように構成されたコントローラと、
を備える電磁流量計。
【請求項10】
前記コントローラは、前記パルス遅延を無作為化する、請求項9に記載の電磁流量計。
【請求項11】
前記コントローラは、前記一連のサンプルに対応する前記電流パルスのそれぞれの前記パルス遅延をシフトする、請求項9に記載の電磁流量計。
【請求項12】
前記電力増幅器は、
電源と、
前記電源に結合されているHブリッジと、
前記Hブリッジから第1および第2の導体を介して前記フィルタを通さない電流パルスを受けるように構成された前記ローパスフィルタと、を備えており、
前記コントローラは、前記フィルタを通さない電流パルスを発生して、前記コイルを通過する前記コイル電流パルスの方向を交互に変えるために、可変するデューティサイクルで前記Hブリッジの対の相補型スイッチを作動するように構成されている、請求項9に記載の電磁流量計。
【請求項13】
前記第1周波数は、10~100kHzであり、
前記第2周波数は、5~200Hzである、請求項12に記載の電磁流量計。
【請求項14】
前記EMFセンサは、前記流体流れの対向側面に位置付けられている第1および第2の電極を備えており、前記第1および第2の電極のそれぞれが前記流体流れの電圧を感知するように構成されており、
前記電磁流量計は、
前記第1および第2の電極が感知する電圧を受信して、前記EMFおよび前記流体流れの流量に比例する前記第1と第2の電極間の電圧差を示すデジタル電圧信号を発生するように構成された信号プロセッサと、
前記デジタル電圧信号を処理して、前記流体流れの流量を確定するように構成されたデジタルプロセッサと、を含む、請求項13に記載の電磁流量計。
【請求項15】
前記電磁流量計に電力供給する二線式プロセス制御ループを介して、前記流量を外部コンピューティングデバイスに通信するように構成された通信インターフェースを含む、請求項14に記載の電磁流量計。
【請求項16】
電磁流量計を制御する方法であって、
流管アセンブリのパイプ部に前記流体流れを受け入れる手順と、
電力増幅器を使用して第1周波数でフィルタを通さない電流パルスを発生させる手順であり、各フィルタを通さない電流パルスは前記第1周波数に対応するパルス期間内に発生する手順と、
コイル電流を形成する第2周波数でコイル電流パルスを形成するために、前記電力増幅器のローパスフィルタを使用して前記フィルタを通さない電流パルスを減衰する手順であり、前記コイル電流パルスは前記フィルタを通さない電流パルスの残留信号を含む手順と、
前記コイル電流パルスを前記流管アセンブリのコイルに交互方向に通過させる手順と、
前記コイル電流パルスを前記コイルに通過させることを受けて、前記流体流れに磁場を発生させて、前記流体流れに前記流量に比例する起電力(EMF)を誘導する手順と、
電流サンプリング回路を使用して各パルス期間内のサンプリングポイントでコイル電流パルスをサンプリングする手順であって、前記サンプリングポイントと前記フィルタを通さない電流パルスの前記残留信号との関係が各サンプリングポイントについて固有である、サンプリングする手順と、
コントローラを使用して前記電流パルスサンプルに基づいて前記コイル電流を調整する手順と、
を含む方法。
【請求項17】
各サンプルの前記サンプリングポイントは、各パルス期間の始まりからサンプリング遅延を設けて位置付けられ、
前記方法は、前記コントローラを使用して各サンプルの前記サンプリング遅延を調整することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
各サンプルの前記サンプリング遅延を調整することは、前記コントローラを使用して各サンプルの前記サンプリング遅延を無作為化することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各サンプルの前記サンプリング遅延を調整することは、前記コントローラを使用して各サンプルの前記サンプリング遅延をシフトすることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記フィルタを通さない電流パルスは、各パルス期間の始まりからパルス遅延後に発生され、
各サンプルの前記サンプリングポイントは、各パルス期間の始まりから一定のサンプリング遅延を設けて位置付けられ、
前記方法は、前記コントローラを使用して各電流パルスの前記パルス遅延を調整することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、電磁流量計に関し、より具体的には、流量測定で使用される磁場を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バルク流体の取扱い、食品や飲料の調製、化学および薬剤、水および空気の分配、炭化水素の抽出および処理、環境管理などの幅広い範囲の流体処理アプリケーション、ならびに、例えば、熱可塑性物質、薄膜、接着剤、樹脂および他の流体物質を利用する多様な製造技術には、精密かつ正確なフロー制御が不可欠である。各特定のアプリケーションに使用される流量測定技術は、関わる流体と、関連するプロセス圧力、温度および流量とに依存する。
【0003】
例示的な流量測定技術は、機械的回転の関数として流れを測定するタービンデバイスと、ベルヌーイ効果または流れの制限による圧力低下の関数として流れを測定するパイロットセンサおよび差圧デバイス、振動効果の関数として流れを測定する渦流形デバイスおよびコリオリ式デバイス、ならびに熱伝導率の関数として流れを測定する質量流量計を含む。電磁流量計は、ファラデーの法則に基づいて流れを特徴付けることによって、これらの技術とは区別され、機械的効果または熱力学効果よりもむしろ電磁的相互作用に依存する。具体的には、電磁流量計は、プロセス流体の導電率と、流体が磁場の領域を流れるときに誘導される起電力(EMF)とに依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電磁流量計は、センサ部と送信機部とを含む。送信機部は、電流をセンサ部のコイルに通過させてパイプ部に磁場を発生させる電流発生器を含む。磁場は、流れの速度に比例するEMFまたは電位差(電圧)を流れに誘導する。電磁流量計は、センサ部によって検出される電位差に基づいて流量を測定する。
【0005】
流量測定の正確さは多くの要因に依存するが、そのうちの1つが流れへの磁場の正確な発生である。動作設定点は、電流発生器に、流れに所望の磁場を生成する電流を発生するよう指示する。電流は、定期的にサンプリングすることで動作設定点と整合していることを確実にし得る。
【0006】
電流発生器の電流は、電流発生器から伝送線路を通ってセンサ部のコイルまで伝送され得る。例えば伝送線路が長い(例えば、10~1000フィート)場合など、ある状況においては、伝送線路の特性インピーダンスと電流発生器および/またはセンサ部との間に不整合が起こることがある。このようなインピーダンスの不整合は、不整合インピーダンスで電圧/電流波反射を引き起す可能性があり、それが伝送線路に定在電流/電圧波を生むことがある。
【0007】
当該定在波は、電流発生器の電流サンプルの正確さに悪影響を及ぼし得る。そのため、サンプリングされた電流発生器の電流が、センサ部のコイルに供給される実際の電流発生器の電流と整合しないことがある。その結果、電流発生器の電流および対応する磁場が、正確な流量測定にとって望ましい電磁流量計の動作パラメータを満たさないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は、流体流れの流量を測定するための電磁流量計、および電磁流量計を制御する方法を対象としている。一実施形態において、電磁流量計は、流管アセンブリと、起電力(EMF)センサと、電力増幅器と、電流サンプリング回路と、コントローラとを含む。流管アセンブリは、流体流れを受け入れるように構成されたパイプ部と、コイル電流を受けて、流量に比例するEMFを流体流れに誘導する磁場を流体流れに生成するように構成されたコイルとを含む。EMFセンサは、EMFを感知して、誘導EMFを示す出力を発生するように配置される。電力増幅器は、第1周波数でフィルタを通さない電流パルスを発生するように構成される。電力増幅器は、フィルタを通さない電流パルスを減衰して、コイル電流を形成する第2周波数でコイル電流パルスを形成するローパスフィルタを含む。電流サンプリング回路は、サンプリング周波数でコイル電流パルスの一連のサンプルを捕捉するように構成される。コントローラは、サンプリング周波数と第1周波数との関係を変更して、サンプルに基づいてコイル電流を調整するように構成される。
【0009】
電磁流量計の別の実施形態は、流管アセンブリと、EMFセンサと、電力増幅器と、電流サンプリング回路と、コントローラとを含む。流管アセンブリは、流体流れを受け入れるように構成されたパイプ部と、コイル電流を受けて、流量に比例するEMFを流体流れに誘導する磁場を流体流れに生成するように構成されたコイルとを含む。EMFセンサは、EMFを感知して、誘導EMFを示す出力を発生するように配置される。電力増幅器は、第1周波数でフィルタを通さない電流パルスを発生するように構成される。フィルタを通さない電流パルスのそれぞれは、パルス期間内であってパルス期間の始めからパルス遅延後に発生する。電力増幅器は、フィルタを通さない電流パルスを減衰して、コイル電流を形成する第2周波数でコイル電流パルスを形成するローパスフィルタを含む。電流サンプリング回路は、サンプリング周波数でコイル電流パルスの一連のサンプルを捕捉するように構成される。コントローラは、サンプリング周波数とフィルタを通さない電流パルスとの関係を変更し、サンプルに基づいてコイル電流を調整するために、パルス遅延を調整するように構成される。
【0010】
方法の一実施形態において、流体流れを流管アセンブリのパイプ部で受け入れる。フィルタを通さない電流パルスは、電力増幅器を使用して第1周波数で発生させられる。フィルタを通さない電流パルスのそれぞれは、第1周波数に対応するパルス期間内に発生させられる。フィルタを通さない電流パルスは、電力増幅器のローパスフィルタを使用して減衰されて、コイル電流を形成する第2周波数でコイル電流パルスを形成する。コイル電流パルスは、フィルタを通さない電流パルスの残留信号を含む。コイル電流パルスは、流管アセンブリのコイルを交互方向に通過する。流量に比例したEMFを流体流れに誘導する磁場が流体流れに発生する。コイル電流パルスの1つは、電流サンプリング回路を使用して各パルス期間内のサンプリングポイントでサンプリングされる。サンプリングポイントとフィルタを通さない電流パルスの残留信号との関係は、各サンプリングポイントについて固有である。コイル電流は、コントローラを使用して電流パルスサンプルに基づいて調整される。
【0011】
この概要は、詳細な説明において以下にさらに説明する概念から選択したものを簡略化した形態で紹介するために提供されている。この概要は、特許請求された主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求された主題の範囲を決定する際の助けとして使用されることを意図するものでもない。特許請求された主題は、背景技術において述べた欠点のいずれかまたは全てを解決する実施態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態による、例示的な産業用プロセス測定システムの簡略図である。
図2】本開示の実施形態による、例示的な電磁流量計の簡略図である。
図3】本開示の実施形態による、例示的なプログラマブル双方向電流発生器の簡略図である。
図4】本開示の実施形態による、例示的なプログラマブル双方向電流発生器の簡略図である。
図5】本開示の実施形態による、コントローラからHブリッジの対の相補型スイッチまでの例示的な制御信号を示すチャートである。
図6】本開示の実施形態による、コントローラからHブリッジの対の相補型スイッチまでの例示的な制御信号を示すチャートである。
図7A】本開示の実施形態による、例示的な高周波数のフィルタを通さない電流パルスと、対応するコイル電流パルスとをそれぞれ示す電圧チャートである。
図7B】本開示の実施形態による、例示的な高周波数のフィルタを通さない電流パルスと、対応するコイル電流パルスとをそれぞれ示す電圧チャートである。
図7C図7Aのフィルタを通さない電流パルスをフィルタリングした後に得られる線路電圧を示す電圧チャートである。
図7D図7Bのフィルタを通さない電流パルスをフィルタリングした後に得られる線路電圧を示す電圧チャートである。
図7E図7Cおよび図7Dの線路電圧を受けて発生するコイル電流パルスのチャートである。
図8】本開示の実施形態による、例示的な電磁流量計の模式図である。
図9】伝送線路の特性インピーダンスと電流発生器およびコイルのインピーダンスとの不整合による電圧/電流波反射の例を示すフローチャートである。
図10】不整合インピーダンスにより形成され得る例示的な定在電圧/電流波を示すチャートである。
図11】本開示の実施形態による、コイル電流パルス上の例示的な残留信号を示すチャートである。
図12】本開示の実施形態による、例示的なコイル電流パルスを示す電圧チャートである。
図13】本開示の実施形態による、コイル電流の例示的な残留信号と、残留信号と同期する電流信号サンプリングポイントとを示す電圧チャートである。
図14】本開示の実施形態による、コイル電流パルス上の例示的な残留信号と、残留信号と非同期させる電流信号サンプリングポイントとを示す電圧チャートである。
図15】本開示の実施形態による、コイル電流パルス上の例示的な残留信号と、残留信号と非同期させる電流信号サンプリングポイントとを示す電圧チャートである。
図16】本開示の実施形態による、コイル電流パルス上の例示的な残留信号と、残留信号と非同期させる電流信号サンプリングポイントとを示す電圧チャートである。
図17】本開示の実施形態による、電磁流量計を制御する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本開示の実施形態をより完全に説明する。同一または類似の参照符号を使用して特定された要素は、同一または類似の要素について言及している。しかし、本開示の種々の実施形態は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全であるように、また本開示の範囲を当業者に十分伝えるように提供される。
【0014】
以下の説明において、実施形態の十分な理解を提供するように具体的な詳細を記載している。しかし、当業者には、実施形態がこれらの具体的な詳細がなくても実施できることは理解される。例えば、不必要に詳細にして実施形態を不明瞭にしないように、回路、システム、ネットワーク、プロセス、フレーム、サポート、コネクタ、モータ、プロセッサおよび他のコンポーネントを図示していない、またはブロック図の形式で示していないことがある。
【0015】
図1は、本開示の実施形態による例示的な産業用プロセス測定システム100の簡略図である。システム100は、材料(例えば、プロセス媒体)の処理に使用され、材料を、より価値の低い状態から、より価値のある有用な製品(石油、化学薬品、紙、食品など)に変換することができる。例えば、システム100は、原油をガソリン、燃料油およびその他の石油化学薬品に加工できる工業プロセスを実行する石油精製所で使用することができる。
【0016】
システム100は、例えばパイプ106を通るような、プロセス流体流れ104の流量を感知するように構成されたパルス直流(DC)電磁流量計102を含む。電磁流量計102は、起電力(EMF)センサ部108と送信機110とを含む。センサ部108は、一般に、流体流れ104の流量を測定または感知するように構成される。送信機110は、一般に、流量を測定するセンサを制御するように構成され、任意選択で、システム100の制御室114内など、流量計102から離れて位置し得るコンピュータ化された制御ユニットなどの外部コンピューティングデバイス112に、測定した流量を通信するように構成される。
【0017】
送信機110は、適切なプロセス制御ループを介して外部コンピューティングデバイス112と通信することもできる。いくつかの実施形態において、プロセス制御ループは、二線式制御ループ116などの物理的リンク、または無線通信リンクを含む。外部コンピューティングデバイス112と送信機部との間の通信は、従来のアナログおよび/またはデジタル通信プロトコルに従って制御ループ116を介して実行することができる。いくつかの実施形態において、二線式制御ループ116は、4~20ミリアンペアの制御ループを含み、二線式制御ループ116を流れるループ電流Iのレベルによってプロセス変数を表すことができる。例示的なデジタル通信プロトコルには、HART(登録商標)通信規格に従うなど、二線式制御ループ116のアナログ電流レベルへのデジタル信号の変調が含まれる。ファンデーションフィールドバスおよびプロフィバス通信プロトコルといった、他の純粋なデジタル技術を使用することもできる。プロセス制御ループの例示的な無線バージョンは、例えば、WirelessHART(登録商標)(IEC 62591)やISA 100.11a(IEC 62734)などの無線メッシュネットワークプロトコル、またはWiFi、LoRa、Sigfox、BLEもしくはその他の適切なプロトコルなどの別の無線通信プロトコルを含む。
【0018】
電力は、任意の適切な電源から電磁流量計102に供給することができる。例えば、電磁流量計102は、制御ループ116を流れるループ電流Iによって完全に電力を供給されてもよい。内部または外部のバッテリなど、1つまたは複数の電源を利用してプロセス電磁流量計102に電力を供給してもよい。また、発電機(例えば、ソーラーパネル、風力発電機など)を使用して電磁流量計102に電力を供給するか、電磁流量計102によって使用される電源を充電してもよい。
【0019】
送信機110は、センサ部108を収容するハウジングなど、センサ部108に直接装着しても、センサ部108から離れて(例えば、10~1000フィート)位置してもよい。送信機110をセンサ部108から離れて位置するとき、送信機110とセンサ部108との電気接続は、1つまたは複数の接続用ケーブルまたは伝送線路118によって提供することができ、これらは、ケーブル、ワイヤ、データバス、制御バス、または電気およびデータの通信に適切な他の接続によって形成することができる。
【0020】
図2は、本開示の実施形態による、電磁流量計102の簡略図である。センサ部108は、パイプ部122を有する流管アセンブリ120を含むことができ、図1に示すように、ここを流体流れ104が移動する。流管アセンブリ120はまた、電極124Aおよび124Bなどの電極124を有するEMFセンサ123を含み、流管アセンブリ120は、コイル126Aおよび/または126Bなどの1つまたは複数の界磁コイルまたはコイルワイヤ126を含む。電極124Aおよび124Bならびにコイル126Aおよび126Bは、図2に示すように、パイプ部122の対向側面に位置付けることができる。
【0021】
デジタルプロセッサ130は、非一時的特許適格性のあるメモリに記憶することができる命令の実行を受けて、本明細書に記載の1つまたは複数の機能を実行するように電磁流量計102のコンポーネントを制御する1つまたは複数のプロセッサを表すことができる。いくつかの実施形態において、デジタルプロセッサ130は、電磁流量計102の動作設定点に基づいて制御信号を電流発生器132に提供して、コイル126を通る方向を交互に変えるDC矩形波電流パルスを含むコイル電流Iを発生させる。
【0022】
いくつかの実施形態において、電流発生器132は、コントローラ140と、電力増幅器142と、プロファイル発生器144とを含む。コントローラ140は、例えばデジタルプロセッサ130からの制御信号を受けて、および/またはコントローラ140によって表される非一時的特許適格性のあるメモリに記憶することができる命令の実行を受けて、本明細書に記載の1つまたは複数の機能を実行するように電力増幅器142のコンポーネントを制御する1つまたは複数のプロセッサを表すことができる。
【0023】
コントローラ140は、正確な流量測定に必要な電磁流量計102の設定点レベルに整合するためにコイル電流Iに調整が必要かどうかを判断するためのフィードバックとして、電流サンプリング回路143からコイル電流Iの電流レベル測定値を定期的に受信することができる。電流サンプリング回路143は任意の適切な形態を取ることができる。例えば、電流サンプリング回路143は、例えば図2に示す位置で、コイル電流Iに関係する電圧を感知して、サンプリングした電圧を、アナログ・デジタル変換器を使用してデジタル信号に変換するように動作することができ、これは、例えば、測定電流レベルとしてコントローラ140に提示される。コントローラ140は、コイル電流Iの電流レベルを電磁流量計102の動作設定点によって指示される設定点電流に整合させるために、測定電流レベルに基づいてコイル電流Iを調整することができる。時間の経過とともにサンプリングされた電流はまた、本明細書に記載されるコイル電流Iまたはコイル電流パルスの電流プロファイルのチャートを作るために使用することができる。
【0024】
図3および図4は、本開示の実施形態による、例示的な電力増幅器142の簡略図である。電力増幅器142は、電圧制御電流源または別の適切な電流源の形態とすることができる。例示される実施例では、電力増幅器142は、電源145と、Hブリッジ146と、ローパスフィルタ(LPF)148とを含む。Hブリッジは、電源145(例えば、電圧源)からフィルタを通さない電流IPSを受けるように構成され、これは、図3および図4に示される方向に移動する。いくつかの実施形態において、Hブリッジ146は、スイッチ156Aとその相補型スイッチ156A'およびスイッチ156Bとその相補型スイッチ156B'を含む対の相補型スイッチを備える。スイッチ対156Aおよび156A'の相補性は、スイッチ156Aが開のときスイッチ156A'が閉であり、スイッチ156Aが閉のときスイッチ156A'が開であることを意味する。これは、相補型スイッチ156Bおよび156B'にも当てはまる。
【0025】
コントローラ140は、マイクロプロセッサと、導体157または159を介してLPFに送られる電流IPSから高周波数(例えば、10~100kHz)電流パルスを発生するようにスイッチ対156Aと156A'および156Bと156B'を制御するゲートドライバとを含むことができる。ローパスフィルタ(LPF)148は、導体157または159上に出力されるHブリッジ146からの高周波数電流パルスを減衰して、コイル電流Iを形成する低周波数(例えば、5~200Hz)のコイル電流パルスを形成するように動作する。
【0026】
コントローラ140は、スイッチ156のデューティサイクルを変調させることによって、フィルタを通すコイル電流Iがコイル126を流れる方向を制御する。例えば、図5および図6は、コントローラ140からスイッチ156までの例示的な制御信号を示すチャートであり、スイッチ156は、コイル電流Iをそれぞれ図4および図3に示す方向に流れさせる。チャート内の高信号は、スイッチ156の閉状態に対応し、チャート内の低信号は、開状態に対応する。図5に示すように、スイッチ156Aのデューティサイクルは、スイッチ156Bのデューティサイクルよりも小さい。その結果、スイッチ156A'のデューティサイクルは、スイッチ156B'のデューティサイクルよりも大きい。これにより線路159の平均電圧が線路157の平均電圧よりも大きくなり、コイル電流I図4に示す方向に流れることになる。図6では、スイッチ156Aのデューティサイクルは、スイッチ156Bのデューティサイクルよりも大きく、スイッチ156A'のデューティサイクルは、スイッチ156B'のデューティサイクルよりも小さい。これにより線路157の平均電圧は、線路159の平均電圧よりも大きくなり、コイル電流I図3に示す方向に流れることになる。この構成は、Hブリッジを使用して、電源からの電流を単に流管アセンブリのコイルを経由して交互方向に流す電磁流量計102の従来の電力増幅器とは異なる。
【0027】
図7Aおよび図7Bは、本開示の実施形態による、LPF148の前に電圧Vpaを有する線路157(図7A)および電圧Vpb(図7B)を有する線路159上のHブリッジ146から出力される例示的な高周波数電流パルス160(パルス160Aおよび160Bなど)を示す電圧チャートである。例えば、パルスまたは励起期間T1中のHブリッジ146からの線路157上の、期間Tおよび対応する周波数1/T(例えば、10~100kHz)を有する一連の電圧パルス160Aは、図7Aに示すように、それぞれがパルス幅Wを有することができる。コイル電流Iが方向を変えるパルス期間T1の過程にわたり、パルス160Aは平均電圧Vを有する。同様に、パルス期間T2中のHブリッジ146からの線路157上の一連の高周波数電圧パルス160Bは、図7Bに示すように、それぞれがパルス幅Wを有することができる。期間T2の過程にわたり、平均電圧パルス160Bは平均電圧Vを有する。Hブリッジ146からの線路159は、パルス期間T1中にパルス160Bを有し、パルス期間T2中に160Aを有し、これらは、図7Bに示すように、同じ期間中に線路157上のものと相補的である。
【0028】
図7Cおよび図7Dは、LPF148の後の電圧VaおよびVb(図2図3および図4)を示しており、LPF148は、線路157および159上の高周波数パルス136Aおよび136Bを減衰する。電圧VaおよびVbは、コイル電流Iを形成するコイル電流パルスの方向と大きさを決定した。例えば、パルス期間T1中、電圧Vaは電圧Vbよりも小さい。これにより、コイル電流I図4に示す方向に流れる。期間T2中、電圧Vaは、電圧Vbよりも大きいため、コイル電流I図2および図3に示す方向に流れる。
【0029】
図7Eは、電流サンプリング回路143によってサンプリングされる電圧など、期間T1およびT2にわたるコイル電流パルス電圧を示す電圧チャートである。図7Eに図示されるように、期間T1にわたるコイル電流パルスP1の電圧はマイナスであり、コイル電流パルスP2の電圧は期間T2にわたりプラスである。
【0030】
コイル電流Iは、図1および図2に図示される伝送線路118などの適切な電気接続により、流管120の界磁コイル126Aおよび126Bに送られる。これにより、コイル126Aおよび/または126Bが、パイプ部122に、励起周波数(例えば、1/T)で方向を変える磁場を発生する。パイプ部122の内部を移動するプロセス流体流れ104は、電磁誘導のファラデーの法則に従いEMFを流体に誘導する可動導体として機能する。導電性のプロセス流体に容量結合されるか、またはプロセス流体に直接電気接触している電極124Aおよび124Bは、流体流れ104に存在する電圧をピックアップする。電極124Aと124Bの電圧差は、流体流れ104の流量に比例する。
【0031】
送信機110の信号プロセッサ128が電極124Aおよび124Bに接続されている。流管アセンブリ120は、パイプ部122に、パイプ部122の上流側もしくは下流側のフランジまたはパイプ部に、または別の適切な接地接続に電気的に接地することができる。デジタルプロセッサ130は、電極124Aと124Bとの間の電圧差をサンプリングし、任意の適切な技術を使用して、測定した電圧差をデジタルプロセッサ130に提供するように信号プロセッサ128を制御する。これは、アナログ差圧信号を、例えば、デジタルプロセッサ130に供給されるデジタル値に変換することを伴い得る。デジタルプロセッサ130は、プロセス流体流れ104の流量の流量測定値を確定するために、測定した差圧の信号処理をさらに実行することができる。測定した流量は、通信インターフェース134を使用して、例えば上述した有線または無線の通信プロトコルの1つを介して、コンピューティングデバイス112に通信することができる。
【0032】
図8は、送信機110の電力増幅器142、センサ部108のコイル126、および電力増幅器142をコイル126に接続する伝送線路118の簡略図である。電力増幅器142は電流源149とインピーダンスZとによって表され、1つまたは複数のコイル126はインピーダンスZによって表され、伝送線路118は特性インピーダンスZを有する。電流発生器のインピーダンスZおよび/またはコイルのインピーダンスZが伝送線路の特性インピーダンスZに整合しないとき、コイル電流Iの反射が起こり得る。このようなインピーダンスの不整合は、センサ部108が長い伝送線路118(例えば、10~1000フィート)を介して送信機110に接続されているときに最も起こりやすい。
【0033】
LPF148は、高周波数またはフィルタを通さないパルス160(図7Aおよび図7B)を完璧には減衰することはできない。その結果、フィルタを通さないパルス160の残留分がLPF148を通過し、コイル電流Iのコイル電流パルスPの頂点(またはその高調波)に存在する。その結果、上述したインピーダンスの不整合を伴って起こるコイル電流Iの反射は、フィルタを通さないパルス160の高周波数残留分の反射を含み、これが伝送線路118に沿って電圧/電流波反射の定在波をもたらすおそれがある。
【0034】
図9は、伝送線路118の特性インピーダンスZと電流発生器132および1つまたは複数のコイル126のインピーダンスZおよびZとの不整合により、LPF148によって減衰されなかったコイル電流I上のフィルタを通さないパルス160の残留信号162の電圧/電流波反射の例を示すチャートである。図10は、不整合インピーダンスにより形成され得る定在電圧/電流波の形成の簡略化した例を示すチャートを含む。
【0035】
図9に示すように、残留信号162が電力増幅器142と伝送線路118とのインターフェース164からコイル126に送信されると、インターフェース166でのインピーダンスZとZとの不整合による反射電圧信号162Aとして、信号162の一部分がコイル126と伝送線路118とのインターフェース166から反射して伝送線路118に沿って戻される。インターフェース164でのインピーダンスZとZとの不整合により、信号162Aの一部分は電圧信号162Bとして伝送線路118に沿って反射して戻される。伝送線路118に沿った「リンギング」として合成定在波信号168が観察されることがあり、これは、図10に示すように、山170および谷172を含む。その結果、コイル電流Iは、図11に示すように、残留波信号168のものと同様な形態を有する高周波数電圧信号を含み得る。残留波信号168は、図12のチャートに示されるように、コイル電流パルスPの頂点に形成される。
【0036】
いくつかの実施形態において、コントローラ140は、コイル電流Iのサンプリングをパルス期間Tまたはコントローラ140のアップデートサイクルと同期させ、その時点でHブリッジのスイッチ156が作動されて、パルス160が発生する。これにより残留波信号168と、電流サンプリング回路143がコイル電流IパルスPをサンプリングするサンプリングポイントとの間が一定間隔になる。不整合インピーダンスのために伝送線路118に定在電流/電圧波反射が起こって、図12に示すように、コイル電流パルスP上の残留波信号168を形成する場合、信号168とサンプリングポイントとの間の同期により、サンプリングポイントを信号168の同じ位置にすることができる。
【0037】
この例を図13に示しており、電流サンプリング回路143が、各電流パルス160の各パルス期間Tまたは残留波信号168の始まりに対して一定のサンプリング遅延tを設けたサンプリングポイント174でコイル電流Iをサンプリングする。図示する実施例では、コイル電流パルスPのこのようなサンプリングにより、サンプリングポイント174は、残留波信号168の谷に位置することになるが、山など、各信号168に沿った別の位置でも起こすことができる。したがって、サンプリングされるコイル電流レベルのそれぞれは、実際の平均電流レベル176からオフセット量178ずれることがある。
【0038】
コイル電流Iの測定レベルにおけるこの誤差が、コントローラ140に、電磁流量計102の動作設定点に従いデジタルプロセッサ130に指示される所望のレベルからオフセットされるレベルにコイル電流Iを設定させることができる。その結果、オフセットコイル電流を受けてコイル126が発生する磁場は、動作設定点が指示し、流体流れ104の流量を正確に測定するために必要な磁場とは異なることになる。そのため、電極124Aと124Bとの測定電圧差は、流体流れ104の流量を正確に示さないことがある。
【0039】
本開示の実施形態は、流量測定の正確さを改善するために、例えば上記説明したインピーダンスの不整合による定在残留波信号168の存在下において、コイル電流Iの測定を改善するように動作する。一般に、電流発生器132のコントローラ140は、期間Tまたは周波数1/Tを有するHブリッジ146から出力されるパルス160と、サンプリング回路143によってコイル電流パルスPがサンプリングされるサンプリングポイント174との関係を変更する(例えば、非同期する)ように構成される。その結果、サンプリング回路143は、サンプリングポイント174が期間Tまたは周波数1/Tと同期しているときに起こるパルス136の同じ部分(図13)ではなく、信号168の異なる部分をサンプリングする。
【0040】
各コイル電流パルスPの複数のサンプリングされた電圧を使用して、1つまたは複数のコイル126に供給されるコイル電流Iの実際のレベル176をより正確に表すコイル電流パルスPの平均電圧レベルを確定することができる。その結果、電流発生器132は、コイル電流パルスPを電磁流量計102の動作設定点により要求される電圧レベルにより正確に設定することが可能となり、それによりコイル126によって発生する磁場に対する改善された制御、およびより正確な流量の測定を提供する。
【0041】
関係を変更する、またはサンプリングポイント174を残留信号168から非同期させるための異なる技術を図14から図16を参照して述べるが、これは、フィルタを通さない電流パルス160の残留信号168を含む例示的なコイル電流パルスPの部分を示すチャートである。いくつかの実施形態において、残留信号168とサンプリングポイント174との関係は、残留信号168に対してサンプリングポイント174に位相シフトまたは遅延を導入することによって変更または非同期することができる。例えば、残留信号168が各パルス期間Tの始めに生成され、パルス周波数(1/T)を有する場合、コントローラ140は、各パルス期間Tの始まりから測定される各サンプリングポイント174のサンプリング遅延tを変えることができる。サンプリング遅延tは、ゼロ遅延からパルス期間Tまで変えることができる。したがって、例えば、コイル電流パルスPのパルスは、パルス期間の始まりからサンプリング遅延tS1分遅延させられたサンプリングポイント174でサンプリングすることができ、第2サンプリングポイント174は、次のパルス期間Tの始まりからサンプリング遅延tS2分遅延させることができ、第3サンプリングポイント174は、次のパルス期間Tからサンプリング遅延tS3分遅延させることができ、第4サンプリングポイント174は、次のパルス期間Tからサンプリング遅延tS4分遅延させることができる。ここで、遅延tS1、tS2、tS3およびtS4は、図14および図15で示されるようにそれぞれ異なる。これによりサンプリング遅延tS1~tS4に対応する残留信号168の異なる部分を、サンプリング回路143がサンプリングし、コントローラ140が使用して、コイル電流レベル測定値を決定する。その結果、残留パルス168の山または谷でのコイル電流パルスPの繰り返しサンプリングが避けられ、電流サンプルの平均(点線)の誤差が時間の経過とともにゼロに近づく。
【0042】
一実施形態において、コントローラ140は、図14に大略的に示すように、一連のフィルタを通さない電流パルス期間またはサイクルTにわたりサンプリング遅延tを無作為化する。代替的に、サンプリング遅延は、図15に示すように、残留信号168のパルス期間Tにわたって制御掃引を効果的に実行するために、サンプリングポイント174がパルス期間Tに沿って個別の間隔に位置するようにプログラミングすることができる。ここで、サンプリング遅延tS1~tS4は、一部分または全体のパルス期間Tをサンプリング回路143によってサンプリングさせる所定の期間分だけそれぞれオフセットしてもよい。これにより、サンプリングポイント174を無作為化するときよりも、より正確なコイル電流レベルの測定値を得ることができる。
【0043】
別の実施形態によると、残留信号168またはフィルタを通さない電流パルス160とサンプリングポイント174との関係は、パルス期間Tの始まりから電流パルス160の発生に位相シフトまたはパルス遅延を導入することによって非同期するが、各電流パルス期間Tの始まりからサンプリング遅延tを一定にすることによって一定のサンプリング周波数を維持する。この技術の例を図16のチャートに示しており、ここに図示される残留信号168は、対応するパルス期間Tの開始から、tP1、tP2およびtP3などの異なるパルス遅延tの後にそれぞれ発生したフィルタを通さない電流パルス160に対応するが、サンプリング遅延tは一定のままである。これによりサンプルポイント174のそれぞれが一連の電流パルス136にわたり電流パルス136の異なる部分に対応させられる。その結果、山または谷の中の残留信号168の繰り返しサンプリングが避けられ、コイル電流Iの平均レベル176をより正確に反映するサンプルの平均をある期間にわたり得ることができる。このように、この技術を使用してコイル電流レベルの測定値の誤差はゼロに近づく。
【0044】
図17は、本開示の実施形態による、電磁流量計102を制御する方法を示すフローチャートである。フローチャートの190で、図1に示すように、流体流れ104を流管アセンブリ120のパイプ部122で受け入れる。192で、上記説明するような電流発生器132の電力増幅器142を使用して、フィルタを通さない電流パルス160(図7Aおよび図7B)を発生させる。フィルタを通さない電流パルス160は高周波数(例えば、10~100kHz)で発生し、各パルス160はパルス期間T図7Aおよび図7B)内で発生する。194で、フィルタを通さない電流パルス160は電力増幅器142のLPF148(図3および図4)を使用して減衰されて、コイル電流Iのコイル電流パルスP(図7Eおよび図12)を形成する。コイル電流パルスPは、図12に図示されるような、LPF148によって完全には減衰されなかったフィルタを通さない電流パルス160の残留信号168を含む。
【0045】
フローチャートの196で、コイル電流パルスPは、1つまたは複数のコイル126を交互方向に通過する。交互方向に1つまたは複数のコイル126を移動するプラスおよびマイナスのコイル電流パルスP(図7E)の形成は、上記説明した技術を使用して電流発生器132によって発生し得る。
【0046】
フローチャートの198で、ステップ186を受けてパイプ部122内の流体流れ104に磁場が発生し、流体流れ104の流量に比例したEMFが流体流れ104に誘導される。
【0047】
フローチャートの200で、電流サンプリング回路143を使用して、各パルス期間T内のサンプルポイント174でコイル電流パルスPの1つがサンプリングされる。コントローラ140を使用して上記説明した技術のうちの1つに従いサンプリングポイント174と対応する電流パルスとの関係が非同期されるので、サンプリングポイント174は残留信号168と固有の関係を有する。その結果、サンプリングポイント174は、図12に図示されるように、残留信号168と同期しなくなる。このように、方法は、例えば残留信号の山170または谷172(図11)で、同じ位置での残留信号168の繰り返しサンプリングを避ける。
【0048】
202で、コイル電流Iは、例えば電磁流量計102の動作設定点に整合するために、コントローラ140を使用してサンプルに基づいて調整される。例えば、コントローラ140は、サンプルが示す電圧レベルの平均など、サンプリング回路143によって取得されたコイル電流パルスPのサンプルに基づいて、コイル電流パルスPの電圧などのコイル電流レベルの測定値を決定することができる。サンプルポイント174が残留信号168と同期している場合(図13)と異なり、この方法により捕捉される電流サンプルは残留信号168の様々な部分をカバーする。得られるサンプルの平均は、残留信号168が残留信号168の同じ山または谷で繰り返しサンプリングされるときよりも正確なコイル電流Iのレベルの近似化をもたらす。ステップ202で、コントローラ140は、コイル電流レベルの測定値と、電磁流量計102の動作設定点に基づく所望のコイル電流レベルとを比較して、それに応じてコイル電流を調整することができる。
【0049】
本開示の実施形態を好適な実施形態を参照して説明してきたが、当業者であれば、本開示の精神および範囲から逸脱することなく形態および詳細において変更を加えることができることを認識するであろう。
【符号の説明】
【0050】
102 電磁流量計
104 流体流れ
108 センサ部
110 送信機
120 流管アセンブリ
122 パイプ部
123 起電力(EMF)センサ
124 電極
126 コイル
128 信号プロセッサ
130 デジタルプロセッサ
134 通信インターフェース
140 コントローラ
142 電力増幅器
143 電流サンプリング回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】