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特表2022-545884種子および植物をマーキングするための追跡可能な複合体
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  • 特表-種子および植物をマーキングするための追跡可能な複合体 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】種子および植物をマーキングするための追跡可能な複合体
(51)【国際特許分類】
   A01C 1/06 20060101AFI20221025BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A01C1/06 Z
A01G7/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511248
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 IL2020050956
(87)【国際公開番号】W WO2021044416
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/894,892
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518274043
【氏名又は名称】セキュリティ マターズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SECURITY MATTERS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】グロフ,ヤイール
(72)【発明者】
【氏名】タル,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】カプリンスキー,モル
(72)【発明者】
【氏名】ダフニ,ロン
(72)【発明者】
【氏名】バレケット,イファット
(72)【発明者】
【氏名】ファーステンバーグ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,テヒラ
(72)【発明者】
【氏名】シャーデー,ハギット
(72)【発明者】
【氏名】ヨラン,ナダフ
(72)【発明者】
【氏名】アロン,ハッガイ
【テーマコード(参考)】
2B022
2B051
【Fターム(参考)】
2B022AB11
2B022AB13
2B022AB15
2B022AB17
2B022AB20
2B022EA10
2B051AB01
2B051AB06
2B051BA20
2B051BB14
2B051BB20
(57)【要約】
本発明は、農産物を認証するための組成物および方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択される方法:
-XRF識別可能マーカーで濃縮された植物の発育を可能にする条件下で種子または苗をマーキングする方法;
-灌注または受精を介してXRF識別可能マーカーで生きている植物を濃縮する方法;および
-採取前または採取後に、生きている植物の表面にマーカー組成物を適用する方法
で使用するための、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含み、種子、外植片または生きている植物表面上へ適用されるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
生きている植物によって取り込まれるように適合された、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
接着物質、着色物質、殺虫剤、肥料、および栄養素から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーが、金属炭化物、金属シアン化物、金属硫化物、金属亜硫酸塩、金属硫酸塩、金属硫酸水素塩、金属酢酸塩、金属炭酸塩、金属重炭酸塩、金属酸化物、二または三金属原子分子、金属有機物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属亜硝酸塩、金属硝酸塩、金属ケイ化物、金属水酸化物、金属過酸化物、金属過マンガン酸塩、金属テルル化物、金属カルボニル、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属二水素リン酸塩、金属ホウ化物、金属シュウ酸塩、金属二クロム酸塩、金属クロム酸塩から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーが、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭化物塩および臭素酸塩から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーが、Mgよりも大きい原子量を有する少なくとも1つの金属の塩形態であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属が、Bi、Ge、Ga、St、Mo、Y、Nb、Cr、Zn、As、Sr、Se、Zr、Sn、SbおよびHfから選択されることを特徴とする、請求項5または7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーが、酸化ビスマスゲルマニウム(BiGe12)、酸化ガリウム(Ga)、モリブデン酸ストロンチウム(SrMoO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、クエン酸ビスマス(III)(BiC)および酸化ビスマス(Bi)のうちの1つまたは複数であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
種子の表面領域上に適用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
生存可能な植物へと発育することができる外植片の表面領域上に適用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記外植片が、シュートチップ、腋窩芽、体細胞胚、および種子から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
生きている植物の表面領域上に適用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記種子が維管束植物から選択される植物のものであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記生存可能な植物が維管束植物であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記植物が、開花植物、野菜生産植物、果実生産植物、薬用植物、または園芸植物であることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記植物が、落葉植物、半落葉植物または常緑樹であることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記植物が、開花植物、野菜生産植物、または果実生産植物であることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記植物が、大麻、アロエベラ、ホホバ、シトロネラ、エキナセア、ローズ、インドセンダン、タバコ、カナンガ、カンダモン、プリムロース、シナモン、ユーカリ、チェリー、ラベンダー、バニラ、ライラック、ショウガ、ナツメグ、スペアミント、ペパーミント、メロン、スイカ、ミントなどから選択されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
前記植物が大麻であることを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを用いて外植片をXRFマーキングする方法であって、前記外植片の少なくとも1つの領域上に前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーのコーティングを形成する工程を含み、前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーが、必要に応じて少なくとも1つの担体物質内に含まれることを特徴とする、方法。
【請求項22】
前記外植片が種子であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含むコーティングでその表面をコーティングされた種子であって、前記マーカーが種子中に天然には存在しないことを特徴とする、種子。
【請求項24】
吸収された量の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む種子であって、前記マーカーが種子中に天然には存在しないことを特徴とする、種子。
【請求項25】
前記コーティングが、天然または合成ポリマーの中から選択される少なくとも1つの担体物質を含むことを特徴とする、請求項23に記載の種子。
【請求項26】
前記少なくとも1つの担体物質が、セルロースおよびセルロース由来物質、キトサン、アカシアゴム、デンプン、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、およびポリビニルピロリドンを含むことを特徴とする、請求項25に記載の種子。
【請求項27】
前記コーティングが、噴霧、ブラッシング、ソーキング、器または容器中の浸漬、トップドレッシング、または鍬または耕運機による混和によって形成されることを特徴とする、請求項25に記載の種子。
【請求項28】
請求項23または24に記載の種子から発育した苗または胚芽。
【請求項29】
ある量の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む少なくとも1つの組織領域を有する苗または胚芽であって、前記マーカーが、前記苗または胚芽中に天然には存在しないことを特徴とする、苗または胚芽。
【請求項30】
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーで濃縮された苗または胚芽であって、前記マーカーが、苗の根、苗条または葉に存在し、前記マーカーが、前記種子中に天然には存在しないことを特徴とする、苗または胚芽。
【請求項31】
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを用いて生きている植物をXRFマーキングするための方法であって、前記生きている植物による前記マーカーの取り込みを可能にするために、前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーで濃縮された水で前記生きている植物に給水する工程を含み、前記マーカーは、種子中に天然には存在せず、前記マーカーは、前記生きている植物に由来する組織におけるXRF同定を可能にするのに充分な量であることを特徴とする、方法。
【請求項32】
前記給水が灌注によって達成されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを用いて生きている植物をXRFマーキングするための方法であって、前記生きている植物の成長培地または土壌に少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを組み込む工程、および、前記生きている植物によるマーカーの取り込みを可能にする工程を含み、前記マーカーは、種子中に天然には存在せず、前記マーカーは、前記生きている植物に由来する組織におけるXRF同定を可能にするのに充分な量であることを特徴とする、方法。
【請求項34】
取り込みは、前記成長培地または土壌に固体マーカーを添加する工程、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの形態で少なくとも1つの栄養素を添加する工程、または少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む少なくとも1つの肥料組成物で前記植物の発達を促する工程を含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを用いて生きている植物をXRFマーキングするための方法であって、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを前記生きている植物の表面領域上に適用する工程を含み、前記マーカーは、種子中に天然には存在せず、前記マーカーは、前記生きている植物に由来する組織におけるXRF同定を可能にするのに充分な量であることを特徴とする、方法。
【請求項36】
前記マーカーの適用が、噴霧、ブラッシング、浸漬およびソーキングから選択される方法によることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーでマーキングされた種子または外植片を認証する方法であって、X線信号を前記外植片に向ける工程、および、前記外植片からの(二次)X線応答信号を検出および分析する工程であって、前記応答信号が前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーに対応するとき、前記外植片が認証される工程を含む、方法。
【請求項38】
植物ベースの製品の生産および商業履歴を同定するための方法であって、
-種子表面内または外植片表面もしくは組織内に第1のマーカーを埋め込むことを可能にする条件下で、前記種子または外植片を、第1の時点において第1のXRF識別可能マーカーを含む製剤で処理する工程であって、前記第1のマーカーは、前記種子または外植片またはそれらに関する成長プロセスに関連する少なくとも1つのパラメータをコード化する工程;
-第2の時点において、第2のマーカーを苗の組織内に埋め込むことを可能にする条件下で、必要に応じて、前記種子から成長した苗を、第2のXRF識別可能マーカーで処理する工程であって、前記第2のマーカーは、苗の成長段階に関連する少なくとも1つのパラメータをコード化する工程;および
-前記種子、外植片または苗に由来する植物またはそれらから製造される製品における前記第1および第2のXRF識別可能マーカーの存在を分析する工程
を含む、方法。
【請求項39】
植物またはそれに由来する製品のサプライチェーンを管理するための方法であって、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーで、前記植物の種子または外植片および/または前記種子または外植片から発育した苗をマーキングする工程を含み、前記マーカーは、種子中に天然には存在せず、前記マーカーは、前記マーキング後の時点で前記生きている植物に由来する組織におけるXRF同定を可能にし、それによって前記植物または製品サプライチェーンに関する少なくとも1つの情報を得るのに充分な量であることを特徴とする、方法。
【請求項40】
前記植物が大麻であることを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記製品は大麻ベースの製品であることを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
ある量の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む少なくとも1つの組織領域を有する大麻苗または胚芽であって、前記マーカーが、前記苗または胚芽中に天然には存在しないことを特徴とする、大麻苗または胚芽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子、植物および他の農産物の認証の分野にある。
【背景技術】
【0002】
種子および植物由来生成物の国際貿易は、世界経済における主要な力の1つであり、先進国および発展途上国の両方において需要が増加している。花、果実および野菜として市販品を生産する健康植物を生産するために高い割合で発芽することができる生存能力があり安定な種子に対する大規模な需要は、独特の生産および使用方法の開発をもたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
種子および他の植物材料の標準化に関連する主な問題の1つは、単純かつ費用効果的に区別することができないブラックマーケット製品にある。低品質の種子などの農産物と商業的に有用な製品を生産するために生産された種子との間の効率的な標準化および適切な区別を達成するために、本明細書に開示される技術の発明者らは、生存可能な種子および外植片の販売上マーケティングをモニタリングする目的で、ならびに不正に生産された種子または外植片を同定するために、種子および他の外植片材料などの生存可能な農産物を認証する方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の方法は、概して、少なくとも1つのX線蛍光(XRF)マーカーをそのような種子および外植片に関連付けるための手段を提供し、この関連付けは、種子または外植片を直接認証するための手段を提供するだけでなく、種子または外植片に由来する植物または植物材料の同定も可能にする。種子またはそれに由来する苗あるいは植物または種子もしくは植物に由来する単離物(抽出物)におけるマーカーの検出は、認証、ブランド保護、植物の起源の証明などの目的のため、ならびに植物および植物成分および生成物のサプライチェーンを管理するためのものであり得る。
【0005】
したがって、第1の態様では、本発明は、少なくとも1つのXRF識別可能マーカー(本明細書ではマーカーと交換可能に称される)を含む農業用組成物を提供する。本明細書で説明する組成物は、様々な形態での用途に適合させることができる。XRF識別可能マーカーで生きている植物をマーキングするために、本発明は、以下のいくつかの代替方法を提供する:
-XRF識別可能マーカーで濃縮された植物の発育を可能にする条件下で種子または苗をマーキングする;
-灌注または受精を介して、生きている植物をXRF識別可能マーカーで濃縮する、濃縮する;および
-例えば噴霧によって、採取前または採取後に生きている植物の表面にマーカー組成物を適用する。
【0006】
本発明はさらに、本明細書で定義される少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む組成物を提供し、組成物は、外植片または生きている植物表面上へ適用するように構成される。
【0007】
生きている植物によって取り込まれるように適合された組成物も企図され、組成物は、本明細書で定義される少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む。
【0008】
本発明の方法に従って使用される本発明の組成物は、概して、農業用途に適合される。したがって、農業用組成物は、例えば、外植片または種子とマーカーとの間の会合を確保または許容または可能にすることができる少なくとも1つの農業的に許容される担体、あるいは、マーカーをその提示された形態で可溶化または含有する担体とともに、ある量のXRF識別可能マーカーを含み得る。担体および/またはマーカーは、水溶性または水不溶性であるように選択され得る。マーカーが水溶性である場合、それは水の存在下で分解し、発育中の胚によって取り込まれ得る。また、担体は、発育中の苗によるマーカーの取り込みを助けることができる栄養素または肥料として知られる物質の中から選択することができる。
【0009】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の農業用組成物は、少なくとも1つのXRF識別可能マーカー、少なくとも1つの担体、および必要に応じて少なくとも1つの添加剤を含み得る。少なくとも1つの添加剤は、接着物質、着色物質、殺虫剤、肥料、栄養素、および当技術分野において公知であり得る他の農業添加剤から選択され得る。
【0010】
本発明の農業用組成物中に存在するXRFマーカーは、X線蛍光(XRF)分光法によって検出可能な原子を含む任意のマーカー物質であってもよく、X線またはガンマ線放射は、例えば種子または外植片の試料に向けられ、そこからの応答X線信号が検出および分析される。XRF分光計(分析器)は、種子または外植片の表面上、あるいは概してマーカーが関連付けられる植物の任意の部分の表面上の、マーカーの存在を検出し、その濃度を測定し得る。
【0011】
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの存在は、認証される種子または外植片中に天然に存在する物質と区別されるため、XRF識別可能マーカーは、種子または外植片中に典型的には見出されない、または種子または外植片が成長する環境(土壌および水を含む)中に見出されない、またはそれらの成長を管理するプロセスにおいて使用される肥料もしくは栄養素中に見出されない、物質の中から選択される、あるいは、植物または環境に存在する量よりも多い量もしくは濃度で本発明の組成物中に提供されており、マーカーが種子または外植体によって取り込まれると、マーカーから受信されるXRF信号を読み取る際に得られる信号は、例えば天然に存在する濃度から受信される信号と区別可能である。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、生きている植物または生きている植物が成長している土壌中に天然に存在する物質である植物栄養素(植物成長または植物代謝に必要な任意の化学元素または化合物;例えば、多量栄養素および微量栄養素)の成分ではないか、または成長の管理に使用される物質(肥料、栄養素など)ではないように選択される。
【0013】
さらに、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、本明細書に詳述されるように、1つ以上のマーカーを、種子、外植片または増殖環境中に天然に存在し得る任意の1つ以上のマーカーと区別する比率で提供される、2つ以上のそのようなマーカーの組合せであってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、金属炭化物、金属シアン化物、金属硫化物、金属亜硫酸塩、金属硫酸塩、金属硫酸水素塩、金属酢酸塩、金属炭酸塩、金属重炭酸塩、金属酸化物、二または三金属原子分子、金属有機物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属亜硝酸塩、金属硝酸塩、金属ケイ化物、金属水酸化物、金属過酸化物、金属過マンガン酸塩、金属テルル化物、金属カルボニル、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属二水素リン酸塩、金属ホウ化物、金属シュウ酸塩、金属二クロム酸塩および金属クロム酸塩の中から選択することができる。。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、コネージ、トリエル、プリクトゲン、カルコゲン、またはテトレルと称される原子の群から選択される少なくとも1つの原子である。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭化物塩および臭素酸塩から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、Mgよりも大きい原子量を有する少なくとも1つの金属の塩形態である。いくつかの実施形態において、金属は、Bi、Ge、Ga、St、Mo、Y、Nb、Cr、Zn、As、Sr、Se、Zr、Sn、SbおよびHfから選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、Bi、Ge、Ga、St、Mo、YおよびNbから選択される少なくとも1つの金属の酸化物形態である。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、酸化ビスマスゲルマニウム(BiGe12)、酸化ガリウム(Ga)、モリブデン酸ストロンチウム(SrMoO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、クエン酸ビスマス(III)(BiC)および酸化ビスマス(Bi)のうちの1つまたは複数である。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、臭化物含有分子であり、これは臭化物塩またはブロモ置換有機もしくは無機分子であり得る。
【0021】
本発明の組成物において、使用される異なるマーカーの数およびそれぞれのそのようなマーカーの相対量は、とりわけ、特定の意図される使用、認証される種子または外植片、種子成長の条件、および、例えば種子のマーキングと発芽の時間との間に及ぶ期間に応じて変動し得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、単一のXRF識別可能マーカーを含み得る。他の実施形態では、XRF識別可能マーカーの数は、2つ以上であってもよく、2つ以上のマーカーのそれぞれは、量および構成(例えば、金属イオン、対イオンなど)が異なってもよい。
【0022】
本発明の組成物は、様々な農業用途に使用することができる。少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む組成物は、生存植物(すなわち、生きている植物または苗)、種子または外植片の表面上に適用してその認証を可能にするように構成され得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、外植片は、生育可能な植物に発達させることができる任意の植物の任意の部分である。外植片は、シュートチップ、腋窩芽、体細胞胚、種子などから選択され得る。いくつかの実施形態では、外植片は種子である。
【0024】
生きている植物または植物に発育する種子もしくは外植片に関する、本明細書に開示される任意の態様または実施形態の「植物」は、主に維管束植物から選択される植物界のメンバーである。植物は、開花植物、野菜生産植物、果実生産植物、薬用植物、園芸植物などであり得る。植物は、落葉植物、半落葉植物または常緑樹であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、植物は、開花植物、野菜生産植物、または果実生産植物である。
【0026】
いくつかの実施形態では、植物は、大麻、アロエベラ、ホホバ、シトロネラ、エキナセア、ローズ、インドセンダン、タバコ、カナンガ、カンダモン、プリムロース、シナモン、ユーカリ、チェリー、ラベンダー、バニラ、ライラック、ショウガ、ナツメグ、スペアミント、ペパーミント、メロン、スイカ、ミントなどから選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、植物は大麻である。
【0028】
いくつかの実施形態では、種子または外植片は、落葉植物または常緑樹のものである。いくつかの実施形態では、種子または外植片は大麻のものである。
【0029】
本発明の組成物はまた、生きている植物による少なくとも1つのXRF識別可能マーカーおよび/または担体の取り込みを可能にするように、すなわち、マーカーが、発芽プロセス中に種子によって吸収される、またはその発育中に苗によって吸収される、または、種子コーティングあるいは種子または植物が植物に成長する環境からのマーカーの移動を可能にする方法でその成長サイクルのいずれかにおいて植物によって吸収される、ことを可能にするように適合され得る。
【0030】
本発明はさらに、定義されるような外植片のXRFマーキングのための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーのコーティングを形成する工程を含み、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、必要に応じて少なくとも1つの担体物質内に含まれる。
【0031】
いくつかの実施形態では、外植片は種子である。
【0032】
したがって、本発明はさらに、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含むコーティングでその表面をコーティングされた種子を提供する。
【0033】
また、本明細書で定義される少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの吸収された量を含む種子も提供される。
【0034】
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含むコーティングは、当該技術で既知の任意の手段によって、種子または外植片の表面の周囲に形成され得る。コーティングは、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーからなり得るが、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、マーカーを埋め込むマトリックスとして作用する少なくとも1つの担体物質内に含まれる、埋め込まれる、または分散される。担体は、本明細書に開示されるように、少なくとも1つの添加剤をさらに含み得る。
【0035】
少なくとも1つの担体物質は、有害生物および疾患から種子を保護するために種子処理において使用される任意の物質であり得る。少なくとも1つの担体は、天然および合成物質の中から選択することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体物質は、天然または合成ポリマーの中から選択される。このような物質の非限定的な例としては、セルロースおよびセルロース由来物質、キトサン、アカシアゴム、デンプン、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0036】
典型的には、種子または外植片の表面上に形成されるコーティングは、少なくとも1つの担体および有効量または充分な量の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む。マーカーの量は、以下に詳述されるように、XRF分光計による効果的な読み取りを可能にするように選択される。
【0037】
いくつかの実施形態では、コーティングは、発芽前または発芽中に形成される。
【0038】
マーカー物質の各々の濃度は、XRF分光計(分析器)によって測定することができ、したがって、それぞれがある濃度範囲において存在し得る複数のマーカーを含むマーキング組成物を使用して、例えば、種子または外植片、そのバッチ、その起源、播種および/または収穫の日付、その意図される使用、その目的または様々な処理設備などに関する情報をコード化することができる。マーキングはまた、植物または胚芽の特定の株を示すために使用されてもよく、植物のその場の(in situ)識別(例えば、圃場または栽培施設における)が容易となる。
【0039】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーの濃度は、コーティング組成物の総重量に対して0.0001~10質量%である。種子のコーティング層の厚さは数十ミクロン~数ミリメートルの範囲であり得る。
【0040】
コーティングは、種子または外植片の任意の1つの領域上に形成され得る。コーティングが適用される種子または外植片の領域は、マーキングされた種子または外植片を、マーキングされていないまたは偽造された種子または外植片から区別するパターン形成パラメータを提供するように選択され得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、種子または外植片の全表面上に形成される。いくつかの実施形態では、コーティングは、種子または外植片の1つまたは複数の間隔を空けた領域上に形成される。
【0041】
コーティングは、噴霧、ブラッシング、浸漬、器または容器への浸漬、トップドレッシング(topdressing)、あるいは鍬または耕運機による種子の周りの砂への混和を含む、当該技術で既知の任意の手段によって形成され得る。
【0042】
種子が関係する場合、例えば、それらは、マーカーを含む組成物によってコーティングされてもよく、これは、噴霧、ブラッシング、器または容器(例えば、回転ドラムまたは連続フローミル)中のソーキングまたは浸漬、または任意の他の堆積方法によって種子の表面に適用されてもよく、マーキング組成物が種子の表面に付着、接着または結合する。さらに、マーキング組成物は、種子製造プロセスの一部として、種子処理のために農業施設で使用される種子コーティング機によって種子に適用されてもよく、種子は、一般的な種子コーティング物質(抗菌物質または殺真菌物質ならびに肥料の適用、着色および他の目的に使用される)に混合することができる。
【0043】
あるいは、マーキング組成物は、種子が水に浸漬されるかまたは湿潤条件下で維持される場合に、種子と接触する水にマーキング組成物を添加することによって、発芽段階の前またはその間に種子に適用されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、水不溶性である。そのような場合、1つ以上の水不溶性マーカーを含む水性組成物は、種子の外表面上に物質コーティングを形成する際に使用するためのエマルジョン(例えば、懸濁液、分散液またはコロイド)の形態であり得る。
【0045】
水不溶性マーカーは、追加的または代替的に、植物または植物組織に存在するアミノ酸に結合または会合することができる中間体または架橋分子に付着または結合して提供することができる。このような架橋分子は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、キトサンおよびリグニンの中から選択することができる。
【0046】
種子は発芽中に水を吸収するので、XRF識別可能マーカー(ならびに担体)は、種子によって発生中の胚芽または苗に吸収され得る。次いで、XRF識別可能マーカーは、成長中の胚芽の他の部分(茎、葉および花)に広がって拡散し、XRF分光計によって検出され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、種子が浸漬されたまたは種子が接触している水中のXRF識別可能マーカーの濃度は、数十ppm~数十パーセントである。
【0048】
したがって、本発明はさらに、本発明に従ってコーティングされた種子から発育した苗または胚芽を提供する。
【0049】
また、ある量の本明細書に定義されるような少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む少なくとも1つの組織領域を有する苗または胚芽が提供される。苗または胚芽は、当該技術で知られているように、植物種子から発生する若い植物である。苗は、胚の根、胚の苗条および種子の葉を有することによって、(それが発達する)種子から、または(それが発育する)成体植物から分化し得る。
【0050】
さらに、本明細書で定義される少なくとも1つのXRF識別可能マーカーが濃縮された苗または胚芽が提供される。マーカーは、苗の根、苗条および/または葉に存在し得る。
【0051】
本明細書に詳述されるように、本発明は、生きた植物を灌注または受精を介してXRF識別可能マーカーでマーキングまたは濃縮するための少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む農業用組成物を提供する。灌注を介して生きた植物をマーキングするための方法は、ある量のXRF識別可能マーカーを含む灌注水の使用を含む。水で灌注すると、マーカーは土壌または成長培地に吸収され、生きている植物の根に取り込まれ、幹、茎、葉および花の組織に広がり拡散する。吸収されたマーカーは、とりわけ、灌水中のマーカーの濃度および植物の水取り込みに応じて、長期間に亘って植物組織内に留まる。植物組織に存在するマーカーは洗い流すことができないため、XRF分光計による検出が可能となる。
【0052】
マーカーは植物の組織内に存在するので、処理の様々な段階中にそこに留まり得る。例えば、葉および花は、(例えば、大麻加工におけるような)加工の第1段階において収穫および乾燥され得る。花または葉が乾燥し、水を失うにつれて、植物内のマーカーの濃度は増加し、マーカーのより容易かつより正確な同定を可能にし得る。
【0053】
あるいは、1つまたは複数のXRF識別可能マーカーを有する組成物は、例えば、鍬または耕運機によって成長培地または土壌に組み込むことができる、または、トップドレッシングとしてあるいは固体または顆粒形態で土壌表面上に置かれてもよい。そのような実装形態では、根によるXRF識別可能マーカーの取り込みは、マーカーが雨または灌注水によって溶解されると行われる。固体マーカーを成長培地または土壌に添加することによって(例えば、マーカーは、必要に応じて固体担体と混合され、その後、植物が植え付けられる前または種子が発芽する前に、あるいは植物の成長期間中に、成長培地または土壌に混合される)、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの形態の少なくとも1つの栄養素を添加することによって(例えば、少なくとも1つの栄養素はマーカーを含んでもよい、またはマーカーであってもよい)、または少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む少なくとも1つの肥料組成物で植物の発達を促することによって、マーカーを組み込みんでもよい。
【0054】
本発明の組成物はまた、(幹、茎、葉などの植物部分の)植物の外表面上への、例えば噴霧による適用のために使用され得る。植物部分は、収穫前または収穫後に植物または植物部分を噴霧、ブラッシング、浸漬またはソーキングすることによって、本明細書で定義される組成物を植物の外表面に塗布することによってマーキングすることができる。例えば、組成物は、植物に噴霧される液体肥料、成長促進剤、および/または害虫駆除物質または雑草抑制物質とブレンドされ得る。
【0055】
本発明はさらに、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーでマーキングされた種子または外植片を認証する方法を提供し、この方法は、X線信号を外植片に向ける工程、および、応答信号が前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーに対応するとき、外植片が認証されるように、外植片からの(二次)X線応答信号を検出および分析する工程を含む。
【0056】
XRFマーキングは、生きている植物または種子または外植片の外表面から、あるいは生きている植物または種子または外植片の内層から検出することができる。同様に、適切なXRFリーダーは、パッケージの内部からマーカーを検出することができる。例えば、マーキングされた種子のパッケージは、積層ポリマー材料から作製されてもよく、マーカーは、手持ち式XRFリーダーによって識別される。積層ポリマー材料は、最大数百ミクロンの厚さであってもよく、より重いマーカー元素についてはさらに厚くてもよい。あるいは、パッケージまたはラップは、それ自体がXRFマーキングによってマーキングされてもよく、パッケージ内の製品およびパッケージ自体の両方のマーキングは、同じXRFリーダーによって、必要に応じて単一のスペクトルを取ることによって測定することができる。パッケージをマーキングするのに適したポリマー材料をマーキングするためのシステムおよび技術は、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/IL2017/051112号明細書またはそれに由来する任意の米国出願および米国仮出願第62/874,141号明細書に記載されている。
【0057】
本発明の一態様では、種子、外植片、および植物のマーキングは、種子、外植片、および植物が、栽培者から、さまざまな流通業者および処理施設を通って、おそらくエンドユーザまで、サプライチェーン全体に亘って取引が行われる際に、認証のためのツールを提供する。植物または種子は、1つの場所(例えば、栽培者/耕作者)で一度だけマーキングされてもよく、サプライチェーンにさらに沿った第2の場所/施設(例えば、流通業者または加工施設)で検出されてもよい。あるいは、植物または種子は、複数の場所でマーキングされてもよく、各場所において、同じまたは異なるマーカーが植物または種子に適用される。例えば、種子は発芽前にマーキングされてもよく、胚は2回目にマーキングされてもよく、植物は成長するにつれ1回または複数回マーキングされてもよく、次いで収穫後に再びマーキングされてもよい。別の実施例では、植物はまた、エンドユーザまでの様々の場所で読み取られ得るように、処理中および処理後にマーキングされてもよい。
【0058】
本発明の方法は、植物または植物成分から作製されたあるいはは植物成分を含有する製品のサプライチェーンを管理および監督するために使用され得る。植物上のマーキングは、種子、植物または植物製品およびそれらの供給業者を識別するために使用され得る。植物のためのサプライチェーンを管理するためのシステムは、植物およびそれらのマーキングに関するデータが記憶されるデータベースシステム(中央または分散型)を含み得る。例えば、データベースシステムは、植物、パッケージ、または植物および植物製品のバッチの過去および現在位置、ならびに将来の目的地(例えば、販売業者および購入者)を記録することができる。この目的のために、マーキングを読み取るデバイス(例えば、XRF分析器)は、データベースシステムと通信することができる。データベースシステムは、オンプレミス、クラウドベースのシステム、または分散型台帳であってもよい。ある実施例では、データベースシステムは、複数の当事者が関連データを記憶し、それにアクセスする分散型ブロックチェーンシステムであってもよい。そのようなブロックチェーンシステムでは、複数の当事者(例えば、同じサプライチェーンのメンバーである当事者)がデータを記憶し、アクセスすることができ、記憶されたデータは、不変であり、容易に検証可能であり、分散型設計により、本質的に修正されにくい。ある実施例において、本発明のマーキングおよびブロックチェーンシステムは、大麻植物および種子および大麻製品の供給チェーンを管理するために使用され得る。ブロックチェーンシステムの当事者は、栽培者、研究所および処理施設、流通業者、製薬会社、薬局、トレーダー、配達会社、政府機関、およびエンドユーザさえも含み得る。大麻植物または大麻製品は、当事者の間で取引が行われる際に記録することができる。ある実施例において、大麻植物または製品のマーキングは、適切なXRF装置によって読み取られ(検出され)、サプライチェーンに沿って取引されるたびに記録され、ブロックチェーン上に記録され(例えば、自動的に)、各当事者が植物または製品の所在および完全な履歴を容易に検証することを可能にする。マーキングされた物体および製品のサプライチェーンを管理するのに適したブロックチェーンシステムは、国際特許出願第PCT/IL2018/050499号明細書および同第PCT/IL2019/050283号明細書またはそれらに由来する任意の米国特許出願に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
例えば、本発明の方法は、大麻植物および大麻製品のサプライチェーンを管理および監督するために使用され得る。大麻植物および種子は、1つまたは複数の場所でマーキングされることができる。例えば、大麻種子および大麻種子パッケージは、1つの場所で(1つの方法を用いて)マーキングされてもよく、植物は、発芽および成長中に(例えば、灌注によって)異なる場所で2度目の(同じまたは異なるコードによって)マーキングをされてもよい。植物または植物部分/含有物がサプライチェーンに沿って(例えば、様々な供給業者、流通業者、処理施設に)進むにつれて、マーキングを読み取ることができ、それによって植物の供給源、その様々な流通業者、その処理設備などを認証することができる。さらに、マーキングは、植物の種および株(異なる株は、特に成長の初期段階において、互いに区別できない場合がある)ならびに植物中の様々なカンナビノイドの濃度レベルを示し得る。ある実施例では、マーキングは、植物または製品が医療用途を意図しているかどうか、さらには意図されている特定の医療用途を意図しているかどうかを示し得る。
【0060】
XRF分光計または分析器は、種子または外植片の表面を越えて延在する容積に存在するマーカーを検出および測定するために使用されることができ、表面の下の容積の深さは、種子または外植片に向かって放出される放射線のエネルギーおよびマーカーによって放出される応答信号、およびマーカー物質および植物の組成、ならびに追加の因子(例えば、XRF分光計における検出器およびエミッタの幾何学的構成および測定された試料)によって特定される。試料に向かって入射する放射線の浸透深さは、より軽い物質(例えば、有機物質)に対して増加し、したがって、XRF分析器内の検出器に向かって試料の内側で応答信号が進行し得る距離も増加する。したがって、XRF分光法は、試料のバルク内部のマーカーを検出および測定することができるので、試料、特に有機物質の試料内部に存在するマーカーを検査および検出するのに特に適している。複数のマーカー物質(元素)(例えば、Mgよりも重い元素)は、有機物質のバルク内で、数百ミクロンから数ミリメートルまたは数十ミリメートル、場合によってはそれ以上の範囲の深さ(バルクの外面からの距離)で検出することができる。マーカー元素を検出するXRF分析器は、モバイルエネルギー分散型X線蛍光EDXRFデバイス(例えば、手持ち式EDXRF)によってもよい。XRF分析器は、ベンチトップ装置であってもよい。植物の表面上または内部に存在するマーカーを(様々な深さで)検出および測定するのに適したXRF分析器は、国際特許出願第PCT/IL2017/051050号明細書またはそれに由来する任意の米国特許出願に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。さらに、XRF分析器は、波長分散X線蛍光(WDXRF)装置であってもよい。
【0061】
本明細書に開示されるようなマーカーで濃縮またはマーキングされた植物または植物部分に由来する製品は、以下のようでありうる:乾燥植物物質、例えば、乾燥葉、花、幹、茎、苗条および他の植物部分の形態;マーキングされた葉、花、幹、茎、苗条および他の植物部分が水に注入される、注入の形態;活性物質が植物部分から抽出され、マーカーがそれと共に抽出される、抽出物の形態;または、マーキングされた植物がそのまま使用するために提供される、任意の他の新鮮な形態。本発明に従ってマーキングされた植物または外植片または種子または苗に由来する任意のそのような製品におけるマーキングは、適切なXRFリーダーによって検出および同定され得る。
【0062】
本発明はさらに、植物ベースの製品の生産および商業履歴を同定するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を含む:
-種子表面内または外植片表面もしくは組織内に第1のマーカーを埋め込むことを可能にする条件下で、種子または外植片を、第1の時点において第1のXRF識別可能マーカーを含む製剤で処理する工程;ここで、第1のマーカーは、種子または外植片またはそれらに関する成長プロセスに関連する少なくとも1つのパラメータをコード化する;
-第2の時点において、第2のマーカーを苗の組織内に埋め込むことを可能にする条件下で、必要に応じて、種子から成長した苗を、第2のXRF識別可能マーカーで処理する工程;ここで、第2のマーカーは、苗の成長段階に関連する少なくとも1つのパラメータをコード化する;および
-種子、外植片または苗に由来する植物またはそれらから製造される製品における第1および第2のXRF識別可能マーカーの存在を分析する工程。
【0063】
植物またはそれに由来する製品のサプライチェーンを管理するための方法もまた提供され、この方法は、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーで、前記植物の種子または外植片および/または前記種子または外植片から発育した苗をマーキングする工程を含み、マーカーは、種子中に天然には存在せず、マーカーは、前記マーキング後の時点で前記生きた植物に由来する組織におけるXRF同定を可能にし、それによって前記植物または製品サプライチェーンに関する少なくとも1つの情報を得るのに充分な量である。
【0064】
いくつかの実施形態では、植物は大麻である。
【0065】
いくつかの実施形態では、製品は、本明細書で定義されるような大麻ベースの製品である。
【0066】
ある量の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む少なくとも1つの組織領域を有する大麻苗または胚芽も提供され、マーカーは、前記苗または胚芽中に天然には存在しない。
【0067】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、実際にどのように実施され得るかを例示するために、非限定的な例としてのみ、添付の図面を参照して、実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1A】種子および主根(蒸留水で洗浄した後)上で検出されたマーカー信号強度、ならびにマーキングされていない種子からのスペクトルを示す。
図1B】種子および主根(蒸留水で洗浄した後)上で検出されたマーカー信号強度、ならびにマーキングされていない種子からのスペクトルを示す。
図2】14日間の期間の0日目(マーキング前)、4日目、7日目、および19日目にそれぞれ採取された植物2の典型的な葉から測定されたエネルギーに対するマーカー(Br)信号強度を示すグラフD-0、D-4、D-7、およびD-19を示す。
図3】14日間の期間の0日目(マーキング前)、3日目、9日目、および14日目にそれぞれ採取された植物3の典型的な葉から測定されたエネルギーに対するマーカー(Br)信号強度を示すグラフD-0、D-3、D-9、およびD-14を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
一般的なマーキング組成物
本発明の組成物は、様々なXRFマーカーを利用して調製されている。マーカーのいくつかは水溶性であり、いくつかは水不溶性であった。以下は、本発明に従って使用されるマーカーの非限定的な実施例である。
【0070】
可溶性マーカー:
ビス-ブロモ-エチルプロパン-ジオール;Co(NO 6HO;Ni(NO) 6HO;Y(NO 6HO;SnCl 2H0;NHBr;NaCl;KI;CsCO;NaSe。
【0071】
非可溶性マーカー:
CoAcAc;NiAcAc;ヘキサン酸エチルスズ;トリブロモアニリン;トリクロロアニリン;WO;Nb
【0072】
実施例1-種子
6種類の種子がマークされた:2つの異なるタイプのトマト種子、2つの異なるタイプのペッパー種子、および2つの異なるタイプのスイカ種子。種子の各タイプは、2~3個の分子を含むマーキング組成物でマーキングされ、各分子は、1つまたは2つのマーカー元素を含む。以下の7つのマーカー分子を使用した:
酸化ビスマスゲルマニウム-BiGe12;酸化ガリウム-Ga;モリブデン酸ストロンチウム-SrMoO;酸化イットリウム-Y;酸化ニオブ-Nb;クエン酸ビスマス(III)-BiC;酸化ビスマス-Bi
【0073】
これらの分子を2~3個含む6つのマーキング組成物(6つの種子タイプのそれぞれについて6つのコードを画定する)を調製した。マーキング組成物は、種子用の産業用コーティング組成物(すなわち、産業において使用されるコーティング組成物)中に分散/溶解/懸濁され、ブレンド中の各マーカー元素の最終濃度は、0.1質量%~0.15質量%であった。マーキング組成物を含むコーティング組成物を回転ドラムによって種子に適用した。種子の各バッチを、手持ち式XRF装置によって直接(パッケージの外側)およびそれらのパッケージの内側で検査した。種子のパッケージは、合計厚さ100μmの金属化バリア層を含む積層ポリマー物質を含んでいた。XRFデバイスによって受信された信号の強度は、パッケージの内側で測定すると、(パッケージされていない試料と比較して)数パーセント~50%減少したが、6つの種子のバッチのすべてがパッケージの外側および内側の両方で同定された。
【0074】
同様に、種子をマーキングする目的で他のXRFマーカーを使用した。
【0075】
実施例2-種子(溶液)
メロンおよびスイカ種子を、水性コーティング組成物(産業で使用されるもの)に溶解した可溶性マーキング組成物によってマーキングした。種子の各タイプが、1つまたは2つの分子を含むマーキング組成物によってマーキングされ、各分子は1つのマーカー元素を含む。以下の3つの分子を使用した:臭化ナトリウム-NaBr;硝酸イットリウム(III)6水和物-Y(NO 6HO;および硝酸コバルト(III)6水和物-Co(NO 6HO。
【0076】
種子を、回転ドラムによってあるいはエアブラシによって、コーティング組成物によりコーティングした。コーティング組成物中の全てのマーカーの濃度は、1000ppm~2000ppmであった。コーティングされた種子の各バッチを、手持ち式XRF装置によって直接(パッケージの外側)およびそれらのパッケージの内側で検査した。種子のパッケージは、合計厚さ100μmの金属化バリア層を含む積層ポリマー物質を含んでいた。XRFデバイスによって受信された信号の強度は、パッケージの内側で測定すると、(パッケージされていない試料と比較して)数パーセント~50%減少した。マーキングされた種子のバッチのすべてがパッケージの外側および内側の両方で同定された。
【0077】
実施例3-発芽
発芽前および発芽中に、いくつかの濃度の塩化クロム(III)6水和物(CrCl 6HO)を含むマーキング組成物によって、グリーンビーンズ(Vigna radiata)種子をマーキングした。マーキング前に手持ち式XRF装置で種子を検査したところ、有意なCr信号マーカーは検出されなかった。
【0078】
種子の第1のバッチを水に24時間浸漬し、次いで濃度5000ppmでマーキング組成物を含む種子コーティング組成物でコーティングした。種子を発芽のために出芽容器に配置した。種子/胚を湿った状態に保ち、出芽容器に蒸留水を給水した。2日後、手持ち式XRF装置で胚を検査し、種子を測定すると強いCr信号が検出された。より弱いCr信号が、種子(根粒)から出てくる主根において検出された。
【0079】
マーキング組成物を有する水に種子を20時間浸漬し、次いでマーキング組成物を含有する水を種子(湿った綿のウール基材上に置かれた)に給水することによって、種子の第2のバッチをマーキングした。これを、水中のマーキング組成物の3つの異なる濃度について(種子の浸漬および胚芽の散水の両方について)20ppmおよび100ppmで行った。種子および種子から出てくる主根を、蒸留水で洗浄する前および後に手持ち式XRF装置によって検査した。マーカーは、洗浄前および洗浄後の両方で、3つの濃度すべてについて、胚の種子、主根において検出された。種子および主根から受信された信号は、洗浄後に数パーセントから最大で50%減少した。
【0080】
図1Aおよび1Bは、種子および主根(蒸留水で洗浄した後)上で検出されたマーカー信号強度、ならびにマーキングされていない種子からのスペクトルを示す。図1Aは、種子(上線)、20ppmのマーカー濃度を有する溶液によってマーキングされた主根(中央線)、およびマーキングされていない種子(下線)についての、マーカー信号強度対エネルギーを示す。図1Aに示すように、20ppm溶液でマーキングされた種子のCr信号強度は、マーキングされていない種子から受信された信号よりも124%高かった。主根(洗浄後)から受信された信号は、マーキングされていない種子よりも57%高かった。図1Bは、種子(上線)、100ppm溶液によってマーキングされた主根(中央線)、およびマーキングされていない種子(下線)についての、マーカー信号強度対エネルギーを示す。100ppm溶液でマーキングされた種子から測定されたCr信号強度は、マーキングされていない種子の信号強度よりも218%高かったが、主根から測定されたCr信号強度は60%高かった。
【0081】
マーキング組成物を含有する水に種子を13時間浸漬することによって、種子の第3のバッチをマーキングした。次いで、種子を湿った綿のウール基材上に置き、蒸留水(マーキング組成物なし)を給水した。これを、20ppm、50ppm、および100ppmの3つの異なる濃度について行った。胚を手持ち式XRF装置で検査した。マーカーが種子上で検出された。
【0082】
実施例4-植物
培養土を有するポット中の3つのスペアミント(Mentha spicata)植物を、灌注(培養土に給水する)によってマーキングした。3つの植物全てについて、灌注水に溶解したマーキング組成物は臭化カルシウム(CaBr)を含んだ。手持ち式XRF装置によって、植物を毎日または数日毎に検査した。各検査において、3つの異なる茎からの3つの葉を検査し、取得されたスペクトルにおけるBr信号を測定した。いかなる処理もせずに水道水で洗浄する前および後の両方で、葉を検査した。洗浄した葉と洗浄していない葉との間で有意差は見られなかった。検査した全ての葉(3つの植物について)において、マーキング前にBrの非常に小さな信号が検出された。この信号(3つの植物すべてについて)は、マーキングされた植物の信号よりもはるかに小さかった(最大で数桁)。
【0083】
植物1を、5000ppmの濃度でCaBrを含む水道水で2週間毎日給水した。2週間後、マーキング前のBr信号強度に対するBr信号強度(3つの葉について平均した)の割合は496であった。その時点以降、植物に水道水(マーカーなし)を給水した。マーキング前のBr信号強度に対するBr信号強度の割合は、29日間の定期的な灌注後(マーカーなし)、約320まで徐々に減少した。
【0084】
マーキングされた水による5日間の灌注後、3つの葉を採取し、次いで室温条件(温度および照明)で2週間乾燥させた。これらの葉を乾燥の前および後に検査した。マーカーの信号強度は、乾燥後に有意に増加した。平均して(3つの葉について)、バックグラウンドに対するマーカー信号の割合は34%増加した。
【0085】
植物2を、50ppmのCaBrを有する水道水で19日間に亘って毎日給水した。3つの葉(3つの異なる茎から)を、各給水前に手持ち式XRFによって毎日検査した。マーキング前のBr信号強度に対するBr強度の割合は、その期間に16.3に(すなわち、1500%を超えて)増加した。19日間後、植物を通常の水道水(マーカーなし)でさらに10日間(合計29日間)毎日給水した。10日間後にマーカー信号強度の有意な減少は検出されなかった。図2は、14日間の期間の0日目(マーキング前)、4日目、7日目、および19日目にそれぞれ採取された植物2の典型的な葉から測定されたエネルギーに対するマーカー(Br)信号強度を示すグラフD-0、D-4、D-7、およびD-19を示す。
【0086】
マーキングされた水による5日間の灌注後、3つの葉を採取し、次いで室温条件(温度および照明)で2週間乾燥させた。これらの葉を乾燥の前および後に検査した。マーキング前のマーカー強度に対するマーカー信号強度の割合は、平均して(3つの葉について)21%増加した。
【0087】
植物3を、14日間に亘って水道水で毎日給水し、50ppmのCaBrマーカーを3日毎に(合計4回)水に溶解した。3つの葉(3つの異なる茎から)を、各給水前に手持ち式XRFによって検査した。マーカー信号強度の平均(各日3つの葉について)は、マーキングされていない植物(マーキング前の0日目に測定)と比較して、3日目に569%、9日目に774%、および14日目に1052%増加した。図3は、14日間の期間の0日目(マーキング前)、3日目、9日目、および14日目にそれぞれ採取された植物3の典型的な葉から測定されたエネルギーに対するマーカー(Br)信号強度を示すグラフD-0、D-3、D-9、およびD-14を示す。
図1A
図1B
図2
図3
【国際調査報告】