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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】複数の硬化状態を含むインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/16 20060101AFI20221025BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20221025BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61L27/16
A61L27/50 100
A61L27/50
A61L27/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512399
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 IL2020050928
(87)【国際公開番号】W WO2021038562
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/891,460
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522068555
【氏名又は名称】セットボーン メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン、ロイ
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン、ニムロッド
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB01
4C081BB06
4C081BB07
4C081BB08
4C081CA051
4C081CA052
4C081CB021
4C081CB022
4C081CC04
4C081CE02
(57)【要約】
本発明は、個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料から形成される変形可能体に関し;前記ポリマー材料は、より低架橋の第1の構成で提供されており;前記ポリマー材料は、適切な刺激を付与すると、前記刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料から形成される変形可能体を含み、
前記ポリマー材料は、より低架橋の第1の構成で提供されており、
前記ポリマー材料は、適切な刺激を付与すると、前記刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、医療グレードのインプラント。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)に共有結合しているメタクリレート基を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記官能基がメタクリレートを含み、前記ポリマー主鎖がPVAを含む、請求項1又は請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記ポリマーが、Pv-GMA、Pv-IMA、Pv-AMA、Pv-EMA、Pv-MA、Pv-GMA-GAE、Pv-GMA-AE、又はこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項5】
前記ポリマーが、約1%~約25%の内部又は外部可塑剤を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項6】
前記インプラントを前記刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項7】
前記ポリマーが10%未満の遊離モノマーを含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項8】
前記ポリマーが遊離モノマーを含まない、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントが10体積%未満の前記ポリマー材料を含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項10】
前記インプラントが80体積%超の前記ポリマー材料を含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項11】
前記インプラントが約60体積%~約90体積%の前記ポリマー材料を含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項12】
前記より低架橋の第1の構成において、前記インプラントは約0.01MPa~約1MPaの弾性率を有する、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項13】
前記より高架橋の第2の構成において、前記デバイスは約2MPa~約500MPaの弾性率を有する、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項14】
前記弾性率が、前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成へ、約10倍~約1000倍変化する、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項15】
前記ポリマーの平均分子量が約1,000g/モル~約200,000g/モルである、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項16】
患者の自然熱が前記刺激として作用するのに適する、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項17】
前記官能基が活性官能基である、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項18】
前記官能基の前記架橋が、相互の架橋である、請求項1~請求項17のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項19】
前記官能基の前記架橋が、前記インプラントに含まれる別の材料との架橋である、請求項1~請求項18のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項20】
前記少なくとも1つの添加剤が、前記ポリマー材料を、光、UV Vis、温度閾値を超える温度、IR、水、pH、及びこれらの任意の組み合わせのうちの1又は複数に対して感受性にさせる、請求項1~請求項19のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項21】
前記刺激が前記架橋の80%を終了させるのに必要な時間が約1分~約60分である、請求項1~請求項20のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項22】
前記温度閾値が20℃を超える、請求項1~請求項21のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項23】
前記UVが前記架橋の80%を終了させるのに必要な時間が約2秒~約20分である、請求項1~請求項22のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項24】
前記刺激が低分子である、請求項1~請求項23のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項25】
前記インプラントが生体適合性材料で作られている、請求項1~請求項24のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項26】
前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成への架橋が、前記官能基の相互の不均一な架橋を含む、請求項1~請求項25のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項27】
前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成への架橋が、前記インプラントにおける弾性率の不均一な変化を含む、請求項1~請求項26のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項28】
前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成への架橋が、前記インプラント内の不均一な架橋位置を含む、請求項1~請求項27のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項29】
前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成への架橋が、生体適合性架橋プロセスを含む、請求項1~請求項28のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項30】
前記変形可能体が少なくとも1つの薬剤を含む、請求項1~請求項29のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項31】
前記変形可能体が少なくとも1つの追加の放射線不透過性マーカー添加剤を含む、請求項1~請求項30のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項32】
前記インプラントが、固体状態の少なくとも3つの相を含む、請求項1~請求項31のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項33】
前記固体状態の相が、可逆的固体状態、柔軟かつ伸縮性の無定形半液体状態、及び不可逆的固体状態、のうちの1又は複数である、請求項1~請求項32のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項34】
前記固体状態の少なくとも3つの相の間の転移が、前記医療グレードの硬化性インプラントの温度を変化させることによって行われる、請求項1~請求項33のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項35】
前記医療グレードの硬化性インプラントが25℃未満の温度に維持されていると、前記可逆的固体状態が保たれる、請求項1~請求項34のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項36】
前記医療グレードの硬化性インプラントが約25℃~約37℃の温度に維持されていると、前記柔軟かつ伸縮性の無定形半液体状態が保たれる、請求項1~請求項35のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項37】
前記医療グレードの硬化性インプラントが37℃超の温度にさらされると、前記不可逆的固体状態が活性化される、請求項1~請求項36のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項38】
少なくとも1つの変形可能部分を含み、前記変形可能部分は、少なくとも20体積%のPv-GMA、Pv-IMA、Pv-AMA、Pv-EMA、Pv-MA、Pv-GMA-GAE、Pv-GMA-AE、又はこれらの任意の組み合わせを含む、医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項39】
前記少なくとも1つの変形可能部分は、約1%~約25%の内部又は外部可塑剤に由来する、請求項38に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項40】
前記少なくとも1つの変形可能部分が、前記医療グレードの硬化性インプラントの80%超である、請求項38又は請求項39に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項41】
前記少なくとも1つの変形可能部分が、前記医療グレードの硬化性インプラントの50%未満である、請求項38~請求項40のいずれか1項に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項42】
前記インプラントの変形不能部分が医療グレードの鋼製である、請求項38~請求項41のいずれか1項に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項43】
前記インプラントが、固体状態の少なくとも3つの相を含む、請求項38~請求項42のいずれか1項に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項44】
前記固体状態の相が、可逆的固体状態、柔軟かつ伸縮性の無定形半液体状態、及び不可逆的固体状態、のうちの1又は複数である、請求項38~請求項43のいずれか1項に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項45】
前記固体状態の少なくとも3つの相の間の転移が、前記医療グレードの硬化性インプラントの温度を変化させることによって行われる、請求項38~請求項44のいずれか1項に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項46】
前記医療グレードの硬化性インプラントが25℃未満の温度に維持されていると、前記可逆的固体状態が保たれる、請求項38~請求項45のいずれか1項に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項47】
前記医療グレードの硬化性インプラントが約25℃~約37℃の温度に維持されていると、前記柔軟かつ伸縮性の無定形半液体状態が保たれる、請求項38~請求項46のいずれか1項に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項48】
前記医療グレードの硬化性インプラントが37℃超の温度にさらされると、前記不可逆的固体状態が活性化される、請求項38~請求項47のいずれか1項に記載の医療グレードの硬化性インプラント。
【請求項49】
(a)少なくとも1つの医療グレードのインプラントを標的組織に送達することと、
(b)前記少なくとも1つのインプラントを刺激して、前記少なくとも1つのインプラントの本体を第1の構成から第2の構成に架橋させることと、
を含み、前記刺激は、患者の自然の体温によって行われる、患者の組織を治療するための方法。
【請求項50】
(a)個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体;
及び
(b)医療グレードのインプラント送達デバイス、を含み、
前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、医療グレードのインプラントシステム。
【請求項51】
刺激を提供する少なくとも1つの手段を任意で含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記少なくとも1つの添加剤が、前記ポリマー材料を、光、UV Vis、温度閾値を超える温度、IR、水、pH、及びこれらの任意の組み合わせのうちの1又は複数に対して感受性にさせる、請求項50又は請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
(a)個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体;
及び
(b)医療グレードのインプラント送達デバイス、を含み、
前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、
医療グレードのインプラントキット。
【請求項54】
個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体を含むポリマーから形成される変形可能体であって、
前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、
変形可能体。
【請求項55】
個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体を含み、
前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、
非医療グレードのインプラント。
【請求項56】
個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体を含み、
前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、
医療グレードのインプラントのための材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月26日に出願された米国仮特許出願第62/891,460号の優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、刺激後にその特性を変化させるように構成される医療グレード及び非医療グレードの材料に関する。
【背景技術】
【0003】
骨折は強い衝撃又はストレスによって引き起こされ、骨折は外傷性骨折、又は、骨粗鬆症、転移性骨疾患、骨形成不全等の骨を弱める特定の病状により適切に名付けられ、さらに病理学的骨折と適切に名付けられる。
【0004】
骨部分を治療するための一般的な外科的処置は、骨折又は変性した骨を置換、補完又は増強するための整形外科用インプラントの使用を含む。多くの種類の生体適合性整形外科用インプラントが入手可能である。ステンレス鋼、コバルト-クロム-モリブデン合金、タングステン、チタン、コバルト-クロム-タングステン-ニッケル、及び類似の合金等の固体金属製のものもある。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の固体ポリマー化合物製のものもある。整形外科用インプラントの中には、セラミックス製や複合材料製のものもある。
【0005】
米国特許US5264215Aは、「炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリレートに由来するポリアルキルメタクリレート、ヒドロキシアパタイト、炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、4-(2-メタクリロイルオキシエチル)トリメリット酸又はその無水物、及び重合開始剤を含む骨セメント組成物」を開示している。さらに、「前記組成物の硬化物、前記組成物を使用したインプラント材料、及びインプラント材料の調製方法」も開示されている。
【0006】
米国特許US5538514Aは、以下を開示している。「アミン開始剤を含まないセメント混合物をインプラントの周囲に成形し、セメント混合物を放射線源に露出することによって重合を開始させる、骨セメントを補綴インプラントに成形する方法。この方法は、重合性骨セメント混合物をインプラントに成形する際の製造タイミングの問題を排除する。」
【0007】
米国特許US8475536B2は、以下を開示している。「セメント結合の強度(例えば、引張強度、剪断強度、及び/又は疲労強度)を増強できる改変された表面を有する生物医学的インプラント(例えば、整形外科用インプラント)が、かかるインプラントの製造方法及び使用方法と共に開示される。前記インプラントは、セメント結合を強化できる様々な物理的、化学的、又はプロセス由来の特徴を示しうる。例えば、インプラント表面は、特定の粗さ値を示すことができ、かつ/又は非天然材料を実質的に含まないことができる。かかるインプラントを製造するためのプロセスは、例えば粒子ブラストによって製造しうる、第1の粗いインプラント表面を提供することを含みうる。処理配合物を前記第1の粗面に付与して、第1の粗面よりも増強されたセメント結合特性を示す第2の粗面を作製しうる。いくつかの場合、前記第1の粗面及び前記第2の粗面は、実質的に同様のRa値を示しうる。前記第2の粗面は、負のRsk値を示しうる。」
【0008】
米国特許US8926710B2は、以下を開示している。「骨伝導性骨移植片材料。これらの組成物は、注入可能なセメントと脱灰した骨マトリクス繊維を含む。これらの材料の組み合わせにより、強度と吸収のバランスを取りながら、骨の空隙を充填することができる。」
【0009】
米国特許US8834845B2は以下を開示する。「生物活性PMMA(ポリメチルメタクリレート)骨セメントは、粉末成分及び反応性モノマー液体を含み、前記粉末成分及び前記反応性モノマー液体は、互いに混合されると、互いに反応し、ポリマー系固体材料を形成する。前記粉末成分は、ポリメチルメタクリレートの粒子状ポリマー粉末、ラジカル開始剤、及びアニオン性コポリマーナノ粒子を含む。前記アニオン性コポリマーナノ粒子は、粒子状粉末成分内にナノ粒子の形態で分布しているか、粒子状ポリマー粉末の粒子上にフィルムとしてコーティングされている。」
【発明の概要】
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料から形成される変形可能体を含み;前記ポリマー材料は、より低架橋の第1の構成で提供されており;前記ポリマー材料は、適切な刺激を付与すると、前記刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、医療グレードのインプラントが提供される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記より低架橋の第1の構成は、約0.1%の架橋~約1%の架橋を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記より高架橋の第2の構成は、約50%の架橋~約90%の架橋を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)に共有結合したメタクリレート基を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記官能基はメタクリレートを含み、前記ポリマー主鎖はPVAを含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは、Pv-GMA、Pv-IMA、Pv-AMA、Pv-EMA、Pv-MA、又はこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記医療グレードのインプラントは、前記インプラントを前記刺激に対して感受性にする少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは、10%未満の遊離モノマーを含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは遊離モノマーを含まない。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記インプラントは、10体積%未満の前記ポリマー材料を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記インプラントは、80体積%超の前記ポリマー材料を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記インプラントは、約60体積%~約90体積%の前記ポリマー材料を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記より低架橋の第1の構成において、前記インプラントは、約0.01MPa~約1MPaの弾性率を有する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記より高架橋の第2の構成において、前記デバイスは、約2MPa~約500MPaの弾性率を有する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記弾性率は、前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成へ、約10倍~約1000倍変化する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ポリマーの平均分子量は、約10,000g/モル~約200,000g/モルである。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ポリマーの平均分子量は、約1,000g/モル~約200,000g/モルである。
本発明のいくつかの実施形態によれば、患者の自然熱が、前記刺激として作用するのに適している。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記官能基は活性官能基である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記官能基の前記架橋は、相互の架橋である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記官能基の前記架橋は、前記インプラントに含まれる別の材料との架橋である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも1つの添加剤は、前記ポリマー材料を、光、UV Vis、温度閾値を超える温度、IR、及びこれらの任意の組み合わせのうちの1又は複数に対して感受性にさせる。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記刺激が前記架橋の80%を終了させるのに必要な時間は、約1分~約30分である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記温度閾値は20℃超である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記UVが前記架橋の80%を終了させるのに必要な時間は、約2秒~約20分である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記刺激は低分子である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記インプラントは、生体適合性材料で作られている。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成への架橋は、前記官能基の相互の不均一な架橋を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成への架橋は、前記インプラントにおける弾性率の不均一な変化を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成への架橋は、前記インプラント内の不均一な架橋位置を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記より低架橋の第1の構成から前記より高架橋の第2の構成への架橋は、生体適合性架橋プロセスを含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記変形可能体は、少なくとも1つの薬剤を含む。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記変形可能体は少なくとも1つの追加の放射線不透過性マーカー添加剤を含む。
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、少なくとも1つの変形可能部分を含み、前記変形可能部分は、少なくとも20体積%のPv-GMA、Pv-IMA、Pv-AMA、Pv-EMA、Pv-MA、Pv-GMA-GAE、Pv-GMA-AE、又はこれらの任意の組み合わせを含む、医療グレードの硬化性インプラントが提供される。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも1つの変形可能部分は、約1%~約25%の内部(internal)又は外部(external)可塑剤に由来する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも1つの変形可能部分は、前記医療グレードの硬化性インプラントの80%超である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも1つの変形可能部分は、前記医療グレードの硬化性インプラントの50%未満である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも1つの変形可能部分は、前記医療グレードの硬化性インプラントの約10%~約90%である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記インプラントの変形不能部分は医療グレードの鋼製である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、
(a)少なくとも1つの医療グレードのインプラントを標的組織に送達することと、
(b)前記少なくとも1つのインプラントを刺激して、前記少なくとも1つのインプラントの本体を第1の構成から第2の構成に架橋させることと、
を含み、前記刺激は、患者の体の自然熱によって行われる、患者の組織を治療するための方法が提供される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、
(a)個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体;及び
(b)医療グレードのインプラント送達デバイス、
を含み、前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、医療グレードのインプラントシステムが提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、刺激を提供するための少なくとも1つの手段を任意で含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも1つの添加剤は、前記ポリマー材料を、光、UV Vis、温度閾値を超える温度、IR、水、pH、及びこれらの任意の組み合わせのうちの1又は複数に対して感受性にさせる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、
(a)個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体;及び
(b)医療グレードのインプラント送達デバイス、を含み、
前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、
医療グレードのインプラントキットが提供される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体であって、前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、変形可能体が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体を含み、前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、非医療グレードのインプラントが提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、個々のポリマー主鎖が、架橋して架橋を形成することが可能な複数の官能基を有する、少なくとも20体積%のポリマー材料であって、より低架橋の第1の構成で提供されている、ポリマー材料;インプラントを刺激に対して感受性にさせる少なくとも1つの添加剤;から形成される変形可能体を含み、前記ポリマー材料は、前記適切な刺激を付与すると、前記適切な刺激は、前記ポリマー材料がより高架橋の第2の構成となるように、前記官能基の架橋を起こさせて前記ポリマー主鎖間に架橋を形成する、医療グレードのインプラントのための材料の使用が提供される。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明の分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、以下には例示的な方法及び/又は材料を説明している。矛盾がある場合は、定義を含む本特許明細書が優先される。また、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、例としてのみ本明細書に記載されている。ここで詳細に図面を具体的に参照しているが、示されている詳細は、例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な説明のためのものであることが強調される。この点について、図面に付された説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにしている。
【0022】
図1図1は、本発明のいくつかの実施形態における、Pv-GMAポリマーと一般的なビスGMAメタクリル樹脂との比較を示す概略図である。
図2図2は、本発明のいくつかの実施形態における、例示的なポリマー合成の概略図である。
図3図3は、本発明のいくつかの実施形態における、Pv-GMA-GAEポリマーとPv-GMA-AEとの比較を示す概略図である。
図4a図4aは、本発明のいくつかの実施形態における、例示的なポリマー改変の概略図である。
図4b図4bは、本発明のいくつかの実施形態における、例示的なポリマー改変の概略図である。
図5図5は、本発明のいくつかの実施形態における、充填デバイスの概略図である。
図6図6は、本発明のいくつかの実施形態における、例示的な送達デバイスの概略図である。
図7a図7aは、本発明のいくつかの実施形態における、例示的なパッケージングデバイスの概略図である。
図7b図7bは、本発明のいくつかの実施形態における、図7aに示されるパッケージングデバイスの使用の概略図である。
図7c図7cは、本発明のいくつかの実施形態における、図7aに示されるパッケージングデバイスの使用の概略図である。
図7d図7dは、本発明のいくつかの実施形態における、図7aに示されるパッケージングデバイスの使用の概略図である。
図8図8は、本発明のいくつかの実施形態における、例示的な最終製造工程の概略図である。
図9図9は、本発明のいくつかの実施形態における、椎骨への骨増強材料の注入の概略図である。
図10a図10aは、死体で実施された実験の結果の画像である。
図10b図10bは、死体で実施された実験の結果の画像である。
図10c図10cは、死体で実施された実験の結果の画像である。
図10d図10dは、死体で実施された実験の結果の画像である。
図11図11は、本発明のいくつかの実施形態における、専用の密封された滅菌ブリスター又はトレイに提供された、事前に充填された送達デバイスの概略図である。
図12a図12aは、本発明のいくつかの実施形態における、整形外科用デバイスでの骨増強材料の使用の例示的な実施形態の概略図である。
図12b図12bは、本発明のいくつかの実施形態における、整形外科用デバイスでの骨増強材料の使用の例示的な実施形態の概略図である。
図13図13は、本発明のいくつかの実施形態における、歯科用デバイスでの骨増強材料の使用の例示的な実施形態の概略図を示す。
図14図14は、本発明のいくつかの実施形態における、骨増強材料の例示的な3Dプリンタインジェクタの概略図である。
図15図15は、本発明のいくつかの実施形態における、油圧システムに接続されるように適合された例示的なカートリッジの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪概略≫
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、軟らかい状態から硬い状態までのいくつかの硬化状態を含む整形外科用インプラントに関し、硬化状態間の変化は、患者の体温によって開始される。いくつかの実施形態では、硬化状態間の変化は、ユーザーによって制御可能である。いくつかの実施形態では、硬化状態の制御は、インプラントの近傍の温度を制御することによって行われる。いくつかの実施形態では、硬化状態の制御は、刺激を制御することによって行われる。いくつかの実施形態では、硬化状態の制御は、インプラントの材料を調整することによって行われる。いくつかの実施形態では、硬化状態間の変化は可逆的であり、例えば、硬化時にGMAに形成されたエステル結合の加水分解(例えば、酸又は塩基による加水分解)によって可逆的である。いくつかの実施形態では、硬化状態間の変化は不可逆的である。いくつかの実施形態では、患者の体の温度は、整形外科用インプラントの硬化プロセスを完全に終了させるのに十分な熱を提供する。いくつかの実施形態では、インプラントを硬化するために、光、UV Vis、水、pH又はIRが使用される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、柔軟性、及び/又は可鍛性、及び/又は修正可能な(modifiable)固体状態と、非柔軟性の固体状態と、の2つのレベルの固体状態を含む整形外科用インプラントに関する。いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、必要になるまで、その柔軟性及び/又は可鍛性及び/又は修正可能な固体状態に保たれる。いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、デバイスを低温に保つことによって、その柔軟性及び/又は可鍛性及び/又は修正可能な固体状態に保たれる。いくつかの実施形態では、低温は30℃未満である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、骨格(backbone)ポリマー及び複数の活性メタクリレート(MA)分子を含む整形外科用インプラントに関する。いくつかの実施形態において、前記骨格はポリビニルアルコールポリマーである。いくつかの実施形態では、前記骨格の鎖の80%以上が、共有結合したメタクリレート(MA)分子を含む。いくつかの実施形態では、最終的な整形外科用インプラントは、遊離モノマーを含まない。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、すぐに使用できる、及び/又は、使用前に予備的処置(例えば、原材料の混合並びに/又は粉末及び液体の混合)を必要としない整形外科用インプラントに関する。いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、専用の容器内ですでに混合された単一のポリマー及び開始剤を含み、すぐに使用できる。いくつかの実施形態において、前記開始剤は熱開始剤であり、前記整形外科用インプラントが体温で重合することを可能にする。いくつかの実施形態では、前記開始剤は前記鎖に共有結合する。いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、粘性のある液体又はペーストポリマーと液体又はペースト開始剤との混合物を含む。いくつかの実施形態では、混合は自己混合であり、送達(例えば、注入)プロセス中に達成される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、複数の制御可能な固体状態を含む医療グレードの硬化性インプラントを提供することに関する。いくつかの実施形態では、前記固体状態の制御は、インプラントがさらされる温度を変えることにより行われる。いくつかの実施形態では、前記固体状態の相は、可逆的固体状態、柔軟かつ伸縮性の無定形半液体状態、及び不可逆的固体状態のうちの1つ又は複数である。いくつかの実施形態では、前記医療グレードの硬化性インプラントが25℃未満の温度に維持されていると、前記可逆的固体状態がその状態に保たれる。いくつかの実施形態では、前記医療グレードの硬化性インプラントが約25℃~約37℃の温度に維持されていると、前記柔軟かつ伸縮性の無定形半液体状態がその状態に保たれる。いくつかの実施形態では、前記医療グレードの硬化性インプラントが37℃超の温度にさらされると、前記不可逆的固体状態が活性化される。いくつかの実施形態では、1又は複数の可塑剤の添加によって前記制御可能な固体状態が可能になる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、硬化プロセス中に、インプラントを弱める可能性のある気泡の生成が最小限である、医療グレードの硬化性インプラントを提供することに関する。いくつかの実施形態では、気泡の生成の低減は、インプラントの材料に可塑剤を添加することによって可能になる。いくつかの実施形態では、前記気泡の生成の低減は、可塑剤の添加によってインプラントの粘度を変更することによって可能になる。いくつかの実施形態では、粘度の変更は、約10%~約50%の減少である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、保存可能期間が延長された医療グレードの硬化性インプラントを提供することに関する。いくつかの実施形態では、保存可能期間は、インプラントの長期保存を可能にする安定した固体状態をインプラントに提供することによって延長される。いくつかの実施形態では、安定した固体状態は、インプラントの材料に可塑剤を添加することによって達成される。いくつかの実施形態では、インプラントの保存可能期間は約1年~約50年である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、硬化プロセス後、硬化プロセス前の体積に対して、最終体積が約0.1%~約5%増加する整形外科用インプラントに関する。
【0031】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載の、及び/又は図面及び/又は実施例に示された構成要素及び/又は方法の構成及び配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、「医療グレード」とは、様々な国、国際協会等(例えば、FDA、ASTM、ISO等)の規格内にある材料を表す。
【0033】
いくつかの実施形態では、「インプラント(implant)」、「インプラント(implants)」、「医療グレードのインプラント」及び「医療用インプラント」との用語は交換可能である。
【0034】
<一般的な例示的インプラント>
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるインプラントは、開始エネルギーの付与によって硬化形態に硬化可能である。いくつかの実施形態では、前記開始エネルギーは熱であり、いくつかの実施形態では、熱源は患者の自然の体温である。
【0035】
いくつかの実施形態では、材料の選択に応じて様々な硬化機構を利用することができ、例えば、ポリマー、架橋剤、紫外線、可視光、赤外線、高周波、X線、ガンマ線、又は他の波長の電磁エネルギーにより開始される硬化、触媒で開始される重合、熱で開始される重合、電気的に開始される重合、機械的に開始される重合、電子線照射により開始される硬化等が挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、既製又は半既製の硬化可能な材料を含み、硬化開始エネルギーの付与によって、所望のインビボの部位に配置された後に硬化されるように構成される、医療グレードのインプラントは、様々な状況で有利に使用されうる。例えば、限定されないが、かかるインプラントは、医療関係者が、漏出のリスクなしに医療用インプラントで作業すること、対象の体内に正確に配置されるように適合された医療用インプラントで作業すること、及び/又は、時間のかかる準備を必要としない医療用インプラントを使用することが望ましい状況で使用することができる。さらに、いくつかの実施形態では、かかるインプラントは、医療関係者が、標的部位に配置されるか医療関係者によって誘導される前にその特性を変化させない医療用インプラントで作業することが望ましい状況で使用することができる。したがって、医療関係者は、特定の及び/又は短い移植時間枠に限定されない。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、硬化プロセス中に医療グレードのインプラント内に気泡がほとんど又はまったく生成されない、上記に開示された医療グレードのインプラントを提供する。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、選択された場所に硬化性材料を容易に注入することを可能にする粘度のレベルを有する医療グレードのインプラントを提供する。いくつかの実施形態では、材料の粘度(動的粘度)は、約1000Pa・s~約500Pa・sであり、任意に約1500Pa・s~約300Pa・sであり、任意に約2000Pa・s~約200Pa・sである。さらに、いくつかの実施形態において、本発明は、保存期間中に有効性を損なう危険性がほとんど又はまったくない、延長された保存可能期間を有する医療グレードのインプラントを提供する。いくつかの実施形態では、前記延長された保存可能期間は、約1年~約5年であり、任意に約5年~約10年であり、任意に約10年~約100年である。
【0037】
いくつかの実施形態では、多用途性はまた、整形外科移植手順のためのより侵襲性の低い技術を可能にし、インプラントデバイスに対する設計の柔軟性を広げることを可能にし、手術中のウェットアウト混合プロセス中に発生しうる合併症の回避又は軽減を可能にする。実施形態は、主に骨デバイスを参照することによって説明されるが、本願は、他の場所で使用される医療機器、及び様々な状況(建設、芸術等)で使用される非医療機器も含むと理解されることが意図されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明は、医療グレードのインプラントに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、医療グレードのインプラントシステムに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、医療グレードのインプラントキットに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、医療グレードのインプラント送達デバイスに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、医療グレードの生体適合性インプラント開始剤に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、非医療用途のための材料に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、上記の任意の組み合わせに関する。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは少なくとも1種のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、整形外科用インプラントは、互いに直接結合したモノマーの鎖を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの基を活性化させたままモノマーの結合が行われる。いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、最終品中に少なくとも1種のポリマーを含み、遊離モノマーを含まない。いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の官能基を含む。いくつかの実施形態では、インプラントは、いくつかの弾性状態を含む。いくつかの実施形態では、前記弾性状態の変化は、ユーザーによって制御される。いくつかの実施形態では、前記弾性状態の変化は可逆的である。いくつかの実施形態では、前記弾性状態の変化は不可逆的である。いくつかの実施形態では、様々な状態の変化は、トリガー及び/又は開始剤によって開始される。いくつかの実施形態では、各少なくとも1種の官能基は、前記少なくとも1種のポリマーの少なくとも1つの結合部位に結合している。いくつかの実施形態では、各少なくとも1種の官能基は、前記少なくとも1種のポリマーの少なくとも2つ又は少なくとも3つの結合部位に結合している。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の官能基は、第1の側で前記少なくとも1種のポリマーに接続し、第2の側で別の少なくとも1種の官能基及び/又は別の少なくとも1種のポリマーに接続する。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、狭い通路を通って患者の体内に挿入され、インプラントは、前記狭い通路よりも大きい空隙を充填する。いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、ミクロ細孔のサイズ以下の細孔を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、様々なサイズ及び形状によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、形状は、任意の幾何学的形態であり得る。いくつかの実施形態では、サイズは約1mm~約1000cmである。いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、例えば、2×2×200mmのサイズ、任意でより大きいサイズ、任意でより小さいサイズを有するストリップ状に用意される。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記整形外科用インプラントは、骨増強材料の硬化を可能にするさらなる化合物を必要とせずに、骨増強材料のみからなる整形外科用インプラントキットに組み立てることができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、インプラント成分を含み、インプラントを標的部位に送達するように設計され、任意で侵襲性が最小化された手順を介して送達するように設計されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記インプラントは、固体で無定形であり、弾性を有し、未硬化である。いくつかの実施形態では、前記インプラント材料は、送達チューブに挿入される。いくつかの実施形態では、前記送達チューブは、減摩化合物をさらに含む。いくつかの実施形態では、送達デバイスは、送達チューブと、送達チューブ出口から骨増強材料を排出する手段と、からなる。いくつかの実施形態では、前記骨増強材料が送達チューブから排出される間、注入されている領域の形態を受け取る。
【0044】
いくつかの実施形態では、整形外科的処置中、例えば骨折した骨を治療する整形外科的処置中に、前記送達デバイスが標的部位、例えば骨折した椎骨に、挿入される。いくつかの実施形態では、前記処置は、任意に、低侵襲手順により行われ、任意に、前記送達チューブをカニューレを通して挿入することにより行われる。いくつかの実施形態では、続いて送達デバイスが活性化されて骨増強材料を放出する。いくつかの実施形態では、前記送達チューブから放出される骨増強材料は、排出された空間を占有する。いくつかの実施形態では、前記送達デバイスから放出されたインプラントは自然の体温を吸収し、任意に完全に硬化するまで自然の体温を吸収する。いくつかの実施形態では、前記骨増強材料は標的部位で硬化され、注入された空間の形状に適合した固体インプラントを形成する。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記骨増強材料は、材料の漏出のリスクを低減する。いくつかの実施形態では、骨増強材料と吸収特性を有する様々な種類の材料との組み合わせは、インプラントの改善された機械的特性をもたらし、かつ/又は骨の内部成長を促進し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記インプラントは、好ましくは、生体適合性ポリマーでできており、例えば、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリプロピレン等が挙げられる。いくつかの実施形態では、コポリマーが使用される。いくつかの実施形態では、異なるポリマー若しくはコポリマー又は他の生体適合性材料の組み合わせが使用される。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記インプラントは、炭素鎖に沿って接続されたメタクリレート(MA)分子でできている。いくつかの実施形態では、最終生成物中に遊離モノマーは存在しない。いくつかの実施形態では、インプラントポリマーは、開始剤分子、放射線不透過性分子、成長因子、医薬品、化学物質、タンパク質等のいくつかの添加剤と混合される。
【0048】
<インプラントの例示的な実施形態>
いくつかの実施形態では、前記医療用インプラントは、固体状態の2つの相を有する、モノマーを含まないメタクリルポリマー(関連する例では骨増強材料とも呼ばれる)として構成される。いくつかの実施形態では、前記第1の相では、ポリマーは、柔軟で伸縮性のある無定形固体である。いくつかの実施形態において、任意に、前記ポリマーは、架橋されていないか、わずかに架橋されていてもよい。いくつかの実施形態において、前記わずかに架橋されたもの(より低架橋の構成とも呼ばれる)は、約0.1%の架橋~約1%の架橋を含む。いくつかの実施形態では、わずかに架橋されたポリマーとは対照的に、約50%の架橋~約90%の架橋を含む架橋ポリマー(より高架橋の構成とも呼ばれる)が存在する。いくつかの実施形態では、これらの特性により、医療用インプラントは狭い穴からキャビティに容易に挿入され、キャビティの形状をとることができる。いくつかの実施形態では、例えば開腹手術等において、標的部位にアクセス可能である場合、標的部位にアクセス可能である場合、前記医療用インプラントは標的部位に直接配置することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記インプラントは、インプラントが移植部位によりよく埋め込まれることを可能にする表面テクスチャーを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記インプラントは、所定の形状をとることができる。いくつかの実施形態では、前記インプラントは、通常のツール(例えば、はさみ、ナイフ等)を使用して所望の形状に切断される。いくつかの実施形態では、インプラントは、外部の型内で硬化され(curated)特定の部位に移植することができる。例えば、この手法を使用して、頭蓋骨の骨プレートを成形したり、特定の骨片を成形したりできる。
【0051】
<硬化性インプラントの例示的な組成物>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる硬化性インプラントは、炭素鎖に沿って接続された複数の活性メタクリレート(MA)分子を含むポリマーを含む。いくつかの実施形態では、前記鎖は、1のモノマーを他のモノマーに直接結合することによって作られる。任意に、MA基を活性に維持しながら結合を行ってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合は、モノマーを連結分子と結合させることによって、又はMAモノマーを主鎖ポリマーに結合させすることによって行われる。いくつかの実施形態では、前記医療用インプラントは、グリシジルメタクリレート(GMA)モノマーをポリビニルアルコール(PVA)ポリマーに結合させて、安定なPv-GMAポリマーを生成することによって作製される。
【0052】
ここで図1を参照すると、Pv-GMAポリマーと一般的なビスGMAメタクリル樹脂との比較が示されている。いくつかの実施形態では、メタクリル基がビスフェノールAに結合している一般的なビスGMAメタクリル樹脂との1つの違いは、Pv-GMA品において、ビスフェノールAは生体適合性炭素鎖で置き換えられていることである。いくつかの実施形態では、MA基の80%超、任意に90%超、任意に100%が結合しており、そのため生成物中に遊離モノマーが存在しない。
【0053】
(ポリマー)
インプラントに含まれるポリマー(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)は、当技術分野で知られている任意の適切なポリマー、例えば、生体適合性ポリマーを含んでもよい。
【0054】
適切なポリマーとしては、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、ポリビニルアミン(PVM)、ポリ(塩化ビニル)、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、シリコーン、及びこれらのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
適切なフルオロポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(ビニリデンジフルオリド)(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、及びポリ(フッ化ビニル)(PVF)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)又はそのコポリマーであり、例えば、ポリ(ビニルアルコール-エチレン)、ポリ(ビニルアルコール-ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール-メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール-ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアルコール-塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)とポリ(エチレンオキシド)のブロックコポリマー、又はこれらのコポリマー(例えば、ポリ(ビニルアルコール-ビニルブチラール-ビニルアセテート)、若しくはポリ(ビニルアルコール-ビニルアセテート-塩化ビニル)であり、これらは、それぞれ、ポリ(ビニルアルコール-ビニルアセテート)とポリ(ビニルアルコール-ビニルブチラール)又はポリ(ビニルアルコール-塩化ビニル)とのコポリマーとみなすことができる。)
【0057】
したがって、例えば、ポリマーは任意に1又は複数種の主鎖単位を含み、例えば、ビニルアルコール、ビニルアミン、塩化ビニル、フッ化ビニル、二フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、ビニルブチラール、及び/又はエチレンオキシド主鎖単位が挙げられる。この用語は本明細書で定義されている。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の各実施形態のいずれかにおいて、前記ポリマーは式Iの架橋ポリマーを有する:
[X][X(-L-Y)] (式I)
【0059】
式中、
Xはポリマー主鎖を形成する主鎖単位であり;
Lは存在しないか、又は結合部分であり;
Yは、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる架橋性官能基であり;
mは0又は正の整数であり、ポリマー主鎖の[X]単位の平均数を表し;
nは1以上の整数であり、ポリマー主鎖の[X(-L-Y)]単位の平均数を表し、mとnの合計は10以上(任意に100以上、又は1,000以上、任意に1,000,000以下、100,000以下、又は10,000以下)である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「主鎖単位(backbone unit)」という用語は繰り返し単位を表し、任意に側鎖(本明細書で定義される)を含み、複数の繰り返し単位の連結(例えば連続的な連結)は、ポリマー主鎖を形成し、前記主鎖には任意に側鎖が結合している。
【0061】
本明細書において、ポリマーの「主鎖(backbone)」とは、繰り返し単位(主鎖単位)を互いに連結してポリマーを形成することによって形成される原子の鎖を表し、さらに、前記鎖に結合した水素原子及びオキソ基を含む。(前記鎖に結合した他の基は側鎖と称する。)
【0062】
本明細書において、「側鎖」という句は、ポリマーの主鎖内の原子に結合している、水素原子又はオキソ(=O)以外の任意の基(1つ又は複数の原子を含む)を表す。
【0063】
式Iに示されるように、L及びYは一緒になって、主鎖単位の少なくとも一部のペンダント基を形成する。この基は、本明細書では簡略化のため単に「ペンダント基」と称する。
【0064】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるペンダント基を有する各主鎖単位(例えば、式IにおいてX(-L-Y)で表される単位、その個数は変数nで表される)、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるペンダント基を有しない各主鎖単位(例えば、式IにおいてXのみで表される単位で、その個数は変数mで表される)。したがって、主鎖単位とはモノマー単位の繰り返し部分を表し、これはポリマー主鎖を形成する部分を含む(ただしこれに限定されない。)。
【0065】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる主鎖単位は、任意に、重合性モノマーの残基、又はモノマーの重合性部分であり得る。多様な重合性モノマー及び重合性部分が当業者に知られており、重合の際に生じる、かかるモノマー残基の構造(例えば、モノマー単位)も当業者に知られているであろう。
【0066】
「重合性モノマーの残基」とは、重合後に残る、重合性モノマー及び/又は重合性モノマー部分の改変形態を表す。
【0067】
重合性モノマー部分は、例えば縮合反応によって形成されてもよく、例えば、モノマー中の1つ以上の原子又は基(例えば、水素原子又はヒドロキシル基)、及び任意にモノマー中の2つ以上の原子又は基(例えば、水素原子及びヒドロキシル基)が別の重合性モノマーとの共有結合で置換されている。
【0068】
重合性モノマーの改変形態は、例えば開環によって形成されてもよく(この場合、環内の2つの原子間の共有結合が切断され、前記2つの原子は任意にそれぞれ別の重合性モノマーと結合する);及び/又は、不飽和結合への付加によって形成されてもよく、この場合、隣接する2つの原子間の不飽和結合が切断され(例えば、不飽和二重結合の飽和結合への変換、又は不飽和三重結合の不飽和二重結合への変換)、前記2つの原子は任意にそれぞれ別の重合性モノマーと結合する。
【0069】
重合性モノマーの改変形態は、元のモノマーと本質的に同じ原子からなってもよく(例えば、共有結合の再配置のみが異なってもよく)、あるいは、例えば、異なる原子組成を有してもよい(例えば、(本明細書に記載されるように)重合が縮合反応を含む場合)。
【0070】
重合性モノマーの改変形態は、重合後に任意に改変されてもよく、例えば側鎖の切断によって改変されてもよい。例えば、ポリ(ビニルアルコール)及びそのコポリマーは、一般に、酢酸ビニルを重合して(ビニルアルコール自体は容易に重合できないため)、(ポリ)酢酸ビニル又はそのコポリマーを得て、アセテート基の全部又は一部からビニルアルコール主鎖単位(任意に残りの酢酸ビニル主鎖単位との組み合わせ)を得ることにより調製される。ビニルアルコール主鎖単位は、例えば水酸化物による(塩化ビニル単位中の塩素等の)側鎖の(部分的又は完全な)求核置換によって形成されてもよい。
【0071】
主鎖単位としては、置換又は非置換の炭化水素(置換又は非置換の炭化水素主鎖を形成していてもよい)、例えばアルキレン単位;ヒドロキシカルボン酸単位(ポリエステル主鎖を形成していてもよい)、例えば、グリコール酸単位、乳酸単位、ヒドロキシ酪酸単位、ヒドロキシ吉草酸単位、ヒドロキシカプロン酸単位、及びヒドロキシ安息香酸単位;ジカルボン酸単位(ジオールと組み合わせてポリエステル主鎖を形成していてもよく、かつ/又はジアミンと組み合わせてポリアミドを形成していてもよい)、例えば、アジピン酸単位、コハク酸単位、テレフタル酸単位、及びナフタレンジカルボン酸単位;ジオール単位(ポリエーテル主鎖を形成していてもよく、ジカルボン酸と組み合わせてポリエステル主鎖を形成していてもよい)、例えば、エチレングリコール単位、1,2-プロパンジオール単位、1,3-プロパンジオール単位、1,4-ブタンジオール単位、及びビスフェノールA単位;ジアミン単位(ジカルボン酸と組み合わせてポリアミド主鎖を形成していてもよい)、例えば、パラフェニレンジアミン、及びヘキシレンジアミン等のアルキレンジアミン;カルバメート単位(ポリウレタン主鎖を形成していてもよい);アミノ酸残基(ポリペプチド主鎖を形成していてもよい);及び、糖残基(多糖主鎖を形成していてもよい)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポリマーは置換又は非置換のアルキレン単位である主鎖単位(例えば、式IのX)を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記ポリマーは、置換又は非置換のエチレン単位、すなわち2原子長のアルキレン単位である主鎖単位(例えば、式IのX)を含む。
【0074】
Xが置換又は非置換エチレン単位であるポリマーは、任意に、エチレン(CH=CH)及び/又はその置換誘導体(本明細書では「ビニルモノマー」とも称する)の重合により形成されるようなポリマー主鎖を含んでいてもよい。かかる重合は非常によく研究されている手順であり、当業者はかかる重合を達成するための多数の技術を知っているであろう。
【0075】
重合により形成されるポリマーに関する本明細書に記載の任意の実施形態は、そのポリマーが実際にその重合(又は他の種類の任意の重合)により形成されたかどうかに関わらず、かかる重合により形成され得る構造を有する任意のポリマーを包含することは理解されるであろう。
【0076】
当技術分野でよく知られているように、エチレン及び置換エチレン誘導体の不飽和結合は、重合により飽和され、ポリマー主鎖の炭素結合は飽和するが、これらは、その類似体である不飽和化合物の単位で称されることがある(例えば、「ビニルモノマー」又は「オレフィンモノマー」等)。
【0077】
ビニルモノマー及びオレフィンモノマー等の不飽和モノマーから形成することができるポリマーは、「ポリビニル」及び「ポリオレフィン」との語で称することもある。
【0078】
本明細書において、「非置換」アルキレン単位(例えば、エチレン単位)とは、本明細書で説明されるペンダント基以外の置換基を有さないアルキレン単位を表す。すなわち、前述のペンダント基に結合したアルキレン単位は、当該アルキレン単位の他部位に置換基がない場合、非置換とみなされる。
【0079】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポリマーは、式IIの主鎖単位(例えば式IのX)を含む(ここで、R~R及びAは、本明細書で定義される通りである)。
-CR-CRA- (式II)
【0080】
主鎖単位(例えばX)がL又はY(すなわちペンダント基)に結合していない場合、Aは側鎖、例えば(本明細書で定義される)Rであり;主鎖単位(例えばX)がL又はYに結合している場合、Aは、L若しくはYに結合する、共有結合又は連結基(本明細書で定義される)であり、A、L及びYを含む側鎖を形成している。
【0081】
Aが連結基である場合、前記連結基は、任意に、-O-、-S-、アルキレン、アリーレン、シクロアルキル、複素環、アミン、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、カルボニル、チオカルボニル、ウレア、チオウレア、カルバミル、チオカルバミル、アミド、エポキシド、又はアミノであってもよい。
【0082】
~Rは、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジン末端基(本明細書で定義される)である。
【0083】
本明細書において、「連結基」との句は、化合物中の2以上の部分に結合している基(例えば置換基)を表す。
【0084】
本明細書において、「末端基」との句は、そのうちの1つの原子を介して化合物中の単一の部分に結合している基(例えば置換基)を表す。
【0085】
~Rがそれぞれ水素であり、Aが共有結合又は連結基である場合、主鎖単位(例えばX)は、本明細書に記載のペンダント基に(Aを介して)結合した非置換エチレン単位である。
【0086】
~Rがそれぞれ水素である場合(及びAがRである場合)、主鎖単位(例えばX)は、本明細書に記載のペンダント基に結合していない非置換エチレン単位である。
【0087】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、R及びRはそれぞれ水素である。そのような実施形態としては、多くの広く使用されているビニルモノマー(エチレン等)から形成されるポリマー主鎖が挙げられ、前記ビニルモノマーとしては、例えば、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、イソブチレン、4-メチル-1-ペンテン)、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリレート、及びこれらの誘導体(例えば、アクリレートエステル、アクリルアミド)、並びに、メタクリレート及びその誘導体(例えば、メタクリレートエステル、メタクリルアミド)等が挙げられる。
【0088】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかのそのような実施形態では、R及びRはそれぞれ水素である。
【0089】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、Rはメチルである。いくつかのそのような実施形態では、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかのそのような実施形態において、前記主鎖単位は、メタクリレート又はその誘導体(例えば、メタクリレートエステル、メタクリルアミド)の単位である。
【0090】
式IIに関連して本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、変数Aにより表される連結基は、-O-、アミン、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、又はフェニレンである。例示的な実施形態では、Aは-O-である。
【0091】
例えば、前記主鎖単位は、任意に、Aが-O-の場合、ビニルアルコール誘導体(例えば、ビニルアルコール単位のエステル又はエーテル)であってもよく;Aが-O-の場合、ビニルアミン誘導体(例えば、ビニルアミン単位のアミド又は置換アミン)であってもよく;Aが-C(=O)O-の場合、アクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体(例えば、アクリレート又はメタクリレート単位のエステル)であってもよく;Aが-C(=O)NH-の場合、アクリルアミド又はメタクリルアミド単位であってもよく;及び/又は、Aがフェニレンである場合、スチレン誘導体(例えば、置換スチレン単位))であってもよい。
【0092】
(各実施形態のいずれかによる)本明細書に記載のペンダント基で置換された主鎖単位(例えば、式IにおいてL-Yに結合するX)は、ペンダント基で置換されていない主鎖単位(例えば、mが1以上の場合、式IのL-Yに結合していないX)と同じであっても異なっていてもよい。
【0093】
また、(各実施形態のいずれかによる)ペンダント基で置換された複数の主鎖単位(例えば、式IでL-Yに結合するX)は、互いに同じであっても互いに異なっていてもよい。
【0094】
また、複数の主鎖単位に結合する複数のペンダント基(例えば、式IのL-Y)は、互いに同じであっても互いに異なっていてもよい(例えば、L及び/又はYの同一性が異なっていてもよい)。
【0095】
さらに、(各実施形態のいずれかによる)ペンダント基で置換されていない複数の主鎖単位(例えば、式IにおいてL-Yに結合していないX)は、互いに同じであっても互いに異なっていてもよい。例えば、本明細書に記載のコポリマーは、(例えば置換ビニルアルコール単位としての)架橋性官能基を含むモノマー単位に加えて、非置換ビニルアルコール主鎖単位と、さらなる非置換主鎖単位(例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル)と、の両方を含んでいてもよい。
【0096】
架橋性官能基を含むモノマー単位の種類数、架橋性官能基を含まないモノマー単位の種類数(そのような単位が存在する場合)、ペンダント基で置換された主鎖単位の種類数、及び/又は、ポリマー中のペンダント基の種類数は、それぞれ独立に、任意の数であってよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上)。
【0097】
前記ポリマーが2種以上のモノマー単位を有する本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、任意の2種以上の異なるモノマー単位(例えば、架橋性官能基を含む単位及び架橋性官能基を含まない単位;架橋性官能基を有する2種の異なる単位;及び/又は、架橋性官能基を有さない2種の異なる単位)は、ポリマー全体にわたってランダムに分布していてもよく非ランダムに分布していてもよい。異なる種類のモノマー単位が非ランダムに分布している場合、当該コポリマーは任意の非ランダム分布、例えば交互コポリマー、周期的コポリマー、及び/又はブロックコポリマーにより特徴付けられていてもよい。
【0098】
(架橋性基)
本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる架橋性基は、当技術分野で知られている任意の架橋性基であってよく、(本明細書のポリマーに関する項に記載の実施形態のいずれかによる)任意の適切なポリマーに結合していてよい。
【0099】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、前記架橋性官能基は、重合により互いに架橋することができ(例えば、この場合、前記インプラントの硬化は重合を開始することを含む。)、例えば、フリーラジカル重合、及び/又はアニオン重合、及び/又はカチオン重合により互いに架橋することができる。重合は、任意に、開始剤との接触により行われ、任意に、照明(UV及び/又は可視照明)により活性化される光開始剤又は熱開始剤(分解は常温~70℃で起こりうる)により行われる。
【0100】
フリーラジカル重合により架橋可能な官能基としては、アクリル基(HC=CH-C(=O)-)及びメタクリル基(HC=C(CH)-C(=O)-)が挙げられるが、これらに限定されない。シアノアクリル(HC=C(C≡N)-C(=O)-)は、アニオン重合により架橋可能な官能基の非限定的な例である。
【0101】
多種多様なさらなる重合性官能基、及び各重合性官能基に適した開始剤は、当業者に知られているであろう。
【0102】
特定の理論に拘束されないが、重合性官能基(例えば、フリーラジカル重合による)は、組織に過度の刺激を引き起こすことなく、インビボで物質を架橋するのに特に適していると考えられる。
【0103】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、架橋性官能基の少なくとも一部は、ポリマーに結合したペンダント基(例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる、式Iの変数L及びYによって表されるペンダント基)により構成される。すなわち、これらは、ポリマー主鎖を形成するのではなく、側鎖(前記官能基がポリマー主鎖に直接結合している場合)、又はポリマーの側鎖の一部(前記官能基が1又は複数の連結基(任意に-O-又は-NH-を含む)を介してポリマー主鎖に結合している場合)を形成している。任意に、ペンダント基としての架橋性官能基の位置は、主鎖間の架橋を容易にする。
【0104】
(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)ペンダント基は、任意に、ポリマー主鎖、又はポリマー中の主鎖単位に含まれる連結基(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)に直接結合していてもよい。例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる、式IIのAで表される連結基に直接結合していてもよい。
【0105】
(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)官能基は、任意に、ポリマーに(例えば、ポリマー主鎖又は主鎖単位に含まれる連結基に)直接結合していてもよい。代替的又は追加的に、(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)前記官能基は、任意に、連結部分を介してポリマーに結合していてもよい。例えば、ペンダント基が前記官能基(例えば、式I中のY)及び本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる前記連結部分(例えば、式I中のL)を含む場合が挙げられる。前記連結部分は、任意に、ポリマー主鎖又はポリマー中の主鎖単位に含まれる(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)連結基(例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる、式IIのAで表される連結基)に直接結合していてもよい。
【0106】
前記結合部分は、任意に、前記官能基のポリマーへの結合を促進するために選択される。
【0107】
適切な連結部分としては、これらに限定されないが、-CH-CH(OH)-CH-O-、-CH-CH(OH)-CH-NR-、-C(=O)-NH-B-O-、及び-C(=O)-NH-B-NR-が挙げられ、ここで、Bは置換又は非置換アルキレンであり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択される。
【0108】
例えば、-CH-CH(OH)-CH-O-及び/又は-CH-CH(OH)-CH-NR-は、任意に、前記官能基又はポリマーを(例えば、エステル、エーテル、アミン又はアミド連結基を介して)グリシドールに結合させ、前記ポリマー又は前記官能基を(それぞれ)グリシドールのエポキシ基に(求核性基、例えばヒドロキシ又はアミンの攻撃を介して)結合させることにより得られる。
【0109】
また、-C(=O)-NH-B-O-、及び-C(=O)-NH-B-NR-は、任意に、前記官能基又はポリマーを(例えば、エステル、エーテル、アミン、又はアミド連結基を介して)イソシアネート基を含む化合物(例えば、式O=C=N-B-OH、又はO=C=N-B-NHRを有する化合物)に結合させ、前記ポリマー又は官能性基を(それぞれ)イソシアネートに(求核性基、例えばヒドロキシ又はアミンの攻撃を介して)結合させることにより得られる。
【0110】
(例えば、インプラントの硬化時に)前記架橋性官能基の架橋により形成される第2の架橋の性質は、所与の架橋官能基に鑑みて、また場合により架橋時に存在するポリマー種や追加の剤の種類に鑑みて、当業者により理解されるであろう。
【0111】
例えば、重合性基(例えば、アクリル、メタクリル、シアノアクリル、及びビニルスルホニル)は、一般的に、前記重合性官能基の重合により形成される二量体部分、三量体部分、オリゴマー部分、及び/又はポリマー部分を形成する。
【0112】
(側鎖と架橋の分布と質量)
本明細書に記載されるように、前記ポリマーの特性は、任意に、(本明細書に記載される各実施形態のいずれかによる)適切な側鎖、官能基、及び/又はこれらの適切な比率を選択することによって制御されてもよい。
【0113】
特定の理論に拘束されないが、(個々の側鎖のサイズが小さい、及び/又は側鎖のモル濃度が低いことにより)側鎖の割合が低いと、お互いに対するポリマー主鎖のかなりの動きが可能となることにより、未硬化のインプラントの柔軟性が促進されると考えられる。
【0114】
(例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)平均分子量の低さは、任意に、個々の側鎖の分子量の低さ(例えば、PVAのヒドロキシル基については17Da)、及び、より高分子量の側鎖の割合の低さ(例えば、相互に架橋可能な官能基、任意に、大きくてもポリマー中の側鎖の少数にのみ存在する官能基)の両方に影響されうることが理解されるだろう。
【0115】
(例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)主鎖に対する側鎖の重量比は、任意に、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)個々の側鎖の平均分子量、及び、側鎖の割合、例えばポリマーがモノマー単位当たり1つの側鎖を有するか(例えば、ビニルアルコール、ビニルアミン、酢酸ビニル、及び塩化ビニル残基等の一置換ビニル残基のように)、又はモノマー単位当たり複数の側鎖を有するか(例えば、テトラフルオロエチレン、又はビニリデンジフルオリド残基のように)、の両方に影響されうることが理解されるだろう。
【0116】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリマーは、モノマー単位よりも多くの架橋性官能基を含む、すなわち、短い側鎖でいくつかの官能基が互いに結合している。
【0117】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポリマーは、モノマー単位よりも少ない架橋性官能基を含む、すなわち、前記ポリマーのモノマー単位の一部のみが架橋可能官能基を含む。他のモノマー単位は、任意に、側鎖を有しないか(例えば、エチレン残基)、小さな側鎖(例えば、-OH、-NH、ハロ)を含んでいてもよく、これは、任意に、柔軟な未硬化ポリマーを提供するために選択される。
【0118】
特定の理論に拘束されないが、ポリマー中のモノマー単位の一部にのみ架橋性官能基が存在することは、以下のいずれかの機序により柔軟性の向上に関連すると考えられる。
a)架橋性官能基は、過度に高割合で存在する場合、例えばすべて又はほぼすべてのモノマー単位に存在する場合、(例えば、主鎖の動きを阻害することにより)剛性を促進するのに十分に大きい場合がある。
b)コポリマー(例えば、ランダムコポリマー)の形態で他のモノマー単位とともに散在する、架橋性官能基を含むモノマー単位は、ポリマー中の結晶化度を低下させる可能性があり(例えば、ポリマー配列の反復性を低下させることにより)、一部のポリマー、特に側鎖が小さいポリマーでは、剛性の重要な原因となる可能性がある。
【0119】
代替的又は追加的に、ポリマー中の架橋性官能基の割合は、ポリマー(その官能基を含む)の分子量に対して決定される。
【0120】
本明細書において、「炭化水素」との語は、その基本骨格として、主に水素原子で置換された炭素原子鎖を含む有機部分を表す。前記炭化水素は、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族、脂環式又は芳香族部分を含んでいてもよく、任意に、1又は複数の置換基(水素以外)で置換されていてもよい。置換炭化水素は、1又は複数の置換基を有していてよく、各置換基は、独立して、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、オキソ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジンであってもよい。前記炭化水素は、本明細書で定義される末端基であっても連結基であってもよい。
【0121】
好ましくは、前記炭化水素部分は、1~20個の炭素原子を有する。本明細書において数値範囲(例えば1~20)が記載される場合はいつでも、当該基、この場合はアルキル基が、1炭素、2炭素、3炭素など、20炭素までを含んでいてよいことを意味する。
【0122】
本明細書において、「アルキル」との語は、直鎖及び分枝鎖基を含む、本明細書で定義される飽和脂肪族炭化水素末端基を表す。好ましくは、前記アルキル基は1~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、前記アルキルは1~10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、別段の記載がない限り、前記アルキルは1~4個の炭素原子を有する低級アルキルである。前記アルキル基は置換であっても非置換であってもよい。置換アルキルは、1又は複数の置換基を有していてよく、各置換基は独立に、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジンであってよい。
【0123】
「アルキレン」との語は、本明細書で定義される、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素連結基を表し、本明細書で定義される、アルキル基(飽和の場合)又はアルケニル若しくはアルキニル基(不飽和の場合)とは、アルキレンが末端基ではなく連結基である点でのみ異なる。
【0124】
本明細書において、「アルケニル」との語は、直鎖及び分枝鎖基を含む、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素末端基を表す。好ましくは、前記アルケニル基は2~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、前記アルケニルは2~10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルケニルである。最も好ましくは、別段の記載がない限り、前記アルケニルは2~4個の炭素原子を有する低級アルケニルである。前記アルケニル基は置換であっても非置換であってもよい。置換アルケニルは、1又は複数の置換基を有していてよく、各置換基は独立に、例えば、シクロアルキル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジンであってよい。
【0125】
本明細書において、「アルキニル」との語は、直鎖及び分枝鎖基を含む、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素末端基を表す。好ましくは、前記アルキニル基は2~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、前記アルキニルは2~10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキニルである。最も好ましくは、別段の記載がない限り、前記アルキニルは2~4個の炭素原子を有する低級アルキニルである。前記アルキニル基は、置換であっても非置換であってもよい。置換アルキニルは、1又は複数の置換基を有していてよく、各置換基は独立に、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジンであってよい。
【0126】
「シクロアルキル」との語は、すべてが炭素の単環又は縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基であって、そのうちの1又は複数の環が完全共役π電子系を有さないものを表す。前記シクロアルキル基は、置換であっても非置換であってもよい。置換シクロアルキルは、1又は複数の置換基を有していてよく、各置換基は独立に、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジンであってよい。シクロアルキル基は、本明細書で定義される、単一の隣接原子に結合する末端基であってよく、本明細書で定義される、2以上の部分に連結する連結基であってもよい。
【0127】
「アリール」との語は、すべてが炭素の単環式又は縮合多環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)末端基であって、完全共役π電子系を有するものを表す。前記アリール基は置換であっても非置換であってもよい。置換アリールは1又は複数の置換基を有していてよく、各置換基は独立に、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジンであってよい。フェニル及びナフチルは代表的なアリール末端基である。
【0128】
「ヘテロアリール」との語は、環内に、例えば、窒素、酸素、硫黄等の1つ又は複数の原子を有する単環式又は縮合環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基であって、完全共役π電子系を有するものを表す。ヘテロアリール基としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、及びプリンが挙げられるが、これらに限定されない。前記ヘテロアリール基は置換であっても非置換であってもよい。置換ヘテロアリールは、1又は複数の置換基を有していてよく、各置換基は独立に、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジンであってよい。前記ヘテロアリール基は、本明細書で定義される、単一の隣接原子に結合する末端基であってよく、本明細書で定義される、2以上の部分に連結する連結基であってもよい。代表的な例としては、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリン等が挙げられる。
【0129】
「アリーレン」との語は、本明細書で定義される、単環式又は縮合多環式連結基を表し、本明細書で定義されるアリール基又はヘテロアリール基とは、アリーレンが末端基ではなく連結基であるという点のみにおいて異なる連結基を包含する。
【0130】
「ヘテロ脂環」との語は、環内に窒素、酸素、硫黄等の1又は複数の原子を有する単環基又は縮合環基を表す。前記環はまた、1又は複数の二重結合を有していてもよい。ただし、前記環は完全共役π電子系を有さない。前記ヘテロ脂環は置換であっても非置換であってもよい。置換ヘテロ脂環は1又は複数の置換基を有していてよく、各置換基は独立に、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハライド、サルフェート、スルホネート、スルホニル、スルホキシド、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルバメート、ウレア、チオウレア、カルバメート、アミド、エポキシド、及びヒドラジンであってよい。前記ヘテロ脂環式基は、本明細書で定義される、単一の隣接原子に結合する末端基であってよく、本明細書で定義される、2以上の部分に連結する連結基であってもよい。代表的な例としては、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン等が挙げられる。
【0131】
本明細書において、「アミン」及び「アミノ」との語は、-NRxRy末端基及び-NRx-連結基のいずれも表し、ここで、Rx及びRyはそれぞれ独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロ脂環であり、これらの用語は本明細書で定義される通りである。Rx又はRyがヘテロアリール又はヘテロ脂環の場合、アミンの窒素原子は前記ヘテロアリール環又はヘテロ脂環の炭素原子に結合する。アミンの窒素原子に結合する炭素原子は、=O又は=Sで置換されておらず、いくつかの実施形態では、いかなるヘテロ原子でも置換されていない。
【0132】
したがって、アミン基は、RxとRyの両方が水素である一級アミンであってもよく、Rxが水素でRyがアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロ脂環である二級アミンであってもよく、又はRxとRyのそれぞれが独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロ脂環である三級アミンであってもよい。
【0133】
「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」との語は、-OH基を表す。
「アルコキシ」との語は、本明細書で定義される、-O-アルキル末端基及び-O-シクロアルキル末端基、又は-O-アルキレン連結基又は-O-シクロアルキル連結基のいずれも表す。
「アリールオキシ」との語は、本明細書で定義される、-O-アリール末端基及び-O-ヘテロアリール末端基、又は-O-アリーレン連結基のいずれも表す。
「チオヒドロキシ」との語は、-SH基を表す。
「チオアルコキシ」との語は、本明細書で定義される、-S-アルキル末端基及び-S-シクロアルキル末端基、又は-S-アルキレン連結基又は-S-シクロアルキル連結基のいずれも表す。
「チオアリールオキシ」との語は、本明細書で定義される、-S-アリール末端基及び-S-ヘテロアリール末端基、又は-S-アリーレン連結基のいずれも表す。
「シアノ」及び「ニトリル」との語は、-C≡N基を表す。
「ニトロ」との語は、-NO基を表す。
「オキソ」との語は、=O基を表す。
「アジド」との語は、-N=N=N基を表す。
「アゾ」との語は、-N=N-Rx末端基又は-N=N-連結基を表し、ここでRxは本明細書で定義される通りである。
「ハライド」及び「ハロ」との語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を表す。
「ホスフェート」との語は、-O-P(=O)(OR)-OR末端基、又は-O-P(=O)(ORx)-O-連結基を表し、ここで、R及びRは、リン酸カルシウム等のリン酸イオン塩に言及する場合を除き、本明細書で定義される通りである。
「ホスホニル」及び「ホスホネート」との語は、-P(=O)(OR)-OR末端基、又は-P(=O)(OR)-O-連結基を指し、ここで、R及びRは本明細書で定義される通りである。「ホスフィニル」との語は、-PR基を表し、ここで、R及びRは本明細書で定義される通りである。
「スルホキシド」又は「スルフィニル」との語は、-S(=O)-R末端基又は-S(=O)-連結基を表し、ここで、Rは本明細書で定義される通りである。
「スルホニル」との語は、-S(=O)-R末端基又は-S(=O)-連結基を表し、ここで、Rは本明細書で定義される通りである。
「スルホネート」との語は、-S(=O)-O-R末端基若しくは-O-S(=O)-R末端基、又は-S(=O)-O-連結基を表し、ここで、Rは本明細書で定義される通りである。
「サルフェート」との語は、-O-S(=O)-O-R末端基又は-O-S(=O)-O-連結基を表し、ここで、Rは本明細書で定義される通りである。
本明細書で使用される「スルホンアミド」及び「スルホンアミド」との語は、S-スルホンアミド末端基及びN-スルホンアミド末端基、並びに-S(=O)2-NR-連結基をいずれも包含する。
「S-スルホンアミド」との語は、-S(=O)-NR末端基を表し、R及びRは本明細書で定義される通りである。
「N-スルホンアミド」との語は、RS(=O)-NR-末端基を表し、ここで、R及びRは本明細書で定義される通りである。
本明細書において、「カルボニル」との語は、-C(=O)-R末端基又は-C(=O)-連結基を表し、Rは本明細書で定義される通りである。本明細書における「アルデヒド」との語は、-C(=O)H末端基を表す。
本明細書で使用される「チオカルボニル」との語は、-C(=S)-R末端基又は-C(=S)-連結基を表し、Rxは本明細書で定義される通りである。
本明細書で使用される「カルボキシ」及び「カルボキシル」との語は、C-カルボキシ末端基及びO-カルボキシ末端基、並びに-C(=O)-O-連結基のいずれも包含する。
「C-カルボキシ」との語は、-C(=O)-OR末端基を表し、ここで、Rは本明細書で定義される通りである。「カルボン酸」との語は、-C(=O)-OH末端基、又は脱プロトン化形態の(-CO )若しくはその塩を表す。
「O-カルボキシ」との語は、-OC(=O)-R末端基を表し、ここで、Rは本明細書で定義される通りである。
「ウレア」との語は、-NRC(=O)-NRyRw末端基又は-NRC(=O)-NRy-連結基を表し、ここでR及びRは本明細書で定義される通りであり、RwはR及びRyについて本明細書で定義される通りである。
「チオウレア」との語は、-NR-C(=S)-NRyRw末端基又は-NR-C(=S)-NRy連結基を表し、R、Ry及びRyは本明細書で定義される通りである。
本明細書において、「アミド(amide)」及び「アミド(amido)」との語は、C-アミド末端基及びN-アミド末端基、並びに-C(=O)-NR-連結基のいずれも包含する。
「C-アミド」との語は、-C(=O)-NRxRy末端基を表し、ここでRx及びRyは本明細書で定義される通りである。
「N-アミド」との語は、RxC(=O)-NRy-末端基を表し、ここでRx及びRyは本明細書で定義される通りである。
本明細書において、「カルバミル」又は「カルバメート」との語は、N-カルバメート及びO-カルバメート末端基、並びに-OC(=O)-NRx-連結基を包含する。
「N-カルバメート」との語は、RyOC(=O)-NRx-末端基を表し、Rx及びRyは本明細書で定義される通りである。
「O-カルバメート」との語は、-OC(=O)-NRxRy末端基を表し、R及びRは本明細書で定義される通りである。
本明細書において、「チオカルバミル」又は「チオカルバメート」との語は、O-チオカルバメート末端基、S-チオカルバメート末端基及びN-チオカルバメート末端基、並びに-OC(=S)-NRx-連結基又は-SC(=O)-NRx-連結基を包含する。
「O-チオカルバメート」及び「O-チオカルバミル」との語は、-OC(=S)-NRxRy末端基を表し、Rx及びRyは本明細書で定義される通りである。
「S-チオカルバメート」及び「S-チオカルバミル」との語は、-SC(=O)-NRxRy末端基を表し、Rx及びRyは本明細書で定義される通りである。
「N-チオカルバメート」及び「N-チオカルバミル」との語は、RyOC(=S)NRx-末端基又はRySC(=O)NRx-末端基を表し、Rx及びRyは本明細書で定義される通りである。
本明細書において、「ヒドラジン」との語は、-NRx-NRyRw末端基、又は-NR-NR-連結基を表し、Rx、Ry、及びRwは本明細書で定義される通りである。
本明細書において、「イソシアネート」との語は、-N=C=O基を表す。
本明細書において、「エポキシド」との語は、本明細書で定義される、
【0134】
【化1】
【0135】
末端基又は
【0136】
【化2】
【0137】
連結基を表し、ここでRx、Ry、及びRwは本明細書で定義される通りである。
【0138】
上述のように、そして架橋性基の架橋に関連して、いくつかの実施形態において、わずかに架橋されたポリマー(より低架橋の構成とも称する)は、約0.1%の架橋~約1%の架橋を含み、任意に、約0.05%の架橋~約3%の架橋、任意に、約0.01%の架橋~約5%の架橋を含む。いくつかの実施形態では、わずかに架橋されたポリマーとは対照的に、約50%の架橋~約90%の架橋、任意に約60%の架橋~約95%の架橋、任意に約70%の架橋~約100%の架橋を含む架橋ポリマー(より高架橋の構成とも称する)が存在する。
【0139】
<例示的なポリマー合成>
ここで、本発明のいくつかの実施形態における例示的なポリマー合成の概略図を示す図2を参照する。いくつかの実施形態において、例示的なポリマーであるPv-GMA、Pv-IMA及びPv-AMAの合成は以下のように行う。
【0140】
1.グリシジルメタクリレート(Pv-GMA)を使用した改変
a)乾燥DMSO(USP標準、Sigma-Aldrich)中のPVA(75~99%加水分解、Mowiol)の0.5~20重量%溶液を加熱し、真空下で95℃で蒸発させる。
b)室温まで冷却した後、GMA(グリシジルメタクリレート、Sigma-Aldrich)及びTEA(トリエチルアミン、Sigma-Aldrich)を、PVAのヒドロキシ基に対して、それぞれ、モル比3:1(低MA濃度では1:1~高MA濃度では5:1の間)、及びモル比1:50(速い反応では1:10~遅い反応では1:300の間)で添加する。窒素下、55℃(48℃~65℃)で10時間(2~15時間)反応を行う。
c)室温まで冷却した後、改変ポリマーを抽出し、数回十分に洗浄して残留するすべてのモノマー、触媒、及び溶媒を洗浄する(洗浄溶液は、ポリマー上のMA改変の割合に応じて、メタノール、イソプロパノール、これらとアセトンとの混合物、水、又はエーテル類とすることができる。)。
d)最終的なPv-GMAポリマー生成物は、炭素鎖に共有結合した複数のMA単位で構成されている。
いくつかの実施形態では、Pv-GMAポリマーの平均分子量は、約130,000g/モルである(10,000から200,000g/モルの間であってもよい)。
【0141】
2.2-イソシアノエチルメタクリレート(Pv-IMA)を使用した改変
a)乾燥DMSO(USP標準、Sigma-Aldrich)中のPVA(75~99%加水分解、Mowiol)の0.5~20重量%溶液を加熱し、真空下で95℃で蒸発させる。
b)50℃まで冷却した後、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)及び2-イソシアノエチルメタクリレート(IEM)を、PVAのヒドロキシ基に対して、それぞれ、モル比1:200(1:50~1:300の間)、及びモル比1:1(0.5:1~5:1の間)で添加する。窒素下、50℃(48℃~65℃)で12時間(2~15時間)反応を行う。
c)室温まで冷却した後、改変ポリマーを抽出し、数回十分に洗浄して残留するすべてのモノマー、触媒、及び溶媒を洗浄する(洗浄溶液は、ポリマー上のMA改変の割合に応じて、メタノール、イソプロパノール、これらとアセトンとの混合物、水、又はエーテル類とすることができる。)。
d)最終的なPv-IMAポリマー生成物は、炭素鎖に共有結合した複数のMA単位で構成されている。
いくつかの実施形態では、Pv-IMAポリマーの平均分子量は、約130,000g/モルである(10,000から200,000g/モルの間であってもよい)。
【0142】
3.無水メタクリル酸(Pv-AMA)を使用した改変
a)乾燥DMSO(USP標準、Sigma-Aldrich)中のPVA(75~99%加水分解、Mowiol)の0.5~20重量%溶液を加熱し、真空下で95℃で蒸発させる。
b)室温まで冷却した後、TEA(トリエチルアミン、Sigma-Aldrich)及び無水メタクリル酸(MAH)を、PVAのヒドロキシ基に対して、それぞれ、モル比1:150(1:50~1:300の間)、及びモル比2:1(0.5:1~5:1の間)で添加する。窒素下、58℃(48℃~65℃)で10時間(2~15時間)反応を行う。
c)室温まで冷却した後、改変ポリマーを抽出し、数回十分に洗浄して残留するすべてのモノマー、触媒、及び溶媒を洗浄する(洗浄溶液は、ポリマー上のMA改変の割合に応じて、メタノール、イソプロパノール、これらとアセトンとの混合物、水、又はエーテル類とすることができる。)。
d)最終的なPv-AMAポリマー生成物は、炭素鎖に共有結合した複数のMA単位で構成されている。
いくつかの実施形態では、Pv-AMAポリマーの平均分子量は、約130,000g/モルである(10,000~200,000g/モルの間であってもよい)。
【0143】
化合物に付されている名称は、本発明の読み及び理解を容易にするために使用される例示的な名前であることに留意されたい。他の出発物質を使用する場合は、他の名称を使用できることは明らかである。したがって、例えば、イソシアノエチルメタクリレートの代わりに他の物質を使用できるため、これらの化合物は一般的に「Pv-EMA」(Pv-エチルメタクリレート)と称され得、また例えば、無水物の代わりに他の物質を使用できるため、これらの化合物は一般的に「Pv-MA」(Pv-メタクリレート)と称され得る。
【0144】
本発明のすべての実施形態において、遊離モノマーが最終生成物に残留しないことを確実にするために、数回の洗浄が行われることに留意されたい。
【0145】
(ポリマーへの添加剤の任意の添加)
いくつかの実施形態では、移植される材料の粘度が、例えば注射器によって、選択された場所への容易な送達を可能にする医療グレードのインプラントを有することが望ましい。いくつかの実施形態では、a)ポリマー溶融の粘度;b)ガラス転移温度(Tg);c)融解温度(Tm);d)ポリマーの弾性率、の1又は複数を減少させることにより、ポリマーの流動性及び/又は熱可塑性を高めるために、可塑剤をポリマーに添加する。いくつかの実施形態では、材料の粘度(動的粘度)は、約1000Pa・s~約500Pa・sであり、任意に約1500Pa・s~約300Pa・sであり、任意に約2000Pa・s~約200Pa・sである。いくつかの実施形態では、前記可塑剤は、ポリマーに添加される内部可塑剤である(例えば、PVAのヒドロキシル基の一部のエーテル化又はエステル化等の内部修飾)。いくつかの実施形態では、前記可塑剤は外部可塑剤である。いくつかの実施形態では、外部可塑剤は、ポリマーに添加された非共有結合分子である。いくつかの実施形態では、1又は複数の可塑剤が使用される。いくつかの実施形態では、可塑剤の混合物が使用される。いくつかの実施形態では、内部可塑剤と外部可塑剤の混合物が使用される。いくつかの実施形態では、量に応じて、半剛性製品から非常に柔軟な製品まで広範な製品を達成することができる。いくつかの実施形態において、可塑剤の濃度は、最終品重量の約1%~約50%、任意に最終品重量の約5%~約60%、任意に最終品重量の0.1%~約80%であり得る。いくつかの実施形態では、可塑剤の優先的な濃度は、最終品重量の約8%~約12%である。いくつかの実施形態では、所望の弾性を提供するために、上記の濃度の可塑剤の添加が行われる。いくつかの実施形態では、重合中に発生する内圧の解放を確実にするために、上記のように可塑剤の濃度を変更及び/又は使用することによって弾性を変化させる。いくつかの実施形態では、以下の外部可塑剤のうちの1又は複数が使用される:非毒性であることが知られているクエン酸分子可塑剤(クエン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチルATBC、クエン酸アセチル(2-エチルヘキシル)、又はクエン酸トリエチル);アジペート可塑剤;トリメリット酸無水物(TMA)可塑剤;ベンゾエート可塑剤、及びフタレート可塑剤。
【0146】
いくつかの実施形態では、ガラス転移温度(Tg)を所望の値、例えば約5℃~約50℃の値に下げるために、必要な量の可塑剤がPvGMAに添加される。いくつかの実施形態では、硬化物の弾性率を約0%~約50%、任意に約10%~約60%、任意に約15%~約80%下げるために、必要な量の可塑剤がPvGMAに添加される。
【0147】
いくつかの実施形態では、変換可塑剤(transforming plasticizer)が使用される。いくつかの実施形態では、前記変換可塑剤は、硬化プロセス前には外部可塑剤として開始し、硬化プロセス中にポリマーに結合する。いくつかの実施形態では、変換可塑剤分子はポリマー上のアクリル基と反応可能なアクリル基を含む。いくつかの実施形態において、形質転換可塑剤は、クエン酸アクリル系、アジピン酸アクリル系、又はアクリル-PEG系である。
【0148】
いくつかの実施形態において、可塑剤の添加の潜在的な利点は、移植される材料の粘度の低下であり、これは、所望の位置に注入されるときにより容易な移植を可能にする。いくつかの実施形態では、前記粘度の改変は、約10%~約50%、任意に約5%~約60%、任意に約15%~約80%の減少である。いくつかの実施形態において、可塑剤の添加のさらなる潜在的な利点は、硬化プロセス中の気泡の生成の減少であり、これにより、より安定で強度の高いインプラントを達成することができる。いくつかの実施形態では、可塑剤を含まないインプラントにおいて、生成された気泡のサイズは直径約0.2mmであり、密度は約12気泡/mmであることがわかった。いくつかの実施形態では、可塑剤を含むインプラントにおいて、生成された気泡のサイズは直径約0.05mmであり、密度は約3気泡/mmであることがわかった。任意に、可塑剤の存在下で生成される気泡は、直径約0.005mmのサイズであり、密度が約1気泡/mmである。任意に、可塑剤の存在下で生成される気泡は、直径約0.005mm~約0.05mmのサイズであり、密度が約1気泡/mm~約5気泡/mmである。
【0149】
<インプラントのさらなる例示的な実施形態>
いくつかの実施形態では、前記医療用インプラントは、3つ以上の固相を有する、モノマーを含まないメタクリルポリマー(関連する例では骨増強材料とも称する)として構成される。いくつかの実施形態では、第1の相においてポリマーは可逆的固体状態にある。いくつかの実施形態では、第1の相の間は主要な材料のみが固体であり、活性剤は不活性に維持されて、第2の相に達するまで保存される。いくつかの実施形態では、第2の相では、前記ポリマーは、柔軟で伸縮性のある無定形半液体である。いくつかの実施形態では、第2の相において、材料は、所望の場所への注入を可能にするのに十分な液状であるが、所望の場所の外に漏出するのに十分な液状ではない。いくつかの実施形態において、任意に、前記ポリマーは、第2の相の間に非架橋であるか、わずかに架橋している。いくつかの実施形態では、これらの特性により、医療用インプラントを狭い穴からキャビティに容易に挿入し、キャビティの形状をとらせることができる。いくつかの実施形態では、標的部位にアクセス可能である場合、例えば開腹手術において標的部位にアクセス可能である場合、医療用インプラントを標的部位に直接配置することができる。いくつかの実施形態では、第3の相では、ポリマーは不可逆的固体である。
【0150】
いくつかの実施形態では、医療グレードのインプラントを第1の相、第2の相、及び第3の相の間で転移させる方法は、インプラントが配置されている周囲の温度を変えることによる。例えば、第1の相では、医療グレードのインプラントは25℃未満の温度で保存される。いくつかの実施形態では、医療グレードのインプラントは、25℃未満に維持されている限り、開始剤を安全かつ不活性に維持しつつ、可逆的固体のまま維持される。いくつかの実施形態では、医療グレードのインプラントを第2の相に転移させるために、約25℃~約37℃に温度を上昇させる。いくつかの実施形態では、医療グレードのインプラントが約25℃~約37℃に維持されている場合、開始剤が安全かつ不活性に維持されつつ、インプラントは半液体に維持される。いくつかの実施形態では、医療グレードのインプラントを第3の相に移行するために、37℃超に昇温する。いくつかの実施形態では、温度を37℃より高めると開始剤が活性化され、これにより医療グレードのインプラントが固体になるまで不可逆的な重合プロセスがおこる。
【0151】
上記のように、また架橋性基の架橋に関連して、いくつかの実施形態では、各相の間の違いは、より低架橋の構成からより高架橋の構成への転移を含む。いくつかの実施形態において、より低架橋の構成は、約0.1%の架橋~約1%の架橋、任意に約0.05%の架橋~約3%の架橋、任意に約0.01%の架橋~約5%の架橋を含む。いくつかの実施形態において、より架橋された構成は、約50%の架橋~約90%の架橋、任意に約60%~約95%の架橋、任意に約70%~約100%の架橋を含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、この材料を達成する方法は、ポリマーのTgを減少させ、インプラントの所望の特性を達成するために、上記と同様の方法によりグリシジルアルキル(GA)を添加することによる。いくつかの実施形態において、前記GAは、PVAのヒドロキシル基の約5%~約90%に添加することができる。いくつかの実施形態では、任意に、ポリマーのTgを低下させ、インプラントの所望の特性を達成するために、アルキルエーテルをPVAに添加する。いくつかの実施形態において、前記GAは、PVAのヒドロキシル基の約5%~約90%に添加することができる。
【0153】
ここでPv-GMA-GAEポリマーとPv-GMA-AEとの比較が示される図3を参照する。いくつかの実施形態では、前記2つのポリマー(PvGMA-AE及びPvGMA-GAE)は、主に、付加された分子の結合基(AE-エーテル、GAE-エステル)によって互いに異なる。いくつかの実施形態では、前記ポリマーの最終的な特性は、添加された分子のアルキル基の組成に大きく依存するが、これはいずれもほぼ同じである。しかしながら、いくつかの実施形態では、(AEにおける)エーテル結合は、(GAEにおける)エステル結合よりも柔軟で安定していると考えられる。
【0154】
いくつかの実施形態では、グリシジルアルキルエーテル(GAE)分子をエーテル化反応によりポリマーのヒドロキシル基に結合させることによって、前記内部可塑剤を添加してもよい(以下を参照)。いくつかの実施形態において、前記GAE分子は、グリシジルエチルエーテル、グリシジルプロピルエーテル、グリシジルブチルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-(2-メトキシエトキシ)エチルグリシジルエーテル、2-(2-エトキシエチル)エチルグリシジルエーテルの1又は複数であってもよい。
【0155】
いくつかの実施形態において、前記内部可塑剤は、塩化ブチル、1-クロロ-2-メチルブタン、1-クロロ-3-フェニルプロパン、1-ブロモ-2-メチルプロパン、1-ブロモブタン、1-ブロモ-3-メチルブタンのようなハロゲン化アルキルと反応することにより、アルキル分子をポリマーのヒドロキシ基に結合することによって添加される。
【0156】
いくつかの実施形態では、前記内部可塑剤は、ポリマー単位の約1%~約50%添加される。いくつかの実施形態では、可塑剤による改変は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を約5℃~約50℃の値に低下させる可能性がある。いくつかの実施形態では、前記可塑剤は、硬化物の弾性率を約0%~約50%の範囲で低下させる可能性がある。
【0157】
いくつかの実施形態では、Pv-GMA-GAEポリマー及び/又はPv-GMA-AEポリマーを使用することの潜在的な利点は、使いやすく保管が容易なポリマーを提供することである。いくつかの実施形態では、開始剤が安全かつ不活性に維持されつつ、材料が可逆的固体であるため、医療グレードのインプラントは必要になるまで無期限に保管することができる。いくつかの実施形態では、材料は第2の相では半液体であるため、所望の位置に容易に注入することができる。
【0158】
(グリシジルアルキルエーテル(Pv-GAE)を用いた改変)
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、グリシジルアルキルエーテル(Pv-GAE)を使用した改変の概略図を示す図4aを参照する。
【0159】
a)乾燥DMSO(USP標準、Sigma-Aldrich)中のPVAの0.5~20重量%溶液(75~99%加水分解、Mowiol)を加熱し、真空下で95℃で蒸発させる。
b)室温まで冷却した後、GAE(グリシジルアルキルエーテル、例えばグリシジルブチルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、グリシジルプロピルエーテル、Sigma-Aldrich)及びTEA(トリエチルアミン、Sigma-Aldrich)を、PVAのヒドロキシ基に対して、それぞれ、モル比3:1(低MA濃度では1:1~高MA濃度では5:1の間)、及びモル比1:50(速い反応では1:10~遅い反応では1:300の間)で添加する。窒素下、55℃(48℃~65℃)で10時間(2~15時間)反応を行う。
c)室温まで冷却した後、改変ポリマーを抽出し、数回十分に洗浄して残留するすべてのモノマー、触媒、及び溶媒を洗浄する(抽出溶液及び洗浄溶液は、ポリマー上のMA改変の割合に応じて、tert-ブチルメチルエーテル、石油エーテル、メタノール、イソプロパノール、アセトン、水、エーテル、又はこれらの混合物とすることができる。)。
d)最終的なPv-GAEポリマー生成物は、炭素鎖に共有結合した複数のアルキルエーテル単位で構成されている。
【0160】
いくつかの実施形態において、Pv-GAEポリマーの平均分子量は、約130,000g/モルである(1,000~200,000g/モルであり得る)。
【0161】
いくつかの実施形態において、上記の手順の1つにおいて、メタクリル基でさらに改変するために、PVAに代えてPv-GAEが使用される。
【0162】
いくつかの実施形態では、GAE及びGMAによる改変反応は、1つの反応で共に実施してもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーの最終的な特性を変化させるために、異なる比率のGAE及びGMAを使用することができる。
【0163】
(ハロゲン化アルキルを用いた改変)
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、ハロゲン化アルキルを使用する改変の概略図を示す図4bを参照する。
【0164】
a)水中のPVA(75~99%加水分解、Mowiol)の0.5~10重量%溶液を、ポリマーが完全に溶解するまで70℃で2時間加熱した。
b)室温まで冷却した後、ハロゲン化アルキル(例えば塩化ブチル)を、PVAのヒドロキシ基に対して、モル比1:20(1:100~1:5の間)で添加した。
c)反応系を75℃に加熱し灌流下で10時間撹拌した。
d)室温まで冷却した後、有機相と水相を分離した。改変ポリマーを抽出し、数回十分に洗浄して残留するすべてのモノマー、触媒、及び溶媒を洗浄した(抽出溶液及び洗浄溶液は、ポリマー上の改変の割合に応じて、tert-ブチルメチルエーテル、石油エーテル、メタノール、イソプロパノール、アセトン、又はこれらの組み合わせであってもよい。)
【0165】
<例示的な最終品の組成>
いくつかの実施形態では、前記医療用インプラントの骨増強材料は、固体であるが柔軟性のあるPv-GMAで構成され、いくつかの実施形態では、任意に少なくとも2つの添加剤を含む。いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つの添加剤は、重合開始剤及び放射線不透過性マーカーである。いくつかの実施形態において、他の添加剤、例えば、可塑剤、成長因子、医薬品、化学物質、タンパク質等が添加されてもよい。
【0166】
(例示的な開始剤)
いくつかの実施形態では、アクリル系材料と同様に、初期状態から最終的な硬質重合状態への移行には、適切な重合開始剤の添加を要する。いくつかの実施形態において、開始剤は、例えば、自己硬化のためにはBPO/DMPT(過酸化ベンゾイル/N、N-ジメチル-p-トルイジン)対、光開始のためにはCQ/TA(カンファーキニン/第三級アミン)対、TPO(光開始用のジフェニルホスフィンオキシド)又はPPD(フェニルプロパンジオン)、又は光又は熱(30~80℃)により開始可能なAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)分子の非毒性誘導体であってよい。いくつかの実施形態では、開始剤は、MA基に対して、1:250のモル比、任意に1:50~1:500のモル比、又は0.01~5重量%でポリマー骨増強材料に添加される。
【0167】
いくつかの実施形態では、貯蔵中の開始剤の自発的活性化を防ぐために、ポリマーは、そのガラス転移点(Tg)又は融点(Tm)が貯蔵温度と体温との間となるように設計された。Tg未満では、ポリマーは硬質な固体状態にあり、開始剤の分解を起こさせないが、Tg超では、ポリマーは軟化して、開始剤の分解を可能にする。
【0168】
いくつかの実施形態では、別の開始方法は、開始剤と活性剤との間の空間的分離によるものである。いくつかの実施形態では、BPO(又は他の)開始剤は、PvGMAの一部に均一に分散され、DMPT(又は他の)活性剤は、PvGMAの他の部分に均一に分散される。次に、これらの2つの部分を互いに直接接続するか、薄い純粋なPvGMAフィルムで分離する。いくつかの実施形態では、この物質に力を加えると、すべての部分が一緒に混合され、開始剤と活性剤の混合により重合反応が開始され、骨増強材料が硬質な相に転移する。
【0169】
いくつかの実施形態では、開始方法は空間的分離に基づいており、開始剤(BPO又は他)及び活性剤(DMPT又は他)はいずれもPvGMAに均一に分散されているが、それらのうち1つはカプセル化されている。いくつかの実施形態では、その物質に力を加えると、カプセルが破壊され、開始剤と活性剤が混合される。いくつかの実施形態では、開始剤と活性剤の混合により重合反応が開始され、骨増強材料がその硬質な相に転移する。
【0170】
いくつかの実施形態では、MAシェル内でのDMPT(又はその他)のマイクロカプセル化は、以下の方法で行うことができる:
【0171】
カプセル化された分子を、MMA(メタクリル酸メチル)、Pv-GMA、又はMA(メタクリレート)基を含む他の非水溶性溶媒と、1:1(1:0~1:10)の比率で混合することにより、カプセル化された分子(DMPT、BPO等)を含む溶液Aを調製する。任意に、少量の有機可溶性光開始剤を加えてもよい。
【0172】
水溶性光開始剤(例えば、和光V50 AIBN誘導体等)を0.1~5%の濃度で水に溶解することにより溶液Bを調製する。任意に、少量の界面活性剤を添加してもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化反応は、激しく混合しながら溶液Aを溶液Bに噴霧することにより行われる。いくつかの実施形態では、B中にAが均一に分布した後、混合物は適切なUV/Vis光で照射される。
【0173】
いくつかの実施形態では、照明の持続時間は、約10分~約1時間であり、任意に約5分~約3時間であり、任意に約1分~約10時間である。いくつかの実施形態では、光源強度は、50mW/cm~2000mW/cmである。いくつかの実施形態では、混合速度は、約100rpm~約500rpmであり、任意に約50rpm~約1000rpmであり、任意に約10rpm~約3000rpmである。いくつかの実施形態では、溶液A:溶液B比は、体積基準で約1:1~約1:100であり、任意に約1:0.5~約1:500であり、任意に約1:0.1~約1:1000である。いくつかの実施形態において、光開始剤の濃度は、0.05%~5%である。いくつかの実施形態において、MA分子のタイプは、Pv-GMA、Pv-IMA、及びPv-AMAであり得る。いくつかの実施形態では、反応温度は約5℃~約70℃であり、任意に約3℃~約90℃であり、任意に約1℃~約150℃である。いくつかの実施形態では、上記のパラメータの変更により、カプセル化のサイズ及び壁の厚さが制御される。いくつかの実施形態では、反応溶液の速度の遅い遠心、液体の除去、及びメタノール/エタノール中での懸濁によってカプセル化の抽出を行ってもよい。
【0174】
<例示的な水感受性添加剤(方法、水の量)>
いくつかの実施形態において、重合(硬化)の開始の引き金は、水への曝露であり得る。いくつかの実施形態では、水に敏感なシアノアクリレート(CA)等のアクリル分子は、湿気にさらされると自然に重合する。いくつかの実施形態では、外科用皮膚及び組織接着剤として、n-ブチル2-シアノアクリレート及び2-オクチル2-シアノアクリレート等のより長鎖のCAが使用されている。いくつかの実施形態では、いくつかのCAモノマーがアクリルポリマー(例えば、PvGMA)と混合される。いくつかの実施形態では、製品が乾燥保管されている限り重合は起こらない。いくつかの実施形態では、手順中に材料が注入されて体液及び湿気にさらされ、これがCAと反応してアニオン性重合反応が開始される。いくつかの実施形態において、CA分子はポリマー重量の0.1~5%添加される。
【0175】
いくつかの実施形態では、特定の電子リッチなビニルモノマー(例えばスチレン)を添加するとラジカル重合反応が開始される。
【0176】
<例示的な放射線不透過性マーカー>
いくつかの実施形態では、骨増強材料の骨への注入中に、医師は、骨増強材料の位置を追跡する必要がある。ポリマーはX線に対して透過性であるため、放射線不透過性添加剤を添加することにより、骨増強材料の視覚化が実現される。いくつかの実施形態では、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、又はこれらの両方のような放射線不透過性マーカーが、10重量%(5~40%の間)の割合で骨増強材料に添加される。
【0177】
<例示的な最終材料の調製>
いくつかの実施形態において、Pv-GMA(又はPv-IMA若しくはPv-AMA)ポリマーは、有機溶媒、例えば、アセトン、メタノール、エタノール又はイソプロパノールに浸漬される。いくつかの実施形態では、完全に浸漬した後、開始剤を添加し、溶液を、任意に0.22ミクロンのフィルターを通して、濾過する。いくつかの実施形態では、任意に、必要な放射線不透過性材料、例えば硫酸バリウム又は酸化ジルコニウムが次に添加される。
【0178】
いくつかの実施形態において、最終的な懸濁液からの最終的に成形された無定形固体材料の調製は、以下の通りである:
【0179】
いくつかの実施形態において、前記懸濁液は型に注がれる。いくつかの実施形態では、次に、(任意にエバポレーターを使用して)溶媒の蒸発及びポリマーの結晶化が達成されるまで型を開いたままにする。
【0180】
いくつかの実施形態では、金型キャビティの形状は、最終的な無定形固体材料のサイズ及び形状を作り出す。いくつかの実施形態では、前記無定形固体材料は、最終的な形状及びサイズに切り出される。いくつかの実施形態では、無定形固体材料のいくつかの断片を組み合わせることによって最終的な形状及びサイズが達成される。
【0181】
いくつかの実施形態では、最終的に成形された無定形材料は、次に、送達デバイスにロードされる。
【0182】
いくつかの実施形態では、型に代えて送達デバイスが使用され、溶媒を蒸発させながら懸濁液が送達デバイスに直接注入される。
【0183】
いくつかの実施形態では、ポリマーを抽出するために、貧溶媒抽出法が使用される。いくつかの実施形態では、この方法では、ポリマー溶液は、貧溶媒、例えば水で満たされたタンクに注入される。いくつかの実施形態では、溶媒が貧溶媒に移され、固体ポリマーが現出する。
【0184】
いくつかの実施形態において、前記懸濁液は、高濃度で粘稠な懸濁液となるまで、溶媒を蒸発させるために、撹拌下で開いたままにされる。いくつかの実施形態では、十分に混合された粘性懸濁液が、シリンジ502及び乾燥ガス蒸気504を介して注入される。いくつかの実施形態では、乾燥ストリップが次にインプラント又は送達デバイス506内に挿入され、これは例えば図5に示されており、ここでは、本発明のいくつかの実施形態による充填デバイス500の例示的な実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、材料がシリンジから排出される場所であるシリンジのアパーチャは、材料が異なるサイズ、形状、及び/又は断面に形成されることを可能にするため、異なるサイズ、形状、及び/又は断面を含むことができる。
【0185】
<例示的なインプラントの調製及び送達>
いくつかの実施形態において、骨増強材料は型で成形され、以下の形状のストリップを形成する:
直径約1mm~約10mm、任意に約0.5mm~約20mm、任意に約0.1mm~約100mm、例えば、0.3mm、2mm、2.8mm、3mm、5mm、50mm;任意により大きい、若しくはより小さい、又はその間の任意の数値;
長さ約10mm~約100mm、任意に約5mm~約200mm、任意に約1mm~約1000mm、例えば、20mm、100mm、200mm、500mm、750mm;任意により大きい、若しくはより小さい、又はその間の任意の数値。
いくつかの実施形態では、前記型は、他の形状及び/又はサイズを有していてもよい。
【0186】
いくつかの実施形態では、約1cc~約10cc、任意に約0.5cc~約50cc、任意に約0.1c~約100cc、例えば、1.25cc、2cc、7cc、20cc、75cc、任意により大きい、若しくはより小さい、又はその間の任意の数値のストリップが送達チューブに入る。いくつかの実施形態では、最終的に充填された送達チューブは、パッキングされ、滅菌される。いくつかの実施形態では、製造は無菌環境で行われるため、追加の滅菌を要しない。
【0187】
<送達デバイスの例示的な実施形態>
ここで、本発明のいくつかの実施形態による例示的な送達デバイスの概略図を示す図6を参照する。いくつかの実施形態では、骨増強材料602は、2つの開口部である近位開口部606及び遠位開口部608を有するチューブ604に挿入される。いくつかの実施形態では、送達デバイス610を使用して、遠位開口部608が移植部位にもたらされる。いくつかの実施形態では、そこに到達すると、プランジャ様デバイス612を使用して、骨増強材料602が所望の位置に放出される。いくつかの実施形態では、シリンジ-プランジャ機構を使用する代わりに、骨増強材料602は、機械的パワーブーストデバイス614を使用して送達される。いくつかの実施形態では、他の機構、例えば、油圧機構、電動機構及び無線動力機構を使用することができる。いくつかの実施形態では、遠位開口部608は、チューブ604よりも小さい直径及び/又は異なる形状を含む。いくつかの実施形態では、開口部608が「ボトルネック」として機能し、制御された配置により、配置される材料の量、及び/又は配置速度、及び/又は領域充填の正確性の意味において、材料の配置のよりよい制御を可能にするため、これは有利である。いくつかの実施形態では、追加的及び/又は任意に、遠位開口部608は、必ずしもチューブ604の先端ではなく、側孔として備えられ得る。いくつかの実施形態では、追加的及び/又は任意に、複数の遠位開口部が存在する。
【0188】
いくつかの実施形態では、前記送達デバイスは、所望の部位への骨増強材料の送達を切断及び/又は停止するように適合された切断機構を含む。いくつかの実施形態では、骨増強材料は、移植可能なデバイスの内部に送達される。いくつかの実施形態では、前記移植可能デバイスが患者の体内に配置されると、骨増強材料が移植可能デバイスの内部から放出され、これにより前記移植可能デバイスがその部位に捕捉及び/又は封入及び/又は固定される(例えば以下の「ねじ内部固定」パートを参照)。
【0189】
ここで、本発明のいくつかの実施形態によるパッケージングデバイス700の概略図を示す図7aを参照する。いくつかの実施形態では、パッケージングデバイス700は、複数の動作、例えば、カートリッジの充填、材料の混合、溶媒の蒸発等を実行する。いくつかの実施形態では、前記パッケージングデバイスは、本体702、1又は複数の混合ブレード704、1又は複数の窒素注入口706、1又は複数の温度制御チャンバー708、1又は複数のGUI(graphical unit interface)710、窒素弁712、及び一般的なオン/オフスイッチ714を含む。いくつかの実施形態では、前記パッケージングデバイス700は1又は複数のカートリッジ及び/又はシリンジ716を充填できる。いくつかの実施形態では、前記パッケージングデバイス700は無菌環境(例えば、ISO5クリーンルーム)に置かれている。いくつかの実施形態では、例えば図8に示されるように、パッケージングデバイス700は最終製造段階に使用される。
【0190】
ここで、本発明のいくつかの実施形態によるパッケージングデバイス700の使用の概略図を示す図7b~dを参照する。いくつかの実施形態では、例えば図7bに示されるように、空のカートリッジ716が前記デバイス内にロードされ、これによりカートリッジ本体が温度制御チャンバー708の内部に配置される。いくつかの実施形態では、任意に、カートリッジは最終品保存チャンバーである。いくつかの実施形態では、任意に、一時的バイアル(例えば、シリンジ)が使用される。いくつかの実施形態では、シリンジが使用される場合、最終的なカートリッジはその後の段階でロードされ、充填される(filed)。図7a~dには、5つのカートリッジ(又はシリンジ)が示されているが、パッケージングデバイスの能力に応じて、より少ない又はより多い数のカートリッジ/シリンジを充填できることを理解されたい。また、(例えば同時に5つのカートリッジを)充填するために適合したパッケージング機器は、機能するために5つすべてのカートリッジを有することを要しないことも理解されたい。
【0191】
いくつかの実施形態では、例えば図8に記載されるように、カートリッジは続いて最終成分で充填される。いくつかの実施形態では、各カートリッジは、例えば、6mlの最終材料(溶媒蒸発後)を形成するための成分で満たされる。いくつかの実施形態では、カートリッジの容量に応じて、より大量又はより少量の材料をカートリッジに挿入することができる。いくつかの実施形態では、任意に、すべての成分が一度にカートリッジに挿入される。いくつかの実施形態では、任意に、成分は、混合及び蒸発プロセス中に順次挿入される。
【0192】
いくつかの実施形態では、パッケージングデバイス700にロードされたカートリッジは、温度制御チャンバー708によって冷却された状態である。いくつかの実施形態では、温度制御チャンバー708内の温度は、混合物中で用いられる開始剤を活性化するのに必要な温度(開始剤活性化温度)より低い。いくつかの実施形態では、例えば図7dに示されるように、混合ブレード704及び窒素注入口706が各カートリッジに挿入される。いくつかの実施形態では、例えば図7cに示されるように、カートリッジ716が静止している間に、混合ブレード704が回転する。いくつかの実施形態では、任意に、混合ブレード704は静止しており、カートリッジ716は回転している。いくつかの実施形態では、回転速度は、約5RPM~約100RPMであり、任意に約3RPM~約500RPMであり、任意に約1RPM~約1000RPMである。いくつかの実施形態では、全混合プロセス中に、窒素ガスがカートリッジの下端からカートリッジ自体に流される。いくつかの実施形態では、窒素の挿入の流量は、約1L/分~約20L/分である。いくつかの実施形態では、任意に、混合プロセスの特定の時点で窒素が流される。いくつかの実施形態では、特定の時点で窒素を流すことの潜在的な利点は、溶媒蒸発プロセスを減速させることである。いくつかの実施形態では、混合及び蒸発プロセスは、溶媒及び窒素ガスのフローの量に応じて、約10分~8時間かかる。いくつかの実施形態では、混合及び蒸発プロセスは、すべての溶媒が蒸発したときに終了する。いくつかの実施形態では、任意に、残留溶媒がカートリッジに残される。いくつかの実施形態では、この段階で、カートリッジ内の材料は最終的なものであり、使用可能な状態となっている。いくつかの実施形態では、次に、カートリッジがデバイスからアンロードされ、密封され、パッケージングされる。いくつかの実施形態では、一時的なバイアルが使用される場合、最終的な材料は、次に、バイアルから最終的なカートリッジに移される。
【0193】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による例示的な最終製造工程の概略図を示す図8を参照する。いくつかの実施形態では、上記のように、最終製造工程は、無菌環境に配置されたパッケージングデバイス700で実行される。いくつかの実施形態では、PvGMAが可塑剤と共に0.22ミクロンのフィルターを通過してカートリッジに入る。いくつかの実施形態では、開始剤が溶媒と共に0.22ミクロンのフィルターを通過してカートリッジに入る。いくつかの実施形態では、滅菌されたパッケージからの放射線不透過剤がカートリッジに挿入される。いくつかの実施形態では、溶媒中の材料の量の約3倍~約10倍中で、100%の材料(溶媒を除く)を達成するために、異なる量のPvGMA、可塑剤、開始剤、放射線不透過剤及び溶媒を使用する。例えば、100gの最終材料では、使用される溶媒の量は約300ml~1000mlである。いくつかの実施形態では、上記のように、混合は、制御された温度、例えば15℃未満で、混合物に窒素を流しながら行われる。
【0194】
<例示的な硬化-柔軟なものから硬質なものまで>
いくつかの実施形態では、硬化プロセスは、ポリマーを最初の柔軟な相から最終的な硬質な相に変化させる。ほとんどの従来技術のセメントの1つの欠点は、注射前に硬化が開始するため、骨増強材料の最終硬化までの作業時間が約10分に制限されることである。いくつかの実施形態では、本医療用インプラントのポリマーでは、硬化プロセスは配置中又は配置後に積極的に開始されるため、作業時間が制限されない。
【0195】
いくつかの実施形態では、硬化中のポリマーの硬質化は、MA基の重合の結果である。いくつかの実施形態において、MA重合の開始は、フリーラジカルによって、又はアニオン性開始剤によって、又はカチオン性開始剤によって誘導される。いくつかの実施形態において、骨増強材料におけるフリーラジカルの生成は、例えば、過酸化物(例えば、BPO(過酸化ベンゾイル))と活性剤(例えば、DMPT(N,Nジメチル-p-トルイジン))との間の化学反応によって行われるか、又は熱/光(例えばAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)系分子)によって行われる。本発明の骨増強材料の利点は、感熱性又は感光性開始剤のいずれかを使用して、位置決めした後に初めて積極的に重合プロセスが開始されることである。いくつかの実施形態では、熱源は患者の自然の体温であり、これにより、患者の体内に位置決めされて初めて重合が開始するインプラントが提供される。
【0196】
いくつかの実施形態では、骨増強材料を標的部位に充填した後、適切な開始プローブがその部位に挿入される。いくつかの実施形態では、例えば、光誘導開始剤(例えば、AIBN系開始剤)を使用する場合、光プローブ(例えば、365nm、Vis、又は250nm)が挿入されて、硬化プロセスが活性化される。いくつかの実施形態では、MA基が重合を開始し、ポリマー間に架橋が生成する。
【0197】
いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、硬化の80%について約2秒~約3分である。いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、硬化の80%について約10秒~約2分である。いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、硬化の80%について約30秒~約1分である。いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、硬化の80%について約1秒~約20分である。
【0198】
いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、100%の硬化について約1時間~約8時間である。いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、100%の硬化について約2時間~約6時間である。いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、100%の硬化について約3時間~約4時間である。いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、100%の硬化について約1時間~約24時間である。いくつかの実施形態では、UVによる硬化プロセスの時間は、100%の硬化について約1時間~約48時間である。
【0199】
いくつかの実施形態では、送達されたインプラントの硬化は、インプラントを特定の温度にさらすことにより行われる。いくつかの実施形態において、熱開始剤(例えば、30℃超で2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、45℃超で2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、60超でジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、55超で2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、42℃超で2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド)等)がポリマーに添加される。
【0200】
いくつかの実施形態では、ポリマーを約30℃~約60℃の温度に曝露するとポリマーが硬化する。いくつかの実施形態では、硬化温度は約45℃~約55℃の範囲である。いくつかの実施形態では、体温が、硬化プロセスのために十分に高い。この場合、外部熱源を適用する必要はない。
【0201】
いくつかの実施形態では、加熱により、ポリマー中にフリーラジカルが生成する。いくつかの実施形態において、前記ラジカルは、メタクリル基間の連鎖反応を開始して架橋ネットワークを形成するであろう。いくつかの実施形態では、インプラントの加熱は、加熱プローブを移植部位に挿入することにより達成することができる。
【0202】
いくつかの実施形態では、熱による硬化プロセスの時間は、硬化の80%について約2分~約30分である。いくつかの実施形態では、熱による硬化プロセスの時間は、硬化の80%について約5分~約20分である。いくつかの実施形態では、熱による硬化プロセスの時間は、硬化の80%について約7分~約10分である。
【0203】
いくつかの実施形態では、熱による硬化プロセスの時間は、100%の硬化について約1時間~約8時間である。いくつかの実施形態では、熱による硬化プロセスの時間は、100%の硬化について約2時間~約6時間である。いくつかの実施形態では、熱による硬化プロセスの時間は、100%の硬化について約3時間~約4時間である。いくつかの実施形態では、硬化は体温によって行われ、100%の硬化に達するには数時間又は数日かかる場合がある。
【0204】
<例示的な機械的特性>
いくつかの実施形態では、柔らかい構成を有するインプラントは、以下の特徴を含む:
【0205】
(密度)
いくつかの実施形態では、密度(g/cm)は約0.05g/cm~約4g/cmである。いくつかの実施形態では、密度(g/cm)は約0.1g/cm~約3g/cmである。いくつかの実施形態では、密度(g/cm)は約0.8g/cm~約2g/cmである。
【0206】
(弾性率)
いくつかの実施形態では、弾性率(MPa)は約0.001MPa~約1MPaである。いくつかの実施形態では、弾性率(MPa)は約0.01MPa~約0.1MPaである。いくつかの実施形態では、弾性率(MPa)は約0.05MPa~約0.1MPaである。いくつかの実施形態では、弾性率は、移植される具体的な部位に従って選択される。いくつかの実施形態では、高密度ではインプラントはより高い弾性率により特徴付けられ、その逆も同様である。いくつかの実施形態では、インプラントは、1つのバルクではなく複数の層により生産される。これにより、弾性の方向を制御し、最終的に硬化したインプラントがある方向でより高い弾性を有し他の方向ではより低い弾性を有するようにすることができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、その硬い(又は硬質な)構成のインプラントは、以下の特徴を含む:
【0208】
(弾性率)
いくつかの実施形態では、弾性率(MPa)は約1MPa~約500MPaである。いくつかの実施形態では、弾性率(MPa)は約2MPa~約150MPaである。いくつかの実施形態では、弾性率(MPa)は約5MPa~約100MPaである。
【0209】
いくつかの実施形態では、未硬化の材料は、高い弾性を有する無定形固体である。いくつかの実施形態では、2つの未硬化材料を互いの方向に力を加えることにより一体化してもよい。
【0210】
いくつかの実施形態では、硬化した材料はその弾性を失い、硬化プロセス中に有していた形態に維持され、2つの硬化した断片は互いに力を加えても一体化しない。
【0211】
<例示的な手順>
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの開始剤を含む、非架橋又はわずかに架橋された骨増強材料が、必要な場所に送達される。いくつかの実施形態では、骨増強材料中のポリマーの架橋は、刺激、この場合例えば患者の自然の体温、にさらされることによりその位置ではじめて開始されてもよい(上記「わずかに架橋された」/「より低架橋の」及び「より高架橋の」の定義を参照)。
【0212】
(例示的な死体での実験手順)
死体での実験:椎骨への骨増強材料の注入。
【0213】
実験の詳細
先に説明したように、プランジャ型デバイス904を使用して、図9に概略的に示されるように、8.2gの骨増強材料が両側椎体形成術により82歳の女性のT11椎骨902に注入された。
【0214】
実験結果
ここで、実験結果の画像を示す図10a~dを参照する。
図10aは、椎体形成術下で骨増強材料1002で充填されたT11椎骨のX線側面像を示す。図10bは、椎体形成術下で骨増強材料(1004、1006)で充填されたT11椎骨のX線AP像を示す。図10c及び10dは、骨増強材料(1008、1010、1012、1014)が注入された椎骨の断面を示す(椎骨底部の白い領域、矢印で示す)。
画像に見られるように、本発明の骨増強材料は、骨の他の部位に漏出することなく、骨を完全に充填した。
【0215】
<例示的な能動的硬化を伴わない手順>
いくつかの実施形態では、硬化プロセスは、熱の能動的使用又はUVの能動的使用のような能動的硬化作用を必要としない。いくつかの実施形態では、硬化は、患者の体の自然の体温を使用して行われる。いくつかの実施形態では、骨増強材料全体が硬化される、すなわち未硬化の骨増強材料は体内に残らない。いくつかの実施形態では、骨増強材料は、健康な人の平均温度よりも低い温度、例えば、37℃未満、又は36℃未満、又は30℃未満、任意に約0℃~約30℃、任意に約-8℃~約20℃、任意に約-20℃~約8℃、任意に-20℃未満に維持される。
【0216】
この実施形態は、材料が手順全体にわたって液相を有さず、硬化前にも固体であり、そのため漏出のリスクが排除されるため、有利である可能性がある。さらに、本発明の骨増強材料のさらなる潜在的利点は、いくつかの実施形態では、追加の外部からの硬化手段が必要とされないことである。本発明の骨増強材料のさらなる潜在的利点は、体温自体が硬化活性剤の源であるため、未硬化の全骨増強材料が体内に残留しないことである。
【0217】
いくつかの実施形態では、任意に、患者の自然の体温によって活性化された硬化プロセスを補助するために、骨増強材料が配置されている部位に少量の熱が加えられる。
【0218】
<例示的な送達方法>
いくつかの実施形態では、任意に、プランジャが骨増強材料を押し出すときに骨増強材料と送達デバイスとの間の摩擦を低減するために、生理食塩水が骨充填デバイスに注入される。
【0219】
いくつかの実施形態では、任意に、プランジャが骨増強材料を押し出すときに骨増強材料と送達デバイスとの間の摩擦を低減するために、送達デバイスの内面は、例えばヒドロゲル材料、ポリマーコーティング、及び/又は吸湿性の塩で、コーティングされる。いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲルは、架橋されたPv-GMA、及び/又はポリアクリレート、及び/又はポリビニルアルコール、及び/又はアルギン酸カルシウムに基づく。
【0220】
いくつかの実施形態では、任意に、例えば図11に示すように、複数の事前に充填された送達デバイスが専用の密封された滅菌ブリスター又はトレイ1100に提供される。いくつかの実施形態では、任意に、単純なプランジャ型送達システムに代えて、注入機構は機械的機構又は油圧的機構である。いくつかの実施形態において、注入機構は、単純注入機構でも機械的注入機構でも、最大3cc、又は任意に最大5cc、又は任意に最大10ccの骨増強材料を送達するように適合されている。
【0221】
<一般的な例示的な医療用途>
いくつかの実施形態において、開始後に硬化する能力を有する生体適合性骨増強材料は、医療分野における様々な用途で使用される。いくつかの実施形態では、以下の適用のそれぞれは、先行技術の手段に対する潜在的な利点を含む。
【0222】
以下は、医療分野においてインプラントを使用可能ないくつかの例である。以下の例は人体用であるが、以下はいずれも動物でも実施できることは明らかである。
【0223】
<骨充填材>
骨粗鬆症、癌、又は傷害による骨材料の不足を、骨増強材料で充填することができる。固定前は柔軟な固体であるため、目的部位に合わせて容易に成形でき、目的の結果が得られた場合にのみ配置及び固定することができる。
【0224】
<ねじ内部固定>
弱い骨内のねじは不安定で外れる可能性がある。いくつかの実施形態において、前記骨増強材料は、カニューレ挿入されたねじを通して移送されて、ねじ周囲の骨を充填して強化し、漏出のおそれなくねじを固定することができる。
【0225】
ここで図12a~12bを参照すると、骨増強材料1202がスクリュー1206の少なくとも1つの開口部1204(この場合は3つが示されている)を通して移送され、ねじ1206周囲の骨1208を充填及び強化する実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、先に開示された機構と同様に、ねじ1206は、ハンドル1214を含むプランジャ1212が挿入される近位開口部1210を含む。いくつかの実施形態では、示されているように、プランジャ1212が押されると、骨増強材料1202が開口部1204を通って排出される。
【0226】
ここで図13を参照すると、骨増強材料1302が、歯科インプラント1306の少なくとも1つのオリフィス1304(この場合は3つが示されている)を通って移送され、歯科インプラント1306周囲の骨1308を充填及び強化する実施形態が示されている。
【0227】
いくつかの実施形態では、例えば、医療用金属固定具(又はねじ、若しくは任意の他の整形外科用デバイス)を患者の組織内で使用しながら、ユーザーは前記金属固定具を探して骨増強材料を適用し、その間に前記骨増強材料は重合し、ユーザーは依然として前記金属固定具の正確な位置を操作することができる。いくつかの実施形態では、骨増強材料の40%、任意に60%、任意に80%、場合により任意の間の割合、任意のより高い割合、又は任意のより低い割合の骨増強材料が重合した後、ユーザーは前記金属固定具を操作できない。いくつかの実施形態では、ユーザーは、1分後、任意に5分後、任意に10分後、場合により任意の間の分数、任意のより長い分数又は任意のより少ない分数の後、前記金属固定具を操作することができない。
【0228】
<3D印刷材料>
硬化前に、骨増強材料をアセトン等の揮発性溶媒に浸してもよい。溶媒を蒸発させながら適切な3Dプリンタインジェクタを介して溶液を注入すると、例えば図14に示すように、ポリマーで作られた3D構造の印刷が可能になる。図14は、本発明のいくつかの実施形態による骨増強材料の例示的な3Dプリンタインジェクタ1400を示している。いくつかの実施形態では、骨増強材料の例示的な3Dプリンタインジェクタ1400は、骨増強材料を含む容器1402を含む(図14には図示せず)。この例では、前記容器はシリンジの形状を有する。いくつかの実施形態では、容器1402は、液体形態の骨増強材料を含み、前記骨増強材料は任意に、例えばアセトンや任意のその他の物質に溶解した、添加剤(例えば、開始剤分子、放射線不透過性分子、成長因子、医薬品、化学薬品、タンパク質等)を含む。いくつかの実施形態では、例示的な3Dプリンタインジェクタ1400は、溶媒1404(この例ではアセトン)を蒸発させるための手段、例えば、送風機を含む。いくつかの実施形態において、骨増強材料の硬化プロセスを制御するために他の手段が用いられ、例えば骨増強材料の温度を制御するための手段が用いられる。この例では、印刷物は移植用の椎骨1406を作製した。いくつかの実施形態では、硬質な物質に簡単に配置し、配置後固定することを可能にする、柔軟性を有するカスタムインプラントを作製するために本方法を用いることができる。いくつかの実施形態では、インプラントの移植後にはじめて最終的な硬化が行われる。
【0229】
<例示的な既知の送達デバイスへの接続>
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、油圧システムに接続されるように適合された例示的なカートリッジを示す図15を参照する。いくつかの実施形態では、医療グレードのインプラント材料1410は、油圧システムに接続されるように適合された専用のカートリッジ1500に挿入される。いくつかの実施形態では、カートリッジ1500は、本体1502の近位端にある油圧システムへのコネクタ1504、本体1402の内側に配置されたピストン1506、及び本体1402の遠位端に配置されたプラグ1408を含む本体1502を備える。いくつかの実施形態では、油圧システムが作動すると、圧力がピストン1506を押し、これにより、医療グレードのインプラント材料1410がカートリッジ1500の遠位端を通って排出される。
【0230】
<一般的な例示的非医療用途>
いくつかの実施形態では、医療グレードのインプラントとして使用される材料は、非医療用途で使用される。いくつかの実施形態では、前記材料は非医療グレード材料である。前述した方法はここでも適用される。
【0231】
非医療用途のいくつかの非限定的な例としては、建設又は航空用のボイド充填(軽量材料が必要な場合)、接着剤代替固定材(ねじ固定材)、芸術、クラフト、見本製造、温度分離、及び流体ろ過が挙げられる。
【0232】
この出願から成熟する特許の存続期間中に、多くの関連する方法が開発されることが期待される。
【0233】
数量又は値に関して本明細書で使用される場合、「約」との語は、「±25%以内」を意味する。
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」との語及びこれらの活用語は、「含むがそれらに限定されない」ことを意味する。
「からなる(consisting of)」との語は、「含み、それらに限定される」ことを意味する。
「本質的にからなる(consisting essentially of)」との語は、その組成物、方法、又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部分を含み得るが、かかる追加の成分、工程、及び/又は部分が請求項に記載の組成物、方法、又は構造の基本的及び新規の特徴を実質的に変更しない場合に限られることを意味する。
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別段の事項を指示していない限り、複数の参照を含む。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」との語は、それらの混合物を含む、複数の化合物を含み得る。
【0234】
本出願を通して、本発明の実施形態は、範囲形式に言及して提示されることがある。範囲形式の説明は便宜上及び簡潔さのためのものであり、発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、とりうるあらゆるサブレンジ及びその範囲の個々の数値を具体的に開示しているものとみなされるべきである。例えば、「1~6」等の範囲の説明は、「1~3」、「1~4」、「1~5」、「2~4」、「2~6」、「3~6」等のサブレンジ、及びこれらの範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、及び6等を具体的に開示しているとみなされるべきである。このことは、範囲の広さに関わらず当てはまる。
【0235】
本明細書で数値範囲が示される場合(例えば、「10-15」、「10~15(10 to 15)」、又は他の類似の範囲表示により連結される任意の数値のペア)はいつでも、文脈が明らかに別段の事項を指示していない限り、その範囲の境界も含み、表示された数値境界内の任意の数値(少数又は整数)を含むことが意図されている。第1指示数値と第2指示数字との間の「範囲」(range/ranging/ranges between)との句、及び、第1指示数値から第2指示数値までの「範囲」(range/ranging/ranges from ~to/up to/until/through又は他の類似する範囲を表す語)との句は本明細書において交換可能に使用され、第1指示数値及び第2指示数値、並びにその間のすべての少数及び整数を含むことを意味する。
【0236】
別段の指示がない限り、本明細書で使用される数値及びそれに基づく任意の数値範囲は、当業者によって理解されるように、合理的な測定精度内及び丸め誤差内の近似値である。
【0237】
本明細書に言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、本出願における参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。項目見出しが使用されている場合、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図11
図12a
図12b
図13
図14
図15
【国際調査報告】