(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】修飾TFF2ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20221025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20221025BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221025BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20221025BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221025BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20221025BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221025BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221025BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20221025BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20221025BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20221025BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221025BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221025BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221025BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221025BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20221025BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221025BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P35/00
A61P1/00
A61P1/02
A61P1/04
A61P11/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P35/04
A61K47/60
A61K47/61
A61K47/59
A61K47/64
A61K39/395 D
A61P29/00
A61P31/14
A61K45/00
C07K19/00 ZNA
C07K14/47
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513154
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 IB2020000699
(87)【国際公開番号】W WO2021038296
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522003316
【氏名又は名称】トニックス ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レーダーマン, セス
(72)【発明者】
【氏名】ドーアティ, ブルース
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076CC04
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC35
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA23
4C084BA34
4C084BA37
4C084BA41
4C084DC50
4C084MA02
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4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA661
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4C084ZA811
4C084ZB111
4C084ZB261
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA13
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
修飾TFF2ポリペプチド、これらのポリペプチドを含む組成物、ならびにがんおよび炎症を処置するためのそれらの使用が本明細書に記載される。本開示は、増強された生物活性ならびに増加した安定性および/またはin vivo効力などの薬物動態学的特性を有する、修飾TFF2ポリペプチドの組成物を提供する。一部の実施形態では、開示される修飾TFF2ポリペプチドの改善された特性は、PEG化もしくはポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、および/またはポリシアリル化(PSA)、および/またはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS化、ホモアミノ酸ポリマー(HAP)、エラスチン様ペプチド(ELP化)、XTEN化を用いる融合タンパク質を含む融合タンパク質、ならびにこれらの修飾の組合せを含む化学修飾を使用して達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾TFF2ポリペプチドを含む組成物であって、前記TFF2ポリペプチドが、PEG化、ポリシアリル化、ポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)コンジュゲーション、および/またはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS化、XTEN化、ELP化もしくはHAP化を含む融合タンパク質のうちの1つまたは複数によって修飾されている、組成物。
【請求項2】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、配列番号1、配列番号3または配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、配列番号1、配列番号3または配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、配列番号1、配列番号3または配列番号6のポリペプチド配列を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、低分子量の直鎖状PEGでPEG化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、高分子量の分枝状PEGでPEG化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
医薬組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、PEG化、ポリシアリル化、PLGAコンジュゲート化、ならびにヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのCTP、PAS化、XTEN化、ELP化およびHAP化を用いる融合タンパク質、またはそれらの組合せからなる群から選択される均一な集団である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、未修飾ヒトTFF2ポリペプチドと比較して、血中半減期が増加している、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、特定の1つまたは複数の部位でPEG化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記修飾TFF2ペプチドが、そのN末端でPEG化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、アルデヒド-PEG化学を介したN末端のPEG化を使用して、PEG化されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、そのC末端でPEG化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
PEG化が、NHS-PEG化学を介した無溶媒で曝されたアミンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記修飾TFF2のPEG化ポリペプチドが、均一な組成物である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、前記対象に、有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記がんが、消化器系のがんである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記消化器がんが、口腔がん、咽頭がん、中咽頭がん、食道がん、胃がん(gastric cancer)、胃がん(stomach cancer)、小腸がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、肛門がん、肝臓がん、膵臓がんおよび胆嚢がんのうちの1つまたは複数から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、結腸がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記がんが、中咽頭がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、食道がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、胃がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記がんが、膵臓がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記がんが、直腸がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記がんが、肝臓がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記がんが、転移性がんである、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記がんを、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体で処置することをさらに含む、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、前記がんが、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体による処置に非応答性であり、前記対象が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物で処置され、前記修飾TFF2ポリペプチド組成物による処置後、前記対象のがんが、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体による処置に感受性になり、その後、前記対象が、前記修飾TFF2ポリペプチドによる処置後約1~約60日以内に、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体で処置される、方法。
【請求項29】
融合タンパク質を含む、修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項30】
前記融合タンパク質が、TFF2-アルブミンタンパク質、TFF2-IgG1融合タンパク質およびTFF2-ポリヒスチジンタグからなる群のうちの1つまたは複数から選択される、請求項29に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項31】
前記融合タンパク質が、ポリヒスチジンタグである、請求項30に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項32】
前記ヒスチジンタグが、アミノ酸切断部位を含有する、請求項31に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項33】
前記アミノ酸切断部位が、配列番号20、配列番号21、配列番号22および配列番号23から選択される、請求項32に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項34】
切断後に、ネイティブTFF2ポリペプチドが形成される、請求項32~33のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項35】
前記ヒスチジンタグが、TFF2のN末端またはC末端のいずれかにある、請求項31~34のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項36】
1)前記TFF2ペプチドを精製すること、ならびに2)前記精製された修飾TFF2のPEG化、ポリシアリル化および/またはポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)とのコンジュゲートを調製することをさらに含む、請求項29~35のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項37】
処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、前記対象に、有効量の請求項29~36のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチドのうちの1つまたは複数を投与することを含む、方法。
【請求項38】
前記がんが、消化器系のがんである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記消化器がんが、口腔がん、咽頭がん、中咽頭がん、食道がん、胃がん(stomach cancer)、小腸がん、大腸がん、結腸がん、胃がん(gastric cancer)、直腸がん、肛門がん、肝臓がん、膵臓がんおよび胆嚢がんのうちの1つまたは複数から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、結腸がんである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記がんが、中咽頭がんである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、食道がんである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記がんが、胃がんである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記がんが、膵臓がんである、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記がんが、直腸がんである、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
処置される前記がんが、肝臓がんである、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記がんが、転移性がんである、請求項37~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記がんを、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体で処置することをさらに含む、請求項37~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、前記がんが、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体による処置に非応答性であり、前記対象が、請求項29~36のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチドで処置され、前記修飾TFF2ポリペプチドによる処置後、前記対象のがんが、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体による処置に感受性になり、その後、前記対象が、前記修飾TFF2ポリペプチドによる処置後約1~約60日以内に、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体で処置される、方法。
【請求項50】
処置を必要とする対象における炎症性腸疾患(IBD)を処置するための方法であって、前記対象が、請求項1~15のいずれか一項に記載の1つもしくは複数の組成物、または請求項29~36のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチドのうちの1つもしくは複数で処置される、方法。
【請求項51】
前記IBDが、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記組成物または前記修飾TFF2ポリペプチドが、経口、静脈内または筋肉内投与される、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
1つまたは複数のドメインI結合ドメインを含む修飾TFF2ポリペプチドであって、前記1つまたは複数のドメインI結合ドメインが、配列番号24を含み、前記ポリペプチドが、ドメインII結合ドメインを含有しない、修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項54】
1つまたは複数のドメインII結合ドメインを含む修飾TFF2ポリペプチドであって、前記1つまたは複数のドメインII結合ドメインが、配列番号25を含み、前記ポリペプチドが、ドメインI結合ドメインを含有しない、修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項55】
配列番号26に記述される2つのドメインI結合ドメインを含む修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項56】
配列番号27に記述される2つのドメインII結合ドメインを含む修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項57】
互いに相互交換され、配列番号28に記述される配列を含む、ドメインIおよびドメインII結合ドメインを含む修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項58】
受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号29の配列を有する、修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項59】
受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号30の配列を有する、修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項60】
受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号31の配列を有する、修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項61】
前記TFF2結合ドメインが、PEG化、ポリシアリル化、ポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)とのコンジュゲーション、ならびに/もしくはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS化融合ポリペプチド、XTEN化融合ポリペプチド、ELP化融合ポリペプチドおよびHAP化融合ポリペプチドからなる群から選択される融合ポリペプチドを含む融合タンパク質としての発現のうちの1つまたは複数によってさらに修飾されている、請求項53~60のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項62】
前記修飾TFF2結合ドメインが、低分子量の直鎖状PEGでPEG化されている、請求項61に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項63】
前記修飾TFF2結合ドメインが、高分子量の分枝状PEGでPEG化されている、請求項61に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項64】
前記修飾TFF2結合ドメインが、特定の1つまたは複数の部位でPEG化されている、請求項61に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項65】
前記修飾TFF2結合ドメインが、そのN末端でPEG化されている、請求項61に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項66】
前記修飾TFF2結合ドメインが、アルデヒド-PEG化学を介したN末端のPEG化を使用して、PEG化されている、請求項61に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項67】
前記修飾TFF2結合ドメインが、そのC末端でPEG化されている、請求項61に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項68】
PEG化が、NHS-PEG化学を介した無溶媒で曝されたアミンを含む、請求項61に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項69】
均一な組成物の一部である、請求項53~68のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項70】
医薬組成物の一部である、請求項53~69のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項71】
配列番号6のヒト野生型TFF2ポリペプチドと比較して、血中半減期が増加している、請求項53~70のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項72】
ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド(CTP)が、前記修飾TFF2ポリペプチドの薬物動態(PK)および薬力学(PD)特性を改善するために使用される、請求項53~68のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項73】
グリコシル化されている、請求項53~72のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチド。
【請求項74】
処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、前記対象に、有効量の請求項53~73のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチドのうちの1つまたは複数を投与することを含む、方法。
【請求項75】
前記がんが、消化器系のがんである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記消化器がんが、口腔がん、咽頭がん、中咽頭がん、食道がん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、小腸がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、肛門がん、肝臓がん、膵臓がんおよび胆嚢がんのうちの1つまたは複数から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記がんが、結腸がんである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記がんが、中咽頭がんである、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記がんが、食道がんである、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記がんが、胃がんである、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記がんが、膵臓がんである、請求項76に記載の方法。
【請求項82】
前記がんが、直腸がんである、請求項76に記載の方法。
【請求項83】
処置される前記がんが、肝臓がんである、請求項76に記載の方法。
【請求項84】
前記がんが、転移性がんである、請求項74~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記がんを、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体で処置することをさらに含む、請求項74~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、前記がんが、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体による処置に非応答性であり、前記対象が、請求項53~73のいずれか一項に記載の1つまたは複数の修飾TFF2ポリペプチドで処置され、前記修飾TFF2ポリペプチドによる処置後、前記対象のがんが、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体による処置に感受性になり、その後、前記対象が、前記修飾TFF2ポリペプチドによる処置後約1~約60日以内に、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体で処置される、方法。
【請求項87】
処置を必要とする対象における炎症性腸疾患(IBD)を処置するための方法であって、前記対象が、請求項53~73のいずれか一項に記載の1つまたは複数の修飾TFF2ポリペプチドで処置される、方法。
【請求項88】
前記IBDが、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、経口、静脈内または筋肉内投与される、請求項87または88に記載の方法。
【請求項90】
処置を必要とする対象におけるCOVID-19を処置するための方法であって、前記対象に、請求項1~15のいずれか一項に記載の1つもしくは複数の組成物、請求項29~36のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチドのうちの1つもしくは複数、または請求項53~73のいずれか一項に記載の修飾TFF2ポリペプチドのうちの1つもしくは複数を投与することを含む、方法。
【請求項91】
前記修飾TFF2ポリペプチドが、経口、静脈内または筋肉内投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
SARS-CoV-2の複製を阻害または低減する薬剤を投与することをさらに含む、請求項90または91に記載の方法。
【請求項93】
リバビリン、インターフェロン(アルファコン-1)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、EIDD-2801、EIDD-1931、GS-5734、GS-441524、イベルメクチン、ファビピラビル、インドメタシン、クロルプロマジン、ペンシクロビル、ナフォモスタット、カモスタット、ニタゾキサニド、レムデシビル、ファモチジンおよびデキサメタゾンからなる群から選択される抗ウイルス剤を投与することをさらに含む、請求項90~92のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2019年8月27日に出願された米国仮出願第62/892,520号、2019年12月4日に出願された米国仮出願第62/943,803号、および2020年6月18日に出願された米国仮出願第63/041,097号に基づく優先権を主張し、それらの内容は、それらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2020年8月27日に作成された前記ASCIIコピーは、104545-0046-WO1_SL.txtという名称であり、37,566バイトのサイズである。
【0003】
本開示の分野
本開示は、修飾TFF2ポリペプチドを使用して、がんおよび/または炎症状態を有する対象を処置する分野にある。
【背景技術】
【0004】
本開示の背景
トレフォイルファミリー因子2(TFF2)(膵臓鎮痙薬ポリペプチド、PSPまたは鎮痙性ペプチド、SPとしても公知)は、ペプチドのトレフォイル因子ファミリーのメンバーである。ヒトTFF2は、106アミノ酸の分泌タンパク質である。成熟ヒトTFF2は、ブタを含む他の種において非常に保存されている7つの残基によって分離された2つのトレフォイルドメインを含有する12kDaのタンパク質である。ブタTFF2の結晶構造は解明されている(De A et al, (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91(3):1084-8)。ブタTFF2の溶液構造はNMRによって研究されている(Carr, MD et al, (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91(6):2206-10)。3ループ構造中に積み重なった3つのループをもたらす3つの分子内ジスルフィド結合を形成するトレフォイルドメイン中に6つの保存されたシステイン残基が存在する(May FEB, et al. (2000), Gut, 46:454-459)。胃液中でのヒトTFF2の一部は、Asn(15)において推定されるように、N連結を介してグルコシル化される(May FEB et al., Gut 2000 46(4):454-9)。
【0005】
TFF2は、十二指腸およびヒト胃幽門におけるブルンネル腺において主に発現され、胃および腸管腔において機能的役割を有することが示されている(Jorgenson, K. H., and Jacobsen H. E., (1982) Regul Pept., 3:207-219)。ガストリンは、ガストリン応答性シス作用性エレメントを介して、およびシグナル伝達経路を介して、TFF2プロモーターを調節することが示されている(Tu, S. et al., (2007), Am J Physiol. Gastrointest Liver Physiol., 292(6):G1726-37)。TFF2はまた、粘膜潰瘍に隣接する細胞中で高濃度で見出されている(Wright N.A., Poulsom R., Stamp G.W. (1990) J Pathol.;162:279-284)。
【0006】
ノックアウト(KO)マウスにおけるTFF2欠損は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘導される大腸炎を悪化させる(Judd LM et al, Am J. Physiol Gatrointest Liver Physiol. (2015) 308(1):G12-24)。TFF2は、安定化すること、ならびにムチンゲルを支持すること、炎症を低減させること、および上皮再建を刺激することによって、損傷から胃腸粘膜を保護すると考えられる。Cookらは、TFF2が、リンパ球によって発現され、リンパ球上で活性であることを示した(Cook et al., (1999), FEBS Lett., 456(1):155-9)。Dubeykovskayaらは、TFF2が、リンパ球を活性化するポリペプチドであり、CXCR4受容体(C-X-Cケモカイン受容体4型、フーシンまたはCD184としても公知)に対する活性化リガンドとしての機能を果たすことを示した(Dubeykovskaya, Z. Dubeykovskaya, A., Wang, J., (2009), J Biol Chem., 284(6):3650-62)。TFF2はまた、脾臓において発現され、循環TFF2は、免疫調節性の役割を有すると思われる(Dubeykovskaya Z, et al. Nat Commun. (2016), 7:1-11)。
【0007】
外因性TFF2は、薬物動態が劣り、血漿から迅速に排出される。修飾TFF2は、TFF2のC末端を、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのカルボキシル末端ペプチド(CTP)と遺伝子学的に融合し、Flagテイルをさらに融合することによって、作製された(TFF2-CTP-Flag)。組換えTFF2-CTP-Flagタンパク質は、結腸の腫瘍成長を抑制することが示されている(Dubeykovskaya, Z. A. et al., (2019), Cancer Gene Therapy, 26:48-57)。組換えTFF2はまた、膵臓がんに対して免疫抑制性であることが報告されている(Sung, Gi-Ho, et al., (2018), Animal Cells and Systems, 22:6, 368-381)。
TFF2は、それが胃のような厳しいpH環境中で安定であるので、がんのための魅力的な生物学的処置である。腫瘍微小環境(TME)は、低pHであることが公知であり、これは、モノクローナル抗体などの他のがん薬剤の結合を低減させ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】De A et al, (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91(3):1084-8
【非特許文献2】Carr, MD et al, (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91(6):2206-10
【非特許文献3】May FEB, et al. (2000), Gut, 46:454-459
【非特許文献4】Jorgenson, K. H., and Jacobsen H. E., (1982) Regul Pept., 3:207-219
【非特許文献5】Tu, S. et al., (2007), Am J Physiol. Gastrointest Liver Physiol., 292(6):G1726-37
【非特許文献6】Wright N.A., Poulsom R., Stamp G.W. (1990) J Pathol.;162:279-284
【非特許文献7】Judd LM et al, Am J. Physiol Gatrointest Liver Physiol. (2015) 308(1):G12-24
【非特許文献8】Cook et al., (1999), FEBS Lett., 456(1):155-9
【非特許文献9】Dubeykovskaya, Z. Dubeykovskaya, A., Wang, J., (2009), J Biol Chem., 284(6):3650-62
【非特許文献10】Dubeykovskaya Z, et al. Nat Commun. (2016), 7:1-11
【非特許文献11】Dubeykovskaya, Z. A. et al., (2019), Cancer Gene Therapy, 26:48-57
【非特許文献12】Sung, Gi-Ho, et al., (2018), Animal Cells and Systems, 22:6, 368-381
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の概要
本開示は、増強された生物活性ならびに増加した安定性および/またはin vivo効力などの薬物動態学的特性を有する、修飾TFF2ポリペプチドの組成物を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、開示される修飾TFF2ポリペプチドの改善された特性は、PEG化もしくはポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、および/またはポリシアリル化(PSA)、および/またはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS化、ホモアミノ酸ポリマー(HAP)、エラスチン様ペプチド(ELP化)、XTEN化を用いる融合タンパク質を含む融合タンパク質、ならびにこれらの修飾の組合せを含む化学修飾を使用して達成される。
【0011】
本明細書で使用される場合、PEG化、PAS化、PLGAコンジュゲーションおよび/もしくはPSAコンジュゲーション、またはHAP、ELP化、XTEN化もしくはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのCTPを用いる融合タンパク質、ならびにこれらの修飾の組合せによって修飾されたTFF2ポリペプチドは、修飾TFF2ポリペプチドと呼ばれる。
【0012】
本開示は、PEG化されたTFF2、PAS化されたTFF2、PLGA修飾TFF2および/もしくはPSA修飾TFF2、またはTFF2融合タンパク質、例えば、CTPペプチドとの融合タンパク質、HAPとの融合タンパク質もしくはELP化されたTFF2、ならびにこれらの修飾の組合せを含む修飾TFF2ポリペプチドの組成物、ならびにがん、過形成、異形成、炎症状態、消化器系の炎症および/またはCOVID-19において発生する任意の症状を処置するためのこれらの修飾TFF2ポリペプチドの使用を提供する。
【0013】
本明細書で定義される場合、「有効量」という用語は、所望の応答を少なくとも部分的に得るため、あるいは処置される特定の状態の開始を遅らせるため、またはその進行を阻害するため、またはその開始もしくは進行を完全に停止させるために必要な、修飾TFF2ポリペプチドの量を意味する。
【0014】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、均一であり、未修飾またはネイティブのヒトTFF2ポリペプチドと比較して、薬物動態学的特性が改善されている。
【0015】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、配列番号1、配列番号3または配列番号6から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0016】
ある特定の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、配列番号1、配列番号3または配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列を有する。
【0017】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、配列番号1、配列番号3または配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0018】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、低分子量の直鎖状PEGでPEG化されている。
【0019】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、高分子量の分枝状PEGでPEG化されている。
【0020】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、配列番号6などの未修飾ヒトTFF2ポリペプチドと比較して、血中半減期が増加している。
【0021】
一実施形態では、PEG化されたTFF2ポリペプチドは、未PEG化ヒトTFF2ポリペプチドと比較して、血中半減期が増加している。
【0022】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、特定の1つまたは複数の部位でPEG化されている。
【0023】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、N末端でPEG化されている。
【0024】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、アルデヒド-PEG化学を介してN末端でPEG化されている。
【0025】
他の実施形態では、本明細書に記載されるPEG化されたTFF2ポリペプチドは、C末端でPEG化されている。
【0026】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるTFF2ポリペプチドのPEG化は、NHS-PEG化学を介した無溶媒で曝されたアミンを含む。
【0027】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)などの融合タンパク質を含む。
【0028】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、PLGAのコンジュゲートなどのコンジュゲートポリペプチドである。
【0029】
一部の実施形態では、TFF2アルブミン融合タンパク質、TFF2-IgG1融合タンパク質およびTFF2-アフィニティータグ融合タンパク質からなる群のうちの1つまたは複数から選択されるTFF2ポリペプチド融合ポリペプチドが本明細書に開示される。
【0030】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ポリヒスチジンタグとの融合タンパク質である。一部の実施形態では、ヒスチジンタグは、アミノ酸切断部位を含有する。一部の実施形態では、ヒスチジンタグ切断部位は、配列番号20、配列番号21、配列番号22および配列番号23から選択される。
【0031】
一部の実施形態では、ネイティブTFF2ポリペプチドは、ポリヒスチジンタグをTFF2の融合タンパク質から除去することによって形成される。
【0032】
一部の実施形態では、ヒスチジンタグは、TFF2ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかにある。
【0033】
他の実施形態では、ヒスチジンタグの切断後、修飾TFF2ポリペプチドは、1)TFF2ペプチドを精製すること、ならびに2)精製された修飾TFF2のPEG化、ポリシアリル化および/またはポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)とのコンジュゲートを調製することによって形成される。
【0034】
本開示の別の態様では、配列番号26~28および
図1によって表されるそれらの結合ドメインに対する変化を有する修飾TFF2ポリペプチドである。
【0035】
本開示の別の態様では、配列番号29~31および
図2によって表される受容体結合部位残基に対する変化を有する修飾TFF2ポリペプチドである。
【0036】
一部の実施形態では、配列番号26~31によって表される修飾TFF2ペプチドは、PEG化、ポリシアリル化、PLGAとのコンジュゲーション、ならびに/もしくはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS化融合ポリペプチド、XTEN化融合ポリペプチド、ELP化融合ポリペプチドおよびHAP化融合ポリペプチドからなる群から選択される融合ポリペプチドを含む融合タンパク質としての発現のうちの1つまたは複数によってさらに修飾されている。
【0037】
一部の実施形態では、配列番号29~31によって表される修飾TFF2ペプチドは、PEG化、ポリシアリル化、PLGAとのコンジュゲーション、ならびに/もしくはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS化融合ポリペプチド、XTEN化融合ポリペプチド、ELP化融合ポリペプチドおよび/またはHAP化融合ポリペプチドからなる群から選択される融合ポリペプチドを含む融合タンパク質としての発現のうちの1つまたは複数によってさらに修飾されている。一部の実施形態では、これらの修飾TFF2ポリペプチドは、配列番号6の未修飾ヒトTFF2と比較して、血中半減期が増加しているか、および/または薬力学特性が改善されている。
【0038】
一部の実施形態では、配列番号26~31によって表される修飾TFF2ペプチドがPEG化されている場合、修飾TFF2結合ドメインポリペプチドは、低分子量の直鎖状PEGでPEG化されている。
【0039】
一部の実施形態では、配列番号26~31によって表される修飾TFF2ペプチドがPEG化されている場合、修飾TFF2結合ドメインポリペプチドは、高分子量の分枝状PEGでPEG化されている。
【0040】
一部の実施形態では、配列番号26~31によって表される修飾TFF2ペプチドがPEG化されている場合、修飾TFF2結合ドメインポリペプチドは、特定の1つまたは複数の部位でPEG化されている。
【0041】
一部の実施形態では、配列番号26~31によって表される修飾TFF2ペプチドがPEG化されている場合、修飾TFF2結合ドメインポリペプチドは、そのN末端でPEG化されている。
【0042】
一部の実施形態では、配列番号26~31によって表される修飾TFF2ペプチドがPEG化されている場合、修飾TFF2結合ドメインポリペプチドは、アルデヒド-PEG化学を介したN末端のPEG化を使用して、PEG化されている。
【0043】
一部の実施形態では、配列番号26~31によって表される修飾TFF2ペプチドがPEG化されている場合、修飾TFF2結合ドメインポリペプチドは、そのC末端でPEG化されている。
【0044】
一部の実施形態では、配列番号26~31によって表される修飾TFF2ペプチドがPEG化されている場合、PEG化は、NHS-PEG化学を介した無溶媒で曝されたアミンを含む。
【0045】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ペプチドは、グリコシル化されている。
【0046】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、均一な組成物中にある。
【0047】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、1種または複数の賦形剤を含有していてもよい医薬組成物中にある。
【0048】
一部の実施形態では、医薬組成物は、PEG化、ポリシアリル化、PLGAとコンジュゲートされる、もしくはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのCTP、PAS化、XTEN化、ELP化、HAP化バージョンを用いる融合ポリペプチド、またはこれらの修飾の組合せである修飾TFF2ポリペプチドからなる群から選択される修飾TFF2ポリペプチドの均一な集団である。
【0049】
本開示の態様は、処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載される1つまたは複数の修飾TFF2ポリペプチドを投与し、それによりがんを処置することを含む、方法である。
【0050】
本開示の実施形態では、がんは、消化器系のがん、例えば、限定されないが、口腔がん、咽頭がん、中咽頭がん、食道がん、胃がん(stomach cancer)、小腸がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、肛門がん、胃がん(gastric cancer)、肝臓がん、膵臓がん、胆嚢がんまたは結腸がんである。
【0051】
一部の実施形態では、処置されるがんは、中咽頭がんである。
【0052】
一部の実施形態では、処置されるがんは、食道がんである。
【0053】
一部の実施形態では、処置されるがんは、胃がんである。
【0054】
一部の実施形態では、処置されるがんは、膵臓がんである。
【0055】
一部の実施形態では、処置されるがんは、結腸がんである。
【0056】
一部の実施形態では、処置されるがんは、直腸がんである。
【0057】
一部の実施形態では、処置されるがんは、肛門がんである。
【0058】
一部の実施形態では、処置されるがんは、肝臓がんである。
【0059】
一部の実施形態では、処置されるがんは、転移性がんである。
【0060】
一部の実施形態では、処置されるがんはまた、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1、CD279)、PD-L1(プログラム死-リガンド1、CD274またはB7ホモログ1[B7-H1])および/またはCTLA-4に対する遮断抗体で処置される。
【0061】
さらに別の実施形態では、処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体による処置に非応答性であり、対象が、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドのうちの1つまたは複数で処置され、修飾TFF2ポリペプチド組成物による処置後、対象のがんが、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体による処置に感受性になり、その後、対象が、修飾TFF2ポリペプチド組成物による処置後約1~約60日以内に、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対する遮断抗体で処置される、方法が本明細書に開示される。
【0062】
一部の実施形態では、本明細書に開示される修飾TFF2ペプチドは、消化器系のがんの処置のための標準治療と組み合わせることができる。一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、標準治療処置の前、それと同時に、またはその後に、与えられる。
【0063】
本開示の別の態様では、処置を必要とする対象における消化器系の炎症などの炎症状態を処置するための方法であって、修飾TFF2ポリペプチドを対象に投与することを含む、方法である。
【0064】
一実施形態では、消化器系の炎症は、限定されないが、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む、炎症性腸疾患(IBD)である。
【0065】
炎症状態を処置するための一部の実施形態では、本明細書に開示される修飾TFF2ポリペプチドは、経口、静脈内または筋肉内投与される。
【0066】
本開示の別の態様は、処置を必要とする対象におけるCOVID-19または発生した合併症のいずれかを処置するための方法であって、対象に、本開示の組成物のうちの1つもしくは複数、または本開示の修飾TFF2ポリペプチドのうちの1つもしくは複数を投与することを含む、方法を提供する。
【0067】
本開示の方法のいずれかの一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、炎症性疾患を処置するための標準治療の前、それと同時に、またはその後に、与えられ得る。
【0068】
修飾TFF2ポリペプチドは、好ましくは、個体に、「治療有効量」または「所望の量」で投与され、これは、個体への利益を示すのに十分である。
【0069】
COVID-19を処置するための方法の一部の実施形態では、方法は、SARS-CoV-2の複製を阻害または低減する薬剤を投与することをさらに含む。
【0070】
COVID-19を処置するための方法の一部の実施形態では、方法は、リバビリン、インターフェロン(アルファコン-1)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、EIDD-2801、EIDD-1931、GS-5734、GS-441524、イベルメクチン、ファビピラビル、インドメタシン、クロルプロマジン、ペンシクロビル、ナフォモスタット、カモスタット、ニタゾキサニド、レムデシビル、ファモチジンおよびデキサメタゾンからなる群から選択される抗ウイルス剤を投与することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は、本出願に開示されるキメラ組換え修飾TFF2ポリペプチドドメイン(D)交換ペプチドを示す。
【0072】
【
図2】
図2は、本出願に開示されるキメラ組換え修飾TFF2ポリペプチドリガンド結合ドメイン(LBD)交換ペプチドを示す。
【0073】
【
図3A-B】
図3A:アゾキシメタン(AOM;10mg/kg i.p.)、続いて1週間後に飲料水中の2.5%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を7日間受けたマウス(C57BL/6 WT)。(SAC=犠牲)。
図3B~D:AOM/DSS処理マウスは、10週間で腫瘍を形成し、AOMの17週間後に腺癌を発生した。
図3B:全体画像。スケールバー、5mm。腫瘍は、遠位結腸においてより頻繁に観察された。
図3C:肉眼で見える腫瘍を計数し、腫瘍面積を、ImageJ Fijiを使用して測定した。
図3D:ヘマトキシリン(Haemotoxylin)およびエオシン(H&E)染色。増加した粘膜内免疫細胞浸潤が、AOMの10週間後に検出された。
【
図3C-D】
図3A:アゾキシメタン(AOM;10mg/kg i.p.)、続いて1週間後に飲料水中の2.5%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を7日間受けたマウス(C57BL/6 WT)。(SAC=犠牲)。
図3B~D:AOM/DSS処理マウスは、10週間で腫瘍を形成し、AOMの17週間後に腺癌を発生した。
図3B:全体画像。スケールバー、5mm。腫瘍は、遠位結腸においてより頻繁に観察された。
図3C:肉眼で見える腫瘍を計数し、腫瘍面積を、ImageJ Fijiを使用して測定した。
図3D:ヘマトキシリン(Haemotoxylin)およびエオシン(H&E)染色。増加した粘膜内免疫細胞浸潤が、AOMの10週間後に検出された。
【0074】
【
図4A】
図4A:AOM/DSS処理C57BL/6 WTマウスからの結腸組織におけるCD45、CD11bおよびPD-L1についての免疫染色。CD11b+骨髄性細胞およびPD-L1発現は、腫瘍が進行するにつれて増加した。
図4Bおよび4C:フローサイトメトリーによる腫瘍内骨髄性細胞の免疫表現型検査(CD45+の%)。CD11b+Gr-1+MDSC、ならびに顆粒球性(CD11b+Ly6G+)および単球性(CD11b+Ly6G-Ly6C+)両方のMDSCサブセットは、腫瘍中で著しく増加した(
図4Bを参照されたい)。マクロファージ(MQ;CD11b Ly6C-F4/80+)および樹状細胞(DC;CD11c+F4/80-)(
図4Cを参照されたい)。
【
図4B-C】
図4A:AOM/DSS処理C57BL/6 WTマウスからの結腸組織におけるCD45、CD11bおよびPD-L1についての免疫染色。CD11b+骨髄性細胞およびPD-L1発現は、腫瘍が進行するにつれて増加した。
図4Bおよび4C:フローサイトメトリーによる腫瘍内骨髄性細胞の免疫表現型検査(CD45+の%)。CD11b+Gr-1+MDSC、ならびに顆粒球性(CD11b+Ly6G+)および単球性(CD11b+Ly6G-Ly6C+)両方のMDSCサブセットは、腫瘍中で著しく増加した(
図4Bを参照されたい)。マクロファージ(MQ;CD11b Ly6C-F4/80+)および樹状細胞(DC;CD11c+F4/80-)(
図4Cを参照されたい)。
【0075】
【
図5A】
図5Aおよび5B:フローサイトメトリーによる腫瘍浸潤T細胞の免疫表現型検査(CD45+の%)。T細胞の割合は、腫瘍の発達につれて減少し、この減少は、CD8+T細胞における低減によって駆動される(
図5A)。CD4+CD25+Foxp3+調節性T細胞(Treg)は、腫瘍の後期で増加し、CD8+T細胞とTregの比のより高い減少をもたらした(
図5B)。
図5C:CRC発達の間の免疫細胞サブセットの動力学。
【
図5B-C】
図5Aおよび5B:フローサイトメトリーによる腫瘍浸潤T細胞の免疫表現型検査(CD45+の%)。T細胞の割合は、腫瘍の発達につれて減少し、この減少は、CD8+T細胞における低減によって駆動される(
図5A)。CD4+CD25+Foxp3+調節性T細胞(Treg)は、腫瘍の後期で増加し、CD8+T細胞とTregの比のより高い減少をもたらした(
図5B)。
図5C:CRC発達の間の免疫細胞サブセットの動力学。
【0076】
【
図6A-C】
図6A~6C:R26-LSL-Pdl1-EGFPマウスの作製。R26-LSL-Pdl1-IRES-EGFPの遺伝子構築物(
図6A)。R26-PD-L1およびLysM-Cre;R26-PD-L1マウスにおける脾臓CD11b-およびCD11b+細胞におけるフローサイトメトリーによる内因性GFP発現(
図6B)およびqPCRによるPdl1遺伝子発現(
図6C)。
図6D:AOM/DSSによるCRCの誘導を示す実験スキーム。
図6E:AOMの10週間後の結腸直腸腫瘍の全体画像。スケールバー、5mm。
図6F:腫瘍数を計数し、腫瘍面積を測定した。AOM/DSSで処理されたLysM-Cre;R26-PD-L1マウスが、著しく増強された早期の結腸直腸腫瘍発生を示したことに留意されたい。
【
図6D-F】
図6A~6C:R26-LSL-Pdl1-EGFPマウスの作製。R26-LSL-Pdl1-IRES-EGFPの遺伝子構築物(
図6A)。R26-PD-L1およびLysM-Cre;R26-PD-L1マウスにおける脾臓CD11b-およびCD11b+細胞におけるフローサイトメトリーによる内因性GFP発現(
図6B)およびqPCRによるPdl1遺伝子発現(
図6C)。
図6D:AOM/DSSによるCRCの誘導を示す実験スキーム。
図6E:AOMの10週間後の結腸直腸腫瘍の全体画像。スケールバー、5mm。
図6F:腫瘍数を計数し、腫瘍面積を測定した。AOM/DSSで処理されたLysM-Cre;R26-PD-L1マウスが、著しく増強された早期の結腸直腸腫瘍発生を示したことに留意されたい。
【0077】
【
図7A-B】
図7Aおよび7B:TFF2過剰発現(CD2-Tff2マウス)(
図7A)および対照Ad-Fcと比較したアデノウイルスAd-Tff2による処置(
図7B)は、MDSCの抑制による結腸癌発生に対する抵抗性を与えた。
図7C:融合構築物Tff2-2CTP-3Flag。
図7Dおよび7E:TFF2-CTP-Flagは、血液中の循環時間を延長したが(
図7D)、生物活性を保持した(
図7E)。Dubeykovskaya et al. 2016 Nat Commun.(
図7A~B);2019 Cancer Gene Ther.(
図7C~E)。
【
図7C-E】
図7Aおよび7B:TFF2過剰発現(CD2-Tff2マウス)(
図7A)および対照Ad-Fcと比較したアデノウイルスAd-Tff2による処置(
図7B)は、MDSCの抑制による結腸癌発生に対する抵抗性を与えた。
図7C:融合構築物Tff2-2CTP-3Flag。
図7Dおよび7E:TFF2-CTP-Flagは、血液中の循環時間を延長したが(
図7D)、生物活性を保持した(
図7E)。Dubeykovskaya et al. 2016 Nat Commun.(
図7A~B);2019 Cancer Gene Ther.(
図7C~E)。
【0078】
【
図8】パネルA:R26-PD-L1およびLysM-Cre;R26-PD-L1マウスにAOM/DSSを与え、融合組換えTFF2-CTP-Flag(300μg i.p.)および/または抗PD-1(RMP1-14;200μg i.p.)で、示された時点で開始して、週に3回、処置した。パネルB:腫瘍数を計数し、腫瘍面積を測定した。対照動物と比較して腫瘍面積の>50%低減を有するマウスを、レスポンダーと定義した。LysM-Cre;R26-PD-L1マウス(5/5;100%)は、対照動物(2/5;40%)よりも、TFF2-CTPおよび抗PD-1の組合せ処置に対するより高い応答比を示したことに留意されたい。
【0079】
【
図9】パネルA:CD45+細胞中のCD3+CD8+T細胞の割合、および腫瘍中のCD8+T細胞のTregに対する比。レスポンダーが、より大量の腫瘍浸潤CD8+T細胞、およびCD8+T細胞のTregに対するより高い比を有していたことに留意されたい。パネルB:異なる処置後の腫瘍内骨髄性細胞の免疫表現型検査。MDSC、特にM-MDSCにおける著しい低減が、レスポンダーにおいて観察された。レスポンダーは、単球のMQに対するより低い比も示した。
【0080】
【
図10】異なるTFF2-HSA融合タンパク質のプロテインA精製のSDS-PAGE(非還元条件)。レーン1:マーカー;レーン2:TFF2-HSA[WT];レーン3:TFF2-HSA[D I/I];レーン4:TFF2-HSA[D II/I];レーン5:TFF2-HSA[D II/II];レーン6:TFF2-HSA[LBD I/I];レーン7:TFF2-HSA[LBD II/I];レーン8:TFF2-HSA[LBD II/II]。
【0081】
【
図11】
図10に記載される精製されたTFF2-HSA融合タンパク質の収率。
【発明を実施するための形態】
【0082】
実施形態の詳細な説明
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の指示対象を含む。「1つの(a)」または「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書における「含む(comprising)」という用語と併せて使用する場合、「1つ(one)」を意味し得るが、これは、「1つまたは複数(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」および「1つまたは2つより多く(one or more than one)」の意味とも一致する。
【0083】
本明細書で使用される場合、「約(about)」という用語は、本明細書において、およそ(approximately)、およそ(roughly)、およそ(around)またはその範囲内(in the region of)を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、それは、記述される数値の上限および下限を拡張することによってその範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、本明細書において、20パーセントの上下の変動(より高いまたはより低い)によって述べられた値の上および下の数値を修飾するために使用される。
【0084】
一実施形態では、PEG化、ポリシアリル化(PSA)またはPLGAとのコンジュゲーションのために使用される修飾TFF2ポリペプチドは、配列番号1、配列番号3もしくは配列番号6のアミノ酸配列のアミノ酸配列を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。配列番号1は、ヒトTFF2ポリペプチドを表す。表示された配列は、成熟形態(配列番号6)にさらにプロセシングされる。配列番号2は、TFF2をコードするヒトヌクレオチド配列を表し、ここで、下線および太字の「ATG」は、開始コドンを表す。TFF2に関する配列情報は、GenBank受託番号NP_005414(タンパク質)およびNM_005423(核酸)によって公開データベースにおいてアクセス可能である。
MGRRDAQLLA ALLVLGLCAL AGSEKPSPCQ CSRLSPHNRT NCGFPGITSD QCFDNGCCFD SSVTGVPWCF HPLPKQESDQ CVMEVSDRRN CGYPGISPEE CASRKCCFSN FIFEVPWCFF PKSVEDCHY(配列番号1)
【0085】
除去されるシグナルペプチドにより、ヒトTFF2ペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する。
ネイティブ-ヒトTFF2(106AA)
EKPSPCQCSRLSPHNRTNCGFPGITSDQCFDNGCCFDSSVTGVPWCFHPLPKQESDQCVMEVSDRRNCGYPGISPEECASRKCCFSNFIFEVPWCFFPKSVEDCHY(配列番号6)
【0086】
配列番号2は、TFF2(ヌクレオチド1~717)に相当するヒト野生型ヌクレオチド配列であり、ここで、下線および太字の「ATG」は、オープンリーディングフレームの開始を示す。
【化1】
【化2】
【0087】
本開示の異なる態様の文脈では、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって一緒に結合した単一の直鎖のアミノ酸を指し、好ましくは、少なくとも約21アミノ酸を含む。ポリペプチドは、1つよりも多くの鎖で構成される1つの鎖のタンパク質であり得るか、またはそれは、タンパク質が1つの鎖で構成される場合、タンパク質それ自身であり得る。「ポリペプチド」という用語は、そのような直鎖のアミノ酸のグリコシル化(すなわち、糖タンパク質)および非グリコシル化形態、ならびにグリコシル化および非グリコシル化形態の混合物を含む。
【0088】
別の実施形態では、PEG化、ポリシアリル化またはPLGAとのコンジュゲートのために使用される修飾TFF2ポリペプチドは、マウスTFF2ポリペプチド(受託番号NP_033389)を表す配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる。
【0089】
配列番号3は、シグナルペプチドを含むマウスTFF2のアミノ酸配列を示す:
MRPRGAPLLA VVLVLGLHAL VEGEKPSPCR CSRLTPHNRK NCGFPGITSE QCFDLGCCFD SSVAGVPWCF HPLPNQESEQ CVMEVSARKN CGYPGISPED CASRNCCFSN LIFEVPWCFF PQSVEDCHY。(配列番号3)
【0090】
配列番号4は、受託番号NM_009363のMus筋肉TFF2核酸配列を表す。
ATTCTGCAGGCTGCCCAGGTCCAGTGGAGCAGACATGCGACCTCGAGGTGCCCCCCTGCT
GGCAGTGGTCCTGGTTTTGGGACTGCATGCTCTGGTAGAGGGCGAGAAACCTTCCCCCTG
TCGGTGCTCCAGGCTGACACCCCACAACAGAAAGAACTGTGGCTTCCCGGGCATCACCAG
TGAGCAGTGCTTTGATCTTGGATGCTGCTTTGACTCTAGCGTCGCTGGGGTCCCTTGGTG
TTTCCACCCACTTCCAAACCAAGAATCGGAGCAGTGTGTCATGGAAGTGTCAGCTCGCAA
GAATTGTGGGTACCCGGGCATCAGTCCCGAGGACTGTGCCAGTCGAAACTGCTGCTTTTC
CAACCTGATCTTTGAAGTGCCCTGGTGTTTCTTCCCACAGTCTGTGGAAGATTGTCACTA
CTGAGAGTTGCTACTGCCGAGCCACCCGTTCCCTGGGAGCTGCAAGCCAGAAGAAAGTTT
CAACCAGACTTCATCAATCTCTGGGGTTTCTAAAACCATCTTGACCCTTAGCAGTGGCTA
GACACAGCATTTTCCAAGTAAAGAAAAGTTG (配列番号4)
【0091】
ヒトTFF2を収集、調製、単離および配列決定するための方法は、参照により本明細書に組み込まれるMay FEB et al. (2000), Gut, 46:454-459に記載されている。
【0092】
一部の実施形態では、PEG化、ポリシアリル化またはPLGAとコンジュゲート化されたタンパク質/ポリペプチドは、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約46%~約50%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約50.1%~約55%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約55.1%~約60%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約60.1%~約65%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と約65.1%~約70%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約70.1%~約75%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約75.1%~約80%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約80.1%~約85%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約85.1%~約90%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約90.1%~約95%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約95.1%~約97%の同一性を有するか、または、配列番号1、3もしくは10と少なくとも約97.1%~約99%の同一性を有する、配列番号1、配列番号3あるいは配列番号6のバリアントを含み得る。
【0093】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、コドン最適化されたDNAから生成される(実施例1~4を参照されたい)。
【0094】
一部の実施形態では、PEG化またはPAS化された修飾TFF2ポリペプチドは、ハイブリッドペプチド、例えば、限定されないが、Hisタグを有する修飾TFF2ポリペプチド;TFF2-C-末端HULG1 FCタグ、TFF2-HSA、TFF2-CTP、TFF2-CTP-FLAG、TFF2-FLAGである。
【0095】
一部の実施形態では、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド(CTP)は、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドの薬物動態(PK)および薬力学(PD)特性を改善するために使用される(Calo, et al., (2015), Precision Medicine, 2:e989)。
【0096】
一部の実施形態では、PEG化またはPAS化された修飾TFF2ポリペプチドは、切断されている。
【0097】
他の実施形態では、PEG化またはPAS化された修飾TFF2ポリペプチドは、グリコシル化されている。
【0098】
一部の実施形態では、ヒトのPEG化またはPAS化された修飾TFF2ポリペプチドは、野生型と比較して、保存的アミノ酸変化を含有する。保存的アミノ酸突然変異または保存的アミノ置換は、アミノ酸を類似の生化学特性、例えば、電荷、疎水性およびサイズを有する異なるアミノ酸に変更するポリペプチド中のアミノ酸の置き換えである。例えば、脂肪族アミノ酸は、別の脂肪族アミノ酸などによって置き換えられ得る(表1を参照されたい)。保存的アミノ酸変化はまた、Dayhoffマトリックスに基づくマトリックスを使用して決定することができ、例えば、Altschul, SF, (1991), Journal of Molecular Biology 219 (3):555-65を参照されたい。
【表1】
【0099】
交換されたドメイン(D)およびリガンド結合ドメイン(LBD)を有する修飾TFF2ポリペプチド
TFF2構造は、2つの比較的対称なドメイン(DIおよびDII)を含有し、それぞれのドメインは、2つの推定上のリガンド結合ドメイン(DIにおけるLBDIおよびD2におけるLBDII)を含有する(例えば、Carr et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994), 91:2206-2210を参照されたい)。LBDIおよびLBDIIについてのリガンドの特定は知られていないが、同じリガンドにそれぞれ結合すること、またはそれらが異なるリガンドに結合することは可能である。それらが同じリガンドに結合する場合、このリガンドに対する親和性が異なるであろうことが可能である。TFF2のLBDIおよびLBDIIのいずれかまたは両方についての1つの可能性のあるリガンドは、CXCR4受容体である。TFF2が、LBDIおよびLBDII両方のCXCR4受容体に結合する場合、その結果、それは、2つのCXCR4受容体の有効な二量体化を有する細胞表面における複合体をもたらすだろう。この種類の二量体化はまた、LBDIおよびLBDIIが、CXCR4とは異なるが通常の受容体に結合する場合に予想されるだろう。LBDIおよびLBDIIが異なるリガンドにそれぞれ結合する場合、その結果、その一方がCXCR4であり得るそのような受容体の有効なヘテロ二量体化をもたらすと予想される。
【0100】
したがって、TFF2のこれらの構造的特徴を利用すること、ならびに潜在的にCXCR4、LBDおよびDの交換を含む標的リガンドのより強力なまたは超強力な活性化因子を作製することは、TFF2タンパク質の新たなバージョンを作製するために用いられ、これは、
図1および2に示される。野生型TFF2は、LBDI/IIと称される。LBDIおよびLBDIIが同じカウンター受容体と相互作用するが、LBDIまたはLBDIIが、カウンター受容体に対してより大きな結合アビディティーを有する範囲まで、次いで、LBDは、野生型LBDI/IIよりも高い親和性でカウンター受容体と相互作用するドメインタンパク質LBDI/IまたはLBDII/IIを交換し、野生型LBDI/IIよりも改善された効果を誘発する。LBDIまたはLBDIIが他のLBD以外の受容体などの異なるカウンターリガンド(それぞれ、LBDIIまたはLBDI)を有する範囲まで、かつLBDI/IIが、カウンター受容体のヘテロ複合体を誘導する範囲まで、次いで、LBD交換バージョン(LBDI/IまたはLBDII/IIなど、下記ならびに
図1および2を参照されたい)は、カウンター受容体のホモ二量体化を誘導し、野生型LBDI/IIよりも異なる改善された効果を誘発する。二量体化およびオリゴマー化するLBDIおよびLBDIIについての1つの可能性のあるカウンター受容体は、CXCR4であり(Ge B, et al., (2017) Sci Rep. 7(1):16873)、その結果、LBDI/IまたはLBDII/IIは、野生型TFF2(LBDI/II)よりも強力なCXCR4の機能性リガンドである。CXCR4はまた、膜結合ケモカイン受容体CCR5およびCCR2とヘテロ二量体を形成する(Gahbauer, S et al. (2018) PLoS Comput Biol. 14(3):e1006062)。LBD交換cDNA構築物、模倣体およびその他によってコードされるある特定の修飾TFF2ポリペプチドは、CXCR4を含むTFF2カウンター受容体の同族および非同族リガンドの機能を阻害する。CXCR4のリガンドの例としては、ストローマ由来因子-1アルファ(SDF-1αまたはCXCL12)、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)および細胞外ユビキチンが挙げられる。SDF-1αは、CXCR4に結合し、活性化する、CXCR4の同族リガンドである。MIFは、CXCR4シグナル伝達を引き起こすCXCR4の非同族リガンドである(Bernhagen, J et al. (2007) Nature Medicine 13(5): 587-96)。細胞外ユビキチンは、CXCR4のリガンドである(Saini, V et al. (2010) J Biol Chem 285(20) 15566;Scofield, SLC et al. (2018) Life Sci. 211:8)。
【0101】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ヒトTFF2の1つまたは複数のドメイン1(DI)領域を含有する。
【0102】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ヒトTFF2の1つまたは複数のDII領域を含有する。
【0103】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ヒトTFF2のDIおよびDII領域の両方を含有する。
【0104】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、以下の配列を有するドメインを含有する。
ヒトTFF2ドメインI(残基8~46)
【化3】
【0105】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、以下の配列を有するドメインを含有する(
図1を参照されたい)。
ヒトTFF2ドメインII(残基58~95)
【化4】
【0106】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、以下の配列を有する2つのDI領域を含有する。
ヒトTFF2ドメインI/Iバリアント(DI/I、107AA)-2つのドメインI領域(
図1を参照されたい)
【化5】
【0107】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、以下の配列を有する2つのDII領域を含有する。
ヒトTFF2ドメインII/IIバリアント(DII/II、105AA)-2つのドメインII領域(
図1を参照されたい)
【化6】
【0108】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、DIIおよびDIバリアントを含有し、ここで、DIおよびDIIの順序は、以下の配列で相互交換される。
ヒトTFF2ドメインII/Iバリアント(DII/I、106AA)-相互交換されたドメインIおよびII(
図1を参照されたい)
【化7】
【0109】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、以下の配列を有するLBDの推定上の受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有する(
図2を参照されたい)。
ヒトTFF2-AA-置換(106AA)-DIおよびDII間で相互交換された推定上のリガンド結合ドメイン(LBD)部位残基(LBD II/I)(
図2を参照されたい)。
【化8】
【0110】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号29の配列を含む。一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号29の配列を有する。
【0111】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、以下の配列を有するLBDの受容体結合部位残基におけるアミノ酸置換を含有する。
ヒトTFF2-AA-置換(106AA)-DIのみからのLBDの推定上の受容体結合部位残基を含有するバリアント(LBD I/I)(
図2を参照されたい)。
【化9】
【0112】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号30の配列を含む。一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号30の配列を有する。
【0113】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、以下の配列を有するLBDの受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有する。
ヒトTFF2-AA-置換(106AA)-ドメインIIのみからのLBDの推定上の受容体結合部位残基を含有するバリアント(LBD II/II)(
図2を参照されたい)。
【化10】
【0114】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号31の配列を含む。一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、受容体結合部位残基にアミノ酸置換を含有し、配列番号31の配列を有する。
【0115】
一部の実施形態では、DIおよびDII領域を有する修飾TFF2ポリペプチドは、CXCR4を含むカウンター受容体への異なる結合親和性、すなわち、より強い~より弱い結合親和性を有する。
【0116】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチド、例えば、配列番号24~31によって記載されるものは、PEG化、ポリシアリル化(PSA)、もしくはPLGAとのコンジュゲート化によって、またはPAS化、HAP化、ELP化、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのCTPによって修飾された融合タンパク質として、および/または、あるいは、およびこれらの修飾の組合せによって修飾される。
【0117】
一部の実施形態では、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド(CTP)は、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチド、例えば、配列番号24~32によって記載されるものの薬物動態(PK)および薬力学(PD)特性を改善するために使用される。
【0118】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチド、例えば、配列番号24~32によって記載されるものは、グリコシル化されている。
【0119】
LBDおよび/またはD交換領域を有する修飾TFF2ポリペプチドの効力は、カルシウム流出、細胞遊走ならびに細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)のERK1およびERK2の活性化によって試験される。CXCR4についての効果の特異性は、CXCR4阻害剤のAMD3100またはmAb 12G5を使用することによって研究される。LBDおよびD交換タンパク質の結合は、mAb 2B11の結合を遮断するそれらの能力によって評価される(Dubeykovskaya, Z. Dubeykovskaya, A., Wang, J., (2009), J Biol Chem., 284(6):3650-62)。
【0120】
ERK1/2のリン酸化についてのアッセイ
一部の実施形態では、TFF2の活性の測定は、Perkin ElmerによるAlphaLISA SureFire Ultra p-ERK 1/2(Thr202/Tyr204)アッセイキットを使用することによって、ジャーカットヒト急性T細胞白血病細胞におけるERK1/ERK2のリン酸化によって行われる。ATCCによって提供されたジャーカット細胞を解凍し、ATCCによって提供された説明書に従って増殖させる。細胞を、遠心分離によって回収し、HBSS中に107個細胞/mLで再懸濁させる。細胞を、384ウェルの白色の不透明な培養プレート(PerkinElmer)に4mLの細胞/ウェルで播種し、37℃で1~2時間インキュベートする。0.1%のBSAを含有するHBSS中の10~30mg/mLの濃度で4μL中の組換えTFF2の野生型およびバリアントを、プレートに添加して、細胞を刺激し、37℃で5~30分間インキュベートする。細胞を、2μL/ウェルの溶解緩衝液で溶解し、続いて、5mLのAcceptor Mixを添加する。次いで、プレートをTopseal-A接着フィルムで密封し、室温で1時間インキュベートする。次いで、5mLのDonor Mixを明るすぎない光の下でウェルに添加し、Topseal-A接着フィルムで密封し、ホイルで覆い、暗所で、室温で1時間インキュベートする。プレートを、標準的なAlphaPlexの設定を使用して、AlphaPlex適合プレートリーダーにおいて読み取る。CXCR4のTFF2刺激の阻害は、組換えTFF2の添加前に、CXCR4の低分子アンタゴニストのAMD3100(Sigma)または抗CXCR4 mAb 12G5および2B11(eBioscience)を用いて37℃で1~2時間行う。
【0121】
PEG化
一部の場合では、タンパク質系薬物は、それらが迅速に分解され、患者から排出される場合があり、分子の免疫原性の可能性を増加させ得、治療の費用も増加させ得る頻回投与をもたらすので、治療薬として問題がある(Dozier, J. K., and Distefano M. D., (2015), Int, J. Mol. Sci., 16:25831-25864)。TFF2タンパク質は、循環中でのその劣った半減期に起因して、劣った薬物動態を有することが示されている(Dubeykovskaya, Z. A. et al., (2019), Cancer Gene Therapy, 26:48-57)。ポリエチレングリコール(PEG)で化学修飾されたタンパク質は、増加した血清半減期、改善された溶解度、良好な物理的および熱的安定性、酵素分解に対する保護、増加した溶解度、低減された毒性ならびに減少した免疫原性を含む、改善された薬理学的特性を示す。
【0122】
薬物動態パラメーターに対するPEG化の有益な効果に加えて、PEG化それ自身が、活性を増強する場合がある。例えば、PEG-IL-10は、非PEG化IL-10よりもある特定のがんに対してより有効であることが示されている(例えば、EP206636A2を参照されたい)。
【0123】
本開示は、他のポリマー、例えば、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンの使用を企図する。
【0124】
本開示の態様は、全長TFF2ポリペプチドと比較して、PEG化された修飾TFF2ポリペプチド、例えば、配列番号1のポリペプチドまたはそのバリアントである。PEG化の任意の好適な方法が使用され得る。ポリペプチドのPEG化は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第6,420,339号;同第7,610,156号;同第5,766,897号;同第7,052,686号および同第7,947,473号を参照されたい。また、例えば、Fee, C., and Damodaran V.B., Protein PEGylation: An overview of chemistry and process consideration, European Pharmaceutical Review, Issue 1 2010も参照されたい。
【0125】
本開示の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、PEG化されて、その腎クリアランスを減少させることによる血漿中でのその循環を延長させるによって生じ得るそのin vivoの半減期を増加させ、および/またはその免疫原性を減少させる。PEG化は、疎水性の薬物およびタンパク質の水溶解度も増加させることができる。
【0126】
タンパク質コンジュゲーションのためにこれまでに使用された全体的なPEG化プロセスは、大きくは2つの種類、すなわち、溶液相バッチプロセス、およびカラム上のフェドバッチプロセスに分類することができる(Fee, Conan J.; Van Alstine, James M. (2006), Chemical Engineering Science, 61 (3): 924)。これは、好適な緩衝液中、好ましくは、4~6℃の温度で試薬を一緒に混合すること、続いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)および膜または水性の2相系を含む、その物理化学的特性に基づく好適な技法を使用する所望の生成物の分離および精製を含む(Veronese, edited by Francesco M. (2009). "Protein conjugates purification and characterization". PEGylated protein drugs basic science and clinical applications (Online-Ausg. ed.). Basel: Birkhauser. pp. 113-125;およびFee, Conan J. (2003), Biotechnology and Bioengineering, 82 (2): 200-6)。
【0127】
PEG誘導体のための好適な官能基の選択は、PEGにカップリングされる分子上の利用可能な反応性基の種類に基づく。タンパク質のためには、典型的な反応性アミノ酸としては、リシン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、チロシンが挙げられる。N末端アミノ基およびC末端カルボン酸も、アルデヒド機能性ポリマーとのコンジュゲーションによる部位特異的な部位として使用することができる(Fee, Conan J.; Damodaran, Vinod B. (2012), Biopharmaceutical Production Technology. p. 199)。
【0128】
一部の実施形態では、PEG化は、TFF2ポリペプチドの一方または両方の末端で起こる。同じ反応性部分によりそれぞれの末端で活性化されたPEGは、「ホモ二官能性」として公知であるが、存在する官能基が異なる場合、その結果、PEG誘導体は、「ヘテロ二官能性」または「ヘテロ官能性」と称される。PEGポリマーの化学的に活性な誘導体または活性化誘導体は、PEGを所望の分子に結合するために調製される(Pasut, G.; Veronese, F. M. (2012), Journal of Controlled Release. 161 (2): 461-472)。
【0129】
第1世代のPEG誘導体を形成するために使用される技法は、一般に、PEGポリマーを、ヒドロキシル基と反応性の基、典型的には、無水物、酸塩化物、クロロホルメートおよびカーボネートと反応させることである。第2世代のPEG化化学では、より有効な官能基、例えば、アルデヒド、エステル、アミドなどが、コンジュゲーションのために利用可能になった。
【0130】
ヘテロ二官能性PEGは、親水性の柔軟で生体適合性のスペーサーが必要とされる場合に、2つの実体の連結において有用である。ヘテロ二官能性PEGのための好ましい末端基は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸およびNHSエステルである(国際公開第2011/008495号を参照されたい)。
【0131】
第3世代のPEG化剤は、ポリマーが分岐している場合、Y型またはくし型が利用可能であり、低減された粘度および臓器蓄積の欠如を示す(Ryan, Sinead M; Mantovani, Giuseppe; Wang, Xuexuan; Haddleton, David M; Brayden, David J (2008), Expert Opinion on Drug Delivery, 5 (4): 371-83)。
【0132】
一実施形態では、PEGは、共有結合的に連結される。別の実施形態では、PEGは、TFF2ポリペプチドに、システインまたはリシン残基で連結される。PEG化は、限定されるものではないが、N-ヒドロキシルスクシンイミド活性エステル、プロピオン酸スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホンまたはチオールを含む、いくつかのPEG結合部分を使用して達成することができる。PEGポリマーは、TFF2ポリペプチドに、いずれかの所定の位置で連結され得るか、またはTFF2ポリペプチドに、無作為に連結され得る。PEG化はまた、TFF2ポリペプチドに結合するペプチドリンカーを通して媒介され得る。すなわち、PEG部分は、TFF2ポリペプチドに融合されたペプチドリンカーに結合され得、ここで、リンカーは、PEG結合のための部位(例えば、遊離システインまたはリシン)を提供する。
【0133】
PEG化は、最も頻繁には、ポリペプチドのN末端のアルファアミノ基、リシン残基の側鎖上のイプシロンアミノ酸、およびヒスチジン残基の側鎖上のイミダゾール基で起こる。ほとんどの組換えポリペプチドは、単一のアルファ基ならびに多くのイプシロンアミノ基およびイミダゾール基を持つので、多数の可能性のある異性体が、リンカー化学に応じて生じ得る。当技術分野において公知の一般的なPEG化戦略を、本明細書において適用することができる。PEGは、ポリペプチド配列のうちの1つまたは複数の遊離のアミノ基またはカルボキシル基とポリエチレングリコールとの間の結合を媒介する末端反応性基(「スペーサー」)を介して、本開示のポリペプチドに結合し得る。遊離アミノ基に結合し得るスペーサーを有するPEGとしては、ポリエチレングリコールのコハク酸エステルをN-ヒドロキシヒドロキシスクシニルイミドで活性化することによって調製され得るN-ヒドロキシスクシニルイミドポリエチレングリコールが挙げられる。遊離アミノ基に結合し得る別の活性化ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを塩化シアヌルと反応させることによって調製され得る2,4-ビス(O-メトキシポリエチレングリコール)-6-クロロ-s-トリアジンである。遊離カルボキシル基に結合する活性化ポリエチレングリコールとしては、ポリオキシエチレンジアミンが挙げられる。
【0134】
スペーサーを有するPEGへの本開示のポリペプチド配列のうちの1つまたは複数のコンジュゲーションは、さまざまな従来の方法によって行われ得る。例えば、コンジュゲーション反応は、4:1~30:1の試薬のタンパク質に対するモル比を利用して、5~10のpHの溶液中、4℃~室温の温度で、30分~20時間行うことができる。反応条件は、主に所望の置換度の生成の方に反応を向かわせるように選択され得る。一般に、低温、低pH(例えば、約pH5)および短い反応時間は、結合するPEGの数を減少させる傾向があるが、高温、中性~高pH(例えば、約pH7)およびより長い反応時間は、結合するPEGの数を増加させる傾向がある。当技術分野において公知のさまざまな手段を使用して、反応を終了させ得る。一部の実施形態では、反応は、反応混合物を酸性化すること、および例えば-20℃で凍結することによって終了される。さまざまなポリペプチドのPEG化は、例えば、米国特許第5,252,714号;同第5,643,575号;同第5,919,455号;同第5,932,462号;および同第5,985,263号において議論されている。
【0135】
本開示は、PEG模倣物の使用も企図する。PEGの特質(例えば、増強された血清半減期)を保持するが、いくつかの追加の有利な特性を付与する組換えPEG模倣物が開発されている。例として、PEGと類似の伸長した配置を形成することができる単純なポリペプチド鎖(例えば、Ala、Glu、Gly、Pro、SerおよびThrを含む)は、目的のペプチドまたはタンパク質薬物に既に融合されて、組換えで生成させることができる(例えば、Amunix’ XTEN technology; Mountain View, Calif.)。これは、製造プロセスの間の追加のコンジュゲーションステップについての必要性を未然に防ぐ。また、確立された分子生物学技法は、ポリペプチド鎖の側鎖組成の制御を可能にし、免疫原性および製造特性の最適化を可能にする。
【0136】
ある特定の実施形態では、親水性ポリマーが、TFF2ポリペプチドに付加される。親水性ポリマーは、修飾TFF2ポリペプチドに、(直接的または間接的に)連結され得る。具体的な実施形態では、リンカー(例えば、1~5、5~10または1~10アミノ酸リンカー、例えば、グリシンリンカー)を使用して、親水性ポリマーを修飾TFF2ポリペプチドに連結させる。親水性ポリマーは、修飾TFF2ポリペプチドに、共有結合的または非共有結合的に連結され得る。親水性ポリマーは、基本的に組織化されていない、PEGの機能性アナログである親水性アミノ酸ポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、ジビニルエーテル-無水マレイン酸(DIVEMA)、ポリオキサゾリン、ポリホスフェート、ポリホスファゼン、および従来のPEGの誘導体(例えば、ヒドロキシ-PEG)であり得る。ヒドロキシ-PEGは、米国特許第8,129,300号;および米国特許出願公開第20120114742号に開示されている。ある特定の実施形態では、2つ、3つまたはそれよりも多くの親水性ポリマーが、TFF2ペプチドに連結される。親水性ポリマーは、ペプチドに、修飾TFF2ポリペプチドのC末端、N末端またはC末端およびN末端の両方で連結され得る。
【0137】
本開示の態様として、修飾TFF2ポリペプチドは、1)アルデヒド-PEG化学を介したN末端のPEG化;および2)NHS-PEG化学を介した無溶媒で曝されたアミン(リシン)のPEG化を含む各種の方法を使用して、PEG化することができる。アルデヒド化学を介したPEG化は、Tureck P. L., et al., (2016), Journal of Pharmaceutical Sciences, 105:460-475に記載されている。NHS活性化PEG誘導体を使用するPEG化は、第1級アミン末端に対するNHS活性エステルの選択性に基づく(Fee, C. and Damodaran V. B., (2010), European Pharmaceutical Review, Issue 1を参照されたい)。
【0138】
本明細書で使用される場合、「N末端修飾された」という用語は、タンパク質またはペプチドのそのアミノ(N)末端での修飾を指す。例えば、修飾がPEG化である場合、その結果、PEG部分は、N末端で修飾TFF2ポリペプチドの最初の4分の1を形成する、1つまたは複数のアミノ酸残基で付加/連結/コンジュゲートされる。アミノ酸残基としては、限定されるものではないが、リシン、システイン、セリン、チロシン、ヒスチジン、フェニルアラニンまたはアルギニンが挙げられる。
【0139】
N末端修飾PEG-修飾TFF2ポリペプチドコンジュゲートは、修飾TFF2ポリペプチドのN末端のアミンを、還元剤の存在下でPEGのアルデヒド基と反応させることによって得られ得る。還元剤としては、NaCNBH3およびNaBH4が挙げられ得る。
【0140】
ポリペプチド配列へのコンジュゲーションのために好適なPEGは、一般に、室温で水に可溶性であり、一般式R(O-CH2-CH2)nO-R(式中、Rは、水素、またはアルキルもしくはアルカノール基などの保護基であり、nは、1~1000の整数である)を有する。Rが保護基である場合、それは、一般に、1~8個の炭素を有する。ポリペプチド配列にコンジュゲートされたPEGは、直鎖状または分枝状であり得る。分枝状PEG誘導体の「star-PEG」およびマルチアームPEGは、本開示によって企図される。本開示において使用されるPEGの分子量は、任意の特定の範囲に制限されず、例は、本明細書の他の箇所に記述され、例として、ある特定の実施形態は、5kDa~20kDaの分子量を有する一方、他の実施形態は、4kDa~10kDaの分子量を有する。
【0141】
本明細書で使用される場合、「分枝状」という用語は、ポリマー分子の構造を指し、ここで、ポリマー分子は、主鎖から伸びている同じ基本ポリマーもしくは別のポリマーの枝を有する骨格または主鎖としての機能を果たす直鎖状ポリマーである。この構造は、低分子の1つまたは複数の官能基の一端で接続されたポリマー分子の直鎖状ストレッチおよびその直鎖状ストレッチのうちの2つまたはそれよりも多くに重合されるモノマーによって表すことができ、ここで、低分子は、1000ダルトン未満の分子量を有する。分枝状ポリマー分子、例えば、分枝状PEGの例は、Roberts et al., Advanced Drug Delivery Reviews, 54:459-476 (2002)に表されている。官能基を有する例示的な低分子としては、N-ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、グリセリン、ペンタエリスリトールまたはヘキサグリセリンが挙げられる。
【0142】
本開示は、PEGが異なるn値を有し、したがって、さまざまな異なるPEGが特異的な比で存在する、コンジュゲートの組成物も企図する。例えば、一部の組成物は、n=1、2、3および4のコンジュゲートの混合物を含む。一部の組成物では、n=1のコンジュゲートのパーセンテージは18~25%であり、n=2のコンジュゲートのパーセンテージは50~66%であり、n=3のコンジュゲートのパーセンテージは12~16%であり、n=4のコンジュゲートのパーセンテージは最高で5%である。そのような組成物は、当技術分野において公知の反応条件および精製方法によって生成することができる。例示的な反応条件を、本明細書全体にわたって記載する。カチオン交換クロマトグラフィーを使用して、コンジュゲートを分離してもよく、次いで、画分は、例えば、所望の数の結合したPEGを有するコンジュゲートを含有するものが特定され、未修飾タンパク質配列および他の数の結合したPEGを有するコンジュゲートを含まずに精製される。
【0143】
別の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、メトキシPEG(mPEG)でPEG化される(例えば、Poovi G., and Damodharan, N. (2018) European Journal of Applied Sciences, 10(1):01-14を参照されたい)。
【0144】
別の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ヒドロキシPEG(hPEG)でPEG化される。ヒドロキシ-PEGは、米国特許第8,129,300号;および米国特許出願公開第20120114742号に記載されている。
【0145】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドのPEG化、または親水性ポリマーの本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドへの付加は、in vivoのペプチドの半減期を、当業者に公知の技法によって評価されるように、未修飾TFFポリペプチドと比較して、2~5倍、2~10倍、2~20倍、2~25倍、2~50倍、2~75倍または2~100倍増加させる。一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドのPEG化、または親水性ポリマーの本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドへの付加は、in vivoのペプチドの半減期を、当業者に公知の技法によって評価されるように、未修飾TFFポリペプチドと比較して、5~10倍、5~20倍、5~25倍、5~50倍、5~75倍または5~100倍増加させる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドのPEG化、または親水性ポリマーの本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドへの付加は、in vivoのペプチドの半減期を、当業者に公知の技法によって評価されるように、未修飾TFFポリペプチドと比較して、10~20倍、10~25倍、10~50倍、10~75倍または10~100倍増加させる。一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドのPEG化、または親水性ポリマーの本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドへの付加は、in vivoのペプチドの半減期を、当業者に公知の技法によって評価されるように、未修飾TFFポリペプチドと比較して、25倍~50倍、25~75倍または25~100倍増加させる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドのPEG化、または親水性ポリマーの本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドへの付加は、in vivoのペプチドの半減期を、当業者に公知の技法によって評価されるように、50~75倍または2~100倍増加させる。
【0146】
治療用ポリペプチドの安定性および/または効力を増加させる他の方法は、当技術分野において公知であり、本開示の実施形態として含まれ、例えば、Strohl, W. R., (2015), BioDrugs, 29(4):215-239を参照されたい。
【0147】
CTPペプチド
一部の実施形態では、コンジュゲートする部分は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのCTPペプチドである。CTPペプチドは、31アミノ酸残基のペプチドFQSSSS*KAPPPS*LPSPS*RLPGPS*DTPILPQ(配列番号11)を含み、ここで、S*は、O-グリコシル化部位を示す(例えば、Furuhashi et al., (1995) Mol Endocrinol., 9(1):54-63を参照されたい)。
【0148】
PAS化(登録商標)
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、PAS化される(Aghaabdollahian, S. et al., (2019) Scientific Reports,9:2978、Payne et al. (2010) Pharm. Dev. Technol., 1-18;Pisal et al. (2010) J. Pharm. Sci. 99 (6), 2557-2575;Veronese. (2001) Biomaterials 22 (5), 405-417;Veronese (2009) Milestones in drug therapy (Parnham, M. J., and Bruinvels, J., Eds.) Birkhauser, Basel;米国特許第9,221,882号;米国特許第9,260,494号;同第9,957,323号;同第10,081,657号;同第10,174,302号;および同第9,574,014号を参照されたい)。これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。PAS化は、in vivoおよび/またはin vitroの安定性を増加させることが報告されている(米国特許第9,260,494号)。PAS化は、ポリペプチド、例えば、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドをコードする核酸のPASポリペプチドをコードする核酸との遺伝子融合である。PASポリペプチドは、Pro、AlaおよびSer残基からなる親水性の非電荷ポリペプチドである。一部の実施形態では、PAS化された修飾TFF2ポリペプチドは、約4、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約200、約300、約400、約500もしくは約600アミノ酸、またはその間の任意の範囲、例えば、4~600、10~500アミノ酸などからなる。
【0149】
XTEN化
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、XTEN化されている。「XTEN(商標)」(Amunix Operating Inc.)および/または「XTEN化」という用語は、アミノ酸A、E、G、P、SおよびTで構成される大きな組織化されていない組換えポリペプチドを指す。XTENは、約864アミノ酸の長さを有し得るが、より短くもあり得る(例えば、国際公開第2010091122A1号による864アミノ酸長のポリペプチドの断片)。XTEN化という用語は、XTENの標的の治療用タンパク質(「ペイロード」)との融合を指す。XTEN化は、治療用タンパク質(すなわち、本明細書では、本開示の融合タンパク質)の血清半減期を増加する働きをする。「XTEN」および/または「XTEN化」という用語は、少なくとも40の連続したアミノ酸を含む組織化されていない組換えポリペプチド(URP)も指し、ここで、URPに含有されるグリシン(G)、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)残基の合計は、組織化されていない組換えポリペプチドの総アミノ酸の少なくとも80%を構成し、残りは、存在する場合、アルギニンまたはリシンからなり、残りは、メチオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンを含有しない。
【0150】
ELP化
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ELP化されている。コンジュゲートする部分は、エラスチン様ポリペプチド(ELP)である。ELP化は、エラスチン中で一般に見出される配列を含有する反復するペプチド単位であるELPを使用する(Yeboah A, et al., (2016), Biotechnol Bioeng 113:1617-1627を参照されたい)。ELP化は、目的のポリペプチドをコードする核酸のエラスチン様ポリペプチド(ELP)をコードする核酸との遺伝子融合を含む。ELPは、VPGxG反復モチーフVal Pro Gly Xaa Gly(配列番号12)を含み、ここで、xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である(国際公開第2018/132768号を参照されたい)。
【0151】
HAP(ホモアミノ酸ポリマー)
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、HAP化されている。HAP化は、目的のポリペプチドをコードする核酸のグリシンリッチホモアミノ酸ポリマー(HAP)をコードする核酸との遺伝子融合である。一部の例では、HAPポリマーは、(Gly4Ser)n反復モチーフ(配列番号13)を含み、約50、100、150、200、250、300またはそれよりも多くの残基の長さを有する場合がある(Schlapschy, M. et al. Protein Eng Des Sel 20, 273-284)。
【0152】
PSA(ポリシアリル化)
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、ポリシアリル化され得る。コロミン酸(CA)としても公知のポリシアル酸(PSA)は、天然に存在する多糖である。これは、α(2→8)ケトシド連結もしくはα(2→9)連結または両方の混合物を有するN-アセチルノイラミン酸のホモポリマーであり、その非還元末端にビシナルのジオール基を含有する。これは、負に帯電しており、ヒト身体の天然の構成物質である。PSAは、細菌中で生成させることができる(米国特許第5,846,951号;米国特許第9,018,166号;米国特許第10,414,793号;Zhang et al., (2014), Asian Journal of Pharmaceutical Sciences, 9(2):75-81)。ポリペプチドをポリシアリル化するための方法は、米国特許出願公開第2012/0329127号に記載されている。
【0153】
PLGA
ポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)とのコンジュゲーション。一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾TFF2ポリペプチドは、ポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)とコンジュゲートされ得る。PLGA(PGLA)は、帯電しており、ヒト身体の天然の構成物質である。PLGAは、例えば、ジルコプラン(Ra Pharmaceuticals technology)を含む環状マクロライド薬物の血漿半減期を伸ばす。
【0154】
医薬組成物および投与の方法
本開示の修飾TFF2ポリペプチドは、さまざまな方法で投与することができる。例えば、修飾TFF2ポリペプチドは、静脈内注入、筋肉内投与、埋め込み可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または投与の他の様式を使用して投与することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Sefton (1987) Biomed. Eng. 14:201; Buchwald et al. (1980) Surgery 88:507;Saudek et al. (1989) N. Engl. J. Med. 321:574を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984);Ranger and Peppas, (1983) J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照されたい;また、Levy et al. (1985) Science 228:190;During et al. (1989) Ann. Neurol. 25:351;Howard et al. (1989) J. Neurosurg. 71:105も参照されたい)。別の実施形態では、放出制御システムを、治療標的に近接して配置することができ、したがって全身用量のほんの一部だけが必要とされる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照されたい)。他の放出制御システムは、Langer (Science (1990) 249:1527-1533)による概説において議論されている。タンパク質/ペプチドは、経口投与を介して不十分に吸収されるが、経口投与のための送達システムは、当技術分野において、例えば、Wu S. et al, (2019), Journal of Pharmaceutical Sciences, 108(6):2143-2152;およびRenukunita, J. et al., (2013), Int. J. Pharm., 447:75-93において公知である。
【0155】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ヒト投与のために十分に無菌条件下で調製された等張賦形剤を含む医薬組成物の形態で供給され得る。賦形剤の選択およびPEG化されたTFF2を含む組成物の任意の添付要素は、投与のために使用される経路およびデバイスに従って適合される。一部の実施形態では、PEG化されたTFF2ポリペプチドを含む組成物はまた、TFF2ペプチドの送達または機能的移動を容易にする1種または複数の他の成分を含むことができ、またはそれに付随し得る。
【0156】
本明細書に記載されるこれらの方法は、包括的な手段によってではなく、特定の適用に適したさらなる方法が当業者によって理解される。また、組成物の有効量は、所望の効果を示すことが公知の化合物との類似性によりさらに概算することができる。
【0157】
本開示の一態様は、処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、対象に、有効量の本開示の組成物のいずれか1つまたは本開示の修飾TFF2ポリペプチドのいずれか1つを投与することを含む、方法を提供する。
【0158】
本開示の別の態様は、処置を必要とする対象における炎症性腸疾患を処置する方法であって、対象に、有効量の本開示の組成物のいずれか1つまたは本開示の修飾TFF2ポリペプチドのいずれか1つを投与することを含む、方法を提供する。
【0159】
本開示の別の態様は、処置を必要とする対象におけるCOVID-19を処置する方法であって、対象に、有効量の本開示の組成物のいずれか1つまたは本開示の修飾TFF2ポリペプチドのいずれか1つを投与することを含む、方法を提供する。
【0160】
一部の実施形態では、本開示の組成物もしくはポリペプチドによって処置されるCOVID-19の合併症または病状としては、限定されるものではないが、疲労、発熱、息切れ、筋肉痛、急性呼吸促迫症候群、急性呼吸不全、急性呼吸促迫症候群(ARD)、肺炎、肝臓損傷、心臓血管系合併症、神経学的および神経精神学的合併症、腎臓損傷などが挙げられる。
【0161】
一実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、SARS-CoV-2の複製を阻害または低減する薬剤と組み合わせて投与することができる。別の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、リバビリン、インターフェロン(アルファコン-1)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、EIDD-2801、EIDD-1931、GS-5734、GS-441524、イベルメクチン、ファビピラビル、インドメタシン、クロルプロマジン、ペンシクロビル、ナフォモスタット、カモスタット、ニタゾキサニド、レムデシビル、ファモチジンおよびデキサメタゾンからなる群から選択される抗ウイルス剤と組み合わせて投与することができる。
【0162】
一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、SARS-CoV-2の複製を阻害もしくは低減する薬剤または抗ウイルス剤の前、それと同時に、またはその後に与えることができる。
【0163】
本開示によれば、薬学的に許容される担体は、医薬品の投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含むことができる。そのような媒体および薬学的に活性な物質のための作用物質の使用は、当技術分野において周知である。活性化合物に適合する任意の従来の媒体または作用物質を使用することができる。補足活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0164】
修飾TFF2ポリペプチドは、対象に、一度に(例えば、単回注射または析出物として)投与することができる。あるいは、修飾TFF2ポリペプチドは、約2~約28日、または約7~約10日、または約7~約15日の期間の間、処置を必要とする対象に、1日1回または2回投与することができる。それは、年に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12回またはそれらの組合せの期間の間、対象に、1日1回または2回投与することもできる。さらにまた、修飾TFF2ポリペプチドは、別の治療薬と共投与することができる。
【0165】
一実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、化学療法薬と共投与することができる。従来の化学療法薬の一部の非限定的な例としては、アミノグルテチミド、アムサクリン、アスパラギナーゼ、bcg、アナストロゾール、ブレオマイシン、ブセレリン、ビカルタミド、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カンプトテシン、クロラムブシル、シスプラチン、カルムスチン、クラドリビン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、シプロテロン、クロドロネート、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ジエンエストロール、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルオロウラシル、フルダラビン、フルドロコルチゾン、エピルビシン、エストラジオール、ゲムシタビン、ゲニステイン、エストラムスチン、フルオキシメステロン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、ヒドロキシウレア、イダルビシン、レバミゾール、イマチニブ、ロムスチン、イホスファミド、メゲストロール、メルファラン、インターフェロン、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、イロノテカン、ミトキサントロン、ニルタミド、メドロキシプロゲステロン、メクロレタミン、メルカプトプリン、ミトタン、ノコダゾール、オクトレオチド、メトトレキサート、マイトマイシン、パクリタキセル、オキサリプラチン、テモゾロミド、ペントスタチン、プリカマイシン、スラミン、タモキシフェン、ポルフィマー、メスナ、パミドロネート、ストレプトゾシン、テニポシド、プロカルバジン、チタノセン二塩化物、ラルチトレキセド、リツキシマブ、テストステロン、チオグアニン、ビンクリスチン、ビンデシン、チオテパ、トポテカン、トレチノイン、ビンブラスチン、トラスツズマブおよびビノレルビンが挙げられる。
【0166】
一実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対するモノクローナル抗体と共投与することができる。PD-1遮断抗体の例は、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))およびセミプリマブ(Libtayo(登録商標))である。PD-L1遮断抗体の例は、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))およびデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))である。CTLA-4遮断抗体の例は、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))である。
【0167】
一実施形態では、がんは、遮断する抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体に応答性ではなく、修飾TFF2ポリペプチドによる処置は、遮断する抗PD-1、抗PD-L1または抗CTLA-4モノクローナル抗体に対する応答性を誘導する。
【0168】
一実施形態では、化学療法薬は、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、コルチコステロイドホルモン、性ホルモンまたは標的化抗腫瘍化合物である。
【0169】
一実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、抗炎症性薬と共投与することができる。抗炎症性薬の一部の非限定的な例としては、抗炎症性ステロイド(コルチコステロイド)(例えば、プレドニゾン)、アミノサリチル酸塩(例えば、メサラジン、Asacol HD(登録商標)、Delzicol(登録商標)他)、バルサラジド(Colazal(登録商標))およびオルサラジン(Dipentum)、ならびに/または非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン)および免疫選択性抗炎症誘導体(ImSAID)が挙げられる。抗炎症薬としては、限定されるものではないが、抗TNFα抗体(例えば、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、アダリムマブ(Humira(登録商標))、セルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))、ゴリムマブ(Simponi(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、抗IL12抗体、抗IL2抗体(バシリキシマブ(Simulect(登録商標))、ダクリズマブ(Zenapax(登録商標))、アザチオプリン(Imuran(登録商標)、Azasan(登録商標))、6-メルカプトプリン(6-MP、Purinethol(登録商標))、シクロスポリンA(Sandimmune(登録商標)、Neoral(登録商標))、タクロリムス(Prograf(登録商標))、および抗GM-CSF抗体を含む、サイトカインおよびケモカインを標的にする抗体または分子も挙げられ得る。一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ナタリズマブ(Tysabri(登録商標))、ベドリズマブ(Entyvio(登録商標))およびウステキヌマブ(Stelara(登録商標))と共投与することができる。一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、ヤヌスキナーゼ1~3の阻害剤、例えば、低分子トファシチニブと共投与される。一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、IBDを処置するために使用される免疫系抑制剤、例えば、アザチオプリン(Azasan(登録商標)、Imuran(登録商標))、メルカプトプリン(Purinethol(登録商標)、Purixan(登録商標))、シクロスポリン(Gengraf(登録商標)、Neoral(登録商標)、Sandimmune(登録商標))およびメトトレキサート(Trexall(登録商標))と投与することができる。
【0170】
一実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、放射線療法と共投与することができる。従来の放射線療法の一部の非限定的な例としては、体外照射療法、密封線源照射療法、非密封源線照射療法、粒子療法および放射性同位元素療法が挙げられる。
【0171】
一実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、がん免疫療法と共投与することができる。がん免疫療法は、がんを処置するために対象の免疫系を使用することを含む。例えば、対象の免疫系を刺激して、がん細胞を認識および排除することができる。がん免疫療法の一部の非限定的な例としては、がんワクチン、治療用抗体、例えば、モノクローナル抗体療法(例えば、ベバシズマブ、セツキシマブおよびパニツムマブ)、細胞に基づく免疫療法および養子細胞に基づく免疫療法が挙げられる。
【0172】
修飾TFF2ポリペプチドはまた、消化器系の疾患の処置のために使用される外科的または他の介入的処置レジメンと組み合わせて使用されてもよい。
【0173】
本開示の組成物は、製剤化および投与されて、活性成分とヒトまたは非ヒト対象の身体における薬剤の作用部位との接触を生じさせる任意の手段によって、消化器系の疾患に関連する症状を低減することができる。例えば、本開示の組成物は、製剤化および投与されて、消化器系の炎症性疾患、消化器系のがんもしくは消化器系の異形成に関連する症状を低減することができ、または細胞増殖の減少もしくは腫瘍成長の減少を引き起こすことができる。それらは、個々の治療活性成分または治療活性成分の組合せのいずれかとして、医薬との併用のために利用可能な任意の従来の手段によって投与することができる。それらは単独で投与することができるが、一般に、選択された投与の経路および標準的な薬務に基づいて選択される薬学的担体とともに投与される。
【0174】
本開示による使用のための医薬組成物は、1種もしくは複数の生理学的に許容される担体または賦形剤を使用して、従来の様式で製剤化することができる。本開示の治療用組成物は、全身および局所または局在投与を含む投与の各種の経路のために製剤化することができる。技法および製剤は、一般に、Remington's Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, Pa. (20th ed., 2000)において見ることができ、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。全身投与のために、筋肉内、静脈内、腹腔内および皮下を含む注射は有用である。注射のために、本開示の治療用組成物は、液体の溶液、例えば、PBS、ハンクス液またはリンゲル液などの生理学的に適合性の緩衝液中で、製剤化することができる。加えて、治療用組成物は、固体形態に製剤化することができ、使用の直線に、再溶解または懸濁され得る。凍結乾燥形態も含まれる。本開示の医薬組成物は、少なくとも無菌でパイロジェンフリーであるとして特徴付けられる。これらの医薬製剤は、ヒトおよび獣医学的使用のための製剤を含む。
【0175】
本明細書に記載される治療適用のいずれかは、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、ブタ、ヒツジ、ヤギまたはヒトなどの哺乳動物を含む、そのような治療を必要とする任意の対象に適用することができる。
【0176】
本開示の医薬組成物は、その意図される投与の経路に適合するように、製剤化される。投与の経路の例としては、非経口的、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内もしくは皮下適用のために使用される液剤または懸濁剤は、以下の成分を含むことができる:無菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および等張性の調整のための作用物質、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調整することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラスもしくはプラスチック製の複数回用量バイアルに封入することができる。
【0177】
注射可能な使用に好適な医薬組成物としては、無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散剤、および無菌の注射可能な液剤もしくは分散剤の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。静脈内投与のために、好適な担体としては、生理的食塩水、静菌性の水、Cremophor EM(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。組成物は、無菌でなければならず、かつ容易な注射可能性が存在する程度に流動性でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、微生物、例えば、細菌および真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールのような薬学的に許容されるポリオール、およびそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールによって達成することができる。多くの場合では、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含めることが有用であり得る。注射可能組成物の延長された吸収は、組成物に、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることによってもたらすことができる。
【0178】
無菌の注射可能液剤は、修飾TFF2ポリペプチドを必要な量で適切な溶媒に、必要により本明細書に列挙された成分の1種または組合せとともに組み込むこと、続いて滅菌濾過することによって調製することができる。分散剤は、活性化合物を、基本の分散媒および本明細書に列挙されたものから必要な他の成分を含有する無菌媒体に組み込むことによって調製される。無菌の注射可能液剤の調製のための無菌粉末の場合では、有用な調製方法の例は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これは、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末を、その予め滅菌濾過された溶液から生じさせる。
【0179】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によってであり得る。経粘膜または経皮投与のために、浸透するバリアに適切な浸透剤が製剤中で使用される。そのような浸透剤は、当技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与のためには、洗剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与のためには、活性化合物は、当技術分野において公知の、軟膏(ointment)、軟膏(salves)、ゲルまたはクリームに製剤化される。
【0180】
本開示の組成物は、処置を必要とする対象に投与することができる。処置を必要とする対象としては、限定されるものではないが、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、ブタ、ヒツジ、ヤギまたはヒトなどの哺乳動物が挙げられ得る。
【0181】
本開示の組成物は、持続性および/または徐放性製剤として製剤化することもできる。そのような持続性および/または徐放性製剤は、当業者に周知である持続放出の手段または送達デバイス、例えば、それらの開示が参照により本明細書にそれぞれ組み込まれる、米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;同第4,008,719号;同第4,710,384号;同第5,674,533号;同第5,059,595号;同第5,591,767号;同第5,120,548号;同第5,073,543号;同第5,639,476号;同第5,354,556号;および同第5,733,566号に記載されるものによって行うことができる。本開示の医薬組成物(例えば、治療効果を有する)を使用して、さまざまな特性の所望の放出プロファイルを提供するために、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェアなど、またはそれらの組合せを使用して、活性成分のうちの1種または複数の遅延または持続放出を提供することができる。本明細書に記載されるものを含む、当業者に公知の好適な持続放出製剤は、本開示の医薬組成物による使用のために容易に選択することができる。限定されるものではないが、持続放出に適合する、錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ、カプレットまたは散剤などの経口投与のために好適な単一単位剤形が、本開示に包含される。
【0182】
本明細書に記載される方法では、修飾TFF2ポリペプチドは、対象に、送達試薬と併せてRNAとして、または遺伝子産物を発現する配列を含む核酸(例えば、組換えプラスミドまたはウイルスベクター)としてのいずれかで投与することができる。修飾TFF2ポリペプチドの投与のための好適な送達試薬としては、Mirus Transit TKO脂溶性試薬;lipofectin;lipofectamine;cellfectin;もしくはポリカチオン(例えば、ポリリシン)、またはリポソームが挙げられる。
【0183】
投与される投薬量は、消化器系の炎症性疾患の処置、消化器系がんのいずれかの処置、細胞増殖の減少、腫瘍成長の減少、または消化器系の異形成の処置をもたらすのに十分な組成物の治療有効量であり得、公知の因子、例えば、活性成分の薬力学的特徴ならびにその投与の様式および経路;活性成分の投与の時間;レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重;症状の本質および程度;併用処置の種類、処置の頻度および所望の効果;ならびに排出の速度に応じて変わり得る。
【0184】
一部の実施形態では、投与される修飾TFF2ポリペプチドの有効量は、少なくとも約0.01μg/kg体重、少なくとも約0.025μg/kg体重、少なくとも約0.05μg/kg体重、少なくとも約0.075μg/kg体重、少なくとも約0.1μg/kg体重、少なくとも約0.25μg/kg体重、少なくとも約0.5μg/kg体重、少なくとも約0.75μg/kg体重、少なくとも約1μg/kg体重、少なくとも約5μg/kg体重、少なくとも約10μg/kg体重、少なくとも約25μg/kg体重、少なくとも約50μg/kg体重、少なくとも約75μg/kg体重、少なくとも約100μg/kg体重、少なくとも約150μg/kg体重、少なくとも約200μg/kg体重、少なくとも約250μg/kg体重、少なくとも約300μg/kg体重、少なくとも約350μg/kg体重、少なくとも約400μg/kg体重、少なくとも約450μg/kg体重、少なくとも約500μg/kg体重、少なくとも約550μg/kg体重、少なくとも約600μg/kg体重、少なくとも約650μg/kg体重、少なくとも約700μg/kg体重、少なくとも約750μg/kg体重、少なくとも約800μg/kg体重、少なくとも約850μg/kg体重、少なくとも約900μg/kg体重、少なくとも約950μg/kg体重、少なくとも約1000μg/kg体重、少なくとも約1500μg/kg体重、少なくとも約2000μg/kg体重、少なくとも約2500μg/kg体重、少なくとも約3000μg/kg体重、少なくとも約3500μg/kg体重、少なくとも約4000μg/kg体重、少なくとも約4500μg/kg体重、少なくとも約5000μg/kg体重、少なくとも約5500μg/kg体重、少なくとも約6000μg/kg体重、少なくとも約6500μg/kg体重、少なくとも約7000μg/kg体重、少なくとも約7500μg/kg体重、少なくとも約8000μg/kg体重、少なくとも約8500μg/kg体重、少なくとも約9000μg/kg体重、少なくとも約9500μg/kg体重または少なくとも約10000μg/kg体重である。
【0185】
一実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、1日に少なくとも1回投与される。別の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、1日に少なくとも2回投与される。一部の実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも18週間、少なくとも24週間、少なくとも36週間、少なくとも48週間または少なくとも60週間投与される。さらなる実施形態では、修飾TFF2ポリペプチドは、第2の治療剤と組み合わせて投与される。
【0186】
本開示の治療用組成物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%が死亡する用量)およびED50(集団の50%において治療有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性および治療効果の間の用量比は、治療指標であり、それは、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指標を示す治療剤が有用である。一部の毒性副作用を示す治療用組成物を使用することができる。
【0187】
実験動物を、ヒト疾患のためのモデルとして使用することができる。例えば、マウスを、哺乳動物モデル系として使用することができる。哺乳動物が持つ生理学的システムは、例えば、マウスにおいて、およびヒトにおいて見出すことができる。ある特定の疾患は、それらの環境、ゲノムまたは両方の組合せを操作することによって、マウスにおいて誘導することができる。例えば、AOM/DSSマウスモデルは、ヒト結腸がんのためのモデルである。別の例では、DSSマウスモデルは、ヒト大腸炎のためのモデルである。癌発生の他のマウスモデルとしては、皮膚がんの2段階DMBA/TPAモデル、肝臓がんのDEN/CCL4モデルおよび胃がんのH.felis/MNUモデルが挙げられる。加えて、がんの多数の遺伝子操作されたモデル、例えば、膵臓がんのKPCモデルがある。
【0188】
修飾TFF2ポリペプチドの投与は、単一の経路に制限されないが、複数経路による投与を包含し得る。複数回投与は、逐次的または同時的であり得る。複数経路による適用の他の様式は、当業者に明らかであろう。
【0189】
組換えタンパク質および技法
本開示は、当業者に利用可能な、従来の分子生物学、微生物学および組換えDNA技法を利用する。そのような技法は、当業者に周知であり、文献中に完全に説明されている。例えば、Maniatis, Fritsch & Sambrook, "DNA Cloning: A Practical Approach," Volumes I and II (D. N. Glover, ed., 1985);"Oligonucleotide Synthesis" (M. J. Gait, ed., 1984);"Nucleic Acid Hybridization" (B. D. Hames& S. J. Higgins, eds., 1985);"Transcription and Translation"(B. D. Hames & S. J. Higgins, eds., 1984);"Animal Cell Culture" (R. I. Freshney, ed., 1986);"Immobilized Cells and Enzymes" (IRL Press, 1986): B. Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning" (1984)およびSambrook, et al.,"Molecular Cloning: a Laboratory Manual" (2001)を参照されたい。
【0190】
当業者は、限定されないが、生化学的手段を介してタンパク質を単離すること、または遺伝子操作方法によって目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現させることを含むいくつかの方法で、TFF2タンパク質を得ることができる。一部の実施形態では、TFF2タンパク質、例えば、ヒトTFF2が発現される宿主細胞中のポリヌクレオチドン配列は、配列番号1または3のタンパク質を依然としてコードしながら、発現のために最適化され得る。一部の実施形態では、TFF2をコードするDNAはまた、タンパク質精製のために有用なアミノ酸、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、hisタグまたはFcタグとのハイブリッドタンパク質を、本明細書に記載の通り、コードすることができる。
【0191】
修飾TFF2ポリペプチドは、TFF2タンパク質の断片であり得、例えば、TFF2タンパク質断片は、配列番号1、配列番号3または配列番号6の少なくとも約8の連続したアミノ酸の任意の部分を包含することができる。断片は、配列番号1、3または6の、少なくとも約10の連続したアミノ酸、少なくとも約20の連続したアミノ酸、少なくとも約30の連続したアミノ酸、少なくとも約40の連続したアミノ酸、少なくとも約50の連続したアミノ酸、少なくとも約60の連続したアミノ酸、少なくとも約70の連続したアミノ酸、少なくとも約80の連続したアミノ酸、少なくとも約90の連続したアミノ酸、少なくとも約100の連続したアミノ酸、少なくとも約110の連続したアミノ酸または少なくとも約120の連続したアミノ酸を含むことができる。断片は、約8~約80アミノ酸のすべての可能なアミノ酸長、例えば、約10~約80アミノ酸、約15~約80アミノ酸、約20~約80アミノ酸、約35~約80アミノ酸、約40~約80アミノ酸、約50~約80アミノ酸または約70~約80アミノ酸の長さを含む。
【0192】
修飾TFF2ポリペプチドは、いくつかの方法、例えば、限定されないが、遺伝子操作方法によって、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列またはその断片を発現させることで得ることができる。
【0193】
修飾TFF2ポリペプチドをコードする核酸は、例えば、細胞における過剰発現を達成するために、発現カセットにおいて発現され得る。核酸は、発現可能な形態、例えば、発現カセット中の目的のRNA、cDNA、cDNA様またはDNAであり得、これは、天然プロモーターまたは完全に異種プロモーターから発現され得る。目的の核酸は、タンパク質をコードすることができ、イントロンを含んでいてもよく、または含んでいなくてもよい。限定されるものではないが、細菌、哺乳動物、酵母、昆虫または植物細胞発現系を含む、任意の組換え発現系を使用することができる。
【0194】
修飾TFF2ポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された宿主細胞を、発現および細胞培養物からのタンパク質の回収のために好適な条件下で培養することができる。形質転換細胞によって産生したポリペプチドは、配列および/または使用されるベクターに応じて、分泌または細胞内に含有され得る。修飾TFF2ポリペプチドをコードする核酸配列を含有する発現ベクターは、原核生物または真核細胞の膜を通って、修飾TFF2ポリペプチドをコードする可溶性ポリペプチド分子の分泌を指示するシグナル配列を含有するように設計することができる。異種シグナルペプチドの例を、限定されないが、下記の表2に示す。
【表2】
【0195】
ポリペプチドをコードするTFF2を含む核酸配列は、全体にまた一部において、当技術分野において公知の化学方法を使用して合成することができる。あるいは、TFF2タンパク質は、そのアミノ酸配列を合成する化学方法を使用して、例えば、固相技法を使用する直接ペプチド合成によって、生成することができる。タンパク質合成は、手作業の技法を使用して、または自動でのいずれかで行うことができる。自動合成は、例えば、Applied Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を使用して達成することができる。必要に応じて、TFF2の断片を、別々に合成し、化学方法を使用して組み合わせて、全長ポリペプチドを生成することができる。
【0196】
合成ペプチドは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を介して実質的に精製することができる。合成修飾TFF2ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列決定によって確認することができる。加えて、TFF2アミノ酸配列の任意の部分を、直接合成の間および/または他のタンパク質由来の配列と化学方法を組み合わせて使用する間に変更して、バリアント修飾TFF2ポリペプチドまたは融合タンパク質を生成することができる。
【0197】
本開示は、TFF2の核酸配列、例えば、配列番号2および3に示される配列によってコードされるタンパク質または修飾TFF2ポリペプチドを使用するための方法をさらに包含する。別の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、グリコシル化および/またはアセチル化および/または化学反応もしくはカップリングによって修飾することができ、1つもしくはいくつかの非天然または合成アミノ酸を含有することができる。ある特定の実施形態では、本開示は、TFF2のバリアントを包含する。
【0198】
融合タンパク質
当業者は、所望のタンパク質産物の発現が融合タンパク質に基づき得ることを理解する。修飾TFF2ポリペプチドの一実施形態は、融合タンパク質である。融合タンパク質の一実施形態は、TFF2-アルブミンタンパク質である。別の実施形態は、修飾TFF2-IgG1融合タンパク質である。これらの融合タンパク質は、ネイティブまたは組換えTFF2と比べて、修飾TFF2ポリペプチドの血清半減期を増加させる。別の種類の融合タンパク質は、組換えタンパク質の精製において有用なアフィニティータグと結合する。融合タンパク質は、TFF2配列のN末端またはC末端のいずれかに新たな配列を含むことができる。融合タンパク質は、TFF2アミノ酸配列の一部、全アミノ酸配列を含むことができ、またはTFF2配列を融合タンパク質に連結する新たな配列を含むことができる。
【0199】
アフィニティータグを有する一般的な融合タンパク質は、ポリヒスチジンタグを用いる。アフィニティータグは、多くの場合、適切なプロテアーゼで切断され得る標的プロテアーゼ切断部位配列によってTFF2配列に連結される(Waugh, DS. An Overview of Enzymatic Reagents for the Removal of Affinity Tags, Protein Expr Purif. 2011 Dec; 80(2): 283-293)。一般的な標的プロテアーゼ切断部位配列は、配列番号20のアミノ酸配列(Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser)後のトロンビン切断部位のための標的である。トロンビンは、切断部位のアルギニンおよびグリシン残基の間を選択的に切断する。他の場合では、アフィニティータグは、認識部位(Asp-Asp-Asp-Lys)(配列番号21)で切断するエンテロキナーゼのための標的配列によって接続される。別の実施形態では、アフィニティータグは、タバコエッチウイルス(TEV)のための標的プロテアーゼ切断部位配列によって接続される。TEVプロテアーゼは、アミノ酸配列:Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-Gly(配列番号22)またはGlu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-Ser(配列番号23)を認識し、GlnおよびGly/Ser(P1’位)残基の間を切断する、非常に特異的なシステインプロテアーゼである。P1’残基はまたは、Ala、MetまたはCysであり得る(Kapust, R.B. et al. (2002). Biochem. and Biophysical Research Comm. 294, 949-955)。
【0200】
他の実施形態では、アフィニティータグの切断後、得られるタンパク質は、切断部位由来の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。
【0201】
一部の実施形態では、アフィニティータグの切断後、得られるタンパク質は、ネイティブタンパク質である。例として、Qiagen(登録商標)からのTAGZymeは、hisタグおよびタグ除去を使用する組換えタンパク質のアフィニティー精製のための酵素系である。それは、N末端からの外部タンパク質分解切断のためのジペプチダーゼ(DAPase、または組換えジペプチジルペプチダーゼI)、およびまたhisタグの完全な除去のための潜在的な2つのアクセサリーアミノペプチダーゼ(Qcyclase、または植物グルタミンシクロトランスフェラーゼ、およびpGAPase、または細菌ピログルタミルアミノペプチダーゼ)を組み合わせる。TAGZyme中の3つの酵素のすべてが、除去のための切断可能ではないhisタグを示す。
【0202】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、アルブミンまたはIgG配列のような半減期を増強する配列、およびhisタグなどのアフィニティータグとして使用される配列、およびアフィニティータグのためまたは生成の他の態様のためのリンカー配列として使用された配列を有する融合タンパク質を含む医薬製品を作製するためにPEG化することができる。
【0203】
細菌発現系
当業者は、原核生物における所望のタンパク質産物の発現が、E.coliにおいて、構成的プロモーターまたは誘導プロモーターを含有するベクターを用いて最も頻繁に行われることを理解する。形質転換のための細菌細胞の一部の非限定的な例としては、細菌細胞系のE.coli株DH5αまたはMC1061/p3(Invitrogen Corp.(登録商標)、San Diego、Calif.)が挙げられ、これは、当技術分野において実行される標準手順を使用して、形質転換することができ、次いで、コロニーを、適切なプラスミド発現のためにスクリーニングすることができる。細菌系では、多くの発現ベクターを選択することができる。そのようなベクターの非限定的な例としては、多機能性E.coliクローニング、およびBLUESCRIPT(Stratagene(登録商標))などの発現ベクターが挙げられる。一部のE.coli発現ベクター(当技術分野において融合ベクターとしても公知)は、通常は発現される組換えタンパク質のN末端に、多くのアミノ酸残基を付加するように設計される。そのような融合ベクターは、1)所望の組換えタンパク質の溶解度を増加させる;2)目的の組換えタンパク質の発現を増加させる;および3)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することによって組換えタンパク質精製を助けるという3つの機能を果たし得る。一部の例では、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を指示するベクターも使用され得る。融合発現ベクターの一部の非限定的な例としては、所望のタンパク質にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を融合するpGEX;目的の組換えタンパク質に6×His(配列番号8)を融合するpcDNA 3.1/V5-His A B & C(Invitrogen Corp.(登録商標)、Carlsbad、Calif.);標的組換えタンパク質にマルトースE結合タンパク質を融合するpMAL(New England Biolabs(登録商標)、MA);E.coli発現ベクターpUR278(Ruther et al., (1983) EMBO 12:1791)、ここで、コード配列は、融合タンパク質を生じさせるために、lac Zコード領域を有するフレームにおいてベクターに個々にライゲートされ得る;およびpINベクター(Inouye et al., (1985) Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke et al., (1989) J. Biol. Chem. 24:5503-5509)が挙げられる。上記で述べたベクターと同様のものによって生じる融合タンパク質は、一般に可溶性であり、融合タンパク質のアフィニティーマトリックスへの吸着および結合を介して溶解した細胞から容易に精製することができる。例えば、融合タンパク質は、グルタチオンアガロースビーズのマトリックスへの吸着および結合、その後、続いて遊離グルタチオンの存在下での溶出を介して溶解した細胞から精製することができる。例えば、pGEXベクターは、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計され、その結果、クローニングされた標的は、GST部分から放出され得る。
【0204】
植物、昆虫および酵母発現系
TFF2ペプチドのためのコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E.coliおよびB.subtilis)などの微生物に加えて、他の好適な細胞系を、代替的に使用して、目的の分子を産生させてもよい。非限定的な例としては、修飾TFF2ポリペプチドのためのコード配列を含有する、組換えウイルス発現ベクター(例えば、タバコモザイクウイルス、TMV;カリフラワーモザイクウイルス、CaMV)に感染したか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系が挙げられる。植物発現ベクターが使用される場合、修飾TFF2ポリペプチドをコードする配列の発現は、多くのプロモーターのいずれかによって駆動され得る。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターなどのウイルスプロモーターを、単独で、またはタバコモザイクウイルスTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて使用することができる。あるいは、RUBISCOの小サブユニットまたは熱ショックプロモーターなどの植物プロモーターを使用することができる。これらの構築物は、直接DNA形質転換によって、または病原体媒介トランスフェクションによって、植物細胞に導入することができる。
【0205】
昆虫系も、修飾TFF2ポリペプチドまたは融合タンパク質を発現させるために使用することができる。昆虫系を使用する組換えタンパク質を発現させるための多くの方法が、当技術分野において公知であり、例えば、Bleckmann, M. et al., (2016), Biotechnol Bioeng. 113(9): 1975-1983;Zitzmann, J. et al., Process Optimization for Recombinant Protein Expression in Insect Cells, New Insights into Cell Culture Technology;InTech; 2017;米国特許第5,194,376号;米国特許第5,843,733号;を参照されたい。例えば、1つのそのような系では、Autographa californicaニュークレア多角体ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用して、Spodoptera frugiperda細胞において、またはTrichoplusia larvaeにおけるTrichoplusia virescensにおいて、外来遺伝子を発現させる。修飾TFF2ポリペプチドをコードする配列を、ウイルスの非必須領域、例えば、ポリヘドリン遺伝子にクローニングすることができ、ポリヘドリンプロモーターの制御下に置くことができる。修飾TFF2ポリペプチドの核酸配列の成功した挿入は、ポリヒドリン遺伝子を不活性にし、コートタンパク質を欠く組換えウイルスが生成する。次いで、組換えウイルスを使用して、例えば、Spodoptera frugiperda(S.frugiperda)細胞、またはイネ科草本のfrugiperda(S.frugiperda)細胞におけるTrichoplusia ni(Trichoplusiaにおける)幼虫、またはTrichoplusia night moth(Trichoplusia)幼虫に感染させ、目的のポリペプチドがそれによって発現される(Engelhard, EK et al. (1994) in Proc.Natl.Acad.Sci. 3224を参照されたい)。
【0206】
別の実施形態では、酵母、例えば、chizosaccharomyces pombe(Schizosaccharomyces pombe);Kluyveromyces(Kluyveromyces)宿主、例えば、乳酸g Lurvy酵母(K Iactis)、Kluyveromyces fragilis(K.fragilis)(ATCC 12424)、K.bulgaricus(K.bulgaricus)(ATCC 16045)、Clostridium Kluyveromyces(K.wickerhamii)(ATCC 24178)、K.waltii(ATCC 56500)、Drosophila Kluyveromyces(K.drosophilarum)(ATCC 36906)、K.thermotolerans(K.thermotoIerans)およびKluyveromyces marxianus(K.marxianus);Yarrowia(yarrowia)(EP402226);Pichia酵母(Pichia pastoris)(EP183070);Candida(Candida);Trichoderma reesei(Trichodermareesei)(EP244234);粗製Tangmaiping保持バクテリア(Neurospora crassa);Schwanniomyces(Schwanniomyces)、例えば、Schwanniomyces occidentalis;ならびに糸状菌、例えば、Neurospora株(Neurospora)、Penicillium(Penicillium)、cyclosporine(Tolypocladium,)およびAspergillus(Aspergillus)宿主、例えば、Aspergillus nidulans(A.nidulans)およびNiger(A.niger)である。酵母は、修飾TFF2ポリペプチドのためのコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換することができる。酵母は、組換えタンパク質をグリコシル化する能力を持ち、胃液中のヒトTFF2のかなりの割合が、推定のAsn(15)上でN連結を介してグリコシル化され、これが、血管内TFF2について機能的に重要であり得、かつ血漿半減期を増加し得る(May FE et al., Gut 2000 46(4):454-9)ので、好ましい実施形態は、S cerevisiaeを含む酵母における発現である。組換えヒトTFF2がS cerevisiaeにおいて発現される場合、組換えタンパク質のかなりの割合が、Asn(15)上でN連結を介してグリコシル化される(Thim L et al. FEBS Lett 1993: 318:345-52)。
【0207】
哺乳動物発現系
哺乳動物細胞(例えば、BHK細胞、VERO細胞、CHO細胞、HEK293細胞など)は、所望の産物の発現のために、発現ベクター(例えば、修飾TFF2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を保有するもの)を含有することもできる。宿主細胞においてヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で少なくとも1つの調節配列に連結されたそのような核酸配列を含有する発現ベクターは、当技術分野において公知の方法を介して導入することができる。多くのウイルス系発現系を使用して、哺乳動物宿主細胞において修飾TFF2ポリペプチドを発現させることができる。ベクターは、組換えDNAまたはRNAベクターであり得、DNAプラスミドまたはウイルスベクターを含む。例えば、アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、修飾TFF2ポリペプチドをコードする配列は、後期プロモーターおよび三要素リーダー配列を含むアデノウイルス転写/翻訳複合体にライゲートされ得る。ウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域への挿入は、感染した宿主において修飾TFF2ポリペプチドを発現することができる生存ウイルスを得るために使用することができる。ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを使用して、哺乳動物宿主細胞における発現を増加させることもできる。加えて、ウイルスベクターを、限定されるものではないが、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスまたはアルファウイルスに基づいて構築することができる。
【0208】
調節配列は、当技術分野において周知であり、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されているように、適切な宿主細胞における目的のタンパク質またはポリペプチド(修飾TFF2ポリペプチドなど)の発現を指示するように選択することができる。調節配列の非限定的な例としては、ポリアデニル化シグナル、プロモーター(CMV、ASV、SV40または他のウイルスプロモーターなど、例えば、ウシ乳頭腫、ポリオーマおよびアデノウイルス2ウイルス(Fiers, et al., 1973, Nature 273:113; Hager G L, et al., Curr Opin Genet Dev, 2002, 12(2):137-41)エンハンサー、および他の発現制御エレメントに由来するもの)が挙げられる。当業者は、発現ベクターの設計が、トランスフェクトされる宿主細胞の選択、ならびに/または発現される所望のタンパク質の種類および/もしくは量などの因子に依存し得ることを理解する。
【0209】
非コードDNA領域中のプロモーター領域の上流または下流で見出されるこれらの配列であるエンハンサー領域も、発現の最適化において重要であることが当技術分野において公知である。必要により、ウイルス源由来の複製開始点を、例えば、原核生物宿主がプラスミドDNAの導入のために利用される場合に、用いることができる。しかしながら、真核生物において、染色体の組み込みは、DNA複製のための一般的な機構である。
【0210】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションのために、ほんのわずかな細胞が、それらのゲノムに導入DNAを組み込むことができる。利用される発現ベクターおよびトランスフェクション方法は、成功した組み込み事象に寄与する因子であり得る。所望のタンパク質の安定な増幅および発現のために、目的のタンパク質(例えば、修飾TFF2ポリペプチド)をコードするDNAを含有するベクターは、真核細胞(例えば、HEK293細胞などの哺乳動物細胞)のゲノムに安定に組み込まれ、トランスフェクトされた遺伝子の安定な発現をもたらす。外因性核酸配列は、その内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号に開示される相同組換えによって、細胞(例えば、哺乳動物細胞など、初代または二次細胞のいずれか)に導入することができる。
【0211】
選択マーカー(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、G418およびハイグロマイシンなどの抗生物質または薬物に耐性)をコードする遺伝子は、目的のタンパク質をコードする遺伝子を安定に発現するクローンを特定および選択するために、目的の遺伝子と一緒に宿主細胞に導入することができる。選択マーカーをコードする遺伝子は、目的の遺伝子と同じプラスミドで宿主細胞に導入することができ、または別々のプラスミドで導入することができる。目的の遺伝子を含有する細胞は、選択マーカー遺伝子が組み込まれた細胞が薬物の存在下で生存する薬物選択によって特定することができる。選択マーカーについての遺伝子が組み込まれなかった細胞は死亡する。次いで、生存細胞を、所望のタンパク質分子(例えば、修飾TFF2ポリペプチド)の産生についてスクリーニングすることができる。
【0212】
宿主細胞株は、挿入された配列の発現をモジュレートする、または所望の方法で発現された修飾TFF2ポリペプチドをプロセシングするその能力について選択することができる。ポリペプチドのそのような修飾としては、限定されるものではないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられる。ポリペプチドの「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングは、正しい挿入、フォールディングおよび/または機能を促進するために使用することもできる。特異的な細胞機構および翻訳後活性についての特徴的な機構を有する異なる宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293およびWI38)は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC;10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110-2209)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確保にするために選択することができる。
【0213】
外因性核酸は、リポフェクション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム沈殿、DEAE-デキストリン媒介トランスフェクションまたは電気穿孔などの当技術分野において公知の各種の技法を介して、細胞に導入することができる。電気穿孔は、適切な電圧およびキャパシタンスで行って、DNA構築物の目的の細胞への移行をもたらす。細胞をトランスフェクトするために使用される他の方法としては、改変リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン沈殿、リポソーム融合および受容体媒介遺伝子送達も挙げられ得る。
【0214】
大量の目的のTFF2ペプチドを保有し、発現し、その後の単離および/または精製のための培養培地に分泌することができる動物または哺乳動物宿主細胞としては、限定されるものではないが、ヒト胚腎臓293細胞(HEK-293)(ATCC CRL-1573);チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、例えば、CHO-K1(ATCC CCL-61)、DG44(Chasin et al., (1986) Som. Cell Molec. Genet, 12:555-556;Kolkekar et al., (1997) Biochemistry, 36:10901-10909;および国際公開第01/92337A2号)、ジヒドロ葉酸還元酵素陰性CHO細胞(CHO/dhfr-、Urlaub et al., (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 77:4216)、およびdp12.CHO細胞(米国特許第5,721,121号);SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS細胞、COS-7、ATCC CRL-1651);ヒト胚腎細胞(例えば、293細胞、または懸濁培養における成長のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al., (1977) J. Gen. Virol., 36:59);ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL-10);サル腎細胞(CV1、ATCC CCL-70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587;VERO、ATCC CCL-81);マウスセルトリ細胞(TM4;Mather (1980) Biol. Reprod., 23:243-251);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL-2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL-34);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL-75);ヒト肝細胞腫細胞(HEP-G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍細胞(MMT 060562、ATCC CCL-51);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL-1442);TRI細胞(Mather (1982) Annals NY Acad. Sci., 383:44-68);MCR 5細胞;FS4細胞が挙げられる。修飾TFF2ポリペプチドを産生するように形質転換された細胞系はまた、リンパ起源の不死化哺乳動物細胞系であり得、限定されるものではないが、骨髄腫、ハイブリドーマ、トリオーマまたはクアドローマ細胞系が挙げられる。細胞系は、B細胞などの正常なリンパ細胞を含むこともでき、これは、エプスタインバーウイルスなどのウイルスによる形質転換によって不死化されている(骨髄腫細胞系またはそれらの派生物など)。
【0215】
挿入された配列の発現をモジュレートするか、または所望の特異的な方法で核酸を修飾およびプロセシングする宿主細胞株も選択され得る。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化および他の翻訳後修飾)およびプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能のために重要である場合がある。異なる宿主細胞株は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングならびに修飾のための特徴的かつ特異的な機構を有する。そのため、適切な宿主系または細胞系を、修飾TFF2ポリペプチドなどの発現される外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確保するために選択することができる。したがって、遺伝子産物の一次転写物の適切なプロセシング、グリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を保有する真核宿主細胞が使用され得る。哺乳動物宿主細胞の非限定的な例としては、HEK-293、3T3、W138、BT483、Hs578T、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、BT2O、T47D、NSO(任意の免疫グロブリン鎖を内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞系)、CRL7O3O、MDCK、293、HTB2およびHsS78Bst細胞が挙げられる。
【0216】
さまざまな培養パラメーターを、培養される宿主細胞に関して使用することができる。哺乳動物細胞のための適切な培養条件は、当技術分野において周知であり(Cleveland W L, et al., J Immunol Methods, 1983, 56(2): 221-234)、または当業者によって決定することができる(例えば、Animal Cell Culture: A Practical Approach 2nd Ed., Rickwood, D. and Hames, B. D., eds. (Oxford University Press: New York, 1992)を参照されたい)。細胞を培養する条件は、選択された宿主細胞の種類に従って変わり得る。市販の培地を利用することができる。
【0217】
培養に好適な細胞は、プラスミドまたはウイルスなどの導入された発現ベクターを含有することができる。発現ベクター構築物は、形質転換、マイクロインジェクション、トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔または感染を介して導入することができる。発現ベクターは、発現および産生のためのタンパク質をコードするコード配列またはその部分を含有することができる。産生されるタンパク質およびポリペプチド、ならびに適切な転写および翻訳制御エレメントをコードする配列を含有する発現ベクターは、当業者に周知かつ当業者によって実行される方法を使用して、生じさせることができる。これらの方法としては、合成技法、in vitro組換えDNA技法、およびJ. Sambrook et al., 201, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.およびF. M. Ausubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.に記載されているin vivo遺伝子組換えが挙げられる。
【0218】
組換えタンパク質の精製
修飾TFF2ポリペプチドは、修飾TFF2ポリペプチドを発現する発現構築物でトランスフェクトされたものを含む、ポリペプチドを発現する任意のヒトまたは非ヒト細胞から精製することができる。精製された修飾TFF2ポリペプチドは、当技術分野において公知の方法を使用して、ある特定のタンパク質、炭水化物または脂質などのTFF2に通常関連する他の化合物から分離することができる。タンパク質の回収、単離および/または精製のために、細胞培養培地または細胞溶解物を遠心分離して、粒子状の細胞および細胞デブリを除去する。所望の修飾TFF2ポリペプチドは、好適な精製技法によって、可溶性のタンパク質およびポリペプチドの混入から単離または精製される。タンパク質のための非限定的な精製法としては、サイズ排除クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはカチオン交換樹脂などの樹脂、例えば、DEAEにおけるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、Sephadex G-75、Sepharose(登録商標)を使用するゲル濾過;免疫グロブリン混入物の除去のためのプロテインAセファロースクロマトグラフィー;などが挙げられる。プロテアーゼ阻害剤(例えば、PMSFまたはプロテイナーゼK)などの他の添加物を、精製の間のタンパク質分解を阻害するために使用することができる。炭水化物のために選択され得る精製手順は、例えば、イオン交換ソフトゲルクロマトグラフィー、またはカチオンもしくはアニオン交換樹脂を使用するHPLCを使用することもでき、ここで、より酸性の画分が収集される。
【実施例】
【0219】
実施例を、本開示のより完全な理解を容易にするために下記に提供する。以下の実施例は、本発明の作製および実行の例示的な様式を説明する。しかしながら、代替の方法を利用して類似の結果を得ることができるので、本開示の範囲は、説明の目的のみのこれらの実施例に開示された詳細な実施形態に限定されない。
【0220】
(実施例1)
His_Strepタグを有するヒト修飾TFF2ポリペプチドのコドン最適化
His_Strepタグを有するヒト修飾TFF2ポリペプチドのコドン最適化を下記の配列番号32に示す。
【化11】
【0221】
最適化されたDNA配列から生成した推定アミノ酸配列を下記の配列番号33に示す。
【化12】
【0222】
(実施例2)
ヒト修飾TFF2-C末端HULG1 Fcタグポリペプチドのコドン最適化
コドン最適化されたDNA配列のTFF2-C末端HULG1 FCタグの配列番号34を下記に示す。
【化13】
【化14】
【0223】
最適化されたDNA配列から生成した推定アミノ酸配列を下記の配列番号35に示す。
【化15】
【0224】
(実施例3)
ヒトTFF2-HSAのコドン最適化
ヒトTFF2-HSAのコドン最適化されたDNAを下記に示す(配列番号36)。
>ヒトTFF2-HSA_コドン最適化されたDNA
【化16】
【化17】
【0225】
推定TFF2-HSAアミノ酸配列を下記の配列番号37に示す。
【化18】
【化19】
【0226】
(実施例4)
ヒトTFF2-CTPX2-FLAG X3のコドン最適化
ヒトTFF2-CTPX2-FLAG X3_コドン最適化されたDNA(配列番号38)
【化20】
【化21】
【0227】
推定TFF2-HSAアミノ酸配列を下記に示す(配列番号39)。
【化22】
【0228】
実施例1~4の構築物はすべて、CHO-S一過性系において発現させる。3つのバリアントの発現を、ウエスタンブロットおよび抗huTFF2を使用して、発現について分析する。
【0229】
(実施例5)
カルシウム動員による修飾TFF2ポリペプチド活性の測定
ジャーカット細胞、KATO-IIIおよび/またはAsPC-1細胞(2.5×106個細胞/ml)を、0.5%のBSAを含有するRPMI 1640培地に再懸濁させ、撹拌しながら、暗所で、5mMの最終濃度のCa2+結合色素Indo-1 AMとともに37℃で1時間インキュベートする。ロードされた細胞を、洗浄し、2mMのCaCl2および1mMのMgCl2を含有するハンクス平衡塩類溶液培地に再懸濁させ、室温で20分間放置する。細胞を、蛍光活性化細胞ソーター管に等分し、これを、測定前にさらに5分間、37℃の水浴に直ぐに移す。次いで、平衡化された細胞を、LSRII機器(BD Biosciences)を使用するCa2+レベルのフローサイトメトリー分析のために使用する。ベースラインの細胞内Ca2+レベルを、最初の25~30秒間記録し、続いて、示された濃度のSDF-1a、TFF2、ガストリン、イオノマイシンまたは希釈剤(リン酸緩衝食塩水)で刺激する。データ収集を、さらに4~10分間、2000事象/秒のスピードで継続する。サイトゾルのCa2+のIndo-1への結合の増加は、510nm(遊離形態)から420nm(Ca2+結合形態)へのIndo-1の発光スペクトルの変化をもたらす。したがって、青色(4’,6-ジアミジノ-2-フェニル-インドールチャネル、420nm)および紫色(Indoチャネル、510nm)の細胞の蛍光を測定し、データを、FlowJoソフトウェア(バージョン6.4;Tree Star,Inc.)を使用してプロットする。したがって、細胞を、AMD3100または抗CXCR4 mAbs 12G5もしくは2B11(eBioscience)とともに37℃で40分間プレインキュベートした後、AMD3100または抗CXCR4抗体の存在下でのSDF-1aまたはTFF2に対する応答における細胞内カルシウム動員を、測定する。
【0230】
(実施例6)
ERK1/2のリン酸化による修飾TFF2ポリペプチド活性の測定
修飾TFF2ポリペプチドの活性の測定は、Perkin ElmerによるAlphaLISA SureFire Ultra p-ERK1/2(Thr202/Tyr204)アッセイキットを使用することによって、ジャーカットヒト急性T細胞白血病細胞、KATO-IIIヒト胃がん細胞および/またはAsPC-1ヒト膵臓細胞(すべての細胞系はATCCによって提供された)におけるERK1/ERK2のリン酸化によって行う。細胞系を解凍し、ATCCによって提供された説明書に従って増殖させる。細胞を、遠心分離によって回収し、HBSS中に107個細胞/mLで再懸濁させる。細胞を、384ウェルの白色の不透明な培養プレート(PerkinElmer)に4mLの細胞/ウェルで播種し、37℃で1~2時間インキュベートする。0.1%のBSAを含有するHBSS中の10~30mg/mLの濃度で4mL中の組換えTFF2の野生型およびバリアントを、プレートに添加して、細胞を刺激し、37℃で5~30分間インキュベートする。細胞を、2mL/ウェルの溶解緩衝液で溶解し、続いて、5mLのAcceptor Mixを添加する。次いで、プレートをTopseal-A接着フィルムで密封し、室温で1時間インキュベートする。次いで、5mLのDonor Mixを明るすぎない光の下でウェルに添加し、Topseal-A接着フィルムで密封し、ホイルで覆い、暗所で、室温で1時間インキュベートする。プレートを、標準的なAlphaPlexの設定を使用して、AlphaPlex適合プレートリーダーにおいて読み取る。CXCR4のTFF2刺激の阻害は、組換えTFF2の添加前に、CXCR4の低分子アンタゴニストのAMD3100(Sigma)または抗CXCR4 mAb 12G5および2B11(eBioscience)を用いて37℃で1~2時間行う。
【0231】
(実施例7)
結腸直腸腺癌
51歳の男性は、リンチ症候群の家系と一致する可能性のある早発性結腸直腸がんまたは他の悪性腫瘍の家族歴なしを示し、患者は、患者が結腸内視鏡検査による最初のルーティンのスクリーニング評価を行うまで通常の健康状態にあり、横行結腸において部分的に閉塞性の腫瘤を有していることが見出される。生検は、リンパ管浸潤を伴う中分化型腺癌の存在を確認する。反射分子試験は、KRASエクソン2突然変異:(+)、BRAF突然変異:(-)について注目に値する。しかしながら、患者は、転移性のマイクロサテライト不安定性-高(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損(dMMR)またはdMMR/MSI-H:(+)として特定される。その後のステージ分類CTスキャンは、腹部外の転位がない、小体積の肝臓および腹膜疾患の両方を特定した。患者は、無症候性のステージIVの結腸直腸がんを有するとして分類され、難なく、横行結腸切除術が成功裏に終了する。その6週間後、患者は、レボホリン酸(FOLまたはFusilev(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FUまたはF)およびオキサリプラチン(OXまたはEloxatin(登録商標)、DNAにおける鎖間および鎖内架橋の両方を形成する白金細胞傷害剤)、または「FOLFOX」とベバシズマブ(Avastin(登録商標))のレジメンを開始する。FOLFOX-ベバシズマブのサイクル#6後の再現は、ほぼ完全な寛解(nCR)と一致する。十分な許容療法にもかかわらず、患者の健康状態は、「維持」ベバシズマブ/フルオロピリミジンを継続しながら、衰え、患者は、観察プログラムに入る。患者は、14か月間健康が回復し、その時に、患者は、呼吸困難の開始に気付く。CTスキャンは、新たな大きな右の胸水、腹水、有意な肝機能検査の異常を伴う進行性の肝転移について注目に値する。大きな体積の胸腔穿刺は、腺癌の細胞学的証拠を伴う悪性胸水の存在を確認する。患者は、胸腔の管の設置を受け、続いて、成功裏の胸膜癒着術を行う。患者は、FOLFIRI-ベバシズマブによる二次治療を開始する。患者は、再び療法を十分に許容し、サイクル#4後の再現CTスキャンは、部分寛解(PR)と一致する。患者は、毒性によって許容される進行を処置するための計画により、レボホリン酸(FOL)、5-FU(F)およびイリノテカン(IRIまたはCamptosar(登録商標)、トポイソメラーゼIの阻害剤)、FOLFIRI-ベバシズマブを継続する。FOLFIRI-Avastinのサイクル#10後の再現は、進行性肝転移および腹水の再発を実証する。患者は、単剤のペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))による治療を開始するが、応答しない。その後の治療を、修飾TFF2ポリペプチドで開始し、患者は、部分的な目的の応答を達成する。併用処置を、修飾TFF2ポリペプチドおよびペムブロリズマブで開始し、これは、完全奏効ならびに腫瘍および転移の退縮をもたらす。
【0232】
(実施例9)
食道扁平上皮癌
患者は、患者が嚥下障害および断続的な剣状突起下の不快感を示すまで通常の健康状態にある、タバコ乱用歴を有する58歳の男性である。ヒスタミン受容体2型(H2)ブロッカーおよびプロトンポンプブロッカーの両方を含む幾度かの対症的介入の失敗の後、患者は、正式な胃腸病学の診察を受け、上部内視鏡検査を受け、その時に、患者は、部分的に閉塞している3.2cmの外方増殖性の食道中央部の腫瘤について知らされる。病理学の再検討は、中分化型扁平上皮癌を明らかにする。PD-L1組合せ陽性スコア(CPS):20%。ステージ分類PET/CTスキャンおよび超音波内視鏡検査は、T4aN0疾患と一致し、腫瘍が切除に適していることを確認する。患者は、同時的な低用量の毎週のネオアジュバントのカルボプラチナム/パクリタキセル(チューブリン阻害剤、Taxol(登録商標))および放射線療法、続いて最終的な外科的切除を成功裏に終了する。外科病理学の再検討は、残った悪性腫瘍のいかなる証拠も明らかにしなかった。9か月後、患者は、食欲不振および体重減少を示す。CTスキャンは、肝転移および肺転移の両方の存在を実証した。CTガイドコア針生検は、転移性扁平上皮癌の存在を確認する。PD-L1組合せ陽性スコア(CPS):16%。無増悪生存期間(PFS)が、一次化学療法(この場合では、ネオアジュバント)後に>6か月であるので、患者は、良好な一般状態を有し(ECOG<1)、特に、患者が、状況を安定化するためだけに早期の有意義な応答を必要とする急速な進行性疾患または高度の症候性疾患のいずれかを示す場合、その結果、二次治療が開始される。患者は、6サイクルのFOLFIRIを受け、分裂停止期の部分寛解(PR)を達成し、観察プログラムに入る。4か月後、ルーティンの監視CTスキャンは、転移性疾患の進行を示す。患者は、ECOG 1の一般状態を維持し、追加治療の続行を希望する。患者は、単剤のペムブロリズマブを開始するが、応答しない。その後、治療を、修飾TFF2ポリペプチドで開始し、患者は、部分的な目的の応答を達成する。併用処置を、修飾TFF2ポリペプチドおよびペムブロリズマブで開始し、これは、完全奏効ならびに腫瘍および転移の退縮をもたらす。
【0233】
(実施例10)
胃/食道腺癌
患者は、患者が18か月前に嚥下障害および断続的な剣状突起下の不快感を示すまで通常の健康状態にある、47歳の女性である。H2およびプロトンポンプブロッカーの両方を含む幾度かの対症的介入の失敗の後、患者は、正式な胃腸病学の診察を受け、上部内視鏡検査を受け、その時に、患者は、(胃の噴門/食道下部の)2.2cmの外方増殖性の腫瘤について知らされる。病理学の再検討は、分化の乏しい腺癌を明らかにする。H.pylori感染の証拠はなく、Her2免疫組織化学的(IHC)染色は0であった。PD-L1組合せ陽性スコア(CPS):12%。ステージ分類CTスキャンは、局所リンパ節腫脹および低体積の肝転移の両方の存在を実証する。患者は、切除不可能な低体積のステージIVの分化の乏しい胃/食道腺癌を有するとして分類される。最小限の症状を伴う低体積の疾患およびCPS>10に基づいて、患者は、CPS>10の患者が、少数のすべてのグレードまたはグレード3/4の毒性を伴ってOS(対CDDP/フルオロピリミジン)を改善した(17.4か月対10.8か月)KEYNOTE-062治験の知見に基づいて、一次治療として、単剤のペムブロリズマブを開始する。しかしながら、患者の状態は進行し、患者は、大きく症候性の腫瘍(主に6.0cm、広範囲の肝転移)およびPD-L1 CPS<10を発生する。その後、患者は、5サイクルのFOLFOXを受け、分裂停止期の部分寛解(PR)を達成する。治療は、一般に、十分に許容されるが、患者は、グレード2の末梢神経障害を経験する。患者は、観察プログラムに置かれる。7か月後、ルーティンの監視CTスキャンは、進行性の肝転移および新たな肺転移を明らかにする。患者は、ECOG 1の一般状態を維持し、処置を、ラムシルマブ(ramucirmab)(Cyramza(登録商標)、直接VEGFR2アンタゴニスト)およびパクリタキセルで開始する。サイクル#4後の再現CTスキャンは、安定疾患と一致する。しかしながら、患者の末梢神経障害は悪化し、パクリタキセルを中止した。患者は、単剤のラムシルマブを維持するが、3か月後に進行する。KEYNOTE-059研究(二次またはそれよりも多くの化学療法に失敗)の結果に基づいて、患者は、単剤のペムブロリズマブに変更する。患者は、単剤のペムブロリズマブを開始するが、応答しない。その後、治療を、修飾TFF2ポリペプチドで開始し、患者は、部分的な目的の応答を達成する。併用処置を、修飾TFF2ポリペプチドおよびペムブロリズマブで開始し、これは、完全奏効ならびに腫瘍および転移の退縮をもたらす。
【0234】
(実施例11)
膵臓がん
患者は、患者が非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の不連続使用で制御されるぼんやりとした中背部痛の開始を報告するまで良好な、一般に優れた健康状態の39歳の女性である。患者は、寝汗、および1週間の強膜黄疸、およびだんだん暗くなる尿を示す。臨床評価は、黄疸の存在を確認し、化学は、12.2mg/dlの総ビリルビンを伴う胆汁うっ滞性肝機能障害のパターンを特定する。CTスキャンは、膵臓頭部の8.4cmの腫瘤、ならびに肝門のリンパ節腫脹、散在性の小さな両側の肝腫瘤および総胆管の有意な膨張を明らかにする。肝ステント留置による内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)に成功し、ビリルビンは正常レベルに戻る。CTガイド肝生検は、分化の乏しいKRAS:(+)TP53:(+)腺癌の存在を確認する。CA 19-9は、著しく上昇する(710)。症状は、切除不可能なステージIVの膵臓の腺癌と最も一致する。膵臓がん、乳がんまたは卵巣がんの家族歴、または既知のBRCA2突然変異はない。患者は、次世代配列決定(NGS)を受ける。BRCA2またはPALB2のいずれかについての胚性突然変異の証拠はない。しかしながら、患者は、dMMR/MSI-Hである。患者は、修飾FOLFIRINOXレジメン(FOL+F+イリノテカンまたは「IRIN」+OX)を開始し、一般に十分に許容される6サイクルの治療を成功裏に終了する。サイクル#4およびサイクル#6後の再ステージ分類CTスキャンは、安定な分裂停止期の部分寛解と一致する。患者は、観察プログラムに入り、ルーティンの監視CTスキャンが無症候性の低体積の肝転移の進行の存在を確認する4か月後まで良好なままである。患者は、単剤のニボルマブ(Opdivo(登録商標))を開始するが、応答しない。その後、治療を、修飾TFF2ポリペプチドで開始し、患者は、部分的な目的の応答を達成する。併用処置を、修飾TFF2ポリペプチドおよびニボルマブで開始し、これは、完全奏効および腫瘍の退縮をもたらす。
【0235】
(実施例12)
安定化組換えTFF2(TFF2-CTP)は結腸直腸がんのマウスモデルにおけるPD-1遮断の抗腫瘍活性を増強する
複数の腫瘍型におよぶ免疫チェックポイント遮断に対する著しい応答にもかかわらず、結腸直腸がん(CRC)における臨床的利点は、マイクロサテライト不安定性腫瘍に限定される。PD-L1発現は、CRCにおける陰性の予後マーカーであるが、PD-1遮断に対する良好な応答と相関する。この実施例では、結腸直腸腫瘍発生におけるPD-L1の役割を研究し、PD-1遮断と組み合わせた骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を標的化する有用性を、結腸直腸がん(CRC)のマウスモデルにおいて評価した。マウスPdl1遺伝子を条件付きで発現するノックインマウス(R26-LSL-Pdl1-EGFP)を作製し、骨髄細胞系列において特異的にPD-L1を過剰発現するように、LysM-Creマウスと交配した。AOM/DSS処理マウスは、10週間で腫瘍を形成し、AOMの17週間後に腺癌を発生した。
図3A~3Dを参照されたい。AOM/DSS処理は、未処理マウスと比較して、骨髄性細胞、特に、CD11b+Gr-1+MDSCの有意な発現をもたらした。
図4A~4Cを参照されたい。さらにまた、弱毒化した抗腫瘍免疫を示す腫瘍内CD8+T細胞における有意な減少があった。
図5A~5Cを参照されたい。AOM/DSS処理されたPD-L1を過剰発現するLysM-Cre;R26-PD-Lマウスは、腫瘍の数およびサイズの有意な増加を伴う著しく増強された早期結腸直腸腫瘍発生を示した。
図6A~6Fを参照されたい。分泌された抗炎症ペプチドのTFF2は、CD11b+Gr-1+MDSCの発現を抑制することによって、結腸の腫瘍成長を阻害する。2つのカルボキシル末端ペプチドおよび3つのFlagモチーフと融合されたTFF2(TFF2-CTP-Flag)は、血中での循環時間を延長したが、生物活性は保持した。
図7A~7Eを参照されたい。本発明者らは、R26-PD-L1およびLysM-Cre;R26-PD-LマウスにおいてAOM/DSSで腫瘍を誘導し、融合組換えTFF2-CTP-Flagおよび/または抗PD-1抗体を投与した。TFF2-CTPと組み合わせた抗PD-1抗体は、腫瘍成長の著しい低減を示したが、抗PD-1単剤療法は、成長の抑制に失敗した。興味深いことに、併用処置は、対照動物よりも、PD-L1を過剰発現するマウスにおいて、より高い抗腫瘍活性を示した。
図8を参照されたい。処置レスポンダーは、有意に増加した腫瘍浸潤CD8+T細胞、および付随して減少したCD11b+Gr-1+骨髄性細胞を示した。
図9を参照されたい。これらの早期の知見は、TFF2が、おそらくMDSCの増殖を抑制することによって、CRCのPD-1遮断に対する応答率を増大させることを示唆し、CRCためのI-O処置の組合せにおけるTFF2-CTPの可能性を裏付ける。
【0236】
したがって、抗PD-1単剤療法は、CRCにおいて抗腫瘍免疫を引き起こすことはできなかったが、TFF2-CTPは、抗PD-1療法の有効性を増大させた。TFF2-CTPと組み合わせた抗PD-1は、PD-L1を過剰発現するマウスにおいて、より高い抗腫瘍活性を示した。TFF2-CTP単独、またはPD-1遮断との組合せに対するレスポンダーは、減少したMDSCと一緒に、腫瘍浸潤CD8+T細胞を増加させた。
【0237】
(実施例13)
TFF2-ヒト血清アルブミン(HSA)融合物の発現および精製
遺伝子合成
TFF-2-HSAタンパク質を、コドン最適化し、Codex遺伝子合成を使用して合成した。合成されたTFF-2 HSAタンパク質は、TFF2-HSA[WT];TFF2-HSA[DI/I];TFF2-HSA[DII/I];TFF2-HSA[DII/II];TFF2-HSA[LBDI/I];TFF2-HSA[LBDII/I]およびTFF2-HSA[LBDII/II]であった。オリゴヌクレオチドをCodexによって合成し、遺伝子をSGI/Codex Assemblerでアセンブルした。合成された遺伝子を、SGIを使用して、発現ベクターpAB2(XbaIおよびBamHIで消化される)にサブクローニングした。重複する30bpの配列を、pAB2への目的の遺伝子のギブソンアセンブルのために使用した。目的の遺伝子を有するベクターを、NEB(登録商標)5-アルファCompetent E.coli[(高効率);NEB;C2987H]に形質転換した。3つのコロニーを、集め、mini-prepを介したDNA単離のためにスケールアップした。次いで、3つのコロニーを、配列決定のために送った。配列確認の際に、陽性クローンをスケールアップし、プラスミドDNAを単離した。
【0238】
トランスフェクション
トランスフェクションの前の日に、HEK293細胞を、フラスコに播種した。トランスフェクションの日に、細胞カウントおよび細胞生存率を測定し、培養物が、>96%の生存率で1.8×106~2.2×106個細胞/mLに達したら、トランスフェクションを進めた。次いで、DNAを、FectoPro(Polyplus)トランスフェクション試薬に再懸濁させ、無血清培地に希釈し、室温でインキュベートした。次いで、トランスフェクション複合体を、フラスコを回旋させながら、穏やかにHEK293細胞に添加し、その後、37℃のインキュベーターに戻した。次いで、細胞培養物に、トランスフェクションの4~5時間後に、新鮮な培地を供給した。トランスフェクションの6日後、細胞上清を、回収し、遠心分離によって清澄化した。
【0239】
タンパク質精製
HSAタグ化ヒトTFF2タンパク質を、AlbuPure(登録商標)(製品コード3151、Prometic Bioseparations(登録商標),Ltd)選択的アフィニティークロマトグラフィー吸着カラムで精製した。カラムを、最初に5カラム体積(CV)の0.5NのNaOH、続いて5CVのオートクレーブされたE純水で洗浄した。次いで、カラムを、10CVの50mMのクエン酸ナトリウム、pH5.5(緩衝液A)で平衡化した。次いで、タンパク質画分を、カラムにのせ、その後、10CVの緩衝液Aで洗浄した。次いで、精製タンパク質を、5CVの50mMの酢酸アンモニウム、10mMのオクタン酸ナトリウム、pH7.0でカラムから溶出させた。
【0240】
SDS-PAGE
試料を、NuPAGEゲル4~12%のBis-Tris 1.0mm、12ウェル(Invitrogen(登録商標)、カタログ番号NP0302BOX)上で流した。試料(2μg)を、NuPAGE LDS試料緩衝液(4×)中でロードし、MES緩衝液(Invitrogen(登録商標)、カタログ番号002-02)中、200Vで30分間、流した。正確なPlus MW標準を、分子量標準として使用した(Bio-Rad(登録商標)、カタログ番号161-0374)。ゲルを、Simply Blue Stain(Invitrogen(登録商標)、カタログ番号LC6060)で染色した。澄明化された回収物、フロースルー、洗浄物およびプロテインA溶出試料をゲルに流した。
図10を参照されたい。精製されたTFF2-HASバリアントのそれぞれについて得られた収率を
図11に示す。
【0241】
本明細書において引用されるすべての特許、特許出願および特許公開、ならびに非特許刊行物は、それらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0242】
本開示の多くの実施形態を記載した。それにもかかわらず、さまざまな改変を、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、行うことができることが理解される。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【配列表】
【国際調査報告】