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特表2022-545929電気的に隔離されたトンネル磁気抵抗センシング素子を利用する水素ガス・センサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電気的に隔離されたトンネル磁気抵抗センシング素子を利用する水素ガス・センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/74 20060101AFI20221025BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20221025BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G01N27/74
G01R33/09
G01R33/02 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513288
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 CN2020109816
(87)【国際公開番号】W WO2021036867
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】201910817744.5
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building D & E, No.2 Guangdong Road,Zhangjiagang Free Trade Zone,Zhangjiagang,Jiangsu,215634 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ジェイムズ ゲーザ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、チーミン
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AC09
2G017AD55
2G017AD65
2G017BA09
2G053AA04
2G053AB11
2G053BA06
2G053BC14
2G053BC20
2G053CA06
2G053CB05
2G053CB09
2G053DA01
2G053DB01
(57)【要約】
【課題】電気的に隔離されたトンネル磁気抵抗センシング素子を利用する水素ガス・センサを提供すること。
【解決手段】水素ガス・センサは、X-Y平面内の基板(9)と、基板(9)上に位置するトンネル磁気抵抗センサ(2)と、トンネル磁気抵抗センサ(2)上に位置する水素感知層(1)とを備える。水素感知層(1)およびトンネル磁気抵抗センサ(2)は、互いから電気的に隔離されている。水素感知層(1)は、パラジウム層(1-1)および強磁性層(1-3)から形成された多層薄膜構造を含み、パラジウム層(1-1)は、X-Z平面内の強磁性層(1-3)ごとの磁気異方性場の配向角の変化をX軸方向に引き起こす空気中の水素を吸収するために使用される。トンネル磁気抵抗センサ(2)は、水素感知層(1)の磁場信号を検出するのに使用され、磁気信号は、水素ガス濃度を決定する。この水素ガス・センサは、測定の安全性を確実にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に隔離されたトンネル磁気抵抗センシング素子を利用する水素ガス・センサであって、
X-Y平面内の基板と、該基板上に位置するトンネル磁気抵抗センサと、該トンネル磁気抵抗センサ上に位置する水素感知層とを備え、該水素感知層および該トンネル磁気抵抗センサは、互いから電気的に隔離され、該水素感知層は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造を備え、ただし、nは1以上の整数であり、
該パラジウム層は、該X-Z平面内のX軸方向に沿って該強磁性層ごとに磁気異方性場の配向角の変化を引き起こす空気中の水素を吸収するのに使用され、該トンネル磁気抵抗センサは、該水素感知層の磁場信号を検出するのに使用され、該磁気信号は、水素ガス濃度を決定する、水素ガス・センサ。
【請求項2】
非水素感知層をさらに備え、該非水素感知層は、前記トンネル磁気抵抗センサ上に位置し、前記水素感知層、該非水素感知層、および前記トンネル磁気抵抗センサは、互いから電気的に隔離されており、
該非水素感知層は、[非パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造であり、または該非水素感知層は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造と、該多層薄膜構造を覆うパッシベーション層とを備える、請求項1に記載の水素ガス・センサ。
【請求項3】
前記トンネル磁気抵抗センサは基準ブリッジ・センサであり、前記トンネル磁気抵抗センサは感知ブリッジ・アームおよび基準ブリッジ・アームを備え、該感知ブリッジ・アームは磁気抵抗感知ユニット・ストリングを備え、該基準ブリッジ・アームは基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングを備え、該磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび該基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの磁場感知方向は共に前記X軸方向であり、
前記水素感知層および前記非水素感知層は共にストリップ状であり、該ストリップの長軸はY軸方向であり、該ストリップの短軸は前記X軸方向であり、
前記X-Y平面内で、該磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、前記水素感知層の該ストリップ内のY軸中心線上に位置し、および/または該磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、前記水素感知層の該ストリップ内で該Y軸中心線の両側で同じ位置に位置し、前記X-Y平面内で、該基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、前記非水素感知層の該ストリップ内のY軸中心線上に位置し、および/または該基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、前記非水素感知層の該ストリップ内で該Y軸中心線の両側で同じ位置に位置し、該磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび該基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、同じように配置され、
前記水素感知層は、該感知ブリッジ・アームに磁気的に結合され、該基準ブリッジ・アームから磁気的に隔離され、前記非水素感知層は、該感知ブリッジ・アームから磁気的に隔離され、該基準ブリッジ・アームに磁気的に結合されている、請求項2に記載の水素ガス・センサ。
【請求項4】
前記水素感知層は、同じ層内で電気的に隔離されるように配置されているプッシュ水素感知層およびプル水素感知層を備え、該プッシュ水素感知層は、外部磁場がないときに正のX軸方向に磁気モーメントを有し、該プル水素感知層は、外部磁場がないときに負のX軸方向に磁気モーメントを有し、
該プッシュ水素感知層の該正のX軸方向磁気モーメントおよび該プル水素感知層の該負のX軸方向磁気モーメントを書き込む方法は、レーザ熱磁気書き込み、書き込みヘッド書き込み、書き込みコイル書き込み、および永久磁石ブロック書き込みのいずれかの書き込み方法を含み、
書き込みコイルは、前記基板と前記水素感知層との間に位置し、該書き込みコイルは、該プッシュ水素感知層のY軸中心線に沿ったおよび正のY軸電流方向を有する第1の書き込みワイヤ、ならびに該プル水素感知層のY軸中心線に沿ったおよび負のY軸電流方向を有する第2の書き込みワイヤを備え、
永久磁石ブロックは、ストリップ状であり、該永久磁石ブロックは、前記水素感知層とは反対の一方の側で前記基板の表面上に位置し、該永久磁石ブロックは、Z軸方向に磁化方向を有し、該プッシュ水素感知層および該プル水素感知層は、該永久磁石ブロックのZ軸中心線の両側の領域内にそれぞれ位置し、該両側の領域は、前記X軸方向に対称的で反対の磁場成分を有する、請求項1に記載の水素ガス・センサ。
【請求項5】
前記水素感知層上に位置する磁気シールド層をさらに備え、該磁気シールド層は、少なくとも1つの貫通穴を備え、前記プッシュ水素感知層のパラジウム層および前記プル水素感知層のパラジウム層は、該少なくとも1つの貫通穴を介して前記空気と直接接触している、請求項4に記載の水素ガス・センサ。
【請求項6】
前記トンネル磁気抵抗センサはプッシュ・プル・ブリッジ・センサであり、前記トンネル磁気抵抗センサはプッシュ・アームおよびプル・アームを備え、該プッシュ・アームはプッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングを備え、該プル・アームはプル磁気抵抗感知ユニット・ストリングを備え、該プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび該プル磁気抵抗感知ユニット・ストリングの磁場感知方向は共に前記X軸方向であり、
前記プッシュ水素感知層および前記プル水素感知層は共にストリップ状であり、該ストリップの長軸はY軸方向であり、該ストリップの短軸は前記X軸方向であり、
前記X-Y平面内で、該プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、前記プッシュ水素感知層の該ストリップ内で前記Y軸中心線上に位置し、および/または該プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、前記プッシュ水素感知層の該ストリップ内で前記Y軸中心線の両側で同じ位置に位置し、前記X-Y平面内で、該プル磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、前記プル水素感知層の該ストリップ内で前記Y軸中心線上に位置し、および/または該プル磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、前記プル水素感知層の該ストリップ内で前記Y軸中心線の両側で同じ位置に位置し、該プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび該プル磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、同じように配置され、
前記プッシュ水素感知層は、該プッシュ・アームに磁気的に結合され、該プル・アームから磁気的に隔離され、前記プル水素感知層は、該プル・アームに磁気的に結合され、該プッシュ・アームから磁気的に隔離されている、請求項4に記載の水素ガス・センサ。
【請求項7】
バイアス・コイルをさらに備え、該バイアス・コイルが位置するフィルム層は、前記基板と前記水素感知層との間に位置し、該バイアス・コイルは、前記トンネル磁気抵抗センサの真上または真下に位置し、該バイアス・コイルは、渦巻きコイルであり、
前記X軸方向またはY軸方向のバイアス磁場について、該バイアス・コイルが位置する平面は、第1のバイアス領域および第2のバイアス領域を備え、該第1のバイアス領域および該第2のバイアス領域は、それぞれ、平行に配置されると共に同じ電流方向を有するN個の直線セグメントを備え、ただし、nは1以上の整数であり、該第1のバイアス領域および該第2のバイアス領域内の該直線セグメントの電流は、同じ方向または反対方向にあり、前記水素感知層は、該第1のバイアス領域内に等しく分布し、前記非水素感知層は、該第2のバイアス領域内に等しく分布し、
Z軸方向のバイアス磁場について、該バイアス・コイルが位置する平面は、中央バイアス領域を備え、該中央バイアス領域は、対称的に配置されると共に対称的で反対の電流方向を有する同じ個数の2M個の直線セグメントを備え、ただし、Mは1以上の整数であり、前記水素感知層および前記非水素感知層は、該中央バイアス領域内に配置されると共に対称的に配置され、前記水素感知層に対応して配置された該直線セグメントの該電流方向は、対称的で反対であり、前記非水素感知層に対応して配置された該直線セグメントの該電流方向は、対称的で反対であり、該電流方向は、Y軸中心線に全て直交する、請求項2に記載の水素ガス・センサ。
【請求項8】
永久磁石バイアス層をさらに備え、
前記X軸方向またはY軸方向のバイアス磁場について、該永久磁石バイアス層は、平行に配置された少なくとも2つの永久磁石棒を備え、該永久磁石棒は、前記水素感知層の両側におよび前記非水素感知層の両側に位置し、前記X軸方向のバイアス磁場または前記Y軸方向のバイアス磁場は、隣接した永久磁石棒間で生成され、
Z軸方向のバイアス磁場について、該永久磁石バイアス層は、前記基板の下方に位置する永久磁石棒を備え、前記水素感知層および前記非水素感知層は、それぞれ、前記Z軸方向に同じ磁場成分を有する該永久磁石棒の2つの領域内に位置し、前記水素感知層および前記非水素感知層は、前記Y軸方向に対称的で反対の磁場成分を有する該永久磁石棒の2つの領域内に位置する、請求項2に記載の水素ガス・センサ。
【請求項9】
バイアス・コイルをさらに備え、該バイアス・コイルが位置するフィルム層は、前記基板と前記水素感知層との間に位置し、該バイアス・コイルは、前記トンネル磁気抵抗センサの真上または真下に位置し、該バイアス・コイルは、渦巻きコイルであり、
Y軸方向のバイアス磁場について、該バイアス・コイルが位置する平面は、第3のバイアス領域および第4のバイアス領域を備え、該第3のバイアス領域および該第4のバイアス領域は、それぞれ、平行に配置されると共に同じ電流方向を有するP個の直線セグメントを備え、ただし、Pは1以上の整数であり、該第3のバイアス領域および該第4のバイアス領域内の該直線セグメントの電流は、同じ方向または反対方向にあり、前記プッシュ水素感知層は、該第3のバイアス領域内に等しく分布し、前記プル水素感知層は、該第4のバイアス領域内に等しく分布し、
前記Z軸方向のバイアス磁場について、該バイアス・コイルが位置する平面は、中央バイアス領域を備え、該中央バイアス領域は、対称的に配置されると共に対称的で反対の電流方向を有する同じ個数の2Q個の直線セグメントを備え、ただし、Qは1以上の整数であり、前記プッシュ水素感知層および前記プル水素感知層は、該中央バイアス領域内に配置されると共に対称的に配置され、前記プッシュ水素感知層に対応して配置された該直線セグメントの該電流方向は、対称的で反対であり、前記プル水素感知層に対応して配置された該直線セグメントの該電流方向は、対称的で反対であり、該電流方向は、前記Y軸中心線に全て直交する、請求項4に記載の水素ガス・センサ。
【請求項10】
永久磁石バイアス層をさらに備え、
Y軸方向のバイアス磁場について、該永久磁石バイアス層は、平行に配置された少なくとも2つの永久磁石棒を備え、該永久磁石棒は、前記プッシュ水素感知層の両側におよび前記プル水素感知層の両側に位置し、前記Y軸方向の前記バイアス磁場は、隣接した永久磁石棒間で生成され、
前記Z軸方向のバイアス磁場について、該永久磁石バイアス層は、前記基板の下方に位置する永久磁石棒を備え、前記プッシュ水素感知層および前記プル水素感知層は、それぞれ、前記Z軸方向に同じ磁場成分を有する該永久磁石棒の2つの領域内に位置し、前記プッシュ水素感知層および前記プル水素感知層は、前記Y軸方向に前記対称的で反対の磁場成分を有する該永久磁石棒の2つの領域内に位置する、請求項4に記載の水素ガス・センサ。
【請求項11】
マイクロストリップをさらに備え、該マイクロストリップは、シングル・ストリップ構造またはダブル・ストリップ構造であり、該マイクロストリップは、前記基板と前記トンネル磁気抵抗センサとの間に位置し、該マイクロストリップの両端は、バイアス磁場がZ軸方向またはY軸方向にあるように、マイクロ波ポートに接続され、マイクロ波励起電源に接続される、請求項2または4に記載の水素ガス・センサ。
【請求項12】
前記トンネル磁気抵抗センサが基準ブリッジ・センサであるとき、前記マイクロストリップは、Y軸中心線の前記方向に平行または直交し、
前記トンネル磁気抵抗センサがプッシュ・プル・ブリッジ・センサであるとき、前記マイクロストリップは、前記Y軸中心線の前記方向に直交する、請求項11に記載の水素ガス・センサ。
【請求項13】
前記水素感知層は、シード層および隔離層をさらに備え、該隔離層は、[パラジウム層/強磁性層]nの該シード層と前記多層薄膜構造との間に位置し、前記強磁性層の磁化強度の配向角は、10°から80°の範囲内で変化する、請求項1に記載の水素ガス・センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス・センサの技術分野に関し、詳細には、電気的に隔離されたトンネル磁気抵抗センシング素子を利用する水素ガス・センサに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料エネルギーに取って代わる再生可能な有害放出物のない新しいエネルギー源として、水素ガスが、近年、世界中でますますより多くの注目を集めており、急速に発展してきた。現在、米国、欧州連合、および日本などの世界の主要経済大国は、将来の自動車および家財のための新しいエネルギーおよび新しい燃料として水素ガスを探求するための努力を惜しんでいない。
【0003】
水素ガスは、人間の感覚によって感知することができないが、水素ガスは、非常に燃えやすくて爆発を起こしやすい。空気中の水素ガスの可燃閾値は、約4%である。水素ガスをエネルギー源として使用するデバイスの安全性を確実にするために、信頼できるおよび非常に感度のよい水素ガス・センサが、水素ガス濃度を検出するために必要とされている。
【0004】
多くのタイプの従来の水素ガス・センサがある。例えば、表面プラズモン共鳴を利用する光学センサは、分光計によって金属ナノロッド・アレイの表面反射光スペクトルの表面プラズモン共鳴ピークのピーク位置および強度変化を監視することができ、したがって、環境中の水素ガスのリアルタイム感知を実現する。例えば、抵抗薄膜水素ガス・センサは、水素ガスを吸収する金属パラジウムの特性を使用し、水素ガス濃度を検出する目的を、金属パラジウムの抵抗値の変化を検出することによって達成することができる。
【0005】
しかしながら、既存の水素ガス・センサが実際に働いているとき、感知ユニットは全て、電流を通させる必要がある。空気中の水素ガス濃度が爆発限界に到達する場合、感知ユニット内の回路は、水素ガスを点火し、爆発を引き起こすことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術の不足を解決するために、本開示の一実施形態は、電気的に隔離されたトンネル磁気抵抗センシング素子を利用する水素ガス・センサであって、
X-Y平面内の基板と、基板上に位置するトンネル磁気抵抗センサと、トンネル磁気抵抗センサ上に位置する水素感知層とを含み、水素感知層およびトンネル磁気抵抗センサは、互いから電気的に隔離され、水素感知層は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造を含み、ただし、nは1以上の整数であり、
パラジウム層は、X-Z平面内のX軸方向に沿って強磁性層ごとに磁気異方性場の配向角の変化を引き起こす空気中の水素を吸収するのに使用され、トンネル磁気抵抗センサは、水素感知層の磁場信号を検出するのに使用され、磁気信号は、水素ガス濃度を決定する、水素ガス・センサを提案する。
【0007】
開示された実施形態では、水素感知層とトンネル磁気抵抗センサとの間で電気的隔離が採用される。水素感知層は、水素ガスを吸収し、配向角の対応する変化を生成する。トンネル磁気抵抗センサは、水素ガス濃度を検出するために磁場信号を取得する。本開示の実施形態では、電流または電圧が水素感知層を通過することはなく、したがって、空気中の水素ガス濃度が爆発限界に到達する場合でも、水素感知層は、爆発を引き起こさない。水素感知層およびトンネル磁気抵抗センサは、電気的に隔離され、トンネル磁気抵抗センサの電流または電圧は、水素感知層を介して空気中の水素ガスと反応せず、トンネル磁気抵抗センサは、水素ガスを点火せず爆発を引き起こさない。先行技術と比較して、試験セキュリティが保証される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態による水素ガス・センサの概略図である。
図2】本開示の一実施形態による水素感知層の磁気異方性場の配向角の概略図である。
図3】本開示の一実施形態による非水素感知層と基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングとの間の位置関係の概略図である。
図4】本開示の一実施形態による水素感知層と磁気抵抗感知ユニット・ストリングとの間の位置関係の概略図である。
図5】本開示の一実施形態による水素ガス・センサの概略図である。
図6】本開示の一実施形態による水素感知層および磁気抵抗感知ユニット・ストリングの平面図である。
図7】本開示の一実施形態によるトンネル磁気抵抗センサの基準ハーフ・ブリッジ構造図である。
図8】本開示の一実施形態によるトンネル磁気抵抗センサの基準フル・ブリッジ構造図である。
図9】本開示の一実施形態による水素感知層、非水素感知層、およびそれらのトンネル磁気抵抗センサの第2の構造概略図である。
図10】本開示の一実施形態による水素ガス・センサの概略図である。
図11】本開示の一実施形態による水素ガス・センサの概略図である。
図12】本開示の一実施形態による水素感知層の概略図である。
図13】本開示の一実施形態によるトンネル磁気抵抗センサの位置における静磁場と水素感知層の磁気モーメントのX軸の配向角との間の関係の線形変換図である。
図14】本開示の一実施形態による渦巻きコイルおよびトンネル磁気抵抗センサの分布の概略図である。
図15】本開示の一実施形態による渦巻きコイルおよび磁気抵抗感知ユニット・ストリングの分布の概略図である。
図16】本開示の一実施形態による渦巻きコイルおよび基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの分布の概略図である。
図17】本開示の一実施形態によるトンネル磁気抵抗センサにおけるY軸方向にバイアスされた渦巻きコイルのバイアス磁場分布図である。
図18】本開示の一実施形態による渦巻きコイルおよびトンネル磁気抵抗センサの分布の概略図である。
図19】本開示の一実施形態による渦巻きコイルおよびトンネル磁気抵抗センサの分布の概略図である。
図20】本開示の一実施形態による渦巻きコイルおよびトンネル磁気抵抗センサの分布の概略図である。
図21】本開示の一実施形態による渦巻きコイルおよび基準ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサの概略図である。
図22】本開示の一実施形態による静磁場基準磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の概略図である。
図23a】本開示の一実施形態によるバイアス・コイル基準磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の図である。
図23b】本開示の一実施形態によるバイアス・コイル基準磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の図である。
図24a】本開示の一実施形態によるX軸方向のバイアス磁場の磁気モーメント偏向図である。
図24b】本開示の一実施形態によるX軸方向のバイアス磁場の永久磁石棒の分布の概略図である。
図25a】本開示の一実施形態によるY軸方向のバイアス磁場の磁気モーメント偏向図である。
図25b】本開示の一実施形態によるY軸方向のバイアス磁場の永久磁石棒の分布の概略図である。
図26a】本開示の一実施形態によるZ軸方向の磁場バイアスの磁気モーメント偏向図である。
図26b】本開示の一実施形態によるZ軸方向のバイアス磁場の永久磁石棒の分布の概略図である。
図27a】本開示の一実施形態による強磁性共鳴マイクロストリップを含む基準磁気抵抗感知ユニット・ブリッジ構造の正面図である。
図27b】本開示の一実施形態によるY軸方向のマイクロ波励起磁場の平面図である。
図27c】本開示の一実施形態によるX軸方向のマイクロ波励起磁場の平面図である。
図28】本開示の一実施形態による強磁性共鳴法の基準磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の図である。
図29】本開示の一実施形態によるバイアス磁場に対する透磁率の変化を示すグラフである。
図30】本開示の一実施形態による水素感知層およびプッシュ・プル・トンネル磁気抵抗センサの構造図である。
図31a】本開示の一実施形態によるプッシュ・プル・トンネル磁気抵抗センサのハーフ・ブリッジ構造図である。
図31b】本開示の一実施形態によるプッシュ・プル・トンネル磁気抵抗センサのフル・ブリッジ構造図である。
図32a】本開示の一実施形態によるプッシュ水素感知層の磁気モーメントの書き込みの概略図である。
図32b】本開示の一実施形態によるプル水素感知層の磁気モーメントの書き込みの概略図である。
図33a】本開示の一実施形態によるプッシュ水素感知層の磁気モーメントの書き込みの概略図である。
図33b】本開示の一実施形態によるプル水素感知層の磁気モーメントの書き込みの概略図である。
図34a】本開示の一実施形態によるプッシュ水素感知層の磁気モーメントの書き込みの概略図である。
図34b】本開示の一実施形態によるプル水素感知層の磁気モーメントの書き込みの概略図である。
図35】本開示の一実施形態によるプッシュ水素感知層の磁気モーメントおよびプル水素感知層の磁気モーメントの書き込みの概略図である。
図36】本開示の一実施形態による磁気シールド層を有する水素感知層、およびトンネル磁気抵抗センサの構造図である。
図37】本開示の一実施形態によるY軸方向にバイアスされた渦巻きコイルおよびプッシュ・プル・トンネル磁気抵抗センサの分布図である。
図38】本開示の一実施形態によるY軸方向にバイアスされた渦巻きコイルおよびプッシュ・プル・トンネル磁気抵抗センサの分布図である。
図39】本開示の一実施形態によるZ軸方向にバイアスされた渦巻きコイルおよびプッシュ・プル・トンネル磁気抵抗センサの分布図である。
図40a】本開示の一実施形態によるY軸方向のバイアス磁場の磁気モーメント偏向図である。
図40b】本開示の一実施形態によるY軸方向に磁場中でバイアスされた永久磁石棒の分布図である。
図41】本開示の一実施形態によるZ軸方向の永久磁石棒の磁場分布図である。
図42】本開示の一実施形態による静磁場プッシュ・プル磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の概略図である。
図43a】本開示の一実施形態による励磁コイル・プッシュ・プル磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の図である。
図43b】本開示の一実施形態による励磁コイル・プッシュ・プル磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の図である。
図44a】本開示の一実施形態による強磁性共鳴マイクロストリップを含むプッシュ・プル磁気抵抗感知ユニット・ブリッジ構造の正面図である。
図44b】本開示の一実施形態によるY軸方向のマイクロ波励起磁場の平面図である。
図45a】本開示の一実施形態による強磁性共鳴法のプッシュ・プル磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の図である。
図45b】本開示の一実施形態による強磁性共鳴法のプッシュ・プル磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの水素ガス測定の図である。
図46】本開示の一実施形態によるトンネル磁気抵抗センサの出力と水素ガスとの間の線形関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の目的、技術的な解決手段、および利点をより明確にするために、本開示の技術的な解決手段が、本開示の実施形態において、添付図面を参照して、実施のやり方を通じて以下により明確におよび完全に説明される。説明される実施形態は、本開示のいくつかの実施形態であるが、本開示の実施形態の全てではないことは明らかである。本開示における実施形態に基づいて、創作的な努力なしに当業者によって得られる全ての他の実施形態は、本開示の保護範囲内に入る。
【0010】
図1を参照すると、図1は、本開示の一実施形態による電気的に隔離されたトンネル磁気抵抗センシング素子を利用する水素ガス・センサの概略図である。本実施形態で提供される水素ガス・センサは、X-Y平面内の基板9と、基板9上に位置するトンネル磁気抵抗センサ2と、トンネル磁気抵抗センサ2上に位置する水素感知層1とを含む。水素感知層1およびトンネル磁気抵抗センサ2は、互いから電気的に隔離されている。水素感知層1は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造を含み、ただし、nは1以上の整数である。パラジウム層は、X-Z平面内のX軸方向に沿って強磁性層ごとに磁気異方性場の配向角の変化を引き起こす空気中の水素を吸収するのに使用される。トンネル磁気抵抗センサ2は、水素感知層1の磁場信号を検出するのに使用され、磁気信号は、水素ガス濃度を決定する。
【0011】
この実施形態では、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸によって確立されたXYZ空間座標系によれば、X軸およびY軸によって形成される平面に平行な平面は、X-Y平面であり、X軸およびZ軸によって形成される平面に平行な平面は、X-Z平面であり、Z軸およびY軸によって形成される平面に平行な平面は、Y-Z平面である。
【0012】
この実施形態では、水素ガス・センサは、基板9と、トンネル磁気抵抗センサ2と、水素感知層1とを含む。水素感知層1およびトンネル磁気抵抗センサ2は、互いから電気的に隔離されている。電気隔離層18は水素感知層1とトンネル磁気抵抗センサ2との間に配置されることが理解できる。電気隔離層18は、不要な爆発を防ぐために水素ガス環境と電力供給環境の隔離を実現するように、水素感知層1とトンネル磁気抵抗センサ2との間に位置する。
【0013】
この実施形態では、水素感知層1は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造を含み、ただし、nは1以上の正の整数である。例えば、n=2の場合、水素感知層1は、第1および第3の層が共に強磁性層であり、第2および第4の層が共にパラジウム層である4層薄膜構造を含む。パラジウム層は、水素ガスを吸収するのに使用され、したがって、水素感知層1の多層薄膜構造におけるパラジウム層の1つは、空気と直接接触し、水素ガスを吸収するためのキャップ層であり。残りのパラジウム層は、中間層であり、空気と直接接触しない。キャップ層としてのパラジウム層は1-1として示され、中間層としてのパラジウム層は1-2として示され、強磁性層は1-3として示され、水素ガスを吸収するそれに続くパラジウム層は、1-1および1-2を含む。強磁性層は磁気異方性場を有し、パラジウム層による水素ガスの吸収は、X-Z平面内のX軸方向に沿って強磁性層内の磁気異方性場の配向角の変化を引き起こす。
【0014】
この実施形態では、トンネル磁気抵抗センサ2は、水素感知層1の磁場の変化を感知し、最終的に、水素感知層1の磁場の変化に従って水素ガス濃度の測定を実現することができる。具体的には、図2に示されるように、水素ガスの作用の下で、強磁性層の磁気モーメントMは、X-Z平面内で偏向され、X-Z平面内のX軸方向に沿った配向角は、Ωとして示される。強磁性層は、ナノスケールで厚さを有し、単一の磁区構造とみなすことができ、したがって、水素感知層1は、周囲の空間中に静磁場分布を生成する磁気モーメントMを有する磁石とみなすことができる。水素感知層1の底部は、静磁場の試験を実現するために水素感知層1の磁場信号を感知することができるトンネル磁気抵抗センサ2を備える。次いで、磁気モーメントMの配向角は、磁場信号に従って推定することができ、水素ガス濃度は、磁気モーメントMの配向角と水素ガス濃度との間の対応する関係に従って最終的に測定することができる。
【0015】
この実施形態では、電気的隔離は、水素感知層とトンネル磁気抵抗センサとの間で採用される。水素感知層は、水素ガスを吸収し、配向角の対応する変化を生成し、トンネル磁気抵抗センサは、水素ガス濃度を検出するために磁場信号を取得する。この実施形態では、電流または電圧は、水素感知層を通過せず、したがって、空気中の水素ガス濃度が爆発限界に到達した場合でも、空気に接触している水素感知層は、爆発を引き起こさない。水素感知層とトンネル磁気抵抗センサとの間の電気的隔離により、トンネル磁気抵抗センサにおける電流または電圧は、水素感知層を介して空気中の水素ガスと反応せず、したがって、トンネル磁気抵抗センサは、やはり、水素ガスを点火せず爆発を引き起こしそうにない。先行技術と比較して、試験セキュリティが保証される。
【0016】
例えば、上記の技術的な解決手段に基づいて、任意選択の水素ガス・センサは、非水素感知層10をさらに備える。非水素感知層10は、トンネル磁気抵抗センサ2上に位置する。水素感知層1、非水素感知層10、およびトンネル磁気抵抗センサ2は、互いから電気的に隔離されている。非水素感知層10は、[非パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造であり、または非水素感知層10は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造と、多層薄膜構造を覆うパッシベーション層とを含む。
【0017】
この実施形態では、電気隔離層18は、不要な爆発を避けるためにトンネル磁気抵抗センサの水素ガス環境と電力供給環境との間の隔離を実現するように水素感知層1、非水素感知層10、およびトンネル磁気抵抗センサ2の間に位置する。水素ガス・センサは、実際の動作中に環境によって、例えば、電力線によって生成されるバックグラウンド磁場により生成されるバックグラウンド磁場中にあり、バックグラウンド磁場Hbは、水素感知層1の磁気モーメントMの配向角に対するさらなる偏向効果も有し、したがって、それは、水素感知層1に対するバックグラウンド磁場Hbの影響をなくす必要がある。
【0018】
図1に示されるように、任意選択の水素感知層1および非水素感知層10は共に、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造を含み、非水素感知層10は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造を覆うパッシベーション層をさらに含む。この実施形態では、非水素感知層10は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造を含み、したがって、非水素感知層10は、バックグラウンド磁場によって引き起こされる磁気モーメント配向角の変化を与える。水素ガスが吸収されないときに、水素感知層1がバックグラウンド磁場によって引き起こされる磁気モーメント配向角の変化をやはり反映することを理解できる。
【0019】
バックグラウンド磁場をなくすために、非水素感知層10は、[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造を覆うパッシベーション層をさらに含む。パッシベーション層は、非水素感知層10中のパラジウム層が空気中の水素ガスと接触することから隔離し、したがって、非水素感知層10が水素ガスを吸収するのを防ぐ。したがって、非水素感知層10の強磁性層によって表される磁気モーメントMの配向角は、水素ガスに関連付けられず、バックグラウンド磁場Hbにのみ関連付けられる。水素感知層1のパラジウム層は、水素ガスと接触しており、水素感知層1は、バックグラウンド磁場および水素ガスによって引き起こされる磁気モーメント配向角の変化を与える。このようにして、トンネル磁気抵抗センサ2は、水素ガスを吸収することによって引き起こされる水素感知層1の磁場の変化、およびバックグラウンド磁場によって引き起こされる非水素感知層10の磁場の変化を得るために、水素感知層1の磁場信号および非水素感知層10の磁場信号を検出するのに使用される。水素ガス濃度情報は、2つの磁場の変化に従って決定され、水素ガス濃度に対するバックグラウンド磁場の影響は取り除かれ、それによって検出精度を改善する。
【0020】
図3は、非水素感知層の磁場の概略図である。非水素感知層10は、パッシベーション層1-7を含む。パッシベーション層1-7は、水素ガスおよび[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造1’を隔離し、それにより非水素感知層10は、水素ガスと反応しない。この場合には、非水素感知層10の強磁性層は、配向角bを有する磁気異方性場を与え、すなわち、バックグラウンド磁場によって引き起こされる強磁性層の配向角はΩ(b)であり、これは、水素ガスによって影響を受けない。パッシベーション層1-7の任意選択の材料は、フォトレジスト、Al、SiN、SiO、またはSiCであり得る。
【0021】
図4は、水素感知層の磁場の概略図である。水素感知層1のパラジウム層は、強磁性層の磁気モーメントの配向角の変化を引き起こす水素ガスを吸収する。同時に、バックグラウンド磁場は、強磁性層の磁気モーメントの配向角の変化も引き起こし、最終的に、強磁性層の配向角は、Ω(b+H)であり、ただしHは、水素ガス要因によって引き起こされる強磁性層の磁気異方性場の変化である。これに基づいて、トンネル磁気抵抗センサ2は、バックグラウンド磁場の信号および水素ガスによって影響を受ける磁場の信号に従ってバックグラウンド磁場信号をなくすことができ、次いで水素ガス濃度を計算する。水素ガス濃度は、バックグラウンド磁場によって影響を受けず、これにより試験精度を改善し、高感度を有する。
【0022】
図5に示されるように、任意選択の非水素感知層10は、[非パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造である。この実施形態では、任意選択の非パラジウム層は、銅層、チタン層、またはタンタル層であり、非パラジウム層中の金属のどれも、水素ガスを吸収することができず、したがって、非水素感知層10の磁気モーメントの配向角は、バックグラウンド磁場によって影響されるだけである。非パラジウム層は、空気に接触することができる。水素感知層1が水素ガスを吸収しないとき、それは、バックグラウンド磁場によって引き起こされる磁気モーメントの配向角の変化をやはり反映することが理解できる。この実施形態では、非パラジウム層は、非水素感知層10が水素ガスを吸収するのを防ぐことができ、したがって、トンネル磁気抵抗センサ2は、水素ガスの吸収によって引き起こされる水素感知層1の磁場の変化を得るために、水素感知層1の磁場信号および非水素感知層10の磁場信号を検出するのに使用される。水素ガス濃度情報は、磁場の変化に従って決定される。このようにして、水素ガス濃度に対するバックグラウンド磁場の影響は取り除かれ、それによって検出精度を改善する。
【0023】
図6から図8に示されるように、任意選択のトンネル磁気抵抗センサ2は、基準ブリッジ・センサである。トンネル磁気抵抗センサ2は、感知ブリッジ・アームおよび基準ブリッジ・アームを含む。感知ブリッジ・アームは、磁気抵抗感知ユニット・ストリングを含み、基準ブリッジ・アームは、基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングを含む。磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの磁場感知方向は共に、X軸方向である。水素感知層1および非水素感知層10は共にストリップ状であり、ストリップの長軸はY軸方向であり、ストリップの短軸はX軸方向である。X-Y平面内で、磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、水素感知層のストリップ内のY軸中心線上に位置し、および/または磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、水素感知層のストリップ内のY軸中心線の両側で同じ位置に位置する。X-Y平面内で、基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、非水素感知層のストリップ内のY軸中心線上に位置し、および/または基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、非水素感知層のストリップ内のY軸中心線の両側で同じ位置に位置する。磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、同じように配置される。水素感知層は、感知ブリッジ・アームに磁気的に結合され、基準ブリッジ・アームから磁気的に隔離されている。非水素感知層は、感知ブリッジ・アームから磁気的に隔離され、基準ブリッジ・アームに磁気的に結合されている。
【0024】
図1から図5に示されるように、トンネル磁気抵抗センサ2は、感知ブリッジ・アームおよび基準ブリッジ・アームを含み、感知ブリッジ・アームは磁気抵抗感知ユニット・ストリングを含み、基準ブリッジ・アームは基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングを含む。磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、磁気抵抗感知ユニット2-1、2-2、および2-3を含み、基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、基準磁気抵抗感知ユニット2-1-1、2-2-1、および2-3-1を含む。磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、基板9と水素感知層1との間に位置し、基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、基板9と非水素感知層10との間に位置する。
【0025】
図6に示されるように、水素感知層1および非水素感知層10は共にストリップ状であり、ストリップの長軸はY軸方向であり、ストリップの短軸はX軸方向である。具体的には、水素感知層1および非水素感知層10が位置する平面は、X-Y平面であり、ストリップ状である。X-Y平面のストリップ状の長軸延長方向、すなわち長軸方向は、Y軸方向であり、短軸延長方向、すなわち短軸方向は、X軸方向である。ここで、磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの磁場感知方向は共に、X軸方向である。水素感知層1と磁気抵抗感知ユニット・ストリングとの間の相対位置関係だけが、図6に示されている。X-Y平面内の磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、X-Y平面内の水素感知層1の正投影に位置する。磁気抵抗感知ユニットの長軸方向はY軸方向であり、短軸方向はX軸方向である。非水素感知層と基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングとの間の相対位置関係は、図6のものに類似し、ここで繰り返されないことが理解できる。
【0026】
図6に示されるように、磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび水素感知層1が同じX-Y平面に投影される場合、磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、X-Y平面内で水素感知層1に位置する。任意選択で、X-Y平面内で、磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、水素感知層1内のY軸中心線1-6上に位置し、および/または、任意選択で、X-Y平面内で、磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、水素感知層1に位置し、対称軸としてのY軸中心線1-6と対称的に配置される。別の実施形態では、基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングと非水素感知層の両方が同じX-Y平面に投影される場合、基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、X-Y平面内で非水素感知層1に位置する。任意選択で、X-Y平面内で、磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、水素感知層内のY軸中心線上に位置し、および/または、任意選択で、X-Y平面内で、磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、水素感知層に位置し、対称軸としてのY軸中心線と対称的に配置される。
【0027】
図7に示されるように、X-Y平面内の磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、水素感知層1のY軸中心線上に位置することができ、同時に、X-Y平面内の基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、非水素感知層10のY軸中心線上に位置することができることに留意されたい。代替として、図8に示されるように、X-Y平面内の磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、水素感知層1のY軸中心線の左側に位置してもよく、X-Y平面内の基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、非水素感知層10のY軸中心線の左側の同じ位置に位置してもよい。さらに、図8に示されるように、X-Y平面内の磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、水素感知層1のY軸中心線の右側に位置してもよく、X-Y平面内の基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、非水素感知層10のY軸中心線の右側の同じ位置に位置してもよい。
【0028】
この実施形態では、任意選択の磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよび基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングの磁気抵抗感知ユニットは、順に、ピン止め層/絶縁層層/自由層/バイアス層をそれぞれ含む。ピン止め層は、反強磁性層/強磁性層または反強磁性層/強磁性層/金属伝導層/強磁性層である。バイアス層は、反強磁性層または反強磁性/強磁性層/金属層/強磁性層、または永久磁石層である。
【0029】
水素感知層1および非水素感知層10は、Y軸中心線1-6上の位置など、互いに対応する位置に磁気抵抗感知ユニット2-3および基準磁気抵抗感知ユニット2-3-1をそれぞれ含み、左側の位置に磁気抵抗感知ユニット2-2および基準磁気抵抗感知ユニット2-2-1をそれぞれ含み、右側の位置に磁気抵抗感知ユニット2-1および基準磁気抵抗感知ユニット2-1-1をそれぞれ含む。バックグラウンド磁場の作用および水素ガスの結合作用の下で、非水素感知層10の磁化角は、Ω(b)だけさらに偏向されるのみである。角度Ω(b)だけ偏向されるのに加えて、水素感知層1は、水素ガスにより角度Ω(H)だけさらに偏向され、合計角度Ω(b+H)だけ偏向される。この実施形態では、基準ブリッジ構造は、バックグラウンド磁場Ω(b)の影響をなくすように選択することができる。
【0030】
上記のバックグラウンド磁場消去法に対応するトンネル磁気抵抗センサの構造図に関し、図7は、水素感知層1および非水素感知層10の磁気抵抗感知ユニット2-3および基準磁気抵抗感知ユニット2-3-1で構成されたハーフ・ブリッジ構造を同じ位置に含むハーフ・ブリッジ構造である。図8は、水素感知層1および非水素感知層10に対応する2つの磁気抵抗感知ユニット2-1および2-2ならびに2つの基準磁気抵抗感知ユニット2-1-1および2-2-1で構成されるフル・ブリッジ構造を同じ位置に含むフル・ブリッジ構造である。トンネル磁気抵抗センサは、準ブリッジ構造、ハーフ・ブリッジ構造、またはフル・ブリッジ構造であってもよいことが理解できる。
【0031】
図9に示されるように、水素感知層1および非水素感知層10について、水素感知層1は、パラジウム層および強磁性層1-3を含み、パラジウム層は、キャップ層に位置するパラジウム層1-1および中間層に位置するパラジウム層1-2を含む。非水素感知層10の構造は、非水素感知層10が非パラジウム層を含み、非パラジウム層は、Cu、Ti、およびTaなどの水素ガスと反応しない金属で作製されたフィルム層であるという点で水素感知層1の構造とは異なる。パラジウム層および非パラジウム層は、同じ層に位置する。水素感知層1および非水素感知層10は、2つの強磁性層の配向角がバックグラウンド磁場、すなわち環境磁場の影響により変わらないことを確実にするように層の厚さおよび個数を含む同じ幾何学的寸法を有することが理解できる。さらに、中間位置、左位置、および右位置などの水素感知層1および非水素感知層10の位置に対応する同じ位置で磁気抵抗感知ユニット・ストリングと基準磁気抵抗感知ユニット・ストリングを接続することによって形成される基準ブリッジ構造は、図7および図8におけるものに類似しており、これは、ここで繰り返されない。
【0032】
例えば、上記の技術的な解決手段に基づいて、図10に示されるように、任意選択の水素感知層は、同じ層上で電気的に隔離されたプッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100を含む。外部磁場がないときに、プッシュ水素感知層1は、正のX軸の方向に磁気モーメントを有し、プル水素感知層100は、負のX軸の方向に磁気モーメントを有する。
【0033】
図11に示されるように、図11は、水素感知層上に位置する磁気シールド層300も含む。磁気シールド層300は、少なくとも1つの貫通穴301を含む。プッシュ水素感知層1のパラジウム層およびプル水素感知層100のパラジウム層は、少なくとも1つの貫通穴301を介して空気と直接接触している。この実施形態では、磁気シールド層300の機能は、Hとパラジウム層との間の吸収反応を可能にしつつバックグラウンド磁場の干渉効果をなくすことであり、磁気シールド層300は、Fe、Co、またはNiを含有する軟磁性合金材料である。キャップ層に位置するパラジウム層は1-1として示すことができ、中間層に位置するパラジウム層は1-2として示すことができ、強磁性層は1-3として示すことができる。
【0034】
任意選択のトンネル磁気抵抗センサ2は、プッシュ・プル・ブリッジ・センサである。トンネル磁気抵抗センサ2は、プッシュ・アームおよびプル・アームを含む。プッシュ・アームは、プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングを含み、プル・アームは、プル磁気抵抗感知ユニット・ストリングを含む。プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよびプル磁気抵抗感知ユニット・ストリングの磁場感知方向は共にX軸方向である。プッシュ水素感知層およびプル水素感知層は共にストリップ状であり、ストリップの長軸はY軸方向であり、ストリップの短軸はX軸方向である。X-Y平面内で、プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、プッシュ水素感知層のストリップのY軸中心線上に位置し、および/またはプッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、プッシュ水素感知層のストリップ内のY軸中心線の両側で同じ位置に位置する。X-Y平面内で、プル磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、プル水素感知層のストリップのY軸中心線上に位置し、および/またはプル磁気抵抗感知ユニット・ストリングの正投影は、プル水素感知層のストリップ内のY軸中心線の両側で同じ位置に位置する。プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングおよびプル磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、同じように配置される。プッシュ水素感知層は、プッシュ・アームに磁気的に結合され、プル・アームから磁気的に隔離されている。プル水素感知層は、プル・アームに磁気的に結合され、プッシュ・アームから磁気的に隔離されている。
【0035】
この実施形態では、プッシュ水素感知層1とプッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングとの間の相対位置関係は、図6を参照して得ることができ、プル水素感知層100とプル磁気抵抗感知ユニット・ストリングとの間の相対位置関係は、それに類似する。プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングは2-1および2-2を含み、プル磁気抵抗感知ユニット・ストリングは2-1-1および2-2-1を含み、プッシュ水素感知層1は、プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1および2-2の上方に位置し、プル水素感知層100は、プル磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1-1および2-2-1の上方に位置する。電気隔離層18は、水素ガス環境および電力供給環境の隔離を実現し、不要な爆発を防ぐように、プッシュ水素感知層1、プル水素感知層100、およびトンネル磁気抵抗センサ2の間に位置する。プッシュ水素感知層1および水素感知層100の表面が、空気に共に曝されることは指摘されるべきである。
【0036】
実際の動作では、バックグラウンド磁場Hbの存在、ならびにプッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100中のHおよびパラジウムによって生成される磁気モーメントのバイアスにより、プッシュ・プル・ブリッジ磁気抵抗センサ2は、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100の磁場信号を収集し、出力信号を生成する。バックグラウンド磁場の情報はなくされ、H濃度の測定が実現され、H環境と電気環境の物理的隔離が確実にされる。
【0037】
上記の実施形態のいずれかに記載された水素感知層について、図12に示された任意選択の水素感知層は、シード層1-5および隔離層1-4をさらに含む。隔離層1-4は、シード層1-5と[パラジウム層/強磁性層]nの多層薄膜構造との間に位置し、強磁性層の磁化強度の配向角は、10°から80°の範囲内で変化する。隔離層1-4は、垂直磁気異方性(PMA)層である。任意選択で、n=3、パラジウム層は、キャップ層として配置されたパラジウム層1-1と、中間層として配置されたパラジウム層1-2とを含む。パラジウム層1-1をキャップ層として配置することで、水素ガスとパラジウムとの間の反応のための接触面積を増大させることができ、強磁性層1-3は、パラジウム層間に位置する。
【0038】
この実施形態では、Hの作用の下で、強磁性層1-3の磁気モーメントMは、X-Z平面内で偏向され、X軸方向の配向角は、Ωである。強磁性層1-3は、ナノスケールの厚さを有し、それは、単一の磁区構造とみなすことができ、したがって、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100は共に、周囲の空間中に静磁場分布を生成する磁気モーメントMを有する磁石とみなすことができる。水素感知層の底部は、静磁場の試験を実現し、磁気モーメントMの配向角を推定し、最終的にH濃度を測定するように、それぞれY軸中心線、左位置、および右位置に磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-3、2-2、および2-1を備える。
【0039】
図13は、磁気モーメントMの配向角Ωが0から90°の範囲内で変化するときの水素感知層1のY軸中心線の中央位置、左位置、および右位置におけるX軸方向の静磁場の成分、および配向角Ωに関する左位置および右位置におけるX軸方向の静磁場差R-Lの変化を示す。見ることができるように、配向角Ωに関する静磁場の変化曲線は、直線状セグメントおよび非直線状セグメントを有する。非直線状セグメントは、磁場配向角Ωおよびトンネル磁気抵抗センサの線形結果を達成し、トンネル磁気抵抗センサによるH濃度の測定を実現するように、配向角Ωに関して0°に近いまたは90°に近い磁場の位置に現れ、フル・レンジで線形化を達成するアルゴリズムによって補償することができる。
【0040】
上記の実施形態で説明された、水素感知層および非水素感知層を含む水素ガス・センサについて。
【0041】
任意選択で、それは、バイアス・コイルをさらに含む。バイアス・コイルが位置するフィルム層は、基板と水素感知層との間に位置し、バイアス・コイルは、トンネル磁気抵抗センサの真上または真下に位置し、バイアス・コイルは、渦巻きコイルである。X軸方向またはY軸方向のバイアス磁場について、バイアス・コイルが位置する平面は、第1のバイアス領域および第2のバイアス領域を含む。第1のバイアス領域および第2のバイアス領域は、それぞれ、平行に配置されると共に同じ電流方向を有するN個の直線セグメントを備え、ただし、Nは1以上の整数である。第1のバイアス領域および第2のバイアス領域内の直線セグメントの電流は、同じ方向または反対方向にあり、水素感知層は、第1のバイアス領域内に等しく分布し、非水素感知層は、第2のバイアス領域内に等しく分布している。Z軸方向のバイアス磁場について、バイアス・コイルが位置する平面は、中央バイアス領域を含み、中央バイアス領域は、対称的に配置されると共に対称的で反対の電流方向を有する同じ個数の2M個の直線セグメントを備え、ただし、Mは1以上の整数である。水素感知層および非水素感知層は、中央バイアス領域内に配置されると共に対称的に配置される。水素感知層に対応して配置された直線セグメントの電流方向は、対称的で反対であり、非水素感知層に対応して配置された直線セグメントの電流方向は、対称的で反対であり、電流方向は、Y軸中心線に全て直交する。
【0042】
任意選択で、それは、永久磁石バイアス層をさらに含む。X軸方向またはY軸方向のバイアス磁場について、永久磁石バイアス層は、平行に配置された少なくとも2つの永久磁石棒を含む。永久磁石棒は、水素感知層の両側におよび非水素感知層の両側に位置する。X軸方向のバイアス磁場またはY軸方向のバイアス磁場は、隣接した永久磁石棒間で生成される。Z軸方向のバイアス磁場について、永久磁石バイアス層は、基板の下方に位置する永久磁石棒を含む。水素感知層および非水素感知層は、それぞれ、Z軸方向に同じ磁場成分を有する永久磁石棒の2つの領域内に位置する。水素感知層および非水素感知層は、Y軸方向に対称的で反対の磁場成分を有する永久磁石棒の2つの領域内に位置する。
【0043】
上述した水素ガス・センサでは、磁区の存在が、水素感知層および非水素感知層の磁気モーメントの分散を引き起こす。この実施形態では、磁区によって引き起こされる磁気モーメントの分散は、バイアス磁場によってなくされ、またはそれは、強磁性共鳴条件下の水素感知層および非水素感知層を飽和させて共鳴周波数を変化させるために使用される。バイアス・コイルを配置すると共に永久磁石棒を配置することは、共に解決手段である。
【0044】
磁区によって引き起こされる磁気モーメントの分散をなくすためにバイアス・コイルを配置する解決手段について。バイアス・コイルは、バイアス磁場を生成するのに使用することができ、これは、マイクロ波励起信号と同様に磁場を動的に励起させることができる。
【0045】
図14を参照すると、渦巻きコイル8が、バイアス磁場を実現するのに使用される。図面は、Y軸方向のバイアス磁場Hyが使用されるときの渦巻きコイル8に対する水素感知層1および非水素感知層10の分布を示す。水素感知層1は、Y軸方向に延び、複数の水素感知層1が、X軸方向に配置されている。非水素感知層10は、Y軸方向に延び、複数の非水素感知層10が、X軸方向に配置されている。水素感知層1および非水素感知層10は、Y軸方向に配置されている。渦巻きコイル8は、Y軸方向に延びる複数の直線セグメント、およびX軸方向に延びる複数の直線セグメントを含み、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントは、水素感知層1および非水素感知層10に重なり合わず、X軸方向に延びる複数の直線セグメントは、水素感知層1および非水素感知層10に重なり合い、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントおよびX軸方向に延びる複数の直線セグメントは、渦巻きバイアス・コイルを形成するように電気的に接続されている。具体的には、渦巻きコイル8は、2つの平行な直線セグメント領域8-1(すなわち、第1のバイアス領域)と、8-2(すなわち、第2のバイアス領域)とを含み、第1および第2のバイアス領域は、等しい距離に配置された3つの平行な直線セグメントでそれぞれ構成される。第1のバイアス領域は、3つの直線セグメント8-1-1を含み、第2のバイアス領域は、3つの直線セグメント8-2-1を含む。2つのバイアス領域の電流方向は反対であり、水素感知層1および非水素感知層10のY軸中心線1-6は、電流方向に共に直交する。具体的には、水素感知層1は、平行な直線セグメント領域8-1内に均一に分布し、非水素感知層10は、平行な直線セグメント領域8-2内に均一に分布する。
【0046】
図15は、渦巻きコイルおよび水素感知層1の断面図であり、図16は、渦巻きコイルおよび非水素感知層10の断面図である。明らかに、渦巻きコイルの直線セグメント8-1-1および8-2-1の電流方向は反対である。一方のバイアス領域の電流方向は+X方向であり、他方のバイアス領域の回路方向は-X方向である。第1のバイアス領域8-1の直線セグメントは、水素感知層1の真下に位置し、第2のバイアス領域8-2の直線セグメントは、非水素感知層10の真下に位置する。図17は、渦巻きコイル8によって生成されるY軸方向のバイアス磁場を示す。見ることができるように、水素感知層1および非水素感知層10内のY軸方向のバイアス磁場分布は、同じ振幅および反対方向を有する。
【0047】
図18に示されるように、水素感知層1はY軸方向に延び、複数の水素感知層1はX軸方向に配置される。非水素感知層10はY軸方向に延び、複数の非水素感知層10はX軸方向に配置される。水素感知層1および非水素感知層10は、X軸方向に配置される。渦巻きコイル8は、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントと、X軸方向に延びる複数の直線セグメントとを含み、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントは、水素感知層1および非水素感知層10に重なり合わず、X軸方向に延びる直線セグメントの少なくとも一部は、水素感知層1および非水素感知層10に重なり合い、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントおよびX軸方向に延びる複数の直線セグメントは、渦巻きバイアス・コイルを形成するように電気的に接続されている。この実施形態では、水素感知層1および非水素感知層10は、それぞれ、2つの平行な直線セグメント領域8-1および8-2内に配置されている。2つの平行な直線セグメント領域8-1および8-2は、等しい距離に配置された3つの同一の平行な直線セグメント、すなわち、3つの平行な直線セグメントが等しい距離に配置されているエリアでそれぞれ構成されている。すなわち、等しい距離に配置された3つの同一の平行な直線セグメントが水素感知層1に重なり合う領域は、第1のバイアス領域8-1であり、等しい距離に配置された3つの同一の平行な直線セグメントが非水素感知層10に重なり合う領域は、第2のバイアス領域8-2である。したがって、3つの平行な直線セグメント8-1-1および8-2-1は、同じ電流方向をそれぞれ有し、この電流方向は、Y軸中心線1-6に直交する。
【0048】
図19に示されるように、図19は、バイアス磁場がX軸方向にある状態の渦巻きコイル8、水素感知層1、および非水素感知層10の分布図である。水素感知層1はY軸方向に延び、複数の水素感知層1はX軸方向に配置されている。非水素感知層10はY軸方向に延び、複数の非水素感知層10はX軸方向に配置されている。水素感知層1および非水素感知層10は、Y軸方向に配置されている。渦巻きコイル8は、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントと、X軸方向に延びる複数の直線セグメントとを含む。X軸方向に延びる複数の直線セグメントは、水素感知層1および非水素感知層10に重なり合わず、Y軸方向に延びる直線セグメントの少なくとも一部は、水素感知層1および非水素感知層10に重なり合い、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントおよびX軸方向に延びる複数の直線セグメントは、渦巻きバイアス・コイルを形成するように電気的に接続されている。この実施形態では、Y軸方向のバイアス磁場からの差は、水素感知層1および非水素感知層10がそれぞれ2つの平行な直線セグメント領域8-1および8-2内に配置されるように、水素感知層1および非水素感知層10が90°だけ回転するものである。平行な直線セグメント8-1-1および8-2-1の電流方向は、Y軸中心線1-6に平行であり、2つの平行な直線セグメント領域8-1および8-2は、等しい距離に配置された3つの同一の平行な直線セグメントで構成される。すなわち、等しい距離に配置された3つの同一の平行な直線セグメントが水素感知層1に重なり合う領域が、第1のバイアス領域8-1であり、等しい距離に配置された3つの同一の平行な直線セグメントが非水素感知層10に重なり合う領域は、第2のバイアス領域8-2である。
【0049】
図20に示されるように、図20は、バイアス磁場がZ軸方向にある状態の渦巻きコイル8、水素感知層1、および非水素感知層10の分布図である。水素感知層1はY軸方向に延び、複数の水素感知層1はX軸方向に配置されている。非水素感知層10はY軸方向に延び、複数の非水素感知層10はX軸方向に配置されている。水素感知層1および非水素感知層10は、X軸方向に配置されている。渦巻きコイル8は、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントと、X軸方向に延びる複数の直線セグメントとを含む。Y軸方向に延びる複数の直線セグメントは、水素感知層1および非水素感知層10に重なり合わず、X軸方向に延びる直線セグメントの少なくとも一部は、水素感知層1および非水素感知層10に重なり合い、Y軸方向に延びる複数の直線セグメントおよびX軸方向に延びる複数の直線セグメントは、渦巻きバイアス・コイルを形成するように電気的に接続されている。この実施形態では、X軸またはY軸方向のバイアス磁場からの差は、水素感知層1および非水素感知層10が渦巻きコイル8の中間領域8-4(すなわち、中央バイアス領域)内に位置するものである。中間領域8-4は、正のX軸方向の2つの同一の電流直線セグメントと、負のX軸方向の2つの電流直線セグメントとを含む。水素感知層1および非水素感知層10のY軸中心線1-6は、共に、電流方向に直交し、4つの直線セグメントに対称的にまたがり、それにより渦巻きコイル8が、Y軸方向などの他の方向の磁場成分よりも大きいZ軸方向の磁場成分を生成することができる。
【0050】
図21に示されるように、図21は、基準ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサを利用する水素ガス・センサの概略図である。渦巻きコイル8において、平行な直線セグメント領域8-1に対応する水素感知層1の磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1および2-2、ならびに平行な直線セグメント領域8-2に対応する非水素感知層10の基準磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1-1および2-2-1は、基準フル・ブリッジ構造を形成するように電気的に接続され、VCC、GND、V+、およびV-の4つのピンに接続されている。
【0051】
図22に示されるように、上記の実施形態の水素ガス・センサに基づく水素ガスを測定する原理は、水素感知層1がHおよびバックグラウンド磁場Hbを感知し、非水素感知層10がバックグラウンド磁場Hbだけを感知し、渦巻きコイル8がバイアス磁場を印加するのに使用されるものである。水素感知層1に対応する磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1および2-2、ならびに非水素感知層10に対応する基準磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1-2および2-2-1は、直接出力することができるまたはアナログ・フロント・エンド回路を介して出力することができる出力端を有する基準ブリッジ構造を構成する。
【0052】
図23aおよび図23bに示されるように、コイル駆動回路は、渦巻きコイル8に電力を供給するのに使用され、渦巻きコイル8は、水素感知層1および非水素感知層10を同時に動的に励起する。基準ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサのブリッジ出力電圧は、直接出力されてもよくまたはアナログ・フロント・エンド回路を介して出力されてもよく、励起信号の周波数および位相に対応する周波数および位相を有する誘起電圧が集められる。したがって、コイル駆動回路、および基準ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサのブリッジ出力電圧は、渦巻きコイルの電力供給の励起磁場信号Heとトンネル磁気抵抗センサの応答信号との間の関係を解析および処理し、圧力濃度に関連した電圧信号を出力するために、デジタル制御および解析回路にジョイント接続される。励起磁場信号He、およびトンネル磁気抵抗センサによって測定される水素感知層および非水素感知層内の強磁性層の磁束Bの変化は、B-H曲線を形成することができる。H濃度の測定を実現するために、残留磁気Br、または保磁力Hc、透磁率μ、飽和磁気誘導強度Bs、および飽和磁場Hsなどのパラメータを抽出することによって。
【0053】
強磁性層中の磁気モーメントMをできる限りトンネル磁気抵抗センサの静磁場に変換できるように水素感知層および非水素感知層内の磁区をなくすために、静磁気バイアス・ファンクションを使用することも必要であり、静磁場は、X方向、Y方向、およびZ方向のいずれかであり得る。図24aは、X軸方向のバイアス磁場Hxを示し、実際の製品では、図24bに示された永久磁石棒5-1、5-2、および5-3は、その磁化方向がX軸方向であるように基板上に用意することができる。図25aは、Y軸方向のバイアス磁場Hyを示し、実際の製品では、図25bに示された永久磁石棒6-1および6-2は、その磁化方向がY軸方向であるように基板上に用意することができる。図26aは、Z軸方向のバイアス磁場Hzを示し、実際の製品では、図26bに示された永久磁石ブロック7は、その磁化方向がZ方向であるように基板の下面上に用意することができ、水素感知層1および非水素感知層10は、それぞれ、Z軸中心線の両側に対称的に位置し、永久磁石水平磁場成分は、それぞれ、正のY軸および負のY軸方向である。
【0054】
任意選択で、水素ガス・センサは、マイクロストリップをさらに備える。マイクロストリップは、シングル・ストリップまたはダブル・ストリップ構造である。マイクロストリップは、基板とトンネル磁気抵抗センサとの間に位置し、マイクロストリップの両端は、バイアス磁場がZ軸方向またはY軸方向にあるように、マイクロ波ポートに接続され、マイクロ波励起電源に接続される。トンネル磁気抵抗センサが基準ブリッジ・センサであるとき、マイクロストリップは、Y軸中心線に平行または直交する。図27aから図27cは、強磁性共鳴(FMR)法によって水素ガス濃度を測定するためのセンサ構造の概略図である。水素感知層1および非水素感知層10の下方で、マイクロストリップ11が、マイクロ波励起信号を伝送するために使用され、マイクロストリップ11は、シングル・ストリップまたはダブル・ストリップ構造とすることができ、マイクロストリップ11は、基板9上に直接製造される。ダブル・ストリップおよびシングル・ストリップのケースが、この実施形態で与えられる。同時に、水素感知層1および非水素感知層10の平面内の磁場またはこの平面に直交する磁場が、バイアス磁場として使用される。この実施形態では、垂直磁場Hzのケースが与えられる。図27bに与えられた水素感知層1および非水素感知層10内のマイクロ波励起磁場は、共にY軸方向であり、図27cに与えられる水素感知層1および非水素感知層10内のマイクロ波励起磁場は、共にX軸方向にある。
【0055】
図28に示されるように、図28は、強磁性共鳴(FMR)法による水素ガス濃度の測定の概略図である。マイクロ波マイクロストリップの入力信号と出力信号の伝統的な解析との違いは、水素感知層1および非水素感知層10に対応する磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1および2-2ならびに基準磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1-1および2-2-1によって形成された基準フル・ブリッジ構造が、強磁性層内の強磁性共鳴プロセス中の透磁率の変化によって引き起こされる磁束密度の変化を測定するために使用されることである。マイクロ波励起電源15によって供給されるマイクロ波励起信号、および磁気抵抗センサによって出力される電圧信号は、周波数と位相の間の相互関係を有し、したがって、センサの出力、およびマイクロ波励起電源15は、処理のためにデジタル制御および解析回路16へ伝送され、次いで、水素ガス含有量に関する情報が出力される。図29に示されるように、強磁性共鳴中、透磁率は、実数部μ’および虚数部μ’’を有する複素数の形態である。実際の動作では、垂直バイアス磁場Hzは、ある一定の範囲内で走査され、マイクロ波励起電源15は、ある一定の周波数fの範囲内で周波数掃引を実行する。したがって、透磁率μ”またはμ’のバイアス磁場Hzが与えられる場合に得られる磁気スペクトル、あるいは周波数fが与えられる場合に得られるバイアス磁場Hzの変化が、透磁率共鳴ピークHpeakまたはその半値全幅H(FWHM)をパラメータとしてとることによって異なる水素ガス濃度における関係値を較正するために使用することができ、周波数fと共に変化する透磁率のグラフは、透磁率共鳴ピークfpeakまたはその半値全幅f(FWHM)をパラメータとしてとることによって異なる水素ガス濃度における関係値を較正するために使用することもできる。
【0056】
上記の実施形態に説明された、プッシュ水素感知層およびプル水素感知層を含む水素ガス・センサについて。
【0057】
任意選択で、それは、バイアス・コイルをさらに含む。バイアス・コイルが位置するフィルム層は、基板と水素感知層との間に位置し、バイアス・コイルは、トンネル磁気抵抗センサの真上または真下に位置し、バイアス・コイルは、渦巻きコイルである。Y軸方向のバイアス磁場について、バイアス・コイルが位置する平面は、第3のバイアス領域および第4のバイアス領域を含む。第3のバイアス領域および第4のバイアス領域は、それぞれ、平行に配置されると共に同じ電流方向を有するP個の直線セグメントを備え、ただし、Pは1以上の整数である。第3のバイアス領域および第4のバイアス領域内の直線セグメントの電流は、同じ方向または反対方向にあり、プッシュ水素感知層は、第3のバイアス領域内に等しく分布し、プル水素感知層は、第4のバイアス領域内に等しく分布している。Z軸方向のバイアス磁場について、バイアス・コイルが位置する平面は、中央バイアス領域を含み、中央バイアス領域は、対称的に配置されると共に対称的で反対の電流方向を有する同じ個数の2Q個の直線セグメントを備え、ただし、Qは1以上の整数である。プッシュ水素感知層およびプル水素感知層は、中央バイアス領域内に配置されると共に対称的に配置される。プッシュ水素感知層に対応して配置された直線セグメントの電流方向は、対称的で反対であり、プル水素感知層に対応して配置された直線セグメントの電流方向は、対称的で反対であり、電流方向は、Y軸中心線に全て直交する。
【0058】
任意選択で、それは、永久磁石バイアス層をさらに含む。Y軸方向のバイアス磁場について、永久磁石バイアス層は、平行に配置された少なくとも2つの永久磁石棒を含む。永久磁石棒は、プッシュ水素感知層の両側におよびプル水素感知層の両側に位置する。Y軸方向のバイアス磁場は、隣接した永久磁石棒間で生成される。Z軸方向のバイアス磁場について、永久磁石バイアス層は、基板の下方に位置する永久磁石棒を含む。プッシュ水素感知層およびプル水素感知層は、それぞれ、Z軸方向に同じ磁場成分を有する永久磁石棒の2つの領域内に位置する。プッシュ水素感知層およびプル水素感知層は、Y軸方向に対称的で反対の磁場成分を有する永久磁石棒の2つの領域内に位置する。
【0059】
上述したような水素ガス・センサでは、水素ガス濃度が増加するときに正のX軸方向にバイアスされるプッシュ水素感知層1に加えて、水素感知層は、負のX軸方向に逆にバイアスされるプル水素感知層100をさらに有する。図30に示されるように、プッシュ水素感知層1に対応するプッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、2-1、2-2、および2-3を含み、プル水素感知層100に対応するプル磁気抵抗感知ユニット・ストリングは、2-1-1、2-2-2、および2-3-1を含む。同じ水素ガス濃度条件下で、プッシュ水素感知層1の磁気モーメントが角度+Ωだけ偏向され、一方プル水素感知層100の磁気モーメントが角度-Ωだけ偏向され、プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1、2-2、および2-3、ならびにプル磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1-1、2-2-1、および2-3-1が、反対のX軸静磁場成分を有すると仮定する。加えて、環境磁場Hb、プッシュ水素感知層1、およびプル水素感知層100は、同じ効果を有し、したがって、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ構造によって、環境磁場Hbをなくすことができ、水素ガスによって引き起こされる磁気モーメント偏向および静磁場を同時に増幅することができると仮定する。
【0060】
図31aは、プッシュ・プル磁気抵抗センサのハーフ・ブリッジ・ブリッジ構造図であり、図31bは、プッシュ・プル磁気抵抗センサのフル・ブリッジ・ブリッジ構造図である。加えて、本明細書に説明されない準ブリッジ構造を形成することもできる。
【0061】
任意選択で、プッシュ水素感知層の正のX軸方向磁気モーメントおよびプル水素感知層の負のX軸方向磁気モーメントを書き込む方法は、レーザ熱磁気書き込み、書き込みヘッド書き込み、書き込みコイル書き込み、および永久磁石ブロック書き込みのうちの任意の書き込み方法を含む。書き込みコイルは、基板と水素感知層との間に位置し、書き込みコイルは、プッシュ水素感知層のY軸中心線に沿ったおよび正のY軸電流方向を有する第1の書き込みワイヤ、ならびにプル水素感知層のY軸中心線に沿ったおよび負のY軸電流方向を有する第2の書き込みワイヤを含む。永久磁石ブロックは、ストリップ状であり、永久磁石ブロックは、水素感知層とは反対の一方の側で基板の表面上に位置し、永久磁石ブロックは、Z軸方向に磁化方向を有する。プッシュ水素感知層およびプル水素感知層は、永久磁石ブロックのZ軸中心線の両側の領域内にそれぞれ位置し、両側の領域は、X軸方向に対称的で反対の磁場成分を有する。
【0062】
図32aおよび図32bは、水素感知層の磁気モーメントの第1の書き込み方法を示す。磁気モーメントは、レーザ熱磁気書き込み方法を使用することによって書き込まれる。具体的には、図32aでは、レーザ・ビーム200ならびに磁場コイル201および202が含まれる。レーザ・ビーム200は、プッシュ水素感知層1に作用し、それをキュリー温度まで加熱し、磁場コイル201および202は、正のX軸方向に静磁場203を生成する。図32bでは、レーザ・ビーム200は、プル水素感知層100に作用し、それをキュリー温度まで加熱し、磁場コイル201および202は、負のX軸方向に静磁場204を生成する。このようにして、正のX軸方向の磁気モーメントおよび負のX軸方向の磁気モーメントは、それぞれ、レーザ熱磁気書き込み方法によってプッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100について得られる。
【0063】
図33aおよび図33bは、水素感知層の磁気モーメントの第2の書き込み方法を示す。磁気モーメントは、書き込みヘッドによって直接書き込まれる。書き込みヘッドは、開放磁気ヨーク205、および励磁コイル206を含む。図33aに示されるように、書き込みヘッドは、プッシュ水素感知層1の上方に正のX軸方向の磁場を生成する。図33bに示されるように、書き込みヘッドは、プル水素感知層100の上方で負のX軸方向に磁場を生成するものであり、これは、励磁コイル106の電流方向を変化させることによって実現される。
【0064】
図34aおよび図34bは、水素感知層の磁気モーメントの第3の書き込み方法を示す。磁気モーメントは、基板上に書き込みコイルを製造することによって書き込まれる。具体的には、書き込みコイルは、基板と水素感知層との間に位置する。書き込みコイルは、プッシュ水素感知層のY軸中心線の方向の第1の書き込みワイヤであって、正のY軸電流方向を有する第1の書き込みワイヤと、プル水素感知層のY軸中心線の方向の第2の書き込みワイヤであって、負のY軸電流方向を有する第2の書き込みワイヤとを含む。図面に示されるように、第1の書き込みワイヤ209は、プッシュ水素感知層1の下方に形成され、第2の書き込みワイヤ212は、プル水素感知層10の下方に形成される。第1の書き込みワイヤ209および第2の書き込みワイヤ212は、水素感知層のY軸中心線の方向にそれぞれ平行である。第1の書き込みワイヤ209の電流方向210は、正のY軸方向であり、第2の書き込みワイヤ212の電流方向は、負のY軸方向である。ここで、第1の書き込みワイヤ209の電流磁場211は、プッシュ水素感知層1に正のX軸方向磁場を形成するように使用され、第2の書き込みワイヤ212の電流磁場214は、プル水素感知層100に負のX軸方向磁場を形成するように使用される。したがって、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100を書き込む磁気モーメントが完成される。
【0065】
図35は、水素感知層の磁気モーメントの第4の書き込み方法を示す。磁気モーメントは、基板の背面上に永久磁石ブロック215を配置することによって書き込まれる。具体的には、永久磁石ブロック215は、ストリップ状であり、永久磁石ブロック215は、水素感知層とは反対の一方の側で基板の表面上に位置する。永久磁石ブロック215は、Z軸方向に磁化方向を有する、プッシュ水素感知層1おおよびプル水素感知層100は、永久磁石ブロック215のZ軸中心線の両側の領域内にそれぞれ位置し、両側の領域は、X軸方向に対称的で反対の磁場成分を有する。永久磁石ブロック215の磁化方向は、Z軸方向であり、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100は、永久磁石ブロック215のZ軸中心線216の両側に対称的に配置され、それによって閉じた磁場218が、永久磁石ブロック215と上に位置するプッシュ水素感知層1との間に形成され、閉じた磁場217は、永久磁石ブロック215と上に位置するプル水素感知層100との間にさらに形成される。さらに、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100の磁気モーメントの書き込みが実現される。
【0066】
図36は、磁気シールド層300を有するプッシュ・プル・ブリッジ型水素ガス・センサの概略図である。プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100は、磁気シールド層300によって覆われ、磁気シールド層300は、水素ガスがプッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100の表面に入ることを可能にするために複数の貫通穴301を備える。磁気シールド層300の機能は、Hとパラジウム層との間の反応を可能にしつつ、バックグラウンド磁場の干渉効果をなくすことである。磁気シールド層300は、Fe、Co、またはNiを含有する軟磁性合金材料である。
【0067】
図37に示されるように、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100を含む水素ガス・センサは、強磁性層の磁区構造をなくすために静磁場によってバイアスすることもできる。プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100は、正および負のX軸方向に磁化方向を有し、したがって、X磁場が単純に使用される場合に、水素感知層のプッシュ・プル構造は破壊される。トンネル磁気抵抗センサは、同じ磁場感度方向を有し、正のX磁場および負のX磁場が使用される場合でも、トンネル磁気抵抗センサは、異常な稼働状態にある。したがって、Y軸方向の磁場またはZ軸方向のバイアス磁場だけが選択され得る。
【0068】
図37は、Y軸方向のバイアス・コイルおよびトンネル磁気抵抗センサの第1の分布図である。渦巻きコイルは、第1のバイアス領域8-1および第2のバイアス領域8-2を含み、各バイアス領域は、3個の平行な直線セグメントを含み、第1のバイアス領域8-1および第2のバイアス領域8-2のコイル直線セグメントは、反対の電流方向を有する。プッシュ水素感知層1ならびにプッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1および2-2は、第1のバイアス領域8-1内に配置され、プッシュ水素感知層1のY軸中心線1-6は、電流方向に直交する。プル水素感知層10およびプル磁気抵抗感知ユニット2-1-1および2-2-1は、第2のバイアス領域8-2内に配置される。
【0069】
図38は、Y軸方向のバイアス・コイル、およびトンネル磁気抵抗センサの第2の分布図である。渦巻きコイルは、第1のバイアス領域8-1および第2のバイアス領域8-2を含む。図37との違いは、第1のバイアス領域8-1の直線セグメント8-1-1および第2のバイアス領域8-2の直線セグメント8-2-1は、同じ電流方向を有し、水素感知層のY軸中心線1-6は、電流方向に直交することである。
【0070】
図39は、Z方向バイアス・コイルおよびトンネル磁気抵抗センサの分布図である。プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100は、それぞれ、渦巻きコイルの中央バイアス領域8-4に位置し、中央バイアス領域8-4は、正のX軸方向の2本の直線ワイヤ8-4と、負のX軸方向の2本の直線ワイヤ8-4-1とを含む。プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100のY軸中心線1-6は、電流方向に直交し、中央バイアス領域8-4がプッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100内のZ軸方向の磁場ならびに正のY軸方向および負のY軸方向の磁場を生成するように、正のX軸方向に直線ワイヤ8-4をおよび負のX軸方向に直線ワイヤ8-4-1に対称的にまたがる。
【0071】
この実施形態では、任意選択で、永久磁石棒は、バイアス磁場を生成するために使用することができる。具体的には、図40aに示されるように、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100は、それぞれ、Y軸方向に磁場を感知する。図40bに示されるように、Y軸方向のバイアス磁場は、2つの平行な永久磁石棒6-1と6-2の間に生成され、プッシュ水素感知層1とプル水素感知層100との間に位置する。図41は、永久磁石棒のZ軸方向のバイアス磁場およびトンネル磁気抵抗センサの分布図である。永久磁石棒7は、トンネル磁気抵抗センサの下方に位置し、Z軸方向の磁化方向を有する。プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100は、それぞれ、2つの閉磁気回路72および71を形成するようにZ軸中心線の両側に対称的に位置する。プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100内の永久磁石棒7によって形成される磁気回路72および71がY-Z平面上に位置し、Z成分以外にY成分のみを有することが指摘されるべきである。
【0072】
図42は、静磁場によってバイアスされるトンネル磁気抵抗センサ構造を利用する水素ガス・センサを示す。測定原理は、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100が逆磁場を形成するようにそれぞれ水素ガスと反応するというものである。逆磁場は、トンネル磁気抵抗センサのプッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1および2-2、ならびにプル磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1-1および2-2-1に作用し、形成されたプッシュ・プル磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの出力端子は、アナログ・フロント・エンド回路を介して水素ガスに関連した電圧信号を直接出力するまたは出力する。加えて、それは、水素感知層の磁気モーメントのみに頼ることによってまたはバイアス静磁場7を印加することによって同時に実現することができ、バイアス静磁場は、渦巻きコイルまたは永久磁石棒あるいは同時に存在する両方であり得る。
【0073】
図43aおよび図43bは、プッシュ・プル・ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサの電磁コイルの動的水素ガス測定の概略図である。この実施形態では、コイル駆動回路は、電力を渦巻きコイル8に供給するために使用され、渦巻きコイル8は、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100を同時に動的に励起する。励起信号の周波数および位相に対応する周波数および位相を有する誘起電圧は、プッシュ・プル・ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサによって集められる。プッシュ・プル・ブリッジ・トンネル磁気抵抗感知ユニット・ブリッジの出力電圧は、直接出力またはアナログ・フロント・エンド回路を介して出力することができ、したがって、コイル駆動回路、およびプッシュ・プル・ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサ・ブリッジの出力電圧は、渦巻きコイル電源の励起磁場信号Heとトンネル磁気抵抗センサの応答信号との間の関係を解析および処理し、Hの濃度に関連した電圧信号を出力するために、デジタル制御および解析回路にジョイント接続される。励起磁場信号Heおよびトンネル磁気抵抗TMRによって測定される水素感知層および非水素感知層内の強磁性層の磁束Bの変化は、B-H曲線を形成し得る。H濃度の測定を実現するために、残留磁気Br、または保磁力Hc、透磁率μ、飽和磁気誘導強度Bs、および飽和磁場Hsなどのパラメータを抽出することによって。プッシュ・プル・ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサと基準ブリッジ・トンネル磁気抵抗センサとの間の差は、励起磁場HeがYまたはZ方向に逆にされることのみであり得る。
【0074】
任意選択で、水素ガス・センサは、マイクロストリップをさらに含む。マイクロストリップは、シングル・ストリップまたはダブル・ストリップ構造である。マイクロストリップは、基板とトンネル磁気抵抗センサとの間に位置し、マイクロストリップの両端は、バイアス磁場がZ軸方向またはY軸方向にあるように、マイクロ波ポートに接続され、マイクロ波励起電源に接続される。トンネル磁気抵抗センサがプッシュ・プル・ブリッジ・センサであるとき、マイクロストリップは、Y軸方向中心線に直交する。
【0075】
図44aおよび図44bに示されるように、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100の下方で、マイクロストリップ11が、マイクロ波励起信号を伝送するために使用され、マイクロストリップ11は、シングル・ストリップまたはダブル・ストリップ構造とすることができ、マイクロストリップ11は、基板9上に直接製造される。この実施形態は、ダブル・ストリップの状況を示し、図44bに示されるように、プッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100の平面内の磁場またはこの平面に直交する磁場が、バイアス磁場として使用される。この実施形態では、垂直磁場Hzのケースが与えられる。さらに、上に示されたマイクロ波励起磁場は、プッシュ水素感知層1とプル水素感知層100の両方の内のY軸方向にあるが、X軸方向にあることはできない。
【0076】
図45aおよび図45bは、強磁性共鳴(FMR)法を使用することによる水素ガス濃度の測定の概略図である。マイクロストリップの入力信号および出力信号の伝統的な解析との違いは、この実施形態は、強磁性層内の強磁性共鳴中の透磁率の変化によって引き起こされる磁束密度の変化を測定するために、プッシュ磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1および2-2ならびにプッシュ水素感知層1およびプル水素感知層100に対応するプル磁気抵抗感知ユニット・ストリング2-1-1および2-2-1で構成されるプッシュ・プル・フル・ブリッジ構造を採用することである。マイクロ波励起電源15によって供給されるマイクロ波励起信号、および磁気抵抗センサによって出力される電圧信号は、周波数と位相の間の相互関係を有し、したがって、トンネル磁気抵抗センサの出力、およびマイクロ波励起電源15は、処理のためにデジタル制御および解析回路16へ伝送され、次いで、水素ガス含有量に関する情報が出力される。強磁性共鳴中、透磁率は、実数部μ’および虚数部μ’’を有する複素数の形態である。実際の動作では、垂直バイアス磁場Hzは、ある一定の範囲内で走査され、マイクロ波励起電源15は、ある一定の周波数fの範囲内で周波数掃引を実行する。したがって、磁気スペクトルは、透磁率μ”またはμ’のバイアス磁場Hzが与えられる場合に得ることができ、あるいはバイアス磁場Hzの変化図は、周波数fが与えられる場合に得ることができる。図45は、透磁率共鳴ピークHpeakまたはその半値全幅H(FWHM)をパラメータとしてとることによって異なる水素ガス濃度で関係値を較正するためにバイアス磁場Hzと共に変化する透磁率のグラフを与える。周波数fと共に変化する透磁率のグラフは、透磁率共鳴ピークfpeakまたはその半値全幅f(FWHM)をパラメータとしてとることによって異なる水素ガス濃度における関係値を較正するために使用することもできる。
【0077】
図46は、典型的な出力パラメータ電圧および水素ガス濃度の変化を示し、これらの出力パラメータは、トンネル磁気抵抗センサ・ブリッジ回路の出力電圧信号であり得、または対応する励磁コイル電磁信号のB-Hループに対応するBr、Hc、u、Bs、またはHsの値であり得、あるいは強磁性共鳴に対応する透磁率の共鳴周波数のピークHpeakシフトまたは半値全幅H(FWHM)値であり得る。
【0078】
上記のものは、本開示および適用される技術的原理の好ましい実施形態にすぎないことに留意されたい。当業者は、本開示が本明細書中に記載された特定の実施形態に限定されず、本開示の保護範囲から逸脱することなく、様々な明らかな変更、再調整、組合せ、および置換が、当業者によってなされてもよいことを理解されよう。したがって、本開示は上記の実施形態によって詳細に説明されてきたが、本開示は、上記の実施形態に限定されず、本開示の概念から逸脱することなく、より多くの他の均等な実施形態を含むこともできる。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
図1
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図32a
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図33a
図33b
図34a
図34b
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図43b
図44a
図44b
図45a
図45b
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【国際調査報告】