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特表2022-545938電動モータを支持するためのブラケットおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電動モータを支持するためのブラケットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20221025BHJP
   H02K 5/00 20060101ALI20221025BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20221025BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20221025BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H02K5/00 A
F16F15/02 L
F16F15/02 C
F16F15/04 A
F16F1/38 S
F16F1/38 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513368
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020073865
(87)【国際公開番号】W WO2021037919
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19306031.6
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520461897
【氏名又は名称】ビブラコースティック ナント エスエーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ショウヴェ, ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】トリモロー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ル コレ, ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
3D235
3J048
3J059
5H605
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB23
3D235CC12
3D235EE14
3D235FF02
3D235HH44
3J048AA02
3J048AD07
3J048AD16
3J048BA05
3J048BA24
3J048BF02
3J048CB22
3J048EA08
3J059BA42
3J059BC06
3J059CB15
3J059EA12
3J059GA28
5H605AA04
5H605BB05
5H605CC03
5H605EA09
5H605EA13
5H605FF06
5H605GG07
(57)【要約】
本発明は、車両のシャーシに電動モータを支持するためのブラケット(10)であって、第1のハーフスペース(20)を画定する第1のハーフシェル(12)と第2のハーフスペース(22)を画定する第2のハーフシェル(14)とを備え、第1のハーフシェル(12)および第2のハーフシェル(14)がプラスチック材料、特にポリマー材料から作られており、第1のハーフシェル(12)および第2のハーフシェル(14)が、第1のハーフスペース(20)および第2のハーフスペース(22)を含むブラケット(10)内の空洞を画定するように、好ましくは溶着によって、互いに固定されたブラケット(10)である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシャーシに電動モータを支持するためのブラケットであって、
第1のハーフスペース(20)を画定する第1のハーフシェル(12)と、
第2のハーフスペース(22)を画定する第2のハーフシェル(14)とを備え、
前記第1のハーフシェル(12)および前記第2のハーフシェル(14)が、プラスチック材料、特にポリマー材料から作られており、
前記第1のハーフシェル(12)および前記第2のハーフシェル(14)が、前記第1のハーフスペース(20)および前記第2のハーフスペース(22)を含むブラケット(10)内の空洞を画定するように、好ましくは溶着によって、互いに固定されているブラケット。
【請求項2】
前記第1のハーフシェル(12)および/または前記第2のハーフシェル(14)が、リブ(26)によって補強されており、
好ましくは、該リブ(26)が、前記第1のハーフシェル(12)および/または前記第2のハーフシェル(14)と一体に形成されている請求項1に記載のブラケット。
【請求項3】
前記空洞内にダンパ(28)が配置され、
好ましくは、該ダンパ(28)が、振動質量(30)と、前記ブラケット(10)および前記振動質量(30)に取り付けられた第1の弾性部材(32)とを備える請求項1または請求項2に記載のブラケット。
【請求項4】
前記第1の弾性部材(32)が、弾性材料から作られ、
好ましくは、該第1の弾性部材(32)が、前記振動質量(30)を取り囲む層を備える請求項3に記載のブラケット。
【請求項5】
前記第1の弾性部材(32)が、前記振動質量(30)と、前記第1のハーフシェル(12)および/または前記第2のハーフシェル(14)と一体に形成されるダンパ壁(38)との間に配置され、
好ましくは、前記第1の弾性部材(32)の一部および前記第2のハーフシェル(14)が二重射出成形工程によって同時に製造されている請求項4に記載のブラケット。
【請求項6】
前記電動モータを前記ブラケット(10)に取り付けるための少なくとも1つの絶縁ブッシュ(42)を備え、
該絶縁ブッシュ(42)が、前記電動モータに接続される剛性材料からなる本体(44)と、該本体(44)を取り囲む第2の弾性部材(46)とを備え、
好ましくは、該第2の弾性部材(46)が、前記本体(44)と前記ブラケット(10)の第1の開口部(48)の内面との間に配置され、
さらに好ましくは、前記第2の弾性部材(46)および前記第2のハーフシェル(14)が、二重射出成形工程によって同時に製造されている請求項1から請求項5のいずれかに記載のブラケット。
【請求項7】
前記ブラケット(10)を前記シャーシに取り付けるための少なくとも1つの取付ブッシュ(50)を備え、
前記ブラケット(10)が、第2の開口部(60)を備え、該第2の開口部(60)が、前記第1のハーフシェル(12)を前記第2のハーフシェル(14)に固定する際に、前記取付ブッシュ(50)を前記第2の開口部(60)にポジティブロックするために前記第2の開口部(60)の軸方向端部に配置され該第2の開口部(60)内に延びる突起(64)を含み、
好ましくは、前記取付ブッシュ(50)が、前記シャーシに接続されるスリーブ(52)と、該スリーブ(52)を取り囲むゴム部材(54)とを備え、
さらに好ましくは、前記スリーブ(52)が、プラスチック材料などの剛性材料によって構成されている請求項1から請求項6のいずれかに記載のブラケット。
【請求項8】
少なくとも2つの前記取付ブッシュ(50)が、それぞれ、各前記第2の開口部(60)に配置され、
好ましくは、前記少なくとも2つの取付ブッシュ(50)が、その形状および/または材料において異なり、
さらに好ましくは、前記取付ブッシュ(50)が、前記第2の開口部(60)の半径方向に延びる凹部(62)内に挿入される少なくとも1つのアーム(58)を備え、
好ましくは、前記少なくとも2つの取付ブッシュ(50)が、前記少なくとも1つのアーム(58)の向きにおいて異なる請求項7に記載のブラケット。
【請求項9】
前記電動モータを取り囲む形状の音響絶縁カバー(68)を備え、
該音響絶縁カバー(68)が前記ブラケット(10)に固定的に取り付けられている請求項1から請求項8のいずれかに記載のブラケット。
【請求項10】
前記音響絶縁カバー(68)が、第1の絶縁ハーフシェル(70)および第2の絶縁ハーフシェル(72)を備え、
好ましくは、前記第1の絶縁ハーフシェル(70)および前記第1のハーフシェル(12)が、一体型のユニット部品であり、
さらに好ましくは、前記第2の絶縁ハーフシェル(72)が、前記第1の絶縁ハーフシェル(70)に機械的に固定されている請求項9に記載のブラケット。
【請求項11】
前記音響絶縁カバー(68)が、前記シャーシおよび/または前記電動モータに前記音響絶縁カバー(68)を取り付けるための取付部分(80)を備え、
好ましくは、該取付部分(80)が、前記絶縁ブッシュ(42)および/または前記取付ブッシュ(50)を備える請求項9または請求項10に記載のブラケット。
【請求項12】
車両のシャーシ上に電動モータを支持するためのブラケット(10)の製造方法であって、
a) 第1のハーフスペース(20)を画定する第1のハーフシェル(12)および第2のハーフスペース(22)を画定する第2のハーフシェル(14)を製造、好ましくは成形するステップであって、前記第1のハーフシェル(12)および前記第2のハーフシェル(14)がプラスチック材料から作られるステップと、
b) 前記第1のハーフシェル(12)および前記第2のハーフシェル(14)が、前記第1のハーフスペース(20)および第2のハーフスペース(22)を含むブラケット(10)内の空洞を画定するように、好ましくは溶着によって、前記第1のハーフシェル(12)を前記第2のハーフシェル(14)に固定するステップとを含む方法。
【請求項13】
前記ステップa)が、二重射出成形工程によって、前記第2のハーフシェル(14)とともにダンパ(28)の第1の弾性部材(32)を製造することを含み、
好ましくは、前記ダンパ(28)の振動質量(30)が前記第1の弾性部材(32)に取り付けられる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップa)が、前記第1のハーフシェル(12)および前記第2のハーフシェル(14)に、少なくとも1つの第1の開口部(48)を設けることを含み、
該第1の開口部(48)の内面が第2の弾性部材(46)によって覆われ、
好ましくは、該第2の弾性部材(46)および前記第2のハーフシェル(14)が二重射出成形工程によって製造される請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップb)の前に、前記ブラケット(10)を前記シャーシに取り付けるための少なくとも1つの取付ブッシュ(50)が、前記第1のハーフシェル(12)および/または前記第2のハーフシェル(14)に配置されている第2の開口部(60)の一部に挿入され、
好ましくは、該第2の開口部(60)が、前記第1のハーフシェル(12)を前記第2のハーフシェル(14)に固定する際に、前記取付ブッシュ(50)を前記第2の開口部(60)にポジティブロックするために、前記第2の開口部(60)の軸方向端部に配置され前記第2の開口部(60)内に延びる突起(64)を備える請求項12から請求項14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシャーシ上に電動モータを支持するためのブラケットであって、プラスチック材料から作られているブラケットに関する。本発明は、さらに、車両のシャーシ上に電動モータを支持するためのブラケットの製造方法であって、ブラケットがプラスチック材料から製造される製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の開発が進み、街中で電気自動車を見かけることが多くなってきた。電気自動車の動力源である電動モータは、一般的な内燃機関とは異なる振動範囲を示す。そのため、振動の減衰または吸収に関して同様の特性を持っていても、内燃機関を支持するための手段は、電動モータを支持するために採用することはできない。特に、電動モータにより発生する振動は、内燃機関用のアブソーバ/ダンパを用いたのでは確実に減衰/吸収することができない。その結果、独国特許出願公開第10 2013 109 352号に記載されているような、電動モータのための新しい支持体が開発された。
【0003】
本発明の目的は、電動モータを車両のシャーシ上に支持するためのブラケットであって、電動モータから発生する振動を良好に減衰/吸収することができるブラケットを提供することにある。さらに、そのようなブラケットの製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
この目的は、請求項1に記載のブラケットだけでなく、請求項12に記載の方法によっても解決される。従属請求項には、本発明の好ましい実施形態が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両のシャーシ上に電動モータを支持するためのブラケットは、第1のハーフスペースを画定する第1のハーフシェルと、第2のハーフスペースを画定する第2のハーフシェルとを備える。第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルとは、プラスチック材料、特にポリマー材料から作られている。第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルは、第1のハーフスペースおよび第2のハーフスペースを含む空洞をブラケット内に画定するように、好ましくは溶着によって互いに固定されている。
【0006】
車両のシャーシ上に電動モータを支持するためのブラケットを製造する方法は、第1のハーフスペースを画定する第1のハーフシェルおよび第2のハーフスペースを画定する第2のハーフシェルを製造、好ましくは成形するステップであって、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルはプラスチック材料から作られるステップと、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルが第1のハーフスペースおよび第2のハーフスペースを含む空洞をブラケット内に画定するように、好ましくは溶着によって、第1のハーフシェルを第2のハーフシェルに固定するステップとを含む。
【0007】
組立体は、上記のブラケットと電動モータとを備え、ブラケットは、電動モータを支持するために電動モータに取り付けられている。
【0008】
空洞によって画定される中空体を有し、プラスチック材料から作られるブラケットは、750Hzから2000Hzの間の範囲において電動モータの振動を減衰および/または吸収することができる柔軟性または弾力性を有している。その結果、ブラケット自体は、その選択された材料とその形状により、750Hzから2000Hzの間の周波数範囲において減衰/吸収特性を提供する。電動モータは、1Hzから2000Hzの範囲の周波数を持つ固体伝播音を発生させると仮定すると、選択された材料と形状によって、発生した周波数範囲の約半分がブラケット自体によって減衰および/または吸収することができる。
【0009】
さらに、ブラケットは、互いに固定される2つのハーフシェルを製造または成形することにより、容易に製造することができる。またさらに、電動モータを支持するためのブラケットは、空洞であるため軽量でありながら、電動モータのかなりの重量を支持するための十分な強度を備えている。
【0010】
ブラケットの製造には、ネジあるいは、その他の固定手段は必要ない。これにより、ブラケットの組み立て工程が大幅に簡素化され、ブラケットの部品点数を減らすことができる。
【0011】
また、電動モータを車両のシャーシ上に支持するためのブラケットは、支持体、マウント、または電動モータを車両のシャーシ上に支持するための手段として理解することができる。また、ブラケットは、電動モータが発生するトルク負荷を受けるように構成されていてもよい。シャーシは、電動モータの重量に耐えることができる車両の任意の構成要素または部分である。
【0012】
車両は、電気自動車または電動モータと内燃機関との両方からなるハイブリッド自動車であることが好ましい。電気自動車は、少なくとも1つの電動モータが発生する動力によってのみ駆動される。電動モータは、電気エネルギを回転運動に変換することが可能な任意の電動モータである。電気自動車を駆動することができる任意の電動モータは、本願の理解において、電動モータとみなすことができる。電動モータは、動作時に、1Hzから2000Hzの間の周波数範囲において(固体伝播)振動を発生させることができる。電動モータまたは複数の電動モータは、好ましくは、車両に動力を供給するため、すなわち、車両を駆動するための動力を供給するために設けられる。
【0013】
ブラケットは、好ましくは、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルのみによって構成されてもよい。第1のハーフシェルは、第1のハーフスペースを画定する。第1のハーフスペースは、一方向のみに開口している空間である。第1のハーフスペースは、180°の立体角にわたる第1のハーフスペースによって提供される第1の表面によって閉じられるように、1つの平面においてのみ開かれていてもよい。同様に、第2のハーフシェルもまた、180°の立体角にわたる第2のハーフシェルによって提供される第2の表面によって第2のハーフスペースが画定されるように、1つの方向においてのみ開かれていてもよい。
【0014】
ブラケットは、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルのそれぞれの開口部を相互に接触させるように、第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとを貼り合わせることにより製造される。これは、ブラケットが完全に製造されると、第1のハーフスペースと第2のハーフスペースとが互いに連通し、ブラケット内に設けられた空洞が、第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとによって画定されることを意味する。特に、第1のハーフシェルの第1の表面および第2のハーフシェルの第2の表面は、(単独で)キャビティを画定する。第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルは、凸形状を呈していてもよい。
【0015】
第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルは、その対掌性を除いて互いに同一であってもよい。つまり、第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとは、右手と左手とのように互いに類似している。これにより、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルを成形するための成形型を互いに類似したものとすることができ、製造工程を簡略化することができる。
【0016】
ただし、第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとは、その構成が異なることもあり得る。例えば、第2のハーフシェルがブラケットの主要な構造を提供し、第1のハーフシェルが基本的に第2のハーフシェルを閉じるための蓋である。これに関しては、第1のハーフスペースは、第1のハーフシェルの凸形状によって画定されてもよい。
【0017】
第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルは、それぞれのハーフスペースの開口面を囲む線、すなわち第2のハーフスペースと第1のハーフスペースにそれぞれ隣接する線に沿って互いに固定されることが好ましい。第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとは、好ましくは溶着、特にホットガス溶着によって互いに固定されるが、接着などの他の手段でもよい。また、第2のハーフシェルの第2のハーフスペースは、特に第2のハーフスペースを囲む壁によって画定することもできる。第1のハーフシェルは、平面状または凸状の第1の表面(第2のハーフシェルとしての壁を含まない)が第2のハーフシェルの壁に固定されるように構成されてもよい。
【0018】
第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルは、それぞれ、第1のハーフスペースおよび第2のハーフスペースの開口面を囲む接触領域を含んでもよい。第1のハーフスペースおよび第2のハーフスペースは、接触領域において互いに固定される。接触領域は、例えば、上述した壁の端面などの線状または帯状であってもよい。
【0019】
第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルは、L字型の形状を有していてもよく、ブラケットもL字型の形状を有している。しかし、他の形状でもよい。ブラケットの形状は、電動モータおよびシャーシの形状に依存する。ブラケットの形状は、電動モータのシャーシへの最適な支持のために適合される。
【0020】
第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルは、硬質プラスチック材料から作られている。特に、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルは、同じプラスチック材料から作られる。プラスチック材料は、特にガラス短繊維によって繊維強化され得るポリマー・プラスチック材料であってもよい。第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルは、任意にガラス短繊維により強化された熱可塑性材料または任意に連続繊維により強化された熱可塑性材料から作ることができる。ブラケットの特定の材料および最終的な形状は、750Hzから2000Hzの間の周波数範囲において固体伝播音の最適な減衰特性を達成することができるように選択および設計される。第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとは、好ましくはホットガス溶着によって互いに取り付けられる。
【0021】
第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルがリブによって補強されていることが好ましく、好ましくは、リブが第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルと一体に形成されている。
【0022】
リブは、好ましくは、組み立てられたブラケットの強度および/または剛性を増加させる。さらに好ましくは、リブは、第1の表面および/または第2の表面を補強する。特に、ブラケットは中空部材であるため、リブは、ブラケットの重量を最小限に抑えながら、必要な強度を提供するのに役立つ。リブは、第1のハーフスペースおよび/または第2のハーフスペースを小区画に区分けしてもよい。リブは、例えば、ハーフシェルの1つが「蓋」として設計されている場合には、第1のハーフシェルまたは第2のハーフシェルにのみ配置されてもよい。
【0023】
リブは、好ましくは、(真っ直ぐな)線状に延びている。さらに、リブの数、配置、厚さおよび/または方向は、電動モータをシャーシ上に支持するためにブラケットの最適な強度を達成することができるよう設定されることが好ましい。その結果、リブを定義するパラメータは、シャーシ上に支持される電動モータの形状、重量分布および/または重量に強く依存する。リブは、リブの最適な配置を計算するためのシミュレーションプログラムを用いて決定してもよい。
【0024】
リブは、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルとは別個の要素であってもよい。好ましい実施形態としては、リブは、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルと一体に形成されている。リブは、好ましくは、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルと同じ成形ステップにおいて製造される。しかし、リブは、別の製造ステップにおいて製造し、その後、例えば溶着によって、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルに取り付けることもできる。リブは、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルと同じ材料、特に、ガラス短繊維によって任意に強化された熱可塑性材料から製造されてもよい。第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとの両方がリブを備えていることが好ましい。しかしながら、第1のハーフシェルのみ、または第2のハーフシェルのみがリブを備えることもできる。
【0025】
リブは、好ましくは、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルからそれぞれの他方のハーフシェルに向かう方向に突出しないように、それぞれの第1のハーフスペースおよび第2のハーフスペースにのみ配置される。例えば、リブの深さは、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルの深さに対応する。一方のハーフシェルのリブは、第1のハーフシェルを第2のハーフシェルに固定する際に、それぞれの他方のハーフシェルのリブに接触することができる。
【0026】
ブラケットは、好ましくは空洞内に配置されたダンパを含んでおり、さらに好ましくは、ダンパは、振動質量と、ブラケットおよび振動質量に取り付けられた第1の弾性部材とを含んでいる。
【0027】
好ましくは、ダンパは、振動質量と、ブラケットと振動質量との間に配置された第1の弾性部材とを備えている。さらに好ましくは、ダンパは、電動モータから発生する振動を吸収/減衰させるために設けられる。特に、ダンパは、電動モータから発生する振動によって誘起されるブラケットの固有振動数をシフトまたは低減させるために設けられる。ダンパは、ブラケットが最も高い固有モード振幅を示す位置に設けられることが好ましい。この位置は、シミュレーションによって計算してもよいし、プロトタイプのブラケットを用いて測定してもよい。ダンパは、電動モータから発生する400Hzから750Hzの周波数帯域の振動を減衰/吸収するために設けられることが好ましい。
【0028】
振動質量は、金属部品であってもよい。一般に、振動質量は、ブラケットの材料よりも重い材料、すなわち、高い密度を有する材料から作られる。振動質量は、第1の弾性部材によってブラケットに対して振動する。第1の弾性部材は、振動質量とブラケットとの間に配置される。例えば、振動質量は、第1の弾性部材によってブラケットに取り付けられる。したがって、振動質量は、ブラケットに対して振動して、ブラケット自体の振動を吸収したり、固有振動数をシフトさせたりすることができる質量として作用する。
【0029】
第1の弾性部材は弾性材料からなることが好ましく、第1の弾性部材が振動質量を取り囲む層を備えることが好ましい。
【0030】
第1の弾性部材の弾性材料は、熱可塑性エラストマ(TPE)であってもよく、層状に形成されている。好ましくは、振動質量は、立方体または直方体の形状を有する。さらに好ましくは、第1の弾性部材は、振動質量の少なくとも2つの反対側の面に配置される。好ましくは、第1の弾性部材は、振動質量を完全に取り囲む。
【0031】
好ましい実施形態において、第1の弾性部材が、2部品構成を有する。第1の弾性部材は、第1の部分と、第1の部分とは別の第2の部分とを備えていてもよい。弾性部材の第1の部分は、一面を除く全ての面において振動質量を取り囲んでいてもよい。例えば、立方体の振動質量の場合においては、第1の弾性部材の第1の部分は、立方体の振動質量の5つの面を覆っている。
【0032】
第1の弾性部材の第2の部分は、第1の弾性部材の第1の部分によって覆われていない振動質量の側面を覆う。その結果、振動質量を第1の弾性部材の第1の部分に挿入することが可能となる。第2のステップにおいては、第1の弾性部材によって覆われていない側面を、第1の弾性部材の第2の部分によって覆う。このようにして、振動質量が第1の弾性部材に固定されることなく、単に形状固定的に保持することができる。
【0033】
第1の弾性部材は、振動質量と、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルと一体に形成されるダンパ壁との間に配置され、第1の弾性部材の一部と第2のハーフシェルとは、二重射出成形工程によって同時に製造されることが好ましい。
【0034】
第1の弾性部材のうち、第2のハーフシェルと二重射出成形工程により同時に製造される部分は、上述したような第1の部分であってもよい。第2の部品は、別の成形工程により製造されてもよいし、第1のハーフシェルと二重射出成形工程により同時に製造されてもよい。後者の場合においては、第1の弾性部材の第2の部分は、第1のハーフシェルに固定される。その結果、振動質量は、第1のハーフシェルを第2のハーフシェルに固定する際に、ブラケット内にポジティブロックされることができる。
【0035】
ダンパ壁は、第2のハーフシェルの第2の表面から第2のハーフスペースに突出してもよい。つまり、ダンパ壁はブラケットの空洞内に配置される。ダンパ壁は、リブの一部分として構成されてもよい。さらに、ダンパ壁は、リブと同じ構成を有していてもよいが、リブとは別に、またはリブの代わりに配置されていてもよい。好ましい実施形態としては、ダンパ壁は、リブの直線的な延長線と交差している。
【0036】
例えば、ダンパ壁は振動質量の4つの面を囲み、第2のハーフシェルの第2の表面は第5の面から振動質量を覆う。一般に、ダンパ壁と第2のハーフシェルの組み合わせは、振動質量が配置されるハーフスペースを提供する。特に、振動質量は、ダンパ壁と第2の表面とによって画定されるハーフスペースにおいて、弾性部材によって振動することができる。
【0037】
第2のハーフシェル上に第1のハーフシェルを配置することにより、ダンパ壁と第2の表面とにより画定されるハーフスペースの第6の面または開口面を閉鎖して、振動質量がブラケットに形状固定的に保持される。第2のハーフシェル上に第1のハーフシェルを取り付けると、第1の弾性部材の第2の部分が、振動質量と第1のハーフシェルとの間の振動質量上に配置される。
【0038】
第1のハーフシェルは、任意にポケットを備える。ダンパ壁と同様にポケットの底は、ダンパがポジティブロックされる空間を画定する。ポケットは、ダンパ壁によって画定された空間を閉じるために、第1のハーフスペースに台(plateau)を形成してもよい。第1の弾性部材の第2の部分は、ポケットの底部に取り付けられてもよい。ポケットおよび第1の弾性部材の第2の部分を含む第1のハーフシェルは、二重射出成形工程により製造されてもよい。ポケットは省略してもよく、第1の外面はダンパをダンパ壁にポジティブロックするための壁として機能してもよい。
【0039】
ブラケットは、電動モータをブラケットに取り付けるための少なくとも1つの絶縁ブッシュを備えることが好ましく、絶縁ブッシュは、電動モータに接続される剛性材料からなる本体と、本体を取り囲む第2の弾性部材とを備えることが好ましく、第2の弾性部材が本体とブラケットの第1の開口部の内面との間に配置されていることがさらに好ましい。
【0040】
絶縁ブッシュは100Hzから400Hzの周波数帯域の(固体伝播)振動を減衰/吸収するために提供されている。減衰/吸収特性は、ブラケットに弾性的に取り付けられた電動モータの質量によって達成される。その結果、電動モータの質量はダンパ/アブソーバとして機能する。必要に応じて、ブラケットは、絶縁ブッシュを介在させて電動モータにのみ固定される。
【0041】
電動モータをブラケットに取り付けるために、剛性材料からなる本体が提供される。例えば、本体は、電動モータをブラケットに取り付けることができるボルトまたはネジを挿入するための貫通孔をその軸方向延長に沿って有する細長い部材であってもよい。他の実施形態においては、本体は、電動モータを取り付けることができるブラケットから突出する細長い部材であってもよい。本体は、断面視において、円形状または星形状を有していてもよい。
【0042】
第2の弾性部材は、ブラケットと本体との間に弾性的な動きを与えるために本体とブラケットとの間に配置される。特に、少なくとも1つの第1の開口部がブラケットに配置されており、これは、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルの両方が同じ位置において第1の開口部のそれぞれの部分を構成し、本体が第2のハーフシェルと同様に第1のハーフシェルを通して第1の開口部に挿入され得るようにすることを意味している。本体は、金属材料から作られてもよく、あるいは、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルの材料と同一の材料から作られてもよい。
【0043】
第2の弾性部材の材料もTPEであってもよい。また、第2の弾性部材は、本体を取り囲む層として構成されてもよい。第2の弾性部材は、第1の開口部の内面に固定的に取り付けられてもよい。電動モータをブラケットに支持するために、2つ以上の第1の開口部、および2つ以上の絶縁ブッシュが設けられることが好ましい。第1の開口部は、断面視において星形であってもよいが、他の形状でもよい。
【0044】
本体と第2の弾性部材の断面視における厚みだけでなく形状は、最適な減衰/吸収特性を実現するために提供されている。電動モータの重量は第1の絶縁ブッシュにかかるので、リブは第1の開口部と連結していることが好ましい。第1の開口部の内面は、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルと一体のものであってもよい。
【0045】
第2の弾性部材および第2のハーフシェルは、二重射出成形工程により同時に製造されることが好ましい。
【0046】
これにより、製造工程を大幅に削減することができる。なお、本体は、製造工程後に第2の弾性部材の開口部に挿入されてもよいし、第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとが互いに固定された後に挿入されてもよい。第2の弾性部材は、第1の開口部の内面に配置された層であってもよい。第2の弾性部材は、第1の開口部の内面を完全に取り囲んでいてもよいし、第1の開口部の内面の角部分に配置されていてもよい。
【0047】
好ましい実施形態において、第1の開口部の内面は、第2のハーフシェルによってのみ提供される。第2のハーフシェルにおける第1の開口部を画定する壁は、第2のハーフシェルから突出していてもよい。特に、第1のハーフシェルにおける第1の開口部は、壁構造を含まず、単に第1の表面における貫通孔である。第2のハーフシェルにおける第1の開口部を画定する壁は、第1のハーフシェルが第2のハーフシェルに固定されるとき、第1の表面まで延びてもよい。この場合においては、第2の弾性部材は、第2のハーフシェルとの二重射出成形工程により完全に製造することができる。
【0048】
第1の開口部の壁は、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルと一体のものであってもよい。第1のハーフシェルと第2のハーフシェルは、第1のハーフシェルが第2のハーフシェルに固定されたときに、第1の開口部のそれぞれの壁において任意に互いに接触し、第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとが提供する第1の開口部の壁が第1の開口部の連続した内面を形成するようにすることができる。
【0049】
ブラケットは、ブラケットをシャーシに取り付けるための少なくとも1つの取付ブッシュを備えることが好ましく、ブラケットは、第1のハーフシェルを第2のハーフシェルに固定する際に、取付ブッシュを第2の開口部にポジティブロックするために第2の開口部の軸方向端部に配置され第2の開口部に延びる突起を含んでいることが好ましい。
【0050】
取付ブッシュは、1Hzから100Hzの範囲の(固体伝播)振動を減衰させるために設けられてる。取付ブッシュは、ゴムブッシュとも呼ばれる。
【0051】
取付ブッシュは、ブラケットをシャーシに取り付けるために使用される。このため、ブラケットは、取付ブッシュが配置される第2の開口部を備えている。ブラケットの形状および電動モータの重量配分に応じて、2つ以上の取付ブッシュおよび第2の開口部が設けられてもよい。必要に応じて、ブラケットは、取付ブッシュを介在させてシャーシにのみ固定される。
【0052】
第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルは、好ましくは、それぞれ、第2の開口部の一部を構成する。第2の開口部は、第2の開口部の外周に沿って延びるブッシュ壁によって形成されてもよい。第2の開口部は、断面視において円形であってもよいが、他の形状でもよい。
【0053】
ブッシュ壁は、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルと一体のものであってもよい。第1のハーフシェルのブッシュ壁および第2のハーフシェルのブッシュ壁は、ブッシュ壁が第2の開口部の連続した内面を形成するようにするように、第1のハーフシェルが第2のハーフシェルに固定されるとき任意に互いに接触する。
【0054】
ブッシュ壁は、第2のハーフシェルまたは第1のハーフシェルのみと一体になったものであってもよく、これはブッシュ壁が第1または第2のハーフシェルの一方のみによって提供されることを意味する。第1および第2のハーフシェルの他方は、第2の開口部の位置に貫通孔だけを含んでもよく、貫通孔は、それぞれのハーフシェルにおける軸方向端部の突起として機能する内面構造を有する。例えば、内面構造の直径は、取付ブッシュの外径より小さくてもよい。また、それぞれの他のハーフシェルが、第2の開口部の位置において減少した厚さを有することも可能であり、例えば、それぞれのハーフスペースは、第2の開口部の周りに延在している。
【0055】
なお、突起は、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルの両方の第2の開口部に配置されてもよい。特に、突起は、第1の外面および第2の外面の同一平面上に配置され得る軸方向端部にそれぞれ配置される。また、突起を第1および/または第2の外面に隣接して配置することもできる。
【0056】
突起は、第2の開口部の内面に沿って周方向に延びるリブとして形成されてもよいし、好ましくは外周に沿って等距離に分布する1つまたは複数の突起として形成されてもよい。突起は、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルと一体のものであってもよい。突起は、取付ブッシュが軸方向において突起の上を移動できないように半径方向に延びている。例えば、突起の内径は、外周に沿ったそれぞれの位置において、取付ブッシュの外径よりも小さくなっている。
【0057】
この突起は、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルの第2の開口部の軸方向両端に配置されているので、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルを固定すると、取付ブッシュが第2の開口部内にポジティブロックされることになる。その結果、ブラケットに取付ブッシュを固定するための追加の手段は不要である。特に、ブラケットに取付ブッシングを固定するために接着剤または接合剤を使用する必要はない。しかし、例えば、取付ブッシュとブラケットとの間の接続の強度または耐久性を高めるために、取付ブッシュをブラケットに固定するために結合剤を使用してもよい。
【0058】
取付ブッシュは、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルの成形工程とは別工程により製造されてもよい。取付ブッシュは、第1のハーフシェルまたは第2のハーフシェルに形成された第2の開口部に差し込むだけでよい。
【0059】
第2の開口部の内面は、取付ブッシュの形状に適合した形状、すなわち、断面視における内面の形状が円形から逸脱した形状を有していてもよい。
【0060】
取付ブッシュは、シャーシに接続されるスリーブと、スリーブを取り囲むゴム部材とを備えることが好ましく、スリーブがプラスチック材料などの剛性材料によって構成されていることがさらに好ましい。
【0061】
スリーブは細長い部材であってもよく、好ましくはシャーシに接続される。スリーブは、スリーブの軸方向に延びる貫通孔を備えていてもよく、この貫通孔には、スリーブ、ひいてはブラケットをシャーシに固定するためのボルトまたはネジを挿入することができる。スリーブは、プラスチック材料などの剛性材料から作られてもよく、好ましくはブラケットと同じプラスチック材料から作られる。また、スリーブは、金属材料から作られてもよい。
【0062】
ゴム部材は、ゴム材料からなることが好ましい。ゴム部材がTPEから作られていること、および/またはゴム部材が、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルとともに二重射出成形工程により製造されることも可能である。ゴム部材は、電動モータによって発生し、ブラケットを経由して取付ブッシュに伝達される振動を減衰/吸収するために設けられた取付ブッシュの弾性的な部分である。
【0063】
スリーブは、円筒形の外周面を有していてもよい。ただし、他の形状のスリーブであってもよい。ゴム部材は、スリーブの全周に渡ってスリーブを取り囲んでいてもよい。また、ゴム部材は、スリーブのうち第2の開口部に配置される部分のみに取り付けられていてもよい。スリーブは、ブラケットの片側または両側においてブラケットから突出していてもよい。また、スリーブは、第1および/または第2の外面と同一平面上にあってもよい。ゴム部材は、例えばゴム部材をスリーブに加硫することによって、スリーブに固定されてもよい。スリーブとゴム部材とは、別々の製造工程により製造されてもよい。
【0064】
ブラケットは、それぞれの第2の開口部に配置された少なくとも2つの取付ブッシュを備えていることが好ましく、少なくとも2つの取付ブッシュは、その形状および/または材料において異なることが好ましい。
【0065】
なお、2つの第2の開口部と2つの取付ブッシュとは、ブラケットの反対側の面に配置されていてもよい。電動モータの重量配分により、またはブラケットの配置により、2つの取付ブッシュに作用する荷重が異なることがあり得る。この荷重の差に対処するために、2つの取付ブッシュは、その構成、特にその形状および/または材料が異なる。例えば、低い荷重を受ける一方の取付ブッシュは、高い荷重を受ける他方の取付ブッシュと比較して低い剛性を備える構成、例えば材料、から構成されている。このような設計とすることにより、両方の取付ブッシュに作用する荷重にかかわらず、両方の取付ブッシュの減衰特性を同等とすることができる。例えば、一方の取付ブッシュには、剛性の異なる材料が使用されている。また、ゴム部材の厚みや体積を一方の取付ブッシュと他方の取付ブッシュとで異ならせて、同等の減衰/吸収特性を確保することも可能である。
【0066】
取付ブッシュが、第2の開口部の半径方向に延びる凹部に挿入される少なくとも1つのアームを備えることが好ましく、少なくとも2つの取付ブッシュは、少なくとも1つのアームの向きにおいて異なることが好ましい。
【0067】
取付ブッシュのアームは、スリーブから直接突出していてもよいし、アームが突出している周方向のゴム部材の一部によりスリーブが完全に取り囲まれていてもよい。アームは3つ、4つ、5つまたは6つ存在することが好ましい。アームは、好ましくは、同じ直径および長さを有するが、その方向が異なる。方向が異なるため、取付ブッシュの有効剛性は、特定の方向によって異なる。このようにして、特定の方向に異なる剛性を有する2つの異なる取付ブッシュを備えることが可能であり、それによって、2つの取付ブッシュは、同様の方向性を有することができる。アームおよび凹部の存在により、凹部内の取付ブッシュの向きを固定することができる。
【0068】
第2の開口部は、取付ブッシュのそれぞれのアームを受け入れるために、第2の開口部の内面に沿って配された凹部を備えてもよい。特に、凹部の寸法は、アームの寸法に適合している。アームが凹部の内面に完全に接触することが好ましく、アームがその半径方向に沿って延び、および/または外周に沿って凹部に接触する。アームは、凹部が矩形断面を示すように、矩形断面を有していてもよい。
【0069】
取付ブッシュは、ゴム部材の径方向外周に配置される外側スリーブを備えていてもよい。外側スリーブは、外周に沿って一定の間隔でのみ配置されていてもよい。例えば、外側スリーブは、アームの半径方向外側の端部にのみ配置することができる。また、ゴム部材の全周にわたって外側スリーブが広がっていてもよい。ゴム部材の一部がスリーブまたは外側スリーブにのみ固定されていてもよい。
【0070】
ブラケットは、電動モータを取り囲む形状の音響絶縁カバーを備え、音響絶縁カバーはブラケットに固定的に取り付けられていることが好ましい。
【0071】
音響絶縁カバーは空気伝播音の低減のために設けられることが好ましく、一方、上記の構成要素を有するブラケットは、固体伝播音の遮断のために設けられることが好ましい。特に、音響絶縁カバーは、音響騒音として認識される2000Hz以上の周波数を有する振動または騒音を遮断するために設けられる。
【0072】
このため、音響絶縁カバーは、電動モータを特に四方から取り囲むような形状となっている。好ましくは、空気伝播音を低減するために、音響絶縁カバーが電動モータを完全に取り囲んでいる。ただし、音響絶縁カバーには、電動モータから音響絶縁カバーを通して軸線またはワイヤを外部に案内するために必要な開口部、貫通孔、通路を設けることができる。さらに、音響絶縁カバーには、換気を目的とした開口部が設けられていてもよい。これらの孔は、音響ノイズを低減するノイズ低減材が充填されてもよいが、空気が通るようにしてもよい。
【0073】
音響絶縁カバーは、電動モータの外形に沿うように、すなわち電動モータと音響絶縁カバーとの間に隙間がない、またはほとんどないように構成、形成されていてもよい。特に、音響絶縁カバーが電動モータに接触して、または間隔を空けて配置されることも可能である。音響絶縁カバーには、空気伝播音を減衰またはキャンセルするための機械的手段が設けられてもよい。
【0074】
音響絶縁カバーは、ブラケットによって支持される。例えば、音響絶縁カバーに2つのブラケットが設けられていてもよい。例えば、音響絶縁カバーは、シャーシに設けられたブラケットによってのみ保持されてもよい。しかし、音響絶縁カバーを支持するために、音響絶縁カバーにさらなる取付手段/取付部が設けられることも可能である。
【0075】
特に、ブラケットは、音響絶縁カバーに固定的に取り付けられる。音響絶縁カバーは、例えば、ボルト、ネジなどの締結要素によって、またはスナップフィット接続によって、ブラケットに機械的に固定されてもよい。さらに、音響絶縁カバーは、接着によって、または溶着によって、ブラケットに固定的に取り付けられてもよい。特に、ブラケットを音響絶縁カバーに取り付けた後は、この組立体は、一体型の部品であってもよい。
【0076】
音響絶縁カバーをブラケットに固定的に取り付ける利点は、ブラケットの固体伝播音または振動減衰能力により、音響絶縁カバーが電動モータによって発生する振動から同時に切り離されることである。そのため、音響絶縁カバーを電動モータから切り離すための追加的な減衰手段が不要になる。
【0077】
音響絶縁カバーは、第1の絶縁ハーフシェルと第2の絶縁ハーフシェルとを備えることが好ましく、さらに好ましくは、第1の絶縁ハーフシェルと第1のハーフシェルとは一体型のユニット部品であり、またさらに好ましくは、第2の絶縁ハーフシェルは第1の絶縁ハーフシェルに機械的に固定されている。
【0078】
音響絶縁カバーが、例えば第1の絶縁ハーフシェルおよび第2の絶縁ハーフシェルの、2つ以上の別部材により構成されいることにより、音響絶縁カバーの内側に電動モータを配置することができる。これは、シャーシにおいてブラケットを用いて第1の絶縁カバーを配置し、ブラケットに電動モータを取り付け、その後、第1の絶縁ハーフシェルに第2の絶縁ハーフシェルを取り付けることにより実現される。
【0079】
特に、第1の絶縁ハーフシェルと第2の絶縁ハーフシェルとの接触箇所において空気伝播音が漏れないように、第1の絶縁ハーフシェルと第2の絶縁ハーフシェルとが互いに固定されている。第1の絶縁ハーフシェルは、例えば、ネジ、ボルト等の締結手段を設けることにより、および/または、スナップフィット接続により、第2の絶縁ハーフシェルに機械的に固定されてもよい。さらに、第1の絶縁ハーフシェルが、接着または溶着の手段によって第2の絶縁ハーフシェルに固定されることも可能である。
【0080】
締結要素が第1の絶縁ハーフシェルと第2の絶縁ハーフシェルとを取り付けるために使用される場合においては、第1および第2の絶縁ハーフシェルの一方は、第1および第2の絶縁ハーフシェルのそれぞれの他方の上に突出する孔を有する舌状部を備えてもよく、それによって、舌状部の孔と同じ位置に、締結要素がその中を導かれるように、さらなる孔が設けられる。
【0081】
第1の絶縁ハーフシェルおよび/または第2の絶縁ハーフシェルは、それぞれ2部品構成であってもよい。例えば、第1の絶縁ハーフシェルおよび/または第2の絶縁ハーフシェルは、支持部材と絶縁部材とから構成されてもよい。支持部材は、安定性および強度を提供するための剛性材料から作られ、それによって、絶縁部材は、それぞれの支持部材の空気伝播音を吸収、減衰またはキャンセルし、かつ/または対応する支持部材の振動を減衰または吸収することが可能な材料から作られる。
【0082】
支持部材は、任意にガラス繊維により強化された熱可塑性材料から製造されてもよい。支持部材は、熱成形によって製造されてもよい。絶縁部材は、ポリプロピレンまたは天然繊維から製造されてもよく、これは絶縁材料をリサイクル可能にするという利点を有する。支持部材および絶縁部材は、絶縁部材が支持部材に接着またはスナップフィットされるように、同じ形状であってもよい。また、絶縁部材が支持部材の表面の一部のみを覆うこともできる。
【0083】
絶縁部材は、支持部材の内面(電動モータに対向する面)および/または外面に配置されてもよい。特に、絶縁部材を支持部材の両面に配置することも可能である。
【0084】
ブラケット、特に第1のハーフシェル、および音響絶縁カバー、特に第1の絶縁ハーフシェル、好ましくは支持部材は、一体型であってもよい。特に、第1の絶縁ハーフシェルとブラケットの第1のハーフシェルは、同じ射出成形工程により製造されてもよい。したがって、絶縁ハーフシェル(特に支持部材)とブラケットのハーフシェルとは、同じ材料から作られてもよい。
【0085】
音響絶縁カバーが、音響絶縁カバーをシャーシおよび/または電動モータに取り付けるための取付部分を備えることが好ましく、取付部分が、絶縁ブッシュおよび/または取付ブッシュを備えることがより好ましい。
【0086】
取付部分は、音響絶縁カバーをシャーシおよび/または電動モータに支持するために、音響絶縁カバーに取り付けられる1つまたは複数のブラケットとは異なる要素である。取付部分は、特に使用される材料および/または構造的構成に関して、ブラケットと同様にすることができる。例えば、取付部分は、取付部分の強度を高めるためのリブを含んでいてもよい。取付部分は、音響絶縁カバーに機械的に固定されてもよく、または取付部分は、音響絶縁カバー、特に第1の絶縁ハーフシェル、より詳細には支持部材と一体化したものであってもよい。
【0087】
取付部分は、第1の絶縁ハーフシェルおよび/または第2の絶縁ハーフシェルに固定されてもよい。取付部分は、シャーシと電動モータとの間の接続を提供すると同時に、音響絶縁カバーを支持してもよい。取付部分は、電動モータによって発生しブラケットに作用するトルクを支持するのに役立つ場合がある。
【0088】
また、取付部分は、電動モータが発生する振動をシャーシから切り離すための手段を備えてもよい。特に、ブラケットと関連付けて説明したのと同様の要素を、取付部分によって電動モータをシャーシから切り離すために使用してもよい。例えば、取付部分は、上述したような絶縁ブッシュおよび/または上述したような取付部分を含んでいてもよい。
【0089】
また、取付部分が、絶縁ブッシュを受け入れるための第1の開口部および/または取付ブッシュを受け入れるための第2の開口部を含むこともできる。取付部分の第1および第2の開口部の形状および/または他の構成は、ブラケットのものと同様である。取付部分は、第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとから構成される、ブラケットの2部品構成を示さない場合もある。取付部分は、1回の射出成形工程により製造された、例えば成形された一体型部品であってもよい。
【0090】
ブラケットと関連して説明した全ての実施形態、好ましい構成および利点は、ブラケットを製造するための方法にも等しく適用される。
【0091】
上述した方法のステップa)は、二重射出成形工程によって、ダンパの第1の弾性部材を第2のハーフシェルと共に製造することを含み、ダンパの振動部材が第1の弾性部材に取り付けられることが好ましい。
【0092】
上述の方法のステップa)が、第1のハーフシェルおよび第2のハーフシェルに少なくとも1つの第1の開口部を設けることを含み、第1の開口の内面が第2の弾性部材によって覆われることが好ましく、第2の弾性部材および第2のハーフシェルが二重射出成形工程により製造されることがより好ましい。
【0093】
上述の方法のステップb)に先立って、ブラケットをシャーシに取り付けるための少なくとも1つの取付ブッシュが、第1のハーフシェルおよび/または第2のハーフシェルに配置される第2の開口部の一部に挿入され、好ましくは、第2の開口部は、第1のハーフシェルを第2のハーフシェルに固定する際に、取付ブッシュを第2の開口部内にポジティブロックするために、第2の開口部の軸方向端部に配置されて第2の開口部に延びる突起を含む。
【0094】
本発明の好ましい実施形態について、添付の図面とともに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】ブラケットの第1実施形態を示す斜視図である。
図2図1のブラケットを示す分解斜視図である。
図3図1のブラケットの部分的な組立図である。
図4図1のブラケットの断面図である。
図5図1のブラケットの取付ブッシュを示す縦断面図である。
図6】音響絶縁カバーを有するブラケットの第2の実施形態の第1のハーフシェルを示す分解斜視図である。
図7図6の構成要素の組み立てられた構成を示す斜視図である。
図8図7の構成要素の側面図である。
図9図6の音響絶縁カバーの第1の絶縁ハーフシェルの底面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
図1は、車両のシャーシ(図示せず)に電動モータ(図示せず)を取り付けるために使用されるブラケット10の斜視図である。
【0097】
ブラケット10は、第1のハーフシェル12と第2のハーフシェル14とを備えている。第1のハーフシェル12および第2のハーフシェル14は、好ましくは、同じプラスチック材料、好ましくは、ガラス繊維強化ポリマー材料、任意にガラス短繊維により強化された熱可塑性材料、または任意に連続繊維により強化された熱可塑性材料から作られる。第1のハーフシェル12は、第1の外面16を備え、第2のハーフシェル14は、第2の外面18を備えている。第1のハーフシェル12を第2のハーフシェル14に取り付けると、ブラケット10の外面は、第1の外面16と第2の外面18とによって定義される。
【0098】
図2図3および図4から分かるように、第1のハーフシェル12の第1の外面16は第1のハーフスペース20を画定し、第の2ハーフシェル14の第2の外面18は第2のハーフスペース22を画定している。その結果、ブラケット10は、第1のハーフスペース20と第2のハーフスペース22とによって構成される空洞を含む。第1のハーフスペース20および第2のハーフスペース22は、第1のハーフシェル12および第2のハーフシェル14の、それぞれの他方に向けられる平面において開口している。
【0099】
それぞれの平面は、接触領域24によって画定され、囲まれている。第1のハーフシェル12と第2のハーフシェル14は、接触領域24において、好ましくはホットガス溶着によって互いに固定される。接触領域24は、(図2図3図4に示すような)線の形状を有していてもよいし、帯状であってもよい。接触領域24は、第1のハーフシェル12および/または第2のハーフシェル14の端面であってもよい。
【0100】
第1のハーフシェル12および/または第2のハーフシェル14は、複数のリブ26を備えている。リブ26は、直線に沿って延びていてもよい。リブ26は、第1の外面16および/または第2の外面18から、それぞれ第1のハーフスペース20および第2のハーフスペース22内に突出している。リブ26の深さは、接触領域24によって画定される平面から突出しないようなものである。リブ26は、第1のハーフシェル12および/または第2のハーフシェル14と一体のものであってよい。
【0101】
リブ26の数、配置、および広がりは、第1のハーフシェル12および/または第2のハーフシェル14が補強されるようなものである。リブ26の配置により、ブラケット10は、電動モータの重量を支持することができる。さらに、ブラケット10の製造は、ブラケット10が、好ましくは溶着によって互いに固定される第1のハーフシェル12および第2のハーフシェル14から作られるので、追加のネジまたはボルトを必要としない。
【0102】
ブラケット10は、任意に、ダンパ28を備えている。図2から特に分かるように、ダンパ28は、振動質量30と第1の弾性部材32とを備えている。ダンパ28は、好ましくは、ブラケット10の空洞内に設けられる。振動質量30は、第1の弾性部材32によってブラケット10に取り付けられている。その結果、振動質量30は、ブラケット10に対して振動することができる。ダンパ28は、ブラケット10の固有モード振動の振幅が最も大きくなるブラケット10の位置に設けられる。この位置は、計算されてもよいし、テストルーチンによって決定されてもよい。ダンパ28は、ブラケット10の固有振動を低減するために、またはブラケット10の振動の固有モードの周波数をシフトさせるために設けられる。
【0103】
第1の弾性部材32は、第1の部分34と、第1の部分34とは別の第2の部分36とを備えていてもよい。揺動質量30は、ブラケット10内にポジティブロックされてもよい。第1の弾性部材32は、振動質量30を取り囲む層を備えていてもよい。例えば、第1の部分34は、振動質量30を5つの側面から取り囲む。第1の弾性部材32の第2の部分36は、振動質量30の6つ目の側面において振動質量30を覆っていてもよい。
【0104】
振動質量30は、ブラケット10の材料よりも重い材料によって製造されてもよい。例えば、振動質量30は、金属から製造されてもよい。第1の弾性部材32が振動質量30を完全に包囲しているので、振動質量30は、減衰/吸収特性を備えつつ、任意の方向に振動することができる。
【0105】
なお、振動質量30は、第1の弾性部材32に接着により固定されていてもよい。しかし、振動質量30は、第1の弾性部材32内にポジティブロックされていることが好ましい。ダンパ28は、ブラケット10に接着等によって取り付けられてもよい。また、ダンパ28は、代替的にまたは追加的に、ブラケット10内にポジティブロックされていることも可能である。
【0106】
例えば、第2のハーフシェル14はダンパ壁38を備え、および/または、第1のハーフシェル12はポケット40を備えている。ダンパ壁38と同様にポケット40の底部は、ダンパ30がポジティブロックされる空間を画定する。ダンパ壁38は、リブ26によって提供されてもよい。この場合には、ダンパ壁38は、リブ26と交差している。ダンパ壁38は、リブ26と同じ形状を有していてもよい。ポケット40は省略されてもよく、第1の外面16は、ダンパ28をダンパ壁38内にポジティブロックするための壁として機能してもよい。
【0107】
第1の弾性部材32の第1の部分34は、第2のハーフシェル14と二重射出成形工程により同時に製造されてもよい。第2のハーフシェル14および第1の弾性部材32の第1の部分34の製造後、振動質量30は、第1の弾性部材32の第1の部分34に挿入されてもよい。その後、ポケット40の底面が第1の弾性部材32の第2の部分36を振動質量30に押し付けるように、第1の弾性部材32の第2の部分36が、振動質量30の、第1のハーフシェル12が第2のハーフシェル14に取り付けられている側に配置される。
【0108】
第1の弾性部材32の第2の部分36は、ポケット40の底面に、例えば、接着剤により取り付けられることもできる。また、第1の弾性部材32の第2の部分36は、第1のハーフシェル12の二重射出成形工程により製造されることも可能である。第1の弾性部材32は、熱可塑性エラストマ(TPE)から製造されてもよい。
【0109】
ブラケット10は、任意に、少なくとも1つの絶縁ブッシュ42を備えている。本実施形態においては、2つの絶縁ブッシュ42が設けられている。絶縁ブッシュ42は、ブラケット10と電動モータとの接続を提供する。絶縁ブッシュ42は、本体44と、第2の弾性部材46とを含んでいてもよい。本体44は、金属材料または硬質プラスチック材料から作られてもよい細長い部材を含むことができる。本体44は、電動モータをブラケット10に取り付けるためのネジまたはボルトを挿入するための貫通孔をその軸方向に備えていてもよい。
【0110】
電動モータ取付用のブラケット10から本体44を突出させることも可能である。本体44は、断面視において星形の外周面を有していてもよい。しかし、断面視における外周面の形状は、他の形状も可能である。
【0111】
第2の弾性部材46は、本体44とブラケット10の第1の開口部48との間の層として形成されている。また、第2の弾性部材46もTPEから作られてもよく、好ましくは、第1のハーフシェル12および/または第2のハーフシェル14との二重射出成形工程により製造される。特に、第2のハーフシェル14に配置された第1の開口部48は、第2のハーフスペース22から第1のハーフシェル12に向かって突出する。したがって、第1の開口部48の内面は、ほとんど、または第2のハーフシェル14にのみ配置され、第2のハーフシェル14との二重射出成形工程において第2の弾性部材46を完全に製造することが可能であるように、第2のハーフシェル14に配置される。第1のハーフシェル12は、絶縁ブッシュ42、特に本体44を挿入することができる孔のみを備えてもよい。
【0112】
リブ26は、電動モータの重量が第1の開口部48によってブラケット10に導入されるため、第1の開口部48を強化するために、第1の開口部48から形成されていてもよい。本体44は、第1の開口部48に既に配置されている第2の弾性部材46に挿入されてもよい。つまり、本体44は、第2のハーフシェル14および第2の弾性部材46の製造後の後工程において挿入される。
【0113】
ブラケット10は、任意に、取付ブッシュ50を備えている。本実施形態においては、2つの取付ブッシュ50が設けられている。取付ブッシュ50は、ブラケット10のシャーシへの取り付けを可能にする。
【0114】
取付ブッシュ50は、スリーブ52とゴム部材54とを備えていてもよい。また、取付ブッシュ50が外側スリーブ56を含むことも可能である。スリーブ52は、その軸方向に沿って延びる貫通孔を含んでもよい細長い部材である。貫通孔は、ブラケット10をシャーシに取り付けるためのボルトまたはネジを挿入するために設けられる。スリーブ52は、金属材料またはプラスチック材料から製造されてもよい。
【0115】
ゴム部材54は、弾性材料、特にゴム材料により作られている。ゴム部材54は、例えば加硫によりスリーブ52に固定されている。図4から最もよくわかるように、ゴム部材54は、少なくとも1つのアーム58、特定の実施形態においては4つのアーム58を備えている。ゴム部材54は、周方向においてスリーブ52を完全に取り囲んでいてもよく、それによって、アーム58は、ゴム部材54の、スリーブ52に取り付けられている部分から突出している。
【0116】
外側スリーブ56は、スリーブ52と同じ材料、特にプラスチック材料により作られていてもよい。外側スリーブ56は、ゴム部材54を取り囲んでいる。ゴム部材54の一部は、特にアーム58の間の領域において、単独で外側スリーブ56に取り付けられてもよい。アーム58の先端は、外側スリーブ56に取り付けられてもよい。外側スリーブ56は、ブラケット10の第2の開口部60に取付ブッシュ50をより良く挿入するために設けられている。
【0117】
ブラケット10は、図示の実施形態においては、2つの第2の開口部60を有している。第2の開口部60は、第1のハーフシェル12と第2のハーフシェル14との両方に設けられている。ただし、第2の開口部60の内面の全体は、第2のハーフシェル14においてのみ設けられている。第1のハーフシェル12は、第1のハーフシェル12における第2の開口部が単に貫通孔となるように、第2の開口部60の周囲において減少した厚さを示してもよい。また、第2の開口部60の内面は、第1のハーフシェル12と第2のハーフシェル14とによって提供されてもよい。
【0118】
第2の開口部60の内面は、取付ブッシュ50のアーム58を受け入れるために設けられた複数の凹部62を備えている。第2の開口部60は、その軸方向両端に突起64を備えている。図5から良くわかるように、突起64は、第2の開口部60の内面から半径方向に内側に延びている。一実施形態においては、第2の開口部60の内面は第2のハーフシェル14にのみ設けられているので、第1のハーフシェル12の第2の開口部60のみが突起64を備えている。
【0119】
突起64は、第2の開口部60の内周面全体にわたって延びるリブとして構成されていてもよい。ただし、突起64は、第2の開口部60に配置された複数の突起によって提供されることも可能である。図5から分かるように、突起64は、第2の開口部60の軸方向両端部に配置されている。突起64は、取付ブッシュ50が突起64の間においてブラケット10の第2の開口部60内にポジティブロックされるような長さだけ第2の開口部60の内面から径方向内側に突出している。
【0120】
第2のハーフシェル14の第2の開口部60は、リブ26と同様に構成されるブッシュ壁66によって提供されてもよい。ブッシュ壁66は、リブ26によって補強、例えば、リブ26が第2の開口部60、すなわちブッシュ壁66において起点または終点となってもよい。ブッシュ壁66は、第2のハーフシェル14と一体のものであってもよい。上述したように、ブッシュ壁66の全体は、第2のハーフシェル14によって提供されてもよい。
【0121】
第1のハーフシェル12の第2の開口部60は、貫通孔のみであってもよく、これにより、第1のハーフシェル12における軸方向端部の突起64は、貫通孔の径を小さくして構成することができる(図6参照)。特に、貫通孔の内径(第1のハーフシェル12における第2の開口部60)は、取付ブッシュ50の外径よりも小さくなっている。
【0122】
取付ブッシュ50は、別の製造工程により製造されてもよい。取付ブッシュ50は、第2のハーフシェル14の第2の開口部60に挿入されてもよい。その後、取付ブッシュ50が突起64によって第2の開口部60にポジティブロックされるように、第1のハーフシェル12が第2のハーフシェル14に固定される。その結果、ブラケット10に取付ブッシュ50を固定するための接着手段またはさらなる取付手段は必要ない。
【0123】
ブラケット10のさらなる実施形態について、図6から図9と併せて説明する。このブラケット10は、以下の相違点を除き、上記で説明したブラケット10と同様の構成である。なお、図6から図9は、ブラケット10の第1のハーフシェル12のみを示している。第2のハーフシェル14(図6から図9には示されていない)は、図1から図5に示された実施形態の第2のハーフシェル14と同一であってもよい。
【0124】
ブラケット10は、音響絶縁カバー68を含む。実際には、2つのブラケット10が音響絶縁カバー68に取り付けられている。ブラケット10は、音響絶縁カバー68に固定的に取り付けられている。音響絶縁カバー68は、電動モータ(図示せず)を取り囲むように構成され、かつ、その形状が形成されている。音響絶縁カバー68は、2000Hz以上の周波数を有する空気伝播音を低減、減衰、および/またはキャンセルするために設けられている。ブラケット10は、2000Hz以下の周波数を有する固体伝播音を低減、減衰、および/またはキャンセルするために設けられている。
【0125】
音響絶縁カバー68は、電動モータに接触していてもよいし、電動モータとは間隔をあけて配置されていてもよい。また、音響絶縁カバー68は、一部が電動モータに接触しており、一部が電動モータに対して間隔をあけて配置されていてもよい。図6から図9から分かるように、音響絶縁カバー68は、電動モータの外郭に沿うように形成され、成形されている。良好な騒音絶縁能力を達成するために、音響絶縁カバー68は、好ましくは、電動モータを完全に取り囲むように形成されている。しかしながら、図6から図9に見られるように、音響絶縁カバー68は、音響絶縁カバー68を通して電動モータからの軸線またはワイヤを案内するために使用され得る貫通孔および/または開口部を含んでもよい。さらに、電動モータから発生する熱を放出するために、通気孔を設けてもよい。
【0126】
音響絶縁カバー68は、第1の絶縁ハーフシェル70と第2の絶縁ハーフシェル72とを備えている。第1の絶縁ハーフシェル70および/または第2の絶縁ハーフシェル72は、支持部材74および絶縁部材76を含むことができる。図示の実施形態においては、第1の絶縁ハーフシェル70のみが支持部材74および絶縁部材76を含んでいる。第2の絶縁ハーフシェル72は、支持部材74のみから構成されている。
【0127】
支持部材74の各々は、音響絶縁カバー68に安定性と強度を与える。支持部材74は、ガラス短繊維により強化された熱可塑性材料から製造することができる。絶縁部材76は、ポリプロピレンから製造されてもよく、空気伝播音だけでなく、固体伝播音を低減し減衰させるために設けられる。特に、絶縁部材76は、第1の絶縁ハーフシェル70の支持部材74と同様に形成され、形状が決められている。絶縁部材76は、第1の絶縁ハーフシェル70の支持部材74の外面(電動モータに対向しない面)を完全に覆っていてもよい。また、絶縁部材76は、支持部材74に接着により固定されていてもよい。絶縁部材76は、振動を減衰させることができる材料であるので、絶縁部材76は、支持部材74の振動を低減させ、電動モータから発生する空気伝播音を吸収することが可能である。
【0128】
第1の絶縁ハーフシェル70の支持部材74は、ブラケット10の第1のハーフシェル12と一体のものである。支持部材74は、ブラケット10の第1のハーフシェル12と1回の射出成形により作製することができる。これにより、音響絶縁カバー68は、ブラケット10によって支持され、電動モータから発生した振動がブラケット10によって減衰され、音響絶縁カバー68に伝達されないようにすることができる。
【0129】
第1の絶縁ハーフシェル70の支持部材74と第2の絶縁ハーフシェル72の支持部材74とは、互いに機械的に取り付けられていることが好ましい。このため、第1の絶縁ハーフシェル70の支持部材74は、第2の絶縁ハーフシェル72の方向に突出する複数の舌状部78を含む。舌状部78は、図7に見られるように、第2の絶縁ハーフシェル72を第1の絶縁ハーフシェル70に取り付ける際に、第2の絶縁ハーフシェル72の孔と同軸に整列される孔を含む。
【0130】
音響絶縁カバー68は、さらに、取付部分80を含んでいてもよい。取付部分80は、第1の絶縁ハーフシェル70の支持部材74と一体のものであってもよい。取付部分80は、音響絶縁カバー68を電動モータおよび/またはシャーシに取り付けるために設けられる。
【0131】
図6から図9に示す実施形態においては、取付部分80は、電動モータだけでなく、シャーシの両方にも接続されるように構成されている。電動モータおよびシャーシに対する取付部分80の取り付けは、ブラケット10の取り付けと同様である。取付部分80は、例えば図9に示すように、絶縁ブッシュ42が挿入される第1の開口部48を含んでいてもよい。絶縁ブッシュ42と連動する第1の開口部48は、音響絶縁カバー68の電動モータへの取り付けを可能にすると同時に、音響絶縁カバー68と電動モータとの間のノイズデカップリングを提供する。
【0132】
また、取付部分80の第2の開口部60には、図6から図9に示されない取付ブッシュ50を含めることができる。このように、取付部分80は、シャーシに取り付けられると同時に、シャーシから切り離されることも可能である。
【0133】
また、取付部分80は、リブ26を含んでもよい(図9参照)。また、取付部分80は、リブ26によって補強された中空部材でもある。しかし、ブラケット10とは対照的に、取付部分80は、ブラケット10のような2部品構成を示さない、一体型の部材である。
【0134】
ブラケット10の有益な側面について、以下に説明する。ブラケット10が、リブ26によって潜在的に補強された2つのハーフシェル12,14によって作られている構成のため、ブラケット10は、電動モータを支持するための十分な強度を提供しながらも軽量化されている。ブラケット10の軽量の側面は、ブラケット10をプラスチック材料から製造することによってさらに提供される。プラスチック材料の特性と、リブ26によって補強された中空部材としてのブラケット10の構成とによって、750Hzから2000Hzの間の周波数帯域において電動モータによって発生する振動を減衰/吸収することが可能である。
【0135】
ダンパ28は、400Hzから750Hzの間の周波数帯域の振動を吸収/減衰することができる。ダンパ28の第1の弾性部材32は、第1のハーフシェル12および/または第2のハーフシェル14とそれぞれ二重射出成形工程により製造することができるので、ダンパ28の製造が簡略化される。
【0136】
絶縁ブッシュ42は、100Hzから400Hzの周波数帯域において減衰/吸収特性を発揮する。このため、電動モータの重量と第2の弾性部材46の剛性との組み合わせにより、減衰/吸収特性が得られる。ここでも、第2のハーフシェル14および第2の弾性部材46との二重射出成形工程により、絶縁ブッシュ42の製造が簡略化される。
【0137】
電動モータから発生する1Hzから400Hzの間の周波数帯域の振動の減衰/吸収は、取付ブッシュ50によって実現される。取付ブッシュ50のブラケット10への取り付けは、第1のハーフシェル12と第2のハーフシェル14とを取り付けることにより取付ブッシュ50がポジティブロックされるため、簡単である。その結果、取付ブッシュ50をブラケット10に取り付けるための追加の手段は不要である。
【0138】
全体的にみれば、ブラケット10の好ましい実施形態は、1Hzから2000Hzの間の周波数帯域にわたって、電動モータによって生成される振動の完全な減衰/吸収を提供する。基本的に、電動モータによって発生する全ての振動は、その好ましい実施形態におけるブラケット10によって減衰され得る。さらに、ブラケット10のハーフシェル構造により、ブラケット10ならびにオプション部品(ダンパ28、絶縁ブッシュ42および/または取付ブッシュ50)の組立工程を簡素化することができる。
【0139】
以下、好ましい実施形態に係るブラケット10の製造工程を説明する。第1のハーフシェル12は成形工程により製造され、それによって好ましくは、第1の弾性部材32の第2の部分36が二重射出成形工程によって同時に製造される。同様に、第2のハーフシェル14は成形され、それによって、好ましくは、第1の弾性部材32および第2の弾性部材46は、二重射出成形工程により同時に成形される。
【0140】
第2のハーフシェル14の成形後、ダンパ28の振動質量30は、第1の弾性部材32の第1の部分34に挿入される。さらに、絶縁ブッシュ42の本体44が、第2の弾性部材46に挿入される。最後に、取付ブッシュ50が第2の開口部60に挿入される。
【0141】
その後、第1のハーフシェル12は、好ましくはホットガス溶着によって第2のハーフシェル14に固定される。第1のハーフシェル12が第2のハーフシェル14に固定されることにより、振動質量30は第1の弾性部材32内にポジティブロックされる一方、取付ブッシュ50も突起64の存在により第2の開口部60にポジティブロックされる。つまり、ブラケット10の組み立て工程においては、追加のネジや他の取り付け手段を必要としない。このため、取り付け工程が簡略化され、部品点数が削減される。
【符号の説明】
【0142】
10 ブラケット
12 第1のハーフシェル
14 第2のハーフシェル
16 第1の外面
18 第2の外面
20 第1のハーフスペース
22 第2のハーフスペース
24 接触領域
26 リブ
28 ダンパ
30 振動質量
32 第1の弾性部材
34 第1の部分
36 第2の部分
38 ダンパ壁
40 ポケット
42 絶縁ブッシュ
44 本体
46 第2の弾性部材
48 第1の開口部
50 取付ブッシュ
52 スリーブ
54 ゴム部材
56 外側スリーブ
58 アーム
60 第2の開口部
62 凹部
64 突起部
66 ブッシュ壁
68 音響絶縁カバー
70 第1の絶縁ハーフシェル
72 第2の絶縁ハーフシェル
74 支持部材
76 絶縁部材
78 舌状部
80 取付部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】