(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】活性ベースプローブ
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20221025BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221025BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20221025BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20221025BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20221025BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20221025BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
C07K19/00
C12N9/10
C12Q1/48
C12Q1/37
C12N15/10 200Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513369
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2020074069
(87)【国際公開番号】W WO2021038034
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510279918
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ダンディー
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF DUNDEE
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】サトパル バーディー
(72)【発明者】
【氏名】スニール マートゥル
(72)【発明者】
【氏名】アダム フレッチャー
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050CC04
4B050CC05
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4B050EE10
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4H045AA10
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4H045BA41
4H045CA40
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4H045EA50
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4H045FA50
4H045FA52
4H045FA53
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は新規な光架橋活性ベースプローブ(ABPs)の開発およびそれらの使用に向けられる。具体的には、ユビキチンチャージドE2コンジュゲーティング酵素は工学的に作り出され、およびRINGユビキチンE1およびE3リガーゼならびに脱ユビキチン化酵素の有効なABPsであることが示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユビキチンの位置31でのグルタミン残基および/または位置32でのアスパラギン酸残基の代わりに光架橋剤モイエティを含む、活性化ユビキチン分子。
【請求項2】
ユビキチンはヒトユビキチンである、請求項1に記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項3】
光架橋剤モイエティは、アスパラギン酸/グルタミン残基の代わりに非自然アミノ酸、例えば、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニンなどのようなものの組込みによって得られた、請求項1または2のいずれかに記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項4】
レポータータグをさらに含む、いずれかの先行する請求項に記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項5】
レポータータグは、ビオチンモイエティ、または分析的検出を可能にする他のレポーター、例は、エピトープタグ、フルオロフォアである、請求項4に記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項6】
ビオチンモイエティ/レポータータグは、ユビキチンのN末端に付着したリンカー分子を通してユビキチン分子に共有結合的に付着している、請求項4または請求項5に記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項7】
E2コンジュゲーティング酵素にコンジュゲーションした、いずれかの先行する請求項に記載の活性化分子を含む、コンジュゲート分子。
【請求項8】
E2コンジュゲーティング酵素は、C85KもしくはC87K変異および/またはS22RもしくはK92A変異を含む変異酵素である、請求項7に記載のコンジュゲート分子。
【請求項9】
E2コンジュゲーティング酵素はUBE2D3またはUBE2Nである、請求項7または8に記載のコンジュゲート分子。
【請求項10】
N末端His-タグ基、例えば、ヘキサヒスチジンタグなどのようなものをさらに含む、請求項7-9のいずれかに記載のコンジュゲート分子。
【請求項11】
RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素の活性プロファイリングの方法における、請求項7-10のいずれかに記載のコンジュゲート分子の使用。
【請求項12】
活性プロファイリングはRING E3酵素のものである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
(i)RING E3酵素調節の研究、(ii)新規RING E3酵素の発見、(iii)インヒビタースクリーニング、(iv)インヒビター選択性プロファイリング;および/または(v)構造研究用の酵素中間体の安定化のための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項7-10のいずれかに記載のコンジュゲート分子とRING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素との間の相互作用を検出する方法であって、コンジュゲート分子を前記RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素と接触させること、および任意の新しいコンジュゲートの形成を検出することを含む、方法。
【請求項15】
RING E3酵素は、RNF4、Cbl、例えば、c-Cblなどのようなもの、Praja2、TRIM11、HECT(11)、RBR(1)、RCR(1)TRAF6、TRAF2およびHLTFの任意の一つまたは組合せであり、および脱ユビキチン化酵素はDUBs(31)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
相互作用はRING E3酵素とのものである、請求項14または請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は新規な光架橋活性ベースプローブ(ABPs)の開発およびそれらの使用に向けられる。具体的には、ユビキチンチャージドE2コンジュゲーティング酵素は工学的に作り出され、およびRINGユビキチンE1およびE3リガーゼならびに脱ユビキチン化酵素の有効なABPsであることが示される。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
活性ベースのタンパク質プロファイリングは、酵素生物学を研究し、および治療用物質の開発を促進するための非常に貴重な技術である。ユビキチンE3リガーゼ(E3s)は、最大の酵素ファミリーの1つであり、および多数の(病理)生理学的プロセスを調節する。最大のサブタイプはRING E3sであり、それには>600メンバーがある。RING E3sは、アダプター様活性を持ち、それは多様な調節機構が得られることを条件とすることができ、および魅力的な薬物ターゲットとなった。我々の知識の及ぶ限りでは、RING E3活性を測定するための活性ベースのプローブ(ABPs)は、存在しない。
【0003】
ユビキチン化は正常な細胞生理を調節する基本的な翻訳後修飾であり、およびその機能不全は疾患の発症につながることがある(Rape(ラペ), M.(2018). Nat Rev Mol Cell Biol(ネイチャー・レビューズ・モレキュラー・セル・バイオロジー)19, 59-70)。ユビキチン化はユビキチンE1活性化(E1)、ユビキチンE2コンジュゲーティング(E2)およびユビキチンE3リガーゼ(E3s)の順次活性を含む酵素カスケードによって行われる(Hershko(ハーシュコ),A.およびCiechanover(チカノヴァー),A.(1998). Annu Rev Biochem(アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー) 67, 425-479.)。ユビキチン(Ub)はE1での触媒に関するシステインからE2での触媒に関するシステイン上へ共有結合的に移され、チオエステル連結したE2中間体(E2~Ub)が形成される。E2~Ubを補充し、および特定の基質をユビキチン化するE3sは数百種類存在することが知られている。E3機構の分岐は2つの全般的クラスに大別される。「Cys E3s」はその~50が存在し、基質修飾に先立ちUbと共有結合チオエステル連結中間体を形成するために触媒に関するシステインを利用する(K. C. Pao(パオ)ら, Nature(ネイチャー), 2018, 556, 381-385;Scheffner(シェフナー), M., Nuber(ヌバー), U., およびHuibregtse(ハイブレグツェ), J.M.(1995). Nature 373, 81-83; Wenzel(ヴェンツェル), D.M.,ら(2011), Nature 474, 105-108)。
【0004】
しかしながら、E3sの最大のクラスは>600の別個の形態が存在するアダプター様E3sである(Deshaies(デシャイエス), R.J., およびJoazeiro(ジョアゼイロ), C.A.(2009). Annu Rev Biochem 78, 399-434)。アダプター様E3sは触媒作用の求核剤を欠き、およびE2~Ubから基質へのUbの直接移動を触媒する。このアダプター様活性はマルチサブユニットのCullin(カリン)-RING E3sおよび~350の単一ポリペプチドRING E3s(以下、単にRING E3sと称する)によって利用される。後半は、単量体、ホモダイマーまたはヘテロダイマーとして存在することができる(Metzger(メッツガー), M.B.らBiochim Biophys Acta(ビオチミカ・エト・ビオフィシカ・アクタ)1843, 47-60)。活性調節は細胞の恒常性および適応的なシグナル伝達を確実にするE3生物学の特に重要な態様である。調節不全は疾患の発症につながることがあり、およびそれゆえRING E3sは魅力的な治療標的となった(Burgess(バージェス),A.ら(2016).Front Oncol(フロンティアズ・イン・オンコロジー)6, 7)。しかしながら、非常に多数のRING E3sについての細胞の役割および調節機構はまだ不十分にしか理解されていないままである。さらに、RING E3sは最近、標的化されたタンパク質分解戦略(例は、PROTAC方法論)に適合することが示された(Naito(ナイト), M., Ohoka(オホカ), N., およびShibata(シバタ), N.(2019). Drug Discov Today Technol(ドラッグ・ディスカバリー・トゥデイ:テクノロジーズ), 31, 35-42;Spradlin(スプラドリン), J.N.ら(2019). Nat Chem Biol(ネイチャー・ケミカル・バイオロジー)15, 747-755;Ward(ウォード), C.C.ら(2019). ACS Chem Biol.(ACSケミカル・バイオロジー))。臨床的情況においてどのRING E3sが活性であるかを決定するためのツールは、この潜在能力をさらに強化するために必要である。
【0005】
アダプター様E3sの特質は、活性状態にあるとき、それらが動力学的なE2~Ub立体構造アンサンブルを明確な集団に向かってシフトし、そこではE2~Ubコンジュゲートが折り返しまたは「閉じた」立体構造を採用することである(Dou(ドウ), H.ら(2012b). Nat Struct Mol Biol(ネイチャー・ストラクチュラル&モレキュラー・バイオロジー), 19, 876-883;Plechanovova(プレハノヴォワ), A.ら(2012). Nature 489, 115-120.;Pruneda(プルネダ),J.N.ら(2012). Mol Cell(モレキュラー・セル), 47, 933-942;Pruneda,J.N.ら(2011). Biochemistry(バイオケミストリー)50, 1624-1633;
図1aを参照)。この立体構造は、E2~Ub内のチオエステル結合を求核攻撃に対して活性化し、および効率的なアミノリシス活性のための要件である。RING E3活性は調節されることができ、および活性化状態への切り替えは、Ub成分とかみ合う構造的特長を獲得し、それによって閉じた立体構造の誘導を促進するE3によって達成される。例えば、RING E3s、例えば、RNF4およびBIRC7などのようなものは、RINGドメインの二量化によって活性化され、そこでは第二のRINGプロトマーの尾部領域がUb成分とかみ合う(Dou, H.ら, 2012b;Plechanovova, A.ら, 2012, supra(前掲))。二量化は細胞シグナルによって調節することができ、およびRNF4の場合、これはポリSUMO鎖への結合によってもたらされる(Rojas-Fernandez(ロハス・フェルナンデス), A.らMol Cell, 53, 880-892)。
【0006】
単量体RING E3sの活性化について、いわゆる非RING要素がUb成分を結合することでの役割を果たすことが示されており、ならびにCbl-bおよびc-Cblの場合には、これはリン酸化チロシン残基である(Dou, H.らNat Struct Mol Biol, 20, 982-986)。リン酸化は増殖因子刺激に応答してキナーゼc-Srcによって行われ、およびCblの活性化は受容体および非受容体チロシンキナーゼのユビキチン化および分解を誘発する。二量化を必要とするRING E3sおよび非RING要素の存在もまた報告されている(Koliopoulos(コリオプロス), M.G.らEMBO J(ザEMBOジャーナル), 35, 1204-1218)。追加のRING E3活性化機構は、アクセサリタンパク質またはリガンドのアロステリック結合を含め、存在する(DaRosa(ダ・ローザ), P.A.らNature, 517, 223-226;Dickson(ディクソン), C.ら(2018). Elife(イーライフ), 7;Duda(ドゥダ), D.M.ら(2012). Mol Cell, 47, 371-382;Wright(ライト), J.D., Mace(メース), P.D.,およびDay(デイ), C.L.(2016). Nat Struct Mol Biol, 23, 45-52)。活性化RING E3sに結合したE2~Ubの非常に多くの結晶構造が解かれ、高度に保存された結合様式が明らかになった(Dou, H.ら2012bおよび2013;Koliopoulos, M.G.ら2016;Plechanovova, A.ら2012;Wright, J.D., Mace, P.D.,およびDay, C.L., 2016, 前掲)。重要なことに、閉じたE2~UbコンジュゲートにおけるUb成分のコンセンサス領域は活性化RINGの近傍となる。さらに、生物物理学的分析は、これまでに研究された活性化RING E3sがそれらの不活性型よりもE2~Ubについてより一層高い自由エネルギーの結合を有することができると実証する(Berndsen(ベルンセン),C.E.ら(2013). Nat Chem Biol. 9, 154-156.;Buetow(ビュータウ), L.ら(2016). BMC Biol.(BMCバイオロジー)14, 76)。
【0007】
活性ベースプローブ(ABPs)は、酵素ファミリーメンバーの活性依存的な共有結合標識化を受ける強力な化学的ツールである(Hewings(ヘウィングス), D.S.らFEBS J., 284, 1555-1576;Niphakis(ニファキス), M.J.およびCravatt(クラヴァット), B.F.(2014). Annu Rev Biochem., 83, 341-377)。これにより、以下のことが可能になる:(i)酵素調節の研究、(ii)新規酵素クラスの発見、(iii)インヒビタースクリーニング、(iv)インヒビター選択性プロファイリング(v)構造研究のための酵素中間体の安定化(Hu, M.らCell(セル), 111, 1041-1054)。我々および他の者はCys E3s用のABPsを開発し、それはE3活性化機構を解明し、およびまったくの新規なE3クラスを発見するために展開されてきた(Love(ラブ), K.R.らACS Chem. Biol., 4, 275-287;Mulder(ムルダー), M.P.ら(2016). Nat. Chem. Biol., 12, 523-530;Pao, K.C.ら(2016). Nat. Chem Biol., 12, 324-331;Xu(スー), L.ら(2019). Chem. Commun. (Camb)(ケミカル・コミュニケーションズ(ケンブリッジ)), 55, 7109-7112)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らの知る限り、RING E3リガーゼ活性を評価するABPsは目下存在しない。本発明は、RING E3リガーゼを評価するABPsを提供することによってこれに対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(本発明の概略)
理論に縛られることなく、本発明者らは、閉じたE2~Ub内のUb成分の保存された(および活性に依存した)コンセンサス相互作用が活性化RING E3sについての結合の自由エネルギーの向上と相まって、ABPsの開発のために利用することができたと考える。
【0010】
工学的に作り出されたユビキチン分子に基づくABPsをここに開示する。ユビキチンの31位でのグルタミン残基および/または32位でのアスパラギン酸残基の代わりに光架橋剤モイエティを含む活性化ユビキチン分子が、E2コンジュゲーティング酵素にコンジュゲーションされたときにABPsとして驚くほど有効であることが見出された。そのようなABPsは、多様なサンプルタイプにおけるRING E3リガーゼの活性プロファイリングに有効であり、および例えば、RING E3調節の研究、標的発見、バイオマーカー応用、モジュレーター発見および構造研究のために有用であり得る。
【0011】
したがって、第一の態様において、本発明は、ユビキチンの位置31でのグルタミン残基および/または位置32でのアスパラギン酸残基の代わりに光架橋剤モイエティを含む、活性化ユビキチン分子を提供する。
【0012】
第二の態様において、本発明はE2コンジュゲーティング酵素にコンジュゲーションした第一の態様の活性化分子を含む、コンジュゲート分子を提供する。
【0013】
第三の態様において、本発明は、RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素の活性プロファイリングの方法における、第二の態様のコンジュゲーテッド分子の使用を提供する。
【0014】
第四の態様において、本発明は、第二の態様のコンジュゲート分子とRING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素との間の相互作用を検出する方法を提供し、本方法は、第二の態様のコンジュゲート分子を前記RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素と接触させること、および任意の新しいコンジュゲートの形成を検出することが含まれる。例えば、コンジュゲートに濃縮可能なレポーター基、例えば、ビオチンなどのようなものを付加することによって、活性化RING E3sを自然な細胞から濃縮し、および質量分析によって識別することができる。
【0015】
熟練した人は、本発明の一態様へのいかなる言及も、その態様のあらゆる実施態様を含むことを認識している。例えば、本発明の第一の態様への任意の言及は第一の態様および第一の態様のすべての実施態様を含む。
(図のリスト)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1-1】
図1:RING E3リガーゼについての光架橋ABPsの生産のための戦略および合成スキーム。a)活性化RING E3の結合は、それ以外の立体構造的に動力学的なE2~Ubコンジュゲートの閉じた立体構造を誘導する。活性化はRINGの二量化によって達成されることができるが、単量体のRING E3sは非RING要素(NRE)の存在によって活性化することができる。E2~UbのUb成分はRING/NRE領域と相互作用する。b)安定化E2~Ubコンジュゲート内のp-ベンゾイル-L-フェニルアラニン(Bpa)架橋アミノ酸の賢明な(judicious)組込みは、RING E3活性のためのABPとして機能する。c)活性化した、二量体RING E3(RNF4)との複合体でのE2~Ubの結晶構造である。活性化E3に近接近するUb内の10のアミノ酸部位をBpa組込みについてテストした。Q31は最適であることが見出された。d)ABPを光架橋するための合成スキームである。
【
図2-1】
図2:光ABPsおよびビオチンタグ付き光ABP-UbBpa31プローブの組み立ておよび特徴付け。a)UbBpa31のE2(UBE2D3 C85K S22K二重変異体)へのユビキチンE1活性化酵素による代表的酵素のコンジュゲーションのSDS-PAGE分析である。アスタリスクは推定されるジユビキチン種に対応する。b)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後のプローブ生産物の代表的な精製画分である。c)精製した光ABP-UbBpa31についてのRP-HPLCクロマトグラムである。d)光ABP-UbBpa31の絡まりを解いた(Deconvoluted、デコンボリューションした)質量スペクトラムである。観察した質量=27901Da、観察した質量(-Met)=27771 Da。期待した質量=27908.87 Da、期待した質量(-Met)=2777.67 Da。
【
図3-1】
図3:RNF4 E3リガーゼ活性の活性依存的プロファイリング。a)構成的に活性なRNF-RING融合タンパク質は2つのE2~Ubコンジュゲートを生産的にかみ合わせることができる。b)プローブ光ABP-UbBpa31(40μM)はRNF4-RING(10μM)により二つの架橋反応を受ける。c)一方または両方のE2~Ubコンジュゲートのかみ合わせはRNF-RINGでの片方または両方のRINGドメイン中に導入されたM140A R181A二重変異により妨害することができる。d)プローブの光ABP-UbBpa31(40μM)の架橋は一方または両方のRINGドメインが変異しているかどうかによって減衰または消失する。e)E2成分中へのF62A変異の導入はE3結合を失わせるべきである。f)架橋は光ABP-UbBpa31 F62A(プローブ濃度5μM)により消失される。g)二量化についてK
d未満の濃度では、RNF4は不活性である。ポリSUMO鎖の結合は二量化およびE3リガーゼ活性を誘導する。h)光ABP-UbBpa31(5μM)は自然なRNF4(100nM)のポリSUMO鎖(10μM)依存架橋を受けるが、RINF4-RING(50nM)はポリSUMO鎖に依存せず架橋する。
【
図4-1】
図4:EGF刺激対非刺激のHEK293T細胞のc-Cbl E3リガーゼ活性の活性依存的なプロファイリングおよび活性に基づくプロテオーム解析。a)c-Src(1.5μM)によりプレインキュベーションしたc-Cbl(3μM)だけが光ABP Bpa31(5μM)の架橋を受ける。架橋は、Cbl Y371(3μM)(それは活性化部位でリン酸化することができない)をSrcと共にインキュベートするとき、観察されない。Cblのリン酸化は電気泳動移動度での低下をもたらす。b)哺乳類HEK293細胞におけるGFP-Cblおよびc-Srcの一過性過剰発現である。抽出物を光ABP31 Bpa31またはF62Aコントロールプローブ(5μM)により処理した。IBは免疫ブロットを示し、および検出に使用した一次抗体は隣接する(即ち、抗Cbl)。c)光ABP-UbBpa31または光ABP-Bpa31 F62Aコントロールプローブ(10μM)のいずれかによるHEK293T抽出物の免疫ブロット分析である。ブロッティングはABPs内に存在するヘキサヒスチジンレポータータグに対して行った。サンプルは60分間照射し、または照射を控えた。d)ビオチン化光ABP-Bpa31を用いた活性ベースプロテオミクスワークフローを描く模式図である。e)ABPプロファイルされたHEK293T細胞から得られたスペクトルカウント値である。検索結果はPFAMドメイン用語「RING」に対してフィルタリングされ、および任意の複製実験において>2スペクトルカウント値を有するRING E3sだけをプロットした。細胞は血清飢餓状態にし、およびEGFを伴うか、または伴わないでか、およびUV照射を伴うか、または伴わないでかのいずれかで処理した。エラーバーは二回の技術的な反復LC-MS/MS分析からの標準誤差に対応する。
【
図5】活性化RING:E2~Ub複合体の構造的な重ね合わせ。活性化RING E3sはE2~Ubを結合し、およびアミノリシスについてチオエステルを活性化する「閉じた」E2~Ub立体構造を誘導する(NB(注)、提示した結晶構造では、E2触媒システインのセリンまたはリジンそれぞれへの変異によって、不安定なチオエステルがエステルまたはイソペプチド連結に置き換えられた)。閉じた立体構造はRINGが混成物E2~Ubの界面に結合することによって誘導される。特に重要なことに、RNF4およびBIRC7の場合、Ub成分はRINGプロトマー2との相互作用によって閉じた立体構造において保持される。Cbl-bについて、リン酸化チロシンモイエティ(pTyr)は非RING要素として機能し、および閉じた立体構造を促進する。TRIM25の場合、二量化および非RINGのグルタミン酸(Glu)残基の存在は閉じた立体構造を促進する。
【
図6】光架橋アミノ酸p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン(Bpa)のユビキチンのRING近位部位への組込みである。SDS-PAGE分析およびクーマシー染色による視覚化である。陽性コントロールとして、参照アミノ酸であるt-ブチルオキシカルボニル-L-リジン(BocK)を位置6にてUb中に組み込んだ。精製を促進するために、C末端のHisタグをUbに付加し、それはその後、脱ユビキチン化酵素UCH-L3で処理することによって除去した。各変異について、UCH-L3処理前後のサンプルを分析した。
【
図7-1】
図7:ユビキチンBpa変異についてのエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル。スペクトルはC末端His-tagの開裂後のUbに対応する。位置6についてのアンバー変異クローンを除き、UbはN末端MGSモチーフと共に発現する。この促進したクローニングについてのDNAコード配列の導入である。これらの後半部のクローンについて、N-末端のメチオニンは細胞のメチオニルアミノペプチダーゼによって様々な程度に開裂される。A)UbBpa6、観察質量=8686 Da;期待=8787.95 Da。B)UbBpa9(-Met)、観察質量=8857 Da;期待=8859.15 Da。UbBpa9、観察質量=8988Da、期待=8990.35Da。C)UbBpa11(-Met)、観察質量=8830Da;期待=8832.08Da。UbBpa11、観察質量=8961Da、期待=8963.28Da。D)UbBpa13(-Met)、観察質量=8845Da;期待=8847.1Da。E)UbBpa14(-Met)、観察質量=8857 Da;期待=8859.15 Da。UbBpa14、観察質量=8988Da、期待=8990.35Da。F)UbBpa31(-Met)、観察質量=8830Da;期待=8832.12Da。UbBpa31、観察質量=8961Da、期待=8963.32Da。G)UbBpa32(-Met)、観察質量=8845Da;期待=8845.17Da。UbBpa32、観察質量=8976Da、期待=8976.37Da。H)UbBpa34(-Met)、観察質量=8830Da;期待=8831.14Da。UbBpa34、観察質量=8961 Da;期待=8962.34 Da。I)UbBpa40(-Met)、観察質量=8831 Da;期待=8832.12 Da。UbBpa40、観察質量=8962Da、期待=8963.32Da。J)UbBpa64(-Met)、観察質量=8830 Da;期待=8831.14 Da。UbBpa64、観察質量=8961Da、期待=8962.34Da。K)UbBpa72(-Met)、観察質量=8803 Da;期待=8804.07 Da。8836 Daにて観察されたピークは未識別の付加物に相当する。
【
図8】光ABP-UbBpa31を与えるための安定化イソペプチド連結を介したUbBpa31のE2への代表的な酵素的コンジュゲーション。SDS-PAGE分析およびクーマシー染色による視覚化(上部)である。プローブ産物はサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した(下部)。
【
図9】光ABP-Bpa31についての代表的なLC-MS分析である。214nmにて測定したHPLCクロマトグラムである。光ABP Bpa31(-Met)、観察質量=27769Da;期待質量=27777.67Da。光ABP Bpa31(-Met)、観察質量=27901Da;期待質量=27908.87Da。
【
図10】イソペプチド連結E2~Ubコンジュゲート内の10の異なるUb位置にBpaを組み込んだ場合のRNF4-RING光架橋効率の評価である。Bpaを位置31に組み込んだ場合だけ有意な組込みが達成され、プローブ光ABP-UbBpa31が与えられた。参照アミノ酸のt-ブチルオキシカルボニル-L-リジン(BocK)およびBpaはこの部位が非自然アミノ酸の組込みに非常に寛容であるため、位置6に組込まれ、およびコントロールとして働いた。
【
図11】RNF4-RINGの用量反応性光架橋である。RNF4-RINGの光架橋効率は光ABP-UbBpa31の上昇する濃度に反応した。
【
図12】リン酸化c-Cblと光ABP-UbBpa31および光ABP-UbBpa31 F62Aコントロールプローブとの光架橋である。精製c-Cbl(3μM)をc-Src(1.5μM)と共にATP(5mM)存在下で37℃にて45分間プレインキュベートした。反応混合物を次に指定されたプローブ(5μM)でプロファイリングした。プローブ光ABP-Bpa31はc-Cbl架橋を受けるが、光ABP-Bpa31F62Aはそうでない。
【
図13】ユビキチン内の複数の位置でのBpa組込についての光架橋効率の比較である。プローブ分析に先立ちc-Src(1.5 3μM)とのインキュベーションによってc-Cbl(3μM)をリン酸化した。位置31および位置32でのBpaの組込みだけが機能的なプローブを与える。
【
図14】Cbl架橋の用量反応分析である。C-Cbl(3μM)はプローブ分析に先立ちc-Src(1.5μM)とインキュベーションすることでリン酸化した。5μMを超えて増加する光ABP-UbBpa31の濃度の結果として、Cbl標識効率での増加は観察されなかった。
【
図15】c-Src処理したc-CblのPhostag(フォスタグ)SDS-PAGE分析である。c-Cblの低下した電気泳動移動度はATP存在下でだけ観察される。ゲルシフトが定量的であることから、これはリン酸化も定量的でなければならないことを指し示す。しかし、光ABP-UbBpa31による架橋効率は5μMを超えると用量反応性でなかった。このことは、c-Cblが複数の部位でリン酸化されることになるが、Y371では準化学量論的であることと矛盾しない。
【
図16】細胞Cblの光架橋はY371の存在に厳密に依存したままである。C-Cbl(3μM)はプローブ分析に先立ちc-Src(1.5μM)とインキュベートすることによってリン酸化した。Cbl標識効率は5μMを超えて増加する光ABP-UbBpa31の結果として観察された。これは、Y371での準化学量論的なリン酸化に起因するかもしれない。
【
図17-1】
図17:Cysタグ付きUbBpa31のビオチン標識化およびE2への酵素コンジュゲーション。N末端MGCSSG標識モチーフと共に発現したUbBpa31のLC-MS特性である(観察質量=8947 Da;期待質量=8948.2 Da)(左上)。システイン標識モチーフはEZ-Link Iodoacetyl-PEG2-Biotin(EZ-連結ヨードアセチル-PEG2-ビオチン)(Thermofisher(サーモフィッシャー))によりアルキル化した。生成物は分取RP-HPLCによって精製し、およびLC-MSによって特徴付けた(観察質量=9360 Da;期待質量=9362.72 Da)(右上)。リフォールドしたビオチンタグUbBpa31をE2上に酵素的にコンジュゲートさせ、およびプローブをサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した(下部)。
【
図18】ビオチン-光ABP-Bpa31のLC-MS分析である。214nmにて測定したHPLCクロマトグラムである。光ABP Bpa31(-Met)、観察質量=28301 Da;期待質量=28308.27 Da。
【
図19-1】
図19:受容体チロシンキナーゼ活性化の確認および非RING E3光架橋の評価。a)EGF依存性受容体活性化はERK1/2リン酸化についての免疫ブロッティングによって確認する。HEK293T細胞を血清飢餓状態にし、および組換えEGFにより刺激した。細胞は刺激に先立ちプロテアソームインヒビターMG132により処理した。N. B.(注意)、プロテオミクス実験のために、細胞はMG132およびバフィロマイシンにより処理した。b)ビオチン化光ABP-UbBpa31を用いた活性ベースのプロテオミクスによる他のユビキチンシステム構成要素の検出である。ABPプロファイルされたHEK293T細胞から得られたスペクトルカウント値である。検索結果はPFAMドメイン用語「HECT、IBRおよびzf-UBR」に対してフィルタリングし、および任意の複製実験における>2のスペクトルカウント値を有するRING E3sだけをプロットした。細胞は血清飢餓状態であり、およびEGFを伴うか、または伴わないか、およびUV照射を伴うか、または伴わないかのどちらかでも処理した。エラーバーは二回の技術的な反復からの標準誤差に対応する。c)上記のようであるが、DUBsはPFAMドメイン用語およびマニュアルキュレーションの組合せを用いてフィルタリングした。
【
図20】UBE2N/Ubc13光架橋活性ベースのプローブがUV依存的マナーにおいてその同族E3 TRAF6の共有結合標識化を受けることの確認である。実験はまたUBE2N基質受容体(Ube2V2)存在下においても行った。その存在はTRAF6に対する活性に影響を与えないようであった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明の詳細な記載)
不安定なシステインチオエステルがより一層安定な連結化学、例えば、リジンイソペプチド(Plechanovova, A.ら、2012、前掲)などのようなもので置換されている工学的に作り出されたE2~Ubコンジュゲートに基づくABPsはここに開示されている。
【0018】
本発明の活性化ユビキチン分子は、E2コンジュゲーティング酵素にコンジュゲーティングされるとき、ABPsとして驚くほど有効である。本発明のABPsは多様なサンプルタイプにおけるRING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素の活性プロファイリングにおいて有効である。次に、本発明の活性化ユビキチン分子、コンジュゲート、使用および方法を詳細に説明する。
【0019】
以下の議論において、多くの用語が参照され、それらは文脈が反対のことを示さない限り、以下に規定される意味を有する。化合物、特に本発明による分子を規定するためにここで使用される命名法は、一般に、化学物質の化合物に関するIUPACの規則、特に「IUPAC Compendium of Chemical Terminology(化学用語法のIUPAC摘要)(Gold Book(ゴールド・ブック))」に基づく。
【0020】
用語「comprising(含むこと)」またはその変形は、述べられた要素、完全体(integer)またはステップ、または要素、完全体またはステップの群の包含を意味し、および任意の他の要素、完全体またはステップ、または要素、完全体またはステップの群を除外するものではないと理解されるであろう。
【0021】
用語「consisting(からなること)」またはその変形は、述べられた要素、完全体またはステップ、または要素、完全体またはステップの群の包含、および任意の他の要素、完全体またはステップ、または要素、完全体またはステップの群の除外を意味すると理解されるであろう。
【0022】
用語「アリール」は当技術においてよく知られ、およびアレーン環状炭素から水素原子を除去することによって形成されるすべての1価の基を規定する。用語「アレーン」は単環式および多環式芳香族炭化水素を規定する。
【0023】
用語「ヘテロアリール」は、芳香族系に特徴的な連続的π-電子系を維持するような方法で、1またはそれらよりも多くの(1以上の)メチン(-C=)および/またはビニレン(-CH=CH-)基がそれぞれ3価または2価のヘテロ原子によって置き換えられたアリールを規定する。
【0024】
「アルキル」という用語は当技術においてよく知られ、および任意の炭素原子から水素原子を除去することによってアルカンから誘導される1価の基を規定し、そこで「アルカン」という用語は一般式CnH2n+2を有する環状または非環状の分枝または非分枝の炭化水素を規定することを意図し、式中nは整数≧1である。
【0025】
「ヒドロカルビル」という用語は当技術でよく知られ、および炭化水素から水素原子を除去することによって形成されるすべての1価の基を規定する。用語「炭化水素」は等しくよく知られ、およびここでは、分枝、非分枝、非環状および環状のアルカン、アルケンおよびアルキンを含めて、炭素および水素だけからなるすべての脂肪族および芳香族化合物を意味する。疑問を回避するために、シクロアルカンおよびシクロアルケンはこの炭化水素の規定の範囲内にある。
【0026】
「ハロ」という用語は当技術でよく知られ、および炭素ラジカルに結合するとき、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物化合物を作るハロゲンラジカルを規定する。
【0027】
本発明の活性化ユビキチン分子は、ユビキチンの位置31にてのグルタミン残基および/または位置32にてのアスパラギン酸残基に代えて光架橋剤モイエティを含む。ユビキチンは、次の配列を有する76個のアミノ酸からなる(配列番号1(SEQ ID:1))。
【化1】
【0028】
位置31にてのグルタミン残基および/または位置32にてのアスパラギン酸残基(上記配列において下線が付され、および太字にされる)を光架橋剤モイエティに置換すると、活性化ユビキチン分子およびE2コンジュゲーティング酵素(下記参照)間の驚くほど効果的な光架橋がもたらされる。
【0029】
いくらかの実施形態において、光架橋剤モイエティはユビキチンの31位でのグルタミン残基または32位でのアスパラギン酸残基の代わりに存在する。ある実施形態では、光架橋剤モイエティはユビキチンの31位でのグルタミン残基の代わりにある。
【0030】
光架橋剤モイエティはユビキチンの31位でのグルタミン残基および/または32位でのアスパラギン酸残基を置換すること、および光子での照射により、ユビキチン分子およびE2コンジュゲーティング酵素間にリンカーを形成することでの能力がある任意のモイエティであり得る。なるべくなら、活性化ユビキチン分子は光子の不存在下で安定であり、それは使用前に適切な条件下で貯蔵することが許される。いくらかの実施形態では、活性化ユビキチン分子は自然光の存在下で安定であり、および更なる実施形態では、視感度を高めるために使用される自然照明および室内人工照明(即ち、主に可視光線を含む典型的な家庭用照明)の存在下で安定である。
【0031】
ここにおいて、「安定」は経時的に生じる材料または物質の化学的分解の量が材料または物質を実用上使用不能にするほど深刻でないことを意味するのに使用する。このことは、材料または物質のある程度の化学的分解が許容され、無視できる化学的分解から分解していない材料または物質の量が実用的用途に耐え得るレベルの化学的分解にまで及ぶ。
【0032】
熟練した人(当業者とも言う)は、活性化ユビキチン分子の貯蔵についてどのような条件が適しているかを評価することが可能である。例えば、活性化ユビキチン分子が光子の不存在下では安定であるが自然光の存在下ではそうでない場合、熟練した人は分子を暗所において貯蔵すべきであること;および活性化ユビキチン分子が室温にて不安定である場合、分子が冷蔵庫において貯蔵されるべきであることを認める。
【0033】
一定の実施形態では、光架橋剤モイエティは、非自然アミノ酸、即ち、全体的または部分的に合成であり得る修飾された自然アミノ酸である。典型的には、非自然アミノ酸は、光子による照射によりユビキチン分子およびE2コンジュゲーティング酵素間にリンカーを形成する能力がある官能基を有する自然アミノ酸の修飾から導き出される。
【0034】
いくらかの実施形態では、非自然アミノ酸は、ジアリールケトン、ジアジリン、アリールアジド、ジアリール/ヘテロアリールケトン、ジヘテロアリールケトン、ヘテロアリールアジドおよび2-アリール-5-カルボキシテトラゾールからなる群より選ばれる任意の一またはそれよりも多くの組合せを含む。一定の実施形態では、非自然アミノ酸は、ジアリールケトン、ジアジリン、アリールアジド、ジアリール/ヘテロアリールケトン、ジヘテロアリールケトン、ヘテロアリールアジドおよび2-アリール-5-カルボキシテトラゾールからなる群より選ばれる1種の官能基を含む。非自然アミノ酸がジアリールケトン、アリールアジドおよび2-アリール-5-カルボキシテトラゾールを含むとき、アリールは随意に置換され、およびフェニルまたはナフタレニルからなる群より選ばれてもよい。非自然アミノ酸がジアリール/ヘテロアリールケトン、ジヘテロアリールケトンおよびヘテロアリールアジドを含むとき、ヘテロアリールは随意に置換され、およびインドリル、イミダゾリル、ピリジル、チオフェニルおよびフラニルからなる群より選ばれてもよい。
【0035】
アリールまたはヘテロアリールは、C1-4ヒドロカルビル、C1-4アルキルオキシ、C1-4ハロアルキル、ヒドロキシおよびハロからなる群より選ばれる任意の1または組合せにより1以上の炭素原子にて置換されていてもよい。いくらかの実施形態では、ハロはフルオロである。一定の実施形態では、アリールまたはヘテロアリールは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシおよびフルオロからなる群より選ばれる任意の1つまたは組合せにより随意に置換される。
【0036】
いくらかの実施形態では、非自然アミノ酸は、ジアリールケトン、ジアジリンおよびアリールアジドからなる群より選ばれる官能基の任意の1つまたは組合せを含む(Pham(ファム)N. D., Parker(パーカー)R. B., Kohler(ケーラー)J. J., Curr. Opin. Chem. Biol.(カレント・オピニオン・イン・ケミカル・バイオロジー),(2013), 17, 1, 90-101;Kauer(カウアー), J. C., Erickson-Viitanen(エリクソン-ビタネン)S., Wolfe(ウルフ)H. R., DeGrado(デ・グラード)W. F.、J. Biol. Chem.(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー),(1986), 261, 23, 10695-10700)。
【0037】
特定の実施形態において、非自然アミノ酸はジアリールケトンを含む。しばしば、ジアリールケトンは、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ジメチルベンゾフェノン、メトキシベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、tertブトキシベンゾフェノン(tertbutoxybenzophenone)、ジtertブトキシベンゾフェノン、トリフルオロメチルベンゾフェノン、ジ(トリフルオロメチル)ベンゾフェノン、テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、フルオロベンゾフェノン、ジフルオロベンゾフェノンおよびトリフルオロベンゾフェノンからなる群より選ばれる任意の1つである。
【0038】
一定の実施形態では、非自然アミノ酸はベンゾフェノンを含む。多くの場合、非自然アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファンおよびヒスチジンからなる群のうちの任意の1つから導き出される。具体的な実施形態では、非自然アミノ酸はフェニルアラニンから誘導される。
【0039】
具体的な実施形態では、光架橋剤モイエティはp-ベンゾイル-L-フェニルアラニンである。
【0040】
本発明の活性化ユビキチン分子は任意の真核生物からのユビキチンに由来し得る。しかしながら、典型的には、本発明でのユビキチンは、動物、例えば、哺乳類に由来する。いくらかの実施形態において、本発明の活性化ユビキチン分子はヒトに由来する。
【0041】
本発明の活性化ユビキチン分子はレポータータグを含み得る。レポータータグの目的は活性化ユビキチンの分析的検出を可能にすることである。したがって、検出、例えば、蛍光によってのために、ユビキチンに結合するのに適した任意のタグを採用し得る。
【0042】
いくらかの実施形態では、レポータータグは、ビオチン、エピトープおよびフルオロフォアからなる群より選ばれる任意の1つ、または組合せを含む。エピトープは、特定のエピトープに結合する普通の抗体によって認識される。レポータータグがエピトープを含むとき、それは抗体と結合することが可能であり、および活性化されたユビキチン分子の局在化、精製および分子的な特徴付けが許容される。エピトープには、Myc-tag(タグ)、HA-tag、FLAG-tag、GST-tag、6xHis、V5-tagおよびOLLASが含まれる。
【0043】
フルオロフォアは蛍光性タグである。レポータータグがフルオロフォアを含むとき、本発明の活性化ユビキチン分子は蛍光顕微鏡または肉眼で検出され得る。フルオロフォアには、フルオレセイン;緑色蛍光タンパク質、例えば、最適化S65T変異、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、モノマーA206K変異、スーパーフォルダーGFP(sfGFP)、Emerald(エメラルド)、Tag(タグ)BFP、mCerulean3(mセルーリアン3)、mCitrine/mVenus(mシトリーン/mビーナス)、tdTomato(tdトマト)、mCherry(mチェリー)、mApple(mアップル)、mKate2(mケート2)およびmNeptune(mネプチューン);FLAsH-EDT2およびReAsH-EDT2が含まれる。
【0044】
レポータータグがビオチンを含むとき、それは、活性化ユビキチン分子の局在化、精製および分子的特徴付けを許容するためにその自然リガンド、即ち、アビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラビジンに結合することが可能である。自然リガンドは、それら自体、上に挙げたフルオロフォアのどれかを含む蛍光プローブ;酵素レポーター、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどのようなもの;または抗ビオチン抗体に結合していてもよい。
【0045】
レポータータグを含む活性化ユビキチン分子の検出は、蛍光顕微鏡(または肉眼)、電子顕微鏡、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISAs)、および/またはウェスタンブロットを介し得る。
【0046】
一定の実施形態では、レポータータグはビオチンモイエティである。これは、本発明のユビキチンまたは活性化ユビキチン分子に共有結合的に連結されてもよい。いくらかの実施形態では、ビオチンモイエティは、末端システイン-、セリン-、スレオニン-またはチロシン-含有モチーフを介してユビキチンまたは活性化ユビキチン分子に共有結合的に連結される。末端モチーフは、C末端またはN末端であってもよいが、典型的にはN末端である。一定の実施形態において、末端モチーフはN末端システイン含有モチーフである。より一層具体的な実施形態では、末端モチーフは配列MGCSSG(配列番号2)を有する。ビオチンおよびエピトープタグは、架橋され、活性化されたRING E3sの濃縮を許容し、それらの識別、および質量分析によって活性の定量が可能にされる。
【0047】
本発明の第二の態様のコンジュゲート分子は、E2コンジュゲーティング酵素にコンジュゲートされた第一の態様の活性化分子を含む。ユビキチン化の間、ユビキチンは、E2において触媒システイン上に移され、標的タンパク質上のリジン残基へのその後のユビキチンの移動の前に、不安定なチオエステル連結E2中間体(E2~Ub)が形成される。
【0048】
本発明の活性化ユビキチン分子のE2コンジュゲーティング酵素からの解離を防ぐために、E2酵素の触媒システイン残基は、より一層安定なリンカーを形成する残基、例えば、リジン残基などのようなもので置換され得る。したがって、いくらかの実施形態では、E2コンジュゲーティング酵素は触媒システイン残基の代わりにリジン残基を含む。一定の実施形態では、E2コンジュゲーティング酵素の触媒システイン残基は位置85にあり、即ち、E2コンジュゲーティング酵素はC85K変異を含む。いくらかの実施形態では、E2コンジュゲーティング酵素の触媒システイン残基は位置87にあり、即ち、E2コンジュゲーティング酵素はC87K変異を含む。E2からのユビキチンの解離を防止する代替方法は、累進的により一層短い脂肪族側鎖を有する非自然リジン誘導体(即ち、ジアミノプロピオン酸、ジアミノ酪酸およびオルニチン)の組込みを含むかもしれない。
【0049】
いくらかのE2コンジュゲーティング酵素、例えば、UBE2D3などのようなものは、ユビキチンと非共有結合を形成する能力があるセリン残基を追加的に含む。これらの相互作用は、あるコンジュゲート分子のユビキチンと別のコンジュゲート分子のE2コンジュゲーティング酵素との会合(自己会合)を増進する。コンジュゲート分子の自己会合を抑制するために、セリン残基はユビキチンと会合しない残基、例えば、アルギニン残基などのようなもので置換されていてもよい。一定の実施形態では、ユビキチンと非共有結合を形成する能力があるセリン残基は位置22にあり、即ち、E2コンジュゲーティング酵素はS22R変異を含む。
【0050】
いくらかのE2共役酵素、例えば、UBE2Nなどのようなものは、ユビキチンにコンジュゲーティングする能力がある自然なリジン残基を追加的に含み、それゆえに、触媒システイン残基の位置または触媒システイン残基の前の位置ではなく、自然な残基にてユビキチンのコンジュゲーションが増進される(例は、そこでシステインがより一層安定なリンカー、例えば、リジンなどのようなもので置換されている)。自己会合はまた増進され得る。自然なリジン残基にてユビキチンのコンジュゲーションを抑制するために、自然なリジン残基はユビキチンと関係しない残基、例えば、アルギニン残基などのようなもので置換されてもよい。一定の実施形態では、自然なリジン残基は位置92にあり、即ち、E2コンジュゲーティング酵素はK92A変異を含む。
【0051】
E2コンジュゲーティング酵素は、ユビキチンと結合する能力がある任意のE2酵素であり得る。しかし、典型的に、E2コンジュゲーティング酵素はUBE2D3である。いくらかの実施形態では、E2コンジュゲーティング酵素はUBE2D3またはUBE2Nである。
【0052】
いくらかの実施形態では、E2コンジュゲーティング酵素はN末端ヒスチジンタグ、例えば、ヘキサヒスチジンタグなどのようなものをもつ。これらのタグは、本発明のコンジュゲート分子の精製を容易にし、ならびにウェスタンブロット(別名、免疫ブロット)分析を介してコンジュゲート分子の検出が促進される。
【0053】
閉じたE2-Ub内のUb成分の保存された(および活性依存性の)コンセンサス相互作用は、活性化RING E3sについての結合の自由エネルギーの向上と相まって、ABPsの開発のために利用される。本発明のABPsは、多様なサンプルタイプにおけるRING E3リガーゼ、RING E1リガーゼおよび脱ユビキチン化酵素の活性プロファイリングにおいて有効である。
【0054】
したがって、第三の態様において、本発明は、RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素の活性プロファイリングの方法における第二の態様のコンジュゲーテッド分子の使用を提供する。一実施形態では、第二の態様のコンジュゲーテッド分子の使用は、RING E3酵素の活性プロファイリングの方法におけるものである。さらなる実施形態において、RING E3酵素は、RNF4、Cbl、例えば、c-Cblなどのようなもの、Praja2(プラジャ2)、TRIM11、HECT(11)、RBR(1)およびRCR(1)の任意の一つまたは組合せである。例えば、RING E3酵素はRNF4またはc-CBIであり得る。いくらかの実施形態では、RING E3酵素は、RNF4、Cbl、例えば、c-Cblなどのようなもの、Praja2、TRIM11、HECT(11)、RBR(1)、およびRCR(1)、TRAF6、TRAF2およびHLTFの任意の一つまたは組合せである。例えば、RING E3酵素はRNF4、c-CBIまたはTRAF6であり得る。
【0055】
RING E3酵素は単量体状態では不活性で、内因性濃度にて優勢である。RING E3酵素の活性化は、RING二量化によって達成され得、RING E3酵素のリガーゼ活性が導かれる(Rojas-Fernandez, A.ら, 2014、前掲)。あるいはまた、単量体RING E3酵素は非RING要素(NREs)によって活性化され得、例えば、Dou H.ら、2013、前掲を参照。E3酵素の活性化はユビキチン化を導き(
図1a参照)、即ち、活性RING E3酵素はE2-Ubに結合し(E2コンジュゲーティング酵素およびユビキチンを含むコンジュゲート)、閉じたE2-Ub立体構造が誘導される。
【0056】
活性なRING E3酵素はRING E3またはNREを介して本発明のコンジュゲーテッド分子に結合し得る。結果として得られた複合体に照射すると、コンジュゲーテッド分子の光架橋剤モイエティはRING E3またはNREに共有結合し得る(
図1bを参照)。それゆえ、本発明のコンジュゲーテッド分子はRING E3 ABPとして作用し得、そこで活性なRING E3酵素が検出され、およびさらに特徴付けられ得る。
【0057】
第四の態様において、本発明は、第二の態様のコンジュゲート分子とRING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素との間の相互作用を検出する方法を提供し、本方法は、第二の態様のコンジュゲート分子を前記RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素と接触させること、および任意の新しいコンジュゲートの形成を検出することが含まれる。
【0058】
ここで使用するとき、「接触すること」は本発明のコンジュゲート分子がRING E3/RING E1/脱ユビキチン化酵素と相互作用することを許容する任意の手段に言及する。典型的には、接触させることは本発明のコンジュゲート分子およびRING E3酵素を含む水溶液において起こる。
【0059】
照射により、コンジュゲーテッド分子の光架橋剤モイエティはRING E3/RING E1/脱ユビキチン化酵素に共有結合し得る。本発明のコンジュゲーテッド分子が光子の存在下で不安定である場合、そのときコンジュゲーテッド分子の光架橋剤モイエティは任意の周波数の光子による照射によりその酵素に共有結合し得る。しかし、コンジュゲーテッド分子が自然光の存在下で安定である場合、共有結合について活性化ユビキチン分子と酵素との間に形成するために、自然光よりも高い周波数が必要な場合がある。典型的には、UV光、即ち、10より400nmまでの範囲内の波長を有する光は光架橋剤モイエティを酵素に共有結合的に連結させるために使用される。
【0060】
熟練した人は、酵素とコンジュゲーテッド分子との間での共有結合の形成に必要な照射時間が様々な要因に依存することを認める。例えば、照射時間は、照射されるサンプルの濃度(より一層高濃度のサンプルはより一層長い照射時間を必要とすると考えられる);サンプルを照射するために用いられる光の周波数(光架橋剤モイエティによって吸収される周波数に一致するものはより一層短い照射時間しか要しないと考えられる);および照射源の出力(より一層大きな出力はより一層短い照射時間をもたらすと考えられる)によって影響を受け得る。本発明のコンジュゲーテッド分子および酵素は1より50分までの間照射してもよい。いくらかの実施形態では、本発明のコンジュゲーテッド分子および酵素は1より40分までの間照射される。典型的には、照射は1より30分までの間である。
【0061】
酵素がRING E3酵素であるとき、本発明のコンジュゲーテッド分子はRING E3酵素の検出が有用であるあらゆる研究において使用し得る。これには、RING E3酵素調節(enzyme regulation)の研究;新規RING E3酵素の発見;インヒビター(抑制物質)のスクリーニング;インヒビターの選択性プロファイリングおよび/または構造研究のための酵素中間体の安定化が含まれる。
【0062】
本発明の方法の新しいコンジュゲートは、蛍光顕微鏡法(または肉眼)、電子顕微鏡法、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISAs)、ゲル電気泳動および/またはウェスタンブロットを含め、様々な方法を用いて検出し得る。多くの場合、分析方法の組合せが本発明の新しいコンジュゲートを検出するために使用される。熟練した人は本発明の新しいコンジュゲートの検出に適した方法がレポータータグを採用したか否か、および任意のレポータータグの同一性に応じて異なることを認める。例えば、ゲル電気泳動はサイズおよび電荷に従ってサンプル混合物から新しいコンジュゲートを分けるために使用され得、およびレポータータグが採用されるか否かに関係なく有用であり得る。しかしながら、蛍光顕微鏡は本発明のコンジュゲーテッド分子が蛍光レポータータグを含む場合にだけ、新しいコンジュゲートを識別するために使用され得る。
【0063】
本発明のコンジュゲート分子は任意の活性RING E3酵素と相互作用し得、即ち、本発明の使用および方法は、任意の特定のタイプのRING E3酵素に制限されない。しかしながら、いくらかの実施形態では、RING E3酵素は、RNF4、Cbl、例えば、c-Cblなどのようなもの、Praja2、TRIM11、HECT(11)、RBR(1)およびRCR(1)酵素である。具体的な実施形態では、RING E3酵素はc-CbI酵素である。いくらかの実施形態では、RING E3酵素は、RNF4、Cbl、例えば、c-Cblなどのようなもの、Praja2、TRIM11、HECT(11)、RBR(1)、およびRCR(1)、TRAF6、TRAF2およびHLTFの任意の一つまたは組合せである。例えば、RING E3酵素は、RNF4、c-CBIまたはTRAF6であり得る。
【0064】
ここにおける文書、法令、材料、装置、物品およびその他同種類のものなどに関するいかなる議論も、これらの事項のどれかまたはすべてが決して、先行技術基礎の一部を形成したり、または本出願の各クレームの優先日前に存在したかのように本開示に関連する分野における共通の一般知識であったりしたことの承認と解釈されることはない。
【0065】
本発明の範囲から離れることなくここに記載される本発明に対して多数の変形および/または修飾が説明したようになされ得ることは、本技術において熟練する者(当業者とも言う)には認識されるであろう。したがって、本実施形態類は、説明目的のために考慮されるべきであり、および制限的なものではなく、および実施形態に記載された範囲のものに制限されるものでもない。本技術において熟練する人は、本実施形態類が単独で、または組み合わせられて読まれてもよく、およびここに記載された特色の任意の一つまたは組合せと組み合わされてもよいことを理解すべきである。
【0066】
ここで引用した各特許および非特許文献の主題は、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【0067】
本発明は以下の非制限的な項目に関してさらに理解され得る:
【0068】
1.ユビキチンの位置31でのグルタミン残基および/または位置32でのアスパラギン酸残基の代わりに光架橋剤モイエティを含む、活性化ユビキチン分子。
【0069】
2.光架橋剤モイエティはユビキチンの位置31でのグルタミン残基または位置32でのアスパラギン酸残基の代わりにある、項1の活性化ユビキチン分子。
【0070】
3.光架橋剤モイエティはユビキチンの位置31でのグルタミン残基の代わりにある、項1の活性化ユビキチン分子。
【0071】
4.光架橋剤モイエティは非自然アミノ酸である、項1より3までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0072】
5.非自然アミノ酸はジアリールケトン、ジアジリン、アリールアジド、ジアリール/ヘテロアリールケトン、ジヘテロアリールケトン、ヘテロアリールアジドおよび2-アリール-5-カルボキシテトラゾールからなる群より選ばれる任意の一つまたは組合せを含む、項4の活性化ユビキチン分子。
【0073】
6.非自然アミノ酸はジアリールケトン、ジアジリン、アリールアジド、ジアリール/ヘテロアリールケトン、ジヘテロアリールケトン、ヘテロアリールアジドおよび2-アリール-5-カルボキシテトラゾールからなる群より選ばれる一種の官能基を含む、項4の活性化ユビキチン分子。
【0074】
7.非自然アミノ酸はジアリールケトン、ジアジリン、アリールアジドおよび2-アリール-5-カルボキシテトラゾールからなる群より選ばれる任意の一つの官能基を含む、項4の活性化ユビキチン分子。
【0075】
8.非自然アミノ酸はジアリールケトンを含む、項4の活性化ユビキチン分子。
【0076】
9.アリールは随意に置換され、およびフェニルまたはナフタレニルからなる群より選ばれ得;ヘテロアリールは随意に置換され、およびインドリル、イミダゾリル、ピリジル、チオフェニルおよびフラニルからなる群より選ばれ得る、項5より8までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0077】
10.アリールまたはヘテロアリールはC1-4ヒドロカルビル、C1-4アルキルオキシ、C1-4ハロアルキル、ヒドロキシおよびハロからなる群より選ばれる任意の一つまたは組合せにより一またはそれよりも多くの炭素原子にて置換され得る、項5より9までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0078】
11.ハロはフルオロである、項10の活性化ユビキチン分子。
【0079】
12.アリールまたはヘテロアリールはメチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシおよびフルオロからなる群より選ばれる任意の一つまたは組合せにより随意に置換される、項5より9までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0080】
13.非自然アミノ酸はベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ジメチルベンゾフェノン、メトキシベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、tertブトキシベンゾフェノン、ジtertブトキシベンゾフェノン、トリフルオロメチルベンゾフェノン、ジ(トリフルオロメチル)ベンゾフェノン、テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、フルオロベンゾフェノン、ジフルオロベンゾフェノンおよびトリフルオロベンゾフェノンからなる群より選ばれるジアリールケトンを含む、項4の活性化ユビキチン分子。
【0081】
14.非自然アミノ酸はベンゾフェノンを含む、項4の活性化ユビキチン分子。
【0082】
15.非自然アミノ酸はフェニルアラニン、トリプトファンおよびヒスチジンからなる群の任意の一つから導き出される、項4より14までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0083】
16.非自然アミノ酸はフェニルアラニンから導き出される、項4より14までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0084】
17.光架橋剤モイエティはp-ベンゾイル-L-フェニルアラニンである、項1より3までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0085】
18.ユビキチンは動物からのものである、項1より17までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0086】
19.ユビキチンは哺乳類からのものである、項1より17までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0087】
20.ユビキチンはヒトからのものである、項1より17までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0088】
21.レポータータグをさらに含む、項1より20までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0089】
22.レポータータグはビオチン、エピトープおよびフルオロフォアからなる群より選ばれる任意の一つまたは組合せを含む、項21の活性化ユビキチン分子。
【0090】
23.項22の活性化ユビキチン分子であって:
(i)エピトープは、Myc-タグ、HA-タグ、FLAG-タグ、GST-タグ、6xHis、V5-タグおよびOLLASから選ばれる任意の一つまたは組合せであり;および
(ii)フルオロフォアは、フルオレセイン、最適化S65T変異、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)、モノマーA206K変異、スーパーフォルダーGFP(sfGFP)、Emerald、TagBFP、mCerulean3、mCitrine/mVenus、tdTomato、mCherry、mApple、mKate2およびmNeptune、FLAsH-EDT2およびReAsH-EDT2から選ばれる任意の一つまたは組合せである。
【0091】
24.レポータータグはビオチンモイエティである、項21の活性化ユビキチン分子。
【0092】
25.ビオチンモイエティは末端システイン-、セリン-、スレオニン-またはチロシン-含有モチーフを介してユビキチンまたは活性化ユビキチン分子に共有結合的に連結されている、項24の活性化ユビキチン分子。
【0093】
26.末端モチーフはN末端である、項25の活性化ユビキチン分子。
【0094】
27.末端モチーフはN末端システイン含有モチーフである、項25の活性化ユビキチン分子。
【0095】
28.末端モチーフは配列MGCSSGを有する、項25より27までの任意の一つの活性化ユビキチン分子。
【0096】
29.E2コンジュゲーティング酵素にコンジュゲーティングされた、任意の一つの先行する項に従う活性化ユビキチン分子を含む、コンジュゲート分子。
【0097】
30.E2コンジュゲーティング酵素は触媒に関するシステイン残基の代わりにリジン残基を含む、項29のコンジュゲート分子。
【0098】
31.E2コンジュゲーティング酵素はC85KまたはC87K変異を含む、項29のコンジュゲート分子。
【0099】
32.ユビキチンと非共有結合を形成する能力があるセリンまたはリジン残基はアルギニン残基により置換されている、項29より31までの任意の一つのコンジュゲート分子。
【0100】
33.E2コンジュゲーティング酵素はC85KおよびS22R変異を含む、項29より30までの任意の一つのコンジュゲート分子。
【0101】
34.E2コンジュゲーティング酵素はUBE2D3である、項29より33までの任意の一つのコンジュゲート分子。
【0102】
35.E2コンジュゲーティング酵素はC87KおよびK92A変異を含む、項29より30までの任意の一つのコンジュゲート分子。
【0103】
36.E2コンジュゲーティング酵素はUBE2Nである、項29より32および35までの任意の一つのコンジュゲート分子。
【0104】
37.E2コンジュゲーティング酵素はN末端ヒスチジンタグをもつ、項29より36までの任意の一つのコンジュゲート分子。
【0105】
38.E2コンジュゲーティング酵素はヘキサヒスチジンタグをもつ、項29より36までの任意の一つのコンジュゲート分子。
【0106】
39.RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素の活性プロファイリングの方法における項29より38までの任意の一つのコンジュゲーテッド分子(conjugated molecule、コンジュゲーションした分子とも言う)の使用。
【0107】
40.RING E3酵素はRNF4、Cbl、例えば、c-Cblなどのようなもの、Praja2、TRIM11、HECT(11)、RBR(1)、RCR(1)、TRAF6、TRAF2およびHLTFの任意の一つまたは組合せであり、および脱ユビキチン化酵素はDUBs(31)である、項39の使用。
【0108】
41.活性プロファイリングはRING E3酵素のものである、項39または項40に従う使用。
【0109】
42.次のもののための項41の使用:
(i)RING E3酵素調節の研究;
(ii)新規RING E3酵素の発見;
(iii)インヒビタースクリーニング;
(iv)インヒビター選択性プロファイリング;および/または
(v)構造研究のための酵素中間体の安定化。
【0110】
43.項29より38までの任意の一つのコンジュゲート分子と、RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素との間の相互作用を検出する方法であって、方法は、コンジュゲート分子を前記RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素に接触させること、および任意の新しいコンジュゲートの形成を検出することを含む。
【0111】
44.RING E3酵素はRNF4、Cbl、例えば、c-Cblなどのようなもの、Praja2、TRIM11、HECT(11)、RBR(1)、RCR(1)、TRAF6、TRAF2およびHLTFの任意の一つまたは組合せであり、および脱ユビキチン化酵素はDUBs(31)である、項43の方法。
【0112】
45.相互作用はRING E3酵素とのものである、項43または44の方法。
【0113】
46.コンジュゲート分子の光架橋剤モイエティが前記RING E3/RING E1/脱ユビキチン化酵素に共有結合するように、コンジュゲート分子およびRING E3/RING E1/脱ユビキチン化酵素に照射することをさらに含む、項43より45までの任意の一つの方法。
【0114】
47.照射はUV光によるものである、項46の方法。
【0115】
48.UV光は200より400nmまでの範囲内の波長を有する、項47の方法。
【0116】
49.RING E3酵素はRNF4、CbIまたはTRAF6酵素である、項45より48までの任意の一つの方法。
【0117】
50.CbI酵素はc-CbI酵素である、項49の方法。
【0118】
本発明は以下の非制限的な例によってさらに説明される。
【実施例】
【0119】
二つのガン関連RING E3s、RNF4およびc-Cblの活性依存性プロファイリングをそれらの自然な活性化シグナルに応じて実証する。RNF4はポリSUMO鎖誘導二量化によって活性化され、その一方でc-Cblはチロシンリン酸化によって活性化される。ビオチンレポータータグ付きコンジュゲートと質量分析を組み合わせることにより、細胞の自然なRING E3活性の並行した測定を行うことができることが実証される。さらに、細胞摂動(cellular perturbation)(例は、増殖因子刺激)により別個のRING E3sの細胞活性化を識別することができる。本発明のコンジュゲート分子は、E3リガーゼ研究およびこの酵素クラスに対する選択的モジュレーターの開発を前進させる潜在能力を有する。
【0120】
(材料および方法)
(実験モデルおよび対象の詳細)
H293T細胞はATCCから取得した。293Tはヒト細胞系であり、HEK293細胞株から導き出され、それはSV40ラージT抗原の変異型(mutant version)(RRID:CVCL_0063)を発現する。細胞は5%CO2雰囲気下に加湿インキュベーター内で37℃にて培養した。Dulbecco´s modified Eagle medium(ダルベッコ改変イーグル培地)を用い、およびウシ胎仔血清とL-グルタミンとを補った。
【0121】
本研究においてタンパク質発現に用いたBL21(DE3)およびEscherichia coli(エシェリキア・コリ、大腸菌)BL21 Rosetta(商標)(ロゼッタ(商標))(DE3)細胞はそれぞれ100mL-1のアンピシリンと34mL-1クロラムフェニコールとを補った1LのLB培地を含む1Lフラスコにおいて培養した(詳細についてはSTAR Methods - Expression of Recombinant Proteins(スターメソッヅ-組換えタンパク質の発現)を参照)。
【0122】
(方法の詳細)
(ユビキチンへのpBpa非自然アミノ酸の部位特異的組込み)
pEvol-BpaプラスミドはpEVOL-pBoF(P. Schultz(シュルツ)、The Scripps Research Institute(スクリプス・リサーチ研究所)によって好意により提供された)から導き出した。プラスミドpEVOL-Bpaを作成するためにBpaの組込み用の変異をMjYRS遺伝子の両方のコピー中に導入した(Young(ヤング)ら、2010;Chin(チン)ら、2002)。BL21細胞(50μL)をpET-Ubiquitin(pET-ユビキチン)-6His-TAGx(そこでxはBpa組込み部位である)とpEvol-Bpaプラスミドとにより熱ショックを用いて共形質転換し、および200μL SOC培地において37℃、1時間回収し、および100μg mL-1アンピシリンと34μg mL-1クロラムフェニコールとを含む50mL Luria-Bertani(ルリア-ベルターニ)(LB)に接種するために使用した。次いで、10mLの夜通しの培養物を同じ濃度の抗生物質が含まれる1LのLBブロスに接種するために使用した。OD600が~0.6になるまで細胞を増殖させ、および培養物を二つの500mL部分に分けた。一方の部分は1mM p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン(Bpa;Bachem(バッケム))により補い、および他方はBpaを与えないコントロールとして取り扱った。培養物は20分間(37℃、200rpm)、またはOD600が0.6-0.7に達するまでインキュベーションし、およびタンパク質発現は0.02%アラビノースと1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)とを加えることによって誘導した。培養物は5時間インキュベーションした(37℃、200rpm)。細胞を収穫し、および50mLファルコンチューブに移す前に10mLのBugBuster(R) Protein Extraction(バグ・バスター・タンパク質抽出)((R)は米国等での登録商標表示を示す)(Merk Millipore(メルク・ミリポア))試薬において懸濁させた。溶解物を20分間インキュベーションし、および次いで1mL Ni-NTAアガロースビーズを含む50mLファルコンチューブに移す前に遠心分離により清澄化し、および穏やかに振盪しながら1時間インキュベーションした。樹脂を遠心分離し(4℃、1000rpm)、および洗浄緩衝剤(20mMのNa2HPO4、pH7.5、25mMイミダゾール)により洗浄した。最後に、タンパク質を200μLの溶出緩衝剤(20mMのNa2HPO4、pH7.5、300mMイミダゾール)により溶出させた。溶出画分からの20μLアリコートを等量の4X SDS添加液(loading buffer)と混合し、および4-12% SDS-PAGEゲル上にロードした。タンパク質はMES緩衝剤を用いて200Vで30分間分け、およびクーマシーブルー(Coomassie blue)染色を用いて検出した。別々の20μLのタンパク質はLC-MSによって分析した。LC-MSは、6130 Quadrupole(四重極)スペクトロメーターにカップリングしたMax-Light Cartridge(マックス-ライト・カートリッジ)フローセルを備えたAgilent(アジレント)1200 LC-MSシステムにより行った。別なふうに述べない限り、Agilent ZORBAX(アジレント・ゾルバックス)300SB-C3 5μm、2.1×150mmカラムを採用した。溶媒系は、緩衝剤AとしてH2Oにおける0.05%トリフルオロ酢酸、および緩衝剤Bとしてアセトニトリルにおける0.04%TFA酸から構成された。タンパク質UV吸収は214および280nmにてモニターした。MS取得はポジティブイオンモードにおいて行い、および合計タンパク質質量はMS Chemstation(MSケムステーション)ソフトウェア(Agilent Technologies(アジレント・テクノロジーズ))内のデコンボリューションによって計算した。pBpa組込み-Ubを含む画分は、Amicon Ultra(アミコン・ウルトラ)-15 3kDa MWCO遠心フィルター装置(Millipore(ミリポア))を用いてプール濃縮した(pooled concentrated)。サンプルはPD-10カラム(GE Life Sciences(GEライフ・サイエンシーズ))を用いて10mM Tris-HCl(トリス-HCl)pH7.5中に脱塩した。DTT(1mM)をサンプルに添加し、次いで終濃度の15μg mL-1にてUCH-L3(Virdee(バーディー)ら、2010)によるヘキサヒスチジンタグ開裂を続けた。サンプルはN末端のHisタグを除去するために37℃で2時間インキュベーションした。Bpa組込み-Ubは半調製HPLCによってさらに精製し、および画分は凍結乾燥し、およそ8-10mgのUb-pBpaが産生された。
【0123】
(UBE2D3(S22R/C85K)組換えタンパク質の発現)
S22RおよびC85Kは部位特異的変異誘発を用いることによってUBE2D3中に導入した。細胞は37℃、200rpmにてOD600が0.6-0.7になるまで増殖させた。タンパク質発現は、OD600が0.6~0.7に達したら、IPTG(1mM)を添加することによって誘導し、および37℃にて3時間インキュベートした。細胞を収穫し、および緩衝剤(20mM Na2HPO4、pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP、complete protease inhibitor cocktail(コンプリート・プロテアーゼ・インヒビター・カクテル)(EDTA-フリー、Roche(ロシュ)))に再懸濁させた。リゾチームを添加し(0.5mg mL-1)、および細胞を氷上で30分間インキュベートし、次いで超音波処理を続けた。His6タグ付きUBE2D3(S22R/C85K)を含む清澄化溶解物をNi-NTA樹脂上にロードし、および緩衝剤(20mM pH7.5、Na2HPO4、pH7.5、25mMイミダゾール、150mM NaCl、1mM TCEP)により洗浄し、次いで溶出緩衝剤(20mM pH7.5、Na2HPO4、pH7.5、300mMイミダゾール、150mM NaCl、1mM TCEP)により溶出を続けた。サンプルは、HiLoad Superdex(ハイ・ロード・スーパーデックス)-75 16/60カラム(GE Healthcare(GEヘルスケア))を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって、ランニング緩衝剤(20mM Na2HPO4、pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP)を用いてさらに精製した。
【0124】
(ビオチン-UbBpa31の調製)
N末端MGCSSGシステイン含有モチーフを有する凍結乾燥UbBpa31(10mg)を1mL 10%DMSO/90% 0.5mM TCEP(水溶液)において再構成し、および穏やかに混合しながら23℃にて45分間インキュベートし、次いで反応緩衝液(50mM Na2HPO4、150mM NaCl、0.5mM TCEP)において5モル等量のEZ-link iodo-acetyl PEG2-Biotin(EZ-リンク・ヨード-アセチルPEG2-ビオチン)(Thermofisher)の添加を続けた。反応を23℃にて穏やかに振盪しながら1時間インキュベートし、およびLC-MSによって完了を監視した。次いで生成物を分取HPLCによって流速にて精製し、および凍結乾燥し、ビオチン-UbBpa31(6-8mg)が産生された。
【0125】
(イソペプチド連結した光ABPsの調製)
UBE2D3(S22R/C85K)-UbBpaを生成するために、UBE2D3(S22R/C85K)(200μM)をUbBpa(200μM)およびHis6-Uba1(1μM)と共に35℃の26hの間コンジュゲーション緩衝剤(50mM Tris、pH10.0、150mM NaCl、3mM ATP、5mM MgCl2、1mM TCEP)にてインキュベートした。E2- UbBpaコンジュゲートをHiLoad 16/60 Superdex 75ゲルろ過カラム(GE Healthcare)(20mM HEPES(ヘペス)、pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP)上に適用した。精製したUBE2D3(S22R/C85K)-UbBpaコンジュゲートは2mg ml-1に濃縮し、および-80℃にて貯蔵した。ビオチン-光ABPプローブは同じ手順を用いて調製した。
【0126】
(組換えRNF4タンパク質の発現。)
二つのRNF4 RINGドメインの線形融合体、および関連する変異体のクローニング、発現および精製は、以前に記載されていた(Plechanovovaら、2011)。RNF4の二つのRINGドメインの融合体はE. coli Rosetta(DE3)細胞(Novagen(ノバジェン))において発現させた。37℃、200rpmにてOD600が0.6~0.7に達するまで細胞を増殖させた。OD600が0.6-0.7に達したら、タンパク質発現はIPTG(1mM)を添加することによって誘導し、および16℃、200rpmにて夜通しインキュベートした。
【0127】
細胞は収集し、および溶解緩衝剤(50mM Tris、pH7.5、0.5M NaCl、10mMイミダゾール、2mMベンズアミジン、complete protease inhibitor cocktail(EDTA-free、Roche))に再懸濁し、および細胞は超音波処理によって溶解させた。His6-MBP融合タンパク質はNi-NTA(Qiagen(キアゲン))クロマトグラフィーによって精製し、次いでTEVプロテアーゼにより4℃、夜通し開裂を続けた。任意の未開裂融合タンパク質、His6タグ付きMBP、ならびにHis6タグ付きTEVプロテアーゼを除去するために、材料を新鮮なNi-NTA樹脂に対して減少させ、次いでHiLoad Superdex 75 16/60カラム(GE Healthcare)(20mM Tris、150mM NaCl、1mM TCEP、pH7.5)によりサイズ排除クロマトグラフィーを続けた。
【0128】
(c-Cblおよびc-Cbl(Y371F)組換えタンパク質の発現)
BL21(DE3)細胞(50μL)はpGEX6P-1-Cblプラスミドにより形質転換し、および200μL SOC培地において37℃、1時間で回収し、および100μg mL-1アンピシリンを含む50mL Luria-Bertani(LB)に接種するために使用した。次いで10mLの夜通しの培養物は、同じ濃度の抗生物質および0.2mM塩化亜鉛を含むLBブロスに接種するために使用した。細胞は、37℃、200rpmにてOD600が0.6-0.7に達するまで培養した。OD600が0.6~0.7に達したら、タンパク質発現は1mM IPTGを添加によって誘導し、および16℃、200rpmにて夜通し放置した。細胞は収集し、および緩衝剤(50mM Hepes(ヘペス)、pH7.5、0.5M NaCl、1mM TCEP)において再懸濁し、および超音波処理によって溶解した。溶解物をグルタチオンセファロースビーズと共に穏やかに振盪しながら1時間インキュベートした。樹脂を遠心分離し(4℃、1000rpm)、および緩衝剤(50mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP)により洗浄し、次いでRhinovirus(ライノウイルス)3Cプロテアーゼによる4℃夜通しにての開裂を続けた。開裂したタンパク質はHiLoad Superdex 200 16/600カラム(GE Healthcare)(20mM HEPES、150mM NaCl、1mM TCEP、pH7.5)によるサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。
【0129】
(c-Cblリン酸化)
精製したc-Cbl(3μM)はSrcキナーゼ(1.5μM)、10mM MgCl2、5mM ATPにより37℃にて45分間インキュベートすることによってリン酸化した。サンプル(15μl)は集め、および4×LDS添加液(ThermoFisher(サーモ・フィッシャー))とよく混合し、次いで7.5% acrylamide phos-tag gel(アクリルアミド・ホス-タグ・ゲル)上にロードする前に煮沸を続けた。タンパク質はMOPS緩衝剤を用いて160Vにて60分間分け、およびクーマシー染色とウェスタンブロットとを用いて分析した。
【0130】
さらに、ATP依存性リン酸化および光ABP-UbBpa31(5μM)とのc-Cblの光架橋はクーマシー染色を用いて分析した。サンプル(15μl)を集め、および4×LDS添加液とよく混合し、次いでMOPSランニング緩衝剤を用いて4-12%SDS-PAGEゲル上にロードする前に95℃にて5分間煮沸を続け、およびクーマシー染色を用いて分析した。さらに、ゲルをブロッティングし、および一次として抗Cbl(1:5000希釈)、および二次抗体として抗マウス(1:10000希釈)によるウェスタンブロットを用いて分析した。
【0131】
(光架橋のためのUV照射条件)
光架橋反応(45μL)は24ウェルプレート(Cryshem(クリスヘム)HR3-158、Hampton Research(ハンプトン・リサーチ))において反応緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP)にて実行した。サンプルは二つの部分に分かたれた。一方の部分は氷上で、handled UV lamp(柄付きUVランプ)(BLE-8T365、Spectroline(スペクトロライン))から2cmの距離にて365nmを10-30分間照射し、および他の部分は暗所で保存した。精製タンパク質、例えば、RNF4-RING(5-50μM)、c-Cbl(3μM)およびc-Cbl Y371F(3μM)などのようなものについては、光ABP-UbBpa31プローブ(5-50μM)により光架橋反応を実行し、およびUVにより照射した。サンプルはSDS-PAGEによって分割し、およびクーマシー染色または免疫ブロッティングによって視覚化した。コントロール実験は同じ条件下で実行した。
【0132】
(細胞抽出物における光架橋)
HEK293細胞はGFP-Cbl、GST-SrcおよびGFP-Cblを発現するプラスミドによりトランスフェクションした。細胞は溶解緩衝剤(50mM Na2HPO4、10mM Glycerophosphate(グリセロリン酸)、50mM Sodium Fluoride(フッ化ナトリウム)、5mM Sodium Pyrophosphate(ピロリン酸ナトリウム)、1mM Sodium Vanadate(バナジン酸ナトリウム)、0.25M Sucrose(スクロース)、50mM NaCl、0.2mM PMSF、1mM Benzamidine(ベンズアミジン)、10μM TCEP、1% NP-40)において溶解させた。プローブ光ABP-Bpa31(25μM)は細胞溶解物と混合し、および一般的な方法において記載されている光架橋手順を用いてUV照射(10分)した。サンプルはMOPSランニング緩衝剤を用いて4-12% SDS-PAGEゲルによって分析し(160V、60分)、および一次として抗Cbl(1:5000希釈)、および二次抗体として抗マウス(1:10000希釈)による免疫ブロッティングによって視覚化した。
【0133】
(Phos-tag(商標)ゲル電気泳動)
Src媒介c-Cblリン酸化を評価するために、我々は分解ゲル(7.5%アクリルアミド/ビスアクリルアミド、375mM Tris-HCl pH8.8、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、100μM MnCl2、50μM Phos-tag(商標)、0.05%(w/v)過硫酸アンモニウム(APS)、0.0625%(v/v)テトラメチルエチレンジアミン(TEMED))および濃縮用ゲル(stacking gels)(4%アクリルアミド/ビス-アクリルアミド、125mM Tris-HCl pH6.6、0.1% SDS、0.05%(w/v)APS、0.1%(v/v)TEMED)を注ぎ、アルゴンでガスを抜き、次いで室温にて三時間重合させた。細胞抽出物(50μg)はLDS-サンプル緩衝剤において煮沸し、およびローディング前に10mM MnCl2を補った。電気泳動は、クーマシー色素による染色、またはマンガンをキレートするために10mM EDTAおよび0.05% SDSを補われた転写緩衝剤(transfer buffer)における3×20分の洗浄の前に、濃縮用ゲルを通して70V、およびランニング緩衝剤(25mM Tris-HCl、192mM Glycine(グリシン)、0.1% SDS)を用いる分離ゲル(resolving gel)を通して130Vにて実行し、次いで0.05% SDSを補った転写緩衝剤において1×20分続けた。その後、タンパク質を0.45μmのニトロセルロース膜に転写緩衝剤において100V、3hr、4℃にて転写した。
【0134】
(細胞培養、トランスフェクションおよび溶解)
293T細胞は10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、2.0mM L-グルタミンおよび抗生物質(100単位mL-1ペニシリン、0.1mg mL-1ストレプトマイシン)を補ったDulbecco´s modified Eagle´s medium(ダルベッコ改変イーグルズ培地)(DMEM)において培養した(37℃、5%CO2)。細胞は100mmディッシュにおいて4×106の密度にて播種した。播種後18時間、細胞トランスフェクション(2μg DNA、空ベクター(pcDNA(Thermo Fisher)(サーモ・フィッシャー))、pcDNAおよびGST-Src、pcDNAおよびGFP-c-Cbl、またはGST-SrcおよびGFP-c-Cbl)は、200μL Eagle´s Minimum Essential Medium(イーグル最小必須培地)(Opti-MEM)における5μL Fugene-6(フーゲン-6)(Promega(プロメガ))を用いて実行した。収穫の90分前にMG132(25μM)を細胞に加えた。細胞を氷冷したPBSによりリンスし、および集め、および氷冷した溶解緩衝剤(50mM Tris-HCl pH7.5、10mM 2-グリセロリン酸ナトリウム、50mMフッ化ナトリウム、5.0mMピロリン酸ナトリウム、1.0mMオルトバナジン酸ナトリウム、0.27Mスクロース、50mM NaCl、0.2mMフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、1.0mMベンザミジン、10μM TCEP、1% NP-40)により氷上で30分間抽出した。溶解物は4℃、21,100gにて20分間遠心分離することによって清澄化した。上清を集め、およびタンパク質濃度をBradford assay(ブラッドフォードアッセイ)によって定めた。
【0135】
(EGF刺激HEK293細胞の活性に基づくプロテオミクスプロファイリング)
293T細胞は150mMディッシュにおいて5×106の密度にて播種し、および10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、2.0mM L-グルタミンおよび抗生物質(100単位mL-1ペニシリン、0.1mg mL-1ストレプトマイシ)を補ったDulbecco´s modified Eagle´s medium(DMEM)において培養した(37℃、5%CO2)。翌日、培地はFBSを欠くDMEMに交換した。次の日、細胞を20μM MG132および200nM Bafilomycin(バフィロマイシン)により6時間37℃にて、次いで組換えEGF 100ng mL-1(Thermo Fisher Scientific(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック)、PHG0311)と共に、またはなしで15分間37℃にて処理した。ディッシュを氷上に移し、洗浄し、氷冷PBSにおいて再懸濁し、および4℃で二回洗浄し、および溶解物を氷冷溶解緩衝剤において抽出した。293T細胞をビオチン化プローブ(ビオチン-光ABP-UbBpa31)(20μM)により処理した。サンプルは分割し、およびUVを用いて1時間照射したか、またはUVを控えた。次いで、ストレプトアビジン樹脂に対してビオチン濃縮を行い、その後、以前に記載したように(Paoら、2018、前掲)オンレジントリプシン消化(on-resin tryptic digestion)およびLC-MS/MS分析およびデータ処理を続けた。
【0136】
(結果)
(光架橋RING ABPsの設計および組立て)
光架橋剤の組込みのための潜在的位置を確立するために、我々は解かれたRING E3:E2~Ub共結晶構造(
図5)についての構造的重ね合わせを生成した(Douら、2012b、2013;Koliopoulosら、2016;Plechanovovaら、2012、前掲)。結合様式における顕著な保存は明らかであったし、およびUbとE2の両方内の複数の残基がRINGドメイン(複数)の近傍に存在する。プローブに活性依存性をもたせるために、我々は光架橋モイエティをUb中に組み込み、それはこの成分が活性なRING E3sの近傍にしか結合しないためである。我々は活性化したRINGsに近接しているUb内の10のコンセンサス部位を選び(
図1c)、および進化したMethanocoldococcus Janashi(メタノカルドコックス・ヤンナスキイ)のtyrosyl-Trna synthetase(チロシルtRNAシンセターゼ)-Trna
CUAペア(
図1b、c)を用いて光架橋アミノ酸p-ベンゾイルL-フェニルアラニン(Bpa)を組み込んだ(Chinら、2002、前掲)。効率的な組込みはすべての部位にて達成され、培養基1リットルあたり~4-6mgのタンパク質が産生された。Ub変異体は均質になるように精製し、およびLC-MSによって特徴付けた(
図6および7)。次に、変異Ub変種(mutant Ub variants)のすべてを乱雑な(promiscuous)E2 UBE2D3に酵素的にコンジュゲートさせ(Brzovic(ブルゾビッチ), P.S.ら(2006). Mol Cell 21, 873-880)、N末端ヘキサヒスチジンタグが伴われた(
図1d)。精製を容易にすることに加えて、後半部は免疫ブロット分析のための便利なレポーターとして機能する。E2へのコンジュゲーションはE1活性化酵素により行われ、およびUbとE2間のより一層安定な連結を形成するために、触媒に関するシステイン(catalytic cysteine)をリジンに変異させ、安定なイソペプチドコンジュゲーションが可能にされる(Plechanovovaら、2012、前掲)(
図2a)。重要なことに、構造分析はイソペプチドが自然なチオエステルの許容可能な構造的ミメティック(mimetic)であることを示した(Koliopoulosら、2016;Plechanovovaら、2012;Wrightら、2016、前掲)。また、我々はABPの自己会合をもたらすことができた非共有結合Ub結合部位を破壊するS22R変異をE2成分中に導入した(Brzovic, P.S.、およびKlevit(クレビト), R.E. (2006). Cell Cycle(セル・サイクル), 5, 2867-2873)。すべてのE2~Ub変種はSDS-PAGEおよびLC-MS分析によって決定されるようにサイズ排除クロマトグラフィーによって均質性にまで精製した(
図2b-dおよび8)。
【0137】
(二量体RING E3 RNF4の活性依存性プロファイリング)
RING E3 RNF4は単量体状態では不活性であり、それは内因性濃度にて優勢である。RNF4内のSUMO相互作用モチーフ(SUMO Interacting Motifs)(SIMs)へのポリSUMO鎖の結合は、RNF4の局所濃度を高め、それによってRINGドメインのホモ二量化およびE3リガーゼ活性の活性化が増進される(Rojas-Fernandezら、2014、前掲)。このことは、SUMO修飾前骨髄球性白血病タンパク質(PML)のユビキチン化および分解を導く(Tatham(タタム), M.H.ら(2008). Nat Cell Biol(ネイチャー・セル・バイオロジー), 10, 538-546)。著しいことに、このプロセスの治療上の誘導は、>90%のケースでの急性前骨髄球性白血病の寛解を導く(Massaro(マッサーロ), F., Molica(モリカ), M.、およびBreccia(ブレッチャ), M. (2016). Int J Hematol Oncol(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ヘマトロジック・オンコロジー), 5, 105-118)。RNF4の工学的に作り出されたバージョンはそれが構成的に活性であり、設計されており、それはフレキシブルなリンカーを介して自然なC末端に融合した追加のRINGドメインを有する全長タンパク質からなる(RNF4-RING)(
図3a)(Plechanovovaら、2011、前掲)。最適な光架橋剤の位置を決定するために、我々はすべての10個のBpa変異体E2~UbコンジュゲートをRNF4-RINGとインキュベートし(
図9)、およびUV照射(10分)による架橋効率を評価した。著しいおよび用量に応じた架橋は、位置31にてのBpa組込みにより(光ABP-UbBpa31)観察されるだけであった(
図3bおよび10)。重要なことに、RNF4-RINGをインキュベートし、およびUbBpa31をコンジュゲートしていない状態でUV照射するとき架橋が観察されず、光架橋がE2駆動のUb接近に依存したことが指し示され、自然な機構と一致した。特に、二つの光ABP-UbBpa31分子を加えた場合の分子量に相当する追加の架橋産物が観察された(
図3b)。二量体RING:E2~Ub複合体での構造研究により、活性RING二量体の両方の面が別々のE2~Ubコンジュゲートに関与し、および活性化することが明らかにされた(
図3c)。融合したRNF4-RING構築物の力で、RINGドメインの一方または両方(それぞれRNF4x-RINGまたはRNF4x-RINGx)中にM140A R181A二重変異を導入することによって、単一のE2~Ub分子または両方への結合を中断することが可能である(Rojas-Fernandezら、2014、前掲)。光ABP-UbBpa31プロファイリングのこの構造的に解明された二部に分かれた機構(bipartite mechanism)と一致して、第二のE2~UbBpa31分子の架橋はRNF4x-RINGにより失われ、およびRNF4x-RINGxにより完全に消失した(
図3d)。活性依存的な光架橋をさらに確認するために、我々は変異体の光ABP-UbBpa31コントロールプローブを用意した。保存されたE2-RING相互作用の一部分は、E2 F62残基(いくらかのモデルE2sではF63)に関与し、およびアラニンへの変異は典型的にE3結合を損ない/消失させる(Weissman(ワイズマン), A.M. (2001). Nat Rev Mol Cell Biol, 2, 169-178)。このコントロールプローブは、観察された標識化が自然なE2-RING相互作用と矛盾しないかどうかについてさらに情報を提供するであろうし、それゆえに、自然な相互作用を破壊するインヒビターのスクリーニングに適する(
図3e)。プローブが自然なマナーでかみ合うことと矛盾せず、光ABP-UbBpa31 F62AプローブはRINGの架橋を受けなかった。これはまた、RING E3sを不可知論的に(agnostically、アグノスティックに)プロファイリングするとき貴重なコントロールプローブとしても機能するはずである(
図3f)。
【0138】
(ポリSUMO鎖誘発RNF4活性化のABPプロファイリング)
細胞性RNF4は、ポリSUMO鎖へのそのSIMドメインを介する補充によって活性化され、それによって二量化が誘導される。二量化のK
dは~180Nmであり(Rojas-Fernandezら、2014、前掲)、それゆえに、この値未満の濃度にて作用することによって、我々は光ABP-UbBpa31が自然なRNF4のポリSUMO鎖誘導活性化をプロファイルできたかどうかを評価する生化学アッセイを確立した(
図3g)。予想されるように、構成的に活性なRNF4-RINGは希釈に鈍感であり、および光ABP-UbBpa31の架橋を受けたが、自然なRNF4はそうでなかった(
図3h)。しかし、線状アミド連結テトラSUMO(SUMOx4)融合タンパク質(10μM)の存在下では、それは自然なイソペプチド連結ポリSUMO鎖の活性化特性を再現し(recapitulates)(Tathamら、2008、前掲)、光ABP-UbBpa31架橋はRNF4-RINGの効率と同等のもので観察された。洞察に満ちたことに、架橋されたバンドは第二の光ABP-UbBpa31分子の添加について観察された(
図3g)。このことは、自然に活性化された野生型RNF4がその二部に分かれた活性を保持し、およびその関連する処理能力(processivity)が細胞において推定上利用されることを示唆する。一緒に考えると、データはこれまでで、光ABP-UbBpa31が自然に活性化されたRING E3の活性依存的な架橋を受けることを実証し、それは触媒に関する求核剤を欠いている。
【0139】
(活性依存的なプロファイリングのリン酸化誘発RING E3活性化)
光ABP-UbBpa31はRING E3によりテストし、それは別個の機構を介して活性化する。Cblタンパク質は、3つのホモログ:c-Cbl、Cbl-bおよびCbl-cからなるマルチドメインおよび多機能性のRING E3リガーゼである(Lyle(ライル), C.L., Belghasem(ベルガセム), M., およびChitalia(チタリア), V.C. (2019). Cells(セルズ), 8)。Cbl機能の大半はRING E3活性に関連し、および脈管新生の調節に関与する。Cbl活性での異常は多数のガンと関係があった。Cblは多くの胸部ガン細胞および組織において過剰発現し、およびまた骨髄増殖性新生物(MDS/MPN)および非小細胞肺ガンでも下方制御されることが見出される(Kales(ケイルズ), S.C.ら、(2010). Cancer Res(キャンサー・リサーチ), 70, 4789-4794;Tan(タン), Y.H.ら, (2010). PLoS One(PLoSワン), 5, e8972)。それで、Cbl E3活性の調整は魅力的な治療上の戦略であり、および製薬会社から大きな関心を寄せられている。臨床において最も多く見られる普通の変異は残基Y371にある。Y371はc-Srcキナーゼによってリン酸化を受け、およびこれは構造変化を導き、それは非RING要素を提示し、E2~Ubに対する親和性を高め、およびCbl E3活性を刺激する(Buetowら、2016;Douら、2013、前掲)。実際、Y371にてリン酸化されたCbl(c-Cbl pTyr371)に対する親和性はE2~Ub親和性を~30倍高める(Buetowら、2016、前掲)。
【0140】
光ABP-UbBpa31がc-Cbl E3活性のSrc依存性活性化をプロファイルできるかどうかを評価するために、我々は組換えSrcをCblおよびCbl Y371Fとインキュベーションさせ、後半部はリン酸化誘導された活性化に不応であると予想された。光ABP-UbBpa31架橋はc-Src存在下においてc-Cblについて観察されたが、c-Cbl Y371Fについてはそうでなく、c-Srcを与えないときも観察されなかった(
図4a)。標識化は、光ABP-UbBpa31 F62Aコントロールプローブにより再び消失し(
図11)、およびまたATP依存性であった(
図12)。したがって、以前の研究と一致して、Y371でのリン酸化はE3活性の活性化について明確に必要である(Douら、2013、前掲)。我々はまた、c-Src活性化c-Cblに対して異なる位置にてBpa組込みを有する工学的に作成したE2~Ubコンジュゲートのパネルをテストし、およびRNF4についての生産的部位との部分的な重複のものを見出した(
図13)。最適なBpaの位置は31であったが、RNF4とは異なり、位置32(光ABP-UbBpa31)でもまた同様の効率で架橋された。これはおそらく、これら2つのRING E3sによって示される単量体および二量体活性化機構間のニュアンスの反映による(Douら、2013;Plechanovovaら、2012、前掲)。興味深いことに、光架橋効率は、光ABP-UbBpa31の濃度にかかわらず、準化学量論的なままであり、組換えタンパク質調製物のサブ集団が活性化していることの示唆に富んだ(
図14)。Phostag(フォスタグ)ゲル分析はCblが定量的にリン酸化されたことを指し示したが(
図15)、SrcはCbl内の複数の部位をリン酸化することが知られ、およびプローブ標識化の程度は位置Y371での準化学量論的リン酸化を反映し得る(Dou, H.ら(2012a). Nat Struct Mol Biol, 19, 184-192)。我々は高められた濃度のSrcとインキュベートすることで光架橋の効率が向上するかどうかをテストしたが、濃度が化学量論に近づくと光架橋が抑制されることが見出され;おそらく、SrcがCblの結合について光ABP-UbBpa31に対して競合するためである(データは示していない)。
【0141】
(ヒト細胞系におけるc-Cbl活性化のプロファイリング)
ヒト細胞系におけるc-Cbl活性化をプロファイリングできるかどうかを確立するために、我々はヒト胚性腎細胞(HEK293)細胞をGSTタグ付きc-Src(GST-Src)と共にGFPタグ付きc-Cbl(GFP-Cbl)またはGFPタグ付きc-Cbl Y371F(GFP-Cbl Y371F)と一緒に一過性にトランスフェクトさせた。自己ユビキチン化による活性化Cblの分解の可能性を防ぐため、我々は細胞を溶解に先立ちプロテアソームインヒビターMG132により90分間処理した。活性依存的な架橋は、Src共発現およびY371の存在に厳密に依存したが、光E2~UbBpa31 F62Aコントロールプローブでは見られなかった(
図4bおよび16)。内因性RING E3リガーゼの並列化プロテオミクスプロファイリング(parallelized proteomic profiling)における将来的使用のための潜在能力を与えるために、我々は光ABP-UbBpa31のビオチン化変異体を用意した。BpaはN末端のシステインタグ付きUb中に組み込み、およびイドドアセチル(idodoacetyl)-PEG2-ビオチンにより標識した。ビオチン標識化UbBpa31は次いでタグなしUbについての手順を使用してイソペプチドを介してE2と酵素的にコンジュゲートさせた(
図17)。
【0142】
(増殖因子刺激に応答した内因性RING E3活性化のプロファイリング)
我々は次に、生理的刺激に応答する内在性RING E3活性化の並列化プロファイリングを行う能力を評価した。そのような実験により、不十分にしか理解されていないRING E3sが生理学的および病態生理学的プロセスの双方のスペクトルにわたって調節機能によるものとすることができるようになる可能性があるであろう。乱雑な架橋によるABPの欠失はRING E3の適用範囲(coverage)を弱めるかもしれず、およびヘキサヒスチジンレポータータグに対する免疫ブロットによって初めにテストした(
図4c)。さらに、架橋は光ABP-UbBpa31 F62Aコントロールプローブにより実質減少し、それによって、架橋されたタンパク質の多くがE3sである可能性が高いことが暗示された(
図4c)。
【0143】
我々は、複雑な細胞サンプルからの架橋タンパク質の選択的濃縮を許容するように、光ABP-UbBpa31のビオチン化した変種を用意した。BpaはN末端システインタグ付きUbに組み込み、およびヨードアセチル-PEG2-ビオチンにより標識化した(Paoら、2018、前掲)。次いでビオチン標識UbBpa31はタグなしUbについての手順を使用してイソペプチドを介してE2に酵素的にコンジュゲートした(
図17および18)。次に、我々はEGF刺激に応答して内因性Cbl活性化が検出されることができたかどうかをテストしたが、それはCblリン酸化を誘導する(Levkowitz(レフコウィッツ)ら、1999;Levkowitzら、1998)。HEK293T細胞はEGFにより刺激し、および活性化されたRING E3sの潜在的な分解を防ぐために、我々はプロテアソームおよびリソソームインヒビターMG132およびバフィロマイシンによりそれぞれ事前処理した。並行実験により、下流マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ活性化について免疫ブロットすることによってEGF応答性を確かめ、それはEGF受容体活性化のローバスト(robust、堅牢な)マーカーである(Traverse(トラバース), S.ら、(1992). Biochem. J.(バイオケミカル・ジャーナル), 288(Pt 2), 351-355、
図19a)。
【0144】
抽出したプロテオームはビオチン化した光ABP-UbBpa31と共にインキュベートし、およびストレプトアビジン樹脂に対して濃縮した(Paoら、2018、前掲、
図4d)。架橋タンパク質の識別およびそれらのプローブ反応性は、ストレプトアビジン濃縮に続いて、データ依存性の液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)およびスペクトルカウントによって推論した(Paoら、2018、前掲)。25のRING E3sがCblを含めて検出された。CblペプチドはEGF-およびUV-処理されたサンプルにおいてだけ検出された(
図4e)。これは、光架橋プローブが内因性レベルにて自然なRING E3活性化を検出することができることを示唆する。興味深いことに、他の2つのRING E3s、Praja2およびTRIM11についてスペクトルカウントにおける顕著な増加があり、それはEGF-およびUV-依存性であった(
図4e)。これらのE3sの両方は増殖因子シグナル伝達と関係していたため、それらの検出はまた、EGF刺激に応答したそれらの活性化またはアップレギュレーションを反映し得る(Di(ダイ), K.らOncogene(オンコジーン), 32, 5038-5047; Rinaldi(リナルディ), L.ら(2016). Cell Death Dis.(セル・デス&ディジーズ)7, e2230.)。
【0145】
我々はHECT(11)、RBR(1)およびRCR(1)E3s、ならびに脱ユビキチン化酵素(DUBs)(31)およびE1活性化酵素のUV依存性濃縮を予想外に取得した(
図19aおよび19b)。結果として、これらの追加のユビキチンシステム構成要素のプローブ修飾は、それらの活性をモジュレートし、および研究中のRING E3sの活性化状態、または安定性を変えることができた。しかしながら、このことは、細胞抽出物の採用に関連する制限を超える任意の制限を提示するとはありそうになく、そこで細胞プロセスの大部分が停止するであろう。
【0146】
(代替E2に基づく光架橋ABPの生産)
また、異なるE2酵素に基づくABPも合成した。酵素UBE2N(またUbc13としても知られる)を採用した。Bpa31変異Ub分子を活性部位位置にコンジュゲートさせるために、上述と同様の戦略を採用した。触媒に関するシステイン(Cys87)をリジンに変異させ、安定なE1媒介イソペプチドコンジュゲーションが可能にされた。野生型ユビキチンを採用した他の研究では、活性部位に近接する自然なリジン残基(Lys92)へのコンジュゲーションが観察されたことに注目すべきである(Branigan(ブラニガン)、らNat Struct Mol Biol 22, 597-602)。このように、均質な修飾を確実にするために、UBE2N C87K K92A二重変異をBraniganらの研究において例証されるように採用した。UBE2Nプローブは、UBE2N E2酵素の生理学的パートナーであることが知られるE3リガーゼ(TRAF6)と機能した(
図20)。UBE2Nを基にしたプローブは、そこでUBE2D3について上述したように、ユビキチン分子がビオチン化され、また調製され(Ubc13-ビオチン-UbBpa3)、および細胞抽出物においてのRING E3リガーゼの活性ベースのプロテオームプロファイリングが可能であることが示された。
【0147】
(考察)
簡潔には、我々はRING E3リガーゼのアダプター様活性についての活性ベースのプローブを開発した。我々は、RNF4、c-CblおよびTRAF6についてのそれらの本来の活性化の合図に応じた活性依存的シグナルおよびABPベースの読み出しがさらなる機構的洞察をどのようにしてもたらすことができるかを実証する。これらのツールは、多様なサンプルタイプにおいてRING E3活性(E1、E2、または基質への依存性がない)の直接的なアセスメントを可能にする。我々はまた、抽出したプロテオームにおける内在性RING E3sのサブセットの並列化プロファイリングを実証し、および増殖因子刺激に応答したCblの活性化を検出する。そういうものとして、この技術は、RING E3調節生物学、標的発見、バイオマーカー応用およびモジュレーター発見の研究において有用性が見出されるべきである。我々のLC-MS/MS実験でのRING E3sのサブセットだけでの検出は、多くが不活性であるか、または我々の目下の実験条件の検出限界を超えていることの反映によるかもしれない。別の可能性は、多くのE3sが使用したE2酵素と機能しないことである(光ABP-UbBpa31は(UBE2D3)に基づく)。しかしながら、工学的に作り出されたイソペプチドコンジュゲーション戦略は、不安定なチオエステルの安定化について、UBE2D3、例えば、UBE2Nなどのようなものから分岐するE2sにより実証した(Braniganら、2015;Ordureau(オルドゥロー)ら、2015)。それゆえに、我々の高度なモジュールによるプローブ生産戦略は、単純に別個の組換えE2基礎的構成要素(building blocks)を使用することによって他のE2sにも難なく適用可能なはずである。これは潜在的に、より一層広範囲なRING E3適用範囲を与え、およびまた細胞のE2-E3相互作用ネットワーク中に洞察を提供するであろう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユビキチンの位置31でのグルタミン残基および/または位置32でのアスパラギン酸残基の代わりに光架橋剤モイエティを含む、活性化ユビキチン分子。
【請求項2】
ユビキチンはヒトユビキチンである、請求項1に記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項3】
光架橋剤モイエティは、アスパラギン酸/グルタミン残基の代わりに非自然アミノ酸、例えば、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニンなどのようなものの組込みによって得られた、請求項1または2のいずれかに記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項4】
レポータータグをさらに含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項5】
レポータータグは、ビオチンモイエティ、または分析的検出を可能にする他のレポーター、例は、エピトープタグ、フルオロフォアである、請求項4に記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項6】
ビオチンモイエティ/レポータータグは、ユビキチンのN末端に付着したリンカー分子を通してユビキチン分子に共有結合的に付着している、請求項4
または5に記載の活性化ユビキチン分子。
【請求項7】
E2コンジュゲーティング酵素にコンジュゲーションした、
請求項1~6のいずれか一項に記載の活性化
ユビキチン分子を含む、コンジュゲート分子。
【請求項8】
E2コンジュゲーティング酵素は、C85KもしくはC87K変異および/またはS22RもしくはK92A変異を含む変異酵素である、請求項7に記載のコンジュゲート分子。
【請求項9】
E2コンジュゲーティング酵素はUBE2D3またはUBE2Nである、請求項7または8に記載のコンジュゲート分子。
【請求項10】
N末端His-タグ基、例えば、ヘキサヒスチジンタグなどのようなものをさらに含む、請求項7-9のいずれか
一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項11】
RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素の活性プロファイリングの方法における、請求項7-10のいずれか
一項に記載のコンジュゲート分子の使用。
【請求項12】
活性プロファイリングはRING E3酵素のものである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
(i)RING E3酵素調節の研究、(ii)新規RING E3酵素の発見、(iii)インヒビタースクリーニング、(iv)インヒビター選択性プロファイリング;および/または(v)構造研究用の酵素中間体の安定化のための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項7-10のいずれか
一項に記載のコンジュゲート分子とRING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素との間の相互作用を検出する方法であって、コンジュゲート分子を前記RING E3酵素、RING E1酵素および/または脱ユビキチン化酵素と接触させること、および任意の新しいコンジュゲートの形成を検出することを含む、方法。
【請求項15】
RING E3酵素は、RNF4、Cbl、例えば、c-Cblなどのようなもの、Praja2、TRIM11、HECT(11)、RBR(1)、RCR(1)TRAF6、TRAF2およびHLTFの任意の一つまたは組合せであり、および脱ユビキチン化酵素はDUBs(31)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
相互作用はRING E3酵素とのものである、請求項14
または15に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
第二の態様において、本発明はE2コンジュゲーティング酵素にコンジュゲーションした第一の態様の活性化ユビキチン分子を含む、コンジュゲート分子を提供する。
【国際調査報告】