(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】鋳造設備及び鋳造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/11 20060101AFI20221025BHJP
B22D 11/115 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B22D11/11 D
B22D11/115 B
B22D11/115 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513839
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2020008597
(87)【国際公開番号】W WO2021132821
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0175835
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,サン ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク, イン ボム
(72)【発明者】
【氏名】ゾ,ヒョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジン ホ
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004AA09
4E004MB11
4E004MB12
4E004NB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、溶融物の流動を制御することのできる鋳造設備及び鋳造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、鋳造設備及び鋳造方法に関するものであり、ノズルを用いてモールドに溶融物を注入する過程と、前記モールドの幅方向に静磁場印加領域と静磁場未印加領域を形成して、前記モールドの長さ方向に前記溶融物の流動を制御する過程と、鋳片を引き抜く過程と、を含み、これを通して、容器内に収められた溶融物の流動を局部的に制御することにより溶融物の清浄度を確保して製品の品質を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳片を鋳造する鋳造設備であって、
内部に溶融物が収められる空間を与えるモールドと、
前記モールドに前記溶融物を供給するために前記モールドの上部に配備されるノズルと、
前記モールドの幅方向に両側の周縁部において磁場の方向を互いに異なる方向に制御するように、前記モールドの幅方向に外側に配備される静磁場発生部と、
前記静磁場発生部の動作を制御し得る制御部と、
を備える鋳造設備。
【請求項2】
前記モールドは、隔設される一対の長辺プレートと、前記一対の長辺プレートの両側をそれぞれ繋ぎ合わせる一対の短辺プレートと、を備え、
前記静磁場発生部は、
前記モールドの幅方向に中心部から離隔するように前記ノズルの下部に前記長辺プレートの幅方向に配備される複数の静磁場発生器と、
前記モールドの幅方向に前記ノズルの両側において前記モールドの厚み方向に通過する磁場を形成するように、前記複数の静磁場発生器に直流電流を供給し得る第1の電流供給器と、
を備える請求項1に記載の鋳造設備。
【請求項3】
前記複数の静磁場発生器のそれぞれは、
前記長辺プレートの幅方向の一部に沿って延び、互いに離隔するように配置されるコアと、
前記コアの外側に巻き付けられるコイルと、
を備える請求項2に記載の鋳造設備。
【請求項4】
前記複数の静磁場発生器は、
第1の静磁場発生器と、
前記第1の静磁場発生器との間に前記ノズルが配置されるように、前記第1の静磁場発生器の一方の側に離隔して配置される第2の静磁場発生器と、
前記第2の静磁場発生器と向かい合うように配置される第3の静磁場発生器と、
前記第3の静磁場発生器との間に前記ノズルが配置されるように、前記第3の静磁場発生器の一方の側に離隔して配置され、前記第1の静磁場発生器と向かい合うように配置される第4の静磁場発生器と、
を備え、
前記第1の電流供給器は、
前記モールドの厚み方向に向かい合う方向に互いに反対の極性を形成し、前記モールドの幅方向に互いに反対の極性を形成するように、前記第1の静磁場発生器、前記第2の静磁場発生器、前記第3の静磁場発生器及び前記第4の静磁場発生器に直流電流を供給し得る請求項3に記載の鋳造設備。
【請求項5】
前記第1の静磁場発生器と前記第2の静磁場発生器とは、第1の距離に見合う分だけ離隔し、前記第3の静磁場発生器と前記第4の静磁場発生器とは、第2の距離に見合う分だけ離隔し、
前記第1の距離と前記第2の距離とは等距離である請求項4に記載の鋳造設備。
【請求項6】
前記鋳片の全幅を100としたとき、前記第1の距離と前記第2の距離は4~36である請求項5に記載の鋳造設備。
【請求項7】
前記第1の静磁場発生器、前記第2の静磁場発生器、前記第3の静磁場発生器及び前記第4の静磁場発生器のうちの少なくともいずれか一つは、前記モールドの幅方向に沿って可動となるように配備される請求項6に記載の鋳造設備。
【請求項8】
前記第1の静磁場発生器と前記第2の静磁場発生器とを連結するための第1の連結コアと、
前記第3の静磁場発生器と前記第4の静磁場発生器とを連結するための第2の連結コアと、
を備える請求項7に記載の鋳造設備。
【請求項9】
前記静磁場発生部は、前記モールドの周方向に回転する形態の磁場を形成し得る請求項8に記載の鋳造設備。
【請求項10】
前記静磁場発生部の上部に配備され、前記溶融物の流動を制御するために移動磁場を形成し得る移動磁場発生部を備え、
前記制御部は、移動磁場の強さ及び方向のうちの少なくともどちらか一方を調節するように前記移動磁場発生部の動作を制御し得る請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の鋳造設備。
【請求項11】
前記移動磁場発生部は、前記ノズルの両側において前記モールドの幅方向に移動磁場を形成し得る複数の移動磁場発生器を備える請求項10に記載の鋳造設備。
【請求項12】
前記移動磁場発生器は、静磁場発生器と並ぶように配置され、前記溶融物の流動を前記静磁場発生器とは異なる方向に制御し得る請求項11に記載の鋳造設備。
【請求項13】
ノズルを用いてモールドに溶融物を注入する過程と、
前記モールドの幅方向に静磁場印加領域と静磁場未印加領域を形成して、前記モールドの長さ方向に前記溶融物の流動を制御する過程と、
鋳片を引き抜く過程と、
を含む鋳造方法。
【請求項14】
前記溶融物を注入する過程前に、
前記モールドの幅方向に中心部に前記ノズルを配置する過程を含み、
前記溶融物の流動を制御する過程は、前記モールドの幅方向に中心部に前記静磁場未印加領域を形成し、前記静磁場未印加領域の両側に前記静磁場印加領域を形成する過程を含む請求項13に記載の鋳造方法。
【請求項15】
前記溶融物の流動を制御する過程は、
前記ノズルよりも下部に前記静磁場印加領域と前記静磁場未印加領域を形成する過程を含む請求項14に記載の鋳造方法。
【請求項16】
前記溶融物の流動を制御する過程は、
前記モールドの厚み方向に沿って静磁場を形成する過程を含み、
前記静磁場印加領域を形成する過程は、前記モールドの幅方向に前記ノズルの両側において磁場の方向が互いに反対の方向に形成されるように静磁場を形成する過程を含む請求項15に記載の鋳造方法。
【請求項17】
前記溶融物の流動を制御する過程は、
前記ノズルが配置される前記モールドの幅方向に中心部の一部に前記静磁場未印加領域を形成する過程を含む請求項16に記載の鋳造方法。
【請求項18】
前記溶融物の流動を制御する過程は、
前記静磁場未印加領域が0~100Gaussの磁場を有するように前記静磁場印加領域の範囲を制御する過程を含む請求項17に記載の鋳造方法。
【請求項19】
前記溶融物の流動を制御する過程は、
前記鋳片の幅に応じて前記静磁場印加領域間の距離を調節する過程を含む請求項18に記載の鋳造方法。
【請求項20】
前記溶融物の流動を制御する過程は、
前記モールドの幅方向に両側の周縁部に前記静磁場印加領域を形成して前記溶融物の下降流の流速を減速させ、前記静磁場印加領域の間に前記静磁場未印加領域を形成して前記溶融物の上昇流を形成する過程を含む請求項19に記載の鋳造方法。
【請求項21】
前記溶融物の流動を制御する過程は、
前記モールドの幅方向に移動磁場印加領域と移動磁場未印加領域を形成して、前記モールドの幅方向に前記溶融物の流動を制御する過程をさらに含む請求項20に記載の鋳造方法。
【請求項22】
前記モールドの幅方向に前記溶融物の流動を制御する過程は、
前記溶融物の湯面と前記ノズルの下端との間に前記移動磁場印加領域と前記移動磁場未印加領域を形成する過程を含む請求項21に記載の鋳造方法。
【請求項23】
前記移動磁場印加領域を形成する過程は、
前記モールドの幅方向に前記ノズルの両側において前記モールドの幅方向に移動磁場を形成する過程を含む請求項22に記載の鋳造方法。
【請求項24】
前記移動磁場印加領域を形成する過程は、
前記移動磁場の磁場の強さ及び方向のうちの少なくともどちらか一方を調節する過程を含む請求項23に記載の鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造設備及び鋳造方法に係り、さらに詳しくは、溶融物の流動を制御して溶融物の清浄度を確保することにより、製品の品質を向上させることのできる鋳造設備及び鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、連続鋳造工程は、一定の内部形状を有するモールド(鋳型)に溶鋼を注入し、モールド内において半凝固された鋳片を連続してモールドの下側に引き抜いてスラブ、ブルーム、ビレット、ビームブランクなどの様々な形状の鋳片を製造することができる。このようにして製造される鋳片の表面品質及び内部品質は、様々な要因により影響を受け、特に、鋳片の表面品質は、モールド内の溶鋼の流動に大きな影響を受ける。
【0003】
連続鋳造工程において浸漬ノズルを用いてモールドに溶融物を注入する場合、浸漬ノズルの吐出口から吐き出された溶融物はジェット流を形成しながらモールドの幅方向に流動することになる。モールドの幅方向に流動する溶融物は、モールドの内面、例えば、短辺プレートの内面に衝突して一部は上昇流を形成し、一部は下降流を形成することになる。そして、上昇流は、溶融物の湯面の近くからモールドの中心部、例えば、浸漬ノズルが配設された側に向かって移動することになる。このようにしてモールドの中心部に向かって移動した溶融物は、互いに反対の方向から移動する溶融物及び浸漬ノズルと衝突して浸漬ノズルの周りの湯面の近くにおいて渦流(vortex)を形成して湯面の流動を不安定にする。このとき、上昇流の流速が速ければ速いほど、溶融物の湯面の流動がさらに不安定になり、これにより、溶融物の湯面の上部に位置しているモールドスラグやモールドフラックスなどといった異種の物質が溶融物中に混入してしまうという不都合がある。
【0004】
また、下降流は、モールドの周縁部に沿って下向きに流動していて、モールドの中心部から上昇する2次上昇流を形成することになる。このとき、溶鋼に含有されている介在物は、下降流に沿って鋳造方向に沿って移動していて、2次上昇流に沿って浮き上がってモールドスラグやモールドフラックスに流れ込んで除去され得る。ところが、下降流の流速に応じて介在物の移動距離が異なってき、下降流の流速が速い場合には介在物が凝固シェルに浸透して、それ以降に製造された鋳片の表面欠陥を引き起こしてしまうという不都合がある。
【0005】
このような不都合を解決するために、モールドに磁場発生器を配設してモールド内の溶鋼の流動を制御する方法が利用されている。この方法で溶鋼の湯面の近くにおいて上昇流を制御して溶鋼中にモールドフラックスが流れ込むことを抑え、浸漬ノズルの下部から下降流を制御して介在物の移動距離を制御することにより、鋳片の表面欠陥が生じることを抑えている。ところが、下降流を制御する過程において下降流により生じる2次上昇流の形成もまた抑えられてしまうという現象が生じている。これにより、下降流に沿って鋳造方向に移動した介在物が正常に浮き上がることなく、溶鋼中に残留して依然として鋳片の品質を低下させてしまうという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1176816号公報
【特許文献2】特許第4411945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶融物の流動を制御することのできる鋳造設備及び鋳造方法を提供する。
【0008】
本発明は、溶融物中に含有される介在物を円滑に取り除くことができ、溶融物中に異種の物質が混入されることを抑えて製品の品質を向上させることのできる鋳造設備及び鋳造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る鋳造設備は、鋳片を鋳造する鋳造設備であって、内部に溶融物を収め得る空間を与えるモールドと、前記モールドに前記溶融物を供給するために前記モールドの上部に配備されるノズルと、前記モールドの幅方向に両側の周縁部において磁場の方向を互いに異なる方向に制御するように、前記モールドの幅方向に外側に配備される静磁場発生部と、前記静磁場発生部の動作を制御し得る制御部と、を備えていてもよい。
【0010】
前記モールドは、隔設される一対の長辺プレートと、前記一対の長辺プレートの両側をそれぞれ繋ぎ合わせる一対の短辺プレートと、を備え、前記静磁場発生部は、前記モールドの幅方向に中心部から離隔するように前記ノズルの下部に前記長辺プレートの幅方向に配備される複数の静磁場発生器と、前記モールドの幅方向に前記ノズルの両側において前記モールドの厚み方向に通過する磁場を形成するように、前記複数の静磁場発生器に直流電流を供給し得る第1の電流供給器と、を備えていてもよい。
【0011】
前記複数の静磁場発生器のそれぞれは、前記長辺プレートの幅方向の一部に沿って延び、互いに離隔するように配置されるコアと、前記コアの外側に巻き付けられるコイルと、を備えていてもよい。
【0012】
前記複数の静磁場発生器は、第1の静磁場発生器と、前記第1の静磁場発生器との間に前記ノズルが配置されるように、前記第1の静磁場発生器の一方の側に離隔して配置される第2の静磁場発生器と、前記第2の静磁場発生器と向かい合うように配置される第3の静磁場発生器と、前記第3の静磁場発生器との間に前記ノズルが配置されるように、前記第3の静磁場発生器の一方の側に離隔して配置され、前記第1の静磁場発生器と向かい合うように配置される第4の静磁場発生器と、を備え、前記第1の電流供給器は、前記モールドの厚み方向に向かい合う方向に互いに反対の極性を形成し、前記モールドの幅方向に互いに反対の極性を形成するように、前記第1の静磁場発生器、前記第2の静磁場発生器、前記第3の静磁場発生器及び前記第4の静磁場発生器に直流電流を供給し得るものであってもよい。
【0013】
前記第1の静磁場発生器と前記第2の静磁場発生器とは、第1の距離に見合う分だけ離隔し、前記第3の静磁場発生器と前記第4の静磁場発生器とは、第2の距離に見合う分だけ離隔し、前記第1の距離と前記第2の距離とは等距離であってもよい。
【0014】
前記鋳片の全幅を100としたとき、前記第1の距離と前記第2の距離は4~36であってもよい。
【0015】
前記第1の静磁場発生器、前記第2の静磁場発生器、前記第3の静磁場発生器及び前記第4の静磁場発生器のうちの少なくともいずれか一つは、前記モールドの幅方向に沿って可動となるように配備されてもよい。
【0016】
前記鋳造設備は、前記第1の静磁場発生器と前記第2の静磁場発生器とを連結するための第1の連結コアと、前記第3の静磁場発生器と前記第4の静磁場発生器とを連結するための第2の連結コアと、を備えていてもよい。
【0017】
前記静磁場発生部は、前記モールドの周方向に回転する形態の磁場を形成し得るものであってもよい。
【0018】
前記鋳造設備は、前記静磁場発生部の上部に配備され、前記溶融物の流動を制御するために移動磁場を形成し得る移動磁場発生部を備え、前記制御部は、移動磁場の強さ及び方向のうちの少なくともどちらか一方を調節するように前記移動磁場発生部の動作を制御し得るものであってもよい。
【0019】
前記移動磁場発生部は、前記ノズルの両側において前記モールドの幅方向に移動磁場を形成し得る複数の移動磁場発生器を備えていてもよい。
【0020】
前記移動磁場発生器は、静磁場発生器と並ぶように配置され、前記溶融物の流動を前記静磁場発生器とは異なる方向に制御し得るものであってもよい。
【0021】
本発明の実施形態に係る鋳造方法は、ノズルを用いてモールドに溶融物を鋳込む過程と、前記モールドの幅方向に静磁場印加領域と静磁場未印加領域を形成して、前記モールドの長さ方向に前記溶融物の流動を制御する過程と、鋳片を引き抜く過程と、を含んでいてもよい。
【0022】
前記鋳造方法は、前記溶融物を鋳込む過程前に、前記モールドの幅方向に中心部に前記ノズルを配置する過程を含み、前記溶融物の流動を制御する過程は、前記モールドの幅方向に中心部に静磁場未印加領域を形成し、前記静磁場未印加領域の両側に前記静磁場印加領域を形成する過程を含んでいてもよい。
【0023】
前記溶融物の流動を制御する過程は、前記ノズルよりも下部に前記静磁場印加領域と前記静磁場未印加領域を形成する過程を含んでいてもよい。
【0024】
前記溶融物の流動を制御する過程は、前記モールドの厚み方向に沿って静磁場を形成する過程を含み、前記静磁場印加領域を形成する過程は、前記モールドの幅方向に前記ノズルの両側において磁場の方向が互いに反対の方向に形成されるように静磁場を形成する過程を含んでいてもよい。
【0025】
前記溶融物の流動を制御する過程は、前記ノズルが配置される前記モールドの幅方向に中心部の一部に前記静磁場未印加領域を形成する過程を含んでいてもよい。
【0026】
前記溶融物の流動を制御する過程は、前記静磁場未印加領域が0~100Gaussの磁場を有するように前記静磁場印加領域の範囲を制御する過程を含んでいてもよい。
【0027】
前記溶融物の流動を制御する過程は、前記鋳片の幅に応じて前記静磁場印加領域間の距離を調節する過程を含んでいてもよい。
【0028】
前記溶融物の流動を制御する過程は、前記モールドの幅方向に両側の周縁部に前記静磁場印加領域を形成して前記溶融物の下降流の流速を減速させ、前記静磁場印加領域の間に前記静磁場未印加領域を形成して前記溶融物の上昇流を形成する過程を含んでいてもよい。
【0029】
前記溶融物の流動を制御する過程は、前記モールドの幅方向に移動磁場印加領域と移動磁場未印加領域を形成して、前記モールドの幅方向に前記溶融物の流動を制御する過程をさらに含んでいてもよい。
【0030】
前記モールドの幅方向に前記溶融物の流動を制御する過程は、前記溶融物の湯面と前記ノズルの下端との間に移動磁場印加領域と移動磁場未印加領域を形成する過程を含んでいてもよい。
【0031】
前記移動磁場印加領域を形成する過程は、前記モールドの幅方向に前記ノズルの両側において前記モールドの幅方向に移動磁場を形成する過程を含んでいてもよい。
【0032】
前記移動磁場印加領域を形成する過程は、前記移動磁場の磁場の強さ及び方向のうちの少なくともどちらか一方を調節する過程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の実施形態によれば、容器内に収められた溶融物の流動を局部的に制御することができる。すなわち、モールドの幅方向に静磁場を選択的に印加してモールドの長さ方向に溶融物の流動を選択的に制御することができる。したがって、溶融物中に含有される介在物が溶融物に沿って下向きに移動する距離を低減させるとともに、上側への浮き上がりを容易にして介在物による製品の品質の低下を抑えることができる。なお、モールドの幅方向に移動磁場を形成して、溶融物の湯面の近くにおいて溶融物の流動を制御することにより、溶融物にモールドフラックスやモールドスラグなどといった異種の物質が混入することを抑えることができる。これを通して、溶融物の清浄度を確保して溶融物を用いて製造される製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】
図1に示すA-A’に沿った鋳造設備の断面図。
【
図3】静磁場発生部を用いて溶融物の流動を制御する原理を説明するための図。
【
図5】本発明の実施形態に係る鋳造方法で溶融物の流動を制御する状態を示す図。
【
図6】モールドの幅方向への静磁場未印加領域の形成有無に応じたモールド内の2次上昇流の流動の解析結果を示す図。
【
図7】
図1に示す線B-B’に沿った鋳造設備の断面図。
【
図8】移動磁場発生部を用いて溶融物の流動を制御する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。本発明を説明するに当たって、同じ構成要素に対しては同じ参照符号を付し、図面は、本発明の実施形態を正確に説明するために大きさが部分的に誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る鋳造設備の斜視図であり、
図2は、
図1に示す線A-A’に沿った鋳造設備の断面図である。
【0037】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る鋳造設備は、内部に溶融物が収められる空間を与えるモールド100と、モールド100に溶融物を供給するために少なくとも一部がモールド100の内部に挿入されるように配置されるノズル130と、モールド100の幅方向に両側の周縁部において磁場の方向を互いに異なる方向に制御するように、モールド100の幅方向に外側に配備される静磁場発生部200及び静磁場発生部200の動作を制御し得る制御部400を備えていてもよい。
【0038】
モールド100は、内部に溶融物、例えば、溶鋼が収められる空間を与えるための複数枚のプレート110、120を備えていてもよい。このとき、複数枚のプレート110、120は、長辺プレート110と短辺プレート120とを備えていてもよい。
【0039】
このような長辺プレート110、例えば、第1の長辺プレート111と第2の長辺プレート113は、互いに離隔するように向かい合うように配置され、短辺プレート120、例えば、第1の短辺プレート121と第2の短辺プレート123は、第1の長辺プレート111と第2の長辺プレート113の両側に接触するように配置されて、内部に溶融物が収められる空間を形成することができる。このとき、モールド100の上部及び下部は開かれてもよく、長辺プレート110と短辺プレート120は、接触部位に溶融物が流出されないように互いに密着されてもよい。
【0040】
ここで、長辺プレート110の水平方向の長さは長辺プレート110の幅と称し、その方向は長辺プレート110の幅方向と称する。このとき、長辺プレート110の幅方向は、モールド100の幅方向を意味することもある。そして、長辺プレート110の上下方向の長さは長辺プレート110の長さと称し、その方向は長辺プレート110の長さ方向と称する。このとき、長辺プレート110の長さ方向は、モールド100の長さ方向または鋳片の引抜方向を意味することもある。なお、短辺プレート120の水平方向の長さは短辺プレート120の幅と称し、その方向は短辺プレート120の幅方向と称する。このとき、短辺プレート120の幅方向は、モールド100の厚み方向を意味することもある。
【0041】
このような長辺プレート110と短辺プレート120の内部には、冷却媒体が移動する流路(図示せず)が形成されていて、モールド100に注入された溶融物は、流路に沿って移動する冷却媒体により冷却されてもよい。このため、溶融物は、モールド100の内面と接触する部分から凝固されて凝固シェルまたは鋳片として鋳造され、モールド100の下部に引き抜かれてもよい。
【0042】
ノズル130は、モールド100の上部に配備されて、モールド100に溶融物を注入することができる。ノズル130は、少なくとも一部、例えば、下部がモールド100の内部に挿入されるように配置されて、モールド100の上部に配備されるタンディッシュ(図示せず)に収められた溶融物をモールド100の内部に注入することができる。ノズル130は、溶融物が移動可能な内孔部を有するノズル胴体132と、溶融物が内孔部から外側、すなわち、モールド100に移動可能な吐出口134と、を備えていてもよい。このとき、ノズル胴体132は、上部が開かれて下端は閉じられ、内部には溶融物が移動可能な通路を形成できるように内孔部(図示せず)が形成されてもよい。そして、吐出口134は、モールド100の内部に溶融物を吐き出し可能なようにノズル胴体132の下部の側面に少なくとも二つ以上、例えば、2個または4個形成されてもよい。このとき、吐出口134は、モールド100の幅方向に溶融物を吐き出し可能なように短辺プレート120と対向するノズル胴体132の下部の側面に形成されてもよい。
【0043】
静磁場発生部200は、モールド100の幅方向に外側に配備されて溶融物に磁場、例えば、静磁場を印加することができる。このとき、静磁場発生部200は、ノズル130の下端よりも下部に配備されて、吐出口134に吐き出される溶融物の下降流の流動を制御することができる。また、静磁場発生部200は、下降流が形成されるモールド100の幅方向に両側の周縁部に形成されて、静磁場印加領域を形成することができる。静磁場発生部200は、モールド100の幅方向に静磁場を印加して、モールド100の幅方向に周縁部に形成される溶融物の下降流の流速を減速させることができる。ここで、静磁場は、磁場発生器に直流電源を用いて形成された磁場であって、磁場領域にある流体の流れや全体的な挙動を抑えることにより流体の流速を減速させる役割を果たすことができる。このように、静磁場発生部200によりモールド100に静磁場が印加されれば、静磁場により下降流の移動が抑えられ、下降流の流動速度が減速可能になる。したがって、下側方向への介在物の移動距離が短縮されて、溶融物内における介在物の浸透深さが低減されることが可能になる。
【0044】
従来にも、モールドに静磁場発生部を配設して、下降流を制御する方法が利用されていた。この場合、モールドの幅方向の全体に沿って静磁場を印加するようにモールドに静磁場発生部を配設したので、下降流の流速を減速させることができた。しかしながら、モールドの幅方向の全体に沿って形成される静磁場により溶融物の流動が抑えられて2次上昇流もまた低減されて、溶融物に含有される介在物を上側に浮き上がらせて取り除くことが困難であるという不都合があった。
【0045】
このため、本発明においては、静磁場発生部200を用いてモールド100の幅方向に沿って静磁場印加領域と静磁場未印加領域を選択的に形成することにより、静磁場印加領域では磁場を用いて下降流の流速を減速させ、静磁場未印加領域では磁場による影響を極力抑えて2次上昇流が形成されるようにすることができる。
【0046】
静磁場発生部200は、モールド100の幅方向に両側において磁場の方向をモールド100の厚み方向に互いに異なる方向、例えば、互いに反対の方向となるように静磁場を形成することができる。このため、静磁場発生部200は、モールド100の幅方向に両側の周縁に静磁場印加領域を形成し、モールド100の幅方向に中心部には静磁場印加領域に形成される磁場の強さが打ち消される領域、すなわち、静磁場未印加領域を形成することができる。このため、静磁場印加領域において浸透深さが低減された介在物が静磁場未印加領域において形成される2次上昇流により上側に浮き上がり易いので、介在物による鋳片表面の欠陥を抑えることができる。
【0047】
このような静磁場発生部200は、静磁場印加領域が形成されるモールド100の幅方向に両側の周縁においてはモールド100の長さ方向に形成される下降流の流速を減速させることができ、静磁場未印加領域が形成されるモールド100の幅方向に中心部においてはモールド100の長さ方向に形成される2次上昇流の流速を増速させたり、2次上昇流が円滑に形成されるようにしたりすることができる。
【0048】
ここで、静磁場印加領域は、静磁場発生部200により静磁場または磁場が形成される領域であって、溶融物の流動を印加できるほどの強さの静磁場または磁場が印加される領域を意味することもある。そして、静磁場未印加領域は、溶融物の流動に影響を及ぼさないほどの強さを有する静磁場または磁場が印加されるか、あるいは、静磁場または磁場が全く印加されない領域を意味することもある。例えば、静磁場未印加領域は、約0~100Gaussの静磁場または磁場が印加される領域を意味することもある。
【0049】
図2を参照すると、静磁場発生部200は、ノズル130の下端よりも下部において長辺プレート110の幅方向に配備される複数の静磁場発生器210、220、230、240と、複数の静磁場発生器210、220、230、240に直流電流を供給し得る第1の電流供給器250と、を備えていてもよい。
【0050】
複数の静磁場発生器210、220、230、240は、第1の静磁場発生器210と第1の静磁場発生器210との間にノズル130が配置されるように、第1の静磁場発生器210から離隔して配置される第2の静磁場発生器220と、第2の静磁場発生器220と向かい合うように配置される第3の静磁場発生器230及び第3の静磁場発生器230との間にノズル130が配置されるように第3の静磁場発生器230から離隔して配置され、第1の静磁場発生器210と向かい合うように配置される第4の静磁場発生器240と、を備えていてもよい。第1の静磁場発生器210と第2の静磁場発生器220は、第1の長辺プレート111の外面に互いに離隔するように配置されてもよく、第3の静磁場発生器230と第4の静磁場発生器240は、第2の長辺プレート113の外面に互いに離隔するように配置されてもよい。このとき、第1の静磁場発生器210と第2の静磁場発生器220との離隔距離D、例えば、第1の距離と、第3の静磁場発生器230と第4の静磁場発生器240との離隔距離D、例えば、第2の距離は等距離であってもよい。これは、静磁場未印加領域がモールド100の幅方向に中心部に形成されるようにするためである。第1の距離と第2の距離は、鋳造しようとする鋳片の幅に応じて変更可能であり、鋳片の全幅を100としたとき、第1の距離と第2の距離は、4~36の範囲に調節されてもよい。あるいは、鋳片の全幅を100としたとき、第1の距離と第2の距離は、10~25や、15~20の範囲に調節されてもよい。このとき、第1の距離と第2の距離が提示された範囲よりも短過ぎる場合には、2次上昇流が形成される空間を十分に確保することができない。このため、2次上昇流がほとんど形成されないか、あるいは、たとえ2次上昇流が形成されるとしても、比較的に狭い領域において形成されるため、溶融物に含有される介在物を十分に取り除くことが困難であるという不都合がある。これに対し、第1の距離と第2の距離が提示された範囲よりも長過ぎる場合には、モールド100の幅方向に両側の周縁において流速が減速された下降流がモールド100の中心部に十分に移動することができず、これにより、2次上昇流の流速もまた減速されて介在物を上側に浮き上がらせ難いという不都合がある。
【0051】
これにより、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240をモールド100の幅に沿って可動となるように備えることにより、鋳片の幅に応じて第1の距離と第2の距離を適宜に調節して溶融物に含有される介在物を効率よく取り除くことができる。このとき、第1の距離及び第2の距離は、鋳造速度に影響を受けることがあり、例えば、鋳片の幅が1100mm以下であり、鋳造速度が0.7~2.8m/minである場合には、第1の距離と第2の距離を50~250mmに調節することができる。なお、鋳片の幅が1100~1500mmであり、鋳造速度が0.7~2.8m/minである場合には、第1の距離と第2の距離を100~350mmに調節することができ、鋳片の幅が1500~1900mmであり、鋳造速度が0.7~2.8m/minである場合には、第1の距離と第2の距離を100~500mmに調節することができる。
【0052】
まず、第1の静磁場発生器210は、第1の長辺プレート111の一方の側に偏るように配備され、第2の静磁場発生器220は、第1の静磁場発生器210から離隔し、第1の長辺プレート111の他方の側に偏るように配備されてもよい。このとき、第1の静磁場発生器210は、第1のコア212と、第1のコア212の外側に巻き付けられる第1のコイル214と、を備えていてもよい。第2の静磁場発生器220は、第2のコア222と、第2のコア222の外側に巻き付けられる第2のコイル224と、を備えていてもよい。ここで、モールド100の一方の側または長辺プレート110の一方の側は、第1の短辺プレート121が位置している方向を意味し、モールド100の他方の側または長辺プレート110の他方の側は、第2の短辺プレート123が位置している方向を意味することがある。
【0053】
第1のコア212と第2のコア222は、モールド100の幅方向に互いに離隔するようにモールド100の外側に配備されてもよい。第1のコア212と第2のコア222は、一方向に延びるプレート状に形成されてもよい。例えば、第1のコア212と第2のコア222は、モールド100の幅方向の長さがモールド100の幅方向の長さよりも長いプレート状に形成されてもよい。これらの第1のコア212と第2のコア222は、第1の長辺プレート111の幅方向の一部に沿って延びるように第1の長辺プレート111の外面に一列に配置されてもよい。このとき、第1のコア212と第2のコア222は、これらの間にノズル130が配置できるようにノズル130が配置されるモールド100の幅方向に中心部において互いに離隔するように配置されてもよい。
【0054】
そして、第1のコイル214は、第1のコア212の外側に第1のコア212が延びる方向、例えば、モールド100の幅方向に巻き付けられてもよい。なお、第2のコイル224は、第2のコア222の外側に第2のコア222が延びる方向、例えば、モールド100の幅方向に水平方向に巻き付けられてもよい。
【0055】
また、第3の静磁場発生器230は、第2の長辺プレート113の他方の側に偏るように配備され、第4の静磁場発生器240は、第3の静磁場発生器230から離隔し、第2の長辺プレート113の一方の側に偏るように配備されてもよい。このとき、第3の静磁場発生器230は、第2の静磁場発生器220と対向する位置、例えば、向かい合うように配置してもよく、第4の静磁場発生器240は、第1の静磁場発生器210と向かい合うように配置してもよい。第3の静磁場発生器230は、第3のコア232と、第3のコア232の外側に巻き付けられる第3のコイル234と、を備えていてもよい。第4の静磁場発生器240は、第4のコア242と、第4のコア242の外側に巻き付けられる第4のコイル244と、を備えていてもよい。第3のコア232と第4のコア242は、モールド100の幅方向に互いに離隔するようにモールド100の外側に配備されてもよい。第3のコア232と第4のコア242は、第2の長辺プレート113の幅方向の一部に沿って延びるように第2の長辺プレート113の外面に一列に配置されてもよい。このとき、第3のコア232と第4のコア242は、これらの間にノズル130が配置できるようにノズル130が配置されるモールド100の幅方向に中心部において互いに離隔するように配置されてもよい。
【0056】
さらに、第3のコイル234は、第3のコア232の外側に第3のコア232が延びる方向であるモールド100の幅方向に巻き付けられてもよい。なお、第4のコイル244は、第4のコア242の外側に第4のコア242が延びる方向であるモールド100の幅方向に巻き付けられてもよい。
【0057】
これらの第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240は、第1の電流供給器250と電気的に接続されてもよい。第1の電流供給器250は、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240に直流電流を供給することができる。第1の電流供給器250は、制御部400の制御を介して第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240に直流電流を同時に供給することもできれば、選択的に供給することもできる。第1の電流供給器250は、磁場の方向がモールド100の厚み方向に形成されるように第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240に直流電流を供給することができる。このとき、第1の電流供給器250は、モールド100の幅方向に中心部、例えば、ノズル130の両側において磁場の方向が互いに反対の方向に形成されるように直流電流を供給することができる。すなわち、第1の電流供給器250は、モールド100の一方の側において磁場の方向が第1の静磁場発生器210から第4の静磁場発生器240に向かって形成され、モールド100の他方の側において磁場の方向が第3の静磁場発生器230から第2の静磁場発生器220に向かって形成されるように第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240に直流電流を供給することができる。このとき、制御部400は、磁場の強さまたは強度を調節するために、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240に供給される電流量を調節するように第1の電流供給器250を制御することもできる。
【0058】
ここでは、モールド100の幅方向にノズル130の一方の側、例えば、モールド100の一方の側に形成される磁場の方向を第1の方向と称し、モールド100の幅方向にノズル130の他方の側、例えば、モールド100の他方の側に形成される磁場の方向を第2の方向と称する。例えば、第1の静磁場発生器210と第4の静磁場発生器240との間に形成される磁場の方向は第1の方向と称し、第2の静磁場発生器220と第3の静磁場発生器230との間に形成される磁場の方向は第2の方向と称する。このとき、第1の方向と第2の方向は互いに反対の方向であってもよい。そして、第1のコア212、第2のコア222、第3のコア232及び第4のコア242においてモールド100と向かい合う方向を一方の側と称し、モールド100の外側に向かう方向は他方の側と称する。このため、第1の電流供給器250は、向かい合う第1のコア212の一方の側と第4のコア242の一方の側とが互いに反対の極性を有するように直流電流を供給することができる。そして、第1の電流供給器250は、向かい合う第2のコア222の一方の側と第3のコア232の一方の側とが互いに反対の極性を有するように直流電流を供給することができる。このとき、第1の電流供給器250は、第1のコア212の一方の側と第2のコア222の一方の側とが互いに反対の極性を有するように直流電流を供給することができ、第3のコア232の一方の側と第4のコア242の一方の側とが互いに反対の極性を有するように直流電流を供給することができる。
【0059】
例えば、第1の電流供給器250は、第1のコア212の一方の側と第3のコア232の一方の側がN極を有し、第2のコア222の一方の側と第4のコア242の一方の側がS極を有するように直流電流を供給することができる。この場合、第1の電流供給器250においてそれぞれの静磁場発生器210、220、230、240に直流電流を形成すると、それぞれの静磁場発生器210、220、230、240に静磁場が形成され得る。それぞれの静磁場発生器210、220、230、240においては、磁場の方向がS極からN極に向かう静磁場が形成されてもよい。このとき、第1の静磁場発生器210において生じる静磁場は、磁場の方向が第1のコア212の他方の側から第1のコア212の一方の側に向かい、第4の静磁場発生器240において生じる静磁場は、磁場の方向が第4のコア242の一方の側から第4のコア242の他方の側に向かうように形成されてもよい。モールド100の一方の側には、第1の静磁場発生器210から第4の静磁場発生器240に向かって、例えば、第1の方向を有する磁場が形成されてもよい。そして、第3の静磁場発生器230において生じる静磁場は、磁場の方向が第3のコア232の他方の側から第3のコア232の一方の側に向かい、第2の静磁場発生器220において生じる静磁場は、磁場の方向が第2のコア222の一方の側から第2のコア22の他方の側に向かうように形成されてもよい。モールド100の一方の側には、第3の静磁場発生器230から第2の静磁場発生器220に向かって、例えば、第2の方向を有する磁場が形成されてもよい。ここでは、第1の方向は、第1の静磁場発生器210から第4の静磁場発生器240に向かい、第2の方向は、第3の静磁場発生器230から第2の静磁場発生器220に向かうことを意味すると説明するが、第1の電流供給器250において、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240に直流電流を供給する状態に応じて、第1の方向と第2の方向は変更可能である。但し、この場合にも、第1の方向と第2の方向は互いに反対であってもよい。
【0060】
図3は、静磁場発生部を用いて溶融物の流動を制御する原理を説明するための図である。
【0061】
まず、ノズル130を用いてモールド100に溶融物を注入してもよい。モールド100に溶融物を注入する前に、モールド100の幅方向に中心部にノズル130を位置させてもよい。そして、静磁場発生部200を用いてモールド100の幅方向に静磁場印加領域と静磁場未印加領域を形成して、モールド100の長さ方向に溶融物の流動を制御しながら、鋳片を引き抜いてもよい。このとき、モールド100の幅方向に静磁場印加領域と静磁場未印加領域を形成する過程は、モールド100に溶融物を注入する前から行われてもよく、モールド100に溶融物を注入した後に行われてもよく、モールド100に溶融物を注入すると同時に行われてもよい。
【0062】
溶融物の流動は、次のように制御されてもよい。
【0063】
図3を参照すると、第1の電流供給器250を介して第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240に直流電流を供給すると、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240のそれぞれは静磁場を形成することができる。このとき、ノズル130を中心として互いにずれるように配置される第1の静磁場発生器210と第3の静磁場発生器230は、同じ極性を有していてもよく、互いにずれるように配置される第2の静磁場発生器220と第4の静磁場発生器240は、同じ極性を有していてもよい。例えば、第1のコア212の一方の側と第3のコア232の一方の側は、同じ極性、例えば、N極を形成し、第2のコア222の一方の側と第4のコア242の一方の側は、同じ極性、例えば、S極を形成することができる。そして、それぞれの静磁場発生器210、220、230、240において形成される静磁場は、それぞれのコア212、222、232、242に沿ってS極からN極に向かう磁場の方向を有することになる。このとき、それぞれのコア212、222、232、242の周りの磁場もまた、S極からN極に向かう磁場の方向を有することになるが、それぞれのコア212、222、232、242の周りに形成される磁場の方向によりモールド100の厚み方向に磁場が形成されてもよい。また、磁場は、それぞれのコア212、222、232、242から遠ざかるにつれて磁場の強さが次第に弱まってくる。このため、向かい合う第1の静磁場発生器210と第4の静磁場発生器240との間において磁場が打ち消されて磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱い区間が形成されることが可能になる。これは、向かい合う第1のコア212の一方の側と第4のコア242の一方の側とが互いに反対の極性を有するためである。また、向かい合う第2の静磁場発生器220と第3の静磁場発生器230との間にも、磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱い区間が形成され得る。これは、向かい合う第2のコア222の一方の側と第3のコア232の一方の側とが互いに反対の極性を有するためである。さらに、隣り合う第1の静磁場発生器210と第2の静磁場発生器220との間、第3の静磁場発生器230と第4の静磁場発生器240との間にも、磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱い区間が形成され得る。このため、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240においてそれぞれ生じる静磁場の間、例えば、モールド100の厚み方向に中心部及びモールド100の幅方向に中心部に磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱い区間、すなわち、静磁場未印加領域が形成され得る。ここで、磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱いということは、磁場の強さが0~100Gauss以下である場合を意味することがある。
【0064】
このように、モールド100の外側に第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240を配設して、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240が配置される領域には静磁場印加領域を形成し、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器及び第4の静磁場発生器240の間には静磁場未印加領域を選択的に形成することができる。したがって、静磁場印加領域においては、磁場を用いて溶融物の下降流の流速を減速させることができ、静磁場未印加領域においては、磁場の影響を極力抑えて2次上昇流を円滑に形成することができる。このとき、鋳造しようとする鋳片の幅に応じて、静磁場未印加領域の幅を調節することができる。前述したように、鋳片の幅に応じて静磁場未印加領域の幅を調節して2次上昇流を円滑に形成することができる。
【0065】
ここでは、第1のコア212及び第2のコア222、第3のコア232と第4のコア242をモールド100の幅方向に離隔させて形成する例について説明して、モールド100の幅方向に静磁場未印加領域と静磁場印加領域を形成する例について説明した。しかしながら、モールド100の幅方向に静磁場未印加領域と静磁場印加領域を形成してもよい。
【0066】
図4は、本発明の変形例に係る鋳造設備の断面図である。本発明の変形例に係る鋳造設備は、第1の静磁場発生器210と第2の静磁場発生器220とを第1の連結コア272で連結し、第3の静磁場発生器230と第4の静磁場発生器240とを第2の連結コア274で互いに連結したことを除いては、前述した実施形態の鋳造設備とほとんど同じ構造に形成され得る。
【0067】
第1の連結コア272は、第1の静磁場発生器210の第1のコア212と第2の静磁場発生器220の第2のコア222とをモールド100の幅方向に沿って互いに連結してもよい。このとき、第1の連結コア272は、第1のコア212の他方の側と第2のコア222の他方の側とを互いに連結してもよく、モールド100を構成する第1の長辺プレート111の外面から離隔するように配置されてもよい。第2の連結コア274は、第3の静磁場発生器230の第3のコア232と第4の静磁場発生器240の第4のコア242とをモールド100の幅方向に沿って互いに連結してもよい。このとき、第2の連結コア274は、第3のコア232の他方の側と第4のコア242の他方の側とを互いに連結してもよく、モールド100を構成する第2の長辺プレート113の外面から離隔するように配置されてもよい。
【0068】
このように、第1の連結コア272で第1のコア212と第2のコア222とを連結し、第2の連結コア274で第3のコア232と第4のコア242とを連結し、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240に直流電流を供給すると、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240にそれぞれ静磁場が形成され得る。この場合、モールド100の外側においてモールド100の幅方向に沿って静磁場が形成され得、モールド100の厚み方向に沿って静磁場が形成され得る。例えば、第1のコア212と第3のコア232の一方の側にS極が形成され、第2のコア222の一方の側と第4のコア242の一方の側にN極が形成され得る。この場合、それぞれの静磁場発生器210、220、230、240において形成される静磁場は、それぞれのコア212、222、232、242に沿ってS極からN極に向かう磁場の方向を有することになる。このとき、それぞれのコア212、222、232、242の周りの磁場もまた、S極からN極に向かう磁場の方向を有することになるが、それぞれのコア212、222、232、242の周りに形成される磁場の方向によりモールド100の厚み方向に磁場が形成され得る。モールド100の厚み方向に、磁場の方向が第4の磁場発生器240から第1の磁場発生器210に向かう磁場と、第2の磁場発生器220から第3の磁場発生器230に向かう磁場と、が形成され得る。なお、磁場は、それぞれのコア212、222、232、242から遠ざかるにつれて、磁場の強さが次第に弱まってくる。このため、向かい合う第1の静磁場発生器210と第4の静磁場発生器240との間において磁場が打ち消されて磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱い区間が形成され得る。これは、向かい合う第1のコア212の一方の側と第4のコア242の一方の側とが互いに反対の極性を有するためである。
【0069】
また、向かい合う第2の静磁場発生器220と第3の静磁場発生器230との間にも、磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱い区間形成され得る。これは、向かい合う第2のコア222の一方の側と第3のコア232の一方の側とが互いに反対の極性を有するためである。また、隣り合う第1の静磁場発生器210と第2の静磁場発生器220との間、第3の静磁場発生器230と第4の静磁場発生器240との間にも、磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱い区間が形成され得る。このため、第1の静磁場発生器210、第2の静磁場発生器220、第3の静磁場発生器230及び第4の静磁場発生器240においてそれぞれ生じる静磁場の間、例えば、モールド100の厚み方向に中心部及びモールド100の幅方向に中心部に磁場が印加されないか、あるいは、磁場の強さが非常に弱い区間、すなわち、静磁場未印加領域が形成され得る。
【0070】
これとともに、第1のコア212と第2のコア222とを連結する第1の連結コア272には、第1の静磁場発生器210から第2の静磁場発生器220に向かう磁場の方向を有する静磁場が形成され得、第2の連結コア274には第3の静磁場発生器230から第4の静磁場発生器240に向かう磁場の方向を有する静磁場が形成され得る。このとき、第1の連結コア272と第2の連結コア274に形成される静磁場の磁場の方向は、互いに反対の方向を有するように形成されてもよい。
【0071】
これにより、静磁場の磁場の方向は、モールド100の幅方向及び厚み方向に沿って回転する形態に形成され得る。このため、モールド100の幅方向に両側に形成される静磁場の間には、モールド100の幅方向に磁場の強さが非常に弱いか、あるいは、磁場がない領域が形成され得る。また、モールド100の厚み方向に両側に形成される磁場の間には、モールド100の厚み方向に沿って磁場の強さが非常に弱いか、あるいは、磁場がない領域が形成され得る。このため、モールド100の厚み方向に沿って形成される磁場が接する領域と、幅方向に沿って磁場が接する領域とが互いに交差する位置、例えば、モールド100の中心部に磁場の強さが非常に弱いか、あるいは、磁場がない領域、すなわち、静磁場未印加領域が形成され得る。
【0072】
図5は、本発明の実施形態に係る鋳造方法で溶融物の流動を制御する状態を示す図である。
【0073】
図5の(a)は、静磁場発生部200を用いて下降流と2次上昇流の流動を制御する前のモールド100内における溶融物の流動状態を示す図であり、
図5の(b)は、モールド100の幅方向の全体に沿って静磁場を印加した場合の溶融物の流動状態を示す図であり、
図5の(c)は、静磁場発生部200を用いてモールド100の幅方向に沿って静磁場印加領域と静磁場未印加領域を形成した場合の溶融物の流動状態を示す図である。
【0074】
ノズル130の吐出口134を介して吐き出された溶融物Mの吐出流は、モールド100の幅方向にモールド100の両側の内面に衝突した後、上昇流と下降流を形成することができる。
図5において、MFはモールドフラックスを意味し、MSはモールドフラックスが溶解されたモールドスラグを意味することがある。
【0075】
図5の(a)を参照すると、静磁場発生部200を用いて溶融物の流動を制御しなかった場合、下降流の流速が比較的に速いため、介在物の移動距離、すなわち、浸透深さが非常に深いことが分かる。この場合、静磁場発生部200を用いて溶融物の流動を制御しないため、2次上昇流が円滑に形成されることが分かる。しかしながら、溶融物に含有されている介在物が下降流によりモールド100の長さ方向、すなわち、鋳片の引抜方向に沿って遠くに移動して2次上昇流により上側に十分に浮き上がることができず、その結果、多量の介在物が溶融物にそのまま残留することを示している。
【0076】
図5の(b)を参照すると、モールド100の幅方向の全体に沿って磁場を印加する場合、磁場により下降流の流速が減速されて下側に介在物の移動距離が短くなったことが分かる。また、磁場により2次上昇流の形成が抑えられて2次上昇流が正常に形成されず、下降流によりモールド100の長さ方向、すなわち、鋳片の引抜方向に移動した介在物が上側に浮き上がらず、その結果、溶融物中にそのまま残留することが分かる。
【0077】
これに対し、
図5の(c)を参照すると、静磁場発生部200を用いて溶融物の流動を制御した場合、静磁場印加領域であるモールド100の幅方向に両側においては、下降流の流速が減速されて下側に介在物の移動距離が短くなったことが分かる。なお、静磁場未印加領域であるモールド100の幅方向に中心部には静磁場未印加領域が形成されて2次上昇流が十分に形成されることにより、溶融物に含有されている介在物が円滑に上側に浮き上がって取り除かれることが分かる。
【0078】
図6は、モールドの幅方向への静磁場未印加領域の形成有無に応じたモールド内の2次上昇流の流動の解析結果を示す図である。
図6の(a)は、モールドの幅方向の全体に亘って静磁場を印加した場合の溶融物の流動状態を示す図であり、
図6の(b)は、モールドの幅方向に中心部に静磁場未印加領域を形成した場合の溶融物の流動状態を示す図である。
【0079】
図6の(a)を参照すると、モールドの幅方向の全体に亘って静磁場を印加した場合、2次上昇流がほとんど形成されないことを確認することができる。これに対し、
図6の(b)を参照すると、モールドの幅方向に中心部に静磁場未印加領域を形成した場合、静磁場が印加されていないモールドの幅方向に中心部において2次上昇流が円滑に形成されることを確認することができる。
【0080】
このように、モールドの幅方向に沿って静磁場印加領域と静磁場未印加領域を選択的に形成することにより、モールド内において溶融物の流動を局部的に制御して溶融物の清浄度を確保することができる。なお、このような溶融物を用いて鋳造された鋳片の品質を向上させることができる。
【0081】
一方、本発明の実施形態に係る鋳造設備は、静磁場発生部200の上部において溶融物の流動を制御するために、モールド100の外側において静磁場発生部200の上部に配備される移動磁場発生部300を備えていてもよい。このとき、制御部400は、移動磁場の強さ及び方向のうちの少なくともどちらか一方を調節するように移動磁場発生部300の動作を制御してもよい。
【0082】
ノズル130から吐き出される溶融物の一部は、短辺プレート120に衝突した後、上向きに移動する上昇流を形成することができる。そして、上昇流は、溶融物の湯面の近くにおいて移動方向が切り替えられてモールド100の幅方向の中心部に向かって水平移動することになる。このように、モールド100の幅方向の中心部に向かって移動する溶融物の流れ、例えば、水平方向の流れは、ノズル130及びその反対の方向から移動してくる溶融物の流れと衝突してノズル130の近くにおいて渦流を形成することができる。このとき、水平方向の流れの流速が速すぎる場合、溶融物の上部のモールドフラックスやモールドスラグなどといった異種の物質が溶融物に混入されてしまうという不都合がある。これに対し、水平方向の流れの流速が遅すぎる場合には、モールド100内において溶融物の温度にムラが生じる虞がある。したがって、移動磁場発生部300を用いて溶融物の湯面の近くにおいて溶融物の水平方向の流動を制御することにより、溶融物の内部にモールドフラックスやモールドスラグなどといった異種の物質が混入されることを抑え、モールド100内の溶融物の温度をムラなく均一に制御することができる。このような溶融物の水平方向の流れの流速は、ノズル130の吐出口134に吐き出される溶融物の流速、すなわち、吐出流の流速に影響を受けてしまう。したがって、移動磁場発生部300を用いて吐出流の流速を制御することにより、溶融物の湯面の近くに形成される溶融物の水平方向の流れの流速を制御することができる。
【0083】
図7は、
図1に示す線B-B’に沿った鋳造設備の断面図である。
【0084】
移動磁場発生部300は、静磁場発生部200の上部、例えば、溶融物の湯面とノズル130の下端との間に備配されて、静磁場発生部200とは溶融物の流動を互いに異なる方向に制御することができる。
図7を参照すると、移動磁場発生部300は、少なくとも長辺プレートの幅方向に離隔するように配備される複数の移動磁場発生器310、320、330、340と、複数の移動磁場発生器に交流電流を選択的に供給し得る第2の電流供給器350と、を備えていてもよい。複数の移動磁場発生器310、320、330、340は、第1の静磁場発生器210の上部に第1の静磁場発生器210と並ぶように配備される第1の移動磁場発生器310と、第1の移動磁場発生器310との間にノズル130が配置されるように第1の移動磁場発生器310から離隔して配置され、第2の静磁場発生器の上部に第2の静磁場発生器220と並ぶように配備される第2の移動磁場発生器320と、第2の移動磁場発生器320と向かい合うように配置され、第3の静磁場発生器230の上部に第2の静磁場発生器230と並ぶように配備される第3の移動磁場発生器330及び第3の移動磁場発生器330との間にノズル130が配置されるように第3の移動磁場発生器330から離隔して配置され、第4の静磁場発生器240の上部に第4の静磁場発生器240と並ぶように配備される第4の移動磁場発生器340を備えていてもよい。すなわち、第1の移動磁場発生器310と第2の移動磁場発生器320は、第1の長辺プレート111の外側に配備されて、モールド100の幅方向に移動磁場印加領域と移動磁場未印加領域を形成してもよい。また、第3の移動磁場発生器330と第4の移動磁場発生器340は、第2の長辺プレート113の外側に配備されて、モールド100の幅方向に移動磁場印加領域と移動磁場未印加領域を形成してもよい。これらの第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340のそれぞれは、複数のコアと、コアの外側に巻き付けられるコイルと、を備えていてもよい。それぞれの移動磁場発生器310、320、330、340は、3個、4個、5個またはそれ以上のコアを備えていてもよく、ここでは、それぞれの移動磁場発生器310、320、330、340が4個のコアを備える場合を例にとって説明する。
【0085】
例えば、第1の移動磁場発生器310は、モールド100の厚み方向に延び、モールド100の幅方向に沿って互いに並ぶように配置される1番コア312a、2番コア312b、3番コア312c及び4番コア312dと、それぞれのコア312a、312b、312c、312dの外側に巻き付けられる1番コイル314a、2番コイル314b、3番コイル314c及び4番コイル314dと、を備えていてもよい。そして、第2の電流供給器350は、1番コイル314a、2番コイル314b、3番コイル314c及び4番コイル314dと電気的に接続されて、それぞれのコイル314a、314b、314c、314dに交流電流を選択的に供給することができる。この場合、第2の電流供給器350は、下記の表1に示すように、0°、90°、180°及び270°の位相差においてそれぞれのコイル314a、314b、314c、314dがS極とN極を有し得るようにそれぞれのコイル314a、314b、314c、314dにコサイン(cosine)状の電流を印加することができる。
【0086】
【0087】
表1を参照すると、位相が0°である交流電源が1番コイル314aと3番コイル314cに供給されれば、1番コイル314aはS極を有し、3番コイル314cはN極を有することができる。そして、位相が90°である交流電源が2番コイル314bと4番コイル314dに供給されれば、2番コイル314bはS極を有し、4番コイル314dはN極を有することができる。位相が180°である交流電源が1番コイル314bと3番コイル314dに供給されれば、1番コイル314bはN極を有し、3番コイル314dはS極を有することができる。また、位相が270°である交流電源が2番コイル314bと4番コイル314dに供給されれば、2番コイル314bはN極を有し、4番コイル314dはS極を有することができる。このような方式により、それぞれのコイルに交流電源が供給されれば、それぞれのコイルの極性が供給される交流電流の位相に応じて周期的に変わることになる。このため、第1の移動磁場発生器310にはコイルが並べられた方向、換言すれば、モールド100の幅方向に磁場が移動する、すなわち、移動磁場が形成され得る。
【0088】
第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340は、第1の移動磁場発生器310と同じ方法で移動磁場を形成することができる。これにより、モールド100の幅方向に沿って移動磁場印加領域と移動磁場未印加領域が形成され得る。
図7において、322a~322dと324a~324dは第2の移動磁場発生器320のコアとコイルを意味し、332a~332dと334a~334dは第3の移動磁場発生器330のコアとコイルを意味し、342a~342dと344a~344dは第4の移動磁場発生器340のコアとコイルを意味する。
【0089】
第2の電流供給器350は、磁場の方向がモールド100の幅方向に形成されるように第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340に交流電流を供給することができる。このとき、第2の電流供給器350は、モールド100内において吐出流の流速を制御することにより上昇流により形成される水平方向の流れを制御することができる。このために、第2の電流供給器350は、磁場の方向が吐出流の移動方向と同一である水平方向、すなわち、モールド100の幅方向に沿って形成されるように第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340に交流電流を供給することができる。この場合、第2の電流供給器350は、それぞれの移動磁場発生器310、320、330、340の少なくとも一部が互いに異なる方向に移動磁場が形成されるように交流電流を供給することができる。例えば、第2の電流供給器350は、第1の長辺プレート111の外側に配備される第1の移動磁場発生器310と第2の移動磁場発生器320に同じ方向、例えば、第3の方向の移動磁場が形成され、第2の長辺プレート113の外側に配備される第3の移動磁場発生器330と第4の移動磁場発生器340に同じ方向、例えば、第4の方向の移動磁場が形成されるように交流電流を供給することができる。このとき、第3の方向と第4の方向は、互いに反対の方向であってもよい。あるいは、第2の電流供給器350は、向かい合うように配備される第1の移動磁場発生器310と第4の移動磁場発生器340において同じ方向、例えば、第3の方向の移動磁場が形成され、向かい合うように配備される第2の移動磁場発生器320と第3の移動磁場発生器330において同じ方向、例えば、第4の方向の移動磁場が形成されるように交流電流を供給することもできる。このとき、第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340により形成される磁場の方向は、ノズル130の吐出口134から吐き出される吐出流の流速に応じて変更され得る。
【0090】
図8は、移動磁場発生部を用いて溶融物の流動を制御する例を示す図である。
図8の(a)に示すように、吐出流の流速が速過ぎる場合には、溶融物の湯面の近くにおいて水平方向の流れの流速が速くなる。この場合、第2の電流供給器350は、吐出流の移動方向と反対の方向に移動磁場が形成されるように第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340に交流電流を供給することができる。このとき、第2の電流供給器350は、移動磁場の方向がモールド100の周縁から中心部に向かって形成されるように第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340に交流電流を供給することができる。これにより、ノズル130の吐出口134から吐き出されて形成される吐出流の流速が減速されて溶融物の湯面が安定的に制御され得る。
【0091】
これに対し、
図8の(b)に示すように、吐出流の流速が遅すぎる場合には、溶融物の湯面の近くにおいて水平方向の流れの流速が減速され得る。この場合、第2の電流供給器350は、吐出流の移動方向と同じ方向に移動磁場が形成されるように第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340に交流電流を供給することができる。このとき、第2の電流供給器350は、移動磁場の方向がモールド100の中心部から周縁に向かって形成されるように第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340に交流電流を供給することができる。これにより、ノズル130の吐出口134から吐き出されて形成される吐出流の流速が増速されて下降流、上昇流及び2次上昇流などの流動が円滑に形成されることにより、モールド100内の溶融物の温度をムラなく均一に制御することができる。
【0092】
一方、第2の電流供給器350は、モールド100の周方向に回転する形態の移動磁場を形成するように第1の移動磁場発生器310、第2の移動磁場発生器320、第3の移動磁場発生器330及び第4の移動磁場発生器340に交流電流を供給することができる。このように、モールド100の周方向に沿って回転する移動磁場を形成すると、溶融物の湯面の近くにおいて溶融物の温度にムラがあるか、あるいは、温度が下がった場合、溶融物を攪拌させて溶融物の近くにおいて溶融物の温度をムラなく均一に制御することができる。ここでは、磁場の方向、すなわち、移動磁場の方向を制御することにより溶融物の吐出流及び水平方向の流れを制御すると説明したが、必要に応じては、磁場の方向と磁場の強さのうちの少なくともどちらか一方を変更して溶融物の流動を制御してもよい。このとき、磁場の強さは、それぞれの移動磁場発生器310、320、330、340に供給される交流電流の電流量の調節により変更されてもよい。
【0093】
このような方法で、移動磁場発生部300を用いてモールド100内において溶融物の吐出流及び水平方向の流れを制御することにより、溶融物の湯面を安定化させて溶融物の湯面の上部に配置されるモールドスラグやモールドフラックスなどといった異種の物質が溶融物に混入されることを抑制もしくは防止することができる。
【0094】
以上、本発明の好適な実施形態について図示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、請求の範囲において請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、これより様々な変形が行え、且つ、均等な他の実施形態が採用可能であるということが理解できる筈である。よって、本発明の技術的な保護範囲は、次の特許請求の範囲によって定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、モールドの幅方向に静磁場を選択的に印加してモールドの長さ方向に溶融物の流動を選択的に制御することにより、溶融物にモールドフラックスやモールドスラグなどといった異種の物質が混入されることを抑えて高品質の製品を製造することがきる。これを通して、溶融物の清浄度を確保して溶融物を用いて製造される製品の品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0096】
100 モールド
110 長辺プレート
111 第1の長辺プレート
113 第2の長辺プレート
120 短辺プレート
121 第1の短辺プレート
123 第2の短辺プレート
130 ノズル
132 ノズル胴体
134 吐出口
200 静磁場発生部
210 第1の静磁場発生器
212 第1のコア
214 第1のコイル
220 第2の静磁場発生器
222 第2のコア
224 第2のコイル
230 第3の静磁場発生器
232 第3のコア
234 第3のコイル
240 第4の静磁場発生器
242 第4のコア
244 第4のコイル
250 第1の電流供給器
310 第1の移動磁場発生器
312a 1番コア 314a 1番コイル
312b 2番コア 314b 2番コイル
312c 3番コア 314c 3番コイル
312d 4番コア 314d 4番コイル
320 第2の移動磁場発生器
322a 1番コア 324a 1番コイル
322b 2番コア 324b 2番コイル
322c 3番コア 324c 3番コイル
322d 4番コア 324d 4番コイル
330 第3の移動磁場発生器
332a 1番コア 334a 1番コイル
332b 2番コア 334b 2番コイル
332c 3番コア 334c 3番コイル
332d 4番コア 334d 4番コイル
340 第4の移動磁場発生器
342a 1番コア 344a 1番コイル
342b 2番コア 344b 2番コイル
342c 3番コア 344c 3番コイル
342d 4番コア 344d 4番コイル
【国際調査報告】