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特表2022-545967完全ヒト翻訳後修飾抗VEGF Fabを用いる糖尿病性網膜症の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】完全ヒト翻訳後修飾抗VEGF Fabを用いる糖尿病性網膜症の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20221025BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20221025BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221025BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20221025BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20221025BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
A61K35/76
A61P27/02 ZNA
A61K31/7088
A61K48/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K9/08
C12N15/864 100Z
C12N15/13
C07K16/18
C12P21/08
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513859
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 US2020047733
(87)【国際公開番号】W WO2021041373
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】63/004,258
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/902,352
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/891,799
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.iPad
(71)【出願人】
【識別番号】520135611
【氏名又は名称】リジェネックスバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】パコラ スティーヴン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン エヴェレン シェリ
(72)【発明者】
【氏名】ヨー ジェシー アイ
(72)【発明者】
【氏名】パテル サミール マガンバイ
(72)【発明者】
【氏名】ガーネカール アヴァンティ アーヴィンド
(72)【発明者】
【氏名】オベリー アンソニー レイ
(72)【発明者】
【氏名】アーウィン-パック キム リース
(72)【発明者】
【氏名】カーティス ダリン トーマス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF11
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA16
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA33
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA33
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA16
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA33
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
ヒト血管内皮増殖因子(「hVEGF」)に対する完全ヒト翻訳後修飾(HuPTM)モノクローナル抗体(「mAb」)またはmAbの抗原結合性断片、例えば、完全ヒトグリコシル化(HuGly)抗hVEGF抗原結合性断片などの糖尿病性網膜症を有すると診断されたヒト対象の眼中の網膜/硝子体液への送達のための組成物および方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、発現ベクターは、6.2×1011GC/mLの濃度で約1.6×1011GC/眼または1.0×1012GC/mLの濃度で約2.5×1011GC/眼の単回用量で網膜下送達によって投与され、抗hVEGF抗体は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターは、AAV8ベクターである、方法。
【請求項2】
投与することが、網膜下薬物送達デバイスを使用して発現ベクターを網膜下腔中に注入することによる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与することが、抗hVEGF抗体の治療上有効な量を前記ヒト対象の網膜に送達する、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
抗hVEGF抗体の治療上有効な量が、前記ヒト対象のヒト網膜細胞によって産生される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抗hVEGF抗体の治療上有効な量が、前記ヒト対象のヒト光受容体細胞、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ヒト光受容体細胞が、錐体細胞および/または桿体細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
網膜神経節細胞が、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリアである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
発現ベクターが、CB7プロモーターを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
発現ベクターが構築物IIである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
製剤化バッファー(pH=7.4)中に6.2×1011GC/mLの濃度で1.6×1011GCまたは1.0×1012GC/mLの濃度で2.5×1011GCの抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを含む単回用量組成物であって、製剤化バッファーは、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.001% Pluronic F68を含み、抗hVEGF抗体は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターは、AAV8ベクターである、単回用量組成物。
【請求項11】
発現ベクターが構築物IIである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
投与ステップ後に、赤外線サーマルカメラを使用して眼における注入された物質の眼注入後熱プロファイルをモニタリングするステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
赤外線サーマルカメラが、FLIR T530赤外線サーマルカメラである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
DRを有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、発現ベクターの眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーは、二重上脈絡膜注入によって投与され、抗hVEGF抗体は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターは、AAV8ベクターである、方法。
【請求項15】
DRを有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、発現ベクターの眼あたり約5.0×1011ゲノムコピーは、二重上脈絡膜注入によって投与され、抗hVEGF抗体は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターは、AAV8ベクターである、方法。
【請求項16】
投与することが、抗hVEGF抗体の治療上有効な量を前記ヒト対象の網膜に送達する、請求項14~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
抗hVEGF抗体の治療上有効な量が、前記ヒト対象のヒト網膜細胞によって産生される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗hVEGF抗体の治療上有効な量が、前記ヒト対象のヒト光受容体細胞、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヒト光受容体細胞が、錐体細胞および/または桿体細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
網膜神経節細胞が、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリアである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
発現ベクターが、CB7プロモーターを含む、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
発現ベクターが構築物IIである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
投与ステップ後に、赤外線サーマルカメラを使用して眼における注入された物質の眼注入後熱プロファイルをモニタリングするステップをさらに含む、請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
赤外線サーマルカメラが、FLIR T530赤外線サーマルカメラである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
製剤化バッファー(pH=7.4)中に眼あたり約6.0×1010ゲノムコピー、眼あたり1.6×1011ゲノムコピー、眼あたり2.5×1011ゲノムコピー、眼あたり5.0×1011ゲノムコピーまたは眼あたり3.0×1012ゲノムコピーの抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを含む単回用量組成物であって、製剤化バッファーは、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.0001% Pluronic F68を含み、抗hVEGF抗体は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターは、AAV8ベクターである、単回用量組成物。
【請求項26】
発現ベクターが構築物IIである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
発現ベクターの脱落をもたらさない、請求項1~9および12~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
1000発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満、500発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満、100発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満、50発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満または10発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満が、投与後任意の時点で生物学的流体において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である、請求項1~9および12~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
210発現ベクター遺伝子コピー/5μl以下が、投与後任意の時点で生物学的流体において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である、請求項1~9および12~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
1000ベクター遺伝子コピー/5μl未満、500ベクター遺伝子コピー/5μl未満、100ベクター遺伝子コピー/5μl未満、50ベクター遺伝子コピー/5μl未満または10ベクター遺伝子コピー/5μl未満が、投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14週まで生物学的流体において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である、請求項1~9および12~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ベクター遺伝子コピーが、ベクターの投与後14週まで生物学的流体において検出可能ではない、請求項1~9および12~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
生物学的流体が、涙、血清または尿である、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月26日に出願された米国仮出願第62/891,799号、2019年9月18日に出願された米国仮出願第62/902,352号および2020年4月2日に出願された米国仮出願第63/004,258号の利益を主張し、それらの各々の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表への言及
本出願は、2020年8月12日に作成され、97,447バイトの大きさを有する「12656-127-228_Sequence_Listing.TXT」と題されたテキストファイルとして本出願とともに提出された配列表を参照により組み込む。
血管内皮増殖因子(「VEGF」)に対する完全ヒト翻訳後修飾(HuPTM)モノクローナル抗体(「mAb」)またはmAbの抗原結合性断片、例えば、完全ヒトグリコシル化(HuGly)抗VEGF抗原結合性断片などの、眼疾患、特に、新血管新生の増大によって引き起こされる眼疾患、例えば、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象の眼中の網膜/硝子体液への送達のための組成物および方法が記載されている。
【背景技術】
【0003】
糖尿病性眼疾患は、米国における労働年齢の成人における視力障害の筆頭原因であり、40歳以上の糖尿病を有する成人における罹病率は、およそ28.4%(420万人の成人)である(AAO PPP Retina/Vitreous Panel, Hoskins Center for Quality Eye Care, “Diabetic retinopathy PPP - Updated 2017”)。米国および他の先進国全体での糖尿病の増加率を考えると、糖尿病性網膜症(DR)の社会的影響および失明に対する影響は増大すると予測される。網膜の専門家は、糖尿病の他の全身性合併症に先行することがしばしばある糖尿病性眼疾患の予防、診断および管理において自身が重要な役割を果たすことを認識している。労働年齢集団において視力を脅かす糖尿病性合併症を制限する可能性は、公衆衛生に対して大きな影響を有する可能性がある。
糖尿病性網膜症は、糖尿病の眼の合併症であり、毛細血管瘤、硬性白斑、出血および非増殖形態の静脈異常および新血管新生、網膜前または硝子体出血および増殖形態の血管結合組織増殖を特徴とする。高血糖症は、微小血管網膜変化を誘発し、かすみ目、暗い点または点滅する光および突然の視力喪失につながる(Cai & McGinnis, 2016, Journal of Diabetes Research, Vol. 2016, Article ID 3789217)。
【0004】
糖尿病性網膜症は、軽度の非増殖性疾患から重症増殖性疾患に及ぶ。非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)の最も一般的な早期に臨床的に目に見える徴候として、毛細血管瘤形成および網膜内出血が挙げられる。微小血管損傷は、網膜毛細血管非灌流、綿花状白斑、出血数の増大、静脈異常および網膜内微小血管異常につながる。疾患の過程のどの段階でも、血管透過性の増大は、網膜肥厚(浮腫)および/または滲出液をもたらし、これは、中心視力(VA)の喪失につながる場合がある。増殖性糖尿病性網膜症(PDR)段階は、網膜、視神経乳頭または前眼部での新規血管の二次増殖に伴う細動脈および細静脈の閉鎖に起因する。患者の視力を危険にさらし、緊急の医学的または外科的介入のいずれかを必要とするDRの一般的な合併症として、中心窩を侵している(center involved)糖尿病性黄斑浮腫(CI-DME)、牽引性網膜剥離、網膜上膜および硝子体出血が挙げられる。DMEは、DRのいずれの段階でも存在し得るが、これらの合併症のリスクは、普通、DRの重症度が増大するにつれ増大する(Aiello et al., 1994, N Engl J Med. 331(22):1480-1487)。糖尿病性虚血と血管内皮増殖因子(VEGF)を含む血管新生因子のその後の増殖との間の関連が確立されている。
【0005】
1990年代からの画期的な早期処置糖尿病性網膜症研究(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)(ETDRS)研究では、ベースラインで重症NPDRを有する患者は、PDRへ進行するおよそ50%のリスクおよびハイリスクPDRを発症する15%のリスクを有していた。さらに、極めて重症のNPDRを有する患者については、ハイリスクPDRへと悪化するそのリスクは、1年以内に75%に増大する。糖尿病性眼研究における患者の平均年齢がおよそ50歳であることを考慮して、PDRおよびその関連する視力を脅かす合併症への変換を避けることは、患者の生活の質を数十年間改善する可能性がある。結果として、NPDRおよび非ハイリスクPDR(軽度~中程度PDR)の予防的処置についての決定に関しては、網膜コミュニティー内で議論が進行中である。
【発明の概要】
【0006】
VEGFに対する完全ヒト翻訳後修飾(HuPTM)抗体を、眼疾患、特に、新血管新生の増大によって引き起こされる眼疾患、例えば、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者(ヒト対象)の眼中の網膜/硝子体液への送達のための組成物および方法が記載されている。ある特定の態様では、VEGFに対する完全ヒト翻訳後修飾(HuPTM)抗体の、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者(ヒト対象)の眼中の網膜下腔への網膜下投与のための組成物および方法が本明細書に記載されている。抗体には、それだけには限らないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え生成された抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、2つの重鎖および2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-重鎖対、イントラボディ、ヘテロコンジュゲート抗体、一価抗体、全長抗体の抗原結合性断片および上記のものの融合タンパク質が含まれる。このような抗原結合性断片には、それだけには限らないが、単一ドメイン抗体(重鎖抗体の可変ドメイン(VHH)またはナノボディ)、全長抗VEGF抗体(好ましくは、全長抗VEGFモノクローナル抗体(mAb)のFab、F(ab’)2およびscFv(単鎖可変断片)(まとめて本明細書において「抗原結合性断片」と呼ばれる)が含まれる。好ましい実施形態では、VEGFに対する完全ヒト翻訳後修飾抗体は、VEGFに対するモノクローナル抗体(mAb)の完全ヒト翻訳後修飾抗原結合性断片(「HuPTMFabVEGFi」)である。さらに好ましい実施形態では、HuPTMFabVEGFiは、抗VEGF mAbの完全ヒトグリコシル化抗原結合性断片(「HuGlyFabVEGFi」)である。代替実施形態では、全長mAbを使用できる。好ましい実施形態では、送達は、遺伝子療法を介して、例えば、抗VEGF抗原結合性断片またはmAb(または高度グリコシル化誘導体(例えば、図3を参照されたい))をコードするウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物を、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者(ヒト対象)の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔(経硝子体アプローチから、または上脈絡膜腔を通るカテーテルを用いて)、網膜内腔、硝子体腔および/または強膜の外表面(すなわち、強膜近傍投与)へ投与して、ヒトPTM、例えば、ヒトグリコシル化、導入遺伝子産物を持続的に供給する眼中の持続的なデポーを作出することによって達成される。好ましい実施形態では、導入遺伝子を送達するために使用されるウイルスベクターは、ヒト網膜細胞または光受容体細胞に対する指向性を有するべきである。このようなベクターとして、非複製性組換えアデノ随伴ウイルスベクター(「rAAV」)を挙げることができ、特に、AAV8カプシドを保有するものが好ましい。特定の実施形態では、本明細書において記載されるウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物は構築物Iであり、構築物Iは、以下の構成成分:(1)発現カセットに隣接するAAV8逆方向末端反復配列、(2)a)CMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターを含むCB7プロモーター、b)ニワトリβ-アクチンイントロンおよびc)ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む制御エレメント、ならびに(3)等量の重鎖および軽鎖ポリペプチドの発現を確実にする、自己切断性フューリン(F)/F2Aリンカーによってわけられた抗VEGF抗原結合性断片の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列を含む。別の特定の実施形態では、本明細書において記載されるウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物は構築物IIであり、構築物IIは、以下の構成成分:(1)発現カセットに隣接するAAV2逆方向末端反復配列、(2)a)CMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターを含むCB7プロモーター、b)ニワトリβ-アクチンイントロンおよびc)ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む制御エレメント、ならびに(3)等量の重鎖および軽鎖ポリペプチドの発現を確実にする、自己切断性フューリン(F)/F2Aリンカーによってわけられた抗VEGF抗原結合性断片の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0007】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗hVEGF抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔(硝子体切除術を用いて、または硝子体切除術を用いずに)、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を処置する方法であって、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、微量注入器の使用によって、前記ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。
【0008】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の網膜に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞(midget cells)、パラソル細胞(parasol cells)、重層状細胞(bistratified cell)、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗hVEGF抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面へ投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の網膜に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、微量注入器の使用によって、前記ヒト対象の網膜に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)、および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。
【0009】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗hVEGF抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面へ投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、微量注入器の使用によって、前記ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。
【0010】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗hVEGF抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の眼に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、微量注入器の使用によって、前記ヒト対象の眼に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。
【0011】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。
【0012】
ある特定の態様では、網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって、前記ヒト対象の眼に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。
【0013】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。
【0014】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の網膜に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の網膜に、ヒト光受容体細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリア)および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療上有効量を送達することを含む方法が、本明細書において記載される。
特定の態様では、方法は、前記ヒト患者の眼で硝子体切除術を実施することを含む。特定の態様では、硝子体切除術は、部分硝子体切除術である。
特定の態様では、投与ステップは、硝子体内薬物送達デバイスを使用して組換えウイルスベクターを硝子体腔中に注入することによる。特定の態様では、硝子体内薬物送達デバイスは、微量注入器である。
【0015】
ヒト網膜細胞によって産生される抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体、例えば、抗hVEGF抗原結合性断片が、本明細書において記載される。ヒトVEGF(hVEGF)は、VEGF(VEGFA、VEGFB、VEGFCまたはVEGFD)遺伝子によってコードされるヒトタンパク質である。hVEGFの例示的アミノ酸配列は、GenBank受託番号AAA35789.1で見出すことができる。hVEGFの例示的核酸配列は、GenBank受託番号M32977.1で見出すことができる。
【0016】
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、抗原結合性断片は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号17~19または配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む。
【0017】
本明細書において記載される方法の特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0018】
本明細書において記載される方法の特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわちWINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわちGYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)はアセチル化されていない。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0019】
本明細書において記載される方法の特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持せず、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、(1)重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない、ならびに(2)軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されておらず、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、(1)重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない、ならびに(2)軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0020】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含み、前記抗原結合性断片が、α2,6-シアリル化グリカンを含有する方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含み、前記抗原結合性断片が、α2,6-シアリル化グリカンを含有する方法が、本明細書において記載される。
【0021】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含み、前記抗原結合性断片が、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない(すなわち、本明細書において、「検出可能な」とは、以下に記載される標準アッセイによって検出可能なレベルを意味する)方法が、本明細書において記載される。特定の実施形態では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与することによって(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによる外科手技)または後強膜近傍デポー手順(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによる)によって)、前記ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合性断片の治療上有効量を送達することを含み、前記抗原結合性断片が、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない方法が、本明細書において記載される。
【0022】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする発現ベクターを投与すること(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)を含み、前記抗原結合性断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞における前記発現ベクターからの発現の際にα2,6-シアリル化される方法が、本明細書において記載される。
【0023】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜に投与または送達すること(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)を含み、前記抗原結合性断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞における前記発現ベクターからの発現の際にα2,6-シアリル化される方法が、本明細書において記載される。
【0024】
ある特定の態様では、網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下および/または網膜内腔へ投与すること(例えば、上脈絡膜腔を通って挿入し、トンネルを形成できるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによって)を含み、前記抗原結合性断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞における前記発現ベクターからの発現の際にα2,6-シアリル化される方法が、本明細書において記載される。ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対する抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与すること(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)を含み、前記抗原結合性断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞における前記発現ベクターからの発現の際にα2,6-シアリル化され、前記抗原結合性断片が、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない方法が、本明細書において記載される。
【0025】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対する抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜へ投与または送達すること(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)を含み、前記抗原結合性断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞における前記発現ベクターからの発現の際にα2,6-シアリル化され、前記抗原結合性断片が、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない方法が、本明細書において記載される。
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対する抗原結合性断片をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下腔および/または網膜内へ投与すること(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによって)を含み、前記抗原結合性断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞における前記発現ベクターからの発現の際にα2,6-シアリル化され、前記抗原結合性断片が、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない方法が、本明細書において記載される。
【0026】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面へ、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を投与すること(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)を含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成される方法が、本明細書において記載される。
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜に投与または送達すること(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)を含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成される方法が、本明細書において記載される。
【0027】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下および/または網膜内腔に投与すること(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによって)を含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成される方法が、本明細書において記載される。
【0028】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与すること(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)を含み、その結果、前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記抗原結合性断片がグリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない方法が、本明細書において記載される。
【0029】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜に投与または送達すること(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)を含み、その結果、前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記抗原結合性断片が、グリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない方法が、本明細書において記載される。
【0030】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下および/または網膜内腔に投与すること(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによって)を含み、その結果、前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記抗原結合性断片が、グリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない方法が、本明細書において記載される。ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下腔および/または網膜内腔に投与することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、発現ベクターは、6.4×1011GC/mLの濃度で約1.6×1011GC/眼または1.0×1012GC/mLの濃度で約2.5×1011GC/眼の単回用量で網膜下送達によって投与される。
【0031】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下および/または網膜内腔へ投与すること(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによって)を含み、その結果、前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記抗原結合性断片が、グリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない方法が、本明細書において記載される。ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下および/または網膜内腔へ投与することを含む方法が、本明細書において記載される。特定の態様では、発現ベクターは、6.2×1011GC/mLの濃度で約1.6×1011GC/眼または1.0×1012GC/mLの濃度で約2.5×1011GC/眼の単回用量で網膜下送達によって投与される。特定の態様では、発現ベクターは、6.2×1011GC/mLの濃度で約1.55×1011GC/眼または1.0×1012GC/mLの濃度で約2.5×1011GC/眼の単回用量で網膜下送達によって投与される。
特定の態様では、抗hVEGF抗体は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。特定の態様では、発現ベクターは、AAV8ベクターである。
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、抗原結合性断片導入遺伝子は、リーダーペプチドをコードする。リーダーペプチドはまた、本明細書においてシグナルペプチドまたはリーダー配列と呼ばれる場合もある。
【0032】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与すること(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)を含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記組換えベクターが、培養中のPER.C6またはRPE細胞に形質導入するために使用される場合に、前記細胞培養においてα2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片の生成をもたらす方法が、本明細書において記載される。
【0033】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜に投与または送達すること(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)を含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記組換えベクターが、培養中のPER.C6またはRPE細胞に形質導入するために使用される場合に、前記細胞培養においてα2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片の生成をもたらす方法が、本明細書において記載される。
【0034】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下および/または網膜内腔に投与すること(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによって)を含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記組換えベクターが、培養中のPER.C6またはRPE細胞に形質導入するために使用される場合に、前記細胞培養においてα2,6-シアリル化グリカンを含有する前記抗原結合性断片の生成をもたらす方法が、本明細書において記載される。
【0035】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に投与すること(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)を含み、その結果、前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記抗原結合性断片が、グリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有せず、前記組換えベクターが、培養中のPER.C6またはRPE細胞に形質導入するために使用される場合に、前記細胞培養においてグリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない前記抗原結合性断片の生成をもたらす方法が、本明細書において記載される。
【0036】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下および/または網膜内腔へ投与すること(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによって)を含み、その結果、前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記抗原結合性断片が、グリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有せず、前記組換えベクターが、培養中のPER.C6またはRPE細胞に形質導入するために使用される場合に、前記細胞培養においてグリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない前記抗原結合性断片の生成をもたらす方法が、本明細書において記載される。
【0037】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、hVEGFに対するmAbの抗原結合性断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療上有効量を、前記ヒト対象の眼中の上脈絡膜腔を経て前記ヒト対象の網膜下および/または網膜内腔へ投与すること(例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスによって)を含み、その結果、前記抗原結合性断片を放出するデポーが形成され、前記抗原結合性断片が、グリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有せず、前記組換えベクターが、培養中のPER.C6またはRPE細胞に形質導入するために使用される場合に、前記細胞培養においてグリコシル化されるが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含有しない前記抗原結合性断片の生成をもたらす方法が、本明細書において記載される。
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、ヒト対象は、>69ETDRS文字(近似スネレン等価物20/40以上)の最高矯正視力(BCVA)を有する。
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、BCVAは、ヒト対象において処置されるべき眼におけるBCVAである。
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、眼に送達することは、眼の網膜、脈絡膜、および/または硝子体液に送達することを含む。本明細書において記載される方法のある特定の態様では、抗原結合性断片は、C末端に1、2、3または4個の追加のアミノ酸を含む重鎖を含む。
【0038】
このような遺伝子療法が投与される対象は、抗VEGF療法に対して応答性であるものであるべきである。特定の実施形態では、方法は、網膜症(DR)を有すると診断されており、抗VEGF抗体を用いる処置に対して応答性であると同定されている患者を処置することを包含する。より具体的な実施形態では、患者は、抗VEGF抗原結合性断片を用いる処置に対して応答性である。ある特定の実施形態では、患者は、遺伝子療法を用いる処置の前に硝子体内に注入される抗VEGF抗原結合性断片を用いる処置に対して応答性であると示されていた。具体的な実施形態では、患者は、これまでに、ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)および/またはアバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)を用いて処置されており、前記ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)および/またはアバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)のうち1種または複数に対して応答性であるとわかっていた。
【0039】
このようなウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物が送達される対象は、ウイルスベクターまたは発現構築物中の導入遺伝子によってコードされた抗hVEGF抗原結合性断片に対して応答性であるべきである。応答性を決定するために、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子産物(例えば、細胞培養物、バイオリアクターなどにおいて産生される)を、硝子体内注入などによって対象に直接投与してもよい。
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、抗原結合性断片は、C末端に追加のアミノ酸を含まない重鎖を含む。
【0040】
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、抗原結合性断片分子の集団を生成し、抗原結合性断片分子は重鎖を含み、抗原結合性断片分子の集団のうち0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%または20%以下が、重鎖のC末端に1、2、3または4個の追加のアミノ酸を含む。本明細書において記載される方法のある特定の態様では、抗原結合性断片分子の集団を生成し、抗原結合性断片分子は重鎖を含み、抗原結合性断片分子の集団の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%または20%以下であるが0%より多くが、重鎖のC末端に1、2、3または4個の追加のアミノ酸を含む。
本明細書において記載される方法のある特定の態様では、抗原結合性断片分子の集団を生成し、抗原結合性断片分子は重鎖を含み、抗原結合性断片分子の集団の0.5~1%、0.5%~2%、0.5%~3%、0.5%~4%、0.5%~5%、0.5%~10%、0.5%~20%、1%~2%、1%~3%、1%~4%、1%~5%、1%~10%、1%~20%、2%~3%、2%~4%、2%~5%、2%~10%、2%~20%、3%~4%、3%~5%、3%~10%、3%~20%、4%~5%、4%~10%、4%~20%、5%~10%、5%~20%または10%~20%が、重鎖のC末端に1、2、3または4個の追加のアミノ酸を含む。
【0041】
導入遺伝子によってコードされるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiとして、それだけには限らないが、hVEGFと結合する抗体の抗原結合性断片、例えば、ベバシズマブ、抗hVEGF Fab部分、例えば、ラニビズマブまたはFabドメインに追加のグリコシル化部位を含有するように操作されたようなベバシズマブもしくはラニビズマブFab部分を挙げることができる(例えば、全長抗体のFabドメインで高度グリコシル化されているベバシズマブの誘導体の説明については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Courtois et al., 2016, mAbs 8: 99-112を参照されたい)。
【0042】
導入遺伝子を送達するために使用される組換えベクターは、ヒト網膜細胞または光受容体細胞に対する指向性を有するべきである。このようなベクターとして、非複製性組換えアデノ随伴ウイルスベクター(「rAAV」)を挙げることができ、特に、AAV8カプシドを有するものが好ましい。しかし、それだけには限らないが、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターを含む他のウイルスベクターまたは「裸のDNA」構築物と呼ばれる非ウイルス性発現ベクターを使用してもよい。好ましくは、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi、導入遺伝子は、適当な発現制御エレメント、2、3例を挙げると、例えば、CB7プロモーター(ニワトリβ-アクチンプロモーターおよびCMVエンハンサー)、RPE65プロモーターまたはオプシンプロモーターによって制御されるべきであり、ベクターによって駆動される導入遺伝子の発現を増強する他の発現制御エレメント(例えば、イントロン、例えば、ニワトリβ-アクチンイントロン、マウスの微小ウイルス(MVM)イントロン、ヒト第IX因子イントロン(例えば、FIX末端切断型イントロン1)、β-グロビンスプライスドナー/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプターイントロン、アデノウイルススプライスドナー/免疫グロブリンスプライスアクセプターイントロン、SV40後期スプライスドナー/スプライスアクセプター(19S/16S)イントロンおよびハイブリッドアデノウイルススプライスドナー/IgGスプライスアクセプターイントロンならびにポリAシグナル、例えば、ウサギβ-グロビンポリAシグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリAシグナル、SV40後期ポリAシグナル、合成ポリA(SPA)シグナルおよびウシ成長ホルモン(bGH)ポリAシグナル)を挙げることができる。例えば、Powell and Rivera-Soto, 2015, Discov. Med., 19(102):49-57を参照されたい。
【0043】
遺伝子療法構築物は、重鎖および軽鎖両方が発現されるように設計される。より詳しくは、重鎖および軽鎖は、ほぼ等量で発現されるべきである、言い換えれば、重鎖および軽鎖は、およそ1:1の重鎖対軽鎖の比で発現される。重鎖および軽鎖のコード配列は、重鎖および軽鎖が切断可能なリンカーまたはIRESによってわけられ、その結果、別個の重鎖および軽鎖ポリペプチドが発現される単一構築物中で操作され得る。例えば、本明細書において提供される方法および組成物とともに使用できる、特定のリーダー配列については節5.2.4ならびに特定のIRES、2Aおよび他のリンカー配列については節5.2.5を参照されたい。
【0044】
ある特定の実施形態では、遺伝子療法構築物は、製剤化バッファー中のAAVベクター有効成分の凍結滅菌単回使用溶液として供給される。特定の実施形態では、網膜下投与に適した医薬組成物は、生理学的に適合する水性バッファー、界面活性剤および任意選択の賦形剤を含む製剤化バッファー中の組換え(例えば、rHuGlyFabVEGFi)ベクターの懸濁液を含む。特定の実施形態では、構築物は、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.001%のPluronic F68、pH=7.4中で製剤化される。
【0045】
ある特定の実施形態では、遺伝子療法構築物は、製剤化バッファー中のAAVベクター有効成分の凍結滅菌単回使用溶液として供給される。特定の実施形態では、上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、硝子体内、結膜下および/または網膜内投与に適した医薬組成物は、生理学的に適合する水性バッファー、界面活性剤および任意選択の賦形剤を含む製剤化バッファー中の、組換え(例えば、rHuGlyFabVEGFi)ベクターの懸濁液を含む。
【0046】
組換えベクターの治療上有効な用量は、≧0.1mL~≦0.5mLの範囲の容量で、好ましくは、0.1~0.30mL(100~300μl)で、最も好ましくは、0.25mL(250μl)の容量で網膜下および/または網膜内に(例えば、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入または上脈絡膜腔を経る網膜下投与によって)投与されるべきである。組換えベクターの治療上有効な用量は、上脈絡膜に(例えば、上脈絡膜注入によって)、100μl以下の容量で、例えば、50~100μlの容量で投与されるべきである。組換えベクターの治療上有効な用量は、強膜の外表面に(例えば、後強膜近傍デポー手順によって)、500μl以下の容量で、例えば、10~20μl、20~50μl、50~100μl、100~200μl、200~300μl、300~400μlまたは400~500μlの容量で投与されるべきである。網膜下注入は、訓練された網膜外科医によって実施される外科手技であり、対象を局所麻酔下にする硝子体切除術および網膜への遺伝子療法の網膜下注入を含む(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるCampochiaro et al., 2017, Hum Gen Ther 28(1):99-111を参照されたい)。特定の実施形態では、網膜下投与は、薬物を網膜下腔に注入する上脈絡膜カテーテルを使用して上脈絡膜腔を経て実施される、例えば、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイス(例えば、その各々が、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Baldassarre et al., 2017, Subretinal Delivery of Cells via the Suprachoroidal Space: Janssen Trial. In: Schwartz et al. (eds) Cellular Therapies for Retinal Disease, Springer, Cham、国際特許出願公開番号WO2016/040635を参照されたい)。上脈絡膜投与手順は、眼の上脈絡膜腔への薬物の投与を含み、普通、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器を使用して実施される(例えば、その各々が、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23; Goldstein, 2014, Retina Today 9(5): 82-87を参照されたい)。本明細書において記載される本発明に従って上脈絡膜腔中に発現ベクターを蓄積するために使用できる上脈絡膜薬物送達デバイスとして、それだけには限らないが、Clearside(登録商標)Biomedical、Inc.によって製造された上脈絡膜薬物送達デバイス(例えば、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23を参照されたい)およびMedOne上脈絡膜カテーテルが挙げられる。本明細書において記載される本発明に従って上脈絡膜腔を経て網膜下腔中に発現ベクターを蓄積するために使用できる網膜下薬物送達デバイスとして、それだけには限らないが、Janssen Pharmaceuticals、Inc.によって製造された網膜下薬物送達デバイス(例えば、国際特許出願公開番号WO2016/040635を参照されたい)が挙げられる。特定の実施形態では、強膜の外表面への投与は、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによって実施される。異なる投与様式のより詳細については節5.3.2を参照されたい。上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、硝子体内、結膜下および/または網膜内投与は、可溶性導入遺伝子産物の、網膜、硝子体液および/または眼房水への送達をもたらすはずである。網膜細胞、例えば、桿体、錐体、網膜色素上皮、水平、双極性、アマクリン、神経節、および/またはミュラー細胞による導入遺伝子産物(例えば、コードされる抗VEGF抗体)の発現は、網膜、硝子体液および/または眼房水における導入遺伝子産物の送達および維持をもたらす。特定の実施形態では、硝子体液において少なくとも0.330μg/mLの、または眼房水(眼の前房)において0.110μg/mLのCminの導入遺伝子産物の濃度を3ヶ月間維持する用量が望まれ、その後、1.70~6.60μg/mLの範囲の導入遺伝子産物の硝子体のCmin濃度、および/または0.567~2.20μg/mLの範囲の眼房Cmin濃度が維持されるべきである。しかし、導入遺伝子産物は、持続的に産生されるので、低濃度の維持が有効であり得る。導入遺伝子産物の濃度は、処置された眼の前房から得た硝子体液および/または眼房の患者サンプルにおいて測定できる。あるいは、硝子体液濃度は、導入遺伝子産物の患者の血清濃度を測定することによって推定および/またはモニタリングできる-導入遺伝子産物に対する全身対硝子体曝露の比は、約1:90,000である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Xu L, et al., 2013, Invest. Opthal. Vis. Sci. 54: 1616-1624において1621頁および1623頁の表5で報告されたラニビズマブの硝子体液および血清濃度を参照されたい)。
【0047】
特定の実施形態では、網膜下投与は、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される微小容量注入送達システムを含む網膜下薬物送達デバイスを用いて実施される(図9Aおよび9Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御するための低力起動レバーとを含み得る。ある特定の実施形態では、微小容量注入器のために使用できる微小容量注入送達システムは、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、上脈絡膜ニードル(例えば、Clearside(登録商標)ニードル)、網膜下ニードル、硝子体内ニードル、強膜近傍ニードル、結膜下ニードルおよび/または網膜内ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端(例えば、網膜下送達のためにMedOne 38gニードルおよびDorc 41gニードルを使用でき、一方で、網膜下送達のために、Clearside(登録商標)ニードルおよびVisionisti OYアダプターを使用できる)が挙げられる。
【0048】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、組換えベクターは、上脈絡膜に投与される(例えば、上脈絡膜注入によって)。特定の実施形態では、上脈絡膜投与(例えば、上脈絡膜腔への注入)は、上脈絡膜薬物送達デバイスを使用して実施される。上脈絡膜薬物送達デバイスは、眼の上脈絡膜腔への薬物の投与を含む上脈絡膜投与手順において使用されることが多い(例えば、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23; Goldstein, 2014, Retina Today 9(5): 82-87; Baldassarre et al., 2017を参照されたい)。本明細書において記載される本発明に従って上脈絡膜腔中に組換えベクターを蓄積するために使用できる上脈絡膜薬物送達デバイスとして、それだけには限らないが、Clearside(登録商標)Biomedical、Inc.によって製造された上脈絡膜薬物送達デバイス(例えば、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23を参照されたい)およびMedOne上脈絡膜カテーテルが挙げられる。別の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用できる上脈絡膜薬物送達デバイスは、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される(図9Aおよび9Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)微小容量注入送達システムを含む。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような、高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御する低力起動レバーとを含み得る。微小容量注入器は、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、上脈絡膜ニードル(例えば、Clearside(登録商標)ニードル)または網膜下ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端(例えば、網膜下送達のためにMedOne 38gニードルおよびDorc 41gニードルを使用でき、一方で、上脈絡膜送達のために、Clearside(登録商標)ニードルおよびVisionisti OYアダプターを使用できる)。別の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用できる上脈絡膜薬物送達デバイスは、Visionisti OYによって製造されるアダプターを(好ましくは、ニードルガイドも)有する通常の長さの皮下ニードルを含むツールであり、アダプターは、通常の長さの皮下ニードルを、アダプターから露出するニードルの先端の長さを制御することによって上脈絡膜ニードルにする(図8を参照されたい)(例えば、米国意匠特許番号D878,575および国際特許出願公開番号WO/2016/083669を参照されたい)。特定の実施形態では、上脈絡膜薬物送達デバイスは、1ミリメートルの30ゲージニードルを備えたシリンジである(図5を参照されたい)。このデバイスを使用する注入の際、ニードルが強膜の基部に貫通し、薬物を含有する流体が上脈絡膜腔に入り、上脈絡膜腔の拡大につながる。結果として、注入の際に触覚的および視覚的フィードバックがある。注入後、流体は後側に流れ、脈絡膜および網膜において優位に吸収される。これは、すべての網膜細胞層および脈絡膜細胞からの治療生成物の生成をもたらす。この種のデバイスおよび手順を使用することで、合併症のリスクの低い迅速で、容易なオフィス内手順が可能となる。上脈絡膜腔中に100μlの最大容量を注入できる。
【0049】
特定の実施形態では、硝子体内投与は、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される、微小容量注入送達システムを含む硝子体内薬物送達デバイスを用いて実施される(図9Aおよび9Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215)、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような、高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御する低力起動レバーとを含み得る。微小容量注入器は、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、硝子体内ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端が挙げられる。
【0050】
特定の実施形態では、強膜近傍投与は、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される微小容量注入送達システムを含む強膜近傍薬物送達デバイスを用いて実施される(図9Aおよび9Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215、米国特許出願公開第2019/0175825および米国特許出願公開第2019/0167906を参照されたい)。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御するための低力起動レバーとを含み得る。微小容量注入器は、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、網膜下ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端が挙げられる。
【0051】
ある特定の実施形態では、投与量は、患者の眼に投与される(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入または上脈絡膜腔を経る網膜下投与によって)、1mlあたりのゲノムコピーまたはゲノムコピー数によって測定される。ある特定の実施形態では、1mlあたり2.4×1011ゲノムコピー~1mlあたり1×1013ゲノムコピーが投与される。特定の実施形態では、1mlあたり2.4×1011ゲノムコピー~1mlあたり5×1011ゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり5×1011ゲノムコピー~1mlあたり1×1012ゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり1×1012ゲノムコピー~1mlあたり5×1012ゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり5×1012ゲノムコピー~1mlあたり1×1013ゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約2.4×1011ゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約5×1011ゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約1×1012ゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約5×1012ゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約1×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、1×109~1×1012ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、3×109~2.5×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、1×109~2.5×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、1×109~1×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、1×109~5×109ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、6×109~3×1010ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、4×1010~1×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、2×1011~1×1012ゲノムコピーが投与される。特定の実施形態では、約3×109ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約1.2×1010ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約1×1010ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約4×1010ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約6×1010ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約2.4×1011ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約1.6×1011ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約6.2×1011ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約1.6×1011ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約6.4×1011ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約1.55×1011ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約6.2×1011ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約2.5×1011ゲノムコピー(250μlの容量で1mlあたり約1.0×1012に相当する)が投与される。
【0052】
ある特定の実施形態では、眼あたり約3.0×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり最大3.0×1013ゲノムコピーが投与される。
ある特定の実施形態では、眼あたり約6.0×1010ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり約1.6×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり約5.0×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり約3×1012ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり1mlあたり約1.0×1012ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり1mlあたり約2.5×1012ゲノムコピーが投与される。
【0053】
ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり約6.0×1010ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり約1.6×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり約3.0×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり最大3.0×1013ゲノムコピーが投与される。
【0054】
ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり約5.0×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり約3×1012ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、単回上脈絡膜注入によって眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、二重上脈絡膜注入によって眼あたり約5.0×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり約3.0×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり最大約3.0×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、100μlの容量の単回上脈絡膜注入によって眼あたり1mlあたり約2.5×1012ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、各注入が100μlの容量である二重上脈絡膜注入によって、眼あたり1mlあたり約2.5×1012ゲノムコピーが投与される。
【0055】
本明細書で使用される場合、特に断りのない限り、用語「約」とは、所与の値または範囲のプラスまたはマイナス10%以内を意味する。ある特定の実施形態では、用語「約」は、列挙された正確な数字を包含する。
本発明は、経時的に消失し、ピークおよびトラフレベルをもたらすVEGF阻害剤の高用量ボーラスの反復された眼への注入を含むケア処置の標準を上回るいくつかの利点を有する。導入遺伝子産物抗体の持続発現は、抗体を反復して注入することとは対照的に、作用部位により一定レベルの抗体が存在することを可能にし、より少ない注入しか行われる必要がなく、その結果、医師にかかることがより少なくなるので、患者にとって危険性が低く、より都合がよい。一定タンパク質生成は、網膜において浮腫リバウンドが生じる可能性が低いので、より良好な臨床アウトカムにつながり得る。さらに、導入遺伝子から発現された抗体は、翻訳の間および翻訳後に存在する異なる微小環境のために、直接注入されるものとは異なる方法で翻訳後修飾される。いずれか特定の理論に捉われようとは思わないが、これは、作用部位に送達される抗体が、直接注入された抗体と比較して「バイオベター」であるように、異なる拡散、生理活性、分布、親和性、薬物動態および免疫原性特徴を有する抗体をもたらす。
【0056】
さらに、in vivoで導入遺伝子から発現される抗体は、組換え技術、例えば、タンパク質凝集およびタンパク質酸化によって生成された抗体と会合した分解生成物を含有する可能性は低い。凝集は、高いタンパク質濃度、製造装置および容器との表面相互作用ならびにある特定のバッファー系を用いる精製のためにタンパク質生成および保存と関連する問題である。凝集を促進するこれらの条件は、遺伝子療法における導入遺伝子発現には存在しない。酸化、例えば、メチオニン、トリプトファンおよびヒスチジン酸化もまた、タンパク質生成および保存と関連しており、ストレスを受ける細胞培養条件、金属および空気接触ならびにバッファーおよび賦形剤中の不純物によって引き起こされる。in vivoで導入遺伝子から発現されるタンパク質はまた、ストレスを受ける条件で酸化し得る。しかし、ヒトおよび多数の他の生物は、抗酸化防御システムを備えており、これは、酸化ストレスを低減するだけでなく、酸化を修復するおよび/または逆転させることもある。したがって、in vivoで産生されるタンパク質は、酸化形態である可能性は低い。凝集および酸化の両方とも、効力、薬物動態(クリアランス)および免疫原性に影響を及ぼす可能性がある。
【0057】
理論に捉われるものではないが、本明細書において提供される方法および組成物は、幾分か以下の原理に基づいている:
(i)ヒト網膜細胞は、グリコシル化およびチロシン-O-硫酸化、網膜細胞におけるロバストなプロセスを含む、分泌されたタンパク質の翻訳後プロセシングの細胞機構を有する分泌細胞である。(ヒト網膜細胞によって行われる翻訳後修飾については、例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、網膜細胞による糖タンパク質の生成を報告するWang et al., 2013, Analytical Biochem. 427: 20-28およびAdamis et al., 1993, BBRC 193: 631-638ならびに網膜細胞によって分泌されたチロシン硫酸化糖タンパク質の生成を報告するKanan et al., 2009, Exp. Eye Res. 89: 559-567およびKanan & Al-Ubaidi, 2015, Exp. Eye Res. 133: 126-131を参照されたい)。
(ii)最先端の理解に反して、抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブ(および全長抗VEGF mAbのFabドメイン、例えば、ベバシズマブ)は、実際にN結合型グリコシル化部位を有する。例えば、ラニビズマブのCHドメイン(TVSWN165SGAL)中およびCLドメイン(QSGN158SQE)中の非コンセンサスアスパラギナル(asparaginal)(「N」)グリコシル化部位ならびにVHドメイン(Q115GT)中およびVLドメイン(TFQ100GT)中のグリコシル化部位であるグルタミン(「Q」)残基(およびベバシズマブのFab中の対応する部位)を同定する図1を参照されたい(抗体中のN結合型グリコシル化部位の同定については、例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Valliere-Douglass et al., 2009, J. Biol. Chem. 284: 32493-32506およびValliere-Douglass et al., 2010, J. Biol. Chem. 285: 16012-16022を参照されたい)。
(iii)このような非標準部位は普通、抗体集団の低レベルグリコシル化(例えば、約1~5%)をもたらすが、機能的利点は、眼などの免疫特権を有する臓器では大きい場合がある(例えば、van de Bovenkamp et al., 2016, J. Immunol. 196:1435-1441を参照されたい)。例えば、Fabグリコシル化は、抗体の安定性、半減期および結合特徴に影響を及ぼし得る。抗体のその標的に対する親和性に対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)または表面プラズモン共鳴(SPR)を使用できる。抗体の半減期に対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術を、例えば、放射標識された抗体が投与されている対象中の血液または臓器(例えば、眼)における放射能のレベルの測定によって使用できる。抗体の安定性、例えば、凝集またはタンパク質アンフォールディングのレベルに対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、例えば、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、キャピラリー電気泳動、質量分析または濁度測定を使用できる。本明細書において提供される、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi、導入遺伝子は、非標準部位で0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上グリコシル化されているFabの生成をもたらす。ある特定の実施形態では、Fabの集団から0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上のFabが、非標準部位でグリコシル化されている。ある特定の実施形態では、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上の非標準部位が、グリコシル化されている。ある特定の実施形態では、これらの非標準部位でのFabのグリコシル化が、HEK293細胞において産生されたFabにおけるこれらの非標準部位のグリコシル化の量よりも25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%またはそれより多い。
(iv)グリコシル化部位に加えて、抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブ(およびベバシズマブのFab)は、CDR中またはその付近にチロシン(「Y」)硫酸化部位を含有する、ラニビズマブのVH(EDTAVY9495)およびVL(EDFATY86)ドメイン中のチロシン-O-硫酸化部位(およびベバシズマブのFab中の対応する部位)を同定する図1を参照されたい。(例えば、タンパク質チロシン硫酸化に付されるチロシン残基の周囲のアミノ酸の分析については、その全体が参照により本明細書に組み込まれるYang et al., 2015, Molecules 20:2138-2164、特にp.2154を参照されたい。「ルール」は以下のとおりにまとめることができる:Yの+5~-5位置内にEまたはDを有するY残基であって、Yの-1は、中性または酸性の荷電アミノ酸であるが、塩基性アミノ酸、例えば、硫酸化を無効にするR、KまたはHではない)。ヒトIgG抗体は、いくつかの他の翻訳後修飾、例えば、N末端修飾、C末端修飾、アミノ酸残基の分解または酸化、システイン関連バリアントおよび糖化を示し得る(例えば、Liu et al., 2014, mAbs 6(5):1145-1154を参照されたい)。
(v)ヒト網膜細胞による抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブまたはベバシズマブのFab断片のグリコシル化は、グリカンの付加をもたらし、これは、導入遺伝子産物の安定性、半減期を改善し、不要な凝集および/または免疫原性を低減することができる(Fabグリコシル化の新たに出現した重要性の概要については、例えば、Bovenkamp et al., 2016, J. Immunol. 196: 1435-1441を参照されたい)。重要なことに、本明細書において提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに付加できるグリカンは、2,6-シアル酸を含有する高度にプロセシングされた複合型二分岐Nグリカン(例えば、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに組み込むことができるグリカンを表す図2を参照されたい)および二分(bisecting)GlcNAcであるが、NGNA(N-グリコリルノイラミン酸、Neu5Gc)ではない。このようなグリカンは、ラニビズマブ中(大腸菌(E. coli)で作製され、全くグリコシル化されていない)に、またはベバシズマブ中(この翻訳後修飾を行うために必要な2,6-シアリルトランスフェラーゼを有さないCHO細胞で作製され、CHO細胞は二分GlcNAcも産生しないが、Neu5Ac(NANA)の代わりに、ヒトにとって通常ではない(免疫原性である可能性がある)シアル酸としてNeu5Gc(NGNA)を付加する)に存在しない。例えば、Dumont et al., 2015, Crit. Rev. Biotechnol.(アーリーオンライン(Early Online)、公開されたオンライン2015年9月18日、1~13頁のp.5)を参照されたい。さらに、CHO細胞はまた、ほとんどの個体中に存在する抗α-Gal抗体と反応し、高濃度では、アナフィラキシーを引き起こす場合がある免疫原性グリカン、α-Gal抗原を産生し得る。例えば、Bosques, 2010, Nat Biotech 28: 1153-1156を参照されたい。本明細書において提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiのヒトグリコシル化パターンは、導入遺伝子産物の免疫原性を低減し、有効性を改善するべきである。
(vi)抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブまたはベバシズマブのFab断片のチロシン硫酸化-ヒト網膜細胞におけるロバストな翻訳後プロセスは、VEGFに対するアビディティーが増大した導入遺伝子産物をもたらす可能性がある。実際、他の標的に対する治療用抗体のFabのチロシン硫酸化は、抗原に対するアビディティーおよび活性を著しく増大すると示されている(例えば、Loos et al., 2015, PNAS 112: 12675-12680およびChoe et al., 2003, Cell 114: 161-170を参照されたい)。このような翻訳後修飾は、ラニビズマブ(大腸菌、チロシン硫酸化のために必要な酵素を有さない宿主において作製される)では存在せず、CHO細胞産物であるベバシズマブでは、多めに見積もっても存在量が少ない。ヒト網膜細胞とは異なり、CHO細胞は、分泌細胞ではなく、翻訳後チロシン硫酸化の制限された能力しか有さない(例えば、Mikkelsen & Ezban, 1991, Biochemistry 30: 1533-1537、特に、p.1537の考察を参照されたい)。
【0058】
前述の理由のために、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの生成は、遺伝子療法によって、例えば、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者(ヒト対象)の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔、網膜内腔、硝子体腔または強膜の外表面に、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiをコードするウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物を投与して(例えば、上脈絡膜注入(例えば、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器による)、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)、形質導入された網膜細胞によって産生される、完全ヒト翻訳後修飾、例えば、ヒトグリコシル化、硫酸化導入遺伝子産物を持続的に供給する眼中の持続的なデポーを作出することによって達成される糖尿病性網膜症(DR)の処置のために「バイオベター」分子をもたらすべきである。FabVEGFiのcDNA構築物は、形質導入された網膜細胞による適切な同時翻訳および翻訳後プロセシング(グリコシル化およびタンパク質硫酸化)を確実にするシグナルペプチドを含むべきである。網膜細胞によって使用されるこのようなシグナル配列として、それだけには限らないが、以下を挙げることができる:
・MNFLLSWVHW SLALLLYLHH AKWSQA(VEGF-Aシグナルペプチド)(配列番号5)
・MERAAPSRRV PLPLLLLGGL ALLAAGVDA(フィビュリン-1シグナルペプチド)(配列番号6)
・MAPLRPLLIL ALLAWVALA(ビトロネクチンシグナルペプチド)(配列番号7)
・MRLLAKIICLMLWAICVA(補体H因子シグナルペプチド)(配列番号8)
・MRLLAFLSLL ALVLQETGT(オプチシン(Opticin)シグナルペプチド)(配列番号9)
・MKWVTFISLLFLFSSAYS(アルブミンシグナルペプチド)(配列番号22)
・MAFLWLLSCWALLGTTFG(キモトリプシノーゲンシグナルペプチド)(配列番号23)
・MYRMQLLSCIALILALVTNS(インターロイキン-2シグナルペプチド)(配列番号24)
・MNLLLILTFVAAAVA(トリプシノーゲン-2シグナルペプチド)(配列番号25)。
使用できるシグナルペプチドについては、例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Stern et al., 2007, Trends Cell. Mol. Biol., 2:1-17およびDalton & Barton, 2014, Protein Sci, 23: 517-525を参照されたい。
【0059】
遺伝子療法に対する代替の、または追加の処置として、HuPTMFabVEGFi生成物、例えば、HuGlyFabVEGFi糖タンパク質を、組換えDNA技術によってヒト細胞株において生成し、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者に、硝子体内または網膜下注入によって投与することができる。HuPTMFabVEGFi生成物、例えば、糖タンパク質はまた、糖尿病性網膜症(DR)を有する患者に投与できる。このような組換え糖タンパク質生成のために使用できるヒト細胞株として、それだけには限らないが、2、3例を挙げると、ヒト胎児腎臓293細胞(HEK293)、線維肉腫HT-1080、HKB-11、CAP、HuH-7および網膜細胞株、PER.C6またはRPEが含まれる。(HuPTMFabVEGFi生成物、例えば、HuGlyFabVEGFi糖タンパク質の組換え生成のために使用できるヒト細胞株の概要については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Dumont et al., 2015, Crit. Rev. Biotechnol.(アーリーオンライン、公開されたオンライン2015年9月18日、1~13頁)“Human cell lines for biopharmaceutical manufacturing: history, status, and future perspectives”を参照されたい)。完全グリコシル化、特に、シアリル化およびチロシン硫酸化を確実にするために、宿主細胞を、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(またはα-2,3-およびα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの両方)ならびに/または網膜細胞においてチロシン-O-硫酸化に関与するTPST-1およびTPST-2酵素を同時発現するように操作することによって、生成に使用される細胞株を増強できる。
【0060】
他の利用可能な処置の送達を伴う、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの、眼/網膜への送達の組合せが、本明細書において提供される方法により包含される。追加の処置は、遺伝子療法処置の前、それと同時に、またはその後に投与できる。本明細書において提供される遺伝子療法と組み合わせることができるであろう糖尿病性網膜症(DR)のための利用可能な処置として、それだけには限らないが、レーザー凝固、ベルテポルフィンを用いる光線力学的療法およびそれだけには限らないが、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプトまたはベバシズマブを含む抗VEGF剤を用いる硝子体内(IVT)注入が挙げられる。抗VEGF剤、例えば、生物製剤を用いる追加の処置は、「レスキュー」療法と呼ばれることもある。
【0061】
小分子薬物とは異なり、生物製剤は、普通、異なる効力、薬物動態および安全性プロファイルを有する異なる修飾または形態を有する多数のバリアントの混合物を含む。遺伝子療法またはタンパク質療法アプローチのいずれかで生成されたどの分子も完全にグリコシル化され、硫酸化される必要はない。むしろ、有効性を実証するために、生成された糖タンパク質の集団は、2,6-シアリル化および硫酸化を含む十分なグリコシル化を有するべきである(集団の約1%~約10%)。本明細書において提供される遺伝子療法処置の目的は、最小の介入/侵襲的手順で網膜変性の進行を減速または停止すること、および視力の喪失を減速または防ぐことである。有効性は、BCVA(最高矯正視力)、眼球内圧、スリットランプ検査、間接眼底検査、SD-OCT(SD-光干渉断層撮影)、網膜電図検査(ERG)を測定することによってモニタリングできる。視力喪失、感染、炎症および網膜剥離を含む他の安全性事象の徴候もモニタリングできる。網膜の厚さをモニタリングして、本明細書において提供される処置の有効性を判定できる。いずれか特定の理論に捉われようとは思わないが、網膜の厚さを、臨床読み取り値として使用でき、網膜の厚さの低減が大きいほどまたは網膜の肥厚の前の期間が長いほど、処置はより有効である。網膜の厚さは、例えば、SD-OCTによって決定できる。SD-OCTは、低コヒーレンス干渉法を使用して、目的の物体から反射された後方散乱光のエコー時間遅延と大きさを決定する3次元イメージング技術である。OCTを使用して、3~15μmの軸分解能で組織サンプルの層(例えば、網膜)をスキャンでき、SD-OCTは、軸分解能およびスキャン速度をこれまでの技術の形式を上回って改善する(Schuman, 2008, Trans. Am. Opthamol. Soc. 106:426-458)。網膜機能は、例えば、ERGによって決定できる。ERGは、ヒトにおける使用のためにFDAによって承認された、網膜機能の非侵襲的電気生理学的検査であり、眼の光感受性細胞(桿体および錐体)およびその接続する神経節細胞、特に、フラッシュ刺激に対するその応答を調べる。
【0062】
好ましい実施形態では、抗原結合性断片は、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Galを含有しない。本明細書において使用される「検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal」という語句は、当技術分野で公知の標準アッセイ法によって検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal部分を意味する。例えば、NeuGcは、NeuGcを検出する方法についての、参照により本明細書に組み込まれる、Hara et al., 1989, “Highly Sensitive Determination of N-Acetyl-and N-Glycolylneuraminic Acids in Human Serum and Urine and Rat Serum by Reversed-Phase Liquid Chromatography with Fluorescence Detection.” J. Chromatogr., B: Biomed. 377: 111-119に従ってHPLCによって検出できる。あるいは、NeuGcは、質量分析によって検出できる。α-Galは、ELISAを使用して、例えば、Galili et al., 1998, “A sensitive assay for measuring alpha-Gal epitope expression on cells by a monoclonal anti-Gal antibody.” Transplantation. 65(8):1129-32を参照されたい、または質量分析によって、例えば、Ayoub et al., 2013, “Correct primary structure assessment and extensive glyco-profiling of cetuximab by a combination of intact, middle-up, middle-down and bottom-up ESI and MALDI mass spectrometry techniques.” Landes Bioscience. 5(5): 699-710を参照されたい、検出できる。Platts-Mills et al., 2015, “Anaphylaxis to the Carbohydrate Side-Chain Alpha-gal” Immunol Allergy Clin North Am. 35(2): 247-260に引用された参考文献も参照されたい。
【0063】
ある特定の態様では、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む抗VEGF抗原結合性断片(すなわち、VEGFに免疫特異的に結合する抗原結合性断片)も本明細書において提供され、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。本明細書において提供される抗VEGF抗原結合性断片は、本明細書において記載される本発明による任意の方法で使用できる。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0064】
ある特定の態様では、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む抗VEGF抗原結合性断片も本明細書において提供され、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない。本明細書において提供される抗VEGF抗原結合性断片は、本明細書において記載される本発明による任意の方法で使用できる。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0065】
ある特定の態様では、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む抗VEGF抗原結合性断片も本明細書において提供され、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持せず、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、(1)重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持せず、(2)軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されておらず、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、(1)重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されておらず、(2)軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわちSASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。本明細書において提供される抗VEGF抗原結合性断片は、本明細書において記載される本発明による任意の方法で使用できる。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0066】
別の企図される投与経路として、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成し、網膜下腔中に注入し、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを有する網膜下薬物送達デバイスを使用する、上脈絡膜腔を経る網膜下投与がある。この投与経路によって、硝子体が無傷のままであることが可能となり、したがって、合併症のリスクがより少ないこと(遺伝子療法の退出ならびに網膜剥離および黄斑円孔などの合併症のリスクが少ない)が可能となり、硝子体切除術を用いない場合、結果として生じるブレブがより拡散性に広がる可能性があり、網膜の表面積のより多くがより少ない容量で形質導入されることが可能となる。この手順後に誘導される白内障のリスクは最小化され、これはより若い患者にとって望ましいものである。さらに、この手順は、中心窩下にブレブを標準的な経硝子体アプローチよりもより安全に送達でき、これは、形質導入の標的細胞が黄斑にある、中心視野に影響を及ぼす遺伝性網膜疾患を有する患者にとって望ましいものである。この手順はまた、他の送達経路に影響を及ぼし得る全身循環中に存在するAAVに対する中和抗体(Nab)を有する患者にとっても都合がよい。さらに、この方法は、標準的な経硝子体アプローチよりも網膜切開術部位からの退出が少ないブレブを作出することを示した。
【0067】
強膜近傍投与は、眼球内感染および網膜剥離、治療薬を眼中に直接注入することと一般に関連する副作用のリスクを避ける追加の投与経路を提供する。
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、発現ベクターが、6.2×1011GC/mLの濃度で約1.6×1011GC/眼または1.0×1012GC/mLの濃度で約2.5×1011GC/眼の単回用量で網膜下送達によって投与され、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである方法が、本明細書において提供される。
【0068】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、発現ベクターが、6.2×1011GC/mLの濃度で約1.55×1011GC/眼または1.0×1012GC/mLの濃度で約2.5×1011GC/眼の単回用量で網膜下送達によって投与され、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである方法が、本明細書において提供される。
【0069】
ある特定の態様では、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、発現ベクターが、6.4×1011GC/mLの濃度で約1.6×1011GC/眼または1.0×1012GC/mLの濃度で約2.5×1011GC/眼の単回用量で網膜下送達によって投与され、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである方法が、本明細書において提供される。
【0070】
ある特定の態様では、製剤化バッファー(pH=7.4)中に6.2×1011GC/mLの濃度で1.6×1011GCまたは1.0×1012GC/mLの濃度で2.5×1011GCの抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを含む単回用量組成物であって、製剤化バッファーが、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.0001% Pluronic F68を含み、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである単回用量組成物が、本明細書において提供される。
【0071】
ある特定の態様では、製剤化バッファー(pH=7.4)中に6.2×1011GC/mLの濃度で1.55×1011GCまたは1.0×1012GC/mLの濃度で2.5×1011GCの抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを含む単回用量組成物であって、製剤化バッファーが、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.0001% Pluronic F68を含み、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである単回用量組成物が、本明細書において提供される。
ある特定の態様では、製剤化バッファー(pH=7.4)中に6.4×1011GC/mLの濃度で1.6×1011GCまたは1.0×1012GC/mLの濃度で2.5×1011GCの抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを含む単回用量組成物であって、製剤化バッファーが、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.0001% Pluronic F68を含み、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである単回用量組成物が、本明細書において提供される。
【0072】
ある特定の態様では、製剤化バッファー(pH=7.4)中に眼あたり約6.0×1010ゲノムコピー、眼あたり1.6×1011ゲノムコピー、眼あたり2.5×1011ゲノムコピー、眼あたり5.0×1011ゲノムコピーまたは眼あたり3.0×1012ゲノムコピーの抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを含む単回用量組成物であって、製剤化バッファーが、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.0001% Pluronic F68を含み、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである単回用量組成物が、本明細書において提供される。
【0073】
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症(DR)を有する対象を処置する方法であって、対象が、DRを有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル47、53、61または65である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
一部の実施形態では、方法は、対象から生体サンプルを得ることまたは得られた生体サンプルを有することおよび対象が10%以下のヘモグロビンA1cの血清レベルを有することを決定することをさらに含む。
一部の実施形態では、方法は、対象において網膜症の増殖性段階への進行を妨げる。
【0074】
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症を有する対象を処置する方法であって、対象が、中程度~重症の非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)を有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル47である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
【0075】
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症を有する対象を処置する方法であって、対象が、重症NPDRを有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル53である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症を有する対象を処置する方法であって、対象が、軽度の増殖性糖尿病性網膜症(PDR)を有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル61である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症を有する対象を処置する方法であって、対象が、中程度のPDRを有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル65である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
【0076】
ETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルは、標準の4広視野デジタル立体眼底写真または同等のものを使用して決定され、それらはまた、Li et al., 2010, Retina Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010;51:3184-3192または類似の方法に従って、モノスコピックまたは立体写真によって測定される場合もある。
【0077】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、方法は、投与ステップ後に、赤外線サーマルカメラを使用して眼の表面の温度をモニタリングするステップをさらに含む。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、FLIR T530赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、FLIR T420赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、FLIR T440赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、Fluke Ti400赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、FLIRE60赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラの赤外線解像度は、75,000ピクセル以上である。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラの熱感受性は、30℃で0.05℃以下である。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラの視野(FOV)は、25°×25°以下である。
【0078】
3.1 例示的実施形態
1. 糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、発現ベクターが、6.2×1011GC/mLの濃度で約1.6×1011GC/眼または1.0×1012GC/mLの濃度で約2.5×1011GC/眼の単回用量で網膜下送達によって投与され、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターがAAV8ベクターである、方法。
2. 投与することが、網膜下薬物送達デバイスを使用して網膜下腔中へ発現ベクターを注入することによる、項1に記載の方法。
3. 投与することが、抗hVEGF抗体の治療上有効量を前記ヒト対象の網膜へ送達する、項1~2のいずれか1つに記載の方法。
4. 抗hVEGF抗体の治療上有効量が、前記ヒト対象のヒト網膜細胞によって産生される、項3に記載の方法。
5. 抗hVEGF抗体の治療上有効量が、前記ヒト対象のヒト光受容体細胞、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される、項4に記載の方法。
6. ヒト光受容体細胞が、錐体細胞および/または桿体細胞である、項5に記載の方法。
7. 網膜神経節細胞が、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリアである、項6に記載の方法。
8. 発現ベクターが、CB7プロモーターを含む、項1~7のいずれか1つに記載の方法。
9. 発現ベクターが、構築物IIである、項8に記載の方法。
10. 製剤化バッファー(pH=7.4)中に6.2×1011GC/mLの濃度で1.6×1011GCまたは1.0×1012GC/mLの濃度で2.5×1011GCの抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを含む単回用量組成物であって、製剤化バッファーが、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.001% Pluronic F68を含み、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターがAAV8ベクターである、単回用量組成物。
11. 発現ベクターがIIである、項10に記載の組成物。
12. 投与ステップ後に、赤外線サーマルカメラを使用して眼における注入された物質の眼注入後熱プロファイルをモニタリングするステップをさらに含む、項1~9のいずれか1つに記載の方法。
13. 赤外線サーマルカメラが、FLIR T530赤外線サーマルカメラである、項12に記載の方法。
14. DRを有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーの発現ベクターが、二重上脈絡膜注入によって投与され、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである、方法。
15. DRを有すると診断されたヒト対象を処置する方法であって、前記ヒト対象の眼中の網膜下腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含み、眼あたり約5.0×1011ゲノムコピーの発現ベクターが、二重上脈絡膜注入によって投与され、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである、方法。
16. 投与することが、抗hVEGF抗体の治療上有効量を前記ヒト対象の網膜に送達する、項14~15のいずれか1つに記載の方法。
17. 抗hVEGF抗体の治療上有効量が、前記ヒト対象のヒト網膜細胞によって産生される、項16に記載の方法。
18. 抗hVEGF抗体の治療上有効量が、前記ヒト対象のヒト光受容体細胞、水平細胞、双極性細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞および/または外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される、項17に記載の方法。
19. ヒト光受容体細胞が、錐体細胞および/または桿体細胞である、項18に記載の方法。
20. 網膜神経節細胞が、ミジェット細胞、パラソル細胞、重層状細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞および/またはミュラーグリアである、項19に記載の方法。
21. 発現ベクターが、CB7プロモーターを含む、項14~20のいずれか1つに記載の方法。
22. 発現ベクターが構築物IIである、項21に記載の方法。
23. 投与ステップ後に、赤外線サーマルカメラを使用して眼における注入された物質の眼注入後熱プロファイルをモニタリングするステップをさらに含む項14~22のいずれか1つに記載の方法。
24. 赤外線サーマルカメラが、FLIR T530赤外線サーマルカメラである、項23に記載の方法。
25. 製剤化バッファー(pH=7.4)中に眼あたり約6.0×1010ゲノムコピー、眼あたり1.6×1011ゲノムコピー、眼あたり2.5×1011ゲノムコピー、眼あたり5.0×1011ゲノムコピーまたは眼あたり3.0×1012ゲノムコピーの抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを含む単回用量組成物であって、製剤化バッファーが、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.0001% Pluronic F68を含み、抗hVEGF抗体が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、発現ベクターが、AAV8ベクターである、単回用量組成物。
26. 発現ベクターが構築物IIである、項16に記載の組成物。
27. 発現ベクターの脱落をもたらさない、項1~9および12~24のいずれか1つに記載の方法。
28. 1000発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満、500発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満、100発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満、50発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満または10発現ベクター遺伝子コピー/5μl未満が、投与後任意の時点で生物学的流体において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である、項1~9および12~24のいずれか1つに記載の方法。
29. 210発現ベクター遺伝子コピー/5μl以下が、投与後任意の時点で生物学的流体において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である項1~9および12~24のいずれか1つに記載の方法。
30. 1000ベクター遺伝子コピー/5μl未満、500ベクター遺伝子コピー/5μl未満、100ベクター遺伝子コピー/5μl未満、50ベクター遺伝子コピー/5μl未満または10ベクター遺伝子コピー/5μl未満が、投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14週まで生物学的流体において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である、項1~9および12~24のいずれか1つに記載の方法。
31. ベクター遺伝子コピーが、ベクターの投与後14週まで生物学的流体において検出可能ではない、項1~9および12~24のいずれか1つに記載の方法。
32. 生物学的流体が、涙、血清または尿である、項28~31のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】ベバシズマブFab(下部)中に5つの異なる残基を示すラニビズマブ(上部)のアミノ酸配列を示す図である。可変および定常重鎖(VHおよびCH)ならびに軽鎖(VLおよびVC)の開始は、矢印(→)によって示され、CDRは下線が引かれている。非コンセンサスグリコシル化部位(「G部位」)チロシン-O-硫酸化部位(「Y部位」)が示されている。
図2】HuGlyFabVEGFiに結合され得るグリカンを示す図である(Bondt et al., 2014, Mol & Cell Proteomics 13.1: 3029-3039から適応された)。
図3】ラニビズマブ(上部)およびベバシズマブFab(下部)の高度グリコシル化バリアントのアミノ酸配列を示す図である。可変および定常重鎖(VHおよびCH)ならびに軽鎖(VLおよびVC)の開始は、矢印(→)によって示され、CDRは下線が引かれている。非コンセンサスグリコシル化部位(「G部位」)およびチロシン-O-硫酸化部位(「Y部位」)が示されている。4種の高度グリコシル化バリアントがアスタリスク(*)で示されている。
図4】AAV8抗VEGFfabゲノムの模式図を示す図である。
図5】Clearside(登録商標)Biomedical、Inc.によって製造された上脈絡膜薬物送達デバイスを示す図である。
図6】Janssen Pharmaceuticals、Inc.によって製造された、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスを示す図である。
図7A-7D】後強膜近傍デポー手順を例示する図である。
図8】AAVカプシド1~9(配列番号41~51)のClustal多重配列アラインメントを示す図である。他のアラインされたAAVカプシドの対応する位置からアミノ酸残基を「補充する」ことによってAAV9およびAAV8カプシドに対してアミノ酸置換(最終行で太字で示される)を行うことができる。「HVR」=超可変領域によって指定された配列領域。
図9A-9B】Altavizによって製造された微小容量注入器薬物送達デバイスを示す図である。
図10A-10B】Visionisti OYによって製造された薬物送達デバイスを示す図である。具体的には、図10Aは、30gの短い皮下ニードルを上脈絡膜/網膜下ニードルに変換できる注入アダプターを表す。デバイスは、アダプターの遠位先端から露出されるニードルの先端の長さを制御できる。10μLで調整を行うことができる。デバイスは、上脈絡膜送達および/または眼外網膜下送達のために調整する能力を有する。図8Bは、眼瞼を開けたままにし、ニードルを送達のために最適な角度および深度で保持するニードルアダプターガイドを表す。ニードルアダプターは、安定化デバイスにロックされる。ニードルアダプターは、標準化および最適化されたオフィス内上脈絡膜および/または網膜下注入のための一体型のツールである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者(ヒト対象)の眼中の網膜/硝子体液へのVEGFに対する完全ヒト翻訳後修飾(HuPTM)抗体の送達のための組成物および方法が記載される。抗体には、それだけには限らないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え生成された抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、2つの重鎖および2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-重鎖対、イントラボディ、ヘテロコンジュゲート抗体、一価抗体および全長抗体の抗原結合性断片および上記のものの融合タンパク質が含まれる。このような抗原結合性断片には、それだけには限らないが、単一ドメイン抗体(重鎖抗体の可変ドメイン(VHH)またはナノボディ)、全長抗VEGF抗体(好ましくは、全長抗VEGFモノクローナル抗体(mAb))のFab、F(ab’)2およびscFv(単鎖可変断片)(まとめて本明細書において「抗原結合性断片」と呼ばれる)が含まれる。好ましい実施形態では、VEGFに対する完全ヒト翻訳後修飾抗体は、VEGFに対するモノクローナル抗体(mAb)の完全ヒト翻訳後修飾抗原結合性断片(「HuPTMFabVEGFi」)である。さらに好ましい実施形態では、HuPTMFabVEGFiは、抗VEGF mAbの完全ヒトグリコシル化抗原結合性断片(「HuGlyFabVEGFi」)である。本明細書において記載される本発明に従って使用できる組成物および方法については、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号WO/2017/180936(2017年4月14日に出願された国際特許出願番号PCT/US2017/027529)、国際特許出願公開番号WO/2017/181021(2017年4月14日に出願された国際特許出願番号PCT/US2017/027650)および国際特許出願公開番号WO2019/067540(2018年9月26日に出願された国際特許出願番号PCT/US2018/052855)も参照されたい。代替実施形態では、全長mAbを使用できる。送達は、遺伝子療法によって、例えば、抗VEGF抗原結合性断片またはmAb(または高度グリコシル化誘導体)をコードするウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物を、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者(ヒト対象)の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔(経硝子体アプローチから、または上脈絡膜腔を通るカテーテルを用いて)、網膜内腔、硝子体腔、および/または強膜の外表面(すなわち、強膜近傍投与)へ投与して、ヒトPTM、例えば、ヒトグリコシル化、導入遺伝子産物を持続的に供給する眼中の持続的なデポーを作出することによって達成され得る。例えば、節5.3.2に記載される投与様式を参照されたい。
【0081】
ある特定の実施形態では、患者は、遺伝子療法を用いる処置の前に硝子体内に注入される抗VEGF抗原結合性断片を用いる処置に対して応答性であると示されていた。具体的な実施形態では、患者は、これまでに、ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)および/またはアバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)を用いて処置されており、前記ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)および/またはアバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)のうち1種または複数に対して応答性であるとわかっていた。
【0082】
このようなウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物が送達される対象は、ウイルスベクターまたは発現構築物中の導入遺伝子によってコードされた抗hVEGF抗原結合性断片に対して応答性であるべきである。応答性を決定するために、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子産物(例えば、細胞培養物、バイオリアクターなどにおいて産生される)を、硝子体内注入などによって対象に直接投与してもよい。
【0083】
導入遺伝子によってコードされるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiとして、それだけには限らないが、hVEGFと結合する抗体の抗原結合性断片、例えば、ベバシズマブ、抗hVEGF Fab部分、例えば、ラニビズマブまたはFabドメインに追加のグリコシル化部位を含有するように操作されたようなベバシズマブもしくはラニビズマブFab部分を挙げることができる(例えば、全長抗体のFabドメインで高度グリコシル化されているベバシズマブの誘導体の説明については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Courtois et al., 2016, mAbs 8: 99-112を参照されたい)。
【0084】
導入遺伝子を送達するために使用される組換えベクターは、ヒト網膜細胞または光受容体細胞に対する指向性を有するべきである。このようなベクターとして、非複製性組換えアデノ随伴ウイルスベクター(「rAAV」)を挙げることができ、特に、AAV8カプシドを有するものが好ましい。しかし、それだけには限らないが、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターを含む他のウイルスベクターまたは「裸のDNA」構築物と呼ばれる非ウイルス性発現ベクターを使用してもよい。好ましくは、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi、導入遺伝子は、適当な発現制御エレメント、2、3例を挙げると、例えば、CB7プロモーター(ニワトリβ-アクチンプロモーターおよびCMVエンハンサー)、RPE65プロモーターまたはオプシンプロモーターによって制御されるべきであり、ベクターによって駆動される導入遺伝子の発現を増強する他の発現制御エレメント(例えば、イントロン、例えば、ニワトリβ-アクチンイントロン、マウスの微小ウイルス(MVM)イントロン、ヒト第IX因子イントロン(例えば、FIX末端切断型イントロン1)、β-グロビンスプライスドナー/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプターイントロン、アデノウイルススプライスドナー/免疫グロブリンスプライスアクセプターイントロン、SV40後期スプライスドナー/スプライスアクセプター(19S/16S)イントロンおよびハイブリッドアデノウイルススプライスドナー/IgGスプライスアクセプターイントロンならびにポリAシグナル、例えば、ウサギβ-グロビンポリAシグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリAシグナル、SV40後期ポリAシグナル、合成ポリA(SPA)シグナルおよびウシ成長ホルモン(bGH)ポリAシグナル)を挙げることができる。例えば、Powell and Rivera-Soto, 2015, Discov. Med., 19(102):49-57を参照されたい。
【0085】
好ましい実施形態では、遺伝子療法構築物は、重鎖および軽鎖両方が発現されるように設計される。より詳しくは、重鎖および軽鎖は、ほぼ等量で発現されるべきである、言い換えれば、重鎖および軽鎖は、およそ1:1の重鎖対軽鎖の比で発現される。重鎖および軽鎖のコード配列は、重鎖および軽鎖が切断可能なリンカーまたはIRESによってわけられ、その結果、別個の重鎖および軽鎖ポリペプチドが発現される単一構築物中で操作され得る。例えば、本明細書において提供される方法および組成物とともに使用できる、特定のリーダー配列については節5.2.4ならびに特定のIRES、2Aおよび他のリンカー配列については節5.2.5を参照されたい。
【0086】
ある特定の実施形態では、遺伝子療法構築物は、製剤化バッファー中のAAVベクター有効成分の凍結滅菌単回使用溶液として供給される。特定の実施形態では、網膜下投与に適した医薬組成物は、生理学的に適合する水性バッファー、界面活性剤および任意選択の賦形剤を含む製剤化バッファー中の組換え(例えば、rHuGlyFabVEGFi)ベクターの懸濁液を含む。特定の実施形態では、構築物は、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.001%のPluronic F68、pH=7.4中で製剤化される。
【0087】
組換えベクターの治療上有効な用量は、≧0.1mL~≦0.5mLの範囲の容量で、好ましくは、0.1~0.30mL(100~300μl)で、最も好ましくは、0.25mL(250μl)の容量で網膜下および/または網膜内に(例えば、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入または上脈絡膜腔を経る網膜下投与によって)投与されるべきである。組換えベクターの治療上有効な用量は、上脈絡膜に(例えば、上脈絡膜注入によって)、100μl以下の容量で、例えば、50~100μlの容量で投与されるべきである。組換えベクターの治療上有効な用量は、強膜の外表面に、500μl以下の容量で、例えば、10~20μl、20~50μl、50~100μl、100~200μl、200~300μl、300~400μlまたは400~500μlの容量で投与されるべきである。網膜下注入は、訓練された網膜外科医によって実施される外科手技であり、対象を局所麻酔下にする部分硝子体切除術および網膜への遺伝子療法の注入を含む(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるCampochiaro et al., 2017, Hum Gen Ther 28(1):99-111を参照されたい)。特定の実施形態では、網膜下投与は、上脈絡膜腔を通って後極に向けて挿入し、トンネルを形成でき、そこで小さいニードルが網膜下腔中に注入されるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスを使用して上脈絡膜腔を経て実施される(例えば、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Baldassarre et al., 2017, Subretinal Delivery of Cells via the Suprachoroidal Space: Janssen Trial. In: Schwartz et al. (eds) Cellular Therapies for Retinal Disease, Springer, Cham、国際特許出願公開番号WO2016/040635を参照されたい)。上脈絡膜投与手順は、眼の上脈絡膜腔への薬物の投与を含み、普通、上脈絡膜薬物送達デバイス、例えば、マイクロニードルを備えた微量注入器を使用して実施される(例えば、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23; Goldstein, 2014, Retina Today 9(5): 82-87を参照されたい)。本明細書において記載される本発明に従って上脈絡膜腔中に発現ベクターを蓄積するために使用できる上脈絡膜薬物送達デバイスとして、それだけには限らないが、Clearside(登録商標)Biomedical、Inc.によって製造された上脈絡膜薬物送達デバイス(例えば、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23を参照されたい)が挙げられる。本明細書において記載される本発明に従って上脈絡膜腔を経て網膜下腔中に発現ベクターを蓄積するために使用できる網膜下薬物送達デバイスとして、それだけには限らないが、Janssen Pharmaceuticals、Inc.によって製造された網膜下薬物送達デバイス(例えば、国際特許出願公開番号WO2016/040635を参照されたい)が挙げられる。特定の実施形態では、強膜の外表面への投与は、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスによって実施される。異なる投与様式のより詳細については節5.3.2を参照されたい。上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、硝子体内、結膜下および/または網膜内投与は、可溶性導入遺伝子産物の、網膜、硝子体液および/または眼房水への送達をもたらすはずである。網膜細胞、例えば、桿体、錐体、網膜色素上皮、水平、双極性、アマクリン、神経節および/またはミュラー細胞による導入遺伝子産物(例えば、コードされる抗VEGF抗体)の発現は、網膜、硝子体液および/または眼房水における導入遺伝子産物の送達および維持をもたらす。特定の実施形態では、硝子体液において少なくとも0.330μg/mLの、または眼房水(眼の前房)において0.110μg/mLのCminの導入遺伝子産物の濃度を3ヶ月間維持する用量が望まれ、その後、1.70~6.60μg/mLの範囲の導入遺伝子産物の硝子体のCmin濃度および/または0.567~2.20μg/mLの範囲の眼房Cmin濃度が維持されるべきである。しかし、導入遺伝子産物は、持続的に産生されるので、低濃度の維持が有効であり得る。特定の実施形態では、導入遺伝子産物の濃度は、処置された眼の前房から得た硝子体液および/または眼房の患者サンプルにおいて測定できる。あるいは、硝子体液濃度は、導入遺伝子産物の患者の血清濃度を測定することによって推定および/またはモニタリングできる-導入遺伝子産物に対する全身対硝子体曝露の比は、約1:90,000である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Xu L, et al., 2013, Invest. Opthal. Vis. Sci. 54: 1616-1624において1621頁および1623頁の表5で報告されたラニビズマブの硝子体液および血清濃度を参照されたい)。
【0088】
ベクター導入遺伝子は、脱落(標的細胞に感染しなかった、および糞便または体液を介して身体から除去されたベクターの放出)、可動化(導入遺伝子複製および標的細胞からの移動)または生殖系列伝達(精液を介した子孫への遺伝子伝達)から意図されないレシピエントへ広がる可能性を有する。ベクター脱落は、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を使用して涙、血清または尿などの生物学的流体においてベクターDNAを測定することによって決定できる。一部の実施形態では、ベクター遺伝子コピーは、ベクターの投与後いかなる時点でも生物学的流体(例えば、涙、血清または尿)において検出可能ではない。一部の実施形態では、1000ベクター遺伝子コピー/5μl未満、500ベクター遺伝子コピー/5μl未満、100ベクター遺伝子コピー/5μl未満、50ベクター遺伝子コピー/5μl未満または10ベクター遺伝子コピー/5μl未満が、投与後任意の時点で生物学的流体(例えば、涙、血清または尿)において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である。具体的な実施形態では、210ベクター遺伝子コピー/5μl以下が、血清において検出可能である。一部の実施形態では、1000ベクター遺伝子コピー/5μl未満、500ベクター遺伝子コピー/5μl未満、100ベクター遺伝子コピー/5μl未満、50ベクター遺伝子コピー/5μl未満または10ベクター遺伝子コピー/5μl未満が、投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14週まで生物学的流体(例えば、涙、血清または尿)において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である。具体的な実施形態では、ベクター遺伝子コピーは、ベクターの投与後14週まで血清において検出可能ではない。
【0089】
本発明は、経時的に消失し、ピークおよびトラフレベルをもたらすVEGF阻害剤の高用量ボーラスの反復された眼への注入を含むケア処置の標準を上回るいくつかの利点を有する。導入遺伝子産物抗体の持続発現は、抗体を反復して注入することとは対照的に、作用部位により一定レベルの抗体が存在することを可能にし、より少ない注入しか行われる必要がなく、その結果、医師にかかることがより少なくなるので、患者にとって危険性が低く、より都合がよい。一定タンパク質生成は、網膜において浮腫リバウンドが生じる可能性が低いので、より良好な臨床アウトカムにつながり得る。さらに、導入遺伝子から発現された抗体は、翻訳の間および翻訳後に存在する異なる微小環境のために、直接注入されるものとは異なる方法で翻訳後修飾される。いずれか特定の理論に捉われようとは思わないが、これは、作用部位に送達される抗体が、直接注入された抗体と比較して「バイオベター」であるように、異なる拡散、生理活性、分布、親和性、薬物動態および免疫原性特徴を有する抗体をもたらす。
【0090】
さらに、in vivoで導入遺伝子から発現される抗体は、組換え技術、例えば、タンパク質凝集およびタンパク質酸化によって生成された抗体と会合した分解生成物を含有する可能性は低い。凝集は、高いタンパク質濃度、製造装置および容器との表面相互作用ならびにある特定のバッファー系を用いる精製のためにタンパク質生成および保存と関連する問題である。凝集を促進するこれらの条件は、遺伝子療法における導入遺伝子発現には存在しない。酸化、例えば、メチオニン、トリプトファンおよびヒスチジン酸化もまた、タンパク質生成および保存と関連しており、ストレスを受ける細胞培養条件、金属および空気接触ならびにバッファーおよび賦形剤中の不純物によって引き起こされる。in vivoで導入遺伝子から発現されるタンパク質はまた、ストレスを受ける条件で酸化し得る。しかし、ヒトおよび多数の他の生物は、抗酸化防御システムを備えており、これは、酸化ストレスを低減するだけでなく、酸化を修復するおよび/または逆転させることもある。したがって、in vivoで産生されるタンパク質は、酸化形態である可能性は低い。凝集および酸化の両方とも、効力、薬物動態(クリアランス)および免疫原性に影響を及ぼす可能性がある。
【0091】
理論に捉われるものではないが、本明細書において提供される方法および組成物は、幾分か以下の原理に基づいている:
(i)ヒト網膜細胞は、グリコシル化およびチロシン-O-硫酸化、網膜細胞におけるロバストなプロセスを含む、分泌されたタンパク質の翻訳後プロセシングの細胞機構を有する分泌細胞である。(ヒト網膜細胞によって行われる翻訳後修飾については、例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、網膜細胞による糖タンパク質の生成を報告するWang et al., 2013, Analytical Biochem. 427: 20-28およびAdamis et al., 1993, BBRC 193: 631-638ならびに網膜細胞によって分泌されたチロシン硫酸化糖タンパク質の生成を報告するKanan et al., 2009, Exp. Eye Res. 89: 559-567およびKanan & Al-Ubaidi, 2015, Exp. Eye Res. 133: 126-131を参照されたい)。
(ii)最先端の理解に反して、抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブ(および全長抗VEGF mAbのFabドメイン、例えば、ベバシズマブ)は、実際にN結合型グリコシル化部位を有する。例えば、ラニビズマブのCHドメイン(TVSWN165SGAL)中およびCLドメイン(QSGN158SQE)中の非コンセンサスアスパラギナル(asparaginal)(「N」)グリコシル化部位ならびにVHドメイン(Q115GT)中およびVLドメイン(TFQ100GT)中のグリコシル化部位であるグルタミン(「Q」)残基(およびベバシズマブのFab中の対応する部位)を同定する図1を参照されたい(抗体中のN結合型グリコシル化部位の同定については、例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Valliere-Douglass et al., 2009, J. Biol. Chem. 284: 32493-32506およびValliere-Douglass et al., 2010, J. Biol. Chem. 285: 16012-16022を参照されたい)。
(iii)このような非標準部位は普通、抗体集団の低レベルグリコシル化(例えば、約1~5%)をもたらすが、機能的利点は、眼などの免疫特権を有する臓器では大きい場合がある(例えば、van de Bovenkamp et al., 2016, J. Immunol. 196:1435-1441を参照されたい)。例えば、Fabグリコシル化は、抗体の安定性、半減期および結合特徴に影響を及ぼし得る。抗体のその標的に対する親和性に対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)または表面プラズモン共鳴(SPR)を使用できる。抗体の半減期に対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術を、例えば、放射標識された抗体が投与されている対象中の血液または臓器(例えば、眼)における放射能のレベルの測定によって使用できる。抗体の安定性、例えば、凝集またはタンパク質アンフォールディングのレベルに対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、例えば、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、キャピラリー電気泳動、質量分析または濁度測定を使用できる。本明細書において提供される、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi、導入遺伝子は、非標準部位で0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上グリコシル化されているFabの生成をもたらす。ある特定の実施形態では、Fabの集団から0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上のFabが、非標準部位でグリコシル化されている。ある特定の実施形態では、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上の非標準部位が、グリコシル化されている。ある特定の実施形態では、これらの非標準部位でのFabのグリコシル化が、HEK293細胞において産生されたFabにおけるこれらの非標準部位のグリコシル化の量よりも25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%またはそれより多い。
(iv)グリコシル化部位に加えて、抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブ(およびベバシズマブのFab)は、CDR中またはその付近にチロシン(「Y」)硫酸化部位を含有する、ラニビズマブのVH(EDTAVY9495)およびVL(EDFATY86)ドメイン中のチロシン-O-硫酸化部位(およびベバシズマブのFab中の対応する部位)を同定する図1を参照されたい。(例えば、タンパク質チロシン硫酸化に付されるチロシン残基の周囲のアミノ酸の分析については、その全体が参照により本明細書に組み込まれるYang et al., 2015, Molecules 20:2138-2164、特に2154頁を参照されたい。「ルール」は以下のとおりにまとめることができる:Yの+5~-5位置以内にEまたはDを有するY残基であって、Yの-1位は、中性または酸性の荷電アミノ酸であるが、塩基性アミノ酸、例えば、硫酸化を無効にするR、KまたはHではない)。ヒトIgG抗体は、いくつかの他の翻訳後修飾、例えば、N末端修飾、C末端修飾、アミノ酸残基の分解または酸化、システイン関連バリアントおよび糖化を示し得る(例えば、Liu et al., 2014, mAbs 6(5):1145-1154を参照されたい)。
(v)ヒト網膜細胞による抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブまたはベバシズマブのFab断片のグリコシル化は、グリカンの付加をもたらし、これは、導入遺伝子産物の安定性、半減期を改善し、不要な凝集および/または免疫原性を低減することができる(Fabグリコシル化の新たに出現した重要性の概要については、例えば、Bovenkamp et al., 2016, J. Immunol. 196: 1435-1441を参照されたい)。重要なことに、本明細書において提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに付加できるグリカンは、2,6-シアル酸を含有する高度にプロセシングされた複合型二分岐Nグリカン(例えば、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに組み込むことができるグリカンを表す図2を参照されたい)および二分GlcNAcであるが、NGNA(N-グリコリルノイラミン酸、Neu5Gc)ではない。このようなグリカンは、ラニビズマブ中(大腸菌で作製され、全くグリコシル化されていない)に、またはベバシズマブ中(この翻訳後修飾を行うために必要な2,6-シアリルトランスフェラーゼを有さないCHO細胞で作製され、CHO細胞は二分GlcNAcも産生しないが、Neu5Ac(NANA)の代わりに、ヒトにとって通常ではない(免疫原性である可能性がある)シアル酸としてNeu5Gc(NGNA)を付加する)に存在しない。例えば、Dumont et al., 2015, Crit. Rev. Biotechnol.(アーリーオンライン、公開されたオンライン2015年9月18日、1~13頁のp.5)を参照されたい。さらに、CHO細胞はまた、ほとんどの個体中に存在する抗α-Gal抗体と反応し、高濃度では、アナフィラキシーを引き起こす場合がある免疫原性グリカン、α-Gal抗原を産生し得る。例えば、Bosques, 2010, Nat Biotech 28: 1153-1156を参照されたい。本明細書において提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiのヒトグリコシル化パターンは、導入遺伝子産物の免疫原性を低減し、有効性を改善するべきである。
(vi)抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブまたはベバシズマブのFab断片のチロシン硫酸化-ヒト網膜細胞におけるロバストな翻訳後プロセスは、VEGFに対するアビディティーが増大した導入遺伝子産物をもたらす可能性がある。実際、他の標的に対する治療用抗体のFabのチロシン硫酸化は、抗原に対するアビディティーおよび活性を著しく増大すると示されている(例えば、Loos et al., 2015, PNAS 112: 12675-12680およびChoe et al., 2003, Cell 114: 161-170を参照されたい)。このような翻訳後修飾は、ラニビズマブ(大腸菌、チロシン硫酸化のために必要な酵素を有さない宿主において作製される)では存在せず、CHO細胞産物であるベバシズマブでは、多めに見積もっても存在量が少ない。ヒト網膜細胞とは異なり、CHO細胞は、分泌細胞ではなく、翻訳後チロシン硫酸化の制限された能力しか有さない(例えば、Mikkelsen & Ezban, 1991, Biochemistry 30: 1533-1537、特に、1537頁の考察を参照されたい)。
【0092】
前述の理由のために、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの生成は、遺伝子療法によって、例えば、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者(ヒト対象)の眼中の上脈絡膜腔、網膜下腔または強膜の外表面に、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiをコードするウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物を投与して(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)、形質導入された網膜細胞によって産生される、完全ヒト翻訳後修飾、例えば、ヒトグリコシル化、硫酸化導入遺伝子産物を持続的に供給する眼中の持続的なデポーを作出することによって達成される糖尿病性網膜症(DR)の処置のために「バイオベター」分子をもたらすべきである。FabVEGFiのcDNA構築物は、形質導入された網膜細胞による適切な同時翻訳および翻訳後プロセシング(グリコシル化およびタンパク質硫酸化)を確実にするシグナルペプチドを含むべきである。網膜細胞によって使用されるこのようなシグナル配列として、それだけには限らないが、以下を挙げることができる:
・MNFLLSWVHW SLALLLYLHH AKWSQA(VEGF-Aシグナルペプチド)(配列番号5)
・MERAAPSRRV PLPLLLLGGL ALLAAGVDA(フィビュリン-1シグナルペプチド)(配列番号6)
・MAPLRPLLIL ALLAWVALA(ビトロネクチンシグナルペプチド)(配列番号7)
・MRLLAKIICLMLWAICVA(補体H因子シグナルペプチド)(配列番号8)
・MRLLAFLSLL ALVLQETGT(オプチシンシグナルペプチド)(配列番号9)
・MKWVTFISLLFLFSSAYS(アルブミンシグナルペプチド)(配列番号22)
・MAFLWLLSCWALLGTTFG(キモトリプシノーゲンシグナルペプチド)(配列番号23)
・MYRMQLLSCIALILALVTNS(インターロイキン-2シグナルペプチド)(配列番号24)
・MNLLLILTFVAAAVA(トリプシノーゲン-2シグナルペプチド)(配列番号25)。
【0093】
使用できるシグナルペプチドについては、例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Stern et al., 2007, Trends Cell. Mol. Biol., 2:1-17およびDalton & Barton, 2014, Protein Sci, 23: 517-525を参照されたい。
【0094】
遺伝子療法に対する代替の、または追加の処置として、HuPTMFabVEGFi生成物、例えば、HuGlyFabVEGFi糖タンパク質を、組換えDNA技術によってヒト細胞株において生成し、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者に、硝子体内注入によって投与することができる。HuPTMFabVEGFi生成物、例えば、糖タンパク質はまた、糖尿病性網膜症(DR)を有する患者に投与できる。このような組換え糖タンパク質生成のために使用できるヒト細胞株として、それだけには限らないが、2、3例を挙げると、ヒト胎児腎臓293細胞(HEK293)、線維肉腫HT-1080、HKB-11、CAP、HuH-7および網膜細胞株、PER.C6またはRPEが含まれる。(HuPTMFabVEGFi生成物、例えば、HuGlyFabVEGFi糖タンパク質の組換え生成のために使用できるヒト細胞株の概要については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Dumont et al., 2015, Crit. Rev. Biotechnol.(アーリーオンライン、公開されたオンライン2015年9月18日、1~13頁)“Human cell lines for biopharmaceutical manufacturing: history, status, and future perspectives”を参照されたい)。完全グリコシル化、特に、シアリル化およびチロシン硫酸化を確実にするために、宿主細胞を、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(またはα-2,3-およびα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの両方)ならびに/または網膜細胞においてチロシン-O-硫酸化に関与するTPST-1およびTPST-2酵素を同時発現するように操作することによって、生成に使用される細胞株を増強できる。
【0095】
他の利用可能な処置の送達を伴う、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの、眼/網膜への送達の組合せが、本明細書において提供される方法により包含される。追加の処置は、遺伝子療法処置の前、それと同時に、またはその後に投与できる。本明細書において提供される遺伝子療法と組み合わせることができるであろう糖尿病性網膜症(DR)のための利用可能な処置として、それだけには限らないが、レーザー凝固、ベルテポルフィンを用いる光線力学的療法およびそれだけには限らないが、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプトまたはベバシズマブを含む抗VEGF剤を用いる硝子体内(IVT)注入が挙げられる。抗VEGF剤、例えば、生物製剤を用いる追加の処置は、「レスキュー」療法と呼ばれることもある。
【0096】
小分子薬物とは異なり、生物製剤は、普通、異なる効力、薬物動態および安全性プロファイルを有する異なる修飾または形態を有する多数のバリアントの混合物を含む。遺伝子療法またはタンパク質療法アプローチのいずれかで生成されたどの分子も完全にグリコシル化され、硫酸化される必要はない。むしろ、有効性を実証するために、生成された糖タンパク質の集団は、2,6-シアリル化および硫酸化を含む十分なグリコシル化を有するべきである(集団の約1%~約10%)。本明細書において提供される遺伝子療法処置の目的は、最小の介入/侵襲的手順で網膜変性の進行を減速または停止すること、および視力の喪失を減速または防ぐことである。有効性は、BCVA(最高矯正視力)、眼球内圧、スリットランプ検査、間接眼底検査、SD-OCT(SD-光干渉断層撮影)、網膜電図検査(ERG)を測定することによってモニタリングできる。視力喪失、感染、炎症および網膜剥離を含む他の安全性事象の徴候もモニタリングできる。網膜の厚さをモニタリングして、本明細書において提供される処置の有効性を判定できる。いずれか特定の理論に捉われようとは思わないが、網膜の厚さを、臨床読み取り値として使用でき、網膜の厚さの低減が大きいほどまたは網膜の肥厚の前の期間が長いほど、処置はより有効である。網膜の厚さは、例えば、SD-OCTによって決定できる。SD-OCTは、低コヒーレンス干渉法を使用して、目的の物体から反射された後方散乱光のエコー時間遅延と大きさを決定する3次元イメージング技術である。OCTを使用して、3~15μmの軸分解能で組織サンプルの層(例えば、網膜)をスキャンでき、SD-OCTは、軸分解能およびスキャン速度をこれまでの技術の形式を上回って改善する(Schuman, 2008, Trans. Am. Opthamol. Soc. 106:426-458)。網膜機能は、例えば、ERGによって決定できる。ERGは、ヒトにおける使用のためにFDAによって承認された、網膜機能の非侵襲的電気生理学的検査であり、眼の光感受性細胞(桿体および錐体)およびその接続する神経節細胞、特に、フラッシュ刺激に対するその応答を調べる。
【0097】
5.1 N-グリコシル化、チロシン硫酸化およびO-グリコシル化
本明細書において記載される方法において使用されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの抗VEGF抗原結合性断片のアミノ酸配列(一次配列)は、N-グリコシル化またはチロシン硫酸化が起こる少なくとも1つの部位を含む。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片のアミノ酸配列は、少なくとも1つのN-グリコシル化部位および少なくとも1つのチロシン硫酸化部位を含む。このような部位は、以下に詳細に記載される。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片のアミノ酸配列は、少なくとも1つのO-グリコシル化を含み、これは、1つもしくは複数のN-グリコシル化部位および/またはチロシン硫酸化部位に加えて前記アミノ酸配列中に存在し得る。
【0098】
5.1.1 N-グリコシル化
逆グリコシル化部位
標準N-グリコシル化配列は、Asn-X-Ser(またはThr)(ここで、Xは、Proを除く任意のアミノ酸であり得る)であると当技術分野で公知である。しかし、ヒト抗体のアスパラギン(Asn)残基は、逆コンセンサスモチーフ、Ser(またはThr)-X-Asn(ここで、Xは、Proを除く任意のアミノ酸であり得る)の関連でグリコシル化され得ることが最近実証された。Valliere-Douglass et al., 2009, J. Biol. Chem. 284:32493-32506およびValliere-Douglass et al., 2010, J. Biol. Chem. 285:16012-16022を参照されたい。本明細書において開示されるように、最先端の理解に反して、本明細書において記載される方法に従って使用するための抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブは、このような逆コンセンサス配列のうちいくつかを含む。したがって、本明細書において記載される方法は、配列Ser(またはThr)-X-Asn(ここで、Xは、Proを除く任意のアミノ酸であり得る)(本明細書において「逆N-グリコシル化部位」とも呼ばれる)を含む少なくとも1つのN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片の使用を含む。
【0099】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法は、配列Ser(またはThr)-X-Asn(ここで、Xは、Proを除く任意のアミノ酸であり得る)を含む1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多いN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片の使用を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多い逆N-グリコシル化部位ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多い非コンセンサスN-グリコシル化部位(以下に本明細書において定義されるような)を含む抗VEGF抗原結合性断片の使用を含む。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用される1つまたは複数の逆N-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片は、それぞれ配列番号1および2の軽鎖および重鎖を含むラニビズマブである。別の特定の実施形態では、方法において使用される1つまたは複数の逆N-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片は、それぞれ配列番号3および4の軽鎖および重鎖を含むベバシズマブのFabを含む。
【0101】
非コンセンサスグリコシル化部位
逆N-グリコシル化部位に加えて、最近、ヒト抗体のグルタミン(Gln)残基は、非コンセンサスモチーフ、Gln-Gly-Thrの関連でグリコシル化され得ることが実証された。Valliere-Douglass et al., 2010, J. Biol. Chem. 285:16012-16022を参照されたい。驚くべきことに、本明細書において記載される方法に従って使用するための抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブは、このような非コンセンサス配列のうちいくつかを含む。したがって、本明細書において記載される方法は、配列Gln-Gly-Thr(本明細書において「非コンセンサスN-グリコシル化部位」とも呼ばれる)を含む少なくとも1つのN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片の使用を含む。
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法は、配列Gln-Gly-Thrを含む1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多いN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片の使用を含む。
【0102】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用される1つまたは複数の非コンセンサスN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片は、ラニビズマブ(それぞれ配列番号1および2の軽鎖および重鎖を含む)である。別の特定の実施形態では、方法において使用される1つまたは複数の非コンセンサスN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片は、ベバシズマブのFab(それぞれ配列番号3および4の軽鎖および重鎖を含む)を含む。
【0103】
操作されたN-グリコシル化部位
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片をコードする核酸は、普通、HuGlyFabVEGFiと関連するであろうよりも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれよりも多いN-グリコシル化部位(標準N-グリコシル化コンセンサス配列、逆N-グリコシル化部位および非コンセンサスN-グリコシル化部位を含む)を含むように(例えば、非修飾状態の抗VEGF抗原結合性断片と関連しているN-グリコシル化部位の数と比較して)修飾される。具体的な実施形態では、グリコシル化部位の導入は、N-グリコシル化部位(標準N-グリコシル化コンセンサス配列、逆N-グリコシル化部位および非コンセンサスN-グリコシル化部位を含む)の、抗原結合性断片の一次構造中のいずれかの場所への挿入によって、前記導入が、抗原結合性断片のその抗原、VEGFへの結合に影響を及ぼさない限り達成される。グリコシル化部位の導入は、例えば、抗原結合性断片もしくは抗原結合性断片が由来する抗体の一次構造に新規アミノ酸を付加すること(すなわち、グリコシル化部位が全体でまたは一部で付加される)によって、または抗原結合性断片もしくは抗原結合性断片が由来する抗体中の既存のアミノ酸を突然変異して、N-グリコシル化部位を生成すること(すなわち、抗原結合性断片/抗体にアミノ酸が付加されないが、抗原結合性断片/抗体の選択されたアミノ酸が、N-グリコシル化部位を形成するように突然変異される)によって達成できる。当業者ならば、当技術分野で公知のアプローチ、例えば、タンパク質をコードする核酸配列の修飾を含む組換えアプローチを使用してタンパク質のアミノ酸配列を容易に修飾できるということを認識するであろう。
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用される抗VEGF抗原結合性断片は、網膜細胞において発現される場合に、高度グリコシル化され得るように修飾される。その全体が参照により本明細書に組み込まれるCourtois et al., 2016, mAbs 8:99-112を参照されたい。特定の実施形態では、前記抗VEGF抗原結合性断片は、ラニビズマブ(それぞれ配列番号1および2の軽鎖および重鎖を含む)である。別の特定の実施形態では、前記抗VEGF抗原結合性断片は、ベバシズマブのFab(それぞれ配列番号3および4の軽鎖および重鎖を含む)を含む。
【0104】
抗VEGF抗原結合性断片のN-グリコシル化
小分子薬とは異なり、生物製剤は、普通、異なる効力、薬物動態および安全性プロファイルを有する異なる修飾または形態を有する多数のバリアントの混合物を含む。遺伝子療法またはタンパク質療法アプローチのいずれかにおいて生成されるどの分子も完全にグリコシル化され、硫酸化されることは必須ではない。むしろ、生成された糖タンパク質の集団は、有効性を実証するために十分なグリコシル化(2,6-シアリル化を含む)および硫酸化を有するべきである。本明細書において提供される遺伝子療法処置の目的は、最小の介入/侵襲的手順で網膜変性の進行を減速または停止すること、および視力の喪失を減速または防ぐことである。
【0105】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブは、網膜細胞において発現される場合、そのN-グリコシル化部位の100%でグリコシル化される可能性がある。しかし、当業者ならば、グリコシル化の利点が得られるために、抗VEGF抗原結合性断片のすべてのN-グリコシル化部位がN-グリコシル化される必要はないということを理解するであろう。むしろ、グリコシル化の利点は、N-グリコシル化部位のあるパーセンテージのみがグリコシル化される場合および/または発現された抗原結合性断片のあるパーセンテージのみがグリコシル化される場合に実現され得る。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合性断片は、網膜細胞において発現される場合に、その利用可能なN-グリコシル化部位の10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%または90%~100%でグリコシル化される。ある特定の実施形態では、網膜細胞において発現される場合に、本明細書において記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合性断片の10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%または90%~100%が、その利用可能なN-グリコシル化部位の少なくとも1つでグリコシル化される。
【0106】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合性断片中に存在するN-グリコシル化部位の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が、抗VEGF抗原結合性断片が網膜細胞において発現される場合に、N-グリコシル化部位中に存在するAsn残基(または他の関連残基)でグリコシル化される。すなわち、得られたHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%がグリコシル化される。
【0107】
別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合性断片中に存在するN-グリコシル化部位の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が、抗VEGF抗原結合性断片が網膜細胞において発現される場合に、N-グリコシル化部位中に存在するAsn残基(または他の関連残基)に連結された同一の結合されたグリカンでグリコシル化される。すなわち、得られたHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が同一の結合されたグリカンでグリコシル化される。
【0108】
本明細書において記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブが、網膜細胞において発現される場合には、抗原結合性断片のN-グリコシル化部位は、種々の異なるグリカンでグリコシル化され得る。抗原結合性断片のN-グリカンは、当技術分野で特性決定されている。例えば、Bondt et al., 2014, Mol. & Cell. Proteomics 13.11:3029-3039(Fabと会合しているN-グリカンの開示について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)では、Fabと会合しているグリカンが特性決定されており、抗体のFabおよびFc部分は、別個のグリコシル化パターンを含み、Fabグリカンは、ガラクトシル化、シアリル化および二分(例えば、二分GlcNAcを有する)が高度であるが、Fcグリカンに関してはフコシル化が低いことを実証する。Bondtと同様に、Huang et al., 2006, Anal. Biochem. 349:197-207(Fabと会合しているN-グリカンの開示について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって、Fabのほとんどのグリカンがシアリル化されていることがわかった。しかし、Huang(マウス細胞バックグラウンドで産生された)によって調べられた抗体のFabでは、同定されたシアル酸残基(sialic residues)は、N-アセチルノイラミン酸(「Neu5Ac」、主なヒトシアル酸)の代わりにN-グリコリルノイラミン酸(「Neu5Gc」または「NeuGc」)(ヒトにとって自然ではない)である。さらに、Song et al., 2014, Anal. Chem. 86:5661-5666(Fabと会合しているN-グリカンの開示について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)には、市販の抗体と会合しているN-グリカンのライブラリーが記載されている。
【0109】
重要なことに、本明細書において記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブが、ヒト網膜細胞において発現される場合、原核生物の宿主細胞(例えば、大腸菌)または真核生物の宿主細胞(例えば、CHO細胞)におけるin vitro生成の必要性が回避される。代わりに、本明細書において記載される方法(例えば、抗hVEGF抗原結合性断片を発現させるための網膜細胞の使用)の結果として、抗VEGF抗原結合性断片のN-グリコシル化部位は、有利なことに、ヒトの処置と関連しヒトの処置に有益なグリカンで装飾される。このような有利な点は、抗体/抗原結合性断片生成においてCHO細胞または大腸菌が利用される場合には、例えば、CHO細胞は、(1)2,6シアリルトランスフェラーゼを発現せず、したがって、N-グリコシル化の際に2,6シアル酸を付加できない、および(2)Neu5Acの代わりにシアル酸としてNeu5Gcを付加できるために、また大腸菌が、N-グリコシル化のために必要とされる構成成分を天然には含有しないために達成可能ではない。したがって、一実施形態では、本明細書において記載される処置の方法において使用されるHuGlyFabVEGFiを生じさせるために網膜細胞において発現された抗VEGF抗原結合性断片は、ヒト網膜細胞、例えば、網膜色素細胞ではタンパク質がN-グリコシル化される方法でグリコシル化されるが、CHO細胞ではタンパク質がグリコシル化される方法でグリコシル化されない。別の実施形態では、本明細書において記載される処置の方法において使用されるHuGlyFabVEGFiを生じさせるために網膜細胞において発現された抗VEGF抗原結合性断片は、ヒト網膜細胞、例えば、網膜色素細胞ではタンパク質がN-グリコシル化される方法でグリコシル化され、このようなグリコシル化は、原核生物の宿主細胞を使用すると、例えば、大腸菌を使用すると天然には可能ではない。
【0110】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、ヒト抗体のFabと会合している1、2、3、4、5つまたはそれより多い別個のN-グリカンを含む。特定の実施形態では、前記のヒト抗体のFabと会合しているN-グリカンは、Bondt et al., 2014, Mol. & Cell. Proteomics 13.11:3029-3039、Huang et al., 2006, Anal. Biochem. 349:197-207および/またはSong et al., 2014, Anal. Chem. 86:5661-5666に記載されるものである。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含まない。
【0111】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、2,6-連結されたシアル酸を含むグリカンで主にグリコシル化される。ある特定の実施形態では、2,6-連結されたシアル酸を含むHuGlyFabVEGFiは、ポリシアリル化されている、すなわち、1つより多いシアル酸を含有する。ある特定の実施形態では、前記HuGlyFabVEGFiの各N-グリコシル化部位は、2,6-連結されたシアル酸を含むグリカンを含む、すなわち、前記HuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の100%が、2,6-連結されたシアル酸を含むグリカンを含む。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が、2,6-連結されたシアル酸を含むグリカンでグリコシル化されている。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%または90%~99%が、2,6-連結されたシアル酸を含むグリカンでグリコシル化されている。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って網膜細胞において発現された抗原結合性断片の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%(すなわち、HuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブを生じさせる抗原結合性断片)は、2,6-連結されたシアル酸を含むグリカンでグリコシル化されている。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って網膜細胞において発現された抗原結合性断片の少なくとも10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%または90%~99%(すなわち、HuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブを生じさせるFab)は、2,6-連結されたシアル酸を含むグリカンでグリコシル化されている。別の特定の実施形態では、前記シアル酸は、Neu5Acである。このような実施形態によれば、HuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位のあるパーセンテージのみが、2,6シアリル化またはポリシアリル化される場合に、残りのN-グリコシル化は、別個のN-グリカンを含む場合がある、またはN-グリカンを全く含まない(すなわち、非グリコシル化のままである)場合がある。
【0112】
HuGlyFabVEGFiが、2,6ポリシアリル化される場合には、複数のシアル酸残基、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多いシアル酸残基を含む。ある特定の実施形態では、HuGlyFabVEGFiがポリシアリル化される場合には、2~5、5~10、10~20、20~30、30~40または40~50個のシアル酸残基を含む。ある特定の実施形態では、HuGlyFabVEGFiがポリシアリル化される場合には、2,6-連結された(シアル酸)nを含み、nは、1~100の任意の数字であり得る。
【0113】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、二分GlcNAcを含むグリカンで主にグリコシル化されている。ある特定の実施形態では、前記HuGlyFabVEGFiの各N-グリコシル化部位は、二分GlcNAcを含むグリカンを含む、すなわち、前記HuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の100%が、二分GlcNAcを含むグリカンを含む。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が、二分GlcNAcを含むグリカンでグリコシル化されている。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%または90%~99%が、二分GlcNAcを含むグリカンでグリコシル化されている。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って網膜細胞において発現された抗原結合性断片の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%(すなわち、HuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブを生じさせる抗原結合性断片)が、二分GlcNAcを含むグリカンでグリコシル化されている。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って網膜細胞において発現された抗原結合性断片の少なくとも10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%または90%~99%(すなわち、HuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブを生じさせる抗原結合性断片)は、二分GlcNAcを含むグリカンでグリコシル化されている。
【0114】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、高度グリコシル化されている、すなわち、天然に存在するN-グリコシル化部位の結果として生じるN-グリコシル化に加えて、前記HuGlyFabVEGFiは、HuGlyFabVEGFiを生じさせる抗原結合性断片のアミノ酸配列中に存在するように操作されたN-グリコシル化部位にグリカンを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、高度グリコシル化されているが、検出可能なNeuGcおよび/またはα-Gal抗原を含まない。
【0115】
抗原結合性断片を含む抗体のグリコシル化パターンを決定するアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、ヒドラジン分解を使用して、グリカンを分析できる。第1に、ヒドラジンとともにインキュベートすることによって、多糖が、その会合しているタンパク質から放出される(Ludger Liberateヒドラジン分解グリカン放出キット、Oxfordshire、UKを使用できる)。求核試薬ヒドラジンは、多糖と担体タンパク質の間のグリコシド結合を攻撃し、結合されたグリカンの放出を可能にする。この処置の際にN-アセチル基は失われ、再N-アセチル化によって再構築しなければならない。グリカンはまた、グリコシダーゼまたはエンドグリコシダーゼ、例えば、PNGase FおよびEndo Hなどの酵素を使用して放出されることもあり、これは、ヒドラジンよりもきれいに切断し、少ない副反応を伴う。遊離グリカンを炭素カラムで精製し、その後、フルオロフォアである2-アミノベンズアミドを用いて還元末端で標識できる。標識された多糖を、Royle et al, Anal Biochem 2002, 304(1):70-90のHPLCプロトコールに従ってGlycoSep-Nカラム(GL Sciences)で分離できる。得られた蛍光クロマトグラムは、多糖の長さおよび反復単位数を示す。構造情報は、個々のピークを収集することおよびその後、MS/MS分析を実施することによって集めることができる。それによって、反復単位の単糖組成および配列を確認することができ、さらに、多糖組成の均一性において同定できる。MALDI-MS/MSによって低または高分子量の特定のピークを分析し、結果を使用して、グリカン配列を確認できる。クロマトグラム中の各ピークは、ある特定の数の反復単位およびその断片、例えば、糖残基からなるポリマー、例えば、グリカンに対応する。したがって、クロマトグラムによって、ポリマー、例えば、グリカン、長さ分布の測定が可能となる。溶出時間は、ポリマー長の指標であり、一方で蛍光強度は、それぞれのポリマー、例えば、グリカンのモル存在量と相関する。抗原結合性断片と会合しているグリカンを評価するための他の方法として、Bondt et al., 2014, Mol. & Cell. Proteomics 13.11:3029-3039、Huang et al., 2006, Anal. Biochem. 349:197-207および/またはSong et al., 2014, Anal. Chem. 86:5661-5666によって記載されるものが挙げられる。
【0116】
抗体(抗原結合性断片を含む)と会合しているグリカンパターンの均一性または不均一性は、グリカンの長さまたは大きさおよびグリコシル化部位全体に存在するグリカン数の両方と関連するので、当技術分野で公知の方法、例えば、グリカンの長さまたは大きさおよび流体力学半径を測定する方法を使用して評価できる。HPLC、例えば、サイズ排除、順相、逆相および陰イオン交換HPLCならびにキャピラリー電気泳動によって、流体力学半径の測定が可能となる。タンパク質中にグリコシル化部位数が多いほど、少ないグリコシル化部位を有する担体と比較して、流体力学半径のより高い変動につながる。しかし、単一グリカン鎖が分析される場合には、それらは、より制御された長さのためにより均質であり得る。グリカン長は、ヒドラジン分解、SDS PAGEおよびキャピラリーゲル電気泳動によって測定できる。さらに、均一性はまた、ある特定のグリコシル化部位使用パターンが、より広い/より狭い範囲に変化することを意味する場合がある。これらの因子は、グリコペプチドLC-MS/MSによって測定できる。
【0117】
N-グリコシル化の利点
N-グリコシル化は、本明細書において記載される方法において使用されるHuGlyFabVEGFiに多数の利点を付与する。このような利点は、大腸菌はN-グリコシル化に必要な構成成分を天然に有さないので大腸菌における抗原結合性断片の産生によって達成することは不可能である。さらに、一部の利点は、例えば、CHO細胞はある特定のグリカン(例えば、2,6シアル酸および二分GlcNAc)の付加に必要な構成成分を欠くので、またCHO細胞は、ヒトにとって通常ではないグリカン、例えば、Neu5Gcを付加できるので、CHO細胞における抗体産生によって達成することは不可能である。例えば、Song et al., 2014, Anal. Chem. 86:5661-5666を参照されたい。したがって、抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブは、非標準N-グリコシル化部位(逆および非コンセンサスグリコシル化部位の両方を含む)を含むという本明細書において示される発見により、そのグリコシル化(したがって、抗原結合性断片と関連する利点の改善)をもたらす方法で、このような抗VEGF抗原結合性断片を発現する方法が実現された。特に、ヒト網膜細胞における抗VEGF抗原結合性断片の発現は、そうでなければ抗原結合性断片またはその親抗体と会合しないであろう有益なグリカンを含むHuGlyFabVEGFi(例えば、ラニビズマブ)の生成をもたらす。
【0118】
非標準グリコシル化部位は、普通、抗体集団の低レベルグリコシル化(例えば、1~5%)をもたらすが、機能的利点は、免疫特権を有する器官、例えば、眼では大きい場合がある(例えば、van de Bovenkamp et al., 2016, J. Immunol. 196:1435-1441を参照されたい)。例えば、Fabグリコシル化は、抗体の安定性、半減期および結合特徴に影響を及ぼし得る。抗体のその標的に対する親和性に対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)または表面プラズモン共鳴(SPR)を使用できる。抗体の半減期に対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術を、例えば、放射標識された抗体が投与されている対象中の血液または器官(例えば、眼)における放射能のレベルの測定によって使用できる。抗体の安定性、例えば、凝集またはタンパク質アンフォールディングのレベルに対する、Fabグリコシル化の効果を決定するために、当業者に公知の任意の技術、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、例えば、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、キャピラリー電気泳動、質量分析または濁度測定を使用できる。本明細書において提供されるHuGlyFabVEGFi導入遺伝子は、非標準部位で0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上グリコシル化されている抗原結合性断片の生成をもたらす。ある特定の実施形態では、抗原結合性断片の集団から0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上の抗原結合性断片が、非標準部位でグリコシル化されている。ある特定の実施形態では、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%以上の非標準部位が、グリコシル化されている。ある特定の実施形態では、これらの非標準部位での抗原結合性断片のグリコシル化が、HEK293細胞において産生された抗原結合性断片におけるこれらの非標準部位のグリコシル化の量よりも25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%またはそれよりも多い。
【0119】
本明細書において記載される方法において使用されるHuGlyFabVEGFiでのシアル酸の存在は、HuGlyFabVEGFiのクリアランス速度、例えば、硝子体液からのクリアランスの速度に対して影響を及ぼし得る。したがって、HuGlyFabVEGFiのシアル酸パターンを使用して、最適化されたクリアランス速度を有する治療薬を生成できる。抗原結合性断片クリアランス速度を評価する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Huang et al., 2006, Anal. Biochem. 349:197-207を参照されたい。
別の特定の実施形態では、N-グリコシル化によって付与される利点は、凝集の低減である。占有されたN-グリコシル化部位は、凝集傾向のアミノ酸残基をマスクすることができ、その結果、凝集が減少する。このようなN-グリコシル化部位は、本明細書において使用された抗原結合性断片にとって天然である場合も、本明細書において使用される抗原結合性断片に操作される場合もあり、発現される場合、例えば、網膜細胞において発現される場合に凝集しにくいHuGlyFabVEGFiをもたらす。抗体の凝集を評価する方法は、当技術分野で公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるCourtois et al., 2016, mAbs 8:99-112を参照されたい。
【0120】
別の特定の実施形態では、N-グリコシル化によって付与される利点は、免疫原性の低減である。このようなN-グリコシル化部位は、本明細書において使用される抗原結合性断片にとって天然である場合も、本明細書において使用される抗原結合性断片に操作される場合もあり、発現される場合、例えば、網膜細胞において発現される場合に免疫原性になりにくいHuGlyFabVEGFiをもたらす。
別の特定の実施形態では、N-グリコシル化によって付与される利点は、タンパク質安定性である。タンパク質のN-グリコシル化は、それらに安定性を付与すると周知であり、N-グリコシル化に起因するタンパク質安定性を評価する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Sola and Griebenow, 2009, J Pharm Sci., 98(4): 1223-1245を参照されたい。
【0121】
別の特定の実施形態では、N-グリコシル化によって付与される利点は、結合親和性の変更である。抗体の可変ドメイン中のN-グリコシル化部位の存在は、抗体のその抗原に対する親和性を増大し得るということは当技術分野で公知である。例えば、Bovenkamp et al., 2016, J. Immunol. 196:1435-1441を参照されたい。抗体結合親和性を測定するアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、Wright et al., 1991, EMBO J. 10:2717-2723およびLeibiger et al., 1999, Biochem. J. 338:529-538を参照されたい。
【0122】
5.1.2 チロシン硫酸化
チロシン硫酸化は、Yの+5~-5位置内にグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)を有するチロシン(Y)残基で生じ、Yの-1位は、中性または酸性の荷電アミノ酸であるが、塩基性アミノ酸、例えば、硫酸化を無効にするアルギニン(R)、リシン(K)またはヒスチジン(H)ではない。驚くべきことに、本明細書において記載される方法に従って使用するための抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブは、チロシン硫酸化部位を含む(図1を参照されたい)。したがって、本明細書において記載される方法は、少なくとも1つのチロシン硫酸化部位を含む抗VEGF抗原結合性断片、例えば、HuPTMFabVEGFiの使用を含み、このような抗VEGF抗原結合性断片は、網膜細胞において発現される場合、チロシン硫酸化され得る。
【0123】
重要なことに、チロシン硫酸化抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブは、天然に、チロシン硫酸化に必要な酵素を有さない大腸菌においては産生され得ない。さらに、CHO細胞は、チロシン硫酸化について欠損している-それらは分泌細胞ではなく、翻訳後チロシン硫酸化のための制限された能力しか有さない。例えば、Mikkelsen & Ezban, 1991, Biochemistry 30: 1533-1537を参照されたい。有利なことに、本明細書において提供される方法は、分泌性であり、チロシン硫酸化のための能力を有する網膜細胞における抗VEGF抗原結合性断片、例えば、HuPTMFabVEGFi、例えば、ラニビズマブの発現を必要とする。網膜細胞によって分泌されるチロシン硫酸化糖タンパク質の生成を報告するKanan et al., 2009, Exp. Eye Res. 89: 559-567およびKanan & Al-Ubaidi, 2015, Exp. Eye Res. 133: 126-131を参照されたい。
【0124】
チロシン硫酸化は、いくつかの理由のために有利である。例えば、標的に対する治療用抗体の抗原結合性断片のチロシン硫酸化は、抗原に対するアビディティーおよび活性を著しく増大すると示されている。例えば、Loos et al., 2015, PNAS 112: 12675-12680およびChoe et al., 2003, Cell 114: 161-170を参照されたい。チロシン硫酸化を検出するアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、Yang et al., 2015, Molecules 20:2138-2164を参照されたい。
【0125】
5.1.3 O-グリコシル化
O-グリコシル化は、酵素によるセリンまたはトレオニン残基へのN-アセチル-ガラクトサミンの付加を含む。抗体のヒンジ領域中に存在するアミノ酸残基は、O-グリコシル化され得るということが実証された。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合性断片、例えば、ラニビズマブは、そのヒンジ領域のすべてまたは部分を含み、したがって、ヒト網膜細胞において発現される場合にO-グリコシル化されることが可能である。やはり大腸菌はヒトO-グリコシル化において使用されるものと同等の機構を天然に含有しないので(代わりに、大腸菌におけるO-グリコシル化は、細菌が特定のO-グリコシル化機構を含有するように修飾される場合のみであると実証されている。例えば、Faridmoayer et al., 2007, J. Bacteriol. 189:8088-8098を参照されたい。)、O-グリコシル化の可能性は、例えば、大腸菌によって産生される抗原結合性断片と比較して、本明細書において提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに別の有利な点を付与する。O-グリコシル化HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiは、グリカンを有するために、N-グリコシル化HuGlyFabVEGFi(上記で論じられたような)と有利な特徴を共有する。
【0126】
5.2 構築物および製剤
本明細書において提供される方法において使用するために、抗VEGF抗原結合性断片または抗VEGF抗原結合性断片の高度グリコシル化誘導体をコードするウイルスベクターまたは他のDNA発現構築物がある。本明細書において提供されるウイルスベクターおよび他のDNA発現構築物は、導入遺伝子を標的細胞(例えば、網膜色素上皮細胞)に送達するための任意の適した方法を含む。導入遺伝子の送達の手段として、ウイルスベクター、リポソーム、他の脂質含有複合体、他の高分子複合体、合成修飾mRNA、非修飾mRNA、小分子、非生物学的に活性な分子(例えば、金粒子)、重合分子(例えば、デンドリマー)、裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミドまたはエピソームが挙げられる。一部の実施形態では、ベクターは、標的化されるベクター、例えば、網膜色素上皮細胞に標的化されるベクターである。
【0127】
一部の態様では、本開示は、使用するための核酸を提供し、核酸は、CB7プロモーター(ニワトリβ-アクチンプロモーターおよびCMVエンハンサー)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、MMTプロモーター、EF-1アルファプロモーター、UB6プロモーター、ニワトリベータ-アクチンプロモーター、CAGプロモーター、RPE65プロモーターおよびオプシンプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結されたHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiをコードする。特定の実施形態では、HuPTMFabVEGFiは、CB7プロモーターに作動可能に連結される。
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を含む組換えベクターが、本明細書において提供される。核酸は、DNA、RNAまたはDNAおよびRNAの組合せを含み得る。ある特定の実施形態では、DNAは、プロモーター配列、目的の遺伝子(導入遺伝子、例えば、抗VEGF抗原結合性断片)の配列、非翻訳領域および終結配列からなる群から選択される配列のうち1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、目的の遺伝子に作動可能に連結したプロモーターを含む。
ある特定の実施形態では、本明細書において開示される核酸(例えば、ポリヌクレオチド)および核酸配列は、例えば、当業者に公知の任意のコドン最適化技術によってコドン最適化され得る(例えば、Quax et al., 2015, Mol Cell 59:149-161による概説を参照されたい)。
【0128】
特定の実施形態では、本明細書において記載される構築物は、構築物Iであり、構築物Iは、以下の構成成分:(1)発現カセットに隣接するAAV8逆方向末端反復配列、(2)a)CMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターを含むCB7プロモーター、b)ニワトリβ-アクチンイントロンおよびc)ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む制御エレメント、ならびに(3)等量の重鎖および軽鎖ポリペプチドの発現を確実にする、自己切断性フューリン(F)/F2Aリンカーによってわけられた抗VEGF抗原結合性断片の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0129】
別の特定の実施形態では、本明細書において記載される構築物は、構築物IIであり、構築物IIは、以下の構成成分:(1)発現カセットに隣接するAAV2逆方向末端反復配列、(2)a)CMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターを含むCB7プロモーター、b)ニワトリβ-アクチンイントロンおよびc)ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む制御エレメント、ならびに(3)等量の重鎖および軽鎖ポリペプチドの発現を確実にする、自己切断性フューリン(F)/F2Aリンカーによってわけられた抗VEGF抗原結合性断片の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、本明細書において記載される構築物は、図4に例示される。
【0130】
5.2.1 mRNA
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、目的の遺伝子(例えば、導入遺伝子、例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)をコードする修飾されたmRNAである。導入遺伝子を網膜色素上皮細胞に送達するための修飾されたおよび修飾されていないmRNAの合成は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるHansson et al., J. Biol. Chem., 2015, 290(9):5661-5672において教示されている。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片部分をコードする修飾されたmRNAが本明細書において提供される。
【0131】
5.2.2 ウイルスベクター
ウイルスベクターには、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV、例えば、AAV8)、レンチウイルス、ヘルパー依存性アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、日本の血球凝集素ウイルス(HVJ)、アルファウイルス、ワクシニアウイルスおよびレトロウイルスベクターが含まれる。レトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MLV)-およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)-ベースのベクターが含まれる。アルファウイルスベクターには、セムリキ森林ウイルス(SFV)およびシンドビスウイルス(SIN)が含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、組換えウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、それらがヒトにおいて複製に欠陥があるように変更される。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、ハイブリッドベクター、例えば、「ヘルプレス」アデノウイルスベクター中に入れられたAAVベクターである。ある特定の実施形態では、第1のウイルスに由来するウイルスカプシドおよび第2のウイルスに由来するウイルスエンベロープタンパク質を含むウイルスベクターが、本明細書において提供される。具体的な実施形態では、第2のウイルスは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)である。より具体的な実施形態では、エンベロープタンパク質は、VSV-Gタンパク質である。
【0132】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、HIVベースのウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるHIVベースのベクターは、少なくとも2つのポリヌクレオチドを含み、gagおよびpol遺伝子は、HIVゲノムに由来し、env遺伝子は、別のウイルスに由来する。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、単純ヘルペスウイルスベースのウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される単純ヘルペスウイルスベースのベクターは、それらが1つまたは複数の前初期(IE)遺伝子を含まず、それらを無細胞毒性にするように修飾される。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、MLVベースのウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるMLVベースのベクターは、ウイルス遺伝子の代わりに最大8kbの異種DNAを含む。
【0133】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、レンチウイルスベースのウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、ヒトレンチウイルスに由来する。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、非ヒトレンチウイルスに由来する。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、レンチウイルスカプシドにパッケージングされる。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、以下のエレメント:長い末端反復配列、プライマー結合部位、ポリプリン配列(polypurine tract)、att部位およびカプシド形成部位のうち1つまたは複数を含む。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、アルファウイルスベースのウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるアルファウイルスベクターは、組換え、複製欠陥アルファウイルスである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるアルファウイルスベクター中のアルファウイルスレプリコンは、そのビリオン表面に機能的異種リガンドを提示することによって指定の細胞種へ標的化される。
【0134】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、AAVベースのウイルスベクターである。好ましい実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、AAV8ベースのウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるAAV8ベースのウイルスベクターは、網膜細胞に対する指向性を保持する。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるAAVベースのベクターは、AAV rep遺伝子(複製のために必要とされる)および/またはAAV cap遺伝子(カプシドタンパク質の合成のために必要とされる)をコードする。複数のAAV血清型が同定されている。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるAAVベースのベクターは、AAVの1つまたは複数の血清型に由来する構成成分を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるAAVベースのベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11またはAAVrh10のうち1つまたは複数に由来するカプシド構成成分を含む。好ましい実施形態では、本明細書において提供されるAAVベースのベクターは、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11またはAAVrh10血清型のうち1つまたは複数に由来する構成成分を含む。
【0135】
特定の実施形態では、調節エレメントの制御下に、ITRおよびAAV8カプシドタンパク質のアミノ酸配列を有するか、またはAAV8カプシドの生物学的機能を保持しながら、AAV8カプシドタンパク質のアミノ酸配列(配列番号48)に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%もしくは99.9%同一であるウイルスカプシドに隣接して、導入遺伝子の発現のための発現カセットを含むウイルスゲノムを含むAAV8ベクターが提供される。ある特定の実施形態では、コードされるAAV8カプシドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のアミノ酸置換を有し、AAV8カプシドの生物学的機能を保持する配列番号48の配列を有する。図8は、SUBSとラベル付けされた行における比較に基づく、アラインされた配列中のある特定の位置で置換され得る可能性があるアミノ酸を有する異なるAAV血清型のカプシドタンパク質のアミノ酸配列の比較アラインメントを提供する。したがって、具体的な実施形態では、AAV8ベクターは、天然のAAV8配列中のその位置には存在しない、図8のSUBS行で同定される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のアミノ酸置換を有するAAV8カプシドバリアントを含む。
【0136】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用されるAAVは、その全体が参照により本明細書に組み込まれるZinn et al., 2015, Cell Rep. 12(6): 1056-1068に記載されるようなAnc80またはAnc80L65である。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用されるAAVは、以下のアミノ酸挿入:各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,193,956号、同9458517号および同9,587,282号ならびに米国特許出願公開第2016/0376323号に記載されるような、LGETTRPまたはLALGETTRPのうち1つを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用されるAAVは、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,193,956号、同9,458,517号および同9,587,282号ならびに米国特許出願公開第2016/0376323号に記載されるようなAAV.7m8である。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用されるAAVは、米国特許第9,585,971号において開示される任意のAAV、例えば、AAV-PHP.Bである。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用されるAAVは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、以下の特許および特許出願において開示されるAAVである:米国特許第7,906,111号、同8,524,446号、同8,999,678号、同8,628,966号、同8,927,514号、同8,734,809号、同9,284,357号、同9,409,953号、同9,169,299号、同9,193,956号、同9458517号および同9,587,282号、米国特許出願公開第2015/0374803号、同2015/0126588号、同2017/0067908号、同2013/0224836号、同2016/0215024号、同2017/0051257号ならびに国際特許出願公開番号PCT/US2015/034799、PCT/EP2015/053335。
【0137】
AAV8ベースのウイルスベクターが、本明細書において記載される方法のある特定のものにおいて使用される。AAVベースのウイルスベクターの核酸配列ならびに組換えAAVおよびAAVカプシドを作製する方法は、例えば、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,282,199号、米国特許第7,790,449号、米国特許第8,318,480号、米国特許第8,962,332号および国際特許出願公開番号PCT/EP2014/076466において教示されている。一態様では、導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合性断片)をコードするAAV(例えば、AAV8)ベースのウイルスベクターが、本明細書において提供される。具体的な実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片をコードするAAV8ベースのウイルスベクターが、本明細書において提供される。より具体的な実施形態では、ラニビズマブをコードするAAV8ベースのウイルスベクターが、本明細書において提供される。
【0138】
ある特定の実施形態では、一本鎖AAV(ssAAV)が使用され得る(前掲)。ある特定の実施形態では、自己相補的ベクター、例えば、scAAVを使用できる(例えば、各々、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wu, 2007, Human Gene Therapy, 18(2):171-82、McCarty et al, 2001, Gene Therapy, Vol 8, Number 16, Pages 1248-1254および米国特許第6,596,535号、同7,125,717号および同7,456,683号を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用されるウイルスベクターは、アデノウイルスベースのウイルスベクターである。組換えアデノウイルスベクターを使用して、抗VEGF抗原結合性断片において導入できる。組換えアデノウイルスは、E1が欠失しており、E3が欠失しているか、していない、いずれかの欠失された領域中に発現カセットが挿入された第1世代のベクターであり得る。組換えアデノウイルスは、E2およびE4領域の完全または部分欠失を含有する第2世代のベクターであり得る。ヘルパー依存性アデノウイルスは、アデノウイルス逆方向末端反復配列およびパッケージングシグナル(phi)のみを保持する。導入遺伝子は、パッケージングシグナルと3’ITRの間に挿入され、およそ36kbの野生型の大きさに近いゲノムを維持するためにスタッファー配列を有するか、または有さない。アデノウイルスベクターの生成のための例示的プロトコールは、その全体が参照により本明細書に組み込まれるAlba et al., 2005, “Gutless adenovirus: last generation adenovirus for gene therapy,” Gene Therapy 12:S18-S27に見出すことができる。
【0139】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用されるウイルスベクターは、レンチウイルスベースのウイルスベクターである。組換えレンチウイルスベクターを使用して、抗VEGF抗原結合性断片において導入できる。構築物を作製するために4種のプラスミドが使用される:Gag/pol配列含有プラスミド、Rev配列含有プラスミド、エンベロープタンパク質含有プラスミド(すなわち、VSV-G)、ならびにパッケージングエレメントおよび抗VEGF抗原結合性断片遺伝子を有するシスプラスミド。
【0140】
レンチウイルスベクター生成のために、4種のプラスミドを細胞(すなわち、HEK293ベースの細胞)中に同時トランスフェクトし、それによって、中でもポリエチレンイミンまたはリン酸カルシウムをトランスフェクション剤として使用できる。次いで、上清においてレンチウイルスを回収する(レンチウイルスは、活性であるために細胞から出芽する必要があり、そのため、細胞回収は行われる必要がない/行われるべきではない)。上清を濾過し(0.45μm)、次いで、塩化マグネシウムおよびベンゾナーゼを添加する。さらなる下流プロセスは広く変わり得るが、TFFおよびカラムクロマトグラフィーを使用することが最もGMP適合性のあるものである。他のものは、カラムクロマトグラフィーと伴に/伴わずに超遠心分離法を使用する。レンチウイルスベクターの生成のための例示的プロトコールは、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lesch et al., 2011, “Production and purification of lentiviral vector generated in 293T suspension cells with baculoviral vectors,” Gene Therapy 18:531-538およびAusubel et al., 2012, “Production of CGMP-Grade Lentiviral Vectors,” Bioprocess Int. 10(2):32-43に見出すことができる。
【0141】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用するためのベクターは、抗VEGF抗原結合性断片(例えば、ラニビズマブ)をコードするものであり、その結果、関連細胞(例えば、in vivoまたはin vitroでの網膜細胞)中にベクターが導入されると、抗VEGF抗原結合性断片のグリコシル化、またはチロシン硫酸化バリアントが、細胞によって発現される。特定の実施形態では、発現された抗VEGF抗原結合性断片は、上記の節5.1に記載されるようなグリコシル化および/またはチロシン硫酸化パターンを含む。
【0142】
5.2.3 遺伝子発現のプロモーターおよびモディファイヤー
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、遺伝子送達または遺伝子発現を調節する構成成分(例えば、「発現制御エレメント」)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、遺伝子発現を調節する構成成分を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、細胞への結合または標的化に影響を及ぼす構成成分を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、取り込み後の細胞内のポリヌクレオチド(例えば、導入遺伝子)の局在性に影響を及ぼす構成成分を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、例えば、ポリヌクレオチドを取り込んでいる細胞を検出または選択するための検出可能なまたは選択マーカーとして使用できる構成成分を含む。
【0143】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、1つまたは複数のプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。ある特定の実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターは、治療効力を求めて望まれるように導入遺伝子発現をオンおよびオフにすることができるように好ましいものであり得る。このようなプロモーターとして、例えば、低酸素誘導性プロモーターおよび薬物誘導性プロモーター、例えば、ラパマイシンおよび関連薬剤によって誘導されるプロモーターが挙げられる。低酸素誘導性プロモーターには、HIF結合部位を有するプロモーターが含まれる、低酸素誘導性プロモーターの教示については、例えば、各々、参照により本明細書に組み込まれる、Schodel, et al., 2011, Blood 117(23):e207-e217およびKenneth and Rocha, 2008, Biochem J. 414:19-29を参照されたい。さらに、構築物において使用され得る低酸素誘導性プロモーターには、エリスロポエチンプロモーターおよびN-WASPプロモーターが含まれる(低酸素誘導性プロモーターの教示については、両方とも参照により本明細書に組み込まれる、エリスロポエチンプロモーターの開示についてのTsuchiya, 1993, J. Biochem. 113:395およびN-WASPプロモーターの開示についてのSalvi, 2017, Biochemistry and Biophysics Reports 9:13-21を参照されたい)。あるいは、構築物は、薬物誘導性プロモーター、例えば、ラパマイシンおよび関連類似体の投与によって誘導可能なプロモーターを含有し得る(例えば、その薬物誘導性プロモーターの開示について、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開番号WO94/18317、WO96/20951、WO96/41865、WO99/10508、WO99/10510、WO99/36553およびWO99/41258ならびに米国特許番号US7,067,526(ラパマイシン類似体を開示する)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、プロモーターは、低酸素誘導性プロモーターである。ある特定の実施形態では、プロモーターは、低酸素誘導性因子(HIF)結合部位を含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、HIF-1α結合部位を含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、HIF-2α結合部位を含む。ある特定の実施形態では、HIF結合部位は、RCGTGモチーフを含む。HIF結合部位の位置および順序に関する詳細については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるSchodel, et al., 2011, Blood 117(23):e207-e217を参照されたい。ある特定の実施形態では、プロモーターは、HIF転写因子以外の低酸素誘導性転写因子の結合部位を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、低酸素において優先的に翻訳される1つまたは複数のIRES部位を含む。低酸素誘導性遺伝子発現に関する教示およびそれに関与する因子については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kenneth and Rocha, Biochem J., 2008, 414:19-29を参照されたい。
【0144】
ある特定の実施形態では、プロモーターは、CB7プロモーターである(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Dinculescu et al., 2005, Hum Gene Ther 16: 649-663を参照されたい)。一部の実施形態では、CB7プロモーターは、ベクターによって駆動される導入遺伝子の発現を増強する他の発現制御エレメントを含む。ある特定の実施形態では、他の発現制御エレメントは、ニワトリβ-アクチンイントロンおよび/またはウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、TATAボックスを含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、1つまたは複数のエレメントを含む。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のプロモーターエレメントを、互いに反転または移動できる。ある特定の実施形態では、プロモーターのエレメントを、協同的に機能するように配置する。ある特定の実施形態では、プロモーターのエレメントを独立に機能するように配置する。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、ヒトCMV前初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RS)長い末端反復配列、ラットインスリンプロモーターからなる群から選択される1つまたは複数のプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、AAV、MLV、MMTV、SV40、RSV、HIV-1およびHIV-2 LTRからなる群から選択される1つまたは複数の長い末端反復配列(LTR)プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、1つまたは複数の組織特異的プロモーター(例えば、網膜色素上皮細胞特異的プロモーター)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、RPE65プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、VMD2プロモーターを含む。
【0145】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、プロモーター以外の1つまたは複数の調節エレメントを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、エンハンサーを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、レプレッサーを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、イントロンまたはキメライントロンを含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、ポリアデニル化配列を含む。
【0146】
5.2.4 シグナルペプチド
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、タンパク質送達をモジュレートする構成成分を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、1つまたは複数のシグナルペプチドを含む。シグナルペプチドはまた、「リーダー配列」または「リーダーペプチド」と呼ばれることもある。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドによって、導入遺伝子産物(例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)が、細胞において適切なパッケージング(例えば、グリコシル化)を達成することが可能となる。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドによって、導入遺伝子産物(例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)が、細胞において適切な局在性を達成することが可能となる。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドによって、導入遺伝子産物(例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)が、細胞からの分泌を達成することが可能となる。本明細書において提供されるベクターおよび導入遺伝子と関連して使用されるべきシグナルペプチドの例は、表1に見出すことができる。
【0147】
【表1】
【0148】
5.2.5 ポリシストロン性メッセージ-IRESおよびF2Aリンカー
配列内リボソーム進入部位。単一構築物を、切断可能なリンカーまたはIRESによってわけられた重鎖および軽鎖の両方をコードし、その結果、形質導入された細胞から別個の重鎖および軽鎖ポリペプチドが発現されるように操作することができる。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、ポリシストロン性(例えば、バイシストロン性)メッセージを提供する。例えば、ウイルス構築物は、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントによってわけられた重鎖および軽鎖をコードし得る(例えば、バイシストロン性ベクターを作出するためにIRESエレメントの使用によって、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gurtu et al., 1996, Biochem. Biophys. Res. Comm. 229(1):295-8を参照されたい)。IRESエレメントは、リボソームスキャニングモデルを迂回し、内部部位で翻訳を開始する。AAVにおけるIRESの使用は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Furling et al., 2001, Gene Ther 8(11): 854-73に記載されている。ある特定の実施形態では、バイシストロン性メッセージは、中のポリヌクレオチドの大きさが制限されたウイルスベクター内に含有される。ある特定の実施形態では、バイシストロン性メッセージは、AAVウイルスベースのベクター(例えば、AAV8ベースのベクター)内に含有される。
【0149】
フューリン-F2Aリンカー。他の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、自己切断性フューリン/F2A(F/F2A)リンカーなどの切断可能なリンカーによってわけられた重鎖および軽鎖をコードする(各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれるFang et al., 2005, Nature Biotechnology 23: 584-590およびFang, 2007, Mol Ther 15: 1153-9)。
【0150】
重鎖および軽鎖コード配列を分離するために、例えば、フューリン-F2Aリンカーを発現カセット中に組み込むことができ、その結果、構造:
リーダー-重鎖-フューリン部位-F2A部位-リーダー-軽鎖-ポリA
を有する構築物が得られる。
【0151】
アミノ酸配列LLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号26)内のF2A部位部位は、自己プロセシングであり、最後のGとPアミノ酸残基の間で「切断」をもたらす。使用できるであろう追加のリンカーとして、それだけには限らないが、以下が挙げられる:
・T2A:(GSG)EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号27)、
・P2A:(GSG)ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号28)、
・E2A:(GSG)QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号29)、
・F2A:(GSG)VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号30)。
【0152】
リボソームがオープンリーディングフレーム中のF2A配列に遭遇すると、ペプチド結合がスキップされ、その結果、翻訳が終結されるか、または下流配列(軽鎖)の翻訳が継続される。この自己プロセシング配列は、重鎖のC末端の末端に一連の追加のアミノ酸をもたらす。しかし、このような追加のアミノ酸は次いで、F2A部位の直前および重鎖配列の後ろに位置するフューリン部位で宿主細胞フューリンによって切断され、カルボキシペプチダーゼによってさらに切断される。得られた重鎖は、使用されるフューリンリンカーの配列およびリンカーをin vivoで切断するカルボキシペプチダーゼに応じて、C末端に含まれる1、2、3個またはより多くの追加のアミノ酸を有する場合もあり、このような追加のアミノ酸を有さない場合もある。がある(例えば、Fang et al., 17 April 2005, Nature Biotechnol. Advance Online Publication, Fang et al., 2007, Molecular Therapy 15(6):1153-1159, Luke, 2012, Innovations in Biotechnology, Ch. 8, 161-186を参照されたい)。使用できるフューリンリンカーは、一連の4個の塩基性アミノ酸、例えば、RKRR、RRRR、RRKRまたはRKKRを含む。このリンカーがカルボキシペプチダーゼによって切断されると、追加のアミノ酸が残る場合があり、その結果、追加の0、1、2、3または4個のアミノ酸が、重鎖のC末端に残る場合がある、例えば、R、RR、RK、RKR、RRR、RRK、RKK、RKRR、RRRR、RRKRまたはRKKR。ある特定の実施形態では、1つのリンカーがカルボキシペプチダーゼによって切断され、追加のアミノ酸は残らない。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用するための構築物によって生成される抗体、例えば、抗原結合性断片集団の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%または20%またはそれより少ないが、0%より多くは、切断後に重鎖のC末端上に残る1、2、3または4個のアミノ酸を有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用するための構築物によって生成される抗体、例えば、抗原結合性断片集団の0.5~1%、0.5%~2%、0.5%~3%、0.5%~4%、0.5%~5%、0.5%~10%、0.5%~20%、1%~2%、1%~3%、1%~4%、1%~5%、1%~10%、1%~20%、2%~3%、2%~4%、2%~5%、2%~10%、2%~20%、3%~4%、3%~5%、3%~10%、3%~20%、4%~5%、4%~10%、4%~20%、5%~10%、5%~20%または10%~20%は、切断後に重鎖のC末端上に残る1、2、3または4個のアミノ酸を有する。ある特定の実施形態では、フューリンリンカーは、配列R-X-K/R-Rを有し、その結果、重鎖のC末端の追加のアミノ酸は、R、RX、RXK、RXR、RXKRまたはRXRRである(ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、アラニン(A)である)。ある特定の実施形態では、追加のアミノ酸が重鎖のC末端に残らない場合がある。
【0153】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される発現カセットは、中のポリヌクレオチドの大きさが制限されたウイルスベクター内に含有される。ある特定の実施形態では、発現カセットは、AAVウイルスベースのベクター(例えば、AAV8ベースのベクター)内に含有される。
【0154】
5.2.6 非翻訳領域
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、1つまたは複数の非翻訳領域(UTR)、例えば、3’および/または5’UTRを含む。ある特定の実施形態では、UTRは、所望のレベルのタンパク質発現のために最適化される。ある特定の実施形態では、UTRは、導入遺伝子のmRNA半減期のために最適化される。ある特定の実施形態では、UTRは、導入遺伝子のmRNAの安定性のために最適化される。ある特定の実施形態では、UTRは、導入遺伝子のmRNAの二次構造のために最適化される。
【0155】
5.2.7 逆方向末端反復配列
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、1つまたは複数の逆方向末端反復配列(ITR)配列を含む。ITR配列を、ウイルスベクターのビリオン中へ組換え遺伝子発現カセットをパッケージングするために使用できる。ある特定の実施形態では、ITRは、AAV、例えば、AAV8またはAAV2に由来する(例えば、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Yan et al., 2005, J. Virol., 79(1):364-379、米国特許第7,282,199号、米国特許第7,790,449号、米国特許第8,318,480号、米国特許第8,962,332号および国際特許出願番号PCT/EP2014/076466を参照されたい)。
【0156】
5.2.8 導入遺伝子
導入遺伝子によってコードされるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiとして、それだけには限らないが、VEGFに結合する抗体の抗原結合性断片、例えば、ベバシズマブ、抗VEGF Fab部分、例えば、ラニビズマブ、またはFabドメインに追加のグリコシル化部位を含有するように操作されたこのようなベバシズマブもしくはラニビズマブのFab部分を挙げることができる(例えば、全長抗体のFabドメインで高度グリコシル化されているベバシズマブの誘導体の説明については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Courtois et al., 2016, mAbs 8: 99-112を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子をコードする。具体的な実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、網膜細胞における発現のために適当な発現制御エレメントによって制御される。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、軽鎖および重鎖cDNA配列のベバシズマブFab部分を含む(それぞれ、配列番号10および11)。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、ラニビズマブ軽鎖および重鎖cDNA配列を含む(それぞれ、配列番号12および13)。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、それぞれ配列番号3および4の軽鎖および重鎖を含むベバシズマブFabをコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号3で示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号4で示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号3で示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号4で示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、それぞれ、配列番号1および2の軽鎖および重鎖を含む高度グリコシル化ラニビズマブをコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号1で示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号2で示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号1で示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2で示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合性断片をコードする。
【0157】
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、以下の突然変異:L118N(重鎖)、E195N(軽鎖)またはQ160NもしくはQ160S(軽鎖)のうち1つまたは複数を有する配列番号3および4の軽鎖および重鎖を含む高度グリコシル化ベバシズマブFabをコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、以下の突然変異:L118N(重鎖)、E195N(軽鎖)またはQ160NもしくはQ160S(軽鎖)のうち1つまたは複数を有する配列番号1および2の軽鎖および重鎖を含む高度グリコシル化ラニビズマブをコードする。抗原結合性断片導入遺伝子cDNAの配列は、例えば、表2に見出すことができる。ある特定の実施形態では、抗原結合性断片導入遺伝子cDNAの配列は、配列番号10および11または配列番号12および13のシグナル配列を、表1に列挙された1つまたは複数のシグナル配列と置き換えることによって得られる。
【0158】
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、抗原結合性断片をコードし、6つのベバシズマブCDRのヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、抗原結合性断片をコードし、6つのラニビズマブCDRのヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、ラニビズマブの重鎖CDR1~3(配列番号20、18および21)を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、ラニビズマブの軽鎖CDR1~3(配列番号14~16)を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、ベバシズマブの重鎖CDR1~3(配列番号17~19)を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、ベバシズマブの軽鎖CDR1~3(配列番号14~16)を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、ラニビズマブの重鎖CDR1~3(配列番号20、18および21)を含む重鎖可変領域およびラニビズマブの軽鎖CDR1~3(配列番号14~16)を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードする。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、ベバシズマブの重鎖CDR1~3(配列番号17~19)を含む重鎖可変領域およびベバシズマブの軽鎖CDR1~3(配列番号14~16)を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードする。
【0159】
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0160】
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわちWINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわちGYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0161】
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3を含む軽鎖可変領域ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持せず、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわちGYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3を含む軽鎖可変領域および配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、(1)重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持せず、(2)軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわちSASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗VEGF抗原結合性断片導入遺伝子は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3を含む軽鎖可変領域および配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合性断片をコードし、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されておらず、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号20の重鎖CDR1を含み、(1)重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されておらず、(2)軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0162】
ある特定の態様では、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む抗VEGF抗原結合性断片ならびにこのような抗原-VEGF抗原結合性断片をコードする導入遺伝子も本明細書において提供され、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。本明細書において提供される抗VEGF抗原結合性断片および導入遺伝子は、本明細書において記載される本発明に従って任意の方法で使用できる。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0163】
ある特定の態様では、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む抗VEGF抗原結合性断片およびこのような抗原-VEGF抗原結合性断片をコードする導入遺伝子も本明細書において提供され、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわちGYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されていない。本明細書において提供される抗VEGF抗原結合性断片および導入遺伝子は、本明細書において記載される本発明に従って任意の方法で使用できる。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0164】
ある特定の態様では、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含む抗VEGF抗原結合性断片ならびにこのような抗原-VEGF抗原結合性断片をコードする導入遺伝子も本明細書において提供され、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持せず、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、(1)重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持せず、(2)軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持しない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されておらず、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。特定の実施形態では、抗原結合性断片は、配列番号14~16の軽鎖CDR1~3ならびに配列番号20、18および21の重鎖CDR1~3を含み、(1)重鎖CDR1の第9のアミノ酸残基(すなわち、GYDFTHYGMN(配列番号20)中のM)は、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR2の第3のアミノ酸残基(すなわち、WINTYTGEPTYAADFKR(配列番号18)中のNは、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわちGYDFTHYGMN(配列番号20)中のN)は、アセチル化されておらず、(2)軽鎖CDR1の第8および第11のアミノ酸残基(すなわち、SASQDISNYLN(配列番号14)中の2つのNは各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化およびピログルタミル化(ピロGlu)のうち1つまたは複数を保持し、軽鎖CDR3の第2のアミノ酸残基(すなわち、QQYSTVPWTF(配列番号16)中の第2のQ)は、アセチル化されていない。本明細書において提供される抗VEGF抗原結合性断片および導入遺伝子は、本明細書において記載される本発明に従って任意の方法で使用できる。好ましい実施形態では、本明細書において記載される化学修飾または化学修飾の欠如(場合によっては)は、質量分析によって決定される。
【0165】
【表2】


【0166】
5.2.9 構築物
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、以下の順序で以下の要素を含む:a)構成的または低酸素誘導性プロモーター配列、およびb)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)をコードする配列。ある特定の実施形態では、導入遺伝子をコードする配列は、IRESエレメントによってわけられる複数のORFを含む。ある特定の実施形態では、ORFは、抗VEGF抗原結合性断片の重鎖および軽鎖ドメインをコードする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子をコードする配列は、F/F2A配列によってわけられた1つのORF中に複数のサブユニットを含む。ある特定の実施形態では、導入遺伝子を含む配列は、F/F2A配列によってわけられた抗VEGF抗原結合性断片の重鎖および軽鎖ドメインをコードする。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、以下の順序で以下の要素:a)構成的または低酸素誘導性プロモーター配列、およびb)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)をコードする配列を含み、導入遺伝子は、VEGFのシグナルペプチド(配列番号5)を含み、導入遺伝子は、IRESエレメントによってわけられた軽鎖および重鎖配列をコードする。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、以下の順序で以下の要素:a)構成的または低酸素誘導性プロモーター配列、およびb)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)をコードする配列を含み、導入遺伝子は、VEGFのシグナルペプチド(配列番号5)を含み、導入遺伝子は、切断可能なF/F2A配列によってわけられた軽鎖および重鎖配列をコードする。
【0167】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、以下の順序で以下の要素:a)第1のITR配列、b)第1のリンカー配列、c)構成的または低酸素誘導性プロモーター配列、d)第2のリンカー配列、e)イントロン配列、f)第3のリンカー配列、g)第1のUTR配列、h)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)をコードする配列、i)第2のUTR配列、j)第4のリンカー配列、k)ポリA配列、l)第5のリンカー配列、およびm)第2のITR配列を含む。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるウイルスベクターは、以下の順序で以下の要素:a)第1のITR配列、b)第1のリンカー配列、c)構成的または低酸素誘導性プロモーター配列、d)第2のリンカー配列、e)イントロン配列、f)第3のリンカー配列、g)第1のUTR配列、h)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合性断片部分)をコードする配列、i)第2のUTR配列、j)第4のリンカー配列、k)ポリA配列、l)第5のリンカー配列、およびm)第2のITR配列を含み、導入遺伝子は、VEGFのシグナルペプチド(配列番号5)を含み、導入遺伝子は、切断可能なF/F2A配列によってわけられた軽鎖および重鎖配列をコードする。
【0168】
特定の実施形態では、本明細書において記載される構築物は、構築物Iであり、構築物Iは、以下の構成成分:(1)発現カセットに隣接するAAV8逆方向末端反復配列、(2)a)CMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターを含むCB7プロモーター、b)ニワトリβ-アクチンイントロンおよびc)ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む制御エレメント、ならびに(3)等量の重鎖および軽鎖ポリペプチドの発現を確実にする、自己切断性フューリン(F)/F2Aリンカーによってわけられた抗VEGF抗原結合性断片の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0169】
別の特定の実施形態では、本明細書において記載される構築物は、構築物IIであり、構築物IIは、以下の構成成分:(1)発現カセットに隣接するAAV2逆方向末端反復配列、(2)a)CMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターを含むCB7プロモーター、b)ニワトリβ-アクチンイントロンおよびc)ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む制御エレメント、ならびに(3)等量の重鎖および軽鎖ポリペプチドの発現を確実にする、自己切断性フューリン(F)/F2Aリンカーによってわけられた抗VEGF抗原結合性断片の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0170】
5.2.10 ベクターの製造および試験
本明細書において提供されるウイルスベクターは、宿主細胞を使用して製造できる。本明細書において提供されるウイルスベクターは、哺乳類宿主細胞、例えば、A549、WEHI、10T1/2、BHK、MDCK、COS1、COS7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、W138、HeLa、293、Saos、C2C12、L、HT1080、HepG2、一次線維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞を使用して製造できる。本明細書において提供されるウイルスベクターは、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギまたはハムスターに由来する宿主細胞を使用して製造できる。
宿主細胞は、導入遺伝子をコードする配列および関連する要素(すなわち、ベクターゲノム)ならびに宿主細胞においてウイルスを産生する手段、例えば、複製およびカプシド遺伝子(例えば、AAVのrepおよびcap遺伝子)を用いて安定して形質転換される。AAV8カプシドを有する組換えAAVベクターを生成する方法については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,282,199号の発明を実施するための形態の節IVを参照されたい。前記ベクターのゲノムコピー力価は、例えば、TAQMAN(登録商標)分析によって決定できる。ビリオンは、例えば、CsCl2沈降によって回収できる。
【0171】
in vitroアッセイ、例えば、細胞培養アッセイを使用して、本明細書において記載されるベクターからの導入遺伝子発現を測定できる、したがって、例えば、ベクターの効力を示すことができる。例えば、ヒト胚性網膜細胞に由来する細胞株であるPER.C6(登録商標)細胞株(Lonza)または網膜色素上皮細胞、例えば、網膜色素上皮細胞株hTERT RPE-1(ATCC(登録商標)から入手可能)を使用して、導入遺伝子発現を評価できる。ひとたび発現されると、HuGlyFabVEGFiと関連するグリコシル化およびチロシン硫酸化パターンの決定を含む、発現された生成物(すなわち、HuGlyFabVEGFi)の特徴を決定できる。グリコシル化パターンおよびそれを決定する方法は、節5.1.1に論じられており、一方でチロシン硫酸化パターンおよびそれを決定する方法は、節5.1.2に論じられている。さらに、細胞によって発現されたHuGlyFabVEGFiのグリコシル化/硫酸化に起因する利点を、当技術分野で公知のアッセイ、例えば、節5.1.1および5.1.2に記載される方法を使用して決定できる。
【0172】
5.2.11 組成物
本明細書において記載される導入遺伝子をコードするベクターおよび適した担体を含む組成物が記載されている。適した担体(例えば、上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、硝子体内、結膜下および/または網膜内投与のための)は、当業者によって容易に選択される。
ある特定の実施形態では、遺伝子療法構築物は、製剤化バッファー中のAAVベクター有効成分の凍結滅菌、単回使用溶液として供給される。特定の実施形態では、網膜下投与に適した医薬組成物は、生理学的に適合する水性バッファー、界面活性剤および任意選択の賦形剤を含む製剤化バッファー中の組換え(例えば、rHuGlyFabVEGFi)ベクターの懸濁液を含む。特定の実施形態では、遺伝子療法構築物は、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水および0.001%Pluronic F68、pH=7.4中で製剤化される。
【0173】
5.3 遺伝子療法
眼疾患、特に、新血管新生の増大によって引き起こされた眼疾患を有するヒト対象への導入遺伝子構築物の治療上有効な量の投与のための方法が記載されている。より詳しくは、特に、上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、硝子体内、結膜下および/または網膜内投与(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順による)のための、糖尿病性網膜症(DR)を有する患者への導入遺伝子構築物の治療上有効な量の投与のための方法が記載されている。
糖尿病性網膜症を有すると診断された患者への導入遺伝子構築物の治療上有効な量の上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、硝子体内、結膜下および/または網膜内投与(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入または上脈絡膜腔を経る網膜下投与による)のための方法が記載されている。
また、導入遺伝子構築物の治療上有効な量の上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、硝子体内、結膜下および/または網膜内のための方法(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順による)および網膜色素上皮への導入遺伝子構築物の治療上有効な量の投与の方法も本明細書において提供される。
【0174】
5.3.1 標的患者集団
本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、任意の哺乳動物、例えば、げっ歯類、飼育動物、例えば、イヌもしくはネコまたは霊長類、例えば、非ヒト霊長類であり得る。好ましい実施形態では、対象はヒトである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、眼疾患、特に、新血管新生の増大によって引き起こされた眼疾患を有すると診断された患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、糖尿病性網膜症(DR)を有すると診断された患者へ投与するためである。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、重症糖尿病性網膜症を有すると診断された患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、減弱した糖尿病性網膜症を有すると診断された患者へ投与するためである。
【0175】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、中程度~重症NPDRを有すると診断された患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、重症NPDRを有すると診断された患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、軽度PDRを有すると診断された患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、中程度PDRを有すると診断された患者へ投与するためである。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、ETDRS-DRSSレベルが47、53、61または65である患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、ETDRS-DRSSレベルが、レベル47である患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、ETDRS-DRSSレベルがレベル53である患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、ETDRS-DRSSレベルがレベル61である患者へ投与するためである。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、ETDRS-DRSSレベルがレベル65である患者へ投与するためである。
【0176】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、女性である。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、男性である。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、任意の年齢であり得る。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、18歳以上である。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、18~89歳の間である。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、1型糖尿病に続発するDRを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、2型糖尿病に続発するDRを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、1型または2型糖尿病に続発するDRを有する18歳以上である。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、1型または2型糖尿病に続発するDRを有する18~89歳の間である。
【0177】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、妊娠の可能性のない女性である。
具体的な実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、有水晶体である。他の具体的な実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、偽水晶体である。
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、ヘモグロビンA1c≦10%(臨床検査評価によって確認される)を有する。
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って処置される対象は、>69ETDRS文字(近似スネレン等価物20/40以上)の処置されるべき眼における最高矯正視力(BCVA)を有する。
【0178】
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症(DR)を有する対象を処置する方法であって、対象がDRを有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル47、53、61または65である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
【0179】
一部の実施形態では、方法は、対象から生体サンプルを得ることまたは得られた生体サンプルを有することおよび対象が10%以下のヘモグロビンA1cの血清レベルを有することを決定することをさらに含む。
一部の実施形態では、方法は、対象において網膜症の増殖性段階への進行を妨げる。
【0180】
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症を有する対象を処置する方法であって、対象が、中程度~重症の非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)を有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル47である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症を有する対象を処置する方法であって、対象が、重症NPDRを有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル53である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
【0181】
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症を有する対象を処置する方法であって、対象が、軽度の増殖性糖尿病性網膜症(PDR)を有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル61である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
ある特定の実施形態では、糖尿病性網膜症を有する対象を処置する方法であって、対象が、中程度のPDRを有する少なくとも1つの眼を有し、以下のステップ:
(1)対象のETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルを決定するステップ、および
(2)対象のETDRS-DRSSがレベル65である場合に、ヒト対象の眼中の網膜下腔または上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
【0182】
ETDRS-DR重症度スケール(DRSS)レベルは、標準の4広視野デジタル立体眼底写真または同等のものを使用して決定され、それらはまた、Li et al., 2010, Retina Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010;51:3184-3192または類似の方法に従って、モノスコピックまたは立体写真によって測定される場合もある。
【0183】
5.3.2 投与量および投与様式
組換えベクターの治療上有効な用量は、≧0.1mL~≦0.5mLの範囲の容量で、好ましくは、0.1~0.30mL(100~300μl)で、最も好ましくは、0.25mL(250μl)の容量で網膜下および/または網膜内に(例えば、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入によって、または上脈絡膜腔を経て)投与されるべきである。組換えベクターの治療上有効な用量は、上脈絡膜に(例えば、上脈絡膜注入によって)、100μl以下の容量で、例えば、50~100μlの容量で投与されるべきである。組換えベクターの治療上有効な用量は、強膜の外表面に、500μl以下の容量で、例えば、10~20μl、20~50μl、50~100μl、100~200μl、200~300μl、300~400μlまたは400~500μlの容量で投与されるべきである。組換えベクターの治療上有効な用量はまた、強膜の外表面に、500μl以下の容量、例えば、10~20μl、20~50μl、50~100μl、100~200μl、200~300μl、300~400μlまたは400~500μlの容量の2回以上の注入で投与される場合もある。2回以上の注入は、同一訪問中に投与されてもよい。
【0184】
ある特定の実施形態では、組換えベクターは、上脈絡膜に(例えば、上脈絡膜注入によって)投与される。特定の実施形態では、上脈絡(suprachorodial)投与(例えば、上脈絡膜腔への注入)は、上脈絡膜薬物送達デバイスを使用して実施される。上脈絡膜薬物送達デバイスは、眼の上脈絡膜腔への薬物の投与を含む上脈絡膜投与手順において使用されることが多い(例えば、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23、Goldstein, 2014, Retina Today 9(5): 82-87; Baldassarre et al., 2017を参照されたい)。本明細書において記載される本発明に従って網膜下腔中に発現ベクターを蓄積するために使用できる上脈絡膜薬物送達デバイスとして、それだけには限らないが、Clearside(登録商標)Biomedical、Inc.によって製造された上脈絡膜薬物送達デバイス(例えば、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23を参照されたい)およびMedOne上脈絡膜カテーテルが挙げられる。
【0185】
特定の実施形態では、上脈絡膜薬物送達デバイスは、1ミリメートルの30ゲージニードルを備えたシリンジである(図5を参照されたい)。このデバイスを使用する注入の際、ニードルが強膜の基部に貫通し、薬物を含有する流体が上脈絡膜腔に入り、上脈絡膜腔の拡大につながる。結果として、注入の際に触覚的および視覚的フィードバックがある。注入後、流体は後側に流れ、脈絡膜および網膜において優位に吸収される。これは、すべての網膜細胞層および脈絡膜細胞からの導入遺伝子タンパク質の生成をもたらす。この種のデバイスおよび手順を使用することで、合併症のリスクの低い迅速で、容易なオフィス内手順が可能となる。上脈絡膜腔中に100μlの最大容量を注入できる。
【0186】
ある特定の実施形態では、組換えベクターは、網膜下薬物送達デバイスの使用によって上脈絡膜腔を経て網膜下に投与される。ある特定の実施形態では、網膜下薬物送達デバイスは、外科手技の際に周囲の上脈絡膜腔を通って眼の裏側へと挿入し、トンネルを形成して網膜下腔へ薬物を送達するカテーテルである(図6を参照されたい)。この手順によって、硝子体が無傷のままであることが可能となり、したがって、合併症のリスクがより少なくなり(遺伝子療法の退出ならびに網膜剥離および黄斑円孔などの合併症の少ないリスク)、硝子体切除術を用いない場合、結果として生じるブレブがより拡散性に広がる可能性があり、網膜の表面積のより多くがより少ない容量で形質導入されることが可能となる。この手順後に誘導される白内障のリスクは最小化され、これはより若い患者にとって望ましいものである。さらに、この手順は、中心窩下にブレブを標準的な経硝子体アプローチよりもより安全に送達でき、これは、形質導入の標的細胞が黄斑にある、中心視野に影響を及ぼす遺伝性網膜疾患を有する患者にとって望ましいものである。この手順はまた、他の送達経路(例えば、上脈絡膜および硝子体内)に影響を及ぼし得る全身循環中に存在するAAVに対する中和抗体(Nab)を有する患者にとっても都合がよい。さらに、この方法は、標準的な経硝子体アプローチよりも網膜切開術部位からの退出が少ないブレブを作出すると示した。このような目的のために、元々Janssen Pharmaceuticals、Inc.によって、現在はOrbit Biomedical Inc.によって製造される網膜下薬物送達デバイス(例えば、Subretinal Delivery of Cells via the Suprachoroidal Space: Janssen Trial. In: Schwartz et al. (eds) Cellular Therapies for Retinal Disease, Springer, Cham、国際特許出願公開番号WO2016/040635を参照されたい)を使用できる。
【0187】
ある特定の実施形態では、組換えベクターは、強膜の外表面に(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスの使用によって)投与される。特定の実施形態では、強膜の外表面への投与は、後強膜近傍デポー手順を使用して実施され、これは、先端が鈍い湾曲したカニューレに薬物を引き込み、眼球を穿刺することなく強膜の外表面と直接接触して送達することを含む。特に、裸の強膜へ小さな切開を作出した後、カニューレの先端を挿入する(図7Aを参照されたい)。カニューレシャフトの曲がった部分を挿入し、カニューレの先端を強膜表面に直接並置して維持する(図7B~7Dを参照されたい)。カニューレを完全に挿入した後(図7D)、カニューレシャフトの上部および側部に沿って滅菌綿棒で穏やかな圧力を維持しながら薬物をゆっくりと注入する。この送達方法によって、眼球内感染および網膜剥離、治療薬を目に直接的に注入することと一般に関連する副作用のリスクが避けられる。
【0188】
硝子体液において少なくとも0.330μg/mLの、または眼房水(眼の前房)において0.110μg/mLのCminの導入遺伝子産物の濃度を3ヶ月間維持する用量が望まれ、その後、1.70~6.60μg/mLの範囲の導入遺伝子産物の硝子体のCmin濃度および/または0.567~2.20μg/mLの範囲の眼房Cmin濃度が維持されるべきである。しかし、導入遺伝子産物は、持続的に産生される(構成的プロモーターの制御下で、または低酸素誘導性プロモーターを使用する場合には低酸素条件によって誘導されて)ので、低濃度の維持が有効であり得る。硝子体液濃度は、硝子体液または前房から収集された流体の患者サンプルにおいて直接測定でき、または導入遺伝子産物の患者の血清濃度を測定することによって推定および/またはモニタリングできる-導入遺伝子産物に対する全身対硝子体曝露の比は、約1:90,000である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Xu L, et al., 2013, Invest. Opthal. Vis. Sci. 54: 1616-1624において1621頁および1623頁の表5で報告されたラニビズマブの硝子体液および血清濃度を参照されたい)。
【0189】
ある特定の実施形態では、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される微小容量注入送達システムが、本明細書において記載される(図7Aおよび7Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御するための低力起動レバーとを含み得る。ある特定の実施形態では、微小容量注入器のために使用できる微小容量注入送達システムは、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、上脈絡膜ニードル(例えば、Clearside(登録商標)ニードル)、網膜下ニードル、硝子体内ニードル、強膜近傍ニードル、結膜下ニードルおよび/または網膜内ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端(例えば、網膜下送達のためにMedOne 38gニードルおよびDorc 41gニードルを使用でき、一方で、網膜下送達のために、Clearside(登録商標)ニードルおよびVisionisti OYアダプターを使用できる)が挙げられる。
【0190】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、組換えベクターは、上脈絡膜に投与される(例えば、上脈絡膜注入によって)。特定の実施形態では、上脈絡膜投与(例えば、上脈絡膜腔への注入)は、上脈絡膜薬物送達デバイスを使用して実施される。上脈絡膜薬物送達デバイスは、眼の上脈絡膜腔への薬物の投与を含む上脈絡膜投与手順において使用されることが多い(例えば、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23、Goldstein, 2014, Retina Today 9(5): 82-87; Baldassarre et al., 2017を参照されたい)。本明細書において記載される本発明に従って上脈絡膜腔中に組換えベクターを蓄積するために使用できる上脈絡膜薬物送達デバイスとして、それだけには限らないが、Clearside(登録商標)Biomedical、Inc.によって製造された上脈絡膜薬物送達デバイス(例えば、Hariprasad, 2016, Retinal Physician 13: 20-23を参照されたい)およびMedOne上脈絡膜カテーテルが挙げられる。別の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用できる上脈絡膜薬物送達デバイスは、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される(図7Aおよび7Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)微小容量注入送達システムを含む。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御するための低力起動レバーとを含み得る。微小容量注入器は、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、上脈絡膜ニードル(例えば、Clearside(登録商標)ニードル)または網膜下ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端(例えば、網膜下送達のためにMedOne 38gニードルおよびDorc 41gニードルを使用でき、一方で、上脈絡膜送達のためにClearside(登録商標)ニードルおよびVisionisti OYアダプターを使用できる)。別の実施形態では、本明細書において記載される方法に従って使用される上脈絡膜薬物送達デバイスは、Visionisti OYによって製造されるアダプター(好ましくは、ニードルガイドも)有する通常の長さの皮下ニードルを含むツールであり、アダプターは、通常の長さの皮下ニードルを、アダプターから露出するニードルの先端の長さを制御することによって上脈絡膜ニードルにする(図8を参照されたい)(例えば、米国意匠特許番号D878,575および国際特許出願公開番号WO/2016/083669を参照されたい)。特定の実施形態では、上脈絡膜薬物送達デバイスは、1ミリメートルの30ゲージニードルを備えたシリンジである(図1を参照されたい)。このデバイスを使用する注入の際、ニードルが強膜の基部に貫通し、薬物を含有する流体が上脈絡膜腔に入り、上脈絡膜腔の拡大につながる。結果として、注入の際に触覚的および視覚的フィードバックがある。注入後、流体は後側に流れ、脈絡膜および網膜において優位に吸収される。これは、すべての網膜細胞層および脈絡膜細胞からの治療生成物の生成をもたらす。この種のデバイスおよび手順を使用することで、合併症のリスクの低い迅速で、容易なオフィス内手順が可能となる。上脈絡膜腔中に100μlの最大容量を注入できる。
【0191】
特定の実施形態では、硝子体内投与は、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される微小容量注入送達システムを含む硝子体内薬物送達デバイスを用いて実施される(図7Aおよび7Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215)、米国特許出願公開第2019/0175825および同2019/0167906を参照されたい)。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御するための低力起動レバーとを含み得る。微小容量注入器は、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、硝子体内ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端が挙げられる。特定の実施形態では、網膜下投与は、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される微小容量注入送達システムを含む網膜下薬物送達デバイスを用いて実施される(図7Aおよび7Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御するための低力起動レバーとを含み得る。微小容量注入器は、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、網膜下ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端(例えば、網膜下送達のためにMedOne 38gニードルおよびDorc 41gニードルを使用でき、一方で、上脈絡膜送達のために、Clearside(登録商標)ニードルおよびVisionisti OYアダプターを使用できる)。
【0192】
ある特定の実施形態では、組換えベクターは、強膜の外表面に(例えば、その先端を挿入し、強膜表面に直接並置して維持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスの使用によって)投与される。特定の実施形態では、強膜の外表面への投与は、後強膜近傍デポー手順を使用して実施され、これは、先端が鈍い湾曲したカニューレに薬物を引き込み、眼球を穿刺することなく強膜の外表面と直接接触して送達することを含む。特に、裸の強膜へ小さな切開を作出した後、カニューレの先端を挿入する(図7Aを参照されたい)。カニューレシャフトの曲がった部分を挿入し、カニューレの先端を強膜表面に直接並置して維持する(図7B~7Dを参照されたい)。カニューレを完全に挿入した後(図7D)、カニューレシャフトの上部および側部に沿って滅菌綿棒で穏やかな圧力を維持しながら薬物をゆっくりと注入する。この送達方法によって、眼球内感染および網膜剥離、治療薬を目に直接的に注入することと一般に関連する副作用のリスクが避けられる。特定の実施形態では、強膜近傍投与は、眼への投与のために本明細書において記載される任意の投与経路のために使用できる、Altavizによって製造される微小容量注入送達システムを含む強膜近傍薬物送達デバイスを用いて実施される(図7Aおよび7Bを参照されたい)(例えば、国際特許出願公開番号WO2013/177215、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)。微小容量注入送達システムは、米国特許出願公開第2019/0175825号および米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるような高力送達および改善された精度を提供するガス動力モジュールを含み得る。さらに、微小容量注入送達システムは、一定用量速度を提供する油圧式駆動と、ガス動力モジュール、次いで、流体送達を制御するための低力起動レバーとを含み得る。微小容量注入器は、用量ガイダンスを備えた微小容量注入器であり、例えば、強膜近傍ニードルとともに使用できる。微小容量注入器を使用する利点として、(a)より制御された送達(例えば、正確な注入流速制御および用量ガイダンスを有するために)、(b)1人の外科医、片手、1本の指での操作、(c)10μLの増分投与量の空圧駆動、(d)硝子体切除術機器から切り離されること、(e)400μLのシリンジ用量、(f)デジタル誘導された送達、(g)デジタル記録された送達、および(h)アグノスティックな先端が挙げられる。
【0193】
ある特定の実施形態では、投与量は、患者の眼に投与される(例えば、上脈絡膜に、網膜下に、硝子体内に、強膜近傍に、結膜下におよび/または網膜内に投与される(例えば、上脈絡膜注入、経硝子体アプローチ(外科手技)による網膜下注入、上脈絡膜腔を経る網膜下投与または後強膜近傍デポー手順によって)1mlあたりのゲノムコピーまたはゲノムコピー数によって測定される。ある特定の実施形態では、1mlあたり2.4×1011のゲノムコピー~1mlあたり1×1013のゲノムコピーが投与される。特定の実施形態では、1mlあたり2.4×1011のゲノムコピー~1mlあたり5×1011のゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり5×1011のゲノムコピー~1mlあたり1×1012のゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり1×1012のゲノムコピー~1mlあたり5×1012のゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり5×1012のゲノムコピー~1mlあたり1×1013のゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約2.4×1011のゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約5×1011のゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約1×1012のゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約5×1012のゲノムコピーが投与される。別の特定の実施形態では、1mlあたり約1×1013のゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、1×109~1×1012ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、3×109~2.5×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、1×109~2.5×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、1×109~1×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、1×109~5×109ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、6×109~3×1010ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、4×1010~1×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施形態では、2×1011~1×1012ゲノムコピーが投与される。特定の実施形態では、約3×109ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約1.2×1010ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約1×1010ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約4×1010ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約6×1010ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約2.4×1011ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約1.6×1011ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約6.2×1011ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約1.55×1011ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約6.2×1011ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約1.6×1011ゲノムコピーが投与される(これは、250μlの容量で1mlあたり約6.4×1011ゲノムコピーに相当する)。別の特定の実施形態では、約2.5×1011ゲノムコピー(250μlの容量で1mlあたり約1.0×1012に相当する)が投与される。
【0194】
ある特定の実施形態では、眼あたり約3.0×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり最大3.0×1013ゲノムコピーが投与される。
ある特定の実施形態では、眼あたり約6.0×1010ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり約1.6×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり約5.0×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり約3×1012ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり1mlあたり約1.0×1012ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、眼あたり1mlあたり約2.5×1012ゲノムコピーが投与される。
ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり約6.0×1010ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり約1.6×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり約3.0×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、網膜下注入によって眼あたり最大3.0×1013ゲノムコピーが投与される。
【0195】
ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり約5.0×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり約3×1012ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、単回上脈絡膜注入によって眼あたり約2.5×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、二重上脈絡膜注入によって眼あたり約5.0×1011ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり約3.0×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、上脈絡膜注入によって眼あたり最大約3.0×1013ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、100μlの容量の単回上脈絡膜注入によって眼あたり1mlあたり約2.5×1012ゲノムコピーが投与される。ある特定の実施形態では、各注入が100μlの容量である二重上脈絡膜注入によって、眼あたり1mlあたり約2.5×1012ゲノムコピーが投与される。
【0196】
本明細書で使用される場合、特に断りのない限り、用語「約」とは、所与の値または範囲のプラスまたはマイナス10%以内を意味する。
ある特定の実施形態では、用語「約」は、列挙された正確な数字を包含する。
ある特定の実施形態では、例えば、SCS内の溶液の広がりの可視化を可能にし、投与が成功裏に完了されたか否かを決定できる可能性がある眼表面の熱プロファイルの変化を検出するために、赤外線サーマルカメラを使用して、体温よりも冷たい溶液を投与した後の眼表面の熱プロファイルの変化を検出できる。これは、ある特定の実施形態では、投与されるべき組換えベクターを含有する製剤が最初に凍結され、室温(68~72°F)にされ、投与の前に短時間解凍され(例えば、少なくとも30分間)、したがって、製剤が、注入時にヒトの眼(約92°F)よりも冷たい(時には、室温よりも冷たい)ためである。薬物製品は、通常、解凍の4時間以内に使用され、溶液がとる最も温かいものは室温である。好ましい実施形態では、手順は、赤外線ビデオでビデオ化される。
【0197】
赤外線サーマルカメラは、温度の小さい変化を検出できる。それらはレンズを通して赤外線エネルギーをとらえ、エネルギーを電子信号に変換する。赤外線は、エネルギーを熱画像に変換する赤外線センサーアレイに焦点を合わせる。赤外線サーマルカメラを、本明細書において記載される任意の投与経路、例えば、上脈絡膜投与、網膜下投与、結膜下投与、硝子体内投与または上脈絡膜腔中への低速注入カテーテルの使用を用いる投与を含む眼への投与の任意の方法のために使用できる。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、FLIR T530赤外線サーマルカメラである。FLIR T530赤外線サーマルカメラは、±3.6°Fの精度でわずかな温度の相違をとらえることができる。カメラは、76,800ピクセルの赤外線解像度を有する。カメラはまた、より小さい視野をとらえる24°のレンズを利用する。高い赤外線解像度と組み合わせたより小さい視野は、オペレーターがイメージしているもののより詳細な熱プロファイルに貢献する。しかし、異なる赤外線解像度を有する、および/または異なるレンズの度を有する、わずかな温度変化をとらえるための異なる能力および精度を有する他の赤外線カメラを使用できる。
【0198】
特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、FLIR T420赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、FLIR T440赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、Fluke Ti400赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラは、FLIRE60赤外線サーマルカメラである。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラの赤外線解像度は、75,000ピクセル以上である。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラの熱感受性は、30℃で0.05℃以下である。特定の実施形態では、赤外線サーマルカメラの視野(FOV)は、25°×25°以下である。
ある特定の実施形態では、鉄フィルターを赤外線サーマルカメラとともに使用して、眼表面の熱プロファイルの変化を検出する。好ましい実施形態では、鉄フィルターの使用によって、疑似カラー画像を生成でき、ここで、最も温かいまたは高い温度の部分は白色であり、中間温度は、赤色および黄色であり、最も冷たいまたは低い温度の部分は黒色である。ある特定の実施形態では、熱プロファイルの疑似カラー画像を生成するために他の種類のフィルターも使用できる。
【0199】
各投与方法の熱プロファイは異なる場合がある。例えば、一実施形態では、上脈絡膜注入の成功は、(a)暗い色のゆっくりとした広い放射状の広がり、(b)始まりでの非常に暗い色、および(c)明るい色への注入物の段階的な変化、すなわち、より明るい色によって示される温度の勾配によって特徴付けることができる。一実施形態では、上脈絡膜注入の不成功は、(a)暗い色の広がりがないこと、および(b)分布を全く伴わない注入部位に局在する色のわずかな変化によって特徴付けることができる。ある特定の実施形態では、小さい局在した温度の低下は、眼組織(高温)に接触しているカニューレ(低温)に起因する。一実施形態では、硝子体内注入の成功は、(a)暗い色の広がりがないこと、(b)注入部位に局在する極めて暗い色への最初の変化および(c)より暗い色への眼全体の段階的な均一の変化によって特徴付けることができる。一実施形態では、眼外流出は、(a)眼の外側外表面での迅速に流れる流れ、(b)始まりでの非常に暗い色および(c)より明るい色への迅速な変化によって特徴付けることができる。
【0200】
5.3.3 サンプル採取および有効性のモニタリング
視覚障害に対する本明細書において提供される処置の方法の効果は、BCVA(最高矯正視力)、眼球内圧、スリットランプ検査および/または間接眼底検査によって測定できる。眼球外の動きも評価できる。眼球内圧測定は、TonopenまたはGoldmann圧平眼圧測定を使用して実施できる。スリットランプ検査は、眼瞼/まつ毛、結膜/強膜、角膜、前房、虹彩、レンズ、および/または硝子体の評価を含み得る。
【0201】
具体的な実施形態では、視覚障害に対する本明細書において提供される方法の効果は、本明細書において記載される方法によって処置されるヒト患者の眼が、処置後(例えば、処置後46~50週または98~102週)に43文字超のBCVAに達するか否かによって測定できる。43文字のBCVAは、20/160近似スネレン等価物に相当する。特定の実施形態では、本明細書において記載される方法によって処置されるヒト患者の眼が、処置後(例えば、処置後46~50週または98~102週)に43文字超のBCVAに達する。
具体的な実施形態では、視覚障害に対する本明細書において提供される方法の効果は、本明細書において記載される方法によって処置されるヒト患者の眼が、処置後(例えば、処置後46~50週または98~102週)に84文字超のBCVAに達するか否かによって測定できる。84文字のBCVAは、20/20近似スネレン等価物に相当する。特定の実施形態では、本明細書において記載される方法によって処置されるヒト患者の眼が、処置後(例えば、処置後46~50週または98~102週)に84文字超のBCVAに達する。BCVA試験は、ETDRSチャートを使用して4メートルの距離で実施できる。視力が低減した(4メートルで≧20文字を正しく読むことができない)参加者については、1メートルの距離でBCVA試験を実施してもよい。
眼/網膜の物理的変化に対する本明細書において提供される処置の方法の効果は、SD-OCT(SD-光干渉断層撮影)によって測定できる。
有効性は、網膜電図検査(ERG)によって測定されるようにモニタリングできる。
本明細書において提供される処置の方法の効果は、視力喪失、感染、炎症および網膜剥離を含む他の安全性事象の徴候を測定することによってモニタリングできる。
【0202】
網膜肥厚をモニタリングして、本明細書において提供される処置の有効性を決定できる。いずれか特定の理論に捉われようとは思わないが、網膜の厚みを臨床読み取り値として使用でき、網膜の厚さの低減が大きいほどまたは網膜の肥厚の前の期間が長いほど、処置はより有効である。網膜機能は、例えば、ERGによって決定できる。ERGは、ヒトにおける使用のためにFDAによって承認された、網膜機能の非侵襲的電気生理学的検査であり、眼の光感受性細胞(桿体および錐体)およびその接続する神経節細胞、特に、フラッシュ刺激に対するその応答を調べる。網膜の厚さは、例えば、SD-OCTによって決定できる。SD-OCTは、低コヒーレンス干渉法を使用して、目的の物体から反射された後方散乱光のエコー時間遅延と大きさを決定する3次元イメージング技術である。OCTを使用して、3~15μmの軸分解能で組織サンプルの層(例えば、網膜)をスキャンでき、SD-OCTは、軸分解能およびスキャン速度をこれまでの技術の形式を上回って改善する(Schuman, 2008, Trans. Am. Opthamol. Soc. 106:426-458)。
【0203】
本明細書において提供される方法の効果はまた、国立眼病研究所の視覚機能質問票、ラッシュスコアバージョン(NEI-VFQ-28-R)におけるベースラインからの変化(複合スコア、活動制限ドメインスコア、および社会的感情機能ドメインスコア)によっても測定できる。本明細書において提供される方法の効果はまた、国立眼病研究所の視覚機能質問票25項目バージョン(NEI-VFQ-25)におけるベースラインからの変化(複合スコアおよびメンタルヘルスサブスケールスコア)によって測定できる。本明細書において提供される方法の効果はまた、黄斑疾患処置満足度質問票(MacTSQ)におけるベースラインからの変化(複合スコア、安全性、有効性、および不快感ドメインスコア、ならびに情報提供および利便性ドメインスコア)によって測定できる。
【0204】
具体的な実施形態では、本明細書において記載される方法の有効性は、約4週間、12週間、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月での、または他の望ましい時点での視覚の改善によって反映される。特定の実施形態では、視覚の改善は、BCVAの増大、例えば、1文字、2文字、3文字、4文字、5文字、6文字、7文字、8文字、9文字、10文字、11文字または12文字またはそれより多くの増大を特徴とする。特定の実施形態では、視覚の改善は、ベースラインからの視力の5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%またはそれより多くの増大を特徴とする。
【0205】
具体的な実施形態では、本明細書において記載される方法の有効性は、約4週間、12週間、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月での、または他の望ましい時点での中心網膜厚(CRT)の低減、例えば、ベースラインからの中心網膜厚の5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%またはそれより多くの減少によって反映される。
具体的な実施形態では、処置後に眼に炎症はない、または処置後に眼に炎症はほとんどない(例えば、ベースラインから10%、5%、2%、1%またはそれより少ない炎症のレベルの増大)。視覚障害に対する本明細書において提供される方法の効果は、視覚運動性眼振(OKN)によって測定できる。
【0206】
理論に捉われるものではないが、この視力スクリーニングでは、OKNの不随意反射の原理を使用して、患者の眼が動く標的を追跡できるかどうかを客観的に評価する。OKNを使用することによって、試験者と患者の間に言語コミュニケーションは必要とされない。したがって、OKNを使用して、言語前および/または非言語患者の視力を測定できる。ある特定の実施形態では、1ヶ月齢、2ヶ月齢、3ヶ月齢、4ヶ月齢、5ヶ月齢、6ヶ月齢、7ヶ月齢、8ヶ月齢、9ヶ月齢、10ヶ月齢、11ヶ月齢、1歳、1.5歳、2歳、2.5歳、3歳、3.5歳、4歳、4.5歳または5歳である患者において視力を測定するためにOKNが使用される。ある特定の実施形態では、患者がiPadで動きを見ている場合、OKN反射の検出によって視力を測定するためにiPadが使用される。
【0207】
理論に捉われるものではないが、この視力スクリーニングは、OKNの不随意反射の原理を使用して、患者の眼が動く標的を追跡できるかどうかを客観的に評価する。OKNを使用することによって、試験者と患者の間に言語コミュニケーションは必要とされない。したがって、OKNを使用して、言語前および/または非言語患者の視力を測定できる。ある特定の実施形態では、1.5ヶ月齢、2ヶ月齢、3ヶ月齢、4ヶ月齢、5ヶ月齢、6ヶ月齢、7ヶ月齢、8ヶ月齢、9ヶ月齢、10ヶ月齢、11ヶ月齢、1歳、1.5歳、2歳、2.5歳、3歳、3.5歳、4歳、4.5歳または5歳未満である患者において視力を測定するためにOKNが使用される。別の特定の実施形態では、1~2ヶ月齢、2~3ヶ月齢、3~4ヶ月齢、4~5ヶ月齢、5~6ヶ月齢、6~7ヶ月齢、7~8ヶ月齢、8~9ヶ月齢、9~10ヶ月齢、10~11ヶ月齢、11ヶ月~1歳、1~1.5歳、1.5~2歳、2~2.5歳、2.5~3歳、3~3.5歳、3.5~4歳、4~4.5歳または4.5~5歳である患者において視力を測定するためにOKNが使用される。別の特定の実施形態では、6ヶ月~5歳である患者において視力を測定するためにOKNが使用される。ある特定の実施形態では、患者がiPadで動きを見ている場合、OKN反射の検出によって視力を測定するためにiPadが使用される。
ヒト患者が小児である場合には、視覚的機能を視覚運動性眼振(OKN)ベースアプローチまたは改変OKNベースアプローチを使用して評価できる。
【0208】
ベクター脱落は、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を使用して生物学的流体、例えば、涙、血清または尿中のベクターDNAを測定することによって決定できる。一部の実施形態では、ベクター遺伝子コピーは、ベクターの投与後いずれの時点でも尿においてで検出可能ではない。一部の実施形態では、1000ベクター遺伝子コピー/5μl未満、500ベクター遺伝子コピー/5μl未満、100ベクター遺伝子コピー/5μl未満、50ベクター遺伝子コピー/5μl未満または10ベクター遺伝子コピー/5μl未満が、投与後任意の時点で生物学的流体(例えば、涙、血清または尿)において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である。具体的な実施形態では、210ベクター遺伝子コピー/5μl以下が、血清において検出可能である。一部の実施形態では、1000ベクター遺伝子コピー/5μl未満、500ベクター遺伝子コピー/5μl未満、100ベクター遺伝子コピー/5μl未満、50ベクター遺伝子コピー/5μl未満または10ベクター遺伝子コピー/5μl未満が、投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14週まで生物学的流体(例えば、涙、血清または尿)において定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である。具体的な実施形態では、ベクター遺伝子コピーは、ベクターの投与後14週まで生物学的流体(例えば、涙、血清または尿)において検出可能ではない。一部の実施形態では、ベクター遺伝子コピーは、ベクターの投与後任意の時点で生物学的流体(例えば、涙、血清または尿)において検出可能ではない。
【0209】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法に従って処置された患者は、中心窩を侵している糖尿病性黄斑浮腫(CI-DME)、白内障、新血管新生、網膜剥離、糖尿病性合併症、血管退縮、漏出の面積および/または網膜非灌流の面積の発生についてモニタリングされる。CI-DME、白内障、新血管新生、網膜剥離、糖尿病性合併症、血管退縮、漏出の面積および網膜非灌流の面積の発生は、当技術分野で公知の、または本明細書において提供される任意の方法によって評価できる。対象において発生した糖尿病性合併症は、汎網膜光凝固(PRP)、抗VEGF療法および/または外科的介入を必要とする場合がある。糖尿病性合併症は、視力を脅かすものであり得る。対象において発生した白内障は、手術を必要とする場合がある。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法に従って処置された患者のバイタルサイン(例えば、心拍数、血圧)をモニタリングできる。
【0210】
本明細書において記載される処置の方法の安全性は、当技術分野で公知のアッセイによって評価され得る。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される処置の方法の安全性は、例えば、グルコース、血中尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、塩化物、二酸化炭素、カルシウム、総タンパク質アルブミン総ビリルビン、直接ビリルビン、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、および/またはクレアチンキナーゼのレベルの血清化学測定によって評価される。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される処置の方法の安全性は、例えば、血小板、ヘマトクリット、ヘモグロビン、赤血球、白血球、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、平均赤血球容量、平均赤血球ヘモグロビンおよび/または平均赤血球ヘモグロビン濃度の血液学的測定によって評価される。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される処置の方法の安全性は、尿検査、例えば、グルコース、ケトン、タンパク質および/または血液のレベルのディップスティック検査(必要な場合には、顕微鏡評価を完了できる)によって評価される。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される処置の方法の安全性は、血液凝固(例えば、プロトロンビン時間および/または部分トロンボプラスチン時間)の測定によって、またはヘモグロビンA1cの測定によって評価される。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法の効果は、統計分析によって決定される。統計的推測は、両側α=0.2の有意レベルで行うことができる。統計的エンドポイントは、対応する80%信頼区間を用いてまとめることができる。
本明細書において提供される方法の効果は、フィッシャーの正確確率検定によって決定でき、処置される集団は、未処置集団における過去の応答率(例えば、5%)に対して試験される。
【0211】
5.4 併用療法
本明細書において提供される処置の方法を、1つまたは複数の追加の療法と組み合わせることができる。一態様では、本明細書において提供される処置の方法は、レーザー凝固とともに投与される。一態様では、本明細書において提供される処置の方法は、ベルテポルフィンを用いる光線力学的療法とともに投与される。
【0212】
一態様では、本明細書において提供される処置の方法は、それだけには限らないが、ヒト細胞株において産生されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiを含む抗VEGF剤(Dumont et al., 2015、前掲)、または他の抗VEGF剤、例えば、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプトもしくはベバシズマブを用いる硝子体内(IVT)注入とともに投与される。
追加の療法は、遺伝子療法処置の前、それと同時に、またはその後に投与されてもよい。
【0213】
遺伝子療法処置の有効性は、標準処置、例えば、それだけには限らないが、ヒト細胞株において産生されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiを含む抗VEGF剤または他の抗VEGF剤、例えば、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプトもしくはベバシズマブを用いる硝子体内注入を使用するレスキュー処置の排除またはその数の低減によって示すことができる。
【0214】
【表3】








【実施例
【0215】
6. 実施例
(実施例1)
6.1 実施例1:ベバシズマブFab cDNAベースのベクター
軽鎖および重鎖cDNA配列(それぞれ、配列番号10および11)のベバシズマブFab部分を含む導入遺伝子を含む、ベバシズマブFab cDNAベースのベクターを構築する。導入遺伝子はまた、表1に列挙される群から選択されるシグナルペプチドを含む核酸も含む。軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列は、IRESエレメントまたは2A切断部位によってわけられており、バイシストロン性ベクターを作出する。任意選択で、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターをさらに含む。
【0216】
(実施例2)
6.2 実施例2:ラニビズマブcDNAベースのベクター
ラニビズマブFab軽鎖および重鎖cDNA(それぞれ、シグナルペプチドをコードしない配列番号12および13の部分)を含む導入遺伝子を含むラニビズマブFab cDNAベースのベクターを構築する。導入遺伝子はまた、表1に列挙される群から選択されるシグナルペプチドを含む核酸も含む。軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列は、IRESエレメントまたは2A切断部位によってわけられており、バイシストロン性ベクターを作出する。任意選択で、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターをさらに含む。
【0217】
(実施例3)
6.3 実施例3:高度グリコシル化ベバシズマブFab cDNAベースのベクター
以下の突然変異:L118N(重鎖)、E195N(軽鎖)、またはQ160NもしくはQ160S(軽鎖)のうち1つまたは複数をコードする配列への突然変異を有する、軽鎖および重鎖cDNA配列のベバシズマブFab部分(それぞれ配列番号10および11)を含む導入遺伝子を含む高度グリコシル化ベバシズマブFab cDNAベースのベクターを構築する。導入遺伝子はまた、表1に列挙される群から選択されるシグナルペプチドを含む核酸も含む。軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列は、IRESエレメントまたは2A切断部位によってわけられており、バイシストロン性ベクターを作出する。任意選択で、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターをさらに含む。
【0218】
(実施例4)
6.4 実施例4:高度グリコシル化ラニビズマブcDNAベースのベクター
以下の突然変異:L118N(重鎖)、E195N(軽鎖)またはQ160NもしくはQ160S(軽鎖)のうち1つまたは複数をコードする配列への突然変異を有する、ラニビズマブFab軽鎖および重鎖cDNA(それぞれ、シグナルペプチドをコードしない配列番号12および13の部分)を含む導入遺伝子を含む高度グリコシル化ラニビズマブFab cDNAベースのベクターを構築する。導入遺伝子はまた、表1に列挙される群から選択されるシグナルペプチドを含む核酸も含む。軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列は、IRESエレメントまたは2A切断部位によってわけられており、バイシストロン性ベクターを作出する。任意選択で、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターをさらに含む。
【0219】
(実施例5)
6.5 実施例5:ラニビズマブベースのHuGlyFabVEGFi
ラニビズマブFab cDNAベースのベクター(実施例2を参照されたい)を、AAV8バックグラウンドにおいてPER.C6(登録商標)細胞株(Lonza)において発現させる。得られた生成物、ラニビズマブベースのHuGlyFabVEGFiは、安定に産生されると決定される。HuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化を、ヒドラジン分解およびMS/MS分析によって確認する。例えば、Bondt et al., Mol. & Cell. Proteomics 13.11:3029-3039を参照されたい。グリカン分析に基づいて、HuGlyFabVEGFiは、N-グリコシル化されていると確認され、2,6シアル酸の主な修飾を有する。N-グリコシル化HuGlyFabVEGFiの有利な特性は、当技術分野で公知の方法を使用して決定される。HuGlyFabVEGFiは、安定性の増大およびその抗原(VEGF)に対する親和性の増大を見出すことができる。安定性を評価する方法については、Sola and Griebenow, 2009, J Pharm Sci., 98(4): 1223-1245を、ならびに親和性を評価する方法については、Wright et al., 1991, EMBO J. 10:2717-2723およびLeibiger et al., 1999, Biochem. J. 338:529-538参照されたい。
【0220】
(実施例6)
6.6 実施例6:オープンラベル第2a相 糖尿病性網膜症を有する参加者における構築物II遺伝子療法の用量評価
この実施例は、糖尿病性網膜症(DR)を有する参加者における構築物II遺伝子療法の第2a相、用量評価の概要を提供する。DRに対する1回の遺伝子療法処置後の構築物II導入遺伝子産物の持続性の安定発現は、視覚を維持しながら現在利用可能な療法の処置負担を潜在的に低減する可能性があり、好都合な利益:リスクプロファイルを有する。現在の概念実証研究は、DRを有する参加者における2つの異なる用量レベルでの構築物II遺伝子療法の安全性および有効性を評価するように意図される。
【0221】
6.6.1 目的およびエンドポイント
【表4】


【0222】
6.6.2 組み入れ基準
参加者は、この研究にとって適格となるために以下の基準のすべてを満たさなければならない。すべての眼性基準は研究眼を指す:(1)1型または2型糖尿病に続発するDRを有する≧18歳の年齢の男性または女性。参加者は、ヘモグロビンA1c≦10%(スクリーニングで得られた臨床検査評価によって、またはスクリーニング前60日以内の日付の文書化された検査室報告書によって確認されるような)を有さなくてはならない、(2)研究者によって適当な外科的候補であると思われる参加者、(3)スクリーニング後少なくとも6ヶ月間、研究者の見解でPRPまたは抗VEGF注入を安全に延期できる、中程度~重症NPDR、重症NPDR、軽度PDRまたは中程度PDR(CRCによって決定されるような、標準の4広視野デジタル立体眼底写真を使用してETDRS-DRSSレベル47、53、61または65)を有する研究眼、(4)以下:(i)視神経の1乳頭面積以内の新規血管、または視神経乳頭でのあまり広範ではない新規血管と関連する、もしくは乳頭面積の半分もしくはそれより大きいサイズの他の場所での新規血管と関連する硝子体もしくは網膜前出血、および(ii)臨床検査で研究眼において前眼部(例えば、虹彩または角)新血管新生の証拠がないことを含む、研究者による視力喪失と通常関連するハイリスク特徴の証拠が研究眼にないこと、(5)>69ETDRS文字(近似スネレン等価物20/40以上)の研究眼における最高矯正視力(BCVA)、両目が適格である場合には、研究眼は、登録前に研究者によって決定されるような、参加者の悪く見える眼でなくてはならないことは留意されたい、(6)研究眼におけるCI-DMEの以前の病歴は、過去6ヶ月以内に硝子体内抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド注入が与えられておらず、かつ、スクリーニング前3年に10以下の文書化された注入が与えられた場合には許容される、(7)女性は、閉経後≧1年または外科的に不妊化されなくてはならない。そうでない場合には、女性は、スクリーニングで陰性血清妊娠検査を有し、1日目(構築物II手術日)に陰性確証的尿;妊娠検査結果を有し、研究の間に追加の妊娠検査を進んで受け入れなくてはならない、(8)妊娠の可能性のある女性、その男性パートナー、および妊娠の可能性のある女性パートナーを有する性的に活発な男性参加者は、スクリーニングからベクター投与後24週間まで高度に効果的な避妊の方法を使用することを進んで受け入れなければならない。この時点以後の受胎調節の中止は、主治医と議論しなくてはならない、(9)すべての研究手順を進んで遵守できなければならず、研究期間中利用可能でなければならない、(10)書面で署名されたインフォームドコンセントを進んで提供できなければならない。
【0223】
6.6.3 除外基準
参加者は、以下の基準のうちいずれかが当てはまる場合に研究から除外される:(1)以下の閾値:ハイデルベルグスペクトラリス:320μmを使用する、臨床検査で、または研究眼の中心亜領域内の研究者によって決定されるような任意の活性CI-DMEの存在、(2)研究者による、DR以外の原因からの研究眼における新血管新生、(3)ベースラインFAでの末梢網膜の>50%または中心窩もしくは乳頭黄斑領域を含む研究眼における虚血の、研究者によって決定されるような研究眼における証拠、(4)臨床検査での視神経蒼白の、または研究者によって決定されるようなベースラインFAでの視神経乳頭新血管新生の研究眼における証拠、(5)研究眼におけるPRPの任意の証拠もしくは文書化された病歴、または研究眼における後極の外側の焦点もしくはグリッドレーザーの任意の証拠、(6)外科手技を干渉する可能性がある研究眼における眼または眼周囲の感染、(7)スクリーニング後6ヶ月以内に外科的介入を必要とする可能性がある研究眼における任意の眼の状態(硝子体出血、組み入れ基準を満たさない白内障、網膜牽引、網膜上膜など)または研究者の見解で、参加者のリスクを増大し得る、視力喪失を防ぐもしくは処置するために研究の間に医学的もしくは外科的介入を必要とし得る、もしくは研究手順もしくは評価を干渉し得る研究眼における任意の状態、(8)研究眼における活発な網膜剥離または病歴、(9)スクリーニング時の研究眼におけるインプラントの存在(眼球内レンズ[IOL]を除く)、(10)ペンタカムデバイスによってスキャンされ、CRCによって検証され、または節6.6.5(c)において概説されたように他のベースライン白内障基準を満たさない、ペンタカム核病期分類スコア≧1、(11)研究者による臨床検査もしくはCRCによって決定されるようなレンズイメージングのいずれかによる、および/またはCRCによって決定されるようなAREDSレベル2(軽度核混濁)を超える核レンズイメージグレードを有する、文書化された既存の皮質もしくは後嚢下白内障、(12)参加者の緑内障専門家との協議によって評価されるような、研究眼における進行した緑内障(すなわち、2回以上の点滴処置またはチューブもしくはシャントなどの介入にもかかわらず制御されない)または緑内障手術の文書化された病歴、(13)スクリーニング前12週間以内の研究眼における眼球内手術の病歴、イットリウムアルミニウムガーネット嚢切開術は、スクリーニング前>10週間で実施された場合には許可される、(14)スクリーニング前6ヶ月以内の抗VEGF療法を含む研究眼における硝子体内療法の履歴およびスクリーニングの3年以内のDMEのための研究眼における10回より多い以前の抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド硝子体内注入の文書化、(15)スクリーニング前6ヶ月以内の研究眼における任意の以前の硝子体内ステロイド注入、スクリーニング前12ヶ月以内のOzurdex(登録商標)の研究眼における投与またはスクリーニング前36ヶ月以内のIluvien(登録商標)の研究眼における投与、(16)スクリーニング前6ヶ月以内の任意の以前の全身抗VEGF処置、またはスクリーニング後次の6ヶ月の間の全身抗VEGF療法を使用する計画(17)網膜毒性を引き起こしたと知られている療法またはVAに影響を及ぼし得る、もしくは公知の網膜毒性を有する任意の薬物、例えば、クロロキンもしくはヒドロキシクロロキンとの同時療法の履歴、(18)スクリーニング前6ヶ月以内の心筋梗塞、脳血管発作または一過性脳虚血発作、(19)最大の医学的処置にもかかわらず制御されない高血圧症(収縮期血圧[BP]>180mmHg、拡張期BP>100mmHg)、BPが180/100mmHg未満にされ、研究者および/またはプライマリケア医によって決定されるように降圧処置によって安定化される場合には、参加者は、適格性について再審査され得るということは留意されたい、(20)研究者の見解で、研究への参加を排除するであろう全身状態(血糖管理の不良、制御されない高血圧症など)、(21)研究者の見解で、眼の外科手技または治癒プロセスに干渉する可能性がある任意の同時処置、(22)スクリーニング前5年における化学療法および/または放射線照射を必要とする免疫系を損なう可能性がある悪性腫瘍または血液悪性腫瘍の病歴、局在基底細胞癌は許可される、(23)研究者の見解で、研究においてすべての評価およびフォローアップを完了するための参加者の安全性または能力を損なう可能性がある、重篤な、慢性のまたは不安定な医学的もしくは心理的状態を有する、(24)スクリーニング時に以下の検査室の値を有する任意の参加者は、研究から除外される:(i)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>2.5×正常の上限(ULN)、(ii)参加者がこれまでに知られているジルベール症候群の病歴を有さない限りおよび総ビリルビンの<35%の抱合ビリルビンを示す分画ビリルビンを有さない限り、総ビリルビン>1.5×ULN、(iii)参加者が抗凝固剤処置されない限り、プロトロンビン時間>1.5×ULN。抗凝固剤処置されている参加者は、研究手順のために抗凝固療法を保持または橋渡しするために地方の検査室によってモニタリングされ、地方の慣行により管理される、参加者が抗凝固剤処置されている場合には、医療モニターとの協議が必要である、(iv)男性参加者についてヘモグロビン<10g/dLおよび女性参加者について<9g/dL、(v)血小板<100×103/μL、(vi)推定糸球体濾過速度<30mL/分/1.73m2、(25)透析または腎臓移植を必要とする慢性腎不全の病歴、(26)スクリーニング前6ヶ月以内の集中的なインスリン処置(ポンプまたは1日に複数回の注入)の開始またはスクリーニングの6ヶ月以内のそのようにする計画、(27)構築物II投与に対する抗凝固療法を保持することが、医療モニターによって検証して、処置する研究者(すなわち、網膜外科医)ならびに参加者の抗凝固を処方する医師の見解で、適応とならない、または安全ではないと考えられる抗凝固療法を現在受けていること、(28)構築物IIを含む任意の他の遺伝子療法研究への参加、または登録前30日以内もしくは治験薬の5半減期以内のいずれか長い方の任意の治験薬の投薬または登録後6ヶ月以内に治験薬を使用する任意の計画、(29)ラニビズマブまたはその構成成分のいずれかに対する既知過敏症。
【0224】
6.6.4 研究介入
研究介入は、研究プロトコールに従って研究参加者に投与されるように意図される任意の治験介入、市販の製品、プラセボまたは医療デバイスとして定義される。
【0225】
適格参加者は、構築物IIの単回用量(用量1)または構築物IIの単回用量(用量2)のいずれかを受け取るように割り当てられる。すべての参加者は、手術室において網膜下送達によって1日目に研究介入を受け取る。
【0226】
【表5】
この研究における参加者は、構築物II(用量1)または構築物II(用量2)を受け取るように双方向応答技術システムを使用してスクリーニングで無作為化される(1:1)。
【0227】
6.6.5 事前および同時療法
(a)薬物適用および療法
以下の薬物適用は、研究に登録する前に禁止される:
・スクリーニング前6ヶ月以内の研究眼における任意の以前の全身性または眼の抗VEGF処置。
・スクリーニングの3年以内のDMEのための研究眼における10回より多い以前の、文書化された抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド硝子体内注入。
・スクリーニング前6ヶ月以内の研究眼における任意の以前の硝子体内短時間作用型ステロイド注入、スクリーニング前12ヶ月以内のOzurdexの研究眼における投与またはスクリーニング前36ヶ月以内のIluvienの研究眼における投与。
・スクリーニング前6ヶ月以内の集中的なインスリン処置(ポンプまたは1日に複数回の注入)の開始、この基準を満たす参加者のために、そのプライマリケア提供者または他の処置の提供者によって推奨および文書化されるように研究の間にレジメンの改変が許可される。
・参加者は、研究者の見解で、構築物II投与または治癒プロセスに干渉する可能性がある任意の同時処置を使用してはならない。
・参加者は、構築物II投与に対する抗凝固療法を保持することが、処置する研究者(すなわち、網膜外科医)ならびに参加者の抗凝固を処方する医師の見解で、適応とならない、または安全ではないと考えられる、抗凝固療法を受けることを禁止される。
・参加者は、登録前30日以内もしくは治験薬の5半減期以内のいずれか長い方で任意の治験薬を使用してはならない。
以下の同時薬物適用は、研究の間禁止される:
・眼性糖尿病性合併症の処置のための節6.6.5(b)において記載されるような状況を除く、スクリーニング後6ヶ月の間の研究眼における抗VEGF療法。
・これまでに示されたように、集中的なインスリン処置(ポンプまたは1日に複数回の注入)の開始は、研究の間許可されない。処置の開始が、スクリーニング前少なくとも6ヶ月で生じた場合には、研究の間に処置レジメンの改変が許可される。
構築物IIを受け取っている参加者の術後ケアは、手順マニュアルに記載されている。この研究における事前または同時療法に対する他の制限はない。
【0228】
(b)眼性糖尿病性合併症の処置
眼性糖尿病のすべての合併症は、各研究センターSOCに従って管理される。
研究の間、SOCによる抗VEGF処置を必要とする糖尿病性合併症を発症する参加者は、必要に応じて療法を投与され得る。必要な場合には、研究センターは、FDAによって承認された抗VEGF療法のその自身の供給を提供する。CI-DMEの発生は、AEとして記録されなければならず、受け取られた抗VEGF注入の数およびすべての投与のタイミングも原文書およびeCRFに記録されなければならない。
PRP SOCを必要とする糖尿病性合併症を発症する患者は、PRPの時間が原文書およびeCRFに記録されなければならない。
外科的介入SOC(気体網膜復位術、冷凍凝固または強膜バックルのいずれか)を必要とする糖尿病性合併症を発症する参加者は、介入の種類および介入の時間が原文書およびeCRFに記録されなければならない。
【0229】
(c)白内障形成のための介入
スクリーニング
スクリーニング訪問の間に、一連の評価を完了して、適格性を決定し、参加者のベースライン白内障状態を確立する。これらの評価には、以下が含まれる:(1)SOCによる参加者の症状の評価、(2)皮質白内障または後嚢下白内障の任意の徴候が存在するか否かを決定するための臨床検査の実施、(3)眼のペンタカム核病期分類システムを用いるイメージング、および(4)標準化前眼部写真を用いる参加者のレンズのイメージング、これは、類別および研究適格性の確認のためにCRCに提出される。除外基準番号11を満たすスクリーニング訪問時に白内障を有する参加者は、登録されてはならない。
【0230】
研究中の白内障評価および介入
研究の間、白内障外科医は、以下に指定される除外のための基準を満たす白内障の存在について参加者を評価し続ける。
AEとして報告されるべき、医学的に適応となる白内障摘出のための基準は以下のとおりである:網膜研究者が、糖尿病性眼疾患および/または全体的な網膜の状態を安全にモニタリングおよび管理するために、網膜を適切に見るおよび/または画像化することができない。
任意のベースライン後訪問時に医学的に適応となる白内障摘出の基準が満たされる場合は、白内障摘出手術のための予定外の訪問が、白内障外科医とともに研究コーディネーターによって5営業日内にスケジュール化される。
【0231】
医学的に適応となる白内障摘出の基準は満たされないが、参加者が、任意のベースライン後訪問時に以下の二次基準のうち2つ以上を満たす場合には、研究コーディネーターは、参加者を、白内障摘出手術が白内障外科医によって10営業日以内に実施されるための予定外の訪問のためにスケジュール化する。AEとしても報告されるべき二次基準は以下のとおりである:
・視力変化:白内障外科医によれば、レンズにおけるベースラインからの変化とも関連している、研究の間に記録された最良値(ベースラインまたはベースライン後)と比較して、≧5のETDRS文字のBCVAの低下。
・屈折シフト:白内障外科医によると、レンズのベースラインからの変化とも関連している、任意の研究訪問で記録されたBCVAの間の屈折異常≧1ジオプトリーの変化(ベースラインでの屈折異常と比較して)。
・構造的:ベースラインからのレンズ内の不透明化の増大を反映する、ペンタカム核病期分類スコアでベースラインからの>1グレードの変化。
・参加者によって報告されるもの:参加者によって報告されるような、ベースラインからの視覚的機能変化。
・CRCイメージング:CRCによって決定されるような、核、皮質または後嚢下スケールでのベースラインからの>1グレード/亜領域の変化(AREDS白内障スケール[詳細については手順マニュアルを参照されたい])。
【0232】
単焦点の1ピースアクリルIOLが、この研究において使用するために選択したレンズである。一部の例では、円環体(乱視補正)IOLを考慮することができるが、スポンサーおよび医療モニターによって別段承認されない限り、単焦点IOLと円環体レンズの間の費用のあらゆる相違は、参加者の責任である。多焦点または他のプレミアムIOLは、それらが網膜病態の任意の変化を正確に追跡する能力を減少させる可能性があるために、研究の間排除される。シリコン光学IOLは、任意のその後の網膜手順を複雑化するその能力のために使用されない。白内障外科医は、参加者に、光学術後VAおよび視覚的機能を提供する可能性が最も高い推奨事項を提供する場合がある。
【0233】
術後、合併症を制限するように意図されたSOCプロトコールをたどる。好ましいSOCプロトコールとして以下が挙げられる:フルオロキノロン(fluroquinolone)液滴、1日4回1週間、Ilevro(ネパフェナク)1日2回1ヶ月間および1日4回1週間で出発し、1日3回、1日2回、最後に、1日1回まで一度につき1週間漸減する酢酸プレドニゾロンを用いるステロイドテーパー。参加者の安全性のために、適切な場合には、医療モニターによる承認をもって、代替術後プロトコールを使用できる。
【0234】
(実施例7)
6.7 実施例7:オープンラベル第2a相 糖尿病性網膜症を有する参加者における構築物II遺伝子療法の用量評価
この実施例は、実施例6の最新バージョンであり、糖尿病性網膜症(DR)を有する参加者における構築物II遺伝子療法の第2a相、用量評価の概要を提供する。DRに対する1回の遺伝子療法処置後の構築物II導入遺伝子産物の持続性の安定発現は、視覚を維持しながら現在利用可能な療法の処置負担を潜在的に低減する可能性があり、好都合な利益:リスクプロファイルを有する。現在の概念実証研究は、DRを有する参加者における2つの異なる用量レベルでの構築物II遺伝子療法の安全性および有効性を評価するように意図される。
【0235】
6.7.1 目的およびエンドポイント
【表6】


【0236】
6.7.2 組み入れ基準
参加者は、この研究にとって適格となるために以下の基準のすべてを満たさなければならない。すべての眼性基準は研究眼を指す:(1)1型または2型糖尿病に続発するDRを有する18~89歳の間の年齢の男性または女性。参加者は、ヘモグロビンA1c≦10%(スクリーニングで得られた臨床検査評価によって、またはスクリーニング前60日以内の日付の文書化された検査室報告書によって確認されるような)を有さなくてはならない、(2)研究者によって適当な外科的候補であると思われる参加者、(3)スクリーニング後少なくとも6ヶ月間、研究者の見解でPRPまたは抗VEGF注入を安全に延期できる、中程度~重症NPDR、重症NPDR、軽度PDRまたは中程度PDR(CRCによって決定されるような、標準の4広視野デジタル立体眼底写真を使用してETDRS-DRSSレベル47、53、61または65)を有する研究眼、(4)以下:(i)視神経の1乳頭面積以内の新規血管、または視神経乳頭でのあまり広範ではない新規血管と関連する、もしくは乳頭面積の半分もしくはそれより大きいサイズの他の場所での新規血管と関連する硝子体もしくは網膜前出血および(ii)臨床検査で研究眼において前眼部(例えば、虹彩または角)新血管新生の証拠がないことを含む、研究者による視力喪失と通常関連するハイリスク特徴の証拠が研究眼にないこと、(5)>69ETDRS文字(近似スネレン等価物20/40以上)の研究眼における最高矯正視力(BCVA)、両目が適格である場合には、研究眼は、登録前に研究者によって決定されるような、参加者の悪く見える眼でなくてはならないことは留意されたい、(6)研究眼におけるCI-DMEの以前の病歴は、過去6ヶ月以内に硝子体内抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド注入が与えられておらず、かつ、スクリーニング前3年に10以下の文書化された注入が与えられた場合には許容される、(7)妊娠の可能性のある女性パートナーを有する性的に活発な男性参加者は、スクリーニングからベクター投与後24週間まで、コンドームおよび医学的に許容される形態のパートナーの避妊を進んで使用しなければならない、(9)すべての研究手順を進んで遵守できなければならず、研究期間中利用可能でなければならない、(10)書面で署名されたインフォームドコンセントを進んで提供できなければならない。
【0237】
6.7.3 除外基準
参加者は、以下の基準のうちいずれかが当てはまる場合に研究から除外される:(1)閉経後としても、外科的に不妊化されたとしても定義されない妊娠の可能性のある女性。閉経後は、連続12ヶ月月経がないと実証されると定義される。外科的に不妊は、両側性卵管結紮術/両側性卵管切除術、両側性卵管閉塞術、子宮摘出術または両側性卵巣摘出術が施されていると定義される、(2)以下の閾値:ハイデルベルグスペクトラリス:320μmを使用する、臨床検査で、または研究眼の中心亜領域内の研究者によって決定されるような任意の活性CI-DMEの存在、(3)研究者による、DR以外の原因からの研究眼における新血管新生、(4)ベースラインFAでの末梢網膜の>50%または中心窩もしくは乳頭黄斑領域を含む研究眼における虚血の、研究者によって決定されるような研究眼における証拠、(5)臨床検査での視神経蒼白の、または研究者によって決定されるような研究眼における証拠、(6)研究眼におけるPRPまたは網膜レーザーの任意の証拠もしくは文書化された病歴、(7)外科手技を干渉する可能性がある研究眼における眼または眼周囲の感染、(8)スクリーニング後6ヶ月以内に外科的介入を必要とする可能性がある研究眼における任意の眼の状態(硝子体出血、組み入れ基準を満たさない白内障、網膜牽引、網膜上膜など)または研究者の見解で、参加者のリスクを増大し得る、視力喪失を防ぐもしくは処置するために研究の間に医学的もしくは外科的介入を必要とし得る、もしくは研究手順もしくは評価を干渉し得る研究眼における任意の状態、(9)研究眼における活発な網膜剥離または病歴、(10)スクリーニング時の研究眼におけるインプラントの存在(眼球内レンズ[IOL]を除く)、(11)有水晶体参加者についてのペンタカムデバイスによってスキャンされ、CRCによって検証され、または節6.6.5(c)において概説されたように他のベースライン白内障基準を満たさない、ペンタカム核病期分類スコア≧1、(12)参加者の緑内障専門家との協議によって評価されるような、研究眼における進行した緑内障(すなわち、2回以上の点滴処置またはチューブもしくはシャントなどの介入にもかかわらず制御されない)または緑内障手術の文書化された病歴、(13)スクリーニング前12週間以内の研究眼における眼球内手術の病歴、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)嚢切開術は、スクリーニング前>10週間で実施された場合には許可される、(14)スクリーニング前6ヶ月以内の抗VEGF療法を含む研究眼における硝子体内療法の履歴およびスクリーニングの3年以内のDMEのための研究眼における10回より多い以前の抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド硝子体内注入の文書化、(15)スクリーニング前6ヶ月以内の研究眼における任意の以前の硝子体内ステロイド注入、スクリーニング前12ヶ月以内のOzurdex(登録商標)の研究眼における投与またはスクリーニング前36ヶ月以内のIluvien(登録商標)の研究眼における投与、(16)スクリーニング前6ヶ月以内の任意の以前の全身抗VEGF処置、またはスクリーニング後次の6ヶ月の間の全身抗VEGF療法を使用する計画、(17)網膜毒性を引き起こしたと知られている療法またはVAに影響を及ぼし得る、もしくは公知の網膜毒性を有する任意の薬物、例えば、クロロキンもしくはヒドロキシクロロキンとの同時療法の履歴、(18)スクリーニング前6ヶ月以内の心筋梗塞、脳血管発作または一過性脳虚血発作、(19)最大の医学的処置にもかかわらず制御されない高血圧症(収縮期血圧[BP]>180mmHg、拡張期BP>100mmHg)、BPが180/100mmHg未満にされ、研究者および/またはプライマリケア医によって決定されるように降圧処置によって安定化される場合には、参加者は、適格性について再審査され得るということは留意されたい、(20)研究者の見解で、研究への参加を排除するであろう全身状態(血糖管理の不良、制御されない高血圧症など)、(21)研究者の見解で、眼の外科手技または治癒プロセスに干渉する可能性がある任意の同時処置、(22)スクリーニング前5年における化学療法および/または放射線照射を必要とする免疫系を損なう可能性がある悪性腫瘍または血液悪性腫瘍の病歴、局在基底細胞癌は許可される、(23)研究者の見解で、研究においてすべての評価およびフォローアップを完了するための参加者の安全性または能力を損なう可能性がある、重篤な、慢性のまたは不安定な医学的もしくは心理的状態を有する、(24)スクリーニング時に以下の検査室の値を有する任意の参加者は、研究から除外される:(i)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>2.5×正常の上限(ULN)、(ii)参加者がこれまでに知られているジルベール症候群の病歴を有さない限りおよび総ビリルビンの<35%の抱合ビリルビンを示す分画ビリルビンを有さない限り、総ビリルビン>1.5×ULN、(iii)参加者が抗凝固剤処置されない限り、プロトロンビン時間>1.5×ULN。抗凝固剤処置されている参加者は、研究手順のために抗凝固療法を保持または橋渡しするために地方の検査室によってモニタリングされ、地方の慣行により管理される、参加者が抗凝固剤処置されている場合には、医療モニターとの協議が必要である、(iv)男性参加者についてヘモグロビン<10g/dLおよび女性参加者について<9g/dL、(v)血小板<100×103/μL、(vi)推定糸球体濾過速度<30mL/分/1.73m2、(25)透析または腎臓移植を必要とする慢性腎不全の病歴、(26)スクリーニング前6ヶ月以内の集中的なインスリン処置(ポンプまたは1日に複数回の注入)の開始またはスクリーニングの6ヶ月以内のそのようにする計画、(27)構築物II投与に対する抗凝固療法を保持することが、医療モニターによって検証して、処置する研究者(すなわち、網膜外科医)ならびに参加者の抗凝固を処方する医師の見解で、適応とならない、または安全ではないと考えられる、抗凝固療法を現在受けていること、(28)構築物IIを含む任意の他の遺伝子療法研究への参加、または登録前30日以内もしくは治験薬の5半減期以内のいずれか長い方の任意の治験薬の投薬または登録後6ヶ月以内に治験薬を使用する任意の計画、(29)ラニビズマブまたはその構成成分のいずれかに対する既知過敏症。
【0238】
6.7.4 研究介入
研究介入は、研究プロトコールに従って研究参加者に投与されるように意図される任意の治験介入、市販の製品、プラセボまたは医療デバイスとして定義される。
【0239】
適格参加者は、構築物IIの単回用量(用量1)または構築物IIの単回用量(用量2)のいずれかを受け取るように割り当てられる。すべての参加者は、手術室において網膜下送達によって1日目に研究介入を受け取る。
【表7】
【0240】
この研究における参加者は、構築物II(用量1)または構築物II(用量2)を受け取るように双方向応答技術システムを使用してスクリーニングで無作為化される(1:1)。
【0241】
6.7.5 事前および同時療法
(a)薬物適用および療法
以下の薬物適用は、研究に登録する前に禁止される:
・スクリーニング前6ヶ月以内の研究眼における任意の以前の全身性または眼の抗VEGF処置。
・スクリーニングの3年以内のDMEのための研究眼における10回より多い以前の、文書化された抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド硝子体内注入。
・スクリーニング前6ヶ月以内の研究眼における任意の以前の硝子体内短時間作用型ステロイド注入、スクリーニング前12ヶ月以内のOzurdexの研究眼における投与またはスクリーニング前36ヶ月以内のIluvienの研究眼における投与。
・スクリーニング前6ヶ月以内の集中的なインスリン処置(ポンプまたは1日に複数回の注入)の開始、この基準を満たす参加者のために、そのプライマリケア提供者または他の処置の提供者によって推奨および文書化されるように研究の間にレジメンの改変が許可される。
・参加者は、研究者の見解で、構築物II投与または治癒プロセスに干渉する可能性がある任意の同時処置を使用してはならない。
・参加者は、構築物II投与に対する抗凝固療法を保持することが、処置する研究者(すなわち、網膜外科医)ならびに参加者の抗凝固を処方する医師の見解で、適応とならない、または安全ではないと考えられる、抗凝固療法を受けることを禁止される。
・参加者は、登録前30日以内もしくは治験薬の5半減期以内のいずれか長い方で任意の治験薬を使用してはならない。
以下の同時薬物適用は、研究の間禁止される:
・眼性糖尿病性合併症の処置のための節6.7.5(b)において記載されるような状況を除く、スクリーニング後6ヶ月の間の研究眼における抗VEGF療法。
・これまでに示されたように、集中的なインスリン処置(ポンプまたは1日に複数回の注入)の開始は、研究の間許可されない。処置の開始が、スクリーニング前少なくとも6ヶ月で生じた場合には、研究の間に処置レジメンの改変が許可される。
構築物IIを受け取っている参加者の術後ケアは、手順マニュアルに記載されている。この研究における事前または同時療法に対する他の制限はない。
【0242】
(b)眼性糖尿病性合併症の処置
眼性糖尿病のすべての合併症は、各研究センターSOCに従って管理され、AEとして文書化されなければならない。
研究の間、SOCによる抗VEGF処置を必要とする糖尿病性合併症を発症する参加者は、必要に応じて療法を投与され得る。必要な場合には、研究センターは、FDAによって承認された抗VEGF療法のその自身の供給を提供する。受け取られた抗VEGF注入の数およびすべての投与のタイミングも原文書およびeCRFに記録されなければならない。
PRP SOCを必要とする糖尿病性合併症を発症する患者は、PRPの時間が原文書およびeCRFに記録されなければならない。
外科的介入SOC(気体網膜復位術、冷凍凝固または強膜バックルのいずれか)を必要とする糖尿病性合併症を発症する参加者は、介入の種類および介入の時間が原文書およびeCRFに記録されなければならない。
【0243】
(c)白内障形成のための介入
有水晶体参加者のベースラインスクリーニング
スクリーニング訪問の間に、一連の評価を完了して、適格性を決定し、有水晶体参加者のみの参加者のベースライン白内障状態を確立する。これらの評価には、以下が含まれる:(1)SOCによる参加者の症状の評価、(2)白内障研究者による任意の臨床上有意な白内障が存在するか否かを決定するための臨床検査の実施、(3)眼のペンタカム核病期分類(PNS)システムを用いるレンズ核のイメージング。ペンタカムグレード≦1は、研究における組み入れのために許容される。ペンタカム適格性は、サイトで決定されるべきであり、ペンタカムスキャンは、検証のためにCRCに提出されるべきである、ならびに(4)標準化赤色反射前眼部写真を用いる参加者の皮質および水晶体後嚢のイメージング、これは、類別および研究適格性の確認のためにCRCに提出される。≧レベル2のAREDS(軽度混濁)の皮質または後嚢下いずれかのレンズイメージグレードを有する任意の対象は、適格ではない。
【0244】
有水晶体参加者の研究中の白内障評価および介入
研究の間、網膜研究者および白内障研究者は、以下に指定される除外のための基準を満たす白内障の存在について参加者を評価し続ける。
AEとして報告されるべき、医学的に適応となる白内障摘出のための基準は以下のとおりである:網膜研究者が、糖尿病性眼疾患および/または全体的な網膜の状態を安全にモニタリングおよび管理するために、網膜を適切に見るおよび/または画像化することができない。
任意のベースライン後訪問時に医学的に適応となる白内障摘出の基準が満たされる場合は、白内障摘出手術のための予定外の訪問が、白内障研究者とともに研究コーディネーターによってできる限り早くスケジュール化される。
【0245】
医学的に適応となる白内障摘出の基準は満たされないが、参加者が、任意のベースライン後訪問時に以下の2つの二次基準(以下に記載されるBCVA減少または参加者によって報告されるもの)のうちいずれかを満たす場合には、研究コーディネーターは、確証的ペンタカムおよびCRCによって類別されたレンズ写真を得るために予定外の訪問をできる限り早くスケジュール化するべきである。(その訪問でまだ入手可能でない場合):
1.BCVA減少:白内障の悪化の結果であると考えられる、研究の間に記録された最良値(ベースラインまたはベースライン後)と比較した、>5のETDRS文字のBCVAの低下。
2.参加者によって報告されるもの:白内障の悪化の結果であると考えられる、参加者によって報告されるようなライフスタイルの障害をもたらす視覚的症状。
【0246】
予定外の訪問の際に、≧1グレードのペンタカム核病期分類でベースラインからの核硬化の変化または中程度の白内障のCRCによって類別された皮質または後嚢下赤色反射レンズイメージング(すなわち、中心の5mmの5%の関与)が確認される場合に、白内障摘出の二次基準が満たされる。これは、AEとして報告されるべきであり、研究コーディネーターは、白内障研究者によるできる限り早い白内障摘出のために予定外の訪問をスケジュール化するべきである。
単焦点の1ピースアクリルIOLが、この研究において使用するために選択したレンズである。一部の例では、円環体(乱視補正)IOLを考慮することができるが、スポンサーおよび医療モニターによって別段承認されない限り、単焦点IOLと円環体レンズの間の費用のあらゆる相違は、参加者の責任である。多焦点または他のプレミアムIOLは、それらが網膜病態の任意の変化を正確に追跡する能力を減少させる可能性があるために、研究の間排除される。シリコン光学IOLは、任意のその後の網膜手順を複雑化するその能力のために使用されない。白内障外科医は、参加者に、光学術後VAおよび視覚的機能を提供する可能性が最も高い推奨事項を提供する場合がある。
術後、合併症を制限するように意図されたSOCプロトコールをたどる。好ましいSOCプロトコールとして以下が挙げられる:フルオロキノロン液滴、1日4回1週間、Ilevro(ネパフェナク)1日2回1ヶ月間および1日4回1週間で出発し、1日3回、1日2回、最後に、1日1回まで一度につき1週間漸減する酢酸プレドニゾロンを用いるステロイドテーパー。参加者の安全性のために、適切な場合には、医療モニターによる承認をもって、代替術後プロトコールを使用できる。
【0247】
(実施例8)
6.8 実施例8:糖尿病性網膜症(DR)を有し、中心窩を侵している糖尿病性黄斑浮腫(CI-DME)を有さない参加者における、1回または2回の上脈絡膜腔(SCS)注入によって送達された構築物II遺伝子療法の有効性、安全性および耐容性を評価するための第2相、無作為化、用量漸増、観察対照研究
【0248】
6.8.1 目的およびエンドポイント
【表8】


【0249】
6.8.2 組み入れ基準
研究に入るすべての参加者
評価された時点での眼房および血清中の構築物II TP濃度(ng/mL)は、処置アームによって、および研究全体によって記述的にまとめられる。参加者は、この研究にとって適格となるために以下の基準のすべてを満たさなければならない。すべての眼の基準は、研究眼を指す:
1.1型または2型糖尿病に続発するDRを有する25~89歳の年齢の男性または女性。参加者は、ヘモグロビンA1c≦10%(スクリーニング訪問2で得られた臨床検査評価によって、またはスクリーニング訪問2の前60日以内の日付の文書化された検査室報告書によって確認されるような)を有さなくてはならない。
2.スクリーニング訪問2の前180日以内のAAV8 NAbの陰性または低い(≦300)血清力価結果を有さなくてはならない。
3.スクリーニング訪問2後少なくとも6ヶ月間、研究者の見解でPRPまたは抗VEGF注入を安全に延期できる、中程度~重症NPDR、重症NPDRまたは軽度PDR(CRCによって決定されるような、標準の4広視野デジタル立体眼底写真を使用してETDRS-DRSSレベル47、53または61)を有する研究眼。
4.以下を含む、研究者による視力喪失と通常関連するハイリスク特徴の証拠が研究眼にないこと:
・視神経の1乳頭面積以内の新規血管。
・視神経乳頭でのあまり広範ではない新規血管と関連する、もしくは乳頭面積の半分もしくはそれより大きいサイズの他の場所での新規血管と関連する硝子体もしくは網膜前出血。
・臨床検査で研究眼において前眼部(例えば、虹彩または角)新血管新生の証拠がないこと。
5.≧69ETDRS文字(近似スネレン等価物20/40以上)の研究眼における最高矯正視力、両目が適格である場合には、研究眼は、登録前に研究者によって決定されるような、参加者の悪く見える眼でなくてはならないことは留意されたい。
6.研究眼におけるCI-DMEの以前の病歴は、過去6ヶ月以内に硝子体内抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド注入が与えられておらず、かつ、スクリーニング訪問2の前3年に10以下の文書化された注入が与えられた場合には許容される。
7.妊娠の可能性のある女性パートナーを有する性的に活発な男性参加者は、スクリーニング訪問2からベクター投与後24週間まで、コンドームおよび医学的に許容される形態のパートナーの避妊を進んで使用しなければならない。
8.すべての研究手順を進んで遵守できなければならず、研究期間中利用可能でなければならない。
9.書面で署名されたインフォームドコンセントを進んで提供できなければならない。
【0250】
構築物IIに切り替える48週目以降の観察対照アーム参加者
48週目以降に構築物IIを用いる処置に切り替えることを選択するラニビズマブ対照アーム中の参加者は、49週目の訪問で以下の基準のうちすべてを満たさなくてはならない:
1.研究眼は、無作為化で資格を与えられる眼でなくてはならない。
2.切り替えるコホート必要条件のNAb力価について資格を与えられなければならない。
3.参加者は、研究者の見解で、49週目でラニビズマブに対する適切な応答を達成しなくてはならず、研究者は、スポンサーとの協議後に構築物IIに切り替えることを推奨しなくてはならない。
4.中程度~重症NPDR、重症NPDRまたは軽度PDR(CRCによって決定されるような、標準の4広視野デジタル立体眼底写真を使用してETDRS-DRSSレベル47、53または61)を有する研究眼。
5.以下を含む、研究者による視力喪失と通常関連するハイリスク特徴の証拠が研究眼にないこと:
・視神経の1乳頭面積以内の新規血管、または視神経乳頭でのあまり広範ではない新規血管と関連する、もしくは乳頭面積の半分もしくはそれより大きいサイズの他の場所での新規血管と関連する硝子体もしくは網膜前出血。
6.臨床検査で研究眼において前眼部(例えば、虹彩または角)新血管新生の証拠がないこと。
7.>69ETDRS文字(近似スネレン等価物20/40以上)の研究眼におけるBCVA。
8.女性は、閉経後である(少なくとも連続12ヶ月月経がないと定義される)または外科的に不妊化されていなくてはならない(すなわち、両側性卵管結紮術/両側性卵管切除術、両側性卵管閉塞術、子宮摘出術または両側性卵巣摘出術を有する)。そうでない場合には、女性は、1日目に陰性血清および尿妊娠検査を有し、研究の間に追加の妊娠検査を進んで受け入れなくてはならない。
9.すべてのWOCBP(およびその男性パートナー)は、高度に効果的な避妊の方法を進んで使用しなければならず、WOCBPと性的関係にある男性参加者は、54週目から構築物II投与後24週間までコンドームを進んで使用しなくてはならない。
【0251】
6.8.3 除外基準
研究に入るすべての参加者
参加者は、以下の基準のいずれかが当てはまる場合には研究から除外される:
1.妊娠の可能性がある女性(すなわち、閉経後でも、外科的に不妊でもない女性)はこの臨床研究から除外される。
・閉経後は、連続12ヶ月月経がないと実証されると定義される。
・外科的に不妊は、両側性卵管結紮術/両側性卵管切除術、両側性卵管閉塞術、子宮摘出術または両側性卵巣摘出術を施されていると定義される。
2.以下の閾値:
・ハイデルベルグスペクトラリス:≧320μm
を使用する、CRCによって評価されるSD-OCTによって決定されるような、臨床検査で、または研究眼の中心亜領域内の研究者によって決定されるような任意の活性CI-DMEの存在。
3.研究者による、DR以外の原因からの研究眼における新血管新生。
4.研究者によって決定されるような、臨床検査での視神経蒼白の研究眼における証拠。
5.研究眼におけるPRPまたは網膜レーザーの任意の証拠もしくは文書化された病歴。
6.SCS手順を干渉する可能性がある研究眼における眼または眼周囲の感染。
7.スクリーニング訪問2後6ヶ月以内に外科的介入を必要とする可能性がある研究眼における任意の眼の状態(硝子体出血、白内障、網膜牽引、網膜上膜など)または研究者の見解で、参加者のリスクを増大し得る、視力喪失を防ぐもしくは処置するために研究の間に医学的もしくは外科的介入を必要とし得る、もしくは研究手順もしくは評価を干渉し得る研究眼における任意の状態。
8.研究眼における活発な網膜剥離または病歴。
9.スクリーニング訪問2時の研究眼におけるインプラントの存在(眼球内レンズを除く)。
10.以前の硝子体切除術を有する参加者。
11.IOP>23mmHg、緑内障を処置するための2回のIOP低下性薬物適用、任意の侵襲的手順(例えば、シャント、チューブまたはMIGSデバイス、しかし、選択的レーザー線維柱帯切除術およびアルゴンレーザー線維柱帯形成術は許可される)によって制御されない、または中心固定を侵襲する視野喪失によって定義されるような、研究眼における進行した緑内障。
12.スクリーニング訪問2の前12週間以内の研究眼における眼球内手術の病歴、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)嚢切開術は、スクリーニング訪問2の前>10週間で実施された場合には許可される。
13.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の抗VEGF療法を含む研究眼における硝子体内療法の履歴およびスクリーニング訪問2の3年以内の研究眼における10回より多い以前の抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド硝子体内注入の文書化。
14.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の研究眼における任意の以前の硝子体内ステロイド注入、スクリーニング訪問2の前12ヶ月以内のOzurdex(登録商標)の研究眼における投与またはスクリーニング訪問2前36ヶ月以内のIluvien(登録商標)の研究眼における投与。
15.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の任意の以前の全身抗VEGF処置、またはスクリーニング訪問2の後、次の48週間の間の全身抗VEGF療法を使用する計画。
16.網膜毒性を引き起こしたと知られている療法またはVAに影響を及ぼし得る、もしくは公知の網膜毒性を有する任意の薬物、例えば、クロロキンもしくはヒドロキシクロロキンとの同時療法の履歴。
17.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の心筋梗塞、脳血管発作または一過性脳虚血発作。
18.最大の医学的処置にもかかわらず制御されない高血圧症(収縮期血圧[BP]>180mmHg、拡張期BP>100mmHg)、BPが180/100mmHg未満にされ、研究者および/またはプライマリケア医によって決定されるように降圧処置によって安定化される場合には、参加者は、適格性について再審査され得るということは留意されたい。
19.研究者の見解で、研究への参加を排除するであろう全身状態(血糖管理の不良、制御されない高血圧症など)。
20.研究者の見解で、眼の外科手技または治癒プロセスに干渉する可能性がある任意の同時処置。
21.スクリーニング訪問2の前5年における化学療法および/または放射線照射を必要とする免疫系を損なう可能性がある、療法を伴うか伴わない悪性腫瘍または血液悪性腫瘍の病歴。局在基底細胞癌は許可される。
22.研究者の見解で、研究においてすべての評価およびフォローアップを完了するための参加者の安全性または能力を損なう可能性がある、重篤な、慢性のまたは不安定な医学的もしくは心理的状態を有する。
23.スクリーニング訪問2時に以下の検査室の値を有する任意の参加者は、研究から除外される:
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>2.5×正常の上限(ULN)。
・参加者がこれまでに知られているジルベール症候群の病歴を有さない限りおよび総ビリルビンの<35%の抱合ビリルビンを示す分画ビリルビンを有さない限り、総ビリルビン>1.5×ULN。
・参加者が抗凝固剤処置されない限り、プロトロンビン時間>1.5×ULN。
・男性参加者についてヘモグロビン<10g/dLおよび女性参加者について<9g/dL。
・血小板<100×103/μL。
・推定糸球体濾過速度<30mL/分/1.73m2
24.透析または腎臓移植を必要とする慢性腎不全の病歴。
25.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の集中的なインスリン処置(ポンプまたは1日に複数回の注入)の開始または1日目の48週間以内のそのようにする計画。
26.構築物IIを含む任意の他の遺伝子療法研究への参加、または登録前30日以内もしくは治験薬の5半減期以内のいずれか長い方の任意の治験薬の投薬または登録後6ヶ月以内に治験薬を使用する任意の計画。
27.ラニビズマブまたはその構成成分のいずれかに対する既知過敏症。
【0252】
構築物IIに切り替える48週目以降の観察対照アーム参加者
48週目以降に構築物IIを用いる処置に切り替えることを選択する観察対照アーム中の参加者は、糖尿病性合併症のためにSOCとして投与される研究眼における処置を除いて(すなわち、研究眼においてSOCを受け取ることは、49週目に構築物IIに移行することにとって除外性ではない)、彼らがスクリーニングのために指定された除外基準のいずれかを満たす場合にはそうするために不適格となる。
【0253】
6.8.4 施される研究介入
適格参加者は、研究眼においていずれかの構築物IIの単回用量(用量1または用量2)を受け取るように割り当てられる、または観察のみについて追跡される。
【表9】
【0254】
(実施例9)
6.9 実施例9:ブタにおいて注入をモニタリングするための赤外線サーマルカメラの使用
FLIR T530赤外線サーマルカメラを使用して、生存するブタにおいて眼注入後熱プロファイルを特徴付けた。あるいは、FLIR T420、FLIR T440、Fluke Ti400またはFLIRE60赤外線サーマルカメラを使用する。研究では、室温生理食塩水(68~72°F)の上脈絡膜(図6)、不成功の上脈絡膜、硝子体内および眼外流出注入を評価した。用量容量は、冷蔵庫から注入のための室温への溶液を用いて注入のたびに100μLとした。
【0255】
赤外線カメラレンズから眼の表面までの距離は、およそ1フィートで設定した。見るためのカメラでの手動での温度範囲は、~80-90°Fに設定した。イメージングオペレーターは、カメラを保持し、ビデオ録画中に注入部位に向けられたセンタースクリーンカーソルを設定した。ブタに、より良好な視感度のために眼を眼球突出するために生理食塩水の眼球後注入を与え、眼瞼を切断して引き戻し、注射部位で強膜を露出させた。サーマルビデオ録画の間に鉄フィルターを使用した。
上脈絡膜注入の成功は、(a)暗い色のゆっくりとした広い放射状の広がり、(b)始まりでの非常に暗い色、および(c)明るい色への注入物の段階的な変化、すなわち、より明るい色によって示される温度の勾配によって特徴付けられた。上脈絡膜注入の不成功は、(a)暗い色の広がりがないことおよび(b)注入部位に局在する色のわずかな変化によって特徴付けられた。硝子体内注入の成功は、(a)暗い色の広がりがないこと、(b)注入部位に局在する極めて暗い色への最初の変化および(c)注入後に生じ、時間につれて発達する、より暗い色への眼全体の段階的な均一の変化によって特徴付けられた。眼外流出は、(a)眼の外側外面での迅速に流れる流れ、(b)始まりでの非常に暗い色および(c)より明るい色への迅速な変化によって特徴付けられた。
【0256】
(実施例10)
6.10 実施例10:ヒト患者において注入をモニタリングするための赤外線サーマルカメラの使用
糖尿病性網膜症(DR)を呈する対象に、ラニビズマブFabをコードするAAV8を、硝子体液中、少なくとも0.330μg/mLのCminの導入遺伝子産物の濃度を3ヶ月間もたらすのに十分な用量で投与する(例えば、網膜下投与、上脈絡膜投与、または硝子体内投与によって)。FLIR T530赤外線サーマルカメラを使用して、手順の際に注入を評価し、注入後に評価して、投与が成功裏に完了したか、または投与の誤投与のいずれかを確認するために利用可能である。あるいは、FLIR T420、FLIR T440、Fluke Ti400またはFLIRE60赤外線サーマルカメラを使用する。処置後、臨床効果の徴候ならびにDRの徴候および症状の改善について、対象を臨床的に評価する。
【0257】
(実施例11)
6.11 実施例11:糖尿病性網膜症(DR)を有し、中心窩を侵している糖尿病性黄斑浮腫(CI-DME)を有さない参加者における、実施例11:1回または2回の上脈絡膜腔(SCS)注入によって送達された構築物II遺伝子療法の有効性、安全性および耐容性を評価するための第2相、無作為化、用量漸増、観察対照研究
この実施例は、実施例8の最新バージョンであり、糖尿病性網膜症(DR)を有する参加者における構築物II遺伝子療法の第2a相、用量評価の概要を提供する。
【0258】
6.11.1 目的およびエンドポイント
【表10】


【0259】
6.11.2 組み入れ基準
参加者は、この研究にとって適格となるために以下の基準のすべてを満たさなければならない。すべての眼性基準は研究眼を指す:
【0260】
1.1型または2型糖尿病に続発するDRを有する25~89歳の年齢の男性または女性。参加者は、ヘモグロビンA1c≦10%(スクリーニング訪問2で得られた臨床検査評価によって、またはスクリーニング訪問2の前60日以内の日付の文書化された検査室報告書によって確認されるような)を有さなくてはならない。
2.スクリーニング訪問2後少なくとも6ヶ月間、研究者の見解でPRPまたは抗VEGF注入を安全に延期できる、中程度~重症NPDR、重症NPDRまたは軽度PDR(CRCによって決定されるような、標準の4広視野デジタル立体眼底写真を使用してETDRS-DRSSレベル47、53または61)を有する研究眼。
3.以下を含む、研究者による視力喪失と通常関連するハイリスク特徴の証拠が研究眼にないこと:
・視神経の1乳頭面積以内の新規血管。
・視神経乳頭でのあまり広範ではない新規血管と関連する、もしくは乳頭面積の半分もしくはそれより大きいサイズの他の場所での新規血管と関連する硝子体もしくは網膜前出血。
・臨床検査で研究眼において前眼部(例えば、虹彩または角)新血管新生の証拠がないこと。
4.AAV8 NAbの陰性または低い(≦300)血清力価結果を有さなくてはならない。
5.≧69ETDRS文字(近似スネレン等価物20/40以上)の研究眼における最高矯正視力、両目が適格である場合には、研究眼は、登録前に研究者によって決定されるような、参加者の悪く見える眼でなくてはならないことは留意されたい。
6.研究眼におけるCI-DMEの以前の病歴は、過去6ヶ月以内に硝子体内抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド注入が与えられておらず、かつ、スクリーニング訪問2の前3年に10以下の文書化された注入が与えられた場合には許容される。
7.妊娠の可能性のある女性パートナーを有する性的に活発な男性参加者は、スクリーニング訪問2からベクター投与後24週間まで、コンドームおよび医学的に許容される形態のパートナーの避妊を進んで使用しなければならない。
8.すべての研究手順を進んで遵守できなければならず、研究期間中利用可能でなければならない。
9.書面で署名されたインフォームドコンセントを進んで提供できなければならない。
【0261】
6.11.3 除外基準
参加者は、以下の基準のいずれかが当てはまる場合には研究から除外される:
1.妊娠の可能性がある女性(すなわち、閉経後でも、外科的に不妊でもない女性)はこの臨床研究から除外される。
・閉経後は、連続12ヶ月月経がないと実証されると定義される。
・外科的に不妊は、両側性卵管結紮術/両側性卵管切除術、両側性卵管閉塞術、子宮摘出術または両側性卵巣摘出術を施されていると定義される。
2.以下の閾値:
・ハイデルベルグスペクトラリス:320μmより大きいCST
を使用する、CRCによって評価されるSD-OCTによって決定されるような、臨床検査で、または研究眼の中心亜領域厚(CST)内の研究者によって決定されるような任意の活性CI-DMEの存在。
3.研究者による、DR以外の原因からの研究眼における新血管新生。
4.研究者によって決定されるような、臨床検査での視神経蒼白の研究眼における証拠。
5.研究眼におけるPRPまたは網膜レーザーの任意の証拠もしくは文書化された病歴。
6.SCS手順を干渉する可能性がある研究眼における眼または眼周囲の感染。
7.スクリーニング訪問2後6ヶ月以内に外科的介入を必要とする可能性がある研究眼における任意の眼の状態(硝子体出血、白内障、網膜牽引、網膜上膜など)または研究者の見解で、参加者のリスクを増大し得る、視力喪失を防ぐもしくは処置するために研究の間に医学的もしくは外科的介入を必要とし得る、もしくは研究手順もしくは評価を干渉し得る研究眼における任意の状態。
8.研究眼における活発な網膜剥離または病歴。
9.スクリーニング訪問2時の研究眼におけるインプラントの存在(眼球内レンズを除く)。
10.以前の硝子体切除術を有する参加者。
11.IOP>23mmHg、緑内障を処置するための2回のIOP低下性薬物適用、任意の侵襲的手順(例えば、シャント、チューブまたはMIGSデバイス、しかし、選択的レーザー線維柱帯切除術およびアルゴンレーザー線維柱帯形成術は許可される)によって制御されない、または中心固定を侵襲する視野喪失によって定義されるような、研究眼における進行した緑内障。
12.スクリーニング訪問2の前12週間以内の研究眼における眼球内手術の病歴、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)嚢切開術は、スクリーニング訪問2の前>10週間で実施された場合には許可される。
13.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の抗VEGF療法を含む研究眼における硝子体内療法の履歴およびスクリーニング訪問2の前36ヶ月以内の研究眼における10回より多い以前の抗VEGFまたは短時間作用型ステロイド硝子体内注入の文書化。
14.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の研究眼における任意の以前の硝子体内ステロイド注入、スクリーニング訪問2の前12ヶ月以内のOzurdex(登録商標)の研究眼における投与またはスクリーニング訪問2前36ヶ月以内のIluvien(登録商標)の研究眼における投与。
15.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の任意の以前の全身抗VEGF処置、またはスクリーニング訪問2の後、次の48週間の間の全身抗VEGF療法を使用する計画。
16.網膜毒性を引き起こしたと知られている療法またはVAに影響を及ぼし得る、もしくは公知の網膜毒性を有する任意の薬物、例えば、クロロキンもしくはヒドロキシクロロキンとの同時療法の履歴。
17.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の心筋梗塞、脳血管発作または一過性脳虚血発作。
18.最大の医学的処置にもかかわらず制御されない高血圧症(収縮期血圧[BP]>180mmHg、拡張期BP>100mmHg)、BPが180/100mmHg未満にされ、研究者および/またはプライマリケア医によって決定されるように降圧処置によって安定化される場合には、参加者は、適格性について再審査され得るということは留意されたい。
19.研究者の見解で、研究への参加を排除するであろう全身状態(血糖管理の不良、制御されない高血圧症など)。
20.研究者の見解で、眼の手順または治癒プロセスに干渉する可能性がある任意の同時処置。
21.スクリーニング訪問2の前5年における化学療法および/または放射線照射を必要とする免疫系を損なう可能性がある、療法を伴うか伴わない悪性腫瘍または血液悪性腫瘍の病歴。局在基底細胞癌は許可される。
22.研究者の見解で、研究においてすべての評価およびフォローアップを完了するための参加者の安全性または能力を損なう可能性がある、重篤な、慢性のまたは不安定な医学的もしくは心理的状態を有する。
23.スクリーニング訪問2時に以下の除外性の検査室の値のうちいずれか1つを満たす:
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>2.5×正常の上限(ULN)。
・参加者がこれまでに知られているジルベール症候群の病歴を有さない限りおよび総ビリルビンの<35%の抱合ビリルビンを示す分画ビリルビンを有さない限り、総ビリルビン>1.5×ULN。
・参加者が抗凝固剤処置されない限り、プロトロンビン時間>1.5×ULN。
・男性参加者についてヘモグロビン<10g/dLおよび女性参加者について<9g/dL。
・血小板<100×103/μL。
・推定糸球体濾過速度<30mL/分/1.73m2
24.透析または腎臓移植を必要とする慢性腎不全の病歴。
25.スクリーニング訪問2の前6ヶ月以内の集中的なインスリン処置(ポンプまたは1日に複数回の注入)の開始または1日目の48週間以内のそのようにする計画。
26.構築物IIを含む任意の他の遺伝子療法研究への参加、または登録前30日以内もしくは治験薬の5半減期以内のいずれか長い方の任意の治験薬の投薬または登録後6ヶ月以内に治験薬を使用する任意の計画。
27.ラニビズマブまたはその構成成分のいずれかに対する既知過敏症。
【0262】
6.11.4 施される研究介入
適格参加者は、研究眼においていずれかの構築物IIの単回用量(用量1または用量2)を受け取るように割り当てられる、または観察のみについて追跡される。構築物IIに関する情報は、以下である。
【0263】
【表11】
【0264】
6.11.5 ベクター脱落
ベクター濃度の測定のために構築物II参加者について、血液(血清)、尿および涙のサンプル採取を実施する。サンプルの処理、取り扱いおよび輸送に関する追加の情報については、研究者の実験室マニュアルを参照されたい。
これらの生物学的流体において収集された脱落データは、標的患者集団における構築物IIの脱落プロファイルを提供し、未処置個体への伝播の可能性を推定するために使用される。脱落は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を使用して測定される。
【0265】
(実施例12)
6.12 実施例12:カニクイザルにおける構築物IIの毒性研究
カニクイザルでは、構築物IIを、微量注入器デバイスを使用して最大3×1012GC/眼の用量で上脈絡膜に投与した。動物を、3ヶ月後に評価した。
この研究では、微量注入器は、構築物IIをSCS腔中に成功裏に投与し、デバイスまたは構築物IIの使用と関連する有害な所見は観察されなかった。網膜およびRPE/脈絡膜において形質導入によって決定される広範な体内分布はなく、眼房および硝子体液の両方において検出可能なTP(抗VEGF Fab)があった。この研究において、有害作用が観察されないレベル(NOAEL)は、試験した最高用量である3×1012GC/眼であった。3ヶ月の非ヒト霊長類(NHP)毒性研究におけるすべての用量で、ベクターDNAが肝臓において検出され、これは、ベクターは上脈絡膜注入後に脈絡毛細管を介して全身循環に入る場合があることを示す。試験された最高用量(3×1012GC/眼)で、低レベルのベクターDNAがまた、さらなる末梢組織(後頭葉、海馬、視床、心臓、肺、腎臓および卵巣)において検出された。しかし、抗VEGF Fabの血清濃度の増大または全身毒性の何らかの証拠はなかった。さらに、遺伝子療法において一般に見られる所見である研究の最後での全血におけるベクターDNAの存在は、観察された末梢の体内分布の一部に影響を及ぼした可能性がある。
【0266】
要約すると、NHPにおける上脈絡膜投薬について、NOAELは、試験した最高用量である3×1012GC/眼であった。肝臓におけるベクターDNAの存在は、血清抗VEGF Fabの増大がなかったので、重要性が不明である。最高用量のみで、低レベルのベクターDNAがまた、さらなる末梢組織において検出されたが、ベクターDNAは同時点で血液においても検出されたので、重要性が不明である。したがって、末梢組織体内分布について、重量ベースの安全性マージンが使用されている。最高用量、3×1012GC/眼または1.5×1012GC/kgで、肝臓中のベクターDNAと相関していたTPの全身濃度の増大の証拠または何らかの肝臓変化の証拠はなかった。したがって、ヒトでは、最大1.5×1011GC/kgの用量は、3ヶ月の毒性研究において投与された最高用量よりも10倍低い用量と同等であるので許容されると考えられる。
SCS微量注入器内で、100μLの単回注入容量をヒトにおいて容易に投与できる。各マイクロニードルは、ニードルあたり合計100μLに目盛付けされる。
【0267】
7. 均等物
本発明はその特定の実施形態を参照して詳細に記載されるが、機能的に均等である変動は、本発明の範囲内にあるということは理解されよう。実際、本明細書において示され、記載されるものに加えて、前述の説明および添付の図面から本発明の種々の改変が、当業者には明らかとなろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るものとする。当業者ならば、日常の実験のみを使用して、本明細書において記載される本発明の特定の実施形態の多数の均等物を認識し、または確認できるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0268】
本明細書に記載されているすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願のそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図9A
図9B
図10A
図10B
【配列表】
2022545967000001.app
【国際調査報告】