(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(54)【発明の名称】無線装置の高周波曝露を抑制する方法及び装置並びに無線装置
(51)【国際特許分類】
H04W 24/08 20090101AFI20221025BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20221025BHJP
H04W 52/38 20090101ALI20221025BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W88/02 150
H04W52/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513976
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2020112956
(87)【国際公開番号】W WO2021043153
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】201910822948.8
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 弋凌
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲荊▼ ▲偉▼涛
(72)【発明者】
【氏名】隋 ▲藝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 志君
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA35
5K067EE02
5K067EE34
5K067FF18
5K067FF28
5K067GG08
5K067LL11
(57)【要約】
本出願の実施形態では、無線装置の高周波曝露を抑制する方法及び装置並びに無線装置を提供する。方法は、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得するステップであって、対象時間窓は基準時間窓である、ステップと、平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定するステップであって、出力閾値は、平均高周波曝露値が属する既定の値範囲に対応する既定の出力値である、ステップと、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制するステップであって、調節済み時間窓の開始時点が対象時間窓の終了時点であり、調節済み時間窓の持続時間が基準時間窓の持続時間未満である、ステップとを含む。本方法では、実際の適用場面に応じて予め設定されるようにして出力閾値が適切に設定される。したがって、出力閾値に基づいて無線装置の高周波曝露を抑制しても無線装置の通信パフォーマンスに影響せず、この抑制は適用範囲が広い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線装置の高周波曝露を抑制する方法であって、
対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得するステップであって、前記対象時間窓は基準時間窓である、ステップと、
前記平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定するステップであって、前記出力閾値は、前記平均高周波曝露値が属する既定の値範囲に対応する既定の出力値である、ステップと、
調節済み時間窓にわたって前記出力閾値に基づいて前記無線装置の送信出力を抑制するステップであって、前記調節済み時間窓の開始時点が前記対象時間窓の終了時点であり、前記調節済み時間窓の持続時間が前記基準時間窓の持続時間未満である、ステップと
を含む、無線装置の高周波曝露を抑制する方法。
【請求項2】
前記出力閾値は送信出力閾値であり、
調節済み時間窓にわたって前記出力閾値に基づいて前記無線装置の送信出力を抑制する前記ステップは、
実際の送信出力が前記送信出力閾値以下になるように、前記調節済み時間窓にわたって前記無線装置の前記実際の送信出力を調節するステップ
を含む、請求項1に記載の高周波曝露を抑制する方法。
【請求項3】
前記出力閾値は出力バックオフ量閾値であり、
調節済み時間窓にわたって前記出力閾値に基づいて前記無線装置の送信出力を抑制する前記ステップは、
目標出力バックオフ量に基づいて送信出力バックオフを実行するように前記無線装置を前記調節済み時間窓にわたって制御するステップであって、前記目標出力バックオフ量は前記出力バックオフ量閾値以上である、ステップ
を含む、請求項1に記載の高周波曝露を抑制する方法。
【請求項4】
対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する前記ステップは、
1つ以上の第1のリアルタイム送信出力を取得するステップであって、前記第1のリアルタイム送信出力は、前記対象時間窓にわたる既定期間で取得される前記無線装置のリアルタイム送信出力である、ステップと、
第1の個数を決定するステップであって、前記第1の個数は、取得された前記第1のリアルタイム送信出力の個数である、ステップと、
前記第1のリアルタイム送信出力の各々に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値を決定するステップと、
第1の加算値を生成するステップであって、前記第1の加算値は、前記第1のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ステップと、
前記平均高周波曝露値を生成するステップであって、前記平均高周波曝露値は、前記第1の個数に対する前記第1の加算値の比である、ステップと
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する方法。
【請求項5】
対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する前記ステップは、
前記対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割するステップと、
第2のリアルタイム送信出力を取得するステップであって、前記第2のリアルタイム送信出力は、前記時間サブ窓の各々で取得される前記無線装置のリアルタイム送信出力である、ステップと、
第2の個数を決定するステップであって、前記第2の個数は前記時間サブ窓の個数である、ステップと、
前記第2のリアルタイム送信出力の各々に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値を決定するステップと、
第2の加算値を生成するステップであって、前記第2の加算値は、前記第2のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ステップと、
前記平均高周波曝露値を生成するステップであって、前記平均高周波曝露値は、前記第2の個数に対する前記第2の加算値の比である、ステップと
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する方法。
【請求項6】
対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する前記ステップは、
前記対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割するステップと、
前記時間サブ窓の各々にわたるサブ窓平均高周波曝露値を取得するステップと、
第2の個数を決定するステップであって、前記第2の個数は前記時間サブ窓の個数である、ステップと、
第3の加算値を生成するステップであって、前記第3の加算値は、前記サブ窓平均高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ステップと、
前記平均高周波曝露値を生成するステップであって、前記平均高周波曝露値は、前記第2の個数に対する前記第3の加算値の比である、ステップと
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する方法。
【請求項7】
無線装置の高周波曝露を抑制する装置であって、
対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得するように構成された取得モジュールであって、前記対象時間窓は基準時間窓である、取得モジュールと、
前記平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定するように構成された決定モジュールであって、前記出力閾値は、前記平均高周波曝露値が属する既定の値範囲に対応する既定の出力値である、決定モジュールと、
調節済み時間窓にわたって前記出力閾値に基づいて前記無線装置の送信出力を抑制するように構成された処理モジュールであって、前記調節済み時間窓の開始時点が前記対象時間窓の終了時点であり、前記調節済み時間窓の持続時間が前記基準時間窓の持続時間未満である、処理モジュールと
を備える、無線装置の高周波曝露を抑制する装置。
【請求項8】
前記出力閾値は送信出力閾値であり、
前記処理モジュールは、
実際の送信出力が前記送信出力閾値以下であるように、前記調節済み時間窓にわたって前記無線装置の前記実際の送信出力を調節すること
を行うように特に構成される、請求項7に記載の高周波曝露を抑制する装置。
【請求項9】
前記出力閾値は出力バックオフ量閾値であり、
前記処理モジュールは、
目標出力バックオフ量に基づいて送信出力バックオフを実行するように前記無線装置を前記調節済み時間窓にわたって制御することであって、前記目標出力バックオフ量は前記出力バックオフ量閾値以上である、こと
を行うように特に構成される、請求項7に記載の高周波曝露を抑制する装置。
【請求項10】
前記取得モジュールは、
1つ以上の第1のリアルタイム送信出力を取得することであって、前記第1のリアルタイム送信出力は、前記対象時間窓にわたる既定期間で取得される前記無線装置のリアルタイム送信出力である、ことと、
第1の個数を決定することであって、前記第1の個数は、取得された前記第1のリアルタイム送信出力の個数である、ことと、
前記第1のリアルタイム送信出力の各々に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値を決定することと、
第1の加算値を生成することであって、前記第1の加算値は、前記第1のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ことと、
前記平均高周波曝露値を生成することであって、前記平均高周波曝露値は、前記第1の個数に対する前記第1の加算値の比である、ことと
を行うように特に構成される、請求項7から9のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する装置。
【請求項11】
前記取得モジュールは、
前記対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割することと、
第2のリアルタイム送信出力を取得することであって、前記第2のリアルタイム送信出力は、前記時間サブ窓の各々で取得される前記無線装置のリアルタイム送信出力である、ことと、
第2の個数を決定することであって、前記第2の個数は前記時間サブ窓の個数である、ことと、
前記第2のリアルタイム送信出力の各々に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値を決定することと、
第2の加算値を生成することであって、前記第2の加算値は、前記第2のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ことと、
前記平均高周波曝露値を生成することであって、前記平均高周波曝露値は、前記第2の個数に対する前記第2の加算値の比である、ことと
を行うように特に構成される、請求項7から9のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する装置。
【請求項12】
前記取得モジュールは、
前記対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割することと、
前記時間サブ窓の各々にわたるサブ窓平均高周波曝露値を取得することと、
第2の個数を決定することであって、前記第2の個数は前記時間サブ窓の個数である、ことと、
第3の加算値を生成することであって、前記第3の加算値は、前記サブ窓平均高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ことと、
前記平均高周波曝露値を生成することであって、前記平均高周波曝露値は、前記第2の個数に対する前記第3の加算値の比である、ことと
を行うように特に構成される、請求項7から9のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する装置。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する装置を備える、無線装置。
【請求項14】
装置であって、前記装置はプロセッサを備え、前記プロセッサは、メモリに接続され、前記メモリから命令を読み出し、前記命令に従って請求項1から6のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する方法を実行するように構成される、装置。
【請求項15】
コンピュータ記憶媒体であって、前記コンピュータ記憶媒体は命令を備え、前記命令がコンピュータで実行されるとき、前記コンピュータが請求項1から6のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する方法を実行可能となる、コンピュータ記憶媒体。
【請求項16】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータで実行されるとき、前記コンピュータが請求項1から6のいずれか一項に記載の高周波曝露を抑制する方法を実行可能となる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は無線通信技術の分野に関し、特に、無線装置の高周波曝露を抑制する方法及び装置並びに無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の発達にともない、携帯電話器、タブレットコンピュータ(portable android device,Pad)やパーソナル・デジタル・アシスタント(personal digital assistant,PDA)などの様々な無線装置の使用がより一般的になっている。これとともに、無線装置は人々に便益をもたらす一方で高周波曝露の問題ももたらしている。言い換えると、無線装置の高周波放射エネルギーが人の健康を害している。高周波曝露の問題に対して、国や、連邦通信委員会(federal communications commission,FCC)、欧州共同体(CE)などの各界によって、一定の時間(たとえば6分間)にわたる平均高周波曝露値を定める対応基準が新たに作成され、この平均高周波曝露値は基準により定められる最大高周波曝露値を超えないものとされた。本明細書では、基準により定められる一定の長さに等しい長さを持つ期間を基準時間窓と略称し、基準により定められる最大高周波曝露値を基準高周波曝露値と略称する。
【0003】
従来の技術では、基準高周波曝露値を超えないように任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値を抑制するために、無線装置の動作状態がリアルタイムで検出され、無線装置の高周波曝露が決定される。高周波曝露値が大きく、基準高周波曝露値を超えるおそれがあるとき、無線装置の送信出力が出力バックオフにより下げられるので、各時点での無線装置の高周波曝露値は基準高周波曝露値を超えない。このようにして、基準高周波曝露値未満になるように無線装置の平均高周波曝露値が抑制される。これの代わりに、ユーザが無線装置に近いか否かをリアルタイムで検知するセンサが用いられる。ユーザが無線装置に近いことが検知されると、無線装置の送信出力が出力バックオフにより下げられる。このようにして、基準高周波曝露値未満になるように無線装置の平均高周波曝露値が抑制される。無線装置の高周波曝露を抑制する上記の2つの仕方では、無線装置の実際の動作状態に基づいて出力バックオフがリアルタイムで実行される。基準高周波曝露値未満になるように無線装置の平均高周波曝露値が抑制されることが可能であるが、無線装置の通信パフォーマンスに対する影響が大きく、通信途絶さえ生じるおそれがある。
【0004】
無線装置の高周波曝露を抑制する既存の方法を用いると、無線装置の通信パフォーマンスに対する影響が大きく、通信途絶さえ生じ、この既存の方法の適用範囲は狭いことが分かる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の実施形態では、無線装置の高周波曝露を抑制する既存の方法を用いると、無線装置の通信パフォーマンスに対する影響が大きく、通信途絶さえ生じ、この既存の方法の適用範囲は狭いという課題を解決する、無線装置の高周波曝露を抑制する方法及び装置を提供する。
【0006】
第1の態様によれば、本出願の実施形態では無線装置の高周波曝露を抑制する方法を提供する。方法は、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得するステップであって、対象時間窓は基準時間窓である、ステップと、平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定するステップであって、出力閾値は、平均高周波曝露値が属する既定の値範囲に対応する既定の出力値である、ステップと、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制するステップであって、調節済み時間窓の開始時点が対象時間窓の終了時点であり、調節済み時間窓の持続時間が基準時間窓の持続時間未満である、ステップとを含む。
【0007】
本実現例では、抑制の開始後、最初に、調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値が取得され、次いで、平均高周波曝露値に対応する出力閾値が決定され、最後に、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力が抑制される。実際の適用場面に応じて出力閾値が設定されるので、任意の調節済み時間窓で対応する出力閾値に基づいて無線装置が動作し、したがって、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。これに加えて、出力閾値が適切に設定されると、無線装置の通信パフォーマンスが影響を受けない。さらに、平均高周波曝露値の既定の値範囲と既定の出力値との間の既定の対応関係に基づいて出力閾値を決定することができ、リアルタイムに計算する必要がない。したがって、計算量が少なく、高周波曝露抑制効率が高い。
【0008】
第1の態様に関して、第1の態様の第1の可能な実現例では、出力閾値は送信出力閾値である。調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制するステップは、実際の送信出力が送信出力閾値以下になるように、調節済み時間窓にわたって無線装置の実際の送信出力を調節するステップを含む。
【0009】
本実現例では、各調節済み時間窓に対応する送信出力閾値が決定されてもよく、無線装置の実際の送信出力が各調節済み時間窓で対応する送信出力閾値以内で抑制されるだけで済む。このようにして、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。したがって、抑制過程が単純であり、抑制効率が高い。
【0010】
第1の態様に関して、第1の態様の第2の可能な実現例では、出力閾値は出力バックオフ量閾値である。調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制するステップは、目標出力バックオフ量に基づいて送信出力バックオフを実行するように無線装置を調節済み時間窓にわたって制御するステップであって、目標出力バックオフ量は出力バックオフ量閾値以上である、ステップを含む。
【0011】
本実現例では、各調節済み時間窓に対応する出力バックオフ量閾値が平均高周波曝露値の既定の値範囲と既定の出力値との既定の対応関係に基づいて決定されてもよく、対応する出力バックオフ量閾値に基づいて無線装置に送信出力バックオフが各調節済み時間窓内に限定して実行される。このようにして、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。実際の適用場面に応じて予め設定されるようにして出力バックオフ量閾値が適切に設定され、したがって、無線装置の通信パフォーマンスに影響せず、適用範囲が広い。
【0012】
第1の態様に関して、第1の態様の第3の可能な実現例では、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得するステップは、1つ以上の第1のリアルタイム送信出力を取得するステップであって、第1のリアルタイム送信出力は、対象時間窓にわたる既定期間で取得される無線装置のリアルタイム送信出力である、ステップと、第1の個数を決定するステップであって、第1の個数は、取得された第1のリアルタイム送信出力の個数である、ステップと、第1のリアルタイム送信出力の各々に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値を決定するステップと、第1の加算値を生成するステップであって、第1の加算値は、第1のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ステップと、平均高周波曝露値を生成するステップであって、平均高周波曝露値は、第1の個数に対する第1の加算値の比である、ステップとを含む。
【0013】
本実現例では、無線装置の複数のリアルタイム送信出力が対象時間窓にわたる既定期間で取得され、リアルタイム送信出力の各々に対応するリアルタイム高周波曝露値が決定され、複数のリアルタイム高周波曝露値の平均値が計算され、この平均値が対象時間窓にわたる平均高周波曝露値として決定される。この過程で、既定期間の長さが実際の適用場面の要件に応じて設定されてもよい。実際の適用場面についての高周波曝露抑制の精度に対する要件が高い場合、既定期間の長さは短く設定されてもよい。実際の適用場面についての高周波曝露抑制の精度に対する要件が低い場合、既定期間の長さは長く設定されてもよい。したがって、抑制の柔軟性が高く、適用範囲が広い。
【0014】
第1の態様に関して、第1の態様の第4の可能な実現例では、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得するステップは、対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割するステップと、第2のリアルタイム送信出力を取得するステップであって、第2のリアルタイム送信出力は、時間サブ窓の各々で取得される無線装置のリアルタイム送信出力である、ステップと、第2の個数を決定するステップであって、第2の個数は時間サブ窓の個数である、ステップと、第2のリアルタイム送信出力の各々に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値を決定するステップと、第2の加算値を生成するステップであって、第2の加算値は、第2のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ステップと、平均高周波曝露値を生成するステップであって、平均高周波曝露値は、第2の個数に対する第2の加算値の比である、ステップとを含む。
【0015】
本実現例では、対象時間窓が少なくとも2つの時間サブ窓に分割され、時間サブ窓の各々でリアルタイム送信出力がランダムに取得され、リアルタイム送信出力の各々に対応するリアルタイム高周波曝露値が決定され、すべてのリアルタイム高周波曝露値の平均値が計算され、この平均値が対象時間窓にわたる平均高周波曝露値として決定される。平均高周波曝露値を取得する過程が単純であり、したがって、以降の高周波曝露抑制の効率が改善されることが可能である。
【0016】
第1の態様に関して、第1の態様の第5の可能な実現例では、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得するステップは、対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割するステップと、時間サブ窓の各々にわたるサブ窓平均高周波曝露値を取得するステップと、第2の個数を決定するステップであって、第2の個数は時間サブ窓の個数である、ステップと、第3の加算値を生成するステップであって、第3の加算値は、サブ窓平均高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ステップと、平均高周波曝露値を生成するステップであって、平均高周波曝露値は、第2の個数に対する第3の加算値の比である、ステップとを含む。
【0017】
本実現例では、対象時間窓が少なくとも2つの時間サブ窓に分割され、次いで、時間サブ窓の各々にわたるサブ窓平均高周波曝露値が計算され、最後に、すべてのサブ窓平均高周波曝露値の平均値が計算され、この平均値が対象時間窓にわたる平均高周波曝露値として決定される。このようにして、取得された平均高周波曝露値の正確度が高くなり、したがって、以降の高周波曝露抑制の正確度がこれに応じて高くなる。
【0018】
第2の態様によれば、本出願の実施形態では無線装置の高周波曝露を抑制する装置を提供する。本装置は、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得するように構成された取得モジュールであって、対象時間窓は基準時間窓である、取得モジュールと、平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定するように構成された決定モジュールであって、出力閾値は、平均高周波曝露値が属する既定の値範囲に対応する既定の出力値である、決定モジュールと、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制するように構成された処理モジュールであって、調節済み時間窓の開始時点が対象時間窓の終了時点であり、調節済み時間窓の持続時間が基準時間窓の持続時間未満である、処理モジュールとを含む。
【0019】
抑制の開始後、本実現例で提供されている装置は、最初に、調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得し、次いで、平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定し、最後に、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制する。実際の適用場面に応じて出力閾値が設定されるので、任意の調節済み時間窓で対応する出力閾値に基づいて無線装置が動作し、したがって、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。これに加えて、出力閾値が適切に設定されると、無線装置の通信パフォーマンスが影響を受けない。さらに、平均高周波曝露値の既定の値範囲と既定の出力値との間の既定の対応関係に基づいて出力閾値を決定することができ、リアルタイムに計算する必要がない。したがって、計算量が少なく、高周波曝露抑制効率が高い。
【0020】
第2の態様に関して、第2の態様の第1の可能な実現例では、出力閾値は送信出力閾値である。処理モジュールは、実際の送信出力が送信出力閾値以下であるように、調節済み時間窓にわたって無線装置の実際の送信出力を調節するように特に構成される。
【0021】
本実現例で提供されている装置は、各調節済み時間窓に対応する送信出力閾値を決定することができ、各調節済み時間窓で対応する送信出力閾値以内にあるように無線装置の実際の送信出力を抑制するだけで済む。このようにして、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。したがって、抑制過程が単純であり、抑制効率が高い。
【0022】
第2の態様に関して、第2の態様の第2の可能な実現例では、出力閾値は出力バックオフ量閾値である。処理モジュールは、目標出力バックオフ量に基づいて送信出力バックオフを実行するように無線装置を調節済み時間窓にわたって制御することであって、目標出力バックオフ量は出力バックオフ量閾値以上である、ことを行うように特に構成される。
【0023】
本実現例で提供されている装置は、各調節済み時間窓に対応する出力バックオフ量閾値を平均高周波曝露値の既定の値範囲と既定の出力値との既定の対応関係に基づいて決定することができ、対応する出力バックオフ量閾値に基づいて無線装置に送信出力バックオフを各調節済み時間窓に限定して実行することができる。このようにして、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。実際の適用場面に応じて予め設定されるようにして出力バックオフ量閾値が適切に設定され、したがって、無線装置の通信パフォーマンスに影響せず、適用範囲が広い。
【0024】
第2の態様に関して、第2の態様の第3の可能な実現例では、取得モジュールは、1つ以上の第1のリアルタイム送信出力を取得することであって、第1のリアルタイム送信出力は、対象時間窓にわたる既定期間で取得される無線装置のリアルタイム送信出力である、ことと、第1の個数を決定することであって、第1の個数は、取得された第1のリアルタイム送信出力の個数である、ことと、第1のリアルタイム送信出力の各々に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値を決定することと、第1の加算値を生成することであって、第1の加算値は、第1のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ことと、平均高周波曝露値を生成することであって、平均高周波曝露値は、第1の個数に対する第1の加算値の比である、こととを行うように特に構成される。
【0025】
本実現例で提供されている装置は、無線装置の複数のリアルタイム送信出力を対象時間窓にわたる既定期間で取得し、リアルタイム送信出力の各々に対応するリアルタイム高周波曝露値を決定し、複数のリアルタイム高周波曝露値の平均値を計算し、この平均値を対象時間窓にわたる平均高周波曝露値として決定する。これに基づけば、既定期間の長さが実際の適用場面の要件に応じて設定されてもよい。実際の適用場面についての高周波曝露抑制の精度に対する要件が高い場合、既定期間の長さは短く設定されてもよい。実際の適用場面についての高周波曝露抑制の精度に対する要件が低い場合、既定期間の長さは長く設定されてもよい。したがって、抑制の柔軟性が高く、適用範囲が広い。
【0026】
第2の態様に関して、第2の態様の第4の可能な実現例では、取得モジュールは、対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割することと、第2のリアルタイム送信出力を取得することであって、第2のリアルタイム送信出力は、時間サブ窓の各々で取得される無線装置のリアルタイム送信出力である、ことと、第2の個数を決定することであって、第2の個数は時間サブ窓の個数である、ことと、第2のリアルタイム送信出力の各々に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値を決定することと、第2の加算値を生成することであって、第2の加算値は、第2のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ことと、平均高周波曝露値を生成することであって、平均高周波曝露値は、第2の個数に対する第2の加算値の比である、こととを行うように特に構成される。
【0027】
本実現例で提供されている装置は、対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割し、時間サブ窓の各々でリアルタイム送信出力をランダムに取得し、各リアルタイム送信出力に対応するリアルタイム高周波曝露値を決定し、すべてのリアルタイム高周波曝露値の平均値を計算し、この平均値を対象時間窓にわたる平均高周波曝露値として決定する。平均高周波曝露値を取得する過程が単純であり、以降の高周波曝露抑制の効率が改善されることが可能である。
【0028】
第2の態様に関して、第2の態様の第5の可能な実現例では、取得モジュールは、対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割することと、時間サブ窓の各々にわたるサブ窓平均高周波曝露値を取得することと、第2の個数を決定することであって、第2の個数は時間サブ窓の個数である、ことと、第3の加算値を生成することであって、第3の加算値は、サブ窓平均高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である、ことと、平均高周波曝露値を生成することであって、平均高周波曝露値は、第2の個数に対する第3の加算値の比である、こととを行うように特に構成される。
【0029】
本実現例で提供されている装置は、対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割し、次いで、時間サブ窓の各々にわたるサブ窓平均高周波曝露値を計算し、最後に、すべてのサブ窓平均高周波曝露値の平均値を計算し、この平均値を対象時間窓にわたる平均高周波曝露値として決定する。このようにして、取得された平均高周波曝露値の正確度が高くなり、したがって、以降の高周波曝露抑制の正確度がこれに応じて高くなる。
【0030】
第3の態様によれば、本出願の実施形態では無線装置を提供する。本無線装置は、第2の態様又は第2の態様の可能な実現例のいずれか1つに係る無線装置の高周波曝露を抑制する装置を含む。
【0031】
第4の態様によれば、本出願の実施形態では装置を提供する。本装置はプロセッサを含み、プロセッサは、メモリに接続され、メモリから命令を読み出し、命令に従って、第1の態様又は第1の態様の可能な実現例のいずれか1つに係る無線装置の高周波曝露を抑制する方法を実行するように構成される。
【0032】
第5の態様によれば、本出願の実施形態ではコンピュータ記憶媒体を提供する。コンピュータ記憶媒体は命令を記憶する。命令がコンピュータで実行されるとき、第1の態様又は第1の態様の可能な実現例のいずれか1つに係る無線装置の高周波曝露を抑制する方法の、一部又は全部のステップをコンピュータが実行可能となる。
【0033】
第6の態様によれば、本出願の実施形態ではコンピュータプログラムプロダクトを提供する。コンピュータプログラムプロダクトがコンピュータで動作するとき、第1の態様又は第1の態様の可能な実現例のいずれか1つに係る無線装置の高周波曝露を抑制する方法のステップの一部又は全部をコンピュータが実行する。
【0034】
無線装置の高周波曝露を抑制する既存の方法を用いると、無線装置の通信パフォーマンスに対する影響が大きいという既存の課題を解決するために、本出願の実施形態では、無線装置の高周波曝露を抑制する方法及び装置並びに無線装置を提供する。高周波曝露を抑制する方法では、抑制の開始後、最初に、各調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値が取得され、次いで、平均高周波曝露値に対応する出力閾値が決定され、最後に、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力が抑制される。実際の適用場面に応じて出力閾値が設定されるので、任意の調節済み時間窓で対応する出力閾値に基づいて無線装置が動作し、したがって、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。これに加えて、出力閾値が適切に設定されると、無線装置の通信パフォーマンスが影響を受けない。さらに、平均高周波曝露値の既定の値範囲と既定の出力値との間の既定の対応関係に基づいて出力閾値を決定することができ、リアルタイムに計算する必要がない。したがって、計算量が少なく、高周波曝露抑制効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本出願に係る、無線装置の高周波曝露を抑制する方法の実現例の概略フローチャートである。
【
図3】本出願に係る、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する方法の実現例の概略フローチャートである。
【
図5】本出願に係る、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する方法の別の実現例の概略フローチャートである。
【
図7】本出願に係る、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する方法の別の実現例の概略フローチャートである。
【
図9】本出願に係る無線装置の高周波曝露を抑制する装置の実現例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面を参照して本出願の技術的解決手段を説明する。
【0037】
本出願の技術的解決手段を説明する前に、まず本出願の技術的場面を添付の図面を参照して説明する。
【0038】
無線装置が、内蔵された高周波(radio frequency,RF)回路を用いて高周波信号を送受信して別の装置との無線通信を実施することができる。本出願の実施形態では、無線装置は携帯電話器、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナル・デジタル・アシスタント、ルータ、メディアプレーヤなどであってもよい。無線装置が高周波信号の受信又は送信を行う過程で、高周波放射(radio frequency radiation,RFR)が引き起こされる。高周波放射は100kHz~300GHzの周波数の電磁放射である。人体に入射する場合、高い高周波放射エネルギーによって人体が害されるおそれがある。これを避けるために、様々な国や各界によって無線装置の高周波放射の関連基準及びガイドラインが新たに作成され、任意の一定の期間(たとえば6分間)にわたる無線装置の平均高周波曝露値が、基準により定められる最大高周波曝露値を超えないものとするという、無線装置の高周波放射エネルギーを測定するのに用いられる高周波曝露値が定められてきた。
【0039】
なお、以下の説明を容易にするために、本出願では、無線装置の関連高周波放射基準で定められる一定の期間を基準時間窓と略称する。異なる基準で定められる一定の期間は異なるので、異なる基準に対応する基準時間窓の持続時間はその分異なる。これに加えて、本出願では、無線装置の関連高周波放射基準で定められる最大高周波曝露値を基準高周波曝露値と略称する。
【0040】
通常、異なる周波数帯の高周波放射の高周波放射エネルギーを測定するのに異なる高周波曝露値が用いられる。たとえば、高周波放射の周波数帯が6GHz未満である場合、通常、人体に入射する高周波放射エネルギーを測定するのに高周波曝露値として比吸収率(specific absorption ratio,SAR)が用いられる。SARとは、電磁放射エネルギーが単位時間に単位質量あたりに吸収される率で表される指標であり、単位はワット/キログラム(W/Kg)である。たとえば、連邦通信委員会FCCによる無線装置の関連高周波曝露基準では、任意の6分間の基準時間窓にわたるSARの平均値が1.6W/Kgを超えないものとするということが定められている。欧州共同体CEによる無線装置の関連高周波曝露基準では、任意の6分間の基準時間窓にわたるSAR値の平均値が2W/Kgを超えないものとするということが定められている。
【0041】
高周波放射の周波数帯が6GHz以上である場合、人体に入射する高周波放射エネルギーを測定するのに高周波曝露値として自由空間電力密度値(MPE)が用いられる。MPEは、特定の領域における平均面積あたりの近接場電力密度を指し、単位はワット/平方メートル(W/m2)である。たとえば、連邦通信委員会FCCによる無線装置の関連高周波曝露基準では、自由空間で無線装置が放射する場合の、所定の距離にある領域にわたるMPE値の平均値が10W/m2を超えないものとするということが定められている。
【0042】
上記に加えて、6GHz未満の周波数帯の高周波放射と6GHz以上の周波数帯の高周波放射との両方が存在する適用場面では、人体に入射する高周波放射エネルギーを測定するのに高周波曝露値として総合照射比(total exposure ratio)が用いられてもよい。総合照射比は、SAR値及びMPE値それぞれに対して基準高周波曝露値の規格化(normalization)を実行することによって取得された結果値の合計である。総合照射比の値は1以下であるものとし、これにより、人体に高周波放射エネルギーが入らないようにすることができる。
【0043】
SAR値の計算式
【数1】
のσは吸収体(たとえば、人体の組織を再現した吸収体)の導電率を表し、ρは吸収体の質量密度を表し、Eは、無線装置が高周波信号を発生するときに現れる電界強度の分散を表すことが分かる。SAR値は、無線装置が発生する高周波信号に起因する電界強度に関係することが分かる。さらに、MPE値も、無線装置が高周波信号を発生するときに現れる電界強度に関係する。無線装置が高周波信号を発生するときに現れる電界強度は無線装置の送信出力に関係する。これに基づけば、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことを保証するために、従来の技術では、通常、無線装置の送信出力を抑制することによって無線装置の高周波曝露が抑制される。
【0044】
以下、従来の技術における無線装置の高周波曝露を抑制するいくつかの手法を説明する。
【0045】
手法1:無線装置の高周波曝露は、無線装置の実際の送信出力を取得し、実際の送信出力に対応する実際の高周波曝露値を決定し、実際の高周波曝露値が基準高周波曝露値を超える場合、出力バックオフ量を取得し(出力バックオフ量は実際の送信出力と基準送信出力との差であり、基準送信出力は基準高周波曝露値に対応する送信出力である)、出力バックオフ量に基づいて無線装置の出力バックオフを実行するという手法で抑制される。
【0046】
無線装置の高周波曝露を抑制するのにこの手法を用いると、出力バックオフ量の値が大きいときに無線装置の通信パフォーマンスに対する影響が大きく、通信途絶さえ生じる。
【0047】
手法2:無線装置の通信パフォーマンスに対する影響を最小にするために、無線装置の高周波曝露は、無線装置の実際の送信出力を取得し、実際の送信出力に対応する実際の高周波曝露値を決定し、実際の高周波曝露値が基準高周波曝露値を超える場合に、ユーザと無線装置との距離を取得し、距離が既定の閾値以下である場合に、出力バックオフ量を取得し(出力バックオフ量は実際の送信出力と基準送信出力との差であり、基準送信出力は基準高周波曝露値に対応する送信出力である)、出力バックオフ量に基づいて無線装置の出力バックオフを実行するという手法で抑制される。
【0048】
このようにして、ユーザが無線装置に近く、かつ無線装置の実際の高周波曝露値が基準高周波曝露値を超える場合にのみ、無線装置に出力バックオフが実行される。これにより無線装置の通信パフォーマンスに対する影響は大幅に低下するが、無線装置の通信パフォーマンスに対する出力バックオフの影響を完全に除くことはできない。
【0049】
手法3:無線装置の高周波曝露は、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得し(対象時間窓は基準時間窓である)、高周波曝露値マージンを計算し(高周波曝露値マージンは基準高周波曝露値と平均高周波曝露値との差である)、高周波曝露値マージンに対応する送信出力閾値を決定し、送信出力閾値以下である送信出力に基づいて調節済み時間窓にわたって送信を実行する(調節済み時間窓の開始時点は対象時間窓の終了時点であり、調節済み時間窓の持続時間は基準時間窓の持続時間未満である)という手法で抑制される。
【0050】
この仕方では、高周波曝露値マージンが調節済み時間窓に対応する対象時間窓に基づいてリアルタイムで計算される必要があるので、計算量が膨大になる。したがって、抑制効率が低い。
【0051】
まとめると、無線装置の高周波曝露を抑制する既存の方法のいくつかを用いると、無線装置の通信パフォーマンスに対する影響が大きく、方法のいくつかには膨大な計算量が必要であり、抑制の効率が低いことが分かる。これらの方法はすべて適用範囲が狭い。既存の技術の課題を解決するために、本出願の実施形態では無線装置の高周波曝露を抑制する方法及び装置並びに無線装置を提供する。
【0052】
以下、本出願で提供される無線装置の高周波曝露を抑制する方法の実施形態を説明する。
【0053】
図1は本出願に係る、無線装置の高周波曝露を抑制する方法の実現例の概略フローチャートである。
図1を参照すれば、高周波曝露を抑制する方法は以下のステップを含むことが分かる。
【0054】
ステップ101:対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する。
【0055】
本出願の本実施形態で提供されている高周波曝露を抑制する方法では、高周波曝露抑制の開始後、調節済み時間窓に基づいて無線装置の高周波曝露が抑制され、当該調節済み時間窓は少なくとも1つ存在する。調節済み時間窓が複数存在する場合、隣接する2つの調節済み時間窓について、先行の調節済み時間窓の終了時点が現在の調節済み時間窓の開始時点であり、各調節済み時間窓の持続時間が基準時間窓の持続時間未満であり、異なる調節済み時間窓の持続時間は同じでも異なってもよい。
【0056】
高周波曝露抑制の開始の発動状況は無線装置の動力がオンにされた時点や、ユーザが接近していることを無線装置が検知した時点などであってもよい点に留意するべきである。本出願ではこれは限定されない。
【0057】
各調節済み時間窓における無線装置の高周波曝露の抑制前に、まず、調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値が取得される。対象時間窓の持続時間は基準時間窓の持続時間に等しく、すなわち、各対象時間窓は基準時間窓である。各調節済み時間窓に対応する対象時間窓の終了時点は調節済み時間窓の開始時点である。言い換えると、各調節済み時間窓に対応する対象時間窓は実際には、調節済み時間窓に先行する調節済み時間窓が位置する基準時間窓である。
【0058】
調節済み時間窓と対象時間窓との具体的な関係について
図2を参照する。
図2は本出願に係る適用場面の概略図である。
図2に示されているように、
図2の時点Aは高周波曝露抑制が開始される時点を表し、時点Aから時点Bまでの期間、時点Bから時点Cまでの期間、時点Cから時点Dまでの期間、及び時点Dから時点Eまでの期間の各々は調節済み期間窓を構成する。時点Aと時点Bとの間の調節済み時間窓に対応する対象時間窓は時点Hと時点Aとの間の期間である。時点Bと時点Cとの間の調節済み時間窓に対応する対象時間窓は時点Gと時点Bとの間の期間である。時点Cと時点Dとの間の調節済み時間窓に対応する対象時間窓は時点Fと時点Cとの間の期間である。時点Dと時点Eとの間の調節済み時間窓に対応する対象時間窓は時点Aと時点Dとの間の期間である。時点Eの後の各調節済み時間窓と、調節済み時間窓に対応する対象時間窓との関係については、調節済み時間窓と、調節済み時間窓に対応する対象時間窓との上記の関係を参照する。本記載ではこれについていちいち列挙はしない。各対象時間窓の持続時間は基準時間窓の持続時間(たとえば6分)に等しい。
【0059】
時点Aは高周波曝露抑制が開始される時点であるので、時点Aと時点Bとの間の調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値はゼロである。時点Bと時点Cとの間の調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値は、時点Aと時点Bとの間の期間の高周波曝露値の平均値である。時点Cと時点Dとの間の調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値は、時点Aと時点Cとの間の期間の高周波曝露値の平均値である。時点Dの後の各調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値は、対象時間窓に対応する期間の高周波曝露値の平均値である。
【0060】
対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を複数の実現例で取得することができる。
【0061】
第1の実現例について
図3を参照する。
図3は本出願に係る、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する方法の実現例の概略フローチャートである。
図3を参照すれば、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を以下のステップで取得することができることが分かる。
【0062】
ステップ201:第1のリアルタイム送信出力を取得する。
【0063】
第1のリアルタイム送信出力は、対象時間窓にわたる既定期間で取得される無線装置のリアルタイム送信出力である。既定期間は実際の適用場面に応じて設定されてもよい。より短い長さの既定期間を設定することは、取得された対象時間窓にわたるより正確な平均高周波曝露値を取得するのに有用であり、これにより、無線装置の高周波曝露の以降の抑制ではこの平均高周波曝露値に基づいてより高い精度が得られることが可能である。これにより、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証される。これに基づけば、精度要件の低い適用場面に対しては、既定期間が比較的長い長さに設定されてもよく、精度要件の高い適用場面に対しては、既定期間が比較的短い長さに設定されてもよい。
【0064】
ステップ202:第1の個数を決定する。
【0065】
第1の個数は取得された第1のリアルタイム送信出力の個数である。
【0066】
ステップ203:第1のリアルタイム送信出力の各々に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値を決定する。
【0067】
無線装置のリアルタイム送信出力とリアルタイム高周波曝露値との間にはシステムにて予め設定された対応関係がある。ステップ203は具体的には、無線装置のリアルタイム送信出力とリアルタイム高周波曝露値との間のシステムにて予め設定された対応関係に基づいて、第1のリアルタイム送信出力の各々に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値を決定するようにして実行されてもよい。
【0068】
ステップ204:第1の加算値を生成する。
【0069】
第1の加算値は、第1のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である。
【0070】
ステップ205:平均高周波曝露値を生成する。
【0071】
平均高周波曝露値は第1の個数に対する第1の加算値の比である。
【0072】
以下、
図3に示されている方法を、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓を例として用いて説明する。
図4に示されているように、基準時間窓の持続時間が6分でありかつ既定期間が2分であるとすると、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓の持続時間も6分になる。時点Aと時点Dとの間の対象時間窓において、時点Aで第1のリアルタイム送信出力P1が取得されてもよく、時点A1で第1のリアルタイム送信出力P2が取得されてもよく、時点A2で第1のリアルタイム送信出力P3が取得されてもよい。時点Aと時点A1との間、時点A1と時点A2との間、時点A2と時点Dとの間は2分間空いている。言い換えると、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓にわたって3つの第1のリアルタイム送信出力が取得される。したがって、第1の個数の値は3である。無線装置のリアルタイム送信出力とリアルタイム高周波曝露値との間のシステムにて予め設定された対応関係に基づいて、P1に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値がS1であり、P2に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値がS2であり、P3に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値がS3であり、したがって、第1の加算値はS1+S2+S3であることが分かる。したがって、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を(S1+S2+S3)/3と計算することができる。
【0073】
第2の実現例について
図5を参照する。
図5は本出願に係る、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する方法の別の実現例の概略フローチャートである。
図5を参照すれば、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を以下のステップで別様に取得することができることが分かる。
【0074】
ステップ301:対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割する。
【0075】
対象時間窓が少なくとも2つの時間サブ窓に分割された結果、先頭の時間サブ窓の開始時点が対象時間窓の開始時点になり、末尾の時間サブ窓の終了時点が対象時間窓の終了時点になる。隣接する2つの時間サブ窓について、先行の時間サブ窓の終了時点が現在の時間サブ窓の開始時点であり、異なる時間サブ窓の持続時間は同じでも異なってもよい。
【0076】
ステップ302:第2のリアルタイム送信出力を取得する。
【0077】
第2のリアルタイム送信出力は各時間サブ窓で取得される無線装置のリアルタイム送信出力である。時間サブ窓毎に、時間サブ窓で取得される第2のリアルタイム送信出力として、時間サブ窓の任意の時点で取得される無線装置のリアルタイム送信出力が決定されてもよい。
【0078】
ステップ303:第2の個数を決定する。
【0079】
第2の個数は時間サブ窓の個数である。
【0080】
ステップ304:第2のリアルタイム送信出力の各々に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値を決定する。
【0081】
ステップ304は具体的には、無線装置のリアルタイム送信出力とリアルタイム高周波曝露値との間のシステムにて予め設定された対応関係に基づいて、第2のリアルタイム送信出力の各々に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値を決定するようにして実行されてもよい。
【0082】
ステップ305:第2の加算値を生成する。
【0083】
第2の加算値は、第2のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である。
【0084】
ステップ306:平均高周波曝露値を生成する。
【0085】
平均高周波曝露値は第2の個数に対する第2の加算値の比である。
【0086】
以下、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓を例として引き続き用いて
図5に示されている方法を説明する。
図6に示されているように、基準時間窓の持続時間が6分であるとすると、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓の持続時間も6分になる。時点Aと時点Dとの間の対象時間窓は、時点Aと時点A1との間の時間サブ窓、時点A1と時点A2との間の時間サブ窓、時点A2と時点A3との間の時間サブ窓、及び時点A3と時点Dとの間の時間サブ窓という4つの時間サブ窓に分割され、時点Aと時点A1との間には時点A11が位置し、時点A1と時点A2との間には時点A21が位置し、時点A2と時点A3との間には時点A31が位置し、時点A3と時点Dとの間には時点A41が位置する。時点A11、時点A21、時点A31及び時点A41で第2のリアルタイム送信出力P1、P2、P3及びP4がそれぞれ取得され、第2の個数の値は4である。無線装置のリアルタイム送信出力とリアルタイム高周波曝露値との間のシステムにて予め設定された対応関係に基づいて、P1に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値がS1であり、P2に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値がS2であり、P3に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値がS3であり、P4に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値がS4であり、したがって、第2の加算値はS1+S2+S3+S4であることが分かる。したがって、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓にわたる平均高周波曝露値は(S1+S2+S3+S4)/4と計算される。
【0087】
第3の実現例について
図7を参照する。
図7は本出願に係る、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得する方法の別の実現例の概略フローチャートである。
図7を参照すれば、対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を以下のステップで別様に取得することができることが分かる。
【0088】
ステップ401:対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割する。
【0089】
ステップ401の具体的な実施については、
図5に示されている実施形態のステップ301を参照する。本説明では詳細は重ねて説明しない。
【0090】
ステップ402:時間サブ窓の各々にわたるサブ窓平均高周波曝露値を取得する。
【0091】
各時間サブ窓にわたるサブ窓平均高周波曝露値は時間サブ窓に対応する期間での平均高周波曝露値である。各時間サブ窓にわたるサブ窓平均高周波曝露値の取得の具体的な実施については、
図3に示されている方法を参照する。本説明では詳細は重ねて説明しない。
【0092】
ステップ403:第2の個数を決定する。
【0093】
第2の個数は時間サブ窓の個数である。
【0094】
ステップ404:第3の加算値を生成する。
【0095】
第3の加算値は、サブ窓平均高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値である。
【0096】
ステップ405:平均高周波曝露値を生成する。
【0097】
平均高周波曝露値は第2の個数に対する第3の加算値の比である。
【0098】
以下、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓を例として引き続き用いて
図7に示されている方法を説明する。
図8に示されているように、基準時間窓の持続時間が6分であるとすると、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓の持続時間も6分になる。時点Aと時点Dとの間の対象時間窓は、時点Aと時点A1との間の4分間の時間サブ窓、及び時点A1と時点Dとの間の2分間の時間サブ窓という2つの時間サブ窓に分割される。この場合、第2の個数の値は2である。
【0099】
図3に示されている方法に従って、時点Aと時点A1との間の時間サブ窓ではリアルタイム送信出力が1分毎に取得され、合計4つのリアルタイム送信出力が取得される。4つのリアルタイム送信出力に対応するリアルタイム高周波曝露値がS1、S2、S3及びS4であり、したがって、時点Aと時点A1との間の時間サブ窓にわたるサブ窓平均高周波曝露値はS11=(S1+S2+S3+S4)/4と計算される。同様に、時点A1と時点Dとの間の時間サブ窓にわたるサブ窓平均高周波曝露値がS22であり、したがって、第3の加算値はS11+S22であることが分かる。したがって、時点Aと時点Dとの間の対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を(S11+S22)/2と計算することができる。
【0100】
ステップ102:平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定する。
【0101】
本出願の本実施形態で提供されている高周波曝露を抑制する方法では、高周波曝露抑制の開始前に、実際の適用場面に基づいて平均高周波曝露値の複数の閾値が設定された後、平均高周波曝露値の複数の閾値に基づいて分割により平均高周波曝露値の複数の既定の値範囲が取得される。既定の値範囲毎に対応する既定の出力値が設定された後、平均高周波曝露値の既定の値範囲と既定の出力値との対応関係が無線装置のシステムに記憶され、これにより、無線装置の高周波曝露が抑制されるときに対応関係が無線装置のシステムから直接呼び出されることが可能である。
【0102】
既定の値範囲に対応する既定の出力値は実際の適用場面で試行錯誤することにより取得されてもよい。特に、複数の基準時間窓がランダムに選択されてもよく、すなわち、複数の期間がランダムに選択され、各時間区分の長さが基準時間窓の持続時間に等しいという条件下で、各期間の開始時点及び終了時点が任意に設定されてもよい。対象の適用場面に合致する既定の値範囲の各々に対応する既定の出力値が複数回試行錯誤することにより取得されてもよい。このようにした後、無線装置では各既定の値範囲に対応する既定の出力値に基づいて各調節済み時間窓の無線装置の送信出力が抑制され、任意の基準時間窓の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証される。
【0103】
これに基づいて、平均高周波曝露値に対応する出力閾値の決定は、平均高周波曝露値が属する既定の値範囲を決定し、既定の値範囲に対応する既定の出力値を決定し、既定の出力値を平均高周波曝露値に対応する出力閾値として決定するという手法で実施されてもよい。
【0104】
出力閾値は送信出力閾値であってもよいし、出力バックオフ量閾値であってもよい。
【0105】
ステップ103:調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制する。
【0106】
各調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値が取得されて、平均高周波曝露値に対応する出力閾値が決定された後、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制することができる。したがって、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値は基準高周波曝露値を超えない。
【0107】
出力閾値が送信出力閾値である場合、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制するステップは、無線装置の実際の送信出力が送信出力閾値以下になるように、調節済み時間窓にわたって無線装置の実際の送信出力を調節するステップを含む。
【0108】
出力閾値が出力バックオフ量閾値である場合、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制するステップは、目標出力バックオフ量に基づいて送信出力バックオフを実行するように無線装置を調節済み時間窓にわたって制御するステップであって、目標出力バックオフ量は出力バックオフ量閾値以上である、ステップを特に含む。
【0109】
本出願の本実施形態で提供されている無線装置の高周波曝露を抑制する方法では、抑制の開始後、最初に、各調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値が取得され、次いで、平均高周波曝露値に対応する出力閾値が決定され、最後に、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力が抑制される。実際の適用場面に応じて出力閾値が設定されるので、任意の調節済み時間窓で対応する出力閾値に基づいて無線装置が動作し、したがって、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。これに加えて、出力閾値が適切に設定されると、無線装置の通信パフォーマンスが影響を受けない。さらに、平均高周波曝露値の既定の値範囲と既定の出力値との間の既定の対応関係に基づいて出力閾値を決定することができ、リアルタイムに計算する必要がない。したがって、計算量が少なく、高周波曝露抑制効率が高い。
【0110】
以下、上記の方法の実施形態に対応する装置の実施形態を説明する。
【0111】
図9は本出願に係る無線装置の高周波曝露を抑制する装置の実現例の構成を示すブロック図である。
図9を参照すれば、高周波曝露を抑制する装置900は、
対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得し、対象時間窓が基準時間窓である、ように構成されている取得モジュール901と、平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定し、出力閾値が、平均高周波曝露値が属する既定の値範囲に対応する既定の出力値である、ように構成されている決定モジュール902と、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制し、調節済み時間窓の開始時点が対象時間窓の終了時点であり、調節済み時間窓の持続時間が基準時間窓の持続時間未満である、ように構成されている処理モジュール903と
を含むことが分かる。
【0112】
抑制の開始後、本出願の本実施形態で提供されている高周波曝露を抑制する装置は、最初に、調節済み時間窓に対応する対象時間窓にわたる平均高周波曝露値を取得し、次いで、平均高周波曝露値に対応する出力閾値を決定し、最後に、調節済み時間窓にわたって出力閾値に基づいて無線装置の送信出力を抑制する。実際の適用場面に応じて出力閾値が設定されるので、任意の調節済み時間窓で対応する出力閾値に基づいて無線装置が動作し、したがって、任意の基準時間窓にわたる無線装置の平均高周波曝露値が基準高周波曝露値を超えないことが保証されることが可能である。これに加えて、出力閾値が適切に設定されると、無線装置の通信パフォーマンスが影響を受けない。さらに、平均高周波曝露値の既定の値範囲と既定の出力値との間の既定の対応関係に基づいて出力閾値を決定することができ、リアルタイムに計算する必要がない。したがって、計算量が少なく、高周波曝露抑制効率が高い。
【0113】
出力閾値が送信出力閾値であることを任意に選択可能である。処理モジュール903は、実際の送信出力が送信出力閾値以下であるように、調節済み時間窓にわたって無線装置の実際の送信出力を調節するように特に構成される。
【0114】
出力閾値が出力バックオフ量閾値であることを任意に選択可能である。処理モジュール903は、目標出力バックオフ量に基づいて送信出力バックオフを実行するように無線装置を調節済み時間窓にわたって制御し、目標出力バックオフ量が出力バックオフ量閾値以上である、ように特に構成される。
【0115】
上記とは別に、取得モジュール901は、1つ以上の第1のリアルタイム送信出力を取得し、第1のリアルタイム送信出力が、対象時間窓にわたる既定期間で取得される無線装置のリアルタイム送信出力であり、第1の個数を決定し、第1の個数が取得された第1のリアルタイム送信出力の個数であり、第1のリアルタイム送信出力の各々に対応する第1のリアルタイム高周波曝露値を決定し、第1の加算値を生成し、第1の加算値が、第1のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値であり、平均高周波曝露値を生成し、平均高周波曝露値が第1の個数に対する第1の加算値の比である、ように特に構成される。
【0116】
上記とは別に、取得モジュール901は、対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割し、第2のリアルタイム送信出力を取得し、第2のリアルタイム送信出力が、時間サブ窓の各々で取得される無線装置のリアルタイム送信出力であり、第2の個数を決定し、第2の個数が時間サブ窓の個数であり、第2のリアルタイム送信出力の各々に対応する第2のリアルタイム高周波曝露値を決定し、第2の加算値を生成し、第2の加算値が、第2のリアルタイム高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値であり、平均高周波曝露値を生成し、平均高周波曝露値が第2の個数に対する第2の加算値の比である、ように特に構成される。
【0117】
上記とは別に、取得モジュール901は、対象時間窓を少なくとも2つの時間サブ窓に分割し、時間サブ窓の各々にわたるサブ窓平均高周波曝露値を取得し、第2の個数を決定し、第2の個数が時間サブ窓の個数であり、第3の加算値を生成し、第3の加算値が、サブ窓平均高周波曝露値をすべて加算することによって取得される値であり、平均高周波曝露値を生成し、平均高周波曝露値が第2の個数に対する第3の加算値の比である、ように特に構成される。
【0118】
図9に示されている無線装置の高周波曝露を抑制する装置は、
図1に示されている無線装置の高周波曝露を抑制する方法を実施し、同じ有益な効果を実現することができる。
【0119】
具体的に実施する際には、本出願の実施形態ではコンピュータ記憶媒体をさらに設ける。コンピュータ記憶媒体はプログラムを記憶してもよく、プログラムは命令を含む。プログラムが実行されると、本出願で提供されている無線装置の高周波曝露を抑制する方法の一部又は全部のステップが実施される。コンピュータ記憶媒体は磁気ディスク、光ディスク、読出し専用メモリ(read-only memory,ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory,RAM)などであってもよい。
【0120】
上記の実施形態の全部又は一部はソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組合せを用いて実施されてもよい。ソフトウェアが実施に用いられる場合、実施形態の全体又は一部がコンピュータプログラムプロダクトの形態で実施されてもよい。コンピュータプログラムプロダクトは1つ以上のコンピュータ命令を含む。コンピュータ命令がコンピュータにロードされて実行されると、本出願に係る手順や機能の全部又は一部が発生する。コンピュータは汎用コンピュータであっても専用コンピュータであってもコンピュータネットワークであっても別のプログラム可能な装置であってもよい。コンピュータ命令はコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよいし、コンピュータ可読記憶媒体から別のコンピュータ可読記憶媒体に伝送されてもよい。たとえば、コンピュータ命令はウェブサイト、コンピュータ、サーバ又はデータセンタから、別のウェブサイト、コンピュータ、サーバ又はデータセンタに有線(たとえば、同軸ケーブル、光ファイバ又はデジタル加入者回線(DSL))方式又は無線(たとえば、赤外線、ラジオ波又はマイクロ波)方式で伝送されてもよい。コンピュータ可読記憶媒体はコンピュータがアクセス可能な任意の使用可能な媒体であってもよいし、1つ以上の使用可能な媒体を統合したサーバ又はデータセンタなどのデータ記憶装置であってもよい。使用可能な媒体は磁気媒体(たとえば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク又は磁気テープ)、光媒体(たとえばDVD)、半導体媒体(たとえばソリッド・ステート・ディスク(solid state disk,SSD))などであってもよい。
【0121】
無線装置の高周波曝露を抑制する装置、無線装置及びコンピュータ記憶媒体は、いずれかの実施形態で提供されている無線装置の高周波曝露を抑制する方法の、一部又は全部のステップを実行するように構成され、これに応じて、無線装置の高周波曝露を抑制する上記の方法の有益な効果を奏する。本説明では詳細は重ねて説明しない。
【0122】
当然、本出願の実施形態では、ステップの機能及び内部ロジックに基づいてステップの実行順序が決定されることが分かる。ステップの一連の番号は実行順序を意味せず、実施形態の実施過程に対する一切の限定を構成しない。
【0123】
上記に加えて、本出願の説明では、「複数の」は、別段記載されていない限り、2以上を意味する。これに加えて、本出願の実施形態の技術的解決手段を明確に説明するために、実質的に同じ機能及び目的を持つ同じ事物又は類似する物品を区別するのに本出願の実施形態では「第1」や「第2」などの用語が用いられている。「第1」や「第2」などの用語は数量や実行順序を限定せず、「第1」や「第2」などの用語は明確な区切りのある違いを示さないことを当業者は理解すると考えられる。
【0124】
本明細書の実施形態はすべて段階的に説明されている。実施形態の同じ部分や類似する部分についてはこれらの実施形態を参照する。各実施形態では他の実施形態との差に注目する。特に、無線装置の高周波曝露を抑制する装置の実施形態と無線装置の実施形態とは方法の実施形態と実質的に同様であるので、説明は比較的簡便になっている。関連する部分については方法の実施形態の説明を参照する。
【0125】
本出願のいくつかの好ましい実施形態を説明してきたが、当業者が基本的な発明の概念を理解すれば、上記の実施形態に対して変形や修正を行うことができる。したがって、特許請求の範囲は本出願の範囲に含まれる好ましい実施形態とすべての変形や修正とをカバーするものとして解釈されることを意図するものである。
【0126】
本出願の上記の実現例は本出願の保護範囲を限定することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0127】
900 高周波曝露を抑制する装置
901 取得モジュール
902 決定モジュール
903 処理モジュール
【国際調査報告】