IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧

特表2022-546015ケイ素化合物を精製するためのプロセス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ケイ素化合物を精製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20221026BHJP
   C07F 7/12 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C01B33/107 B
C07F7/12 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022511282
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 US2020045560
(87)【国際公開番号】W WO2021034526
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/890,088
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハグパナ、レザ
(72)【発明者】
【氏名】デピエロ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ケトラ、バリー
【テーマコード(参考)】
4G072
4H049
【Fターム(参考)】
4G072AA11
4G072AA14
4G072BB20
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH07
4G072HH09
4G072JJ42
4G072MM03
4G072MM12
4G072RR12
4G072TT19
4G072UU01
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ12
4H049VR21
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR31
4H049VR32
4H049VR33
4H049VW02
(57)【要約】

クロロシランモノマー及び/又は塩素化ポリシランなどのハロゲン化ケイ素化合物から金属性不純物を除去するためのプロセスが開示される。プロセスは、ハロゲン化ケイ素化合物を三級アミン、その後、好適なグレードの活性炭で処理する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ケイ素化合物を精製するためのプロセスであって、
1)
99.5重量%~99.75重量%の混合物であって、
i)流体ケイ素化合物と、
ii)金属を含む不純物であって、前記不純物が、前記混合物の重量に基づいて、少なくとも500ppmの前記金属を提供するのに十分な量で存在する、不純物とを含む、混合物、及び
0.25重量%~0.5重量%の三級アミンを組み合わせて、
それによって、i)前記流体ケイ素化合物と、iii)アミン-金属複合体と、を含む生成物を形成する工程と、
2)
工程1)で形成された92重量%~98重量%の前記生成物と、
2重量%~8重量%の活性炭と、を組み合わせて、それによって、前記アミン-金属複合体を前記活性炭で吸着させ、前記精製流体ケイ素化合物を調製する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項2】
工程1)における前記混合物が、直接プロセス残渣である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記直接プロセス残渣が、トリクロロシラン直接プロセス残渣である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記トリクロロシラン直接プロセス残渣が、式HSiCl(4-a)(式中、下付き文字aは、0~4である)のシラン、及び式
【化1】
(式中、各Rは、独立して、H及びClから選択され、下付き文字bは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのRの事例がClである)のポリシランを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記直接プロセス残渣が、メチルクロロシラン直接プロセス残渣である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記メチルクロロシラン直接プロセス残渣が、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、0~4である)のシラン、及び式
【化2】
(式中、各R’は、独立して、H、メチル、及びClから選択され、下付き文字dは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのR’の事例がClである)のポリシランを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
i)前記流体ケイ素化合物が、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、1~3である)のハロシランモノマーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記不純物が、アルミニウム、チタン、アルミニウムの化合物、チタンの化合物、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
工程1)の前記混合物が、少なくとも700重量ppmのアルミニウム及び少なくとも900重量ppmのチタンを含有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
工程1)の前記混合物が、最大4000ppmの前記不純物を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
B)前記三級アミンが、式NR’’(式中、各R’’は、独立して選択される2~16個の炭素原子のアルキル基である)のトリアルキルアミンである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記トリアルキルアミンが、トリエチルアミンである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記活性炭が、歴青炭系である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記活性炭が、Calgon Carbon Corporationから入手可能なCPG-LF及びPWAグレードからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
3)工程2)の後に、前記活性炭及び前記流体ケイ素化合物を分離する工程を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2019年8月22日に出願された米国特許仮出願第62/890088号の優先権を主張するものである。米国特許仮出願第62/890088号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
直接プロセス残渣(DPR)などの、流体ケイ素化合物から金属不純物を除去するためのプロセスが開示される。このプロセスを使用して、DPRから多量のアルミニウム及びチタン不純物を除去することができる。
【背景技術】
【0003】
クロロシランモノマーなどのハロシランモノマーを製造するための直接プロセスは、流動層反応器(FBR)内で冶金グレードのケイ素金属粒子をハロゲン化物(例えば、塩化物)と反応させることによって商業規模で実施されている。ハロゲン化物は、塩化メチルなどの有機ハロゲン化物であり得、直接プロセスは、ジメチルジクロロシランなどの有機官能性クロロシランを生成させる。あるいは、ハロゲン化物は、ハロゲン化水素(例えば、HCl)であり得、直接プロセスを使用して、トリクロロシランなどの無機ハロシランを生成させる。触媒及び/又は促進剤は、所望のハロシランモノマーに対する収率及び/又は選択性を改善するために、任意選択でFBRに添加され得る。
【0004】
直接プロセス実行の最後に、DPRを処理する必要がある。DPRは、典型的には、未反応のケイ素金属、金属不純物、ハロシランモノマー、及び高沸点成分を含有する。DPRのハロシランモノマー及び高沸点成分を再循環及び/又は再利用することが望ましい。高沸点成分は、分子中にSi-Si、Si-O-Si、Si-C-Si、Si-C-C-Si、及びSi-C-C-C-Si結合を含有する化合物を含み得る。DPRの高沸点成分中の典型的な化合物は、例えば、米国特許第2,598,435号、同2,681,355号、及び同8,852,545号に記載されている。DPRからのハロシランモノマーの回収、及びDPRの高沸点成分中の化合物のハロシランモノマーへの転換は、直接プロセスからの廃棄物を最小限に抑えるために望ましい。
【0005】
金属不純物は、ケイ素金属及び/又は触媒及び促進剤からFBRに導入される場合があり、実行中に反応器内に蓄積し、DPRから回収されたハロシラン及び高沸点成分の反応性にとって有害である場合がある。理論に束縛されることを望むものではないが、金属不純物は、高沸点成分を分解するため、及び/又はハロシラン成分を更に反応させて、ポリオルガノシロキサンポリマー又は樹脂などの有用な生成物を形成するための触媒毒として作用し得ると考えられる。したがって、DPRのハロシランモノマー及び高沸点成分からの金属不純物を最小限に抑えること又は排除することが望ましい。
【0006】
活性炭は、これまでにケイ素化合物から金属不純物を除去するために使用されてきた。しかしながら、活性炭を使用する以前の方法は、低濃度の不純物をすでに含有するケイ素化合物から始まる場合にのみ、その特定の金属不純物を低レベルまで除去するものであった。
【発明の概要】
【0007】
流体ケイ素化合物を精製するためのプロセスは、
1)
A)混合物であって、
i)流体ケイ素化合物と、
ii)金属を含む不純物であって、不純物が、混合物の重量に基づいて、少なくとも500ppmの金属を提供するのに十分な量で存在する、不純物とを含む、混合物、及び
B)三級アミンを組み合わせて、
それによって、C)i)流体ケイ素化合物と、iii)アミン-金属複合体と、を含む生成物を形成する工程と、
2)
C)工程1)で形成された生成物と、
D)活性炭と、を組み合わせて、それによって、アミン-金属複合体を活性炭で吸着させ、精製流体ケイ素化合物を調製する工程と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
混合物
本明細書に記載の方法の工程1)で使用される混合物は、i)流体ケイ素化合物と、ii)金属を含む不純物と、を含む。混合物は、DPRを含み得る。あるいは、混合物は、ii)不純物に加えて、流体ケイ素成分として、i)ハロシランモノマーを含み得る。混合物がDPRを含む場合、DPRは、メチルクロロシランを製造するための直接プロセスに由来し得る(MCS DPR)。あるいは、DPRは、トリクロロシランを製造するための直接プロセスに由来し得る(TCS DPR)。あるいは、DPRは、MCS DPR及びTCS DPRの混合物であり得る。米国特許第8,852,545号は、MCS DPR及びTCS DPRの含有量を記載し、その目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
MCS DPR
あるいは、上記のプロセスの工程1)で使用される混合物は、MCS DPRであり得る。MCS DPRは、典型的には、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、0~4、あるいは1~3である)のモノシラン、及び式
【化1】
(式中、各R’は、独立して、H、メチル、及びClから選択され、下付き文字dは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つ、あるいは2~6つ、あるいは3~6つのR’の事例がClである)のポリシランを含む。モノシランは、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。ポリシランは、ヘキサクロロジシラン、オクタクロロトリシラン、デカクロロテトラシラン、及び高級同族塩素化ポリシラン;テトラメチルジクロロジシラン、トリメチルトリクロロジシラン、テトラメチルテトラクロロトリシラン、ジメチルテトラクロロジシラン、ペンタクロロヒドロジシラン、テトラクロロジヒドロジシラン、ペンタクロロメチルジシラン、トリメチルトリクロロジヒドロトリシラン、テトラメチルジクロロジヒドロトリシラン、及び他の塩素化メチル官能性ポリシラン;並びにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0010】
TCS DPR
あるいは、上記のプロセスの工程1)で使用される混合物は、TCS DPRであり得る。TCS DPRは、典型的には、式HSiCl(4-a)(式中、下付き文字aは、0~4である)のモノシラン、及び式
【化2】
(式中、各Rは、独立して、H及びClから選択され、下付き文字bは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのRの事例がClであり、あるいは1分子当たり、少なくとも3つ、あるいは2~6つ、あるいは3~6つのRの事例がClである)のポリシランを含む。TCS DPR中のモノシランは、典型的には、トリクロロシラン(HSiCl)、ジクロロシラン(HSiCl)及びモノクロロシラン(HSiCl)を含む。TCS DPR中のポリシランは、ヘキサクロロジシラン、オクタクロロトリシラン、デカクロロテトラシラン、及び高級同族塩素化ポリシラン;ジヒドロテトラクロロジシラン、ペンタクロロヒドロジシラン、テトラクロロジヒドロジシラン、トリクロロトリヒドロジシラン、テトラヒドロテトラクロロトリシラン、トリヒドロペンタクロロトリシラン、及び他の塩素化ヒドロ官能性ポリシラン;並びにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0011】
他のハロシランモノマー混合物
あるいは、本明細書に記載のプロセスの工程1)で使用される混合物中の流体ケイ素化合物は、式の1つのハロシランモノマー、又は2つ以上のハロシランモノマーの混合物であり得、ハロシランモノマーは、式R’’’SiX(式中、各R’’’は、独立して選択される一価炭化水素基であり、各Xは、独立して選択されるハロゲン原子であり、下付き文字は、0≦x≦3、0≦y≦3、1≦z≦4、及び量(x+y+z)=4であるような値を有する)を有する。R’’’に対する一価炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であってもよい。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及びイソ-プロピルを含む)、及びブチル(n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルを含む)が挙げられ、あるいは、アルキル基は、メチル又はエチル、あるいはメチルであってもよい。好適なアルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。あるいは、アルケニル基は、ビニル又はヘキセニル、あるいはビニルであってもよい。好適なアリール基としては、フェニルが挙げられる。各Xは、独立して、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)及びヨウ素(I)からなる群から、あるいはBr、Cl及びF、あるいはBr及びClから選択されてもよく、あるいは、各XはClであってもよい。あるいは、流体ケイ素化合物は、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、1~3である)のハロゲノシランモノマーを含んでもよい。
【0012】
ハロシランモノマーの例としては、テトラクロロシラン(SiCl)、トリクロロシラン(HSiCl)、メチルトリクロロシラン(CHSiCl)、ジメチルジクロロシラン[(CHSiCl]、ジクロロシラン(HSiCl)、モノクロロシラン(HSiCl)、フェニルメチルジクロロシラン[(C)(CH)SiCl]、フェニルトリクロロシラン[(C)SiCl]、ビニルトリクロロシラン[(CH=CH)SiCl]、又はそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
金属性不純物
本明細書に記載のプロセスの工程1)で使用される混合物は、不純物を含む。不純物は、金属(ケイ素以外)、金属の化合物、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、不純物は、アルミニウム、チタン、アルミニウムの化合物、チタンの化合物、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含み得る。アルミニウム化合物の例としては、塩化アルミニウム(AlCl)が挙げられる。チタン化合物の例としては、TiCl、TiCl、TiCl、及びそれらの2つ以上が挙げられる。混合物は、多量の不純物、すなわち、工程1)における混合物が、少なくとも500ppm、あるいは>1,000ppm、あるいは500ppm~4,000ppm、あるいは>1,000ppm~4,000ppmの金属(ケイ素以外)を含有するように十分な量の不純物を含有する。あるいは、混合物は、総金属含有量が>1,000ppmであるように、少なくとも700重量ppmのアルミニウム及び少なくとも1つの他の金属、及び少なくとも1つの他の金属を含有し得る。あるいは、混合物は、総金属含有量が>1,000ppmであるように、少なくとも900重量ppmのチタン及び少なくとも1つの他の金属を含有し得る。
【0014】
三級アミン
上記のプロセスの工程1)で、B)三級アミンは、周囲条件(すなわち、室温及び周囲圧力)で液状である三級アミンであり得る。例えば、三級アミンは、以下の表Aに示されるものからなる群から選択され得る。
【表1】
【0015】
表1の三級アミンは、Kao Specialties Americas LLC of High Point,NC,USAから市販されている。
【0016】
あるいは、三級アミンは、トリアルキルアミンであり得る。トリアルキルアミンは、式NR’’(式中、各R’’は、2~16個の炭素原子、あるいは2~12個の炭素原子、あるいは2~8個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子の独立して選択されるアルキル基である)を有し得る。あるいは、トリアルキルアミンは、トリエチルアミンであり得る。三級アミンは、当該技術分野において公知であり、例えば、Millipore Sigma of St.Louis,Missouri,USA.から市販されている。
【0017】
活性炭
本明細書の方法で使用される活性炭は、具体的には限定されない。しかしながら、活性炭は、歴青炭系又は褐炭系であり得る。好適な活性炭は、参考文献、Activated Carbon Adsorption For Wastewater Treatment,Jerry.R.Perrich,CRC Press,1981に開示されている。褐炭から製造された活性炭は、液相中の化学化合物からの大きな分子量の成分を除去するのにより良く適するより高い総細孔容積(高い糖蜜数)を有する大きな細孔径を有する傾向がある。しかしながら、歴青炭系活性炭は、高度に発達した多孔質構造及び大きな比表面を有し、より小さな分子の吸着に適した大きな微細孔容積を有する。言い換えれば、褐炭炭素は、歴青炭系活性炭と比較して、より大きな細孔容積、より小さい表面積を有する。活性炭の例は、表Bに示される特性を有し得る。
【表2】
【0018】
あるいは、活性炭は、歴青炭系であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、歴青炭系活性炭は、本明細書に記載のプロセスにおいて他のタイプの活性炭よりも良好に機能し得ると考えられる。歴青炭系活性炭は、Calgon Carbon Corporation of Pittsburgh,Pennsylvania,USAから入手可能なCPG(商標)LF及びPWAグレードからなる群から選択され得る。好適な褐炭系活性炭の例としては、Cabot Corporation of Boston,Massachusetts,USA製のDarco(商標)Liが挙げられる。
【0019】
方法の工程
流体ケイ素化合物を精製するためのプロセスは、
1)
99.5重量%~99.75重量%の混合物であって、
i)流体ケイ素化合物と、
ii)金属を含む不純物であって、不純物が、混合物の重量に基づいて、少なくとも500ppmの金属を提供するのに十分な量で存在する、不純物とを含む、混合物、及び
0.25重量%~0.5重量%の三級アミンを組み合わせて、
それによって、i)流体ケイ素化合物と、iii)アミン-金属複合体と、を含む生成物を形成する工程と、
2)
工程1)で形成された92%~98%の生成物と、
2%~8%の活性炭と、を組み合わせて、それによって、アミン-金属複合体を活性炭で吸着させ、精製流体ケイ素化合物を調製する工程と、を含み得る。
【0020】
プロセスは、任意選択で、1つ以上の追加工程を更に含み得る。例えば、混合物が粒子状物(DPR含有ケイ素金属など)を含有する場合、粒子状物は、工程1)の前、並びに/又は工程1)の後及び工程2)の前に除去され得る。粒子状物は、上澄み液の沈降及び除去、濾過、遠心分離、又はそれらの組み合わせなどの、任意の便利な手段によって除去され得る。
【0021】
混合物が比較的揮発性の成分を含有する場合、揮発性成分の全部又は一部は、工程1)の前に除去され得る。例えば、工程1)の前に、DPRをストリッピング及び/又は蒸留して、未反応ハロゲン化物、並びにジクロロシラン及び/又はメチルハイドロジェンクロロシランなどの低沸点ハロシランなどの揮発性成分を除去してもよい。
【0022】
工程1)は、撹拌機を有する容器内で混合するなど、任意の便利な手段によって実施され得る。工程1)は、不活性及び無水条件下で実施され得る。工程1)における圧力は重要ではなく、周囲圧力又は高圧力であってもよい。工程1)は、-30℃~300℃の温度で実施され得る。
【0023】
プロセスは、工程1)で形成された生成物及び工程2)における活性炭を混合する前に、活性炭を乾燥させる工程を任意選択で更に含み得る。乾燥は、活性炭の充填床を通して乾燥不活性ガスを加熱及び/又は掃引するなどの任意の便利な手段によって実施され得る。
【0024】
上記のプロセスの工程2)は、工程1)で形成された生成物、並びに撹拌機を任意選択で有するバッチ容器などの、流体及び固体を組み合わせるのに好適な任意の装置内の活性炭を混合するなどの任意の便利な手段によって実施され得る。工程2)は、周囲圧力以上で実施され得る。工程2)は、-30℃~300℃の温度で実施され得る。あるいは、工程2)は、周囲温度及び周囲圧力で実施され得る。
【0025】
本明細書に記載のプロセスは、バッチ、半バッチ、又は連続モードで実施され得る。
【0026】
プロセスは、任意選択で、3)工程2)の後に精製ケイ素化合物を回収する工程を更に含み得る。例えば、残渣活性炭などの粒子状物は、工程2)の後に精製ケイ素化合物と共に存在し得る。粒子状物は、上澄み液の沈降及び除去、濾過、遠心分離、又はそれらの組み合わせなどの、任意の便利な手段によって除去され得る。
【0027】
プロセスは、任意選択で、4)例えば、残渣三級アミンを最小限に抑え若しくは排除し、及び/又は精製ケイ素化合物中の三級アミンの所望の濃度を達成するために、残渣三級アミンの全部又は一部を除去する工程を更に含み得る。アミンは、任意の便利な手段を使用して精製ケイ素化合物から除去され得る。これには、例えば、蒸留、薄膜蒸発、拭き取り膜蒸発、吸着(炭素又は他の吸着剤で)が挙げられ得る。
【0028】
上記のプロセスは、精製流体ケイ素化合物が不純物からの金属を≦50ppmで含有するという利点を提供し得る。精製ケイ素化合物は、≦50ppmのAl、あるいは≦50ppmのTi、あるいは合計で≦50ppmのAl及びTiを含有し得る。あるいは、精製流体ケイ素化合物は、<10ppmのTi、<10ppmのAl、又はその両方を含有し得る。
【実施例
【0029】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0030】
参考例1.活性炭の乾燥
供給元から受領した活性炭試料は、様々な濃度の水分を含有していた。水がクロロシラン出発物質と反応し、HCl蒸気及びシロキサンゲルを形成するリスクを軽減するために、全ての活性炭試料を一貫して、使用前に真空オーブン内にて160℃で24時間乾燥させた。乾燥させてから、活性炭試料をオーブンから取り出し、ジャーに入れた。次いで、ジャーをグローブボックス内に保管し、これを非常に低い水分レベルに維持した。
【0031】
実施例2.全般的な手順
TCS DPRをストリッピングし、次いで、CPG-LF 12×40活性炭(Calgon Carbon Corporation of Pittsburgh,Pennsylvania,USA製の歴青炭系活性炭)及びDarco Li 12×20(Cabot Corporation製の褐炭系活性炭)で処理し、これらの両方を参考例1に記載されるように乾燥させた。2つの異なるレベルの固体(活性炭)対液状物質量(直接プロセス残渣)比、すなわち8%及び13%を使用した。活性炭を秤量し、グローブボックス内のガラスバイアルに添加した。次いで、DPRをバイアルに添加した。
【0032】
DPR添加が完了してから、バイアルをグローブボックスから取り出した。パラフィルムのストリップをバイアルのキャップの周りに巻き付けて、上部から漏れる材料を軽減した。次いで、バイアルをフード内のボルテックスミキサー上に置き、24時間振盪した。
【0033】
24時間後、振盪したバイアルをグローブボックス内に戻した。シリンジ及びフィルタを使用して、バイアルの内容物を濾過した。0.45μmのフィルタにスレッドを有する5mLのシリンジを使用した。フィルタからの流出物は、破片を含まない透明な液状であった。濾過した材料を、以下の参考例4の試験方法に従ってICP-OESによって分析した。得られた金属含有量をppm単位で以下の表1及び表2に示す。
【表3】
【表4】
【0034】
表1及び2は、TCS DPRが炭素のみ(三級アミンなし)で処理されたとき、非経済的な高量の活性炭を使用しない限り、Al及びTiを含有する50ppm以下の不純物が達成できなかったことを示した。更に、特定の活性炭(例えば、Darco)が高レベルであっても50ppm以下のTi不純物を達成できなかったという点で、その結果は一貫していなかった。
【0035】
実施例3.全般的な手順
参考例1に記載されるようにストリッピングしたTCS DPRを、トリエチルアミン(TEA)で処理した。最初に、TCS DPRにTEAを添加し(0.5%のTEA/99.5%のTCS DPR、表3を参照、又は0.25%のTEA/99.75%のTCS DPR、表4を参照)、得られたTEA処理DPRをICPによって評価した(下記の表3及び表4の比較例6及び9を参照)。
【0036】
次いで、得られたTEA処理DPRをマスターバッチとして使用して、活性炭を使用し、表3及び表4に示されるTCS DPR質量比まで炭素吸着処理をした。活性炭を秤量し、グローブボックス内のガラスバイアルに添加した。次いで、TCS DPRをバイアルに添加した。
【0037】
TCS DPR添加が完了してから、バイアルをグローブボックスから取り出した。パラフィルムのストリップをバイアルのキャップの周りに巻き付けて、上部から漏れる材料を軽減した。次いで、バイアルをフード内のボルテックスミキサー上に置き、24時間振盪した。
【0038】
24時間後、振盪したバイアルをグローブボックス内に戻した。シリンジ及びフィルタを使用して、バイアルの内容物を濾過した。0.45μmのフィルタにスレッドを有する5mLのシリンジを使用した。フィルタからの流出物は、破片を含まない透明な液状であった。濾過した材料を、参考例4の方法に従ってICP-OESによって分析した。得られた金属含有量をppm単位で以下の表3及び表4に示す。
【表5】
【0039】
表3は、TEAのみでTCS DPRを処理することが、Al及びTi不純物含有量を50ppm未満に低減させなかったことを示した。しかしながら、実施例は、本発明のプロセスをTEA及び歴青炭系活性炭で実施することが、Ti含有不純物及びAl含有不純物の両方を10ppm未満に低減させたことを示した。
【表6】
【0040】
表4は、TCS DPRをより低いレベルのTEA(表3で上記使用されたものよりも)で、その後、歴青炭系活性炭処理することが、Ti不純物及びAl不純物の一方又は両方を10ppm未満に除去するのに有効であったことを示した。
【0041】
参考例4.ICP-OES試験方法
試料(5グラム)を白金皿に秤量し、HFを試料に直ちに添加して全てのケイ素を溶解した。HSO及びHNOを添加して、溶解を完了し、次いで添加剤を乾燥させた。HNO及びHを添加し、添加剤を乾燥させた後、5%の温HNOを使用して25mlの最終容量にした。次いで、このプロセスの一部として、Sc内部標準がオンラインで追加されたICP-OESを介して試料を分析した。試料中のAl及びTiのより良好な定量化を可能にするために、Al又はTi中で200ppmを超える初期結果を有する試料を、追加のオンライン希釈で再分析した。第2の分析からのAl及びTiデータは、200ppmを超える結果を有する全ての試料について上に示される。
【0042】
発明が解決しようとする課題
高(500ppm以上)レベルの金属不純物(例えば、アルミニウムを含有する不純物)を含有するクロロシラン混合物又はDPRなどの流体ケイ素化合物からの金属不純物を50ppm未満、あるいは10ppm未満のレベルまで低減することが業界で求められている。更に、そのような流体ケイ素化合物からチタン及び/又はアルミニウム不純物を除去することが業界で求められている。
【0043】
産業上の利用可能性
上記の実施例及び比較例は、TCS DPRを炭素及びアミンで処理することが、金属(Al及び/又はTi)を含有する不純物の含有量を低減して、広範囲の工業用途で更に使用することを可能にする、効果的な方法であることを示している。いくつかの例では、そのような不純物含有量の低減は、下流のプロセス工程で使用される触媒の被毒を回避するために必要であり得る。
【0044】
更に、下流プロセス工程では、本明細書に記載のプロセスは、工程2)の精製流体ケイ素化合物中の残渣三級アミンが、その後のハロシラン及び/又は高沸点成分の反応のための触媒又は助触媒として作用して、オルガノシランを製造することができるという、更なる効果をもたらし得る。
【0045】
用語の定義及び用法
全ての量、比率、及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば/など、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用される略語は、表9の定義を有する。
【表7】
【0046】
本発明は、例示的な様式で説明されており、使用されている用語は限定目的よりも、むしろ説明のための言葉としての性質が意図されているものと理解されるべきである。本明細書で具体的な特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠されてもよく、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0047】
更に、本発明を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にすることを、そして、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2分の1、3分の1、4分の1、5分の1などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、範囲「1~18」は、下から3分の1、すなわち、1~6、中間の3分の1、すなわち、7~12、及び上から3分の1、すなわち、13~18と更に詳述でき、これらは、個別的及び包括的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供し得る。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。
【0048】
本発明の実施形態
実施形態1では、流体ケイ素化合物を精製するためのプロセスは、
1)
99.5重量%~99.75重量%の混合物であって、
i)流体ケイ素化合物と、
ii)金属を含む不純物であって、不純物が、混合物の重量に基づいて、少なくとも1,000ppmの金属を提供するのに十分な量で存在する、不純物とを含む、混合物、及び
0.25重量%~0.5重量%の三級アミンを組み合わせて、
それによって、i)流体ケイ素化合物と、iii)アミン-金属複合体と、を含む生成物を形成する工程と、
2)
工程1)で形成された<98重量%の生成物と、
>2重量%の歴青炭系活性炭と、を組み合わせて、それによって、アミン-金属複合体を活性炭で吸着させ、精製流体ケイ素化合物を調製する工程と、を含む。
【0049】
実施形態2では、実施形態1に記載のプロセスは、工程1)で形成された生成物及び工程2)における活性炭を混合する前に、活性炭を乾燥させる工程を更に含む。
【0050】
実施形態3では、実施形態1又は実施形態2に記載のプロセスは、工程2)を実施する前に、工程1)で形成された生成物を濾過する工程を更に含む。
【0051】
実施形態4では、実施形態1~3のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程1)の混合物は、直接プロセス残渣である。
【0052】
実施形態5では、実施形態4に記載のプロセスは、工程1)の前に直接プロセス残渣から粒子状物を除去する工程を更に含む。
【0053】
実施形態6では、実施形態4又は実施形態5に記載のプロセスは、工程1)の前に直接プロセス残渣から揮発物を除去する工程を更に含む。
【0054】
実施形態7では、実施形態4~6のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、直接プロセス残渣は、トリクロロシラン直接プロセス残渣である。
【0055】
実施形態8では、実施形態7に記載のプロセスにおいて、トリクロロシラン直接プロセス残渣は、式HSiCl(4-a)(式中、下付き文字aは、0~4である)のシラン、及び式
【化3】
(式中、各Rは、独立して、H及びClから選択され、下付き文字bは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのRの事例がClである)のポリシランを含む。
【0056】
実施形態9では、実施形態4~6のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、直接プロセス残渣は、メチルクロロシラン直接プロセス残渣である。
【0057】
実施形態10では、実施形態9に記載のプロセスにおいて、メチルクロロシラン直接プロセス残渣は、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、0~4である)のシラン、及び式
【化4】
(式中、各R’は、独立して、H、メチル、及びClから選択され、下付き文字dは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのR’の事例がClである)のポリシランを含む。
【0058】
実施形態11では、実施形態1~3のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、流体ケイ素化合物は、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、1~3である)のハロシランモノマーを含む。
【0059】
実施形態12では、実施形態1~11のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、不純物は、アルミニウム、チタン、アルミニウムの化合物、チタンの化合物、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0060】
実施形態13では、実施形態12に記載のプロセスにおいて、工程1)の混合物は、少なくとも700重量ppmのアルミニウム及び少なくとも900重量ppmのチタンを含有する。
【0061】
実施形態14では、実施形態1~13のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程1)の混合物は、最大4000ppmの不純物を含有する。
【0062】
実施形態15では、実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、B)三級アミンは、式NR’’(式中、各R’’は、独立して選択される2~16個の炭素原子のアルキル基である)のトリアルキルアミンである。
【0063】
実施形態16では、実施形態15に記載のプロセスにおいて、トリアルキルアミンは、トリエチルアミンである。
【0064】
実施形態17では、実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、活性炭は、Calgon Carbon Corporationから入手可能なCPG-LF及びPWAグレードからなる群から選択される。
【0065】
実施形態18では、実施形態1~17のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程2)は、-30℃~300℃の温度で実施される。
【0066】
実施形態19では、実施形態1~18のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程2)は、工程1)の生成物及びバッチ容器内の活性炭を混合することによって実施される。
【0067】
実施形態20では、実施形態1~18のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程2)は、固定層接触器を使用して連続的又は半連続的に実施され、活性炭が接触器に充填され、工程1)の生成物は、接触器を通過する。
【0068】
実施形態21では、実施形態1~20のいずれか1つに記載のプロセスは、3)工程2)の後に、活性炭及び流体ケイ素化合物を分離する工程を更に含む。
【0069】
実施形態22では、実施形態21に記載のプロセスは、沈降、遠心分離、及び/又は濾過によって実施される。
【0070】
実施形態22では、実施形態1~22のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、精製流体ケイ素化合物は、<10ppmのチタン、<10ppmのアルミニウム、又はその両方を含有する。
【0071】
実施形態24では、実施形態1~23のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、精製流体ケイ素化合物は、過剰な三級アミンを含有する。
【0072】
実施形態25では、実施形態24に記載のプロセスは、過剰な三級アミンの全部又は一部を、精製流体ケイ素化合物から除去する工程を更に含む。
【手続補正書】
【提出日】2021-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2019年8月22日に出願された米国特許仮出願第62/890088号の優先権を主張するものである。
【0002】
直接プロセス残渣(DPR)などの、流体ケイ素化合物から金属不純物を除去するためのプロセスが開示される。このプロセスを使用して、DPRから多量のアルミニウム及びチタン不純物を除去することができる。
【背景技術】
【0003】
クロロシランモノマーなどのハロシランモノマーを製造するための直接プロセスは、流動層反応器(FBR)内で冶金グレードのケイ素金属粒子をハロゲン化物(例えば、塩化物)と反応させることによって商業規模で実施されている。ハロゲン化物は、塩化メチルなどの有機ハロゲン化物であり得、直接プロセスは、ジメチルジクロロシランなどの有機官能性クロロシランを生成させる。あるいは、ハロゲン化物は、ハロゲン化水素(例えば、HCl)であり得、直接プロセスを使用して、トリクロロシランなどの無機ハロシランを生成させる。触媒及び/又は促進剤は、所望のハロシランモノマーに対する収率及び/又は選択性を改善するために、任意選択でFBRに添加され得る。
【0004】
直接プロセス実行の最後に、DPRを処理する必要がある。DPRは、典型的には、未反応のケイ素金属、金属不純物、ハロシランモノマー、及び高沸点成分を含有する。DPRのハロシランモノマー及び高沸点成分を再循環及び/又は再利用することが望ましい。高沸点成分は、分子中にSi-Si、Si-O-Si、Si-C-Si、Si-C-C-Si、及びSi-C-C-C-Si結合を含有する化合物を含み得る。DPRの高沸点成分中の典型的な化合物は、例えば、米国特許第2,598,435号、同2,681,355号、及び同8,852,545号に記載されている。DPRからのハロシランモノマーの回収、及びDPRの高沸点成分中の化合物のハロシランモノマーへの転換は、直接プロセスからの廃棄物を最小限に抑えるために望ましい。
【0005】
金属不純物は、ケイ素金属及び/又は触媒及び促進剤からFBRに導入される場合があり、実行中に反応器内に蓄積し、DPRから回収されたハロシラン及び高沸点成分の反応性にとって有害である場合がある。理論に束縛されることを望むものではないが、金属不純物は、高沸点成分を分解するため、及び/又はハロシラン成分を更に反応させて、ポリオルガノシロキサンポリマー又は樹脂などの有用な生成物を形成するための触媒毒として作用し得ると考えられる。したがって、DPRのハロシランモノマー及び高沸点成分からの金属不純物を最小限に抑えること又は排除することが望ましい。
【0006】
活性炭は、これまでにケイ素化合物から金属不純物を除去するために使用されてきた。しかしながら、活性炭を使用する以前の方法は、低濃度の不純物をすでに含有するケイ素化合物から始まる場合にのみ、その特定の金属不純物を低レベルまで除去するものであった。
【発明の概要】
【0007】
流体ケイ素化合物を精製するためのプロセスは、
1)
A)混合物であって、
i)流体ケイ素化合物と、
ii)金属を含む不純物であって、不純物が、混合物の重量に基づいて、少なくとも500ppmの金属を提供するのに十分な量で存在する、不純物とを含む、混合物、及び
B)三級アミンを組み合わせて、
それによって、C)i)流体ケイ素化合物と、iii)アミン-金属複合体と、を含む生成物を形成する工程と、
2)
C)工程1)で形成された生成物と、
D)活性炭と、を組み合わせて、それによって、アミン-金属複合体を活性炭で吸着させ、精製流体ケイ素化合物を調製する工程と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
混合物
本明細書に記載の方法の工程1)で使用される混合物は、i)流体ケイ素化合物と、ii)金属を含む不純物と、を含む。混合物は、DPRを含み得る。あるいは、混合物は、ii)不純物に加えて、流体ケイ素成分として、i)ハロシランモノマーを含み得る。混合物がDPRを含む場合、DPRは、メチルクロロシランを製造するための直接プロセスに由来し得る(MCS DPR)。あるいは、DPRは、トリクロロシランを製造するための直接プロセスに由来し得る(TCS DPR)。あるいは、DPRは、MCS DPR及びTCS DPRの混合物であり得る。米国特許第8,852,545号は、MCS DPR及びTCS DPRの含有量を記載する。
【0009】
MCS DPR
あるいは、上記のプロセスの工程1)で使用される混合物は、MCS DPRであり得る。MCS DPRは、典型的には、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、0~4、あるいは1~3である)のモノシラン、及び式
【化1】
(式中、各R’は、独立して、H、メチル、及びClから選択され、下付き文字dは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つ、あるいは2~6つ、あるいは3~6つのR’の事例がClである)のポリシランを含む。モノシランは、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。ポリシランは、ヘキサクロロジシラン、オクタクロロトリシラン、デカクロロテトラシラン、及び高級同族塩素化ポリシラン;テトラメチルジクロロジシラン、トリメチルトリクロロジシラン、テトラメチルテトラクロロトリシラン、ジメチルテトラクロロジシラン、ペンタクロロヒドロジシラン、テトラクロロジヒドロジシラン、ペンタクロロメチルジシラン、トリメチルトリクロロジヒドロトリシラン、テトラメチルジクロロジヒドロトリシラン、及び他の塩素化メチル官能性ポリシラン;並びにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0010】
TCS DPR
あるいは、上記のプロセスの工程1)で使用される混合物は、TCS DPRであり得る。TCS DPRは、典型的には、式HSiCl(4-a)(式中、下付き文字aは、0~4である)のモノシラン、及び式
【化2】
(式中、各Rは、独立して、H及びClから選択され、下付き文字bは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのRの事例がClであり、あるいは1分子当たり、少なくとも3つ、あるいは2~6つ、あるいは3~6つのRの事例がClである)のポリシランを含む。TCS DPR中のモノシランは、典型的には、トリクロロシラン(HSiCl)、ジクロロシラン(HSiCl)及びモノクロロシラン(HSiCl)を含む。TCS DPR中のポリシランは、ヘキサクロロジシラン、オクタクロロトリシラン、デカクロロテトラシラン、及び高級同族塩素化ポリシラン;ジヒドロテトラクロロジシラン、ペンタクロロヒドロジシラン、テトラクロロジヒドロジシラン、トリクロロトリヒドロジシラン、テトラヒドロテトラクロロトリシラン、トリヒドロペンタクロロトリシラン、及び他の塩素化ヒドロ官能性ポリシラン;並びにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0011】
他のハロシランモノマー混合物
あるいは、本明細書に記載のプロセスの工程1)で使用される混合物中の流体ケイ素化合物は、式の1つのハロシランモノマー、又は2つ以上のハロシランモノマーの混合物であり得、ハロシランモノマーは、式R’’’SiX(式中、各R’’’は、独立して選択される一価炭化水素基であり、各Xは、独立して選択されるハロゲン原子であり、下付き文字は、0≦x≦3、0≦y≦3、1≦z≦4、及び量(x+y+z)=4であるような値を有する)を有する。R’’’に対する一価炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であってもよい。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及びイソ-プロピルを含む)、及びブチル(n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルを含む)が挙げられ、あるいは、アルキル基は、メチル又はエチル、あるいはメチルであってもよい。好適なアルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。あるいは、アルケニル基は、ビニル又はヘキセニル、あるいはビニルであってもよい。好適なアリール基としては、フェニルが挙げられる。各Xは、独立して、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)及びヨウ素(I)からなる群から、あるいはBr、Cl及びF、あるいはBr及びClから選択されてもよく、あるいは、各XはClであってもよい。あるいは、流体ケイ素化合物は、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、1~3である)のハロゲノシランモノマーを含んでもよい。
【0012】
ハロシランモノマーの例としては、テトラクロロシラン(SiCl)、トリクロロシラン(HSiCl)、メチルトリクロロシラン(CHSiCl)、ジメチルジクロロシラン[(CHSiCl]、ジクロロシラン(HSiCl)、モノクロロシラン(HSiCl)、フェニルメチルジクロロシラン[(C)(CH)SiCl]、フェニルトリクロロシラン[(C)SiCl]、ビニルトリクロロシラン[(CH=CH)SiCl]、又はそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
金属性不純物
本明細書に記載のプロセスの工程1)で使用される混合物は、不純物を含む。不純物は、金属(ケイ素以外)、金属の化合物、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、不純物は、アルミニウム、チタン、アルミニウムの化合物、チタンの化合物、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含み得る。アルミニウム化合物の例としては、塩化アルミニウム(AlCl)が挙げられる。チタン化合物の例としては、TiCl、TiCl、TiCl、及びそれらの2つ以上が挙げられる。混合物は、多量の不純物、すなわち、工程1)における混合物が、少なくとも500ppm、あるいは>1,000ppm、あるいは500ppm~4,000ppm、あるいは>1,000ppm~4,000ppmの金属(ケイ素以外)を含有するように十分な量の不純物を含有する。あるいは、混合物は、総金属含有量が>1,000ppmであるように、少なくとも700重量ppmのアルミニウム及び少なくとも1つの他の金属、及び少なくとも1つの他の金属を含有し得る。あるいは、混合物は、総金属含有量が>1,000ppmであるように、少なくとも900重量ppmのチタン及び少なくとも1つの他の金属を含有し得る。
【0014】
三級アミン
上記のプロセスの工程1)で、B)三級アミンは、周囲条件(すなわち、室温及び周囲圧力)で液状である三級アミンであり得る。例えば、三級アミンは、以下の表Aに示されるものからなる群から選択され得る。
【表1】
【0015】
表1の三級アミンは、Kao Specialties Americas LLC of High Point,NC,USAから市販されている。
【0016】
あるいは、三級アミンは、トリアルキルアミンであり得る。トリアルキルアミンは、式NR’’(式中、各R’’は、2~16個の炭素原子、あるいは2~12個の炭素原子、あるいは2~8個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子の独立して選択されるアルキル基である)を有し得る。あるいは、トリアルキルアミンは、トリエチルアミンであり得る。三級アミンは、当該技術分野において公知であり、例えば、Millipore Sigma of St.Louis,Missouri,USA.から市販されている。
【0017】
活性炭
本明細書の方法で使用される活性炭は、具体的には限定されない。しかしながら、活性炭は、歴青炭系又は褐炭系であり得る。好適な活性炭は、参考文献、Activated Carbon Adsorption For Wastewater Treatment,Jerry.R.Perrich,CRC Press,1981に開示されている。褐炭から製造された活性炭は、液相中の化学化合物からの大きな分子量の成分を除去するのにより良く適するより高い総細孔容積(高い糖蜜数)を有する大きな細孔径を有する傾向がある。しかしながら、歴青炭系活性炭は、高度に発達した多孔質構造及び大きな比表面を有し、より小さな分子の吸着に適した大きな微細孔容積を有する。言い換えれば、褐炭炭素は、歴青炭系活性炭と比較して、より大きな細孔容積、より小さい表面積を有する。活性炭の例は、表Bに示される特性を有し得る。
【表2】
【0018】
あるいは、活性炭は、歴青炭系であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、歴青炭系活性炭は、本明細書に記載のプロセスにおいて他のタイプの活性炭よりも良好に機能し得ると考えられる。歴青炭系活性炭は、Calgon Carbon Corporation of Pittsburgh,Pennsylvania,USAから入手可能なCPG(商標)LF及びPWAグレードからなる群から選択され得る。好適な褐炭系活性炭の例としては、Cabot Corporation of Boston,Massachusetts,USA製のDarco(商標)Liが挙げられる。
【0019】
方法の工程
流体ケイ素化合物を精製するためのプロセスは、
1)
99.5重量%~99.75重量%の混合物であって、
i)流体ケイ素化合物と、
ii)金属を含む不純物であって、不純物が、混合物の重量に基づいて、少なくとも500ppmの金属を提供するのに十分な量で存在する、不純物とを含む、混合物、及び
0.25重量%~0.5重量%の三級アミンを組み合わせて、
それによって、i)流体ケイ素化合物と、iii)アミン-金属複合体と、を含む生成物を形成する工程と、
2)
工程1)で形成された92%~98%の生成物と、
2%~8%の活性炭と、を組み合わせて、それによって、アミン-金属複合体を活性炭で吸着させ、精製流体ケイ素化合物を調製する工程と、を含み得る。
【0020】
プロセスは、任意選択で、1つ以上の追加工程を更に含み得る。例えば、混合物が粒子状物(DPR含有ケイ素金属など)を含有する場合、粒子状物は、工程1)の前、並びに/又は工程1)の後及び工程2)の前に除去され得る。粒子状物は、上澄み液の沈降及び除去、濾過、遠心分離、又はそれらの組み合わせなどの、任意の便利な手段によって除去され得る。
【0021】
混合物が比較的揮発性の成分を含有する場合、揮発性成分の全部又は一部は、工程1)の前に除去され得る。例えば、工程1)の前に、DPRをストリッピング及び/又は蒸留して、未反応ハロゲン化物、並びにジクロロシラン及び/又はメチルハイドロジェンクロロシランなどの低沸点ハロシランなどの揮発性成分を除去してもよい。
【0022】
工程1)は、撹拌機を有する容器内で混合するなど、任意の便利な手段によって実施され得る。工程1)は、不活性及び無水条件下で実施され得る。工程1)における圧力は重要ではなく、周囲圧力又は高圧力であってもよい。工程1)は、-30℃~300℃の温度で実施され得る。
【0023】
プロセスは、工程1)で形成された生成物及び工程2)における活性炭を混合する前に、活性炭を乾燥させる工程を任意選択で更に含み得る。乾燥は、活性炭の充填床を通して乾燥不活性ガスを加熱及び/又は掃引するなどの任意の便利な手段によって実施され得る。
【0024】
上記のプロセスの工程2)は、工程1)で形成された生成物、並びに撹拌機を任意選択で有するバッチ容器などの、流体及び固体を組み合わせるのに好適な任意の装置内の活性炭を混合するなどの任意の便利な手段によって実施され得る。工程2)は、周囲圧力以上で実施され得る。工程2)は、-30℃~300℃の温度で実施され得る。あるいは、工程2)は、周囲温度及び周囲圧力で実施され得る。
【0025】
本明細書に記載のプロセスは、バッチ、半バッチ、又は連続モードで実施され得る。
【0026】
プロセスは、任意選択で、3)工程2)の後に精製ケイ素化合物を回収する工程を更に含み得る。例えば、残渣活性炭などの粒子状物は、工程2)の後に精製ケイ素化合物と共に存在し得る。粒子状物は、上澄み液の沈降及び除去、濾過、遠心分離、又はそれらの組み合わせなどの、任意の便利な手段によって除去され得る。
【0027】
プロセスは、任意選択で、4)例えば、残渣三級アミンを最小限に抑え若しくは排除し、及び/又は精製ケイ素化合物中の三級アミンの所望の濃度を達成するために、残渣三級アミンの全部又は一部を除去する工程を更に含み得る。アミンは、任意の便利な手段を使用して精製ケイ素化合物から除去され得る。これには、例えば、蒸留、薄膜蒸発、拭き取り膜蒸発、吸着(炭素又は他の吸着剤で)が挙げられ得る。
【0028】
上記のプロセスは、精製流体ケイ素化合物が不純物からの金属を≦50ppmで含有するという利点を提供し得る。精製ケイ素化合物は、≦50ppmのAl、あるいは≦50ppmのTi、あるいは合計で≦50ppmのAl及びTiを含有し得る。あるいは、精製流体ケイ素化合物は、<10ppmのTi、<10ppmのAl、又はその両方を含有し得る。
【実施例
【0029】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0030】
参考例1.活性炭の乾燥
供給元から受領した活性炭試料は、様々な濃度の水分を含有していた。水がクロロシラン出発物質と反応し、HCl蒸気及びシロキサンゲルを形成するリスクを軽減するために、全ての活性炭試料を一貫して、使用前に真空オーブン内にて160℃で24時間乾燥させた。乾燥させてから、活性炭試料をオーブンから取り出し、ジャーに入れた。次いで、ジャーをグローブボックス内に保管し、これを非常に低い水分レベルに維持した。
【0031】
実施例2.全般的な手順
TCS DPRをストリッピングし、次いで、CPG-LF 12×40活性炭(Calgon Carbon Corporation of Pittsburgh,Pennsylvania,USA製の歴青炭系活性炭)及びDarco Li 12×20(Cabot Corporation製の褐炭系活性炭)で処理し、これらの両方を参考例1に記載されるように乾燥させた。2つの異なるレベルの固体(活性炭)対液状物質量(直接プロセス残渣)比、すなわち8%及び13%を使用した。活性炭を秤量し、グローブボックス内のガラスバイアルに添加した。次いで、DPRをバイアルに添加した。
【0032】
DPR添加が完了してから、バイアルをグローブボックスから取り出した。パラフィルムのストリップをバイアルのキャップの周りに巻き付けて、上部から漏れる材料を軽減した。次いで、バイアルをフード内のボルテックスミキサー上に置き、24時間振盪した。
【0033】
24時間後、振盪したバイアルをグローブボックス内に戻した。シリンジ及びフィルタを使用して、バイアルの内容物を濾過した。0.45μmのフィルタにスレッドを有する5mLのシリンジを使用した。フィルタからの流出物は、破片を含まない透明な液状であった。濾過した材料を、以下の参考例4の試験方法に従ってICP-OESによって分析した。得られた金属含有量をppm単位で以下の表1及び表2に示す。
【表3】
【表4】
【0034】
表1及び2は、TCS DPRが炭素のみ(三級アミンなし)で処理されたとき、非経済的な高量の活性炭を使用しない限り、Al及びTiを含有する50ppm以下の不純物が達成できなかったことを示した。更に、特定の活性炭(例えば、Darco)が高レベルであっても50ppm以下のTi不純物を達成できなかったという点で、その結果は一貫していなかった。
【0035】
実施例3.全般的な手順
参考例1に記載されるようにストリッピングしたTCS DPRを、トリエチルアミン(TEA)で処理した。最初に、TCS DPRにTEAを添加し(0.5%のTEA/99.5%のTCS DPR、表3を参照、又は0.25%のTEA/99.75%のTCS DPR、表4を参照)、得られたTEA処理DPRをICPによって評価した(下記の表3及び表4の比較例6及び9を参照)。
【0036】
次いで、得られたTEA処理DPRをマスターバッチとして使用して、活性炭を使用し、表3及び表4に示されるTCS DPR質量比まで炭素吸着処理をした。活性炭を秤量し、グローブボックス内のガラスバイアルに添加した。次いで、TCS DPRをバイアルに添加した。
【0037】
TCS DPR添加が完了してから、バイアルをグローブボックスから取り出した。パラフィルムのストリップをバイアルのキャップの周りに巻き付けて、上部から漏れる材料を軽減した。次いで、バイアルをフード内のボルテックスミキサー上に置き、24時間振盪した。
【0038】
24時間後、振盪したバイアルをグローブボックス内に戻した。シリンジ及びフィルタを使用して、バイアルの内容物を濾過した。0.45μmのフィルタにスレッドを有する5mLのシリンジを使用した。フィルタからの流出物は、破片を含まない透明な液状であった。濾過した材料を、参考例4の方法に従ってICP-OESによって分析した。得られた金属含有量をppm単位で以下の表3及び表4に示す。
【表5】
【0039】
表3は、TEAのみでTCS DPRを処理することが、Al及びTi不純物含有量を50ppm未満に低減させなかったことを示した。しかしながら、実施例は、本発明のプロセスをTEA及び歴青炭系活性炭で実施することが、Ti含有不純物及びAl含有不純物の両方を10ppm未満に低減させたことを示した。
【表6】
【0040】
表4は、TCS DPRをより低いレベルのTEA(表3で上記使用されたものよりも)で、その後、歴青炭系活性炭処理することが、Ti不純物及びAl不純物の一方又は両方を10ppm未満に除去するのに有効であったことを示した。
【0041】
参考例4.ICP-OES試験方法
試料(5グラム)を白金皿に秤量し、HFを試料に直ちに添加して全てのケイ素を溶解した。HSO及びHNOを添加して、溶解を完了し、次いで添加剤を乾燥させた。HNO及びHを添加し、添加剤を乾燥させた後、5%の温HNOを使用して25mlの最終容量にした。次いで、このプロセスの一部として、Sc内部標準がオンラインで追加されたICP-OESを介して試料を分析した。試料中のAl及びTiのより良好な定量化を可能にするために、Al又はTi中で200ppmを超える初期結果を有する試料を、追加のオンライン希釈で再分析した。第2の分析からのAl及びTiデータは、200ppmを超える結果を有する全ての試料について上に示される。
【0042】
発明が解決しようとする課題
高(500ppm以上)レベルの金属不純物(例えば、アルミニウムを含有する不純物)を含有するクロロシラン混合物又はDPRなどの流体ケイ素化合物からの金属不純物を50ppm未満、あるいは10ppm未満のレベルまで低減することが業界で求められている。更に、そのような流体ケイ素化合物からチタン及び/又はアルミニウム不純物を除去することが業界で求められている。
【0043】
産業上の利用可能性
上記の実施例及び比較例は、TCS DPRを炭素及びアミンで処理することが、金属(Al及び/又はTi)を含有する不純物の含有量を低減して、広範囲の工業用途で更に使用することを可能にする、効果的な方法であることを示している。いくつかの例では、そのような不純物含有量の低減は、下流のプロセス工程で使用される触媒の被毒を回避するために必要であり得る。
【0044】
更に、下流プロセス工程では、本明細書に記載のプロセスは、工程2)の精製流体ケイ素化合物中の残渣三級アミンが、その後のハロシラン及び/又は高沸点成分の反応のための触媒又は助触媒として作用して、オルガノシランを製造することができるという、更なる効果をもたらし得る。
【0045】
用語の定義及び用法
全ての量、比率、及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば/など、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用される略語は、表9の定義を有する。
【表7】
【0046】
本発明は、例示的な様式で説明されており、使用されている用語は限定目的よりも、むしろ説明のための言葉としての性質が意図されているものと理解されるべきである。本明細書で具体的な特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠されてもよく、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0047】
更に、本発明を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にすることを、そして、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2分の1、3分の1、4分の1、5分の1などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、範囲「1~18」は、下から3分の1、すなわち、1~6、中間の3分の1、すなわち、7~12、及び上から3分の1、すなわち、13~18と更に詳述でき、これらは、個別的及び包括的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供し得る。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。
【0048】
本発明の実施形態
実施形態1では、流体ケイ素化合物を精製するためのプロセスは、
1)
99.5重量%~99.75重量%の混合物であって、
i)流体ケイ素化合物と、
ii)金属を含む不純物であって、不純物が、混合物の重量に基づいて、少なくとも1,000ppmの金属を提供するのに十分な量で存在する、不純物とを含む、混合物、及び
0.25重量%~0.5重量%の三級アミンを組み合わせて、
それによって、i)流体ケイ素化合物と、iii)アミン-金属複合体と、を含む生成物を形成する工程と、
2)
工程1)で形成された<98重量%の生成物と、
>2重量%の歴青炭系活性炭と、を組み合わせて、それによって、アミン-金属複合体を活性炭で吸着させ、精製流体ケイ素化合物を調製する工程と、を含む。
【0049】
実施形態2では、実施形態1に記載のプロセスは、工程1)で形成された生成物及び工程2)における活性炭を混合する前に、活性炭を乾燥させる工程を更に含む。
【0050】
実施形態3では、実施形態1又は実施形態2に記載のプロセスは、工程2)を実施する前に、工程1)で形成された生成物を濾過する工程を更に含む。
【0051】
実施形態4では、実施形態1~3のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程1)の混合物は、直接プロセス残渣である。
【0052】
実施形態5では、実施形態4に記載のプロセスは、工程1)の前に直接プロセス残渣から粒子状物を除去する工程を更に含む。
【0053】
実施形態6では、実施形態4又は実施形態5に記載のプロセスは、工程1)の前に直接プロセス残渣から揮発物を除去する工程を更に含む。
【0054】
実施形態7では、実施形態4~6のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、直接プロセス残渣は、トリクロロシラン直接プロセス残渣である。
【0055】
実施形態8では、実施形態7に記載のプロセスにおいて、トリクロロシラン直接プロセス残渣は、式HSiCl(4-a)(式中、下付き文字aは、0~4である)のシラン、及び式
【化3】
(式中、各Rは、独立して、H及びClから選択され、下付き文字bは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのRの事例がClである)のポリシランを含む。
【0056】
実施形態9では、実施形態4~6のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、直接プロセス残渣は、メチルクロロシラン直接プロセス残渣である。
【0057】
実施形態10では、実施形態9に記載のプロセスにおいて、メチルクロロシラン直接プロセス残渣は、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、0~4である)のシラン、及び式
【化4】
(式中、各R’は、独立して、H、メチル、及びClから選択され、下付き文字dは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのR’の事例がClである)のポリシランを含む。
【0058】
実施形態11では、実施形態1~3のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、流体ケイ素化合物は、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、1~3である)のハロシランモノマーを含む。
【0059】
実施形態12では、実施形態1~11のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、不純物は、アルミニウム、チタン、アルミニウムの化合物、チタンの化合物、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0060】
実施形態13では、実施形態12に記載のプロセスにおいて、工程1)の混合物は、少なくとも700重量ppmのアルミニウム及び少なくとも900重量ppmのチタンを含有する。
【0061】
実施形態14では、実施形態1~13のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程1)の混合物は、最大4000ppmの不純物を含有する。
【0062】
実施形態15では、実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、B)三級アミンは、式NR’’(式中、各R’’は、独立して選択される2~16個の炭素原子のアルキル基である)のトリアルキルアミンである。
【0063】
実施形態16では、実施形態15に記載のプロセスにおいて、トリアルキルアミンは、トリエチルアミンである。
【0064】
実施形態17では、実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、活性炭は、Calgon Carbon Corporationから入手可能なCPG-LF及びPWAグレードからなる群から選択される。
【0065】
実施形態18では、実施形態1~17のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程2)は、-30℃~300℃の温度で実施される。
【0066】
実施形態19では、実施形態1~18のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程2)は、工程1)の生成物及びバッチ容器内の活性炭を混合することによって実施される。
【0067】
実施形態20では、実施形態1~18のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、工程2)は、固定層接触器を使用して連続的又は半連続的に実施され、活性炭が接触器に充填され、工程1)の生成物は、接触器を通過する。
【0068】
実施形態21では、実施形態1~20のいずれか1つに記載のプロセスは、3)工程2)の後に、活性炭及び流体ケイ素化合物を分離する工程を更に含む。
【0069】
実施形態22では、実施形態21に記載のプロセスは、沈降、遠心分離、及び/又は濾過によって実施される。
【0070】
実施形態22では、実施形態1~22のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、精製流体ケイ素化合物は、<10ppmのチタン、<10ppmのアルミニウム、又はその両方を含有する。
【0071】
実施形態24では、実施形態1~23のいずれか1つに記載のプロセスにおいて、精製流体ケイ素化合物は、過剰な三級アミンを含有する。
【0072】
実施形態25では、実施形態24に記載のプロセスは、過剰な三級アミンの全部又は一部を、精製流体ケイ素化合物から除去する工程を更に含む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ケイ素化合物を精製するためのプロセスであって、
1)
99.5重量%~99.75重量%の混合物であって、
i)ハロシランモノマーを含む流体ケイ素化合物と、
ii)アルミニウム、チタン、アルミニウムの化合物、チタンの化合物、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される金属を含む不純物であって、前記不純物が、前記混合物の重量に基づいて、少なくとも500ppmの前記金属を提供するのに十分な量で存在する、不純物とを含む、混合物、及び
0.25重量%~0.5重量%の三級アミンを組み合わせて、
それによって、i)前記流体ケイ素化合物と、iii)アミン-金属複合体と、を含む生成物を形成する工程と、
2)
工程1)で形成された92重量%~98重量%の前記生成物と、
2重量%~8重量%の活性炭と、を組み合わせて、それによって、前記アミン-金属複合体を前記活性炭で吸着させ、前記精製流体ケイ素化合物を調製する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項2】
工程1)における前記混合物が、直接プロセス残渣である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記直接プロセス残渣が、トリクロロシラン直接プロセス残渣である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記トリクロロシラン直接プロセス残渣が、式HSiCl(4-a)(式中、下付き文字aは、前記ハロシランモノマーのように、0~4である)のシラン、及び式
【化1】
(式中、各Rは、独立して、H及びClから選択され、下付き文字bは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのRの事例がClである)のポリシランを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記直接プロセス残渣が、メチルクロロシラン直接プロセス残渣である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記メチルクロロシラン直接プロセス残渣が、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、前記ハロシランモノマーのように、0~4である)のシラン、及び式
【化2】
(式中、各R’は、独立して、H、メチル、及びClから選択され、下付き文字dは、0~6であり、ただし、1分子当たり、少なくとも2つのR’の事例がClである)のポリシランを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
i)前記流体ケイ素化合物が、式(CHSiCl(4-c)(式中、下付き文字cは、1~3である)のハロシランモノマーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
工程1)の前記混合物が、少なくとも700重量ppmのアルミニウム及び少なくとも900重量ppmのチタンを含有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
工程1)の前記混合物が、最大4000ppmの前記不純物を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
B)前記三級アミンが、式NR’’(式中、各R’’は、独立して選択される2~16個の炭素原子のアルキル基である)のトリアルキルアミンである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記トリアルキルアミンが、トリエチルアミンである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記活性炭が、歴青炭系である、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
3)工程2)の後に、前記活性炭及び前記流体ケイ素化合物を分離する工程を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【国際調査報告】