(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(54)【発明の名称】金属ワークピースを分離するための切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23B 27/04 20060101AFI20221026BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B23B27/04
B23B27/14 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512735
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020067569
(87)【国際公開番号】W WO2021037416
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506297474
【氏名又は名称】ヴァルター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バンドゥラ, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ゼエブ, ルディ
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA00
3C046CC00
(57)【要約】
本発明は、金属ワークピースを分離するための切削インサートであって、切削インサートは、細長い本体を備え、細長い本体は、上面と、底面と、それぞれ一方の側方の側で上面と底面とを接続する第1の側面および第2の側面と、第1の側面および第2の側面、上面、ならびに底面を接続する前面と、中心平面において前面から軸方向後方に延びる長手方向軸と、切削エッジを備える切削ヘッドであって、切削エッジは、前面と上面との交差部に形成されており、切削エッジは、第1の側方側面にある前方切削コーナおよび第2の側方側面にある後方切削コーナを含む、切削ヘッドとを有し、後方切削コーナは、前方切削コーナの軸方向後方に位置し、切削エッジは、最後方点を有し、最後方点は、後方切削コーナから軸方向後方に位置する、切削インサートに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ワークピースを分離するための切削インサート(1)であって、
前記切削インサート(1)が、細長い本体(18)を備え、前記細長い本体(18)が、
上面(4)と、
底面(5)と、
それぞれ一方の側方の側で前記上面(4)と前記底面(5)とを接続する第1の側面(8)および第2の側面(9)と、
前記第1の側面(8)および前記第2の側面(9)、前記上面(4)、ならびに前記底面(5)を接続する前面(12)と、
中心平面において前記前面(12)から軸方向後方に延びる長手方向軸(10)と、
切削エッジ(11)を備える切削ヘッド(2)であって、前記切削エッジ(11)が、前記前面(12)と前記上面(4)との交差部に形成されており、前記切削エッジ(11)が、
前記第1の側方側面(8)にある前方切削コーナ(13)、および
前記第2の側方側面(9)にある後方切削コーナ(14)
を含む、切削ヘッド(2)と
を有し、前記後方切削コーナ(14)が、前記前方切削コーナ(13)の軸方向後方に位置する、切削インサート(1)において、
前記切削エッジ(11)が、最後方点(16)を有し、前記最後方点(16)が、前記後方切削コーナ(14)から軸方向後方に位置する
ことを特徴とする、切削インサート(1)。
【請求項2】
前記切削インサートが、幅(w)を有し、前記幅(w)が、横方向に測定した場合、前記前方切削コーナ(13)と前記後方切削コーナ(14)との間の距離であり、軸方向に測定した場合、前記前方切削コーナ(13)と前記後方切削コーナ(14)との間の距離(ad)が、前記幅(w)の5%から15%の範囲内である、請求項1に記載の切削インサート(1)。
【請求項3】
前記前方切削コーナ(13)に隣接する前記切削エッジ(11)の一次部分(22)が、一次角度(α1)を含み、前記一次角度(α1)が、前記長手方向軸(10)に垂直な線(19)と前記切削エッジ(11)の前記一次部分との間の平均角度であり、前記一次角度(α1)が、15°から25°の範囲内である、請求項1または2に記載の切削インサート(1)。
【請求項4】
前記切削エッジ(11)が、前記切削インサート(1)が前記長手方向軸(10)に沿って前記ワークピースに向かって送られ、前記切削エッジ(11)全体が前記ワークピースと係合しているときに、結果として生じる力が、前記長手方向軸(10)と20°以下の角度をなすように、前記前方切削コーナ(13)と、前記最後方点(16)と、前記後方切削コーナ(14)との間の形状を有する、請求項3に記載の切削インサート(1)。
【請求項5】
横方向に測定した場合、前記最後方点(16)が、前記前方切削コーナ(13)および前記後方切削コーナ(14)よりも前記長手方向軸(10)の近くに位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項6】
前記切削エッジ(11)が、前記前方切削コーナ(13)から前記最後方点(16)まで延在する第1の切削エッジ部分(15)と、前記最後方点(16)から前記後方切削コーナ(14)まで延在する第2の切削エッジ部分(17)とを備え、前記第1の切削エッジ部分(15)および前記第2の切削エッジ部分(17)がそれぞれ、座標系において単調な形状を有し、前記座標系が、y軸として前記長手方向軸(10)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項7】
前記切削エッジ(11)が、第1の切削エッジ部分(15)および第2の切削エッジ部分(17)を備え、前記第1の切削エッジ部分(15)が、
前記前方切削コーナ(13)と前記最後方点(16)との間に位置し、
前記前方切削コーナ(13)から前記最後方点(16)までの、前記切削エッジの全長の少なくとも2/3の長さを有し、
直線状であるか、
または、前記第2の切削エッジ部分(17)が、
前記最後方点(16)と前記後方切削コーナ(14)との間に位置し、
前記最後方点(16)から前記後方切削コーナ(14)までの、前記切削エッジ(11)の全長の少なくとも2/3の長さを有し、
直線状である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項8】
前記第1の部分(15)および前記第2の部分(17)が、前記最後方点(16)で交わる、請求項7に記載の切削インサート(1)。
【請求項9】
横方向に測定した場合、前記前方切削コーナ(13)および前記後方切削コーナ(14)が、前記長手方向軸(10)から異なる距離を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項10】
前記前方切削コーナ(13)および前記後方切削コーナ(14)の少なくとも一方が、凸状に湾曲しており、0.05mmから0.5mmの範囲の曲率半径を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項11】
前記切削エッジ(11)が、凹状湾曲部分()を有し、前記湾曲部分が、前記最後方点(16)を含み、前記湾曲部分()が、1mmから5mmの範囲の曲率半径を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項12】
前記切削インサート(1)が、幅(w)を有し、前記幅(w)が、前記前方切削コーナ(13)と前記後方切削コーナ(14)との間の、前記長手方向軸(10)に垂直な横方向距離であり、前記幅が5mm以下である、請求項1から11のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項13】
金属ワークピースを分離するための分離工具であって、前記分離工具が、工具本体と、請求項1から12のいずれか一項に記載の切削インサート(1)とを備え、前記工具本体が、インサート座を有し、前記切削インサート(1)が、前記インサート座に取り付けられる、分離工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属ワークピースを分離するための切削インサートであって、切削インサートは、細長い本体を備え、細長い本体は、上面と、底面と、それぞれ一方の側方の側で上面と底面とを接続する第1の側面および第2の側面と、第1の側面および第2の側面、上面、ならびに底面を接続する前面と、中心平面において前面から軸方向後方に延びる長手方向軸と、切削エッジを備える切削ヘッドであって、切削エッジは、前面と上面との交差部に形成されており、切削エッジは、第1の側方側面にある前方切削コーナおよび第2の側方側面にある後方切削コーナを含む、切削ヘッドとを有し、後方切削コーナは、前方切削コーナの軸方向後方に位置する、切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
分離用の切削インサートは、例えば、ワークピースの機械加工が完了した後に、機械加工された金属ワークピースをロッドの形態のブランクから切り離すために使用される。金属ワークピースを金属ロッドから分離することは、通常、旋削加工であり、切削インサートを含む分離工具の半径方向の送り込みは、最初のブランクが2つのピース、すなわちロッドの残りの部分と実際のワークピースとに分かれるまでロッドが機械加工されるようなものである。
【0003】
金属ワークピースを金属ロッドから分離するとき、バリ、例えば、スラグまたはリングの形態のバリがワークピースに残らないように、きれいな切削を達成することは困難である。切削インサートを使用することによって、分離中のスラグ形成を回避することが試みられており、直線状の切削エッジは、ワークピースの回転軸に対して傾けられている。その場合、切削エッジは、回転するワークピースの半径方向において、ワークピース側に前方切削コーナを、ロッド側に後方切削コーナを有する。分離用の切削インサートは幅が小さいが有限であるため、これらの既知の切削インサートの問題は、発生する横方向の力が切削インサートを湾曲させ、これが、バリの形成をさらに増加させ、きれいな切削を提供する能力に悪影響を及ぼすことである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、金属ワークピースを分離するための切削インサートであって、よりきれいな切削を提供する切削インサートを提供することである。
【0005】
上述の目的の少なくとも1つは、特許請求の範囲に規定されている発明によって達成される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、上記の目的のうちの少なくとも1つは、金属ワークピースを分離するための切削インサートであって、切削インサートは、細長い本体を備え、細長い本体は、上面と、底面と、それぞれ一方の側方の側で上面と底面とを接続する第1の側面および第2の側面と、第1の側面および第2の側面、上面、ならびに底面を接続する前面と、中心平面において前面から軸方向後方に延びる長手方向軸と、切削エッジを備える切削ヘッドであって、切削エッジは、前面と上面との交差部に形成されており、切削エッジは、第1の側方側面にある前方切削コーナおよび第2の側方側面にある後方切削コーナを含む、切削ヘッドとを有し、後方切削コーナは、前方切削コーナの軸方向後方に位置し、切削エッジは、最後方点を有し、最後方点は、後方切削コーナから軸方向後方に位置する、切削インサートによって対処される。
【0007】
本発明による本発明の切削インサートの目的は、切削インサートに作用する結果として生じる軸外力を同時に低減しながら、金属ワークピースが残りの金属ロッドから切り離されるワークピースの軸方向位置を明確に規定することである。切削エッジの最後方点が、前方切削コーナと後方切削コーナとの間に位置するため、前方切削コーナは、前方切削コーナと後方切削コーナとを直接接続する直線状の切削エッジと比較して、より顕著になる。一般に、切削インサートに作用する軸外力は、主に、前方切削コーナと後方切削コーナとの間の軸方向オフセットによって決定される。前方切削コーナと後方切削コーナとの間に最後方点を有する切削エッジにより、切削インサートに作用する軸外力の少なくとも部分的な補償が達成される。
【0008】
本発明の一実施形態では、切削インサートは、幅を有し、幅は、前方切削コーナと後方切削コーナとの間の、長手方向軸に垂直な横方向距離であり、幅は5mm以下である。5mm以下の幅を有する切削インサートは、金属ロッドブランクの材料が切削時にほとんど浪費されないため、金属ワークピースを分離するのに適している。本発明の一実施形態では、切削インサートの幅は、3mm以下または1mm以下である。
【0009】
本発明の切削インサートがワークピースを分離するための旋削加工中に使用されるとき、ブランクは回転軸を中心に回転される。ワークピースの半径方向は、ワークピースの回転軸に垂直である。
【0010】
切削インサートが操作されているとき、すなわち回転する金属ワークピースに向かって送られているとき、切削インサートの長手方向軸は、ワークピースの半径方向と一直線であるか、または平行であり得る。このような操作では、切削インサートの長手方向軸は、ワークピースの回転軸に垂直である。特定の操作では、切削インサートがワークピースと係合しているとき、切削インサートの長手方向軸は、分離工具の送り軸とも一致し得る。
【0011】
切削インサートの軸方向は、切削インサートの長手方向軸と一直線のまたは平行な方向として理解されるべきである。工具の動作中、切削インサートの軸方向は、ワークピースの回転軸に垂直であり得る。
【0012】
切削インサートの横方向は、切削インサートの長手方向軸に垂直な方向として理解されるべきである。したがって、切削インサート上の2つの位置間の横方向距離または横方向に測定された距離は、長手方向軸に垂直な平面に投影したときの2つの位置間の距離である。
【0013】
本出願では、切削インサートに作用する軸外力は、その方向が切削インサートの長手方向軸とは異なる力である。軸外力は、ワークピースの回転軸に平行な方向の成分を有する。したがって、軸外力は、ワークピースの回転軸に平行な方向に切削インサートを動かす傾向がある。
【0014】
本発明の一実施形態では、切削インサートは、切削ヘッドに加えて、切削ヘッドの後端に隣接する取付部を備える。この取付部は、切削インサートが分離工具の工具本体のインサート座に受け入れられると、クランプ要素によってクランプされる。
【0015】
本発明の一実施形態では、第1の側面は、第1の上部側縁で上面と交差し、第2の側面は、第2の上部側縁で上面と交差する。したがって、上面は、切削インサートの両側で、上部側縁によって画定される。
【0016】
切削インサートが取付部を備える実施形態では、第1の上部側縁および第2の上部側縁は、取付部において平行である。この実施形態では、中心平面は、取付部において第1の上部側縁と第2の上部側縁との中間に位置する。
【0017】
本発明の一実施形態では、取付部において、第1の側面および第2の側面は、長手方向軸に関して対称である。
【0018】
本発明の一実施形態では、分離用の切削インサートは、2つの切削ヘッドを備える割り出し可能な切削インサートである。一実施形態では、2つの切削ヘッドは、取付部の長手方向両端に位置する。
【0019】
本発明の一実施形態では、上面は、少なくとも取付部ではほぼ平坦であり、第1の上部側縁および第2の上部側縁は共通の平面内に設けられる。
【0020】
本発明の一実施形態では、切削ヘッドにおいて、第1の上部側縁および第2の上部側縁は軸方向後方に互いに近づいている。この実施形態では、横方向に測定した場合、前方切削コーナと後方切削コーナとの間の距離は、切削インサートの最大幅である。
【0021】
本発明の一実施形態では、横方向に測定した場合、長手方向軸に対する前方切削コーナの距離は、長手方向軸に対する後方切削コーナの距離よりも大きい。
【0022】
切削エッジは、前方切削コーナから後方切削コーナまで延在し、両方の切削コーナを含む。
【0023】
本発明の一実施形態では、切削エッジは平面内に延在し、この平面は、取付部の平坦な上面の平面と角度をなす。
【0024】
本発明の一実施形態では、切削インサートは、幅を有し、幅は、横方向に測定した場合、前方切削コーナと後方切削コーナとの間の距離であり、切削インサートの軸方向に測定した場合、前方切削コーナと後方切削コーナとの間の距離は、幅の5%から15%の範囲内である。この設計は、結果として生じる軸外力を低減する。
【0025】
本発明の一実施形態では、前方切削コーナに隣接する切削エッジの一次部分は、一次角度を含み、一次角度は、長手方向軸に垂直な線と切削エッジの一次部分との間の平均角度であり、一次角度は、15°から25°の範囲内、または18°から25°の範囲内、または20°から25°の範囲内である。長手方向軸に垂直な線は、前方切削コーナで切削エッジと交差する。これらの範囲内で前方切削コーナに一次角度を有する切削インサートは、残存スラグが減少した改善された分離が達成される。
【0026】
本発明の一実施形態では、切削エッジの一次部分は、横方向に測定した場合、切削インサートの幅の10%にわたって延在する。
【0027】
本発明の一実施形態では、後方切削コーナに隣接する切削エッジの二次部分は、二次角度を含み、二次角度は、長手方向軸に垂直な線と切削エッジの二次部分との間の平均角度であり、二次角度は、5°から15°の範囲内である。この線は、後方切削コーナで切削エッジと交差する。
【0028】
本発明の一実施形態では、切削エッジは、切削インサートが長手方向軸に沿ってワークピースに向かって送られ、切削エッジ全体がワークピースと係合しているときに、切削インサートに作用する結果として生じる力が、長手方向軸と20°以下の角度をなすように、前方切削コーナと、最後方点と、後方切削コーナとの間の形状を有する。本発明の一実施形態では、この角度は、15°以下、10°以下、または5°以下である。切削インサートに作用する結果として生じる力と長手方向軸との間の角度が20°以下、15°以下、10°以下、または5°以下であると、残存軸外力の低減により切削の清浄度が改善される。
【0029】
本発明の一実施形態では、横方向に測定した場合、最後方点は、前方切削コーナおよび後方切削コーナよりも長手方向軸の近くに位置する。最後方点が切削コーナよりも長手方向軸の近くにあることで、特定の深さの凹状の切削エッジが設けられ、したがって、一実施形態では、前方切削コーナに隣接する切削エッジの一次部分の一次角度が増加する。
【0030】
本発明の一実施形態では、横方向に測定した場合、長手方向軸からの最後方点の距離は、前方切削コーナと後方切削コーナとの間の距離の15%以下である。
【0031】
本発明の一実施形態では、横方向に測定した場合、長手方向軸からの最後方点の距離は、0から0.2mmの範囲内である。
【0032】
本発明の一実施形態では、最後方点は、長手方向軸の、積荷切削コーナと同じ側に位置する。本発明の代替的な実施形態では、最後方点は、長手方向軸の、後方切削コーナと同じ側に位置する。
【0033】
本発明の一実施形態では、切削エッジは、前方切削コーナから最後方点まで延在する第1の切削エッジ部分と、最後方点から後方切削コーナまで延在する第2の切削エッジ部分とを備え、第1の切削エッジ部分および第2の切削エッジ部分はそれぞれ、座標系において単調な形状を有し、座標系は、Y軸として長手方向軸を含む。この実施形態では、切削エッジは、軸外力の補償を補助する滑らかな形状を有する。
【0034】
本発明の一実施形態では、切削エッジは、第1の切削エッジ部分および第2の切削エッジ部分を備え、第1の切削エッジ部分は、前方切削コーナと最後方点との間に位置し、前方切削コーナから最後方点までの、切削エッジの全長の少なくとも2/3の長さを有し、少なくとも35mmの曲率半径を有するか、または第2の切削エッジ部分は、最後方点と後方切削コーナとの間に位置し、最後方点から後方切削コーナまでの、切削エッジの全長の少なくとも2/3の長さを有する。
【0035】
一実施形態では、切削エッジの第1の切削エッジ部分および/または第2の切削エッジ部分は直線状である。少なくとも35mmの比較的大きな曲率半径を備える切削エッジ部分、特に直線状の切削エッジは、製造がより容易である。
【0036】
本発明の一実施形態では、切削エッジの第1の部分および第2の部分は、最後方点で交わる。切削エッジの第1の直線部分と第2の直線部分との間の交わる点として最後方点を設計することにより、切削インサートの切削エッジの正確な形状を削り出すことが可能になる。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、横方向に測定した場合、前方切削コーナおよび後方切削コーナは、長手方向軸からの距離が異なる。この設計は、長手方向軸に関して完全に対称なブランクを削り出すことによって切削インサートを製造することを可能にする。切削コーナを異なる軸方向位置に配置することによって、切削コーナは、横方向に測定した場合、切削ヘッドが前面から後方にテーパ状であることから、長手方向軸から異なる距離を有する。
【0038】
本発明の一実施形態では、前方切削コーナおよび後方切削コーナの少なくとも一方は、凸状に湾曲し、0.05mmから0.5mmの範囲の曲率半径を有する。切削コーナの丸みを帯びた設計は、切削コーナを強化する。一実施形態では、前方切削コーナおよび後方切削コーナの少なくとも一方の曲率半径は、0.05mmから0.2mmの範囲内である。
【0039】
本発明の一実施形態では、切削エッジは、凹状湾曲部分を有し、凹状湾曲部分は、最後方点を含み、凹状湾曲部分は、1mmから5mmの範囲の曲率半径を有する。比較的大きな曲率半径で最後方点に切削エッジを設けることによって、最後方点での亀裂形成が低減される。
【0040】
さらに、上記の目的のうちの少なくとも1つは、金属ワークピースを分離するための分離工具であって、分離工具が、工具本体と、先の請求項のいずれか1つによる切削インサートとを備え、工具本体が、インサート座を有し、切削インサートが、インサート座に取り付けられる、分離工具によって解決される。
【0041】
一実施形態では、分離工具は、切削インサートの長手方向軸に平行な送り軸を有する。一実施形態では、前方切削コーナおよび後方切削コーナは、分離工具が動作しているとき、回転軸に平行な平面内に位置する。
【0042】
本発明のさらなる利点、特徴、および用途は、以下の実施形態の説明および添付の図面から明らかになるであろう。本発明の実施形態の前述の説明および以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読まれるとき、より良く理解される。図示された実施形態は、図示されたまさにその配置および手段に限定されないことを理解されたい。別段の指示がない限り、異なる図面における同じ参照番号は、同じまたは対応する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の第1の実施形態による切削インサートの上方からの等角図である。
【
図4】
図1から
図3の切削インサートの切削ヘッドの拡大破断上面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態による切削インサートの切削ヘッドの拡大破断上面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態による切削インサートの切削ヘッドの拡大破断上面図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態による切削ヘッドの拡大破断上面図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態による切削インサートの切削ヘッドの拡大破断上面図である。
【
図9】本発明の第6の実施形態による切削インサートの切削ヘッドの拡大破断上面図である。
【
図10】本発明の第7の実施形態による切削インサートの切削ヘッドの拡大破断上面図である。
【
図11】本発明の第8の実施形態による切削インサートの切削ヘッドの拡大破断上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1から
図4を参照して、本発明による切削インサート1の第1の実施形態が説明される。
【0045】
切削インサート1は、細長い本体18を有する割り出し可能な切削インサートであり、2つの切削ヘッド2が取付部3の両端に設けられている。使用時に、取付部3は、工具ホルダのインサート座にクランプされる。切削インサート1の全体的な工具寿命を延ばすために、2つの切削ヘッド2が順に使用される。切削インサート1は、上面4および底面5を有する。取付部3に沿って、上面4は、2つの上部側縁6、7によって画定されている。上部側縁6、7はそれぞれ、側面8、9と上面4との交差部に形成されている。取付部3に沿って、上部側縁は互いに平行に延在する。さらに、取付部3における側面8、9は互いに平行である。切削インサート1は長手方向軸10を備え、取付部3における長手方向軸10は、2つの上部側縁6、7に平行であり、このようにして切削インサート1の中心平面に位置する。使用時に、切削インサート1は、切削インサート1の長手方向軸10と一致する方向に沿ってワークピースに向かって送られる。
【0046】
切削インサート1の幅wは、前方切削コーナ13と後方切削コーナ14との間の、長手方向軸10に垂直な方向に測定された横方向距離である。
図1から
図11によるすべての実施形態では、切削インサートの幅wは3mmである。これらの実施形態の各々における前方切削コーナ13と後方切削コーナ15との間の、長手方向軸10に平行に測定した軸方向距離は0.3mmである。
【0047】
ここで、2つの同一の切削ヘッド2の各々の設計について、特に
図4を参照して説明する。
【0048】
2つの切削ヘッド2の各々は、切削エッジ11を備え、切削エッジ11は、切削インサートの前面12と上面4との交差部に形成されている。さらに、切削エッジ11は、2つの切削コーナ13、14を含む。切削コーナ13、14は、前面12と、上面4と、側面8、9のそれぞれとの交差部に形成されている。切削エッジ11は、それぞれの切削ヘッド2において第1の上部側縁6および第2の上部側縁7が延びる平面内に位置する。
【0049】
切削ヘッド2における上部側縁6、7および側面8、9は、切削エッジ11から取り付け部分3に向かって後方にテーパ状になっている。したがって、2つの切削コーナ13、14から後方に向かって軸方向に逃げ面が設けられている。
【0050】
図4の上方切削コーナ13は、前方切削コーナ13として示されており、
図4の下方切削コーナ14は、後方切削コーナ14として示されている。後方切削コーナ14は、前方切削コーナ13の軸方向後方に位置する。言い換えれば、後方切削コーナ14は、軸方向において、前方切削コーナ13よりも取付部3の近くに位置する。
【0051】
切削ヘッド2における上部側縁6、7および側面8、9は、横方向に測定した場合、切削エッジ11から取り付け部分3に向かって後方に互いに近づいているため、前方切削コーナ13は、後方切削コーナ14よりも長手方向軸10からの距離が大きい。
【0052】
切削エッジ11は、切削コーナ11が最後方点16に達するまで、第1の切削エッジ部分15に沿って軸方向後方に延びる。同様に、第2の切削エッジ部分17は、後方切削コーナ14から最後方点16まで軸方向後方に延びる。その結果、最後方点16は、後方切削コーナの軸方向後方かつ前方切削コーナ13の軸方向後方に位置する。
【0053】
図1から
図4の第1の実施形態では、2つの切削エッジ部分15、17の各々は、最後方点16で互いに交わり、交差する直線状の切削エッジ部分である。第1の実施形態では、前方切削コーナ13を含む第1の切削エッジ部分15と長手方向軸10に垂直な線19とは、15°の一次角度α1をなし、第2の切削エッジ部分17と長手方向軸10に垂直な線19は、8°の二次角度α2をなす。
【0054】
第1の切削エッジ部分15および第2の切削エッジ部分17は直線であるため、第1の切削エッジ部分15および第2の切削エッジ部分17は、本出願の意味において、それぞれ一次部分および二次部分を形成する。
【0055】
前方切削コーナ13と後方切削コーナ14とを結ぶ直線20は、長手方向軸10に垂直な線19と2°の角度βをなす。
【0056】
図1から
図4の実施形態では、最後方点16は、長手方向軸10に対して前方切削コーナ13に近い側に位置する。第1の切削エッジ部分15の傾きが第2の切削エッジ部分17の傾きよりも急峻であるため、第1の切削エッジ部分15は第2の切削エッジ部分17よりも短い。
【0057】
切削エッジ11は、前方切削コーナ13、後方切削コーナ14、および最後方点16を備える。この設計に起因して、前方切削コーナにおける一次角度α1は、前方切削コーナ13と後方切削コーナ14とを結ぶ直線の角度βよりもはるかに大きい。したがって、
図1から
図4の切削インサート1は、
図1から
図4のインサート1と同じ軸方向オフセットadを有する前方切削コーナおよび後方切削コーナを備えるが、前方切削コーナおよび後方切削コーナが直線状の切削エッジの一部であり、直線状の切削エッジが前方切削コーナから後方切削コーナまで延びる従来技術の切削インサートと比較して、ワークピースにおけるスラグ形成を減少させるより正確な、ワークピースの分離を提供する。
【0058】
それでも、ワークピースを分離するときに切削インサート1に作用する全体的な軸外力は、前方切削コーナと後方切削コーナとを接続する直線状の切削エッジを有する従来の切削インサートに作用する軸外力の規模である。
【0059】
図5から
図11を参照して以下に説明されるさらなる実施形態では、切削ヘッド2が個々の実施形態間で本質的な変形形態を実施するため、切削ヘッド2の破断上面のみが示されている。
【0060】
図5の第2の実施形態では、
図1から
図4による第1の実施形態の尖った前方切削コーナ13は、丸みを帯びた前方切削コーナ13に置き換えられており、前方切削コーナは、凸状に湾曲し、0.4mmの曲率半径を有する。これにより、前方切削コーナ13がかなり強化され、したがって切削インサート1の耐用年数が向上する。
【0061】
図1から
図4の第1の実施形態と比較して、
図6による第3の実施形態は、第1の切削エッジ部分15および第2の切削エッジ部分17であって、それぞれ、前方切削コーナ13から最後方点16まで、および後方切削コーナ14から最後方点16までのその範囲全体にわたってもはや直線ではない第1の切削エッジ部分15および第2の切削エッジ部分17を有する。代わりに、切削エッジ11は凹状湾曲部分21を有し、凹状湾曲部分は切削エッジ11の最後方点16を含む。その結果、最後方点16で交わる直線状の第1の切削エッジ部分および第2の切削エッジ部分は存在しないが、最後方点16は、3mmのかなり大きな曲率半径を有する湾曲した切削エッジ部分によって形成される。その結果、最後方点16の切削エッジ11での亀裂形成が低減される。
【0062】
図6の実施形態のように切削エッジ11が少なくとも湾曲部分21を備えるこれらの実施形態では、一次角度α1は、切削エッジ11の一次部分22の平均角度であり、一次部分は、前方切削コーナに隣接し、切削インサート1の幅の10%にわたって延在する。
【0063】
図7の切削インサート1の第4の実施形態は、第1の実施形態から第3の実施形態による切削インサートの設計を組み合わせたものである。切削ヘッド2は、
図5の第2の実施形態のように0.4mmの曲率半径を有する前方切削コーナ13を有し、最後方点16の周りの切削エッジ11は、
図6の第3の実施形態のように3mmの曲率半径を有する凹状湾曲部分21を備える。切削エッジ11の全体的な強化に起因して、
図7の第4の実施形態の切削インサート1は、工具寿命が長くなる。
【0064】
図8から
図11に示されている実施形態は、最後方点16がもはや長手方向軸10の、前方切削コーナ13に近い側に位置しない点で、
図1から
図7の実施形態とは異なる。代わりに、最後方点16は、長手方向軸10の、後方切削コーナ14に近い側にシフトされている。
【0065】
それ以外は、
図8の第5の実施形態は、
図1から
図4の第1の実施形態に適切に対応する。第1の切削エッジ部分15および第2の切削エッジ部分17は直線状である。その結果、
図1から
図4の第1の実施形態と比較して、
図8の第5の実施形態では、第1の切削エッジ部分15は、所望の機能を依然として維持しながら、わずかに小さい一次角度α1を有する。
【0066】
図9の実施形態は、
図5の第2の実施形態に適切に対応する。すなわち、前方切削コーナ13は、切削エッジ11を強化する拡大曲率半径を有する。
【0067】
図10の実施形態は、
図6の第3の実施形態に適切に対応する。切削エッジ11は、切削エッジ11を強化する4mmの曲率半径を有する、最後方点16の周りの湾曲部分21を有する。
【0068】
図7の実施形態のように、
図11の第8の実施形態は、
図8から
図10の第5の実施形態、第6の実施形態、および第7の実施形態の設計を組み合わせており、したがって、長手方向軸に対する最後方点16の位置を除いて、
図7の第4の実施形態に対応する。
【0069】
一実施形態に関連して説明された特徴は、当業者によって容易に理解可能であるように、他の実施形態でも使用され得ることに留意されたい。
【0070】
本発明は、図面を参照して詳細に説明されてきたが、この説明は一例にすぎず、特許請求の範囲によって規定されるように保護の範囲を限定するとは考えられない。
【0071】
特許請求の範囲において、「を備える」という語は他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」は複数を排除しない。いくつかの特徴が異なる請求項で特許請求されているという単なる事実は、それらの組み合わせを排除しない。特許請求の範囲における参照番号は、保護の範囲を限定するとは考えられない。
【符号の説明】
【0072】
1 切削インサート
2 切削ヘッド
3 取付部
4 上面
5 底面
6、7 上部側縁
8、9 側面
10 長手方向軸
11 切削エッジ
12 前面
13 前方切削コーナ
14 後方切削コーナ
15 第1の切削エッジ部分
16 最後方点
17 第2の切削エッジ部分
18 本体
19 長手方向軸10に垂直な線
20 前方切削コーナ13と後方切削コーナ14とを結ぶ線
21 切削エッジ11の凹状湾曲部分
22 切削エッジ11の一次部分
w 幅
ad 前方切削コーナ13と後方切削コーナ14との間の軸方向オフセット
α1 一次角度
α2 二次角度
β 線19と線20との間の角度
【国際調査報告】