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特表2022-546046修飾された環状RNA及びその使用法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(54)【発明の名称】修飾された環状RNA及びその使用法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20221026BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221026BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20221026BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20221026BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20221026BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20221026BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 39/002 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20221026BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221026BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20221026BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20221026BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 33/14 20060101ALI20221026BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20221026BHJP
   C12N 15/30 20060101ALN20221026BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20221026BHJP
   C12N 15/33 20060101ALN20221026BHJP
【FI】
A61K39/00 H
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12P19/34 A
A61K48/00
A61K31/7088
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K39/12
A61K39/02
A61K39/002
A61K39/00 K
A61K39/00 Z
A61K9/51
A61K47/59
A61K35/76
A61K35/761
A61K47/61
A61K38/02
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P33/14
C12N15/12 ZNA
C12N15/30
C12N15/31
C12N15/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513181
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020047995
(87)【国際公開番号】W WO2021041541
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/892,776
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ハワード・ワイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】アマヤ,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュン-カン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064BJ10
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA01
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC34
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE30
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB37
4C084ZC75
4C085AA03
4C085BA02
4C085BA07
4C085BA49
4C085BA51
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZB37
4C087ZC75
(57)【要約】
本明細書において、少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)を含む組換え環状RNA分子を作出する方法が提示される。mA修飾circRNAは、物質を、細胞へと送達し、細胞内にRNA結合性タンパク質を隔離するのに使用されうる。環状RNAの免疫原性をモジュレートするための方法もまた、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N6-メチルアデノシン(mA)残基を、一切、含有しない環状RNA分子を含むワクチン組成物。
【請求項2】
環状RNAが、RRACHモチーフを欠く、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの抗原をさらに含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
環状RNA分子が、ポリペプチドをコードする配列に作動可能に連結された内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
ポリペプチドをコードする配列が、少なくとも1つの抗原をコードする、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの抗原が、ウイルス由来、細菌由来、寄生虫由来、真菌由来、原虫由来、プリオン由来、細胞由来、又は細胞外由来の抗原である、請求項3又は5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの抗原が、腫瘍抗原である、請求項3又は5に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
環状RNA分子が、インビトロ転写を使用して作製される、請求項1~7のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
環状RNAが、組成物中に、ネイキッドRNAとして存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
環状RNAが、ナノ粒子と複合体を形成している、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
ナノ粒子が、ポリエチレンイミン(PEI)ナノ粒子である、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
自然免疫応答を誘発することを必要とする対象における自然免疫応答を誘発する方法であって、対象へと、有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載のワクチン組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項13】
環状RNAをコードするDNA配列を含む組成物であって、環状RNAが、N6-メチルアデノシン(mA)残基を、一切、含有しない組成物。
【請求項14】
DNA配列が、RRACHモチーフを一切含まない、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
ウイルスベクター又は非ウイルスベクターが、DNA配列を含む、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター又はヘルペスウイルスベクターである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
非ウイルスベクターが、プラスミドである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
自然免疫応答を誘発することを必要とする対象における自然免疫応答を誘発する方法であって、対象へと、有効量の、請求項13~17のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項19】
インビトロ転写により、環状RNA分子を作製する方法であって、
(a)環状RNA分子をコードするDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及びRNAポリメラーゼを用意するステップ;
(c)DNA鋳型から、直鎖状RNAを転写するステップ;及び
(d)直鎖状DNAを環状化して、環状RNAを形成するステップ
を含み;
リボヌクレオチド三リン酸が、N6-メチルアデノシン-5’三リン酸(mATP)を一切含まず;
環状RNAが、対象において、自然免疫応答をもたらすことが可能である、
方法。
【請求項20】
環状RNAが、mAを一切含まない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
インビトロ転写により、環状RNA分子を作製する方法であって、
(a)環状RNA分子をコードするDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及びRNAポリメラーゼを用意するステップ;
(c)DNA鋳型から、直鎖状RNAを転写するステップ;及び
(d)直鎖状DNAを環状化して、環状RNAを形成するステップ
を含み;
リボヌクレオチド三リン酸が、N6-メチルアデノシン-5’三リン酸(mATP)を含み;
環状RNAが、同じ方法を使用するが、mATPの非存在下で使用して作製される環状RNAと比較して免疫原性が小さい、
方法。
【請求項22】
組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも1%が、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも10%が、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組換え環状RNA分子内のアデノシンの全てが、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
環状RNA分子の自然免疫原性を低減する方法であって、
(a)対象において自然免疫応答を誘導する環状RNA分子を用意するステップ;及び
(b)N6-メチルアデノシン(mA)、シュードウリジン及びイノシンから選択される少なくとも1つのヌクレオシドを、環状RNA分子へと導入して、自然免疫原性が低減された修飾環状RNA分子をもたらすステップ、
を含む方法。
【請求項26】
修飾環状RNAを、対象へと投与するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
環状RNA分子のうちの、少なくとも1%が、mA、シュードウリジン及び/又はイノシンを含有する、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
環状RNA分子のうちの、少なくとも10%が、mA、シュードウリジン及び/又はイノシンを含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
環状RNA分子の自然免疫原性を増大させる方法であって、
(a)RRACHモチーフを欠く環状RNA分子を作出するステップ;及び
(b)1つ以上のアデノシンを、別の塩基により置きかえて、自然免疫原性が増大させられた修飾環状RNA分子をもたらすステップ、
を含む方法。
【請求項30】
修飾環状RNAを、対象へと投与するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも1%が、ウラシルにより置きかえられる、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも10%が、ウラシルにより置きかえられる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
環状RNA分子内のアデノシンの全てが、ウラシルにより置きかえられる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
物質を、細胞へと送達する方法であって、
(a)少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)を含む組換え環状RNA分子を作出するステップ;
(b)物質を、組換え環状RNA分子へと接合させて、物質へと接合された組換え環状RNA分子を含む複合体を作製するステップ;及び
(c)細胞を、複合体と接触させるステップであって、これにより、物質が、細胞へと送達されるステップ、
を含む方法。
【請求項35】
物質が、タンパク質又はペプチドである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
物質が、抗原又はエピトープである、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
物質が、低分子である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
物質が、組換え環状RNA分子へと共有結合的に連結される、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
細胞内にRNA結合性タンパク質を隔離する方法であって、
(a)少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)及び1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性ドメインを含む組換え環状RNA分子を作出するステップ;及び
(b)RNA結合性タンパク質を含む細胞を、組換え環状RNA分子と接触させるステップであって、これにより、RNA結合性タンパク質が、1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性ドメインに結合し、細胞内に隔離されるステップ、
を含む方法。
【請求項40】
RNA結合性タンパク質が、細胞内において異常に発現されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
RNA結合性タンパク質が、少なくとも1つの突然変異を含む核酸配列によりコードされる、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
RNA結合性タンパク質が、疾患と関連する、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも1%が、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項39~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも10%が、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
組換え環状RNA分子内のアデノシンの全てが、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
組換えRNA分子が、ファージT4チミジル酸シンターゼ(td)遺伝子の自己スプライシングI群イントロン及び少なくとも1つのエクソンを含む、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
組換え環状RNA分子が、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
組換え環状RNA分子が、200ヌクレオチド~6,000ヌクレオチドの間のヌクレオチドを含む、請求項39~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
組換え環状RNA分子が、約1,500ヌクレオチドを含む、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、2019年8月28日に出願された米国特許仮出願第62/892,776号に対する優先権を主張する。
【0002】
配列表に関する言明
本出願と関連する配列表は、紙原稿ではなく、テキストフォーマットで提示され、本明細書への参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含有するテキストファイルの名称は、STDU2_37833_101_SeqList_ST25.txtである。ファイルは、約4kbであり、2020年8月24日に作成され、電子的に提出されている。
分野
本出願は、環状RNAを修飾して、その免疫原性を低減する、又は増大させる方法の他、修飾環状RNAを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
真核生物において、何万もの環状RNA(circRNA)が同定されている。肝炎デルタウイルス及び植物ウィロイドなどのウイルスは、circRNAゲノムを有し、多くのウイルスは、環状RNAを、それらの複製周期の通常部分として産生する。近年の研究は、部分的に、circRNAに基づく、自然免疫系像についての新たな描像を示唆する。ある特定の外因性circRNAの導入が、抗ウイルスプログラム及び免疫遺伝子発現プログラムを活性化させうるのに対し、内因性circRNAは、総体として、タンパク質キナーゼRを阻害し、ウイルス感染時に、自然免疫に対する閾値を設定しうる。
【0004】
哺乳動物の自然免疫系は、ウイルス及び細菌の間で一般的な、病原体関連分子パターン(PAMP)を認識するパターン認識受容体(PRR)に依存する。RIG-I及びMDA5は、外来核酸を感知する、細胞質ゾル内において見出されるPRRである。MDA5は、長いdsRNAを検出することが公知であるのに対し、RIG-Iは、短いdsRNA上の5’三リン酸を認識することが示されている。RIG-Iの活性化のための直鎖状RNAリガンドは、広範に特徴づけられているが、とりわけ、外来circRNA検出の文脈において、RIG-Iの、circRNAとの相互作用は、調べられていない。
【0005】
N6-メチルアデノシン(mA)は、最も豊富なRNA修飾のうちの1つである。mRNA上において、mAは、スプライシング、翻訳及び分解を含む、細胞規模の作用及び組織規模の作用を及ぼしうる様々な機能を調節することが裏付けられている。既存の研究は、mAがまた、circRNA上にも存在し、キャップ非依存性翻訳を誘発する潜在的可能性を有することを示唆している。しかし、mAの、circRNA機能に対する作用及びRIG-Iによる、circRNAの検出におけるその役割は、知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
環状RNAプラットフォームを、バイオテクノロジーにおいて使用するために、環状RNAの免疫原性を操作する組成物及び方法が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本明細書において、環状RNAの免疫原性を操作するための組成物及び方法並びにこれらの使用が提示される。
【0008】
一部の実施形態において、本開示は、N6-メチルアデノシン(mA)残基を、一切、含有しない環状RNA分子を含むワクチン組成物を提示する。
【0009】
一部の実施形態において、本開示は、環状RNAをコードするDNA配列を含む組成物であって、環状RNAが、N6-メチルアデノシン(mA)残基を、一切、含有しない組成物を提示する。
【0010】
本開示はまた、自然免疫応答を誘発することを必要とする対象における自然免疫応答を誘発するための方法であって、対象へと、有効量の、本明細書において記載される環状RNAをコードするDNA配列を含む組成物を投与するステップを含む方法も提示する。
【0011】
本開示はまた、自然免疫応答を誘発することを必要とする対象における自然免疫応答を誘発するための方法であって、対象へと、有効量の、mA残基を含有しない環状RNA分子を含むワクチン組成物を投与するステップを含む方法も提示する。
【0012】
本明細書においてまた、インビトロ転写により、環状RNAを作製するための方法であって、環状RNA分子をコードするDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及びRNAポリメラーゼを用意するステップ;DNA鋳型から、直鎖状RNAを転写するステップ;及び直鎖状DNAを環状化して、環状RNAを形成するステップを含み;リボヌクレオチド三リン酸が、N6-メチルアデノシン-5’三リン酸(mATP)を一切含まず;環状RNAが、対象において、自然免疫応答をもたらすことが可能である方法も提示される。
【0013】
本明細書においてまた、インビトロ転写により、環状RNA分子を作製するための方法であって、環状RNA分子をコードするDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及びRNAポリメラーゼを用意するステップ;DNA鋳型から、直鎖状RNAを転写するステップ;及び直鎖状DNAを環状化して、環状RNAを形成するステップを含み;リボヌクレオチド三リン酸が、N6-メチルアデノシン-5’三リン酸(mATP)を含み;環状RNAが、同じ方法を使用するが、mATPの非存在下で使用して作製される環状RNAと比較して免疫原性が小さい方法も提示される。
【0014】
本開示は、物質を、細胞へと送達する方法であって、(a)少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)を含む組換え環状RNA分子を作出するステップ;(b)物質を、組換え環状RNA分子へと接合させて、物質へと接合された組換え環状RNA分子を含む複合体を作製するステップ;及び(c)細胞を、複合体と接触させるステップであって、これにより、物質が、細胞へと送達されるステップを含む方法を提示する。
【0015】
本開示はまた、細胞内にRNA結合性タンパク質を隔離する方法であって、(a)少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)及び1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性ドメインを含む組換え環状RNA分子を作出するステップ;及び(b)RNA結合性タンパク質を含む細胞を、組換え環状RNA分子と接触させるステップであって、これにより、RNA結合性タンパク質が、1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性ドメインに結合し、細胞内に隔離されるステップを含む方法も提示する。
【0016】
本開示は、環状RNA分子の自然免疫原性を低減する方法であって、(a)対象において自然免疫応答を誘導する環状RNA分子を用意するステップ;及び(b)少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)を、環状RNA分子へと導入して、自然免疫原性が低減された修飾環状RNA分子をもたらすステップを含む方法をさらに提示する。
【0017】
また、対象における環状RNA分子の自然免疫原性を増大させる方法であって、(a)RRACHモチーフ(配列番号18)を欠く環状RNA分子を作出するステップ;及び(b)環状RNA配列内の1つ以上のアデノシンを、別の塩基(例えば、U、C、G又はイノシン)により置きかえて、自然免疫原性が増大させられた修飾環状RNA分子をもたらすステップを含む方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1-1】図1Aは、ゲル精製の前における、circFOREIGNについてのアガロースゲル電気泳動(左)及び結果として得られる精製RNAについてのTapeStation解析(右)を描示する画像を含む図である。図1Bは、HeLa細胞への、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフである。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。circFOREIGNのトランスフェクションを、ゲル精製RNAトランスフェクションと比較する、スチューデントのt検定におけるp<0.05である。
図1-2】図1Cは、circFOREIGN精製についてのHPLCクロマトグラムである。出力波形上に指し示された回収画分(左)及び精製RNAについてのTapeStation解析(右)である。図1Dは、HeLa細胞への、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフである。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。circFOREIGNのトランスフェクションを、表示のRNAのトランスフェクションと比較する、スチューデントのt検定におけるp<0.05である。
図2-1】図2Aは、OVAを伴う、アゴニストRNAの皮下注射を描示する概略図である。T細胞についてのICS及び抗体力価を、一次免疫化及び二次免疫化後の表示の時点において測定した。図2Bは、一次ワクチン接種の後において、circRNAが、トランスフェクション剤に依存しない抗OVA T細胞応答を刺激することを例示するグラフである。平均値を示す(n=5)が、クルスカル-ワリス検定によるp<0.05である。図2Cは、二次ワクチン接種の後において、circRNAが、トランスフェクション剤に依存しない抗OVA抗体力価を刺激することを例示するグラフである。平均値を示す(n=5)が、Anova-チューキー検定によるp<0.05である。
図2-2】図2Dは、皮下注射により送達されるOVAを伴う、circFOREIGNによるワクチン接種を描示する概略図である。14日後、左右の脇腹において、OVA発現B16黒色腫細胞を確立した。腫瘍を、測定及びイメージングした。図2Eは、腫瘍確立の前にPBS又はcircFOREIGNをワクチン接種されたマウスについての左右の腫瘍における生物発光測定の定量を示す画像を含む図である。ウィルコクソン符合順位検定により計算されたp値である。各群内のマウスのn=5である。図2Fは、腫瘍確立の前にPBS又はcircFOREIGNをワクチン接種されたマウスについての左右の腫瘍における生物発光測定の定量を示すグラフを含む図である。ウィルコクソン符合順位検定により計算されたp値である。各群内のマウスのn=5である。図2Gは、circFOREIGNをワクチン接種されたマウスが、陰性対照マウスの2倍長く生存することを示すグラフである。グラフは、腫瘍確立の前にPBS又はcircFOREIGNをワクチン接種されたマウスについての生存曲線を示す。ログランク検定により計算されたp値である。各群内のマウスのn=5である。
図3-1】図3Aは、IFNγ+ CD8+ T細胞についてのFACS解析のためのゲーティング戦略を示すグラフを含む図である。図3Bは、circFOREIGNが、二次免疫化の後において、PEIに依存しない抗OVA特異的T細胞応答を刺激することを示すグラフである。平均値を示すが(n=5)、Anova-チューキー検定によるp<0.05である。図3Cは、circFOREIGNが、二次免疫化の後において、PEIに依存しない抗OVA抗体力価を刺激することを示すグラフである。平均値を示す(n=5)が、Anova-チューキー検定によるp<0.05である。
図3-2】図3Dは、cDC1細胞及びcDC2細胞についてのFACS解析のためのゲーティング戦略を示すグラフを含む図である。図3Eは、circFOREIGNによる免疫化が、マウスにおける樹状細胞(DC)を活性化させることを例示するグラフを含む図である。
図3-3】図3Fは、PBS又はcircFOREIGNをワクチン接種されたマウスにおける左右の腫瘍の体積の測定についてのグラフを含む図である。ウィルコクソン符合順位検定により計算されたp値である。図3Gは、PBS又は陽性対照であるpolyI:Cをワクチン接種されたマウスについての生存曲線についてのグラフを含む図である。ログランク検定により計算されたp値である。
図4-1】図4Aは、circZKSCAN1、circSELF及びcircFOREIGNについてのChIRP-MSによるペプチドカウントについてのヒートマップである。酵素を、mAライター、mAリーダー及びmAイレーサーとして分類する。図4Bは、ChIRP-MSにより指し示される通り、mA機構が、circZKSCAN1及びcircSELFと会合するが、circFOREIGNと会合しないことを示すグラフである。RNアーゼ処理対照に対するエンリッチメント倍数を示す。
図4-2】図4Cは、タンパク質支援型スプライシングを方向付けて、mA修飾circSELFをもたらすZKSCAN1イントロン及び自己触媒性スプライシングを方向付けて、非修飾circFOREIGNを形成するファージtdイントロンを示す概略モデルである。図4Dは、mA-irCLIPが、circRNAスプライス接合部に近位の高信頼性mA位置を同定することを示すグラフである。ZKSCAN1イントロンは、tdイントロン指向circFOREIGNと比較して、circSELF上のmA修飾を方向付けるのに十分である。mA-irCLIPリードの密度は、100万当たりのリード数(reads per million)に対して正規化した。図4Eは、HeLa細胞内の内因性ヒトcircRNAのcircRNAスプライス接合部の近傍におけるmA-irCLIPのリード密度を示すグラフである。mA-irCLIPリードの密度は、circRNAスプライス接合部に近位のリードについての100万当たりのリード数(reads per million)に対して正規化した。
図5図5Aは、mA-irCLIPが、circSELF又はcircFOREIGNの高信頼性mA位置を同定することを示すグラフである。circSELF又はcircFOREIGNにおいてエンリッチされるRT stopsについてのフィッシャーの正確検定を示す。mA-irCLIPリードの密度は、100万当たりのリード数(reads per million)に対して正規化した。図5Bは、内因性直鎖状RNAにおけるmAの頻度を示すグラフである。図5Cは、RNアーゼR処理を伴う、又は伴わない、表示レベルのmA修飾が組み込まれた、circFOREIGNのインビトロ転写についてのTapeStation解析を示す画像である。図5Dは、インビトロ転写時における、非修飾circRNA及びmA修飾circRNAの形成を確認する、スプライス接合部にわたるqRT-PCRについての画像である。図は、表示の「逆位」プライマーを使用するqRT-PCRの後における、非修飾circRNA及びmA修飾circRNAのアガロースゲルを示す。
図6図6Aは、野生型HeLa細胞への、非修飾circFOREIGNのトランスフェクションは、免疫応答を刺激するが、mA修飾circFOREIGNは、これを刺激しないことを例示するグラフである。グラフは、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフを示す。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)が、直鎖状RNAによる遺伝子刺激を、表示のRNAと比較する、スチューデントのt検定におけるp<0.05である。図6Bは、RRACH mAコンセンサスモチーフ(配列番号17)を欠くcircFOREIGNプラスミドのトランスフェクションが、circFOREIGNより高レベルにおいて、免疫応答を刺激することを例示するグラフである。エクソン配列の全体にわたり、RRACHモチーフ(部位のn=12)を、RRUCH(配列番号19)へと突然変異させた。スプライス接合部に後続する、最初の200塩基(部位のn=37)内における、あらゆるアデノシンの、ウラシルへの突然変異は、免疫原性を、さらに増大させる。グラフは、DNAプラスミドのトランスフェクションの後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示す。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。circFOREIGNのトランスフェクションを、表示のRNAのトランスフェクションと比較する、スチューデントのt検定において**p<0.01、***p<0.001である。図6Cは、全てのアデノシンがウラシルにより置きかえられた、circFOREIGNプラスミドのトランスフェクションが、免疫原性の上昇を結果としてもたらすことを例示するグラフである。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)が、circFOREIGNのトランスフェクションを、表示のRNAのトランスフェクションと比較する、スチューデントのt検定におけるp<0.01である。図6Dは、mA修飾circFOREIGNが、一次ワクチン接種の後における抗OVA T細胞応答を緩和することを示すグラフである。平均値を示す(n=10)が、Anova-チューキー検定によるp<0.05である。図6Eは、mA修飾circRNAが、二次ワクチン接種の後における抗OVA抗体力価を緩和することを示すグラフである。平均値を示す(n=10)が、ANOVA-チューキー検定によるp<0.05である。
図7図7Aは、非修飾circFOREIGN及びmA修飾circFOREIGNの、免疫原性に対する効果についての概略モデルである。図7Bは、circFOREIGNが、抗OVA特異的T細胞応答を刺激し、1%のmA修飾circFOREIGNが、二次免疫化の後における免疫を緩和することを示すグラフである。平均値を示す(n=10)が、Anova-チューキー検定によるp<0.05である。図7Cは、circFOREIGNが、抗OVA抗体力価を刺激し、1%のmA修飾circRNAが、二次免疫化の後における免疫を緩和することを示すグラフである。平均値を示す(n=5)が、Anova-チューキー検定によるp<0.05である。
図8-1】図8Aは、野生型HeLa細胞及び2つのYTHDF2ノックアウト(KO)クローンについてのウェスタンブロット画像である。図8Bは、HeLa YTHDF2-/-クローン#2への、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフである。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。図8Cは、使用されたYTHDF1/2構築物についての概略図である。図8Dは、YTHDF2-λ、YTHDF2、YTHDF2N、YTHDF2N-λ、YTHDF1N及びYTHDF1N-λについてのウェスタンブロット画像である。
図8-2】図8Eは、RIP-qPCRによる、表示のYTHタンパク質のエンリッチメントに続く、circRNA-BoxB又は対照であるアクチンRNAに対するqRT-PCRを示すグラフである。平均値±SEMを示す(n=3)。スチューデントのt検定によるp<0.05である。図8Fは、YTHDF2 KO細胞への、YTHDF2のC末端YTHドメインへとテザリングされた非修飾circBoxBのトランスフェクションが、免疫応答を緩和するのに不十分であることを示すグラフである。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。YTHDF2を伴う/YTHDF2を伴わないトランスフェクションを受ける細胞を比較する、スチューデントのt検定におけるp<0.05である。図8Gは、YTHDF2 KO細胞への、RFP-YTHドメインタンパク質融合体へとテザリングされた非修飾circBoxBのトランスフェクションが、免疫応答を緩和するのに不十分であることを示すグラフである。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。YTHDF2を伴う/YTHDF2を伴わないトランスフェクションを受ける細胞を比較する、スチューデントのt検定におけるp<0.05である。図8Hは、YTHDF1へとテザリングされた非修飾circBoxBのトランスフェクションが、免疫応答を緩和するのに不十分であることを示すグラフである。グラフは、野生型HEK 293T細胞への、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフを示す。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、YTHDF1N-λNを発現させるプラスミドのトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。
図9-1】図9Aは、非修飾circFOREIGN又はmA修飾circFOREIGNに対する応答を示す概略モデルを含む図である。YTHDF2-/- HeLa細胞への、非修飾circFOREIGN又はmA修飾circFOREIGNのトランスフェクションは、免疫応答を刺激した。図9Aの右パネルは、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフである。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。0%のmAを伴うcircFOREIGNのトランスフェクションを、表示のRNAのトランスフェクションと比較する、スチューデントのt検定を使用した。図9Bは、YTHDF2の異所性発現が、YTHDF2 KO HeLa細胞内の、非修飾circFOREIGNに対する応答を、mA修飾circFOREIGNと対比してレスキューすることを示す図である。図9Bの左パネルは、レスキューの後における、mA修飾circFOREIGNに対する応答を示す概略モデルである。図9Bの右パネルは、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフである。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。0%のmAを伴うcircFOREIGNを、1%のmAを伴うcircFOREIGNと比較する、スチューデントのt検定を使用して、p<0.05である。
図9-2】図9Cは、YTHDF2の、非修飾circFOREIGNへのテザリングが、circRNAによる免疫を遮蔽することを例示する図である。図9Cの左パネルは、免疫原性の緩和をもたらす、インビボにおける、ラムダN及びBoxBを介する、タンパク質の、RNAへのテザリングを示す概略モデルである。図9Cの右上パネルは、ラムダNテザリングタグを伴う全長野生型YTHDF2及びこれを伴わない全長野生型YTHDF2並びにラムダNテザリングタグを伴うYTHDF2のN末端ドメイン及びこれを伴わないYTHDF2のN末端ドメインのタンパク質ドメインアーキテクチャーを示す概略図である。図9Cの右下パネルは、RIP-qPCRによる、表示のYTHタンパク質のエンリッチメントに続く、circRNA-BoxB又は対照であるアクチンRNAに対するqRT-PCRを示すグラフである。平均値±SEMを示す(n=3)。ラムダNテザリングを伴うYTHDF2のN末端を、テザリングを伴わないYTHDF2のN末端と比較する、スチューデントのt検定を使用して、p<0.05である。図9Dは、野生型HeLa細胞への、全長野生型YTHDF2へとテザリングされた非修飾circBoxBのトランスフェクションが、免疫応答を緩和したことを示すグラフである。グラフは、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフを示す。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションに対して正規化した。野生型YTHDF2-ラムダN(グレー)を、免疫原性についての陰性対照として、異所性発現させた。circBoxBのみのトランスフェクションを、免疫原性についての陽性対照として用いられた。平均値±SEMを示す(n=3)。ラムダNテザリングを伴う野生型YTHDF2を伴うcircBoxBを、ラムダNテザリングを伴わない野生型YTHDF2を伴うcircBoxBと比較する、スチューデントのt検定を使用して、p<0.05である。図9Eは、YTHDF2 KO細胞への、YTHDF2のN末端ドメインへとテザリングされた非修飾circBoxBのトランスフェクションが、免疫応答を緩和するのに不十分であることを示すグラフである。グラフは、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフを示す。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果は、モックトランスフェクションに対して正規化した。YTHDF2-ラムダNのN末端ドメイン(黒)を、免疫原性についての陰性対照として、異所性発現させた。平均値±SEMを示す(n=3)。スチューデントのt検定を使用して、ラムダNテザリングを伴うYTHDF2のN末端を伴うcircBoxBを、テザリングを伴わないYTHDF2のN末端を伴うcircBoxBと比較した。
図10図10Aは、RIG-IのKOが、mAライターMETTL3の枯渇により誘導される細胞死をレスキューすることを示すグラフである。グラフは、表示のRNAのトランスフェクション後の、野生型HeLa細胞又はRIG-I KO HeLa細胞における、細胞死の倍数変化を示す。平均値±SEMを示す(解析された細胞のn=約50,000個である)。モックトランスフェクションを、表示のRNAのトランスフェクションと比較する、スチューデントのt検定を使用して、p<0.05、***p<0.001である。図10Bは、図10Aにおいて描示されたFACS解析による、生の細胞カウントを示す表である。図10Cは、METTL3 siRNA又は非ターゲティング対照siRNAをトランスフェクトされた、野生型HeLa細胞及びRIG-I KO HeLa細胞において、ウェスタンブロットにより、METTL3のノックダウン効率を検証する画像である。図10Dは、野生型HeLa細胞及びRIG-I KO HeLa細胞において、ウェスタンブロットにより、RIG-Iタンパク質の発現を検証する画像である。FACS実験と同等な条件下において、細胞に、METTL3 siRNA又は非ターゲティングsiRNAをトランスフェクトした。
図11図11Aは、circFOREIGNが、RIG-IのATPアーゼ活性を誘導しないことを示すグラフである。RIG-I及びRNAをインキュベートし、ATPを添加した。表示の時点において、反応をクエンチングし、Pi濃度を測定した。平均値±SEMを示す(n=2)。図11Bは、RIG-Iを、表示のRNAと共にインキュベートした後における、RIG-Iフィラメントについての代表的電子顕微鏡画像を含む図である。図11Cは、精製RIG-I、K63結合型ポリユビキチン及び表示のRNAリガンドを伴う、インビトロにおけるRIG-I結合アッセイの結果を描示する画像である。描示されるNativeゲル電気泳動シフトアッセイは、RIG-Iへの結合が、非修飾circFOREIGNと、mA修飾circFOREIGNとを識別しないことを示す。図11Dは、インビトロにおける、精製RIG-I、MAVS、表示のRNAリガンド及びK63結合型ポリユビキチンの非存在又は存在を伴う再構成の結果を描示する画像である。描示される、蛍光標識化MAVS 2CARDドメインについてのNativeゲルは、circFOREIGN誘発性MAVSフィラメント形成が、K63結合型ポリユビキチンに依存することを示す。図11Eは、インビトロにおける、IRF3二量体化の、circRNA媒介性誘導の再構成を示す画像である。RIG-I、IRF3及び表示のRNAリガンドをインキュベートした。表示のRNAリガンドによる放射性標識化IRF3についてのNativeゲルを示す。細胞質RNA(cytoRNA)及び表示のRNAは、各々、0.5ng/mLにおいて添加した。
図12図12Aは、インビトロにおける、精製RIG-I、MAVS、K63-Ubn及び表示のRNAリガンドを伴う再構成を描示する画像である。蛍光標識化MAVS 2CARDドメインについてのNativeゲルを示す。図12Bは、表示のRNAによるMAVS重合アッセイの後における、MAVSフィラメントについての、代表的な電子顕微鏡画像を含む図である。スケールバーは、600nmを指し示す。図12Cは、各アゴニストRNAについて、5つの電子顕微鏡画像において観察された、MAVSフィラメントの総数の定量を示すグラフである。スチューデントのt検定によるp<0.05である。図12Dは、インビトロにおける、IRF3二量体化の、circRNA媒介性誘導の再構成を描示する画像である。表示のRNAリガンドによる放射性標識化IRF3についてのNativeゲルを示す。S1は、細胞抽出物である。
図13図13Aは、circFOREIGNが、RIG-I及びK63結合型ポリユビキチン鎖と共局在することを示す免疫蛍光画像を含む図である。代表的な視野を示す。図13Bは、circFOREIGNの、RIG-I及びK63-Ubnとの共局在の定量(n=152)を示すグラフである。生物学的反復にわたる、10の視野にわたり、反復実験を代表するフォーサイを収集した。図13Cは、10%のmA circFOREIGNが、YTHDF2との共局在を増大させたことを示す免疫蛍光画像を含む図である。代表的な視野を示す。>10の視野にわたり、反復実験を代表するフォーサイを収集した。図13Dは、circFOREIGN及び10%のmA circFOREIGNの、YTHDF2及びRIG-Iとの共局在の定量を示すグラフである。ピアソンのχ検定によるp<0.05である。
図14】K63結合型ポリユビキチンに依存する、RIG-Iによる、外来circRNAの認識についての仮説的機構を例示する概略図である。
図15】野生型HeLa細胞への、非修飾circRNA(すなわち、mA修飾を欠く)のトランスフェクションが、免疫応答を刺激することを示すグラフである。グラフは、RNAのトランスフェクションの24時間後における、自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示すグラフを示す。表示のmRNAと、トランスフェクトされたRNAとの相対発現を、qRT-PCRにより測定し、結果モックトランスフェクションの後における発現に対して正規化した。平均値±SEMを示す(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、少なくとも部分的に、ヒト環状RNA分子(circRNA)のN6-メチルアデノシン(mA)RNA修飾が、circRNAの免疫原性を低減するという発見を前提とする。外来circRNAは、インビボにおいて、抗原特異的T細胞活性化、抗体産生及び抗腫瘍免疫を誘導する、強力なアジュバントであり、そのmA修飾は、免疫遺伝子の活性化及びアジュバント活性を消失させることが見出されている。mAリーダータンパク質であるYTHDF2は、mA-circRNAを隔離し、自然免疫の抑制に重要である。
【0020】
定義
本技術についての理解を容易とするために、下記において、多数の用語及び語句が規定される。さらなる定義は、「発明を実施するための形態」全体にわたり明示される。
【0021】
本明細書において使用される「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、ピリミジン塩基及び/又はプリン塩基、好ましくは、それぞれ、シトシン、チミン及びウラシル並びにアデニン及びグアニンのポリマー又はオリゴマーを指す。用語は、任意のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド又はペプチド核酸の構成要素及びこれらの塩基のメチル化形態、ヒドロキシメチル化形態又はグリコシル化形態など、これらの任意の化学的変異体を包含する。ポリマー又はオリゴマーは、組成物中において異種の場合もあり、同種の場合もあり、天然に存在する供給源から単離される場合もあり、人工的に、又は合成的に作製される場合もある。加えて、核酸は、DNA又はRNA又はこれらの混合物であることが可能であり、ホモ二重鎖、ヘテロ二重鎖及びこれらのハイブリッド状態を含む、一本鎖形態又は二本鎖形態において、恒常的に存在する場合もあり、一過性に存在する場合もある。一部の実施形態において、核酸又は核酸配列は、例えば、DNA/RNAヘリックス、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸(例えば、Braasch及びCorey、Biochemistry、41(14):4503~4510(2002)並びに米国特許第5,034,506号を参照されたい。)、ロックト核酸(LNA;Wahlestedtら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、97:5633~5638(2000)を参照されたい。)、シクロヘキシニル核酸(Wang、J.Am.Chem.Soc.、122:8595~8602(2000)を参照されたい。)及び/又はリボザイムなど、他の種類の核酸構造を含む。「核酸」及び「核酸配列」という用語はまた、天然ヌクレオチド(例えば、「ヌクレオチド類似体」)と同じ機能を呈しうる、非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド及び/又は非ヌクレオチド構成要素を含む鎖も包含しうる。
【0022】
本明細書において使用される「ヌクレオシド」という用語は、リボース糖又はデオキシリボース糖へと接合された、プリン塩基又はピリミジン塩基を指す。DNA内又はRNA内に一般に見出されるヌクレオシドは、シチジン、シトシン、デオキシリボシド、チミジン、ウリジン、アデノシン、アデニンデオキシリボシド、グアノシン及びグアニンデオキシリボシドを含む。本明細書において使用される「ヌクレオチド」という用語は、DNAポリマー又はRNAポリマーが構築される、単量体単位のうちの1つであって、プリン塩基又はピリミジン塩基、五炭糖及びリン酸基を含む単量体単位を指す。DNAのヌクレオチドは、デオキシアデニル酸、チミジル酸、デオキシグアニル酸及びデオキシシチジル酸である。対応するRNAのヌクレオチドは、アデニル酸、ウリジル酸、グアニル酸及びシチジル酸である。
【0023】
本明細書において、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、互換的に使用され、コードアミノ酸及び非コードアミノ酸、化学修飾アミノ酸若しくは生化学修飾アミノ酸又は誘導体化アミノ酸並びに修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドを含みうる、少なくとも2つ以上の連続アミノ酸を含むアミノ酸のポリマー形態を指す。
【0024】
本明細書において使用される、ヌクレオチド、核酸、ヌクレオシド及びアミノ酸についての命名法は、International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)基準に準拠する(例えば、bioinformatics.org/sms/iupac.htmlを参照されたい。)。
【0025】
本明細書において使用された、「RRACHモチーフ」という用語は、5ヌクレオチドのDNAモチーフ又はRNAモチーフを指し、この場合、Rは、A又はGであることが可能であり、Hは、A、C又はT/Uでありうる。RRACHモチーフは、DNA内のコンセンサス配列である5’-(A又はG)-(A又はG)-A-C-(A又はC又はT)-3’(配列番号17)又はRNA内のコンセンサス配列である5’-(A又はG)-(A又はG)-A-C-(A又はC又はU)-3’(配列番号18)を有する。mA修飾は、典型的に、真核細胞内のRRACHモチーフ内において生じる。多くの細胞型において、mAの付加は、METTL3、METTL14及びWTAPを含む、多重構成要素型メチルトランスフェラーゼ複合体により触媒される。一部の実施形態において、RRACHモチーフ(配列番号17~18)は、mA修飾を低減する、又は消失させるように修飾されうる。例えば、RRACHモチーフは、RRUCHモチーフ(配列番号19~20)へと修飾されうる。
【0026】
「抗原」とは、哺乳動物において、免疫応答を誘発する分子である。「免疫応答」は、例えば、抗体の産生及び/又は免疫エフェクター細胞の活性化を伴いうる。本開示の文脈における抗原は、哺乳動物において、免疫応答を惹起する、任意のタンパク質性分子又は非タンパク質性分子(例えば、炭水化物又は脂質)の、任意のサブユニット、断片又はエピトープを含みうる。「エピトープ」とは、抗体又は抗原受容体により認識される抗原の配列を意味する。当技術分野において、エピトープはまた、「抗原決定基」とも称される。抗原は、哺乳動物において、免疫応答を惹起する、好ましくは、防御免疫をもたらす、ウイルス由来、細菌由来、寄生虫由来、真菌由来、原虫由来、プリオン由来、細胞由来、又は細胞外由来のタンパク質又はペプチドでありうる。
【0027】
本明細書において使用される「組換え」という用語は、特定の核酸(DNA又はRNA)が、天然系において見出される内因性核酸から識別可能な、構造的コード配列又は構造的非コード配列を有する構築物を結果としてもたらす、クローニングステップ、制限ステップ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ステップ及び/又はライゲーションステップの多様な組合せの生成物であることを意味する。ポリペプチドをコードするDNA配列は、cDNA断片からアセンブルされる場合もあり、細胞内又は無細胞転写系内及び無細胞翻訳系内に含有される組換え転写単位からの発現が可能な合成核酸をもたらす、一連の合成オリゴヌクレオチドからアセンブルされる場合もある。対象とする配列を含むゲノムDNAもまた、組換え遺伝子又は転写単位の形成において使用されうる。非翻訳DNAの配列は、オープンリーディングフレームから5’側に存在する場合もあり、3’側に存在する場合もあるが、これらの場合に、このような配列は、コード領域の操作又は発現に干渉せず、多様な機構による、所望の生成物の作製をモジュレートするように作用しうる。代替的に、翻訳されないRNAをコードするDNA配列もまた、組換えであると考えられうる。したがって、「組換え」核酸という用語はまた、天然に存在しない核酸、例えば、ヒト介入を介して、天然に存在しない形で隔てられた、2つの配列セグメントの人工的組合せにより作製された核酸も指す場合がある。この人工的組合せは、単離核酸セグメントの化学合成手段又は人工的操作により、例えば、遺伝子操作法により達せられることが多い。このような人工的組合せは、通例、コドンを、同じアミノ酸、保存的アミノ酸又は非保存的アミノ酸をコードするコドンにより置きかえることによりなされる。代替的に、人工的組合せは、所望の機能を有する核酸セグメントを、一体に接続して、所望の機能の組合せを作出するように実施されうる。この人工的組合せは、単離核酸セグメントの化学合成手段又は人工的操作により、例えば、遺伝子操作法により達せられることが多い。組換えポリヌクレオチドが、ポリペプチドをコードする場合、コードされるポリペプチドの配列は、天然に存在する(「野生型」)配列の場合もあり、天然に存在する配列の変異体(例えば、突然変異体)の場合もある。したがって、「組換え」ポリペプチドという用語は、その配列が、天然において生じないポリペプチドを、必ずしも指さない場合がある。そうではなく、「組換え」ポリペプチドは、組換えDNA配列によりコードされるが、ポリペプチドの配列は、天然に存在する(「野生型」)配列の場合もあり、又は天然に存在しない(例えば、変異体、突然変異体など)配列の場合もある。したがって、「組換え」ポリペプチドは、ヒト介入を有するが、天然に存在するアミノ酸配列を含みうる。
【0028】
「結合性ドメイン」という用語は、別の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質ドメインを指す。結合性ドメインは、例えば、DNA分子(DNA結合性タンパク質)、RNA分子(RNA結合性タンパク質)及び/又はタンパク質分子(タンパク質結合性タンパク質)に結合しうる。タンパク質に結合するタンパク質ドメインの場合、タンパク質は、それ自身(ホモ二量体、ホモ三量体などを形成するように)に結合する場合もあり、かつ/又は1つ以上の異なるタンパク質による、1つ以上の分子に結合する場合もある。
【0029】
環状RNA
環状RNA(circRNA)とは、ヘッドからテールへと接続され、当初、D型肝炎ウイルス(HDV)及び植物ウィロイドなど、病原性ゲノム内において発見された一本鎖RNAである。circRNAは、真核細胞内に遍在する非コードRNAのクラスとして認識されている。バックスプライシングを介して作出されるcircRNAは、それらの驚くべき安定性のために、細胞間の情報伝達又は記憶において機能すると仮定されている。
【0030】
内因性circRNAの機能は、知られていないが、それらの数の多さ及びウイルスcircRNAゲノムの存在から、ヒトcircRNAによる、NF90/NF110の調節を介するウイルス抵抗性のモジュレーション(Liら、2017)及びPKRの調節を介する自己免疫のモジュレーション(Liuら、2019)についての、近年の発見により証拠立てられる通り、circRNAによる免疫系があるのは必然である。本明細書において裏付けられる通り、circRNAは、特異的なT細胞応答及びB細胞応答を誘導する、強力なアジュバントとして作用しうる。加えて、circRNAは、自然免疫応答及び獲得免疫応答の両方を誘導することが可能であり、腫瘍の確立及び増殖を阻害する能力を有する。
【0031】
イントロンの識別が、circRNAによる免疫を決定する(Chenら、前出)が、最終的なcircRNA産物の一部ではないため、イントロンは、1つ以上の共有結合的化学的マーキングの、circRNAへの付与を方向付けうることが仮定される。100を超える公知のRNA化学修飾のうち、mAは、哺乳動物ポリAテール転写物内の、全てのアデノシンのうちの、0.2%~0.6%において存在する、直鎖状mRNA上及び長鎖非コードRNA上における、最も豊富な修飾(Roundtreeら、Cell、169:1187~1200(2017))である。mAは、近年、哺乳動物のcircRNA上において検出されている(Zhouら、Cell Reports、20:2262~2276(2017))。本明細書において記載される通り、ヒトcircRNAは、生誕時に、それらのバックスプライシングをプログラムするイントロンに基づき、1つ以上の共有結合的mA修飾によりマーキングされると考えられる。
【0032】
一部の実施形態において、本明細書において記載される方法は、少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)を含む組換え環状RNA分子を作出するステップを伴う。組換えcircRNAは、常套的な分子生物学法を使用して作出又は操作されうる。上記において開示された通り、組換えcircRNA分子は、典型的に、直鎖状RNAのバックスプライシングにより作出される。一実施形態において、環状RNAは、5’側スプライシング部位の下流(スプライシングドナー)から、3’側スプライシング部位の上流(スプライシングアクセプター)へのバックスプライシングにより、直鎖状RNAから作製される。環状RNAは、任意の非哺乳動物スプライシング法により、このようにして作出されうる。例えば、自己スプライシングI群イントロン、自己スプライシングII群イントロン、スプライセオソームイントロン及びtRNAイントロンを含む、多様な種類のイントロンを含有する直鎖状RNAが環状化されうる。特に、I群イントロン及びII群イントロンは、それらの自己触媒性リボザイム活性に起因する、自己スプライシングを経るそれらの能力により、インビトロ並びにインビボにおいて、環状RNAの作製のために、たやすく使用されうることの利点を有する。
【0033】
代替的に、環状RNAは、RNAの5’末端と3’末端との化学的ライゲーション又は酵素的ライゲーションにより、インビトロにおいて、直鎖状RNAからも作製されうる。化学的ライゲーションは、例えば、ホスホジエステル結合の形成を可能とするように、臭化シアン(BrCN)又はエチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を、ヌクレオチドのホスホモノエステル基の活性化のために使用して実施されうる(Sokolova、FEBS Lett、232:153~155(1988);Dolinnayaら、Nucleic Acids Res.、19:3067~3072(1991);Fedorova、Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids、15:1137~1147(1996))。代替的に、酵素的ライゲーションは、RNAを環状化するのに使用されうる。使用されうる、例示的なリガーゼは、T4 DNAリガーゼ(T4 Dnl)、T4 RNAリガーゼ1(T4 Rnl 1)及びT4 RNAリガーゼ2(T4 Rnl 2)を含む。
【0034】
他の実施形態において、スプリントライゲーションは、RNAを環状化するのに使用されうる。スプリントライゲーションは、ライゲーションのために、直鎖状RNAの末端を一体とする、直鎖状RNAの2つの末端とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドスプリントの使用を伴う。デオキシリボオリゴヌクレオチドの場合もあり、リボオリゴヌクレオチドの場合もある、スプリントのハイブリダイゼーションは、RNA末端の5’-リン酸及び3’-OHを、ライゲーションの向きに合わせる。後続のライゲーションは、上記において記載された化学法又は酵素法を使用して実施されうる。酵素的ライゲーションは、例えば、T4 DNAリガーゼ(DNAスプリントが要求される)、T4 RNAリガーゼ1(RNAスプリントが要求される)又はT4 RNAリガーゼ2(DNAスプリント又はRNAスプリント)により実施されうる。ハイブリダイズされたスプリント-RNA複合体の構造が、酵素活性に干渉する場合、BrCN又はEDCなどによる化学的ライゲーションは、場合によって、酵素的ライゲーションより効率的である(例えば、Dolinnayaら、Nucleic Acids Res、21(23):5403~5407(1993);Petkovicら、Nucleic Acids Res、43(4):2454~2465(2015)を参照されたい。)。
【0035】
1つ以上のmA修飾を含む環状RNA分子は、非天然ヌクレオチドを、核酸配列へと導入するための、当技術分野で公知である、任意の適する方法を使用して作出されうる。一部の実施形態において、mAは、例えば、Chenら、前出において、記載されているインビトロ転写法などのインビトロ転写法を使用して、RNA配列へと導入されうる。例示的なインビトロ転写反応は、プロモーターを含有する、精製直鎖状DNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸、DTT及びマグネシウム並びに適切なファージRNAポリメラーゼ(例えば、SP6、T7又はT3)を含む緩衝液系を要求する。当業者により理解される通り、転写反応において使用される正確な条件は、具体的適用に必要とされるRNAの量に依存する。
【0036】
本明細書において記載される通りに作出される、特定のcircRNA分子内の、任意の数のアデノシンは、対応する数のmAにより修飾されうる(例えば、置きかえられうる)。理想的に、circRNA分子内の、少なくとも1つのアデノシンは、mAにより置きかえられる。一部の実施形態において、組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの、少なくとも1%(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%以上)は、N6-メチルアデノシン(mA)により置きかえられる。他の実施形態において、組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの、少なくとも10%(例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上)は、N6-メチルアデノシンにより置きかえられる。例えば、組換え環状RNA分子内のアデノシンの全て(すなわち、100%)は、N6-メチルアデノシン(mA)により置きかえられうる。組換え環状RNA分子へと導入されるmA修飾の数は、本明細書においてさらに記載されるcircRNAの特定の使用に依存することが理解される。
【0037】
一部の実施形態において、インビトロ転写により、環状RNA分子を作製する方法は、環状RNA分子をコードするDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及びRNAポリメラーゼを用意するステップ;DNA鋳型から、直鎖状RNAを転写するステップ;及び直鎖状DNAを環状化して、環状RNAを形成するステップを含む。一部の実施形態において、リボヌクレオチド三リン酸は、N6-メチルアデノシン-5’三リン酸(mATP)を一切含まない。一部の実施形態において、環状RNAは、対象において、自然免疫応答をもたらすことが可能である。一部の実施形態において、環状RNAは、対象において、自然免疫応答をもたらすことが可能である。
【0038】
一部の実施形態において、インビトロ転写により、環状RNA分子を作製する方法は、環状RNA分子をコードするDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及びRNAポリメラーゼを用意するステップ;DNA鋳型から、直鎖状RNAを転写するステップ;及び直鎖状DNAを環状化して、環状RNAを形成するステップを含む。一部の実施形態において、リボヌクレオチド三リン酸は、N6-メチルアデノシン-5’三リン酸(mATP)を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、同じ方法を使用するが、mATPの非存在下で使用して作製される環状RNAと比較して免疫原性が小さい。環状RNAの免疫原性は、環状RNAによる処置の後において、炎症応答を測定することにより決定されうる。一部の実施形態において、環状RNAの免疫原性は、環状RNAによる処置の後においてもたらされる、I型インターフェロン応答若しくはII型インターフェロン応答又は1つ以上の炎症促進性サイトカインレベルを測定することにより決定されうる。例えば、環状RNAの免疫原性は、環状RNAによる処置の後において、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ(IFNβ)、インターフェロンガンマ(IFNγ)、インターフェロンオメガ(IFNω)、インターロイキン1ベータ(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン23(IL-23)又はインターロイキン17(IL-17)のレベルを測定することにより決定されうる。一部の実施形態において、免疫原性は、レチノイン酸誘導的遺伝子1(RIG-I)、黒色腫分化関連タンパク質5(MDA5)、2’-5’-オリゴアデニル酸シンターゼ(OAS)、OAS様タンパク質(OASL)及び二本鎖RNA依存性タンパク質キナーゼ(PKR)のうちの1つ又は複数の発現又は活性を測定することにより決定されうる。免疫原性は、インビトロにおいて評価される場合もあり、インビボにおいて評価される場合もある。第1の環状RNAによる処置の後における炎症応答が、第2の環状RNAによる処置の後における炎症応答と比較して低減される場合、第1の環状RNAは、第2の環状RNAより免疫原性が小さい。
【0039】
一部の実施形態において、環状RNAは、所望のレベルの免疫原性を有するように設計される。例えば、環状RNAは、高度に免疫原性となるように設計される場合もあり、低度に免疫原性となるように設計される場合もあり、実質的に非免疫原性である、又は非免疫原性となるように設計される場合もある。環状RNAの免疫原性は、環状RNA内に存在するRRACHモチーフの数を修飾することにより制御される場合があり、この場合、RRACHモチーフの数の増大は、免疫原性の低減をもたらし、RRACHモチーフの減少は、免疫原性の増大をもたらす。一部の実施形態において、環状RNA又はこれをコードするDNA配列は、1~5、5~10、10~25、25~100、100~250、250~500又は500を超えるRRACHモチーフを含む。
【0040】
一部の実施形態において、組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも1%は、N6-メチルアデノシン(mA)である。一部の実施形態において、組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも10%は、N6-メチルアデノシン(mA)である。一部の実施形態において、組換え環状RNA分子内のアデノシンの全ては、N6-メチルアデノシン(mA)である。
【0041】
一部の実施形態において、組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの1%未満は、N6-メチルアデノシン(mA)である。例えば、組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満又は0.1%未満は、mAでありうる。一部の実施形態において、組換え環状RNAは、1~5、5~10、10~25、25~100、100~250、250~500又は500を超えるmA残基を含む。
【0042】
環状RNAは、一般に、主に、エクソヌクレアーゼ媒介性分解に必要な遊離末端が存在しないために、それらの直鎖状対応物より安定であるが、安定性をさらに改善するように、本明細書において記載されるmA修飾circRNAへと、さらなる修飾が施されうる。さらに他の種類の修飾は、環状化効率、circRNAの精製及び/又はcircRNAからのタンパク質の発現を改善しうる。例えば、組換えcircRNAは、「相同性アーム」(すなわち、5’側スプライシング部位と3’側スプライシング部位とを、互いに近接させることを目的として、前駆体RNAの5’末端及び3’末端に配置される、9~19ヌクレオチドの長さのアーム)、スペーサー配列及び/又はホスホロチオエート(PS)キャップを含むようにも操作されうる(Wesselhoeftら、Nat.Commun.、9:2629(2018))。組換えcircRNAはまた、その安定性を増大させるのに、2’-O-メチルコンジュゲート、-フルオロコンジュゲート若しくは-O-メトキシエチルコンジュゲート、ホスホロチオエート骨格又は2’,4’-サイクリック2’-O-エチル修飾を含むようにも操作されうる(Holdtら、Front Physiol.、9:1262(2018);Kruetzfeldtら、Nature、438(7068):685~9(2005)並びにCrookeら、Cell Metab.、27(4):714~739(2018))。
【0043】
一部の実施形態において、環状RNA分子は、少なくとも1つのイントロン及び少なくとも1つのエクソンを含む。本明細書において使用される「エクソン」という用語は、遺伝子内に存在する核酸配列であって、転写時のイントロンの切出しの後において、RNA分子の成熟形態により表される核酸配列を指す。エクソンは、タンパク質へと翻訳されうる(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の場合)。本明細書において使用される「イントロン」という用語は、所与の遺伝子内に存在する核酸配列であって、最終RNA生成物の成熟時に、RNAスプライシングにより除去される核酸配列を指す。イントロンは、一般に、エクソンの間に見出される。転写時に、イントロンは、前駆体メッセンジャーRNA(プレmRNA)から除去され、エクソンは、RNAスプライシングを介して接続される。
【0044】
一部の実施形態において、環状RNA分子は、1つ以上のエクソン及び1つ以上のイントロンを含む核酸配列を含む。一部の実施形態において、環状RNA分子は、1つ以上のエクソンを含む。一部の実施形態において、環状RNA分子は、イントロンを一切含まない。
【0045】
一部の実施形態において、環状RNA分子は、人工配列を含みうる。人工配列は、所望の結合特性など、好適な特性を付与しうる。例えば、人工配列は、1つ以上のRNA結合性タンパク質に結合する場合もあり、1つ以上のマイクロRNAと相補性の場合もある。一部の実施形態において、人工配列は、遺伝子配列又は天然に存在する環状RNAに由来する配列のスクランブル形でありうる。スクランブル配列は、典型的に、それが由来する配列と同じヌクレオチド組成物を有する。当業者に、スクランブル核酸を作出するための方法は公知である。一部の実施形態において、環状RNAは、人工配列を含むが、エクソンを含まない。一部の実施形態において、環状RNAは、人工配列を含むが、また、少なくとも1つのエクソンも含む。
【0046】
したがって、環状RNAは、WO2017/222911において記載されている、内因性イントロン又は外因性イントロンにより作出されうる。多種多様な生物及びウイルスに由来する、多数のイントロン配列が公知であり、タンパク質、リボソームRNA(rRNA)又は転移RNA(tRNA)をコードする遺伝子に由来する配列を含む。代表的なイントロン配列は、Group I Intron Sequence and Structure Database(rna.whu.edu.cn/gissd/)、Database for Bacterial Group II Introns(webapps2.ucalgary.ca/groupii/index.html)、Database for Mobile Group II Introns(fp.ucalgary.ca/group2introns)、Yeast Intron DataBase(emblS16 heidelberg.de/ExternalInfo/seraphin/yidb.html)、Ares Lab Yeast Intron Database(compbio.soe.ucsc.edu/yeast_introns.html)、U12 Intron Database(genome.crg.es/cgibin/u12db/u12db.cgi)及びExon-Intron Database(bpg.utoledo.edu/afedorov/lab/eid.html)を含む多様なデータベースにおいて利用可能である。
【0047】
ある特定の実施形態において、組換え環状RNA分子は、自己スプライシングI群イントロンを含む核酸によりコードされる。I群イントロンは、広範にわたる生物における、mRNA前駆体、tRNA前駆体及びrRNA前駆体からの、それら固有の切出しを触媒する、RNA自己スプライシングイントロンの、顕著に異なるクラスである。真核細胞核内に存在する、全ての公知のI群イントロンはリボソームDNA遺伝子座内に配置された、機能的リボソームRNA遺伝子を中断する。真核微生物及び変形体粘菌(変形菌)の間で広範に存在すると考えられる、核内I群イントロンは、豊富な自己スプライシングイントロンを含有する。環状RNA分子内に含まれる自己スプライシングI群イントロンは、例えば、細菌、バクテリオファージ及び真核生物のウイルスなど、任意の適切な生物から得られる場合もあり、これらに由来する場合もある。自己スプライシングI群イントロンまた、ミトコンドリア及び葉緑体など、ある特定の細胞小器官内においても見出される場合があり、このような自己スプライシングイントロンは、環状RNA分子をコードする核酸へと組み込まれうる。
【0048】
ある特定の実施形態において、組換え環状RNA分子は、ファージT4チミジル酸シンターゼ(td)遺伝子の自己スプライシングI群イントロンを含む核酸によりコードされる。ファージT4チミジル酸シンターゼ(td)遺伝子のI群イントロンは、環状化することが十分に特徴づけられているのに対し、エクソンは、直鎖状のまま、併せてスプライシングを行う(Chandry及びBelfort、Genes Dev.、1:1028~1037(1987);Ford及びAres、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:3117~3121(1994)並びにPerriman及びAres、RNA、4:1047~1054(1998))。任意のエクソン配列を挟む、tdイントロンの順序が入れ替えられる(すなわち、5’側の半分が、3’位に配置され、この逆もなされる)場合、エクソンは、2つの自己触媒性エステル交換反応を介して環状化される(Ford及びAres、前出;Puttaraju及びBeen、Nucleic Acids Symp.Ser.、33:49~51(1995))。
【0049】
一部の実施形態において、本明細書において記載された組換え環状RNAは、ポリペプチドをコードするRNA配列に作動可能に連結されうる、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含みうる。IRESの組入れは、環状RNAに由来する、1つ以上のオープンリーディングフレームの翻訳を可能とする。IRESエレメントは、真核リボソーム翻訳開始複合体を誘引し、翻訳開始を促進する(例えば、Kaufmanら、Nuc.Acids Res.、19:4485~4490(1991);Gurtuら、Biochem.Biophys.Res.Comm、229:295~298(1996);Reesら、BioTechniques、20:102~110(1996);Kobayashiら、BioTechniques、21:399~402(1996)並びにMosserら、BioTechniques、22:150~161(1997)を参照されたい。)。
【0050】
当技術分野において、多数のIRES配列は公知であり、環状RNA分子内に組み入れられうる。例えば、IRES配列は、ピコルナウイルスのリーダー配列(例えば、脳心筋炎ウイルス(EMCV)UTR)(Jangら、J.Virol.、63:1651~1660(1989))、ポリオリーダー配列、A型肝炎ウイルスリーダー、C型肝炎ウイルスIRES、ヒト鼻炎ウイルス2型IRES(Dobrikovaら、Proc.Natl.Acad.Sci.、100(25):15125~15130(2003))、口蹄疫ウイルスに由来するIRESエレメント(Rameshら、Nucl.AcidRes.、24:2697~2700(1996))及びジアルジアウイルスIRES(Garlapatiら、J.Biol.Chem.、279(5):3389~3397(2004))など、多種多様なウイルスに由来しうる。酵母由来のIRES配列、ヒトアンジオテンシンII 1型受容体IRES(Martinら、Mol.Cell Endocrinol.、212:51~61(2003))、線維芽細胞増殖因子IRES(例えば、FGF-1IRES及びFGF-2IRES;Martineauら、Mol.Cell.Biol.、24(17):7622~7635(2004))、血管内皮増殖因子IRES(Baranickら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、105(12):4733~4738(2008);Steinら、Mol.Cell.Biol.、18(6):3112~3119(1998);Bertら、RNA、12(6):1074~1083(2006))及びインスリン様増殖因子2IRES(Pedersenら、Biochem.J.、363(1号):37~44(2002))を含むがこれらに限定されない、様々な非ウイルスIRES配列もまた、環状RNA分子内に組み入れられうる。
【0051】
場合によって、組換え環状RNAは、IRESに作動可能に連結されたタンパク質又はポリペプチドをコードする配列を含む。IRESを含む組換え環状RNAは、適切なサイズの、任意の目的のポリペプチドを作製するように設計されうる。例えば、環状RNAは、細菌、ウイルス、真菌、原生生物又は寄生生物に由来する抗原など、免疫原性ポリペプチドをコードするRNA配列に作動可能に連結されたIRESを含みうる。代替的に、環状RNAは、遺伝性障害、がん又は他の疾患を処置するための、酵素、ホルモン、神経伝達物質、サイトカイン、抗体、腫瘍抑制因子又は細胞傷害剤などの治療用ポリペプチドをコードするRNA配列に作動可能に連結されたIRESを含みうる。
【0052】
当技術分野において、IRESエレメントは公知であり、IRESエレメントをコードするヌクレオチド配列及びベクターは、例えば、Clontech(MountainView、CA)、Invivogen(SanDiego、CA)、Addgene(Cambridge、MA)及びGeneCopoeia(Rockville、MD)及びIRESite:実験により検証されたIRES構造についてのデータベース(iresite.org)など、様々な供給元から市販されている。
【0053】
本開示における使用のために所望のRNA、ポリペプチド、イントロン及びIRESをコードするポリヌクレオチドは、標準的な分子生物学法を使用して作製されうる。例えば、ポリヌクレオチド配列は、細胞に由来するcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーをスクリーニングすること又はポリヌクレオチドを含むことが既知のベクターからポリヌクレオチドを切り出すことによるなど、組換え法を使用して作製されうる。ポリヌクレオチドはまた、クローニングではなく、公知の配列に基づき、合成により作製される場合もある。完全配列は、標準法により調製された、重複オリゴヌクレオチドからアセンブルされ、次いで、完全配列へとアセンブルされ、ライゲーションされうる(例えば、Edge、Nature、292:756(1981);Nambairら、Science、223:1299(1984)並びにJayら、J.Biol.Chem.、259:6311(1984)を参照されたい。)。核酸配列を得る、又は合成する他の方法は、部位指向突然変異誘発法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(例えば、Greene,M.R.及びSambrook,J.、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、4版(2012年6月15日)において開示されている)、自動式ポリヌクレオチド合成器(例えば、Jayaramanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:4084~4088(1991)を参照されたい。)、オリゴヌクレオチド指向合成(Jonesら、Nature、54:75~82(1986))、既存のヌクレオチド領域に対するオリゴヌクレオチド指向突然変異誘発(Riechmannら、Nature、332:323~327(1988)並びにVerhoeyenら、Science、239:1534~1536(1988))及びT4 DNAポリメラーゼを使用する、酵素によるオリゴヌクレオチドギャップへの充填(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:10029~10033(1989))を含むがこれらに限定されない。
【0054】
組換え環状RNA分子は、任意の適切な長さ又はサイズの組換え環状RNA分子でありうる。例えば、組換え環状RNA分子は、約200ヌクレオチド~約6,000ヌクレオチドの間(例えば、約300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000ヌクレオチド又は前出の値のうちのいずれか2つにより規定される範囲)のヌクレオチドを含みうる。一部の実施形態において、組換え環状RNA分子は、約500~約3,000ヌクレオチドの間(約550、650、750、850、950、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900ヌクレオチド又は前出の値のうちのいずれか2つにより規定される範囲)のヌクレオチドを含む。一実施形態において、組換え環状RNA分子は、約1,500ヌクレオチドを含む。
【0055】
アジュバントとしてのcircRNA
Aを含有しないcircRNA分子は、対象において、免疫応答を惹起するのに使用されうる。したがって、一部の実施形態において、mAを欠くcircRNAは、アジュバントとして、例えば、ワクチン組成物の一部として使用されうる。
【0056】
一部の実施形態において、免疫原性の環状RNAは、それを必要とする対象へと投与される。一部の実施形態において、免疫原性の環状RNAは、mA残基を含有しない。
【0057】
一部の実施形態において、環状RNAは、ポリペプチドをコードする配列を含む。ポリペプチドは、例えば、抗原性ポリペプチドでありうる。一部の実施形態において、ポリペプチドは、複数の(すなわち、少なくとも2つの)抗原を含む。抗原は、ウイルス由来、細菌由来、寄生虫由来、真菌由来、原虫由来、プリオン由来、細胞由来、又は細胞外由来の抗原でありうる。一部の実施形態において、少なくとも1つの抗原は、腫瘍抗原である。一部の実施形態において、ワクチン組成物の環状RNAは、ポリペプチドをコードする配列に作動可能に連結された内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む。
【0058】
一部の実施形態において、環状RNAは、対象への投与の前に、エクスビボにおいて合成される。一部の実施形態において、環状RNAは、インビトロ転写を使用して作製される。
【0059】
一部の実施形態において、環状RNAは、対象へと、ネイキッドRNAとして投与される。一部の実施形態において、環状RNAは、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)ナノ粒子などのナノ粒子と複合体を形成している。
【0060】
一部の実施形態において、環状RNAをコードするDNA配列を含むベクターは、対象へと投与される。一部の実施形態において、環状RNAをコードするDNA配列は、環状RNAのma修飾を防止する特徴を含む。例えば、DNA配列は、RRACHモチーフ(配列番号17)を含まない場合がある。ベクターは、例えば、プラスミドなど、非ウイルスベクターでありうる。一部の実施形態において、ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター又はヘルペスウイルスベクターなどのウイルスベクターである。
【0061】
一部の実施形態において、ベクターは、1つ以上の特異的細胞型へとターゲティングされる。例えば、ベクターは、1つの細胞型に特異的に、又は優先的に結合しうるが、別の細胞型に特異的に、又は優先的に結合しえない。一部の実施形態において、ベクターは、がん細胞へとターゲティングされる。
【0062】
一部の実施形態において、ワクチン組成物は、環状RNAを含む。一部の実施形態において、ワクチン組成物は、N6-メチルアデノシン(mA)残基を、一切、含有しない環状RNA分子を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、RRACHモチーフ(配列番号18)を欠く。一部の実施形態において、環状RNAは、1つ以上のRRUCHモチーフ(配列番号20)を含む。
【0063】
一部の実施形態において、ワクチン組成物は、N6-メチルアデノシン(mA)残基を、一切、含有しない環状RNA分子を含み、また、少なくとも1つの抗原も含む。
【0064】
一部の実施形態において、ワクチン組成物の環状RNAは、インビトロ転写を使用して作製される。一部の実施形態において、環状RNAは、組成物中に、ネイキッドRNAとして存在する。一部の実施形態において、環状RNAは、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)ナノ粒子などのナノ粒子と複合体を形成している。
【0065】
ワクチン組成物は、疾患、障害又は状態を処置又は防止するように、それを必要とする対象へと投与されうる。したがって、一部の実施形態において、自然免疫応答を誘発することを必要とする対象における自然免疫応答を誘発する方法は、対象へと、有効量の、ワクチン組成物を投与するステップを含む。
【0066】
送達媒体としてのcircRNA
非天然circRNAの、N6-メチルアデノシン(mA)修飾は、誘導された自然免疫応答を阻害するので、mA修飾circRNA分子は、宿主免疫系により除去されずに、多様な物質を、細胞へと送達するのに使用されうる。したがって、本開示はまた、物質を、細胞へと送達する方法であって、(a)少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)を含む組換え環状RNA分子を作出するステップ;(b)物質を、組換え環状RNA分子へと接合させて、物質へと接合された組換え環状RNA分子を含む複合体を作製するステップ;及び(c)細胞を、複合体と接触させるステップであって、これにより、物質が、細胞へと送達されるステップを含む方法も提示する。上記において記載された、組換え環状RNA分子、mA修飾、組換え環状RNA分子及びその構成要素を作出する方法についての記載はまた、物質を、細胞へと送達する方法についての、同じ態様へも適用される。
【0067】
開示される環状RNA分子を使用して、任意の適する物質、化合物又は材料が、細胞へと送達されうる。物質は、生物学的物質の場合もあり、かつ/又は化学的物質の場合もある。例えば、物質は、タンパク質(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質断片、タンパク質複合体、融合タンパク質、組換えタンパク質、リンタンパク質、糖タンパク質又はリポタンパク質)、脂質、核酸又は炭水化物などの生体分子でありうる。開示される環状RNA分子を使用して細胞へと送達されうる他の物質は、ホルモン、抗体、増殖因子、サイトカイン、酵素、受容体(例えば、神経受容体、ホルモン受容体、栄養物質受容体及び細胞表面受容体)又はこれらのリガンド、がんマーカー(例えば、PSA、TNF-アルファ)、心筋梗塞のマーカー(例えば、トロポニン又はクレアチンキナーゼ)、毒素、薬物(例えば、中毒薬物)及び代謝剤(例えば、ビタミンを含む)を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態において、物質は、抗原、エピトープ、サイトカイン、毒素、腫瘍抑制因子タンパク質、増殖因子、ホルモン、受容体、マイトジェン、免疫グロブリン、神経ペプチド、神経伝達物質又は酵素などのタンパク質又はペプチドである。物質が、抗原又はエピトープである場合、抗原又はエピトープは、病原体(例えば、ウイルス又は細菌)又はがん細胞(すなわち、「がん抗原」又は「腫瘍抗原」)から得られる場合もあり、これらに由来する場合もある。
【0068】
他の実施形態において、物質は、低分子でありうる。本明細書において使用される「低分子」という用語は、典型的に、1nmのオーダーのサイズを伴い、生物学的過程を調節しうる、低分子量(<900ダルトン)の有機化合物を指す。低分子は、様々な生物学的機能を呈し、細胞内シグナル伝達において用いられ、医薬として用いられ、殺虫剤として用いられるなど、多種多様な適用に用いられる。低分子の例は、アミノ酸、脂肪酸、フェノール化合物、アルカロイド、ステロイド、ビリン、レチノイドなどを含む。
【0069】
物質を、組換え環状RNA分子へと接合させて、物質へと接合された組換え環状RNA分子を含む複合体を形成するのに、生体分子のコンジュゲーションのための、任意の適切な方法が使用されうる。理想的に、物質は、組換え環状RNA分子へと共有結合的に連結される。共有結合的連結は、環状RNA分子上又は物質上に存在する連結部分により生じうる。連結部分は、は、特定の細胞内部の物質の放出を可能としうる化学結合を含有することが所望される。当技術分野において、適切な化学的結合が周知であり、ジスルフィド結合、酸不安定性結合、光不安定性結合、ペプチダーゼ不安定性結合及びエステラーゼ不安定性結合を含む。典型的な共有結合的コンジュゲーション法は、システイン及びリシンなど、特異的アミノ酸の側鎖をターゲティングする。システイン側鎖及びリシン側鎖は、それぞれ、これらが多種多様な試薬(例えば、連結用試薬)による修飾を経ることを可能とする、チオール基及びアミノ基を含有する。バイオコンジュゲーション法は、例えば、N.Stephanopoulos及びM.B.Francis、Nature、Chaemical Biology、7:876~884(2011);Jainら、Pharm Res.、32(11):3526~40(2015)並びにKaliaら、Curr.Org.Chem.、14(2):138~147(2010)において、さらに記載されている。
【0070】
組換え環状RNA分子へと接合された物質を含む複合体の形成の後、方法は、細胞を、複合体と接触させるステップであって、これにより、物質が、細胞へと送達されるステップを含む。任意の適切な原核細胞又は真核細胞が、複合体と接触させられうる。適切な原核細胞の例は、バチルス属(Bacillus)(バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・ブレビス(Bacillus brevis)など)、エシェリキア属(Escherichia)(E.コリー(E.coli)など)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、サルモネラ属(Salmonella)及びエルウィニア属(Erwinia)に由来する細胞を含むがこれらに限定されない。特に有用な原核細胞は、エシェリキア・コリー(Escherichia coli)の多様な株(例えば、K12、HB101(ATCC受託番号:33694)、DH5α、DH10、MC1061(ATCC受託番号:53338)及びCC102)を含む。
【0071】
当技術分野において、適切な真核細胞が公知であり、例えば、酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含む。適切な酵母細胞の例は、ハンセヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、リノスポリジウム属(Rhinosporidium)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)及びスキゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)に由来する酵母細胞を含む。適切な昆虫細胞は、Sf-9細胞及びHIS細胞(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)を含み、例えば、Kittsら、Biotechniques、14:810~817(1993);Lucklow、Curr.Opin.Biotechnol.、4:564~572(1993)並びにLucklowら、J.Virol.、67:4566~4579(1993)において記載されている。
【0072】
ある特定の実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞である。当技術分野において、多数の適切な哺乳動物細胞が公知であり、これらのうちの多くは、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、Va.)から入手可能である。適切な哺乳動物細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(ATCC受託番号:CCL61)、CHODHFR-細胞(Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97:4216~4220(1980))、ヒト胎児性腎臓(HEK)293細胞又は293T細胞(ATCC受託番号:CRL1573)及び3T3細胞(ATCC受託番号:CCL92)を含むがこれらに限定されない。他の適切な哺乳動物細胞系は、サルCOS-1細胞系(ATCC受託番号:CRL1650)及びCOS-7細胞系(ATCC受託番号:CRL1651)の他、CV-1細胞系(ATCC受託番号:CCL70)である。さらなる例示的な哺乳動物宿主細胞は、形質転換細胞系を含む、霊長動物細胞系及び齧歯動物細胞系を含む。正常二倍体細胞、初代組織のインビトロ培養物に由来する細胞株の他、初代外植片もまた適する。他の適切な哺乳動物細胞系は、それらの全てが、ATCCから入手可能である、マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa細胞、マウスL-929細胞及びBHKハムスター細胞系又はHaKハムスター細胞系を含むがこれらに限定されない。当技術分野において、適切な哺乳動物宿主細胞を選択するための方法及びこのような細胞の形質転換、培養、増幅、スクリーニング、精製のための方法は、周知である(例えば、Ausubelら編、「Short Protocols in Molecular Biology」、5版、John Wiley & Sons,Inc.、Hoboken、N.J.(2002)を参照されたい。)。
【0073】
好ましくは、哺乳動物細胞は、ヒト細胞である。例えば、哺乳動物細胞は、ヒト免疫細胞、特に、細胞抗原又はエピトープを免疫系へと提示しうる細胞でありうる。ヒト免疫細胞の例は、リンパ球(例えば、Bリンパ球又はTリンパ球)、単球、マクロファージ、好中球及び樹状細胞を含む。一実施形態において、細胞は、マクロファージである。
【0074】
物質へと接合された組換え環状RNA分子を含む複合体は、例えば、トランスフェクション、形質転換又は形質導入による方法を含む、任意の適切な方法により、細胞へと導入されうる。本明細書において、「トランスフェクション」、「形質転換」及び「形質導入」という用語は、互換的に使用され、物理的方法又は化学的方法の使用による、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドの、宿主細胞への導入を指す。当技術分野において、多くのトランスフェクション技法が公知であり、例えば、リン酸カルシウムDNA共沈殿;DEAEデキストラン;電気穿孔;カチオン性リポソーム媒介性トランスフェクション;タングステン粒子促進型微粒子銃及びリン酸ストロンチウムDNA共沈殿を含む。
【0075】
一部の実施形態において、複合体は、物質へとコンジュゲートされた、ネイキッドRNAの形態において、細胞へと送達されうる。一部の実施形態において、複合体は、ポリエチレンイミン(PEI)ナノ粒子など、細胞への送達のためのナノ粒子と複合体を形成していてもよい。
【0076】
一部の実施形態において、組成物は、物質へとコンジュゲートされたRNAを含み、任意に、薬学的に許容される担体を含みうる。担体の選出は、部分的に、特定の環状RNA分子及び環状RNA分子が導入される細胞(1つ以上の細胞)の種類により決定される。したがって、様々な適切な組成物の製剤が可能である。例えば、組成物は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムなどの保存剤を含有しうる。任意に、2つ以上の保存剤の混合物が使用されうる。加えて、組成物中に、緩衝剤も使用されうる。適切な緩衝剤は、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム並びに他の多様な酸及び塩を含む。任意に2つ以上の緩衝剤の混合物が使用されうる。当業者に、医薬的使用のための組成物を調製するための方法が公知であり、例えば、「Remington:Science and Practice of Pharmacy」、Lippincott Williams & Wilkins、21版(2005年5月1日)において、より詳細に記載されている。
【0077】
他の実施形態において、物質へと接合された組換え環状RNA分子を含む複合体を含有する組成物は、シクロデキストリン封入複合体などの封入複合体として製剤化される場合もあり、リポソームとして製剤化される場合もある。リポソームは、宿主細胞をターゲティングするのに使用される場合もあり、環状RNA分子の半減期を延長するのに使用される場合もある。リポソーム送達システムを調製するための方法は、例えば、Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.、9:467(1980)及び米国特許第4,235,871;同第4,501,728;同第4,837,028及び同第5,019,369号において記載されている。複合体はまた、ナノ粒子としても製剤化されうる。
【0078】
RNA結合性タンパク質を隔離するためのcircRNA
本開示はまた、細胞内にRNA結合性タンパク質を隔離する方法であって、(a)少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)及び1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性モチーフを含む組換え環状RNA分子を作出するステップ;及び(b)RNA結合性タンパク質を含む細胞を、組換え環状RNA分子と接触させるステップであって、これにより、RNA結合性タンパク質が、1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性モチーフに結合し、細胞内に隔離されるステップを含む方法も提示する。上記において記載された、組換え環状RNA分子、mA修飾、組換え環状RNA分子を作出する方法、細胞を、circRNA及びその構成要素と接触させる方法についての記載はまた、細胞内にRNA結合性タンパク質を隔離する方法についての、同じ態様へも適用される。
【0079】
RNA結合性タンパク質は、RNAの代謝、RNA-タンパク質間相互作用及びタンパク質-タンパク質間相互作用の協調並びにRNAのスプライシング、成熟、翻訳、輸送及び代謝回転の調節において、主要な役割を果たす。神経障害、筋萎縮症及びがんを含む、ヒト疾患のいくつかの主要なクラスにおいて、RNA結合性タンパク質の発現異常、機能不全及び凝集が同定されている。したがって、特に、細胞内において異常に発現される場合のRNA結合性タンパク質は、疾患と関連しうる。
【0080】
RNA結合性タンパク質は、典型的に、1つ以上のRNA認識モチーフ(RRM)(また、「RNA結合性モチーフ」とも称される)を含有する。様々な異なるRNA結合性タンパク質について、多数のRRMが公知である。リボヌクレオタンパク質(RNP)ドメイン(また、「RNA認識モチーフ(RRM)」及び「RNA結合性ドメイン(RBD)」としても公知である)は、真核生物において、最も豊富なタンパク質ドメインのうちの1つである。RNPドメインは、2つのコンセンサス配列:RNP-1及びRNP-2を含む、約90アミノ酸のRNA結合性ドメインを含有する。RNP-1が、主に、芳香族であり、正に帯電した、8つの保存的残基を含むのに対し、RNP-2は、6つのアミノ酸残基から構成される、保存性の小さな配列である。RNPドメインは、広範にわたる特異性及びアフィニティーにより、RNA分子への結合に必要かつ十分であることが示されている。他のRNA結合性ドメインは、亜鉛フィンガードメイン、hnRNPK相同性(KH)ドメイン及び二本鎖RNA結合性モチーフ(dsRBM)(例えば、Clery A,H.-T.Allain F.、「From Structure to Function of RNA Binding Domains」、「Madame Curie Bioscience Database」、Austin(TX):Landes Bioscience(2000~2013)を参照されたい。)を含むがこれらに限定されない。組換え環状RNA分子は、RRM又はRNA結合性モチーフ(すなわち、「RNA結合性タンパク質結合性ドメイン」)により認識される、1つ以上のドメインを含有するように作出される。組換えcircRNA分子内に組み入れる、RNA結合性タンパク質結合性ドメインの選出しは、細胞内への隔離のためにターゲティングされる、特異的RNA結合性タンパク質に依存する。組換え環状RNA分子は、常套的な分子生物学法及び/又は組換えDNA法を使用して、1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性ドメインを含むように作出されうる。
【0081】
ある特定の実施形態において、RNA結合性タンパク質は、組換えcircRNA分子と接触させられる細胞内において異常に発現されている。上記において言及された通り、RNA結合性タンパク質の異常な発現は、神経障害、筋萎縮症及びがんなどの疾患と関連している。RNA結合性タンパク質の発現は、非正常であるという意味において「異常」である。この点において、RNA結合性タンパク質をコードする遺伝子は、細胞内において、非正常に発現される結果として、非正常量のRNA結合性タンパク質もたらしうる。代替的に、遺伝子発現は、正常であるが、RNA-タンパク質の産生が調節異常である、又は機能不全であるために、細胞内において、非正常量のタンパク質を結果としてもたらす場合もある。発現の異常は、過剰発現、過小発現、発現の完全な欠如又は発現の一時的調節異常(例えば、遺伝子が、細胞内の、不適切な時点において、発現される)を含むがこれらに限定されない。細胞内の、突然変異体又は変異体RNA結合性タンパク質の、正常レベルにおける発現もまた、RNA結合性タンパク質の発現の異常であると考えられうる。したがって、一部の実施形態において、RNA結合性タンパク質は、少なくとも1つの突然変異(例えば、欠失、挿入又は置換)を含む核酸配列によりコードされる。
【0082】
一部の実施形態において、環状RNAは、ネイキッドRNAの形態において、細胞へと送達されうる。一部の実施形態において、環状RNAは、ポリエチレンイミン(PEI)ナノ粒子など、細胞への送達のためのナノ粒子と複合体を形成していてもよい。
【0083】
circRNAの自然免疫原性に対するモジュレーション
その最終的適用に応じて、環状RNA分子の自然免疫原性をモジュレートすることが所望されうる。本明細書において、「自然免疫原性」及び「自然免疫」という用語は、互換的に使用され、抗原への曝露後速やかに、又は曝露から数時間以内に生じる、非特異的防御機構を指す。これらの機構は、皮膚などの物理的障壁、血液中の化学物質及び生物における外来細胞を攻撃する免疫系細胞を含む。例えば、circRNA分子が、細胞内にRNA結合性タンパク質を隔離するのに使用される場合、circRNA分子により誘導される自然免疫原性は、その除去を低減し、タンパク質隔離効果を最大化するように低減されうる。この点において、本開示は、対象において環状RNA分子の自然免疫原性を低減する方法であって、(a)対象において自然免疫応答を誘導する環状RNA分子を用意するステップ;及び(b)N6-メチルアデノシン(mA)、シュードウリジン及びイノシンから選択される少なくとも1つのヌクレオシドを、環状RNA分子へと導入して、自然免疫原性が低減された修飾環状RNA分子をもたらすステップを含む方法を提示する。上記において記載された環状RNA分子、mA修飾、組換え環状RNA分子及びその構成要素を作出する方法についての記載はまた、対象において環状RNAの自然免疫原性を低減する方法についての、同じ態様へも適用される。
【0084】
RNA内において見出される、最も豊富な修飾ヌクレオシドのうちの1つである、シュードウリジン(また、「psi」又は「Y」とも称される)は、広範な細胞内RNA内に存在し、種間において高度に保存的である。シュードウリジンは、Ψシンターゼにより触媒される塩基特異的異性体化を介して、ウリジン(U)から導出される。イノシンは、ヒポキサンチンが、β-N9-グリコシド結合を介して、リボース環(また、リボフラノースとしても公知である)へと接合される場合に形成されるヌクレオシドである。イノシンは、一般に、tRNA内において見出され、揺らぎ塩基対内の遺伝子コードの適正な翻訳に不可欠である。図15は、イノシン又はシュードウリジンの、環状RNAへの導入が、circRNAによる免疫に影響を与えることを裏付ける。いかなる理論にも束縛されずに述べると、イノシン又はシュードウリジンの、環状RNAへの導入は、そのmA修飾を防止することが考えられる。理想的に、環状RNA分子のうちの、少なくとも1%(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%以上)は、mA、シュードウリジン及び/又はイノシンを含有する。他の実施形態において、環状RNA分子のうちの、少なくとも10%(例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上)は、mA、シュードウリジン及び/又はイノシンを含有する。
【0085】
代替的に、circRNAが、抗原性タンパク質(例えば、腫瘍抗原又はがん抗原)を、細胞へと送達するのに使用される実施形態において、circRNA分子の自然免疫原性は増大させられうる。この目的で、本開示はまた、対象における環状RNA分子の自然免疫原性を増大させる方法であって、(a)RRACHモチーフ(配列番号18)を欠く環状RNA分子を作出するステップ;及び/又は(b)少なくとも1つのエクソン内の、1つ以上のアデノシンを、別の塩基(例えば、U、G、C又はイノシン)により置きかえて、自然免疫原性が増大させられた修飾環状RNA分子をもたらすステップを含む方法も提示する。上記において記載された、環状RNA分子、組換え環状RNA分子及びその構成要素を作出する方法についての記載はまた、対象において環状RNAの自然免疫原性を増大させる方法についての、同じ態様へも適用される。
【0086】
下記の実施例において論じられる通り、RRACH(配列番号17~18)は、mA修飾についてのコンセンサスモチーフである。したがって、一部の実施形態において、環状RNA分子は、モチーフ内の「A」を、ウラシル(「U」)、グアニン(「G」)又はシトシン(「C」)など、別の塩基又は塩基の組合せにより置きかえることにより、RRACHモチーフ(配列番号18)を欠くように操作されうるが、RRACHモチーフ内の、任意のヌクレオチドは、別の塩基又は塩基の組合せにより置きかえられうる。理想的に、環状RNA分子内のアデノシンのうちの、少なくとも1%(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%以上)は、別の塩基(例えば、ウラシル)又は塩基の組合せにより置きかえられる。他の実施形態において、環状RNA分子内のアデノシンのうちの、少なくとも10%(例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上)は、別の塩基(例えば、ウラシル)又は塩基の組合せにより置きかえられる。例えば、環状RNA分子内のアデノシンの全て(すなわち、100%)は、別の塩基(例えば、ウラシル)又は塩基の組合せにより置きかえられる。
【0087】
環状RNA分子の自然免疫原性を低減する、又は増大させる方法は、修飾環状RNAを、対象へと投与するステップをさらに含みうる。修飾環状RNA又は修飾環状RNAを含む組成物は、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺内投与、経皮投与、筋内投与、鼻腔内投与、口腔内投与、舌下投与、膣内投与又は坐剤投与を含む、標準的な投与法を使用して、対象(例えば、哺乳動物)へと投与されうる。
【0088】
一部の実施形態において、環状RNAは、ネイキッドRNAの形態において、細胞へと送達されうる。一部の実施形態において、環状RNAは、ポリエチレンイミン(PEI)ナノ粒子など、細胞への送達のためのナノ粒子と複合体を形成していてもよい。
【0089】
以下の例は、本発明をさらに例示するが、当然ながら、いかなる形であれ、その範囲を限定するものとして見なされるべきではない。
【実施例
【0090】
実施例において記載される実験において、以下の材料及び方法を使用した。
【0091】
プラスミド
自己触媒性スプライシングを介して、circRNAを発現させるファージイントロンをコードするプラスミドは、Chenら、前出において記載されている。IN-FUSION(登録商標)HDアセンブリー(タカラバイオ株式会社、638910)を使用して、ファージイントロンをコードするプラスミドであって、BoxBモチーフを組み込んだ、外来circGFPを発現させるプラスミドを構築した。λNを伴う、及びこれを伴わないYTHDF1N及びYTHDF2Nを発現させるプラスミドは、Chuan He博士(University of Chicago)により恵与された。YTHDF2タンパク質ドメインの切断型を発現させるプラスミドは、IN-FUSION(登録商標)HDにより構築した。全てのプラスミドは、LB培地中において増殖させた、NEB(登録商標)Turbo Competent E.coli Cell(New England Biolabs、C2984H)内において繁殖させ、ZYMOPURE II(商標)Plasmid Prepキット(Zymo Research、D4200)を使用して精製した。
【0092】
RNAの合成及び精製
製造元の指示書に従い、MEGAscript T7転写キット(Ambion、AM1334)を使用するインビトロ転写及び37℃において、一晩又は少なくとも8時間にわたるインキュベーションによりRNAを合成した。MEGASCRIPT(登録商標)T7転写キット(Ambion、AM1334)を使用し、mATP(Trilink、N-1013)を、転写キットのATPにより指定される比において添加するインビトロ転写により、同じ方式において、mA標識化RNAを合成した。転写されたcircFOREIGNを、RNEASY(登録商標)Miniカラム(Qiagen、74106)により精製し、次いで、RNアーゼR(Epicenter、RNR07250)により、以下の方式において処理した:circFOREIGNの二次構造を、72℃における5分間に続く、氷上における2分間にわたり変性させ;RNアーゼRを、1U:RNA 1μgの比において添加し、37℃において、2~3時間にわたりインキュベートした。CircRNALinear RNAは、RNアーゼRにより処理しなかった。次いで、circFOREIGNを、RNEASY(登録商標)カラムにより精製した。次いで、circFOREIGN又は直鎖状RNAを、FASTAP(商標)により、以下の方式においてホスファターゼ処理した:FASTAP(商標)を、1U:circFOREIGN 1μgの比において添加し、37℃において、2時間にわたりインキュベートし、次いで、RNEASY(登録商標)カラムにより精製した。RNAの品質は、Tapestation解析(Agilent、5067-5576)により評価した。
【0093】
Gel Loading Buffer II(Thermo Fisher Scientific、AM8547)により、72℃における3分間に続く、氷上における2分間にわたり、RNAを変性させることにより、circFOREIGNをゲル精製し、次いで、1%の低融点アガロースへとロードした。青色光トランスイルミネーター(Clare Chemical)上においてゲル抽出を行うのに続き、室温において、10分間にわたり回転させながら行った融解を除き、製造元の指示書に従い、ZYMOCLEAN(商標)Gel Recoveryキット(ZymoResearch、R1011)による精製を行った。
【0094】
粒子サイズを5μmとし、小孔サイズを2000Åとする、4.6×300mmサイズ除外カラム(Sepax Technologies、215980P-4630)により、HPLC分画を実施した。ヌクレアーゼ非含有TE緩衝液を、流量を0.3ml/分とする移動相として使用した。手作業により、RNA画分を回収し、凍結乾燥させ、次いで、後続の品質管理及び実験使用の前に、RNA Clean & Concentrator-5(Zymo Research、R1013)により清浄化した。
【0095】
A-irCLIP
Poly(A)Purist MAGキット(Thermo Fisher Scientific、AM1922)を使用して、mRNA(polyA)を除去し、RIBOMINUS(商標)Eukaryote System v2キット(Thermo Fisher Scientific、A15026)を使用して、リボソームRNA(ribo)を除去することにより、10μgの全RNAを、circRNAについてエンリッチした。次いで、RNA Fragmentation Buffer(RNA)を、75℃において、12分間にわたり使用して、結果として得られるpolyA/riboRNAを、35~100ntのサイズへと断片化させた。断片化されたRNAを変性させ、次いで、IPP緩衝液(50mMのトリス-HCl、pH7.4;100mMのNaCl;0.05%のNP-40;5mMのEDTA)中、4℃において、2時間にわたり、抗mA抗体(SynapticSystems、202003)と共にインキュベートした。次いで、UV光(254nm)を使用し、2ラウンドにわたる、0.15Jにおける架橋を使用して、RNAと抗体とを架橋した(Stratalinker 2400)。次いで、架橋されたRNA及び抗体を、4℃において、2時間にわたり、Protein A Dynabeads(Thermo Fisher Scientific、10002D)と共にインキュベートした。次いで、ビーズを、回転させながら、4℃において、10分間にわたり、IPP緩衝液により、1回、回転させながら、4℃において、10分間にわたり、低塩濃度緩衝液(50mMのトリス、pH7.4;50mMのNaCl;1mMのEDTA;0.1%のNP-40)により、1回、回転させながら、4℃において、10分間にわたり、高塩濃度緩衝液(50mMのトリス-HCl pH7.4、1MのNaCl、1%のNP-40、0.1%のSDS)により、1回洗浄し、未使用の1.5mLチューブへと移し、PNK緩衝液(20mMのトリス-HCl、pH7.4;10mMのMgCl2;0.2%のTween 20)により、2回にわたり洗浄した。次いで、irCLIP法(Zarnegarら、2016)を使用して、ライブラリーを調製した。Bioanalyzerにより、ライブラリーを、品質について点検し、irCLIP法において記載されている通りに、カスタムのシーケンシングプライマーであるP6_seqによる、NextSeq 500上のシーケンシングにかけた。リードを、hg38配列に対してマッピングし、その後、カスタムアセンブリーのcircGFP配列に対してマッピングし、UMIツール(Smithら、2017)を使用して、PCR重複を除去した。FAST-iCLIPパイプライン(Flynnら、2015)を使用して、再現可能なRT stopsを同定した。
【0096】
A-RIP-seq
Poly(A)Purist MAGキット(Thermo Fisher Scientific、AM1922)を使用して、mRNA(polyA)を除去し、RIBOMINUS(商標)Eukaryote System v2キット(Thermo Fisher Scientific、A15026)を使用して、リボソームRNA(ribo)を除去することにより、10μgの全RNAを、circRNAについてエンリッチした。次いで、残りのRNAを、RNアーゼRにより処理して、残留直鎖状RNAを除去した。次いで、polyA/riboRNアーゼRRNAを、75℃において、12分間にわたり、RNA Fragmentation Buffer(Thermo Fisher Scientific、AM8740)により断片化した。3μgの抗mA(Synaptic Systems、202003)を、室温において、2時間にわたり、Protein A Dynabeadsに結合させた。次いで、抗体を結合させたビーズを、IPP緩衝液(50mMのトリス-HCl、pH 7.4;100mMのNaCl;0.05%のNP-40;5mMのEDTA)により洗浄し、1μLのRIBOLOCK(商標)(Thermo Fisher Scientific、EO0382)を伴うIPP中に再懸濁させた。IPP緩衝液中において断片化されたRNAを、回転させながら、4℃において、2時間にわたり、抗体及びビーズと共にインキュベートした。次いで、RNAを結合させたビーズを、回転させながら、4℃において、10分間にわたり、IPP緩衝液により、1回、回転させながら、4℃において、5分間にわたり、低塩濃度緩衝液(50mMのトリス、pH7.4;50mMのNaCl;1mMのEDTA;0.1%のNP-40)により、1回、回転させながら、4℃において、5分間にわたり、高塩濃度緩衝液(50mMのトリス-HCl pH7.4、1MのNaCl、1%のNP-40、0.1%のSDS)により、1回洗浄した。次いで、ビーズを、300μLの高塩濃度緩衝液中に再懸濁させ、未使用の1.5mLチューブへと移した。ビーズを、PNK緩衝液(20mMのトリス-HCl、pH7.4;10mMのMgCl2;0.2%のTween 20)により洗浄し、次いで、500μLのTrizol中に再懸濁させ、25℃において、5分間にわたりインキュベートした。150μLのクロロホルム:イソアミルアルコールを添加し、インキュベートの前に、25℃において、2分間にわたり混合した。4℃、13,000×gにおいて、10分間にわたりスピンした後、水性層を、未使用の1.5mLチューブへと移し、RNA Clean & Concentrator-5(Zymo Research、R1013)により清浄化した。RNAを、10μLのヌクレアーゼ非含有水中に溶出させた。溶出したRNA及び10%のインプットRNAへと、10μLの末端修復ミックス(5倍濃度のPNK緩衝液4μL;1μLのRIBOLOCK(商標)、1μLのFASTAP(商標);2μLのT4 PNK、2μLのヌクレアーゼ非含有水)を添加した。反応を、37℃において、1時間にわたりインキュベートした。20μLのリンカーライゲーションミックス(10倍濃度のRNAライゲーション緩衝液2μL;2μLの100mMのDTT;2μLのL3リンカー(Zarnegarら、2016);2μLのT4 RNAリガーゼ緩衝液;50%w/vのPEG8000 12μL)を添加した。反応物を、25℃において、3時間にわたりインキュベートし、次いで、RNA Clean & Concentrator-5カラムにより清浄化した。加工されたRNAを、10μLのヌクレアーゼ非含有水中に溶出させた。irCLIP法(Zarnegarら、2016)を使用して、ライブラリーを調製し、カスタムのシーケンシングプライマー(P6_seq(Zarnegarら、2016))を使用して、NextSeq 500上においてシーケンシングした。リードは、hg38配列及びcircGFP配列に対してアライメントした。Bamファイルは、ゲノムへとマッピングされたリードに対して正規化した。
【0097】
逆転写及びリアルタイムPCR解析(RT-qPCR)
製造元の指示書に従い、TRIZOL(登録商標)(Invitrogen、15596018)及びコラム上のDNアーゼIによる消化を伴う、DIRECT-ZOL(登録商標)RNA Miniprep(Zymo Research、R2052)を使用して、全RNAを、細胞から単離した。RT-qPCR解析は、Brilliant II SYBR Green qRT-PCR Master Mix(Agilent、600825)及びLightCycler 480(Roche)を使用して、三連において実施した。使用されたプライマーを、表1に示す。mRNAレベルは、アクチン値又はGAPDH値に対して正規化した。circRNAのトランスフェクションについての、表示のmRNA遺伝子の相対発現は、トランスフェクトされたRNAのレベルにより正規化し、モックトランスフェクション又は直鎖状RNAのトランスフェクションがなされた細胞の発現レベルに対する倍数変化としてプロットした。
【0098】
【表1】
【0099】
細胞系及び維持
ヒトHeLa(子宮頸部腺癌、ATCC CCL-2)細胞及びHEK293T(胎児性腎臓、ATCC CRL-3216)細胞を、1ml当たり100単位のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco、15140-163)及び10%(v/v)のウシ胎仔血清(Invitrogen、12676-011)を補充されたダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM、Invitrogen、11995-073)中において増殖させた。細胞の増殖は、5%のCO雰囲気中、37℃において維持した。
【0100】
細胞の培養及び一過性トランスフェクション
細胞は、トランスフェクションの24時間前に播種した。細胞を、70~80%のコンフルエンシーとし、Lipofectamine 3000(Thermo Fisher Scientific、L3000008)を使用して、これらに、RNAをトランスフェクトした。Lipofectamine 3000(Thermo Fisher Scientific、L3000008)を使用して、24ウェルプレートの1つのウェルに、500ngの直鎖状RNA又はcircFOREIGNをトランスフェクトした。製造元の指示書に従い、P3000及びLipofectamine 3000を伴う核酸を希釈し、室温、Opti-MEM(Invitrogen、31985-088)中において、5分間にわたりインキュベートした。次いで、核酸とLipofectamine 3000とを、併せて混合し、室温において、15分間にわたりインキュベートし、次いで、核酸-Lipofectamine 3000複合体を、単層培養物へと滴下した。異所性タンパク質を発現させる場合、製造元の指示書に従い、細胞を、NEON(商標)Transfection System(Thermo Fisher Scientific MPK5000S)により電気穿孔した。大半の場合、細胞を、緩衝液R中に、1mL当たりの細胞2×10個において再懸濁させ、100μLのNEON(商標)チップにより、これらに、5μgのDNAプラスミドを電気穿孔した。12時間後、細胞を継代培養し、24時間後、それらが、70~80%コンフルエントとなるように播種した。24時間後、次いで、上記において記載された通りに、Lipofectamineにより、細胞に、RNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、PBSにより、1回洗浄し、24ウェルごとに、300μLずつのTRIZOL(登録商標)試薬を添加した。DIRECT-ZOL(登録商標)RNA Miniprepにより、RNAを採取した。
【0101】
ウェスタンブロット解析
HeLa細胞を回収し、トランスフェクションの24時間後に溶解させて、全タンパク質を抽出した。RIPA 緩衝液(150mMのNaCl、1%のTriton X-100、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のSDS、50mMのトリス、pH8.0)を使用して、細胞を溶解させた。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により、タンパク質を分画し、ニトロセルロース膜へと転写し、5%(wt/vol)の無脂肪乳を含有するリン酸緩衝生理食塩液中、室温において、1時間にわたりブロッキングし、次いで、4℃において、一晩にわたり、表2に表示の一次抗体と共にインキュベートした。製造元の指示書に従い、IRDye 800CWヤギ抗ウサギIgG(Li-Cor、926-32211)二次抗体又はIRDye 680CWロバ抗ヤギIgG(Li-Cor、926-68074)二次抗体を使用した。Odyssey遠赤外イメージング系(Li-Cor)を使用して、ウェスタンブロットによる検出及び定量を行った。
【0102】
【表2】
【0103】
YTHDF2によるレスキュー及びYTHDF1/2の、CircBoxBへのテザリング
上記において記載された通り、NEON(商標)トランスフェクションシステムを介して、細胞に、ラムダペプチド(λN)(すなわち、BoxB結合性タンパク質)を伴う、及びこれを伴わないYTHDF1N又はYTHDF2Nを発現させるプラスミドを電気穿孔した。12時間後、細胞を継代培養し、24時間後、それらが、70~80%コンフルエントとなるように播種した。この24時間後に、Lipofectamine 3000により、500ngのcircBoxB(5BoxB部位を伴うcircRNA)をトランスフェクトした。RNAを採取し、上記において記載された通りに、Brilliant II SYBR Green qRT-PCR Master Mix及びLightCycler 480によりにより、qRT-PCRを実施した。タンパク質溶解物回収のために、追加の二連を確保し、ウェスタンブロットにより、これらの条件下における異所性タンパク質発現を、同時に確認した。
【0104】
RNA免疫沈降-qPCR
NEON(商標)トランスフェクションシステムにより、細胞に、λNを伴う、及びこれを伴わない、Flagタグ付けYTHDF1N又はYTHDF2Nを発現させるプラスミドを電気穿孔し、次いで、その後、上記において記載された時間経過において、6ウェルフォーマットへと継代培養した。0.25%のトリプシン-EDTA(Thermo Fisher Scientific、25200056)により、細胞約300万個を採取し、次いで、PBSにより洗浄した。次いで、以下の設定値:Fill Level:10、Duty Cycle:5%、Peak Incident Power:140 W、Cycles/Burst:200、time per tube:300秒間を伴うCovaris Ultrasonicatorにより、細胞を、細胞溶解緩衝液(プロテイナーゼ阻害剤を伴う、50mMのトリスpH8.0、100mMのNaCl、5mMのEDTA、0.5%のNP-40)中に溶解させた。16,000rcfにおいて、15分間にわたり、細胞溶解物をペレット化させた。上清を回収し、100μLの抗FLAG(登録商標)M2磁気ビーズ(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)と共に、室温において、回転させながら、2時間にわたりインキュベートして、YTHDF1N又はYTHDF2Nをプルダウンした。ビーズを、細胞溶解緩衝液により、3回にわたり洗浄し、1回は、PBSにより洗浄した。ビーズを、500μLのTRIZOL(登録商標)中に再懸濁させ、RNEASY(登録商標)Miniキット(Qiagen、74106)を使用して、全RNAを抽出した。qRT-PCRを、上記において記載された通りに、Brilliant II SYBR Green qRT-PCR Master Mix及びLightCycler 480により実施した。RNAレベルは、各生物学的反復内のインプットに対するパーセントとして正規化した。結果は、circRNAのエンリッチメントの、アクチンを上回る倍数変化として提示した。
【0105】
FACS解析
細胞を、抗生剤を伴わないFBSを伴うDMEM中、ウェル1つ当たりの細胞60,000個において、24ウェルフォーマットへと播種した。24時間後に、製造元の推奨に従い、細胞に、siRNAをトランスフェクトした。DHARMAFECT(登録商標)SMARTpool ON-TARGETplus METTL3 siRNA(Dharmacon、L-005170-02-0005)を、ノックダウンsiRNAとして使用し、ON-TARGETplus Non-Targeting control siRNA(Dharmacon、D-001810-01-05)を、非ターゲティングsiRNAとして使用した。トランスフェクションの12及び36時間後に、培地を交換した。トランスフェクションの48時間後に、0.25%のトリプシン-EDTAを介して、細胞を回収し、Annexin binding buffer中のAnnexin V-647(Thermo Fisher Scientific、A23204)により、15分間にわたり染色した。次いで、細胞をスピンダウンし、5分間にわたり、Annexin binding buffer(BD Biosciences、556454)中のDAPIへと再懸濁させた。細胞を、染料を伴わないAnnexin binding buffer中に再懸濁させ、セルストレーナーキャップ(Corning、352235)付き丸底チューブに通した。特注のFACS Aria II(BD Biosciences)上において、フロー解析を行った。上記と同じトランスフェクションにかけた細胞を回収し、タンパク質溶解物を回収した。抗METTL3抗体を使用するウェスタンブロットを介して、METTL3のノックダウンを確認した。
【0106】
マウスの免疫化
25μgの高分子量ワクチングレードPolyI:C(Invivogen、vac-pic)、単独における、又はインビボjetPEI(Polyplus Transfection、201-10G)を伴う、25μgの環状RNA、単独における、又はインビボjetPEIを伴う、25μgの修飾RNAによりアジュバント処理された、マウス1匹当たり100μgのOVA(Invivogen、vac-pova)により、Jackson Laboratoriesから購入された、8~12週齢の雌C57BL/6マウスを、尾の基部において皮下免疫化した。製造元の指示書に従い、PEI/RNA複合体を製剤化した。図に表示の通り、ワクチン接種の後において、CD8+ T細胞応答及び抗体応答を解析するために、定期的間隔において、側方尾静脈又は顔面静脈を介して、マウスから採血した。適応の場合、一次ワクチン接種の5週間後に、追加ワクチン接種を施した。腫瘍確立及び増殖研究のために、単回のRNAワクチン接種の14日後に、マトリゲルを伴う、OVA発現B16黒色腫細胞50万個を、マウスの左右の脇腹に送達した。腫瘍を、毎週2回測定し、生物発光を、毎週1回測定した。生物発光は、20gのマウス1匹当たり3mgのD-ルシフェリンを、腹腔内注射することにより測定し、Ami HT Imager(Spectral Instruments)を使用し、曝露から20秒間~1分間の範囲においてイメージングした。全ての動物手順は、スタンフォード大学施設内の動物愛護/使用委員会によるガイドラインにより確立されたガイドラインに従い実施した。
【0107】
CD8+ T細胞アッセイ
一次免疫化及び二次免疫化の7日後に、一次CD8+ T細胞応答及び記憶CD8+ T細胞応答を査定した。略述すると、スクロース密度勾配分離(Histopaque、1083;Sigma Aldrich 10831)を使用して、末梢血単核細胞(PBMC)をエンリッチし、BD Golgi Plug(商標)の存在下における、5時間にわたるエクスビボでの再刺激のために、1μg/mLのOVA特異的MHCクラスI拘束ペプチド(SIINFEKL)(Invivogen、vac-sin)と共に培養した。刺激された細胞を、まず、表面マーカーである、抗マウスCD8α(Biolegend、クローン53-6.7)、抗マウスCD3(Biolegend、クローン17A2)、抗マウスCD4(Biolegend、クローンRM4-5)について染色するのに続き、BD cytofix/cytoperm中の固定及びBD cytoperm緩衝液中の抗マウスIFN-γ(BD Bioscience、クローンXMG1.2)による細胞内染色にかけた。live/dead aqua stain(Invitrogen)を使用して、死細胞を除外した。FACS LSR-II cytometer上において、標識化細胞を収集し、Flow JOソフトウェア(TreeStar)を使用して、データを解析した。
【0108】
抗体ELISA
96ウェルプレート(NuncMaxiSorp、442404-21)を、4℃において、一晩にわたり、20μg/mLのOVAタンパク質(Invivogen)100μlによりコーティングした。Bio-Rad自動式プレート洗浄機を使用して、プレートを、PBS/0.5% Tween-20により、3回にわたり洗浄し、4%のBSA(Sigma Aldrich)200μlにより、室温において、2時間にわたりブロッキングした。表示の時点における免疫化マウスに由来する血清試料を、PBS/0.5% Tween-20中に0.1%のBSA中において系列希釈し、ブロッキングされたプレート上、室温において、2時間にわたりインキュベートした。ウェルを洗浄し、PBS/0.5% Tween-20中の抗マウスIgG-HRP(1:5000)、抗マウスIgG1-HRPコンジュゲート(1:5000)及び抗マウスIgG2c-HRPコンジュゲート(1:2000)と共に、室温において、2時間にわたりインキュベートした。検出用抗体は、Southern Biotechから得た。プレートを洗浄し、ウェル1つ当たり100μlのテトラメチルベンジジン(TMB)基質(Thermo Fisher Scientific、34028)を使用して発色させるのに続き、停止溶液(Thermo Fisher Scientific、N600)を使用して、反応を停止させた。Bio-Radプレート読取り用分光光度計を、595nmにおける補正を伴う450nmにおいて使用して、プレートを解析した。抗体力価を、血清希釈率の逆数として表すことから、450nmにおける光学濃度(OD)値と>0.3をもたらした。
【0109】
RIG-I ATPアーゼアッセイ
0.1μMのRIG-Iを、緩衝液B(20mMのHEPES pH7.5、150mMのNaCl、1.5mMのMgCl2)中において、指定の環状RNA又は5’ppp dsRNA 512bp(0.4ng/μl)と共にプレインキュベートした。37℃において、2mMのATPを添加することにより、反応を誘発した。ATP添加の2、4又は8分間後に、アリコート(10μl)を採取し、100mMのEDTAにより、速やかにクエンチングした。GREEN(商標)試薬(Enzo Life Sciences)を使用して、ATP加水分解活性を測定した。GREEN(商標)試薬(90μl)を、クエンチングされた反応物へと、9:1の比において添加し、SYNERGY(商標)2プレートリーダー(BioTek)を使用して、OD650を測定した。
【0110】
RIG-I Nativeゲルシフトアッセイ
RNA(1ng/mL)を、緩衝液A(20mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、1.5mMのMgCl2、2mMのATP及び5mMのDTT)中のRIG-I(500nM)と共に、室温において、15分間にわたりインキュベートした。次いで、ポリユビキチンを、表示の濃度において添加し、室温において、5分間にわたりにおいてインキュベートした。複合体を、Bis-Tris Native PAGEゲル(Life Technologies)上において解析し、SYBR(登録商標)Gold染料(Life Technologies)により染色した。FLA9000スキャナー(富士フイルム株式会社)を使用して、SYBR(登録商標)Goldによる蛍光を記録し、Multigauge(GE Healthcare)により解析した。
【0111】
RIG-I重合アッセイ
0.4μMのRIG-Iを、緩衝液A(20mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、1.5mMのMgCl2、2mMのATP及び5mMのDTT)中の指定の環状RNA(1ng/μl)と共に、室温において、15分間にわたりインキュベートした。調製された試料を、カーボンコーティンググリッド(Ted Pella)へと吸着させ、0.75%のギ酸ウラニルにより染色した。TECNAI(商標)G2 Spirit BioTWIN透過電子顕微鏡を、30,000倍又は49,000倍の拡大率において使用して、画像を回収した。
【0112】
タンパク質の調製
ヒトRIG-Iは、既に報告されている(Peisley ら、2013)通りに発現させた。略述すると、0.5mMのIPTGによる誘導の後、BL21(DE3)中、20℃において、16~20時間にわたりタンパク質を発現させた。Emulsiflex C3(Avestin)を使用して、細胞をホモジナイズし、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィー、ヘパリンアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ除外クロマトグラフィー(SEC)を含む3ステッププロトコールを、20mMのHEPES、pH7.5、150mMのNaCl及び2mMのDTT中において使用して、タンパク質を精製した。
【0113】
K63-Ubnは、既に報告されている(Dongら、2011)通りに合成した。略述すると、マウスE1、ヒトUbc13、Uev1a及びユビキチンを、BL21(DE3)細胞から精製し、緩衝液(10mMのATP、50mMのトリス pH7.5、10mMのMgCl2、0.6mMのDTT)中に0.4mMのユビキチン、4μMのmE1、20μMのUbc13及び20μMのUev1aを含有する反応物中において混合した。反応物を、37℃において、一晩にわたりインキュベートした後に、合成されたK63-Ubn鎖を、50mMの酢酸アンモニウムpH4.5、0.1MのNaClへと、5倍に希釈し、Hi-Trap SP FFカラム(GE Healthcare)を使用して、50mMの酢酸アンモニウムpH4.5中に、0.1~0.6MのNaCl 45mLの勾配にわたり分離した。高分子量画分を、20mMのHEPES pH7.5、0.15MのNaCl中において平衡化されたS200 10/300カラムへと適用した。
【0114】
MAVS CARDは、0.4mMのIPTGによる誘導の後、20℃において、16~20時間にわたり、BL21(DE3)細胞内のSNAPタグ(CARD-S)との融合構築物として発現させた。SNAPタグは、MAVS CARDの蛍光標識化を可能とする。CHAPSではなく、0.05%のNP-40を使用することを除き、記載されている(Wuら、2016)Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、MAVS CARD-S融合体を精製した。精製CARD-Sを、一定の振盪を伴い、6Mの塩化グアニジウム中、37℃において、30分間にわたり変性させるのに続き、4℃において、1時間にわたり、リフォールディング緩衝液(20mMのトリス、pH7.5、500mMのNaCl、0.5mMのEDTA及び20mMのBME)に対する透析にかけた。リフォールディングされたCARD-Sを、0.1μのフィルターに通し、その後、製造元の指示書に従い、Alexa647-ベンジルグアニン(NEB)により、氷上において、15分間にわたり蛍光標識化した。標識化MAVS CARD-Sは、重合アッセイ(下記において記載される)に、速やかに使用した。
【0115】
MAVS重合アッセイ
MAVSフィラメント形成アッセイは、既に報告されている(Wuら、2013)通りに実施した。SNAP(CARD-S)へと融合させたMAVS CARDを、BG-Alexa 647(New England Biolabs)により、氷上において、15分間にわたり標識化した。RIG-I(1μM)を、6μMのK63-Ubn(20mMのHEPES pH7.5、150mMのNaCl、1.5mMのMgCl2、2mMのDTT中に)の存在下、又は非存在において、多様な濃度のRNA及び2mMのATPと共に、室温において、15分間にわたりプレインキュベートした。その後、標識化された単量体MAVS CARD-S(10μM)を、混合物へと添加し、室温において、1時間にわたり、さらにインキュベートした。MAVSフィラメント形成は、Native PAGE解析又はネガティブ染料であるEMにより検出した。Bis-Trisゲル(Life Technologies Corp.)上において泳動させる前に、ドライアイス上において、5分間にわたりインキュベートするのに続、室温において、5分間にわたりにおけるインキュベーションにより、全ての試料を、1ラウンドの凍結-融解サイクルにかけた。FLA9000スキャナー(富士フイルム株式会社)を使用して、蛍光ゲル画像を走査した。既に記載されている(Ohiら、2004)通り、MAVS重合アッセイからの試料を、カーボンコーティンググリッド(Ted Pella)へと吸着させ、0.75%のギ酸ウラニルにより染色した。TECNAI(商標)G2 Spirit BioTWIN透過電子顕微鏡を、9,300倍の拡大率において使用して、画像を回収した。
【0116】
免疫蛍光及び定量
インビトロ転写反応ミックス中に5%のフルオレセイン12 UTP(Thermo Fisher Scientific、11427857910)により、100%のUTPを代替することを除き、FITC標識化RNAは、上記において記載された通りに合成した。FITC標識化10%mA RNAは、インビトロ転写反応ミックス中に10%のmAによる、100%のATPの、さらなる代替により合成した。RNアーゼR処理及びFASTAP(商標)処理は、記載されている通りに行った。RNAの品質は、Tapestationにより評価した。
【0117】
HeLa細胞を、6ウェルフォーマット、厚さ#1.5の、22×22mmカバースリップ上に播種した。12時間後、FITC標識化circRNAによる一過性トランスフェクションを、Lipofectamine 3000(Thermo Fisher Scientific、L3000015)により実施した。12時間後、細胞を、PBS(Thermo Fisher Scientific、28908)中に1%のホルムアルデヒドにより、室温において、10分間にわたり固定した。ホルムアルデヒド固定スライドを、PBS中においてすすぎ、PBS中に0.5%のTriton X-100中、室温において、10分間にわたり透過化した。透過化の後、溶液をすすぎ、スライドを、抗体希釈剤(Thermo Fisher Scientific、003118)により、室温において、1時間にわたりブロッキングした。抗RIG-Iウサギポリクローナル一次抗体(Cell Signaling Technology、3743S)及び抗Ub-K63マウスモノクローナル抗体(eBioscience、14-6077-82)を、抗体希釈剤中、1:200において希釈し、4℃において、一晩にわたりインキュベートした。PBSによる洗浄の後、スライドを、抗体希釈剤中、1:1000において希釈された、ヤギ抗ウサギIgG高度交差吸着処理Alexa594(Thermo Fisher Scientific、A-11037)及びヤギ抗マウスIgG高度交差吸着処理Alexa647(Thermo Fisher Scientific、A-21236)と共に、室温において、2時間にわたりインキュベートした。スライドを、PBSにより洗浄し、VECTASHIELD(登録商標)を、DAPI(Vector Labs、H-1200)と共に使用してマウントし、Zeiss LSM 880共焦点顕微鏡(Stanford Microscopy Facility)によりイメージングした。フォーサイが、FITC-circRNA及び/又は互いと直接重なる場合に、共RIG-IとK63-polyUbとの局在をカウントした。
【0118】
抗RIG-Iウサギポリクローナル一次抗体(Cell Signaling Technology、3743S)及び抗YTHDF2マウスポリクローナル抗体(USBiological、135486)を、各々、抗体希釈剤中、1:200において希釈した。二次染色、マウンティング及びイメージングを含む、残りの免疫蛍光ステップは、上記において詳述された通りに実施した。フォーサイが、FITC-circRNA及び/又は互いと直接重なる場合に、共RIG-IとYTHDF2との局在をカウントした。
【0119】
IRF3二量体化アッセイ
二量体化アッセイは、既に記載されている(Ahmadら、Cell、172:797~810、e713(2018))通りに実施した。略述すると、HEK293T細胞を、低張性緩衝液(10mMのトリス pH7.5、10mMのKCl、0.5mMのEGTA、1.5mMのMgCl2、1mMのオルトバナジン酸ナトリウム、1倍濃度の哺乳動物Protease Arrest(GBiosciences))中においてホモジナイズし、1000gにおいて、5分間にわたりにおいて遠心分離して、核をペレット化させた。細胞質ゾル画分及びミトコンドリア画分を含有する上清(S1)を、インビトロIRF3二量体化アッセイのために使用した。10ng/μlのRIG-I及び2.5ng/μlのK63-Ubnを、表示量のRNAと共に含有する刺激ミックスを、20mMのHEPES pH 7.4、4mMのMgCl2及び2mMのATP中、4℃において、30分間にわたりプレインキュベートした。製造元の指示書に従い、T7 TNT(登録商標)Coupled Reticulocyte Lysate System(Promega)を使用するインビトロ翻訳により、35S-IRF3を調製した。プレインキュベートされた刺激ミックス1.5μlを、10μg/μlのS1、0.5μlの35S-IRF3(20mMのHEPES pH 7.4、4mMのMgCl2及び2mMのATP中に)を含有する反応物15μlへと添加することにより、IRF3活性化反応を誘発し、30℃において、1時間にわたりインキュベートした。その後、試料を、18,000gにおいて、5分間にわたり遠心分離し、上清を、Native PAGE解析にかけた。IRF3の二量体化は、オートラジオグラフィー及びリン光イメージング(富士フイルム株式会社、FLA9000)により可視化した。
【0120】
樹状細胞の活性化
マウスを、尾の基部において、PBS(対照)又は環状RNA(マウス1匹当たり25μg)により、皮下免疫化した。免疫化の24時間後、マウスを安楽死させ、皮膚流入領域鼠径リンパ節を切り出した。皮膚流入領域鼠径リンパ節を、3mLシリンジプランジャーのサムレストにより、静かに押しつぶし、1mg/mLの4型コラゲナーゼにより、37℃において、20~25分間にわたり消化した。
【0121】
反応は、2mMのEDTAにより停止させ、単一細胞懸濁液は、40μmのセルストレーナーに通すことにより調製した。
【0122】
統計学的解析
全ての統計学的解析を、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software、LaJolla、CA)により実施した。適切な場合、スチューデントのt検定、クルスカル-ワリス検定又はAnova-チューキー検定を使用した。0.05未満のp値を、統計学的に有意であると考えた。
【0123】
[実施例1]
本実施例は、免疫原性circRNAの、インビトロにおける作製及び特徴付けを裏付ける。
【0124】
本明細書の以下において、「circFOREIGN」と称される、T4バクテリオファージに由来する、順序が入れ替えられたtdイントロンを含有する、環状化緑色蛍光タンパク質(GFP)mRNAは、培養哺乳動物細胞内において、高度に免疫原性(Chenら、前出)である。TDイントロンは、インビトロ転写時に自己触媒性スプライシングをプログラムして、circFOREIGNを形成する。circFOREIGNの、エクソヌクレアーゼである、RNアーゼRによる、長時間(>2時間)にわたる処理は、直鎖状RNA副産物を分解し、circRNAのエンリッチをもたらす(Chenら、前出)。後続のアルカリホスファターゼ処理は、遊離末端から、5’リン酸を除去する。外来circRNAの、哺乳動物細胞への送達は、免疫遺伝子の発現を強力に刺激し、後続のウイルス感染に対して防御した(Chenら、前出)。近年の報告は、外因性circRNAは、免疫刺激性ではなく、不完全なRNアーゼR消化に起因する、5’三リン酸化直鎖状RNA夾雑物が、免疫応答を誘発することを示唆する(Wesselhoeftら、Mol Cell.、74(3):508~520(2019))。Wesselhoeftらは、短い(30分間)RNアーゼR処理を使用し、次いで、HPLCを実施して、circRNAから、直鎖状RNAを除去した。あらかじめ、インビトロにおいて合成され、RNアーゼRにより、2時間にわたり処理されたcircFOREIGNによる免疫刺激が、夾雑直鎖状RNA上の三リン酸を除去する、第2ラウンドのホスファターゼにより処理されたcircFOREIGNと同等であるのに対し、ホスファターゼ処理を伴う直鎖状RNAは、免疫活性化を、大幅に低減することが示された(Chenら、前出)。したがって、circFOREIGNによる刺激は、試料中の異常な5’三リン酸の存在に依存しない。しかし、5’三リン酸が、免疫遺伝子の発現を刺激していないことを確認するために、本明細書において記載される、全てのcircFOREIGN分子を、ホスファターゼの存在下で合成した。
【0125】
RNアーゼRにより処理されたcircFOREIGNのゲル精製が、circFOREIGNによる免疫刺激を変更するのか否かを調べた。夾雑直鎖状RNA構成要素が、circFOREIGNの免疫原性に寄与している場合、ゲル抽出は、異なる分子量を有するこれらの夾雑物を消失させると仮定した。ゲル内のニックcircRNA生成物は、直鎖状となるので、免疫刺激性ではない。この目的で、RNアーゼR及びアルカリホスファターゼにより処理されたゲル精製circFOREIGNを、ゲル精製を経た、同じcircFOREIGN調製物と比較した。HeLa細胞に、各RNA調製物をトランスフェクトするのに続き、24時間後に、自然免疫遺伝子についてのqRT-PCR解析を行った。ゲル精製circFOREIGNは、RNアーゼRのみによるcircRNAと比較して、ほぼ同じ効力(約80~90%の活性)により、自然免疫遺伝子を刺激した(図1A及び1B)。
【0126】
RNアーゼRにより処理された合成circRNAはまた、HPLCによる分画にもかけた。サイズ除外クロマトグラフィーは、RNアーゼR処理circRNAを、2つの画分へと分解した(図1C)。各画分の濃縮及びTapeStation解析は、HPLCによるピーク1が、RNアーゼR処理circFOREIGNに対するゲル電気泳動からの結果を正確に再現する(図1C)のに対し、ピーク2は、分解RNAであることを反映した。結果として得られるHPLC精製によるクロマトグラム及び画分は、測定装置の差違のために、既に報告されている(Wesselhoeftら、前出)分離と異なった。HeLa細胞への、各画分のトランスフェクションに続くqRT-PCRは、circRNAを伴う画分が、免疫応答を保持するが、活性が低度であることを明らかにした(図1D)。ピーク2は、小型の分解RNA及び未消化のイントロンを含んだが、この画分は、免疫原性ではなかった。この結果は、試料調製の全体にわたるホスファターゼ処理が、免疫原性の直鎖状RNAを不活化させたという解釈と符合する。したがって、ゲル精製circFOREIGNにおける刺激のわずかな低下(図1B)は、これらのRNA分子種の喪失に起因しなかった。circFOREIGNの完全性は、ゲル精製において、HPLC精製より良好に保存され、前者における小型のRNA断片への分解は低度であり、これは、circFOREIGNの免疫原性の良好な保存と相関した。
【0127】
不完全なRNアーゼR消化から生じる、小型の直鎖状RNAは、上記において記載された調製物中のcircRNAによる免疫原性の一因とならなかった。上記において記載された、酵素による精製過程は、circFOREIGNの完全性を最良な形で保存すると考えられた。
【0128】
[実施例2]
本実施例は、circFOREIGNが、インビボにおいて、ワクチンアジュバントとして作用することを裏付ける。
【0129】
circFOREIGNは、インビトロにおいて、免疫遺伝子の発現を強力に刺激することが既に示されている(Chenら、前出)が、インビボにおけるその挙動は知られていない。circFOREIGNは、自然免疫を活性化させる潜在的可能性を有するので、ワクチンの効果を増大させる、ワクチンアジュバントとして作用すると仮定した。circFOREIGNを、インビトロにおいて転写し、精製し、ニワトリオボアルブミン(OVA)と組み合わせて、皮下注射により、C57BL/6Jマウスへと送達した。PolyI:Cを、RNAアジュバントに対する陽性対照として用いられた。circFOREIGNを、ネイキッドRNAとして、又はトランスフェクション剤であるポリエチレンイミン(PEI)中のパッケージングの後で送達した。T細胞を回収し、細胞内サイトカイン染色(ICS)を、一次ワクチン接種又は二次ワクチン接種の7日後に実施した。血清もまた回収し、抗体応答を、ワクチン接種の5週間後に測定した(図2A)。測定された抗体を、表3に示す。
【0130】
【表3】
【0131】
OVA特異的であり、インターフェロンガンマ陽性(Ifnγ+)である活性化CD8 T細胞の誘導は、予測される通り、polyI:Cなどのアジュバントを要求した(図2B及び図3A~3C)。とりわけ、ネイキッドcircRNA(モックと比較したp=0.0088、Anova-チューキー検定)又はPEIナノ粒子(モックと比較したp=0.0039、Anova-チューキー検定、図2B)による、circFOREIGNの共注射は、polyI:Cにより誘導されるレベルと同等の、強力な抗OVA T細胞を誘導した。OVA特異的抗体の測定は、単独におけるcircFOREIGNが、抗体の産生を、陽性対照であるpolyI:Cと同等なレベルまで刺激することを明らかにした(図2C及び3B)。circFOREIGNは、OVA特異的CD8+ T細胞及びOVA特異的抗体の刺激のために、トランスフェクション試薬を要求しなかった。実際、CD8+ T細胞応答は、PEIを伴わない注射において、より高度であり、後続の実験において、PEIを省略した。
【0132】
circFOREIGN又は対照によるマウスの免疫化の後、樹状細胞(DC)を、流入領域リンパ節から単離した。circFOREIGNアジュバントは、共刺激分子であるCD86の細胞表面発現の、対照を上回る増大により判定される通り、cDC1サブセット及びcDC2サブセットの両方を活性化させた(図3D及び3E)。
【0133】
これらの結果は、circRNAの接種が、DCを活性化させたことの、インビボにおける直接的な証拠を提示する。DCの活性化は、原理的に、CD4+濾胞性ヘルパー(fh)T細胞及びCD8+ T細胞による抗原の交差提示及びこれらの活性化を容易としうる。しかし、circRNAはまた、T細胞及び他の免疫細胞型にも直接影響を及ぼしうる。
【0134】
[実施例3]
本実施例は、circFOREIGNが、抗腫瘍免疫を誘導しうることを裏付ける。
【0135】
circFOREIGNの送達は、CD8+ T細胞応答を誘導するため、circFOREIGN及びOVAへと曝露されたマウスは、OVA発現腫瘍に対する獲得免疫を有すると仮定した。したがって、マウスに、circFOREIGN及びOVAをワクチン接種し、2週間後、OVA発現B16黒色腫細胞を、マウスの左右の脇腹へと植え込んだ(図2D)。OVA-B16黒色腫モデルは、主にCD8+エフェクターT細胞を介して免疫による制限を受けている(Budhuら、J Exp Med.、207(1):223~35(2010))。circFOREIGNを施されるマウスは、PBSを施される陰性対照マウスと比較して、低度の腫瘍増殖を呈した(図2E、2F及び3F)。各マウスにおける左右の腫瘍が互いと相関したことは、ワクチン接種により、全身規模の効果がもたらされたことを裏付ける。circFOREIGNを、1回のみワクチン接種されたマウスは、全生存の、陰性対照マウスと比較してほぼ2倍の延長を呈し(p=0.0173、ログランク検定、図2G)、陽性対照である高分子量polyI:Cを施されるマウスと同等であった(図3G)。
【0136】
本実施例の結果は、circRNAによる免疫が、潜在的治療目的へと生かされうることを指し示す。
【0137】
[実施例4]
本実施例は、内因性circRNAが、mA機構と会合することを裏付ける。
【0138】
哺乳動物細胞が、内因性circRNAを有することを踏まえると、それらの、circFOREIGNに対する免疫応答は、それらが、自己circRNAと非自己circRNAとを識別することを示唆する。上記において論じた通り、circRNAは、RNAエクソンの3’末端と5’末端とを、共有結合的に接続するバックスプライシングを介して作製される。イントロンの識別が、circRNAによる免疫を決定する(Chenら、前出)が、最終的なcircRNA産物の一部ではないため、イントロンは、1つ以上の共有結合的化学的マーキングの、circRNAへの付与を方向付けうると仮定した。
【0139】
circZKSCAN1は、その内因性イントロンにより作製されるヒトcircRNAであり、ヒト細胞内において発現される場合、免疫原性ではない。ZKSCAN1イントロンを使用して、「circSELF」と称する、circGFPの作製をプログラムした。HeLa細胞に、タンパク質支援型スプライシング(circSELF)又は自己触媒性スプライシング(circFOREIGN)により作出された、circRNAをコードするDNAプラスミドをトランスフェクトし、質量分析(ChIRP-MS)により、RNA結合性タンパク質の包括的同定を実施した(Chenら、前出)。共有結合的mA修飾(Roundtreeら、前出)のライター、リーダー及びイレーサーを、circRNAとの会合において解析した(図4A)。circZKSCAN1は、WTAP及びVIRMA(Virilizer相同体又はKIAA1429としてもまた公知である)など、mAライター複合体の構成要素並びにmAリーダータンパク質である、YTHDF2、HNRNPC及びHNRNPA2B1と会合するが、circFOREIGNは、これらと会合しないことが見出された(図4A)。いずれのcircRNAも、FTO及びALKBH5などの推定mA脱メチル化酵素(「イレーサー」)と会合しなかった。重要なことは、circSELFは、circFOREIGNと同じcircRNA配列を含むが、もはや免疫原性ではなく(Chenら、前出)、mAライタータンパク質及びmAリーダータンパク質と会合することである(図4A)。ヒトイントロンによりプログラムされる、2つの異なるcircRNA(circSELF及びcircZKSCAN1)は、WTAP、VIRMA及びYTHDF2を含む、mAライタータンパク質及びmAリーダータンパク質と、同等レベルの会合を達成する(図4B)。
【0140】
本実施例の結果は、mA修飾機構が、circRNA配列に依存せずに生じる、それらの生合成を媒介するイントロンの記憶として、エクソンであるcircRNAへと伝達されることを示唆する。
【0141】
[実施例5]
本実施例は、自己と外来circRNAとが、異なるmA修飾パターンを有し、mA修飾が、circRNAを、「自己」としてマーキングすることを裏付ける。
【0142】
ヒトcircRNA及び外来circRNAのmA修飾パターンを規定した。適切なcircRNAを発現するようにプログラムされたヒト細胞において、RNアーゼR処理を使用して、circRNAについてエンリッチし、次いで、mA-UV-C架橋及びmA免疫沈降(mA-irCLIP)を実施して(Zarnegarら、Nat.Meth.、13:489~492(2016))、mA修飾部位へと、高感度によりマッピングした(図4C)。circFOREIGNと対比した、circSELFについてのmA-irCLIPは、circSELFが、環状化接合部の3’側の、50~100ヌクレオチド(nt)の範囲内に、mA修飾を獲得したことを明らかにした(図4D)。転写物の残りの部分を通して、修飾の有意差は観察されなかった(図5A)。circSELFと、circFOREIGNとは、ヒト(自己)イントロン又はファージ(外来)イントロンにより環状化された、同じエクソン配列であるため、この結果は、ヒトイントロンが、mA修飾を、結果として得られるcircRNA上に配置するのに十分であることを指し示した。さらに、mA-irCLIPにかけられた内因性circRNAの、モデルである、ヒトプログラム化circRNAとの比較は、いずれもが、同様のmA修飾パターンを有することを指し示した(図4E)。mAは、内因性circRNA上、バックスプライス接合部の3’側の、+40~100ntの帯域内において、トランスクリプトームワイドにおいてエンリッチされる(図4E)。mAは、直鎖状mRNA及び非コードRNA(lncRNA)の最後のエクソンにおいてエンリッチされることが公知である(図5B)(Dominissiniら、Nature、485:201~206(2012);Keら、Genes & Development、29:2037~2053(2015);Meyerら、Cell、149:1635~1646(2012))。バックスプライス接合部の3’側におけるmA修飾が見出されたことは、このパターンと符合する。スプライシングは、5’側から3’側へと、転写時に生じ、3’側から5’側へのバックスプライシングは、circRNA上において予測される最後のスプライシングイベントである(すなわち、スプライシングにより切り出されたままのイントロンは存在しない)。
【0143】
次いで、化学修飾自体又はRNA結合性タンパク質によるmAの認識と組み合わせた化学修飾は、「自己」circRNAのマーキングを可能とすると仮定した。mAの、circFOREIGNへの組込みが、「非自己」の識別を遮蔽し、circFOREIGNの免疫原性を低下させるのか否かを検討することにより、これについて調べた。この目的で、非修飾circFOREIGN又はmA修飾circFOREIGNを、インビトロ転写(Chenら、前出)により合成し、RNアーゼR処理により、circRNAを精製した。mA修飾の、circRNAへの組込みは、circRNAを形成するスプライシングに影響を及ぼさず、RNアーゼR処理は、circRNAについてエンリッチした(図5C及び5D)。次いで、レシピエント細胞に、circFOREIGNをトランスフェクトし、抗ウイルス遺伝子の発現について測定した。細胞内におけるcircRNAのmA修飾が、転写物に沿って、特異的位置に集中したのに対し、インビトロ転写時におけるmAの組込みは、ランダムであった。こうして、全てのアデノシンが、mAにより置きかえられる(100%のmA)、又はmAのうちの1%のみが、circRNAへと組み込まれて、各circRNAについて、平均3つずつのmA修飾をもたらした。100%のmAは、超生理学的である可能性が高いが、インビボにおいて観察されるmAの連続的生起をモデル化する。1%のmAは、内因性RNA上のmAの比の総レベルをモデル化するが、修飾パターンをモデル化しない。circFOREIGNは、RIG-I、MDA5、OAS、OASL及びPKRを含む、抗ウイルス遺伝子のパネルを強力に誘導したが、アデノシンの全てが、mA修飾により置きかえられると、抗ウイルス遺伝子の誘導は、完全に消失させられた(図6A、100%のmA)。1%のmAの組込みは、抗ウイルス遺伝子の誘導を、有意に低減したが、これを消失させなかった(図6A)。こうして、mA修飾は、培養細胞内の外来circRNAの免疫原性を低減するのに十分であった。
【0144】
次いで、GFPエクソン内の配列であるRRACH(配列番号17)及びRRUCH(配列番号19)の全ての場合(n=12)を突然変異させることにより、mAコンセンサスモチーフ(Dominissiniら、前出)を消失させるように、circFOREIGNプラスミドを修飾した。circFOREIGNが、ヒト細胞の核内において転写されると、METTL3/14が、circFOREIGNを、低レベルにおいて修飾しうるが、これは、ΔRRACH突然変異体内において消失させられると仮定した。HeLa細胞に、野生型circRNA又は突然変異体circRNAをコードするプラスミドをトランスフェクトし、circRNAレベル及び自然免疫遺伝子の誘導を、qRT-PCRにより定量した。次いで、遺伝子誘導を、測定されたcircRNAのレベルに対して正規化した。
【0145】
RRACH部位の突然変異は、circRNAによる、抗ウイルス遺伝子の誘導を、有意に、約2倍に増大させた(図6B)。mAは、RRACHモチーフ(配列番号18)上においてエンリッチされるが、RRACHモチーフ上にのみ存在するわけではないため、GFPエクソン内の全てのアデノシンを、ウラシルへと突然変異させた修飾circFOREIGNプラスミドを構築した(Aを欠くcircFOREIGN、図6C)。Aを欠くcircRNAをコードするプラスミドのトランスフェクションは、抗ウイルス遺伝子の誘導の、circFOREIGNを上回る約100倍の増大をもたらした。
【0146】
本実施例の結果は、特異的circRNAエクソン配列が、免疫に影響を与えることの最初の証拠を提示し、内因性mA修飾が、自然免疫を弱めることを具体的に示唆する。
【0147】
[実施例6]
本実施例は、circRNAのmA修飾が、インビボにおけるワクチン接種応答を鈍らせ、mAリーダータンパク質であるYTHDF2が、circRNAによる免疫を遮蔽するのに必要であることを裏付ける。
【0148】
circRNAのmA修飾はまた、インビボにおけるアジュバントとしてのcircRNAの免疫原性も低下させた。1%mA修飾circFOREIGNを、非修飾circFOREIGNと同じアジュバントレジメにおいて使用したところ、1%のmA修飾は、活性化CD8 T細胞応答(図2Bと対比した図6D)及び抗体力価(図2Cと対比した図6E)の両方を実質的に低減することが見出された。1%mA修飾circFOREIGNによる反復免疫化は、減弱させられるが、皆無ではない免疫応答を誘導した(図7)。これらの結果は、circFOREIGNが、インビボにおいて、強力な免疫刺激剤であり、1%のmA修飾が、circRNAによる免疫を鈍らせるのに十分であることを示す。
【0149】
次いで、circRNAによる免疫の、mAによる抑制の機構について検討した。mAは、リーダータンパク質のファミリーにより認識され、これらのうちで最も主要なタンパク質は、YTHドメインを含有するRNA結合性タンパク質である(Dominissiniら、前出及びEdupugantiら、Nature Structural & Molecular Biology、24:870(2017))。YTHDF2は、(i)内因性circRNA又はcircSELFとの会合において検出された、主要なmAリーダーであり(図4A及び4B)、(ii)内因性circRNA及びトランスフェクトされたcircRNAと同様に、細胞質性タンパク質である(Chenら、前出;Rybak-Wolfら、Molecular Cell、58:870~885(2015);Salzmanら、PLoS One、7:e30733(2012))ため、これに焦点を当てた。YTHDF2-/-HeLa細胞への、circFOREIGNのトランスフェクション(図8A)は、抗ウイルス遺伝子の強力な誘導をもたらした(図9A)。さらに、1%mA又は10%mAの、circFOREIGNへの組込みも、YTHDF2-/-細胞内の、抗ウイルス遺伝子の誘導を、もはや抑制しなかった(図9A)。独立のYTHDF2-/-クローンも、酷似する結果をもたらした(図8B)。さらに、YTHDF2-/-細胞内の、YTHDF2の異所性発現が、mA修飾circFOREIGNに応答して、免疫遺伝子の誘導の抑制をレスキューした(図9B)ことは、YTHDF2が、mAによりマーキングされたcircRNAの「自己」識別を媒介するために要求されることを指し示す。
【0150】
次に、YTHDF2の、どのドメインが、circFOREIGNによる免疫刺激を抑制するために必要であるのかについて調べた。全長YTHDF2(図9C)を、非修飾circFOREIGNへと、人工的にテザリングし、mAリーダータンパク質の近接が、circRNAによる免疫を抑制するための、mA修飾の必要を回避しうるのか否かを決定した。5つの連続BoxB RNAエレメントを、circFOREIGNの、スプライス接合部の直後へと導入し、これを、「circBoxB」と称した。加えて、C末端のラムダNペプチドタグを、タンパク質へとクローニングし、ウェスタンブロットを介して、発現を確認した(図8C及び8D)。これは、RIP-qPCRにより確認される通り、λNペプチドへと融合させた、YTHタンパク質の動員を可能とした(図9C及び8E)。RNA分子種であるcircBoxBをコードするプラスミドのトランスフェクションは、単独において、抗ウイルス遺伝子を強力に刺激し、全長YTHDF2のテザリングは、抗ウイルス遺伝子の誘導を、有意に減弱させた(図9D)。
【0151】
YTHDF2のN末端ドメイン(YTHDF2N)が、circFOREIGNの免疫回避に十分であるのか否かを確立するために、YTHDF2のN末端を、非修飾circFOREIGN-BoxBへとテザリングした。N末端は、circFOREIGNに対する免疫応答を抑制するのに十分ではなかった(図9E)。N末端ドメインは、YTHDF2-RNA複合体の細胞内局在の一因となり、C末端ドメインは、mA修飾RNAに選択的に結合する(Wangら、Nature、505:117~120(2014))ので、C末端ドメインは、circFOREIGNによる抗ウイルス遺伝子の誘導を減弱させるために要求される可能性が高い。
【0152】
次いで、YTHドメインは、YTHを、非修飾circRNAへと接続することにより、circFOREIGNを、自己としてマーキングすることが可能であるのか否かについて検討した(図8F)。circFOREIGNが、YTHドメインへとテザリングされた場合であれ、そうでない場合であれ、RIG-I遺伝子の発現に著明な変化は見られなかった。しかし、circFOREIGNと、YTHとの接続は、MDA5及びOAS1の発現を著明に増大させた。全長YTHDF2タンパク質は、個別のドメインの各々より大型であるので、circFOREIGNの、赤色蛍光タンパク質(RFP)へのテザリングの、非修飾circRNAによる細胞認識に対する影響(図8G)について調べた。RIG-I遺伝子発現刺激のわずかな低下が見られたが、他の被験免疫センサーのいずれも、発現の変化を呈さなかった。これは、circFOREIGNの免疫原性の完全な抑制が、YTHDF2ドメインの全てを要求し、別のタンパク質とcircRNAとの相互作用は十分ではないことを示唆する。
【0153】
YTHファミリーの他のメンバーも、circFOREIGNの免疫抑制に関与するのか否かについて調べるために、BoxBモチーフを使用して、別の細胞質mAリーダータンパク質である、YTHDF1の、circFOREIGNへのテザリングの効果について検討した。YTHDF1のN末端もまた、YTHDF2と同様に、抗ウイルス遺伝子の誘導を減弱させなかった(図8H)。まとめると、これらの結果は、circRNAによる免疫を遮蔽するのに、全長mAリーダータンパク質が必要であり、circRNAは、「自己」circRNAと「外来」circRNAとを識別するのに、mAによる化学修飾又はmAリーダータンパク質を要求することを裏付ける。
【0154】
[実施例7]
本実施例は、mAライタータンパク質であるMETTL3が、circRNAの自己/非自己認識に要求されることを裏付ける。
【0155】
circRNA上の「自己」マーキングの伝送における、mAの必要性について精査するために、mA修飾の導入のための、ライター複合体の触媒性サブユニットであるMETTL3の役割について調べた。Mettl3は、RNAの適時の代謝回転における、mAの極めて重要な役割のために、胚の発生に不可欠である(Batistaら、Cell Stem Cell、15:707~719(2014))。多くのヒトがん細胞系におけるMETTL3の枯渇は、細胞死をもたらす。METTL3枯渇の1つ可能な帰結は、内因性circRNAのmA修飾の欠損であり、免疫活性化をもたらす。RIG-Iは、免疫遺伝子活性化のために、ウイルスRNAを感知するRNA結合性タンパク質であり、シグナル伝達タンパク質である(Wu及びHur、Current Opinion in Virology、12:91~98 (2015))。外来circRNAは、ヒト細胞内のRIG-Iと共局在することが示されており、RIG-Iは、circRNAによる免疫に必要かつ十分である(Chenら、前出)。したがって、mAが、細胞が、それら自身のcircRNAを、外来として認識し、免疫応答を誘発することを防止するのに要求されるのだとすると、同時に起こるRIG-Iの不活性化は、応答を改善するはずである。実際、野生型HeLa細胞内のMETTL3の枯渇は、広範な細胞死をもたらしたが、HeLa細胞内のRIG-Iの不活化(Chenら、前出)は、細胞死をレスキューした(図10)。
【0156】
本実施例の結果は、mAが、自己RNAによるRIG-Iの活性化を妨げることを示唆するが、METTL3の、他のRNA標的に起因する間接的効果は除外することはできない。
【0157】
[実施例8]
本実施例は、RIG-IによるcircFOREIGN認識が、直鎖状RNA認識と顕著に異なり、circFOREIGNが、RIG-I及びK63結合型ポリユビキチン鎖に直接結合し、mAを区別することを裏付ける。
【0158】
circRNAが、自然免疫応答をどのようにして刺激するのかの機構について精査するために、精製構成要素による生化学的再構成を用いた。まず、RIG-IによるATPの加水分解を誘導する、circFOREIGNの能力を評価した。RIG-Iが、5’ppp dsRNAアゴニストを認識すると、タンパク質のヘリカーゼドメインは、ATPを加水分解する(Hornungら、Science、314:994~997(2006);Schleeら、Immunity、31:25~34(2009))。RIG-Iの、circFOREIGN又は5’ヒドロキシル直鎖状RNAへの曝露が、そのATPアーゼ活性を刺激しなかったのに対し、512塩基対の5’三リン酸dsRNAは、RIG-IによるATP加水分解を誘導した(図11A)。次に、circFOREIGN上において、フィラメントを直接形成することにより、精製RIG-Iを活性化させるcircFOREIGNの能力について調べた。RIG-I、circFOREIGN及びATPについての電子顕微鏡イメージングが、フィラメントの明白な形成を明らかにしなかったのに対し、陽性対照である5’ppp dsRNAは、RIG-Iの重合を誘導した(図11B)。したがって、予測された通り、circFOREIGNは、5’ppp RNAリガンドと同じ形で、RIG-Iと相互作用したり、これを活性化させたりしない。
【0159】
RIG-I活性化の代替的機構は、RIG-I 2CARDドメインオリゴマーと相互作用し、これを安定化させるリシン63(K63)結合型ポリユビキチン鎖(K63-Ubn)を伴う(Jiangら、Immunity、36:959~973(2012);Peisleyら、Nature、509:110(2014);Zengら、Cell、141:315~330(2010))。非修飾circFOREIGN及びmA修飾circFOREIGNに結合するRIG-Iの能力及び相互作用の、K63結合型ポリユビキチン鎖に対する依存性について評価した。Nativeゲルシフト結合アッセイを、精製RIG-I及びcircFOREIGNと共に使用したところ、RIG-Iは、K63結合型ポリユビキチンの非存在下(図11C、レーン2)及び存在下(図11C、レーン3~4)のいずれにおいても、陽性対照である、162bpの5’ppp dsRNAに結合することが見出された。RIG-Iはまた、非修飾circFOREIGN及びmA修飾circFOREIGNのいずれにも結合した(図11C、レーン5~16)。K63結合型ポリユビキチン鎖は、RIG-Iの、circFOREIGNへの結合に必要であると考えられないが、K63結合型ポリユビキチン鎖の濃度が高濃度である場合、RIG-Iの、circFOREIGNへの結合の増大が見られた(図11C、レーン8と対比したレーン7、レーン12と対比したレーン11、レーン16と対比したレーン15)。これらの結果は、RIG-Iが、結合レベルの変化ではなく、コンフォメーション変化のレベルにおいて、非修飾circRNAと、mA修飾circRNAとを区別することを示唆する。これらの結果はまた、RIG-Iの、circRNAへの結合が、5’ppp dsRNAリガンドと異なることも裏付けている。
【0160】
RIG-I及びMDA5などのPRRは、多くのRNAを精査するが、免疫原性のRNAリガンドとの相互作用時に、オリゴマー化のためのコンフォメーション変化を、選択的にのみ経る(Ahmadら、Cell、172(4):797~810.e13(2018))。同様に、RIG-Iの、5’三リン酸(ウイルスRNA上に存在する)に対する、m7Gpppキャップ(全てのmRNA上に存在する)を上回る選択性は、リガンドへの結合ではなく、コンフォメーション変化に起因する(Devarkarら、Proc Natl Acad Sci USA、113(3):596~601(2016))。したがって、mA修飾circRNAを、コンフォメーション変化と対比した、結合レベルにおいて区別するRIG-Iの能力を査定した。
【0161】
RIG-Iが活性化されると、オリゴマー化RIG-Iは、MAVS(Mitochondrial Anti-Viral Signaling protein;IPS-1、Cardif及びVISAとしてもまた公知である)の、フィラメントへの重合の鋳型となり、IRF3転写因子の活性化及び二量体化に至る、後続のシグナル伝達のためのプラットフォームを創出する。精製circFOREIGN、精製RIG-I、精製K63結合型ポリユビキチン及び精製MAVSを、インビトロにおいて再構成し、MAVSの、単量体から、フィラメントへの移行を、ゲルシフト(図12A)又は電子顕微鏡(図12B)によりモニタリングした。非修飾circFOREIGNは、K63結合型ポリユビキチンの存在下において、MAVSの重合を、濃度依存的に強力に刺激した(図12B)。重要なことは、mA修飾を、circFOREIGNへと、1%又は100%において組み込んだところ、MAVSフィラメントの形成が、それぞれ、実質的に低下させられる、又は完全に消失させられたことである(図12B及び12C)。K63結合型ポリユビキチンの非存在下において、circRNA基質のうちのいずれもが、MAVSの重合を誘導しなかったことは、後続するMAVSの重合及びシグナル伝達が生じるために、活性化RIG-Iコンフォメーションを安定化させるのに、ポリユビキチンが必要であることを指し示す(図11D)。MAVSフィラメントの、電子顕微鏡による定量は、非修飾circFOREIGNが、MAVSフィラメントの形成を強力に誘導するのに対し、circFOREIGNのmA修飾は、オリゴマー化するMAVSの能力を抑制することを確認した(図12B及び12C)。
【0162】
精製構成要素による、これらのインビトロ結果は、非修飾circFOREIGNが、K63結合型ポリユビキチンの存在下において、RIG-Iを直接活性化させ、他の任意の酵素又はRNA結合性タンパク質の非存在下において、MAVSを活性化させることを裏付ける。RIG-Iへの結合は、非修飾circRNAと、mA修飾circRNAとを識別できず(図11C)、非修飾circFOREIGNのみが、K63結合型ポリユビキチンの存在下において、MAVSフィラメントの形成を誘発した(図12A~12C)。これらの結果は、mAの区別が、MAVSの、単量体から、フィラメントへの移行において生じ、RIG-Iへの結合ではなく、RIG-Iコンフォメーション変化に依存することを示唆する。
【0163】
[実施例9]
本実施例は、circFOREIGNが、IRF3の二量体化を活性化させることを裏付ける。
【0164】
MAVSのフィラメント形成の後、下流における転写因子であるIRF3の二量体化は、ゲノムへの自然免疫シグナル伝達を完了する。IRF3を活性化させるcircFOREIGNの能力について調べるために、無細胞アッセイを、まず、RIG-I、RNA、K63結合型ポリユビキチン複合体を形成し、次いで、細胞質ゾル画分及びミトコンドリア画分の両方を含有する細胞抽出物(S1)の存在下において、放射性標識化IRF3と共にインキュベートすることにより実施した。circFOREIGNが、IRF3の二量体化を、濃度依存的に強力に誘導したのに対し、mA修飾circFOREIGNは、IRF3二量体化の実質的な低下をもたらした(図12D、レーン8~10と対比した、レーン5~7)。公知のアゴニストである、162bpの5’ppp dsRNAは、化学当量未満の量において存在する場合に、RIG-I媒介性IRF3二量体化を良好に刺激し、dsRNAの増大は、RNA上における、RIG-Iの効果的なオリゴマー化を妨げた(図11D)。5’-ヒドロキシル直鎖状RNAは、陰性対照について予測される通り、IRF3の二量体化を刺激しなかった(図12D、レーン2~4)。
【0165】
[実施例10]
本実施例は、circFOREIGNが、活性化の前に、適正な複合体の形成を要求することを裏付ける。
【0166】
RIG-Iのオリゴマー化及び活性化の要件を理解するために、インビトロアッセイのための、特異的構成要素の添加の順序について検討した。5’ppp RNAは、S1溶解物の補充の前に、RIG-I及びK63結合型ポリユビキチンと共にプレインキュベートされる場合に、より強力な応答を示した。しかし、S1溶解物の導入の後における、5’ppp dsRNAの添加は、有意であるが、低減された刺激活性を結果としてもたらした(図11E、レーン8及び9と対比したレーン2及び5)。ポリユビキチンの存在又は非存在の間に差違が見られなかったので、S1期におけるK63結合型ポリユビキチンの添加は、有効でなかった(図11E、レーン10及び11と対比したレーン2及び5)。circFOREIGNを、S1細胞溶解物へと添加し、次いで、RIG-I及びポリユビキチンと混合したところ、IRF3二量体化活性は得られなかった(図12D、レーン11~13)。この結果は、おそらく、細胞溶解物中の遊離K63結合型ポリユビキチン鎖の急速な分解又は不安定化のために、ポリユビキチンが、まず、アゴニストであるcircRNAの存在下において、RIG-Iと相互作用し、これを安定化させる必要があることを示唆する。したがって、シグナル伝達複合体は、S1細胞溶解物の添加の前に形成される必要がある。さらなる実験は、IRF3のcircFOREIGN媒介性活性化における、内因性RNAの役割を除外した(図11F)。
【0167】
まとめると、上記において記載された、生化学的再構成実験は、circFOREIGN、RIG-I及びK63-Ubnが、免疫シグナル伝達のための、3構成要素型のシグナル伝達コンピテント複合体を形成することを裏付けた。
【0168】
[実施例11]
本実施例は、細胞内における、非修飾circRNAの、mAマーキングcircRNAと対比して、顕著に異なる局在について記載する。
【0169】
RIG-Iによる、circFOREIGNの直接的なセンシングについてのインビトロアッセイを検証するために、免疫蛍光顕微鏡法を実施した。HeLa細胞に、FITC標識化circFOREIGNをトランスフェクトし、ホルムアルデヒドにより固定し、RIG-I及びK63結合型ポリユビキチンを標識付けした(図13A)。circFOREIGN-FITCの大部分は、RIG-I及びK63結合型ポリユビキチンのいずれとも共局在した(図13B、85.5%)。K63結合型ポリユビキチンが、複合体内に存在する場合、非修飾circFOREIGNとの相互作用は、RIG-Iを活性化させ、これは、MAVSのフィラメント形成に対する後続の刺激を可能とした。
【0170】
RIG-Iの活性化は、非修飾circRNAと、mA修飾circRNAとを区別するので、YTHDF2が、RIG-Iの活性化を阻害する、又はRIG-Iへの結合を減少させる複合体に参与すると仮定した。かつて、circRNA上において、1%のmA修飾を使用したが、mAは、ランダムに組み込まれるため、RRACHコンセンサスモチーフ(配列番号18)におけるmAレベルは、1%をはるかに下回ることが予期された。YTHDF2は、RRACHモチーフ(配列番号18)において、mAに結合する(Dominissiniら、前出;Meyerら、前出)。したがって、コンセンサス配列におけるmAの配置の良好なモデル化のために、10%のmAを、circFOREIGNへと組み込んだ。免疫蛍光顕微鏡法を、非修飾circFOREIGN又は10%のmA修飾circFOREIGN、RIG-I及びYTHDF2について実施した(図13C)。circFOREIGN上にmA修飾が存在する場合に、circRNAの、RIG-I及びYTHDF2との共局在の百分率が、倍増を超えた(33.8%~65.3%)のに対し、単独におけるRIG-Iと相互作用するcircFOREIGNの百分率は低下した(図13D、61.9%~29.3%)。これらの結果は、mA修飾が、YTHDF2を、RIG-Iと同じ複合体へと動員することを裏付け、免疫蛍光研究は、細胞内における、mA修飾circRNAと対比した、非修飾circRNAの顕著に異なる運命について、直交的かつ空間的な情報をもたらす。
【0171】
まとめると、データは、RIG-Iが、K63結合型ポリユビキチンに依存する機構を介して、外来circRNAを認識することを示唆する(図14)。RIG-I、非修飾RNA及びK63結合型ポリユビキチンの複合体の形成は、MAVSフィラメントの形成及びIRF3の二量体化を誘発して、下流におけるインターフェロンの産生を刺激する。mA修飾circFOREIGNもまた、RIG-Iに結合するが、RIG-Iの活性化を抑制するので、mA修飾を有する自己circRNAは、安全に無視される。細胞内において、YTHDF2は、mAと共に作用して、免疫シグナル伝達を阻害する。
【0172】
上記の例は、circRNAが、特異的なT細胞応答及びB細胞応答を誘導する、強力なアジュバントとして作用することの、インビボにおける証拠を提示する。circRNAは、自然免疫応答及び獲得免疫応答の両方を誘導することが可能であり、腫瘍の確立及び増殖を阻害する能力を有する。結果は、ヒトcircRNAが、生誕時に、それらのバックスプライシングをプログラムするイントロンに基づき、共有結合的mA修飾によりマーキングされることを示唆する。RIG-Iは、非修飾circRNAと、mA修飾circRNAとを区別し、前者のみにより活性化される。RIG-Iが、外来circRNAによる自然免疫に必要かつ十分であるのに対し(Chenら、前出)、toll様受容体は、circRNAに対して応答性ではない(Wesslhoeftら、前出)。これに対し、RNA修飾を欠く外来circRNAは、RIG-I及びK63-Ubnにより認識され、外来circRNAのmA修飾は、それらを、「自己」としてマーキングして、免疫活性化を防止するのに十分である。モデルcircRNA内の全てのアデノシンの修飾又はカノニカルのmAモチーフであるRRACH(配列番号18)内のアデノシンのみの修飾は、circRNAによる、抗ウイルス遺伝子の誘導を、実質的に増大させた。
【0173】
これらの結果は、特異的circRNAエクソン配列が、免疫に影響を与えることの最初の証拠を提示し、内因性mA修飾が、自然免疫を弱めることを裏付ける。5’三リン酸直鎖状RNAリガンドのmA修飾はまた、RIG-Iへの結合及びRIG-Iの活性化も消失させる(Durbinら、mBio、7:e00833-00816(2016);Peisley ら、Molecular Cell、51:573~583(2013))。よって、RIG-Iは、circRNAの一般的リーダーであると考えられ、その活性化は、真核RNAの主要な特色である、RNA修飾により抑制される。非修飾circRNA及びmAcircRNAのいずれも、RIG-Iに結合しうるが、非修飾circRNAのみが、RIG-Iを活性化させて、MAVSフィラメントの形成を誘発しうる。これらの結果は、RIG-Iコンフォメーション変化が、MAVSフィラメントの形成を誘導するのに必要であることを示唆する。この観察は、リガンドへの結合ではなく、コンフォメーション変化に起因する、RIG-Iの、5’三リン酸(ウイルスRNA上に存在する)に対する、m7Gpppキャップ(全てのmRNA上に存在する)を上回る選択性(Devarkarら、前出)と同様である。共結晶構造解析及び生化学解析は、5’三リン酸及びm7Gpppのいずれもが、RIG-Iに、同じアフィニティーにより結合するが、後者が、顕著に異なるコンフォメーション変化を誘発し、RIG-Iに、内因性mRNAに対してフィルターをかけるように仕向け、ATPアーゼ活性を低下させることを示す(Devarkarら、前出)。生細胞において、YTHDF2は、免疫遺伝子の下流におけるシグナル伝達に必要なRIG-Iのコンフォメーション転換を阻害する(図13)。
【0174】
上記の例は、circRNAによる免疫に対する、YTHDF2媒介性抑制の必要性、十分性及びドメイン要件について、体系的に対処している。全長YTHDF2の要件は、YTHタンパク質が、mA修飾RNAを、それらのN末端変性ドメインを介して、相分離凝縮物へと動員する、すなわち、いずれのドメインも、高次のRNA-タンパク質間相互作用に必要とされるという近年のモデルと符合する(Luo、2018)。これらの結果は、YTHDFの機能についての既存の知見を拡大する。RNAの分解又は翻訳を誘導するのに、エフェクタードメインのみのテザリングで十分である(Wangら、2015;Wangら、2016)が、circRNAの自己/外来の区別に、全長タンパク質が必要とされる。これらの結果は、mAについて、RIG-I抗ウイルス経路を活性化しないように、内因性circRNAを隔離及び遮断する二層からなる系を示唆する。YTHDF2に加えて、内因性circRNAの自己としての同定に関与する、他のセンサー及び受容体もまた存在する。
【0175】
本明細書において引用される、刊行物、特許出願及び特許を含む、全ての参考文献は、各参考文献が、参照により組み込まれることが、個別に、かつ、具体的に指し示され、本明細書において、その全体において明示された場合と同じ程度に、参照により組み込まれる。
【0176】
本明細書において別途指示がない限り、又は文脈により反対のことが明確に指示されない限り、本発明についての記載の文脈における(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈における)、「ある(a)」指示対象及び「ある(an)」指示対象及び「その」指示対象並びに「少なくとも1つの」指示対象並びに同様の指示対象という用語の使用は、単数の指示対象及び複数の指示対象の両方を対象とする。本明細書において別途指示がない限り、又は文脈により反対のことが明確に指示されない限り、リストの1つ以上の項目に続く、「少なくとも1つの」という用語(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、列挙された項目から選択される1つの項目(A又はB)又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組合せ(A及びB)を意味するように理解されるものとする。「~を含むこと(comprising)」、「~を有すること」、「~を含むこと(including)」及び「~を含有すること」という用語は、別途注記されない限り、オープンエンドの(すなわち、「~を含むがこれらに限定されない」を意味する)用語であると理解されるものとする。本明細書において別途指示がない限り、本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内に収まる各個別の値に、個別に言及する縮約法として用いられることのみが意図され、各個別の値は、本明細書において個別に列挙された場合と同様に、本明細書へと組み込まれる。本明細書において別途指示がない限り又は文脈により反対のことが別途明確に指示されない限り、本明細書において記載される全ての方法は、任意の適切な順序で実施されうる。本明細書において提示される、任意の例及び全ての例又は例示的表現(例えば、「~など」)の使用は、本発明をよりよく例示することのみが意図されるものであり、別途特許請求されない限り、本発明の範囲に対する限定を提起するものではない。本明細書におけるいかなる表現も、特許請求されていない任意の要素を、本発明の実施に不可欠なものとして指し示すものとして理解されるべきではない。
【0177】
本明細書において、本発明を実施するために、本発明者らに既知である、最良の方式を含む、本発明の好ましい実施形態が記載される。これらの好ましい実施形態の変動は、前出の記載を読めば、当業者に明らかとなりうる。本発明者らは、当業者が、適宜、このような変動を用いることを期待し、本発明者らは、本発明が、本明細書において具体的に記載された形とは別の形で実施されることを意図する。したがって、本発明は、該当する法規により許容される限りにおいて、本明細書に付属の特許請求の範囲において列挙される主題の、全ての改変及び均等物を含む。さらに、本明細書において別途指示がない限り、又は文脈により反対のことが別途明確に指示されない限り、上記において記載された要素の、その全ての可能な変動における、任意の組合せも、本発明により包含される。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2022546046000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N6-メチルアデノシン(mA)残基を、一切、含有しない環状RNA分子を含むワクチン組成物。
【請求項2】
環状RNAが、RRACHモチーフを欠く、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの抗原をさらに含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
環状RNA分子が、ポリペプチドをコードする配列に作動可能に連結された内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
ポリペプチドをコードする配列が、少なくとも1つの抗原をコードする、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの抗原が、ウイルス由来、細菌由来、寄生虫由来、真菌由来、原虫由来、プリオン由来、細胞由来、又は細胞外由来の抗原である、請求項3又は5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの抗原が、腫瘍抗原である、請求項3又は5に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
環状RNA分子が、インビトロ転写を使用して作製される、請求項1~7のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
環状RNAが、組成物中に、ネイキッドRNAとして存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
環状RNAが、ナノ粒子と複合体を形成している、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
ナノ粒子が、ポリエチレンイミン(PEI)ナノ粒子である、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
自然免疫応答を誘発することを必要とする対象における自然免疫応答を誘発するための、請求項1~11のいずれか一項に記載のワクチン組成
【請求項13】
環状RNAをコードするDNA配列を含む組成物であって、環状RNAが、N6-メチルアデノシン(mA)残基を、一切、含有しない組成物。
【請求項14】
DNA配列が、RRACHモチーフを一切含まない、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
ウイルスベクター又は非ウイルスベクターが、DNA配列を含む、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター又はヘルペスウイルスベクターである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
非ウイルスベクターが、プラスミドである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
有効量の、請求項13~17のいずれか一項に記載の組成物を含む、自然免疫応答を誘発することを必要とする対象における自然免疫応答を誘発するための組成物
【請求項19】
インビトロ転写により、環状RNA分子を作製する方法であって、
(a)環状RNA分子をコードするDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及びRNAポリメラーゼを用意するステップ;
(c)DNA鋳型から、直鎖状RNAを転写するステップ;及び
(d)直鎖状DNAを環状化して、環状RNAを形成するステップ
を含み;
リボヌクレオチド三リン酸が、N6-メチルアデノシン-5’三リン酸(mATP)を一切含まず;
環状RNAが、対象において、自然免疫応答をもたらすことが可能である、
方法。
【請求項20】
環状RNAが、mAを一切含まない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
インビトロ転写により、環状RNA分子を作製する方法であって、
(a)環状RNA分子をコードするDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及びRNAポリメラーゼを用意するステップ;
(c)DNA鋳型から、直鎖状RNAを転写するステップ;及び
(d)直鎖状DNAを環状化して、環状RNAを形成するステップ
を含み;
リボヌクレオチド三リン酸が、N6-メチルアデノシン-5’三リン酸(mATP)を含み;
環状RNAが、同じ方法を使用するがmATPの非存在下で使用して作製される環状RNAと比較して免疫原性が小さい、
方法。
【請求項22】
組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも1%が、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも10%が、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組換え環状RNA分子内のアデノシンの全てが、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
環状RNA分子の自然免疫原性を低減する方法であって、
(a)対象において自然免疫応答を誘導する環状RNA分子を用意するステップ;及び
(b)N6-メチルアデノシン(mA)、シュードウリジン及びイノシンから選択される少なくとも1つのヌクレオシドを、環状RNA分子へと導入して、自然免疫原性が低減された修飾環状RNA分子をもたらすステップ、
を含む方法。
【請求項26】
環状RNA分子のうちの、少なくとも1%が、mA、シュードウリジン及び/又はイノシンを含有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
環状RNA分子のうちの、少なくとも10%が、mA、シュードウリジン及び/又はイノシンを含有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
環状RNA分子の自然免疫原性を増大させる方法であって、
(a)RRACHモチーフを欠く環状RNA分子を作出するステップ;及び
(b)1つ以上のアデノシンを、別の塩基により置きかえて、自然免疫原性が増大させられた修飾環状RNA分子をもたらすステップ、
を含む方法。
【請求項29】
環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも1%が、ウラシルにより置きかえられる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも10%が、ウラシルにより置きかえられる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
環状RNA分子内のアデノシンの全てが、ウラシルにより置きかえられる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(m A)化学修飾を含む組換え環状RNA分子を含む、細胞へ物質を送達するための組成物
【請求項33】
物質が、タンパク質又はペプチドである、請求項32に記載の組成物
【請求項34】
物質が、抗原又はエピトープである、請求項32又は33に記載の組成物
【請求項35】
物質が、低分子である、請求項32に記載の組成物
【請求項36】
物質が、組換え環状RNA分子へと共有結合的に連結される、請求項3235のいずれか一項に記載の組成物
【請求項37】
インビトロにおいて、細胞内にRNA結合性タンパク質を隔離する方法であって、
(a)少なくとも1つのN6-メチルアデノシン(mA)及び1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性ドメインを含む組換え環状RNA分子を作出するステップ;及び
(b)RNA結合性タンパク質を含む細胞を、組換え環状RNA分子と接触させるステップであって、これにより、RNA結合性タンパク質が、1つ以上のRNA結合性タンパク質結合性ドメインに結合し、細胞内に隔離されるステップ、
を含む方法。
【請求項38】
RNA結合性タンパク質が、細胞内において異常に発現されている、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
RNA結合性タンパク質が、少なくとも1つの突然変異を含む核酸配列によりコードされる、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
RNA結合性タンパク質が、疾患と関連する、請求項3739のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも1%が、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項3740のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
組換え環状RNA分子内のアデノシンのうちの少なくとも10%が、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
組換え環状RNA分子内のアデノシンの全てが、N6-メチルアデノシン(mA)である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
組換えRNA分子が、ファージT4チミジル酸シンターゼ(td)遺伝子の自己スプライシングI群イントロン及び少なくとも1つのエクソンを含む、請求項3743のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
組換え環状RNA分子が、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む、請求項3744のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
組換え環状RNA分子が、200ヌクレオチド~6,000ヌクレオチドの間のヌクレオチドを含む、請求項3745のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
組換え環状RNA分子が、約1,500ヌクレオチドを含む、請求項46に記載の方法。
【国際調査報告】